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日本からもこういう情報が欲しい!(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染禍は2年以上持続している。テレビのニュースでは各県の新規感染者数が発表される。日本のような小さな国で、各県、揺らぎの大きい毎日の感染報告者数を発表されても正直何もわからない。科学の世界では数値情報が必須である。世界の誰とも共有できるように、科学的方法に基づいて数値をまとめてほしい。 北欧諸国は日本と同様に比較的サイズの小さい国である。社会主義的傾向があるのでNational Databaseが充実している。本研究は新型コロナウイルス発症日を起点として、発症前の時期と静脈血栓症、肺塞栓症、重篤出血イベントの発症リスクを示している。ウイルス感染であるため、感染後ウイルスは増殖するが、免疫により駆逐される。新型コロナウイルスは血管内皮にも感染して血栓リスクを増加させるとされているが、リスクの増加はいつまでも持続するわけではない。血栓イベント予防を目指してヘパリンなどの抗血栓薬を使用するのが一般的なので重篤な出血合併症も増えると想定される。 新型コロナウイルスに感染すると静脈血栓リスクは速やかに上昇し、1週間から1ヵ月でリスクは5倍以上と最大になる。3ヵ月後には激減し、6ヵ月でコントロールに戻る。肺塞栓症のリスクは発症直後から激増し、2週間で46倍ともなる。その後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月とリスクは激減する。重篤な出血イベントリスクは発症直後が5倍と最大で、その後は、急速にリスクは低下する。 日本のニュースで発表される情報が臨床的見地から役に立たないのに対して、スウェーデンでは新型コロナウイルスの血栓症、その重篤なイベントである肺血栓塞栓症、抗血栓薬の合併症の好発時期に対して臨床に役立つ情報を提供している。 継続的に集積されているイベントデータなので、ワクチン接種の有無による変化、ウイルス株による血栓性の変化も定量情報として取得できる。 厚生労働省内部に「論文出版課」を作れば、日本でも役所が仕事として科学論文をシステムに出版するようになるかもしれない。科学論文を作ろうとすれば、データを科学的にまとめるだろう。厚労省から科学的数値データが出れば、数値データに基づいた政策ができるだろう。読者がいたらまじめに考えてほしい。

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英語で「頓服」は?【1分★医療英語】第25回

第25回 英語で「頓服」は?I still have pain in my left arm.(まだ左腕に痛みがあります)Take this medication as needed.(この薬を頓服してください)《例文1》Take this painkiller as needed for breakthrough pain.(突発的な痛みがあるときに、この痛み止めを服用してください)《例文2》Please contact us as needed basis.(必要に応じてご連絡ください)《解説》日本語の「頓服」とは「必要に応じて」という意味であり、英語では“as needed”と表現します。処方箋の表記は“PRN”(ラテン語のpro re nataの略)です。患者さんに説明するときは、具体的にどのような場合に服用が必要なのか、という情報が必要です。《例文1》のように“breakthrough pain”と説明したり、“Take it ‘only’ when you start feeling pain.”とonlyを強調して伝えたりすることで、飲み間違いが起こらないようにします。また、“short acting”(短期即効性のある薬)の頓服薬を“rescue medication”と呼び、服用状況の確認のため“Keep a record when you take your rescue medication.”(頓服薬をどれくらい飲んだか記録してください)と患者さんに伝えることが多いです。“Call me as needed!”(必要なときに電話して)とスタッフ同士のやりとりでも“as needed”はよく用いられる表現なので、“必要に応じて”使ってみてください!講師紹介

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第109回 12ヵ国が小児の原因不明の急な肝炎を報告

英国や北アイルランドで発端不明の急な肝炎が幼い小児に多発していることを世界保健機関(WHO)が今月15日に発表して以降その数は増えており、21日までに12ヵ国で少なくとも169人に認められています1,2)。注意の高まりでいつもなら未発見のままの発生例がより検出されているだけで発生率は上昇していないかもしれず、肝炎が実際に増えているのかどうかは定かではありません。原因の調査は進行中ですが、今のところアデノウイルスの関与が示唆されています。肝炎小児の年齢層は生後1ヵ月から16歳で、169人のうち17人(約10%)は肝臓移植を受けました。少なくとも1人は死亡しています。小児の多くは腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸症状を急な重症肝炎に先立って被っており、肝酵素・ASTやALTの500 IU/L超への上昇や黄疸を生じています。一方、ほとんどは発熱していません。急な肝炎の原因として知られるA~E型肝炎ウイルスはどの小児からも検出されていません。把握済みの情報によると外国への旅行や国外要因の寄与は認められていません。アデノウイルスは少なくとも74人から検出されており、分子レベルの検査記録がある小児のうち18人からはアデノウイルスF亜群41型(F type 41)が検出されています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は20人に認められ、19人からはSARS-CoV-2とアデノウイルスの両方が検出されています。報告数のほとんどを占める英国では新型コロナウイルス感染(COVID-19)流行の初期には少なかったアデノウイルス市中感染が最近になって有意に増加しています。また、オランダも同様の傾向を報告しています。アデノウイルスは免疫学的に50を超える種類があり、少なくとも18人から見つかっている41型の主な症状として知られているのは下痢、嘔吐、発熱であり、しばしば呼吸器症状を伴います。免疫不全小児のアデノウイルス感染肝炎の報告はありますが、アデノウイルス41型が健康な小児の思いもよらない肝炎の原因と見られたことはありません。COVID-19流行中にアデノウイルスと疎遠だった幼い小児のその後の易感染性、新たなアデノウイルスが発生していないかどうか、アデノウイルスとSARS-CoV-2の同時感染などの要因調査が必要とWHOは述べています。英国はアデノウイルスのゲノムに変化が生じているかどうかの調査を始めています3)。WHOに報告されている小児のほとんどはCOVID-19ワクチン非接種です。報告数が最も多い英国の12日までの医療機関受診例に認められた原因不明肝炎の小児108人にCOVID-19ワクチン接種者は1人もおらず、COVID-19ワクチンとは無関係と判断されています3)。参考1)Multi-Country - Acute, severe hepatitis of unknown origin in children / WHO2)WHO says at least one child has died after increase of acute hepatitis cases in children / Reuters3)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation /UK Health Security Agency

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抗精神病薬の治療歴とその後の代謝関連副作用との関係

 抗精神病薬治療によるさまざまな有害事象が報告されているが、重篤な副作用が頻繁に認められるわけではない。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYe Yang氏らは、抗精神病薬の治療歴が現在の抗精神病薬誘発性代謝関連副作用と関連しているかを確認するため、検討を行った。BMC Psychiatry誌2022年3月21日号の報告。 抗精神病薬未治療患者115例、代謝関連副作用リスクの低い抗精神病薬による治療歴を有する患者65例、同リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者88例を対象に、ケースコントロール研究を実施した。すべての患者に対し、オランザピン治療を実施した。体重、BMI、血糖値、脂質パラメータ、ベースラインより7%以上の体重増加が認められた患者の割合、脂質異常症の割合を評価した。すべての評価は、ベースライン時、治療開始4週目および6週目に実施した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン治療により、抗精神病薬未治療患者は他の2群と比較し、体重とBMIの有意な増加が観察された(それぞれp<0.05)。・代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、脂質レベルが有意に高かった(それぞれp<0.05)。・抗精神病薬の治療歴と体重増加との間に有意な関連は認められなかった(すべてのp>0.05)。・抗精神病薬による治療歴を有さない患者と比較し、同治療歴を有する患者では、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値が観察された(aOR:1.75、95%CI:1.07~3.52)。・とくに、代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値リスクが高かった(aOR:2.18、95%CI:1.03~3.32)。 著者らは「抗精神病薬治療歴、とくに代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、現在使用している抗精神病薬により誘発される代謝関連副作用との関連が示唆された」としている。

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乳がん術後化学療法後、長期QOLが悪化しやすい患者の特徴/JCO

 乳がん術後補助化学療法後のQOLの長期的経過は個人差が大きい。今回、フランス・Gustave RoussyのAntonio Di Meglio氏らが術後補助化学療法を受けた乳がん患者のQOLの長期的経過の特徴を調査し、関連する健康行動パターンを特定した結果、ほとんどの患者は経過が良好だったが、QOLが著しく悪化し、診断後4年間は治療前の値に回復しなかった集団が特定された。このグループでは、過体重、身体的不活動、喫煙がとくに多く、その他のリスク因子として、若年、併存疾患あり、低所得、内分泌療法ありが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年4月21日に掲載。 本研究の対象は、CANTO(CANcer TOxicity)試験において化学療法を受けているStageI〜IIIの乳がん患者。QOL(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-C30 Summary Score)の経過と各グループの患者との関連は、それぞれ、グループを基にした経過モデルと多変量多項ロジスティック回帰の反復推定によって調べた。 主な結果は以下のとおり。・QOLの経過によって、大変良好(51.7%)、良好(31.7%)、悪化(10.0%)、悪い(6.6%)の4グループが特定された(4,131例)。・QOLが悪化したグループは、ベースラインのQOL(平均:78.3/100、95%CI:76.2〜80.5)が良好で、1年目(平均:58.1/100、95%CI:56.4〜59.9)で著しく悪化し、診断後4年目(平均:61.1/100、95%CI:59.0~63.3)まで治療前の値に回復しなかった。・健康的な行動は、より良い経過のグループの患者と関連していた。診断時における肥満(痩せに対する調整オッズ比[OR]:1.51、95%信頼区間[CI]:1.28〜1.79、p<0.0001)および現在喫煙(非喫煙に対する調整OR:1.52、95%CI:1.27〜1.82、p<0.0001)はQOLが悪化したグループの患者と関連しており、4年目まで過体重で身体活動が不十分な患者が多く、化学療法中にもしばしば喫煙していたことも特徴としてみられた。・悪化したグループの患者に関連するその他の因子として、若年(1歳低下による調整OR:1.01、95%CI:1.01~1.02、p=0.043)、併存疾患あり(なしに対する調整OR:1.22、95%CI:1.06~1.40、p=0.005)、低所得(裕福な家計に対する調整OR:1.21、95%CI:1.07〜1.37、p=0.002)、内分泌療法あり(なしに対する調整OR:1.14、95%CI:1.01〜1.30、p=0.047)などがあった。

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NSCLCの術前補助療法、ニボルマブ追加でEFS延長(CheckMate-816)/NEJM

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法において、PD-1免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブと化学療法の併用療法は化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に延長し、病理学的完全奏効の割合は有意に高率であり、ニボルマブ追加による有害事象や手術の実行可能性の妨げとなる事象の増加は認められないことが、米国・ジョンズホプキンス大学KimmelがんセンターのPatrick M. Forde氏らが実施した「CheckMate-816試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年4月11日号で報告された。14ヵ国の無作為化第III相試験 本研究は、NSCLCの術前補助療法における、化学療法へのニボルマブ追加の有用性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、東アジアの4ヵ国(中国、日本、韓国、台湾)を含む世界14ヵ国の施設が参加し、2017年3月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(米国Bristol Myers Squibbの助成を受けた)。 対象は、Stage IB(腫瘍径≧4cm)~IIIAの切除可能NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第7版の病期判定基準に準拠)で、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(0~4点、点数が高いほど身体機能の障害度が高い)のスコアが0または1で、がんに対する治療歴のない成人患者であった。 被験者は、根治手術を受ける前に、ニボルマブ(360mg)+プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法、またはプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法のみの投与を、3週(1サイクル)ごとに3サイクル施行する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。手術は、術前補助療法終了から6週間以内に行われ、術後補助療法は化学療法、放射線療法あるいはこれら双方を最大4サイクル実施してよいこととされた。 主要エンドポイントは、無イベント生存期間(病勢進行、再発、死亡までの期間)と病理学的完全奏効(切除肺とリンパ節に生存かつ増殖可能な腫瘍細胞が存在しない)とされた。根治手術施行率:83.2% vs.75.4% 358例が登録され、ニボルマブ併用群に179例(年齢中央値64歳、女性28.5%、アジア人47.5%)、化学療法単独群に179例(65歳、29.1%、51.4%)が割り付けられた。術前補助療法を完遂した患者の割合は、ニボルマブ併用群が93.8%、化学療法単独群は84.7%、術後の補助化学療法はそれぞれ11.9%および22.2%、後治療は21.2%および43.6%が受けた。 最も短い追跡期間が21ヵ月の時点で、無イベント生存期間中央値はニボルマブ併用群が31.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.2~未到達)と、化学療法単独群の20.8ヵ月(95%CI:14.0~26.7)に比べ有意に長かった(ハザード比[HR]:0.63、97.38%CI:0.43~0.91、p=0.005)。1年無イベント生存率はそれぞれ76.1%および63.4%、2年無イベント生存率は63.8%および45.3%であった。 また、病理学的完全奏効の割合は、ニボルマブ併用群が24.0%(95%CI:18.0~31.0)であり、化学療法単独群の2.2%(0.6~5.6)よりも有意に高かった(オッズ比[OR]:13.94、99%CI:3.49~55.75、p<0.001)。 無イベント生存期間と病理学的完全奏効の結果は、ほとんどのサブグループが化学療法単独群よりもニボルマブ併用群で良好であった。 根治手術は、ニボルマブ併用群が83.2%、化学療法単独群は75.4%で行われた。R0切除(遺残腫瘍なし)は、根治手術例のそれぞれ83.2%および77.8%で達成された。 一方、事前に規定された1回目の中間解析では、両群とも全生存期間中央値には到達せず、統計学的有意性の判定基準(p<0.0033)は満たされなかった(HR:0.57、99.67%CI:0.30~1.07、p=0.008)。 Grade 3/4の治療関連有害事象は、ニボルマブ併用群が33.5%、化学療法単独群は36.9%で発現した。治療中止の原因となった全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ10.2%および9.7%で認められた。全体として免疫介在性有害事象の発生頻度は低く、多くがGrade1/2であり、ニボルマブ併用群で最も頻度が高かったのは皮疹(8.5%)だった。 手術関連有害事象(手術合併症)は、ニボルマブ併用群が41.6%(うちGrade3/4は11.4%)、化学療法単独群は46.7%(同14.8%)で認められた。Grade5の手術関連有害事象(発症後24時間以内に死亡)はニボルマブ併用群で2例(肺塞栓症、大動脈破裂)にみられたが、いずれも試験薬との関連はないと考えられた。 本試験の結果に基づき、米国では、ニボルマブとプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法の併用が、切除可能(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)NSCLCの成人患者の術前補助療法として承認された。

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第98回 診断遅滞で研修医寝たきり、鹿児島大などに約3億円の賠償命令

<先週の動き>1.診断遅滞で研修医寝たきり、鹿児島大などに約3億円の賠償命令2.新型コロナワクチン接種、4回目は対象者を絞って実施へ/厚労省3.新型コロナ治療薬としてパキロビッドパックを推奨/WHO4.第6波のコロナ受け入れ体制、国の要請に応じる余力なしと判明/医労連5.膨らみ続けるコロナ対策、予備費の用途に透明性を求める声1.診断遅滞で研修医寝たきり、鹿児島大などに約3億円の賠償命令研修医の男性が、鹿児島大学病院と鹿児島生協病院の医師らが適切な診断と治療をしなかったため、寝たきりになる後遺障害を負ったとして、同病院に対して慰謝料など約4億1,200万円を求めた訴訟の判決が20日、鹿児島地裁で下された。裁判長は医師らの過失を認め、病院を運営する鹿児島大と鹿児島医療生協に対して約3億2,700万円の支払いを命じた。判決によれば、鹿児島生協病院の研修中だった男性が、2007年12月、診療中に頭痛を訴え、同病院の内科を受診。頭部CT検査などから異常を認め、鹿児島大学病院の脳外科に精査を求めたところ、「膠芽腫」の可能性があると診断されたが、すぐに手術が必要とは判断されず生協病院で入院継続となった。男性は嘔吐を繰り返し、4日後に意識消失のため鹿児島大学病院に緊急搬送され、別の医師の診察で「脳膿瘍」による脳ヘルニアと判明した。治療開始が遅れたため、開頭手術をしたが意識障害や運動障害が残り、現在は要介護状態である。裁判長は、ただちに治療していれば後遺症の発生を避けられた可能性を指摘した。(参考)診断ミスで寝たきり 鹿児島大などに3.2億円の賠償命令 地裁(毎日新聞)誤診で後遺症、3億2700万円賠償命令 鹿児島大学病院と生協病院に 地裁判決(南日本新聞)2.新型コロナワクチン接種、4回目は対象者を絞って実施へ/厚労省政府は、新型コロナウイルスワクチンの4回目接種について、60歳以上と基礎疾患のある者を対象として検討している。これまでは子供から高齢者まで積極的なワクチン接種の推奨を行ってきたが、3回目の接種率が伸び悩んでいることや死亡率の低下、治療薬の普及を踏まえ、接種対象をハイリスク患者に絞る方針。先に4回目接種が承認された米国でも対象者は50歳以上とされるなど、海外の影響もあると考えられる。今月27日の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会で議論予定。(参考)ワクチン4回目接種、60歳以上と基礎疾患者を軸に検討 政府(毎日新聞)ワクチン4回目接種 3回目から5か月間隔での実施を検討 厚労省(NHK)4回目接種、全員に必要?「高齢者の重症予防に」―専門家指摘・コロナワクチン(時事通信)3.新型コロナ治療薬としてパキロビッドパックを推奨/WHO世界保健機関(WHO)は22日、新型コロナウイルス感染症について、ワクチン未接種や高齢者などの軽症患者の治療薬としてファイザー製の内服治療薬「パキロビッドパック」を強く推奨するとした。わが国では2月に重症化リスクが高い軽症~中等症の患者を対象として特例承認されたものの、報道によれば、累計投与数は約4,000人(4月12日時点)にとどまる。これは同剤に含まれるリトナビルがCYP3Aの強い阻害作用を有するため、投与前に他剤との相互作用について確認する時間が必要であり、処方が進まない1つの原因と考えられる。安全性について慎重なのは大事だが、再び感染拡大となった場合は、本剤が必要とされる人への投与がもっと検討されるべきだろう。(参考)ファイザーコロナ薬、投与は感染者の0.12% 奪い合いから一転(朝日新聞)WHO recommends highly successful COVID-19 therapy and calls for widegeographical distribution and transparency from originator(WHO)4.第6波のコロナ受け入れ体制、国の要請に応じる余力なしと判明/医労連日本医労連は、新型コロナウイルス感染症の第6波(2022年1月以降)における医療現場の実態調査を公表した。調査は3~4月、医労連に加盟する全国の国立病院や赤十字病院、民間病院などを対象に行い、176病院から回答を得た。2021年中に政府から「ウイルスの感染力が第5波より2倍になっても対処できる医療提供体制の整備」が要請された後、重症病床を増やしたかどうかに対し、実際に「増やした」と回答したのは176施設中14施設だった。また、今年1月以降に救急搬送(コロナ以外も含む)の受け入れを断ったことがあるのは61病院(35%)で、最大で1日16件を断った病院もあった。医労連は、回答した医療機関は国公立病院が中心であり、そのほとんどが第5波までにコロナ患者をすでに最大限受け入れていたため、第6波に備えてさらなる受け入れ態勢拡大を要請されても応じられなかった状況があるのではないかと推測した。さらに離職者について、2021年度は2020年度と比較して50施設(28.4%)が増えたと回答しており、とくに多かったのは圧倒的に看護師だった。(参考)重症病床増の病院1割のみ コロナ5波後、医労連調査(東京新聞)コロナ救急搬送受け入れ、公的病院の3割超が断る…最大で1日16件のケースも(読売新聞)第6次「新型コロナ感染症」に関する実態調査(医療)結果(医労連)5.膨らみ続けるコロナ対策、予備費の用途に透明性を求める声政府が新型コロナウイルス感染症への対応で用意している2022年度補正予算について、国会審議を経ずに閣議決定のみで予算執行されることを問題視する報道が相次いでいる。日本経済新聞によれば、12兆円余りの用途について、医療・検疫体制向けの4兆円のほか、地方自治体に支出した地方創生臨時交付金は3.8兆円だが、最終的な用途を特定できたのはわずか8,000億円余り(約6.5%)と不透明であり、今後の補正予算のあり方について国会のチェック機能も含めた改善が求められる。(参考)予備費乱用の恐れも 異例の補正予算編成―緊急経済対策(時事通信)社説:予備費の乱用 立法府の自己否定だ(朝日新聞)コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題(日経新聞)

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小児期および青年期におけるオミクロン株に対するファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)の予防効果(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、小児におけるファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)のオミクロン株に対する有効性を評価した論文である。 まず、本邦と海外での現況を確認する。本邦における5~11歳の新型コロナウイルスワクチン接種は、2022年(令和4年)1月21日より薬事承認されている。これは、オミクロン株が流行する前のデルタ株でのデータで、5~11歳でも、16~25歳と同程度に抗体価が上昇し、有効性が評価できたことを根拠としている。ただし、小児におけるオミクロン株の感染状況が確定的ではなかったことと、オミクロン株の小児における発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスも十分ではなかったため、小児については努力義務の規定は適用せず、今後の最新の科学的知見を踏まえて引き続き議論することが適当とされていた。また、本コメント執筆時点での海外情勢としては米国やカナダ、フランスでは小児に対して接種を推奨、英国やドイツは重症化リスクが高い小児や重症化リスクのある者と同居や接触がある場合などで接種を推奨している。 今回の研究結果では、5~11歳に対するワクチン接種で、オミクロン株関連入院のリスクを68%低下させることが証明された。これは、過去に報告されたデルタ株関連の入院リスクを低減させる効果よりは低いが、引き続き重症化リスクのある小児へのワクチン接種を推奨する根拠になると考えられる。 また、新型コロナワクチンは時間経過に伴う予防効果の軽減が懸念されている。本研究では、12~18歳の青年期について、デルタ期とオミクロン期でワクチン接種からの時間経過に伴う有効性の違いも分析されている。12~18歳の青年に対するデルタ株流行期間中のCovid-19関連入院に対するワクチンの効果は、ワクチン2回接種完了後2~22週で93%(95%CI:89~95)、23~44週で92%(95%CI:80~97)だった。オミクロン株流行期間中は、ワクチン2回接種完了後2~22週で43%(95%CI:-1~68)、23~44週で38%(95%CI:-3~62)だった。このデータから、本論文ではオミクロン株流行期におけるワクチン接種による予防効果の低下は、ワクチン接種後の時間経過による効果軽減よりも、流行株の変化に伴うワクチン効果の軽減が大きいと考えられると指摘している。 前述のデータを参考にすると、12~18歳のオミクロン株に対する効果が落ちていることが懸念されたが、それでも重篤なCovid-19関連の入院を防ぐことは本論文からも読み取られた。サブグループ解析で、オミクロン期間中の入院に対する予防効果が、非重篤なCovid-19に対しては20%(95%CI:-25~49)であったが、重篤なCovid-19に対しては79%(95%CI:51~91)であり、オミクロン株流行時期の青年期であっても重篤な入院を予防するためには適切なワクチン接種が望ましいと考えられる。 また、本論文のlimitationsにも記載があるが、5~11歳についてはワクチン接種後の追跡期間が限られており、時間経過による予防効果の変化はデータが収集できていない。本コメント執筆時点では、小児におけるファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)の5~11歳に対する接種量は成人よりも少ないため、時間経過に伴う感染予防効果軽減が起こることが懸念されている。小児についてはブースター接種時期のみならず、適切な1回当たりのワクチン接種量を勘案するためにもこれらのデータは今後確認する必要があるだろう。 さて、ワクチン接種の推奨については、ワクチンによる予防効果のみではなく、副反応やCovid-19流行に伴う小児に与える行動制限の影響についても考える必要がある。副反応は、本論文に記載はないが、CDCの報告やNEJM誌に掲載されたデータを参考にすることができ、現時点での厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の資料では許容できないリスクを示唆する情報はないとしている。また、本邦の報告でも、厚生労働省によるワクチン接種後の副反応疑い報告で、3月20日までに推定で21万5,000回余りの接種で16件。症状が重いと判断されたのは心筋炎・心膜炎などが疑われた2例とのことだった。この2例も、その後軽快しており、厚生労働省は副反応の頻度について、「12歳以上と比較して低い傾向にある」としたうえで、「重大な懸念は認められない」としている。 小児のワクチン接種が成人ほど急がれなかった理由の1つに、Covid-19流行当初は小児におけるCovid-19罹患率や、重症化リスクが低いことがあった。しかし、今後の流行株によっては小児の重症化リスク増大や、小児多系統炎症性症候群(MIS-C:multisystem inflammatory syndrome in children)症例の増加、安全な集団生活の確保困難等が起こり、さらにワクチン接種の推奨度が増すことも考えられる。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その2【「実践的」臨床研究入門】第19回

前回、学術誌の影響力の指標としてインパクトファクター(Impact factor: IF)やCiteScore、JCR Quartileを紹介し、その解釈の注意点についても解説しました。結構、勘違いされている方も多いので、もう一度記しますが、学術誌の影響力 ≠ 個別の論文や論文著者の影響力や評価です。今回は、個別の論文の影響力の指標について解説します。論文の影響力の指標個別の論文自体の影響力の指標は、学術誌のそれと同じく被引用回数で示されます。前回と同様に、われわれのリサーチ・クエスチョン(RQ)の「Key論文」のひとつであるコクラン・フル・レビュー論文1)の最新版をPubMedで検索してみましょう(連載第18回参照)。すると、リンクのように被引用回数はAbstractの下をスクロールすると、“Cited by”という小見出しの横に示されています。連載第19回執筆時点(2022年4月)では、MEDLINE(PubMed)収載学術誌に掲載された38論文で引用されたことがわかります。このコクラン・フル・レビュー論文1)を引用した論文のリストとそのリンクも“Cited by”以下に列記されています。被引用回数はその論文の出版年や研究分野、論文タイプなどによって影響されます。被引用回数は経年的に蓄積されるので、出版年が古いほど増える可能性があります。学術誌や研究者の多いメジャーな研究分野の論文も、より多く引用される傾向があります。論文タイプ別にみると、原著論文よりレビュー(総説論文)のほうが平均引用回数が多いことが、ScopusやWeb of Scienceなどの検索データベース(連載第17回参照)の解析結果から示されています。そこで、Scopusでは被引用回数の絶対値とは別に、個別の論文の影響力の指標として、Field-Weighted Citation Index(FWCI)や被引用ベンチマークが提案されています。FWCIは、当該論文の被引用数と類似の論文の平均被引用数との比で表される指標で、出版年、研究分野、論文タイプを考慮し補正して計算されています。FWCIの値が1以上の論文は、類似論文の平均よりも多く引用されていることを示します。被引用ベンチマークも、やはり出版年、研究分野、論文タイプを加味した類似論文グループにおけるランキングを表しています。実際に上記のコクラン・フル・レビュー論文1)を例にして、この論文のFWCIと被引用ベンチマークをScopusで調べてみましょう。Scopusは有料機関契約で使用できる検索データベースですが、大学病院などの研究教育施設では導入しているところも多いと思います。ScopusでもPubMedと同様に論文タイトルやDOIを用いて個別の論文を検索することができます(連載第18回参照)。すると、当該論文1)のFWCIは3.37と表示され、類似論文と比較して平均より多く引用されていることがわかります。また、この論文の被引用ベンチマークは94パーセンタイルであり、上述した類似論文グループで上位6%に位置するということになります。関連研究レビューの際に、当該論文の(総)被引用数の絶対値だけでなく、今回解説したFWCIや被引用ベンチマークも、その論文の影響力や信頼性、妥当性の評価指標として参考にされると良いかと思います。1)Hahn D et al. Cochrane Database Syst Rev 2020:CD001892.doi: 10.1002/14651858.CD001892.pub4.

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健康的な生活習慣で平均余命延長、認知症期間も増えず/BMJ

 健康的な生活習慣は男女とも平均余命の延長と関連しており、65歳以降の人生でアルツハイマー型認知症のない期間の割合が高いことが、米国・ラッシュ大学医療センターのKlodian Dhana氏らによる住民を対象としたコホート研究の結果、示された。健康的な生活習慣がアルツハイマー型認知症のリスク低下ならびに平均余命の延長に関連していることはこれまでも知られていたが、平均余命が延びればそれだけ高齢者が増加し、加齢とともに認知症のリスクは高まるため、むしろ全体の認知症は増加する可能性がある。そのため、生活習慣の改善による平均余命の延長が、アルツハイマー型認知症を有する期間に与える影響について理解する必要があった。著者は、「今回の解析による平均余命の推定は、医療専門家、政策立案者、その他ステークホルダーが将来の医療サービス等を計画するのに役立つだろう」とまとめている。BMJ誌2022年4月13日号掲載の報告。食事、認知活動、身体活動、禁煙、飲酒について健康度を評価 研究グループは、一般住民を対象としたアルツハイマー型認知症のリスク因子を検討する前向きコホート研究「Chicago Health and Aging Project:CHAP」(1993~2012年)のデータを用いて解析した。CHAP研究では、6期にわたり65歳以上の男女計1万802例が登録され、質問票を用いた生活習慣等に関する調査と神経認知機能検査が実施された。 本解析は、詳細な臨床評価を行うため、1万802例から年齢、性別、人種、認知機能カテゴリーを層別因子として無作為抽出した男女2,449例(ベースラインにおいてアルツハイマー型認知症有病者は339例、非有病者は2,110例)を解析対象とした。 主要評価項目は、女性および男性におけるアルツハイマー型認知症を有する場合と有していない場合の平均余命で、次の5つの生活習慣に基づいた健康因子スコア別に解析した。(1)脳の健康のための食事(Mediterranean-DASH Diet Intervention for Neurodegenerative Delay[MIND]食事スコア)、(2)後期の認知活動(読書、博物館・美術館訪問、カードゲーム、クロスワード、パズルなど)、(3)中~強度の身体活動(150分/週以上)、(4)禁煙、(5)中程度以下の飲酒(女性1~15g/日、男性1~30g/日)。 各因子について、基準を満たした場合は1、満たさない場合は0として合計した(範囲0~5、スコアが高いほど健康的な生活習慣であることを示す)。健康因子スコアが高いほど、平均余命延長、アルツハイマー型認知症リスク低下 65歳女性の平均余命は、健康因子スコアが4~5で24.2年(95%信頼区間[CI]:22.8~25.5)、健康因子スコアが0~1で21.1年(19.5~22.4)であり、前者で3.1年延長した。65歳時での平均余命のうちアルツハイマー型認知症を有する期間の割合は、健康因子4~5の女性で10.8%(2.6年、95%CI:2.0~3.3)、健康因子0~1の女性で19.3%(4.1年、95%CI:3.2~5.1)であった。また、65歳時点でアルツハイマー型認知症を有しておらず、健康因子4~5の女性の平均余命は21.5年(20.0~22.7)、健康因子0~1の女性の平均余命は17.0年(15.5~18.3)であった。 65歳男性の平均余命は、健康因子4~5で23.1年(95%CI:21.4~25.6)、健康因子0~1で17.4年(15.8~20.1)であり、前者で5.7年延長した。65歳時での平均余命のうちアルツハイマー型認知症を有する期間の割合は、健康因子4~5の男性で6.1%(1.4年、95%CI:0.3~2.0)、健康要因0~1の男性で12.0%(2.1年、95%CI:0.2~3.0)であった。65歳時点でアルツハイマー型認知症を有しておらず、健康因子が4~5の男性の平均余命は21.7年(19.7~24.9)、健康因子が0~1の男性の平均余命は15.3年(13.4~19.1)であった。

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日本の小児および青少年に対する抗精神病薬の処方傾向

 日本における小児および青少年に対する抗精神病薬の処方パターンについては、とくに外来患者において、ほとんど知られていない。京都大学のSayuri Nakane氏らは、2006~12年に初めて抗精神病薬の処方を受けた17歳以下の外来患者における抗精神病薬の処方パターンおよび傾向を明らかにするため、大規模な調剤データセットを用いて調査を行った。Child Psychiatry and Human Development誌オンライン版2022年2月24日号の報告。 年齢、性別、診療科、処方薬の種類(単剤療法または多剤併用療法)、抗精神病薬の投与量、向精神薬の併用を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は1万511例(13~17歳の割合:65.1%、男性の割合:52.9%)。・第2世代抗精神病薬の単剤療法の割合は、2006年の53.8%から2012年には78.3%に増加していた。・最も処方の頻度が高かった抗精神病薬はリスペリドンであり、次いでアリピプラゾール、オランザピンであった。・抗精神病薬の初回投与量が推奨用量よりも少なかった患者の割合は、約25.0%であった。 著者らは「現在、初めて抗精神病薬の処方を受けた17歳以下の外来患者では、第2世代抗精神病薬の単剤療法が最も一般的に行われている処方パターンであることが確認された」としている。

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銃創から自殺と他殺を鑑別する方法【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第208回

銃創から自殺と他殺を鑑別する方法pixabayより使用「ちがうな、こいつは他殺だ……。」『警部……!』みたいな会話が繰り広げられるシーンは、推理小説や刑事ドラマで幾度となく目にしてきました。フィクションでよくあるのが、拳銃を使って他殺した後、それを自分の手に握らせて自殺に見せかける手法ですが、あれは警察に言わせると、即バレ案件らしいです。Karger B, et al.Autopsy features relevant for discrimination between suicidal and homicidal gunshot injuriesInt J Legal Med . 2002 Oct;116(5):273-8.この研究は、624件の連続銃創剖検データを後ろ向きに調査したものです。自殺284例と殺人293例のデータを用いて、使用した銃器、弾薬、発砲数、部位、射撃距離、弾道など多くの特徴を記録しました。名探偵もびっくりの研究です。殺人被害者の26.3%および自殺者の10.6%が女性で、いずれも短銃身銃器のほうが長銃身銃器より多いという結果でした。自殺者で1発を超える銃創があったのは全体の5.6%で、最大5発でした。おおう、強い意志を感じますね。反面、殺人では1発を超える銃創があったのは53.9%で、最大23発でした。おおう、強い殺意を感じますね。自殺では89%が非常に近距離から発射されていましたが、殺人では遠方からの射撃が多く近距離から発射されたのは7.5%でした。そりゃそうだろ、という結果です。銃創があった部位は、こめかみ36%、口20%、額11%、左胸15%でした。こめかみは、ロシアンルーレットのアレですね。イメージ通りです。この論文では、剖検所見は単独では自殺か殺人かわからないが、複数の所見を複合的に分析することで判断できると書かれています。でも、そこまで深いアハ体験はなくて、鑑別に有用なのは発砲距離や部位で、そりゃそうだろうという結果なんですよね。

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末梢動脈疾患の在宅での歩行運動導入、歩行距離を改善/JAMA

 間欠性跛行を呈する末梢動脈疾患(PAD)成人患者において、在宅での歩行運動行動変容介入は通常ケアと比較し、3ヵ月時点での歩行距離を改善することが示された。英国・ロンドン大学のLindsay M. Bearne氏らが、多施設共同無作為化評価者盲検比較試験「Motivating Structured Walking Activity in People With Intermittent Claudication trial:MOSAIC試験」の結果を報告した。PAD患者に対し在宅での歩行運動介入が推奨されているが、その有効性に関するエビデンスはさまざまであった。JAMA誌2022年4月12日号掲載の報告。PAD患者190例、理学療法士による歩行運動行動変容介入の有効性を通常ケアと比較 研究グループは、2018年1月~2020年3月の期間に英国の病院6施設において、50歳以上の間欠性跛行を呈するPAD患者190例を、動機付けアプローチを用いるよう訓練を受けた理学療法士による歩行運動行動変容介入を受ける群(介入群)または通常ケア群に、1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間追跡した(最終追跡調査日は2020年9月8日)。評価者および統計解析者は、解析完了まで盲検化した。 主要評価項目は、3ヵ月後の6分間歩行距離(6MWT)(臨床的に意義のある最小変化量:8~20m)、副次評価項目は8項目で、そのうち3項目はWalking Estimated Limitation Calculated by History(WELCH)質問票(範囲:0[最も良好]~100)、簡易版疾患認識尺度(Brief Illness Perceptions Questionnaire:BIPQ)(範囲:0~80[80は疾患に対して否定的認識])、計画的行動理論(Theory of Planned Behavior)質問票(範囲:3~21[21が最高の態度、主観的規範、行動統制感、意図])であり、これらの尺度については臨床的に意義のある最小変化量は定義されなかった。3ヵ月後の6分間歩行距離、介入群で有意に改善 無作為化された190例(平均年齢 68歳、女性30%、白人79%、ベースラインの平均6MWT 361.0m)のうち、148例(78%)が3ヵ月間の追跡調査を完遂し、6MWTは介入群ではベースライン352.9mから3ヵ月後380.6mに増加したが、通常ケア群では369.8mから372.1 mへの変化にとどまった(変化量の補正後平均群間差:16.7m、95%信頼区間[CI]:4.2~29.2、p=0.009)。 副次評価項目8項目中、5項目は統計学的有意差が認められなかった。WELCHスコアの変化はベースライン→6ヵ月後で、介入群18.0→27.8、通常ケア群20.7→20.7(変化量の補正後平均群間差:7.4、95%CI:2.5~12.3、p=0.003)、BIPQスコアの変化は同様に介入群45.7→38.9、通常ケア群44.0→45.8(-6.6、-9.9~-3.4、p<0.001)、TPB質問票の構成項目である「態度」のスコアの変化は介入群14.7→15.4、通常ケア群14.6→13.9(1.4、0.3~2.5、p=0.02)であった。 重篤な有害事象は、介入群で13例、通常ケア群で3例報告されたが、すべて試験との関連性はない、または可能性は低いと判断された。

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新型コロナによる血栓・出血リスク、いつまで高い?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は深部静脈血栓症、肺塞栓症および出血のリスク因子であることが、スウェーデンにおけるCOVID-19の全症例を分析した自己対照ケースシリーズ(SCCS)研究およびマッチドコホート研究で示された。スウェーデン・ウメオ大学のIoannis Katsoularis氏らが報告した。COVID-19により静脈血栓塞栓症のリスクが高まることは知られているが、リスクが高い期間やパンデミック中にリスクが変化するか、また、COVID-19は出血リスクも高めるかどうかについては、ほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、COVID-19後の静脈血栓塞栓症の診断と予防戦略に関する推奨に影響を与えるだろう」とまとめている。BMJ誌2022年4月6日号掲載の報告。スウェーデンのCOVID-19全患者約105万7千例を解析 研究グループは、スウェーデン公衆衛生庁の感染症サーベイランスシステム「SmiNet」を用い、2020年2月1日~2021年5月25日の期間における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査陽性例(初感染者のみ)の個人識別番号を特定するとともに、陽性者1例につき年齢、性別、居住地域をマッチさせた陰性者4例を特定し、入院、外来、死因、集中治療、処方薬等に関する各登録とクロスリンクした。 SCCS研究では、リスク期間(COVID-19発症後1~7日目、8~14日目、15~30日目、31~60日目、61~90日目、91~180日目)における初回深部静脈血栓症、肺塞栓症または出血イベントの発生率比(IRR)を算出し、対照期間(2020年2月1日~2021年5月25日の期間のうち、COVID-19発症の-30~0日とリスク期間を除いた期間)と比較。マッチドコホート研究では、COVID-19発症後30日以内における初回および全イベントのリスク(交絡因子[併存疾患、がん、手術、長期抗凝固療法、静脈血栓塞栓症の既往、出血イベント歴]で補正)を対照群と比較した。 解析対象は、SCCS研究ではCOVID-19患者105万7,174例、マッチドコホート研究では対照407万6,342例であった。COVID-19発症後数ヵ月間は有意に高い 対照期間と比較し、深部静脈血栓症はCOVID-19発症後70日目まで、肺塞栓症は110日目まで、出血は60日日目までIRRが有意に増加した。とくに、初回肺塞栓症のIRRは、COVID-19発症後1週間以内(1~7日)で36.17(95%信頼区間[CI]:31.55~41.47)、2週目(8~14日)で46.40(40.61~53.02)であった。また、COVID-19発症後1~30日目のIRRは、深部静脈血栓症5.90(5.12~6.80)、肺塞栓症31.59(27.99~35.63)、出血2.48(2.30~2.68)であった。 交絡因子補正後のCOVID-19発症後1~30日目のリスク比は、深部静脈血栓症4.98(95%CI:4.96~5.01)、肺塞栓症33.05(32.8~33.3)、出血1.88(1.71~2.07)であった。率比は、重症COVID-19患者で最も高く、スウェーデンでの流行の第2波および第3波と比較し第1波で高かった。同期間におけるCOVID-19患者の絶対リスクは、深部静脈血栓症0.039%(401例)、肺塞栓症0.17%(1,761例)、出血0.101%(1,002例)であった。

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初発統合失調症の再発予防に対する抗精神病薬の用量とその効果

 初発統合失調症患者の再発予防に対する抗精神病薬の投与量として、成功の可能性が最も高い用量は、明らかになっていない。東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の使用および特定用量と精神科再入院リスクについての調査を行い、抗精神病薬の投与量の変化と重度の再発リスクとの関連について、検討を行った。The Lancet. Psychiatry誌2022年4月号の報告。初発統合失調症を5年間/5回の再発エピソードまでをフォローアップ フィンランドにおいて全国レジストリベースコホート研究を実施した。すべての入院患者の情報が記録されているnationwide Hospital Discharge registerより、対象患者を特定した。初発統合失調症と診断された45歳以下の入院患者を、5年間または5回の再発エピソードまでフォローアップした。主に精神科再入院を再発のマーカーとして評価し、退院時診断として記録されたICD-10コード(F20-29)を用いて入院治療を定義した。次の再発と見なす期間の定義は30日以上とした。抗精神病薬の使用に関するデータは、処方レジストリより抽出した。用量は、使用したすべての抗精神病薬の合計とした。再入院予防に対する抗精神病薬の有効性は、個別分析を用いて検討し、選択バイアスを除外し、2回目の再発前と再発後の時間で層別化した。初発統合失調症の再発予防に対する抗精神病薬の有効性は2回目再発後に大幅減 初発統合失調症の再発に対する抗精神病薬の有効性を検討した主な結果は以下のとおり。・対象患者は5,367例(男性:3,444例[64.2%]、女性:1,923例[35.8%])、フォローアップ開始時の平均年齢は29.5±7.8歳であった。・民族性に関するデータは、収集できなかった。・5,367例中3,058例(57.0%)が入院治療を必要とした。・抗精神病薬の平均用量は、最初の再発前で1.22 DDD(defined daily doses)/日(95%CI:1.18~1.26)であり、再発ごとに増加が認められ、5回目の再発前では1.56 DDD/日(95%CI:1.48~1.64)であった。・抗精神病薬の使用を未使用と比較した再入院の調整済みハザード比(aHR)は、2回目の再発前の0.42(95%CI:0.35~0.51)から2回目の再発後には0.78(95%CI:0.62~0.99)に増加しており(p<0.0001)、再発予防効果の著しい低下が認められた。・特定用量のカテゴリ分析では、U字型曲線関係が認められ、標準用量の使用中において入院リスクが最低を示した(0.9~1.1 DDD/日)。これは、2回目の再発前で認められたが、2回目の再発後では認められなかった。・低用量(0.6 DDD未満/日)は、2回目の再発前の標準用量と比較し、実質的に高い再入院リスクと関連が認められたが(aHR:1.54、95%CI:1.06~2.24)、2回目の再発後ではこの関連は認められなかった(aHR:1.11、95%CI:0.76~1.62)。これは、2回目の再発後には、すべての用量において有効性が低下するためであると考えられる。 著者らは「再発予防に対する抗精神病薬の有効性は、2回目の再発後、大幅に減少した。そのため、2回目の再発予防は不可欠であり、最初の再発後には十分な投与量の抗精神病薬の使用と再発予防強化策を治療に組み込む必要がある」としている。

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COVID-19に対する中和抗体薬「ソトロビマブ」の有効性(解説:小金丸博氏)

 ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ点滴静注液)はSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を発揮することが期待されている中和抗体薬である。Fc領域にLS改変と呼ばれる修飾が入ることで長い半減期を達成する。今回、重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症のCOVID-19患者に対するソトロビマブの有効性と安全性を検討した第III相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験の最終結果がJAMA誌オンライン版に報告された。被験者1,057例を対象とした解析では、無作為化後29日目までに入院または死亡した患者の割合は、プラセボ投与群(529例)が6%(30例)だったのに対し、ソトロビマブ投与群(528例)では1%(6例)であった(相対リスク減少率:79%)。副次評価項目である救急外来受診の割合や致死的な呼吸状態悪化の割合などでもソトロビマブ投与群で有意に減少しており、軽症~中等症のCOVID-19に対して重症化予防効果を示した。 本試験の重要なLimitationとして、変異株に対する有効性が検討されていないことが挙げられる。2020年8月~2021年3月に割り付けが行われた試験であり、その後世界的に流行したオミクロン変異株は含まれていない可能性が高い。オミクロン変異株に対するソトロビマブの中和活性は若干の減弱にとどまり、有効性が期待できると考えられているが、BA.2系統に対してはBA.1系統に対してよりも中和活性が低下する可能性が指摘されている。今後、ソトロビマブの中和活性が低い変異株が出現する可能性は考えられるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報に注視し、適応を検討する必要がある。 主な有害事象としてソトロビマブ投与群では下痢を2%に認めたものの、ソトロビマブに関連した重篤な有害事象は認めなかった。ただし、まれな有害事象を検出するには症例数が不十分であり、さらなる知見の集積が必要である。 本試験の中間解析の結果を参考に、本邦においても2021年9月27日に特例承認された。COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行う。本臨床試験の組み入れ基準等を参考に、重症化リスク因子としては、薬物治療を要する糖尿病、肥満(BMI 30kg/m2以上)、慢性腎障害(eGFR 60mL/分/1.73m2未満)、うっ血性心不全(NYHA心機能分類クラスII以上)、慢性閉塞性肺疾患などが想定される。発症早期に投与することが望ましく、症状出現から7日以内が投与の目安となる。

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各抗うつ薬に対する患者の主観的満足度の比較

 現在、異なる作用機序を有するさまざまな抗うつ薬が利用可能であるが、その有効性および安全性に有意な差があるかは、よくわかっていない。また、各抗うつ薬に対する主観的な経験に関するデータを組み込んだ検討は、ほとんど行われていなかった。アルゼンチン・AREA(Assistance and Research in Affective Disorders)のSebastian Camino氏らは、各抗うつ薬に対する患者の主観的満足度について、比較検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2022年3月29日号の報告。使用されている抗うつ薬で満足度が高かった薬剤 薬剤に関する患者評価のWebサイト(www.askapatient.com)から、さまざまな抗うつ薬についての投稿を定性的および定量的に分析した。1,000件の投稿をランダムサンプルとして確認した。 さまざまな抗うつ薬の評価を定性的および定量的に分析した主な結果は以下のとおり。・包含基準および除外基準を適用し、450件の投稿が分析サンプルに含まれた。・450件には、最も使用されている抗うつ薬(セルトラリン、citalopram、パロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルタザピン、bupropion)それぞれの投稿50件が含まれた。・全体的な満足度が高かった薬剤は、bupropion、citalopram、ベンラファキシンであった。・セルトラリン、パロキセチン、fluoxetineでは感情鈍麻の報告が多く、bupropionでは少なかった。・抗うつ薬治療に対する全体的な満足度は、自殺傾向、過敏性、感情鈍麻、認知機能障害、禁断症状などの有害事象との逆相関が認められた。・交絡因子で調整した後、セロトニン作動性薬を使用した患者では、非セロトニン作動性薬と比較し、感情鈍麻のみ報告頻度が高かった。 著者らは「抗うつ薬は薬剤間に違いがあることから、選択する際には、治療中の患者の主観的な経験を考慮すべきであることが示唆された。感情鈍麻を引き起こす可能性の低い薬剤である非セロトニン作動性薬の選択は、患者の満足度の向上につながる可能性がある」としている。

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日本人乳がん経験者、皮膚関連副作用で困っていること

 がん治療後の皮膚関連症状の多くは生命予後にあまり影響しないことから軽視されがちであり、患者自身も治療から長期間経った場合に医療関係者に相談してよいものか悩んでいるケースがある。しかしその実態は十分に調査されていない。身原皮ふ科・形成外科クリニックの身原 京美氏らは国内の乳がん経験者約370人に対してアンケート調査を実施。その結果をProgress in Medicine誌2022年3月号に報告した。乳がん生存者を対象に皮膚関連症状のアンケート調査を実施 本研究では、日本国内の9つの乳がん患者会を通じて20歳以上の女性の乳がん生存者を対象にアンケート調査を実施した。調査票は、1)回答時点における主要な皮膚関連症状の有無と、Numerical Rating Scale(NRS)を用いた0~10の11段階で困っている程度を評価、2)症状の低減が期待できる治療(一般薬、医薬部外品などを含む)に対する1ヵ月当たりの自己負担での支出意欲の確認、3)皮膚関連の国際的なQOL評価尺度であるSkindex-29を用い、回答時点の直近1週間における皮膚関連症状に起因する現状のQOLの評価から構成された。乳がん生存者の50%以上が乾燥、色素沈着、しびれ・感覚異常を訴えた 乳がん生存者を対象に皮膚関連症状のアンケート調査を実施した主な結果は以下のとおり。・369人の回答者の平均年齢は60.3歳で50代が最も多かった(33.9%)。・乳がんと診断されてからの経過年数は最短が5ヵ月、最長が35年0ヵ月(平均8年10カ月)と広く分布しており、全体の7割は10年以内であった。・乳がんの治療内容は、手術に関しては乳房温存手術が55.3%、乳房切除術が48.0%であった。放射線治療は62.1%が受けたと回答した.薬物療法に関しては、59.6%が化学療法、19.0%が分子標的薬による治療、78.0%がホルモン療法を受けていた。再発・転移について「ある」と回答したのは15.2%であった。・乳房およびその周辺での乳がん治療薬あるいは放射線治療による皮膚関連症状の有無については、63.1%が「副作用がある」と回答した。・皮膚症状として50%を超えたのは、カサカサ・乾燥(70.8%)、色素沈着(50.6%)、しびれ・感覚異常(50.6%)であった。・困っている程度は、NRSスコアが高い順に、むくみ(4.78)、しびれ・感覚異常(4.65)、つっぱる・かたい(4.78)であった。・脱毛や髪質の変化については58.3%が「ある」と回答し、困っている程度はNRSスコアが5.41と、今回確認した項目の中で最も高かった。・手や足の爪については、3割前後が変色や変形、爪が折れやすいなどの症状の持続を自覚しており、困っている程度はNRSスコアが高い順に、爪が折れやすい(4.53)、爪の変形(4.26)、爪の変色(3.98)であった。・症状軽減を目的とした治療費の支払い意思額は、「月額3,000円まで」が最も多かった(38.5%)。・皮膚関連症状の有無を治療内容別に比較したところ、乳房温存手術と乳房切除術の比較において、カサカサ・乾燥、かゆみ、汗が出ないの3症状は乳房温存手術で有意に多く認められ、しびれ・感覚異常は乳房切除術で有意に多く認められた。・放射線治療ありとなしの比較において、放射線治療ありで、カサカサ・乾燥、色素沈着、汗が出ないが有意に多く認められた.・化学療法ありとなしの比較において、化学療法ありで、むくみ、爪の変色、爪の変形、爪が折れやすい、脱毛や髪質の変化が有意に多く認められた.・ホルモン療法は、その有無で症状の頻度に有意な差を認めなかった.・乳がん診断からの経過年数と、それぞれの皮膚関連症状のために困っている程度(NRSスコア)や支出意欲との相関をみると、脱毛や髪質の変化のみで時間経過に伴う有意な低減がみられたが、これ以外の項目で有意差はなかった。 著者らは、個人差はあるものの、60%以上が何らかの皮膚関連症状を有しており、各皮膚関連症状の困りごとの程度や治療に対する支出意欲は、乳がんと診断されてからの期間による大きな変化はなく、乳がん経験者の多くは長期にわたり皮膚に関連する症状に悩み、負担を感じていることが示唆されたとしている。

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デルタ株、オミクロン株感染に対するBNT162b2の3回目接種の感染/発症、入院予防効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 今回取り上げたMoreiraらの論文(Moreira ED Jr, et al. N Engl J Med. 2022 Mar 23. [Epub ahead of print])はBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)の3回目接種の効果を検証した第III相試験の結果を提示したものである。この論文の解釈において注意しなければならない点は、試験が施行された時期の背景ウイルスが現在の問題ウイルスであるオミクロン株ではなく、それ以前のVOC(Variants of concern)であるという事実である。すなわち、Moreiraらの論文に示された内容は、現在、あるいは近未来において、“Real-world”で深刻な問題を提起するであろうオミクロン株に対する抑制効果を示すものではない。それ故、本論評ではMoreiraの論文に基づき一世代前の変異株であるデルタ株に対するBNT162b2の3回目接種による予防効果とAndrewsら(Andrews NA, et al. N Engl J Med. 2022 Mar 2.)が発表したオミクロン株に対する3回目接種の予防効果を比較し、両者の差を説明する液性免疫、細胞性免疫の動態について考察する。デルタ株に対するBNT162b2の3回目接種による感染、入院予防効果 Moreiraらは2回目ワクチン接種より中央値で約11ヵ月後に3回目接種を施行した18歳以上の症例を対象として3回目接種より中央値で2.5ヵ月の経過を観察した。治験開始は2021年7月1日、デ-タ集積締め切りは2021年10月5日であった。この時期の主たる背景ウイルスはデルタ株であり、治験の結果はデルタ株に対する予防効果を示すものである。3回目接種後のデルタ株感染予防効果は2ヵ月未満で94.8%、2~4ヵ月で93.3%であった。ワクチン2回接種後の感染予防効果は3%/月の割合で低下するので(Thomas SJ, et al. N Engl J Med. 2021;385:1761-1773.)、2回接種11ヵ月後には60%前後まで低下していたはずである。すなわち、2回接種後の時間経過に伴い低下したデルタ株に対する感染予防効果は、3回目接種により2回目接種後の最大値付近(90~95%)まで回復した。しかしながら、一度回復したデルタ株感染予防効果はその後の時間経過に伴い再度低下した。 重症化予防の1つである入院予防効果は2回目接種5ヵ月後にも90%台の高い値を維持し(Tartof SY, et al. Lancet. 2021;398:1407-1416.)、3回目ワクチン接種による入院予防効果の底上げは著明なものではない(Thompson MG, et al. Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71:139-145.)。オミクロン株に対するBNT162b2の3回目接種による感染、入院予防効果 Andrewsらはオミクロン株に対するBNT162b2の2回接種、3回接種の効果を報告した。オミクロン株に対する発症予防効果(感染予防効果とほぼ同等)はワクチン2回接種2~4週後に65.5%であったものが接種後25週以上経過すると8.8%まで低下した。定性的に同様の結果は英国健康安全保障庁(UKHSA)からも報告されている(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。ワクチン2回接種後25週以降に8.8%まで低下したワクチンの発症予防効果は3回目ワクチン接種2~4週後には67.2%まで回復した。しかしながら、3回目接種から10週以上経過するとワクチンの発症予防効果は45.7%まで再度低下した。 オミクロン株に対する入院予防効果は2回目接種2~24週後には72%であったものが25週以上で52%まで低下するが、3回目接種2週以降には88%まで回復する(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。しかしながら、それ以降は再度低下する(UKHSA. Technical Briefing. 2022 Jan 14.)。以上のようにオミクロン株に対するワクチンの感染/発症、入院予防効果はデルタ株に対する予防効果に比べ、いかなる時間帯でも低値を維持する。デルタ株、オミクロン株に対するワクチン接種後の液性免疫、細胞性免疫の動態 まず初めにBooster(免疫増強)という言葉について考えたい。従来、ワクチン接種による生体の免疫反応において1回目接種による免疫記憶細胞(B細胞、T細胞)の誘導をPriming、2回目接種による免疫記憶細胞の賦活化をBoostingと表記されてきた。コロナRNAワクチンに関する論文では3回目接種をBoosterと呼称されることが多いが、厳密には、2回目ワクチンを1回目のBooster、3回目ワクチンを2回目のBoosterと定義すべきである。また、液性免疫(B細胞)と細胞性免疫(T細胞)に対するPrimingとBoostingは必ずしも並行しないことにも注意する必要がある。 1回目ワクチン接種(Priming)から2~4週以降に液性免疫を形成するのは記憶B細胞の賦活化である。2回目ワクチン接種(1回目Booster)より3.5ヵ月後における賦活化された記憶B細胞の変異株S蛋白RBD(Receptor binding domain)に対する認識は、デルタ株で85%であるがオミクロン株では42%と低い(Tarke A, et al. Cell. 2022;185:847-859.)。その結果、オミクロン株に対する中和抗体価は2回目接種後でも検出限界近傍の低値を呈する(山口. 日本医事新報. 2022;5111:28.)。これはオミクロン株S蛋白に存在する数多くの遺伝子変異による強力な液性免疫回避に起因する。すなわち、オミクロン株に対する液性免疫においては2回目までのワクチン接種はPriming効果しかなく、3回目接種以降に初めてBooster効果を発現する。一方、デルタ株に対する液性免疫においては2回目接種以降にBooster効果が発現する。 オミクロン株に対するワクチン2回接種後の感染/発症予防効果は6ヵ月以内には低いながらも有効域に存在し、感染/発症予防効果の動態をほぼ無効の液性免疫からは説明できず、細胞性免疫(記憶CD4+-T、記憶CD8+-T細胞)の関与を考慮する必要がある。S蛋白にはCD4+-T細胞によって認識される抗原決定基(Epitope)が167個、CD8+-T細胞によって認識されるEpitopeが224個存在する(Ahmed SF, et al. Viruses. 2022;14:79.)。デルタ株ではCD4+-T細胞に対するEpitopeの91%、CD8+-T細胞に対するEpitopeの94%が保持されるため、デルタ株に対する細胞性免疫は野生株に対する細胞性免疫とほぼ同じレベルに維持される。一方、オミクロン株ではCD4+-T細胞に対するEpitopeの72%、CD8+-T細胞に対するEpitopeの86%が保持されるので、オミクロン株に対する細胞性免疫は有効ではあるがデルタ株に比べ少し低い(Tarke A, et al. Cell. 2022;185:847-859.)。2回目のワクチン接種により賦活化されたCD4+-T細胞は液性免疫と共同してデルタ株感染を抑制する。一方、2回目ワクチンのオミクロン株感染抑制には液性免疫の寄与はほぼゼロで、主としてCD4+-T細胞がその役割を担う。CD8+-T細胞の賦活化はデルタ株、オミクロン株に感染した生体細胞を殺傷/処理し重症化を阻止する。 3回目ワクチン接種後にはオミクロン株に対する記憶B細胞の賦活化が初めて有効化し、オミクロン株に対する感染予防はデルタ株の場合と同様に液性免疫とCD4+-T細胞賦活の共同作業として発現する。ワクチン接種後のCD4+-T細胞、CD8+-T細胞性免疫は時間経過と共に緩徐ではあるが低下することが報告されており(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)、オミクロン株における2回目ならびに3回目ワクチン接種後の感染/発症予防効果、入院予防効果の時間的低下を招来する。 現状のRNAワクチンは武漢原株のS蛋白をPlatformとして作成されたものである。それ故、オミクロン株が有する多数の変異がワクチン接種後の記憶B細胞(液性免疫)、記憶T細胞(細胞性免疫)の働きを抑制/修飾する。その結果、現状ワクチンのオミクロン株制御効果は不十分で、2022年1月3日にイスラエルで、3月29日に米国で、高齢者に対する4回目のワクチン接種(3回目Booster)が開始された(Magen O, et al. N Engl J Med. 2022 Apr 13. [Epub ahead of print]; The Washington Post. updated. 2022 Mar 29.)。このように、現状ワクチンを用いたオミクロン株制御は複雑な様相を呈し、今後、何回のワクチン接種が必要であるかを結論できない混沌とした時代に突入している。この問題を解決するためにはオミクロン株特異的ワクチンの開発が必要である。2022年1月下旬、Pfizer社とModerna社はオミクロン株のS蛋白をPlatformにしたオミクロン株特異的ワクチンの臨床治験を開始したと発表した。これらの新ワクチンの開発が成功すれば、現在混沌としているオミクロン株に対するワクチン脆弱性に関する多くの問題が解決する可能性があり、両製薬会社の努力に期待したい。

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世界血栓デーWEB講演会の開催について【ご案内】

 世界血栓症デーとは、国際血栓止血学会(ISTH)が「血栓症に関する正しい知識を広め、血栓症に起因する障害や死亡を減らす」ことを目的に制定したものである。一般社団法人日本血栓止血学会では日本における血栓症の啓発活動の一環として取り組んでおり、2022年度最初の世界血栓症デーWEB講演会として2022年5月17日(火)に『がん関連血栓症:がんと血栓の新たな関係』をテーマとしてWEB開催する。今回の講演内容は医療関係者を対象としているが、誰でも無料で視聴可能である。 開催概要は以下のとおり。【日時】2022年5月17日(火) 19:00~20:30【参加条件】登録方法:オンライン参加登録が可能(下記URLからお申込み可能)https://coubic.com/morishita/622935参加費:無料【テーマ】『がん関連血栓症:がんと血栓の新たな関係』-perspective of cancer-associated thrombosis-司会:向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科)1.「がん関連血栓症の成因と病態」森下 英理子氏(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 金沢大学附属病院血液内科)2.「がん関連脳卒中-動脈塞栓症の新展開」野川 茂氏(東海大学医学部付属八王子病院脳神経内科)3.「がん治療関連血栓症とその対応」向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科)4.質問・討論【主催】一般社団法人 日本血栓止血学会【お問い合わせ】WTD講演会担当E-mail:kanazawa.u.hoken.morishita@gmail.com

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