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免疫抑制が強い患者ほど接種後の抗体価に差、モデルナ製vs.ファイザー製

 免疫抑制治療を受けている固形臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者において、モデルナ製の新型コロナワクチンがファイザー製ワクチンより強い液性免疫原性を誘導しやすく、この効果は免疫抑制が強いほど顕著だったことが、米国・Johns Hopkins University School of MedicineのJonathan Mitchell氏らの研究で示された。JAMA Network Open誌2022年5月16日号に掲載。 臓器移植患者やリウマチ性・筋骨格系疾患患者などの免疫抑制患者は、新型コロナワクチンに対する免疫応答が低下している。したがって、ワクチンの免疫原性の差は、免疫正常者での差より臨床的に重要である。本コホート研究では、免疫抑制の強さの異なる患者群ごとにファイザー製およびモデルナ製ワクチン2回接種後の抗スパイク抗体価を比較した。 対象は、2020年12月16日~2021年7月6日にmRNAワクチンを2回接種している新型コロナウイルス検査陽性歴のないリウマチ性・筋骨格系疾患と固形臓器移植患者で、免疫抑制の強さによって以下に層別化した。・免疫抑制治療を受けていないリウマチ性・筋骨格系疾患患者・免疫抑制治療を受けているリウマチ性・筋骨格系疾患患者・ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されていない固形臓器移植患者・ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者 ワクチン2回目接種から15〜45日後に半定量的抗体検査を実施し、年齢・ワクチン接種後期間・免疫抑制薬の数で重み付けした修正ポアソン回帰を使用して、2つのワクチンでの応答率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・リウマチ性・筋骨格系疾患患者1,158例(うちファイザー製ワクチン接種647例)および固形臓器移植患者697例(同367例)について調査した。・免疫抑制治療を受けていないリウマチ性・筋骨格系疾患患者(220例)のうち、抗受容体結合ドメイン力価が250U/mL以上だった患者の割合は、ファイザー製ワクチン91.5%、モデルナ製ワクチン93.1%で同等だった(発生率比[IRR]:1.02、95%CI:0.94~1.10、p=0.69)。・しかし、他の群では、モデルナ製ワクチン接種者のほうがファイザー製ワクチン接種者よりも受容体結合ドメイン抗体価250U/mL以上だった患者の割合が高かった。- 免疫抑制治療を受けているリウマチ性・筋骨格系疾患患者(938例):79.2% vs.60.5%、IRR:1.30、95%CI:1.20~1.43、p<0.001- ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されていない固形臓器移植患者(260例):66.4% vs.44.7%、IRR:1.56、95%CI:1.24~1.96、p<0.001- ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者(437例):11.4% vs.4.3%、IRR:2.62、95%CI:1.28~5.37、p=0.01 本研究では、免疫抑制治療を受けていない患者では、モデルナ製およびファイザー製ワクチンに対する免疫応答は同等だったが、免疫抑制治療を受けている患者は、モデルナ製ワクチンのほうがファイザー製ワクチンより高かった。免疫原性の差は、免疫抑制が最も強い患者(ミコフェノール酸/ミコフェノール酸モフェチルを投与されている固形臓器移植患者)で最も大きく、抗体価250U/mL以上の患者の割合は2.6倍の差があった。

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英語で「食上げ」は?【1分★医療英語】第29回

第29回 英語で「食上げ」は?Mr. Smith is tolerating well with clear liquid diet.(スミスさんは水分を問題なく飲めているようです)Great. Let’s advance his diet from clear to full liquid diet.(いいですね。水分からペースト食に食上げしましょう)《例文1》Please advance diet as tolerated.(問題ない範囲で食上げしてください)《例文2》Let’s hold off on advancing his diet until we get the barium swallow results.(バリウム造影検査の結果が返ってくるまで、食上げはやめておきましょう)《解説》「食上げ」は、病院の中ではよく用いるものの、英会話スクールなどではなかなか出合うことのない表現だと思います。「食上げを行う」は“advance diet”と言いますので、丸ごと覚えてしまいましょう。また、流動食は“liquid diet”、軟菜食は“soft diet”、常食は“regular diet”と言います。“clear liquid”と“full liquid”の違いは、前者が水やスープ、後者がペースト食のようなものです。米国の病院では、三分粥、五分粥、全粥のような段階的に水分が減るお粥はありませんので、これに対応する英語はありません。ただし、普通のお粥は出す病院もあり、これは“congee”と呼ばれます。日本語の「漢字」に発音が近いので、渡米して間もないころ、「漢字?」と思わず聞き返してしまったことがありました。ちなみに「漢字」の英単語は“chinese character”です。また、“advance diet”という表現と一緒に“as tolerated”という表現もよく用います。「耐えられる範囲で」という意味で、食上げだけでなく、安静度やリハビリテーションのオーダーの際にも用いられる表現ですので、併せて覚えておくとよいでしょう。講師紹介

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第113回 小児肝炎はCOVID-19絡みの肝臓損傷の氷山の一角かもしれない

小児の原因不明の肝炎は日本で24例に増え1)、米国では先週18日までに180人が調べられています2)。米国が調査を進めるそれら180例のおよそ9%は肝臓移植が必要となりましたが、死亡したという報告は幸いありません。英国で先週月曜日16日までに確認されている急な肝炎小児197人にも幸いにして死亡例はありません3)。英国ではそれら197人のうち11人(約6%)が肝臓移植を受けています。たいていは対症療法でなんとかなりますが、手遅れにならないように親は子供の皮膚が黄色くなったり目が白っぽくなったらすぐに医者に連れていく必要があります。健康な小児が黄疸を突然呈して急な肝炎を伴う重病に陥る原因はいまだ不明ですが、米国も英国もアデノウイルスを原因とする見方を強めています4)。米国疾病管理センター(CDC)は同国での180例の半数近くに認められているアデノウイルスが引き続きとくに目立つ(strong lead)と言っています。英国でのアデノウイルス検出率はさらに高く、検査した170例中116人(68%)から検出されており、英国保健安全保障庁(UKHSA)もCDCと同様にアデノウイルス感染との関連が引き続き示唆されていると言っています。しかし、アデノウイルスは免疫抑制小児に肝炎を引き起こしうるものの健康な小児をそうすることはこれまで知られておらず、アデノウイルスは主役ではないかもしれないと考える研究者もいます。アデノウイルス原因説を疑う向きによるとアデノウイルス肝炎の典型的な特徴であるアデノウイルス感染細胞が肝炎小児の肝生検で見つかっておらず、もっと目を向けるべき原因候補・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が見過ごされがちです。SARS-CoV-2感染の数週間後に複数の臓器が傷んで小児多臓器炎症症候群(MIS-C)が生じうることが知られるように、SARS-CoV-2感染からしばらくして肝臓への免疫絡みの攻撃が生じてもおかしくありません4)。SARS-CoV-2が検出された英国の肝炎小児の割合はアデノウイルス検出率よりずっと低い15%です。しかしCDCの最近の報告によると米国の12歳未満の小児の75%がSARS-CoV-2感染を経ていると推定されています5)。また、欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control)と世界保健機関(WHO)が20日に報告した原因不明肝炎小児の疫学データによると26人の血清検査で大半の19人(73%)がSARS-CoV-2感染歴を裏付ける陽性でした6)。原因を見極めることは患者の治療手段に直結します。もしアデノウイルスが肝臓を害しているなら強力な抗ウイルス薬cidofovir(シドホビル)の出番です4)。しかし免疫反応の持続で肝臓が傷んでいるなら免疫抑制剤が命を救う治療になりえます。仮にSARS-CoV-2が誘発する過度の免疫が肝炎に寄与しているとするならアデノウイルス感染が共謀してその引き金の役割を果たすのかもしれません。小児から検出されているアデノウイルス41F型は胃腸に感染し、SARS-CoV-2は感染後に胃腸に長居しうることが知られており、それらが相まって肝炎を招きうるとの仮説がLancet姉妹誌に最近掲載されました7)。T細胞の見境ない活性化を誘発しうることが知られるSARS-CoV-2スパイクタンパク質がSARS-CoV-2感染小児のMIS-Cで認められる深刻な炎症にどうやら寄与する8)のと同様にスパイクタンパク質の一部がアデノウイルスへの免疫反応を過剰にしてその無法な免疫反応が肝臓を傷めるのかもしれないと著者は示唆しています。仮説の検証のために原因不明肝炎の小児の便を回収して腸に潜むSARS-CoV-2の検出を試みたり免疫系の過剰な活性化の検査が必要です。免疫の過剰が原因と今後の研究で判明したならば免疫抑制が適切な治療となるはずです。原因が判明して治療の方針が定まることは表沙汰となった肝炎の背後で知らずに肝臓を傷めているかもしれない多くの小児の助けにもなる可能性があります。米国のSARS-CoV-2感染小児とSARS-CoV-2以外の呼吸器感染小児(対照群)それぞれ約25万人を比較した最近の試験結果9)によるとSARS-CoV-2はアデノウイルスとの関連はどうあれ小児の肝臓を悪くすると傷めることがあるようです。試験の結果、SARS-CoV-2感染小児の6ヵ月間の肝酵素・ASTやALTの上昇(それぞれ110U/L以上と100U/L以上)は対照群より2.5倍多く認められました。黄疸を引き起こしうる赤血球分解産産物ビリルビンの血清濃度上昇(2mg/dL以上)もSARS-CoV-2小児に3.3倍多く認められました。小児に発生している原因不明の肝炎はSARS-CoV-2感染に伴う数多の肝臓損傷の氷山の一角なのかもしれず4)、そうであるなら肝炎の原因解明はその他多数の肝臓損傷の手当てを見出すことにも役立つでしょう。参考1)小児の原因不明の急性肝炎について / 厚生労働省2)Update on Children with Acute Hepatitis of Unknown Cause / CDC3)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation / UK Health Security Agency4)What’s sending kids to hospitals with hepatitis-coronavirus, adenovirus, or both? / Science5)Clarke KEN,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Apr 29;71:606-608. [Epub ahead of print]6)European Centre for Disease Prevention and Control/WHO Regional Office for Europe. Hepatitis of Unknown Aetiology in Children. Joint Epidemiological overview, 20 May, 2022.7)Brodin P, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2022 May 13:S2468-1253.00166-2. [Epub ahead of print] 8)Porritt RA, et al. J Clin Invest. 2021 May 17;131:e146614. [Epub ahead of print]9)Elevated liver enzymes and bilirubin following SARS-CoV-2 infection in children under 10. medRxiv. May 14, 2022.

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双極性または単極性うつ病患者の季節による臨床的特徴

 双極性障害のうつ症状(双極性うつ病)と単極性うつ病の鑑別は、誤診しないために重要である。中国・上海交通大学のShuqi Kong氏らは、双極性うつ病および単極性うつ病の初回入院患者における季節的な症状および非酵素性酸化ストレスの特徴を調査した。その結果、単極性うつ病患者と比較し、双極性うつ病患者は季節的な特徴を有している可能性が示唆された。著者らは、「季節性の単極性うつ病と双極性うつ病を鑑別するうえで、臨床症状や酸化ストレスの指標は有用である可能性がある」とし、「15~35歳の比較的若い年代では、冬期に双極性うつ病を発症する可能性が高い」と併せて報告している。Frontiers in Psychiatry誌2022年4月6日号の報告。 対象は、双極性うつ病患者450例および単極性うつ病患者855例。うつ症状の急性発症で入院した季節に応じて、春、夏、秋、冬の4群に患者を分類した。DSM-Vに基づいた双極性障害の特徴的な症状は医療記録から収集し、酸化ストレスを反映した臨床生化学的指標も併せて収集した。双極性うつ病患者または単極性うつ病患者における季節的リスク因子を分析し、冬期発症の患者では年齢や性別との関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・春期発症(双極性うつ病:124例、単極性うつ病:233例)では、メランコリックな特徴、非定型の特徴、抱合型ビリルビンに両群間で有意な差が認められた。・夏期発症(同:115例、260例)では、メランコリックな特徴、尿酸、抱合型ビリルビンに両群間で有意な差が認められた。・秋期発症(同:122例、211例)では、メランコリックな特徴、不安や疼痛、非定型の特徴、尿酸、総ビリルビン、抱合型ビリルビン、アルブミンに両群間で著しい差が認められた。・冬期発症(同:89例、161例)では、抱合型ビリルビン、プレアルブミンに両群間で有意な差が認められた。・双極性うつ病と比較した単極性うつ病の季節的な独立したリスク因子は、夏期発症のメランコリックな特徴および尿酸、秋期発症のメランコリックな特徴、尿酸、総ビリルビンであった。・冬期発症では、両群間で年齢に有意な差が認められ、15~35歳の若年層で、冬期に双極性うつ病を発症する可能性が高かった。

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世界一短い医学雑誌名は?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第210回

世界一短い医学雑誌名は?pixabayより使用私は呼吸器内科医なので、「CHEST」や「Thorax」という医学雑誌をよく読んでいますが、シンプルに一単語で構成されているので、とても短い医学雑誌名ですよね。医学雑誌のタイトルは短いほうが、科学雑誌として評価が高く、優れているものが多いと思います。先ほどの呼吸器系の雑誌でも、「CHEST」や「Thorax」はインパクトファクターも高く、世界中の呼吸器科医が参照するものです。「Cell」や「Nature」なども、そうですね。代表的な英単語をそのまま雑誌名に使える権利を持っているわけですから、放っておいても投稿者・読者がたくさん集まってきます。―――さて、その中でも最短の医学雑誌名は何でしょうか?これはおそらく「Gut」と思われます。わずか3文字です。「Gut」は消化管・胃腸という意味の英単語で、消化器系の有名医学雑誌です。私も消化器内科をローテートしていた研修医のころ、よく読んでいました。あ、すいません、もし2文字以下の医学雑誌があったら、こっそり私に教えてください。ほかにも人類学の「MAN」、言語学の「LIA」など3文字の雑誌はいくつかあるのですが(LIAは正確にはLanguage, Interaction and Acquisition)、医学雑誌に限定すると、やはり「Gut」となりそうです。そういえば、ファッション雑誌も短いタイトルのものが多いですよね。MORE、VERY、with、ViVi…。企業もそうです。Apple、UNIQLO、SONY。短いほうが、より人を引き付けるのかもしれません。ちなみに私の下の名前は「優(ゆう)」ですが、とくに人から「キャーー!優サマー!」などと言われたことは一度もありません。なお、世界一名前が長い医学雑誌は、「〇〇学会」「公式」といった副題をどんどん付けて、「~を添えて」のようなフランス料理のメニューのように、長めに登録しちゃうジャーナルが多いので、ちょっと判定困難です。あしからず。

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妊娠高血圧腎症の高リスク妊婦、自己血圧測定は有用か?/JAMA

 妊娠高血圧腎症のリスクが高い妊婦において、遠隔モニタリングによる自己血圧測定は通常ケアと比較して、臨床的高血圧の早期発見にはつながらなかった。英国・オックスフォード大学のKatherine L. Tucker氏らが、無作為化非盲検試験「Blood Pressure Monitoring in High Risk Pregnancy to Improve the Detection and Monitoring of Hypertension trial:BUMP 1試験」の結果を報告した。血圧上昇の不十分な管理は、妊産婦死亡の重要な要因である。一般集団における自己血圧測定は高血圧の診断および管理を改善することが示されているが、妊娠中の血圧自己測定の使用についてはほとんど知られていなかった。JAMA誌2022年5月3日号掲載の報告。妊娠高血圧腎症の高リスク妊婦2,441例、自己血圧測定+通常ケアvs.通常ケア 研究グループは2018年11月~2019年10月の期間に、英国の2次医療機関15施設の産科病棟において、妊娠16~24週で妊娠高血圧腎症のリスクが高い妊婦2,441例を、遠隔モニタリングによる自己血圧測定+通常ケア(介入群)、または遠隔モニタリングによる血圧を利用できない通常の妊婦ケアのみ(通常ケア群)のいずれかの群に無作為に割り付けた(追跡期間終了2020年4月)。 介入群(1,223例)では、週3回、血圧を自己測定した。毎回2回測定し、2回目の測定値を手動で研究用アプリを通じて提出してもらい、測定値が高かった場合は3回目の測定が要求され、3回目の測定値も上昇していた場合は産科に連絡するよう促された。通常ケア群(1,218例)では、必要に応じて(合併症がない場合、妊娠中に7回以上)産科クリニックを受診し、妊娠ケアチームによる血圧測定を受けた。 主要評価項目は、無作為化から「臨床的高血圧」が最初に記録されるまでの期間の両群間の差である。「臨床的高血圧」は、医療従事者によって記録された持続性の血圧140/90mmHg以上(収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上のいずれか、または両方)と定義した。臨床的高血圧の診断までの期間に両群で有意差なし 無作為化された妊婦2,441例の背景は平均(±SD)年齢33±5.6歳、妊娠20±1.6週で、2,346例(96%)が試験を完遂した。 無作為化から「臨床的高血圧」が最初に記録されるまでの期間(平均±SD)は、介入群が104.3±32.6日、通常ケア群106.2±32.0日で、両群に有意差は認められなかった(平均群間差:-1.6日、95%信頼区間[CI]:-8.1~4.9、p=0.64)。 試験期間中に重篤な有害事象が18例報告されたが(介入群12例[1%]、通常ケア群6例[0.5%])、介入に関連すると判断されるものはなかった。

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医師免許を存分に活かして!安全地帯から起業というゲームに参加する【医師のためのお金の話】第56回

「起業」って何だかカッコいい響きですよね! アップルのスティーブ・ジョブズ氏やテスラのイーロン・マスク氏、日本ではサイバーエージェントの藤田 晋氏などなど。皆さんキラキラしています。医者がそんな大起業家になるのはムリでしょ、と思ってしまいますが、われらが医療業界でもスタートアップは目白押し。メドレーやメドピアのように、現役の臨床医が立ち上げた会社が株式上場した例もいくつかあります。さすがに上場のハードルは高いかもしれません。しかし、医師を続けながら立ち上げた企業がいい感じになっている例は、あなたの身近にもあるのではないでしょうか。やり方次第では、起業家の一員になれるかも!?医師にお勧めの起業パターン医師の起業には、どのようなパターンがあるのでしょうか。起業というからには、すべてを投げ打って事業を立ち上げるパターンを思い浮かべる人が多いでしょう。もちろん上場を目指すスタートアップでは、このようなパターンが多いのは事実です。国内スタートアップの代表例として、AI事業のプリファード・ネットワークスやクラウド会計ソフトウエアのfreeeが挙げられます。こうしたスタートアップは、ベンチャーキャピタル(VC)から出資してもらい、事業を拡大していきます。VCが出資する条件として、「経営者が専業である」はいうまでもないことです。このため、上場を目指すスタートアップを起業するのであれば、医師を辞めて事業に取り組む必要があります。でもこれって、かなりハードルが高いですよね。医師の最大の強みは、「個人で稼ぐ力」です。常勤ではなくアルバイト医師であっても、食うに困る状況にはなりません。極論すると「片手間」で医師を続けても、十分に生活していけます。一般の会社員では望むべくもない、破格の好条件といえるでしょう。医師ならこれを利用しない手はありません。つまり臨床を続けながら、面白そうな領域で起業してみるのです。起業するために医師を辞めるなんて、そんなもったいないことしてはいけません。生活基盤はきっちり確保しましょう。私の起業体験起業は背水の陣で臨まないと成功しないのではないか、と思う人がいるかもしれません。確かにそれも一理ありそうです。しかし、私自身の経験からは、実際に起業してみると、生活基盤の安定性が経営者マインドに与える好影響の大きさを実感しています。私はこれまで10近い事業を立ち上げてきました。そのほとんどは廃業してしまいましたが、これだけの数をチャレンジできたのは医師としての安定収入があったからです。事業継続が困難になっても、さほど追い詰められることなく冷静に対処できます。また、廃業するにも資金が必要であり、精神的な負荷のかかり方はハンパないものがあります。ありがちなのは、廃業する決断ができずにズルズルと引っ張ってしまい、さらに傷口を拡大させてしまうパターン…。事業以外に何も収入がなければ苦しい立場に追い込まれますが、医師を続けていれば「ちょっとやらかした」程度に過ぎません。これって天と地ほどの差がありますよね。医師を続けてさえいれば、安全地帯から起業というゲームに参加できるのです。気軽に起業してみよう!起業といっても、多額の借り入れをして最初から大風呂敷を広げる必要はありません。むしろ少額かつ自己資金だけで事業を立ち上げる方法を考えてみましょう。自己資金だけでは大したことはできなさそう…と思いますが、実際には全然そんなことはありません。デジタル化の進展で、事業で必須のツールを無料もしくは極めて安価に使えるようになりました。たとえば、SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールの登場でリモートワークが広がり、オフィスの必要性は低下しました。またfreeeなどのクラウド会計ソフトによって、会計業務を劇的に軽減することができます。ウェブ広告の活用で、営業部隊の必要性も低下しました。モノやヒトの固定費が低下したおかげで、昔と比べて起業は容易になったのです。しかし、たった1つだけ残る高いハードル…。それが、あなたの心の中に潜む「起業は怖い」という気持ちです。起業に対する恐怖心を打ち砕く決定打はありません。解決策は「とにかくやってみる」、だけです。どんな小さな事業でもいいので、一度でも立ち上げてみると起業に対する恐怖心は氷解します。幸いにも医療業界は参入障壁が高く、起業ネタがゴロゴロ転がっています。もちろん医療とまったく異なる分野での起業でも問題ありません。しかし、せっかく医師になったのですから「おいしい」業界で起業しない手はないでしょう。日常臨床のちょっとした気付きが起業のネタかもしれません。起業も念頭に置いて、臨床に取り組もうではありませんか。

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統合失調症患者の入院率減少に対するセンサー付き錠剤の可能性

 統合失調症患者の精神科病棟への入院は、経済的な負担を引き起こす。そのため、服薬アドヒアランスは重要な因子であるが、依然として難しい問題である。米国・Hassman Research InstituteのElan A. Cohen氏らは、センサー付きアリピプラゾール錠(システムに摂取可能なセンサー、シグナル検出用パッチ、スマートフォンアプリを含む)が、標準的な経口抗精神病薬と比較し、精神科入院数の減少に寄与するかを評価した。その結果、センサー付きアリピプラゾール錠は、標準的な経口抗精神病薬と比較し、軽度から中等度の成人統合失調症患者の精神科入院率を低下させることが示された。本システムにより、統合失調症患者の薬物摂取の支援および症状改善を通じて、急性期治療の必要性を減少させることが期待される。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。 本試験は、6ヵ月間の標準的な経口抗精神病薬治療期間(レトロスペクティブ期)があり、過去48ヵ月間に1回以上の入院を経験した成人統合失調症患者を対象とした、第IIIb相ミラーイメージ臨床試験(実施期間2019年4月29日~2020年8月11日)である。すべての対象患者に対し、3~6ヵ月間のセンサー付きアリピプラゾール錠による治療を行った。主要評価項目は、レトロスペクティブ期と比較した1~3ヵ月目の修正ITT集団(mITT:113例)における精神科入院率とした。副次評価項目は、投与対象となる日数の割合とした。安全性の評価には、服薬またはパッチと自殺傾向に関連する有害事象を含めた。 主な結果は以下のとおり。・センサー付きアリピプラゾール錠は、対応するレトロスペクティブ期と比較し、mITT集団の1~3ヵ月目(-9.7%、p≦0.001)および1~6ヵ月目(-21.3%、p≦0.001)の入院を有意に減少させた。・センサー付きアリピプラゾール錠の使用により、確認された薬物摂取が1~3ヵ月目で26.5ポイント改善され(p≦0.001)、PANSSスコアは低下した。・パッチは忍容性が高く、試験参加者の報告による自殺リスクの変化は認められなかった。

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片頭痛と胃腸疾患との関係

 片頭痛は世界中に蔓延している疾患であり、最近の研究によると、胃腸疾患患者において片頭痛の発症率が増加しているとされている。また、前臨床でのエビデンスでは、消化管神経系と脳腸軸などの中枢神経系との双方向性の関係が示唆されている。韓国・同徳女子大学校のJemin Kim氏らは、主要な胃腸疾患と片頭痛との関連を明らかにするため、検討を行った。その結果、胃腸疾患と片頭痛との間に統計学的に有意な関連が認められ、この関連は胃腸疾患の数が多い患者や、片頭痛の予防と急性期治療の両方で片頭痛治療薬を使用している患者において、強い相関が認められることが報告された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2022年3月28日号の報告。片頭痛の有病率、消化不良など複数の胃腸疾患を有する患者で3.5倍 対象は、片頭痛または胃腸疾患の診断が年に2回以上認められた患者。胃腸疾患には、消化性潰瘍、消化不良、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃食道疾患を含めた。 主要な胃腸疾患と片頭痛との関連を明らかにするために行った調査の主な結果は以下のとおり。・HIRAデータセットより、78万1,115例が研究に含まれた。・片頭痛の有病率は、年齢、性別、保険の種類で調整した後、複数の胃腸疾患を有する患者において、約3.5倍高かった(調整オッズ比:3.46、95%CI:3.30~3.63、p<0.001)。・胃腸疾患の数が増加するほど、片頭痛の有病率も高かった。・胃腸疾患の有病率は、急性予防または急性治療のいずれかの患者と比較し、予防と急性期治療の両方のために片頭痛治療薬を使用していた患者のほうが高かった。

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オミクロン株とデルタ株の流行時期における、COVID-19に伴う症状の違いや入院リスク、症状持続時間について(解説:寺田教彦氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、流行株の種類により感染力や重症化率、ワクチンの効果が変化していることはニュースでも取り上げられている。これらのほかに、流行株により臨床症状が変わってきたことも医療現場では感じることがあるのではないだろうか? 例えば、2020年にイタリアから報告されたCOVID-19に伴う症状では、味覚・嗅覚障害が新型コロナウイルス感染症の50%以上に認められ、特徴的な症状の1つと考えられていたが、それに比して咽頭痛や鼻汁などの上気道症状は少なかった(Carfi A, et.al. JAMA 2020;324:603-605.)。ところが、2022年4月現在の臨床現場の感覚としては、COVID-19に伴う症状は咽頭痛や声の変化を訴える患者が増えてきており、味覚・嗅覚障害を理由に検査を新型コロナウイルスのPCR検査を受ける人はほとんどいなくなったように思われる。 本研究は、英国において、新型コロナウイルス感染症の検査結果や症状を報告するアプリ「ZOE COVID」の使用者を対象に、オミクロン株とデルタ株の流行時期のデータを比較している。 オミクロン株の症状の特徴としては、下気道症状や嗅覚異常が少なく、咽頭痛がデルタ株より多いことが報告されている(オミクロン株患者の症状報告、喉の痛みや嗅覚障害の割合は?/Lancet)。そして、Supplementary appendixのTbale S2に個々の症状についてワクチン2回接種後と3回接種後(ブースター接種済み)の患者による症状の違いもまとめられている。 デルタ株、オミクロン株の症状を比較すると、発熱は2回接種後で(44.1% vs.36.7%、[OR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.75~0.9)、3回接種後で(25.8% vs.39.2%、OR:1.09、95%CI:0.9~1.33)。 嗅覚障害は2回接種後で(41.9% vs.22.3%、OR:0.53、95%CI:0.48~0.58)、3回接種後で(32.4% vs.27.7%、OR:0.6、95%CI:0.49~0.73)。味覚障害は2回接種後で(56.7% vs.17.6%、OR:0.16、95%CI:0.14~0.18)、3回接種後で(38% vs.13.2%、OR:0.24、95%CI:0.2~0.3)と味覚・嗅覚症状はオミクロン株で減少傾向。鼻水は2回接種後で(80.9% vs.82.6%、OR:0.66、95%CI:0.59~0.74)、3回接種後で(81.8% vs.74.9%、OR:1.11、95%CI:0.89~1.39)。 嗄声は2回接種後で(39.6% vs.42.8%、OR:1.15、95%CI:1.05~1.26)、3回接種後で(31.1% vs.42%、OR:1.62、95%CI:1.35~1.94)。咽頭痛は2回接種後で(63.4% vs.71%、OR:1.42、95%CI:1.29~1.57)、3回接種後で(51% vs.68.4%、OR:2.11、95%CI:1.76~2.53)と咽頭痛や嗄声はオミクロン株で増加傾向だった。 もちろん、デルタ株とオミクロン株を比較することも重要ではあるが、本邦の患者さんやCOVID-19を診療する機会の少ない医療従事者の中には2020年ごろにニュースで取り上げられていた症状をCOVID-19の典型的な症状と捉えている方もおり、昨今の新型コロナウイルス感染症は、いわゆる風邪(急性ウイルス性上気道炎)の症状に合致し、検査を実施する以外に鑑別は困難であることも理解しておく必要があると考える。今回の報告は、オミクロン株では2020年ごろよりも発熱や味覚・嗅覚障害の症状は減少してきており、咽頭痛や鼻水などの上気道症状が多いことを実感することのできるデータであると考える。 急性期症状の持続日数についてもまとめられているが、デルタ株では平均値が8.89で中央値が8.0、95%CI:8.61~9.17に比して、オミクロン株では平均値が6.87、中央値が5.0、95%CI:6.58~7.16とオミクロン株で短縮が認められていた。本邦でも増えてきている3回接種後(ブースター接種済み)の場合では、デルタ株感染で平均7.71日、オミクロン株では4.40日が症状持続期間であった。 入院率はオミクロン変異株流行中の入院率(1.9%)のほうが、デルタ変異株流行中の入院率(2.6%)よりも有意に低下したことを指摘されているが、これも過去の報告や現場の臨床感覚に合致する内容だろう。 本論文は、全体を通して現場の臨床感覚に一致した内容だったと考える。 今回の論文では、オミクロン株では、とくにワクチン接種後では症状持続期間が短くなっていることが確認されている。適切な感染管理を行うために現場と調整する際、新型コロナウイルス感染症で難しさを感じる点に濃厚接触者となった場合や、感染した場合に一定の休業期間を要する点がある。症状持続期間が短くなっていることからは、場合によっては、感染力を有する期間も短くなっているかもしれない。 新型コロナウイルス感染症と診断された場合や、濃厚接触者となった場合でも、感染力を有する期間も短くなっていることが明らかになれば、今後の感染対策が変わりうるだろう。他に、この論文のLimitationsの4つ目に、年齢やワクチン接種状況、性別は一致させたが、他の交絡因子は一致していないことが指摘されている。流行株も変化したが、抗ウイルス薬も臨床現場で使用されることが増えている。これらの抗ウイルス薬による、症状改善時間の短縮や、感染力期間が短縮されることが明らかになれば、新型コロナウイルス感染症に対する公衆衛生上の方針にも影響を及ぼしてゆくかもしれない。

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HR+/HER2-乳がんへの術前ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾール、安全性データを発表(CheckMate 7A8)/ESMO BREAST 2022

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がん患者に対する術前療法としての、ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾールの3剤併用は、主に肝毒性による安全性上の懸念から組み入れが停止され、無作為化試験には進まないことが報告された。前臨床試験では免疫チェックポイント阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果の可能性が示唆されていた。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で第Ib/II相CheckMate 7A8試験の安全性確認期間における安全性データおよび予備的有効性データを報告した。[CheckMate 7A8試験]・対象:新たにHR+/HER2−乳がんと診断された閉経後女性あるいは男性(腫瘍径≧2cm、ECOG PS 0~1)・試験群1(9例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル・試験群2(12例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ100mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル・評価項目:[主要評価項目]用量制限毒性(DLT:治療開始後最初の4週間に発生した治療に起因する有害事象)[副次評価項目]安全性、病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・主なGrade≧3の治療関連AE(TRAE)は、試験群1ではALT上昇(33.3%)、AST上昇(33.3%)、好中球減少症(22.2%)、白血球数減少(22.2%)、試験群2では好中球数減少(41.7%)、好中球減少症(16.7%)だった。両群で治療関連の死亡は報告されていない。・DLTは、試験群1では9例中2例で報告され(22.2%)、1例は肝炎、もう1例は発熱性好中球減少症だった。試験群2では報告されていない。・両群の全21例中9例で毒性により治療が中止された。6例(29%)はGrade≧3の肝臓のAE(ALT上昇とAST上昇:2例、ALT上昇:1例、トランスアミナーゼ上昇:2例、高トランスアミナーゼ血症:1例)、Grade≧3の発疹とGrade2の免疫介在性肺障害、Grade1の肺臓炎、Grade3の発熱性好中球減少症が1例ずつだった。・pCRが得られたのは試験群2の1例で、全体としてpCR率は4.8%。CRは1例、PRは14例で、放射線画像評価によるORRは、71.4%だった。 Tolaney氏は、今回の結果と文献上の他データに基づくと、抗PD-1薬とCDK4/6阻害薬の併用は、肝毒性および肺毒性のリスク増加のため、安全な使用は難しい可能性があるとまとめている。

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血栓回収脳卒中センターと地方脳卒中センター、死亡率に有意差なし/JAMA

 大血管閉塞による脳卒中が疑われる患者を、地方脳卒中センターに搬送した場合と血栓回収脳卒中センターへ搬送した場合を比較した結果、90日神経学的アウトカムについて有意な差は示されなかった。スペイン・Hospital Universitari Germans Trias i PujolのNatalia Perez de la Ossa氏らが、同国カタルーニャ州で行った住民ベースの多施設共同クラスター無作為化試験の結果を報告した。地方では血栓回収脳卒中センターへのアクセスが制限されており、大血管閉塞による脳卒中が疑われる患者の最適な搬送先病院の戦略は明らかになっていなかった。JAMA誌2022年5月10日号掲載の報告。血栓回収脳卒中センター搬送群vs.地元の脳卒中センター搬送群で評価 試験は2017年3月~2020年6月に、スペインのカタルーニャ州で、血栓摘出術が提供できない地方の脳卒中センターに近在する救急医療サービスを利用した、急性大血管閉塞による脳卒中が疑われる患者1,401例を対象に行われた。 被験者は、血栓回収脳卒中センターへと搬送された群(688例)と近接の地方脳卒中センターに搬送された群(713例)に無作為化され、追跡評価を受けた。最終フォローアップは2020年9月。 主要アウトカムは、虚血性脳卒中患者(標的集団)の90日時点の機能障害で、修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])に基づき評価した。副次アウトカムは11項目で、標的集団におけるt-PA静脈内投与率および血栓摘出の割合、全無作為化集団(安全性評価集団)における90日死亡率などであった。 被験者登録は、2回目の中間解析後に無益性を理由に中止となった。90日時点のmRSスコア、死亡率とも有意差みられず 1,401例が安全性解析に登録された。うち1,369例(98%)から試験参加の承諾を得ており無作為化解析に包含された(男性56%、年齢中央値75歳[IQR:65~83]、National Institutes of Health Stroke Scale[NIH脳卒中スケール]スコア17[IQR:11~21])。主要解析には、標的虚血性脳卒中集団の949例が含まれた。 標的集団における主要アウトカムのmRSスコア中央値は、血栓回収脳卒中センター搬送群3(IQR:2~5)vs.地方脳卒中センター搬送群3(IQR:2~5)であった(補正後共通オッズ比[OR]:1.03[95%信頼区間[CI]:0.82~1.29])。報告された11の副次アウトカムのうち、8つで有意差が認められなかった。 標的集団において、一次搬送が地方脳卒中センターであった患者群と比較して、最初から血栓回収脳卒中センターに搬送された患者群は、t-PA静脈内投与を受けたオッズ比は有意に低く(229/482例[47.5%]vs.282/467例[60.4%]、OR:0.59[95%CI:0.45~0.76])、血栓摘出を受けたオッズ比は有意に高かった(235/482例[48.8%]vs.184/467例[39.4%]、OR:1.46[95%CI:1.13~1.89]。 安全性集団における90日死亡率は、両群で有意な差はみられなかった(188/688例[27.3%]vs.194/713例[27.2%]、補正後ハザード比:0.97[95%CI:0.79~1.18])。 著者は、「今回示された所見が、他の設定集団でも観察されるのか確認する必要がある」とまとめている。

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英語で「波がある痛み」は?【1分★医療英語】第28回

第28回 英語で「波がある痛み」は?Is the pain constant?(持続する痛みですか?)No, it comes and goes.(いいえ、痛みには波があります)《例文1》Does the pain come and go?(痛みには波がありますか?)《例文2》Hives can come and go.(蕁麻疹は、出たり消えたりします)《解説》“come and go”は文字通り、「行ったり来たりする」を意味し、症状に波があることを指します。医学用語では、持続痛は“constant pain”、間欠痛は“intermittent pain”と言いますが、患者さんに“intermittent”という単語は伝わりにくいため、どちらの痛みなのか確認したいときには、“Does it come and go?”と聞くとよいでしょう。その他の「痛みには波がある」という言い方として、“The pain gets better and worse.”や“The pain waxes and wanes.”などがあり、併せて覚えておくと役立ちます。“wax and wane”は、もともとは「月の満ち欠け」という意味で、“wax”が「満ちる」、“wane”が「欠ける」を意味します。“wax and wane”は月の満ち欠け以外にも、症状が良くなったり悪くなったりすることを表すことができ、医療者同士の会話では“His mental status waxed and waned, so we couldn’t extubate him.”(彼の意識レベルは波があり、抜管できませんでした)といった表現が頻繁に登場します。講師紹介

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第112回 シャネルの5番の匂い成分が蚊をヒトに誘う

遥か100年ほど前の1920年に誕生して以来現代まで廃れず名高い香水・シャネルの5番に使われていることで知られる長鎖アルデヒド2種・デカナール(アルデヒド C-10)とウンデカナール(アルデヒド C-11)1)はヒトの匂いに一貫して豊富で、どうやらヒトに特有の皮脂を出どころとします。Nature誌に今月初めに掲載された新たな研究の結果、ジカ熱・デング熱・黄熱病等の病原性ウイルスを運ぶネッタイシマカはそれら2つの匂い成分を頼りにヒトを探し当てると分かりました2-4)。蚊の脳には嗅覚処理を担う神経構造・糸球体が60個存在します。研究者はその多く、もしくはほとんどがヒトを見つけ出すのに関わっていると予想していました3)。しかし意外にもそうではなく、どうやらたった2つで事足ります。ヒトや動物(ラットと羊)の匂いへの反応を調べたところ3つの糸球体の反応が主立っており、それらのうちの2つ・B糸球体とH糸球体はヒトの匂いに強く反応し、それら2つの働きでヒトと動物の匂いの識別が可能でした。B糸球体の相手は手広くてヒトだけでなく動物の匂いにも強く反応します。一方H糸球体はヒトの匂いで一貫して活性化し、動物の匂いには全くまたはほんの弱くしか反応しません。ヒトに敏感なそのH糸球体がシャネルの5番の成分として有名なデカナールとウンデカナールで活性化します。ヒトと動物の匂いの成分は重複しており、ヒトに特有のものはありません。しかし匂い成分の配合比は異なります。デカナールとウンデカナールはヒトの匂いに豊富に含まれ、そういう個々の匂い成分の多い少ないの特徴が動物とは一線を画すヒト特有の匂いを生み出しています。デカナールとウンデカナールはおそらく皮脂から発生し、今回の結果によると皮脂からのそれら長鎖アルデヒド等の匂い成分は獲物の識別に大事な役割を担っています。皮脂は組成が種に特異的な傾向があり、休んでいるときも動いているときと変わらず毛包から分泌されます。そういう特徴のおかげで皮脂由来成分はネッタイシマカのヒト選別の頼みの綱となっているのでしょう。興味深いことに、蚊に刺されやすい人とそうでない人の違いにも皮脂成分や長鎖アルデヒド量が関係しているかもしれません。ヒトの長鎖アルデヒド量はヒトと動物の差ほどではないものの個人差があります。今回の研究の一環の試験の被験者のうち長鎖アルデヒド量が多すぎるヒトや少なすぎるヒトに比べて標準量に近いヒトにネッタイシマカはより寄り付きました。ネッタイシマカがヒトはヒトでもどのヒトに取り付くかという選別にもヒト好みへの進化が勢い余って波及している可能性があると著者は言っています。そのような興味をそそる研究課題を提示することに加えて、蚊の新たな駆除法の手段を今回の研究は示しました。著者等は長鎖アルデヒド配合の特許を得ており、蚊をおびき寄せて一網打尽に死なす誘引剤、もしくはその逆の虫よけが新たに誕生することを望んでいます。参考1)大野 斉子.シャネルNo.5と帝政ロシアの香水産業.宇都宮大学国際学部研究論集.2014;37:1-12.2)Zhao Z,et al.. Nature. 2022 May 4. [Epub ahead of print] 3)How mosquito brains encode human odor so they can seek us out / Eurekalert4)Researchers Discover What Attracts Mosquitoes to Humans / TheScientist

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進行/転移TN乳がんの1次治療、PD-L1発現によらずDato-DXd+デュルバルマブが奏効(BEGONIA)/ESMO BREAST 2022

 進行/転移トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、トポイソメラーゼI阻害薬を含むTROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)が、PD-L1発現の有無によらず高い奏効率を示し、安全性プロファイルも管理可能であったことがBEGONIA試験で示された。英国・Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。 BEGONIA試験は、2つのPartで構成された非盲検プラットフォーム試験で、進行/転移TNBCの1次治療として、抗PD-L1抗体のデュルバルマブと他の薬剤との併用を評価している。Part1について、すでにパクリタキセル+デュルバルマブ群での客観的奏効率(ORR)が58.3%、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+デュルバルマブ群でのORRが66.7%であったことを報告している。今回はDato-DXd+デュルバルマブ群における結果を報告した。・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]ORR(RECIST v1.1)、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・29例がDato-DXd+デュルバルマブを投与され(24例が投与継続中)で、27例がベースライン後に2回評価を受けた。追跡期間中央値は3.9ヵ月(範囲:2~6ヵ月)。・ORRは74%(20/27例、95%CI:54~89)で、完全奏効は2例(7%)、部分奏効は18例(67%)だった。奏効はPD-L1発現の有無によらず認められた。・奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月(95%CI:1.35~1.58)で、奏効例すべてがデータカットオフ時(2021年11月15日)も奏効を維持し、奏効期間中央値未到達である。・用量制限毒性は認められていない。・Dato-DXdの減量が4例(14%、すべて口内炎による)、Dato-DXdの投与延期が1例(3%)、デュルバルマブの投与延期が4例(14%)にみられた。・頻度が高い有害事象は、口内炎(69%)、脱毛症(66%)、悪心(66%)であった。下痢は4例(14%、すべてGrade1)と少なく、間質性肺疾患/肺炎や好中球減少は報告されなかった。 現在、本試験のPart2の Dato-DXd +デュルバルマブ群への登録が進行中であり、奏効期間、PFS、OSの評価のためのフォローアップを継続している。

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米国における双極性障害の治療パターン

 双極性障害は慢性的かつ複雑な疾患であるため、治療が困難なケースも少なくない。米国・テキサス工科大学のRakesh Jain氏らは、双極性障害患者に対する治療パターンを明らかにするため、レトロスペクティブ研究を実施した。その結果、抗うつ薬やベンゾジアゼピンは、フロントライン治療としての使用はガイドラインで推奨されていないにもかかわらず、双極性障害に対し高頻度で処方されていることが明らかとなった。本結果は、双極性障害のケアにおける異質性を強調しており、多くの臨床医がエビデンスに基づく双極性障害治療を実践していないことを示唆している。Advances in Therapy誌オンライン版2022年4月6日号の報告。 2016~18年に新たに双極性障害と診断された成人患者を、IBM MarketScan Commercial claims databaseより特定した。患者の登録は、初回診断の12ヵ月以上前と6ヵ月後に行った。Lines of therapy(LOT)は、抗うつ薬、気分安定薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、精神刺激薬のほか、適応外の薬物による継続的な治療期間とした。すべてのデータを記述的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・基準を満たした患者は、4万345例であった。・最も一般的な初期エピソードタイプは、双極II型障害(38.1%)であり、次いで双極I型障害(29.8%)、躁病(12.8%)、混合型(12.0%)であった。・すべてのエピソードタイプのうち、約90%が治療を受けており(LOT1)、これらの患者の約80%は1つ以上のLOT追加治療を受けていた。・LOT1(3万6,587例)で使用された薬剤は、気分安定薬(43.8%)、抗うつ薬(42.3%、単剤療法では12.9%)、非定型抗精神病薬(31.7%)、ベンゾジアゼピン(20.7%)であり、LOT追加治療では抗うつ薬(51.4~53.8%)、ベンゾジアゼピン(26.9~27.4%)の使用量の増加が認められた。・LOT1のレジメンは、2,067パターンであった。・治療パターンは、エピソードタイプ全体で類似していた。

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地中海食、心血管イベントの2次予防にも有用/Lancet

 心血管イベントの2次予防において、地中海食は低脂肪食よりも優れていることが、スペインのレイナ・ソフィア大学病院で実施された単施設の無作為化臨床試験「CORDIOPREV試験」で示された。同病院のJavier Delgado-Lista氏らが報告した。地中海食は心血管イベントの1次予防に有効であることが知られているが、2次予防に関するエビデンスは乏しかった。著者は、「今回の結果は、臨床診療に関連しており、2次予防における地中海食の摂取を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年5月4日号掲載の報告。冠動脈疾患既往1,002例を地中海食群と低脂肪食群に無作為化 CORDIOPREV試験の対象は、冠動脈疾患の既往(急性心筋梗塞、不安定狭心症による入院、直径2.5mm以上の心外膜血管の50%以上狭窄)を有し、過去6ヵ月間、冠動脈疾患に関連する臨床事象のない20~75歳の男女である。2009年10月1日~2012年2月28日に、1,002例(平均[±SD]年齢59.5±8.7歳、男性82.5%)が1対1の割合で地中海食群(502例)または低脂肪食群(500例)に無作為に割り付けられた。 それぞれの食事カロリーの構成は、地中海食が脂肪35%以上(1価不飽和脂肪酸22%、多価不飽和脂肪酸6%、飽和脂肪酸10%未満)、タンパク質15%、炭水化物50%以下で、低脂肪食は総脂肪30%未満(1価不飽和脂肪酸12~14%、多価不飽和脂肪酸6~8%、飽和脂肪酸10%未満)、タンパク質15%、炭水化物55%以上で、いずれの食事もコレステロールの含有量は1日300mg未満とした。 栄養士のみが割り付けを知っており、医師および臨床評価委員会委員等は割り付けを盲検化された。また、参加者は盲検化されていなかったが、食事に関することを医師に話さないよう指示された。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心筋梗塞、血行再建、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、心血管死の複合)で、intention-to-treat解析を行った。追跡期間中央値7年、地中海食群の主要心血管イベント発生のHRは0.719~0.753 追跡期間中央値7年において、主要心血管イベントは198例に発生した。内訳は、地中海食群87例、低脂肪食群111例で、1,000人年当たりの粗率は地中海食群28.1(95%信頼区間[CI]:27.9~28.3)、低脂肪食群37.7(37.5~37.9)であった(log-rank検定p=0.039)。地中海食群の低脂肪食群に対する、多変量で補正後の主要心血管イベントに関するハザード比(HR)は、0.719(95%CI:0.541~0.957)~0.753(0.568~0.998)であり、地中海食が良好であった。 これらの効果は男性においてより顕著で、主要評価項目のイベント発生率は地中海食群の16.2%(67/414例)に対し低脂肪食群では22.8%(94/413例)(多変量補正後HR:0.669、95%CI:0.489~0.915、log-rank検定のp=0.013)であった。女性175例(地中海食群88例、低脂肪食群87例)では群間差は認められなかった。

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新しい植物由来COVID-19ワクチン、各種変異株に有効:第III相試験/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンCoVLP+AS03(カナダ・Medicago製)は、各種変異株によるCOVID-19の予防に有効で、症候性COVID-19に対する有効率は69.5%、中等症~重症COVID-19に対する有効率は78.8%であったことを、カナダ・MedicagoのKaren J. Hager氏らが第III相無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。CoVLP+AS03ワクチンは、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)という植物で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質を発現させ形成されたコロナウイルス様粒子(CoVLP)と、アジュバントシステム03(AS03)を組み合わせた、新しい植物由来COVID-19ワクチンである。NEJM誌オンライン版2022年5月4日号掲載の報告。2021年3月~9月、南・北米で約2万4,000人を対象に無作為化プラセボ対照試験 研究グループは、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコ、英国および米国の85施設において、SARS-CoV-2に対するワクチンの接種歴がなく、確認されたCOVID-19の既往もない18歳以上の成人を、CoVLP+AS03ワクチン群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ21日間隔で2回筋肉内注射した。 主要評価項目は、2回接種後7日以降のRT-PCR法で確認された症候性COVID-19発症に対する有効性である。事後解析として中等症~重症COVID-19に対する有効性なども評価した。 ワクチンの有効性は100×(1-発生率比)で算出し、発生率比はプラセボ群に対するワクチン群のCOVID-19発生率(人年当たり)の比と定義した。 解析は、RT-PCR法で確認されたCOVID-19症例が160例以上認められた後、中央値で2ヵ月以上の安全性追跡調査を経て行った。なお、本試験は2021年3月15日~9月2日に実施され、有効性解析および安全性解析のデータカットオフ日はそれぞれ2021年8月20日および同年10月25日であった。 計2万4,141例が無作為化され、intention-to-treat集団に含まれた(ワクチン群1万2,074例、プラセボ群1万2,067例)。対象の年齢中央値は29歳で、14.8%はベースライン時に血清陽性であった。有効率は69.5%、中等症~重症化の予防効果は78.8% 2021年8月20日時点で、RT-PCR法で確認されたCOVID-19はintention-to-treat集団で165例(ワクチン群40例、プラセボ群125例)であり、全体におけるワクチンの有効率は69.5%(95%信頼区間[CI]:56.7~78.8)であった。165例中122例でウイルスの配列が同定され、デルタ株56例(45.9%)、ガンマ株53例(43.4%)、アルファ株6例(4.9%)、ミュー株4例(3.3%)、ラムダ株3例(2.5%)であった。 事後解析の結果、ベースライン時の血清陰性集団における有効率は74.0%(95%CI:62.1~82.5)であった。また、中等症~重症COVID-19に対する有効率は、intention-to-treat集団で78.8%(55.8~90.8)、血清陰性集団で86.0%(66.2~95.1)であった。 ワクチン群では重症COVID-19は認められず、感染例におけるCOVID-19診断時のウイルス量中央値は、ワクチン群と比較してプラセボ群で100倍以上高かった(ワクチン群3.46 log10コピー/mL、プラセボ群5.65 log10コピー/mL)。 非自発的な有害事象はほとんどが軽度または中等度で、一過性であった。発現率はワクチン群がプラセボ群よりも高かった(局所有害事象:92.3% vs.45.5%、全身性有害事象:87.3% vs.65.0%)。また、自発報告による有害事象の発現率(ワクチン群vs.プラセボ群)は、接種後21日目まで(22.7% vs.20.4%)、ならびに43日目から201日目まで(4.2% vs.4.0%)のいずれも、両群で同程度であった。

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第100回 手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査

<先週の動き>1.手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査2.4回目コロナワクチン、今月末からの開始に向けて/厚労省3.3回目用に確保したコロナワクチン、期限切れで廃棄相次ぐ4.医師偏在解消に向け「医師確保計画ガイドライン」改正/厚労省5.ヤングケアラー支援のための手引きを作成/厚労省6.有事の医薬品開発を見据えた緊急承認制度が新設1.手術動画を無断で提供、改正個人情報保護法に基づき調査全国の総合病院などに勤務する眼科医5人が、病院や患者に無断で白内障の手術動画を医療機器メーカーに提供し、去年までの3年間に現金40~105万円を受け取っていたことが明らかとなりました。画像の提供を受けていたのは白内障治療用眼内レンズを販売するスター・ジャパン社。同社が白内障手術の動画を作成するために提供を受けたとされているが、販売促進の目的の可能性があるため、業界団体がメーカーの調査に着手した。今回の動画は手術動画であり、厳密には個人情報に含まれない可能性があるが、各医療機関側は患者の同意なく外部に提供したことを把握できておらず、再発防止のためには職員に対して個人情報保護法の教育が必要となる。個人情報保護法は今年4月から改正法が施行されており、個人データの授受については研究目的であっても第三者提供記録が本人による開示請求の対象となるなど規制が強化されている。医療機関側は情報漏洩時の報告義務を負っており、医師個人も個人情報保護法のルール順守が必須となる。(参考)“手術動画”無断で外部提供か 病院側「再発防止に努めたい」(NHK)“手術動画”で医師に現金提供 業界団体がメーカーを調査(同)医療・ 介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(個人情報保護委員会)【2022年4月施行】個人情報保護法改正とは?改正点を解説!(契約Watch)2.4回目コロナワクチン、今月末からの開始に向けて/厚労省今月末に開始見込みの新型コロナウイルスワクチン4回目接種の準備に向け、厚生労働省は全国の自治体に対して10日に通知を発出した。接種の対象者は、3回目の接種完了から5ヵ月以上が経過した60歳以上の者および18歳以上60歳未満の者のうち基礎疾患を有する者やその他新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高いと医師が認める者で、自治体に対してファイザー製および武田/モデルナ製ワクチンを配布する。基礎疾患のある人については、自己申告した者のほか、申告がない一部の人にも接種券を配布できるとし、自治体側の煩雑な事務作業を減らすために、18歳以上の対象者以外への一律送付も可能となっている。(参考)4回目コロナ接種券、対象以外も 厚労省が自治体に通知(産経新聞)4回目接種券、18歳以上一律も可能に…煩雑作業避けたい自治体の要望受け厚労省容認(読売新聞)新型コロナウイルスワクチンの追加接種(4回目接種)体制整備に係る医療用物資の配布について(厚労省)新型コロナワクチン追加接種(4回目接種)の体制確保について(その2)(同)3.3回目用に確保したコロナワクチン、期限切れで廃棄相次ぐ新型コロナウイルスワクチン3回目接種のために配布されたモデルナ製ワクチンが使用されないまま有効期限を迎え、これまでに10万本以上が破棄されていることが報道された。感染状況を踏まえた複合的な理由により、配送されたワクチン数が希望者を上回っていると考えられる。一方、ファイザー製ワクチンは4月に有効期限が9ヵ月から1年に延長されて破棄を免れたが、今後進められる4回目接種は対象者が制限されるため、引き続き期限切れを迎えるワクチンの増加は避けられないだろう。確保したワクチンの有効活用のために、国民に対してワクチン接種の働きかけを強化するなど、自治体で期限切れにならないような工夫を凝らす必要がある。(参考)なぜ?新型コロナワクチン 期限切れ廃棄 次々と明らかに(NHK)余るモデルナ、止まらぬ廃棄 融通できず悩む自治体(産経新聞)京都市、モデルナワクチン期限切れで廃棄へ 8万回分(日経新聞)4.医師偏在解消に向け「医師確保計画ガイドライン」改正/厚労省厚労省は、第8次医療計画等に関する検討会の下部組織「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」を11日に開催した。2018年の医療法改正により、医療資源の地域的偏在の是正のため「医師確保計画」を策定することとなっており、各都道府県は2次医療圏ごとに医師確保計画を通じた医師偏在対策を進めている。今後、医師の働き方改革や地域医療構想の実現も視野に入れつつ、キャリア形成プログラムなどを含めた検討を進め、2022年中に報告書をまとめ、年度内に「医師確保計画策定ガイドライン」の改定を行う。2024年から始まる第8次医療計画の開始とともに医師確保計画の策定を開始する予定。(参考)2024年度から「医師確保計画」も新ステージに、医師偏在解消に向け2022年内に見直し案まとめ―地域医療構想・医師確保計画WG(Gem Med)地域枠医師などサポートするキャリア形成プログラム、現場ニーズを意識した作成・運用進む―地域医療構想・医師確保計画WG(2)(同)医師確保計画を通じた医師偏在対策について(厚労省)5.ヤングケアラー支援のための手引きを作成/厚労省全国の自治体に向け、大人に代わって日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラーについて、早期の発見や支援を行う体制などの事例をマニュアルにまとめ、ヤングケアラー支援の体制作りを働きかける通知が発出された。厚労省が2021年度に子供・子育て支援推進調査研究事業で行った全国の中高校生を対象とした調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生は4.1%だった。そのうち、世話の頻度を「ほぼ毎日」と回答した者が3~6割程度、平日1日当たりで世話に費やす時間は「3時間未満」が多いものの、「7時間以上」と回答した者も約10%程度いることから、誰にも相談できずに1人で抱え込んでいるのかもしれない。今度、ヤングケアラーをいかに社会で支えるかが大きな課題となっている。(参考)ヤングケアラー支援で手引 学校や自治体連携、厚労省(日経新聞)厚労省、ヤングケアラー支援マニュアルを通知 「福祉、介護、教育など多分野の連携が重要」(JOINT)「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」(厚労省)6.有事の医薬品開発を見据えた緊急承認制度が新設感染症流行時などの有事にワクチンや治療薬を緊急承認する制度の創設を盛り込んだ医薬品医療機器法の改正案が、13日の参議院にて全会一致で可決され、成立した。現行制度では、海外承認された医薬品を早期承認する特例承認制度があるが、日本人への有効性が確認できる臨床データが十分集まっていない場合は国内で追加治験を行わなければならず、承認が遅れてしまう問題があった。今回新設された緊急承認制度は、国民の生命や健康に重大な影響を与える恐れがある病気の蔓延を防ぐために必要な医薬品や医療機器が対象で、ほかに代替手段がないことが条件となる。緊急時として原発事故やテロなども想定しているが、2年以内に有効性を確認できなければ承認を取り消す。(参考)薬の緊急承認制度創設へ 改正薬機法が成立 遅れたワクチン開発、反省踏まえ(産経新聞)「緊急承認制度」新設、早いワクチン実用化の実現は 改正薬機法成立(朝日新聞)改正医薬品医療機器法が成立 薬の緊急承認、新設 コロナ対応反省/信頼性課題(毎日新聞)

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HR+/HER2-早期乳がんへの術前HER3-DXdが有望(SOLTI TOT-HER3)/ESMO BREAST 2022

 未治療のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対する、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の術前単回投与が、病理学的完全奏効(pCR)の予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加と関連し、奏効率が45%であることが示された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのAleix Prat氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で多施設共同前向きSOLTI TOT-HER3試験(part A)1)の最終結果を報告した。[SOLTI TOT-HER3試験(part A)]・対象:未治療のHR+/HER2−、手術可能(超音波検査で腫瘍径≧1cm)、Ki67≧10%の閉経前/後女性および男性乳がん患者・試験群:治療前のERBB3 mRNAレベルに基づき4分類され、HER3-DXd(6.4mg/kg)を単回投与(77例)・評価項目:[主要評価項目]治療前と治療後(サイクル1の21日目)のCelTILスコア(-0.8×tumor cellularity[%]+1.3×TILs[%]:pCRと相関)2)の変動[副次評価項目]治療後(サイクル1の21日目)の奏効率(ORR)、治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化、PAM50サブタイプの変化、治療前後の67遺伝子の発現状況およびKi67の変化、安全性と忍容性 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、平均年齢53歳、腫瘍径中央値21mm、cN0:71%、平均Ki67:27%だった。・治療前のERBB3 mRNAレベルは、high:21例、medium:21例、low:21例、ultralow:14例だった。・治療前のIHCでのHER3タンパク質発現状況は、high:50例、low:10例、negative:1例だった(16例は測定中あるいは測定不可)。・評価可能な62例において、治療後(サイクル1の21日目)のORRは45%(CR:23%、PR:23%)だった。・CelTILスコアは治療前と比べ治療後有意に増加した(平均差+6.8、p<0.001)。この増加は、レスポンダーではみられたが(p<0.001)、非レスポンダーではみられなかった(p=0.135)。・治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化に関連はみられなかった。・PAM50サブタイプは、治療前がLuminal A:40例、Luminal B:32例、HER2-Enriched:2例、Basal-like:3例だったのに対し、治療後にはLuminal A:54例、Luminal B:13例、HER2-Enriched:1例、Basal-like:2例となり、Luminal Aの約10%がNormal-likeに、Luminal Bの50%超がLuminal Aに変化した。・治療前の非Luminalサブタイプと高い再発リスクスコアは、CelTILスコア増加との関連がみられた。・67遺伝子の発現状況は、治療前と比較して治療後にCD68やCD4といった免疫関連遺伝子が誘導され、MELKやMKI67などの細胞増殖関連遺伝子は抑制されていた。Ki67遺伝子の発現は治療後有意に減少した(平均差-8.9、p<0.001)。・Grade3以上のTEAEは14%で発現し、主なTEAEは好中球減少症(8%)、ALT上昇(3%)、下痢(1%)だった。ILDおよび死亡例の報告はない。 TOT-HER3試験ではpart Bとしてトリプルネガティブ乳がん患者の登録が進められているほか、SOLTI-VALENTINE試験ではHR+/HER2−乳がんに対する術前療法として、HER3-DXd単剤あるいは内分泌療法との併用が検証される予定。

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