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「トップガン マーヴェリック」【Dr. 中島の 新・徒然草】(429)

四百二十九の段 「トップガン マーヴェリック」「トップガン マーヴェリック」というタイトルにしましたが、私はこの映画をまだ観ていません。観たというのは外来の患者さんです。彼女は40歳頃の事故で高次脳機能障害になってしまい、もう何年も通院とリハビリをしています。短期記憶が苦手で、私の名前を尋ねてみても出てきたり出てこなかったり。患者「うーん、先生の名前は……中島さん? そんな気もするわ」で、そんな彼女が開口一番言ったのは、「この前、旦那と『トップガン マーヴェリック』を観てきた!」という事です。患者「私、すごく感動した!」中島「面白かったですか、やっぱり?」患者「旦那は中身に感動しとったけどな、私は自分が前のストーリーを憶えてたことに感動してん」前のストーリーというのは1986年の元祖「トップガン」の事で、当時小学生だった彼女は映画館ではなく、テレビやビデオなどで何度も観たのだそうです。トム・クルーズが米国海軍の戦闘機パイロットとして縦横無尽に活躍する「トップガン」は日本を含む全世界で大ヒットしました。そして長らく待たれていた続編が今回の「トップガン マーヴェリック」で、実に36年ぶりの第2作目です。主役はまたもトム・クルーズで、還暦近い年齢でありながら、相変わらずのイケメンぶりを発揮してくれました。また、このシリーズのもう1つの主役とも言える戦闘機の方は、前回がF-14 トムキャット、今回はF/A-18E/F スーパーホーネットです。患者「あの時に死んだ相棒がおったやろ?」中島「グースの事ですか」トム・クルーズの相棒役を演じたアンソニー・エドワーズは、むしろ「ER」のグリーン先生役として我々の業界では有名ですね。患者「そうそう。その息子がパイロットとして出てきとってん」トム・クルーズ扮するマーヴェリックとの浅からぬ因縁を持つ息子という役どころでしたか。この患者さん、何しろストーリーが頭に残らないので、普段は連続テレビドラマなんかを見るのが苦痛だということです。でも昔の映画については熱く語ってくれました。患者「お母ちゃんがトム・クルーズのファンでな、『ミッション:インポッシブル』とかのDVDを全部持ってるねん」中島「なるほど」患者「私は『007』のほうが好きやけどな」いつもはこんなに饒舌な人ではありませんが、映画の話になると熱が入ってきます。中島「でも、『007』のほうはジェームズ・ボンド役の俳優がどんどん入れ替わっているじゃないですか」患者「そうやなあ」中島「どの俳優が1番ですか?」俳優の名前を思い出すのは、いいリハビリになるかも。患者「それを訊かれると難しいねん」中島「確か初代は……あの、カツラ男。あかん、名前が出てこない」ショーン・コネリーですね。私ごときにカツラ男よばわりされて、申し訳ないです。中島「それで途中にティモシー・ダルトンがいましたかね」患者「そうそう!」中島「ん、でもほかの俳優の名前が出てこないぞ」私も年を取ったものです、名前がパッと出てきません。後で調べるとティモシー・ダルトンの前がロジャー・ムーア、後がピアース・ブロスナンでした。どうやら私にもリハビリが必要みたい。患者「私な、ロバート・デ・ニーロも大好きやねん」中島「そうすると『俺たちは天使じゃない』という映画は知ってますか」患者「先生こそ、なんでそんなマイナーな映画知ってるの?」中島「マイナーやけど名作でしょ、あれは」患者「あんな面白い映画もないよね」中島「確か相棒役の俳優が……出てこない!」患者「私も名前が出てけえへん。年齢のせいかな」こちらはショーン・ペンでしたね。ちなみに、私は家で「そっちじゃない!」と言いたい時に、この映画の有名なセリフをとって "another father Brown!" と叫んでおります。ということで、短期記憶に障害のある患者さんが、案外、昔の映画を憶えていたというお話です。こういった有名な映画で俳優の名前やストーリーを思い出そうとするのも、脳の活性化につながるかもしれませんね。思いがけず盛り上がった外来診察でした。最後に1句6月の 空を切り裂く ホーネット

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若年性双極性障害およびうつ病患者における自殺行動~メタ解析

 うつ病または双極性障害の小児および青年における自殺行動の割合や死亡率を評価するため、イタリア・IRCCS Bambino Gesu Pediatric HospitalのGiulia Serra氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、気分障害と診断された若者の死亡率(自殺企図当たりの死亡者数)は、一般的な若者よりも高いものの、成人よりは低いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年5月16日号の報告。双極性障害の自殺企図の平均発生率はうつ病より高い 18歳以下の自殺行動に関する報告をシステマティックにレビューし、プールされたデータから自殺行動リスクや1年発生率を評価するため、ランダム効果メタ解析および多変量線形回帰モデルを用いた。 双極性障害またはうつ病の小児および青年における自殺行動の割合や死亡率を評価した主な結果は以下のとおり。・対象は、15ヵ国で検討された研究41件(1995~2020年)より抽出された10万4,801例(うつ病:10万2,519例、双極性障害:2,282例)。自殺行動リスクは0.80~12.5年であった。・メタ解析では、自殺企図の発生率は、双極性障害で7.44%/年(95%CI:5.63~9.25)、うつ病で6.27%/年(95%CI:5.13~7.41)であった。・うつ病および双極性障害の患者群を用いた研究5件のメタ解析では、双極性障害患者はうつ病患者と比較し、自殺企図リスクが有意に高かった(OR:1.59、95%CI:1.24~2.05、p<0.0001)。・6件の研究における若年性気分障害を伴う平均自殺率は、10万人当たり125人/年(56.9~236)であった。この値は成人と同様で、一般的な若者の30倍以上に当たり、年齢が上がるごとにリスクが高まった。・若年性気分障害患者の自殺企図/自殺の比率(A/S)は52.6であり、一般的な若者(A/S≧250)よりも死亡率が高かったが、成人で推定される死亡率(A/S:約30)よりも低かった。・若年性気分障害における自殺企図の平均発生率は10万人当たり6,580人/年であり、うつ病患者よりも双極性障害患者のほうが高く、観察期間が短いほど高かった。

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ワクチン3回目、異種・同種接種での有効性~メタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのあらゆるプライマリ接種におけるブースター接種にはmRNAワクチンが推奨されること、異種・同種ワクチンの接種を問わず3回接種レジメンが、種々の変異株のCOVID-19予防に比較的有効であることを、中国・香港大学のWing Ying Au氏らが、システマティック・レビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。ただし、3回接種レジメンのCOVID-19関連死への有効性については不明なままだったとしている。BMJ誌2022年5月31日号掲載の報告。ワクチン有効性、SUCRAスコアを比較 研究グループは、ブースター接種の有無を含む異種・同種COVID-19ワクチンレジメンのCOVID-19感染、入院および死亡に対する予防効果を評価するシステマティック・レビューとネットワークメタ解析を行った。 世界保健機関(WHO)の38のCOVID-19データベースについて、2022年3月から毎週検索を行う方法(Living systematic review)にて、COVID-19ワクチンの同種または異種レジメンの有効性について評価した試験を抽出した。ブースター接種の有無は問わなかった。 解析対象としたのは、ワクチン接種群と非接種群について、症候性や重症COVID-19、COVID-19関連の入院や死亡数を記録した試験だった。 主要評価項目は、ワクチンの有効性で、1-オッズ比で算出し評価。副次評価項目は、surface under the cumulative ranking curve(SUCRA)スコアとペアワイズ比較の相対的効果だった。 バイアスリスクについては、非無作為化介入試験バイアスリスク評価ツール「ROBINS-I」を、無作為化比較試験については、コクランバイアスリスク評価ツール「ROB-2」を用いて評価した。mRNAワクチン3回接種、免疫不全でも高い有効性 53試験を対象に、初回解析を行った。COVID-19ワクチンレジメンの24の比較のうち、mRNAワクチン3回接種が、非症候性・症候性COVID-19感染に対し最も有効だった(ワクチン有効性:96%、95%信頼区間[CI]:72~99)。 アデノウイルスベクターワクチン2回接種+mRNAワクチン1回接種の異種ブースター接種の非症候性・症候性COVID-19感染に対する有効性は88%(95%CI:59~97)と良好なワクチン効果が認められた。また、mRNAワクチン2回の同種接種の、重症COVID-19に対する有効性は99%(79~100)だった。 mRNAワクチン3回接種は、COVID-19関連入院においても最も有効だった(有効率:95%、95%CI:90~97)。mRNAワクチン3回接種者における死亡に対する有効性は、交絡因子により不明確だった。 サブグループ解析では、3回接種レジメンは、高齢者(65歳以上)を含むすべての年齢群で同程度の有効性が認められた。mRNAワクチンの3回接種レジメンは、免疫低下の有無にかかわらず比較的良好に機能することが認められた。 同種・異種のワクチン3回接種レジメンは、COVID-19変異株(アルファ、デルタ、オミクロン)のいずれに対しても、感染予防効果が認められた。

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サル痘に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。さて、2年ぶりに連載が再開した「気を付けろッ!」ですが、いつの間にか私の所属も大阪大学に変わってしまいました(まあ変わったのもすでに1年前なんですが…)。冨樫義博先生(漫画家)が『HUNTER×HUNTER』(週刊少年ジャンプ)の連載再開に向けて動き出しているということで、私も頑張らなあかんな~と思い、筆を取った次第です。この連載とは別に『ちょっくら症例報告を書いてみよう』という連載も開始しましたので、こちらの連載の方はCareNet.comの担当者からは「最後に1つ書いて終わってください」と言われていますが、「いやいや、くつ王、連載やめへんで! CareNet.comの連載2本持ちをしている文豪(&遅筆)としてこれからも邁進してまいります」ということで今回は「サル痘」についてです。サル痘はアフリカ由来サル痘は、1970年にコンゴ民主共和国で初めてヒトでの感染例が報告されたサル痘ウイルスによる動物由来感染症です。サル痘という名前ですが、サルも感染することがあるというだけで、もともとの宿主はネズミの仲間のげっ歯類ではないかと考えられています。天然痘ウイルスやワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルスに属するサル痘ウイルスによる感染症であり、アフリカの異なる地域にそれぞれ別の系統が分布しています。コンゴ民主共和国などの中央アフリカのサル痘ウイルスよりも、ナイジェリアなどの西アフリカのサル痘ウイルスの方が病原性が低いことがわかっています。これまでに報告されているサル痘患者の大半はアフリカからのものですが、同様に近年、アフリカでサル痘患者が増えているとナイジェリアやコンゴ民主共和国などから報告されております。その理由として、天然痘の根絶後、種痘の接種歴のある人が減っていることでサル痘患者が増加してきているのではないかと懸念されています。アフリカ以外でも、まれに旅行や動物の輸入に関連したサル痘患者がアメリカ、イギリス、シンガポール、イスラエルなど海外でも散発的に報告されていました。ほかの感染症との鑑別とサル痘の主症状そんな中、2022年5月からイギリスを発端としてアフリカ以外の地域でサル痘の患者が急増しています。2022年6月2日現在、600人を超えるサル痘患者が30ヵ国から報告されています。これまでにわかっている確定例は大半が男性患者であり、20代~40代の比較的若い世代に多いことも特徴です。また、今回の感染者のうち、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性、いわゆる男性同性間性的接触者(MSM)の間で発生したケースが多いことが指摘されています。表 サル痘、天然痘、水痘の特徴の違い画像を拡大する(文献5と6をもとに筆者が作成)サル痘は1980年に世界から根絶された「天然痘」に病態がとても良く似ており、症状だけでこれら2つの疾患を鑑別することは困難だと言われています。しかし、サル痘では人から人へ感染する頻度は天然痘よりも低く、また重症度も天然痘よりもかなり低いことが知られています。ヒトがサル痘ウイルスに感染すると約12日の潜伏期の後に発熱や発疹などの症状がみられます。アメリカにおける2003年のアウトブレイクの際にサル痘と診断された34人の患者では、以下の症状がみられました。●サル痘の主な症状発疹(97%)発熱(85%)悪寒(71%)リンパ節の腫脹(71%)頭痛(65%)筋肉痛(56%)この報告では発熱が発疹よりも2日ほど先行し、発熱は8日間、発疹は12日間続いたとのことです。通常、全身に発疹がみられますが、今回のアウトブレイクでは性器や肛門周辺にのみ発疹がみられた事例も報告されているようです。アフリカにおけるサル痘患者の致死率は約1〜10%とされていますが、先進国ではこれまでに死亡者は確認されていません。サル痘の皮疹は天然痘と非常に似ており、水疱がみられることが特徴です。同様に水疱がみられる水痘では、水疱の時期、痂皮になった時期などさまざまな時期の皮疹が混在しますが、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴です。天然痘と比べると、サル痘では首の後ろなどのリンパ節が腫れることが多いと言われています。診断は水疱内容物や痂皮などを検体として用いたPCR検査を行うことになります。サル痘が疑われた場合は、最寄りの保健所を経由して国立感染症研究所で検査が実施されます。サル痘の治療は治療は原則として対症療法となります。海外ではシドフォビル、Tecovirimat、Brincidofovirなど天然痘に対する治療薬が承認され、実際に投与も行われている国もありますが、わが国ではこれらの治療薬は現時点では未承認です。感染経路は、接触感染(サル痘ウイルスを持つ動物に噛まれる、引っかかれる、血液・体液・皮膚病変に接触する、サル痘に感染した人の体液・発疹部位)と飛沫感染(サル痘に感染した人の飛沫を浴びる)の2つと考えられています。今回のアウトブレイクでは、ゲイやバイセクシュアルなど男性とセックスをする男性(MSM)の間で発生したケースが多いことから、性交渉の際の接触が感染の原因になっているのではないかと疑われています。種痘(天然痘ワクチン)はサル痘にも有効です。コンゴ民主共和国でのサル痘の調査では、天然痘ワクチンを接種していた人は、していなかった人よりもサル痘に感染するリスクが5.2倍低かったと報告されています。しかし、1976年以降日本では種痘は行われていませんので、昭和50年以降に生まれた方は接種していません。院内感染対策については、サル痘患者における科学的研究はほとんどなく、そのほとんどがアフリカで実施されたものです。サル痘ウイルスの人から人への感染は、天然痘と同じメカニズム、すなわち飛沫または接触によって起こると考えられていますので、天然痘と同様に考え、標準予防策、接触予防策、飛沫予防策を行うことになります。なお、アメリカの疾病対策予防センター(CDC)は、サル痘ウイルスが空気感染する理論的なリスクがあるということで、可能な限り陰圧個室隔離の上で空気感染予防策を適用することを推奨しています。1)Rimoin AW, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107:16262-16267.2)Traeger MW, et al. Lancet Infect Dis. 2022;S1473-3099.3)Sklenovská N,et al. Front Public Health. 2018;6:241.4)Huhn GD, et al. Clin Infect Dis. 2005;41:1742-1751.5)McCollum AM,et al. Clin Infect Dis. 2014;58:260-267.6)Frey SE, et al. N Engl J Med. 2004;350:324-327.

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薬歴確認が重要なリンパ増殖性疾患(LPD)【知って得する!?医療略語】第13回

第13回 薬歴確認が重要なリンパ増殖性疾患(LPD)最近、薬剤が原因のリンパ節腫脹が増えていると聞きました。そうなんです。近年、関節リウマチなどの自己免疫疾患に対する免疫抑制薬の使用に伴うリンパ増殖性疾患の報告が増えています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MTX-LPD【日本語】メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患【英字】Methotrexate-associated lymphoproliferative disorder【分野】膠原病・免疫・血液【診療科】耳鼻科・皮膚科【関連】リンパ増殖性疾患(LPD:lymphoproliferative disorder)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。内科の初診外来で鑑別に難渋しやすい症状の1つがリンパ節腫脹です。リンパ節腫脹は良性から悪性疾患まで、鑑別疾患が多く、診断に難渋することが多々あります。さらに患者本人は、悪性疾患のリンパ節転移を心配して来院することも少なくありません。そんなリンパ節腫脹の鑑別ですが、最近は薬剤によるリンパ節腫脹に留意しなけなければと感じています。その理由は、薬剤によるリンパ増殖性疾患(LPD)の存在です。関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患の免疫抑制薬使用中に発生するリンパ増殖性疾患(LPD)は、WHO分類2017(第4版)において「他の医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患(OIIA-LPD:other iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders)」に分類されています。メトトレキサートによる免疫不全関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)もOIIA-LPDに属する病態ですが、近年はその症例報告が増えています。このため、リンパ節腫脹を訴える患者の診療では、使用薬剤の確認において、免疫抑制薬の使用有無に留意することがとても大切だと思います。この免疫抑制薬の治療に起因するリンパ増殖性疾患ですが、診療する医師が必ずしもその薬剤を処方した医師とは限りません。その理由は、医療機関の機能分化が進む中、患者が処方医とは別の医療機関を受診する可能性が多分にあるからです。また、免疫抑制薬を処方した医療機関を受診した際も、外来トリアージや総合案内で、患者を処方医の外来ではなく、初診外来等に回してしまうこともあります。さらに、リンパ増殖性疾患は、全身症状や口腔・咽頭症状、肺病変、皮膚病変を呈することが指摘されています。そのため、リンパ増殖性疾患を訴える患者が、内科だけではなくさまざまな診療科を受診する可能性があります。日常診療で免疫抑制薬を使用しない診療科の先生方も、薬剤によるリンパ増殖性疾患を認識しておくことは、とても意義があると考えます。1)得平 道英ほか. 臨床血液. 2019;60:p932-943.2)内田 雄大ほか. 臨床神経. 2018;58:p485-491.3)吉原 良祐ほか. 臨床リウマチ. 2017;29:p164-172.4)犬塚 絵里ほか. 口咽科. 2017;30:p51-59.5)西尾 綾子ほか. 耳鼻咽喉科臨床. 2011;104:p143-150.

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小児の中等症~重症尋常性乾癬、イキセキズマブは長期で有効・安全

 世界中の小児・青少年の約1%が尋常性乾癬にさらされているというが、また1つ朗報がもたらされた。中等症~重症の尋常性乾癬を有する小児に対し、生物学的製剤イキセキズマブの投与について、108週の長期的な有効性と安全性が確認されたことを、米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ校のAmy S Paller氏らが報告した。 患者報告に基づくアウトカム改善と客観的測定による完全な皮膚クリアランスが示され、得られた奏効率は試験期間中維持されていた。また安全性は、同一集団において以前に報告された所見と一致しており、イキセキズマブ治療の既知の安全性プロファイルと一致していたという。JAMA Dermatology誌2022年5月号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症の尋常性乾癬を有する小児におけるイキセキズマブの有効性と安全性を評価する多施設共同無作為化試験「IXORA-PEDS試験」を行った。 被験者は、6~18歳未満、中等症~重症の尋常性乾癬を有し、スクリーニング時およびベースラインにおいてPsoriasis Area and Severity Index(PASI)スコア12以上、static Physician's Global Assessment(sPGA)スコア3以上、乾癬の影響を受ける体表面積(BSA)が10%以上で、光線療法または全身療法の対象患者であり、局所療法ではコントロール不良の乾癬を有している患者を適格とした。 被験者は、体重ベース用量のイキセキズマブを4週ごとに投与する群またはプラセボ投与群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。12週間のプラセボとの比較検討後に、患者は48週間の非盲検下でのイキセキズマブ維持療法を受けた(12~60週)。その後に最終的に108週まで試験は延長された。またサブ試験として、60週以降のイキセキズマブ無作為化中止試験の評価が行われた。 108週時点の有効性のアウトカムは、ベースラインからの75%(PASI 75)、90%(PASI 90)、100%(PASI 100)改善の達成患者の割合、sPGAスコア0~1または0達成患者の割合、およびItch Numeric Rating Scaleスコアがベースラインから4ポイント以上の改善であった(いずれも対レスポンダーで算出)。安全性アウトカムは、有害事象(AE)の評価(治療関連の緊急的AE、重篤AE、とくに注目すべきAEなどを含む)、および症状を認める身体領域のベースラインからの改善などであった(いずれも対レスポンダーで算出)。 カテゴリーアウトカムに関する紛失データは、修正nonresponder imputation(NRI)法を用いて補完が行われた。データ解析はintention-to-treatを原則とし、2021年5月~10月に行った。 主な結果は以下のとおり。・総計171例(平均年齢13.5歳[SD 3.04]、女児99例[57.9%])が、イキセキズマブ群(115例)またはプラセボ群(56例)に無作為に割り付けられた。・166例が維持療法期に組み込まれ、うち139例(83.7%)が108週の試験を完了した。・主要および副次エンドポイントは108週まで維持された。PASI 75を達成した患者割合は91.7%(86/94例)、PASI 90は79.0%(74/94例)、PASI 100は55.1%(52/94例)、sPGA0または1達成割合は78.3%(74/94例)およびsPGA0達成割合は52.4%(49/94例)であった。Itch Numeric Rating Scaleスコア4ポイント以上改善を報告した患者は55/70例(78.5%)であった。・108週時点で、爪乾癬の消失を報告した患者割合は68.1%(19/28例)、掌蹠乾癬の消失は90.0%(9/10例)、頭皮乾癬の消失は76.2%(63/83例)、性器乾癬の消失は87.5%(21/24例)であった。・試験期間の48週~108週の間に、炎症性腸疾患やカンジダ感染症の新規症例などは報告されず、新しい安全性に関する所見は認められなかった。

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モデルナアームが発現しやすい人は?/自衛隊中央病院

 モデルナ社の新型コロナワクチン(mRNA-1273ワクチン、商品名:スパイクバックス筋注)接種により一時期話題となった「モデルナアーム」。このモデルナアームの原因が遅発性大型局所反応(DLLR:delayed large local reaction)*と言われるも詳細は不明であった。しかし、今回、自衛隊中央病院皮膚科の東野 俊英氏らはDLLRがIV型アレルギーを原因として生じるアレルギー性接触皮膚炎に類似している可能性があること、女性は男性より5.3倍も発症しやすいことなどを突き止めた。このようにモデルナアームの原因や発症しやすい対象者が特定できれば、今後、この副反応を回避する対応ができそうだ。本研究はJAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号に掲載されたほか、自衛隊中央病院のホームページでも報告している。*ワクチン接種後、7日程度経過した後に接種部位周囲が赤くなったり、腫れたり、硬くなったりする副反応。痛みやかゆみ、灼熱感などを伴うこともある。モデルナアームの原因と言われるDLLR発生率は男性より女性で優位に高い 本研究は、モデルナ社ワクチンmRNA-1273(以下、ワクチン)接種後の性別と年齢およびDLLRの感受性との関連を調べるため、5人の経験豊富な皮膚科医が、2021年5月24日~11月30日に2回目接種のために新型コロナワクチン接種会場へ出向いた1,273例(4〜6週間前に初回投与接種)を対象にインタビューを実施し、ワクチン初回投与後にDLLRの症状を経験したかどうかを評価した。 モデルナアームの原因と言われるDLLRの感受性と性別や年齢との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・本横断研究の対象者5,893例のうち男性は3,318例(56.3%、年齢中央値55歳[IQR:38~68歳])、女性は2,575例(43.7%、年齢中央値50歳[IQR:34~67歳])だった。・インタビューによると、747例(12.7%)がワクチン初回投与後にDLLR症状を経験したが、症状は軽度であったため、ワクチン禁忌とはみなされなかった。・DLLRの発生率は、男性(5.1%[170例])よりも女性(22.4%[577例])で有意に高かった(OR:5.30、95%信頼区間[CI]:4.42~6.34)。・その発生率を年齢層別でみると、18〜29歳で9.0%(81例、参照値)、30〜39歳で14.3%(129例、OR:1.68、95%CI:1.25~2.26)、40〜49歳で15.8%(136例、 OR:1.89、95%CI:1.41~2.53)、50〜59歳で14.9%(104例、OR:1.76、95%CI:1.29~2.40)、60〜69歳で12.6%(182例、OR:1.45、95%CI:1.10~1.91)であり、30歳以上での発生率は30歳未満と比較して有意に高かった。一方で、70歳以上での発生率は10.5%(115例、OR:1.19、95%CI:0.88~1.56)と18~29歳の発生率と有意差が認められなかった。・年齢調整後の発症平均時間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に早かった(6.97 ±1.26日vs. 7.32±1.44日、β=0.345日、95%CI:0.105~0.586、p=0.005)。・一方で、発症時間と性別調整後の年齢との間に関連はなかった(β=0.003日、95%CI:-0.003〜0.009日、p=0.30)。・年齢調整後の症状の平均期間(±SD)は、男性のほうが女性よりも有意に短かった(4.83±3.27日vs. 5.98±4.43日、β= 1.535日、95%CI:0.901〜2.169日、p

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抗体薬物複合体SG、複数治療歴のあるHR+転移乳がんでもPFS改善(TROPiCS-02)/ASCO2022

 内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法による複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)が、医師選択治療(TPC)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、第III相TROPiCS-02試験で示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 欧米では、SGは2種類以上の前治療歴を有する転移のあるトリプルネガティブ乳がんに対して承認されている。HR+/HER2-進行乳がんに対しては、第I/II相IMMU-132-01試験において、客観的奏効率(ORR)31.5%、PFS中央値5.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値12ヵ月、管理可能な安全性プロファイルが確認されている。今回、HR+/HER2-転移乳がんに対する第III相TROPiCS-02試験の結果が報告された。・対象:HR+/HER2-の転移または局所進行した切除不能の乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、ORR、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、患者報告アウトカム、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2022年1月3日)で、SG群272例、TPC群271例であった。内臓転移例は両群共に95%、転移後の6ヵ月以上の内分泌療法歴は両群共に86%、CDK4/6阻害薬治療歴は12ヵ月以下ではSG群59%、TPC群61%、12ヵ月超ではSG群39%、TPC群38%、化学療法歴の中央値は両群共に3ラインだった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月とSG群で改善し(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83、p=0.0003)、6ヵ月PFS率は順に46.1%、30.3%、12ヵ月PFS率は21.3%、7.1%であった。サブグループ解析では、化学療法歴3ライン以上、内臓転移あり、65歳以上を含めて、SG群のPFSベネフィットが示された。・OSは、SG群13.9ヵ月、TPC群12.3ヵ月で有意差はなかったが(HR:0.84、95%CI:0.67~1.06、p=0.14)、今回は1回目の中間解析(全3回予定)であり、まだデータがmatureではなく現在フォローアップ中である。・ORRはSG群21%、TPC群14%(オッズ比:1.63、p=0.03)、CBRはSG群34%、TPC群22%(オッズ比:1.84、p=0.002)とどちらもSG群で高く、DOR中央値はSG群7.4ヵ月、TPC群5.6ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は全体でSG群74%、TPC群60%で、最も多かったのは好中球減少症(SG群51%、TPC群38%)と下痢(9%、1%)だった。SGの安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であった。間質性肺疾患はSG群ではみられず(TPC群1%)、心機能不全および左室機能不全は両群共にみられなかった。  今回の結果から、Rugo氏は「複数の治療歴があり治療選択肢が限られている乳がん患者において、SGは統計学的に有意で臨床的に意味のあるベネフィットを示し、可能な治療選択肢として考慮されるべき」と述べた。

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第115回 COVID-19入院患者の生存が関節リウマチ薬で改善

関節リウマチの治療でよく知られる免疫調節薬2つ・J&J社のTNF 阻害薬・インフリキシマブ(infliximab)やBristol Myers Squibb社のCTLA-4活性化薬・アバタセプト(abatacept)が米国国立衛生研究所(NIH)主催のプラセボ対照無作為化試験(ACTIV-1 IM試験)でどちらも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の死亡を減らしました1)。COVID-19患者の免疫系は炎症を誘発するタンパク質を悪くすると過剰に解き放ち、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、その他の死に至りうる合併症を招くことがあります。ACTIV-1 IM試験はそういう過度の免疫を抑制しうる薬剤で中等~重度COVID-19入院成人の回復が改善するかどうかや死亡を減らせるかどうかを調べることを目的として実施されました。NIHの舵取りのもとでCOVID-19治療/ワクチンの開発促進を目指す産官学の提携(ACTIV) の一環として2020年10月に始まった2)ACTIV-1 IM試験の被験者はいつもの治療に加えて免疫調節薬幾つかの1つまたはプラセボを投与する群に割り振られました。ほとんどの被験者にはいつもの治療としてステロイド・デキサメタゾンやギリアド社の抗ウイルス薬・レムデシビル(remdesivir)が投与されました。デキサメタゾンはおよそ85%、レムデシビルは約90%の被験者に投与されています。退院を指標とする回復までの期間が主要転帰(プライマリーエンドポイント)で、両剤ともその改善傾向をもたらしたものの残念ながらプラセボとの差は有意ではありませんでした。しかしながらより深刻で究極の転帰・死亡率の低下を両剤のどちらももたらしました。インフリキシマブ投与群518人の死亡率は10%、プラセボ群519人の死亡率は約15%(14.5%)であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群より率にして約41%(40.5%)少なくて済んでいました。アバタセプトも同様で、その投与群509人の死亡率は11%、プラセボ群513人の死亡率は15%であり、同剤投与群の死亡率はプラセボ群に比べて率にして約37%(37.4%)少なくて済んでいました。もう1つの試験薬cenicriviroc(セニクリビロック)は残念ながら無効で、同剤投与群への被験者組み入れは去年9月に打ち切りとなっています。cenicrivirocはAbbVie社の開発段階のCCR2/CCR5阻害薬です。インフリキシマブやアバタセプトと同様にCOVID-19入院患者の死亡を減らすことが試験で示されているEli Lilly社の免疫調節薬・バリシチニブ(baricitinib)は重度以上のCOVID-19患者に使用すべき治療選択肢の一つとすることが世界保健機関(WHO)のガイドラインですでに強く推奨されています3)。レムデシビルやデキサメタゾンなどのいつもの治療に加えて投与することで死亡率のかなりの低下が見込めるインフリキシマブやアバタセプトもCOVID-19入院患者の治療選択肢に仲間入りしうるとACTIV-1 IM試験のリーダーWilliam Powderly氏は言っています1)。参考1)Immune modulator drugs improved survival for people hospitalized with COVID-19 / NIH2)NIH Begins Large Clinical Trial to Test Immune Modulators for Treatment of COVID-19 / NIH3)Agarwal A,et al.. BMJ. 2020 Sep 4;370:m3379

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F1CDx 、非小細胞肺がんと悪性黒色腫の4薬剤のコンパニオン診断追加承認/中外

 中外製薬は2022年6月3日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、チロシンキナーゼ阻害薬ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)およびブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)の非小細胞肺がん、ならびにBRAF阻害薬エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(製品名:メクトビ)の悪性黒色腫の適応に対するコンパニオン診断として、6月2日に厚生労働省より承認を取得した。 下線部が今回の追加適応・活性型EGFR遺伝子変異非小細胞肺がん:アファチニブマレイン酸塩、エルロチニブ塩酸塩、ゲフィチニブ、オシメルチニブメシル酸塩、ダコミチニブ水和物・EGFRエクソン20 T790M 変異:オシメルチニブメシル酸塩・ALK融合遺伝子:アレクチニブ塩酸塩、クリゾチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ・ROS1融合遺伝子:エヌトレクチニブ・METエクソン14スキッピング変異:カプマチニブ塩酸塩水和物・BRAF V600Eおよび V600K変異:悪性黒色腫 ダブラフェニブメシル酸塩、トラメチニブジメチルスルホキシド付加物、ベムラフェニブ、エンコラフェニブ、ビニメチニブ・HER2遺伝子増幅陽性乳がん:トラスツズマブ・KRAS/NRAS野生型結腸・直腸がん:セツキシマブ、パニツムマブ・高頻度マイクロサテライト不安定性結腸・直腸がん:ニボルマブ・高頻度マイクロサテライト不安定性固形がん:ペムブロリズマブ・腫瘍遺伝子変異量高スコア固形がん:ペムブロリズマブ・NTRK1/2/3融合遺伝子固形がん:エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ硫酸塩・BRCA1/2遺伝子変異卵巣がん:オラパリブ・BRCA1/2遺伝子変異 前立腺がん:オラパリブ・FGFR2融合遺伝子 胆道がん:ペミガチニブ

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世界の健康維持に必要な人的資源、医師は640万人不足か/Lancet

 2019年の世界の医師密度は人口1万人当たり約17人、看護師・助産師の密度は約39人と、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC:すべての人が適切な保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)の達成に要する、健康のための人的資源(HRH)としては不十分で、医師は640万人、看護師・助産師は3,060万人が足りておらず、今後、世界の多くの地域で保健人材の拡充を進める必要があることが、米国・ワシントン大学のAnnie Haakenstad氏らGBD 2019 Human Resources for Health Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年5月23日号で報告された。GBD研究の一環の系統的解析 研究グループは、比較可能で標準化されたデータ源を用いて世界のHRH密度を推定し、HRHの中核となる最小限の保健人材とUHCの有効なカバレッジの遂行能力との関係を評価する目的で、「世界の疾病負担(GBD)研究」の一環として系統的な解析を行った(Bill & Melinda Gates財団の助成を受けた)。 国際労働機関(ILO)とGlobal Health Data Exchangeのデータベースを用いて、労働力調査から1,404ヵ国年のデータと、国勢調査から69ヵ国年のデータが特定され、医療関連の雇用に関する詳細なマイクロデータが収集された。また、世界保健機関(WHO)のNational Health Workforce Accountsから2,950ヵ国年のデータが同定された。 すべての職業コーディングシステムのデータを、国際標準職業分類1988(ISCO-88)にマッピングすることで、全時系列で医療従事者の16項目のカテゴリーについて、その密度の推定が可能となった。 204の国と地域のうち196(GBDの7つの広域圏と21の地域を網羅)の1990~2019年のデータを用い、時空間ガウス過程回帰(ST-GPR)を適用することで、1990~2019年のすべての国と地域のHRH密度がモデル化された。 また、UHCの有効カバレッジインデックスと、持続可能な開発目標(SDG)の指針3.c.1のHRHにかかわる保健人材の4つのカテゴリー(医師、看護師・助産師、歯科医師等[歯科医、歯科衛生士等(dental assistants)]、薬剤師等[薬剤師、pharmaceutical assistants])の密度との関係が、確率的フロンティアメタ回帰(SFM)でモデル化された。 UHCの有効カバレッジインデックスに関して、特定の目標の達成(100のうち80)に要する保健人材の最小限の密度の閾値が同定され、これらの最小閾値に関して国ごとの保健人材の不足分が定量化された。過小評価の可能性を考慮 2019年に、世界には1億400万人(95%不確実性区間[UI]:8,350万~1億2,800万)の保健人材が存在し、このうち医師が1,280万人(970万~1,660万)、看護師・助産師が2,980万人(2,330万~3,770万)、歯科医師等が460万人(360万~600万)、薬剤師等は520万人(400万~670万)であった。 2019年の世界の医師密度は、人口1万人当たり平均16.7人(95%UI:12.6~21.6)で、看護師・助産師は1万人当たり38.6人(30.1~48.8)であった。日本は人口1万人当たり、それぞれ23.5人(17.8~30.1)および119.2人(94.7~148.8)で、高所得国(それぞれ33.4人[26.9~41.0]および114.9人[94.7~137.7])の中では医師密度が低かった。 GBDの7つの広域圏のうち、サハラ以南のアフリカ(人口1万人当たりの医師密度2.9人[95%UI:2.1~4.0]、看護師・助産師密度18.3人[13.6~24.0])、南アジア(6.5人[4.8~8.5]、9.7人[7.3~12.8])、北アフリカ/中東(10.8人[8.0~14.3]、25.8人[19.6~33.5])でHRH密度が低かった。 UHC有効カバレッジインデックスの100のうち80の目標を達成するのに要する最小限の保健人材は、人口1万人当たり、医師が20.7人、看護師・助産師が70.6人、歯科医師等が8.2人、薬剤師等は9.4人であった。2019年に、この最小限の閾値の達成に不足していた保健人材数は各国の合計で、医師が640万人、看護師・助産師が3,060万人、歯科医師等が330万人、薬剤師等は290万人だった。 著者は、「中核となる保健人材の最小限の閾値は、人的資源を最も効率的にUHCの達成に結び付ける保健システムを基準としているため、実際のHRHの不足は推定よりも大きい可能性がある。この過小評価の可能性を考慮すると、UHCの有効カバレッジを向上させるには、多くの地域で保健人材の拡充を進める必要がある」としている。

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有害事象報告のための可視化への動きが始まった(解説:折笠秀樹氏)

 臨床試験の有害事象はおよそ、群ごとに各事象の頻度と割合を示しているだけです。最後の表で示されていることが多いので、しっかり見ている人は少ないかもしれません。もっと注目してもらおうと、可視化(Visualization)への動きが高まっています。 英国の大学に所属する統計家を主に、コンセンサス会議が行われました。28種類の可視化を検討して、その中で10個を推奨することになったようです。 その多くはよく知られたものでした。棒グラフ、帯グラフ、折れ線グラフ、散布図、ドット・プロット、カプラン・マイヤープロットはよく見掛けます。それ以外にバイオリン・プロットとカーネル密度プロットが推奨されましたが、最近医学雑誌で見掛けたことがあります。統計ソフトのStata、R、SASなどでも描けるようになったみたいです。 カプラン・マイヤープロットというと、100%から下がるタイプしかありませんでした。がん治療の生命予後ならこれでよかったわけですが、循環器の心臓死なら、むしろ0%から上がっていく方式のほうが見やすいわけです。こうした持ち上がり型プロットが登場したのは、20年ほど前ではなかったでしょうか。統計ソフトもこれに対応するようになってきました。 可視化への動きは医学論文だけとは限りません。テレビや新聞などのマスメディアにおいても、視聴者や読者へ訴えかける手段として可視化には力を入れています。どういった解析法がよいかだけを考えるのが統計家の役目のように考えられてきましたが、この可視化についても統計家はもっと関与していくべきかもしれません。可視化に関する著書もたくさん出版されるようになってきました。最後に、可視化のカタログというサイトがあります(https://datavizcatalogue.com)。ぜひ見ておいてください。

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第50回 クラメール連関係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第50回 クラメール連関係数とは?クラメール連関係数(Cramer's coefficient of association)は2つのカテゴリーデータの相関関係を把握する解析手法です。下の表1のクロス集計表は、医師の所属する施設形態とある疾患の治療薬の処方との関係をみたものです。表1 薬剤処方と医師所属機関のクロス集計表回答割合をみると、A薬剤は「一般病院勤務医」、B薬剤は「開業医」、C薬剤は「大学病院勤務医」が他の所属施設形態を上回り、医師の所属施設の経営形態で医師が処方する薬剤が異なることがわかります。これより「医師の所属施設の経営形態と処方薬剤とは関連がある」と言えます。ただし、関連性はわかったものの、クロス集計表からは関連性の強さまではわかりません。このようなとき、クロス集計表の関連性、すなわち「カテゴリーデータである2項目間の関連性の強さを明らかにする解析手法」が「クラメール連関係数」です。クラメール連関係数は0~1の値で、値が大きいほど関連性は強くなる■関連性の強さの度合いクラメール連関係数はいくつ以上あれば関連性があるという統計学的基準はありません。クロス集計表をみる限り関連性があるように思えても、クラメール連関係数の値は大きい値を示さないことを考慮して、一般的に基準は表2のように設定されています。表2 クラメール連関係数の関連性の強さ■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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コロナ罹患後症状を大規模調査、成人の2割以上が発症/CDC

 米国疾病対策センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(post-COVID、いわゆる後遺症)についての約200万人の大規模調査によると、急性肺塞栓症や呼吸器症状の発症リスクが2倍となり、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上発症しているという。研究結果は、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年5月27日号に掲載されている。 本調査は、米国50州の18歳以上のCerner Real-World Dataに登録された電子健康記録(EHR)データを用いて、2020年3月~2021年11月の期間、過去にCOVID-19の診断を受けた、または検査で陽性となった群(症例群:35万3,164例)におけるコロナ罹患後によく見られる26の対象症状の発生率と、コロナ既往歴がない群(対照群:164万776例)における対象症状の発生率について、後ろ向きコホート研究で比較評価した。解析では、18~64歳(症例群:25万4,345例、対照群:105万1,588例)と65歳以上(症例群:9万8,819例、対照群:58万9,188例)に層別化した。 主な結果は以下のとおり。・全年齢層の症例群38.2%、対照群16.0%が、少なくとも1つの対象症状を経験した(18~64歳:症例群35.4%、対照群14.6%。65歳以上:症例群45.4%、対照群18.5%)。・症例群と対照群のリスク差は、18~64歳では20.8%ポイント、65歳以上では26.9%ポイントであった。・全年齢層で最も多い罹患状況は、呼吸器症状と筋骨格系疼痛だった。リスク比が最も高い対象症状は、急性肺塞栓症(18~64歳:2.1、65歳以上:2.2)、呼吸器症状(両年齢層:2.1)であった。・65歳以上では、26の対象症状すべてにおいて対照群より症例群が、リスク比が高かった。一方、18~64歳では、22の対象症状で対照群より症例群が、リスク比が高かった。・心不整脈のリスク比は、65歳以上(1.5)よりも、18~64歳(1.7)が有意に高かった。・筋骨格系疼痛のリスク比は、65歳以上(1.4)よりも、18~64歳(1.6)が有意に高かった。・65歳以上では、味覚・嗅覚障害などの神経学的症状や、気分障害、不安、物質関連障害などの精神症状のリスク比が、18~64歳と比べて有意に高かった。 本研究により、コロナ既感染者の成人では、18~64歳の5人に1人、65歳以上の4人に1人が、コロナの既往に起因すると考えられる症状を経験していることが示された。若年者に比べ高齢者のほうがリスクが高く、感染から1年後まで持続することが報告されている神経学的症状などは、脳卒中や神経認知障害のリスクがすでに高い高齢者に対して、追加支援などが必要になる可能性があるため、とくに懸念されるとしている。研究グループは、コロナ罹患後症状のリスク上昇に関連する病態生理学的メカニズムを理解するため、今後もさらなる調査が必要だとしている。

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妊娠糖尿病、インスリン使用で周産期合併症が増加/BMJ

 妊娠糖尿病の妊婦は正常血糖値妊婦と比較して、インスリンを使用していない場合は、帝王切開による分娩や早産児・巨大児が多く、インスリンを使用している場合は、母親のアウトカムに差はないものの、新生児の在胎不当過大や黄疸、呼吸窮迫症候群などの周産期合併症の割合が有意に高いことが、中国・中南大学のWenrui Ye氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月25日号で報告された。妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムの関連をメタ解析で評価 研究グループは、妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムとの関連を、最小限の交絡因子を調整したうえで評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 1990年1月1日~2021年11月1日の期間に、医学データベース(Web of Science、PubMed、Medline、Cochrane Database of Systematic Reviews)に登録された文献が検索された。 対象は、非妊娠糖尿病(対照群)と妊娠糖尿病(曝露群)が厳格に定義され、妊娠糖尿病と妊娠のさまざまな有害アウトカムの明確な診断基準を有するコホート研究および臨床試験の対照群とした。 これらの基準を満たした研究が、インスリンの使用状況に基づき次の3つのサブグループに分けられた。(1)インスリン非使用(疾患の経過中にインスリンを使用したことがない)、(2)インスリン使用(個別の割合で、妊婦がインスリン治療を受けている)、(3)インスリン使用の報告がない。 妊娠糖尿病や妊娠有害アウトカムに影響を及ぼす可能性のある因子(国の発展状況[先進国、開発途上国]、バイアスのリスク[低、中、高]、診断基準[WHO〔1999年版〕、Carpenter-Coustan基準、国際糖尿病・妊娠学会〔IADPSG〕、その他]、スクリーニング法[universal one step、universal glucose challenge test、リスク因子に基づく選択的スクリーニング])について、事前に計画されたサブグループ解析が行われた。 インスリンの投与を受けた患者の割合に基づきメタ回帰モデルが適用された。器械分娩や肩甲難産などには差がない 156件(インスリン非使用35件[22.4%]、インスリン使用63件[40.4%]、報告なし58件[37.2%])の研究に参加した750万6,061例の妊婦が解析に含まれた。133件(85.3%)が母親のアウトカムを、151件(96.8%)は新生児のアウトカムを報告していた。 アジアの研究が39.5%、欧州が25.5%、北米は15.4%で、84件(53.8%)が先進国で行われた研究であった。Newcastle-Ottawa尺度によるバイアスのリスクは、50件(32.1%)が低または中、106件(67.9%)は高だった。 インスリン非使用研究では、交絡因子を調整すると、非妊娠糖尿病妊婦に比べ妊娠糖尿病の妊婦で有意にオッズ比(OR)が高かったのは、次の5つの項目であった。母親のアウトカムでは、帝王切開による分娩(OR:1.16、95%信頼区間[CI]:1.03~1.32)、新生児のアウトカムでは、早産児(在胎期間<37週)(1.51、1.26~1.80)、分娩から1分後のApgarスコア低値(<7点)(1.43、1.01~2.03)、巨大児(出生時体重≧4,000g)(1.70、1.23~2.36)、在胎不当過大児(出生時体重が在胎期間の標準の90パーセンタイル以上)(1.57、1.25~1.97)。 また、インスリン使用研究では、交絡因子を調整すると、妊娠糖尿病の女性で有意にORが高かったのは次の4項目で、いずれも新生児のアウトカムであった。在胎不当過大児(OR:1.61、95%CI:1.09~2.37)、呼吸窮迫症候群(1.57、1.19~2.08)、黄疸(1.28、1.02~1.62)、新生児集中治療室入室(2.29、1.59~3.31)。 一方、器械分娩、肩甲難産、分娩後出血、死産、新生児死亡、分娩から5分後のApgarスコア低値、低出生時体重、在胎不当過小児については、交絡因子を調整しても、妊娠糖尿病の有無で明確な差は認められなかった。 サブグループ解析では、先進国よりも開発途上国において、妊娠糖尿病妊婦で巨大児が多く(インスリン使用研究のp<0.001、インスリン非使用研究のp=0.001)、インスリン使用研究ではBMIで調整すると巨大児(p=0.02)と在胎不当過大児(p<0.001)が有意に多かった。また、インスリン使用の報告がなかった研究では、選択的スクリーニングを受けた妊婦において、妊娠糖尿病妊婦で帝王切開による分娩(p<0.001)と新生児集中治療室入室(p<0.001)が有意に多くみられた。 著者は、「これらの知見は、妊娠糖尿病に関連する妊娠有害アウトカムの、より包括的な理解に寄与すると考えられる。今後の研究では、より完全な予後因子で調整することを常に心がける必要がある」としている。

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RSウイルスによる死亡率、生後6ヵ月未満で高い/Lancet

 2019年に、5歳未満(生後0~60ヵ月)の小児における呼吸器合胞体(RS)ウイルス(RSV)への罹患とこれによる死亡の負担は、とくに生後6ヵ月未満の乳幼児および低~中所得国の小児において世界的に大きく、生後0~60ヵ月の小児では50件の死亡のうち1件が、28日~6ヵ月の乳幼児では28件の死亡のうち1件がRSVに起因しており、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡1件につき、市中では約3件のRSV関連死が発生していると推定されることが、英国・エディンバラ大学のYou Li氏らが実施したRESCEU研究で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。最新データを加え、系統的な解析で罹患率と死亡率を更新 研究グループは、生後0~60ヵ月の小児におけるRSV関連の急性下気道感染症の罹患率と死亡率を、2019年の時点での世界、地域、国のレベルで更新することを目的に、最新のデータを加えて系統的に解析を行った(欧州連合革新的医薬品イニシアチブの欧州RSウイルスコンソーシアム[RESCEU]による助成を受けた)。 医学データベース(MEDLINE、Embase、Global Health、CINAHL、Web of Science、LILACS、OpenGrey、CNKI、Wanfang、ChongqingVIP)を用いて、2017年1月1日~2020年12月31日に発表された論文をあらためて検索して新たなデータを収集し、これまでの世界的なRSV疾病負担のデータセットを拡張した。また、このデータセットには、Respiratory Virus Global Epidemiology Network(RSV GEN)の共同研究者による未発表データも含まれた。 対象は、次の3つのデータを報告している研究とした。(1)1次感染としてRSVによる市中の急性下気道感染症または入院を要する急性下気道感染症に罹患した生後0~60ヵ月の小児のデータ、(2)院内の症例死亡率(CFR)を除き少なくとも連続12ヵ月間のデータ、またはRSVの季節性が明確に定義されている地域(温暖な地域など)のデータ、(3)急性下気道感染症の発生率、入院率、急性下気道感染症による入院者におけるRSV陽性割合、または院内CFRのデータ。 リスク因子に基づくモデルを用いて、国レベルでのRSV関連の急性下気道感染症の罹患率が推定された。また、RSVによる総死亡数を推定するために、RSVによる市中死亡率の最新データを組み込んだ新たなモデルが開発された。新データ164件を加えた解析、院内死亡の97%以上が低~中所得国 以前のレビューに含まれた317件の研究に、新たに適格基準を満たした113件と未発表51件の研究の164件を加えた合計481件のデータが解析に含まれた。 RSV関連の急性下気道感染症の罹患率が最も高い年齢は、低所得国~低中所得国が生後0~3ヵ月であったのに対し、高中所得国~高所得国は生後3~6ヵ月であった。 2019年の生後0~60ヵ月の小児における世界的な推定値として、RSV関連の急性下気道感染症のエピソードが3,300万件(不確実性範囲[UR]:2,540万~4,460万)、RSV関連の急性下気道感染症による入院が360万件(290万~460万)、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡が2万6,300件(1万5,100~4万9,100)、RSVに起因する全死亡は10万1,400件(8万4,500~12万5,200)との結果が得られた。 生後0~6ヵ月の乳幼児では、RSV関連の急性下気道感染症エピソードが660万件(UR:460万~970万)、RSV関連の急性下気道感染症による入院が140万件(100万~200万)、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡が1万3,300件(6,800~2万8,100)、RSVに起因する全死亡は4万5,700件(3万8,400~5万5,900)と推定された。 生後0~60ヵ月の小児の死亡の2.0%(UR:1.6~2.4)(50件に1件)、生後28日~6ヵ月の乳幼児の死亡の3.6%(3.0~4.4)(28件に1件)が、RSVに起因していた。また、いずれの年齢層の小児における、RSV関連の急性下気道感染症エピソードの95%以上、およびRSVに起因する院内死亡の97%以上が、低~中所得国で発生していた。 著者は、「RSVによる院内死亡と全死亡の推定値に基づくと、生後0~60ヵ月の小児のRSV関連の院内死亡率は26%にすぎず、したがって、RSV関連の急性下気道感染症による院内死亡1件につき、市中では3件の死亡が発生していると推定される」とし、「多くのRSV予防薬の開発が予定されている現状において、これらの年齢層を絞った推定値は、製品の導入、優先順位の決定、評価に重要な基本的情報をもたらす。生後6ヵ月未満の乳幼児にRSV予防薬を投与すると、RSV負担の頂値が、より高い年齢に移行する可能性があるが、この意味を理解するにはさらなるエビデンスが必要とされる」と指摘している。

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母親の育児ストレスと子供のADHDとの関連~日本の出生コホート研究

 注意欠如多動症(ADHD)は幼児期に発症し、その後、生涯にわたり影響を及ぼす疾患であるが、早期診断や介入により、臨床アウトカムの最適化を図ることができる。長期的または過度な育児ストレスは、ADHDなどの発達障害に先行してみられる乳児の行動の差異に影響している可能性があることから、幼少期の定期的評価には潜在的な価値があると考えられる。東京都医学総合研究所の遠藤 香織氏らは、母親の育児ストレスが子供のADHDリスクのマーカーとして利用可能かを明らかにするため、出産後1~36ヵ月間の母親の育児ストレスとその子供の青年期初期におけるADHDとの関連について、定期的に収集した自己報告を用いて調査を行った。その結果、出産後9~10ヵ月、18ヵ月、36ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連が認められ、自己報告による育児ストレスのデータはADHDリスクの初期指標として有用である可能性が示唆された。このことから著者らは、ADHDの早期発見と介入を促進するためにも、幼少期の健康診断、育児ストレスの評価、家族のニーズに合わせた支援を行う必要があることを報告している。Frontiers in Psychiatry誌2022年4月28日号の報告。 子供の成長プロセスに関する調査「東京ティーンコホート」の人口ベース出生コホート研究から子供2,638人(女児:1,253人)のサンプルを抽出し、その母親には、母子健康手帳を用いた出産後1~36ヵ月間における育児ストレス5回の記録を求めた。9年後、「子供の強さと困難さアンケート(SDQ)」の多動性/不注意のサブスケールを用いて、12歳時点でのADHD症状を評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産後36ヵ月間で、育児ストレスを報告していた母親は、約7.5%であった。・12歳時点でADHD症状のカットオフ値を超えていた子供は、6.2%であった。・1ヵ月および3~4ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連は認められなかった。・12歳時点での子供のADHD症状と有意な関連が認められた育児ストレスの時期は、9~10ヵ月(未調整OR:1.42、p=0.047、95%CI:1.00~2.00)、18ヵ月(同:1.57、p=0.007、95%CI:1.13~2.19)、36ヵ月(同:1.67、p=0.002、95%CI:1.20~2.31)であった。・これらの関連には、子供の性別、月齢、世帯収入で調整した後でも、変化は認められなかった。

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ADHD児の不注意重症度と野菜や果物など食事の質との関係

 注意欠如多動症(ADHD)は、米国の小児においては有病率が8~10%といわれる神経発達障害である。ADHDの症状には不注意や多動性/衝動性が認められるが、反抗挑戦性障害および重篤気分調節症などの情動調節不全(ED)症状も頻発する。ADHDの病因は多因子的と考えられ、その症状の重症度は食事療法と関連しているといわれている。米国・オハイオ州立大学のLisa M. Robinette氏らは、小児コホート研究において、食事の質とADHDおよびED症状との関連を調査した。その結果、ADHDやEDを有する子供では、果物や野菜の摂取が少ないと、より深刻な不注意症状が出現する可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2022年5月10日号の報告。ADHDと食事の質との有意な関連は認められなかった 多栄養素の補充に関するRCTに登録された、ADHDおよびED症状を有する6~12歳の子供134例を対象に分析を行った。食事の質は、Healthy Eating Index-2015(HEI-2015)を用いて評価した。ADHDおよびEDの症状は、Child and Adolescent Symptom Inventory-5およびStrengths and Difficulties Questionnaireを用いて評価した。必要に応じ共変量で調整した後、関連性を検討するため、線形回帰モデルを用いた。 食事の質とADHDおよびED症状との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・平均HEI総スコアは63.4±8.8であり、ADHDおよびED症状との有意な関連は認められなかった。全体的な食事の質との関連性が認められなかった要因として、ベースライン時の食事の質が比較的良好、ADHDおよびED症状の重症度が軽度、食事摂取量の推定値からの測定誤差、サンプルサイズの小ささが考えられる。・共変量で調整した後、果物の総摂取量(β=-0.158、p=0.037)および野菜の総摂取量(β=-0.118、p=0.004)のHEIコンポーネントスコアに、不注意症状との負の相関が認められた。

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「がんゲノム医療の現状と未来」国際WEBカンファレンス開催/日本乳がん情報ネットワーク

 日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)では2022年6月25日、「Cancer genome medicineの現状と将来展望」と題した国際WEBカンファレンスを開催する。米国臨床腫瘍学会(ASCO)CEOのClifford A. Hudis氏による基調講演のほか、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のWilliam Gradisher氏による「NCCN ガイドラインの最新情報」などのミニレクチャー、米国・欧州・アジア・オセアニアを繋いだライブでのパネルディスカッションが予定されている。<JCCNB Conference 2022 開催概要>主催:日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)テーマ:Cancer genome medicineの現状と将来展望開催日:2022年6月25日(土)17:00~21:30会議形式:WEB配信(録画・ライブ)参加費:10,000円プログラム:17:00~17:05 「開会」 Dr.中村 清吾(昭和大学臨床ゲノム研究所)17:05~18:00 「基調講演」 Dr. Clifford Hudis(ASCO)18:00~18:05 「Introduction」Dr. Robert Carlson(NCCN)18:05~18:20 「NCCN ガイドラインの最新情報」Dr. William Gradisher(Northwestern University)18:20~18:35 「トリプルネガティブ乳がんにおける最近の話題」Dr. Mellinda Telli(Stanford University School of Medicine)18:35~18:50 「外科医の視点」Dr. Emiel Rutgers(EBC council)18:50~19:05 「腫瘍内科医の視点」Dr. Barbara Pistilli(Gustave Roussy Cancer Center)19:05~19:20 「がん治療における免疫療法の新パラダイム」Dr. Gianpaolo Biancini(Ospedale San Raffaele)19:20~20:00 休憩20:00~21:30 パネルディスカッション(座長:Dr. Clifford Hudis・Dr. 中村清吾)パネルディスカッション参加予定者:Dr. Robert Carlson、Dr. William Gradisher、Dr. Mellinda Telli、Dr. Emiel Rutgers、Dr. Barbara Pistilli、Dr. Gianpaolo Biancini、Dr. Wonshik Han(Seoul National University Hospital)、Dr. Tan Puay Hoon(Singapore General Hospital)、Dr. Bruce Mann(Victorian Comprehensive Cancer Centre) 詳細、ならびに事前参加登録はこちら。

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統合失調症患者のクロザピン中止後の臨床アウトカム~システマティックレビュー

 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療は、ゴールデンスタンダードである。しかし、クロザピン治療でも約60%の患者は治療反応が得られず、クロザピン治療中止後の臨床アウトカムについては明らかになっていない。東京・大泉病院の三浦 元太郎氏らは、クロザピン治療中止後のアウトカムを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、クロザピン治療中止後に臨床アウトカムは悪化しており、その後の治療として、クロザピン再投与やオランザピン治療が検討されていることを報告した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年5月5日号の報告。 検索キーワードを用いて、MEDLINE、Embaseよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・27文献より28件の臨床研究が特定され、システマティックレビューに含まれた。・ランダム化比較試験3件において、精神症状の悪化が報告された。・シングルアーム研究10件において、精神症状の悪化と改善の結果に一貫性は認められなかった。・大規模レトロスペクティブコホート研究1件において、クロザピン治療中止後のクロザピン再投与、オランザピン治療、抗精神病薬の多剤併用は、薬物治療を行わなかった場合と比較し、再入院率が低かった。・その他のレトロスペクティブ研究14件では、クロザピン治療中止後の臨床状態悪化が多く認められた。・クロザピン再投与後の臨床アウトカムに関する研究5件のうち4件では、クロザピン再投与を行った患者の半数以上で臨床状態改善が報告されていた。・残りの研究では、クロザピン治療中止後に再投与を行った群は、再投与を行わなかった群よりも、寛解評価スコアが不良であったと報告されていた。・クロザピン治療不応答患者におけるクロザピン治療中止後のアウトカムは不明なままであり、適切に設計された今後の研究が求められる。

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