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StageII大腸がん、ctDNAに基づく術後化学療法の選択は有用(DYNAMIC)/NEJM

 StageII大腸がんの治療において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた治療方針の決定により無再発生存期間(RFS)を損なうことなく術後化学療法の使用を減少できることが、オーストラリア・Walter and Eliza Hall Institute of Medical ResearchのJeanne Tie氏らが行った多施設共同無作為化第II相試験「Circulating Tumour DNA Analysis Informing Adjuvant Chemotherapy in Stage II Colon Cancer trial:DYNAMIC試験」の結果、示された。StageII大腸がんにおける術後化学療法の役割については議論が続いている。術後にctDNAが存在する場合はRFSが非常に短いことを、存在しない場合は再発リスクが低いことを予測するが、ctDNA陽性者に対する術後化学療法の有用性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年6月4日号掲載の報告。ctDNAの有無による術後化学療法vs.標準治療のRFSを比較 研究グループは2015年8月10日~2019年8月2日の期間に、オーストラリアの23施設において、StageII(T3またはT4、N0、M0)の結腸または直腸腺がんでR0切除が得られ、術後化学療法を実施可能なECOG PS 0~2の患者455例を、ctDNAの結果に基づき治療を行うctDNA群または標準治療群に、2対1の割合で無作為に割り付けた(それぞれ302例、153例)。 ctDNA群では、術後4週および7週時のいずれかでctDNAが陽性であった場合に、フルオロピリミジン単剤またはオキサリプラチンを含む2剤併用療法による術後化学療法を行い、標準治療群では従来の臨床病理学的所見に基づいた治療が行われた(いずれの群も、主治医による選択)。 有効性の主要評価項目は、2年RFS率(非劣性マージンは、群間差の95%信頼区間[CI]の下限が-8.5%)、主要な副次評価項目は術後化学療法の実施とし、ITT解析を行った。ctDNA群の標準治療群に対する非劣性を確認、術後化学療法はctDNA群で減少 追跡期間中央値37ヵ月(ctDNA群37ヵ月、標準治療群38ヵ月)において、術後化学療法を受けた患者の割合は、ctDNA群が標準治療群より少なく(15% vs.28%、相対リスク:1.82、95%CI:1.25~2.65)、2年RFS率に関してctDNA群の標準治療群に対する非劣性が認められた(93.5% vs.92.4%、絶対群間差:1.1%、95%CI:-4.1~6.2)。 3年RFS率は、術後化学療法を受けたctDNA陽性者で86.4%、術後化学療法を受けなかったctDNA陰性者では92.5%であった。

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RBDダイマー由来のCovid-19ワクチンZF2001の成人における有効性と安全性(解説:寺田教彦氏)

 ZF2001ワクチンは、組み換えタンパクCOVID-19ワクチンの1つで、SARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)をベースにしたワクチンである。組み換えタンパクワクチンは抗原以外の物質で免疫の獲得を助ける物質であるアジュバントが添加されるが、ZF2001はアジュバントとして水酸化アルミニウムが含有されている。組み換えタンパクワクチンの技術はCOVID-19ワクチン以前からも用いられており、1986年にB型肝炎が承認されるなど、他のワクチンでも使用実績がある。 本邦で薬事承認され、予防接種法に基づいて接種されているCOVID-19ワクチンは、ファイザー社のmRNAワクチン(商品名:コミナティ)、武田/モデルナ社のmRNAワクチン(同:スパイクバックス)、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン(同:バキスゼブリア)、武田社の組み換えタンパクワクチン(同:ヌバキソビッド)があるが、このうち、ZF2001と同様の組み換えタンパクワクチンは武田社のヌバキソビッドである。 さて、本研究の内容である有効性と安全性について見てゆく。 ワクチンの有効性は、アップデートした解析では、主要エンドポイントのCOVID-19発症例が、ZF2001群は1万2,625例中158例、プラセボ群は1万2,568例中580例であり、発症予防効果は75.7%(95%信頼区間[CI]:71.0~79.8)だった。重症~致死的なCOVID-19症例は、ZF2001群で6例、プラセボ群で43例であり、重症化予防効果は87.6%(95%CI:70.6~95.7)だった。COVID-19の関連死はそれぞれ2例、12例であり、死亡に対する予防効果は86.5%(95%CI:38.9~98.5)だった。 ZF2001のCOVID-19に対する発症予防効果は70%以上を示し、有効性は示したと考えられる。世界各国で承認されているCOVID-19ワクチンは複数あり、ワクチンによる効果の差は気になるところではあるが、有効性は研究を実施した国の流行状況や流行株、政策などの影響を受けるため、ワクチンの効果を単純な数値のみで比較することは難しい。 副反応は、ZF2001群とプラセボ群で有害事象の発現率や重篤な有害事象の発生率は類似しており、ZF2001群での局所反応の発生率は18.8%で、全身反応の発生率は25.1%と低値だった。 上記の結果から、ZF2001のCOVID-19ワクチンとしての、立ち位置を考える。執筆時点としては、本邦において当ワクチンを新規に採用するメリットは乏しいと思われる。 本邦では、すでに多くの国民がファイザー社や武田/モデルナ社のmRNAワクチンやアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンを接種しており、COVID-19流行の抑制に貢献してきた。本邦でも未接種者やブースター接種が未実施の方がいるが、ZF2001がこれらのワクチンに優先して接種されるとは過去の実績的に考えにくい。これらCOVID-19のmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンは世界的に接種されてきた回数も多く、安全性や副反応、効果に十分なデータがある。ZF2001はこれらワクチンに比較すると接種後データは少なく、今後新規の副反応が報告される懸念は残るかもしれない。また、組み換えタンパクワクチンは、局所反応を含めた副反応が低い点やmRNAワクチンが接種できない未接種者にも接種可能になりうる点はあるが、本邦ではすでに武田社の組み換えタンパクワクチン(ヌバキソビッド)が採用されている。ヌバキソビッドの有効性と副反応のデータもNEJM誌に掲載をされている(Heath PT, et al. N Engl J Med. 2021;385:1172-1183.)が、執筆時点でZF2001がヌバキソビッドに明らかに勝る点も指摘が難しい。 次に世界的な観点から考える。本文でも指摘されているように、ZF2001などの組み換えタンパクワクチンは輸送・保存の安定性の点でmRNAワクチンよりも有利である。本邦でもmRNAワクチンを導入する際には、低温での保管が課題となっていた。今後ワクチン接種を進めてゆく国でも輸送や保管の簡便さは求められると考えられる。当ワクチンのCOVID-19に対する有効性と接種後の副作用結果からは、本研究に参加した国々を中心にZF2001の接種が進んでゆくと思われる。 複数のワクチンが選択可能な本邦では当ワクチンが臨床で必要とされる機会は乏しいと考えられるが、世界的には同ワクチンが接種に活用され、接種をされた地域でのCOVID-19流行の抑制に役立つことが期待される。 また、COVID-19に限らず今後も世界的な流行を起こす感染症は発生すると考えられ、複数の国でワクチン開発技術が発展することは望ましいことであろう。

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悪性神経膠腫〔malignant glioma〕

1 疾患概要■ 定義脳には神経細胞と神経線維以外に、それらを支持する神経膠細胞があり、この神経膠細胞から発生する腫瘍を総称して「神経膠腫(グリオーマ:glioma)」という。細胞の種類により星細胞腫(アストロサイトーマ:astrocytoma)、乏突起膠腫(オリゴデンドログリオーマ:oligodendroglioma)、上衣腫(エペンディモーマ:ependymoma)などに分類される。さらに病理診断上は悪性度に応じてグレード(grade)が1~4までの4つに分かれており、成人の神経膠腫はほとんどがグレード2以上のものであり、びまん性神経膠腫と呼ばれる。グレード4の神経膠腫は膠芽腫(グリオブラストーマ:glioblastoma)と呼ばれ最も予後不良である。グレード2とグレード3の神経膠腫をまとめて低悪性度神経膠腫(lower grade glioma)と呼ぶが、必ずしも悪性度が低いわけではない。■ 疫学「脳腫瘍全国集計調査報告(2005~2008)」では、原発性脳腫瘍のうち神経膠腫全体の頻度は26.9%であった1)。神経膠腫のなかでは、グレード4の膠芽腫が約半数を占め、グレード2、3のlower grade gliomaが約40%の頻度である。Lower grade gliomaのうち、星細胞腫系と乏突起膠腫系がおよそ2:1となっており、以前の統計に比べて乏突起膠腫の頻度が増加している。グレードが上がるにつれて発症年齢も上がっていき、年齢中央値はグレード2のびまん性星細胞腫で38歳、乏突起膠腫で42歳、グレード3の退形成性星細胞腫で49歳、退形成性乏突起膠腫で54歳、グレード4の膠芽腫で63歳となっている。男女比は、膠芽腫で1.39:1、lower grade gliomaで1.34:1と男性にやや多い。■ 病因1)遺伝的素因神経膠腫のほとんどは孤発性に発生し、遺伝的な素因により発症する遺伝性腫瘍はまれである。神経膠腫を生じうる遺伝性腫瘍として、以下のような疾患がある。リ・フラウメニ症候群:生殖細胞系列にTP53遺伝子の異常を有し、家族性にがんを多発する。リンチ症候群:生殖細胞系列にミスマッチ修復遺伝子の異常を有しており、神経膠腫のみならず大腸がん、子宮体がん、卵巣がん、胃がんなどのリスクを有する。ターコット症候群のtype1はリンチ症候群の亜型で、神経膠腫と大腸がんを合併する。2)遺伝子異常腫瘍細胞は、前駆細胞に遺伝子異常が生じ、その結果生物学的な性格の変化を来して発生すると考えられている。神経膠腫においては、腫瘍の組織型別および悪性度別に生じている遺伝子異常に共通性と相違が認められており、その種類や生じる時期により、異なるタイプと悪性度の神経膠腫が発生するのではないかとの仮説が提唱されている。主な神経膠腫の遺伝子異常を図1に示す。図1 神経膠腫の遺伝子異常画像を拡大するびまん性神経膠腫の発生初期に起こる遺伝子異常の代表的なものとして、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)遺伝子変異があげられる。網羅的な遺伝子解析の結果、lower grade gliomaおよびグレード2、3の星細胞腫から悪性転化した二次性膠芽腫に非常に高頻度にみられることが明らかになった。このIDH遺伝子変異を持つ細胞にTP53遺伝子変異やATRX遺伝子変異が加わると星細胞腫へ、第1番染色体短腕(1p)および第19番染色体長腕(19q)の全体が共に欠失する(1p/19q共欠失)変異が加わると乏突起膠腫に進展していくという仮説が広く受け入れられている。IDH変異のない膠芽腫では、EGFR遺伝子の増幅、第10番染色体の欠失、TERT遺伝子プロモーター領域の変異などが腫瘍形成に関与していると考えられている。小児悪性神経膠腫において、ヒストンテールをコードする遺伝子変異(H3F3A K27M/G34Rなど)が高頻度に認められることが判明し、この変異がエピゲノム制御を介して腫瘍化に関わっていることが示唆される。毛様細胞性星細胞腫(pilocytic astrocytoma)や類上皮膠芽腫(epithelioid glioblastoma)に高率に認められるBRAF遺伝子変異(BRAF V600E)なども重要な遺伝子異常で、この遺伝子を標的とした分子標的薬による治療が開発されている。3)外的因子放射線照射は脳腫瘍の発生と関連性が深いと考えられており、照射後数年~数十年後に神経膠腫が発生する事例の報告がある。■ 症状神経膠腫の症状としては、(1)腫瘍による脳の圧迫や脳浮腫に由来する頭蓋内圧亢進症状、(2)発生部位の脳機能障害による局所症状、(3)腫瘍に起因する痙攣発作がある。(1)頭蓋内圧亢進症状:頭痛や嘔気・嘔吐の症状が出現し、進行すると意識障害を来す。(2)局所症状:腫瘍の部位により麻痺、感覚障害、失語症、視野障害、認知機能低下などのさまざまな高次脳機能障害が起こりうる。進行の早い膠芽腫では局所症状が起こりやすく、脳腫瘍全国集計調査報告では膠芽腫の初発症状のうち57%が局所症状である1)。(3)痙攣発作:腫瘍が発生源となる部分発作から、二次性全般化を来して全身の強直間代性発作を起こすこともある。特にlower grade gliomaで痙攣発作の頻度が高く、lower grade gliomaの初発症状のおよそ半数が痙攣発作である1)。■ 分類神経膠腫はグリア細胞起源であり、その分化組織型により星細胞腫系、乏突起膠腫系に分かれる。また、疾患予後を表す指標である組織学的悪性度は世界保健機関(WHO)のグレード分類で予後が良い方から悪い方へグレードIからIVに分類される。WHO脳腫瘍分類第4版(2007年改訂)では病理組織所見に基づいて分類され、星細胞腫系、乏突起膠腫系およびそれらの混合腫瘍に分類された(表1)。表1 成人神経膠腫の分類(WHO2007)画像を拡大する2016年にWHO脳腫瘍分類の改訂が行われ、腫瘍組織の遺伝子検査を加味した分類がされるようになった。神経膠腫においては、lower grade gliomaの70~100%の頻度でみられるIDH変異、乏突起膠腫系腫瘍の特徴である1p/19q共欠失を付記し、形態学的診断、悪性度、分子情報を統合したintegrated diagnosis(統合診断)が取り入れられた(表2)。表2 成人神経膠腫の分類(WHO2016)画像を拡大するまた、小児脳幹部に好発する神経膠腫ではヒストンの遺伝子変異などの異常が明らかにされて、びまん性正中神経膠腫(diffuse midline glioma、H3K27M-mutant)という分類が新設された。さらに、2021年にWHO分類の改定が行われ、成人びまん性神経膠腫は以下の3種類に統合された(表3)。グレードの記載はローマ数字からアラビア数字に変更された。表3 成人神経膠腫の分類(WHO2021)画像を拡大する(1)星細胞腫IDH変異型(グレード2、3、4)グレードは病理組織学的に決定されるが、遺伝子解析の結果CDKN2A/B遺伝子のホモ接合型欠失があればグレード4に分類される。(2)乏突起膠腫IDH変異型, 1p19q共欠失(グレード2、3)乏突起膠腫の診断にはこの遺伝子型が必須となり、グレードは病理組織学的に決定される。(3)膠芽腫IDH野生型(グレード4)IDH野生型で、[1]病理での微小血管増殖または壊死、[2]TERT遺伝子プロモーター領域の変異、[3]EGFR遺伝子増幅、[4]7番染色体増加かつ10番染色体の全欠失のいずれかを伴えば膠芽腫と診断される。IDH野生型のグリオーマでこれらの所見を伴わない場合には、小児型のびまん性神経膠腫を考慮することになるが、この分類では診断困難な腫瘍群が出てくることが課題である。■ 予後神経膠腫の予後はグレード、組織型により異なり、最も予後の悪い膠芽腫では標準治療 である放射線治療およびテモゾロミド化学療法の併用療法を行っても生存期間中央値は15~20.3ヵ月と予後不良である1、2)。脳腫瘍全国集計調査報告(2005~2008年)によると、神経膠腫の5年生存率は、グレード4の膠芽腫で16%、グレード3の退形成性星細胞腫で43%、退形成性乏突起膠腫で63%、グレード2のびまん性星細胞腫で77%、乏突起膠腫で92%である(表4)1)。表4 組織型・グレード別予後画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 血液検査神経膠腫の有用な腫瘍マーカーは今のところない。悪性リンパ腫に対する腫瘍マーカーとして可溶性IL-2レセプターがあり、その他各種がんの腫瘍マーカーは転移性脳腫瘍の鑑別診断の補助となる。■ 髄液検査髄腔内播種がある場合、髄液細胞診で異型細胞が検出されることがある。■ 画像検査診断のためにはCT、MRIなどの画像検査が欠かせない。1)CT腫瘍の局在に加えて、腫瘍内の出血や石灰化の有無を確認する。神経膠腫で腫瘍内の石灰化があれば、乏突起膠腫を強く疑う。2)MRI腫瘍の詳細な解剖学的位置情報のみならず、多種類の撮像方法により、病巣の質的・生物学的情報も得ることができる。T2強調画像・FLAIR画像では、病巣の広がりと脳浮腫の領域を、T1強調画像ではガドリニウムによる造影検査を行うことで、血液脳関門の破綻のある腫瘍本体の局在情報が得られる。造影される神経膠腫は、膠芽腫をはじめとした高悪性度(high grade)の腫瘍を疑う。拡散強調画像では、腫瘍細胞密度の推定や急性期脳梗塞との鑑別を行う。拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging)を用いて、錐体路、視放線、言語関連線維(弓状束や上縦束など)などの白質線維の描出が可能である。灌流画像により腫瘍の血流・血液量の評価が可能で、腫瘍の悪性度の推定や膠芽腫と悪性リンパ腫の鑑別に有用である。さらに、MR spectroscopy (MRS)では、病巣に含有される分子の成分解析を行い、腫瘍性成分の多寡、嫌気性代謝の有無などの情報が得られ、疾患の鑑別の一助となる。3)PET病巣の代謝活性を直接評価するためにPET検査が有用である。脳はブドウ糖代謝が高度であることから、一般に用いられるブドウ糖をトレーサーとするFDG-PET検査での検出力は低く、アミノ酸代謝を反映するメチオニンPETがより検出力に優れているが、現在まだ保険適用となっていないため自費での検査となる。アミノ酸をトレーサーとするフルシクロビン(18F)PETは2021年に初発悪性神経膠腫に対して薬事承認されたが、いまだ保険収載されておらず、使用できる段階にはない。■ 病理診断診断確定のためには、手術摘出検体(生検含む)を用いた病理組織診断が必要である。■ 遺伝子解析2016年のWHO脳腫瘍分類改訂第4版以降は、IDH変異や1p/19q共欠失などの遺伝子解析が診断確定に必須となる。IDH変異のうち、IDH1遺伝子のR132H変異は免疫染色で高精度に検出できるが、他のIDH変異はサンガーシークエンスやパイロシークエンスなどの解析が必要である。1p/19q共欠失は、FISH法、マイクロサテライト法、MLPA法などで解析を行うのが一般的である。現在、保険収載を目指した1p/19qのFISHプローブの開発が進められている。IDH変異、1p/19q共欠失含め神経膠腫の遺伝子解析は保険適用となっておらず、現在は主要施設において研究の一環として実施されているのが実情であり、今後の課題である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)悪性神経膠腫に対する治療の柱は手術、放射線治療、化学療法であるが、腫瘍の組織型、グレードによりその選択は異なる。また、腫瘍治療電場療法(商品名:オプチューン)やウイルス療法(同:デリタクト)などの新規治療法が近年保険収載され、保険診療下に使用可能となった。初発膠芽腫の標準治療例について、図2に示す。図2 初発膠芽腫標準治療画像を拡大する■ 手術神経膠腫が疑われたら、原則としてまず手術による腫瘍摘出が行われる。摘出標本による病理学的確定診断が極めて重要であり、その結果により術後の補助療法の内容や適否が決定される。神経膠腫の手術は、膠芽腫においてもlower grade gliomaにおいても摘出率を上げることにより予後改善が見込めるという報告が多く、最大限の摘出が望ましい3、4)。ただし、手術合併症により症状を悪化させてしまうと患者QOLを大きく損なうばかりか、生命予後をかえって悪化させてしまうため、症状を悪化させない範囲での最大限の摘出(maximal safe resection)を目指すべきである。手術支援技術が発展してきたため、術中ナビゲーション、電気生理モニタリング、覚醒下手術、術中蛍光診断(5-ALA)、術中MRIなどを駆使した精度の高い手術が可能となってきている。■ 放射線治療神経膠腫への放射線治療は、腫瘍細胞の浸潤性性格から浸潤領域を含む領域に照射することが必要であるため、正常神経細胞の機能障害を最小限とするべく、局所分割照射が行われる。グレード4の膠芽腫には、手術に引き続き後述のテモゾロミド併用放射線治療を60Gy/30回分割(1回線量2Gy)で施行する。照射範囲は腫瘍周囲のT2高信号域に若干のマージンを加えた範囲とすることが一般的である。高齢者の膠芽腫に対しては、40Gy/15回分割の放射線治療の非劣性が示され、寡分割照射が推奨される5)。また、高齢者や脆弱なフレイル患者に対して25Gy/5回分割照射の40Gy/15回分割照射に対する非劣性が示され、さらなる照射期間の短縮が治療選択肢となり得る6)。グレード3の退形成性神経膠腫には、総線量54~60Gyが照射される。摘出術後に引き続き照射を行うことが標準的であるが、予後良好な因子を持つ退形成性乏突起膠腫に対しては、照射を待機する試験的な治療も臨床試験では検討されている。グレード2の低悪性度神経膠腫の場合は、摘出度、年齢、腫瘍径、組織型などにより高リスク(high risk)例では放射線治療を行うことが推奨される。低リスク(low risk)例では術後早期の放射線治療は行わず、慎重に経過をみることが提案される。■ 化学療法わが国で神経膠腫に対して保険適用のある薬剤は、テモゾロミド(TMZ)、ニムスチン(ACNU、商品名:ニドラン)、ベバシズマブ(bevacizumab;BEV、同:アバスチン)、カルムスチン(BCNUウエハー、同:ギリアデル)、プロカルバジン(PCZ、同:プロカルバジン)、ビンクリスチン(VCR、同:オンコビン)などである。1)膠芽腫テモゾロミド(TMZ)18歳以上70歳以下の成人初発膠芽腫患者に対しては、手術後TMZを放射線治療期間中、ならびに放射線終了後投与するStuppレジメンが強く推奨される7)。TMZはリンパ球減少を生じやすく、その結果ニューモシスチス肺炎などの日和見感染のリスクが高まるため、ST合剤などの予防処置を行う。神経膠腫においては、O6-methylguanine-DNA methyltransferase (MGMT)遺伝子プロモーター領域のメチル化があるとTMZがより有効である8)。高齢者の膠芽腫において、短期照射の放射線治療にTMZの上乗せが有効かどうか検証した第III相臨床試験において、TMZ併用の有効性が示された9)。特にMGMTメチル化のある高齢者膠芽腫に対してはTMZ併用が勧められる。ベバシズマブ(BEV)血管新生の主因となる血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害するヒト化モノクローナル抗体で、2013年6月に悪性神経膠腫に対して薬事承認された。初発膠芽腫に対して、AVAglioとRTOG0825の2つの第III相臨床試験が報告され、どちらも無増悪生存期間は延長するが、全生存期間は延長させないという結果であった10、11)。わが国では保険診療下で初発膠芽腫でのBEVの使用が可能であるが、全生存期間の延長が示されないことから必ずしも推奨されない。術後の残存腫瘍や浮腫によりperformance status(PS)を下げている患者には、浮腫軽減効果の強いBEV併用が期待できる可能性がある。一方、TMZ治療後の再発膠芽腫に対しては、国内外での臨床試験で高い奏効割合、無増悪生存期間と症状改善効果が示され、BEV単独療法は再発膠芽腫に対する有力な治療法と考えられる12、13)。これまでのところ、他剤との併用による効果増強は示されておらず、単独投与が基本である。BCNUウエハー手術時に摘出腔壁に留置してくるニトロソウレア系BCNUの徐放性ペレット剤(ギリアデル)が、2013年1月に承認された。初発および再発悪性神経膠腫に対する欧米での第III相臨床試験の結果は、BCNUウエハー留置による全生存期間が、初発時では悪性神経膠腫に対し、再発時にはサブ解析にて膠芽腫に対し、有意な延長が認められた。逆に、初発時の膠芽腫に、また再発時の悪性神経膠腫全症例には有意差はみられなかった。一方、BCNUウエハーの使用による有害事象としては、術後の脳浮腫が約25%で認められたほか、摘出腔内ガス発生、髄液漏、創感染、けいれん発作などが生じる可能性がある。現在、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)において、90%以上の摘出が見込まれる初発膠芽腫に対して術中ランダム化してBCNUウエハー留置の有効性を検証する第III相試験が行われている(JCOG1703)。2)グレード3神経膠腫グレード3神経膠腫に対しては、術後薬物療法が推奨される。退形成性星細胞腫に対して放射線治療に同時併用(concurrent)と維持療法(adjuvant)のTMZを併用するかどうかを検証したCATNON試験では、concurrent TMZは放射線治療単独に比べて無増悪生存期間(PFS)・全生存期間(OS)ともに差を認めなかったが、adjuvant TMZはPFS・OSともに有意に延長するという結果であった14)。退形成性乏突起膠腫(1p/19q共欠失腫瘍)に対する放射線治療単独と放射線治療とPCV療法(PCZ+CCNU+VCR)の併用療法を比較した欧米の2つの第III相試験において、PCV療法の併用がOSを有意に延長することが示された15、16)。わが国ではCCNUが未承認であるため、ACNUを代替薬として用いるPAV療法が行われている。また、放射線治療+PCV療法と、放射線治療+TMZを比較するCODEL試験が現在行われている17)。3)グレード2神経膠腫High riskのグレード2神経膠腫に対しては、放射線治療+PCV療法の併用療法が放射線治療単独に比べてOSを延長することが示された18)。同じくhigh riskのグレード2神経膠腫に対するTMZ単独療法と放射線治療の第III相試験では、両群に差を認めなかった19)。■ 腫瘍治療電場療法(オプチューン)脳内に特殊な電場を発生させて腫瘍増殖を抑制する治療法で、交流電場腫瘍治療システム(オプチューン)を用いる。頭皮に電極パッド(transducer arrays)を貼り、中間周波の交流電場(Tumor Treating Fields)を持続的に発生させて腫瘍細胞の分裂を阻害する。初発テント上膠芽腫に対して、手術とTMZ併用放射線治療後、TMZ維持療法時にオプチューンを併用することで有意にPFS・OSが延長することが示され、2018年にわが国でも承認された20)。装着のために髪の毛を頻繁に剃り、約1.2kgの装置を常時持ち運びする必要が生じるため日常生活が制限される可能性がある。装着時間が長いほど治療効果が高まるが、接触性皮膚炎などの皮膚トラブルに注意が必要である。4 今後の展望■ ウイルス療法腫瘍溶解ウイルス療法(oncolytic virus therapy)とは、腫瘍細胞だけで増えるように改変したウイルスを腫瘍細胞に感染させ、ウイルスそのものが腫瘍細胞を殺しながら腫瘍内で増幅していくという新しい治療法である。ウイルスが直接腫瘍細胞を殺すことに加え、腫瘍細胞に対するワクチン効果も誘発する。2021年6月、世界初の脳腫瘍に対するウイルス療法として、テセルパツレブ(デリタクト)が承認されたが、薬剤の供給が間に合わずまだ普及はしていない。■ がん遺伝子パネル、がんゲノム医療2019年6月にがん遺伝子パネル検査としてOncoGuide NCCオンコパネル(シスメックス社)とFoundationOne CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬)が保険収載され、それぞれ114遺伝子、324遺伝子の遺伝子変異などを解析することが可能となった。神経膠腫においてもがん遺伝子パネル検査を行い、遺伝子異常に応じた分子標的薬治療につなげるがんゲノム医療が進んでいくことが期待される。5 主たる診療科脳神経外科、脳脊髄腫瘍科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本脳腫瘍学会オフィシャルホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がん情報サイト「オンコロ」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報脳腫瘍ネットワーク(Japan Brain Tumor Alliance:JBTA)(患者とその家族および支援者の会)がんの子どもを守る会(患者とその家族および支援者の会)1)Brain Tumor Registry of Japan(2005-2008). Neurol Med Chir(Tokyo).2017;57:9-102.2)Wakabayashi T, et al. J Neurooncol. 2018;138:627-636.3)Sanai N, et al. J Neurosurg. 2011;115:3-8.4)Smith J.S, et al. J Clin Oncol. 2008;26:1338-1345.5)Roa W, et al. J Clin Oncol. 2004;22:1583-1588.6)Roa W, et al. J Clin Oncol. 2015;33:4145-4150.7)Stupp R, et al. N Engl J Med. 2005;352:987-996.8)Hegi M.E, et al. N Engl J Med. 2005;352:997-1003.9)Perry J.R, et al. N Engl J Med. 2017;376:1027-1037.10)Chinot O.L, et al. N Engl J Med. 2014;370:709-722.11)Gilbert M.R, et al. N Engl J Med. 2014;370:699-708.12)Friedman H.S, et al. J Clin Oncol. 2009;27:4733-4740.13)Nagane M, et al. Jpn J Clin Oncol. 2012;42:887-895.14)van den Bent M.J, et al. Lancet Oncol. 2021;22:813-823.15)Cairncross J.G, et al. J Clin Oncol. 2014;32:783-790.16)van den Bent M.J, et al. J Clin Oncol. 2013;31:344-350.17)Jaeckle K.A, et al. Neuro Oncol. 2021;23:457-467.18)Buckner J.C, et al. N Engl J Med. 2016;374:1344-1355.19)Baumert B.G, et al. Lancet Oncol. 2016;17:1521-1532.20)Stupp R, et al. JAMA. 2015;314:2535-2543.公開履歴初回2022年6月16日

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オリゴ転移乳がん1次治療、SBRT/外科的切除追加でPFS改善せず(NRG-BR002)/ASCO2022

 オリゴ転移乳がんの1次治療で、標準薬物療法に定位放射線治療(SBRT)もしくは外科的切除によるmetastases directed treatment(MDT)を追加しても、生存ベネフィットを得られないことが、第IIR/III相NRG-BR002試験で示された。米国・シカゴ大学のSteven J. Chmura氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 オリゴ転移乳がんに対しては、アブレーションにより無増悪生存(PFS)および全生存(OS)が改善されることが後ろ向き研究で示されているが、第III相試験のエビデンスはほとんどない。このNRG-BR002試験は、オリゴ転移乳がんの1次治療として、標準薬物療法にSBRT/外科的切除でのMDTを追加することによる生存へのベネフィットを検討した無作為化第IIR/III相試験である。・対象:標準的画像診断で頭蓋外転移が4つ以下で、原疾患がコントロールされているオリゴ転移乳がん・試験群(併用群):標準薬物療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法)+全転移巣へのMDT・対照群(薬物療法群):標準薬物療法のみ・主要評価項目:第IIR相 PFS、第III相 OS 主な結果は以下のとおり。・第IIR相への登録は129例、うち125例が適格だった(薬物療法群:65例、併用群:60例)。年齢中央値54歳、転移数は1つが60%、ERおよび/またはPR陽性かつHER2陰性が79%、トリプルネガティブが8%だった。無作為化後の治療について、併用群におけるMDTはSBRT93%、外科的切除2%、プロトコール外の治療5%、標準薬物療法は薬物療法群で化学療法28%、内分泌療法83%、併用群で化学療法27%、内分泌療法68%だった。追跡期間中央値は35ヵ月。・PFS中央値は、薬物療法群23ヵ月、併用群19.5ヵ月で差は認められなかった(HR:0.92、70%CI:0.71~1.17、片側log-rank p=0.36)。・OS中央値は両群とも未達で、36ヵ月OSは薬物療法群71.8%(95%CI:58.9~84.7)、併用群68.9%(同:55.1~82.6)だった(片側log-rank p=0.54)。・治療失敗に関する解析では、薬物療法群でのindex領域/併用群での照射領域以外の新たな転移の発生率はどちらも40%程度だった。また、これらの領域内での新たな転移は、併用群(7%)のほうが薬物療法群(29%)より少なかった。・ベースライン時の循環腫瘍細胞の有無別にみたPFSは同程度だった(HR:1.04、95% CI:0.54~2.02)。・治療関連有害事象は、Grade4が薬物療法群で1例、Grade3が薬物療法群で6例(10%)、併用群で3例(5%)に発現した。 本試験では、MDT追加によるPFS改善を示すことができなかったため、第III相試験は中止される予定である。Chmura氏は「本試験で定義されたオリゴ転移乳がん患者はPFSおよびOSが長く、SBRTは標準薬物療法群と同様に安全で、有害事象発現率も低かった」と追加した。

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I型SMAに対するエブリスディ:3年間の新たな成績

 第63回日本神経学会学術大会にて、症候性I型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児を対象にエブリスディの有効性および安全性を検討した、FIREFIS試験の3年間の新たな成績が発表された。 SMAは、脊髄の運動神経細胞が選択的に障害されることによって、体幹や手足の近位部優位の筋力低下や筋萎縮などの症状が現れる。新生児~乳児期(生後0~6ヵ月)に発症するI型は重症型で、一人で坐位を保つことができず、無治療の場合は、1歳までに呼吸筋の筋力低下による呼吸不全の症状をきたす。また、治療をせず、人工呼吸器の管理を行わない状態では、90%以上が2歳までに死亡する。 今回発表されたFIREFISH試験は、I型SMAの乳児(登録時点で月齢1~7ヵ月)を対象にエブリスディの有効性と安全性を評価している。試験は用量設定パートと用量設定パートで選択された用量の安全性有効性評価パートの2パートで構成されている。プールされた母集団には承認用量を3年以上投与した乳児が含まれている。今回の長期成績は、非盲検継続投与期間1年間の成績を含む、3年間の成績である。エブリスディを投与した乳児のうち推定91%が3年後に生存していた。また、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development - Third Edition)の粗大運動スケールの評価で、エブリスディを投与した評価可能な乳児48名のうち32名で、24ヵ月目以降、支えなしで座位を少なくとも5秒間保持する能力を乳児が維持していた。さらに、4名が新たにその能力を獲得した。嚥下能力に関しても、エブリスディを投与した乳児のほとんどが、36ヵ月目まで経口摂取と嚥下の能力を維持していた。 主な有害事象は、発熱(60%)、上気道感染(57%)、肺炎(43%)、便秘(26%)、鼻咽頭炎(24%)、下痢(21%)、鼻炎(19%)、嘔吐(19%)および咳嗽(17%)。主な重篤な有害事象は、肺炎(36%)、呼吸窮迫(10%)、ウイルス性肺炎(9%)、急性呼吸不全(5%)および呼吸不全(5%)であった。肺炎を含む有害事象の発現および重篤な有害事象の発現は経時的に低下し、12ヵ月の投与期間毎に約50%ずつ減少し、投与開始1年目から3年目の間に78%減少していた。全体として、有害事象および重篤な有害事象は基礎疾患を反映したものであり、休薬や投与中止に至った薬剤関連の有害事象は認められなかった。 今後の展開について、FIREFISH試験の5年間の追跡と並行して、リアルワールドデータを集める臨床研究も立ち上がっている。

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日本における統合失調症に対する抗コリン薬使用の特徴

 統合失調症のさまざまな臨床ガイドラインにおいて、抗コリン薬の長期使用は推奨されていない。福岡大学の堀 輝氏らは、向精神薬使用のパターンおよび病院間での違いを考慮したうえで、統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について、調査を行った。その結果、抗精神病薬の高用量および多剤併用、第1世代抗精神病薬の使用に加え、病院の特性が抗コリン薬の使用に影響を及ぼすことが示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2022年5月17日号の報告。統合失調症に対する抗コリン薬処方率は0~66.7%と病院ごとに大きく異なる 日本の医療機関69施設の統合失調症患者2,027例を対象に、退院時治療薬に関する横断的レトロスペクティブ調査を実施。抗コリン薬と向精神薬使用との関連を調査した。各病院を抗コリン薬の処方率に応じて、低、中、高の3グループに分類し、抗コリン薬処方率と抗精神病薬使用との関連を分析した。 統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について調査を行った主な結果は以下のとおり。・抗コリン薬が処方されていた統合失調症患者数は618例(30.5%)であり、抗精神病薬の高用量、多剤併用、第1世代抗精神病薬使用の患者で有意に高かった。・抗コリン薬処方率は0~66.7%と病院ごとに大きく異なり、低・中グループと比較し高グループにおいて、抗精神病薬の単剤治療、多剤併用、標準および高用量使用患者で有意に高かった。・高グループにおける第2世代抗精神病薬単剤治療患者の抗コリン薬処方率も、低・中グループと比較し有意に高かったが、第1世代抗精神病薬単剤治療患者では、有意な差が認められなかった。

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英語で「傷を見せてください」は?【1分★医療英語】第32回

第32回 英語で「傷を見せてください」は?I am concerned about infection.(感染症が心配なのですが…)Okay.Let me take a peek at the incision.(わかりました。傷を見せてください)《例文1》医師Good morning. Let me take a peek at the incision.(おはようございます。傷を見せていただけますか)患者Of course.(もちろんです)《例文2》医師Let me take a peek at the incision real quick.(さっと傷を見せてください)《解説》“Let me take a look”(見せてください)はよく知られている表現ですが、その変形として“peek”を使った表現です。“peek”は「ちらっと見る」という意味の動詞なので、“look”を使ったときよりも「短時間でさっと見る」というニュアンスになります。また、手術創など、衣服に覆われている場所にある傷を見るときにも“peek”を使うことで「覗き込む」ニュアンスが出ます。よく使われる場面としては、朝回診のときに患者さんと話をした後で“Let me take a peek at the incision.”と言いながら、素早く傷をチェックする、というのが代表的です。カジュアルなので患者さんにあまりプレッシャーを与えることなく傷の診察に移ることができ、非常に便利な表現です。ぜひ皆さんも使ってみてくださいね。講師紹介

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第116回 男性の500人に1人が性染色体過剰で、より病気がち

英国の50万人ほどの匿名化情報を集めている医学データベースUK Biobankの参加男性およそ21万人を調べたところ356人がそうとはほとんどが知らずに性染色体(X染色体かY染色体)を余分に有しており、不妊などの生殖不調、2型糖尿病、動脈硬化や血栓症などをより被っていました1,2)。UK Biobankの男性が一般に比べてより高学歴で健康的というバイアスを考慮すると世間の男性では約500人に1人がXかY染色体を余分に有するようです。X染色体が1つ多い病態はクラインフェルター症候群として知られ、UK Biobankの性染色体過剰男性365人のうち213人がそうであり、残り143人はY染色体が1つ過剰でした。それらの性染色体異常が発見に至っていたのはわずかで、X染色体過剰(XXY)の診断率は4人に1人に満たない23%、Y染色体過剰(XYY)の診断率はたった1%未満(0.7%)でした。カルテ情報で行く末を調べたところXXYの男性は生殖困難をより生じており、性的成熟(思春期)の遅れが3倍、子供ができないことが4倍多く認められました。また、男性ホルモン・テストステロン血中濃度が低いことも示されました。対照的にXYY男性の生殖機能はどうやら正常です。ただしXYYの男性もXXYの男性と同様に病気がちであり、XYYかXXYだと静脈血栓症が約6倍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が約4倍、2型糖尿病・肺塞栓症(PE)・動脈硬化がいずれも約3倍多く生じていました。性染色体過剰の害は他の国でも調べられており、たとえばデンマークのXXY男性832人を検討したところ今回の試験と同様に静脈血栓症、PE、COPD、2型糖尿病、動脈硬化をより生じていました3)。英国での先立つ研究ではXXY男性の糖尿病、PE、慢性下気道疾患での死亡率がより高いことが確認されています4)。性染色体過剰でそれらの病気が生じやすくなる仕組みはよくわかっていません。また、過剰な性染色体がXであれYであれ生じやすくなる病気がなぜ似通うのかも不明です。代謝、血管、呼吸器のそれらの病気は仕組みがどうあれ性染色体過剰の診断を足がかりにして予防できる可能性があります。しかし相当数の男性が性染色体過剰であるにもかかわらず残念ながらそうと気付けることは今回の研究が示しているとおり稀です2)。男性のX染色体過剰は思春期の遅れや不妊でたまに判明しますが、ほとんどは無自覚なままです。Y染色体過剰の男性は身長がより高くなる傾向があるだけで他にこれといった身体的特徴はありません。見た目では発見しにくい染色体異常を検診で早くに検出すれば病気を未然に防ぐ手立てを講じうるようになるかもしれず、そういった可能性も含め、世間の男性の染色体異常をより手広く検出することにどれほどの価値があるかをこれから調べる必要があります。当然ながら女性にも性染色体異常はあり、X染色体が余分なトリプルX症候群は女性の1,000人に1人に認められ、言語発達の遅れや知能指数(IQ)が低い等の困難と関連しうることが示されています5)。参考1)Zhao Y,et al.Genet Med. 2022 Jun 9;S1098-3600. 00777-8. [Epub ahead of print]2)One in 500 men carry extra sex chromosome, putting them at higher risk of several common diseases / Eurekalert3)Bojesen A, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2006 Apr;91:1254-60. 4)Swerdlow AJ, et al.J Clin Endocrinol Metab. 2005; 90: 6516-6522.5)Otter M, et al. Eur J Hum Genet. 2010 Mar;18:265-71.

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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLC1次治療、3年フォローアップ(CheckMate 9LA) /ASCO2022

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法(NIVO+IPI+Chemo)の無作為化第III相CheckMate9LA試験の3年間の追跡で、同レジメンの生存ベネフィットが引き続き観察されている。スペイン・Universidad Complutense de MadridのLuis G. Paz-Ares氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で、解析結果を発表した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低36.1ヵ月であった(データカットオフ2022年2月15日)・3年全生存(OS)率はNIVO+IPI+Chemo群27%、化学療法(Chemo)群19%であった(HR:0.74、95%CI:0.62~0.87)。 ・PD-L1発現別の3年OS率は、PD-L1<1%では25%対15%(HR:0.67)、PD-L1≧1%では28%対19%(HR:0.74)、PD-L1 1~49%では26%対15%(HR:0.70)、PD-L1≧50%では33%対24%(HR:0.75)、といずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全集団の3年無増悪生存率はNIVO+IPI+Chemo群13%、Chemo群5%であった。・全集団の奏効率はNIVO+IPI+Chemo群38%、Chemo群25%であった。・全集団の奏効期間中央値はNIVO+IPI+Chemo群12.4ヵ月、Chemo群5.6ヵ月であった。・探索的研究における遺伝子変異とOS解析の結果、KRAS、TP53、STK11、KEAP1いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好な傾向だったが、遺伝子異常による違いは見られなかった。・3年追跡でも新たな安全性シグナルは確認されなかった。 発表者のPaz-Ares氏は、この結果は転移を有するNSCLCの1次治療の選択肢としてニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法を支持するものだと述べている。

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HER3-DXd、複数治療歴のあるHER3+乳がんでサブタイプによらず良好な結果/ASCO2022

 既治療のHER3陽性、転移を有する乳がん(mBC)患者を対象とした、HER3標的抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の日米多施設共同非盲検第I/II相試験(U31402-A-J101)の結果、HR+/HER2-およびHER2+、そしてTNBC患者において、HER3-DXdの有効性と安全性が示された。米国・ダナファーバーがん研究所のIan E. Krop氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本試験では用量漸増フェーズ(HER3-DXd 1.6~8.0mg/kgを3週に1回静脈内投与)と用量設定フェーズを順に実施(HER2+12例を含む66例)。続いて行った用量拡大フェーズでは、HER3-high(膜陽性率≧75%)とHER3-low(膜陽性率25~75%)を定義し、サブタイプ別にそれぞれ用量が決められた。HER3-highのHR+/HER2-(6.4mg/kg:31例、4.8mg/kg:33例)、TNBC(6.4mg/kg:31例)、HER3-lowのHR+/HER2-(6.4mg/kg:21例)として、それぞれ3週に1回静脈内投与した。有効性および安全性は3つのフェーズのプール解析により評価された。・対象:進行/切除不能または転移を有するHER3陽性乳がん患者(用量漸増&用量設定フェーズでは2~6ラインの化学療法歴および≧2の進行病変、用量拡大フェーズでは進行病変に対する1~2ラインの化学療法歴)・有効性の評価:サブタイプ別に実施(HR+/HER2-:113例、TNBC:53例、HER2+:14例)・安全性の評価:HER3-DXd4.8mg/kg投与群(48例)、6.4mg/kg投与群(98例)、全例(182例)について実施 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はHR+/HER2-:55歳、TNBC:59歳、HER2+:58歳、日本からの参加は71%、87%、100%、進行病変への治療歴数中央値は6.0(2~13)、2.0(1~13)、5.5(2~11)と濃厚な治療歴を有していた。・2021年8月16日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は31.9ヵ月、治療期間中央値は5.9ヵ月だった。・サブタイプ別の確定奏効率(ORR)は、HR+/HER2-:30.1%(95%信頼区間[CI]:21.8~39.4)、TNBC:22.6%(95%CI:12.3~36.2)、HER2+:42.9%(95%CI:17.7~71.1)だった。・サブタイプ別の奏効持続期間(DOR)中央値は、7.2ヵ月(95%CI:5.3~NE)、5.9ヵ月(95%CI:3.0~8.4)、8.3ヵ月(95%CI:2.8~26.4)だった。・サブタイプ別の無増悪生存期間(PFS)中央値は、7.4ヵ月(95%CI:4.7~8.4)、5.5ヵ月(95%CI:3.9~6.8)、11.0ヵ月(95%CI:4.4~16.4)だった。・治療中止に関連したTEAEは、4.8mg/kg投与群で10.4%、6.4mg/kg投与群で8.2%、全例で9.9%だった。・治療関連のILDは、4.8mg/kg投与群で2.1%、6.4mg/kg投与群で7.1%、全例で6.6%で発生したが、多くがGrade1~2(4.4%)だった。・≧Grade3の好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症は4.8mg/kg投与群に比べ6.4mg/kg投与群で多くみられたが、用量調整により管理可能であり、治療中止には関連しなかった。 ディスカッサントを務めたフランス・Eugene Marquis CenterのVeronique C. Dieras氏は、予後不良の濃厚な治療歴を有する患者群においてHER3-DXdはサブタイプによらず有望な活性を示したとし、最適用量やHER3発現状況の影響等について、さらなる研究が必要とコメントした。

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遅発性ジスキネジア治療剤の新薬ジスバルカプセル40mg発売/田辺三菱

 田辺三菱製薬は、「ジスバルカプセル40mg」(一般名:バルベナジン)(小胞モノアミントランスポーター2[VMAT2]阻害剤)について、遅発性ジスキネジア治療剤として2022年5月25日に薬価基準に収載されたことを受け、6月1日に販売を開始した。遅発性ジスキネジアの治療薬として日本で初めて承認された新薬 遅発性ジスキネジアは、口腔顔面領域(舌、口唇、顎および顔面)、四肢および体幹の不随意運動を特徴とする神経障害である。重症になれば嚥下障害や呼吸困難を引き起こす可能性があり、重篤な状態になる患者もいるとされる。抗精神病薬(原疾患の治療に用いられる薬剤)などを長期間服用することで起こり、ドパミン受容体の感受性増加等が原因と考えられている。 本剤は、日本においては初めて遅発性ジスキネジアの治療薬として承認された新薬であり、1日1回服用の経口剤である。製品概要販売名:ジスバルカプセル40mg一般名:バルベナジン効能・効果:遅発性ジスキネジア用法・用量:通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回80mgを超えないこととする。包装:100カプセル(10カプセル[PTP]×10)薬価:40mg 1カプセル 2,331.20円製造販売承認日:2022年3月28日薬価基準収載日:2022年5月25日発売日:2022年6月1日製造販売元:田辺三菱製薬株式会社販売元:ヤンセンファーマ株式会社プロモーション提携:吉富薬品株式会社

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子宮頸がん検診の間隔、HPV陰性なら延長可能か/BMJ

 子宮頸がん検診の間隔は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の1次検査を受けることで、検査の方法を問わず延長が可能で、25~49歳の女性では検査陰性から5年まで延長でき、50~59歳の女性は5年以上に延長の可能性もあるが、個別受診再勧奨による再検査で陽転した女性では従来どおり3年の間隔を保持する必要があることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMatejka Rebolj氏らHPV pilotの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月31日号に掲載された。英国134万例の観察研究 研究グループは、子宮頸がんの1次スクリーニングが陰性の女性における、Grade3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3+)および子宮頸がんのリスクに関して、年齢別、検査法別のエビデンスの更新を目的に観察研究を行った(英国公衆衛生庁[イングランド]などの助成を受けた)。 解析には、2013~16年に英国で実施されたHPVスクリーニングの1回目と2回目のパイロット検査の実際のデータが使用された(追跡は2019年に終了)。134万1,584例の女性が解析の対象となった。 子宮頸がん検診には、HPV検査または液状化検体細胞診検査が用いられた。細胞診によるスクリーニングを受けた女性は、高Gradeの異常が認められた場合、または境界型か低Gradeの異常で、HPVトリアージ検査が陽性の場合に、コルポスコピーによる検査が勧められた。 HPV検査によるスクリーニングで陽性となった女性は、細胞診トリアージ検査で少なくとも境界型の異常がみられた場合、またはHPV陽性が持続し、細胞診で少なくとも境界型の異常が発現したため1次スクリーニングから12ヵ月か24ヵ月後に再HPV検査(早期の個別受診再勧奨[early recall]による)を受けたのち、コルポスコピーによる検査が勧められた。 主要アウトカムは、HPV検査陰性後のCIN3+および子宮頸がんの検出とされた。HPV mRNA検査とHPV DNA検査で検出能に差はない 24~59歳の女性では、1回目の検診で134万1,584例のうち30万677例がHPV検査を受け、70万6,820例は細胞診検査を受けた。CIN3+は、HPV検査で5,313例、細胞診検査では8,232例が検出され(検査1,000件当たり17.67 vs.11.65、補正後オッズ比[OR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.50~1.61)、子宮頸がんはそれぞれ259例および441例で発見された(0.86 vs.0.62、1.38、1.18~1.61)。 24~59歳の女性における2回目の検診時のCIN3+検出率は、1回目の検診でHPV検査を受け陰性だった女性が、細胞診検査で陰性だった女性よりも低く(検査1,000件当たり1.21 vs.4.52、補正後OR:0.26、95%CI:0.23~0.30)、子宮頸部の中間期がんのリスクも同様の結果であった(10万人年当たり1.31 vs.2.90、補正後ハザード比[HR]:0.44、95%CI:0.23~0.84)。これは、英国子宮頸がん検診プログラムの検診間隔3年を、少なくとも5年に延長できることを示す。 また、HPV検査陰性から5年後の2回目の検診において、50~59歳の女性で初めてCIN3+が検出されるリスクは、24~49歳の女性における検査陰性から3年後の2回目の検診時に比べて低かった(検査1,000件当たり0.57 vs.1.21、補正後OR:0.46、95%CI:0.27~0.79)。これは、50歳以上では、5年という現在の検診間隔を延長でき、50歳未満では3年の検診間隔が望ましいことを示唆する。 一方、HPVのスクリーニング検査が陽性で細胞診検査で異常がなく、個別受診再勧奨でHPV検査陰性の女性では、2回目の個別受診再勧奨による検査でCIN3+が検出される割合が、1次スクリーニング検査でHPV陰性であった女性よりも高かった(検査1,000件当たり5.39 vs.1.21、補正後OR:3.27、95%CI:2.21~4.84)。 検査法の比較では、HPV mRNA検査(APTIMA)とHPV DNA検査(cobasまたはRealTime)で、1回目の検査におけるCIN3+(補正OR:1.04、95%CI:0.96~1.12)および子宮頸がん(0.95、0.67~1.34)の検出能に差はなく、1回目の検査が陰性だった場合の2回目の検査におけるCIN3+(1.05、0.73~1.50)の検出能もほぼ同等であった。 著者は、「これらのデータは、検査法の種類や年齢を問わず、現在の検査間隔は延長可能であることを示唆するものである」としている。

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ワクチン接種者のlong COVIDリスク

 ブレークスルー感染者においてもコロナ罹患後症状(いわゆる後遺症、long COVID)が発現するか、米国退役軍人のコホート研究で調査した結果、急性期以降の死亡やコロナ罹患後症状発現のリスクがあることが確認されたが、ワクチン未接種の感染者より発現リスクが低いことが示された。本結果は、Nature Medicine誌オンライン版2022年5月25日号に掲載されている。 本調査では、2021年1月1日~10月31日の期間での退役軍人保健局の利用者で、ブレークスルー感染(BTI)群(3万3,940例)と、コロナ既往歴のない同時期対照群(498万3,491例)ほか、ワクチン未接種の感染群(11万3,474例)や、季節性インフルエンザ入院群(1万4,337例)など複数のコホートを構成し、2つの尺度でリスクを比較検証した。1つは死亡もしくは特定の症状発現(肺、心血管、血液凝固、消化器、腎臓、精神、代謝、筋骨格など)の補正ハザード比(HR)、もう1つは、BTI群におけるSARS-CoV-2検査陽性後6ヵ月間の各アウトカムについて1,000例当たりの補正超過負荷(excess burden)を推定した。 BTI群は、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチン初回接種から14日以上、もしくはファイザー製またはモデルナ製ワクチン2回接種から14日以上経過し、コロナ検査陽性後30日間生存した人が対象となる。ワクチン接種完了者のうちBTIの割合は1,000例当たり10.60例(95%信頼区間[CI]:10.52~10.70)だった。 主な結果は以下のとおり。・BTI群は同時期対照群と比べて死亡リスクが上昇しており(HR:1.75、95%CI:1.59~1.93)、BTI後6ヵ月の患者1,000例当たりの超過負荷が13.36例(95%CI:11.36~15.55)増加することが示された。・BTI群は同時期対照群と比べて、コロナ罹患後症状と考えられる症状を1つ以上経験するリスクが上昇した(HR:1.50、95%CI:1.46~1.54)。超過負荷はBTI後6ヵ月の患者1,000例当たり122.22例(95%CI:115.31~129.24)増加。・BTI群は同時期対照群と比べて、罹患後症状のリスクが次のように上昇した。肺機能障害HR:2.48(95%CI:2.33~2.64)、超過負荷:39.82(95%CI:36.83~42.99)心血管障害HR:1.74(95%CI:1.66~1.83)、超過負荷:43.94(95%CI:39.72~48.35)血液凝固障害HR:2.43(95%CI:2.18~2.71)、超過負荷:13.66(95%CI:11.95~15.56)疲労HR:2.00(95%CI:1.82~2.21)、超過負荷:15.47(95%CI:13.21~17.96)消化器障害HR:1.63(95%CI:1.54~1.72)、超過負荷:37.68(95%CI:33.76~41.80)腎臓障害HR:1.62(95%CI:1.47~1.77)、超過負荷:16.12(95%CI:13.72~18.74)精神障害HR:1.46(95%CI:1.39~1.53)、超過負荷:45.85(95%CI:40.97~50.92)代謝障害HR:1.46(95%CI:1.37~1.56)、超過負荷:30.70(95%CI:26.65~35.00)筋骨格系障害HR:1.53(95%CI:1.42~1.64)、超過負荷:19.81(95%CI:16.56~23.31)神経系障害HR:1.69(95%CI:1.52~1.88)、超過負荷:11.60(95%CI:9.43~14.01)・BTI群において、コロナ急性期に入院していない人よりも、入院した人、さらにICUに入院した人のほうが、罹患後症状のリスクが有意に上昇していた。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、死亡リスクが低く(HR:0.66、95%CI:0.58~0.74)、超過負荷は-10.99(95%CI:-13.45~-8.22)であった。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、罹患後症状のリスクが低く(HR:0.85、95%CI:0.82~0.89)、超過負荷は-43.38(95%CI:-53.22~-33.31)であった。・BTI群はワクチン未接種の感染群と比べて、調査した47の罹患後症状のうち24のリスクを低下させた。・BTI群は季節性インフルエンザ入院群と比べて、死亡リスクが高く(HR:2.43、95%CI:2.02~2.93)、超過負荷は43.58(95%CI:31.21~58.26)であった。・BTI群は季節性インフルエンザ入院群と比べて、罹患後症状のリスクが高く(HR:1.27、95%CI:1.19~1.36)、超過負荷は87.59(95%CI:63.83~111.40)であった。 研究グループはこの結果に対して、ワクチン接種は感染後の死亡と罹患後症状のリスクを部分的にしか減少させることができないため、SARS-CoV-2感染による長期的な健康への影響のリスクを軽減させるためには、ワクチンだけではなく予防対策が必要であるとしている。

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NSCLC1次治療のNIVO+ IPI、5年生存は24%(CheckMate 227)/ASCO2022

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのニボルマブとイピリムマブ(NIVO+IPI)の併用療法は、PD-L1の発現状態を問わず、化学療法と比較して長期的な生存効果を示すことがCheckMate 227試験の5年間追跡結果から示された。この結果は米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)において、米国・Johns Hopkins Kimmel Cancer CenterのJulie R. Brahmer氏が発表した。CheckMate 227試験の5年追跡結果でNIVO+IPI群でのOS改善が継続 CheckMate 227試験の主な5年間追跡結果は以下のとおり。・最小フォローアップは61.3ヵ月であった(データカットオフ2022年2月15日)。・PD-L1≧1%は1189例、PD-L1

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入院うつ病患者の自殺リスクに対する不眠症の影響

 不眠症は、うつ病に関連する重要な症状であり、自殺のリスク因子の1つであるといわれている。いくつかの研究によると、うつ病患者では不眠症と自殺行動との関連が示唆されているが、入院患者の大規模サンプルによる評価は十分に行われていなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のZeeshan Mansuri氏らは、入院うつ病患者を対象に不眠症の有無による自殺リスクの評価を行った。その結果、うつ病患者の不眠症は自殺リスクと有意に関連することが示唆されたことから、不眠症を合併しているうつ病患者では、自殺行動をより注意深くモニタリングする必要があると報告した。Behavioral Sciences誌2022年4月19日号の報告。 ICD-9のコードを用いたNational Inpatient Sample(NIS 2006-2015)データベースより、1次診断時うつ病と診断され、不眠症状を併発していた患者(MDD+I群)のデータを収集した。比較対照を行うため、MDD+I群と1対2でマッチさせた不眠症のないうつ病患者を対照群として設定した。両群間の自殺念慮および自殺企図に関するデータを比較するため、多変量ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析には、MDD+I群13万9,061例と対照群27万6,496例が含まれた。・MDD+I群は、対照群と比較し、より高齢であった(47歳 vs.45歳、p<0.001)。・自殺念慮および自殺企図の割合は、MDD+I群で56.0%、対照群で42.0%であった(p<0.001)。・年齢、性別、人種、境界性パーソナリティ障害、不安症、物質使用障害で調整した後、不眠症は、入院うつ病患者における自殺行動の1.71倍増加と関連することが認められた(オッズ比:1.71、95%CI:1.60~1.82、p<0.001)。

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リサンキズマブ、クローン病の寛解維持療法に有効/Lancet

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットを標的とするヒト化モノクローナル抗体リサンキズマブの静脈内投与による寛解導入療法で臨床的奏効が得られた中等症~重症の活動期クローン病患者の寛解維持療法において、リサンキズマブ皮下投与はプラセボ(休薬)と比較して、52週の時点での臨床的寛解率および内視鏡的改善率が高く、忍容性も良好で、有害事象の頻度には差がないことが、ベルギー・ルーヴェン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「FORTIFY substudy 1(SS1)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。世界44ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FORTIFY SS1は、活動期クローン病の寛解維持療法における、リサンキズマブ皮下投与の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ(休薬)対照第III相試験であり、2018年4月~2020年4月の期間に、日本を含む44ヵ国273施設で参加者の登録が行われた(AbbVieの助成を受けた)。 対象は、リサンキズマブ静脈内投与による2つの寛解導入試験(ADVANCE試験、MOTIVATE試験)の参加者のうち、12週時に臨床的奏効が得られた患者とされた。2つの寛解導入試験の参加者は、年齢16~80歳で、中等症~重症の活動期クローン病(クローン病活動指数[CDAI]:220~450、平均1日排便回数4回以上または腹痛スコア2以上、簡易版クローン病内視鏡スコア[SES-CD]6以上[孤立性回腸病変の場合は4以上])の患者であった。 被験者は、寛解維持療法として、リサンキズマブ180mg(90mg製剤×2回とプラセボ×2回)、同360mg(90mg製剤×4回)、導入療法のリサンキズマブを休薬してプラセボ(休薬群、プラセボ×4回)をそれぞれ皮下投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、8週ごと(0、8、16、24、32、40、48週目)の投与が行われた。患者、担当医、試験関係者には、治療割り付け情報が知らされなかった。 主要複合エンドポイントは、52週の維持療法期間に少なくとも1回の投与を受けた患者における臨床的寛解(米国のプロトコルではCDAIが150未満、米国以外のプロトコルでは水様便または超軟便の平均1日排便回数が2.8回以下で、ベースラインより悪化せず、1日の平均腹痛スコアが1以下で、導入療法のベースラインより悪化しない場合)および内視鏡的改善(SES-CDがベースラインに比べ50%超減少[孤立性回腸病変でベースラインのSES-CDが4の患者ではベースラインから2以上減少]した場合)とされた。幅広い患者の新たな治療選択肢となる可能性 2つの寛解導入試験の参加者のうち542例がFORTIFY SS1試験に登録され、有効性の主解析には462例(intention-to-treat集団)が含まれた。リサンキズマブ180mg群が157例(平均[SD]年齢39.1[14.8]歳、女性57%)、同360mg群が141例(37.0[12.8]歳、43%)、休薬群は164例(38.0[13.0]歳、46%)だった。 CDAIに基づく臨床的寛解率(米国)は、リサンキズマブ360mg群が52%(74/141例)と、休薬群の41%(67/164例)に比べ有意に高かった(補正後群間差:15%、95%信頼区間[CI]:5~24、p=0.0054)。排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解(米国以外)の割合は、それぞれ52%(73/141例)および40%(65/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に優れた(補正後群間差:15%、95%CI:5~25、p=0.0037)。また、内視鏡的改善(米国および米国以外)の割合は、それぞれ47%(66/141例)および22%(36/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に良好だった(補正後群間差:28%、95%CI:19~37、p<0.0001)。 一方、リサンキズマブ180mg群と休薬群の比較では、排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解率(p=0.124)には差がなかったが、CDAIに基づく臨床的寛解率(55%[87/157例]vs.41%[67/164例]、補正後群間差:15%、95%CI:5~24、p=0.0031)および内視鏡的改善率(47%[74/157例]vs.22%[36/164例]、26%、17~35、p<0.0001)は、リサンキズマブ180mg群で有意に優れた。 より厳格な内視鏡的エンドポイントや複合エンドポイント、炎症性生物マーカーの結果には、リサンキズマブの用量反応関係が認められた。また、2つの用量はいずれも全般に良好な忍容性を示した。 有害事象の頻度は3つの群で同程度(リサンキズマブ180mg群72%、同360mg群72%、休薬群73%)で、重篤な有害事象(12%、13%、13%)や試験薬中止の原因となった有害事象(2%、3%、3%)の発現率もほぼ同じだった。3群で最も頻度の高い有害事象は、クローン病の悪化(11%、12%、17%)、鼻咽頭炎(9%、9%、14%)、関節痛(8%、9%、11%)、頭痛(5%、6%、6%)であった。重篤な感染症は、それぞれ3%、4%、4%で認められた。 著者は、「リサンキズマブ皮下投与による寛解維持療法は、疾患の経過に変化をもたらす可能性のあるエンドポイントを達成し、他の先進的な治療で不耐または効果が不十分であった患者でも有効性が観察されており、今後、幅広い患者にとって新たな治療選択肢となるだろう」としている。

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アストラゼネカ、新型コロナの新規抗体カクテル療法を国内承認申請

 アストラゼネカは6月9日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症抑制および治療を適応として、長時間作用型抗体の併用療法AZD7442の製造販売承認(特例承認)を厚生労働省に申請したことを発表した。AZD7442(海外での商品名:Evusheld)は、現在までにEUでの販売承認、英国医薬品医療製品規制庁の条件付き販売承認、米国食品医薬品局の緊急使用許可を取得している。 AZD7442は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し回復した患者により提供されたB細胞に由来する、2種類の長時間作用型抗体であるtixagevimabとcilgavimabの併用療法だ。それぞれがSARS-CoV-2のスパイク蛋白に特異的に結合し、ウイルスのヒト細胞への侵入を阻止する。AZD7442を筋注で1回投与後、少なくとも6ヵ月間ウイルスからの保護が持続するという。 AZD7442のCOVID-19曝露前予防について、第III相試験PROVENTほか、The Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年6月7日付1)に掲載された第III相試験TACKLEなど、複数の臨床試験でプラセボ群と比較してCOVID-19の発症リスクが統計学的に有意に減少することが示されている。 第III相試験TACKLEは、2021年1月28日~7月22日に、米国、中南米、欧州、日本の95施設にて、910人が参加した無作為化二重盲検プラセボ対照試験。COVID-19発症から7日以内の軽症から中等症Iの入院していない18歳以上の成人を対象とした。そのうち併存疾患や年齢により重症化のリスクが高い患者が90%だった。被験者をAZD7442群(456例)とプラセボ群(454例)に分け、AZD7442群にAZD7442600mg筋注投与し、29日後までの重症化または死亡の相対リスクを調査した。 主な結果は以下のとおり。・AZD7442群はプラセボ群と比較して、重症化または死亡の相対リスクが50.5%(95%信頼区間[CI]:14.6~71.3)減少した。さらに、発症から3日以内に治療を受けた患者では88.0%(95%CI:9.4~98.4)、発症から5日以内に治療を受けた患者では66.9%(95%CI:31.1~84.1)減少した。・呼吸不全リスクが71.9%(95%CI:0.3~92.1)減少し、人工呼吸やECMOなどを必要とした患者は、プラセボ群11人(2.6%)に対して、AZD7442群3人(0.7%)だった。・有害事象は、AZD7442群が29%(うち重篤例7%)に対しプラセボ群は36%(うち重篤例12%)だった。最も多かったのはCOVID-19肺炎で、AZD7442群26例(6%)、プラセボ群49例(11%)に発生した。COVID-19による死亡は、AZD7442群3例、プラセボ群6例だった。 このほか、複数の独立したin vitroおよびin vivo試験により、オミクロン株に対する効果の検討も進められている。米国ワシントン大学医学部の研究結果によると、オミクロン株BA.2に対しても中和活性を保持しており、同研究ではin vivoにて、AZD7442がオミクロン株のウイルス負荷を軽減し、肺の炎症を抑制することが示された。さらに、英国オックスフォード大学が実施した非臨床試験では、オミクロン株の新たな亜種であるBA.4およびBA.5に対しても、中和活性を保持していることが確認されているという。

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ER+進行乳がん1次治療、パルボシクリブ+レトロゾールのOSの結果は?(PALOMA-2)/ASCO2022

 ER+/HER2-進行乳がんの1次治療として、パルボシクリブ+レトロゾールをプラセボ+レトロゾールと比較した第III相PALOMA-2試験において、副次評価項目である全生存期間(OS)は有意な改善が示されなかったことが報告された。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのRichard S. Finn氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 PALOMA-2試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示されている(追跡期間中央値23ヵ月でのPFS中央値:24.8ヵ月vs.14.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.58、p<0.001)。PFSの最終解析時、OSデータは必要なイベント数(層別log-rank検定で0.74未満のHR検出に390イベント必要)に達しておらず、2021年11月に必要イベント数に達したことからOSの最終解析を実施した。・対象:進行がんに対する治療歴のないER+/HER2-進行乳がんの閉経後女性 666例・試験群(パルボシクリブ群):パルボシクリブ+レトロゾール 444例・対照群(プラセボ群):プラセボ+レトロゾール 222例・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]OS、奏効率、安全性、バイオマーカー、患者報告アウトカム 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、パルボシクリブ群53.9ヵ月(95%CI:49.8~60.8)、プラセボ群51.2ヵ月(95%CI:43.7~58.9)だった(HR:0.956、95% CI:0.777~1.177、片側p=0.3378)。・同意撤回/追跡不能により生存データが得られなかった患者(パルボシクリブ群13%、プラセボ群21%)を除外した事後感度分析では、OS中央値はパルボシクリブ群51.6ヵ月(95%CI:46.9~57.1)、プラセボ群44.6ヵ月(95%CI:37.0~52.3)だった(HR:0.869、95%CI:0.706~1.069)。・化学療法までの期間の中央値は、パルボシクリブ群38.1ヵ月(95%CI:34.1~42.2)、プラセボ群29.8ヵ月(95%CI:24.7~34.8)だった(HR:0.730、95%CI:0.607~0.879)。・PALOMA-1試験とPALOMA-2試験を合わせたOS中央値(追跡期間中央値90ヵ月)は、パルボシクリブ群51.8ヵ月、プラセボ群46.8ヵ月で、HRは0.934(95%CI:0.780~1.120)だったが、無病生存期間12ヵ月超のサブグループでは、パルボシクリブ群64.0ヵ月、プラセボ群44.6ヵ月で、HRは0.736(95%CI:0.551~0.982)であった。 Finn氏は、「OSは数値的には改善したが、統計学的に有意ではなかった。しかしながら、この集団におけるOS中央値が50ヵ月以上であることはHR+乳がんの臨床経過において意味のある改善を示すものであり、それは無病生存期間12ヵ月超の患者で強調される」と述べた。さらに、「PALOMA-2試験では生存データが得られなかった患者の割合が大きく、また2つの群に偏りがあったことで、OSの解釈は限られる」と考察した。

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COVID-19パンデミックによる日本人医学生の座位行動とうつ病との関連

 2019年に発生したCOVID-19により人々の行動が変化し、座りがちな行動の割合が増え、うつ病の増加につながっていることが示唆されている。医学生におけるこのような影響は、今後の医療提供体制に負の作用をもたらす可能性がある。広島大学の田城 翼氏らは、日本人医学生を対象にCOVID-19パンデミック中の座位行動とうつ病との関連を調査した。その結果、COVID-19パンデミック下の日本人医学生のうつ病リスクを減少させるためには、座位時間および余暇でのスクリーンタイムの減少が有効である可能性が示唆された。著者らは、これらの結果に基づき、うつ病の予防や治療を行うための適切な介入の開発が求められると報告している。BMC Psychiatry誌2022年5月20日号の報告。 2021年7月30日~8月30日に匿名アンケートシステムを用いてオンライン調査を実施し、日本人大学生1,000人を対象に社会人口統計学的特性、身体活動、座位行動に関するデータを収集。うつ病は、Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)を用いて評価した。484人の回答者データをステップワイズ法で分析し、モデル1として医学生と非医学生の違いを、モデル2としてうつ病を有する医学生と非うつ病の医学生の違いを評価した。両モデルの群間比較には、社会人口統計学的特性ではカイ二乗検定、身体活動および座位行動ではマン・ホイットニーのU検定を用いた。モデル2では、医学生のうつ病に関連する因子を分析するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・モデル1では、医学生は非医学生と比較し、身体活動時間が短く(p<0.001)、座位時間が長く(p<0.001)、PHQ-2スコアが高かった(p=0.048)。・モデル2では、うつ病医学生は非うつ病医学生と比較し、座位時間が長く(p=0.004)、余暇のスクリーンタイムが長かった(p=0.007)。・潜在的な交絡因子で調整後のロジスティック回帰分析では、座位時間(OR:1.001、p=0.048)と余暇のスクリーンタイム(OR:1.003、p=0.003)が医学生のうつ病と有意に関連していることが示唆された。

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中等~重症のクローン病、リサンキズマブ導入療法が有効/Lancet

 中等症~重症の活動期クローン病患者において、IL-23 p19阻害薬リサンキズマブは導入療法として有効であり忍容性も良好であることが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのGreet D'Haens氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ADVANCE試験」および「MOTIVATE試験」の結果を報告した。Lancet誌2022年5月28日号掲載の報告。1,549例を対象に、リサンキズマブ2用量の有効性と安全性をプラセボと比較 両試験の対象は16~80歳の中等症から重症の活動期クローン病患者で、ADVANCE試験では既存治療または生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者、MOTIVATE試験では生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を適格とした。適格患者をリサンキズマブ600mg群、1,200mg群、またはプラセボ群(いずれも0、4および8週目に単回静脈内投与)に、ADVANCE試験では2対2対1の割合で、MOTIVATE試験では1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、12週時の臨床的寛解および内視鏡的改善であった。臨床的寛解は、米国内ではクローン病活動性指数(CDAI)を用いて同スコアが150未満、米国外では患者報告アウトカム(PRO)を用いて平均排便回数が2.8回/日以下、1日の平均腹痛スコアが1以下と定義した。 有効性の解析はITT集団(12週間の導入期間に少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者)、安全性の解析は少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者を対象とした。 ADVANCE試験では2017年5月10日~2020年8月24日に計931例が無作為化され(リサンキズマブ600mg群373例、1,200mg群372例、プラセボ群186例)、ITT集団は850例(それぞれ336例、339例、175例)であった。MOTIVATE試験では2017年12月18日~2020年9月9日に計618例が無作為化され(206例、205例、207例)、ITT集団は569例(191例、191例、187例)であった。臨床的寛解率はプラセボ19~25% vs.リサンキズマブ35~45% ADVANCE試験では、CDAI臨床的寛解率はプラセボ群25%に対して、リサンキズマブ600mg群45%(補正後群間差:21%、95%信頼区間[CI]:12~29)、1,200mg群42%(補正後群間差:17%、95%CI:8~25)であり、排便回数・腹痛スコアによる臨床的寛解率はそれぞれ22%、43%(補正後群間差:22%、95%CI:14~30)、41%(補正後群間差:19%、95%CI:11~27)であった。また、内視鏡的寛解率はそれぞれ12%、40%(補正後群間差:28%、95%CI:21~35)、32%(補正後群間差:20%、95%CI:14~27)であった。 MOTIVATE試験では、CDAI臨床的寛解率はプラセボ群20%に対して、リサンキズマブ600mg群42%(補正後群間差:22%、95%CI:13~31)、1,200mg群40%(補正後群間差:21%、95%CI:12~29)、排便回数・腹痛スコアによる臨床的寛解率はそれぞれ19%、35%(補正後群間差:15%、95%CI:6~24)、40%(補正後群間差:20%、95%CI:12~29)、内視鏡的寛解率はそれぞれ11%、29%(補正後群間差:18%、95%CI:10~25)、34%(補正後群間差:23%、95%CI:15~31)であった。 治療下で発生した有害事象の発現率は、両試験のすべての治療群で類似していた。導入療法期に、死亡がADVANCE試験のプラセボ群で2例、MOTIVATE試験のリサンキズマブ1,200mg群で1例報告されたが、リサンキズマブとの因果関係は否定された。

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