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治療抵抗性高血圧への腎デナベーション、長期アウトカムは/Lancet

 治療抵抗性高血圧患者に対する腎デナベーションシステム「Symplicity」(米国Medtronic製)の安全性と有効性を検討した偽処置(シャム)対照大規模臨床試験「SYMPLICITY HTN-3試験」の最終報告として、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが長期(36ヵ月フォローアップ)アウトカムの結果を発表した。処置後6ヵ月時点の評価では、降圧を安全に達成できることは確認された一方で有意な降圧の有効性は見いだせなかったが、36ヵ月時点の評価において、安全性に関するエビデンスが増強されるとともに、12~36ヵ月において、施術を受けた患者の降圧効果がシャム対照患者と比べて大きく、また血圧コントロールが良好であったことが示されたという。結果を踏まえて著者は、「腎デナベーションの臨床的効果が時間とともに衰えることはなく、増す可能性があることが示唆された」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年9月16日号掲載の報告。腎デナベーションvs.シャム、36ヵ月の血圧変化、血圧コントロールを評価 SYMPLICITY HTN-3試験は、米国内88施設で行われた多施設共同単盲検シャム対照無作為化試験。18~80歳、利尿薬を含む3剤以上の最大耐用量投与にもかかわらず、座位診察室収縮期血圧(SBP)が160mmHg以上および24時間外来SBPが135mmHg以上の治療抵抗性高血圧患者を、2対1の割合で無作為に、単極(Flex)カテーテルを用いた腎デナベーションを受ける群またはシャム対照群に割り付け追跡評価した。 オリジナルの主要エンドポイントは、シャム対照群と比較した腎デナベーションの診察室SBPのベースラインから6ヵ月までの変化であった。その時点で包含基準を満たしたシャム対照患者(診察室SBP≧160mmHg、24時間外来SBP≧135mmHg、3剤以上の降圧薬処方)は、腎デナベーションを受けるクロスオーバーが可能であった。 36ヵ月までの変化は、オリジナルの腎デナベーション群とシャム対照群の患者で解析されたが、6ヵ月後に腎デナベーションを受けた患者(クロスオーバー群)と非クロスオーバー群も含まれ、腎デナベーションとシャム対照を比較するために、クロスオーバー群のフォローアップ血圧値は、クロスオーバー前のマスク時の最新血圧値を用いた推定値とした。その上で、腎デナベーション群とシャム対照群の長期血圧変化を報告し、両群の血圧コントロールを至適血圧範囲内時間(time in therapeutic blood pressure range)を用いた解析法で調べた。 安全性の主要エンドポイントは、全死因死亡、末期腎不全、重大塞栓イベント、介入を要した腎動脈穿孔または解離、血管合併症、服薬非アドヒアランスとは無関係の高血圧クリーゼによる入院、または6ヵ月以内70%超の新規腎動脈狭窄の発生であった。診察室SBPの変化、-26.4mmHg vs.-5.7mmHgで有意差、コントロールも良好 2011年9月29日~2013年5月6日に、1,442例がスクリーニングを受け、535例(37%、女性210例[39%]、男性325例[61%]、平均年齢57.9[SD 10.7]歳)が無作為化を受けた。腎デナベーション群は364例(68%、平均年齢57.9[SD 10.4]歳)、シャム対照群は171例(32%、56.2[11.2]歳)であった。 36ヵ月フォローアップデータは、オリジナル腎デナベーション群219例、クロスオーバー群63例、非クロスオーバー群33例から入手できた。 36ヵ月時点で、診察室SBPの変化は、腎デナベーション群-26.4mmHg(SD 25.9)、シャム対照群-5.7mmHg(24.4)で有意差が認められた(補正後治療群間差:-22.1mmHg[95%信頼区間[CI]:-27.2~-17.0]、p≦0.0001)。24時間外来SBPはそれぞれ-15.6mmHg(SD 20.8)、-0.3mmHg(15.1)で有意差が認められた(補正後治療群間差:-16.5mmHg[95%CI:-20.5~-12.5]、p≦0.0001)。 欠測値補完(imputation)前の解析で、腎デナベーション群のほうがシャム対照群よりも至適血圧範囲内時間を有した割合が高く(18%[SD 25.0]vs.9%[18.8]、p≦0.0001)、投薬負荷が類似していたが、腎デナベーション群のほうが血圧コントロールはより良好であることが示された。有意な結果は、欠測値補完後も変わらず一貫していた。 有害事象の発現頻度は、すべての治療群間で同程度で、腎デナベーションによるlate-emerging合併症のエビデンスは認められなかった。48ヵ月時点の安全性複合エンドポイント(全死因死亡、新規の末期腎疾患、末端器官損傷に至った重大塞栓イベント、血管合併症、腎動脈再介入、高血圧クリーゼなど)の発生率は、腎デナベーション群15%(54/352例)、クロスオーバー群14%(13/96例)、非クロスオーバー群14%(10/69例)であった。

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時の効果を比較/NEJM

 米国では、2型糖尿病患者の治療においてメトホルミンとの併用で使用される血糖降下薬の相対的有効性のデータは十分でないという。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、メトホルミンと4種類の血糖降下薬の併用療法の効果を比較し、微小血管合併症や死亡の発生には4種類の薬剤で実質的な差はないが、心血管疾患の発生には群間差が存在する可能性があることを示した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号に掲載された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。本論では、主に副次アウトカムの結果が報告され、主要アウトカムは別の論文で詳報された。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、診断からの経過期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、糖化ヘモグロビン値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、メトホルミンに加え、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、グリメピリド、リラグルチド、シタグリプチンのうち1つの投与を受ける4つの群に無作為に割り付けられた。5,047例が登録され、このうちグラルギン群が1,263例、グリメピリド群が1,254例、リラグルチド群が1,262例、シタグリプチン群は1,268例だった。高血圧、脂質異常症、尿中アルブミン上昇にも、実質的な差はない ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、63.6%が男性だった。糖尿病の平均罹病期間は4.2±2.7年、メトホルミンの平均1日投与量は1,994±205mgであり、平均BMIは34.3±6.8、平均糖化ヘモグロビン値は7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年。 目標血糖値の維持(代謝に関する主要アウトカム)については、グラルギン群とリラグルチド群の効果がグリメピリド群、シタグリプチン群よりも優れ、4年時の糖化ヘモグロビン値はグラルギン群とリラグルチド群が7.1%であったのに対し、グリメピリド群は7.3%、シタグリプチン群は7.2%であった。 高血圧、脂質異常症の発生、および微小血管アウトカムに関しては、4つの治療群で実質的な差はなかった。また、全体的な尿中アルブミンの中等度上昇の発生割合の平均値は、100人年当たり2.57、尿中アルブミンの高度上昇は1.08、腎障害は2.91で、いずれも治療群間で差はなく、試験終了時の累積発生率はそれぞれ約15%、8%、20%であった。同様に、糖尿病性末梢神経障害の発生割合は100人年当たり16.7であり、追跡期間の1年目の発生率は約20%、試験終了時には約70%に達した。 試験期間中の全心血管疾患の発生割合は100人年当たり1.79で、試験終了時には4つの治療群の発生率は10~15%に達した。治療群別の発生割合は、100人年当たりグラルギン群が1.87、グリメピリド群が1.92、リラグルチド群が1.36、シタグリプチン群は2.00であり、わずかな差が認められた。 また、全体的な主要有害心血管イベント(MACE)の発生割合は100人年当たり0.98、心不全による入院は0.40、心血管系の原因による死亡は0.27、全死因死亡は0.59であり、治療群間で差はなかった。 一方、1つの治療を、他の3つの治療を統合した結果と比較すると、全心血管疾患のハザード比は、グラルギン群が1.07(95%信頼区間[CI]:0.87~1.33)、グリメピリド群が1.12(0.90~1.39)、リラグルチド群が0.71(0.56~0.90)、シタグリプチン群は1.18(0.96~1.46)であった。 著者は、「2型糖尿病の治療薬を選択する際には、血糖値に対する効果とともに、微小血管合併症、心血管リスク因子、心血管アウトカムに及ぼすこれらの薬剤の異なる効果を考慮する必要があり、この試験の結果は、治療薬の選択において有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

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抗精神病薬の切り替え理由~システマティックレトロスペクティブレビュー

 多くの精神疾患患者で抗精神病薬の切り替えが行われているが、切り替え理由や臨床記録を研究した報告はほとんどない。米国・ザッカーヒルサイド病院のDaniel Guinart氏らは、抗精神病薬の切り替え理由についてレトロスペクティブに分析を行った。その結果、抗精神病薬の切り替え理由は性別により異なるようであったが、多くの場合、忍容性の不十分にあることが報告された。また、切り替え理由が適切に記載されていないケースが5分の1で認められた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月5日号の報告。 1施設で抗精神病薬の切り替えを行った入院または外来患者において、切り替え理由および切り替えた薬剤の種類を明らかにするため、処方記録や処方箋の記載をレトロスペクティブにレビューした。2017年8月1日から270件に至るまで抗精神病薬の切り替えデータを収集し、検出力分析に必要な薬剤の種類および切り替え理由を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・クエチアピンから抗精神病薬以外に切り替えられた7件を除く263件の抗精神病薬切り替え事例を分析した(患者数:195例、年齢中央値:31歳[四分位範囲:24~47]、統合失調症:36.9%、双極性障害:27.7%、統合失調感情障害:18.5%)。・主な抗精神病薬の切り替え理由は、忍容性不十分(45.7%)、効果不十分/悪化(17.6%)であった。・抗精神病薬の切り替え理由は、人種(p=0.2644)、年齢(p=0.0621)、保険の種類(p=0.2970)による影響を受けなかったが、性別についてはいくつかの理由に関して不均一性が認められた(p=0.004)。・最も多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の経口剤(SGA-OAP)から他のSGA-OAPへの切り替えであり(155件、58.9%)、その理由は、忍容性不十分または効果不十分であった。・次に多かった切り替えは、第2世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(SGA-LAI)からSGA-OAPへの切り替えであり(11%)、その理由は、忍容性不十分、患者の好み、保険適用の問題であった。・SGA-OAPからSGA-LAIへの切り替えは、10.7%であった。・抗精神病薬の切り替え理由が適切に処方箋に記載されていたのは、208件(79.1%)であった。

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国内初、自己投与可能なメトトレキサート皮下注製剤「メトジェクト」承認/エーザイ

 エーザイと日本メダックは、2022年9月26日付けのプレスリリースで、抗リウマチ剤メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL、同10mgシリンジ0.20mL、同12.5mgシリンジ0.25mL、同15mgシリンジ0.30mL(一般名:メトトレキサート[MTX]、以下「メトジェクト」)について、関節リウマチの効能または効果で製造販売承認を取得したと発表した。 メトジェクトの承認は、日本メダックが国内で実施した有効性と安全性についてMTX経口剤と比較する、二重盲検期ならびに継続投与期からなる臨床第III相試験(MC-MTX.17/RA試験)の結果に基づく。本試験の二重盲検期において、MTX未治療の関節リウマチ患者102例を対象に、メトジェクト7.5mg/週あるいはMTX経口剤8mg/週が12週間反復投与された。主要評価項目である12週後のACR 20%改善率(米国リウマチ学会[American College of Rheumatology]作成の関節リウマチの臨床症状改善度の基準)は、MTX経口剤群51.0%に対してメトジェクト群59.6%であり、同程度の有効性が認められた。二重盲検期における副作用発現率は、メトジェクト群25.0%、MTX経口剤群34.0%、主な副作用(発現率5%以上)は、メトジェクト群で口内炎5.8%、MTX経口剤群で悪心12.0%、口内炎6.0%であった。 メトジェクトは、関節リウマチを対象とした国内初の自己投与可能なMTX皮下注射製剤である。2019年5月にエーザイとmedac(ドイツ)が締結したライセンス契約に基づき、本剤の製造販売承認は日本メダックが保有し、販売はエーザイが担当する。

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FFRとIVUSを同時に使うのはぜいたく?(解説:山地杏平氏)

 韓国、中国から、冠血流予備量比(FFR)ガイド下と血管内超音波法(IVUS)ガイド下での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を比較したFLAVOUR研究がAmerican College of Cardiology 2022で報告され、New England Journal of Medicine誌2022年9月1日号に掲載されました。FLAVOUR研究では、FFRガイド群で838症例、IVUSガイド群で844症例が登録され、FFRガイド群で33.2%の病変、IVUSガイド群で58.4%の病変が治療されました。そして、2年後の総死亡、心筋梗塞、再血行再建のイベント率は、FFRガイド群で8.1%、IVUSガイド群で8.5%と両群に差はありませんでした。統計学的に差がないことを評価するために設けられる非劣性マージンが2.2%と大きいのは確かですが、カプランマイヤー生存曲線を見る限り、どちらの群も差がないということが真実である可能性が高そうです。この研究結果のメッセージとしては、治療適応に悩むような中等度狭窄のときには、FFR、IVUSいずれも同等の効果が期待されるということになります。 FFRガイドPCIとは、FAME 2研究で示されたように、冠動脈にFFR 0.80以下の動脈硬化病変があった場合には、PCIを行ったほうが、予後が良いとされるものです。一方で、IVUSガイドPCIとは、韓国や中国から報告されたIVUS-XPL研究やULTIMATE研究で示されたように、複雑な冠動脈病変であれば、IVUSを用いて治療を行ったほうが、成績が良いとされます。FFRは治療対象となるような心筋虚血の有無を評価するもの、IVUSは血管内の性状を評価するものであり、2つの目的の異なる手段を、ランダム化比較試験で比較する意義がよくわからないなというのが、FLAVOUR研究の最初の感想です。FLAVOUR研究の著者も述べていましたが、高度狭窄冠動脈病変など、臨床的にPCIを行わなければならないことが明確な症例では、FFRは使用せず、IVUSなどの冠動脈イメージングを用いれば良いと思います。一方で、FLAVOUR研究が検討したのは「治療適応に悩むような中等度狭窄のときに、FFRもしくはIVUSのいずれかしか用いることができないのであればどちらが良いのか?」になります。 FLAVOUR研究が行われた背景について考えてみましょう。先ほど述べたように、FAME 2研究にて、FFR 0.80以下の中等度冠動脈硬化病変があった場合に、PCIを行ったほうが良いことが示されています。一方で、IVUSで冠血流の評価を行うことはできませんが、冠動脈内を可視化することで、最も狭窄度が狭い部分の面積である最小血管内腔断面積(MLA)を計測することが可能です。心筋虚血の有無を評価するためのカットオフである、FFR 0.80という指標が、IVUSでのMLAがどの程度に相当するのかについては、さまざまな検討がされてきました。 研究ごとに差異がありますが、総合すると左主幹部病変では4.5mm2から6.0mm2、非主幹部病変では、2.1mm2から4.4mm2がFFR 0.80に相当するとされます。一方で、FFRでの0.80や、IVUSでのMLA 4.0mm2は冠動脈の内腔に基づく値であり、冠動脈自体のプラークを見ているわけではありません。FFR 0.80以上で、IVUSでMLA 4.0mm2以上の、いわゆる冠動脈血行再建の対象とはならないような病変でも、狭窄部のプラーク量が多い場合や、そのプラークの性状が不安定であれば、今後の臨床イベントが多いことが知られています。たとえば、IVUSで測定したプラーク量が将来のイベントに関連していることは、Steven Nissen先生らが多くの研究を報告されていますし、また、PROSPECT研究では、virtual histology-IVUSという特殊なIVUSを用いて評価した不安定プラーク、MLA 4.0mm2、プラーク面積率70%が、それぞれ将来のイベントに関連していたことが示されました。 こういった結果を踏まえて、FLAVOUR研究では、FFRガイド群ではFFR 0.80以上でPCIを行い、IVUSガイド群ではMLA 3.0mm2以下、または3.0から4.0mm2でプラーク面積率70%より大であればPCIが行われています。これらの至適なカットオフ値を用いることで、FFRガイドもしくは、IVUSガイドで、それぞれ適切な治療対象となるような冠動脈病変を評価することが可能であり、どちらでも同じ程度の効果があるのであれば、どちらか一方で良いのではないか、というのがFLAVOUR研究の出発点になります。 FLAVOUR研究で示された、FFRガイド下PCIはIVUSガイド下PCIに対して非劣性であったという結果を受けて、日本の臨床が変わるか、という点についてですが、現時点ではそんなことはないかなと思っています。日本の医療において、デバイス使用の保険適用は都道府県ごとに異なり、FFRとIVUSは両方を1回の手技で用いても保険適用上問題ないとしている地域がある一方で、FFRとIVUSのどちらか一方しか保険適用ではないという判断をされている地域もあります。ただ、どちらか一方しか使えないという地域でも、FFRを行ったうえで、いったん退院し、再入院してIVUSを用いて治療を行うという施設もちらほら聞きます。いずれにせよ多くの現場では、FFRもIVUSは別のモダリティであり、両方用いて治療が行われているというのが日本の現状ではないでしょうか。 そもそも、FLAVOUR研究に登録された症例は、90%以上の症例で1枝のみで、SYNTAX scoreは8から9程度であり、シンプルな病変がかなり多いです。このような病変背景では、いずれにせよ臨床イベントはきわめて低いと考えられますし、皮肉な見方かもしれませんが、2年以内のイベント率で非劣性マージンを2.2%と設定して比較すれば、もしかしたらangiographyガイド下PCIであっても差がないかもしれないなとも思ってしまいます。FFRとIVUSの双方を用いることが多いという日本では、このような非劣性研究という結果の解釈が難しい研究結果に、現状を変えるほどのインパクトは現時点ではないように思います。 ただ、FLAVOUR研究がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたということを踏まえると、FFRかIVUSのどちらか一方しか使わないというのが、世界の(少なくともNew England Journal of Medicine誌がある米国の)一般的な状況なのかもしれません。FFR、IVUSいずれも大切なモダリティで、別物と考えて使うことができる日本の現状では、FLAVOUR研究は大きな影響はないのかもしれませんが、それはとてもぜいたくなことなのかもしれません。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その4【「実践的」臨床研究入門】第24回

下記は、連載第22回でも提示した、われわれのコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)のクリニカル・クエスチョン(CQ)とリサーチ・クエスチョン(RQ)のP(対象)とI(介入)です。CQ:アルドステロン受容体拮抗薬は維持透析患者の予後を改善するかP:維持透析患者I:アルドステロン受容体拮抗薬今回からは、このコクランSR論文1)の検索式の具体例を読み解きながら、実際の検索式の構造について解説します。Pの構成要素をORでつないでまとめる検索式はPとI(もしくはE)で構成すると説明しました(連載第22回参照)。実際の検索式ではPとI(もしくはE)の構成要素に分けて、論理演算子(ANDやOR)でつなぎます。PやI(もしくはE)、それぞれの構成要素は、MeSH(Medical Subject Headings)やテキストワードで表される類似した語句を"OR"でつなげて、できるだけ検索漏れが少なくなるようにするのです。それでは、われわれのコクランSR論文1)の実際の検索式をみてみましょう(参照 Appendix 1. Electronic search strategies)。データベースごと(CENTRAL、MEDLINE、EMBASE)の検索式が公開されています。これらの検索データの違いについては連載第17回をご参照ください。ここでは、実際の文献検索の参考になるように、MEDLINEの検索式をPubMed用に変換した検索式を用いて解説します。以下は、Pの構成要素に該当する部分の検索式です。1.Renal Replacement Therapy[mh:noexp]2.Renal Dialysis[mh:noexp]3.Peritoneal Dialysis[mh]4.CAPD[tiab] OR CCPD[tiab] OR APD[tiab]5.Hemodiafiltration[mh]6.Hemodialysis, home[mh]7.dialysis[tiab]8.hemodialysis[tiab] OR haemodialysis[tiab]9.hemofiltration[tiab] OR haemofiltration[tiab]10.hemodiafiltration[tiab] OR haemodiafiltration[tiab]11.end-stage-kidney[tiab] OR end-stage-renal[tiab] OR endstage-kidney[tiab] OR endstage-renal[tiab]12.ESKD[tiab] OR ESKF[tiab] OR ESRD[tiab] OR ESRF[tiab]13.#1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12まず、#1-3ではPの構成要素の概念である「透析」に関連するMeSH term (統制語)がリストアップされ、「タグ」でもMeSHが検索項目として指定されています(連載第23回参照)。#3のタグは[mh]、#1、 2のタグは[mh: noexp]ですが、そのMeSH term に付随する下位のMeSH termも含むか含まないか、という指定の違いになります。たとえば、#1の"Renal Replacement Therapy"というMeSH termの階層構造は下記およびリンクのようになっています。○Renal Replacement Therapy■Continuous Renal Replacement Therapy■Hemofiltration■Hemoperfusion■Hybrid Renal Replacement Therapy■Intermittent Renal Replacement Therapy■Kidney Transplantation■Renal Dialysis●Hemodiafiltration●Hemodialysis, Home●Peritoneal DialysisこのコクランSR論文1)のPの構成要素の概念は「透析」のなかでも慢性期に行う「維持透析」です。したがって、"Renal Replacement Therapy"のひとつ下の階層に位置するMeSH termのうち、急性期に行う"Continuous Renal Replacement Therapy"や、特殊な血液浄化療法である"Hemoperfusion"、”Hybrid Renal Replacement Therapy"、”Intermittent Renal Replacement Therapy”、また"Kidney Transplantation"は、Pの構成要素に該当しません。そのため、Renal Replacement Therapy[mh:noexp]として、これらの下位のMeSH termは含まない検索式にしているのです。"Renal Dialysis”以下の「維持透析」の概念に含まれるMesh Termは#2、 3、 5、 6で個別に指定して補完しています。また、#4、 7、 8-10ではMeSHで拾えない同義語・関連語をテキストワードで記述し、「タグ」でTitle/Abstractを指定して検索式に組み込んでいます(連載第23回参照)。Pである維持透析患者は末期腎不全患者という表現もされます。#11では「フレーズ検索」を使用することにより、これらのテキストワードが「タグ」で指定したTitle/Abstractに含まれる論文を検索しています。「フレーズ検索」とはハイフンでつないだ単語が指定した順序で出現するフレーズを検索する機能です。ハイフンを使わずに、フレーズを””(ダブルクォーテーション)で囲んでも「フレーズ検索」になります。#12は、”ESKD”や”ESKF”などの末期腎不全を示す略語をカバーしています。最後に、#13で#1から#12までをORでつなぐことにより、Pの構成要素の検索式が出来上がります。1)Hasegawa T,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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がんチーム医療の実践に向けたワークショップ開催/J-TOP

 一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト主催のJapan TeamOncology Program(J-TOP)は、2023年1月21~22日および2月11~12日、「チームサイエンス・ワークショップ~変動の時代、革新的なアプローチでチームをエンパワーする~」と題したワークショップを開催する。がんチーム医療の実践に向けた「チームサイエンスの理解、優れたリーダーシップ、個人のキャリア形成」などをテーマに、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよび国内施設のがん専門スタッフからなる日米のメンターによるレクチャー、実践的なケーススタディを用いたグループワークおよび参加者によるプレゼンテーションによる参加型研修会が計画されている。<開催概要>主催:一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト監修:米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター開催日:第1部:2023年1月21日(土)、22日(日)ZOOMでのバーチャルセッション第2部:2023年2月11日(土)、12日(日)会場での現地開催会場:国立国際医療研究センター(東京都新宿区)目的:Upon completion of the program, Participants will gain valuable experience with;科学的思考をもとにした優れた医療人および医療チームを育成することを目的に、参加者は下記の目的を達成する。1. Establishing Empowered Teams through Team Science Principles チームサイエンスの原理を用いたエンパワーメントチームの確立2. Formulating Personal and Team Mission & Vision 個人とチームのミッションとビジョンの策定3. Developing Leadership & Effective Communication リーダーシップと効果的なコミュニケーションスキルの習得4. Applying Evidence-Based Medicine EBM(科学的根拠に基づく医療)の概念を応用できる5. Designing a Personal Career Development Plan 個人のキャリア計画を立案する6. Learning Skills to Develop Strategies for Empowered Team チームを強化するための戦略開発スキルを学ぶ参加費:35,000円(医師)/25,000円(看護師・薬剤師、その他のメディカルスタッフ)※チームオンコロジー.Com会員(入会無料)であることが必要※交通・宿泊費は参加者負担プログラム(予定):第1部:J-TOP日米メンターによる講演およびグループワーク(テーマ別の討論)第2部:グループワーク 2(医師・看護師・薬剤師、その他のメディカルスタッフチームでの課題実習)/チームによる課題のプレゼンテーション※本ワークショップの公用語は英語※プログラムの詳細については決定次第ホームページに掲載予定参加要件:医師・看護師・薬剤師・その他のメディカルスタッフで、下記に該当する人1. がん治療の基礎知識がある人2. 最良のがん医療チームをつくるための「チーム医療を科学する」ことへの関心がある人3. 効果的なコミュニケーション、リーダーシップ論、キャリア形成に関心がある人4. チームオンコロジー.Com web会員になる5. 英語でのコミュニケーション能力があれば好ましい6. J-TOPの活動に協力する意思がある参加申込方法:ホームページでの申し込み手続きのほか、メールでのレポート・紹介文の送付1. 課題レポート(英文) “My Dream (Vision): What would I like to become in 5 years, 10 years”上記をテーマに、今回のワークショップへ参加を希望する目的や、今後のキャリア形成に向けたご自身のアクションプランなどを盛り込み、簡潔にまとめてください。※英語による本文のあとに、簡潔に日本語でサマリーもしくは注釈を添付して頂いても結構です。なお、日本語は必須ではありません。2. キャリア紹介(英文) これまでのキャリアの中で達成したものを自由書式で記載してください。研究への参画、チーム医療への貢献、教育的活動、論文発表、学会発表、学会での役職、など何でも結構です(A4用紙1枚以内に英語にてご記入ください)。なお、この資料はあなたのキャリアの中で何が重要であるかを知るためのものであり、格付けを行うものではありません。※MDアンダーソンがんセンターの上野 直人教授によるビデオレクチャー『キャリア形成に必須の Mission & Visionの創り方:Successful Career』をYouTube 動画チャンネルに掲載しています。課題レポート執筆の参考にしてください。提出書式:上記の1.課題レポートならびに2.キャリア紹介については、それぞれのファイルは別にせず、改ページにて記載のこと。書式およびタイトルは自由、A4用紙2枚以内で、施設名と氏名、レポート本文を英語にて必ず記入する。提出方法:施設名と氏名を記載してe-mailに添付のうえ事務局宛(secretariat@teamoncology.com)に送付提出期限:2022年11月11日(金)※定員を超える応募があった場合には、課題レポート、キャリア紹介から書類審査をおこない、参加者を選抜する旨、ご了承ください。<問い合わせ先>Japan TeamOncology Program(J-TOP)事務局〒105-0003 東京都港区西新橋1-6-12メッドコア・アソシエイツ株式会社内e-mail:secretariat@teamoncology.com

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lecanemabが早期アルツハイマー病の症状悪化を抑制、今年度中の申請目指す/エーザイ・バイオジェン

 エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは2022年9月18日付のプレスリリースで、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(これらを総称して早期ADと定義)を対象とした第III相Clarity AD試験において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成したと発表した。 Clarity AD試験は、早期AD患者1,795例を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第III相検証試験。被験者は、lecanemab 10mg/kg bi-weekly投与群またはプラセボ投与群に1:1で割り付けられた。ベースライン時における被験者特性は両群で類似しており、バランスがとれていた。被験者登録基準においては、幅広い合併症あるいは併用治療(高血圧症、糖尿病、心臓病、肥満、腎臓病、抗凝固薬併用など)を許容している。試験実施地域は日本、米国、欧州、中国。 主要評価項目はベースラインから投与18ヵ月時点でのCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes)の変化。主な副次評価項目はベースラインから投与18カ月時点での、アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale 14)、ADCOMS(Alzheimer’s Disease Composite Score)およびADCS MCI-ADL(Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment)。 lecanemab:可溶性のアミロイドβ(Aβ)凝集体(プロトフィブリル)に対するヒト化モノクローナル抗体で、ADを惹起させる因子の1つと考えられている、神経毒性を有するAβプロトフィブリルに選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されている。 今回発表されたClarity AD試験の主な結果は以下のとおり。・intent-to-treat(ITT)集団における解析の結果、投与18ヵ月時点での全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBスコアの平均変化量は、lecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して-0.45となり27%の悪化抑制を示し(p=0.00005)、主要評価項目を達成した。・また、CDR-SBは投与6ヵ月以降すべての評価ポイントにおいてlecanemab投与群がプラセボ投与群と比較して統計学的に高度に有意な悪化抑制を示した(全評価ポイントでp<0.01)。・副次評価項目であるアミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積、ADAS-cog14、ADCOMSおよびADCS MCI-ADLの投与18ヵ月時点での変化についても、すべての項目においてプラセボと比較して統計学的に高度に有意な結果を示した(p<0.01)。・抗アミロイド抗体に関連する有害事象であるアミロイド関連画像異常(ARIA)について、ARIA-E(浮腫/浸出)の発現率は、lecanemab投与群で12.5%、プラセボ投与群で1.7%だった。そのうち症候性のARIA-Eの発現率は、lecanemab投与群で2.8%、プラセボ投与群で0.0%だった。・ARIA-H(ARIAによる脳微小出血、大出血、脳表ヘモジデリン沈着)の発現率は、lecanemab投与群で17.0%、プラセボ投与群で8.7%だった。症候性ARIA-Hの発現率は、lecanemab投与群で0.7%、プラセボ投与群で0.2%だった。ARIA-Hのみ(ARIA-Eを発現していない被験者でのARIA-H)はlecanemab投与群(8.8%)とプラセボ投与群(7.6%)で差はみられなかった。・ARIA(ARIA-Eおよび/またはARIA-H)の発現率はlecanemab投与群で21.3%、プラセボ投与群で9.3%であり、総じてlecanemabのARIA発現プロファイルは想定内であった。 本試験結果については、2022年11月29日にアルツハイマー病臨床試験会議で発表し、査読付き医学誌で公表する予定となっているほか、同社では本試験結果をもとに2022年度中の米国フル承認申請、および日本、欧州での承認申請を目指している。

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高リスク腎細胞がん術後補助療法、アテゾリズマブの有効性は/Lancet

 再発リスクが高い腎細胞がん術後患者において、アテゾリズマブはプラセボと比較し無病生存(DFS)期間を有意に延長せず、腎細胞がんの術後補助療法としてアテゾリズマブを支持する結果は得られなかった。米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta Kumar Pal氏らが、28ヵ国215施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「IMmotion010試験」の結果を報告した。局所腎細胞がんに対する標準治療は手術であるが、再発例が多く、免疫療法を含む術後補助療法が検討されていた。Lancet誌オンライン版2022年9月10日号掲載の報告。再発リスクが高い腎細胞がん778例、アテゾリズマブ群またはプラセボ群に無作為化 研究グループは、18歳以上の淡明細胞型腎細胞がんまたは肉腫様腎細胞がんで、再発リスクが高く(Fuhrman grade4のT2、grade3/4のT3a、全gradeのT3b-cおよびT4またはTxN+、同時性副腎/肺転移または異時性肺/リンパ節/軟組織転移で最初の腎摘除術後12ヵ月以上経過後の再発)、全身療法未実施の患者を、アテゾリズマブ(1,200mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け(層別化因子:病期、地域、PD-L1発現)、無作為化後12週以内に腎摘除術(±転移巣切除)を行い、アテゾリズマブまたはプラセボを術後3週ごと16サイクルまたは1年、あるいは再発または許容できない毒性発現等まで投与した。 主要評価項目は、治験責任医師の評価によるDFS、副次評価項目は全生存(OS)期間等とし、無作為化された全患者(intention-to-treat集団)を解析対象とした。また、安全性評価対象集団は、アテゾリズマブまたはプラセボを投与量にかかわらず1回以上投与されたすべての患者とした。 2017年1月3日~2019年2月15日の期間に778例が登録され、アテゾリズマブ群に390例(50%)、プラセボ群に388例(50%)が割り付けられ追跡評価を受けた。DFSはアテゾリズマブ群57.2ヵ月、プラセボ群49.5ヵ月で有意差なし データカットオフ(2022年5月3日)時点で、追跡期間中央値は44.7ヵ月(四分位範囲[IQR]:39.1~51.0)であった。 治験責任医師評価によるDFS期間中央値は、アテゾリズマブ群57.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:44.6~評価不能)、プラセボ群49.5ヵ月(47.4~評価不能)であった(ハザード比[HR]:0.93、95%CI:0.75~1.15、p=0.50)。 主なGrade3~4の有害事象は、高血圧(アテゾリズマブ群7例[2%]vs.プラセボ群15例[4%])、高血糖(10例[3%]vs.6例[2%])、下痢(2例[1%]vs.7例[2%])であった。アテゾリズマブ群69例(18%)およびプラセボ群46例(12%)に重篤な有害事象が発現した。治療に関連した死亡の報告はなかった。

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慢性期統合失調症患者に対する音楽療法の有効性および睡眠障害の予測因子

 統合失調症患者に睡眠障害がみられることは少なくない。このような場合、非侵襲的介入である音楽療法が有益である可能性がある。台湾・輔英科技大学のMei-Jou Lu氏らは、統合失調症患者の睡眠障害に対する音楽療法の有効性を調査した。その結果、統合失調症患者の睡眠障害に対する音楽療法のメリットが実証された。Archives of Psychiatric Nursing誌2022年10月号の報告。 慢性期病棟で睡眠障害を伴う統合失調症患者を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。対象者は、標準療法のみを行う対照群と、標準療法に加えて4週間の就寝前音楽療法を行う介入群に割り付けられた。睡眠障害の重症度を測定するため、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。両群間のベースライン時と4週間後のPSQIスコアの変化を分析するため、一般化推定方程式を用いた。介入群における治療効果の予測因子の特定も試みた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、介入群35例、対照群31例の計66例。・人口統計学的変数で調整した後、介入群のPSQIスコアの変化は対照群と比較し、有意に大きく(群×時間の推定値:-7.05、p<0.001)、音楽療法の有効性が示唆された。・無宗教の患者や慢性疾患を有する患者では、より優れた有効性が予測された。・高齢患者では、音楽療法の有効性が乏しい可能性が示唆された。・統合失調症患者に対する音楽療法の有効性が示唆される一方で、医療従事者は実臨床において統合失調症患者の重症度の変化を考慮する必要がある。

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妊娠糖尿病診断の明確なカットオフ値perfect lineはあるのか?(解説:住谷哲氏)

 現在の妊娠糖尿病(GDM)の診断は HAPO(Hyperglycemia and adverse pregnancy outcomes)研究の結果を受けてIADPSG(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)が2010年に発表した診断基準に基づいている1)。わが国においても、当初は日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会および日本糖尿病・妊娠学会で見解の相違があったが2015年に統一された。GDMの診断基準は「75gOGTTにおいて、(1)空腹時血糖値92mg/dL以上、(2)1時間値180mg/dL以上、(3)2時間値153mg/dL以上のいずれか1点を満たした場合」とされている(ただし妊娠中の明らかな糖尿病[overt diabetes in pregnancy]は除く)。 注意する必要があるのは、HAPO研究においてLGA(large for gestational age)の発症と血糖値との間には直線的関係があり、閾値が認められなかった点である2)。つまり血糖値が低ければ低いほどLGAの発症は減少する。したがって現在のGDMの診断基準はexpert consensusであり、LGAを含む主要評価項目のオッズ比(OR)が、HAPO研究でのコントロール群(全例を7群に分けた際に最も血糖値の低いカテゴリー)と比較して1.75倍になる血糖値(92-180-153)がカットオフ値として採用された。したがって、海外ではこのIADPSGの診断基準を採用していない国もあり、本試験が実施されたニュージーランドもその一つである。ニュージーランドでは2014年に公表された妊娠糖尿病の診断基準が用いられており、それが今回の試験の高基準値(99-xx-162)に相当する3)。 結果は、主要評価項目であるLGAの発症率は低基準値群と高基準値群との間に有意差はなかった。さらに母児の健康状態に関連するその他の副次評価項目にも両群にほとんど差はなかった。当然であるが、低基準値群で妊娠糖尿病の診断率が高く、医療介入も増加し、医療費も増大している。この結果だけから見ると、高基準値を採用するのに問題はないように思われるが、問題は低基準値と高基準値の間に分類された妊婦のアウトカムがどうであったかにある。この群は、低基準値を採用すれば妊娠糖尿病と診断されて介入対象となったが、高基準値を採用すると妊娠糖尿病と診断されず介入されなかったことになる(milder degree of GDM、以下milder GDM)。この群に対するサブグループ解析は事前に設定されており、その結果も記載されている。低基準値で妊娠糖尿病と診断された310人のうち、195人(63%)がmilder GDMであり、高基準群では178人がmilder GDMに分類された。両群におけるLGAの発症は、低基準値群12人(6.2%)、高基準値群32人(18.0%)であり、LGA発症の調整後相対リスク比は0.33(95%信頼区間[CI]:0.18~0.62)、NNTは4(95%CI:2~17)であった。したがって、milder GDMにおいては低基準値による診断が母児に健康上のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。 本試験の結果より、高基準値による妊娠糖尿病の診断は母児に対して健康上のリスクとならないことが明らかとなった。医療経済的には高基準値の採用がより正当化されるだろう。しかし事前に設定されたサブグループ解析の結果をどのように解釈するか? ニュージーランド当局が本試験の結果を踏まえて、妊娠糖尿病の診断基準に対してどのような判断を下すかを注視したい。

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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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鼻腔ぬぐい液を用いた新型コロナウイルス検査-自己採取と医療従事者採取の比較-(解説:小金丸博氏)

 4~14歳の小児において、鼻腔ぬぐい液を用いた新型コロナウイルスの検出率を自己採取と医療従事者採取で比較した横断研究がJAMA誌オンライン版2022年8月26日号に報告された。自己採取は簡単な説明資材(ビデオと印刷物)を見た後に行い、その次に医療従事者が2回目の検体を採取した。その結果、陽性一致率は97.8%(95%信頼区間[CI]:94.7~100.0)、陰性一致率は98.1%(同:95.6~100.0)と高率だった。陽性検体のCt値も検討されているが、両群間で同等の結果であった。検査結果が不一致となったのが4例あったが、陽性検体において比較的高いCt値を示しており、ウイルスの排出量が少ない場合に一致率が低下する可能性が示唆された。 自己検体採取に関しては、過去に性感染症や呼吸器系ウイルス感染症で検討されており、成人において高い一致率が示されてきた。本研究では、小児において自己採取の高い精度を示しており、学校等におけるマススクリーニングで活用できる可能性がある。医療従事者が検体採取を行う場合、自己採取と比較して時間と費用がかかり、加えて、医療従事者は常に患者からの感染リスクを伴う。これらの観点から自己採取のメリットは大きく、自己採取と医療従事者採取で検査結果の一致率が高いのであれば、今後さらに自己採取による検査が広がる可能性がある。 本研究のLimitationとして以下のようなことが挙げられる。第1に、本研究の参加者はすべて有症状者であり、無症状の小児において同等の結果が得られるかは不明である。自己採取のメリットのひとつは、学校などの集団環境でのスクリーニング検査で用いることであるが、多くの人が無症候性であることが想定される場面での使用には大きな懸念事項がある。第2に、本研究は 2021年7月~8月のデルタ変異株の流行期に行われたことであり、変異株の違いがテスト結果に与える影響は不明である。第3に、不快感を伴う研究への自発的な参加においては、とくに子供が関与している場合、より協力的な子供だけが登録され、テストに消極的な子供の親は参加を辞退する可能性があるため、選択バイアスにつながる可能性がある。 新型コロナウイルス感染症は、早期に診断することによって重症化の防止や感染拡大の抑制につながる。自己検体採取はさまざまな場面で早期診断のための重要なツールとなりうるため、今後、無症候者や変異株の違いが検査結果に与える影響が検証され、検査方法として確立することを期待したい。

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悪化するその慢性頭痛、MOHの可能性は?【知って得する!?医療略語】第20回

第20回 悪化するその慢性頭痛、MOHの可能性は?薬が原因になる頭痛があると聞きました。鎮痛薬の過剰な使用による頭痛があり、MOHと呼ばれています。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MOH【日本語】鎮痛薬使用過多による頭痛 (薬物乱用頭痛)【英字】medication-overuse headache【分野】脳神経【診療科】脳神経外科【関連】慢性片頭痛実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。外来で慢性片頭痛患者の求めに応じて鎮痛薬を処方していると、いつの間にか鎮痛薬の処方量や処方頻度が増えていることがあります。そのような時、薬剤の使用過多による頭痛(MOH:medical-overuse headache)の可能性を疑う必要があります。MOHは国際頭痛分類(ICHD)では、物質またはその離脱による頭痛として二次性頭痛に分類されます。同分類は第2版(ICHD-2)までは「薬物乱用頭痛」と訳されていました。しかし、「薬物乱用頭痛」は、まるで非合法な薬剤を乱用しているようなイメージが連想されるため、第3版(ICHD-3)からは「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」に翻訳が変更されています。MOHは片頭痛や緊張型頭痛で市販薬を含む鎮痛薬を過剰に服用することで生じる頭痛です。最初は月に数回程度の頭痛で鎮痛薬を服用していたものが、気付いたらほぼ連日にわたり頭痛薬を服用しているというものです。薬剤の使用過多は、薬の鎮痛効果の減弱を招き、さらに服用量が増えるという悪循環を招きます。MOHが生じるメカニズムは、痛みの調節系の異常だけではなく、薬物依存を形成する神経系と類似した機序の関与も推定されています。日本では市販の複合鎮痛薬によるMOHが主流を占める一方で、近年はトリプタン乱用頭痛の増加が指摘されています。ICHD-3によれば、MOHの診断基準は、慢性的な頭痛が月に15日以上存在し、1種類以上の治療薬を3ヵ月以上にわたり定期的に乱用し、ほかに最適なICHD-3の診断がないこと、となっています。MOHの治療原則は、使用過多になっている鎮痛薬の中止です。MOHが疑われる場合、患者さんにMOHの可能性を伝え、乱用している薬剤を中止し離脱を試みます。まずは患者さんにMOHについて説明し、使用過多の薬剤中止と予防薬を含めた代替薬の提案をします。MOH患者は、患者自身も薬が効かなくなっていることに薄々気付いていることも多く、中止に向けて努力してくれる方も少なくありません。しかし、筆者の経験上は多用していた鎮痛薬をスパッと止められないケースも多いのが現状です。軽い頭痛による鎮痛薬の使用を控え、「頭痛になるのでは…」という予期不安での薬剤使用を控えることから始めてもらう場合もあります。なお、うまく鎮痛薬の使用から離脱できても慢性頭痛が増悪する場合は、MOHは否定的となり、診断を考え直す必要があります。片頭痛に緩徐進行性(たとえば、肥厚性硬膜炎など)の二次性頭痛が併存する可能性も念頭に置く必要があると考えられ、必要に応じて画像のフォローも必要だと考えます。1)国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版:二次性頭痛2)五十嵐 久佳.神経治療. 2019;36:229-232.3)濱田 潤一. 臨床神経. 2011;51:1150-1152.

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低用量メトトレキサート、悪性黒色腫リスク増大と関連?

 メトトレキサート(MTX)は関節リウマチを含む炎症性疾患の治療で幅広く使用されているが、低用量MTX曝露は悪性黒色腫のリスク増大と関連することが、オーストラリア・アルフレッド病院のMabel K. Yan氏らが行ったシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。ただし、著者は結果を踏まえて、「リスク増大の絶対値は取るに足らないもので、現実的な影響は無視できるものだ」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月31日号掲載の報告。 研究グループは、MTX曝露が悪性黒色腫のリスク増大と関連するかをシステマティック・レビューとメタ解析で調べた。 創刊~2022年5月12日のMEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govを検索して、適格試験を特定。低用量MTX曝露被験者と非曝露被験者を比較して悪性黒色腫のオッズ比(OR)またはリスク比(RR)を評価していたケースコントロール試験、コホート試験、無作為化臨床試験(RCT)を適格試験とした。言語については限定しなかった。 2人のレビュアーがそれぞれ試験特性とアウトカムデータを抽出。Meta-analysis of Observational Studies in Epidemiology(MOOSE)ガイドラインを用いて解析を行い、試験の質の評価は、RCTはコクランバイアスリスクツールを用い、コホート試験とケースコントロール試験についてはJoanna Briggs Institute Checklistを用いた。 ケースコントロール試験からのオッズ比と、コホート試験またはRCTからの相対リスクまたはハザード比(HR)をプールし、ランダム効果モデルメタ解析を行った。 事前に規定したアウトカムは、低用量MTX曝露被験者と非曝露被験者を比較した悪性黒色腫のオッズ比、ハザード比、リスク比であった。 主な結果は以下のとおり。・検索により、17試験(RCT 8、コホート試験5、ケースコントロール試験4)が適格として包含された。・主要解析には、12試験・悪性黒色腫1万6,642例がプールされた。MTXの適応症は、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患であった。残りの5試験は不明であった。・曝露群は非曝露群と比較して、悪性黒色腫のリスクがわずかに増大した(プール相対リスク:1.15、95%信頼区間[CI]:1.08~1.22)。しかし、この関連は、最大規模の試験を除外して行った感度解析では維持されなかった(1.11、1.00~1.24)。・類似のリスク推定値は、MTX曝露群vs.免疫調節薬単独群または免疫調節薬+MTX群を比較群とするサブグループ解析や、MTXの適応症が関節リウマチの場合に示唆された。・悪性黒色腫の地理的罹患率を用いて算出した有害必要数(number needed to harm:NNH)は、オーストラリアでは1万8,630例、北米では4万1,425例であった。■関連記事メトトレキサート、重症円形脱毛症に有効

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オープンソースの自動インスリン伝達システム、1型DM血糖コントロールを改善/NEJM

 7~70歳の1型糖尿病患者において、オープンソースの自動インスリン伝達(AID)システムはセンサー付きインスリンポンプと比較して、24週時に血糖値が目標範囲にある時間の割合が有意に高く、1日のうち血糖値が目標範囲内である時間は3時間21分延長したとの研究結果が、ニュージーランド・オタゴ大学のMercedes J. Burnside氏らが実施した「CREATE試験」で示された。研究結果は、NEJM誌2022年9月8日号で報告された。ニュージーランドの無作為化対照比較試験 CREATE試験は、1型糖尿病患者におけるオープンソースAIDシステムの有効性と安全性のデータの収集を目的とする非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年9月~2021年5月の期間に、ニュージーランドの4施設で参加者の登録が行われた(ニュージーランド保健研究会議[HRC]の支援を受けた)。 対象は、年齢7~70歳、1型糖尿病の診断を受けてから1年以上が経過し、インスリンポンプ療法を6ヵ月以上受け、糖化ヘモグロビンの平均値<10.5%(91mmol/mol)の患者であった。 被験者は、オープンソースAIDシステムまたはセンサー付きインスリンポンプ(対照)を使用する群に無作為に割り付けられた。また、年齢7~15歳が小児、16~70歳は成人と定義された。 AIDシステムは、AndroidAPS 2.8(標準的なOpenAPS 0.7.0アルゴリズムを使用)の修正版で、試作段階のDANA-iインスリンポンプとDexcom G6持続血糖モニター(CGM)を組み合わせて用いた。ユーザーインターフェースは、Androidスマートフォンアプリケーション(AnyDANA-Loop)だった。 主要アウトカムは、155~168日目(試験の最後の2週間[23~24週])に、血糖値が目標範囲(70~180mg/dL[3.9~10.0mmol/L])にある時間の割合とされた。年齢による治療効果に差はない 97例が登録され、AID群に44例(小児21例[年齢中央値14.0歳、女児11例]、成人23例[40.0歳、15例])、対照群に53例(27例[11.0歳、13例]、26例[38.0歳、15例])が割り付けられた。ベースラインの平均糖化ヘモグロビン値は小児が7.5%、成人は7.7%だった。 血糖値が目標範囲にある時間の割合の平均値(±SD)は、AID群がベースラインの61.2±12.3%から24週時には71.2±12.1%へ上昇し、これに対し対照群は57.7±14.3%から54.5±16.0%へと低下しており、有意な差が認められた(補正後平均群間差:14.0ポイント、95%信頼区間[CI]:9.2~18.8、p<0.001)。また、AID群は、1日のうち血糖値が目標範囲内である時間が、対照群よりも3時間21分長かった。 血糖値が目標範囲にある時間の割合が70%以上で、かつ範囲外(<70mg/dL)にある時間の割合が4%未満の患者は、AID群が52.0%であったのに対し、対照群は11.0%であった(補正後平均群間差:36.9ポイント、95%CI:25.9~48.5)。また、年齢による治療効果の差はみられなかった(p=0.56)。 小児では、AID開始から2週間以内には介入効果が認められ、24週の試験期間中も維持された。また、AID群は、夜間(午前0時~午前6時)の血糖値が目標範囲にある時間の割合が76.8±15.8%と、日中(午前6時~午後12時)の64.3±11.7%に比べて高かった。対照群は、それぞれ57.2±21.4%および50.9±17.4%であった。成人のAID群も小児と同様に、夜間が85.2±12.7%と高かったのに対し日中は70.9±12.7%であった。対照群は、それぞれ53.5±20.1%および57.5±14.4%であり、夜間と日中で同程度だった。 重度の低血糖および糖尿病性ケトアシドーシスは両群とも発現せず、インスリン投与のアルゴリズムおよび自動制御に関連した有害事象もみられなかった。また、重篤な有害事象は、AID群で2件(輸液セットの不具合に起因する高血糖による入院と、糖尿病とは無関係の入院)、対照群で5件(インスリンポンプの不具合による高血糖が1件、糖尿病とは無関係のイベントが4件)認められた(いずれも小児)。 著者は、「この試験の参加者は、多くの実臨床研究に比べ、より典型的な1型糖尿病であり、オープンソースAIDの使用経験がなかったことから、さまざまな1型糖尿病患者が、このシステムから利益を得る可能性があることが示唆される」としている。

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英語で「慎重に観察します」は?【1分★医療英語】第47回

第47回 英語で「慎重に観察します」は?His hemoglobin is trending down. Could you monitor his blood pressure?(ヘモグロビンが低下傾向です。血圧を見ておいてもらえますか?)Sure, I will keep a close eye on his vital signs.(わかりました。バイタルサインを慎重に観察しておきますね)《例文1》We must keep a careful eye on that patient.(あの患者さんは慎重に観察しないといけないですね)《例文2》You’ve put on a lot of weight. You need to keep an eye on what you eat.(体重がかなり増えていますね。食べているものに気を配るようにしましょう)《解説》今回ご紹介する“keep an eye on”は「〜を注意して見ておく」「〜から目を離さないようにする」といった意味合いのある表現で、医療機関でもよく用いられる表現の一つです。たとえば、バイタルサインや病状の不安定な患者さんがいるときには、医療チーム内で「慎重に観察しましょう」というコミュニケーションが取られるでしょうが、そんな時にピッタリの表現です。“monitor”や“watch”などの単語にも置き換えは可能ですが、より「注意深く」というニュアンスが含まれるので、好まれて用いられます。さらに、その注意深さを重ねて強調したい時には、“eye”の前に“close”(慎重な)を付けて“keep a close eye”としたり、“careful”(注意深い)を付けて“keep a careful eye”としたりします。こうすることで、さらに念入りに観察しなければならない、というニュアンスが出ます。これらの場合、冠詞の“an”が“a”に変わることにも注意してください。講師紹介

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第131回 感染症後の体調不良(sickness behavior)を誘発する脳神経を同定

感染症は病原体を直接の原因とはしない食欲低下、水分を摂らなくなる(無飲症)、倦怠感、痛み、寒気、体温変化などのとりとめのない種々の症状や生理反応を引き起こします。ともすると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状の一因かもしれないそういう体調不良(sickness behavior)に寄与する脳の神経がマウス実験で同定されました1)。よく知られているとおり人体は絶えずある種の均衡を保とうとし、体温、食欲、睡眠などを調節しています。われわれが日々健康に生きられるのも恒常性と呼ばれるその均衡のおかげです2)。しかし病気になってその均衡が崩れると上述したような一連の症状や生理的反応が生じます。sickness behaviorの少なくとも幾らかは脳幹に端を発することが先立つ研究で示唆されています3)。今は米国バージニア州のJanelia Research Campusに籍を置くAnoj Ilanges氏やその同僚はさらに突き詰めて脳幹のどこがsickness behaviorの発端なのかを同定することを目指しました。最初にIlanges氏らは細菌感染と同様にsickness behaviorを引き起こす細菌毒素・リポ多糖(LPS)をマウスに注射し、続いて脳のどこが活性化するかをFOSと呼ばれるタンパク質を頼りに探りました。FOSは神経発火の後で発現することが多く、神経活動の目安となります2)。そのFOSがLPS注射マウスの脳幹で隣り合う2つの領域・孤束核(NTS)と最後野(AP)に多く認められました。LPSに反応するとみられるそれら2領域を活性化したところLPSがなくともsickness behaviorが生じ、NTS- AP領域こそsickness behaviorに寄与する神経の在り処であることが確かになりました。さらなる研究によりそれら神経はタンパク質(神経ペプチド)ADCYAP1を発現していることも判明し、ADCYAP1発現神経を活性化するとNTS- AP領域の活性化の時と同様にLPSが誘発するsickness behaviorが再現されました。また、それらADCYAP1発現神経を阻害するとLPS投与後に見られる食欲低下、無飲症、運動低下を解消とはいかないまでも和らげることができました。sickness behaviorに寄与するのはNTS- AP領域の神経のみというわけではなさそうで、今回の報告と同様にNatureに掲載された別のチームの最近の研究では発熱、食欲低下、暖を取る行動などのsickness behavior症状に視床下部の神経が不可欠なことが示されています4)。今回の研究で対象外だった睡眠障害や筋痛などの他のsickness behaviorの出どころの検討も興味深いところです2)。NTS-AP領域は脳と各臓器の連絡路・迷走神経からの信号を直接受け取り、血中に放たれたタンパク質などの体液性信号を感知することが知られています。今回の研究ではsickness behaviorを引き起こすNTS-AP神経の反応がどの生理成分を頼りにしているのかはわからず仕舞いでした。ウイルスや非細菌感染症でもNTS-AP神経が果たして活性化するのかどうかも調べられていません。ロックフェラー大学在籍時に今回の研究を手掛けたIlanges氏は今の職場であるJanelia Research Campusで続きに取り組む予定であり、他の研究者の加勢も期待しています。Ilanges氏等の今回の結果は何らかの理由でsickness behaviorが解消しない患者の治療の開発に役立ちそうです。たとえば慢性的に不調の患者の食欲を回復させる薬が実現するかもしれません。また、広い意味では感染症への対抗に脳の役割が不可欠なことを示した今回の成果を契機にADYAP1発現神経活性化後の脳の反応、sickness behaviorの持続の調節の仕組み、COVID-19の罹患後症状などの感染後慢性症状へのNTS-AP経路の寄与の検討5)などのさまざまな研究が今後続いていくでしょう2)。参考1)Ilanges A, et al.Nature.2022;609:761-771.2)Research Pinpoints the Neurons Behind Feeling Ill / TheScientist3)Konsman JP, et al. Trends Neurosci.2002;25:154-9. 4)Osterhout JA, et al.Nature.2022;606:937-944.5)Infection Activates Specialized Neurons to Drive Sickness Behaviors / Genetic Engineering & Biotechnology News.

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閉経後乳がん術後内分泌療法の延長、6年vs.3年(DATA)/ESMO2022

 術後に2~3年のタモキシフェン投与を受け、無病状態にあったホルモン受容体(HR)陽性の閉経後乳がん患者において、続いてアナストロゾールを投与した場合の効果を複数の期間で検討した結果が報告された。オランダ・マーストリヒト大学病院のVivianne Tjan-Heijnen氏が、第III相非盲検無作為化比較試験(DATA試験)の最終解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:ER+および/またはPR+、2~3年の術後タモキシフェン投与を受け、再発のない閉経後乳がん患者1,660例・試験群:アナストロゾール(1mg/日)を6年間投与 827例アナストロゾール(1mg/日)を3年間投与 833例・評価項目:[主要評価項目]無作為化後3年以降の調整無病生存率(aDFS)[副次評価項目]調整全生存期間(aOS)[層別化因子]リンパ節転移の状態、ホルモン受容体・HER2の発現状況、タモキシフェンの投与期間 主な結果は以下のとおり。・2006年6月~2009年8月にオランダの79施設から1,660例が登録され、6年群(827例)または3年群(833例)に無作為に割り付けられた。・調整追跡期間中央値は10.1年であった。・ベースライン時の特性は両群でバランスがとれており、ER+およびPR+が6年群75.8% vs.3年群76.0%、pN1が52.5% vs.54.9%だった。・10年aDFSは6年群で69.1% vs.3年群で66.0%となり、統計学的に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.72~1.01、p=0.073)。・10年aDFSのサブグループ解析の結果、ER+およびPR+の患者において、6年群で70.8% vs.3年群で64.4%(HR:0.77、95%CI:0.63~0.93)だったのに対し、ER+またはPR+の患者では、63.7% vs.70.9%(HR:1.22、95%CI:0.86~1.73)だった(相互作用のp=0.018)。さらに、ER+およびPR+かつリンパ節転移陽性の患者では68.7% vs.60.7%(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、ER+およびPR+かつリンパ節転移陽性かつ腫瘍サイズ≧2cmの患者では70.0% vs.56.4%(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)だった。・aOSは6年群で80.9% vs.3年群で79.2%となり、統計学的に有意な差は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.75~1.16、p=0.53)。・aOSのサブグループ解析の結果、ER+およびPR+の患者においては6年群で82.7% vs.3年群で78.7%(HR:0.83、95%CI:0.65~1.07)、ER+またはPR+の患者では、75.2% vs.81.0%(HR:1.33、95%CI:0.86~2.05)だった(相互作用のp=0.051)。 Tjan-Heijnen氏は結論として、ホルモン受容体陽性乳がんのすべての閉経後女性において、アロマターゼ阻害薬による5年以上の延長治療を行うことは推奨できないとした。ただし、ホルモン受容体の状態(ER+およびPR+)、リンパ節転移の状態(リンパ節転移陽性)については、延長治療を行うにあたっての予測因子となる可能性があるとしている。

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重症心不全への完全磁気浮上型遠心ポンプ、5年生存率は良好/JAMA

 重症心不全患者に対する左室補助人工心臓(LVAD)療法において、完全磁気浮上型遠心ポンプLVAD(HeartMate 3)は、5年後の複合アウトカムおよび全生存が良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが米国の69施設で実施した無作為化非劣性試験「MOMENTUM 3試験」の延長試験で示した。MOMENTUM 3の本試験では、2年後の後遺障害を伴う脳卒中またはデバイス交換の再手術のない生存に関して、HeartMate 3のHeartMate II(軸流ポンプLVAD)に対する優越性が認められ、米国食品医薬品局(FDA)は、本試験でLVAD療法を継続している患者の追跡調査を5年後まで延長することを条件に、2018年、HeartMate 3を永久植込み治療(destination therapy:DT)として承認している。著者は、「今回の結果は、完全磁気浮上型遠心ポンプ式LVADの使用を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。遠心ポンプ群vs.軸流ポンプ群、2年間の無作為化非劣性試験終了後、3年間追跡 MOMENTUM 3試験はLVADを要する重症心不全患者を対象とし、心臓移植へのブリッジまたはDTかを問わず、HeartMate 3(遠心ポンプ群)またはHeartMate II(軸流ポンプ群)を植え込む群に無作為に割り付け追跡評価した。2年間の無作為化非劣性試験が終了し、2年後の追跡調査時にLVAD療法を継続していた患者について、さらに3年間(植え込み後5年まで)追跡調査を実施した。 主要評価項目は、後遺障害を伴う脳卒中(修正Rankin尺度スコア>3)またはデバイス交換の再手術のない生存(移植、回復またはLVAD療法)、その他の評価項目は全生存率などであった。 無作為化非劣性試験で植込み術を受けた1,020例(遠心ポンプ群515例、軸流ポンプ群505例)のうち、2年後もLVAD療法を継続していたのは536例(遠心ポンプ群289例、軸流ポンプ群247例)であった。5年無イベント生存率54.0% vs.29.7%、5年全生存率58.4% vs.43.7% 536例中、59例は主試験終了と延長試験開始の間にギャップが生じたため2年以降のデータを収集できず、477例(遠心ポンプ群258例、軸流ポンプ群219例)の2年以降のデータが解析に含まれた(年齢中央値62歳、女性86例)。なお、477例のうち295例(遠心ポンプ群178例、軸流ポンプ群117例)は2019年6月~2021年4月の期間に同意を得て延長試験に登録され、他の182例からは限定的なデータが提供された。 後遺障害を伴う脳卒中またはデバイス交換の再手術のない5年無イベント生存率のKaplan-Meier推定値は、遠心ポンプ群54.0%、軸流ポンプ群29.7%であった(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.45~0.67、p<0.001)。 5年間の追跡期間中に、遠心ポンプ群は515例中156例(30.3%)、軸流ポンプ群は505例中184例(36.4%)が死亡した。Kaplan-Meier法による5年全生存率は、それぞれ58.4%および43.7%であった(HR:0.72、95%CI:0.58~0.89、p=0.003)。 重篤な有害事象の頻度は、遠心ポンプ群が軸流ポンプ群より有意に低かった(デバイス血栓症:0.010 vs.0.108イベント/患者年、脳卒中:0.050 vs.0.136イベント/患者年、出血:0.430 vs.0.765イベント/患者年)。

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