高リスク腎細胞がん術後補助療法、アテゾリズマブの有効性は/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/30

 

 再発リスクが高い腎細胞がん術後患者において、アテゾリズマブはプラセボと比較し無病生存(DFS)期間を有意に延長せず、腎細胞がんの術後補助療法としてアテゾリズマブを支持する結果は得られなかった。米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta Kumar Pal氏らが、28ヵ国215施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「IMmotion010試験」の結果を報告した。局所腎細胞がんに対する標準治療は手術であるが、再発例が多く、免疫療法を含む術後補助療法が検討されていた。Lancet誌オンライン版2022年9月10日号掲載の報告。

再発リスクが高い腎細胞がん778例、アテゾリズマブ群またはプラセボ群に無作為化

 研究グループは、18歳以上の淡明細胞型腎細胞がんまたは肉腫様腎細胞がんで、再発リスクが高く(Fuhrman grade4のT2、grade3/4のT3a、全gradeのT3b-cおよびT4またはTxN+、同時性副腎/肺転移または異時性肺/リンパ節/軟組織転移で最初の腎摘除術後12ヵ月以上経過後の再発)、全身療法未実施の患者を、アテゾリズマブ(1,200mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け(層別化因子:病期、地域、PD-L1発現)、無作為化後12週以内に腎摘除術(±転移巣切除)を行い、アテゾリズマブまたはプラセボを術後3週ごと16サイクルまたは1年、あるいは再発または許容できない毒性発現等まで投与した。

 主要評価項目は、治験責任医師の評価によるDFS、副次評価項目は全生存(OS)期間等とし、無作為化された全患者(intention-to-treat集団)を解析対象とした。また、安全性評価対象集団は、アテゾリズマブまたはプラセボを投与量にかかわらず1回以上投与されたすべての患者とした。

 2017年1月3日~2019年2月15日の期間に778例が登録され、アテゾリズマブ群に390例(50%)、プラセボ群に388例(50%)が割り付けられ追跡評価を受けた。

DFSはアテゾリズマブ群57.2ヵ月、プラセボ群49.5ヵ月で有意差なし

 データカットオフ(2022年5月3日)時点で、追跡期間中央値は44.7ヵ月(四分位範囲[IQR]:39.1~51.0)であった。

 治験責任医師評価によるDFS期間中央値は、アテゾリズマブ群57.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:44.6~評価不能)、プラセボ群49.5ヵ月(47.4~評価不能)であった(ハザード比[HR]:0.93、95%CI:0.75~1.15、p=0.50)。

 主なGrade3~4の有害事象は、高血圧(アテゾリズマブ群7例[2%]vs.プラセボ群15例[4%])、高血糖(10例[3%]vs.6例[2%])、下痢(2例[1%]vs.7例[2%])であった。アテゾリズマブ群69例(18%)およびプラセボ群46例(12%)に重篤な有害事象が発現した。治療に関連した死亡の報告はなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏

東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授