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認知症患者のインフルエンザワクチン接種の抗体反応に対する光曝露の影響

 認知症受け入れ施設の照明条件を改善すると、患者の睡眠、概日リズム、健康状態の改善がみられる。スイス・Ecole Polytechnique Federale de LausanneのMirjam Munch氏らは、日中に明るい光を浴びると、認知症患者のインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答がサポートされる可能性について報告を行った。この結果は、毎日より多くの光を浴びることで、認知症患者の免疫応答が上昇することを示唆しており、今後の研究において、定期的な光曝露がヒトの免疫系に対し直接的または安定した概日睡眠覚醒リズムを介して良い影響を及ぼすかが明らかになることが期待される。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年9月20日号の報告。 施設に入所している認知症患者80例を対象に、光曝露と休息および活動サイクルとの関係を評価するためアクティビティトラッカー活動量計を8週間使用した。毎年のインフルエンザワクチン接種前と接種4週間後に採血した血液サンプルを用いて、患者の免疫反応を分析した。3つのインフルエンザウイルス株(H3N2、H1N1、IB)に対する抗体濃度は、赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition)アッセイで定量化した。 主な結果は以下のとおり。・個々の光曝露プロファイル(日光を浴びるを含む)を定量化し、照度392.6ルクスを中央値として低光曝露群と高光曝露群に分類した。・両群間で、認知機能障害の重症度、年齢、性別に違いは認められなかった。・高光曝露群は、低光曝露群と比較し、ワクチン接種前の濃度が同等であったにもかかわらず、H3N2ワクチンに対する抗体価が有意に増加し、概日活動の振幅が有意に大きかった(日中の活動量が多く、夜間の活動量が少ない)。・全対象者の75%以上で、3つのインフルエンザウイルス株に対する十分な血清保護応答が確認された。

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【第221回 】液体窒素を飲むとどうなるか?

液体窒素を飲むとどうなるか?いらすとやより使用私の子供がとあるYouTubeチャンネルの動画を見ていたとき「液体窒素を口に含んでも大丈夫」と言っていました。確かにそうかもしれない、と私も思いました。熱したフライパンに水を垂らしたとき、水滴は玉になったままフライパンの上を転がるのと同じ原理ということです。しかし、間違って飲んでしまったらどうなるんだろう…。ちょっと気になったので調べてみました。まとまった報告はなく、症例報告をいくつか紹介してみます。Kim DW.Stomach Perforation Caused by Ingesting Liquid Nitrogen: A Case Report on the Effect of a Dangerous Snack.Clin Endosc. 2018 Jul;51(4):381-383.これは13歳の男児が遊園地でお菓子を食べたところ、突然腹痛を訴えて来院した症例報告です。このお菓子は、液体窒素でキンキンに冷えていたことがわかりました。腹部CT検査で、消化管穿孔を起こしていることがわかり、緊急手術で胃穿孔が判明しました。液体窒素そのものか、ただ冷えていたことが原因なのかどうか、何とも言えない症例ではありますね。Zheng Y, et al. Barotrauma after liquid nitrogen ingestion: a case report and literature review.Postgrad Med. 2018 Aug;130(6):511-514.これは、25歳男性が液体窒素を含んだ自家製飲料を摂取した後に、急性腹症を起こした症例です。精査の結果、胃穿孔を起こしていることがわかり、緊急手術となりました。Pollard JS, et al.A lethal cocktail: gastric perforation following liquid nitrogen ingestion.BMJ Case Rep. 2013 Jan 7;2013:bcr2012007769.液体窒素を含むアルコール飲料を摂取した後に、胃穿孔を起こした18歳女性の症例報告です。胃の損傷の程度が大きかったため、Roux-en-Y再建による胃全摘術が必要でした。胃穿孔ばかり続きます。痛そうです。胃全摘はかなりシビアですね。Knudsen AR, et al.Gastric rupture after ingestion of liquid nitrogen.Ugeskr Laeger. 2009 Feb 9;171(7):534.28歳男性が、煙を吐き出して周囲を驚かせるために液体窒素15mLを飲み、その後重度の腹部膨満と縦隔気腫があったという症例報告です。小弯部を中心に胃が破裂していたため、開腹手術で縫合されました。上部消化管内視鏡検査では、冷却による潰瘍性病変などはありませんでした。おや?4つ目の報告は、ちょっと胃潰瘍とは異なる機序のようですね。実は、液体窒素による胃の傷害は、冷却による粘膜障害ではないとされています。ドライアイスなどを飲み込むと、長時間冷温に曝露されるので胃潰瘍のリスクがあるのですが、液体窒素はおそらくそれよりも早く気化します。液体窒素は、加熱されると数百倍に膨張することが問題になります。これによって、胃が極度に膨張して傷害を受けるのではないか、ということです。まぁ…どちらの機序が優勢にしても、こんなもんを飲み込むなんて狂気の沙汰ですから、決してマネしないように。ちなみにドライアイスを飲んだらどうなるかというと…実はこの連載の3回目で紹介しています。

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ガーダントヘルスジャパン、Guardant360 CDxでエスアールエルと業務提携

 ガーダントヘルスジャパンとエスアールエルは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360CDx)のサービス提供のために業務提携契約を締結した。 ガーダントヘルスジャパンは、今回の業務提携によりSRLの遺伝子検査領域におけるロジスティックスならびにネットワーク、サービスを活用することが可能となる。SRLが医療機関から検体を受理してから14日を目途に、国立がん研究センター、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)およびGuardant360 CDxがん遺伝子パネル検査ポータルに解析結果を提供する。 Guardant360 CDxは、米国食品医薬品局(FDA)から2020年8月、日本では2022年3月10日に、すべての固形がんに対する包括的リキッドバイオプシーとして承認を取得している。また、わが国のコンパニオン診断としては、2021年12月にKRAS G12C阻害薬ソトラシブの切除不能非小細胞肺がん、2022年3月にペムブロリズマブのMSI-High固形がんおよびニボルマブのMSI-High結腸・直腸がんに承認されている。

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ニボルマブ+イピリムマブによるNSCLC1次治療、CheckMate227試験5年追跡結果/JCO

 CheckMate 227 Part1の5年間の結果がJournal of Clinical Oncology誌2022年10月12日号で発表された。ニボルマブとイピリムマブの併用は、PD-L1の状態にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の5年生存(OS)率を改善していた。(試験デザインは下記関連記事を参照)ニボルマブ+イピリムマブの5年生存率は24% 最低追跡期間61.3ヵ月の解析で、PD-L1≧1%集団の5年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群の24%に対し、化学療法群では14%であった。PD-L1<1%集団では、ニボルマブ+イピリムマブ群の19%に対し、化学療法群では7%であった。  PD-L1≧1%の奏効期間(DoR)はニボルマブ+イピリムマブ群の24.5ヵ月に対し、化学療法群では6.7ヵ月、PD-L1≧1%のDoRは19.4ヵ月対4.8ヵ月であった。投与中止後も生存ベネフィットは持続 ニボルマブ+イピリムマブの5年生存患者で、解析時点に投与を中止していた患者は、60%を超えていた(PD-L1≧1%集団66%、PD-L1<1%集団64%)。 治療関連有害事象でニボルマブ+イピリムマブを中止した場合も生存ベネフィットは持続しており、5年OS率は39%にのぼった。

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GRADE試験―比較効果研究(comparative effectiveness research)により示されたGLP-1受容体作動薬の優位性(解説:景山茂氏)

 GRADE試験は著者らが述べているように比較効果研究(comparative effectiveness research)である。糖尿病治療薬については2008年の米国FDAのrecommendation以来、新規に開発される薬物については治験段階から心血管イベントに対する影響が検討されている。これらの成果として、近年はGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の臓器保護効果が検証された。しかし、これらはプラセボを対照とした試験が多く、必ずしも数多くある治療薬の中でどれがよいかを示すものではなく、また、それを目的として行われたわけでもない。 比較効果研究で観察するのは、efficacyではなく、実臨床における効果effectivenessである。そして、対照はプラセボではなく実薬である。GRADE試験はランダム化比較試験 (randomized controlled trial:RCT)であるが、盲検化はされておらず、日常診療に近い形で行われている。また、比較効果研究のスタディ・デザインはRCTに限らず、観察研究やデータベース研究によっても行われる。 さて、GRADE試験は、これまでのプラセボ対照試験で示された成績からある程度推測される結果を示した。本試験は心血管イベントの群間差を把握するようデザインされていないが、GLP-1受容体作動薬の心血管系保護の優位性を示唆している。本試験にSGLT2阻害薬が含まれていないのは残念であるが、これはGRADE試験の計画開始時期によるのかもしれない。 糖尿病治療薬のように数多くの選択肢のある領域においては、何が最善の選択であるかを明確にすることを目的とした比較効果研究が必要であり、この分野の充実が望まれる。

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従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付け【心不全診療Up to Date】第2回

第2回 従来の薬剤治療up dateと新規治療薬の位置付けKey Pointsエビデンスが確立している心不全薬物治療をしっかり理解しよう!1)生命予後改善薬を導入、増量する努力が十分にされているか?2)うっ血が十分に解除されているか?3)服薬アドヒアランスの良好な維持のための努力が十分にされているか?はじめに心不全はあらゆる疾患の中で最も再入院率が高く1)、入院回数が多いほど予後不良といわれている2)。また5年生存率はがんと同等との報告もあり3)、それらをできる限り抑制するためには、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の実施が極めて重要となる4)。なぜこれから紹介する薬剤がGDMTの一員になることができたのか、その根拠までさかのぼり、現時点での慢性心不全の至適薬物療法についてまとめていきたい。なお、現在あるGDMTに対するエビデンスはすべて収縮能が低下した心不全Heart Failure with reduced Ejection Fraction(HFrEF:LVEF<40%)に対するものであり、本稿では基本的にはHFrEFについてのエビデンスをまとめる。 従来の薬剤治療のエビデンスを整理!第1回で記載したとおり、慢性心不全に対する投薬は大きく2つに分類される。1)生命予後改善のための治療レニン–アンジオテンシン–アルドステロン系(RAAS)阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)、β遮断薬、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬、ベルイシグアト、イバブラジン2)症状改善のための治療利尿薬、利水剤(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)その他、併存疾患(高血圧、冠動脈疾患、心房細動など)に対する治療やリスクファクター管理なども重要であるが、今回は上記の2つについて詳しく解説していく。1. RAAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB、MR拮抗薬)1)ACE阻害薬、ARB(ACE阻害薬≧ARB)【適応】ACE阻害薬のHFrEF患者に対する生命予後および心血管イベント改善効果は、1980年代後半に報告されたCONSENSUSをはじめ、SOLVDなどの大規模臨床試験の結果により、証明されている5,6)。無症候性のHFrEF患者に対しても心不全入院を抑制し、生命予後改善効果があることが証明されており7)、症状の有無に関わらず、すべてのHFrEF患者に投与されるべき薬剤である。ARBについては、ACE阻害薬に対する優位性はない8–11)。ブラジキニンを増加させないため、空咳がなく、ACE阻害薬に忍容性のない症例では、プラセボに対して予後改善効果があることが報告されており12)、そのような症例には適応となる。【目標用量】ATLAS試験で高用量のACE阻害薬の方が低用量より心不全再入院を有意に減らすということが報告され(死亡率は改善しない)13)、ARBについても、HEAAL試験で同様のことが示された14)。では、腎機能障害などの副作用で最大用量にしたくてもできない症例の予後は、最大用量にできた群と比較してどうなのか。高齢化が進み続けている実臨床ではそのような状況に遭遇することが多い。ACE阻害薬についてはそれに対する答えを示した論文があり、その2群間において、死亡率に有意差は認めず、心不全再入院等も有意差を認めなかった15)。つまり、最大”許容”用量を投与すれば、その用量に関係なく心血管イベントに差はないということである。【注意点】ACE阻害薬には腎排泄性のものが多く、慢性腎臓病患者では注意が必要である。ACE阻害薬/ARB投与開始後のクレアチニン値の上昇率が大きければ大きいほど、段階的に末期腎不全・心筋梗塞・心不全といった心腎イベントや死亡のリスクが増加する傾向が認められるという報告もあり、腎機能を意識してフォローすることが重要である16)。なお、ACE阻害薬とARBの併用については、心不全入院抑制効果を報告した研究もあるが9,17)、生存率を改善することなく、腎機能障害などを増加させることが報告されており11,18)、お勧めしない。2)MR拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)【適応】スピロノラクトンは、RALES試験にて重症心不全に対する予後改善効果(死亡・心不全入院減少)が示された19)。エプレレノンは、心筋梗塞後の重症心不全に対する予後改善効果が示され20)、またACE阻害薬/ARBとβ遮断薬が85%以上に投与されている比較的軽症の慢性心不全に対しても予後改善効果が認められた21)。以上より、ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬を最大許容用量投与するも心不全症状が残るすべてのHFrEF患者に対して投与が推奨されている。【目標用量】上記の結果より、スピロノラクトンは50mg、エプレレノンも50mgが目標用量とされているが、用量依存的な効果があるかについては証明されていない。なお、EMPHASIS-HF試験のプロトコールに、具体的なエプレレノンの投与方法が記載されているので、参照されたい21)。【注意点】高カリウム血症には最大限の注意が必要であり、RALES試験の結果発表後、スピロノラクトンの処方率が急激に増加し、高カリウム血症による合併症および死亡も増加したという報告もあるくらいである22)。血清K値と腎機能は定期的に確認すべきである。ただ近年新たな高カリウム血症改善薬(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物)が発売されたこともあり、過度に高カリウム血症を恐れる必要はなく、できる限り予後改善薬を継続する姿勢が重要と考えられる。またRALES試験でスピロノラクトンは女性化乳房あるいは乳房痛が10%の男性に認められ19)、実臨床でも経験されている先生は多いかと思う。その場合は、エプレレノンへ変更するとよい(鉱質コルチコイド受容体に選択性が高いのでそのような副作用はない)。2. β遮断薬(カルベジロール、ビソプロロール)【適応】β遮断薬はWaagsteinらが1975年に著効例7例を報告して以来(その時は誰も信用しなかった)、20年の時を経て、U.S. Carvedilol、MERIT−HF、CIBIS II、COPERNICUSなどの大規模臨床試験の結果が次々と報告され、30~40%の死亡リスク減少率を示し、重症度や症状の有無によらずすべての慢性心不全での有効性が確立された薬剤である23–26)。日本で処方できるエビデンスのある薬剤は、カルベジロールとビソプロロールだけである。カルベジロールとビソプロロールを比較した研究もあるが、死亡率に有意差は認めなかった27)。なお、慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬どちらの先行投与でも差はないとされている28)。【目標用量】用量依存的に予後改善効果があると考えられており、日本人ではカルベジロールであれば20mg29)、ビソプロロールであれば5mgが目標用量とされているが、海外ではカルベジロールであれば、1mg/kgまで増量することが推奨されている。【注意点】うっ血が十分に解除されていない状況で通常量を投与すると心不全の状態がかえって悪化することがあるため、少量から開始すべきである。そして、心不全の増悪や徐脈の出現等に注意しつつ、1~2週間ごとに漸増していく。心不全が悪化すれば、まずは利尿薬で対応する。反応乏しければβ遮断薬を減量し、状態を立て直す。また徐脈などの副作用を認めても、中止するのではなく、少量でも可能な限り投与を継続することが重要である。3. 利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、トルバプタン)、利水剤(五苓散など)【適応】心不全で最も多い症状は臓器うっ血によるものであり、浮腫・呼吸困難などのうっ血症状がある患者が利尿薬投与の適応である。ただ、ループ利尿薬は交感神経やRAS系の活性化を起こすことが分かっており、できる限りループ利尿薬を減らした状態でいかにうっ血コントロールをできるかが重要である。そのような状況で、新たなうっ血改善薬として開発されたのがトルバプタンであり、また近年利水剤と呼ばれる漢方薬(五苓散、木防已湯、牛車腎気丸など)もループ利尿薬を減らすための選択肢の1つとして着目されており、心不全への五苓散のうっ血管理に対する有効性を検証する大規模RCTであるGOREISAN-HF試験も現在進行中である。この利水剤については、また別の回で詳しく説明する。【注意点】あくまで予後改善薬を投与した上で使用することが原則。低カリウム血症、低マグネシウム血症、腎機能増悪、脱水には注意が必要である。新規治療薬の位置付け上記の従来治療薬に加えて、近年新たに保険適応となったHFrEF治療薬として、アンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(Angiotensin receptor-neprilysin inhibitor:ARNI)、SGLT2阻害薬(ダバグリフロジン、エンパグリフロジン)、ベルイシグアト、イバブラジンがある。上記で示した薬物療法をHFrEF基本治療薬とするが、効果が不十分な場合にはACE阻害薬/ARBをARNIへ切り替える。さらに、心不全悪化および心血管死のリスク軽減を考慮してSGLT2阻害薬を投与する。第1回でも記載した通り、これら4剤を診断後できるだけ早期から忍容性が得られる範囲でしっかり投与する重要性が叫ばれている。服薬アドヒアランスへの介入は極めて重要!最後に、施設全体のガイドライン遵守率を改めて意識する重要性を強調しておきたい。実際、ガイドライン遵守率が患者の予後と関連していることが指摘されている28)。そして何より、処方しても患者がしっかり内服できていないと意味がない。つまり、内服アドヒアランスが良好に維持されるよう、医療従事者がしっかり説明し(この薬がなぜ必要かなど)、サポートをすることが極めて重要である。このような多職種が介入する心不全の疾病管理プログラムは欧米のガイドラインでもクラスIに位置づけられており、ぜひ皆様には、このGDMTに関する知識をまわりの看護師などに還元し、チーム医療という形でそれが患者へしっかりフィードバックされることを切に願う。1)Jencks SF, et al. N Engl J Med.2009;360:1418-1428.2)Setoguchi S, et al. Am Heart J.2007;154:260-266. 3)Stewart S, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes.2010;3:573-580.4)McDonagh TA, et al.Eur Heart J. 2022;24:4-131.5)CONSENSUS Trial Study Group. N Engl J Med. 1987;316:1429-1435.6)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1991;325:293-302.7)SOLVD Investigators. N Engl J Med. 1992;327:685-691.8)Pitt B, et al.Lancet.2000;355:1582-1587.9)Cohn JN, et al.N Engl J Med.2001;345:1667-1675.10)Dickstein K, et al. Lancet.2002;360:752-760.11)Pfeffer MA, et al.N Engl J Med. 2003;349:1893-1906.12)Granger CB, et al. Lancet.2003;362:772-776.13)Packer M, et al.Circulation.1999;100:2312-2318.14)Konstam MA, et al. Lancet.2009;374:1840-1848.15)Lam PH, et al.Eur J Heart Fail.. 2018;20:359-369.16)Schmidt M, et al. BMJ.2017;356:j791.17)McMurray JJ, et al.Lancet.2003;362:767-771.18)ONTARGET Investigators. N Engl J Med.2008;358:1547-1559.19)Pitt B, et al. N Engl J Med.1999;341:709-717.20)Pitt B, et al. N Engl J Med.2003;348:1309-1321.21)Zannad F, et al. N Engl J Med.2011;364:11-21.22)Juurlink DN, et al. N Engl J Med.2004;351:543-551.23)Packer M, et al.N Engl J Med.1996;334:1349-1355.24)MERIT-HF Study Group. Lancet. 1999;353:2001-2007.25)Dargie HJ, et al. Lancet.1999;353:9-13.26)Packer M, et al.N Engl J Med.2001;344:1651-1658.27)Düngen HD, et al.Eur J Heart Fail.2011;13:670-680.28)Fonarow GC, et al.Circulation.2011;123:1601-10.29)日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」

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TSLPを標的とした重症喘息の新たな治療選択肢

 2022年10月24日、アストラゼネカは、都内にて「テゼスパイアによる重症喘息治療への貢献」をテーマにメディアセミナーを開催した。TSLPは喘息の重症化や呼吸機能低下に関与 現在の重症喘息治療における課題は複雑な炎症経路である。ウイルスやアレルゲン、ハウスダストなど環境因子の刺激により、気道上皮から上皮サイトカインが産生され、その結果、アレルギー性炎症や好酸球性炎症、気道のリモデリングなど、複数の経路から喘息が増悪すると考えられている。 上皮サイトカインのなかでも、炎症カスケードの起点となっているのが胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)である。TSLPは、喘息の重症化や呼吸機能低下だけでなく、気道のリモデリングやステロイド反応性の低下、ウイルス感染に対する過剰な2型炎症にも関与していると考えられている。TSLPを標的とした生物学的製剤がテゼスパイア テゼスパイア皮下注210mgシリンジ(一般名:テゼペルマブ[遺伝子組換え]、以下「テゼスパイア」)はTSLPを標的とした生物学的製剤である。セミナーでは第III相国際共同試験(検証的試験)、NAVIGATOR試験について、昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 相良 博典氏が詳しく説明した。 対象は、コントロール不良な重症喘息(国際的な喘息診療指針Global Initiative for Asthma:GINAに基づく)を有する成人および12歳以上の小児患者1,061例。対象患者を地域および年齢によって層別化した後、テゼスパイア群およびプラセボ群に1:1で無作為に割り付け、52週間投与した。 主要評価項目である年間喘息増悪率はテゼスパイア群で0.93、プラセボ群で2.10であり、テゼスパイアの有効性が示された(プラセボ群に対する比:0.44、95%信頼区間[CI]:0.37~0.53、p<0.001)。また、その他の副次評価項目である血中好酸球数、FeNO、血清総IgE値のベースラインからの変化量について、テゼスパイア投与後、早期から低下する傾向が見られた。 安全性に関して、有害事象の発現率はテゼスパイア群で77.1%(407/528例)、プラセボ群で79.5%(422/531例)であった。主な有害事象(発現率>10%)は、テゼスパイア群(528例)で上咽頭炎が112例(21.2%)、上気道感染が58例(11.0%)、プラセボ群(531例)で上咽頭炎が113例(21.3%)、上気道感染が84例(15.8%)、喘息が56例(10.5%)に認められた。TSLPを阻害することでテゼスパイアは複雑な炎症経路を同時に抑制 テゼスパイアは、これまでの喘息治療薬とは異なる作用機序を有するため、新たな治療選択肢となる。「2型喘息患者では、いまだに増悪を来す患者が多く存在する。TSLPはさまざまな病態と関連しており、増悪・呼吸機能低下だけでなく、ステロイド抵抗性の獲得や粘液産生、気道リモデリング、神経炎症と、多岐にわたって影響を及ぼす。テゼスパイアは炎症の起点となるTSLPを阻害することで、複雑な炎症経路を同時に抑制し、優れた臨床的改善効果をもたらすことが期待される」と相良氏はまとめ、セミナーを終了した。

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futibatinib、既治療の切除不能肝内胆管がんに対しFDAの承認取得/大鵬

 大鵬薬品工業は、2022年10月3日、米国子会社の大鵬オンコロジーが、FGFR阻害薬futibatinib(開発コード:TAS-120)について、「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子またはその他の再構成を伴う切除不能な局所進行または転移性肝内胆管がん」の適応で米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。今回の承認は、FOENIX-CCA2試験での全奏効率(ORR)と奏効期間結果に基づくものである。 FOENIX-CCA2試験は、FGFR2遺伝子融合またはその他の再構成を有する切除不能な肝内胆管がん患者103例を対象とした第II相試験である。全身療法治療歴のある患者を対象に、病勢進行または許容できない毒性が認められるまでfutibatinib20mg/日を経口投与した。本試験の主要評価項目は全奏効率である。

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コロナ流行で糖尿病関連死が30%増加、とくに若年で顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、米国における2021年および2022年の糖尿病関連の死亡が、パンデミック以前と比べて30%以上増加したことを、中国・西安交通大学のFan Lv氏らが報告した。糖尿病は新型コロナ感染症の重症化の重大なリスク因子であるとともに、新型コロナウイルス感染は血糖コントロールの悪化につながることが報告されている。同氏らは、パンデミックによって糖尿病患者の治療の提供が混乱したことから、パンデミック中の糖尿病関連の死亡の傾向を調査した。eClinicalMedicine誌9月23日掲載の報告。 調査は、米国人の出生と死亡に関する人口データベース「National Vital Statistics System(NVSS)」を用い、2006年1月1日~2021年12月31日に25歳以上であった死亡者のデータを解析した。糖尿病関連の死亡は、死亡診断書に記載された原死因と関連死因に糖尿病が記録されていた場合とした。超過死亡率は、2006~19年の死亡率より、年齢調整死亡率の観測値と期待値を線形および多項式回帰モデルで比較して推定した。 主な結果は以下のとおり。・2006~21年の間に、25歳以上の糖尿病関連の死亡は424万3,254例あった。その多くは、65歳以上の高齢者グループ(76%)、男性(54%)、非ヒスパニック系白人(71%)であった。・10万例あたりの年齢調整死亡率は、2006年(116.1)から2015年(103.9)にかけて減少し、2019年(106.8)にかけてわずかに増加した後、2020年(144.1)および2021年(148.3)に大きく増加した。・糖尿病関連の死亡の超過死亡率は、2020年が33.3%(95%信頼区間[CI]:30.5~36.2)、2021年が35.3%(同:31.7~39.0%)であった。この超過死亡率の増加は、25~44歳、女性、ヒスパニック系において著しかった。・米国全人口の全死因の超過死亡率は2020年が15.3%(同:13.2~17.4)、2021年が17.8%(同:15.2~20.6)であり、糖尿病関連死の超過死亡率のほうが高かった。・糖尿病関連の超過死亡例の約3分の2が、パンデミック中の新型コロナウイルス感染症に関連していた。

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LINEを使った患者報告システムを副作用マネジメントに活かす/日本癌治療学会

 薬剤の副作用は、医師の評価と患者の捉え方が大きく異なるケースが多いことは以前から報告されていた。PRO(Patient Reported Outcome)とは、医師の評価を経ず、患者自身が副作用を報告するシステムを指し、これを電子的に行うePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが世界各地で開発され、実際の運用や効果測定のための臨床試験が行われている。 慶應義塾大学が開発した乳がん患者を対象としたePROについて、同大外科学教室の林田 哲氏が第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)上で発表した。 このePROはLINEを利用しており、対象となる乳がん患者はシステムから送られてくる症状に関する問いかけに返信し、そのデータがプラットフォームに蓄積され、適切な患者管理や副作用マネジメントに役立てる、というもの。システムへの登録はLINEの「友だち追加」、返信は症状の重さをタップで選択するだけ、と非常に簡便に使えることが特徴だ。「化学療法」「ホルモン療法」「転移・再発」などの治療別に送付頻度や質問内容のパターンが設定されており、事前に医療者が設定する。また、質問は有害事象評価の国際規格であるCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)に基づいており、国際標準に合致したデータとしても利用できる。 この「LINE ePRO」の受容度を見たAQUARIUS試験では、73例の患者が登録され、観察期間中央値435日(84~656日)のあいだに収集されたレポート総数は1万6,417件、1人あたり平均224件だった。年代別に見ると、60歳以上の層でも回答数は若年層と同等かそれ以上であり、LINEの浸透度を背景とした、高い受容度を確認できたという。 AQUARIUS試験を受け、現在進行中のLIBRA試験は、HR+/HER2-の進行再発乳がん患者60例を対象とした前向き試験。アベマシクリブ投与後に、副作用としてとくに頻度が高い下痢に対してePRO報告システムを使用した症状のモニタリングを行ったうえで、がん専門看護師からの助言の有無を比較する試験デザイン。治療期間中の下痢の程度や頻度を抑制可能かどうかの検証を行うことを目的とする。現時点で半数程度の患者登録が終わっており、来年の終了、発表を見込んでいるという。

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脳保護デバイスでTAVRの周術期脳梗塞は解決するか?(解説:上妻謙氏)

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、低侵襲かつ有効な治療のためAS単独手術患者に関して標準的な医療となった。しかし周術期脳卒中の合併率は、最近の治療技術、デバイスの進歩によってある程度低下してきたものの依然として1~2%で発生している1)。脳卒中の合併率は外科手術と同等であるが、この脳卒中の問題が克服されればASの治療としてTAVRは外科手術に対して圧倒的に安全となる。本論文は北米、欧州、オーストラリアの51施設で行われたtransfemoral TAVR施行時の脳保護デバイス(cerebral embolic protection=CEP)の有効性を検証するメーカースポンサーの前向きランダマイズスタディである2)。3,000例のASを登録して行われたが、2,100例の登録終了時点で中間解析が行われ、脳卒中の合併率がCEP群2.2%、対照群2.4%であったため、サンプルサイズは予定された3,000例と決定された。主要エンドポイントは72時間以内の脳卒中の発生率で、CEP群2%、対照群4%の脳卒中合併率で90%の検出力で計算された。CEP群の94.4%でこのデバイス留置に成功し、デバイスに起因する合併症は1例(0.1%)のみで安全に施行できることが示された。しかし結果としては対照群2.9%に対しCEP群2.3%と残念ながら脳保護デバイスの有効性を証明することはできなかった(p=0.3)。死亡率、TIA、せん妄、急性腎障害も差がなかったが、modified Rankin Scale 2点以上の後遺症を残す脳卒中だけはCEP群0.5%、対照群1.3%と有意に脳保護デバイスを使用した群で少なくなった。サブグループ解析では人工弁のタイプや局所麻酔、前拡張や後拡張の有無などすべての要素でCEPの優位性を示す患者群を同定することができなかった。 このCEPはSentinelと呼ばれる2つのフィルターを備えた6Frのデバイスで、右の橈骨動脈か上腕動脈から挿入し、腕頭動脈と左総頸動脈でフィルターを展開して留置するデバイスで、比較的簡便かつ安全に使用できるためとても期待されていたが、大規模ランダマイズスタディではnegativeな結果となった。しかしこういったフィルターはどうしても血管壁との隙間が空くので、すべてのdebrisをブロックできるわけではなく、大きなdebrisをキャッチできればよいので、大きな脳梗塞が減少したというのは妥当な結果といえる。軽症の脳梗塞を減らすものではなく、重症の脳梗塞を減少させるデバイスと捉えると有用性は高いといえる。NEJM誌は科学的に最初の仮説を立証したものしか優位性を述べることを認めないため、完全に有用性が示されない形での論文となっているが、後遺症を残す脳梗塞というのは患者さん自身にとってはきわめて重要な問題である。少なくとも自分が患者であればこのデバイスを使用してもらいたいと思える結果であった。

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痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第109回

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」今回は、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年3月28日に承認され、8月8日より販売されています。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬および抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。<安全性>国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、体内のリンパ球が産生するIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合はネモリズマブが選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。なお、2023年6月1日より、本剤は在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用となりました。

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英語で「性交渉はありますか」は?【1分★医療英語】第52回

第52回 英語で「性交渉はありますか」は?Are you sexually active?(性交渉はありますか?)Yes. With my wife.(はい、妻と性交渉をしています)《例文1》Have you ever been sexually active?(これまでに性交渉の経験はありますか?)《例文2》What types of sexual activity do you have?(どのような性交渉をしますか?)《解説》問診で十分な情報を得るためには性交渉歴の聴取は不可欠ですが、センシティブな内容でもあり、英語で聞くのをためらう方も多いのではないでしょうか。まず、言語以前の問題として、当然ながら患者さんが安心して話すことができるよう、個室などプライバシーが保たれる状況を確保する必要があります。また、導入には“I’m going to ask a few questions about your sexual history. These are routine questions I ask all my patients.”(性交渉について少し質問させてください。これは皆さんにしている質問です)などと前置きをしておくとスムーズです。現在、性交渉を行うパートナーがいる状況を“sexually active”と表現し、性交渉は“sexual activity”と言います。さらに、性交渉がある場合には以下の「5つのP」を加えて問診すると、性感染症などのリスクの評価に有効です。1.Partners(パートナーの性別、人数)2.Practice(性交渉の内容)3.Protection from STIs(コンドームなど、性感染症の予防)4.Past history of STIs (性感染症の既往)5.Prevention of pregnancy(避妊方法)講師紹介

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第136回 ウイルス2種が融合して免疫をかいくぐる

異なる呼吸器ウイルス2種が融合し、免疫をより回避する新たな素質を備えうることが示されました1,2)。2つ以上のウイルスの共感染は呼吸器ウイルス感染の10~30%に認められ、とくに子供ではよくあることですが、それがどういう結末をもたらすのかは定かではありません。共感染したところで経過にどうやら変わりはないという試験結果がある一方で肺炎が増えたという報告もあります。共感染者の細胞内での2つ以上のウイルスの相互作用もよく分かっていませんが、細胞内での直接的な相互作用でウイルスの病原性が変わるかもしれません。たとえば別のウイルスの表面タンパク質を取り込んでそのウイルスもどき(pseudotyping)になるとかウイルスゲノムの再編が起きる可能性があります。ゲノムの再編は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やパンデミックインフルエンザウイルスのような世界的に流行しうる新たなウイルス株の原因となりうる現象です。世界で500万人を超える人が毎年インフルエンザAウイルス(IAV)感染で入院しています。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は5歳までの小児の急な下気道感染症の主因となっています。新たな研究で英国グラスゴー大学の研究者等は一緒に出回ることが多くて重要度が高いそれら2つの呼吸器ウイルスをヒトの肺起源の細胞内に同居させて何が起きるかを調べました。生きた細胞の撮影や顕微鏡で観察したところIAVとRSVの双方からの成分を併せ持つ融合ウイルス粒子(HVP)が確認され、HVPは他の細胞に感染を広げることができました。HVPに抗IAV抗体は歯が立たないらしく、その感染細胞に抗IAV抗体を与えても感染の他の細胞への広がりを防ぐことはできませんでした。HVPはRSVからの糖タンパク質を流用して抗IAV抗体を逃れることができるのです。一方、抗RSV抗体は依然としてHVPと勝負できるらしく、HVPの細胞から細胞への広がりを防ぎました。著者によるとIAVがRSVからの授かりものを使って免疫を回避できるようになるのとは対照的にRSVはIAV糖タンパク質に細胞侵入を手伝わせることはできないようです。“IAVはRSVとの融合によりより重症の感染を招く恐れがある”と今回の研究には携わっていない英国リーズ大学のウイルス学者Stephen Griffin氏は同国のニュースTheGuardianに話しています3,4)。RSVは季節性インフルエンザに比べてより奥の肺に下って行こうとします。よってインフルエンザがRSVと同様に肺へと深入りするとより重症化するおそれがいっそう高まるかもしれません。体外での研究で今回認められたようなウイルス融合の人体での発生はまだ観察されておらず、ウイルス融合が人の健康に影響するのかどうかを今後の研究で調べる必要があります。IAVとRSVが手を取り合うのとは真反対に一方がもう一方を抑えつける関係もどうやら存在します。たとえば、風邪ウイルスとして知られるライノウイルスとSARS-CoV-2が細胞内でそういう排他的関係にあるらしいことが昨年3月の報告で示されています5,6)。その報告によるとライノウイルスはSARS-CoV-2複製を防ぐインターフェロン(IFN)反応を誘発し、ライノウイルスがいる呼吸上皮細胞でSARS-CoV-2は増えることができません。巷にあまねく広まるライノウイルスとSARS-CoV-2の相互作用は計算によると世間全般に及ぶ影響があり、ライノウイルス感染が増えるほどSARS-CoV-2感染は減るらしいと推定されています5)。参考1)Haney J, et al. Nat Microbiol. 2022;7:1879-1890.2)NEW RESEARCH SHEDS LIGHT ON HIDDEN WORLD OF VIRAL COINFECTIONS / University of Glasgow3)Immune system-evading hybrid virus observed for first time / TheGuardian4)Flu/RSV Coinfection Produces Hybrid Virus that Evades Immune Defenses / TheScientist5)Dee K, et al. J Infect Dis. 2021;224:31-38.6)Coronavirus: How the common cold can boot out Covid / BBC

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妊婦へのコロナワクチン接種をメタ解析、NICU入院や胎児死亡のリスク減

 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による周産期アウトカムへの影響について、有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏ら日米研究グループによりシステマティックレビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種が新生児集中治療室(NICU)入院、子宮内胎児死亡、母親のSARS-CoV-2感染などのリスク低下と関連することや、在胎不当過小(SGA)、Apgarスコア低値、帝王切開分娩、産後出血、絨毛膜羊膜炎などといった分娩前後の有害事象のリスク上昇との関連がないことが示された。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年10月3日号に掲載の報告。 本研究では、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種に関連する新生児アウトカムを調査したすべての前向き研究および観察研究について、2022年4月5日にPubMedとEmbaseデータベースで包括的な文献検索を行い、(1)査読付き雑誌に掲載された研究、(2)妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受けた妊婦と受けなかった妊婦を比較した研究、(3)新生児アウトカムにおいて、早産(妊娠37週未満での出産)、SGA、Apgarスコア低値(出生5分後のApgarスコアが7未満)、NICU入院、子宮内胎児死亡のうち少なくとも1つを報告する研究、という3つの条件を満たすものを対象とした。最終的に9つの研究を抽出し、妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受けた妊婦8万1,349例(ワクチン接種群)と受けていない妊婦25万5,346例(ワクチン非接種群)について検証した。オッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて算出された。 被験者のベースラインは次のとおり。平均年齢は、ワクチン接種群:32~35歳vs.ワクチン非接種群:29.5~33歳。合併症については、妊娠前/妊娠糖尿病は、1,267例(1.6%)vs.3,210例(1.3%)。妊娠前/妊娠高血圧は、1,176例(1.4%)vs.3,632例(1.4%)。肥満は、8,420/4万8,231例(17.5%)vs.2万6,108/11万4,355例(22.8%)。喫煙歴は、4,049/8万35例(5.1%)vs.1万8,930/25万2,990例(7.5%)。ワクチン接種群では、98.2%がmRNAワクチン(ファイザー製:6万1,288例、モデルナ製:1万6,036例、規定なし:2,575例)、1.1%がウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ製:488例、ヤンセン製:425例)、0.7%が明確に記録されていなかった。6つの研究で投与回数が報告されており、5万2,295/6万1,255例(85.4%)が妊娠中にmRNAワクチンを2回投与されていた。 主な結果は以下のとおり。【新生児のアウトカム】・妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、NICU入院、子宮内胎児死亡のリスク低下と関連していた。NICU入院は、OR:0.88(95%信頼区間[CI]:0.80~0.97)。子宮内胎児死亡は、OR:0.73(95%CI:0.57~0.94)。・そのほかの主要アウトカムは2群間で統計的有意差を示さなかった。早産は、OR:0.89(95%CI:0.76~1.04)。SGAは、OR:0.99(95%CI:0.94~1.04)。Apgarスコア低値のOR:0.94(95%CI:0.87~1.02)。・妊娠初期に1回目のワクチン接種を受けた妊婦と、妊娠中にワクチン接種を受けなかった妊婦の間では、早産(OR:1.81、95%CI:0.94~3.46)、SGA(OR:1.09、95%CI:0.95~1.27)の発生率で有意差はなかった。一方、中期または後期のワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けなかった人と比較して、早産(OR:0.80、95%CI:0.69~0.92)、SGA(OR:0.94、95%CI:0.88~1.00)のリスクの低下と関連していた。【母親のアウトカム】・妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、追跡期間中の母親のSARS-CoV-2感染リスク(OR:0.46、95%CI:0.22~0.93)の低下と有意に関連した。・妊娠中のワクチン接種は、帝王切開分娩(OR:1.05、95%CI:0.93~1.20)、産後出血(OR:0.95、95%CI:0.83~1.07)、絨毛膜羊膜炎(OR:1.06、95%CI:0.86~1.31)のリスクとは関連がなかった。 本研究により、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、新生児および母親の有害事象のリスク上昇と関連せず、新生児のNICU入院、子宮内胎児死亡のリスク低下と関連し、妊娠中期以降の接種で早産、SGAのリスク低下と関連したことが示され、妊婦に対するワクチン接種の安全性と有効性が裏付けられた。さらに研究チームは、集中治療を必要とするCOVID-19に罹患した妊婦のほとんどがワクチン未接種であり、また、無症状感染であっても、子癇前症や早産などのリスク上昇と関連しているとし、新生児および母親をSARS-CoV-2から保護するため、妊婦のワクチン接種率を高めることが最も重要だと指摘している。

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ルキソリチニブクリーム、白斑に有効/NEJM

 白斑に対するJAK阻害薬ルキソリチニブ(本邦では骨髄線維症、真性多血症の適応で承認)のクリーム製剤は、基剤クリーム(対照)よりも病変部の再色素沈着を拡大したことが示された。安全性については最も多く報告された有害事象は、塗布部におけるにきびやかゆみであった。米国・タフツ医療センターのDavid Rosmarin氏らによる、2件の第III相二重盲検溶媒対照無作為化試験の結果で、同剤については白斑成人患者を対象に行った第II相試験で、再色素沈着をもたらしたことが報告されていた。著者は今回の結果を踏まえて、「有効性および安全性について、より大規模かつ長期の試験を行い確認することが必要である」とまとめている。NEJM誌2022年10月20日号掲載の報告。2件の無作為化試験TRuE-V 1とTRuE-V 2で評価 2試験は、Topical Ruxolitinib Evaluation in Vitiligo Study 1(TRuE-V 1)と2(TRuE-V 2)で、北米および欧州で、12歳以上、総体表面積の10%以下に色素脱失を有する非分節型白斑患者を対象に行われた。 患者を2対1の割合で、ルキソリチニブ1.5%クリーム群または対照群に無作為に割り付け、顔面および体幹のすべての白斑病変部に1日2回、24週間塗布した。その後は、全患者について52週までルキソリチニブ1.5%クリーム塗布を可能とした。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点の顔面Vitiligo Area Scoring Index(F-VASI、範囲:0~3、高スコアほど顔面の白斑面積が大きいことを示す)の低下(改善)が75%以上(F-VASI75)とした。主な副次エンドポイントは5つで、Vitiligo Noticeability Scale(VNS)の改善などが含まれた。24週時点のF-VASI75達成患者割合、対照との相対リスクは2.7~4.0 TRuE-V 1は2019年9月20日~2021年10月21日(北米29施設と欧州16施設で330例登録)、TRuE-V 2は2019年10月3日~2021年10月1日に行われ(同32施設と17施設で344例登録)、合計674例が登録された。TRuE-V 1で無作為化を受け有効性・安全性の解析に包含されたのは330例、TRuE-V 2では有効性解析には331例が、安全性解析には343例が包含された。 24週時のF-VASI75達成患者割合は、TRuE-V 1ではルキソリチニブクリーム群29.8%、対照群7.4%であった(相対リスク:4.0、95%信頼区間[CI]:1.9~8.4、p<0.001)。TRuE-V 2ではそれぞれ30.9%、11.4%であった(2.7、1.5~4.9、p<0.001)。 副次エンドポイントの結果も、ルキソリチニブクリームが対照よりも優れることを示すものであった。 52週間ルキソリチニブクリームを塗布された患者において、有害事象の発生は、TRuE-V 1で54.8%、TRuE-V 2で62.3%。最も頻繁に報告された有害事象は、塗布部のにきび(TRuE-V 1で6.3%、TRuE-V 2で6.6%)、鼻咽頭炎(5.4%、6.1%)、塗布部のかゆみ(5.4%、5.3%)であった。

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COVID-19に対するモデルナ製のオミクロン株対応2価ブースターワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン[BA.1])の安全性と免疫原性について(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、COVID-19に対するモデルナ製のオミクロン株対応2価ブースターワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン[BA.1])の安全性と免疫原性の評価の中間解析結果を示している。 新型コロナウイルスワクチンは、当初、野生株(従来株)に対して高い感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果が示されていた(Baden LR, et al. N Engl J Med. 2021;384:403-416.)。しかし、デルタ株が流行した時期には新型コロナウイルス感染症の感染予防効果や発症予防効果は減衰することも指摘されるようになった(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。その後、オミクロン株の流行下では、ワクチンの効果は比較的短期間で減衰し、また効果も低下していることが示されていた。変異株に対する戦略としては、株に対応したワクチンの作成が行われ、ベータ株対応の2価ワクチンの使用では、従来のワクチンに比較して複数の変異体に対して一貫して高い中和抗体応答とスパイク結合応答を誘導することが報告されていた(Chalkias S, et al. Nat Med. 2022 Oct 6. [Epub ahead of print])。 今回の論文で取り上げられているオミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)は、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの1つで、起源株とオミクロン株の2種類のスパイク蛋白に対応している。オミクロン株は、伝播力の向上や免疫からの逃避能力の獲得により世界的に流行したが、オミクロン株対応ワクチンはこの流行の抑制に寄与することが期待されている。 本研究の結果、オミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)は、従来のワクチンに比して中和抗体応答がBA.1のみならずBA.4/5や他の複数の変異株に対しても高かった。過去のワクチンと中和抗体価に関する研究結果を参考にすると、感染予防効果はおおよそ相関することが考えられることから、本研究の結果を考えるとオミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)は、従来のワクチンよりも感染予防効果が高くなることが期待されるだろう。安全性に関しても、従来のモデルナワクチンと比較して有害事象はほぼ同等であり、ほとんどが軽症から中等症だった。 オミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)のリアルワールドでの感染予防効果や発症予防効果、重症化予防効果のデータは今後の結果を待つ必要があるが、本論文の内容を参考にすると、オミクロン株も含めた多様な新型コロナウイルス株に対して旧来のワクチン(mRNA-1273)よりも高い中和抗体応答を誘導し、安全性の明らかな懸念も認められなかったことから、追加接種をする場合はオミクロン株対応2価ワクチンを接種することが良さそうである。 オミクロン株対応ワクチンの開発により、追加接種のタイミングも変更された。本論文では、オミクロン株対応ワクチンは、前回接種後3ヵ月以上経過している患者を対象に追加接種していた。本邦もこれらのデータを参考に2022年10月21日より、追加接種は前回の接種完了から3ヵ月以上経過している場合に接種と変更されている。ちなみに、米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)はBA.4/5対応ワクチンを承認し、接種タイミングは最後の接種から2ヵ月以上空けてワクチン接種を追加することを推奨している(https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/interim-considerations-us.html#COVID-19-vaccines)。 本邦では、オミクロン株対応2価ワクチンのうち、BA.1対応ワクチンが先行して接種可能となったが、今後はBA.4/5対応ワクチンの接種も行われることになるだろう※。BA.4/5ワクチンのデータは限られているが、ファイザーは10月13日付のプレスリリースで、同ワクチンをブースター接種した7日後にオミクロン株BA.4/5に対する中和抗体応答が大幅に増加したことを報告しており、今後数週間以内にブースター接種後1ヵ月時点での中和抗体応答の結果を発表するとしている。 効果の高いワクチンが開発されることは喜ばしいことではあるが、ワクチン接種には費用がかかることや、接種に伴う副反応のリスクも伴う。今後は、2価ワクチンのリアルワールドでの感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果や安全性のさらなるデータを待つとともに、COVID-19に対するワクチンの追加接種の適切なタイミングを知るためにもワクチン効果の減衰に関するデータにも注目をしてゆきたい。※執筆時点において、モデルナ製のBA.1対応ワクチンは薬事承認され、BA.4/5対応の新型コロナワクチンは10月5日に薬事承認申請がなされている。ファイザー製はBA.1対応の2価ワクチンだけではなく、BA.4/5ワクチンも薬事承認されている。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5【「実践的」臨床研究入門】第25回

前回、筆者らが出版したコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)のP(対象)の構成要素の検索式の実例を用いて、その構造を解説しました。今回は引き続き、このコクランSR論文1)のI(介入)を示す検索式と検索式全体の完成形の実際例について解説します(連載第24回参照)。Iの構成要素をORでつないでまとめる下記は、この論文のIである「アルドステロン受容体拮抗薬」の構成要素の検索式です。14.Mineralocorticoid Receptor Antagonists[mh]15.Diuretics, Potassium Sparing[mh:noexp]16.spironolactone[tiab]17.eplerenone[tiab]18.canrenone[tiab]19.#14 OR #15 OR #16 OR #17 OR #18#14は「アルドステロン受容体拮抗薬」のMeSH term (統制語)である”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”です(連載第22回参照)。「アルドステロン受容体拮抗薬」は降圧薬の一種でK保持性利尿薬に分類される薬剤です。”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”というMeSH termの階層構造をみてみると、下記およびリンクのとおりとなります。●Diuretics, Potassium Sparing○Epithelial Sodium Channel Blockers○Mineralocorticoid Receptor Antagonists#15では”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”の上位概念である”Diuretics, Potassium Sparing”(K保持性利尿薬)を[mh: noexp]の「タグ」で指定しています。”Diuretics, Potassium Sparing”の下位概念のうち"Epithelial Sodium Channel Blockers"という違う薬剤クラスは除外した検索式になっています(連載第22回参照)。その結果、”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”で拾えない”Diuretics, Potassium Sparing”をカバーしています。#16-18では、MeSH termで拾えない可能性のある「アルドステロン受容体拮抗薬」に含まれる薬剤固有名詞を、「タグ」でTitle/Abstractを指定したうえでテキストワードを列記し、検索式を補完しています(連載第23回、第24回参照)。#19で#14から#19を”OR”でつなぎ、Iの構成要素の検索式が出来上がります。最後にPとIの構成要素をANDでつなぐPとIそれぞれの構成要素は、MeSH termやテキストワードで示される類似した語句同士なので重なりは大きいのですが、”OR”でつなげて、できるだけ検索漏れがないようにします。高校の数学で習ったはずの「ベン図」で表すと、下の図のようなイメージです。「ベン図」とは、ある概念で表されるグループ(集合)の関係性を視覚的に表した図でした。PとIの構成要素の検索式がそれぞれ完成したら、最終的にはPとIの「集合」の重なり部分を求めます。こちらも「ベン図」で示すと下図のようになります。Pの構成要素の検索式のまとめである#13(下記、連載第24回参照)と13. #1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12Iの構成要素をまとめた検索式#19を、#20(下記)のように”AND”でつなぐことで検索式が完成します。20. #13 AND #191)Hasegawa T, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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ビタミンD欠乏で筋力低下→サルコペニア発症の可能性/長寿研ほか

 ビタミンDが欠乏することで、将来的に筋力が低下してサルコペニア罹患率が上昇する可能性を、国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山 徹氏や、名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野 隆文氏らの研究グループが発表した。 先行研究において、ビタミンDは加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されていたが、それらの多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠は十分ではなかった。Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌2022年10月13日掲載の報告。 研究グループは、国立長寿医療研究センターで実施している老化に関する長期縦断疫学研究「NILS-LSA」のデータを用い、血中ビタミンD量低値の一般住民の4年後の筋力変化や筋量変化、新規サルコペニア発生数などについて検討した。 主な結果は以下のとおり。・NILS-LSAに登録されている1,919人のデータから傾向スコアでマッチさせたビタミンD欠乏群(血中25OHD量が20ng/mL未満、n=384)および充足群(20ng/mL以上、n=384)の比較解析の結果、ビタミンD欠乏群では握力低下が進行した(欠乏群:-1.55±2.47kg、充足群:-1.13±2.47kg、p=0.019)。・サルコペニアの新規発生率は、ビタミンD欠乏群で有意に高かった(欠乏群:3.9%、充足群:1.3%、p=0.039)。・ビタミンD受容体遺伝子Vdrを成熟した筋線維で特異的に欠損させたコンディショナルノックアウト(VdrmcKO)マウスの表現型の解析では、VdrmcKOマウスでは有意な筋力低下を認めた。なお、筋重量、筋線維径、筋線維タイプ、骨格筋幹細胞数など骨格筋の量的形質には影響はみられなかった。・VdrmcKOマウスでは、筋線維の収縮・弛緩に関わる遺伝子Serca1とSerca2aの発現が減少し、骨格筋における筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ活性も低下していた。 これらの結果より、研究グループは「ビタミンD欠乏と将来的な筋力低下およびサルコペニア罹患率の上昇には関連性がある可能性があり、成熟筋線維におけるビタミンDシグナルは、筋量には影響を与えないものの筋力発揮へ寄与する」とまとめた。

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転移乳がんへの局所療法はescalationなのか?/日本癌治療学会

 転移乳がんに対する積極的な局所療法の追加は、がんが治癒しなくても薬剤使用量を減らすことができればescalationではなくde-escalationかもしれない。第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)において、岡山大学の枝園 忠彦氏は「転移乳がんに対する局所療法はescalationかde-escalationか?」と題した講演で、3つのクリニカルクエスチョンについて前向き試験の結果を検証し、転移乳がんにおける局所療法の意義について考察した。 転移乳がんにおいて治癒は難しいが、ある特定の患者ではきわめて長期生存する可能性があり、近年そのような症例が増えてきているという。枝園氏はその背景として、PETなどの画像検査の進歩により術後早期に微小転移の描出が可能となったこと、薬物療法が目まぐるしく進歩していること、麻酔や手術が低侵襲で安全になってきていること、SBRT(体幹部定位放射線治療)が保険適用され根治照射が可能になったことを挙げた。この状況の下、3つのクリニカルクエスチョン(CQ)について考察した。CQ1 転移乳がんに対する局所療法は生存期間を延長するか?(escalationとしての局所療法の意義) de novo StageIV乳がんに対して原発巣切除を行うかどうかは、すでに4つの臨床試験(ECOG2018、India、MF07-01、POSITIVE)でいずれも生存期間を延長しないことが明らかになっており、現時点でescalationとして原発巣切除をする意義はないと考えられると枝園氏は述べた。なお、一連の臨床試験の最後となるJCOG1017試験は、今年8月に追跡期間が終了し、現在主たる解析中で来年結果を報告予定という。 一方、オリゴ転移に対する局所療法の効果については、杏林大学の井本 滋氏らによるアジアでの後ろ向き研究において、局所療法を加えた症例、単発病変症例、無病生存期間が長い症例で予後が良いことが示されている。前向き試験も世界で実施されている。SABR-COMET試験はオリゴ転移(5個以下)に対する積極的な放射線療法を検討した試験で、SBRT群が通常の放射線療法に比べ、無増悪生存期間だけでなく全生存期間の延長も認められた。ただし、本試験には乳がん症例は15~20%しか含まれていない。 それに対し、乳がんのオリゴ転移(4個以下)に対するSBRTの効果を検討したNRG-BR002試験では、SBRTによる有意な予後の延長は認められなかった。しかしながら、本試験で薬物療法がしっかりなされているのか疑わしく、また転移検索でPET検査を実施していないため転移が本当に4個以下だったのか曖昧であることから、この試験結果によって「オリゴ転移に対する局所療法は有効ではない」という結論にはなっていないという。 国内でも、枝園氏らがオリゴ転移(3個以下)を有する進行乳がんに対する根治的局所療法追加の意義を検証するランダム化比較試験(JCOG2110)の計画書を作成中で、年末もしくは来年早々に登録を開始予定である。CQ2 転移乳がんに対する局所療法は局所の状態を改善するか?(escalationとしての局所療法の意義) このCQに関するデータとしては、de-novo StageIV乳がんに対する原発巣切除のデータしかないが、局所コントロールは手術ありで非常に良好で、手術なしに比べて局所の悪化を半分以下に抑えている。また、先進国であるECOGの試験では、手術なしでも4分の3は局所が悪化しておらず、枝園氏は、全例に対して局所コントロールの目的で手術が必要というわけではないとしている。手術ありのほうが術創の影響などで18ヵ月後にQOLスコアが悪化したという試験結果もある。CQ3 転移乳がんは治癒するか?(de-escalationとしての局所療法の意義) 枝園氏は、転移乳がんが局所切除によって本当に治癒するのであれば、薬物療法を中止できることからde-escalationなのではないかと述べ、自身が経験したホルモン陰性HER2陽性StageIV乳がんの52歳の女性の経過を紹介した。本症例ではトラスツズマブの投与で転移巣が完全奏効(CR)し、原発巣の残存病変については切除した。その後トラスツズマブを継続し、再燃がみられないため中止、そのまま無治療で8年間再燃していないことから、この手術はde-escalationとなったのではないかと考察している。 また、転移乳がんに対する薬物療法の効果はサブタイプによって大きく異なり、たとえば1次治療におけるCR率はHER2陽性では28%、ER陽性ではわずか2%である。薬物療法だけでCRを達成できるなら局所療法は不要であり、それらを見極めたうえで局所療法をうまく使わないといけないと枝園氏は述べた。 さらに、CRを達成したら薬物を中止できるのかという問いに関して、枝園氏は、データとして出すことはできないが、HER2陽性転移乳がんに1次治療としてトラスツズマブを投与しCRを達成した患者において、投与中止患者の80%が10年以上生存していたとのJCOGの多施設後ろ向き研究のデータを提示した。 最後に、枝園氏は3つのCQを総括したうえで「それぞれのescalation、de-escalationで良し悪しがあり、もう少しデータが必要ではないか」と述べ、講演を終えた。

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