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非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。直接対決では減塩食の効果が有意平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P

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糖尿病性腎症に対するbardoxolone methyl、52週時点でも腎機能改善確認

糖尿病性腎症の治療薬として新規開発中のbardoxolone methylについて、長期効果と用量反応が検証された第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験の結果、検討されたいずれの用量群でも、主要アウトカムである24週時点の腎機能の有意な改善が認められ、副次アウトカムである52週時点でも有意な改善が持続していたことが報告された。米国・Renal Associates(テキサス州、サンアントニオ)のPablo E. Pergola氏ら治験研究グループが、NEJM誌2011年7月28日号(オンライン版2011年6月24日号)で発表した。bardoxolone methylは、糖尿病性腎症の慢性炎症および酸化ストレスに着目し開発された経口抗酸化炎症調節薬。試験の結果を踏まえ研究グループは「bardoxolone methylは治療薬として有望である可能性が示された」と結論している。227例をプラセボ群と25mg、75mg、150mg各群に無作為化し52週治療bardoxolone methylの長期有効性を検討する第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験は、中等度~重症のCKD(eGFRが20~45mL/分/1.73m2体表面積)を伴う2型糖尿病患者を適格患者として行われた。米国内43施設から集められた573例がスクリーニングを受け、227例が無作為に(1)プラセボ投与群(57例)、(2)bardoxolone methyl 1日1回25mg投与群(57例)、(3)同75mg投与群(57例)、(4)同150mg投与群(56例)に割り付けられ、52週にわたり治療が行われた。4群の基線プロフィールは同等で、平均年齢は67歳、98%がACE阻害薬かARBまたは両方を服薬していた。主要アウトカムは、各治療群の24週時点のeGFRの基線からの変化値で、プラセボ群と比較された。副次アウトカムは、同52週時点の変化値とされた。24週時点で有意な改善、52週時点でも有意な改善持続試験の結果、eGFRの基線からの変化は12週でピーク値を示し、その後、試験期間終了の52週まで比較的安定的に推移していた。24週時点のeGFRの基線からの変化は、bardoxolone methyl各投与群ともプラセボ群との比較で有意な上昇が認められた。eGFR変化の平均値(±SD)は、25mg投与群8.2±1.5mL、75mg投与群11.4±1.5mL、150mg投与群10.4±1.5mLであった(すべての比較のP<0.001)。また、25mg投与群と75mg投与群との変化値の差は有意だったが(P=0.04)、75mg投与群と150mg投与群との差は有意ではなかった(P=0.54)。各投与群のプラセボ群と比較した有意なeGFR上昇は、52週時点でも持続していた[変化値はそれぞれ5.8±1.8mL(P=0.002)、10.5±1.8mL(P<0.001)、9.3±1.9mL(P<0.001)]。bardoxolone methyl各投与群で最も頻度が多かった有害事象は筋痙縮だったが、総じて軽度であり、また用量依存に認められた。その他、よくみられたのが、低マグネシウム血症、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の軽度上昇、胃腸への影響であった。(武藤まき:医療ライター)

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STEMI患者、エビデンス治療の導入率増加に伴い死亡率低下

1996~2007年にかけて、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者に対するエビデンスに基づく治療の導入率が上がるに従い、院内死亡率や30日・1年死亡率が低下していたことが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院循環器部門のTomas Jernberg氏らが、同期間にSTEMIの診断を受け治療・転帰などを追跡された「RIKS-HIA」研究登録患者6万人超について調査し明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月27日号で発表した。エビデンスベースやガイドライン推奨の新しい治療の実施状況や実生活レベルへの回復生存との関連についての情報は限られている。再灌流、PCI、血行再建術の実施率、いずれも増大研究グループは、1つの国で12年間以上追跡された連続患者の新しい治療導入率と短期・長期生存との関連を明らかにすることを目的に、1996~2007年にかけて、スウェーデンの病院で初めてSTEMIの診断を受け、基線特徴、治療、アウトカムについて記録された「RIKS-HIA(Register of Information and Knowledge about Swedish Heart Intensive Care Admission)」の参加者6万1,238人について、薬物療法、侵襲性処置、死亡の割合を推定し評価した。被験者の年齢中央値は、1996~1997年の71歳から、2006~2007年の69歳へと徐々に若年化していた。男女比は試験期間中を通じて有意な変化はなく、女性が34~35%であった。エビデンスベースの治療導入率は、再灌流が66%から79%へ、プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が12%から61%へ、血行再建術は10%から84%へと、いずれも有意に増加した(いずれもp<0.001)。スタチンやACEなどの薬剤投与率も増大、死亡率は院内・30日・1年ともに低下薬剤投与についても、アスピリン、クロピドグレル、β遮断薬、スタチン、ACE阻害薬の投与率がいずれも増加していた。具体的には、クロピドグレルは0%から82%へ、スタチンは23%から83%へ、ACE阻害薬もしくはARBは39%から69%へと、それぞれ投与率が増加した(いずれもp<0.001)。同期間の推定死亡率についてみてみると、院内死亡率は12.5%から7.2%へ、30日死亡率は15.0%から8.6%へ、1年死亡率は21.0%から13.3%へと、それぞれ有意な低下が認められた(いずれもp<0.001)。補正後、長期にわたる標準死亡率の一貫した低下傾向も認められ、12年生存解析の結果、死亡率は経年的に低下していることが確認された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。厳格、通常、非コントロール群の有害心血管アウトカムを評価観察サブグループ解析が行われたのは、「INVEST」試験(International Verapamil SR-Trandolapril Study)参加者2万2,576人のうちの6,400人で、糖尿病とCADを有する50歳以上の人だった。参加者は、14ヵ国862施設から1997年9月~2000年12月の間に集められ、2003年3月まで追跡された。米国からの参加者の追跡評価は、全米死亡統計によって2008年8月まで行われた。INVEST参加者は、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目標に、降圧薬治療の第一選択薬はCa拮抗薬あるいはβ遮断薬を用い、併用薬として、ACE阻害薬か利尿薬または両剤を服用した。Cooper-DeHoff氏らは、被験者を、血圧コントロールが130mmHg未満を保持している場合は厳格コントロール群に、130~140mmHg未満の場合は通常コントロール群に、140mmHg以上だった場合は非コントロール群に分類し、全死因死亡、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の初発を含む、有害心血管アウトカムを主要評価項目に検討した。主要アウトカム、通常群12.6%、厳格群12.7%、補正後ハザード比1.111万6,893患者・年の追跡調査の間、主要アウトカムイベントを呈した患者は、厳格コントロール群286人(12.7%)、通常コントロール群249人(12.6%)、非コントロール群431例(19.8%)だった。通常コントロール群 vs. 非コントロール群の心血管イベント発生率は、12.6%対19.8%だった(補正後ハザード比:1.46、95%信頼区間:1.25~1.71、P<0.001)。一方、通常コントロール群 vs. 厳格コントロール群は、12.6%対12.7%(同:1.11、0.93~1.32、P=0.24)で、ほとんど違いは存在しなかった。全死因死亡率については、厳格コントロール群は11.0%、通常コントロール群は10.2%(同:1.20、0.99~1.45、P=0.06)。延長追跡評価を含むと、同22.8%、21.8%(同:1.15、1.01~1.32、P=0.04)だった。上記結果から、「糖尿病とCADを有する患者における収縮期血圧の厳格なコントロールは、通常のコントロールと比べて心血管アウトカムの改善には関連が認められなかった」と結論した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ACE阻害薬+Ca拮抗薬、高リスク高血圧におけるCKD抑制効果が明らかに:ACCOMPLISH試験2次解析

 ACE阻害薬ベナゼプリル(商品名:チバセンなど)とCa拮抗薬アムロジピン(同:ノルバスク、アムロジンなど)の併用は、心血管疾患のリスクが高い高血圧患者において慢性腎臓病(CKD)の進行の抑制効果が高いことが、アメリカChicago 大学Pritzker医学校のGeorge L Bakris氏らが実施したACCOMPLISH試験の2次解析で明らかとなった。本試験は、主解析でベナゼプリルとアムロジピンの併用が、ベナゼプリルと利尿薬ヒドロクロロチアジド(同:ニュートライドなど)の併用よりも心血管疾患罹患率および死亡率の改善効果が優れることが示されたため、平均フォローアップ期間2.9年の時点で早期中止となっている。進行期腎症ではRA系抑制薬と利尿薬の併用で降圧効果が得られることが多くの試験で示されているが、CKDの進行に対する固定用量による降圧薬併用の効果を検討した試験はないという。Lancet誌2010年4月3日号(オンライン版2010年2月18日号)掲載の報告。CKDの進行を評価する事前に規定された2次解析 ACCOMPLISH試験は高リスク高血圧患者を対象としたプロスペクティブな二重盲検無作為化試験。今回、研究グループは、本試験の事前に規定された2次解析として固定用量のベナゼプリル+アムロジピンとベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドのCKD抑制効果について評価した。 2003年10月~2005年5月までに、5ヵ国(アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)から心血管イベントのリスクが高い55歳以上の高血圧患者11,506例が登録された。これらの患者が、ベナゼプリル(20mg/日)+アムロジピン群(5mg/日)群(5,744例)あるいはベナゼプリル(20mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日)群(5,762例)に無作為に割り付けられた。 用量は、推奨目標血圧を達成するように、無作為割り付け後1ヵ月が経過して以降は個々の患者の病態に応じて漸増した。事前に規定されたエンドポイントであるCKDの進行は、血清クレアチニン値の2倍化あるいは末期腎不全の発症(推定糸球体濾過率<15mL/分/1.73m2あるいは要透析の診断)と定義した。ACE阻害薬+Ca拮抗薬でCKDの進行が48%抑制 試験終了時点で、143例(1%)のフォローアップが完遂できなかった(ベナゼプリル+アムロジピン群70例、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群73例)。無作為割り付けされたすべての症例がintention-to-treat解析の対象となった。 CKDの進行がみられたのは、ベナゼプリル+アムロジピン群が113例(2.0%)と、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群の215例(3.7%)に比べ有意に低下した(ハザード比:0.52、p<0.0001)。 CKD患者で最も高頻度にみられた有害事象は、末梢浮腫[ベナゼプリル+アムロジピン群33.7%(189/561例)、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群16.0%(85/532例)、p<0.0001]であった。CKD患者における血管浮腫の頻度は、ベナゼプリル+アムロジピン群の方が高かった(1.6% vs. 0.4%、p=0.04)。 非CKD患者では、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群でめまい(20.3% vs. 25.5%、p<0.0001)、低カリウム血症(0.1% vs. 0.3%、p=0.003)、低血圧(2.3% vs. 3.4%、p=0.0005)の頻度が高かった。 著者は、「ベナゼプリル+アムロジピン併用療法は、腎症の進行をより遅らせるため、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法よりも優先的に考慮すべきである」と結論し、「これらの併用降圧治療のCKD抑制効果の優劣を確立するには、さらに進行した腎症を対象としたプロスペクティブ試験を行う必要がある」としている。

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医療現場で見逃される遺伝性血管性浮腫(HAE)とは

2010年1月27日、CSLベーリング株式会社本社(勝どき)にて、「血漿分画製剤と共に生きる」と題して開催されたメディアセミナーについてお届けする。順天堂大学医学部腎臓内科 客員准教授の大井洋之氏は、遺伝性血管性浮腫(Hereditary Angio Edema:HAE)が疾患としてほとんど認知されていない現状と、今後、医療従事者や製薬会社のみでHAEの認知理解を進めていくには限界があることを示唆した。大井氏によれば、「HAEが、補体の制御因子であるC1 INH欠損によって発症することはすでに明らかになっており、またHAEの診断は比較的容易で、C1 INH製剤による補充療法も可能な疾患である」ため、現在のHAE治療における最大の問題点は、「その認知理解の低さ」にあるという。その背景として、HAEがこれまで一部の医師や補体研究者のみの認知にとどまっていたことや、原因不明の浮腫として扱われていたこと、そして呼吸器・消化器にも浮腫が出現し、激しい症状をきたすことなどがほとんど知られていなかったためであるとした。なお、欧米では5万人~15万人に1人の頻度で発症するとされており、日本での有病率はいまだ不明だという。大井氏は、現在進めているHAEの啓蒙活動によって、「2~3年後には有病率が明らかになることを期待したい」と述べた。続いて、HAEがC1 INHの遺伝子異常で発症する常染色体性遺伝の遺伝性疾患であり、その症状は主にブラジキニンによるものであることを紹介した。HAE発症後、症状は、皮下、粘膜下、消化器、喉頭などに起こり、喉頭浮腫が適切に治療されない場合の致死率はおよそ)30%に上るという。発作は、精神的ストレスや外傷、抜歯、薬物投与などで誘発されることがあり、薬物投与では特にACE阻害薬に注意が必要だと述べた。 そのほか、補体研究会における取り組みや、疾患認知度に関するアンケート結果などから、医療現場でもいまだにHAEが認知されていない現状についても紹介した。大井氏は最後に、「過剰に不安をあおることなくHAEの認知理解が進むように、医療従事者・研究者・メディアなどが協力していかなければならない」と強く訴え、本講演を終えた。(ケアネット 片岡磨衣子)

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高用量ARBが、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者の臨床転帰を改善:HEAAL試験

 高用量のロサルタン(商品名:ニューロタン)は低用量に比べ、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者において心不全による入院率および死亡率を有意に低減させることが、アメリカTufts大学医学部Tufts医療センターのMarvin A Konstam氏らが実施した無作為化試験(HEAAL試験)により明らかとなった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、ACE阻害薬併用の有無にかかわらず心不全患者の合併症発生率や死亡率を低減し、左室駆出率(LVEF)を改善することが示されているが、これらの臨床試験は1種類の用量の評価にすぎないため、種々の用量のレジメンのうちの至適用量や相対的なリスク/ベネフィットのプロフィールの指針とはならないという。心不全患者に対するARB治療では、高血圧治療に使用される通常用量よりも高用量のほうが臨床転帰は改善される可能性が指摘されていた。Lancet誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月17日号)掲載の報告。ロサルタンの高用量と低用量を比較する二重盲検試験 HEAAL試験の研究グループは、ARBの一つであるロサルタンを用い、心不全患者の臨床転帰の改善効果は高用量と低用量のいずれが優れるかを検討する二重盲検無作為化試験を実施した。 2001年11月~2005年3月までに、30ヵ国255施設からNYHAクラスII~IV、LVEF<40%で、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者3,846例が登録された。これらの患者が、ロサルタン150mg/日を投与する群(1,927例)あるいは50mg/日を投与する群(1,919例)に無作為に割り付けられた。 無作為割り付けの際に、施設およびβ遮断薬の併用の有無で層別化が行われ、患者、医師ともに割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は死亡および心不全による入院の複合エンドポイントとした。高用量群で死亡および心不全による入院が有意に低減、ARB漸増法は有用 両群とも、データの質の不良により6例ずつが除外された。フォローアップ期間中央値4.7年の時点で、死亡および心不全による入院の割合は50mg群の46%(889/1,913例)に対し、150mg群は43%(828/1,921例)と有意に低減した(ハザード比:0.90、p=0.027)。 主要評価項目の2つの構成因子のうち、死亡については有意な差はなかった[150mg群:33%(635/1,921例) vs. 35%(665/1,913例)、ハザード比:0.94、p=0.24]が、心不全による入院は高用量群が低用量群よりも有意に優れた[150mg群:23%(450/1,921例) vs. 26%(503/1,913例)、ハザード比:0.87、p=0.025]。 Kaplan-Meier法による主要評価項目の累積発現率は、150mg群では1年後11.7%、2年後21.4%、3年後28.9%、4年後35.7%であり、50mg群はそれぞれ13.3%、24.4%、31.5%、38.9%と推移した(ハザード比:0.90、p=0.027)。サブグループ解析では、高血圧の既往歴のない心不全患者では、高用量群が低用量群よりも有意に臨床転帰が優れた(p=0.01)。 高用量群で、腎不全(150mg群:454例 vs. 50mg群:317例)、低血圧(203例 vs. 145例)、高カリウム血症(195例 vs. 131例)が多く見られたが、これらの有害事象によって高用量群の治療中止例が有意に増加することはなかった。 著者は、「ロサルタン150mg/日は、50mg/日に比べACE阻害薬不耐容の心不全患者の死亡および心不全による入院の割合を有意に低減した」と結論し、「これらの知見は、臨床的ベネフィットがもたらされるまでARBを漸増する方法の有用性を示す」と指摘している。

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CKD患児、ramipril高用量服用の血圧コントロール強化群に大きなベネフィットが

慢性腎疾患(CKD)は成人でも小児でも、末期腎不全へと進行する傾向があり、臨床的に重大な問題である。腎不全は高血圧と糸球体の過剰ろ過によって進行するが、成人患者において、レニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害する降圧薬服用が、腎機能を保護し腎不全の進行を遅らせることが明らかとなった。しかし、目標とすべき血圧値についてはなお議論の的となっている。欧州の33の小児腎臓病学部門が共同参画するESCAPE Trial Groupは、ACE阻害薬ramiprilを高用量服用する小児CKD患者(約50%が高血圧症を有するといわれる)を無作為に2群に分け、一方の血圧コントロール目標値を厳しく設定し、その長期的な腎保護作用の評価を行った。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。24時間動脈圧目標値通常群と強化群に無作為化し、5年間追跡試験は、1998年4月~2001年12月の間に、3~18歳のCKD患者(糸球体濾過量15~80mL/分/1.73m2体表面積)385例が参加し行われた。被験者はramiprilを、試験導入(6ヵ月間)後に1日6mg/m2体表面積で投与され、通常の血圧コントロール群(目標値:24時間平均動脈圧50~95パーセンタイル)と、目標値を厳しく設定した血圧コントロール群(目標値:同50パーセンタイル未満)の2群に無作為に割り付けられ、5年間追跡された。ramiprilだけで目標値が達成できない場合は、RA系をターゲットとしない降圧薬を併用した。1次エンドポイントは、糸球体濾過量50%低下に要した時間または末期腎不全への進行までの期間とした。副次エンドポイントには、血圧、糸球体濾過量、蛋白尿の変化を含んだ。腎不全への進行等、通常群41.7%に対し強化群29.9%にとどまる5年間での1次エンドポイント達成は、通常群は41.7%だったが、強化群は29.9%にとどまった(ハザード比:0.65、95%信頼区間:0.44~0.94、P = 0.02)。有害事象の種類や発生率に両群に有意差はなく、試験からの累積脱落率(通常群26.5%対厳格群28.0%)も有意差はなかった。また、血圧コントロールが良好に維持されている一方で、蛋白尿は当初50%以下になった後、ACE阻害薬継続服用中に徐々にリバウンドし、目標血圧値達成と蛋白尿減少はそれぞれ、腎疾患進行を遅らせる独立した有意の予測因子であることが認められた。なお、この蛋白尿の再出現は、長期にわたるACE阻害薬服用患児に共通して見られ、研究グループは、「血圧コントロールの目標値を通常より厳しくすることは、小児CKD患者の腎機能に多大なベネフィットを与える」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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「テルミサルタン」と「アムロジピン」の新規配合錠をFDAが承認

 ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社は19日、同社の開発したテルミサルタン(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)とアムロジピン(カルシウム拮抗薬)の新規配合錠が、米国食品医薬品局(FDA)から承認されたと発表した。米国での製品名は、TWYNSTA。高血圧治療を適応として、単独あるいは他の降圧剤との併用にて、目標血圧を達成するための初期治療として用いられる。 新たな配合錠のベネフィットは、アンジオテンシンII受容体およびカルシウムチャネルの長時間の拮抗・遮断という作用機序を相補的に発揮することにあるという。24時間にわたる降圧および血圧コントロールにきわめて有効で、テルミサルタンとアムロジピンでそれぞれ既に実証されている心血管保護での有用性を併せ持つという。テルミサルタンは降圧効果に加え、心血管イベント高リスク患者での心筋梗塞、脳卒中、心血管死のリスク減少の有用性が実証された唯一のアンジオテンシンII受容体拮抗薬となり、米国で19日、ACE阻害薬を服用することができない高リスク患者での心血管イベント減少を適応として承認を受けた。 テルミサルタンとアムロジピンの配合錠は、現在日本と欧州で承認申請されており、引き続きその他の国々でも申請される予定。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=9804

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1型糖尿病患者へのRA阻害薬の早期投与は、網膜症の進行を遅らせる

未だ1型糖尿病患者にとって、腎症と網膜症は重大な合併症である。米国ミネソタ大学小児科のMichael Mauer氏らは、これら疾患の進行を、ACE阻害薬やARBのレニン・アンジオテンシン系(RA)阻害薬の早期投与によって抑制できるか、無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて検討した。NEJM誌2009年7月2日号より。ロサルタン群、エナラプリル群、プラセボ群で検討試験は、1型糖尿病患者285例(血圧、蛋白尿ともに正常値)を、ACE阻害薬のエナラプリル(商品名:レニベースなど)投与(20mg/日)群、もしくはARBのロサルタン(商品名:ニューロタン)投与群(100mg/日)、あるいはプラセボ投与群に二重盲検にて無作為化し、5年間追跡し行われた。主要エンドポイントは、腎生検で行った糸球体に占めるメサンギウム容積率の変化とされた。網膜症のエンドポイントは、2段階以上の網膜症重症度スケールの進行とされ、線形回帰およびロジスティック回帰モデルを用いてintention-to-treat解析が行われた。プラセボとの比較で、網膜症の進行割合65~70%減少完全な腎生検データが得られたのは90%、網膜症のデータが得られたのは82%だった。5年間にわたる主要エンドポイントの変化は、プラセボ群(0.016単位)、エナラプリル群(0.005単位、P=0.38)、ロサルタン群(0.026単位、P=0.26)で、有意な違いは見られなかった。他のあらゆる腎生検データ(構造的変化)でも治療効果の有意な違いは見られなかった。微小アルブミン尿症の5年累積発生率は、プラセボ群が6%である一方、ロサルタン群は17%(ログランク検定によるP=0.01)と高かったが、エナラプリル群は4%(同P=0.96)だった。網膜症の進行割合は、プラセボ群との比較で、エナラプリルでは65%減少(オッズ比:0.35、95%信頼区間:0.14~0.85)、ロサルタン群は70%減少(0.30、0.12~0.73)していた。いずれも血圧の変化とは関連がなかった。有害事象は、生検に関連し3件が発生したが、いずれも治癒した。また、慢性咳嗽がエナラプリル群で12例、ロサルタン群6例、プラセボ群4例が報告された。Mauer氏は、「1型糖尿病患者への、RA阻害薬の早期投与は、腎症の進行を遅らせることはできなかったが、網膜症の進行を遅らせられた」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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降圧薬は血圧レベルに関係なく、ある年齢になったら検討すべきではないか

ロンドン大学疫学部門のM.R.Law氏らの研究グループは、異なるクラスの降圧薬について、冠動脈疾患(CHD)と脳卒中予防の有効性を定量的に判定するとともに、治療を受けるべき患者を見極めることを目的としたメタ解析を行った。Medline(1966~2007)をデータソースに文献を検索、CHDイベントおよび脳卒中の記録があった147の前向き無作為化疫学研究を選定し解析は行われた。BMJ誌2009年5月24日号より。46万例をCVD歴なし、CHD歴あり、脳卒中歴ありに分類しメタ解析選択した試験のうち、108件が実薬とプラセボ(あるいは対照群が未投与)間の「血圧差試験」、46件が「薬剤比較試験」だった。なお、7試験はいずれにも該当、被験者は合計95万8,000例だった。そのうち、心血管疾患(CVD)既往のない者、CHD既往のある者、脳卒中既往のある者の3群に分類された46万4,000例をメタ解析した。β遮断薬のCHDイベント再発低下が有意β遮断薬に関する血圧差試験の解析から、β遮断薬は、CHD既往のある者のCHDイベント再発を有意に低下することが認められた(平均リスク低下率:29%、CHD既往のない者での場合や他クラスでの試験では平均15%)。その効果は、CHD既往のうちでも試験参加1、2年前に急性心筋梗塞を発症していた者ほど大きく(31%)、CHD発症から時間が経っていた者ほど効果は小さかった(13%)(P=0.04)。上記以外の血圧差試験での、CHDイベント低下率は22%、脳卒中低下率は41%で、この結果は、メタ解析で予想されたCHD 25%減、脳卒中36%減と同程度であり、その有益性は血圧を低下させたことにあることが示された。60~69歳、拡張期血圧90mmHgの患者には標準用量の半量で3剤投与がベスト5つのおもな降圧薬(サイアザイド、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬)は、CHDイベントと脳卒中の予防に関する効果は同程度だった。ただし例外として、Ca拮抗薬は脳卒中に対してより大きな予防効果が認められた(相対リスク:0.92)。CHDイベントと脳卒中の減少の度合いは、CVD歴の有無と治療前の血圧(収縮期110mmHg、拡張期70mmHgまで)にかかわらず同程度だった。これら結果と2つの他の研究(血圧コホート研究、薬剤の降圧効果を投与量で判定した試験のメタ解析)を総合すると、60~69歳の、治療前拡張期血圧90mmHgの患者で、標準用量の半量で3剤を組み合わせ投与した場合、CHDで約46%、脳卒中で62%、リスクを低下することが明らかになった。標準用量1剤では効果がおよそ半分だった。さらに、Ca拮抗薬以外の降圧薬(非選択性のβ遮断薬を除く)では心不全の出現率を24%低下する一方、Ca拮抗薬は19%の低下だったことも明らかになった。血圧レベルによらないシンプルな降圧治療ガイドラインをCHD直後に投与されたβ遮断薬の付加的な保護作用と、脳卒中予防のCa拮抗薬のわずかな付加的効果を除けば、降圧薬はいずれもCHDイベントと脳卒中の減少に同程度の効果があった。CVDイベントの減少率は、治療前血圧やCVDの有無にかかわらず、同じか同程度だった。これらから研究グループは、降圧薬の使用ガイドラインについて、いかなる血圧レベルの患者にも提供されるよう単純化されるべきだと述べるとともに、血圧測定によって治療対象者を選ぶのではなく、一定の年齢に達したら誰でも降圧薬の服用を検討することが重要だと述べている。

252.

ARB バルサルタン、心房細動の再発予防効果得られず

 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与によっても心房細動の再発予防効果が得られなかったことが報告された。心房細動に関して今のところ、コントロール可能な理想的な治療はないとされる一方で、実験的研究でARBが心房リモデリングに影響を与えることが、また臨床試験からはARBの心房細動予防の可能性が示唆されていた。報告は、バルサルタン(商品名:ディオバン)に関する大規模多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験GISSI-AFからで、NEJM誌2009年4月16日号で掲載された。1,442例が参加した大規模試験 GISSI-AF(Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto Miocardico–Atrial Fibrillation)試験は、心血管疾患、糖尿病、左心拡大の基礎疾患があり心房細動の既往がある患者に、バルサルタン320mg/日を標準治療として加えることが有効かどうかを調べることを目的とし行われた。試験には、2004年11月~2007年1月の間に、イタリアの114医療センターで1,442例が登録。過去6ヵ月で心房細動が2回以上あった患者、もしくは過去2週間で心房細動があり電気的除細動が成功した患者で、現在は洞調律の者を適格とした。 対象者は無作為に、バルサルタン群(722例)とプラセボ群(720例)に割り付けられた(投与量は、最初の2週間は80mg/日、3~4週間は160 mg/日、以降320 mg/日)。 主要エンドポイントは2つで、追跡1年間の、心房細動再発までの期間と、再発が複数回に及んだ患者の割合とした。ACE阻害薬の服用有無問わず、結果はプラセボと同等 再発があったのは、バルサルタン群371/722例(51.4%)、プラセボ群375/720例(52.1%)で、補正後ハザード比は0.97(96%信頼区間:0.83~1.14、p=0.73)だった。 再発が複数回あったのは、バルサルタン群194/722例(26.9%)、プラセボ群201/720例(27.9%)で、補正後ハザード比は0.89(99%信頼区間:0.64~1.23、p=0.34)だった。 ACE阻害薬を服用していなかった患者を含めたサブグループ解析においても、同様の結果が見られたという。

253.

ACE阻害薬、利尿薬とよりもCa拮抗薬との併用のほうが優れる:ACCOMPLISH試験

 米国の現行の高血圧治療ガイドライン(JNC 7)では、ハイリスクの高血圧患者に対してサイアザイド系利尿剤を含んだ併用療法を用いることを推奨しているが、最適な併用治療は十分に検討されていなかった。国際的な多施設共同試験ACCOMPLISHは、ACE阻害薬「ベナゼプリル」+ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬「アムロジピン」と、「ベナゼプリル」+サイアザイド系利尿薬「ヒドロクロロチアジド」とを比較したもので、ACE阻害薬+Ca拮抗薬併用療法のほうが、心血管イベントの減少効果が優れていることを報告した。NEJM誌2008年12月4日号より。アメリカ、北欧の計5ヵ国548施設から1万強が参加 ACCOMPLISH(Avoiding Cardiovascular Events through Combination Therapy in Patients Living with Systolic Hypertension)試験は多施設共同無作為化二重盲検試験で、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの5ヵ国548施設から参加した、心血管イベントリスクが高い高血圧患者1万1,506例(2003年10月登録開始)を、ベナゼプリル+アムロジピン併用療法群(Ca拮抗薬併用群)とベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法群(利尿薬併用群)に割り付け行われた。 両群の患者基線値は同等。試験は、追跡平均36ヵ月時点で、事前規定の試験有効性の中止基準を上回ったため早期に終了された。Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の2割減 平均血圧は、Ca拮抗薬併用群で131.6/73.3 mmHg、利尿薬併用群で132.5/74.4 mmHgで、目標血圧(140/90 mmHg以下)は前者75.4%、後者72.4%の達成率だった。 主要なアウトカムイベント(心血管系を原因とする死亡、心筋梗塞、脳卒中、狭心症による入院、突然の心停止後に蘇生、冠動脈血行再建)は、Ca拮抗薬併用群では552件(9.6%)だったが、利尿薬併用群では679件(11.8%)発生し、Ca拮抗薬併用群のイベント発生は利尿薬併用群の0.80倍(95%信頼区間:0.72~0.90、P

254.

テルミサルタン、有意な予後改善効果はない:TRANSCEND試験

アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタンは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に不耐用な心血管疾患患者で良好な耐用性を示すものの有意な予後改善効果はないことが、カナダMcMaster大学のSalim Yusuf氏らTRANSCEND試験の研究グループによって報告された。ACE阻害薬は主要な心血管イベントを抑制するが患者の約20%は耐用性がない。不耐用のおもな原因は咳嗽で、特に女性やアジア人に不耐用例が多いという。Lancet誌2008年9月27日号(オンライン版2008年8月31日号)掲載の報告。約6,000例が参加した大規模な無作為化対照比較試験Telmisartan Randomised AssessmeNt Study in ACE iNtolerant subjects with cardiovascular Disease(TRANSCEND)試験は、心血管疾患および臓器障害を有する糖尿病のうちACE阻害薬に不耐用な患者を対象に、テルミサルタンの有用性を検討する無作為化対照比較試験。2001年11月~2004年5月の間に40ヵ国630施設から5,926例が登録された。3週間のrun-in期間ののち、テルミサルタン群(80mg/日、2,954例)あるいはプラセボ群(2,972例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院の複合エンドポイントとした。耐用性は良好だが、主要評価項目に有意差なしフォローアップ期間中央値は56ヵ月、全例で有効性解析が可能であった。平均血圧は試験期間中を通じてプラセボ群よりもテルミサルタン群で低かった[重み付けされた両群間の差の平均値:4.0/2.2(SD 19.6/12.0)mmHg]。主要評価項目の発生率はプラセボ群17.0%(504例)、テルミサルタン群15.7%(465例)と、両群で同等であった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.81~1.05、p=0.216)。副次評価項目である心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発生率は、プラセボ群の14.8%(440例)に対しテルミサルタン群は13.0%(384例)と有意に低かった(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.76~1.00、非補正p値=0.048)が、補正後は有意差が消失した(p=0.068)。心血管疾患による入院率は、プラセボ群の33.0%(980例)に対しテルミサルタン群は30.3%(894例)と有意に優れた(相対リスク:0.92、95%信頼区間:0.85~0.99、p=0.025)。薬剤の恒久的な中止例は、プラセボ群よりもテルミサルタン群で少ない傾向が見られた[21.6%(639例) vs. 23.8%(705例)、p=0.055]。もっとも高頻度な中止理由は血圧低下症状であった[プラセボ群:0.54%(16例)、テルミサルタン群:0.98%(29例)]。併用投与でベネフィットをもたらす可能性も研究グループは、「テルミサルタンはACE阻害薬に不耐用な心血管疾患および糖尿病患者で良好な耐用性を示した。心不全による入院を含めた主要評価項目に有意差は認めなかったが、副次評価項目である心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントのリスクはテルミサルタン群で中等度に低下する傾向が見られた」と結論している。また、「今回の結果に加えPRoFESS、HOPE、LIFE、ADVANCE、ONTARGETなどの知見を考慮すると、他の確立された治療法と併用すればテルミサルタンは中等度の付加的なベネフィットをもたらすことが示唆される。薬剤の耐用性と心血管イベントに対する効果の観点からは、ACE阻害薬に不耐用な心血管疾患患者、高リスク糖尿病患者の治療薬となる可能性もある」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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薬物治療開始血圧値、降圧目標値ともに年々低下傾向 -「ケアネット 高血圧白書2004-2008」より-

ケアネットが提供するサービスに利用登録している医師(ケアネット会員医師)に対する「高血圧症に関する医師の治療意識」に関する5年間におよぶ調査結果より、薬物治療開始血圧値、降圧目標値ともに年々低下傾向にあることが明らかになった。ケアネットでは、毎年6月(2004年は5月に実施)に「高血圧症に関する医師の治療意識に関するインターネット調査」をケアネット会員医師に対し実施し、目標回収数を500名(2007年までは1,000名)とし、2004年より実施してきた。本調査項目の中から、「薬物治療開始血圧値」と「降圧目標値」に関する5年間におよぶ調査の結果がまとまったので以下に示す。「薬物治療開始血圧値」は、5年間で6.5~3.3mmHg低下高血圧患者の年齢区分別に「降圧薬の投与を開始する判断基準となる血圧値」を記入形式で尋ね、平均値を算出した。その結果、患者年齢が高いほど薬物治療の開始血圧値(平均)は高めだが、その値は年々低下し、年齢層間の差異は縮小しており、薬物治療に対し、積極的になっている傾向がうかがえた。 65歳未満患者: 151.8mmHg(2004年5月)→148.5mmHg(2008年6月)65~74歳患者: 155.1mmHg(2004年5月)→150.6mmHg(2008年6月)75歳以上患者: 160.4mmHg(2004年5月)→153.9mmHg(2008年6月)「降圧目標値」も、5年間で4.3~1.2mmHg低下高血圧患者の年齢区分別に「降圧治療の目標としている血圧値」を記入形式で尋ね、平均値を算出した。患者年齢が高いほど治療の目標血圧値(平均)は高めだが、その値は年々低下し、年齢層間の差異は縮小しており、血圧コントロールの重要性への認識が高まっていることがうかがえた。 65歳未満患者: 133.3mmHg(2004年)→132.1mmHg(2008年)65~74歳患者: 137.4mmHg(2004年)→135.4mmHg(2008年)75歳以上患者: 142.7mmHg(2004年)→138.4mmHg(2008年)後期高齢者の薬物治療には、まだ消極的「薬物治療開始血圧値」の回答分布をまとめたところ、患者の年齢が65歳未満においては、2004年調査では150mmHgを降圧薬の投与を開始する判断基準となる血圧値としている医師が最も多かったが(140mmHg:22%、150mmHg:37%、160mmHg:31%)、2008年調査で最も多かった「薬物治療開始血圧値」は140mmHgであった(140mmHg:36%、150mmHg:34%、160mmHg:19%)。一方、75歳以上の後期高齢者に対しては、2008年調査においても160mmHg以上になってから薬物治療を考慮する医師が全体の45%を占めた。すなわち、患者の血圧が140、150mmHgでは薬物治療を開始せず、しばらく生活習慣の改善を指導し、血圧が160mmHg付近に達した時点で、ようやく薬剤処方を検討するといった消極的な医師が多いことがうかがえる。10年前の常識が非常識になる!?これは「加齢に伴い血圧が高くなるのは生理現象であり、治療の必要性はない」、「収縮期血圧は“年齢+90mmHg”くらいを目安に」という考え方が長らく支配的であり、2000年6月に発表された「高血圧治療ガイドライン2000(JSH2000)」においても80-89歳の患者に対する薬物治療開始血圧値は「160~180mmHg以上/90mmHg以上」が推奨されていたことが影響していると考えられる。現在のJSH2004では“患者年齢に関わらず、生活習慣の修正を指導し、1~3ヵ月後に140/90mmHg以上なら降圧薬治療を開始すべき”と推奨しており、薬物治療開始を単純に血圧値での判断するようなものではないが、「薬物治療開始血圧値」は140/90mmHgである。また、本年5月には「80歳以上の高血圧患者に対しても薬物治療によって、脳卒中、心不全の発症率を抑えることができ、死亡率も低下する」という後期高齢者の降圧薬治療を支持する結果が発表されている1)。このHYVET(Hypertension in the Very Elderly Trial)と呼ばれる大規模介入試験は、80歳以上の収縮期高血圧症3,845例を対象に、利尿薬インダパミド±ACE阻害薬ペリンドプリルによる降圧薬治療群とプラセボ群を無作為化比較したものであり、降圧薬治療によって1次評価項目である「脳卒中発症」が30%低下し(p=0.06)、「総死亡」が21%低下した(p=0.02)。[詳しくはこちら]第31回高血圧学会学術総会でのディスカッションに期待!2009年1月、日本高血圧学会によりJSH2004が5年ぶりに改訂され、「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が発行される予定である。今回は前述のHYVETなど2004年以降に発表された海外の大規模介入試験だけでなく、日本人を対象とした大規模介入試験もエビデンスとして取り入れられることになっており、注目が高まっている。なお、この新しいガイドラインの草案は、2008年10月11日に「第31回日本高血圧学会学術総会」の『特別企画 JSH2009ガイドライン』にて議論される予定である。このセッションにおいても『高齢者高血圧』は採り上げられており、樂木宏実氏(大阪大学大学院老年・腎臓内科学)の講演の後、指定討論者として桑島巌氏(東京都老人医療センター循環器科)という活発な討論が期待される本学術総会の目玉の1つである。 文献1) Beckett NS et al :N Engl J Med. 2008; 358: 1887-1898.(ケアネット 藤原 健次)

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欧州心臓病学会にて大規模臨床試験「TRANSCEND」発表される

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)において高血圧治療薬ミカルディス(テルミサルタン)のアウトカム試験TRANSCENDの結果が報告され、ミカルディス群はプラセボ群と比較して、心血管イベント高リスク患者での心血管死、心筋梗塞、脳卒中発症リスクの抑制効果が13%高いことが証明されたと発表した。TRANSCEND(Telmisartan Randomised AssessmeNt Study in ACE-iNtolerant subjects with cardiovascular Disease)は、ONTARGET試験に並行して実施された試験で、ACE阻害薬に忍容性の認められない心血管イベント高リスク患者5,926人(40ヵ国)を対象に、ミカルディス群のプラセボ群に対する心血管イベント抑制効果および忍容性を検討したもの。抗血小板薬、スタチンなどの標準的治療が施された上に、ミカルディスまたはプラセボ群ともにRAS抑制薬以外の降圧薬の併用が認められていたことも、試験の特徴として挙げられる。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/news/p-release/08_0902.html

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テルミサルタン+ラミプリル併用で腎機能はむしろ低下:ONTARGET試験

血管リスクの高い集団の腎機能に及ぼすテルミサルタンの効果はラミプリルと同等であり、両薬剤を併用した場合は単剤投与に比べ蛋白尿は改善するものの腎機能はむしろ低下することが、ONTARGET試験の参加者を対象とした解析で明らかとなった。アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬は蛋白尿を抑制することが確認されており、併用による腎機能の改善効果が期待されていた。ドイツLudwig Maximilians大学Schwabing総合病院のJohannes F E Mann氏が、Lancet誌2008年8月16日号で報告した。2万5,000例以上を対象とした国際的な無作為化試験の腎機能解析ONTARGET(ongoing telmisartan alone and in combination with ramipril global endpoint trial)試験の研究グループは、55歳以上のアテローム動脈硬化性血管疾患患者あるいは臓器障害を伴う糖尿病患者を対象に、ARBであるテルミサルタン、ACE阻害薬であるラミプリルおよびその併用投与が腎機能に及ぼす効果を比較検討した。試験期間は2001~2007年で、3週間のrun-in期間ののち2万5,620例がテルミサルタン群(80mg/日、8,542例)、ラミプリル群(10mg/日、8,576例)、併用群(それぞれ80mg/日+10mg/日、8,502例)に無作為に割り付けられ、腎機能の評価および蛋白尿の測定が行われた。フォローアップ期間(中央値)は56ヵ月であった。主要アウトカムは透析、血清クレアチニン値の倍化、死亡の複合発生率、副次アウトカムは透析、血清クレアチニン値の倍化の複合発生率とした。主要、副次アウトカムがともに併用群で有意に悪化試験期間中に低血圧症状で784例(テルミサルタン群229例、ラミプリル群149例、併用群406例)が治療を中止した。主要アウトカム(透析、血清クレアチニン値の倍化、死亡)の発生率は、テルミサルタン群(1,147件、13.4%)とラミプリル群(1,150件、13.5%)は同等であったが(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.92~1.09)、併用群(1,233件、14.5%)では有意に上昇した(1.09、1.01~1.18、p=0.037)。副次アウトカム(透析、血清クレアチニン値の倍化)の発生率も同様で、テルミサルタン群(189例、2.21%)とラミプリル群(174 例、2.03%)は同等であったが(1.09、0.89~1.34)、併用群(212例、2.49%)では有意に上昇した(1.24、1.01~1.51、p=0.038)。推定糸球体濾過率(eGFR)のベースラインからの低下は、テルミサルタン群(-4.12 mL/分/1.73m2)、併用群(-6.11 mL/分/1.73m2)に比べラミプリル群(-2.82 mL/分/1.73m2)で少なく、いずれも有意差を認めた(いずれもp<0.0001)。尿中アルブミン排泄の上昇は、ラミプリル群に比べテルミサルタン群(p=0.004)および併用群(p=0.001)で有意に少なかった。著者は、「血管リスクの高い集団では、テルミサルタンの腎機能に及ぼす効果はラミプリルと同等であり、両薬剤の併用投与はそれぞれの単剤投与に比べ蛋白尿は改善するものの腎機能はむしろ低下した」と結論し、「明確な蛋白尿が見られる腎疾患患者では、併用投与が腎不全の進行や透析の予防に有効な可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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BPLTTCから新たなメタ解析:65歳の上下で降圧薬の有用性を比較

降圧大規模試験に関する前向きメタ解析であるBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’Collaboration(BPLTTC)から新たなデータが報告された。65歳未満の高血圧患者には「ACE阻害薬」、「より積極的な降圧」、「利尿薬またはβ遮断薬」がイベント抑制の観点からは好ましいようだ。BMJ誌2008年5月17日号(オンライン版2008年5月14日号)からの報告。31試験20満例弱を対象今回解析対象となったのは31試験に参加した190,606例。異なった薬剤あるいは降圧目標を比較した降圧無作為化試験のうち、1,000人年以上の規模を持ち2006年9月までにデータを入手でき、かつ本メタ解析が事前に定めている患者情報の得られた試験である。65歳「未満」群(平均年齢57歳)と「以上」群(平均年齢72歳)に分け、1次評価項目である心血管系イベント(脳血管障害、冠動脈イベント[突然死含む]、心不全)のリスクが比較された。65歳「以上」「未満」間で有意なバラツキみられず結果だが、まずプラセボ群と比較したACE阻害薬群、Ca拮抗薬群の心血管系イベント減少率は65歳「未満」「以上」で同等だった。すなわちプラセボ群と比較したACE阻害薬群の心血管系イベント相対リスクは、65歳未満で0.76(95%信頼区間:0.66~0.88)、65歳以上で0.83(95%信頼区間:0.74~0.94)[バラツキ:P=0.37]、Ca拮抗薬群では65歳未満0.84(95%信頼区間:0.54~1.31)、65歳以上0.74(95%信頼区間:0.59~0.92))[バラツキ:P=0.59]だった。「非積極的降圧」と「積極的降圧」を比較しても同様で、積極的降圧群の相対リスクは65歳未満で0.88(95%信頼区間:0.75~1.04)、65歳以上1.03(95%信頼区間:0.83~1.24 [バラツキ:P=0.24] となっていた。「ACE阻害薬 vs 利尿薬またはβ遮断薬」、「Ca拮抗薬 vs 利尿薬またはβ遮断薬」、「ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬」、「ARB vs その他」で比較しても同様で、65歳「以上」と「未満」の間にイベント抑制作用の有意なバラツキはみられなかった。65歳「未満」・「以上」ではなく年齢を連続変数として解析しても、各種降圧薬による心血管系イベント抑制作用は有意な影響を受けていなかった。なお65歳「未満」と「以上」の間に「一定度の降圧により得られるイベント相対リスクの減少率」の差もなかった。降圧治療は少なくとも本解析で検討された範囲であれば年齢の高低を問わず有用であり、また年齢により降圧薬の有用性に差はない──と研究者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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ARBは心筋梗塞の発症抑制についてACE阻害薬より劣るのか? -ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(2)-

 “ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させるのか?”、“ARBの心筋梗塞発症抑制はACE阻害薬より劣るのか?”-これらの疑問に対する答えを一身に背負わされてきた試験が先ごろ発表された。冠動脈疾患ハイリスク例に対してACE阻害薬とARB テルミサルタン、そしてその2剤併用療法を比較したONTARGET試験1)だ。ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる!? この疑問について注目を集めるきっかけを2004年に発表されたVALUE試験2)にまで遡ってみた。ハイリスク高血圧患者に対して、バルサルタンを投与した場合、アムロジピンより心筋梗塞の発症率が有意に高かったのである。VALUE試験において心筋梗塞の発症は二次評価項目ではあったが、このような結果が発表前に誰が予想しただろうか。 その年の11月、米国トロント総合病院心臓外科のVerma氏は、この結果を受け、「Angiotensin receptor blockers and myocardial infarction –These drugs may increase myocardial infarction and patients may need to be told」というタイトルの論文をBMJ誌に発表した3)。ここでは前述のVALUE試験以外にもCHARM-Alternative試験などの結果からARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる可能性があり、ONTARGET試験の結果が発表されるまで、「ARBが咳の出ないACE阻害薬」と考えることに慎重になる必要があると言及した。そしてこの論争を投げかけたVerma氏も結論をONTARGET試験に委ねたのであった。ARBは心筋梗塞の発症リスクを高めない! その半年後、2005年夏にはARBの有用性を検証した無作為化比較試験のメタアナリシスが2報発表された4,5)。いずれの論文においても「ARBは心筋梗塞の発症リスクを有意に高めない」という結論に達し、Verma氏の仮説を支持するものとはならなかった。そしてここでもONTARGET試験がこの問題を解決する結果を導いてくれるものだと、ONTARGET試験に期待が寄せられた。ACE阻害薬は降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用が認められる 一方、降圧薬の違いによるのアウトカムの格差に関するいくつかのメタアナリシスを発表してきたBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration (BPLTTC)は、2007年にACE阻害薬とARBのメタアナリシスを発表した6)。これによると5mmHgの降圧に対して冠動脈疾患の発症リスクをACE阻害薬は16%、ARBは17%減少させると推算されている。一方、降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用はACE阻害薬だけに認められることを示した。 しかし、BPLTTCのメタアナリシスにおいては解析対象となった26の比較試験のうち、ACE阻害薬とARBをhead-to-headで比較した試験はわずか3つしか含まれていなかった。ELITEII7)(慢性心不全3,152例、カプトプリル vsロサルタン)、OPTIMAAL8)(急性心筋梗塞5,477例、カプトプリル vsロサルタン)、VALIANT9)(急性心筋梗塞9,818例、カプトプリル vsバルサルタン)の3つだ。これら個々の比較試験における心筋梗塞発症率や、これら3試験のメタアナリシス6)における冠動脈疾患発症率においてはACE阻害薬カプトプリルとARBの間には有意な差を認めてない。この有名なメタアナリシスもまた「ACE阻害薬とARBを直接比較した非常に大規模な比較試験であるONTARGET試験がこの疑問に対して何らかの重要な情報を与えてくれる」だろうとONTARGET試験への期待を抱かせたのであった。 「ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる」のではと懸念される中、慢性心不全例へのARBカンデサルタンの有用性を検証したCHARM試験のOverall解析においてカンデサルタンの投与によって慢性心不全例の心筋梗塞の発症率が有意に抑制されたとの報告10)もあったことは押さえておきたい。 ARBと心筋梗塞発症の議論を一身に背負わされたONTARGET試験 このようにONTARGET試験は「脳心血管イベントの高リスク患者におけるARBテルミサルタンのACE阻害薬に対する非劣性を検証する」といった主要目的とは別のところで、「心筋梗塞の発症抑制に関してARBがACE阻害薬より劣るか否か(もしかすると優るのか)」も明らかしてくれるのではないかと期待された試験でもあった。 そして2008年春、ONTARGET試験は発表された1)。この試験では〈1〉冠動脈疾患、〈2〉末梢動脈疾患、〈3〉脳血管疾患、〈4〉臓器障害を伴う糖尿病の4つのうちいずれかを有する55歳以上の者を対象として、〈1〉ARBテルミサルタン、〈2〉ACE阻害薬ラミプリル、〈3〉その併用の3群のうちいずれかの治療が施され、〈1〉心血管死、〈2〉非致死的心筋梗塞、〈3〉非致死的脳卒中、〈4〉うっ血性心不全による入院のいずれかが発症率が主要評価項目として検証された。中央値56ヵ月、すなわち4年と8ヵ月において主要評価項目はテルミサルタン群とラミプリル群でそれぞれ16.7%、16.5%発症し、テルミサルタンのラミプリルに対する非劣性が証明された。 一方、主要評価項目の構成要素の1つとされた「非致死的心筋梗塞」は25,620例中1,291例(5.0%)に発症した。治療群別に見ると、ラミプリル群で4.8%、テルミサルタン群で5.2%であり、テルミサルタンによる治療を受けた場合、5年弱の間に心筋梗塞を発症する危険性はラミプリルと差がないという結果となった(相対リスク1.07、95%信頼区間:0.94-1.22)。すなわち、心筋梗塞発症抑制効果はテルミサルタンとラミプリルで同程度であり、Verma氏の論説から始まった「ARB投与、少なくともテルミサルタン投与の懸念」を払拭するものとなったとみている。1) ONTARGET Investigators:N Engl J Med. 2008;358:1547-15592) Julius S et al.: Lancet. 2004;363:2022-20313) Verma S et al:BMJ. 2004 ;329:1248-12494) McDonald MA et al.: BMJ. 2005;331:873.5) Verdecchia P et al:Eur Heart J. 2005;26:2381-2386.6) Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration:J Hypertens. 2007;25:951-9587) Pitt B et al:Lancet. 2000;355:1582-1587.8) Dickstein K et al:Lancet. 2002;360:752-760.9) Pitt B et al:N Engl J Med. 2003;348:1309-1321.10) Demers C et al:JAMA. 2005;294:1794-1798.

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インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。心筋梗塞疑い例を対象としたレジストリー研究CREATE registryは、インドの50都市89施設で実施されたプロスペクティブなレジストリー研究である。対象は、明確な心電図上の変化(STEMI、非STEMI、不安定狭心症)が見られ急性心筋梗塞(MI)が疑われる症例、あるいは心電図上の変化は見られないが虚血性心疾患の既往を有しMIが疑われる症例とした。臨床的アウトカムおよび30日全原因死亡率の評価を行った。70%以上が貧困層~中間所得下位層2002~2005年の間に2万937例が登録され、明確な心電図上の変化により診断がなされた2万468例のうち1万2,405例(60.6%)がSTEMIであった。全体の平均年齢は57.5歳であり、非STEMI例/不安定狭心症(59.3歳)よりもSTEMI例(56.3歳)のほうが若年であった。1万737例(52.5%)が中間所得層の下位層であり、3,999例(19.6%)が貧困層であった。症状発現から来院までの所要時間中央値は360分、来院から血栓溶解療法開始までの時間は50分。糖尿病が6,226例(30.4%)、高血圧が7,720例(37.7%)、喫煙者は8,242例(40.2%)であった。30日死亡率はSTEMI例および貧困層で有意に高いSTEMI例は非STEMI例よりも血栓溶解薬(96.3%がストレプトキナーゼ)(58.5% vs 3.4%)、抗血小板薬(98.2% vs 97.4%)、ACE阻害薬/アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)(60.5% vs 51.2%)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(8.0% vs 6.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。逆に、STEMI例は非STEMI例/不安定狭心症に比べβ遮断薬(57.5% vs 61.9%)、脂質低下薬(50.8% vs 53.9%)、冠動脈バイパス移植術(CABG)(1.9% vs 4.4%)の施行率が有意に低かった(いずれもp<0.0001)。STEMI例の30日アウトカムが死亡8.6%、再梗塞2.3%、心停止3.4%、脳卒中0.7%であったのに対し、非STEMI例/不安定狭心症ではそれぞれ3.7%、1.2%、1.2%、0.3%と有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。富裕層は貧困層に比べ血栓溶解療法(60.6% vs 52.3%)、β遮断薬(58.8% vs 49.6%)、脂質低下薬(61.2% vs 36.0%)、ACE阻害薬/ARB(63.2% vs 54.1%)、PCI(15.3% vs 2.0%)、CABG(7.5% vs 0.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。貧困層の30日死亡率は富裕層よりも有意に高かった(8.2% vs 5.5%、p<0.0001)。治療法で補正するとこの差は消失したが、リスク因子およびベースライン時の患者背景で補正した場合は維持された。Xavier氏は、「インドのACSは先進国に比べSTEMI例が多かった。これらの患者の多くは貧困層であり、それゆえにエビデンスに基づく治療を受けにくく、30日死亡率が高かった」と結論し、「貧困層における病院へのアクセスの遅れを解消し、高額すぎない治療法を提供できれば、罹患率および死亡率が低減する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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