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ペムブロリズマブによるMSI-H大腸がん1次治療、無増悪生存期間を改善/Merck

 Merck社は、2020年4月2日、切除不能または転移を有するMSI-H/dMMRの結腸直腸がんに対するキートルーダの1次治療を評価する第III相 KEYNOTE-177試験において、2つの主要評価項目の1つ無増悪生存期間(PFS)を達成したと発表。 独立データ監視委員会(DMC)による中間解析では、化学療法(mFOLFOX6またはFOLFIRI ±ベバシズマブまたはセツキシマブ)と比較し、ペムブロリズマブ単剤療法は統計的に有意で臨床的に意味のあるPFSの改善を示した。 また、同研究のもう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)の評価も、DMCの推奨に基づき変更なしで続行される。この試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは以前に報告された研究と一致しており、新しい安全性信号は確認されていない。 Merck社は、KEYNOTE-177のデータを世界の規制当局および今後の医療会議で共有するとしている。

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第2回 “緊急事態宣言”賛否、基本再生産数がものを言う

日本での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は、ついに4月7日、政府が7都府県に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく「緊急事態宣言」を発令するに至った。報道を見ていると、今回の緊急事態宣言は東京都を中心とする感染者急増に対し、医療崩壊を懸念する日本医師会や日本看護協会などの危機意識表明に背中を押されたようにも見える。実際、この緊急事態宣言に至った舞台裏を報じた朝日新聞の「『経済ガタガタに…』揺れた政権、緊急事態宣言に動く訳」でも、政権がこうした医師会などの姿勢に根負けしたことが赤裸々につづられている。歴代内閣総理大臣の中で最長在職日数記録(第1~4次内閣)を達成し、かつての佐藤 栄作氏の最長連続在職日数記録に迫りつつある安倍 晋三氏の看板政策が、大胆な金融政策に代表される経済政策「アベノミクス」。その成果については賛否両論があるものの、安倍氏就任以降、一貫してこの中で成功していたのが株価である。2018年1月には日経平均株価が約26年ぶりの2万4,000円台を回復し、2019年末から2020年1月にかけても2万4,000円台に2度達成するなど一番目に見えた成果が、今回のCOVID-19騒動で一時は1万6,000円台まで急落した。緊急事態宣言で最も全国民に影響する外出自粛要請により、それに伴う企業活動・消費の低下は必至で、日経平均株価の1万6,000円割れも視野に入る。安倍政権の焦りは分からないわけではない。もっとも、公開データを基に感染症病床の病床使用率の参考値を公表しているサイト「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」の最新データ(4月6日時点)を見ると、既に感染者数が特定感染症病床、一種感染症病床、二種感染症病床の合計数を超える自治体が東京都をはじめとして5都県、病床使用率70%以上100%未満が7県あるという状況では、経済重視が行き過ぎればまさに全国的な医療崩壊が現実のものになってしまう。しかし、今回の外出自粛要請がどの程度感染拡大スピードの抑止につながるか未知数なのは、誰もが承知していることだろう。ちょうど本稿執筆時点の4月8日、今回のCOVID-19の震源地となった中国湖北省・武漢市は1月23日から2ヵ月半続いた都市封鎖が解除された。解除の理由は3月の第4週に新規感染者発生がほぼゼロになったことを受けたものだが、この都市封鎖は厳しい移動制限や商業施設の閉鎖など強制力を伴うもの。また、中国ほどではないものの3月10日から全土封鎖と罰則を伴う外出禁止令を出していたイタリアでも、ようやく4月に入り感染者報告が減少し始めている。日本はこれよりも緩い措置であるため「感染抑止効果が薄いのでは?」との指摘もあるが、そもそも感染症の感染力を示す「基本再生産数」は、単純なウイルスの感染力だけでなく、流行地域の人口密度、各国の医療レベルや国民の行動様式、個人の感染防御対応などにも左右される。その意味で今回の日本での外出自粛の効果を占うなら、最短時期は東京都の小池百合子知事が初めて外出自粛を訴えた3月最終週の週末に今回のウイルスの最大潜伏期間14日間を足した4月13日以降の都内での感染者報告となるだろう。

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岡田正人のアレルギーLIVE

第1回 食物アレルギー第2回 臨床免疫第3回 アナフィラキシーショック第4回 鼻炎第5回 薬物アレルギー第6回 アトピー性皮膚炎第7回 蕁麻疹第8回 好酸球増加 岡田正人が帰ってきた!2007年にリリースされた名作『Dr.岡田のアレルギー疾患大原則』を最新の知見を踏まえて全面刷新。白熱教室さながらの熱いレクチャーをご体感ください。外来でよく遭遇するが悩ましい食物アレルギーや即座の対応を必要とするアナフィラキシーはもちろん、花粉症、蕁麻疹、喘息、薬剤アレルギーなど、アレルギー疾患の基本を世界標準の診療を知り尽くしたDr.岡田が圧倒的なわかりやすさでお届けします。第1回 食物アレルギーどの科の医師でも必ず知っておくべきアレルギー診療。その基本をわかりやすくレクチャーします。初回は外来で出会うことも多い食物アレルギーについて。症例ベースに詳しく解説します。第2回 臨床免疫自然免疫と獲得免疫、免疫系のそれぞれの細胞の働き、またそれに伴う疾患、薬剤についてなど‥。免疫についてこんなにわかりやすく解説した番組はこれまでになかったといっても過言ではありません!第3回 アナフィラキシーショックアナフィラキシーショックは、時間との勝負!わずかなためらいや判断の遅れが患者の命にかかわります。即座に判断、対応するための知識をわかりやすく解説します。なぜ、アナフィラキシーが起こるのか、なぜその対応が必要なのかまで、しっかりとカバー。アナフィラキシーに関する疑問や悩みを解決します。第4回 鼻炎今回はアレルギー性鼻炎についてです。アレルギー性鼻炎は、鼻漏、鼻閉、かゆみ、結膜炎などさまざまな症状があります。実は、出る症状(とくに鼻漏と鼻閉)によって、処方する薬が異なってきます。患者の症状に合わせた治療薬と処方方法についてそれぞれの薬の特徴も踏まえ、詳しくわかりやすく解説します。また、効果のある飲み方とその理由など、患者に説明することによって、より効果を高めることができます。次回の花粉症シーズン前に知識を整理してみませんか。第5回 薬物アレルギー今回は薬物アレルギーについて解説します。薬物アレルギーは、100%防ぐことは不可能です。発症したときにできるだけ早く、そして重症化しないように対処しなければなりません。医原性である薬物アレルギーの対処法は、すべての医療者にとって必要なことです。しっかりと理解しておきましょう。一方で、近年、抗菌薬アレルギーに対するオーバーダイアグノーシス(過剰診断)が問題となっています。それにより、本来使うべき薬剤を使用できず、薬剤の効果や耐性菌など、実際の治療への影響を及ぼしています。ならば、どうすればよいのか。岡田正人がわかりやすくお教えします。第6回 アトピー性皮膚炎「アトピー性皮膚炎」当然のように使われるこの言葉ですが、本来の意味だと、実はちょっとおかしいのでは?そう、アトピーで皮膚炎が起こるのではありません。なぜ皮膚炎が起こるのか、起こさないためにはどうすべきか、起こったときの治療方法は、そしてなぜその方法なのか。そのことを患者が理解することが、治療への近道となります。ステロイド・保湿剤の選択、患者への説明の仕方、ステロイドが嫌だという患者への対応など、実際の臨床で行われているDr.岡田のシンプルかつ詳細な治療方法をわかりやすくお教えします。第7回 蕁麻疹今回のテーマは蕁麻疹。蕁麻疹には、抗ヒスタミン薬。それだけ処方すればいいと思っていませんか?確かに抗ヒスタミン薬は有効ですが、それが効かない患者さんもいます。なぜ効かないのかを知っておくと、その後の対応がぐっと楽になります。問診や検査はどうするか、かゆみの鑑別診断は?そして薬剤の処方のしかたや患者さんの納得する説明など、蕁麻疹の診療のノウハウを岡田正人がわかりやすくお教えします。第8回 好酸球増加好酸球が増加する原因はアレルギー、薬剤、寄生虫感染症、膠原病、HES、悪性腫瘍など多岐にわたります。現在では、好酸球の遺伝子異常の検査もできますが、医療経済的なことを考えると、最初から行うものではありません。診察、問診によって、まずは明らかな原因がないかどうかを確認し、そのうえで必要な検査を行うようにしましょう。好酸球の働きや特性を知っておけば、その症状を引き起こす原因と理由がはっきりと理解できるようになります。

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第2回 コロナ第2波招きかねない中国の“性急な生産再開”

中国は、死者を供養する「清明節」の4月4日、新型コロナウイルス感染死者への黙祷行事を全国一斉に行い、国内における感染抑制をアピールした。8日には、新型コロナの“震源地”となった武漢の都市封鎖および湖北省の省封鎖を完全解除。自動車メーカーを中心に、工場も相次いで生産を再開しており、中国共産党が宣伝する「ウイルスとの戦いにいち早く勝利した中国」を体現したかのようだ。果たして、本当だろうか。中国は4月1日から、統計に含めていなかった無症状感染者の人数や管理状況を公表するようになったが、これまで無症状感染者への措置が徹底されていなかったり、習近平国家主席の武漢視察(3月10日)前には、患者数減少を理由に、臨時病院で働く医療従事者に14日間の休暇が与えられ、診療が行われなかったりしているため、ひとたび封鎖が解除されれば人の動きが活発化し、再び感染が拡大する恐れがある。たとえ中国国内の感染が抑えられたとしても、世界では感染者数が150万人超、死者数は8万人超と、今なお増加し続けており、ワクチンや治療薬もない。効果のあった既存薬を使うにしても、大量生産し、各国に配布し、感染を世界的に抑制できるようになるには、1年では足りないだろう。その意味では、1年延期した東京五輪・パラリンピックの開催も再び危ぶまれる。感染が収まらない以上、世界経済が回復するのはまだ先のことだ。それでも中国が早々に感染抑制をアピールするのには、悪化した経済の立て直しを急ぐ必要があるからだ。感染が拡大する最中の2月12日、中国共産党中央政治局常務委員会は、習近平総書記(国家主席)の主宰で「新型肺炎疫情分析と対策強化の研究」をテーマにした会議を開いた。議論は新型コロナ対策に絞るべき時期だったが、会議後半はもっぱら経済問題が主題だったという。中国における2019年の国内総生産(GDP)の成長率は6.1%で、プラス成長とはいえ1991年以降では最低水準となった。今年は第13次5ヵ年計画(2016~20年)の最終年で、経済成長の減速に何としても歯止めを掛けなければならなかった。そのような状況下に新型コロナが重なり、経済環境を一気に悪化させたのだ。経済悪化による企業倒産と失業の増加は、社会不安をもたらし、中国共産党の統治そのものを揺るがしかねない。このような事情が、企業の生産活動の性急な再開を推し進めているのである。第1次世界大戦中に発生し、世界で感染者数は5億人、死者数は1,700万人から5,000万人、さらには1億人にも達したといわれる「スペインかぜ」も、第2波での被害が最も大きかった。このような事態を回避するためにも、無症状感染者を徹底的に洗い出した上で都市および省の封鎖を解除し、企業活動を再開しても遅くはなかったはずだ。「『第2の武漢』が武漢だった」では、洒落にならない。

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シェアード・ディシジョン・メイキングをシェアしたい!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第21回

第21回 シェアード・ディシジョン・メイキングをシェアしたい!今回は、シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared decision making)を紹介したいと思います。皆さんご存じのように、EBMは根拠(evidence)に基づく(based)医療(medicine)の頭文字です。最良の治療方針を決定するには、エビデンスに基づいて判断しなければなりません。そのエビデンスを構築する土台が臨床研究です。臨床研究は、介入研究と観察研究に大別されます。ランダマイズ研究は介入研究の代表です。患者を2つのグループにランダム化し、一方には新規の治療や薬物の介入を行い、他方には従来から行われている治療を行います。一定期間後に病気の罹患率・生存率などを比較し、介入の効果や安全性を検証します。ランダマイズ研究では、どのような患者を研究に組み入れるか、逆に除外するかという参加基準を設定して研究を遂行します。そこから得られるエビデンスのレベルは高く、EBMの中核を構成します。レジストリ研究は、観察研究の1つで、研究対象となる疾患の患者の情報を順次データベースに登録し、使用した薬物や治療法による経過の優劣について、統計学的に比較するものです。ランダマイズ研究とレジストリ研究の意味を考えさせられる面白いデータを紹介しましょう。EAST試験のサブ解析の論文です(Am J Cardiol 1997; 79: 1453-59)。20年以上昔の古い臨床研究ですが、循環器領域の医師だけでなく、すべての医療関係者に知っていてほしい興味深い内容です。お付き合いください。EAST試験は冠動脈多枝疾患に対する血行再建法を比較するランダマイズ試験です(N Engl J Med 1994; 331: 1044-50)。参加基準を満たし組み入れ可能と判断された842例中、実際にCABGかPCIいずれかにランダム化されたのは392例でした。残り450例は、担当医と患者が相談し、個々の事例にあわせて最善と思われる血行再建法が選択されました。このランダム化されなかった患者は、レジストリ群として登録され解析されました。その結果、レジストリ群の3年生存率は96.4%で、ランダム化群の 93.4%と比較して有意に優れていたのです。EAST研究の本来の目的は、CABGとPCIの比較ですが、ランダム化したどちらの群の治療成績よりも、レジストリ群の治療成績が優れていたのです。この解釈は難しいですが、ランダム化してCABGとPCIの優劣に決着をつける以前に、医師は個々の患者の状態に合わせて、CABGとPCIの適切な選択ができていたことを意味します。医師の存在価値が証明された素晴らしい内容です。このレジストリ群では、「Shared decision making」が実践されていた可能性が高いと、自分は推察しています。EBMに基づいて確実性の高い治療法が選択できる場合には、「Informed consent」で問題はありません。治療法間の差が明確ではなく、絶対的に優れている治療法がない場合には、「Shared decision making」の出番です。これは決してEBMを否定するものではなく、治療法の優劣に不確実性のある場合に用いられる手法です。医療者と患者がエビデンスを共有(シェア)して一緒に治療方針を見つけ出していく手法で、「共有意思決定」とも称されます。数字としての治癒率や生存率の数値の優劣だけでなく、各治療法への患者の希望(選好: preference)や価値観も総合して、適切な治療法を一緒に考えていくものです。循環器領域だけでなく、治療法の選択肢が増えているがん治療の現場で、必要とされていくことが予測されます。ぜひとも、この「Shared decision making」を皆様とシェアしたいと思い紹介しました。今回は少し重い内容になってしまい、本コラムのテーマでもある猫の出番がないことが残念です。お許しください。

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スマホでSpO2を測定する時代!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第158回

スマホでSpO2を測定する時代!photoACより使用最近、iPhoneが医療現場で活躍するようになりました。Gram染色を撮影するときの専用レンズ、ダーモスコピーのように皮膚所見が拡大できるレンズ、ポータブルエコーアプリケーション。すげぇなAppleと思います。しかし、なかなかiPhoneアプリの臨床試験って出てこないんですよね。Jordan TB, et al.The utility of iPhone oximetry apps: A comparison with standard pulse oximetry measurement in the emergency department.Am J Emerg Med. 2019 Jul 15. pii: S0735-6757(19)30467-X. doi: 10.1016/j.ajem.2019.07.020. [Epub ahead of print] 日本ではまだ普及していませんが、iPhone用のパルスオキシメーターアプリケーションがいくつか登場しています。これがあれば、iPhoneでSpO2が測定できる、ということです。これは、異なる3つのiPhoneのパルスオキシメーターアプリケーションの精度を、通常のパルスオキシメーターのSpO2と比べたシンプルな研究です。iPhone 5sにダウンロードしたのは、3つのアプリケーションで、それぞれ"Pulse Oximeter" (Pox)、"Heart Rate and Pulse Oximeter" (Ox)、外付けパルスオキシメーターのiOxです。救急外来にやってきた循環器・呼吸器系疾患のあるSpO2≦94%の患者さんを登録し、全員にこのアプリケーションを試してもらいました。合計191人が登録されました。通常SpO2と比較した一致相関係数は、iOxで0.55(95%信頼区間[CI]:0.46~0.63)、POxは0.01(95%CI:-0.09~0.11)、Oxは0.07(95%CI:-0.02~0.15)でした。かなり差がありますね。191人のうち68人(35%)が低酸素血症で、これを同定する感度はそれぞれのアプリで69%、0%、7%で、特異度は89%、100%、89%でした。もっとも精度の高いiOxでさえも21人(11%)が低酸素血症なしと誤認され、22人(12%)が低酸素血症ありと誤認されました。Amazonでもパルスオキシメーターが安値で手に入る時代ですし、救急外来でもすぐにパルスオキシメーターが測定できる時代ですから、あえてiPhoneにパルスオキシメーターアプリをダウンロードする意味って……。うーん……ないですね!(ズコー)。

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新型コロナウイルスあれこれ(2)【Dr. 中島の 新・徒然草】(312)

三百十二の段 新型コロナウイルスあれこれ(2)相変わらず猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、一連のニュースを見ていると、こちらも色々と考えさせられます。そのあたりの事をいくつか述べましょう。その1:清潔とはなんぞや、不潔とはなんぞや厚生労働省副大臣がツイッターに投稿して話題となったダイヤモンド・プリンセス内部の写真。そのドアには「清潔」「不潔」の表示がありました。医療従事者にはなじみの深い「清潔」「不潔」ですが、よく考えてみると場面によって複数の意味が使い分けられているようです。つまり手術室の中では無菌状態のことを「清潔」と呼び、無菌状態でないことを「不潔」と呼んでいます。一方、感染症と戦う時には、汚染された状態を「不潔」と呼び、汚染されていない状態を「清潔」と呼んでいます。これらのことをわかりやすく整理すると、無菌、通常、汚染という3つの状態のうち、手術室での「清潔」は無菌状態、「不潔」は通常状態および汚染状態ということになります。一方、ダイヤモンド・プリンセス号の中での「清潔」は無菌状態および通常状態であり、「不潔」は汚染状態だけに使われる用語になります。我々医療従事者は、いつも「清潔」「不潔」という用語を用いていますが、無意識のうちに2種類の「清潔」と2種類の「不潔」を正確に使い分けていたんですね。今回のことではじめて気付きました。その2:自主的に行う手洗い、マスクこれまでは、院内でICT(Infection Control Team:感染制御チーム)の人たちに「手洗いをしましょう」「マスクをしましょう」と何度言われても無視していた医師たちが、自分からこまめに手洗いやマスクをするようになりました。もちろん私もその1人で、接触感染の恐怖から丹念に速乾性アルコールを用いて手を消毒し、少しでも飛沫感染を避けるためにサージカル・マスクの着用をしています。現段階ではさすがにN95マスクまではしていません。一方、あのカモノハシみたいなマスクを他の人がしているのをみると、つい手で摘まんで引っ張りたくなってしまいます。そんな事を考えているのは私だけでしょうか?その3:ランダムの恐怖コロナウイルス感染では、高齢者や持病のある人が重症化しやすい、ということになっていますが、北海道では20代の女性が重症化し、中国では武漢の新型肺炎を「告発」した李文亮医師が33歳の若さで亡くなっています。「重症化するのは高齢者であり、若者は大丈夫だ」というのならわかりやすいのですが、そんな単純な話でもなさそうです。「大部分の感染者は治療しなくても自然に回復するが、中には重症化する人もおり、重症化するかしないかは運だ」と言う方が正しいのかもしれません。とはいえ、ランダムに人が死ぬなどというのは、恐怖そのものです。その4:中国を見直した有無を言わせずあの1,000万都市の武漢を封鎖し、コロナウイルスと戦いながらもLancetやNew England Journal of Medicineにどんどん論文を発表しているのを見ると、中国の底力を認めざるを得ません。日本からもダイヤモンド・プリンセス号のデータを用いた英語論文が出てほしいものです。というわけで、新型コロナウイルスのニュースを見ながら思ったこと感じたことを自由に述べました。読者の皆様はどのようにお考えでしょうか。最後に1句コロナ見て あれこれ思う 冬の空

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ドイツの医療システムの根幹はかかりつけ医【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第4回

手取り6割のお給料ドイツでは、“GKV”と呼ばれる公的医療保険に必ず入る必要があり、保険料は所得の15%程度となります。給料をもらっても所得税やら年金やらと一緒に差っ引かれて、手元に残るのは6割程度です。給与明細を見るたびに切なく、ため息が出ます。しかし、医療費は全額無料となっており、プライベートの保険(PKV)に加入すれば、さらに高度な医療を希望し、受診することもできます。たとえば心臓外科であれば、入院部屋が個室になったり、術者に教授を指名できたりします。公的保険を請け負う会社はいくつかあり、少しずつサービスに差があります。マイナー疾患の予防接種に保険が適用されたり、歯の検診が年4回まで認められたりします。それらを見比べた上で、自分で加入する保険会社を決めなくてはなりません。ドイツでの受診の流れ実際にドイツで受診する場合、具体的にどういった手順になるのか説明します。まず、かかりつけ医を指定します(かかりつけ医が決まると保険会社に連絡しなくてはなりません)。かかりつけ医は、薬を飲んで寝ていれば治る程度の病気は診てくれますが、基本的には定期的な内服処方と専門医への紹介が主な業務です。カルテすら書きません(ちなに“Karte”カルテはドイツ語で「カード」の意味で、診療録は“Akte”アクテと呼んでいます)。かかりつけ医から渡されるのは病名を書いた紙切れのみ。「後は自分で専門医を探して、詳しい話はそこでしろ」と言うのです。清々しいくらいのブン投げっぷりです。それに対して専門医は治療が終わると詳細な経過と今後の内服処方やフォローについての手紙をかかりつけ医に送ります。このようにすべての情報がかかりつけ医に集まるようにできているので、二重処方やフォロー漏れといった事態を避けることができます。かかりつけ医には簡単になれないこのかかりつけ医は“Hausarzt”と呼ばれています。緩やかな勤務が売りのドイツ医療界においても、トップクラスの待遇を誇るお仕事です。長期休暇だってしっかり取ります。その期間は患者さんに多めの処方をするか、近所の診療所に振ってしまうかでアッサリと乗り切ってしまいます。「じゃあ、みんな Hausarztになればいいんじゃないか」というとそうはいきません。Hausarztになるには、まず、総合診療(“Allgemeinmedizin”と呼ばれます)の専門医を取得しなくてはなりません。これは5~6年かけて外科やら内科やら救急やらのローテーションを行い、口頭試験を受けて初めて取得できます。専門医になっても簡単に開業とはいきません。ドイツでは、基本的に新たに開業することはできず、どこかの開業医が引退するのを待って、その診療所を譲ってもらうのを待たないといけないらしいです(この制度は、州によって違うのかもしれません)。何にせよ、かかりつけ医の制度は、ドイツ医療界の医師の待遇向上の大きな要因の1つといえます。画像を拡大するドイツではスポーツ系のイベントがよく開催されていて、保険会社が協賛していることが多いです。「スポーツして健康になって、保険を使うことなく生活してね!」と言うことです。

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日本人COVID-19の特徴、診療第一線医師が語る

 2月13日、「新型コロナウイルス(COVID-19)感染症への対応」と題したメディア・市民向けセミナーが開催された。感染症専門医4名が対応策について講じ、そのなかで、忽那 賢志氏(国立国際医療研究センター 国際感染症対策室医長)は、今回、日本で明らかにされた臨床像として、「発症から数日~1週間くらい『かぜ』のような症状が続き7割くらいの症例で肺炎を伴う、肺炎症例では胸膜下のすりガラス影~浸潤影が見られる」などの特徴を述べた(主催:日本感染症学会、日本環境感染学会、FUSEGU2020)。 日本国内の新型コロナウイルス感染症診療にあたっている忽那氏は、2月13日時点で明らかにされている中国・武漢での臨床像を発表論文1)に基づき以下のようにまとめた。・潜伏期は平均5.2日・感染源の発症から2次感染者の発症まで(発症間隔)は7.5日・受診までは4.6~5.8日・入院までは9.1~12.5日 また、この論文から武漢での症例の特徴について、「重症例の場合、発熱や呼吸苦の症状が強い。軽症者を含めると入院中の発熱、咳、倦怠感、筋肉痛・関節痛、悪寒が見られる」とコメント。重症41例(致死率15%)と軽症含む1,099例(中国全体31省、致死率1.4%)でほぼ同様の症状を有しており、軽症例にも胸部レントゲンや胸部CTが実施されていた。感染者のうち、胸部レントゲンで異常が見られたのは14.7%、胸部CTでは76.4%と報告されたが、これに対して同氏は「感染者全員へのCT検査推奨を意味するわけではない」ことを強調した。 現時点でのCOVID-19による致死率は2.5%であり、ほかの新興感染症と比較して現段階では低いものの、明らかになっている感染者は氷山の一角に過ぎない。同氏は「予断は許さない。重症化しやすい患者には、ICU入室が多い高齢者・持病のある人が挙げられる。感染リスクに男女差はなく、免疫不全や妊婦の重症化は否定できないので考慮が必要」と、述べた。 最後に「現段階では、インフルエンザと比較すると肺炎合併率が高い印象。感染率はインフルエンザと同等と考えられ、基礎疾患、高齢者・高齢者施設を守る対策の徹底が重要」と締めくくった。

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「患者力」を上げるため、医師ができること

 ネット上の情報に振り回され、代替医療に頼ろうとする患者、自分で何も考えようとせず、すべてお任せの患者、どんな治療も拒否する患者…。本人がそう言うならば仕方がないとあきらめる前に、医師にできることはあるのか。2020年1月12~13日、「第1回医療者がリードする患者力向上ワークショップ」(主催:オンコロジー推進プロジェクト、共催:Educational Solution Seminar、アストラゼネカ)が開催された。本稿では、東 光久氏(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)、上野 直人氏(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)、守田 亮氏(秋田厚生医療センター)による講演の内容を紹介する。まず患者の自己解決力を信じ、自信を与え、力をつける手伝いをする 「患者力を高める」、「患者をエンパワメントすべき」。近年よく耳にするようになったこれらの言葉だが、具体的に何を指すのか。東氏はまず、この2つの言葉について以下のようにまとめた。「患者力」とは 自分の病気を医療者任せにせず、自分事として受け止め、いろいろな知識を習得したり、医療者と十分なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、人生を前向きに生きようとする患者の姿勢「Patient Empowerment」とは 患者が、患者力を自主的に発揮できるように、医療者が援助すること「前回何を話したか覚えていますか?」から診察をスタートしてみる 自身もがんを経験した上野氏は、「振り返ると私自身も決して高い“患者力”を持った患者ではなかった」と話す。専門医の自分でさえ難しかった感情のコントロールや後悔のない選択を、医療従事者はどうやってサポートしていけばよいのか。同氏は患者力を高めるために重要なスキルを、「コミュニケーション」「情報の吟味」「自己主張」の3つに分けて、患者力向上に向けて医療者ができることについて具体的に整理した。コミュニケーション・焦らせない、慢性疾患のスタンスで接する(決断を急がせない/急かす態度をとらない/パソコンをいじりながら話さない):同氏は、医師の中には「早く決めてほしい」という気持ちが顔に出ている人もいると指摘。・医師が話した内容を取得させる(録音・録画・同伴者と来院することを推奨):医師のほうから、録音の準備をしてきたらどうですか?と声がけする。・質問上手にさせる(質問をあらかじめ準備させる/質問のために別の時間を設定/質問を評価する):質問票を作ってくるように言って、質問が明確でないときはどこが明確でないのかを指摘する=ともにスキルアップ。情報の吟味・話す内容をできる限り分かりやすくする(専門用語は原則禁止だが、キーワードは専門用語と一般用語を両方伝える/図を多用):専門用語を正しく伝えることで、検索したときにヒットする情報が大きく変わる。・医師が話した内容を消化させる(医療者に説明してみてもらう←間違いや勘違いがあれば指摘/家族や友人に自分で説明してもらう):毎回診察のはじめに、前回何を話したか覚えているかを確認する。・標準治療の意味を理解させる(標準治療かそうでないかを説明/標準治療でない場合は、その理由をていねいに説明/臨床試験とは何かを説明):あらかじめ優良なサイトを紹介する、気になった情報があればプリントアウトして持ってきてほしいと伝えることも重要。自己主張・治療法を自分で選べるようにサポート(選択肢を数多く与えるだけではなく、優先順位とともに伝える):なぜその優先順位なのかを説明する。・自分の希望を伝えられるようサポート(価値観・職歴・趣味を知る努力):価値観は常に変化するので、治療開始直後の希望が変化していないとはかぎらない。医療者は常に患者から情報を引き出す努力が必要。・恐れないチャレンジをサポート(標準治療と臨床試験の違いを教育/臨床試験のオプションを提示/セカンドオピニオンについての教育と提示):ただし、人には詳しく聞きたい気分のときと聞きたくない気分のときがある。最初に「今日は詳しく聞きたいですか?」と尋ねるのも一手。劇的な治療効果が、医師の目を曇らせている? 「先生、皮膚にボツボツができて辛いです…」「この薬を使うと出る患者さんが多いんです。これだけ治療効果があるので、やめるのはもったいないですよ」。こんな診察風景に覚えはないだろうか。守田氏は、近年分子標的薬による治療の進歩が著しい肺がん領域を例に、医師と患者が感じる副作用のギャップについて講演した。 肺がん領域で使われるEGFR-TKIの副作用で多くみられるのが下痢や皮疹、爪の異常だが、生存に大きな影響は及ぼさないという点で医師は治療効果をどうしても優先させがちになる。しかし、がん患者が感じる副作用の“つらさ”についてのアンケート1)では、皮膚や爪の異常に対して感じるつらさは決して小さくなかった。さらにそのつらさを医療者に伝えたかという問いに対して、4割が伝えていないと答えていた。 また、同アンケートで約8割以上の人が「医療者に伝えられなかった」と答えたのが、“経済的なつらさ”だった。同氏が診療に従事する秋田県では農業従事者が多く、ある時期は集中的に働かないと年間収入が激減するので、その期間中は抗がん剤を休みたいという申し出があったという。治療効果という観点ではマイナスであっても、治療を続けていく患者自身にとっては譲れない点であるケースもありうる。そして、医師が真摯に「治すために」と強調するほど、経済的な問題点は言い出しにくくなってしまう。 医師は臨床試験における担当医判断による有害事象の発生状況を判断基準とすることが多いが、客観的評価であるCTCAEと患者自身の主観的な訴え(patient report)の間には差があることが報告されている2)。守田氏は、この隙間を埋めるために、医師のほか各職種がそれぞれの専門性を生かして患者力向上に取り組んでいくことが重要として、講演を締めくくった。

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医師の働き方改革で薬剤師の権限が拡大?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第40回

日本各地で「働き方改革」が叫ばれてきましたが、医師を中心とする医療者の働き方については根本的な取り組みは後回しにされてきました。しかし、もはや医師の働き方改革も待ったなしの状態となり、積極的な議論がなされています。医師の働き方改革の始まりは、政府が掲げた「一億総活躍社会の実現」のために、2017年3月にまとめられた「働き方改革実行計画」でした。その中で医師も時間外労働規制の対象となりましたが、罰則がないことから強制力はありませんでした。その後、2019年3月末に厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」において、時間外労働の上限時間は「年960時間以下、月100時間未満」が原則とされました。地域医療確保のためにやむを得ないと認められた場合や研修医などの例外的な場合には「年1,860時間以下、月100時間未満」と緩和されますが、勤務間インターバルなどの追加的健康確保措置を組み合わせることが求められました。ちなみに、同時期の2019年3月にケアネットが実施した医師を対象とした働き方に関するアンケートでは、年1,860時間を超える時間外労働をしていると答えた医師は6.5%であり、「特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない」など、特例の上限として提案されている年1,860時間に対する懸念の声が多く上がりました。医師の業務を他職種へタスク・シフトもし、医師の働き方改革が実行された場合には、薬剤師や他の医療者への影響は必ず生じるでしょう。その影響の1つが以前から議論されていたタスク・シフトです。先日、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、医師事務作業補助者、救急救命士へのタスク・シフトについて、四病院団体協議会から要望が出ました。薬剤師に関しては下記のとおりです。薬剤師へのタスク・シフト医師等との協働により作成した包括的指示に基づいた投薬の実施、持参薬の継続提案、多剤併用薬に対する処方提案等、現行法の下で可能なタスク・シフトを確認し、医療機関内において薬剤師が主体的に業務を行えるようにすること。(2020年1月15日付四病院団体協議会「要望書 ~医師のタスク・シフティング/シェアリングについて~」より抜粋)薬剤師へのタスク・シフトに関わる内容としては、厚生労働省が2019年11月に設置した「医師等医療機関職員の働き方改革推進本部」の議論において、とくに進めるべき業務として「持参薬の入力などを含む術前服薬指導」「薬物療法のモニタリングの実施とその結果に伴う処方内容の見直しの提案」「プロトコールに基づいた投薬」などがあります。プロトコールに基づいた投薬については、医師の包括的指示と同意がある場合には、医師の最終確認・再確認を必要とせずに投薬することが可能です。保険薬局についても多少の議論があり、「処方医の事前の指示に基づき、問題が認められない場合は薬局薬剤師が分割調剤を実施」「定期的な分割調剤の都度、副作用の発現状況や服薬状況の確認」などが現行制度上可能であるとされています。分割調剤や多剤併用薬に対する処方提案については、現行法で可能なタスクです。しかし、すでに可能であるにもかかわらず現実的には行われていません。それによって医師の過重労働が発生しているのだとすれば、薬剤師側に何らかのアクションが強く求められる可能性もあります。正直「この議論で本当に変わるのか?」という疑問もありますが、着々と議論は進んでいます。とにもかくにも、医療者が継続可能な業務を行える環境が整うことが期待されます。

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高出血リスク重症例への予防的PPI・H2RAは有用か/BMJ

 出血リスクの高い成人重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびH2受容体拮抗薬(H2RA)の予防的投与は非投与群と比較して、消化管出血について臨床的に意味のある減少をもたらす可能性が示された。中国・首都医科大学のYing Wang氏らがシステマティックレビューとメタ解析を行い明らかにしたもので、リスクの低い患者ではPPIおよびH2RAの予防的投与による出血の減少は意味のないものであり、また、これらの予防的投与は、死亡率や集中治療室(ICU)滞在期間、入院日数などのアウトカムとの関連は認められなかった一方、肺炎を増加する可能性が示されたという。消化管出血リスクの高い患者の大半が、ICU入室中は胃酸抑制薬を投与されるが、消化管出血予防処置(多くの場合ストレス性潰瘍の予防とされる)については議論の的となっている。BMJ誌2020年1月6日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析、GRADEシステムでエビデンスの質も評価 研究グループは、重症患者に対するPPI、H2RA、スクラルファートの投与、または消化管出血予防(あるいはストレス潰瘍予防)未実施のアウトカムへの相対的影響を患者にとって重要であるか否かの観点から明らかにするため、Medline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、試験レジスタおよび灰色文献を2019年3月時点で検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 成人重症患者に対し、PPI、H2RA、スクラルファートあるいはプラセボまたは予防的投与未実施による消化管出血予防について比較検討した無作為化試験を適格とした。2人のレビュアーがそれぞれ適格性について試験をスクリーニングし、データの抽出とバイアスリスクの評価を行った。また、パラレルガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)がシステマティックレビューの監視を行い、患者にとって重要なアウトカムを同定するなどした。 ランダム効果ペアワイズ/ネットワークメタ解析を行い、GRADEシステムを用いて、各アウトカムに関するエビデンスの質を評価。バイアスリスクが低い試験と高い試験の間で結果が異なった場合は、前者を最善の推定であるとした。高出血リスク群では、患者に恩恵をもたらす? 72試験、被験者合計1万2,660例が適格として解析に組み込まれた。 出血リスクが最高リスク(8%超)の患者と高リスク(4~8%)の患者については、PPIおよびH2RAの予防的投与は、プラセボまたは非予防的投与に比べて、臨床的に意味のある消化管出血を減少する可能性が示された。PPIのオッズ比(OR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.42~0.89)で、最高リスク患者では同リスクは3.3%減少、高リスク患者では2.3%減少した(確実性・中)。また、H2RAのORは0.46(0.27~0.79)で、最高リスク患者では4.6%減少、高リスク患者では3.1%減少した(確実性・中)。 一方でPPI、H2RA投与はいずれも、非予防的投与と比べて肺炎リスクを増加する可能性が示された(PPIのOR:1.39[95%CI:0.98~2.10]、5.0%増加)(H2RAのOR:1.26[0.89~1.85]、3.4%増加)(いずれも確実性・低)。また、死亡率との関連は認められないと考えられた(PPIのOR:1.06[0.90~1.28]、1.3%増加)(H2RAのOR:0.96[0.79~1.19]、0.9%減少)(いずれも確実性・中)。 そのほか予防的投与による、死亡率、クロストリジウム・ディフィシル感染症、ICU滞在期間、入院日数、人工呼吸器装着期間への影響を支持する結果は、エビデンスがばらついており示されなかった。

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医学研究者に週末や休日はあるか/BMJ

 医学研究者は、全般に週末や祝日、深夜の時間外労働(論文の投稿、査読結果の報告)の割合が高いが、国によって差がみられ、この傾向は経時的にほとんど変化していないことが、オーストラリア・クイーンズランド工科大学のAdrian Barnett氏らの調査で明らかとなった。大学の格付け順位表は、研究者に「論文を発表せよ、しからずんば去れ(publish or perish)」を促す管理手段として活用されている。研究者は、研究と論文執筆の要請に応えるために長時間働いていると考えられ、学術および臨床における過重労働には苦言も多いという。BMJ誌2019年12月19日号クリスマス特集号の「Shiny Happy People」より。投稿論文と査読報告の送信日時を解析 研究グループは、就業時間外における投稿論文および査読報告の提出の状況を調査し、その経時的な変化について検討する目的で観察研究を行った(筆頭著者は、オーストラリア国家保健医療研究会議[NHMRC]の助成を受けた)。 解析には、ロンドン市を拠点とする2つの国際的な医学ジャーナル(BMJ誌、BMJ Open誌)の投稿システムのデータを用いた。2012年1月1日~2019年4月5日の期間(2,651日間)に提出された研究論文と査読報告の送信日時を解析した。 主要アウトカムは、週末(土曜日、日曜日)、国民の祝日(地域の祝日は除く)、早朝・深夜の時間帯の投稿論文および査読報告の提出とした。ロジスティック回帰を用いて提出の確率を推定した。回帰モデルにはベイジアン・パラダイムを使用し、95%確信区間(credible interval:CI)を算出した。日本は週末、祝日、午前0時前後の提出の確率が高い 4万9,464本の投稿論文および7万6,678本の査読報告が解析に含まれた。以下に示すように、時間外労働の割合は高く、同一の週の平日と比較して、週末および祝日は労働の平均確率が高かった。 週末に提出される確率は、投稿論文(平均確率:BMJ誌0.14[95%CI:0.12~0.15]、BMJ Open誌0.14[0.13~0.15])および査読報告(0.18[0.16~0.20]、0.18[0.17~0.20])の双方において、2誌とも同じ値であった。週末に提出される確率は、査読報告が投稿論文に比べて高かった。 祝日に提出される確率は、査読報告(平均確率:BMJ誌0.13[0.11~0.15]、BMJ Open誌0.12[0.11~0.13])が投稿論文(0.08[0.07~0.10]、0.10[0.08~0.11])よりも高かった。 週末と祝日に提出された投稿論文および査読報告の平均確率には、2誌とも経時的な変化は認められなかった。 BMJ誌への週末と祝日の投稿論文の提出の確率は、国によって明確な差が認められた。たとえば、週末の提出は、インドが最も低く中国が最も高かった(日本は26ヵ国中6番目に高い)。祝日の提出は、カナダが最も低くベルギーが最も高かった(日本は21ヵ国中4番目に高い)。 中国は、2誌への週末の投稿論文および査読報告の確率(0.22~0.23)が最も高かったが、祝日(0.08~0.12)は低かった。北欧諸国(ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン)は週末の労働の確率(0.10~0.17)が最も低い国に含まれ、平日および日中の提出の確率が最も高かった。ベルギーは祝日の労働の確率が最も高かった(0.09~0.18)。 日本は、投稿論文および査読報告の提出の確率が、週末(0.15~0.20)および祝日(0.08~0.18)の双方で、高い傾向が認められた。 1日のうち提出の頻度が高い時間帯は、就業日の終わり(午後3~5時)であった。正午付近も提出が集中しており、おそらく昼食中に仕事をする研究者が多いことを反映している可能性がある。また、中国と日本は、午前0時前後に投稿論文および査読報告を提出する確率が最も高かった。 著者は、「時間外労働は国によって差があり経時的な変化がないという結果は、『過重労働の文化(culture of overwork)』は文字どおりの意味であり、比喩的な表現ではまったくないことを示す。『週末(weekend)』という言葉は、多くの研究者にとって、誤った名称である」としている。

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第21回 カイ2乗検定とは? その1【統計のそこが知りたい!】

第21回 カイ2乗検定とは? その1日常、医療者が文献でよく目にするカイ2乗検定(Chi-squared test)は、「独立性の検定」とも呼ばれます。ここで「独立」とはどういう意味かというと、簡単に言えば「独立→関係がない」「独立でない→何か関係性がある」ということです。では、カイ2乗検定とはどのような検定でしょう。■カイ2乗検定とは何か表1は、ある新薬Xの有効性を、若年層(15~34歳)、中年層(35~64歳)、高齢層(65歳以上)別に調べた結果です。表1 年齢別新薬Xの有効人数この表からは、若年層に新薬Xが有効と判断された人数が多く、次いで中年層、高齢層ということになります。しかし、この表からだけでは「新薬Xは若年層に最も有効性を示し、次いで中年層、高齢層であった」と考えることはできません。なぜならば、この表には、「無効と判断された人数がない」からです。表2のクロス集計表は年齢層と有効、無効との関係をみたものです。表2 新薬Xの有効・無効の人数別と割合別上のクロス集計表を解釈すると次のようになります。有効と判断された人の割合は、若年層が75%、中年層が67%、高齢層は33%で、年齢層が若い層ほど有効と判断された人の割合が高くなる傾向がみられます。無効と判断された人の割合は、若年層が25%、中年層が33%、高齢層は67%で、年齢層が高い層ほど無効と判断された人の割合は高くなる傾向がみられます。このクロス集計表でみられるように、ある特定の年齢層で有効と判断された人の割合あるいは無効と判断された人の割合が高いとき、年齢層と有効・無効の項目は関連性があると解釈します。では、母集団における年齢層と有効・無効の項目との関連性の有無はどうでしょうか。それを調べる検定法がカイ2乗検定です。第22回では、カイ2乗検定を理解するために「期待度数」と「カイ2乗値」について解説します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション13 カイ2乗検定第4回 ギモンを解決!一問一答質問24 カイ2乗検定とは?

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肺血栓塞栓症の診断―人工知能本格利用の前に―(解説:後藤信哉氏)-1158

 NEJMの論文にて、本文を読むだけでは理解できない論文は少なかった。本論文は内容を読むだけでは理解しきれない。肺血栓塞栓症の診断は容易でないことが多い。筆者は30年臨床医をしているので勘が利く。しかし、医療を標準化するためには経験を積んだ臨床医の「勘」を定量化する必要がある。本論文では肺塞栓症を疑う臨床症状を有する3,133例から出発した。明確な除外基準に該当しない2,017例を研究対象とした。これらの症例がWells scoreにより層別化された。静脈血栓症の少ない日本ではWells scoreの知名度も低い。Wells scoreを覚えるのは面倒くさい。臨床的に静脈血栓症らしければ3点、肺塞栓症以外の病気らしくなければ3点などかなりソフトな因子により分類する。本研究では、このソフトなWells scoreとd-dimerを組み合わせたことによる肺塞栓症診断精度を評価している。 かつてNEJMに掲載された論文は質の高いエビデンスと評価された。最近、とくに循環器領域では「?」と思う論文が増えた。本論文は「NEJM大丈夫かな?」と思わせる論文の1つである。 本論文はカナダの大学病院の臨床データベースである。外来症例と入院症例を合わせているが大学病院というだけで一般診療に広げるにはバイアスが強い。d-dimerの計測値はハードパラメーターであるが、臨床的なclinical pre-test probability(c-PTP)はかなり主観的指標である。またc-PTPとしてのWells scoreも世界に普及しているとは言い難い。圧倒的多数の症例はc-PTPにてlow riskとされた。d-dimerは日本ではμg/mLを使用している。本研究ではc-PTPが低く、d-dimer 1μg/mL以下の症例1,285例では3ヵ月以内の肺塞栓症なしと報告されている。c-PTPが低くともd-dimer 1μg/mL以上の症例ではそれなりに肺塞栓症が含まれている。c-PTPにてmoderate riskとされた218例ではd-dimer 0.5μg/mLをカットオフにしている。同一研究において、baseline riskに応じて検査の閾値を変えた研究がNEJMに発表されたのは驚きである。 肺塞栓症の診断は難しい。臨床医として一定の見落としがあるのは仕方ないと理解している。本研究はc-PTPを数値化し、d-dimerを計測すれば著しいlow riskの症例を除外できる根拠としては意味がある。しかし、システム的な臨床研究を採択していたNEJMの一般水準には達していない。電子カルテの情報をスーパーコンピューターにて扱えば、本研究よりもはるかにシステム的に肺塞栓症の除外診断が可能である。本研究はdigital health技術普及前の一過性の意味しかない。NEJMもdigital healthを取り込めるか否かにてlow grade journalに転落するリスクがあることが本論文から示唆された。

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知っておくべきガイドラインの読み方/日本医療機能評価機構

 日本で初となるGRADE Centerが設立された。これにより、世界とガイドライン(GL)のレベル統一が図れるほか、日本のGLを世界に発信することも可能となる。この設立を記念して、2019年11月29日、公益財団法人日本医療機能評価機構がMinds Tokyo GRADE Center設立記念講演会を実施。福岡 敏雄氏(日本医療機能評価機構 執行理事/倉敷中央病院救命センター センター長)が「Minds Tokyo GRADE Center設立趣旨とMindsの活動」を、森實 敏夫氏(日本医療機能評価機構 客員研究主幹)が「Mindsの診療ガイドライン作成支援」について講演し、GL活用における今後の行方について語った。そもそもGRADEとは何か 近年のGLでよく見かけるGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチとは、エビデンスの質と益と害のバランスなどを系統的に評価する方法で、診療ガイドライン(CPG)作成において世界的に広く受け入れられているものである。また、GRADE CenterはGRADEアプローチを普及させる国際的な活動組織であり、2019年現在、米国、カナダ、ドイツなどで設立されている。患者・市民を巻き込むガイドラインが主流に 今回の主催者であるEBM普及推進事業Minds(Medical Information Network Distribution Service)は、厚生労働省の委託を受け、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する事業である。単なる情報提供にとどまらず、CPGの普及などにも広く貢献するほか、4つの取り組み(1.CPG作成支援、2.CPG評価選定・公開、3.CPG活用促進、4.患者・市民支援[CPG作成・活用に関わる])を行っている。 1では、CPG作成のためのマニュアル作成(Minds診療ガイドライン作成マニュアルは2020年改訂版の発刊を予定)に力を入れている。2では、AGREE IIを利用した評価を複数人で実施、公開に際しては各ガイドラインの出版社などにも許可を得ている。3、4は現在の課題であり、福岡氏は「医師・医療者と患者・家族とのインフォームドコンセントをより効率的で安全に行えるように支援し、患者の願い、家族の思いやそれぞれの負担など患者視点を導入しなければガイドラインのレベルが向上しないと言われている」と現行GLの問題点について指摘。さらに「どうやってガイドラインに患者を取り入れていくか、現場で使用するなかで患者と協調していくのかが、国際会議でも重要なトピックとして語られている」と述べた。日本がGRADEで認められた意味とメリット 今回、世界13番目のGRADEセンターに認定された経緯について、同氏はCPG作成支援が評価された点を挙げ、「われわれはセミナー・ワークショップや意見交換会、そして、オンデマンド相談会などを行っている。この活動によって、GLの作成段階で患者視点を取り入れる例が増加している。これによりGLが現場で活用しやすく、患者・家族に受け入れてもらいやすくなる」と、説明した。 さらに、GRADE認定されたメリットについて、「GRADEで認められると海外GL作成チームとディスカッションが可能になるばかりか、日本のGL作成ノウハウを海外に輸出することもできる」と、日本がGRADEから情報を受けるだけではなく、日本人の努力が世界に発信できる状況になったことを喜び、「GRADE内では、未来のGL作成者のための世界共通プラットフォームやトレーニングコース開設の動きもある」とも付け加えた。 GRADEアプローチでは、推奨を“向き”(実施することを or 実施しないことを)と“強さ”(強く推奨する or 弱く[条件付きで]推奨する)で表す。これについて、CPG作成支援活動を行う森實氏は、「弱い推奨の場合、条件付きという語を“裁量的”や“限定的”と表現することも可能である。それゆえ“個別の患者さんに合わせた決断が必要”で、患者さんの価値観・好みに合わせた結論に到達することを手助けする必要がある。そのためには何らかの決断支援ツールが有用」と述べ、「その方法として、患者にシステマティックレビューの結果をわかりやすく提示することも重要」とコメントした。 最後に、福岡氏は「ガイドライン作成の目的は、より良い社会作りと市民の幸せを前提とするべきである。専門家のためのみの作成ではない」と強調しつつ、「GRADEの進化はすさまじく、少しでも見失うと議論はあっという間に進んでいる。世界のGRADEミーティングに参加することで最新情報をキャッチアップしたい」と、締めくくった。

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第4回 疑義照会を恐れる薬剤師は「失格」

第4回 疑義照会を恐れる薬剤師は「失格」―医師との関わり方で注意している点はありますか?鈴木:医師の性格や関係性によって伝え方は異なりますが、ざっくばらんに話せる先生では、「抗菌薬のターゲットは何にしていますか?」ということから始まり、「それなら抗菌薬はこっちのほうがいいんじゃないですか? なぜなら~」と自分の意見を率直に伝えています。あまり関係性ができていない先生では、「こういう選択肢もあるんですがどう思いますか?」とお伺いを立てるようにしています。あと、顔のわからない関係で話すとうまくいかないので、挨拶に行ったり、抗菌薬の使い方の方針を聞きに行ったりして、知識共有してから疑義照会や処方提案をするようにしています。前医から引き継いだ処方をそのまま継続している医師も多いので、知識共有するのは大切だと思っています。笹川:今の若い子たちは、みんな真面目過ぎてポリファーマシーとかを印籠のように医師にかざして説得しようとしてトラブルになるっていうのはよく聞きますね。山﨑:ポリファーマシーの種々の判断基準は絶対的なものではないのですけどね。それは参考としつつ、患者情報を踏まえてどう考えるかということなのだろうとは思いますが。鈴木:個々の患者さんには当てはまらない判断基準に飛びついて、判断基準で推奨されていないからこの処方はダメだ、という薬剤師は何もわかっていないですよね。笹川:あと、薬剤師のよくない点は白か黒かで判断しようとするところ。灰色のときもあるっていうことを知っていてほしいですね。あいまいなのが嫌でやめる薬剤師もいるそうですが、そのあいまいさを受け入れて楽しむくらいでいいんじゃないでしょうか。山﨑:確かに、論文を読んでいくら調べてもわからないことはわからないんですよ。あいまいなことがあるということがわかるだけでもいいと思います。鈴木:あいまいなことが実は正解だったということもありますよね。そもそもポリファーマシーに行きつく前にワンステップあって、患者さんの基礎疾患などの基本情報を把握するのがベースと考えています。薬歴で患者さんの治療の流れや個別に抱えている問題が見えないままポリファーマシーの話をしても、医師からしたら患者の現病歴や既往歴をどこまで把握して意見してるの? なんの根拠があるの? っていう感じでしょう。基礎疾患などの基本情報を把握する力が必要です。笹川:すぐに薬のことにはいかずに、体の仕組み、生理学とか、解剖学とかから入るのも一手です。解剖学などは医師や看護師の共通言語ですが、薬剤師はその共通言語を知らないまま薬の話をするので医療者の中で浮いてしまうことがあります。医師向けや看護師向けの書籍はとても勉強になりますよ。共通言語を学べばコミュニケーションがうまくいきますので、そのうえで薬の話をするとよいと思います。山﨑:適切に提案できるのであれば、医師の診療報酬上のインセンティブもあるので、積極的に提案したほうがいいでしょうね。ただ、疑義照会に怒る医師に出会ったりして、怖くてできなくなるという話も聞きます。薬剤師の伝え方が悪かったのかもしれませんが、疑義照会が薬剤師の義務だと知らなかったという医師や疑義照会で助かったという経験の少ない医師にもお会いしたことがあります。そういう場合は医師も対応がきつくなるかもしれません。ただ、医師が怖くて疑義照会を避けるという薬剤師と会ったこともありますが、何かあったときに不利益を被るのは患者さんなので、そこは信念をもってやっていただけたらとも思いました。鈴木:患者さんを守らずに自分を守るっていうのはどうなんでしょうね。処方箋枚数とスピード調剤の薬剤師は淘汰される―疑義照会しない理由はほかにもありますか?笹川:私は調剤報酬にも問題があるのではないかと思います。できる薬剤師とできない薬剤師の報酬が同じっていうのは疑問です。できる薬剤師の評価っていうのは難しいので、かかりつけ薬剤師制度でカバーしようとしたのでしょうが、かかりつけに同意すると安くなるほうが良かったのではないかと思います。安いから同意するっていうのもあるかもしれませんが、待ってでもその薬剤師から指導を受けたいと思ってもらえるようになりたいんですよ。報酬が同じだとどうしてもスピード重視になりますよね。質よりも量・スピードを求め過ぎたのでは?山﨑:即座にそうなるというわけではないですが、アマゾンなどECサイトでの薬剤購入が普及したり、遠隔服薬指導や「調剤ハブ」(多店舗の調剤を集約して行うことができる薬局)などが現実化した場合に、スピード勝負だけでほかの要素でファンを獲得できていないと選ばれる理由がなくなってしまいます。笹川:みんな学校を卒業したときは意識が高かったはずです。なのに、置かれた環境がやりがいのある環境ではなかったので心が折れていくのかもしれません。―薬剤師ごとに評価が変わるシステムはできないのでしょうか?山﨑:システム畑の人と冗談交じりで話していたら、何らかの基準をもって良い服薬指導ができる薬剤師のデータが取れるのであれば、できる薬剤師にインセンティブを与える設計ができるのではないかという話題になったことがあります。MRの知人に聞くと、医師は患者さんが離れていかないように一定の競争をしている部分もあるとのことですが、薬剤師は頑張っても一定のパイの中で決まった報酬を得るという構造にあらがいづらいので、優秀な薬剤師が自然に評価され、能力の低い薬剤師は評価が低いという形になりにくい。なので、服薬指導の質やリピーター率などを数値化して、薬剤師の評価設計をしていくというのはアリかもしれません。鈴木:現状はさばいた処方箋の枚数で評価するしかないですからね。これだけ頑張っているのに、頑張っていない薬剤師や薬局と同じ扱いをされたくないですよ。山﨑:きちんと勉強してコミュニケーション能力も高い優秀な薬剤師から不満が出やすい状況は健全ではないですね。鈴木:たとえばの話ですが、重複投薬・相互作用等防止加算の40点は薬剤師の処方提案が評価される点数ですので差をつけられそうかなって思っています。残薬調整は誰でもできますが、この点数は、腎機能を評価して、投与量を調整・中止したり、新しい薬を提案したりするなどしっかりした知識が必要なものなので、もっと区分けしたり、報酬を高くしたりしてもいいと思います。提案した内容をレセプトに記入する必要があれば、それができるようになるために勉強もするでしょうし。いいことやっているのに、現状では残薬調整の30点と10点しか違わないんですよね。またまた感染症領域の話で申し訳ないですけど、患者さんの原因菌を想定した薬剤への処方提案をしてもただの日数調整と同じ点数というのは納得がいかないですよ。重複投薬・相互作用等防止加算は幅広く評価されますが、頑張っている薬剤師が評価される点数になったらいいなと思います。笹川:みんなが頑張っていることを学会などでも発信したら、知らない薬剤師にも広がっていきますし、どんどん知識やデータがたまれば厚生労働省に届く可能性はあると思います。そういう意味でも情報を発信することの重要性を感じます。―最後に若手薬剤師に向けてエールをお願いいたします。笹川:現場で患者さん、そしてその家族、医療者と一緒に悩みましょう。悩んだ数が、薬剤師としてのやりがいです。さあ、一緒に一歩踏み出しましょう。鈴木:目の前にいる患者さんにとってなくてはならない存在になって、患者さんの健康サポートのために惜しまず支援してみませんか? 薬剤師の仕事って、深掘りすればするほど楽しくこなすことができますよ。大学でやってきたことをさらにアップデートしてよりよい薬学的ケアを目指しましょう! 薬剤師のソコジカラを思う存分発揮して、一緒に頑張っていきましょう!山﨑:日々薬局の現場を支援する中で、薬局・薬剤師のポテンシャルや既得権益の枠を越えた職能の広がりを強く感じています。生き生きと働きながら患者さん、ひいては地域に貢献できる舞台はあります。一緒に頑張っていきましょう。

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医師が選んだ“2019年の漢字”TOP5! 【CareNet.com会員アンケート結果発表】

漢字の素晴らしさや奥深い意義を伝えるための啓発活動の一環として、日本漢字能力検定協会が毎年11月に公募している「今年の漢字®」。CareNet.comでも2014年から毎年、医師会員にアンケートを実施し、医師の考える「今年の漢字」を選んでいただいています。今年は535人の先生方にご協力いただきました。はたして、読者の皆さまがイメージする漢字はランクインしているでしょうか? それでは、今年の新入社員5人が「2019年の漢字」TOP5を発表します。1位 災第1位はランクインの常連になりつつある「災」。今年は勢力のある台風が立て続けに上陸し、日本各地を脅かしました。地震を想定した災害対策が水害には通用しないなど、多くの課題が残りました。 「災」を選んだ理由(コメント抜粋)台風、水害、首里城火災など大きなニュースが相次ぎ、これらに対する準備の必要性を痛感した。(40代 内科/東京都)災害の国と再認識した。(50代 その他/鳥取県)経験したことがない台風・河川氾濫などの自然災害が多発。(50代 内科/千葉県)水害や台風被害など地震ではない自然災害が多かった。(20代 整形外科/愛媛県)2位 令第2位は、今年と言えばやっぱり「令」。新天皇の即位を記念して日本全国がお祭りムードに包まれました。一方、医療施設では書類への元号記載時に、令和元年とするか、平成31年のままとするか…悩まれたのではないでしょうか。 「令」を選んだ理由(コメント抜粋)令和元年 新時代の息吹。(40代 内科/大阪府)新天皇即位で新時代の幕開け。(60代 呼吸器内科/神奈川県)元号が変わって盛り上がったから。(20代 消化器内科/東京都)3位 水第3位は水害の「水」。2019年後半に上陸した大型台風は多くの方の命を奪いました。自宅の2階以上に逃げるのか、避難場所に逃げるのか…。個人での判断、状況に応じた判断の難しさが浮き彫りとなりました。 「水」を選んだ理由(コメント抜粋)地震にばかり気を取られていたら、ここまで大きな水害に見舞われるとは思わなかった。(40代 腎臓内科/岡山県)洪水で亡くなった方が多く、水の恐ろしさを再確認した。(60代 精神科/岐阜県)台風15号、19号と立て続けに水害に襲われた年でした。(50代 心臓血管外科/東京都)4位 和第4位も令和にちなんだ漢字、「和」が選ばれました。平和への祈り、ラグビーのチームプレーや災害時の結束力の重要性など、そんな思いを込めて選ばれていました。 「和」を選んだ理由(コメント抜粋)新元号「令和」の和、ラグビーONE TEAMでチームの和。(50代 腎臓内科/大阪府)令和になり天皇即位やラグビーワールドカップなど、和のおもてなしがあった。(50代 消化器外科/神奈川県)令和の和、多くの災害を支える和、ラグビーワールドカップから学んだ和。(50代 救急科/宮城県)5位 嵐第5位は、アイドルグループ「嵐」の活動休止、そして、ここでも災害が多かったという思いからこの漢字が選ばれていました。ちなみに、インターネットで「嵐」を検索すると… 嵐(storm)とは風雨が非常に強い状態、を意味するそうです。検索上位に関して言えば、アイドルグループが圧倒的多数を占めていました。 「嵐」を選んだ理由(コメント抜粋)台風被害が大変だったことと、嵐が来年活動休止になること。(50代 内科/和歌山県)自然災害が多く、嵐のようだったから。(50代 内科/広島県)台風の被害が大きかった一年です。(60代 眼科/神奈川県)アンケート概要アンケート名 :『2019年を総まとめ!今年の漢字と印象に残ったニュースをお聞かせください』実施日    :2019年11月8日~14日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :535件

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トロポニン値と年齢、死亡リスクとの関連は/BMJ

 トロポニン陽性例では、正常値をわずかに超えただけで、年齢にかかわらず死亡の臨床的に重要な増加と関連し、その値の上昇に伴う死亡の増加は、初回測定から数週間以内に集中していることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAmit Kaura氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年11月21日号に掲載された。トロポニンは、急性心筋梗塞の診断の優れたバイオマーカーとされる。トロポニン値が制限範囲を超えても、その上昇の程度と死亡との直接的な関連を示すエビデンスがある。一方、全年齢層におけるトロポニン値と死亡との関連のデータは十分でなく、若年層に比べ超高齢層ではとくに不十分であるが、医師は一般に、全年齢層で高トロポニン値は高死亡率を意味すると考える傾向があるという。年齢とトロポニン値の関連を評価する後ろ向きコホート研究 研究グループは、年齢とトロポニン値の関連、およびその予後における意義を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 解析には、UK-NIHR医療情報学共同研究(UK-NIHR HIC)計画に参加している5つの病院の心血管センターのデータを使用した。対象は、2010~17年の期間に何らかの臨床的理由でトロポニン検査を受けた患者であった。 トロポニンの解析には、トロポニン頂値(在院中に測定したトロポニンの最も高い値)を使用した。トロポニン値は、正常上限値(ULN)の99パーセンタイル値として標準化された。>ULNをトロポニン陽性とした。 主要アウトカムは全死因死亡であった。急性冠症候群患者では逆U字型の関係 試験期間中に25万7,948例がトロポニンの測定を受けた。トロポニン陽性例は7万7,709例、陰性例は18万239例であった。全体の年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:50~79)で、14万2,718例(55.3%)が男性だった。 トロポニン測定患者の相対的な割合は、20代から60代にかけてほぼ直線的に増加し、その後は10歳ごとに約50%ずつ急激に増加した。また、トロポニン陽性例の割合は、加齢に伴って増加し、18~29歳の9%から90歳以上では50%に達した。 追跡期間中央値は1,198日(IQR:514~1,866)で、この間に5万5,850例(21.7%)が死亡したが、最初の1年間に3万1,112例(12.1%)が死亡していた。 3年以上の試験期間において、ベースラインのトロポニン陽性例の死亡のハザードは、陰性例の3.2倍(95%信頼区間[CI]:3.1~3.2)であった。この影響はとくに若年患者で強く、死亡率のハザード比(HR)は18~29歳が10.6(95%CI:8.5~13.3)であったのに対し、90歳以上では1.5(1.4~1.6)であり、HRは加齢に伴って低下した。 トロポニン陽性例は陰性例に比べ、全年齢層を通じて3年絶対死亡率が14.8ポイント高かった。また、トロポニン陽性例における死亡の増加のほとんどは、最初の3ヵ月間に集中していた。 死亡率は、トロポニン値>5~10×ULNまでは漸増したが、これ以上の値では予想に反して低下した。また、入院患者と非入院患者でサブグループ解析を行ったところ、入院患者(15万6,410例)において死亡とトロポニン値に逆U字型の関係が認められ、トロポニン頂値約70×ULNでHRが最も高値(2.4、95%CI:2.3~2.4)を示した。 多変量で補正した制限付き3次スプラインCox回帰を用いて解析したところ、急性冠症候群のない患者(12万49例)では、トロポニン値と死亡に直接的な関連が認められたのに対し、急性冠症候群患者(1万4,468例)では逆U字型の関係がみられ、トロポニン頂値>70×ULNを境に、逆に死亡率が低下した。 急性冠症候群患者のうち、侵襲的管理(トロポニン頂値から3ヵ月以内の血管造影)を受けた患者では、多変量で補正しても逆U字型の関係が存続していたが、非侵襲的管理を受けた患者では、トロポニン値と死亡には直接的な正の相関が認められた。 著者は、「トロポニン値は、わずかな上昇であっても予後において大きな意義を有するが、臨床的決定は基礎疾患を考慮して行う必要があり、トロポニンの上昇の程度にのみ依存すべきではない」としている。

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プライマリケアにおけるセルトラリンの臨床的有効性~PANDA研究

 うつ病のケアは、プライマリケアで行われることが多い。しかし、ほとんどの抗うつ薬の試験では、うつ症状の診断と重症度に基づいた適格基準を有する2次医療圏の精神保健サービスの患者を対象としている。抗うつ薬は、これまでの臨床試験の対象患者よりもはるかに幅広い患者に用いられている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGemma Lewis氏らは、軽度~重度のうつ症状を伴うプライマリケア患者を対象に、セルトラリンの臨床効果を調査し、治療反応に対する重症度と期間との関連について検討を行った。The Lancet. Psychiatry誌2019年11月号の報告。 本研究(PANDA研究)は、英国4都市(ブリストル、リバプール、ロンドン、ヨーク)のプライマリケア医179人の患者を対象に、実臨床多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化試験として実施された。過去2年間に抗うつ薬のベネフィットについて臨床的不確実性が認められた18~74歳の抑うつ症状患者を対象とし、セルトラリン群(最初の1週間は1日1カプセル[セルトラリン50mg]、その後2カプセルとし最大11週間投与)またはプラセボ群にランダムに割り付け、重症度、期間などで層別化した。主要アウトカムは、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコアにより測定された6週間後の抑うつ症状とした。副次アウトカムは、2、6、12週目の抑うつ症状および寛解(PHQ-9、Beck Depression Inventory-II[BDI-II])、全般性不安症状(Generalised Anxiety Disorder Assessment 7-item version[GAD-7])、心の健康および身体的健康(12-item Short-Form Health Survey[SF-12])、自己報告による改善度とした。すべての分析は、intention-to-treat分析で行った。 主な結果は以下のとおり。・2015年1月~2017年8月までに655例を、セルトラリン群326例、プラセボ群329例に割り付けた。・セルトラリン群の2例は、ベースライン評価が完了しなかったため除外した。・主要アウトカムの分析対象患者数は、550例(セルトラリン群:266例、プラセボ群:284例)であった。85%のフォローアップ率で、両群間に差は認められなかった。・6週間後、セルトラリン群において、臨床的に意味のある抑うつ症状の軽減は認められなかった。・6週間後の平均PHQ-9スコアは、セルトラリン群で7.98±5.63、プラセボ群で8.76±5.86であった(調整比例差:0.95、95%CI:0.85~1.07、p=0.41)。・副次アウトカムでは、セルトラリン群において、不安症状、メンタルヘルス関連QOL(身体的QOLは除く)、メンタルヘルスに関する自己報告の改善が認められた。・12週間後、セルトラリン群において、抑うつ症状の軽減が認められた(弱エビデンス)。・有害事象は、セルトラリン群で4件、プラセボ群で3件が認められたが、両群間に差は認められなかった。・重篤な有害事象は、セルトラリン群で2件(うち1件は薬物療法に関連と分類)、プラセボ群で1件と分類された。 著者らは「セルトラリンは、プライマリケアにおいて、6週間以内に抑うつ症状を改善させる可能性は低いものの、臨床的に重要であると考えられる不安、QOL、メンタルヘルスに関する自己評価の改善が認められた。本調査結果は、うつ病または全般性不安症の診断基準を満たさない軽度~中等度の症状を有する患者を含む、これまで考えられていたよりも幅広い患者に対するSSRI抗うつ薬の使用を裏付けている」としている。

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