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学会総会まるわかり! 第44回 日本動脈硬化学会総会レビュー ガイドライン作成委員が語る今年の総会

執筆:塚本和久先生(福島県立医科大学 会津医療センター準備室 糖尿病・代謝・腎臓内科 教授)7月19日と20日の二日間、「動脈硬化性疾患の包括医療 ―ガイドライン2012―」をメインテーマとして、佐々木淳会長(国際医療福祉大学)のもと、第44回日本動脈硬化学会総会・学術集会が福岡にて開催された。本学会でも、近年他学会でも採用され始めたiPhone・iPad・スマートフォンでのプログラムの検索や予定表の作成が可能な専用のアプリが採用され、さらには抄録集もPDF化されたことにより、従来の重たい抄録集を持ち歩く必要がなくなったのも目新しい試みであった。両日を通じて総数1200名弱の参加があった。1. 新ガイドライン関連セッション今回の学会は、本年6月20日に発表された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版」をめぐるセッションがいくつか設けられた。初日午前には、各脂質測定に関する精度に関するワークショップが企画された。日常臨床で、各々の測定値がどのように標準化されているのか、その測定精度がどの程度のものであるのか、を考えることがないのが、ほとんどの臨床家の現状であろう。このセッションにおいて、総コレステロールはその精度管理が優れておりばらつきはほとんどないこと、現在のHDL-C測定法も精度の高い測定法であること、それに対して中性脂肪測定は標準化が十分でなく今後強力な標準化の努力が必要であること、また欧米での中性脂肪測定法と日本のそれとは遊離グリセロールを含めて測定するかどうかの相違が存在しており、値として同等のものと考えることはできないこと、などの解説が行われた。またLDL-C直接法に関しては、現在12メーカー(試薬は8試薬)がキットを出しているが、その測定法の詳細は示されておらず、同じ検体を測定してもキットにより値が異なることがしばしばあり、特に中性脂肪値の高い検体ではBQ法(比重1.006g/mL以上の画分を除いた検体でコレステロールを測定する方法)での測定値よりもかなり高値となるキットがあることが指摘された。それゆえ、今回のガイドラインでは、中性脂肪値が400 mg/dL以上の場合にはnon HDL-Cを指標とすること、中性脂肪値高値例ではLDL-C目標値達成後にnon HDL-C値を二次目標として用いること、が推奨されることとなったとの解説があった。non HDL-Cに関しては、近年の報告からLDL-Cよりも強い冠動脈疾患のマーカーとなる可能性が示されていること、高TG血症・低HDL-C血症ではLDL-Cにnon HDL-Cを加えて用いることによりそのリスク予測能が高まること、ただしnon HDLを指標とした大規模研究や疫学研究はないため、とりあえずLDL-C + 30 mg/dLで基準を定めてはいるものの、今後その閾値の設定が必要になってくることが提言された。二日目の午後には、今回のガイドライン作成の中心的存在として活躍された先生方による、「改訂動脈硬化性疾患予防ガイドライン」のセッションが開かれた。寺本民生先生(帝京大学)からは新ガイドラインの概要と二次予防・高リスク病態における層別化について、枇榔貞利先生(Tsukasa Health Care Hospital)からは脂質異常症の診断基準の元となった日本人でのデータと境界域を設定した根拠、そしてLDL-C直接法の欠点とnon HDL-Cの導入理由が示された。また、岡村智教先生(慶應義塾大学)より、今回のガイドラインで設定された絶対リスクに基づいたカテゴリー分類の基準を設定する際に参考とされた諸外国でのガイドラインの解説と最終的なカテゴリー分類基準の解説が行われ、最後に横出正之先生(京都大学)からは今回の学会のメインテーマである「動脈硬化性疾患の包括的管理」について、詳細な説明がなされた。2. 今回の学会でのセッションの傾向最近の動脈硬化学会の演題内容は、どちらかというと細胞内シグナル伝達やサイトカインのセッションが多い印象があったが、今回はどちらかというとリポ蛋白関連・脂質代謝異常、という概念でのセッションが多かった印象がある。二日目の午前には、「脂質異常症と遺伝子の変異」というセッションで、CETP欠損症、家族性高コレステロール血症、アポEについての講演とともに、今後の脂質異常症の発展につながるであろう「遺伝子変異の網羅的解析とTG異常」、「脂質異常症遺伝子変異データベースの構築」の演題が発表された。また、HDLについては、HDL研究に造詣の深い M John Chapman博士の特別講演が一日目に組まれ、二日目の午後には「How do we deal HDL?」との表題でのワークシップが行われた。そして、一日目の午後には、3年前の学会から継続して開催されている「動脈硬化性疾患の臨床と病理」のセッションが催された。ハーバード大学の相川先生から、近年の動脈硬化イメージングの進歩状況として、FDG PET/CT イメージング、MRI T2シグナルを用いての動脈硬化巣マクロファージのイメージング、特殊な薬物(NIRF OFDI)を用いての分子イメージングについての解説があった。座長の坂田則行先生(福岡大学)からは、現在の画像診断技術の進歩はめざましいが、どうしても臨床医は画像診断のみに頼りがちになっており、今後は画像診断での病変がどのような病理組織像を呈するのか、ということに関して、臨床家と病理家が共同して検討していく必要性が提起された。3. 特別企画、および若手奨励賞一日目の午後、特別企画として、Featured Session「時代を変えた科学者たち」が開催され、松澤佑次博士(内臓脂肪研究)、泰江弘文博士(冠攣縮性狭心症)、遠藤章博士(スタチンの発見)、荒川規矩男博士(アンジオテンシン研究)といった、日本を代表する研究者たちの講演をまとめて拝聴する機会が得られた。各博士の講演内容の詳細はスペースの関係上省略させていただくが、どの先生の話も内容が濃く感慨深いものであり、現在および将来基礎・臨床研究にいそしむ若い先生方の非常によい指南となったと考える。このような中、次世代を担う若手の先生の発表もポスター発表も含め多数行われた。中でも、一日目の午前には、若手研究者奨励賞候補者の発表、そして選考が行われた。スタチンがARH(autosomal recessive hypercholesterolemia)患者に有効に働く機序を安定同位体を用いた代謝回転モデルにて解析した論文(Dr. Tada)、急性冠症候群の血栓成分の相違がどのような臨床像、あるいは心機能回復能と相関するかを調べた臨床研究(Dr. Yuuki)、マクロファージからのコレステロール逆転送に関与するABCA1とABCG1が、ポリユビキチン化されて代謝されること、そしてプロテアゾーム阻害薬でコレステロール逆転送が活性化されることを示した論文(Dr. Ogura)、カルシウム感受性細胞内プロテアーゼであるカルパインは内皮細胞の細胞間接着に関与するVEカドヘリンの崩壊を惹起し、内皮細胞のバリア機能を低下させ、動脈硬化を促進すること、そしてカルパイン阻害薬は動脈硬化を抑制することを示した論文(Dr. Miyazaki)の発表があった。最優秀賞は、Dr. Miyazakiの演題が選出された。4. 特別講演、懇親会さて、このような実りの多い学会をさらに充実させたイベントとして、一日目の夜に開催された懇親会、そして東北楽天ゴールデンイーグルス名誉監督である野村克也氏の講演が挙げられるであろう。懇親会は、いつもの学会懇親会よりも多数の参加者があった。会長および運営事務局・プログラム委員会の諸先生の趣向・ご尽力、そして開催ホテルがヤフードームの隣であったこともあり、福岡ソフトバンクホークスのチアガールによる余興なども行われ、非常に和気藹藹とした雰囲気の中で会員同士の親交が深まったと思われる。また、二日目の野村克也監督の特別講演は、「弱者の戦略」という題名で行われた。南海、ヤクルト、阪神、楽天と、長い選手人生そして監督人生にて経験し、培ってきた考え方・姿勢を拝聴できた。とても内容の濃い講演であったが、中でも、弱者がいかに強者に対応していけばよいのか、組織・あるいはグループの長である監督とはどうあるべきか、部下のものに対する対応はどのようにすべきなのか、など、我々医師の世界にも相通じる内容の話を、ユーモアを交えながら語っていただいた。様々な苦労を乗り越え、その場その場でよく考えて人生を歩まれた監督ならではの講演であったと考えている。5. まとめ来年は、及川眞一会長の下、7月18日・19日に東京・京王プラザホテルにて第45回日本動脈硬化学会が開催される予定である。今年の充実した学会を更に発展させ、基礎および臨床の動脈硬化研究の進歩がくまなく体得できる学会になることを期待する。

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統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当?

近年、統合失調症患者では骨粗鬆症の罹患率が高いことが明らかになってきているが、著しい骨密度(BMD)の減少にいたる機序や臨床的意味はまだわかっていない。慶応義塾大学の岸本氏(Zucker Hillside Hospital留学中)らは統合失調症患者における骨粗鬆症と骨折リスク、さらに抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の骨代謝への影響について、最近の知見をもとにレビューを行った。Curr Opin Psychiatry誌オンライン版2012年6月30日付の報告。主な結果は以下のとおり。 ・16報告中15件(15/16:93.8%)において、統合失調症患者は対照群と比較して、低BMDまたは骨粗鬆症の高い罹患率のうち、少なくともいずれかと相関していた。ただし、全体の一貫性はなかった。・高い骨折リスクは、統合失調症と関係し(2/2)、抗精神病薬投与とも関係していた(3/4)。・これらの要因として、運動不足、栄養不足、喫煙、アルコール摂取、ビタミンD不足が示唆された。・抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症とBMD低下との関係を調べた報告(9/15:60.0%)では、高プロラクチン血症の影響が少なからず認められた。・本結果は、サンプルが少なく効果の小さなものが含まれており、またプロスペクティブ研究は2報だけであった。・高プロラクチン血症や不健康な生活による影響はまだ明らかになっていないが、統合失調症患者ではBMD低下や骨折リスクとの関係が示唆されることから、予防や早期発見、早期介入が必要であると考えられる。(ケアネット 鷹野 敦夫)関連医療ニュース ・肥満や糖尿病だけじゃない!脂質異常症になりやすい統合失調症患者 ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ

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脂質異常症になりやすい統合失調症患者、肥満や糖尿病だけじゃない

統合失調症患者では肥満や糖尿病の罹患率が高く、とくに抗精神病薬の使用でこれらの発生率 が上昇することが問題となっている。脂質異常症もまた、統合失調症患者によくみられる合併症のひとつである。Hsu氏らは台湾の統合失調症患者における脂質異常症の罹患率・発症率を調査し、Gen Hosp Psychiatry誌2012年7月号(オンライン版2012年3月27日号)で報告した。2005年、18歳以上の766,427人の被験者を無作為抽出し、統合失調症の診断を受けた患者、脂質異常症を有する患者または薬物治療を行っている患者 を特定したうえで、統合失調症患者の脂質異常症の罹患率および発症率を一般集団と比較検討した。主な結果は以下のとおり。 ・統合失調症患者における脂質異常症の罹患率は一般集団より高かった(8.15% vs 8.10%、オッズ比:1.17、95%信頼区間:1.04~1.31)。・リスクファクターは、50歳以上、高保険料支払者、台湾北部または中部・都市部の生活者であり、青年期で非常に高い脂質異常症の罹患率であった。・2006年~2008年に第二世代抗精神病薬を使用していた統合失調症患者の脂質異常症平均年間発症率は、一般集団より高かった(1.57% vs 1.29%、オッズ比:1.31、95%信頼区間:1.11~1.55)。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・ケアネット 7月の特集「動脈硬化」 ・アルツハイマーの予防にスタチン!? ・精神疾患患者におけるメタボリックシンドローム発症要因は?

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新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク 臨床医と患者が語る、乾癬の研究と治療の最新動向

 6月25日、アボット・ジャパン株式会社、エーザイ株式会社の主催でプレスセミナー「もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク」が開催された。聖母病院皮膚科 小林里実氏を講師に、乾癬患者さんをゲストに迎え、乾癬がおかれている現状と、乾癬に罹患した患者さんがどのような症状で苦しんでいるのかを紹介した。乾癬の現状 乾癬では、炎症による表皮細胞の増殖を伴う疾患である。炎症と増殖があるという点で、皮膚炎の中でも湿疹とは異なる。表皮細胞は増殖分化する細胞であり、表皮は常に新生を繰り返すこと(turn over)で外傷や炎症に対処している。乾癬では、炎症により通常は有棘層28日+角層14日のturn overサイクルが4~7日+2日にまで亢進しているため、表皮が厚くなるとともに角層が鱗屑としてどんどん落ちていく。 また、これらの炎症は皮膚表面で起こっているため、見た目にも非常に目立ち、感染症や特殊な皮膚病などと誤解されることが多い。 乾癬の皮膚症状は、境界明瞭な紅斑、銀白色雲母様の鱗屑、盛り上がって触れる浸潤が特徴的である。初発部位は頭部、次いで肘膝などが多いが、全身どこにでも出現する。尋常性乾癬が90%近くを占めるが、そのほかにも関節症性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬がある。 膿疱性乾癬のうち、急性型は重症で治療に難渋する例が少なくない。また、乾癬性紅皮症は、正常な皮膚がほとんどない、紅皮症を呈する病型である。そして、関節症性乾癬は、非リウマチ性関節炎一つで、の不十分な治療により関節破壊や屈曲変形をきたす。しかしながら、症状に消長があるため、軽症と判断されたり、仙腸関節炎や脊椎炎も腰痛症などとして見逃されることも少なくない。 乾癬の罹患率は欧米で2%。本邦では0.1~0.2%とされているが、生活の欧米化により日本人での発症は増えている。発症年齢は、20歳と40~50歳代の二峰性といわれているが、実際には10代での発症も稀ではない。治療をあきらめて受診しない例のほか、きちんと診断されていない例、脂漏性湿疹などと誤診される例もあり、実際は乾癬として登録されるデータ以上の患者さんがいると予想される。 このような症状を示す乾癬では患者さんのQOLは著しく低い。鱗屑は軽く触れるだけで大量に落ちる。そのために温泉やプールに行けない。皮膚症状が手足にでるため、スカートがはけない、半袖のシャツが着られないなど日常生活での支障は多い。また、このような状態におかれた患者さんは人に見られることが大きな精神的ストレスとなる。ひどい場合は引きこもりとなったり、精神的に支障を来す例も少なくない。生物学的製剤が、より高い治療レベルを達成 乾癬の治療は、外用療法、光線療法、免疫抑制剤など進歩してきたが、近年の生物学的製剤の登場で治療は格段に向上した。これにより、重症の患者さんでも皮疹のない状態を保持する事が可能となってきたのである。PASI(Psoriasis Area Sensitivity Index)90、つまり皮疹の90%改善を達成すると、QOLは著明に改善する事が明らかになった。従来の治療では、皮疹が減り医療者が「良くなった」と思っても、患者さんにとっては満足できる状態ではなく、認識の乖離がみられることも少なくなかった。生物学的製剤によりPASI90を目指すことができるようになり、患者さんのQOLもDLQI 0~1と、日常生活にほとんど支障のない状態を実現することが可能となった。また、生物学的製剤の適応となる関節症性乾癬では、有効な治療を得たことにより医療者側の治療意欲の向上、知識の普及にもつながるなど、生物学的製剤は、乾癬治療を格段に進歩させた。乾癬の病態解明とメタボリックシンドローム 近年、乾癬はメカニズムが解明されて、Th17リンパ球、またその活性経路に関わるTNFα、IL12、IL23などのサイトカインが重要であることがわかってきた。そして、これらのサイトカインをブロックするターゲット療法として、生物学的製剤の登場へとつながった。 さらに、ここ1~2年で新たな知見が加わっている。乾癬に高血圧、脂質異常症、高血糖、高尿酸血症などの合併が多いことは以前から知られていたが、これらの疾患にもTNFαが強く関連することがわかったのである。その結果、乾癬によるTNFαの増加が、イ ンスリン抵抗性、動脈硬化、虚血性疾患のリスクを上昇させるという乾癬マーチの概念まで出てきている。 乾癬の治療目的とゴールは、皮疹の改善からQOLの改善へと変化している。そして、生物学的製剤の出現により、関節症性乾癬も有効に治療できるようになった。さらに、今後はメタボリックシンドロームと心血管イベントの低減までも視野に入れた治療へと変わっていく可能性がある。社会にもっと知ってほしい セミナーでは、3名の患者さんもゲストとして発言をした。そのなかで、患者B氏の事例を紹介する。 B氏は長年、関節症状で悩まされてきた患者さんである。初期は、ふけが出始めることから始まった。その後、背中のこわばり、足先の痛み、そして2ヵ月後に足親ゆびが曲がり始める。皮膚科医を受診し、乾癬と診断されるが、その際に不治の病であるといわれた。そのショックから、診療所、病院、鍼灸など数えきれないほどの医療機関を受診する。その経過の中で、免疫抑制剤で副作用が現れるなど多くの苦痛を経験した。 少し関節症状がよくなると皮膚症状が悪化し始めた。強いステロイド外用薬を大量に使い、ついには全身が赤くなり、やけどのように、少し触っただけで皮膚がむけてしまうようにもなった。服を脱ぐと砂糖を撒いたように皮膚が落ちたそうだ。 このような状態から、勤務先を解雇になり生活保護を余儀なくされる。精神的にも支障をきたし、うつ病と診断される。自暴自棄となりギャンブル依存症、ついに自殺寸前まで精神的に追い込まれたという。 しかしながら、昨年からの生物学的製剤治療が奏効し、現在は誰もBさんを見て病気だという人はいない。だが、関節症性乾癬の症状である脊椎炎が続いて定職につけず、ボランティア活動をしているという。Bさんは長年の経験を話し、「22年間病気を理解してくれる日がくる事を望んでいた。社会にもっと知って欲しい、メディアももっと取り上げてほしい」と訴えた。 最後に小林氏は、「医師は患者から得た乾癬の情報を研究し、新たな治療法の開発に努めている。患者さんや患者会は、患者間の情報共有、医師への疑問・要望の提供など素晴らしい活動をしている。しかし、それだけでは不十分であり、社会の理解とサポートが必要だ。メディアの今後の啓発活動に大いに期待したい」と語った。(ケアネット 細田 雅之)

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新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。中央値10年追跡、その間の心血管疾患イベントは約1万5,000件研究グループは、1968~2007年に行われた37の前向きコホート試験のデータを用い、試験開始時点で心血管疾患のない16万5,544人について、従来のリスク因子に脂質マーカーを加えることによる、心血管疾患リスク予測の改善について分析した。追跡期間の中央値は10.4年(四分位範囲:7.6~14)、その間に発生した心血管疾患イベントは1万5,126件(冠動脈性心疾患1万132件、脳卒中4,994件)だった。主要アウトカムは、心血管疾患イベント発生の判定と、10年発生リスクについて低リスク群(10%未満)、中間リスク群(10~20%)、高リスク群(20%以上)の3群への再分類改善率だった。新たな脂質マーカー追加、ネット再分類改善率は1%未満結果、新たな各脂質マーカーの追加による判別モデルの改善はわずかで、アポリポ蛋白B/A-Iの追加によるC統計量の変化は0.0006(95%信頼区間:0.0002~0.0009)、リポ蛋白(a)は0.0016(同:0.0009~0.0023)、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2は0.0018(同:0.0010~0.0026)だった。新たな各脂質マーカーの追加による、心血管疾患発生リスクのネット再分類改善率についても、いずれも1%未満に留まった。従来リスク因子のみで分類した結果、40歳以上成人10万につき1万5,436人が、10%未満および10~20%のリスク階層群に分類されると推定された。そのうち、米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III)に基づきスタチン治療が推奨される人を除外して残った1万3,622人について、アポリポ蛋白B/A-Iの検査値を加えた場合に20%以上の高リスク群へと再分類された割合は1.1%だった。リポ蛋白(a)を加えた場合は4.1%、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2を加えた場合は2.7%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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エキスパートへのQ&A ~エキスパートDrに聞く~

慢性腎臓病(CKD)の概念が提唱され、10年が経ちました。この間、本疾患に対する注目度や臨床医の治療経験が飛躍的に向上し、今では、コモン・ディジーズの一つとなりました。このCKD診療の浸透に大きな役割を果たした『CKD診療ガイド』が、2012年6月に改訂されました。ケアネットでは、『CKD診療ガイド』改訂を機に、CKD診療に関する質問を会員の医師より募集しました。この質問に、常喜信彦先生(東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科 准教授)が回答します。常喜信彦先生東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科 准教授CKD患者を専門医に紹介するにしても、腎臓専門医の人数は少なく、それほど多くの患者を診療することは難しいかと思います。どのような患者であれば、専門医に紹介すべきでしょうか?とくに軽症の患者さんを専門医に送るときの判断について教えてください。たとえ蛋白尿が認められていても、またeGFRが45 mL/分/1.73m2と低下していたとしても、極論を言えばそれ以上悪くならなければ、臨床上まったく問題はないわけですが、進行性のCKDが疑われるならば、専門医への紹介が望まれます。進行性を疑う最も強力なマーカーは蛋白尿の量になります。1日換算量で0.5 g以上認められ、かつその量が半年から1年の経過で増加傾向を示す時には積極的に専門医に紹介すべきです。eGFRについても進行性に低下する場合は同様です。尿蛋白の測定は、どのようにしていますか? 自費で行う場合もありますか? 対象となる患者を教えてください。最も一般的な方法は、随時尿の蛋白尿量を尿中Cr値で割った1日換算量を求める方法です。この方法で算出された1日換算量は、24時間畜尿により求められた蛋白尿と非常によく相関することがわかっています。高血圧、糖尿病、高脂血症といったいわゆる古典的な動脈硬化危険因子で診療中の患者、メタボリックシンドロームの患者には積極的に尿蛋白の測定を行うことを推奨します。蛋白尿をきたす原因として、若年では慢性糸球体腎炎も頻度が高くなります。微量アルブミン尿は保険診療の上では、糖尿病性腎症が疑われる時に適応となります。日常診療の中で、それ以外の疾患にまで微量アルブミン尿を計測拡大させる必要はないと思います。それよりも、まず通常の尿蛋白1日換算量を忘れずに確実に測ることが推奨されます。病状評価にあたり、初診時に何を行いますか? 定期検査の頻度についても教えてください。慢性腎臓病の診断、重症度の評価をするときに必須の検査は、1日換算量の蛋白尿ないしアルブミン尿とeGFR値になります。この2つの検査は必須とお考えください。加えて、腎の形態的異常の把握のために腎臓超音波を行えば、慢性腎臓病の病状評価としては必要な検査はそろいます。今回renewalされたCKD診療ガイドでは、尿蛋白1日換算量とeGFR値から、腎臓専門医への受診間隔の目安が示されています。ご参考いただければと思います。腎臓専門医への受診間隔(月)画像を拡大する血圧やコレステロールもそれほど高くない患者の場合、尿所見とeGFRのみで患者さんの受診を持続させられるものでしょうか? 患者さんの受診モチベーションをあげる方法などありますか?CKD診療ガイドに示されている、慢性腎臓病の重症度評価の色別表を使用されてはいかがでしょうか。将来、末期腎臓病に至るリスクや心血管イベントを起こすリスクが色別に表記されており、患者さんにお見せしても非常にわかりやすい表かと思います。今回、同時に、その表をもとにした、診療間隔目安表も公開されました。ご参考いただければと思います。CKDの重症度分類画像を拡大するLDL-Cと中性脂肪の両方が高いCKD患者さんには、フィブラートとスタチンのいずれを用いればよいでしょうか?まだ、答えの出ていない分野かもしれません。まずフィブラート系の治療薬はeGFR30 mL/分/1.73m2未満では使用できませんので、CKDステージ3までの患者でどう考えるべきか、ということになります。CKD患者における脂質代謝異常の治療に関する証拠はかなり限られたものになり、不十分と言わざるを得ません。しかしながらLDL-CとTGを比較したとき、どちらのパラメーターに関する治療成績が多いかと言えばLDL-Cになるかと思われます。選択するとなれば、LDL-C低下作用に秀でたスタチンになるかと思います。参考までに、スタチンとフィブラートの併用は横紋筋融解症の危険が高まるため、原則禁忌とされています。必然的にCKD患者の高TG血症へはニコチン酸系薬剤を使用することが多くなります。高尿酸血症の管理について、管理する患者や介入開始尿酸値、管理目標値などについて教えてください。高尿酸血症がCKDの発症、進行に深くかかわる因子であることが明らかとなってきました。わが国の報告で、住民健診で尿酸値について男性7.0mg/dL以上、女性6.0mg/dL以上を高尿酸血症と定義したとき、高値群で末期腎臓病への移行リスクが高くなることが報告されています。男性7.0mg/dL未満、女性6.0mg/dL未満を管理目標値と考えてよいでしょう。管理の第一段階は、過食、高プリン・高脂肪・高たんぱく質食の嗜好、常習飲酒、運動不足などを是正する生活習慣の改善です。一方、CKD ステージ 4~5 において生活習慣改善にもかかわらず血清尿酸値が9.0mg/dL 超える無症候性高尿酸血症では、証拠はないものの薬物治療が考慮される場合が多いです。結局は血圧、血糖、脂質を良好にコントロールすることがCKD進行の予防になると考えます。血清クレアチニン正常の患者さんをあえて混んでいる大病院腎臓内科に紹介するメリットは何でしょうか?ひとつは潜在する腎炎の合併を除外するためです。とくに蛋白尿量が多い患者さんでは、その疑いが強くなります。たとえ腎炎であっても、血圧、血糖、脂質の管理を厳密に行うことに変わりはありませんが、腎炎を併発していれば、その腎炎に介入治療することで、腎障害の進行を抑えられる可能性もあります。また、栄養指導、食事療法を行うという意味では、基幹病院の方が有利かもしれません。eGFR60以上でも、3-6ヵ月に1回、腎臓専門医を受診することが推奨されています。

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双極性障害患者の「うつ症状」は心血管イベントリスクを高める

Slomka氏らは双極性障害患者の気分症状と心血管イベント(CVD)リスクとの関係を調査し、「双極性障害患者のうつ症状は10年後のCVDによる死亡リスクと関連する」ことを報告した。この論文は、J Affect Disord誌2012年5月号(オンライン版2月21日付)に掲載された。VA クリニック の外来を受診している退役軍人 のうち、CVD危険因子を有する双極性障害患者118例を対象にコホート研究をおこなった。本研究では気分症状(抑うつ症状、躁症状)とフラミンガムリスクスコアとの関係および精神症状とCVDリスクファクター(脂質、血圧、体重、喫煙、空腹時血糖)との関係を調査した。主な結果は以下のとおり。 ・対象者は平均年齢53歳(標準偏差:9.9)、男女比=82:17、BMI 30以上が約70%、脂質異常症合併が84%、高血圧合併が70%、糖尿病合併が25%、フラミンガムスコア(10年以内の心血管イベントリスクを示すスコア)が20%を超える割合が19%であった。・うつ 症状を有する患者ではフラミンガムスコアが20%を超える割合が6倍であった(オッズ比:6.1、p=0.03)が、躁症状を有する患者ではフラミンガムスコアとの関係は認められなかった(オッズ比:0.6、p=0.03)。・うつ症状はBMI高値 、空腹時血糖、血圧の上昇との関連が認められた。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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日本人でも早食いは2型糖尿病のリスクに

食べるスピードと日本人男性2型糖尿病発症率との関連を調べた研究結果が発表された。対象は、金属製品工場に勤務する中年層の日本人男性2,050名。参加者を自己申告による食べるスピード別に分類し、評価した。糖尿病発症率は7年間にわたって毎年実施される健康診断の結果を用いて評価した。食べるスピードと糖尿病発症率との関連は、年齢、糖尿病の家族歴、喫煙、飲酒、運動習慣、高血圧・高脂血症の有無といった複数因子の調整を行ったうえで、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。結果、食べるスピードと糖尿病発症率とに関連がみられた。ただし、BMI調整後はこの関連に有意差がなかったことから、早食いが引き起こす体重への影響が関与している可能性が示唆された。食べるスピードは比較的コントロール可能な危険因子であり、ゆっくりと食べることが糖尿病予防にも有用な可能性があるといえる。主な結果は以下のとおり。 ・食べるスピード別に「ゆっくり、普通、早い」の3カテゴリーに分類・BMI 25以上の肥満者の割合は「ゆっくり」で14.6%、「普通」で23.3%、「早い」で34.8%と、食べるスピードが速いほど高い肥満有病率を示した。・試験期間中、177人の参加者が糖尿病を発症した。・各カテゴリーにおける糖尿病発症率(1,000人・年あたり)は「ゆっくり」で9.9、「普通」で15.6、「早い」で17.3であった。・多変量調整ハザード比(95%信頼区間)でみると、「ゆっくり」を1.00とした場合、「普通」で1.68(0.93~3.02)、「早い」で1.97(1.10~3.55)と、食べるスピードは糖尿病発症と関連していた(p= 0.030)。・ただし、BMI調整後、有意な相関は認められなかった。(ケアネット 佐藤 寿美)

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脂質異常症治療薬「JTT-705(dalcetrapib)」開発中止

 JTは7日、脂質異常症治療薬「JTT-705(dalcetrapib)」について、本日、スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社(以下ロシュ社)が同剤のすべての開発を中止することを発表したことを公表した。JTT-705については、2004年10月にロシュ社と導出に関するライセンス契約を締結し、日本を除く海外において同社が開発を行っていた。 「JTT-705(dalcetrapib)」はHDL中のコレステロールをLDLに転送する蛋白質であるCETP(コレステリルエステル転送蛋白)の活性を調節することにより血中のHDLコレステロールを増加させて抗動脈硬化作用を示す薬剤で、導出に関するライセンス契約締結以降、同社が海外における臨床試験を行っており、海外において第III相臨床試験の段階にあったという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.jti.co.jp/investors/press_releases/2012/pdf/20120507_01.pdf

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【速報】「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」はここが変わる!

 4月26日(木)、日内会館(東京・本郷)にて「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」の発行に関するプレスセミナーが行われ、本ガイドラインの主な改訂点が発表された。主な改訂点は以下の通り。●絶対リスクの評価による層別化 これまでのガイドラインでは、健常者に対する相対的リスクで評価がなされてきたが、個々を絶対リスクで評価できないことは課題とされてきた。しかしながら、NIPPON DATA80をもとにリスク評価チャートが発表され、個々のリスクを絶対評価で表現することが可能となった。これにより、個人が有する危険因子を総合的に評価でき、性差や加齢の影響も解消できると期待されている。●動脈硬化性疾患の包括的管理 多くの患者は生活習慣病を併せもっており、常に包括的な判断が求められてきた。今回初めて、それぞれのガイドラインのエッセンスを織り込み、動脈硬化性疾患予防のための各種疾患(脂質異常症、高血圧、糖尿病、その他)の包括的なリスク管理チャートが加わった。●診断基準境界域の設定 これまで脂質異常症における治療エビデンスはリスクの高い患者を対象とした試験が多かった。このため、あくまで絶対リスクが高い場合に限り、治療を勧めるものであり、診断基準がそのまま治療対象となるわけではないことを認識する必要がある。このことから、診断基準では「スクリーニングのための」という記載が加えられている。 その一方で、糖尿病や脳梗塞のような危険度の高い一次予防については、早期の治療介入が予後を改善させるという多くのエビデンスがある。このため、リスクの高さに応じて判断できる境界域が設定され、治療介入が可能な領域についても提案されている。●高リスク病態 近年、CKDに伴う脂質異常とCVDリスクの関係などの報告から、新たに慢性腎臓病(CKD)が高リスク病態として扱われることとなった。 また、強力なスタチンの登場により、家族性高コレステロール血症(FH)は認識されずに治療されていることも多く、かつ、そのリスクは高いことから「原発性高脂血症」とは別項目として取り扱われている。これまで検討されてきたLDL-C100mg/dL未満よりもさらに厳しい目標値(very high riskグループ)設定の是非については、日本人でのエビデンスがないことから継続的な検討課題とされた。●non HDL-Cの導入 non HDL-CとCVDの関係を示すエビデンスの報告から、non HDL-Cがリスク区分別脂質管理目標値に加えられた。高TG血症、低HDL-C血症ではLDL-C値に加えて、non HDL-C値を加えることにより、リスク予測力が高まるとされている。 また、TCとHDL-Cから簡便に計算でき、食後採血でも使用できる点やFriedewald式が適用できない高TG血症にも使用できる点などは利点といえる。 本ガイドラインは2012年5月末の発行を予定しており、その詳細内容については2012年の7月に福岡で行われる「第44回日本動脈硬化学会総会」にて紹介される予定となっている。

735.

初発の心筋梗塞後の院内死亡率、冠動脈心疾患リスクが少ないほど増大

 心筋梗塞を初めて発症し、それ以前に心血管疾患歴のない人の院内死亡リスクについて、5つの主要な冠動脈心疾患リスクの数との関連を調べた結果、リスクが少ないほど高くなる逆相関の関連がみられることが大規模試験の結果、示された。米国フロリダ州にあるWatson ClinicのJohn G. Canto氏らが、約54万人を対象とした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月16日号で発表した。これまで地域ベースでの急性心筋梗塞の冠動脈心疾患リスク因子数とアウトカムとの関連について、調査されたことはほとんどなかった。全米心筋梗塞レジストリ54万2,008人について調査 研究グループは、1994~2006年の全米心筋梗塞レジストリから、心筋梗塞を初めて発症し、それ以前に心血管疾患歴のない54万2,008人について調査を行った。 冠動脈心疾患の主要リスク因子である、高血圧、喫煙、脂質異常症、糖尿病、冠動脈心疾患の家族歴の5つと、院内総死亡リスクの関連について分析を行った。 被験者の平均年齢は66.3歳、うち女性は41.4%だった。そのうち、来院時に冠動脈心疾患のリスク因子が全く認められなかったのは14.4%、1~3個のリスク因子があったのは81%、4~5個のリスク因子があったのは4.5%だった。リスク因子0の人は、5つを有する人に比べ院内死亡リスクが1.54倍 リスク因子の数は、年齢が増すほど増加し、リスクがまったく認められなかった群の平均年齢は56.7歳だったのに対し、5つすべてが認められた群の平均年齢は71.5歳だった(傾向に関するp<0.001)。 被験者のうち、院内総死亡数は5万788人だった。補正前の院内死亡率は、同リスク因子が少ないほど高率で、リスク因子総数0群14.9%、同1群10.9%、同2群7.9%、同3群5.3%、同4群4.2%、同5群3.6%だった。 年齢とその他臨床的リスク因子を補正後、主要な冠動脈心疾患リスク因子の数と、院内総死亡率との間には逆相関の関連が認められた。同リスク因子総数0群の、同5群に対する同死亡に関するオッズ比は1.54(95%信頼区間:1.23~1.94)だった。

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米国・カナダの臨床ガイドライン、作成委員の半数超が作成時に利害対立があったと報告

米国とカナダの脂質異常症高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインの作成委員のうち半数超が、いわゆる臨床家と産業界との利害対立が作成時にあったと報告したことが明らかにされた。その一方で、検証したガイドラインのおよそ3分の1は、利害対立に関する情報の開示をしていなかった。さらに、ガイドライン作成に関する出資元が政府の場合には、そうでない場合に比べ、利害対立があったことを報告した委員の割合が少ないことも示された。これは、米国・マウントサイナイ・メディカルスクール予防医学部門のJennifer Neuman氏らが、14の臨床ガイドラインとその作成に携わった委員に対して行った調査の結果で、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年10月11日号)に掲載発表された。利害対立が事実あったと認めた委員は150人・52%、うち12人が未報告同研究グループは、2000~2010年、米国またはカナダで作成された、14の脂質異常症高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインについて調査を行った。このうち5つのガイドラインでは、利害対立に関する情報開示の宣言を行っていなかった。これらのガイドライン作成に携わった委員288人のうち、ガイドライン公表時に利害対立があったことを報告したのは138人(48%)、利害対立はなかった(73人)、または報告する機会がなかったとしたのは合わせて150人(52%)だった。しかし、公式には利害対立はなかったと報告していた73人のうち、実際には利害対立があったとした委員が8人(11%)いた。全体では、利害対立があったと認めた委員は150人(52%)に上り、そのうち12人がその旨を報告していなかった。作成委員会座長の半数が利害対立があったと報告調査対象の14のガイドラインのうち、座長が確認できたのは12ガイドラインだった。そのうち、利害対立があったことを認めたのは6人で、全員その旨を報告していた。また、ガイドライン作成委員会の出資元が政府の場合には、利害対立があったとした委員の割合が92人中15人(16%)と、そうでない場合の196人中135人(69%)に比べ、有意に大幅に低率だった(p<0.001)。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

737.

2型糖尿病治療薬 リオベル(一般名:アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠)

 2011年7月、アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠(商品名:リオベル配合錠LD,同配合錠HD)が2型糖尿病を適応として製造販売承認を取得した。製剤は低用量のLD製剤と高用量のHD製剤の2規格。アログリプチン(商品名:ネシーナ)の含量(25mg)が一定で、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)の含量(15mg、30mg)のみ差がある。糖尿病の2大病態を改善 アログリプチンとピオグリタゾンの組み合わせは、薬理学的作用から糖尿病の2大病態であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性を改善すると期待される。DPP-4阻害薬であるアログリプチンのインスリン分泌促進作用はブドウ糖濃度依存性であり単独投与では低血糖をおこしにくい。またアログリプチンは他のDPP-4阻害薬と比べ、DPP-4に対する選択性が高い1)という特徴をもつ。一方のピオグリタゾンはインスリン抵抗性の改善を介して血糖降下作用を発揮する薬剤であり、インスリン分泌促進作用がないため単独投与での低血糖の危険は少ないといわれる。また大血管障害既往例への心血管イベント発症抑制2)を示したPROactiveに代表される多数のエビデンスを有している。組み合わせにより期待される相乗効果 2剤の併用による血糖改善作用は承認時のデータで示されている。ピオグリタゾン単独療法で効果不十分例に対し、アログリプチン25mgを追加投与したところ、投与12週時点におけるHbA1c変化量は-0.97%3)であった。また血糖降下作用に加え、db/db マウスを用いた膵保護作用の検討では、アログリプチンならびにピオグリタゾン単独投与でも、膵のインスリン含量はプラセボ群よりも有意に増加したが、両剤の併用でさらに相乗的な膵インスリン含量の増加が認められた4)。アドヒアランスの向上は糖尿病治療に好影響を与える 糖尿病患者の多くは高血圧や脂質異常症などの他疾患を合併しているため、服薬錠数が多く服薬タイミングも様々である。リオベル配合錠は、1日1回1錠の服用で済むことから、服薬アドヒアランスの向上に有効である。アドヒアランスの向上は、より良好な血糖コントロールの達成につながるとの報告もあり、糖尿病治療ではアドヒアランスを意識した治療が重要といえる。使用にあたっての注意点 リオベル配合錠は、既に発売されている配合剤のソニアスやメタクト同様、「2型糖尿病の第一選択薬としないこと」と添付文書に記載されており、投与対象は、原則として両剤を併用し常態が安定している患者、もしくはピオグリタゾン単独で効果不十分な患者となる。承認時までの臨床試験では165例中の42例(25.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められており、これらを含め、各単剤で報告のある副作用にも十分な注意が必要である。ピオグリタゾンとアログリプチンでは、これまでに重大な副作用として、心不全の増悪あるいは発症、浮腫、肝機能障害、黄疸、低血糖症状、横紋筋融解症、間質性肺炎、胃潰瘍の再燃が報告されているので、使用に当たってはこれらの副作用にも十分に注意したい。ピオグリタゾンについては、海外の疫学研究5)において、主要解析である全体の解析では膀胱癌の発生リスクの増加はみられないものの、治療期間による層別解析ではピオグリタゾンの長期間の投与によりわずかなリスクの増加という注意喚起もあるため、本剤の有効性と膀胱癌のリスクを事前に説明し、投与後は血尿、頻尿、排尿痛等の症状を経過観察する等、適切に使用することが重要である。まとめ 糖尿病治療では患者さんの病態の多様性に応じて薬剤を使い分けることが多い。そのため、配合剤の選択が一様に普及しづらい一面もある。しかし、服薬錠数が減れば、患者さんにとっての負担が軽減されるのも事実だ。患者さんがインスリン分泌不全とインスリン抵抗性とを併せ持つ病態の場合、今後は、リオベル配合錠が有用な治療選択肢のひとつとなるだろう。

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「Pramlintade/Metreleptin」の肥満症を対象とした臨床第2相試験を自主的中断

武田薬品工業株式会社は17日、Amylin Pharmaceuticals, Inc.(本社:米国カリフォルニア州サンディエゴ)と同社は、肥満症を対象に追加で実施中のPramlintade/Metreleptin(開発コード:AC137-164594)による有効性と安全性を検証する臨床第2相試験を、自主的に中断することを決定したと発表した。今回の中断は、既に終了している肥満症を対象とした別の臨床試験において、Metreleptinによる治療を受けた患者2名に発現が確認された抗体について精査するためのもの。Amylin社は、「我々にとって臨床試験に参加される患者さんの安全性確保が最優先です。そのため、今回新たに認められた所見を精査するために中断することにしました。Amylin社と武田薬品は、治験医師、規制当局、外部の専門家とも緊密に連携し、今後の最適な方針を決定してまいります」と述べている。なお、本決定は、Amylin社が別途実施している脂肪異栄養症の患者を対象とした糖尿病または高脂血症、あるいは両方の治療を目的としたMetreleptinの開発プログラムに影響はないとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.takeda.co.jp/pdf/usr/default/press/0317%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9_41561_1.pdf

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早期乳がんに対する術後エキセメスタン、継続投与と逐次投与のいずれが有効か?

第3世代アロマターゼ阻害薬(AI)エキセメスタン(商品名:アロマシン)の5年継続投与と、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)→エキセメスタン逐次投与は、いずれも早期乳がんの術後補助療法として有用な治療選択肢となる可能性があることが、オランダLeiden大学医療センターのCornelis J H van de Velde氏らが行ったTEAM(Tamoxifen Exemestane Adjuvant Multinational)試験で示唆された。同じく第3世代のAIであるアナストロゾール(同:アリミデックス)およびレトロゾール(同:フェマーラ)は、継続投与、逐次投与ともにタモキシフェン継続投与に比べ無病生存率(DFS)を上昇させるが、全生存率(OS)は改善しないことが示されている。TEAM試験は当初、エキセメスタンとタモキシフェンの単剤の比較試験として開始されたが、もう一つのランドマーク試験であるIES試験の結果(逐次投与群のエストロゲン受容体陽性/不明例でDFS、OSが有意に改善)を受けてプロトコールが変更されたという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。日本の30施設が参加した継続投与と逐次投与の国際的第III相試験TEAM試験の研究グループは、エキセメスタン継続投与とタモキシフェン→エキセメスタン逐次投与の長期的有用性を比較する多施設共同無作為化第III相試験を実施した。9ヵ国566施設(ヨーロッパ357施設、アメリカ179施設、日本30施設)から、閉経後ホルモン受容体陽性早期乳がん女性(年齢中央値64歳、範囲:35~96歳)が登録され、エキセメスタン25mg/日(経口)を5年間投与する群(継続投与群)あるいはタモキシフェン20mg/日(経口)を2.5~3年間投与後エキセメスタン25mg/日に切り替えて合計5年間投与する群(逐次投与群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療5年の時点におけるDFSとし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。DFSは同等、有害事象プロフィールは異なる9,779例が登録され、逐次投与群に4,875例が、継続投与群には4,904例が割り付けられた。このうち、逐次投与群の4,868例および継続投与群の4,898例がITT解析の対象となった。治療5年の時点で逐次投与群の4,154例、継続投与群の4,186例が無病生存しており、DFSはそれぞれ85%(4,154/4,868例)、86%(4,186/4,898例)、ハザード比は0.97(95%信頼区間:0.88~1.08)と両群で同等であった(p=0.60)。婦人科的症状は、逐次投与群が20%(942/4,814例)と、継続投与群の11%(523/4,852例)に比べ高頻度であった。静脈血栓症[2%(99例) vs. 1%(47例)、p<0.0001]や子宮内膜の異常[4%(191例) vs. 1%(19例)、p<0.0001]も、逐次投与群で多くみられた。継続投与群で多い有害事象としては、筋骨格系障害[44%(2,133/4,814例) vs. 50%(2,448/4,852例)]、高血圧[5%(219例) vs. 6%(303例)、p=0.0003]、脂質異常症[3%(136例) vs. 5%(230例)、p<0.0001]などが認められた。これらの知見に基づき、著者は「エキセメスタン単独の5年継続投与およびタモキシフェン2.5~3年→エキセメスタン2~2.5年の逐次投与は、いずれも閉経後ホルモン受容体陽性早期乳がんに対する適切な治療選択肢となる可能性がある」と結論し、「ニつの治療アプローチは有害事象プロフィールが異なるため、治療法を決める際はこの点を十分に考慮することが重要であろう。今後、TEAM試験と他のアロマターゼ阻害薬の臨床試験の成果に関するトランスレーショナル・リサーチにより、特定の治療戦略のベネフィットが最も大きい患者を同定することが可能になるだろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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動脈硬化は心臓・頭以外にも起きるが、認知度は低い

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、同社が行った「動脈硬化に関する意識」調査結果を発表した。この調査は2010年12月上旬、国内に居住する40~70歳代の男女800名に対してインターネット上で行われたもの。動脈硬化の危険因子有無について聞いたところ、「高血圧」が30.4%と最も多く、続いて「肥満」(24.1%)「脂質異常症」(18.1%)「喫煙習慣がある」(15.6%)「糖尿病」(11.8%)「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした」(5.4%)の順となり、一つでも持っている人は64.5%にのぼった。この結果は、3人に2人が動脈硬化の危険因子を持っているということを示している。性別年代別で見た場合には、60代以上の男性においては8割が動脈硬化の危険因子を持っていることもわかった。動脈硬化が起きる部位として知っているものについて聞いたところ、「心臓」(86.9%)「頭」(77.6%)という回答が多かったのに対し、「足」(32.1%)「首」(29.8%)「腹部」(17.1%)「腎臓」(8.9%)は昨年の調査結果同様、わずか約3割程度にとどまった。また、動脈硬化が起きる部位によっては5年後の生存率ががんより低いことを知っていると回答した人は15.1%で、動脈硬化の危険因子を持つ人においても、認知度はわずか16.7%であった。同社は、「全身に起きる動脈硬化は、部位によっては症状が出にくい場合もあり、発見や遅れによりQOL(Quality Of Life)の低下や生命予後を悪化させるケースがあります」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2010/1227/index.html

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