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本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか

 非定型抗精神病薬に伴う代謝異常は、薬剤の種類により異なるといわれている。非定型抗精神病薬と心血管疾患のリスク因子との関連を踏まえ、米国糖尿病学会(ADA)および米国精神医学会(APA)は、非定型抗精神病薬の中でもアリピプラゾールとジプラシドン(国内未承認)は代謝異常を生じにくいとのコンセンサスステートメントを発表した。今回、米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、実臨床下におけるアリピプラゾールと他の非定型抗精神病薬の代謝関連有害事象リスクに関する検討を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2014年3月26日号の掲載報告。 本検討において研究グループは、非定型抗精神病薬アリピプラゾールの治療を受けている成人患者の体重増加、脂質異常、血糖異常、糖尿病のリスクを検討した実臨床での研究(観察/自然的研究、オープンラベル研究など)を評価した。2000年1月1日~2011年10月4日までに報告された文献を対象とし、タイトルまたは抄録に「アリピプラゾール」「非定型」「糖」「インスリン」「コレステロール」「トリグリセリド」「糖尿病」「HbA1c」「体重」「BMI」「高脂血症」などの用語が含まれている論文をPubMedで検索した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールと関連する代謝への影響を評価した22件のピアレビュー論文が抽出された。それら論文は、被験者15例の小規模観察研究から170万例を超える大規模データベースにわたった。・アリピプラゾールによる治療を受けた成人患者の体重増加、脂質異常、血糖異常および糖尿病発症リスクを評価した観察または自然的研究は13件、オープンラベル試験は9件あった。・アリピプラゾールは、その他の非定型抗精神病薬と比較して、体重増加および脂質異常に及ぼす影響が同等またはそれ以下であり、その程度は試験デザインに依存しているようであった。・さらに、アリピプラゾールはその他の非定型抗精神病薬の大半に比べ、糖尿病のリスクが少なかった。・無作為化比較試験のデータと、本レビューの所見は一致しており、アリピプラゾールは汎用されているその他の非定型抗精神病薬よりも、成人における代謝関連有害事象のリスクが少ない可能性が示唆された。所見は、ADA/APAのコンセンサスステートメントとも一致するものであった。 関連医療ニュース オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 最初の1年がピーク、抗精神病薬による体重増加と代謝異常

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スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA

 臨床ガイドラインによって、スタチン投与の対象となる人は大きく異なることが判明した。2013年に発表された新たな米国心臓病学会と米国心臓協会(ACC/AHA)ガイドラインを順守した場合には、55歳以上男性コホートの約96%に相当する一方で、従来の米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III:ATP III)に則した場合は、スタチン投与の対象者は男性の52%に留まるという。オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らが、約5,000例のコホート試験を基に分析して明らかにした。JAMA誌2014年4月9日号掲載の報告より。「Rotterdam Study」の被験者4,854例を対象に各臨床ガイドラインを適用 研究グループは、オランダのロッテルダム在住の55歳以上に行った住民ベースの前向きコホート試験「Rotterdam Study」の被験者4,854例を対象に、各臨床ガイドラインを適用した場合のスタチン投与対象者を割り出すなどの検討を行った。被験者の平均年齢は、65.5歳(SD 5.2)だった。 結果、同集団に対してACC/AHAガイドラインを順守した場合、スタチン投与の対象となったのは男性の96.4%(1,825例)と女性の65.8%(1,523例)だった。 一方、ATP IIIガイドラインを適用した場合、男性52.0%(985例)、女性35.5%(821例)に、欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは、66.1%(1,253例)、39.1%(906例)と、いずれもACC/AHAガイドラインとの間に大きな格差があった。3種ガイドラインのリスクモデル、イベント発生を過剰予測 また、ACC/AHAリスクモデルでは、男性の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベント発生率の予測値は21.5%だったのに対し、実際の累積ASCVDイベント発生率は12.7%、女性ではそれぞれ11.6%と7.9%と、予測値が実測値を上回っていた。ATP IIIモデル、ESCモデルでも、冠動脈性心疾患(CHD)やアテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)死亡イベントについて、同様の過大予測が認められた。 ACC/AHAリスクモデルのASCVDに関するC統計量は、男性が0.67、女性が0.68だった。ATP IIIモデルのCHDに関するC統計量は、それぞれ0.67と0.69、ESCモデルのCVD死亡に関するC統計量は、それぞれ0.76と0.77と、いずれも改善の余地があったという。

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米成人の半数がスタチン治療を受ける時代に?/NEJM

 米国心臓病学会および米国心臓協会(ACC/AHA)は昨年11月、関連するガイドラインを改訂したが、デューク大学臨床研究所のMichael J. Pencina氏らは、その影響について調べた。結果、スタチン治療が適格となる患者が1,280万人増大し、米国成人(40~75歳)の約半数(48.6%)5,600万人がスタチン治療対象者となることが推算されたという。増大者のうち大半は心血管疾患を有さない高齢者であった。NEJM誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。ACC/AHA新ガイドラインの影響を調査 新ガイドラインでは、心血管疾患既往成人についてはコレステロール値を問わず治療を推奨することが示されている。また、一次予防については、LDL値190mg/dL以上の患者についてスタチン治療を推奨することに加えて、70mg/dL以上で糖尿病または心血管疾患10年リスク7.5%以上のすべての成人にスタチン治療を推奨することが盛り込まれた。 Pencina氏らは、全米健康・栄養調査(NHANES)のデータを用いて、脂質異常症治療のサポートガイドラインとして推奨されてきたthe Third Adult Treatment Panel(ATP III)との比較で、新ガイドラインをベースとした場合の、スタチン治療推奨が適格となる米国成人数を推算することを試みた。 具体的には、2005~2010年のNHANESデータと、40~75歳の米国成人1億1,540万人を推定のベースに用いて調べた。スタチン治療適格者、以前より1,280万人増加し米成人の48.6%と推算 結果、スタチン治療適格となる米国成人は、ATP IIIガイドラインでは4,320万人(37.5%)であったが、新ガイドラインでは5,600万人(48.6%)に増大することが示唆された。増大者1,280万人のうち大半(1,040万人)は、心血管疾患を有さない成人だった。 また、心血管疾患を有さずスタチン治療を受けていない60~75歳の高齢者において、スタチン治療適格となる割合は、男性についてはATP IIIでの30.4%から新ガイドラインでは87.4%に、女性については21.2%から53.6%にそれぞれ増加することが示唆された。これらの増大をもたらす要因は、主として治療推奨の層別化要因としての「心血管イベント10年リスク」が単独で盛り込まれたことによるものであった。 新たなスタチン治療適格者は、女性よりも男性が多く、血圧が高めだがLDL値が顕著に低いという特徴が浮かび上がった。 ATP IIIガイドラインと比較して、新ガイドラインは、より高齢で、将来心血管イベントを有する可能性が高いが(感度が高い人)、同時に将来心血管イベントが起きる可能性が低い(特異度が低い)人も多数含まれることが示唆された。

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グルコキナーゼ遺伝子異常症(MODY2)を参考にした血糖コントロールレベルの検討(コメンテーター:景山 茂 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(177)より-

グルコキナーゼはヘキソキナーゼのアイソフォームの1つで、膵β細胞および肝細胞に存在する。ヘキソキナーゼのKmは0.1mmol/Lで、生理的条件下では最大速度で反応するのに対して、グルコキナーゼのKmは5.5mmol/L(99mg/dL)で、生理的な血糖の範囲でブドウ糖のリン酸化が調節されうる。また、グルコキナーゼにより産生されるG-6-Pの抑制を受けないことから、グルコキナーゼは膵β細胞においてグルコースセンサーの役割を果たしていると考えられる。 糖尿病には1型と2型以外に特殊な形として若年発症成人型糖尿病(maturity-onset diabetes of the young, MODY)が存在するが、この1つが、グルコキナーゼ遺伝子異常により生じるMODY2である。この疾患は生後1週間以内に高血糖を生じるとされているが、空腹時血糖は108~144mg/dL程度と軽度であり、生涯を通じて薬物治療を必要とすることは稀有である。MODY2では、インスリン抵抗性はなく、空腹時の脂質は正常、食後高血糖の程度も軽度という、2型糖尿病との相違が認められる。 細小血管障害は血糖コントロールとの関連が密接であり、グルコキナーゼ遺伝子異常症例は目標とすべき血糖コントロールレベルの参考になると思われる。一方、大血管障害の成因には高血圧、脂質異常症等々の因子が関与し、グルコキナーゼ遺伝子異常症例のインスリン抵抗性、血清脂質のプロファイルは2型糖尿病とは異なるので、得られた成績の解釈には注意が必要と思われる。

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糖尿病患者のトータルケアを考える

 2014年2月19日(水)都内にて、糖尿病患者の意識と行動についての調査「T-CARE Survey」を題材にセミナーが開かれた(塩野義製薬株式会社 開催)。演者である横浜市立大学の寺内 康夫氏(分子内分泌・糖尿病内科学 教授)は、患者が治療に前向きに取り組むためには「治療効果の認識」「症状の理解」が重要と述べ、患者の認知・理解度に応じて個々に合ったアプローチをすべき、と述べた。 T-CAREとは 「塩野義製薬が考える“糖尿病患者さまのトータルケア”」を意味する名称とのこと。以下、セミナーの内容を記載する。【糖尿病患者の3割が治療ストレスを感じている】 『糖尿病患者の約30%が治療を続けることにストレスを感じている』これは、糖尿病患者の意識と行動を把握するためのインターネット調査「T-CARE Survey」の結果である。「T-CARE Survey」は全国の20代~60代の男女を対象に2013年10月に実施されたインターネット調査で、一般回答者2万254名、糖尿病患者3,437名の回答が得られている。その結果、糖尿病患者は高血圧や脂質異常症と比較してストレスを感じやすく、そのストレス度合いは、喘息やアレルギーなどの自覚症状がある疾患と同程度であることが明らかになった。糖尿病は症状が少ないにもかかわらず、患者さんはストレスや不安を感じやすいことから、リスクケアのみならず、生活環境や心理的不安も見据えたトータルケアが必要と考えられる。【心配事・不満の上位は、『合併症の不安』】 糖尿病患者は何に不安を感じているのだろうか。患者さんの心配事や不満の上位は「透析になるのが怖い」「失明するのが怖い」といった「合併症の不安」であった。また約1割が「足のしびれや痛みが我慢できない」と感じていることも明らかにされた。寺内氏は、この結果を基に「患者さんに医療機関との接点を持ち続けてもらう、つまり続けて通ってもらうことが不安解消にも重要」と述べた。【治療継続には『病状理解』と『治療効果の認識』】 では、患者さんに治療を続けてもらうにはどうすべきか。今回の調査では「糖尿病患者の治療モチベーションに関する検証」も行われた。糖尿病の知識、治療への評価、周囲との関係性といったいくつかの項目を仮説として設定し、重回帰分析等を用いて検証を行った結果、「自分の病状の理解」「治療効果の認識・理解」の2項目が治療モチベーション向上に寄与していることが明らかになった。医師やスタッフの説明を通じて患者さんに病状を理解してもらい、効果を認識させることが治療にも有用なようだ。【メディカルスタッフへの相談も有用】 患者さんが糖尿病疾患について相談する相手をみると、医師が83%、配偶者・パートナーが52.8%であった。一方、看護師・薬剤師・管理栄養士といったメディカルスタッフへの相談はいずれも30%未満であり、まだまだ少ないといえる。しかし、メディカルスタッフに相談している患者は相談していない患者に比べ、前向きに治療に取り組む割合が高いこともわかっており、チームサポートの重要性がうかがえる。【糖尿病療養指導士を要としたコミュニティサポート推進が望まれる】 患者さんの家庭環境はどうだろうか。「家族が治療やケアに協力してくれる」という回答は56.4%であった。家族ケア有りの場合、前向きに治療に取り組む割合は高く、医療従事者側も家族によるサポートを促すことができる。しかし、一人暮らしの高齢世帯の増加を鑑みると、今後は家族のみならず、地域のコミュニティによるサポートが推進されていくことを期待したい。自身が日本糖尿病療養指導士認定機構の役員を務める寺内氏は、今後、介護施設や在宅医療スタッフの中に糖尿病療養指導士の資格を持つ方が増え、地域のコミュニティサポートが推進されていくことを期待したい、と述べた。【編集後記】 講演の最後に寺内氏は、「トータルケアの実践には患者をタイプ分類し、タイプ別のアプローチを工夫することが有用」と述べた。タイプ別アプローチ方法が確立し、治療に不満を抱く方や疾患を放置する患者さんが、治療に前向きに取り組めるようになることを期待したい。

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双極性障害、男女間で肥満割合に違いあり

 カナダ・クイーンズ大学のAnusha Baskaran氏らは、双極性障害(BD)における肥満の性差とその背景因子について、論文レビューを行った。その結果、BD女性は、BD男性および一般集団の男女と比較して、腹部肥満の割合が高いことを報告した。性別に基づく多彩な要因が、BD女性の肥満を促進していたことも判明した。Bipolar Disorders誌2014年2月号の掲載報告。 双極性障害(BD)の女性は、BDの男性および一般集団の男女に比較して心血管疾患(CVD)による標準化死亡比(SMR)が高い。本研究では、このような差異に寄与する要因について検討を行った。1990年9月~2012年6月までに英語で発表された論文について、「双極性障害」「メタボリックシンドローム(性別、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症を参考)」をキーワードとしてPubMedにて検索を行った。リファレンスリスト中の代表的な論文については、手動でレビューを行って補足した。論文の選択は、著者のコンセンサス、標準化された経験的手法の使用、確証されている評価項目の設定および論文全体の質に基づいた。 主な結果は以下のとおり。・成人BDは一般集団と比較して、メタボリックシンドロームの割合が高かった。・BD女性は、BD男性および一般集団の男女と比較して腹部肥満の割合が高かった。・BDの臨床経過と所見に性差が認められ、女性では、うつ優位な病状の頻度が高く、より晩期のBD発症、気分障害の季節性がみられ、再発しやすいことが判明した。・現象的な要因は、BD患者における合併症の性差にまで拡大する可能性があった。・BD女性の腹部肥満のリスクに寄与し得るその他の因子として、生殖に関する出来事、性的・身体的虐待などの経験、ライフスタイル、医原性などが考えられた。・上記を踏まえて著者は、「BD女性の肥満は、性別に基づく多彩な要因により促進されていることが判明した。一方で、BD女性の腹部肥満の増加が、CVDによるSMRの増加に関与するか否かは、引き続き検討すべき課題である」と結論したうえで、「本レビューから得られた臨床的推奨は、BD女性の肥満増加に関わる因子の現病歴や既往歴に主眼を置くということである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 双極性障害患者の長期健康状態の独立予測因子は肥満 うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は

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造血細胞移植後の重大な心血管疾患リスクを減らすには?

 造血細胞移植後の心血管疾患リスクに対する生活習慣の影響について、米国フレッドハッチンソンがん研究センターのEric J. Chow氏らが検討した。その結果、医師が心血管リスク因子と生活習慣に注意を払うことにより、造血細胞移植後の重大な心血管疾患の罹患率を減少させる可能性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2013年12月2日号に掲載。 著者らは、1970年~2010年に1年以上治療を受けた造血細胞移植後の生存者(n=3,833)について、2010年~2011年に、心血管の状態およびそれに関連する生活習慣因子(喫煙、食事、レクリエーション的な身体活動)を調査した。データが得られた生存者(n=2,362)を、マッチングさせた一般集団サンプル(国民健康栄養調査:n=1,192)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・造血細胞移植後生存者(年齢中央値:55.9歳、移植後期間中央値:10.8年、同種移植の割合:71.3%)は、国民健康栄養調査参加者と比べ、心筋症(4.0% vs 2.6%)、脳卒中(4.8% vs 3.3%)、脂質異常症(33.9% vs 22.3%)、糖尿病(14.3% vs 11.7%)で高い割合を示した(すべてp<0.05)。高血圧の有病率は同等(27.9% vs 30.0%)であり、虚血性心疾患は造血細胞移植生存者のほうが低かった(6.1% vs 8.9%、p<0.01)。・造血細胞移植後生存者において、高血圧、脂質異常症および糖尿病は、虚血性心疾患や心筋症における独立した危険因子であり、喫煙は、虚血性心疾患と糖尿病と関連していた(オッズ比[OR]:1.8~2.1、p=0.02)。肥満は、移植後高血圧、脂質異常症および糖尿病の危険因子であった(OR:≧2.0、p<0.001)。一方、果物や野菜の低摂取は、脂質異常症および糖尿病の高リスクに関連し(OR:1.4~1.8、p≦0.01)、低レベルの身体活動は、高血圧や糖尿病の高リスクに関連していた(OR:1.4~1.5、p<0.05)。・造血細胞移植後生存者において、健康的な生活習慣は、調査したすべての心血管関連リスクを減弱させた。

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抗精神病薬治療は予後にどのような影響を及ぼすのか

 抗精神病薬治療中の患者では、いくつかの心血管リスク因子(糖尿病、肥満、喫煙、脂質異常症)を有する割合が高く、脳卒中の有病率が有意に高いことなどが明らかにされた。これには、服用する抗精神病薬が定型あるいは非定型かによる違いはみられなかったという。スペイン・Institut Catala de la SalutのX Mundet-Tuduri氏らがバルセロナで行った断面調査の結果、報告した。Revista de Neurologia誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、プライマリ・ケアでの長期の抗精神病薬治療における心血管リスク因子(CVRF)および血管イベントについて明らかにするため断面調査を行い、抗精神病薬の治療を受けている患者と受けていない患者とを比較した。対象は、2008~2010年にバルセロナのプライマリ・ヘルスケアセンターを受診した患者。身体測定、臨床検査値、CVRFを評価し、また被験者を成人/ 高齢者、服用している抗精神病薬(定型/ 非定型)でそれぞれ層別化し評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、抗精神病薬を処方されていた1万4,087例(治療群)と、受けていなかった1万3,724例(処方を受けていた患者と同一の年齢・性別:非治療群)の合計2万7,811例であった。・治療群の患者のうち、非定型薬を処方されていたのは63.4%であり、リスペリドンの処方が最も多かった。・治療群は、肥満(16.9% vs. 11.9%)、喫煙(22.2% vs. 11.1%)、糖尿病(16% vs. 11.9%)、脂質異常症(32.8% vs. 25.8%)の有病率が非治療群よりも有意に高かった(p<0.001)。・また、治療群では脳卒中の有病率が、成人患者群(オッズ比[OR]:2.33)、高齢者群(同:1.64)のいずれにおいても、非治療群より有意に高かった。冠動脈性心疾患(CHD)の有病率は、両群で同程度であった(OR:0.97)。・治療群の患者において、抗精神病薬の定型または非定型の違いによる差はみられなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

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HbA1cの改善に加え患者QOLも向上―DPP-4阻害薬へのグラルギンの併用エビデンス(ALOHA2)

サノフィ株式会社池田勧夫氏近年DPP-4阻害薬は日本で急速に普及してきたが、DPP-4 阻害薬を含む経口血糖降下薬(OHA)を服用しても良好な血糖コントロールが得られない場合がある。そこで、池田氏らは、DPP-4 阻害薬を含むOHAで血糖コントロールが目標に達していない日本人の2 型糖尿病患者を対象にインスリン グラルギン(以下、グラルギン)を追加し、24週間観察した前向き研究(ALOHA 2)を行った。その結果が国際糖尿病連合の世界糖尿病会議(12月2~6日、メルボルン)で発表され、グラルギンの追加でHbA1cが大きく低下するだけでなく、治療満足度が有意に改善することが明らかとなった。OHA2剤でグラルギンを始めるケースが最も多い本研究の対象となったのは、これまでOHAによる治療を受け、グラルギンを開始する4 週間前のHbA1c が6.5%以上だった20歳以上の2,602例。これまでインスリンによる治療を受けたことがなく、経口薬への追加でグラルギンを開始し、24週まで継続した症例をBOT 群とした。BOT 群は1,629 例。観察期間は24 週間。BOT群のベースラインの患者背景は年齢が61.8 歳、HbA1cは9.58%、FPGは2 0 4.6 mg/dL、2 時間P PGは272.8mg/dL。糖尿病罹患期間は10年未満が3 4.7%、10~15年が19.5%、15年以上が23.9%、併存疾患は糖尿病性神経障害が22.5%、糖尿病性網膜症が14.6%、糖尿病性神経障害が14.9 %、高血圧が47.8%、脂質異常症が51.9% など。またベースラインで使用されていたOHAの数は、1 種類が29.3%、2 種類が34.8%、3 種類が26.9%、4種類が9.1%であり、観察期間中に高頻度に併用されたOH Aはスルホニル尿素薬が71.5%、DPP-4 阻害薬が60.7%、ビグアナイド薬が4 8.6 %などであった(表1)。画像を拡大するHbA1cはベースラインから1.6%低下、空腹時血糖値だけでなく食後血糖値も大きく改善基礎インスリンとDPP-4 阻害薬の併用療法は、2 型糖尿病患者の空腹時血糖値(FPG)と食後血糖値(PPG)の両方を管理し、良好な血糖コントロールが得られる治療法として注目されているが、本研究ではグラルギンの追加によりHbA1cがベースラインから最終評価時までで1.61%有意に低下していた(p

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慢性腎臓病における2つのエンドポイントを予防するために

 わが国の慢性腎臓病(CKD)患者数は2005年に1,330万人に達し、成人の8人に1人がCKDといわれている。CKDは、腎機能が悪化すると透析が必要な末期腎不全に進行するだけではなく、心血管疾患の発症リスクが高まる。そのリスク因子であるリンの管理について、2013年11月19日に都内にてプレスセミナーが開催された(主催・バイエル薬品株式会社)。そのなかで、東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座 特任准教授の花房 規男氏は、CKDという概念が提唱された経緯やCKD治療の目的、リンコントロールを介したCKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)対策について講演した。CKDの概念とは CKDには糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などさまざまな疾患があるが、どの疾患においても、腎機能の低下は最終的に共通の経路をとる。そのため、CKDとして共通の対策がとられることになる。また、CKDは末期腎不全や心血管合併症という予後に関連する疾患である。CKDの治療目的はこれら2つのエンドポイントの予防であり、早期の対策が望まれる。 CKDは「わかりやすく」をモットーに提唱された概念であり、大きく分けて3つの条件(尿所見をはじめとする腎疾患に関連する異常、eGFR 60mL/min/1.73m2未満、3ヵ月以上継続)を満たす場合に診断される。従来明らかになっていなかった数多くのCKD患者が存在するため、花房氏は「診療は腎臓専門医だけでは難しく、かかりつけ医による診療が重要」と訴えた。CKD対策には生活習慣関連が多い CKDに対する治療介入のなかには、「生活習慣の改善」「食事指導」「高血圧治療」「糖尿病の治療」「脂質異常症の治療」「骨・ミネラル代謝異常に対する治療」「高尿酸血症に対する治療」といった生活習慣に関連する項目が多い。 近年、生活習慣に起因する腎疾患が増加しており、透析患者の原疾患も糖尿病性腎症が増加している。また、BMIが高い患者は末期腎不全に移行しやすいなど、生活習慣とCKDは深く関わっている。そのため、「生活習慣を最初の段階で改善することがポイントである」と花房氏は指摘した。CKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新たな概念が提唱される 骨・ミネラルについても腎臓と深く関連している。CKDで生じるミネラル代謝異常は、骨や副甲状腺の異常のみならず、血管の石灰化を介して、生命予後に大きな影響を与えることが認識され、CKD-Mineral and Bone Disorder(CKD-MBD:CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新しい概念が提唱されている。リンの高値が血管の石灰化をもたらし心血管合併症の原因となるため、CKD-MBD対策として、リンをコントロールし、生命予後の改善および末期腎不全への進行を予防することが重要である。リンをコントロールするには CKD患者のリンをコントロールするには、食事中のリンを減らしたり、リン吸着薬で腸からの吸収を減らすことにより、体の中に入ってくるリンを減らすことが重要である。リンはタンパク質を多く含む食物に多いため、タンパク質を制限すればリンも制限されるはずである。しかし、実際には食事制限だけでは十分ではなく、また食事量低下による低栄養のリスクもあるため、必要に応じてリン吸着薬を使用することが有効である。リン吸着薬には、カルシウム含有リン吸着薬(炭酸カルシウム)とカルシウム非含有吸着薬(炭酸ランタン、セベラマー、ビキサロマー)がある。このうち、炭酸カルシウムが以前より使用されているが、花房氏は「持続的なカルシウム負荷は異所性石灰化を生じ、心血管合併症が発症する可能性がある」と指摘し、「保存期の長い過程においては、カルシウム非含有吸着薬が有効なのかもしれない」と述べた。

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わが国のHIVの現状 ~抗HIV療法関連の骨粗鬆症、腎機能障害、代謝性疾患が問題に~

約30年前は死に至る病と言われていたHIV感染症。現在は、定期的な受診と適切な服薬継続により長期にわたり日常生活を続けることが可能になり、慢性疾患と考えられるようになりつつある。しかしながら、日本では感染者が増加傾向にあり、新たに抗HIV療法に関連した代謝性疾患などが問題となっている。このたび、途上国のエイズ対策を支援する『世界エイズ・結核・マラリア対策基金』の支持を決定する技術審査委員の1人である、しらかば診療所 院長の井戸田 一朗氏が、ヤンセンファーマHIV/AIDSメディアセミナー(2013年10月29日開催)でHIVの現状や課題を紹介した。性感染症にかかるとHIVにかかりやすい井戸田氏のクリニックは、セクシャル・マイノリティ(同性愛者、バイセクシャル、トランスジェンダーなど)を主な対象として2007年に東京都新宿区に開院した。現在、同クリニックには約400人のHIV陽性者が定期的に通院しているという。井戸田氏が性感染症にかかった男性にHIV検査を勧めて検査した結果(自分で希望した人は除外)、淋菌感染症患者では20%、梅毒患者では13%、尖圭コンジローマ患者では26%がHIV陽性であった。井戸田氏は、「性感染症、とくに淋菌感染症、梅毒、尖圭コンジローマにかかった人は、HIV感染症も検査することが大切」と強調した。男性間の性的接触による感染が増加わが国の性感染症の報告数は全体的に減少傾向にあるが、新規HIV感染者とAIDS患者数は年々増加している。その内訳をみると、異性間性的接触による感染はほとんど変化がないのに比べて、男性間性的接触による感染の増加は著しく、2011年では全体の64%を占めていた。人口当たりのHIV陽性累積数は、都道府県別では、東京、大阪、茨城、長野、山梨の順で多く、HIV感染者とAIDS患者の6割が関東に集中している。男性間性的接触をする男性(MSM:men who have sex with men)の割合については、2005年度国勢調査における対象地域(関東、東海、近畿、九州)の男性では、性交渉の相手が同性のみ、もしくは両性である割合が2.0%(95%CI:1.32~2.66%)と報告されている。井戸田氏は、MSMにおけるHIVや性感染症の流行の背景として、解剖学的差異、性交渉の様式、ハッテン場・インターネットでの出会い、薬物(アルコール含む)、心理的要因を挙げた。HIV陽性者の予後と今後の課題HIV陽性者の予後は、抗HIV療法の登場により、20歳時の平均余命が36.1歳(1996~1999年)から49.4歳(2003~2005年)に延長した。また、抗HIV療法の登場により、カポジ肉腫や非ホジキンリンパ腫などのエイズ関連悪性腫瘍が減少する一方で、非エイズ関連悪性腫瘍(肛門がん、ホジキンリンパ腫、肝がん、皮膚がん、肺がん、頭頸部がん)が増加してきている。HIV陽性者においては脳心血管イベントの発生率が上昇する。禁煙によりそのリスクを下げることができるが、井戸田氏によると、同院を訪れるHIV陽性MSMでは喫煙者が多く52%に喫煙歴があったという。また、最近、抗HIV療法に関連した骨粗鬆症、腎機能障害、代謝性疾患(脂質異常症、糖尿病)が問題となっている。井戸田氏は、HIVに直接関係のないこれらの疾患について、「それぞれの分野の先生に診てもらえるとHIV陽性者や拠点病院にとって大きな支えになる」と各領域の医師からの協力を期待した。(ケアネット 金沢 浩子)

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中等度~重度乾癬患者はCKDに注意/BMJ

 米・ペンシルベニア大学のJoy Wan氏らは、英国でコホート内断面研究を行い、乾癬患者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクについて調査した。その結果、乾癬の重症度が高いほど、CKD発症リスクが増加することが示された。 これまでの研究で乾癬は、糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患の発症と関連することが報告されていたが、腎臓疾患の発症との関連については検討が十分ではなかった。BMJ誌2013年10月15日掲載報告。 著者らは、英国の電子カルテデータベースを用いて、人口ベースのコホート研究を行った。被験者は18~90歳の乾癬患者14万3,883例で、そのうち軽度は13万6,529例、重度は7,354例であった。対照群は、乾癬罹患の記録がなく、年齢、治療、来院時期で適合させた68万9,702例であった。メインアウトカムは、中等度から高度(ステージ3~5)のCKD発症であった。 その後、コホート内断面研究であるiHOPE試験(Incident Health Outcomes and Psoriasis Events study)を実施した。被験者は25~64歳の乾癬患者8,731例で重症度別に登録され、対照群は乾癬罹患の記録がなく、年齢と治療で適合させた8万7,310例であった。メインアウトカムは、ベースラインでのCKDの有病率であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究において、性別、年齢、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、NSAIDsの使用、BMIで補正後、重度乾癬群ではCKD発症リスクが高かった(全患者のハザード比[HR] :1.05、95%信頼区間[CI] :1.02~1.07、軽度乾癬群のHR:0.99、95%CI:0.97~1.02、重度乾癬群のHR:1.93、95%CI:1.79~2.08)。・重度乾癬群を年齢別にみたところ、若年であるほどCKD発症リスクが増加していた(30歳のHR:3.82、95%CI:3.15~4.64、60歳のHR:2.00、95%CI:1.86~2.17)。・iHOPE試験において、性別、年齢、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、NSAIDsの使用、BMI、観察期間で補正後、CKDの発症リスクは乾癬の重症度が高いほど増加していた(軽度乾癬群のオッズ比[OR]:0.89、95%CI:0.72~1.10、中等度乾癬群のOR:1.36、95%CI:1.06~1.74、重度乾癬群のOR:1.58、95%CI:1.07~2.34)。

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最初の1年がピーク、抗精神病薬による体重増加と代謝異常

 抗精神薬に関連する代謝系の長期副作用に関するデータは不足している。英国・King's College LondonのRocio Perez-Iglesias氏らは、初回エピソード精神病患者を対象に、抗精神病薬投与後の体重増加および代謝異常の出現状況について検討した。その結果、最初の1年間に著しい体重増加が認められ、代謝に関しては総コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセリドなどの脂質異常を認めたことを報告した。結果を踏まえて著者は、「抗精神病薬投与後、最初の1年間は体重増加と代謝パラメータの変動に注意を要することが示唆された」と述べ、また「体重増加の経過を明らかにすることは、抗精神病薬に関連する代謝系有害事象の防止または軽減を目的とした研究における有用な情報となるであろう」とまとめている。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2013年10月8日号の掲載報告。 研究グループは、治療歴のない初回エピソード精神病患者を対象とした前向き長期試験は、抗精神病薬投与前の状況を把握でき、かつ交絡因子の影響が少ないという点で貴重な情報といえる、として本検討を行った。試験は、抗精神病薬投与開始後3年間における体重増加の経過および代謝異常の出現頻度を評価することを目的とした。初回エピソード精神病患者170例のコホートを、ハロペリドール群(32%)、オランザピン群(32%)、リスペリドン群(36%)に無作為化し、可変用量を投与した。初期治療は、臨床効果と忍容性を考慮し、必要に応じて変更された。 主な結果は以下のとおり。・3年時点における平均体重増加は12.1kg(SD:10.7)であった。・最初の1年間における体重増加が著しく(平均総体重増加量の85%)、その後は次第に安定した。・総コレステロール、LDL-コレステロールおよびトリグリセリド値は同様の推移を示し、最初の1年間においてのみ有意な増加がみられた。・血糖パラメータの有意な変化は認められなかった。・糖尿病の家族歴を有する2例で、2型糖尿病の発症がみられた。・短期評価において、体重増加と関連する因子は「BMI低値」「男性」「オランザピン投与」であった。・長期評価において、「機能的状態」と「臨床効果」が主要な予測因子であることが示された。関連医療ニュース 抗精神病薬性の糖尿病、その機序とは 若年発症統合失調症への第二世代抗精神病薬治療で留意すべき点 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か

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心血管疾患治療のための用量固定配合剤(FDC)投与は治療改善につながるや否や?(コメンテーター:島田 俊夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(139)より-

 本臨床試験で使用された用量固定配合剤(FDC):(アスピリン+スタチン+2種類の降圧剤2剤の組み合わせ)を用いることにより、いかなる利益と問題点が生じたかを読み取ってみたい。 UMPIRE試験はヨーロッパの3国(イギリス、アイルランド、オランダ)と、インドを対象地域とした無作為化オープンラベル盲検エンドポイント試験である。心血管疾患の既往、または5年以内に15%以上の心血管リスクを持つ受診者を対象とした。参加者を無作為に2群に割り付け、FDC群と通常治療群に群別した。FDC群は通常治療群と比較してアドヒアランス(治療遵守)の有意な改善と収縮期血圧・LDLコレステロールのわずかな低下を認めた(統計上有意)。さらに、ベースラインでのアドヒアランスが低いほどメリットが大きいことも判明した。死亡や入院頻度に差を認めなかったのは、追跡期間が短いことが影響していると推測する。 今回の検討から確実に言えることは、既存もしくは疑わしい心血管疾患患者にFDCを投与することは、アドヒアランスを改善するのに有効である。しかし、リスク因子(血圧・LDLコレステロール)に関してはその効果の差は認めるがわずかであり、死亡・入院頻度に関して差を認めなかった点は本試験の弱点となっている。通常治療群で効果が低かった理由は、おそらくアドヒアランスの不良に起因するところが大きい。FDC治療は用量固定配合剤を用いて治療を行うため、薬物選択上妥協を強いられるので、必ずしも参加者個人にとってベストの治療ではない。このようなことが相殺し合い、治療効果の差を僅かなものにした可能性を考える。 しかしながら、本試験からアドヒアランスの悪い患者への投与は治療効果を改善するので、アドヒアランス不良例ではFDCの使用が推奨される。アドヒアランスの改善が死亡・入院頻度の減少に繋がることを実証することが何よりも重要であるが、本研究からのみでは結論を得るに至らない。確実な結論を導くためには今後、もう少し長期のフォローアップが必要ではないだろうか。

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LDL-Cを40%低下させた新しいタイプの薬、RNA干渉薬/Lancet

 低分子RNA干渉薬ALN-PCSによる前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)の合成阻害は、LDLコレステロール(LDL-C)を低下させる安全な作用メカニズムである可能性が、米国・Alnylam Pharmaceuticals社のKevin Fitzgerald氏らの検討で示された。研究の詳細はLancet誌オンライン版2013年10月3日号に掲載された。2006年、セリンプロテアーゼであるPCSK9の機能喪失型遺伝子変異によってLDL-Cが低下し、冠動脈心疾患のリスクが著明に低減することが確認された。それ以降、PCSK9を標的とする新たな脂質低下療法の開発が活発に進められ、これまでに抗PCSK9抗体のLDL-C低下効果が確認されているが、RNA干渉に基づくPCSK9合成阻害に関する報告はないという。健常者における安全性を無作為化第I相試験で評価 研究グループは、健常成人におけるALN-PCSの安全性と有効性を評価する単盲検プラセボ対照無作為化第I相用量漸増試験を実施した。 対象は、年齢18~65歳で、血漿LDL-C値の上昇(≧3.00mmol/L)がみられるが脂質低下療法を受けていない健常者とした。被験者は、ALN-PCSを静脈内単回投与(0.015~0.400mg/kg)する群またはプラセボ群に3対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は安全性および忍容性とし、副次評価項目はALN-PCSの薬物動態(PK)特性およびPCSK9、LDL-Cに及ぼす薬力学(PD)作用とした。被験者には治療割り付け情報がマスクされ、per-protocol解析が行われた。PCSK9が約70%、LDL-Cが約40%低下 2011年9月21日~2012年9月11日までに32人が登録され、ALN-PCS群に24人(年齢中央値51.0歳、男性22人)が、プラセボ群には8人(41.5歳、8人)が割り付けられた。ALN-PCS群の用量別の内訳は、0.015mg/kg群3人、0.045mg/kg群3人、0.090mg/kg群3人、0.150mg/kg群3人、0.250mg/kg群6人、0.400mg/kg群6人であった。 治療関連有害事象の発症率はALN-PCS群が79%(19人)、プラセボ群は88%(7人)と両群で同等であった。ALN-PCSは血漿中に迅速に分布し、注入終了時あるいは終了後まもなくピーク濃度に達した。また、ほぼ用量に比例してピーク濃度および曲線下面積(AUC)が上昇した。 最大用量の0.400mg/kg群では、投与後3日目の空腹時血漿PCSK9のベースラインからの平均変化率が、プラセボ群に比べ69.7%低下した(p<0.0001)。また、0.400mg/kg群では、空腹時血清LDL-Cのベースラインからの平均変化率が、プラセボ群に比べ40.1%低下した(p<0.0001)。 著者は、「LDL-Cが上昇している健常者において、RNA干渉によるPCSK9合成の阻害は、LDL-Cを低下させる安全な作用メカニズムであることが示唆される」とまとめ、「スタチン治療中の患者を含む高コレステロール血症患者において、ALN-PCSのさらなる評価を進めることを支持する知見が得られた。また、RNA干渉薬が、臨床的な妥当性が確認されているエンドポイント(すなわちLDL-C値)に影響を及ぼすことが、ヒトで初めて示された」と指摘している。

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2型糖尿病のCVD予測に、6つのマーカーが有用

2型糖尿病における心血管疾患(CVD)予測因子として、NT-ProBNPを含む6つのバイオマーカーが有用であることが示唆された。関連のあったバイオマーカーは、NT-ProBNP、アポCIII(ApoCIII)、可溶性-RAGE(sRAGE)、高感度トロポニンT、IL-6およびIL-15の6つであった。演者のHelen C. Looker氏は、今回の結果についてIL-15が予測因子となることは新たな発見であり、ApoCIIIとsRAGEにおけるCVD発症との逆相関の関連についても、さらなる研究が必要であると語った。これまでに、2型糖尿病におけるCVD予測因子に有用とされるバイオマーカーは複数報告されている。そこで、CVD予測因子として有用なバイオマーカーを検索するため、5つのコホート研究の調査が実施された。本調査は、SUMMIT(SUrrogate markers for Micro- and Macrovascular hard endpoints for Innovative diabetes Tools)研究の一環である。対象となったコホート研究は、Go-DARTS(n=1,204)、スカニア糖尿病レジストリ(n=666)、MONICA/KORA(n=308)、IMPROVE(n=94)およびストックホルム研究(n=46)である。候補バイオマーカーとしては、糖尿病患者、非糖尿病患者を問わず、これまでの研究でCVDとの関連が報告された42のマーカーが選択された。年齢、性別、糖尿病罹患期間、BMI、血圧、HbA1c、トリグリセリド、LDL-C、HDL-C、eGFR、喫煙、薬物治療(降圧剤、アスピリン、脂質異常症治療薬およびインスリン使用を含む)を共変量として解析が行われた。主な結果は以下のとおり。2型糖尿病におけるCVD予測因子として、6つのバイオマーカー(NT-ProBNP、ApoCIII、sRAGE、高感度トロポニンT、IL-6、IL-15)が強い関連を認めた。●NT-ProBNP(OR = 1.74、95%CI:1.51~2.02)●ApoCIII(OR = 0.81、95%CI:0.73~0.91)●sRAGE(OR = 0.86、95%CI:0.78~0.96)●高感度トロポニンT(OR = 1.28、95%CI:1.12~1.47)●IL-6(OR = 1.19、95%CI:1.07~1.33)●IL-15(OR = 1.16、95%CI:1.05~1.28)NT-proBNPおよび高感度トロポニンTが2型糖尿病におけるCVD発症に関連していることが明らかになった。IL-6は一般的なCVD予測因子としても知られているが、2型糖尿病患者においても同じくCVD予測因子となることが本調査で確認された。IL-15と2型糖尿病におけるCVD発症の関連性が、今回新たに報告された。ApoCIIIとsRAGEにおいてCVD発症と逆相関の関連が示唆された。Looker氏は「2型糖尿病患者におけるCVD予測因子となるマーカーが、今後の研究によって、さらに明確化されることを願っている」と講演を終えた。

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PCIを病院到着から90分以内に施行することで院内死亡率は改善したか?/NEJM

 米国では2005年~2009年の4年間で、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の、病院到着から経皮的冠動脈インターベンション(PCI)開始までの時間(door-to-balloon time)が16分短縮し、90分以内PCI開始率は23.4ポイント上昇した。しかし、院内死亡率は0.1ポイントの低下でほとんど変化していないことが、ミシガン大学のDaniel S. Menees氏らの調査で判明した。現行のACC/AHAガイドラインでは、STEMI患者に対し病院到着から90分以内のプライマリPCI施行開始を強く推奨(Class I)している。door-to-balloon timeは医療施設の評価指標とされ、地域および国による医療の質向上戦略の中心に位置づけられるが、実際にdoor-to-balloon timeの改善が死亡率の低下に結びついているかは、これまで検証されていなかったという。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告。約9万7,000人の患者データを解析 研究グループは、プライマリPCI施行STEMI患者におけるdoor-to-balloon timeの短縮と院内死亡率の変化の関連を明らかにするために、米国のレジストリ・データに基づく解析を行った。 2005年7月~2009年6月までに、515のCathPCIレジストリ参加施設から登録された、プライマリPCI施行STEMI患者9万6,738例のデータを用い、4年間の各年度別解析を行った。 全体の平均年齢は60.8歳、女性が28.0%であった。高血圧が61.0%、糖尿病が18.8%、脂質異常症が59.2%、喫煙が43.3%、慢性肺疾患が11.4%、心筋梗塞の既往が18.5%に認められた。また、PCI歴ありが20.5%、CABG歴ありが5.6%で、平均入院期間は4.3日であった。 血栓除去術が20.5%、ステント留置術が89.3%で行われ、アプローチは大腿動脈が98.5%、橈骨動脈は0.8%であった。標的冠動脈は左主幹動脈が3.0%、左前下行枝が55.4%、左回旋枝が33.0%、右冠動脈は59.7%だった。高リスク群の予後も改善せず 解析の結果、door-to-balloon time中央値は、初年度(2005年7月~2006年6月)の83分から、最終年度(2008年7月~2009年6月)には67分へと有意に低下した(p<0.001)。同様に、door-to-balloon time90分以内の患者の割合は、初年度の59.7%から最終年度には81.3%まで有意に増加した(p<0.001)。 しかし、このようなdoor-to-balloon timeの改善にもかかわらず、全体的な未補正院内死亡率には有意な変化は認めず(初年度:4.8%、最終年度:4.7%、傾向検定p=0.43)、リスク補正院内死亡率(同:5.0%、4.7%、p=0.34)および未補正30日死亡率(同:9.7%、9.8%、p=0.64)にも有意な変化はなかった。 高リスクのサブグループである75歳以上(1万5,121例)、前壁梗塞(1万8,709例)、心原性ショック合併(9,535例)の患者においても、同様にdoor-to-balloon timeは有意に短縮したが、全体の院内死亡率に変化はみられなかった(75歳以上:初年度12.5%、最終年度11.1%、p=0.19/前壁梗塞:7.2%、6.9%、p=0.79/心原性ショック合併:27.4%、27.2%、p=0.60)。 著者は、「STEMI患者の院内死亡率を改善するには、door-to-balloon time以外の戦略が必要である」とし、「医療施設の評価指標や一般向けの報告にdoor-to-balloon timeを使用することには疑問が生じる」と指摘している。

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さすがに4剤を1つの配合剤にすると服薬継続率も良くなるだろう/JAMA

 心血管疾患(CVD)またはその高リスクを有する患者への降圧・脂質低下・抗血小板薬の固定用量配合剤投与(fixed-dose combinations:FDC)治療戦略は通常ケアと比較して、アドヒアランスを有意に改善すること、血圧と脂質の臨床値の改善は有意だがわずかであったことが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSimon Thom氏らによる無作為化試験「UMPIRE」の結果、示された。CVD患者の大半は、推奨薬物療法が長続きしない。FDCによるアドヒアランス改善効果はその他領域で報告されており、心血管系FDCについてはこれまで、プラセボあるいは未治療と比較した短期効果の検討は行われていた。JAMA誌2013年9月4日号掲載の報告より。FDC治療と通常ケアを比較、アドヒアランスと重大リスク因子の改善を評価 UMPIRE試験は、インドおよび欧州で2010年7月~2011年7月にCVD既往またはそのリスクを有する患者2,004例を登録して行われた非盲検無作為化エンドポイント盲検化試験であった。 試験は、長期アドヒアランスの改善についてFDC(アスピリン、スタチン、降圧薬2剤)と通常ケアを比較することを目的とし、治療の改善および2つの重大なCVDリスク因子(収縮期血圧[SBP]、LDLコレステロール[LDL-C])について評価した。 被験者は、無作為に1,002例が(1)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+アテノロール50mg、または(2)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgのいずれかのFDC群に割り付けられ、残る1,002例は通常ケア群に割り付けられた。 主要評価項目は、自己申告に基づく治療アドヒアランスと、SBPとLDL-Cのベースラインからの変化とした。アドヒアランスは有意に改善、SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善 被験者2,004例のベースライン時の平均血圧値は137/78mmHg、LDL-C値91.5mg/dLで、抗血小板薬、スタチン薬、2剤以上の降圧薬を服用していたのは1,233例(61.5%)だった。 追跡調査は、2012年7月に終了し、平均追跡期間は15ヵ月(範囲:12~18ヵ月)であった。 結果、FDC群は通常ケア群と比較して有意にアドヒアランスが改善した(86%対65%、相対リスク[RR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.26~1.41、p<0.001)。また、試験終了時のSBPの低下(-2.6mmHg、95%CI:-4.0~-1.1mmHg、p<0.001)、LDL-Cの低下(-4.2mg/dL、95%CI:-6.6~-1.9mg/dL、p<0.001)も、わずかだが有意にFDC群のほうが低下していた。 事前に定義したサブグループ(アドヒアランス、性、糖尿病、喫煙の有無別など)でも効果は一致しており、ベースラインでのアドヒアランスが低い患者ほどベネフィットが大きいというエビデンスが得られた。このベースラインでアドヒアランスが低かった患者727例(36%)の試験終了時のアドヒアランスの改善は、FDC群77%対通常ケア群23%で(RR:3.35、95%CI:2.74~4.09、相互作用のp<0.001)、SBPの低下は-4.9mmHg(95%CI:-7.3~-2.6mmHg、相互作用のp=0.01)、LDL-Cの低下は-6.7mg/dL(95%CI:-10.5~-2.8mg/dL、相互作用のp=0.11)だった。 重大有害イベントまたは心血管イベントの発生に有意差はみられなかった。FDC群50例(5%)、通常ケア群35例(3.5%)、RR:1.45(95%CI:0.94~2.24、p=0.09)。 以上を踏まえて著者は、「CVDまたはその高リスクを有する患者において、血圧、コレステロール、血小板コントロールのためのFDC治療戦略は通常ケアと比較して、15ヵ月時点のアドヒアランスを有意に改善した。SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善であった」と結論している。

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クッシング病〔CD : Cushing's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義クッシング症候群は、副腎からの慢性的高コルチゾール血症に伴い、特異的・非特異的な症候を示す病態である。高コルチゾール血症の原因に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が関与するか否かで、ACTH依存性と非依存性とに大別される。ACTH非依存性クッシング症候群では、ACTHとは無関係に副腎(腺腫、がん、過形成など)からコルチゾールが過剰産生される。ACTH依存性クッシング症候群のうち、異所(非下垂体)性ACTH産生腫瘍(肺小細胞がんやカルチノイドなど)からACTHが過剰分泌されるものを異所性ACTH症候群、ACTH産生下垂体腺腫からACTHが過剰分泌されるものをクッシング病(Cushing's disease:CD)と呼ぶ。■ 疫学わが国のクッシング症候群患者数は1,100~1,400人程度と推定されているが、その中で、CD患者は約40%程度を占めると考えられている。発症年齢は40~50代で、男女比は1:4程度である。■ 病因ACTH産生下垂体腺腫によるが、大部分(90%以上)は腫瘍径1 cm未満の微小腺腫である。ごくまれに、下垂体がんによる場合もある。■ 症状高コルチゾール血症に伴う特異的な症候としては、満月様顔貌、中心性肥満・水牛様脂肪沈着、皮膚線条、皮膚のひ薄化・皮下溢血や近位筋萎縮による筋力低下などがある。非特異的な徴候としては、高血圧、月経異常、ざ瘡(にきび)、多毛、浮腫、耐糖能異常や骨粗鬆症などが挙げられる(表)。一般検査では、好中球増多、リンパ球・好酸球減少、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、高カルシウム尿症、高血糖、脂質異常症などを認める。■ 分類概念・定義の項を参照。■ 予後治療の項を参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)高コルチゾール血症に伴う主症候が存在し、早朝安静(30分)空腹時採血時の血中コルチゾール(および尿中遊離コルチゾール)が正常~高値を示す際に、クッシング症候群が疑われる。さらに、同時採血時の血中ACTHが正常~高値(おおむね10 pg/mL以上)の場合は、ACTH依存性クッシング症候群が疑われる(表)。次にACTH依存性を証明するためのスクリーニング検査を行う。(1)一晩少量(0.5 mg)デキサメタゾン抑制試験にて翌朝の血中コルチゾール値が5μg/dL以上を示し、さらに、(2)血中コルチゾール日内変動の欠如(深夜睡眠時の血中コルチゾール値が5μg/dL以上)、(3)DDAVP試験に対するACTH反応性(前値の1.5倍以上)の存在(例外:異所性ACTH症候群でも陽性例あり)、(4)深夜唾液中コルチゾール値(わが国ではあまり普及していない)高値(1)は必須で、さらに(2)~(4)のいずれかを満たす場合は、ACTH依存性クッシング症候群と考えられる。ここで、偽性クッシング症候群(うつ病・アルコール多飲)は除外される。次に、CDと異所性ACTH症候群との鑑別のための以下の確定診断検査を行う。(1)CRH試験に対するACTH反応性(前値の1.5倍以上)の存在(例外:下垂体がんや巨大腺腫の場合は反応性欠如例あり、一方、カルチノイドによる異所性ACTH症候群の場合は反応例あり)(2)一晩大量(8mg)デキサメタゾン抑制試験にて、翌朝の血中コルチゾール値の前値との比較で半分以下の抑制(例外:巨大腺腫や著明な高コルチゾール血症の場合は非抑制例あり、一方、カルチノイドによる異所性ACTH症候群の場合は抑制例あり)(3)MRI検査にて下垂体腫瘍の存在以上の3点が満たされれば、ほぼ確実であると診断される。しかしながら、CDは微小腺腫が多いことからMRIにて腫瘍が描出されない症例が少なからず存在する。その一方で、健常者でも約10%で下垂体偶発腫瘍が認められることから、CDの確実な診断のためにさらに次の検査も行う。(4)選択的静脈洞血サンプリング(海綿静脈洞または下錐体静脈洞)を施行する。血中ACTH値の中枢・末梢比が2以上(CRH刺激後は3以上)の場合は、CDと診断される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 外科的療法CD治療の第一選択は、経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術(trans-sphenoidal surgery:TSS)であるが、手術による寛解率は60~90%と報告されている。完全に腫瘍が摘出されれば術後の血中ACTH・コルチゾール値は測定感度以下となり、ヒドロコルチゾンの補充が6ヵ月~2年間必要となる。術後の血中ACTH・コルチゾール値が高値の場合は腫瘍の残存が疑われ、正常範囲内の場合でも再燃する場合が多いために注意が必要である。術後の非寛解例・再発例は、各々10%程度存在すると考えられている。手術不能例や術後の残存腫瘍に対しては、ガンマナイフやサイバーナイフを用いた定位放射線照射を行う。効果発現までには長期間かかるため、薬物療法との併用が必要である。また、従来の通常分割外照射ほどではないが、長期的には下垂体機能低下症のリスクが存在する。■ 薬物療法薬物療法は、下垂体に作用するものと副腎に作用するものに大別される。1)下垂体に作用する薬剤下垂体腺腫に作用してACTH分泌を抑制する薬剤としては、ドパミン受容体作動薬[ブロモクリプチン(商品名:パーロデル)やカベルゴリン(同:カバサール)]、セロトニン受容体拮抗薬[シプロヘプタジン(同:ペリアクチン)]、持続性ソマトスタチンアナログ[オクトレオチド(同:サンドスタチンほか)]やバルプロ酸ナトリウム(同:デパケンほか)などが使用されるが、有効例は20%未満と少ない。2)副腎に作用する薬剤副腎に作用する薬剤としてはメチラポン(同:メトピロン)やミトタン(同:オペプリム)が用いられる。とくに11β‐水酸化酵素阻害薬であるメチラポンは、高コルチゾール血症を短時間で確実に低下させることから、術前例も含めて頻用される。以前、同薬剤は、診断薬としてのみ認可されていたが、2011年からは治療薬としても認可されている。ミトタンは80%以上の有効性が報告されているが、効果発現までの期間が長く、副腎皮質を不可逆的に破壊することから、使用には注意が必要である。初回のTSSで寛解した場合の予後は良好であるが、腫瘍残存例や再発例は、高コルチゾール血症に伴う感染症、高血圧、糖尿病、心血管イベントなどのため、長期予後は不良である。4 今後の展望CD患者の長期予後改善のためには、下垂体に作用する新規薬剤の開発・実用化が急務と考えられる。近年、5型ソマトスタチン受容体に親和性の高い新規ソマトスタチンアナログSOM230(pasireotide)が開発されたが、わが国では治験中であり、まだ使用開始となっていない。また、最近では、レチノイン酸の有効性も報告されており、今後の臨床応用が期待される。5 主たる診療科内分泌代謝内科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター クッシング病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)

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統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

 統合失調症は、重大な併存疾患と死亡を伴う主要な精神病性障害で、2型糖尿病および糖尿病合併症に罹患しやすいとされる。しかし、併存疾患が統合失調症患者の超過死亡につながるという一貫したエビデンスはほとんどない。そこで、ドイツ・ボン大学のDieter Schoepf氏らは、一般病院の入院患者を対象とし、統合失調症の有無により併存疾患による負担や院内死亡率に差異があるかどうかを調べる12年間の追跡研究を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2013年8月13日号の掲載報告。統合失調症の併存疾患の大半は糖尿病合併症またはその他の環境因子に関与 対象は、2000年1月1日から2012年6月末までにマンチェスターにある3つのNHS一般病院に入院した成人統合失調症患者1,418例であった。1%以上の発現がみられたすべての併存疾患について、年齢、性別を適合させたコントロール1万4,180例と比較検討した。多変量ロジスティック回帰解析により、リスク因子(例:院内死亡の予測因子としての併存疾患など)を特定した。 統合失調症の併存疾患を比較検討した主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者はコントロールに比べ緊急入院の割合が高く(69.8 vs. 43.0%)、平均入院期間が長く(8.1 vs. 3.4日)、入院回数が多く(11.5 vs. 6.3回)、生存期間が短く(1,895 vs. 2,161日)、死亡率は約2倍であった(18.0 vs. 9.7%)。 ・統合失調症患者では、うつ病、2型糖尿病、アルコール依存症、喘息、COPDに罹患していることが多く、併存疾患としては23種類も多かった。また、これらの大半は糖尿病合併症またはその他の環境因子に関与していた。・これに対し、高血圧、白内障、狭心症、脂質異常症は統合失調症患者のほうが少なかった。・統合失調症患者の死亡例において、併存疾患として最も多かったのは2型糖尿病で、入院中の死亡の31.4%を占めていた(試験期間中、2型糖尿病を併発している統合失調症患者の生存率はわずか14.4%であった)。・統合失調症患者においては、アルコール性肝疾患(OR:10.3)、パーキンソン病(OR:5.0)、1型糖尿病 (OR:3.8)、非特異的な腎不全(OR:3.5)、虚血性脳卒中(OR:3.3)、肺炎(OR:3.0)、鉄欠乏性貧血(OR:2.8)、COPD(OR:2.8)、気管支炎(OR:2.6)などが院内死亡の予測因子であることが示された。・コントロールとの比較において、統合失調症患者の高い死亡率に関連していた併存疾患はパーキンソン病のみであった。パーキンソン病以外の併存疾患に関しては、統合失調症の有無による死亡への影響に有意差は認められなかった。・統合失調症患者の死亡例255例におけるパーキンソン病の頻度は5.5%、試験期間中に生存していた1,163例におけるパーキンソン病の頻度は0.8%と、統合失調症患者の死亡例で有意に多かった(OR:5.0)。・また、統合失調症死亡例はコントロール死亡例に比べ、錐体外路症状の頻度が有意に高かった(5.5 vs. 1.5%)。・12年間の追跡調査により、統合失調症患者はコントロールに比べて多大な身体的負担を有しており、このことが不良な予後と関連していることが判明した。・以上のことから、統合失調症において、2型糖尿病および呼吸器感染症を伴うCOPDの最適なモニタリングと管理は、鉄欠乏性貧血、糖尿病細小血管障害、糖尿病大血管障害、アルコール性肝疾患、錐体外路症状の的確な発見ならびに管理と同様に細心の注意を払う必要がある。関連医療ニュース 検証!抗精神病薬使用に関連する急性高血糖症のリスク 抗精神病薬によるプロラクチン濃度上昇と関連する鉄欠乏状態 抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響

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