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多発性骨髄腫と共に“生きる”選択を―Well-beingから考える

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年4月4日、「多発性骨髄腫患者のWell-being向上も考慮した治療目標を」と題したメディアセミナーを開催した。多発性骨髄腫は、根治が難しいものの、治療の進歩により長期生存が可能となってきている疾患である。本セミナーは、患者が「治療と生活を両立」させるために必要な視点として「Well-being」に焦点を当て、医療者と患者双方の視点からその意義を共有することを目的として開催された。 セミナーでは、群馬大学大学院医学系研究科 血液内科学分野の半田 寛氏が「診断から最新治療、そして患者自身ができること」について講演を行い、続いて日本骨髄腫患者の会代表の上甲 恭子氏が登壇し「Well-beingとは“一人一人が今どのように生きたいか”」をテーマに患者の視点から語った。「多発性骨髄腫の治療を諦めず、やりたいことも諦めないために」 多発性骨髄腫の診断・治療は、この20年間で著しい進歩を遂げてきた。新たな薬剤の登場により、生存期間は大幅に延伸し、治療の選択肢も増えている。一方、治療の選択肢の多様化は、治療の複雑化という新たな課題を生んでいる。 こうした状況において、半田氏は「治療の目標は深い奏効、すなわちMRD(微小残存病変)検出感度未満の達成に向かっている。そのうえで、いかに患者のQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)を損なわずに治療を継続できるかが今後の大きな課題である」と指摘した。たとえ根治が難しくとも「治療をしながら、自分らしく生きる」ことの両立が、これからの治療においてますます重要になってくるという。 その鍵となるのが「どう生きたいか」という価値観を、患者と医療者が共有する“Shared Decision Making(共同意思決定)”であると半田氏は述べる。治療法を選ぶ際、注射か内服か、治療期間の長短、通院頻度、生活の目標など、個々の患者の価値観に沿って擦り合わせていくことが不可欠であると強調した。「“いい塩梅”の暮らしを支える:患者のWell-beingを考える」 「治療のために生きるのではなく、生きるために治療をする」。多発性骨髄腫の治療が進歩する中で、患者にとって大切なのは「今をどう生きるか」であると、日本骨髄腫患者の会で代表を務める上甲氏は語った。講演では、自身の家族の経験や患者支援の活動を通して見えてきた、多発性骨髄腫患者における「Well-being」の在り方について紹介した。 上甲氏は、Well-beingという概念を「絶妙なバランス、つまり“よい塩梅”」と表現し、患者調査の結果から「長生きしたい」よりも「自分らしく、元気に過ごしたい」と考える傾向が高齢患者に多いことを紹介した。一方で、痛みや不安、外見の変化に苦しむ声も届くことを紹介。ある患者の「病院には薬をもらいに行っているだけ」「主治医との会話にも虚無感がある」といった実情に対し、上甲氏は「医療者との対話の重要性、そして患者自身が正しい知識を持ち、信頼関係を築くこと」の必要性を訴えた。医師と患者、すれ違う“目標”と本音 パネルディスカッションでは、医師と患者それぞれの「治療目標」に関する意識の違いが調査結果を交えて紹介された。 患者が挙げた目標として最も多かったのは「以前と変わらない生活を送りたい」、次いで「好きなことを続けたい」であった。一方、医師は「生存期間の延長」など、科学的エビデンスに基づいた数値を重視していた。 これについて半田氏は、「医師は“提供できるもの”として科学的な指標を挙げているが、患者は“どう生きたいか”を大切にしている」と説明。上甲氏も「“治療目標”という言葉は患者には伝わりにくい。“どんな生活を望んでいるか”と問うことで、初めて本音が語られる」と述べた。日常の充実が、治療を支える 「治療以外の時間の充実」が治療に与える影響についての調査では、医師の92%、患者の96%が「かなり良い影響を与える」または「やや良い影響を与える」と回答した。 上甲氏は「夢中になれることを持っている患者は、生きる力が明らかに違う」と述べ、半田氏も「やりたいことを伝えてもらえれば、それを実現できる治療を一緒に考えられる」と応じた。まとめ 多発性骨髄腫の治療は進歩し続けている。しかし、医学的な成功が必ずしも患者の幸福と一致するとは限らない。治療を続けながらも、自分らしい生活、すなわちWell-beingを実現するためには、医療者と患者が対等な立場で治療目標を共有することが求められる。科学的根拠に基づく治療と、患者が描く人生の在り方。その両輪がかみ合ってこそ、多発性骨髄腫の治療は本当の意味で“前進”していくと考えられる。

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未治療多発性骨髄腫の新しい治療選択肢:パラダイムシフトは起こるか

未治療多発性骨髄腫の患者さんへの新しい選択肢 2025年3月27日、サノフィは未治療の多発性骨髄腫の治療薬として、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによるVRd療法にイサツキシマブ(商品名:サークリサ®)を追加する4剤併用療法の適応追加承認を取得したCD38受容体を標的としたイサツキシマブに関するメディアセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、イサツキシマブの適応拡大の意義や新たな治療戦略について、芹澤 憲太郎氏(近畿大学 医学部 血液・膠原病内科)と鈴木 憲史氏(日本赤十字社医療センター アミロイドーシスセンター)が解説した。サークリサ®が挑む多発性骨髄腫の治癒への挑戦 多発性骨髄腫の好発年齢の中央値は67歳と高齢者に多く発症する疾患であり、罹患率は年々上昇している。一方、治療の進歩に伴い、2006年以降死亡率は横ばいで推移している。とくに、近年は再発・難治の状態に使用できる新薬が多く登場しており、劇的な進歩を遂げている。 さらに、最近では多発性骨髄腫の治療戦略はPFSの延長だけではなく、微小残存病変/測定可能残存病変(MRD)を陰性化し、長期生存を目指すことが主流となっている。そして、多発性骨髄腫は再発を重ねるごとに奏効期間が短縮するため、初発時により深く、長く奏効する治療が必要とされていた。 イサツキシマブは再発・難治性の患者さんを対象としたIKEMA試験で現行治療法の中で最もMRD陰性化率が高く、CD8+T細胞の活性化や制御性T細胞の抑制効果が報告されており、次治療が必要な場合もその効果を高める可能性が考えられる。そのため、イサツキシマブをより早い段階で使用することがより治療成績を向上させることに寄与するのではないか、と芹澤氏は語った。 イサツキシマブ、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによる治療(IsaVRd療法)の意義としては、サブクローンの駆逐が見込めるだけでなく、イサツキシマブのアポトーシス誘導とボルテゾミブ、レナリドミドのROS産生による細胞傷害の相乗作用が期待できるため、より深く、長い奏効が期待できるレジメンであると考えられる。 今後の治療戦略としては、IsaVRd療法を最初に行うことで、移植適応ではより移植への到達度を高め、移植非適応ではFunctional Cureを目指した治療を考えられる、として芹澤氏は鈴木氏にバトンを渡した。サークリサ®による新たな治療戦略~IsaVRdでFunctional Cureを目指す~ 多発性骨髄腫はこれまで完治できない疾患であったが、新しい治療選択肢が増えた今、MRD陰性が維持できており、無治療でも病態を抑えられている状態、Functional Cureが目指せるパラダイムシフトが起こっている、と鈴木氏は冒頭で語った。 そのために、これからの多発性骨髄腫治療で重要なのは初期治療から再発をさせない治療戦略である。つまり、良好な予後を得るために必要なのはMRD陰性を維持できる治療が必要だ、ということだ。 実際に移植非適応の患者さんを対象にしたIMROZ試験では下記のような結果が示された。・主要評価項目であるPFSはIsaVRd群で中央値未到達、60ヵ月時点のPFSは63.2%・副次評価項目のsCR+CRの割合はIsaVRd群で74.7%・安全性プロファイルはVRd療法と同様であった 今後は年齢でなくnon-frailかFrailで治療を選択し、FrailでなければIsaVRd療法でMRD陰性化とFunctional Cureを目指すという治療戦略が考えられる。 鈴木氏は「多発性骨髄腫の治療は新時代を迎え、今後は治癒や予防を考えられるようになるのではないか。『早く行きたければ1人で行け、遠くにいきたければみんなで行け』という言葉の通り、医療従事者、製薬メーカー、患者さん、みんながより幸せになれる時代が来たと感じている」として講演を締めくくった。

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多発性骨髄腫に対する新たな二重特異性抗体テクリスタマブ/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、再発/難治性多発性骨髄腫の治療薬として本邦での製造販売承認を取得したテクリスタマブ(商品名:テクベイリ)を、2025年3月19日に発売した。これを受け、3月25日に記者説明会が開催され、石田 禎夫氏(日本赤十字社医療センター 血液内科部長/骨髄腫アミロイドーシスセンター長)が講演を行った。3剤使用後の患者にも有効なBCMA標的治療 テクリスタマブは、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体を含む少なくとも3つの標準的な治療が無効または治療後再発となった患者、つまりtriple-class exposed(TCE)の患者に使用される。TCE患者の予後は不良であり、後続治療の全奏効率(ORR)は29.8%、無増悪生存期間(PFS)中央値は4.6ヵ月という報告もある1)。近年、TCE患者にも効果が期待できる治療として、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法や二重特異性抗体が登場している。テクリスタマブの有効性プール解析と感染症対策 テクリスタマブはBCMAとCD3を標的とする二重特異性抗体で、海外第I/II相MajesTEC-1試験2)と国内第I/II相MMY1002試験3)の結果に基づいて承認された。MajesTEC-1試験のORRは63.0%(95%信頼区間[CI]:55.2~70.4)、PFS中央値は11.3ヵ月(95%CI:8.8~17.1)であった。一方、MMY1002試験のORRは76.9%(95%CI:56.4~91.0)、PFS中央値は未到達であった。 MajesTEC-1試験の患者登録期間は2020~21年であり、大半の患者はCOVID-19のパンデミック期に組み入れられた。患者登録期間が2021年12月以降であった中国人と日本人コホートを追加して実施されたプール解析4)では、追跡期間中央値29.2ヵ月におけるORRは66.4%(95%CI:59.7~72.6)、PFS中央値は15.1ヵ月(95%CI:10.5~19.8)と報告されている。 副作用の1つである感染症の対策として、IgG値を測定したうえでのグロブリン補充療法が推奨される。また、テクリスタマブの継続投与期に奏効が6ヵ月間持続した場合は、投与間隔を1週間から2週間に変更可能であり、2週間間隔のほうがGrade3以上の感染症発症が少なかったという報告もある5)。CAR-Tと二重特異性抗体、複数選択肢をどう使うか 石田氏は、BCMA標的治療後にCAR-T細胞療法を使用すると、有効性の低下や製造不良の増加が危惧されることから6)、個人的な見解として、可能であればCAR-T細胞療法使用を優先すると説明した。また、CAR-T細胞療法後に二重特異性抗体を使用する場合の有効性は、CAR-T細胞療法の奏効期間やT細胞の疲弊状態によって異なることが予想されると述べた。さらに、ほかの二重特異性抗体と比較した場合のテクリスタマブの特徴として、海外で先行承認されたためにさまざまなデータが蓄積されていること、体重当たりの投与量調整が可能なことなどを挙げた。 石田氏は「BCMA標的治療が登場する前はTCE患者への有効な治療がなく、治療選択に悩んでいた。今は悩まず使用できる治療が登場し、患者さんも喜んでいる。今後は、CAR-T細胞療法や二重特異性抗体を使用した後の治療が課題になるだろう」と締めくくった。【製品概要】商品名:テクベイリ皮下注30mg/153mg 一般名:テクリスタマブ(遺伝子組換え) 製造販売承認日:2024年12月27日 薬価基準収載日:2025年3月19日 効能又は効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る) 用法及び用量:通常、成人にはテクリスタマブ(遺伝子組換え)として、漸増期は、1日目に0.06mg/kg、その後は2~4日の間隔で0.3mg/kg、1.5mg/kgの順に皮下投与する。その後の継続投与期は、1.5mg/kgを1週間間隔で皮下投与する。なお、継続投与期において、部分奏効以上の奏効が24週間以上持続している場合には、投与間隔を2週間間隔とすることができる。 製造販売元(輸入):ヤンセンファーマ株式会社■参考文献・参考サイトはこちら1)Mateos MV, et al. Leukemia. 2022;36:1371-1376.2)Moreau P, et al. N Engl J Med. 2022;387:495-505.3)Ishida T, et al. Int J Hematol. 2025;121:222-231.4)Martin TG, Ishida T, et al. ASH 2024.5)Nooka AK, et al. Cancer. 2024;130:886-900.6)Sidana S, et al. Blood. 2025;145:85-97.MajesTEC-1試験第I相(Clinical Trials.gov)MajesTEC-1試験第II相(Clinical Trials.gov)MMY1002試験(Clinical Trials.gov)

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兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学(血液)【大学医局紹介~がん診療編】

吉原 哲 氏(教授)吉原 享子 氏(臨床講師)寺本 昌弘 氏(助教)熊本 友子 氏(レジデント)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴私たちの医局のモットーは、すべての血液疾患の患者さんに最良の治療を提供することです。血液疾患には、白血病、リンパ腫、骨髄腫といった造血器腫瘍のほか、血友病、凝固異常症といった出血性疾患があります。兵庫医大には、ハプロ移植やCAR-T療法のイメージが強いかもしれませんが、血友病やHIVの診療施設としても関西での重要な拠点となっています。地域のがん診療における医局の役割兵庫県の特徴は、大学の系列などに関係なく、各病院間の血液内科医の横のネットワークが非常に強いことです。その結果として、兵庫県内の多数の病院から移植やCAR-T症例のご紹介をいただいています。また、ハプロ移植やCAR-T療法については、県外からも多数の患者さんをご紹介いただいています。医師の育成方針まずは血液内科医として、どんな疾患でもひととおり診られるようになってもらいたいと考えています。実際、白血病から血友病まで非常に症例数が多いですので、化学療法だけでなく移植やCAR-T療法、そして血友病等の治療についても効率的に研修可能です。その後は専門性を高めていってもらうことになりますが、その際には医師それぞれのライフプランに合わせて無理のない働き方をして欲しいと考えています。子育てをしながら働く女性医師も多いため、女性医師にとって相談しやすい環境だと思います。同医局でのがん診療のやりがい、魅力私たちの医局でのがん診療チームは、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫といった疾患に対し、化学療法のみならず、同種造血幹細胞移植やCAR‐T療法など、最先端の治療法を幅広く実施しています。日々進歩していく血液内科診療の劇的な変化を肌で感じることができ、また大学病院ならではの高度な医療現場で、他院では診断が困難な症例や治療が難しいケースも積極的に受け入れており、その度に多くの発見とやりがいを感じる毎日です。医局の雰囲気少人数制のチーム体制で、アットホームな雰囲気です。タスクシフトを積極的に取り入れ、一人ひとりが豊富な症例経験を積み自らの専門性を高めていけるよう支援しています。さらに、当医局には出産後も現場で活躍している女性医師たちが多数在籍しています。私自身は2人の子育て中でもありますが、自身の経験より家庭と仕事の両立の困難さを誰よりも理解しているつもりです。そのような若手医師たちを支援するため、各医師のライフプランに合わせた柔軟なサポート体制を整えるよう尽力しています。医学部生/初期研修医へのメッセージ医学部生/初期研修医の皆さまが、当医局で最先端の医療技術と充実した臨床経験を学びながら、自身の成長と挑戦を続けていただけることを心より願っております。ぜひ一緒に働きましょう!力を入れている治療/研究テーマ兵庫医科大学病院 血液内科(当科)では血液疾患に対するさまざまな研究に取り組んでいますが、これまでとくに力を入れてきた研究テーマの1つに、血液がんに対する同種造血幹細胞移植(同種移植)があります。私自身はこれまで、同種移植後の副作用を抑えるための、免疫抑制剤の投与方法に関する研究や、同種移植を受けた患者さんの生存率に影響を与えるリスク因子の解析を行ってきました。また、白血病の治療ターゲットとなるような分子標的を見つけるための基礎研究にも取り組み、新しい治療薬の開発を目指しています。さらに、当科ではキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)に関する基礎研究も開始しており、より効果的な細胞療法を実現するために頑張っています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、同種移植やCAR-T療法を含めた細胞治療の分野はもちろん、血液学に関する臨床研究、基礎研究の両方に挑戦できる環境が整っています。研究に興味がある方は、ぜひ気軽にご相談ください。一緒に新しい治療法を探していきましょう。これまでの経歴もともと2008年に筑波大学を卒業しましたが、その後海外でスポーツ活動に取り組んでいました。海外にいる頃に医師になりたいと奮起、2013年に兵庫医科大学に入学し、2019年に卒業、同大学で初期研修を行い血液内科に入局しました。1年半、外病院で一般内科・一般血液を学び今は大学で血液内科医として日々勉強しています。同医局を選んだ理由学生の頃から血液内科に入局しようと思っていましたが、兵庫医科大学病院は西日本でも有数の移植施設で、今ではCAR-T療法なども含め、大学でしかできない治療がたくさんあることと、腫瘍とは別にHIVや血友病など専門の先生がいることも大きな理由です。また、どんなに忙しくても質問すると上級医の先生は優しく丁寧に教えて下さったことも理由の1つです。最初の頃は勿論、今でも分からないことは沢山ありますし、自分の行為が患者様の命にも関わる仕事ゆえ、どんな些細なことでも気がねなく何でも聞ける医局の雰囲気、指導体制は大事だと思います。現在学んでいることCAR-T療法、臍帯血移植、ハプロ移植など、市中病院ではなかなか経験できない症例をたくさん受け持っております。一方で、市中病院でも診ることの多いITPやリンパ腫の症例も多数あります。血液疾患は新規薬剤やガイドラインについても年々アップデートが必要ですが、症例が多数あるため知識だけではなく実症例として経験することができます。今後のキャリアプラン出産・育児を挟んだこともあり、目の前の目標は内科専門医の取得です。兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学(血液)住所〒663-850 兵庫県西宮市武庫川町1-1問い合わせ先ketsueki@hyo-med.ac.jp医局ホームページ兵庫医科大学 血液内科教室専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会(認定医)日本輸血・細胞治療学会(認定医)日本再生医療学会(認定医)研修プログラムの特徴(1)造血器腫瘍だけでなく血栓・止血やHIV診療も研修可能(2)子育てなどライフプランに合わせた柔軟なサポート体制を整えている(3)造血細胞移植やCAR-T療法など最新の治療を経験できる

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細胞免疫療法~CAR T-cell・T-cell engager~の進歩と今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 手術療法、抗がん剤療法、放射線療法に続くがん治療の第4の柱として、細胞免疫療法が国内外で徐々に広がりつつある。とくに、最近は通常の免疫機能などでは治癒が困難な難治性のがんに対する治療法として、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法やT細胞誘導抗体(T-cell engager:TCE)が、一部の血液がんに対する効果的な治療法として期待されている。 2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、日本血液学会と日本臨床腫瘍学会の合同シンポジウムが開催され、細胞免疫療法の現状や課題、今後の展望などについて議論が交わされた。CAR-T細胞療法に残された課題に挑む CAR-T細胞療法は細胞免疫療法の1つとして、とくに一部の血液がんに対して高い治療効果を発揮している。一方で、CAR-T細胞療法にはサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性のような有害事象、再発率の高さ、固形がんに対する限定的な効果、さらには高額な製造コストなどが解決すべき課題として残されている。 このような背景の中で、玉田 耕治氏(山口大学大学院医学系研究科 免疫学講座)らの研究グループは、固形がんに対する高い効果が期待できる次世代(第4世代)のCAR-T細胞の開発に取り組んでいる。固形がんに対してCAR-T細胞療法が効果を発揮するためには、腫瘍部分でのCAR-T細胞の集積と増殖が必要となる。玉田氏らは、免疫機能を調整する能力をCAR-T細胞に追加することでこの問題が解決できると考え、T細胞の生存や増殖を刺激するサイトカインであるIL-7とT細胞や樹状細胞の遊走や集積を促進するケモカインであるCCL19を同時に産生する7×19 CAR-T細胞を開発し、これをPRIME(Proliferation-inducing and migration-enhancing)CAR-T細胞と名付けた。マウスモデルを用いた研究により、7×19 CAR-T細胞は、内因性腫瘍抗原に対するエピトープ拡散を誘導することで、強力な抗がん効果を発揮することが証明された。また、がん患者の末梢血単核球細胞(PBMC)由来の7×19 CAR-T細胞の抗腫瘍効果なども確認されている。これらのことから、「PRIME CAR-T細胞は固形がんに対する画期的ながん治療法となることが期待され、近い将来、固形がんに対するCAR-T細胞の臨床研究が日本で実施される可能性がある」と玉田氏は述べた。 一方で、CAR-T細胞療法には高い製造コストがかかり、1回の投与で数千万円という高額な治療費を要することが大きな課題となり、とくに開発途上国においては治療の実現を拒む主な要因となっている。そこで、高橋 義行氏(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)らの研究グループは、製造コストを下げるために独自で安価なCAR-T細胞の製造法を開発した。従来、CAR-T細胞はウイルスベクターを用いた遺伝子を導入する方法で製造されてきたが、高橋氏らは非ウイルスベクターによるpiggyBacトランスポゾン法を用いてCAR-T細胞の培養を行うことに成功した。本法は酵素べクター法の1つで、ウイルスベクターを用いた方法に比べて製造方法が簡便かつ安価であり、ウイルスベクターを用いた従来の方法と同様の治療効果が期待できるという。 そして、高橋氏らは再発または難治性のCD19陽性急性リンパ性白血病患者を対象に、piggyBacトランスポゾン法にて製造したCD19標的CAR-T細胞療法の第I相試験を実施している。CD19標的CAR-T細胞1×105/kgを1回投与するコホート1(16~60歳、3例)とコホート2(1~15歳、3例)、3×105/kgの1回投与に増量するコホート3(1~60歳、3例)において、投与後28日時点で全例に完全奏効(CR)が認められ、2例が再発した。なお、本剤を投与した全例の末梢血で、piggyBac CAR-T細胞の増殖が観察されていた。 さらに、高橋氏らはタイのチュラロンコン大学からの要請を受けてCAR-T細胞療法の臨床研究を支援している。同氏らと同じ方法で製造されたCD19標的CAR-T細胞療法を受けたタイの悪性リンパ腫患者5例の全例で効果が確認され、その中の1人は投与後1ヵ月で多発していた腫瘍が消失し、1年後には寛解となっていた。 これまでの成果を踏まえ、高橋氏は、「安価な製造コストを実現することで、世界中でCAR-T細胞療法が普及することが期待される。また、日本の知的財産を活用した純日本製のCAR-T製剤が承認されれば、日本の医療費削減にもつながるのではないか」と結論した。iPS細胞技術を用いた若返りT細胞療法の開発 これまで、難治性のエプスタイン・バー(EB)ウイルス関連リンパ腫に対して、末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)を体外で増殖して再び体内に戻すCTL療法が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。これは、CTLが標的抗原に持続的に曝露されると疲弊してしまうためで、この問題を解決するために安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科 血液内科学)らの研究グループは、iPS細胞技術を用いることで疲弊したT細胞を若返らせる技術を開発した。EBウイルス抗原特異的CTLからT細胞由来のiPS細胞を作製し、再びCTLに分化誘導することで若返ったCTL(rejT)となり、rejTはEBウイルス感染腫瘍を縮小することなどが確認された。さらに、EBウイルス抗原のLMP2に対するrejTをマウスに投与すると、EBウイルス関連リンパ腫に対する強い抗腫瘍効果を示しながら末梢血でセントラルメモリーT細胞として存在することが確認され、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期間生存することで難治性リンパ腫の再発抑制効果を維持することが示唆された。 また、安藤氏らはCARによる抗原認識とT細胞受容体(TCR)による抗原認識の両者を兼ね備え、2つの異なる受容体により効率よく腫瘍を攻撃するiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスモデルによる検討では、DRrejTはEBウイルス関連リンパ腫に対して、単一標的のrejTやCARに比べて抗腫瘍効果は高く、効果が長期間持続することが示された。 加えて、小細胞肺がん(SCLC)にGD2が高発現していることに着目して、iPS細胞から分化誘導したCTL(rejT)にGD2標的CARを導入する方法でGD2-CARrejTを作製すると、SCLC対する強い抗腫瘍効果を示すとともに、末梢血由来のGD2-CAR-Tよりも有意に生存期間を延長した。 さらに、同様の方法でiPS細胞からヒトパピローマウイルス特異的rejT(HPV rejT)を誘導したところ、末梢血由来HPV CTLと比較して子宮頸がんをより強く抑制していた。しかし、患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化は難しく、他家iPS細胞を用いた場合は免疫拒絶反応などが問題となる。そこで、安藤氏らはCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてHLAクラスIを編集した健常人由来のHPV rejTを作製したところ、免疫拒絶反応を抑えながら子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。このような結果を踏まえ、現在、HLAクラスIを編集したHPV rejTの安全性を評価する医師主導第I相試験が進行しているという。 安藤氏は、「iPS細胞技術を活用することで、迅速かつ何度でも十分量のDRrejTを作ることが可能で、“Off-the-shelf”療法として大いに期待できる」と締めくくった。固形がんに対する細胞免疫療法の臨床開発状況と展望 固形がんに対する細胞免疫療法としては、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、CARマクロファージ(CAR-M)療法、TCR-T細胞療法など、数多くの臨床試験が実施されているが、日本で承認されている治療法はまだ存在しない。 CAR-T細胞療法は、CD3ζ単独のCARが第1世代、CD3ζに副刺激分子のCD28や4-1BBを1つ足したものが第2世代、2つ足したものが第3世代と呼ばれ、とくに2010年に登場した第2世代以降のCAR-T細胞療法は、B細胞性白血病/リンパ腫に高い有効性を示してきた。さらに、サイトカイン分子によりT細胞の活性化シグナルを増強させるように設計された第4世代のCAR-T細胞療法の開発が進んでいる。 固形がんに対するCAR-T細胞療法の開発の問題点として、北野 滋久氏(がん研究会 有明病院)は、免疫抑制性の環境が形成される腫瘍微小循環(TME)による有効性と持続性の低下、高いCRSのリスク、on-target/off-tumor 毒性(OTOT)、抗体薬物複合体(ADC)やTCEとの競合などを挙げる。現在、これらの問題を解決するためにさまざまな技術開発が進められており、その一例として、第4世代のCAR-T細胞療法によるTMEの調整、CRSを回避するための抗IL-6受容体抗体や免疫抑制薬の予防的投与の研究、主要組織適合性複合体(MHC)/ペプチド複合体の標的化や三重特異性抗体などによるOTOTへの対応のような研究が進行しているという。 また、CAR-T細胞療法に続く有望な細胞免疫療法として、北野氏はTCR-T細胞療法にも注目している。TCR-T細胞療法は、患者からリンパ球を採取し、がん抗原特異的なTCRをT細胞に導入して再び患者に輸注する治療法で、がん関連抗原であるNY-ESO-1を標的とした高親和性TCRを用いた滑膜肉腫患者を対象とした第I/II相試験では、有効な成績が示されていた。CAR-T細胞療法は細胞表面の抗原を標的とするのに対して、TCR-T細胞療法の標的は細胞内タンパク質と糖鎖であり、最近ではネオアンチゲンを対象としたTCR-T細胞療法の開発も進められている。リンパ系腫瘍に対する細胞免疫療法(CAR-T、BiTE)の現状と今後の展望 CAR-Tと二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を用いた細胞免疫療法は、B細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫など、さまざまな種類のリンパ系悪性腫瘍の治療に用いられている。大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を例にとると、CD19を標的としたCAR-T細胞療法やCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法が臨床使用されている。 LBCLに対するCAR-T細胞療法としては、tisa-cel、axi-cel、liso-celがそれぞれの臨床試験の結果を基に3rdライン以降の治療薬として最初に承認された。その後、初回治療に対する治療抵抗例や、初回治療による寛解後1年以内の再発例を対象にした臨床試験において、標準治療(化学療法+自家移植)を上回るCAR-T細胞療法の有効性が示されたことを受け、axi-celとliso-celは2ndラインでの使用も認められることとなった。このような現状を踏まえ、伊豆津 宏二氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)はCAR-T細胞療法について、「再発または難治性のLBCL患者の治療にパラダイムシフトをもたらした」と述べた。さらに、今後は高リスクなLBCL患者に対する1stラインでの使用や、ほかのサブタイプによるCAR-T細胞療法の開発などが期待されるという。 加えて、伊豆津氏はCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法について、LBCLに対する2ndラインの有用性について検討した臨床成績、さらには現在進行中の1stラインにおける有用性を評価する臨床試験の概要についても言及した。 最後に、CAR-T細胞療法やBiTE抗体療法のようなT細胞リダイレクト療法には、有効性の長期持続が困難、抗原回避や耐性、CRSなどの有害事象、長い製造時間、高額な製造コスト、最適な治療順序の決定など、解決すべき課題が多く残されていることを伊豆津氏は指摘し、講演を締めくくった。

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リンパ腫・骨髄腫に対する新たな免疫治療/日本臨床腫瘍学会

 キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法や二重特異性抗体など、最近の免疫治療の進歩は目覚ましく、とくに悪性リンパ腫と多発性骨髄腫に対しては生命予後を大幅に改善させている。今後もさらに治療成績が向上することが期待され、最適な治療法を選択していくためには、本邦における免疫治療の現状や課題、今後の治療法の開発状況などについてよく理解しておく必要がある。 2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、リンパ腫・骨髄腫に対する新たな免疫治療についてのシンポジウムが開催され、国内外の4人の演者が最新の知見や今後の展望などについて講演した。B細胞リンパ腫治療の進歩に重要な役割を果たす二重特異性抗体 「とくに、最近のCD3とCD20を標的とする二重特異性抗体の出現は、B細胞リンパ腫治療に大きな進歩をもたらしている」とGrzegorz Stanislaw Nowakowski氏(Mayo Clinic)は強調する。T細胞の細胞膜上に発現するCD3とB細胞性がん細胞の膜上に発現するCD20の両者に結合し、T細胞の増殖および活性化を誘導することでCD20が発現しているがん細胞を攻撃する治療法で、最近はCD20とは異なる表面分子を標的とする、または複数の表面分子を同時に標的とする二重特異性抗体の研究開発も進行しているという。 CD3とCD20を標的とする二重特異性抗体に関する臨床試験は、CAR-T細胞療法後の再発を含む再発または難治性の進行性リンパ腫を対象に実施され、約50~60%の患者に奏効し、奏効した患者の約半数が完全奏効となっていた。加えて、完全奏効した患者は、その状態が長く持続し、患者の病態や前治療の数や内容などにかかわらず、効果は一貫してみられていた。 一方で、二重特異性抗体の有害事象については、Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクは高くなく、用量漸増や予防薬の前投与によって軽減することが可能となる。Nowakowski氏は、「重要なのは、CRSは管理可能であると認識することである。加えて、治療に関連する神経毒性の発生リスクも高くなく、Grade3以上の神経毒性の発現頻度は非常に低い」と述べた。 さらに、二重特異性抗体による治療のメリットは、化学療法やCAR-T細胞療法などのほかの治療法と組み合わせたり、治療の順番を調整したりすることができる点にあるとNowakowski氏は指摘する。また、特定の二重特異性抗体をCAR-T細胞療法までの橋渡しの治療としても使うことができることを示唆する研究報告もあり、治療効果をより継続したり高めたりする臨床研究が進行中であるという。 最後に、「活動性の高い低悪性度リンパ腫に対しては、化学療法を併用しない二重特異性抗体による単独治療も可能となる。このように、二重特異性抗体はモノクローナル抗体と同様に、複数の治療法で使用できる可能性がある」とNowakowski氏は付け加えた。B細胞リンパ腫に対する早期治療ラインにおけるCAR-T細胞療法の可能性 本邦においても、CD19を標的としたCAR-T細胞療法は、再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)などのB細胞リンパ腫に適応となっている。CAR-T細胞療法の治療成績は、それまでの再発または難治性LBCLに対する標準治療に比べて群を抜いて高く、治療成績は劇的に改善された。今回、蒔田 真一氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)は、B細胞リンパ腫に対する早期の治療ラインにおけるCAR-T細胞療法の可能性について言及した。 LBCLに対するCAR-T細胞療法としては、第2世代のCAR-T細胞療法であるtisa-cel、axi-cel、liso-celがそれぞれの単群試験の結果を基に、3rdライン以降の治療薬として本邦では最初に承認された。その後、初回治療に対する治療抵抗例や、初回治療による寛解から12ヵ月以内の再発例を対象としたランダム化比較試験において、化学療法と自家幹細胞移植による標準治療を上回るCAR-T細胞療法の有効性が示されたことで、axi-celとliso-celが2ndラインとしても使用できるようになっている。 蒔田氏は、CAR-T細胞療法を早期ラインで使用することのメリットとして、まず、早期のラインではより多くのブリッジング(橋渡し)治療が可能となり、CAR-T細胞を製造している間の腫瘍進行を抑制することが可能となることを挙げる。さらに、早期ラインでは従来の細胞障害性抗がん薬への曝露が少ないことから、CAR-T細胞療法が効きやすい可能性もあるという。 このような背景の中で、未治療のLBCLに対する1stラインとしてのCAR-T細胞療法の有用性を評価するための臨床試験が現在進行している。「加えて、LBCLに対する二重特異性抗体の臨床試験なども複数進行しており、近い将来、未治療LBCLに対する治療戦略が劇的に変化する可能性がある」と蒔田氏は結んだ。CAR-T細胞療法の効果的な運用に向けて CAR-T細胞療法は、2012年に米国のフィラデルフィアで小児急性リンパ芽球性白血病への最初の使用が報告された免疫細胞療法であり、長期にわたる良好な治療成績が得られている。その後も、CD19を標的としたCAR-T細胞療法はとくに再発または難治性のLBCLの治療戦略を劇的に変化させ、その適応は広がっている。 LBCL患者の約60%は、初回のR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)で長期生存を達成するが、再発または難治性となった場合は、化学療法や自家幹細胞移植などの2ndラインの標準治療で治癒に至る患者はわずか10%にすぎない。そのため、再発または難治性のLBCLに対する治療戦略はきわめて重要であると福島 健太郎氏(大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)は述べる。 CAR-T細胞療法を効果的に運用していくためには、まずは適切なCAR-T細胞の製造が重要となる。CAR-T細胞の製造については、製造管理や品質管理の手法が「再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準(GCTP)」に適合する必要があるが、開発企業や医療機関によってアフェレーシス(T細胞採取)の手順や採取されたアフェレーシス産物の製造所への輸送方法などが異なっている。大阪大学ではこれを未来医療センター細胞調製施設(MTR CPC)が担当し、アフェレーシス、CD3陽性細胞率の測定、生細胞率測定、採取産物の濃縮・調整・凍結保存、製品原料の発送などを主治医、輸血部門、中央研究所、MTR CPCなどが連携して実施しているという。 CAR-T細胞療法では、アフェレーシス、製造(遺伝子改変・培養)、輸送、投与前処置など、患者からT細胞を採取してから再び患者に戻すまでの過程があり、これに要する時間(Vein to Vein Time:V2VT)は治療効果や患者の状態管理に大きく影響を与えることになる。そのため、V2VTの短縮は、CAR-T細胞療法における重要な課題となっている。そして、V2VTによっては、アフェレーシス終了後にCAR-T細胞の輸注に先立ってリンパ腫に対する治療を行う橋渡し治療を行うこともある。このように、V2VTの短縮や橋渡し治療などを患者ごとに吟味しながら、CAR-T細胞療法の治療効果を高めていくことが重要と福島氏は指摘する。 さらに、福島氏はCAR-T細胞療法後における二次性のT細胞性悪性腫瘍の発生リスクについて言及した。2024年4月、米国食品医薬品局(FDA)は、CAR-T細胞療法製品の添付文書に新たなT細胞性悪性腫瘍が発生する可能性について警告を表示することを要求した。しかし、その後の新たな研究から、CAR-T細胞療法後の二次性悪性腫瘍の発生頻度は、標準治療後における発生頻度と同程度であることが示されているという。多発性骨髄腫に対する免疫療法の治療効果最大化への課題 これまで、プロテアソーム阻害薬(PI)、免疫調節薬(IMiDs)、抗CD38モノクローナル抗体製剤(抗CD38抗体)などの治療薬が登場し、多発性骨髄腫(MM)患者の生命予後はかなり改善されてきた。しかし、これらの治療を続けていても、多くの場合再発となり、予後不良の再発または難治性のMMとして、現在の重要なアンメットメディカルニーズとなっている。この問題に対処するために、最近はCAR-T細胞療法、二重特異性抗体、抗体薬物複合体(ADC)などが登場し、大いに注目されている。 CAR-T細胞療法や二重特異性抗体、ADCの標的抗原として、とくにMM患者の骨髄腫細胞に高発現しているB細胞成熟抗原(BCMA)が重要であり、BCMAを標的とした免疫療法の現状と、効果を最大限に発揮するための課題などについて、原田 武志氏(徳島大学大学院 血液・内分泌代謝内科学分野)が言及した。現状では、PI、IMiDs、抗CD38抗体による治療の後に再発または難治性となったMMに対して、BCMAを標的としたCAR-T細胞療法、二重特異性抗体、ADCによる治療が有効であることを示唆する結果が複数の臨床試験によって示されている。 このように、BCMAはMMの創薬ターゲットとして注目されているが、これらの薬剤の臨床効果はMM患者にとって普遍的ではなく、治療中に低下することがあり、これが治療効果を最大化するための1つの課題と原田氏は指摘する。現在、薬剤に対する治療抵抗性のメカニズムが精力的に研究されている中で、原田氏らはBCMAを標的とした免疫療法の後には、BCMA発現のダウンレギュレーションが関与していることを明らかにしてきた。また、BCMAとそのリガンドであるB細胞活性化因子(BAFF)とB細胞の発達や自己免疫応答に関与する関連タンパク質(APRIL)との相互作用も治療抵抗性に関与している可能性もあり、MM細胞と破骨細胞におけるBAFF/APRILのBCMAへの結合は、BCMAを標的とした免疫療法の有効性に影響を与える可能性が示唆されていた。さらに、原田氏らは、APRILがBCMAへのBCMAを標的とした二重特異性抗体製剤の結合を妨害し、破骨細胞由来のAPRILはBCMAを標的とした免疫療法の治療効果を減弱させる可能性もあると考えているという。 最近は、MMに対する新たな治療概念として、腫瘍細胞のみでなく腫瘍微小循環を標的とした治療も検討されはじめている。「今後、BCMAを標的とした免疫治療の効果を最大限に発揮するためには、腫瘍細胞と腫瘍微小循環の両者に対する治療戦略が重要となる」と原田氏は結論付けた。

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再発/難治性多発性骨髄腫に対するテクリスタマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年3月19日、再発/難治性の多発性骨髄腫の治療薬として、B細胞成熟抗原(BCMA)およびCD3を標的とする二重特異性抗体テクリスタマブ(遺伝子組換え)(商品名:テクベイリ皮下注)を発売したことを発表した。本剤は、2024年12月27日に「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として承認され、2025年3月19日に薬価収載された。 本剤は、投与前の希釈が不要な皮下注製剤で、再発/難治性多発性骨髄腫において日本で初めてかつ唯一の体重に応じた投与が可能なBCMAおよびCD3を標的とするT細胞リダイレクト二重特異性抗体である。<製品概要>製品名:テクベイリ皮下注30mg、153mg一般名:テクリスタマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)用法及び用量:通常、成人にはテクリスタマブ(遺伝子組換え)として、漸増期は、1日目に0.06mg/kg、その後は2~4日の間隔で0.3mg/kg、1.5mg/kgの順に皮下投与する。その後の継続投与期は、1.5mg/kgを1週間間隔で皮下投与する。なお、継続投与期において、部分奏効以上の奏効が24週間以上持続している場合には、投与間隔を2週間間隔とすることができる。薬価:テクベイリ皮下注30mg 3mL 216,930円/瓶、153mg 1.7mL 1,081,023円/瓶製造販売承認日:2024年12月27日薬価基準収載日:2025年3月19日発売日:2025年3月19日製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社

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獨協医科大学 血液・腫瘍内科【大学医局紹介~がん診療編】

今井 陽一 氏(主任教授)遠矢 嵩 氏(准教授)中村 文美 氏(講師)吉原 さつき 氏(助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴獨協医科大学病院は圧倒的症例数と最新鋭の設備で北関東の医療をリードする特定機能病院です。血液・腫瘍内科は広範囲の医療圏から多くの血液疾患の患者さんにご来院いただき、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫を中心とした造血器腫瘍から再生不良性貧血などの造血障害まで幅広く血液疾患の診断と治療にあたっています。患者さんお一人おひとりに寄り添いながら、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)などの最先端治療を積極的に導入するなど最適な血液診療の提供を心掛けています。とくに多発性骨髄腫はCAR-T細胞療法、二重特異性抗体療法を取り入れ最先端の治療を推進しています。臨床研究では、16施設の多施設共同前向き臨床研究を主導して、多発性骨髄腫の維持療法における遺伝子変異・免疫状態の変化を世界に先駆けて解明すべく取り組んでいます。基礎研究は、ゲノム・フローサイトメトリー解析、分子生物学、疾患モデルマウスを駆使して造血器腫瘍の病態解明を目指し、新規治療法の開発を目指しています。このように、私たちの教室は目の前の患者さんの癒しを第一に考えることを礎に、さまざまな形で血液診療の推進に貢献できる医療人の育成を目指しています。日光・那須の素晴らしい景観に囲まれた充実した環境で共に切磋琢磨する仲間をお待ちしております。力を入れている治療/研究テーマ当科では、急性白血病などの造血器腫瘍のほか、再生不良性貧血などの特発性造血障害も含めた幅広い血液疾患に対する診療を行っています。通常の化学療法に加えHLA半合致移植(ハプロ移植)を含む造血幹細胞移植も行い、2025年にはCAR-T細胞療法も開始し、豊富かつ多彩な臨床経験を積むことができます。また、近年は血液疾患診療を行うにも遺伝子変異の理解が必要です。当科では次世代シーケンスを用いた遺伝子変異解析も行っており、経験知と理論的理解の双方に基づいた診療を行っています。研究についても、基礎研究から臨床研究まで幅広く行っています。私個人としては造血器腫瘍の遺伝子変異と病態の関連性や、日和見ウイルス感染症にとくに注目して研究を行っています。学会参加に対する補助もあり、学会発表や論文執筆の機会も多いです。医学生/初期研修医へのメッセージ血液内科に多忙、激務といったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。当院ではチーム診療を行っており休日は交代制で十分確保できますし、残業も少なく、無理なく持続可能な形で経験や実績を積むことができると思います。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力北関東で高度な血液診療を提供できる施設は限られているため、遠方からも患者さんが来院されています。当院に対する期待と信頼を感じ、患者さんに希望を提供できるように、日々取り組んでいます。当科では症例報告や後方視的研究について学会発表をするだけではなく、多施設共同前向き研究の提案や参加をすることで、新たなエビデンスの確立にも貢献しています。基礎研究では、技術的なサポートが充実しているおかげで、診療と研究の両立が可能になっています。医局の雰囲気、魅力若手、ベテランを問わず、よりよい診療を提供するために、助け合っています。治療方針に悩む場合には、定時のカンファレンスだけでなく、随時、相談することが可能となっており、安心して診療ができます。週末・休日は当番制のため、プライベートとの両立が可能です。また、それぞれのキャリアプランに応じて、医局がサポートしてくれます。医学生/初期研修医へのメッセージ血液内科は新規薬剤や細胞療法の導入で、治療成績の向上を実感できるとてもやりがいのある科です。血液内科に興味のある先生方、一緒に頑張ってみませんか?これまでの経歴獨協医科大学病院で初期研修、国立病院機構栃木医療センターで内科専門医プログラムを修了し、2024年4月に獨協医科大学病院血液・腫瘍内科に入局しました。同医局を選んだ理由患者さんの診断から看取りまで伴走したいと思い、総合内科で学んでいましたが、より専門的な知識や技術があれば、治療や終末期といった患者さんの重要な意思決定により深く関われるのではないかと思いました。血液疾患は症状が多彩で診断の面白さがあり、急性期は集中治療の側面もあることから内科の醍醐味だと思いました。また、当医局では臨床医としてもきめ細やかな先生が研究にも従事しており、多面的に疾患や臨床を捉えている姿を見て、こういう医師になりたいと思いました。当院は県内外から多くの患者さんが集まるため血液疾患も多彩であり、他診療科との連携もしやすく、良い環境と考えました。現在学んでいること悪性リンパ腫や急性白血病の入院患者さんを担当し、化学療法について学んでいます。大学院進学予定であり、今は臨床研究の準備をしています。獨協医科大学 血液・腫瘍内科住所〒321-029 栃木県下都賀郡壬生町北小林880問い合わせ先ketsueki@dokkyomed.ac.jp医局ホームページ獨協医科大学 血液・腫瘍内科専門医取得実績のある学会日本内科学会(認定内科医・総合内科専門医)日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会日本輸血・細胞治療学会日本感染症学会日本臨床腫瘍学会研修プログラムの特徴(1)幅広い症例と専門的な指導急性白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など多様な疾患を経験でき、造血幹細胞移植やCAR-T細胞・二重特異性抗体療法など最先端の治療にも携わることができます。専門医の手厚い指導のもと、診断から治療まで実践的に学べる環境です。 (2)充実した設備と豊富な実践機会無菌室を備えた移植ユニットや最新の検査・治療設備を活用し、骨髄穿刺や腰椎穿刺などの基本手技から移植管理まで幅広く経験できます。学会発表や研究のサポートも整い、学術的な成長も後押しします。 (3)働きやすい環境とキャリア支援都市部の利便性を持ちながら、地方ならではの温かい雰囲気の中で研修でき、研修医一人ひとりに合った指導を受けられます。計画的なローテーションで血液内科の基礎をしっかり固め、専門医取得や大学院進学、海外研修など多様なキャリアを支援します。詳細はこちら

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新たな時代に向けた白血病診療の在り方と展開/日本臨床腫瘍学会

 自己複製能と多分化能を備える造血幹細胞は、複数の過程を経てさまざまな血液細胞に分化し、体内の造血系を恒常的に維持している。一方、この分化過程の各段階で生じるがん化は、白血病やリンパ腫、骨髄腫を引き起こす。 2025年3月6〜8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、教育講演の1つとして「本邦における白血病診療」と題した講演が行われた。演者の藥師神 公和氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)は、「白血病に特異的な症状はない。多くの場合、血液検査で異常が指摘されると、造血の場である骨髄の検査が実施され、診断に至る」と説明し、白血病が急性または慢性、ならびに骨髄性またはリンパ性の違いで一般的に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分類されることから、「本講演では、日本血液学会より2024年に公開された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』に沿って、各白血病の総論やアルゴリズム、クリニカルクエスチョン(CQ)の改訂点を紹介するとともに、今後の展望にも触れたい」とした。AMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について 従来のAMLの診断は、骨髄における白血病細胞がFAB分類では30%以上、WHO分類では20%以上とされてきたが、今回のガイドライン改訂版ではEuropean Leukemia Net(ELN)が2022年の改訂で採用した分類を引用している。すなわち、AMLを定義付けるような遺伝子異常(PML::RARA、CBFB::MYH11、RUNX1::RUNX1T1など)があれば、芽球比率が10%以上でAMLと診断することになった。ただし、BCR::ABL1については、CML移行期との混乱を避けるため20%以上とされた。 分類に関するほかの重要な変更点の1つとして、病歴よりも遺伝学的特徴のほうが生物学的AMLの分類に関連していることから、従来のAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)と治療関連骨髄性腫瘍の病型が削除された。 なお、遺伝子変異と染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた予後層別化システムについては、2022年のELN改訂版でFLT3-ITD変異がアレル比やNPM1変異の有無にかかわらず、すべてIntermediate群に分類された点が今回のガイドライン改訂版に記載された(ただし、FLT3阻害薬が初回治療から使用できることが前提)。このほかにも、細かい遺伝子異常が予後層別化に追加された。 急性前骨髄球性白血病(APL)以外の若年者AMLにおける治療アルゴリズムとして、今回のガイドライン改訂版ではFLT3遺伝子変異の情報を診断時に取得することが明記された。また、高齢者AMLにおいてもFLT3遺伝子変異情報の取得が記載され、藥師神氏は「基本的に初発時からFLT3遺伝子変異検査を行うことになる。なお、強力化学療法非適応症例への寛解導入療法は、CQ8『強力化学療法が適応とならない高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)を参照すること」と述べた。 これ以外の注目すべきCQとして、同氏はCQ3『若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ13『治療関連・二次性AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2Aおよび2B)を挙げた。一方、APLにおいては、CQ2『初発APLの寛解導入療法におけるDIC(播種性血管内凝固)対策として何が勧められるか』で、遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療が推奨グレード・カテゴリー3からカテゴリー2Bにアップグレードされた点を挙げた。CMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について CMLの診断時に評価すべき予後スコアは、SokalスコアやELTS(EUTOS long-term survival)スコアを使用し、治療効果はELN 2020の判定規準に従い、血液学的奏効(血液・骨髄検査所見および臨床所見で判定)、細胞遺伝学的奏効(骨髄細胞中のPhiladelphia[Ph]染色体割合で判定)、分子遺伝学的奏効(PCRによる血液細胞中のBCR::ABL1遺伝子発現量で判定)の3つのレベルで判定する。加えて、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療効果のモニタリングと戦略が、同氏より解説された。 また、注目すべきCQとして、CQ1『初発CML-CP(慢性期)に対する治療として何が勧められるか』で、TKI阻害薬が新たに1剤追加されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ3『ELNの効果判定規準によりWarningやFailureとされた症例に対する二次治療、三次治療以降は何が勧められるか』で、三次治療以降にSTAMP(specifically targeting the ABL myristoyl pocket)阻害薬が追記されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ5『同種造血幹細胞移植はCMLの治療中どのようなときに考慮すべきか』で、さまざまな状況に応じた移植の検討が推奨されること(推奨グレード・カテゴリー2A)を挙げた。 さらに、CQ6『DMR(分子遺伝学的に深い奏効)を達成しMRD(微小残存病変)が検出されなければTKI中止は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ7『CMLに対するTKI治療中にTKIの減量は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1、2Aおよび2B)、CQ8『CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2B)の改訂点が紹介された。ALLおよびCLLの主なCQの改訂点について ALLの注目すべきCQとして、CQ4『寛解期成人ALLにおけるMRDは、どのような評価方法、評価時期、閾値の判定が勧められるか』で、定量PCRによる白血病特異的融合遺伝子測定および免疫グロブリン重鎖(Ig)/T細胞受容体(TCR)遺伝子再構成測定が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、ならびに1回目のMRD測定は寛解導入療法後が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)が紹介された。同氏は、そのほかにCQ6『第一寛解期ALLの同種造血幹細胞移植には骨髄破壊的前処置と減弱前処置のどちらが勧められるか』で、適切な前処置に関する推奨(推奨グレード・カテゴリー2B)が明記された点や、CQ7『Ph陽性ALLに対する移植後TKIの維持療法は勧められるか』で、MRD陰性の時点で開始する予防的なTKI維持療法は推奨されない(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが記載された点を紹介。CQ9『再発ALLに対する再寛解導入療法の選択肢としてどのような治療が勧められるか、CAR-T細胞療法はどのようなときに考慮すべきか』で、新たな治療選択肢(推奨グレード・カテゴリー1)やCAR-T細胞療法(推奨グレード・カテゴリー2A)が追記された点についても言及した。 CLLの注目すべきCQとして、初回治療としてBTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬が推奨され(CQ2『CLL初回治療としてBTK阻害薬療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])、免疫化学療法は初回治療として推奨されない(CQ3『CLL初回治療として免疫化学療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])ことが紹介された。二次治療における治療方針の推奨(CQ4『イブルチニブ初回治療に治療抵抗性もしくは再発CLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』およびCQ5『イブルチニブ初回治療に治療不耐容のCLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』)が、ともにカテゴリー1として明記された点も紹介し、CQ7『自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症を合併したCLLに対してステロイド治療は勧められるか』では、無症候性・非活動性CLLであればステロイド治療が推奨される(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが説明された。これからの白血病診療の展望 造血器腫瘍の診断および治療について、ゲノム情報に基づく診療がWHOなどから提唱される中、つい最近、わが国においても造血器腫瘍を対象とした遺伝子パネル検査が登場した。「本邦での造血器腫瘍におけるがんゲノム医療の導入は喫緊の課題」と語る藥師神氏は、「日本血液学会が発行する『造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年度版』で遺伝子パネル検査の基盤となる情報が提供されている。そのため、新規治療薬の導入とともに、白血病診療が今後さらに前進していくことが期待される」と締めくくった。

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多発性骨髄腫、ASCT後維持療法の中止から3年後のMRD陽性転換率/Blood

 多発性骨髄腫患者に自家造血幹細胞移植(ASCT)後、レナリドミド維持療法を実施し、微小残存病変(MRD)陰性を3年間維持した後、レナリドミド療法を中止したときのMRD陽性への転換、無治療生存期間(TFS)、無増悪生存期間(PFS)を、ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのEvangelos Terpos氏らが評価した。その結果、レナリドミド維持療法中止後3年時点のTFS率は75.8%であった。また、MRD陽性に転換し維持療法を再開した12例のうち4人が進行したが全員生存しているという。Blood誌オンライン版2025年2月26日号に掲載。 この前向き研究では、骨髄および画像MRD陰性を3年間維持した後、レナリドミド維持療法を中止した多発性骨髄腫患者52例について追跡した。レナリドミド投与中止後にMRD陽性となった患者は、同用量でレナリドミド維持療法を再開した。 主な結果は以下のとおり。・レナリドミド維持療法中止時点からの追跡調査期間中央値は3年であった。・12例(23%)がMRD陽性に転換し、レナリドミド維持療法を再開した。4例(7.6%)が進行し、3 例は生化学的進行、1 例は臨床的進行であった。・PFS中央値は未到達であったが、診断時からの7年PFS率は90.2%であった。・TFS率は1年、2年、3年の順に93.9%、91.6%、75.8%であり、維持療法中止(試験開始)からのランドマークPFS率は順に96.0%、96.0%、92.9%であった。・年齢、性別、R2-ISS、導入療法の種類、強化療法使用と、PFS、TFSとの間に統計学的に有意な関連は認められなかった。 著者らは「骨髄および画像MRD陰性を3年間維持した後の維持療法の中止は、MRD転換および進行の割合が低いことと関連した。現代の多発性骨髄腫治療においては、一部の患者は奏効を台無しにすることなく、完全寛解のまま治療を受けずにいられる可能性がある」とした。

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CAR-T細胞療法後、T細胞リンパ腫に対するモニタリング必要/NEJM

 オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSimon J. Harrison氏らは、1~3レジメンの前治療歴のあるレナリドミド抵抗性多発性骨髄腫患者を対象に、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(cilta-cel)と標準治療を比較した第III相無作為化試験「CARTITUDE-4試験」において、cilta-cel投与後に末梢性T細胞リンパ腫(CAR導入遺伝子発現と組み込みを伴う悪性単クローン性T細胞リンパ増殖症)を発症した2例について報告した。著者は、この病態を「CAR導入遺伝子T細胞リンパ増殖性腫瘍(CTTLN)」と呼んでいるが、「T細胞リンパ腫の発症に対する挿入突然変異の関与は、直接的な証拠がないため現在のところ不明である」と述べている。NEJM誌2025年2月13日号掲載の報告。2例ともCAR導入遺伝子発現と組み込みを認める 症例1は、細胞遺伝学的高リスク(del[17p]およびgain[1q])の50代男性で、cilta-cel単回投与により完全奏効が得られ微小残存病変(MRD)陰性(閾値10-6)が確認された。本症例では、投与5ヵ月後に急速に増大する紅斑性鼻顔面斑が出現し、皮膚生検で異型T細胞浸潤が認められ、FDG-PETで確認された頸部リンパ節腫脹の組織でも顔面病変と同じT細胞浸潤が認められた。病変組織にはレンチウイルスDNA(0.8コピー/cell)が含まれており、その90~100%がCAR+であることが明らかになった。皮膚およびリンパ節生検組織からはTET-2変異(H1416R)が検出された。 症例2は、IgG-κ型多発性骨髄腫と診断された細胞遺伝学的高リスク(t[4;14]およびgain[1q])の50代の女性で、治療後1年で完全奏効が得られMRD陰性となった。本症例では、投与16ヵ月後に顔面や体幹、乳房などに皮膚腫瘤が出現し、自然退縮したが再発した。FDG-PETで皮膚、リンパ節、乳房、肺、骨に病変が確認され、病変細胞は主にCAR+であることが明らかになった。遺伝子解析で、CARのARID1A遺伝子への組み込みが確認され、TET2変異(Y1902H)も検出された。 両患者とも、治療によりT細胞リンパ腫は完全奏効が得られた。直接的な証拠はなし 両患者の単クローン性T細胞は、検出可能なCAR導入遺伝子発現と組み込みが認められた。これらのCTTLNの臨床遺伝学的特徴から、その発症には既存のTET2変異T細胞への遺伝子組み込みに続き、さらなるがん原性ゲノム変異の獲得など、複数の内在性または外在性の因子が寄与している可能性が示唆された。また、生殖細胞系列のゲノム変異、ウイルス感染、多発性骨髄腫の治療歴などの寄与も考えられた。しかし、T細胞性リンパ腫の発症に挿入突然変異が関与している直接的な証拠は現在のところない。 これらの結果を踏まえて著者は「多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法のベネフィットは依然としてリスクよりまさっているが、T細胞リンパ腫に対する警戒、モニタリングを行う必要がある」とまとめている。

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イサツキシマブ、未治療の多発性骨髄腫に適応追加/サノフィ

 サノフィは、イサツキシマブ(商品名:サークリサ点滴静注)について、未治療の多発性骨髄腫患者を対象としてボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(BLd)に本剤を追加する新たな併用療法(IsaBLd)の承認を2025年2月20日に取得したと発表した。今回の承認により、再発/難治性の多発性骨髄腫に加え、未治療の多発性骨髄腫に対する新たな選択肢となる。 本剤は、CD38受容体の特異的エピトープを標的とするモノクローナル抗体製剤で、日本では2020年8月に発売され、現在4種類の治療レジメンで承認されている(再発又は難治性の多発性骨髄腫における、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法と、単剤療法、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法、デキサメタゾン併用療法)。 今回の承認は、ランダム化非盲検国際共同第III相試験であるIMROZ試験の結果に基づいている。本試験は移植非適応の未治療の多発性骨髄腫446例(うち日本人25例)を対象に、BLd療法とBLd療法にイサツキシマブを上乗せしたIsaBLd療法を2:3の割合で割り付け、比較した。主要評価項目である無増悪生存期間の中央値はIsaBLd群では未達、BLd群では54.34ヵ月(95%信頼区間[CI]:45.207~推定不能)で、IsaBLd群で有意な延長が示された(ハザード比:0.596、98.5154%CI:0.406~0.876、p=0.0005、層別log-rank検定)。新たな安全性の懸念は認められなかった。<適応追加後の「効能又は効果」「用法及び用量」>●効能又は効果:多発性骨髄腫●用法及び用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回10mg/kgを、併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、以下のA法又はB法の投与間隔で点滴静注する。デキサメタゾンのみとの併用投与又は単独投与の場合(再発又は難治性の場合に限る)、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回20mg/kgを、以下のA法の投与間隔で点滴静注する。 A法:1週間間隔、2週間間隔の順で投与する。 B法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。

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多発性骨髄腫の新規治療開発を加速するMRDに基づくエンドポイント/JCO

 多発性骨髄腫(MM)の新たな治療の早期承認を実現するためには、臨床試験を迅速化するための早期エンドポイントが必要である。今回、米国・メイヨークリニックのQian Shiらは、新規診断の移植適格患者・移植不適格患者、再発/難治性(RR)の多発性骨髄腫患者において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中間エンドポイントとして微小残存病変(MRD)陰性完全奏効(CR)の可能性を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年2月12日号に掲載。 本解析では、20の多施設無作為化試験から個々の患者データを収集した。十分なデータを有する11試験(4,773 例)を解析し、9 ヵ月または 12 ヵ月における10-5を閾値としたMRD陰性CRがPFSとOSに関する臨床的有用性を予測できるかどうかを評価した。全体的なオッズ比(OR)は二変量Plackett Copulaモデルを用いて推定した。さらに、MRD陰性CRとPFS/OSにおける治療効果の相関を、線形回帰(R2加重最小二乗)モデルおよびCopula(R2Copula)モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析の結果、新規診断の移植適格患者、新規診断の移植不適格患者、再発/難治性MM患者において、9 ヵ月および 12 ヵ月におけるMRD陰性CRが、患者レベルでPFSと強い相関を示した。 ・全体的なORは3.06~16.24の範囲であり、95%CIはすべて1.0を含まなかった。・3つの集団の統合により、有望な試験レベルの相関(R2:0.61~0.70)がみられ、新規診断集団ではより強い相関(R2:0.67~0.78)がみられた。・OSについても同様の結果がみられた。 著者らは、「今回の結果は、新規診断の移植適格患者および移植不適格患者、再発/難治性MM患者を対象とした今後の臨床試験において、早期承認のための中間エンドポイントとして、治療開始後9ヵ月または12ヵ月に10-5を閾値としたMRD陰性CRを使用することを支持するもの」とした。

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ダラツムマブ配合皮下注、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に申請/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年2月14 日、ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(商品名:ダラキューロ配合皮下注)について、「高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫」を効能又は効果として、製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。 今回の申請は、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)を対象にダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ配合皮下注単剤療法の有効性と安全性を検証した国際共同第III相AQUILA試験に基づくもの。 AQUILA試験では上記患者390例を対象に、本剤群と経過観察群が比較された。結果、観察期間中央値 65.2ヵ月で、経過観察群に比べ本剤群は主要評価項目である無増悪生存期間を有意に改善した(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.36〜0.67、p<0.0001)。この解析結果は第66回米国血液学会年次総会(ASH2024)で発表され、NEJM誌オンライン版にも掲載されている。 SMMは多発性骨髄腫の前駆状態であり、異常な形質細胞が骨髄内で検出されるものの無症状である。SMMに対する標準的アプローチでは、病勢進行または臓器障害発現まで経過観察するが、最近は多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者には早期治療介入の可能性が示唆されている。

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移植不適格/移植延期の新規診断多発性骨髄腫、D-VRdがVRdより深い持続的なMRD反応(CEPHEUS)

 移植不適格の新規診断多発性骨髄腫(NDMM)患者または初期治療として移植予定のない(移植延期)患者を対象に、ダラツムマブ皮下投与+ボルテゾミブ+レナリドミド+ デキサメタゾン(D-VRd)をボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)と比較した無作為化第III相CEPHEUS試験において、D-VRdがより深い持続的な微小残存病変(MRD)反応をもたらすことが示された。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのSaad Z. Usmani氏らがNature Medicine誌オンライン版2025年2月5日号に報告した。 本試験では、移植不適格または移植延期となったNDMM患者395例を、D-VRdを 8サイクル投与後D-Rdを進行するまで投与する群(D-VRd群)とVRdを8サイクル投与後Rdを進行するまで投与する群(VRd群)に無作為に割り付けた。主要評価項目は、次世代シークエンシングによる全MRD陰性率(閾値10-5)、主な副次的評価項目は、完全奏効(CR)以上の割合、無増悪生存期間、MRD陰性持続率(閾値10-5)であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値58.7ヵ月で、MRD陰性率はD-VRd群が60.9%、VRd群が39.4%であった(オッズ比:2.37、95%信頼区間[CI]:1.58~3.55、p<0.0001)。・CR以上の割合(81.2% vs.61.6%、p<0.0001)およびMRD陰性持続率(12ヵ月以上、48.7% vs.26.3%、p<0.0001)は、D-VRd群がVRd群より有意に高かった。・進行または死亡のリスクは、D-VRd群がVRd群より43%低かった(ハザード比:0.57、95%CI:0.41~0.79、p=0.0005)。・有害事象はダラツムマブおよびVRdの既知の安全性プロファイルと同様であった。 著者らは「本研究は、移植不適格または移植延期NDMMに対する新たな標準治療として4剤併用D-VRd療法を支持するもの」としている。

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イサツキシマブの新規システムによる皮下投与、多発性骨髄腫治療で静注に非劣性(IRAKLIA)/サノフィ

 再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象に、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法(Pd)に追加してイサツキシマブ(商品名:サークリサ)をオン・ボディ・デリバリー・システム(OBDS)用いて皮下投与する方法と、同剤を静注する方法を比較した無作為化非盲検第III相IRAKLIA試験において、複合主要評価項目である客観的奏効率(ORR)などを達成し、皮下投与の静注に対する非劣性が示された。 IRAKLIA試験は、再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象に、Pdレジメンにイサツキシマブの固定用量をOBDSで皮下投与を追加する集団と、体重換算用量を静注追加する集団を比較した無作為化非盲検ピボタル第III相試験。 試験には世界252施設から531例が登録され、皮下投与群と静注群に無作為に割り付けられ、皮下投与群にはイサツキシマブの固定用量を、静注群には体重換算用量が投与された。結果、主な副次評価項目であるVGPR(very good partial response)以上の奏効率、注入に伴う反応の発現率および第2サイクルにおけるトラフ濃度を達成した。 なお、皮下投与は、Enable Injections社のenFuseハンズフリーOBDSを用いて行われた。この装置は、自動薬物送達技術を用いて、格納式の注射針から大容量薬剤の皮下投与を可能にしている。

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再発・難治性MMへのtalquetamab+teclistamab、第Ib-II相で有望(RedirecTT-1)/NEJM

 イスラエル・テルアビブ・ソウラスキー医療センターのYael C. Cohen氏らRedirecTT-1 Investigators and Study Groupが、再発・難治性の多発性骨髄腫に対するtalquetamab+teclistamab併用療法の安全性と有効性を評価するRedirecTT-1試験の第Ib-II相の結果を報告した。Grade3/4の感染症の発現頻度がそれぞれの単剤療法と比べて高率であったが、すべての用量群において高い割合の患者で奏効が観察され、推奨された第II相レジメンでは持続的な奏効が示された。talquetamab(抗Gタンパク質共役受容体ファミリーCグループ5メンバーD:GPRC5D)およびteclistamab(抗B細胞成熟抗原)は、CD3を標的としT細胞を活性化する二重特異性抗体薬であり、3種類の標準的な前治療歴を有する再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬として承認されている(本邦では承認申請中)。NEJM誌2025年1月9日号掲載の報告。第Ib-II相試験で、有害事象と用量制限毒性を評価 第Ib-II相試験は、多施設共同非無作為化非盲検試験として現在も進行中である。適格被験者の募集は、カナダ、イスラエル、韓国で行われた。第I相の用量漸増試験では、5つの用量群を評価。その結果を踏まえて第II相試験では、talquetamab 0.8mg/kg+teclistamab 3.0mg/kgの隔週投与が推奨レジメンとされた。 第Ib-II相試験の主要な目的は、有害事象と用量制限毒性の評価であった。Grade3/4の有害事象96%、奏効率は推奨レジメン群で80% 2020年12月9日~2023年4月26日に116例がスクリーニングされ、2024年3月15日時点で94例が治療を受け、そのうち44例に推奨された第II相レジメンが用いられた。 追跡期間中央値は20.3ヵ月(範囲:0.5~37.1)、推奨された第II相レジメンを受けた患者の追跡期間中央値は18.2ヵ月(0.7~27.0)であった。5つの全レジメン群において、計49例(52%)が併用療法を継続していた。年齢中央値は64.5歳、診断後期間中央値は6.1年、前治療歴中央値は4種類であった。 用量制限毒性は3例に発生した(第II相レジメン群のGrade4血小板減少症1例を含む)。 5つの全レジメン群で最も多くみられた有害事象は、サイトカイン放出症候群、好中球減少症、味覚の変化、皮疹を除く皮膚障害であった。 Grade3/4の有害事象は全レジメン群で96%に発現し、最も多くみられたのは血液学的事象であった。Grade3/4の感染症は64%に発現した。 奏効が認められた患者の割合は、第II相レジメン群で80%(髄外病変を有する患者では61%)、5つの全レジメン群で78%であった。奏効が持続している患者の割合は、18ヵ月時点で第II相レジメン群86%(髄外病変を有する患者では82%)、5つの全レジメン群77%であった。

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