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ホルモン避妊法、乳がんリスクが2割増/NEJM

 現代のホルモン避妊法をこれまで一度も使用したことがない女性と比較し、現在使用中または最近まで使用していた女性において、乳がんのリスクが高く、しかも使用期間が長いほどそのリスクは増加することが明らかとなった。デンマーク・コペンハーゲン大学のLina S. Morch氏らが、同国の女性を対象とした前向きコホート研究の結果を報告した。これまでに、エストロゲンは乳がんの発生を促進し、一方でプロゲスチンの役割はより複雑であることが示唆されていたが、現代のホルモン避妊法と乳がんリスクとの関連はほとんど知られていなかった。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。15~49歳の女性約180万例を平均約11年、前向きに追跡 研究グループは、デンマーク在住の15歳~79歳の全女性が含まれるDanish Sex Hormone Register Studyのデータを用い、1995年1月1日現在15~49歳の女性、ならびにそれ以降2012年12月31日までに15歳になった女性で、がんや静脈血栓塞栓症の既往および不妊治療歴がない女性を抽出し、National Register of Medicinal Product Statisticsからホルモン避妊法の使用、乳がんの診断ならびに潜在的交絡因子に関するデータを得て、ホルモン避妊法の使用と浸潤性乳がんリスクとの関連を評価した。解析にはポアソン回帰分析を用い、相対リスクと95%信頼区間(CI)を算出した。 1995年~2012年に、平均10.9年間、約180万例(1,960万人年)を追跡した。ホルモン避妊法の使用で乳がんリスク1.2倍、使用期間が長いほどリスク増大 180万例中1万1,517例に乳がんが発生した。ホルモン避妊法の使用歴がない女性と比較し、使用歴のある(現在使用中または最近まで使用していた)女性では、乳がんの相対リスクが1.20(95%CI:1.14~1.26)と有意に高かった。このリスクは、使用期間が1年未満では1.09(95%CI:0.96~1.23)であったのに対し、10年超では1.38(95%CI:1.26~1.51)まで上昇した(p=0.002)。ホルモン避妊法を中止しても、使用期間が5年以上の場合は、使用歴がない女性より乳がんリスクが高かった。 経口避妊薬の使用(現在使用中または最近まで使用)による乳がんリスク推定値は、各種エストロゲン・プロゲスチン配合薬により1.01~1.62と幅があった。プロゲスチンのみの子宮内避妊システム(レボノルゲストレル放出子宮内システム)の使用でも同様に、乳がんリスクが上昇した(相対リスク:1.21、95%CI:1.11~1.33)。 あらゆるホルモン避妊法の使用による乳がん診断の増加は、絶対値で10万人年当たり13件(95%CI:10~16)であった。ホルモン避妊法を1年間で7,690例が使用すると、乳がんが約1例増加することが認められた。

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~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【整形外科編】

第1回 筋骨格系の診察の基本 第2回 筋膜性疼痛とトリガーポイントについて 第3回 肉離れの診断と治療 第4回 むちうちと緊張性頭痛 第5回 肩関節の診察と五十肩 第6回 肩の痛みの鑑別第7回 腰痛の鑑別 第8回 腰痛のレッドフラッグ 第9回 腰痛の治療 第10回 膝痛の鑑別 第11回 膝関節穿刺 第12回 骨折を疑うときの診察と画像診断 第13回 骨折の初期対応 第14回 骨粗鬆症の診断と治療 「五十肩と言われたときどう診察する?」「専門医に紹介すべき腰痛は?」「膝関節穿刺のコツは?」などの整形外科領域の診療に関する疑問を、プライマリケア医視点で前野哲博氏が厳選。整形外科のスペシャリスト斉藤究氏が、日常診療に役立つノウハウを交えてそれらの疑問に答えます!第1回 筋骨格系の診察の基本 内科の診察であっても、よく診る患者から腰痛、膝痛など整形外科領域の相談を受けることもあるのではないでしょうか。整形外科といっても、実は問診が最も重要。単に痛い箇所を聞くだけでは、適切な治療につなげることはできません。問診で必ず確認すべきポイント、痛みの原因を特定するために押さえるべき診察項目を伝授します。第2回 筋膜性疼痛とトリガーポイントについて腰痛や肩こりなどの慢性的な痛みに対して、鎮痛薬を処方するしかないのでしょうか?筋膜性疼痛とトリガーポイントについて知っていると、内科でできる治療選択肢が増えます。今回は筋膜性疼痛の概念と、トリガーポイントを発見するアセスメントを紹介します。第3回 肉離れの診断と治療 内科でもよく出合う整形外科領域の訴え、肉離れはどこまで内科で診てよいのでしょうか?また内科で行うべき処置は?専門医に送るべきタイミングの判断まで、ズバリ回答します。第4回 むちうちと緊張性頭痛 むちうちの症状が長引く原因は、複数の要素が絡み合っていることだと斉藤先生は言います。なかには、緊張性頭痛をむちうち由来の症状と思っている場合も。今回は、患者の訴えが長引く原因を明らかにし、内科でできる対応を学びます。第5回 肩関節の診察と五十肩 患者さんから「五十肩」で肩が上がらない、と言われることはありませんか?いわゆる五十肩はおもに肩関節周囲炎です。今回は肩関節の診察方法、専門医に紹介すべき例、そしてプライマリケアで行える治療を挙げて、「五十肩」と言われたときの対応を解説します。 第6回 肩の痛みの鑑別肩が痛いといっても、痛みの部位やできない動作によって原因が異なります。今回は紹介すべき疾患と、保存的に診療してよい疾患を見分ける方法を、身体診察を交えて解説します。第7回 腰痛の鑑別 腰痛の8割以上が非特異的腰痛…つまり原因がわからない?これは画像検査では原因が見えないだけ。筋肉の触診や可動域の確認で診断ができるものが多くあります。しかも身体診察のコツを知れば、プライマリケアでも鑑別可能。ただし、鑑別疾患を理解していることが必須です。今回は非特異的腰痛の中で頻度が高い仙腸関節性腰痛や椎間関節性腰痛などを解説します。第8回 腰痛のレッドフラッグ 腰痛の大半は筋疲労などによる非特異的腰痛と考えても問題はないでしょう。とはいうものの、中には治療が必要な疾患も潜んでいます。拾い上げるべきレッドフラッグの症例を例に、腰痛に伴うどんな症状を見逃さずに拾い上げるべきか解説します。とくに注意すべきポイントは高齢者と若年者で異なります。それぞれの特徴的な訴えを押さえて、見逃さずに診断するコツをつかんでください。第9回 腰痛の治療 腰痛の治療はずっと湿布とNSAIDs…でいいのでしょうか?慢性化した場合ほど、全身状態の改善や心理的なケアといった取り組むべき課題があります。そしてそれらを解消していくことが、意外にも原因療法になるのです。腰痛だけでなく慢性疼痛全般に応用できる痛みの回避モデルとその対応方法は必見です。第10回 膝痛の鑑別 膝が痛いというと、真っ先に変形性膝関節症(OA)を鑑別に挙げていませんか?膝も画像偏重で診断してはダメ。まず重要なのは触診です。膝痛に関連する筋肉群を押さえておきましょう。その上で一見OAに見える症例や専門医への紹介が必要な事例の見分け方を解説します。第11回 膝関節穿刺 どんなときに膝関節穿刺が必要?引いた液で疾患の鑑別ができるので、やはり穿刺はしておきたいところ。今回はプライマリケアで膝関節穿刺を行うべきタイミングと、手技のポイントをコンパクトに解説します。ヒアルロン酸注射にも応用できる手技解説は必見です。第12回 骨折を疑うときの診察と画像診断 「骨折を見落としたくない!」これはプライマリケア医に共通の心配ではないでしょうか?今回は、骨折を疑うとき、何を見て、どう対処すればよいか、クリアカットに解説します。診察のポイントは画像より●●。これを押さえていれば、見落としを恐れることはなくなります!外来での遭遇頻度が高い、転倒や高齢者に起こりやすい骨折など、具体的な例を挙げて身体診察のコツも伝授します。第13回 骨折の初期対応 骨折を疑うときの初期対応はシンプル。対応のルールと、固定の方法をしっかり押さえておきましょう。基本に忠実に、かつ回復を妨げない固定のTIPSは必見です。第14回 骨粗鬆症の診断と治療 骨粗鬆症診療のキモは、検査、薬剤、フォロー。骨密度検査を勧めるべき患者の条件は初めに押さえましょう。スペシャリストが教える骨密度に応じた薬剤選択、長期服用による副作用が心配されるビスホスホネートの扱い方は必見です。

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卵巣予備能バイオマーカーと不妊、関連性は?/JAMA

 生殖年齢後期の女性において、血中の抗ミュラー管ホルモン(AMH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インヒビンBあるいは尿中FSHといった卵巣予備能を示すバイオマーカーの低下は、妊孕性の低下とは関連していないことが明らかとなった。米国・ノースカロライナ大学のAnne Z. Steiner氏らが、不妊歴のない妊活3ヵ月未満の30~44歳の女性を対象とした前向きコホート試験の結果を報告した。卵巣予備能のバイオマーカーは、その有益性に関するエビデンスがないにもかかわらず、生殖能の目安として用いられている。著者は「尿または血中FSHや血中AMHを用いて、女性の現在の受胎能を評価することは支持されない」と注意を促している。JAMA誌2017年10月10日号掲載の報告。卵巣予備能バイオマーカーを測定し、1年間にわたり受胎率を評価 研究グループは2008年4月~2016年3月の期間で、ノースカロライナ州にあるローリー-ダーラムの地域コミュニティで募集した、不妊歴のない妊活3ヵ月未満の30~44歳の女性981例を対象に、卵胞期前期の血清AMH、血清FSH、血清インヒビンB、尿中FSHを測定した。 主要評価項目は、6周期と12周期までの累積受胎率および相対的な受胎確率(特定の月経周期における受胎率)とし、妊娠テスト陽性を受胎と定義した。 計750例(平均年齢33.3歳[SD 3.2]、白人77%、過体重または肥満36%)から血液と尿の検体が提供され、解析に組み込んだ。バイオマーカー低値と正常値の女性で受胎率に有意差なし 年齢、BMI、人種、現在の喫煙状況、ホルモン避妊薬使用の有無で補正後、妊活6周期までの推定受胎率は、AMH低値(<0.7ng/mL)群(84例)で65%(95%信頼区間[CI]:50~75%)、AMH正常値群(579例)で62%(同:57~66%)と両群で有意差はなかった。妊活12周期までの推定受胎率比較においても、有意差は示されなかった(AMH低値群84%[同:70~91%] vs. 正常値群75%[同:70~79%])。 血清FSHについても同様に、妊活6周期までの推定受胎率は高値(>10mIU/ml)群(83例、63%[95%CI:50~73%])と正常値群(654例、62%[同:57~66%])で有意差はなく、12周期までの推定受胎率も有意差はなかった(82%[同:70~89%] vs.75%[同:70~78%])。 尿中FSH値についても、高値(>11.5mIU/mg creatinine)群の妊活6周期までの推定受胎率(69例、61%[95%CI:46~74%])は、正常値群(660例、62%[同:58~66%])と有意差はなく、妊活12周期までの推定受胎率も有意差はなかった(70%[同:54~80%] vs.76%[同:72~80%])。 インヒビンB値に関しては、測定しえた737例において特定の月経周期での受胎率との関連性が確認されなかった(1-pg/mL増加当たりのハザード比:0.999、95%CI:0.997~1.001)。 なお著者は、出生ではなく受胎を主要評価項目としていること、排卵は評価されていないこと、男性の精液検体は提供されていないことなどを研究の限界として挙げている。

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国民病「腰痛」とロコモの関係

 2017年9月7日、日本整形外科学会は都内において、10月8日の「骨と関節の日」を前に記者説明会「ロコモティブシンドロームと運動器疼痛」を開催した。今月(10月)には、全国各地で講演会などのさまざまな関連行事が予定されている。予防にも力を入れる整形外科 はじめに理事長のあいさつとして、山崎 正志氏(筑波大学医学医療系整形外科 教授)が、学会の概要と整形外科領域の説明を行った。 わが国において整形外科医師が関わる疾患は幅広く、関節、脊髄、骨粗鬆症、外傷など運動器疾患全般を診療の範囲としている。近年では、運動器の障害から要介護となるリスクが高まることからロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称:ロコモ)の概念を提唱し、2010年に「ロコモチャレンジ! 推進協議会」を設立、運動器障害の予防、健康寿命の延長を期している。また、この「ロコモ」の認知度の向上にも注力し、学会では2022年までに認知度80%(2017年現在46.8%)を目標として掲げている。 山崎氏は「今回の講演では、国民の有訴率で男女ともに上位にある『腰痛』を取り上げた。運動器疾患に伴う疼痛であり、愁訴も多いので理解を深めていただきたい」とあいさつを終えた。腰痛にもトリアージが肝心 続いて、山下 敏彦氏(札幌医科大学医学部整形外科学講座 教授)が「国民病・腰痛の“原因不明”の実際とは?  痛みに関する誤解と診断・治療の最新動向」をテーマに講演を行った。 まず、ロコモの要因となる疾患と痛みの関係について触れ、主な原因疾患として変形性膝関節症(患者数2,530万人)、腰部脊柱管狭窄症(同600万人)、骨粗鬆症(同1,070万人)を挙げ、これらは関節痛、下肢痛、腰背部痛を引き起こすと説明。筋骨格系の慢性痛有病率は15.4%で、およそ1,500万人が慢性痛を有し、とくに腰、頸、肩の順に多いという1)。 こうした慢性痛による運動困難は筋力低下をもたらし、これがさらに運動困難を誘引、脊椎・関節の変性を惹起して、さらなる痛みを生む。また、痛みがうつ状態を招き、引きこもりにより脳内鎮痛を低下させて痛みの除去を困難にするといった、悪循環に陥ると指摘する。 次に痛みの中でも「腰痛」に焦点を当て、その原因を探った。従来、腰痛の原因は、その85%が不明とされていたが、近年の研究では78%の原因が特定可能で、22%は非特異的腰痛だとする2)。特定できる腰痛の原因は椎間関節性、筋・筋膜性、椎間板性の順に多く、心因性腰痛はわずか0.3%にすぎないという。そして、腰痛診断ではトリアージが大切であり、重篤な順に、がんや化膿性脊椎炎などの重篤な疾患による腰痛(危険な腰痛)、腰椎椎間板ヘルニアや椎体骨折などの神経症状を伴う腰痛(神経にさわる腰痛)、深刻な原因のない腰痛(非特異的腰痛も含む)となる。とくに危険な腰痛の兆候として「安静にしても痛みがある」、「体重減少が顕著である」、「発熱がある」の3点を示し、これに神経症状(足のしびれ・痛み、麻痺)が加われば、早急に専門病院などでの受診が必要とされる。多彩な治療で痛みに対処 運動器慢性痛の治療は、現状では完全な除痛が難しい。痛みの緩和とQOL・ADLの改善をゴールとして、薬物療法、理学療法、手術療法、生活指導、心理療法(認知行動療法)が行われている。 薬物療法では、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、ステロイド、プレガバリン、抗うつ薬、オピオイドが使用されるが、個々の痛みの性質に応じた薬剤の選択が必要とされる。 理学療法では、温熱療法、電気療法のほかストレッチや筋力増強訓練などの運動療法があり、運動は廃用性障害による身体機能不全の改善となるだけでなく、脳内鎮痛が働くことで痛みの緩和も期待されている。 手術療法は、機能改善や痛みの軽減を目的として変形性膝関節症の人工関節置換術などが行われているが、近年では術後の痛みの少なさ、早期離床が可能、入院期間の短縮、早い職場復帰などのメリットから最小侵襲手術(MIS)が行われている。 心理療法(認知行動療法)では、運動、作業、日記療法などが行われ、「腰痛でできないことよりも、できることを探す」ことで痛みを和らげ、患者さんが願う生活が過ごせることを目指している。 腰痛の予防では、各年代に合ったバランスのとれた食事、体操、水泳、散歩などの適度な運動、正座や中腰を避けるなどの生活様式の工夫などが必要とされる。 最後に山下氏は「慢性痛では、民間療法で済ませている人が多い。しかし、先述の危険な兆候があれば早期に医療機関、整形外科への受診をお勧めする。また、痛みで仕事、家事、学業、趣味・スポーツができない、毎日が憂鬱であれば整形外科を受診し、痛みの治療をしてもらいたい」と語りレクチャーを終えた。

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新規抗体薬ロモソズマブ、骨粗の骨折リスク有意に減少/NEJM

 骨折リスクが高い骨粗鬆症の閉経後女性において、新たな骨粗鬆症治療薬ロモソズマブ(承認申請中)を12ヵ月間投与し、その後アレンドロネートを12ヵ月投与した群は、24ヵ月間アレンドロネートのみを投与した群と比べて有意に骨折リスクが低かった。米国・アラバマ大学のKenneth G. Saag氏らが、第III相の国際多施設共同無作為化試験の結果を発表した。ロモソズマブは、骨形成モノクローナル抗体であるが、スクレロスチンに結合し骨形成を増加させる一方で、スクレロスチンを阻害し骨吸収を減少させるという二重の効果を有する。NEJM誌オンライン版2017年9月11日号掲載の報告。閉経後女性4,093例を対象に無作為化試験でロモソズマブの有効性と安全性を評価 研究グループは、骨粗鬆症で脆弱性骨折歴のある閉経後女性4,093例を登録し、12ヵ月間にわたりロモソズマブ(210mg)の月1回皮下投与を受ける群、またはアレンドロネート(70mg)の週1回経口投与を受ける群に、無作為に二重盲検下で1対1の割合で割り付けた。両群は続いて12ヵ月間、オープンラベル下でアレンドロネートの投与を受けた。 主要エンドポイントは、24ヵ月時点の新たな脊椎骨折の累積発生率と、主要解析の期間(臨床的骨折が330例以上で確認後)における臨床的骨折(非脊椎骨折、症候性の脊椎骨折)の累積発生率であった。 副次エンドポイントは、主要解析期間時の非脊椎および大腿骨近位部骨折の発生率などであった。また、安全性について、重篤な心血管有害事象、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折などを評価した。主要および副次エンドポイントの骨折リスク、ロモソズマブ投与群で有意に低率 24ヵ月の間に発生した新規脊椎骨折は、ロモソズマブ-アレンドロネート群(ロモソズマブ併用群)6.2%(127/2,046例)、アレンドロネート-アレンドロネート群(アレンドロネート単独)11.9%(243/2,047例)であり、ロモソズマブ併用群でリスクが48%低かったことが観察された(リスク比:0.52、95%信頼区間[CI]:0.40~0.66、p<0.001)。 臨床的骨折の発生は、ロモソズマブ併用群9.7%(198/2,046例)、アレンドロネート単独群13.0%(266/2,047例)で、ロモソズマブ併用群のリスクが27%低かった(p<0.001)。また非脊椎骨折リスクは、ロモソズマブ併用群のリスクが19%低く(8.7%[178/2,046例] vs.10.6%[217/2,047例]、p=0.04)、大腿骨近位部骨折リスクは、ロモソズマブ併用群でリスクが38%低かった(2.0%[41/2,046例]vs.3.2%[66/2,047例]、p=0.02)。 すべての有害事象および重篤有害事象の発生は両群で類似していたが、1年の間(各単独投与期間中)に確認された重篤心血管有害事象の頻度は、ロモソズマブ群がアレンドロネート群よりも高率であった(2.5%[50/2,040例]vs.1.9%[38/2,014例])。また、オープンラベル下でアレンドロネートを投与した期間において、顎骨壊死(ロモソズマブ併用群1例、アレンドロネート単独群1例)、非定型大腿骨骨折(各群2例、4例)が観察されている。

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2017年度 総合内科専門医試験、直前対策ダイジェスト(前編)

【第7回】~【第12回】は こちら【第1回 呼吸器】 全7問呼吸器領域は、ここ数年で新薬の上市が続いており、それに伴う治療方針のアップデートが頻繁になっている。新薬の一般名や承認状況、作用機序、適応はしっかり確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肺結核について正しいものはどれか?1つ選べ(a)IGRA(QFT-3G・T-SPOT)は、冷蔵保存して提出する(b)医療者の接触者健康診断において、IGRAによるベースライン値を持たない者には、初発患者の感染性期間における接触期間が2週間以内であれば、初発患者の診断直後のIGRAをベースラインとすることが可能である(c)デラマニドはリファンピシン(RFP)もしくはイソニアジド(INH)のどちらかに耐性のある結核菌感染に使用可能である(d)レボフロキサシンは、INHまたはRFPが利用できない患者の治療において、カナマイシンの次に選択すべき抗結核薬である(e)結核患者の薬剤感受性検査判明時の薬剤選択としてINHおよびRFPのいずれも使用できない場合で、感受性のある薬剤を3剤以上併用することができる場合の治療期間は、菌陰性化後24ヵ月間とされている(f)潜在性結核感染症(LTBI)の標準治療は、INH+ RFPの6ヵ月間または9ヵ月間である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第2回 感染症】 全5問感染症領域では、耐性菌対策とグローバルスタンダード化された部分が出題される傾向がある。また、認定内科医試験に比べて、渡航感染症に関する問題が多いのも特徴である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)感染症法に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)鳥インフルエンザはすべての遺伝子型が2類感染症に指定されている(b)レジオネラ症は4類感染症に指定されており、届出基準にLAMP法による遺伝子検出検査は含まれていない(c)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は4類感染症に指定されており、マダニを媒介とし、ヒト‐ヒト感染の報告はない(d)鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除くインフルエンザ感染症はすべて5類定点把握疾患である(e)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症は5類全数把握疾患に指定されているが、保菌者については届出の必要はない例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第3回 膠原病/アレルギー】 全6問膠原病領域では、ほぼ毎年出題される疾患が決まっている。リウマチと全身性エリテマトーデス(SLE)のほか、IgG4関連疾患、多発性筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)についてもここ数年複数の出題が続いている。アレルギーでは、クインケ浮腫、舌下免疫療法、アスピリン喘息が要注意。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)全身性エリテマトーデス(SLE)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)疾患活動性評価には抗核抗体を用いる(b)神経精神SLE(NPSLE)は、血清抗リボゾームP抗体が診断に有用である(c)ヒドロキシクロロキンは、ヒドロキシクロロキン網膜症の報告があり、本邦ではSLEの治療として承認されていない(d)ベリムマブは本邦で承認されており、感染症リスクの少なさより、ステロイド併用時のステロイド減量効果が期待できる(e)ミコフェノール酸モフェチル(MMF)が、2016年5月にループス腎炎に対して承認になり、MMF単独投与によるループス腎炎治療が可能となった例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第4回 腎臓】 全5問腎臓領域では、ネフローゼ症候群はもちろん、急性腎障害、IgA腎症、多発性嚢胞腎についても、症状、診断基準、治療法をしっかり押さえておきたい。また、アルポート症候群と菲薄基底膜病も、出題される可能性が高い。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)次の記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)血清または血漿シスタチンCを用いたGFR推算式は年齢・性差・筋肉量に影響を受けにくい(b)随時尿で蛋白定量500mg/dL、クレアチニン250mg/dL、最近数回での1日尿中クレアチニン排泄量1.5gの場合、この患者の実際の1日尿蛋白排泄量(g)は2g程度と考えられる(c)70歳、検尿で尿蛋白1+、血尿-、GFR 42mL/分/1.73m2(ただしGFRの急速な低下はなし)の慢性腎臓病(CKD)患者を認めた場合、腎臓専門医への紹介を積極的に考える(d)食塩摂取と尿路結石リスクの間に相関はないとされている(e)日本透析医学会による「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」2015年版によると、血液透析(HD)・腹膜透析(PD)・保存期CKD患者のいずれにおいても、複数回の検査でHb値10g/dL未満となった時点で腎性貧血治療を開始することが推奨されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第5回 内分泌】 全5問内分泌領域は、甲状腺疾患、クッシング症候群は必ず出題される。さらに認定内科医試験ではあまり出題されない先端巨大症、尿崩症もカバーしておく必要があり、診断のための検査と診断基準についてしっかりと押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)先端巨大症について正しいものはどれか?1つ選べ(a)重症度にかかわらず、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」による医療費助成を受けることが可能である(b)診断基準に「血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない」という項目が含まれている(c)診断基準に「軟線撮影により9mm以上のアキレス腱肥厚を認める」という項目が含まれている(d)骨代謝合併症として、変形性関節症・手根管症候群・尿路結石・骨軟化症が挙げられる(e)パシレオチドパモ酸塩徐放性製剤は高血糖のリスクがあり、投与開始前と投与開始後3ヵ月までは1ヵ月に1回、血糖値を測定する必要がある  例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第6回 代謝】 全5問代謝領域では、糖尿病、肥満症、抗尿酸血症は必ず出題される。加えて骨粗鬆症とミトコンドリア病を含む、耐糖能障害を来す疾患が複数題出題される。とくに骨粗鬆症は、内科医にはなじみが薄いがよく出題される傾向があるので、しっかりとカバーしておこう。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肥満に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)本邦における高度肥満は、BMI30以上の肥満者のことをいう(b)肥満関連腎臓病の腎組織病理像は膜性腎症像を示す(c)「肥満症診療ガイドライン2016」 において、減量目標として肥満症では現体重からの5~10%以上の減少、高度肥満症では10~20%以上の減少が掲げられている(d)PCSK9阻害薬であるエボロクマブの効能・効果に、「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分な場合に限る」と記載があり、処方にあたってはHMG-CoA還元酵素阻害薬との併用が必要である(e)低分子ミクロソームトリグリセリド転送たん白(MTP)阻害薬であるロミタピドメシルは、ヘテロ接合体家族性高コレステロール血症に適応がある例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第1回~第6回の解答】第1回:(b)、第2回:(e)、第3回:(b)、第4回:(a)、第5回:(b)、第6回:(d)【第7回】~【第12回】は こちら

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骨粗鬆症のBP治療後、新規抗体製剤vs.テリパラチド/Lancet

 経口ビスホスホネート系薬で治療を受ける、閉経後の骨粗鬆症女性の治療薬移行について、開発中のヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤romosozumab(AMG 785、承認申請中)が既存薬のテリパラチド(フォルテオ)との比較において、股関節部の骨密度(BMD)を上昇させたことが報告された。デンマーク・オーフス大学病院のBente L. Langdahl氏らによる第III相の非盲検無作為化実薬対照試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年7月26日号で発表された。ビスホスホネート系薬の既治療は、テリパラチドの骨形成作用を減弱することが確認されている。著者は、「今回示されたデータを、骨折リスクの高い患者の臨床的意思決定のために周知すべきである」と述べている。ビスホスホネート系薬既治療患者を対象に無作為化試験 試験は、北米、中南米、欧州の46施設で行われた。閉経後の骨粗鬆症女性(55歳以上90歳以下)で、スクリーニング以前に3年以上ビスホスホネート系薬を服用、およびスクリーニングの前年にアレンドロネート(アレンドロン酸ナトリウム錠)を服用しており、BMD Tスコアが、total hip、大腿骨頸部、腰椎で-2.5以下、さらに骨折歴がある患者を登録した。 研究グループは適格患者を、romosozumab皮下投与群(月1回210mg)またはテリパラチド皮下投与群(1日1回20μg)に無作為に割り付けて追跡した。 主要エンドポイントは、ベースラインから12ヵ月時点(6~12ヵ月の平均)のDEXA法で測定したBMDの%変化とし、線形ミックス効果モデルを用いて反復測定を行い、6~12ヵ月時点の平均治療効果を表した。 無作為化を受けた患者は全員、ベースラインで測定を受けた。有効性の解析には、その後少なくとも1回測定を受けた患者を包含した。12ヵ月間のtotal hip BMDの平均%変化、2.6% vs.-0.6% 2013年1月31日~2014年4月29日に、436例がromosozumab群(218例)またはテリパラチド群(218例)に無作為に割り付けられた。有効性解析には、romosozumab群206例、テリパラチド群209例が包含された。 ベースラインからの12ヵ月間で、total hip BMDの平均%変化は、romosozumab群2.6%(95%信頼区間[CI]:2.2~3.0)に対し、テリパラチド群は-0.6%(-1.0~-0.2)で、群間差は3.2%(95%CI:2.7~3.8、p<0.0001)であった。 有害事象の頻度は、概して両群間で一致していた。報告の頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎(romosozumab群28/218例[13%]、テリパラチド群22/214例[10%])、高カルシウム血症(romosozumab群2/218例[<1%]、テリパラチド群22/214例[10%])、関節痛(romosozumab群22/218例[10%]、テリパラチド群13/214例[6%])であった。重篤有害事象は、romosozumab群で17例(8%)、テリパラチド群は23例[11%]報告されたが、いずれも治療に関連した事象とは判定されなかった。なお、有害事象により試験薬投与が中断されたのは、romosozumab群は6例(3%)、テリパラチド群は12例(6%)であった。

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高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。 高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。高齢者の高血圧診療は高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。高齢者においても降圧治療による脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。高齢者高血圧には認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が示唆されているものの、一定の結論は得られていない。よって、現段階では認知機能の評価により、降圧治療を差し控える判断や降圧薬の種類を選択することにはつながらないため、原則として認知機能にかかわらず、降圧治療を行う。ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。高齢者高血圧への降圧治療で転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨 高齢者高血圧への降圧治療を開始する際には、骨折リスクを増大させる可能性があるので注意を要する。一方で、サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、合併症に伴う積極的適応を考慮したうえで、転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる可能性があるため、注意が必要である。高齢者高血圧への降圧治療でCa拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性 高齢者高血圧への降圧治療でもっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。しかし、「利尿薬」という名称から、高齢者高血圧患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。高齢者高血圧の降圧薬治療開始や降圧目標は個別判断が必要なケースも 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、65~74歳では140/90mmHg未満、75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。エンドオブライフにある高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。高齢者高血圧の「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載 高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。 また、高齢者高血圧の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間~3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシーやアドヒアランスの対策などのポイントが挙げられている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第37回

第37回:潜在性甲状腺機能亢進症はどのような時に治療すべきか?監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム TSH、Free T4を臨床の場や人間ドックで測定することはよくありますが、FreeT4が正常、TSHが基準値より低値を示す場合があり、稀に潜在性甲状腺機能亢進の状態を認める患者と遭遇することがあるかと思います。こういった場合にどのようなリスクを考え、どのような患者に対して治療や専門家への相談を行うべきでしょうか。今回の記事では、潜在性甲状腺機能亢進症に対する米国甲状腺学会の治療方針について紹介したいと思います。 以下、American Family Physician 2017年6月1日号より1) より<潜在性甲状腺機能亢進症とは>潜在性甲状腺機能亢進症はFreeT4とT3値が正常であるが、TSHが低値または検出されない状態と定義される。潜在性甲状腺機能亢進症はTSH値で2つのカテゴリーに分類される。1)TSH値が低値だが検出される(たいていは0.1~0.4mlU/L)2)TSH値が0.1mlU/L以下である潜在性甲状腺機能亢進症は、内因性に過剰に甲状腺ホルモンが作られたり、甲状腺がんを抑制するために甲状腺ホルモンの内服を行っていたり、甲状腺機能低下症の患者に対し過剰に甲状腺ホルモン補充療法を行った結果生じる。内因性の潜在性機能亢進症の最も頻度の高い原因としては、Graves(Basedow)病、中毒性甲状腺結節、中毒性多結節性甲状腺腫(プランマー病)が挙げられる。一時的な甲状腺TSHの抑制の原因としては、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、産後甲状腺炎が挙げられる。潜在性甲状腺機能亢進症の最も多い原因は、甲状腺ホルモン補充療法によるものである。低TSHが、潜在性甲状腺機能亢進症によるものか、その他の甲状腺の機能亢進と関係しない原因によるものかを病歴などから鑑別する必要があり、その他の原因としては、ドパミンやグルココルチコイドの使用、Sick Euthyroid Syndrome(低T3症候群)、TSH産生下垂体腺腫などが挙げられる。<どのような影響があるのか?>これまでの研究では、潜在性甲状腺機能亢進症と心血管系イベントや骨折のリスクについての関係性が示唆されている。最新の研究では、TSH値が0.1以下の潜在性甲状腺機能亢進症の患者で、とくに高齢者における心血管系イベントや骨折のリスクに対してのエビデンスが明らかとなってきている。<心血管系への影響>平均心拍数の増加、心房細動と心不全のリスク、心左室の腫瘤形成、拡張不全、心拍数の変動性を減少させる。とくに65歳以上の患者において、Euthyroidの患者と比較すると、潜在性甲状腺機能亢進症の患者は心血管系のイベントが多くなる。<骨・ミネラルの代謝への影響>すべての甲状腺機能亢進を来す病態において、骨代謝回転の増加や、骨密度(とくに皮質骨)の減少を認め、骨折のリスクとなることが明らかとなっている。<いつ治療を考慮するべきか?>米国甲状腺学会では、以下のような推奨を出している。治療を行うべき場合TSH値が持続的に0.1mlU/L未満の患者の中で、1)年齢が65歳以上の場合2)65歳未満においては、心疾患・骨粗鬆症の既往や、甲状腺機能亢進による症状を有する場合3)65歳未満、閉経後でエストロゲンやビスホスホネートの内服がない場合治療を考慮すべき場合TSH値が持続的に0.1mlU/L未満の患者の中で、1)TSH値が0.1~0.4mlU/Lである65歳以上の患者2)TSH値が0.1mlU/L未満で無症状の65歳未満の患者3)TSH値が0.1~0.4mlU/Lで無症状だが心疾患の既往がある、または甲状腺機能亢進による症状が存在する65歳未満の患者4)TSH値が0.1~0.4mlU/Lで無症状の閉経後女性で、エストロゲンやビスホスホネートの内服のない65歳未満の患者※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、 詳細に関しては原著に当たることを推奨いたします。 1) DONANGELO I,et al. Am Fam Physician. 2017;95:710-716

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亜鉛欠乏症のあなどれない影響

 2017年4月26日、都内においてノーベルファーマ株式会社は、「見落とされがちな『亜鉛不足』の最新治療~日本初となる低亜鉛血症治療薬の登場~」と題してプレスセミナーを開催した。セミナーでは、2008年に承認された同社の酢酸亜鉛水和物(商品名:ノベルジン)が2017年3月に低亜鉛血症にも追加承認されたことから、小児に多い亜鉛欠乏症の概要を小児科専門医の視点から、そして、亜鉛が肝疾患に与える影響について消化器専門医の視点から講演が行われた。亜鉛欠乏症はサプリメントでは補えない はじめに「けっして稀ではない亜鉛欠乏」と題し児玉浩子氏(帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 学科長・教授/帝京大学医学部小児科)が、亜鉛欠乏症の概要を説明した。 亜鉛は、人にとり必須微量ミネラルであり、成人男性なら約2gが体内に存在、各種酵素の形成や造血機能、皮膚代謝、味覚維持などの働きを担っている。亜鉛が欠乏すると、皮膚炎や脱毛、貧血、味覚障害、下痢、食欲低下、骨粗鬆症などの症状がみられ、性腺機能低下やとくに小児であれば発育障害を引き起こす。 「こうした身近にあるはずの亜鉛欠乏について、一般臨床ではあまり知られておらず、主な教科書や論文でも本症の症状が鑑別診断の対象とされていない。そのため、多くの場合、医療現場で見逃されている可能性がある」と児玉氏は指摘する。 「亜鉛欠乏症の診断指針」では、一定の症状(たとえば皮膚炎、口内炎、食欲低下、発育障害、易感染性、味覚障害など)があり、血清アルカリホスファターゼ(ALP)が低値で、症状の原因となる他の疾患が否定され、血清亜鉛値が60μg/dL未満で、亜鉛補充により症状が改善する場合を本症と確定診断する。 そして、亜鉛欠乏症と診断された場合、食事療法やサプリメントの摂取では改善しないことが多く、亜鉛製剤による治療が必要となる。亜鉛欠乏症の治療薬であるノベルジンを使用する際は、患者の病状や血清亜鉛値を参考としながら、成人および体重30kg以上の小児ならば1回25~50mgを開始用量としつつ、1日2回食後に経口投与する(最大150mg/日)。体重30kg未満の小児(なお、新生児は、現在臨床試験中)であれば1回25mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する(最大75mg/日)。また、投与時に気を付けたい有害事象としては、嘔気、腹痛などの消化器症状、銅欠乏による貧血、白血球減少がある。いずれも重篤なものではないが、投与中は定期的血清亜鉛値の測定とこれによる減量と中止、必要な銅や鉄の補充を行う必要がある。 最後に児玉氏は「小児で食欲不振、低身長があれば亜鉛不足が推定される。また、成人であれば味覚異常、脱毛、貧血、長期の薬剤使用などがあれば亜鉛欠乏症を疑うサインとなる。日常診療でも本症を思い浮かべてもらい、疑ったら血清亜鉛値を検査するなど診療に生かしてもらいたい」と思いを語った。亜鉛欠乏が肝疾患に与える影響 次に片山和宏氏(大阪国際がんセンター 副院長/臨床研究センター長 肝胆膵内科)が、「亜鉛と肝疾患」をテーマに亜鉛欠乏が肝疾患に与える影響について解説した。 亜鉛には、タンパク合成を行う重要な働きがあり、欠乏すると肝臓の代謝不良から慢性肝疾患へ至るとされている。実際、亜鉛が不足し、肝臓でタンパク質の代謝が鈍るとアンモニアの処理ができず、肝性脳症になることが知られている。 そこで、片山氏が肝硬変患者の亜鉛欠乏の度合いを調べた研究では、血中アルブミン濃度が3.5g/dLまで下がると亜鉛欠乏(<70μg/dL)率は約90%になったという。また、肝硬変のタンパク代謝(アルブミン)と生命予後の関係の調査では、タンパク質合成がうまく働かず血中アルブミン濃度が下がると3.5g/dLを境に5年生存率にも大きく影響する。 そのほか、C型肝炎患者に亜鉛製剤投与の長期間経過観察(2,500日超)では、亜鉛濃度が80μg/dL以上維持できた場合、有意に発がん率が少なかったこと、動物モデルではあるが亜鉛投与で肝臓の線維化が抑制されたことなどが報告された。 臨床現場で使用されている「肝硬変診療ガイドライン2015(栄養編)」の中では、亜鉛補充は「中等度のエビデンス」とされ、亜鉛の必要性は認識されているもののエビデンスレベルが低く、今後エビデンスの集積が待たれるという。 最後に片山氏は「次回の改訂では、ガイドラインの栄養療法の項目で、エネルギー低栄養を認めたら低亜鉛血症への診療へと移る項目ができることを期待したい」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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ワルファリン服用者の骨は脆い?(解説:後藤 信哉 氏)-676

 ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する抗凝固薬である。ワルファリン服用者にはビタミンKの摂取制限を指導する。ビタミンKは「ビタミン」であるため、摂取制限により「ビタミン」不足の症状が起こる場合がある。ビタミンKを必要とする生体反応として骨代謝は重要である。ワルファリンはビタミンK依存性の凝固蛋白の機能的完成を阻害して、血液凝固を阻害する。骨の石灰化に必須のオステオカルシンの活性化にもビタミンKが必要である。ビタミンK摂取制限、ワルファリンの服用により、出血以外に骨粗鬆症も懸念される。もともと高齢で骨が弱い症例が、ワルファリン治療の対象となる。臨床的仮説として「ワルファリンの服用者では非服用者よりも骨粗鬆症性骨折が増える」とするのは妥当である。 本研究は香港の無名化臨床データベースを用いた。ワルファリンとダビガトランの服用はランダム化されていない。リスク因子などをそろえるpropensity matchを行っているが、臨床医がワルファリンまたはダビガトランを選択した個別の理由があると考えると、リスク因子がそろってワルファリン群とダビガトラン群がランダムに割り付けられていないことが本研究の限界である。2年程度の観察にて、骨粗鬆症性骨折はダビガトラン群の1.0%、ワルファリン群の1.5%に起こった。ランダム化比較試験が示した年間3%以上の重篤な出血の半分以下ではあるが、ワルファリン使用例では骨折にも注意が必要である。 50年の経験を有するワルファリンの欠点を、臨床医は十分に理解している。心房細動症例に起こる心原性脳塞栓症は予防したい。しかし、抗凝固薬には欠点がある。ワルファリンの欠点のうち、一部はNOACsにより改善できた。しかし、重篤な出血を起こすNOACsは安心して長期服用できる薬ではない。ブームに乗ってNOACsの使用推奨をするよりも、NOACsの出血の問題を克服できる次世代の薬剤開発に、時間とエネルギーを割くべきである。 本研究では香港の無名化(annotated)臨床データを用いている。電子カルテから個人を特定できる情報をすべて抜き取って院内のサーバーに蓄積する。そのannotatedな臨床データを日本中から集めて解析すれば、日本のデータを使って多くのclinical questionに関する回答を不完全ながら得ることができる。これはアカデミアの研究というよりも、コンピューターによる自動化で可能な事務仕事といえるレベルでできる。オープンソースにして誰もが解析可能とすれば、日本の臨床研究の質を楽に、一気に引き上げることができる。法整備ができれば、電子カルテ業界は競ってpopulation scienceのデータ化を容易にできるシステムを作ると思う。多くの人が自分でデータベースを操作してみれば、臨床医も「エビデンス」の限界を直感できるであろう。技術的には十分可能と思うので、あとは国民のコンセンサスの問題である。

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高齢者における潜在性甲状腺機能低下症への対応(解説:吉岡 成人 氏)-673

潜在性甲状腺機能低下症とその頻度 血中サイロキシン(T4)あるいは遊離サイロキシン(FT4)値は基準範囲にありながら、血中TSHのみが基準値上限を超えて高値を示している場合が潜在性甲状腺機能低下症である。血清TSHが10μU/mLを超え、血清FT4が基準値を下回っている場合は顕性甲状腺機能低下症と診断される。潜在性甲状腺機能低下症の診断には血清TSHの測定が最も重要であるが、TSH値の基準値の上限は加齢に伴い変化し、40歳以上では10歳ごとに0.3μU/mL上昇すると報告されており1)、日本人においても同様の傾向が確認されている2)。 日本における潜在性甲状腺機能低下症の疫学を検討した聖路加国際病院予防医療センターの成績によれば、頻度は、健診受診者のうち4.03%(38万6,846人中1万5,540人、男性1.99%、女性2.03%)、男女とも加齢とともに頻度が増加することが報告されている3)。潜在性甲状腺機能低下症の治療 潜在性甲状腺機能低下症であることのデメリットとしては、倦怠感などの自覚症状の出現、脂質代謝への悪影響、動脈硬化の進展、心機能の低下、妊婦においては流・早産の増加、児の精神発育遅延などが挙げられる。しかし、潜在性甲状腺機能低下症を治療することに対しての十分なエビデンスは確立しておらず、一般的には、TSHが10μU/mL以上の場合に甲状腺ホルモンを補充することが多いものの、TSHが10μU/mL未満の「軽症」患者にどのように対応するかについては意見の一致をみていない。日本甲状腺学会の「Subclinical hypothyroidism潜在性甲状腺機能低下症:診断と治療の手引き」にはTSHが10μU/mLを持続して超える場合に補充を行うとしながらも、甲状腺ホルモンを補充することの有用性と危険性を勘案し、個々の患者の状況を総合的に判断して補充の適応を考慮すべきとしている4)。一般に、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体が陽性の場合には顕性甲状腺機能低下症に移行しやすいことが知られており、慢性甲状腺炎などの疾患が背景に隠れていないかどうかを判定することも重要である。また、甲状腺ホルモンを補充することの有害性としては、潜在性冠不全の顕性化、心房細動の誘発、骨粗鬆症の進行などが挙げられ、80歳以上の高齢者では慎重に治療の適否を判定すべきである。高齢潜在性甲状腺機能低下症患者への対応 NEJM誌オンライン版2017年4月3日号に65歳以上の高齢潜在性甲状腺機能低下患者を対象として甲状腺ホルモンを投与することの有用性を検討した無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果が掲載されている5)。737名(女性396名)、平均年齢74.4歳の潜在性甲状腺機能低下症患者に甲状腺ホルモンを投与しても、甲状腺機能低下症の症状や甲状腺関連QOLに関した質問票の疲労感のスコアには差を認めないという結論が示されている。甲状腺ホルモンを補充することの有害事象である、心房細動や心不全、骨粗鬆症の出現についても差はなかったという。甲状腺自己抗体の測定は実施しておらず、慢性甲状腺炎患者の頻度などは勘案されていない。この臨床試験の結果を日常診療の現場に即座に置き換えることの有用性についてはさらなる検証が必要である。とはいえ、顕性の甲状腺機能低下症患者はもちろん治療の対象となるが、TSHの異常のみを指摘された潜在性甲状腺機能低下症の高齢者に対しては、慌てることなく、十分な経過観察を行い、甲状腺ホルモンの補充の必要性についても慎重に考えてよいといえる。参考文献1)Boucai L, et al. Thyroid. 2011; 21: 5-11.2)Yoshihara A, et al. Thyroid. 2011; 58: 585-588.3)武田京子.日本甲状腺学会誌.2015;6:95-98.4)網野信行ほか.ホルモンと臨床.2008;56:705-724.5)Stott DJ, et al. N Engl J Med. 2017 Apr 3. [Epub ahead of print]

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第1回 運動療法でインスリンの効果を高めよう【できる!糖尿病の運動療法】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/)」の動画ページが開きます。■今回の内容「糖尿病ネットワーク」「糖尿病リソースガイド」を運営する創新社がお届けする「糖尿病3分間ラーニング」。今回は「運動」がインスリン分泌へ及ぼす影響を学習します。運動には、筋力の増強、心肺機能の向上、屋外活動の増加、骨粗鬆症の予防、ストレス解消などの効果があるといわれています。では、糖尿病患者が運動をすると、どんなメリットがあるでしょうか。運動療法は、体重の減少だけでなく、運動することでインスリンの分泌をうながし、血糖コントロールに役立つというメリットがあります。そのほか高血糖の抑制と、これに伴う治療薬の効果を上げるなど、多くのメリットがあるようです。詳しくは、上の画像をクリックして、動画でご確認ください。

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高齢者の潜在性甲状腺機能低下症にホルモン療法は有効か?/NEJM

 潜在性甲状腺機能低下症の治療において、これまでレボチロキシンの使用は議論の的であったが、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(TRUST試験)の結果、高齢患者に対するレボチロキシンの有効性は認められなかった。英国・グラスゴー王立診療所のDavid J Stott氏らが報告した。潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法については、小規模な無作為化比較試験しかなく、治療のリスクや有効性に関するエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2017年4月3日号掲載の報告。潜在性甲状腺機能低下症の高齢患者約700例で、プラセボ vs.レボチロキシン 研究グループは、65歳以上で潜在性甲状腺機能低下(TSH:甲状腺刺激ホルモン[サイロトロピン]値4.60~19.99mIU/L、遊離サイロキシン値は正常範囲内)が持続している患者737例を、レボチロキシン群368例(50μg/日[または体重50kg未満か冠動脈疾患既往歴がある場合は25μg/日から開始]、TSH値によって投与量を調整)、またはプラセボ群(369例)に、二重盲検法により無作為に割り付けた。 主要評価項目は、甲状腺機能低下症の症状スコアならびに甲状腺関連QOLに関する質問票の疲労度スコアの変化であった(両スコアとも範囲0~100、スコアが高いほど症状または疲労感が強い、臨床的に意義のある有意な差は最低9点)。潜在性甲状腺機能低下症群とプラセボ群で、症状、疲労度の改善に有意差なし 潜在性甲状腺機能低下症の被験者は、平均年齢74.4歳、53.7%(396例)が女性であった。 平均(±SD)TSH値は、ベースライン6.40±2.01mIU/Lから、1年後にはプラセボ群で5.48mIU/Lに、レボチロキシン群(平均投与量50μg)で3.63mIU/Lに低下した(p<0.001)。1年後における甲状腺機能低下症症状スコアのベースラインからの変化は、プラセボ群0.2±15.3、レボチロキシン群0.2±14.4(群間差:0.0、95%信頼区間[CI]:-2.0~2.1)、同様に疲労度スコアの変化はそれぞれ3.2±17.7および3.8±18.4(群間差:0.4、95%CI:-2.1~2.9)であり、いずれも両群間で有意差は認められなかった。 副次評価項目についても、レボチロキシンの有効性は示されなかった。とくに注目すべき有害事象としてあらかじめ規定された重篤な有害事象(心房細動、心不全、骨折、新規骨粗鬆症)について、有意な増加は認められなかった。 なお、心血管イベントの発生や死亡率に関するレボチロキシンの影響については、検出力不足であった。

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AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。リスクを後ろ向きに評価するコホート試験 本研究は、香港病院管理局が運営するClinical Data Analysis and Reporting System(CDARS)を用いて2つの抗凝固薬の骨粗鬆症性骨折リスクをレトロスペクティブに評価する地域住民ベースのコホート試験である。 CDARSの登録データから、2010年1月1日~2014年12月31日に新規にNVAFと診断された患者5万1,946例を同定した。このうち、傾向スコアを用いて1対2の割合で背景因子をマッチさせた初回投与例8,152例(ダビガトラン群:3,268例、ワルファリン群:4,884例)が解析の対象となった。 ポアソン回帰を用いて、2群の骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折および椎体骨折のリスクを比較した。罹患率比(IRR)および絶対リスク差(ARD)と、その95%信頼区間(CI)を算出した。転倒、骨折の既往例でリスク半減 ベースラインの全体の平均年齢は74(SD 11)歳、50%(4,052例)が女性であった。平均フォローアップ期間は501(SD 524)日だった。この間に、104例(1.3%)が骨粗鬆症性骨折を発症した(ダビガトラン群:32例[1.0%]、ワルファリン群:72例[1.5%])。初回投与から骨折発症までの期間中央値は、ダビガトラン群が222日(IQR:57~450)、ワルファリン群は267日(81~638)だった。 ポアソン回帰分析において、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ骨粗鬆症性骨折のリスクが有意に低いことが示された。すなわち、100人年当たりの発症割合はそれぞれ0.7、1.1であり、100人年当たりの補正ARDは-0.68(95%CI:-0.38~-0.86)、補正IRRは0.38(0.22~0.66)であった(p<0.001)。また、投与期間が1年未満(1.1 vs.1.4/100人年、p=0.006)、1年以上(0.4 vs.0.9/100人年、p=0.002)の双方とも、ダビガトラン群のリスクが有意に低かった。 転倒、骨折、これら双方の既往歴がある患者では、ダビガトラン群のリスクが統計学的に有意に低かった(1.6 vs.3.6/100人年、ARD/100人年:-3.15、95%CI:-2.40~-3.45、IRR:0.12、95%CI:0.04~0.33、p<0.001)が、これらの既往歴がない患者では両群間に有意差は認めなかった(0.6 vs.0.7/100人年、ARD/100人年:-0.04、95%CI:0.67~-0.39、IRR:0.95、95%CI:0.45~1.96、p>0.99)(交互作用検定:p<0.001)。 事後解析では、ダビガトラン群は無治療の患者との比較でも、骨粗鬆症性骨折リスクが有意に良好であった(ARD/100人年:-0.62、95%CI:-0.25~-0.87、IRR:0.52、95%CI:0.33~0.81)。 著者は、「これら2つの薬剤と骨折リスクの関連の理解を深めるには、無作為化試験を含め、さらなる検討を要する」と指摘している。

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抗スクレロスチンモノクローナル抗体ロモソズマブ、高骨折リスクの骨粗鬆症治療薬として承認申請

 アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社(本社:東京、代表取締役社長:マークテニソン、以下「アステラス・アムジェン・バイオファーマ」)とアステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長:畑中好彦、以下「アステラス製薬」)は、アステラス・アムジェン・バイオファーマがヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤ロモソズマブ(一般名、開発コード:AMG785)について、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の治療薬として製造販売承認申請を行なった。 ロモソズマブは開発中のモノクローナル抗体で、骨細胞から分泌される糖タンパク質スクレロスチンと結合してその作用を阻害し、骨形成を促進し、骨吸収を抑制する。ロモソズマブの日本での製造販売承認申請には、閉経後の骨粗鬆症女性 7,180例を対象としたプラセボ対照試験である FRAME 試験(FRActure study in postmenopausal woMen with ostEoporosis)および骨粗鬆症男性 245例を対象とした BRIDGE 試験(placeBo-contRolled study evaluatIng the efficacy anD safety of romosozumab in treatinG mEn)の2つの第III相試験データが含まれている。 FRAME試験は、大腿骨近位部または大腿骨頸部の低骨密度で定義した閉経後骨粗鬆症女性に対する有効性と安全性を評価するための第III相多施設共同国際共同無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験。本試験では、ロモソズマブ12ヵ月間投与のプラセボに対する有効性を、新規椎体骨折リスク低下を指標として評価した。さらに、12ヵ月間のロモソズマブおよびプラセボ投与に続けて、デノスマブを12ヵ月間投与し、24ヵ月間の新規椎体骨折のリスク低下についての有効性も評価した。加えて、12ヵ月および24ヵ月の臨床骨折(自覚症状のある椎体骨折および非椎体骨折の合計)のリスク低下、および非椎体骨折(脊椎以外で、骨粗鬆症性とは考えられない部位の骨折、高度な外傷性、または、病的骨折を除く)のリスク低下についても評価した。 BRIDGE試験は、腰椎、大腿骨近位部または大腿骨頚部の骨密度Tスコア-2.5以下または-1.5以下で、非椎体骨折(大腿骨近位部骨折を除く)または椎体骨折の既往歴がある55~90歳の男性を対象とした多施設国際共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験。本試験では、ロモソズマブの12ヵ月投与の有効性を、12ヵ月時点の腰椎骨密度の増加、ならびに12ヵ月および6ヵ月時点での大腿骨頚部および大腿骨近位部の骨密度、さらに血清骨代謝マーカーP1NPおよびCTXのベースラインからの変化率のプラセボとの比較で評価した。 骨粗鬆症は日本において、40 歳以上の女性約 980万人および男性約300万人が骨粗鬆症に罹患していると推定されている。アステラス製薬株式会社ニュースリリースはこちら(PDF)

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45歳から考える運動器のライフプラン

 11月29日、ロコモ チャレンジ!推進協議会主催のイベント、第3回ロコモサロンが、都内において開催された。イベントでは、ロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」)の普及の道程を振り返るとともに、国をはじめとする行政の取り組み、同会に所属している組織のロコモへの取り組み事例などが報告された。気が付かないうちに進む運動器の衰え はじめに同会の委員長である大江隆史氏(NTT東日本関東病院 手術部長/整形外科主任医長)が、「ロコモ提唱から9年の軌跡と今後の展望」と題して講演を行った。 2007年にロコモが提唱されて以来、ロコモチェック、ロコモ度テスト、さらに多くの疫学研究がなされるとともに、広報活動にも力を入れてきたことを振り返った。また、2010年には日本整形外科学会の外部委託事業としてロコモ チャレンジ!推進協議会が設立され、ロコモアドバイスドクター、ロコモメイトの新設など新たな取り組みを実施、全国の市町村への支援も報告された。 ロコモの認知度については、2012年の調査開始時点で17.3%だったものが、本年2016年には47.3%へと推移。とくに70歳以上の女性では74.1%の認知度なのに対し、20~29歳の女性(31.1%)、40~49歳の男性(35.5%)のように青壮・中年層での認知度が低いことが課題だと報告された。 今後10年の展望として、さらに啓発活動を実施するとともに、ロコモ度テストの年齢・性別の参考値の策定、高齢者の運動療法の評価へのロコモ度テストの導入、高齢者の健康に関するほかの概念(たとえばフレイル、サルコペニア)との整理、長寿化への対応などを見据え取り組んでいくという。 最後に大江氏は、「運動器障害は知らないうちに進行する障害である。たとえば平均寿命が90歳まで延びるとしたら、折り返し年齢の45歳ころから運動器のライフプランを考え、骨粗鬆症など運動器疾患への治療はもちろん、柔軟性低下、姿勢変化、筋力低下などにも早期に介入することで、運動器の健康を保つことが大切。その指標にロコモチャレンジを活用してもらいたい」と希望を述べた。3つの政策で健康長寿国を目指す仕組みづくり ヘルスケア産業の創出を支援する経済産業省の富原早夏氏(同省商務情報政策局ヘルスケア産業課統括補佐)が、生涯現役社会を目指すための3つの大きな政策を説明した。 同省では、高齢者が仕事をリタイヤしても社会参画する将来を見据え、とくに疾患進展防止サービスを推進することで、健康寿命の延長を目指すとしている。そのために、公的保険以外の疾病予防・健康管理サービスの活用や新産業の創出を支援していくという。 政策の1つ目は「健康経営」(健康保持・増進への取り組みが将来収益を高める投資と考え、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること)を推進することで、職域の健康管理を通じ、企業価値を高める施策(たとえば自治体による企業表彰、低利融資などのインセンティブ)を講じるとしている。  2つ目は、IoTを活用した大規模な健康情報データリンクで、それらを健康の維持に役立てる。たとえば登録者の歩数・活動量、身長、体重、血圧などを収集・分析することで、今後の行動変容のエビデンスとし、健康政策に役立てることなどが計画される。 3つ目は、地域の高齢者の多様なニーズに応え、適切なサービスを行うため医療機関に加え、それを補完する機能をもつサービスを創出していく。具体的には、公的保険外サービスで健康への気づき事業(受診勧奨)の創設や健康維持のフィットネスサービスの充実を目指すものである。そのために、関係する産業協議会の設置などを行い、地域ぐるみで切れ目のない、健康サービスの提供ができる仕組みづくりを展開していく。 最後に富原氏は、「こうしたサービスのビジネスパッケージ化を経済産業省として、支援していく」と今後の展望を述べた。進む企業の健康への取り組み 後半では、ロコモ!チャレンジ推進協議会の協賛企業・団体から取り組み事例が紹介された。 JFEスチール株式会社では、過去に転倒災害と運動器疾患が多かったことから、社内で「安全体力®」機能テストを実施し、リスク回避に役立てているほか、宮崎市では、地元の宮崎大学と協力し、ロコモ健診やロコモメイト養成講座による啓発・広報活動を行っているという。そのほか、アルケア株式会社では、大磯町(神奈川県)と連携した取り組みで、ロコモ健診・指導をした結果、疾病予防へどれだけ貢献したか医療経済の側面から効果を示した。また、日本シグマックス株式会社は、中国へのロコモ概念の普及事業を紹介した。参考サイト【特集】骨粗鬆症

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高安動脈炎〔TAK : Takayasu Arteritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義高安動脈炎(Takayasu Arteritis:TAK)は、血管炎に属し、若年女性に好発し、大動脈および大動脈1次分枝に炎症性、狭窄性、または拡張性の病変を来し、全身性および局所性の炎症病態または虚血病態により諸症状を来す希少疾病である。1908年に金沢医学専門学校(現・金沢大学医学部)眼科教授の高安 右人氏(図1)により初めて報告された。画像を拡大する呼称には、大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などがあるが、各学会において「高安動脈炎」に統一されている。2012年に改訂された血管炎のChapel Hill分類(図2)1)により、英文病名は“Takayasu arteritis”に、略語は“TAK”に改訂された。画像を拡大する■ 疫学希少疾病であり厚生労働省により特定疾患に指定されている。2012年の特定疾患医療受給者証所持者数は、5,881人(人口比0.0046%)だった。男女比は約1:9である。発症年齢は10~40代が多く、20代にピークがある。アジア・中南米に多い。TAK発症と関連するHLA-B*52も、日本、インドなどのアジアに多い。TAK患者の98%は家族歴を持たない。■ 病因TAKは、(1)病理学的に大型動脈の肉芽腫性血管炎が特徴であること、(2)特定のHLAアレル保有が発症と関連すること、(3)種々の炎症性サイトカインの発現亢進が報告されていること、(4)ステロイドを中心とする免疫抑制治療が有効であることから、自己免疫疾患と考えられている。1)病理組織像TAKの標的である大型動脈は中膜が発達しており、中膜を栄養する栄養血管(vasa vasorum)を有する。病変の主座は中膜の外膜寄りにあると考えられ、(1)外膜から中膜にかけて分布する栄養血管周囲への炎症細胞浸潤、(2)中膜の破壊(梗塞性病変、中膜外側を主とした弾性線維の虫食い像、弾性線維を貪食した多核巨細胞の出現)、これに続発する(3)内膜の細胞線維性肥厚および(4)外膜の著明な線維性肥厚を特徴とする。進行期には、(5)内膜の線維性肥厚による内腔の狭窄・閉塞、または(6)中膜破壊による動脈径の拡大(=瘤化)を来す。2)HLA沼野 藤夫氏らの功績により、HLA-B*52保有とTAK発症の関連が確立されている。B*52は日本人の約2割が保有する、ありふれたHLA型である。しかし、TAK患者の約5割がB*52を保有するため、発症オッズ比は2~3倍となる。B*52保有患者は非保有患者に比べ、赤沈とCRPが高値で、大動脈弁閉鎖不全の合併が多い。HLA-B分子はHLAクラスI分子に属するため、TAKの病態に細胞傷害性T細胞を介した免疫異常が関わると考えられる。3)サイトカイン異常TAKで血漿IL-12や血清IL-6、TNF-αが高値との報告がある。2013年、京都大学、東京医科歯科大学などの施設と患者会の協力によるゲノムワイド関連研究により、TAK発症感受性因子としてIL12BおよびMLX遺伝子領域の遺伝子多型(SNP)が同定された2)。トルコと米国の共同研究グループも同一手法によりIL12B遺伝子領域のSNPを報告している。IL12B遺伝子はIL-12/IL-23の共通サブユニットであるp40蛋白をコードし、IL-12はNK細胞の成熟とTh1細胞の分化に、IL-23はTh17細胞の維持に、それぞれ必要であるため、これらのサイトカインおよびNK細胞、ヘルパーT細胞のTAK病態への関与が示唆される。4)自然免疫系の関与TAKでは感冒症状が、前駆症状となることがある。病原体成分の感作後に大動脈炎を発症する例として、B型肝炎ウイルスワクチン接種後に大型血管炎を発症した2例の報告がある。また、TAK患者の大動脈組織では、自然免疫を担当するMICA(MHC class I chain-related gene A)分子の発現が亢進している。前述のゲノムワイド関連研究で同定されたMLX遺伝子は転写因子をコードし、報告されたSNPはインフラマソーム活性化への関与が示唆されている。以上をまとめると、HLAなどの発症感受性を有する個体が存在し、感染症が引き金となり、自然免疫関連分子やサイトカインの発現亢進が病態を進展させ、最終的に大型動脈のおそらく中膜成分を標的とする獲得免疫が成立し、慢性炎症性疾患として確立すると考えられる。■ 症状1)臨床症状TAKの症状は、(1)全身性の炎症病態により起こる症状と(2)各血管の炎症あるいは虚血病態により起こる症状の2つに分け、後者はさらに血管別に系統的に分類すると理解しやすい(表1)。画像を拡大する2)合併疾患TAKの約6%に潰瘍性大腸炎(UC)を合併する。HLA-B*52およびIL12B遺伝子領域SNPはUCの発症感受性因子としても報告されており、TAKとUCは複数の発症因子を共有する。■ 分類1)上位分類血管炎の分類には前述のChapel Hill分類(図2)が用いられる。「大型血管炎」にTAKと巨細胞性動脈炎(GCA)の2つが属する。2)下位分類畑・沼野氏らによる病型分類(1996年)がある(図3)3)。画像を拡大する■ 予後1年間の死亡率3.2%、再発率8.1%、10年生存率84%という報告がある。予後因子として、(1)失明、脳梗塞、心筋梗塞などの各血管の虚血による後遺症、(2)大動脈弁閉鎖不全、(3)大動脈瘤、(4)ステロイド治療による合併症(感染症、病的骨折、骨壊死など)が挙げられる。診断および治療の進歩により、予後は改善してきている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)各画像検査による血管撮影TAKは、生検が困難であるため、画像所見が診断の決め手となる。(1)画像検査の種類胸部X線、CT、MRI、超音波、血管造影、18F-FDG PET/PET-CTなどがある。若年発症で長期観察を要するため、放射線被曝を可能な限り抑える。(2)早期および活動期の画像所見大型動脈における全周性の壁肥厚は発症早期の主病態であり、超音波検査でみられる総頸動脈のマカロニサイン(全周性のIMT肥厚)や、造影後期相のCT/MRIでみられるdouble ring-like pattern(肥厚した動脈壁の外側が優位に造影されるため、外側の造影される輪と内側の造影されない輪が出現すること)が特徴的である。下行大動脈の波状化(胸部X線で下行大動脈の輪郭が直線的でなく波を描くこと)も早期の病変に分類され、若年者で本所見を認めたらTAKを疑う。動脈壁への18F-FDG集積は、病変の活動性を反映する(PET/PET-CT)。ただし動脈硬化性病変でもhotになることがある。PET-CTはTAKの早期診断(感度91~92%、特異度89~100%)と活動性評価の両方に有用である(2016年11月時点で保険適用なし)。(3)進行期の画像所見大型動脈の狭窄・閉塞・拡張は、臨床症状や予後と関連するため、CTアンギオグラフィ(造影早期相の3次元再構成)またはMRアンギオグラフィ(造影法と非造影法がある)で全身の大型動脈の開存度をスクリーニングかつフォローする。上行大動脈は拡張し、大動脈弁閉鎖不全を伴いやすい。従来のgold standardであった血管造影は、血管内治療や左室造影などを目的として行い、診断のみの目的では行われなくなった。(4)慢性期の画像所見全周性の壁石灰化、大型動脈の念珠状拡張(拡張の中に狭窄を伴う)、側副血行路の発達などが特徴である。2)心臓超音波検査大動脈弁閉鎖不全の診断と重症度評価に必須である。3)血液検査(1)炎症データ:白血球増加、症候性貧血、赤沈亢進、血中CRP上昇など(2)腎動脈狭窄例:血中レニン活性・アルドステロンの上昇■ 診断基準下記のいずれかを用いて診断する。1)米国リウマチ学会分類基準(1990年、表2)4)6項目中3項目を満たす場合にTAKと分類する(感度90.5%、特異度97.8%)。この分類基準にはCT、MRI、超音波検査、PET/PET-CTなどが含まれていないので、アレンジして適用する。2)2006-2007年度合同研究班(班長:尾崎 承一)診断基準後述するリンクまたは参考文献5を参照いただきたい。なお、2016年11月時点で改訂作業中である。画像を拡大する■ 鑑別診断GCA、動脈硬化症、血管型ベーチェット病、感染性大動脈瘤(サルモネラ、ブドウ球菌、結核など)、心血管梅毒、炎症性腹部大動脈瘤、IgG4関連動脈周囲炎、先天性血管異常(線維筋性異形成など)との鑑別を要する。中高年発症例ではTAKとGCAの鑑別が問題となる(表3)。GCAは外頸動脈分枝の虚血症状(側頭部の局所的頭痛、顎跛行など)とリウマチ性多発筋痛症の合併が多いが、TAKではそれらはまれである。画像を拡大する3 治療■ 免疫抑制治療の適応と管理1)初期治療疾患活動性を認める場合に、免疫抑制治療を開始する。初期治療の目的は、可及的に疾患活動性が低い状態にすること(寛解導入)である。Kerrの基準(1994年)では、(1)全身炎症症状、(2)赤沈亢進、(3)血管虚血症状、(4)血管画像所見のうち、2つ以上が新出または増悪した場合に活動性と判定する。2)慢性期治療慢性期治療の目的は、可及的に疾患活動性が低い状態を維持し、血管病変進展を阻止することである。TAKは緩徐進行性の経過を示すため、定期通院のたびに診察や画像検査でわかるような変化を捉えられるわけではない。実臨床では、鋭敏に動く血中CRP値をみながら服薬量を調整することが多い。ただし、血中CRPの制御が血管病変の進展阻止に真に有用であるかどうかのエビデンスはない。血管病変のフォローアップは、通院ごとの診察と、1~2年ごとの画像検査による大型動脈開存度のフォローが妥当と考えられる。■ ステロイドステロイドはTAKに対し、最も確実な治療効果を示す標準治療薬である。一方、TAKは再燃しやすいので慎重な漸減を要する。1)初期量過去の報告ではプレドニゾロン(PSL)0.5~1mg/kg/日が使われている。病変の広がりと疾患活動性を考慮して初期量を設定する。2006-2007年度合同研究班のガイドラインでは、中等量(PSL 20~30mg/日)×2週とされているが、症例に応じて大量(PSL 60 mg/日)まで引き上げると付記されている。2)減量速度クリーブランド・クリニックのプロトコル(2007年)では、毎週5mgずつPSL 20mgまで、以降は毎週2.5mgずつPSL 10mgまで、さらに毎週1mgずつ中止まで減量とされているが、やや速いため再燃が多かったともいえる。わが国の106例のコホートでは、再燃時PSL量は13.3±7.5mg/日であり、重回帰分析によると、再燃に寄与する最重要因子はPSL減量速度であり、減量速度が1ヵ月当たり1.2mgより速いか遅いかで再燃率が有意に異なった。この結果に従えば、PSL 20mg/日以下では、月当たり1.2mgを超えない速度で減量するのが望ましい。以下に慎重な減量速度の目安を示す。(1)初期量:PSL 0.5~1mg/kg/日×2~4週(2)毎週5mg減量(30mg/日まで)(3)毎週2.5mg減量(20mg/日まで)(4)月当たり1.2mgを超えない減量(5)維持量:5~10mg/日3)維持量維持量とは、疾患の再燃を抑制する必要最小限の用量である。約3分の2の例でステロイド維持量を要し、PSL 5~10mg/日とするプロトコルが多い。約3分の1の例では、慎重な漸減の後にステロイドを中止できる。4)副作用対策治療開始前にステロイドの必要性と易感染性・骨粗鬆症・骨壊死などの副作用について十分に説明し、副作用対策と慎重な観察を行う。■ 免疫抑制薬TAKは、初期治療のステロイドに反応しても、経過中に半数以上が再燃する。免疫抑制薬は、ステロイドとの相乗効果、またはステロイドの減量効果を期待して、ステロイドと併用する。1)メトトレキサート(MTX/商品名:リウマトレックス)(2016年11月時点で保険適用なし)文献上、TAKに対する免疫抑制薬の中で最も使われている。18例のシングルアーム試験では、ステロイド大量とMTX(0.3mg/kg/週→最大25mg/週まで漸増)の併用によるもので、寛解率は81%、寛解後の再燃率は54%、7~18ヵ月後の寛解維持率は50%だった。2)アザチオプリン(AZP/同:イムラン、アザニン)AZPの位置付けは各国のプロトコルにおいて高い。15例のシングルアーム試験では、ステロイド大量とAZP(2mg/kg/日)の併用は良好な経過を示したが、12ヵ月後に一部の症例で再燃や血管病変の進展が認められた。3)シクロホスファミド(CPA/同:エンドキサン)CPA(2mg/kg/日、WBC>3,000/μLとなるように用量を調節)は、重症例への適応と位置付けられることが多い。副作用を懸念し、3ヵ月でMTXまたはAZPに切り替えるプロトコルが多い。4)カルシニューリン阻害薬(2016年11月時点で保険適用なし)タクロリムス(同:プログラフ/報告ではトラフ値5ng/mLなど)、シクロスポリン(同:ネオーラル/トラフ値70~100ng/mLなど)のエビデンスは症例報告レベルである。■ 生物学的製剤関節リウマチに使われる生物学的製剤を、TAKに応用する試みがなされている。1)TNF-α阻害薬(2016年11月時点で保険適用なし)TNF-α阻害薬による長期のステロイドフリー寛解率は60%、寛解例の再燃率33%と報告されている。2)抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(同:アクテムラ/2016年11月時点で保険適用なし)3つのシングルアーム試験で症状改善とステロイド減量効果を示し、再燃はみられなかった。■ 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)免疫抑制治療により疾患活動性が落ち着いた後も、虚血病態による疼痛が残りうるため、病初期から慢性期に至るまでNSAIDsが必要となることが多い。腎障害・胃粘膜障害などに十分な注意と対策を要する。■ 抗血小板薬、抗凝固薬血小板薬は、(1)TAKでは進行性の血管狭窄を来すため脳血管障害や虚血性心疾患などの予防目的で、あるいは、(2)血管ステント術などの血管内治療後の血栓予防目的で用いられる。抗凝固薬は、心臓血管外科手術後の血栓予防目的で用いられる。■ 降圧薬血圧は、鎖骨下動脈狭窄を伴わない上肢で評価する。両側に狭窄がある場合は、下肢血圧(正常では上肢より10~30mmHg高い)で評価する。高血圧や心病変に対し、各降圧薬が用いられる。腎血管性高血圧症にはACE阻害薬が用いられる。■ 観血的治療1)術前の免疫抑制治療の重要性疾患活動性のコントロール不十分例では、再狭窄、血管縫合不全、吻合部動脈瘤などの術後合併症のリスクが高くなる。観血的治療は、緊急時を除き、原則として疾患活動性をコントロールしたうえで行う。外科・内科・インターベンショナリストを含む学際的チームによる対応が望ましい。術前のステロイド投与量は、可能であれば少ないほうがよいが、TAKの場合、ステロイドを用いて血管の炎症を鎮静化することが優先される。2)血管狭窄・閉塞に対する治療重度の虚血症状を来す場合に血管バイパス術または血管内治療(EVT)である血管ステント術の適応となる。EVTは低侵襲性というメリットがある一方、血管バイパス術と比較して再狭窄率が高いため、慎重に判断する。3)大動脈瘤/その他の動脈瘤に対する治療破裂の可能性が大きいときに、人工血管置換術の適応となる。4)大動脈弁閉鎖不全(AR)に対する治療TAKに合併するARは、他の原因によるARよりも進行が早い傾向にあり、積極的な対策が必要である。原病に対する免疫抑制治療を十分に行い、内科的に心不全コントロールを行っても、有症状または心機能が低い例で、心臓外科手術の適応となる。TAKに合併するARは、上行大動脈の拡大を伴うことが多いので、大動脈基部置換術(Bentall手術)が行われることが多い。TAKでは耐久性に優れた機械弁が望ましいが、若年女性が多いため、患者背景を熟慮し、自己弁温存を含む大動脈弁の処理法を選択する。4 今後の展望最新の分子生物学的、遺伝学的研究の成果により、TAKの発症に自然免疫系や種々のサイトカインが関わることがわかってきた。TAKはステロイドが有効だが、易再燃性が課題である。近年、研究成果を応用し、各サイトカインを阻害する生物学的製剤による治療が試みられている。治療法の進歩による予後の改善が期待される。1)特殊状況での生物学的製剤の利用周術期管理ではステロイド投与量を可能であれば少なく、かつ、疾患活動性を十分に抑えたいので、生物学的製剤の有用性が期待される。今後の検証を要する。2)抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)2016年11月時点で国内治験の解析中である。3)CTLA-4-Ig(アバタセプト)米国でGCAおよびTAKに対するランダム化比較試験(AGATA試験)が行われている。4)抗IL-12/23 p40抗体(ウステキヌマブ)TAK3例に投与するパイロット研究が行われ、症状と血液炎症反応の改善を認めた。5 主たる診療科患者の多くは、免疫内科(リウマチ内科、膠原病科など標榜はさまざま)と循環器内科のいずれか、または両方を定期的に受診している。各科の連携が重要である。1)免疫内科:主に免疫抑制治療による疾患活動性のコントロールと副作用対策を行う2)循環器内科:主に血管病変・心病変のフォローアップと薬物コントロールを行う3)心臓血管外科:心臓血管外科手術を行う4)脳外科:頭頸部の血管外科手術を行う6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報1)2006-2007年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン(ダイジェスト版)(日本循環器学会が公開しているガイドライン。TAKについては1260-1275ページ参照)2)米国AGATA試験(TAKとGCAに対するアバタセプトのランダム化比較試験)公的助成情報難病情報センター 高安動脈炎(大動脈炎症候群)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報大動脈炎症候群友の会 ~あけぼの会~同講演会の講演録(患者とその家族へのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Terao C, et al. Am J Hum Genet. 2013;93:289-297.3)Hata A, et al. Int J Cardiol. 1996;54:s155-163.4)Arend WP, et al. Arthritis Rheum. 1990;33:1129-1134.5)JCS Joint Working Group. Circ J. 2011;75:474-503.主要な研究グループ〔国内〕東京医科歯科大学大学院 循環制御内科学(研究者: 磯部光章)京都大学大学院医学研究科 内科学講座臨床免疫学(研究者: 吉藤 元)国立循環器病研究センター研究所 血管生理学部(研究者: 中岡良和)鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 小児診療センター 小児科(研究者: 武井修治)東北大学大学院医学系研究科 血液・免疫病学分野(研究者: 石井智徳)〔海外〕Division of Rheumatology, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104, USA. (研究者: Peter A. Merkel)Department of Rheumatology, Faculty of Medicine, Marmara University, Istanbul 34890, Turkey.(研究者: Haner Direskeneli)Department of Rheumatologic and Immunologic Disease, Cleveland Clinic, Cleveland, OH 44195, USA.(研究者: Carol A. Langford)公開履歴初回2014年12月25日更新2016年12月20日

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日常生活で行いたいこと

骨粗鬆症】【日常の注意事項 やりましょう】普段の生活でやった方がいいことは、何ですか●1日15分程度、腕に直射日光を当てるだけで体内でビタミンDが作られます。●女性も日焼けなどあまり気にせず、普段の生活の中で、毎日、陽に当りましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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