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第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、「パワハラなし」、理事長引責辞任でひとまず幕引き

大量退職の責任を取って理事長は3月末で辞任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京都心では、週末の雨のせいもあって、あっという間に桜が散ってしまいました。私は先週末、少々用事があって京都と東京・浅草を訪れました。どちらの街も、コロナ禍前のように観光客でごった返していました。ひとつ気になったのは、京都、浅草ともに、どう見ても似合っていない着物を纏った多くの若い女性が、慣れない草履を履いてよろよろと街を歩いていたことです。昔は見なかった光景です。どうやら、春休み、レンタル着物で観光するのが流行っているようです。それはそれで風情のあることですが、春とは言ってもまだ風が冷たい中、浴衣に毛が生えたような薄手の着物で歩く女性たちはとても寒そうで、風邪をひくのではないかと心配になってしまいました。さて、今回は、「第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚」で書いた、地方独立行政法人・市立大津市民病院(401床)の医師大量退職に関する続報です。京都大学からの派遣医師の大量退職の原因をつくったとされる北脇 城理事長は混乱の責任を取って3月末で辞任しました。北脇理事長の医師に対するパワハラの有無について調べていた第三者委員会も3月末に報告書をとりまとめ、公表しました。ただ、その報告書は北脇理事長がかなり強引な診療科再編を行おうとしたにもかかわらず、「パワハラはなかった」とするもので、事件の早期の幕引きを狙ったとしか見えない内容でした。外科・消化器外科・乳腺外科、脳神経外科、泌尿器科、計19人が退職意向経緯を簡単におさらいしておきます。大津市民病院では今年2月初旬に外科・消化器外科・乳腺外科の医師9人が3月末~6月末に退職する意向であることが発覚。その後、脳神経外科の全医師5人が4月以降に、さらには泌尿器科の5人も9月末までに退職することが明らかになりました。退職の意向を示したのはいずれも京大医学部から派遣されていた医師です。京都府立医科大学出身の北脇理事長(当時)が各診療科に対して行った再編提案などに納得できなかった京大側の関係医局が医師派遣取り止めを決断した、という構図です。19人もの医師の大量退職は全国メディアでも大きく報道され、大津市議会や滋賀県議会でも診療への影響が問題視されました。その後、代わりの医師確保も難航し、混乱は一向に収束しませんでした。年度末が近づいた3月24日、佐藤 健司・大津市長は記者会見において、北脇理事長が「大きな混乱を招いた責任は大きい」として31日付で辞任すると明らかにしました。同理事長は辞任、4月1日以降、理事長職は空席となっています。なお、退職意向を示した医師のうち4人が北脇理事長らからパワハラがあったと訴えており、事が表沙汰になった後、病院が弁護士2人で構成された第三者委員会を設置し、関係者へのヒアリングなどを進めてきました。その検証結果の報告書が理事長辞任報道の4日後の3月28日に公表された、というわけです。報告書の要旨については、大津市民病院のホームページにも掲載されました。「『パワーハラスメント』に該当するような言動は認められない」報告書は、外科医師からのハラスメントと脳外科医師からのハラスメントを分けて、別々に検証しています。外科医師からのハラスメント申告について報告書は、2021年9月に「理事長が副院長(外科系医師)に対し、外科の業績不振を理由に挙げて、京都府立医科大学から消化管チームを招聘することを決断したとして、副院長ほか複数名の医師が退職することを求めたことが認められる」としています。そしてこの際、「『業績不振』の原因が現外科チームにあることや、現外科チームでは今後改善の見込みがないことについて合理的根拠が示されず、また現外科チームに問題があると考えるのであれば、先に派遣元である京都大学から別のチームに交替してもらうよう打診するという選択肢があったにもかかわらず、先に京都府立医科大学から消化管チームを招聘する話を持ち出した」とし、このことが「外科チームや京都大学側の不信感を招いた。このような話の進め方が、後の混乱につながったものと考えられる」と、北脇理事長の話の進め方の不合理さを指摘しています。一方の脳神経外科医師からのハラスメント申告については、「理事長が脳神経外科の診療部長に対し、脳血管障害の科を新設して外部から医師を招聘することを提案し、それに併せて現脳神経外科チームの人員削減を求めたことが認められる」「理事長から、脳神経外科の『業績不振』について診療部長の責任を問う発言があった」としています。その上で、「新設する科への医師の招聘は、理事長らからまず現脳神経外科チームの派遣元である京都大学に対し人員派遣を要請したものの、断られたため京都府立医科大学からの招聘を念頭に話を進めており、話の進め方に特段問題となる点は見当たらない。ただ、外科の事案で醸成された不信感が、脳神経外科にも派生したと考えられる」としています。報告書は、全体として北脇前理事長の、各診療科の運営等に関する言動がさまざまな混乱をもたらしたこことを認めつつも、「退職を求めるにあたって人格を否定するような言動や、過度に威圧的な言動がなされたとは認められず、『パワーハラスメント』に該当するような言動は認められない」(外科)、「時に表現がきつくなった場面もあったが、人格を否定するような内容はなく、面談全体を通して診療部長の医師としての技量への敬意も表されていることからすると、『パワーハラスメント』とまでは認められない」(脳神経外科)とし、それぞれ、パワーハラスメントの存在がなかったと結論付けています。「内部検証手続きの進め方に不備も規定違反はなし」なお、ハラスメント申告の内部検証手続きの進め方についても、「申告者である副院長からヒアリングを行わなかったことは、音声記録の検証によって足りるとの判断に基づくものではあったが、内部統制推進室が作成して法人内に周知している手続フロー図に反しており、少なくとも当該フロー図と異なる手順で進めることについて副院長に丁寧に説明すべきであった」「申告者においてハラスメントの当事者と認識していた院長を、検証者の人として選んだことは、検証の公平性に疑問を抱かせる点で不適切であった。また、申告者に調査結果を伝える際、ハラスメントに該当しないという結論のみ伝え、理由の説明が一切なかったことも、申告者の納得性の点にもう少し配慮が必要であった」と、全体の手続きの問題点を指摘はしています。しかし、こちらも「内部検証手続において、法令および内部規程の違反は認められない」と結論付けています。なお、同報告書を受けて、大津市民病院は同日、「調査報告においては、第三者委員会から、公平かつ中立な視点に立って、『ハラスメントか否か』ということだけではなく、当院の再建およびより良い地域医療構築のための具体的な提言をいただいております。第三者委員会からのご提言につきましては、重く受けとめ、今後の法人運営に活かしてまいります」「4月1日から外科医師4名が着任することが決まっております。外科以外の診療科におきましても、患者の皆様をはじめ市民の皆様が安心していただける診療体制の確保に引き続き努めてまいります」とのコメントを発表しています。また、佐藤市長は、「市民や患者に不安を招いた法人の責任は極めて重いとの認識に変わりはない。法人と診療科の双方責任者との間で意思疎通を図り、互いが信頼できる関係づくりに注力することを求める」とコメントしています。府立医大のジッツを広げたいという強い意向が働いていた可能性混乱の張本人だった北脇元理事長が辞任し、第三者委員会も「パワハラなし」の調査結果を出したことで、世間的には早期に幕引きを図ったように見えます。できるだけ早く事態を収め、新体制での医師確保を急ぎたかった独立行政法人の出資者である大津市の意向も強く働いたに違いありません。仮にパワハラが存在せず、純粋に経営的な観点からの派遣医局変更だったとすれば、北脇元理事長が辞任する必要はないわけで、そこには「業績不振」を理由にしてまで自身の出身母体である府立医大のジッツを広げたい、という強い意向が働いていた可能性は否定できません。実際、北脇元理事長が就任した2021年春の時点で、府立医大の脳神経外科が大津市民病院をジッツにしようとしていたとの証言もあります。ただ、今回、北脇元理事長を“パワハラ有罪”としてしまっては、府立医大と大津市民病院との関係が悪化し、京大のみならず府立医大からの医師派遣にも支障を来しかねません。その意味で、「パワハラなし」の認定は大津市民病院の医療体制を安定化させるためには不可欠だったと言えるでしょう。新理事長にどこの大学出身者を選ぶか?とは言え、産経新聞等の報道によれば、報告書本体ではジッツ争いに対する苦言ともとれる指摘もなされています。「現外科チームでは今後改善の見込みがないことについて合理的根拠が示されず、先に京都府立医科大学から消化管チームを招聘する話を持ち出した」ことに対して、「理事長、院長が京都府立医大の『医局』の出身者であることと相まって、病院における京都府立医大の勢力を高めるため理不尽に退職を迫っているとの不信感を抱かせた」とし、「理事長の話の進め方は、病院、地域医療の発展のため努力・貢献してきた外科医師の心情に対する配慮が不十分で、京都大学側の不信感を醸成して今日の混乱につながった」と、強く非難しているのです。こうした問題点の指摘を踏まえ、大津市と地方独立行政法人・大津市民病院が次の新理事長にどこの大学出身者を選ぶかが注目されます。再度、府立医大出身者を理事長に招けば、同じような事態が起こる可能性もあります。そうした意味では、歴史的な背景から、京阪神では圧倒的なジッツの多さを誇るとされる府立医大の今後の動きも、気になるところです。

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新型コロナ感染による脳への影響、わかってきたこと【コロナ時代の認知症診療】第13回

新型コロナ感染後、認知機能に変化2022年1月に始まったCOVID-19のオミクロン株によるコロナ第6波はピークは越えたものの、感染者数は3月時点でも高止まり状態が続く。これまでの波のうち、最大、最長のものになっている。さて2020年初頭の流行初期から嗅覚低下・脱失の症状は報道されてきた。これを除くと従来は、COVID-19と脳あるいは認知機能との関係はそう注目されてこなかった。しかしこれは重要な観点である。スペイン風邪(Spanish Influenza)は第1次世界大戦中にパンデミックとなった最初の人畜共通感染症である。実はこの疾患においても、認知症症状(Brain fog:脳の霧)の発生が気づかれていたのである。さて流行開始からでも2年余りが過ぎて、このCOVID-19による認知機能障害に関して本格的な臨床研究が報告されるようになった。まず武漢における縦断研究は、感染による認知機能の変化に注目している。平均年齢69歳で感染者1,438名を対象、平均年齢67歳の438名をコントロールにして、1年間の認知機能の推移を比較している1)。対象をCOVID-19の身体症状から重篤と非重篤に分けて比較している。また認知機能は重篤度に応じて4段階に分けられている。その結果、軽度の認知機能低下を生じる危険性はCOVID-19の身体症状重篤群でオッズ比が4.87、非重篤群で1.71であった。さらに驚くべきは、身体症状重篤群では進行性認知機能低下を生じるオッズ比が19.0と極めて高かったことである。嗅覚異常の背景に、脳の構造学的な異常かさて次に、感染による脳構造変化についての画像研究が英国から報告されている2)。401名の感染者(51~81歳)が対象で、平均141日間隔で頭部MRI画像が撮像されている。なおコントロールは384名である。その結果、次の3つの所見が得られている。1)前頭葉の眼窩皮質との萎縮がみられたこと。前頭眼窩面には嗅覚や味覚情報が収斂している。またここは、有名な報酬系、動機付けや学習行動と関連する部位であり、偏桃体を中心とする辺縁系と深い結びつきがある。とくに臨床的に有名なのは、ここに病巣をもつピック病では、抑制欠如や脱抑制の表れとして反社会的行為が生じることである。また海馬傍回は海馬の周囲に位置し、記憶の符号化と検索の役割を担っている。なおこの前部は嗅内皮質を含んでいる。このような機能を持つ大脳領域に萎縮を認めたのである。2)一次嗅覚路と機能的に結ばれている脳部位の組織破壊が認められたこと。さてヒト嗅覚系には2種類あるが、一次および二次嗅覚皮質は下図において、それぞれ青と緑で表される。一次嗅覚系は、匂い物質を受容する嗅神経が存在する嗅上皮、嗅神経の投射先である主嗅球、さらに嗅球からの投射を受ける梨状皮質などの嗅皮質から構成されている。こうして一次嗅覚系は主に一般的な匂い物質の受容に関わっている。このように、流行当初から指摘されてきた「臭わなくなった」症状の基盤として、こうした形態学的な異常がわかったのである。3)脳全体の萎縮が認められた。このことは、COVID-19の大脳への影響は、嗅覚路を中心に前頭葉と辺縁系で大きいが、脳全体にも及ぶことを意味している。さてなぜこのような病理学的変化がもたらされるのだろうか? まずCOVID-19感染によって脳低酸素症が誘発される。これは、脳のエネルギー産生工場といわれるミトコンドリア機能不全が関わると考えられてきた。この低酸素脳症が基盤にあることは納得できる。一方でこの脳画像研究の筆者たちは、今回の研究結果から2つの可能性を考えている。まず感染が、嗅覚路を侵略経路として大脳辺縁系を中心とする系統的変性が生じさせる可能性である。次に嗅覚脱失によって臭いの感覚の入力がなくなることが大脳辺縁系変性につながっている可能性である。そして最後にこの嗅覚の障害が治るか否かについては、まだわからないとされている。第7波にも注意が喚起されるようになった今日、COVID-19による中枢神経系障害に対する注意がさらに求められるだろう。参考1)Liu YH,et al. JAMA Neurol. 2022 Mar 8. [Epub ahead of print]2)Douaud G, et al. Nature. 2022 Mar 7. [Epub ahead of print]

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第101回 私が見聞きした“アカン”医療機関(中編) オンライン診療、新しいタイプの“粗診粗療”が増える予感

18都道府県に出ていた「まん延防止等充填措置」がやっと解除こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3月21日、18都道府県に出ていた「まん延防止等充填措置」が解除されました。全面解除は実に約2ヵ月半ぶりです。ただ、これからの時期、お花見、春休み、新学期、新年度などで宴会や移動が活発化します。「第7波」に備えた体制は怠りなく進めておく必要がありそうです。ところで、先週のこのコラムで、「鈴木 誠也選手はサンディエゴ・パドレス、菊池 雄星投手はトロント・ブルージェイズと合意したとの報道もありました」と書きましたが、鈴木選手の情報は一部スポーツ紙の勇み足による“誤報”でした。その後、鈴木選手は歴史あるシカゴ・カブスと合意、契約しました。契約金は5年総額8,500万ドル(約101億3,000万円)と伝えられており、日本人野手の渡米時の契約としては、4年総額4,800万ドルの福留 孝介(当時、カブス)を上回る史上最高額とのことです。カブスと言えば「ヤギの呪い(Curse of the Billy Goat)」で有名なチームです。鈴木選手が何らかの呪いに襲われることなく、大活躍することを願っています(「ヤギの呪い」自体は2016年のワールドシリーズ優勝で解けたと言われていますが…)。さて、今回も前回に引き続き、少し趣向を変え、最近私や知人が体験した“アカン”医療機関について、書いてみたいと思います。【その3】オンライン診療ゆえの“マイルド”処方に困った友人新型コロナウイルス感染症のオミクロン株に感染した友人の話です。症状は軽快し、PCR検査も陰性となって療養解除となったのですが、数週間経ってもひどい咳がなかなか止みません。とくに夜間がひどく、「これは『いつもの処方』が必要だ」と感じた彼は、時節柄、外来診療ではなく近所のクリニックでオンライン診療を受けることにしました。「いつもの処方」とはステロイド内服薬の服用です。これまでも風邪などで気管支がひどくやられると、炎症が治まらずひどい咳が遷延することがたびたびありました。そんなときだけ、知り合いの呼吸器内科医に頼んで、ステロイド(プレドニゾロンなど)を頓服で処方してもらっていたのです。ただ、その呼吸器内科医は最近、遠方の病院に異動してしまったため、今回は渋々、呼吸器内科も標榜し、オンライン診療にも対応している近所のクリニックをネットで見つけ、受診することにしたわけです。ステロイド内服薬を出せない、出さないオンライン診療医LINEを用いてのオンライン診療は、初めての体験でとても緊張したそうです。これまでの咳治療の経験も詳しく説明し、「スパッ」と咳が止まるステロイド内服薬の処方を頼んでみたのですが、願いは叶えられなかったそうです。「結局、吸入薬のサルタノールインヘラーとツムラ麦門冬湯エキス顆粒が出されただけだった。粘ってみたんだけど…」と友人。サルタノールインヘラーは、β2アドレナリン受容体刺激剤です。ステロイドも入っている吸入薬(ブデホルなど)もあるはずなのに、それも避け、漢方を気休めに上乗せするというのは、幾多のしつこい咳と戦ってきた彼にとっては、効き目があまり期待できない“マイルド”過ぎる処方でした。「オンラインで初診だと、マイルドで安全な処方をしたくなるのはわかるが、患者側の意見もきちんと聞いて欲しい。これで咳にまだ数週間悩まされると思うとウンザリだ。結局、次は外来に来てくれと言われたし…」と、オンライン診療に不満たらたらの友人でした。処方箋が届いたのは診療から5日後実はこの話、これだけで終わりませんでした。水曜日にオンライン診療を受診し、「処方箋は郵送します」と言われたのですが、2日後の金曜になっても処方箋が届かなかったのです。金曜夕刻に診療所に電話すると、夜8時過ぎに、クリニックの事務職員が薬(おそらく院内調剤)を持って自宅にやって来たそうです。「処方箋はちゃんと郵送したのですが」と弁明する職員でしたが、現物が届いたのは翌週月曜でした。これは全く“アカン”ですね。最終的に彼は、最初の処方では全く軽快しませんでした。翌週末に外来を訪れ、今度はステロイドも入ったブデホルを入手することができ、その後徐々に快方に向かったそうです。新しいタイプの“粗診粗療”が増えるのではオンライン診療については、処方箋のやり取りと、薬剤のデリバリーが障害になることがある、とも聞きます。クリニックから薬局にファクスやメールで処方箋を送るにしても、その薬局が患者の近所にあるか、宅配を行っていなければなりません。また、そうしたオンライン診療の処方箋に対応できる“かかりつけ”薬局を持っている人もまだ多くはありません。診療から薬剤入手までのインターバルの解消は、オンライン診療普及に向けた大きな課題の一つでしょう。オンライン診療については、「第96回 2022年診療報酬改定の内容決まる(前編)オンライン診療初診から恒久化、リフィル処方導入に日医が苦々しいコメント」でも詳しく書きました。こうした新しい動きに対し、日本医師会の今村 聡副会長は3月2日の定例会見で、自由診療下でオンライン診療を活用し、GLP-1受容体作動薬のダイエット目的での不適切処方が横行している状況について問題提起をしました。今村氏は、「本来の治療に用いる医薬品が不適切に流通して健康な方が使用してしまうというような状況は、国民の健康を守るという日本医師会の立場としては看過できない」と話したとのことです。オンライン診療のこうした“悪用”は確かに問題ですが、私自身は、逆に友人が経験したような、対面でないために慎重になり、治療効果が低い、“マイルド”過ぎる薬剤を処方してしまうという、新しいタイプの“粗診粗療”が増えることを危惧しています。ステロイドと同様、抗菌薬も初診からの投与を嫌う医師が多い印象があります。診断が適切なら問題はないのですが、結局、2回目からはリアルの対面受診を余儀なくされ、本来服用が必要な薬にたどり着くまでに通院回数が増えるとしたら、オンライン診療のメリットはほぼないに等しいと思うのですが、皆さんどうでしょう。次回も、引き続き“アカン”医療機関を紹介します(この項続く)。

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ゼロ・リスクか?ウィズ・リスクか?それが問題だ(解説:甲斐久史氏)

 早いもので20年ほど前、外勤先の内科クリニックでの昼下がり。「今朝から、とくにどこというわけではないが、何となく全身がきつい」と20歳代後半の女性が来院した。熱も貧血もないのに脈拍が120前後。血圧はもともと低いそうだが収縮期血圧は80mmHg弱。心音・呼吸音に明らかな異常はないが、皮膚が何となくジトーッと冷たい気がする。聞いてみると先週、2〜3日間、風邪にかかったとのこと。心電図をとってみた。洞性頻脈。PQ延長(0.30秒くらいだったか?)。ドヨヨーンとした嫌な波形のwide QRS。どのように患者さんに説明し納得してもらったかは覚えていないが、ドクターヘリでK大学病院に搬送した。救急車では小一時間かかるためでもあったが、当時導入されたばかりのドクターヘリを使ってみたいというミーハー心に負けた一面も否定できない。夕方、帰学するとその足でCCUを覗いてみた。「大げさですよ。スカでしたよ!」レジデントたちからの叱責(?)覚悟しつつ…。が、何と!その患者はPCPSにつながれていたのである。約10分のフライト中は順調であったが、CCU搬入直後に完全房室ブロック。あっという間に心室補充収縮も消失。直ちにその場でPCPSを挿入できたため事なきを得たとのこと。CCUスタッフの的確な治療もあり、彼女は、2~3日後にはPCPSを離脱し、その後も順調に回復。完璧な正常心電図に復し、心機能障害を残すこともなく退院した。循環器内科医には身に覚えのある“心筋炎、あるある話”と言えよう。 本稿の執筆時(2022年3月中旬)、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染拡大第6波の感染者数のピークは越えたとはいえ、期待されていた急激な感染者数減少はなかなか見通せず、死亡者数や重症者数も高水準で推移している。そのような中で、依然としてワクチンが、発症・重症化予防、感染予防(オミクロン変異株には期待できないようであるが)の現実的な切り札的存在であることに変わりはない。しかしながら、種々の要因のため3回目のワクチン接種は伸び悩んでいる。その中で、ワクチンの副反応、とりわけ最近、コミナティ(BNT162b2、ファイザー社)・スパイクバックス(mRNA-1273、モデルナ社)の添付文書にも記載された心筋炎・心膜炎への危惧の影響も大きいようである。 米国疾病予防管理センターのOsterらによれば、米国のワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)に基づく解析の結果、2020年12月〜2021年8月にmRNAワクチンを接種された12歳以上の約2億例(約3億5,000万回接種)のうち、心筋炎が1,626例(BNT162b2 947例、mRNA-1273 382例)でみられたという。心筋炎患者の年齢中央値は21歳、男性に多く(82%)、2回目接種後が多く、症状発症までの期間は2日(中央値)であった。ワクチン接種後7日以内の心筋炎の報告は、12〜15歳男性でBNT162b2 70.7例/100万回、16〜17歳男性でBNT162b2 105.9例/100万回、18〜24歳男性でBNT162b2 52.7例/100万回、mRNA-1273 56.3例/100万回であった。これらは、一般の心筋炎の発症頻度とされる80〜100例/100万人に匹敵する。なお、30歳未満の症例のうち詳細な臨床情報が得られたものは826例でそのうち98%が入院した。その87%が退院までに症状が消失した。治療は主に非ステロイド系抗炎症薬投与(87%)であった。最近の厚生労働省資料によれば、わが国の心筋炎・心膜炎の発症頻度は、10代男性でBNT162b2 3.7例/100万回、mRNA-1273 28.8例/100万回、20代男性でBNT162b2 9.6例/100万回、mRNA-1273 25.7例/100万回である。VAERSの報告と比較すると低めではあるが、やはり10〜20代男性では心筋症発症リスクが認められる。ただ、VAERSや厚生労働省のデータは受動的な報告システムであるため、心筋炎の報告が不完全であり情報の質も一貫していない恐れがあり、報告数が過小評価なのか過剰評価なのかさえ判断が難しい。 まったく健康な若者にワクチン接種することで、一定の割合で心筋症のリスクを負わせることに、社会や当の若者たちが不安を覚えることはよくわかる。しかし、そのリスクは一般住民が日常的に曝されている普通のウイルスなどにより引き起こされる心筋炎・心膜炎のリスクを超えるものではない。少なくとも急激に重症心不全に陥るような劇症心筋炎はまずみられないようである。一方、新型コロナウイルス感染症に実際に感染した場合、心筋症・心筋炎発症リスクは、わが国(15〜39歳男性)では834例/100万回、海外(12〜17歳男性)では450例/100万回にのぼる。われわれ医師としては、ワクチン接種のメリットがデメリットよりはるかに大きいことを、正しく冷静に社会に訴えていくのが妥当であろう。リスクを強いるのであれば、ワクチン接種者に胸痛、動悸、強い倦怠感や息切れなど心筋炎・心膜炎症状を自覚したら迷わず受診することを周知するとともに、ワクチン接種後には積極的に心筋炎・心膜炎を考慮した診察・検査を行い早期発見、早期治療を提供することがわれわれの責務と心得るべきであろう。ただ、心筋炎は、心不全進展とは全く別途に、心室頻拍、心室粗動、伝導障害により突然死を来す。この発症頻度の推定困難なリスクまで考えると悩みは深まる。 2年以上続く新型コロナウイルス感染症パンデミックを前にして、日本は、依然、ゼロ・コロナか? ウィズ・コロナか? という命題の前に右往左往している。その根源には、そもそもゼロ・リスクの人生などあり得ないのに、ウィズ・リスクの現実には目を背け、「日々安心が何より」を是とする筆者のような正常性バイアスがあるのではないか? かと思うと一点、自分に都合の良い情報ばかりに頼る確証バイアスに陥るし・・・。日常からリスクを正面に見据えたリスク・リテラシーの醸成は、わが国にとって喫緊の課題かもしれない。

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第97回 “アジャイル思考”を得ない限り、日本は今のコロナ対策から抜けられない!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の流行の主流がオミクロン株になって以降、よく耳にするようになったのが「オミクロン株による感染はただの風邪」という理屈だ。これはある意味では正しいかもしれない。少なくとも基礎疾患のない若年者にとっては、風邪に近いと言っても差し支えはないだろう。もっともこの一部の人にとっての「風邪」もワクチンの2回接種完了者が国内総人口の約8割を占めるワクチン効果が加味されている可能性が高いことも念頭に置かねばならない。この昨今、声高に語られる「オミクロン株感染風邪論」の背後には、過去2年以上の度重なる行動規制に対する恨み節が籠っていることは否定できない。なんせ、今回のコロナ禍によって発出された緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下、まん防)に伴う経済損失総額は、野村総合研究所による試算で20兆円超。これは先日、衆議院予算委員会を通過した過去最大の2022年度予算の歳出総額107兆5,964億円の約20%に相当する。これ以外に数字に表れない損失もあることは周知のことで、いずれにせよ国民に大きな犠牲を強いていることは明確である。それ故に若年層を中心に「風邪ごときのとばっちりを食らうのはまっぴらごめん」との理屈が支持を受けるのも分からないわけではない。とはいえ、医学的に見れば、高齢者での新型コロナはただの風邪ではなく、その一撃で命を奪われる危険性は明らかにほかの感染症よりも高い。このように言うと、「残りの人生が少ない高齢者のために、なぜ前途ある若者が苦渋を強いられなければならない」という反論が常に飛び出してくる。実際、私の身近でもそうした声はよく聞く。こうした時に私は「重症化した高齢者にかかる莫大な医療費を負担するのは、結局若年層なので高齢者を感染から守ることは若年者を守ること」と伝えている。もっとも目に見えにくい負担を実感してもらうのはなかなか難しいのが現実だ。そうした中で「オミクロン株感染風邪論者」が最近引き合いに出すのが、欧州連合内で初めて新型コロナの感染拡大阻止関連規制のほぼすべてを撤廃したデンマークの事例だ。この措置は2月1日からスタートし、公共交通機関利用時のマスク着用義務、飲食店利用時などでのデジタル証明「コロナパス(ワクチン接種証明・PCR or抗原検査陰性証明)」の提示義務などが撤廃された。規制撤廃発表の記者会見では、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が「さよなら規制、ようこそコロナ前の生活」と宣言したほど。ところが今のデンマークでは毎日3万人程度の新規感染者と30~40人の死者が報告されている。総人口約580万人のデンマークのこの状況を日本に当てはめると、毎日約65万人の感染者と700人前後の死者が発生している計算だ。現在1日の新規感染者8万人前後で、31都道府県に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくまん防を発令中の日本から考えれば驚くような決断である。デンマークの決定は感染者が増加していながら、重症者が増加していない同国内の感染状況データを根拠としている。ちなみに現在、デンマークでの感染の主流は、日本の報道では「ステルス・オミクロン」と称されるオミクロン株の亜種BA.2である。確かにオミクロン株はデルタ株と比較して重症化しにくいとは言われているが、感染者が増えれば、当然ながら重症者も増える。にもかかわらず、今回の決定に至った背景には、デンマーク国内の総人口に占める新型コロナワクチンの2回接種完了率が81.0%と日本と大差ないにもかかわらず、ブースター接種完了率が61.7%(2月22日付)と日本とは比較にならないほど高い現状を加味していると言われている(2月22日付の日本国内での2回接種完了率は79.1%、ブースター接種完了率は15.3%)。さらにデンマークの場合、現時点で65歳以上の高齢者のブースター接種完了率は約95%。重症化のハイリスク者に対しては4回目接種を計画し、新たな変異株の登場次第では4回目接種の対象を全人口に拡大することを視野に入れている。要は現状と将来の備えは日本とは比較にならず、デンマークを事例に挙げながら日本国内の対応を単純批判する「オミクロン株風邪論者」は自分の主張に合わせてファクトを都合良く切り貼りしているに過ぎない。だが、それ以上にデンマークと日本には根本的に大きな差があると個人的には考えている。というのもデンマークはすでに昨年9月に今回のような規制の大幅な解除を行いながら、その後の感染者増加に伴って規制を復活。そして再び今回の規制撤廃に至っている。要は状況に応じてアジャイルな対策を行っているのだ。「アジャイル」は、英語で「機敏な」という意味。最近ではソフトウェア開発などに関連してよく耳にするようになった言葉で、要は基本機能を実装したソフトウェアはすぐに実用を開始し、必要に応じて徐々にアップデートしていくということ。スマートフォン用アプリなどが代表例だ。ところが最初に何らかの商品やサービスを市場に出す際に完璧さを求めがちな日本ではこうした手法はあまり馴染みがない。私はもう一つの取材領域である国際紛争関係でこうした違いを実感したことがある。海外の紛争地域では、旧西側を中心とする欧米各国の軍が停戦監視などの平和維持活動(PKO)のために派遣されることが少なくない。そこで見かける各国の軍用車両は、基本型を軸にさまざまな派生型がある。派遣地域の地勢や気候の違い、技術革新に応じて基本型への追加改修キットがあり、結果として派生型の軍用車両が数多く存在するのである。何とも合理的だと思っていたが、日本の自衛隊ではこうしたケースは見かけない。ある時にこの点を防衛省関係者に尋ねたところ次のような答えが返ってきた。「新装備の予算要求の際、国会をはじめとする関係各方面からは考えられうる最上スペックを求められます。それが数年後に状況に合わなくなり、また新装備を導入しようとすると、『あの時、君たちは最上のものだと言ったじゃないか。じゃあ、あの時の提案は不備や間違いだったのか』と言われてしまうのです。ベストのものはその時々で変わるものなのですが…」新興感染症では、時間の経過とともに不明点が明らかになり、それに伴い対応策も大きく変更を迫られることが多い。しかし、前述のように日本ではもともとこうした変更に対する国民的許容幅は広くはない。アジャイルに過ぎないことが時に「場当たり」「なし崩し」と表現される。もっと端的に言えば、オール・オア・ナッシングな傾向とも言えるかもしれない。そしてこうした傾向は、オミクロン株登場後の新型コロナワクチンに対する世間の評価でも垣間見られる。オミクロン株に対する既存の新型コロナワクチンの感染予防と発症予防の効果がかなり低下したことは事実である。だが、2回目接種完了直後あるいは3回目接種終了後ならば、それでも6割程度の感染予防・発症予防効果はあることが分かっている。しかし、これを機にもともとワクチンに否定的ではなかった人からも「ワクチンに意味はない」「いまやワクチンは無効だ」という言説が目につくようになった。そして、国などが新型コロナ対策でマイナーチェンジをする時なども、「完璧さ」を目指す社会的雰囲気を受けたばつの悪さなのか、歯切れの悪い説明が目立つ。結局のところ、現在の「オミクロン株風邪論」や「感染症法での新型コロナの扱いは2類か5類か論争」も日本人のアジャイル感のなさゆえの結果とも思えてきて仕方がない昨今だ。

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腎機能が低下した患者には市販NSAIDsは要注意【ママに聞いてみよう(2)】

ママに聞いてみよう(2)腎機能が低下した患者には市販NSAIDsは要注意講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説風邪をひいたのでOTC薬を使ってよいか患者さんに聞かれた紗耶華さん。薬歴を確認すると、その患者さんには腎機能障害があることがわかりましたが、どのようなことに気を付けるべきか悩みます。OTCのNSAIDsの特徴や注意すべき患者について、美智子先生が教えます。

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妊娠中の風邪対策、のどスプレーは使用可能?【ママに聞いてみよう(2)】

ママに聞いてみよう(2)妊娠中の風邪対策、のどスプレーは使用可能?講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説妊娠中の女性にOTCの、のど用殺菌消毒スプレーを使用してよいか尋ねられた正隆さん。ヨウ素含有製品には注意が必要なことを思い出しますが、どのような影響があるのか疑問に思います。そこで、美智子先生がヨウ素の摂取基準とヨウ素の過剰摂取による具体的な影響について教えます。

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第93回 アムロジピンも足りない!?供給不足を「怪我の功名」にするには…

メディアにはいまもなお旧来的なヒエラルキーがある。まず、多くの人もご承知の通り、最近では「レガシー・メディア」とも揶揄される大手新聞社・NHK・民放キー局が頂点に位置し、その下に週刊誌・月刊誌、さらに最下層に現在では最もすそ野が広いインターネットメディアの3層構造となっている。私のようなフリーランスの主戦場は下の2層となる。そうした中でこれまでインターネットメディアは最下層ながらも速報性・拡散性でほかを圧倒してきたが、現在では上位2層もネットメディアを有するようになり、メディア業界は横並びの混戦となりつつある。とはいえレガシー・メディアが有する「伝統」と「信頼」はまだまだ牙城である。ここ最近、それを実感させられることに遭遇した。昨年来私が注目していた出来事がある。それはジェネリック医薬品企業の不祥事に端を発した「医薬品供給不足問題」である。当初、懸念をしつつも私自身が成り行きをやや甘く見ていたが、昨秋ある薬剤師と話をしていて「アムロジピンが手に入らないんですよ」とこぼされた際にはさすがに驚いた。表現はやや下衆だが、アムロジピンと言えば「馬に食わせても良い」ほどありふれた薬である。「冗談が過ぎるよ」と言い返した私は、この薬剤師に半ば逆上されてしまった。もちろんその後、良く調べて事実と分かり、この薬剤師に平謝りした。当然、私の職責としてはこれを捨ておくわけにはいかない。主戦場の雑誌やインターネットメディアの何社かに企画提案をしたが、反応は冷ややかだった。反応を大まかにまとめて言うと「もともとジェネリック医薬品なんかバッタもんでしょ。無くなっていいんじゃないですか?」というものだ。しかし、今や特許失効成分の流通量の約8割をジェネリック医薬品が占めている中で、「無くなっていい」はずもない。ある編集者は「ジェネリック医薬品を推進した厚生労働省を斬る方向なら考えても良いよ」とも返された。厚労省による診療報酬による政策誘導にはある種の嫌悪感はなくもないが、それも何かが違う。「お役人の代弁者」と皮肉られるかもしれないが、高齢化が進展する日本の社会保障制度を考えた場合にジェネリック医薬品の推進は不可欠とも考えるからだ。そんなこんなのうちにNHKが「医薬品不足取材班」なるものを立ち上げ、「薬がない!?」と題した特集を組み始めると、一気に風向きが変わった。以前冷淡な態度だった編集者が「先日話していた件ですけど…」と連絡を取ってきた。別に人が悪いわけでも何でもないが、私は「あいにく別のところでやることになって…」と返した。事実、そうだったからだ。ちなみにその「別のところ」の編集者に話した際も「なんか最近NHKでやってましたね」という反応だった。伝統ある大手メディアが取り上げると、読者がそれに注目するだろうと考えるわけである。「××がくしゃみをすると、○○が風邪をひく」の法則とも言える。実は私も最終的に「別のところ」に提案したのはNHKが取り上げたので「そろそろどこかが食いつく」と思ったからであり、さらに言えば以前提案した編集者に再提案するのも何かと面倒だからほかの編集者に持ち掛けたという次第だ(やっぱり人が悪いか…)。先ほどのヒエラルキーで言うと、さらに最下層あるいは完全に外側になるフリーランスの辛酸を20年以上味わってきた身の処世術でもある。さて前置きが長くなってしまったが、ここからが本論だ。今回の不祥事、ほとんどはジェネリック医薬品企業が製造手順や品質試験を悪く言えば「ごまかしていた」から起きたことで、決して許されるべきことではない。同時にこれまた悪く言えば、厚労省もジェネリック医薬品推進の旗印を掲げ、太鼓を打ち鳴らして現場を鼓舞してきたものの、後は企業に対して単なる性善説で臨んでいただけともいえる。ならばなぜ前述の厚労省批判の切り口で提案してきた編集者に組しなかったのかと問われれば、厚労省が「特定の悪者」ではないからだ。もっとも処方する医師、調剤する薬剤師は足りない医薬品を「打出の小槌」で出せるわけもないので少なくとも被害者であることは確かである。ただ、今回の件で薬剤師の中からは「どうしようもなくて医師に電話連絡して同種同効薬への変更をお願いしたら、『薬局に薬があるかどうかなんて知ったことじゃない。それは薬局の問題でしょ』と返答された」という話はよく耳にした。現在、出荷調整が続く医薬品の納入では、医薬品卸が各薬局の直近の納入実績に応じて事実上「配給」をしている状態。大規模病院の医師と話すと、中にはこの問題をあまり知らないこともあるが、それは納入実績や取引が元々巨額であるというビジネス上の理由から医薬品卸が大規模病院やその門前の調剤薬局チェーンを最優先しているだけで、市中の中小薬局に罪はない。そして医師と薬剤師でこうした些細な応酬(薬剤師側はそんなつもりはないだろうが)をしているのは不毛の極み。患者はいい迷惑である。この点についてはとくに医師と薬剤師の間ではノーサイドにしてもらいたい。とはいえ、「企業の問題だから医療現場は何もできない」も私からすると異論がある。数少ないながらも対応策はあると思うからだ。それはコロナ禍の影響のせいか、最近やや霞みつつある「多剤併用(ポリファーマシー)・残薬の解消」である。もっとも「またどっちつかずか」と言われそうだが、薬物療法の中で悪の権化のごとく語られるポリファーマシーについて、私は善意の結果だと思っている。医師側は患者の訴えに応じてそれを何とか解消しようと症状ごとに薬を処方する、症状が悪化したら患者が気の毒だから念のため併用療法をする。一方、患者は不安だからより多くの薬をもらおうとする。あるいは、患者自身は処方された薬を実際にはほとんど服用せず、症状改善しないと首をかしげる医師に怖くてそのことは言えないので、医師は何とかしようと作用機序の違う同効薬が重ねられるということもあるだろう。ポリファーマシーはこれらの総体というのが私見だ。ざっくり言えば誰も悪意がないゆえに、なかなか手を付けにくい。とはいえ残薬とポリファーマシー解消に向けて2016年の診療報酬改定で重複投薬・相互作用等防止加算の名称変更と算定要件の拡大が行われたことを契機に薬剤師が以前よりも積極的に取り組むようになってはいる。実際、日本薬剤師会学術大会では、この2016年の診療報酬改定直後から残薬調整などを通じた減薬の成果報告があふれていた。現在は当時ほどの盛り上がりはないが、これは徐々にこうした取り組みが定着しつつあるものと好意的に受け止めたい。もっとも問題そのものも依然として消えていないことは各所から耳にする。だからこそこの医薬品供給不足を機に今一度、「減薬」に一歩踏み込めないだろうか? 一部からは「薬が足りないから減薬をしろとは本末転倒」と言われるかもしれない。しかし、善意をベースに慣習的に続いているものを何のきっかけもなしに変化させることがいかに難しいかは、世の中のさまざまな事象でみられること。だからこそ医師にも薬剤師にも「災い転じて福となす」に向かってほしいと思うのは理想論だろうか?

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フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火【Dr. 中島の 新・徒然草】(409)

四百九の段 フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火コロナ第6波は大変なことになっています。いくらオミクロン株が重症化しにくいといっても、感染者数自体が増えてしまったら重症者の絶対数が増え、やはり医療機関は逼迫してしまいます。できるだけ個々の人に予防に努めていただき、何とか第6波を凌ぐしかないですね。「コロナはただの風邪」というためには、第8波や第9波まで待つしかありません。さて、この1週間のニュースで驚かされたのは、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火です。元々はフンガ・トンガ島とフンガ・ハアパイ島に分かれていたのが、2009年の噴火で地続きになったので、名前のほうも繋がりました。さすがに長過ぎる名前なので、以下フンガ・トンガ火山と呼ぶことにします。今回は、2022年1月15日に大噴火を起こしました。衛星からの映像を見ると、その噴煙の規模は半径260kmにも及び、これは北海道がすっぽり収まってしまうサイズです。とはいえ、この半径260kmが吹っ飛ばされたというわけではなく、あくまでも噴煙が拡がったというもの。火山から約60kmの距離にあるトンガ王国は、津波や火山灰の被害には遭ったものの、直接破壊されたわけではありません。今回は周囲が海に囲まれた火山だったせいか、火砕流がトンガ王国に到達するということもなかったようです。でも、もし阿蘇山がこの規模で噴火したら、あっという間に火砕流が九州全体を覆ったことでしょう。阿蘇山はわかっているだけでも過去4回、VEI-7以上の破局噴火を起こしました。VEIとは火山爆発指数(Volcanic Explosivity Index)で、数字が大きくなるほど規模が大きくなり、7以上が慣習的に「破局噴火」と呼ばれています。阿蘇山の噴火の中でも、一番最近のAso-4と呼ばれるものは8万8,000年前に起こったもので、VEI-8の規模だったそうです。このときの火砕流は、160km離れた山口県(当時は地続き)にまで達しました。また、日本での直近の破局噴火は、7,300年前に起こったVEI-7の鬼界カルデラの噴火で、その時の火砕流は九州南部まで達して、南九州の縄文人を絶滅させたと言われています。つまりは、火砕流が海を渡ったということになるんですかね。現在の日本でこの規模の噴火が起こったら、大変な被害が出るどころか、国家の存亡にかかわります。だいたい日本では、1万年に1回程度の頻度で破局噴火が起こっていますが、こんなものは予測も予防もできたもんじゃありません。今回のフンガ・トンガ火山の噴火は、VEIで5~7と諸説あります。VEI-7だと観測史上最大の規模ですが、VEI-6だと1991年のピナトゥボ火山(フィリピン)に匹敵する大きさになります。驚くのは日本に到達した津波で、通常と違って「空振(くうしん)」という衝撃波によって引き起こされたのではないかとのこと。というのも、日本への経路の途中にあるサイパン島やミクロネシア領ポンペイ島で大きな潮位の変化がみられなかったことと、小笠原諸島の父島での潮位変化が気象庁の予想よりも2時間も早かったことなどが、いつもの津波と違っているからです。空振による津波は前代未聞なので、気象庁も解釈に困ったことでしょう。さて、誰もがスマホを持つ時代になったので大量の映像がYouTubeにアップされていますが、その中でも印象に残ったものは、救命胴衣をつけて津波をバックに自撮りをしている若者たちです。当然のことながら津波にのみ込まれてしまうのですが、救命胴衣をつけているので平気、波にのまれても自撮り棒は手離しません。津波も舐められたものです。とはいえ、救命胴衣さえつけていれば波の上に浮かぶので大丈夫なわけですね。津波が来そうになったら高いところや遠くに逃げるのもさることながら、救命胴衣をつけることが大切だということがわかりました。発想の転換、恐るべし!ということで、いろいろ考えさせられた火山噴火でした。我々自身の防災の参考にいたしましょう。最後に1句大寒を 異国の火山が 吹き飛ばす

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咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例【Dr.山中の攻める!問診3step】第10回

第10回 咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例―Key Point―咳は重大な疾患の一つの症状であることがある詳細な問診、咳の持続時間、胸部レントゲン所見から原因疾患を絞り込むことができる慢性咳に対するアプローチを習得しておくと、患者満足度があがる症例:45歳 男性主訴)発熱、咳、発疹現病歴)3週間前、タイのバンコクに出張した。2週間前から発熱あり。10日前に帰国した。1週間前から姿勢を変えると咳がでる。38℃以上の発熱が続くため紹介受診となった。既往歴)とくになし薬剤歴)なし身体所見)体温:38.9℃ 血圧:132/75mmHg 脈拍:88回/分 呼吸回数:18回/分 SpO2:94%(室内気)上背部/上胸部/顔面/頭部/手に皮疹あり(Gottron徴候、機械工の手、ショールサインあり)検査所見)CK:924 IU/L(基準値62~287)経過)胸部CT検査で両側の間質性肺炎ありCK上昇、筋電図所見、皮膚生検、Gottron徴候、機械工の手、ショールサインから皮膚筋炎1)と診断された筋力低下がほとんど見られなかったので、amyopathic dermatomyositis(筋無症候性皮膚筋炎)と考えられるこのタイプには、急性発症し間質性肺炎が急速に進行し予後が悪いことがある2)本症例ではステロイドと免疫抑制剤による治療を行ったが、呼吸症状が急速に悪化し救命することができなかった◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!急性の咳(<3週間)では致死的疾患を除外することが重要である亜急性期(3~8週間)の咳は気道感染後の気道過敏または後鼻漏が原因であることが多い慢性咳(>8週間)で最も頻度が高い原因は咳喘息である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】緊急性のある疾患かどうか考えよう咳を伴う緊急性のある疾患心筋梗塞、肺塞栓、肺炎後の心不全悪化重症感染症(重症肺炎、敗血症)気管支喘息の重積肺塞栓症COPD (慢性閉塞性肺疾患)の増悪間質性肺炎咳が急性発症ならば、心血管系のイベントが起こったかをまず考える心筋梗塞や肺塞栓症、肺炎は心不全を悪化させる心筋梗塞や狭心症の既往、糖尿病、高血圧、喫煙、脂質異常症、男性、年齢が虚血性心疾患のリスクとなる3つのグループ(高齢、糖尿病、女性)に属する患者の心筋梗塞は非典型的な症状(息切れ、倦怠感、食欲低下、嘔気/嘔吐、不眠、顎痛)で来院する肺塞栓症のリスクは整形外科や外科手術後、ピル内服、長時間の座位である呼吸器疾患(気管支喘息、COPD、間質性肺炎、結核)の既往に注意するACE阻害薬は20%の患者で内服1~2週間後に咳を起こす【STEP3-1】鑑別診断:胸部レントゲン所見と咳の期間で行う胸部レントゲン写真で肺がん、結核、間質性肺炎を確認する亜急性咳嗽(3~8週間)の原因の多くはウイルスやマイコプラズマによる気道感染である細菌性副鼻腔炎では良くなった症状が再び悪化する(二峰性の経過)。顔面痛、後鼻漏、前かがみでの頭痛増悪を確認する百日咳:咳により誘発される嘔吐とスタッカートレプリーゼが特徴的である2)【STEP3-2】鑑別診断3):慢性咳か否か8週間以上続く慢性咳の原因は咳喘息、上気道咳症候群(後鼻漏症候群)、逆流性食道炎、ACE阻害薬、喫煙が多い上記のいくつかの疾患が合併していることもある咳喘息が慢性咳の原因として最も多い。冷気の吸入、運動、長時間の会話で咳が誘発される。ほかのアレルギー疾患、今までも風邪をひくと咳が長引くことがなかったかどうかを確認する非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB:non-asthmatic eosinophilic bronchitis)が慢性咳の原因として注目されている3)上気道咳症候群では鼻汁が刺激になって咳が起こる。鼻咽頭粘膜の敷石状所見や後鼻漏に注意する夜間に増悪する咳なら、上気道咳症候群、逆流性食道炎、心不全を考える【治療】咳に有効な薬は少ないハチミツが有効とのエビデンスがある4)咳喘息:吸入ステロイド+気管支拡張薬上気道咳症候群:アレルギー性鼻炎が原因なら点鼻ステロイド、アレルギー以外の原因なら第一世代抗ヒスタミン薬3)逆流性食道炎:プロトンポンプ阻害薬<参考文献・資料>1)Mukae H, et al. Chest. 2009;136:1341-1347.2)Rutledge RK, et al. N Engl J Med. 2012;366:e39.3)ACP. MKSAP19. General Internal Medicine. 2021. p19-21.4)Abuelgasim H, et al. BMJ Evid Based Med. 2021;26:57-64.

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アサガオが体内で発芽した子ども【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第201回

アサガオが体内で発芽した子どもphoto-ACより使用最近、日本語の論文ばかり紹介していますが、結構面白くて、いろいろな他科雑誌を読んでいます。アサガオといえば、夏休みの観察日記が定番中の定番です。ウチの子どもも小学1年のとき、ゴツイ植木鉢を持って帰ってきて、毎日アサガオの観察をしていました。アサガオを、なんと体内で育ててしまったという驚愕の医学論文があるので紹介しましょう。小山新一郎ら.アサガオ種子気管支異物の1例喉頭. 2006;18:146-148.この論文の主人公は、生後5ヵ月の男の子でした。口にものを入れたい盛りですよね。ウチの子どもも、よくトミカのミニカーを口に入れていました。アサガオの種が入った容器を誤って倒してしまい、その際、いくつか種が口に入ってしまったそうです。その後、呼吸器症状が出現したため、近くの小児科を受診しました。大きな異常はないだろうと診断され、感冒薬を処方されて帰宅しました。しかし、2日後に40℃の発熱がみられ、別の小児科を受診しました。その際、胸部レントゲン写真で明確な所見が確認され、総合病院へ紹介されたそうです。その後、胸部CT検査を行うと、「左の気管支に何か詰まっていること」がわかりました。タイトルに書いてあるように、気管支にはアサガオの種が入り込んだわけですが、全身麻酔下で左気管支をのぞくと、黒褐色のアサガオの種とは異なるモノがありました。それを取り除いてみると、あれ、アサガオの種じゃなかったのだろうか。主治医は、その取り出した異物をつぶさに観察しました。すると、それは発芽して大きくなったアサガオの種でした。体内ですでにアサガオは発芽していたのです。さすが、成長が早い!おそらく、最初に小児科を受診した時点ではアサガオが発芽していなかったので、気管支の通気性がよく、画像で無気肺を指摘できなかったのでしょう。その後、気管支を閉塞することで含気不良の肺葉が出てきたということだと思います。もし風邪や喘息と診断されたままで、どんどんアサガオが成長していったらどうなっていたのかと考えると恐ろしいですね。

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心が折れそうな時の心の薬、アガペー【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第43回

第43回 心が折れそうな時の心の薬、アガペー人生は、失敗や挫折の連続です。誰もが味わう経験ですが、その苦痛はけっして小さくありません。当科の若手医師が、苦労して英文の論文を仕上げ投稿しました。最初の投稿作業を完了した時には、自信に満ちた様子でした。査読者のレビューを経て、採択に向けて良い返事があるものと確信しているのでしょう。編集部からの返事を待ちわびています。結果はリジェクト(不採択)でした。内容としては決して悪いものではなく、解析法や英文のレベルも十分です。投稿先を変更して挑戦するも、何と6回続けてリジェクトでした。前向きに挑戦する気持ちも失われ、心が折れていく様子が傍目にも明らかでした。自信喪失です。論文を修正して内容を高める作業を応援することは勿論ですが、「頑張れ!」と励まし続けるだけでは解決しません。この挫折感を容認し、共有することも大切です。風邪をひいたときに身体をいたわるように、失敗や挫折を経験した時には、ゆっくり心をいたわる必要があります。シェル・シルヴァスタインの「おおきな木」という絵本をご存知でしょうか。1本のリンゴの木が1人の人間に限りない愛を捧げる美しくも悲しい物語です。日本を代表する作家である村上春樹が翻訳していることでも知られています。原題名は『The Giving Tree』といいます。困った時だけやって来て、リンゴの木に「~をくれるかい」と要求ばかりする坊やに、身を犠牲にして尽くす木は、「きは それで うれしかった」と応えるのです。大好きな坊やに、りんごを与え、枝を与え、切り株になっても見返りを求めない大きな木のお話です。ひたすら少年に尽くす木の姿が、心に余韻を残します。一読をおすすめします。立ち読みで完読できます(本屋さんごめんなさい)。古代ギリシャでいう「愛」の形の1つとして、アガペー(agape)があります。アガペーは、新約聖書の中でのイエス・キリストの受難と復活に象徴的に示される無条件的絶対愛です。自分が与えるということ、たとえ相手が何かをしてくれなくても、ひたすら自分が与えるのがアガペーです。親が子供を愛する気持ちは当然と思いますが、賢く勉強のできる優秀な子供をかわいいという気持ちと、バカな子ほどかわいいという気持ち、この一見矛盾する両方が存在します。バカな子を思う気持ちがアガペーに近く、優秀な子を尊ぶ気持ちがフィリア(philia)でしょうか。失敗や挫折に直面している者には、アガペーの愛情で接することが肝要です。7回目の論文投稿です。なんと見事に素晴らしいジャーナルに採択されました。七転八起ならぬ、六転七起です。苦労のすえに得られた成果への賛辞である、「Congratulations!」に相応しい快挙です。この連絡を受けた若手医師は、弱った生け花が水切りを受けたかのように瞬時に元気を回復しました。小生にとっても、我がことのように嬉しく、その喜びを共有させていただきました。短期間での成果が求められ、成功するまで長い気持ちで待つことができない世の中になっています。こんな時代だからこそ、挫折に苦しむ者を大きなアガペーで容認していきたいですね。

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アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第89回

アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「アブロシチニブ(商品名:サイバインコ錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、全身療法が可能な経口剤であり、既存治療で効果不十分な中等症~重症のアトピー性皮膚炎の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎(AD)の適応で、2021年9月27日に承認され、同年12月13日に発売されました。なお、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間施行しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与します。患者の状態に応じて200mgを1日1回投与することもできます。なお、中等度の腎機能障害(30≦eGFR<60)では50mgまたは100mgを1日1回投与し、重度の腎機能障害(eGFR<30)では50mgを1日1回経口投与します。本剤投与時も保湿外用薬は継続使用し、病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。なお、投与開始から12週までに治療反応が得られない場合は中止を考慮します。<安全性>AD患者を対象に本剤を投与した臨床試験の併合解析において、発現頻度2%以上の臨床検査値異常を含む有害事象が確認されたのは3,128例中2,294例でした。主な副作用は、上咽頭炎、悪心、アトピー性皮膚炎、上気道感染、ざ瘡、筋骨格系および結合組織障害などでした。なお、重大な副作用として感染症(単純ヘルペス[3.2%]、帯状疱疹[1.6%]、肺炎[0.2%])、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症[0.1%未満]、深部静脈血栓症[0.1%未満])、血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(ヘモグロビン減少[0.9%]、貧血[0.6%])、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少症(0.4%)、間質性肺炎(0.1%)、肝機能障害、消化管穿孔(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、皮膚バリア機能を低下させたり、アレルギー炎症を悪化させたりするJAKという酵素の産生を抑えることで、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。2.本剤には免疫を抑制させる作用があるため、発熱や倦怠感、皮膚の感染症、咳が続く、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの感染症の症状に注意し、気になる症状が現れた場合は、すみやかにご相談ください。3.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。4.(女性に対して)この薬を服用中、および服用中止後一定期間は適切な避妊をしてください。5.これまで使用していた保湿薬は続けて使用してください。<Shimo's eyes>近年、ADの新しい治療薬が次々と発売されており、難治例における治療が大きく変化しつつあります。本剤と同じ経口JAK阻害薬のほかにも、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤や外用JAK阻害薬などがすでに発売されています。本剤は、ADの適応を得た経口JAK阻害薬として、バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)、ウパダシチニブ水和物(同:リンヴォック錠)に続く3剤目となります。また、12歳以上のアトピー性皮膚炎患者に使用できる製剤としてはウパダシチニブに続いて2剤目となります。相互作用については、フルコナゾール、フルボキサミンなどの強力なCYP2C19阻害薬、あるいはリファンピシンのような強力なCYP2C19および CYP2C9誘導薬との併用に注意が必要です。これらの薬剤と併用する場合、可能な限りこれらの薬剤をほかの類薬に変更する、または休薬するなどの対応を考慮します。経口JAK阻害薬は、肺炎、敗血症、ウイルス感染などによる重篤な感染症や結核の顕在化および悪化への注意が警告に記載されています。生ワクチンの接種は控え、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化にも注意する必要があります。調剤時の注意に関しては、抗うつ薬/慢性疼痛治療薬デュロキセチン(商品名:サインバルタカプセル)と販売名が類似していることから、取り違え防止案内が発出されています。薬剤の登録名や調剤棚の表示などを工夫して、取り違えを防ぎましょう。本剤は、米国においてブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)の指定を受け、優先審査品目に指定されています。参考1)PMDA 添付文書 サイバインコ錠50mg/サイバインコ錠100mg/サイバインコ錠200mg

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第87回 生物兵器の道理で考えるとぞっとする!?オミクロン株軽症者を軽視するリスク

先週触れた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のオミクロン株の感染者は、NHKのまとめたデータによると、8日18:30時点で世界53ヵ国・地域で検出され、日本国内でもすでに4例目が確認されている。先週の段階では南アフリカ(以下、南ア)で感染の主流がデルタ株からオミクロン株に移行しつつあったことから、感染力はデルタ株より強いことが示唆されるのではないかと触れたが、その可能性は先週よりも高まっていると言えそうだ。「8割おじさん」こと西浦 博氏(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授)が12月8日に開催された厚生労働省の第62回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出した資料によれば、南アのハウテン州での報告をベースにしたオミクロン株の実効再生産数はデルタ株の4.2倍だという。もっともこれはウイルスの素の感染力である基本再生産数ではなく、報告バイアスの可能性はすべて拭い切れていないことや、ワクチン接種歴や年齢などを加味できていないデータであること、南アのワクチン接種率は30%未満でワクチンより抗体価が低い自然感染での免疫獲得者が多い状態だったことなどが研究の限界として存在したことを西浦氏自身が指摘している。とはいえ、これまでデルタ株主流だった世界各国でオミクロン株の市中感染報告が増加している現状を考えれば、やはりデルタ株を超える感染力の強さという可能性はかなり濃厚と言える。その一方で、あくまで現時点の感染者の多くが無症候、軽症で、野生株や既存の変異株と比べて重症化リスクが上昇している可能性が見えていないことはやや好材料である。もっともこれも現時点での推測に過ぎない。ただ、そのためか「全世界からの外国人入国をストップさせている『鎖国政策』はやり過ぎではないか?」との意見がちらほら出ている。しかし、現時点では私はやむを得ないと思っている。この件は前回も簡単には触れたが、そもそも感染者が無症候、軽症だから気にしなくていいというのはやや極論に過ぎる。重症化リスクが高まっていないとしても、従来株ですら20%は重症化するのだから、感染力が強い可能性があるオミクロン株が流入すれば、日本国内でも大量の市中感染を産み出し、その結果、一定数の重症者が発生してしまう。しかも、現在の日本国内は、高齢者や基礎疾患保有者という重症化リスクの高い人の抗体価が低下し、3回目接種のスタンバイ状態となっている時期である。つまり、今が最もブレークスルー感染リスクが高まっている時期とも言える。加えて新型コロナをインフルエンザと同等に扱えるだけの対処手段はまだ乏しく、それは今申請中の新型コロナの経口治療薬であるモルヌピラビルが承認を受けても劇的に変化するとは断言し切れない。結果としてオミクロン株の流入とそれに伴う感染者の増加は、まだ仮縫いの新型コロナ医療体制を再び逼迫させる恐れがある。百歩譲ってオミクロン株感染者がほとんど重症化しないとしても、流入して感染が広がれば問題は多くなると感じている。そう思うのは、私が過去に共著ながら生物兵器テロに関する新書を執筆した際にお会いした、ある生物兵器の専門家が言っていた一言をふと思い出したからでもある。私はこの専門家にお会いした時、次のような質問を投げかけた。「ベネズエラウマ脳炎ウイルスなんて生物兵器として使えるんですか?」ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、トガウイルス科アルファウイルス属に属するウイルスで人獣共通感染症を引き起こす。感染力が強く、10~100個のウイルスでも感染が成立し、ヒトでは2~5日間の潜伏期間を経て発熱・頭痛・筋肉痛などのインフルエンザ様症状が起こる。感染者の約1~3%が脳炎を発症し、そうした人の10~20%が死亡する。生物兵器の候補としてよく書籍や文献に登場するのだが、最終的な感染者の致死率は計算上0.1~0.6%と必ずしも高くない。私としては「その程度の致死率の低いウイルスが生物兵器として効果があるのか?」 という意味で、この専門家に質問したのだった。それに対するこの方の答えは次のようなものだった。「そりゃ致死率が高いもののほうが生物兵器としての効果が高いようにも思えますよね? でも必ずしもそうとは言えない。おおむね致死率が高い病原体は、感染力は低い。また、そうした病原体を生物兵器にすると、開発・使用する側もその過程で感染リスクを負う。これに対し、ベネズエラウマ脳炎ウイルスは開発・使用する側のリスクは低い。敵国に使う際の効果は、確かに殺傷能力という意味では低いが、感染力が強いため、一旦放出されれば次から次に敵側の戦闘員が感染してダラダラと発熱の症状が続いて戦闘能力が大幅に奪われる。感染が民間人に及べば、軍事力を底から支える敵国の経済が低迷し、敵国の継戦能力は軍事力と経済力の双方から削がれる。こう考えると実は最も生物兵器としては利用価値があるとも言える」さすがにこの回答には「なるほど」と唸ってしまった。ここで話をオミクロン株に戻そう。まさに感染力が強く重症化しにくい可能性があるオミクロン株は、ベネズエラウマ脳炎ウイルスと通じるものがある。そしてこのコロナ禍を契機に日本社会全体にようやく「風邪も含め、感染症が疑われる時は無理せず休もう」というごく当たり前の概念が定着しつつある。「風邪でも休めないあなたに…」といったCMコピーはもはや非常識と言い切ってもいい社会環境だ。とすると、オミクロン株による感染者がほぼ軽症か無症候だったとしても、感染者が激増すれば社会全体が経済活動の大幅な縮小を強いられることになる。そうなればようやく感染状況が落ち着いて再開されつつある経済への打撃はいかばかりだろうか? 「感染しても軽症だから」という思考は、社会全体が長らく続くコロナ禍で疲弊しすぎた故の副作用なのかもしれないが、SNSを中心にこの手の発言が比較的著名な言論人から出てくることには危惧の念しかないのである。

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世界初、がん疼痛に使える経皮吸収型NSAIDs「ジクトルテープ75mg」【下平博士のDIノート】第76回

世界初、がん疼痛に使える経皮吸収型NSAIDs「ジクトルテープ75mg」今回は、持続性がん疼痛治療薬「ジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤(商品名:ジクトルテープ75mg、製造販売元:久光製薬)」を紹介します。本剤は、がん疼痛に適応を有する世界初の経皮吸収型NSAIDs製剤であり、簡便かつ効率的に疼痛をコントロールすることが期待されています。<効能・効果>本剤は、各種がんにおける鎮痛の適応で、2021年3月23日に承認され、5月21日に発売されました。<用法・用量>通常、成人に対し、1日1回2枚(ジクロフェナクナトリウムとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部または大腿部に貼付し、1日(約24時間)ごとに貼り替えます。なお、症状や状態により1日3枚(ジクロフェナクナトリウムとして225mg)まで増量可能です。本剤使用時はほかの全身作用を期待する消炎鎮痛薬との併用は可能な限り避け、やむを得ず併用する場合は必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意する必要があります。<安全性>国内臨床試験において、臨床検査値異常を含む主な副作用として、適用部位そう痒感(5%以上)、適用部位紅斑、上腹部痛、AST上昇、ALT上昇、クレアチニン上昇(1~5%未満)などが報告されています。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、出血性ショックまたは穿孔を伴う消化管潰瘍、消化管の狭窄・閉塞、再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、紅皮症(剥脱性皮膚炎)、急性腎障害(間質性腎炎、腎乳頭壊死など)、ネフローゼ症候群、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、重篤な肝機能障害、急性脳症、横紋筋融解症、脳血管障害が設定されています(いずれも頻度不明)。<患者さんへの指導例>1.1日1回、通常2枚を、胸、おなか、上腕、背中、腰、太もものいずれかの部位に貼って使用します。症状によって枚数が増えることもありますが、医師から指示された枚数を守り、一度に3枚を超えないように使用してください。2.創傷面または湿疹・皮膚炎などが見られる部位および放射線照射部位への貼付は避けてください。皮膚への刺激を減らすために、貼り替える際は、前回とは異なる部位を選択してください。3.この薬は1枚ずつ包装されています。貼る直前まで開封しないでください。途中で薬がはがれ落ちた場合は、ただちに新しいものを貼り、次の貼り替え予定時間には、再度新しいものに貼り替えてください。4.使用中に眠気、めまいが生じたり、かすみがかったように見えたりする場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないでください。貼った部位に赤みや痒みが出るなどつらいことがありましたら、早めにご相談ください。5.自己判断によるほかの消炎鎮痛薬との併用は避けてください。市販の風邪薬などを使用する場合は事前に相談してください。6.過去に風邪薬や消炎鎮痛薬を使用して喘息のような症状が現れたことがある方や、妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できません。<Shimo's eyes>本剤は、世界初のNSAIDsの経皮吸収型持続性がん疼痛治療薬です。同成分を含む局所作用型製剤ジクロフェナクナトリウムテープ(商品名:ボルタレン)とは異なり、全身投与型の製剤です。有効成分が全身の血中に移行するため、禁忌はジクロフェナク経口薬とほぼ同じように設定されています。NSAIDsなどの非オピオイド鎮痛薬は、「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」において、軽度のがん疼痛に対する導入薬として推奨されています。中等度~高度のがん疼痛で、オピオイド鎮痛薬では十分な鎮痛効果が得られない、または有害事象のためオピオイド鎮痛薬を増量できない場合などでは、非オピオイド鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬の併用が推奨されています。本剤は、1日1回の貼り替えで持続的な効果が期待できるため、患者・介護者の双方にとって利便性が高いと考えられます。3枚貼付時のジクロフェナクの全身曝露量が、同成分の徐放性カプセル剤(商品名:ナボールSRカプセル37.5)と同程度ですが、血中濃度が定常状態に達するまで7日ほどかかるため、効果判定のタイミングに注意が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ジクトルテープ75mg

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第61回 アデュカヌマブのFDA承認は薄氷を踏むが如し、次に待ち受けるのは…

「進むも地獄退くも地獄」。あるニュースを見て、ふとそんな言葉が頭をよぎった。6月7日夜から日本中を駆け巡った米国食品医薬品局(FDA)によるアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブ承認の件だ。アメリカでのアルツハイマー病治療薬の承認は18年ぶり。現在、同薬を承認申請中の日本も2011年7月以来、10年もアルツハイマー病治療薬は登場していない。厚生労働省の推計では2025年の国内の認知症患者推計は700万人前後。認知症の約6割がアルツハイマー病とされ、これだけでも400万人以上。加えてこの前駆段階の軽度認知障害(MCI)の患者が同じく約400万人いると推計されている。この総計約800万人の患者がいる市場でこれほど長期間、新薬が登場しなかったことは極めてまれだ。その原因は新薬開発が極めて困難な領域であるという点に尽きる。そのことを表す数字がある。米国研究製薬工業協会(PhRMA)が2016年7月に公表したアルツハイマー病治療薬開発に関する報告書である。同協会会員の製薬企業が1998~2014年に臨床試験を行ったアルツハイマー病の新薬候補127成分のうち、規制当局から製造承認取得を得るに至ったのはわずか4成分、確率にして3.1%に過ぎない。この4成分とは、エーザイが1999年に世界初のアルツハイマー病治療薬として世に送り出したアリセプトを含む、現在ある4種類の治療薬そのものだ。一般的にヒトでの臨床試験に入ったもののうち10%強が実用化に至るといわれる新薬開発の現状からすれば、かなりの低確率だ。新薬開発が難しい最大の理由はアルツハイマー病の原因がいまも仮説の域を超えていないからである。今回承認されたアデュカヌマブは、脳内に蓄積するタンパク質「アミロイドβ(Aβ)」が神経細胞を死滅させることでアルツハイマー病になる、という仮説に基づき開発されたAβを除去する抗体医薬品。だが、Aβの蓄積の結果として神経細胞が死滅するのか、それとも別の原因で神経細胞が死滅した結果としてAβの蓄積が起こるのかは判別ができていない。そして過去15年ほどはこのAβを標的に、その前駆タンパク質からAβが作り出される際に働く酵素のβセクレターゼ(BACE)の阻害薬、アデュカヌマブと同じ脳内に沈着したAβを排除する抗Aβ抗体の2つの流れで新薬開発が進められてきたが、ロシュ、ファイザー、イーライリリー、メルク、ノバルティスといった名だたるメガファーマが最終段階の第III相試験で次々に開発中止に追い込まれた。その数は2012年以降これまで実に7件、まさに死屍累々と言っていいほどで、特定領域でここまで開発失敗が続くのは異例だ。実はアデュカヌマブもこの7件に含まれている。2019年3月に独立データモニタリング委員会の勧告により進行中の2件の第III相試験が中止。しかし、その後、新たな症例を加えて解析した結果、うち1件では高用量群でプラセボ群と比較し、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)の有意な低下が認められ、一転して承認申請に踏み切った。そして提出されたデータに対するFDA諮問委員会の評決では、ほぼ一貫して否定的な評価を下されていたものの、最終判断で新たな無作為化比較試験の追加実施を条件に、その結果次第では後日承認を取り消しができるという条件付き承認となった。まさに薄氷を踏むような事態を繰り返し、ようやく承認にこぎつけたのである。今後、日本での審査がどのようになるかはまだわからないが、「FDAが風邪を引けば、厚労省はくしゃみをする」とも揶揄される中で、日本で承認が得られないと思っている人はまずいないだろう。今回のニュースはアルツハイマー病患者・家族団体の関係者のインタビューでも報じられているように、これまで何度も落胆し続けてきた当事者にとって大きな光明だ。とはいえ、これからも薄氷を踏む状況は変わらない。ご承知のように現時点でアデュカヌマブの有効性が示唆されているのは軽度のアルツハイマー病あるいはMCIのみである。ただし、添付文書上では「アルツハイマー病」という全般的な適応表記である。アデュカヌマブの登場は医学的観点から「使える人」と「使えない人」という患者・家族の分断を生む危険性をはらんでいる。また、追加試験を要求されている以上、製薬企業もリアルワールドデータも含めて今後ネガティブな評価やデータが浮上してくるのは避けたいはずで、彼らもまた有効性が担保できそうな厳格な症例基準を持ち出してくるだろう。さらに現時点で標準用量の年間薬剤費が600万円と報じられているように、経済的に「使える人」と「使えない人」の分断も顕在化させる可能性がある。これは高額療養費制度を持つ日本で承認された場合でも大なり小なり同じ問題は浮かび上がってくるだろう。また、このことは同時に「患者数の多い巨大市場×高薬価」という社会保障制度をコントロールする側からすればもっとも歓迎できないファクターも抱えている。いずれにせよ、今後アデュカヌマブが乗り越えなければならない壁はいくつもある。かくいう私自身、MCIの父親を抱える立場として、「父親には使えるだろうか?」「もし使えるとしても父親は納得してくれるだろうか?」「母親は何と考えるだろうか?」「経済的負担は?」「もし有効性が示せなかったら?」「そもそも使うのが本当に良いことなの?」などなどの疑問や思いがぐるぐる脳内を駆け巡っている。

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第58回 世界との比較で見えてきた日本のコロナ対策の課題と対応

新型コロナウイルス感染症を巡っては、検査やワクチン接種が遅々として進まず、治療においても病床数が不足している日本。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏が4月24日、「これまでのコロナ対策を問う」と題した講演会において問題点の指摘と提言を行った。以下、講演の概要を紹介する。季節性の“風邪コロナ”の動向にも注視を緊急事態宣言後の新規感染者数の増加に対し、「リバウンド」という言い方がされるが、世界で感染者数が増加しているということは、日本固有以外の理由がある。それは変異株の拡大と季節性の変動の影響だ。前者については改めて説明の必要はないが、後者については新型コロナ流行を予測する上で重要だ。コロナは元々、風邪のウイルスで、新型コロナが流行する以前から4種のウイルスが世界で流行を繰り返してきた。このような“風邪コロナ”は夏と冬の年2回流行することから、新型コロナも夏に流行する可能性がある。しかし日本の場合、現在の状況では今夏はおろか、今冬であっても国民の大半がワクチン接種を完遂するのは無理だろう。G7の中では、英国と米国において感染者数が激減している。英国については、昨夏の日本の第2波までは、感染者数の急増により「世界の負け組」と呼ばれたが、年末年始頃から減少に転じた。また、米国は死亡者数の急増から第2次世界大戦末の様相とまで言われた。両国はなぜ感染者数の減少に成功したのか、そしてその他の欧州諸国がなぜうまくいっていないのかを分析すべきだ。ワクチン接種数5割超で集団免疫を獲得日本に関しては、やり方次第で緊急事態宣言は必要なかったと考える。各国の人口10万人当たりのワクチン接種率(4月13日現在、1回目接種)のデータによると、英米両国の接種率は約6割。対する日本は1.3%。英米の感染者数の減少傾向を見ると、集団免疫を獲得していることがうかがえる。このことが示すのは、接種率が5割を超えれば感染者数を抑えられるということだ。ただし、速やかな接種でなければいけない。ちなみに、接種率1位はチリで約65%。しかし、同国の感染者数は急増した。ワクチンの主な購入先は中国のメーカーだ。中国製は不活化ワクチンで、有効性は5〜7割。これに対し、米国のファイザー製やモデルナ製はmRNAワクチンで、有効性は約9割だ。後者は世界初のワクチンで、接種後何が起きるかわからないからと、当初は中国製ワクチンが求められていたが、チリの状況が明らかになってから潮目が変わった。菅 義偉首相が4月、5,000万回分のワクチンの追加供給をファイザーと合意した頃、中国は1億回分を輸入した。習 近平・国家主席は自国のワクチンを危ないと思ったのか。一方、ファイザー製は短期的な有効性や安全性が明らかになりつつある。「特例承認」制度を早期に生かせなかった日本日本の接種率が低い理由に、接種開始の遅れがある。主要先進国では昨年12月に始まったが、日本は今年2月からだ。田村 憲久・厚生労働大臣は、安全性チェックのため治験が必要だと言ったが、ファイザー製ワクチンの治験にヨーロッパで参加した国はドイツのみで、多くが自国での治験にこだわらなかった。形だけのブリッジ試験を実行した日本とは危機意識が違うと言えよう。日本は緊急事態と言っても平時の対応だ。医薬品医療機器等法に基づく特例承認という制度があって、治験せずとも承認できるのに、政治判断をしなかった。問題を指摘された菅首相の答弁は、「法改正が必要」との苦しい説明だった。ワクチンを確保したら、あとは打つだけ。欧米では医学生や看護学生、軍人でも接種できる。日本も規制を緩和して打ち手を増やさなければいけない。日本は経済的に大きなダメージを受けている。2020年のGDPは、前年比で-5.1ポイント、アジア圏域では中ぐらいだが、東アジアの中では最下位だ。一方、ヨーロッパで感染対策を緩めたスウェーデンでは、ロックダウン措置をしなかった結果、死亡者数が増えた。2020年のGDPは前年比‐4.2ポイント。高齢者層の経済活動自粛などが要因として考えられる。国際標準とは真逆の日本の対応策日本のコロナ施策における最大の問題点は、PCR検査を抑制したことだ。G20における10万人当たりのPCR検査数(2020年12月9日前後の数字)を見ると、トップは米国で約6万5,000件。翻って、日本は14位で5,000件以下だ。世界のコロナ対策が大きく動いたのは、昨年8月。リードした米国では、新学期が始まるタイミングだった。学校では対面でないと教育効率が下がったり、教員の雇用に影響したりする。週2回の検査により陽性者が早期に発見できるという研究結果を根拠に、実行することにした。日本も東京五輪・パラリンピックの選手や関係者は週2回検査(その後、毎日に変更)するというが、子ども達に週2回検査しようとはしない。ダブルスタンダードになっている。OECD加盟国と中国の10万人当たりのCOVID-19関係論文数(2020年12月28日現在)を見ると、トップはスイスで、日本は34位。「イソジンでうがいをすれば感染を防げる」「PCR検査を増やせば医療が崩壊する」「マスク会食をしましょう」などという言説が行政トップから発せられるのが日本なのだ。実際は逆で、検査をして陰性の人はマスクを外して外食しましょう、これが国際標準であるということは明白だ。大学病院での受け入れ増に必要な感染症改正欧米と比べて患者数が少ない日本で医療が逼迫するのは、コロナ感染者の受け入れ病床数が少ないからだが、とくに問題なのは、大学病院が少数の感染者しか受け入れられない点だ。それはコロナが感染症法に規定されている法定感染症で、受け入れ病院として大学病院は認定されていないからだ。言うまでもなく、コロナは「総力戦」。科学的かつ合理的でなければならない。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 呼吸器

第1回 慢性閉塞性肺疾患(COPD) オーバーラップ症候群(ACO)第2回 特発性間質性肺炎(IIPs)第3回 咳嗽・喀痰第4回 喘息第5回 肺炎第6回 肺癌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。呼吸器については、島根大学医学部附属病院の長尾大志先生がレクチャーします。ガイドラインの改訂がとくに顕著な呼吸器領域。疾患の概念や治療方針に関する大きな変更点、新たに採用された診断基準に注目します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 慢性閉塞性肺疾患(COPD) オーバーラップ症候群(ACO)タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる慢性閉塞性肺疾患(COPD)。2018年のガイドライン改訂により、炎症だけでなく非炎症性機転も重視され、FEV1の数値と合わせて、各症状の程度を加味した総合的な重症度の判断が求められるようになりました。喘息とCOPDを合併したACOは、COPD全体の10~20%を占め、治療には吸入ステロイドを併用します。増悪した際の治療手順も試験で問われやすいポイントです。第2回 特発性間質性肺炎(IIPs)特発性間質性肺炎(IIPs)は、明らかな原因を特定できない間質性肺炎の総称。主要6疾患と、その他の希少疾患に分類されます。各疾患名だけでなく、対応する病理組織パターンもしっかり確認しておきましょう。中でも重要なのが特発性肺線維症(IPF)。IPFの診断は、病理診断は必須ではありませんが、アルゴリズムに沿って複数の項目をチェックします。他のIIPsと唯一異なるIPF治療のポイントは、ステロイドを使用しないこと。第3回 咳嗽・喀痰「咳嗽喀痰の診療ガイドライン2019」では、咳嗽と密接に関連している喀痰の項目を新たに追加。咳嗽と喀痰の原因疾患は、急性と慢性に大別されます。狭義の感染性咳嗽、いわゆる風邪には、抗菌薬は不要です。多彩な疾患が鑑別に上がる遷延性・慢性の咳嗽。鑑別診断では、結核や肺癌など危険な疾患を見逃すことなく、後鼻漏の原因となる好酸球性副鼻腔炎や、喘息、胃食道逆流症なども念頭に置きます。※この番組は2020年3月に収録したものです。新型コロナウイルス感染症については取り上げていません。第4回 喘息変動性を持った気道狭窄や咳などの症状を起こす喘息。これまで明確な診断基準は示されていませんでしたが、「喘息とCOPDのACO診断と治療の手引き2018」に、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)値が診断に有効な指標として記載されました。近年の重要な治療方針の変更点は、以前は重症のみに使用されていた抗コリン薬が、比較的初期から吸入ステロイドと併用可能になったこと。重症例に効果的な抗体医薬も増えているので、しっかり押さえておきましょう。第5回 肺炎市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎の3つの肺炎が統合されたガイドラインが2017年に発表されました。終末期の症例が含まれる院内肺炎と医療・介護関連肺炎を1つの診療群とし、市中肺炎と区別した診療プロセスが示され、終末期における患者の意志やQOLを尊重した治療・ケアのあり方が重要なトピックとなっています。肺炎の種別の重症度スコアリング法や、段階別の治療戦略、適応できる薬剤を解説します。第6回 肺癌今回は非小細胞肺癌について詳しく解説します。肺癌については新規薬剤の開発が盛んで、それに伴ってガイドラインもオンラインで頻繁に更新されています。まずTMN分類で、手術、放射線治療、または薬剤治療のどれを採用するか適応判断。キナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場によって、生存期間の延長が見込めるようになりました。副作用に耐えられるか、患者さんの体力も考慮しながら使用できる薬剤を選択します。

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第52回 40~50代は必見!ワクチンオタクの筆者が薦める新型コロナ以外のワクチン4選

コロナ禍の影響で私自身が週刊誌などから新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)について取材を受ける機会が増えている。もちろん週刊誌なども最初はいわゆる「大御所」の医師にあの手この手でコンタクトを取ろうとするのだが、こうした医師たちは多忙なことに加え、取材を受ける場合でも新聞、テレビなどの大手メディアに予定を押さえられていることが多く、捕まえにくい。そんなことで第2候補、第3候補としてコロナ禍でのさまざまなテーマで取材依頼が舞い込んでくる。まあ、同じメディアに身を置くゆえに頼みやすいことも影響しているのだろう。先日もある取材依頼があったのだが、それは珍しく直接的にコロナに関連するものではなかった。たまたま、SNSのFacebookに書いた私の投稿に知人の編集者が目を止めて、取材をさせてほしいと連絡があったのだ。その投稿とは私のワクチン接種歴である。3月半ば、私は国立国際医療研究センターで国内未承認のダニ脳炎ウイルスに対する3回目のワクチン接種を完了。これにより過去約2年で20種類のワクチン接種を終了した。以下はこの間に私がワクチン接種を完了した感染症である。A型肝炎B型肝炎麻疹風疹ポリオジフテリア破傷風百日咳おたふく風邪帯状疱疹腸チフス狂犬病コレラヒトパピローマウイルス髄膜炎(B群も含む)インフルエンザダニ脳炎黄熱病肺炎球菌日本脳炎現在私は51歳。この年齢と照らし合わせておやっと思うものもあるだろう。たぶん、その筆頭は麻疹・風疹ではないだろうか。私の場合、どちらも罹患歴もなく、これまでワクチン接種歴もなかった。風疹に関しては男子がワクチン接種対象となっていなかった年代、なおかつたまたま罹患したことがなかった。麻疹は私の世代でも1歳時にワクチン接種を受けるはずだが、ある事情によりワクチン接種をスキップしてしまった。それは生後3ヵ月の頃、当時4歳だった姉が麻疹を発症、姉か私のいずれかを隔離するわけにもいかず、かかりつけ医が私に免疫グロブリンを注射。当時こうしたケースは1歳時点でのワクチン接種で抗体が作られにくいと考えられ、通常の接種をスキップされてしまっていたのである。また、学生時代にバックパッカーだったこともあり、当時は抗体価持続期間10年と言われていた黄熱病ワクチンを接種したことがある。現在では抗体持続期間は生涯とされている。しかし、当時のイエローカードは10年経過した段階で無効と思い廃棄してしまっていた。そんなこんなで再接種した次第である。そもそも、なぜこんなにワクチンを打ったのか? きっかけは2つある。最初のきっかけは2018年2月4日にさかのぼる。この日は語呂合わせで「風疹の日」で、たびたび流行していた風疹のワクチン接種を呼びかけるイベントが成田空港で行われていた。その取材に赴き、妊娠中に風疹に感染し、先天性風疹症候群の娘さんを出産した「風疹をなくそうの会『hand in hand』」共同代表の可児 佳代氏の講演を聞いた。可児氏の娘・妙子(たえこ)さんは先天性風疹症候群により生まれつき目、耳、心臓に重い障害を持ち、闘病の末に18歳で短い命を終えていた。妙子さんの写真を手に話す可児氏の姿に衝撃を受け、その後しばらくぼーっとしたまま空港内を徘徊したのを覚えている。この時のイベントで実施していた無料抗体検査を受け、後日郵送で届いた結果で私にはやはり抗体がないことが判明した。そこで知人の医師に相談し、麻疹・風疹混合ワクチンを接種した。多くの方がご存じのように、かつては麻疹も風疹もワクチン接種は1回のみだったが、その後ワクチン接種での抗体獲得状況に関する研究が進み、2回接種で抗体獲得がほぼ確実になることが分かった。今では麻疹、風疹ともワクチン接種は2回が原則となっている。この時は知人の医師と2回目をどうしようか話し合ったが、医師からは「流行地域に行くならばまた来月接種するというのもありかもしれないが、そうでなければ1~2年後でいいのではないか?」と提案され、そのようにすることになった。そうこうするうちに2019年に家族と南アジアのブータンを旅行することになったのが第2のきっかけだ。このとき渡航前に調べたところ、現地では狂犬病、腸チフス、日本脳炎、コレラといった感染症のリスクがあることが分かった。たまたま前述の知人の医師のところでは国内未承認のものも含め、これらのワクチンがすべて接種できることがわかり、早速接種することにした。その際に知人医師のところではかなり数多くのワクチンを接種できることが分かった。経歴にもある通り、私は災害現場や海外の紛争地の取材などもする。その意味では数多くのワクチンを接種しておいて損はない。ということで、次々に接種し始めたのである。知人医師のところで接種できなかったダニ脳炎、髄膜炎B群、帯状疱疹(シングリックス)は国立国際医療研究センターのトラベルクリニックで接種した。ちなみにこのうちヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関しては、接種を申し出た際に知人医師からは「もういいんじゃないの?」と笑われた。そりゃ50代の不活発なおじさんにはほぼ不要である。ただ、ご存じのようにHPVワクチンに関してはさまざまな問題が噴出している。その報道にかかわる際にこのワクチンに懐疑的な人たちから「じゃあ、あなたは接種したんですか?」と問われて、接種していないと答えればそれだけで揚げ足を取られかねない。ということで、少しでも説得力を付けるために接種したというのが実際だ。さて前置きが長くなったが、ではどんな取材を受けたかというと、端的に言えば「新型コロナをきっかけにワクチンに関する関心が高まっている今、一般の人に接種をお薦めするワクチンを教えて欲しい」というテーマだった。ちなみに取材依頼元の週刊誌のメイン購読層は40~50代の男性である。そこで私がお薦めしたのが麻疹・風疹ワクチン、HPVワクチン、おたふく風邪ワクチン、破傷風ワクチンである。麻疹・風疹ワクチンを薦めたのは、私のような公的に風疹ワクチンを接種する機会がなかった1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた男性は、近年の風疹流行の媒介者であることが明らかなため、国が2019年~2022年3月末までの3年間は無料で抗体検査と予防接種を受けられるクーポンを発行しており、一部の男性にとっては確実にお得だからだ。しかも、このクーポンで抗体がないと判定されてワクチンが接種される際は、基本的に麻疹・風疹混合ワクチンが選択される。つまり、主に空気感染し一度流行すると厄介な麻疹の阻止にもつながるという接種者個人はもちろん、社会全体にとっても「2度おいしい」のである。HPVに関しては、ご存じのように性感染症であり、男性ではオーラルセックスなどをきっかけに中咽頭がんに罹患するおそれがある。中咽頭がんは胃がんや大腸がんのように定期健診もなく、見つかった段階でかなり進行しているケースも少なくない。そして手術や化学放射線療法の合併症である発声困難や味覚障害でQOLが著しく低下するケースもあるほか、最悪は死に至る。それがワクチン接種で大幅にリスクを低下させることができる。おたふく風邪ワクチンは睾丸炎による男性不妊の予防、破傷風ワクチンは災害ボランティア活動などで比較的感染の機会が多いというのが推奨理由である。まあ、この辺は本サイトの読者である医療者の方々からは異論があるかもしれないが、少なくとも個人的には大きく外れてはいないと思っている。ちなみにこれまでこの接種にかかった費用は約40万円。もはや趣味の域であると言っても差し支えなく、私自身も最近では「趣味はワクチン接種」と公言している。実際、趣味の域を極めるべく、将来的には国内で接種が不可能なEU承認のエボラワクチン、中国のみで承認のE型肝炎ワクチン、アメリカのみで承認の炭疽菌ワクチンもコロナ禍終息後に機会があれば接種してみたいところ。これは冗談ではなく真面目な話。もちろん飛行機に乗って接種しに行きますので、何らかの情報や伝手がある方は編集部にご一報ください(笑)。ちなみにどの雑誌に掲載されるかというと、一部では男性でも購入しにくいと言われる数少ないカタカナ名の男性週刊誌である。まあ、どんな反応があるか、それともまったく反応がないのか、個人的にもちょっと興味がある。

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風邪なのにいきなり喘息治療薬?【処方まる見えゼミナール(大和田ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大和田ゼミ)風邪なのにいきなり喘息治療薬?講師:大和田 潔氏 / 秋葉原駅クリニック院長動画解説風邪だと思って来院した患者さんに処方されたのは喘息治療薬。この患者さんはどんな病態なのでしょうか?解熱鎮痛薬を使う・使わないという線引きは?薬剤の選択や使用方法に込められた意図を大和田潔先生が解説します。

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