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アスピリン喘息の患者に対し解熱消炎薬を投与し、アナフィラキシーショックで死亡したケース

自己免疫疾患最終判決判例タイムズ 750号221-232頁、786号221-225頁概要気管支喘息の検査などで大学病院呼吸器内科に入院していた42歳女性。入院中に耳鼻科で鼻茸の手術を受け、術後の鼻部疼痛に対し解熱消炎薬であるジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)2錠が投与された。ところが服用後まもなくアナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難から意識障害が進行、10日後に死亡した。詳細な経過患者情報42歳女性経過1979年(39歳)春痰を伴う咳が出現し、時に呼吸困難を伴うようになった。12月10日A病院に1ヵ月入院し、喘息と診断された。1981年夏安静時呼吸困難、および喘鳴が出現し、歩行も困難な状況になることがあった。8月11日再びA病院に入院し、いったんは軽快したがまもなく入院前と同じ症状が出現。1982年2月起坐呼吸が出現し、夜間良眠が得られず。体動による喘鳴も増強。6月近医の紹介により、某大学病院呼吸器内科を受診し、アミノフィリン(同:ネオフィリン)などの投与を受けたが軽快せず。9月7日A病院耳鼻科を受診し、アレルギー性鼻炎を基盤とした重症の慢性副鼻腔炎があり、鼻茸を併発していたため手術が予定された(患者の都合によりキャンセル)。9月27日咽頭炎で発熱したためA病院耳鼻科を受診し、解熱鎮痛薬であるボルタレン®、およびペニシリン系抗菌薬バカンピシリン(同:バカシル、製造中止)の処方を受けた。帰宅後に両薬剤を服用してまもなく、呼吸困難、喘鳴を伴う激しいアナフィラキシー様症状を起こし、救急車でA病院内科に搬送された。入院時にはチアノーゼ、喘鳴を伴っていて、薬剤によるショックであると診断され、ステロイドホルモンなどの投与で症状は軽快した。担当医師は薬物アナフィラキシーと診断し、カルテに「ピリン、ペニシリン禁」と記載した。この時の発作以前には薬物による喘息発作誘発の既往なし。1983年2月3日A病院耳鼻科を再度受診して鼻茸の手術を希望。この時には症状および所見の軽快がみられたので、しばらくアレルギー性鼻炎の治療が行われ、かなり症状は改善した。5月10日気管支喘息の原因検索、およびコントロール目的で、某大学病院呼吸器内科に1ヵ月の予定で入院となった。5月24日不眠の原因が鼻閉によるものではないかと思われたので同院耳鼻科を受診。両側の鼻茸が確認され、右側は完全閉塞、左側にも2~3の鼻茸があり、かなりの閉塞状態であった。そこで鼻閉、およびそれに伴う呼吸困難の改善を目的とした鼻茸切除手術が予定された。5月25日教授回診にて、薬剤の既往症をチェックし、アスピリン喘息の可能性を検討するように指示あり。6月2日15:12~15:24耳鼻科にて両側鼻茸の切除手術施行。15:50病室へ戻る。術後に鼻部の疼痛を訴えた。17:00担当医師が学会で不在であったため、待機していた別の当番医によりボルタレン®2錠が処方された。17:30呼吸困難が出現。喘鳴、および低調性ラ音が聴取されたため起坐位とし、血管確保、およびネオフィリン®の点滴が開始された。17:37喘鳴の増強がみられたため、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム(同:サクシゾン)、ネオフィリン®の追加投与。17:40突然チアノーゼが出現し気道閉塞状態となる。ただちに気管内挿管を試みたが、筋緊張が強く挿管困難。17:43筋弛緩薬パンクロニウム(同:ミオブロック4mg)静注し再度気管内挿管を試みたが、十分な開口が得られず挿管中止。17:47別の医師に交代して気管内挿管完了。17:49心停止となっため心臓マッサージ開始。エピネフリン(同:ボスミン)心注施行。17:53再度心停止。再びボスミン®を心注したところ、洞調律が回復。血圧も維持されたが、意識は回復せず、まもなく脳死状態へ移行。6月12日07:03死亡確認となる。当事者の主張患者側(原告)の主張1.問診義務違反アスピリン喘息が疑わる状況であり、さらに約8ヵ月前にボルタレン®、バカシル®によるアナフィラキシーショックを起こした既往があったのに、担当医師は問診を改めてやっていないか、きわめて不十分な問い方しかしていない2.過失(履行不完全)問診により発作誘発歴が明らかにならなくても、鼻茸の手術前に解熱鎮痛薬を使用してよい患者かどうか確認するために、スルピリンやアスピリンの吸入誘発試験により確実にアスピリン喘息の診断をつけるべきであった。さらに、疼痛に対しいきなりボルタレン®2錠を使用したことは重大な過失である3.救命救急処置気管内挿管に2度失敗し、挿管完了までに11分もかかったのは重大な過失である病院側(被告)の主張1.問診義務違反アスピリン喘息を疑がって問診し、風邪薬などの解熱鎮痛薬の発作歴について尋ねたが、患者が明確に否定した。過去のアナフィラキシーショックについても、問題となった薬剤服用事実を失念しているか、告知すべき事実と観念していないか、それとも故意に不告知に及んだかのいずれかである2.過失(履行不完全)スルピリン吸入誘発試験によるアスピリン喘息確定診断の可能性、有意性はきわめて少ない。アナフィラキシーショックを予防する方法は、適切な問診による既往症の聴取につきるといって良いが、本件では問診により何ら薬物によるアナフィラキシー反応の回答が得られなかったので、アナフィラキシーショックの発生を予測予防することは不可能であった3.救命救急処置1回で気管内挿管ができなかったからといって、けっして救命救急処置が不適切であったことにはならない裁判所の判断第1審の判断問診義務違反患者が故意に薬剤服用による発作歴があることを秘匿するとは考えられないので、担当医師の質問の趣旨をよく理解できなかったか、あるいは以前の担当医師から受けた説明を思い出せなかったとしか考えられない。適切な質問をすれば、ボルタレン®およびバシカル®の服用によってショックを起こしたことを引き出せたはずであり、問診義務を尽くしたとは認めがたい。このような担当医師の問診義務違反により、アスピリン喘息の可能性を否定され、鼻茸の除去手術後にアスピリン喘息患者には禁忌とされるボルタレン®を処方され、死亡した。第2審の判断第1審の判断を翻し、入院時の問診で主治医が質問を工夫しても、鎮痛薬が禁忌であることを引き出すのは不可能であると判断。しかし、担当医師代行の当番医が、アスピリン喘息とは断定できないもののその疑いが残っていた患者に対してアスピリン喘息ではないと誤った判断を下し、いきなりボルタレン®2錠を投与したのは重大な過失である。両判決とも救命救急処置については判断せず。6,612万円の請求に対し、3,429万円の支払命令考察本件では第1審で、「ボルタレン®、バシカル®によるアナフィラキシーショックの既往歴を聞き出せなかったのは、問診の仕方が悪い」とされました。この患者さんは弁護士の奥さんであり、「患者は知的で聡明な女性であり、医師のいうことを正しく理解できたこと、担当医師との間には信頼関係が十分にあった」と判決文にまで書かれています。しかも、この事件が起きたのは大学病院であり、教授回診で「薬剤の既往症をチェックし、アスピリン喘息の可能性を検討するように」と具体的な指示までありましたので、おそらく担当医師はきちんと問診をしていたと思われます。にもかかわらず、過去にボルタレン®およびバシカル®でひどい目にあって入院までしたことを、なぜ患者が申告しなかったのか少々理解に苦しみますし、「既往歴を聞き出せなかったのは、問診の仕方が悪い」などという判決が下るのも、ひどく偏った判断ではないかと思います。もっとも、第2審ではきちんとその点を訂正し、「担当医師の問診に不適切な点があったとは認められない」とされました。当然といえば当然の結果なのですが、こうも司法の判断にぶれがあると、複雑な思いがします。結局、本件はアスピリン喘息が「心配される」患者に対し、安易にボルタレン®を使ったことが過失とされました。ボルタレン®やロキソプロフェンナトリウム(同:ロキソニン)といった非ステロイド抗炎症薬は、日常臨床で使用される頻度の高い薬剤だと思います。そして、今回のようなアナフィラキシーショックに遭遇することは滅多にないと思いますので、われわれ医師も感冒や頭痛の患者さんに対し気楽に処方してしまうのではないかと思います。過去に薬剤アレルギーがないことを確認し、そのことをカルテにきちんと記載しておけば問題にはなりにくいと思いますが、「喘息」の既往症がある患者さんの場合には要注意だと思います。アスピリン喘息の頻度は成人喘息の約10%といわれていますが、喘息患者の10人に1人は今回のような事態に発展する可能性があることを認識し、抗炎症薬はなるべく使用しないようにするか、処方するにしてもボルタレン®やロキソニン®のような酸性薬ではなく、塩基性非ステロイド抗炎症薬を検討しなければなりません。自己免疫疾患

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「自分には関係ない」「定年後にはアリかな」…“僻地医療”、どうお考えですか?

高齢化が進む日本。過疎化も手伝って、全国各地で増加中なのが「限界集落」です。“人口の50%以上が65歳以上の高齢者となって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落”のことだそうですが、こういった地域の増加に伴ってますます重要になっているのが「僻地医療」。身も心もその地に…の“Dr.コトー”のイメージが強い僻地医療、しかし実際はドクターヘリや交代医師派遣、巡回診療など、現地に常駐する以外の形で僻地をサポートしている先生方も多くいらっしゃいます。今回はそんな僻地医療に対する先生のお考えを聞いてみました!コメントはこちら結果概要医師の3割以上が 『僻地医療に携わった経験がある』僻地医療に関する経験を尋ねたところ、全体の63.8%は『携わったことがない』と回答。現在『常勤で携わっている』が全体の7.5%。パートタイム、巡回、ドクターヘリなど『常勤以外』で携わっている医師が4.8%、「医局からの派遣」などで『以前携わっていた』とした医師は23.9%。全体の3割以上が何らかの形で僻地医療に携わった経験を持つことが明らかとなった。30代以下の約半数『条件次第で考えたい』、年を重ねる毎に『関心はあるが携われない』増加現在携わっていない(経験者含む)医師に対し、今後の考えを尋ねたところ、『将来的には考えたい』7.9%、『勤務体制次第』12.1%、『待遇次第』14.7%という結果となり、全体の34.7%が検討の可能性があると回答。30代以下では48.9%に上った。一方、“携われない”と回答した人の割合は30代以下で51.1%、60代以上で76.9%と年代と共に上昇。『全く関心がない』とする人は逆に減る傾向にあり「気持ちはあるが体力がついていかない」など、『関心はあるが携われない』人が多く見られた。若手「都市部でキャリアアップしたい」、中堅 「子供の教育が」、ベテラン「専門科以外自信がない」『携われない/関心がない』と回答した医師にその理由を尋ねたところ、『教育・介護などで住まいを移せない』36.1%、『多忙で余裕がない』32.8%、『開業しているため』27.1%などと続き、『自分が携わる必要があると思わないため』は7.2%であった。若手医師から「僻地ではキャリアアップにつながる仕事ができない」、ベテラン医師からは「医師が少ない中では診療科を問わず広く診る必要があるが、もう自分の専門科以外を診る自信がない」といったコメントが寄せられた。濃密な人間関係、ひとりにかかる重い責任…現状打開の鍵のひとつは“チーム制”携わるにあたってのハードルとして、経験者から「人員・設備不足の中で都市部と同レベルの医療を求められ、訴訟社会の今はリスクが高すぎる」「プライバシーがない・よそ者扱いされるなど人間関係の難しさ」といったことが挙げられた。ひとりの医師に24時間の負担をかけるのではなく、チーム制・輪番・期間限定などの体制を組めば携わる医師が増え、状況が改善するのでは、といった意見も複数見られた。設問詳細現在、全国各地で高齢化が進み、中山間地域・離島を中心とした地方では、過疎化と共に“限界集落”※が増加しているといわれています。※人口の50%以上が65歳以上の高齢者となって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落このような状況下、僻地診療所や小規模な病院による医療提供のほかに、診療所と大規模病院の連携・一時的な交代医師派遣・専門医による巡回診療・ドクターヘリの出動なども含めたかたちの“僻地医療”の充実が望まれています。医療分野における“僻地“とは:厚生労働省により『交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち、医療の確保が困難である地域。無医地区、無医地区に準じる地区、僻地診療所が開設されている地区等が含まれる』と定義されていますそこで先生にお尋ねします。Q1.現在、僻地医療に携わっていらっしゃいますか常勤で携わっている常勤以外(パートタイム・巡回・ドクターヘリなど)で携わっている以前携わっていた携わったことがない(「以前携わっていた」「携わったことがない」の回答者のみ)Q2.僻地医療に携わることについて、先生のお考えに近いものをひとつお選び下さい将来的には考えたい勤務体制(期間/曜日限定、要請時のみなど)次第で考えたい待遇(報酬・休息時間など)次第で考えたい関心はあるが携われない全く関心がない(「関心はあるが携われない」「全く関心がない」回答者のみ)Q3.僻地医療に携われない・関心のない理由をお聞かせ下さい(複数回答可)開業しており、自分の交代要員がいないため多忙で他の業務に携わる余裕がないため診療科を問わず総合的な診療を行うことが不安なため自分の専門科の必要性が薄いと思うため設備の充実していない施設での医療提供が不安なため医療技術が遅れないか不安なため住民・風土に馴染めるか不安なため僻地の生活環境で暮らせないと思うため子供の教育・親の介護など、現在の住まいを移せないため自分が携わる必要があると思わないためその他Q4.コメントをお願いします(現在携わっている/以前携わっていた先生はその内容、充実している点・困った点など日々感じることやエピソード、携わっていない先生は理由・懸念点、そのほか僻地医療に関わることであればどういったことでも結構です)2013年4月26日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「住民にとっては無医村解消であっても、自分にとっては無医村なのが心配。医療はチームで考えるべき」(青森県,50代,循環器科)「僻地病院で約1週間単位での交代勤務をしている。常勤はやはりつらいと感じる。1週間交代での勤務は、医師によって「先送り診療」が生じ患者さんに不利益が生じることがある。もう少し長いスパンでの交代も望ましいかと思う。」(北海道,40代,産婦人科)「満足できる報酬と住民の理解が得られる事が最低条件。住民が「自分たちの税金で雇っている」という感覚で、いつでも診察を要求したり、生活を見張っていたりするような地域では、医師は居着かないのでは」(宮崎県,50代,循環器科)「赴任に関しては、ある程度の行政指導などの強制力(1-2年間くらい?)が必要なのかも」(福岡県,50代,外科)「僻地の方は病院へ2時間移動はざらですから、診療所が近くにあると喜ばれる。これだけでもやりがいに」(愛知県,50代,麻酔科)「本当に医療を必要に感じている人は自ら都会へ足を運びます。僻地医療という閉鎖的な響きを払拭し、各都市間で横の連携を深めないと、この時代に「あかひげ先生」を奨励してもしょうがないと思う」(北海道,40代,消化器科)「島に一人の医師でした。かなり重圧…」(京都府,50代,内科)「学会専門医や単位がいつとれるのか、維持できるのか?大学におけるインセンティブがとれるのか、不安になったことがあります。そのとき思ったのが交代制。必ず期間を区切ること、将来のキャリアアップにつなげることができれば、地域医療に一時的にかかわるのは悪くないと思いました」(北海道,40代,内科)「基幹病院の立場から協力しています。僻地の先生から無理難題を押し付けられることもありますが、できる範囲でこれからも協力したいと思います」(愛媛県,60代以上,脳神経外科)「東北の沿岸部で常勤。自然が豊かで、ダイビング・釣りなどできる。困ったのは、医師も住民も権利意識が強いこと、医療のレベルが低いこと(正しい医療より、保険点数重視)。今の病院・前の勤め先も津波でえらい目にあったが、楽しく前向きに仕事してます」(岩手県,60代以上,内科)「私のような特殊領域を専門とする医師は僻地の医療機関に常勤医としては不要である。但し、僻地の診療所の非専門医からのコンサルテーションは積極的に受託している。現在は当該医療機関の医師と私の個人的信頼感に基づいているが、公的ネットワーク(病理組織の遠隔診断のような)の構築が必要と思われる。」(京都府,50代,その他)「強制的にやっても無理でしょう。志のある人にやってもらえばいいと思う」(神奈川県,60代以上,消化器科)「広範囲の疾患に対応する必要があり、経験豊富な医師でないと務まらない」(秋田県,50代,内科)「一番の懸念は『一人きりの医師』として拘束される時間。それが解決できれば考える余地はある」(鹿児島県,50代,麻酔科)「期間限定ならかまいません。いろいろなところでの医療に携われるのは経験にもなって良いと思う」(北海道,40代,精神・神経科)「以前携わっていたのは風光明媚な所で、勤務ものんびりしていた。家族としては幸せだったらしいが、キャリアとしてはこのままではだめだという意識が常にあり、結局短期間でそこを離れることになった」(福島県,40代,内科)「定義によっては僻地とみなされない地域で勤務しています。子弟の教育に不利で、ちょっとした研究会への参加が困難。県庁所在地(むしろ医学部所在地か)や中央へ行くことが多く移動で疲労する。食事をする店もありません」(広島県,40代,内科)「非常勤で勤務していた先で、治療が必要な患者さんを診ても送り先を探すのに苦労した。人口も医療資源も少ない地域では現実的にできることは限られるし、勤務のストレスは大きくなる。医局制度があった当時のほうがまだよかったが、もう戻らない」(愛知県,40代,神経内科)「定年退職後、僻地とはいえませんが九州から北海道東部の重症心身障害児施設へ月に1週間けいれん患者の診療に行っています。そもそも重症心身障害児医療に従事する医師が少ない上に道東地区は医師の絶対数が少ない。多くの重症心身障害児を一人の医師が診て、巡回診療もしている。何とかならないかと愚考しています」(大分県,60代以上,小児科)「週2回、へき地のコミュニティーセンターの1室で1時間診療を行なっている。検査は心電図しかないが、患者さんには喜んでもらっています」(香川県,60代以上,循環器科)「常勤。郷里ではありますが、人間関係が濃厚すぎて…」(長崎県,40代,内科)「短期ボランティアで各地に行きます。外からの継続的な支援が、ずっと僻地医療に関わっている医療者の助けになればと」(神奈川県,30代以下,内科)「自分の老後にボランティア感覚で貢献したいとは思うが、現役バリバリのときはキャリアアップにつながる仕事をしたいので僻地医療をしているヒマはない」(京都府,30代以下,呼吸器科)「以前は数年おき交代の派遣で維持されていたが,医局制度の崩壊により片道切符になった」(石川県,40代,循環器科)「僻地医療は24時間の対応が必要でボランティア的な要素が大きい。自分の郷里若しくはお世話になった地域等でなければなかなかモチベーションを保てないのではないか。」(埼玉県,60代以上,内科)「50代後半にもなって僻地で生活したいとは思わない。24時間オンコールのような状態で、患者の転送システムもうまくいっている地域はごくわずかであろう。年収が3倍にでもしてくれないと」(宮城県,40代,内科)「へき地ではないが、田舎での勤務は経験あります。月に1週間、1年くらい通いました。どんな飲食店にいっても顔を知られていて、人々の話を時間的に並べるとその日の自分の行動が丸わかりになる。ちょっとしんどかった1年でした」(京都府,50代,呼吸器科)「僻地で長期間を経れば、現在の医療について行かれなくなり、離任した頃には次の行く先を失ってしまう。一定期間での確実な交代が不可欠であり、全く無関係の医師が行くことも好ましくない。かつてのように、医局単位で同門者から脈々と勤務者が派遣されることは、連続性という意味でも、非常に好ましい制度であったように感じている。」(東京都,50代,呼吸器科)「子供が成長して、一緒にいなくてもよくなれば考えるかも」(神奈川県,40代,小児科)「僻地医療の重症受け入れ機関で働いていたが、かかりつけ医との役割分担が不十分で、何でもかんでも大きな病院という患者が多く、体制づくりが必要と感じた」(千葉県,30代以下,総合診療科)「専門バカになっており、ジェネラリストとしてやっていけるかどうかが不安」(東京都,40代,神経内科)「家族の生活や子供の教育を考えると、一家揃って僻地に赴くことは現時点で不可能。ひとりで一手に引き受けるのも負担が大きく、複数の担当者でチームとして診療に当たれるような体制が望まれる」(福岡県,40代,泌尿器科)「離島での産科医療は、即断即決で常に背水の陣にあり、重圧を常に感じる。特に悪天候の折には、ヘリも高速ボートも使えず覚悟がいる」(佐賀県,60代以上,産婦人科)「以前は大学からのパートで僻地に行っていた。当時より高齢化しており、長期的には都市部に医療資源を集めるべきだと思うので、そちらに計画的に移ってもらうのが理想。それとは別に、医師全員が研修医の時期など一定期間必須で携わるべきだと思う。総合科の医療はそこにあるので勉強になる」(徳島県,40代,消化器科)「以前、僻地の公立病院に勤務。盆と正月は最悪。都会から患者の息子ら帰省、東京並みの医療を求めてクレーム。「しばらく見ないうちにこんなに弱っている。いったい今まで何を管理していたのか!」老親「先生、すみませんねえ」と申し訳なさそうに言うも、お亡くなりになれば、文句を言ってくるのは都会の息子らなので、もうこんな僻地ではやってられないと退職、都会に避難。僻地に住むなら、僻地で提供できる医療の範囲をわきまえてほしい」(大阪府,40代,呼吸器科)「妻帯者が通勤困難な僻地に単身赴任するのは家庭崩壊に繋がる為、独身の医師でないと務まらないと思われる」(宮城県,40代,循環器科)「お手伝いが出来ればいくらでもしたいという気持ちはあるが、かなりの専門性が問われるようになり、大変厳しい時代になっていると思う」(東京都,50代,皮膚科)「そもそも医療に限らず十分なサービスを望むものはそれが充実した地域に移住すべきだと考えています。僻地に住むのは、不便であることを含めて住むということ。よって、医療サービスを無理して僻地に持っていく必要は全くないと思う」(福岡県,40代,皮膚科)「若い時期は自分の能力を向上させるため僻地にとどまることができないと思うし、年をとると体力的に役立つことができなくなるしで、結局僻地医療に従事できなかった。 一度僻地に行くと交代の医師がいない限りやめることができない懸念があるので、派遣の形でも交代医師を確保する体制が必要だと思います。僻地医療の良さもあるはずですので、誰もが一度は経験する機会を制度として組み込むのも良いかと思う」(神奈川県,60代以上,精神・神経科)「5km四方に医療機関はなく救急車もないような山奥の寒村に、短期間ではあったが一人でいた。数十年前の話では参考にもならないだろうが、オートバイで峠を越えての往診で帰路の降雨で峠を越せず、患者宅に戻り車を預けて熊でも出そうな夜の山道を帰ってきて半日を消費し、その間の外来患者さんを診られなかったことや、簡単な手術と思ってもたった一人で実施したことなどを振り返ると、何も起こらなかったのはただ幸運だっただけ。実は冷や汗ものだったので、若気の至りでもなければ出来る事ではない」(東京都,60代以上,産婦人科)「私自身はいい思い出しかありません。住民の方も優しい方が多かったですし、むしろ地域病院で臨床力をつけたと思っています」(和歌山県,50代,内科)「単なる人員確保として高額な給与を提示したり、医学生や研修医の囲い込みを図っているようにしか見えないが、非効率な上に役にたたず、問題だらけだと思う。一番良いのは「経験もあって」「人脈もしっかりしていて」「自分の家族、特に子育てを終了している」一般に定年を過ぎた老人医師でグループを形成し(一人や二人にすべて押し付けるのではなく!)週2~3日程度の勤務であれば、人は集まると思うし実際の役に立つ。資源(老人医師)の有効活用にもなる。そういう勤務なら田舎暮らししようという気になる連中はたくさん知っている。 あとは、過疎地域の社会生活をどうやって成り立たせて行くのか、統廃合するのか、もっと高い視点から俯瞰した行政のビジョンと手腕が必要である。けして小手先の対応策に逃げないでほしい」(長野県,50代,外科)「常勤です。田舎なのでのんびりしてますが、子供を通わせたい進学校は遠く、いずれ息子を下宿させるか、自分が単身赴任するかを選ばなくてはいけなくなっています。 買い物も週に2回車で40分かかるスーパーに行ってますが、更に奥の部落からだと1時間半、救急車が指定病院に到着するまでも同じくらい掛かります」(秋田県,40代,内科)「自分の診療所を閉めたら考えたいが、その時自分は役に立たないかもしれません」(東京都,50代,内科)「僻地にも医師は不足していると思うが、都会でも医師が充実しているところは一部で、現職場では全くの人材不足。また、やはり家族の問題が大きい。自分一人なら良いが、家族も一緒には連れて行けないし離れて暮らすつもりはない」(兵庫県,40代,内科)「僻地医療の充実に必要なコストと僻地に住む人が病院にアクセスできるよう道路整備を行うコストを比較してよりコストパフォーマンスの高い方法を選択すると良いのでは?僻地に常勤医は医療資源の無駄遣いのように思います。医療の不充実などのデメリットを承知の上で住んでいると思う。限られた予算ですべての要求を満たすことは不可能でしょ」(広島県,30代以下,整形外科)「僻地に都市並みの医療機関は必要ない。現状の僻地医療は補助金で運営されているのが現状であり、受益者負担になっていない。一票の格差同様、極めて不平等である」(北海道,40代,内科)「スタッフが多かった頃は離島の応援業務に出ていましたが、今は人数的に不可能です。離島に関しては、常勤を希望するDrが不在の場合は、回り持ちで応援するシステムを構築するのが理想だと思います。」(京都府,50代,産婦人科)「現在常勤である。敷居は高くないので、多くの先生方に積極的に関わって頂きたい」(長野県,50代,呼吸器科)「24時間365日の待機体制。1日外来数100名。有床診で重症者多数。深夜0時以降も毎日のように呼び出され、週1~2回は地域の集会にも呼ばれる。感謝されることもあるが、「当然」と思っている住民が多く、身が持たない。離島の診療所で2年間勤務したが、一時期は医師を辞めることも考えたくらいで、疲弊して帰ってきた。今は地方の病院勤務だが、二度と関わりたくない」(鹿児島県,40代,内科)「放射線治療をずっとやってきたので、大病院での勤務が続いたが、定年退職後は総合診療医としてへき地医療を考えている」(岡山県,60代以上,放射線科)「僻地医療に機会があれば一度は携わりたいと思います。しかし僻地医療に携わるためには総合内科としてのスキルがある程度必要であり、ある程度医療経験が必要であり、若いうちに行くことは難しいと思います。逆に30-40歳になると家庭があり難しい面もあると考えます」(香川県,30代以下,内科)「40才前半で医局より派遣。学位と引き換えでしたが。すべて1人ということで24時間勤務。対応をある程度断らないと自分の体がもたない。自分の体と、家庭、使命感のはざまでした。3~4人で埋めればなんとかなるのだろうが。人件費等を考えると、へき地医療は公立病院の使命ではないか。公費、税金でマイナスを補てんしているのですから。めんどくさいことはすべてお断り、9時~5時ただいるだけというような公立病院は廃止して、その分へき地医療に充てればよい。」(東京都,50代,内科)「家族のため現在は難しいのですが、その状況が変化すれば考えてみたいです。好きな地方があるのでそこへ行きたいです」(東京都,30代以下,泌尿器科)「結局、余所者という立場からは脱却できないのではないかという懸念がある。高待遇で呼ばれても、村長が『自分より高い給料はけしからん』といって待遇が変われば、それらの付加価値はすぐなくなるであろう。それに対して地元民が擁護してくれるとは思えず、結局使い捨てになるのではないか?自然の中でのんびりは幻想だと思う」(滋賀県,40代,小児科)「以前の勤務先で、無医地区での健診を行っていた。その際は自分の専門範囲のみ、1日ずつだったので、大きな支障はなかった。しかし、とかくそうした地域では、一人の医師に広範囲の役割を求められるので、長期にわたって「何でも屋になれ」と言われると、まったく自信がないしお役に立てない。」(北海道,40代,小児科)「山間部のへき地病院に大学から派遣されたことがあるが、給与は自治医大出身の先生の半分以下。同じ仕事をしているのに、とやる気が失われた。公平な対応が必要では」(佐賀県,40代,内科)「現在の職場を辞められないため無理ですが、嫌いではありません。またやってみたい気持ちはあります」(秋田県,40代,外科)「以前関わっていたが、地域住民・行政の理解が得られないことが多々あり、責任の押し付けをされる、協力してもらえない等、精神的に過酷な状況に追い込まれる医療であった」(北海道,40代,循環器科)「僻地において医療だけを充実させることは無理 すべてのインフラに対する投資が必要。投資をしないならば僻地から住民を都市部に移動させるしか選択枝は無い」(京都府,40代,皮膚科)「不定期の診療では、患者さんの変化に応じた医療の提供が難しい」(北海道,50代,泌尿器科)「24時間身をささげる覚悟(在宅死の看取りなど)はないが、慢性疾患の管理であれば考えたい」(熊本県,30代以下,循環器科)「現在携わっており、200床程度の病院、常勤医は18名のみ。小児科医師は私一人でして、限界を感じながらも奮闘中です」(熊本県,60代以上,小児科)「勤務は総合病院ですが、地理的に僻地。一番困るのは、信頼されていないこと。手術適応の患者は都会での手術を希望し、面倒くさい検査やその後の経過観察のみを要求します。そのため、紹介する時は終診として、今後の診察を拒否させてもらっています。医師としての態度が歪んでいると批判されるかもしれませんが、歪みの原因は患者側にもあると思っています」(青森県,40代,泌尿器科)「僻地医療の過疎化は以前からあったが、厚労省主導の新臨床研修制度により、ますますひどくなったのが現実。今や、東京の一人勝ちでしょう?何故各県に一医大を作って行ったのか、その原点に戻るべきじゃないのかな。僻地医療はその延長線上にあるんだから」(千葉県,40代,循環器科)「輪番制で強制的にいく制度を作るしかないと考えます」(北海道,50代,内科)「私は400床程度の急性期病院の院長です。近隣の国保の診療所にて週一度、半日の代診をしています。人口3000人余のこの地域は、地理条件的にへき地とはいえませんが常勤の医師がいません。しかし交通事情が良いので、住民は近郊の町の医療機関にかかっており、診療所を利用する方は多くありません。在宅医療などのニーズ把握が十分でなく、潜在的なニーズ把握調査を行ってくれる保健師などもおらず受身の代診医の限界を感じています。行政に働き掛けていますが、なかなかうまくいきません」(香川県,60代以上,外科)「病院の医師の数が少なく、研究会や講演会、学会などに参加する機会がほとんど与えられなかった。そのあたりの改善がはかられたら、うれしいです。」(大阪府,40代,精神・神経科)「現在の仕事に加えての僻地医療に関しては、まず時間を割くことが困難。 個人で関わるのではなくチームやグループで対応しないと個人の負担があり途中で疲弊してしまうのではないだろうか。現在の医療の実態・限界・経営面なども僻地に暮らす住民も含め相談し検討する必要がありと思われる。」(福岡県,40代,内科)「患者さんも僻地と認識しているので、当院でできる治療であっても、都会に行ってしまう傾向が残念」(北海道,30代以下,内科)「医療のみならず生活を支える様々なインフラの整備が困難となっており、医師・スタッフを派遣すれば問題が解決するわけではないと考える。経済性や効率面などから、居住地の集約化の議論が避けられないのでは」(岡山県,40代,血液内科)「子育てが落ち着き、ある程度の設備が整っていれば、一度は携わってみたいと思う」(三重県,30代以下,眼科)「皮膚科以外は全く診療不能なため、自分は無理」(神奈川県,40代,皮膚科)「できない、やるべきでないのに田舎でも高次医療を求められる」(広島県,40代,内科)「『リタイアしたら考えても良い』『リタイアしたら、もう医療はしたくない』との思いの間で揺れています。しかし実際に赴任するとなると、引っ越しや家族の説得、新たな人間関係の構築など、煩わしいことがいっぱいあるため、なかなか踏み出せないのが実情。そういう思いの高齢の先生方が実は多いのでは?そこをクリアできれば潜在的な供給源はあるようにも思う」(大阪府,60代以上,内科)「僻地医療は専門分野をまたいで様々な疾患を広く浅く診られなくてはいけない。 その点が足かせになっているのではないか」(秋田県,40代,消化器科)「以前過疎地に勤務していた先輩が、地域の政治対立に巻き込まれ辞任せざるをえなくなったのを経験しました。秋田の医師追い出し事件や愛媛での町立病院高給訴訟など、僻地住民が自分の土地に医療を必要としているのか、疑問に感じる事件を多々目にします。必要だと思ってもらえないなら、誰もそんな所に行きたくないのでは」(愛媛県,40代,代謝・内分泌科)「中山間地域の在宅医療に関わっています。今後高齢化が更に進むと病院へ足を運ぶことが困難な患者が更に増えていくため巡回診療等も必要ではないかと考えています」(静岡県,50代,外科)「関わっていた当時(約20年前)に比べると、必要な医療情報の入手は格段に容易となった。都市部の「地域医療」とは異なった独特の魅力を持つ「僻地医療」は、将来の選択肢の一つである」(北海道,50代,整形外科)「僻地医療の限界を、患者や住民、マスコミがある程度理解しないと医師は減り続けると思う。都会の高度医療圏と同じレベルの医療を受けることを当然としている人々が多すぎる」(北海道,40代,循環器科)「僻地にコストをかけて十分な医療を提供するのは国家にとってかなりの負担になる。住民にもしっかり負担させるべき」(長崎県,30代以下,皮膚科)「都市部の多忙な病院勤務で空き時間がないため携われていないし、子供の教育の問題で僻地に赴くことができない 年に何回か1~2週間ずつであれば行ける可能性がある」(兵庫県,50代,外科)「研修医です。将来携わる予定です。日本では在学中にそういう経験をする機会が少ないからか、僻地医療を見下したり興味がないと言い切れる先生が多いことを悲しく思っています」(石川県,30代以下,内科)「以前携わっていたが、とにかくよそ者に対する住民の目がうるさい」(静岡県,50代,呼吸器科)「地方で開業していますが、患者さんのブランド志向や家族の入院施設入所志向は強く、時間外診療とか往診等で苦労しても知らないうちに入院していたり、急に入院目的の紹介を頼まれたりして、自分の時間を削ったのにと思ったりします。心底信頼されるとか金銭になるとかの見返りを求めない方なら良いが、いろいろな意味で僻地診療は困難と思います(政府は在宅在宅といいますが、若い方で親の在宅医療を希望される方は今はごく少数派)」(広島県,50代,内科)「当科の診療には高度な検査機器が必要なため,僻地現場での精査・加療は困難である.むしろ,地域のネットワークでドクターヘリなどが広く準備される環境が望ましいと考える」(石川県,50代,脳神経外科)「奥能登など人口の著しい減少地帯では、もう手遅れではないかと思う。医師の倫理観だけでは何もできない。社会的な対応が必要である。」(富山県,50代,精神・神経科)「時々代診に行くのを楽しみにしています。普段は専門領域のみですが、代診で幅広い領域を診察したり、往診に行ったりするのは医師になった原点を思い出すことにもなりいい経験です。豪雪だと、行き帰りが大変で困りますが」(福井県,40代,循環器科)「携わるべき人材の育成をしないと成り立たない。自治医大が出来た時には各県から2名ずつ程、奨学金を貰って卒業し卒業後は県に戻るとなっていたが、結局お金を払って自分の選んだコースへ進む人が大部分で僻地へは行かない状況です。『僻地医療大学』でも作って、卒業したら20年位は僻地医療への従事義務を負わせる事にでもしないと解決出来ないと思います」(神奈川県,60代以上,泌尿器科)「30年間専門科のみの診療を行ってきており、言ってみれば大学卒業直後の研修医より他の診療科の知識が乏しい。自分の専門科として僻地病院で勤務するのなら可能だろうが、総合診療、一般救急を担当することは困難と考える」(新潟県,50代,産婦人科)「研修医のときに関わりました。結構楽しく充実した日々でしたが、自分の生活もあり長期では出来ないと思いました」(千葉県,30代以下,精神・神経科)「伊豆諸島のひとつに1ヶ月間いた。当時の住民人口約700人プラス観光客に対して、医師は自分一人。診療所の勤務は月曜から土曜の午前中だけであったが、交代の医師が来るまで島に缶詰なので、一人で24時間オンコール体制であった。夜中にステルベンがあったり、緊急でヘリや船をチャーターして患者を本土に送ったりしたときは大変で早く戻りたかったが、のんびりした時間が心地よく、帰る頃には『もう少し居たい」と思うようになった。」(東京都,50代,呼吸器科)「現在常勤。行政や議会が医療崩壊の実態に無理解で、自分たちのこととして考えていない。行政は医療になるべく金をかけまいとし、病院をお荷物であるかのように扱う。 定期的に医師の交替があるのに、住民は「田舎に来る医師は都市部よりレベルが低い」と信じ込んでいる。へき地であっても、コンビニ受診、クレームも多い。開業医は夜間診ないで中核病院に押し付ける。医師偏在があるのに大学は医師を引き上げて都市部へ異動させる」(大分県,50代,外科)「医療に対する目が厳しく、こちらが良しと考え行った治療も、結果が悪ければ訴えられる時代であり、困難な症例の場合、相談する医師のいない僻地ではリスクが大きすぎる。」(兵庫県,50代,代謝・内分泌科)「人口3000人程度の村の診療所に勤務していたが(診療所の2階に居住)、夜間・休日に遠方へ出かけた際、時間外の診察に応じられなかったことがある。特に義務があるわけでもないし、緊急の診察依頼でもなかったが(風邪程度)、拘束されている感じがしてかなりストレスだった。代診も頼めず、研修などを急遽中止したこともある」(鳥取県,40代,内科)「子供の教育を考えると難しい。子供を犠牲にしてまで僻地医療に貢献しなければならない、とは思わない。非常勤で月に何回か手伝いに行くという形でなら,もしくは報酬次第では手伝いに行きたい、という医師は多いだろう」(東京都,30代以下,小児科)「都会で生活している身には正直あまり考えたことない内容でしたが、僻地医療は大切だと思います。ただ、小規模な病院をたくさん作るよりは、基幹病院を充実させ、そことの連携を図る方が重要だと考えます」(大阪府,30代以下,呼吸器科)「地方都市の郊外で開業していますが、当医院より山奥はまさに僻地で、限界集落ばかりです。人口が少なく、医療機関の新規立地は困難。開業医も高齢化しつつあり、医療格差が広がっていると思います。僻地医療にインセンティブでもないとやっていられない」(新潟県,50代,内科)「できれば協力したいと考えている方ですが、休みの予定が全く立たないような勤務は私の年齢では無理です。ある程度の医師のいる施設や、非常勤や外来だけであれば将来的には可能」(熊本県,50代,循環器科)「医療圏に僻地を含んだ総合病院に勤務していた。僻地からの患者は、医療を受けず/受けられず、いよいよ重症という時になってようやく救急車で運ばれてくる、というパターンが多かった」(東京都,30代以下,代謝・内分泌科)「四十数年前に大学の医局から派遣されたことがある。大都会での研修ばかりでなく、制度として昔のように大学から赴任させる制度の復活が望まれる」(兵庫県,60代以上,小児科)「自分の専門性が活かせるとは思うが、家族の理解が得られない」(京都府,50代,総合診療科)「僻地自治体の取り組みに温度差が大きく、すぐに医師が辞めてしまう話を聞きます。地域住民も意識が低いようです。給与を多くすると住民が離れ、安いと誰も赴任してきません。私の元本籍地の現状です」(京都府,50代,産婦人科)「以前に僻地医療を行っていたことがあるが、特権意識がある、あるいは赴任してくる医師を小馬鹿にしたような意識がある方が住民の一部におられる。住民も街の医療機関への志向が強いようであり、医療機関がそこにある必要性がないのであろう」(広島県,50代,脳神経外科)「僻地勤務ですが,地域救急病院への搬送は遠くても40分以内で可能です。加齢と共に勤務は大変になってきましたが、気力のある限りは留まりたいと考えています」(岐阜県,60代以上,内科)「週一回、大学より山奥へ土日の一泊で行っていた。急患の手術必要時は麓まで下ろしていた。空気はうまいし人は温かかった」(徳島県,60代以上,内科)「自分は携わっていませんが、実家がへき地の診療所なので苦労は聞いています。家族含めて住民とその土地の雰囲気に慣れるか、教育レベルを維持できるか、給料格差に対して妬みなど受けないかなど気を使うことが多いようで、自分にはできないなと思います」(埼玉県,50代,代謝・内分泌科)「赴任期間が長くなると、近隣の市中病院との医療レベルの差が顕著に。意識的な自己研鑽の時間が必要になると思う」(青森県,50代,皮膚科)

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第14回 添付文書 その3:抗がん剤副作用訴訟の最高裁判所判決を読み解く!

■今回のテーマのポイント1.添付文書の記載が適切かを判断する際には、(1)副作用の程度及び頻度、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力、(3)添付文書の記載内容について検討する。また、この3つの要因間には相関関係があると考えられる2.医薬品に対する医療界と司法との認識には、なお相当のギャップがある。今後も積極的かつ持続的な情報公開、相互理解が必要である3.本件最高裁判決は、企業側が勝訴したものの、5名中3名の裁判官が抗がん剤の副作用被害についても副作用被害救済を行うべきと意見している。ドラッグ・ラグの加速や萎縮医療が生じないよう速やかに抗がん剤を対象除外医薬品から外すべきと考えるindex最高裁判決をレビューする各裁判官の補足意見を検討する裁判例のリンク最高裁判決をレビューする第13回で取り扱ったイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)訴訟の最高裁判所(以下、最高裁)判決が4月12日に出されました。結果は、裁判官全員一致で製薬企業側の勝訴となりました。ただ、全裁判官から補足意見が出されており、本件問題に対する司法の逡巡が見て取れます。今回は、すこし趣を変えて最高裁判決および補足意見を丁寧にみていきたいと思います。また、同時に法律家がどのように判断していくのかもご理解いただけたらと考えています。まずは、最高裁判決をみてみましょう。「医薬品は、人体にとって本来異物であるという性質上、何らかの有害な副作用が生ずることを避け難い特性があるとされているところであり、副作用の存在をもって直ちに製造物として欠陥があるということはできない。むしろ、その通常想定される使用形態からすれば、引渡し時点で予見し得る副作用について、製造物としての使用のために必要な情報が適切に与えられることにより、通常有すべき安全性が確保される関係にあるのであるから、このような副作用に係る情報が適切に与えられていないことを一つの要素として、当該医薬品に欠陥があると解すべき場合が生ずる。そして、前記事実関係によれば、医療用医薬品については、上記副作用に係る情報は添付文書に適切に記載されているべきものといえるところ、上記添付文書の記載が適切かどうかは、(1)上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む)、(2)当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力、(3)当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して、上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断すべきものと解するのが相当である」(( )番号は原文なし、筆者による加筆。以下同様)判決はいわゆる法的三段論法によって書かれます。すなわち、まず、抽象的に記載されている法律を具体的事例に対する法規範となるよう解釈します(大前提)(図1)。図1 法的三段論法画像を拡大する本判決では、まず、「製造物責任法2条2項:この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」における「欠陥」(当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)とは、医療用医薬品については、どのように解釈すべきかが示されています。本判決では、医療用医薬品においても製造物責任法(PL法)が適用されることを前提として、医療用医薬品における「欠陥」の一つの類型として、引渡し時点で予見しうる副作用について、(1)副作用の程度及び頻度(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力(3)添付文書の記載内容等を総合的に考慮して、医薬品を安全に使用するための情報が処方者に十分明らかにされていないことがあると判示しています。製造物責任法2条2項と見比べていただければ、最高裁が条文に忠実に法解釈をしていることがわかると思います。そして、次にこの大前提に本件事実が該当するか否かを判断します(小前提(あてはめ))。本判決では、下記のように判示し、本事案は欠陥の要件に該当しないことから欠陥があるとはいえない(結論)としました。「前記事実関係によれば、(1)本件輸入承認時点においては、国内の臨床試験において副作用である間質性肺炎による死亡症例はなく、国外の臨床試験及びEAP副作用情報における間質性肺炎発症例のうち死亡症例にイレッサ投与と死亡との因果関係を積極的に肯定することができるものはなかったことから、イレッサには発現頻度及び重篤度において他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在するにとどまるものと認識され、(3)被上告人は、この認識に基づき、本件添付文書第1版において、「警告」欄を設けず、医師等への情報提供目的で設けられている「使用上の注意」欄の「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎についての記載をしたものということができる。(2)そして、イレッサは、上記時点において、手術不能又は再発非小細胞肺がんを効能・効果として要指示医薬品に指定されるなどしていたのであるから、その通常想定される処方者ないし使用者は上記のような肺がんの治療を行う医師であるところ、前記事実関係によれば、そのような医師は、一般に抗がん剤には間質性肺炎の副作用が存在し、これを発症した場合には致死的となり得ることを認識していたというのである。そうであれば、上記医師が本件添付文書第1版の上記記載を閲読した場合には、イレッサには上記のとおり他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在し、イレッサの適応を有する患者がイレッサ投与により間質性肺炎を発症した場合には致死的となり得ることを認識するのに困難はなかったことは明らかであって、このことは、「重大な副作用」欄における記載の順番や他に記載された副作用の内容、本件輸入承認時点で発表されていた医学雑誌の記述等により影響を受けるものではない。・・・以上によれば、本件添付文書第1版の記載が本件輸入承認時点において予見し得る副作用についてのものとして適切でないということはできない」このように、本件の最高裁判決では、製造物責任法の条文を忠実に解釈した上で、本事案における添付文書の記載に不適切な点はなかったと判示しています。一方、本件地裁判決において原告側が勝訴したのは、法解釈(大前提)においては最高裁判決と相違なかったものの、小前提(あてはめ)において、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力を低く見積もったことから、(3)添付文書の記載内容が詳細に求められることとなり、結果として適切な情報として不足したという判断がなされたからと考えられます。そして、前回紹介した高裁判決及び最高裁判決においては、(2)を高く評価(肺がん専門医または肺がんに係る抗がん剤治療医)したことから、(3)に求められる水準が下がり、結果として、求められる適切な情報が提供されていたと判断されています。このことからわかるように、医療用医薬品の欠陥判断における、(1)~(3)の要件はそれぞれ独立した要件ではなく、(2)が高くなれば(3)は低くてよく、逆に(2)が低ければ、(3)は高く求められるという負の相関関係があると考えられます。また、同様に、(1)と(3)の間には正の相関関係があると考えられます(図2)。図2 医療用医薬品において添付文書に求められる適切な副作用情報に関する各要因間の関係画像を拡大する各裁判官の補足意見を検討する:司法の常識とは!?次に各裁判官の補足意見をみていきましょう。補足意見とは、多数意見に賛成であるが意見を補足したい場合に、判決となった多数意見と別に各裁判官の個別意見を表示するもので、最高裁判決においてのみ認められています(裁判所法11条)。本判決では、裁判長以外全員が補足意見を出しており、結論は同じでも各裁判官の考えに少しずつ相違があることが読み取れます。〔1〕欠陥認定の基準時と事後の知見について「製造物責任法2条に定める「欠陥」は、当該製造物が「通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と定義されているところ、その安全性具備の基準時は、あく迄、当該製造物が流通におかれた時点と解すべきものである。製造物が流通におかれた時点においては、社会的にみて、「通常有すべき安全性」を具備していたにも拘ず、事後の知見によってその安全性を欠いていたことが明らかになったからといって、遡及的に流通におかれた時点から「欠陥」を認定すべきことにはならない(事後の知見によって安全性を欠いていることが明らかになった後に流通におくことについては、製造物責任が問われ得るが、それ以前に流通しているものは製造物責任の問題ではなく、回収義務、警告義務等の一般不法行為責任の有無の問題である)」(田原睦夫補足意見)「後に判明した結果を前提に具体的な記載を求めるとすれば被上告人に不可能を強いることになり法の趣旨に反することになろう」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)製造物責任法4条1号は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」の場合には免責すると定め、開発危険の抗弁を認めています。ただし、前回解説したように、「科学又は技術に関する知見」は、入手可能な世界最高の科学技術の水準とされており、非常に限定されています。しかし、開発危険の抗弁が非常に限定的に用いられるべきといっても、後で判明した当時は知る由もなかった知見によって欠陥認定することはさすがに認められないと補足意見は述べています。これは、一見すると当たり前のことのように思われますが、製造物責任法が、無過失責任を求めている以上、製品によって利益を得ている企業がいかなる場合においても責任をとるべきであるという学説は根強く存在しており、この点につき補足意見を述べたこととなります。この欠陥認定の基準時の問題は、順次症例数を増やしながら開発、使用される医薬品にとっては非常に重要な問題であり、この点について意見としてではありますが明確に述べられたことは意義があるといえます。また、裁判は事件が発生した後に行われることから、常に「後知恵バイアス」がかかります。医療訴訟でも2000年代前半には、結果からみて「あの時こうすべきだった」として病院側を敗訴させた判決がいくつか出され、医療界が混乱する原因となりました。医療と司法の相互理解が進む中、「後知恵バイアス」の危険性について、司法は常に意識する必要があるものと考えます。〔2〕医薬品に対する理解「医薬品、殊に医療用医薬品は、身体が日常生活において通常摂取しないものを、その薬効を求めて摂取するものであるから、アレルギー体質による反応等を含めて、一般に何らかの副作用を生じ得るものである。医療用医薬品のうち汎用的に用いられるものについては、その求められる安全性の水準は高く、副作用の発生頻度は非常に低く、又その副作用の症状も極めて軽微なものに止まるべきものであり、かかる要件を満たしている医薬品は、「通常有すべき安全性」が確保されていると言えよう。次に、一般に医療用医薬品は、薬効が強くなれば、それと共に一定程度の割合で副作用が生じ得るものである。当該医薬品の副作用につき、医師等は一定の用法に従うことによりその発生を抑止することができ、あるいは発生した副作用に対し、適切に対応し、またその治療をすることが出来るのであれば、かかる副作用が生じ得ること及びそれに対する適切な対応方法等を添付文書に記載することによって、「通常有すべき安全性」を確保することが出来ると言って差支えないと考える」(田原睦夫補足意見)これは、医療用医薬品の副作用について述べている部分を抜粋したものです。医療界の人ならばギョッとする文章ですが、現時点における最高裁判事の医療への理解はこの水準であることが理解できます。当たり前のことですが、医薬品である以上、風邪薬でも致死的な副作用は生じます。市販薬ですら、年数件の死亡事例があります。(一般用医薬品による重篤な副作用について)行き過ぎた安全神話が2000年代前半の医療バッシングを後押ししたことは記憶に新しいところです。「安全であればいいなあ」が「安全に決まっている」になり、その結果、「悪しき結果が生じた場合には犯人がいるに違いない」とされ、医療崩壊が生じました。しかし、このような認識のギャップは専門領域においては必然的に生じるものであり、その解決策は決して相手を非難することではなく、積極的な情報開示を行い、相互理解を進めることです。医療界には、積極的かつ継続的な情報開示と対話が求められているものと考えます。〔3〕製造物責任法の適用について「しかし、薬効の非常に強い医薬品の場合、如何に慎重かつ適切に使用しても、一定の割合で不可避的に重篤な副作用が生じ得る可能性があることは、一般に認識されているところである。そうであっても、副作用の発生確率と当該医薬品の効果(代替薬等の可能性を含む。)との対比からして、その承認が必要とされることがある。その場合、「慎重投与や不可避的な副作用発生の危険性」については添付文書に詳細に記載すべきものではあるが、その記載がなされていることによって当該医薬品につき「通常有すべき安全性」が確保されていると解することには違和感がある(その記載の不備については、不法行為責任が問われるべきものと考える)。他方、かかる危険性を有する医薬品であっても、その薬効が必要とされる場合があり、その際に、かかる重大な副作用の発生可能性が顕在化したことをもって、当該医薬品の「欠陥」と認めることは相当ではない。上記のように副作用が一定の確率で不可避的に発生し得る場合には、「通常有すべき安全性」の有無の問題ではなく、「許された危険」の問題として捉えるべきものであり、適正に投与したにも拘ず生じた副作用の被害に対しては、薬害被害者救済の問題として考えるべきものではなかろうか」(田原睦夫補足意見)「イレッサが、手術不能又は再発非小細胞肺がんという極めて予後不良の難治がんを効能・効果として、第Ⅱ相の試験結果により厚生労働大臣の承認がなされ、要指示医薬品、医療用医薬品とされた上で輸入販売が開始されたのは、有効な新薬の早期使用についての患者の要求と安全性の確保を考慮した厚生労働大臣の行政判断によるものであり、その判断に合理性がある以上は、その結果について医薬品の輸入・製造者に厳格な責任を負わせることは適当ではない。その一方で、副作用が重篤であり、本件のように承認・輸入販売開始時に潜在的に存在していた危険がその直後に顕在化した場合について、使用した患者にのみ受忍を求めることが相当であるか疑問が残るところである。法の目的が、製造者の責任を規定し、被害者の保護を図り、もって国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することにあるならば、有用性がある新規開発の医薬品に伴う副作用のリスクを、製薬業界、医療界、ないし社会的により広く分担し、その中で被害者保護、被害者救済を図ることも考えられてよいと思われる」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)前回解説したように、医薬品の副作用被害には、すでに無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度が存在します(表)。しかし、「制度の穴」として抗がん剤や免疫抑制剤等の対象除外医薬品による副作用被害や添付文書違反等があることから、除外対象事由に該当する患者・家族は、泣き寝入りするか訴訟をするしかない状況にあります。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する今回の最高裁判決は、製造物責任法を適用した上で、製薬企業側の勝訴としました。しかし、補足意見の形で、5名中3名の最高裁判事が抗がん剤による副作用被害についても、副作用被害救済制度に組み入れるべきと述べました。第1審敗訴によって「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上がり、第2審勝訴によって同検討会は、抗がん剤による副作用被害を除外事由から外すことを見送りました。しかし、この最高裁判決により、ボールは今、再び医療界、製薬業界および厚労行政に返ってきました。このまま除外事由として放置した場合には、次に同種の訴訟が起きた際にどう転ぶかはわかりません。一時の勝訴にあぐらをかき、最高裁からのメッセージを見て見ぬふりをすることは、本訴訟の一連の流れの中で懸念してきたドラッグ・ラグの加速や萎縮医療を自らの手で致命的なところまで押しやることになりかねないということを真摯に自覚すべきと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成25年4月12日(未収載)

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ちびまる子ちゃん【パーソナリティ】

「いるいる、こんな人!」―パーソナリティとは?みなさんは、今までに出会った人で、「いるいる、こんな人!」と思わず別の誰かを連想してしまったことはありませんか?私たちは、いろいろな人とかかわっていく中で、新しく出会った人が、自分のすでに知っている誰かに重なってしまうことがあります。そして、その人が、国民的人気アニメ番組「ちびまる子ちゃん」のあの個性的なキャラクターたちに似ていると思ったことはありませんでしたか?普段の日常生活で私たちの心を惹きつけたり、逆にヤキモキさせる人たちが、「ちびまる子ちゃん」のキャラクターたちに重なってしまうのはよくあることです。その理由は、「ちびまる子ちゃん」に登場するキャラクターたちの多様で魅力的な個性には、メンタルヘルスで扱われる性格の傾向(パーソナリティの偏り)が巧みに描かれているからです。彼らの存在こそ、「ちびまる子ちゃん」が20年を超える長寿番組となったことに大きく貢献しているように思います。今回は、「ちびまる子ちゃん」のキャラクターたちの特徴を深く探っていきましょう。そこには、魅力と同時に危うさ(リスク)も潜んでいます。そこから、私たちが実生活で人とより良くコミュニケーションをするためのヒントを見つけていきましょう。パーソナリティの源 ―個体因子と環境因子厳密には、パーソナリティは、成人後に完成するという前提があります。なぜなら、まる子の年頃はまだまだ心の成長の途中で、柔軟性(可塑性)があるので、一概にパーソナリティを決め付けることはできません。しかし、あまりにも特徴が出ているので、あくまでパーソナリティの傾向やリスクとして、みなさんにぜひご紹介したいと思います。【男子】丸尾くん―生真面目キャラ―発達の偏り、強迫性パーソナリティまず、最も強烈なキャラクターの丸尾くんです。「ズバリ!○○でしょう」が口癖で、一貫して丁寧な言葉使いで一本調子な話し方が特徴です(コミュニケーションの偏り)。学級委員としていつもハツラツとしていますが、学級委員で居続けることに執念を燃やし、そのためには並々ならぬ努力もしています。ここから、彼に強いこだわりがあることが分かります(想像力の偏り)。次の学級委員の選挙を前に、ライバルが出てくるのに神経質になった丸尾くんは、クラスメート1人1人に「困っていることはありませんか?1つくらい絶対にあるでしょう」と強引に迫っていくエピソードがあります。そして、まる子たちに「親切の押し売りだ」「何でもないのにいちいち声をかけられたら迷惑なんだよ」だと責められます。ここから、彼は、こだわりが強いあまりに融通が利かず、空気が読めずに空回りしていることが分かります(社会性の偏り)。目指すのが、みんなのお手本でありながら、日頃から女子に「奇妙キテレツ」と思われてもいます。さらには、花輪クンのきれいなお母さんを見て帰ってきた時、丸尾くんは自分のお母さんに「母さま、なぜあなたは美しくないのですか?」と悪気なく聞いてしまいます。彼は、相手の心を汲み取って(心の理論)、人に合わせるバランス感覚は鈍いのでした。これらの3つの特徴から、丸尾くんはどうやら発達の特性(発達の偏り)が際立っています。さらに、成長して空気の読みづらさが目立たなくなっても、こだわりに囚われてしまうことが癖(完璧癖)になってしまうリスクがあります(強迫性パーソナリティ)。彼のこれらの特徴は、彼の心構え(パターン認識)や周りの理解によって、良さや魅力にもなりえます。こだわりは、ひたむきさ、熱意、真面目さにもなりえます。実際に、彼は、勉強だけでなく、お楽しみ会の手品や運動会の応援や合唱の練習など何ごとにおいても一生懸命にする努力家です。学級委員として、みんなのためにみんなが嫌がることも喜んでやります。そして、女子に対しての純情な一面もあります。私たちが丸尾くんから学べるコミュニケーションのコツは、丸尾くんのような人に何かしてほしい時、まず細かく具体的な指示を出して、脱線しないようにレールをしっかり敷いてあげることです(構造化)。そして、そのレールに乗せて、本人のひたむきさを生かすことです(パターン学習)。私たちが、丸尾くんのひたむきさを高く買ってあげることができれば、「立派なサラリーマン」「マイホーム購入で親孝行」「ノーベル賞受賞」という丸尾くんの夢をきっと応援したくなるのではないでしょうか?表 丸尾くんの二面性危うさ魅力こだわり、完璧癖、融通が利かない空気が読めず空回り奇妙キテレツひたむき、熱意生真面目、努力家純情花輪クン―セレブキャラ―自己愛パーソナリティまず、家庭環境が際立って恵まれているのが、花輪クンです。彼は、いわゆるセレブです。しかも、家の財力があるだけでなく、英語やフランス語などの語学、ピアノやバイオリンの音楽、お茶とお花の教養などのあらゆる英才教育を受けてきています。通学は、車という特別扱いが当たり前です。さらに、端正な顔立ちで、クラスの女子からの圧倒的な人気があり、口癖は「ベイビー」です。唯一の欠点は、字が下手なことくらいです。このように、子どもの頃から全てにおいて恵まれた環境で、挫折も知らないまま育った場合、何ごとも自分の思い通りになると思ってしまいます(万能感)。すると、パーソナリティの傾向としては、自信に溢れてしまい(自己評価が高い)、自分に酔いしれて自惚れやすくなります(誇大性)。そして、いつもチヤホヤされたいと思うようになります(賞賛欲求)。また、自惚れが強ければ、人を見下してしまいやすくなり、自分以外の恵まれない環境の人たちの気持ちが分かりにくくなります(共感性欠如)。その一方で、もともと守られていることで、自分を大切に思う気持ちが強く(自己愛)、妥協をしません。これが向上心としてより良く生きる原動力になるので、攻めは強いです。しかし、もしもその守りがなくなってしまったら、どうでしょう?つまり、持っているものを持ち続けている限りは強いのですが、持っているものがなくなってしまった時は、どうでしょう?例えば、お父さんの会社が倒産したら?成長して端正な顔立ちではなくなったら?大病を患ってしまったら?人間関係のトラブルで信頼を失ったら?彼は、何ごとも思い通りにできるという自分のイメージ(自己イメージ)が人一倍強いです。それだけに、実は、慣れていない苦しい状況によるストレスに対しては人一倍に打たれ弱いのです。このように、自己イメージと現実とのギャップに苦しむリスクが高まります(自己愛性パーソナリティ)。つまり、攻めには強いですが、守りにはとても弱いという弱点があるのです。私たちが花輪クンから学べることは、恵まれすぎていることは、逆に、人間的な成長にとってプラスにならないという客観的な視点です。むしろ、生きていて思い通りにならないことにこそ、心を鍛え養うエッセンスが潜んでいます。失敗や挫折を跳ね返す経験は、私たちの心の糧(かて)になり、心をより豊かにするために大事なことであると言えます。表 パーソナリティの源危うさ魅力自惚れやすい(誇大性)チヤホヤされたい(賞賛欲求)人の気持ちが分かりにくい(共感性欠如)守りは弱い自信に溢れている(自己評価が高い)より良く生きる原動力(向上心)になる妥協しない攻めは強い永沢―ひねくれ者キャラ―反社会性パーソナリティ花輪クンとは対照的に、家庭環境が恵まれていないのが永沢です。彼には、火事で家を失った暗い過去があります。昔は「明るい少年だった」と言われていますが、火事を境にして、今は暗く、「どいつもこいつも」といつも不平不満を口にして(不信感)、誰に対しても口が悪いひねくれ者です(敵意感情)。火事で自分だけ惨めな思いをしたことから、「自分が損をすること」にとても敏感になのです(不公平感)。「世の中は平等で公平である」という育むまれるべき感覚(規範意識)が彼の中で揺らいでいます。彼には、気難しくてすぐに殴る父親と愛情表現が乏しく厳しい母親がいます。この両親に対して、すでに小学校3年生にして反抗的な一面があります。うっぷん晴らしで、彼を慕う藤木を冷たくあしらったり、おとしめたりします(攻撃性)。「損をしないためには他人を利用する」というものごとのとらえ方が芽生えてしまい、理屈っぽくて相手の気持ちがよく分からなくなっています(共感性欠如)。校外の社会科見学で、出発の時に、わざと姿をくらませて、出発できないようにして、みんなを困らせようとしたエピソードもありました。図書室の本「みんなに好かれる性格になる本」を、永沢が読むべきだとまる子に言われたことに腹を立てて、怒りが治まらずに本を引き裂くエピソードもあります(衝動性)。彼の攻撃性や衝動性は、やがて訪れる反抗期にエスカレートすれば、不良グループに属し非行に走るリスクがあります。そして、成人後には社会のルール違反を繰り返すリスクがあります(反社会性パ-ソナリティ)。しかし、同時に、彼の反抗心や反骨精神、闘争心は、将来的に尊敬できるロールモデルに巡り合い、良い方向付けができれば、古いしきたりや価値観に縛られることなく、新しい発想や価値観をもたらすエネルギー源にもなりえます。不信感や不公平感は、現状に甘んじることのない問題意識の高さでもあります。衝動性は、フットワークの軽さでありチャレンジ精神の旺盛さでもあります。つまり、彼は、時代のパイオニアや改革者になる可能性も秘めているということです。表 永沢の二面性危うさ魅力不信感、不公平感ひねくれ者、反抗心攻撃性衝動性問題意識が高い反骨精神、闘争心パイオニア、改革者軽いフットワーク、チャレンジ精神藤木―気にしすぎキャラ―回避性パーソナリティ藤木は、ハートはとても弱い泣き虫の臆病者です。臆病な行動をとってしまって、どんなに永沢に付け込まれて「卑怯者」呼ばわりされても、藤木は永沢を慕います。「永沢くんにもいいところがある」と永沢をかばおうとする姿勢は、健気(けなげ)で優しさがありますが、同時に、これはいじめられっ子の典型的な心理でもあります。一人ぼっちにはなりたくないという怯えがあり、たとえ意地悪な相手であっても、かかわりを持ちたいと思うのです。この状況は、永沢の気分によっては、いじめにエスカレートするリスクが潜んでいます。彼はクラスメート全員から、ことあるごとに「あいつ卑怯だからな」とからかわれ、卑怯者のレッテルを貼られます。まさに、弱々しいしい彼がターゲット(スケープゴート)にされるいじめの構図です。また、藤木自身もそれに甘んじてしまい、「どうせおれは卑怯者だから」と卑怯なことをする都合の良い言い訳にして、卑怯なことを繰り返してしまいます(ラベリング理論)。さらに、残念なことは、彼は卑怯者呼ばわりされたことを涙して両親に打ち明けたのに、その両親は「そうなった原因はお前だ」「いや、あんただ」と責任のなすり合いをして夫婦ゲンカに発展してしまったことです。全く、藤木は両親から守られておらず、ますます心の支えや安心感(安全基地)がなくなってしまいます。こうして彼は、自分に自信がなくなってしまい(自己評価が低い)、将来的に、引っ込み思案で引きこもりになるリスクが高まります(回避性パーソナリティ)。ただ、彼のパーソナリティは、裏を返せば、慎重で協調性があり、争いを好まない平和主義者という見方もできます。彼の良さである穏やかさや優しさが発揮されるには、プレッシャーをひどく与えないコミュニケーションが望まれます。表 藤木の二面性危うさ魅力臆病、引っ込み思案自分に自信がない(自己評価が低い)引きこもりのリスク慎重、穏やか協調性がある、優しさ平和主義はまじ―お調子者キャラ―演技性パーソナリティはまじは、クラス一のお調子者です。いつもいろいろな芸をして、クラスメートを笑わせています。「だいたいなぁ、長山(読書家で優等生のクラスメート)みたいに真面目ばっかじゃ面白くねえんだよ。子供らしくない子供はみんなに嫌われるぜ」と彼は力説します。この発言から読み取れるのは、彼は「みんなに嫌われる」かどうかに価値を置いている点です。つまり、彼は人一倍、「みんなに好かれたい」のです。みんなを喜ばせて注目の的になりたいという欲求が強く、派手好きで、周りへの働きかけがとても積極的です(能動性)。実際に、彼のようなキャラクターは、やり手のセールスマンに多く、世渡り上手(社交性)で出世しやすく、また、芸能界ではムードメーカーとしてもてはやされ人気者になります。はまじの教訓は、「人生なんに面白おかしく過ごしたやつの勝ちだ」です。お気楽でウケ狙いのノリの良さはあるのですが、気に入られることばかりに気をとられてしまうとどうなるでしょうか?自分自身を振り返ることが疎かになり、媚びるばかりの「中身のない薄っぺらいヤツ」になるリスクもあります(演技性パーソナリティ)。真面目さや内面性を問われる集団では、親しみやすさは馴れ馴れしさになってしまい、派手さはけばけばしさになり、目立ちたがり屋、チャラい男、ブリっ子女子として煙たがれ、疎まれるリスクもあります。表 はまじの二面性危うさ魅力目立ちたがり屋、大げさ馴れ馴れしいけばけばしい媚びる、中身がない、薄っぺらいお調子者、ムードメーカー親しみやすさ、世渡り上手派手好きノリが良い、演出がうまい【女子】まる子―愛されキャラ―依存性パーソナリティ主人公のまる子は、面白いことに好奇心があり、楽天的です。みんなに気に入られ、愛される魅力的なキャラクターです。はまじとはお調子者同士でよく似ており、気も合うようですが、まる子は、はまじほど積極的ではありません(受身)。しかし、要領が良い分、甘え上手、お願い上手で、だらしない面がたくさんあります。例えば、おじいちゃん大好きっ子で、おじいちゃんにはよくおねだりをします。また、お姉ちゃんには「まる子の一生のお願い、これで17回目だよ」と言われたり、お父さんに「お前の一生は何回あるんだ」と突っ込まれるなど、まる子は一生のお願いを連発しています。飽きっぽくて怠け癖があり、よく朝寝坊をして、遅刻ぎりぎりセーフでいつも学校に通っています。すぐにいらないものを買うなどお金の浪費癖も目立っています。このようなだらしなさは、見通しが甘く(無責任)、人を当てにして(主体性がない)、生きてしまうリスクがあります(依存性パーソナリティ)。まる子の家族(おじいちゃんを除く)は、まる子を気安く助けないようにしていますが、これは、とても良いコミュニケーションのコツと言えます。表 まる子の二面性危うさ魅力だらしない、飽きっぽい怠け癖、浪費癖無責任、主体性がない楽天的、受身甘え上手、頼み上手気に入られる、愛されるたまちゃん―しっかり者キャラ―共依存まる子と大の仲良しなのは、たまちゃんです。彼女は、ピンチになるまる子をいつも全力で助けてくれます。例えば、まる子が言いたいことをついはっきり言ってしまい、みぎわさんや前田さんとやり合った時、ハラハラしながらも仲直りさせようとします。また、まる子ができ心からカンニングをして、その後ろめたさからみんなに打ち明けようとすると、たまちゃんはまる子に「絶対に言っちゃだめ」「言ったら絶交だからね」と言います。そして、心の中で誓います。「私はまるちゃんをかばうよ。どんなことがあってもかばう。絶対にみんなから責められたりしないようにするよ」と。まる子がたまちゃんに頼りがちなだけに、たまちゃんは、いつもまる子を放っておけなくなります。実は、たまちゃんのようなしっかり者が、そのしっかりしている力を発揮するには、周りにだめな人がいてくれる必要があります。将来的には、だめな人を放っておけない、自分を頼ってくれるだめな人を探し求めてしまうお節介屋さんになる可能性もあります。頼られることに頼る、つまり必要とされることを必要とするようになり、相手も自分もだめにしてしまうリスクがあります(共依存)。たまちゃんは、なぜこんなにしっかり者なのでしょうか?その答えは、たまちゃんのお父さんの存在にありました。たまちゃんのお父さんは、カメラマニアで、「何でも記念を写真に撮っておきたい」というこだわりが強く、相手の気持ちを汲み取る心(心の理論)が鈍いようです(発達の偏り)。シャッターチャンスを逃すまいとしてしょっちゅう常識外れな行動に走ります。「風邪で苦しんでいる自分の記念だ」と自分で自分の写真を撮るほどのこだわりがあります。ですので、周りに風変わりに思われることが多々あり、たまちゃんに世話を焼かせ、困らせています。たまちゃんは、将来的には、自分には恥ずかしい父親がいるという引け目から、よりいっそうとしっかり者になって、人の役に立つ仕事(対人援助職)に就くのではないかでしょうか?表 たまちゃんの二面性危うさ魅力お節介しっかり者、頼まれ上手世話焼きみぎわさん―思い込みキャラ―妄想性パーソナリティみぎわさんは、洋服、持ち物、好きなもの全てが乙女チックで女の子らしく、学級委員を務める優等生です。そして、とにかく花輪クンのことが大好きです。花輪クンのことにはつい敏感になってしまい、彼に優しい言葉をかけられただけで、気に入られていると思い込み、大喜びしてしまいます(被愛妄想)。逆に、クラスの女子が花輪クンと仲良く話していると、「花輪クンを狙っているでしょ!」と詰め寄り、嫉妬心を燃やします (嫉妬妄想)。授業中に、まる子がクラスメートの女子から受け取る手紙を、たまたま花輪クンが回してくれた時、それを見たみぎわさんは花輪クンがまる子に手紙を渡したと思い込み、大激怒します。そして、みぎわさんはまる子に「放課後、話をつけましょう。体育館の裏で待ってるわ」と書いた手紙を渡すのでした。みぎわさんの思い込みの激しさは二面性があります。疑い深く嫉妬深くて、妄想癖があるために、花輪クン以外のクラスメートには、ヒステリックで高圧的になっていくリスクがあります(妄想性パーソナリティ)。一方、彼女は、思いこんだら一直線のエネルギーを持っているとも言えます。このエネルギーを用心深さ、勘の良さ、対抗心、想像力の豊かさに有効活用することもできます。みぎわさんの「暴走」に対して、花輪クンは、はっきりしたことを言わず(中立)、心の間合い(心理的距離)をとって、巻き込まれないようにしています。これが、まさにコミュニケーションのコツと言えます。表 みぎわさんの二面性危うさ魅力疑い深い嫉妬深い妄想癖用心深い、勘が良いすぐに対抗心を燃やす想像力が豊か前田さん―怒りんぼ泣き虫キャラ―情緒不安定性パーソナリティ登場回数は少ないわりに強烈な印象を残すのが、前田さんです。彼女は、掃除係で、掃除にかける思いは熱くて良いのですが、気が強く、掃除を盾に威張り散らすことが多いです。そして、挨拶代わりに文句を言って威圧して、周りに気を使わせます。人に指図することも多く、大晦日に通りすがりのまる子に荷物を持たせたこともありました。彼女の最大の特徴は、相手に言うことを聞かせるためにすぐに怒り出すことと、逆に反撃され、行き詰り追い込まれるとすぐに泣き出すことです(衝動性)。大激怒して散々まる子たちを困らせたあと、自分が困ったら今度は大号泣するのです。そして、泣くことで、相手から手助けや譲歩を引き出し(操作性)、問題が解決すると、ケロっと泣きやみ、また威張り散らし始めるのです。また、「私に味方はいない」と漏らし、相手は敵か味方かという発想が強いようです(スプリッティング)。このように、すぐにかっとなったり、すぐに泣き出したりする行動パターンを繰り返していると、感情が揺れやすいことが本人の生き様になり、人間関係で苦労するリスクが高まります(情緒不安定性パーソナリティ)。一方で、この心の様は、感受性の豊かでもあり、このエネルギーを文学や音楽、演技力などの芸術センスに生かすこともできます。コミュニケーションのコツは、本人の感情の揺れに振り回されないように、近付きすぎずにやはり一定の心の間合い(心理的距離)が大切になります。表 前田さんの二面性危うさ魅力感情が揺れやすい感受性が豊か野口さん―ミステリアスキャラ―統合失調性パーソナリティ野口さんは、一見、無表情、無口のネクラでひっそりしていて、クラスの中で陰が薄いです。しかし、「クックックッ」という笑い声や、「しーらない」「言えやしないよ」と低いフラットなトーンの口癖は独特です。しかも、実は、かなりのお笑い好きで、「お笑いは、まず身近な所から見つけていこうね」と言い、しょっちゅう何かしでかすまる子の様子を、電柱の陰から密かに伺うなど、神出鬼没な一面もあり、かなり強烈な印象があります。まる子が前田さんにからまれ、何とか切り抜けた後に、野口さんはまる子に「これからも前田さんのことは、温かく見守っていこうね」「あ、またそろそろ泣くぞ」とボソっと告げるなど超越した視点を持っています。野口さんの特徴は、家族や友達との親密さを求めず、周りと距離を取ろうとする一匹狼キャラであることです。音楽の歌のテストの時には、壇上に出て「歌いたくありません」ときっぱり拒否をするエピソードもあります。ミステリアスで孤高でマイペースな一方、奇妙に思われて孤立して、社会生活が送りづらくなるリスクもあります(統合失調性パーソナリティ)。本人のペースを尊重しつつ、必要な時は社会との橋渡しをしてあげることがコミュニケーションのコツと言えます。表 野口さんの二面性危うさ魅力孤立奇妙社会生活を送りづらい孤高、超越した視点ミステリアスマイペース【まとめ】個性 ―パーソナリティの偏りこれまで、ちびまる子ちゃんの代表的で個性的なキャラクターたちを見てきました。彼らをより良く知ったことで、さらに彼らが私たちの身近な誰かに重なったり、または自分自身に重なってしまったりはしていないでしょうか?実は、彼らの特徴は、傾向やリスクとして、メンタルヘルスで扱うパーソナリティの偏りをほぼ全てカバーしているのです(表)。表 メンタルヘルスで扱うパーソナリティの偏り傾向またはリスクのあるキャラクターパーソナリティ強迫性丸尾くん自己愛性花輪クン反社会性永沢回避性藤木演技性はまじ依存性まる子共依存たまちゃん妄想性みぎわさん情緒不安定性前田さん統合失調性野口さんちびまる子ちゃんの友達関係―社会の縮図その他のクラスメートとして、リーダーキャラの大野君と杉山くん、お嬢様キャラの城ヶ崎さん、おバカキャラの山田、口癖キャラのブー太郎、胃弱キャラの山根、食いしん坊キャラの小杉などがいます。彼らを加えると、ちびまる子ちゃんたちがコミュニケ―ションを織りなし繰り広げる教室は、まさに私たちの社会の縮図です。ちびまる子ちゃんのキャラクターたちをヒントとして、実生活での相手のことをよく知り、同時に自分自身のことをよく知り、そして、相手と自分の関係性を見つめ直すことに生かすことができるのではないかということです。コミュニケーションにおいて、相手がどんな人なのかというパーソナリティの傾向を踏まえた上で、その魅力の裏にある危うさ(リスク)を想定して接するのと、そうでないのでは、心の余裕は全く違ってしまいます。ちびまる子ちゃんの作品を通して、人の個性の魅力と危うさという二面性をより良く知っていくことで、私たちの人生はより豊かになっていくのではないでしょうか?1)「ちびまる子ちゃん大図鑑」(扶桑社)2)「ICD-10(精神および行動の障害、臨床記述と診断ガイドライン)」(医学書院)3)「DSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引)」(医学書院)

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アビエイター【強迫性障害】

ハワード・ヒューズ―完璧主義の光と影この映画の舞台は、20世紀前半のアメリカ。黎明期の航空業界と全盛期のハリウッドを股にかけて活躍した実在の人物、ハワード・ヒューズの激動の半生が描かれています。彼は若くして、資産家の両親を失い、その莫大な遺産を受け継ぎ、航空工学の才能と情熱により、飛行機作りと映画作りに明け暮れ、時代のパイオニアとして大成功をおさめます。また、数々のハリウッドの美女たちと浮名を流し、世界一の富と名声をほしいままにします。そんなハワードを衝(つ)き動かすものは、生まれながらの完璧主義と執着心でした。しかし、同時に、それらは諸刃の剣として、彼を苦しめ、数多い奇行の逸話を残しました。社会的な成功者としての強さと心の闇を持つ者としての脆さ、この彼のギャップは、私たちの好奇心を大いに焚きつけます。今回は、この映画を通して、みなさんといっしょにハワード・ヒューズの光と影をメンタルヘルスの視点から探っていきましょう。強迫観念―完璧さを求める心の囚われハワードは若くして、製作した映画で大ヒットを飛ばし、また、自身の設計、操縦した飛行機により世界最速の記録を塗り替えます。さらに、世界一周を4日で成し遂げるという新記録も樹立して、華やかなハリウッドで一躍スポットライトを浴びるようになります。これらの偉業の原動力は、ものごとを何でも丁寧に几帳面にやろうとする彼の完璧主義の性格によるものでした。映画製作では、撮影に納得しないと、時には同じシーンを100テイク近くも撮り直し、編集作業では同じ映像を繰り返し確認し、膨大な時間を費やしています。飛行機製作では、機体の流線形の美しさや操縦かんの触り心地にこだわり続けます。しかし、完璧主義は職業的に生かされる一方、完璧さを求めるあまり、完璧じゃないと気が済まなくなり、本人も周りも苦しむことにもなります。ハワードは、心を許した恋人に打ち明けます。「時々、本当はありえないかもしれないおかしな考えに取り憑(つ)かれ」「正気を失うんじゃないかと怖くなる」と。彼は、自分の心の闇にうすうす気付いていたのでした。自分の性分のおかげで、社会的に成功して、世の中をコントロールできるようになってはいます。しかし、同時に、その性分が裏目に出てしまい、自分でバカバカしい(不合理)と思えることにまでこだわり、その考えに心を囚われ(侵入思考)、自分の心をうまくコントロールできなくなっていくのです。これは、まさに心に強く迫ってくる考えで、強迫観念と呼ばれます。強迫行為―バカバカしいと分かっているのに、やらずにはいられないパーティ会場で、ハワードがトイレで手を洗うシーンが印象的です。彼は、恋人が上層部の男のご機嫌とりをしてベタベタしている様子に苛立ち、トイレに駆け込みます。そして、念入りな手洗いが始まるのです。その後のトイレでの手洗いでのシーンでは、血が出るまでゴシゴシと手洗いを続けます。その痛々しさは、見ている私たちにも伝わってきます。彼に一体、何が起きているのでしょうか?実は、彼の完璧主義は、美しさから清潔さへの追求においても発揮されていました。彼は、ちょっとしたストレスをきっかけに、手の不潔さが気になってしまい、手洗いをしなければ気が済まないという強迫観念で頭の中がいっぱいになります。そして、ついには、手洗いを始めてしまい、止めたいと思いながらも完璧だと自分で納得し安心するまで手洗いを止められないのでした。もはやきれい好きの度を越しています。このように、バカバカしいと分かっているのに、やらずにはいられない行為、やめられない行為を、強迫行為と言います。特に、手洗いを繰り返す行為を洗浄強迫と呼びます。また、確認を繰り返す行為は確認強迫と呼びますが、彼の映画作りや飛行機作りでの度を越した執拗な確認癖は、これに当てはまるとも言えそうです。強迫性恐怖―心の囚われが不安を招くハワードは、飛行機の操縦かんをセロフィンで包んで、清潔にしようとしています。また、トイレでは、たまたま居合わせた体の不自由な男性が、タオルを取ってほしいと頼みますが、彼は「できないんだ」と申し訳なさそうに断っています。もちろん、出る時にトイレのドアノブも触れません。そんな彼が、最愛の恋人が口を付けた牛乳ビンをちょっとためらいながらも思い切って飲むシーンは、また印象的です。その後、恋人とうまくいかなくなり、社会的にピンチになるなどのストレスが引き金となって、症状が悪化していくことが分かりやすく描かれています。強迫観念はエスカレートしていくと、恐怖が募ってきます(強迫性恐怖)。不潔さに対しての強迫観念から不安が強まる場合は、特に不潔恐怖と言います。いわゆる潔癖症です。きれい好きは、裏を返せば、不潔恐怖になりうるのです。彼自身、やがては不潔さを気にするあまり、部屋から出られなくなっていきます。また、不完全さに対しての強迫観念から不安が強まる場合、不完全恐怖と言います。やり直し―完璧でなければ最初から全てをやり直すハワードの浮気が原因でその最愛の恋人が家を出て行った直後のシーン。彼は、自分の衣類が雑然と部屋に投げ出されている状況が際立って目に入ってしまい、不潔さや不完全さへの強迫性恐怖が一気に押し寄せてきます。そして、衝動的に家にあった衣類を全て燃やし始めます。最後には、自分が着ていた服までも燃やし、生まれたままの姿で棒立ちになるのでした。過去を脱ぎ捨て、リセットを望むかのように。これは、完璧でなければ最初から全てをやり直すという、やり直し(取り消し)と呼ばれる心理メカニズム(防衛機制)でもあります。彼の完璧主義の信念に通じるものでもあります。完璧さを求めるあまり、言い換えれば、不完全恐怖から逃れるために、完璧か無のどちらかでなければ気が済まなくなり、無にしてやり直すという強迫行為です。強迫儀式―自分の行動の儀式化その後、ハワードは、飛行機事故で体が不自由になり、ライバル会社に自分の会社を乗っ取られそうになるというプレッシャーもあいまって、ついに、部屋にこもって出られなくなります。そして、彼は、紙、髭、爪が伸び放題のまま、顔も体も洗わずに、素っ裸で延々と自分自身に訴えかけます。「最初から繰り返せ!」と。そして、自分の行動を決められた手順で正確に実行しようとします。まるで儀式を執り行うかのように、同じ言葉や動きを繰り返すのです。これは、強迫儀式と呼ばれます。さらに、この儀式が心の中の言葉やイメージを思い浮かべる行為にまで及ぶと、体の動きがゆっくりになっていきます(強迫性緩慢)。例えるなら、ギアが硬すぎて吹かされ続けている車のエンジンです。こうして、彼の本来の才能や情熱は、食事の用意の仕方やばい菌に触れない方法などの儀式の確立に注がれていったのでした。もともと彼は欲しいものは全てを手に入れられる立場にあり、自分にできないことはないという感覚(万能感)が強かっただけに、誰も彼を止めることができませんでした。だからこそ、病状も深刻化していったと考えられます。強迫性障害―強迫観念と強迫行為を主とする部屋ごもりが長くなるにつれて、ハワードはゴミをため込むようになります。彼の部屋には、彼がものに触れる時に使ったティッシュが山のように床に散乱しています。そして、なんと自分のおしっこを入れたビンを整列させて並べています(強迫的ため込み、強迫的保存症)。潔癖な性格のはずなのに、自分の出した垢、爪、ティッシュ、おしっこなどは大丈夫なのでした。もはや清潔かどうかの判断基準は、彼の思い込み(認知の歪み)によって大きく狂ってしまっていたのです。彼の苦悩と狂気が強烈に描かれているシーンです。これは、最近、社会問題にもなっている「ゴミ屋敷」の主人の収集癖にもつながってくる症状とも言えます。そのゴミに価値があるかどうかは本人の思い込みによるものが大きいようです。また、彼は言葉を繰り返して言ってしまい、止まらなくなる症状がいくつかのシーンで見られます。「青写真を見せろ」「ミルクをもって来い」「最初からやり直せ」「風邪をうつしたくない」「未来への道だ」などの言葉でした。相手や周りに変だと思われることは重々自覚しており、苦しそうに手で口を塞いでいます。このように、やってはいけないと思えば思うほど(禁断的思考)、やらずにはいられなくなる行為も強迫行為と言えます。以上を振り返ると、ハワード・ヒューズは、強迫観念と強迫行為を主として、強迫性恐怖、強迫儀式、強迫性緩慢、強迫的ため込み、禁断的思考などの多彩な症状も見られる、重度の強迫性障害を患っていたことが伺えます。原因(1)―思い通りの子ども時代それでは、ハワードはなぜ強迫性障害になってしまったのでしょうか?すでに、彼の完璧主義で潔癖な性格とストレスについて触れましたが、そもそもなぜ彼はこんな性格になったのでしょうか? ハワードの生い立ちを調べると、14歳で飛行訓練を受けるなど、彼はとても裕福な家庭で育ちました。しかも、11歳にして故郷ヒューストンで第1号となる無線放送セットを作り上げるなど、頭も抜群に良かったようです。幼少期の病気による聴覚障害を除くと、彼は一貫してもてはやされ、自分の思うままの子ども時代を過ごし、挫折などの失敗体験が少なすぎていました。これが、彼の完璧主義の性格を作り上げたようです。原因(2)―母親の言いつけさらに、母親の絶大な影響がありました。彼が幼少期に母親から言いつけられる記憶を思い出すシーンがあります。裸の自分が母親に体を洗われている場面です。母親から「か・く・り(隔離)・・・、分かるかしら?」「伝染病がどんなに恐ろしいかも知っている?」「あなたは安全じゃないのよ」と言い諭されています。ここから、母親自身が不潔なものに対して神経質で過保護であることが伺えます。実際の伝記にも、母親は学校の先生、ボーイスカウトの隊長、サマーキャンプの指導員に「病気の人に近付けないで」との内容の手紙を書いていたというエピソードが残っています。彼の周りも母親の訴えに気を使って、彼を見かけると、「具合は悪くないか?」と過剰に気にかけていたようです。このようにして、幼い頃から、母親を中心として周りが病気を予防しようと過剰にかかわること(弁別刺激)により、彼は清潔であれば褒められるということを学び(オペラント学習)、潔癖は良いことであるという考え方(認知)が、繰り返し刷り込まれていった(強化)のです。これが、彼の潔癖な性格を形作りました。そして、大人になったハワードが具合を悪くした時につぶやくのは、「か・く・り・だ(隔離だ)」でした。あの母親の言葉です。この言葉は、彼の生涯において根深く付きまとっていることが伺えます。まさに、彼の人生の本質的な部分です。この隔離とは、もともとはコレラなど伝染病の患者を隔離する意味がありますが、自分の感情や行動に実感が伴わなくなる心理メカニズム(防衛機制)である「(感情の)隔離」「分離」をほのめかしているようにも思えます。部屋にこもって強迫儀式や強迫性緩慢に陥っている彼は、まさに、心を囚われ、自分自身が「隔離」されてしまっているのでした。ちなみに、最近、ばい菌や臭いをイメージ化した過剰な徐菌や消臭のテレビコマーシャルをよく見かけます。この影響が子どもたちをハワードのような不潔恐怖だけでなく、口臭・腋臭などの自分の匂いへの恐怖(自己臭恐怖)を持つ神経質な大人へと駆り立てていくのではないかと心配になってしまいます。実際に、清潔すぎる環境で育った子どもたちは、異物に対しての免疫が過敏に働き(アレルギー)、喘息や花粉症になりやすくなると言われています。さらには、体のアレルギー反応だけでなく、心の「アレルギー反応」として、汚れたものや臭うものへの恐怖が高まってしまうということも考えられるわけです。原因(3)―遺伝的な傾向ヒトが完璧さを求める欲求にもっと根源的な理由はないでしょうか?完璧さとは、対称性、正確性、美意識であり、そこには秩序があります。この秩序の欲求は、どうやら、動物の縄張りを守る習性(縄張り行動)に由来し、脈々と私たちの遺伝子にもそれぞれ多かれ少なかれ受け継がれ、組み込まれているようです。ですので、この遺伝的な傾向が強いだけで、強迫性障害になりやすくなるとも言えます。つまり、ハワードの強迫性障害は、子ども時代の裕福さや母親などの周りのかかわり、成人後のストレス(環境因子)だけでなく、ヒトそれぞれが元来持っている遺伝的な傾向(個体因子)も絡み合った結果として、出来上がったのではないかということが考えられます。治療―薬物療法と認知行動療法部屋にこもっていたハワードでしたが、ライバル会社と手を組んでいる議員から汚職の疑いをかけられ、ついに強制的に公聴会に呼び出されます。彼が外出を決意した時、助けにやってきた恋人とのやり取りが興味深いです。彼女は言います。「さあ、ここ(洗面所)で顔を洗いなさい」「私はどこにも行かないわよ」と。「きみには清潔に見えるかい?」というハワードに、彼女は「何も清潔なものなんかないわよ」「でも私たちはベストを尽くすものよ」と言い、彼に顔を洗わせる後押しをします。これは、あえて恐怖の対称に曝(さら)されて逃げ出したくなる反応を妨害し、馴らしていく(馴化)という治療法でもあります(曝露反応妨害法)。すっきりした彼は、思わず言います。「結婚しないか?」と。うわての彼女は「私のためにやってくれたのね」と受け流します。好ましい行動に対して賞賛を与えており、この行動を強化しようとしています(オペラント強化技法)。かつて幼少期に強化された潔癖な考え方を拭い去り(学習解除)、不潔にこだわらないという新しい考え方に修正しようとしています。このように、もともとの不潔なものに対する思考パターン(認知パターン)、行動パターンを変えていく治療法をまとめて認知行動療法と呼びます。現在の強迫性障害の治療は、薬物療法とこの認知行動療法が主流です。シネマセラピーラストシーンでハワードは、ついに、世界最大の飛行機を完成させ、自らが操縦し、飛行を達成させます。この飛行機は、今でも最長の翼幅を持つ航空機として、記録を保持し続けています。しかし、映画では描かれていない晩年の彼は、強迫性障害を悪化させ、事故による痛みの治療で覚えてしまった麻薬を乱用してしまい、薬物依存症にもなっていました。彼は、全財産をなげうってまで、飛行機作りに全てを賭けていました。そこまでして彼が飛行機をこよなく愛したのは、飛ぶことで全てを超越し、心の安らぎが得られるからだったようです。彼は、アビエイター(飛行機操縦士)として、自分の飛行機を完璧に操縦することができました。しかし、皮肉にも、自分の心は、完璧さを求めるあまりに制御が利かない「自動操縦」になってしまい、生涯最後まで「手動操縦」をうまく行うことはできなかったのでした。ハワード・ヒューズの生き様と心の病気は、まさにコインの裏と表です。私たちは、ハワードから完璧さや潔癖さを求めることの危うさを教わることで、ほどよい心の操縦法を見出していくことができるのではないでしょうか?1)エキスパートによる強迫性障害(OCD)(星和書店) 上島国利2)標準精神医学(医学書院) 野村総一郎3)STEP精神科(海馬書房) 岸本年史4)“Howard Hughes: His life and Madness”5)Donald L. Barlett & James B. Steele

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ショーシャンクの空に【心の抵抗力(レジリエンス)】[改訂版]

「あ~もう嫌になる!」みなさんは、仕事や人間関係でうまくいかなかったり、移った職場で慣れなくて居心地が悪かったりして、「あ~もう嫌になる!」と絶望的になったことはありませんか?そんな時、みなさんの心に何が起きているのでしょうか?そして、どうしたらこの気持ちから救われるのでしょうか?これらの疑問を踏まえて、今回は、映画「ショーシャンクの空に」を取り上げてみました。舞台は、1940年代後半から1960年代頃までの、とあるアメリカの刑務所。主人公の20年の歳月をかけた刑務所での生活が描かれています。このストーリーを追いながら、メンタルヘルスの視点で、心の抵抗力(レジリエンス)について、いっしょに考えていきましょう。ストレス因子―心の風邪ウイルス主人公のアンディは、もともと若くして有能な銀行員で、妻といっしょに裕福な暮らしをしていました。しかし、彼の妻は不倫をしており、しかも彼女の愛人とともに何者かに銃殺されてしまったのです。そして、彼は、身に覚えのないまま、状況証拠から、妻とその愛人を殺害した罪で終身刑を言い渡され、ショーシャンク刑務所に収容されてしまいます。刑務所では、所長に「命を私に預けろ」と宣告され、全裸にされ乱暴に消毒薬の粉をかけられ、そのまま独房が並ぶ廊下を歩かされます。囚人虐待を予感させます。その後、アンディは男色の囚人たちに目を付けられ、集団で暴行されレイプされます。看守たちは見て見ぬふりの無法状態です。そして、それが刑務所の日常業務の1つのようにして繰り返されるのでした。時には反撃しますが、暴行はとどまるところがなく、まさに絶望的なのでした。アンディのストレスとなる原因(ストレス因子)として、妻の裏切りと喪失、濡れ衣、終身刑、囚人虐待、集団レイプがあげられます。彼はくじけそうになり、精神的に限界に達しようとしていました。私たちも、彼ほどではないにしても、日々の生活の中で、このストレス因子という心の風邪ウイルスにより、心の風邪(うつ)をひいて、ふさぎ込むことはあります。このストレス因子を整理して見ると、対人関係、環境変化、燃え尽き(過剰適応)の3つに大きく分けられます(表1)。表1 ストレス因子の例対人関係環境変化燃え尽き(過剰適応)例職場・学校・地域・家庭でのトラブル離婚、結婚(「マリッジブルー」)喪失、死別(「ペットロス」なども含む)就職(5月病)、退職、解雇、昇進転居、転勤、転職、転校カルチャーショック施設症身体疾患(疼痛、不自由など)育児ノイローゼ介護疲れ(介護ノイローゼ)新人(新入生や新入社員)の張り切り過ぎ(4月病)レジリエンス―心の抵抗力アンディが受けた囚人たちからのレイプの関係とは対照的に、調達屋で友人のレッドとの友情が引き立ちます。この映画の醍醐味の1つとも言えます。アンディはレッドに趣味の鉱物集めのためにとロックハンマーを調達してもらいます。刑務所の中の時間はゆっくりと流れていきます。2年後のある時に、屋根掃除のボランティアが募られました。この時、レッドは「このままだと彼は廃人同然になる」と思い、彼の計らいで、メンバーにアンディが引き抜かれます。レッドはアンディを何とか救いたいと思ったのでした(ソーシャルサポート)。屋根掃除をしているさなか、たまたま看守が遺産相続で愚痴をこぼしているのを小耳にはさんだアンディは、もともと銀行員であった知識を生かし資産運用をアドバイスします。その見返りとして、なんと意を決して、掃除メンバーにビールを振る舞うように申し出るのです(積極性)。まさに、アンディ自身が囚人たちにとっての「救世主」となるのです。アンディの狂気に陥りそうになる中での人間らしさを求める気持ちが伝わってきます。それは、彼を思いやるレッドの存在と同時に、彼がレッドを含め多くの仲間たちへの思いやりです(愛他主義)。ビールを片手に、メンバーたちは、アンディに感謝すると同時に一目置くようになります。その後、その能力を買われたアンディは刑務所職員たちの税理士となり、所長にも大目に見られるようになります。刑務所職員からも一目置かれる存在になり、強姦魔たちは排除されます。アンディは生き生きとし自尊心を取り戻し、図書室の改造や刑務所全体にオペラを流すなど、様々なことに精力的に力を注いでいきます。オペラの歌声が響き渡り、荒みきった囚人たちの心がひと時、潤されるシーンは感動的です。アンディが様々な苦難にくじけずに乗り越えてきた理由が、ストーリーを追っていくうちに見えてきます。それは、彼には、苦難という心の風邪ウイルス(ストレス因子)を撥ね返す心の抵抗力(レジリエンス)が強かったからでした。これから、このレジリエンスという心の抵抗力の要素を、他の登場人物と比べながら、もっと掘り下げていきましょう。スキーマ―生き様という心の習慣図書室の係員であるブルックスは50年という歳月を刑務所で過ごしてきました。一番の古株です。その彼に仮釈放処分が許可されたところから事態が急展開します。彼は出所を拒む気持ちから、仮釈放取り消しを望んで、気が動転して、なんと仲間にナイフを振り回してしまいました(衝動性)。あまりにも長い年月、塀の中にいると逆にその居心地が良くなってしまうのです。もはや塀の外でやっていくだけの自信がないのでした。レッドも気付きます。「ブルックスはここでは教養があり大事にされているが、外ではただの老いた元服役因だ」「あの塀は、最初に憎み、やがて慣れ、最後に頼るようになる」「これは施設慣れ(施設症)だ」(表1)と。ブルックスが刑務所での役割を見出し、そこが自分の居場所であると確信していました。ちょうど風邪ウイルスから体を守るために、マスク、手洗い、うがいをする習慣のように、心の風邪ウイルス(ストレス因子)から心を守るために、私たちはそれぞれが良しとしている心の習慣を持っています(スキーマ)。それは、考え方の癖、生き方、生き様、人生観があります。そして、この心の習慣(スキーマ)が周りから見てあまりにも偏っている場合は、問題が起きてしまいます(認知の歪み)。それはちょうど、風邪を予防しなければならない時に、あえてマスクを付けなかったり、手洗いやうがいをいい加減にしてしまうようなものです。適応障害―心の風邪(うつ)結局ブルックスは出所します。半世紀を経て外の世界が大きく変わったことに驚きます。与えられた仕事であるスーパーマーケットのレジ係に慣れず、上司からは嫌われ、気遣ってくれる仲間もいなくて、新しい生活を送ることがつらくなっていきます。また、「悪夢で眠れない」「不安から解放されたい」と思い詰めていきます。出所後の慣れない生活環境 (ストレス因子)が心の習慣(スキーマ)に合わず、心の風邪をひいています(適応障害)。そして最後は、「おさらばすることにしました」とあっけなく(衝動性)、自宅アパートで首を吊ってしまいます。レッドが後に「ここ(刑務所)で死なせてやりたかった」と言ったように、ブルックスほどにもなると、もはや居場所は刑務所しかなかったのかもしれません。ブルックスは、もともとの衝動性や「刑務所が自分の本当の居場所」という凝り固まり偏った考え(認知の歪み)に、出所後の孤独が重なり、心の抵抗力はとても弱くなっていた(脆弱性)と考えられます(表2)。実際に最近の日本でも、出所しても社会での居場所がないため軽犯罪を繰り返し、再び入所するケースが問題視されています。出所後、彼らにどういう適応環境が提供されるか(ソーシャルサポート)、また彼らがどういう適応環境を見出すことができるか(認知再構築)が大きな課題です。実は、この問題は、精神科病院に長期入院をしている患者にも通じることです。入院期間が年単位の患者ともなると、病院生活がいかに楽かうすうす気付いてしまい、むしろ安住し、居付いてしまうのです。そして、地域や病院の手助けがあるのに、自分で生きていくことを拒むようになります。また、家族も本人が家庭にいないことが当たり前になってしまい、今の生活を続けたいと思い、家族も受け入れに対して強い抵抗を示すようになります。仮に退院しても、本人が新しい生活に慣れず、すぐ再入院してしまうケースも多く、医療関係者の頭を悩ませる1つになっています。表2 脆弱性とレジリエンスの比較脆弱性レジリエンス意味ストレスへの心の脆さ、弱さストレスを撥ね返す心の抵抗力(立ち直る力、打たれ強さ)要素本人(個人)衝動性偏った考え方(認知の歪み)マイナス思考消極性無力感、受身自己本位客観視ユーモア希望を持つプラス思考積極性他者への思いやり(愛他主義)助けを求める能力(社交性)周り(社会)つながりなし(孤独)家族、仲間、地域、職場とのつながりアスピレーション―心のワクチン20年の月日が流れ、新入りトミーが入所します。憎めないトミーにアンディは父親のように接し、勉強を教え、高校卒業資格を取らせます。その後、奇遇にも、トミーはたまたまアンディの妻とその愛人を殺害した真犯人の話を知っていました。ついに、アンディの無実が明るみになります。アンディは、所長に掛け合いますが、所長は全く取り合ってくれません。所長に金銭面での違法な便宜を図り悪事を支えているアンディは、所長にとって、なくてはならない存在にまでなっていたからです。その直後、トミーは密かに射殺されます。そして、アンディは監禁房に入れられてしまいます。アンディが2ヵ月間も監禁房にいて正気が保てたのは、ひとえに彼を希望が支えていたからでした。彼の希望とは、脱獄し、ジワタネホという楽園に行くことでした。このように、「自分の人生をどうしたいのか」というはっきりとした希望、目標、生きがいがあること(アスピレーション)は、苦難を生き抜くための大きな原動力になります。このアスピレーションは、ちょうど、風邪をひかないために、ある一定期間に免疫力を高めるワクチン予防接種のように、心の抵抗力を高める心のワクチンと言えます。レッドが昔、アンディに「希望は危険だ」「塀の中では禁物だ」「正気を失わせる」と言い諭したことがありましたが、非常に対照的です。セルフモニタリング―心を鍛えるようやく監禁房から出た後、アンディは、レッドに漏らします。「自分が妻を死に追いやったも同然だと思う」「こんな私が彼女を死なせた」「そして、もう十分すぎるほどの償いをした」と。自分の運命を受け入れているという前向きな発言です(プラス思考)。「私は運が悪いな」「不運は誰かの頭上に舞い降りるけど、今回は私だった」「それだけのことだけど、油断しちゃったな」とユーモアも交えています。これらの考え方の基になるのは、彼が自分自身を冷静に見つめ直し、客観視していることです(セルフモニタリング)。このセルフモニタリングの能力は、ちょうど、風邪をひかないように体を鍛えて血の巡りをよくするのと同じく、心の風邪をひかないよう心を鍛えて心の血の巡りをよくしていくことであると言えそうです。ただ、この心の鍛えることは、「スポ根(スポーツ根性)」のような単に無理に我慢すること(忍耐力)とは違います。その理由は、単なる我慢強さは、燃え尽き(過剰適応)に陥るリスクを高めてしまうからです(表1)。自分の独房に戻った時、アンディは思い立ちます。脱獄する時が来たと。かつてレッドに調達してもらった大きなポスターが貼られてある独房の壁の向こうには、彼が小さなロックハンマーで密かに20年の歳月をかけて地道に掘った穴が続いていたのです。彼は、自分の運命を受け入れ、さらに時間をかけて打開しようとしていたのでした(積極性)。その穴の向こうには確実に希望がありました。小さな穴道を必死に這いつくばり、最後は塀の外の下水管から這い出ていきます。そして、汚物まみれのアンディは恍惚とします。祝福の雷雨に、汚物と過去に背負ってきた全てのものを洗い流されながら。この映画のクライマックスと言えるシーンです。その後すぐに、アンディの告発によって、所長の悪事が明るみになります。所長は、様々な聖書の一節を引用する偽善者でしたが、駆けつけてくる警察車両を彼は窓から見つつ、壁に刺繍で書かれた聖書の一節が眼に飛び込んできます。「主の裁きは下る。いずれ間もなく」と。見ている私たちには、してやったりの瞬間です。追い詰められた所長は咄嗟にピストル自殺します。ソーシャルサポート―人薬という心のビタミン剤アンディが去った刑務所で喪失感を感じるレッドにも、やがて仮釈放処分が下ります。そして、かつて自殺したブルックスと同じ道を辿っていきます。ブルックスが住んだアパートに住み、ブルックスと同じスーパーマーケットのレジ係の仕事に就きます。長年、刑務所で調達屋としての地位を築いていた彼は、塀の一歩外に出てしまうとただのスーパーのレジ係に過ぎず、自分を必要としてくれる仲間はそこにはいません。レッドは塀の外に出て初めて、ブルックスと同じように正気を失いかけていました。彼は、ブルックスと自分を重ね合わせて思います。「毎日が恐ろしい」「おびえなくて済む安心できる場所へ行きたい」と。その時、かつてアンディが脱獄前に言った言葉を思い出しました。ある場所に行けと。そこは二人が出会う約束の場所でした。それは、まさにレッドにとっての一筋の希望(アスピレーション)でした。希望は、正気を失いかけていたレッドも救ったのでした。希望とは、ポジティブな見通しであり、心の抵抗力(レジリエンス)としてとても重要であることが分かります。また、自分とつながっている人がいること (ソーシャルサポート)も大切であることが分かります。これは、風邪をひかないためのビタミン剤のように、心の風邪をひかないための「人薬(ひとぐすり)」という心のビタミン剤と言えます。ブルックスと比べて、レッドの状況は大きく違っています。アンディが待っていると気付いたことで、レッドは初めて本当の自由を実感したのでした。そして、「希望には永遠の命がある」と思うまでになりました。ブルックスにも、地域で行きつけのお店ができて、顔馴染みの知り合いでもできれば、また状況は変わったかもしれません。表3 心の抵抗力(レジリエンス)の違いブルックスレッドアンディレジリエンス×衝動的×認知の歪み×出所後に孤独△出所後に一時孤独◎アンディとの約束○冷静○仲間思い◎希望を持つ心の抵抗力を高める具体的なコツ私たちは、アンディから心の抵抗力(レジリエンス)を高める様々なコツを学ぶことができました。これらは、それぞれ連動し合い、強め合っています。これから、それらを大きく3つに分けて整理し、具体的に私たちにもできることを考えていきましょう。(1)心を鍛える(セルフモニタリング)1つ目は、心を鍛える、つまりは、自分を冷静に見つめ直す癖を付けること、つまり自己客観視です(セルフモニタリング)。具体的には、自分自身の行動や気持ちを記録したり日記をつけて、心の風邪ウイルス(ストレス因子)を書き出して、言葉にすることです(外在化)。これは、例えば、「神様にいつも見守られている(=いつも見られている)」という信者が神様の視点で自分自身を見る心理でもあります。また、カリスマ歌手である矢沢永吉の熱烈なファンが、「自分は困った時、『永ちゃんだったらどうするんだろう』っていつも考えるんだよ」と語る発想にも似ています。尊敬する人の視点で自分自身を見ることにより、自分自身への気付きを高めていると言えます。また、気持ちが揺らいできたら、そこでわざと自分を実況生中継して、自分自身への気付きを高めるのも手です(マインドフルネス)。例えば、あなたは今お腹が空いてイライラしてレストランで注文した食事を待っているという状況。「『お腹が空いた』と○○(自分の名前)はいら立っている」「なぜかと言うと・・・」と実況中継します。すると、どうでしょう?自分じゃない誰かの視点に立つことで、自分自身の心から距離が取れた感覚(メタ認知)になりませんか?このように、もやもやとした感情を理性的な言葉にすること(外在化)で、理性が、感情の手綱を握ることができるようになります。さらには、お笑いネタのように自分自身に突っ込みを入れること(ユーモア)も良いです。これらは、車の運転や楽器の習い事のように、理屈を頭で理解すると同時に、別の視点や様々な発想(認知パターン)を感覚的に刷り込むトレーニングです。こうして、心を鍛えることで、やがていら立ちも意識しにくくなっていきます。(2)アスピレーション2つ目は、はっきりとした希望、目標、生きがいを持つことです(アスピレーション)。自分は「こうしたい」や「こうなりたい」(ロールモデル)という強い気持ちがあることで、人生をより前向きに(プラス思考)、より積極的に生きて行こうという発想になります。これは、1つ目のコツの自己客観視(セルフモニタリング)が基になっています。例えば、誰かのために何かをした時、「いいように使われた」と損得勘定だけでマイナスに思ってしまったら(外発的動機付け)、同時に「自分を役立てることができた喜びと楽しさがあった」「お仕えすることができて幸せだ」との前向きで積極的な発想も持ち、そして強めていくことです(内発的動機付け)。また、苦しい状況の中に意味を見出すのもコツです。例えば、「あっ、今、自分は試されている」「これは自分の目標に達するための試練だ」と発想を切り替えることです。これらの発想は、全てアスピレーションという希望や目標があることで支えられていると言えます。(3)ソーシャルサポートそして、3つ目は、家族や仲間とのつながりを保つこと、つまりは人薬です(ソーシャルサポート)。そのためには、まず家族や仲間への思いやりが大切であることが分かります。独りぼっちには思いの外、危うさがあります。そして、つながっていることで、自分の役割を見つけ、居場所を見いだすことができます。これらは、アスピレーションである希望や目標をより硬く力強いものにしてくれます。表4 心の抵抗力(レジリエンス)を高めるコツ例心を鍛える(セルフモニタリング)自己客観視言葉にする(外在化)自分への気付きを高める(マインドフルネス)心のワクチン(アスピレーション)希望、目標、生きがい、ロールモデルを持つプラス思考積極性人薬(ソーシャルサポート)家族や仲間とのつながり家族思い、仲間思い自分の役割と居場所の確保自分らしく生き生きと生きる二人が再会するラストシーンは、かつて共に過ごしていた高い塀に囲まれた暗く行き場のない刑務所から一転して、視界が限りなく広がった真っ青な海のビーチです。このシーンは強烈なインパクトで、最高のコントラストでした。もはや見ている私たちにも深い感動と、そして癒しを与えてくれます。私たちの生活に置き換えてみると、私たちも「日常生活」という塀の中にいるのかもしれません。そして、何かに立ち向かっている時や苦しんでいる時に、この映画は心地よく励みになります。「必死に生きるか、必死に死ぬか」とのアンディのセリフがありますが、それは塀の中でも外でも同じことで、いかに自分らしく生き生きと生きるかが大事だというメッセージです。私たち自身も、心の抵抗力(レジリエンス)を高めることで、より生き生きと生きていけるのではないでしょうか?1)「臨床精神医学、レジリエンスと心の科学」(アークメディア)2012年2月号2)「マインドフルネスそしてACTへ」(星和書店) 熊野宏昭

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(57)〕 重ね着にメリットなし、かえって風邪をひくかも-ACE阻害薬とARB併用に効果増強みられず-

 Renin-angiotensine(RA)系抑制薬として、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)そして直接的レニン阻害薬 アリスキレン(商品名:ラジレス)が実用に供されているが、これらのうち2種類の併用を“dual blockade”と称する。最近このdual blockade 治療を検証したONTARGET試験やALTITUDE試験などで、その有用性が相次いで否定されている。 本試験はこれまで発表されたDual Blockade Therapy(DBT)に関する33のランダム化試験約6万8,000人のメタ解析である。その結果は、DBTは単独治療に比べて全死亡を減らすことはなく、高カリウム血症や低血圧、腎不全などの有害事象を増加させたというものである。本試験は、各トライアルの患者の臨床背景が不一致であるというメタ解析一般にみられるlimitationを差し引いても妥当な結果といえよう。 過剰なRA系の抑制は、かえって生体の代償機転を損ねる可能性が示唆されるが、今後保険上の縛りをいれることで、RA系同士の併用が処方されることのないようにわが国の臨床医に啓蒙していく必要があろう。

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第11回 転医義務:「妊婦たらい回し事件」から考える周産期救急体制とは!

■今回のテーマのポイント1.転医義務には、大きく分けて(1) 医療連携のための転医義務、(2) 専門外診療時の転医義務、(3) 診療不能時の転医義務の3種類がある2.転医義務は手段債務(転医先を探すこと)であり、結果債務(転医先を見つけること)ではない3.救急医療の整備・確保は、医師個人の努力によってカバーするものではなく、国や地方自治体の最も基本的な責務である事件の概要32歳女性(X)。妊娠41週2日。出産予定日を渡過したため、分娩目的にてY病院に入院しました。ところが、Xは午前0時頃からこめかみの痛みを訴え、同0時14分頃に意識消失しました。産科医であるA医師は、当直していた内科医であるB医師に診察を依頼したところ、B医師は失神であると診断し、経過観察をするよう助言しました。しかし、経過観察をしていたところ、午前1時37分頃、血圧上昇(200/100mmHg)に引き続きけいれん発作が生じたため、A医師は、救急車を要請しました。ところが、深夜の上に意識障害を伴う妊婦の処置ができる施設は限られていることから、転送先の確保に時間がかかり、結局、県外にある転送先病院(D病院)がみつかるまで約3時間かかってしまいました。Xは、D病院に搬送され、脳出血と診断され開頭血腫除去術および帝王切開術が行われました。しかし、児は無事に娩出されましたが、母体(X)の脳出血は脳室穿破しており、血腫除去は行われたものの、8日後に死亡しました。Xの夫および子は、Y病院およびA医師に対し、「Xの転院が遅延した過失がある」として約8,900万円の損害賠償請求を行いました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過32歳女性(X)。妊娠41週2日。出産予定日を渡過したため、分娩目的にてY病院に入院しました。ところが、Xは午前0時頃からこめかみの痛みを訴え、同0時14分頃に意識消失しました。産科医であるA医師は、当直していた内科医であるB医師に診察を依頼しました。B医師はXのJCS100~200点であるものの、神経所見に異常はなく、バイタルサインも問題なかったことから、陣痛による精神的な反応から来る心因的意識喪失発作であり、このまま様子をみるのが相当と判断しました。その後、モニターを設置し、助産師が10分おきに経過観察をしていました。その間、Xは、意識がない状態が続いていたものの、バイタルサインに問題はなく、陣痛発作時に四肢を動かしたり、顔をしかめたりしていました。しかし、午前1時37分頃、モニター上、血圧が上昇したことから、助産師と看護師がXのもとに赴いたところ、Xは、いびきをかいており、四肢をつっぱったような形で反り返ったような姿勢を示しており、血圧は200/100mmHgでした。助産師は直ちにA医師に連絡し、駆け付けたA医師が診察したところ、Xの瞳孔は中程度の散大固定をしており、対光反射は消失していました。応援に駆け付けたB医師は、A医師に対し、頭部CT検査を行うか尋ねましたが、Y病院では、夜間にCT検査を行う場合、実際に撮影するまでに40~50分程度かかることから、A医師は、検査をするより、直ちに転送した方がよいと考え、午前1時50分頃、同県の周産期医療情報システムに則って、C大学病院に受け入れ依頼をしました。ところが、C大学病院は、ベッド満床のため受入れ不能であったことから、C大学病院の方で、他の病院を探して見つかった時点でY病院に連絡することとなりました。しかし、通常は、長くても1時間程度で搬送先が決まっていたところ、1時間たっても2時間たっても見つかりませんでした。結局、4時半頃になり、隣県のD病院が受け入れ可能であるとの連絡があり、Xは、搬送されることとなりましたが、その時点で舌根沈下が生じていたことから、気管内挿管がなされ、午前4時49分に搬送開始となりました。午前5時47分に、Xは、D病院に到着し、頭部CT検査を行ったところ、右被殻から右前頭葉に及ぶ巨大脳内血腫(約7×5.5×6 cm)が認められ、著明な正中偏位があり、脳室穿破し、脳幹部にも出血が認められると診断されました。臨床症状、CT所見とも脳ヘルニアが完成した状態であり、Xの救命は極めて厳しいと考えられましたが、Xの夫らからの強い希望もあり、午前7時55分頃、緊急開頭血腫除去術および帝王切開術が行われました。しかし、児は無事に娩出されたものの、母体(X)は、8日後に死亡しました。事件の判決問題となるのは、原告らが主張するように、頭部CT検査をしなかったために、脳出血の診断が遅れ、脳圧下降剤を投与する機会を逸したことをもって過失といえるかという点である。確かに、午前1時37分ころには脳に何らかの異常が生じていることを認識することは可能であり、現に被告A医師らにおいて認識していたと考えられるのであるから、通常直ちにCT検査を実施すべきであったといえる。しかし、被告A医師において、午前1時37分ころの時点で、一刻を争う事態と判断し、CT検査に要する時間を考慮すると、高次医療機関にできるだけ迅速に搬送することを優先させ、直ちにC大学病院に対し受入れの依頼をしているところであって、頭部CT検査を実施せずに搬送先を依頼したことが不適切であったといえるものではない。もっとも、結果的には、午前1時50分ころにC大学病院に対し受入れの依頼をし、D病院への搬送が開始されたのは午前4時49分であるから、約3時間を要しているところ、被告病院においてCT検査は40~50分程度で実施可能であることからすると、CT検査を行うことができたということができ、それにより脳に関する異常を発見してグレノール(脳圧下降剤)の投与等の措置をとることができた可能性は否定できない(ただし、本件ほどの血腫の場合、脳圧下降剤の効果があるかは疑問視される)。しかし、被告A医師のそれまでの経験では搬送先が決まるまで長くても1時間程度であったことからすると、CT検査を実施すると、その実施中に搬送先が決まる可能性が高く、その場合には、CT検査の実施が早期の搬送の妨げとなることも考えられるところであって、CT検査を実施するよりも早期に搬送することを選択した被告A医師の判断は、十分な合理性を有しているということができる。そして、CT検査は極めて有用ではあるが、検査に出室させることによるリスクや検査中不測の事態をも考慮し施行時期を慎重に選択することが重要であるとされているところであって、まず受入れを依頼し、搬送先の病院に検査をゆだねた被告A医師の判断が不適切であったということはできない。・・・・・・・(中略)・・・・・・・原告らは、Xが8日午前零時14分ころに意識を消失してから数分経過した時点で頭部CT検査を実施していれば、午前1時までには脳出血の存在が明らかになっており、脳外科救急機関は数多くあることから、搬送先を確保することは困難ではなく、より早期に治療を受けることができたとして、転送を遅延させた過失を主張し、N意見も同旨を述べる。しかしながら、CT検査を実施し、脳出血であるとの診断ができたとしても、現に分娩進行中であるから、産婦人科医の緊急措置が必須であることに変わりはなく、子癇の疑いとして搬送先を探した場合に比べて受入施設の決定がより容易であったとはいいがたい。仮に、原告において、脳外科の医療機関を希望したとしても、現に分娩が進行中であり、脳外科医が分娩を放置してXの脳出血の治療のみに専念するとは考えがたく、脳外科と産婦人科の双方の対応が可能な医療機関に転送することがやはり必要であり、CT検査を実施し、脳出血であるとの診断がついていたとしても、早期に搬送先の病院が決まったということはできない。以上のとおり、被告A医師らにおいてCT検査を実施せず、転送が遅れた過失を認めることはできない。(大阪地判平成22年3月1日判タ1323号212頁)ポイント解説今回は、転医義務についてです。医療法1条の4第3項は、「医療提供施設において診療に従事する医師及び歯科医師は、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携に資するため、必要に応じ、医療を受ける者を他の医療提供施設に紹介し、その診療に必要な限度において医療を受ける者の診療又は調剤に関する情報を他の医療提供施設において診療又は調剤に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供し、及びその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。皆さんご存知の通り、病院には、その診療機能別に一次医療機関(風邪等軽症の患者の対応をする施設(診療所等))、二次医療機関(入院、手術が必要な患者の対応をする施設(病院))、三次医療機関(重症であり、高度の医療を必要とする患者の対応をする施設(特定機能病院等))に分けられており、各医療機関が相互に連携することでそれぞれの役割を十全に果たすことが求められています。転医義務にはこのような、患者の病態が重篤であること等からより高次の医療機関へ患者を紹介する場合((1) 医療連携のための転医義務)だけでなく、「保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき、又はその診療について疑義があるときは、他の保険医療機関へ転医させ、又は他の保険医の対診を求める等診療について適切な措置を講じなければならない。」(療担規則16条)というような場合((2)専門外診療時の転医義務)や、入院ベッド満床や医師が他の患者の診療にあたっている等物的・人的診療能力に欠く場合((3) 診療不能時の転医義務)等があります。転医義務についての判例としては、本判決以外にも「開業医の役割は、風邪などの比較的軽度の病気の治療に当たるとともに、患者に重大な病気の可能性がある場合には、高度な医療を施すことのできる診療機関に転医させることにある」(最判平成9年2月25日民集51巻2号502頁)や、「患者の上記一連の症状からうかがわれる急性脳症等を含む重大で緊急性のある病気に対しても適切に対処し得る、高度な医療機器による精密検査及び入院加療等が可能な医療機関へ患者を転送し、適切な治療を受けさせるべき義務があったものというべき」(最判平成15年11月11日民集57巻10号1466頁)としたもの等があります。本事例は、「妊婦たらい回し事件」としてマスコミにより大々的に報道され世間の耳目を集めました。地方の医療提供体制の不備という医療政策上の問題を現場の医師の怠慢のように報道した本件報道により産科医療は大きな被害を受けました。実際、本事例を契機に同病院では、分娩の扱いを中止しており、その結果、本判決がでた時点(平成22年)においてまで同県南部には分娩施設がないという状況が生まれました。本件訴訟においては、転医義務が争われましたが、「事件の判決」で引用したように転医義務違反が認められなかったばかりか、原告が主張する午前1時37分時点で除脳硬直が生じていたとすると、その時点ですでにXの救命は著しく困難となりますので、原告の主張をすべていれてもXは救命不能であったという何とも不可思議な訴訟でした。ただ、本判決の重要な意義として転医義務は、より高度な医療が必要な場合や専門家の診療が必要な場合等に「適切な転医先を探そうとする義務」であり、適時に転医先を探し始めた以上、結果として転医先が見つからなかった又は、見つかるのが遅れたとしても、直ちに転医義務違反になることはないということです。これを法的に表現すると転医義務は手段債務(転医先を探すこと)であり、結果債務(転医先を見つけること)ではないということになります。また、本判決の特徴として、通常、裁判所が書く判決には、個別具体的な紛争解決に必要かつ最小限を記載するにとどまるところ、本件事件を含めたマスメディアや司法による医療バッシングにより、現実に医療が崩壊したことを受け、付言として、下記の様にわが国の救急医療体制や1人医長制度について言及していることがあげられます。本事件及び福島大野病院事件を契機に裁判所がようやく医療に対して本質的理解をするよう努力し始めたという点で、本判決は歴史的な判決ということができます。■判決付言「現在、救急患者の増加にもかかわらず、救急医療を提供する体制は、病院の廃院、診療科の閉鎖、勤務医の不足や過重労働などにより極めて不十分な状況にあるともいわれている。医療機関側にあっては、救急医療は医療訴訟のリスクが高く、病院経営上の医療収益面からみてもメリットはない等の状況がこれに拍車をかけているようであり、救急医療は崩壊の危機にあると評されている。社会の最も基本的なセイフティネットである救急医療の整備・確保は、国や地方自治体の最も基本的な責務であると信じる。重症患者をいつまでも受入医療機関が決まらずに放置するのではなく、とにかくどこかの医療機関が引受けるような体制作りがぜひ必要である。救急医療や周産期医療の再生を強く期待したい」*   *   *「本件で忘れてはならない問題がもう一つある。いわゆる1人医長の問題である。被告病院には常勤の産科医は被告A医師のみであり、出産時の緊急事態には被告A医師のみが対処していた。1人医長の施設では連日当直を強いられるという過重労働が指摘されている。本件で、被告A医師は夜を徹して転送の手続を行い、救急車に同乗してD病院まで行った後、すぐに被告病院に戻り、午前中の診察にあたっている。平成20年に日本産科婦人科学会が実施した調査では、当直体制をとっている産婦人科の勤務医は月間平均で295時間在院している。こうした医療体制をそのままにすることは、勤務医の立場からはもちろんのこと、過労な状態になった医師が提供する医療を受けることになる患者の立場からしても許されないことである。近時、このような状況改善の目的もあって、医師数が増加されることになったが、新たな医学生が臨床現場で活躍するまでにはまだ相当な年月を要するところであり、それまでにも必要な措置を講じる必要があるものと思う。近年女性の結婚年齢や出産年齢が上がり、相対的に出産の危険性が高まることになる。より安心して出産できる社会が実現するような体制作りが求められている。愛妻を失った原告の悲しみはどこまでも深い。Xは我が子を抱くことも見ることもなくこの世を去った。子は生まれた時から母親がいない悲しみを背負っている。Xの死を無駄にしないためにも、産科等の救急医療体制が充実し、1人でも多くの人の命が助けられることを切に望む」*   *   *本件においては、原告、病院、医師にとって非常に残念な経緯を辿りましたが、これを契機に、司法と医療の相互理解の促進が一歩ずつでも進んでいくことが強く望まれます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)大阪地判平成22年3月1日判タ1323号212頁最判平成9年2月25日民集51巻2号502頁最判平成15年11月11日民集57巻10号1466頁

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直伝!Dr.守屋の素人独学漢方<上巻>

第1回「素人独学漢方の世界へようこそ!」第2回「まずは体験!漢方的診療」第3回「キーワード ①漢方脳 ②モデル」第4回「キーワード③方剤=症候群」第5回「漢方理論の概観」第6回「桂枝湯から始める4段階独学法」 第1回「素人独学漢方の世界へようこそ!」先ずは、漢方診療の基本となる4つの用語を解説。「生薬」と「方剤」の違いは何?「証」って何?そして、漢方医学の歴史を知っておきましょう。実は、私たちが接する日本の漢方は、起源となる中国の漢方とは似て非なる発展を遂げてきたのです!第2回「まずは体験!漢方的診療」漢方診療の入口として、第一回は基本となる用語の解説と漢方医学の歴史を紹介。第二回では“西洋医学”的診療と“漢方”的診療のアプローチを比較。一体、どこが違うのか?先ずは、独学に必要な基本知識を身につけましょう!第3回「キーワード ①漢方脳 ②モデル」漢方を独学しようとするとき、大きな壁として立ちはだかるのが、漢方特有の“曖昧”さ。西洋医学からかけ離れたこの世界に足を踏み入れる際、心にしっかりと留めておくべき3つのキーワードがあります。1つ目のキーワードは「漢方脳」。“分析的”思考の対極にある“感覚的”思考が、漢方の理解には欠かせません。そして、2つ目のキーワードは「モデル」。抽象化/簡略化をベースとするモデル診断&治療を身につけて、漢方独学の壁を乗り越えましょう!第4回「キーワード ③方剤=症候群」<3つのキーワード>と<4段階独学法>でマスターする守屋式漢方。今回は、3つ目のキーワード「方剤=症候群」について解説します。漢方を理解する上で欠かせない概念的なキーワード「漢方脳」と「モデル」に対して、「方剤=症候群」は実践的なコツをつかむためのキーワードです。例えば、桂枝湯が適応となる風邪の症状を“桂枝湯症候群”と名付けることで、桂枝湯にまつわる漢方理論を個別に学んでいきます。つまり、特定の“方剤”が有効な症状の集まりを“症候群”という枠でくくって、とらえどころのない漢方を少しずつマスターしていくのです。第5回「漢方理論の概観」“漢方理論”の把握に欠かせない6つのキーワードを網羅!①八綱(はっこう)→患者さんの症状を<寒・熱><表・裏>など、二項分類で把握。②六病位(ろくびょうい)→疾患の進行度を6段階に分類。③気血水(きけつすい)→体内の循環バランスが崩れると疾病状態に。④五臓(ごぞう)→人体の機能を、5つの<臓>=<肝心脾肺腎>に割り当てて解釈。⑤四診(ししん)→漢方流の問診・診察手技。⑥生薬・方剤(しょうやく・ほうざい)→漢方流の薬理学。これらの理論を念頭に、いよいよ実践に臨みましょう!第6回「桂枝湯から始める4段階独学法」“桂枝湯症候群”をサンプルとして、漢方流アプローチを具体的に紐解いていきましょう。患者さんに悪寒はありますか?関節痛は?咳は?熱は?舌苔は?・・・それらの有無で決まる分類の違いは何でしょうか?悪寒の有無は<八綱>の寒熱、関節痛や咳は<八綱>の表裏・・・等々、桂枝湯がもっとも効果的な症例を一つマスターするだけで、漢方理論の大枠がスラスラと頭に入ってきます!

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ワクワク ! 臨床英会話

1.受付対応2.初めての問診 3.家族の病気 4.生活習慣  5.出産歴 6.女性特有の問題 7.アレルギー 8.薬 9.予防接種 10.風邪  11.頭痛12.呼吸困難13.腹痛  14.糖尿病 15.便秘 16.腰痛  17.関節痛 18.骨折 もしも英語しか話せない患者さんが来院したらドキドキしませんか?この教材は、ドキドキを“ワクワク”に変えてもらおうと企画されました。特に外来で使える英語を重視して、ネイティブが自然に理解出来る表現を多数紹介しています。そして、プログラムの一番の特長はパペットたちと一緒に「練習」するコーナー。楽しみながら、何度も練習できるので、いつの間にか自然な表現が身についてしまいます。もちろん、伊藤彰洋先生の「日本人が間違えやすい医学英語」のワンポイント解説も見逃せません。すぐに使える臨床英会話を楽しくマスターしましょう !収録タイトル1. 受付対応 Reception ~笑顔が大切、受付対応~2. 初めての問診 History Taking ~初めての問診~3. 家族の病気 Family History ~ご家族の病気も教えてください~4. 生活習慣 Social History ~もっと知りたいあなたの生活習慣~5. 出産歴 OB History ~出産経験はありますか?~6. 女性特有の問題 GYN History ~女性の悩み、知っていますか?~7. アレルギー Allergies ~アレルギーはありますか?~8. 薬 Medication ~どんなお薬を使ってますか?~9. 予防接種 Immunization ~予防接種は受けましたか?~10 .風邪 Cold ~よくある風邪だと思うんですが・・・~11. 頭痛 Headache ~頭痛って、意外と心配です~12. 呼吸困難 Difficulty Breathing ~息が苦しくて、苦しくて~13. 腹痛 Abdominal Pain ~お腹が痛いんです~14. 糖尿病 Diabetes Mellitus ~糖尿病が気になるこの頃~15. 便秘 Constipation ~便秘の予防にイイことは?~16. 腰痛 Back Pain ~腰が痛くて、痛くて~17. 関節痛 Joint Pain ~関節痛で仕事もできず…~18. 骨折 Fracture ~骨が折れた!~

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マッシー池田の神経内科快刀乱麻!

第1回「どうしてキライ?神経内科」第2回「頭痛の診断にCTは役に立たない?」第3回「発熱・頭痛、それってホントに風邪?」 第1回「どうしてキライ?神経内科」誰も調べたことはないけれど、プライマリケア医に最も「苦手」で「きらい」な科を尋ねたら、常に神経内科はそのトップを争うのではないでしょうか。学生時代に点数が取れなかったいやな思い出を持つ方もたくさんいらっしゃることでしょう。第1回はまず、どうして神経内科が医師の間で「苦手」と思われているのか、その理由と背景を分析、そしてそれらの多くは誤解であり、克服できることを証明します。第2回「頭痛の診断にCTは役に立たない?」「このタイトルを見て『そんなことあたり前じゃないか』と思う方は、見ていただかなくて結構。」と池田先生。確かに私たちは、日々漫然とCTを撮ってしまっているのが現状かもしれません。しかし、“頭痛ですか?ではCTでも撮りましょう”という安易な考え方が、日本に必要以上に多くのCTをもたらし、医療費を圧迫する大きな原因の一つになっているのだと池田先生は指摘します。それでは頭痛、例えば、くも膜下出血を疑うような頭痛の患者さんが来院したとき、プライマリ・ケアとしてはどう対処すればいいのでしょうか? 頭痛を引き起こす疾患は無数にあり、一つ一つを鑑別することは難しいかも知れません。しかし、少なくとも見落としてはいけない疾患、命に関わるような病気には機敏に反応できる技術を持っておきたいもの。そんな疑問をマッシー池田先生が一刀両断します!第3回「発熱・頭痛、それってホントに風邪?」「熱が出て頭が痛いんです」そんな患者さん、日々何人もの患者さんが来院されることでしょう。そんな時、「風邪ですね。お薬を出しておきましょう」と簡単にすませていませんか? もちろん多くの場合、風邪であることがほとんどなのですが、似たような症状でも実は、髄膜炎やくも膜下出血、慢性硬膜下血腫、脳出血、側頭動脈炎などの急を要する疾患であったり、あるいは緑内障ということも、無きにしもあらずなのです。かといってこれらの病気の症候を丁寧にとったり、ましてや神経学的所見をひとつ一つとるなんて「非現実的!」と思われることでしょう。それでも、やはり髄膜炎くらいは最低限見逃さないようにしなくてはなりません。 今回も池田先生がそんな疑問にお答えします。すべての疾患を完璧にルールアウトというわけにはいきませんが、忙しい外来診療の中でどうやって診察を絞り込み、短時間でどう実践するか、数々のデータに基づき現実的な診察の流れを伝授します。

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Dr.岩田の感染症アップグレード―外来シリーズ―

第1回「風邪ですね…ですませない、気道感染マネジメント(1)」第2回「風邪ですね…ですませない、気道感染マネジメント(2)」第3回「スッキリ解決!外来の尿路感染」第4回「その下痢に抗菌薬使いますか?」 第1回「風邪ですね…ですませない、気道感染マネジメント(1)」日々迷うことの多い外来診療での感染症マネジメント能力をぜひアップグレードしてください。外来で一番目にする感染症といえば、やはり「風邪」。カルテには「上気道炎」などと書いていることが多いでしょう。しかし、その風邪に対して何となく抗菌薬を出したり出さなかったりと、あやふやな診療をしていませんか? 「「風邪」と一括りにしてはいけません、きちんと分類する必要があります」と岩田先生。症状に合わせて気道感染を7つ(コモンコールド、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎、インフルエンザ、気管支炎、肺炎)に分類。この分類をすることで抗菌薬を使うのか使わないのか、自ずとわかってきます。今回は、コモンコールド、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎について解説します。第2回「風邪ですね…ですませない、気道感染マネジメント(2)」風邪には原則的に抗菌薬の必要はありません。しかしそうは言っても本当に大丈夫なのかよくわからず、その結果漠然と抗菌薬を出したり出さなかったりと、あやふやな診療をしてしまっている方は多いです。今回も岩田式気道感染の分類法を伝授。第1回で解説した4症状に続き、残りのインフルエンザ、気管支炎、肺炎を詳しく解説します。いろいろと議論されているタミフルの使い方にも一石を投じる、岩田式の明解な外来診療術をご堪能ください !第3回「スッキリ解決!外来の尿路感染」尿路感染は外来ではとても頭を悩ませる症状です。泌尿器科や婦人科に紹介するのも一考ですが、実は、尿路感染の治療自体はそれほど難しくはありません。ただ、男性と女性では全くマネジメントが異なるため、そこをよく理解しておかなければなりません。そして病気の治療だけでなく、その周辺にある原因や生活習慣を指導していくことが重要で、ここにプライマリ・ケアの意味があります。また外来で役立つ患者さんへの接し方なども合わせてお伝えします。第4回「その下痢に抗菌薬使いますか?」下痢は、外来でよく診る症状ですが、下痢診断の難しさはその原因の多さにあります。いわゆる食中毒といっても原因微生物は多種多様、慢性の下痢にも多くの疾患が考えられます。忙しい外来では、どう考えればいいのでしょうか?「原因を突き詰めるより、臨床に則して考えましょう」と岩田先生。その下痢に便培養は必要か、抗菌薬は必要か、止痢薬は必要か。この3点を判断することが重要です。そして、その決め手となるのはやはり「病歴」です。この病歴の取り方から、患者さんのケアまで詳しく解説します。

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Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!

第4回「見えない檻」第5回「美食の報酬」第6回「逆転の構図」 第4回「見えない檻」「檻」とは猛獣などが逃げ出さないように設けるもの。つまり空間を隔てるために用意されるものです。我々人間の間でも「世界を隔てる」という意味でいつも檻をつくられ、内と外を区別しようとします。はっきりと意識して檻に入ったり、檻の外へ出たり、そんな時もあります。しかし時には無意識のうちに「見えない檻」に囲まれることもあるかもしれません・・・。第5回「美食の報酬」美食を嫌う人はまずいないでしょう。しかしその「報酬」は…?「美食」を「薬」に置き換えても同じことが言えます。「楽になりたいから薬を」→「でも副作用は嫌だ」→「漢方なら安心」→「だから漢方治療で」という図式は、漢方薬の人気を支えている一つの要素です。しかし漢方薬も薬ですから、その「結果」について考えておかなければいけません。第6回「逆転の構図」東洋医学の重要な考え方に「寒熱」があります。もちろん寒と熱は反対側に位置するもの。しかし、だからといって無関係であるとは言い切れません。女性に多くみられる「冷え症」、これは実際に冷える部分(足など)に触れてみると確かに冷たくなっています。したがって、診断は「寒」。一方で、風邪をひいた時の診断として知られる「表寒」の時には、多くの場合、体表は冷えてはおらず、反って発熱。つまり体表は温かくなっているのに診断は「寒」。これはいったいどういうことなのでしょうか?

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ワクワク ! 臨床英会話

19.胸痛 20.高血圧 21.高脂血症22.花粉症 23.喘息  24.湿疹 25.意識障害 26.めまい 27.不眠  28.不正出血 29.妊娠30.性感染症 31.バイタルサイン32.採血 33.尿検査  34.禁煙外来35.退院指示書 36.処方箋 外来ですぐに使える英語表現が満載のシリーズ第2弾。胸が痛いとき、胸を押さえて訴える人もいれば、胃のあたりを押さえながら異常を訴える人もいる。めまいには目が回る場合とふらっとする場合、風邪の咳と喘息様の咳など、それぞれ違う英語の表現方法を知っていれば余裕を持って対応できるようになります。パペットたちと一緒に練習するコーナーも更にパワーアップ!楽しみながら自然な表現が身につきます。婦人科に限らず知っておきたい女性患者向けの表現や「日本人が間違えやすい医学英語」のワンポイントも多数紹介します。収録タイトル19. 胸痛 Chest Pain ~胸が痛くて息切れが…~20. 高血圧 Hypertension ~ストレスだらけの毎日で…~21. 高脂血症 Hyperlipidemia ~善玉、悪玉コレステロールって?~22. 花粉症 Hay Fever ~ツライ季節がやって来た~23. 喘息 Asthma ~咳が止まりません~24. 湿疹 Eczema ~痒い、かゆい、カユイ!~25. 意識障害 Confusion ~あなたのお名前は?~26. めまい Dizziness ~そのめまい、どんなめまい?~27. 不眠 Insomnia ~羊が?匹~28. 不正出血 Vaginal Bleeding ~検査、受けてますか?~29. 妊娠 Pregnancy-first prenatal visit ~コウノトリがやって来た!~30. 性感染症 STI ~つけ忘れのないように~31. バイタルサイン Vital Signs ~少し熱がありますね~32. 採血 Blood Test ~じっとしていてくださいね~33. 尿検査 Urine Test ~紙コップの1/3まで…~34. 禁煙外来 Smoking Cessation ~一日に何箱吸いますか?~35. 退院指示書 Discharge Instructions ~おだいじに!~36. 処方箋 Prescription ~その薬、どんな薬?~

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Dr.林の笑劇的救急問答4

第1回「一皮むけるECGのTips」第2回「熱性痙攣はコワイ?」 第1回「一皮むけるECGのTips」今回のテーマは心電図について。とはいっても教科書的な心電図の読解ではなく臨床で役に立つ、知っているとちょっと自慢になるようなTipsとピットフォールについてお届けします。 53歳男性 「胃が重い」と救急外来を受診。心電図で心筋梗塞を疑い研修医はMONAを実施したが突然患者の血圧が低下 ! さぁどうする !? 40歳男性 重度うつ病で入院中。自殺企図が強いためトイレと洗面以外は抑制されていたが前日から2度にわたり失神を起こしたため救急外来を受診。主治医は肺炎を疑い胸部X線を実施したが影はない。第2回「熱性痙攣はコワイ?」小児の救急車要請の頻度が最も高い疾患として熱性痙攣があります。医師として誰もがきちんと診ることができなければならない疾患ですが、実際に痙攣を起こしている患児をみると、どうしても慌ててしまう事も多いでしょう。その為あまりにも慎重になり過ぎたり、逆に何度も経験すると「たかが熱性痙攣」と甘くみてしまい、思わぬ落とし穴にハマることにもなりかねません。 そこで、腰椎穿刺を行うべき症例や、そこまで必要のない症例の見分け方のポイントを学びます。今回の症例ドラマもツブ揃いの名演技、どうぞお見逃しなく! 1歳3ヶ月男児 自宅で痙攣を起こし救急車搬送された。痙攣は初発であるとの事。研修医は髄膜炎の鑑別診断のため腰椎穿刺を実施しようとするが母親に拒否され…。 8歳男児 数日前から風邪をひいていたが夜中に痙攣を起こしたため救急車搬送された。熱性痙攣の既往ありという母親の言葉を研修医は鵜呑みにしてしまうが指導医であるDr.林の診断は!?

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Dr.林の笑劇的救急問答6

第1回 「目指せ ! 腰痛ソムリエ」第2回 「CT or Not CT,それが問題だ…軽症頭部外傷」 第1回 「目指せ ! 腰痛ソムリエ」腰痛の中でも特に外来でよく診る急性腰痛症に焦点を当てます。急性腰痛症は、なかなか良いエビデンスがない上に古い迷信が信じられていたりと、治療は難しいものです。そこで腰痛を3つのタイプに分けて対応する事を提案。その3つのタイプとは何か? 迫真の症例ドラマと濃密な講義で構成された内容は救急医ならずとも見逃せません! 77歳男性 早朝4時に徒歩で救急外来に来院。患者は5日前から風邪をひいているにも関わらず漬物石を持ち上げたため腰痛が発症したと説明。研修医はそれを鵜呑みにしてしまうがDr.林は納得しない。さて本当の病名は!? 35歳男性 家業である酒屋の仕事中に急性腰痛症を発症し救急車来院。動けなくなるほどの症状は2度目。X線検査を実施しようとする研修医をDr.林は「必要ない」と止める…第2回 「CT or Not CT,それが問題だ…軽症頭部外傷」頭部を打撲して来院する患者は意外と多いもの。緊急手術が必要なほど重症ではない、でも万全を期すためにCT を撮るべきか、あるいは必要ないのかと悩む事はありませんか? 特に小児の場合は親御さんの心配解消のため、そして医師自身の「安心」のために、必要も無いのにCT を撮るケースが多く見られます。ガイドラインでも様々な解釈があることから結局ほぼ全例にCT 撮影を行っている…という人もいるのではないでしょうか。そのCT が本当に必要かどうか、改めて整理して考えてみましょう。 1歳6ヶ月男児 ショッピングセンターのカートから転落して両親とともに救急車来院した。頭から落ちて「たんこぶ」が出来ている。母親は頭部CT撮影による診断を強く要望するが…。 16歳男性 ラグビーのクラブ活動中に他の選手とぶつかり脳震盪を起こした。数分の意識消失、受傷機転の記憶の欠如、健忘が見られる。

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Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ

第1話「NSAIDsで胃薬を欲しがる患者さん」第2話「風邪で抗菌薬を欲しがる患者さん」特別篇「101人目の患者 〜EBMの常識のウソ〜」 第1話「NSAIDsで胃薬を欲しがる患者さん」「痛み止めのNSAIDs薬を常用している患者さんが、胃痛を訴えて来院する」というのは日常診療でよくあること。それでは・・・と惰性で粘膜保護剤を出す前に、「ちょっと待った!その処方に根拠はありますか?」と名郷先生。こういう場合、どんな薬を出すのが最も適切であると言えるのでしょうか? 前編では、主にコンクランライブラリー記載の臨床試験データを勉強し、個々の患者に最適な処方とは何かを考え、後編では、クリニカルエビデンスをもとに、臨床現場でEBMを具体的に使っていく方法を学んでいきます。「薬剤の副作用にまた別の薬剤をもって対処する」ことを求められた時、医師は一体何を考え、どのように行動すべきなのか?診療に対する考えが、更に一歩深まるはずです。第2話「風邪で抗菌薬を欲しがる患者さん」一般に感冒はウィルスに感染することによりおこり、抗菌薬は無効であると知られています。その一方で、風邪に罹った患者さんが「抗生物質」を欲しがることは非常に多く、かなりの医師が(後ろめたい気持ちを抱きつつも)実際に抗菌薬を処方しています。そこには、「もし処方せずに患者が肺炎に罹ったら大変」というリスク回避の論理が強く働いていることでしょう。本番組では、このテーマについて掘り下げ、「風邪に抗菌薬は無効」というのは本当に正しいのか?もし多少なりとも効果があるのであれば、それはどの程度のものなのか? 膿性鼻汁、水溶性鼻汁ではどうなのか?Dr.名郷が驚きのデータとともに解説していきます。特別篇「101人目の患者 〜EBMの常識のウソ〜」多くの人がEBMについて抱くイメージとは、“大規模臨床試験に基づく論文など外部の客観的情報から臨床判断を行う”というものでしょう。しかし、元来EBMのプロセスでは、先に述べた外部情報だけでなく、むしろ個々の患者にじかに接することによって得られた情報が重要で、両者を統合して臨床判断に至ることこそが求められていたはずです。この「特別篇」では、ゲストにマッシー池田先生をお招きし、「狂牛病」の話題を枕に「EBMそのもの」の常識のウソに迫ります。「100人の患者を相手にした場合、101人目の患者がいることに気がつくんですよ」と、なぞの言葉をつぶやく名郷先生。硬い脳ミソを打ち砕き、目からウロコのお話の数々!御出演の先生方と一緒に(グラス片手に)どうぞお楽しみください。

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聖路加GENERAL 【一般診療に役立つ腫瘍内科学】

第1回「がんの一般情報について」第2回「Oncologic emergenciesとがん性疼痛管理について」 第1回「がんの一般情報について」「日本人の約3人に1人はがんで死亡する」「日本人の約2人に1人はがんに罹る」という言葉からは、「がんの恐ろしさ」だけではなく、「がんにかかっても一定数は治っている」ことが読み取れます。がんを治すためには、早期発見が原則です。しかしながら、がんは初期症状が出ないのが特徴。では、一体どこからがんを疑えばよいのでしょうか。脳腫瘍の場合は、「頭痛」「嘔吐」「うっ血乳頭」が三徴として知られていますが、実際にはそのような明確な徴候よりもむしろ、「だるい」「調子が悪い」「食欲がない」などと訴えてくることがほとんどです。つまり、どんな患者さんに対しても、がんの可能性を意識することが第一歩となるのです。がんの早期発見のためのポイントをはじめ、がん治療中患者が風邪などで来院した場合の注意点や、performancestatus に基づくがんの治療方針など、プライマリ・ケア医が知っておくべき、がん情報のエッセンスを届けます。第2回「Oncologic emergenciesとがん性疼痛管理について」がんは慢性疾患のひとつと捉えられますが、救急処置が必要な「Oncologicemergencies」という病態があります。たとえばSAIDH は、肺がんなど、がん自体に起因するほかプラチナ系のシスプラチンなどの治療薬が原因となることもあります。また、がんの既往がある患者に脊髄圧迫による疼痛や高カルシウム血症などが発症した場合は、すぐに病院に送る必要のある症状かどうかの見極めが重要です。まずOncologic emergenciesの具体的な対処法について、そして後半は、がんの疼痛管理についてお伝えします。薬のおかげで痛みが減って、“我慢できるようになった”ではダメ。痛み“0”を目指すためには、積極的な麻薬の使用が必要です。現場ではなかなか使われない麻薬について、その使い方と注意点を解説します。

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聖路加GENERAL 【内分泌疾患】

第4回「糖尿病の悪化だと思ったら・・・」第5回「ただ風邪といっても」第6回「2次性高血圧を見逃さない ! 」 第4回「糖尿病の悪化だと思ったら・・・」人間ドックにおいて、糖尿病の疑いということで精査を勧められていた68歳の男性。肥満も家族歴もないことから受診していませんでしたが、急な体重減少をきっかけに初めて検査を受けたところ、A1Cが13.7%と、急激に上昇していることが判明。高血糖の要因は、I型II型糖尿病以外にも、膵炎、膵がん、ヘモクロマトーシス、Cushing症候群、先端肥大症、PCOSなどさまざまなものがあります。本症例の患者さんは、急な体重減少もあることから膵臓のCTを撮影したところ、膵がんが発見されました。血糖の悪化が膵がん発見のきっかけになり、膵がんが糖尿病治療のきっかけになったという例を通して、糖尿病の裏に隠れている内分泌系の異常をどのようにして見抜くか、そしてその対応について解説します。第5回「ただ風邪といっても」もともと健康な21歳の女子大生。発熱、咽頭痛など、感染症の症状を呈したため近医で受診しました。数種類の抗菌薬を処方されましたが改善せず、ついには意識低下で救急コール。糖尿病の既往のある78歳の男性。家族が訪ねて行ったら、すでに意識がなく倒れていた。いずれも意識障害が出る危険な状態ですが、その裏には糖尿病がありました。意識障害の鑑別AIUEO tipsから始まって、DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)、遷延性の低血糖による意識障害など、難度の高い診断について解説します。第6回「2次性高血圧を見逃さない ! 」最終回は、高血圧の裏に隠れた内分泌疾患を紹介します。10年間高血圧があるも、降圧薬が効かない60歳女性。特に目立った所見はないものの、低Kから原発性アルドステロン症をつきとめました。内分泌性高血圧もさまざまなものがありますが、まずは患者をよく観察することがポイントです。たとえば、「クッシング症候群」ではにきび、肥満、多毛、「アクロメガリー」では大きな鼻顎手足、「腎血管性高血圧」では腎周囲の血管雑音など。その後、症状によって、所定の検査をおこなうことで診断します。ともすれば、見逃して放置されてしまう可能性もある内分泌性高血圧を、具体的な症例を呈示して解説します。

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聖路加GENERAL 【Dr.大曲の感染症内科】

第1回「咽頭炎」第2回「尿路感染症」 第1回「咽頭炎」「のどが痛い」と訴えてくる患者は多数いますが、その原因はさまざま。最も多いのが、急性上気道炎や伝染性単核球症などの感染症。その他に、扁桃周囲膿瘍や急性咽頭蓋炎など、頻度は低いものの緊急性の高いもの、あるいはアレルギー性鼻炎、胃・食道逆流など感染症以外の要因によるものもあります。今回は、咽頭炎をテーマに、緊急性の高い症例の鑑別法をはじめ、風邪と溶連菌の見分け方、Modified Centor Scoreによる溶連菌の判定、溶連菌感染症と伝染性単核球症の見分け方など診断のポイント、治療法について解説します。第2回「尿路感染症」65歳の女性は、発熱が5日経っても下がらず受診するが、それ以外には特に症状はありません。このように、発熱のみで他に症状がほとんどない感染症には、尿路感染、腹腔内感染、稀に循環器系の感染性心内膜炎などがあります。逆に、他に症状がない時にこそ、急性腎盂腎炎など尿路感染症を疑うことがポイント。高齢になるほど増加するのはなぜか?クランベリージュースが予防に効果がある?エストロゲンクリームは?主に急性腎盂腎炎について、その症状の特徴と鑑別法、画像診断、治療法、またリスクのある患者として妊婦が罹患した場合の診断と治療についてもお伝えします。

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