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家庭におけるオンラインでの血圧管理は血圧コントロール率を改善する(解説:石川讓治氏)-1358

 家庭血圧は診察室血圧よりも優れた心血管イベント発症の予測因子であることが報告されており、わが国においては、高血圧患者の血圧評価において家庭血圧測定が広く行われている。家庭の安定した環境で毎日繰り返し測定された血圧値は、診察時の不安定な血圧値よりも正確な血圧であることがその理由の1つであると考えられている。 その一方で、家庭血圧を指標とした血圧管理が、診察室血圧を指標とした血圧管理よりも心血管イベントや高血圧性臓器障害の抑制効果が優れていたことを示した研究は今のところない。家庭血圧と診察室血圧を指標とした血圧管理を比較し、24時間自由行動下血圧モニタリングにおける到達血圧レベルを評価した研究においては、その差はそれぞれの目標血圧レベルの差(家庭収縮期血圧135mmHg vs.診察室収縮期血圧140mmHg:その差5mmHg)に依存していた1)。 家庭血圧測定を行いながら降圧治療する利点は、従来の診察機会ごとの血圧管理よりも、患者の服薬アドヒアランスの改善、食事やライフスタイルに関する行動変容、血圧上昇時の受診の動機付け、薬剤師や患者自身による降圧薬投与量の調節(欧米において)などを行うことで、血圧コントロール率を改善することであると思われる。これらの効果が加わった場合に、家庭血圧測定を行った降圧治療が、従来の診察室血圧による血圧管理より優れているといえると思われる2)。 MacManus RJら(BMJ. 2021;372:m4858.)3)は、家庭血圧をオンラインで管理を行った群と、通常の診察室血圧で管理した群を比較し、家庭血圧をオンラインで管理した群で収縮期血圧が3.4mmHg低く、費用対効果も優れていたことを報告した。家庭血圧のオンライン管理群では、患者が入力した家庭血圧値を評価しながら、降圧薬の投与量の自己調節の指導や、ライフスタイルの改善の指導(食事、身体活動、減量、塩分摂取、アルコール摂取)を行っており、これらの介入は血圧コントロール率を改善するのに有用な方法であったと思われる。本研究における介入方法は、医師が家庭血圧をチェックしフィードバックし続ける手間と労力が大変であったことが容易に想像できる。12か月間の追跡期間で評価されているが、日常臨床ではこの血圧管理を生涯続けなければならない。オンラインでの家庭血圧管理の有用性はとくに67歳未満の非高齢者、併存疾患のない患者に認められていた。インターネットに不慣れであることが予想される67歳以上の高齢者においては、収縮期血圧の到達度は両群に差が認められなかった。 多忙な日常診療における医師の負担の増大と、心血管リスクの高い高齢者において有効性が低い(継続率も低い)ことが、家庭血圧のオンライン管理の現在の課題であると思われる。将来的にウエアラブル血圧計を用いて、AIなどで自動的に患者指導し、在宅で薬剤師や看護師が降圧薬の投与量を調節したりできる日が来れば、日本でも広く普及するのかもしれない。また、現代のスマートホンやインターネットを使いこなしている非高齢者の世代が高齢者になる時代には、超高齢者でも難なく家庭血圧のオンライン管理ができる日が来るのであろうか?血圧管理方法も時代とともに変遷していくようである。

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降圧薬の有害事象メタ解析、急性腎障害や失神が関連か/BMJ

 降圧薬による高血圧治療は、転倒との関連はないものの、軽度の有害事象として高カリウム血症および低血圧と関連し、重度の有害事象として急性腎障害および失神との関連が認められることが、英国・オックスフォード大学のAli Albasri氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年2月10日号に掲載された。降圧治療の有効性を評価した無作為化対照比較試験のメタ解析は多いが、潜在的な有害性を検討したメタ解析はほとんどない。また、既存のメタ解析は、降圧治療とすべての有害事象の関連に重点を置き、特定の有害事象との関連は明らかにされていないという。降圧治療と特定の有害事象の関連をメタ解析で評価 研究グループは、降圧治療と特定の有害事象との関連を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を実施した(英国Wellcome Trustなどの助成による)。 成人(年齢18歳以上)で、降圧薬とプラセボまたは無投与、降圧薬数が多い群と少ない群、降圧目標値の高値と低値を比較した無作為化対照比較試験を対象とした。小規模な初期段階の試験を回避するために、試験はフォローアップ期間が650人年以上であることが求められた。 2020年4月14日の時点で、4つの学術データベース(Embase、Medline、CENTRAL、Science Citation Index)に登録された文献を検索した。 主要アウトカムは、試験のフォローアップ期間中の転倒とした。副次アウトカムは、急性腎障害、骨折、痛風、高カリウム血症、低カリウム血症、低血圧、失神であった。また、死亡や主要心血管イベントと関連する追加アウトカムのデータを抽出した。 バイアスのリスクはCochrane risk of bias toolで評価した。変量効果メタ解析で、試験の異質性(τ2)を考慮してすべての試験の率比(RR)、オッズ比(OR)、ハザード比(HR)を統合した。死亡、心血管死、脳卒中を抑制、心筋梗塞との関連は不明確 58件の無作為化対照比較試験(28万638例、フォローアップ期間中央値:3年[IQR:2~4])に関する63本の論文が解析に含まれた。多くの試験(40件[69%])はバイアスのリスクが低かった。 転倒のデータを報告したのは7件の試験(2万9,481例、1,790イベント)で、降圧治療との関連を示すエビデンスは認められず(要約RR:1.05、95%信頼区間[CI]:0.89~1.24)、この関連に関する試験間の異質性はほとんどなかった(τ2=0.009、I2=31.5%、p=0.372)。 一方、降圧薬は、急性腎障害(要約RR:1.18、95%CI:1.01~1.39、τ2=0.037、15試験)、高カリウム血症(1.89、1.56~2.30、τ2=0.122、26試験)、低血圧(1.97、1.67~2.32、τ2=0.132、35試験)、失神(1.28、1.03~1.59、τ2=0.050、16試験)との関連が認められた。 降圧治療と骨折(要約RR:0.93、95%CI:0.58~1.48、τ2=0.062、I2=53.8%、5試験)、および痛風(1.54、0.63~3.75、τ2=1.612、I2=94.3%、12試験)との関連のエビデンスは明確ではなく、CIの幅の広さは試験の異質性が大きいことをある程度反映すると考えられた。 レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系拮抗薬に限定すると、急性腎障害と高カリウム血症のイベントを評価した試験間の異質性は低くなった。また、個々の試験で投与中止の原因となった有害事象に焦点を当てた感度分析では、結果の頑健性が示された。 さらに、降圧治療は、全死因死亡(HR:0.93、95%CI:0.88~0.98、τ2=0.008、I2=50.4%、32試験)、心血管死(0.92、0.86~0.99、τ2=0.011、I2=54.6%、21試験)、脳卒中(0.84、0.76~0.93、τ2=0.013、I2=44.8%、17試験)のリスク低減と関連したが、心筋梗塞(0.94、0.85~1.03、τ2=0.013、I2=40.7%、19試験)との関連は明確ではなかった。 著者は、「これらのデータは、降圧治療の開始や継続について医師と患者が協働意思決定を行う際に、とくに有害事象の既往歴や腎機能低下により有害性のリスクが高い患者にとって、有益な情報となるだろう」としている。

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高血圧DNAワクチンの第I/IIa相試験で抗体産生確認/アンジェス

 アンジェスが開発している高血圧DNAワクチンの第I/IIa相臨床試験(オーストラリアで実施中)において、投与後の経過観察期間を経た初期の試験結果から、重篤な有害事象はなく安全性に問題がないこと、また、アンジオテンシンIIに対する抗体産生を認められたことを、2月4日、アンジェスが発表した。今後、安全性、免疫原性および有効性を評価する試験を継続的に行っていく予定。 高血圧DNAワクチンは、アンジオテンシンIIに対する抗体を体内で作り出し、その働きを抑えることで高血圧を治療するために開発が進められている。現在、多く使用されている経口降圧薬は毎日忘れずに服用する必要があるが、注射剤であるDNAワクチンは一度の投与で長期間にわたって効果が持続することが期待されている。とくに経口剤の服用が難しい高齢者を中心に利便性が向上する。 今回の第I/IIa相試験は、安全性、免疫原性および有効性の評価を目的としたプラセボ対照二重盲検比較試験で、対象は高用量のアンジオテンシンII受容体拮抗薬による血圧のコントロールが必要な高血圧患者24例(高血圧ワクチン18例、プラセボ6例)。観察期間は12ヵ月である。

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GERDを増悪させる薬剤を徹底見直しして負のスパイラルから脱出【うまくいく!処方提案プラクティス】第32回

 今回は、胃食道逆流症(GERD)を悪化させる薬剤を中止することで症状を改善し、ポリファーマシーを解消した事例を紹介します。GERDは胸焼けや嚥下障害などの原因となるほか、嚥下性肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性咳嗽などの呼吸器疾患を発症・増悪させることもあるため、症状や発症時期を聴取して薬剤を整理することが重要です。患者情報70歳、女性(外来患者)基礎疾患発作性心房細動、慢性心不全、高血圧症、逆流性食道炎診察間隔循環器内科クリニックで月1回処方内容<循環器内科クリニック(かかりつけ医)>1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠2.5mg 1錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン徐放錠40mg 1錠 分1 朝食後(1ヵ月前から増量)5.エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後<内科クリニック>1.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前(2週間前に処方)2.テオフィリン徐放錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前(2週間前に処方)本症例のポイントこの患者さんは、なかなか胸焼けが治らないことを訴えて、半年前にGERDの診断を受けました。プロトンポンプ阻害薬による治療によって症状は改善したものの、最近はまた症状がぶり返しているとお悩みでした。患者さんの生活状況を聴取したところ、喫煙や飲酒はしておらず、高脂肪食なども5年前の心房細動の診断を機に気を付けて生活していました。心不全を併発していますが、体重は47.5kg程度の非肥満で増減もなく落ち着いていて、とくにGERD増悪の原因となる生活習慣や体型の問題は見当たりませんでした。さらに確認を進めると、最近の変化として、血圧が高めで推移したため1ヵ月前にニフェジピン徐放錠が20mgから40mgに増量になっていました。また、2週間前に咳症状のため、かかりつけの循環器内科クリニックとは別の内科クリニックを受診し、喘息様発作でモンテルカストとテオフィリンを処方されていました。GERDにおける食道内への胃酸の逆流は、嚥下運動と無関係に起こる一過性の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)弛緩や腹腔内圧上昇、低LES圧による食道防御機構の破綻などにより発生します1)。また、GERDを増悪させる要因として、Ca拮抗薬やテオフィリン、ニトロ化合物、抗コリン薬などのLES弛緩作用を有する薬剤、NSAIDsやビスホスホネート製剤、テトラサイクリン系抗菌薬、塩化カリウムなどの直接的に食道粘膜を障害する薬剤があります1,2)。Ca拮抗薬は平滑筋に直接作用してCaイオンの流れを抑制することで、LES圧を低下させるとも考えられています3)。上記のことより、1ヵ月前に増量したCa拮抗薬のニフェジピン徐放錠がGERD症状の再燃に影響しているのではないかと考えました。その食道への刺激によって乾性咳嗽が生じて他院を受診することになり、そこで処方されたテオフィリンによってさらにLESが弛緩してGERD症状が増悪するという負のスパイラルに陥っている可能性も考えました。かかりつけ医では他院で処方された薬剤の内容を把握している様子がなかったため、状況を整理して処方提案することにしました。処方提案と経過循環器内科クリニックの医師と面談し、別の内科クリニックから乾性咳嗽を主体とした症状のためモンテルカストとテオフィリンが処方されていることと、患者さんの胸焼けや咳嗽がニフェジピン増量に伴うLES弛緩により出現している可能性を伝えしました。医師より、ニフェジピン増量がきっかけとなってGERD症状から乾性咳嗽に進展した可能性が高いので、ニフェジピンを別の降圧薬に変更しようと回答をいただきました。そこで、ACE阻害薬は空咳の副作用の懸念があったため、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を提案し、医師よりニフェジピンをオルメサルタン40mgに変更する指示が出ました。また、現在は乾性咳嗽がないため、心房細動への悪影響を考慮してテオフィリンを一旦中止し、モンテルカストのみ残すことになりました。変更した内容で服用を続けて2週間後、フォローアップの電話で胸焼け症状は改善していることを聴取しました。その後の診察でモンテルカストも中止となり、患者さんは乾性咳嗽や胸焼け症状はなく生活しています。1)藤原 靖弘ほか. Medicina. 2005;42:104-106.2)日本消化器病学会編. 患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド. 2018.3)江頭かの子ほか. 週刊日本医事新報. 2014;4706:67.

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オンライン血圧管理で、良好な収縮期血圧コントロール/BMJ

 コントロール不良の高血圧患者において、デジタル技術を用いた介入による「家庭オンライン血圧管理・評価(Home and Online Management and Evaluation of Blood Pressure:HOME BP)」は通常治療と比較して、1年後の収縮期血圧のコントロールが良好で、費用の増分も低いことが、英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが実施した「HOME BP試験」で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年1月19日号に掲載された。これまでの自己モニタリングと自己管理の試験では、血圧低下に関する有効性が示されているが、効果を得るには比較的高価な技術や時間がかかる一連の訓練を必要とすることが多い。また、デジタル介入の短期試験では、血圧コントロールの改善の可能性が示唆されているが、広く実施するための十分なエビデンスは得られていないという。プライマリケアでの無作為化対照比較試験 研究グループは、血圧の自己モニタリングと生活様式の自己管理を統合した高血圧管理のためのデジタル介入の、プライマリケアにおける有用性を評価する目的で、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 この試験には英国の76の総合診療施設が参加した。対象は、治療を行っても血圧コントロールが不良(>140/90mmHg)で、インターネットが使用可能な環境にある患者622例であった。 被験者は、HOME BPによる血圧自己モニタリングとデジタル介入を受ける群(介入群、305例)または通常治療(ルーチンの高血圧治療、受診の予約、総合診療医の裁量による薬剤の変更)を受ける群(317例)に無作為に割り付けられた。 デジタル介入では、患者と医療従事者に血圧測定の結果がフィードバックされ、生活様式への助言や動機付けを高めるための支援を受ける選択が可能であった。高血圧、糖尿病、80歳以上の人々の目標血圧は英国の国のガイドラインに準拠した。 主要アウトカムは、ベースラインの血圧、目標血圧、年齢、診療内容で補正した1年後の収縮期血圧(2回目と3回目の測定値の平均値)の差とされた。欠測値は多重代入法で補完された。用量・薬剤の変更が多く、1mmHg低下の増分費用は11ポンド ベースラインの平均年齢は、介入群が65.2(SD 10.3)歳、通常治療群は66.7(10.2)歳で、女性はそれぞれ47.5%および45.0%であった。1年後に552例(88.6%)のデータが得られ、残りの70例(11.4%)のデータは補完された。 平均血圧は、介入群がベースラインの151.7/86.4mmHgから1年後には138.4/80.2mmHgへ、通常治療群は151.6/85.3mmHgから141.8/79.8mmHgへと低下した。収縮期血圧の両群間の平均差は-3.4mmHg(95%信頼区間[CI]:-6.1~-0.8)、拡張期血圧の平均差は-0.5mmHg(-1.9~0.9)であった。また、完全ケース分析では同様の結果が得られた(収縮期血圧の平均差:-3.5mmHg[95%CI:-6.2~-0.9]、拡張期血圧の平均差:-0.5mmHg[-1.8~0.9])。 頻度の高い有害事象として、関節のこわばり(介入群56.8%、通常治療群55.6%)、疼痛(47.5%、46.8%)、睡眠困難(45.7%、51.2%)、疲労(46.3%、43.3%)、咳嗽(34.6%、37.5%)などが認められたが、両群間に有意差があるものはなかった。また、高血圧に特異的な症状(下肢/くるぶしの腫脹、ほてり感、胃のむかつき、めまい、インポテンス)の頻度にも両群間に差はなかった。 介入群は通常治療群に比べ、試験期間中に降圧薬の投与を受ける患者の割合が高かった。また、用量の変更(相対的リスク:2.0、95%CI:1.5~2.7)および薬剤の変更(1.5、1.1~1.9)の割合が高かった。 試験期間中のQOL(EuroQoL5D-5L)には両群間に差はみられなかった。また、介入群の1例の増分費用は38ポンド(95%CI:27~47)であり、収縮期血圧の1mmHg低下当たりの増分費用は11ポンド(95%CI:6~29)(15ドル、12ユーロ)だった。 著者は、「HOME BPをプライマリケアで実施するには、臨床ワークフローへの統合と、デジタル技術を使用しない人々への配慮が求められる」としている。

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FIDELIO-DKD試験-非ステロイド系選択的鉱質コルチコイド受容体拮抗薬finerenoneに、心腎保護効果あり!(解説:石上友章氏)-1340

 慢性腎臓病(CKD)診療の究極のゴールは、腎保護と心血管保護の、両立にある。腎機能低下・透析を回避して、長生きできる治療法が、待ち望まれている。高血圧、糖尿病は、CKDのリスクであり、降圧薬、血糖降下薬には、高血圧・糖尿病を修正・軽快することで、間接的にCKDないしDKDの進展抑制が可能である。しかし、降圧薬であるACE阻害薬・ARBの確たる『降圧を超えた臓器保護作用』については、議論の余地があった。 レニン・アンジオテンシン(RA)系は、重要な創薬標的であり、これまでさまざまな薬剤が上市されてきた。RA系の最終産物であるアンジオテンシンIIは、腎内作用と、腎外作用があり、副腎を刺激してアルドステロンの分泌を促進することは、主要な腎外作用である。アルドステロンは、11βHSD2存在下でコルチゾールが不活化することで、核内にある鉱質コルチコイド受容体(MR)と結合し、アルドステロン誘導性タンパク質(AIP:aldosterone inducible protein)の遺伝子発現を通して、アルドステロン作用を発揮する。 第1世代(スピロノラクトン)、第2世代(エプレレノン)の抗アルドステロン薬は、ステロイド骨格を有し、第3世代(エサキセレノン)は非ステロイド骨格であり、前者をMRA(鉱質コルチコイド受容体拮抗薬)、後者をMRB(鉱質コルチコイド受容体遮断薬)と呼称する。FIDELIO-DKD試験1)では、新規第3世代MRBであるfinerenoneを試験薬として、RA系阻害薬を用いた治療中のCKD合併2型糖尿病患者を対象に行われた。 結果は、finerenoneに心腎保護効果があることが証明された。1次エンドポイントである、腎複合エンドポイントは楽々と(HR:0.82、0.73~0.93、p=0.001)、2次エンドポイントである心血管複合エンドポイントは辛うじて(HR:0.86、0.75~0.99、p=0.03)統計学的有意差をつけることができた。これまで、多くの基礎研究の成果から、鉱質コルチコイド受容体の活性化が、心血管・腎の組織・細胞レベルでの障害をもたらすことが示唆されている。FIDELIO-DKD試験は、セオリーを臨床試験で証明したことから、トランスレーショナル・リサーチの成果と言える。著者らはDiscussionにおいて、軽度の血圧低下を伴った、アルブミン尿・心血管イベントに対する効果が早期に認められることから、一部の作用はナトリウム利尿効果に由来するとしている。一方、SGLT2阻害薬カナグリフロジンを試験薬にしたCREDENCE試験と比較して、1次エンドポイントの群間差のmagnitudeが少ないことに言及しており、両薬剤の薬効をもたらす作用点を比較するうえで興味深い。

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HFpEFに対するsGC刺激薬の効果―VITALITY-HFpEF試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1329

 VITALITY-HFpEF試験では、6ヵ月以内に心不全増悪の既往を有する左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)を対象にして、可溶型グアニリル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬であるvericiguat 10mg/日あるいは15mg/日を24週間投与した際の生活の質(QOL)ならびに運動耐容能に対する効果が、多施設共同第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験として検証された。結論としてvericiguatの有効性は示されず1)、HFpEFに対する臨床試験としては、またしてもネガティブな結果に終わった。 本研究に先立って行われたSOCRATES-PRESERVED試験では、HFpEFに対するvericiguatの12週間投与がN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値および左房容積に及ぼす効果について検証された。プライマリエンドポイントにvericiguat投与群とプラセボ群間で有意差を認めなかったが、探索項目として調査されたカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)によるQOL評価値が、vericiguat 10mg/日投与群においてプラセボ群に比べ有意に改善した2)。このことにより、より長期の24週間にわたって10~15mg/日の高用量を投与する本研究はQOLを改善させ、同時に運動耐容能を改善するのではないかと考えられた。しかしながら、今回の研究においてKCCQの身体制限に関するスコアや6分間歩行距離に有意な結果が得られなかっただけでなく、JAMA誌の同号に掲載されたCAPACITY HFpEF試験(Phase II)でも、sGC刺激薬であるpraliciguatは、HFpEFにおける最大酸素摂取量をはじめとした運動耐容能を改善するには至らなかった3)。 HFpEF患者の心筋生検標本を用いた検討においては、環状グアノシン3’,5’-1リン酸(cGMP)ならびにプロテインキナーゼG(PKG)活性の低下が報告されており4)、加齢や、糖尿病、高血圧、肥満などのHFpEFに多く認める併存症によって血管内皮機能が障害され、一酸化窒素(NO)の生物学的利用能が低下することが原因と考えられてきた5)。PKGの活性低下は左室の肥大・線維化を介して拡張機能障害をもたらすことから、NO-cGMP-PKG経路が治療標的として着目されるに至った。 しかしながら、HFpEFの左室における圧容積曲線の特性上、血管拡張作用を有する薬剤は、過降圧や一回拍出量低下などを来すことにより、むしろ血行動態を悪化させてしまう可能性が指摘されており6)、これまでの血管拡張作用を有する薬剤を用いた大規模臨床試験では、いずれも有意な結果が得られていない。本試験においても、症候性低血圧の出現頻度は、vericiguat 15mg/日、10mg/日、プラセボの各群で、6.4%、4.2%、3.4%とvericiguat高用量投与群において高率に発生している。血行動態にまで悪影響をもたらしたかどうかは不明であるが、QOL改善に至らなかった一因と考えられる。 NO-cGMP-PKG経路の障害は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の全身ならびに冠動脈における血管平滑筋細胞に生じており、前・後負荷増大とともに心筋虚血を悪化させている7-9)。cGMPを増加させるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)やsGC刺激薬はHFrEFの予後を改善することが報告されているが10,11)、冠動脈疾患の合併が比較的少なく、血管拡張薬によって血行動態の改善が得られにくいHFpEFでは、sGC刺激薬の効果が十分に得られなかった可能性が考えられる。また、sGC刺激薬以外にも、経口硝酸薬やホスホジエステラーゼ5阻害薬、ARNIを用いた研究が過去に行われているが、いずれも有意な結果が得られていない12-15)。PKG活性の低下から心筋肥大・線維化を呈し、すでに症候性となっている段階では、NO-cGMP-PKG障害が治療標的とはなり得なかった可能性もある。ただし、病態によっては有効な可能性も否定できず、多様な病態を持つHFpEFに対しては、ディープフェノタイピングに基づいた精密医療が今後は必要になるものと考えられる。引用文献1)Armstrong PW, et al. JAMA. 2020;324:1512-1521.2)Pieske B, et al. Eur Heart J. 2017;38:1119-1127.3)Udelson JE, et al. JAMA. 2020;324:1522-1531.4)Komajda M, et al. Eur Heart J. 2014;35:1022-1032.5)Emdin M, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1795-1807.6)Schwartzenberg S, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;59:442-451.7)Kubo SH, et al. Circulation. 1991;84:1589-1596.8)Ramsey MW, et al. Circulation. 1995;92:3212-3219.9)Katz SD, et al. Circulation. 2005;111:310-314.10)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020;382:1883-1893.11)McMurray JJ, et al. N Engl J Med. 2014;371:993-1004.12)Redfield MM, et al. N Engl J Med. 2015;373:2314-2324.13)Borlaug BA, et al. JAMA. 2018;320:1764-1773.14)Redfield MM, et al. JAMA. 2013;309:1268-1277.15)Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2019;381:1609-1620.

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第36回 無罪のままのディオバン事件関係者、これからの行方は?

世の中は相変わらず新型コロナウイルス感染症に関する話題で持ちきりだが、先日ふと「もう2年が経ってしまったか」と思った事件がある。一時世間をにぎわした、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)・バルサルタン(商品名:ディオバン)の旧薬機法違反事件の検察による上告の件である。ここで改めて事件を振り返りたい。バルサルタンは日本国内だけで一時年間売上高1,000億円を超えたトップクラスの医薬品。そもそもARBを含む降圧薬は血圧を低下させることで脳心血管疾患の発症を予防することが服用目的だ。このため、降圧薬を擁する製薬各社はプロモーション活動を有利にするため、市販後に心血管疾患の発症予防効果を確認する大規模な臨床研究を行う。ご多分に漏れずバルサルタンでもそうした臨床研究が国内で複数行われ、いずれもバルサルタンでのポジティブな結果だったことから、製造販売するノバルティス社のプロモーション資材などで大々的に紹介された。ところが2012年に当時の京都大学医学部附属病院循環器内科助教の由井 芳樹氏がLancetなど複数の学術誌で、国内で行われたバルサルタンにポジティブな結果を示した臨床研究である、京都府立医科大学による「Kyoto Heart Study」、東京慈恵医科大学による「Jikei Heart Study」、千葉大学による「VART」の統計処理の不自然さを指摘したことをきっかけに問題が顕在化した。そしてこの件に加え、この3つの臨床研究の共同研究者として名を連ねていた大阪市立大学の研究者が実際にはノバルティス社の社員であることが発覚。前述の3研究以外にもこの社員が共同研究者として参加したことが判明した、バルサルタン関連の研究である滋賀医科大学の「SMART」、名古屋大学の「Nagoya Heart Study」にも不自然な点があることも分かった。各大学は調査委員会を設置し、データの人為的な操作がうかがわれる、あるいはデータ管理がずさんという調査結果が公表し、いずれの研究も既に論文は撤回されている。この件については厚生労働省も2013年に検討会を設置して関係者などをヒアリング。2014年1月にはバルサルタンに有利な形に研究データを操作して掲載に至った論文をプロモーションに用いた行為が薬事法(現・薬機法)第66条に基づく誇大記述・広告違反に該当するとしてノバルティス社を東京地検に刑事告発。この結果、同年6月に東京地検は大阪市立大学教官を名乗っていた前述のノバルティス社員を逮捕し、社員と同時に同法第90条に定める法人の監督責任に伴う両罰規定に基づき法人としてのノバルティス社も起訴した。一審で元社員、ノバルティス社はともに一貫して無罪を主張。2016年12月、検察側は元社員に懲役2年6ヵ月、ノバルティス社に罰金400万円を求刑したが、2017年3月16日の一審の判決公判で、東京地裁は両者に無罪の判決を言い渡し、これを不服とする検察側が控訴した。しかし、控訴審判決で、東京高裁は2018年11月19日、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却。これに対して東京高検は同年11月30日に最高裁に上告していた。それから何の判断も下らず2年が経過したのであるそもそもなぜこの事件では現時点まで無罪という判断が下っているのか?実は一審判決では、起訴事由となった研究論文作成の過程で元社員がバルサルタンに有利になるようなデータ改ざんを行っていたことは認定している。しかし、判決で裁判長は薬事法第66条で言及する「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布」は、(1)医薬品の購入意欲を喚起・昂進するもの、(2)特定医薬品の商品名の明示、(3)一般人が認知できる状態、の3要件すべてを満たすものと指摘。この件はこのうちの(2)、(3)を満たすものの、(1)については一般的な査読のある学術誌に掲載された研究論文は、「購入意欲を喚起・昂進するもの」との要件を満たしているとは言い難いとして、第66条が規定する「広告」「記述」「流布」のいずれにも当たらず、違法とはならないとの判断だった。法的解釈、あるいは製薬業界内の論理で考えれば、この判決は妥当との判断もできるかもしれない。しかし、一般社会に向けて「保険薬のプロモーションに利用された論文に改ざんはあれども違法ではない」と言われても、にわかには納得しがたいはずだ。一審判決時、裁判長が無罪判決を言い渡した直後、法廷内は数秒間静まり返り、その後「フー」とも「ホー」とも判別できない微かな声が広がった様子をやはり法廷内にいた私は今でも覚えている。顔見知りの記者同士は互いに無言のまま目を大きくして顔を見合わせた。意外だという反応の表れだった。東京地検は即座に控訴するが、その理由の中でノバルティス社側には論文の執筆・投稿に明確な販促の意図があり、査読のある学術誌への掲載という外形的な事実のみで「広告」に当たらないとするのは事実誤認であると主張していた。これに対して控訴審判決では、学術論文は客観的に顧客誘引性を有しておらず、論文を宣伝に用いようとしていた被告らの行為も顧客誘引の準備行為と言えるものの直接的に顧客誘引の意図があったとは認められないとして控訴を棄却した。また、66条の規制に学術論文を認めた場合、論文内に不正確性などがあった場合は、その都度、故意の有無を問わねばならず、「学問の自由」への侵害ともなりかねないと指摘。虚偽の学術論文による宣伝行為に関しては「何らかの対応が必要だが、66条1項での対応は無理があり、新たな立法措置が必要」とした。簡単に言えば、「問題のある行為だが、今の法律では裁けない」ということだ。確かに控訴審の判断まで聞けば、ある意味無罪もやむなしなのかと個人的には思った。しかし、何ともモヤモヤした思いが残る。そして東京高検は上告に踏み切った。当時、東京高検周辺を取材した際に上告理由として浮上してきたのは、「経験則違反」と「著反正義」の2点である。経験則違反は判例などに照らして事実認定すべきものを怠った場合を指し、著反正義は控訴審判決を維持した場合に、著しく社会正義が損なわれるという考え方。東京高検が経験則違反に当たる事実認定をどの部分と考えているかは不明だ。控訴審での検察の主張と判決を照らし合わせると、論文の作成過程に関してノバルティス社が深く関与したにもかかわらず、判決ではあくまで広告の準備段階としてこの行為そのものに顧客誘引性は認定しなかったことを指すと思われる。著反正義はまさに地裁判決で認定された元社員によるデータ改ざんがありながら、罪には問えない点が該当するとみられる。さてそこで上告から2年経つわけだが、そもそも直近のデータでは刑事事件で上告されたケースの8割は上告棄却になり、2割弱は上告が取り下げられる。最高裁が下級審の原判決を破棄して判決を下す「破棄自判」、下級審での裁判のやり直しを命じる「破棄差戻・移送」は極めて稀である。しかも上告棄却の場合は約95%が上告から半年以内に行われる。もちろん今回のバルサルタン事件のように上告から2年以上音沙汰なしだったものが、最終的に上告棄却となったものもあるが、その確率は直近で0.4%。ちなみに最新データによると、上告事件で破棄自判となったものはそれまでに2年超、破棄差戻・移送では1年超が経過している。バルサルタン事件がいずれの判断になるかは分からない。だが、どうなろうとも現時点で極めて異例な事態となっているのだ。そして、もし原判決が覆ることになれば、おそらく「製薬企業の資金支援がある研究論文≒広告」という決着になるだろう。その場合、医療用医薬品情報提供ガイドラインの登場、コロナ禍によるリモートプロモーションの増加と同等あるいはそれ以上のインパクトを製薬業界に与えることは間違いないと思っている。

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スタチン+降圧薬のポリピル、アスピリン併用で心血管イベント抑制/NEJM

 心血管疾患がなく、中等度以上の心血管リスクを有する集団において、スタチンと3つの降圧薬の合剤であるポリピル(polypill)とアスピリンの併用療法はプラセボ+プラセボと比較して、心血管イベントの発生率が約3割低いことが、カナダ・マックマスター大学のSalim Yusuf氏らが行ったTIPS-3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号に掲載された。世界では毎年、心血管疾患による死亡が約1,800万件発生しており、その80%以上を低~中所得国が占めるという。血圧上昇とLDLコレステロール値上昇は、心血管疾患の最も重要な修正可能なリスク因子であり、降圧薬と脂質低下薬を組み合わせたポリピルが有益な可能性が示唆されている。一方、アスピリンは、心血管疾患患者に対する有用性が証明されているが、心血管疾患の1次予防における単独での役割、あるいはポリピルに含まれる1剤としての役割は明らかにされていない。ポリピル単独とアスピリン単独とポリピル+アスピリン併用を比較 本研究は、2×2×2ファクトリアルデザインの二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、9ヵ国(インド、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、コロンビア、カナダ、タンザニア、チュニジア)の86施設が参加し、2012年7月~2017年8月の期間に患者登録が行われた(Wellcome Trustなどの助成による)。 対象は、心血管疾患がなく、INTERHEARTリスクスコア(0~48点、点数が高いほど心血管リスクが高い)で中等度または高リスクの50歳以上の男性および55歳以上の女性であった。被験者は、ポリピル(シンバスタチン40mg、アテノロール100mg、ヒドロクロロチアジド25mg、ramipril 10mgを含有)またはプラセボを毎日、アスピリン75mgまたはプラセボを毎日、ビタミンDまたはプラセボを毎月投与する群に無作為に割り付けられた。 今回は、ポリピル単独とプラセボ、アスピリン単独とプラセボ、ポリピル+アスピリンとダブルプラセボの比較の結果が報告された。 ポリピル単独およびポリピル+アスピリンとそれぞれのプラセボとの比較における主要アウトカムは、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心停止への蘇生術、心不全、動脈血行再建)の複合とした。アスピリンとプラセボの比較における主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合であった。ポリピル+アスピリン併用群の主要アウトカム:4.1% vs.5.8% 5,713例が無作為化の対象となり、平均フォローアップ期間は4.6年であった。参加者はインドが47.9%と最も多く、次いでフィリピンが29.3%であった。ベースラインの平均年齢は63.9歳、52.9%が女性で、高血圧/血圧上昇が83.8%、糖尿病/血糖値上昇が36.7%で認められ、平均収縮期血圧は144.5mmHg、平均心拍数は77.0拍/分、平均LDLコレステロール値は120.7mg/dL(3.1mmol/L)だった。 試験期間中、ポリピル単独とポリピル+アスピリン併用を合わせた群はプラセボ群と比較して、平均収縮期血圧が5.8mmHg低く、平均心拍数が4.6拍/分少なく、平均LDLコレステロール値が19.0mg/dL(0.50mmol/L)低かった。 ポリピル比較の主要アウトカムは、ポリピル群(2,861例)が126例(4.4%)、プラセボ群(2,852例)は157例(5.5%)で発生した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.63~1.00)。また、アスピリン比較の主要アウトカムは、アスピリン群(2,860例)が116例(4.1%)、プラセボ群(2,853例)は134例(4.7%)で発生した(HR:0.86、95%CI:0.67~1.10)。 ポリピル+アスピリン比較の主要アウトカム(初発)は、ポリピル+アスピリン群(1,429例)が59例(4.1%)、ダブルプラセボ群(1,421例)は83例(5.8%)で発生した(HR:0.69、95%CI:0.50~0.97)。初発と再発を合わせた主要アウトカムは、ポリピル+アスピリン群が64例、ダブルプラセボ群は93例で発生した(HR:0.68、95%CI:0.48〜0.96)。 副作用により試験を中止した参加者数は、ポリピル+アスピリン群とダブルプラセボ群で同程度であった(筋肉症状:5例、7例、消化管出血:3例、1例、胃腸症[dyspepsia]:3例、3例、胃炎:19例、22例、消化性潰瘍:3例、3例)。また、低血圧およびめまいの発生率は、ポリピルを投与された群が、それぞれに対応するプラセボ群に比べて高かった。低血圧およびめまいにより試験薬を中止した参加者は、ポリピル+アスピリン群が45例、ダブルプラセボ群は22例だった。大出血は、ポリピル+アスピリン群が9例、ダブルプラセボ群は12例で報告された。 著者は、「併用群の心血管イベントに関する有益性は、LDLコレステロール値と血圧の適度な低下に、アスピリンによる有益性が加わった場合に予測されたものと一致していた」としている。

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米国で血圧コントロールが悪化した理由:われわれは何を学ぶべきか?(解説:有馬久富氏)-1321

 米国で継続的に行われている国民健康栄養調査(National Health & Nutrition Examination Survey:NHANES)の成績から、1999/2000年から2017/18年までにおける血圧コントロール状況の経時変化を検討した論文がJAMAに掲載された1)。血圧コントロール良好(血圧140/90mmHg未満)な高血圧者の年齢調整割合は、1999/2000年の32%から2013/14年の54%まで上昇傾向にあったが、2015/16年から減少傾向に転じ、2017/18年には44%まで低下した。論文では、2015/16年から血圧コントロールが悪化した原因として、2014年に米国の高血圧ガイドライン(JNC8)2)が改訂された際に、降圧目標が引き上げられたことを挙げている。また、2015年にSPRINT試験3)の成績が発表され、2017年に米国のACC/AHAガイドライン4)が降圧目標を引き下げたことから、2019年以降の血圧コントロール状況は改善するであろうとも予測している。 米国でみられた一時的な血圧コントロール悪化から、われわれは何を学ぶべきであろうか。JNC8が出版された当時、収縮期血圧130mmHg未満を目標とする厳格降圧の効果を検討した無作為化比較試験の成績は少なく、厳格降圧が脳心血管病を予防する可能性が示唆されていたものの統計学的有意差までは得られていなかった5,6)。一方、一部の観察研究からJカーブ現象(つまり治療中の血圧が低いと脳心血管病が増加する現象)が報告されていたこともあり、JNC8の降圧目標は引き上げられた3)。当時を振り返ってみると、エビデンスレベルの高い無作為化比較試験において厳格降圧が害をもたらす根拠はなかったので、観察研究を根拠に降圧目標を引き上げたのは適切な判断でなかったのかもしれない。ガイドラインの推奨ひとつで、国民の血圧コントロールを悪化させ、脳心血管病を増加させるような事態に陥る可能性があることを考えると、ガイドラインはその時点のエビデンスを包括的かつ公正に評価して作成される必要があると考えられる。私が執筆委員・システマティックレビュー(SR)サポートチームを務めさせていただいた高血圧治療ガイドライン20197)では、SRに基づいて透明性の高い推奨決定がなされた。今後発行されるガイドラインにおいても最新のエビデンスに基づいた公正な推奨を発信してゆくことが大切であると考えられる。文献1)Muntner P, et al. JAMA. 2020;324:1190-1200.2)James PA, et al. JAMA. 2014;311:507-520.3)SPRINT Research Group. N Engl J Med. 2015;373:2103-2116.4)Whelton PK, et al. Hypertension. 2018;71:e13-e115.5)ACCORD Study Group. N Engl J Med. 2010;362:1575-1585.6)SPS3 Study Group. Lancet. 2013;382:507-515.7)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編. 高血圧治療ガイドライン2019. 日本高血圧学会;2019.

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血圧高めの低リスク青壮年者に降圧治療が必要か?(解説:有馬久富氏)-1320

 18~45歳の青壮年者においても、血圧上昇が脳心血管病をわずかに増大させるとする観察研究のメタ解析の結果がBMJ誌に報告された1)。論文の中では古い血圧分類が用いられているが、120/80mmHg未満に対して、120~129/80~84mmHgにおいて1.19倍、130~139/85~89mmHgにおいて1.35倍、140~159/90~99mmHgのI度高血圧において1.92倍、160/100mmHg以上のII~III度高血圧において3.15倍脳心血管病のリスクが上昇していた。しかし、絶対リスクが低いため、1例の脳心血管病を予防するために降圧治療しなくてはならない人数(number needed to treat:NNT)の推定値は、120~129/80~84mmHgにおいて2,672人、130~139/85~89mmHgにおいて1,450人、I度高血圧において552人、II~III度高血圧において236人と、高リスク者を治療する場合に比べて非常に大きかった。つまり、低リスク者において1例の脳心血管病を予防するために必要な医療費(薬剤費)は、高リスク者のそれよりも非常に高額になる(つまり費用対効果が悪い)ことがわかる。 社会全体でみると、高リスク者を優先して治療していく(つまり低リスク者の治療を後回しにする)ことにより、限られた資源(医療費など)の中で効率よく脳心血管病を予防していくことが可能となる2)。一方、個人の立場に立つと、血圧が高めの低リスク者であっても、正常血圧の同年代の方に比べると脳心血管リスクが高いわけであるから、高リスク者と同じように降圧治療を受けたいと考える方も多いであろう。 『高血圧治療ガイドライン2019』3)では、高リスクの高値血圧(130~139/80~89mmHg)において非薬物療法で十分な効果が得られない場合に薬物療法を推奨する一方、低・中等リスクにおける薬物療法は推奨していない。これらの推奨の背景にも、限られた資源の中で効率よく脳心血管病を予防したいという考えがある。 SPRINT試験4)の結果発表後、降圧目標が徐々に引き下げられつつある現在、低リスク者についてどこまで薬物療法の適応を広げるかについては、費用対効果などを考えながら社会全体で議論していく必要があろう。

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英国ガイドラインにおける年齢・人種別の降圧薬選択は適切か/BMJ

 非糖尿病高血圧症患者の降圧治療第1選択薬について、英国の臨床ガイドラインでは、カルシウム拮抗薬(CCB)は55歳以上の患者と黒人(アフリカ系、アフリカ-カリブ系など)に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ACEI/ARB)は55歳未満の非黒人に推奨されている。しかし、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のSarah-Jo Sinnott氏らによる同国プライマリケア患者を対象としたコホート試験の結果、非黒人患者におけるCCBの新規使用者とACEI/ARBの新規使用者における降圧の程度は、55歳未満群と55歳以上群で同等であることが示された。また、黒人患者については、CCB投与群の降圧効果がACEI/ARB投与群と比べて数値的には大きかったが、信頼区間(CI)値は両群間で重複していたことも示された。著者は、「今回の結果は、最近の英国の臨床ガイドラインに基づき選択した第1選択薬では、大幅な血圧低下には結び付かないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌2020年11月18日号掲載の報告。12、26、52週後の収縮期血圧値の変化を比較 研究グループは、英国臨床ガイドラインに基づく推奨降圧薬が、最近の日常診療における降圧に結び付いているかを調べるため観察コホート試験を行った。英国プライマリケア診療所を通じて2007年1月1日~2017年12月31日に、新規に降圧薬(CCB、ACEI/ARB、サイアザイド系利尿薬)の処方を受けた患者を対象とした。 主要アウトカムは、ベースラインから12、26、52週後の収縮期血圧値の変化で、ACEI/ARB群vs.CCB群について、年齢(55歳未満、または以上)、人種(黒人またはそれ以外)で層別化し比較した。2次解析では、CCB群vs.サイアザイド系利尿薬群の新規使用者群の比較も行った。 ネガティブなアウトカム(帯状疱疹の発症など)を用いて、残余交絡因子を検出するとともに、一連の肯定的なアウトカム(期待される薬物効果など)を用いて、試験デザインが期待される関連性を特定できるかを判定した。ACEI/ARB服用約8万8,000例、CCB約6万7,000例、利尿薬約2万2,000例を追跡 52週のフォローアップに包含された各薬剤の新規使用者は、ACEI/ARBが8万7,440例、CCBは6万7,274例、サイアザイド系利尿薬は2万2,040例だった(新規使用者1例当たりの血圧測定回数は4回[IQR:2~6])。 非糖尿病・非黒人・55歳未満の患者について、CCB群の収縮期血圧の低下幅はACEI/ARB群よりも大きく相対差で1.69mmHg(99%CI:-2.52~-0.86)だった。また、55歳以上の患者の同低下幅は0.40mmHg(-0.98~0.18)だった。 非糖尿病・非黒人について6つの年齢群別で見たサブグループ解析では、CCB群がACEI/ARB群より収縮期血圧値の減少幅が大きかったのは、75歳以上群のみだった。 非糖尿病患者において、12週後のCCB群とACEI/ARB群の収縮期血圧値の減少幅の差は、黒人群では-2.15mmHg(99%CI:-6.17~1.87)、非黒人では-0.98mmHg(-1.49~-0.47)と、いずれもCCB群でACEI/ARB群より減少幅が大きかった。

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「ミオコールスプレー」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第25回

第25回 「ミオコールスプレー」の名称の由来は?販売名ミオコール®スプレー0.3mg一般名(和名[命名法])ニトログリセリン効能又は効果狭心症発作の寛解用法及び用量通常、成人には、1回1噴霧(ニトログリセリンとして0.3mg)を舌下に投与する。なお、効果不十分の場合は1噴霧を追加投与する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)1.重篤な低血圧又は心原性ショックのある患者[血管拡張作用により更に血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。]2.閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]3.頭部外傷又は脳出血のある患者[頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。]4.高度な貧血のある患者[血圧低下により貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を悪化させるおそれがある。]5.硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者6.ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[本剤とこれらの薬剤との併用により降圧作用が増強され、過度に血圧を低下させることがある。※本内容は2020年11月11日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2014年11月改訂(第10版)医薬品インタビューフォーム「ミオコール®スプレー0.3mg」2)トーアエイヨー:製品情報

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2つの心保護作用で心不全の悪化を防ぐ「エンレスト錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第61回

2つの心保護作用で心不全の悪化を防ぐ「エンレスト錠50mg/100mg/200mg」今回は、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)」を紹介します。本剤は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA系)の抑制作用と、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)系の増強作用を併せ持つことで、心不全の進行を抑えます。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。※また、2021年9月、100mg・200mg錠に「高血圧症」の適応が追加されました。<用法・用量>《慢性心不全》通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として、1日2回経口投与します。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量します。忍容性に応じて適宜減量しますが、1回投与量は50mg、100mg、200mgとし、いずれにおいても1日2回投与です。なお、本剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)から切り替えて投与します。※《高血圧症》通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、最大投与量は1日1回400mgです。なお、本剤の投与により過度な血圧低下の恐れなどがあり、原則、高血圧治療の第一選択薬としては使えません。<安全性>慢性心不全患者を対象とした国内および海外の第III相臨床試験において、調査症例4,314例中966例(22.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、低血圧448例(10.4%)、高カリウム血症201例(4.7%)、腎機能障害124例(2.9%)、咳嗽67例(1.6%)、浮動性めまい63例(1.5%)、腎不全34例(0.8%)、心不全31例(0.7%)、起立性低血圧31例(0.7%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、血管浮腫(0.2%)、腎機能障害(2.9%)、腎不全(0.8%)、低血圧(10.4%)、高カリウム血症(4.7%)、ショック(0.1%未満)、失神(0.2%)、意識消失(0.1%未満)、間質性肺炎(0.1%未満)、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、低血糖、横紋筋融解症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、Stevens-Johnson症候群、多形紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、肝炎(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、心臓の負担を減らし血圧を下げる作用によって、心不全の悪化を抑えます。2.血圧が下がることで、めまいやふらつきが現れることがあるので、高所での作業、自動車の運転などの危険を伴う機械を操作する場合には注意してください。3.唇・まぶた・舌・口の中・顔・首が急に腫れる、喉がつまる感じ、息苦しい、声が出にくいなどの症状が現れた場合は、すぐに連絡してください。4.体のしびれ、脱力感、吐き気、嘔吐などの症状が現れた場合、体内のカリウム値が高くなっている可能性があるので、すぐにご相談ください。<Shimo's eyes>心不全が進行すると、心臓のポンプ機能が低下して循環血液量が減少し、これを補うためにレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系と心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)系の働きが亢進します。そして、その状態が続くと心臓に負担がかかり、心不全がさらに悪化するという悪循環に陥ります。本剤の有効成分はサクビトリルおよびバルサルタンですが、いわゆる配合薬ではなく、サクビトリルとバルサルタンを1対1のモル比で含む医薬品であり、経口投与後に速やかにサクビトリルとバルサルタンに解離します。サクビトリルは、ANPを不活化するネプリライシン(NEP)を阻害してANP系を増強し、心室肥大の抑制や抗線維化などの心保護作用をもたらします。しかし、NEPはアンジオテンシンII(AII)の不活化作用も有するため、阻害されるとRAA系の働きを強めてしまいます。そこで、本剤はサクビトリルとバルサルタン(ARB)を組み合わせることでRAA系を抑え、心保護作用と降圧作用を得ることができる薬剤となり、すでに欧米を含む世界100ヵ国以上で承認されています。初回投与時は、ACE阻害薬またはARBから切り替えて使用します。ただし、ACE阻害薬との併用は血管浮腫が現れる恐れがあるため禁忌であり、ACE阻害薬から切り替える、もしくは本剤からACE阻害薬に切り替える場合は、少なくとも36時間空ける必要があります。初期投与量は50mgから開始して、忍容性を確認しながら維持量まで増量します。増量時の注意点として、50mg錠は100mg錠・200mg錠との生物学的同等性が確認されていないため、100mg以上の投与量の場合では50mg錠を使用することはできません。また、1回50mgから100mgへ増量時の基準として、(1)症候性低血圧がなく、収縮期血圧が95mmHg以上、(2)血清カリウム値5.4mEq/L以下、(3)eGFR 30mL/min/1.73m2以上かつeGFR低下率35%以下が示されています。注意すべき副作用として、本剤のブラジキニン分解阻害作用による血管浮腫、脱水(ナトリウム利尿)などがあります。臨床試験での発現頻度は低いものの、重症化すると生命を脅かす可能性がありますので、十分に注意して経過を観察しましょう。※2021年9月、添付文書改訂に伴い一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg

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第二アンジオテンシン変換酵素(ACE2)は、ヒトの運命をつかさどる『X因子』か?(解説:石上友章氏)-1309

 米国・ニューヨークのマクマスター大学のSukrit Narulaらは、PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)試験のサブ解析から、血漿ACE2濃度が心血管疾患の新規バイオマーカーになることを報告した1)。周知のようにACE2は、古典的なレニン・アンジオテンシン系の降圧系のcounterpartとされるkey enzymeである。新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2が、標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2を受容体として、ウイルス表面のスパイクタンパクと結合することが知られている。降って湧いたようなCOVID-19のパンデミックにより、にわかに注目を浴びているACE2であるが、本研究によりますます注目を浴びることになるのではないか。 Narulaらの解析によると、血漿ACE2濃度の上昇は、全死亡、心血管死亡、非心血管死亡と関係している。さらに、心不全、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病の罹患率の上昇にも関係しており、年齢、性別、人種といったtraditional cardiac risk factorとは独立している。ここまで幅広い疾病に独立して関与しているとすると、あたかも人の運命を決定する「X因子」そのものであるかのようで、にわかには信じることができない。COVID-19でも、人種による致命率の差を説明する「X因子」の存在がささやかれていることから、一般人にも話題性が高いだろう。COVID-19とRA系阻害薬、高血圧との関係が取り沙汰されていることで、本研究でも降圧薬使用とACE2濃度との関係について検討されている(Supplementary Figure 1)。幸か不幸か、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬のいずれの使用についても、有意差はつかなかった。血漿ACE2濃度は、血漿ACE2活性と同一であるとされるが、肺胞上皮細胞での受容体量との関係は不明である1)。したがって、単純にSARS-CoV-2の感染成立との関係を論ずることはできない。 COVID-19の「X因子」については、本年Gene誌に本邦のYamamotoらが、ACE遺伝子のI(挿入)/D(欠失)多型であるとする論文を発表している2)。欧米人と日本人で、ACE遺伝子多型に人種差があることで、COVID-19の致命率の差を説明できるのではないかと報告している。欧州の集団はアジアの集団よりもACE II遺伝子型頻度が低く、一方、高い有病率とCOVID-19による死亡率を有していた。何を隠そう、ACE遺伝子多型に人種差があることを、初めて報告したのは本稿の筆者である3)。自分の25年前の研究とこのように再会することになるとは、正直不思議な思いである。

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第40回 降圧薬は就寝時服用でより心血管イベントリスクを低減の報告【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 痒みなどのアレルギー症状や喘息発作、片頭痛発作など、特定の時間に症状が出やすい疾患では、日内リズムや薬物の時間薬理学的特徴に応じて薬剤の服用タイミングが設定されることがあります。血圧にも日内変動がありますが、こうした時間治療(chronotherapy)は高血圧に対しても有用なのでしょうか。今回は、降圧薬の服用タイミングと心血管イベントについて検討したHygia Chronotherapy Trial1)を紹介します。対象は、スペイン在住の18歳以上の白人で、普段は日中に活動して夜間は就寝し、1剤以上の降圧薬を服用している高血圧患者1万9,084例(男性1万614例、女性約8,470例、平均年齢60.5歳)です。夜勤のある人やほかの人種では結果が変わるかもしれない点には注意が必要です。降圧薬を就寝時に服用する群9,552例、起床時に服用する群9,532例に分け、中央値6.3年追跡しています。ランダム化の方法は厳密には本文からは読み取れませんが、結果的に振り分けられたベースラインでの群間の特徴は似通っているため、おおむね平等な比較とみてよいかと思います。試験期間を通して定期的な血圧測定を行い、さらに年に1回は2日間にわたり携帯型の自動血圧計を装着して、自由行動下の24時間血圧も測定しています。服用薬の内訳は、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、β遮断薬、利尿薬で、評価者のみを盲検化するPROBE(Prospective Randomised Open Blinded-Endpoint)法を用いて評価しています。アウトカムは、主要なCVDイベント(CVDによる死亡、心筋梗塞、冠動脈再建術、心不全、脳卒中)の発生でした。医師と患者のいずれも治療内容を知っているためバイアスは避けられませんが、実臨床に近いセッティングともいえるでしょう。判断に揺らぎが出やすいアウトカムだと評価者の判断が影響を受けかねませんが、心筋梗塞や死亡など明確な場合は問題になりづらいと思われます。結果としては、追跡調査期間中に、1,752例で主要なCVDイベントがあり、就寝時服薬群の起床時服薬群と比較してのハザード比は次のとおりでした。 心血管イベントの複合エンドポイント 0.55(95%信頼区間[CI]: 0.50-0.61) 心血管死亡 0.44(95%CI:0.34~0.56) 心筋梗塞 0.66(95%CI:0.52~0.84) 冠動脈再建術 0.60(95%CI:0.47~0.75) 心不全 0.58(95%CI:0.49~0.70) 脳卒中 0.51(95%CI:0.41~0.63)降圧薬を起床時に服用した群と比べて、就寝時に服用した群では、心血管死亡リスクは56%、心筋梗塞リスクは34%、血行再建術の施行リスクは40%、心不全リスクは42%、脳卒中リスクは49%、これらのイベントを併せた複合アウトカムの発症リスクは45%と、それぞれ有意に低いという結果でした。これらの結果は、性別や年齢、糖尿病や腎臓病といったリスク因子の有無にかかわらず一貫しています。就寝時服薬群は24時間血圧で夜間の血圧が低下本文では著者らは相対ハザード比のみを報告し、絶対リスク減少率(ARR)や必要治療数(NNT)を報告していませんでしたが、批判を受けたためコメント欄に補足する形で各アウトカムのARRとNNTを追記しています。それによると、全CVDイベントは起床時服用群で1,566、就寝時服用群で888、ARRは 7.08(95%CI:6.13~8.02)、NNTは14.13(95%CI:12.46~16.30)でした。24時間血圧の測定値からも、就寝時服用群では睡眠中の血圧値が有意に低いこともわかっており、心筋梗塞や脳卒中のリスク因子である夜間高血圧の改善が結果に寄与したのではないかと仮説が述べられています。現時点では高血圧症診療ガイドラインに服用タイミングについて明確な言及はありませんが、就寝時の処方が増えてもおかしくない結果ではないでしょうか。もちろん、夜間の血圧が昼間に比べ20%以上低くなるようなextreme-dipper型などでは注意が必要です。利尿薬を夜に服用することを避けたいという患者さんもいれば、一部のCa拮抗薬は朝食後服用となっているものもあります。そうした個別の事情を踏まえつつ、用法提案の1つの選択肢として覚えておいて損はないかと思います。1)Hermida RC, et al. Eur Heart J. 2019; ehz754.

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Dr.水谷の妊娠・授乳中の処方コンサルト

第1回 【妊娠中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗インフルエンザ薬第2回 【妊娠中】抗てんかん薬・抗うつ薬・麻酔薬第3回 【妊娠中】β刺激薬・チアマゾール・レボチロキシン第4回 【妊娠中】経口血糖降下薬・ワルファリン・制酸薬第5回 【妊娠中】抗リウマチ薬・抗アレルギー薬・タクロリムス外用薬第6回 【妊娠中】漢方薬・CT,MRI検査・悪性疾患の治療方針第7回 【授乳中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗ウイルス薬第8回 【授乳中】抗てんかん薬・向精神薬・全身麻酔第9回 【授乳中】胃腸薬・降圧薬・抗アレルギー薬第10回 【授乳中】ステロイド・乳腺炎への対処・造影検査後の授乳再開 臨床では妊娠中・授乳中であっても薬が必要な場面は多いもの。ですが、薬剤の添付文書を見ると妊婦や授乳婦への処方は禁忌や注意ばかり。必要な治療を行うために、何なら使ってもいいのでしょうか?臨床医アンケートで集めた実際の症例をベースとした30のQ&Aで、妊娠中・授乳中の処方の疑問を解決します。産科医・総合診療医の水谷先生が、実臨床で使える、薬剤選択の基準の考え方、そして実際の処方案を提示します。第1回 【妊娠中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗インフルエンザ薬臨床医アンケートで集めた妊婦・授乳婦への処方の疑問を症例ベースで解説・解決していきます。初回は、妊娠中の解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗インフルエンザ薬の選択についてです。明日から使える内容をぜひチェックしてください。第2回 【妊娠中】抗てんかん薬・抗うつ薬・麻酔薬妊娠を機に服薬を自己中断してしまう患者は少なくありません。そして症状の悪化とともに受診することはよくあります。今回は抗てんかん薬、抗うつ薬の自己中断症例から妊娠中の薬剤選択について解説します。緊急手術時に必須の麻酔薬の処方についても必見です。第3回 【妊娠中】β刺激薬・チアマゾール・レボチロキシン喘息は妊娠によって症状の軽快・不変・増悪いずれの経過もとりえます。悪化した場合にβ刺激薬やステロイド吸入など一般的な処方が可能のか?甲状腺関連の疾患では妊娠の希望に応じて、バセドウ病患者はチアマゾールを継続していいのか?橋本病ではレボチロキシンを変更すべきなのか?といった実臨床で遭遇する疑問を解決します。第4回 【妊娠中】経口血糖降下薬・ワルファリン・制酸薬今回のクエスチョンは弁置換術既往の妊婦の抗凝固薬選択。ワルファリンからヘパリンへの変更は適切なのでしょうか?降圧薬の選択では妊娠週数に応じて使用可能な薬剤が変わる点を必ず押さえましょう!そのほか、妊娠中の内視鏡検査の可否とその判断、2型糖尿病の薬剤選択についても取り上げます。2型糖尿病管理は、薬剤選択とともに血糖管理目標についてもチェックしてください。第5回 【妊娠中】抗リウマチ薬・抗アレルギー薬・タクロリムス外用薬膠原病があっても妊娠を継続するにはどのような薬剤選択が必要なのでしょうか?メトトレキサートや抗リウマチ薬の処方変更について解説します。花粉症症状に対する抗アレルギー薬処方、アトピー性皮膚炎へのタクロリムス外用薬の継続可否など、臨床で頻用される薬剤についての解説もお見逃しなく。第6回 【妊娠中】漢方薬・CT,MRI検査・悪性疾患の治療方針妊娠中に漢方薬を希望する患者は多いですが、どういうときに漢方薬を使用すべきなのでしょうか?上気道炎事例を入り口に、妊婦のよくある症状に対する漢方薬の処方について解説します。CTやMRIの適応判断に必要な放射線量や妊娠週数に応じたリスクを押さえ、がん治療については永久不妊リスクのある治療をチェックしておきましょう。第7回 【授乳中】解熱鎮痛薬・抗菌薬・抗ウイルス薬今回から授乳中の処方に関する質問を取り上げます。授乳中処方のポイントはRID(相対的乳児投与量)とM/P比(母乳/母体濃度比)。この2つの概念を理解して乳児への影響を適切に検討できるようになりましょう。今回取り上げるのは、解熱鎮痛薬、抗菌薬、抗インフルエンザ薬といった日常診療に必要不可欠な薬剤。インフルエンザについては、推奨される薬剤はもちろん、家庭内での感染予防に対する考え方なども必見です。第8回 【授乳中】抗てんかん薬・向精神薬・全身麻酔ほとんどの母親は服薬中も授乳継続を希望します。多くの薬剤は添付文書上で授乳中止が推奨されていますが、実は授乳を中断しなくてはならないケースはあまり多くありません。育児疲労が増悪因子になりやすい、てんかんや精神疾患について取り上げ、こうした場合の対応を解説します。治療と母乳育児を継続するための、薬剤以外のサポートについても押さえておきましょう。第9回 【授乳中】胃腸薬・降圧薬・抗アレルギー薬授乳中の処方で気を付けるべきは、薬剤の児への移行だけではありません。見落としがちなのが、乳汁分泌の促進・抑制をする薬剤があるということ。症例ベースのQ&Aで、胃腸薬、降圧薬、抗アレルギー薬など日ごろよく処方する薬の注意点を解説していきます。OTC薬で気を付けるべき薬剤やピロリ菌除菌の可否なども押さえておきましょう。第10回 【授乳中】ステロイド・乳腺炎への対処・造影検査後の授乳再開ステロイド全身投与で議論になるのは児の副腎抑制と授乳間隔。どちらも闇雲に恐れる必要はありません。乳腺炎については、投与可能な薬剤だけでなく再発を予防するための知識を押さえておきましょう。造影剤使用後の授乳再開については日米での見解の違いを臨床に活かすための知識を伝授します。

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初回訪問で服用薬の処方経緯を確認し、減薬を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第28回

 今回は、新しく担当することになった在宅患者さんの処方薬を整理した事例を紹介します。患者さんとの面談で、どのような経緯があって処方された薬剤なのかをよく確認してみると、減薬のヒントを見つけられることが多々あります。漫然処方を解消するためにも、薬剤師がヒアリングして情報収集することは非常に重要です。患者情報90歳、女性(個人在宅)基礎疾患高血圧症介護度要支援2既往歴半年前に血便あり(精査なし)訪問診療の間隔2週間に1回介護サービスの利用週1回、通所介護在宅訪問開始の理由前任の薬局が閉局したため、当薬局で引き継いだ。備考過去に降圧薬を後発医薬品に変更して血圧が上昇したことがあり、降圧薬は先発医薬品がいいというこだわりがある。処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタン シレキセチル錠8mg 1錠 分1 朝食後3.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 1錠 分1 朝食後4.クロチアゼパム錠5mg 1錠 分1 就寝前5.ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後6.ジフェニドール塩酸塩錠25mg 3錠 分3 毎食後7.ビフィズス菌製剤散 3g 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは長年訪問診療を利用していましたが、前任の薬局が閉局したため、当薬局で引き継ぐことになりました。ご高齢者の独居ということで、これらの薬剤をしっかりと服用できているかどうか確認が必須だと考えました。初回訪問時に服薬管理状況と残薬を確認したところ、薬剤はピルケースに1週間分をセットしてご自身で管理されていました。しかし、降圧薬は飲み忘れなく服薬しているものの、他の薬剤は自己調節していました。服用理由は曖昧で、効果も評価もされないまま飲み続けていることもわかりました。そこで、患者さんとの面談で、各薬剤が処方された経緯や服薬状況、残薬を確認し、整理してみると下表のようになりました。画像を拡大するこのように、症状や処方の経緯、薬に対する考え方を聴取しました。減らせる薬剤があれば減らしたいという患者さんの想いも確認し、医師に処方整理を提案することにしました。処方提案と経過医師に、トレーシングレポートで残薬の状況と現在の服用状況を報告しました。ファモチジンとジフェニドールについては、服用していなくても症状が出ていないことから中止を提案し、クエン酸第一鉄ナトリウムについては一度血液検査をして貧血項目および血清鉄やフェリチン、総鉄結合能(TIBC)の評価を行うことを提案しました。医師より返事があり、ファモチジンとジフェニドールは中止の承認を得ることができ、クエン酸第一鉄ナトリウムについては採血して評価をするという返答がありました。患者さんからは、薬剤師に相談したことで薬剤数が減り、服薬の煩雑さが軽減されて良かったと喜んでもらえました。現在は降圧薬のみ定期内服しており、クロチアゼパム錠とビフィズス菌製剤散を頓用で継続しています。服薬アドヒアランスは維持できていて、経過も安定しています。

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青壮年の高血圧は後年の心血管イベントリスクに影響?/BMJ

 青壮年(18~45歳)の高血圧は、後年の心血管イベントリスクを、わずかだが増大する可能性があることが、中国・広東省人民医院のDongling Luo氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。高血圧と心血管リスクの関連性は長期にわたり認識されている。しかし研究グループは、大半のアウトカム研究対象集団に包含されているのは中年以上の世代であり、また青壮年における高血圧症の有病率が上昇しているとして本検討を行った。結果を踏まえて著者は、「降圧のエビデンスは限定的であることから、積極的介入には注意が必要であり、さらなる検討が必要だ」とまとめている。BMJ誌2020年9月9日号掲載の報告。17試験・450万人についてシステマティックレビューとメタ解析で検討 高血圧症の青壮年における心血管イベントの将来リスクを評価し定量化する本検討は、発刊から2020年3月6日までのMedline、Embase、Web of Scienceを検索して行われた。 ランダム効果モデルを用いて相対リスクをプールし、95%信頼区間(CI)とともに示し、絶対リスク差を算出した。血圧と個々人のアウトカム間の用量反応関係を、制限付き3次スプラインモデルにより評価した。 試験選択の適格基準は、血圧が上昇した18~45歳成人の有害アウトカムを調査した試験とした。 主要試験アウトカムは、総計の心血管イベントの複合。副次アウトカムは、冠動脈疾患、脳卒中および全死因死亡であった。 解析には、17の観察コホート試験に参加した約450万人の青壮年が包含された。平均追跡期間は14.7年であった。心血管イベントリスクは血圧高値ほど増大 正常血圧群の青壮年は至適血圧群と比較して、心血管イベントリスクが増大した(相対リスク:1.19、95%CI:1.08~1.31、1,000人年当たりリスク差:0.37、95%CI:0.16~0.61)。 血圧値の分類と心血管イベントリスク増加との間に、段階的かつ漸進性の関連がみられた。正常高値血圧群では相対リスク1.35(95%CI:1.22~1.49)、1,000人年当たりリスク差0.69(95%CI:0.43~0.97)、I度高血圧群では相対リスク1.92(1.68~2.19)、リスク差1.81(1.34~2.34)、II度高血圧群では相対リスク3.15(2.31~4.29)、リスク差4.24(2.58~6.48)であった。 同様の結果は冠動脈疾患と脳卒中についても観察された。 概して、血圧上昇に関連する心血管イベントの人口寄与割合は23.8%(95%CI:17.9~28.8)であった。心血管イベント1件を予防するために1年間に必要となる治療数は、正常血圧群では2,672(95%CI:1,639~6,250)、正常高値血圧群では1,450(1,031~2,326)、I度高血圧群では552(427~746)、II度高血圧群では236(154~388)と推算された。

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米国成人、過去20年間の血圧コントロールの状況は?/JAMA

 米国成人集団を代表するよう補正された一連の横断的調査の結果、血圧コントロール良好者の割合は、1999/2000年~2007/08年にかけては増加していたが、2007/08年~2013/14年は有意な変化はみられず、2013/14年以降は減少傾向にあることが明らかにされた。血圧コントロールは心血管疾患を減少することから、米国・アラバマ大学のPaul Muntner氏らは、過去20年間(1999/2000年~2017/18年)の高血圧の米国成人におけるコントロール状況の変化を調べる検討を行った。JAMA誌オンライン版2020年9月9日号掲載の報告。「全米国民健康・栄養調査」の10回分のデータを解析 検討は、米国成人を代表するよう重み付けされた「全米国民健康・栄養調査」の逐次横断研究の、1999/2000年~2017/18年の10回分のデータを用いて行われた。 同データから、高血圧症(収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上と定義)を有するか、降圧薬の使用歴のある18歳以上1万8,262例を包含して解析を行った。最終データの収集は2018年。 平均血圧を3回測定にて算出し、血圧コントロールの主要アウトカムは、収縮期血圧140mmHg未満、拡張期血圧90mmHg未満と定義した。 解析に包含されたのは5万1,761例であった。平均(SD)年齢は48(19)歳、2万5,939例(50.1%)が女性、人種による内訳は、白人43.2%、黒人21.6%、アジア系5.3%、ヒスパニック系26.1%であった。2013/14年以降、血圧コントロール良好者の比率は低下の傾向 高血圧と定義された成人1万8,262例において、血圧コントロール良好者の年齢補正後推定割合は、1999/2000年の31.8%(95%信頼区間[CI]:26.9~36.7)から2007/08年は48.5%(45.5~51.5)へと増加していた(傾向のp<0.001)。その後は安定的に推移し、2013/14年は53.8%(48.7~59.0)であったが(傾向のp=0.14)、以降は低下し、2017/18年は43.7%(40.2~47.2)であった(傾向のp=0.003)。 2015~18年の血圧コントロール良好者の割合を年齢群別に見ると、18~44歳群と比較して、45~64歳群はより多い傾向が(49.7% vs.36.7%、多変量補正後有病率比:1.18[95%CI:1.02~1.37])、75歳以上群はより少ないことが推定された(37.3% vs.36.7%、0.81[0.65~0.97])。人種別に見ると、非ヒスパニック黒人は、白人と比べて血圧コントロール良好者の割合が低い傾向が高いと推定された(41.5% vs.48.2%、0.88[0.81~0.96])。 血圧コントロール良好者の割合は、民間保険(48.2%)、メディケア(53.4%)、メディケア・メディケイド以外の政府系健康保険(43.2%)の加入者で多く、一方で健康保険未加入者(24.2%)は少ない傾向がみられた(多変量補正後有病率比はそれぞれ1.40[95%CI:1.08~1.80]、1.47[1.15~1.89]、1.36[1.04~1.76])。 また、かかりつけ医療施設(usual health care facility)を持つ集団のほうが、持たない集団と比べて血圧コントロール良好者の割合が多い傾向がみられた(48.4% vs.26.5%、多変量補正後有病率比:1.48[95%CI:1.13~1.94])。また、過去1年間に医療サービスを利用した群のほうが、利用しなかった群と比べて血圧コントロール良好者の割合が多い傾向がみられた(49.1% vs.8.0%、5.23[2.88~9.49])。

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