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「エアコン28℃設定」にこだわらないで!医師が患者に伝えたい熱中症対策

 日本救急医学会は熱中症予防の注意喚起を行うべく6月28日に緊急記者会見を実施した。今回、熱中症および低体温症に関する委員会の委員長を務める横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科 救急医学分野教授)らが2020年に発刊された「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」に記された5つの提言を踏まえ、適切なエアコンの温度設定の考え方などについて情報提供した。クールビズと節電が苦しめる“エアコンの温度調節” 人間の身体が暑さに慣れるのには数日から約2週間を要する。これを暑熱順化と言うが、身体が暑さに慣れる前に猛暑日が到来すると暑熱順化できていない人々の熱中症リスクが高まる。今年は6月27日に関東甲信・東海・九州南部で梅雨明けが宣言され、しばらく猛暑日が続くと言われ、横堀氏は「身体が暑さに慣れていない今が一番危険」だと話した。 そんな日本にさらなる追い打ちをかけるのが電力不足であり、“エアコンの温度設定は〇〇℃にしないといけない”“エアコンではなく扇風機を使う”といった話題がワイドショーでもちきりだ。これに同氏は「『エアコンを28℃に設定しましょう』と言うけれど、それはクールビズの視点であり、室温を28℃設定にしても快適に過ごせるような軽装や取り組みを促すためのもの。エアコンを28℃に設定することを推奨するものではない」と指摘。また、全国の熱中症の48%が屋内で発症していること、発症者の半数以上が体温調節機能の低下している高齢者であることから、「エアコンの節電は後回しに」するよう訴えた。 また、近年では、環境省が発表している暑さ指数(WBGT)*や熱中症警戒アラート**が熱中症対策にも有用で、テレビの情報番組でも紹介されるようになっているので、「それに基づいて外出の判断をしたり、暑熱順化の期間は無理をしないように体調管理をしたりして欲しい」と話した。*暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標。日常生活に関する指針の場合、31以上は危険、28~31未満は厳重警戒で「すべての生活活動でおこる危険性」に該当。**熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、熱中症予防行動をとるよう促すための情報で、環境省と気象庁が発信。 さらに、コロナ禍ではこれまでの熱中症対策以外の問題も生じるため、2020年に「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を日本救急医学会ほか3学会合同で発表している。これには予防のための5つの提言(1:換気と室内温度、2:マスクと水分摂取、3:暑熱順化、4:熱中症弱者への対応、5:日頃の体調管理)が記載されており、同氏はこれを踏まえ「家庭用エアコンには換気機能がないものが多いため、部屋の窓を風の流れができるようにし、毎時2回以上は開放(数分程度/回)して換気を確保1)すること。ただし、頻回に窓を開けることで室温が上昇するため、すだれやレースカーテンなどで直射日光の照射を避け、部屋の温度をこまめに確認して欲しい」とコメントした。マスク着用習慣、熱中症への影響は? 厚生労働省でもマスク着脱のタイミングを公表しているが、日本では屋外でのマスク不要論がなかなか浸透しないのが現状である。しかし、マスクをしていると熱中症リスクも上がるのではという問題もある。これについてガイドライン編集委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター)は、「多数の論文をレビューして検討しているが、マスク着用により熱中症の発症が増えたという報告は現時点ではない。しかし、マスク着用が熱中症リスクになる可能性はあるため、人混みの中ではマスクを着用し、屋外で運動を行う際はマスクを外すなどのメリハリのある行動が良い」と説明した。熱中症という災害の再来か 今年5月時点ですでに全国の熱中症による救急搬送患者は前年を約1,000人も上回る2,668人に上り、東京・大阪・福岡などの都心部では前年の約2倍もの人が発症している。コロナ流行前の2018年にも同様の気候条件で、日本救急医学会が緊急宣言を発令するほどの災害レベルの酷暑が続き全国の熱中症による死者数が1,288人に上った。今夏はそれに匹敵もしくは上回る可能性も指摘されており、「医療者から患者への啓発も重要」と横堀氏らは訴える。熱中症リスクの高い熱中症弱者には高齢者はもちろんのこと、「既往歴や経済状況なども視野に入れて注意すべきなので見逃さないで欲しい」と同氏は強調した。<熱中症弱者>・既往歴:高血圧症(利尿薬を服用者[脱水を招く]、降圧薬[心機能抑制]、糖尿病[尿糖による多尿])、脳卒中後遺症を有する者、認知症患者[対応しない/できない]・日常生活にハンディキャップを有する者(活動性が低く暑熱順化が不十分)、独居・経済的弱者(エアコン設置なし、電気代の支払い、悪い住居環境、低栄養状態) 日本救急医学会では医療者向けに、判定が難しかった熱中症の重症度を正確化する重症度予測スコアを救急搬送トリアージアプリ『Join Triage』に組み込んだ熱中症応急処置・診断支援アプリを開発しHP上に公開しているほか、前述で紹介した「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」の作成や熱中症の実態調査を2005年より報告しているので、それらが診療時の一助になるのではないだろうか。

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血圧コントロールのため慢性心不全治療の見直しを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第47回

 今回は、心不全患者の降圧薬の処方提案について紹介します。高血圧が理由でデイサービスの利用に影響が生じた場合は降圧だけに着目しがちですが、慢性心不全の標準治療薬を見直して心不全そのものをコントロールすることで、血圧やうっ血などの改善も兼ねられます。患者情報70歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患慢性心不全(HFrEF)、心房細動、狭心症、高血圧服薬管理施設管理処方内容1.クロピドグレル錠75mg 1錠 朝食後2.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 朝食後3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠15mg 1錠 朝食後4.カンデサルタン錠4mg 1錠 朝食後5.フロセミド錠20mg 1錠 朝食後6.アトルバスタチン錠5mg 1錠 朝食後7.カルベジロール錠2.5mg 1錠 朝食後8.スピロノラクトン錠25mg 1錠 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、最近は収縮期血圧が170~180台と高値が持続するようになり、下腿浮腫も増強したことからフロセミド錠20mgが開始となりました。下腿浮腫は軽減しましたが、血圧は高値で横ばいの状態が続き、デイサービスの利用や入浴の制限などがかかったことから、施設スタッフより医師に降圧薬追加の依頼がありました。そこで、医師よりCa拮抗薬を追加しようと思っているがどの薬がいいか、と相談がありました。確かに血圧だけを下げるのであればCa拮抗薬が妥当ですが、現在の患者さんの状態や治療薬などから、ほかの薬剤でうまくコントロールできないか検討することにしました。まず、基礎疾患とその治療をみると、HFrEFの治療として標準治療薬であるARBのカンデサルタン、β遮断薬のカルベジロール、MR拮抗薬のスピロノラクトンを服用しています。また、下腿のうっ血治療として直近でフロセミド錠が追加されています。現行の薬剤の増量やCa拮抗薬の追加によって降圧を図るという方法もありますが、うっ血症状が最近現れるようになったことから心不全治療薬の再考も選択肢となります。「2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」の治療アルゴリズムのとおり、ARBからARNIへ基本薬の変更を行うことは、血圧のコントロールに加え、心不全の管理としても有効ではないかと考えました。処方提案と経過医師に、「Ca拮抗薬の追加も選択肢の1つですが、降圧とともにうっ血症状の管理が必要なため、心不全管理の観点からカンデサルタンをARNIのサクビトリルバルサルタンに変更してみるのはどうですか」と提案しました。心不全診療ガイドラインの改訂についてはPDFファイルでその場で医師と共有してARNIの位置づけを再確認し、提案内容で2週間様子をみようと承諾を得ることができました。翌日の朝よりカンデサルタンからサクビトリルバルサルタン100mg 朝食後に切り替えとなり、開始4日目から血圧は130/80台で安定するようになりました。その後も過度に血圧が下がることはなく、下腿浮腫の増悪や体重増加もなく経過は安定しています。日本循環器学会 / 日本心不全学会.2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版

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第110回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、「デジタル薬」が効く人効かない人の微妙な線引き(後編)

日医・中川会長不出馬、政権と日医との対立構造も変化かこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週末、大きなニュースが飛び込んで来ました。日本医師会の中川 俊男会長が6月に予定される会長選に立候補しない意向を周囲に伝えたことがわかったのです。中川会長と日医については、本連載で幾度も取り上げて来ました。今年に入ってからも、「第107回 会長選前に日医で内紛勃発、リフィル処方箋導入で松原副会長が中川会長を批判」「第108回 『かかりつけ医』の制度化めぐり、日本医師会と財務省の攻防本格化」などで、2022年診療報酬改定を機に勃発した日医執行部内部での内紛や、財務省の力が増す中での日医の立ち位置の難しさなどについて書きました。中川会長は、中央社会保険医療協議会委員の頃から強面で、政策通を自認していました。もっとも医師の利益だけを重視する発言は昔から有名で、そのスタンスはコロナ禍となっても変わりませんでした。しかし、「第92回 改定率で面目保つも『リフィル処方』導入で財務省に“負け”た日医・中川会長」でも書いたように、リフィル処方を執行部の了解も得ずに飲んでしまったことが致命傷となりました。医師の利益よりも、権力にしがみつきたいという私欲が、日医執行部の面々をも呆れさせたのかもしれません。いったん飲んでしまってから、リフィル処方に反対する姿勢を見せてはいましたが、悪あがきのようにも映りました。結局、国民と政権からそっぽを向かれ、日医内部からもそっぽを向かれた格好です。“お山の大将”のまま日医会長になったものの、その“大将”ぶりを変えずリーダーシップを取り続けた結果、失脚してしまったというわけです。5月23日に開いた記者会見で不出馬を正式表明した中川会長は、「出馬しないことで日本医師会の分断を回避し、一致団結して夏の参院選に向かうことができるのであれば本望」と語ったとのことです。また、「強権的だったとの一部批判があった。反省している」とも述べたそうです。5月25日時点で会長選に出馬を表明しているのは日本医師会副会長の松原 謙二氏と日本医師会常任理事の松本 吉郎氏です。このうち優勢と言われる松本氏は前回会長選で敗れた横倉 義武氏(前日本医師会会長)の陣営の一員でした。仮に松本氏が新会長となり、政界ともパイプが太かった横倉氏の“路線”、“政策”を引き継ぐとしたら、政権と日医との対立構造にも少しは変化が出てくるかもしれません。DTxに対する素朴な疑問をさらに深掘りさて、先週の続きです。前回は、高血圧治療用の「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の製造販売承認(薬事承認)取得を機に盛り上がりを見せる「デジタル薬=DTx(Digital Therapeutics)」に対する素朴な疑問について書きました。今週はその疑問をもう少し深掘りしてみます。前回詳しく書いたように、「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の臨床試験では、主要評価項目であるABPM (24時間自由行動下血圧測定)による24時間のSBP(収縮期血圧)が、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した「介入群」と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するのみの「対照群」を比較評価した結果、「介入群」の方が有意な改善を示した、とのことでした。もっとも、「有意な改善」とは言うものの、血圧の変化量の群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]で、素人目には劇的というほどではありませんでした。「スマホアプリにうまく順応して素直に行動を変えられる人ならいいが、頑固でアプリのアドバイスにもなかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか」という私の素朴な疑問に対し、DTxの開発に詳しい知人の記者は「行動変容を促すDTxは、アプリを使用するだけでなく、アプリの提案を基に患者自身が行動を起こす必要がある。通常の薬剤の“服用”よりもアドヒアランスのハードルがとても高く、臨床試験で目に見える効果を出すのが難しいと言われている」と教えてくれました。「なるほど」と思い、少し調べてみたのですが、DTxの臨床試験は、国内外でなかなか難しい状況にあることがわかってきました。大日本住友製薬は2型糖尿病管理指導用のアプリの開発を中止DTxの開発は国内外で活発化しています。対象となっている疾患領域も糖尿病、うつ病、不眠症、アルコール依存症とさまざまです。そんな中、開発に頓挫したケースもみられます。たとえば、大日本住友製薬は、日本で2型糖尿病患者を対象に第III相臨床試験を実施していたDTxの開発を2022年1月に中止しています。同DTxは、スタートアップのSave Medicalと共同開発していた2型糖尿病管理指導用のアプリです。食事や運動、体重といった生活習慣や服薬や血圧、血糖値の指標などをアプリで管理することで、患者の行動変容を促し、2型糖尿病患者の臨床的指標を改善することを目指していました。しかし、第III相臨床試験の結果、主要評価項目であるHbA1cのベースラインからの変化量が未達となり、開発は中止されました。デジタル流行りの昨今、デジタル治療の現状については、一般メディアも専門メディアも甘口の記事が多いですが、日経バイオテクは今年3月22日付の「あの『BlueStar』に学ぶ、デジタル治療の臨床開発の難しさ」というタイトルで、辛口の分析記事を掲載しています。その記事は大日本住友製薬のDTx開発断念について、「第3相のデータの詳細は明らかではないが、大日本住友製薬の幹部は、『被験者の組み入れ基準などが厳密にコントロールされていなかったことなどが課題かもしれない』と明かしており、被験者によって効果が認められた患者とそうでない患者がいた可能性がありそうだ」と書いています。臨床試験とは、良いデータを出すことが目的ではなく、その“薬”が効くかどうかを証明することが目的のはずです。しかし、ともすれば開発者は、良いデータを出すために恣意的に臨床試験をデザインすることがあります。DTxの場合であれば、対照群も含めて「アプリ治療に反応しやすい人」だけを選んでおけば、良好な結果を出しやすくなるはずです。ただ、そうした臨床試験の結果をもって「効く」と言ってしまっていいのか、難しい問題です。治験の被検者を厳格に選んでいたBlueStar先程の日経バイオテクの記事は、DTxの成功例として知られる米Welldoc社の糖尿病治療用アプリ「BlueStar」にも切り込んでいます。BlueStarとは、DTxの成功例として知られるWelldoc社の糖尿病治療用アプリのことです。米食品医薬品局(FDA)の認可を2010年8月に受けており、同社と提携したアステラス製薬が日本と一部アジア地域での共同開発と製品化を進めています。同記事によれば、2008年から行われたBlueStarの2型糖尿病患者に対する臨床試験では、標準治療群と、標準治療にアプリを上乗せした群で有意差が出た(HbA1c値は対照群では0.7%の低下に留まったが、標準治療にアプリと医師による意思決定支援を上乗せした群では1.9%低下)ものの、被検者登録の段階で2度にわたって患者の同意を取るよう医師に求めるという、極めて厳格なセレクションが行われていたとのことです。最初2,602例をスクリーニングの対象としたものの、最終的に2度の同意手続きに反応のあった163例が被験者として登録されたとのことです。同記事は「被験者登録の過程で、結果的にアプリの効果が得られやすい患者が登録されていた、という可能性も否定できない」と書いています。また、同記事は、カナダにおける多施設でのランダム化対照試験では有意差が示されなかった、とも書いています。なお、アステラス製薬はBlueStarの臨床試験を日本でまだ開始していません。CureAppは「降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」にDTxのパイオニアであるBlueStarですら、相当厳格な対象患者絞り込みによって、有意差のある結果を出していたらしいという事実は、万人に効くようなDTxの開発は相当困難であることを示唆しています。逆に言えば、「こういう性格や行動パターンの人には効く」という明確な線引きが行われて、臨床試験にもそれが反映されていれば、「効能又は効果」にその旨が記載されることで、本当に効く人だけに処方されることになります。私の素朴な疑問もこれで解消です。ただ、現状、DTxの臨床試験の対象患者選びはある意味、ブラックボックス化しているようです。たとえば、PMDAが先日公開した「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の審議結果報告書1)によれば、このアプリの臨床試験の対象患者は「20歳以上65歳未満の降圧薬による内服治療を受けていないI度又はII度の本態性高血圧患者のうち、 食事・運動療法等の生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」と書かれていますが、「降圧効果を十分に期待できる」をどう判断したかについては書かれていません。なお、臨床試験の同意取得症例は946例で、うち登録例399例(治験治療実施例390例)、未登録例547例となっています。市場に出る前に効く人と効かない人の線引きを国はDTxをはじめとするプログラム医療機器(SaMD)の普及・定着に相当前のめりになっている印象です。2022年度診療報酬改定では、プログラム医療機器を使用した医学管理を行った場合に算定する「プログラム医療機器等医学管理加算」の項目が新設されました。また、3月30日のデジタル臨時行政調査会で、岸田 文雄総理大臣は医療や介護のデジタル化の推進策を取りまとめるよう規制改革推進会議に指示、同会議ではプログラム医療機器の承認審査の在り方も検討される予定です。先週、5月18日には、自民党の「医療・ヘルスケア産業の新時代を創る議員の会」(ヘルステック推進議員連盟、 田村憲久会長)がデジタルヘルス推進に向けた提言を取りまとめており、この中でもプログラム医療機器の重要性が強調され、 利活用に向けた環境整備を求めています。しかし、デジタルは万能ではありません。効果が微妙なDTxがどんどん市場に出ていっても、迷惑を被るのは患者です。「市販後調査できちんと評価」という声もあるようですが、むしろ市場に出る前に効く人と効かない人の線引きをきちんとすることの方が重要ではないでしょうか。鳴り物入りのDTxですが、医療費の無駄遣いにならないことを願うばかりです。参考1)CureApp HT 高血圧治療補助アプリ 審議結果報告書/PMDA

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高血圧合併妊娠または妊娠高血圧症の妊婦、自己血圧測定は有用か?/JAMA

 高血圧合併妊娠または妊娠高血圧症の妊婦において、遠隔モニタリングによる自己血圧測定は通常ケアと比較して、臨床的高血圧の有意な改善をもたらすことはなかった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが、無作為化非盲検臨床試験「Blood PressureMonitoring in High Risk Pregnancy to Improve the Detection and Monitoring of Hypertension 2 trial:BUMP 2試験」の結果を報告した。高血圧の不十分な管理は、妊産婦死亡の重要な要因であるが、妊婦および乳児の臨床転帰改善に対する妊娠中の自己血圧測定の役割は不明であった。JAMA誌2022年5月3日号掲載の報告。高血圧合併妊娠/妊娠高血圧症の妊婦850例、自己血圧測定+通常ケアvs.通常ケア 研究グループは2018年11月~2019年9月の期間に、英国の2次医療機関15施設の産科病棟において、18歳以上で、高血圧合併妊娠(登録時または妊娠20週以前から認められる持続性の収縮期血圧140mmHg以上および/または拡張期血圧90mmHg以上、または降圧治療中と定義)の妊娠37週未満の妊婦、または妊娠高血圧症候群(妊娠20週以降に認められる持続性の収縮期血圧140mmHg以上および/または拡張期血圧90mmHg以上と定義)の妊娠20~37週の妊婦を、遠隔モニタリングによる自己血圧測定+通常ケア(介入群)、または通常ケアのみ(通常ケア群)のいずれかの群に無作為に割り付けた(追跡期間終了2020年5月)。 主要評価項目は、医療従事者が測定した収縮期血圧の平均値(無作為化1日後~出産日前日までの平均値)の群間差である。 BUMP 2試験に直接登録された600例、ならびにBUMP 1試験で高血圧を発症しBUMP 2試験に移行した250例、計850例が介入群(430例)または通常ケア群(420例)に割り付けられた。臨床的に測定した無作為化から出産までの平均収縮期血圧、両群で有意差なし 無作為化された850例の内訳は、高血圧合併妊娠が454例(平均年齢36歳、登録時平均妊娠20週)、妊娠高血圧症が396例(平均年齢34歳、登録時平均妊娠33週)で、主要評価項目の評価を完遂したのはそれぞれ444例(97.8%)および377例(95.2%)であった。 高血圧合併妊娠コホートにおいて、主要評価項目の平均収縮期血圧は介入群133.8mmHg、通常ケア群133.6mmHgであり、両群間に有意差は認められなかった(補正後平均差:0.03mmHg、95%信頼区間[CI]:-1.73~1.79)。妊娠高血圧症コホートでも同様の結果であった(137.6mmHg vs.137.2mmHg、補正後平均差:-0.03mmHg、95%CI:-2.29~2.24)。 重篤な有害事象は、介入群で8例(各コホート4例)、通常ケア群で3例(高血圧合併妊娠コホート2例、妊娠高血圧症コホート1例)に認められた。

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第109回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、「デジタル薬」が効く人・効かない人の微妙な線引き(前編)

官民こぞってデジタル、デジタルこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。世の中、デジタル流行りです。デジタル庁発足の前後くらいから、官民こぞってデジタル、デジタル(あるいはDX)と言い始めた印象があります。デジタル化はまるで世の中の不便や非効率をすべて解決できる“魔法の薬”のように(とくにデジタルに弱い人々=政治家などから)捉えられているようです。スマートフォンやインターネットの世界の相当な部分をGAFAにやられてしまってから、デジタル化推進に力を入れ出す国もどうかと思いますが、さすがにこの流れに乗っておかないとまずい、と国も企業も考えているのでしょう。医療の世界も例外ではありません。国だけではなくコンサルタントやICT関連メーカーなどが、さかんに「医療DX推進」を喧伝しています。自民党の社会保障制度調査会・デジタル社会椎進本部「健康・医療情報システム推進合同プロジェクトチーム」は5月13日、 全国医療情報プラットフォームの創設、 電子カルデ情報の標準化、 診療報酬改定DXを柱とする提言を取りまとめました。これらを椎進する方針を「医療DX令和ビジョン2030」と名付け、首相を本部長とする「医療DX椎進本部(仮称)」を設置するよう求めたとのことです。「電子的保健医療情報活用加算」を新設で患者負担増えるしかし、これまでの状況を見ても、その前途は多難としか言いようがありません。デジタル化の一環として、国は「マイナ保険証」を推進しようとしていますが、普及を目的として今年4月の診療報酬改定で「電子的保健医療情報活用加算」を新設したところ、この保険証をわざわざつくった患者の自己負担が増える事態となり反発を招いています。医療機関の設備投資や手間を考えての報酬設定でしたが、肝心の患者は二の次にされた格好です。マイナンバーカードを取得し、保険証利用の登録もした、という奇特な人の医療費の自己負担を逆に増やすとは……。気が遠くなるようなマイナンバーカード取得の手続きの面倒さを思うと、考えられない“仕打ち”です。4月13日に成立した改正薬機等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって、電子処方箋システムの整備も始まりますが、こちらも今から相当な混乱が予想されます。おそらく政治家のほとんどは自分でマイナーバーカードの取得や、マイナポイントの登録申請などやったことないのでしょう。現場の煩雑さ、大変さも知らないで、安易なポンチ絵で説明される政策の普及・定着が覚束ないのは当然です。デジタル化以前の問題と言えます。さて今回は、デジタルつながりということで、最近流行りのスマホアプリなどで病気の治療を行う「デジタル薬」について書いてみたいと思います。「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」薬事承認を取得連休直前の4月27日、株式会社CureAppはメディア向けのオンラインセミナーで、高血圧治療用の「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の製造販売承認(薬事承認)を4月26日に取得したことを明らかにしました。高血圧治療の領域で医師が処方する「デジタル薬」の薬事承認取得は世界初とのことです。同社は2022年中の保険適用と上市を目指すとしています。「デジタル薬」とは、スマホアプリやゲーム、デジタル機器など、ソフトウェアを活用して治療を行うデジタル療法のことです。日本では2014年の薬機法改正で、医療用ソフトウェアが薬事承認規制の対象となったことを契機として開発が本格化しました。日本においては販売に当たって薬事承認が必要となるものは「プログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD(サムディ)」、それ以外は「Non-Software as a Medical Device:Non-SaMD (ノンサムディ)」に分類されます。薬事承認が必要なSaMDのうち、治療用アプリなど、疾患の治療を目的としたものは「デジタル治療(Digital Therapeutics:DTx)」と呼ばれており、このDTxがいわゆるデジタル薬です(SaMDにはこの他に診断機器もあります)。ということで、CureAppの治療用アプリ「高血圧症治療補助プログラム」は、正式には「SaMDの中のDTx」という分類になります。ニコチン依存症の治療用アプリに次ぐ国内2番目のDTx国内で初めて実用化されたDTxは皆さんご存知のCureAppのニコチン依存症の治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」です。2020年12月に保険適用されて販売が開始されました。ただ、同アプリに併用することになっている禁煙補助薬のバレニクリン(国内商品名:チャンピックス)の一部製品から、発がん性のリスクを高める可能性があるとされるN-ニトロソバレニクリンが社内基準を超えて検出されたため、2021年6月から出荷停止となり、同アプリの使用は難しくなっているようです(ファイザーは2021年11月に「出荷再開は早くても2022年後半以降」と発表)。これに続く国内2番目のDTxが、今回薬事承認を取得した高血圧治療用の「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」というわけです。生活習慣の行動変容を促し、正しい生活習慣の獲得をサポート同アプリは、スマートフォンを介して患者に生活習慣の行動変容を促し、正しい生活習慣の獲得をサポートすることで、継続的な生活習慣の修正を実現、減塩や減量などを通じて血圧の低下という治療効果を得る、とされています。具体的には、医師が患者に同アプリにログインするための「処方コード」を提供。患者がアプリにログインすると、血圧計と連動させて血圧を記録したり、生活習慣を質問形式やアプリ内のキャラクターとの会話などでモニタリングしたりなど、さまざまなサービスを利用できるようになります。そして、個別化された治療ガイダンス(患者が入力した情報に応じた食事、運動、睡眠、飲酒などに関する知識や行動改善を働きかける情報)をスマートフォンを介して直接患者に提供することで、行動変容を促す仕組みです。処方した医師の側も、医師用アプリを使うことで患者の日々の生活習慣の修正状況が確認できるため、診療の効率化にもつながるとされています。主要評価項目はABPMによる24時間の収縮期血圧今回の薬事承認は、360人程度の患者を対象とした臨床第III相試験の結果に某づくとしています。欧州心臓病学会で発表されたデータや、PMDAで公開された添付文書1)等によれば、治験の対象者は20歳以上65歳未満の男女で本態性高血圧症の患者。ABPM(24時間自由行動下血圧測定)による24時間収縮期血圧が130mmHg以上で、直近3ヵ月以上降圧薬治療を受けていないことが条件となっています。主要評価項目はABPMによる24時間のSBP(収縮期血圧)で、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した「介入群」と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するだけの「対照群」を比較評価。介入群の方が有意な改善を示したとのことです。添付文書によれば、介入群の血圧はベースライン時と12週または中止時点の比較で144.3 ± 10.43mmHgが137.4 ± 11.58mmHgに下がり、変化量は-6.9 ± 10.70(n=178)。一方、対照群の血圧は144.9 ± 10.44mmHgが139.5 ± 12.31mmHgに下がり変化量は-4.7 ± 10.32(n=170)。群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]となっています。なお、今回の薬事承認の了承に当たっては、「承認後1年経過するごとに、市販後の有効性に関する情報を収集し、有効性が維持されていることを医薬品医療機器総合機構(PMDA)宛てに報告すること」という条件が付けられています。DTxに対する素朴な疑問さて、「有意な改善」とは言うものの、血圧の変化量を見ると、劇的というほどではなく微妙な感じもします。この数字を見て、素朴な疑問が頭をもたげました。それは、こうしたスマホアプリに順応して素直に行動を変えられる人ならよいが、頑固でアプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか、ということです。おそらく臨床試験では、対照群も含めてアプリに順応し、アドバイスも受け入れ易い人を選んでいると思われます。それでこの成績だとしたら、本態性高血圧全体の患者で考えると、治療効果は相当低くなってしまうのではないでしょうか。こうした疑問をデジタル薬の開発に詳しい知人の記者にぶつけてみたところ、「そのとおり。行動変容を促すDTxは、アプリを使用するだけでなく、アプリの提案を基に患者自身が行動を起こす必要がある。通常の薬剤の“服用”よりもアドヒアランスのハードルがとても高く、臨床試験で目に見える効果を出すのが難しいと言われている」との答えでした。実際、調べてみると、DTxの臨床試験は、国内外でなかなか難しい状況にあるようです。「これからはDTxの時代だ!」「治療用アプリは普及期に入る」といった声も聞こえてきますが、国が進めようとしている医療DX同様、こちらの前途も洋々とは言えないようです。(この項続く)参考1)CureApp HT 高血圧治療補助アプリ/PMDA

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高血圧合併妊娠において、非重症域の高血圧症の妊婦、目標<140/90mmHgの積極的治療が有用(解説:三戸麻子氏)

 これまで、母体死亡等の重篤な合併症を防ぐ目的から、160/110(105)mmHg以上の重症域の高血圧に対しては、降圧加療を行うことは共通の認識があった。しかし、140/90mmHg以上160/110(105)mmHg未満の非重症域の高血圧に対する治療方針は、一定していなかった。その理由は、妊娠中の降圧は母体の重症高血圧への移行を防ぐものの、他の母児合併症を改善させられるのかどうか、また児への血流不全による胎児発育遅延の懸念や、降圧薬を使用すること自体による児への悪影響が懸念されていたからである。2015年にMageeらによるControl of Hypertension in Pregnancy Study(CHIPS)の結果が報告され、妊娠中の拡張期血圧85mmHgを目標に降圧した群(tight control群)では、拡張期血圧100mmHgを目標に降圧した群(less tight control群)と比較して、児への悪影響を認めることなく、母体の重症高血圧への移行を有意に防げたことが示された。また、その後の追加解析で、重症高血圧を認めること自体が、母体だけではなくpregnancy lossや児の48時間以上のNICU入室といった複合アウトカムと関連していることが示された。しかし米国は、非重症域の高血圧に対し降圧加療を行うことが、母児両方にメリットがあることを示すには、CHIPStrialではパワー不足であるとし、降圧開始基準を重症高血圧に据え置いていた。 今回発表された、米国発のCHAPstudyの結果では、高血圧合併妊娠女性を対象とし、140/90mmHg未満を目指して降圧するactive treatment群が、160/105mmHgになって初めて治療を開始する従来治療群と比較して、重症高血圧または臓器障害を認める妊娠高血圧腎症(preeclampsia with severe features)/35週未満の早産/胎盤早期剥離/児死亡の複合アウトカムを有意に改善させた。また、安全性アウトカムである児のsmall for gestational ageも両群で差を認めなかった。CHIPStrialでは認められなかった、preeclampsia with severe featuresや35週未満の早産予防に対しても、積極的な降圧の効果が認められたのは特筆すべきである。これにより、米国における高血圧合併妊娠の妊娠中の降圧開始血圧/目標血圧値が引き下げられることが予想される。 本研究の対象集団は、主にnon hispanic black、non hispanic white、hispanicであり、アジア人種に関しての記載はない。また、ベースラインのBMIが両群ともに37であり、本邦の特徴とは異なることから、注意が必要である。また、本研究で使用された降圧薬は、ファーストラインがラベタロールとニフェジピン、追加投与が必要な場合はメチルドパ、アムロジピンが使用されている。

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腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性(解説:冨山博史氏)

概要 既報のSPYRAL HTN-ON MED試験は、試験開始前の少なくとも6週間、安定した用量で1~3種類の降圧薬を服用しても診察室収縮期血圧が150~180mmHgであり、かつ24時間平均収縮期血圧が140~170mmHgの範疇の症例を対象に、無作為、単盲検、Shamコントロール試験として実施された1)。同試験では、術後6ヵ月の腎交感神経除神経術の有意な降圧効果を報告している1)。今回の試験(ON-MED長期試験)は、その後の追跡研究であり、SPYRAL HTN-ON MED試験対象例の試験開始時、術後24ヵ月、36ヵ月の診察室血圧、24時間平均血圧を評価し、腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性を検証した。 今回のON-MED長期試験では、腎交感神経除神経術実施群では、36ヵ月後に実施された24時間血圧評価では、Shamコントロール群と比較して、午前平均収縮期血圧は11.0mmHg、夜間平均収縮期血圧は11.8mmHgと有意に低値を示した。両群間の降圧薬処方数は平均3であり、有意差は認めなかった。臨床的意義 1.基礎研究では、腎交感神経除神経術後の腎交感神経再生が示されている。この再生は腎交感神経除神経術後長期の降圧作用を減弱させることが懸念されていた。しかし、本ON-MED長期試験では36ヵ月後も腎交感神経除神経術が有意な降圧効果を示すことが示された。また、腎交感神経除神経術後の腎動脈狭窄も確認されなかった。 2.これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、Shamコントロール群と比較して、術後6ヵ月に収縮期血圧4~8mmHg前後の降圧効果を示した。一方、降圧薬による降圧効果は一般に収縮期血圧10~15mmHgであり、腎交感神経除神経術の降圧効果の有効性の限界が指摘されていた。しかし、本ON-MED長期試験の降圧度は収縮期血圧11mmHgであり、腎交感神経除神経術の長期降圧効果は降圧薬治療に近い有効性を有する可能性が示唆された。試験の限界 1.症例数が80例と比較的少ない。 2.本試験のプロトコールでは、試験期間中の降圧治療の目標は、診察室収縮期血圧で140mmHg未満であった。しかし、ON-MED長期試験における36ヵ月後の診察室収縮期血圧は除神経群で143mmHg、Shamコントロール群で151mmHgであった(論文、表1、図2より推察)。また、両群間の降圧薬処方数は平均3であった。ゆえに、両群とも十分な降圧薬処方が実施されなかった可能性がある。 3.SPYRAL試験では、対照群が降圧薬を服用するON-MED試験1)と、服用しないOFF-MED試験2)が実施されている。今回のON-MED長期試験は、このON-MED試験において腎交感神経除神経術後の長期(36ヵ月)降圧効果が、Shamコントロール群に比して24時間平均収縮期血圧で10mmHg大きいことを示した。しかし、ON-MED試験の術後6ヵ月の降圧はShamコントロール群に比し7.4mmHg低値を示し1)、OFF-MED試験の術後6ヵ月の降圧度の両群の差5mmHgより大きかった2)。上述のごとく、これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、術後6ヵ月にShamコントロール群と比較して、24時間平均収縮期血圧で5mmHg前後の降圧効果を示し、本ON-MED長期試験の術後6ヵ月の降圧効果より小さい。ゆえに、ON-MED長期試験の結果のみでは、腎交感神経除神経術の長期降圧効果が降圧薬に近い有効性を有するかは結論できない。

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非重症の高血圧症の妊婦、目標<140/90mmHgの積極的治療が有用/NEJM

 <160/100mmHgの非重症の高血圧症の妊婦では、血圧目標値<140/90mmHgの介入戦略が、重症高血圧症となった場合のみ介入する戦略よりも、在胎不当過小児(SGA児)のリスクを増大することなく良好な妊娠アウトカムと関連することが示された。米国・アラバマ大学のAlan T. Tita氏らが、非盲検多施設共同無作為化試験の結果を報告した。妊娠中の非重症の高血圧症治療の有益性と安全性は、明らかになっておらず、血圧目標値<140/90mmHgの介入戦略が、胎児の成長を損なうことなく有害妊娠アウトカムを低減するのかについてデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2022年4月2日号掲載の報告。重症の子癇前症・妊娠35週未満での医原性の早産の発生などを評価 研究グループは、非重症の高血圧症の単胎児妊娠23週未満の妊婦を、妊娠中の使用が推奨されている降圧薬投与(積極治療)群または重症高血圧症(収縮期血圧160mmHg以上、拡張期血圧105mmHg以上)でない限り降圧薬投与は行わない(対照)群に無作為化し追跡評価した。 主要アウトカムは、重症の子癇前症・妊娠35週未満での医原性の早産・胎盤早期剥離または胎児/新生児死亡の複合とした。安全性アウトカムは、SGA児の出生体重(在胎期間別出生時体格標準よりも10パーセンタイル未満)。また、副次アウトカムは、新生児または母体の重篤な合併症・子癇前症・早産の複合などであった。積極治療群のアウトカム発生のリスク比0.82 2015年9月~2021年3月に女性2万9,772例がスクリーニングを受け、試験には計2,408例が登録され無作為化を受けた(積極治療群1,208例、対照群1,200例)。両群の特性は類似しており、年齢は共に32.3歳、非重症の高血圧症が既知で降圧薬治療を受けている被験者が多数を占め(56%)、新規に非重症の高血圧症との診断を受けたのは22%であった。また、被験者の41%が在胎週数は14週未満であった。 主要アウトカムの発生は、対照群より積極治療群で有意に低かった(30.2% vs.37.0%、補正後リスク比0.82[95%信頼区間[CI]:0.74~0.92]、p<0.001)。 出生体重10パーセンタイル未満のSDA児の割合は、積極治療群11.2%、対照群10.4%であった(補正後リスク比:1.04[95%CI:0.82~1.31]、p=0.76)。また、重篤な母体合併症の発生率はそれぞれ2.1% vs.2.8%(リスク比:0.75、95%CI:0.45~1.26)、子癇前症の発生率は24.4% vs.31.1%(0.79、0.69~0.89)、早産は27.5% vs.31.4%(0.87、0.77~0.99)であった。

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腎デナベーションは有効・安全か:SPYRAL HTN-ON MED試験の3年成績/Lancet

 高周波腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し降圧薬の併用を問わず、3年間、臨床的に意味のある持続的な降圧をもたらし、安全性の懸念もなかった。ドイツ・ザールラント大学のFelix Mahfoud氏らが、無作為化シャム対照単盲検概念実証試験「SPYRAL HTN-ON MED試験」の長期追跡結果を報告した。腎デナベーションは、降圧薬服用中の患者において血圧を低下することが示されているが、無作為化試験での長期安全性および有効性に関するデータは不足していた。著者は、「高周波腎デナベーションは、高血圧患者の管理において補助的な治療手段となり得るものである」とまとめている。Lancet誌2022年4月9日号掲載の報告。降圧薬でコントロール不良の高血圧患者、腎デナベーションvs.シャム 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を登録した。適格基準を、1~3種の降圧薬を6週間以上服用している状況下で、診察室収縮期血圧(SBP)150mmHg以上180mmHg未満、診察室拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)によるSBP平均値が140mmHg以上170mmHg未満の患者とし、腎血管造影後、高周波腎デナベーション群またはシャム群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者および血圧評価者は、無作為化12ヵ月後まで盲検下に置かれ、シャム群は12ヵ月後の追跡調査来院後にクロスオーバー可とした。 主要評価項目は、術後6ヵ月時におけるABPMによる24時間平均SBPのベースライン(第2スクリーニング来院)からの変化量の治療群間差で、intention-to-treat解析を行った。長期有効性は、36ヵ月のABPMおよび診察室での血圧測定を使用して評価し、降圧薬の使用についても調査した。また、安全性は36ヵ月後まで評価した。3年後に腎デナベーションで有意に降圧、ベースラインからの変化量の群間差10mmHg 2015年6月22日~2017年6月14日の期間に、登録患者467例のうち適格基準を満たした最初の80例が、腎デナベーション群(38例)またはシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。 ABPMによる平均SBPおよびDBPは、腎デナベーション群でベースライン時から有意に低下し、降圧薬の治療強度が同等であるにもかかわらず、24ヵ月および36ヵ月時の血圧の低下はシャム群と比較して有意に大きかった。降圧薬のクラスと用量を考慮した薬剤負荷は、36ヵ月時で腎デナベーション群2.13剤(SD 1.15)、シャム群2.55剤(SD 2.19)であり(p=0.26)、腎デナベーション群で77%(24/31例)、シャム群で93%(25/27例)が36ヵ月時に服薬を継続していた。 36ヵ月時のABPMによる24時間平均SBPのベースラインからの変化量(±SD)は、腎デナベーション群(30例)で-18.7±12.4mmHg、シャム群(32例)で-8.6±14.6mmHgであった(補正後群間差:-10.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-16.6~-3.3、p=0.0039)。 また、36ヵ月時の腎デナベーション群とシャム群の群間差は、ABPMによるDBPSで-5.9mmHg(95%CI:-10.1~-1.8、p=0.0055)、朝のSBPで-11.0mmHg(-19.8~-2.1、p=0.016)、夜間のSBPで-11.8mmHg(-19.0~-4.7、p=0.0017)であった。 腎デナベーションに関連した短期または長期的な安全性の問題は確認されなかった。

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新型コロナへのイベルメクチン、RCTの結果が明らかに/NEJM

 早期に診断された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、イベルメクチンで治療してもCOVID-19進行による入院の発生率や救急外来での観察期間延長は低下しないことが、ブラジル・Pontifical Catholic University of Minas GeraisのGilmar Reis氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験「TOGETHER試験」の結果、示された。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の急性症状を呈するCOVID-19外来患者に対するイベルメクチンの有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2022年3月30日号掲載の報告。入院/救急外来受診患者でイベルメクチンvs.プラセボ 研究グループは、ブラジルの公衆衛生クリニック12施設において、COVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、50歳以上などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、イベルメクチン(400μg/kgを1日1回3日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院またはCOVID-19悪化による救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合アウトカムとした。主要評価項目のイベント発現率は14.7% vs.16.3%、有意差なし 2021年3月23日~8月6日の間に、イベルメクチン群(679例)またはプラセボ群(679例)に割り付けられた1,358例が解析に含まれた。 主要評価項目のイベントは、イベルメクチン群で100例(14.7%)、プラセボ群で111例(16.3%)確認され、相対リスクは0.90(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.70~1.16)であった。主要評価のイベント計211例のうち、171例(81.0%)が入院であった。 少なくとも1回のイベルメクチンまたはプラセボの投与を受けた患者のみを解析対象とした修正intention-to-treat解析(相対リスク:0.89、95%ベイズCrI:0.69~1.15)、ならびに割り付けられた治療のアドヒアランスが100%の患者のみを解析対象としたper-protocol解析(0.94、0.67~1.35)でも、主解析と同様の結果が得られた。 イベルメクチン投与による副次評価項目または有害事象への有意な影響は観察されなかった。

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挿管早産児へのヒドロコルチゾン、気管支肺異形成症を抑制せず/NEJM

 気管支肺異形成症は超早産の生存児の約半数にみられる合併症で、機械的人工換気による炎症もその発症に寄与している可能性があるという。米国・ニューメキシコ大学健康科学センターのKristi L. Watterberg氏らEunice Kennedy Shriver国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)新生児研究ネットワーク(NRN)は、出生後に挿管を受けた早産児を対象に出生から2週以降にヒドロコルチゾンの10日間漸減治療を開始する方法の有効性を検討し、プラセボと比較して中等度または重度の気管支肺異形成症のない生存割合を改善しなかったと報告した。研究の詳細はNEJM誌2022年3月24日号に掲載された。米国19施設のプラセボ対照無作為化試験 本研究は、米国の19施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2011年8月22日~2018年2月4日の期間に新生児の登録が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 対象は、在胎週数が30週未満と推定され、生後14~28日に少なくとも7日間、気管内チューブによる機械的人工換気を受けた乳児であった。これらの乳児が、ヒドロコルチゾン(4mg/kg体重/日で開始し、10日間で漸減)を静脈内あるいは経口投与する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。抜管の閾値が規定され、抜管はこれに基づき担当医の裁量で行われた。 有効性の主要アウトカムは、最終月経から36週の時点における中等度または重度の気管支肺異形成症(酸素飽和度>90%の維持に酸素補給または陽圧換気、あるいはこれら両方を使用)のない生存であった。安全性の主要アウトカムは、修正月齢22~26ヵ月時の中等度または重度の神経発達障害(Bayley乳幼児発達検査第3版[Bayley-III]の認知複合スコア<85点など)のない生存とされた。降圧薬治療を要する高血圧の頻度が高い 800例の乳児が登録され、ヒドロコルチゾン群に398例、プラセボ群に402例が割り付けられた。全体の平均(±SD)出生時体重は715±167g、平均在胎週数は24.9±1.5週であった。プラセボ群で男児が多かった(46.7% vs.58.5%)が、これ以外のベースラインの背景因子に大きな差は認められなかった。 最終月経後36週時の中等度または重度の気管支肺異形成症のない生存割合は、ヒドロコルチゾン群が16.6%(66/398例)、プラセボ群は13.2%(53/402例)であり、両群間に差はみられなかった(補正後率比:1.27、95%信頼区間[CI]:0.93~1.74)。また、36週までの死亡(ヒドロコルチゾン群4.8% vs.プラセボ群7.0%、補正後率比:0.66、95%CI:0.38~1.16)および中等度または重度の気管支肺異形成症の発生(82.6% vs.85.8%、0.96、0.91~1.02)にも差はなかった。 2年後のアウトカムのデータは91.0%の乳児で得られた。22~26ヵ月時の中等度または重度の神経発達障害のない生存割合は、ヒドロコルチゾン群が36.9%(132/358例)、プラセボ群は37.3%(134/359例)であり、両群間に差はなかった(補正後率比:0.98、95%CI:0.81~1.18)。 治療期間中の抜管成功の割合はヒドロコルチゾン群で高かった(44.7% vs.33.6%、補正後率比:1.54、95%CI:1.23~1.93)。また、機械的人工換気の日数中央値は、最終月経後36週以内(37日vs.40日、群間差中央値:-3日、95%CI:-5~-1)および生後120日以内(37日vs.41日、-4日、-7~-1)のいずれもヒドロコルチゾン群で良好だったが、36週以内の抜管乳児数や総酸素補給期間、入院期間には差がなかった。 一方、降圧薬治療を要する高血圧はヒドロコルチゾン群で多かった(4.3% vs.1.0%、補正後率比:4.27、95%CI:1.45~12.55)。これ以外の有害事象の頻度は両群でほぼ同等であった。プロトコル違反の割合もほぼ同等で、最も頻度が高かったのは投与または飲み忘れ(7.0% vs.8.0%)と、14日以内のデキサメタゾン投与(6.8% vs.5.7%)だった。 著者は、「大多数の乳児(634/753例、84.2%)は最終月経後36週の時点で中等度または重度の気管支肺異形成症と診断されており、これは機械的人工換気を36日以上受けた乳児に関する先行研究と同程度であった。したがって、今回の結果は、抜管が早いほど中等度または重度の気管支肺異形成症および死亡の発生は減少するとのわれわれの仮説を支持するものではなかった」としている。

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第89回 経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?

<先週の動き>1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?厚生労働省は10日、米・ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を特例承認した。日本国内では軽症者向けの経口薬としてモルヌピラビルに次ぐ2剤目となるが、作用機序は異なり、本剤は12歳以上で使用可能。臨床試験において、重症化リスクのある患者に投与した場合、非投与群に比べて入院・死亡リスクが88%減少したと報告されている。発症後5日以内の使用が推奨され、オミクロン株への効果も期待される。パキロビッドパックには5シートのPTP包装が含まれ、1シートに朝・夕服用分としてニルマトレルビル錠150mgが4錠(1回2錠)およびリトナビル錠100mgが2錠(1回1錠)で構成されている。2剤のうち、ニルマトレルビルはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬であり、HIV治療薬としても使用されるリトナビルはSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示さないが、ニルマトレルビルのCYP3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を維持させる。リトナビルは各薬物代謝酵素やトランスポーターの強力な阻害作用を有するため、パキロビッドパックでは降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬など38成分と食品1つ(セイヨウオトギリソウ)が併用禁忌とされる。しかし、注意すべき薬剤はこれにとどまらず、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しており、当面の参考になるだろう。なお、今月27日までは全国約2,000医療機関での院内処方を原則として提供され、その間で適正使用の推進に向けた情報収集が行われる見込み。配分を希望する対象の医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録し、同センターを通じて配分依頼を行う必要がある。(参考)新型コロナウイルス治療薬の特例承認について(厚労省)厚労省 ファイザーの経口新型コロナ治療薬パキロビッドを特例承認 段階的に医療現場に提供(ミクスonline)ファイザー新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに今年度の診療報酬改定について、処方箋を3回まで繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入が決定した。高血圧や糖尿病などの慢性疾患において、症状が安定した患者が継続服用している場合に対応して、医師の診療なしで薬の受け取りが可能となる。一方で、投与量に限度がある湿布薬や向精神薬などは対象外となる。なお、今回の改定では湿布の処方上限が70枚から63枚に引き下げられた。また、紹介状を持たずに大学病院などを受診した患者に対する特別負担徴収の拡大についても、初診の場合は現在の5,000円から7,000円に、再診の場合は2,500円から3,000円にそれぞれ引き上げる方針となった。実施は10月1日から。対象となる医療機関は、これまでと同様に大学病院などの特定機能病院に加えて、地域医療支援病院のうち200床以上の病院も徴収の対象となる。わが国は国際的に見ても外来受診回数が多いとされるが、高度医療を担う外来にかかりつけ医を持たない患者が受診するのを抑制するとともに、来年度から開始される外来機能報告制度を用いて基幹病院を明確化し、機能分化を促進するのが狙いと考えられる。(参考)リフィルは1回29日以内で処方箋料の減算なし(日経ドラッグインフォメーション)大病院、紹介状なしなら初診7000円 診療報酬改定(日経新聞)外来機能報告制度 高度な外来を担う基幹病院を明確化し機能分化を促進(Beyond Health)3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2022年度診療報酬改定の答申が行われ、焦点の1つだったオンライン診療の初診料は251点と、特例的対応の214点から対面診療の水準との中間程度まで引き上げられた。同様に、電話など情報通信機器を用いた再診料・外来診療料はいずれも73点とされた。これに伴い、現行のオンライン診療料(月1回71点)は廃止となる。通常診療の初再診料は据え置きとなった。これに対して、日本医師会の中川会長は「対面診療を提供できる体制を有すること」「患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他医療機関と連携して対応できる体制を有すること」が堅持されたことに言及。オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視していくとするとともに、患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には、期中であっても、すみやかに診療報酬要件の見直しを要請する考えを示した。(参考)オンライン初診料、4月から値上げへ 厚労省「診療報酬」見直し案(朝日新聞)オンライン診療に係る診療報酬について(日本医師会)中医協・22年度診療報酬改定を答申 オンライン診療で患者の受診機会増に期待 営利追及への懸念も(ミクスonline)4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁視覚障害者の就労先を保護するために、健常者向けの「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設を認めないとする厚労省の規制について、違憲性を争った訴訟の上告審の判決で、最高裁第2小法廷は7日に、視覚障害者の「自立と社会経済活動への参加を促す積極的な意義がある」として合憲であるとした。視覚障害者の団体は判決後、記者会見において「あん摩マッサージ指圧師の職は自立した社会参加の命綱。それを残すような判断が示されたことに大きな意味がある」と話した。厚労省の統計では、2020年末のあん摩マッサージ指圧師は約11万8,000人、うち視覚障害者は約2万6,000人となっている。(参考)指圧師養成、新設規制は「合憲」 最高裁初判断(日経新聞)指圧師 養成施設の設置規制 最高裁「憲法違反とはいえない」(NHK)5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ厚労省は10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、5~11歳の小児に対する新型コロナワクチン接種について議論を行い、ファイザー製ワクチンは一定の有効性が期待できるとしながらも、最終的に「努力義務」を課さない方針を正式に決めた。小児に対するファイザー製ワクチンの接種について、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUではすべての小児に対して接種を推奨している。わが国では予防接種法上の「臨時接種」に位置付けられ、小児用ワクチンは21日から各自治体に配布される。一方で、以前から努力義務の適応外とされていた妊婦への接種については、有効性や安全性のデータが確認され、妊娠後期に感染すると早産率が高くなったり、重症化リスクが高いとする報告もあることから、新たに努力義務の適用となった。(参考)新型コロナワクチンの接種について(厚労省)小児は努力義務適用外 コロナワクチン、妊婦は対象に―厚労省(時事通信)5~11歳の接種「努力義務の対象外」了承 厚労省分科会(毎日新聞)

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