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治療抵抗性高血圧、スピロノラクトン追加が有効/Lancet

 スピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)は、通常の降圧治療を受けている治療抵抗性高血圧患者への追加薬剤として高い効果を発揮することが、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのBryan Williams氏らが実施したPATHWAY-2試験で確認された。国際的なガイドラインでは、3つの推奨降圧薬(ACE阻害薬/ARB、カルシウム拮抗薬、サイアザイド系利尿薬)の最大耐用量による治療でも、目標血圧でコントロールができない場合を治療抵抗性高血圧と定義している。スピロノラクトンは治療抵抗性高血圧に有効であることが、メタ解析で示唆されているが、既存のエビデンスの質は低いとされ、他の降圧薬と比較した試験はこれまでなかったという。Lancet誌オンライン版2015年9月20日号掲載の報告。3剤とプラセボを切り換えて上乗せするクロスオーバー試験 PATHWAY-2試験は、「治療抵抗性高血圧の多くは過度のナトリウム貯留によって引き起こされ、それゆえスピロノラクトンは利尿薬以外の薬剤を追加するよりも降圧に有効である」との仮説を検証する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(英国心臓財団/国立衛生研究所の助成による)。 対象は、年齢18~79歳、最大耐用量の3剤併用療法(ACE阻害薬/ARB+カルシウム拮抗薬+サイアザイド系利尿薬)を3ヵ月以上継続しても、座位収縮期血圧≧140mmHg(糖尿病罹患者は≧135mmHg)、家庭収縮期血圧(4日で18回測定)≧130mmHgの患者とした。 これらの患者は、ベースライン時に投与されていた降圧薬に加え、スピロノラクトン(25~50mg)、ビソプロロール(5~10mg)、放出調節型ドキサゾシン(4~8mg)、プラセボの1日1回経口投与を、クロスオーバーデザインであらかじめ決められた順に施行する群に無作為に割り付けられた。 各薬剤は12週ずつ投与。低用量を6週間投与し、倍量に増量してさらに6週間投与した。耐用不能な患者は次の薬剤に移行した。ウォッシュアウト期間は設けず、試験期間はプラセボ導入期間を含め1年であった。 階層的主要評価項目として、スピロノラクトンとプラセボ間の平均家庭収縮期血圧の差を評価し、有意差がある場合はスピロノラクトンと他の2剤の投与期を合わせた家庭収縮期血圧の差を、次いでスピロノラクトンと他の個々の2剤との家庭収縮期血圧の差の評価を行った。 2009年5月15日~14年7月8日の間に、英国12ヵ所の2次医療機関および2つのプライマリケア施設で335例が登録。ベースラインの平均年齢は61.4±9.6歳、男性が69%で、家庭血圧は収縮期が147.6±13.2mmHg、拡張期が84.2±10.9mmHg、心拍数は73.3±9.9拍/分、診察室血圧はそれぞれ157.0±14.3mmHg、90.0±1.5mmHg、心拍数は77.2±12.2拍/分であった。すべての比較で良好な降圧効果、高用量で効果が高い フォローアップ不能であった21例を除く314例をintention-to-treat集団とした。285例がスピロノラクトン、282例がドキサゾシン、285例がビソプロロール、274例がプラセボの投与を受け、全治療を完遂したのは230例だった。 スピロノラクトンは、平均家庭収縮期血圧をプラセボよりもさらに8.70mmHg(95%信頼区間[CI]:7.69~9.72、p<0.0001)低下させ、有意差が認められた。 また、スピロノラクトンによる家庭収縮期血圧の降圧効果は、ドキサゾシンとビソプロロール投与期よりも4.26mmHg(95%CI:3.38~5.13、p<0.0001)大きかった。個々の薬剤との比較では、スピロノラクトンはドキサゾシンよりも4.03mmHg(同:3.02~5.04、p<0.0001)、ビソプロロールよりも4.48mmHg(同:3.46~5.50、p<0.0001)有意に低下させた。 スピロノラクトンの降圧効果は、前投与薬の種類にかかわらず、低用量よりも高用量でさらに3.86mmHg(p<0.0001)大きかった。また、全体で、219例(68.9%)が目標血圧(家庭収縮期血圧<135mmHg)を達成した。 最も有効な4th-lineの薬剤を予測するために、血漿レニン値と家庭収縮期血圧低下の関連を評価したところ、ベースラインの血漿レニン値にかかわらずスピロノラクトンの降圧効果が最も優れ、レニン値が低いほど個々の患者における降圧効果が優れる可能性が高い(逆相関)ことが示された。 スピロノラクトンによる有害事象の発現率は19%で、重篤な有害事象は2%に認められた。有害事象による治療中止は1%にみられたが、腎機能障害、高カリウム血症、女性化乳房による治療中止の頻度は他の薬剤やプラセボとの間に差はなかった。6例(2%)で、血清カリウム値が6.0mmol/Lを超えた(最大値は6.5mmol/L)が、いずれも1回のみであった。 著者は、「血漿レニン値とスピロノラクトンの降圧効果の逆相関の関係は、治療抵抗性高血圧の発症におけるナトリウム貯留の関与を示唆する」と指摘し、「本試験の知見は、今後、世界的にガイドラインの改訂や実地臨床に影響を及ぼすと考えられる」としている。

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中高年高血圧症例では足関節上腕血圧比測定を考慮する必要はあるか?(解説:冨山 博史 氏)-429

概要とコメント 本研究は、英国において1990年から2013年までプライマリケアで電子媒体に登録された、30~90歳の成人422万例の医療記録データを、前向き研究(平均観察期間7年)として解析した。前向き研究開始時に、末梢動脈疾患(PAD)非合併例は420万4,190例であり、PAD合併例は1万8,296例であった。前者では、経過中に4万4,239例(1.1%)でPADを発症し、収縮期血圧20mmHg上昇に伴い、PAD発症リスクは63%高まることが示された。 これまで血圧とPADの関係は、断面研究で検討した報告が多く1)、大規模な前向き研究が少ないため、PAD発症に対する血圧上昇のリスクとしての重要性は十分明らかでなかった。422万例を対象とした本前向き研究にて、血圧上昇がPAD発症の独立したリスクであることが示された。高血圧のPAD発症リスクとしての重要性を示す結果である。 一方、PAD合併例(1万8,296例)では、7年の経過観察中に7,760例(42.5%)で心血管イベント発症を認めた。その内訳では、従来の冠動脈疾患、脳卒中に加え、慢性腎臓病(24.4%)、心不全(14.7%)、心房細動(13.2%)の発症が多いことが新たに示された。PADでは、わが国の検討も含め20~40%の症例に腎動脈狭窄を合併することが報告されている2)。今後、こうした腎動脈狭窄のCKD発症への影響を検証する必要がある。また、PADでは血管床全体が硬化しており、中心血行動態異常が生じていると推察される。中心血行動態異常は心不全発症のリスクであり3)、今後、PADで心不全が発症する機序を明確にする必要がある。研究成果の臨床応用と限界 2007年に発表されたTASC IIでは、PAD発症リスクとしての高血圧の相対危険度(オッズ比:1.5~2)は、DM/喫煙(オッズ比:3前後)より弱いと述べている4)。本研究における重要な知見は、血圧上昇に伴うPAD発症のハザード比は70歳以上では1.4であるのに対し、40~69歳では1.8前後と上昇することである。さらに、本研究ではオッズ比は算出していないが、考察においてサブグループ解析の結果より、収縮期血圧20mmHg上昇によるPAD発症のリスクは、喫煙と同等と推察している。 一般に、PAD合併を考慮する(足関節上腕血圧比測定を考慮する)症例として、70歳以上、50~69歳でかつ喫煙または糖尿病を合併する症例が挙げられる4)。2013年、日本循環器学会「血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン」では、高血圧症例において足関節上腕血圧比測定を考慮する症例として、65歳以上、またはJSH2009脳心血管リスク層別化で高リスクの症例を推奨している5)。しかし、最近のガイドラインを踏まえても6)、どのような病態の高血圧症例で足関節上腕血圧比測定を考慮すべきか、十分に明確ではなかった。本研究の結果は、50~69歳で未治療高血圧例および血圧コントロール不良の症例においてもPAD合併を考慮し、適切な問診、下肢動脈触診を実施し、可能であれば足関節上腕血圧比を測定することの有用性を示唆する。 TASC IIでは、PAD症例は40~50%に冠動脈疾患、20~40%に脳卒中を合併すると報告している4)。本研究では7年の経過観察中に1万8,296例中3,415例(19%)で冠動脈疾患、脳卒中または心不全の発症を認めた。本結果は、PAD診断時にほかの心血管疾患合併のない症例でも、慎重な経過観察が重要であることを支持する。 本研究の限界として以下が挙げられる。 (1)PADの診断は間欠跛行で実施されているが、無症候性PAD(足関節上腕血圧比0.90未満だが無症状)の頻度は間欠跛行を有する症例の3~4倍とされる。近年、わが国を中心に、オシロメトリック法を用いて足関節上腕血圧比が簡便に測定されるようになり、無症候性PADを診断する機会が多くなってきた7)。本研究の結果をこうした無症候性PADに応用できるかは不明であり、また、疾患診断が電子記録媒体での評価であることも研究の限界である。 (2)本研究では、収縮期血圧・拡張期血圧上昇とPAD発症の関連は、正常血圧域から認められた。本研究の著者らは、血圧低下がPAD発症を予防すると推論を述べている。しかし、研究対象症例で降圧薬服用は観察開始時9.9%、終了時28.7%であり、積極的な血圧治療がPAD発症予防に有用であるかは検証できない。参考文献はこちら1)Meijer WT, et al. Arch Intern Med. 2000;160:2934-2938.2)Endo M, et al. Hypertens Res. 2010;33:911-915.3)Chirinos JA, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;60:2170-2177.4)Norgren L, et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2007;33 Suppl 1:S1-75.5)日本循環器学会ほか.循環器病の診断と治療に関するガイドライン2013(2011-2012年度合同研究班報告)血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン(JCS 2013).6)Vlachopoulos C, et al. Atherosclerosis. 2015;241:507-532.7)Koji Y, et al. Am J Cardiol. 2004;94:868-872.

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脳出血再発抑制に降圧は有効。それでもRCTは必要(解説:石上 友章 氏)-425

 マサチューセッツ総合病院のAlessandro Biffi氏らは、脳出血のサバイバー(90日以上生存者)を対象にして、その再発抑制に関する降圧治療の影響を調べて報告した。その結果、『降圧治療』および『血圧管理の質』が、脳葉型(lobular type)脳出血、非脳葉型(non-lobular type)脳出血のいずれのタイプの脳出血においても、再発抑制に有効であることが明らかになった。『血圧管理の質』については、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による脳出血の2次予防の推奨血圧(非糖尿病者:SBP<140mmHg、DBP<90mmHg、糖尿病者:SBP<130mmHg、DBP<80mmHg)を基準にして、二項変数として「適切」、「不十分」とした。 この結果は、ガイドライン遵守による降圧治療の正当性をリアルワールドの実臨床データで証明するとともに、細動脈硬化によらない脳葉型の脳アミロイド血管障害(Cerebral Amyloid Angiopathy:CAA)によるとされる脳出血であっても、降圧治療が有効であることを示すことができた。 脳内出血サバイバーを対象にした単施設のコホート試験であることから、本研究は著者らが本文中に明言するように、試験結果の解釈は仮説提示に留まっている。観察研究は、さまざまなバイアスリスク(選択バイアス、実行バイアス、検出バイアス、症例減少バイアス)を持っている。本研究では、『小脳出血』を脳葉型、非脳葉型に分類できないという理由から除外しているが、もしデータ化しているのであれば、重要な情報となりうることから、解析に含めることが望ましかった。量反応関係の証明については、『降圧・アウトカム』間に、図に示すような関係が認められているが、降圧に限定した解析では、交絡因子をどれだけ解消することができたのか疑問が残る。本研究を仮説提示に留めるとするのであれば、より多くの情報を用いて仮説化していく試みがあってもよかった。本邦でも、MINDSの診療ガイドライン作成マニュアルでは、観察研究のエビデンスの強さの評価にあたっては、『弱(C)』から始めることが推奨されている。したがって、本研究によって明らかにされたCQに対する回答は、本論文の掉尾を飾る下記の一文に集約されるだろう。“These data suggest that randomized clinical trials are needed to address the benefits and risks of stricter BP control in ICH survivor.”画像を拡大する

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冬の高齢者の血圧上昇、暖房の指導が有効

 冬季の心血管疾患による死亡率増加の原因の1つに、寒冷曝露によって引き起こされる血圧上昇がある。寒冷曝露を減らすよう、医師が家庭での暖房使用を指導することは実現可能な選択肢であるが、有効性は不明である。奈良県立医科大学の佐伯 圭吾氏らは、その有効性を調査するため、冬季にオープンラベル単純無作為化比較試験を実施した。その結果、暖房使用の指導により室内温度が有意に上昇し、高齢者の自由行動下血圧が有意に低下した。このことから、家庭の暖房に関する指導が冬季の心血管系疾患発症予防に短期的に有効であることが示唆された。Journal of hypertension誌オンライン版2015年9月12日号に掲載。 介入群の参加者には、予想される起床時刻の1時間前に、居間の暖房機器の設定温度を24℃にセットして起動することと、起床後2時間までは居間でできるだけ長く過ごすように要請した。自由行動下血圧、身体活動、起床後4時間までの室温について、ランダム切片のマルチレベル線形回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・合計359人の適格な参加者(平均年齢±SD:71.6±6.6歳)を、対照群(n=173)と介入群(n=186)に無作為に割り付けた。・年齢、性別、降圧薬、世帯収入、身体活動などの交絡因子を調整し評価したところ、介入により居間の温度は有意に上昇し(2.09℃、95%CI:1.28~2.90)、収縮期血圧および拡張期血圧は有意に減少した(4.43/2.33mmHg、95%CI:0.97~7.88/0.08~4.58mmHg)。

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糖尿病性腎症の治療薬としての非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に期待(解説:浦 信行 氏)-413

 JAMA誌に、非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であるfinerenoneの尿アルブミン低減効果が報告された。 現時点では、糖尿病性腎症に対しては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が第1選択薬であるが、ACE阻害薬やARB使用でも尿アルブミン低減が十分でない例が多く、より一層の腎保護効果、尿アルブミン低減効果を期待できる薬物療法が求められていた。ステロイド系MR拮抗薬であるスピロノラクトンやエプレレノンは、降圧効果だけでなく、ACE阻害薬やARBへの併用で一層の尿アルブミン低減効果を示したが、高K血症の誘発や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を引き起こすことが報告され、エプレレノンは糖尿病性腎症や中等度以上の腎機能障害では禁忌となっている。 ステロイド骨格を持たないMR拮抗薬finerenoneはバイエル薬品で開発されたが、すでにACE阻害薬かARBが使用されている糖尿病性腎症例へのfinerenoneの併用効果が、二重盲検試験で評価された。その結果は、有意な尿アルブミン低減効果が確認され、高K血症は2~3%程度にとどまり、eGFRの有意な変動はなかったというものである。 動物実験ではすでに、同等のNa利尿作用を示す量のエプレレノンに比較して、尿蛋白低減効果が有意に大で、臓器保護効果にも優れていたことが報告されていた。 本研究は多施設共同研究で、糖尿病性腎症においてACE阻害薬やARBとの併用効果をみた初めての試験である。尿アルブミンは最大で38%の減少効果の上乗せがあり、ACE阻害薬やARBは72.7%の例で最少使用量を超える量が使用されている。高K血症は、過去のステロイド系MR拮抗薬では8%や17%などと報告され、多いものでは52%という高い数字が示されている。高K血症が低率であった一因には、eGFRの低下がなかったことが挙げられる。ただし、ほぼ95%に高血圧が合併し、併用前の血圧値は138/77mmHg前後であったが、20mgの最大使用量でも収縮期血圧の低下作用が5mmHg程度にとどまっていた。尿アルブミン低減効果は降圧効果とは関連しないとも結論され、機序としては、ステロイド系MR拮抗薬のような脳内移行による中枢での降圧作用がないことが1つであるとしている。 この研究では、60%以上の例がeGFRで60mL/min/1.73m2以上のCKD1~2であり、もっと広い範囲で一層のデータの集積が必要ではあるが、わが国で新規透析導入の原因疾患の第1位である糖尿病性腎症の薬物療法において、大きな光明をもたらすことを期待する。

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血圧管理は脳出血の再発を抑制するか/JAMA

 脳出血(ICH)発症後の生存例では、適切な血圧管理により再発リスクが改善することが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlessandro Biffi氏らの検討で明らかとなった。ICHは、主に細動脈硬化と脳アミロイド血管障害(CAA)によるものに分けられ、細動脈硬化関連ICHのほとんどが脳の深部構造で発症するのに対し、CAA関連ICHは皮質~皮質下領域(脳葉)にほぼ限定される。ICH生存例は再発リスクが高く、一般に再発ICHは初発ICHよりも重症であるため、2次予防戦略の改善が重要とされる。一方、非脳葉型ICHの再発の予防では血圧管理が重要とされるが至適な降圧に関するデータはほとんどなく、脳葉型ICHにおける降圧の役割はほとんど知られていないという。JAMA誌2015年9月1日号掲載の報告。1,145例で2次予防における血圧管理の意義を評価 研究グループは、ICH生存例において、適切な血圧管理による脳葉型および非脳葉型ICHの再発リスクの抑制効果を検討する縦断的コホート試験を実施した(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、1994年7月~2011年12月までにマサチューセッツ総合病院に入院し、CTで診断が確定された発症後24時間以内のICHで、90日以上生存した患者であった。外傷や血管奇形/動脈瘤破裂などによる出血は除外した。 血圧は、医療従事者または患者自身が3、6、9、12ヵ月、その後は6ヵ月ごとに測定し、収縮期(SBP)および拡張期血圧(DBP)を記録した。 各測定時点で、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)によるICHの2次予防の推奨血圧(非糖尿病者:SBP<140mmHg、DBP<90mmHg、糖尿病者:SBP<130mmHg、DBP<80mmHg)が達成されている場合は血圧管理が「適切」、達成されていない場合は「不十分」とした。また、米国合同委員会第7次報告(JNC7)の判定基準で高血圧のステージを判定した。 主要評価項目はICHの再発および脳内の再発部位(脳葉、非脳葉)とした。 1,145例が解析の対象となり、そのうち脳葉型ICHが505例(平均年齢73.4±11.4歳、男性51.6%)、非脳葉型ICHは640例(68.7±13.3歳、56%)であった。フォローアップは2013年12月まで行われ、期間中央値は36.8ヵ月(四分位範囲:16.2~55.4)であり、最短は9.8ヵ月だった。不十分な血圧管理でリスクが約4倍に、高血圧が重症化するほどリスク上昇 脳葉型ICH患者のうち102例がICHを再発し、非脳葉型ICH患者では44例が再発した。フォローアップ期間中の血圧測定で、血圧管理が1回以上「適切」と判定された患者は625例(54.6%)であり、すべての測定時点で「適切」であった患者は495例(43.2%)だった。 脳葉型ICH患者の再発率は、血圧管理適切例が1,000人年当たり49件であったのに対し、不十分例では84/1,000人年であった。また、非脳葉型ICH患者の再発率は、適切例が27/1,000人年、不十分例は52/1,000人年だった。 血圧管理を時間依存変数とするモデル解析では、不十分な血圧管理は、脳葉型ICH(ハザード比[HR]:3.53、95%信頼区間[CI]:1.65~7.54)および非脳葉型ICH(4.23、1.02~17.52)の双方で再発リスクを有意に増大させた。 正常血圧(SBP:90~119mmHg、DBP:60~79mmHg)と比較して、高血圧前症(HR:2.76、95%CI:1.32~5.82)、ステージ1高血圧(3.90、1.36~11.17)、ステージ2高血圧(5.21、2.74~9.91)のいずれにおいても、脳葉型ICHの再発リスクが有意に高く、重症度が上がるほどリスクが増加した。また、非脳葉型ICHの再発リスクは、高血圧前症(3.06:1.07~8.78)とステージ1高血圧(3.88、1.31~11.61)では有意に増加したが、ステージ2高血圧(6.23、0.90~42.97)では有意ではなかった。 SBPの上昇により、脳葉型ICH(10mmHg上昇ごとのHR:1.33、95%CI:1.02~1.76)および非脳葉型ICH(HR:1.54、95%CI:1.03~2.30)の双方の再発リスクが有意に増加した。 DBPの上昇では、脳葉型ICH(10mmHg上昇ごとのHR:1.36、95%CI:0.90~2.10)の再発リスクは増大しなかったが、非脳葉型ICH(HR:1.21、95%CI:1.01~1.47)の再発リスクは有意に増加した。 年間再発リスクは、脳葉型、非脳葉型ICHの双方とも、SBPが高くなるほど増大し、とくに140mmHgを超えると急激に増加する傾向が認められた。また、DBPについても同様の関連がみられ、90mmHgを超えると急激にリスクが上昇した。 著者は、「ICH生存例では、フォローアップ期間中の血圧管理が不十分であると、脳葉型および非脳葉型ICHの双方で再発リスクが有意に上昇した」とまとめ、「より厳格な血圧管理のリスクとベネフィットを検討する無作為化臨床試験を行う必要があることが示唆される」としている。

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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症のコントロールと治療薬

土橋 卓也 氏製鉄記念八幡病院はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム(MetS)、慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病と密接に関連することが明らかとなってきた。さらに最近の知見より、高尿酸血症が高血圧や糖尿病発症のリスクとなること、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制されることが報告されるようになった。本稿では、心血管疾患リスクとしての尿酸管理の意義と尿酸降下薬を用いた治療方針について概説する。1. 生活習慣病としての高尿酸血症の実態日本人における高尿酸血症の頻度に関して、尿酸値>7mg/dLで定義される高尿酸血症の頻度は、成人男性で21.5%、女性では50歳未満で1.3%、50歳以降で3.7%と報告されている1)。また、高尿酸血症は高血圧者に高頻度に合併することが知られている。われわれが調査した降圧薬服用者667名(平均年齢66.4歳)における高尿酸血症(尿酸値>7mg/dLまたは尿酸低下薬服用者)の頻度は男性で40.6%、女性で8.6%と男性で高頻度に認められ、特に使用降圧薬が3剤以上の者では37.3%と高頻度であった2)。この要因として、3剤以上の降圧薬を必要とする者は肥満やMetS、CKDなど高尿酸血症を合併する病態が多いこと、尿酸値を上昇させる利尿薬の使用頻度が高いことが挙げられる。すなわち、高尿酸血症は他の危険因子とともに心血管疾患リスクが重積した病態を形成することが多いことから、心血管疾患予防のためのtotal risk managementの一環として管理すべき疾患といえる。2. 高尿酸血症の治療(1) 治療方針日本痛風・核酸代謝学会による高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインが提唱する高尿酸血症の治療方針では、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合、肥満の是正、飲酒制限、プリン体制限などの食事療法、運動など生活習慣修正を指導することが記載されている。痛風関節炎や痛風結節を認めず、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、MetS、CKDなどを合併する例においては、尿酸値が8mg/dL以上に上昇した場合、尿酸低下療法を考慮する。(2) 病型分類に基づく薬剤選択高尿酸血症は、その機序から産生過剰型と排泄低下型に病型分類される(本誌p.36図を参照)に示すように、病型分類を行うためには、尿酸産生量(尿中尿酸排泄量)と尿酸クリアランスを評価する必要がある3)。われわれが、高尿酸血症合併高血圧患者を対象として、24時間家庭蓄尿を用いて病型分類を行ったところ、MetS合併例を含め、約9割が排泄低下型であった4)。日常診療において24時間蓄尿や外来60分法による評価を行うのは困難である。われわれは、日常診療で使用可能な病型分類の指標として随時尿中尿酸/クレアチニン比(UA/Cr)を用いており、随時尿中UA/Crが0.5未満を示す場合、排泄低下型と判断してよいと考えている5)。(3) 尿酸降下薬の選択尿酸生成抑制薬のアロプリノールは尿酸産生過剰型に適した薬剤であり、尿路結石の既往など尿酸排泄促進薬が使用できない症例においても使用される。ただ、腎機能の低下に応じて使用量を減じる必要があり、クレアチニンクリアランス(Ccr)50mL/分以下では100mg/日、30mL/分以下では50mg/日とすべきである。最近発売されたフェブキソスタットやトピロキソスタットは、腎機能低下例においても用量調節が必要なく、使用しやすい薬剤といえる。前述のように高血圧合併高尿酸血症患者の病型はほとんど排泄低下型であることから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬がより有用であることが多い。実際、アロプリノールを投与中の高血圧患者で随時尿中UA/Crが0.5未満を示し、排泄低下が疑われた15症例において薬剤を排泄促進薬のベンズブロマロンに切り替えたわれわれの検討では、随時尿中UA/Crは0.31から0.51へと有意に上昇し、血清尿酸値も7.3mg/dLから4.7mg/dLへと有意に低下した6)。ベンズブロマロン服用者(平均用量39mg/日)はアロプリノール服用者(平均用量106mg/日)に比し、血清尿酸値が低く(5.6±1.1 vs. 6.6±0.8mg/dL、p<0.01)ガイドラインが提唱する管理目標値≦6mg/dLの達成頻度も61.7%とアロプリノール服用者(18.2%)より高かった2)(本誌p.38図を参照)。これらの結果は、高血圧合併高尿酸血症の治療において尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロンがより有用であることを示唆している。ただベンズブロマロンは尿酸排泄量が増加し、尿路結石のリスクが高くなるため、尿のアルカリ化が必要であること、腎機能低下例では作用が減弱するため、アロプリノールを使用するか、両者の少量併用を検討する必要があることに留意する。(4) 尿酸コントロールの目標高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、尿酸降下薬による治療の目標値として血清尿酸値6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとしている(本誌p.35図を参照)。確かに痛風患者の再発予防の観点からは6.0mg/dL以下にすることの根拠が示されているが7)、心血管疾患リスクとしての管理目標は明確でない。本態性高血圧患者を対象とした治療介入試験であるLIFE試験において、血清尿酸値は全体の平均5.6±1.3mg/dLからアテノロール群で0.8±1.2mg/dL、ロサルタン群で0.3±1.2mg/dL上昇しているが、6.0mg/dL前後であっても血清尿酸値上昇により心血管病発症リスクが増加することが示されており8)、高血圧患者における積極的な尿酸管理の重要性が示唆される。心臓手術を受けた高尿酸血症患者(血清尿酸値≧8mg/dL)141例を対象として、フェブキソスタット群とアロプリノール群に無作為に割り付け、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標として治療を行ったNU-FLASH試験における投与6か月後の血清尿酸値6.0mg/dL以下達成率は、フェブキソスタット群で95.8%と、アロプリノール群の69.6%に比し有意に高率であった9)。さらに、フェブキソスタット群では、投与1か月後からeGFRの有意な増加を認めている。このことは、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目指した治療が腎機能保持の観点からも有用であることを示唆している。一方、尿酸は強力な抗酸化作用を有していることから、低値であることも心血管疾患リスクとなる報告が散見されており10)、“the lower, the better”とはいえない可能性がある。現時点では血清尿酸値4~6mg/dLが最もリスクの低い値と推測される。女性は血清尿酸値が男性に比し低値であるが、心血管疾患リスクとしての関与は男性より強いことが報告されていることから11, 12)、女性においてはより厳格なコントロールが望ましい可能性がある。おわりに高尿酸血症の心血管疾患リスクとしての意義を認識し、他のリスク因子とともに管理することが重要である。今後、心血管疾患リスクとしての高尿酸血症の治療開始基準および管理目標について検討する臨床試験が望まれる。文献1)冨田眞佐子ほか. 高尿酸血症は増加しているか?性差を中心に. 痛風と核酸代謝 2006; 30: 1-5.2)榊美奈子ほか. 降圧薬服用者における尿酸管理の現状. Gout and Nucleic Acid Metabolism 2013; 37:103-109.3)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版, メディカルレビュー社,東京, 2010.4)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.5)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者における高尿酸血症の慣習的病型分類の有用性について. 痛風と核酸代謝 2012; 36: 9-13.6)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者におけるアロプリノールからベンズブロマロンへの変更の有用性. 血圧2008; 15: 910-912.7)Shoji A et al. A retrospective study of the relationship between serum urate level and recurrent attacks of gouty arthritis; Evidence for reduction of recurrent gouty arthritis with antihyperuricemic therapy. Arthritis Rheum 2004;51: 321-325.8)Hoieggen A et al. LIFE Study Group: The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.9)Sezai A et al. Comparison of febuxostat and allopurinol for hyperuricemia in cardiac surgery patients (NU-FLASH Trial). Circ J 2013; 77: 2043-2049.10)Verdecchia P et al. Relation between serum uric acid and risk of cardiovascular disease in essential hypertension ; PIUMA study. Hypertension 2000; 36: 1072-1078.11)Iseki K et al. Significance of hyperuricemia as a risk factor for developing ESRD in a screened cohort. Am J Kidney Dis 2004; 44: 642-650.12)Holme I et al. Uric acid and risk of myocardial infarction, stroke and congestive heart failure in 417,734 men and women in the Apolipoprotein MOrtality RISk study (AMORIS). J Intern Med 2009; 266: 558-570.

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高血圧への肥満の影響、30年で著しく増加

 わが国ではこの数十年にわたって、過体重者(BMI:25.0~29.9)と肥満者(同:30.0以上)の割合が増加している。福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター 永井 雅人氏らは、1980~2010年における4つの全国調査を用い、過体重および肥満の高血圧症への影響の経年動向を調べた結果、その影響は有意に増加したことが示された。過体重者および肥満者が増加しないよう、早急に対処する必要性を示唆している。Hypertension Research誌オンライン版2015年7月16日号に掲載。 著者らは、参加者を全集団から無作為にサンプリングした4つの全国調査を用いて、高血圧症(血圧140/90mmHg以上もしくは降圧薬使用)に対する過体重や肥満の影響の経年動向を調査した。各々の調査に選択された参加者(30~79歳)は、1980年10,370人、1990年8,005人、2000年5,327人、2010年2,547人。 主な結果は以下のとおり。・高血圧症に対する過体重および肥満の影響は有意に増加していた(男性:p=0.040、女性:p=0.006)。・過体重者および肥満者について、正常体重者(BMI:18.5~24.9)と比較した高血圧症のオッズ比(多変量調整後)の変化は、1980年から2010年において、男性では1.94(95%信頼区間:1.64~2.28)から2.82(同:2.07~3.83)、女性では2.37(同:2.05~2.73)から3.48(同:2.57~4.72)へと増加していた。・日本人では肥満者は3%のみであり、ほとんどの関連は過体重者でみられた。・高いBMIが、他の有害な健康状態との関係に加え、高血圧症との関連性が増加していることから、体重コントロールに対する取り組みの緊急性が高まっている。

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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症と循環器疾患 高血圧とのかかわり

川添 晋 氏鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に、心血管疾患のリスクになることが次々と報告され、メタボリックシンドロームの一翼としての尿酸の重要性が認識されるようになってきた。最近では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることや、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制される可能性を示唆する報告もなされている。本稿では、血圧上昇や高血圧性臓器合併症と尿酸との関連を疫学と機序の両面から概説するとともに、高血圧症を合併した高尿酸血症に対する薬物治療を行う際の注意すべき点について解説する。高尿酸血症と高血圧血圧上昇と血清尿酸値との疫学の歴史は意外に古い。1800年代後半には、痛風の家族歴を持つ高血圧患者が多いことや、低プリン食が高血圧と心血管病を予防することが報告されている。最近の報告では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることが国内外の疫学調査から明らかとなっている。米国における国民健康栄養調査にて、血清尿酸値が上昇するにつれて高血圧の有病率は上昇し、血清尿酸値6.0mg/dL以下では24.5%であるのに対して10.0mg/dLでは84.7%に高血圧が合併していた1)。わが国における調査でも、高血圧患者は男性で34.1%、女性で16.0%に高尿酸血症が合併していたと報告されている2)。高尿酸血症と高血圧発症に関する国内外11研究の成績をまとめたメタアナリシスでは、高尿酸血症患者における高血圧発症の相対リスクは1.41と有意に高く、1mg/dL の尿酸値の上昇により高血圧発症リスクは13%上昇するとの結果であった3)(本誌p.29図を参照)。尿酸値上昇自体が高血圧のリスクとなることが明確に示されたことになる。また小規模の研究ではあるが、アロプリノールによる尿酸降下療法にて24時間血圧が有意に下がるとの介入試験の結果も報告されている4)。尿酸が血圧を上昇させるメカニズムについてもさまざまな知見が得られている(本誌p.30図を参照)5)。尿酸によるNO(一酸化窒素)産生低下とレニン・アンジオテンシン系の産生亢進を伴った血管内皮機能低下に起因した腎血管収縮により血圧が上昇すると報告されている6, 7)。このタイプの高血圧は、食塩抵抗性で尿酸値を下げることにより降圧を認めることが特徴であるが6)、別のタイプもあることが推察されている。高尿酸血症は動脈硬化性変化による腎微小循環障害をきたし、塩分感受性で腎依存性、血清尿酸値非依存性の高血圧が形成される8)。微小循環の損傷に起因する病態においては、直接尿酸が血管平滑筋細胞に対して増殖反応を促し、レニン・アンジオテンシン系を賦活化し、CRPや単球走化性蛋白-1(MCP-1)といった炎症関連物質の産生を刺激することが報告されている9)。高血圧性臓器合併症と尿酸日本高血圧学会やヨーロッパ高血圧学会のガイドラインでは、高血圧性臓器合併症の有無でリスクの層別化を行うことを推奨している。Viazziらは、このような臓器合併症の重症度と血清尿酸値との関連性を横断研究にて検討している。これによると、ヨーロッパ高血圧学会のガイドラインに準拠した高血圧性臓器合併症が重症になるにしたがって、血清尿酸値が高値となっていくことが示されている。さらに古典的心血管危険因子で補正後も、心肥大や頸動脈不整の危険因子となることが示唆されている。またSystolic Hypertension in the Elderly Program(SHEP)10)やThe Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension(LIFE)11) といった大規模臨床試験のサブ解析において、血清尿酸値と心血管イベントの発症との間に関連があることが示されている。われわれは669名の本態性高血圧症を対象に前向きに検討を行い、尿酸値が心血管疾患と脳卒中の発症の予測因子となるかどうかの検討を行った12)。平均7.1年のフォローアップ期間に脳卒中71例、心血管疾患58例が発生し、64例が死亡した。生存曲線では、尿酸値が最も高かった群(8.0mg/dL以上)では有意に脳卒中と心血管疾患の発症が多く(p=0.0120)、死亡率も高かった(p=0.0021)。古典的な心血管疾患のリスク因子で補正した後も、血清尿酸値は心血管疾患(相対リスク1.30, p=0.0073)、脳卒中および心血管疾患(相対リスク1.19, p=0.0083)、死亡(相対リスク1.23, p=0.0353)、脳卒中および心血管疾患による死亡(相対リスク1.19, p=0.0083)の有意な予測因子であった(本誌p.31図を参照)。また、血清尿酸値が心血管疾患リスクに与える影響は、女性においてより強かった。しかしながら、大規模疫学調査のなかには、Framingham Heart研究13)やNIPPON DATA 8014)のように、他の心血管危険因子で補正を行うと血清尿酸値の心血管死に対する影響が減弱するか喪失すると結論づけている報告もいくつか認められる。また血清尿酸値と心血管疾患の間のJカーブ現象の報告もあり15)、この分野に関しては今後のさらなる検討が必要と考えられる。高血圧治療の最終的な目標は臓器合併症、すなわち心血管イベント発症や腎機能悪化に伴う透析などの回避であることはいうまでもない。臓器合併症予防のためには、蓄積されつつある知見を踏まえて、血圧のみならず血清尿酸値も含めた管理を行う必要がある。高血圧症例における高尿酸血症の管理高血圧患者における血清尿酸値上昇が腎障害や心血管事故発症と関連することから、日本痛風・核酸代謝学会による『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』16)に準じて、総合的なリスク回避をめざした6・7・8ルールに基づく尿酸管理が推奨されている(本誌p.32図を参照)。高尿酸血症を合併する高血圧では、血清尿酸値7mg/dL以上でエネルギー摂取制限、運動習慣、節酒等の生活指導を開始する。8mg/dL以上では、生活習慣の修正を行いながら尿酸降下薬の開始を考慮する。降圧療法中の血清尿酸値の目標は6mg/dL以下をめざす。この際、降圧剤が尿酸代謝に及ぼす影響も考慮することが望まれる(本誌p.32図を参照)。サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は高尿酸血症を増長し、痛風を誘発することがあるため注意が必要である。Ca拮抗薬とロサルタンは高血圧患者の痛風発症リスクを減少させることが知られている17)。大量のβ遮断薬およびαβ遮断薬の投与は血中尿酸値を上昇させる。ACE阻害薬、Ca拮抗薬、α遮断薬は血清尿酸値を低下させるという報告と、影響を与えないとする報告がある。ARBの1つであるロサルタンは、腎尿細管に存在するURAT1の作用を阻害することによって血中尿酸値を平均0.7mg/dL低下させる18, 19)。重症高血圧患者におけるβ遮断薬のアテノロールに対するロサルタンの標的臓器保護作用の有意性を示したLIFEでは、ロサルタンの降圧を超えた臓器保護作用のうち29%は尿酸値の改善によることが示唆されている11)。最近使用頻度が増えているARB/利尿薬合剤には、ヒドロクロロチアジド6.25mgまたは12.5mgが使用されているが、尿酸管理の観点からはより低用量の製剤を使用するか、尿酸排泄増加作用を有するARBであるロサルタンを含む合剤の使用が望ましい。高血圧合併高尿酸血症患者の病型は排泄低下型が多いことから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬が有用であることが多い。キサンチンオキシダーゼ阻害薬のアロプリノールは、これまで唯一の尿酸生成抑制薬として40年間にわたり全世界で用いられてきた。しかしアロプリノールの活性代謝産物であるオキシプリノールは腎排泄性であり、血中半減期が長く体内に蓄積しやすいため、腎機能障害ではオキシプリノールの血中濃度が上昇し20)、汎血球減少症などの重篤な副作用の出現に関係するとされる。高血圧患者には腎機能低下を合併する症例が多いためアロプリノール使用に関してはこの点に注意が必要である。本邦において2011年から臨床使用可能となったフェブキソスタットは、肝腎排泄型であるため腎機能障害者においても用量調節が不要であるとされている。おわりに高尿酸血症が高血圧発症や心血管疾患のリスク因子であるというエビデンスが蓄積されてきている。高血圧診療の場では、糖尿病や脂質異常症などの既知のリスクに加えて、尿酸値も意識して総合的な管理を行うことが求められている。文献1)Choi HK et al. Prevalence of the metabolic syndrome in individuals with hyperuricemia. Am J Med 2007; 120: 442-447.2)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.3)Grayson PC et al. Hyperuricemia and incident hypertension: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Care Res 2011; 63: 102-110.4)Feig DI et al. Effect of allopurinol on blood pressure of adolescents with newly diagnosed essential hypertension: a randomized trial. JAMA 2008; 300: 924-932.5)大野岩男. 高血圧のリスクファクターとしての尿酸. 高尿酸血症と痛風 2010; 18: 31-37.6)Mazzali M et al. Elevated uric acid increases blood pressure in the rat by a novel crystal-independent mechanism. Hypertension 2001; 38:1101-1106.7)Sanches-Lozada LG et al. Mild hyperuricemia induces vasoconstriction and maintains glomerular hypertension in normal and remnant kidney rats. Kidney Int 2005; 67: 237-247.8)Watanabe S et al. Uric acid, hominoid evolution,and the pathogenesis of salt-sensitivity. Hypertension 2002; 40: 355-360.9)Johnson RJ et al. 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インスリンポンプ、1型糖尿病の心血管死抑制/BMJ

 1型糖尿病患者に対するインスリンポンプ療法は、インスリン頻回注射療法よりも心血管死のリスクが低いことが、デンマーク・オーフス大学のIsabelle Steineck氏らによる、スウェーデン人を対象とする長期的な検討で示された。糖尿病患者では、高血糖と低血糖の双方が心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)のリスク因子となるが、持続的皮下インスリン注射(インスリンポンプ療法)はインスリン頻回注射療法よりも、これらのエピソードが少なく、血糖コントロールが良好とされる。一方、これらの治療法の長期的予後に関する知見は十分ではないという。BMJ誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。約1万8,000例を約7年フォローアップ 研究グループは、1型糖尿病の治療において、インスリンポンプ療法が心血管疾患や死亡に及ぼす長期的な影響の評価を目的とする観察研究を行った(欧州糖尿病学会[EASD]の助成による)。 Swedish National Diabetes Registerに登録された1型糖尿病患者1万8,168例(インスリンポンプ療法:2,441例、インスリン頻回注射療法[MDI]:1万5,727例)のデータを解析した。被験者は、2005~2007年に初回受診し、2012年12月31日までフォローアップされた。 臨床的背景因子、心血管疾患のリスク因子、治療法、既往症の傾向スコアで層別化し、Cox回帰モデルを用いてアウトカムのハザード比(HR)を算出した。平均フォローアップ期間は6.8年(11万4,135人年)であった。 ポンプ療法群はMDI群よりも若く(38 vs.41歳)、収縮期血圧がわずかに低く(126 vs.128mmHg)、男性(45.0 vs.57.1%)や喫煙者(10.5 vs.13.5%)が少なかった(いずれもp<0.001)。また、ポンプ療法群は身体活動性の低い患者が少なかった(21.8 vs.24.0%、p=0.01)。 さらに、ポンプ療法群は、アルブミン尿(20.7 vs.24.0%)や腎機能が低い患者(10.4 vs.11.7%)が少なく、降圧薬(32.0 vs.36.7%)や脂質低下薬(21.0 vs.26.4%)、アスピリン(15.0 vs.18.8%)の使用例が少なかった(腎機能p=0.04、その他p<0.001)。また、心血管疾患(5.4 vs.8.0%)や心不全(0.9 vs.2.3%)の既往例が少なく、教育歴が高い患者(37.3 vs.27.6%)や既婚者(40.3 vs.36.5%)が多かった(いずれもp<0.001)。致死的冠動脈心疾患、致死的心血管疾患、全死因死亡リスクが著明に低下 Kaplan-Meier法による解析では、すべてのアウトカム(致死的/非致死的冠動脈心疾患、致死的/非致死的心血管疾患、致死的心血管疾患、全死因死亡)が、ポンプ療法群で有意に優れていた(いずれもp<0.001)。 ポンプ療法群のMDI群に対する主要エンドポイントの補正後HRは、致死的/非致死的冠動脈心疾患が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.01、p=0.05)、致死的/非致死的心血管疾患は0.88(0.73~1.06、p=0.2)であり、ポンプ療法群で良好な傾向がみられたものの有意な差はなかった。 一方、致死的心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)の補正後HRは0.58(0.40~0.85、p=0.005)、全死因死亡は0.73(0.58~0.92、p=0.007)であり、いずれもポンプ療法群で有意に良好であった。 また、副次エンドポイントである致死的冠動脈心疾患の補正後HRは0.55(95%信頼区間[CI]:0.36~0.83、p=0.004)と有意差を認めたが、致死的脳卒中は0.67(0.27~1.67、p=0.4)、心血管疾患以外による死亡は0.86(0.64~1.13、p=0.3)であり、有意な差はなかった。 致死的冠動脈心疾患の1,000人年当たりの未補正絶対差は3.0件であり、致死的心血管疾患は3.3件、全死因死亡は5.7件であった。また、低BMI(<18)および心血管疾患の既往歴のある患者を除外したサブグループ解析を行ったところ、結果は全症例とほぼ同様であった。 著者は、「インスリンポンプ療法の生理学的作用や、使用者が受ける臨床的管理、ポンプ使用の教育的側面が、これらの結果に影響を及ぼしているかという問題は未解明のままである」としている。

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96)おいしく糖尿病食を食べてもらう前に【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師糖尿病食は、いかがですか? 患者あまりおいしくないですね。 医師それでは、ちょっと味覚(塩分味覚)をチェックしてみましょうか。 患者……これは全然味がしないですね。これも、これも……これならわかります。塩味ですね(6番目のろ紙で正解)。 医師正解です。 患者ほかは何味ですか? 医師じつはすべて塩味です。1~6番まで徐々に濃くなっています(0.6→0.8→1.0→1.2→1.4→1.6%)。1、2番なら味覚は敏感、3、4番なら低下の疑い、5、6番なら低下となります。1.6%だとラーメンの塩分濃度になりますね。だから、ラーメンはおいしく感じるのかもしれません。 患者えっ、そうだったんですか。味オンチになっていたんですね(驚きの声)。 医師それじゃ、減塩トレーニングをしてみましょうか。 患者よろしくお願いします。●ポイント糖尿病で味覚が鈍くなっていることに気づかせ、減塩トレーニングを推奨します●資料加齢、高血圧、糖尿病、アンジオテンシンII受容体拮抗薬など降圧薬の服用が味覚障害と関連している。糖尿病患者は甘味、塩味、酸味味覚が鈍っており、とくに甘味味覚鈍化が顕著である。血糖コントロールと味覚障害の関連も報告されている。教育入院患者に対し、食塩含浸濾紙ソルセイブRを用いて塩味味覚のチェック(0.6~1.6%)をしたところ、糖尿病食がまずいという患者に限って塩分味覚が鈍っていた。ラーメンの塩分濃度は1.6%以上なのに対し、京都の老舗のすまし汁の塩分濃度は0.7%ぐらいである。ラーメンは、おいしいと感じるが、すまし汁の細やかな味はわからないのかもしれない。 1) 坂根直樹. 日本味と匂学会誌. 2006; 13: 257-264. 2) 日本味と匂学会誌 .2006; 13: 143-148.

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CKD合併糖尿病患者では降圧治療は生命予後を改善しない?(解説:浦 信行 氏)-366

 高血圧の降圧治療は、少なくとも糖尿病合併例では予後改善と臓器合併症抑制効果を示すことが、多くの治療介入試験で証明され、JAMA誌2015年2月10日号1)に大変素晴らしいメタ解析と総説が報告され、少なくとも高血圧例では降圧治療の多大な有用性が明らかにされている。しかし、CKD合併糖尿病を対象としたこのメタ解析研究の結果では、ACE阻害薬とARB、あるいはその併用は末期腎不全発症抑制には有用だが、それ以外の降圧薬も含めてすべての降圧戦略が生命予後を改善しなかったと報告された。先ほどのJAMA誌との結果と対比して考えると、CKDが合併すると結局は生命予後に何もメリットはないのだろうか? しかし、このメタ解析にはいくつかの問題点があると思われる。 157試験4万3,256例を対象としており、血圧に関してはすべてプラセボより低下しているが、DBPでは一部有意ではあるものの、SBPはすべてが有意な降圧ではない。 個々の試験の内容をみると、対象が高血圧の例は1万2,656例、正常血圧例は2,193例、両者を含むものが2万8,407例であり、おそらく4割方が正常血圧例と推定される。 このメタ解析の1次エンドポイントは全死亡と末期腎不全であるが、33試験2万9,782例で全死亡を評価しており、末期腎不全は13試験2万4,477例で解析している。 原著では、1次エンドポイントを心血管疾患や生命予後にしたものは半数以下であり、そのほとんどがHTとNT両者を含むが、これを区別して解析していない。降圧戦略の効果を評価するのであれば、少なくともHTとNTの区別、層別解析も考慮すべきではなかったか? また、そのなかでも最大の試験は8,606例のALTITUDE試験であるが、平均血圧は137/74 mmHgと高くなく、しかも追跡期間は32ヵ月と短い。これでは腎作用は評価できても、生命予後を評価するには不十分と考える。全体に追跡期間が短く、9試験1万7,258例は短期で終了している。著者も結果の部分で、一部の試験ではデータが不十分であり、明確な結論を引き出すのは困難、としている。であるのにこの結論を下すのは理解に苦しむ。 2次エンドポイントは腎イベントで、Crの倍化とアルブミン尿の減少はRA系阻害薬が良い。それとは別にAKIも評価しているが、その定義が試験ごとに違い、何といってもAKIはRA系阻害薬に多い傾向はあるものの有意ではなく、高K血症も同じ傾向で有意ではなかったのに、有害の可能性として考察にも結論にも強調されて記載されている。同じく2次エンドポイントの、ARBの心筋梗塞のリスク低減効果(18試験2万1,471例)は有意であるのに、結論にまったく記載されていない。メタ解析のあり方にも疑問を感じるが、著者らの結果の解釈にも疑問を感じざるを得ない。

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糖尿病合併CKD、降圧薬治療は有益か/Lancet

 糖尿病合併慢性腎臓病(CKD)患者に対する降圧薬治療について、生存を延長するとのエビデンスがあるレジメンはないことが、ニュージーランド・オタゴ大学のSuetonia C Palmer氏らによるネットワークメタ解析の結果、明らかにされた。また、ACE阻害薬とARBの単独または2剤併用療法は、末期腎不全に対して最も効果的な治療戦略であること、一方でACE阻害薬とARBの併用療法は、レジメンの中で高カリウム血症や急性腎不全を増大する傾向が最も高いことも示され、著者は「リスクベネフィットを考慮して用いる必要がある」と報告している。糖尿病合併CKD患者への、降圧薬治療の有効性と安全性については議論の余地が残されたままで、研究グループは、同患者への降圧薬治療の有益性と有害性を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌2015年5月23日号掲載の報告より。すべての降圧薬治療戦略とプラセボをSUCRAでランク付け 解析は、世界各地で行われた18歳以上の糖尿病とCKDを有する患者が参加した経口降圧薬治療に関する無作為化試験を対象に、2014年1月時点で電子データベース(Cochrane Collaboration、Medline、Embase)を系統的に検索して行われた。 主要アウトカムは、全死因死亡および末期腎不全。副次アウトカムとして安全性および心血管アウトカムについても評価した。 主要および副次アウトカムに関する推定値を入手し、ランダム効果ネットワークメタ解析を行い、オッズ比または標準化平均差を95%信頼区間[CI]値と共に算出した。surface under the cumulative ranking(SUCRA)を用いて、すべての降圧薬治療戦略とプラセボの効果を比較し、ランク付けした。ACE+ARB併用は、末期腎不全を減少するがリスク増大も ネットワークメタ解析には、157試験、4万3,256例のデータが組み込まれた。被験者の大半は、2型糖尿病合併CKD患者で、平均年齢は52.5歳(SD 12.0)であった。 結果、各レジメンの全死因死亡のオッズ比は、0.36(ACE阻害薬+Ca拮抗薬)から5.13(βブロッカー)にわたってランク付けされたが、抑制効果についてプラセボより有意に良好なレジメンはなかった。 しかしながら末期腎不全については、ARB+ACE阻害薬の併用療法(オッズ比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.90)と、ARB単独療法(同:0.77、0.65~0.92)において、プラセボと比較した有意な抑制効果が認められた。 高カリウム血症または急性腎不全を有意に増大したレジメンはなかったが、その中でランク付けにおいて、ARB+ACE阻害薬併用の推定リスクが最も高かった。(高カリウム血症のオッズ比:2.69、95%CI:0.97~7.47、急性腎不全:2.69、0.98~7.38)。

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1型糖尿病患者における強化療法と眼科手術(解説:住谷 哲 氏)-363

 糖尿病診断直後からの数年にわたる厳格な血糖管理が、その後の患者の予後に大きく影響することは、1型糖尿病(T1DM)においてはmetabolic memory(高血糖の記憶)、2型糖尿病(T2DM)においてはlegacy effect(遺産効果)として広く知られている。T1DMにおける糖尿病性腎症、心血管イベントおよび総死亡に対するmetabolic memoryの存在がすでに報告されていたが、本論文により眼科手術に対しても同様にmetabolic memoryの存在が明らかにされた。 糖尿病網膜症を有する患者においては、高血糖の急速な改善により網膜症の増悪を来すことがあるため注意が必要である、といわれているがエビデンスははっきりしない。本論文の基になっているDCCT試験1)において、血糖正常化を目指した強化療法群では介入開始1年後に、2次介入群(secondary-intervention cohort:軽度から中等度の非増殖性網膜症を有する患者群)では網膜症の増悪・進展を認めているが、3年後からは逆に強化療法群で増悪・進展が抑制されていた。6.5年後の試験終了時には、強化療法により1次予防群(primary-prevention cohort:網膜症なしの患者群)において、網膜症の新規発症が76%、2次介入群では網膜症の進展が54%、増殖性網膜症または高度の非増殖性網膜症の発症が47%とそれぞれ抑制されていた。したがって、T1DM患者においては、中等度の非増殖性網膜症までの段階であれば厳格に血糖管理を行うことで、一過性に網膜症の増悪を認めることもあるが、長期的には網膜症の新規発症、増悪、進展を抑制できる、とのエビデンスをわれわれは持っていたことになる。 本論文ではDCCT試験終了から23年後、試験開始から30年後における、通常療法群と強化療法群との眼科手術の頻度と、眼科手術にかかるコストとが評価された。結果は予想どおり、眼科手術の頻度とコストとの両者共に強化療法群において有意に減少していた。しかしながら、失明した患者数については記載がない。著者らの結論は眼科手術とコストとの両者においてもmetabolic memoryの存在が証明された、となっているが、すでに腎症、心血管イベントにおいてmetabolic memoryの存在が証明されており、当然のような気がしないでもない。 Discussionにおいて、強化療法によるベネフィットのほとんどはHbA1cの低下によって説明され、血圧の関与は有意ではなかったとある。この解釈には少し注意が必要であろう。2型糖尿病患者における血圧管理の重要性を初めて明らかにしたUKPDS 362)においては、cataract extraction(白内障摘出術)を除いたすべてのエンドポイントが降圧により減少した。他の2つの眼科関連エンドポイントであるvitrectomy(硝子体切除術)、retinal photocoagulation(網膜光凝固術)も降圧により有意に減少している。本論文においては眼科手術の多くがcataract extractionであり、全体の結果がこれに引きずられた可能性が否定できない。血圧管理は1型、2型を問わず糖尿病合併症予防においてきわめて重要であり、厳格な血糖管理のみに注目するのではなく、血圧、脂質も含めた包括的な管理を心がける必要があろう。

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長期血圧変動性とCKD発症リスク~日本人5万人の調査

 非糖尿病者における長期血圧変動性が、他の血圧パラメータ(平均血圧、血圧への累積曝露など)と代謝プロファイルの変化に関係なく、慢性腎臓病(CKD)の新規発症リスクと関連しているかどうかは、いまだ不明である。今回、米国・ノースウェスタン大学の矢野裕一朗氏らは、糖尿病およびCKDではない中高年の日本人約5万人の調査データから、3年間の長期血圧変動性が、追跡期間中の血圧の曝露(平均もしくは累積)や代謝プロファイルの変化に関係なく、CKDの新規発症リスクと関連していたことを報告した。Hypertension誌オンライン版2015年5月18日号に掲載。 対象は、ベースライン時に糖尿病およびCKD(eGFR 60mL/分/1.73m2未満または尿試験紙で蛋白尿)ではなかった日本人4万8,587人。年齢は40~74歳(平均61.7歳)、男性の割合は39%であった。血圧測定は、ベースライン時ならびに年1回(3年間)の計4回実施した。この4回の血圧の標準偏差(SD)と平均変動幅を血圧変動性と定義した。 主な結果は以下のとおり。・3年目の血圧測定時に、全体の6.3%がCKDを発症していた。・多変量調整ロジスティック回帰モデルでは、臨床的特徴の調整後、収縮期血圧のSD(5mmHgごと)、拡張期血圧のSD(3mmHgごと)、収縮期血圧の平均変動幅(6mmHgごと)、拡張期血圧の平均変動幅(4mmHgごと)における1SDの増加が、CKDの新規発症と関連していた(それぞれのオッズ比[95%CI]は順に、1.15[1.11~1.20]、1.08[1.04~1.12]、1.13[1.09~1.17]、1.06[1.02~1.10]、すべてp<0.01)。また、測定した4回の血圧の平均とも関連していた。・血圧のSDおよび平均変動幅とCKDとの関連は、追跡期間中の代謝パラメータの変化について追加調整後も有意であった(各オッズ比:1.06~1.15、すべてp<0.01)。・性別、降圧薬の使用、高血圧の存在による感度分析でも、同様の結論を示した。

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日本型臨床研究を探る…日本循環器学会

 本年(2015年)4月、第79回日本循環器学会学術集会において、プレナリーセッション「世界の潮流を見据えた日本型臨床研究のあり方を探る」が行われ、日本型の臨床研究がいかにあるべきか、循環器領域の臨床試験の取り組みについて議論が交わされた。心不全患者のレジストリ 当セッションの中で東北大学 循環器内科学 坂田 泰彦氏は、心不全登録研究であるCHART-2(The Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2)試験の結果を示した。心不全は高齢になるほど発症頻度が増加する。日本はすでに超高齢化社会に突入しているが、今後はヨーロッパ、アジアの多くの国も高齢化社会となり、心不全の増加は今後の世界的問題となる。 そのようななか、同科では2006年から東北6県24施設から冠動脈疾患患者、心不全患者、心不全の前段階であるステージB症例患者を登録したCHART-2試験を開始している。このCHART-2試験を2000年当時のデータと比較すると、心不全患者の基礎疾患に冠動脈疾患、高血圧、糖尿病が増加していること、エビデンスに沿った治療が浸透していることが明らかになった。CHART-2試験からは、心不全の予後や発症予防についての規定因子が示された。75歳以上では収縮期血圧が高いほうが心不全発症後の予後が不良であること、拡張期血圧70mmHg未満では収縮期血圧のいかんにかかわらず心不全発症リスクが高いことなどが明らかになっている。 坂田氏は、わが国は超高齢化国として、心不全の治療・発症予防に関するエビデンス発信をすることで、世界の心不全の急増に対して大きなメッセージを送るべきであると述べた。2型糖尿病を合併した冠動脈疾患のレジストリ 琉球大学 臨床薬理学の植田 真一郎氏は、佐賀大学と共同で取り組んでいる2型糖尿病を合併した冠動脈疾患のレジストリを紹介した。 ハイリスクな糖尿病疾患の研究には、年齢・性別など患者の背景因子、心血管インターベンション、降圧薬、脂質低下薬、糖尿病薬などの各種介入の影響など、多くの因子分析が必要である。結果を出すためには多面的な評価が必要となり、一つひとつRCTを組んでいくことは現実的ではない。そのため、まずはコホート研究を実施すべく、上記患者のレジストリを構築した。現在、2005年から6,400例以上が登録されている。 このコホート試験の結果から、総死亡、心筋梗塞、脳卒中などハードエンドポイントの発症は年間6~7%発症と高いこと、血圧と積極的降圧の関係などが明らかになっている。現在は、レジストリをベースに積極的降圧と標準治療の比較、DPP-4阻害薬の比較などRCTに適切な患者を登録する取り組みを行っている。 臨床研究は治験だけでは成り立たない。実際、新薬登場後も多くのコホート研究、ケースコントロール研究、現実的なRCTが行われた後、有効性・安全性や患者の予後改善のデータがそろう。患者レジストリには課題はあるものの、それ自体大規模なコホート研究となる。植田氏は、レジストリは、今後多くの臨床研究のプラットホームとなるであろうと述べた。

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片頭痛予防にSSRIやSNRIは支持されない

 うつ病および抗うつ薬の使用がそれぞれ乳がんのリスクを高めるという仮説2005年に発表した、片頭痛および緊張型頭痛の予防のためのSSRIに関するコクランレビューを、イタリア・Laboratory of Regulatory PoliciesのRita Banzi氏らはアップデートした。今回のレビューでは、SSRIやセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるベンラファキシン(国内未承認)を片頭痛の予防として用いることを支持するエビデンスは得られなかった。また、2~3ヵ月超の治療でSSRIやベンラファキシンがプラセボやアミトリプチリンより片頭痛の頻度、重症度および持続期間を減少させるというエビデンスも示されなかった。これらの結果を踏まえて著者は、「片頭痛の予防にSSRIやSNRIの使用は支持されない」とまとめている。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年4月1日号の掲載報告。 今回研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2014年第10号)、MEDLINE(1946年~2014年11月)、EMBASE(1980年~2014年11月)、PsycINFO(1987年~2014年11月)を用い、18歳以上の片頭痛を有する男女を対象としたSSRI/SNRIとあらゆるタイプの介入との無作為化比較試験を検索するとともに、検索した論文の参照文献リストや進行中の臨床試験も調査した。2人の研究者が独立してデータ(片頭痛の頻度、インデックス、重症度、持続期間、対症療法あるいは鎮痛薬の使用、休業日数、QOL、気分の改善、費用対効果、有害事象)を抽出し、試験のバイアスリスクを評価した。なお、本レビューでの主要アウトカムは片頭痛の頻度とした。 結果は以下のとおり。・本レビューには、5種類のSSRIおよび1種類のSNRIを用いた11件(被験者合計585例)の試験が含まれた(プラセボ対照試験6件、SSRIまたはSNRIとアミトリプチリンとの比較試験4件、エスシタロプラムとベンラファキシンの比較試験1件)。・大半の試験は、方法論や報告(もしくはその両方)が不十分であった。すなわち、すべての試験が選択および報告バイアスのリスクがはっきりしておらず、また、追跡調査が3ヵ月を超える試験はまれであった。・大半の試験は十分な検出力もなく、片頭痛の頻度を主要評価項目としてSSRIまたはSNRIの効果を検討した試験は、ほとんどなかった。・プラセボ対照試験のうち2件の試験は、SSRIおよびSNRIとプラセボとの差についてエビデンスがないことを示唆する曖昧な報告であった。・アミトリプチリンとの比較試験のうち2件の研究では、SSRIやSNRIとアミトリプチリンとの間で片頭痛の頻度に差があるというエビデンスは見出されず(標準化平均差:0.04、95%信頼区間[CI]:-0.72~0.80、I2=72%)、片頭痛の重症度や持続期間などの副次的評価項目にも差はなかった。・SSRIやSNRIは、三環系抗うつ薬よりも全般的に忍容性が良好であった。しかし、有害事象または他の理由のために試験を中止した患者数に差はなかった(1件の研究で、オッズ比[OR]:0.39、95%CI:0.10~1.50、およびOR:0.42、95%CI:0.13~1.34)。・SSRIまたはSNRIと抗うつ薬以外の薬物治療(たとえば抗てんかん薬や降圧薬)とを比較した研究はなかった。関連医療ニュース 片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか SSRI中止は離脱症状に注意を  担当者へのご意見箱はこちら

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結果が矛盾する論文をどう解釈すべきか【Dr.桑島が動画で解説】

プレゼント応募はこちら抽選の申し込みをする応募受付期間を終了いたしました。抽選で100名様に『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2015』を進呈!応募期間: 2015年4月24日~2015年5月25日 正午まで当選の通知方法 : プレゼントの発送をもって、当選のお知らせとさせていただきますプレゼント発送予定日 : 2015年6月上旬ごろ予定  3月4月に最も読まれたCLEAR!ジャーナル四天王 TOP51位)「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)2位)DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人 氏)3位)降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)4位)ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)5位)COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)J-CLEARのメンバーが評論した論文を紹介したコーナー「CLEAR!ジャーナル四天王」最新記事一覧はこちらをクリック前回の動画はこちら第1回 Dr.桑島の動画でわかる「エビデンスの正しい解釈法」MRの話はどこまで信じていいのか・・・と感じた経験ありませんか?「適切なエンドポイントか」「実験の実施主体はどこか」など見極めるポイントをわかりやすく解説

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高血圧治療を再考する ~L/N型Ca拮抗薬/ARB配合錠の選択~

高血圧治療ガイドライン2014でも示すとおり、各種降圧薬には各々の積極的適応が存在し、高血圧治療においては、それに対応した単剤/併用療法を考慮します。また、配合剤の登場により、患者の負担もより少なくなっています。本コンテンツでは、 N型Caチャネル阻害により交感神経亢進を抑制するシルニジピンと、ARBとの合剤であるシルニジピン/バルサルタン配合錠にスポットをあて、有用性とそのメカニズムを動画で詳しく解説します。

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降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)-331

 これまで降圧速度に関しては、急激な降圧が臓器虚血を誘発する可能性があるとの考え方から、概念的に「The slower the better(ゆっくりなほど、よし)」というコンセプトを持つ専門家が多かった。しかし、この考え方を支持する科学的根拠はほとんどなかったのである。 近年の心血管疾患のコンセプトは、血管病という概念により、酸素や栄養成分の補給路、ライフラインである“血管”の破綻が心筋梗塞や脳梗塞をもたらし、治療においては、血管保護こそが心血管疾患発症予防に重要であるとの考え方が主流になりつつある。 たとえていえば、傷んだ道路に対しては速やかな対策、すなわち通行制限が急務ということになり、高血圧治療では、速やかな降圧こそが心血管合併症予防に有効なのである。このことを証明したトライアルが、ARBバルサルタンの心血管疾患合併症予防効果をアムロジピンと比較したVALUE試験である。 value試験では、6ヵ月間の血圧調整期間において、アムロジピン群の降圧効果がバルサルタン群よりも大きかったために、心筋梗塞や脳卒中の発生が少なかったことから、速やかな降圧こそが重要であることを示唆した。 本研究は英国のプライマリケア受診症例の長期追跡による結果であるが、まさに、降圧は「The faster the better(速やかな降圧ほど、よし)」を科学的に証明したという点で意義がある。速やかとはいってもアダラートカプセルのように服用後1、2時間で降圧させることは危険であることは言うまでもなく、本論文の主旨は、数週間単位での降圧速度のことであり、まずは、少なくとも1.4ヵ月以内に収縮期血圧を150mmHg以下に下げることが、脳心血管合併症予防に重要であることを示唆している。

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