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糖尿病合併CKD、降圧薬治療は有益か/Lancet

 糖尿病合併慢性腎臓病(CKD)患者に対する降圧薬治療について、生存を延長するとのエビデンスがあるレジメンはないことが、ニュージーランド・オタゴ大学のSuetonia C Palmer氏らによるネットワークメタ解析の結果、明らかにされた。また、ACE阻害薬とARBの単独または2剤併用療法は、末期腎不全に対して最も効果的な治療戦略であること、一方でACE阻害薬とARBの併用療法は、レジメンの中で高カリウム血症や急性腎不全を増大する傾向が最も高いことも示され、著者は「リスクベネフィットを考慮して用いる必要がある」と報告している。糖尿病合併CKD患者への、降圧薬治療の有効性と安全性については議論の余地が残されたままで、研究グループは、同患者への降圧薬治療の有益性と有害性を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌2015年5月23日号掲載の報告より。すべての降圧薬治療戦略とプラセボをSUCRAでランク付け 解析は、世界各地で行われた18歳以上の糖尿病とCKDを有する患者が参加した経口降圧薬治療に関する無作為化試験を対象に、2014年1月時点で電子データベース(Cochrane Collaboration、Medline、Embase)を系統的に検索して行われた。 主要アウトカムは、全死因死亡および末期腎不全。副次アウトカムとして安全性および心血管アウトカムについても評価した。 主要および副次アウトカムに関する推定値を入手し、ランダム効果ネットワークメタ解析を行い、オッズ比または標準化平均差を95%信頼区間[CI]値と共に算出した。surface under the cumulative ranking(SUCRA)を用いて、すべての降圧薬治療戦略とプラセボの効果を比較し、ランク付けした。ACE+ARB併用は、末期腎不全を減少するがリスク増大も ネットワークメタ解析には、157試験、4万3,256例のデータが組み込まれた。被験者の大半は、2型糖尿病合併CKD患者で、平均年齢は52.5歳(SD 12.0)であった。 結果、各レジメンの全死因死亡のオッズ比は、0.36(ACE阻害薬+Ca拮抗薬)から5.13(βブロッカー)にわたってランク付けされたが、抑制効果についてプラセボより有意に良好なレジメンはなかった。 しかしながら末期腎不全については、ARB+ACE阻害薬の併用療法(オッズ比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.90)と、ARB単独療法(同:0.77、0.65~0.92)において、プラセボと比較した有意な抑制効果が認められた。 高カリウム血症または急性腎不全を有意に増大したレジメンはなかったが、その中でランク付けにおいて、ARB+ACE阻害薬併用の推定リスクが最も高かった。(高カリウム血症のオッズ比:2.69、95%CI:0.97~7.47、急性腎不全:2.69、0.98~7.38)。

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1型糖尿病患者における強化療法と眼科手術(解説:住谷 哲 氏)-363

 糖尿病診断直後からの数年にわたる厳格な血糖管理が、その後の患者の予後に大きく影響することは、1型糖尿病(T1DM)においてはmetabolic memory(高血糖の記憶)、2型糖尿病(T2DM)においてはlegacy effect(遺産効果)として広く知られている。T1DMにおける糖尿病性腎症、心血管イベントおよび総死亡に対するmetabolic memoryの存在がすでに報告されていたが、本論文により眼科手術に対しても同様にmetabolic memoryの存在が明らかにされた。 糖尿病網膜症を有する患者においては、高血糖の急速な改善により網膜症の増悪を来すことがあるため注意が必要である、といわれているがエビデンスははっきりしない。本論文の基になっているDCCT試験1)において、血糖正常化を目指した強化療法群では介入開始1年後に、2次介入群(secondary-intervention cohort:軽度から中等度の非増殖性網膜症を有する患者群)では網膜症の増悪・進展を認めているが、3年後からは逆に強化療法群で増悪・進展が抑制されていた。6.5年後の試験終了時には、強化療法により1次予防群(primary-prevention cohort:網膜症なしの患者群)において、網膜症の新規発症が76%、2次介入群では網膜症の進展が54%、増殖性網膜症または高度の非増殖性網膜症の発症が47%とそれぞれ抑制されていた。したがって、T1DM患者においては、中等度の非増殖性網膜症までの段階であれば厳格に血糖管理を行うことで、一過性に網膜症の増悪を認めることもあるが、長期的には網膜症の新規発症、増悪、進展を抑制できる、とのエビデンスをわれわれは持っていたことになる。 本論文ではDCCT試験終了から23年後、試験開始から30年後における、通常療法群と強化療法群との眼科手術の頻度と、眼科手術にかかるコストとが評価された。結果は予想どおり、眼科手術の頻度とコストとの両者共に強化療法群において有意に減少していた。しかしながら、失明した患者数については記載がない。著者らの結論は眼科手術とコストとの両者においてもmetabolic memoryの存在が証明された、となっているが、すでに腎症、心血管イベントにおいてmetabolic memoryの存在が証明されており、当然のような気がしないでもない。 Discussionにおいて、強化療法によるベネフィットのほとんどはHbA1cの低下によって説明され、血圧の関与は有意ではなかったとある。この解釈には少し注意が必要であろう。2型糖尿病患者における血圧管理の重要性を初めて明らかにしたUKPDS 362)においては、cataract extraction(白内障摘出術)を除いたすべてのエンドポイントが降圧により減少した。他の2つの眼科関連エンドポイントであるvitrectomy(硝子体切除術)、retinal photocoagulation(網膜光凝固術)も降圧により有意に減少している。本論文においては眼科手術の多くがcataract extractionであり、全体の結果がこれに引きずられた可能性が否定できない。血圧管理は1型、2型を問わず糖尿病合併症予防においてきわめて重要であり、厳格な血糖管理のみに注目するのではなく、血圧、脂質も含めた包括的な管理を心がける必要があろう。

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長期血圧変動性とCKD発症リスク~日本人5万人の調査

 非糖尿病者における長期血圧変動性が、他の血圧パラメータ(平均血圧、血圧への累積曝露など)と代謝プロファイルの変化に関係なく、慢性腎臓病(CKD)の新規発症リスクと関連しているかどうかは、いまだ不明である。今回、米国・ノースウェスタン大学の矢野裕一朗氏らは、糖尿病およびCKDではない中高年の日本人約5万人の調査データから、3年間の長期血圧変動性が、追跡期間中の血圧の曝露(平均もしくは累積)や代謝プロファイルの変化に関係なく、CKDの新規発症リスクと関連していたことを報告した。Hypertension誌オンライン版2015年5月18日号に掲載。 対象は、ベースライン時に糖尿病およびCKD(eGFR 60mL/分/1.73m2未満または尿試験紙で蛋白尿)ではなかった日本人4万8,587人。年齢は40~74歳(平均61.7歳)、男性の割合は39%であった。血圧測定は、ベースライン時ならびに年1回(3年間)の計4回実施した。この4回の血圧の標準偏差(SD)と平均変動幅を血圧変動性と定義した。 主な結果は以下のとおり。・3年目の血圧測定時に、全体の6.3%がCKDを発症していた。・多変量調整ロジスティック回帰モデルでは、臨床的特徴の調整後、収縮期血圧のSD(5mmHgごと)、拡張期血圧のSD(3mmHgごと)、収縮期血圧の平均変動幅(6mmHgごと)、拡張期血圧の平均変動幅(4mmHgごと)における1SDの増加が、CKDの新規発症と関連していた(それぞれのオッズ比[95%CI]は順に、1.15[1.11~1.20]、1.08[1.04~1.12]、1.13[1.09~1.17]、1.06[1.02~1.10]、すべてp<0.01)。また、測定した4回の血圧の平均とも関連していた。・血圧のSDおよび平均変動幅とCKDとの関連は、追跡期間中の代謝パラメータの変化について追加調整後も有意であった(各オッズ比:1.06~1.15、すべてp<0.01)。・性別、降圧薬の使用、高血圧の存在による感度分析でも、同様の結論を示した。

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日本型臨床研究を探る…日本循環器学会

 本年(2015年)4月、第79回日本循環器学会学術集会において、プレナリーセッション「世界の潮流を見据えた日本型臨床研究のあり方を探る」が行われ、日本型の臨床研究がいかにあるべきか、循環器領域の臨床試験の取り組みについて議論が交わされた。心不全患者のレジストリ 当セッションの中で東北大学 循環器内科学 坂田 泰彦氏は、心不全登録研究であるCHART-2(The Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2)試験の結果を示した。心不全は高齢になるほど発症頻度が増加する。日本はすでに超高齢化社会に突入しているが、今後はヨーロッパ、アジアの多くの国も高齢化社会となり、心不全の増加は今後の世界的問題となる。 そのようななか、同科では2006年から東北6県24施設から冠動脈疾患患者、心不全患者、心不全の前段階であるステージB症例患者を登録したCHART-2試験を開始している。このCHART-2試験を2000年当時のデータと比較すると、心不全患者の基礎疾患に冠動脈疾患、高血圧、糖尿病が増加していること、エビデンスに沿った治療が浸透していることが明らかになった。CHART-2試験からは、心不全の予後や発症予防についての規定因子が示された。75歳以上では収縮期血圧が高いほうが心不全発症後の予後が不良であること、拡張期血圧70mmHg未満では収縮期血圧のいかんにかかわらず心不全発症リスクが高いことなどが明らかになっている。 坂田氏は、わが国は超高齢化国として、心不全の治療・発症予防に関するエビデンス発信をすることで、世界の心不全の急増に対して大きなメッセージを送るべきであると述べた。2型糖尿病を合併した冠動脈疾患のレジストリ 琉球大学 臨床薬理学の植田 真一郎氏は、佐賀大学と共同で取り組んでいる2型糖尿病を合併した冠動脈疾患のレジストリを紹介した。 ハイリスクな糖尿病疾患の研究には、年齢・性別など患者の背景因子、心血管インターベンション、降圧薬、脂質低下薬、糖尿病薬などの各種介入の影響など、多くの因子分析が必要である。結果を出すためには多面的な評価が必要となり、一つひとつRCTを組んでいくことは現実的ではない。そのため、まずはコホート研究を実施すべく、上記患者のレジストリを構築した。現在、2005年から6,400例以上が登録されている。 このコホート試験の結果から、総死亡、心筋梗塞、脳卒中などハードエンドポイントの発症は年間6~7%発症と高いこと、血圧と積極的降圧の関係などが明らかになっている。現在は、レジストリをベースに積極的降圧と標準治療の比較、DPP-4阻害薬の比較などRCTに適切な患者を登録する取り組みを行っている。 臨床研究は治験だけでは成り立たない。実際、新薬登場後も多くのコホート研究、ケースコントロール研究、現実的なRCTが行われた後、有効性・安全性や患者の予後改善のデータがそろう。患者レジストリには課題はあるものの、それ自体大規模なコホート研究となる。植田氏は、レジストリは、今後多くの臨床研究のプラットホームとなるであろうと述べた。

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片頭痛予防にSSRIやSNRIは支持されない

 うつ病および抗うつ薬の使用がそれぞれ乳がんのリスクを高めるという仮説2005年に発表した、片頭痛および緊張型頭痛の予防のためのSSRIに関するコクランレビューを、イタリア・Laboratory of Regulatory PoliciesのRita Banzi氏らはアップデートした。今回のレビューでは、SSRIやセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるベンラファキシン(国内未承認)を片頭痛の予防として用いることを支持するエビデンスは得られなかった。また、2~3ヵ月超の治療でSSRIやベンラファキシンがプラセボやアミトリプチリンより片頭痛の頻度、重症度および持続期間を減少させるというエビデンスも示されなかった。これらの結果を踏まえて著者は、「片頭痛の予防にSSRIやSNRIの使用は支持されない」とまとめている。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年4月1日号の掲載報告。 今回研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(2014年第10号)、MEDLINE(1946年~2014年11月)、EMBASE(1980年~2014年11月)、PsycINFO(1987年~2014年11月)を用い、18歳以上の片頭痛を有する男女を対象としたSSRI/SNRIとあらゆるタイプの介入との無作為化比較試験を検索するとともに、検索した論文の参照文献リストや進行中の臨床試験も調査した。2人の研究者が独立してデータ(片頭痛の頻度、インデックス、重症度、持続期間、対症療法あるいは鎮痛薬の使用、休業日数、QOL、気分の改善、費用対効果、有害事象)を抽出し、試験のバイアスリスクを評価した。なお、本レビューでの主要アウトカムは片頭痛の頻度とした。 結果は以下のとおり。・本レビューには、5種類のSSRIおよび1種類のSNRIを用いた11件(被験者合計585例)の試験が含まれた(プラセボ対照試験6件、SSRIまたはSNRIとアミトリプチリンとの比較試験4件、エスシタロプラムとベンラファキシンの比較試験1件)。・大半の試験は、方法論や報告(もしくはその両方)が不十分であった。すなわち、すべての試験が選択および報告バイアスのリスクがはっきりしておらず、また、追跡調査が3ヵ月を超える試験はまれであった。・大半の試験は十分な検出力もなく、片頭痛の頻度を主要評価項目としてSSRIまたはSNRIの効果を検討した試験は、ほとんどなかった。・プラセボ対照試験のうち2件の試験は、SSRIおよびSNRIとプラセボとの差についてエビデンスがないことを示唆する曖昧な報告であった。・アミトリプチリンとの比較試験のうち2件の研究では、SSRIやSNRIとアミトリプチリンとの間で片頭痛の頻度に差があるというエビデンスは見出されず(標準化平均差:0.04、95%信頼区間[CI]:-0.72~0.80、I2=72%)、片頭痛の重症度や持続期間などの副次的評価項目にも差はなかった。・SSRIやSNRIは、三環系抗うつ薬よりも全般的に忍容性が良好であった。しかし、有害事象または他の理由のために試験を中止した患者数に差はなかった(1件の研究で、オッズ比[OR]:0.39、95%CI:0.10~1.50、およびOR:0.42、95%CI:0.13~1.34)。・SSRIまたはSNRIと抗うつ薬以外の薬物治療(たとえば抗てんかん薬や降圧薬)とを比較した研究はなかった。関連医療ニュース 片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか SSRI中止は離脱症状に注意を  担当者へのご意見箱はこちら

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結果が矛盾する論文をどう解釈すべきか【Dr.桑島が動画で解説】

プレゼント応募はこちら抽選の申し込みをする応募受付期間を終了いたしました。抽選で100名様に『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2015』を進呈!応募期間: 2015年4月24日~2015年5月25日 正午まで当選の通知方法 : プレゼントの発送をもって、当選のお知らせとさせていただきますプレゼント発送予定日 : 2015年6月上旬ごろ予定  3月4月に最も読まれたCLEAR!ジャーナル四天王 TOP51位)「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)2位)DPP-4阻害薬の副作用としての心不全-アログリプチンは安全か…(解説:吉岡 成人 氏)3位)降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)4位)ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)5位)COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)J-CLEARのメンバーが評論した論文を紹介したコーナー「CLEAR!ジャーナル四天王」最新記事一覧はこちらをクリック前回の動画はこちら第1回 Dr.桑島の動画でわかる「エビデンスの正しい解釈法」MRの話はどこまで信じていいのか・・・と感じた経験ありませんか?「適切なエンドポイントか」「実験の実施主体はどこか」など見極めるポイントをわかりやすく解説

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高血圧治療を再考する ~L/N型Ca拮抗薬/ARB配合錠の選択~

高血圧治療ガイドライン2014でも示すとおり、各種降圧薬には各々の積極的適応が存在し、高血圧治療においては、それに対応した単剤/併用療法を考慮します。また、配合剤の登場により、患者の負担もより少なくなっています。本コンテンツでは、 N型Caチャネル阻害により交感神経亢進を抑制するシルニジピンと、ARBとの合剤であるシルニジピン/バルサルタン配合錠にスポットをあて、有用性とそのメカニズムを動画で詳しく解説します。

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降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)-331

 これまで降圧速度に関しては、急激な降圧が臓器虚血を誘発する可能性があるとの考え方から、概念的に「The slower the better(ゆっくりなほど、よし)」というコンセプトを持つ専門家が多かった。しかし、この考え方を支持する科学的根拠はほとんどなかったのである。 近年の心血管疾患のコンセプトは、血管病という概念により、酸素や栄養成分の補給路、ライフラインである“血管”の破綻が心筋梗塞や脳梗塞をもたらし、治療においては、血管保護こそが心血管疾患発症予防に重要であるとの考え方が主流になりつつある。 たとえていえば、傷んだ道路に対しては速やかな対策、すなわち通行制限が急務ということになり、高血圧治療では、速やかな降圧こそが心血管合併症予防に有効なのである。このことを証明したトライアルが、ARBバルサルタンの心血管疾患合併症予防効果をアムロジピンと比較したVALUE試験である。 value試験では、6ヵ月間の血圧調整期間において、アムロジピン群の降圧効果がバルサルタン群よりも大きかったために、心筋梗塞や脳卒中の発生が少なかったことから、速やかな降圧こそが重要であることを示唆した。 本研究は英国のプライマリケア受診症例の長期追跡による結果であるが、まさに、降圧は「The faster the better(速やかな降圧ほど、よし)」を科学的に証明したという点で意義がある。速やかとはいってもアダラートカプセルのように服用後1、2時間で降圧させることは危険であることは言うまでもなく、本論文の主旨は、数週間単位での降圧速度のことであり、まずは、少なくとも1.4ヵ月以内に収縮期血圧を150mmHg以下に下げることが、脳心血管合併症予防に重要であることを示唆している。

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エナラプリル+葉酸、脳卒中を有意に低下/JAMA

 降圧薬エナラプリル(商品名:レニベースほか)単独よりも、葉酸を併用したほうが、高血圧患者の脳卒中初発が有意に低下したことが報告された。中国・北京大学第一病院のYong Huo氏らが、同国高血圧患者で脳卒中または心筋梗塞の既往歴がない2万702例を対象に行った無作為化二重盲検試験CSPPTの結果、報告した。これまで、脳卒中1次予防に関する葉酸の効果については、データが限定的および一貫性がないため不明であった。JAMA誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。中国人高血圧患者2万例超で、vs.エナラプリル単独の二重盲検無作為化試験 研究グループは、中国人高血圧患者の1次予防に関して、エナラプリル単独よりも葉酸サプリメントを併用したほうが、初発の脳卒中発生を抑制する効果が大きいとの仮説について検証するCSPPT(China Stroke Primary Prevention Trial)を行った。 試験は2008年5月19日~2013年8月24日に、江蘇省と安徽省の32地域で行われ、高血圧症で脳卒中または心筋梗塞既往歴のない2万702例が参加した。 被験者を、MTHFR C677T遺伝子型(CC、CT、TT)によって層別化し、1日1回、エナラプリル10mgと葉酸0.8mgを含んだ合剤を投与(1万348例)またはエナラプリル10mg錠剤を投与(1万354例)する群に無作為に二重盲検下で割り付けて追跡した。 主要アウトカムは脳卒中の初発であった。副次アウトカムは、初発の虚血性脳卒中、初発の出血性脳卒中、心筋梗塞、心血管イベント複合(心血管死・心筋梗塞・脳卒中)、全死因死亡などだった。併用群の初発脳卒中リスクハザード比0.79 治療期間中央値4.5年間で、エナラプリル単独群と比較して、葉酸併用群は、初発脳卒中リスクは有意に低下した(葉酸併用群2.7% vs. エナラプリル単独群3.4%)。ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.68~0.93)だった。また、初発の虚血性脳卒中(同:2.2% vs. 2.8%、HR:0.76)、心血管イベント複合(心血管死・心筋梗塞・脳卒中)(同:3.1% vs. 3.9%、HR:0.80)も有意に低下した。 一方、出血性脳卒中(HR:0.93)、心筋梗塞(同:1.04)、全死因死亡(同:0.94)は、両群で有意差はみられなかった。 有害事象の発生頻度については両群間で有意差はなかった。

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降圧薬に認知症予防効果は期待できるのか

 慢性高血圧、とくに中年期の高血圧は、認知機能低下や認知症のリスク増加と関連することが知られている。しかし、降圧薬の予防効果についてはあまり解明されていなかった。フランス・INSERMのLaure Rouch氏らは、システマティックレビューを行い、カルシウム(Ca)拮抗薬やレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は認知機能低下および認知症の予防に有効である可能性を示した。ただし、「今回の知見を確認するためには、認知症を主要評価項目としたより長期の無作為化試験が必要」とまとめている。CNS Drugs誌2015年2月号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、Embase、the Cochrane Libraryを用い、高血圧、降圧薬、認知機能低下、認知症に関する1990年以降の論文を検索した。 結果は以下のとおり。・検索論文1万251件から、縦断的研究18件、無作為化試験11件、メタ解析9件、計38件の研究が特定され解析に組み込んだ(合計134万6,176例、平均年齢74歳)。・認知障害あるいは認知機能低下に対する降圧薬の作用を評価した7件の縦断的研究において、降圧薬は有効であることが示唆された。・認知症の発症に対する降圧薬の作用を評価した11件の縦断的研究において、有意な予防効果が認められなかったのは3件のみであった。・降圧薬は、血管性認知症だけでなくアルツハイマー病のリスクも減少できることが示された。・4件の無作為化試験において、降圧薬が認知機能低下または認知症の発症予防効果を有する可能性が示された。 - SYST-EUR(Systolic Hypertension in Europe Study)IおよびII:認知症のリスクが55%低下(3.3 vs 7.4例/1,000人年、p<0.001)。 - HOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation):脳卒中関連の認知機能低下が41%減少(95%CI:6~63)。 - PROGRESS(Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study):認知機能低下が19%減少(95%CI:4~32、p=0.01)。・メタ解析による本検討は、研究デザイン、対象、曝露因子、評価項目および追跡期間が均一でないなど方法論的な問題が原因で矛盾した結果が示され、限定的なものである。関連医療ニュース 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか 認知症によいサプリメント、その効果は 認知症にイチョウ葉エキス、本当に有効なのか  担当者へのご意見箱はこちら

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Vol. 3 No. 2 AF患者の脳卒中にどう対応するか? NOAC服用患者への対応を中心に

矢坂 正弘 氏国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科はじめに非弁膜症性心房細動において新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の「脳卒中と全身塞栓症予防」効果はワルファリンと同等かそれ以上である1-3)。大出血や頭蓋内出血が少なく、管理が容易であることを合わせて考慮し、ガイドラインではNOACでもワルファリンでも選択できる状況下では、まずNOACを考慮するように勧めている4)。しかし、NOACはワルファリンより脳梗塞や頭蓋内出血の発症頻度が低いとはいえ、その発症をゼロに封じ込める薬剤ではないため、治療中の脳梗塞や頭蓋内出血への対応を考慮しておく必要がある。本稿では、NOACの療法中の脳梗塞や頭蓋内出血時の現実的な対応を検討する。NOAC療法中の急性脳梗塞NOAC療法中の症例が脳梗塞を発症した場合、一般的な脳梗塞の治療に加えてNOAC療法中であるがゆえにさらに2つの点、rt-PA血栓溶解療法施行の可否と急性期抗凝固療法の実際を考慮しなくてはならない。(1) rt-PA血栓溶解療法の可否ワルファリン療法中は適正使用指針にしたがってPTINRが1.7以下であればrt-PA血栓溶解療法を考慮できる5)。しかし、ダビガトラン、リバーロキサバンおよびアピキサバン療法中の効果と安全性は確立しておらず、明確な指針はない。表1にこれまで発表されたダビガトラン療法中のrt-PA血栓溶解療法例を示す6-8)。ダビガトラン療法中の9例のうち中大脳動脈広範囲虚血で190分後にrt-PAが投与された1例を除き、8例で良い結果が得られている。それらに共通するのは、ダビガトラン内服から7時間以後でrt-PAが投与され、投与前APTTが40秒未満であった。ダビガトランの食後内服時のTmaxが4時間であることを考慮すると、rt-PA投与が内服後4時間以降であり、APTTが40秒以下(もしくは前値の1.5倍以下)であることがひとつの目安かもしれない。内服時間が不明な症例では来院時のAPTTと時間を空けてのAPTTを比較し、上昇傾向にあるか、低下傾向にあるかを見極めてTmaxを過ぎているかどうかを判断することも一法であろう。NOAC療法症例でrt-PA血栓溶解療法を考慮する場合は、少なくとも各薬剤のTmax 30分から4時間程度、ダビガトランではAPTTが40秒以下、抗Xa薬ではプロトロンビン時間が1.7以下であることを確認し、論文を含む最新情報に十分に精通した上で施設ごとに判断をせざるを得ないであろう5)。アピキサバンはAPTTやPT-INRと十分に相関しないことに注意する。抗Xa薬では、血中濃度と相関する抗Xa活性を図る方法も今後検討されるかもしれない。表1 ダビガトラン療法中のtPA血栓溶解療法に関する症例報告画像を拡大する(2) 急性期抗凝固療法心原性脳塞栓症急性期は脳塞栓症の再発率が高いため、この時期に抗凝固療法を行えば、再発率を低下させることが期待されるが、一方で栓子溶解による閉塞血管の再開通現象と関連した出血性梗塞もこの時期に高頻度にみられる。したがって、抗凝固療法がかえって病態を悪化させるのではないかという懸念もある。この問題はまだ解決されていないため、現時点では、脳塞栓症急性期の再発助長因子(発症後早期、脱水、利尿薬視床、人工弁、心内血栓、アンチトロンビン活性低下、D-dimer値上昇など)や、抗凝固療法による出血性合併症に関連する因子(高齢者、高血圧、大梗塞、過度の抗凝固療法など)を考慮して、個々の症例ごとに脳塞栓症急性期における抗凝固療法の適応を判断せざるを得ない。われわれの施設では症例ごとに再発の起こりやすさと出血性合併症の可能性を検討して、抗凝固療法の適応を決定している。具体的には感染性心内膜炎、著しい高血圧および出血性素因がないことを確認し、画像上の梗塞巣の大きさや部位で抗凝固療法開始時期を調整している(表2)9)。表2 脳塞栓症急性期の抗凝固療法マニュアル(九州医療センター2013年4月1日版)画像を拡大する(別タブが開きます)出血性梗塞の発現は神経所見とCTでモニタリングする。軽度の出血性梗塞では抗凝固療法を継続し、血腫型や広範囲な出血性梗塞では抗凝固薬投与量を減じたり、数日中止し、増悪がなければ再開する10)。新規経口抗凝固薬、ヘパリン、およびワルファリン(ワーファリン®)の投与量および切り替え方法の詳細も表2に示す。ワルファリンで開始する場合は即効性のヘパリンを必ず併用し、PT-INRが治療域に入ったらヘパリンを中止する。再発と出血のリスクがともに高い場合、心内血栓成長因子である脱水を避けること,低容量ヘパリンや出血性副作用がなく抗凝血作用のあるantithrombin III製剤の使用が考えられる11)。NOAC療法中に脳梗塞を発症した症例で、NOAC投与を考慮する場合、リバーロキサバンとアピキサバンは第III相試験が低用量選択基準を採用した一用量で実施されているので、脳梗塞を発症したからといって用量を増量したり、調節することは適切ではない2,3)。他剤に変更するか、脳梗塞が軽症であれば、あるいは不十分なアドヒアランスで発症したのであれば、継続を考慮することが現実的な対応であろう。一方ダビガトランは第III相試験が2用量で行われ、各々の用量がエビデンスを有しているので、低用量で脳梗塞を発症した場合、通常用量の可否を考慮することは可能である1)。NOAC療法中の頭蓋内出血ここではNOAC療法中の頭蓋内出血の発症頻度や特徴をグローバルやアジアでの解析結果を参照にワルファリン療法中のそれらと対比しながら概説する。(1) グローバルでの比較結果非弁膜症性心房細動を対象に脳梗塞の予防効果をワルファリンと対比したNOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の4つの研究(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AF)においてワルファリン群と比較してNOAC群の頭蓋内出血は大幅に減少した(本誌p.24図1を参照)1-3,12)。(2) アジアでの比較結果各第III相試験サブ解析から読み取れるアジアや東アジアの人々の特徴は、小柄であり、それに伴いクレアチニンクリアランス値が低く、脳卒中の既往や脳卒中発症率が高いことである13-16)。またワルファリンコントロールにおけるtime in therapeutic range(TTR)が低く、PT-INRが低めで管理されている症例が多いにもかかわらず、ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率は極めて高い特徴がある(本誌p.24図2を参照)13-16)。しかし、NOACの頭蓋内出血発症率はワルファリン群より大幅に低く抑えられており、NOACはアジアや東アジアの人々には一層使いやすい抗凝固薬といえよう。(3) NOAC療法中に少ない理由NOACで頭蓋内出血が少ない一番の理由は、脳に組織因子が多いことと関連する16-18)。組織が損傷されると組織因子が血中に含まれる第VII因子と結びつき凝固カスケードが発動する。NOAC療法中の場合は第VII因子が血液中に十分にあるので、この反応は起こりやすい。しかし、ワルファリン療法中は第VII因子濃度が大幅に下がるのでこの反応は起こりにくくなり止血し難い。次にワルファリンと比較して凝固カスケードにおける凝固阻止ポイントが少ないことが挙げられる。ワルファリンは凝固第II、VII、IX、X因子の4つの凝固因子へ作用するが、抗トロンビン薬や抗Xa薬はひとつの凝固因子活性にのみ阻害作用を発揮するため、ワルファリンよりも出血が少ない可能性がある。さらに安全域の差異を考慮できる。ある薬剤が抗凝固作用を示す薬物血中濃度(A)と出血を示す薬剤の血中濃度(B)の比B/Aが大きければ安全域は広く、小さければ安全域は狭い。ワルファリンはこの比が小さく、NOACは大きいことが示されている19)。最後に薬物血中濃度の推移も影響するだろう。ワルファリンはその効果に大きな日内変動はみられないが、ダビガトランは半減期が12時間で血中濃度にピークとトラフがある。ピークではNOAC自身の薬理作用が、トラフでは生理的凝固阻止因子が主となり、2系統で抗凝固作用を発揮し、見事に病的血栓形成を抑制しているものと理解される(Hybrid Anticoagulation)(図)16,17)。トラフ時には生理的止血への抑制作用は強くないため、それが出血を減らすことと関連するものと推測される。図 ハイブリッド抗凝固療法画像を拡大する(4) 特徴NOAC療法中は頭蓋内出血の頻度が低いのみならず、一度出血した際に血腫が大きくなり難い傾向も有するようだ。われわれはダビガトラン療法中の頭蓋内出血8例9回を経験しケースシリーズ解析を行い報告した20)。対象者は高齢で9回中7回は外傷と関連する慢性硬膜下出血や外傷性くも膜下出血などで、脳内出血は2例のみであった。緊急開頭が必要な大出血はなく、入院後血腫が増大した例もなく、多くの転帰は良好であった。もちろん、大血腫の否定はできず、血圧、血糖、多量の飲酒、喫煙といった脳内出血関連因子の徹底的な管理は重要であるが、ダビガトラン療法中の頭蓋内出血が大きくなりにくい機序としては、前述の頻度が低い機序が同様に関連しているものと推定される。(5) 出血への対応1.必ず行うべき4項目基本的な対応として、まず(1)休薬を行うこと、そして外科的な手技を含めて(2)止血操作を行うことである。(3)点滴によるバイタルの安定は基本であるが、NOACでは点滴しバイタルを安定させることで、半日程度で相当量の薬物を代謝できるので極めて重要である。(4)脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血時には十分な降圧を行う。2.場合によって考慮すること急速是正が必要な場合、ワルファリンではビタミンK投与や新鮮凍結血漿投与が行われてきたが、第IX因子複合体500~1,000IU投与(保険適応外)が最も早くPT-INRを是正できる。NOACの場合は、食後のTmaxが最長で4時間程度なので、4時間以内の場合は胃洗浄や活性炭を投与し吸収を抑制する。ダビガトランは透析で除去されるが、リバーロキサバンやアピキサバンは蛋白結合率が高いため困難と予測される。NOAC療法中に第IX因子複合体を投与することで抗凝固作用が是正させる可能性が示されている21)。今後の症例の蓄積とデータ解析に基づく緊急是正方法の開発が急務である。抗体製剤や低分子化合物も緊急リバース方法の1つとして開発が進められている。おわりにNOACは非常に有用な抗凝固薬であるが、実臨床における諸問題も少なくない。登録研究や観察研究を積極的に行い、安全なNOAC療法を確立する必要があろう。文献1)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151 and Erratum in. N Engl J Med 2010; 363: 1877.2)Patel MR et al. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011;365: 883-891.3)Granger CB et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.4)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf5)日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針改訂部会: rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf6)矢坂正弘ほか. 新規経口抗凝固薬に関する諸問題.脳卒中2013; 35: 121-127.7)Tabata E et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA) therapy in an acute stroke patient taking dabigatran etexilate: A case report and literature review, in press.8)稲石 淳ほか. ダビガトラン内服中に出血合併症なく血栓溶解療法を施行しえた心原性脳塞栓症の1例―症例報告と文献的考察. 臨床神経, 2014; 54:238-240.9)中西泰之ほか. 心房細動と脳梗塞. 臨牀と研究 2013;90: 1215-1220.10)Pessin MS et al. Safety of anticoagulation after hemorrhagic infarction. Neurology 1993; 43:1298-1303.11)Yasaka M et al. Antithrombin III and Low Dose Heparin in Acute Cardioembolic Stroke. Cerebrovasc Dis 1995; 5: 35-42.12)Giugliano RP et al. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013;369: 2093-2104.13)Hori M et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke 2013; 44: 1891-1896.14)Goto S et al. Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin for stroke prevention in atrial fibrillation in East Asia with atrial fibrillation. Eur Heart J 2013; 34 (abstract supplement):1039.15)Wong KS et al. Rivaroxaban for stroke prevention in East Asian patients from the ROCKET AF trial. Stroke 2014, in press.16)Yasaka M et al. Stroke Prevention in Asian Patients with Atrial Fibrillation. Stroke 2014, in press.17)Yasaka M et al. J-ROCKET AF trial increased expectation of lower-dose rivaroxaban made for Japan. Circ J 2012; 76: 2086-2087.18)Drake TA et al. Selective cellular expression of tissue factor in human tissues. Implications for disorders of hemostasis and thrombosis. Am J Pathol 1989; 134: 1087-1097.19)大村剛史ほか. 抗凝固薬ダビガトランエテキシラートのA-Vシャントモデルにおける抗血栓および出血に対する作用ならびに抗血栓作用に対するビタミンKの影響. Pharma Medica 2011; 29: 137-142.20)Komori M et al. Intracranial hemorrhage during dabigatran treatment: Case series of eight patients. Circ J, in press.21)Kaatz S et al. Guidance on the emergent reversal of oral thrombin and factor Xa inhibitors. Am J Hematol 2012; 87 Suppl 1: S141-S145.

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「2型糖尿病では降圧薬の種類にかかわらず、厳格な降圧そのものが重要」を裏付けるメタ解析(解説:桑島 巌 氏)-314

 糖尿病を合併した高血圧患者における収縮期血圧の降圧目標値に関して、海外では従来よりも緩和する傾向がある。最近発表されたINVEST研究やACCORD研究などを参考にしているが、必ずしも信頼性の高い研究ではなかった。 本研究はバイアスが少ないと考えられる45のRCTからのメタ解析の成績である。MEDLINEから検索したRCTデータを統計したものであり、BPLTTCのように登録した試験のみの生データを再解析したものではない点や、異質性(heterogeneity)を排除しきれていないこと、追跡期間の長短が混在していることなどにやや難点がある。しかし、対象症例約10万例という規模の大きさがそれを補っている形である。 収縮期血圧の10mmHgの下降が、死亡率や心血管イベントを有意に抑制し、とくにベースラインの収縮期血圧140mmHg以上でのイベント抑制が大きいことから、糖尿病合併例での降圧治療開始はこのレベルが適切であることを示唆している。 脳卒中やアルブミン尿をエンドポイントとした場合には、収縮期血圧が140mmHg以上でも以下でも降圧による有用性が大きいことも臨床的に有用な情報である。 また、到達収縮期血圧が130mmHg以上でも以下でも脳卒中、アルブミン尿は有意な抑制が認められているが、脳卒中発症が多い日本人では参考になるデータである。 一方、死亡率、心血管イベント、冠動脈疾患、心不全などをエンドポイントとした場合には、収縮期血圧が130mmHg以下での有意な抑制率はみられていない。本論文のlimitationでも述べているように、収縮期血圧を120~130mmHgとしたトライアルが少なかったことも関係しているかもしれない。 しかし、一般に心疾患と血圧の関係は、原因というよりも結果である可能性も考えられる。肝要なことは、降圧によるイベント抑制効果は降圧薬の種類によらず、降圧そのものが重要であることを示した点は臨床上、参考になる結果である。

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2型糖尿病に降圧治療は有効か/JAMA

 2型糖尿病患者に対する降圧治療は、全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿などのリスクを改善することが、英国・オックスフォード大学のConnor A. Emdin氏らの検討で示された。糖尿病患者は平均血圧が高く、血圧の上昇は糖尿病患者における大血管障害および細小血管障害のリスク因子として確立されている。一方、糖尿病患者への降圧治療の是非や目標血圧値については、現在もさまざまな議論が続いている。JAMA誌2015年2月10日号掲載の報告。降圧治療と血管疾患の関連をメタ解析で評価 研究グループは、2型糖尿病患者における降圧治療と血管疾患の関連を評価するために系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。対象は、1966~2014年に発表された糖尿病患者を含む降圧治療の大規模無作為化対照比較試験に関する論文とした。 本研究では、介入試験のメタ解析の指針であるPRISMAガイドラインで推奨されているアプローチが用いられた。2人のレビューワーが別個に患者背景や血管アウトカムのデータを抽出した。ベースラインおよび達成された血圧値別のアウトカムを評価し、固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主要評価項目は、全死因死亡、心血管イベント、冠動脈心疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の新規発症または増悪、腎不全の8項目とした。収縮期血圧の10mmHg低下における相対リスク(RR)、1,000人年当たりのイベントの絶対リスク減少率(ARR)および10年間の治療必要数(NNT)を算出した。6項目でリスク改善、薬剤クラス別の差はほとんどない バイアスのリスクが低いと判定された40試験に参加した10万354例が解析の対象となった。収縮期血圧の10mmHgの低下により、主要評価項目のうち以下の6項目のリスクが有意に改善した。 全死因死亡(RR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.96/1,000人年当たりのイベントのARR:3.16、95%CI:0.90~5.22/10年NNT:32、95%CI:19~111)、心血管イベント(0.89、0.83~0.95/3.90、1.57~6.06/26、17~64)、冠動脈心疾患イベント(0.88、0.80~0.98/1.81、0.35~3.11/55、32~284)。 脳卒中(0.73、0.64~0.83/4.06、2.53~5.40/25、19~40)、網膜症(0.87、0.76~0.99/2.23、0.15~4.04/45、25~654)、アルブミン尿(0.83、0.79~0.87/9.33、7.13~11.37/11、9~14)。 ベースラインの平均収縮期血圧が≧140mmHgと<140mmHgの試験に分けて解析したところ、降圧治療により≧140mmHgの試験でRRが有意に減少し、<140mmHgの試験では有意な変化のない項目として、全死因死亡、心血管疾患イベント、冠動脈心疾患イベント、心不全が挙げられた(交互作用のp値がいずれもp<0.1)。 降圧薬のクラス別の解析では、全体としてアウトカムとの関連はほとんどなかった。例外として、利尿薬により心不全のRRが有意に減少した(RR:0.83、95%CI:0.72~0.95)が、これにはALLHAT試験の影響が大きかった。また、ARB薬も心不全のRRを有意に低減させた(0.61、0.48~0.78)が、データは2つの試験に限られ、信頼区間の間隔が広かった。これに対し、カルシウム拮抗薬(CCB)は他のクラスの薬剤に比べ心不全のRRが有意に高かった(1.32、1.18~1.47)。 一方、CCBは脳卒中のリスクを有意に低下させた(RR:0.86、95%CI:0.77~0.97)が、β遮断薬はこれを増大させた(1.25、1.05~1.50)。また、ARBは他の薬剤に比べ全死因死亡のリスクが相対的に低かった(0.81、0.66~0.99)が、これにはLIFE試験の影響が大きかった。なお、バイアスのリスクが高いと判定された1試験と不明と判定された3試験を加えると、薬剤のクラスによるアウトカムの差はほぼなくなった。 著者は、「2型糖尿病患者では、降圧治療により全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクも改善した。これらの知見は、2型糖尿病患者への降圧薬の使用を支持するものである」とまとめ、「脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクが高い糖尿病患者では、収縮期血圧をさらに130mmHgへと低下させると、これらのリスクが減少することが示唆された」としている。

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降圧強化治療はタイムリーな管理が重要/BMJ

 高血圧治療において、収縮期血圧強化閾値が150mmHg超であること、血圧上昇後の降圧強化治療開始が1.4ヵ月超遅れること、強化治療後の次回受診までの期間が2.7ヵ月超空くことは、急性心血管イベントや死亡の増大と関連することが明らかにされた。米国ベスイスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのWenxin Xu氏らが住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、報告した。著者は、「高血圧患者の治療ではタイムリーな管理とフォローアップが重要であることを支持する所見が示された」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年2月5日号掲載の報告より。8万8,756例のプライマリケアデータベースを基に分析 検討は、1986~2010年の英国プライマリケア研究データベースHealth Improvement Networkを基に行われた。同データベースの高血圧患者8万8,756例について、降圧治療戦略別に急性心血管イベント、全死因死亡の発生率を調べた。治療戦略の評価は各患者10年間にわたって行われ、期間中の収縮期血圧強化閾値、強化治療開始までの期間、そしてフォローアップ(強化治療開始後の次回外来受診血圧測定)までの期間を特定して検討した。年齢、性別、喫煙、社会経済的状態、糖尿病歴、心血管疾患または慢性腎臓病歴、チャールソン併存疾患指数、BMI、総投薬量に対する実服薬量の割合(medication possession ratio:MPR)でみた服薬コンプライアンス、ベースライン時の血圧で補正を行った。「150mmHg超」「1.4ヵ月超」「2.7ヵ月超」、転帰リスク増大 対象者はベースライン時、平均年齢58.5歳、男性41.5%、平均BMIは27.6、過去/現在喫煙者56.5%、心血管疾患歴のある人は11.2%などであった。 10年間の治療戦略評価期間後の追跡期間中央値37.4ヵ月の間に、9,985例(11.3%)が急性心血管イベントまたは死亡に至っていた。 転帰リスクの差は、収縮期血圧強化閾値130~150mmHgではみられなかったが、150mmHg超では、リスクは次第に増大する関連が認められた(強化閾値160mmHgのハザード比[HR]:1.21、同170mmHgのHR:1.42、同180mmHg以上のHR:1.69、いずれもp<0.001)。 血圧上昇後の強化治療開始までの期間については五分位範囲で評価した。その結果、転帰リスクは最低位(0~1.4ヵ月に開始)から最高位(15.3ヵ月以上で開始)まで次第に増大する関連が認められた(第2分位[1.4~4.7ヵ月に開始]のHR:1.12、95%信頼区間[CI]:1.05~1.20、p=0.009)。 フォローアップまでの期間についても五分位範囲で評価した結果、最高位(2.7ヵ月超)で、転帰リスク増大との有意な関連が認められた(HR:1.18、95%CI:1.11~1.25、p<0.001)。

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治療抵抗性高血圧の切り札は、これか?~ROX Couplerの挑戦!(解説:石上 友章 氏)-313

 治療抵抗性高血圧に対する切り札的治療は、ひと昔前は「腎動脈交感神経アブレーション」だった。循環器、高血圧関連の学会のセミナーには必ずと言っていいほど、「腎動脈交感神経アブレーション」のセッションがあり、関係者の期待の高さをうかがわせていた。しかし、治療群に加え、腎動脈内にカテーテルを挿入するものの高周波治療を行わないシャムオペレーション群をおいた、初めての無作為化比較試験であるSymplicity HTN-3の結果が発表された(87施設、患者数535例)1)。その結果は、手技の安全性には問題はなかったが、試験実施前に設定された降圧効果を得ることができず、Medtronic社は、本邦で予定されていたHTN-Japanを含むすべての治験を中止し、現時点では治験再開の情報は得られていない。 このたび、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMelvin D Lobo氏らは、人為的に大腿動静脈吻合をつくるROX Couplerを用いた本研究(ROX CONTROL HTN)で、「腎動脈交感神経アブレーション」に代わって、治療抵抗性高血圧症に対する良好な降圧効果を報告している2)。実際に、本研究に登録された患者の一部は、「腎動脈交感神経アブレーション」治療を以前に受けた患者が含まれているという。 本試験は、非盲検多施設前向きの無作為化比較のデザインで、ROX Couplerを挿入した群と、薬物治療群の6ヵ月の降圧を比較している。本デバイスはこれまでに、COPD患者を対象にした臨床試験の結果が報告されている3)。ROX Couplerによる降圧機序は、人為的な動静脈吻合による全血管抵抗の減少が、第一に考えられているが、右心カテーテル検査の結果からは、心拍出量をはじめ、さまざまなパラメーターの変化が報告されている4) 5)。 予想通りに全血管抵抗は有意に低下しており、降圧をもたらす機序を説明しうる変化が認められる一方で、心拍出量、平均肺動脈圧、肺動脈楔入圧も上昇している。人為的にシャントを作ったので、混合静脈血酸素飽和度は上昇している。COPDによる低酸素血症が改善し、自覚症状や運動耐用能は一時的に回復するが、潜在的な心不全が悪化している。 この結果からは、本デバイスによる治療効果が、新たに非生理的な状態を生体に作り出すことで、見かけ上の降圧を実現している可能性が示唆される。治療抵抗性高血圧症に対する、標準的とは言わないまでも、新たな侵襲的デバイス治療の選択肢としての地位を確立するには、まだまだ十分ではない。高血圧を伴ったCOPD患者を対象にした、ROX Coupler挿入前後の心血行動態の変化4)平均(標準偏差)

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