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冠動脈疾患患者への降圧治療、Jカーブリスクに留意が必要/Lancet

 安定冠動脈疾患で降圧治療を受ける患者において、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧70mmHg未満と、それぞれ140mmHg以上、80mmHg以上で、死亡を含む有害心血管イベント発生リスクが増大するという「Jカーブ」を描くことが確認された。フランス・パリ第7大学のEmmanuelle Vidal-Petiot氏らが、45ヵ国、約2万3,000人を対象に行った前向きコホート研究の結果、明らかにした。至適降圧目標についてはなお議論の的であり、とくに冠動脈疾患患者では、拡張期血圧が低すぎる場合に心筋の血流低下が起きることが懸念されている。結果を踏まえて著者は、「所見は、冠動脈疾患患者に対する降圧治療は注意深く行うべきことを示すものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月26日号掲載の報告。心血管死、心筋梗塞、脳卒中の心血管イベントと血圧値の関連を分析 研究グループは、2009年11月~2010年6月にかけて45ヵ国で、安定冠動脈疾患で標準治療を受ける患者が登録されたレジストリ「CLARIFY」を基に、降圧治療を受ける2万2,672例のデータを解析した。 主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合心血管イベント。収縮期・拡張期血圧値(各イベント前の平均値を10mmHg単位で分類)との関連を分析した。収縮期血圧120mmHg未満、心血管リスク120~129mmHgの1.6倍 追跡期間の中央値は5.0年だった。分析の結果、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧80mmHg以上において、心血管イベントの発生リスクをそれぞれ有意に増大した。具体的に、収縮期血圧140~149mmHg群は、120~129mmHg群(収縮期参照群)に比べ、心血管イベント発生に関する補正後ハザード比は1.51(95%信頼区間[CI]:1.32~1.73)、また、150mmHg以上群の同ハザード比は2.48(同:2.14~2.87)だった。拡張期血圧については、80~89mmHg群の70~79mmHg群(拡張期参照群)に対する同ハザード比は1.41(同:1.27~1.57)だった。 一方で、収縮期血圧120mmHg未満群でも、心血管イベント発生リスクが増大することが示された。収縮期参照群に対する同ハザード比は1.56(同:1.36~1.81)だった。拡張期血圧については、60~69mmHgの拡張期参照群に対する同ハザード比は1.41(同:1.24~1.61)、60mmHg未満は同2.01(同:1.50~2.70)だった。

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観察研究の限界超えられず:CLARIFY登録観察研究(解説:桑島 巖 氏)-588

 冠動脈疾患合併の高血圧症例では、過度な降圧によってかえって心血管予後が悪くなるという、いわゆるJカーブ論争というのが古くからあるが、本研究はそれをぶり返す論文である。すなわち、登録時および観察中の血圧が120mmHg以上では心血管死、心血管合併症は増えるものの、120mmHg未満であっても予後は悪化するという結論である。 “ぶり返す”というのは、昨年発表された米国からのランダム化試験SPRINTで、中等度以上のリスクを有する高血圧症例では、収縮期血圧120mmHg未満への降圧が140mmHg未満よりも心疾患予後の点で優れているという、J-曲線仮説を否定する結論が出ているからである。 CLARIFY登録研究は観察研究であり、エビデンスの信頼性ではランダム化試験SPRINTには及ばないことを認識しておくべきである。 本試験は、登録観察研究の大きな欠点である交絡因子を除外しきれていない点は難点である。具体的には、収縮期血圧120mmHg未満の群では、登録時すでに心筋梗塞症例が66%であり、他の血圧群(120~129:60%、130~139:57%、140~149:56%、>150mmHg:53%)よりも明らかに多い。また、登録時の左室駆出率も<120mmHgの群では52.7%と他の群の56~57%よりも明らかに低い。 これらのことは何を意味するか?登録時および観察時収縮期血圧が低い群は、すでに冠動脈疾患が重症でありかつ心機能が低下していることを意味し、登録時点で予後不良であったことを意味する。このことは、登録時の心不全合併率が高いことからも明らかである。つまり、血圧が下がったから心血管予後を悪くしたのではなく、最初から冠動脈疾患が重症だったから血圧が低かったのである。心血管死が多いのは血圧が下がった結果ではなく、心血管が重症だったから血圧が低かったという因果の逆転である。 しかも、血圧測定はたった5分間安静にしただけの診察室血圧であり、さらに年に1回の測定である。医師のいないところで自動血圧計での3回測定で、3ヵ月に1回測定したSPRINT試験とは大きな違いがある。 ちなみに、Jカーブ論争はそろそろ打ち止めとすべきであると私は考える。元々、この仮説はCruickshank氏という人物が、冠動脈疾患合併症を有する高血圧では拡張期血圧を85mmHg以下に下げると冠動脈死が増えるといって一時話題になった仮説であるが、拡張期85mmHgなどというレベル以下での予後悪化は、今では完全に否定されている。高齢化社会となった現在では、むしろ収縮期血圧が重視されており、拡張期血圧はかなり低いレベルでも問題にならない。血圧と死亡の関係では必ずJ曲線は存在するのである。致死的疾患では死に近づくほど、血圧は0になることは明白で、死と血圧の関係はJカーブとなるからである。Jカーブ論争には終止符を打つべきである。

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糖尿病患者は血圧が低いほうが心筋梗塞になりにくい?しかし降圧治療による結果ではない(解説:桑島 巖 氏)-586

 SPRINT試験は、高リスク高血圧患者の降圧目標に関して、収縮期血圧120mmHg未満が140mmHg未満よりも心血管イベントおよび心血管死が少ないという結果を示し、話題をさらったことは記憶に新しい。しかし、SPRINT試験では糖尿病合併例は除外されていた。ACCORD-BP試験で収縮期血圧120mmHg未満の群と140mmHg未満の群で心血管合併症発症に有意差が見られなかったとの理由からである。 今回、スウェーデン・イエーテボリ大学のEryd氏らのグループは、国民ベースのコホート観察研究において、登録時の収縮期血圧を6群に分けて、血圧値と非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合エンドポイントの発生率をハザード比で比較した。この結果によると、収縮期血圧110~119mmHg未満の群が、そのレベル以上のどの血圧グループよりも複合エンドポイントの発生率が少なく、いわゆるJカーブ曲線は認められなかったという結論であった。 しかし、本研究の結論は、糖尿病合併高血圧でも120mmHgまで下げるべきということではない。糖尿病では血圧が低い例ほど非致死的心筋梗塞や非致死的脳卒中になりにくいといっているのである。登録時の血圧が最も低い群での降圧薬薬剤数が平均0.7剤であるのに対して、最も高い群では1.6剤である。ということは、血圧が最も低い群は、降圧薬がなくとも血圧が低い症例ということである。積極的降圧で収縮期血圧が120mmHg未満になった症例群ではないことには注意が必要である。 本試験のリミテーションは、血圧情報が登録時のみで、追跡期間中の降圧治療情報が示されていないということであり、降圧目標を論じるのに参考にはなりにくい。また、収縮期血圧が120mmHg以下の群で心不全、全死亡が多いということは、肺炎や慢性疾患合併症が含まれているのかもしれず、交絡因子が十分に排除できていない可能性がある。さらに、75歳以上の後期高齢者や糖尿病性合併症を有している人も対象から除外している点からも、日常診療で糖尿病患者での降圧目標を決定するうえで、あまり参考にはなりにくい論文である。

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心血管疾患既往のない糖尿病患者の適切な降圧目標は?/BMJ

 2型糖尿病患者において、現行の推奨値よりも低値の収縮期血圧値は、心血管イベントの有意なリスク低下と関連することが、スウェーデン・イエーテボリ大学のSamuel Adamsson Eryd氏らによる国民ベースのコホート試験の結果、示された。この所見は、心血管疾患既往のない2型糖尿病患者についてみられたもので、著者は「先行研究で示された血圧低値と死亡増大の関連は、降圧治療というよりも合併症によるものと思われる」と述べている。最近の高血圧ガイドラインにおいて、2型糖尿病患者の降圧目標は、130mmHg以下から140mmHg以下へと緩和された。背景には、低値目標を支持する決定的な無作為化試験がないこと、および観察研究で血圧値と合併症にJカーブの関連を認めることが示唆されたためであった。BMJ誌オンライン版2016年8月4日号掲載の報告より。心血管疾患既往のない18万7,106例について分析 研究グループは、2型糖尿病で心血管疾患既往のない患者における、現行の収縮期血圧推奨値(140mmHg以下)のリスクと、血圧低値のリスクを比較することを目的とし、2006~12年の全国的な臨床レジストリを用いた集団ベースコホート試験を行った。平均追跡期間は5.0年。試験には、スウェーデンのプライマリケア施設および病院外来クリニック861施設が関与し、スウェーデン糖尿病レジスタに登録された2型糖尿病歴1年以上、75歳以下で、心血管疾患またはその他重大疾患の既往がない18万7,106例が参加した。 臨床イベントを病院退院および死亡レジスタから入手。急性心筋梗塞・脳卒中・急性心筋梗塞/脳卒中の複合(心血管疾患)、冠動脈疾患、心不全に関する臨床イベント、および全死亡について評価した。共変量(臨床的特性および薬物処方データ)を踏まえて、ベースライン収縮期血圧値群ごとに(110~119、120~129、130~139、140~149、150~159、≧160mmHg)ハザード比(HR)を算出して行った。脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患のJカーブの関連見られず 収縮期血圧最小値(110~119mmHg)群は、同参照値(130~139mmHg)群との比較において、非致死的急性心筋梗塞(補正後HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.64~0.91、p=0.003)、全急性心筋梗塞(同:0.85、0.72~0.99、p=0.04)、非致死的心血管疾患(0.82、0.72~0.93、p=0.002)、全心血管疾患(0.88、0.79~0.99、p=0.04)、非致死的冠動脈疾患(0.88、0.78~0.99、p=0.03)のリスクはいずれも有意に低かった。 心不全と全死亡を除き、収縮期血圧値と各エンドポイントとの間にJカーブの関連は認められなかった。 上記を踏まえて著者は、「心血管疾患既往の除外で、収縮期血圧値と脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患のJカーブの関連はみられなくなった。血圧低値と死亡増大との関連は、降圧治療によるものではなく合併症に起因するものと思われる」とまとめている。【訂正のお知らせ】本文内に誤解を招く表現があったため、一部訂正いたしました(2016年8月30日)。

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ATACH-2とINTERACT2:脳出血の急性期に血圧をどう管理すべきか?(解説:有馬 久富 氏)-563

 急性期脳出血に対する、積極的降圧療法の効果を検討したATACH-2試験の結果が、N Engl J Med誌に掲載された。ATACH-2は、無作為化オープン比較試験である。発症4.5時間以内で、収縮期血圧180mmHg以上の脳出血患者が、収縮期血圧110~139mmHgを目標とする積極的降圧療法群と、140~179mmHgを目標とする通常治療群に無作為に割り付けられた。当初のサンプルサイズは、1,280例であったが、中間解析で「治療効果なし」と判定され、1,000例の段階で早期終了となった。その結果、3ヵ月間後の高度身体機能障害あるいは死亡(modified Rankin Scale 4-6)の頻度に、割付群間で差を認めなかった(積極的降圧療法群38.7% vs.通常治療群37.7%、相対危険1.04、p=0.72)。 ATACH-2の結果は、私がシドニー大学在職中に従事したINTERACT2試験1)の結果と異なるものであった。INTERACT2も無作為化オープン比較試験であり、発症6時間以内で、収縮期血圧150~220mmHgの脳出血患者2,839例が、収縮期血圧140mmHg未満を目標とする積極的降圧療法群と、180mmHg未満を目標とする通常治療群に無作為に割り付けられた。その結果、積極的降圧療法により3ヵ月後の高度身体機能障害あるいは死亡(modified Rankin Scale 3-6)の頻度は約4%減少した(相対危険0.87、p=0.06)。 なぜ、ATACH-2試験とINTERACT2試験で異なる結果が得られたのであろうか?理由の1つとして、対象者の治療開始前の収縮期血圧の違いがあるかもしれない。ATACH-2試験では収縮期血圧の上限がなかった(平均約200mmHg)のに対し、INTERACT2試験では収縮期血圧の上限を220mmHgに設定していた(平均約179mmHg)。来院時の収縮期血圧が220mmHg以上と非常に高い脳出血患者では、慎重な降圧が必要なのかもしれない。別の理由として、治療開始後の降圧レベルの差もあるかもしれない。ATACH-2試験の積極的降圧療法群では、収縮期血圧110~139mmHgが目標とされ、治療中の収縮期血圧平均値は120mmHg程度であった。一方、INTERACT2試験の積極的降圧療法群では、収縮期血圧130mmHg未満で治療を一時中断するプロトコルだったため、実質的には収縮期血圧130~139mmHgが目標とされており、治療中の収縮期血圧の平均値も140mmHg程度であった。INTERACT2試験のサブ解析において、予後の最も良い至適降圧レベルは130mmHg付近であり、それ以下では、高度身体機能障害/死亡が増加する傾向にあった2)ことを考えると、過度な降圧は避けたほうがよいのかもしれない。 現時点のエビデンスに基づいた場合、脳出血の急性期に血圧をどう管理すべきであろうか? INTERACT2試験で積極的降圧療法が予後を改善する傾向にあったこと、ATACH-2試験で少なくとも死亡や身体機能障害を増悪させることはなかったことを考えると、今後も積極的降圧療法を行っていくべきであろう。ただし、来院時の収縮期血圧が非常に高い(220mmHg以上)場合には、慎重な降圧が必要かもしれない。また、ATACH-2試験およびINTERACT2試験サブ解析の結果から、過度の降圧を避け、収縮期血圧130~139mmHgを降圧目標とすることが望ましいであろう。

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133)上手な筋トレの指導法【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師血圧のために、運動はどんなことをされていますか? 患者週に3回は歩くように心がけています。けど、天気の悪い日は歩けなくて…筋トレは血圧が上がりそうだし…。 医師そんなことはありせんよ。上手にやれば、筋トレもいい運動になりますよ。 患者そうなんですか!(興味津々) 医師ポイントは呼吸を止めずに、筋トレをすることです。 患者なるほど。 医師1、2、3…と声を出しながら、息を止めずにゆっくり丁寧にすると、上手に筋トレができます。 患者早速、やってみます(嬉しそうな顔)。●ポイント筋トレも上手にやれば、降圧効果が上がることを具体的に説明します文献1)Cornelissen VA,et al.Hypertension.2011;58:950-958.2)Battagin AM,et al.Arq Bras Cardiol.2010;95:405-411.3)Moraes MR,et al.J Hum Hypertens.2012;26:533-539.

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急性期脳出血に対する積極的降圧療法は有効か?/NEJM

 超急性期脳出血患者において、ニカルジピンによる収縮期血圧140mmHg以下への積極的降圧療法は、140~179mmHgを目標とした標準降圧療法と比較し、死亡や高度障害は減少しなかった。米国・ミネソタ大学のAdnan I. Qureshi氏らが、多施設共同無作為化非盲検比較試験ATACH-2(Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral HemorrhageII)の結果、報告した。脳出血急性期の収縮期血圧の降圧目標については、INTERACT-2試験にて、発症後1時間以内に140mmHg未満に下げることで3ヵ月後の転帰を改善する傾向が示されたが(急性脳内出血後の降圧治療、積極的降圧vs.ガイドライン推奨/NEJM)、これまで推奨の根拠となるデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2016年6月8日号掲載の報告より。脳出血急性期の降圧、収縮期血圧110~139mmHgと140~179mmHgを比較 ATACH-2試験は2011年5月~2015年9月に、米国・日本・中国・台湾・韓国・ドイツの110施設で実施された。 対象は、発症後4.5時間以内に治療開始可能で、出血量60cm3未満、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS:3~15、数値が低いほど状態は不良)5点以上、発症~治療開始までの測定時の収縮期血圧が180mmHg以上の脳出血患者であった。 積極的降圧群(無作為化後24時間以内に収縮期血圧値目標110~139mmHg)と標準降圧群(同140~179mmHg)に無作為化し、速やかに(発症後4.5時間以内)ニカルジピンを静脈投与した(5mg/時から開始し、15分ごとに2.5mg/時増量、最大量15mg/時)。 主要評価項目は、評価者盲検下における無作為化後3ヵ月時の死亡および重度の障害(修正Rankinスケール[0:無症状、6:死亡]で4~6)とした。3ヵ月後の死亡・重度の障害に差はない 1,000例が登録され(積極的降圧群500例、標準降圧群500例)、ベースラインの収縮期血圧(平均±SD)値は200.6±27.0mmHg、平均年齢は61.9歳、56.2%がアジア人であった。 主要評価項目である死亡・重度の障害の割合は、積極的降圧群38.7%(186/481例)、標準降圧群37.7%(181/480例)で、年齢・ベースラインのGCSスコア・脳室内出血の有無で調整後の相対リスクは1.04(95%信頼区間:0.85~1.27)であった。 治療に関連した重篤な有害事象の発現頻度(無作為化後72時間以内)は、積極的降圧群1.6%、標準降圧群1.2%であった。また、無作為化後7日以内の腎臓の有害事象の発現頻度は、それぞれ9.0%および4.0%で、積極的降圧群が有意に高値であった(p=0.002)。 なお、本試験は事前に計画された中間解析において無益性が認められたため、その後の登録は中止となっている。

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結節性多発動脈炎〔PAN: polyarteritis nodosa〕

1 疾患概要■ 概念・定義主として中型の筋性動脈が侵される壊死性動脈炎である。国際的な血管炎の分類であるChapel Hill Consensus Conference 2012分類(CHCC2012)1)では、血管炎を障害される血管のサイズにより分類しており、本疾患はmedium vessel vasculitis(中型血管炎)に分類されている。剖検時に動脈に沿って粟粒大から豌豆大の小結節が多発して認められる場合があり、KussmaulとMaierにより結節性動脈周囲炎として1866年に提唱された。現在では、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)の呼称が一般的に用いられている。本症の壊死性動脈炎は、肝臓、胆嚢、脾臓、消化管、腸間膜、腎泌尿生殖器、皮膚、骨格筋、中枢神経系、心臓、肺など全身に認め、とくに血管の分岐部が侵されやすい。肺では気管支動脈に病変を認め、肺動脈が侵されることはまれである。原則として腎糸球体は侵されない。■ 疫学50~60歳に好発し、男女比では男性にやや多い。厚生労働省より結節性動脈周囲炎として、特定疾患医療受給者証を交付された患者数は2011年の時点でおよそ9,000人であるが、この中には顕微鏡的多発血管炎の患者も含まれているので、PANの患者が実際にどのくらい存在するかは不明である。しかしながら、PANの患者数は顕微鏡的多発血管炎に比べて圧倒的に少なく、500人未満と推定される。2006年以降、PANと顕微鏡的多発血管炎は別個に登録されるようになったため、今後その実数が明らかになるものと思われる。■ 病因不明である。アデノシンデアミナーゼ2(adenosine deaminase 2: ADA2)の一塩基多型による先天的機能欠損が、小児期のPAN類似血管症の原因となることが報告されている2、3)が、成人例でADA2の量的または質的異常があるとの報告はない。本疾患に特徴的な自己抗体は知られていない。■ 症状発熱や全身倦怠感、体重減少のほか、急速進行性腎障害、高血圧、中枢神経症状、消化器症状、紫斑、皮膚潰瘍、末梢神経障害などの多彩な症状を呈する。■ 分類本症の組織学的病期はArkinにより、I期:変性期、II期:炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期に分類されている(Arkin分類)。変性期には内膜から中膜にかけて、浮腫とフィブリノイド変性が認められる。炎症期には中膜から外膜にかけて、好中球、時に好酸球、リンパ球、形質細胞が浸潤し、フィブリノイド壊死は血管全層に及ぶ。その結果、内弾性板は破壊され、断裂、消失する。炎症期が過ぎると、組織球や線維芽細胞が外膜より侵入し、肉芽期に入る。肉芽期には内膜増殖が起こり、血管内腔が閉塞するほど高度になることがある。瘢痕期では、炎症細胞浸潤はほとんどみられず、血管壁は線維性組織に置換される。このような場合でも、弾性線維染色を行うと内弾性板の断裂が認められ、診断に有用である。また、これら各期の病変が、同一症例内に同時期に混在して認められることも特徴である。■ 予後本症の予後は急性期の治療によるところが大きい。副腎皮質ステロイドによる治療を基本としたフランスの臨床研究では、57例中48例(84.2%)が初期治療により寛解し、残りの9例中8例も免疫抑制薬の併用などにより寛解導入されている4)。しかしながら、寛解導入された56例中、26例(46.4%)で再燃しており、再燃率は比較的高いといえる。5年生存率は90%強である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省指定難病診断基準(難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)に基づいて行われる(表1)。重症度に応じて、1度~5度に分類される(表2)。表1 結節性多発動脈炎の診断基準(厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)【主要項目】1) 主要症候(1)発熱(38℃以上、2週以上)と体重減少(6ヵ月以内に6kg以上)(2)高血圧(3)急速に進行する腎不全、腎梗塞(4)脳出血、脳梗塞(5)心筋梗塞、虚血性心疾患、心膜炎、心不全(6)胸膜炎(7)消化管出血、腸閉塞(8)多発性単神経炎(9)皮下結節、皮膚潰瘍、壊疽、紫斑(10)多関節痛(炎)、筋痛(炎)、筋力低下2) 組織所見中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在3) 血管造影所見腹部大動脈分枝(とくに腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞4) 判定(1)確実(definite)主要症候2項目以上と組織所見のある例(2)疑い(probable)(a)主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例(b)主要症候のうち(1)を含む6項目以上存在する例5) 参考となる検査所見(1)白血球増加(10,000/μL以上)(2)血小板増加(400,000/μL以上)(3)赤沈亢進(4)CRP強陽性6) 鑑別診断(1)顕微鏡的多発血管炎(2)多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェゲナー肉芽腫症)(3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎)(4)川崎病動脈炎(5)膠原病(SLE、RAなど)(6)IgA血管炎(旧称:紫斑病性血管炎)【参考事項】(1)組織学的にI期:変性期、II期:急性炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期の4つの病期に分類される。(2)臨床的にI、II期病変は全身の血管の高度の炎症を反映する症候、III、IV期病変は侵された臓器の虚血を反映する症候を呈する。(3)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる。表2 結節性多発動脈炎の重症度分類●1度ステロイドを含む免疫抑制薬の維持量ないしは投薬なしで1年以上病状が安定し、臓器病変および合併症を認めず、日常生活に支障なく寛解状態にある患者(血管拡張剤、降圧剤、抗凝固剤などによる治療は行ってもよい)。●2度ステロイドを含む免疫抑制療法の治療と定期的外来通院を必要とするも、臓器病変と合併症は併存しても軽微であり、介助なしで日常生活に支障のない患者。●3度機能不全に至る臓器病変(腎、肺、心、精神・神経、消化管など)ないし合併症(感染症、圧迫骨折、消化管潰瘍、糖尿病など)を有し、しばしば再燃により入院または入院に準じた免疫抑制療法ないし合併症に対する治療を必要とし、日常生活に支障を来している患者。臓器病変の程度は注1のa~hのいずれかを認める。●4度臓器の機能と生命予後に深く関わる臓器病変(腎不全、呼吸不全、消化管出血、中枢神経障害、運動障害を伴う末梢神経障害、四肢壊死など)ないしは合併症(重症感染症など)が認められ、免疫抑制療法を含む厳重な治療管理ないし合併症に対する治療を必要とし、少なからず入院治療、時に一部介助を要し、日常生活に支障のある患者。臓器病変の程度は注2のa~hのいずれかを認める。●5度重篤な不可逆性臓器機能不全(腎不全、心不全、呼吸不全、意識障害・認知障害、消化管手術、消化・吸収障害、肝不全など)と重篤な合併症(重症感染症、DICなど)を伴い、入院を含む厳重な治療管理と少なからず介助を必要とし、日常生活が著しく支障を来している患者。これには、人工透析、在宅酸素療法、経管栄養などの治療を要する患者も含まれる。臓器病変の程度は注3のa~hのいずれかを認める。注1:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により軽度の呼吸不全を認め、PaO2が60~70Torr。b.NYHA2度の心不全徴候を認め、心電図上陳旧性心筋梗塞、心房細動(粗動)、期外収縮あるいはST低下(0.2mV以上)の1つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が2.5~4.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.09~0.2の視力障害。e.拇指を含む2関節以上の指・趾切断。f.末梢神経障害による1肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による軽度の片麻痺(筋力6)。h.血管炎による便潜血反応中等度以上陽性、コーヒー残渣物の嘔吐。注2:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により中等度の呼吸不全を認め、PaO2が50~59Torr。b.NYHA3度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着のいずれかを認める。c.血清クレアチニン値が5.0~7.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.02~0.08の視力障害。e.1肢以上の手・足関節より中枢側における切断。f.末梢神経障害による2肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による著しい片麻痺(筋力3)。h.血管炎による肉眼的下血、嘔吐を認める。注3:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により高度の呼吸不全を認め、PaO2が50Torr 未満。b.NYHA4度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着、のいずれか2つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が8.0mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.01以下の視力障害。e.2肢以上の手・足関節より中枢側の切断。f.末梢神経障害による3肢以上の機能障害(筋力3)、もしくは1肢以上の筋力全廃(筋力2以下)。g.脳血管障害による完全片麻痺(筋力2以下)。h.血管炎による消化管切除術を施行。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)2006~2007年度合同研究班による『血管炎症候群の診療ガイドライン』の中で、「寛解導入療法と寛解維持療法の指針」が示されているので、以下に示す。■ 寛解導入療法1)副腎皮質ステロイドプレドニゾロン0.5~1mg/kg/日(40~60mg/日)を重症度に応じて経口投与する。腎、脳、消化管など生命予後に関わる臓器障害を認めるような重症例では、パルス療法すなわちメチルプレドニゾロン大量点滴静注療法(メチルプレドニゾロン500~1,000mg + 5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけ点滴静注、3日間連続)を行う。後療法としてプレドニゾロン0.5~0.8mg/日の投与を行う5)。2)ステロイド治療に反応しない場合シクロホスファミド点滴静注療法(intravenous cyclophosphamide:IVCY)または経口シクロホスファミド(CY)の経口投与(0.5~2mg/kg/日)を行う。IVCYは、シクロホスファミド500~600mg/生理食塩水または5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけて点滴静注し、4週間間隔、計6回を目安に行う6、7)。IVCY治療中は白血球減少に注意し3,000/㎜3以下にならないように次回のIVCY量を減量する。なお、CYは腎排泄性のため腎機能低下に応じて減量投与を行う(クラスIIb、レベルC)8)。表3に年齢、腎機能に応じたIVCY量を示す。なお、IVCYは経口CYに比べて有効性は同等だが副作用が少ないと報告されている9)。画像を拡大するその他の免疫抑制薬としてアザチオプリン、メトトレキセートも用いられる(クラスIIb、レベルC)9)。いずれも腎排泄性である。アザチオプリンは腎機能低下時には減量が必要であり、メトトレキセートは腎不全には禁忌である。3)重要臓器傷害の重症例肺・腎・消化管・膵などの重要臓器を2ヵ所以上傷害された重症例では、ステロイドパルスと共に血漿交換療法を行い、生命予後を改善させるようにする(クラスIIb、レベルC)10、11)。4)HBウイルス肝炎併発例活動性のHBウイルス肝炎を伴っている場合には、抗ウイルス薬および免疫複合体除去目的で血漿交換療法を併用する(クラスIIb、レベルC)5、6)。■ 寛解維持療法初期治療による寛解導入後は、再燃のないことを確認しつつ副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン)を漸減し維持量(5~10mg/日)とする。副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の治療期間は原則として2年を超えない(クラスIIb、レベルC)12)。CYは3ヵ月間用い、その後寛解維持薬として、より副作用の少ないアザチオプリンに変更し、半年~1年間用いる(クラスIIb、レベルC)13)。なお、免疫抑制薬、血漿交換療法は、本疾患に対する保険適用薬でないため、投薬時には十分なインフォームドコンセントが必要である。4 今後の展望血管炎症候群の中でも、顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎の病因・病態解明が進み、新規治療法が考案されてきているのに対し、PANに対する基礎研究ならびに臨床研究は、ここ数年あまり大きな進展が得られていないのが実情である。とはいえ、厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班をはじめとする地道な基礎的・臨床的研究が継続されており、その中からブレイクスルーが生まれることが期待される。5 主たる診療科膠原病・リウマチ科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 結節性多発動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本血管病理研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Zhou Q, et al. New Engl J Med.2014;370:911-920.3)Navon Elkan P, et al. New Engl J Med.2014;370:921-931.4)Samson M, et al. Autoimmun Rev. 2014;13:197-205.5)中林公正ほか. ANCA関連血管炎の治療指針. 厚生労働省厚生科学特定疾患対策研究事業難治性血管炎に対する研究班(橋本博史編). 2002;19-23.6)Gayraud M, et al. Br J Rheumatol. 1997;36:1290-1297.7)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 2003;49:93-100.8)難病医学研究財団/難病情報センター 免疫疾患調査研究班(難治性血管炎に関する調査研究班). IVCY治療における年齢、腎機能に応じたシクロホスファミドの投与量設定表. 難病情報センター. (参照 2015.1月26日)9)Jayne D. Curr Opin Rheumatol. 2001;13:48-55.10)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1995;38:1638-1645.11)寺田典生ほか. 日内会誌. 1988;77:494-498.12)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1998;41:2100-2105.13)Jayne D, et al. N Engl J Med. 2003;349:36-44.公開履歴初回2015年05月15日更新2016年06月07日

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SPRINT試験:frailな高齢者でも厳格な降圧が有用であることを示した点で画期的、ただし腎機能の悪化や有害事象も起こりやすい(解説:桑島 巖 氏)-540

 今回のSPRINTサブ解析では、75歳以上の高齢者高血圧では収縮期血圧140mmHg未満を目指す標準降圧群よりも、120mmHg未満の厳格降圧群のほうが生命予後の改善に良好であることを示した点で画期的である。サブ解析とはいえども対象数は2,636例と、解析には十分堪えられる症例数であり、信頼性は高い。 厳格降圧群で実際に達成された血圧値は、厳格群で123.4/62.0mmHgであることから、後期高齢者では収縮期血圧120~130mmHgが好ましく、拡張期血圧への配慮は不要であることを示唆している。かつて、拡張期血圧が80mmHg以下では死亡率が増加するというJ-カーブ仮説がまことしやかに流布していたことを考えると、今昔の感がある。 本試験の特徴は、frailtyについても詳細に検討しており、参加者の55%以上がless fit(頑強でない)であることや、歩行速度が遅い症例も28%前後含まれており、試験の対象のfrailtyが一般社会の後期高齢者の頻度とは差がないことが示されている。この点、頑強な高齢者ばかりを対象とした研究ではないといえるが、結果を読み解くうえで、frailな例や歩行速度の遅い症例は試験からの脱落率も高いことに注意が必要である。 全死亡を除いた1次エンドポイントは、厳格降圧群のほうが標準降圧群に比べて34%減少を示しており、NNTは27とかなり低い数値である。1次エンドポイントの中でも心不全抑制率が顕著である。しかし、もともとCKDを有していなかった症例において、厳格降圧群において腎機能悪化症例が、3倍以上増えたことは注意しておく必要がある。また、厳格降圧による有用性は心筋梗塞や脳梗塞といった一般的な心血管合併症ではなく、心不全というこれまでのトライアルではしばしば2次エンドポイントとされてきた疾患であることの解釈が難しい。おそらく、降圧利尿薬の有効性が発揮されているのであろう。 また、SPRINT試験では脳卒中既往例や糖尿病例は含まれていないことから、もともと心機能が低下している症例が高血圧という後負荷が軽減されたことで、心不全の抑制に有効であったとも解釈できる。 frailtyのサブ解析では、frailになるほどエンドポイント発症率が経過とともに高くなっていることが示されているが、興味あることにfrailな症例ほど厳格降圧の1次エンドポイント抑制効果が大きくなるという結果は、意外である。ただ、厳格治療群のほうが、低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害が多いという結果は、後期高齢者ではただ積極的に血圧を下げるだけではなく、これらの有害事象が起こりやすいことを念頭に置きながら、きわめて慎重な対応が必要であることを示唆している。

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CKD患者の心血管リスク、減塩で低下する可能性/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者では、尿中ナトリウム排泄量高値が心血管疾患(CVD)リスクの増加と関連していることを、米国・テュレーン大学のKatherine T. Mills氏らが、慢性腎不全コホート研究(Chronic Renal Insufficiency Cohort Study:CRIC研究)の結果、報告した。CKD患者は、一般住民と比較してCVDのリスクが増加していることが知られている。しかし、これまでは食事によるナトリウム摂取とCVDリスクとの関連について矛盾した結果が示されており、CKD患者でこの関連性は検討されていなかった。JAMA誌2016年5月24・31号掲載の報告。CKD患者約3,800例を10年間追跡 CRIC試験は、CKD患者の尿中ナトリウム排泄量とCVDイベントとの関連を評価する目的で、米国7施設において実施されている前向きコホート研究である。21~74歳の軽度~中等度CKD患者3,757例(平均年齢58歳、女性45%)が、2003年5月~2008年に登録された。研究は現在も進行中であり、本報告は2003年5月~2013年3月の追跡結果である。 ベースラインおよび最初の2年間に年1回、計3回の24時間蓄尿検査を行い、24時間尿中ナトリウム排泄累積平均値を算出し、性特異的な24時間尿中クレアチニン排泄平均値(男性1,569mg/24h、女性1,130mg/24h)で補正した。主要評価項目はCVD複合イベント(うっ血性心不全、脳卒中、心筋梗塞)とし、6ヵ月ごとに医療記録によって確認した。尿中ナトリウム排泄量とCVDリスクは有意に関連 追跡期間中央値6.8年において、計804例のCVD複合イベントが発生した(心不全575例、心筋梗塞305例、脳卒中148例)。補正ナトリウム排泄量の第1四分位群(<2,894mg/24h)で174例、第2四分位群(2,894~3,649mg/24h)で159例、第3四分位群(3,650~4,547mg/24h)で198例、第4四分位群(≧4,548mg/24h)で273例であった。また、累積発生率はそれぞれ18.4%、16.5%、20.6%および29.8%であった。 補正ナトリウム排泄量の第4四分位群と第1四分位群で各CVD複合イベント累積発生率を比較すると、心不全が23.2% vs.13.3%、心筋梗塞が10.9% vs.7.8%、脳卒中が6.4% vs.2.7%であった。多変量解析による第4四分位群の第1四分位群に対する調整ハザード比は、CVD複合イベントで1.36(95%信頼区間[CI]:1.09~1.70、p=0.007)、心不全で1.34(同:1.03~1.74、p=0.03)、脳卒中で1.81(同:1.08~3.02、p=0.02)であった。また、多変量で調整した制限3次スプライン回帰モデル解析で、ナトリウム排泄量とCVD複合イベントとの関連は、非線形ではなく(p=0.11)、線形(p<0.001)であることが認められた。 これらの関連は、降圧薬の使用やCVD既往歴等のCVDリスク因子、さらには総カロリー摂取量および収縮期血圧から独立していた。研究にはいくつかの限界があるものの、著者は「ナトリウム摂取量が多いCKD患者では、その摂取量を減らすことでCVDリスクを低下できる可能性が示唆される」と述べている。

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75歳以上も降圧目標120mmHgが至適:SPRINT試験サブ解析/JAMA

 75歳以上の非糖尿病高血圧患者について、目標収縮期血圧値を120mmHgとする強化降圧治療を行ったほうが、同140mmHgとした場合に比べ、心血管イベントや全死因死亡のリスクが、いずれも3割強低下することが示された。米国・ウェイクフォレスト大学医学部のJeff D. Williamson氏らが、2,636例を対象に行った多施設共同無作為化比較試験「SPRINT」の結果で、JAMA誌オンライン版2016年5月19日号で発表した。高齢の高血圧患者への至適治療は、議論の的となっていた。非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管疾患死などの統合エンドポイントを比較 SPRINT試験は2010年10月~2015年8月にかけて、75歳以上の糖尿病を有さない高血圧患者2,636例を対象に行われた。被験者を無作為に2群に分け、一方には目標収縮期血圧を120mmHgとした血圧コントロール(強化降圧治療群)を、もう一方には140mmHgとした血圧コントロール(標準降圧治療群)をそれぞれ行い、アウトカムを比較した。 主要評価項目は、非致死的心筋梗塞、心筋梗塞に至らない急性冠症候群、非致死的脳卒中、非致死的急性非代償性心不全、心血管疾患死の統合エンドポイントだった。また、全死因死亡を副次アウトカムとして評価した。強化降圧治療群、心血管イベントリスクが0.66倍に 全被験者(平均年齢79.9歳、女性37.9%)のうち、追跡が可能だった2,510例(95.2%)について、分析を行った。追跡期間の中央値は、3.14年。 結果、統合アウトカムが発生したのは、標準降圧治療群が148件に対し、強化降圧治療群は102件と有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.51~0.85)。 また全死因死亡の発生も、それぞれ107件、73件と、強化降圧治療群で有意に低率だった(HR:0.67、95%CI:0.49~0.91)。 一方、重篤な有害事象発生率については、それぞれ48.3%、48.4%と、両群で有意差はなかった(HR:0.99、95%CI:0.89~1.11)。絶対率でみた各有害事象の発生は、低血圧症が2.4%、1.4%(同:1.71、0.97~3.09)であったほか、失神(1.23、0.76~2.00)、電解質異常(1.51、0.99~2.33)、急性腎障害(1.41、0.98~2.04)、転倒(0.91、0.65~1.29)などが報告された。

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心筋梗塞・脳梗塞の発症確率予測モデルを開発~JPHC研究

 わが国の多目的コホート(JPHC)研究から、研究開始時の健診成績・生活習慣からその後10年間の心筋梗塞および脳梗塞の発症確率予測モデルを開発した研究結果が発表された。健診結果から自分で心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを計算できるため、禁煙などの行動変化や生活習慣の変容を通した心血管疾患予防に役立つことが期待される。Circulation journal誌2016年5月25日号に掲載。 この研究では、JPHC研究コホートII(1993~94年のベースライン時に40~69歳であった1万5,672人)のデータを用いた。平均約16年の追跡期間中に観察された192例の心筋梗塞と552例の脳梗塞発症について、研究開始時の健診成績や生活習慣の組み合わせから、統計学的な方法でリスク予測に有用な変数を選択した。 その結果、性別、年齢、現在喫煙、降圧薬の有無、収縮期血圧、糖尿病の有無、HDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値の8つの変数が、心筋梗塞発症予測に必要十分な変数として選択された。また、これらの変数のうちnon-HDLコレステロール以外は、脳梗塞の発症予測に関係する変数として選択された。作成した予測モデルの性能は十分高く、日本人の一般集団に対して適用することも可能であることが確認された。詳細はこちらへ国立研究開発法人国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC study)

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飲酒量と高血圧の関連、フラッシングと関係なし~NIPPON DATA2010

 高血圧における飲酒の影響はフラッシング反応の有無により異なる可能性があるが、確認されていない。今回、大規模コホートNIPPON DATA2010のデータを用いた研究で、日本人男性ではフラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧が正相関することを、東北大学の小暮 真奈氏らが報告した。Hypertension research誌オンライン版2016年5月12日号に掲載。 著者らは、日本人集団の代表的なサンプルにおいて飲酒量と高血圧との関係を、フラッシング反応に応じて調査した。NIPPON DATA2010のベースライン調査への参加を依頼された、2010年国民健康・栄養調査の参加者のデータを用いて、フラッシング反応に応じた飲酒量と高血圧との関係を検討した。年齢、BMI、喫煙状態、糖尿病の有無、脂質異常症の有無の調整後、多重ロジスティック回帰モデルを用いて横断的に統計解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・男性1,139人、女性1,263人のうち、それぞれ659人、463人が高血圧であった。・男性では、フラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧に正の相関がみられた(線形傾向のp<0.05)。この相関は、降圧薬使用の有無にかかわらず認められた。フラッシング反応による交互作用は認められなかった(交互作用のp=0.360)。・女性では、フラッシング反応が見られる人と見られない人で傾向が異なるが、フラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧との相関は有意ではなかった。

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PATHWAY-2試験:治療抵抗性高血圧例の治療に非常に参考になるが、解釈には十分な注意が必要な研究結果(解説:桑島 巖 氏)-525

 カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB、サイアザイド系利尿薬の3剤併用しても、降圧不十分な高血圧は治療抵抗性と呼ばれるが、日常診療でもしばしば遭遇し、次に何を追加するべきかに悩むことは少なくない。一般にはα遮断薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬のいずれかを選択することになるが、その優劣に関するRCTによるエビデンスはほとんどなかった。 PATHWAY-2試験は、抗アルドステロン薬が、最も降圧効果に優れているという結果を示した点で、そのような疑問に1つの示唆を与えてくれる臨床研究である。とくに、ベースライン時の血漿レニン活性が低い例ほど降圧率が高いという結果は、低レニンを呈する副腎過形成によるアルドステロン分泌過多による高血圧では、スピロノラクトンが有効であることを示唆している。 しかし、本試験には注意すべき重大な点がいくつかある。 まず、eGFR<45mL/分の慢性腎臓病合併例は完全除外されており、対象例の平均eGFR 91.1±26.8という腎機能良好な症例のみの成績である点は認識すべきである。 一般に、治療抵抗性高血圧は、多かれ少なかれ腎障害が進行した症例にみることが多く、そのような例では抗アルドステロン薬によって高カリウム血症を誘発したときに死に至ることもある。本研究のエンドポイントは疾患発生や死亡ではないので、この点は明らかにできない。また、試験期間も1年間と短い。 とくに、心不全に対する抗アルドステロン症の有用性を証明したRALES試験では、試験結果発表後、爆発的にスピロノラクトンの処方が増加し、高カリウム血症による合併症および死亡率が増加したことを想起する必要がある1)。 本試験は臨床的に意義があるが、結果の解釈と臨床への適用に当たっては十分な注意が必要である。

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HOPE3試験:あまり新規性のない結果?(解説:興梠 貴英 氏)-517

 HOPE3試験は、心血管疾患を持たないが中等度の心血管リスクを有する人間に対して、降圧治療およびLDLコレステロール低下治療を行うことで、イベントを減らすことができるのかをみた試験である。 登録基準が男性55歳以上、女性65歳以上のほかに、ウェストヒップ値高値、最近または現在の喫煙、HDL-C値低値、血糖障害、軽度腎障害、一親等の虚血性心疾患早期発症の家族歴のいずれか1つ以上を持つことで、高血圧や高脂血症は登録基準には入っていない。また、除外基準に「記録された臨床的に明らかな動脈硬化性心血管疾患」が入っているため、比較的リスクが低い(著者らは「中等度」と表現)集団を対象としている。 この集団に対して、カンデサルタン16mg + HCTZ 12.5mgもしくはプラセボ×ロスバスタチン10mgまたはプラセボの2×2、合計4群を比較したもので、(1)双方とも実薬 vs.双方ともプラセボ、(2)降圧薬 vs.プラセボ、(3)スタチン vs.プラセボの3つの論文が報告されている。 簡単に結果を要約すると(2)では有意差がつかず、(1)(3)で実薬群がプラセボ群に比較して有意にエンドポイントを低下させた、ということになる。また、低下率は(1)での29%に対して、(3)では24%と、降圧の効果は相対的に小さいことが読み取れる。さて、これらの結果からいえることは何だろうか。 実は、筆頭著者のYusuf氏は以前から、心血管疾患患者に対して、降圧薬、スタチン、低用量アスピリンはそれぞれ単独で2次予防効果があるので、それらの合剤(polypill)を一律に投与することでよりリスクが減らせるはずだという仮説を持っており、これまでにpolypillを用いた臨床試験を行ったり1)、WHOにそうした提案を行ったりしている2)。HOPE3試験は1次予防であるが、(1)の結果のみをみると、血圧、コレステロール双方低下させる(=降圧薬とスタチンの合剤を服用させる)ことで心血管リスクを低下させられる、という結論になるかもしれない。しかし、(2)(3)と考え合わせるとスタチンの効果が大きく、降圧薬は小さいか、または有意な効果がない、ということになるだろう。 ところで、低~中等度のリスクを持つ患者に対してスタチンが心血管リスクを低下させる、ということは、過去のスタチンランダム比較試験の結果をメタ解析した結果でもすでに報告されている3)。このメタ解析で興味深いのは、リスクの高低にかかわらず、スタチンによるLDL-C低下により同じくらいの割合でイベントリスクが低下することが示された一方、絶対リスクの低下量はもともと患者が持っているリスクが大きいほど大きく、小さいと低下量が大幅に小さくなることである。HOPE3試験でも絶対リスクの低下量は小さく、この結果をもって高脂血症を持つとは限らない、中等度リスク患者に対してスタチンを投与すべきか否かは、費用対効果を検討したうえで決める必要があるだろう。 また、本質的なことではないかもしれないが、3つの論文に共通して奇妙なのは主要エンドポイントのKaplan-Meier曲線が示されていないことである。

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中等度リスク患者へのスタチン+降圧薬治療の効果は?/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中等度の患者に対し、ロスバスタチンと、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドを投与しコレステロール値と血圧値を下げることで、主要心血管イベントリスクは約3割減少することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのS. Yusuf氏らが、約1万3,000例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。ロスバスタチン+カンデサルタン/ヒドロクロロチアジドを投与し、イベント発生率を比較 研究グループは、21ヵ国228ヵ所の医療機関を通じて、55歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患の既往がなく、(1)ウエスト・ヒップ比が高い、(2)低HDLコレステロール値、(3)最近または現在喫煙、(4)糖代謝異常、(5)早期冠動脈疾患の家族歴、(6)軽度腎機能障害のいずれか1つ以上が認められる、1万2,705例を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。 同試験では、2×2要因デザインを用いて、カンデサルタン16mg/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日と、脂質低下薬ロスバスタチン10mg/日の効果を検証。本論文では、ロスバスタチン+カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド投与群(3,180例)と、同非投与群(3,168例)について、その効果を比較した。 主要複合アウトカムは2つあり、第1主要複合アウトカムは心血管疾患死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中、第2主要複合アウトカムは、第1主要複合アウトカムに心肺停止からの蘇生、心不全、血行再建術を加えたものだった。治療群でイベントリスクは0.71倍に 追跡期間中央値は、5.6年だった。試験期間中、治療群がプラセボ群に比べLDLコレステロール値低下幅は33.7mg/dL大きく、また収縮期血圧低下幅はプラセボ群に比べ治療群が6.2mmHg大きかった。 第1主要複合アウトカムの発生率は、プラセボ群が5.0%(157例)に対し、治療群が3.6%(113例)と、有意に低率だった(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.56~0.90、p=0.005)。 第2主要複合アウトカムの発生率も、プラセボ群5.9%(187例)に対し、治療群が4.3%(136例)と低率だった(同:0.72、同:0.57~0.89、p=0.003)。 有害事象発生率については、筋肉症状やめまいは治療群で高率だったものの、治療中断率は両群で同等だった。

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中等度リスク患者への降圧治療のベネフィットは?/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中程度の患者に対し、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドによる降圧治療を行っても、主要心血管イベントリスクは低下しないことが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのEva M. Lonn氏らが、約1万3,000例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。降圧治療について、高リスクの人および収縮期血圧が160mmHg以上の人では、心血管イベントリスクを低下するが、中等度リスクの人および血圧が低い(160mmHg未満)人における役割については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。 21ヵ国228ヵ所の医療機関で調査 研究グループは、21ヵ国228ヵ所の医療機関を通じて、55歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患の既往がなく、(1)ウエスト・ヒップ比が高い、(2)低HDLコレステロール値、(3)最近または現在喫煙、(4)糖代謝異常、(5)早期冠動脈疾患の家族歴、(6)軽度腎機能障害のいずれか1つ以上が認められる、1万2,705例を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。 同試験では、2×2要因デザインを用いて、カンデサルタン16mg/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日と、脂質低下薬ロスバスタチン10mg/日の効果を検証。本論文では、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド投与群(6,356例)と、同非投与群(プラセボ群、6,349例)について、その効果を比較した。 主要複合アウトカムは2つあり、第1主要複合アウトカムは心血管疾患死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中、第2主要複合アウトカムは、第1主要複合アウトカムに心肺停止からの蘇生、心不全、血行再建術を加えたものだった。第1および第2主要複合アウトカムともプラセボ群と同等 追跡期間中央値は、5.6年だった。被験者のベースライン平均血圧値は138.1/81.9mmHgだった。 試験期間中、治療群の血圧低下幅はプラセボ群に比べ6.0/3.0mmHg大きかった。 第1主要複合アウトカムの発生率は、治療群が4.1%(260例)に対し、プラセボ群は4.4%(279例)で、同等だった(ハザード比:0.93、95%信頼区間[CI]:0.79~1.10、p=0.40)。 第2主要複合アウトカムの発生率も、治療群4.9%(312人)に対し、プラセボ群5.2%(328例)と、両群で同等だった(同:0.95、0.81~1.11、p=0.51)。 なお、事前に規定した収縮期血圧値が143.5mmHg超のサブグループについて調べたところ、第1・第2主要複合アウトカムとも、治療群でプラセボ群に比べ有意に低率だった(第1主要複合アウトカムについての傾向のp=0.02、第2主要複合アウトカムについての同p=0.009)。

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HOPE-3試験:仮説が不明で、かえって混乱を招く結果となった臨床試験(解説:桑島 巖 氏)-513

 本試験の仮説がよくわからない。HOPE試験のようにACE阻害薬の“降圧を超えた心血管合併症予防効果”をARB検証するのであれば、サイアザイド利尿薬を併用せずに行うべきであったし、正常高値に対する降圧の有用性を検証するのであれば、ヒドロクロロチアジドではなく、降圧効果の確実なサイアザイド類似薬であるクロルタリドンあるいはインダパミドを併用するなり、降圧薬の用量調整をするなりして、さらに厳格に収縮期血圧で120mmHg前後まで下げるべきであった。本試験では降圧目標を設定しておらず、ただARBとサイアザイド利尿薬の固定用量を用いた場合のイベント抑制効果という、中途半端な試験である。 リスクも低く、血圧も高くない(正常高値)症例に対して、ARBと降圧利尿薬固定用量を長期間投与することはメリットがあるか否かを検証したかったとすれば、当然メリットがないことは予想された。本試験の結果は、血圧が高いほど、あるいは高リスクほど厳格な降圧が有用であり、低リスク高血圧例での積極的降圧の有用性は乏しい、という結果を示したBPLTTC試験やSPRINT試験の結果とは矛盾しない。ただし、低リスク正常高値血圧の有用性を検証するには5年間は短すぎる。 本試験の対象は非常に複雑で、ウエスト・ヒップ比が高い症例、HDLコレステロール値が低い症例、糖代謝異常、喫煙、冠疾患家族歴を有する例を対象としているが、このような肥満症例では、生活習慣の改善、あるいは脂質低下療法が有効であり、降圧治療の有用性はあまり期待できないことはある程度予想できた。 本試験では、2×2方式で行われているため、試験の仮説がかなり分散している点は否めない。このような脂質代謝障害のある症例で、コレステロール低下療法の有用性を確認したいスポンサー企業の意図を垣間見る試験ともいえなくもない。事実、ロスバスタチンの有用性が認められている。 プラセボ群との血圧値の差は、収縮期 6.0/拡張期 3.0mmHgであり、実薬群の達成血圧は、128/76前後である。下げてもメリットはないともいえるし、この程度の降圧ではメリットはあまりなく、下げるなら120mmHgまで必要かもしれないことを示しているともいえる。 本試験から得られる結論としては、低リスクの症例では、血圧143以上でなければ降圧薬追加によるメリットはない。ただし、低リスクで血圧が正常であっても、さらに120mmHgまで下げた場合のメリットは否定できない。また、さらに長期間(たとえば10年)降圧薬を投与すればメリットはあるかもしれない。 なんとも中途半端なトライアルである。2×2で、自社製品のカンデサルタンとロスバスタチンの配合薬のメリットを出そうとしたスポンサーのもくろみがあったのかもしれない。科学的にはあまり意味がなく、かえって混乱を招きかねない。

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120)降圧目標は患者さんごとに異なる【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師(血圧測定後)血圧は136/84mmHgですね。 患者それならいいぐらいですね。 医師じつは違います。 患者違う!? 医師そうです。どのくらいまで血圧を下げたらいいのかは、年齢や病気によって異なります。 患者そうなんですか。私の場合はどのくらいにしたらいいんですか? 医師糖尿病がある人の目標は130/80mmHg未満になります。蛋白尿が陽性で、腎臓が悪くなってきている人の目標も130/80mmHg未満です。 患者そうすると、もう少し下げたほうがいいわけですね。 医師そうなると、ベストですね。 患者どんなことに気をつけたらいいですか?●ポイント降圧目標値が、年齢や合併症により異なることをわかりやすく説明します●資料

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