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日本高血圧学会、台風19号被災者向けのQAと総会概要を発表

 10月15日、特定非営利活動法人日本高血圧学会(JSH)は、10月25-27日に開催される第42回日本高血圧学会総会に先立ち、プレスセミナーを開催した。 冒頭に、理事長の伊藤 裕氏が、台風19号による甚大な被害を踏まえ、学会としての対応を発表した。「甚大な被害が広範囲に広がり、避難生活が長引く被災者も多くなると考えられる。ストレスや血圧の管理が不十分となり、いわゆる『災害高血圧』が生じて、脳卒中や心疾患につながることを懸念している」と述べた。最初の対応としては、被災地の高血圧患者から多く寄せられる質問と回答をまとめ「台風19号により被害を受けられた皆さまへ」と題して学会サイトに発表した。もう一つ、気づかれにくい問題として、支援物資について注意喚起を求めた。「今回の台風は物流の問題は限られ、薬不足は回避できそうだ。問題は食料で、被災地に送られる支援物資は調理の簡単なカップラーメンやパンなどに偏り、塩分過多と高血圧につながりがち。送る方は減塩食品を選ぶなどの配慮をして欲しい」と訴えた。今後も被災者に向け、即時性をもって情報を発信していく、とした。「早期介入」「精密医療」「モデルタウン」を柱に活動 続いて、学会の最新の活動内容が発表された。世界保健機構(WHO)による健康調査で提唱される「疾患負荷(disease burden:経済的コスト、死亡率、疾病率で計算される特定の健康問題の指標)」において、高血圧の死亡への寄与割合は女性で1位、男性で喫煙に次いで2位と非常に大きい。一方で、日本国内の高血圧患者は4300万人を超えるものの、きちんと疾病コントロールがされているのは3割の1300万人程度に満たない。この状況を踏まえ、JSHは2018年に「高血圧の国民を10年間で700万人減らし、健康寿命を延ばす」との声明を発表している。今後の具体的な活動としては、以下の3点を重点施策とした。1)2019年4月に新「高血圧治療ガイドライン」を刊行。診断基準値は従来通りとしものの降圧目標を引き下げ、早期からの生活習慣への介入を呼びかける。2)デジタルデバイス等を利用し、ビッグデータやAIによる「プレシジョンメディシン(精密医療)」を高血圧対策に応用する研究を進める。3)患者個人だけではなく、家族や地域、自治体を含めた規模で対策をとることが重要とする「集団健康管理」の考えのもと、協力自治体を募り、学校教育や企業への働きかけを行っている「モデルタウン」事業を行う。2019年日本高血圧学会総会の概要発表 10月25-27日に東京・新宿で開催される第42回日本高血圧学会総会は、テーマを「未来を支える血圧管理」とし、総会の開会式では「JSH東京減塩宣言」が行われる予定。310の一般演題(口演177・ポスター133)のほか、カリフォルニア大学教授Theodore W. Kurtz 氏による「食塩感受性高血圧」をはじめとした特別講演、シンポジウム、市民公開講座などが予定される。さらに「デジタルハイパーテンションカンファレンス」と題し、ビッグデータ・ICT・AI等の技術を高血圧対策にどうつなげていくか=高血圧の精密医療について議論も行われる。■「食塩感受性高血圧」関連記事塩分摂取によって血圧が上昇しやすい人と、そうでない人が存在するのはなぜか?―東大 藤田氏らが解明―

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重症域の妊娠高血圧症候群に対する経口降圧薬の効果比較(解説:三戸麻子氏)-1121

 重症域(160/110mmHg以上)の妊娠高血圧症候群に対する降圧加療として、ニフェジピン、ラベタロール、メチルドパという日常診療で頻用されている経口薬の降圧効果・副作用を直接比較している点が画期的である。また、緊急の降圧が必要な症例に対しては経静脈的な降圧加療が行われることも多いが、それがかなわない状況も考慮してすべて経口薬で行っている部分も斬新と思われる。 Primary outcome(降圧薬投与後6時間での降圧)はニフェジピン群がメチルドパ群より有意に達成していたものの、ニフェジピン群とラベタロール群は同等であった。しかし、本研究では初回使用量がニフェジピン10mg、ラベタロール200mgのうえ、必要に応じて各々30mg、600mgまで増量しているということから、ラベタロールは本邦での使用よりも高用量で使用されていることに留意する必要がある。 さらにニフェジピン群で児のNICU入室率が有意に高かったこと、2,500g未満の低出生体重児と1,500g未満の極低出生体重児を合わせた割合がニフェジピン群で有意に高かったことが報告されている。しかし在胎週数や平均出生体重、極低出生体重児のみの割合やNICUでの人工呼吸管理の割合、NICU滞在期間など児の全身状態に関しては3群で差を認めていない。本研究では研究エントリー時の在胎週数と血圧平均など患者背景に統計学的有意差は認めていない。しかしエントリー時の推定胎児体重は不明であり、収縮期血圧170mmHg以上の割合や双胎の割合などがニフェジピン群で比較的多く含まれていたこと等も考慮する必要があり、ニフェジピンの非有用性に直結するデータではないと考えられる。

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第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?高齢糖尿病患者は罹病期間が長い例が多く、進行した合併症を有する例も多く経験します。今回はいわゆる三大合併症について解説します。合併症の進展予防には血糖管理だけではなく、血圧、脂質など包括的な管理が必要となりますが、すべてを厳格にコントロールしようとするがあまり“ポリファーマシー”となり、症例によっては、かえって予後を悪化させる場合もありますので、実際の治療に関しては個々の症例に応じて判断していくことが重要になります。Q1 微量アルブミン尿が出現しない場合も? 糖尿病腎症の管理について教えてください。高齢糖尿病患者でも、高血糖は糖尿病腎症の発症・進展に寄与するため、定期的に尿アルブミン・尿蛋白・eGFRを測定・計算し、糖尿病腎症の病期分類を行うことが推奨されています1)。症例にもよりますが、血液検査は外来受診のたび、尿検査は3~6カ月ごとに実施していることが多いです。高齢者では筋肉量が低下している場合が多く、血清Cre値では腎機能をよく見積もってしまうことがあり、BMIが低いなど筋肉量が低下していることが予想される場合には、血清シスタチンCによるeGFR_cysで評価します。典型的な糖尿病腎症は微量アルブミン尿から顕性蛋白尿、ネフローゼ、腎不全に至ると考えられており、尿中アルブミン測定が糖尿病腎症の早期発見に重要なわけですが、実際には、微量アルブミン尿の出現を経ずに、あるいは軽度のうちから腎機能が低下してくる症例も多く経験します。高血圧による腎硬化症などが、腎機能低下に寄与していると考えられていますが、こういった蛋白尿の目立たない例を含め、糖尿病がその発症や進展に関与していると考えられるCKDをDKD (diabetic kidney disease;糖尿病性腎臓病)と呼びます。加齢により腎機能は低下するため、DKDの有病率も高齢になるほど増えてきます。イタリアでの2型糖尿病患者15万7,595例の横断調査でも、eGFRが60mL/min未満の割合は65歳未満では6.8%、65~75歳で21.7%、76歳以上では44.3%と加齢とともにその割合が増加していました2)。一方、アルブミン尿の割合は65歳未満で25.6%、 65~75歳で28.4%、76歳以上で33.7%であり、加齢による増加はそれほど目立ちませんでした。リスク因子としては、eGFR60mL/min、アルブミン尿に共通して高血圧がありました。また、本研究では80歳以上でDKDがない集団の特徴も検討されており、良好な血糖管理(平均HbA1c:7.1%)に加え良好な脂質・血圧管理、体重減少がないことが挙げられています。これらのことから、高齢者糖尿病の治療では、糖尿病腎症の抑制の面からも血糖管理だけではなく、血圧・脂質管理、栄養療法といった包括的管理が重要であるといえます。血圧管理に関しては、『高血圧治療ガイドライン2019』では成人(75歳未満)の高血圧基準は140/90 mmHg以上(診察室血圧)とされ,降圧目標は130/80 mmHg未満と設定されています3)。75歳以上でも降圧目標は140/90mmHg未満であり、糖尿病などの併存疾患などによって降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満への降圧を目指すとしています。しかしながら、こうした患者では収縮期血圧110mmHg未満によるふらつきなどにも注意したほうがいいと思います。降圧薬は微量アルブミン尿、蛋白尿がある場合はACE阻害薬かARBの使用が優先されますが、微量アルブミン尿や蛋白尿がない場合はCa拮抗薬、サイアザイド系利尿薬も使用します。腎症4期以上でARB、ACE阻害薬を使用する場合は、腎機能悪化や高K血症に注意が必要です。また「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、75歳以上で腎症4期以上では、CCBが第一選択薬として推奨されています4)。腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤(ESA)の使用については、75歳以上の高齢CKD患者では「ESAと鉄剤を用い、Hb値を11g/dL以上、13g/dL未満に管理するが、症例によってはHb値9g/dL以上の管理でも許容される」となっています。高齢者ではESAを高用量使用しなければならないことも多く、その場合はHbA1c 10g/dL程度を目標に使用しています。腎臓専門医への紹介のタイミングは日本腎臓学会より示されており、蛋白尿やアルブミン尿の区分ごとに紹介基準が示されているので、ご参照ください(表)。画像を拡大するQ2 網膜症、HbA1cの目安や眼科紹介のタイミングは?高血糖が糖尿病網膜症の発症・進展因子であることは高齢者でも同様です。60歳以上の2型糖尿病患者7万1,092例(平均年齢71歳)の追跡調査では、HbA1c 7.0%以上の患者ではレーザー光凝固術の施行が10.0%以上となり、HbA1c 6.0%未満の患者と比べて約3倍以上となっています5)。また、罹病期間が10年以上の高齢者糖尿病では、10年未満の患者と比べて重症の糖尿病性眼疾患(失明、増殖性網膜症、黄斑浮腫、レーザー光凝固術施行)の頻度は高くなりますが、80歳以上ではその頻度がやや減少すると報告されています6)。このように、高齢糖尿病患者では罹病期間が長く、光凝固術の既往がある例も多く存在します。現在の血糖コントロールが良好でも、罹病期間が長い例では急激に糖尿病網膜症が進行する場合があり、初診時は必ず、その後も少なくとも1年に1回の定期受診が必要です。増殖性前網膜症以上の網膜症が存在する場合は急激な血糖コントロールにより網膜症が悪化することがあり、緩徐に血糖値をコントロールする必要があります。どのくらいの速度で血糖値を管理するかについて具体的な目安は明らかでありませんが、少なくとも低血糖を避けるため、メトホルミンやDPP-4阻害薬単剤から治療をはじめ、1~2ヵ月ごとに漸増します。インスリン依存状態などでやむを得ずインスリンを使用する場合には血糖目標を緩め、食前血糖値200mg/dL前後で許容する場合もあります。そのような場合には当然眼科医と連携をとり、頻回に診察をしていただきます。患者さんとのやりとりにおいては、定期的に眼科受診の有無を確認することが大切です。眼科との連携には糖尿病連携手帳や糖尿病眼手帳が有用です。糖尿病連携手帳を渡し、受診を促すだけでは眼科を受診していただけない場合には、近隣の眼科あての(宛名入りの)紹介状を作成(あるいは院内紹介で予約枠を取得)すると、大抵の場合は受診していただけます。また、収縮期高血圧は糖尿病網膜症進行の、高LDL血症は糖尿病黄斑症進行の危険因子として知られており、それらの管理も重要です。高齢者糖尿病の視力障害は手段的ADL低下や転倒につながることがあるので注意を要します。高齢糖尿病患者797人の横断調査では、視力0.2~0.6の視力障害でも、交通機関を使っての外出、買い物、金銭管理などの手段的ADL低下と関連がみられました7)。J-EDIT研究でも、白内障があると手段的ADL低下のリスクが1.99倍になることが示されています8)。また、コントラスト視力障害があると転倒をきたしやすくなります9)。Q3 高齢者の糖尿病神経障害の特徴や具体的な治療の進め方について教えてください。神経障害は糖尿病合併症の中で最も多く、高齢糖尿病患者でも多く見られます。自覚症状、アキレス腱反射の低下・消失、下肢振動覚低下により診断しますが、高齢者では下肢振動覚が低下しており、70歳代では9秒以内、80歳以上では8秒以内を振動覚低下とすることが提案されています10)。自律神経障害の検査としてCVR-Rがありますが、高齢者では、加齢に伴い低下しているほか、β遮断薬の内服でも低下するため、結果の解釈に注意が必要です。検査間隔は軽症例で半年~1年ごと、重症例ではそれ以上の頻度での評価が推奨されています1)。しびれなどの自覚的な症状がないまま感覚障害が進行する例もあるため、自覚症状がない場合でも定期的な評価が必要です。とくに、下肢感覚障害が高度である場合には、潰瘍形成などの確認のためフットチェックが重要です。高齢者糖尿病では末梢神経障害があると、サルコペニア、転倒、認知機能低下、うつ傾向などの老年症候群を起こしやすくなります。神経障害が進行し、重症になると感覚障害だけではなく運動障害も出現し、筋力低下やバランス障害を伴い、転倒リスクが高くなります。加えて、自律神経障害の起立性低血圧や尿失禁も転倒の誘因となります。また、自律神経障害の無緊張性膀胱は、尿閉や溢流性尿失禁を起こし、尿路感染症の誘因となります。しびれや有痛性神経障害はうつのリスクやQOLの低下だけでなく、死亡リスクにも影響します。自律神経障害が進行すると神経因性膀胱による排尿障害、便秘、下痢などが出現することがあります。さらには、無自覚低血糖、無痛性心筋虚血のリスクも高まります。無自覚低血糖がみられる場合には、血糖目標の緩和も考慮します。また、急激な血糖コントロールによりしびれや痛みが増悪する場合があり(治療後神経障害)、高血糖が長期に持続していた例などでは緩徐なコントロールを心がけています。中等度以上のしびれや痛みに対しては、デュロキセチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬が推奨されていますが、高齢者では副作用の点から三環系抗うつ薬は使用しづらく、デュロキセチンかプレガバリンを最小用量あるいはその半錠から開始し、少なくとも1週間以上の間隔をあけて漸増しています。両者とも効果にそう違いは感じませんが、共通して眠気やふらつきの副作用により転倒のリスクが高まることに注意が必要です。また、デュロキセチンでは高齢者で低Na血症のリスクが高くなることも報告されています。1)日本老年医学会・日本糖尿病学会編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂; 2017.2)Russo GT,et al. BMC Geriatr. 2018;18:38.3)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;20194)日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社会; 20185)Huang ES, et al. Diabetes Care.2011; 34:1329-1336.6)Huang ES, et al. JAMA Intern Med. 2014; 174: 251-258.7)Araki A, et al. Geriatr Gerontol Int. 2004;4:27-36.8)Sakurai T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2012;12:117-126.9)Schwartz AV, et al. Diabetes Care. 2008;31: 391-396.10)日本糖尿病学会・日本老年医学会編著. 高齢者糖尿病ガイド2018. 文光堂; 2018.

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CKD治療抵抗性高血圧症、patiromer併用でスピロノラクトン服薬率上昇/Lancet

 治療抵抗性高血圧症の慢性腎臓病(CKD)患者に対し、カリウム吸着薬patiromerを用いることで、より多くの患者が高カリウム血症を呈することなくスピロノラクトンによる治療が継続可能なことが示された。米国・インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らが、10ヵ国62外来医療センターを通じて行った第II相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。スピロノラクトンは、治療抵抗性高血圧症で血圧コントロール不良の患者において、降圧効果があることが示されている。しかし、CKDが併存する患者では高カリウム血症を呈することからスピロノラクトンの使用は制限される場合があることが課題となっていた。Lancet誌オンライン版2019年9月15日号掲載の報告。12週後のスピロノラクトン服薬継続率を比較 研究グループは、10ヵ国(ブルガリア、クロアチア、ジョージア、ハンガリー、ウクライナ、フランス、ドイツ、南アフリカ共和国、英国、米国)、62ヵ所の外来医療センターを通じ、推定糸球体濾過量(eGFR)が25~45以下mL/分/1.73m2のCKDで、コントロール不良の治療抵抗性高血圧症を有する18歳以上を対象に試験を行った。最終スクリーニングですべての適格基準を満たした患者を、血清カリウム値(4.3~4.7未満mmol/Lまたは4.7~5.1mmol/L)と糖尿病歴の有無で層別化した。 被験者を双方向ウェブ応答システムで無作為に1対1の割合で割り付け、非盲検下で投与したスピロノラクトン(25mgを1日1回から開始)とベースラインで服用中の高血圧治療薬に加えて、patiromer(8.4gを1日1回)またはプラセボのいずれかを投与した。patiromerの用量漸増は1週間後、スピロノラクトンは3週間後に可能とした。 被験者、投薬管理と血圧測定を行う試験チーム、および研究者は、割り付け治療群に対してマスキングされた。 主要エンドポイントは、12週後のスピロノラクトン服薬継続率の群間差だった。有効性のエンドポイントと安全性は、無作為化を受けた全被験者(intention-to-treat集団)で評価された。スピロノラクトン服薬継続率、patiromer群86%、プラセボ群66% 2017年2月13日~2018年8月20日にスクリーニングを受けた574例のうち、すべての基準を満たした295例(51%)を対象に無作為化試験を行った。patiromer群147例、プラセボ群148例だった。 12週後、スピロノラクトンを服薬継続していたのは、プラセボ群98/148例(66%)に対し、patiromer群126/147例(86%)と有意に高率だった(群間差:19.5%、95%信頼区間[CI]:10.0~29.0、p<0.0001)。 有害イベントは大半が軽度~中等度で、プラセボ群79/148例(53%)、patiromer群82/147例(56%)で発生した。 これらの結果を踏まえて著者は、「こうしたCKDが進行した患者集団において、治療抵抗性高血圧症の治療のために、スピロノラクトン継続使用が可能となることは、臨床的に意味がある」と述べている。

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コメディカルによる地域包括ケア、心血管イベント抑制に効果/Lancet

 地域の状況を熟知したプライマリケア医と患者家族、地域住民の支援の下で、医師以外の医療従事者(NPHW)が行う包括的なケアは、血圧コントロールと心血管疾患リスクを実質的に改善することが、カナダ・マックマスター大学のJon-David Schwalm氏らが行ったHOPE 4試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。高血圧は、世界的に心血管疾患の主要な原因である。高血圧のコントロールは、その有益性が証明されているにもかかわらず、十分に実施されていないという。Schwalm氏らは、コントロール不良および新規に診断された高血圧患者では、降圧治療とともに、地域の状況を詳細に分析して得られた他のリスク因子を改善する包括的なアプローチが、通常ケアに比べ有効性が高いとの仮説を立て、検証を行った。2つの中所得国30地域のクラスター無作為化試験 本研究は、NPHW、プライマリケア医、患者家族、有効な薬剤の提供から成るケアのモデルが、心血管疾患のリスクを実質的に低減するか否かの検証を目的に、2014~17年の期間にコロンビアとマレーシアの30地域(15地域ずつ)で実施された地域住民ベースのクラスター無作為化対照比較試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 30地域は、介入群と対照群に無作為に割り付けられた。介入群では、(1)NPHWが、タブレット型コンピュータ内の簡易な管理アルゴリズムと指導プログラムを用いて心血管疾患リスク因子の治療を行い、(2)医師の監督下でNPHWが無料の降圧薬およびスタチンを推奨し、(3)治療支援者として患者家族または友人が、服薬や健康的な行動の順守を改善する手助けを行った。対照群では通常治療が行われた。 主要アウトカムは、フラミンガムリスクスコア(FRS)によるベースラインから12ヵ月までの心血管疾患10年リスク推定値の変化の差とした。SBP<140mmHg達成の変化は2倍以上に 30地域(1,371例)のうち14地域が介入群(644例、平均年齢65.1歳[SD 9.1]、女性58%)に、16地域は対照群(727例、65.8歳[9.7]、54%)に割り付けられた。1,371例中1,299例(生存例の97%、介入群607例、対照群692例)が12ヵ月のフォローアップを完遂した。 ベースラインにおいて対照群で、喫煙者(7.8% vs.9.4%)と糖尿病患者(32% vs.37%)が多かった。全体の参加者の多く(1,008例、73.5%)が高血圧既往で、降圧薬を服用していたが血圧はコントロールされていなかった。残りの参加者は新規に診断された高血圧患者であった。 FRSの10年心血管疾患リスクのベースラインから12ヵ月までの変化は、介入群が-11.17%(95%信頼区間[CI]:-12.88~-9.47)、対照群は-6.40%(-8.00~-4.80)であり、両群間の変化の差は-4.78%(-7.11~-2.44)と、介入群で有意に良好であった(p<0.0001)。介入群におけるFRSの相対的減少率は34.2%だった。 介入群は対照群と比較して、12ヵ月時の収縮期血圧(SBP)の変化が11.45mmHg(95%CI:-14.94~-7.97)低く、総コレステロール値が0.45mmol/L(-0.62~-0.28)、LDLコレステロール値は0.41mmol/L(-0.60~-0.23)低下した(いずれもp<0.0001)。また、12ヵ月時の血圧コントロール(SBP<140mmHg)達成の変化は、介入群が対照群の2倍以上であった(69% vs.30%、p<0.0001)。 一方、血糖値、HDLコレステロール値、禁煙率、体重には両群間に有意な差はみられなかった。 介入群で18件の重篤な有害事象が発現したが、いずれも試験関連薬が原因ではなく、17件(94%)では患者が服薬を継続していた。死亡、心筋梗塞、脳卒中、これらの複合、心血管疾患による入院は、いずれも両群間に有意な差はなかった。 著者は、「HOPE 4戦略は効果的かつ実用的であり、2つの中所得国において、一般に医師が行う現在の戦略と比較して、実質的に心血管疾患を低減する可能性がある」としている。

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HFrEF患者、降圧薬の至適用量に性差/Lancet

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者では、ACE阻害薬やARB、β遮断薬の至適用量に性差があり、女性患者は男性患者に比べ、これらの薬剤の用量を減量する必要があることが、オランダ・フローニンゲン大学医療センターのBernadet T. Santema氏らが実施したBIOSTAT-CHF試験の事後解析で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月22日号に掲載された。ACE阻害薬、ARB、β遮断薬の薬物動態には性差があることが知られているが、ガイドラインで推奨されているこれらの薬剤の用量は、HFrEFの男女でほぼ同量だという。左室駆出率が低下した心不全患者で仮説を検証 研究グループは、HFrEF患者におけるACE阻害薬、ARB、β遮断薬の至適用量には性差が存在するとの仮説を検証する目的で、BIOSTAT-CHF試験の事後解析を行った(欧州委員会[EC]の助成による)。 BIOSTAT-CHF試験は、プロトコールによってACE阻害薬、ARB、β遮断薬の投与開始または漸増が推奨される心不全患者を対象とした前向き観察研究で、欧州の11ヵ国が参加し、2010~12年に患者登録が行われた。今回の事後解析には、左室駆出率<40%の患者のみが含まれ、試験開始から3ヵ月以内に死亡した患者は除外された。 主要評価項目は、全死因死亡および心不全による入院までの期間の複合とした。得られた知見は、アジアの11地域が参加した前向き観察研究であるASIAN-HF試験(男性3,539例、女性961例)のデータを用いて妥当性の検証が行われた。β遮断薬は推奨用量の60%、ACE阻害薬/ARBは40%が至適 HFrEF患者1,710例(男性1,308例、女性402例)が解析に含まれた。女性患者は男性患者よりも、ベースラインの平均年齢が高く(74[SD 12]歳vs.70[12]歳、p<0.0001)、体重が軽く(72[16]kg vs.85[18]kg、p<0.0001)、身長が低かった(162[7]cm vs.174[8]cm、p<0.0001)が、BMIに差はなかった(27.3[5.8]vs.27.9[5.2]、p=0.06)。 ガイドラインで推奨された目標用量へ到達した患者の割合は、ACE阻害薬/ARB(女性99例[25%]vs.男性304例[23%]、p=0.61)およびβ遮断薬(57例[14%]vs.168例[13%]、p=0.54)のいずれにおいても、男女間に差は認めなかった。 β遮断薬は、女性ではU字型のリスク曲線が示され、推奨される目標用量の約60%が至適用量であり、男性は推奨用量の30%と100%でリスクが最も低かった。ACE阻害薬/ARBは、女性では推奨用量の約40%で複合エンドポイントのリスクが最も低く、それ以上増量してもリスクは低下しなかったのに対し、男性は推奨用量の100%投与で最もリスクが低かった。これらの性差は、年齢や体表面積などの臨床的な共変量で補正しても存在していた。 ASIAN-HF試験のコホートは男女とも、BIOSTAT-CHF試験に比べ年齢が若く、体重が軽く身長が低かった。アジア人女性では、β遮断薬の用量と複合エンドポイントの関連は3次スプライン曲線を描き、推奨用量の40~50%でリスクが急激に低下し、それ以上増量してもリスクは低下しなかったのに対し、男性では推奨用量の100%を投与した場合にリスクが最も低かった。ACE阻害薬/ARBは、アジア人女性では推奨用量の約60%でリスクが最も低く、60%以上に増量してもそれ以上の保護効果を認めなかった。男性では、ACE阻害薬/ARBは推奨用量の50%以上を投与しないとほとんど効果はなく、用量の全体を通じて複合エンドポイントのリスクが女性よりも高かった。 著者は、「これらの知見は、女性患者にとって真に至適な薬物療法とは何かという疑問をもたらす。他の心血管疾患領域でも同様の調査を行う必要がある」としている。

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強化降圧治療、脳白質病変容積の増加が少ない/JAMA

 成人高血圧患者では、収縮期血圧(SBP)の降圧目標値を120mmHg未満とする強化降圧治療は140mmHg未満とする標準降圧治療に比べ、脳白質病変の容積の増加が少ないものの、その差は大きくないことが、米国・ペンシルベニア大学のIlya M. Nasrallah氏らが行ったSPRINT MIND試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年8月13日号に掲載された。強化降圧治療は、心血管疾患による合併症や死亡を抑制することが証明されているが、脳の健康への影響は明確でないという。疫学データでは、高血圧は脳白質病変の主要なリスク因子とされる。SPRINT試験のMRIサブスタディ 本研究は、米国の27施設が参加した多施設共同無作為化試験であるSPRINT試験のサブスタディであり、強化降圧治療は脳白質病変容積の増加を抑制するかを評価する目的で行われた(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 SPRINT試験の対象は、年齢50歳以上、SBPが130~180mmHgで、心血管リスクが高い患者(心血管疾患、慢性腎臓病[CKD、eGFR<60mL/分/1.73m2]、10年フラミンガム心血管疾患リスク≧15%、年齢75歳以上)であり、糖尿病や脳卒中の既往歴のある患者や認知症の患者は除外された。被験者は、SBPの目標値を120mmHg未満とする強化治療群または140mmHg未満とする標準治療群に無作為に割り付けられた。 SPRINT試験は2010年11月8日に開始され、2015年8月20日、主解析の主要アウトカム(複合心血管イベント)と全死因死亡が強化治療群で明らかに優れたことから、早期有効中止となった。 今回の解析には、ベースライン時に脳MRIを受けた670例が含まれ、このうち449例がフォローアップのMRIを完遂した。最終フォローアップ日は2016年7月1日だった。主要アウトカムは脳白質病変容積、副次アウトカムは全脳容積とした。全脳容積の減少は強化治療で大きく、その解剖学的原理は不明 ベースラインでMRIを受けた670例は、平均年齢67.3[SD 8.2]歳、女性40.4%であった。このうちフォローアップのMRIを完遂した449例(67.0%)の無作為化から最終MRIまでの期間中央値は3.97年であり、治療介入期間中央値は3.40年であった。 線形混合モデルに基づく解析を行ったところ、脳白質病変容積の平均値は、強化治療群では4.57から5.49cm3(差:0.92cm3、95%信頼区間[CI]:0.69~1.14)へ、標準治療群では4.40から5.85cm3(1.45cm3、1.21~1.70)へとそれぞれ増加し、変化の群間差は-0.54cm3(-0.87~-0.20)と、強化治療群で有意に増加の程度が小さかった。 また、全脳容積の平均値は、強化治療群では1,134.5から1,104.0cm3(差:-30.6cm3、95%CI:-32.3~-28.8)へ、標準治療群では1,134.0から1,107.1cm3(-26.9cm3、-28.8~-24.9)へとそれぞれ低下し、変化の群間差は-3.7cm3(-6.3~-1.1)と、強化治療群で有意に低下の程度が大きかった。 全脳容積のサブグループ解析では、女性は治療群によって全脳容積の変化の差(差:-0.2cm3、95%CI:-4.5~4.0)に有意差はなかったが、男性は強化治療群が標準治療群に比べ減少の程度が有意に大きかった(-6.0cm3、-9.3~-2.7)(交互作用のp=0.04)。 著者は、「脳における高血圧の主たる構造的な関連要因は、異常な脳白質病変容積であることを考慮すると、今回の結果は、高血圧に対しより強い降圧治療を行えば、この構造的異常の発現を遅延させる可能性があることを示唆する。一方、強化治療群で脳容積の減少が大きかったことの解剖学的原理と機能的意義は不明である」と指摘している。

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重症妊娠高血圧、経口薬ではニフェジピンがより効果大か/Lancet

 医療資源が乏しい環境下の重症高血圧症の妊婦について、基準値への降圧を図る経口薬治療の効果を検証した結果、ニフェジピン、メチルドパ、ラベタロールのいずれもが現実的な初回選択肢であることが示された。3薬間の比較では、ニフェジピンの降圧達成率がより高かったという。米国・ワシントン大学のThomas Easterling氏らが、これまで検討されていなかった3種の経口降圧薬の有効性と安全性を直接比較する多施設共同非盲検無作為化比較試験を行い、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号で発表した。高血圧症は妊婦における最も頻度の高い内科的疾患であり、重症例では広く母体のリスク低下のための治療が推奨される。急性期治療としては一般に静脈投与や胎児モニタリングが有効だが、医療従事者が多忙であったり医療資源が限られている環境下では、それらの治療は困難であることから研究グループは本検討を行った。妊娠28週以上の重症高血圧症にニフェジピン・ラベタロール・メチルドパ投与 試験はインド・ナーグプールの公立病院2ヵ所で、妊娠28週以上、収縮期血圧値が160mmHg以上または拡張期血圧値が110mmHg以上の重症高血圧症で、薬による血圧コントロールを必要とし、経口薬服用が可能な18歳以上の女性を対象に行われた。 被験者を無作為に3群に分け、ニフェジピン10mg、ラベタロール200mg(いずれも高血圧が持続する場合は投与量を3倍まで毎時増加)、メチルドパ1,000mg(1回投与、増量なし)をそれぞれ行った。試験群における増量プロトコールが異なるため、被験者、試験研究者および治療担当者のマスキングはできなかった。 主要アウトカムは、有害アウトカムを伴わない6時間以内の血圧コントロール(収縮期血圧120~150mmHg/拡張期血圧70~100mmHg)だった。重症の妊娠高血圧の血圧コントロール率、ニフェジピン群が84%で最も高率 2015年4月1日~2017年8月21日に2,307例の女性をスクリーニングした。うち1,413例(61%)を、不適格、試験参加を拒否、子癇前症、活性分娩、あるいはそれらを複合的に有するなどの理由で除外した。また、ニフェジピン群11例(4%)、ラベタロール群10例(3%)、メチルドパ群11例(4%)が治療不適(血圧測定が1回のみであったため)、または治療が中断となった(分娩または転院などのため)。 重症の妊娠高血圧症894例(39%)が無作為化を受け、ITT解析の対象に包含された。ニフェジピン群は298例(33%)、ラベタロール群は295例(33%)、メチルドパ群は301例(33%)だった。 主要アウトカムの発生は、メチルドパ群が230例(76%)に対しニフェジピン群が249例(84%)と、有意に高率だった(p=0.03)。一方で、ニフェジピン群vs.ラベタロール群(228例[77%]、p=0.05)、ラベタロール群vs.メチルドパ群(p=0.80)では、いずれも有意差はなかった。 重症有害事象の発生は7例(出生児の1%)だった。ラベタロール群の妊婦1例(<1%)が分娩時発作を、6例(1%)は死産であった(ニフェジピン群1例[<1%]、ラベタロール群2例[1%]、メチルドバ群3例[1%])。1件以上の有害事象を有した出生例はなかった。

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高血圧治療戦略、心血管疾患予防にはQRISK2準拠が望ましい/Lancet

 心血管疾患リスクスコアに基づいた治療戦略「QRISK2≧10%」は、NICEガイドライン2011年版の約1.4倍、同2019年版の約1.2倍多く心血管疾患を予防可能であるという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のEmily Herrett氏らが、英国で用いられている高血圧治療戦略の意義を検証した後ろ向きコホート研究の結果を報告した。血圧スペクトル全体での血圧低下が有益であるという強力なエビデンスにもかかわらず、世界中で広く推奨されている降圧療法は主に血圧閾値を目標としており、リスクに基づいて治療を決定することの効果とその後の心血管疾患の発生については明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2019年7月25日号掲載の報告。4つの異なる治療戦略を比較検証 研究グループは、Hospital Episode Statistics(HES)および国家統計局(Office for National Statistics:ONS)の死亡データとリンクしているプライマリケアのデータベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用い、30~79歳の心血管疾患を伴わないプライマリケア患者について後ろ向きに解析し、NICEガイドラインの2011年版および2019年版、血圧値(閾値≧140/90mmHg)のみ、または心血管疾患10年リスク予測スコア(QRISK2スコア≧10%)のみの4つの異なる治療戦略について比較検証した。 患者は、心血管疾患の診断、死亡、追跡調査の終了(2016年3月31日)のいずれかまで追跡調査を受けた。各戦略について、治療対象となる患者の割合と、当該治療で予防可能な心血管イベント数を推定した後、英国の全人口における10年間の適格性と発生イベント数を推定した。QRISK2に基づいた治療戦略でより多くの心血管イベントを回避 2011年1月1日~2016年3月31日の期間で、122万2,670例を中央値4.3年(IQR:2.5~5.2)追跡した。治療対象は、NICEガイドライン2011年版で27万1,963例(22.2%)、2019年版で32万7,429例(26.8%)、血圧値(≧140/90mmHg)のみで48万1,859例(39.4%)、QRISK2スコア(10%以上)のみで35万7,840例(29.3%)であった。 追跡期間中に、3万2,183例が心血管疾患と診断された(7.1/1,000人年、95%信頼区間[CI]:7.0~7.2)。各戦略の治療対象と判断された患者における心血管イベント発生率(/1,000人年)は、NICEガイドライン2011年版で15.2(95%CI:15.0~15.5)、2019年版で14.9(95%CI:14.7~15.1)、血圧値のみで11.4(95%CI:11.3~11.6)、QRISK2スコアのみで16.9(95%CI:16.7~17.1)であった。 英国の全人口に当てはめると、推定された回避可能なイベント数は、NICEガイドライン2011年版で23万3,152件(10年間に1件のイベント発生を回避するための治療必要数28例)、2019年版で27万233件(29例)、血圧値のみで30万1,523件(38例)、QRISK2スコアのみで32万2,921件(27例)であった。

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ミネブロ錠:3剤目のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬

2019年5月13日、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬、ミネブロ錠(一般名:エサキセレノン)が高血圧治療薬として新たに販売開始となった。高血圧治療に残された課題日本の高血圧患者は4,300万人と推計され、そのうち治療によって適切に血圧がコントロールされているのはわずか1,200万人。残りの3,100万人は治療をしていてもコントロール不良、もしくは治療を行っていないという。このような状況の中、日本高血圧学会は2019年に、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を発表し、高血圧対策を進めていく必要性を訴えた。今回の改訂では合併症のない75歳未満の成人、脳血管障害患者、冠動脈疾患患者は130/80mmHg未満に、75歳以上の高齢者は140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられている。降圧目標達成のためには個人レベルでの取り組みだけでなく、社会全体での積極的な取り組みが必要であることが強調されており、降圧目標達成率や疾患啓発など、高血圧治療に課題が残されていることがうかがえる。新しく登場したミネブロ錠は高血圧治療の新しい選択肢となり、課題解決に寄与する可能性がある。MR拮抗薬の作用機序について尿細管に存在するMRへ、アルドステロンが過剰に結合し続けると、尿中のナトリウム再吸収とカリウム排泄を促進させ、循環血量の増加により、血圧が上昇する。ミネブロ錠はMRをブロックし、ナトリウム排泄を促進することで血圧低下効果を発揮する。このMRをブロックするという作用機序から、食塩感受性高血圧の患者さんや原発性アルドステロン症の患者さんで有効性を示すことが期待されている。国内臨床試験成績:中等度腎機能障害に使えるMR拮抗薬国内第III相試験において、I度またはII 度の本態性高血圧症患者を対象に、単剤および他の降圧薬との併用の両方で試験が行われた。単剤投与では2.5mgを1日1回、12週間投与した結果、収縮期血圧は13.7mmHg低下し、エプレレノン(投与量:50mg)に対する非劣性が検証された。また、長期投与試験では52週を通して安定した降圧効果の持続が確認されただけでなく、ARBやCa拮抗薬との併用でも観察期に比べて有意な降圧効果を示している。さらに、中等度腎機能障害を合併した患者やアルブミン尿を有する2型糖尿病を合併した患者を対象とした試験では1.25mgを1日1回投与し、どちらの患者でも収縮期血圧は10mmHg以上低下している。ARBやCa拮抗薬を用いても降圧目標を達成できず、あと10mmHg程度を下げたいケースに追加する薬剤として良いだろう。そして、最大の特徴の1つは、これまでのMR拮抗薬では禁忌であった中等度腎障害の患者にも使用できるようになっている点である。ただし、副作用である高カリウム血症には注意が必要であり、とくに腎機能が低下している患者では、注意を払いながら使用していくことが求められる。カリウム値のモニタリングを行うなどして、患者に合わせて投与量を調整しながら使用していくことが重要となってくる。今後の可能性ミネブロ錠は単独投与、併用投与どちらでも10mmHg以上の血圧低下効果を示している。今後は、あともう少し血圧を下げたい場合や、これまでMR拮抗薬を使いたいが使えなかった症例において、新しい選択肢の1つとなるのではないか。さらに、MR拮抗薬はアルドステロンの作用を阻害するため、腎臓や心臓などの臓器保護効果を示す可能性があり、ミネブロ錠は高血圧症以外の適応拡大を目指して、糖尿病性腎症患者を対象とした第III相臨床試験が進められている。

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地域ベースの高血圧スクリーニング、血圧を改善する?/BMJ

 地域ベースの高血圧スクリーニングと、血圧上昇が認められた人々に対する降圧治療と行動変容の勧奨は、長期的には地域レベルでの収縮期血圧に重要な影響を与えうることが示された。ドイツ・ハイデルベルク大学のSimiao Chen氏らが、中国全土の高齢者を対象としたコホート研究のデータを用いた解析結果を報告した。著者は、「このアプローチは、中国ならびに高血圧の診断と治療について大きなアンメットニーズを有する国々において、心血管疾患の高い負荷を解決するだろう」と述べている。中国やほかの中低所得国において、地域ベースの高血圧スクリーニングがその後の血圧にもたらす影響に関するエビデンスは不足していた。BMJ誌2019年7月11日号掲載の報告。高齢者約3,900例でスクリーニング介入前後の血圧を評価 研究グループは、地域密着型高血圧スクリーニングの血圧への影響を評価する目的で、中国人高齢者を対象とした長期健康長寿調査(Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey:CLHLS)の、2011~12年と2014年のデータを解析した。 本調査では、高血圧のスクリーニングで血圧上昇を認めた場合、治療と生活習慣(体重管理、禁煙、アルコールや塩分摂取の抑制、運動など)の改善を口頭で奨励した。 解析対象は、高血圧と診断されたことがない高齢者3,899例で、2011~12年と2014年の血圧について回帰不連続解析にて評価した。スクリーニングと指導により2年後の収縮期血圧が低下 スクリーニングの介入による収縮期血圧の変化量は、共変量のないモデルにおいて-6.3mmHg(95%信頼区間[CI]:-11.2~-1.3)、人口統計的・社会的・行動的な共変量で補正したモデルにおいて-8.3mmHg(95%CI:-13.6~-3.1)であった。拡張期血圧への影響は小さく、すべてのモデルで有意差は確認されなかった。 介入の影響を推定するため、代替関数を用い高血圧の閾値を変化させた場合でも、結果は類似していた。また、サブグループ解析でも結果は同じであった。 なお、著者は、65歳以上を対象としたこと、高血圧治療に関するデータを利用できていないことなどを研究の限界として挙げている。

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人種は、リスクか?- CREOLE試験の挑戦(解説:石上友章氏)-1065

 米国は、人種のるつぼといわれる、移民の国である。17世紀、メイフラワー号に乗船したピルグリム・ファーザーズによるプリマス植民地への入植は、その当初友好的であったといわれている。しかし、米国建国に至る歴史は、対立抜きに語ることはできない。対立は、民族であったり、皮膚の色であったり、宗教の対立であった。高血圧の領域には、半ば伝説的な“学説”が信じられており、驚くべきことに、今に至るも受け入れられている。筆者も学生時代の当時、講義中に語られたと記憶している。すなわち、アフリカ系米国人は、奴隷交易にその祖があり、奴隷船の過酷な環境に適応した者が生存して、今に至っている。その結果、アフリカ系米国人は食塩感受性を特徴としており、RA系阻害薬の効果が高い(こうした環境負荷による表現型・遺伝子の選択を、ボトル・ネック効果と呼び、遺伝学で用いられている)。驚くべきことに米国では、こうした人種による薬剤応答性の違いが信じられており、黒人だけに適応がある、心不全治療薬が処方されている。 ナイジェリア・アブジャ大学のDike B. Ojji氏らが、サハラ以南のアフリカ6ヵ国で実施した無作為化単盲検3群比較試験「Comparison of Three Combination Therapies in Lowering Blood Pressure in Black Africans:CREOLE試験」は、標準的・代表的な降圧薬である、カルシウム拮抗薬、サイアザイド系利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の3種類から、2剤による3通りの組み合わせの処方の効果を、24時間携帯型自動血圧計による血圧値により評価した臨床研究である。本研究は、組織的に良好に遂行されたばかりでなく、その結果の質の高さにおいても、疑義なく受け入れることができる、質の高い研究である。本研究の結果、アフリカ系黒人の高血圧患者に対して、カルシウム拮抗薬(アムロジピン)と他の2剤の組み合わせが、サイアザイド系利尿薬・アンジオテンシン変換酵素阻害薬と比較して、有意に優れた降圧効果を示すことができた。この結果は、米国黒人の高血圧患者に、通説として受け入れられている説に反する結果といえる。非科学的で、偏見に満ちた通説と比較すると、科学的かつ、実証的な反論であるともいえる。試験のタイトルになったCREOLEとは、宗主国に対して植民地を意味する言葉であり、研究者らの思いをくみ取ることができるのではないか。

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第23回 心肺停止の症例から考えるバイタルサイン1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

最終回は「心肺停止」の症例です。文字通り、心臓と肺の機能が停止した(心停止・呼吸停止)状態です。病院の救急外来には心肺停止の患者さんが搬送されてくることがありますが、搬送される前の状態を思い浮かべてください。もしも人が倒れたその時、その場所にあなたが居合わせたら...。もしもその人があなたの大切な人だったら...。そんなことを想像しながら読んでみてくださいね。プロローグ「最近、私の行く先々で患者さんの具合が悪くなるわ...」そう思っていた薬剤師のあなたは先日、近隣の消防署で心肺蘇生法の講習会を受けてきました。さて、今日はお母さんと一緒にレストランに来ています。「ここのパスタ、おいしいのよ」 「へぇ!そうなの?」と、お母さんは喜んでくれています。「お母さん、最近調子はどう?」お母さんは数年前から高血圧で降圧薬を内服しています。さらに1年位前の血液検査で糖尿病と診断され、糖尿病治療薬が追加となり、真面目なお母さんは大好きなおまんじゅうやおせんべいをきっぱりやめて食事療法に取り組んでいます。「間食しないように気を付けているわよ。おじいちゃん(お母さんの父親)は心臓病で亡くなったから、私も気を付けないとね。でも、たまには外食もいいわね」患者さんIの場合◎経過──1ミートソースとカルボナーラを注文してトイレに行って戻ってきたあなたは、お母さんの具合が悪そうなのに気が付きました。顔色が悪く、ジトッと汗をかいています。「どうしたの?」 「ちょっと胸のあたりがね...」 「大丈夫?帰って休む?」そう尋ねると、「うぅぅ...」 「え?ちょっと...」お母さんは突然崩れ落ち、 椅子から横に倒れました。すると、「どうされました!?」すぐに店員さんが気付き、近寄ってきました。倒れたお母さんを見た店員さんは「大丈夫ですか!?」と叫びますが返事はありません。「え?え?」あなたの頭の中は真っ白になっています。◎経過──2「だれか!救急車呼んで!」 その若い店員さんは叫びました。近づいてきた他の店員さんには、「向かいにある駅にAED(自動体外式除細動器)が置いてあったと思う。借りてきて!」と言いました。レジ付近の店員さんは119番通報しているようです。「大丈夫ですか?」 お母さんに向かって再度そう言いますが反応がありません。右手はそっとお母さんの首を触れています。そしてあなたに、「ご家族の方ですか?」 あなたの頭は真っ白なままです。「え?ええ。...、今、急に倒れてしまって...」 うまく言葉が出ません。「救急車は呼んでもらいました。意識がないようですが...」目の前に倒れたお母さんは呼吸をしていないように見えました〈表1〉。「心臓マッサージ...、しなきゃ!」 そうつぶやくと、店員さんが心臓マッサージを開始しました。その時ハッとあなたの頭に先日の心肺蘇生法の講習会の光景が思い浮かびました。あなたは少しずつ周りの状況が見えるようになってきました。心肺停止、そして心肺蘇生と一次救命処置「心肺停止である」と判断されるのは、(1)意識がなく、(2)呼吸しておらず(または通常の呼吸をしていない状態、あえぎ呼吸とか死戦期呼吸と言われます)、(3)脈が触れない時です。どんな医療機器もいりません。私たちの五感で心肺停止であることを判断するのです。読者のみなさんは血圧計などの機器を用いてバイタルサインをチェックできるだけでなく、患者さんの状態を五感で感じとることができますね。心肺停止であると判断したら、大声で叫び応援を求め、救急車を呼んで、AEDを依頼して直ちに心肺蘇生を開始します。胸骨圧迫や人工呼吸を行うことを「心肺蘇生」と言い、心肺蘇生・AEDを用いた除細動・気道異物除去の3つをあわせて「一次救命処置」といいます〈図1〉。図2に主に市民が行う一次救命処置の手順を示します。

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がん生存率に降圧薬が影響するか

 降圧薬のがん生存率に対する影響について結論は出ていない。米国ヴァンダービルト大学医療センターのYong Cui氏らは、主な降圧薬と乳がん、大腸がん、肺がんおよび胃がんの全生存(OS)・がん特異的生存(DSS)との関連について、潜在的な交絡因子を包括的に調整し、時間依存Cox回帰モデルにより検討した。その結果、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、Ca拮抗薬が、消化器がんの生存を改善する可能性が示唆された。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2019年5月7日号に掲載。 本研究の対象は、中国の上海で実施されたShanghai Women's Health Study(1996~2000)およびShanghai Men's Health Study(2002~2006)の参加者で、2,891例の乳がん、大腸がん、肺がん、胃がんの患者が含まれた。降圧薬の使用は電子カルテから調べた。 主な結果は以下のとおり。・がん診断後の追跡期間中央値3.4年(四分位範囲:1.0~6.3)において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬を使用していた大腸がん患者(OSの調整HR:0.62、95%CI:0.44~0.86、DSSの調整HR:0.61、95%CI:0.43~0.87)および胃がん患者(OSの調整HR:0.62、95%CI:0.41~0.94、DSSの調整HR:0.63、95%CI:0.41~0.98)、β遮断薬を使用していた大腸がん患者(OSの調整HR:0.50、95%CI:0.35~0.72、DSSの調整HR:0.50、95%CI:0.34~0.73)でアウトカムが改善した。・さらに、Ca拮抗薬(DSSの調整HR:0.67、95%CI:0.47~0.97)および利尿薬(OSの調整HR:0.66、95%CI:0.45~0.96、DSSの調整HR:0.57、95%CI:0.38~0.85)を使用していた胃がん患者においてもアウトカムが改善した。

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第17回 意識の異常〜意識障害と意識消失発作-1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は意識レベルの異常を来した患者さん2例を紹介します。「意識障害」と「意識消失発作」はともによく耳にする言葉ですが、これらの違いはご存じでしょうか?2つの症例を通して学びたいと思います。患者さんDの場合◎経過──182歳、男性。施設入所中の方です。杖をついて歩くことができ、施設内でのレクリエーションにも積極的に参加しています。生活習慣病として高血圧症・糖尿病・脂質異常症があり、主治医からは降圧薬・経口血糖降下薬処方されています。普段は元気に過ごされていますが、2日前から発熱・嘔吐・下痢があり、ウイルス性胃腸炎との診断で嘱託医から胃粘膜保護薬と整腸薬が処方されました。本日、あなたが施設に行くと、職員があわただしく動き回っている光景を見ました。「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!?」見ると、いつも元気で過ごしているEさんが、ベッド上にぐったりとして意識がないようです。一方で、他の職員は嘱託医に電話連絡しているところでした。意識と、意識の中枢と、意識障害意識という言葉は、医学だけでなくいろいろな分野でいろいろな意味合いで使われているようですが、一般的には「目が覚めていて(覚醒)、自分や周囲の状況が認識できている(認知)状態」と定義されます。これらが障害された状態を意識障害といいます。ヒトは覚醒しているとき、脳幹にある「脳幹網様体」と呼ばれる部分に身体の感覚が入り、それが脳の視床という部分を介して大脳皮質に伝わります(上行性網様体賦活系といいます)〈図〉。この脳幹網様体が障害された時、または、両側の大脳が広範に障害された時に意識障害を生じます。意識障害の状態は表1のJapan Coma Scale(JCS)を参考にしてください。スライドを拡大する◎経過──2意識がないEさんを目の当たりにして、あなたは少し動揺してしまいました。(先生には連絡が行っているはずだから、こういうときこそ落ち着いて、基本に立ち返って...)あなたは一度深呼吸をして、バイタルサインを確認しました〈表2〉。Eさんはぐっしょりと全身に汗をかいています。(意識レベル以外にあまり異常はないわ...。どうしよう)意識障害の原因前述の通り、脳幹網様体や、両側大脳が広範に障害されると意識の状態が悪くなります(=意識障害を来します)。これらが障害されるのは、脳出血・脳梗塞といった頭蓋内疾患の場合もありますし、脳幹や大脳に影響を及ぼすような脳以外の疾患の場合もあります。意識障害の原因を検索するとき、表3のような「アイウエオチップス」という覚え方があります。表3を見ていただくと、実は脳の疾患に伴う意識障害よりも、脳以外の疾患を原因とする意識障害の方が多いことに気がつきます。ですから、「意識障害=脳の疾患」という訳ではありません。意識障害の鑑別には、その場のバイタルサインだけでなく、意識障害に至った病歴、既往歴、服用歴、身体診察、さらに血液検査、血液ガス分析、頭部CTを含めた画像診断が必要となります。この観点から、意識障害の患者さんは必ず病院の受診が必要ですが、意識障害の原因疾患の中でも緊急度の高いのは、バイタルサインに異常を来している場合(呼吸や循環にも異常がある場合)と低血糖です。スライドを拡大する◎経過──3(そういえばEさん、糖尿病の薬を内服している!)そう思ったとき、嘱託医が到着しました。医師が診察を始めるのと同時に、看護師は医師の指示で血糖を測定しました〈写真〉。「血糖『20未満』です」看護師が言うと、医師は静脈路確保の後、50%ブドウ糖液を40mL静注し、まもなくEさんの意識レベルは改善しました。最近の嘔吐・下痢で食事があまり摂れないのに、経口血糖降下薬は継続していたため、低血糖になったと考えられました。内服薬の効果の持続する時間を考えると、低血糖が遷延する可能性があり、提携している病院に入院することとなりました。医師はEさんを搬送するため、救急車に同乗していきました。

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高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標の変更は?

 本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。2014年以来5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。 4月25日の「高血圧治療ガイドライン2019」発表を前に、日本高血圧学会主催の記者発表が4月19日に行われ、平和 伸仁氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が改訂点やその作成経過について解説した。家庭血圧 vs.診察室血圧、厳格治療 vs.通常治療などCQ方式で推奨度を明記 高血圧治療ガイドライン2019では、初めてClinical Question(CQ)方式、Systematic Review(SR)方式が採用され、エビデンスに基づく17のCQが作成された。また、エビデンスが十分ではないが、医療者が実臨床で疑問を持つ課題として9のQ(クエスチョン)を設定。コンセンサスレベルでの推奨が解説されている。 作成されたCQは、「成人の本態性高血圧患者において、家庭血圧を指標とした降圧治療は、診察室血圧を指標とした治療に比べ、推奨できるか?(CQ1)」、「降圧治療において、厳格治療は通常治療と比較して心血管イベントおよび死亡を改善するか?(CQ3)」、「高血圧患者における減塩目標6g/日未満は推奨されるか?(CQ4)」など。推奨の強さが3段階、エビデンスの強さが4段階でそれぞれ評価されている。 Qについては、2021年以降製造・輸出入が禁止される水銀血圧計に代わって何を推奨するか(Q1)、家庭血圧はいつ/何回/何日間の測定を推奨するか(Q2)などの項目が設けられた。基準値は変更なし、ただし120/80mmHg以上は定期的な再評価と早期介入を推奨 高血圧治療ガイドライン2019での高血圧の基準値は、2014年版と同じく140/90mmHg以上。一方で、正常域血圧の名称と拡張期血圧の範囲が、一部変更された:・至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満・正常血圧:120~129/80~84mmHg→正常高値血圧:120~129/80mmHg未満・正常高値血圧:130~139/85~89mmHg→高値血圧:130~139/80~89mmHg 背景には、120~139/80~89mmHgでは生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高く、120/80mmHg未満と比較して脳心血管リスクが高いというデータがある。そのため、高血圧治療ガイドライン2019では基準値以下である高値血圧あるいは正常高値血圧の段階から、早期介入が推奨されている。2014年版では、I度高血圧以上のみ年齢や合併症の有無によって層別化されていた脳心血管病リスクが、高値血圧についても低~高リスクに分類された(表3-2)。また、高血圧管理計画は、高値血圧や正常高値血圧についてもフローチャートの形で整理され、初診時の血圧レベルに応じた再評価時期、治療法選択の考え方が示されている(図3-1)。なぜ高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標が10mmHgずつ引き下げられたか 合併症のない75歳未満の成人および脳血管障害患者、冠動脈疾患患者については、高血圧治療ガイドライン2019では130/80mmHg未満、75歳以上の高齢者については140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられた。この背景には、日本人対象のJATOS、VALISH、HOMED-BPなどを含む介入試験のメタ解析結果(CQ3)と、EPOCH-JAPANや久山町研究などのコホート研究結果があるという。 厳格治療群と通常治療群を比較したRCTのメタ解析では、厳格治療群で複合心血管イベントおよび脳卒中イベントリスクが有意に低く、130/80mmHgを目標とする厳格治療のメリットが示された。またEPOCH-JAPANでは、120/80mmHg未満と比較して血圧レベルが上昇するにつれ脳心血管死亡リスクが高まることが示されている。 高血圧治療ガイドライン2019では、高齢者は130 mmHg未満への降圧による腎障害などに注意を要するため、140/90mmHg未満とされたが、「忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す」とされている。高血圧治療ガイドライン2019で従来より厳格な薬物治療が求められる患者とは? とはいえ、「この目標値は、すべての患者における降圧薬による降圧目標ということではない」と平和氏は重ねて強調。初診時あるいは降圧薬治療中で130/80mmHg台、低・中等リスクの患者では、生活習慣修正の開始・強化が推奨されている。脳心血管病や糖尿病などの合併症のある高リスク患者でのみ、「降圧薬治療の開始/強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す」とされた。 2014年版と比較して、高血圧治療ガイドライン2019で生活習慣修正の上で薬物による降圧強化が新たに推奨された病態としては、下記が挙げられている:◇130~139/80~89mmHgで、以下のいずれか・75歳未満の高リスク患者※・脳血管障害患者(血管狭窄なし)・冠動脈疾患患者※高リスク患者の判定: ・脳心血管病既往 ・非弁膜症性心房細動 ・糖尿病 ・蛋白尿陽性のCKD ・65歳以上/男性/脂質異常症/喫煙の4項目のうち、3項目以上がある ・上記4項目のうちいずれかがあり、血圧160/100mmHg以上 ・血圧180/110mmHg以上◇75歳以上で、収縮期血圧140~149mmHg

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MR選択性の高い高血圧症治療薬「ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg」【下平博士のDIノート】第23回

MR選択性の高い高血圧症治療薬「ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg」今回は、選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)ブロッカー「エサキセレノン錠(商品名:ミネブロ錠1.25mg/2.5mg/5mg)」を紹介します。本剤は、中等度の腎機能障害およびアルブミン尿を有する2型糖尿病を合併する高血圧症患者にも投与することができ、これまでの高血圧症患者のアンメットニーズを満たす薬剤となることが期待されています。<効能・効果>本剤は、高血圧症の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年5月13日より発売される予定です。体液量の恒常性の維持に寄与するアルドステロンが作用するMR受容体の活性化を抑制することで降圧作用を示します。<用法・用量>通常、成人にはエサキセレノンとして2.5mgを1日1回経口投与します。なお、効果不十分な場合は5mgまで増量できます。本剤は、高カリウム血症の患者もしくは本剤投与開始時に血清カリウム値が5.0mEq/Lを超えている患者や重度の腎機能障害のある患者、カリウム保持性利尿剤やカリウム製剤などを投与中の患者には禁忌となっています。<副作用>国内第III相臨床試験において、総症例1,250例中162例(13.0%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、血清カリウム値上昇51例(4.1%)、血中尿酸増加17例(1.4%)、高尿酸血症13例(1.0%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として高カリウム血症(1.7%)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血圧を上げるホルモン(アルドステロン)の働きを抑えることにより、血圧を低下させます。2.血圧が下がることにより、めまいなどが現れることがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意してください。3.飲み合わせに注意すべき薬や健康食品があるため、現在服用している薬やサプリメントがある場合は、医師・薬剤師にお伝えください。また、新たに薬を飲み始める場合は、あらかじめ相談してください。4.本剤を服用中は、体内のミネラルバランスを保つために、こまめな水分摂取や適度な運動を心掛け、脱水や便秘を予防してください。5.この薬の服用により、血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合は相談してください。6.葉物野菜や芋類、豆類、バナナなど、カリウムを多く含む食物を食べ過ぎないように注意してください。カリウムは水に溶けやすいため、ゆでたり水にさらしたりすることで、カリウムを減らすことができます。<Shimo's eyes>MR拮抗薬は『高血圧診療ガイドライン2014』において、高血圧症治療の第1選択薬とはなっていないものの、ミネラルコルチコイドが関与する低レニン性高血圧症にとくに効果が期待でき、治療抵抗性高血圧症に対しても有用であるとされています。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)とエプレレノン(同:セララ)が発売されています。スピロノラクトンのMR拮抗作用は強力ですが、女性化乳房や月経異常などの性ホルモンに関連した副作用を発現しやすいことが治療継続の課題となっています。MRへの選択性が高いエプレレノンは、性ホルモン関連副作用は軽減されていますが、中等度以上の腎機能障害患者や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。本剤はMR選択性を有し、本態性高血圧症患者を対象とした臨床試験においてエプレレノンに劣らない降圧作用が認められています。また、中等度の腎機能障害患者、および微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者に対しても、血清カリウム値の定期的な測定は必要ですが投与可能です。今までMR拮抗薬を使用できなかった血圧コントロール不良の患者の新たな治療選択肢となりうるでしょう。なお、2019年4月時点において、海外で承認されている国および地域はありませんので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。

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がん終末期は減薬を/Cancer

 がん終末期における予防薬の投与はいつまで行われているのか。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLucas Morin氏らは、高齢の進行がん患者における降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬の継続について調査を行い、これらは死亡前1年間においても処方され、しばしば最後の数週間まで続けられていたことを明らかにした。著者は、「終末期の患者において、予防薬が臨床的有用性を達成する可能性は低い。死期が近づいたころの臨床的有用性が限られた薬剤の負担を減らすため、適切な減薬(deprescribing)戦略が必要である」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年3月25日号掲載の報告。 研究グループは、スウェーデンのデータベースを用い、2007~13年に死亡した65歳以上の高齢固形がん患者について、患者が死亡する前1年間における予防薬の毎月の使用と費用を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は15万1,201例(平均年齢81.3歳)で、死亡前1年間において、平均投与薬剤数は6.9剤から10.1剤に増加していた。・降圧薬、抗血小板薬、抗凝固薬、スタチン、経口糖尿病薬などの予防薬は、しばしば死亡月まで継続されていた。・1人当たりの薬剤費(中央値)は、1,482ドル(四分位範囲[IQR]:700~2,896ドル)に達し、そのうち213ドル(IQR:77~490ドル)が予防薬であった。・予防薬の費用は、肺がんで死亡した高齢患者(1人当たりの薬剤費[中央値]:205ドル、IQR:61~523ドル)と比較して、膵がん患者(補正後群間差:13ドル、95%CI:5~22ドル)、婦人科系がん患者(補正後群間差:27ドル、95%CI:18~36ドル)で高かった。・死亡前1年間を通して、予防薬の費用に関して減少は認められなかった。

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アフリカの黒人高血圧に有益な降圧薬2剤併用は/NEJM

 サハラ以南のアフリカに住む黒人高血圧患者において、アムロジピン+ヒドロクロロチアジドまたはペリンドプリルの併用療法は、ペリンドプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法より6ヵ月時の降圧効果が大きく、有効であることが示されたという。ナイジェリア・アブジャ大学のDike B. Ojji氏らが、サハラ以南のアフリカ6ヵ国で実施した無作為化単盲検3群比較試験「Comparison of Three Combination Therapies in Lowering Blood Pressure in Black Africans:CREOLE試験」の結果を報告した。黒人のアフリカ人は高血圧の有病率が高く、血圧コントロールに2剤以上の降圧薬を必要とすることが多いが、現在利用可能で最も有効な2剤併用療法の組み合わせは確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2019年3月18日号掲載の報告。3つの2剤併用療法について、6ヵ月後に有効性を比較 研究グループは2017年6~12月に、血圧コントロール不良の黒人のアフリカ人患者728例(未治療患者または1剤のみの降圧薬を服用している患者、≧140/90mmHg)を対象に試験を行った。 被験者を、アムロジピン+ヒドロクロロチアジド(HCTZ)併用群、アムロジピン+ペリンドプリル併用群、ペリンドプリル+HCTZ併用群の3群に無作為に割り付けた。投与量は、いずれの群もアムロジピン5mg/日、HCTZ 12.5mg/日、ペリンドプリル4mg/日から開始し、2ヵ月後に倍量(それぞれ10mg/日、25mg/日、8mg/日)にして4ヵ月間投与した。 主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月時の24時間自由行動下収縮期血圧の変化とし、線形混合効果モデルを用いintention-to-treat集団にて有効性を解析した。アムロジピン+ヒドロクロロチアジドまたはペリンドプリルの併用が有効 被験者は、平均年齢51歳、女性が63%であった。ベースラインと6ヵ月時に24時間血圧モニタリングを実施できた患者621例について解析した。 アムロジピン+HCTZ併用群およびアムロジピン+ペリンドプリル併用群は、ペリンドプリル+HCTZ併用群と比較し、24時間自由行動下収縮期血圧が低かった。ベースラインからの変化量についてペリンドプリル+HCTZ併用群との群間差は、アムロジピン+HCTZ併用群が-3.14mmHg(95%信頼区間[CI]:-5.90~-0.38、p=0.03)、アムロジピン+ペリンドプリル併用群は-3.00mmHg(95%CI:-5.8~-0.20、p=0.04)であった。アムロジピン+HCTZ併用群とアムロジピン+ペリンドプリル併用群の群間差は、-0.14mmHg(95%CI:-2.90~2.61、p=0.92)であった。 診察室血圧および自由行動下拡張期血圧についても、3群間にみられた差は同様であった。

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超急性期に脳卒中が疑われる患者に対する搬送中の経皮型ニトロは機能的転帰を改善しない(中川原譲二氏)-1014

 高血圧は急性期脳卒中によくみられ、不良なアウトカムの予測因子である。大規模な降圧試験でさまざまな結果が示されているが、超急性期の脳卒中に関する高血圧のマネジメントについては不明なままだった。著者らは、経皮型ニトログリセリン(GTN)が、発症後超早期に投与された場合に、転帰を改善するかどうかについて検討した。90日後の修正Rankin Scaleスコアを評価 研究グループ「The RIGHT-2 Investigators」は多施設共同の救急隊員による救急車内でのシャム対照無作為化試験を行った。被験者は、4時間以内に脳卒中を発症したと考えられ、FAST(face-arm-speech-time)スコアは2または3、収縮期血圧値が120mmHg以上の成人だった。被験者を無作為に2群に分け、GTN群には経皮型GTNを投与し(5mg/日を4日間)、シャム群にはシャム処置を、いずれも救急隊員が開始し、病院到着後も継続した。救急隊員は治療についてマスキングされなかったが、被験者はマスキングされた。主要アウトカムは、90日後の7段階修正Rankin Scale(mRS)による機能的アウトカムのスコアだった。評価は治療についてマスキングされた追跡調査員が電話で行った。分析は段階的に行い、まずは脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)と診断された患者について(コホート1)、次に被験者全員を対象に無作為化した患者について行った(コホート2)。機能的転帰に有意差なし、死亡や重大有害イベントも低下せず 試験は、2015年10月22日~2018年5月23日にかけて、英国8ヵ所の救急車サービス拠点から救急隊員516人、被験者数1,149例(GTN群は568例、シャム群581例)が参加して行われた。無作為化までの時間の中央値は71分(IQR:45~116)。被験者のうち虚血性脳卒中を発症したのは52%(597例)、脳内出血は13%(145例)、TIAは9%(109例)、脳卒中類似症例は26%(297例)だった。GTN群の入院時点の血圧値はシャム群と比べて、収縮期血圧値が5.8mmHg(p<0.0001)、拡張期血圧値が2.6mmHg(p=0.0026)、それぞれ低かった。コホート1において、最終的に脳卒中またはTIAと診断された被験者におけるmRSスコアに有意差はみられなかった。GTN群の同スコアは3(IQR:2~5)、シャム群も3(同:2~5)、不良なアウトカムに関する補正後commonオッズ比(acOR)は1.25(95%信頼区間[CI]:0.97~1.60)で、両群間に有意差はみられなかった(p=0.083)。コホート2でも、GTN群のmRSスコアは3(同:2~5)、シャム群も3(同:2~5)で、acORは1.04(95%CI:0.84〜1.29)と同等だった(p=0.69)。死亡(治療関連の死亡:GTN群36例vs.シャム群23例、p=0.091)や重大有害イベント(188例vs.170例、p=0.16)といった副次的アウトカムも、両群で差はみられなかった。本研究での降圧効果は、十分であったか? 本研究では、脳卒中が疑われる患者に対する搬送中の経皮型ニトログリセリン(GTN)の投与は、機能的アウトカムを改善しないことが示された。死亡率や重大有害イベントの発生リスクも低減しなかった。患者の登録時の収縮期血圧値が平均163mmHg前後、拡張期血圧値が平均92mmHg前後であり、GTN群ではシャム群に比較して、収縮期血圧値で5.8mmHg、拡張期血圧値で2.6mmHg低下しているが、この程度の血圧低下では、機能的転帰は改善しないとも考えられる。層別解析では、登録時の収縮期血圧値が、140mmHg以下の2群間で、GTN群の転帰がやや良好な傾向がみられるため、超急性期における降圧のさらなる強化療法について、検討の余地があると思われる。

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