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第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?Q1 COVID-19流行による受診機会減少、運動不足解消への具体的な対応策は?COVID-19流行に不安を感じ、受診を控える患者さんは少なくありません。適切な通院間隔は個々の症例によって異なるため、一概には言えませんが、通院間隔が短いほうが血糖コントロールが良好となる傾向があります。糖尿病診療において血糖測定(およびHbA1c測定)は重要な要素であるため、自己血糖測定を行っていない場合にオンラインや電話診療のみで加療をするのは困難です。したがって、血糖コントロールが良好な状態が維持できていれば通院間隔を延長する(最大3ヵ月)、もともと不良であったり、悪化傾向がみられる場合には通院間隔を短縮するといった柔軟な対応が必要です。患者さんの背景にもよりますが、HbA1c 6%台であれば3ヵ月ごと(インスリン使用者は除く)、7%台であれば2ヵ月ごと、8%台であれば1ヵ月ごとなどの目安を患者さんに提示し、受診の必要性を理解していただくことも効果的です。COVID-19流行に伴い外出機会や活動量が低下した高齢糖尿病患者さんも多く経験します。高齢者は活動量が低下すると容易に筋力が低下しますので、活動量の維持は重要です。1人あるいは同居者とのウォーキングで感染リスクが高まることはまずないと考えますので、可能な方には、人込みを避けたウォーキングを推奨しています。また、室内でできる運動としてラジオ体操や当センター研究所 社会参加と地域保健チームで開発された「本日の8ミッション」などを提示しています。「本日の8ミッション」は、つま先あげや、ももあげ、スクワットなどからなり、チェックシートがホームページよりダウンロードできます。また、座位行動時間に注目した指導も有効です。ADA(米国糖尿病学会)によるStandards of medical care in diabetes 2020では座位行動時間の短縮が推奨されています。30分以上座り続けないことで血糖値が改善するといわれており1)、自宅にいても30分に1回は立ち上がるよう患者さんに指導しています。Q2 誤嚥性肺炎の効果的な予防法について教えてください高齢者肺炎の多くを占めると考えられているのが誤嚥性肺炎です。糖尿病患者は脳梗塞による嚥下障害や高血糖による免疫能低下を介し、誤嚥性肺炎のリスクが高いと考えられます。誤嚥性肺炎は、睡眠中などに口腔内の細菌が唾液とともに下気道に流入する不顕性誤嚥により生じると考えられており、口腔内を清潔に保つことが重要です。コロナ禍の現在でも歯磨き習慣の確認や口腔内のセルフチェックを促すことは重要です。嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能の回復を目指したリハビリ(通院が困難な場合は在宅でも可能)や嚥下状態に合わせた適切な食形態への変更が必要です。鎮静薬や睡眠薬、抗コリン薬などの口腔内乾燥をきたす薬剤は嚥下障害をきたしやすいため、適切な使用がなされているか評価する必要があります。また、肺炎一般の予防として肺炎球菌やインフルエンザワクチンの接種も有効です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも肺炎による入院減少が示されており、両者の併用により、さらに入院頻度が減少することが示されています2)。なお、経鼻胃管や胃瘻造設による誤嚥性肺炎の予防効果は示されていません。Q3 尿路感染症の効果的な予防法・無症候性細菌尿への対応は?糖尿病は尿路感染症のリスクであることが知られており、そのリスクは血糖コントロール不良(HbA1c 8.5%以上)により高くなります3)。また、糖尿病患者では男女とも無症候性細菌尿の頻度が高いことも知られていますが4)、一部の例外(妊婦、好中球減少、泌尿器処置前)を除き、無症候性細菌尿に対するスクリーニングや治療は推奨されません5)。ただし、SGLT-2阻害薬の使用は尿路感染症のリスクとなる可能性があるため、現時点で明確なエビデンスがあるわけではありませんが、使用開始前に評価し、無症候性細菌尿が認められれば、使用を慎重に検討する必要があると考えます。閉経後女性140名を対象とした無作為比較試験では、1.5L以上の飲水により単純性膀胱炎の発症を50%低下することが示されています6)。膀胱炎を繰り返す場合には神経因性膀胱を念頭とした残尿測定やエコーによる尿路閉塞の有無を確認する必要があります。再発性尿路感染症予防におけるクランベリージュースの有効性を検討した研究では、50歳以上の女性においてその有効性が示されていますが7)、否定的な意見もあり8)注意を要します。Q4 歯周病に対する評価や歯科との連携について高齢糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、血糖コントロールが不良であると歯周病が悪化しやすいことが知られています。歯周病が重症化すると血糖コントロールが悪化します。逆に治療により歯周病による炎症が改善すると血糖コントロールも改善することが報告されています9)。歯周病による歯牙の喪失は嚥下障害のリスクとなるほか、オーラルフレイルを介し、身体的フレイルおよびサルコペニアのリスクとなる可能性があるため、歯周病の評価・治療は重要です。高齢糖尿病患者で歯牙の喪失または歯周病があると健康関連のQOL低下は1.25倍おこりやすく、過去12ヵ月間歯科治療を受けていないと1.34倍QOL低下をきたしやすいという米国の70,363人の調査結果も出ています10)。歯科との連携に際し、日本糖尿病協会が発行している「糖尿病連携手帳」を利用することが多いです。「糖尿病連携手帳」にはHbA1cなどの検査結果を記載するページとともに眼科・歯科の検査結果を記載するページもあり、受診時に患者さんに持参していただくことで情報の共有が可能です。もともとの状態や血糖コントロール状況にもよりますが、一般に3~6ヵ月間隔での評価が推奨されています。1)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020 Jan;43:S48-S65.2)Kuo CS, et al.Medicine (Baltimore). 2016 Jun;95:e4064.3)McGovern AP, et al.Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Apr;4:303-4.4)Renko M, et al.Diabetes Care. 2011 Jan;34:230-55)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-,日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, p1-3,2016年1月.6)Hooton TM, et al.JAMA Intern Med. 2018 Nov 1;178:1509-1515.7)Takahashi S, et al.J Infect Chemother 2013 Feb;19:112-7.8)Nicolle LE. JAMA. 2016 Nov 8;316:1873-1874.9)Munenaga Y, et al.Diabetes Res Clin Pract. 2013 Apr;100:53-60.10)Huang DL, et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Oct;61:1782-8.

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双極性障害の向精神薬多剤併用に影響を及ぼす因子~MUSUBI研究の分析

 北海道・足立医院の足立 直人氏らは、医師が双極性障害に用いる治療薬を選択する際に影響を及ぼす因子を明らかにするため、日本における全国調査のデータを用いて検討を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年10月22日号の報告。 精神科クリニック176施設より、双極性障害外来患者3,130例の臨床データを、連続的に収集した。患者の一般的特性5項目(性別、年齢、教育、職業、社会的適応)、患者の精神疾患特性5項目(発症年齢、併存する精神疾患、ラピッドサイクラー、精神病理学的重症度、フォローアップ期間)、医師特性5項目(性別、年齢、専門医経験年数、開業年数、開業場所)の合計15項目について評価を行った。薬物療法の指標として、向精神薬(気分安定薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠鎮静薬)の数を用いた。各クリニックから収集したデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の数と関連が認められた因子は、以下の7項目であった。 ●患者の社会的適応 ●患者の精神病理学的重症度 ●患者の併存する精神疾患 ●患者のフォローアップ期間 ●医師の年齢 ●開業年数 ●患者の教育年数・重回帰分析では、疾患重症度(不十分な社会的適応、併存する精神疾患)および難治性の疾患経過(長期フォローアップ期間)は、向精神薬の数と有意な関連が認められた。 著者らは「双極性障害に対する向精神薬の多剤併用は、医師に関連する因子よりも、患者に関連する因子のほうが、影響力が大きいことが示唆された」としている。

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高齢入院患者のせん妄予防に対する薬理学的介入~メタ解析

 入院中の高齢患者に対するせん妄予防への薬理学的介入の効果について、スペイン・Canarian Foundation Institute of Health Research of Canary IslandsのBeatriz Leon-Salas氏らがメタ解析を実施し、包括的な評価を行った。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2020年9~10月号の報告。 2019年3月までに公表された、65歳以上の入院患者を対象としたランダム化比較試験を、MEDLINE、EMBASE、WOS、Cochrane Central Register of Controlled Trialsの電子データベースよりシステマティックに検索した。事前に定義した基準を用いて研究を抽出し、それらの方法論的な質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・各データベースより抽出された1,855件から重複を削除し、1,250件の評価を行った。・メタ解析には、以下の25件のランダム化比較研究が含まれた。 ●抗てんかん薬(1件、697例) ●抗炎症薬(2件、615例) ●抗精神病薬(4件、1,193例) ●コリンエステラーゼ阻害薬(2件、87例) ●催眠鎮静薬(13件、2,909例) ●オピオイド(1件、52例) ●向精神薬・認知機能改善薬(1件、81例) ●抑肝散(1件、186例)・プラセボや通常ケアと比較し、せん妄の発生率を減少させた薬剤は、以下のとおりであった。 ●オランザピン(RR:0.36、95%CI:0.24~0.52、k=1、400例) ●リバスチグミン(RR:0.36、95%CI:0.15~0.87、k=1、62例) ●デクスメデトミジン(RR:0.52、95%CI:0.38~0.71、I2=55%、k=6、2,084例) ●ラメルテオン(RR:0.09、95%CI:0.01~0.64、k=1、65例)・デクスメデトミジンのみが、せん妄期間の短縮(0.70日短縮)、抗精神病薬の使用量低下(48%)と関連が認められた。・死亡率、有害事象、尿路感染症、術後合併症への影響は認められなかった。 著者らは「本メタ解析では、デクスメデトミジンが入院中の高齢患者におけるせん妄の発生率減少と期間短縮に有用であることが示唆された。各研究において、ラメルテオン、オランザピン、リバスチグミンの効果が報告されているが、確固たる結論を導き出すにはエビデンスが不十分である」としている。

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幸いな術後管理への道(解説:今中和人氏)-1272

 せん妄、いわゆるICU症候群は実に頭が痛い。心を込めて説得してもダメ、抑制してももちろんダメ、あれこれ鎮静薬を使っても硬い表情に異様にギラギラしたまなざしは去ることなく、「あんなに苦労して入れたA-ラインが、こんなにもアッサリと…」と激しく萎えた経験は、多くの先生にとって一度や二度ではあるまい。幻覚で大暴れしている患者さんも気の毒には違いないが、医師もナースも負けず劣らず気の毒。もちろん、臨床経過にも悪影響が及ぶ。せん妄の克服こそは、幸いな術後管理の鍵を握っている。 せん妄の原因は、従来は不安、孤立感、不眠といった心理面が重視されていたが、近年は多種多様な病態の複合的結果と捉えられている。脳血管障害などの既往、高齢、大手術といった工夫のしようもない要因、低酸素、電解質異常(とくに低ナトリウム、低カルシウム)、アシドーシス、低血糖、低心拍出、低血圧、不十分な鎮痛など、完璧に制御するのは容易でない要因が「これでもか」と並び、薬剤では利尿剤、抗不整脈薬、β遮断薬、H2ブロッカーに、ステロイド、抗生剤、麻薬、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬とくれば、一定以上の頻度でせん妄に遭遇することは避けられそうにない。 これでは、「幸いな術後管理」のほうが幻覚になってしまう。何とかせん妄を予防できないものか? 本論文はCleveland clinicを中心とする7病院における人工心肺症例約800例に対する、二重盲検無作為化試験である。すべて米国の施設だが、オフポンプCABGに積極的に取り組んでいるのか、単独CABGは1.5%のみ。55%が弁か大動脈の単独手術、45%がCABGとの複合手術であった。この800例を、麻酔後・執刀時からデクスメデトミジンか生食を持続投与する2群、各々約400例に分け、術後の新規心房細動とせん妄の発生を1次エンドポイント、急性腎障害と90日後の創部痛を2次エンドポイントと定義して比較している。デクスメデトミジンの投与量は開始時が0.1μg/kg/h、人工心肺離脱後は0.2μg/kg/h、ICUで0.4μg/kg/hに増量して24時間継続、患者さんの状態に応じて増減可、というプロトコルであった。現在、本邦では医療安全の観点からもpre-filledシリンジが多く使用されており、当院採用の製品の含有量が4μg/mLなので、体重60kgの患者さんの場合、0.1μg/kg/hは1.5mL/hに相当する。するとICUでの投与速度は6mL/hとなり、普通はまずまずしっかり鎮静されていて、過量と言うほどでもない投与速度である。 結果は期待に反し、新規心房細動は対照群34%に対して30%と有意に減少せず、せん妄は対照群12%に対して17%に発生し、有意差はないがむしろ増加、という結果であった。急性腎障害、創部痛もほぼ同数であった。ICU滞在はむしろ長くなり、臨床的に有意な低血圧が増加した。著者らはこの低血圧が、無効という結論になった一因かもしれない、と考察し、詳述してはいないが、コスト的にむしろマイナスだと示唆している。 過去には観察研究やプロトコル不統一のメタ解析では、デクスメデトミジンの有効性がちらほら報告されたが、本RCTでは全医療従事者の期待がアッサリ裏切られてしまった。そうは言っても患者さんが静穏であれば、術後管理は取り敢えずはうまくいっているわけだから、希望は捨てずに類似研究の報告を待ちたいところである。 ただ、鎮静薬持続静注の状態では食事もリハビリも始めにくいわけで、幸いな術後管理への道は、やっぱり遠い。

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COVID-19重症患者に対する人工呼吸管理に関する注意点/日本集中治療医学会

 4月6日、日本集中治療医学会が『COVID-19重症患者に対する人工呼吸管理に関する注意点』を発出。集中治療医学会ならびに日本呼吸療法医学会では、COVID-19重症患者に対する人工呼吸管理が増加している現状を踏まえ、日常的に重症呼吸不全の呼吸管理を行っていない施設やグラフィクモニターが搭載されない人工呼吸器を使用せざるを得ない場合に呼吸管理が行われる場合を想定し、海外の情報と本邦における経験に基づき、COVID-19患者の特徴に合わせた人工呼吸療法の対策を総括した。 ※ガイドラインなどのようにエビデンスレベルを検討して作成したものではない。 概要は以下のとおり。1. COVID重症患者の特徴 a)呼吸困難感出現から数時間で重症化する場合がある b)放射線画像と肺酸素化能はしばしば乖離する c)病態として中等度から重度のARDSを呈する d)死腔換気の増加により分時換気量が大きい(10~14L/分) e)呼気が延長しCO2排出に難渋する症例がある f)吸気努力が亢進している(とくに人工呼吸開始早期) g)鎮静薬に対し抵抗性を示す症例がある h)経過中喀痰分泌物が増加し気道閉塞をきたす症例がある2. 上記特徴を踏まえた対策 a)~h)の8項目3. 2.のc)~f)の対策で換気が維持できない場合 c)~f)の4項目 人工呼吸療法に行き詰まったときやECMOを考慮する場合は「日本COVID-19対策ECMO-net」のコールセンターが利用できる。(参考)ECMO相談窓口の開設について4.その他の留意点 一般に人工呼吸管理ではガス交換を維持することだけでなく、人工呼吸に関連する合併症を防止することが重要である。症例によっては、ガス交換がある程度改善すれば合併症回避を優先することも必要となる。重症患者の人工呼吸に慣れないスタッフが接触を減らすためにいたずらに深鎮静による無動化を継続すると、人工呼吸器関連合併症を起こし生命予後を悪化させる。また、積極的な早期経腸栄養開始や、カテーテル関連血流感染防止などにも留意する。肺以外の臓器障害がある場合は、治療方針につき専門医に相談することを推奨する。

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オピオイド中止によって増大するリスクとは?/BMJ

 オピオイド治療を受けている退役軍人保健局の患者では、処方の中止により過剰摂取または自殺による死亡リスクが増大し、治療期間が長い患者ほど死亡リスクが高いことが、米国退役軍人局精神保健自殺予防部のElizabeth M. Oliva氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月4日号に掲載された。米国では、オピオイドの過剰摂取やオピオイド使用障害による死亡の増加に伴い、オピオイド処方関連リスクの軽減戦略が求められており、リスクがベネフィットを上回った時点での治療中止が推奨されている。その一方で、長期の治療を受けている患者では、治療中止後の有害事象(過剰摂取による死亡、自殺念慮、自傷行為、薬物関連イベントによる入院や救急診療部受診)の増加が報告されている。約140万例の観察研究 研究グループは、オピオイド治療の中止またはオピオイド治療の期間と、過剰摂取または自殺による死亡の関連を評価する目的で、観察研究を行った(米国退役軍人局精神保健自殺予防部の助成による)。 対象は、2013~14年の会計年度(2012年10月1日~2014年9月30日)に、米国の退役軍人保健局の施設を受診し、オピオイド鎮痛薬の外来処方を受けた退役軍人の患者139万4,102例であった。過剰摂取の薬物には、オピオイドのほか、鎮静薬、アセトアミノフェン、その他の薬物中毒が含まれた。オピオイド治療を中止した患者と、継続した患者を比較した。 多変量Cox非比例ハザード回帰モデルを用いて、過剰摂取または自殺による死亡(主要アウトカム)を評価し、主な共変量としての治療期間別(30日以下、31~90日、91~400日、400日以上)のオピオイド中止の交互作用を検討した。開始後と中止後最低3ヵ月間は、リスク低減の取り組み強化 全体の平均年齢は約60歳、女性が約8%で、ほぼ半数が既婚者、61%が都市部居住者であった。また、半数強が3つ以上の医療診断を受けており、アルコール使用障害の診断は約10%、ニコチン使用障害の診断は約22%の患者が受けていた。最も頻度の高い精神疾患は、うつ状態と心的外傷後ストレス障害だった。 79万9,668例(57.4%)がオピオイド治療を中止し、59万4,434例(42.6%)は治療を継続した。2,887例が、過剰摂取(1,851例)または自殺(1,249例)により死亡した。オピオイド治療の期間が30日以下の患者は32.0%、31~90日は8.7%、91~400日は22.7%、400日以上は36.6%であった。 オピオイド治療中止と治療期間には交互作用が認められ(p<0.001)、治療期間が長い患者ほど治療中止後の過剰摂取または自殺による死亡リスクが高いことが示唆された。治療を中止した患者における過剰摂取または自殺による死亡リスクのハザード比(他のすべての共変量を参照値として比較)は、治療期間30日以下が1.67、31~90日が2.80、91~400日が3.95、400日以上は6.77であった。 過剰摂取または自殺による死亡リスク増加の他の独立の関連因子として、長時間作用型/短時間作用型オピオイドの処方(トラマドールとの比較)、医療診断数、精神疾患の診断、薬物使用障害(ニコチンを除く)などが挙げられた。一方、高齢、女性、既婚は低リスクの独立の関連因子だった。 また、生命表の記述的データでは、過剰摂取または自殺による死亡はオピオイドの開始と中止の双方の直後に増加し、発生率が低下するまで約3~12ヵ月を要すると示唆された。 著者は、「オピオイド治療の開始後および中止後は、それぞれ少なくとも3ヵ月間は、リスク軽減の取り組み(患者モニタリング、自殺および過剰摂取の防止)を強化する必要がある」と指摘している。

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米国うつ病患者の薬物療法と治療パターン

 ケアの潜在的なギャップを特定するためには、リアルワールドで患者がどのように治療されているか理解することが不可欠である。米国・Janssen Research & DevelopmentのDavid M. Kern氏らは、現在の米国におけるうつ病に対する薬理学的治療パターンについて解析を行った。BMC Psychiatry誌2020年1月3日号の報告。 2014年1月~2019年1月に、4つの大規模な米国レセプトデータベースよりうつ病患者を特定した。対象は2回以上のうつ病診断歴またはうつ病入院患者で、最初のうつ病診断の1年以上前および診断後3年間にデータベースへの登録がある患者を適格とした。対象患者に対する治療パターンは、薬剤クラスレベル(SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、その他の抗うつ薬、抗不安薬、催眠鎮静薬、抗精神病薬)で、利用可能なすべてのフォローアップ期間中に収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象のうつ病患者は、26万9,668例であった。・フォローアップ期間中に、薬理学的治療を行っていなかった患者の割合は29~52%であった。・治療を行っていた患者の約半数は、2つ以上の異なるクラスの薬剤で治療が行われていた。また、3クラス以上の薬剤で治療が行われていた患者は4分の1、4クラス以上の薬剤で治療が行われていた患者は10%以上であった。・最も一般的な第1選択薬はSSRIであったが、多くの患者において抗うつ薬治療前に、抗不安薬、催眠鎮静薬または抗精神病薬による治療が行われていた。・クラス間の併用による治療は、第1選択薬での治療の約20%から第4選択薬での治療の40%の範囲内で認められた。 著者らは「うつ病と診断された多くの患者は治療を受けていない。また、治療を受けていた患者の多くは、最初の治療が抗うつ薬以外の薬剤によって行われていた。半数以上の患者は、フォローアップ期間中に複数のタイプの治療を受けており、多くの患者において初回治療が最適ではなかった可能性が示唆された」としている。

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ネコ型ロボット、せん妄に有効

 せん妄は入院患者に多く発症し、入院期間、死亡率、および長期的な認知の転帰など負の予測因子に強く一貫している。せん妄に関連する症状としては、集中力の低下、睡眠障害、精神運動興奮、および情緒障害が含まれる。また、せん妄による行動障害の管理は困難であり、せん妄の持続期間または重症度を軽減するために、初期の身体離床、方向転換、自然な睡眠パターンを高めるための試み、およびベッドサイドのシッターなどの非薬理学的手段が提唱されているが、それらを超える確立された治療は限られている。今回、米国・Albany Medical CenterのJoshua S-M氏らは、ペット型ロボットによるICUでのせん妄患者による行動障害軽減の可能性を明らかにした。The American Journal of Medicine誌2月7日号掲載の報告。 近年、ペット型ロボットの使用は、認知症の特別養護老人ホームに入居する患者の興奮抑制に役立つと報告されている。認知症はせん妄の主要な危険因子であるため、病院内でこれらが役立つかどうかが推測されている。研究者らは、せん妄を持つICU患者に対し、非薬理学的行動介入としてペット型ロボットの使用に関する実現の可能性を評価するために、パイロット試験を行った。 研究者らは、2017年7~12月に、当院のICUでせん妄治療を受けている20例に対し、ICUにおけるせん妄評価法(CAM-ICU)で評価を実施。患者の代理人は、書面による同意説明後、new Joy For All robotic cat(Hasbro、RI:ネコ型ロボット)を受け取った。このネコは電池式で、触るとゴロゴロ、ニャーなどの鳴き声を発する。患者、家族、そしてベッドサイドの看護師は、このネコの使用を勧められた。ICUへ入室3日目に、患者(可能なら)とその家族(すぐに可能なら)に対して、5つの質問を行い、体系化されていないフィードバックを求めた。同じ調査をすべてのICUの看護師、サポートスタッフ、および医師に電子メールで送信した(n=400)。調査の質問事項は、リッカート尺度を用いて5段階で評価した(1:強く反対~5:強く同意する)。 主な結果は以下のとおり。・患者/家族全体のうち23件、ICUサポートスタッフから70件の結果が報告された。・患者20例の年齢中央値は73歳(26~94歳)で、50%が女性だった。・ICUでの1次診断は65%が内科的、35%が外科的であった。・調査登録前に投与された薬は、鎮静薬:85%、ベンゾジアゼピン系:55%、抗精神病薬:30%だった。・ミトンは65%、拘束は40%の患者にされていた。・全体として、患者/家族および臨床スタッフそれぞれ65%が、ネコ型ロボットの使用によって落ち着いたと回答。また、回答者の70%以上が、ネコ型ロボットによる臨床ケアの妨害はなかったと回答した。・回答者の大多数は、ネコ型ロボットがICU患者へ将来的な役割を果たす可能性があることに同意した(患者/家族:95%、スタッフ:72%)。・介入は簡潔、目立たず、安全で低コストだった。・ペット型ロボットは一般的に患者、家族、そしてスタッフに好評だった。・主な不満や参加辞退の理由は、「イヌ型ロボットがなかった」というもので、最も多かったのは、「ネコ型同様にイヌ型ロボットを提供してほしい」という声だった(コメントの20%)。 本試験の見解は研究デザインとサンプルサイズによって制限されており、実現の可能性の探索研究であったため、対照群の登録はない。しかし、これはICU環境でのペット型ロボットによる初の研究で、この研究の終了以降、せん妄のある特定の患者へペット型ロボットの利用についてICUの看護師から問い合わせが増えている。 潜在的には、ペット型ロボットの使用および同様の介入は、患者および家族の経験を改善しながら、向精神薬の使用および拘束の必要性を減らすことができる。さらに、そのような装置はほかの入院患者(小児科、脳外傷など)、または重症度が低いユニットにおいてもいっそう役立つかもしれず、今後、より大規模な検証が求められる。

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不安や睡眠の質と飲酒との関係

 睡眠不足の人は、睡眠の質を高めるために不安を和らげようとするが、毎日の飲酒が不安や睡眠障害を緩和する要因であるかはよくわかっていない。台湾・輔仁大学のKe-Hsin Chueh氏らは、不安と睡眠の質との関連および毎日の飲酒が、睡眠不足の人の不安や睡眠の質に対し調整因子として働くかについて、検討を行った。The Journal of Nursing Research誌オンライン版2018年11月28日号の報告。 台湾北部で睡眠不足(ピッツバーグ睡眠質問票:5超)を報告した20~80歳の84例を対象に、横断研究を行った。毎日の飲酒を含む人口統計、不安のレベル、うつ病のレベル、睡眠の質を網羅した構造化された質問票を用いてデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、女性の割合が高かった(72.6%)。・平均年齢は41.81歳(SD:12.62)であった。・不安の重症度の割合は、最小51.2%、軽度19.0%、中等度13.1%、重度14.3%であった。・重回帰分析を用いて睡眠の質に関連する因子で調整した結果、睡眠療法実施、毎日の飲酒、不安が睡眠の質不良の予測因子であった。・毎日の飲酒は、不安と睡眠の質との関連を緩和することが示唆された。 著者らは「睡眠不足の人は、睡眠の質不良や不安を自己治療するための誤った飲酒を避け、代わりに睡眠衛生教育とメンタルヘルスケアを利用するべきである。毎日の飲酒は、不安症状と睡眠の質との関係の調整因子となる可能性がある」としている。■関連記事不眠症とアルコール依存との関連入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入睡眠薬使用で不眠症患者のQOLは改善するのか

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入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入

 多くの患者において入院は不眠症の原因となり、通常は対症療法で治療が行われる。しかし、催眠鎮静薬の誤った使用は、とくに高齢入院患者において合併症と関連している。この合併症には、めまい、転倒、過鎮静が含まれる。このような潜在的な危険性のため、とくに高齢者においては、不眠症に対する催眠鎮静薬の広範な使用は、多くの病院で推奨されていない。サウジアラビア・King Abdulaziz University Faculty of PharmacyのAisha F. Badr氏らは、処方パターンの検討および評価を行い、地域病院における日々の薬剤師介入を通じた催眠鎮静薬の使用最適化について検討を行った。Saudi Pharmaceutical Journal誌2018年12月号の報告。 本研究は、前後比較研究として催眠鎮静薬の使用や合併症発症などについて、薬剤師による介入前と介入後で比較を行った。催眠鎮静薬の使用に関するデータを2ヵ月間レトロスペクティブに収集し、分析のために100例の患者サンプルをランダムに選択した。2ヵ月間のフォローアップでは、薬剤師1名が日々の処方を検討し、必要に応じて不要薬の中止や催眠鎮静薬の新規処方の勧告を行った。介入前後における結果は、患者の人口統計学的要因の違い、複数の催眠鎮静薬の処方、合併症の記録について比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・薬剤師の介入により、97例の患者の25%が催眠鎮静薬を中止した。・複数の催眠鎮静薬を投与されている患者数は、介入後のほうが介入前よりも有意に少なかった(15例 vs.34例、p=0.0026)。・合併症の発生率は、介入前後で有意な差は認められなかった(過鎮静:p=0.835、転倒:p=0.185、せん妄:p=0.697)。 著者らは「救命救急を除く入院患者において、催眠鎮静薬の使用は広まっている。また、多くの患者が複数の催眠鎮静薬を服用している可能性もあり、潜在的な問題が蓄積する可能性がある。薬剤師介入により、催眠鎮静薬を処方されている入院患者の25%が使用を中止し、複数の催眠鎮静薬使用患者も有意に減少した。入院患者に対する不必要な催眠鎮静薬の使用を避け、薬剤師によるモニタリングが最適化されるよう、さらなる努力を行うべきである」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデートメラトニン使用でベンゾジアゼピンを簡単に中止できるのか

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過剰処方の解消に薬剤師が一役買った(解説:折笠秀樹氏)-964

 薬剤の過剰投与はポリファーマシーとも呼ばれ、日本でも社会問題になっている。とくに、高齢者で問題が大きい。なぜ問題かというと、過剰投与によってさまざまな有害事象が生じるからである。極論としては、薬剤の過剰投与が死因の上位にあるという意見も聞かれる。欧米では「ビアーズ(Beers)基準」が作られ、使用を避けるべき薬剤の一覧表が示されている。薬とお酒を掛けて「Beers」、ビール基準と洒落たのかとも思ったけど、実は「Beers」とは提唱した人の名前らしい。 今回、ランダム化比較試験を通じて、過剰処方の解消に薬剤師が一役買えることが立証できた。薬剤師が過剰処方の危険性について小冊子を患者に渡したり、薬剤師が担当医に薬を減らすよう進言した。薬剤師から医師に処方箋について進言することは、日本ではできないだろう。しかし、本研究の実施場所であるカナダ・ケベック州では、薬剤師に法律上認められた行為のようだ。もちろん、ただ単に進言するのではなく、きちんとしたエビデンスを伴う資料を付けて進言した。 こういった薬剤師の活動によって、過剰投与は43%も解消(中止)できた。通常群では12%しか解消できなかった。催眠鎮静薬(俗にいう睡眠薬)では43%中止でき(通常群では9%)、NSAIDでは58%も中止できた(通常群では22%)。 あと1点興味深かったことがある。薬剤師の活動にもかかわらず、過剰投与がなかなか解消しなかった高齢者は、長期投与例(5年以上)と複数投与例(10剤以上)であったことである。過剰投与の解消は、できるだけ初期に手を付けることが必要なのだろう。

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第7回 意識障害 その6 薬物中毒の具体的な対応は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)ABCの安定が最優先! 気管挿管の適応を正しく理解しよう!2)治療の選択は適切に! 胃洗浄、血液浄化の適応は限られる。3)検査の解釈は適切に! 病歴、バイタルサイン、身体所見を重視せよ!【症例】42歳女性の意識障害:これまたよく遭遇する症例42歳女性。自室のベッド上で倒れているところを、同居している母親が発見し、救急要請。ベッド脇には空のPTP(press through pack[薬のシート])が散在していた。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:200/JCS血圧:102/58mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:18回/分 SpO2:97%(RA)体温:36.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+この症例、誰もが急性薬物中毒を考えると思います。患者の周りには薬のシートも落ちているし、おそらくは過量に内服したのだろうと考えたくなります。急性薬物中毒の多くは、経過観察で改善しますが、ピットフォールを理解し対応しなければ、痛い目に遭いかねません。「どうせoverdose(薬物過量内服)でしょ」と軽視せず、いちいち根拠をもって鑑別を進めていきましょう。重度の意識障害で意識することは?(表1)このコーナーの10's Ruleの「1)ABCの安定が最優先!」を覚えているでしょうか。重度の意識障害、ショックでは気管挿管を考慮する必要がありました。意識の程度が3桁(100~300/JCS)と重度の場合には、たとえ酸素化の低下や換気不良を認めない場合にも、確実な気道確保目的に気管挿管を考慮する必要があることを忘れてはいけません。薬物中毒に伴う重度の意識障害、出血性ショック(消化管出血、腹腔内出血など)症例が典型的です。考えずに管理をしていると、目を離した際に舌根沈下、誤嚥などを来し、状態の悪化を招いてしまうことが少なくありません。来院時の酸素化や換気が問題なくても、バイタルサインの推移は常に確認し、気管挿管の可能性を意識しておきましょう。●Rule1 ABCの安定が最優先!●Rule8 電解質異常、アルコール、肝性脳症、薬物、精神疾患による意識障害は除外診断!画像を拡大する薬物中毒のバイタルサイン内服した薬剤や飲酒の併用の有無によってバイタルサインは大きく異なります。覚醒剤やコカインなど興奮系の薬剤では、血圧や脈拍、体温は上昇します。それに対して、頻度の高いベンゾジアゼピン系薬に代表される鎮静薬ではすべて逆になります。飲酒もしている場合には、さらにその変化が顕著となります。瞳孔も重要です。興奮系では一般的に散瞳し、オピオイドでは縮瞳します。救急外来では明らかな縮瞳を認める場合には、脳幹病変以外にオピオイド、有機リン中毒を考えます。「目は口ほどにものを言う」ことがあります。自身で必ず瞳孔所見をとることを意識しましょう。薬物中毒の基本的な対応は?急性薬物中毒の場合には、意識障害が遷延することが少なくないため、内服内容、内服時間をきちんと確認しましょう。内服してすぐに来院した場合と、3時間経過してから来院した場合とでは対応が大きく異なります。薬物過量内服においても初療における基本的対応は常に一緒です。“Airway、Breathing、Circulation”のABCを徹底的に管理します。原因薬剤が判明している場合には、拮抗薬の有無、除染・排泄促進の適応を判断します。拮抗薬など特徴的な治療のある中毒は表2のとおりです。最低限これだけは覚えておきましょう。除染や排泄促進は、内服内容が不明なときにはルーチンに行うものではありません。ここでは胃洗浄の禁忌、血液透析の適応を押さえておきましょう。画像を拡大する胃洗浄の禁忌意識障害患者において、確実な気道確保を行うことなしに胃洗浄を行ってはいけません。誤嚥のリスクが非常に高いことは容易に想像がつくでしょう。また、酸やアルカリを内服した場合も腐食作用が強く、穿孔のリスクがあるため禁忌です。胃洗浄を行い、予後を悪くしてはいけません。意識状態が保たれ、内服内容が判明している場合に限って行うようにしましょう。もちろん薬物が吸収されてしまってからでは意味がないため、原則内服から1時間を経過している場合には適応はないと考えておいてよいでしょう。CTを撮影し薬塊などが胃内に貯留している場合には、胃洗浄が有効という報告もありますが、薬物中毒患者全例に胸腹部CTを撮影することは現実的ではありません1)。エコー検査で明らかに胃内に貯留物がある場合には、考慮してもよいかもしれません。活性炭の投与もルーチンに行う必要はありません。胃洗浄の適応症例には、洗浄後投与すると覚えておけばよいでしょう。血液透析の適応となる中毒体内に吸収されたものを、体外に除去する手段として血液透析が挙げられますが、これもまたルーチンに行うべきではありません。多くの薬物は血液透析では除去できません。判断する基準として、分布容積と蛋白結合率を意識しましょう。分布容積が小さく、蛋白結合率が低ければ透析で除去しえますが、そういったものは表3のような中毒に限られます。診療頻度の高いベンゾジアゼピン系薬や非ベンゾジアゼピン系薬(Z薬)、三環系抗うつ薬は適応になりません。ベンゾジアゼピン系薬、Z薬の過量内服は遭遇頻度が高いですが、それらのみの内服であれば過量に内服しても、きちんと気道を確保し管理すれば、一般的に予後は良好であり透析は不要なのです。画像を拡大する薬物中毒の検査は?1)心電図心電図は忘れずに行いましょう。QT延長症候群など、薬剤の影響による変化を確認することは重要です。内服時間や意識状態を加味し、経時的に心電図をフォローすることも忘れてはいけません。以前の心電図の記録が存在する場合には、必ず比較し新規の変化か否かを評価しましょう。2)血液ガス酸素化や換気の評価、電解質や血糖値の評価、そして中毒に伴う代謝性アシドーシスを認めるか否かを評価しましょう。3)尿中薬物検査キットトライエージDOAなどの尿中薬物検査キットが存在し、診療に役立ちますが、結果の解釈には注意しなければなりません。陽性だから中毒、陰性だから中毒ではないとはいえないことを覚えておきましょう。偽陽性、偽陰性が少なくないため、病歴と合わせ、根拠の1つとして施行し、結果の解釈を誤らないようにしましょう。薬物中毒疑い患者の実際の対応“10's Rule”にのっとり対応することに変わりはありません。Ruleの1~4)では、重度の意識障害であるため、気管挿管を意識しつつ、患者背景を意識した対応を取ります。薬物過量内服患者の多くは女性、とくに20~50代です。また、薬物過量内服は繰り返すことが多く、身体所見では利き手とは逆の手にリストカット痕を認めることがあります。意識しておくとよいでしょう。バイタルサインがおおむね安定していれば、低血糖を否定し、頭部CTを撮影します。この場合には、脳卒中の否定以上に外傷検索を行います。薬物中毒の患者は、アルコールとともに薬を内服していることもあり、転倒などに伴う外傷を併発する場合があるので注意しましょう。また、採血では圧挫に伴う横紋筋融解症*を認めることもあります。適切な輸液管理が必要となるため、CK値や電解質、腎機能は必ず確認しましょう。アルコールの関与を疑う場合には、浸透圧ギャップからアルコールの推定血中濃度を計算すると、診断の助けとなります。詳細は、次回以降に解説します。*急性中毒の3合併症:誤嚥性肺炎、異常体温、非外傷性圧挫症候群急性薬物中毒の多くは、特異的な治療をせずとも時間経過とともに改善します。また、繰り返すことが多く、再来した場合には軽視しがちです。そのため、確立したアプローチを持たなければ痛い目をみることが少なくないのです。外傷や痙攣、誤嚥性肺炎の合併を見逃す、アルコールとともに内服しており、症状が遷延するなどはよくあることです。根拠をもって確定、除外する意識を常に持ちながら対応しましょう。症例の経過本症例では空のPTPの存在や40代の女性という背景から、第一に薬物過量内服を疑いながら、Ruleにのっとり対応しました。母親から病歴を聴取すると、来院3時間前までは普段どおりであり、その後患者の携帯電話の記録を確認すると、付き合っている彼氏とのメールのやり取りから、来院2時間ほど前に衝動的に薬を飲んだことが判明しました。内服内容もベンゾジアゼピン系の薬を中心としたもので致死量には至らず、採血や頭部CTでも異常がないことが確認できたため、モニタリングをしながら、家族付き添いの下、入院管理としました。時間経過とともに症状は改善し、翌日には意識清明、独歩可能となり、かかりつけの精神科と連携を取り、退院となりました。本症例は典型的な薬物中毒症例であり、基本的なことを徹底すれば恐れることはありません。きちんと病歴や身体所見をとること、バイタルサインは興奮系か抑制系かを意識しながら解釈し、瞳孔径を忘れずに確認すればよいのです。次回は、アルコールによる意識障害のピットフォールを、典型的なケースから学びましょう。1)Benson BE, et al. ClinToxicol(Phila). 2013;51:140-146.

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薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。地域薬局の薬剤師主導介入を検討するクラスター無作為化試験 本研究は、不適正処方の防止に関して、薬剤師主導の介入の有効性を評価する目的で、カナダ・ケベック州で行われたプラグマティックなクラスター無作為化臨床試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成による)。 2014年2月~2017年9月の期間に、地域の薬局を登録し、介入群または対照群に無作為に割り付け、2018年2月までフォローアップを行った。 対象患者は、年齢65歳以上で、高齢者における潜在的に適正ではない医薬品を定めたビアーズ基準(Beers criteria)に含まれる4種の薬剤(催眠鎮静薬、第1世代抗ヒスタミン薬、glyburide(グリベンクラミド)、選択的非ステロイド性抗炎症薬)のうち1剤を処方された者とし、69の地域薬局で登録が行われた。 介入群の薬剤師は、患者には、薬剤の中止・減量に関する患者教育用の小冊子を送るよう奨励された。同時に、担当医には、薬剤の中止・減量の推奨に関するエビデンスに基づく薬学的見解が記された資料を送付することが勧められた。対照群の薬剤師は、通常治療を行った。 34の薬局が介入群(248例)に、35の薬局が対照群(241例)に割り付けられた。患者、担当医、薬剤師、評価者には、アウトカムのデータはブラインドされた。主要アウトカムは、6ヵ月時の不適正処方の中止とし、処方の更新は薬局の薬剤管理記録で確認した。不適正処方のリスクが31%低減 全体の患者の平均年齢は75歳、66%(322例)が女性であった。23%(113例)が80歳以上で、27%(132例)がフレイルの基準を満たした。437例(89%)が試験を完遂した(介入群:219例[88%]、対照群:218例[91%])。 6ヵ月時に、不適正処方に該当しなかった患者の割合は、介入群が42.7%(106/248例)と、対照群の12.0%(29/241例)に比べ良好であった(リスク差:31%、95%信頼区間[CI]:23~38%)。 各薬剤における不適正処方の中止の割合は、催眠鎮静薬では介入群が43.2%(63/146例)、対照群は9.0%(14/155例)(リスク差:34%、95%CI:25~43%)、glyburideではそれぞれ30.6%(19/62例)、13.8%(8/58例)(17%、2~31%)、非ステロイド性抗炎症薬では57.6%(19/33例)、21.7%(5/23例)(35%、10~55%)であった。薬剤クラスの交互作用検定では有意な差はなかった(p=0.09)。抗ヒスタミン薬は症例数(12例)が少なく解析不能だった。 介入群では、処方中止と患者の年齢、性別、健康状態、フレイル、処方期間、薬剤数などのサブグループに関連は認めなかった。 また、介入群で6ヵ月のフォローアップが完遂された219例のうち、担当医に薬学的見解の資料が届けられたのは145例(66.2%)で、この集団の処方中止率は47.6%(69/145例)であったのに対し、担当医に資料が送られていなかった74例の処方中止率は39.2%(29/74例)であり、両群間に差はみられなかった(リスク差:8%、95% CI:-6~22%)。資料を送らなかった理由は、「患者の要望」「患者がすでに薬剤を中止していた」「別の伝達法がよいと思った」などさまざまだった。 入院を要する有害事象は報告されなかったが、催眠鎮静薬の漸減を行った患者の37.7%(29/77例)に離脱症状がみられた。 著者は、「今後、これら知見の一般化可能性の検討が求められる」としている。

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不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデート

 現在の不眠症に対する薬物治療は、すべての不眠症患者のニーズを十分に満たしているわけではない。承認されている治療は、入眠および睡眠維持の改善において一貫して効果的とはいえず、安全性プロファイルも複雑である。これらのことからも、追加の薬物療法や治療戦略が求められている。初期研究において、一部の不眠症患者に対して、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)が追加の薬物治療選択肢として有用であると示されている。米国・セント・トーマス大学のKayla Janto氏らは、DORAとその潜在的な役割について、既存の文献を調査しアップデートを行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2018年8月15日号の報告。 DORAに関する既存の文献は、PubMedデータベースより、「オレキシン受容体拮抗薬」「almorexant」「filorexant」「lemborexant」「スボレキサント」の検索キーワードを用いて検索を行った。検索対象は、英語の主要な研究論文、臨床試験、レビューに限定した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症治療においてオレキシン受容体系を標的とすることは、より一般的に用いられるGABA作動性催眠鎮静薬治療に対する追加および代替的な薬物治療である。・現在の文献において、その有効性が示唆されているものの、まだ十分に確立されていない。・前臨床報告では、アルツハイマー病と不眠症を合併した患者に対する治療の可能性が示唆されている。 著者らは「DORAは、不眠症に対する追加の治療選択肢として使用可能である。いくつかの不眠症サブタイプにおいて、その安全性および有効性をきちんと評価するために、より多くの臨床試験が必要とされる。不眠症に対する既存治療とのhead-to-head比較研究が求められている」としている。■関連記事日本人高齢不眠症患者に対するスボレキサントの費用対効果分析不眠症へのスボレキサント切り替えと追加併用を比較したレトロスペクティブ研究不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析

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睡眠薬の長期使用に関する10年間のフォローアップ調査

 催眠鎮静薬の長期使用は、非常によく行われているが、ガイドラインでは推奨されていない。新規睡眠薬使用患者における長期使用への移行率は、十分に研究されているわけではなく、現時点では、有益だと考えられる推奨薬は不明である。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、新規睡眠薬使用患者における長期使用リスクを定量化し、睡眠薬の選択とその後の使用パターンとの関連性を検討した。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2018年8月8日号の報告。 イスラエル最大のヘルスケアプロバイダーのデータベースを用い、検討を行った。2000~05年に催眠鎮静薬を新たに使用した患者23万6,597例を対象に、10年間フォローアップを行った。2年目、5年目、10年目の処方箋が記録された。初回の睡眠薬選択(ベンゾジアゼピン/Z薬[非ベンゾジアゼピン系])と長期使用との関連は、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・新規睡眠薬使用患者の平均年齢は、63.7歳(SD±16.4歳)であった。・女性の割合は、58.6%であった。・ベンゾジアゼピンは、15万4,929例(65.5%)に使用されていた。・ベンゾジアゼピン使用患者は、Z薬使用患者と比較し、より高齢であり、社会経済的状態もより低かった(p<0.001)。・10年目において、新規ベンゾジアゼピン使用患者の66.8%(10万3,912例)が30DDD(defined daily dose:規定1日用量)以下、20.4%(3万1,724例)が長期使用(180DDD/年以上)、0.5%(828例)が過量投与(720DDD/年以上)であった。・Z薬の使用は、長期使用リスクの増加と関連していた(p<0.0001)。 2年目:17.3% vs.12.4%、RR=1.40(1.37~1.43) 5年目:21.9% vs.13.9%、RR=1.58(1.55~1.61) 10年目:25. 1% vs.17.7%、RR=1.42(1.39~1.45)・Z薬使用患者における日常的投与および過量投与についても、同様の結果が観察された(p<0.001)。 著者らは「新規催眠鎮静薬使用患者のうち約20%が長期使用となっていた。また、過量投与は、0.5%に認められた。そして、Z薬の使用は、長期使用リスク増加と関連が認められた」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は高齢者へのZ薬と転倒・骨折リスクに関するメタ解析ベンゾジアゼピン依存に対するラメルテオンの影響

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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米国の長期介護における向精神薬を使用した認知症ケア改善に関する研究

 養護老人施設における認知症ケア改善のための、メディケアおよびメディケイド・サービスセンター(CMS)国家パートナーシップ(以下、パートナーシップ)は、抗精神病薬の処方の割合を測定し、認知症者のケアの質を向上させるために設立された。米国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らは、長期介護を受ける高齢者への抗精神病薬および他の向精神薬の処方傾向とパートナーシップとの関連について検討を行った。JAMA internal medicine誌オンライン版2018年3月17日号の報告。 2009年1月~2014年12月までのメディケアサンプル20%の断続的な時系列分析を、パートD(処方箋薬剤給付保険)を有する長期介護のメディケア受給者63万7,426例を対象に実施した。データ分析は、2017年5月1日~2018年1月9日に行われた。主要アウトカムは、抗精神病薬と他の向精神薬(抗うつ薬、気分安定薬[バルプロ酸、カルバマゼピンなど]、ベンゾジアゼピン、他の抗不安薬、催眠鎮静薬)の四半期における使用率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象者63万7,426例のうち、女性は44万6,538例、男性は19万888例で、養護老人施設入所時の平均年齢は79.3±12.1歳であった。・対象者における向精神薬使用は、気分安定薬を除き、パートナーシップ開始前に減少していた。・2009年の第1四半期において、14万5,841例中3万1,056例(21.3%)に抗精神病薬が処方されており、これはパートナーシップ開始まで四半期ごとに-0.53%減少していた(95%CI:-0.63~-0.44%、p<0.001)。・その時点での、四半期ごとの減少率は-0.29%であり(95%CI:-0.39~-0.20%、p<0.001)、パートナーシップ後の四半期ごとの減少率は0.24%と減速していた(95%CI:0.09~0.39%、p=0.003)。・気分安定薬の使用は、パートナーシップ開始前に増加し続けており(率:0.22%、95%CI:0.18~0.25%、p<0.001)、開始後にはそれが加速し(変化率:0.14%、95%CI:0.10~0.18%、p<0.001)、2014年の最終四半期までに35万5,716例中7万1,492例(20.1%)まで達した。・抗うつ薬は全体として最も頻繁に処方された薬剤であり、2009年初めには14万5,841例中7万5,841例(52.0%)に処方されていた。・抗精神病薬と同様に、抗うつ薬の使用は、パートナーシップ開始前後どちらでも減少していたが、減少率は減速していた(変化率:0.34%、95%CI:0.18~0.50%、p<0.001)。・認知症者に限定した場合でも、同様な結果が得られた。 著者らは「長期介護において向精神薬の処方は減少していたが、パートナーシップでこの減少は加速しなかった。パートナーシップ開始後に、長期介護者や認知症者に対する気分安定薬の使用が増加し、それが加速したことは、抗精神病薬の代替品として使用されたためであると考えられる。抗精神病薬のみの使用を評価することは、ケアの質の面では不十分であり、リスクとベネフィットのバランスが良くない代替品への処方変更に寄与している可能性がある」としている。■関連記事警告後、認知症への抗精神病薬処方は減少したのか認知症者への抗精神病薬投与の現状は日本では認知症への抗精神病薬使用が増加

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アルツハイマー病患者へのベンゾジアゼピン使用と肺炎リスク

 ベンゾジアゼピンや同様の作用を有する非ベンゾジアゼピン(Z薬)が、高齢者の肺炎リスク増加と関連しているかはよくわかっていない。フィンランド・Kuopio Research Centre of Geriatric CareのHeidi Taipale氏らは、催眠鎮静薬の使用と肺炎を有するアルツハイマー病患者を対象に、この関連性を調査した。CMAJ(Canadian Medical Association Journal)誌2017年4月10日号の報告。 対象は、Medication use and Alzheimer disease(MEDALZ)コホートより、2005~11年にフィンランドでアルツハイマー病の診断を受けた地域住民。処方箋、償還、退院、死因に関する全国登録データを用いた。ベンゾジアゼピンおよびZ薬での治療患者は、1年間のウォッシュアウト期間を用いて同定され、傾向スコアによって非使用者とマッチさせた。肺炎による入院または死亡との関連は、Cox比例ハザードモデルで分析し、時間依存的に他の向精神薬の使用により調整した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者4万9,484例のうち、ベンゾジアゼピン使用患者5,232例、Z薬使用患者3,269例および、1対1でマッチしたこれらの薬の非使用患者を用い、分析を行った。・全体的には、ベンゾジアゼピンおよびZ薬の使用は、肺炎リスク増加と関連していた(調整HR:1.22、95%CI:1.05~1.42)。・個別に分析したところ、ベンゾジアゼピンの使用は、肺炎リスク増加と有意に関連していたが(調整HR:1.28、95%CI:1.07~1.54)、Z薬の使用では認められなかった(調整HR:1.10、95%CI:0.84~1.44)。・肺炎リスクは、ベンゾジアゼピン使用の最初の30日間で最大であった(調整HR:2.09、95%CI:1.26~3.48)。 著者らは「ベンゾジアゼピン使用は、アルツハイマー病患者における肺炎リスク増加と関連していた。アルツハイマー病患者に対しベンゾジアゼピンを使用する際には、ベネフィットと肺炎リスクを考慮する必要がある」としている。関連医療ニュース ベンゾジアゼピンと認知症リスク~メタ解析 認知症予防にベンゾジアゼピン使用制限は必要か ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は

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日本の外来患者、抗精神病薬の処方傾向を分析:京都大

 京都大学の河内 健治氏らは、精神科医療のコミュニティベースのアプローチに重点を置き、日本の外来患者に対する抗精神病薬処方の傾向を評価した。Pharmacoepidemiology and drug safety誌オンライン版2017年3月7日号の報告。 本研究は、全国の調剤薬局1,038施設からの処方箋データを用いた記述的疫学論文。2006~12年に、初めて抗精神病薬を処方された18歳以上の外来患者を評価した。単剤処方、多剤併用処方、抗精神病薬の用量、向精神薬の併用処方について年間の傾向を分析した。 主な結果は以下のとおり。・外来患者は、15万2,592例であった。そのうち、18~64歳は10万1,133例(成人群:66%)、65歳以上は5万1,459例(高齢者群:34%)であった。・成人群における2006年と2012年の処方傾向は以下のとおりであった。 ●第2世代抗精神病薬単剤処方:49%から71%へ増加 ●第1世代抗精神病薬単剤処方:29%から14%へ減少 ●抗精神病薬多剤併用処方:23%から15%へ減少・高齢者群における2006年と2012年の処方傾向は以下のとおりであった。 ●第2世代抗精神病薬単剤処方:64%から82%へ増加 ●第1世代抗精神病薬単剤処方:29%から12%へ減少 ●抗精神病薬多剤併用処方:7%から6%へ減少・研究期間中の抗精神病薬の用量は、成人群の80%超、高齢者群の90%超において、リスペリドン等価換算量6mg/日未満であった。・各種向精神薬の併用処方率は以下のとおりであった。 ●抗不安/鎮静薬:成人群70%、高齢者群43% ●抗うつ薬:成人群33%、高齢者群16% ●抗パーキンソン薬:成人群20%、高齢者群19% ●気分安定薬:成人群20%、高齢者群8% ●抗認知症薬:成人群0.3%、高齢者群16% 著者らは「大規模処方箋データより、日本の外来患者における抗精神病薬の高用量処方と多剤併用処方は、これまで考えられていたよりも広く行われていない」としている。関連医療ニュース 日本のデータベースから各種抗精神病薬のEPS発現を分析 抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大 各抗精神病薬、賦活系と鎮静系を評価

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繰り返す肺炎、危険因子となる薬剤は?

 日本や高齢化が急速に進行する社会において、繰り返す肺炎(recurrent pneumonia:RP)は大きな臨床的問題である。全国成人肺炎研究グループ(APSG-J)は、わが国のRP発症率と潜在的な危険因子を調査するために、成人肺炎の前向き研究を実施した。その結果、RPは肺炎による疾病負荷のかなりの割合を占めることが示唆され、RPの独立した危険因子として、肺炎既往歴、慢性の肺疾患、吸入ステロイドや催眠鎮静薬の使用、緑膿菌の検出が同定された。著者らは、高齢者におけるRPの影響を減らすために薬物使用に関して注意が必要としている。BMC pulmonary medicine誌2017年1月11日号に掲載。 2012年2月1日~2013年1月31日に日本の典型的な地域病院において、前向きに15歳以上の肺炎患者の登録を行った。患者を1年間追跡し、肺炎の再発およびRPに関連する特徴を調べた。Cox比例ハザードモデルを用いて、調整ハザード比(aHR)を算出、RPに有意に関連する危険因子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・合計841例(年齢中央値:73歳、範囲:15~101歳)が登録され、観察は計1,048人年で追跡期間中央値は475日であった。・1回以上再発した患者は137例で、発症割合は100人年当たり13.1(95%信頼区間[CI]:11.1~15.5)であった。・多変量解析により、RPの独立した危険因子として、肺炎既往歴(aHR 1.95、95%CI:1.35~2.8)、慢性の肺疾患(aHR 1.86、同:1.24~2.78)、吸入ステロイドの使用(aHR 1.78、同:1.12~2.84)、催眠鎮静薬の使用(aHR 2.06、同:1.28~3.31)が同定された。一方、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の使用(aHR 0.22、同:0.05~0.91)はRPリスクの減少と関連していた。・緑膿菌の検出は、慢性の肺疾患による調整後も有意にRPと関連していた(aHR 2.37)。

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