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超加工食品の高摂取で死亡リスク増大/BMJ

 超加工食品を1日4サービング以上摂取すると、死亡のハザードが相対的に62%増加し、1日1サービング増えるごとに死亡リスクが18%増加することが、スペイン・ナバラ大学のAnais Rico-Campa氏らの調査で示された。研究の成果はBMJ誌2019年5月29日号に掲載された。既報の成人を対象とした前向きコホート研究により、超加工食品の摂取は、がん、過敏性腸症候群、肥満、高血圧のハザードの上昇と関連することが知られている。約2万例を2年ごとに観察 研究グループは、超加工食品の摂取と全死因死亡の関連を評価する目的で、前向きコホート研究を行った(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成による)。 解析には、スペインの大学卒業生が登録されたSeguimiento Universidad de Navarra(SUN)の1999~2018年のデータを用いた。1999~2014年の期間に、20~91歳の1万9,899例を2年ごとにフォローアップした。食品と飲料の摂取状況を、NOVA分類による加工の程度で分類し、妥当性が確認された136項目の食品頻度質問票を用いて評価した。 主要アウトカムは、4段階の超加工食品の1日摂取量(低[<2サービング/日]、低~中[2~<3サービング/日]、中~高[3~≦4サービング/日]、高[>4サービング/日])で調整したエネルギー消費量と全死因死亡の関連とし、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。加工肉と砂糖入り飲料が最も多い 1万9,899例のうち、女性が1万2,113例、男性は7,786例で、ベースラインの全体の平均年齢は37.6(SD 12.3)歳、フォローアップ期間中央値は10.4年であった。観察人年20万432人年に、335例が死亡した(がん死164例、心血管死71例)。 超加工食品の平均1日摂取量は、低摂取群(4,975例)が1.4(SD 0.8)サービング、低~中摂取群(4,975例)が2.7(0.2)サービング、中~高摂取群(4,975例)が3.5(0.3)サービング、高摂取群(4,974例)は5.3(1.4)サービングであった。 高摂取群は平均BMI(23.8)が高かった。また、高摂取群は低摂取群と比較して、現喫煙者が多く、大学教育レベルが高く(大学院、博士号取得者が多い)、心血管疾患・がん・糖尿病・高血圧・高コレステロール血症・うつ病の家族歴を持つ者が多かった。 高摂取群は低摂取群に比べ、間食や1日3時間以上のテレビ視聴の割合が高く、1日のコンピュータ使用時間や昼寝の時間が長く(座位行動が多い傾向)、総脂肪摂取が多く、タンパク質や炭水化物の摂取は少なかった。高摂取群は他の群に比し、ファストフード、揚げ物、加工肉、砂糖入り飲料の摂取量が多く、野菜、果物、オリーブ油、アルコール飲料、総食物繊維の摂取量が少なかった。超加工食品の摂取量が多くなるほど、地中海食のアドヒアランス・スコア(0~9点、点数が高いほど伝統的地中海食へのアドヒアランスが高い)が低下した。 超加工食品のうち、最も多かったのは加工肉(15%、ハム、ソーセージ、チョリソ、サラミ、モルタデッラ、ハンバーガーを含む)と砂糖入り飲料(15%)で、次いで乳製品(12%、カスタード、アイスクリーム、ミルクシェイク、プチスイスを含む)、フレンチフライ(11%)、ペストリー(10%、マフィン、ドーナツ、クロワッサンや他の非手作りペストリー、菓子類を含む)、クッキー(8%、ビスケット、チョコレートクッキーを含む)の順であった。 超加工食品の高摂取群は低摂取群に比べ、全死因死亡のハザードが62%有意に高く(多変量で補正後のハザード比[HR]:1.62、95%信頼区間[CI]:1.13~2.33)、有意な用量反応関係が認められた(線形傾向のp=0.005)。がん死(1.22、0.70~2.12、p=0.42)および心血管死(2.16、0.92~5.06、p=0.11)には有意差はなかった。また、超加工食品が1サービング増えるごとに、全死因死亡が相対的に18%有意に増加した(補正後HR:1.18、95%CI:1.05~1.33)。 著者は、「超加工食品の摂取を抑制し、製品への課税や売買制限を目標とし、新鮮な最小限の加工食品(地中海食の重要な側面)の摂取を促進することは、世界の公衆衛生の改善において重要な健康施策の一環と考えるべきである」としている。

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エーラス・ダンロス症候群〔EDS:Ehlers-Danlos syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患の総称である。■ 疫学EDS全体としての頻度は1/5,000人程度と推定されている。古典型EDSでは1/2万人、関節過可動型EDSでは1/5,000~2万人、血管型EDSでは1/5~25万人、後側弯型EDSでは1/10万人とされる。それ以外の病型ではさらに頻度は低くまれとなる。詳しい病型は後述する。■ 病因コラーゲン分子、もしくは修飾酵素の遺伝子変異などにより発症する。古典型EDSはV型コラーゲン遺伝子変異、血管型EDSはIII型コラーゲン遺伝子変異によるdominant negative効果またはハプロ不全に基づき発症する。筋拘縮型EDSでは、デルマタン4-0-硫酸基転移酵素-1またはデルマタン硫酸エピメラ-ゼの欠損に基づき、代表的なデルマタン硫酸(DS)含有プロテオグリカンであるデコリンのグリコサミノグリカン鎖の組成が変化し(DSの消失、コンドロイチン硫酸への置換)、デコリンが媒介するコラーゲン細線維のassembly不全を来すことによって進行性の結合組織脆弱性を生じる。関節過可動型EDSでは、いまだ原因遺伝子は同定されていない。■ 症状EDSの各病型の臨床症状は、後述する表2の診断基準のとおりである。血管型EDSでは、薄く透けて見える皮膚、易出血性、特徴的な顔貌、動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする。血管破裂・解離、腸管破裂、臓器破裂は70%の成人例における初発症状となる(平均年齢23歳)。新生児期には、内反足、先天性股関節脱臼を、小児期には鼠径ヘルニア、気胸、反復性関節脱臼・亜脱臼を合併しうる。妊婦では分娩前後の動脈・子宮破裂により、死亡する危険性がある(~12%)。古典型EDSでは、滑らかでベルベット様の皮膚、過伸展性、脆弱性が目立ち、創傷治癒が遅れ瘢痕が薄く伸展する(萎縮性瘢痕:シガレットペーパー様と称される)。また、縫合部位は離開しやすい。肩、膝蓋骨、指、股、橈骨、鎖骨などが容易に脱臼するが、自然整復または自力で整復できることが多い。運動発達遅延を伴う筋緊張低下、易疲労性、筋攣縮、易出血性がみられることがある。妊婦は前期破水・早産(罹患胎児の場合)、会陰裂傷、分娩後の子宮・膀胱脱を生じうる。関節過可動型EDSでは、皮膚の過伸展性は正常もしくは軽度であるが、関節過伸展性が顕著であり、脱臼・亜脱臼の頻度も高い。変形性関節症もよくみられる。関節痛を含めた慢性疼痛が深刻であり、身体的・精神的な障害となりうる。しばしば胃炎、胃食道逆流、過敏性腸症候群といった消化器合併症を呈する。筋拘縮型EDSでは、先天性多発関節拘縮(内転母指、内反足)、顔貌上の特徴、内臓や眼の先天異常など先天異常関連症状、そして、皮膚の脆弱性、関節の易脱臼性、足・脊椎の変形、巨大皮下血腫、大腸憩室など進行性の結合組織疾患脆弱性関連症状を呈する。■ 分類1998年に発表された国際命名法により、6つの主病型に分類されてきたが,近年新たな病型がその生化学的・遺伝学的基盤とともに報告されており、2017年に新たな国際分類が定められ13の病型に分類された(表1)。表1 2017年に発表された新たなEDSの国際分類画像を拡大する■ 予後予後は各病型によりさまざまである。血管型EDSでは生涯を通じて易出血性を呈する。20歳までに25%の症例が、40歳までに80%の症例が深刻な合併症を発症し、死亡年齢の中央値は48歳とされる。とくに誘因もなく突然発症し、突然死、脳卒中、急性腹症、ショックといった形で現れることも多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断では、表2に示したEDSの各病型の診断基準を参照されたい。関節過可動型EDSを除きいずれの病型でも、最終診断には分子遺伝学的検査が必須となってくる。関節過可動性の評価としては、Beightonの基準を用いる。(1)小指の他動的背屈>90°(片側1点)、(2)母指が他動的に前腕につく(片側1点)、(3)肘の過伸展>10°(片側1点)、(4)膝の過伸展>10°(片側1点)、(5)前屈で手掌が床につく(1点)(計9点中5点以上で関節過可動性ありと判断)。表2 EDS各病型の診断基準画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)各病型に共通している診療のポイントは、医療者(関係各科、救急)と患者・家族が疾患についてあらゆる情報を共有し、起こりうる合併症の早期発見・早期治療を行うことである。病型にもよるが皮膚裂傷や関節過伸展性・脆弱性に対しては、激しい運動を控えサポーターなどで保護を行う。関節過可動型EDSでは、関節保護の理学療法、補装具の使用、鎮痛薬投与なども必要であり、重症患者では身体障害や難治性疼痛への負担に配慮した心理カウンセリング、抗うつ薬の投与などの対応が必要な時もある。血管型EDSでは動脈合併症予防のためセリプロロール(商品名:セレクトール)投与を考慮する。急性の動脈病変(瘤、解離)が生じた場合、可能な限り保存的に対処するが、病状が進行する場合は、血管内治療を考慮する。手術を行う場合は、血管および組織脆弱性を考慮し、細心の注意が必要になる。患者の妊娠はハイリスクであり、カップルに対し十分な情報提供を行ったうえで、心臓血管外科のバックアップができる施設において、陣痛開始前のコントロールされた分娩(おそらくは帝王切開のほうが安全)を行う。古典型EDSの裂傷の予防対策として、小児で皮膚裂傷を予防するためには、前頭部、膝、頸部を保護する。縫合に際しては、張力をかけない、できれば2層で縫合するなど十分注意を払う。さらに瘢痕を広げないよう、抜糸までの期間を通常の2倍程度に延ばす、テープで補強するなどの工夫が必要となる。また、遺伝カウンセリングについてふれると、これは「臨床遺伝専門医を中心に認定遺伝カウンセラー、担当医、看護・心理職種が協力して、患者自身または家族の遺伝に関する問題を抱える患者を対象に、臨床情報の収集に基づき正確な診断と発症・再発リスク評価を行い、わかりやすく遺伝に関する状況の整理と疾患に関する情報提供を行うこと、同時に患者が遺伝に関連したさまざまな負担に、その人らしく向き合い、現実的な意思決定を行っていけるような継続的な心理社会的支援を行うことを含んだ診療行為」とされる。EDSの病型は常染色体優性遺伝が多く、この場合、本症と診断されることは、患者自身が難治性疾患であることに加え、次世代が罹患する確率が50%であることを示すものである。また、稀少病型の多くは常染色体劣性遺伝であり、発症者の同胞への再発率は25%とされる。診断の時点、家族計画の相談が出た時点など診療の局面で、遺伝子医療部門への紹介を考慮したい。4 今後の展望次世代シークエンスを活用した、網羅的な遺伝学的検査の運用が始まっている。現在、唯一原因遺伝子が同定されていない関節過可動型EDSの原因遺伝子同定に向けた研究が進行中である。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、消化器外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科(ペインクリニック)、リウマチ科、救急科、遺伝子医療部門など関与する診療科は多岐にわたる。各科との連携が重要である。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター エーラス・ダンロス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Gene Reviews(医療従事者向けの研究情報:英文のみ)Gene Review Japan(医療従事者向けの研究情報。血管型、古典型、関節可動型について詳細説明あり)患者会情報日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)(患者とその家族および支援者の会)公開履歴初回2019年5月14日

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腸内細菌の医療への応用

過去10年間で急速な発展を遂げてきた腸内細菌叢領域。健康や疾患との関連性も明らかになってきており、医学・医療分野での注目度も高まっている。そのようななか、腸内細菌叢解析のビジネス化にいち早く着目したのが株式会社サイキンソーだ。サイキンソー代表取締役 沢井悠氏に、腸内細菌叢の解析が医療にもたらす可能性について聞いた。インタビュイー腸内細菌叢が注目されるようになった背景や、サイキンソーが提供する腸内細菌叢検査サービスについて教えていただけますか?ゲノム解析技術の革新を背景に、2010年台前半から世界的に腸内細菌叢研究が活発化するようになりました。そのようななか、サイキンソーは2014年に創業しました。創業当時は、腸内細菌叢に対する認知度はそれほど高くありませんでしたが、その後メディアが取り上げたことがきっかけで一気に認知が広がり、一般の方も関心を持たれるようになりました。私どもの提供する個人向け腸内細菌叢検査サービス「マイキンソー(Mykinso)」も、そうした背景から注目されるようになりました。マイキンソーは、生活習慣に関する問診票に回答し、専用のキットを使って採取した糞便サンプルを郵送するだけの、手軽な腸内細菌叢検査サービスです。キットを返送いただいてから約4週間で結果が出ます。個人向けとして展開していましたが、医師から問い合わせをいただくことが増えたため、現在は医療機関にもサービスを提供しています。検査では、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌、エクオール産生菌などの主要な細菌の割合、腸内細菌の多様性、細菌の構成比率などがわかります。医療機関向けには、問診票に書かれた悩みや症状に関連する細菌の解析結果などをまとめた「腸内フローラカルテ」を作成しています。腸内フローラカルテには、患者さん一人ひとりに管理栄養士から具体的な生活習慣のアドバイスがあり、検査後の患者指導にも役立てられると思います。腸内フローラカルテの一例画像を拡大する画像を拡大する検査サービスを利用いただく方は30~50代が中心で、医療機関を通して検査を受けるのは60~70代の方が多い傾向にあります(図)。特に、20代や60歳以上では症状や体調の悩みが強い方が多く、投薬やプレバイオティクス・プロバイオティクスなど、症状改善のためにすでに色々なことを試しているケースが多く見受けられます。(図)腸内細菌叢検査「マイキンソー」の利用者属性画像を拡大する医療機関ではどのように活用されているのでしょうか?マイキンソーは、北海道から沖縄まで、幅広い地域の医療機関に採用いただいています。診療科別では消化器内科が多く、産婦人科や整形外科での導入実績もあります。便秘や下痢などの症状が従来の検査・治療ではなかなか改善しない患者さんに対し、腸内細菌叢の検査を勧めるという流れで活用されることが一般的です。全国に先駆けて腸内細菌外来を設置した愛知県一宮市の山下病院では、従来の検査で原因が特定できず、投薬でも便秘や下痢が改善しない患者さんに対し、腸内細菌叢検査の結果を基にした生活指導を行っています。指導は医師が行うだけでなく、看護師や管理栄養士もフォローアップをしているそうです。機能性の消化管障害の場合、治療をしても満足のいく改善効果が得られないケースが一定数ありますが、腸内細菌叢検査を活用することで、そうしたケースでも適切な指導が行えるようになったと伺っています。これまでに蓄積した解析データから、機能性の消化管障害を有する人では健常な人と比べて腸内細菌叢のバランスが崩れており、検出される菌叢が大きく異なることがわかっています。具体的には、短鎖脂肪酸を産生する細菌が少ない、細菌の多様性を示すスコアが低い、ファーミキューテス門菌とバクテロイデーテス門菌の比率(FB比)が高いなどの違いが見つかります。菌叢のバランスが崩れている場合、プレバイオティクスやプロバイオティクスを取り入れてバランスを整えていくことで症状の改善につながることも期待できるようです。将来的に、腸内細菌叢検査は医療にどのような影響をもたらすと期待されますか?腸内細菌叢との関連に関する研究が最も進んでいるのは、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)、便秘、下痢などの下部消化管の疾患・症状です。そのほかに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの肝臓の疾患や関節リウマチなどの自己免疫疾患との関連も多く調べられています。エビデンスの集積が進めば、疾患の治療戦略の検討や予防を目的として、腸内細菌叢を解析するようになっていくものと期待されます。腸内細菌叢は、抗菌薬をはじめとするさまざまな薬の影響を受けると考えられています。また逆に、腸内細菌叢のバランスが崩れていると、薬の効果や副作用の発現が減弱・増強される可能性があることもわかってきています。将来的に、投薬のベースとして腸内細菌叢を整えることが重要視されるようになれば、腸内細菌叢を解析する意義がより明確になるものと考えられます。米国では、日本より先んじて臨床での腸内細菌叢検査の活用が広がっています。細菌叢検査領域のベンチャー企業の代表格である米国uBiomeでは、IBDやIBSなどの疾患と関連する腸内細菌を検出する腸内細菌叢検査サービス「SmartGut」を展開していますが、この検査は大多数の健康保険会社で保険償還されています。近い将来、日本でも腸内細菌叢検査が評価され、血液検査のように日常診療で実施されるようになることを期待しています。

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添付文書改訂:タミフル/スタチンとフィブラート併用の原則禁忌解除/リンゼス錠【下平博士のDIノート】第13回

タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<Shimo's eyes>2007年に、オセルタミビルを服用した10代の患者が転落して死傷する事例が相次いで報告されたことから、緊急安全性情報の発出や添付文書の警告欄の新設によって、10代の未成年患者への使用は原則として差し控えられていました。しかし、2018年8月に、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知にて、オセルタミビル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明という調査結果が報告され、インフルエンザ罹患時には、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類にかかわらず、異常行動が発現する可能性があることが明記されました。そして、オセルタミビルを含めたすべての抗インフルエンザウイルス薬について、異常行動に対する注意喚起の記載が統一されました。今年は経口抗インフルエンザ薬のラインアップに変化が生じており、2018年3月には新規作用機序であり、1回の経口投与で治療が可能なバロキサビル錠(商品名:ゾフルーザ)が発売され、同年9月には顆粒製剤が承認されています。同じく9月には、オセルタミビルの後発医薬品も発売されています。患者さんに合わせて処方薬が使い分けられるようになりますが、どのような薬剤が処方されていたとしても、異常行動の可能性があることを念頭に、小児・未成年者を1人にしないことや住居が高層階の場合は施錠を徹底することなどを指導しましょう。スタチン系とフィブラート系併用の原則禁忌が解除画像を拡大する<Shimo's eyes>2018年10月に、腎機能低下患者へのフィブラートとスタチンの併用が添付文書の原則禁忌から削除され、「重要な基本的注意」の項で、腎機能に関する検査値に異常が認められる場合、両剤は治療上やむを得ないと判断する場合のみ併用することという旨の注意喚起が追記されました。欧米では腎機能が低下している患者でもスタチンとフィブラートの併用が可能であること、わが国においても併用治療のニーズがあることなどから、日本動脈硬化学会より2018年4月に添付文書改訂の要望書が提出されていました。さらに、2019年4月に施行される予定の医療用医薬品の添付文書記載要領の改訂において、「原則禁忌」および「原則併用禁忌」が廃止されることを踏まえた対応と考えられます。なお、原則禁忌が解除されたとはいえ、腎機能が低下している患者では、スタチンとフィブラートの併用による横紋筋融解症のリスクについて、引き続き十分な注意を払う必要があるでしょう。リンゼス錠0.25mg画像を拡大する<使用上の注意>治療の基本である食事指導および生活指導を行ったうえで、症状の改善が得られない患者に対して本剤の適用を考慮します。重度の下痢が現れるおそれがあるので、症状の経過を十分に観察し、漫然と投与しないよう、定期的に本剤の投与継続の必要性を検討します。<用法・用量>通常、成人にはリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口投与します。なお、症状により0.25mgに減量します。<Shimo's eyes>慢性便秘症は高齢者に多いため、超高齢社会となったわが国では、近年便秘治療薬の領域が活気を帯びています。従来、慢性便秘症の薬物治療には、酸化マグネシウムやセンノシドなどが主に使われてきましたが、近年新薬が相次いで発売されています。便秘は「本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、腸そのものの病変(腫瘍や炎症、狭窄など)によって起こる「器質性便秘」と、消化器官の機能低下によって起こる「機能性便秘」に分類されます。「慢性便秘症」は機能性便秘のうち、便秘の状態が日常的に続くものです。リナクロチドは、2017年3月に「便秘型過敏性腸症候群」の適応で発売されましたが、今回「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」が追加されました。同適応を有するものとしてすでに、ルビプロストンカプセル(商品名:アミティーザ)、エロビキシバット錠(同:グーフィス)が発売されており、さらに2018年9月にはマクロゴール含有製剤(同:モビコール)、ラクツロースゼリー(同:ラグノスNF)が承認されました。なお、食後投与の薬剤や食前投与の薬剤、服用時点の定めのない薬剤があるため、監査・服薬指導の際には注意が必要です。

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肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射

第1回 トリガーポイントとは何か? 第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 第3回 肩痛で触るべき筋肉 第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 第6回 頭痛のトリガーポイント 第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 慢性的な痛みを訴える患者さんに出会うのは日常茶飯事。根本的な解決にはならないけれど、唯一の選択肢として鎮痛薬や貼付剤を処方していませんか?整形外科領域の疾患やレッドフラッグを除外しても続く痛みの原因の多くは実は筋肉にあります。 トリガーポイント注射は、これにアプローチする、新しい治療方法です。 なぜ筋肉が原因で身体のあちこちに痛みが生じるのか?そのメカニズムは、実にシンプル。筋肉に痛い箇所がひとつあれば、それを代償するように体を使い、さらに痛みが連続していくのです。遭遇頻度の高い肩痛、腰痛、膝痛、そして、ときに筋肉が原因となっている腹痛や頭痛について、それぞれ診察、触診、注射のポイントを伝授します。第1回 トリガーポイントとは何か? 腰や膝の痛みを訴える患者さんに、鎮痛薬や貼付剤を処方するだけ?これからはトリガーポイント注射も選択肢に入れてください!”筋肉”が原因で慢性的な疼痛が生じるのはしばしばあること。トリガーポイント注射は、筋肉が原因の痛みにアプローチする、新しい治療方法です。 普段、筋骨格系の診察をしない先生でも、明日から実践できるよう、筋肉の位置や名称は3DCGでわかりやすく提示。トリガーポイント注射を第一線で実践する斉藤先生が、診察と注射のノウハウを実技で伝授します。第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 痛みの原因になっている筋肉はどこなのか。注目すべきは、「痛みがある箇所よりも、つっぱりを感じるところ」。筋肉が短縮しているところにトリガーポイントがあります。今回は、視診、動作、触診とトリガーポイントを特定するための診察ノウハウを伝授。もちろん、見つけたトリガーポイントにどうやって安全に注射をしていくか、そのコツをお伝えします。第3回 肩痛で触るべき筋肉 肩痛で見るべきは、筋肉は3つ。どの筋肉にTPがあるかで、痛みの場所が違います。原因になる筋肉を特定する診察の方法、トリガーポイントを探す触診まで実技でわかりやすく解説します。第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 腰痛の原因は椎間板ヘルニア?もちろんそういう場合は多いですが、神経所見をとると痛みやしびれの原因がヘルニアでないことはよくあります。ヘルニアがあってもなくても、一度トリガーポイントを探索してみましょう。今回は、腰痛を訴える場合に触るべき脊柱起立筋群、殿筋群の診察ノウハウを解説します。さらに、意外な部位にある腰痛の原因も紹介します。第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 膝関節だけに注目しても、痛みが取れない原因は、膝痛には大腿から下腿までの筋肉がかかわっているから。大腿から下腿まで、確認すべき筋肉を、CG、触診、超音波を駆使して立体的に解説します。膝の前面か後面か、痛む部位に応じたトリガーポイントを見つけるコツを詰め込みました。第6回 頭痛のトリガーポイント 緊張性頭痛や片頭痛といった頭痛には肩、首、顔、頭の筋肉が関与している可能性があります。レッドフラッグを除外しても、鎮痛薬を処方しても、継続する頭痛に、トリガーポイントを取り入れることで苦痛を和らげられる可能性が大きく広がります。触るべき筋肉の位置とトリガーポイント、触診のコツを押さえましょう。第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 筋肉があれば、そこにはトリガーポイントが形成される可能性があります。人間は全身筋肉に覆われているので、どの部位であってもトリガーポイントによる痛みが生じるとも言えます。胸部のトリガーポイントでは狭心症と見まがう痛みを生じることがあります。腹部では逆流性食道炎や過敏性腸症候群、胃潰瘍など消化器疾患と似た症状がでることも。いずれも触るべき筋肉の解剖と触診、超音波像で診察のポイントを解説します。

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続々と選択肢増、慢性便秘症治療の最新事情

 相次いで新薬が登場している慢性便秘症治療で、各治療薬はどのように使い分けていけばよいのか。9月11日、都内で慢性便秘症治療の最新事情をテーマとしたプレスセミナーが開催された(主催:アステラス製薬株式会社)。演者として登壇した三輪 洋人氏(兵庫医科大学 内科学消化管科 主任教授)は、「便秘は治療満足度に対する医師と患者側のギャップが大きい。単純に排便回数を改善するだけでなく、症状を改善していく治療が求められている」と話し、便秘治療の考え方や各治療薬の特徴について解説した。慢性便秘症の診断で医師は排便回数の減少を、患者は腹部の膨満感を重視 慢性便秘症の診療を行っている医師400人と、症状が6ヵ月以上あり通院あるいは市販薬を服用している患者700人を対象とした2017年の調査1)で、医師が慢性便秘症の診断にあたり重視する項目は多い順に、「排便回数の減少」「便の硬さ」「排便困難」であった。一方、患者側は「腹部の膨満感」「排便回数の減少」「便の硬さ」の順に回答が多く、特に腹部症状を改善したいと感じていることが明らかになった。 また、慢性便秘症治療の各薬剤(上皮機能変容薬は含まれていない)について満足度を尋ねたところ、浸透圧性下剤で80%以上など医師の満足度がおおむね高かったのに対し、患者側では全薬剤で50%以下となり、医師と比較すると圧倒的に低い傾向がみられた。 三輪氏は、「われわれはつい、“週2回だった排便が4回になりましたか、よかったですね”と排便回数を慢性便秘症治療の目安としてしまいがちだが、患者さん側は症状を改善したいと感じている。漫然と治療を続けるのではなく、どうしたら症状がとれるのかという観点からも治療を考えていかなければいけない」と話した。慢性便秘症の薬物療法、ガイドラインでの推奨は? 慢性便秘症の薬物療法について、まず前提として、骨盤底筋の機能障害に起因する便排出障害型の便秘には効果がなく、リハビリ療法の一種であるバイオフィードバック療法の有効性が確立されていることに三輪氏は言及。「2時間以上もトイレにこもる、手でかき出さないと出せないなど、排便の困難感が極度に強い患者さんは、便排出障害型の可能性がある」と話した。 2017年10月発行の「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、複数ある薬剤の中で、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、ラクツロース、ソルビトールなど)と上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチドなど)に、「強い推奨(1)」と「最も高いエビデンスレベル(A)」が示されている。 しかし、兵庫医科大学の関連病院で2017年10月~2018年2月にかけて薬剤の使用状況を調べたところ、酸化マグネシウムと刺激性下剤の使用が90%以上を占めており、上皮機能変容薬の使用は数%に留まっていた。「市販薬や一部の漢方薬(“大黄”が含まれるもの)を含む刺激性下剤は、一時的な効果はあるが習慣性や依存性があるため、短期間の投与とすることがガイドラインでも推奨されている」と三輪氏。酸化マグネシウムについては、慢性便秘症治療において「今後も第一選択であることは変わらないだろう」としたうえで、副作用(高マグネシウム血症)が報告されており高齢者や腎機能低下患者では定期的な血清マグネシウム濃度の測定が求められていることから2)、「とくに高齢者などでは、慢性便秘症治療に漫然と酸化マグネシウムを投与するのではなく、効果や症状の改善がみられない場合は上皮機能変容薬に切り替えていくという考え方がいいのではないか」と話した。新薬と既存薬をどのように使い分けるか 2018年に入り、4月に胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバットが発売、8月には便秘型過敏性腸症候群の治療薬として発売されていたリナクロチドが慢性便秘症に適応拡大された。リナクロチドは2012年発売のルビプロストンと同じく、腸管上皮に直接作用して管腔内への水分分泌を促進する上皮機能変容薬だが、作用機序は異なる。 リナクロチドは腸管上皮に存在するグアニル酸シクラーゼC(GC-C)を活性化させ、サイクリックGMP(cGMP)を増加させることで、水分分泌を増加させる。このcGMPには求心性神経の痛覚過敏を抑制するはたらきがあり、便秘治療薬の中で唯一、大腸痛覚過敏改善作用が示されている。三輪氏は「上皮機能変容薬の使い分けは非常に難しいが、それぞれ特徴はある」と話し、「リナクロチドは薬物相互作用が比較的少ないため、他剤を併用している高齢者などでも使いやすく、また腹痛などの症状が強い人に向いているのではないかと考えている」と期待感を示した。 今後も新薬ラッシュは続く見込みで、ポリエチレングリコール(PEG)製剤が近く発売予定となっている。PEGは酸化マグネシウムと同じ浸透圧性下剤で、欧米では慢性便秘症治療の第一選択薬として広く使われている。「直接比較したデータはないのでどちらがいいと明言するのは難しいが、PEGは水に溶かして飲む形状なので、その点が日本の患者さんたちにどの程度受け入れられるかという部分もある」と話した。

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過敏性腸症候群は炎症性腸疾患よりもうつ病が重症化しやすい

 過敏性腸症候群(IBS)患者は炎症性腸疾患(IBD)患者と比べて併存しているうつ病や不安の重症度が高いことが、中国・中日友好医院のQin Geng氏らの研究によって明らかになった。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2018年5月4日号に掲載。過敏性腸症候群のうつ病は炎症性腸疾患と比べて重症度が高い IBSやIBDといった慢性胃腸疾患の患者では、うつ病が併存している割合が高いが、IBSとIBDで一貫性のある結果は認められていない。そのため、本研究では、IBSおよびIBD患者におけるうつ病の有病率や重症度について検討した。 PubMed、PsycINFO、Embase、Cochrane Library、Wan Fang、SinoMed、Chinese National Knowledge Infrastructureを使用して、2017年9月12日までのデータについて体系的な文献探索を行い、比較解析のためのIBS患者とIBD患者を抽出した。さらに、ランダム効果モデルによって併存したうつ病の標準化平均差(standardized mean difference:SMD)とオッズ比を算出したほか、今回の解析に用いた研究から併存した不安に関するデータを抽出し、メタ解析を行った。メタ解析の質の評価はNewcastle-Ottawa Scale(NOS)を用いて行った。 過敏性腸症候群患者と炎症性腸疾患患者のうつ病の有病率や重症度を検討した主な結果は以下のとおり。・IBS患者1,244名とIBD患者1,048名が22件の研究から抽出された。・うつ病の有病率は、IBS群とIBD群で有意差はなかった(研究数10件、OR=1.18、95%CI:0.87~1.60、p=0.29)。・IBS群は、IBD群と比べて、以下の症状の重症度が高かった。 うつ病(pooled SMD=0.18、95%CI:0.04~0.33、p=0.01) 不安(pooled SMD=0.31、95%CI:0.14~0.49、p=0.0006)・22件中16件の研究が、NOSにより「質が高い」と評価された。

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「パーキンソン病診療ガイドライン」7年ぶりに改訂

 2011年以来の改訂版となる「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」が5月15日に発行された。今回のガイドライン改訂では、パーキンソン病診療における最も重要な臨床課題として「早期パーキンソン病治療」と「運動合併症治療」を設定し、GRADEシステムに基づいてエビデンスレベルと推奨レベルの2軸による治療の推奨度が示された。「Minds診療ガイドライン作成の手引き(2014年版)」に準拠して作成され、治療だけでなく診断基準や病因、画像所見などについても幅広く解説されていることから、「治療ガイドライン」から「診療ガイドライン」に名称を変更している。 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」は日本神経学会を中心に、日本神経治療学会、日本脳神経外科学会、日本定位・機能神経外科学会、日本リハビリテーション医学会の協力のもとで作成された。また、看護師や薬剤師、患者らが参加するパネル会議を開催し、多職種による議論を経たうえで、推奨文の内容が決定されている。パーキンソン病診療ガイドラインはGRADEシステムに基づく2つのCQと50のQ&Aで構成 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」は、各抗パーキンソン病薬、手術療法やリハビリテーションについてそれぞれ有効性と安全性をまとめた第I編、早期および進行期の2つのCQについて推奨度、治療アルゴリズムを示した第II編、診断・治療における50の臨床課題についてQ&A方式でまとめた第III編で構成される。 第I編では、ドパミンアゴニスト徐放剤、アポモルヒネ皮下注射、イストラデフィリン、L-ドパ持続経腸療法など、前版「パーキンソン病治療ガイドライン2011」発行後の新しい治療法について情報が追加された。第II編では、「CQ1:早期パーキンソン病の治療はどのように行うべきか」、「CQ2:運動合併症に対する治療について」の2つのCQを設定。CQに対する推奨文には、1(強い:確実に行うことが強く推奨される場合)もしくは2(弱い:条件を選べば推奨できる場合)の推奨レベル、およびA~Dの4段階(最も高いものがA)のエビデンスレベルが明記されている。 第III編は、「パーキンソン病治療ガイドライン2011」における第II編の内容を改訂したもの。重要ではあるが、エビデンスが少ない臨床課題として、GRADEシステムに基づくCQとは区別する意味で、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」ではQ&Aとしてまとめられている。パーキンソン病診療ガイドラインでは早期はL-ドパを中心にドパミンアゴニストもしくはMAOB阻害薬 以下、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」での大きな改訂点である、第II編の2つのCQの概要を紹介する。■早期パーキンソン病は、診断後できるだけ早期に薬物療法を開始すべきか[CQ1-1] 推奨:特別の理由のない限りにおいて、診断後できるだけ早期に治療開始することを 提案する(2C:弱い推奨/エビデンスの質「低」) 付帯事項:早期介入による不利益に関する十分なエビデンスがないことから、治療を 開始する際は効果と副作用、コストなどのバランスを十分考慮する。■早期パーキンソン病の治療はL-ドパとL-ドパ以外の薬物療法(ドパミンアゴニストおよびMAOB阻害薬)のどちらで開始すべきか[CQ1-2] 推奨:運動障害により生活に支障をきたす場合、早期パーキンソン病の治療はL-ドパで 開始することを提案する(2C) 付帯事項:運動合併症リスクが高いと推定される場合はドパミンアゴニストもしくは MAOB阻害薬を考慮する。抗コリン薬やアマンタジンも選択肢となりえるが十分な根拠 がない。パーキンソン病診療ガイドラインでは進行期にどの治療法をアドオンするか推奨度を明示 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」のCQ2では、ウェアリングオフ(L-ドパを1日3回投与しても、薬の内服時間に関連した効果減弱がある)を呈する進行期パーキンソン病患者に追加する治療法について、それぞれ推奨度が示された。各推奨度と、付帯事項の概要については以下の通り。■ドパミンアゴニスト[CQ2-1] 推奨度:2A 付帯事項:60代前半対象のエビデンスに基づくため、高齢者への使用には注意を要 する。L-ドパとの併用によるオフ時間の短縮効果、L-ドパ減量効果、UPDRS partIII スコアの改善効果があり、副作用の発現に注意しながら使用することを提案する。■ドパミン付随薬・COMT阻害薬[CQ2-2-1] 推奨度:2B 付帯事項:なし・MAOB阻害薬[CQ2-2-2] 推奨度:2C 付帯事項:セレギリンのRCTが少なく、ラサギリンについては現時点で本邦における エビデンスが公開されていない・イストラデフィリン[CQ2-2-3]、ゾニサミド[CQ2-2-4] 推奨度:2C 付帯事項:本邦のみでの承認薬剤のため、海外での評価が定まっていない点に注意が 必要■脳深部刺激療法 推奨度:2 C 付帯事項:オフ時の運動症状改善、L-ドパ換算用量の減量効果があるが、認知 機能への影響のほか、合併症も起こりうるため、慎重に適応を判断する なお、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」のCQ1およびCQ2では、それぞれ章末に資料として、推奨度をもとにした治療アルゴリズムがフロー図の形で示されている。

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国内初の慢性便秘症診療ガイドライン発刊―便秘の定義や治療推奨明確に

 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会は、今月『慢性便秘症診療ガイドライン』を発刊した。高齢者を中心に有症状者は増え続け、その数は1,000万人超といわれる慢性便秘だが、これまで本邦においては診断や治療に関する明瞭な指針がなかった。本ガイドラインでは、診療に当たる医師らのコンセンサスを図るべく、「便秘」を定義。治療についてはClinical Question(CQ)を設定し、ステートメントとともにエビデンスレベルと推奨度を示した。以下でその概略を紹介する。「状態名」としての便秘を改めて定義 排便習慣には個人差が大きく、患者が「便秘」という言葉で意味する内容もさまざまだが、本ガイドラインでは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状況」を便秘と定義。また、便秘症については、「便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする場合であり、その症状として排便回数減少によるもの(腹痛、腹部膨満感など)、硬便によるもの(排便困難、過度の怒責など)と便排出障害によるもの(軟便でも排便困難、過度の怒責、残便感とそのための頻回便など)がある」としている。 一方、何らかの理由で経口摂取量が不十分な場合は排便回数が減少するのは当然であり、この理由で排便の回数や量が少ないのは真の便秘ではない。また、残便感を訴える患者の中には強迫観念のために、「本来体外に排出すべき糞便」が直腸内に存在しないにもかかわらず、残便感(偽の便意)を訴え、過度に怒責したり、頻回にトイレに行ったりする排便強迫神経症も少なからず存在し、そのような患者も真の便秘症とはいえない、としている。治療法をエビデンスレベルと推奨度で評価 治療については、生活習慣の改善や薬物療法などの保存的治療に関するCQを11項目、順行性洗腸法や大腸切除術などの外科的治療に関するCQを3項目設定。それぞれにステートメントと、関連する文献エビデンスを評価したエビデンスレベル(A~D)と、推奨度(1:強い推奨、2:弱い推奨)を表記している。 このうち、浸透圧性下剤の使用については「慢性便秘症に対して有用であり使用することを推奨」している(推奨度1、エビデンスレベルA)。ただし高齢者については、腎機能が正常な場合も含めて、マグネシウムを含む塩類下剤は「慎重投与」とし、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するよう注意を呼び掛けている。 上皮機能変容薬についても、本ガイドラインでは「有用であり、使用することを推奨する」としている(推奨度1、エビデンスレベルA)。ただし、ルビプロストンについては「妊婦には投与禁忌であり、若年女性に生じやすい悪心の副作用にも十分に注意する必要がある」としている。 一方、便秘型過敏性腸症候群の治療薬として本年、保険適応を取得したリナクロチドについては、「副作用として下痢がもっとも多く報告されており、腹痛、鼓腸なども報告されているが、深刻な副作用はこれまでに報告されていない」としたうえで、「日本では市販後間もないため、内服後の症状に注意して用いる必要がある」としている。■関連記事もはや「秘め事」ではない!? 患者1,000万人超の慢性便秘の考え方

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2017年度 総合内科専門医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全5問消化管領域で最も出題される可能性が高いのは、(1)相次ぐ新薬の上市、(2)胃がんガイドライン改訂に向けた動き、(3)消化器がんの化学療法、である。治療の進歩が著しい炎症性腸疾患、2016年にRome IV基準が発表された過敏性腸症候群と機能性胃腸症については、必ず押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)上部消化管疾患に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)食道粘膜傷害の内視鏡的重症度と自覚症状の間には相関を認める(b)食道アカラシアは高い非同期性収縮を認めることが多い(c)食道静脈瘤出血時にバソプレシン、テルリプレシン、オクトレオチドは有効であるが、ソマトスタチンは無効である(d)好酸球性胃腸炎の診断基準の1つに、「腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在している」がある(e)ボノプラザンは、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌治療には保険適用となっていない例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全5問肝臓の領域では、B型肝炎をはじめ、体質性黄疸、肝膿瘍、自己免疫性肝炎などのマイナー疾患からの出題も予想される。膵臓では嚢胞腫瘍、自己免疫性膵炎、膵がんの化学療法などがポイントとなる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)HBV感染に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)B型慢性肝炎の治療対象は、HBe抗原の陽性・陰性にかかわらずALT 31U/L以上かつHBV DNA 2,000IU/mL以上である(b)本邦におけるB型肝硬変は、代償性/非代償性肝硬変にかかわらずIFN治療が第1選択となる(c)HBV持続感染者に対する抗ウイルス療法の長期目標は、ALT持続正常化・HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性・HBV DNA増加抑制の3項目である(d)テノホビルの長期投与では、腎機能障害・高リン血症・骨密度低下に注意する必要があり、定期的に腎機能と血清リンの測定を行うことが推奨される(e)テノホビルアラフェミナド(TAF)はテノホビル(TFV)の新規プロドラッグであり、テノホビルジソプロキシル(TDF)に比べ少ない用量で同等の高い抗ウイルス効果を示すが、TDFと比較して腎機能障害および骨密度低下を来しやすいと報告されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域は、認定内科医試験では出題比率が低いものの、総合内科専門医試験では高い傾向がある。本試験の対策としては、個々の薬剤名とその適応をしっかり覚えることがポイントとなる。頻出テーマは、鉄過剰症、悪性リンパ腫の治療前感染症スクリーニング、特発性血小板減少性紫斑病など。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)貧血に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)鉄欠乏性貧血では、生体内鉄制御を担う血中ヘプシジン増加を認めることが報告されている(b)鉄欠乏性貧血の原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌感染が関与している可能性が指摘されている(c)鉄欠乏性貧血の診断基準は(1)ヘモグロビン12g/dL未満(2)血清鉄30µg/dL未満(3)血清フェリチン12ng/mL未満である(d)温式自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)は、全例直接クームス試験陽性である(e)特発性温式AIHAの治療は、副腎皮質ステロイドを第1選択とするが、ステロイド無効の場合にはリツキシマブ(ヒト化抗CD20モノクローナル抗体)が保険適用となっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 神経】 全5問神経領域では、総合内科専門医試験特有のテーマとして、抗NMDA受容体抗体脳炎、多発性硬化症と神経脊髄炎との違い、筋強直性ジストロフィーがある。この3つのテーマは、毎年複数題出題されているので、確実に押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)末梢神経障害に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)膝蓋腱反射とアキレス腱反射の反射中枢は同じである(b)起床時に手首に力が入らず、垂れてしまう。これは睡眠中の尺骨神経麻痺が原因である(c)フローマンサイン陽性は、橈骨神経麻痺の診断に有用である(d)手根管症候群の診断に有用な所見として、ファレンテスト陽性・ティネル様サイン陽性がある(e)足を組んで寝ていたら、翌朝足首(足関節)と足の指(趾)が背屈できなくなり受診。診察所見で下垂足(drop foot)を認める。脛骨神経麻痺が原因である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 循環器】 全7問循環器領域では、心筋梗塞、心不全治療に加えて、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、大動脈炎症候群が、本試験における特徴的なテーマといえる。また、新しいデバイスが登場すると出題される傾向がある。今年要注意なのは、リードレスペースメーカー、最近適応拡大されたループレコーダーなど。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)心不全について正しいものはどれか?1つ選べ(a)NYHA分類I度は「軽度の身体活動の制限があるが、安静時には無症状」の状態である(b)NYHA分類II度はAHA/ACC心不全ステージBに相当する(c)クリニカルシナリオ(CS)は急性心不全患者の入院早期管理に用いられる指標で、CS4は右心不全、CS5は急性冠症候群に分類されている(d)NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心筋細胞内のproBNPがBNPに分解される際に産生され、心不全診断の基準値はBNPと同じ値である(e)日本循環器学会/日本心不全学会のステートメント(心不全症例におけるASV適正使用に関するステートメント第2報)に、中枢型有意の睡眠時無呼吸を伴い、安定状態にある左室収縮機能低下に基づく心不全患者に対しては、ASVの導入・継続は禁忌ではないが、慎重を期する必要があると記載されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全3問総合内科/救急の領域で確実に出題されるのは「意識レベル」。JCSとGCSについては、どちらも確実に解答できるようにしておきたい。また、JMECCに関する問題と脳死判定基準も出題のヤマとなると思われる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)救急・脳死に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)覚醒しているが、見当識障害を認めればJapan Coma Scale(JCS)は3とする(b)「痛み刺激で開眼・不適当な発語・指示には従えないが痛み刺激から逃避する」でGlasgow Coma Scale(GCS)は8点となる(c)病歴聴取で使用されるSAMPLE historyの「M」は「Meal(最終食事時間)」である(d)脳死判定基準の除外基準では、深昏睡および自発呼吸の消失が「低体温によるもの」「代謝/内分泌障害によるもの」とともに「急性薬物中毒によるもの」が含まれている(e)脳死判定基準の1つに「前庭反射の消失」があり、聴性脳幹誘発反応にて確認することとなっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第7回~第12回の解答】第7回:(d)、第8回:(a)、第9回:(b)、第10回:(d)、第11回:(e)、第12回:(d)【第1回】~【第6回】は こちら

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過敏性腸症候群に新たな光が(解説:内藤 正規 氏)-493

 過敏性腸症候群は、日本人の約10~15%に認められる頻度の高い疾患であり、消化器症状により受診する人の約3割を占めるといわれている。内視鏡検査や血液検査で明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感を伴う便秘や下痢が長く続き、多くの人々を悩ませている。そのような人々に光を差す可能性がある、下痢型の過敏性腸症候群に対しての新たな治療薬である混合型オピオイド作用を有する製剤eluxadolineの有効性を示す第III相試験の結果が、Anthony J Lembo氏らのグループにより報告された。 オピオイド受容体には、μ・κ・δの3種類のサブタイプがあり、主な発現部位や薬理作用が異なる。μ受容体の刺激は、鎮痛作用と消化管運動の抑制作用を発揮し、κ受容体の活性化は鎮痛・鎮静作用を発揮する。一方、δ受容体は、情動・神経伝達物質の制御や依存に関与する。eluxadolineは、μ・κ受容体のアゴニスト、δ受容体のアンタゴニストであり、鎮痛・鎮静作用と消化管運動の抑制作用を有し、依存性を回避できる薬といえる。 eluxadolineの投与により、腹痛の軽減、便性状の改善が得られた症例の割合は投与期間を問わず、プラセボ群、150mg/日を投与した群、200mg/日を投与した群の順に有意に高くなり、下痢型の過敏性腸症候群に対して量依存性に有効であった。一方、悪心・便秘・腹痛といった有害事象は、有意ではないものの量依存性にプラセボ群と比較して高い傾向にあり、少ないものの膵炎の発症も認めた。 本試験の結果から、過敏性腸症候群に対してeluxadolineが有効で安全であることが示された。下痢型の過敏性腸症候群の治療に新たな光を差す薬剤であると考えられるが、有害事象に対する医療者の注意も必要である。

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下痢型過敏性腸症候群、新規オピオイド受容体作動薬が有効/NEJM

 下痢型過敏性腸症候群(IBS)に対し、新規経口薬eluxadolineは男女を問わず下痢症状を軽減し新たな治療薬となりうることが、Anthony J. Lembo氏らによる2件の第III相試験(多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験)の結果、示された。100mgの1日2回投与で6ヵ月間の持続効果が確認された。eluxadolineは混合型オピオイド作用(μ/κオピオイド受容体アゴニストとδオピオイド受容体アンタゴニスト)を有する製剤。対プラセボの100mg、200mg用量(いずれも1日2回)の検討が行われた第II相試験では、200mg用量の効果に優位性はなく、むしろ有害事象が多かったことから、第III相試験では75mg、100mg用量について対プラセボの有効性(26週)、安全性(52週)を評価した。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。eluxadoline75mgまたは100mg/1日2回とプラセボを比較 試験は2,427例の下痢型IBS成人患者を、eluxadoline(75mgまたは100mg)またはプラセボを1日2回投与する群に無作為に割り付けて、26週間(IBS-3002試験)または52週間(IBS-3001試験)の治療を行った。 主要エンドポイントは、腹痛の軽減(ベースライン平均スコアより30%以上軽減)、便性状の改善(便性状スコアが5未満)の両効果が同一日に確認された患者(レスポンスあり)の割合とした。レスポンスありの定義は、初期12週間(米国FDA規定のエンドポイント)、26週間(欧州医薬品庁[EMA]エンドポイント)のそれぞれの評価期間中50%以上(最低60日、110日)効果ありの記録日があった患者とした。12週間評価、26週間評価とも100mg群の効果が優れる 第1~12週では、eluxadoline(75mgまたは100mg)群のほうがプラセボ群よりも、主要エンドポイントを達成した患者の割合が多かった。IBS-3001試験被験者ではプラセボ群17.1%に対し、75mg群23.9%(p=0.01)、100mg群25.1%(p=0.004)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群16.2%に対し、75mg群28.9%(p<0.001)、100mg群29.6%(p<0.001)であった。 第1~26週の評価については、IBS-3001試験被験者ではプラセボ群19.0%に対し、75mg群23.4%(p=0.11)、100mg群29.3%(p<0.001)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群20.2%に対し、75mg群30.4%(p=0.001)、100mg群32.7%(p<0.001)であった。 安全性の評価(IBS-3002試験とIBS-3001試験の両被験者データ)では、プラセボ群と比較して75mg/100mg群で最も多く共通してみられた有害事象は、悪心(5.1% vs.8.1%/7.5%)、便秘(2.5% vs.7.4%/8.6%)、腹痛(4.1% vs.5.8%/7.2%)であった。膵炎の発症は、安全性評価集団(1,666例)中5例(0.3%)であった(75mg群2例、100mg群3例)であった。

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【消化器編】

第1回 帰してはいけない腹痛の見分け方は? 第2回 専門医でもヒヤリとした腹痛の症例を教えてください! 第3回 腹痛の部位で疾患の鑑別はできる? 第4回 虫垂炎を見逃さないコツは? 第5回 ピロリ菌検査は何を使うのがよい? 第6回 ピロリ菌除菌後にすべきことはある? 第7回 胃潰瘍治療のベストな処方は? 第8回 PPIが効かないとき、プライマリ・ケア医はどうするべき? 第9回 便秘の治療、どうしたらいい? 第10回 便秘症状から重篤な疾患を疑うことはできる? 第11回 GERDの診断と治療について教えてください! 第12回 止瀉薬を出してはいけない下痢の見分け方は? 第13回 過敏性腸症候群、診断のコツは? 第14回 プライマリ・ケアで膵臓がんを早期発見するコツは? 腹痛や虫垂炎、胃潰瘍にGERD。日常臨床でよく遭遇する消化器疾患の診察・検査・治療に関する14の質問を、番組MCを務める総合診療医の前野哲博先生が経験豊富な消化器科専門医 西野徳之先生にぶつけます。プライマリケア医視点のまとめも加え、すぐに現場で役立つ知識を詰め込みました!第1回 帰してはいけない腹痛の見分け方は?プライマリケアで日常的にみるからこそ油断してはいけないのが腹痛。軽症の患者のなかに緊急手術が必要な患者が埋もれていることも。今回はズバリ、帰していい腹痛の条件・帰してはいけない症例をお教えいただきます。精度が高く、診療所でも使える診断ツールは必見です。第2回 専門医でもヒヤリとした腹痛の症例を教えてください!第1回の帰してはいけない腹痛の鑑別に続き、今回も腹痛を取り上げます。腹部の痛みは局在性に乏しいうえ、鑑別疾患も多種多様。専門医ですら重篤な症例を見逃しかけてヒヤっとしたことはあるといいます。今回は西野先生に症例を提示いただき、見逃さないコツを教わります。第3回 腹痛の部位で疾患の鑑別はできる? 腹痛の部位で疾患を鑑別する方法は複数知られていますが、局在性に乏しい腹部疾患では思っているほど役立たないことも。今回は実臨床で使えるひとつの考え方をレクチャーします。前野先生がこれなら研修医にもわかりやすい!と太鼓判を押したスペシャリスト西野先生のノウハウをお見逃しなく!第4回 虫垂炎を見逃さないコツは? この腹痛は虫垂炎?それとも?虫垂炎は決して見逃せない疾患ですが、典型的な症状をきたす患者ばかりでなく、鑑別に苦慮することも多いのではないでしょうか。今回は、確定診断でなくとも虫垂炎を見逃さないコツをズバリお教えいただきます。第5回 ピロリ菌検査は何を使うのがよい? ピロリ菌感染の検査には、呼気試験、血液、便などの様々な検査法があります。どのように検査法を選択し、結果を解釈すればよいのか?専門医が勧める検査方法、またピロリ菌についての最新トピックも交えて明日から使えるノウハウをお届けします。第6回 ピロリ菌除菌後にすべきことはある? ピロリ菌感染が明らかになった際に、何をどんな手順で行うべきか?除菌治療と治療後の注意点を簡潔にレクチャー。また除菌が成功しなかったとき、プライマリケアでどう対応すべきかも解説します。第7回 胃潰瘍治療のベストな処方は? 今回は胃潰瘍の治療がテーマです。胃潰瘍の治療には、主流であるPPIのほかに、H2ブロッカーや粘膜保護薬などの薬が使われています。それぞれの薬の使い分けや注意点はどのように考えればよいのか、薬剤選択についての疑問にズバリお答えします。第8回 PPIが効かないとき、プライマリ・ケア医はどうするべき?胃潰瘍のファーストチョイスとして使われるPPIですが、その効果がなかったとき、プライマリケア医はどのように考えればいいのでしょうか。今回は西野先生に症例を提示いただき、臨床に役立つヒントを見つけていきます。第9回 便秘の治療、どうしたらいい? 今回のテーマは便秘です。便秘は日常臨床で頻繁にみられる症状ですが、生活に支障のある「便秘症」の診断は実は難しいもの。プライマリケア医はどのように情報を集め、どう評価し、どのように治療方針を立てればよいでしょうか。診断、治療についてスペシャリストの知恵を伝授してもらいましょう!第10回 便秘症状から重篤な疾患を疑うことはできる? 実際は重篤な疾患でも、患者の自覚症状は「便秘」ということは往々にしてあります。今回は西野先生が遭遇した症例を例に、便秘を訴える患者の中から異常を見逃さないためのポイントを学びます。第11回 GERDの診断と治療について教えてください! 今回はGERDがテーマです。GERDはプライマリケアできわめてよく遭遇する疾患のひとつですが、どのように診断し、治療すればよいのでしょうか。診断の際に気を付けるべきことなどを解説します。第12回 止瀉薬を出してはいけない下痢の見分け方は? 今回は下痢の治療がテーマです。安易に下痢を止めてはいけないといわれますが、実際には患者さんは薬を希望することもよくあります。どんな条件ならば止瀉薬を出していいのか?処方するときの注意点は?日常診療で感じる疑問にズバリ回答します!第13回 過敏性腸症候群、診断のコツは?今回は過敏性腸症候群がテーマです。過敏性腸症候群は訴えが多彩で、コントロールに難渋することもしばしばある疾患。IBSを治療するうえで必ず除外したい疾患は?どの薬を初めに処方すべきか?コントロール不良の場合、どうやって薬剤を変更していくのか?様々な疑問に答えていきます。第14回 プライマリ・ケアで膵臓がんを早期発見するコツは?自覚症状が出にくく、早期発見が難しいといわれる膵臓がん。しかし発見する機会がないわけではなく、プライマリケアでこそ特に注意して疑ってほしいと西野先生は強調します。今回は異変に気付くためのポイントや考え方についてレクチャーします!

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CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013

第1回「突然の片麻痺、構音障害」第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」第3回「診断の目利きになる」第4回「Good Morning, NY!」第5回「不明熱」第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」第7回「Shock」第8回「外見の医療」第9回「What a good case!」第10回「首を動かすと電気が走る」第11回「木を診て森も診る」第12回「なぜキズを縫うのか」第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」第15回「患者満足度」第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」第18回「原因不明を繰り返す発熱」第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」第20回「眼科での恐怖の糖尿病」第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」第22回「失神恐るるに足らず?」第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」【特典映像】魅せる!伝える!プレゼンの極意 『CliPS(Clinical Presentation Stadium)』は、限られた時間の中で、プレゼンター自身が経験した「とっておきの患者エピソード」や聞いた人が「きっと誰かに話したくなる」興味深い症例を「症例の面白さ(学び)」と「語りの妙(プレゼンスキル)」で魅せるプレゼンテーションの競演です。プレゼンターは、ケアネットでお馴染みの達人講師から若手医師・研修医まで。散りばめられたクリニカルパール。ツイストの効いたストーリー。ユーモアとウィットに富んだプレゼンの数々は、年齢、診療科にかかわりなく、医療者のハートをつかむことでしょう。あなたも『CliPS』の世界を楽しみ、学んで下さい!第1回「突然の片麻痺、構音障害」このタイトル『突然の片麻痺、構音障害』のような患者さんをみたとき、どのようなことを思い浮かべるでしょうか? おそらく診断は脳梗塞で良いだろうと。そして、治療計画、リハビリ、再発予防、介護状況など様々な側面にまで考えは及ぶでしょう。そういった様々な脳梗塞のマネージメントのうち、一番最初の診断のところでしていただきたい「あること」についてお話しします。患者さんの血液を採った時、一滴だけあることに使っていただきたいのです。第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」近年、認知機能障害の患者さんに出会う機会は増えています。そして、その際にはしばしば「病歴のとりづらさ」や「診察への抵抗」に苦慮します。今回登場された伊藤先生も、正直言って、それらの患者さんには煩わしさや苦手意識を感じていたそうです。今回ご紹介する患者さんに出会うまでは・・・。治らないと思っていた病気が治るって素晴らしい!そんな症例です。第3回「診断の目利きになる」山中先生が日々の診断で気をつけていることはなんでしょうか?「はじめの1分間が何より大切」、「患者さんと眼の高さを合わせる」、「患者さんは本当のことを言ってくれない」、「キーワードから読み解く」、「診断の80%は問診による」、「典型的な症状をパッケージにして問う」など。診断の達人である山中先生の『攻める問診』メソッドの原点がここに表されています。患者さんの心をつかみ、効果的な病歴聴取や診察を行うためのさまざまなTIPSをご紹介いただきます。山中先生の話芸の素晴らしさにグイと引き込まれること必至です。第4回「Good Morning, NY!」岡田先生が、研修時代を過ごされたニューヨークでのお話。異国の病院で生き残るために、「日本人らしさ」と一貫した態度で信頼を勝ち得たそうです。2年目に出会った原因不明で発熱が続き、意識不明の患者さんとの感動的なエピソードを語っていただきます。第5回「不明熱」 不明熱をテーマに、膠原病科の岸本先生が、2ヶ月間も熱が下がらず、10kgの体重減、消化管に潰瘍、動脈瘤のある、36歳男性の症例をご紹介いただきます。学習的視点も踏まえた岸本先生の分かりやすいプレゼンテ-ションも必見です。第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」 呼吸困難をテーマに2つの症例を紹介いただきます。呼吸困難で典型的な疾患が心不全と肺炎。鑑別のキーポイントは、検査所見で十分でしょうか。一見ありふれた症例も、SOAPの順序を誤ると、、、非常に重要なメッセージが導き出されます。第7回「Shock」とびきり印象的なショックの症例を紹介します。イタリアンレストランに勤務されている61歳の男性。主訴は「気分が悪い」。ショック状態ですが、熱はなく、サチュレーションも正常。不思議なことに、毎年1回、同様の症状がでると。さて、この患者さんは?第8回「外見の医療」形成外科医の立場から人の「外見」という機能を語ります。顔の機能のうち「外見」という機能は、生命に直接関係ないものの、社会生活を営む上で需要な役割を果たしています。近い未来、「顔」の移植ということもあり得るのでしょうか?第9回「What a good case!」症例は29歳の女性。発熱と前胸部痛を主訴に見つかった肺多発結節影の症例。診断は?そして、採用された治療選択は?岡田先生の分かりやすいトークと意外性と重要な教訓に満ちたプレゼンテーションをお楽しみください。第10回「首を動かすと電気が走る」山中先生のかつて失敗して「痛い目」にあった症例です。60歳の男性で、主訴は「首を動かすと電気が走る」とのこと。しかし、発熱、耳が聞こえない、心雑音など異常箇所が増えていきます。せひ心に留めていただきたい教訓的なプレゼンテーションです。第11回「木を診て森も診る」46歳男性の糖尿病患者さん。 HbA1C が,この半年間で10.5%まで悪化。教育入院やインスリン導入を勧めるも、「それは出来ない」と強い拒絶。この背景にはいくつかの社会的・心理学的な要因があったのです。家庭医視点のプレゼンテーションです。第12回「なぜキズを縫うのか」なぜ傷を縫うのでしょうか? 額の傷を昨日縫合されたばかりの患者さんが紹介されてきたとき、菅原先生はすぐに抜糸をしてしまいました。なぜ?傷の治るメカニズムや、縫合のメリット/デメリットなどを形成外科のプロがわかりやすく解説します。第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」慢性的な下部腹痛の症例。半年前から明け方に臍周囲から下腹部の張るような痛みで覚醒するも、排便で症状は改善。内視鏡検査では大腸メラノーシスと痔を指摘されたのみで、身体所見も血液検査も異常なし。過敏性腸症候群?実際は・・・?第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」高齢者の血圧の「日内変動」からいろいろなものが見えてくる。ある1ポイントの血圧だけでなく、幅広い視点からの血圧管理が必要。明日の高血圧治療にすぐに役立つプレゼンテーション!第15回「患者満足度」患者満足度にもっとも影響を与える因子は「医師」。その「医師」は患者満足度を上げるには、何をすればいいのでしょうか。岸本先生が研修医時代に学んだ心構えとは?第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」ガイドラインはどのくらい大切なのでしょうか。プラセボ効果の歴史を振り返りつつ、ガイドラインの背景にあるものに注目。第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」EBMだけでは対応できない稀なケースには、XBM(経験に基づく医療)で治療に臨まなければなりません。さて、今回の症例では?第18回「原因不明を繰り返す発熱」総合診療科の外来では「不明熱」の患者さんが多く訪れます。今回の「不明熱」に対して、記者出身の医師がしつこく問診を繰り返した結果、浮かび上がってきた答えは・・・。第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」ボツリヌス療法と、経皮的電気刺激(TENS)とを併用して治療を行った症例についての報告です。さて、まったく動かすことのできなくなった患者さんの上肢には、どの程度の改善が見られたのでしょうか。第20回「眼科での恐怖の糖尿病」眼科医の視点から糖尿病を考えてみます。日本人の失明原因の第2位(1位の緑内障と僅差)が糖尿病網膜症となっています。内科医と眼科医の連携はまだまだ十分ではないと言えそうです。第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」症例は70代男性の胸痛。1~2週間チクチクした鋭い痛みが一日中持続、緊急性は低そうです。検査をしても特徴的な所見に乏しく決め手に欠けました。さて、どんな疾患なのでしょう?実は大きなヒントがこの一見奇妙なタイトルに凝縮されているのです。第22回「失神恐るるに足らず?」患者が突然、目の前で意識を失って倒れたとします。まず一番最初に行うべきことは?「失神」は原因疾患によって予後が異なるため早期の正しい見極めが重要です。76歳女性の症例を題材に、日常臨床で遭遇する「失神」への対応を解説していただきます。第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」症例は82歳男性。背部痛を主訴に救急外来に搬送。しかしバイタルや検査では異常はなく痛み止めのみ処方。その一週間後に再び搬送された患者さんは激しい痛みを訴えているが、やはりバイタルは安定。ところが…。研修医時代の苦い経験を語ります。第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」症例は59歳男性。悪性関節リウマチ、Caplan症候群という既往を持ち、強く免疫抑制をかけられている患者。発熱やだるさを主訴に歩いて外来受診。5日後、胸部CTで浸潤影があり入院。しかし肺炎を疑う呼吸器症状がありません。次に打つべき手とは?第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」症例は22歳の女性。回転性めまいの後2分程度の初発痙攣があり救急搬送。診察・検査の結果、特記すべき所見はほぼ見あたらず、LAC5.1とやや上昇を認めるのみ。原因不明のまま「重篤な疾患はルールアウトされた」と判断。ところが全くの誤りでした。

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下痢と体重減少を過敏性腸症候群と診断し、膵臓がんを見逃したケース

消化器概要約3ヵ月間続く下痢と、5ヵ月間に約9kgの体重減少を主訴に総合病院内科を受診、注腸検査、上部消化管内視鏡検査が行われ、過敏性腸症候群と診断された。担当医は止痢薬を約10ヵ月間にわたり投与し続け、その間に新たな検査は行われなかった。初診から11ヵ月後に別の病院を受診し、閉塞性黄疸を伴う膵頭部がんと診断されたが、その2ヵ月後に死亡した。詳細な経過経過1982年4月末食欲不振、下痢、全身倦怠感、体重減少に気付いた。6月30日5kgの体重減少、空腹時腹痛を主訴として近医受診。消化管X線検査、超音波検査などが行われ、膵臓にやや腫脹がみられたため膵炎疑いと診断された(アミラーゼは正常)。8月21日慢性下痢、体重減少を主訴にA総合病院内科受診。注腸検査、上部消化管内視鏡検査が行われ、出血性胃炎の所見以外は著変なしと判断し、過敏性腸症候群と診断した。その結果、下痢止めを処方し経過観察となった。12月27日血液検査で異常がないことから、下痢止めの処方を継続した。1983年1983年はじめ20kgに及ぶ体重減少、背部痛が出現し、鍼灸院などで治療を受ける。6月20日A総合病院再診し、下痢止めの処方を受ける。7月11日発熱を主訴に近医受診、担当医師は内臓の病気を疑い、B病院に紹介入院、精査の結果、閉塞性黄疸を伴う膵頭部がんと診断され、肝臓そのほかへの転移もみられる末期がんと判断された。8月15日A総合病院に転院、根治的治療は不可能と判断され、経皮胆管ドレナージなどが行われたが、9月25日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張下痢と体重減少を主訴とした患者に対し、胃・腸の形態的検査で異常がないという理由で過敏性腸症候群と診断した。アミラーゼが正常であったので膵がんあるいは膵疾患を疑わなかったということだが、胃・腸の形態的検査で異常がなければ膵疾患を疑うのは医学の常識である初診時に心窩部痛、全身倦怠感、食欲不振を申告したにもかかわらず、カルテにその記載がないのは問診が不十分である。さらに前医の超音波検査で膵炎疑いと診断されていながら、これを見過ごした上腹部超音波検査を行えば膵がん発見の可能性は高かった膵がんが早期に発見されていれば、延命、さらには助命の可能性があった。病院側(被告)の主張下痢と体重減少はみられたが、通院期間中疼痛(腹痛、背部痛)をはじめとして、膵がんを疑うべき特有な症状はみられなかった。便通異常は膵がんに特有な症状ではない問診では患者の協力が必要だが、当時の医師の問診に対して腹痛を否定するなど、患者の協力が得られなかった当時の医療水準(腹部超音波検査、腹部CT)で検出できるのは進行膵がんが中心であり、小膵がんを検出できるほどの技術は発達していなかったもし初診時に膵がんと診断しても、手術不能のStageIII以上であったものと推認され、延命は期待できなかった。裁判所の判断以下の過失を認定過敏性腸症候群との診断は結果的に誤診であった。顕著な体重減少、食欲不振の患者に対し、胃・大腸に著変なしとされたのであれば、腹痛・背部痛がなかったとしても胆嚢、胆道、膵臓などの腹部臓器の異変を疑うのが当然であり、患者の苦痛がない腹部超音波検査を実施するべきであったとくに見解は示さず小膵がんの発見は難しく、超音波検査は術者の技術に診断の結果が左右されるといわれているが、当時膵がんの発見が絶無とはいえない以上、病態解明のために考えうる手段をとることが期待されているので、債務不履行である初診時に膵がんと診断されていても、延命の可能性はきわめて低かった延命の可能性がまったくなかったわけではないのに、9ヵ月近く下痢止めの投薬を受けたのみで、膵がんに対する治療は何ら受けることなく推移したのであるから、患者の期待を裏切ったことになり、精神的損害賠償の対象となる。原告側合計7,768万円の請求に対し、慰謝料として200万円の判決考察本件では「体重減少」という、悪性腫瘍をまず除外しなければならない患者に対し、下痢症状に着目して消化管の検査だけを行いましたが、腹部超音波検査を行わず、約9ヵ月にわたって膵臓がんを診断できなかった点が「期待権侵害」と判断されました。もっとも、病院側に同情するべき点もいくつかはあります。おそらく、普段は多忙をきわめる内科外来においては一人の患者に割り当てられる時間が絶対的に少ないため、初診後一定の検査が終了して一つの診断に落ち着いた場合には、患者側からの申告が唯一の診断の拠り所となります。その際、「下痢と体重減少」という所見だけで腹痛の訴えがなく、さらに血液検査上も異常値がみられなかったのならば、過敏性腸症候群と考えて「しばらくは様子を見よう」と決めたのは自然な経過ともいえるように思います。さらに、止痢薬投与によってある程度下痢が改善している点も、あえて検査を追加しようという意思決定につながらなかったのかもしれません。しかしながら、慢性に下痢と体重減少に対して9ヵ月間も経過観察とした点は、注意が足らなかったいわれても仕方がないと思います。とくに、簡便にできる腹部超音波検査をあえて行わなかったことの理由を述べるのはかなり難しいと思います。裁判の判決額をみる限り、原告の請求よりも遙かに低い金額で解決したのは、膵臓がんという予後のきわめて悪い疾病を見落としたことに関連すると思います。もし、早期発見・早期治療によって予後が改善するような疾病であれば、当然賠償額も高額になったであろうと思います。消化器

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