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1.

産婦人科医が授業に、中学生の性知識が向上か

 インターネットは、性に関する知識を求める若者にとって主要な情報源となっているが、オンライン上には誤情報や有害なコンテンツが存在することも否定できない。このような背景から、学校で行われる性教育の重要性が高まっている。今回、婦人科医による性教育が、日本の中学生の性に関する知識と意識の大幅な向上につながる、とする研究結果が報告された。ほとんどの学生が産婦人科医による講義を肯定的に評価していたという。研究は、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は「BMC Public Health」に5月28日掲載された。 インターネットへのアクセスが容易になり、子どもたちの性的な内容への露出に対する懸念が高まったことにより、多くの国々が国際的なガイドラインを導入し、包括的な性教育(CSE)プログラムを推進するようになった。2000年には、汎米保健機構(PAHO)と性の健康世界学会(WAS)は、世界保健機構(WHO)と共同で「セクシュアル・ヘルスの推進 行動のための提言」を作成し、全ての人にCSEを提供することを提案した。 日本でも、この提言に呼応し、適切な性に関する知識を得るためのCSEプログラムが求められている。また、世界的に多くのCSEプログラムでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種が重要な要素として含まれている。これは、HPVと子宮頸がんとの関連が確立されており、子宮頸がんは「予防可能」であることに由来する。このような背景を踏まえ著者らは、専門医による性教育の講義が、日本の中学生の経口避妊薬(OC)、避妊、子宮頸がん、HPVワクチン接種に関する知識と意識に与える影響を評価することとした。授業の前後にアンケート調査を実施し、知識と意識の変化を調査した。 本研究では、日本国内の公立および私立の中学校37校に通う中学3年生の男女を対象とした。講義で取り上げたトピックは、文部科学省のCSEガイドラインに従い、1:男女の体の違い、2:月経の問題とその管理、3:避妊方法、4:LGBTQやデートDVに関する問題、5:性感染症、6:子宮頸がんとHPVワクチン、の6つとした。生徒は講義の前後にアンケートに回答し、講義内容に関する知識と意識を評価された。 事前アンケートには5,833名、事後アンケートには5,383名が回答し、男女比はほぼ均等だった。講義に先立ち実施した事前アンケートでは、性に関する情報源と現状の知識について回答を得た。情報源として「インターネットやYouTube」と回答した生徒の割合が最も多かったが、男女別に見ると男子学生の割合が有意に高かった。女子学生は「学校の先生や授業」や「両親・家族」を情報源として挙げる割合が高かったのに対し、男子学生では、「友人」や「この種の情報を得たことがない」と回答する割合が高かった。また、講義前はOC、子宮頸がん、HPVに関する知識が乏しく、多くの学生がHPVワクチンに対して不安を抱いていた。 講義後、OCに関する知識(使用可能年齢や副作用など)が向上し、生理痛の緩和など避妊以外のメリットを認識する学生が増えた。また、避妊方法の理解も著しく深まり、「避妊は男性が責任を持つべき」と考える学生の数は減少した。さらに、子宮頸がんやHPVに関する知識も大幅に向上し、HPVワクチンの接種を希望する学生の割合も増加した。 講義後に実施したアンケートでは、ほとんどの学生が今回の講義を肯定的に評価し、5段階評価で4または5を選択した。男子学生よりも女子学生の方が、わずかに高い評価をしていた。 本研究について著者らは「本研究は、国際機関や先行研究の提言を踏まえ、日本の若者にとって包括的でアクセスしやすい性教育の必要性を明確にした。婦人科医などの専門医が関与することで、性に関する幅広い健康トピックについて正確かつ最新の情報を提供でき、こうした介入の効果をさらに高めることができるだろう」と述べている。

2.

週1回のカプセル剤が統合失調症の服薬スケジュールを簡略化

 週1回のみの服用で胃の中から徐々に薬を放出する新しいタイプのカプセル剤によって、統合失調症患者の服薬スケジュールを大幅に簡略化できる可能性が新たな研究で明らかになった。この新たに開発された長時間作用型経口リスペリドンは、患者の体内のリスペリドン濃度を一定に保ち、毎日服用する従来の治療と同程度の症状コントロールをもたらすことが臨床試験で示されたという。製薬企業のLyndra Therapeutics社の資金提供を受けて米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学准教授のGiovanni Traverso氏らが実施したこの研究の詳細は、「The Lancet Psychiatry」7月号に掲載された。 Traverso氏は、「われわれは、1日1回飲む必要があった薬を、週1回飲むだけで済むように作り変えた。この技術はさまざまな薬剤に応用可能だ」とMITのニュースリリースの中で述べている。 今回報告された最終段階の臨床試験の結果は、Traverso氏の研究室が10年以上かけて取り組んできた研究の成果だ。試験で使用されたカプセル剤は、マルチビタミンほどの大きさである。飲み込むと、胃の中でカプセル剤の6本のアームが星形に広がって胃の出口を通過できない大きさになり、そのまま胃の中で漂いながらアームから約1週間かけて徐々に薬を放出する。アームは溶解性で、最終的には分離して消化管を通過して排出される。Traverso氏の研究室は2016年、この星形の薬剤送達デバイスの開発について報告している。 試験では、米国内の5施設の統合失調症または統合失調感情障害を有する患者83人(平均年齢49.3歳、男性75%)を対象に、2種類の用量の長時間作用型経口リスペリドン「LYN-005」の有用性を検証した。リスペリドンは統合失調症の治療薬として広く使用されており、Traverso氏らによると、多くの患者が即放性のリスペリドンを1日1回服用しているという。試験参加者は、試験開始1週目は即放性リスペリドン(2mgまたは6mg)を1日1回服用する導入期間を経た後、LYN-005を週1回、計5回服用した。初回のLYN-005投与週のみ、半用量の即放性リスペリドンも併用した。試験を完遂したのは47人だった。 44人を対象に薬物動態を解析した結果、LYN-005の全用量において活性成分の持続放出が確認された。LYN-005と即放性リスペリドンの血中濃度指標における幾何平均比は、1週目の最小血中濃度(Cmin)で1.02、5週目では、Cminで1.04、最大血中濃度(Cmax)で0.84、平均血中濃度(Cavg)で1.03であり、いずれも事前に設定した薬物動体評価の基準を満たした。副作用に関しては、一部の患者に短期的な軽度の胃酸逆流や便秘が見られたが、全体的には少なく、重篤な治療関連有害事象の発生は1件だった。 こうした結果を受けてTraverso氏は、「この臨床試験では、カプセル剤が予測された薬物血中濃度を達成したことと、多くの統合失調症患者で症状をコントロールできることが確認された」としている。また、論文の筆頭著者である米ニューヨーク医科大学精神医学・行動科学臨床教授のLeslie Citrome氏は、「慢性疾患を抱える人の治療を阻む最大の問題の一つが、薬が継続的に服用されないことだ。それによって症状が悪化し、統合失調症の場合、再発や入院につながる可能性がある。薬を週に1回だけ経口摂取するという選択肢は、注射製剤よりも経口薬を好む多くの患者にとって服薬アドヒアランスの維持を助ける重要な選択肢になる」とニュースリリースの中でコメントしている。 Traverso氏らは、米食品医薬品局(FDA)に対するこのリスペリドンの投与アプローチの承認申請に先立ち、より大規模な第3相臨床試験の実施を予定している。また、避妊薬など他の薬剤の投与にもこのデバイスを用いる初期段階の臨床試験も開始予定としている。

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静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」【最新!DI情報】第41回

静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」今回は、経口避妊薬「ドロスピレノン(商品名:スリンダ錠28、製造販売元:あすか製薬)」を紹介します。本剤は単剤型プロゲスチン製剤であり、従来の混合型経口避妊薬よりも静脈血栓塞栓症のリスクが少なく、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬です。<効能・効果>避妊の適応で、2025年5月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与します。以上28日間を投与1周期とし、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。なお、服用開始日は、経口避妊剤を初めて服用する場合、月経第1日目から開始します。<安全性>副作用として、不正性器出血(月経中間期出血、異常子宮出血)(89.9%)、下腹部痛(13.4%)、月経異常(過少月経、過長過多不規則月経、重度月経出血)(14.9%)、頭痛(16.3%)、腹痛(12.3%)、乳房不快感、悪心、下痢、ざ瘡(いずれも5%以上)、無月経、卵巣嚢胞、子宮頸部上皮異形成、子宮筋腫、カンジダ症、外陰部炎、性器分泌物、乳頭痛、乳腺良性腫瘍、乳腺嚢胞症、傾眠、いらいら感、不安感、めまい、片頭痛、上腹部痛、嘔吐、胃腸障害、発疹、そう痒症、背部痛、倦怠感、浮腫、発熱、体重増加(いずれも1~5%未満)、陰部そう痒症、子宮ポリープ、外陰腟痛、卵巣腫大、乳房痛、抑うつ、便秘、消化不良、腹部膨満、口内炎、紅斑、皮膚乾燥、関節痛、肋軟骨炎、貧血、肝機能検査値異常(いずれも1%未満)、リビドー減退、高カリウム血症、ほてり(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1. この薬は、妊娠を防ぐための経口避妊薬です。2. 毎日1錠、決まった時間に服用することで、排卵を抑えたり、子宮内膜や子宮頸管の状態を変化させたりして、妊娠を防ぎます。3. この薬は、喫煙者や高血圧の人など、従来の避妊薬が使えなかった人にも適しています。4. 毎日一定の時刻に白色錠から服用を開始し、指定された順番に従い28日間服用してください。5. 1日(24時間以内)の飲み忘れがあった場合、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。6. 2日連続して飲み忘れた場合は、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を1錠服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。7. 2日以上連続して飲み忘れた場合は妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用し、必要に応じて医師に相談してください。<ここがポイント!>現在、日本で使用されている経口避妊薬の主流は、低用量エストロゲンとプロゲスチンを配合した混合型経口避妊薬(Combined Oral Contraceptives:COC)です。しかし、COCに含まれるエストロゲンには、静脈血栓塞栓症をはじめとする血栓症のリスクがあることが知られています。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、プロゲスチン単剤の経口避妊薬(Progestin-Only Pill:POP)は、COCと比較して静脈血栓塞栓症のリスクが低く、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬とされています。本剤は、ドロスピレノン(DRSP)4mgを含有する国内初のPOPであり、排卵の抑制、子宮内膜の菲薄化、子宮頸管粘液の高粘稠による精子の侵入障害などにより避妊効果を発揮します。避妊を希望する日本人女性を対象とした国内第III相臨床試験(LF111/3-A試験)において、13周期投与期終了時の暴露周期(3,319周期)の間に1例が妊娠し、主要評価項目とされた全般パール指数※は0.3917(95%信頼区間[CI]:0.0099~2.1823)でした。95%CIの上限が閾値である4下回ったことから、本剤の有効性が検証されました。なお、妊娠例に関して、受胎推定日は未服薬期間内と判断されています。※パール指数(Pearl index):100人の女性がその避妊法を1年間(13周期)用いたときの妊娠数(対100女性年)日本で発売されているCOCは、血栓症に関連する既往歴や現病歴を有する患者は禁忌でしたが、本剤では禁忌に該当しません。本剤では禁忌に該当しない血栓症関連の疾患などは以下のとおりです。血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴のある患者35歳以上で1日15本以上の喫煙者血栓症素因のある女性抗リン脂質抗体症候群の患者大手術の術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内および長期間安静状態の患者脂質代謝異常のある患者高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)

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第246回 医師への食事提供ルールが来春から厳格化、MRとの懇親が制限対象に/医薬品公取協

<先週の動き> 1.医師への食事提供ルールが来春から厳格化、MRとの懇親が制限対象に/医薬品公取協 2.医療費削減のため風邪薬・湿布が保険外に? 医師会は反発/政府 3.三党合意で11万床削減の波紋、病床再編と医療DXの両輪は進むか/政府 4.「医療費タダ乗り」批判に本腰、外国人の社会保障制度見直しへ/政府 5.iPhoneでマイナ保険証対応へ、医療機関も対応準備を/デジタル庁 6.特定健診実施率、過去最高も目標未達、背景に情報提供の不足も/厚労省 1.医師への食事提供ルールが来春から厳格化、MRとの懇親が制限対象に/医薬品公取協医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(医薬品公取協)は5月30日、講演会や情報提供における飲食提供のルールを13年ぶりに見直し、明確な金額基準と提供形態の規定を導入する新運用基準を発表した。来春の2026年4月1日から実施。新基準では、医師への飲食提供の上限は「飲酒を伴う飲食」で2万円、「飲酒を伴わない食事」で3,000円に統一された。講演会の役割者や医療機関から委託された業務に伴う飲食は上限2万円まで許容されるが、施設外でのMR活動における飲食は廃止され、食事のみ・上限3,000円に厳格化された。これは「飲酒を伴う情報提供は適切でない」との判断による。また、社内研修会の講師への慰労飲食は“乱用の恐れが大きい”として禁止され、従来1万円以下で認められていた着席型の懇親会も認めない方針とした。懇親行事は原則として立食形式に限定される。この見直しは、2012年の改定以降の社会変化-コロナ禍、情報提供のデジタル化、働き方改革など-を反映したもの。従来、飲食に関する基準は不明瞭で違反リスクも高かったことから、公務員倫理規程を参考に「国民・患者からの理解」重視で簡素化と整合性を図った。あわせて2024年度には、病院長への10年以上にわたる社有車送迎による規約違反が「指導」対象となるなど、透明性向上と規律強化が求められている。医薬品公取協の新会長には安川 健司氏(アステラス製薬)が就任し、改定ルールの周知と規約遵守、業界全体の信頼向上に取り組む姿勢を表明した。 参考 1) 飲食提供ルールを改定へ-施設外での酒席認めず、医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(薬事日報) 2) メーカー公取協 飲食や食事の提供に関する運用基準見直し 上限額明記 社内研修会の慰労会は許容せず(ミクスオンライン) 2.医療費削減のため風邪薬・湿布が保険外に? 医師会は反発/政府政府は2026年度から、医療費削減策として「OTC類似薬」の一部を医療保険の適用外とする方向を正式に打ち出した。風邪薬や湿布薬、胃薬など、効能が市販薬と類似する処方薬が対象で、維新の会の試算では最大3,500億円の医療費削減が見込まれる。これにより、現役世代の保険料軽減が期待される一方で、高齢者や慢性疾患患者への影響は避けられず、日本医師会は「健康被害のリスクがある」として強く反発している。このような制度改革と並行して、製薬業界でもOTC市場への展開が活発化している。2025年6月、エーザイは国内で初めてPPI(プロトンポンプ阻害薬)のOTC化を実現し、「パリエットS」を発売した。同剤は医療用と同量のラベプラゾールナトリウムを含み、要指導医薬品として薬剤師の対面販売が義務付けられている。今後はアリナミン製薬(タケプロンS)や佐藤製薬(オメプラールS)も参入予定であり、OTC胃薬市場に構造変化をもたらす可能性が高い。さらにED治療薬「タダラフィル」のスイッチOTC化も動き出した。エスエス製薬が申請を進めており、薬剤師による問診と適正使用指導、医療機関との連携体制を構築する方針だ。偽造薬の蔓延や未受診者の多さ(ED患者の88%が未治療)を背景に、正規ルートでの治療アクセス拡充が期待されている。こうした変化により、軽症疾患の自己管理が推奨される一方で、診断機会の喪失や副作用管理の困難性が課題となる。医師にとっては、患者のセルフメディケーションを前提にした服薬管理の支援や、重症化リスクの早期発見の啓発がより重要となる。 参考 1) OTC類似薬、保険除外へ 26年度から一部、骨太明記 政府、患者負担配慮(共同通信) 2) “OTC類似薬見直し”で風邪薬や湿布が保険適用外に? 膨張する医療費の削減目的が背景「健康被害広まる」と医師会は反発(FNNプライムオンライン) 3) 国内初、OTCのPPI「パリエットS」が発売(日経ドラッグインフォメーション) 4) 緊急避妊薬のOTC化「面前服用は必要」意見多数(同) 3.三党合意で11万床削減の波紋、病床再編と医療DXの両輪は進むか/政府政府が6月6日に公表した「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)」に加え、自民・公明両党と日本維新の会の三党合意により、医療業界にとって重大な政策転換が進もうとしている。今回の合意では、全国で約11万床の病床削減と、電子カルテ普及率100%に向けた医療DXの加速が明記され、医療提供体制と経営構造に抜本的な変革が迫られることになる。三党は人口減少によって将来的に不要とされる病床が11万床にのぼると推定し、2040年を見据えた新たな地域医療構想の開始時期である2027年度までに、調査を踏まえて削減を図る方針。維新の試算では、この病床削減により年間約1兆円の医療費抑制効果が見込まれるとされるが、自民党側はこの数字への責任を明言せず、合意文書では「一定の合理性のある試算」との曖昧な表現に止まっている。他方、「骨太方針2025」では医療・介護給付費の対GDP比の上昇に対して制度改革を進める方針が打ち出されており、医師の地域偏在是正、在宅医療体制の整備、ICT活用の推進が重点項目となっている。とくに地方では医療・介護の維持そのものが課題となっており、病床の削減は地域医療体制の崩壊リスクを伴う。電子カルテ普及率の5年以内の実質100%実現も明記され、医療DXが急速に進む見通しである。医療情報の共有による効率化が期待される一方で、初期投資やシステム整備の負担が中小病院や診療所に重くのしかかる可能性がある。これに加え、介護分野でも人材確保と処遇改善、公的制度の見直しがセットで進められる。このような一連の改革は、医療の質の担保と地域格差の是正を両立させる必要があり、数値目標ありきで進めれば、現場の疲弊や医療難民の増加を招く恐れもある。全国自治体病院協議会も声明で「数字ありきではなく、適正な病床再編を」と強調している。現場の声を踏まえつつ、持続可能な医療・介護体制をどう築くか。今回の合意は社会保障改革の一里塚であると同時に、医療現場への重大な問いかけでもある。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針 2025原案(経済財政諮問会議) 2) 自公維 “病床削減などで国民負担軽減”社会保障改革 合意(NHK) 3) 人口減で全国11万床が不要に…自公と維新が病床削減で合意、医療法改正案の年内成立目指す(読売新聞) 4) 自公維・社会保険料の負担軽減協議 余剰病床の削減で合意 11万床で1兆円の医療費削減(FNNプライムオンライン) 4.「医療費タダ乗り」批判に本腰、外国人の社会保障制度見直しへ/政府政府は6月6日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2025」の原案において、「外国人との秩序ある共生社会の実現」を掲げ、外国人による医療費の「タダ乗り」対策を中心とする制度見直しを明記した。外国人による社会保障の不適正利用や滞納への懸念が高まる中、入国審査の厳格化、在留資格更新への制限、情報基盤整備など、多方面からの対策が進められる。厚生労働省の調査では、外国人世帯主の国民健康保険納付率は全国平均で63%に止まり、日本人世帯の93%と比べて大きな差がある。政府はこれを受け、医療費の未払い履歴を入国管理や在留資格の審査に反映させる仕組みを構築し、保険制度の適用範囲の見直しも検討する。また、医療費未払いを理由とした外国人観光客の再入国拒否や、社会保険料滞納者への在留資格更新の不許可も新たな対応策として盛り込まれた。制度の実効性を高めるため、内閣官房に新たな司令塔組織を設置し、「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」を中心に、法令順守や情報の透明性向上に取り組む方針。さらに、2028年度導入を目指す電子渡航認証制度や入国・出国情報の一元管理により、出入国管理の強化も進める。急増する外国人観光客や就労者との共生を前提に、制度の整合性と持続性が問われる中、国民の不安を背景にしたこの一連の対策は、今後の外国人政策全体の方向性を左右する転機となる可能性がある。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針 2025原案(経済財政諮問会議) 2) 外国人医療費「タダ乗り」対策強化 政府「骨太の方針」原案 外国人関連部分の全容判明(産経新聞) 3) 医療費未払い、入国審査を厳格化 外国人材受け入れで司令塔組織-政府(時事通信) 5.iPhoneでマイナ保険証対応へ、医療機関も対応準備を/デジタル庁デジタル庁は6月6日、2025年6月24日からiPhoneにマイナンバーカード機能を搭載可能とする方針を発表した。これにより、iPhoneユーザーは物理カードを持ち歩かなくても、マイナポータルへのログインや、住民票などの証明書の取得が可能となる。ウォレットアプリへの登録後、顔認証や指紋認証で本人確認を行い、各種行政手続きに対応できる。医療現場にとって注目すべきは、9月以降に「マイナ保険証」機能もiPhone上で利用可能になる点だ。現在はAndroid端末のみが先行対応していたが、今後はiPhoneでも対応となる予定で、保険証確認がスマートフォン1台で完結する時代が到来する。厚生労働省は7月から一部の医療機関で実証実験の開始を予定。従来のカードリーダーにスマホ読取用アタッチメントを追加する形で運用される見込みだ。セキュリティ対策として、AppleのFace IDやTouch IDで保護されており、医療情報や銀行口座情報はスマホに保存されない設計。万が一の紛失時も24時間体制のフリーダイヤルやAppleの「探す」アプリから即時利用停止が可能となる。iPhoneへの対応により、患者側の利便性が大幅に向上する一方で、医療機関としては新たな読み取り機器や受付対応の見直しが求められる可能性がある。今後の制度設計や導入指針に注目が集まる。 参考 1) 2025年6月24日から「iPhoneのマイナンバーカード」を開始予定です(デジタル庁) 2) iPhoneにマイナ機能搭載、24日から…カードが手元になくても行政手続き可能に(読売新聞) 3) 「iPhoneのマイナンバーカード」6月24日開始(Impress Watch) 4) iPhoneへのマイナンバーカード搭載は6月24日から-秋には保険証にも 運転免許証対応は?(CNET Japan) 6.特定健診実施率、過去最高も目標未達、背景に情報提供の不足も/厚労省厚生労働省が公表した2023年度の「特定健康診査・特定保健指導」の実施状況によると、特定健診の実施率は59.9%、保健指導の実施率は27.6%となり、いずれも制度開始(2008年度)以来で過去最高となった。ただし、国が掲げる2023年度の目標値(健診70%以上、保健指導45%以上)には届かず、2029年度までの達成が継続課題となっている。健診の実施率は、健康保険組合や共済組合が80%超と高い一方で、市町村国保は38.2%に止まり、保険者間の格差が大きい。年代別では40~60代前半で60%を超えたが、高齢層では実施率が低下傾向にある。一方、東京都が行った2024年度「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査によれば、健康意識は高まっているものの、特定健診の受診率は66%とコロナ前の72.3%には戻っておらず、保健指導の未実施者も多い。指摘内容は、「脂質異常」「高血圧」「肥満」が中心で、保健指導を受けた人のうち約7割が「おおむね」または「一部」実行していると回答した。生活習慣の改善意欲を持つ人は9割近くに上ったが、特定保健指導を「案内されていない」とする人が約4割おり、対象者への確実な情報提供や参加促進策が課題とされる。今後は、対象者の掘り起こしや、働き盛り世代・高齢層への個別アプローチの強化、保険者間の格差是正が、生活習慣病予防と医療費抑制に向けた鍵となる。 参考 1) 2023年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省) 2) 特定健診実施率は59.9% 23年度、保健指導は27.6%(MEDIFAX) 3) 特定健診実施率59.9%、23年度 過去最高も国の目標未達(CB news) 4) 「都民の健康と医療に関する実態と意識」の結果(東京都)

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避妊法による脳卒中や心筋梗塞のリスクをどのように回避することができるのか?(解説:三浦伸一郎氏)

 避妊法の条件は、確実であり、方法が簡便で長期間使用できること、経費が少なくて済み、副作用が少ないことなどが挙げられる。経口避妊薬には、ホルモン剤としてプロゲスチンとエストロゲンの混合型とプロゲスチン単独のものがある。ホルモン避妊法による深部静脈血栓症や肺塞栓症の発生率は、エストロゲン投与量が増加すると上昇することが知られている。エストロゲンやプロゲステロンの投与では、フィブリノゲンなどの凝固因子が増加し、凝固抑制因子が減少することにより凝固系が亢進する。 最近、ホルモン避妊法による虚血性脳卒中や心筋梗塞のリスクに関する前向きコホート研究の結果が報告された1)。これまで、ホルモン避妊法が心血管疾患リスクに悪影響を与えるとの報告はあったが、このコホート研究では、避妊法の違いによりリスクが異なっていることが検証され、従来の複合経口避妊薬やプロゲスチン単剤避妊法ではリスクが高かった。一方、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具は、リスク増加と関連しておらず、今後の安全な避妊法として期待されるものであった。 現在、日本では、ホルモン避妊法が多く使用されている。しかし避妊教育が少なく、避妊のリスクとベネフィットを理解できる機会を増やし、多くの選択肢を知ってもらう必要がある。このYonisらの研究は、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具という新たな選択肢をもたらした。安全な方法をより普及させる必要があるとともに、ホルモン避妊法についての再教育も必要と思われる。

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第256回 安全な男性用避妊薬候補がマウス検討を通過して霊長類試験に進む

安全な男性用避妊薬候補がマウス検討を通過して霊長類試験に進む避妊手段は数あれど、世界のすべての妊娠の半数近くは不慮のものです。それゆえ毎年7千件を超える中絶があり、多大な精神的、肉体的、金銭的負担を強いています。男性が都度必要に応じて避妊をするなら基本的にコンドームに頼るほかありません。男性のホルモン成分の避妊薬の臨床試験がいくつか進行中ですが、承認には至っていません。ホルモンとは別の標的に目を向けることで副作用の心配が少ない避妊薬の道が開けるかもしれません。精巣に豊富な遺伝子800種超を省いた検討結果があり、それらのうち約250の遺伝子を省くと不妊を呈することが確認されています。キナーゼの類いのSTK33(serine/threonine kinase 33)遺伝子はその1つで、雄マウスのSTK33を省くと尾が動かない異常な精子が形成され、不妊となることが先立つ研究で示されています1)。パキスタンの一家系の調査で不妊男性にSTK33遺伝子変異が見つかっており2)、ヒトでもSTK33は男性の生殖能に必要なようです。STK33遺伝子一対のどちらにも変異を有する男性の精子には複数の異常が認められました。STK33遺伝子が損なわれたマウスもヒト男性も精子に異常があることを除いておおむね正常で、精巣の大きさにも異常はありませんでした。よってSTK33狙いの避妊薬なら安全に使えそうです。そこで米国・ベイラー医科大学のAngela Ku氏らは数十億の化合物ライブラリーからSTK33に結合する低分子化合物を探し出し、CDD-2807という名称のSTK33阻害薬を生み出しました3)。CDD-2807を雄マウスの腹腔内に21日間注射したところ精子の数や運動が低下して不妊となりました。注目すべきことにその効果は永続的ではなく可逆的であり、投与を止めると21日以内に生殖能が復活しました。毒性の所見は認められず、STK33欠損マウスやSTK33変異男性と同様に精巣の大きさも変化しませんでした。CDD-2807の効果はSTK33が雄の生殖能に不可欠なことを一層明確にし、必要に応じた可逆的な男性用避妊薬の標的となりうることを示しています。CDD-2807は経口投与時の体内の巡りが今ひとつだったので、効果の検討では腹腔内に注射されました。とはいえ経口薬を誂えるためのヒントとなりうるSTK33とCDD-2807の結合構造が把握されています。その構造は別のSTK33阻害薬の発見や経口投与で事足りるようにする取り組みを後押しするでしょう4)。CDD-2807の成果の実用化には多分に漏れずまだまだやるべきことがたくさんあります。広く使われる避妊薬となるためにはホルモン濃度、生殖機能全般、子孫への影響などのさまざまな安全性の検討を無事通過しなければなりません。また、長期使用で生じうる害を検討する長丁場の試験も欠かせません。まずは今後数年のうちにCDD-2807やその後続品の可逆的男性用避妊薬としての効果を霊長類で検討することを目指す、と今回の研究を率いたMartin Matzuk氏は言っています5,6)。参考1)Martins LR, et al. Dev Biol. 2018;433:84-93.2)Ma H, et al. Hum Mol Genet. 2021;30:1977-1984. 3)Ku AF, et al. Science. 2024;384:885-890.4)Holdaway J, et al. Science. 2024;384:849-850.5)A promising approach to develop a birth control pill for men / Eurekalert6)Towards a Male Contraceptive That Doesn’t Target Hormones / TheScientist

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ホルモン避妊法、脳梗塞・心筋梗塞のリスクは?/BMJ

 生殖年齢15~49歳の女性において、現在使用されているエストロゲン・プロゲスチンおよびプロゲスチン単剤による避妊法は、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具を除き、虚血性脳卒中および一部の症例では心筋梗塞のリスク増加と関連していることが、デンマーク・Nordsjaellands HospitalのHarman Yonis氏らが同国居住の女性約203万例を対象に行った前向きコホート研究の結果で示された。著者は、「絶対リスクは低いが、臨床医はホルモン避妊法を処方する際、ベネフィットとリスクの評価に動脈血栓症の潜在的リスクを含めるべきである」と述べている。BMJ誌2025年2月12日号掲載の報告。デンマーク居住の約203万例を対象にコホート研究 研究グループは、1996~2021年にデンマークに居住しており、動脈・静脈血栓症、がん(非黒色腫皮膚がんを除く)、血栓症、肝疾患、腎疾患、抗精神病薬の使用、不妊治療、ホルモン療法の使用、卵巣摘出、子宮摘出、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症の既往歴のない15~49歳の女性202万5,691例を対象に、前向きコホート研究を行った。 主要アウトカムは、虚血性脳卒中または心筋梗塞の初回退院時診断とした。脳梗塞10万人年当たり、経口避妊薬群39件、黄体ホルモン単剤ピル群33件 2,220万9,697人年の追跡において、虚血性脳卒中イベントの発生は4,730件、心筋梗塞イベントの発生は2,072件であった。 試験集団は、ホルモン避妊法非使用群、複合ホルモン避妊法使用群(複合経口避妊薬[経口エチニルエストラジオール30~40μg、同20μg、経口エストラジオール]、膣リング、パッチ)、プロゲスチン単剤避妊法使用群(経口[ピル]、子宮内避妊具、インプラント、注射)に特徴付けられた。 標準化虚血性脳卒中発生頻度(10万人年当たり)は、ホルモン避妊法非使用群が18(95%信頼区間[CI]:18~19)、複合経口避妊薬使用群が39(36~42)、プロゲスチン単剤ピル使用群が33(25~44)、子宮内避妊具使用群が23(17~29)。標準化心筋梗塞発生頻度(10万人年当たり)は、それぞれ8(8~9)、18(16~20)、13(8~19)、11(7~16)であった。 非使用群に対する複合経口避妊薬使用群の補正後発生率比は、虚血性脳卒中2.0(95%CI:1.9~2.2)、心筋梗塞2.0(1.7~2.2)であった。これら標準化発生率比の差は、10万人年当たり虚血性脳卒中21例(18~24例)、心筋梗塞10例(7~12例)の増加に相当した。 非使用群に対するプロゲスチン単剤ピル使用群の補正後発生率比は、虚血性脳卒中1.6(95%CI:1.3~2.0)、心筋梗塞1.5(1.1~2.1)で、これは10万人年当たり虚血性脳卒中15例(6~24)、心筋梗塞4例(-1~9)の増加に相当した。 動脈血栓症リスクの増加は、膣リング使用群(補正後発生率比:虚血性脳卒中2.4[95%CI:1.5~3.7]、心筋梗塞3.8[2.0~7.3])、パッチ使用群(虚血性脳卒中3.4[1.3~9.1]、心筋梗塞なし)、およびプロゲスチン単剤インプラント使用群(虚血性脳卒中2.1[1.2~3.8]、心筋梗塞≦3)でも観察されたが、プロゲスチン単剤放出子宮内避妊具使用群では観察されなかった(虚血性脳卒中1.1[1.0~1.3]、心筋梗塞1.1[0.9~1.3])。

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BRCA1/2変異保有者の避妊薬使用、乳がんリスクとの関連/JCO

 生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者において、ホルモン避妊薬が乳がんリスクを増加させるかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのKelly-Anne Phillips氏らの研究で、ホルモン避妊薬は、とくに長期使用で、BRCA1変異保有者の乳がんリスク上昇と関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月2日号に掲載。 本研究では、4つの前向きコホート研究からプールされた観察データを用いて、避妊薬使用とBRCA1/2変異保有女性の乳がんリスクとの関連についてCox回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・BRCA1変異保有者3,882人およびBRCA2変異保有者1,509人のうち、それぞれ53%および71%で1年以上の避妊薬使用歴があり、累積使用期間中央値はそれぞれ4.8年、5.7年だった。・BRCA1変異保有者488人とBRCA2変異保有者191人が、それぞれ追跡期間中央値5.9年と5.6年の間に乳がんを発症した。・BRCA1変異保有者では、現在/以前の使用とも1年以上の避妊薬使用歴は乳がんリスクと有意な関連はみられなかったが、使用歴ありは有意な関連がみられた。使用歴なしと比べたハザード比[HR](95%信頼区間[CI])は以下のとおり。 現在使用:1.40(0.94~2.08)、p=0.10 1~5年前に使用:1.16(0.80~1.69)、p=0.4 6~10年前に使用:1.40(0.99~1.97)、p=0.05 10年より前に使用:1.27(0.98~1.63)、p=0.07 使用歴あり:1.29(1.04~1.60)、p=0.02・避妊薬の累積使用期間が長いほど乳がんリスクが上昇し、1年増えるごとに3%(95%CI:1~5、p=0.002)のリスク上昇が推定された。・BRCA2変異保有者では、現在使用(HR:0.70、95%CI:0.33~1.47、p=0.3)および以前使用(HR:1.07、95%CI:0.73~1.57、p=0.7)とも乳がんリスクの上昇と関連していなかった。 これらの結果から、著者らは「BRCA1変異を有する女性における避妊薬の使用については、個々人のリスクとベネフィットを慎重に検討する必要がある」としている。

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新たな男性用避妊ジェル、第2相試験で有望な結果

 新しいジェル状のホルモン剤が男性用の避妊法として有望な可能性を示した第2相試験の結果が報告された。2種類のホルモン剤を組み合わせたこの避妊ジェルは、ホルモン剤をベースにした他の実験的な男性用避妊薬よりも短期間で精子の生産を抑制することが示されたという。米国立衛生研究所(NIH)の避妊薬開発プログラム主任であるDiana Blithe氏らによるこの研究は、米国内分泌学会(ENDO 2024、6月1〜4日、米ボストン)で発表された。Blithe氏は、「男性にとって、安全で効果が高く、可逆的であることが確実な避妊法の開発は、アンメットニーズである」と述べている。 この試験では、222人の男性がこの新しい避妊ジェル5mLを1日1回、3週間以上にわたって両肩甲骨に塗布した。このジェルは、プロゲスチン(合成黄体ホルモン)の一種であるセゲステロン酢酸エステル8mgと、男性ホルモンのテストステロン74mgを含有する。セゲステロン酢酸エステルは、避妊リングのAnnoveraの成分である。研究グループは、4週間ごとに検査で精子濃度を調べ、精子生産の抑制を評価した。避妊効果があると見なされる精子濃度の閾値は100万個/mL以下であるという。 その結果、86%の男性が、ジェルの使用開始から15週目までに避妊効果のある精子濃度を達成したことが明らかになった。この濃度を達成するまでの期間中央値は8週間であり、研究グループの予想よりも早かったという。Blithe氏は、注射による男性ホルモン避妊薬に関する先行研究では、精子の生産が抑制されるまでの期間中央値は9週間から15週間だったと説明している。 以上の結果を踏まえてBlithe氏は、「精子生産抑制までの期間が短くなれば、潜在的なユーザーがこの避妊薬に対して抱く魅力が増し、受容性も高まるかもしれない」と述べている。 Blithe氏は、「いくつかのホルモン剤が男性の避妊に有効であることは示されているが、精子生産抑制の開始が遅いことが問題だった」と指摘し、本研究で用いたジェルには2種類のホルモン剤が配合されているため、効果がより速く現れ、必要なテストステロンの量も少なくて済むと説明している。同氏によると、この避妊ジェルを毎日使用しても、血中のテストステロン濃度は生理的範囲内に保たれ、性機能やその他のアンドロゲン依存の活動は正常なままで維持されるという。 Blithe氏らは今後も研究を続け、この避妊ジェルの有効性と安全性、受容性、治療中止後の生殖能力の回復についての調査を進める予定であると話している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第219回 マラリア薬が世界の数百万人もの女性疾患を治療しうる

マラリア薬が世界の数百万人もの女性疾患を治療しうる植物のヨモギ(artemisia)から単離され、抗マラリア作用を有することでよく知られる化合物群アルテミシニン(artemisinins)の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療効果がマウス/ラットやヒトへの投与試験で判明しました1,2)。世界の数百万人もの女性が被るPCOSは女性の最も一般的な内分泌疾患の1つで、男性ホルモン過剰(高アンドロゲン血症)、排卵を乏しくするかなくならせる卵巣不調、多嚢胞性卵巣を特徴とします。濾胞異形成や排卵/内分泌/代謝障害などのPCOSの病変の数々にアンドロゲン過剰が寄与することが知られています。また、PCOS女性から生まれた女児はPCOSになりやすく、出生前に過剰なアンドロゲンと共に過ごした雌マウスにはPCOS様病態が生じることが示されており、PCOSの影響は子にも及ぶようです3)。よってPCOSを制するにはアンドロゲン過剰を制する必要があります。薬によるPCOSの治療といえば今のところもっぱら個々の症状の手当てを目指すもので、PCOSのすべての病態を相手しうる薬はほとんどありません。経口避妊薬がPCOS成人女性のアンドロゲン過剰や不規則な月経周期の手当てとして推奨されていますが、不妊や多嚢胞性卵巣病変の改善は見込めません。また、経口避妊薬は血栓症などの副作用の心配があります。PCOS女性の多くは肥満などの代謝障害を呈します。中国の上海の復旦大学のチームによる先立つ研究で、アルテミシニン化合物がエネルギー消費を増やして肥満を防ぐ効果を有することが示されています。PCOS発生に代謝経路不調がどうやら寄与しうることとアルテミシニン化合物の代謝恒常性促進作用にヒントを得た同チームのさらなる検討のかいあって、アルテミシニン化合物のPCOS治療効果が今回新たに判明しました。アンドロゲン生成を増やすことが知られるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)やインスリンの動物への投与でPCOSを模す病態が生じることがわかっています。hCGはミトコンドリアプロテアーゼLONP1とアンドロゲン生成の始まりを触媒する酵素CYP11A1の相互作用を妨げてCYP11A1を増やし、アンドロゲン生成を促してPCOSを起こします。アルテミシニンはLONP1とCYP11A1の仲を取り持ってCYP11A1分解を促し、卵巣でのアンドロゲン生成を阻止することを復旦大学のチームは今回新たに突き止めました。PCOSを模すマウスやラットにアルテミシニンの一種であるアルテメテルを投与したところ、血清のテストステロン上昇が抑制され、不規則な発情周期が正常化し、多嚢胞卵巣が減り、不妊病態が改善しました。検討はさらに少人数の臨床試験へと進みます。マラリア治療に実際に使われているアルテミシニンの一種であるdihydroartemisininをPCOS女性19例に投与したところ、マウスやラットでの結果と同様に血中のテストステロンが減り、多嚢胞卵巣病態が改善しました。19例中12例はいつもの生理周期を取り戻しました。長期投与の効果や経過改善を最大限にするための投与手段の最適化がさらなる検討で必要ですが4)、今回の結果によるとアルテミシニンはPCOS治療手段として有望なようです。参考1)Liu Y , et al. Science. 2024;384:eadk5382.2)Antimalarial compounds show promise to relieve polycystic ovary syndrome / Eurekalert 3)Risal S, et al. Nat Med. 2019;25:1894-1904.4)Stener-Victorin E. Science. 2024;384:1174-1175.

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第212回 緊急避妊薬が必要な女性に届かず?日薬が販路拡大へ動く

厚生労働省の医薬局医薬品審査管理課の委託調査事業として、昨年11月末から日本薬剤師会(以下、日薬)が『薬局での緊急避妊薬の試験販売』を行っている。これまで47都道府県で145軒の薬局が試験販売に参加してきたが、今年度も試験販売を継続するにあたって、日本薬剤師会は6月下旬までに参加薬局を200~250軒程度まで拡大する計画だ。昨年11月末から今年1月末までの試験販売実績などは、「令和5年度厚生労働省医薬局医薬品審査管理課事業 緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業報告書」としてまとめられている。この2ヵ月間での全国での販売実績は2,181件。調査研究事業であるため服用者に事後アンケートを行っており、このうち報告書で解析対象としたのは1,982件。その結果は、「面談した薬剤師の対応」「説明のわかりやすさ」「プライバシーの配慮」に対して、「とても満足」あるいは「概ね満足」と回答した割合は、それぞれ順に98.7%、98.7%、97.2%だった。薬剤師による緊急避妊薬の説明が「よく理解できた」が99.8%、必要時に「医師の診察を受けずに、薬局で薬剤師の面談を受けてから服用したい」が82.2%となっている。薬局での緊急避妊薬の販売は少なくとも服用者からの支持が高いと言ってよいだろう。今回の試験販売参加薬局の増加については、日薬常務理事の長津 雅則氏は「薬局当たりの販売件数は全国的にかなり濃淡がある。とくに女性人口に比して販売実績が少ない地域、薬局当たりの販売件数が全国平均より非常に多い地域はもう少し(軒数を)広げたほうが良いと思う。各都道府県の薬剤師会と連携し、参加薬局の追加を進めている」と定例会見で説明している。前述の報告書の結果を見ても、地域別の販売実態にばらつきが多いのは確かだ。試験販売対象は16歳以上だが、最新の国勢調査からそれ以上でかつ妊孕性があると見込まれる不妊治療の保険適用上限43歳までの女性人口を算出し、報告された都道府県別の販売件数と併せて該当女性人口1万人当たりの販売件数などを試算してみた。まず該当女性人口当たりの販売件数の全国平均は1.3件。都道府県別にすると、最低が北海道の0.2件、最高は高知県の4.4件である。このほかに販売件数が少ないのは山形県と山口県の0.4件、青森県と岐阜県の0.5件などで、逆に多いのは沖縄県の3.6件、富山県の3.2件、大分県の2.9件など。また、1薬局当たりの販売件数の全国平均は15件で、都道府県別では最低の山形県の1.7件に対し、最高の東京都は53.2件。ほかに少ない地域は山口県の2.0件、秋田県と島根県の2.7件、多い地域は沖縄県の40件、神奈川県の38.5件など。販売件数を人口当たりで見ても薬局当たりで見ても、最低値と最高値で20倍以上の開きがある。長津氏は「立地の問題もあったかと思うが、やはり人口の少ない県での販売件数は少ない」と説明したが、前述の試算データを詳細に見ると、どちらかというと立地に左右されていることがうかがえる。たとえば、該当女性人口当たりの販売件数最低の北海道、それに次ぐ山形県、山口県、岐阜県では最大人口となる道県庁所在地に参加薬局は皆無だ。1薬局当たりの販売件数が3番目に多い神奈川県も県庁所在地である横浜市には参加薬局はない。緊急避妊薬を必要とする女性(潜在的に必要とする人も含む)は、本来人口規模が大きくなればなるほど多くなると予想される。ということは、前述した道県の販売実績は少ない場合も多い場合も潜在的な必要性を正確に反映していないと言い切れるだろう。また、該当女性人口当たりの販売件数が最高値の高知県は、その該当女性人口の絶対数が全国で4番目の低値で、都道府県別で高齢化率はトップである。つまりこのような結果になったのは、高知県が特殊なのではなく、本来高知県より数値が高くなるはずの都道府県が前述のように参加薬局の立地や少なさによって、数値が見かけ上は低くなっているに過ぎないと考えるのが自然である。こうしたことを念頭に置けば、今回の日薬が参加薬局数を増やし、その立地・配置も検討するというのはある意味当然と言える。ちなみに全国145軒でこの試験販売が始まった時、前述のような人口規模が多い都道府県庁所在地に参加薬局がないなどの問題は各方面から疑問の声が上がっていた。なぜそうなったかについて、日薬関係者の口はかなり重いが、それでも聞こえてくる話を総合すると、「日本産婦人科医会などに緊急避妊薬の薬局販売に対する慎重論が根強い中、試験販売の失敗は許されず、日薬や都道府県薬剤師会との繋がりが強く信頼できる対応薬局が複数ある地域で、かつこれら薬局と連携ができて販売にも理解がある産婦人科医がいる地域を慎重に選ばねばならなかった」ということらしい。確かに日本産婦人科医会が、2021年8~9月に緊急避妊薬の処方および予期せぬ妊娠に関する診療を行っている産婦人科医を対象に行ったアンケート調査では緊急避妊薬のスイッチOTC化について、「無条件で賛成」が7.8%、「条件付き賛成」が46.9%、「反対」が42.0%で、いまだ反対が4割以上に上る。結局のところ、こうした背景による忖度などが、前述したニーズに対応できていない地域が多数あることを強くうかがわせる結果の一因のようだ。日本産婦人科医会には、なぜ、かくも一定数の根強い反対論があるのか? 同医会が行ったWebアンケートでは、緊急避妊薬のOTC化により懸念される問題はあるかについて、「ある」との回答が92.0%。具体的に懸念される問題(複数回答)については、「転売の可能性」が64.6%、「コンドーム使用率の低下による性感染症リスクの拡大の可能性」が61.1%、「緊急避妊薬服用後の妊娠(異常妊娠含む)への対応が遅れる可能性」が60.2%、「避妊に協力しない男性が増える」が57.5%などとなっている。ここで挙げられた懸念については、私も相当程度は納得する。しかし、実際のところOTC販売にどのような厳格な条件を付けても、これらを完全に防ぐことはできない。そして日本産婦人科医会をはじめとする医師系団体は、どのような条件が満たされれば試験販売からスイッチOTCとしての本格販売への移行を認めるかの出口戦略をほとんど示していない点についても、個人的にはやや首をかしげざるを得ない。確かにスイッチOTC化に一定の懸念はあるが、それは望まない妊娠の可能性に悩む女性たちの保護という眼前の問題を超えてまで語るべきほどの懸念だろうか? このように書くと、「いや、だからそうした女性は産婦人科医が直接診察して…」という声が上がるだろう。しかし、そうした女性の82.2%という大多数はその考えを支持していない。加えて今回の調査結果からは、もう1つ興味深い結果が明らかになっている。服用者に対して3~5週間後に行ったアンケートでは、その後、産婦人科医を受診したかを尋ねている。結果は受診したとの回答が14.4%。受診しなかった服用者の理由の筆頭は「生理が確認できたから」の78.8%で、次いで「受診する時間がなかったから」が21.6%。これについては多少なりとも懸念を示す医師が多いかもしれない。しかし、この調査では参考値として、緊急避妊薬を求めて産婦人科医を受診し、その後、薬局で調剤を受けた事例でも同じ調査を行っている。その結果では3~5週間後の時点で産婦人科医を受診した割合は14.3%。受診しなかった理由はやはり「生理が確認できたから」の62.5%で、「受診する時間がなかったから」が12.5%。薬局での直接販売と違うのは、「特に理由がない」が試験販売では3.3%に対し、産婦人科医から処方を受けた服用者では12.5%となっている点だ。ただ、これは深読みせずとも、この12.5%のかなりの割合が「受診する時間がなかったから」に分類されるのではと解釈するだろう。総合してみれば、緊急避妊薬を求める女性にとって、ファーストコンタクトが医師、薬剤師のいずれでも信頼度は同等と言ってもいいのではないだろうか?昨今でも望まない妊娠の結果とみられる、若い女性による胎児殺害・遺棄事件は断続的に報道されている。こうした現実や今回の結果を目の当たりにするにつけ、私たちの社会は「望まない妊娠の可能性を抱えて不安に苛まれる女性たちには一時的に耐えてもらって、転売や性感染症リスクを徹底的に封じ込める対策が確立されるまで待つ」のか「転売や性感染症拡大のリスクは一定程度目をつぶって、まずは望まない妊娠の不安を解消する」のか? これはあまりにも“究極”過ぎる選択と言えるのではないだろうか。今回の報告書を読んで、改めてこの問題に関しては、お上のお膝元で市民感覚を置き去りにした議論が行われていると思わざるを得ないのである。

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3つのプロゲストーゲン、髄膜腫の新たなリスク因子に/BMJ

 高用量プロゲストーゲン(nomegestrol acetate、クロルマジノン、cyproterone acetate)は、頭蓋内髄膜腫のリスク因子として知られているが、他の多くのプロゲストーゲンのリスクの評価はなされていなかった。French National HealthのNoemie Roland氏らは、今回、新たにmedrogestone、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、promegestoneの長期使用が髄膜腫の過剰なリスクと関連し、プロゲステロン、ジドロゲステロン、子宮内レボノルゲストレル放出システムにはリスクの上昇はみられず安全であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年3月27日号に掲載された。フランス在住女性の症例対照研究 研究グループは、フランスにおける8種のプロゲストーゲンの使用に関連した頭蓋内髄膜腫のリスクを評価する目的で、全国的な症例対照研究を行った(French National Health Insurance Fund[Cnam]などの助成を受けた)。 症例は、2009年1月1日~2018年12月31日に髄膜腫に対する頭蓋内手術を受けたフランス在住の女性1万8,061例であった。各症例と出生年および居住地域をマッチさせた女性5例ずつを対照とした(合計9万305例)。 全体の平均年齢は57.6(SD 12.8)歳、最も多い年齢層は45~54歳(26.7%)で、次いで55~64歳(26.4%)、65~74歳(21.5%)の順であった。短期使用では差がない medrogestone(5mg、経口薬)の現使用者は、非使用者に比べ髄膜腫の発生率が高かった(症例群0.2% vs.対照群0.1%、オッズ比[OR]:3.49、95%信頼区間[CI]:2.38~5.10)。また、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(150mg、注射薬)(0.05% vs.0.01%、5.55、2.27~13.56)、およびpromegestone(0.125/0.5mg、経口薬)(0.5% vs.0.2%、2.39、1.85~3.09)の現使用者も、髄膜腫のリスクが増加していた。 これら3剤による髄膜腫のリスク上昇は、いずれも長期(1年以上)の使用によるものであり、短期使用では両群に差を認めなかった。 一方、プロゲステロン(皮下)(症例群0.5% vs.対照群0.6%、OR:1.11、95%CI:0.89~1.40)、ジドロゲステロン(0.9% vs.1.1%、0.96、0.81~1.14)、子宮内レボノルゲストレル放出システム(52mg:3.7% vs.5.1%[OR:0.94、95%CI:0.86~1.04]、13.5mg:0.2% vs.0.2%[1.39、0.70~2.77])の3剤については、髄膜腫のリスク上昇はないことを確認した。陽性対照の3剤は高度なリスク上昇 ジエノゲストとヒドロキシプロゲステロンは、これらの投与を受けた人数が少なかったため、結論は得られなかった。 陽性対照としたcyproterone acetate(症例群4.9% vs.対照群 0.3%、OR:19.21、95%CI:16.61~22.22)、nomegestrol acetate(5.1% vs.1.2%、4.93、4.50~5.41)、酢酸クロルマジノン(3.5% vs.1.0%、3.87、3.48~4.30)は、いずれも髄膜腫の高度なリスク上昇を示した。 著者は、「とくに、広く使用されている避妊薬であるメドロキシプロゲステロン酢酸エステル注射薬の使用に関連したリスクの増加と、子宮内レボノルゲストレル放出システムの安全性を確認したことは、重要な新知見である」としている。

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カフェインは片頭痛を引き起こすのか

 カフェイン摂取は、片頭痛の要因であると考えられており、臨床医は、片頭痛患者に対しカフェイン摂取を避けるよう指導することがある。しかし、この関連性を評価した研究は、これまでほとんどなかった。習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、強さとの関係を調査するため、米国・Albany Medical CollegeのMaggie R. Mittleman氏らは、発作性片頭痛成人患者を対象としたプロスペクティブコホート研究を実施した。Headache誌オンライン版2024年2月6日号の報告。 2016年3月~2017年8月に発作性片頭痛と診断された成人患者101例を対象に、カフェイン入り飲料の摂取に関する情報を含むベースラインアンケートを実施した。対象患者は、頭痛の発症、持続時間、痛みの強さ(スケール:0~100)に関する情報を1日2回、6週間、電子的日誌で報告した。年齢、性別、経口避妊薬の使用で調整した後、ベースライン時の習慣的なカフェイン摂取と6週間の頭痛との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・データ収集が完了した対象患者は97例。・調整後の平均頭痛日数は、習慣的なカフェイン摂取のない患者20例、カフェイン摂取1~2回/日の患者65例、カフェイン摂取3~4回/日の患者12例で同様であった。【習慣的なカフェイン摂取のない患者】7.1日、95%信頼区間(CI):5.1~9.2【カフェイン摂取1~2回/日の患者】7.4日、95%CI:6.1~8.7【カフェイン摂取3~4回/日の患者】5.9日、95%CI:3.3~8.4・推定値は不正確であったものの、平均頭痛継続時間、痛みの強さにおいても、カフェイン摂取レベルによる差は認められなかった。●平均頭痛継続時間【習慣的なカフェイン摂取のない患者】8.6時間、95%CI:3.8~13.3【カフェイン摂取1~2回/日の患者】8.5時間、95%CI:5.5~11.5【カフェイン摂取3~4回/日の患者】8.8時間、95%CI:2.3~14.9●痛みの強さ【習慣的なカフェイン摂取のない患者】43.8:95%CI、37.0~50.5【カフェイン摂取1~2回/日の患者】43.1:95%CI、38.9~47.4【カフェイン摂取3~4回/日の患者】46.5:95%CI、37.8~55.3 著者らは「本研究では、習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、痛みの強さとの関連は認められなかったことから、発作性片頭痛患者に対するカフェイン摂取制限は推奨されない」としながらも、「通常のカフェイン摂取量から逸脱した場合、片頭痛発作が引き起こされるかどうかを明らかにするためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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低炭水化物ダイエット、肉食だと効果が続かない?

 低炭水化物ダイエットの体重に対する影響は一律ではないことが報告された。炭水化物を減らした分のエネルギーを植物性食品主体に置き換えて摂取した場合は減量効果が長期間続く一方、動物性食品に置き換えて摂取した場合は時間の経過とともに体重が増加に転じやすいという。米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に12月27日掲載された。論文の筆頭著者であるLiu氏は、「われわれの研究では、炭水化物を摂取すべきか摂取すべきでないかという単純な疑問の範囲を超え、食事の内容の違いが数週間や数カ月ではなく数年間にわたって、健康にどのような影響を与える可能性があるかを検討した」と述べている。 この研究は、米国で医療従事者を対象に現在も行われている、3件の大規模前向きコホート研究のデータを用いて行われた。一つは30~55歳の看護師を対象とする「Nurses' Health Study;NHS」で、別の一つは25~42歳の看護師対象の「NHS II」であり、残りの一つは男性医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」。65歳以上や糖尿病などの慢性疾患罹患者を除外し、計12万3,332人(平均年齢45.0±9.7歳、女性83.8%)を解析対象とした。 食習慣は後述の5種類の指標で評価した。研究参加者は4年ごとにこれらのスコアが評価され、そのスコアと4年間での体重変化との関連が検討された。解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・高コレステロール血症の既往、摂取エネルギー量、糖尿病の家族歴、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン療法の施行など)を調整した。 全体的な炭水化物摂取量が少ないことを表すスコア(total low-carbohydrate diet)のプラスの変化(炭水化物摂取量がより少なくなること)は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(animal-based LCD)のプラスの変化も体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。植物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(vegetable-based LCD)の変化と体重変化との関連は非有意だった(傾向性P=0.16)。炭水化物は精製度の低いものとして、植物性食品からのタンパク質や健康的な脂質が多いことを表すスコア(healthy LCD)のプラスの変化は、体重の減少と関連していた(傾向性P<0.0001)。全粒穀物などの健康的な炭水化物の摂取が少なく、動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(unhealthy LCD)のプラスの変化は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。 サブグループ解析からは、これらの関連性は、過体重や肥満者、55歳未満、身体活動量が少ない群で、より強く認められた。論文の上席著者である同大学院のQi Sun氏は、「われわれの研究結果は、低炭水化物ダイエットをひと括りにしていたこれまでの捉え方の変更につながる知見と言えるのではないか。また、全粒穀物、果物、野菜、低脂肪乳製品などの摂取を推奨する公衆衛生対策を、より強く推進していく必要があると考えられる」と述べている。

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緊急避妊薬の市販化に伴い女性の救急外来受診が激減

 米食品医薬品局(FDA)が緊急避妊薬を処方箋なしで購入できる市販薬として承認したことが、米国の病院に予期せぬ好ましい「副作用」をもたらしたことが、新たな研究で報告された。緊急避妊薬の市販化により、女性の緊急避妊に関連した救急外来(ED)受診が96%も減少し、それに伴い医療費も大幅に削減されたことが明らかになったのだ。米ミシガン大学医学部産婦人科教授のErica Marsh氏らによる研究で、詳細は「JAMA Network Open」に1月26日掲載された。 24時間受診可能で高度な医療を提供するEDは、緊急避妊を必要とする女性に対し重要な役割を果たしている。米国では、緊急避妊薬は1998年に初めてFDAにより承認され、翌年には二つ目の緊急避妊薬であるPlan B(一般名レボノルゲストレル)が承認された。その後、2006年には単回投与版のレボノルゲストレル(Plan B One-Step)が承認されるとともに、18歳以上の成人向けにPlan Bの市販が、2013年にはPlan B One-Stepの未成年に対する市販が承認された。さらに、2012年には、アフォーダブルケア法(患者保護及び医療費負担適正化法、通称オバマケア)により、緊急避妊薬を保険適用とすることが義務付けられた。 この研究では、ED受診に関する2006年から2020年の全国データを用いて、15歳から44歳の女性による緊急避妊に関連したED受診が、上述のFDAの承認に伴いどのように変化したかが調査された。 その結果、この期間に総計4万7,858件の緊急避妊関連のED受診が発生していたが、受診件数は年を追うごとに減少する傾向にあることが明らかになった。具体的には、緊急避妊関連のED受診件数は、2006年には1万7,019件だったのが2020年には659件と96%も減少していた。このようなED受診件数の減少に伴い、緊急避妊関連の医療費も、2006年の720万ドル(1ドル146円換算で10兆5120万円)から2020年には38万5,946ドル(同5634万8,116円)へと95%削減されていた。 また、米国北東部の病院では、緊急避妊関連以外のED受診については米国全体での受診の17.1〜19.1%を占める程度だったが、緊急避妊関連のED受診については米国全体での受診の43.9〜58.6%を占めていた。一方、南部の病院では、前者が41.0〜42.6%を占めていたのに対して、後者はわずか4.5〜17.4%を占めるに過ぎなかった。 さらに、緊急避妊関連でEDを受診した女性には、年齢が若い、黒人またはヒスパニック系、メディケイド加入者などの特徴があることも判明した。Marsh氏は、「緊急避妊のためにEDを受診する人は、特定の人口統計学的属性を有する人に偏っていることが明らかになった」と指摘。「これは、一部の人では、緊急避妊薬を入手する上で障壁が依然として存在することや、性的暴行などの理由によるED受診が増加していることを示唆した、外来患者を対象にした過去の調査結果と一致している」と話す。 Marsh氏は、「われわれが得た分析結果は、市販の緊急避妊薬の入手に格差が存在することを示唆するものだ。一部の人々の前に立ちはだかる障壁を取り除き、安全な緊急避妊薬を全ての人が手頃な価格で入手できるようにする政策を講じる必要がある」と述べている。

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米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

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早期閉経やホルモン補充療法は関節リウマチのリスク増加と関連

 女性は50歳未満での関節リウマチ(RA)の発症リスクが男性よりも4〜5倍高いが、この原因として、いくつかのホルモン因子が関与している可能性が新たな研究で示唆された。ホルモンや生殖に関わる因子とRAリスクとの関連を検討したところ、45歳前の早期閉経やホルモン補充療法(HRT)を受けていること、4人以上の子どもがいることなどがリスク上昇と関連していることが示されたという。安徽医科大学(中国)公共衛生学院のHai-Feng Pan氏らによるこの研究の詳細は、「RMD Open」に1月9日掲載された。 RAは、体の免疫系が関節を含む自分の組織を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患であり、ダメージが他の臓器に及ぶこともある。RAリスクは男性よりも女性で高いことが以前から知られており、女性でのリスクは、50歳未満では男性の4〜5倍、60〜70歳では男性の2倍と推定されている。さらに、女性の方が男性よりもRAの進行速度が早く、疾患活動性も高いことも知られている。 先行研究では、このような女性でのRAリスクの増加には、女性ホルモンや、妊娠や閉経などの生殖機能に関わる因子が影響している可能性が示唆されている。しかし、具体的にどの要因がRAリスクに特に強い影響を及ぼすのかについては、明らかになっていない。 Pan氏らは、UKバイオバンク参加者の中から女性22万3,526人のホルモンや生殖に関わる因子に関するデータを抽出して、それらとRAリスクとの関連を検討した。ホルモンや生殖に関わる因子には、初経年齢、妊娠歴、子どもの数、更年期、閉経年齢、生殖期間、子宮摘出歴、卵管摘出歴、避妊薬の使用歴と使用期間、HRT歴とその治療期間を含めた。 中央値で12.39年にわたる追跡期間中に3,313人(1.5%)がRAを発症していた。交絡因子を調整して解析した結果、初経年齢が14歳超の女性は初経年齢が13歳の女性と比べてRAリスクが13%有意に高いことが明らかになった(ハザード比1.13、95%信頼区間1.02〜1.26、P=0.025)。また、閉経年齢が45歳未満の女性でも閉経年齢が50〜51歳の女性と比べてRAリスクが46%高かった(同1.46、1.27〜1.67、P<0.001)。さらに、生殖期間が33年未満の女性では38〜39年の女性と比べてRAリスクが39%高かった(同1.39、1.21〜1.59、P<0.001)。この他、RAリスクは、子どもの数が2人の女性に比べて4人以上の女性では18%、子宮摘出術や卵管摘出術を受けた女性では受けていない女性に比べてそれぞれ40%と21%高かった。また、HRTの使用歴がある女性では使用歴のない女性に比べてRAリスクが46%高いことや、HRTの使用期間が1年増えるごとにRAリスクが2%上昇することも示された。 このようにいくつかの女性ホルモンや生殖に関わる因子とRAリスクとの間に関連が認められたものの、Pan氏らは、これらの結果が因果関係を示したものではないことを強調している。それでも研究グループは、「本研究で得られた知見は重要であり、女性におけるRAリスクを抑制するためのターゲットを絞った介入策を開発するための基礎となる可能性がある」と述べている。

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緊急避妊薬、新年直後に販売数が増加/BMJ

 米国のドラッグストアや量販店で、レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数について調べたところ、新年の祝日後に顕著に増加することが、米国・テキサス工科大学のBrandon Wagner氏らが行った時系列分析で示された。そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日の後にも、新年の祝日後ほどではないが増加が認められたという。結果を踏まえて著者は、「新年の祝日後の緊急避妊薬の売上増加は、この時期が他の休日と比べて、無防備な膣性交のリスクが高いことを示唆している」と述べ、「行動リスクをターゲットとした性暴力を軽減するための予防戦略と、休日前後の避妊薬へのアクセスを改善することで、無防備な膣性交のリスクを制限できる可能性がある」とまとめている。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。新年直後とそれ以外の週の販売数を比較 研究グループは自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを使用した時系列分析にて、大みそか・元旦休暇後の緊急避妊薬の売上増加を推計した。2016~22年の米国の従来型(実店舗)小売店(食料品店、ドラッグストア、量販店、クラブストア、1ドルショップ、軍用アウトレット)で集めた緊急避妊薬の週単位販売データ(362件)について、新年の祝日後(6件)とそれ以外(356件)に分け、ARIMAモデルを用いた時系列分析で比較した。 主要アウトカムは、米国の生殖可能年齢の女性1,000人当たりの、レボノルゲストレル緊急避妊薬の週間販売数とした。新年直後の週、緊急避妊薬販売数は0.63/女性1,000人の増加 レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数は、新年祝日後に顕著に増加した(15~44歳の女性1,000人当たり0.63単位増加、95%信頼区間:0.58~0.69)。 そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日で祝日後に同増加が認められた。 同増加は15~44歳の女性1,000人当たりそれぞれ、0.31(同:0.25~0.38)、0.14(同:0.06~0.23)、0.20(同:0.11~0.29)だった。 これら以外の祝日(イースター、母の日、父の日)後に、同増加は認められなかった。

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緊急避妊薬の処方箋なしの試験販売が開始【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第121回

緊急避妊薬の処方箋なしの試験販売が開始11月28日より、一部薬局で緊急避妊薬を処方箋なしで販売する試験が始まります。緊急避妊薬の販売対応の大きな一歩で、私個人としてはとても急な展開に驚いています。望まない妊娠を防ぐために性交後に服用する「緊急避妊薬(アフターピル)」について、医師の処方箋なしでの試験的な薬局販売を28日から開始すると、厚生労働省が17日、発表した。業務委託を受けた日本薬剤師会が20日開始に向けて準備していたが、調整に時間がかかった。日本薬剤師会によると、各都道府県に2〜3店ずつ、全国145薬局で順次販売する。対象は16歳以上で、18歳未満は保護者の同伴が必要になる。販売価格は7千〜9千円程度。事前の電話連絡が必要で、試験販売開始時に薬局一覧を同会がウェブサイトで公表する。(2023年11月17日付 日本経済新聞)現在、いわゆる緊急避妊薬を入手するには産婦人科などの医師が発行した処方箋が必要です。オンライン診療でも処方可能ですが、避妊失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐには早急な入手・服用が必要であるため、市販化を要望する声が高まっていました。そこで、厚生労働省が長年議論を重ね、調査研究として薬局販売することを決めました。今回販売が可能となった緊急避妊薬はレボノルゲストレル(商品名:ノルレボ錠)とその後発医薬品で、性交後72時間以内に服用することで妊娠を8割程度阻止できます。試験販売の薬局は原則、以下の要件を満たすことと発表されています。(1)研修を受けた薬剤師がいる。(2)夜間や土日祝日の対応が可能。(3)近くの産婦人科などと連携できる。(4)個室があるなどプライバシーが確保できる。今回は適正な販売を確保できるかなどを調べる調査研究を目的とした試験販売ですので、この調査研究に同意した16歳以上の女性(18歳未満は保護者の同意が必要)にしか販売できません。なお、薬剤師の目の前で服薬してもらう必要がありますが、これは日本だけの要件のようです。試験販売の期間は2024年3月までで、調査結果を踏まえてスイッチOTC化して市販化が検討されるようです。実質4ヵ月間の試験販売で、しかも全国で150軒弱の薬局という非常に少ない参加ですので、販売経験が集まるかなどの問題があると思います。しかし、手軽とはとてもいえない要件ですが、緊急避妊薬を市販するうえでの課題が明確になり、1人でも多くの女性が安全にそしてできるだけ不安が少なく緊急避妊薬を服用できる時代になることが望まれます。

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女性統合失調症に対する治療~エビデンスに基づく推奨事項

 性差は、抗精神病薬の有効性や忍容性に大きな影響を及ぼすことが示唆されているにもかかわらず、現在の統合失調症スペクトラム障害(SDD)の治療ガイドラインでは、男女間の区別は行われていない。オランダ・フローニンゲン大学のBodyl A. Brand氏らは、女性に対する薬物療法の改善に寄与する可能性のある戦略について、入手可能なエビデンスを要約し、女性統合失調症患者の治療を最適化するためのエビデンスに基づいた推奨事項を報告した。Current Psychiatry Reports誌オンライン版2023年10月21日号の報告。 次の3つのトピックスに関する査読済みの研究をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。トピックスは、(1)用量調節した抗精神病薬の血中濃度に関する性差、(2)症状の重症度を改善するためのエストロゲンおよびエストロゲン様化合物によるホルモン増強療法、(3)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を軽減するための戦略とした。 主な結果は以下のとおり。・データベース研究3件、ランダム化比較試験(RCT)1件に基づくと、ほとんどの抗精神病薬は、男性と比較し、女性において用量調節濃度が高かった。・クエチアピンは、とくに高齢女性で高濃度であった。・最近の2つのメタ解析に基づくと、エストロゲンおよびラロキシフェンにおいて全体的な症状改善が認められた。・閉経後女性におけるラロキシフェン増強療法に関する最も一貫した所見が確認された。・症状に対するエストロゲン性避妊薬の効果を評価した研究は見当たらなかった。・メタ解析2件、RCT1件に基づくと、抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を軽減するための研究として、アリピプラゾール補助療法が最も研究されており、最も安全な戦略であることが示唆された。 女性SSDに対する薬物療法について、エビデンスに基づく推奨事項は次のとおりであった。 (1)治療薬のモニタリングに基づく女性特有の抗精神病薬の投与量 (2)閉経後の女性におけるラロキシフェンによるホルモン増強療法 (3)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症に際するアリピプラゾール補助療法 著者らは「これらの戦略を組み合わせることで、女性SSD患者の副作用を軽減し、アウトカムを改善できる可能性がある」とし、「これらの効果を今後の縦断的RCTで明らかにしていく必要がある」とまとめている。

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