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日本の頭部外傷の実態/脳神経外傷学会

 日本の頭部外傷診療の現状の把握を目的に、1998年より重症頭部外傷患者を対象とした疫学研究を開始。現在まで、日本頭部外傷データバンク(JNTDB)Projectとして1998、2004、2009、2015が行われ、Project2015(P2015)の結果がまとまり、第42回日本脳神経外傷学会にて、その結果が報告された。P2015の登録対象症例は2015年4月1日~2017年3月31日に、搬入時あるいは受傷後48時間以内にGlasgow Coma Scale(GCS)8以下、あるいは脳神経外科手術を施行した頭部外傷症例(0歳を含む全年齢)。Project2015の参加施設は32施設1,345例が登録された。転機は改善するも、高齢者の転倒、歩行者事故による頭部外傷が増加 仙台市立病院 加藤 侑哉氏はシンポジウムの中で、重症頭部外傷の年齢構成の推移についてJNTDB2015と過去のデータの比較を発表した。分析対象は6歳以上、GCS8以下などの規準を満たした重症頭部外傷患者で、P2015の1,345例中924例が検討対象となった。 JNTDBの4回のProjectの結果、若年者層での重症頭部外傷減少、高齢者層での増加を経時的に認めている。P2015では、80~84歳がピークとなり、過去の統計と比べ、さらに高齢者側にシフトした。 受傷機転をみると、交通事故は経時的に減少しているが、転倒・転落・墜落は増加しており、どちらもP2015では65歳以上で大幅に増加した。転帰については、GOS(Glasgow Outcome Scale)でGR(good recovery:日常生活に復帰)、MD(moderate disability)の転帰良好群は横ばい、SD(severe disability)、VS(vegetative state)の機能的転帰不良群は増加、死亡は減少していた。増加する高齢者頭部外傷の割合 わが国における高齢者重症頭部外傷の変遷について、日本医科大学 横堀 將司氏が発表した。4回のJNTDB Projectの合計4,539例のうち、高齢者(65歳以上)を対象に分析した。 結果、わが国の頭部外傷における65歳以上の高齢者の割合は半分以上であり、P2015では、とくに75歳以上の増加が顕著であった。積極的治療を受けている高齢者頭部外傷の割合は7割であった。死亡率は低下していたが、P2015ではSD、VS群は増加していた。機能的転帰不良患者の予測因子は、年齢75歳以上、ISS(injury severity score)25以上、GCS8以下、外傷性くも膜下出血、脳室内出血の存在であった。交通外傷による頭部外傷の変化 千葉県救急医療センター 脳神経外科 宮田 昭宏氏は、4回のJNTDBの集積データを振り返り、頭部外傷の原因として大きな比重を持つ、交通外傷の変遷について発表した。分析対象は、4回のデータベースの中から交通外傷を原因とする患者2,192例(48.3%)。 頭部外傷において、交通外傷の占める割合は減少している。年齢構成別にみると45歳以下が大きく減少する一方、65歳以上の高齢者で増加、とくに80歳以上では大きく増加している。内訳をみると4輪車事故によるものが減り、歩行者事故が大幅に増加。その傾向は80歳以上で顕著で、P2015における80歳以上の交通事故での頭部外傷の中で、歩行者事故の割合は60%を占めた。 転帰について、P2015では死亡率が顕著に下がった(33.2%)。年齢別にみると、若年者44歳以下でGR、MD群が大きく増加した反面、高齢者では、SDやVS群が増加していた。■関連記事日本の頭部外傷の現状は?/脳神経外科学会

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国内で開発された新規末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg」【下平博士のDIノート】第21回

国内で開発された新規末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg」今回は、「ミロガバリンベシル酸塩錠(商品名:タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg)」を紹介します。本剤は、α2δサブユニットに強力かつ特異的に結合してカルシウムイオンの流入を抑制することで、興奮性神経伝達物質の過剰放出を抑制し、痛みを和らげることが期待されています。<効能・効果>本剤は、末梢性神経障害性疼痛の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年4月15日より販売されました。※2022年3月、添付文書改訂による「中枢性神経障害性疼痛」の効能追加に伴い、適応は「神経障害性疼痛」となりました。<用法・用量>通常、成人にはミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔を空けて漸増します。維持用量は、年齢・症状により1回10~15mgの範囲で適宜増減します。なお、腎機能障害患者に投与する場合は、投与量および投与間隔の調節が必要です。<副作用>日本を含むアジアで実施された臨床試験において、糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者を対象とした854例中267例(31.3%)、帯状疱疹後神経痛患者を対象とした553例中241例(43.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、傾眠(12.5%/19.9%)、浮動性めまい(9.0%/11.8%)、体重増加(3.2%/6.7%)などでした(承認時)。なお、弱視、視覚異常、霧視、複視などの眼障害が現れることがあるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.過敏になっている神経を鎮めることで、しびれ、電気が流れているような痛み、焼けるような痛みなど、末梢神経障害による痛みを和らげます。2.服用中は、めまい、強い眠気、意識消失などが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.本剤の服用を長く続けたり量を増やしたりすることで、体重が増加することがあります。実際に体重が増加し始めた場合はご相談ください。4.この薬を突然中止すると、不眠、吐き気、頭痛、下痢、食欲低下などの症状が現れることがあります。自己判断で減らしたりやめたりしないでください。5.本剤を服用中に飲酒をした場合、注意力、平衡機能の低下を強める恐れがあるので注意してください。<Shimo's eyes>神経障害性疼痛は、『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(改訂第2版)』で「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」とされ、神経の損傷部位によって“末梢性”と“中枢性”に分類されます。本剤の作用機序は既存薬のプレガバリンと同様ですが、神経障害性疼痛全般に使用できるプレガバリンとは異なり、本剤の適応は「末梢性神経障害性疼痛」に限られています。末梢性神経障害性疼痛の代表例としては、坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病の合併症による神経障害性疼痛(痛み・しびれ)、抗がん剤の副作用による神経障害性疼痛などがあります。本剤は低用量から開始して、有効性や安全性を確認しながら維持量に漸増します。腎機能障害のある患者さんや高齢者では副作用が発現しやすいため、慎重に症状や副作用を聞き取りましょう。とくに高齢者ではめまいなどの副作用が生じると、転倒による骨折などを起こす恐れがあるため、細やかな投与量の調節が必要です。神経障害性疼痛は罹病期間が長引きがちで、さらに不安や睡眠障害を引き起こすこともあり、患者さんのQOLに与える影響は甚大です。末梢神経障害性疼痛の治療選択肢が増え、痛みに悩む患者さんの生活に改善がもたらされるのは喜ばしいことです。なお、2019年1月時点において、海外で承認されている国および地域はありませんので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。※2022年3月、添付文書の改訂情報を基に一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 タリージェ錠2.5mg/タリージェ錠5mg/タリージェ錠10mg/タリージェ錠15mg

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加齢で脆くなる運動器、血管の抗加齢

 2月18日、日本抗加齢医学会(理事長:堀江 重郎)はメディアセミナーを都内で開催した。今回で4回目を迎える本セミナーでは、泌尿器、内分泌、運動器、脳血管の領域から抗加齢の研究者が登壇し、最新の知見を解説した。年をとったら骨密度測定でロコモの予防 「知っておきたい運動器にかかわる抗加齢王道のポイント」をテーマに運動器について、石橋 英明氏(伊奈病院整形外科)が説明を行った。 厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016)によると、65歳以上の高齢者で介護が必要となる原因は、骨折・転倒によるものが約12%、また全体で関節疾患も含めると約5分の1が運動器疾患に関係するという。とくに、高齢者で問題となるのは、気付きにくい錐体(圧迫)骨折であり、外来でのFOSTAスコアを実施した結果「25歳時から4cm以上も身長が低下した人では、注意を払う必要がある」と指摘した。また、「骨粗鬆症治療薬のアレンドロン酸、リセドロン酸、デノスマブによる大腿骨近位部骨折の予防効果も、近年報告されていることから、積極的な治療介入が望ましい」と同氏は語る。 そして、「50代以降で骨の検査をしたことがない人」「体重が少ない人」など6つの条件に当てはまる人には、「骨粗鬆症の早期発見のためにも、骨密度検査を受けさせたほうがよい」と提案する。また、筋力は「加齢、疾患、不動、低栄養」を原因に減少し、40歳以降では1年間に0.5~1%減少すると、筋力低下についても注意喚起。この状態が続けばサルコぺニアに進展する恐れがあり、予防のため週2~3回の適度な運動とタンパク質などの必須栄養の摂取を推奨した。 そのほかロコモティブシンドローム防止のため日本整形外科学会が推奨するロコモーショントレーニング(スクワット、片脚立ち運動など)は、運動機能の維持・改善になり、実際に石橋氏らの研究(伊奈STUDY)1)でも、運動機能の向上、転倒防止に効果があったことを報告し、レクチャーを終えた。血管からみた認知症予防の最前線 同学会の専門分科会である脳血管抗加齢研究会から森下 竜一氏(同会世話人代表、大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学寄付講座 教授)が、「血管からみるアンチエイジング」をテーマに、血管の抗加齢や認知症診断の最新研究について説明した。 はじめに最近のトピックスである食後高脂血症(食後中性脂肪血症)について触れ、多くの人々が6時間後に中性脂肪がピークとなるため1日の大部分を食後状態で過ごす中で、食後の中性脂肪値を抑制することが重要だと指摘する。実際、食後高脂血症は動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスク因子となる研究報告2)もある。また、即席めんやファストフードに多く含まれる酸化コレステロールについて、これらはとくに肥満者や糖尿病患者には酸化コレステロールの血中濃度を上昇させ、動脈硬化に拍車をかけると警鐘を鳴らしたほか、食事後の短時間にだけ、人知れず血糖値が急上昇し、やがてまた正常値に戻る「血糖値スパイク」にも言及。こうした急激な血糖値の変動が高インスリン血症をまねき、過剰なインスリン放出が認知症の原因とされるアミロイドβを蓄積させると指摘する。 そして、認知症については、軽度認知障害(MCI)の段階で発見、早期治療介入により予防する重要性を強調した。その一方で、認知症の評価法について現在使用されている簡易認知機能検査(MMSE)、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)などでは、検査に時間要すだけでなく、被験者の心理的ストレス、検査者の習熟度のばらつきなどが問題であり、スクリーニングレベルで使用できる簡便性がないと指摘する。そこで、森下氏らは、被験者の目線を赤外線で追うGazefinder(JCVKENWOOD社)を使用した視線検出技術を利用する簡易認知機能評価法の研究を実施しているという。最後に同氏は「今までの認知症の評価法のデメリットを克服できる評価法を作り、疾患の早期発見・予防に努めたい」と展望を述べ、講演を終えた。■参考文献1)新井智之、ほか. 第2回日本予防理学療法学会学術集会.2015.2) Iso H, et al. Am J Epidemiol. 2001;153:490-499.■参考脳心血管抗加齢研究会日本抗加齢医学会

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インスリンアナログとヒトインスリンのどちらを使用すべきか?(解説:住谷哲氏)-1016

 はじめに、わが国におけるインスリン製剤の薬価を見てみよう。すべて2018年におけるプレフィルドタイプのキット製剤(300単位/本、メーカー名は省略)の薬価である。インスリンアナログは、ノボラピッド注1,925円、ヒューマログ注1,470円、アピドラ注2,173円(以上、超速効型)、トレシーバ注2,502円、ランタス注1,936円、インスリングラルギンBS注1,481円、レベミル注2,493円(以上、持効型)。ヒトインスリンは、ノボリンR注1,855円、ヒューマリンR注1,590円(以上、速効型)、ノボリンN注1,902円、ヒューマリンN注1,659円(以上、中間型)。つまり、わが国でインスリン頻回注射療法(MDI)を最も安く実施するための選択肢は、インスリンアナログのインスリングラルギンBS注とヒューマログ注の組み合わせになる。さらにわが国においてはインスリンアナログとヒトインスリンの薬価差はそれほどなく、ヒューマログ注とヒューマリンR注のようにインスリンアナログのほうが低薬価の場合もある。したがって、本論文における医療費削減に関する検討はわが国には適用できない。それに対して米国では、インスリンアナログはヒトインスリンに比較してきわめて高価であり(本論文によると米国では10倍の差のある場合もあるらしい)、インスリンアナログをヒトインスリンに変更することでどれくらい医療費が削減できるかを検討した本論文が意味を持つことになる。 医療費削減は重大な問題であるが、医療費を削減した結果、臨床的アウトカムが悪化すれば本末転倒である。そこで本論文ではインスリンアナログからヒトインスリンに変更後におけるHbA1c、重症低血糖および重症高血糖の頻度を検討している。HbA1cはヒトインスリンに変更後0.14%(95%CI:0.05~0.23、p=0.003)増加したが、これは臨床的にはほとんど意味のない変化と見なしてよい。重症低血糖および重症高血糖の頻度にも変更前後で有意な差は認められなかった。つまりヒトインスリンへの変更によって、臨床的アウトカムの悪化なしに医療費の削減が可能であることが示されたことになる。 確かに、インスリンアナログがヒトインスリンに比較して臨床的アウトカムを改善するエビデンスは現時点で存在しない。RCTにおいては、インスリンアナログであるグラルギンはヒトインスリンであるNPHに比較して夜間低血糖を有意に減少させた1)。しかしreal-worldにおいては、NPHとインスリンアナログとを比較するとHbA1c、重症低血糖による救急外来受診または入院の頻度には差がなかったとする報告もある2)。さらに、持効型インスリンアナログ間の比較であるDEVOTEでは、デグルデクはグラルギンに比較して有意に夜間低血糖を減少させたが、両群における3-point MACEには有意な差がなかった3)。 インスリンアナログはヒトインスリンと比較して優れている、と考えている医療従事者は多い。しかし上述したように、インスリンアナログを使用することで低血糖の頻度が減る可能性はあるが、心血管イベントなどの臨床的アウトカムを改善するエビデンスはない。したがってヒトインスリンで十分であるが、米国とは異なりインスリンアナログが安価に使用できるわが国においては、あえてヒトインスリンに固執する必要性もないと思われる。

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第6回 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をどう使う?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第6回 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をどう使う?Q1 なぜ、高齢者の血糖コントロール目標が発表されたのですか?糖尿病の血糖コントロールに関しては、かつては下げれば下げるほどよいという考え方でした。ところが、ACCORD試験などの高齢者を一部含む大規模な介入試験によって、厳格すぎる血糖コントロールは細小血管症を減らすものの、重症低血糖の頻度を増やし、死亡に関してはリスクを減らさずに、むしろ増やすことが明らかになりました。さらに、重症低血糖は、死亡だけでなく、認知症、転倒・骨折、ADL低下、心血管疾患の発症リスクになることがわかってきました。また、軽症の低血糖でもうつ状態やQOL低下をきたすことも報告されています。すなわち、低血糖は老年症候群の一部を引き起こすのです。また、低血糖は高齢者で起こりやすくなり、とくに重症低血糖は80歳以上の高齢者でさらに増えることがわかっており、低血糖の弊害の影響を大きく受けるのは高齢者ということになります。生物学的には高齢者においても血糖コントロールは糖尿病合併症を減らすと考えられますが、心血管を含めた合併症を予防するためには少なくとも10年間以上の良好な血糖コントロールを要すると思われます。とすると、平均余命が短い高齢者では厳格な血糖コントロールの意義が相対的に小さくなることになります。平均余命の推定は困難なことが少なくありませんが、高齢者の死亡リスクは疾患やそのコントロール状況よりもむしろ機能状態、すなわち認知機能やADLの状態によって決まることがわかっています。認知機能、ADL、併存疾患などで糖尿病を3つの段階に分けると、機能低下の段階が進むほど、死亡リスクが段階的に増えていくので、血糖コントロール目標は柔軟に考えていく必要があるのです。また、高齢者に厳格なコントロールを行うと、重症低血糖のリスクだけでなく、多剤併用や治療の負担も増えることになります。一方、血糖コントロール不良(HbA1c 8.0%以上)は網膜症、腎症、心血管死亡だけなく、認知症、転倒・骨折、サルコペニア、フレイルなどの老年症候群のリスクにもなることにより、高齢者でもある程度はコントロールしたほうがいいことも事実です。こうしたことから、米国糖尿病学会(ADA)、国際糖尿病連合(IDF)は平均余命や機能分類を3段階に分けて設定する高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を発表しました。本邦でもこうした高齢者糖尿病の種々の問題から、高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が発足し、2016年に高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)が発表されました(第4回参照)。Q2 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」のわかりやすい見かたとその意味について教えてください。日常臨床において、上記の図を見ながら高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)を設定するのは複雑で大変であるという意見もあります。そこで、私たちが行っている方法を紹介します。図1の簡単な血糖コントロール目標の設定を参照してください。1)まず、75歳以上の後期高齢者でインスリン、SU薬など低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用している場合を考えます。この場合、カテゴリーIの認知機能正常で、ADLが自立している元気な患者と、カテゴリーIIの軽度認知障害または手段的ADL低下の患者の目標値は全く同じで、HbA1c 8.0%未満、目標下限値はHbA1c 7.0%。この数字だけでも覚えておくといいと思います。目標下限値がHbA1c7.0%というのはIDFの基準と全く同じであり、HbA1c 7.0%をきると重症低血糖、脳卒中、転倒・骨折、フレイル、ADL低下または死亡のリスクが高くなるという疫学データに基づいています。2)つぎに中等度以上の認知症または基本的ADL低下があるカテゴリーIIIの患者の場合は、(1)に+0.5%で、HbA1c 8.5%未満で目標下限値はHbA1c 7.5%です。中等度以上の認知症とは、場所の見当識、季節に合った服が着れないなどの判断力、食事、トイレ、移動などの基本的ADLが障害されている場合で、誰がみても認知症と判断できる状態の患者です。HbA1c 8.5%未満としているのは、8.5%以上だと、肺炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症のリスクが上昇し、さらに上がると高浸透圧高血糖状態(糖尿病性昏睡)のリスクが高くなるからです(第3回参照)。3)65~75歳未満の前期高齢者で、低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用している場合は、まず元気なカテゴリーIの場合を考えます。この場合は(1)から-0.5%で、HbA1c 7.5%未満、目標下限値はHbA1c 6.5%となります。すなわち、7.0%±0.5%前後です。前期高齢者では、カテゴリーが進むにつれて0.5%ずつ目標値が上昇していき、カテゴリーIIIでは後期高齢者と同じHbA1c 8.5%未満、目標下限値はHbA1c 7.5%です。4)つぎは低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用していない場合で、DPP-4阻害薬、メトホルミン、GLP-1受容体作動薬などで治療している場合です。この場合、血糖コントロール目標は従来の熊本宣言のときに出された目標値と同様で、カテゴリーIとIIの場合はHbA1c 7.0%未満、カテゴリーIIIの場合はHbA1c 8.0%未満で、目標下限値はなしです。このように、低血糖のリスクの有無で目標値が異なるのはわが国独自のものです。わが国では医療保険などでDPP-4阻害薬などが使用できる環境にあるので、低血糖のリスクが問題にならない場合は、「高齢者でも良好なコントロールによって合併症や老年症候群を防ごう」という意味だと解釈できます。

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Z薬の濫用や依存~欧州医薬品庁データ調査

 元来、zaleplon、ゾルピデム、ゾピクロンなどのZ薬は、依存性薬物であるベンゾジアゼピンの安全な代替薬として市販されいていたが、Z薬の濫用、依存、離脱などの可能性に関する臨床的懸念の報告が増加している。英国・ハートフォードシャー大学のFabrizio Schifano氏らは、EudraVigilance(EV)システムを用いて欧州医薬品庁(EMA)より提供された薬物有害反応(ADR)のデータセットを分析し、これらの問題点について評価を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年2月5日号の報告。 各Z薬のADRデータを分析し、症例の記述統計分析を行い、Proportional Reporting Ratio(PRR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・Z薬を使用した患者6,246例に対応する、誤用、濫用、依存、離脱に関連するADRは全体で3万3,240件(ゾルピデム:2万3,420件、ゾピクロン:9,283件、zaleplon:537件)だった。・人口統計学的特徴および併用薬、用量、投与経路、治療転帰などの臨床データ、死亡者数の記録を含む症例データを記録した。・PRR値を考慮した際、ゾルピデムは、ゾピクロンと比較し、誤用または濫用と離脱との関連が認められた。・ゾルピデムとゾピクロンの依存リスクは同程度であったが、ゾピクロンは、過剰摂取のADRに対する関連が最も高かった。・ゾピクロンは、zaleplonと比較し、高い依存リスクと過剰摂取による問題が認められたが、誤用もしくは濫用と離脱のPRR値については、わずかに低かった。 著者らは「現在のデータは、Z薬誤用の発生率を実際よりも過小評価している可能性がある。Z薬を処方する場合には、とくに精神疾患患者や楽物乱用歴を有する患者では注意が必要である。処方薬の誤用に関して、高精度かつ速やかに検出し、理解、予防を促すために、積極的なファーマコビジランス活動が求められる」としている。■関連記事ベンゾジアゼピンの使用と濫用~米国調査ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は高齢者へのZ薬と転倒・骨折リスクに関するメタ解析

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レビー小体型認知症のBPSD、対応のポイントは?

 2019年2月20日、大日本住友製薬主催により、レビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、その中で2つの講演が行われた。DLBは早期介入が重要 初めに、小田原 俊成氏(横浜市立大学 保健管理センター教授・センター長)が、DLBの現状、認知機能障害、行動・心理症状(BPSD)の特徴について講演を行った。 現在、日本国内におけるDLBの推定患者数は、50~100万人程度とされている。しかし、類似疾患との鑑別が難しく、DLBと診断されていない患者も多く存在すると考えられている。実際に、臨床診断されるDLBの割合は4%程度だが、病理診断される割合は20%近いという報告もある。小田原氏によると、「アルツハイマー型認知症(AD)では初期からほとんどの症例で記憶障害を呈する一方で、DLBでは初期から記憶障害を呈するのは3分の1程度である」、「注意・遂行機能や、視知覚機能の障害が、ADよりも強く現れる」といった点がDLBに特徴的だという。さらに、DLBではADに比べ、妄想、幻覚、不安、睡眠障害といったBPSDによる弊害も多い。これらは、患者本人のみならず介護者の大きな負担やQOLの低下に直結するため、「介護者がレビー小体型認知症の特徴的症状を把握し、患者本人に受診動機を持ってもらう。そうすることで、早期に治療介入を行えるようにすることが大切である」と述べた。DLBにおけるBPSD、「運動症状への対応」がカギ 次に、服部 信孝氏(順天堂大学医学部 脳神経内科)より、DLBの非運動・運動症状の特徴について講演が行われた。 DLBの鑑別診断が難しい要因として、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)と病理学的に同一のスペクトラムであるため、両疾患の診断基準を同時に満たすケースが存在することも挙げられると、服部氏は語る。一方、両者を正確に区別することは難しいものの、DLBでは、記憶障害がみられるようになる数年前から、便秘、嗅覚障害、レム期睡眠行動異常症(RBD)、抑うつの症状などが現れる点が特徴的であるという。この中でもとくに「RBD」は、2017年に改訂されたDLBの臨床診断基準で中核的臨床特徴に位置付けられるなど、その重要性が注目されている。中核的臨床特徴には、このほかに「認知機能の変動」、「繰り返す具体的な幻視」、「特発性パーキンソニズム」があるが、パーキンソニズムは、転倒による予後の悪化や、患者のADL・QOL低下、介護者のQOL低下、社会的コストの上昇(パーキンソニズムのスコアが1上昇すると827米ドルのコスト上昇という報告もある)などがみられるため、とくに注意が必要だと服部氏は強調する。その一方で、「DLBのパーキンソニズムに対する薬物療法は、精神症状を悪化させる可能性があるため、精神症状をコントロールしつつ、運動症状を治療していくことが大切。運動症状が悪化する前に、RBDや嗅覚障害などの特徴からDLBを早期に発見し、早期に治療介入していくことが重要である」と述べ、講演を締めくくった。

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パーキンソン病〔PD:Parkinson's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は、運動緩慢(無動)、振戦、筋強剛などのパーキンソニズムを呈し、緩徐に進行する神経変性疾患である。■ 疫学アルツハイマー病の次に頻度の高い神経変性疾患であり、平成26年に行われた厚生労働省の調査では、男性6万2千人、女性10万1千人の合計16万3千人と報告されている。65歳以上の患者数が13万8千人と全体の約85%を占め(有病率は1.5%以上)、加齢に伴い発症率が上昇する(ただし、若年性PDも存在しており、決して高齢者だけの疾患ではない)。症状は進行性で、歩行障害などの運動機能低下に伴い医療・介護を要し、社会的・経済的損失は著しい。超高齢社会から人生100年時代を迎えるにあたり、PD患者数は増え続けることが予想されており、本疾患の克服は一億総活躍社会を目指すわが国にとって喫緊の課題と言える。■ 病因これまでの研究により遺伝的因子と環境因子の関与、あるいはその相互作用で発症することが示唆されている。全体の約90%が孤発性であるが、10%程度に家族性PDを認める。1997年に初めてα-synucleinが家族性PDの原因遺伝子として同定され、その後当科から報告されたparkin、CHCHD2遺伝子を含め、これまでPARK23まで遺伝子座が、遺伝子については17原因遺伝子が同定されている。詳細はガイドラインなどを参照にしていただきたい。家族性PDの原因遺伝子が、同時に孤発性PDの感受性遺伝子となることが報告され、孤発性PDの発症に遺伝子が関与していることが明らかとなった。これら遺伝子の研究から、ミトコンドリア機能障害、神経炎症、タンパク分解障害、リソソーム障害、α-synucleinの沈着などがPDの発症に関与することがわかっている。環境因子では、性差、タバコ、カフェインの消費量などが重要な環境因子として検討されている。他にも農薬、職業、血清尿酸値、抗炎症薬の使用、頭部外傷の既往、運動など多くの因子がリスクとして報告されている。■ 病理PDの病理学的特徴は、中脳黒質の神経細胞脱落とレビー小体(Lewy body)の出現である。PDでは黒質緻密層のメラニン色素を持った黒質ドパミン神経細胞が脱落するため、肉眼でも黒質の黒い色調が失われる(図1-A、B)。レビー小体は、HE染色でエオジン好性に染まる封入体で、神経細胞内にみられる(図1-C、D)。レビー小体は脳幹の中脳黒質(ドパミン神経細胞)だけではなく、橋上部背側の青斑核(ノルアドレナリン神経細胞)、迷走神経背側運動核、脳幹に分布する縫線核(セロトニン神経細胞)、前脳基底部無名質にあるマイネルト基底核(コリン作動性神経)、大脳皮質だけではなく、嗅球、交感神経心臓枝の節後線維、消化管のアウエルバッハ神経叢、マイスナー神経叢にも認められる。脳幹の中脳黒質の障害はPDの運動障害を説明し、その他の脳幹の核、大脳皮質、嗅覚路、末梢の自律神経障害は非運動症状(うつ症状、不眠、認知症、嗅覚障害、起立性低血圧、便秘など)の責任病変である。PDのhallmarkであるレビー小体が全身の神経系から同定されることはPDが、多系統変性疾患でありかつ全身疾患であることを示しており、アルツハイマー病とはこの点で大きく異なる。家族性PDの原因遺伝子としてα-synuclein遺伝子(SNCA遺伝子)が同定された後に、レビー小体の主要構成成分が、α-synuclein蛋白であることがわかり、この遺伝子とその遺伝子産物がPDの病態に深く関わっていることが明らかとなった。図1 パーキンソン病における中脳黒質の神経脱落とレビー小体画像を拡大する■ 症状1)運動症状運動緩慢(無動)、振戦、筋強剛などのパーキンソニズムは、左右差が認められることが多く、優位側は初期から進行期まで不変であることが多い。初期から仮面様顔貌、小字症、箸の使いづらさなどの巧緻運動障害、腕振りの減少、小声などを認める。進行すると、姿勢保持障害・加速歩行・後方突進・すくみ足(最初の一歩が出ない、歩行時に足が地面に張り付いて離れなくなる)などを観察し、歩行時の易転倒性の原因となる。多くの症例で、進行期にはL-ドパの効果持続時間が短くなるウェアリングオフ現象を認める。そのためL-ドパを増量したり、頻回に内服する必要があるが、その一方でL-ドパ誘発性の不随意運動であるジスキネジア(体をくねらせるような動き。オフ時に認める振戦とは異なる)を認めるようになる。嚥下障害が進行すると、誤嚥性肺炎を来すことがある。2)非運動症状ほとんどの患者で非運動症状が認められ、前述の病理学的な神経変性、レビー小体の広がりが多彩な非運動症状の出現に関与している。非運動症状は、運動症状とは独立してQOLの低下を来す。非運動症状は、以下のように多彩であるが、睡眠障害、精神症状、自立神経症状、感覚障害の4つが柱となっている。(1)睡眠障害不眠、レム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorders:RBD)、日中過眠、突発性睡眠、下肢静止不能症候群(むずむず足症候群:restless legs syndrome)など(2)精神・認知・行動障害気分障害(うつ、不安、アパシー=無感情・意欲の低下、アンヘドニア=快感の消失・喜びが得られるような事柄への興味の喪失)、幻覚・妄想、認知機能障害、行動障害(衝動制御障害=病的賭博、性欲亢進、買い物依存、過食)など(3)自律神経症状消化管運動障害(便秘など)、排尿障害、起立性低血圧、発汗障害、性機能障害(勃起障害など)、流涎など(4)感覚障害嗅覚障害、痛み、視覚異常など(5)その他の非運動症状体重減少、疲労など嗅覚障害、RBD、便秘、気分障害は、PDの前駆症状(prodromal symptom)として重要な非運動症状であり、とくに嗅覚障害とRBDは後述するInternational Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)の診断基準にもsupportive criteria(支持的基準)として記載されている。■ 分類病期についてはHoehn-Yahrの重症度分類が用いられる(表1)。表1 Hoehn-Yahr分類画像を拡大する■ 予後現在、PDの平均寿命は、全体の平均とほとんど変わらないレベルまで良くなっている一方で、健康寿命については十分満足のいくものとは言い難い。転倒による骨折をしないことがPDの経過に重要であり、誤嚥性肺炎などの感染症は生命予後にとって重要である。2 診断■ 診断基準2015年MDSよりPDの新たな診断基準が提唱され、さらにわが国の『パーキンソン病診療ガイドライン2018』により和訳・抜粋されたものを示す。これによるとまずパーキンソニズムとして運動緩慢(無動)がみられることが必須であり、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか1つ以上がみられるものと定義された。姿勢保持障害は、診断基準からは削除された。パーキンソン病の診断基準(MDS)■臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在し、さらに、1)絶対的な除外基準に抵触しない。2)少なくとも2つの支持的基準に合致する。

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認知症のBPSDに対する治療の有効性・安全性比較~メタ解析

 認知症患者の行動と心理症状(BPSD)に対する薬理学的および非薬理学的治療の有効性、安全性を比較するため、中国・China Medical UniversityのBoru Jin氏らは、ランダム化データより直接的および間接的なエビデンスを用いて、検討を行った。Journal of Neurology誌オンライン版2019年1月21日号の報告。 BPSDに利用可能なすべての介入のランダム化比較試験(RCT)のみを用いて、システマティックレビューおよびベイジアンネットワーク・メタ解析を行った。RCTは、PubMed、EMBASE、Cochrane library、CINAHLより検索した。有効性アウトカムは、Neuropsychiatric Inventory(NPI)およびCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)を用いて評価した。安全性アウトカムは、全有害事象(AE)、下痢、めまい、頭痛、転倒、悪心、嘔吐、脳血管疾患について評価した。 主な結果は以下のとおり。・RCT146件より、BPSD患者4万4,873例が検討に含まれた。・以下の薬剤のNPIは、プラセボより優れていた。 ●アリピプラゾール(MD:-3.65、95%CI:-6.92~-0.42) ●エスシタロプラム(MD:-6.79、95%CI:-12.91~-0.60) ●ドネペジル(MD:-1.45、95%CI:-2.70~-0.20) ●ガランタミン(MD:-1.80、95%CI:-3.29~-0.32) ●メマンチン(MD:-2.14、95%CI:-3.46~-0.78) ●リスペリドン(MD:-3.20、95%CI:-6.08~-0.31)・以下の薬剤のCMAIは、プラセボより優れていた。 ●アリピプラゾール(MD:-4.00、95%CI:-7.39~-0.54) ●リスペリドン(MD:-2.58、95%CI:-5.20~-0.6)・以下の薬剤の全AEリスクは、プラセボよりも高かった。 ●ドネペジル(OR:1.27、95%CI:1.07~1.50) ●ガランタミン(OR:1.91、95%CI:1.58~2.36) ●リスペリドン(OR:1.47、95%CI:1.13~1.97) ●リバスチグミン(OR:2.02、95%CI:1.53~2.70) 著者らは「薬理学的治療は、BPSDの第1選択治療とすべきである。アリピプラゾール、ハロペリドール、クエチアピン、リスペリドンなどの抗精神病薬は有効性を示し、メマンチン、ガランタミン、ドネペジルなどの抗認知症薬は、中程度の効果が認められた。各薬剤の安全性に関しては、許容できると考えられる」としている。■関連記事認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化患者の性格と認知症タイプでBPSDを予測可能:旭川医大

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第12回 アナタはどうしてる? 術前心電図(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第12回:アナタはどうしてる? 術前心電図(前編)内科医であれば、外科系の先生方から術前心電図の異常について、一度はコンサルテーションされたことがありますよね? 循環器内科医なら日常茶飯事のこの案件、もちろん“正解”は一つじゃありません。前編の今回は、症例を通じて術前心電図の必要性について、Dr.ヒロと振り返ってみましょう。症例提示67歳、男性。変形性膝関節症に対して待機的手術が予定されている。整形外科から心電図異常に対するコンサルテーションがあった。既往歴:糖尿病、高血圧(ともに内服治療中)、喫煙:30本×約30年(10年前に禁煙)。コンサル時所見:血圧120/73mmHg、脈拍81/分・整。HbA1c:6.7%、ADLは自立。膝痛による多少の行動制限はあるが、階段昇降は可能で自転車にて通勤。仕事(事務職)も普通にこなせている。息切れや胸痛の自覚もなし。以下に術前の心電図を示す(図1)。(図1)術前の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを2つ選べ1)洞(性)徐脈2)左軸偏位3)不完全右脚ブロック4)(第)1度房室ブロック5)左室高電位(差)解答はこちら3)、5)解説はこちら術前心電図でも、いつも通りに系統的な心電図の判読を行いましょう(第1回)。1)×:R-R間隔は整、P波はコンスタントで、向きも“イチニエフの法則”に合致しますから、自信を持って「洞調律」です(第2回)。心拍数なら“検脈法”が簡便です。左半分(肢誘導)のみ、あるいは左右全体(肢誘導・胸部誘導)で数えても60/分ですから、「徐脈」基準を満たしません。Dr.ヒロ的な“境界線”は「50/分」でしたね。2)×:QRS電気軸は、“スパイク・チェック”にて、QRS波の「向き」を確認するのでした(第8回)。I、II、aVF誘導いずれも上向き(陽性)で、軸偏位はありません(正常軸)。ちなみに、以前紹介した“トントン法Neo”だと、「+40°」と計算されます(TPは、III [+120°]と-aVL [+150°]の間で前者よりの「+130°」)。3)○:典型的ではないですが、一応「不完全右脚ブロック」でいいでしょう。V1誘導の特徴的な「rSr'型(r<r')」と、イチエルゴロク(とくにI、aVL、V5)でS波が軽めに“主張”する感じです(Slurという)。QRS幅が0.12秒(3目盛り)以内なら、“不完全”という言葉を冠します(自動診断でQRS幅は0.102秒です)。4)×:「(第)1度房室ブロック」はPR(Q)間隔が延長した所見であり、“バランスよし!”の部分でチェックします。P波とQRS波の距離はちょい長め(≒0.20秒)ですが、これくらいではそう診断しません(目安:0.24秒以上)。「PR(Q)延長」との指摘にとどめるべき範疇でしょうか。5)○:QRS波の「高さ」は“高すぎ”ですね。具体的な数値も知っていて損はないですが、V4~V6あたりの誘導、とくにゴロク(V5、V6)のR波が突き抜けて直上の誘導に突き刺さる“重なり感”にボクはビビッときます(笑)。加えて、軽度ですがII、V4~6誘導に「ST低下」があり、高電位所見とあわせて「左室肥大(疑い)」とジャッジしたいものです。【問題2】術前心電図(図1)の意義について考察せよ。解答はこちら意義:耐術性や心合併症リスク評価の観点では「低い」解説はこちら非心臓手術の術前検査で何をどこまで調べるか? 心電図に限らず、これは全ての検査に言えることなので、純粋な心電図の読みから少し離れてお話しましょう。非心臓手術における術前検査に関するガイドラインは、米国では10年以上前*1、2から、そして最近ではわが国でも欧米のものを参考に作成*3されています。これらのガイドラインによると、今回のように日常生活や仕事などで特別な症状もなく十分に“動ける”ケースの場合、心電図検査のみならず、術前心血管系評価そのものが「適応なし」とされます。従って、心電図に「意義」を求めるのは“筋違い”なのかもしれません。ただ、現実はどうでしょう? 皆さんの病院の診療はガイドライン通りに行われていますか…? おそらく「NO」なのではないでしょうか?欧米では、こうした“見なくて良かった”心電図異常のコンサルト、手術の対象疾患とは無関係な心臓の追加検査が、コスト的にムダとみなされています。これは、検査技師やナースにも無駄な仕事をさせているともとらえることができますよね?*1:Fleisher LA, et al.Circulation.2014;130:e278-333.*2:Feely MA, et al.Am Fam Physician.2013;87:414-8.*3:日本循環器学会ほか:非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン2014年改訂版.(注:*1は2019年1月に一部改訂)循環器内科医・内科医にとって、外科医からの術前心電図のコンサルテーションは非常によくあります。実際に、日本の病院では、非心臓手術をする前に心電図を“(ほぼ)全例”やっているのではないでしょうか。そんな状況下で、術前心電図をすべきか否かを論じるのは正直ナンセンスな気もします。心電図検査をすること自体に、一見、悪いことなんて見当たりません。採血の痛みもレントゲンの被曝もない安全・安心な検査ですから。前述のガイドライン*1でも、低リスク手術でなければ心電図検査は年齢を問わず“考慮”(considered)となっています(ただし、膝手術を低リスクと見なす文献もあり)。ほかにも、「65歳以上」なら心電図を“推奨”(recommended)、今回のように「糖尿病」や「高血圧」を有するなら“考慮”(considered)とする文献もあります。「よく調べてもらっている」という患者さん側のプラスな印象も相まって、わが国の医療・保険制度上では、オーダーする側の医師のコスト意識も、諸外国に比べて断然低いと想像できます。“ルーチンでやっちゃえ”的な発想が根付くのにも納得です。でも、本当にそうでしょうか?少し古いレビューですが、次の表を見て下さい(図2)。(図2)ルーチン心電図の検査意義画像を拡大する既往歴や動悸・息切れ、胸痛などの心疾患を疑う思わせぶりな自覚症状があってもなくても、あまり深く考えずに術前に“ルーチン”で心電図検査をすると、4.6~31.7%に“異常”が見つかります。中央値は12.4%で、これは実に8人に1人の割合です。どうりで術前コンサルトが多いはずです。もしも、何も考えずに自動診断のところに何か所見が書いてあったら、循環器(内科)に相談しておこう、という外科医がいたとしたら、ボクたちの“通常業務”も圧迫しかねない“迷惑な相談”です(いないと信じたい)。でも、実際には臨床的意義のある心電図所見は約3分の1の4.6%、そして驚くなかれ、治療方針が変わったのは全体の0.6%なんです!より具体的に言うと、仮に200人の非心臓手術を受ける患者さんに、盲目的に術前心電図をオーダーすると、約25人に何らかの自動診断による所見があります。でも、治療方針に影響を与えるような重大な結果があるのはせいぜい1人。つまり大半の24人には大局に影響しない、ある意味“おせっかい”な指摘なんです。自分の診療を振り返ってみても、確かにと納得できる結果です。心電図をとってもデメリットはないと言いましたが、たとえば癌で手術を受けるだけでも不安な患者さんに、心電図が余計な“心配の種”になっていたら本末転倒だと思いませんか?今回の67歳男性も整形外科で膝の手術を受けるわけですが、心疾患の既往やそれを疑うサインもない中で、なかば“義務的”に心電図検査を受けたがために、「不完全右脚ブロック」と「左室肥大(疑い)」という“濡れ衣”を着せられようとしています。これはイカン。“ボクたちの仕事増やすな”という冗談は置いといて、今回、ボクが皆さんに投げかけたいテーゼはこれです。緊急性を要さない心電図異常、とくに「波形異常」の術前コンサルトの場合、循環器内科医(または内科医)のとるべきスタンスは…1)心電図異常=心臓病とは限らない2)今の心臓の状態は、今回の手術を優先して問題ないので、追加検査は原則必要ないと言ってあげること。これが非常に大事です。しいて言えば、所見の重症度や外科医の意向などから、せいぜい心エコー検査を追加するくらいでしょうか。この辺は一様ではなく、病院事情やコンサルタントの裁量で決めることになろうかと思います。ボクなりのコメント例を示します。「今回は手術を受けるために心電図検査を受けてもらいました。○○さんの検査結果には多少の所見がありましたが、ほかの人でもよくあることです。心臓病の既往や疑いもないですし、普段も自覚症状がないようなので手術には影響のないレベルです。必要に応じて、手術が済んでから調べても問題ないのですが、外科の先生の希望もあるため、念のためエコー検査だけ受けてもらえませんか?」患者を安心させ、コンサルティ(外科医)の顔もつぶさず、かつ病院の“慣習”にも逆らわない“正解”は様々でしょう。けれど、このような内容を知っているだけで対応も変わってくるのではないでしょうか。今回は、ルーチン化している術前検査の意義について、心電図を例に提起してみました。次回(後編)も引き続き、術前心電図をテーマに一歩進んだ異常所見の捉え方についてお伝えします。お楽しみに!Take-home Messageルーチンの術前心電図では高率に異常所見が見つかるが、大半は精査・急な処置ともに不要!【古都のこと~夕日ヶ浦海岸~】本連載では、京都市内ないし近郊の名所をご紹介してきましたが、今回は少し遠出します。おとそ気分覚めやらぬ1月初旬、京丹後市の夕日ヶ浦(浜詰)海岸を訪れました。京都縦貫自動車道を使って片道3時間(往復300km)の道のりですが、立派に府内です。春すら感じてしまう天候、はるかな水平線、海、空、そして数km続く白浜…。そこには、前年に訪れた際の小雨降る青黒い日本海とは“別の顔”がありました。“何をそんな小さなコト・モノ・ヒトにこだわっているの?”日本屈指のサンセット・ビーチのダイナミックなパノラマビューを眺めれば、誰でもそんな声が聞こえるはず。かに料理に舌鼓を鳴らし露天風呂につかれば、至高の休日です。

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第5回 糖尿病患者とフレイル・ADL【高齢者糖尿病診療のコツ】

第5回 糖尿病患者とフレイル・ADLQ1 実際、糖尿病患者でどのようにフレイルを評価しますか?高齢糖尿病患者ではフレイル・サルコペニア、手段的/基本的ADL、視力、聴力などの身体機能を評価することが大切です。その中で、フレイルは要介護になることを防ぐという意味で重要な評価項目の1つでしょう。フレイルは加齢に伴って予備能が低下し、ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態と定義されます(図1)。本邦ではフレイルは健康と要介護の中間の状態とされていますが、海外では要介護を含む場合もあります。運動や食事介入によって一部健康な状態に戻る場合があるという可逆性も、フレイルの特徴です。もう1つの大きな特徴は多面性で、身体的フレイルだけでなく、認知機能低下やうつなどの精神・心理的フレイル、閉じこもりなどの社会的フレイルも含めた広い意味で、フレイルを評価することが大切です。フレイルにはさまざまな指標がありますが、ここでは大きく分けて3つのタイプを紹介します。1つ目は身体的フレイルで、評価法としてCHS基準があります。この基準はL.P.Friedらが提唱したもので、体重減少、疲労感、筋力低下、身体活動量低下、歩行速度低下の5項目のうち3項目以上当てはまる場合をフレイルとします。体重減少は低栄養、筋力低下と歩行速度低下はサルコペニアの症状なので、Friedらによる身体的フレイルは、低栄養やサルコペニアを含む概念とも言えます。本邦ではCHS基準のそれぞれの項目のカットオフ値や質問を修正したJ-CHS基準があります(表1)。2つ目はdeficit accumulation model(障害蓄積モデル)によるフレイルで、高齢者に多い機能障害や疾患の集積によって定義されます。36項目からなるFrailty Indexが代表的な基準です。障害が多く重なることで予備能が低下し、死亡のリスクが大きくなるという考えに基づいて作成されていますが、項目数が多く、臨床的に使いにくいのが現状です。3つ目は高齢者総合機能評価(CGA)に基づいたフレイルであり、身体機能、認知機能、うつ状態、低栄養などを総合的に評価した結果に基づいて評価するものです。本邦では介護予防検診で使用されている「基本チェックリスト」がCGAに基づいたフレイルといえるでしょう。ADL、サルコペニア関連、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知、うつなどの25項目を評価し、8項目以上当てはまる場合をフレイルとします1)(表2)。画像を拡大する(表上部)画像を拡大する(表下部)外来通院の高齢糖尿病患者でまず簡単に実施できるのはJ-CHSでしょう。基本チェックリストを行うことができれば、広い意味でフレイルの評価ができます。基本チェックリストを行うのが難しい場合にはDASC-8を行って、(高齢者糖尿病の血糖コントロール目標における)カテゴリーIIの患者を対象にフレイル対策を行うという方法もあります(第4回参照)。Q2 糖尿病とフレイル・ADL低下の関係、危険因子は?糖尿病患者は、高齢者だけでなく中年者でもフレイルをきたしやすいことがわかっています。糖尿病がない人と比べて、糖尿病患者ではフレイルのリスクが約5倍、プレフレイルのリスクも約2.3倍と報告されています2)。また、糖尿病患者では手段的ADL低下を1.65倍、基本的ADL低下を1.82倍きたしやすいというメタ解析結果があります3)。高齢糖尿病患者では、特に高血糖、重症低血糖、動脈硬化性疾患の合併がフレイルの危険因子として重要です。HbA1c 8.0%以上の患者はフレイル、歩行速度低下、転倒、骨折を起こしやすくなります(図2)。もう一つ重要なことは、糖尿病にフレイルを合併すると死亡リスクが大きくなることです。点数化して重症度が評価できるフレイルでは、フレイルが重症であるほど死亡のリスクが高まることがわかっています。英国の調査では、糖尿病にフレイルを合併した患者では平均余命(中央値)は23ヵ月という、極端な報告もあります4)。Q3 フレイルを合併した患者への運動療法、介入のタイミングや内容をどうやって決めますか?フレイルがあるとわかったら、運動療法と食事療法を見直します。運動療法については、まず身体活動量が低下していないかをチェックします。家に閉じこもっていないか、家で寝ている時間が多くないかを質問し、当てはまる場合は坐位または臥位の時間を短くし、外出の機会を増やすように助言をすることが大切です。フレイル対策で有効とされているのが、レジスタンス運動と多要素の運動です。レジスタンス運動は負荷をかけて筋力トレーニングを行うものです。市町村の運動教室、介護保険で利用可能なデイケア、ジムでのマシントレーニング、椅子を使ってのスクワット、ロコトレ、ヨガ、太極拳などがあり、エルゴメーターや水中歩行などもレジスタンス運動の要素があります。これらは少なくとも週2回以上行うことを勧めています。多要素の運動は、レジスタンス運動ができないフレイルの高齢者に対して、ストレッチ運動から始まり、軽度のレジスタンス運動、バランス運動、有酸素運動を組み合わせて、レジスタンス運動の負荷を大きくしていく運動です。この多要素の運動も身体機能を高め、フレイル進行予防に有効であるとされています。Q4 フレイルを合併した患者への食事療法、エネルギーアップのコツや腎機能低下例での対応を教えてくださいフレイルを考慮した食事療法は十分なエネルギー量を確保し、タンパク質の摂取を増やすことがポイントです。欧州栄養代謝学会(ESPEN)では高齢者の筋肉の量と機能を維持するためには実体重当たり少なくとも1.0~1.2g/日のタンパク質をとることが推奨されています5)。つまり、体重60㎏の人は70g/日のタンパク質摂取が必要になります。フレイルのような低栄養または低栄養リスクがある場合には、さらに多く、体重当たり1.2~1.5g/日のタンパク質をとることが勧められます。フレイルがある場合、腎症3期まではタンパク質を十分にとり、腎症4期では病状によって個別に判断するのがいいと思います。腎機能悪化の速度が速い場合や高リン血症の場合はタンパク質制限を優先し、体重減少、筋力低下などでフレイルが進行しやすい状態の場合はタンパク質摂取を増やすことを優先させてはどうかと考えています。高齢者は肉をとることが苦手な場合もあるので、魚、乳製品、卵、大豆製品などを組み合わせてとることを勧めます。また、タンパク質の中でも特にロイシンの多い食品、例えば「魚肉ソーセージを一品加える」といった助言もいいのではないでしょうか。朝食でタンパク質を必ずとるようにすると、1日の摂取量を増やすことにつながります。エネルギー量は従来、高齢者は体重×25~30kcalとして計算することが多かったと思いますが、フレイル予防を考えた場合、体重当たり30~35kcalとして十分なエネルギー量を確保し、極端なエネルギー制限を避けることが大切です。例えば体重50㎏の女性では、1,600kcalの食事となります。Q5 フレイルを合併した糖尿病患者への薬物療法、考慮すべきポイントは?フレイルがある糖尿病患者の薬物療法のポイントは1)低血糖などの有害事象のリスクを減らすような選択をする2)フレイルの原因となる併存疾患の治療も行う3)服薬アドヒアランス低下の対策を立てることです。特に重症低血糖には注意が必要で、フレイルだけでなく認知機能障害、転倒・骨折、ADL低下、うつ状態、QOL低下につながる可能性があります。したがって、フレイルの患者では低血糖を起こしにくい薬剤を中心とした治療を行います。メトホルミンやDPP-4阻害薬などをまず使用します。SU薬を使用する場合は、できるだけ少量、例えばグリクラジド10~20㎎/日で使用します。フレイルの患者では、体重減少をきたしうるSGLT2阻害薬や高用量のメトホルミンの使用には注意を要します。特に腎機能は定期的にeGFRで評価し、結果に応じて、メトホルミンやSU薬の用量を調整する必要があります。SU薬はeGFR45mL/分/1.73m2未満で減量、eGFR30mL/分/1.73m2未満で中止します。フレイルの糖尿病患者は心不全、COPD、PADなど複数の併存疾患を有していることが多く、それがフレイルの原因となっている場合もあります。したがって、フレイルの原因となる疾患を治療することも大切です。心機能、呼吸機能、歩行機能を少しでも改善することが、フレイルの進行防止につながります。また、軽度の認知機能障害を伴うことも少なくなく、服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。多剤併用も問題となります。両者は双方向の関係があると考えられており、併存疾患の多さや運動療法の不十分さなどが多剤併用の原因となりえますが、多剤併用がフレイルにつながる可能性もあります。したがって、こうした患者では治療の単純化を行うことが必要です。服薬数を減らすことだけでなく、服薬回数を減らすことや服薬のタイミングを統一することも単純化の手段として重要です。例えば、α-GIやグリニド薬を使用する場合には、すべての内服薬を食直前に統一するようにしています。ADL低下や認知症がある場合には、重症低血糖のリスクが高いので、減量・減薬を考慮すべき場合もあります。Q6 他にどのような治療上の注意点がありますか?フレイルがある患者では、認知機能障害、手段的ADL低下、身体活動量低下、うつ状態、低栄養、服薬アドヒアランス低下、社会的サポート不足などを伴っている場合が少なくありません。したがって、状態を包括的に評価できるCGAを行い、その結果に基づき、運動/食事/薬物療法だけでなく、社会的サポートを行うことが大切になります。介護保険を申請し、要介護と認定されれば、デイケアなどのサービスを受けることもできます。認定されない場合でも、老人会、地域の行事、講演会などの社会参加を促して、閉じこもりを防ぐことが社会的なフレイルを防ぐために重要だと考えています。1)Satake S, et al.Geriatr Gerontol Int.2016;16:709-715.2)Hanlon, et al. Lancet Public Health. 2018 Jun 13. [Epub ahead of print]3)Wong E et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2013 ;1: 106–14.4)Hubbard RE, et al. Diabet Med. 2010 ;27:603-606.5)Deutz NE, et al.Clin Nutr 2014;33:929-936.6)Kalyani RR, et al. J Am Geriatr Soc. 2012;60:1701-7.7)Park SW et al. Diabetes. 2006;55:1813-8.8)Yau RK, et al. Diabetes Care. 2013;36:3985-91.9)Schneider AL et al. Diabetes Care. 2013;36:1153-8.

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入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入

 多くの患者において入院は不眠症の原因となり、通常は対症療法で治療が行われる。しかし、催眠鎮静薬の誤った使用は、とくに高齢入院患者において合併症と関連している。この合併症には、めまい、転倒、過鎮静が含まれる。このような潜在的な危険性のため、とくに高齢者においては、不眠症に対する催眠鎮静薬の広範な使用は、多くの病院で推奨されていない。サウジアラビア・King Abdulaziz University Faculty of PharmacyのAisha F. Badr氏らは、処方パターンの検討および評価を行い、地域病院における日々の薬剤師介入を通じた催眠鎮静薬の使用最適化について検討を行った。Saudi Pharmaceutical Journal誌2018年12月号の報告。 本研究は、前後比較研究として催眠鎮静薬の使用や合併症発症などについて、薬剤師による介入前と介入後で比較を行った。催眠鎮静薬の使用に関するデータを2ヵ月間レトロスペクティブに収集し、分析のために100例の患者サンプルをランダムに選択した。2ヵ月間のフォローアップでは、薬剤師1名が日々の処方を検討し、必要に応じて不要薬の中止や催眠鎮静薬の新規処方の勧告を行った。介入前後における結果は、患者の人口統計学的要因の違い、複数の催眠鎮静薬の処方、合併症の記録について比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・薬剤師の介入により、97例の患者の25%が催眠鎮静薬を中止した。・複数の催眠鎮静薬を投与されている患者数は、介入後のほうが介入前よりも有意に少なかった(15例 vs.34例、p=0.0026)。・合併症の発生率は、介入前後で有意な差は認められなかった(過鎮静:p=0.835、転倒:p=0.185、せん妄:p=0.697)。 著者らは「救命救急を除く入院患者において、催眠鎮静薬の使用は広まっている。また、多くの患者が複数の催眠鎮静薬を服用している可能性もあり、潜在的な問題が蓄積する可能性がある。薬剤師介入により、催眠鎮静薬を処方されている入院患者の25%が使用を中止し、複数の催眠鎮静薬使用患者も有意に減少した。入院患者に対する不必要な催眠鎮静薬の使用を避け、薬剤師によるモニタリングが最適化されるよう、さらなる努力を行うべきである」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデートメラトニン使用でベンゾジアゼピンを簡単に中止できるのか

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第10回 カラダを温める食べ方【実践型!食事指導スライド】

第10回 カラダを温める食べ方医療者向けワンポイント解説カラダを温めることは、寒い冬の中で快適に毎日を送るための重要なポイントです。血流が悪くなると、代謝量が落ちる原因になるばかりか、冷えることで、「外出が億劫になる」「部屋の中でじっとして動かない」など活動量も落ちていきます。その結果、体重増加や食べ過ぎなどにつながってしまいます。また、カラダが冷えると筋肉も固くなり、けがや転倒のきっかけにもなります。寒い冬こそ代謝量や活動量が上がるよう、カラダを温める食べ方を意識してもらいましょう。以下ポイントについて解説をします。■ポイント1:肉や魚を食べる食事を摂取すると、消化の際に熱が産み出され、その一部が体熱となって消費されます。その結果、食事の後はカラダが温かくなり、安静時においても代謝量が増えます。これを『食事誘発性熱産生』(DIT:Diet Induced Thermogenesis)と言います。栄養素によって、このエネルギー量は異なり、タンパク質のみ摂取の場合は、摂取エネルギーの約30%、糖質のみ摂取では約6%、脂質のみ摂取では約4%と言われています。つまり、肉や魚、卵、大豆製品といったタンパク質の摂取は、ほかの栄養素と比べてカラダを温める働きが強いと言えます。また、筋肉量を増やすと体温はより高まるので、タンパク質の中でも脂肪が少なく、筋肉を作るのに適した栄養成分で組成されているヒレ肉や赤身肉、魚、卵などを、毎食意識して食べてもらうのが良いでしょう。■ポイント2:温かい汁物を食べる温かい汁物や食物の摂取には、カラダを直接温める働きがあります。とくに汁物など液状のものは、喉から胃に流れる過程で温かさを長く感じることができます。また、胃は冷たいものが入ると収縮し、動きが緩慢になりますが、温められることで動きが活発になり、消化促進にもつながります。■ポイント3:ショウガを食べるショウガの成分には6-ジンゲロール、6-ショウガオール、ジンゲロンなどがあります。生の状態で多く含まれる6-ジンゲロールを加熱または乾燥させることで、6-ショウガオールへ変化します。6-ショウガオールは内側からカラダを温める働きがあるので、スープや味噌汁など汁物や炒め物に加えるなどの加熱調理による食べ方を意識すると、より効果的です。また、残ったショウガをスライスして、乾燥させておくと無駄なく利用できるのでおすすめです。■ポイント4:辛い料理を食べるカプサイシンは、末梢血管を広げ、血流を改善する働きが期待できます。血流がスムーズになることで、指先やつま先など末端の循環を高め、酸素や栄養素の運搬を促し、カラダを温める働きがあります。辛い料理を食べることも良いですが、苦手な方は、炒め物や煮物に輪切り唐辛子を少し加える、うどんなどに七味唐辛子や一味唐辛子をふるなど、一手間加えてみることもおすすめです。■ポイント5:生野菜より茹で野菜野菜は水分を多く含むため、生野菜の多量摂取は、冷たい水分を摂取し、カラダを冷やす要因となります。「生野菜を食べないと、ビタミンやミネラルが摂取できない」と考える方も多いですが、茹で野菜でもビタミンやミネラルは摂取できます。生野菜から流出するのは水溶性のビタミンやミネラルの一部であり、すべてがなくなるわけではありません。刻んで水につけた葉物からは、ビタミンCが約50%減少するというデータもありますが、50%は残存します。生野菜はかさがあるため、サラダでは大量に食べるのは難しいです。しかし、茹でることで、かさが減り、一度に食べられる量が増えるので、かえって効率的にビタミンやミネラルが摂取できます。また、ビタミンやミネラルの流出を減らすには、生で食べる場合は“洗ってから切る”、加熱して食べる場合は“茹でてから切る”がポイントです。カラダを温めることは、環境整備や運動だけでなく、食事でも対策ができます。『寒い時期こそ、カラダを温めることを意識し、活動量を上げましょう』と、患者さんにお伝えすると良いでしょう。

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高齢者の肥満診療はどうすべきか

 2018年12月18日に一般社団法人 日本老年医学会(理事長:楽木 宏実氏)は、同会のホームページにおいて『高齢者肥満症診療ガイドライン2018』(作成委員長:荒木 厚氏)を公開した。 本ガイドラインは、同会が作成方針を打ち出している「高齢者生活習慣病管理ガイドライン」、すなわち 「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「肥満症」のガイドラインの第4弾にあたり、日本肥満学会の協力を得て作成されたものである。作成では既刊の『肥満症診療ガイドライン2016年版』を参考に、認知症・ADL低下の観点から新たにクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビューを実施したものとなっている。 17のCQで肥満症診療に指針 ガイドラインでは、「肥満または肥満症の診断」「肥満症の影響」「肥満症の治療」と全体を3つに分け、各項目でCQを設定している。とくに「肥満症の影響」は厚く記載され、肥満と認知症リスク、運動機能低下、循環器疾患との関係が記されている。 具体的に「肥満または肥満症の診断」では、肥満症の特徴について「高齢者ではBMIが体脂肪量を正確に反映しないことが少なくないこと」「BMIよりもウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比が死亡リスクの指標となること」「内臓脂肪が加齢と共に増加すること」などが記されている。 「肥満症の影響」では、「高齢期の認知症のリスク」について、「中年期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクであるので注意(推奨グレードA)」とする一方、「高齢者の肥満は認知症発症リスクとはならず、認知症発症リスクの低下と関連する」としている。また、「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べ、ADL低下・転倒・骨折、死亡のリスクとなるか」では、「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べてよりADL低下・転倒・骨折、死亡をきたしやすいので注意する必要がある(推奨グレードA)」とし注意を促している。 「肥満症の治療」では、「生活習慣の改善で体重、BMIを是正することでADLや疼痛、QOLは改善するか」について、「ADL低下、疼痛、QOLを改善することができる(推奨グレードB)」としているほか、「肥満症を治療すると認知機能は改善するか」では、「認知機能は改善する可能性がある(推奨グレードB)」などが記されている。 本ガイドラインの詳細については、同会のホームページで公開されているので参照にしていただきたい。

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脳梗塞後に抗うつ薬を内服しても機能向上は得られない、うつにはならない、骨折は増える(解説:岡村毅氏)-984

 脳梗塞後にはうつを発症しやすく(脳梗塞ではない同等の身体機能障害と比較しても多い)、脳梗塞後うつ(post-stroke depression)と言われるが、リハビリを阻害したり、自傷・自殺の原因となることもある重大な病態である。 これとは別に、脳梗塞後に抗うつ薬を内服すると、その神経保護作用から運動機能の向上がみられるという報告もある。 こういった問題に対して大規模研究で果敢に挑んだのが今回のFOCUS研究である。使用された抗うつ薬はSSRIの1つfluoxetineである。勘の鋭い人はおわかりかもしれないが、fluoxetineは海外における抗うつ薬の乱用や病気喧伝(なんでも病気のせいにして薬を売ろうとすること)の文脈で批判にさらされている現代文明を象徴する薬剤の1つである。商品名はプロザックといい、『Prozac Nation』という本も有名だ。なお、わが国では販売されていない。とはいえ、多く使われるのには理由があり、はっきり言って効果も有害事象も弱いため、このような対照研究で使われるのは合理的だろう。 3,000例以上の対象者を抗うつ薬内服と偽薬の2群に分けて6ヵ月以上みたが、残念ながらmodified Rankin Scaleにて測定した機能においては2群に差はない。 一方で、当たり前と言えば当たり前だが、脳梗塞後うつの発症は少ない。神経作用薬を投与する際に気を付けるべき痙攣や出血などは両群で差がない。さらに投与群では骨折が多いのだが、おそらく活動的になってリハビリに精を出したからかもしれない。SSRIによるふらつきのせいだ、あるいは骨が弱くなるんじゃないか、などという可能性だってゼロではないが、他の神経症状や転倒で差がないとなると、私ならリハビリが進んだためと考えるが…読者諸兄はいかがであろうか。 本論文を素直に読めば「抗うつ薬を内服しても生活機能面での効果はないのだから、予防的抗うつ薬投与は過剰だ」というものだ。一方で「脳梗塞後うつは生活の質に直結する重大な病態であり、予防できるのであれば内服しておけば安心だ」も理論上は残される。おそらく臨床現場では全例投与なんてことはありえないので、脳梗塞後うつの重大さを鑑みると少しでも兆候があれば早めに専門家にコンサルトする、あるいは治療を開始する、という文脈に依存した考え方をするべきだろう。

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日本人の血圧は意外とコントロールできていない

 生活習慣病のなかで最も罹患率の高い高血圧。これを治療するための有用な薬剤が普及し、世界的に治療率は改善している。ところが、日本人の高血圧のコントロール率はアジア諸国と比較してもまだまだ低く、高血圧パラドックスに陥っている。 2018年11月14日に日本心臓財団が主催する「高血圧パラドックスの解消に向けて‐脳卒中や認知症、心不全パンデミックを防ぐために必要なこととは?‐」が開催され、楽木 宏実氏(大阪大学大学院 医学系研究科老年・総合内科学 教授)が登壇した。日本の現状とAHA130/80のなぜ 命に直結するがん治療は常に注目の的である。しかし、高血圧もまた、高齢化に伴う心不全での死亡者が増加傾向にあり注目に値する。 「血圧値にはカットオフポイントが存在しない」と語る同氏は、EPOCH-JAPAN試験の血圧レベル別の心血管病死亡ハザード比と集団寄与危険割合(PAF)を示し、高血圧患者の心不全などによる死亡リスクの上昇について解説。このデータからも、どこからが血圧異常であるのかを区別することができず、治療対象の観点から「恣意的に高血圧の定義をしている」現状を指摘した。 日本と世界の血圧値の基準は、心血管病のリスクと治療介入の成績などを基に定義し、140/90と決められている。ところが、米国心臓病協会は昨年、基準変更を実施。世界基準から各値を10mmHgも下げ、“130/80mmHg以上を高血圧”と定義を改めた。これには、まだ分類を変えるほどの根拠の所在がそれほど明確ではないため、世界に衝撃を与えた。同氏は、「米国では降圧目標を原則130/80mmHg未満に改変した。一般にもわかりやすいように定義変更をしたと理解している」とコメント。「130~139/80~89mmHgの血圧カテゴリーを明確に“高血圧ステージ1”という表現にし、従来の高血圧基準である140/90mmHg以上は“高血圧ステージ2”という名称になった」ことも付け加えた。高血圧パラドックスへの対策 高血圧であることは、種々の疾患原因となり死亡リスクに結びつく。“日本での2007年の非感染性疾患および外因による死亡数への各種リスク因子の寄与(男女計)”のデータによると、喫煙に次いで高血圧の寄与は非常に高く、その数は11万人にも上るなど、心血管病への関連は圧倒的であった。また、心血管病が増加するとそれに伴い、脳血管疾患、認知症、骨折転倒など介護が必要となりうる状況に陥る。つまり、血圧管理を怠り続けると自覚症状がなかった状況から要介護状態へ転じてしまうのである。 そこで、高血圧抑制のために取り組むべき課題として、国民全体での血圧レベルの低下などが求められる。その成功事例には、食品表示においてNaから食塩相当量へ変更されたことがある。今ではお弁当などを購入してもひと目で塩分量がわかるようになったが、これは減塩委員会が企業に動きかけた結果である。食塩摂取量の低下もあって日本の高血圧有病率は女性では低下傾向を示し、男女ともに収縮期血圧の平均値が低下している。  今年9月には、伊藤 裕氏(慶應義塾大学腎臓・内分泌・代謝内科教授)を主導とする“高血圧学会みらい医療計画~JSH Future Plan~”が発表され、今後10年間で高血圧患者を500万人減らし、健康寿命を延伸させることが目標として示された。その実現に向け、医療システム、学術研究、社会啓発を3本の柱とし、活動が展開される予定だ。海外と日本では国民への啓発に差 米国では、国や米国心臓協会が主導となり国民向けの啓発ツールを多数排出している。これは、医療機関への受診とは別に、自身の血圧値やリスクを意識してチェックできる仕組みになっている。 日本の場合、意識付けができるのは医療機関受診者のみである。受診者には血圧手帳に血圧を記録することが勧められているが、同氏は、「一部には成績表の一種と勘違いして、良い血圧値だけを記録しているような場合もある」と述べ、「これを防ぐためにデジタル記録計の普及を目指す」とコメントした。 高齢化が進行する中、高齢者の高血圧に関する統合的レビュー論文が最近になって3編発表された。現在、同氏は高齢者の認知機能低下に配慮した最適な降圧療法の解明に取り組んでおり、「この分野に関する研究が不足するなか、リスクベネフィットに加えてコストベネフィットにも言及できる研究成果を期待したい」と締めくくった。■参考日本心臓財団■関連記事減塩したい患者さん向け、単身者でもできる作り置きレシピ発表

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第7回 意識障害 その6 薬物中毒の具体的な対応は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)ABCの安定が最優先! 気管挿管の適応を正しく理解しよう!2)治療の選択は適切に! 胃洗浄、血液浄化の適応は限られる。3)検査の解釈は適切に! 病歴、バイタルサイン、身体所見を重視せよ!【症例】42歳女性の意識障害:これまたよく遭遇する症例42歳女性。自室のベッド上で倒れているところを、同居している母親が発見し、救急要請。ベッド脇には空のPTP(press through pack[薬のシート])が散在していた。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:200/JCS血圧:102/58mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:18回/分 SpO2:97%(RA)体温:36.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+この症例、誰もが急性薬物中毒を考えると思います。患者の周りには薬のシートも落ちているし、おそらくは過量に内服したのだろうと考えたくなります。急性薬物中毒の多くは、経過観察で改善しますが、ピットフォールを理解し対応しなければ、痛い目に遭いかねません。「どうせoverdose(薬物過量内服)でしょ」と軽視せず、いちいち根拠をもって鑑別を進めていきましょう。重度の意識障害で意識することは?(表1)このコーナーの10's Ruleの「1)ABCの安定が最優先!」を覚えているでしょうか。重度の意識障害、ショックでは気管挿管を考慮する必要がありました。意識の程度が3桁(100~300/JCS)と重度の場合には、たとえ酸素化の低下や換気不良を認めない場合にも、確実な気道確保目的に気管挿管を考慮する必要があることを忘れてはいけません。薬物中毒に伴う重度の意識障害、出血性ショック(消化管出血、腹腔内出血など)症例が典型的です。考えずに管理をしていると、目を離した際に舌根沈下、誤嚥などを来し、状態の悪化を招いてしまうことが少なくありません。来院時の酸素化や換気が問題なくても、バイタルサインの推移は常に確認し、気管挿管の可能性を意識しておきましょう。●Rule1 ABCの安定が最優先!●Rule8 電解質異常、アルコール、肝性脳症、薬物、精神疾患による意識障害は除外診断!画像を拡大する薬物中毒のバイタルサイン内服した薬剤や飲酒の併用の有無によってバイタルサインは大きく異なります。覚醒剤やコカインなど興奮系の薬剤では、血圧や脈拍、体温は上昇します。それに対して、頻度の高いベンゾジアゼピン系薬に代表される鎮静薬ではすべて逆になります。飲酒もしている場合には、さらにその変化が顕著となります。瞳孔も重要です。興奮系では一般的に散瞳し、オピオイドでは縮瞳します。救急外来では明らかな縮瞳を認める場合には、脳幹病変以外にオピオイド、有機リン中毒を考えます。「目は口ほどにものを言う」ことがあります。自身で必ず瞳孔所見をとることを意識しましょう。薬物中毒の基本的な対応は?急性薬物中毒の場合には、意識障害が遷延することが少なくないため、内服内容、内服時間をきちんと確認しましょう。内服してすぐに来院した場合と、3時間経過してから来院した場合とでは対応が大きく異なります。薬物過量内服においても初療における基本的対応は常に一緒です。“Airway、Breathing、Circulation”のABCを徹底的に管理します。原因薬剤が判明している場合には、拮抗薬の有無、除染・排泄促進の適応を判断します。拮抗薬など特徴的な治療のある中毒は表2のとおりです。最低限これだけは覚えておきましょう。除染や排泄促進は、内服内容が不明なときにはルーチンに行うものではありません。ここでは胃洗浄の禁忌、血液透析の適応を押さえておきましょう。画像を拡大する胃洗浄の禁忌意識障害患者において、確実な気道確保を行うことなしに胃洗浄を行ってはいけません。誤嚥のリスクが非常に高いことは容易に想像がつくでしょう。また、酸やアルカリを内服した場合も腐食作用が強く、穿孔のリスクがあるため禁忌です。胃洗浄を行い、予後を悪くしてはいけません。意識状態が保たれ、内服内容が判明している場合に限って行うようにしましょう。もちろん薬物が吸収されてしまってからでは意味がないため、原則内服から1時間を経過している場合には適応はないと考えておいてよいでしょう。CTを撮影し薬塊などが胃内に貯留している場合には、胃洗浄が有効という報告もありますが、薬物中毒患者全例に胸腹部CTを撮影することは現実的ではありません1)。エコー検査で明らかに胃内に貯留物がある場合には、考慮してもよいかもしれません。活性炭の投与もルーチンに行う必要はありません。胃洗浄の適応症例には、洗浄後投与すると覚えておけばよいでしょう。血液透析の適応となる中毒体内に吸収されたものを、体外に除去する手段として血液透析が挙げられますが、これもまたルーチンに行うべきではありません。多くの薬物は血液透析では除去できません。判断する基準として、分布容積と蛋白結合率を意識しましょう。分布容積が小さく、蛋白結合率が低ければ透析で除去しえますが、そういったものは表3のような中毒に限られます。診療頻度の高いベンゾジアゼピン系薬や非ベンゾジアゼピン系薬(Z薬)、三環系抗うつ薬は適応になりません。ベンゾジアゼピン系薬、Z薬の過量内服は遭遇頻度が高いですが、それらのみの内服であれば過量に内服しても、きちんと気道を確保し管理すれば、一般的に予後は良好であり透析は不要なのです。画像を拡大する薬物中毒の検査は?1)心電図心電図は忘れずに行いましょう。QT延長症候群など、薬剤の影響による変化を確認することは重要です。内服時間や意識状態を加味し、経時的に心電図をフォローすることも忘れてはいけません。以前の心電図の記録が存在する場合には、必ず比較し新規の変化か否かを評価しましょう。2)血液ガス酸素化や換気の評価、電解質や血糖値の評価、そして中毒に伴う代謝性アシドーシスを認めるか否かを評価しましょう。3)尿中薬物検査キットトライエージDOAなどの尿中薬物検査キットが存在し、診療に役立ちますが、結果の解釈には注意しなければなりません。陽性だから中毒、陰性だから中毒ではないとはいえないことを覚えておきましょう。偽陽性、偽陰性が少なくないため、病歴と合わせ、根拠の1つとして施行し、結果の解釈を誤らないようにしましょう。薬物中毒疑い患者の実際の対応“10's Rule”にのっとり対応することに変わりはありません。Ruleの1~4)では、重度の意識障害であるため、気管挿管を意識しつつ、患者背景を意識した対応を取ります。薬物過量内服患者の多くは女性、とくに20~50代です。また、薬物過量内服は繰り返すことが多く、身体所見では利き手とは逆の手にリストカット痕を認めることがあります。意識しておくとよいでしょう。バイタルサインがおおむね安定していれば、低血糖を否定し、頭部CTを撮影します。この場合には、脳卒中の否定以上に外傷検索を行います。薬物中毒の患者は、アルコールとともに薬を内服していることもあり、転倒などに伴う外傷を併発する場合があるので注意しましょう。また、採血では圧挫に伴う横紋筋融解症*を認めることもあります。適切な輸液管理が必要となるため、CK値や電解質、腎機能は必ず確認しましょう。アルコールの関与を疑う場合には、浸透圧ギャップからアルコールの推定血中濃度を計算すると、診断の助けとなります。詳細は、次回以降に解説します。*急性中毒の3合併症:誤嚥性肺炎、異常体温、非外傷性圧挫症候群急性薬物中毒の多くは、特異的な治療をせずとも時間経過とともに改善します。また、繰り返すことが多く、再来した場合には軽視しがちです。そのため、確立したアプローチを持たなければ痛い目をみることが少なくないのです。外傷や痙攣、誤嚥性肺炎の合併を見逃す、アルコールとともに内服しており、症状が遷延するなどはよくあることです。根拠をもって確定、除外する意識を常に持ちながら対応しましょう。症例の経過本症例では空のPTPの存在や40代の女性という背景から、第一に薬物過量内服を疑いながら、Ruleにのっとり対応しました。母親から病歴を聴取すると、来院3時間前までは普段どおりであり、その後患者の携帯電話の記録を確認すると、付き合っている彼氏とのメールのやり取りから、来院2時間ほど前に衝動的に薬を飲んだことが判明しました。内服内容もベンゾジアゼピン系の薬を中心としたもので致死量には至らず、採血や頭部CTでも異常がないことが確認できたため、モニタリングをしながら、家族付き添いの下、入院管理としました。時間経過とともに症状は改善し、翌日には意識清明、独歩可能となり、かかりつけの精神科と連携を取り、退院となりました。本症例は典型的な薬物中毒症例であり、基本的なことを徹底すれば恐れることはありません。きちんと病歴や身体所見をとること、バイタルサインは興奮系か抑制系かを意識しながら解釈し、瞳孔径を忘れずに確認すればよいのです。次回は、アルコールによる意識障害のピットフォールを、典型的なケースから学びましょう。1)Benson BE, et al. ClinToxicol(Phila). 2013;51:140-146.

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薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。地域薬局の薬剤師主導介入を検討するクラスター無作為化試験 本研究は、不適正処方の防止に関して、薬剤師主導の介入の有効性を評価する目的で、カナダ・ケベック州で行われたプラグマティックなクラスター無作為化臨床試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成による)。 2014年2月~2017年9月の期間に、地域の薬局を登録し、介入群または対照群に無作為に割り付け、2018年2月までフォローアップを行った。 対象患者は、年齢65歳以上で、高齢者における潜在的に適正ではない医薬品を定めたビアーズ基準(Beers criteria)に含まれる4種の薬剤(催眠鎮静薬、第1世代抗ヒスタミン薬、glyburide(グリベンクラミド)、選択的非ステロイド性抗炎症薬)のうち1剤を処方された者とし、69の地域薬局で登録が行われた。 介入群の薬剤師は、患者には、薬剤の中止・減量に関する患者教育用の小冊子を送るよう奨励された。同時に、担当医には、薬剤の中止・減量の推奨に関するエビデンスに基づく薬学的見解が記された資料を送付することが勧められた。対照群の薬剤師は、通常治療を行った。 34の薬局が介入群(248例)に、35の薬局が対照群(241例)に割り付けられた。患者、担当医、薬剤師、評価者には、アウトカムのデータはブラインドされた。主要アウトカムは、6ヵ月時の不適正処方の中止とし、処方の更新は薬局の薬剤管理記録で確認した。不適正処方のリスクが31%低減 全体の患者の平均年齢は75歳、66%(322例)が女性であった。23%(113例)が80歳以上で、27%(132例)がフレイルの基準を満たした。437例(89%)が試験を完遂した(介入群:219例[88%]、対照群:218例[91%])。 6ヵ月時に、不適正処方に該当しなかった患者の割合は、介入群が42.7%(106/248例)と、対照群の12.0%(29/241例)に比べ良好であった(リスク差:31%、95%信頼区間[CI]:23~38%)。 各薬剤における不適正処方の中止の割合は、催眠鎮静薬では介入群が43.2%(63/146例)、対照群は9.0%(14/155例)(リスク差:34%、95%CI:25~43%)、glyburideではそれぞれ30.6%(19/62例)、13.8%(8/58例)(17%、2~31%)、非ステロイド性抗炎症薬では57.6%(19/33例)、21.7%(5/23例)(35%、10~55%)であった。薬剤クラスの交互作用検定では有意な差はなかった(p=0.09)。抗ヒスタミン薬は症例数(12例)が少なく解析不能だった。 介入群では、処方中止と患者の年齢、性別、健康状態、フレイル、処方期間、薬剤数などのサブグループに関連は認めなかった。 また、介入群で6ヵ月のフォローアップが完遂された219例のうち、担当医に薬学的見解の資料が届けられたのは145例(66.2%)で、この集団の処方中止率は47.6%(69/145例)であったのに対し、担当医に資料が送られていなかった74例の処方中止率は39.2%(29/74例)であり、両群間に差はみられなかった(リスク差:8%、95% CI:-6~22%)。資料を送らなかった理由は、「患者の要望」「患者がすでに薬剤を中止していた」「別の伝達法がよいと思った」などさまざまだった。 入院を要する有害事象は報告されなかったが、催眠鎮静薬の漸減を行った患者の37.7%(29/77例)に離脱症状がみられた。 著者は、「今後、これら知見の一般化可能性の検討が求められる」としている。

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夜の南京町【Dr. 中島の 新・徒然草】(247)

二百四十七の段 夜の南京町全国140ほどの病院からなる国立病院機構では、国立病院総合医学会、略して「国病学会」というのを年に1回行っています。今年は神戸であったので、地元民として出席すべきではありましたが、結局参加したのは内輪の夜の懇親会だけ。なんとも本末転倒な状況となってしまいました。さて、その懇親会は神戸の南京町(なんきんまち)という中華街で行われました。南京町というのはJR元町駅の南側にある中華街です。東側の長安門と西側の西安門の距離をグーグルマップで測ると270メートルありました。南北は北側の元町商店街と南側の海榮門(南桜門)との間が130メートルほどです。地形的な理由で、神戸にあるものはなんでも横に長いのですが、ここも例外ではありませんでした。横浜の中華街に比べると規模ははるかに小さいのですが、ディープ感では負けません。夜に行ってみると中国語と怪しい日本語が飛び交っており、異国情緒たっぷりです。われわれの行った所は飲み放題で1人5,000円という安い店で、参加者には大変好評でした。参加者が酔っぱらうにつれ飛び出してきた話題の1つは、飛行機や新幹線でのドクターコールです。医師A「あれ何て言ったっけな、エスケープ何とかだよな」医師B「とにかく逃げ出せばいいんですよ」中島「それ、“Escape quickly.”じゃないですか?」医師A、B「そうだそうだ。中島先生はいつも逃げ出してんの?」中島「いやいや、僕は要領が悪くて捕まってしまうほうなんですよ」実際、ひき逃げ事故に遭遇して、救急車や警察を呼んだりしたことが覚えているだけでも2回くらいあります。もちろん救急車が来るまでは倒れている人の意識やバイタルを確認しなくてはなりません。通行人から「動かさない方がいいんじゃないですか?」とアドバイスされながら頑張ったのもいい思い出です。中島「確かAから始まってEまでありましたよね」「新・徒然草」の第105回で紹介した「救急の“裏”ABC」です。中島「まず、“Avoid the situation.”」一同「なるほど」「そのような状況に出くわすこと自体を避けよ」ってわけです。私もまだまだ修行が足りません。中島「次に“Behind the curtain.”」一同「ガッハッハ。まったくその通りだ」「カーテンの後ろに隠れておけ」とは名言です。情景が目に浮かんできますね。中島「それから“Call another doctor.”(ほかの医者を呼べ)」医師A「そうそう、俺なんかいても役に立たないからな」それ、堂々と言うことでもないと思うんですけど。中島「そして“Deny your responsibility.”(自分の責任はとことん否定せよ)」一同「素晴らしい! まさしくリスク・マネジメントの基本だ」中島「最後に“Escape quickly.”」一同「ワッハッハ。それが一番大切だよ。それにしても中島先生はよく知ってるねえ。ちゃんと実行してるんだ」いやいやいや、いつも逃げ遅れてるって言うてまんがな。そんなこんなで盛り上がった2時間。最後に中国語なまりの日本語を話すおばちゃんが出てきました。おばちゃん「お飲物、ラストオーダーです。何か要りますか?」医師C「じゃあ、俺、ホットウーロン茶をもらおうかな」おばちゃん「えっ、ホットウーロン茶?(怒)」確かにメニューにはホットウーロン茶というのがありました。僕も頼もうかと思ったくらいなのでよく覚えています。でもおばちゃんの「もう片づけ始めているのに、そんなややこしい物を注文するなよ」と言わんばかりの表情を察した東北人のC先生、素早く変更しました。医師C「じゃあ、あの、オレンジジュースでいいです」おばちゃん「は~い、オレンジジュース1つね(機嫌回復)」なんかよくある展開ですね。というわけで、もし読者の皆さんが神戸に行くことがあれば、是非、夜の南京町に行ってみてください。とはいえ、午後9時すぎに店の外に出たら、もう誰も通りを歩いていなかったので、あまり遅くならない時間の方がよろしいかと思います。最後に1句おばちゃんの 機嫌に客が 対応だ

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益と害を見極めてポリファーマシーを解消させる

 超高齢化社会に伴い多剤併用が問題視されているが、果たして何が原因なのだろうか。2018年11月6日にMSD株式会社が主催する「高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)に関する実態と不眠症治療の課題」について、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座教授)と池上 あずさ氏(くわみず病院院長)が登壇し、ポリファーマシーの原因と不眠症治療のあり方について語った。ポリファーマシーはなぜ起こり、何が問題なのか 多剤服用でも、とくに害をなすものをポリファーマシーと呼ぶ。そして、薬物有害事象、アドヒアランス不良など多剤に伴う諸問題だけを指すのではなく、不要な処方、過量・重複投与などあらゆる不適正処方を含む概念に発展している。 ポリファーマシーが高齢者で起こる理由は、年齢とともに疾患リスクが上昇するからであり、脳心血管疾患、生活習慣病、消化器や運動器などの併存疾患、そして老年症候群に対する処方薬剤の積み上がりが原因とされている。 秋下氏は、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が不眠症治療薬としても利用されている点を問題視しており、「患者は両者が同じ系統の薬剤であることを理解せずに、さまざまな医師に相談をもちかける。結果、重複して服用することになる」と、問題が起こる状況の例を示した。高齢者の多剤併用、どうやって何を減らすと良いのか 患者からの『なぜこれまで飲んでいた薬を減らすのか』という問いに対し、「きちんと説明できない医師が多い」と同氏は語る。こういう場合は、急性期から慢性期、外来から在宅へ移行するタイミングがチャンスだという。東大病院では、薬剤師が主導となり、入院時に“持参薬評価テンプレート”を用いて薬剤調整を実施している。6剤以上服用かつ7つの評価項目のいずれかに該当する場合は、調整対象となり、対象者の21%で薬剤の必要性が見直され、減薬に成功している。 また、さまざまな疾患で使用される抗コリン系薬剤は、認知症リスクを高める報告があるため、高齢者や認知機能が低下している患者において、同氏は「この種の薬剤の重複投与をなるべく避けるよう検討することが重要」と、注意を促した。“中止を前提”として不眠症治療薬を処方する 漫然と処方されがちな不眠症治療薬であるが、高齢者の場合は、服用時の転倒・骨折だけではなく、長期間の服用継続によるせん妄誘発や認知症リスクの増大、さらにはそれらが引き金となり、誤嚥性肺炎から死につながることもある。 不眠症には3つのタイプがあり、入眠困難が年齢と関係ないのに対し、中途覚醒や早朝覚醒は60歳以上になると増える傾向にある。これを踏まえ池上氏は、「夜間頻尿など患者の不眠原因を追求したうえで、“5時間以上眠れたらOK”、“無駄に布団にいない”よう指導する」など、服用中断への導き方を指南した。 また、糖尿病をはじめ生活習慣病に罹患している患者は、不眠症治療薬の服用率が高い。これに対し同氏は、「生活習慣病で病院に受診していると先生に不眠であることを訴えやすく、不眠症治療薬に手が届きやすい」と疾患以外の原因についても言及した。減薬には時間をかけることが大切 「ポリファーマシーに関する診療所医師と保険薬局薬剤師の意識調査」1)における、ポリファーマシーに対する減薬アプローチについて、医師は41.3%が関与していた。一方、服薬指導を行う立場である薬剤師の関与は7.2%であった。これについて秋下氏は、「ポリファーマシーの問い合わせを疑義照会と同じタイミングで行おうとしているのではないか。その場で減薬ができなくても、次やその次に減薬ができれば良いという感覚で問い合わせを行えば、もっとアプローチができるのではないか」と、医師への問い合わせにためらいをみせる薬剤師に対してアドバイスした。 池上氏は、「患者は不眠症治療薬を飲むうえで、“依存性があり止められなくなる”、“効果がなくなる(量が増える)”などの不安を抱え、本当は飲みたくない方が多い。患者一人ひとりの生活環境を把握し、コーヒーやお茶などカフェインを含む飲料は睡眠の4時間前にとるように指導するなど、患者に寄り添うことで減薬は可能である。しかし、減薬する際は、反跳性不眠などのリスクを考慮しながら、しっかり時間をかけて行ってほしい」と、減薬におけるリスクとベネフィットを説明した。 最後に、秋下氏は「レセプトデータ等の処方解析やエビデンス蓄積に努めていく」とし、池上氏は「不眠症も生活習慣病の一つと考え、睡眠衛生指導を行い、出口を見据えた不眠症薬物療法を実践する」と今後の方針や意気込みを示した。■参考日本老年学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015日本睡眠学会:睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン1)AMED長寿科学研究開発事業 平成28年度~29年度「高齢者の多剤処方見直しのための医師・薬剤師連携ガイド作成に関する研究」■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ待望の刊行 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」

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