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Ph陽性ALLの1次治療、減弱化学療法下のポナチニブvs.イマチニブ/JAMA

 新たに診断されたフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph陽性ALL)成人患者において、ポナチニブはイマチニブと比較し、強度減弱化学療法併用下で導入療法終了時の微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)率が有意に高く、優越性が認められた。安全性プロファイルはイマチニブと同等であった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのElias Jabbour氏らが、77施設で実施された第III相国際共同無作為化非盲検比較試験「PhALLCON試験」の結果を報告した。Ph陽性ALLの1次治療では、第1世代または第2世代のBCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性獲得による病勢進行が一般的であるが、ポナチニブはBCR-ABL1およびT315Iを含むすべての単一変異体を阻害する第3世代のチロシンキナーゼ阻害薬である。JAMA誌オンライン版2024年5月9日号掲載の報告。未治療Ph陽性ALL患者、ポナチニブ群またはイマチニブ群に2対1に無作為化 研究グループは、新たにPh陽性ALLと診断されたECOG PSが2以下の成人患者をポナチニブ(1日1回30mg)群またはイマチニブ(1日1回600mg)群に2対1の割合で無作為に割り付け、強度減弱化学療法と併用投与し、20サイクル終了後は各単剤投与を、有効性の減弱、許容不能な毒性発現または造血幹細胞移植(HSCT)の開始まで行った。 ポナチニブ群では、導入療法終了時以後、MRD陰性CRが得られた時点で15mgに減量し、MRD陰性が消失した場合は30mgに漸増した。なお、3サイクル終了時にMRD陰性CRが得られなかった患者は、試験治療を中止した。 主要評価項目は、寛解導入(3サイクル)終了時のMRD陰性CRで、BCR-ABL1≦0.01%(MR4)かつ4週以上の血液学的CRと定義した。 重要な副次評価項目は、無イベント生存期間(EFS)で、死亡、寛解導入療法終了時点までにCR未達、CRからの再発と定義された。MRD陰性CR率は34.4% vs.16.7% 2019年1月~2022年5月に、245例(年齢中央値54歳、女性133例[54.3%])が無作為化され、このうち中央検査にてp190/p210が確認された232例(ポナチニブ群154例、イマチニブ群78例)が主要評価項目の解析対象集団に含まれた。 追跡期間中央値20.1ヵ月(データカットオフ2022年8月12日)において、MRD陰性CR率はポナチニブ群34.4%(53/154例)、イマチニブ群16.7%(13/78例)であり、ポナチニブ群が有意に約2倍高かった(相対リスク:2.06[95%信頼区間[CI]:1.19~3.56]、リスク差:0.18[95%CI:0.06~0.29]、p=0.002)。 EFSについては、事前に規定されたイベント数に達しておらず、EFS中央値はポナチニブ群未到達、イマチニブ群29.0ヵ月であった。 有害事象の発現率はポナチニブ群とイマチニブ群で同程度であり、Grade3または4の試験治療下における有害事象(TEAE)はそれぞれ85.3%、87.7%、治療関連有害事象(TRAE)は65.6%および59.3%であった。閉塞性動脈イベントの発現率は低く、ポナチニブ群2.5%、イマチニブ群1.2%であった。

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未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet

 未治療・65歳以下のマントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、自家造血幹細胞移植(ASCT)+免疫化学療法へのイブルチニブ追加はASCT+免疫化学療法に対する優越性を示したが、ASCT後のイブルチニブの投与継続により有害事象が増加した。ドイツ・ミュンヘン大学病院のMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkが欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設で実施した無作為化非盲検第III相優越性試験「TRIANGLE試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「導入療法および維持療法にイブルチニブを追加することは、65歳以下のMCL患者の1次治療の一部とすべきで、イブルチニブを含むレジメンにASCTを追加するかどうかはまだ決定されていない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年5月2日号掲載の報告。治療成功生存期間(FFS)を評価 TRIANGLE試験の対象は、組織学的にMCLと確定診断された未治療の、Ann Arbor病期II~IV、測定可能な病変が1つ以上、Eastern Cooperative Oncology Groupのパフォーマンスステータスが2以下の、ASCTの適応がある18~65歳の患者であった。 研究グループは、被験者をASCT+免疫化学療法群(A群)、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群(A+I群)、免疫化学療法+イブルチニブ群(I群)の3群に、試験グループおよびMCL国際予後指標リスクで層別化し、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 3群とも導入免疫化学療法は、R-CHOP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)と、R-DHAP(リツキシマブ+デキサメタゾン+シタラビン+シスプラチン)またはR-DHAOx(リツキシマブ+デキサメタゾン+シタラビン+オキサリプラチン)を交互に6サイクル行った。A+I群およびI群ではR-CHOPサイクルの1~19日目にイブルチニブ(560mg/日経口投与)を追加した。その後、A群およびA+I群ではASCTを施行し、A+I群ではASCT後に、I群では導入免疫化学療法に引き続き、イブルチニブによる維持療法(560mg/日経口投与)を2年間継続した。なお、3群とも、リツキシマブ維持療法を3年間追加することが可能であった。 主要評価項目は、治験責任医師評価による治療成功生存期間(failure-free survival:FFS[導入免疫化学療法終了時に安定、進行、または死亡のうちいずれかが最初に起こるまでの期間と定義])で、3つのペアワイズ片側ログランク検定により比較し、ITT解析を行った。 2016年7月29日~2020年12月28日に、計870例(男性662例、女性208例)が無作為化され(A群288例、A+I群292例、I群290例)、そのうち866例が導入療法を開始した。イブルチニブ併用+ASCTで3年治療成功生存率88%、ただしGrade3~5の有害事象が増加 追跡期間中央値31ヵ月において、3年FFS率はA群72%(95%信頼区間[CI]:67~79)、A+I群88%(84~92)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(ハザード比[HR]:0.52、片側98.3%CI:0.00~0.86、片側p=0.0008)。一方、I群の3年FFS率は86%(95%CI:82~91)であり、A群のI群に対する優越性は示されなかった(HR:1.77、片側98.3%CI:0.00~3.76、片側p=0.9979)。A+I群とI群の比較検討は現在も進行中である。 有害事象については、導入療法中またはASCT中のGrade3~5の有害事象の発現率について、R-CHOP/R-DHAP療法とイブルチニブ併用R-CHOP/R-DHAP療法で差は認められなかった。 一方、維持療法中または追跡調査中においては、ASCT+イブルチニブ(A+I群)が、イブルチニブのみ(I群)やASCT(A群)と比較してGrade3~5の血液学的有害事象および感染症の発現率が高く、A+I群では血液学的有害事象50%(114/231例)、感染症25%(58/231例)、致死的感染症1%(2/231例)が、I群ではそれぞれ28%(74/269例)、19%(52/269例)、1%(2/269例)が、A群では21%(51/238例)、13%(32/238)、1%(3/238例)が報告された。

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愛媛大学医学部 臨床腫瘍学講座【大学医局紹介~がん診療編】

薬師神 芳洋 氏(教授)藤井 知美 氏(緩和ケアセンター 特任講師)長谷部 晋士 氏(腫瘍センター 特任講師)山中 伸太郎 氏(腫瘍センター 院生医員)講座の基本情報医局の特徴、医師の育成方針全国に広がる臨床腫瘍学教室の大きな使命は、次世代のがん診療を担うリーダーを養成することです。がん医療のリーダーには、多くの疾患や腫瘍、ゲノム医療、緩和医療に長けた診療能力を培うことのみならず、医療経済上の知識や対応、臨床治験を推進する能力、地域や行政と連携する能力なども必要です。また、基礎医学との連携を通じ、医学貢献への絶え間ない努力も必要です。当愛媛大学医学部臨床腫瘍学講座は、がん患者さんに対する高度な医療行為や緩和医療に加え、がん医療におけるこういった技術や知識の習得を目標に、学部学生やがんプロ大学院の指導を広く行っています。私たちの教室で「がん医療のリーダー」として羽ばたいてみませんか?力を入れている治療緩和ケアセンターのセンター長をしています。がん治療と緩和ケアは相補的な関係にあり、腫瘍学と緩和ケアの統合が推奨されています。当院では全入院患者に対しつらさのスクリーニングを行い、適切な患者に時期場所を問わず、すなわち必要があればがんと診断した早期から継続的に緩和ケアを提供しています。神経ブロックなど専門的緩和ケアを行い、多職種の緩和ケアチームで患者、およびそのご家族のつらさを和らげています。同医局でのやりがい、魅力/医学生・初期研修医へのメッセージ治すがん医療も大切ですが、治らない状況下でいかに患者さんとそのご家族に寄り添いつらさを和らげるかも医療の大事な側面です。緩和医療、緩和ケアは医療者自身の人間性の成長が問われる大変やりがいのある分野だと思っています。一般的な緩和ケアの提供はがん治療に携わるすべての医療者が行うべきものです。がん治療の研鑽とともに緩和ケア、緩和医療についても一緒に学んでみませんか?力を入れている治療県下一円の医療機関より、診断・治療に難渋する原発不明がんや希少がんのご紹介をいただきます。医療機関がお困りである以上に、患者さん、そしてご家族はお困りでいらっしゃいます。ご紹介いただいた方々に対し何ができるか、ご希望にどこまで添えるか。大学病院にいらっしゃるさまざまなエキスパートの先生方のお力添えをいただきながら、個々の患者さんに対し最良の医療を提供すべく精進しております。医局の魅力教授の面倒見の良さ、に尽きます。20年にわたる師弟関係です。箸にも棒にもかからなかった研修医を、病棟医長として見捨てることなく指導し、総合内科専門医・がん薬物療法専門医になることができました。院生時代は基礎実験の手技に至るまでマンツーマンで指導、学位取得まで導いてくれました。この医局でなければ私は、大学人として生きて行くことは不可能でしたし、医師として専門性を深めることも難しかったでしょう。医学生/初期研修医へのメッセージ学部学生時代に父をがんで亡くしており、現在の専門に進む動機となりました。そして師のおかげで、憧れであったがん薬物療法専門医となり、腫瘍内科医として専門性をもった仕事を行えております。将来ある皆さまが生涯の師との出会いに恵まれますことを祈念しております。これまでの経歴愛媛大学医学部医学科を卒業後、県内で初期研修を開始すると同時に、医学系研究科臨床腫瘍学教育課程に進学し、臨床経験を積みつつ、研究と論文執筆を行いました。卒後3年目からは当講座に入局し、がん診療に一部携わりながら、患者のがん細胞を用いた基礎研究を行っています。同医局を選んだ理由元々純粋な臨床医として生きていくつもりでしたが、コロナ禍を経て、われわれを取り巻く医療および社会のあり方について深く考えさせられ、医学研究に強く興味を持ったことがきっかけで、学部時代からお世話になっていた当講座への入局、および大学院進学を決めました。卒後の進路について思い悩んでいたときに相談に乗ってくださった薬師神教授にはたいへん感謝しています。現在学んでいること腫瘍に関連する幅広い知識を学んでおり、大学院での基礎研究はもちろん、臨床分野では、クラシカルな殺細胞薬から、ICIや最新の分子標的治療薬まで、数多くの抗腫瘍薬が最新のエビデンスに基づいて使用されており、腫瘍内科の特徴である臓器横断的な医療を日々経験しています。また、新たな治療の選択肢を見つける手段としてがんゲノム検査(CGP検査)を行っており、その検査データの解釈を通じて、ゲノムに関する学びも深めています。愛媛大学医学部 臨床腫瘍学講座住所〒791-0295 愛媛県東温市志津川454問い合わせ先oncology@m.ehime-u.ac.jp医局ホームページ愛媛大学医学部 臨床腫瘍学講座専門医取得実績のある学会日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本緩和医療学会 緩和医療専門医日本内科学会 総合内科専門医日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医研修プログラムの特徴(1)がん診療を生涯のライフワークとする医師を養成(2)愛媛大学病院を含む愛媛県下の7つのがん診療連携病院、ならびに全国のがんセンターを研修先とした、がん薬物療法専門医/緩和ケア専門医研修(サブスペシャリティー研修)を受け付ける(希望に応じて専門研修施設が選べる)

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先天性TTP、ADAMTS13の予防的投与で症状発現を抑制/NEJM

 先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者では、遺伝子組み換えADAMTS13の予防的投与後のADAMTS13活性が正常値である101%を達成し、有害事象の大部分は軽度~中等度で、TTPイベントや症状の発現はまれであることが、英国・ロンドン大学病院のMarie Scully氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年5月2日号に掲載された。第III相無作為化2期クロスオーバー試験の中間解析 本研究は、欧州連合(EU)、米国、英国、日本の34施設で実施した第III相非盲検無作為化2期クロスオーバー試験であり、今回の中間解析では、2017年10月~2022年8月に登録した患者の結果が報告された(Takeda Development Center AmericasとBaxalta Innovationsの助成を受けた)。 年齢0~70歳で、分子遺伝学的検査で先天性TTPと確定し、ADAMTS13活性が10%未満の患者を対象とした。スクリーニング時に急性TTPイベントを認めなかった患者を予防コホート、急性TTPイベントを認めた患者をオンデマンドコホートとした。 被験者を、1期目として6ヵ月間、遺伝子組み換えADAMTS13(40 IU/kg体重、静脈内投与)の予防的投与を行う群、または標準治療(血漿由来製剤)の予防的投与を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付け、引き続き2期目の6ヵ月間はこれらの治療を入れ替えた。その後、6ヵ月間、全例にADAMTS13を投与した。 主要アウトカムは急性TTPイベントであった。急性TTPイベントが発生した患者はオンデマンド治療を受けられることとした。最も頻度の高いTTP症状は血小板減少症 48例(年齢中央値33歳[範囲:3~68]、女性28例[58%])を無作為化の対象とした。ADAMTS13投与期間後に標準治療を受けた患者が21例、標準治療期間後にADAMTS13投与を受けた患者が27例だった。中間解析時に、32例が試験を完了しており、14例が継続中で、2例は中止した。 急性TTPイベントは、ADAMTS13の予防的投与期間中には発生しなかったのに対し、標準治療の予防的投与期間中には1例で発生した(年間イベント発生率の平均値0.05、95%信頼区間[CI]:0.00~0.14)。 最も頻度の高いTTPの症状は血小板減少症で、1期と2期を通じた年間イベント発生率はADAMTS13群が0.74、標準治療群は1.73であった(推定比:0.4、95%CI:0.3~0.7)。また、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇(平均年間イベント発生率:ADAMTS13群0.26 vs.標準治療群0.74、推定比:0.4[95%CI:0.1~1.1])、神経症状(0.18 vs.0.29、0.6[0.3~1.2])、腹痛(0.11 vs.0.17、0.6[0.2~2.3])も、標準治療群に比べADAMTS13群で低い傾向を認めた。有害事象は重度7%、試験薬関連9%、中和抗体の発現はない 有害事象は、ADAMTS13投与中に71%、標準治療中に84%で発現した。大部分の有害事象の重症度は軽度~中等度で、重度の有害事象はADAMTS13投与中に7%、標準治療中に14%で発現した。ADAMTS13投与中に頻度が高かった有害事象は、頭痛、片頭痛、上咽頭炎、下痢であった。 担当医が試験薬関連と判定した有害事象は、ADAMTS13投与中に9%、標準治療中に48%で認めた。有害事象による試験薬の中断または中止は、ADAMTS13投与中にはみられなかったが、標準治療中には8例で発生した。ADAMTS13投与中に中和抗体の発現はなかった。 治療後のADAMTS13の最大活性の平均値は、標準療法後が19%であったのに対し、ADAMTS13投与後は101%だった。 著者は、「これらの知見により、遺伝子組み換えADAMTS13は先天性TTP患者に対する有効な予防的治療法であることが示された」としている。

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CAR-T細胞療法、CD7陽性造血器腫瘍のハプロ一致HSCTの橋渡しに有望/NEJM

 再発・難治性の造血器腫瘍患者の治療において、ハプロタイプ一致の同種造血幹細胞移植(HSCT)への橋渡しとしてのキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は、安全かつ有効で寛解を達成し、有害事象は重篤だが可逆的であり、従来の同種HSCTが適応とならないCD7陽性腫瘍の患者に対して実行可能な治療法となる可能性があることが、中国・浙江大学医学院のYongxian Hu氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年4月25日号に掲載された。中国の新たな一体型治療戦略を評価する症例集積研究 本研究は、再発・難治性のCD7陽性白血病またはリンパ腫の患者を対象に、CD7 CAR-T細胞療法とハプロタイプが一致したHSCTを逐次的に施行する、新たな一体型(all-in-one)の治療戦略の評価を目的とする症例集積研究である(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]などの助成を受けた)。 CAR-T細胞療法により、血液学的回復が不完全な完全寛解となった患者に対し、薬剤による骨髄破壊や移植片対宿主病(GVHD)の予防薬を投与せずに、ハプロタイプ一致HSCTを実施した。CAR-T細胞療法後全例で汎血球減少、HSCT後3例でGVHD 10例(急性骨髄性白血病7例、T細胞性急性リンパ芽球性白血病2例、T細胞性リンパ芽球性リンパ腫[IV A期]1例)を登録した。登録時の年齢中央値は56.5歳(範囲:13.7~72.5)、女性が6例(60%)で、前治療コース数中央値は9.5(範囲:4~15)であった。 CAR-T細胞療法後に10例すべてが、血液学的回復が不完全な完全寛解となった。サイトカイン放出症候群が9例(Grade1:5例、Grade2:4例)で発生したが、いずれも抑制に成功した。全例にGrade4の汎血球減少を認めた。 ハプロタイプ一致HSCT後13日目に、1例がStaphylococcus haemolyticus感染による敗血症性ショックと、ヒトヘルペスウイルス6感染による脳炎により死亡した。8例で完全ドナーキメリズムがみられ、1例で自己造血回復が得られた。また、3例でGrade2のHSCT関連急性GVHDが発生した。60%が微小残存病変陰性の完全寛解を維持 CAR-T細胞療法後の追跡期間中央値は15.1ヵ月(範囲:3.1~24.0)であった。データカットオフ日の時点で6例(60%)が微小残存病変陰性の完全寛解を維持し、2例はCD7陰性白血病を再発した。 1年全生存率の推定値は68%(95%信頼区間[CI]:43~100)であり、1年無病生存率の推定値は54%(29~100)だった。 著者は、「この統合的な治療戦略は、CAR-T細胞と移植片対白血病の可能性の両面から抗白血病効果を最大化し、従来の同種HSCTが不適応の再発・難治性CD7陽性腫瘍の患者に対して実行可能な治療法を提供するものである」としている。現在、より大規模なコホートにおいて、CD7 CAR-T細胞療法とハプロタイプ一致HSCTを逐次的に施行する第I相試験が進行中だという。

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2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている1)。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。 Q1では、コロナの診療に現在携わっているかについて聞いた。「診療している」が79%、「診療していない」が21%だった。年代別で「診療している」と答えた割合は、40代(86%)、60代(83%)、30代(81%)の順に多かった。診療科別では、血液内科(94%)、呼吸器内科(94%)、救急科(92%)、総合診療科(90%)、腎臓内科(88%)、神経内科(88%)、内科(85%)、小児科(83%)、消化器内科(81%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(80%)、臨床研修医(80%)の順に多かった。年齢が低い医師ほど、コロナに感染した割合が高い Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を聞いた。感染したことがある医師は全体の45%、感染したことがない/感染したかわからない医師は55%であった。感染したことがある医師は年齢が低いほど、感染した割合が高く、20代は60%、30代は55%、40代は51%、50代は44%、60代は35%、70代以上は24%だった。臨床数別では、病床数が多いほうが感染した医師の割合が高く、20床以上で感染したのは49%、0~19床では34%だった。また、コロナ診療状況別では、コロナを診療している医師では47%、診療していない医師では37%に感染歴があった。昨年は20~40代の接種率が50%弱 Q3では、2023年秋冬接種でのXBB.1.5対応ワクチンの接種状況を聞いた。全体では「接種した」が58%、「接種していない」が42%だった。年代別で「接種した」と答えた割合は、多い順に70代以上(77%)、60代(72%)、50代(61%)、20代(50%)となり、30代(45%)と40代(48%)は50%未満であった。コロナ診療状況別の接種率は、診療している医師は62%、診療していない医師は46%であった。前年の傾向を引き継ぎ、接種する人と接種しない人の二極化進む Q4では、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となった。年代別では、「接種する予定」と答えた割合が過半数となったのは70代以上(56%)のみで、ほかは多い順に60代(44%)、50代(31%)、40代(28%)、20代(28%)、30代(23%)であった。30代では「接種する予定はない」が54%となり過半数を占めた。2023年コロナワクチン接種状況別で、2023年に接種した人では「2024年度に接種する予定」が53%、「2024年度に接種する予定はない」が16%となった。対して、2023年に接種していない人では、「接種する予定」が6%、「接種する予定はない」が74%となり、今回のアンケートで最も顕著な差が認められ、医師のなかでもコロナワクチンを接種する人と接種しない人の二極化が進んでいることがわかった。 Q5では、自身が受ける2024年度のコロナワクチンの費用は、病院負担か自己負担のどちらになるか、これまでのインフルワクチンなどの対応を踏まえ推測を交えて聞いた。「おそらく全額病院負担」が22%、「おそらく一部自己負担」が22%、「おそらく全額自己負担」が23%、「わからない」が33%となり、全体的に均等な割合となった。2024年度にワクチンを接種する予定の人のうち「全額病院負担」35%、「一部自己負担」29%、「全額自己負担」16%だったのに対し、接種する予定はない人は「全額病院負担」12%、「一部自己負担」20%、「全額自己負担」30%であった。ワクチンの必要性や高額な治療薬について、患者にどう説明するか Q6の自由回答のコメントでは、新型コロナに関して現在困っていることや知りたい情報を聞いた。主な回答は以下のとおり。ワクチンについて・ワクチンで感染予防が成り立たないのは明白。ただし重症予防は十分成り立っていたと思うので、高齢者と持病多い人は無料で受けられるようにしてほしい(40代、循環器内科)・接種の必要性をよく質問されるが、正直な所、自分も勧めてよいのか迷っている(40代、小児科)・今後新たに使用可能となるワクチンの種類とその効果など(60代、内科)・公費負担が終了すると被接種者は減少すると思われるが、今後の流行予測は?(70代以上、内科)・医療従事者のワクチン接種費用について(50代、内科)治療薬について・抗ウイルス薬の値段が高い事の説明をどうするか(60代、内科)・コロナ治療薬の処方が減り、対症療法が増えると思う(70代以上、内科)・抗ウイルス薬の適応と思われる患者さんが、高額のため投薬拒否された時のことを考えると頭が痛い(50代、消化器内科)流行状況、院内対策などについて・現在の感染状況の情報発信が少なくなり、新型コロナ感染症に対する世間の認識が乏しくなり、感染増加を招いていること(40代、呼吸器内科)・感染対策の立場として、職場での接種をどうするか悩んでいる(40代、感染症内科)・発熱外来の体制に悩んでいる(30代、呼吸器内科)・後遺症に関する診断(40代、呼吸器内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート

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英語で「問題を先送りする」は?【1分★医療英語】第129回

第129回 英語で「問題を先送りする」は?《例文1》I tend to procrastinate until the last minute.(私はギリギリまで問題を先送りしてしまいがちです)《例文2》It is a waste of time.(それは時間の無駄です)《解説》医療の現場では難しい決断が迫られることが珍しくありません。時に、最善の選択肢がわかっていても、副作用や費用など、さまざまな理由でほかの選択肢を検討することがあります。“kick the can down the road”(問題を先送りする)は便利な慣用句で、患者さんを説得する場面などでたびたび使用されるのを耳にします。このフレーズの由来には諸説あります。「歩いている人が、自分がいずれ拾うべき缶を自分の前方に蹴り続けている状態」をイメージすると理解しやすいかと思います。類義語としては、“procrastinate”(先延ばしにする)が最もシンプルでしょう。さらに直接的な表現となりますが、場面によっては“waste of time”(時間を無駄にする)を使うこともできます。講師紹介

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何はさておき記述統計 その4【「実践的」臨床研究入門】第43回

仮想データ・セットを用いてKaplan-Meier曲線を描いてみる前々回は簡単なエクセル関数を使って仮想データ・セットから発生率を計算し、前回は手計算によるKaplan-Meier曲線の描き方を説明しました。今回は、いよいよ仮想データ・セットを用いて実際にKaplan-Meier曲線を描いてみます。今後、実際の統計解析手法については無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順を交えて解説していきます。まずはEZRの概要とそのインストール方法について簡単に説明します。EZRは自治医科大学附属さいたま医療センター血液科の神田 善伸先生が無料統計解析ソフトRに基づいて開発されました。RはR言語というプログラミング言語(スクリプト)を入力しないと動かせないというのが、統計解析初心者にとって最大の障壁になっています。しかし、EZRではマウスなどのポインティングデバイス操作だけで基本的な統計解析を行うことができるgraphic user interfaceを採用しており、ユーザーフレンドリーな統計解析ソフトです。EZRのダウンロードとインストールについては、自治医科大学附属さいたま医療センター血液科のホームページにアクセスし、説明のとおりに行ってください。それでは、早速仮想データ・セットからEZRを用いてKaplan-Meier曲線を描いてみましょう。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。まずは、Kaplan-Meier曲線の描出に必要なデータを整理し準備します。必要となるデータは以下の3つになります。比較する群のデータイベント(アウトカム発生)か打ち切りのデータ生存時間(観察期間)のデータこれらは、下記に示した仮想データ・セットのB、C、D列にそれぞれ相当します(連載第41回参照)。A列:IDB列:Treat(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)D列:Year(at riskな観察期間)次に、インストールしたEZRを起動し、以下の手順で仮想データ・セットを取り込みましょう。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」仮想データ・セットがインポートできたことを確認したら、下記の手順でKaplan-Meier曲線を作成します。「統計解析」→「生存時間の解析」→「生存曲線の記述と群間の比較(Logrank検定)」を選択。すると、下記のウィンドウが開きますので、以下のとおりにそれぞれ変数を選択します。画像を拡大する観察期間の変数 ⇒ Yearイベント(1)、打ち切り(0)の変数 ⇒ Censor群別する変数を選択 ⇒ Treatその他はとりあえずデフォルト設定のままで結構です。変数選択と設定が完了したら、「OK」ボタンをクリックしましょう。図のようなKaplan-Meier曲線が描けたでしょうか。

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第211回 承認薬一つひとつの検討を含む個別化がん治療の試験成績が有望

血液や腫瘍から集めたがん細胞で多ければ125の承認薬一つひとつを新たな手法で検討し、ゲノム解析結果も加味して患者ごとに割り出した薬の組み合わせによる個別化がん治療が、米国のフロリダ国際大学(FIU)の研究者らによる試験で有望な成績を収めています1)。個別化治療で最も多く使われている手段は患者のがんのDNA解析です。昔ながらの方法で数千もの遺伝子を解析するには何週間もかかります。辛抱強く待ってその結果をようやく手にしたところで、治療手段が結局わからず仕舞いということもありえます。ゲノム解析結果のみをよりどころとして治療方針が決まったところでそれが有益であることは少ないようで、最近の報告によると成人患者のわずか10例に1例ほどに限られるようです2)。小児患者でのその割合はもっと低いでしょう。FIUのDiana Azzam氏らのチームが手掛ける個別化治療でもゲノム解析が実施されます。しかしそれだけではなく、患者の血液や腫瘍検体から集めた生きたがん細胞を使って承認薬の効果のほどを検討する薬剤感受性検査(drug sensitivity testing:DST)も含みます。Azzam氏らによる試験には再発/治療抵抗性の難儀な固形がんや血液がんの小児患者25例が組み入れられ、それらのうち21例がDSTでの薬のふるい分けを受け、20例はゲノム解析も行いました。DSTの結果判明までの日数の中央値は血液がんで9日、固形がんで10日でした。ゲノム解析の結果判明までの中央値は約27日です。最終的に6例がDSTとゲノム解析の両方に基づく治療を受け、それら6例中5例は奏効し、無増悪生存期間(PFS)は前治療を1.3倍上回りました。また、DSTとゲノム解析に基づかない治療を受けた8例にも勝りました。それら8例で奏効したのはわずか1例のみでした。とくに有効だった「患者番号13」FIUのニュースでは同試験の被験者の1人であるLogan Jenner君の経過が紹介されています。試験でLogan君は患者番号13(EV013)という扱いでした。しかし、Azzam氏は後にEV013がLogan君であることを知ることになります。そのきっかけはAzzam氏が出席した会(Live Like Bella Pediatric Cancer Research Symposium)でのことです。同会にたまたま居合わせたLogan君の母親がAzzam氏に「息子がどうやら試験に参加していたと思う」と話しかけ、その後の短い会話でAzzam氏はEV013がLogan君であることを悟りました。どの試験もそうであるように、患者の個人情報は厳重に保護されており、Azzam氏にとってほかの被験者はおそらく今後も匿名のままです。その出来事があった後にLogan君はFIUのAzzam氏の研究室を訪問し、いまやAzzam氏の研究室にいつでも出入りできる身となっています。Logan君、すなわちEV013はDSTとゲノム解析に基づく治療がとりわけ奏効した例として論文中でも特記されています。Logan君は3歳のときに急性骨髄性白血病(AML)と診断され、化学療法と骨髄移植を受けて、ひとまずは150日間の寛解期間を過ごしました。しかし運命は残酷で、それから14ヵ月が過ぎた5歳のときに再発に見舞われます。Logan君の担当医のMaggie Fader氏はほかでもないAzzam氏とともに試験を率いた1人で、より最適な治療を求めてLogan君を試験に招きました。Logan君には手の打ちようがある(clinically actionable)FLT3-ITD変異がありました。そこでどのFLT3阻害薬を使うべきかがDSTで検討され、ソラフェニブやポナチニブに比べてmidostaurinがより効果的と判明しました。また、midostaurinと併用する化学療法はフルダラビンとシタラビンで事足り、心毒性が知られるイダルビシンは不要と示唆されました。さらに、ステロイドによる急な細胞増殖が認められたことからその使用が省かれました。DSTとゲノム解析なしでは成し得なかったそのような治療方針の甲斐あって、Logan君は2年を超えてがんなしの生活を過ごせています。ゲノム解析に加えてDSTも行ってそれぞれの患者ごとに治療をあつらえることの力の程をLogan君の経過は見せつけました1)。Azzam氏らによる個別化医療の取り組みは歩みを進めており、小児に加えて成人も参加しているより大規模な臨床試験が進行中です。Logan君が笑って遊んでいるのを見るにつけ、がん治療の革新に向けてわれわれは正しい道を進んでいることを知る、とAzzam氏は言っています3)。参考1)Acanda AM, et al. Nat Med. 2024;30:990-1000. 2)O'Dwyer PJ, et al. Nat Med. 2023;29:1349-1357.3)New approach helped Patient 13 reach remission - could it revolutionize how cancer is treated? / Florida International University

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迅速承認の抗がん剤の臨床的有用性/JAMA

 米国では、食品医薬品局(FDA)の迅速承認を受けたがん治療薬の多くは、承認から5年以内に全生存期間(OS)または生活の質(QOL)に関して有益性を示せず、確認試験で臨床的有用性を示したのは半数に満たないことが、米国・ハーバード大学医学大学院のIan T. T. Liu氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年4月7日号で報告された。米国FDAが2013~23年に迅速承認したがん治療薬を調査 研究グループは、FDAによる迅速承認を受けたがん治療薬が最終的に臨床的有用性を示すかを確認し、通常承認への転換の根拠を評価する目的でコホート研究を行った(Arnold Ventures and the Commonwealth Fundの助成を受けた)。 迅速承認は、満たされない医療ニーズのある重篤な疾患の特定の治療薬について、代替評価項目の改善に基づいて承認を許可する優先審査制度。迅速承認を受けた医薬品の製造企業は、有効性を確認するために臨床評価項目の評価を行う承認後臨床試験の実施を求められる。 本研究では、公開されているFDAのデータを用いて、2013~23年に迅速承認されたがん治療薬を特定し検証した。確認試験で臨床的有用性を示したのは43% 2013~23年に129件のがん治療薬とその適応症の組み合わせが迅速承認を受けた。このうちQOLとOSの解析を行い、追跡期間が5年以上(2013~17年に承認)の適応症は46件(1次解析)で、そのうち通常承認へ変更された適応症は約3分の2(29件[63%])であり、10件(22%)は取り下げとなり、7件(15%)は6.3年(中央値)の時点で追跡を継続中であった。 確認試験で臨床的有用性を示したのは46件中20件(43%)であり、半数に満たなかった。取り下げまでの期間は9.9年から3.6年に短縮し、通常承認までの期間は1.6年から3.6年に延長した。患者に明確な情報提供を 通常承認への変更の決定を支持するエビデンスに焦点を当てた2次解析では、2013~23年に迅速承認を受けたがん治療薬と適応症の組み合わせは66件で、このうち48件(73%)が通常承認へ変更され、18件(27%)は取り上げられた。 通常承認へ変更された48件のうち、19件(40%)はOSを根拠とし、21件(44%)は無増悪生存期間、5件(10%)は奏効率(ORR)+奏効期間、2件(4%)はORRに基づくものであり、残りの1件(2%)は確認試験で有効性が示されなかったにもかかわらず通常承認を受けていた。 また、迅速承認と通常承認の適応症を比較すると、48件中18件(38%)は変更がなかったが、30件(63%)は適応症が異なっていた(たとえば、より早期の治療ラインへの変更など)。 著者は、「迅速承認は有用と考えられるが、がん治療薬の中には患者の延命やQOLの改善という有益性を示すことができないものもある。患者には、迅速承認制度の利用や患者中心の臨床アウトカムにおいて、有益性を示さないがん治療薬について明確に情報提供を行うべきである」としている。

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PNHに対するC5阻害薬と併用する世界初の経口薬、ボイデヤ発売/アレクシオン

 アレクシオンファーマは2024年4月17日、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬としてボイデヤ(一般名:ダニコパン)を同日より発売開始したことを発表した。 PNHは、血管内溶血として知られる血管内の赤血球破壊と、白血球および血小板の活性化を特徴とするまれで重度の血液疾患であり、血栓症を引き起こし、臓器障害や早期死亡に至る可能性がある。C5阻害薬のユルトミリス(一般名:ラブリズマブ[遺伝子組換え])またはソリリス(一般名:エクリズマブ[遺伝子組換え])は、補体C5を阻害して終末補体を抑制することで症状および合併症を軽減し、PNH患者の生存率への影響が期待できる薬剤である。C5阻害薬を投与下のPNH患者の約10~20%に臨床的に問題となる血管外溶血が顕在化し、持続的な貧血症状や定期的な輸血が必要となるケースがある。 本剤は、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を効能または効果とし、C5阻害薬による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合にC5阻害薬と併用して投与される。C5阻害薬のユルトミリスまたはソリリスと併用投与する薬剤として開発されたファースト・イン・クラスの経口補体D因子阻害薬である本剤は、C5阻害薬の治療中に臨床的に問題となる血管外溶血が生じる特定のPNH患者(約10~20%)のニーズに対応する。 本剤の承認は、国際共同第III相臨床試験(ALPHA試験)から得られた肯定的な結果に基づく。同試験における12週間の主要評価期間の結果については、Lancet Haematology誌に掲載されている1)。ALPHA試験では、ヘモグロビンが9.5g/dL以下かつ網状赤血球数が120×109/L以上と定義した臨床的に問題となる血管外溶血を示すPNH患者を対象に、ユルトミリスまたはソリリスに本剤を併用した際の有効性および安全性を評価した。その結果、プラセボ群と比較した投与12週時点のヘモグロビンのベースラインからの変化量という主要評価項目を達成したほか、輸血回避および慢性疾患治療の機能的評価-疲労(FACIT-Fatigue)スコアの変化量を含む主な副次評価項目を達成した。ALPHA試験の結果において、安全性と忍容性に新たな懸念は認められず、本試験で最も多く報告された有害事象は頭痛、悪心、関節痛および下痢であった。 アレクシオンファーマ社長の笠茂 公弘氏は、「当社は『すべての希少疾患をもつ人々に人生を変える治療法と希望を届ける』というパーパスを掲げ、より早く、より多くの患者さんのニーズに応えるよう務めている。ボイデヤが、これまで以上にPNHをもつ患者さんとそのご家族のより良い生活に寄与できることを願っている」としている。

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C5阻害薬との併用で血管外溶血を抑制する経口PNH治療薬「ボイデヤ錠50mg」【最新!DI情報】第13回

C5阻害薬との併用で血管外溶血を抑制する経口PNH治療薬「ボイデヤ錠50mg」今回は、補体D因子阻害薬「ダニコパン(商品名:ボイデヤ錠50mg、製造販売元:アレクシオンファーマ)」を紹介します。本剤は、補体(C5)阻害薬と併用することで、発作性夜間ヘモグロビン尿症患者の輸血の必要性が軽減し、患者QOLや転帰が改善することが期待されています。<効能・効果>発作性夜間ヘモグロビン尿症の適応で、2024年1月18日に製造販売承認を取得しました。本剤は、補体(C5)阻害薬による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合に、補体(C5)阻害薬と併用して投与します。<用法・用量>通常、成人には、補体(C5)阻害薬との併用において、ダニコパンとして1回150mgを1日3回食後に経口投与します。効果不十分な場合には1回200mgまで増量することができます。なお、本剤を漸減せずに中止した場合は肝機能障害が現れる恐れがあるため、本剤の投与を中止する場合は最低6日間かけて、1回100mgを1日3回3日間、その後1回50mgを1日3回3日間投与してから中止します。<安全性>本剤により、髄膜炎または敗血症を発症し、急速に生命を脅かす、あるいは死亡に至る恐れがあるため、初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直、羞明、精神状態の変化、痙攣、悪心・嘔吐、紫斑、点状出血など)の観察を十分に行う必要があります。また、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの莢膜形成細菌による重篤な感染症(頻度不明)が現れることがあります。その他の主な副作用として、肝酵素上昇(ALT上昇、トランスアミナーゼ上昇など[5%以上])などがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療に用いる薬です。補体(C5)阻害薬で効果が不十分な場合に、C5阻害薬と併用して投与されます。2.C5阻害薬の治療中に生じる血管外溶血を防ぎ、輸血の必要性を軽減します。3.投与中に発熱や悪寒、頭痛など感染症を疑う症状が現れた場合は、たとえ軽度であっても主治医に連絡し、直ちに診察を受けてください。4.肝機能検査値異常が起きることがあるので、定期的に肝機能検査を受けてください。<ここがポイント!>発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は血管内溶血およびヘモグロビン尿を特徴とする造血幹細胞疾患です。治療には、補体(C5)阻害薬であるエクリズマブやラブリズマブが用いられ、終末補体経路を持続的に阻害することで血管内溶血を効果的に防ぐことができます。しかし、一部の患者では、終末補体経路の活性化を阻害することで、補体(C3)フラグメントがPNH赤血球の膜上に蓄積して血管外溶血が顕在化し、頻回の輸血が必要になることがあります。そのため、2023年9月よりC3とC3bをターゲットとしたペグセタコプランが臨床使用されていますが、ペグセタコプランで効果が不十分の場合はより重篤なブレイクスルー溶血が懸念されます。ダニコパンは、補体D因子のセリンプロテアーゼ活性を阻害し、補体第二経路の活性化を阻害することでC3フラグメント沈着を阻止します。したがって、血管内溶血を抑制するC5阻害薬とダニコパンを併用することで、血管外溶血も抑制することが期待されます。ダニコパンは生命予後に影響を及ぼす血管内溶血を抑制する、C5阻害薬と併用可能な唯一の経口PNH治療薬です。ラブリズマブまたはエクリズマブが投与されていて血管外溶血が認められるPNH患者を対象とした国際共同第III相試験(ALPHA試験:ALXN2040-PNH-301試験)において、主要評価項目である投与12週時点のヘモグロビン濃度のベースラインからの変化量の最小二乗平均値(標準誤差)は、ダニコパン群で2.940(0.2107)g/dL、プラセボ群で0.496(0.3128)g/dLであり、ダニコパンの優越性が示されました(p<0.0001)。また、副次評価項目である輸血回避できた患者の割合(投与開始から12週間)は、ダニコパン群83.3%、プラセボ群38.1%で、有意な差が認められました(p=0.0004)。

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治療に対する不安を軽くするには?【もったいない患者対応】第3回

治療に対する不安を軽くするには?登場人物今日来た患者さん、とても不安が強くて治療の説明をしてもなかなか必要性を理解してもらえないんです。なぜそんなに不安が強いのかな?どうやら同じ病気の友達にいろいろ言われたらしく…。副作用が多いからやめたほうがいいとか…。患者さんは友達の体験談に大きな影響を受けるからね。ですよね。どうすればいいんでしょう?先生は同じ治療を安全に受けた患者さんをたくさん知ってるよね?そのことに少し触れてみるのはどうだろう?実体験を例に挙げるたとえば、患者さんが下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける予定で、その説明を医師から受けるとします。しかし実は事前に知人から、「大腸カメラはすごく痛いよ!」「大腸カメラで大腸に穴が空いた人がいるらしいよ!」「前日の下剤がつらすぎて二度と受けたくない!」という話を聞いていたとしたら、患者さんはどういう思いを抱いているでしょうか? 「たった1人の事例が自分に当てはまるとは限らないし、個人差はあるに決まっているだろうから信用しない」などと冷静に判断できる人はおそらくいないでしょう。誰もが「自分も同じ目にあうかもしれない」と強い不安を抱くはずです。患者さんにとって、“親しい人からの体験談”ほど大きな影響を与えるものはないからです。そこで、私たちもそれを逆手にとり、不安が強い患者さんには「参考程度」に体験談をお伝えするのも1つの手です。たとえば、私は大腸カメラを2度受けた経験があるので、「私も大腸カメラを受けたことがあるんですが、全然痛くなかったんですよ。もちろん個人差はあると思いますが…」「私も下剤を飲んだとき夜中に何度かトイレに起きたのですが、お腹が痛くてつらい、ということはなかったです」と伝えています。実際に同じ検査や治療を受けた患者さんの事例を、個人情報に注意しながら例に出してみてもよいでしょう。もちろん、「n=1」の体験談は医学的には大きな意味をもちませんから、「個人差はありますよ」「ケースバイケースですよ」という補足説明は必要ですし、リスクについてはデータをもとに客観的な情報を提供すべきです。しかし、「実際にそういう感想もある」と知っておくことが、患者さんの心理的負担を少し軽くするのは間違いないでしょう。「相反する例」をうまく使う治療や検査の必要性をきちんと理解してもらうなら、「相反する例」をうまく利用するのも1つの手です。患者さんに「AはBです」と伝えたいときに、「AがBでなかったらどうなるか」を引き合いに出し、対比を浮き彫りにして理解してもらいやすくする、という手法です。たとえば、化学療法を受ける予定の患者さんに制吐薬を処方するとします。医師にとって、化学療法に制吐薬を併用するのは当たり前のことですが、患者さんにとっては初めての体験です。そこで、「吐き気止めを処方しておきますね」と言うだけで済ませるのではなく、「もし吐き気止めを使わないと、〇〇という状況になることが予想されます(〇%くらいの人に吐き気が起こると言われています)ので、吐き気止めを処方しますね」というふうに話します。他にも、たとえば輸血が必要な患者さんに対しては、「もし輸血をしないと〇〇になってしまうので、今日は輸血を行いましょう」というように伝えることが可能です。もちろん「脅す」という意味ではありません。治療の必要性を理解するためには、「治療をしなかった未来」を具体的に思い描いていただくことが有効だという意味です。これとは少し違うものの、似た例をあげてみます。以前、私の指導医は、肝臓切除の手術前に必ず、「実は、昔は肝臓は切れない臓器だと言われていました。肝臓は血管の塊だからです。いまはいろんな道具が出てきて、ようやく切れるようになったんです」と説明していました。技術が進歩する前は肝臓を「切ることすらできなかった」と伝えることで、「出血リスクが高すぎて手術が困難だった昔」を引き合いに出し、出血リスクの大きさを患者さんが理解しやすくしていたのです。

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国内初の造血器腫瘍遺伝子パネル検査を申請/大塚

 大塚製薬、国立がん研究センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター、慶應義塾大学医学部は2024年3月29日、共同で設計・開発してきた造血器腫瘍遺伝子パネル検査について、国内での製造販売承認申請を行ったと発表した。 がん遺伝子パネル検査は数種類の製品が固形腫瘍に保険適用されているが、造血器腫瘍では同様の製品はない。そのため、造血器腫瘍では保険診療下のゲノム医療が行われていない。 上記の共同研究コンソーシアムは、造血器腫瘍の保険診療下でのゲノム医療を実現するため、造血器腫瘍ゲノム検査ガイドラインに基づいた網羅的な遺伝子パネル検査の開発に取り組んできた。造血器腫瘍に関連する遺伝子異常を検出することにより、骨髄系腫瘍からリンパ系腫瘍までほとんどの造血器腫瘍に対して、診断、治療法選択、予後予測が可能になると期待される。 承認されれば、同製品は国内初の造血器腫瘍を対象としたがん遺伝子パネル検査となる予定だ。

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抗BCMA/CD3二重特異性抗体エルラナタマブ、再発・難治多発性骨髄腫に承認/ファイザー

 ファイザーは2024年3月26日、抗BCMA/CD3二重特異性抗体エルラナタマブ(商品名:エルレフィオ)について、「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対する治療薬として、国内における製造販売承認を取得した。今回の承認は、国際共同第II相試験(MagnetisMM-3試験)および国内第I相試験(MagnetisMM-2試験)の結果等に基づくもの。 再発・難治多発性骨髄腫に対する治療では、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬および抗CD38モノクローナル抗体の3クラスの薬剤がキードラッグとして用いられる。これらの薬剤に耐性を示す患者の多くはその後治療で十分な効果が期待できず、また標準薬物治療もなかった。 MagnetisMM-3試験は再発・難治多発性骨髄腫を対象に、同剤単剤投与の有効性および安全性を評価する第II相非盲検単群多施設共同試験である。同試験は免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬および抗CD38モノクローナル抗体それぞれ少なくとも1剤に抵抗性を示す多発性骨髄腫患者を対象とし、BCMAを標的とした治療歴のない患者をコホートA(123例)、BCMAを標的とした治療歴のある患者をコホートB(64例)として評価した。主要評価項目の奏効率について、コホートAおよびコホートBで臨床的に意義のある結果が認められた。主な有害事象はサイトカイン放出症候群、貧血、好中球減少症、下痢、血小板減少症、疲労、食欲減退、リンパ球減少症、注射部位反応、発熱、悪心および低カリウム血症であった。

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イノツズマブ オゾガマイシン、小児CD22陽性急性リンパ性白血病に適応追加/ファイザー

 ファイザーは2024年3月26日、イノツズマブ オゾガマイシン(商品名:ベスポンサ)について、小児の再発又は難治性のCD22陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対する国内における医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。今回の承認は、小児の再発・難治ALLを対象とした2つの医師主導治験、国内第I相試験(INO-Ped-ALL-1試験)および海外第I/II相試験(ITCC-059試験)の結果に基づいている。 小児ALLは小児期の造血器悪性疾患の中で最も高頻度にみられ、2〜5歳に発症することが多い。小児10万人当たり年間3〜4人が発症し、日本では年間約500人の小児が新規に診断されている。 INO-Ped-ALL-1試験およびITCC-059試験では、同剤の高い完全寛解率と微小残存病変(MRD)陰性率が認められ、寛解持続期間、造血幹細胞移植(HSCT)または CAR-T細胞療法への移行率、無イベント生存率(EFS)、全生存期間(OS)、非寛解または再発の累積発生率も良好な結果が得られた。また、両試験において本剤は、成人患者と同様に管理可能な安全性プロファイルを示した。

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英語で「責任追及」は?【1分★医療英語】第124回

第124回 英語で「責任追及」は?《例文1》This is not to finger point, but we have to hold the primary doctor accountable.(罪のなすり付けをするつもりはないが、主治医には説明責任を求めるべきだ)《例文2》We need to stop the blame game.(私たちは罪のなすり付けをやめるべきだ)《解説》医師は医療のさまざまな現場でリーダーとしての役割を求められることが多く、時には、現場での不毛な責任追及を制止して、チームを団結させて問題解決に導くコミュニケーション力も必要です。“finger pointing”は、直訳すると「指差しをすること」となりますが、英会話では「責任追及のために特定の人物を指すこと」という意味があります。否定的な意味合いで使われることが多く、過度・不当な責任追及(=罪のなすり付け)を意味する場合が多いです。また、「正当な責任追及である」と考えて発言するときには、「これはfinger pointingではない」という言い回しを使って前置きすることもよくあります《例文1》。“finger pointing”の類似表現としては、“the blame game”があります《例文2》。講師紹介

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名目上のp値とは?「ネコは心筋梗塞の発症を抑制する」は真実か【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第70回

経済用語における「名目」本原稿を執筆している3月13日は春闘の集中回答日でした。これは、自動車や電気機器、鉄鋼などの製造業大手の経営側が、賃上げなど労働組合の春闘要求に対する回答をいっせいに伝える日です。報道によれば、大手企業では満額を含む高い水準の回答が相次いだそうです。30年近く給与が上昇しなかった日本では画期的なニュースです。労働組合活動に疎い医師の立場からすると、縁遠い感じもしますが、医師も連携して力を合わせて、要求すべきことを訴えていかねばならないとも感じます。満額回答が続出した背景には、歴史的な物価高があります。賃金が上昇しても、物価の上昇分に追い付いていなければ、実質的には目減りしていることになります。これを説明するための用語が「名目賃金」と「実質賃金」です。名目賃金は、貨幣で受け取った賃金そのものを指します。給与明細に記載された給与額です。実質賃金は、労働者が実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて計算したものです。たとえば、名目賃金が10%上がると同時に、物価も10%上がった場合には、実質賃金は変化なく同じです。物価上昇分を超える名目賃金の上昇がなければ、「給料が上がり景気が良くなった。さあ金を使おう」とはなりません。海外に比して日本の物価が相対的に安いことは実感されますので、一定の物価上昇が続いてもいいのでしょう。それ以上の賃金上昇が続く「物価と賃金の好循環」が期待されます。日本経済がデフレ基調から脱却し、成長軌道に復することを願うばかりです。名目賃金・実質賃金だけでなく、国内総生産(GDP)でも「名目GDP」「実質GDP」というように、対義語の関係にある「名目」と「実質」は経済指標でしばしば使用されます。医学領域では、「名目」という用語はあまり使われないかもしれません。しかし、読者の皆さまが「名目」という言葉を目にしないと感じるのであれば、注意力が不足しています。医療関係者は、製薬企業から薬剤についての宣伝の資料を受け取ると思います。最近ならばインターネット上で宣伝資材に触れる機会も多いと思います。そのパンフレットやチラシの資料には「名目上のp値」という言葉が多く記載されています。たいてい小さな文字で書かれていることが多いので気付かないかもしれませんが、あらゆる図表に「名目上のp値」と記載されています。名目上のp値とは?まずp値について復習しましょう。研究の世界では統計的な有意性が求められます。有意性の判定基準として通常は「p値」が使われ、一般的には0.05(=20分の1)を有意水準として、p値が0.05未満の時に有意であるとされます。新薬Aの有効性を検討するために、プラセボと比較するランダマイズ試験を実施するとします。新薬Aは有効性がない薬剤であるとの仮説を立てます。これを帰無仮説といいます。この有効性がないと仮定した場合に、今回のランダマイズ試験の結果が偶然に発生する確率であるp値を計算します。このp値が0.05未満であった場合に、「5%未満の確率で起こる事象は、20回に1回以下しか起こらないまれな事象だ。したがってこのようなまれな事象が今回の研究で偶然に起こったとは考えないことにしよう。そうだ、前提である新薬Aは有効性がないという帰無仮説が間違っていたのだ。新薬Aが有効と考えても良いかもしれない」という解釈となります。ある仮の臨床研究を考えてみます。心筋梗塞の既往のある100人と、既往のない100人への調査研究です。好きな動物は何ですかという調査です。イヌ・ネコ・ウマ・クマ・パンダ・ライオン・トラ……動物園のごとく動物名が続きます。心筋梗塞の既往の有無にかかわらず、パンダ好きの方がいるはずです。パンダ好きであることと心筋梗塞発症には何の関係もなくとも、両群でピッタリ同じ人数とは限りません。心筋梗塞の既往のある群とない群の各100人の中でパンダ好きと返答する人は、同数ではなく多少の差異、つまりバラツキがあるほうが多いはずです。このバラツキが生じる確率であるp値を計算します。これがp=0.4ならば、「パンダ好きの人に心筋梗塞の既往のない人が多いが、10回に4回ほども発生する珍しくない出来事だな、まあパンダには心筋梗塞予防効果があるとはいえないなぁ」となります。イヌのp値は0.42、タヌキのp値は0.8、ゾウのp値は0.31、クマのp値は0.64と続きます。そしてネコで計算してみると、なんとp=0.04でした。これは大発見です。何しろp値が0.05未満の非常に珍しい事象が観察されたのです。さっそく論文化します。「ネコ好きには、有意に心筋梗塞の既往のある者が少ない、つまりネコをかわいがると心筋梗塞になりにくい。そうだ皆がネコを飼うのだ、ネコさま万歳!」という趣旨の大論文です。これは正しいでしょうか。有意かどうかを判断する有意水準が0.05(=20分の1)であれば、20以上の動物名を羅列すれば、1つくらいはp値が0.05を下回る項目があるほうが普通です。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」式に山ほどの動物名で調査しながら、その他の動物名で調査したことを伏して、ネコの部分だけで調査したかのように公表するのは間違っています。主要評価項目の結果のみ「p値」を記載できる正しい流れは以下であるべきです。ネコを愛することには心筋梗塞の予防効果があることを示唆する基礎研究データが背景にあり、その次に、「ネコ好きには心筋梗塞発症予防効果がある」という臨床上の仮説を立てて、研究計画を練るというステップです。多くの項目で検定すれば、どれか1つは有意となる可能性は高まります。それを最初からピンポイントで狙っていたかのように発表することには大きな問題があります。これが研究において何を一番評価するのかを、事前に主要評価項目(プライマリ・エンドポイント)として1つ定めておく理由です。他の副次的評価項目(セカンダリ・エンドポイント)と明確に区別しておくことが必要です。数多くの項目を網羅的に検定することの問題は、多重性検定への対応として、統計学に1つのジャンルを成すほど重要なテーマとなっています。一方で、多くを検定することイコール「悪」ではなく、探索的に種々の検定を行う中に、真の大発見の種がある可能性もあることに留意ください。製薬企業の資料作成要領では、その薬剤の承認にかかる研究の主要評価項目に関する検証的な解析結果の表記においてのみ、堂々と「p値」を名乗ることが可能です。それ以外の解析結果を宣伝資材に記載する場合には、「名目上のp値」と記載し、多重性検定への対応にも触れることが必要とされています1)。参考1)日本製薬工業協会「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」

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がん合併の低リスク肺塞栓症患者に対する在宅療養は適切か(ONCO PE)/日本循環器学会

 肺塞栓症含む血栓塞栓症はがん患者の主要な合併症の1つだ。通常の肺塞栓症の場合、低リスクであればDOACによる在宅療養を安全に行えるものの、がん患者の肺塞栓症に対してもそれが可能であるか議論されていた。倉敷中央病院心臓病センター循環器内科の茶谷 龍己氏らは、肺塞栓症重症度スコア(sPESI)が1点のがん合併の低リスク肺塞栓症患者に対して、リバーロキサバンによる在宅療養と入院療養の比較試験を、ONCO PE試験のコンパニオンレポートとして実施した。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2セッションにて茶谷氏が発表した。なお本結果は、Circulation Journal誌オンライン版2024年3月8日号に同時掲載された。 ONCO PE試験(NCT 04724460)は、sPESIスコアが1点の活動性がん合併の低リスク肺塞栓症患者を対象に、18ヵ月間のリバーロキサバン治療と6ヵ月間のリバーロキサバン治療を比較することを目的とした、国内32施設による多施設非盲検判定者盲検RCTだ。今回、ONCO PE試験のスキーム外で、プロトコルで事前に決定されていたコンパニオンレポートとして、在宅療養と入院療養の3ヵ月間の臨床転帰が評価された。なお、本試験はバイエル薬品より資金提供を受けたが、同社は本試験のデザイン、データの収集・解析、報告書の執筆には関与していない。 本試験では、造影CT検査によって新たに肺塞栓症(sPESIスコア:1点)が認められた活動性がん患者が対象とされた。診断時の抗凝固療法の実施、出血ハイリスクと医師に判断された患者、リバーロキサバン禁忌、生命予後が6ヵ月以下とされた患者は除外された。試験開始後、医師の判断でリバーロキサバンを最初の3週間は15mgを1日2回の初期強化療法を行い、その後15mgを1日1回投与した。医師の判断で初期強化療法を行わないことは許容された。主要評価項目は、肺塞栓症関連死、再発性静脈血栓塞栓症(VTE)、大出血の複合転帰とした。副次評価項目は、主要評価項目に関連する肺塞栓症関連死、再発性VTE、大出血、全死因死亡と肺塞栓症関連事象による入院(再発性VTE、出血による入院)とした。Kaplan-Meier曲線を用いて累積発生率を推定し、log-rank検定で差異を評価した。在宅療養と入院療養における評価項目をCox比例ハザードモデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月~2023年3月に、国内32施設の178例が解析対象となった。平均年齢65.7歳、女性53%、平均体重60.1kg、平均BMI 23.0kg/m2。・在宅療養群は、66例(37%)、平均年齢66.2±9.5歳、女性34例(52%)、平均体重60.4±10.9kg、平均BMI 23.1±2.9kg/m2。・入院療養群は、112例(63%)、平均年齢65.5±11.0歳、女性61例(55%)、平均体重60.0±11.7kg、平均BMI 22.9±4.2kg/m2。・ベースライン時では、在宅療養群では右心負荷所見のある患者の頻度が低かった(1.5% vs.13%、p=0.01)。・3ヵ月間での肺塞栓症関連死、再発性VTE、大出血の複合転帰は、在宅療養群:66例中3例(4.6%、95%信頼区間[CI]:0.0~9.6)vs.入院療養群:112例中2例(1.8%、95%CI:0.0~4.3)で、主要評価項目の累積3ヵ月の発生率には両群間に有意差はなかった(log-rank p=0.28)。・肺塞栓症関連死は両群ともに発生しなかった。・在宅療養群では、3例に大出血が発生した(4.6%、95%CI:0.0~9.6)。・入院療養群では、再発性VTEが1例(0.9%、95%CI:0.0~2.7)、大出血が1例(0.9%、95%CI:0.0~2.7)発生した。・両群で、初期強化療法期間中に大出血は発生しなかった。・3ヵ月間での全死因死亡は在宅療養群4例(6.1%、95%CI:0.3~11.8)、院内療養群5例(4.5%、95%CI:0.6~8.3)であった。すべてがんによるものだった。・在宅療養群では、2例が肺塞栓症関連事象による入院を必要としたが、すべて出血事象による入院であった(3.0%、95%CI:0.0~7.2)。 本試験の結果、sPESIスコアが1点の活動性がん合併の低リスク肺塞栓症患者は、在宅療養での治療ができる可能性があることが示された。

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英語で「予防」は?【1分★医療英語】第123回

第123回 英語で「予防」は?《例文1》Do you recommend initiating antibiotic prophylaxis?(抗菌薬での予防を開始したほうがいいと思いますか?)《例文2》The oncology team has decided to use neutropenia prophylaxis.(腫瘍チームが好中球減少症の予防をすることを決めました)《解説》「予防」を示す英単語は、“prevention”と習ったかと思います。患者さんとの会話の際は一般的なこの表現を使いますが、医療者同士では“prophylaxis”(プロフィラクスィス:[病気の]予防)が使われることが多く、臨床ガイドライン等でもこちらが採用されています。“PrEP”(pre-exposure prophylaxis=曝露前予防)、“PEP”(post-exposure prophylaxis=曝露後予防)など、HIV曝露前後に予防として抗HIV薬を服用する意味の単語にも使われています。“prophylaxis”は少し長いので、カルテ等では略語の“ppx”と書くこともあります。同じ薬であっても、治療目的と予防目的では異なる用量で処方することも多く、注意が必要です。“therapeutic dose”は「治療目的の用量」、“prophylactic dose”は「予防目的の用量」を指します。薬のオーダーをするときや、スタッフとの会話の際に、間違いや勘違いがないよう気を付けてください。講師紹介

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