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「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」5年ぶりの改訂

CKD診療ガイドラインが全面改訂 日本腎臓学会は6月、5年ぶりの改訂となる「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」を発行した。今回は専門医だけではなく、かかりつけ医や非専門医の利用を想定して制作されており、全面改訂する際に「CKD診療ガイド2012」と「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」を一元化させている。 前回同様、全章がクリニカルクエスチョン(CQ)形式の構成。CKD診療ガイドライン2018の主な改訂ポイントとして“STOP-DKD宣言”で注目を集めた、糖尿病性腎臓病(DKD)が章立てられているほか、高血圧・心血管疾患(CVD)、高齢者CKDについても詳しく取り上げられている。CKD診療ガイドラインの役割 本ガイドラインはすべての重症度のCKD患者を対象とし、診療上で問題となる小児CKDの特徴と対処法、CKD患者の妊娠時についても簡潔に記載されている。ただし、末期腎不全(ESKD)に達した維持透析患者や急性腎障害(AKI)患者は除外されているため、必要に応じて他のガイドラインを参照する必要がある。本来であれば病診連携が必要とされる疾患だが、本ガイドラインは専門医が不在とする地域での、かかりつけ医によるCKD診療のサポートに配慮した構成となっている。CKD診療ガイドライン2018では75歳以上は150/90mmHg未満を推奨 CKD診療ガイドライン第4章の「高血圧・CVD」では、血圧基準値を「糖尿病の有無」「尿蛋白の有無(軽度尿蛋白[0.15g/gCr]以上を尿蛋白ありと判定)」「年齢(75歳で区分)」の3つのポイントで定めている。・75歳未満の場合 CKDステージを問わず、糖尿病および尿蛋白の有無で判定 糖尿病なし:尿蛋白(-)140/90mmHg未満、尿蛋白(+)130/80mmHg未満 糖尿病あり:尿蛋白(+)130/80mmHg未満・75歳以上の場合 糖尿病、尿蛋白の有無にかかわらず150/90mmHg未満 起立性低血圧やAKIなどの有害事象がなければ、140/90mmHg未満への降圧を目指すが、80歳以上の120/60mmHg以下での管理において、Jカーブ現象が見られたという研究報告もあることから過降圧への注意も提案されている。CKD診療ガイドライン2018では高齢者への対応に変化 CKD診療ガイドライン第12章「高齢者CKD」では、高齢者CKDの年齢が“75歳以上”と改訂されており、これは2017年に日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループ において、「75歳以上を高齢者」と定義付けたことが反映されている。また、同章にはフレイルに対する介入のCQが盛り込まれており、これは厚生労働省が今年度より本格実施を始めた「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に沿った改訂であることが伺える。DKDの推奨検査項目と管理目標値 CKD診療ガイドライン第16章「糖尿病性腎臓病(DKD)」では4つのCQが挙げられており、「尿アルブミン尿の測定」「浮腫を伴うDKDへのループ利尿薬投与」「HbA1c7.0%未満」「集約的治療」を推奨している。とくに血管合併症の発症・進行抑制ならびに総死亡率抑制のために集約的治療が重要とされ、以下の管理目標値を推奨としている。・BMI 22(生活習慣の修正[適切な体重管理、運動、禁煙、塩分制限食など])・HbA1c7.0%未満(現行のガイドラインで推奨されている血糖)・収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満・LDLコレステロール120mg/dl、HDLコレステロール40mg/dl、中性脂肪150mg/dl未満(早朝空腹時) ただし、「多因子の厳格な治療を推奨することで、投与薬剤数の増加や薬剤に関連する低血糖、過降圧、浮腫、高カリウム血症などのリスクが高まることにも注意が必要であり、適切なモニタリングと患者背景や生活環境を十分に勘案するように」といった注意事項も明記されている。PKD病診連携の架け橋に 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は透析導入原因の第4位となる疾患であるが、指定難病のため腎臓専門医・専門医療機関への紹介が必要となる。CKD診療ガイドライン第17章-3には、かかりつけ医による診療ポイントとして「脳動脈瘤」「トルバプタンによる治療」「血圧管理」について記載されているが、詳細については「エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2017」を参照とされている。今後の方針 今後の方針として「同改訂委員会が継続しメディカルスタッフや患者を利用者に想定したCKD療養ガイド2018を作成、出版する」と記され、医療者と患者が一体となって治療に取り組むことで、透析導入予防や医療費抑制につながることが期待される。

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DKDの意義とは―腎臓専門医からの視点

 5月24日から3日間にわたって開催された、第61回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:宇都宮 一典)において、日本腎臓学会・日本糖尿病対策推進会議合同シンポジウムが行われ、岡田 浩一氏(埼玉医科大学腎臓内科 教授)が「糖尿病性腎臓病DKDの抑制を目指して」をテーマに講演した。なぜ、DKD(糖尿病性腎臓病:Diabetic Kidney Disease)? 日本糖尿病学会と日本腎臓学会の両理事長による“STOP-DKD宣言”の調印から7ヵ月が経過した。しかし、「現時点ではまだ十分に市民権を得た概念ではない」と、岡田氏は腎臓専門医の立場から日本でのDKDの意義を示した。 同氏によると「海外では2013年頃から“DKD”の概念が広まっており、現在、国際学会ではヒトの糖尿病関連腎症を示す病名としてDN(diabetic nephropathy:糖尿病性腎症)を使用していない。そのため、日本ではDN、海外ではDKDが使用される、いわばダブルスタンダードの状況である。国際間の情報収集・交換を考慮すると疾患概念を輸入する必要があるため、2学会の承認を得て決定した」とDKDの概念の発足理由を説明した。日本人の病態推移 日本人の2型糖尿病患者の40%以上は微量アルブミン以上の所見を有する糖尿病腎症であり、その中で高血圧性腎症(HN)の病態に類似の、アルブミン尿が顕性化せずにeGFRが低下する非典型的な経過をたどる症例が増加している。また、透析導入率で見ると、1998年以降年々増加し、現在は横ばいの推移を示しているが、高血圧を原因とする腎硬化症による透析導入は徐々に増加傾向である。さらに、性別、年齢別の経年変化のグラフ1)によれば、女性は85歳未満のすべての年代において糖尿病による透析導入率は低下しており、85歳以上では横ばいである。一方、男性は80歳未満では低下傾向であるが、80歳以上は増加傾向というデータが報告されている。これを踏まえ、同氏は「2型糖尿病患者の男性透析導入者は人口構成上、今後も増えることが予想されるため、重要なターゲット」と注意を促した。DKD疾患とその対策法とは 近年はRA系阻害薬の使用率が上昇し、それに伴う腎保護作用の恩恵を受けている。しかしその結果、アルブミン尿が検出されなくても腎機能が低下している症例が増えているのも事実である。これに同氏は「アルブミン尿をしっかり下げているにもかかわらずGFRが低い人が増えていることを考えると、集約的治療の網の目をくぐり抜けて腎不全に陥る糖尿病患者がおり、しかも高齢化や罹病期間の延長も関与している可能性がある」と現在の人口構成を踏まえた集約的治療の在り方と検査方法について危惧した。 このような症例を減らすためには現在の概念であるCKDやDNだけでは収まりきらないため、両学会は米国から広まったDKDの概念の国内普及に努めている。 同氏は6月に発刊される「CKD診療ガイドライン2018」に掲載予定のDKDの概念図を用い、「“DKD”とは典型的な糖尿病腎症+非典型的(顕性アルブミン尿を伴わずにGFRが落ちていく症例)で、その発症進展に糖尿病が関わっている腎症の包括的な疾患概念」と説明。また、「“CKD with DM(糖尿病合併CKD)”はさらに広い包括的な疾患概念として、海外では2014年頃から整理された疾患概念である。現在、これはDKD+非糖尿病関連CKD(多発嚢胞腎やIgA腎症のような独立したCKD)として理解されるようになった」と解説した。DKDに対する検査 次に同氏は、既存検査に加えて、新しい画像検査法であるBOLD MRIについて提唱した。顕性アルブミン尿を伴わずeGFRが低下している症例の腎生検では、典型的な糖尿病性糸球体硬化症と細動脈硬化が混在している所見が観察されることから、早い段階から腎硬化症と糖尿病の糸球体病変が合併しており、これが非典型的な糖尿病関連腎症の組織学的な特徴ではないか」という仮説を紹介した。顕性微量アルブミンが検出されないまま腎機能の低下をきたした原因には腎組織の虚血の関与が想定され、「このような症例に対し、尿アルブミンの定量に加えてeGFRの測定が重要であり、加えて腎臓の酸素化を可視化できるBOLD MRIなどの新しい検査法の開発・導入を推進すべき」とコメントした。DKDによる診療意図拡大へ J-DOIT3試験の応用が、より良い臓器合併症抑制効果に結びつくことを踏まえ、同氏は「これには多職種からなるチームでの介入が重要であり、そのためには、かかりつけ医から専門医への適切な紹介が必要となる。これを推進するため、両学会において紹介基準が作成された2)」と述べ、「この際、アルブミン尿とGFRを定期的に測定してもらうことが大前提となる」と適切な紹介のための注意点を伝えた。 最後に同氏は「ただし、DKDの中には、集約的治療では抑え込めない非典型的な糖尿病関連腎症が含まれている。この顕性アルブミン尿を伴わない腎症の病態解明と新しい管理・治療法の開発という2つの学会をあげての取り組みを促進すること、これが今、DKDの定義を発信する目的である」と締めくくった。

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透析医療の新たなる時代

 2018年5月22日にバクスター株式会社主催のプレスセミナーが開催された。今回は『変革期を迎える透析医療~腹膜透析治療の可能性とQOLを高める「治療法決定プロセス」の在り方とは~』と題し、日本透析医学会理事長 中元 秀友先生(埼玉医科大学病院 総合診療内科 教授)が登壇した。なぜ腹膜透析が浸透しないのか 人工透析患者は2016年時点で32万9,609人に上り、新規透析導入患者は3万9,344人と報告されている。血液透析(HD)導入が増加する一方、他国と比較して日本の腹膜透析(PD)導入率は2.7%と、PDの普及率は世界でも最低レベルである。 PDはHDと比較すると残存腎機能維持、QOL維持、患者満足度が良好であるのに対し、透析効率や除水効率の低さ、継続可能年数が短いことが問題点として挙げられる。なかでも一番の問題点として、「腹膜透析の専門家(医師、看護師)が少ないこと」「患者にとって十分な情報提供の不足」を中元氏は強調した。日本の透析技術に高い評価 「血液透析患者の治療方針と患者予後についての調査(DOPPS)」によると、日本は米国に次いで患者登録数が多く、現在は第7期調査が進められている。 世界12ヵ国の7,226名の透析患者を対象としたDOPPS(第4期調査)研究からの報告では、日本人1人当たりの透析期間は平均8.76年と参加国で最も長いと記されている。それにもかかわらず患者の活動状況の指標であるFunctional Status (FS)が最も良好であるのは、“日本の医療技術が優れ、シャントが計画的に作成される結果、透析導入も計画的に行われているため”とも報告されている。その他にも“保険制度が優れ、透析導入時の金銭的負担が少ない”というメリットがあり、「すべての患者が良好な血液透析を受けることができる。本邦の血液透析の成績が極めて良いことは誇るべきことであるが、これがPDの普及の足かせになっている可能性もある」と中元氏は語った。透析医療の変革期 2000年以降PD液は中性透析液となり、腹膜への侵襲性は大きく改善した。また、ブドウ糖に代わるものとしてイコデキストリンが登場し、緩衝剤へ重曹が使用されるようになったため、より生体に適合する透析液が発売されるようになった。中性液の有用性については、「中性液でEPSの発症率をみたNEXT-PD試験」において、EPSの発症を以前の研究と比較して約1/3まで抑えることが報告されている。 中元氏は、このように腹膜透析の医療技術が飛躍的に躍進しているものの「患者への情報に偏り」があることを、これまでのアンケート結果(全腎協、腎臓サポート協会)から指摘した。2008年の全腎協のアンケートでは「血液透析開始前の患者の6割が、さらに透析開始後も4割の患者は腹膜透析を知らなかった」と報告されている。また腎臓サポート協会の「治療法は医師が決定しそれに従った患者が半数以上だが、実際は、85%の患者が治療法を自身で決定したいと考えている」という結果から、今後、医療従事者の認識不足を解決し、患者がもっと治療の意思決定に参加できる態勢が必要であると説明した。在宅診療や労働人口の社会復帰に寄与 国としても適切な腎代替療法推進を目指している。平成30年度診療報酬改定では、糖尿病性腎症からの透析導入者抑制のため「糖尿病透析予防指導管理料」の対象患者の拡大や、療法選択への診療報酬加算の充実、特に腹膜透析や腎移植の推進評価として「腎代替療法実績加算 100点」算定が開始された。 高齢患者の在宅治療の推進、地域包括ケアの重要性が言われており、高齢者が社会生活を維持しながら透析治療を継続するためにはPDの普及が急がれる。今回、バクスターより発売された自動腹膜用灌流装置「ホームPDシステム かぐや」は医療従事者による遠隔操作により、さらに身近な在宅治療が実現可能となった。また、通院回数を減らすことが可能であり、就業への支障が少なく社会に対する疎外感の抑制にもメリットがある。 最後に中元氏は、「今後はこのシステムに大病院だけが関与するのではなく、在宅治療が増えていくことを見据え、中小病院やクリニックとの連携が重要となる」ことを強調し、PDは地域連携に考慮した治療法であるとPDの普及に期待を示した。■参考バクスターニュースリリース日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況DOPPS

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第4回 育児をする医師は負け組?【宮本研のメディア×ドクターの視座】

第4回 育児をする医師は負け組?ある日の当直中、急性心筋梗塞と判明した外来患者を前に、私は循環器内科のオンコール医師へ急いで電話をかけました。受話器の向こうでは、幼い子供の大きな泣き声が聞こえます。独身の私には事態の深刻さがピンときませんでした。「ああ、分かった、AMIね・・・。今さ、子供を風呂に入れているけど、すぐに行く。○○先生に連絡して、カテの準備を病棟スタッフに頼んで」数十分後、風呂上がりで紅潮した顔の先輩医師が到着すると、長めの髪も乾ききらないまま、心臓カテーテル室へと走って行きました。あれから10年以上が経ち、毎晩、幼い子供たちをお風呂に入れながら、この瞬間にオンコールで呼び出されることが、切実な問題として分かるようになりました。もし妻が不在であったり対応できない時間帯であれば、誰かの助け無しには、夜遅くに子供たちを置いて、病院へ駆けつけることは不可能です。親が慌てて出かける事情が理解できない彼らは大泣きし、相当に厳しい状況となるでしょう。勤務医生活をふり返ると、腎臓内科医が1人体制だった民間病院での7年間は、24時間オンコール体制が毎日続きました。大学や基幹病院よりも呼び出しが少ないとはいえ、朝5時に病棟急変の連絡が入る、深夜1時に緊急透析の判断を問われるといった立場は、精神的に苦しい環境でした。そこに育児が加われば、やっと夜泣きがおさまった子供をオンコールの着信で起こされてしまう。不意の電話は、幼児にとっては恐怖でもあります。「何を軟弱なことを言ってる! それが医者だろう!」という意見もあるかと思いますが、私の父方は100年以上の医師家系で、とくに父が外科医の多忙な日々を送り、オンコールや当直が続き、早々に家庭が崩壊した事実をお伝えしておきます。家族を犠牲にして働くことが、本当に医師の美徳なのか。父親が週末さえもいない中で、母親が「患者さんのために、パパは病院へ行ったんだよ」と言う意味は、高校生になっても理解できませんでした。しかし父と同じく医師になってみると、院内に長時間いる先生が素晴らしい、というデファクト・スタンダード的な見方が、まだあちこちにありました。長時間労働をいとわず、急変時は昼夜を問わずに駆けつけ、床やソファで仮眠を取れば超人的なパフォーマンスを発揮する医師。たびたび身体を壊しつつ、そのような望まれる医師像に挑んできて、「長続きしようがない」というのが私なりの結論です。肉体の老化は年々進み、我が身を満足にメンテナンスできない環境では、医師なりの思考回路も鈍っていく。猛烈なプレッシャーは心身の余裕も破壊します。そして、育児という連続的で多大な負荷は、自宅内での実労働として重くのしかかります。幼い子供は機嫌も体調もグズりも、常に変わり続ける。親の思うとおりにはならないし、真夜中に抱っこしてもずっと泣かれ続ければ、大人の我慢も限界にきてしまう。他人からは見えない修羅場を毎日抱えながら、ハードな医師業も年々レベルアップしろというのは、結構な無茶ぶりでしょう。育児をしている医師、とくに女性は、フルタイム勤務を続けにくい。これは他のビジネスでも同様ですが、最近は多様な支援や代替策を探すことが可能となりつつあります。人員の手当や勤務環境の調整など、医師業よりはかなり柔軟に対応できているのではないでしょうか。育児中の女性社員に優秀なパフォーマンスを発揮してもらうための経営施策は、ハードワーク男性を主戦力としてきた医師業界と比べて、明らかに進歩しているように感じます。けれども、働き方改革における先送りのように、公的な任務を背負う医師業界では、個人の状況は後回しにして、社会的な貢献度合いが優先されやすい。メディア業界で白衣を着用せずに働いてみると、世間一般の理解も医療界としての内部対策も、ともに“不足しっぱなし”であると痛感します。女性に対する「こんなときに妊娠なんて」という言葉は、医師業界でも蔓延するハラスメント行為ですが、きっと今日もどこかで実際に起こっているはず。新卒医師の3分の1以上が女性である時代にもかかわらず、毎日の育児に対する支援や理解、さらに先達たちの発言は不十分です。「忙しくて育児なんて全然しなかったけど、子供たちは奥さんが頑張って育ててくれた」という丸投げ談は、この発想を若い医師へ当てはめること自体、現代のハラスメントになりかねません。ましてや、育児をしている医師はキャリアの負け組だ、というひそかな認識も、医師の働き方が改善しない重大な要因ではないでしょうか。育児はもうひとつの無償労働である。だが、将来の日本を支える人材を懸命に育てる重要な責務でもある。―「オートマチックな育児などない」という声をもっと大きく取り上げ、医師業界に横たわる育児軽視を短期に好転させていくことが、今こそ重要です。

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CKD患者に水摂取を励行するのは意味があるか?(解説:木村健二郎氏)-862

 CKD患者における脱水が腎機能を低下させることは明らかで、日常臨床でも多く経験されるところである。しかし、逆に、水摂取を多くすることが、腎機能の低下を抑制するかどうかは明らかではない。 『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013』(日本腎臓学会編)では、「水分摂取量はCKDの進展に影響を及ぼすか?」というCQに対して「CKDステージG1、2では、水分負荷は腎機能保持に有効である」「CKDステージG3以降では、水分負荷により腎機能が悪化する可能性がある」としており、いずれもエビデンスとしては弱いため推奨レベルは付けられていない。CKDにおける水分摂取を考える際には、そのステージも考慮する必要があるが、まだ、十分なエビデンスはない、ということになる。 本試験では、CKDステージ3の患者を水摂取励行群と対照群に分けて1年間経過をみたが、eGFRの低下に両群で有意差はみられていない。水摂取が確実に増加したことは、希釈尿(色で確認)、1日尿量増加および血漿コペプチン(抗利尿ホルモン分泌のバイオマーカー)の低下で確認しているので、信頼できる介入試験であると考えられる。ディスカッションで著者が述べているように、両群で有意差をつけるにはもっと大量の水摂取か2年以上の観察期間が必要なのかもしれない。本試験は水摂取励行に関する新しい知見をわれわれに提供しなかったが、このような生活習慣に関わる研究の難しさを示している。

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男女の排尿時間はどちらが長いか?~日本抗加齢医学会総会

 「あなたは自分が何秒間おしっこしているか知っていますか?」 男女別の排尿時間という、これまで泌尿器科、婦人科の世界できちんと検証されてこなかったシンプルな疑問を明らかにしたのは、旭川医科大学病院臨床研究支援センターの松本 成史氏。5月25日~27日に大阪で開催された日本抗加齢医学会のシンポジウム中でその研究成果を発表した。男女とも排尿時間は加齢とともに有意に延長 ヒトの排尿に関する数値としては、1回20~30秒、1回200~400mL、1日1,000~1,500mL、1日5~7回などが標準とされている。しかし、「ヒトの本当の1回の排尿時間を実際に測定して分析した研究報告はこれまでなかった」(松本氏)。一方で、すべての哺乳類の平均排尿時間は、体の大きさに関係なく、21±13秒と結論付けられており、この研究論文は2015年のイグ・ノーベル賞を受賞している(Yang PJ, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111:11932-11937.)。 松本氏は、これら排尿に関する数値を日本人で実証すべく、本研究を行った。 排尿時間の調査対象は、NHKの番組企画に協力してくれた20歳以上の3,719人(男性2,373人、女性1,336人)。「通常の尿意」の際の排尿時間(尿が実際に出始め、出終わるまでの時間)を自己計測し、高血圧、糖尿病、腎機能障害の有無、過活動膀胱症状スコア、国際前立腺症状スコアとQOLスコア(男性のみ)などとともに自己申告で記載してもらった。 その結果、平均排尿時間は、男性(平均63.36±11.72歳)で29.00±20.62秒、女性(平均52.63±13.05歳)で18.05±12.48秒と、男性のほうが10秒以上上回った。排尿時間は、尿道が長い男性のほうが女性より長いと一般的に考えられており、それを裏付ける結果となった。 年齢との関係を見ると、男女とも排尿時間は加齢とともに有意に延長。自己申告に基づく高血圧、腎機能障害等の有病者と健常者の比較では、有病者グループのほうが男女とも有意に長かった。 排尿時間の哺乳類標準である「21秒」との乖離について松本氏は、「(排尿時間を延長させる)前立腺肥大の影響がないと考えられる20~50歳に限ると、男性の平均は21.98±17.87秒である」とし、先行研究と矛盾しない結果だと説明する。それも踏まえ、「排尿時間は自己測定が容易であり、アンチエイジング、疾病早期発見の1つの指標になりえる。とくに男性については、[21秒]はわかりやすい数値だ」と話している。

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水分摂取増やしても、CKDの進行抑制できず/JAMA

 成人の慢性腎臓病(CKD)患者において、飲水量の増加を指導しても、通常の飲水量を維持するよう指導した場合と比較し、1年後の腎機能低下に有意な影響は認められなかった。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のWilliam F. Clark氏らが行った無作為化試験「CKD WIT(Chronic Kidney Disease Water Intake Trial)」の結果、明らかになった。これまで、観察研究では飲水量の増加が良好な腎機能と関連することが示唆されていたが、飲水量の増加がCKD患者にとって有益かどうかについては不明であった。JAMA誌2018年5月8日号掲載の報告。CKDステージ3の患者631例を、飲水量増加群と通常量維持群に無作為化 CKD WIT試験は、2013~17年に、カナダ・オンタリオ州の9施設で実施された(最終追跡調査は2017年5月25日)。対象は、ステージ3(推定糸球体濾過量[eGFR]30~60mL/分/1.73m2で、微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿)、かつ24時間尿量が3.0L未満のCKD患者631例で、介入群と対照群に無作為に割り付けられた。 介入群には、飲水量を増やすよう指導し(性別や体重に合わせて、通常より1日1.0~1.5L多く飲水する)、対照群には、通常の飲水量を維持、または無作為化前の24時間尿量が1.5L/日より多く24時間尿浸透圧が500mOsm/kg未満の場合は飲水量を1日0.25~0.5L(カップ1~2杯)減らすよう指導した。 主要評価項目は、腎機能の変化(無作為化後12ヵ月時点のベースラインからのeGFRの変化)、副次評価項目は血漿コペプチン濃度、クレアチニンクリアランスおよび24時間尿中アルブミンの1年間の変化、患者評価による健康の質(腎疾患特異的QOL尺度[KDQOL-SF]の22項目:0点[最悪]~10点[最良]で評価)などであった。1年間のeGFR低下、両群で有意差なし 631例(平均年齢65.0歳、男性63.4%、平均eGFR 43mL/分/1.73m2、尿中アルブミン中央値123mg/日)のうち、12例が死亡した(介入群5例、対照群7例)。 1年間追跡しえた生存患者590例(介入群291例、対照群299例)において、24時間尿量の平均変化は、対照群に比べ介入群で0.6L/日の増加がみられた(95%信頼区間[CI]:0.5~0.7、p

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LCZ696に腎機能保持の新解析結果

 2018年4月16日、ノバルティス(スイス・バーゼル)は、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全(HFrEF)患者に、LCZ696(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)投与が推算糸球体濾過量(eGFR)を指標とする腎機能の保持に役立つという、PARADIGM-HF試験の新たな事後解析結果を発表した1)。 本剤は1日2回投与で、機能不全に陥った心臓の負荷を軽減する薬剤。本剤を投与されたHFrEF患者では、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬エナラプリルを投与された患者と比較し、eGFR低下の抑制が示された1)。また、糖尿病を合併したHFrEF患者のサブグループでは、その効果が2倍高いことが示された。この結果は、The lancet. Diabetes & endocrinology誌に掲載された。LCZ696は糖尿病合併患者の腎機能保持に役立つ PARADIGM-HF試験に参加した糖尿病合併のないHFrEF患者では、一般集団に比べ、腎機能の低下が2倍速いことが示された1)。糖尿病を合併したHFrEF患者では腎機能低下の速さはさらに顕著で、糖尿病のないHFrEF患者に比べて2倍の速さで腎機能低下がみられた1)。 HFrEF患者において、本剤投与は、エナラプリル群と比較し、腎機能低下を有意に抑制した(ベースラインからの変化量:-1.3 vs.-1.8mL/分/1.73m2/年)1)。 糖尿病を合併したHFrEF患者では、LCZ696による治療で、糖尿病のないHFrEF患者に比べ2倍のベネフィットが得られた(ベースラインからの変化量の投与群間差(95%信頼区間):0.6(0.4~0.8)vs.0.3(0.2~0.5)mL/分/1.73m2/年)1)。 これにより本剤による治療は、心血管死および心不全による入院リスクの低下という確立されたベネフィットに加え、とくに糖尿病合併患者の腎機能保持に役立つと期待される。LCZ696について 1日2回投与する薬剤で、心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(NP系、ナトリウム利尿ペプチド系)を促進すると同時に、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害な影響を抑制することで、機能不全に陥った心臓の負荷を軽減する。 欧州ではLVEFの低下した成人患者の症候性慢性心不全を適応とし、米国では収縮不全を伴う心不全(NYHAクラスII~IV)患者の治療を適応としている。わが国では、慢性心不全患者を対象とした第III相臨床試験を実施中。■参考文献1)Packer M, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Apr 13. [Epub ahead of print]■参考ノバルティス プレスリリース

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全身性エリテマトーデス〔SLE:Systemic Lupus Erythematosus〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫異常を基盤として発症し、多彩な自己抗体の産生により多臓器に障害を来す全身性炎症性疾患で、再燃と寛解を繰り返しながら病像が完成される。全身に多彩な病変を呈しうるが、個々人によって障害臓器やその程度が異なるため、それぞれに応じた管理と治療が必要となる。■ 疫学本疾患は指定難病に指定されており、令和元年(2019年)度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は6万1,835件であり、計算上の有病率は10万人中50人である。男女比は1対9で女性に多く、発症年齢は10~30代で大半を占める。■ 病因発症要因として、遺伝的背景要因に加えて、感染症や紫外線などの環境要因が引き金となり、発症することが考えられているが、不明点が多い。その病態は、抗dsDNA抗体を主体とする多彩な自己抗体の出現に加え、多岐にわたる免疫異常によって形成される。自然免疫と獲得免疫それぞれの段階で異常が指摘されており、樹状細胞・マクロファージを含めた貪食能を持つ抗原提示細胞、各種T細胞、B細胞、サイトカインなどの異常が病態に関与している。体内の細胞は常に破壊と産生を繰り返しているが、前述の引き金などを契機に体内の核酸物質が蓄積することで、異常な免疫反応が惹起され、自己抗体が産生され免疫複合体が形成される。そして、それらが各臓器に蓄積し、さらなる炎症・自己免疫を引き起こし、病態が形成されていく。■ 症状障害臓器に応じた症状が、同時もしくは経過中に異なる時期に出現しうる。初発症状として最も頻度が高いものは、発熱、関節症状、皮膚粘膜症状である。全身倦怠感やリンパ節腫脹を伴う。関節痛(関節炎)は通常骨破壊を伴わない。皮膚粘膜症状として、日光過敏症や露光部に一致した頬部紅斑のほかに、手指や四肢体幹部に多彩な皮疹を呈し、脱毛、口腔内潰瘍などを呈する。その他、レイノー現象、腎炎に関連した浮腫、肺病変や血管病変と関連した労作時呼吸困難、肺胞出血に伴う血痰、漿膜炎と関連した胸痛・腹痛、神経精神症状など、さまざまな症状を呈しうる。■ 分類SLEは障害臓器と重症度により治療内容が異なる。とくに重要臓器として、腎臓、中枢神経、肺を侵すものが挙げられ、生命および機能予後が著しく障害される可能性が高い障害である。ループス腎炎は組織学的に分類されており、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society(ISN/RPS)分類が用いられている。神経精神ループス(Neuropsychiatric SLE:NPSLE)では大きく中枢神経病変と末梢神経病変に分類され、それぞれの中でさらに詳細な臨床分類がなされる。■ 予後生命予後は、1950年代は5年生存率がおよそ50%であったが、2007年のわが国の報告では10年生存率がおよそ90%、20年生存率はおよそ75%である1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査所見として、抗核抗体、抗(ds)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、β2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体など)が陽性となる。また、血清補体低値、免疫複合体高値、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少、溶血性貧血、直接クームス陽性を呈する。ループス腎炎合併の場合はeGFR低下、蛋白尿、赤血球尿、白血球尿、細胞性円柱が出現しうる。SLEの診断では1997年の米国リウマチ学会分類基準2)および2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準3)を参考に、他疾患との鑑別を行い、総合的に判断する(表1、2)。2019年に欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が合同で作成した新しい分類基準4)が提唱された。今後はわが国においても本基準の検証を元に診療に用いられることが考えられる。画像を拡大する表2 Systemic Lupus International Collaborating Clinics 2012分類基準画像を拡大するループス腎炎が疑われる場合は、積極的に腎生検を行い、ISN/RPS分類による病型分類を行う。50~60%のNPSLEはSLE診断時か1年以内に発症する。感染症、代謝性疾患、薬剤性を除外する必要がある。髄液細胞数、蛋白の増加、糖の低下、髄液IL-6濃度高値であることがある。MRI、脳血流シンチ、脳波で鑑別を進める。貧血の進行を伴う呼吸困難、両側肺びまん性浸潤影あるいは斑状陰影を認めた場合は肺胞出血を考慮する。全身症状、リンパ節腫脹、関節炎を呈する鑑別疾患は、パルボウイルス、EBV、HIVを含むウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫、血管炎症候群、他の膠原病および類縁疾患が挙がるが、感染症を契機に発症や再燃をすることや、他の膠原病を合併することもしばしばある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SLEの基本的な治療薬はステロイド、免疫抑制薬、抗マラリア薬であるが、近年は生物学的製剤が承認され、複数の分子標的治療が世界的に試みられている。ステロイドおよび免疫抑制薬の選択と使用量については、障害臓器の種類と重症度(疾患活動性)、病型分類、合併症の有無によって異なる。治療の際には、(1)SLEのどの障害臓器を標的として治療をするのか、(2)何を治療指標として経過をみるのか、(3)出現しうる合併症は何かを明確にしながら進めていくことが重要である。SLEの治療選択については、『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』の記載にある通り、重要臓器障害があり、生命や機能的予後を脅かす場合は、ステロイド大量投与に加えて免疫抑制薬の併用が基本となる5)(図)。ステロイドは強力かつ有効な免疫抑制薬でありSLE治療の中心となっているが、免疫抑制薬と併用することで予後が改善される。ステロイドの使用量は治療標的臓器と重症度による。ステロイドパルス療法とは、メチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール)250~1,000mg/日を3日間点滴投与、大量ステロイドとはプレドニゾロン換算で30~100mg/日を点滴もしくは経口投与、中等量とは同じく7.5~30mg/日、少量とは7.5mg/日以下が目安となるが、体重により異なる6)(表3)。ステロイドの副作用はさまざまなものがあり、投与量と投与期間に依存して必発である。したがって、副作用予防と管理を適切に行う必要がある。また、大量のステロイドを長期に投与することは副作用の観点から行わず、再燃に注意しながら漸減する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する寛解導入療法として用いられる免疫抑制薬は、シクロホスファミド(同:エンドキサン)とミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)が主体となる(ループス腎炎の治療については別項参照)。治療抵抗性の場合、免疫抑制薬を変更するなど治療標的を変更しながら進めていく。病態や障害臓器の程度により、カルシニューリン阻害薬のシクロスポリン(同:サンディミュン、ネオーラル)、タクロリムス(同:プログラフ)やアザチオプリン(同:イムラン、アザニン)も用いられる。症例に応じてそれぞれの有効性と副作用の特徴を考慮しながら選択する(表4)。画像を拡大するリツキシマブは、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)および欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism:EULAR)/欧州腎臓学会-欧州透析移植学会(European Renal Association – European Dialysis and Transplant Association:ERA-EDTA)の推奨7,8)においては、既存の治療に抵抗性の場合に選択肢となりうるが、重症感染症や進行性多巣性白質脳症の注意は必要と考えられる。わが国ではネフローゼ症候群に対しては保険承認されているが、SLEそのものに対する保険適用はない。可溶型Bリンパ球刺激因子(B Lymphocyte Stimulator:BLyS)を中和する完全ヒト型モノクローナル抗体であるベリムマブ(同:ベンリスタ)は、既存治療で効果不十分のSLEに対する治療薬として、2017年にわが国で保険承認され、治療選択肢の1つとなっている9)。本稿執筆時点では、筋骨格系や皮膚病変にとくに有効であり、ステロイド減量効果、再燃抑制、障害蓄積の抑制に有効と考えられている。ループス腎炎に対しては一定の有効性を示す報告10)が出てきており、適切な症例選択が望まれる。NPSLEでの有効性はわかっていない。ヒドロキシクロロキン(同:プラケニル)は海外では古くから使用されていたが、わが国では2015年7月に適用承認された。全身症状、皮疹、関節炎などにとくに有効であり、SLEの予後改善、腎炎の再燃予防を示唆する報告がある。短期的には薬疹、長期的には網膜症などの副作用に注意を要し、治療開始前と開始後の定期的な眼科受診が必要である。アニフロルマブ(同:サフネロー)はSLE病態に関与しているI型インターフェロンα受容体のサブユニット1に対する抗体製剤であり、2021年9月にわが国でSLEの適応が承認された。臨床症状の改善、ステロイド減量効果が示された。一方で、アニフロルマブはウイルス感染制御に関与するインターフェロンシグナル伝達を阻害するため、感染症の発現リスクが増加する可能性が考えられている。執筆時点では全例市販後調査が行われており、日本リウマチ学会より適正使用の手引きが公開されている。実臨床での有効性と安全性が今後検証される。SLEの病態は複雑であり、臨床所見も多岐にわたるため、複数の診療科との連携を図りながら各々の臓器障害に対する治療および合併症に対して、妊娠や出産、授乳に対する配慮を含めて、個々に応じた管理が必要である。4 今後の展望本稿執筆時点では、世界でおよそ30種類もの新規治療薬の第II/III相臨床試験が進行中である。とくにB細胞、T細胞、共刺激経路、サイトカイン、細胞内シグナル伝達経路を標的とした分子標的治療薬が評価中である。また、異なる作用機序の薬剤を組み合わせる試みもなされている。SLEは集団としてヘテロであることから、適切な評価のためのアウトカムの設定方法や薬剤ごとのバイオマーカーの探索が同時に行われている。5 主たる診療科リウマチ・膠原病内科、皮膚科、腎臓内科、その他、障害臓器や治療合併症に応じて多くの診療科との連携が必要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 全身性エリテマトーデス(公費対象)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病患者とその家族の会)1)Funauchi M, et al. Rheumatol Int. 2007;27:243-249.2)Hochberg MC, et al. Arthritis Rheum. 1997;40:1725.3)Petri M, et al. Arthritis Rheum. 2012;64:2677-2686.4)Aringer M, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1151-1159.5)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),日本リウマチ学会(編):全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.南山堂,2019.6)Buttgereit F, et al. Ann Rheum Dis. 2002;61:718-722.7)Hahn BH, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64:797-808.8)Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1771-1782.9)Furie R, et al. Arthritis Rheum. 2011;63:3918-3930.10)Furie R, et al. N Engl J Med. 2020;383:1117-1128.公開履歴初回2018年04月10日更新2022年02月25日

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.1

第1回 腎臓 第2回 代謝 第3回 内分泌 第4回 血液 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第1巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第1回 腎臓 疾患をしっかり区別するためには解剖生理が非常に重要です。とくに腎の場合は、どこの部位で起こる障害かということをしっかり整理する必要があります。民谷式オリジナルのアニメーションでは腎疾患を大きく3つに分類。疾患を振り分けるコツをしっかりとレクチャーします。第2回 代謝 代謝のセクションではまず、物質が体内に入って分解・合成される流れをしっかりとおさらいします。物質の流れをもう一度理解すると、機能低下している箇所に必要な治療や薬剤といった知識がすんなりと頭に入ります。民谷式オリジナルのシェーマを参考に、代謝領域攻略のポイントをしっかりとつかんでください。第3回 内分泌 内分泌領域ではまず、それぞれの臓器の解剖生理をしっかり覚えることが、試験攻略の近道です。民谷式オリジナルのシェーマはわかりやすく簡略化してあるので、物質の流れが阻害されるとどんな病態になりどんな症状になるのか、すんなりと頭に入ります。第4回 血液 血液分野では、どこでなにが起こっているのかを考えるのが、頭を整理するうえで非常に大切です。また、日常診療では、骨髄標本と血液標本を間違えることはありませんが、ペーパーテストでは起こり得ることです。必ず、何を見ているかを確認する癖をつけましょう。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第44回

第44回:CKD(慢性腎臓病)の評価方法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 2002 年に米国で提唱されたChronic Kidney Disease(慢性腎臓病:CKD)の概念は、現在、世界中に普及し、日常の外来でも多く遭遇します。厚生労働省「平成26年患者調査の概況」によると、国内のCKD総患者数は29万6,000人(男性18万5,000人、女性11万人)とされています。 今回は、CKDの検出や初期評価に関してまとめましたので、参考にしてみて下さい。なお、国内では「CKD診療ガイド」1)や「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」2)が上梓されています。この機会にぜひ併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年12月15日号3)より【CKD定義・重症度分類】本邦指針では、下記の定義が定められている1)。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。とくに、0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のAlb尿)の存在が重要(2)GFR<60 mL/分/1.73 m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3 ヵ月以上持続する。CKDの重症度分類に関しては、2012年KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)において、従来の糸球体濾過量(GFR)のみによる病期分類がGFR と尿蛋白Alb尿を組合せた形式となり、著聞されている通りです。【CKD評価時のClinical recommendation】CKD評価時のClinical recommendationとしては、下記の項目が挙げられている。なお、Evidence RatingはいずれもC(=consensus, disease oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series)である。GFRの初期評価には、血清Cre値と血清Cre値を用いたeGFRを用いるべきである。CKD患者の初期評価における早朝スポット尿のAlb/Cre比は、タンパク尿評価よりも好ましい。血中シスタチンCは、血清Cre値が上昇しているが、既知のCKD、危険因子、Alb尿症も有しない患者において、GFRの減少が偽陽性かどうかを決めるときに測定すべきである。CKDは、eGFRおよびAlb尿症の程度を用いて分類されるべきである。CKDを有する患者は、少なくとも年一回、血清Hb値を測定すべきであり、CKDの重症度でその頻度を増す。骨密度のルーチン評価は、結果が不正確である可能性があるため、eGFR<45mL /分/1.73m2の患者では行わない。ステージ3a~5の CKD(eGFR<45mL /分/1.73m2)の患者評価には、血清Ca、P、副甲状腺ホルモン、ALPおよび25‐ヒドロキシビタミンD値の測定が含まれるべきである。【CKDを疑う際の初期診断アプローチ】下記の表を参考に、CKDのリスクや病因を評価する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 社団法人 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」 2) 社団法人 日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」 3) Gaitonde DY, et al. Am Fam Physician. 2017 Dec 15.

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米国人の1日Na摂取量は何グラム?/JAMA

 先行研究でナトリウム摂取の90%が尿として排出されると示されたことから、米国医学研究所(現・米国医学アカデミー)は2010年に、24時間蓄尿でナトリウム摂取量を推定するよう推奨を始めた。米国疾病予防管理センターのMary E. Cogswell氏らは、2014年のサンプルを調査し、少なくとも1回の24時間蓄尿検査を受けたことがある70歳未満の成人のデータを分析。その結果、推定平均ナトリウム摂取量は3,608mg/日であることが示されたという。JAMA誌オンライン版2018年3月7日号掲載の報告。国民健康栄養調査の24時間蓄尿検査データを解析、カリウム排出量も調査 研究グループは、米国成人集団の平均ナトリウム摂取量を推定し、カリウムの尿排出について明らかにするため、施設入所者を除く代表的な米国人集団を対象とした全米規模の断面サーベイを行った。 具体的には、米国国民健康栄養調査(NHANES)の調査項目において、2014年に少なくとも1回の24時間尿検体を集められていた20~69歳の非妊娠者のデータについて調べた。 主要評価項目は、平均24時間尿中ナトリウム(Na)値とカリウム(K)値。サーベイデザインの複雑性、選択の蓋然性、ノンレスポンスを考慮して、人口統計学的/健康特性は加重全米推定値を算出、電解質排出量は平均値を算出した。24時間尿中Na値:男性4,205mg、女性3,039mg NHANESから無作為に選択した1,103例のうち、対象者の基準を満たした827例(75%、男性421例、女性406例)について調べた。63.7%が非ヒスパニック系の白人、15.8%がヒスパニック系、11.9%が非ヒスパニック系黒人、5.6%が非ヒスパニック系アジア人であった。43.5%が高血圧症(2017年の高血圧症ガイドライン準拠)を有し、10.0%が糖尿病歴を報告した。 24時間蓄尿に関するサーベイ全体の回答率は、約50%と推定された(75%[24時間蓄尿の調査項目完遂率]×66%[NHANES調査項目回答率])。 全体の平均24時間尿中Na値は3,608mg(95%信頼区間[CI]:3,414~3,803)であった。全体の中央値は3,320mg(四分位範囲:2,308~4,524)であった。 性別にみた副次解析での平均Na値は、男性は4,205mg(95%CI:3,959~4,452)、女性は3,039mg(2,844~3,234)であった。また年齢群別にみた平均Na値は、20~44歳(432例)3,699mg(3,449~3,949)、45~69歳(395例)3,507mg(3,266~3,748)であった。 全体の平均24時間尿中K値は2,155mg(95%CI:2,030~2,280)であった。性別では、男性2,399mg(2,253~2,545)、女性1,922mg(1,757~2,086)。また年齢群別では、20~44歳1,986mg(1,878~2,094)、45~69歳2,343mg(2,151~2,534)であった。 著者は、「これらの結果は、今後の試験のベンチマークとなりうるものである」とまとめている。

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ミトコンドリア病〔mitochondrial disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義ミトコンドリア病は、ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により、十分なATPを生成できずに種々の症状を呈する症候群の総称である。ミトコンドリアの機能不全を来す病因として、電子伝達系酵素、それを修飾する核遺伝子群、ピルビン酸代謝、TCAサイクル関連代謝、脂肪酸代謝、核酸代謝、コエンザイムQ10代謝、ATP転送系、フリーラジカルのスカベンジャー機構、栄養不良による補酵素の欠乏、薬物・毒物による中毒などが挙げられる。■ 疫学ミトコンドリア病の有病率は、小児においては10万人当たり5~15人、成人ではミトコンドリアDNA異常症は10万人当たり9.6人、核DNA異常症は10万人当たり2.9人と推計されている1)。一方、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)で報告されたミトコンドリアDNAのA3243G変異の保因者は、健常人口10万人当たり236人という報告があり2)、少なくとも出生10万人当たり20人がミトコンドリア病と推計されている。■ 病因ミトコンドリアは、真核細胞のエネルギー産生を担うのみではなく、脂質、ステロイド、鉄および鉄・硫黄クラスターの合成・代謝などの細胞内代謝やアポトーシス・カルシウムシグナリングなどの細胞応答など、多彩な機能を持つオルガネラであり、核と異なる独自のDNA(ミトコンドリアDNA:mtDNA)を持っている。しかし、このmtDNAにコードされているのは13種類の呼吸鎖サブユニットのみであり、これ以外はすべて核DNA(nDNA)にコードされている。ミトコンドリアに局在する呼吸鎖複合体は、電子伝達系酵素IからIV(電子伝達系酵素)とATPase(複合体V)を指し、複合体IIを除き、mtDNAとnDNAの共同支配である。これらタンパク複合体サブユニットの構造遺伝子以外に、その発現調節に関わる多くの核の因子(アッセンブリー、発現、安定化、転送、ヘム形成、コエンザイムQ10生合成関連)が明らかになってきた。また、ミトコンドリアの形態形成機構が明らかになり、関連するヒトの病気が見つかってきた。ミトコンドリア呼吸鎖と酵素欠損に関連したミトコンドリア病の原因を、ミトコンドリアDNA遺伝子異常(図1)、核DNA遺伝子異常(図2)に分けて示す。図1 ミトコンドリアDNAとミトコンドリア病で報告された遺伝子異常画像を拡大する図2 ミトコンドリア病で報告された核DNAの遺伝子異常画像を拡大する■ 症状本症では、あらゆる遺伝様式、症状、罹患臓器・組織、重症度の組み合わせも取り得る点を認識することが重要である(図3)。エネルギーをたくさん必要とする臓器の症状が出やすい。しかし、本症は多臓器症状が出ることもあれば、単独の臓器障害の場合もあり、しかも、その程度が軽症から重症まで症例ごとに症状が異なる点が、本症の診断を難しくしている。画像を拡大する■ 分類表にミトコンドリア病の分類を示す。ミトコンドリア病の分類は、I 臨床病型による分類、II 生化学的分類、III 遺伝子異常による分類の3種に分かれている。それぞれ、オーバーラップすることが知られているが、歴史的にこの分類が現在も使用されている。表 ミトコンドリア病の分類I 臨床病型による分類1.MELAS:mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes2.CPEO/KSS:chronic progressive external ophthalmoplegia / Kearns Sayre syndrome3.Leigh脳症   MILS:maternally inherited Leigh syndrome   核遺伝子異常によるLeigh脳症4.MERRF:myoclonus epilepsy with ragged-red fibers5.NARP:Neurogenic atrophy with retinitis pigmentosa6.Leber遺伝性視神経萎縮症7.MNGIE:mitochondrial neurogastrointestinal encephalopathy syndrome8.Pearson骨髄膵症候群9.MLASA:mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia10.ミトコンドリアミオパチー11.先天性高乳酸血症12.母系遺伝を示す糖尿病13.Wolfram症候群(DiDmoad症候群)14.autosomal dominant optic atrophy15.Charcot-Marie-Tooth type 2A16.Barth症候群 II 生化学的分類1.基質の転送障害1)carnitine palmitoyltransferase I、II欠損症2)全身型カルニチン欠乏症3)organic cation transporter2欠損症4)carnitine acylcarnitine translocase欠損症5)DDP1欠損症2.基質の利用障害1)ピルビン酸代謝   Pyruvate carboxylase欠損症   PDHC欠損症2)脂肪酸β酸化障害3)TCAサイクル関連代謝   succinate dehydrogenase欠損症   fumarase欠損症   α−ketoglutarate dehydrogenase欠損症4)酸化的リン酸化共役の異常   Luft病5)電子伝達系酵素の異常   複合体I欠損症   複合体II欠損症   複合体III欠損症   複合体IV欠損症   複合体V欠損症   複数の複合体欠損症6)核酸代謝7)ATP転送8)フリーラジカルのスカベンジャー9)栄養不良による補酵素の欠乏10)薬物・毒物による中毒III 遺伝子異常による分類1.mtDNAの異常1)量的異常(mtDNA欠乏)   薬剤性(抗ウイルス剤による2次的減少)   γDNApolymerase阻害   核酸合成障害   遺伝性(以下の項目参照)2)質的異常   単一欠失/重複   多重欠失(以下の項目参照)   ミトコンドリアリボソームRNAの点変異   ミトコンドリア転移RNAの点変異   ミトコンドリアタンパクコード領域の点変異2.核DNAの異常1)酵素タンパクの構成遺伝子の変異   電子伝達系酵素サブユニットの核の遺伝子変異2)分子集合に影響を与える遺伝子の異常   (SCO1、SCO2、COX10、COX15、B17.2L、BSL1L、Surf1、LRPPRC、ATPAF2など)3)ミトコンドリアへの転送に関わる遺伝子の異常   (DDP1、OCTN2、CPT I、 CPT II、Acyl CoA synthetase)4)mtDNAの維持・複製に関わる遺伝子の異常   (TP、dGK、POLG、ANT1、C10ORF2、ECGF1、TK2、SUCLA2など)5)mitochondrial fusion に関わる遺伝子の異常   (OPA1、MFN2)6)ミトコンドリアタンパク合成   (EFG1)7)鉄恒常性   (FRDA、ABC7)8)分子シャペロン   (SPG7)9)ミトコンドリアの保全   (OPA1、MFN2、G4.5、RMRP)10)ミトコンドリアでの代謝酵素欠損   (PDHA1、ETHE1)■ 予後臨床試験で効果が証明された薬物治療は、いまだ存在しない。2012年に発表されたわが国のコホート研究では、一番症例数の多いMELASは、発症して平均7年で死亡している。また、その内訳は、小児型MELASで発症後平均6年、成人型MELASでは発症後平均10年で死亡している。そのほか、小児期に発症するLeigh脳症では、明確な疫学研究はないものの、発症年齢が低ければ低いほど早期に死亡することが知られている。いずれにしても、慢性進行性に経過する難病で、多くは寝たきりとなり、心不全、腎不全、多臓器不全に至り死亡する重篤な疾患である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)従来、用いられてきた診断までの方法を図4に示す。臨床症状からどの病気にも当てはまらない場合は、必ずミトコンドリア病もその鑑別に挙げることが大切である。代謝性アシドーシスも本症でよくみられる所見であり、アニオンギャップが20以上開大すれば、アシドーシスの存在を疑う。乳酸とピルビン酸のモル比(L/P比)が15以上(正常では10)、ケトン体比(3-hydroxybutyrate/acetoacetate:正常では33))が正常より増加していれば、1次的な欠損がミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の異常と推測できる。頭部単純CT検査では、脳の萎縮や大脳基底核の両側対称性石灰化などが判明することが多く、その場合、代謝性アシドーシスの存在を疑う根拠となる。頭部MRI検査では、脳卒中様発作を起こす病型であれば、T1で低吸収域、T2、Flairで高吸収域の異常所見がみられる。MELASでは、異常画像は血管支配領域に合致せず、時間的・空間的に出現・消失を繰り返す。脳卒中様発作のオンセットの判断は、DWI・ADC・T2所見を比較することで推測できる。MRSでの乳酸の解析は、高乳酸髄液症の程度および病巣判断に有用である。また、脳血流を定量的に判定できるSPM-SPECT解析は、機能的脳画像として病巣診断、血管性認知症、脳血流の不均衡分布の判断に有用である。画像を拡大する■ 筋生検最も診断に有用な特殊検査は、筋生検である。筋病理では、Gomori trichrome変法染色で、増生した異常ミトコンドリアが赤ぼろ線維(RRF:ragged-red fiber)として確認でき、ミトコンドリアを特異的に染色するコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性染色でも濃染する。RRFがなくても、チトクロームC酸化酵素(COX)染色で染色性を欠く線維やSDHの活性染色で動脈壁の濃染(SSV:SDH reactive vessels)を認めた場合、本症を疑う根拠となる。■ 生化学的検査生検筋、生検肝、もしくは培養皮膚線維芽細胞からミトコンドリアを分離して、酸素消費速度や呼吸鎖活性、blue-native gelによる呼吸鎖酵素タンパクの質および量の推定を行い、生化学的に呼吸鎖異常を検証する。場合によっては、組織内のカルニチン、コエンザイムQ10、脂肪酸の組成分析の必要性も出てくる。大切なことは、ミトコンドリア機能のどの部分の、質的もしくは量的異常かを同定することである。この作業の精度により、その後の遺伝子解析手法への最短の道筋が立てられる。■ 遺伝子検査ミトコンドリア病の遺伝子検索は、mtDNAの検索に加えて新たに判明したnDNAの検索も行わなければいけない。疾患頻度の多いmtDNAの異常症の検出には、体細胞の分布から考え、非侵襲的検査法としては、尿細管剥奪上皮を用いた変異解析が最も有用である。尿での変異率は、骨格筋や心筋、神経組織との相関が非常に高い。一方、ほかの得られやすい臓器としては、血液(白血球)、毛根、爪、口腔内上皮細胞なども有用であるが、尿細管剥奪上皮と比較すると変異率として最大30~40%ほどの低下がみられる。mtDNAの異常症を疑った場合、生涯を通じて再生できない臓器もしくは罹患臓器由来の検体を、遺伝子検査の基本とすることが望ましい。■ 乳酸・ピルビン酸、バイオマーカー(GDF15)の測定従来、乳酸・ピルビン酸がミトコンドリア病のバイオマーカーとして用いられてきた。しかし、これらは常に高値とは限らず、血液では正常でも、髄液で高値をとる場合も多い。さらに、乳幼児期の採血では、採血時の駆血操作で2次的に高乳酸値を呈することもあり(採血条件に由来する高乳酸血症)、その場合は、高アラニン血症の有無で高乳酸血症の存在を鑑別しなければならない。そこで、最近見いだされ、その有用性が検証されたバイオマーカーが「GDF15」である。このマーカーは、感度、特異度ともに98%と、あらゆるMELASの診断に現在最も有用と考えられている3)。最新の診断アルゴリズムを図5に示す4)。従来用いられていた乳酸、ピルビン酸、L/P比、CKと比較しても、最も臨床的に有用である。さらに、GDF15は髄液にも反映しており、この点で髄液には分泌されないFGF21に比較して、より有用性が高い。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症に対する薬物治療の開発は、多くの国で臨床試験として行われているが、2018年2月1日時点で、臨床試験で有効性を証明された薬剤は世界に存在しない。欧州では、Leber遺伝性視神経萎縮症に対して限定的にidebenone(商品名:Raxone)が、米国では余命3ヵ月と宣告されたLeigh脳症に対するvatiquinone(EPI-743)がcompassionate useとして使用されている。わが国では、MELASに対して、脳卒中様発作時のL-アルギニン(同:アルギU)の静注および発作緩解期の内服が、MELASの生存予後を大きく改善しており、適応症の申請を準備している。4 今後の展望創薬事業として、MELASに対するタウリン療法、Leigh脳症に対する5-ALAおよびEPI-743の臨床試験が終了しており、現在、MELAS/MELA Leigh脳症に対するピルビン酸療法が臨床試験中である。また、創薬シーズとして5-MAやTUDCAなどの候補薬も存在しており、今後有効性を検証するための臨床試験が組まれる予定である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)本症は臨床的に非常に多様性を有し、発症年齢も小児から成人、罹患臓器も神経、筋、循環器、腎臓、内分泌など広範にわたる。診療科としては、小児科、小児神経科、神経内科、循環器内科、腎臓内科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、老年科、リハビリテーション科など多岐にわたり、最終的には療養、療育施設やリハビリ施設の紹介も必要となる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾患情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ミトコンドリア病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:障害者手帳[肢体不自由、聴覚、視覚、心臓、腎臓、精神]、介護申請など)患者会情報日本ミトコンドリア学会ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報:ドクター相談室、患者家族の交流の場・談話室など)ミトコンドリア病患者・家族の会(MCM家族の会)(ミトコンドリア病患者とその家族および支援者の会)1)Gorman GS, et al. Ann Neurol. 2015;77:753-759.2)Manwaring N, et al. Mitochondrion. 2007;7:230-233.3)Yatsuga S, et al. Ann Neurol. 2015;78:814-823.4)Gorman GS, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16080.公開履歴初回2018年3月13日

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パンジェノタイプのDAA療法の登場と今後に残された課題(解説:中村郁夫氏)-825

 本論文は、遺伝子型1型および3型のHCVを有するC型慢性肝炎症例に対する、グレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法の治療効果および安全性に関するランダム化・オープンラベル・多施設で行われた第III相試験の結果の報告である。合計1,208症例に対し、8週間および12週間投与が行われ、SVR12(治療終了後12週におけるHCV陰性化)の割合は、遺伝子型1型(ENDURANCE-1試験):8週投与群99.1%、12週投与群99.7%。遺伝子型3型:8週投与群/12週投与群とも95%と高率であった。 本論文で検討されたグレカプレビル・ピブレンタスビルの合剤は、本邦初の「IFNフリー・リバビリンフリー・パンジェノタイプ」のDirect-acting Antivirals(DAA)製剤として、昨年の11月にマヴィレット(アッヴィ合同会社)として薬価収載された。従来のDAA併用療法は、1種類の遺伝子型のHCVに対するものであったが、本治療は、いわゆる「パンジェノタイプ」:複数の遺伝子型のHCVに効果のある治療法である。さらに、治療期間が、慢性肝炎症例は8週間、肝硬変症例は12週間と従来のDAA製剤と比べて短縮された。ただし、併用禁忌薬として、アトルバスタチンが含まれている点には注意が必要である。 本邦において、第III相試験まで進んだDAA療法は残り1剤であるという状況、また、遺伝子型3型の症例が欧米と比較してごく少数であるという背景を勘案すると、本邦におけるHCVに対するDAA治療の開発は、いよいよ最終段階を迎えたと考えられる。しかし、今後に残された課題として、DAA療法不成功例に生じた高度の耐性変異に対する治療、また、非代償性肝硬変症例に対する治療の検討が必要である。

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小児期の腎臓病が成人期の末期腎不全の危険因子となる(解説:木村健二郎氏)-823

 小児期に腎臓が受けた傷害が、臨床上一見治癒したようにみえても数十年の年月をかけて徐々に進行し末期腎不全に陥る可能性を示した点で興味ある報告である。しかし、著者らも述べているように、この報告にはいくつものlimitationがある。 まず、小児期の腎臓病は先天性腎尿路奇形、腎盂腎炎、糸球体疾患と定義されているが、それらの疾患の詳細な情報や治療情報がないこと、経過中の危険因子の有無が不明ということが挙げられる。また、ベースラインの血清クレアチニンの情報は正常か異常かの情報しかないため、eGFRを知ることができない。血清クレアチニンが基準値内であってもベースラインのeGFRが低いほど、末期腎不全のリスクが高くなる可能性はあるが、そのことに関しては判断がつかないなどである。 小児期の腎臓疾患が成人期の慢性腎臓病につながる可能性は以前より指摘されていた。小児期のネフロンロスと残存ネフロンの過剰ろ過がその後の腎不全の発症につながることも考えられる。今後、さらに病態生理が解明されることが望まれる。

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志水太郎の診断戦略エッセンス

第1回 なぜ今、診断戦略か? 第2回 2つの思考プロセス 第3回 診断力をどう鍛えるか? 第4回 診断の型のイノベーション 第5回 病歴の技法 第6回 注意すべきいくつかの戦術的要所 第7回 難症例に打ち勝つ戦術 すべての医師が診断の力を伸ばすために、診断に至るまでの医師の思考プロセスを見える化できないか?総合診療医 志水太郎氏は医師が無意識下で行っている診断の思考過程を言語化することで、それを「型」として、意識的に使えるもの、訓練できるものにしました。この番組では質の高い診断を効率的に行うためのアイデアや、診断エラーを減らす方策、病歴の技法、そして診断力を鍛えるための訓練方法を紹介します。志水氏のこの診断学イノベーションに触れることで、明日からの診断の精度が確実に向上することをお約束します!第1回 なぜ今、診断戦略か? 若手Dr.の支持を集める診断学の「ニューバイブル」を映像化!「診断」というものを独自のアプローチで捉え直した書として注目された「診断戦略」(医学書院)。医師が無意識的に行っていた診断に至るプロセスを言語化することで、意識的に、効率的にその精度を向上させることができる、まさに診断学イノベーション!本番組では著者である志水太郎先生がその本質と、診断力をアップする具体的な方法について解説します!第2回 2つの思考プロセス 診断戦略の世界へようこそ。医師が操る直観的思考と分析的思考。この思考パターンの見える化こそが、診断の精度をアップするための第1歩。診断プロセスを意識することで、自身の診断能力を鍛えることができるんです。今回は実際の症例のなかで、ひらめきである直観的思考と分析的思考による推論に挑戦。診断戦略の凄みを体験してください!第3回 診断力をどう鍛えるか? 診断力は、直観的思考の洗練に加え、活用できる分析的思考の種類がどれだけあるかがカギ。分析的思考のための具体的なツールであるアルゴリズム、ベイズの定理、スコアリングシステム、フレームワーク。このなかで自分なりの手堅い戦略の型を持っておくことが鑑別診断を進める際の高い機動力に繋がります。番組内では志水先生が日常的に使うフレームワーク“MEDICINE”を紹介!第4回 診断の型のイノベーション 知れば使いたくなる新しい診断戦略を伝授します。鑑別診断という答えをどう追い詰めて明らかにするか。診断力をアップする鍵は、これまでとはまったく異なるアプローチかもしれません。今回は、直観と分析の合わせ技「Pivot&Cluster」や、疾患群の網を重ねていく「Mesh Layers」など、今日からの診断の質が変わる、具体的な方法をご紹介します!第5回 病歴の技法 検査値、画像、身体所見―医師は様々な情報から診断を導き出す。その中でもとくに重要な意味を持つのは病歴聴取。志水太郎先生が日々の問診で大切にしているのは”4つのC”と"BEOアプローチ”。診断戦略の前提となる質の高い病歴の技法を伝授します。第6回 注意すべきいくつかの戦術的要所 日常臨床では診断のプロセスの原則では対応できない場面に出くわすことが多々あります。疾患が患者の別の病態の下に隠れている、薬剤など別の要因が本来のバイタルサインを見えにくくしてしまっているといった場合です。今回はそうした医師の診断を誤らせる“霧”や“オッカムヒッカムの破れ”について解説します。知ることで盾になり、使えれば武器になる!志水太郎の診断戦略をお見逃しなく!第7回 難症例に打ち勝つ戦術 一筋縄ではいかない困難な症例には戦術が必須!例えば、患者の痛がる箇所をあえて解剖学的構造の外側から考えるというのも、鑑別の幅を広げる戦術の1つ。また、突発性や反復性という発症様式から病態的カテゴリーを一気に絞りこむというのも、1つの戦術です。あらゆる方向からのアプローチ法を事前に用意しておくということが重要です。すべての医療者へ届けたい志水先生のラストメッセージをお見逃しなく!

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脳灌流画像による選択により、発症後6~16時間の脳梗塞にも血栓除去術が有用(中川原譲二氏)-818

血栓除去術群 vs.薬物療法群で、90日後の主要アウトカムを比較 血栓除去術は、現在、発症から6時間以内に治療される適格な脳梗塞患者に推奨されている。米国・スタンフォード大学脳卒中センターのGregory W. Albers氏らが行った「DEFUSE3試験」は、発症までは元気で、梗塞に陥っていない虚血脳組織が残存する患者を対象として、発症後6~16時間の血栓除去術の有効性について検討した多施設共同無作為化非盲検試験(アウトカムは盲検評価)である。対象患者は、中大脳動脈近位部または内頸動脈の閉塞を有し、CTやMRI灌流画像で、初期の梗塞容積70mL未満、虚血/梗塞容積比1.8以上を適格とし、血管内治療(血栓除去術)+標準的薬物療法併用(血管内治療群)、または標準的薬物療法単独(薬物療法群)に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、90日後の修正Rankinスケール(mRS)の通常スコア(範囲:0~6、高スコアほど障害の程度が大きい)とされた。血栓除去術群で主要アウトカムの改善が有意に良好 この試験は、2016年5月~2017年5月に米国内38施設で行われた。182例が血管内治療群:92例、薬物療法群:90例に無作為に割り付けられ、中間解析で有効性が確認され早期終了となった。血管内治療群では、薬物療法群と比べて、90日後のmRSでみた機能的アウトカムの分布の良好なシフトがみられた(オッズ比[OR]:2.77、p<0.001)。また、mRSスコアで0~2と定義した「機能的に自立」の患者の割合も高かった(45% vs.17%、リスク比:2.67、p<0.001)。90日死亡率は、血管内治療群14%に対し、薬物療法群26%であった(p=0.05)。症候性頭蓋内出血(7% vs.4%、p=0.75)や、重篤な有害事象(43% vs.53%、p=0.18)については、両群間で有意差はみられなかった。 本研究では、中大脳動脈近位部または内頸動脈の閉塞、および虚血は認めるが梗塞に至っていない組織領域を有する患者では、発症後6~16時間でも、標準的薬物療法単独よりも血管内治療(血栓除去術)を併用したほうが、良好な機能的アウトカムに結びつくことが示された。一方、昨年報告されたDAWN試験では、症状出現から6~24時間が経過した急性脳梗塞で、臨床的障害と梗塞体積の重症度が一致しない患者では、標準的治療+血栓除去術の90日後のアウトカムが良好であることが示された。これら2試験は、血栓除去術のtime windowが6時間から16時間、24時間へと拡大する余地のあることを示すもので、血栓除去術の適格基準がtime-baseから脳灌流画像を用いたtissue-baseに変更する必要性についての議論が今後高まると思われる。しかし、脳梗塞の成立は、発症からの時間と残存脳血流に依存していることは自明であり、血栓除去術については、6時間以内はtime-baseの治療戦略、6時間以降はtissue-baseの治療戦略が奏功すると考えるのが妥当と思われる。

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CKDの高齢心房細動患者への抗凝固薬投与は?/BMJ

 慢性腎臓病(CKD)があり心房細動を呈した高齢者への抗凝固薬の投与で、虚血性脳卒中や脳・消化管出血リスクはおよそ2.5倍増大し、一方で全死因死亡リスクは約2割低減することが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのShankar Kumar氏らが、約273万人分の患者データベースを基に、傾向スコア適合住民ベースの後ろ向きコホート試験を行い明らかにした。現状では、透析不要のCKDで心房細動を呈した高齢患者について、信頼性の高い臨床ガイドラインや無作為化比較試験はないという。同研究グループは今回の逆説的な結果を受けて、「こうした患者を対象にした、適切な規模の無作為化試験の実施が急務である」と提言している。BMJ誌2018年2月14日号掲載の報告。CKDで心房細動の診断を受けた約7,000例を調査 研究グループは2006年1月~2016年12月にかけて、イングランドとウェールズの110ヵ所の一般診療所に通院する約273万人分を収載する、The Royal College of General Practitioners Research and Surveillance Centreのデータベースを基に検討を行った。このうち、推定糸球体濾過量(eGFR)が50mL/分/1.73m2未満のCKDで、新たに心房細動の診断を受けた、65歳以上の6,977例を対象にコホート試験を行った。 心房細動の診断後60日以内の抗凝固薬の処方と、虚血性脳卒中、脳・消化管出血、全死因死亡率の関連について評価した。抗凝固薬処方で死亡リスクは0.82倍に 心房細動の診断を受けた6,977例のうち、診断後60日以内に抗凝固薬を処方されたのは2,434例、処方されなかったのは4,543例だった。傾向スコアマッチングを行った2,434組について、中央値506日間追跡した。 抗凝固薬を処方された患者において、虚血性脳卒中の補正前発生率は4.6/100人年、脳・消化管出血は同1.2/100人年だった。これに対して、非処方の患者では、それぞれ1.5/100人年、0.4/100人年だった。 虚血性脳卒中発生に関する、抗凝固薬処方患者と非処方患者を比較したハザード比は2.60(95%信頼区間[CI]:2.00~3.38)、脳・消化管出血の同ハザード比は2.42(同:1.44~4.05)と、処方患者における増大が認められた。一方で、全死因死亡に関する同ハザード比は0.82(同:0.74~0.91)と、処方患者で低かった。

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