サイト内検索|page:36

検索結果 合計:1056件 表示位置:701 - 720

701.

透析患者のEPO抵抗性貧血の解決になるか(解説:浦信行氏)-1102

 同時報告の保存期CKDでも述べたように(「保存期CKD患者の貧血治療が経口薬で」)、roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチン(EPO)の転写を促進して腎性貧血の改善を促す。併せて、ヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も持つ。 今回の透析例における第III相の結果は、EPO製剤投与群と比較して貧血改善効果は同等であった。従来のEPO製剤は、高用量を要するEPO抵抗性の症例が存在する。今回の検討ではCRPの値で2群に分けて検討しており、CRP高値群では反応性の低下からEPOの用量を多く必要としたが、roxadustat群ではCRPの高低にかかわらず良好な反応を示し、炎症に左右されない効果を発揮することが明らかとなった。 ところで、保存期CKDの成績ではあるが、従来のEPO製剤での治療でHb値を13g/dL以上にすると死亡や心不全による入院のリスクが増加し(CHOIR試験)、脳卒中リスクが増加する(TREAT試験)可能性が報告されている。しかし、リスクと相関していたのはHb値よりも高用量のEPO製剤であったとされる。この点からもHIF刺激薬は有利である可能性がある。ちなみに、炎症がヘプシジンを増加させるので、両治療群でCRP高低の2群間のヘプシジンの差を比較すると、機序の1つの解明につながる可能性があるが、残念ながらそのような解析結果は示されていない。 一方、やや気に掛かるのは、HIF刺激薬群で有害事象による中止と中断例が多いことである。本来EPO製剤投与群を2群に分けて試験に入っているので、EPO製剤による有害事象例や中断例が事前に除外されている結果なのかもしれないが、これら有害事象と中断を合わせた脱落率が15%であることは、やはり気に掛かる。

702.

第12回 低血糖、シックデイ、アドヒア―注射剤にまつわる問題への対処法【高齢者糖尿病診療のコツ】

第12回 低血糖、シックデイ、アドヒア―注射剤にまつわる問題への対処法前回に引き続き、GLP-1受容体作動薬とインスリンそれぞれについて、高齢者での使い方のポイントをご紹介します。低血糖や、GLP-1受容体作動薬での消化器症状、そしてきちんと打てているかが心配な注射剤のアドヒアランスについて、状態を確認する方法と対処法をまとめます。Q1 低血糖や消化器症状、シックデイが心配。どのようにコントロールしますか?1)低血糖について高齢者では発汗・動悸といった典型的な低血糖症状が出づらく、めまいや脱力感が前面に出る場合が多く、低血糖症状が見逃されることがあります。また、低血糖症状がせん妄として現れることもあり、注意が必要です。インスリン使用者あるいはGLP-1製剤にSU薬やグリニド薬を併用している例では、低血糖のリスクがあるため、定期受診時に非典型的な症状も含めて症状の有無を確認します。また、HbA1cの下限も意識し、過度のコントロールにならないようにインスリンやSU薬、グリニド薬を減量します。2)消化器症状について肥満の非高齢者では好ましいGLP-1受容体作動薬の食欲低下作用ですが、高齢者では脱水やサルコペニアを惹起する可能性があり、食思不振や過度の体重減少に注意が必要です。そのため、筋肉量が少ないと予想される「やせ型」の高齢者にはあまりいい適応ではありません。週1回のGLP-1受容体作動薬は消化器症状が比較的出づらいといわれていますが、リスクはあるため、定期外来受診時は食欲と体重の推移に注意する必要があります。3)シックデイについて水分や炭水化物の摂取などの一般的なシックデイ対応が前提ですが、ここでは注射製剤の取扱いについて記述します。GLP-1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進するため、基本的には食事量が少なくても中止する必要はありませんが、嘔気などの消化器症状が強い場合は増悪させる危険性があるため中止します。持効型や中間型などの作用時間の長いインスリンは中止しないことが原則です。とくに、1型糖尿病などインスリン依存状態の場合は、たとえ食事摂取ができなくとも持効型製剤は絶対に中止しないように指導します。2型糖尿病でインスリン分泌能が保たれている場合には投与量を減量する場合もあります。超即効型製剤は、食事(炭水化物)量に応じ調整(例:食事摂取量が半量ならインスリン半量など)するように指導し、紙に書いて渡していますが、高齢者では対応困難な場合が多く、強い症状が半日以上続く、24時間以上経口摂取ができないなどといった場合1)は医療機関を受診するように指導しています。Q2 手技指導のポイントがあれば、教えてください。1)自己注射の可否の判断認知機能の低下した高齢者にとって新たに注射手技を獲得することは非常に困難です。DASC-8や時計描画試験を含むMini-Cogなどを用いて認知機能をスクリーニングし(第4回参照)、本人への指導を行うかを検討します。本人が難しい場合には介護者への指導を行うことになりますが、老々介護の世帯も多く、介護者への指導も難しいこともあり、インスリン分泌能が保たれている場合には、訪問看護やデイケアの看護師が行う週1回のGLP-1製剤が有用な選択肢として考えられます。また、注射自体は患者本人が可能なものの、インスリンの準備やその単位設定が困難な場合があるので、注射手技の一部を介護者に依頼することもよくあります。2)自己血糖測定本人や介護者が注射手技は獲得できても、自己血糖測定が困難な場合もあるため、指導状況をみながら自己血糖測定の指導を行うかどうか検討します。GLP-1製剤のみを使用している場合で、低血糖リスクが少ないと判断した場合は、血糖測定は必須ではありません。インスリン注射の場合で血糖測定が困難なときには、低血糖回避のため、やむを得ず血糖コントロール目標を緩和することがあります。自己血糖測定が可能な場合には、低血糖を回避するために、食前または眠前の血糖値100mg/dL未満が継続する場合にその前の責任インスリンの減量(1~2単位)を考慮します。また、血糖値の変動が大きい場合には、インスリンボールができていないかどうかを確認し、固くない場所に注射するように指導します。3)注射のアドヒアランス自己注射を行えていた例でも、加齢に伴って打ち忘れがあったり、注射の実施が困難になったりする場合もあります。明らかな誘因がなくコントロールが悪化したときは、注射の打ち忘れと注射手技を確認します。とくに眠前の持効型インスリンは、つい早く寝てしまって、打ち忘れが起こりやすいので、朝食前や夕食後に変更することがあります。外出や旅行の際のインスリンの打ち忘れも起こりやすいので、あらかじめバッグに予備の注射薬を入れておくように指導します。インスリン注射は実施できていても単位を間違えることが懸念される場合は、多少の血糖上昇には目をつぶり、毎回のインスリン量を同じにする、10単位など覚えやすい単位数に設定するなどの工夫をすることもあります。インスリン単位数は処方箋の記載だけでなく、必ず紙に書いて(多くは自己血糖記録用紙に)渡すようにし、外来受診時に何単位打っているかを患者さんに答えてもらって、単位数の間違えがないかを確認しています。独居で介護者がいない場合は低血糖リスクを極力下げるため、血糖管理目標を緩和します。訪問看護を導入すると、インスリンの残量を確認することで実際に打てているかどうかをわかることがあります。インスリン注射が必要であるが、自己管理が困難で、かつ介護者が不在の場合は外来での対応は困難であり、入院あるいは短期入所のうえ環境調整が必要です。入院・入所を拒否された場合でも、説得を続けながら地域包括支援センターなどに相談します。1)日本老年医学会・日本糖尿病学会編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂;2017.

703.

保存期CKD患者の貧血治療が経口薬で(解説:浦信行氏)-1101

 従来、CKDに合併する腎性貧血は透析例も含めて赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が治療の主体であった。roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチン(EPO)の転写を促進して腎性貧血の改善を促す。現在、roxadustatを含めて5製剤が開発中である。同時に鉄吸収や肝臓からの鉄の放出を抑えるヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も併せ持つ。 今回の第III相の結果は貧血改善に著効を呈し、しかも反応も2~3週間後の早期から期待できるようだ。これにはEPO産生の増加だけでなく、EPOの受容体も活性化し、加えて鉄供給・利用も連動することによると考えられる。これまでは保存期CKDは2~4週ごとのESAの皮下または静脈注射を余儀なくされ、また、EPO抵抗性の症例もあることから、HIF刺激薬は治療利益が大きいと考えられる。また、LDLコレステロールも25.3mg/dL低下し、有意な減少であったため付加価値的要素もあるが、同時にHDLコレステロールも10mg/dL程度低下するため、その価値は大きくはなさそうである。一方でHIF刺激の結果、長期的には血管新生を惹起する可能性は否定できず、糖尿病症例の網膜症悪化や、腫瘍進展のリスクの懸念は残るので、長期的なリスクの評価が必要と考える。

704.

糖尿病外来患者の検査、施設でばらつき

 「全国のレセプトデータを調査し、糖尿病診療の質指標を測定した研究」について、国立国際医療研究センターと東京大学大学院医学系研究科などで構成される研究グループが、7月30日に研究結果を発表し、“Diabetes Research and Clinical Practice”1)にも掲載された(発表者:杉山 雄大氏[国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病情報センター 医療政策研究室長])。 糖尿病診療では、血糖・血圧などのコントロールの他に、合併症を早期診断するために合併症検査を定期的に行うことが重要だとされている、しかし、これまで一部の保険者や施設の実施割合の報告はあったものの、全国における状況を調べた研究はなかったことから今回行われたものである。 本研究では、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」を用いて、2015年度に糖尿病薬の定期処方を受けている外来患者(約415万例)が、『糖尿病治療ガイド』(日本糖尿病学会 編・著)などで推奨されている糖尿病関連の検査を受けている割合を糖尿病診療の質指標として測定した。同時に、都道府県別、日本糖尿病学会認定教育施設としての認定有無別の指標も計算し、さらに施設単位の指標のばらつきを観察した。網膜症検査と尿検査の実施割合の低さが顕著 主な結果は以下のとおり。・血糖コントロール指標(HbA1c またはグリコアルブミン)を測定したのは96.7%・網膜症検査を受けたのは46.5%(都道府県別範囲:37.5−51.0%、認定有無別:44.8%(認定無し)対59.8%(認定有り))・尿定性検査を受けたのは67.3%(都道府県別範囲:54.1−81.9%、認定有無別:66.8%対92.8%)・尿アルブミンまたは蛋白の定量検査を受けたのは19.4%(都道府県別範囲:10.8−31.6%、認定有無別:18.7%対54.8%) 以上から血糖コントロール指標の測定は良好ではあるものの、網膜症検査と尿検査の実施割合が低く、また詳細な解析においては都道府県別・施設別のばらつきが課題であることが判明した。着実な検査の実施が糖尿病診療の質の向上に寄与 研究グループでは、新しい検査・治療の開発などにより、取るべき指標や指標の定義も変わることもあるとしながらも、「これらの数値は糖尿病診療の質指標と捉えることができ、医療従事者が着実な検査実施に注意を払うことで、今後の糖尿病診療の質が向上することが期待されるとともに、都道府県が医療計画などを立案する際や診療報酬改定に関して議論を行う際の資料になるなど、エビデンスに基づいた政策立案を推進することが考えられる」と展望を述べている。

705.

ミネブロ錠:3剤目のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬

2019年5月13日、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬、ミネブロ錠(一般名:エサキセレノン)が高血圧治療薬として新たに販売開始となった。高血圧治療に残された課題日本の高血圧患者は4,300万人と推計され、そのうち治療によって適切に血圧がコントロールされているのはわずか1,200万人。残りの3,100万人は治療をしていてもコントロール不良、もしくは治療を行っていないという。このような状況の中、日本高血圧学会は2019年に、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を発表し、高血圧対策を進めていく必要性を訴えた。今回の改訂では合併症のない75歳未満の成人、脳血管障害患者、冠動脈疾患患者は130/80mmHg未満に、75歳以上の高齢者は140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられている。降圧目標達成のためには個人レベルでの取り組みだけでなく、社会全体での積極的な取り組みが必要であることが強調されており、降圧目標達成率や疾患啓発など、高血圧治療に課題が残されていることがうかがえる。新しく登場したミネブロ錠は高血圧治療の新しい選択肢となり、課題解決に寄与する可能性がある。MR拮抗薬の作用機序について尿細管に存在するMRへ、アルドステロンが過剰に結合し続けると、尿中のナトリウム再吸収とカリウム排泄を促進させ、循環血量の増加により、血圧が上昇する。ミネブロ錠はMRをブロックし、ナトリウム排泄を促進することで血圧低下効果を発揮する。このMRをブロックするという作用機序から、食塩感受性高血圧の患者さんや原発性アルドステロン症の患者さんで有効性を示すことが期待されている。国内臨床試験成績:中等度腎機能障害に使えるMR拮抗薬国内第III相試験において、I度またはII 度の本態性高血圧症患者を対象に、単剤および他の降圧薬との併用の両方で試験が行われた。単剤投与では2.5mgを1日1回、12週間投与した結果、収縮期血圧は13.7mmHg低下し、エプレレノン(投与量:50mg)に対する非劣性が検証された。また、長期投与試験では52週を通して安定した降圧効果の持続が確認されただけでなく、ARBやCa拮抗薬との併用でも観察期に比べて有意な降圧効果を示している。さらに、中等度腎機能障害を合併した患者やアルブミン尿を有する2型糖尿病を合併した患者を対象とした試験では1.25mgを1日1回投与し、どちらの患者でも収縮期血圧は10mmHg以上低下している。ARBやCa拮抗薬を用いても降圧目標を達成できず、あと10mmHg程度を下げたいケースに追加する薬剤として良いだろう。そして、最大の特徴の1つは、これまでのMR拮抗薬では禁忌であった中等度腎障害の患者にも使用できるようになっている点である。ただし、副作用である高カリウム血症には注意が必要であり、とくに腎機能が低下している患者では、注意を払いながら使用していくことが求められる。カリウム値のモニタリングを行うなどして、患者に合わせて投与量を調整しながら使用していくことが重要となってくる。今後の可能性ミネブロ錠は単独投与、併用投与どちらでも10mmHg以上の血圧低下効果を示している。今後は、あともう少し血圧を下げたい場合や、これまでMR拮抗薬を使いたいが使えなかった症例において、新しい選択肢の1つとなるのではないか。さらに、MR拮抗薬はアルドステロンの作用を阻害するため、腎臓や心臓などの臓器保護効果を示す可能性があり、ミネブロ錠は高血圧症以外の適応拡大を目指して、糖尿病性腎症患者を対象とした第III相臨床試験が進められている。

706.

長期透析患者の貧血、roxadustat vs.エポエチンアルファ/NEJM

 透析を受ける中国人患者の貧血治療において、経口roxadustatは非経口製剤のエポエチンアルファに対して非劣性であることが示された。中国・上海交通大学医学院のNan Chen氏らが、roxadustatの有効性および安全性を評価した第III相無作為化非盲検実薬対照比較試験の結果を報告した。roxadustatは、経口投与が可能な低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬で、赤血球造血を刺激し鉄代謝を調整することが実証されている。透析施行中の貧血患者に対する治療薬として、標準治療である赤血球造血刺激因子製剤と比較した場合の有効性と安全性に関して、さらなるデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年7月24日号掲載の報告。エポエチンアルファ投与中の透析患者約300例を対象に無作為化試験を実施 研究グループは、エポエチンアルファ治療を6週間以上受けている透析患者を、roxadustat群またはエポエチンアルファ群に2対1の割合で無作為に割り付け、週3回26週間投与した。各群、ヘモグロビン(Hb)値が10.0~12.0g/dLに維持されるよう投与量を調整し、鉄剤投与はレスキュー療法以外での使用は控えることとした。 主要評価項目は、投与23~27週におけるベースラインからの平均Hb値変化量であった。roxadustat群とエポエチンアルファ群の群間差の両側95%信頼区間(CI)の下限が-1.0g/dL以上の場合に非劣性とした。また、有害事象および臨床検査値異常により安全性を評価した。 合計305例が無作為化され(roxadustat群204例、エポエチンアルファ群101例)、256例が26週間の治療を完遂した(それぞれ162例、94例)。ベースライン時の平均Hb値は10.4g/dLであった。roxadustatの有効性は、エポエチンアルファに対して非劣性 投与23~27週におけるベースラインからの平均Hb値変化量(±SD)は、roxadustat群0.7±1.1g/dL、エポエチンアルファ群0.5±1.0g/dLで、群間差0.2±1.2g/dL、95%CIは-0.02~0.5であり、roxadustatの非劣性が検証された。 エポエチンアルファ群と比較してroxadustat群では、トランスフェリン値の増加(群間差:0.43g/L、95%CI:0.32~0.53)、血清鉄の維持(群間差:25μg/dL、95%CI:17~33)、トランスフェリン飽和度低下の抑制(群間差:4.2ポイント、95%CI:1.5~6.9)が認められた。 27週時において、総コレステロール値の低下は、roxadustat群がエポエチンアルファ群より大きく(群間差:-22mg/dL、95%CI:-29~-16)、LDLコレステロール値も同様であった(群間差:-18mg/dL、95%CI:-23~-13)。平均ヘプシジン値の低下も、roxadustat群(-30.2ng/mL、95%CI:-64.8~-13.6)がエポエチンアルファ群(-2.3ng/mL、95%CI:-51.6~6.2)より大きかった。 有害事象は、roxadustat群で高カリウム血症および上気道感染症、エポエチンアルファ群で高血圧の発現頻度が高かった。

707.

保存期CKD患者の貧血、roxadustatが有効/NEJM

 人工透析を導入していない保存期慢性腎臓病(CKD)の中国人患者において、roxadustat(FG-4592)投与はプラセボと比較して、8週後のヘモグロビン(Hb)値を増加したことが示された。中国・上海交通大学医学院のNan Chen氏らが患者154例を対象に行った、第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年7月24日号で発表された。roxadustatは、経口の低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素阻害薬で、赤血球新生を促進し、鉄代謝を調整する。CKD患者が参加した第II相試験で、roxadustatは内因性エリスロポエチン値を生理的閾値内または閾値近くまで増大させ、Hb値についても上昇し、鉄代謝を改善することが示されていた。 roxadustatを週3回投与 研究グループは、保存期CKD患者の貧血治療について、roxadustatの有効性と安全性に関する付加的データを得る第III相試験を行った。中国29ヵ所の医療機関を通じて、CKD患者154例を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはroxadustatを、もう一方にはプラセボを、いずれも週3回8週間投与した。被験者のベースライン時Hb値は7.0~10.0g/dLだった。 8週間終了後に、非盲検下でさらに18週間追跡し、期間中は被験者全員にroxadustatを投与した。非経口的な鉄投与は見合わせられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから7~9週後のHb値の平均変化値だった。8週間のHb値増加量、roxadustat群で1.9g/dL 8週間の主要試験期間において、ベースラインから7~9週後の平均Hb変化値は、プラセボ群が-0.4±0.8g/dLに対し、roxadustat群は1.9±1.2g/dLだった(p<0.001)。 ヘプシジン値のベースラインから9週後の平均減少量も、プラセボ群が15.10±48.06ng/mLに対し、roxadustat群は56.14±63.40ng/mLと減少幅が大きかった。ヘプシジン値が高い貧血患者では、ヘプシジン値の減少は概して、鉄供給量の増加を示している。 また、総コレステロール値のベースラインからの減少量も、プラセボ群が7.7mg/dLに対し、roxadustat群は40.6mg/dLだった。 roxadustatによるHb値増加は、18週間の非盲検追跡期間も維持された。 なお、高カリウム血症と代謝性アシドーシスの発症率が、roxadustat群でより高率だった。

708.

第24回 心電図の壁~復刻版~(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第24回:心電図の壁~復刻版~(前編)今でこそ心電図に関するさまざまなテキストを出版し、多くの講義・セミナーの機会をいただいているDr.ヒロですが、かつては心電図や不整脈が不得手だったのです…多くの人と同じか、それ以上に苦労して何度もくじけそうになりました。そんなボクだからこそ、いかにして困難を乗り越えたかを語ることで、心電図学習で悩む人へ勇気を与えられるのではないかと、かつて、医学書院の「内科医の道」という若手医師向けのシリーズ企画の中で、あるエッセイ*を執筆しました。このシリーズは、著名な先生方が若手に向けたメッセージをWEB上で発信するもので、ボク自身も時々興味深く読んでいた企画でした。もちろん自分には分不相応だとは思いつつ…当時のボクは承諾してしまいました。その時つけたタイトルが『心電図の壁』。大先輩でもある養老 孟司先生の影響を受けていないとは言いません(笑)。*杉山裕章. 内科医の道[電子版エッセイ]. 医学書院;2012.第48回. (※2018年に公開終了)ニガテ・キライ・ムリの状態から、どう“壁”を乗り越えてきたか-そのプロセスが心電図を学びたい“迷える子羊”たちのお役に少しでも立てればと懸命に書きました。この自分の成長日記とも言えるエッセイも、今では時の流れで“閲覧不能”となってしまいましたが、医学書院と交渉し、自らツッコミ的な補足も追加しつつ、本連載の番外編として2回シリーズでお届けできることになりました。いつものようなレクチャー調でもなく、気軽にご笑読いただけたら嬉しいです。では、はじまり、はじまり~。注)黄緑枠部分がエッセイ、グレー枠部分が現在のDr.ヒロによるツッコミです。原稿依頼をいただいた時、若手医師へ向けたWebエッセイ企画とのことで、本当はお断りしたかった。なぜって、自分こそ“読者”たるべき若者1)だから。でも、いろいろと考えた挙句、心電図についての“苦労話”を皆さんに聞いてもらうことで、少しはお伝えできることもあろうかと思ってお引き受けした。学生時代を思い返してみると、お世辞にも真面目とは言えなかったと思う。でも、外部病院実習2)で配属になった循環器の先生方のカテーテル室やCCUを駆け回るパワフルな姿がとてもカッコ良く見え、自分もやってみたくなったのだ3)。でもオレって…シンデンズとか全然ダメじゃん(泣)。当時は何だかよくわからないけれど心電図が循環器の“象徴”な気がして、試験そのほかでもひどい目にあった記憶が頭から離れなかったからかもしれない。とにかく心電図が大のニガテだった。1:当時33~34歳。冷静になってみるとそんなに若くはないか…。2:とくに印象的だったのは、T病院とM病院の2つ。3:今も最前線で活躍されておられる某医師。当時、若くてバリバリの彼に向けられたナースたちの眼差しはとても印象的だった。容姿もカッコよく、しかもデキる…まさに“完璧”!そんな自分を少しだけ変えたのは、ひょんなことから参加した学内の“心電図ゼミ”だった。有志の勉強会なんてものに参加したことなんて一度もなかったが、わらをもつかみたい気持ちが背中を押してくれたか4)。それは毎週1人1枚、ナマの心電図波形が与えられ、ノーヒントの状態で担当教授と十数人の同級生の前で自分なりの診断・解釈を述べるものであった。ボクが普段やっている“マルチョイ”方式のクイズとはレベルが違う。今で言う、“リアル・ガチ”だ(頼みの綱の自動診断結果も消されていた…)。ほかの人が読んできた心電図もコピーして配布されるため、1回このゼミに行くと、必ず十数個の新しい課題が生まれた。正しく読み切れたときもあれば、全然アサッテの診断をしてしまったことも多々あった5)。出席者の多くも皆、それなりに間違った。しかし、その教授は、たとえ間違った診断をしても決してけなすことなく、その場で“どう読むのか”を、逐一教えてくれた6)。プロ(循環器)の視点に触れた瞬間はしばしば身震いがした。4:実は、当時仲良くしていた友人が参加すると言ったため、何か不安になって一緒について行った。5:今でこそ「系統的判読法」などと1枚の心電図から漏れなく所見を拾い上げることの重要性を強調してるが、当時は指定教科書とブツ(心電図)とをウンウンうなって見比べながら恥をかきたくない一心で必死でやっていたっけなぁ(その甲斐なく敗れさったことも数知れず)。6:同教授は退官されるまで毎年同ゼミを開催されていたそう。心電図はいわんや、まさに教育のプロフェッショナル!約半年間、なぜだか休まず通った。必修の授業だってサボることのあった“劣等生”が。いつしか、自分が担当でない問題にも自分なりの所見をつけてからセッションに参加するようにもなった7)。ただ、その後は苦労の連続だった。国家試験にどうにか通って医師1年目、大学病院で入院サマリーや諸雑用に追われ、心電図はおろか、ほとんど勉強なんてできなかった。もともと自分の要領が悪く、種々のストレスや疲労にも悩まされることもあったのだが。ゼミで築いた“土台”も見事に退化してしまった。7:学生時代に用いていた教科書の大半は廃棄したが、この心電図“教材”は捨てずにファイリングして残してあるほど愛着アリ。2年目は“野戦病院”8)に出た。当然、心電図の講義なんてない。でも、そこでダメ研修医に再度転機が訪れた。1つ上の先生が、「あなた、循環器に興味があるのなら、心電図の“下読み”してみたら? ○○先生が添削してくれるから勉強になるわよ」と勧めてくれたのがキッカケだった9)。それは、院内で毎日記録される山のような心電図の所見を他科のドクターにもわかるよう紙に記載する仕事だった10)。この“下読み”に、コワモテ循環器部長が目を通し、間違っていれば赤ペンで修正してくれるというのだ。しかも、生理検査室の人は、訂正が入った心電図と“正解”できたものとを別に分けておいてくれた11)。それ以後1年近くの間、頼まれてもないのに院内ほぼすべての心電図に目を通す、出来の悪い下読み工場をオープンさせた。はじめのうちはドン引きするくらい直され、不整脈やペースメーカーの心電図などは最後までまったく歯が立たなかった。だが、毎回ドキドキしながら添削結果と向き合った経験は貴重ではあり、一度は失いかけた心電図への“情熱”が徐々に湧き上がってくるのを感じた12)。 8:飲み屋街としても有名な神楽坂付近の病院で、名称は変わっても現在も同じ場所にある。 9:何度か一緒に飲みに行き(ご馳走になっていた)、「腎臓内科の紹介でこの病院に来たんですけど、今更ながらやっぱり循環器やりたいなぁって思ってるんです」なーんて相談したような気が…。10:当時はまだ電子カルテはなく、複写式の短冊状の紙にボールペンで所見を書いた。個々人に“ポケベル”が手渡されており、それが鳴るたび近くの電話機にダッシュしていたなぁ…。11:悩みに悩んでつけた所見が予想通り“誤り”であったもの、そして逆に自分では難なく診断できたと思っていたのに訂正が入り、「そう考えるのか」と多々学ぶことも。悩んだ末に出した回答が“正解”だった時は、ニコニコとスキップして病棟に戻るくらい喜んだなぁ。12:現在でも循環器レジデントなどのdutyとして心電図“下読み”があるようだが、“添削”まで入る環境は比較的少ないのでは。研修自体はいろいろ苦労もしたけれど、この点は恵まれていたと思う。今回はここまで。今振り返ると、かつての教授や部長と同じような立ち居振舞いや試みは、現時点でのボクにはできていません。時勢も変化も踏まえ、Dr.ヒロが選んだのは書籍やWEBでの連載による講義に重点を置くという道です。ただ、それでも“胸のうちは一つ。医学生や研修医・レジデント諸氏に以下のTake home messageを実践してもらいたい―それだけです。今回はDr.ヒロのライフ・ワークの根幹に触れる話をお届けしました。次回は、循環器医になってからの“心電図の壁”への挑戦ストーリーをお届けします。お楽しみに!Take-home Message教科書や問題集だけではなく“生”の心電図に数多く触れよ!心電計の自動診断や先輩の読みに頼らず、自分なりの所見・診断をつける“訓練”をすべし!自分がわからなかった心電図をプロ(循環器医)がどう読んだかチェックして真似よ!【古都のこと~心リハ学会2019教育講座】今回は夏休み特別編をお送りします。2019年7月13日、大阪国際会議場にて第25回日本心臓リハビリテーション学会学術集会(大会長:木村 穣氏[関西医科大学健康科学科])が開催され、Dr.ヒロは教育基礎講座『心電図とのつき合い方、教えます!~心臓リハビリテーション編~』*のレクチャーをする機会に恵まれました。実は、本学術集会への参加は初めてだったのですが、医師もさることながら、理学療法士や看護師などのコメディカルの方々の熱気がダイレクトに伝わってくる、本当に素晴らしい学会であり、今まで不参加であった自分を恥じました。当日は600人収容の会場が超満員、立ち見が数十人どころか会場の外まで人がギッシリ! こうした状況で講演をさせてもらえることは非常に光栄に感じます。さらに、ボクがレジデント時代を過ごした際の恩師が座長という別のプレッシャーもありました(笑)。ただ、いざ始まってしまえば、いつも通り「心電図・不整脈が好きだー」という情熱を前面に押し出す“熱血講義”スタイルで行うことができました。写真はタイトルスライドで、本連載での著者紹介イラスト、背景は伏見稲荷大社(伏見区)の千本鳥居の様子です。心電図は循環器領域の“言葉”の一つであり、その重要性はもちろん心臓リハビリテーションの世界でも変わらないと思います。聴講してくださった皆さんが、レクチャーから何かしらの「ヒント」を感じ取り、ひいては彼ら彼女らが担当する患者さんの健康回復につながるとしたら、演者冥利に尽きるものです。*:当日使用したスライド資料はこちらから

709.

膜性腎症、リツキシマブvs.シクロスポリン/NEJM

 膜性腎症へのリツキシマブ静脈内投与は、シクロスポリン経口投与に対して、12ヵ月(1年)時点の蛋白尿の完全寛解または部分寛解の導入について非劣性であることが示された。また、24ヵ月(2年)時点までの蛋白尿寛解の維持について優越性が示された。米国・メイヨークリニックのFernando C.Fervenza氏らが、130例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2019年7月4日号で発表した。膜性腎症にはB細胞異常が関与しており、リツキシマブによるB細胞除去は、同患者の蛋白尿の完全寛解・部分寛解の導入・維持について、シクロスポリン治療に対して非劣性となる可能性が示されていた。24ヵ月時点の蛋白尿の完全寛解/部分寛解の複合アウトカムを評価 研究グループは、膜性腎症で24時間の蛋白尿が5g以上、定量クレアチニンクリアランス値が40mL/分/1.73m2体表面積以上で、アンジオテンシン系阻害薬を3ヵ月以上投与されている患者130例を対象に、無作為化試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはリツキシマブを静脈内投与(1回1,000mgを14日間隔で計2回投与、部分奏効の場合は6ヵ月後に再投与)、もう一方の群にはシクロスポリンを経口投与し(開始用量3.5mg/kg体重/日を12ヵ月間)、24ヵ月間フォローアップした。 主要アウトカムは、24ヵ月時点での蛋白尿の完全寛解/部分寛解の複合だった。臨床検査値と安全性についても評価を行った。完全寛解/部分寛解、リツキシマブ群60%、シクロスポリン群20% 12ヵ月時点で、完全寛解/部分寛解が認められたのは、リツキシマブ群65例中39例(60%)に対し、シクロスポリン群65例中34例(52%)だった(リスク差:8ポイント、95%信頼区間[CI]:-9~25、非劣性のp=0.004)。 24ヵ月の時点で完全寛解/部分寛解が認められたのは、リツキシマブ群39例(60%)、シクロスポリン群13例(20%)だった(リスク差:40ポイント、95%CI:25~55、非劣性・優越性ともp<0.001)。 寛解を認めた抗ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)抗体陽性の被験者では、抗PLA2R自己抗体価の低下がリツキシマブ群でシクロスポリン群よりも速く、その程度も大きく持続期間も長かった。 重篤な有害事象の発現は、リツキシマブ群11例(17%)、シクロスポリン群20例(31%)で認められた(p=0.06)。

710.

ダパグリフロジン、糖尿病患者の腎保護示す-DECLARE‐TIMI 58サブ解析

 近年、SGLT2阻害剤はアテローム性動脈硬化症患者の腎アウトカムに対し、有益な効果を示すことが明らかになりつつある。今回、イスラエル・Hadassah Hebrew University Hospital のOfri Mosenzon氏らがDECLARE-TIMI 58のサブ解析を実施。ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、腎機能を保持している2型糖尿病患者において、アテローム性動脈硬化症の有無にかかわらず、プラセボと比較して腎疾患の予防および進展抑制を示す結果が得られた。Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載された。 研究者らは、複合アウトカムの構成要素、サブグループ解析、さまざまな時点でのeGFRの変化を調査する目的でサブ解析を実施。HbA1cが6.5〜12.0%(47.5〜113.1mmol/mol)の2型糖尿病で、アテローム性動脈硬化症または複数の危険因子を有し、クレアチニンクリアランス60mL/分以上の患者を、1日1回ダパグリフロジン10mg服用群またはプラセボ服用群に1対1に無作為に割り付けた。事前に規定した副次評価項目としての心腎複合アウトカムは、eGFR(推定糸球体濾過量)60mL/分/1.73m2未満かつ40%以上の持続的低下、末期腎不全(90日以上の透析、腎移植、またはeGFRが15mL/分/1.73m2未満を持続)、あるいは腎・心血管系による死亡であった。また、腎特異的複合アウトカムからは、心血管死を除外した。 主な結果は以下のとおり。・試験は2013年4月25日~2018年9月18日に実施された。・追跡期間中央値は4.2年(四分位範囲3.9~4.4)だった。・参加者1万7,160例が無作為に割り付けられた。・各参加者のベースライン時のeGFRは、90mL/分/1.73m2以上が8,162例(47.6%)、60〜90mL/分/1.73m2未満が7,732例(45.1%)、60mL/分/1.73m2未満が1,265例(7.4%)であった(eGFRのデータ消失が1例)。・6,974例(40.6%)はアテローム性動脈硬化症を発症し、1万186例(59.4%)は複数の危険因子を有していた。・副次評価項目としての心腎複合アウトカムは、プラセボと比較してダパグリフロジンで有意に減少した(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.67~0.87、p

711.

GLP-1受容体作動薬、デュラグルチドは2型糖尿病患者の腎イベントを抑制するか?:REWIND試験の腎に関する予備解析結果(解説:栗山哲氏)-1069

REWIND研究の結論 2型糖尿病においてGLP-1受容体作動薬、デュラグルチドのadd-on療法は、新規アルブミン尿発症を抑制する。REWIND研究の概要 インクレチン薬であるGLP-1受容体作動薬の腎作用が解明されつつある。現在までにGLP-1受容体作動薬に関する大規模研究は、セマグルチドのSUSTAIN-6研究、リラグルチドのLEADER研究、リキシセナチドのELIXA研究の3つ報告がある。この中で、前二者において腎複合イベントに改善作用が示唆された(ELIXA研究では腎イベントは事前設定されていない)。 REWIND研究(Researching Cardiovascular Events with a Weekly Incretin in Diabetes)は、GLP-1受容体作動薬に関する4つ目の大規模研究である。研究結果は、第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7日~11日)においてDr. Gerstein氏により報告され、6月10日のLancet誌に2つの論文として発表された。1つは心血管アウトカム(便宜上、第1報)、もう1報は腎アウトカムの予備解析(第2報)である。 REWINDの主要評価項目として心血管死、非致死性心筋梗塞と脳卒中(MACE)初発(第1報)、副次的評価項目として腎複合イベントを観察した(第2報)。本研究は、世界24ヵ国の371施設における国際的規模で、50歳以上の2型糖尿病患者9,901例(平均年齢66.2歳、白人76%、女性46.3%、心血管疾患の既往歴31.5%、ベースラインHbA1c中央値7.2%、BMI 32%、糖尿病罹病歴9.5年、eGFR 77mL/min/1.73m2)を登録した大規模研究である。併用薬は、BG薬(プラセボ群81.3% vs.デュラグルチド群81.1%)、SU薬(45.9% vs.46.1%)、ARBあるいはACE阻害薬(81.0% vs.82.0%)などである。これらの糖尿病治療薬に追加して、週1回の長時間作用型の注射製剤であるデュラグルチド1.5mgを投与する群(4,949例)とプラセボを投与する群(4,952例)に1:1でランダム化割り付けをし、中央値で5.4年間追跡した。REWIND研究の結果 第1報において、主要評価項目とした追跡期間中のMACE初発は、プラセボ群の663例(13.4%、100人・年当たり2.7例)に比べてデュラグルチド群では594例(12.0%、同2.4例)と有意に低値であった(ハザード比[HR]:0.88、95%CI:0.79~0.99、p=0.026)。このデュラグルチドによるMACE抑制効果は、心血管疾患の既往歴の有無、ベースラインのHbA1c値、年齢、性、糖尿病の罹病期間、心血管疾患既往、BMI、地域差を問わず認められた。ただし、全死亡に関してはプラセボ群(12.0%、100人・年当たり2.3例)とデュラグルチド群(10.8%、同2.1例)で有意差はなかった(HR:0.90、95%CI:0.80~1.01、p=0.067)。 第2報ではexploratory analysis(予備解析)が発表され、副次的評価項目とした腎疾患の発症に関して解析が行われた。腎評価項目は、「微量アルブミン尿(UACR>33.9mg/mmol)の発症」、「基礎値から30%以上のeGFRの持続性低下」、「腎代替療法開始」、である。その結果、腎複合イベント発症数は、プラセボ群の970例(19.6%、100人・年当たり4.1例)に比べてデュラグルチド群では848例(17.1%、同3.5例)と有意に低値を呈した(HR:0.85、95%CI:0.77~0.93、p=0.0004)。その腎アウトカムの最も明らかな原因は、「新規の微量アルブミン尿発症抑制」(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87、p<0.0001)であり、「30%以上の持続性eGFR低下」(HR:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.066)と「腎代替療法開始」(HR:0.75、95%CI:0.39~1.44、p=0.39)には有意差を認めなかった。以上から、従来の糖尿病治療に加えて、デュラグルチドの長期追加投与は、腎複合イベントを抑制することが示唆された。この主因は、新規の微量アルブミン尿発症抑制であった。さらに、デュラグルチド群においては軽度の体重減少、HbA1cの低下、LDLコレステロール値の低下、収縮期血圧の低下効果なども認められた。一方、心拍数は軽度の上昇がみられた。 なお、事前設定した、投薬中止率、有害事象である重篤な低血糖、膵がんや甲状腺がん、急性膵炎、不整脈などの点でデュラグルチド群とプラセボ群で差はなかった。ただし、消化管有害事象として、便秘および下痢を含む消化管有害事象の発現率は、プラセボ群(34.1%)に比べてデュラグルチド群(47.4%)で高かった(p<0.0001)。REWIND研究の腎予備解析:新知見は? 問題点は? 本研究の第2報である腎複合イベント解析は、副次的評価項目を予備解析したもので、REWINDの主要評価項目ではない。この解析結果を一言で要約すれば、「デュラグルチドのadd-on療法は新規の微量アルブミン尿発症を抑制する」ことである。腎複合イベント改善に、「腎機能低下抑制」や「腎代替療法開始抑制」は関与しなかった。本研究の対象が、腎機能良好群であること(eGFR 60mL/min/1.73m2以上でアルブミン尿なしが47%)を考慮すると、後二者が有意差に至らないのは自明でもある。なぜなら、一般的に糖尿病発症後の自然経過は、尿蛋白陽性例は5年間で30%、その後の経過観察25年間で30%が血清クレアチニン(Cr)値1.5mg/dL以上の慢性腎不全に至るとされる。つまり、糖尿病の自然経過を30年間追跡すると30%が慢性腎不全に至る。このことから、「30%以上のeGFR低下」と「腎代替療法開始」を腎アウトカムとした場合には相当な長期間観察を設定しなければ(仮にありうるにしても)有意差には至らない。インクレチン薬のアルブミン尿発症抑制の想定機序 現在、明確な腎保護作用のエビデンスが知られる薬剤は唯一RAS抑制薬(ACE阻害薬とARBの二者)であった。しかし、最近の新知見としてSGLT2阻害薬が心血管イベントを減少させるだけではなく、Class effectとして腎保護作用があることが、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58、CREDENCEにおいて明らかにされ、第3の腎保護薬として認識されつつある。 薬剤が腎保護を惹起する病態生理学的機序は複雑だ。腎の解剖学的見地からは、Glomerulopathy(糸球体障害)、Tubulopathy(尿細管障害)そしてVasculopathy(血管障害)の3系統を念頭に論じる必要がある。RAS阻害薬やSGLT2阻害薬は、糸球体高血圧を是正しGlomerulopathyを改善することが、主たる腎保護機序である(Tubulo-glomerular feedback:TGF)。また、これらの薬剤は、腎間質の低酸素環境改善や線維化抑制を介しTubulopathyやVasculopathyを改善する報告もある。 さて、GLP-1受容体が腎糸球体や尿細管に発現しているか否かには、いまだ議論がある。一方、腎血管系に発現している事実にはまったく異論はない。基礎実験でのインクレチン薬の主たる腎作用は、血圧低下作用、腎尿細管NHE3を介したNa利尿作用、ANP増加作用を介したNa利尿、そして、血圧低下作用と連関し、TGFを介した輸入細動脈収縮と腎内アンジオテンシンII低下による輸出細動脈拡張による糸球体内圧低下を惹起する(Tsimihodimos V, et al. Eur J Pharmacol. 2018;818:103-109.)。糸球体内圧低下は、アルブミン尿低下を惹起し腎保護的に働く。これらの作用はあたかもSGLT2阻害薬に類似するが、インクレチン薬の主たる薬理作用であるNa利尿作用は、利尿薬としてのpharmacological potencyは強くないためTGFを介した腎保護機序の関与度は、SGLT2阻害薬に比較して低いと想像される。実臨床における道のり REWIND研究の患者背景は、平均年齢60代、白人中心(76%)、肥満者(BMI 32)、腎機能はeGFRが77mL/min/1.73m2と保たれている患者での成績であり、本邦の糖尿病患者とは一致しない面がある。GLP-1受容体作動薬は、初期治療から用いられることは推奨されておらず、既存の糖尿病薬にステップ3ないし4でadd-onされる位置付けの薬剤である。 冒頭のDr. Gerstein氏はADA 2019での発表を、「幅広い中年の2型糖尿病患者において、デュラグルチドは血糖・血圧・脂質そして体重などに改善をもたらし心血管イベントならびに腎イベントを安全に低減されることが示された」、として締めくくったと取材班は伝えている。しかし、著者を含め腎臓・高血圧専門医の大多数は、同剤が腎イベントに対して有効との発言には、いささか抵抗感がある。現時点ではREWIND研究の結果から、「2型糖尿病の腎イベントを改善する」、との推論はいかにも時期早尚であり、正確には、「2型糖尿病の新規のアルブミン尿発症抑制に関連する」にとどめるべきである。今後、多くの研究と議論の集積が必要である。

712.

デュラグルチドが2型DMの腎アウトカム改善/Lancet

 デュラグルチド(商品名:トルリシティ)は、Stage3/4の慢性腎臓病患者において、1年後の推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を軽減することが報告されている。カナダ・マックマスター大学のHertzel C. Gerstein氏らREWIND試験の研究グループは、今回、同試験の探索的解析として、デュラグルチドの長期使用による2型糖尿病患者の腎アウトカムへの影響を検討し、プラセボと比較して有意な改善効果が得られることを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年6月10日号に掲載された。本試験では、既存の血糖降下レジメンへのデュラグルチドの追加により、2型糖尿病患者の心血管イベントのリスクが低減することが確認されている。デュラグルチドによる腎アウトカムへの影響を評価 本研究は、心血管リスク因子を有し、HbA1cが広範囲にわたる2型糖尿病の中年~高齢患者の血糖コントロールにおけるデュラグルチドの有用性を検討する、二重盲検プラセボ対照無作為化試験「REWIND試験」の探索的解析である(Eli Lilly and Companyの助成による)。 対象は、年齢50歳以上、BMI≧23で、2剤以内の安定用量の経口血糖降下薬を服用している2型糖尿病(HbA1c≦9.5%、下限値は設けない)で、心血管イベントの既往または心血管リスク因子を有する患者であった。 被験者は、デュラグルチド(1.5mg)またはプラセボを毎週1回皮下注射する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。少なくとも6ヵ月ごとに、アウトカムの評価のためのフォローアップが行われた。また、12ヵ月ごとに、尿検査と血清学的検査を実施し、尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)およびeGFRを推算した。 探索的解析として、細小血管症の複合アウトカムのうち腎関連項目(新規の顕性アルブミン尿[UACR>33.9mg/mmol]の初回発現、eGFRのベースラインから30%以上の持続的低下、持続的腎代替療法[透析、腎移植])の評価を行った。デュラグルチド群の腎アウトカム:17.1% vs.19.6%(p=0.0004) 2011年8月~2013年8月の期間に24ヵ国371施設で9,901例が登録され、デュラグルチド群に4,949例(平均年齢66.2歳(SD 6.5)、女性46.6%、平均HbA1c 7.3%[SD 1.1])、プラセボ群には4,952例(66.2歳(SD 6.5)、46.1%、7.4%[1.1])が割り付けられた。ベースライン時に、791例(7.9%)が顕性アルブミン尿を発症しており、平均eGFR値は76.9(SD 22.7)mL/分/1.73m2であった。 フォローアップ期間中央値5.4年(IQR:5.1~5.9)の時点(5万1,820人年)で、腎アウトカムはデュラグルチド群が848例(17.1%、3.5件/100人年)で発現したのに対し、プラセボ群は970例(19.6%、4.1件/100人年)と、デュラグルチド群が15%有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.77~0.93、p=0.0004)。 最も明確なデュラグルチドの効果を認めたのは、顕性アルブミン尿の抑制効果(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87、p<0.0001)であり、eGFRの30%以上の持続的低下(0.89、0.78~1.01、p=0.066)と持続的腎代替療法(0.75、0.39~1.44、p=0.39)には有意差はみられなかった。 重篤な腎有害事象の発現率は、両群間に有意差を認めなかった(デュラグルチド群1.7% vs.プラセボ群1.9%、HR:0.90、95%CI:0.67~1.20、p=0.46)。 著者は、「今後、ベースライン時に腎機能が保持された患者や低下した患者において、デュラグルチドの腎機能への影響の特性をさらに明らかにするために、大規模な前向き試験を行う必要がある」としている。■「デュラグルチド」関連記事デュラグルチドのREWIND試験は1次予防の壁を越えるか

714.

メトホルミン、軽度~中等度腎機能障害にも処方可-使用上の注意改訂

 2型糖尿病治療薬のメトホルミン含有製剤の添付文書について、2019年6月18日、厚生労働省より使用上の注意改訂指示が発出された。「腎機能障害」、重度のみが禁忌 これまで、メトホルミン含有製剤は軽度~中等度腎機能障害の患者も禁忌とされてきたが、今回の改訂でeGFR(推算糸球体濾過量)30未満の重度の腎機能障害患者のみを禁忌とすることになった。これに伴い、腎機能障害患者に対する1日最高用量については、eGFRに基づいた目安が記載される。また、経口摂取が困難な場合などの脱水リスクや過度のアルコール摂取、そのほか乳酸アシドーシスに関連する注意が整理されたが、製剤ごとに改訂内容の記載に違いがあるため、それぞれの添付文書を確認する必要がある。 改訂指示のある対象製剤は以下の通り。<対象製剤>・1日最高投与量が2,250mgである製剤(商品名:メトグルコ錠250mg、同500mg[大日本住友製薬]ほか)・1日最高投与量が750mgである製剤(商品名:グリコラン錠250mg[日本新薬]ほか)・メトアナ配合錠(アナグリプチン・メトホルミン塩酸塩配合剤:三和化学研究所)・イニシンク配合錠(アログリプチン安息香酸塩・メトホルミン塩酸塩配合剤:武田薬品工業)・メタクト配合錠(ピオグリタゾン塩酸塩・メトホルミン塩酸塩配合剤:武田薬品工業)・エクメット配合錠LD/HD(ビルダグリプチン・メトホルミン塩酸塩配合剤:ノバルティスファーマ)なぜ今、改訂されるのか? これまで乳酸アシドーシスのリスクを最小限にとどめるため、1970年代から国内の添付文書に使用患者や投与量などを記載し制限してきた。とくに腎機能障害患者ではメトホルミンの排泄が遅延し血中濃度が上昇するため、1977年5月に「軽度を含む腎機能障害患者」も禁忌へ追加。それ以降、腎機能障害患者に対する使用制限がより厳格なものとなっていた。 ところが近年、海外では腎機能障害患者におけるメトホルミンの安全性に関する最新の科学的知見に基づき、腎機能障害患者に対する使用制限が見直されてきた。2016年4月には米国食品医薬品局(FDA)が、同年10月には欧州医薬品庁(EMA)がそれぞれ、公表文献などをレビュー。その結果、軽度から中等度の腎機能障害患者へのメトホルミン使用は可能であると結論付け、禁忌をeGFRが30mL/min/1.73m2未満の患者に限定するとともに、軽度から中等度の腎機能障害患者へ使用する際の注意を追加するための添付文書の改訂を行う旨を公表した。 これに伴い、2019年5月31日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会による話し合いの結果、国内においても海外同様の対応を行うことが決定された。

715.

PPI服用、心血管疾患・CKD・上部消化管がんの過剰死亡と関連か/BMJ

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用は、心血管疾患・CKD・上部消化管がんに起因する過剰死亡と少なからず関連することが明らかにされた。米国・セントルイス退役軍人ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによる長期観察コホート研究の結果で、BMJ誌2019年5月29日号で発表した。著者は「結果はPPI服用への警戒感を高めることを支持するものだった」とまとめている。これまでに、PPI服用は重篤な有害事象と関連しており、全死因死亡リスクを増大することが報告されていた。PPI服用と全死因死亡および死因別死亡との関連を評価 研究グループは、米国退役軍人省のデータベースを用いた長期観察コホート研究で、PPI服用と全死因死亡および死因別死亡との関連(PPI服用1,000患者当たりの報告された起因性死亡数)を推算し評価した。 被験者は、PPI(15万7,625例)またはH2ブロッカーの新規服用者(5万6,842例)であった。PPI服用1,000患者当たりの全死因過剰死亡は45.20例 PPI服用1,000患者当たりの過剰死亡は45.20例(95%信頼区間[CI]:28.20~61.40)であった。死因別にみると、循環器系疾患が17.47例(95%CI:5.47~28.80)、新生物12.94例(1.24~24.28)、感染症および寄生虫症4.20例(1.57~7.02)、泌尿生殖器系疾患6.25例(3.22~9.24)であった。 PPI曝露の累積期間と、全死因死亡および循環器系疾患・新生物・泌尿生殖器系疾患による死亡には、段階的関連性が認められた。 サブ死因別解析では、PPI服用と、心血管疾患(15.48、5.02~25.19)およびCKD(4.19、1.56~6.58)による過剰死亡との関連が示唆された。 酸分泌抑制薬に関わる消化器系の記録のない患者(11万6,377例)を対象とした解析では、PPI服用は心血管疾患(22.91、11.89~33.57)、CKD(4.74、1.53~8.05)、上部消化管がん(3.12、0.91~5.44)による過剰死亡と関連することが示唆された。形式交互作用解析により、これらサブ要因による死亡リスクは、心血管疾患、CKD、上部消化管がんの既往によって変化しないことが示された。 PPI服用は、腸管機能関連死や消化性潰瘍性疾患死(ネガティブ対照アウトカム)の過剰な負荷とは関連していなかった。

716.

TIMI Studyから学ぶ臨床研究

 NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR/理事長 桑島 巖氏)は2019年4月20日、都内においてJ-CLEAR講演会を開催。6名の講演者が特定臨床研究の現状や糖尿病領域の臨床試験の変遷などについて発表した。 本稿では、第1部「特定臨床研究法施行のあとさき」に続き、第2部、第3部の話題をお届けする。SGLT2阻害薬は腎機能を保護するか 第2部では、「相次ぐ糖尿病新規治療薬:助っ人、それとも敵?」をテーマに2題の講演が行われた。 はじめに「SGLT2阻害薬の腎機能保護作用に関する最近の知見」をテーマに栗山 哲氏(東京慈恵会医科大学 客員教授)が講演を行った。患者数が1,330万人と推定される慢性腎臓病(CKD)をコモンディジーズと位置付けた上で、CKDによる心血管イベント発生のリスクと関連性を概括し、腎臓を守ることは生命予後の改善になると述べた。そして、心・腎保護作用としてSGLT2阻害薬によるEMPA-REG、CANVAS、DECLARE TIMI 58、CREDENCEの各試験結果を示し、試験内容を説明した。 腎臓保護のためには「糸球体障害、尿細管障害、血管障害」の3つがターゲットとなり、「KDIGOガイドライン2014」で示されたように血圧、血糖、ACE阻害薬/ARBなどを優先して考慮するとともに、脂質、尿酸、貧血、減塩なども同時に考えるべきと提案する。 これらの保護に作用するのがSGLT2阻害薬であり、その作用は、食塩感受性改善など食塩関連、血糖低下・糖毒性改善など血糖関連に多面的に作用するとともに、尿酸値の低下、LDL-Cの低下などにも作用する。これらの作用が先述の3つのターゲットを改善するとともに、腎機能障害進行抑制に寄与すると考えられると効果の仕組みを説明した。 最後に今後のSGLT2阻害薬の課題として、諸効果の持続可能性、副作用のリスクを挙げ、レクチャーを終えた。臨床研究結果が医師の行動を変えるためには 次に「医療の現実、教えます:脚気論争から糖尿病治療薬論争まで」をテーマに名郷 直樹氏(武蔵国分寺公園クリニック 院長)が、明治期の脚気論争から最近のディオバン事件までを振り返り、臨床研究の問題点を糖尿病治療薬とも絡め説明した。 「脚気論争」は医学史の中でもよく知られた史実で、「臨床試験の正確さよりも、なぜ治療に結びつく医療がなされなかったのか、“負の歴史”として語られている」と同氏は語るとともに、コレラ菌論争や現在の治療薬の偏重傾向にある糖尿病治療薬に関しても触れた。これら過去の反省を医療者は踏まえ、「病態生理から臨床データをひとつながりにする」「日々の実践教育にRCTによるEBM教育を入れる」「研究結果と現場のギャップを明確にする」などを今後の臨床研究に活かすべきだと提言を行った。 最後に、同氏は「臨床研究は医者の行動を変えないが、間違いながらも(軌道)修正可能な医療を進めていきたい。どういう研究をするかだけでなく、どう研究が使われるかも視野に入れる必要がある」と語り、講演を終えた。わが国が見習うべき臨床研究方法“TIMI Study” 第3部では「負けない臨床研究の作り方:TIMI Study*に学ぶ」をテーマに後藤 信哉氏(東海大学循環器内科 教授)が、最近臨床研究で目にする機会の多い“TIMI Study”の概要とわが国が進むべき方向性を解説した。 はじめに臨床研究の利害関係者を「臨床医・臨床研究者」「企業(薬剤、機器)」「規制当局」「患者」の4つに分け、それぞれの立場から臨床研究の目的・目標を説明した。それぞれの利益とは、臨床医・臨床研究者は質の高いジャーナルに論文を多数掲載すること、企業として製品で利益を生むこと、規制当局として許認可のために役立つ科学的根拠を得ること、患者にとって疾患が治癒することである。この4つの利害関係者の思いが合致し、目的を充足させていると思える体制の構築に成功しているのが“TIMI Study Group”だと語る。 具体的には、「ランダム化比較試験が、標準治療の転換を目指す唯一正しい方法とコンセプトを確立させている」「標準プロトコールとして、ランダム化比較試験が有効性と安全性を検証するものと完成させている」「同グループと協調して標準的プロトコールの症例登録をするため、各国のコーディネーターが決まっている」「同グループに臨床研究を委託することで薬剤開発メーカーは投資リスクを低くすることができる」「同グループが検証した臨床試験の結果は、アカデミアにはNEJMなどのhigh impact journalへの論文発表、規制当局には認可承認に必要な科学的データの提供、新薬開発メーカーには認可承認とその後の販売拡大に必要な科学的根拠を提供する」と5つの要素を挙げ説明した。 実際、同氏も参加したSGLT2阻害薬ダパグロフロジンの“DECLARE TIMI 58試験”を例に、試験がどのような目的とプロセスで行われ、結果どのような影響があったかを報告した。DECLARE TIMI 58試験では、企業と規制当局は同薬剤が心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を増やさないことを示すことで、心不全入院、腎不全悪化予防の可能性を示唆した。臨床医・臨床研究者では本試験の論文がNEJMを含め他のジャーナルにも17本掲載され、患者には同薬剤への懸念を減らすインパクトがあったという。補足で同氏へのメリットとしては、共著の研究者になったことと“Circulation”への掲載のほか、わが国の研究貢献度の比重が増したと考えていると感想を語った。 そして、「こうした四者にメリットとなる研究を創造したTIMI Studyグループに、わが国の臨床研究も見習うべきところがある」と述べ、(1)「何が正しいか」を定義し、検証する方法を確立することが重要(2)検証する理論ができたら、その理論を広報して「世界を一色に染める」ことが重要(3)利害関係のある四者すべてが「Win/Win/Win」であると納得しながら、結果としては一人勝ちになる仕組みを考えることが重要と3つのポイントを提言し、レクチャーを終えた。*TIMI Study Groupとは、循環器領域に特化したアカデミック臨床研究機関。設立から約70以上の臨床研究を手掛け、いずれの結果も一流医学雑誌に発表・掲載されている。(ケアネット 稲川 進)■参考臨床研究適正評価教育機構■関連CLEAR!ジャーナル四天王

718.

脳心血管病予防策は40歳からと心得るべき/脳心血管病協議会

 日本動脈硬化学会を含む16学会で作成した『脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019』が日本内科学会雑誌第108巻第5号において発表された。2015年に初版が発行されてから4年ぶりの改訂となる今回のリスク管理チャートには、日本動脈硬化学会を含む14学会における最新版のガイドラインが反映されている。この改訂にあたり、2019年5月26日、寺本 民生氏(帝京大学理事・臨床研究センター長)と神崎 恒一氏(杏林大学医学部高齢医学 教授)が主な改訂ポイントを講演した(脳心血管病協議会主催)。脳心血管病予防が今後はますます求められる  2018年12月、「健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が成立した。2015年度国民医療費1)は42兆円を超え、内訳を見ると循環器疾患に対する医療費は全体の19.9%(5兆9,818億円)、次いで、悪性新生物が13.7%(4兆1,257億円)を占めていた。近年では医療の発展に伴い、病態の発症から死亡に至るまでの期間が伸びているものの、平均寿命と健康寿命の差はまだ大きい。死亡までに介護が必要となった主たる原因も、認知症を上回り、脳血管疾患が1位にランクインしている2)。このように、そのほか問題視されている肥満、糖尿病、喫煙などの現状を踏まえると、今後ますます、脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの活用が求められるようになる。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの対象 厚生労働省による“人生100年時代構想”や高齢者のフレイル・介護問題を受け、今回の改訂でも高齢者の留意点が多く盛り込まれた。健康寿命を伸ばして要介護期間を短くする、つまり“不健康な期間”を短縮することがわれわれの使命、と考える両氏。神崎氏は、「65歳以上になってから努力するのではなく、中年期から努力することが健康寿命を延ばすためには必要。高齢者の場合は生活習慣病を管理しながら、多病に基づくポリファーマシーやサルコペニア/フレイルの発生にも注意する必要がある」とし、寺本氏は「高血圧などの危険因子を持たない段階での予防(0次予防)の患者に啓発することが重要」と、脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートの対象者について言及。また、寺本氏は「定期的にチェックするために誕生日月に実施するのが有用。その旨を事前に患者に伝えておくと、患者自身も覚えている」と活用時期やその方法についてコメントした。脳心血管病リスクの管理状態の評価ツールとして活用可能 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、臨床現場で使用しやすいようにStep1~6までの順に従って診断・診療できるように設計されている。また、健康診断などで偶発的に脳心血管病リスクを指摘されて来院する患者を主な対象者とし、既に加療中の患者に対しても、管理状態の評価ツールとして活用可能になるようにも作成されている。 以下に脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート各Stepにおける留意点を示す。◆Step1:スクリーニングと専門医等への紹介の必要性の判断基準a~cに分類。aでは家族歴や脈拍について重視、bの場合は空腹時血糖の測定が必要になるため、空腹時での来院を求める必要がある。また、アルドステロン症の見落としが散見されるため、この段階でしっかりチェックする必要がある。cでは、各専門医への紹介の必要性がある対象者を明確にしている。また、慢性腎臓病(CKD)の記載方法が変更している。◆Step2:各リスク因子の診断と追加評価項目脳心血管病の各リスク因子の診断と追加評価項目は各学会のガイドラインに準拠。◆Step3:治療開始前に確認すべきリスク因子喫煙リスクがある患者での禁煙指導が重要で、1回/年の確認が鍵となる。また、個々の病態に応じた管理目標について高齢者について加味している点がポイント。◆Step4:リスクと個々の病態に応じた管理目標の設定改訂前はリスク層別にNIPPON DATA80を使用していたが、今回は「吹田スコア」の使用を推奨。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートには危険因子を用いた簡易版が載っているので、それを基にリスクスコアを算出することが可能。◆Step5:生活習慣の改善食事摂取量は、日本人の食事摂取基準を参考にし、これまでのkcal重視からBMI重視に変更。身体活動を患者と共有できるよう詳細に記述。◆Step6:薬物療法の紹介と留意点実際の薬物療法については各疾患のガイドラインに従い、導入前には生活習慣の改善を基盤に患者とのコンセンサスを得ることが重要。 脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、5年に1回のタイミングで更新を目指しており、大きな改訂はできなくとも各学会で改訂事項が発表された際には、それらを脳心血管病協議会で話し合い、対策を講じるという。最後に寺本氏は「このような類いの包括的な管理チャートは海外では作成されておらず、世界に一歩先立った活動である」と締めくくった。■「日本人の食事摂取基準」関連記事日本人の食事摂取基準2020年版、フレイルが追加/厚労省

719.

大動脈弁狭窄症に対する治療の第1選択はTAVIの時代に(解説:上妻謙氏)-1058

 超高齢時代を迎え冠動脈疾患、弁膜症、末梢動脈疾患、脳血管疾患などによる心血管イベントは、悪性腫瘍と並んで非常に多い死亡原因となっている。またそれらの疾患の終末像である心不全は、パンデミックといわれるほどの国民病となっており、冬期は救急医療機関が満床となる原因となっている。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は高齢者心不全の原因の1つとなっている大動脈弁狭窄症(AS)に対する根本的介入を行うもので、手術ハイリスク、超高齢者に対する治療としては第1選択となった。海外ではPARTNER 2試験など中等度リスク患者に対するTAVIは死亡、後遺症の残る脳卒中などの重大なイベントにおいて外科手術に対し優れることが示され、ガイドライン上でも中等度リスクまで適応が拡大されていた。 今回発表されたPopmaらによるNew England Journal of Medicine誌(2019年3月16日号)の論文は、手術低リスクの患者に対する自己拡張型生体弁を用いたTAVIと外科手術の無作為化比較試験結果で、同時にバルーン拡張型を用いたPARTNER 3試験とともに発表された。1,486人の重症ASが無作為化され、そのうち1,403人が実際にTAVIまたは外科手術を施行された。選択基準としては一般に重症のASと診断される症候性、あるいは無症候でも超重症と判定されるASの患者が対象で、30日死亡率が3%未満と予測される患者が対象となった。これは近年心臓外科手術のリスク評価で標準的に使用されているSTSスコアに相当するものであるが、今回の判定基準はローカルのハートチームの評価とスクリーニングコミッティーでの評価となっており、若干の曖昧さがあった。 プライマリーエンドポイントは死亡および後遺障害の残る脳卒中で、2年までフォローされた。TAVIの人工弁はメドトロニック社の現在も使用されているEvolut Rを中心に、その逆流防止スカート付きであるEvolut PRO、サイズによってわずかではあるが一世代前のCoreValveが使用されたこともあった。結果、プライマリーエンドポイントである2年の死亡、脳卒中はTAVI群が5.3%、外科手術が6.7%と非劣性を示すことができ、重篤な出血、腎障害、心房細動の発生、残存圧較差、QOLをはじめとして、多くのセカンダリーエンドポイントでTAVIの優越性が示された。TAVIにおいて外科手術よりも頻度が有意に多くなったのがペースメーカー植え込みで、これは外科手術の6.1%に比べ17.4%にもなった。 この低リスク治験は、参加が遅くなったため症例数としては少ないが日本も含まれており、日本での承認治験の役割も担っている。同時に発表されたPARTNER 3試験もSTSスコア4%未満がエントリーということ以外ほぼ同様のデザインで行われ、プライマリーエンドポイントに再入院も含めたため、非劣性のみならず優越性も示すことに成功している。 これら2つのランダマイズトライアルを総合すると、ASに対する手術低リスク患者のTAVIは、外科手術よりも30日の段階で明らかに安全であり、2年の段階でTAVIのほうが死亡、後遺症を残す脳卒中が少ないというメッセージを示している。日本も治験の形で参加した臨床試験であり、TAVIのメリットが明らかになったことで、今後低リスク患者への適応拡大が認められると考えられ、機械弁を選択する若年患者を除けばTAVIが第1選択となる時代が迫っているといえる。今まで課題とされてきたTAVIの生体弁の耐久性についても10年程度までは外科手術の生体弁と変わりがないことも示されてきており、残された課題はペースメーカー植え込み率の高さを含めて高いコストであろう。

検索結果 合計:1056件 表示位置:701 - 720