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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1【「実践的」臨床研究入門】第36回

今回はO(アウトカム)を設定する際の要点を解説します。これまでブラッシュアップしてきたわれわれのResearch Question(RQ)のOは下記のとおりです(連載第34回参照)。O:1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度O(アウトカム)は測定可能で臨床的に意義があるかまず、ここで設定したOが測定可能で臨床的に意義があるものなのか、再考してみましょう。末期腎不全(透析導入)は明確なイベントであり、カルテ調査でその発症日も容易に確認できます。GFRは血清クレアチニン値(Cr)と年齢、および性別で算出される腎機能評価の指標で、日本人の集団でも確立された計算式が論文で公開されています1)。GFR低下速度は、複数回のCrの経時的評価が行われていれば計算できますので、客観的な測定が可能です。末期腎不全(透析導入)は患者さんにとって、生活が大きく変わるハードエンドポイントであり、臨床的にも大きな意義があるOと考えられます。一方、GFR低下速度はサロゲートエンドポイントです(連載第3回参照)。しかし、GFR低下速度の持続的な加速は、慢性腎臓病(CKD)患者さんの末期腎不全発症を含めたハードエンドポイントの予測因子であることが多くの臨床研究の結果から示されています。したがって、これも臨床的に重要なアウトカムと言えるでしょう。さて、われわれのRQの曝露要因(E)は、低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日の遵守という厳格な食事療法です。すでに設定した腎予後に関するOの臨床的重要性は前述したとおりですが、厳格な食事療法に伴う負担など、負の側面も気になりませんか。たとえば、厳格な低たんぱく食事療法によるQOL悪化の懸念は、診療ガイドラインなどでも指摘されていますが、明らかなエビデンスはこれまでに認められていないとされています。今回、われわれが実施を予定しているのは、カルテ調査をベースにした、いわゆる「後ろ向き」の観察研究です(連載第1回、第6回参照)。QOL尺度(連載第3回参照)の経時的な測定は、日常診療では一般的に行われていないと思いますし、われわれのカルテ調査データでも収集はできませんでした。このように、通常の臨床現場で測定されないOについては「後ろ向き」ではなく「前向き」研究でなければ検討できない、ということです。ちなみに、前回紹介したDOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)は、血液透析患者さんを対象とした「前向き」観察研究です。DOPPSでは多大なコストをかけて、経時的な健康関連QOL尺度(連載第3回参照)の測定と収集も行っています。また、前回説明したとおり、研究の効率や実施可能性の観点から、できればP(対象)はOを起こしやすい集団である方が望ましいです。つまり、発生頻度が多いOを設定した方が研究の効率が良いということです。そこで、今回の「後ろ向き」観察研究の解析で使用するデータをざっと確認してみたとしましょう。保存期CKD患者さん600例余り、最長5年間の観察期間のカルテ調査データを収集・調べてみたところ、全体の約30%の症例でプライマリのOである末期腎不全(透析導入)の発生が確認できました。実施可能性の高い解析データが収集できたものとホッとした次第です。1)Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis. 2009;53;6:982-992.

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漫画『王の病室』がリアル!【Dr. 中島の 新・徒然草】(495)

四百九十五の段 漫画『王の病室』がリアル!「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、本当に彼岸を過ぎたらこの暑さが和らぐのでしょうか? 外来受診をしたタイ人の患者さんが「日本のほうが暑い!」と言っていたくらいですから、まだまだ続くのかもしれません。さて、前々回は『響~小説家になる方法』という漫画を紹介しましたが、今回は『王の病室』(講談社、原作:灰吹 ジジ、漫画:中西 淳)という医療漫画を紹介したいと思います。医学部を卒業して新しく研修医になった赤城くんが主人公。彼が研修をしながら、医療の現実の中で悩みながら成長する物語です。漫画の中の登場人物のセリフがリアル。我知らず感心してしまいました。以下、いくつかの例を紹介させていただきます。ここがリアル! その1まず、赤城くんが担当患者さんのご家族に「少しお伺いしたいことが」と呼び止められる場面。ご家族が赤城くんに尋ねます。「父が治るまでに一体いくらぐらい用意しておけばよろしいのでしょうか」これに対して赤城くんの答えが笑えます。「さあ」何ですか、「さあ」って!でも、開業医の先生はともかく、私を含めて勤務医はあまり医療費のことを考えていません。ましてや赤城くんは卒業したばかりの研修医ゆえ、「さあ」以外の答えがないのは当然です。それにしても、もう少しマシな答えはなかったものでしょうか?ここがリアル! その2先輩の獄門院 聖(ごくもんいん ひじり)先生が赤城くんを慰める場面。「安心しろ赤城。この世に絶対の名医なんて存在しねェ。だから潔く泥仕合に励むんだな」赤城くんはグッドパスチャー症候群に対して血漿交換で挑もうとしていたのですが、いくら繰り返しても改善しない、という経過を予想できていません。泥仕合とは言い得て妙です。ここがリアル! その3指導医の高野 孝太郎(たかの こうたろう)先生に血漿交換の許可をもらいに行ったときのこと。すでに負け戦が見えている高野先生にとって、血漿交換は貴重な医療資源の浪費にしか思えません。でも一生懸命な赤城くんを見てこう言います。「赤城先生のためと思って今回は大目にみましょう…(略)…ここで血漿交換療法を経験した赤城先生が未来で誰かを救うかもしれない」大金をドブに捨てるみたいな治療ではあるけれども若者の教育のため、と思って自分を無理に納得させているのでしょう。ここがリアル! その4腎臓内科の松下 優音(まつした ゆね)先生は獄門院先生や高野先生とは別の考えを持っています。彼女のセリフが私にとっては一番腑に落ちるものでした。ちょっと長いけど引用させてもらいます。「この世で最も平等なものは『病』だと思うんだ…(略)…平等という言葉を使うとき我々は少し歪んだ認識をしてると思うんだけど。『善人が救われる』『悪人が罰を受ける』どこかそんな勧善懲悪をイメージしてない?」見事に我々が無意識に持っている考えを言い当ててくれます。そして松下先生はこう続けました。「本当の平等はもっと残酷だよ。老いも若きも金持ちも貧乏人も善人も悪人も区別なくただただ病は降り注ぐ」まさしく、その通り!「だからこそ私は信じてるんだよね。病と闘う者もまた同じくらい平等が許されると。若者を助けるべきとか誰を優先すべきとか、そういう小賢しい判断は国のお偉いさんにお任せ。与えられた手段全部使って誰でも治すのが私のやり方だから」飲酒喫煙しながら長生きする人が大勢いる一方、清く正しい生活で早死にしてしまう人も少なくありません。まさしく病は平等、そして理不尽です。だからこそ、自分のほうも理不尽に振る舞い、使えるものは何でも使って治療する、という松下先生の考え方には頷かされてしまいます。この漫画には、ほかにも示唆に富むセリフが沢山出てきました。読者の皆さまには、是非ともこの漫画を買って読んでいただきたく思います。きっと「あるある」と笑えることでしょう。ということで最後に1句彼岸すぎ リアルな漫画に 感心す

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血尿診断で内科医も知っておきたい4つのこと―血尿診断ガイドライン改訂

 『血尿診断ガイドライン』が10年ぶりに改訂された。改訂第3版となる本ガイドラインは、各専門医はもちろんのこと、一般内科医や研修医にもわかりやすいように原因疾患診断のための手順を詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示した。また、コロナ禍での作成ということもあり、最終章では「新型コロナワクチンと血尿」について触れている。今回、本ガイドライン改訂委員会の事務局を務めた小路 直氏(東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学)に、内科医が血尿時の問診や専門医への紹介を行ううえで注意すべきポイントなどを聞いた。成人の血尿診断アルゴリズム、尿沈渣検査がカギ 小路氏はまず、非糸球体性血尿の鑑別が進行速度の早い尿路上皮がんの早期発見につながることから、「一般内科医でも血尿を相談された場合などには尿沈渣検査をぜひ実施してほしい」と強調した。また、「非糸球体性血尿が検出されればその後は泌尿器科が対応し、糸球体性血尿が検出された場合には腎臓内科医が対応することになる。かかりつけ医受診の段階で、非糸球体性か糸球体性かを判断することで、患者が次の受診施設の選択で迷わずに済む」とも説明した。尿沈渣検査には遠心分離機が必要だが、それを所有するクリニックは多くはないため、外注に頼らざるを得ないのが現状だろう。もちろん、診療報酬点数(尿沈渣[鏡検法]27点)が算定できるため、尿路上皮がんの早期発見ならびに、紹介先の目星をつけるためにも「尿試験紙で血尿と判断された場合には、尿沈渣検査までは実施し、可能であれば尿細胞診や腹部超音波の実施もお願いしたい。ただし、尿細胞診は悪性度が強いがんでないと検出できないことには留意いただきたい」と話した。<内科医がおさえておきたい検査>・血液検査(血清クレアチニン異常高値)・尿沈渣検査   均一赤血球(非糸球体性血尿)   血尿に加え尿蛋白や細胞円柱/変形赤血球(糸球体性血尿)・尿細胞診 (悪性度の高い尿路上皮がんでないと検出ができないことに留意)・腹部超音波検査   尿路上皮がんや腎がんの検出感度は十分でないことに留意したうえで、適応を検討 なお、肉眼的血尿を呈する(または既往のある)患者で以下の場合には、腎臓内科への早期紹介が勧められるため、特筆すべき点としてフローチャートには赤字で示されている。・cola-like urine(コーラ色の褐色尿)・高度尿蛋白および/または進行性の腎機能低下・尿路感染症を疑う所見を欠く発熱・呼吸器症状や皮膚症状など他の全身症状・腎後性因子が否定される腎機能障害抗血小板薬や抗凝固薬服用が血尿を引き起こす可能性は低い 次に同氏は、よくある患者紹介の事例として“抗血小板薬や抗凝固薬服用患者が紹介されるケース”について言及した。本ガイドラインの「BQ12:抗血小板薬、抗凝固薬を服用している顕微鏡的血尿患者に対して通常の精査は必要か?」では、これらの薬剤を服用している患者において顕微鏡的血尿が認められた場合には、服用が原因であると判断することは困難であるため、これらの薬物を服用していない患者と同様に評価を行う必要があり、リスク分類に基づく精査を考慮する、と要約されている。これについて同氏は「抗血小板薬や抗凝固薬の“出血”という副作用が血尿を連想させやすいものの、種々の研究から鑑みても抗血栓薬に起因する血尿だと判断することは難しい。なお、この件は米国・泌尿器学会のガイドラインやリスク分類も参照している。ただし、専門医にとっては、膀胱鏡検査を実施する際のリスク因子になることはポイントで、念頭に置いておく必要がある」とコメントした。ご存じですか?ビタミンCによる偽陰性 「BQ3:血尿を診断するための採尿方法はどのようにすべきか?」において、採尿前の注意事項として(1)健診など尿試験紙でのスクリーニングではアスコルビン酸(ビタミンC)が存在すると偽陰性となることがあるため、アスコルビン酸を多く含む物の摂取を控える、と記載されている。これは健診時の常識のようだが、医療者によって注意事項として触れているか否かのバラつきがあるようだ。これについて、「結果が出た後に服用状況を確認する必要はないが、医療者としては尿試験紙に影響を及ぼす点は理解しておき、検査前の患者に対し、事前にビタミンCの服用で偽陰性になる点をインフォメーションしておく必要はあるだろう」とコメントした。コロナワクチン接種後の肉眼的血尿はIgA腎症のサインか このほか、専門医がおさえておくべきCQは以下のとおり。―――CQ1:蛋白尿を合併しない成人の顕微鏡的血尿患者において腎生検で同定される病態は何か?CQ2:顕微鏡的血尿の初回精査で異常を指摘されなかった患者に対して定期的経過観察は必要か?CQ3:成人の尿路上皮がん高リスク患者の診断においてCT urographyは推奨されるか?――― 最後に新型コロナワクチンと血尿との関係について、ワクチン接種後に腎炎が再発・再燃する症例が世界的に明らかになり、とくにIgA腎症の既往者では接種後の尿でコーラ色や紅茶色を認めるとの報告がある。これらの症例には1)全例がmRNAワクチン接種後、2)女性に多い、3)遷延する腎機能障害を認める症例はごく一部で大部分は一過性の尿所見増悪に留まる、という特徴があることが国内の調査1)や前向き観察研究からも明らかになってきている。しかし、ワクチン接種が腎症の発症を助長しているわけではなく、むしろ未診断の症例が顕在化した可能性が高いことから、同氏は泌尿器科医や一般内科医に向けて「ワクチン接種後に血尿を訴えた患者が来院した場合には、既往の確認のみならず、IgA腎症の存在を疑い、腎臓内科医への相談も視野に入れて診察に当たってほしい」と述べた。

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睡眠の質を高めるため、多くの医師がしていることは?/1,000人アンケート

 2024年4月から医師の働き方改革の新制度がスタートするが、長時間労働に端を発する医師の過労問題は改善されていないのが現状である。そのような中、睡眠は健康管理の重要カテゴリーとして医学界を筆頭にさまざまな業界で注目されているが、長時間労働者の象徴とも言える医師は果たして睡眠時間を確保できているのだろうか―。そこで、ケアネットでは多忙を極める医師の睡眠時間の実態を調査するために「睡眠状況、睡眠への意識について」のアンケートを実施。回答結果を診療科別、年代別、病床数別に抽出した。平均睡眠時間/睡眠の質に満足、全体の48% 今回は平均睡眠時間(当直時を除く)や睡眠に対する満足度、気になっていることについてそれぞれ質問した。平均睡眠時間や睡眠の質に満足していると回答した割合が半数以上であった診療科は全9科(血液内科、皮膚科、泌尿器科、精神科/心療内科、神経内科、腎臓内科、総合診療科、耳鼻咽喉科、内科)であった。一方、満足している回答者が少なかったのは、眼科(25%)、産婦人科(30%)、放射線科(31%)と続き、臨床研修医(37%)も満足できていない実態が明らかになった。また、年代別の満足度を見ると70代以上(59%)、40代(50%)、60代(49%)と続いた。1日の平均睡眠時間、6時間が最多 経済協力開発機構(OECD)が33ヵ国を対象に行った「1日の睡眠時間(睡眠に充てる時間)」に関する調査によると、日本人の睡眠時間は7時間22分と33ヵ国平均(8時間28分)と比較しても1時間以上短い。さらに「スタンフォード式 最高の睡眠」の著者である株式会社プレインスリープ創業者/最高研究顧問の西野 精治氏らが調査した日本人の平均睡眠時間は6時間43分と報告されている。これらを参考に、ここでは「睡眠時間5時間以下を睡眠時間が短い」と定義すると、本アンケート全体では4人に1人が睡眠不足であり、血液内科、総合診療科、麻酔科、小児科などが該当した。ただし、血液内科においては睡眠時間が短くても現状に満足していると回答している人が多く、睡眠時間が長い=満足、につながるわけではないことも言えるのではないだろうか。ちなみに、こちらも年代で見てみると、睡眠への満足度が高かった70代の3割超は5時間睡眠であった。医師が睡眠時に気になっていること 続いて「医師自身が睡眠時において気にしていること」を尋ねたところ、回答者の2/3が睡眠中の悩みを抱えており、最も多かったのは中途覚醒で、50代以上の回答が多かった。そのほか、いびき、入眠障害も年齢層問わず悩みの種として挙げられた。睡眠の質向上のため、マットレスや枕にこだわる 今回のアンケートでは医師が睡眠のためにこだわっている物事、活用している物も聞いてみた。その結果、枕と回答した人が最も多く(397人)、オススメ商品として「テンピュール」「じぶんまくら」を多数が挙げていた。次にマットレス/布団(317人)と回答した人が多く、「エアウィーヴ」「コアラマットレス」「シモンズ」などが選ばれていた。また、睡眠のために、「ヤクルト1000」などの乳酸菌飲料やサプリメントの摂取、就寝時間や食事時間など時間管理を挙げる人も多かった。 なお、厚生労働省は今年3月、睡眠について気になっているけれど対処法がわからずに悩んでいる人、肥満、高血圧、糖尿病などの疾患がある人を含む幅広い人を対象に作成された『良い目覚めは良い眠りから知っているようで知らない睡眠のこと』というパンフレットとともにその解説書を公開しており、患者への生活指導のみならず医師にも役立つツールなので、ぜひ参考にされたい。 このほか、医師の睡眠実態の詳細ほか、以下のアンケ―ト結果では医師が個人の見解でオススメする寝具、意識して取り入れている物の一覧も公開している。『医師の平均睡眠時間、睡眠への満足度は?』<アンケート概要>目的:睡眠が健康管理の重要なカテゴリーとして注目されていることから、多忙な医師の睡眠状況、睡眠に対する意識を調査した。対象:ケアネット会員医師 1,000人調査日:2023年8月24日方法:インターネット

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臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS

医学専門出版社がつくったしっかり学べるアートブック本書は、イユダエマさん(2021年大阪芸術大学デザイン学科グラフィックデザインコース卒業)による卒業制作作品「ORGAN ROOMS」をもとに制作したアートブックです。本作品は9つの臓器をそれぞれの部屋に見立ててその働きをわかりやすく表現したもので、大阪芸術大学卒業制作選抜展で公開された段階でも、医学的にかなり調べこんで制作されたものでした。単行本化にあたり、アートのよさを残しつつ、医学専門出版社として、より正しくわかりやすい表現にできないかと検討を重ねるとともに、アートブックとしてだけでなく、読み物としても楽しめるよう、臓器にまつわる豆知識を盛り込んでいます。なお、幅広い読者層を想定し、全ページにわたり振り仮名をつけています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS定価2,750円(税込)判型A4判頁数42頁発行2023年7月著者ORGAN ROOMS編集部(編・著)

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IgA腎症のメサンギウム領域に障害をもたらすIgA1は腸管由来が主体?(解説:浦信行氏)

 IgA腎症は糸球体メサンギウム領域を中心に、一部糸球体毛細血管係蹄にIgA1の有意な沈着を伴うメサンギウム増殖腎炎であり、最も頻度の高い原発性糸球体腎炎である。未治療で経過すると4割が末期腎不全に至る腎予後不良の疾患であり、病因解明に向けて多くの研究が行われているが、いまだにその病因の詳細は不明である。これまでは主に粘膜免疫異常がその病因候補として検討されてきた。 わが国では以前から上気道粘膜、とりわけ口蓋扁桃粘膜の関与が注目され、治療法として扁桃摘出+ステロイドパルス療法(扁摘パルス)が広範囲に行われ、その有効性が報告されている。早期介入では高率な寛解も一部の試験で報告されている。しかし欧米では扁摘パルスは必ずしも有効性は高くなく、ステロイドの副作用などの観点から推奨されていない。 欧米では、IgA腎症と炎症性腸疾患やセリアック病との合併例が多いことから、腸管における粘膜免疫異常が病因に関連する可能性が議論されてきた。Nefeconは、腸管作用型ステロイド薬のブデソニドが徐放されて腸管由来のIgA1の産生・放出を抑制する。今回のNefIgArd試験ではNefeconが著明な腎機能障害進行抑制作用を示した。また、eGFR低下が2.47mL/min/1.73m2にとどまっており、欧米における45歳以上の健康成人の年間のeGFRが約1mL/min/1.73m2であることから、とりわけ尿蛋白が1.5g/gCr未満の群では自然経過とほぼ変わりない。開始時eGFRでの層別解析でpoint of no remissionの解析や、地域差・人種差を考慮すると、アジア地区の解析もあればわが国にとってはより有益な情報となるであろう。有害事象に関しては、全身投与よりは頻度も程度も低値であろうが、ステロイドによると考えられるものがやはり主体である。

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在宅アルブミン尿スクリーニング、最適な方法は?/Lancet

 一般住民におけるアルブミン尿増加の在宅スクリーニングは、採尿器(UCD)法で参加率が高く、アルブミン尿高値ならびに慢性腎臓病(CKD)や心血管疾患のリスク因子を有する個人を正しく同定した。一方、スマートフォンのアプリケーションを用いる方法(スマホアプリ法)は、UCD法より参加率が低く、精密スクリーニングによる個人のリスク因子の正確な評価のためには検査の特異度が低かった。オランダ・フローニンゲン大学のDominique van Mil氏らが、前向き無作為化非盲検試験「Towards Home-based Albuminuria Screening:THOMAS試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「UCDスクリーニング戦略により、CKD患者の進行性腎機能低下と心血管疾患を予防するための早期の治療開始が可能となるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月16日号掲載の報告。45~80歳の一般住民を、UCD法とスマホアプリ法に無作為化 研究グループは、オランダ・ブレダ地区に居住する45~80歳の一般住民から無作為に抽出され本研究の参加に同意した人を、UCD法群またはスマホアプリ法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 UCD法群では、UCDで採取した尿サンプルを中央検査施設に送ってもらい、免疫比濁法による尿アルブミン/クレアチニン比(ACR)を測定した。スマホアプリ法群では、家庭用アルブミン尿スクリーニング自己検査キットを配布し、スマートフォンのアプリケーションを使用して自宅でディップスティックによるACR測定を行った。 いずれの群も、最初の検査でアルブミン尿高値(国際腎臓病ガイドライン機構[KDIGO]の分類でA2以上など)を認めた参加者には、2回目の検査キットを送付し、2回目の検査結果が陰性であった場合は、3回目の検査キットを送付した。2回目または3回目の検査が陽性だった参加者は、ブレダにあるAmphia HospitalでCKDと心血管リスク因子の精密スクリーニングを受け、高血圧、高コレステロール血症、2型糖尿病または腎機能障害などが発見された場合は、治療のために一般開業医に紹介された。 主要アウトカムは、在宅スクリーニングと精密スクリーニングの参加率と陽性率とした。また、探索的解析として、在宅スクリーニングの2つの方法の感度と特異度を評価することを事前に計画した。検査完了はUCD法群59.4%、スマホアプリ法群44.3%、検査の感度と特異度はUCD法で96.6%および97.3% 2019年11月14日~2021年3月19日の間に1万5,074例が登録され、7,552例(50.1%)がUCD法群、7,522例(49.9%)がスマホアプリ法群に割り付けられた。 在宅スクリーニングを完了した人(参加率)は、UCD法群で7,552例中4,484例(59.4%、95%信頼区間[CI]:58.3~60.5)、スマホアプリ法群で7,522例中3,336例(44.3%、43.2~45.5)であった(p<0.0001)。 そのうち、最終的にアルブミン尿陽性が確認された人(陽性率)は、UCD法群で4,484例中150例(3.3%、95%CI:2.9~3.9)、スマホアプリ法群で3,336例中171例(5.1%、4.4~5.9)であった。 精密スクリーニングには、UCD法群で150例中124例(82.7%、95%CI:75.8~87.9)、スマホアプリ法群で171例中142例(83.0%、76.7~87.9)が参加した。 ACR高値の検出感度は、UCD法で96.6%(95%CI:91.5~99.1)、スマホアプリ法で98.1%(89.9~99.9)、特異度はそれぞれ97.3%(95%CI:94.7~98.8)、67.9%(62.0~73.3)であり、UCD法のみ検査特性はスクリーニングに十分であることが示された。 精密スクリーニングを完了したUCD法群の124例のうち、アルブミン尿、高血圧、高コレステロール血症、腎機能低下が新たに診断されたのはそれぞれ77例(62.1%)、44例(35.5%)、30例(24.2%)、27例(21.8%)であり、111例(89.5%)が新たにCKDまたは心血管疾患等のリスク因子を有すると診断され、一般開業医に紹介された。

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IgA腎症、新規腸管作用型ステロイドが有効/Lancet

 IgA腎症患者において、ブデソニドの新規の腸管作用型経口剤であるNefeconは、9ヵ月間の治療でプラセボと比較し、臨床的に意義のあるeGFR低下および蛋白尿の持続的な減少をもたらし、忍容性も良好であった。米国・スタンフォード大学のRichard Lafayette氏らが、20ヵ国132施設で実施された2年間の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「NeflgArd試験」の結果を報告した。IgA腎症は、慢性免疫介在性腎疾患で腎不全の主な原因であり、発症機序には腸粘膜免疫システムが関与している。Nefeconは、ブデソニドが腸管で徐々に放出され腸粘膜で作用するようデザインされている。Lancet誌オンライン版2023年8月14日号掲載の報告。IgA腎症患者をNefecon群とプラセボ群に無作為化し9ヵ月間投与 研究グループは、2018年9月5日~2021年1月20日に、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬による最適な支持療法にもかかわらず、推算糸球体濾過量(eGFR)が35~90mL/分/1.73m2で、持続性蛋白尿(尿蛋白-クレアチニン比≧0.8g/gまたは尿蛋白≧1g/24時間)を呈する原発性IgA腎症成人患者(18歳以上)を、Nefecon群(16mg/日)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け9ヵ月間投与し、その後15ヵ月間(2週間の漸減期間を含む)を観察期間とした。最終追跡調査日は2023年2月6日である。 無作為化では、ベースラインの蛋白尿(<2または≧2g/24時間)、ベースラインのeGFR(<60または≧60mL/分/1.73m2)、および地域(アジア太平洋、欧州、北米、南米)を層別因子とした。また、全例に対して無作為化前の少なくとも3ヵ月間ならびに試験期間に、最適な支持療法が義務付けられた。 有効性の主要アウトカムは、2年間のeGFRの時間加重平均値とした。2年間の時間加重平均eGFR、Nefecon群で臨床的に意義のある改善 最大の解析対象集団は364例(各群182例)で、240例(66%)が男性、124例(34%)が女性、275例(76%)が白人であった。 2年間のeGFRの時間加重平均値の変化量は、Nefecon群-2.47mL/分/1.73m2(95%信頼区間[CI]:-3.88~-1.02)、プラセボ群-7.52mL/分/1.73m2(-8.83~-6.18)、群間差は5.05mL/分/1.73m2(95%CI:3.24~7.38、p<0.0001)であり、プラセボ群に対してNefecon群で統計学的に有意な治療効果が認められた。 Nefeconで治療中の主な有害事象は、末梢性浮腫(31例[17%]vs.プラセボ群7例[4%])、高血圧症(22例[12%]vs.6例[3%])、筋痙攣(22例[12%]vs.7例[4%])、ざ瘡(20例[11%]vs.2例[1%])、頭痛(19例[10%]vs.14例[8%])であった。治療に関連した死亡例の報告はなかった。

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血尿診断ガイドライン2023

2013年版から10年ぶりの大幅改訂!血尿の原因疾患を診断する「血尿診断アルゴリズム」を提示わが国では母子保健法、学校保健法、労働安全衛生法、老人保健法などにより、生涯にわたり検尿を受けることが可能。こうした検尿での異常所見(潜血)が契機となって重篤な腎疾患や泌尿器疾患が発見されることも少なくない。本書は潜血が認められた患者における、血尿のタイプの判定と原因疾患の診断のためのガイドラインで、血尿の原因疾患を診断するための手順を初めて詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示。また、ワクチン接種後の血尿例の報告を受けて、最終章で「新型コロナワクチンと血尿」について解説している。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    血尿診断ガイドライン2023定価3,080円(税込)判型A4判頁数80頁発行2023年6月編集血尿診断ガイドライン改訂委員会Amazonでご購入の場合はこちら

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2【「実践的」臨床研究入門】第35回

P(対象)をより具体的で明確なものにする今回は前回に引き続き、P(対象)を設定する際の要点について解説します。Pを設定する際、PがResearch Question(RQ)で設定したO(アウトカム)のat risk集団(Oを発生する可能性のある集団)であることも、押さえるべきポイントです。前述のとおり(連載第34回参照)、プライマリのOは末期腎不全(透析導入)と設定しました。したがって、すでに末期腎不全に至り、透析導入(もしくは腎臓移植)された患者さんはat risk 集団にならず、除外されることになります。できればPは設定したOを起こしやすい集団とするのもコツのひとつです。なぜなら、Oを発症しやすい集団を対象とした方が研究の「効率が良い」からです。ここで言う「効率が良い」の意味は、より少ないサンプル数や短い観察期間で興味のあるOの発生数を確保することができる、ということです。その結果、研究の実施可能性や統計的な検出力が高まります。筆者が米国留学以来関わっている、DOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)という血液透析患者さんを対象とした国際的な臨床疫学研究があります。血液透析患者さんは健常人と較べて、死亡や心血管イベント発症などハードエンドポイント(連載第3回参照)を起こすリスクがかなり高い集団です。ハイリスクな血液透析患者集団の中でも、その予後には国際間で大きな差があることが知られています。日本の血液透析患者さんの予後は、米国の患者さんのそれより圧倒的に良好なことが、DOPPSなどの研究成果から示されています。米国留学中にご指導頂いていたミシガン大学の腎臓内科と臨床疫学の名誉教授であるFK Port先生が、"US data are bad for patients but good for statistical analysis."と日本から来た筆者に自虐的に? おっしゃっていたことを覚えています。また、「研究対象集団」のデータ取得の場である「セッティング」についてキチンと明記することも重要です(連載第34回参照)。われわれのRQの「標的母集団」は慢性腎臓病(CKD)集団全体です。しかし、本研究で実際に診療データにアクセスできるのは自施設の外来に通院中の患者のみであったとすると、「セッテイング」は単施設外来ということになります。単施設の「セッテイング」で行われた臨床研究では、その施設の特性やそこに通院する患者背景などの偏り(選択バイアス)が結果に影響を及ぼす可能性があります(連載第34回参照)。ちなみに、このような「選択バイアス」の影響を出来るだけ減らすために、DOPPSでは「2段階無作為抽出法」というサンプリング手法がとられています。第1段階として、研究施設を所在地や経営母体(公立・私立など)、施設規模(患者数)を考慮して無作為に抽出。第2段階で、施設規模に合わせて研究対象患者を施設毎に無作為抽出。このようなサンプリング手法を用いることにより、「研究対象集団」の代表性を担保しているのです。さて、ここで、われわれのRQのPをあらためて以下のように整理してみました。P(対象):慢性腎臓病(CKD)患者組み入れ基準診療ガイドライン1)で定義されるCKD患者除外基準  ネフローゼ症候群、透析導入(または腎移植)された患者S(セッティング):単施設外来このように組み入れ基準、除外基準、セッテイングも含めて、Pをより具体的で明確なものにします。そうすることにより、研究結果の解釈が容易となり、またその研究結果を他の状況に適用する際の判断もしやすくなるのです。1)日本腎臓学会編集. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社;2023.

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カラダワンダーランド、子供たちに医学視点を

医学専門出版社のメディカルレビュー社は、フジテレビジョン主催で4年ぶりの開催となるお台場冒険王2023に「ORGAN ROOMS カラダワンダーランド」を出展した。これは人々の健康維持・予防に取り組む社会を目指す啓発活動・寄付活動「ORGAN ROOMS PROJECT」の一環であり、出展ブースは子供たちが自分の身体の仕組みに興味をもってもらうことを目指したもの。フジテレビ本社屋1階フジテレビモールに8月27日(日)まで出展している。3つの臓器を体感できるORGAN ROOMS カラダワンダーランドには脳・心臓・肺の3つのエリアが設けられ、各臓器をイメージしたゲーム(のぞいてみよう!のうウォッチング、歩いて走って!心臓ゲーム、吸って吐いて!はいゲーム)ができる。このほか、9つの臓器スタンプを集めてカラダを完成させるコーナー、大人も知っておきたい“体のトリビア”が書かれている外壁など、随所に工夫が散りばめられており、子供だけではなく大人も楽しめる。来場時間によっては公式キャラクター「のうポン」とも一緒に記念撮影ができる。また、本ブースではのうポンなどのグッズを販売しており、その売上の一部は、病気と向き合う子供たちの医療、生活環境のサポートのための寄付に役立てる。寄付先は一般社団法人 日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)会員施設の38施設をはじめ、小児医療に携わる病院に行う予定だ。プロジェクトは一冊の本との出会いからこのプロジェクトの発端となった「ORGAN ROOMS」はイユダエマ氏(大阪芸術大学デザイン学科グラフィックデザインコース卒)が卒業制作で制作し、学長賞を受賞した作品だ。実際には9つの臓器をデザインしているが、今回の体験ブースには、とくに子供たちに知ってほしい臓器(脳、心臓、肺)をピックアップしている。イユダエマ氏は本インタビューに対し以下のように回答している。-なぜ、身体をテーマにしようと思ったのでしょうか?もともと理科の授業が好きだったこと、コロナの影響で健康や人体というものをみつめ直すことで興味を持ったからです。そして、自分の理科のノートに描いてあった人体図の進化系を作ってみたかったんです。また、人体は一番身近なものにも関わらず、その働きが目に見えないので、それを目に見える形に表現したいと思ったこともきっかけです。-このようなデザインを思いついたきっかけを教えてください大学の講義中に紹介された“内経図”(内丹術の修煉過程を象徴的身体として表現した図)が発想のきっかけです。一見、山のように見えるのですが実は座する身体の側面図にもなっています。おそらく、体内の気の流れを環境に見立てて表現しているのではないでしょうか。この表現方法はおもしろいなと思い、われわれにとって身近でもっとわかりやすい“部屋”で見立てて表現してみたらどうか? と思いました。-今後も医学や身体をテーマにした創作活動を続けられますか?機会があれば、ほかのシリーズを作ってみたいなと思います。高校の生物の授業で苦戦したホルモンのインフォグラフィックスにも挑戦してみたいですね。本書を通じて自分の体に興味を持ち、学びや将来の道を決めるきっかけを与えられたらと思います。いつか、多言語で翻訳されて世界中の人たちに見てもらえれば最高ですね。現在、書籍「臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS」が全国の各書店で販売されており、本ブース内での販売も行っている。キャラクターはポケモンのデザイナーが担当本プロジェクトの公式キャラクター「からだっポン」の世界観やキャラクター設定を担当したのは、うたの☆プリンスさまっ♪などの企画・開発経験のある関 彩絵子氏。「からだっポンを通して子供たちに ”自分のからだ” に興味を持ってもらい、予防医療について楽しく知ってほしいと考えた。今回、にしだあつこさんのデザインの魅力がベースにあり、からだっポンたちの設定に、知れば知るほどクスっと笑える魅力を散りばめたので、感じてもらえたらとても嬉しい」と本稿に言葉を寄せた。また、関氏が手掛けた世界観に沿ってキャラクターデザインを担当したのは、にしだ あつこ氏。にしだ氏はこれまでにピカチュウをはじめ、さまざまな人気ポケモンのデザインを担当してきたそう。写真に登場するのうポンこと脳のキャラクター誕生について、「キャラクターを通じて、体のことに興味を持ってもらえるようシンプルでわかりやすく、愛着の湧くようなデザインを目指し作成した。たとえば、のうポンは、真面目でしっかりものの先生タイプだと思う」とし、「からだっポンたちを通じて、医療者と患者さんとのコミュニケーションが取りやすくなると良いなと思っている」とコメントした。子供自身が健康を意識するためにプロジェクト代表の松岡 武志氏(メディカルレビュー社 代表取締役社長)は、「予防医療」「病気と向き合う子供たちへの包括的なサポート」を社会課題に挙げており、これらの啓発・寄付を目的とした「ORGAN ROOMS PROJECT」を立ち上げたが、医療者の賛同も不可欠である。賛同者の一人で国立成育医療研究センター理事長の五十嵐 隆氏は本プロジェクトに対し、「子供が自分の体の仕組みを正しく理解することは“身体”の健康を目指すうえで不可欠なだけではなく、“身体”と“心理”あるいは“社会”との相互作用について理解することにもつながる」とメッセージを寄せている。メディカルレビュー社広報担当者によると「身体の仕組みを知る、たとえば、お腹いっぱいになると体内でどんなことが起こるのかなどを理解することで、自身の身体の変化や違和感などを大人に伝えられるようになることも重要だと考える。今回は本プロジェクトのキックオフに過ぎず、これからの活動が要となるが、将来的にはデジタル絵本を作成し、小児病棟などで身体と病気に関する啓発活動を行っていきたい」と今後の方向性を説明した。参考ORGAN ROOMS PROJECTメディカルレビュー社:臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMSフジテレビジョン:お台場冒険王

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1【「実践的」臨床研究入門】第34回

今回からは、Research Question(RQ)を構成する、P(対象)、E(曝露要因)、C(比較対照)、O(アウトカム)、それぞれの要素をより具体的かつ明確なカタチに設定するための要点と実際について解説していきます。下記に、これまでにブラッシュアップしてきた、われわれのClinical Question(CQ)とRQ、PECOを再掲します。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうかP(対象):非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E(曝露要因):食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C(比較対照):食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O(アウトカム):1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度「標的母集団」と「研究対象集団」、「解析対象集団」まず、Pを設定するうえでの最初のポイントとして、「標的母集団」と「研究対象集団」、「解析対象集団」の違いについて解説します。われわれのRQのPとなるCKDは、日本腎臓学会の診療ガイドライン1)で以下のように定義(抜粋)されています。(1)尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかで、とくに蛋白尿の存在が重要(2)GFR<60mL/分/1.73m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続する「標的母集団」とは自身のRQが対象とし、その研究結果を一般化しようとする集団全体です。上記の定義を用いることにより、このRQの「標的母集団」の概念を明確にし、Pの具体的な「組み入れ基準」をはっきり示すことができそうです。ただ、実際の「研究対象集団」というのは、「標的母集団」の一部をサンプリングして代用したものにすぎません。たとえば、われわれが行ったCKD患者の腎予後予測モデルの研究2)では、日本全国の腎臓内科のある17ヵ所の大規模病院から患者登録を行いました。その結果、この研究の「研究対象集団」は、腎臓内科に紹介されていないCKD患者を含んでいません。このような偏りを「選択バイアス」と言い、研究の「外的妥当性」を損なう原因になりえます。「外的妥当性」とは、得られた研究結果を行われた「研究対象集団」とは異なるサンプルや「セッティング」(「研究対象集団」のサンプリングが行われた場)にも当てはめることができるか、ということです(「一般化可能性」とも言います)。われわれは、本研究の結果は腎臓内科医がいない小規模病院やクリニックで診療されているCKD患者には適用することが難しい可能性を、研究の限界の1つとしてこの論文1)のディスカッションの項で述べました。「外的妥当性」に対し、「内的妥当性」という用語もありますが、こちらは研究の結論(研究結果からの推論)の「研究対象集団」での当てはまりのよさ、を表します。研究対象には「除外基準」を設定することが多くあります。前述の研究2)では、予後が大きく異なるであろう治療中の悪性腫瘍を併発している患者などは除外しました。本稿のRQでも関連研究レビューの結果から、ネフローゼ症候群はPから除外するとにしました(連載第11回参照)。また、研究参加への同意が撤回されたり、追跡が不能になった患者も除外されます。このように「研究対象集団」から除外基準に合致する患者だけでなく、種々の事由で除かれて、実際の解析に用いられたサンプルを「解析対象集団」と言います。ただ、「除外基準」をあまり多く設けすぎると、「標的母集団」、「研究対象集団」と「解析対象集団」の乖離が大きくなり、「外的妥当性」が低くなってしまいます。論文ではフローチャートなども用いて、これらを明確に区別して記述することが、観察研究の報告ガイドラインであるSTROBE声明3)でも推奨されています。フローチャートの具体例については引用文献2のFigure 1.もご参照ください。1)日本腎臓学会編集. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社;2018.2)Hasegawa T, et al. Clin Exp Nephrol. 2019;23:189-198.3)von Elm E, et al. Lancet. 2007;370:1453-1457.

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わが国のオンラインHDFの現況(解説:浦信行氏)

 つい先日のNEJM誌オンライン版(2023年6月16日号)に、欧州における多施設共同研究であるCONVINCE研究の結果が報告された。その結果は、従来のハイフラックス膜の血液透析(HFHD)に比較して、大量置換液使用のオンライン血液透析濾過(HDF)は全死亡を有意に23%減少させたと報告された。それまでの両者の比較はローフラックスHDとの比較が多く、またHFHDとの比較では一部の報告では有意性を示すが、有意性がサブクラスにとどまるものも見られていた。また、置換液量(濾過量+除水量:CV)の事前設定がなされておらず、階層分析で大きなCVが確保できた症例の予後が良好であった可能性も報告され、患者の病状によるバイアスが否定できなかった。本研究においては目標CVが23±1Lと定められ、患者背景にも群間に差はなかった。そのうえでの予後の改善の報告は大変意義の大きいものである。 わが国では2012年にようやくオフラインと区別され、オンラインHDFが保険診療上認められた。その後は増加の一途をたどり、2021年末には12万人を超える患者で施行されている。全透析人口が35万人であることから、わが国においては標準的血液浄化法となりつつある。 しかし、置換液補充がヘモダイアフィルターの後の後希釈方式である欧米と大きく違い、わが国では前希釈方式であり、後希釈方式は5%前後にとどまる。各々に利点はあるが、このような違いの要因の一部は患者背景の違いが関与すると考えられる。わが国では肥満の透析患者は少ないが、この研究ではBMIが27.4±5.6とわが国の軽度肥満に該当する体格である。また、後希釈方式でCV23Lを得るには大量の血流量を必要とし、この研究では369±54mL/minで行っているが、わが国では体格差と関連して後希釈方式では200~260mL/min程度が8割を占める。したがって、後希釈方式でCVが20Lを超えるものは1割に満たない。 前希釈方式の利点はαミクログロブリン除去に優れ、骨・関節痛やレストレスレッグ症候群への効果に優れるが、生命予後に関しては日本透析医学会のデータベースで2012年末から1年間でHD群を対照に検討し、HDおよびCV40L未満の前希釈方式HDFに比較して、CV40L以上の前希釈方式HDFの生命予後が優れていたと報告されている。新たに前向き研究でHFHDもしくは後希釈方式HDFとの生命予後を比較した研究が望まれる。

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『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』改訂のポイント/日本腎臓学会

 6月9日~11日に開催された第66回日本腎臓学会学術総会で、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』が発表された。ガイドラインの改訂に伴い、「ここが変わった!CKD診療ガイドライン2023」と題して6名の演者より各章の改訂ポイントが語られた。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」第1~3章の改訂ポイント第1章 CKD診断とその臨床的意義/小杉 智規氏(名古屋大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)・実臨床ではeGFR 5mL/分/1.73m2程度で透析が導入されていることから、CKD(慢性腎臓病)ステージG5※の定義が「末期腎不全(ESKD)」から「高度低下~末期腎不全」へ変更された。・国際的に用いられているeGFRの推算式(MDRD式、CKD-EPI式)と区別するため、日本人におけるeGFRの推算式は「JSN eGFR」と表記する。・一定の腎機能低下(1~3年間で血清Cr値の倍化、eGFR 40%もしくは30%の低下)や、5.0mL/分/1.73m2/年を超えるeGFRの低下はCKDの進行、予後予測因子となる。※GFR<15mL/分/1.73m2第2章 高血圧・CVD(心不全)/中川 直樹氏(旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野)・蛋白尿のある糖尿病合併CKD患者においては、ACE阻害薬/ARBの腎保護に関するエビデンスが存在するが、蛋白尿のないCKD患者においては、糖尿病合併の有無にかかわらず、ACE阻害薬/ARBの優位性を示す十分なエビデンスがない。したがって、ACE阻害薬/ARBの投与は糖尿病合併の有無ではなく、蛋白尿の有無を参考に検討する。・CKDステージG4※、G5における心不全治療薬の推奨クラスおよびエビデンスレベルが『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では次のとおり明記された。ACE阻害薬/ARB:2C、β遮断薬:2B、MRA:なしC、SGLT2阻害薬:2C、ARNI:2C、イバブラジン:なしD。※eGFR 15~29mL/分/1.73m2第3章 高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症/大島 恵氏(金沢大学大学院 腎臓内科学)・2018年版では「腎硬化症・腎動脈狭窄症」としていたが、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では「高血圧性腎硬化症・腎動脈狭窄症」としている。高血圧性腎硬化症とは、持続した高血圧により生じた腎臓の病変である。・片側性腎動脈狭窄を伴うCKDに対する降圧薬として、RA系阻害薬はそのほかの降圧薬に比べて末期腎不全への進展、死亡リスクを抑制する可能性がある。ただし、急性腎障害発症のリスクがあるため注意が必要である。・動脈硬化性腎動脈狭窄症を伴うCKDに対しては、合併症のリスクを考慮し、血行再建術は一般的には行わない。ただし、治療抵抗性高血圧などを伴う場合には考慮してもよい。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」で腎性貧血を伴う患者のHb目標値が改定第4章 糖尿病性腎臓病/和田 淳氏(岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学)・尿アルブミンが増加すると末期腎不全・透析導入のリスクが有意に増加することから、糖尿病性腎臓病(DKD)患者では定期的な尿アルブミン測定が強く推奨される。・DKDの進展予防という観点では、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬の使用について十分なエビデンスはない。体液過剰が示唆されるDKD患者ではループ利尿薬、尿アルブミンの改善が必要なDKD患者ではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が推奨される。・糖尿病患者においては、DKDの発症、アルブミン尿の進行抑制が期待されるため集約的治療が推奨される。・DKD患者に対しては、腎予後の改善と心血管疾患発症抑制が期待されるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。第9章 腎性貧血/田中 哲洋氏(東北大学大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌内科学分野)・PREDICT試験、RADIANCE-CKD Studyの結果を踏まえて、腎性貧血を伴うCKD患者での赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療における適切なHb目標値が改定された。『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、Hb13g/dL以上を目指さないこと、目標Hbの下限値は10g/dLを目安とし、個々の症例のQOLや背景因子、病態に応じて判断することが提案されている。・「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation(2020年9月29日版)」に関する記載が追記された。2022年11月、ロキサデュスタットの添付文書が改訂され、重要な基本的注意および重大な副作用として中枢性甲状腺機能低下症が追加されたことから、本剤投与中は定期的に甲状腺機能検査を行うなどの注意が必要である。第11章 薬物治療/深水 圭氏(久留米大学医学部 内科学講座腎臓内科部門)・球形吸着炭は末期腎不全への進展、死亡の抑制効果について明確ではないが、とくにCKDステージが進行する前の症例では、腎機能低下速度を遅延させる可能性がある。・代謝性アシドーシスを伴うCKDステージG3※~G5の患者では、炭酸水素ナトリウム投与により腎機能低下を抑制できる可能性があるが、浮腫悪化には注意が必要である。・糖尿病非合併のCKD患者において、蛋白尿を有する場合、腎機能低下の進展抑制、心血管疾患イベントおよび死亡の発生抑制が期待できるため、SGLT2阻害薬の投与が推奨される。・CKDステージG4、G5の患者では、RA系阻害薬の中止により生命予後を悪化させる可能性があることから、使用中のRA系阻害薬を一律には中止しないことが提案されている。※eGFR 30~59mL/分/1.73m2 なお、同学会から、より実臨床に即したガイドラインとして、「CKD診療ガイド2024」が発刊される予定である。

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話題のマイナ保険証、機器の設置率やトラブル報告は?/1,000人アンケート

 皆さんの施設ではマイナ保険証の利用で困った事例はないだろうか? ある報道によると、オンライン資格確認の導入施設の65%以上1)で何らかのトラブルが発生しているという。そこで今回、ケアネット会員のうち、20床未満の施設を経営/勤務する医師1,000人の実情を伺うべく「マイナ保険証で困っていること」についてアンケートを実施した。カードリーダーの設置率、昨年10月から40ポイント上昇 昨年10月、マイナ保険証が本格導入した際にもケアネットでは『マイナ保険証への対応』についてアンケートを実施しており、前回に続き今回も「マイナンバーカードの取得と保険証への連携手続き」「カードリーダーの設置状況」に関する調査を行った。昨年10月と今回の調査を比較した各変化率は以下のとおり。●マイナンバーカードの取得と保険証への連携手続き・マイナンバーカードを取得している:59% → 76%(+17ポイント)・取得しており、連携手続きを終えた:33% → 60%・取得しており、これから手続き予定:26% → 16%●カードリーダーの設置状況・対応済:20% → 60%(+40ポイント)・対応準備中:35% → 18%・未設置※:45% → 22% ※様子をみて検討する・迷っている、その他、対応予定はない、を含む最も困るトラブルは「システム関連」 設置義務が課されていることから、上記の結果にも反映されているようにこの半年で設置状況も変わりつつあるようだが、設置施設が増え、利用者が増えれば必然的にトラブルに見舞われる割合も増えるだろう。では、実際にどのようなトラブルが多いのかを調べたところ、「システム関連」が最も多く、「患者説明/窓口対応の負担」「登録情報の不備」とつづいた。また、トラブルが生じている施設の約4割で診療にも影響が生じているということが明らかになった。<カードリーダー設置後に困っていること>・顔認証エラー多発(50代・内科)・資格確認で該当なしがよくある(60代・内科)・リーダーが動かないとレセコン、レントゲンすべてが止まる(50代・内科)・マイナ保険証使用中はほかのシステムが使えない(30代・腎臓内科)・マイナカードリーダーの読み込みが遅い(50代・整形外科)・保険証が変更になっていてもひも付けがすぐにされていないことがある(40代・皮膚科)・勤務先変更により保険証も変更しているにもかかわらず、勤務先の手続きが滞っているためにマイナ保険証へタイムリーに反映されていない(50代・皮膚科)・本人しか取得することができず、介護の必要な家族が取得するのは難しい(50代・内科)・オンライン診療でマイナ保険証が使えない(60代・脳神経外科)・発熱外来でドライブスルー利用の患者さんがマイナ保険証を利用できない(40代・内科)・管理業務の負担が増える。保守費用が増える。マイナ保険証のほうが再診の保険証の確認により多くの時間がかかる(40代・糖尿病/代謝・内分泌科)・回線設置・セキュリティー対応を含むランニングコストで月5万円の負担を強いられる(50代・循環器内科) このほか、アンケートの詳細やマイナ保険証に関する意見などは以下のページで公開されている。『マイナ保険証の対応、困っていることは?』<アンケート概要>目的:利用可能な医療機関の65%でシステム上のトラブルを経験している(全国保険医団体連合会の最終集計結果より)と報道があったことから、会員医師の状況を確認した。対象:病床数20床未満のケアネット会員医師 1,000人調査日:2023年6月23日方法:インターネット

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リアルワールドエビデンス、高カリウム血症が心腎疾患患者の転帰におよぼす影響/AZ

 AstraZeneca(英国、CEO:Pascal Soriot氏)は、同社のリアルワールドエビデンス(RWE)に基づくZORA研究(以下、本研究)の解析から、高カリウム血症を発症している患者において、レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系阻害薬(RAASi)の投与量減量または中止による影響が示されたと発表した。 イタリアのミラノで開催された欧州腎臓学会(ERA)2023総会で発表された本研究の解析の1つより、慢性腎臓病(CKD)および/または心不全(HF)を患う心腎疾患患者におけるRAASi治療の継続を提案する複数のガイドラインがある一方で、米国および日本の臨床現場では、高カリウム血症発症後にRAASi治療の中止が依然行われていることが示された。また、RAASi治療を中止した患者のうち、6ヵ月以内に再開した割合は、米国では10~15%、日本では6~8%で、RAASi治療を再開した少ない患者の中で、米国および日本ともにその17~37%の患者において投与量が25%を超えて減量されていた。 本研究における別の解析では、スウェーデン(6,998例)と日本(2,092例)の心腎疾患患者において、高カリウム血症発症後にRAASi治療を中断した場合、発症から6ヵ月までと発症の6ヵ月前までを比べると、スウェーデンでは18.2日、日本では17.9日、全原因の入院日数が増加することが明らかになった。一方、高カリウム血症発症から6ヵ月後までRAASi治療を維持した患者の入院日数の増加は、スウェーデンと日本でそれぞれ9.4日と8.5日であり、CKDおよびHF関連の原因による入院日数についても同様の傾向が観察された。 今回発表された2つの解析は、BMC Nephrology誌に掲載された本研究結果に基づいており、この論文では米国および日本のCKDまたはHF患者において、高カリウム血症に関連してRAASi治療を中止または漸減した患者では、RAASi治療を維持または漸増した患者と比較して、心腎イベントのリスクが高いことが明らかになった。 UCLA Healthの腎臓内科主任であるAnjay Rastogi氏は、「心腎疾患患者には、心疾患のリスクや入院率の上昇につながる高カリウム血症の管理という深刻なアンメットニーズがある。今回発表されたリアルワールドデータにより、心腎疾患患者においてRAASi治療がガイドラインで推奨されているにもかかわらず、高カリウム血症の発症によって投与量の減量が一般的に行われていることが示された。ガイドラインに基づいてRAASi治療を受けているCKDやHFの患者において、とくに、この慢性病態をよりよく管理できる可能性のあるカリウム吸着薬などの治療選択肢がある場合には、高カリウム血症の発症によってRAASi治療が妨げられるべきではない」と述べた。 また、同社のエグゼクティブバイスプレジデント兼バイオファーマビジネスユニットの責任者であるRuud Dobber氏は、「ガイドラインに沿ったRAASi治療を行わなかった場合、心腎疾患患者の転帰に影響をもたらす可能性がある。しかし、今回の知見は、これらの患者が高カリウム血症の発症によってRAASi治療を中止した場合、RAASi治療を再開することはまれであり、再開を可能にするためには高カリウム血症管理におけるプラクティスチェンジが急務であることを浮き彫りにしている。私たちは、高カリウム血症に対する治療を通じてこの疾患を改善し、よりよく心腎保護の機会を患者に届けられるよう、一層広く医療従事者と協力していく」としている。

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腎不全死亡、オンラインHDFが従来血液透析よりリスク低下/NEJM

 腎不全患者において、大量血液透析濾過(high-dose hemodiafiltration with on-line production:オンラインHDF)は従来のハイフラックス膜を使用した血液透析(HFHD)と比較して、全死因死亡リスクを低下することが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のPeter J. Blankestijn氏らが欧州8ヵ国の61施設で実施した実用的な無作為化比較試験「CONVINCE研究」の結果を報告した。いくつかの研究で、腎不全患者では標準的な血液透析と比較し、オンラインHDFが有用である可能性が示唆されているが、発表されている研究には限界があり追加データが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。3ヵ月以上HFHDを受けている患者を、継続群またはオンラインHDF群に無作為化 研究グループは、HFHDを3ヵ月以上受けていたオンラインHDF(後希釈HDFで置換液量23L以上)の候補者で、週3回の透析を受ける意思があり、患者報告アウトカム評価を完了することが可能と判断された18歳以上の成人患者を、HFHDの継続(従来透析)群とオンラインHDF群に無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、全死因死亡。副次アウトカムは、死因別死亡、致死的または非致死的心血管イベントの複合、腎移植、あらゆる原因の再入院または感染症関連の再入院であった。全死因死亡率、オンラインHDF群17.3% vs.継続群21.9% 2018年11月~2021年4月に、合計1,360例が無作為化された(オンラインHDF群683例、継続群677例)。追跡期間中央値は30ヵ月(四分位範囲[IQR]:27~38)。オンラインHDF群において、1セッション当たりの置換液量23±1Lを達成した患者は92%で、平均置換液量は25.3Lであった。 主要アウトカムの全死因死亡は、オンラインHDF群で118例(17.3%)、継続群で148例(21.9%)に発生し、ハザード比(HR)は0.77(95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、p=0.005)であった。 心血管イベントによる死亡リスク(HR:0.81、95%CI:0.49~1.33)、致死的または非致死的心血管イベントの複合死亡リスク(1.07、0.86~1.33)は、両群で同等であった。

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CKD-MBDガイドライン改訂に向けたデータの吟味/日本透析医学会

 日本透析医学会による慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドラインが発表されてから10年以上が経過し、これまでに多くのデータが蓄積されてきた。そのデータを吟味し、今後のガイドラインのアップデートにつなげる目的として、2023年6月16日、日本透析医学会学術集会・総会のシンポジウム1「CKD-MBDガイドライン改訂に必要なデータを吟味する」にて、8名の医師からその方向性に関する報告と提案があった。血液透析患者における血清リン、カルシウム濃度の目標値の上限 日本透析医学会の統計調査データによる観察研究の結果を基に、血液透析患者における血清リン、カルシウムの管理について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。同氏は、「血清リンの下限は3.5mg/dLのまま、上限は現状の6.0mg/dLよりも少し厳しく管理することが望ましい。血清カルシウムも下限は現状の8.4mg/dLは必要であり、上限については10.0mg/dLのままでよいか、より厳しくしていく必要があるか、さらなる検討が必要である」と述べた。CKD-MBDガイドラインが発表されてから多くのリン吸着薬が登場 2012年にCKD-MBDガイドラインが発表されてから多くのリン吸着薬が登場し、実臨床で使用されている。その多彩なリン吸着薬をどのように使い分けていくべきか、ネットワークメタ解析による結果を基に山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)から提案があった。解析の結果、カルシウム含有リン吸着薬と比較して、塩酸セベラマーは総死亡リスクが有意に低下し、炭酸ランタンは冠動脈の石灰化が有意に低下した。心血管死亡リスクではリン吸着薬間で有意差は認められなかった。また、消化器症状のリスクは、ニコチン酸アミド、鉄含有リン吸着薬、塩酸セベラマー、炭酸ランタンの順で高くなっていた。この結果を踏まえて同氏は、エビデンスに基づいて薬剤を選択することはもちろん重要だが、日本人の特徴を考慮して、患者背景に即した自由な選択、個々の薬剤の特性を活かした選択を検討する必要があり、その参考指標を改訂時に公表できるよう準備を進めていくと述べた。インタクトPTH 240pg/mL以上で総死亡や心血管死亡リスクが上昇 わが国のPTHの管理目標値は、インタクトPTH60~240pg/mLと、海外と比較して厳格な設定となっている。ガイドラインの改訂に向けて、海外の基準値に合わせるべきか、より厳格な目標値を設定すべきか、日本透析医学会の統計調査データを基に、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科)からPTHと生命予後、骨折リスクとの関連について報告があった。生命予後の観点ではインタクトPTH 240pg/mL以上で総死亡や心血管死亡リスクが上昇、インタクトPTHを下げ過ぎることによるこれらのリスクは確認されなかった。一方、骨折リスクは死亡リスクよりも頻度は高く、PTHが高くなるほど、あらゆる骨折と大腿骨近位部骨折のリスクが上昇していた。高齢や低栄養、女性においてその傾向が強く、「骨折防止の観点でもPTHの管理はthe lower, the better?」とコメント。新しいPTHの管理目標をどのように設定すべきか、同氏は「生命予後の観点ではPTHの管理目標値の上限は240pg/mLとなるかもしれないが、骨折防止の観点ではより厳格なPTHの管理を目指すべきかもしれない。また、患者の背景を考慮して、個々に検討する必要がある」と述べた。 CKD・透析患者の骨の評価では、骨代謝マーカーにも注目 腎機能低下に伴って大腿部骨折のリスク増加に関しては、多くの観察研究で報告されており、CKDや透析患者において骨の評価・管理は重要な要素である。骨の評価について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)から骨脆弱性と骨密度に加えて骨代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)も一緒に評価すべきと提案があった。ALPと骨折リスクの相関性をみた報告によると、インタクトPTHを十分に抑えた状況でもALPが高いと大腿部頸部骨折のリスクが高くなっていることが報告されており1)、「ALPも骨の評価の予後規定因子として考えるべき」とコメント。一方、骨の管理に関してはPTH管理のポイントとして駒場氏の報告でもあった「the lower, the better?」を採用し、適切に管理したうえで骨粗鬆症治療薬の使用を考慮し、薬剤選択は標準治療に準じて検討するように提案された。今後に向けて、同氏は他領域の医師にも骨粗鬆症治療薬によるリスクを認識してもらえるようヒートマップを活用した薬剤別の表の作成や、骨密度上昇効果と骨折予防効果を明確に分けて、エビデンスレベルがどの程度まであるか示したプラクティスポイントを調整中であると述べた。腹膜透析におけるCKD-MBDによる死亡リスクとは 血液透析ではカルシウム、リン、PTHと死亡リスクに関する報告はあるものの、腹膜透析に限定した報告は存在しない。日本透析医学会の統計調査のデータベースを用いた前向きコホート研究の結果から、カルシウム、リン、PTHを可能な限り低めに保つことで全死亡や心血管死亡などのアウトカムの改善につながる可能性があることがわかった。この結果に対して、村島 美穂氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科)は、「目標値の下限でコントロールすることを提案していきたい」とコメント。また、カルシミメティクスの投与に関して、残腎機能に注意を払う必要があると述べた。移植患者のCKD-MBDの管理とは 移植後のビスフォスフォネートや活性型ビタミンD製剤の効果、移植後を見据えた移植前のCKD-MBDの管理、移植後のCKD-MBDの管理について、河原崎 宏雄氏(帝京大学医学部附属溝口病院 第4内科)からシステマティック・レビューの紹介があった。同氏は、「ビスフォスフォネートでは骨折予防、活性型ビタミンD製剤ではPTH抑制に対して効果があるかもしれない。移植前のCKD-MBDでは、透析期間が長い、副甲状腺腫が大きい、シナカルセトの使用、移植前にカルシウムやPTHが高い場合には副甲状腺摘出術(PTx)を検討すること。そして、移植後のCKD-MBDでは高カルシウム血症に対してPTxやカルシミメティクスを検討すること」と述べた。CKD-MBDガイドラインに保存期における治療の開始時期 保存期CKDにおけるCKD-MBD治療の開始タイミングに関して、ガイドラインのClinical Questionに答えるための十分なエビデンスが存在しない状況にある。新しいCKD-MBDガイドラインの方向性について、藤井 直彦氏(兵庫県立西宮病院 腎臓内科)は、「保存期CKD患者における低カルシウム血症、高リン血症、高PTH血症のデータに注目し、CKD-MBD治療をどのタイミングで開始すればよいのか、アプローチ方法について検討中である」とコメント。保存期からカルシウム、リン、PTHを測定する目安をまとめたフローについても準備を進めていると述べた。小児におけるCKD-MBDの現状とは 日本透析医学会の統計調査データを基に小児腎不全患者におけるCKD-MBDの指標と成長、生命予後との関連について、今泉 貴広氏(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)から報告があった。小児腎不全患者はPTHの増加に伴い成長が鈍化する傾向にあり、カルシウム、リン、PTHのいずれも生存との関連はなかった。同氏は、「現在、ガイドラインで設定されているインタクトPTHの目標値を覆す根拠は得られなかった」とコメント。さらなる追加解析について検討していく必要があると述べた。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8【「実践的」臨床研究入門】第33回

検索式で研究デザインを限定する その3前回は、PubMedの「Filterサイドバー」(連載第31回参照)を利用して、検索式で「研究デザイン」を「観察研究」に限定する方法について説明しました。「Filterサイドバー」を用いる方法は簡便ですが、Publication typeが“Observational Study(観察研究)”であるという情報が付与されていない論文は、検索式から漏れてしまいます。そこで、今回は「観察研究フィルター」の検索式を紹介します。また、実際にわれわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に「観察研究フィルター」の検索式を加えて、「Filterサイドバー」を使う方法と検索結果を比較してみたいと思います。Journal of the Medical Library Associationという医学図書館学についての専門学術誌があります。この雑誌に掲載された論文1)で、「研究デザイン」を「観察研究」に絞る、PubMed用の「観察研究フィルター」の検索式が紹介されています。ちなみにこの論文1)では、「観察研究フィルター」以外にも、「システマティックレビューフィルター」と「介入研究フィルター」のPubMedおよびEmbaseの検索式が提示されていますので、ご関心があれば参照してください。下記に、この論文1)で紹介されたPubMed用の「観察研究フィルター」検索式の例を示します。“Epidemiologic Studies”[mh] OR “case control”[tiab] OR “case-control”[tiab] OR ((case[tiab] OR cases[tiab]) AND (control[tiab] OR controls[tiab)) OR “cohort study”[tiab] OR “cohort analysis”[tiab] OR “follow up study”[tiab] OR “follow-up study”[tiab] OR “observational study”[tiab] OR longitudinal[tiab] OR retrospective[tiab] OR “cross sectional”[tiab] OR questionnaire[tiab] OR questionnaires[tiab] OR survey[tiab]それでは、Advance Search Builderを用いて(連載第27回参照)、われわれのRQの関連研究レビューのための検索式に、この「観察研究フィルター」検索式を加えてみましょう。検索結果は下記の表1のようになりました(本稿執筆2023年6月時点)。表1画像を拡大する前回解説した、「Filterサイドバー」の“article type”で“Observational Study(観察研究)”に絞り込んだ検索結果の10倍以上の文献数がヒットしました。この検索結果に、改めて「Filterサイドバー」を用いて“Observational Study(観察研究)”に限定すると、下記の表2のとおりとなり、前回ヒットした文献がすべて検索されました。表2画像を拡大するこのように、今回解説した「研究デザインフィルター」の検索式を用いた方が、「Filterサイドバー」を使うよりも、さらに網羅的な検索ができることがわかります。1)Avau B, et al. J Med Libr Assoc. 2021;109:599-608.

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フォシーガ、心不全の罹患期間によらず、循環器・腎・代謝関連の併存疾患で一貫したベネフィット/AZ

 AstraZeneca(英国)は、チェコのプラハで開催された欧州心臓病学会の心不全2023年次総会において、第III相DELIVER試験の2つの新たな解析結果から、心不全(HF)の罹患期間にかかわらず、循環器・腎・代謝(CVRM)疾患のさまざまな併存状態におけるフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の一貫したベネフィットが裏付けられたと発表した。 第III相DELIVER試験の事前規定された解析として、左室駆出率(LVEF)が40%超の心不全患者におけるフォシーガの治療効果を、HFの罹患期間(6ヵ月以内、6ヵ月超~12ヵ月以内、1年超~2年以内、2年超~5年以内、および5年超)別に検討した。その結果、フォシーガのベネフィットがHFの罹患期間にかかわらず一貫していることが示された。さらに、高齢かつ1つ以上の併存疾患を有し、HF悪化および死亡率の高い、罹患期間が長期にわたるHF患者において、絶対利益が増加した(治療必要数[NNT]:HF罹患期間5年超の患者と6ヵ月以内の患者との比較で24:32)。 CVRM関連の併存疾患の有病率およびさまざまな併存状態でのフォシーガに対する被験者の反応を評価した第III相DELIVER試験の事後解析結果も発表され、同時にJACC Heart Failure誌に掲載された。本解析結果によると、LVEFが40%超のHF患者では、5例中4例以上の割合で他のCVRM疾患を少なくとも1つ併発しており、5例中1例の割合でHFに加えて3つのCVRM疾患を併発していた。また、フォシーガは忍容性が良好であり、その治療ベネフィットはCVRM疾患の併存状態に関係なく一貫していた。 ハーバード大学医学部およびブリガム&ウィメンズ病院の内科学教授で、第III相DELIVER試験の主任治験責任医師を務めるScott Solomon氏は「現在の診療では、罹患期間が長期にわたる心不全患者は、新しい治療を追加しても反応しない、または忍容性が低い進行性疾患に罹患していると見なされる可能性がある。第III相DELIVER試験のデータは、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンによる治療ベネフィットは心不全の罹患期間にかかわらず一貫しており、患者にとって治療が決して遅すぎることがないことを示している。このデータは、心不全におけるダパグリフロジンの有効性に関するエビデンスの拡大を裏付け、ダパグリフロジンが、新たに診断された患者と同じように長期に罹患している患者に対しても役立つことを実証している」と述べた。 また、AstraZenecaのバイオ医薬品事業部門担当、エグゼクティブバイスプレジデントであるRuud Dobber氏は「CVRM疾患が患者そして社会に及ぼす影響は計り知れない。しかしながら、これらの患者に対する診断、治療は不十分であり、CVRM疾患における相互関係も十分に認識されていない。第III相DELIVER試験の結果から、心不全患者が2型糖尿病や慢性腎臓病といった他のCVRM疾患を併発していることがいかに一般的であるかが浮き彫りとなった。今回発表された新たな解析は、あらゆる心・腎疾患に対してベネフィットをもたらすフォシーガの価値をさらに示しており、心不全や他のCVRM疾患を有する何百万人もの患者の治療を根本的に変えるという私たちのコミットメントを強調している」とした。

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