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服用〇時間以内が勝負、アセトアミノフェン中毒【中毒診療の初期対応】第12回

<今回の症例>年齢・性別18歳・女性患者情報早朝7時、母親が患者を部屋に起こしに行くと、机の上に市販薬(総合感冒薬)の空瓶3本を発見した。患者は呼びかけに覚醒して、市販薬を過量服用したことを認めたため、8時に救急センターに搬送された。初診時は、気道開通、呼吸数20/分、SpO2 99%(室内気)、血圧112/64mmHg、心拍数96bpm、意識レベルJCS 0、瞳孔 左右3.5mm同大、対光反射+、体温36.8℃であった。患者の意思疎通は良好で、嘔気以外の訴えはなかった。患者は「何件かのドラッグストアを回って購入した市販薬を服用して死のうと思って4時ごろにまとめて飲んだ」と話していた。患者の服用した市販薬の空瓶の表示から、患者はアセトアミノフェンを計39g服用したと推定された。なお、患者の体重はおよそ50kgであった。検査値・画像所見末梢血では、WBC 8.40×103/mm3、Hb 14.6g/dL、Ht 44.8%、Plt 183×103/mm3、生化学検査では、TP 7.2g/dL、AST(GOT)20IU/L、ALT(GPT)14IU/L、LDH 122IU/L、CPK 107IU/L、AMY 82IU/L、Glu 98mg/dL、BUN 10.5mg/dL、Cr 0.62mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 102mEq/L、血液凝固検査では、PTT 11.6秒、PT% 98%、PT-INR<1.00、APTT 28.8秒、FIB 408mg/dL、アセトアミノフェンの血中濃度は604.8μg/mLであった。尿中薬物簡易スクリーニングキットではオピオイド類(OPI)およびアンフェタミン類(AMP)が陽性であった。<問題1><解答はこちら>解毒薬の投与入院後の経過アセトアミノフェンの中毒量は150mg/kg以上であるので、体重50kgの患者の中毒量は7.5g以上である。従って、患者は中毒量をはるかに超える量(39g)を服用していた。さらに、血中濃度を図1に示すSmilksteinらのノモグラム(治療線)にプロットしたところ、解毒薬による治療を要すると判断された。ただちにN-アセチルシステイン(NAC、商品名:アセチルシステイン内用液17.6%)40mLを約200mLのジュースで希釈して患者に経口投与した。入院での経過観察とし、さらに4時間後よりNAC 20mLを約100mLのジュースで希釈し、4時間ごとに計17回経口投与した。第5病日にALTは524IU/Lまで上昇したが、その後は速やかに低下し、第14病日に後遺症なく精神科病棟に転棟となった。(図1)Smilksteinらのノモグラム画像を拡大する<問題2><問題3><解答・解説はこちら>問題2:ジヒドロコデイン問題3:dl-メチルエフェドリン市販薬の過量服用患者では、アセトアミノフェン以外にも尿中薬物簡易スクリーニングキットで、鎮咳成分として含有されているジヒドロコデインによりOPIが、dl-メチルエフェドリンによりAMPが陽性になることがあるので、結果の解釈には注意が必要である。中毒のメカニズムと臨床症状アセトアミノフェンには解熱・鎮痛作用があり、処方薬のみならず、総合感冒薬などの市販薬にも含有されている。アセトアミノフェンは消化管より吸収されると、大部分は肝臓でグルクロン酸または硫酸抱合されて尿中に排泄されるが、一部分はCYP2E1などによって代謝されて、中間代謝物であるN-acetyl-p-benzoquinone imine(NAPQI)となり、速やかに肝細胞内のグルタチオンと結合して解毒される。アセトアミノフェンの過量服用では、グルクロン酸抱合および硫酸抱合が飽和してグルクロン酸および硫酸が枯渇するために、CYP2E1などによる代謝に移行してNAPQIの産生が増加する。この結果、グルタチオンの消費が亢進してグルタチオンが枯渇すると、処理しきれなくなったNAPQIが肝細胞蛋白のSH基などに結合して肝細胞壊死などをもたらす。表1に示すように急性アセトアミノフェン中毒では遅発性に肝障害が生じるのが特徴で、症状の経過は4相に分けることができる。(表1)急性アセトアミノフェン中毒の症状の経過画像を拡大する図2に示すように、アセトアミノフェン中毒の解毒薬であるNACは肝臓で代謝されてシステインとなり、細胞内に取り込まれて、グルタチオンの代わりに肝毒性のあるNAPQIと結合してこれを解毒する。また、NACは、システインを含むトリペプチドであるグルタチオンの前駆物質として、グルタチオンの貯蔵を増加させる。アセトアミノフェンの単回の過量服用では、摂取後4時間以降の血中濃度を測定し、Smilksteinらのノモグラム(治療線)より上にあるかを確認する。血中濃度が測定できない場合は、150mg/kg以上の過量服用を確認次第、NACを投与する。NAC療法は服用後8~10時間以内に開始するのが最も有効である。8~10時間以降では有効性は時間とともに低下するため、遅くても24時間以内に開始することが望ましい。(図2)NACによる解毒のメカニズム画像を拡大する初回はNAC140mg/kgを経口投与し、以後は70mg/kgを4時間ごとに計17回(72時間)経口投与する。本症例のように、体重50kgであれば初回は40mL(2A)をジュース類または水で200mL程度に希釈し、以後は20mL(1A)を100mL程度に調整して4時間ごとに17回経口投与する。なお、NAC投与により悪心・嘔吐の副作用がしばしば生じるので、NACを経口投与する際は、メトクロプラミドなどの制吐薬の投与も考慮される。ちなみに、本症例では服用4時間後に搬送されているので、胃洗浄や活性炭の投与などの消化管除染法は有効ではない。また、尿のアルカリ化は、アスピリン吸収後に加水分解されて産生されるサリチル酸などのように、尿中排泄される弱酸性物質には有効な可能性があるが、アセトアミノフェンには有効ではない。このほか、アセトアミノフェン中毒は単回の過量服用ばかりではなく、治療用量を超える量の繰り返し服用でも生じること、服用後何日か経過して肝障害や急性肝不全が生じてから受診する場合はアセトアミノフェンが血中から検出されないことなどにも注意が必要である。 1) 上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023. 2) Rumack BH, et al. Arch Intern Med. 1981;141:380-385. 3) Smilkstein MJ, et al. N Engl J Med. 1988;319:1557-1562.

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残余リスク可視化へ、Lp(a)コンセンサス・ステートメント公表/日本動脈硬化学会

 日本動脈硬化学会は2026年9月15日、Lp(a)に関する日本版『コンセンサス・ステートメント』を公表した。本ステートメントは、「世界的なエビデンスと日本の疫学的および臨床的現実を統合し、将来の治療および医療システムの発展を支援しつつ、日本に合わせたLp(a)の測定、解釈、リスク層別化、および管理に関する明確な推奨事項を提供することを目標」として作成された。今回、日常診療においてLp(a)測定の普及促進を訴える、日本動脈硬化学会Lp(a)タスクフォースの吉田 雅幸氏(日本動脈硬化学会理事長/東京科学大学 生命倫理センター長・大学院先端倫理医科学分野 教授)が測定法や心血管リスク評価への具体的な活用法など、診療で実践すべき臨床的Key takeawayについて解説した。ステートメントの公表意義と日本独自の層別化 Lp(a)スクリーニングの波はすでに世界的な大きな潮流となっている。これまでに海外データから、Lp(a)の上昇は心筋梗塞や大動脈弁狭窄症などの動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の独立した強力なリスク因子であることが示されている。欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓病学会(ACC)、中国などでは先行してステートメントが発表され、高リスク患者の特定が強く推奨されている。さらに2025年3月にLp(a)研究の世界的権威であるFlorian Kronenberg氏らが「ブリュッセル宣言」を行ったことで、危険因子としての重要性と市民への啓発が国際的に提唱されるようになった。 本邦でもこれまでいくつかの臨床試験が実施されてきたものの、測定法の標準化が不十分で、施設間や研究間の比較が困難であったため、多施設共同で測定値の標準化を行ったLEAP研究を開始。2026年5月にその成果が論文報告され、ようやく今回の本ステートメント公表1)に至ったのである。同氏は「日本人に対しても“すべての成人が生涯に一度は必ず測定すべき項目”として推奨され、日本独自の層別化カテゴリーが設定(25nmol/L未満、25~125nmol/L未満、125nmol/L以上)され、リスクに応じた適切な管理を促している」と述べ、「ガイドラインではないため、具体的な治療アルゴリズムを詳細に規定するものではないが、国内の疫学データを含む最新エビデンスに基づいた情報提供として極めて重要な意義を持つ」と強調した。日本人でのLp(a)のエビデンスと血管障害のメカニズム では、なぜLp(a)が心血管リスクを格段に高めるのか。その背景には、主に以下の4つの血管障害のメカニズムが考えられている。―――●動脈硬化形成の促進:Lp(a)はLDL粒子に類似した構造を持つため、血管壁へのコレステロール蓄積を促す。●炎症惹起作用:酸化リン脂質(OxPL)の主要キャリアとして働き、血管内皮細胞の活性化や局所炎症反応を強力に誘発する。●血栓形成の促進:apo(a)が線溶系プラスミノーゲンと構造類似性を持つため、これと競合して血栓溶解を阻害し、血栓形成を促進する。●大動脈弁の石灰化:輸送されたOxPLが大動脈弁の石灰化を直接的に進行させ、大動脈弁狭窄症を悪化させる。――― また、Lp(a)が高値となる要因には、遺伝的素因、家族性高コレステロール血症(FH)、そして腎機能低下(クリアランスの低下)などが挙げられる。東アジア人や日本人の場合、欧米の白人と比較してLp(a)の中央値が有意に低いことが疫学データで明らかにされているものの、「心血管リスク上昇率は欧米同様であるので、過小評価はできない」と同氏は注意喚起した。世界的な動向とLp(a)測定普及に向けて そんな中、日本の実臨床においてはいまだに大きな課題が残されている。それは測定する医師が少ないことである。Lp(a)の血中濃度は大部分が遺伝的に規定されるため、スタチンなどの既存薬や、食事・運動といった生活習慣の改善ではほとんど低下しないことから、「治療介入が困難」「治療薬がない」という大きな問題が実臨床での検査の普及を阻んできたという。なお、この憂慮に対し、Florian Kronenberg氏は取材インタビューにて「測らない理由なんてあるのか?」と疑問を投げかけている[参考記事:Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス~Lp(a)の今をインタビュー(後編)]。 実際、Lp(a)の測定方法に難しいことはない。Lp(a)は一般的な生化学検査の項目に含まれていることが多く、動脈硬化性疾患などの病名があれば保険診療上も3ヵ月に1回(107点)の測定が可能である。ただし、測定単位に関する技術的課題も存在する。現在多くの検査キットが質量単位(mg/dL)を用いているが、世界的には粒子濃度(nmol/L)への移行が強く推奨されており、日本国内でも標準化に向けた取り組みが過渡期を迎えている。実臨床への実装と今後の展望 次世代治療の展望として、Lp(a)を特異的かつ劇的に低下させるアンチセンス核酸医薬pelacarsenをはじめとするさまざまな作用機序の薬剤が臨床試験の最中である。とくにpelacarsenの第III相「HORIZON試験」の速報結果に注目が集まっていたが、2026年9月4日に発表された解析結果では、Lp(a)の有意な低下が認められたものの、主要評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、緊急冠血行再建術)の達成には至らなかった。この結果の解釈と今後の診療のあり方について、「ハザード比や個別エンドポイントの詳細な結果が公表されていないため、全体像の把握には詳細を待つ必要がある。しかし、今回のLp(a)介入試験のネガティブな結果を踏まえても、Lp(a)が強力な遺伝的リスク要因であることに変わりはない。現状の測定率の極端な低さを踏まえると、リスクを可視化するという測定意義を今後も継続して啓発していきたい。現状ではLp(a)を直接下げる薬剤がないからこそ、Lp(a)が高い患者を一人でも見つけたら、血縁者のカスケードスクリーニングを行うことがきわめて重要である」と同氏は強調した。 本ステートメントはタスクフォースメンバーの合議に基づいているため、厳密な意味でのガイドラインと同等のエビデンスレベルではないものの、実臨床における外来受診時での測定を強く推進し、将来的には人間ドックへの追加も視野に入れている。さらに現在、健康成人を対象とした「LEAP2研究」が進行中であり、この結果次第で今後の国内のリスク分類がさらに精緻にアップデートされる可能性がある。なお、今回を機にLp(a)の呼称を国際的に汎用されている“エルピーリトルエー”に統一することも公表された。「呼称について定められた国際基準があるわけではなく、一般的な使用状況を踏まえて、この呼び方に揃えるという趣旨である。臨床現場ではエルピースモールエー、エルピーエーなどとも呼ばれており、それも決して間違いではない」とコメントした。 Lp(a)高値患者に対しては、スタチンやPCSK9阻害薬などを用いてLDL-Cを厳格に管理するなど、修正可能なリスク因子に対する徹底的な介入が不可欠となる。すべての医師がこの「隠れたリスク」に気付き、包括的な脂質管理と、次世代治療薬の登場を見据えた標準化された診療体制の確立を目指すことが、今強く求められている。

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高カリウム血症時はソリタ-T1で万事OK?【ケースで学ぶ輸液オーダー】第7回

高カリウム血症時はソリタ-T1で万事OK?カリウムの入っていない輸液といえば、まず誰もが初期研修医時代にソリタ-T1号輸液と教わりますよね。では、輸液療法中に高カリウム血症になった場合、正常化するまでとりあえずソリタ-T1を続けておけば万事OKなのでしょうか?症例70歳男性、大腸穿孔による急性汎発性腹膜炎術後体重60kg併存疾患高血圧、慢性腎臓病術後の腸管麻痺が持続しているため、腸管機能回復までの間は絶食としてしばらく中心静脈栄養を行うことになりました。右上腕に挿入したシングルルーメンの末梢挿入式中心静脈カテーテルから、術後10日目時点でエルネオパNF2号1日2,000mLの栄養輸液を行っています。この間、術後の創痛に対し、フルルビプロフェン アキセチルを1日3回点滴していました。後期研修医A君は、併存疾患の慢性腎臓病に留意し、NSAIDs投与に伴う腎機能低下を来していないか確認するため、そろそろBUNやCrをチェックすべきと考えました1)。採血を行ったところ、BUNはやや上昇、Crは横ばい、Kは6.0mEq/Lと上昇していました。幸い心電図異常は認めません。A君「輸液をカリウムフリーにしなくては…」A君は急いで本日の2本目の点滴をソリタ-T1 500mLに変更し、向こう3日間はソリタ-T1を1日2,000mL投与するオーダーを出しました。すると翌日朝、A君は病棟看護師にコールされました。看護師「患者さんが冷や汗をかいています。簡易血糖が20です!」高カリウム血症には常にソリタ-T1?ソリタ-T1はカリウムフリーということは誰もが知っています。しかし、その糖濃度はどれだけなのか答えられますか? エルネオパNF2号とソリタ-T1、皆さんおなじみのソリタ-T3のエネルギー、糖濃度、ナトリウムとカリウムの含有量を比較してみましょう(図1)。図1 1L当たりのエネルギー、糖、ナトリウム、カリウム含有量比較画像を拡大するソリタ-T1のエネルギーや糖濃度の低さが際立ちますね。一方、ナトリウムは生理食塩水の半分以上と多く設定されています。それもそのはず、ソリタ-T1は生理食塩水と5%ブドウ糖液を1対1で混合した組成がもとになっているからです。当然アミノ酸も含んでいません。救急の現場で詳細のわからない患者さんに、とりあえずカリウムフリーで輸液したい場合の生理食塩水500mL。高カリウム血症が判明している患者さんの維持輸液を開始するときに、とりあえずカリウムフリーでソリタ-T1 500mL。このような「とりあえず」は全然問題ありません。しかし、本症例のように、栄養輸液をしばらく行ってから生じた高カリウム血症に対しては、それに起因する症状がなければ、急いでソリタ-T1に走らずに落ち着いてカリウムフリーの栄養輸液メニューを作ってみましょう。所属施設の薬剤師と相談し、あらかじめ院内で自作メニューの組成を決めていると便利ですよ。NST薬剤師によるカリウムフリーメニュー作りのコツ基本的には、カリウム非含有のTPN輸液基本液(糖・電解質輸液)とアミノ酸製剤を組み合わせ、そこに総合ビタミン製剤と微量元素製剤を加えて調剤します。以下のコツを踏まえ、エルネオパNF2号に近い組成のカリウム非含有TPN製剤を作成してみましょう。コツ1直前まで投与していたTPNキット製剤の組成(とくに水分量、糖質量、アミノ酸量、ナトリウム量、ビタミン、微量元素)に近づけることを意識する。本症例では、エルネオパNF2号の組成に近づけることを目標に輸液メニューを作成。コツ2調製回数がなるべく少なく済むよう、所属施設の採用品を組み合わせることを意識する。調製回数を減らすことで、調製時間の短縮に加え、不溶性微粒子や細菌などの混入リスクの低減にもつながる。これらのコツを踏まえ、当院で作成しているエルネオパNF2号に近い組成のカリウムフリーメニューを示します(表1)。当院では重い点滴をぶらさげて歩行する患者さんの転倒リスクを考慮し、1バッグ当たりの水分は約1kg程度までとなるよう工夫しています。また、電子カルテ内の医師オーダーセットにカリウムフリーメニューを登録し、簡便かつ安全な処方を可能としています2)。表1 エルネオパNF2号類似Kフリー自作製剤と本家の比較画像を拡大する本症例の分析本症例は、慢性腎臓病の患者さんへNSAIDsを定期的に投与し、腎障害が増悪して高カリウム血症を来しました。A君の頭には、カリウムなし=ソリタ-T1の回路しかなく、あわてて高カロリー輸液をソリタ-T1に変更し、漫然と継続したことで低血糖を招きました。その後、薬剤師に相談してエルネオパNF2号類似のカリウム非含有TPN製剤を調整してもらい、カリウム値が正常化するまで使用しました。高カリウム血症には常にソリタ-T1でよいわけではありません。あらかじめ自院でカリウムフリーの輸液メニューを作っておき、共有すると便利です。ワルファリン服用患者ではビタミンK含有量の違いに注意エルネオパNF2号2,000mLに含有されているフィトナジオン(ビタミンK1)は、2mgから0.150mgへ減量された経緯があります。国内に上市されている総合ビタミン剤の多くはフィトナジオン2mgを含有しており、これを含む自作のカリウム非含有TPN製剤にエルネオパNFから切り替えると、ビタミンK含有量がエルネオパNFよりも多くなり、ワルファリン服用中の患者さんでは相互作用で効果が減弱する恐れがあります。ワルファリン服用患者の適切なビタミンK摂取量は150μg/日と報告されており3)、このような場合はPT-INRのモニタリング強化、または直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)への変更を検討しましょう。1)Baker M, et al. Am J Kidney Dis. 2020;76:546-557.2)カリウムフリー輸液を組み立てよう!:下馬栄養倶楽部(参照 2026年9月3日)3)佐藤陽子ほか. 食品衛生学雑誌. 2015;56:157-165.

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学会抄録のかたちにまとめる その4【「実践的」臨床研究入門】第66回

構造化抄録を英文化する前回まで、これまでの連載で取り扱ってきた架空の臨床シナリオに基づく研究を、構造化抄録のかたちにまとめました(連載第63回、64回、65回参照)。ここまで日本語の構造化抄録ができれば、次はいよいよ英文抄録を作成し、国際学会での発表に挑戦してみたいところです。英文抄録を作成する際は、粗々でもよいので、まず自分で英文案を作成できるのが望ましいです。しかし、「英作文のトレーニングなんて大学受験以来やっていない」という方もおられるでしょう。そこで今回は、ChatGPTなどの生成AIや機械翻訳・校正ツール(DeepLやGrammarlyなど)を活用して、日本語で作成した構造化抄録を英文抄録にするためのコツを解説します。英語は、原則として「誰が(主語)」「どうしたか(述語)」を明確に示すことを文法的に要求する言語です。一方、日本語ではこれらの要素が文脈に委ねられることが多く、主語が省略されたり、修飾関係が曖昧なまま読者の解釈に依存したりします。したがって、英訳の第一歩は、日本語原稿を「英訳しやすい日本語」に書き直すことです。具体的には、主語を明示すること、曖昧な表現を避けること、一文を短くすることです。たとえば、日本語で作成した構造化抄録の【背景】(連載第63回参照)を書き直してみます。【背景】たんぱく質摂取制限は慢性腎臓病(CKD)進行抑制に推奨されているが、厳格な低たんぱく食(low-protein diet:LPD)の遵守と腎予後との関連については十分に検討されていない。日本語としてはとくに不自然ではありません。しかし、英訳の下準備として、あえて少し説明的な日本語に分解してみます。ChatGPTなどの生成AIに、以下のようなプロンプト(指示文)を入力して書き換えてみました。「主語を明示する、曖昧な表現を避ける、一文を短くする、という点を意識して書き直してください。【背景】たんぱく質摂取制限は、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の進行抑制を目的として推奨されている。一方で、厳格な低たんぱく食(low-protein diet:LPD)の遵守がCKD患者の腎予後と関連するかは、十分に検討されていない。」※生成AIや機械翻訳・校正ツールは、同じプロンプトや文章を入力しても同じ回答を生成するとは限らず、出力にはばらつきが生じる点にご留意ください。続いて、以下のようなプロンプトでひとまず英訳してみます。「英語ネイティブが執筆したような自然な医学論文英語に書き直してください。」すると、下記のような英文が示されました。Background:Dietary protein restriction is recommended to slow the progression of chronic kidney disease(CKD). However, whether adherence to a strict low-protein diet(LPD)is associated with kidney outcomes in patients with CKD has not been adequately investigated.次の段階として、DeepLを用いて逆翻訳してみます。逆翻訳とは、作成した英文を再び日本語に翻訳し、元の日本語原稿との間に意味のずれがないかを確認する方法です。【背景】慢性腎臓病(CKD)の進行を遅らせるため、食事中のたんぱく質摂取制限が推奨されている。しかし、CKD患者において、厳格な低たんぱく質食(LPD)の遵守が腎機能の転帰と関連しているかどうかについては、十分に調査されていない。ここで確認するのは、逆翻訳された文章が読みやすい日本語かどうかではありません。主語、肯定・否定、比較、因果関係など文意が変わっていないかを確認します。この例では、原文の「腎予後」が逆翻訳では「腎機能の転帰」に変わっています。日本語の「腎機能の転帰」では腎機能の変化だけを指すように読めてしまいますが、英語のkidney outcomesは末期腎不全への進展(透析導入)までを含む広い言葉ですのでそのまま採用します。このように逆翻訳を行うと、訳語の意味する範囲が原文とずれていないかを確認できます。AIを活用した文章支援ツールであるDeepL Writeを使えば、ひとまず作成した英文について、別の表現を検討することもできます。いくつか示された書き換え候補を吟味し、2文目について下記のようにより簡潔に書き換えてみました。However, it remains unclear whether adherence to a strict low-protein diet (LPD) is associated with kidney outcomes in patients with CKD.筆者(1年弱の米国留学経験はありますが、自認は純ジャパです)は、長いwhether節を文末に置いた後者のほうが座りがよいと感じました。生成AIにも「どちらの英文が医学学術英語としてより洗練されているか」と尋ねてみたところ、後者を推奨するとの回答でした。この時点ですでにかなりブラッシュアップされた英文になっていますが、筆者は英文ドラフトの文法やスタイルのチェックにGrammarlyを活用しています。Grammarlyは無料版でも基本的な文法エラーやスペルミスを検出してくれます。また、WordのアドインやWebブラウザ拡張機能も提供されており、使い勝手が良いです。筆者がおすすめする英文化のためのAIツールの実践的な使い分けのフローを整理すると、以下のようになります。1.生成AIで英訳のための下準備・下訳2.DeepL(およびDeepL Write)で逆翻訳・推敲3.Grammarlyで文法チェックここまで示した範囲の生成AIや機械翻訳・校正ツールの利用は無料版で十分可能ですので、ぜひご自身の文例で試してみてください。ただし、未公表データや患者情報など、機密性の高い情報の入力は避ける必要があります。また、デフォルト設定では入力内容がAIの学習やサービスの改善に利用される場合もあるため、利用前に各サービスの設定を確認し、入力内容をモデルの改善に利用しない設定(オプトアウト)にしておくと良いです。なお、英文論文の投稿にあたって生成AIを利用した場合には、Acknowledgementsなどでその旨を明示する必要がある点にも留意してください。英文化は、あなたの研究の国際的な可視性を高めるための最終工程です。まず日本語原稿の論理を磨き、次にAIツールを目的に応じて使い分け、最後は必ず自身の目で内容を確認します。この3段階のプロセスによって、英文作成に不慣れな研究者でも効率的に質の高い英文抄録を作成できるでしょう。

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イプタコパンがIgA腎症の適応追加/ノバルティス

 ノバルティス ファーマは2026年9月16日、経口補体B因子阻害薬イプタコパン(商品名:ファビハルタカプセル200mg)について、IgA腎症に対する効能又は効果の追加承認を取得したことを発表した。今回の承認により、本剤の効能又は効果は、発作性夜間ヘモグロビン尿症、C3腎症、IgA腎症となった。 今回の承認は、主に国際共同第III相試験(APPLAUSE-IgAN試験)の結果に基づく。本試験は、生検により確認されたIgA腎症患者477例(日本人28例を含む)を対象とし、イプタコパン(200mgを1日2回)またはプラセボを投与して最長24ヵ月間追跡した。イプタコパン群では24ヵ月で推定した年換算eGFR total slopeにおいて、プラセボ群と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある腎機能低下の抑制を示した。また、腎不全への進行リスクを43%低減し、2年間にわたり尿蛋白の持続的な減少を示した。 イプタコパンは、IgA腎症における糸球体炎症および腎障害の主な促進因子の1つである補体第二経路を選択的に阻害する、国内初かつ唯一の経口補体B因子阻害薬である。補体B因子を阻害することで、持続する補体介在性の損傷を軽減し、疾患の進行を遅らせることを目指している。<電子化添付文書情報の抜粋> ※下線が今回の変更箇所商品名:ファビハルタカプセル200mg一般名:イプタコパン塩酸塩水和物効能又は効果:発作性夜間ヘモグロビン尿症、C3腎症、IgA腎症効能又は効果に関連する注意:〈IgA腎症〉支持療法等による適切な治療を行っても、蛋白尿が認められ、本剤の投与が適切と判断された場合に投与すること。また、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験の対象患者等を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。用法及び用量:通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する。

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米国の20代の8割に心腎代謝症候群の兆候

 米国では多くの若年成人が、将来の心血管・腎・代謝に関する健康リスクを高める状態にあることが明らかになった。米ボストン大学のDonald Lloyd-Jones氏らの研究の結果であり、詳細は「Circulation:Population Health and Outcomes」に8月20日付で掲載された。平均年齢23歳という若年集団を対象とした調査で、参加者の約8割に心腎代謝(CKM)症候群の兆候が認められたという。 CKM症候群とは、代謝性リスク因子、腎疾患、心血管疾患が相互に関連し、心血管疾患の発症・進行リスクを高める状態を指し、米国心臓協会(AHA)によると、その初期兆候として、高血圧、脂質異常、インスリン抵抗性、糖尿病前症などが現れてくるという。Lloyd-Jones氏らは、子どもとその家族の健康状態を長期間追跡している研究(FF-CHAYA研究)の参加者、1,283人(平均年齢22.9±0.7歳、女性54.4%)から得られたデータを用いて、CKM症候群のステージを解析した。 その結果、ステージ4(心臓病や腎不全の発症後)の該当者はいなかったが、40.2%がステージ1(脂肪の過剰蓄積がある状態)に該当し、さらに36.2%はステージ2(代謝リスク因子がある状態)であり、2.8%はステージ3(潜在的な心血管疾患や腎疾患がある状態)に該当し、ステージ0(リスク因子なし)は20.7%にとどまった。また、頸動脈IMT(首の動脈の血管壁の肥厚)は、CKM症候群ステージが進んでいる人ほど高値となる有意な関連があり(傾向性P<0.001)、20代前半という若年期でも、頸動脈の動脈硬化性変化がみられる可能性が示された。 この結果について研究者らは、「心血管の健康状態を評価する指標である『Life's Essential 8(健康に重要な8項目)』に含まれている生活習慣や行動を、若い人たちに対して教育する必要性を強調するものだ」と述べている。なお、今回の研究では、CKM症候群のステージが進んでいる人ほどLife's Essential 8スコアが低値(高リスク)という有意な関連が認められた(傾向性P<0.001)。論文の上席著者であるLloyd-Jones氏は、「本研究により、30歳未満の成人において、CKM症候群のステージ分類とLife's Essential 8スコアは互いに補完し合うような関係にあり、動脈硬化が急速に進行して将来の心血管イベントのリスクが上昇する可能性のある人を特定するのに役立つことが示された」と解説している。 Life's Essential 8に含まれる生活習慣や行動とは、以下のとおり。 ・より良い食生活 ・より活動的な生活 ・タバコを避ける ・必要な睡眠を取る ・体重のコントロール ・コレステロールのコントロール ・血糖値のコントロール ・血圧のコントロール Lloyd-Jones氏は、「われわれは20代の若い人たちに、心血管系の健康状態を改善することを意識してほしいと考えている。私の診療経験から言えること、そして私が推奨することは、今日の健康、そして将来の健康のためにLife's Essential 8を心掛け、できる限り遵守するということだ」と話している。

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「ジンタス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第89回

第89回 「ジンタス」の名称の由来は?販売名ジンタス錠®25mgジンタス錠®50mg一般名(和名[命名法])ヒスチジン亜鉛水和物(JAN)効能又は効果低亜鉛血症用法及び用量通常、成人及び体重30kg以上の小児では、亜鉛として、1回50~100mgを開始用量とし1日1回食後に経口投与する。なお、血清亜鉛濃度や患者の状態により適宜増減するが、1日1回150mgを超えないこと。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2026年9月11日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2026年6月作成(第5版)医薬品インタビューフォーム「ジンタス錠®25mg、ジンタス錠®50mg

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亜鉛欠乏はCKM症候群の進行リスクを高めるか

心血管・腎・代謝(CKM)症候群は、代謝異常、慢性腎臓病(CKD)、心血管疾患が連続的に進展する疾患概念として注目されている。微量元素の1つである亜鉛が欠乏することで心血管・腎アウトカムの悪化をもたらすことが報告されているものの、CKM症候群の進行との関連は十分に明らかでない。今回、台湾・Chi Mei HospitalのKuan-Chieh Tu氏らは、CKMステージ1または2の成人において、亜鉛欠乏はCKMステージ3~4への進行リスク上昇と有意に関連していたことを明らかにした。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2026年7月23日号に掲載された。本研究は、世界の医療機関172施設の匿名化電子健康記録を集積したTriNetX Global Collaborative Networkを用いた後ろ向きコホート研究である。2010年1月1日~2026年3月31日に、CKMステージ1または2に該当し、前年に血清亜鉛測定を受けた18歳以上を対象とした。血清亜鉛濃度70μg/dL未満を亜鉛欠乏群、70~120μg/dLを対照群とし、1:1の傾向スコアマッチング後に解析を行った。主要評価項目は、CKMステージ1~2からステージ3~4への進行に相当する心血管疾患または進行CKDの新規発症とした。副次評価項目は、主要心血管イベント(MACE)、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、心房細動、虚血性脳卒中、心不全、進行CKD、全死亡などであった。追跡期間は最大365日で、中央値はいずれの群も365日であった。主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたCKMステージ1~2かつ血清亜鉛測定済みの患者は22万4,495例で、このうち亜鉛欠乏群9万168例、対照群13万4,327例であった。傾向スコアマッチング後は各群7万4,245例となり、平均年齢は亜鉛欠乏群49.5歳、対照群48.9歳、女性の割合はそれぞれ69.5%、71.2%であった。・主要評価項目であるCKMステージ3~4への進行は、亜鉛欠乏群4,864例(6.6%)、対照群3,752例(5.1%)に発生し、亜鉛欠乏はCKM進行リスク上昇と関連していた(ハザード比[HR]:1.36、95%信頼区間[CI]:1.30~1.41、p<0.001)。・副次評価項目はそれぞれ以下の結果となった。 ●MACEのHRは1.35(95%CI:1.30~1.41、p=0.001、亜鉛欠乏群5,434例[7.3%]、対照群4,204例[5.7%])で、亜鉛欠乏群でリスクが高かった。 ●冠動脈疾患のHRは1.33(95%CI:1.26~1.41、p<0.001、2,731例[3.7%]vs.2,131例[2.9%])。 ●末梢動脈疾患では1.17(95%CI:1.06~1.31、p=0.003、729例[1.0%]vs.646例[0.9%])。 ●心房細動では1.42(95%CI:1.29~1.56、p<0.001、1,024例[1.4%]vs.748例[1.0%])。 ●虚血性脳卒中では1.38(95%CI:1.22~1.55、p<0.001、638例[0.9%]vs.481例[0.6%])。 ●心不全では1.61(95%CI:1.48~1.74、p<0.001、1,501例[2.0%]vs.971例[1.3%])。 ●進行CKDでは1.31(95%CI:1.21~1.43、p<0.001、1,226例[1.7%]vs.955例[1.3%])。 ●全死亡では1.65(95%CI:1.55~1.75、p<0.001、2,906例[3.9%]vs.1,820例[2.5%])。・ランドマーク解析でも、亜鉛欠乏とCKM進行との関連は維持された。リスク上昇はインデックス日後3ヵ月以内でHR 1.57(95%CI:1.47~1.66)、3ヵ月~1年でHR 1.24(95%CI:1.18~1.31)、6ヵ月~1年でHR 1.21(95%CI:1.14~1.28)であり、1~3年の追跡に限定しても有意であった(HR:1.12、95%CI:1.07~1.16)。・3~12ヵ月後の再測定でも亜鉛欠乏を認める持続性亜鉛欠乏を曝露とした解析でも、CKM進行リスクは上昇していた(HR:1.58、95%CI:1.36~1.83、p<0.001)。また、感染症(HR:1.24、95%CI:1.21~1.26)、敗血症(HR:1.56、95%CI:1.47~1.65)、治癒不良創傷(HR:1.31、95%CI:1.23~1.40)、CRP高値(HR:1.27、95%CI:1.24~1.31)、動脈硬化性プラーク(HR:1.21、95%CI:1.09~1.34)、心拡大(HR:1.71、95%CI:1.58~1.85)、eGFR 45mL/分/1.73m2未満(HR:1.35、95%CI:1.31~1.40)のリスクも高かった。本研究結果について著者らは、「CKMステージ1~2患者において、亜鉛欠乏はCKMステージ3~4への進行、ならびに心血管、腎、死亡アウトカムの幅広い悪化と関連していた」とし、「亜鉛欠乏はCKM健康状態不良の重要なマーカーであり、CKM進行リスクが高い患者の同定に役立つ可能性がある」と結論付けた。

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がん既往CKM症候群でもフィネレノンの効果は一貫(FINE-HEART)/Eur Heart J

心血管・腎・代謝(CKM)症候群では、共通のリスク因子や病態機序を背景にがんを併存する患者が少なくない。しかし、がん既往を有するCKM症候群患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンの有効性・安全性が同様に得られるかは明らかではない。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMihaly Ruppert氏らは、FINE-HEART統合解析を用いて、がん既往の有無別の臨床像、転帰、フィネレノンの治療反応を検討した。その結果、がん既往は全死亡および全入院リスクの上昇と関連したが、フィネレノンの治療効果はがん既往の有無にかかわらず一貫していた。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月18日号に掲載された。本研究は、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HFの3試験を対象とした、FINE-HEART患者レベル統合解析の事後解析である。対象は、2型糖尿病と慢性腎臓病を有する患者、または左室駆出率が軽度低下もしくは保持された心不全患者の計1万8,991例とした。3試験では、標準治療にフィネレノンまたはプラセボが追加された。がん既往は病歴記録から、追跡中の新規がんは有害事象報告から同定した。主要評価項目は心血管死(死因不明を除く)で、全死亡、心不全入院、全入院、腎複合アウトカム、主要心血管イベント(MACE)、新規心房細動なども評価した。主な結果は以下のとおり。・1万8,991例のうち、ベースライン時にがん既往を有した患者は1,389例(7.3%)であった。がん種は消化管がん18.3%、男性生殖器がん17.1%、腎・尿路がん13.3%などが多く、肥満関連がんは40.5%を占めた。・がん既往あり群はなし群と比較して高齢(72.2歳vs.66.6歳)で、eGFRが低く(52.5 vs.59.5mL/分/1.73m2)、CKMステージ3~4、心房細動、現喫煙または過去喫煙の割合が高かった。・がん既往は、全死亡リスクの上昇(16.3%vs.11.1%、調整ハザード比[aHR]:1.31、95%信頼区間[CI]:1.13~1.52)および初回全入院リスクの上昇(57.8%vs.44.6%、aHR:1.26、95%CI:1.17~1.36)と独立して関連した。・一方、心血管死、心不全入院、MACE、腎複合アウトカム、新規心房細動では、共変量調整後にがん既往による有意差は認められなかった。・ベースライン時にがん既往のない1万7,602例のうち、追跡期間中央値2.9年に915例(5.2%)で新規がんが報告された。フィネレノン投与による新規がん発症(HR:0.95、95%CI:0.83~1.08)およびがん関連死(HR:0.81、95%CI:0.63~1.03)の有意なリスク低下・増加は認められなかった。・フィネレノンの治療効果(心血管死、全死亡、心不全入院、全入院、MACE、腎複合アウトカムなど)は、がん既往の有無にかかわらず一貫していた。・安全性について、重篤な有害事象の発現率はがん既往あり群で高かったが、薬剤による差は認められなかった。高カリウム血症はフィネレノン群で多く認められたものの(がん既往あり:14.4%vs.プラセボ6.1%、がん既往なし:12.7%vs.プラセボ6.2%)、高カリウム血症による死亡はいずれの群でも認められなかった。本研究結果について著者らは、CKM症候群患者においてがん併存は比較的多く、予後不良と独立して関連したが、フィネレノンの治療利益を減弱させなかったとまとめた。また、治療開始時点で余命12ヵ月未満と見なされない場合、がん併存を理由にCKM健康改善を目的としたリスク低減治療の実施を控えるべきではないと述べている。

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高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。高齢糖尿病患者へのSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の使用で違いはあるか 研究グループは、わが国のレセプトデータと健康診断データを連結し、標的試験エミュレーションを実施。SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の投与を新たに開始した75歳以上の2型糖尿病患者を対象に、死亡、心血管および腎臓の転帰について、1ヵ月の導入期間を設けたうえで、逆確率重み付け法を用いてITT(治療意図)解析による効果を推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究では8,486例(SGLT2阻害薬群2,204例、DPP-4阻害薬群6,282例)が解析された。・1ヵ月の導入後、SGLT2阻害薬群では全死因死亡リスクの低下(ハザード比[HR]:0.677、95%信頼区間[CI]:0.500~0.916)および末期腎不全または透析導入リスクの低下(HR:0.374、95%CI:0.157~0.890)に関連していた。・ITT解析において、心不全による入院(HR:1.103、95%CI:0.854~1.426)や心筋梗塞(HR:1.015、95%CI:0.768~1.341)については、明確な差は認められなかった。・脳卒中の発生頻度はSGLT2阻害薬群で高かった(HR:1.420、95%CI:1.165~1.828)が、この結果の解釈には慎重な検討が必要である。 以上の結果から研究グループは、「75歳以上の2型糖尿病患者においては、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。観察された脳卒中リスクの上昇については、残存交絡因子、競合する死亡要因、および脆弱な高齢者における異質性がこの傾向に寄与している可能性があるため、慎重な解釈が必要」と結論付けている。

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フィネレノンは非糖尿病CKDのeGFR低下を抑制する(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しい? 非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(non-steroidal mineralocorticoid receptor antagonist:nsMRA)であるフィネレノン(商品名:ケレンディア)の非糖尿病慢性腎臓病(CKD)の腎機能低下抑制効果について、最近、二重盲検無作為化比較試験(RCT)のFIND-CKD研究の2報が報告された。1報は非糖尿病CKD患者全体を対象とした解析(Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2026;395:533-545.)であり、もう1報は、そのうち糸球体疾患を有する患者に限定した探索的サブ解析(CLEAR!ジャーナル四天王「フィネレノンは糸球体疾患由来のCKDに対しても腎保護的である可能性がある」)である。これらの解析から、フィネレノンには、非糖尿病CKD患者全体でeGFRスロープの低下を遅延化させる腎保護効果があることが示された。CKD腎保護薬としてのフィネレノンの位置付け 糖尿病を合併するCKDに対する腎保護療法としては、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)、およびGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)の4剤が推奨されている。このうち、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は第1選択薬として推奨されている。一方、nsMRAおよびGLP-1 RAは、これらの薬剤に上乗せして使用する薬剤として推奨されている(KDIGOガイドライン:Levin A, et al. Kidney Int. 2024;105:684-701.)。これらの推奨の根拠となったエビデンスは、糖尿病CKD患者を対象としたFIGARO-DKD試験およびFIDELIO-DKD試験、ならびに両試験の統合解析であるFIDELITYの成績である。一方、非糖尿病CKDではフィネレノンに関するRCTは実施されていなかった。今回のFIND-CKD研究で得られた非糖尿病CKDにおける肯定的な結果と、これまでに蓄積されてきた糖尿病CKDにおけるエビデンスを合わせて考えると、フィネレノンの腎保護作用は糖尿病の有無にかかわらずCKD全般で期待される可能性が示唆された。本研究の主要結果 FIND-CKD研究は、世界24ヵ国で実施された国際共同第III相二重盲検RCTである。糖尿病を合併しないCKD患者1,584例を対象とし、フィネレノン群793例とプラセボ群791例を比較した。対象患者の腎機能はCKD G3bが中心で、UACRは大部分がA3に相当する中等度~高度アルブミン尿を呈していた。また、57.0%は糸球体疾患を原疾患とするCKDであり、99.8%が最大耐用量のRAS阻害薬による治療を受けていた。 主要評価項目は、ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率である総eGFRスロープ。その結果、eGFRの平均年間変化率は、フィネレノン群で-3.3mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-3.6~-3.1)、プラセボ群で-4.0mL/分/1.73m2/年(95%CI:-4.3~-3.8)であり、群間差は0.7mL/分/1.73m2/年(95%CI:0.3~1.1、p<0.001)であった。 副次評価項目には、腎・心血管複合イベント、腎複合イベント、心血管複合イベントなど。腎・心血管複合イベントの発生リスクは、フィネレノン群でプラセボ群と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.60~0.99、p=0.04)。腎複合イベントのHRは0.78(95%CI:0.60~1.01)、心血管複合イベントのHRは0.60(95%CI:0.27~1.33)であった。 高カリウム血症の発現率は、フィネレノン群で17.0%(135例)、プラセボ群で13.3%(105例)であった。今後のCKD治療にどう影響する? CKDにおける腎保護の基本は、蛋白尿を減少させ、適切に降圧することである。加えて、糖尿病では血糖管理が重要であり、慢性糸球体腎炎・IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などでは、ステロイド、扁桃摘出術、免疫抑制薬などが病態に応じて選択される。フィネレノンによるCKDの腎保護作用は、「MRの過剰活性化→炎症・線維化」という共通の経路を抑制することによる。FIND-CKDは、非糖尿病CKDにおいても同剤が腎保護作用を有するという仮説を検証したRCTである。本研究の意義と展望については、Dr. Robert TotoのEditorial(Toto R. N Engl J Med. 2026;395:600-601.)のコメントは参考になる。Totoは、「フィネレノンは、CKDや高血圧の病態の根底にあるMRの過剰活性化を抑制する可能性がある。FIND-CKD研究の成果は、フィネレノンを『糖尿病CKDの腎保護薬』から、非糖尿病CKDにおいても『MRの過剰活性化による残余リスクを抑制する薬剤』へと位置付ける可能性がある」と展望している。言い換えると、FIND-CKDはフィネレノンを、「糖尿病CKDの薬」から「CKD全般の腎保護薬」へと適応を拡大する根拠を提供した初めての研究ともいえる。もっとも、eGFR低下の遅延抑制に加えて、腎ハードエンドポイント(腎不全や透析開始など)への効果、CKD疾患別の効果、SGLT2阻害薬との併用効果など、今後検討すべき課題は残されている。 現在、国内外のガイドラインにおいて、非糖尿病CKDに対するフィネレノンの使用についての言及はない。しかし、本研究により、今後のガイドライン改訂において、同剤がCKD全般で新たな腎保護の治療選択肢として位置付けられる可能性が高い。実臨床で非糖尿病CKD患者において、フィネレノン投与を考慮すべき患者として、(1)UACRが中等度から高度、(2)eGFRが25mL/分/1.73m2以上、(3)ARBやSGLT2阻害薬による先行治療を行ってもなお残余リスクがある患者、が想定される。また、フィネレノン投与時には、高カリウム血症のリスクを念頭に入れ、血清カリウム濃度を適切にモニターすべきである。

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Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス~Lp(a)の今をインタビュー(後編)

前編では、Lp(a)の第一人者であるDr. Florian Kronenberg氏(オーストリア・インスブルック医科大学遺伝疫学研究所 教授/所長)が治療薬のない状況であっても「Lp(a)測定が重視される」のか、Lp(a)が心血管疾患(CVD)イベントの生涯リスクに及ぼす影響を中心に解説した。後編では、Lp(a)測定が失速した30年前の出来事の振り返り、1次予防への測定意義や日本の医療への期待などについて語った。※前編はこちら(8月18日公開:5人に1人はLp(a)高値、CVD死を見落とさないために)INDEX30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用専門家が伝えたい4つの重要プロセス測らない理由なんてあるのか?スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること―30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史なぜ、Lp(a)測定が失速してしまったのか。それは1990年代にアメリカで行われた大規模な研究において、「Lp(a)と心血管アウトカムには関連性がない」という結果が報告されたことが要因でした。しかし後になって、当時の測定法には技術的な問題があり、それがこのような否定的な結果につながったのではないかと考えられるようになりました。この研究結果により、Lp(a)研究は一度完全に死にかけました。私がこの分野に関わり始めた頃も、周囲から「その分野はやめなさい、もう死んだ分野だから」と言われたものです。しかし、私は遺伝子データから「Lp(a)高値の人は遺伝的に心血管リスクが高いはずだ」という確信を持っていたため、研究を続けました。その後、大きな転機が訪れました。デンマークの研究グループが10万人規模の膨大なビッグデータを持って(われわれの研究に)参入してきたのです。彼らのデータを解析した結果、Lp(a)が高い人は将来明らかに心血管イベントを起こしていることが判明しました1)。さらに、彼らが私たちの遺伝子解析手法をその10万人に適用したところ、遺伝子変異とLp(a)高値、そして心血管疾患の間に強固な因果関係があることが完全に証明されたのです。その後、『2022年EAS Lp(a)コンセンサスステートメント』の作成にあたって、イギリスの「UKバイオバンク」が持つ50万人規模のデータを解析したところ、その結果も同様の方向性を示していました。現在では欧米だけではなく、日本を含めた世界中の研究グループが同様の関連性を確認しており、世界基準の事実となっています。―CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用2025年にブリュッセルで開催され、『Brussels International Declaration on Lp(a) Testing and Management』2)の策定につながった「Lp(a) Global Summit」において、Lp(a)測定を心血管疾患(CVD)の1次予防として行う費用対効果に関する世界初の解析結果が発表され3)、Lp(a)を広くスクリーニングすることで、多くの心筋梗塞や虚血性脳梗塞を回避し、結果として医療費の大幅な削減につながることが証明されたのです。たとえば、20~30代の若者が自身のLp(a)が高値だと知ったとしたら、「血圧をしっかり下げよう」「禁煙しよう」「糖尿病を予防しよう」という強力なモチベーションにもなります。当然ながら、心筋梗塞や脳梗塞を経験した2次予防の患者さんがLp(a)を知ることもきわめて重要です。現実として、心筋梗塞後の患者の一部で、1年後にコレステロール低下薬の服用を止めてしまっているというデータがあります。しかし、自分が「Lp(a)高値という高リスクを抱えている」と知っていれば、将来の再発を防ぐために“従来のリスク因子に対する治療を継続する”強い動機となり、結果としてアドヒアランスの向上にもつながります。つまり、Lp(a)測定はCVDリスクの1次予防と2次予防の双方に重要と言えるのです。Lp(a) Global Summitでの一枚後方左から2番目がKronenberg氏、前方左から3番目には斯波 真理子氏が写る画像を拡大する繰り返しになりますが(前編参照)、心血管イベントの絶対的な生涯リスクは、Lp(a)が高かったとしてもほかの従来の一般的なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、過体重、不健康な生活習慣など)を減らすことで低減させることができるため、Lp(a)自体は生活習慣で下げることができなくても、「ほかの従来の一般的なリスク因子を徹底的に管理しようという意識を高める」というアプローチを取ることができます。「Lp(a)は現在の薬で下げられないのに、なぜ測るのか?」という疑問を持つ人が医療者の中にも存在しますが、「Lp(a)が高くて下げられないからこそ、ほかの従来の危険因子を徹底的に管理しようという意識を高めるために、今すぐ測定すべきだ」というのが私の答えです。Lp(a)値を把握せず、従来のリスク因子に対する治療も十分に行わないというのは、まったく意味がありません。―専門家が伝えたい4つの重要プロセスそこで、多くの国際的なガイドラインとも一致する、私が皆さんにお伝えしたい重要なアドバイス4点を紹介しましょう。1.全員、人生で少なくとも一度はLp(a)を測定すべきである2.リスク評価の際は、Lp(a)の値だけでなく、全体のバランス、患者の全体像、そのほかのリスク因子も含めて総合的に判断する3.Lp(a)が高値である場合は、ほかのコントロール可能なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、喫煙など)を徹底的に治療・管理する4.Lp(a)高値がみつかった場合は、その「家族(親、子、兄弟姉妹)」も機会があれば早めに検査を行う測定タイミングは、初めて脂質プロファイル(健康診断などの血液検査)を取るときが理想的で、早ければ早いほどいいでしょう。Lp(a)は遺伝的要因が非常に強いため、家族歴こそが最大のヒントになります。もしご家族や親戚に若くして心筋梗塞や脳卒中を起こされた方がいる場合は、Lp(a)高値が関連している可能性が疑われます。ぜひ、そのような患者さんにLp(a)測定を強くお勧めします。次にLp(a)の基準値(カットオフ値)の考え方について解説しましょう。Lp(a)のリスクは、ある数値を境に白黒はっきり分かれるようなカットオフ値(閾値)ではなく、数値が高くなるにつれてリスクが上昇していく“連続的なもの”として捉える必要があります4)。たとえば、122nmol/Lだから安全で、127nmol/Lだから危険、という単純な生物学的区切りはありません。測定法や標準化の違いによって105や125という数字のブレは生じますが、本質的なリスクに大差はありません。絶対的な一律の区切りが必要なのではなく、患者個人の全体的なリスク(糖尿病などの有無や既往歴)に応じて、個別に数値を評価し対応する必要があるものです。LDL-Cの基準値も、まったくリスクのない人であれば欧州では「116mg/dL未満」が目安ですが、心筋梗塞の既往があれば「55mg/dL未満」、さらに、同時に末梢動脈疾患(PAD)などを合併していれば「40mg/dL未満」と患者背景やリスク因子の重なりによって目標値が変わるように、Lp(a)も同様に、ほかのリスク因子と合わせて総合的に判断すべきです。―測らない理由なんてあるのか?実際に心イベントを繰り返した患者さんが、「ガイドラインで推奨されていたのに、なぜ何年も前にLp(a)を検査してくれなかったのか」と医師に不満を訴えるような事例は世界で起きています。同様のことを繰り返さないためにも医師への啓発を進め、Lp(a)測定を通常の診療プロセスに組み込む必要があります。さらにポジティブなニュースとして、現在、Lp(a)自体を劇的(80~90%)に低下させる新薬の臨床試験が進んでいます。最終的な試験結果を待つ必要がありますが、これが承認されれば、2次予防の患者さんに対してさらなるイベント再発を防ぐ強力な選択肢を提供できるようになります。―スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること日本のスクリーニングは間違いなく他国の一歩先を行っています。日本には成人健康診査のみならず、小児期という非常に早い時期から検診が行われているケースもあると聞きました。これは国として大変重要な取り組みであり、今後Lp(a)のスクリーニングを導入していく上でも、素晴らしい土台です。これは私にとっても大きな学びとなり、欧州に戻ったらぜひ共有したいと思っています。しかし、「スクリーニングが行われていること」は一側面に過ぎず、「スクリーニング結果を踏まえ、どのように対応(治療・管理)するか」という点においては、まだギャップ(課題)があると感じています。これは日本に限った問題ではなく、世界中で直面している課題でもあります。政策立案者にとっては、常に自国のデータが重要となるため、一般住民を対象とした大規模コホートを構築し、「Lp(a)高値の有病率」「 Lp(a)が日本でもリスク因子である」ことを示す予後データを構築することが望まれます。後者についてはLEAP研究5)をはじめ、質の高い研究によるデータが多ければ多いほど、医療コミュニティでLp(a)が受け入れられる可能性は高くなります。日本には企業健診など、素晴らしいスクリーニングシステムがありますよね。肉体労働者から事務職まで(幅広い職域を)含む代表的な集団を雇用している大企業に研究協力してもらえれば、多数の対象者を迅速かつ低コストで集めることができます。このときに必要なのはLp(a)測定にかかる追加費用のみです。もちろん将来的には、医師がLp(a)測定を行うようになることが重要です。現在、日本動脈硬化学会が主導するLp(a)に関するコンセンサスステートメントが間もなく発刊される予定だと聞いています。これは欧米のガイドラインの「成人は生涯に少なくとも一度は必ずLp(a)を測定すべき」と完全に整合性の取れた内容になるでしょう。また、順天堂大学の三井田 孝氏らが日本国内での測定法の標準化を先導されていますが、国際的にもIFCC(国際臨床化学臨床検査医学連合)が中心となって、Lp(a)測定の標準化を進める取り組みが動いています。これらが整えば、次は実装段階に入っていきます。今後、日本からLEAP研究5)やLp(a)JAPAN study6)のサブ解析結果や心血管リスクに関する大規模な試験などが発信されれば、政策提言や医療者を説得する上でも非常に強力な材料になるでしょう。スクリーニングのさらなる普及を含め、日本における今後の発展に大いに期待しています。 参考 1) Kamstrup PR, et al. Circulation. 2008;117:176-184. 2) Kronenberg F, et al. Atherosclerosis. 2025;406:119218. 3) Morton JI, et al. Atherosclerosis. 2025:409:120447. 4) Kronenberg F, et al. Eur Heart J. 2022;43:3925-3946. 5) Yamada T, et al. J Atheroscler Thromb. 2026;33:1049-1059. 6) Kataoka Y, et al. Eur Heart J. 2026 May 24. [Epub ahead of print]

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第309回 ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省

<先週の動き> 1.ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省 2.OTC類似薬で患者負担増を懸念 患者調査で見直し要求/保団連 3.熊本地震で医療機関の断水続く 介護保険手続きなど緩和/厚労省 4.自治体病院の赤字2,180億円 物価・人件費高騰で「経営努力に限界」/全自病 5.イヌ飼育で要介護認知症リスク48%減 公的支出5,920億円削減試算/国環研ほか 6.豪雨で医療・介護施設91ヵ所被災 透析転院や手術制限続く/千葉県 1.ベースアップ評価料の請求に疑義 施設基準の再確認を/厚労省厚生労働省は、医療従事者の処遇改善を支援するベースアップ評価料などについて、医療機関が届け出た施設基準と実際の診療報酬請求の内容に齟齬が生じているケースが散見されるとして、8月診療分以降の請求前に改めて施設基準を確認するよう求めた。対象は外来・在宅ベースアップ評価料I・II、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料I・II、調剤ベースアップ評価料、看護職員処遇改善評価料など。2026年度診療報酬改定では、医療スタッフのさらなる賃上げを目的に、ベースアップ評価料の対象職種拡大や点数引き上げが行われた。外来・在宅ベースアップ評価料Iでは継続的に賃上げに取り組む医療機関をより高く評価し、入院ベースアップ評価料でも従来から賃上げを実施してきた医療機関を手厚く評価する仕組みが導入された。これに伴い、改定前から評価料を算定していた医療機関でも、6月以降に継続算定する場合は6月1日までに改めて施設基準を届け出る必要があった。しかし、6・7月診療分の請求では、届け出で受理された評価項目と実際に請求した評価料の種類や点数が一致しない例が確認された。厚労省は、改定対応が多岐にわたったことを踏まえ、この2ヵ月分については審査支払機関で特段の調整を行っていた。その一方で、8月診療分以降については、4月24日付の事務連絡や施設基準の届け出早見表を参照し、適切に請求するよう強く要請している。病院では、過去の賃上げ実績や入院ベースアップ評価料の選択状況によって、算定点数、入院料減算の有無、提出すべき様式が異なる。厚労省は、特設サイトでも必要書類や手続きを示しており、医療機関に対し自院で受理された施設基準とレセプト請求内容が一致しているか、請求前に改めて確認するよう呼びかけている。 参考 1) ベースアップ評価料等に係る診療報酬請求について(厚労省) 2) 令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について(同) 3) ベア評価料、診療報酬請求の内容に疑義が散見 受理された施設基準「改めて確認を」厚労省(CB news) 4) ベースアップ評価料の施設基準届出と請求との齟齬が頻発、8月分以降の請求に備え改めて自院の施設基準確認し、適切な請求を(Gem Med) 2.OTC類似薬で患者負担増を懸念 患者調査で見直し要求/保団連全国保険医団体連合会(保団連)は、厚生労働省が進めるOTC類似薬の保険給付見直しについて、患者への配慮措置が限定的で、慢性疾患の治療継続を妨げる恐れがあるとして制度の撤回・見直しを求めた。8月6~13日に実施した緊急調査では9,641人が回答し、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、慢性便秘症、高尿酸血症など慢性疾患で対象薬の処方を受ける患者が約85%を占めた。厚労省は、市販薬と成分などが類似する医療用医薬品77成分、約1,100品目について、通常の窓口負担とは別に追加料金を求める制度を検討している。がんや指定難病患者、長期使用が医学的に必要な場合などは配慮対象とする方針だが、原疾患と関連しない症状や季節性の花粉症などは対象外となるケースが多い。保団連調査では花粉症・アレルギー性鼻炎患者の42.1%がいずれの配慮類型にも該当しなかった。保団連は、アトピー性皮膚炎で症状に応じてステロイド外用薬を変更するケースや、喘息で抗アレルギー薬を断続的に併用する場合など、治療自体は継続していても個々の薬剤が「通年使用」とならず配慮対象から外れる点を問題視。慢性腰痛や関節リウマチなどで使用する湿布薬も長期使用であっても原則対象外となるため、患者負担が大きくなると訴えた。保団連の試算では、制度による医療費削減は年間約900億円、保険料軽減効果は加入者1人当たり年約400円にとどまる一方で、花粉症で内服薬、点眼薬、点鼻薬を併用すれば月約1,500円の負担増になる可能性がある。また、医師が過去の治療歴や処方期間を確認して配慮対象を判定する必要があり、診療・薬局業務の複雑化や患者とのトラブルも懸念される。保団連は「配慮する必要のない患者という線引きに医学的根拠はない」とし、必要な医療へのアクセスを損なわない制度設計を求めている。 参考 1) OTC類似薬の配慮措置に関する疾患、処方薬ごとの影響(保団連) 2) OTC類似薬の保険給付見直し、配慮措置の適用は限定的-保団連が9,641人の患者調査結果公表(日本医事新報) 3) 「働いて身を削り、次は健康を…」花粉症薬など“保険除外”で年数万円の負担増も?現役世代の家計圧迫に医師・患者ら撤回要望(弁護士JPニュース) 3.熊本地震で医療機関の断水続く 介護保険手続きなど緩和/厚労省最大震度7を記録した2026(令和8)年熊本地震の発生から3週間が経過したが、医療・介護施設への影響が続いている。厚生労働省によると、8月18日午前10時時点で熊本県内の18医療機関が断水しており、このうち14施設が八代市に集中している。被災医療機関はピーク時に92施設、断水は88施設に上った。県内ではDMAT15隊、DPAT12隊、災害支援ナース、JMAT、JRATなどが支援を継続している。高齢者施設でも960施設が建物被害や停電、断水、ガス停止などの影響を受けている。厚労省は、被災者への介護保険上の特例も相次いで示している。災害救助法が適用された10市10町1村の被保険者について、要介護・要支援認定の有効期間を市町村判断で最大12ヵ月延長でき、また、介護サービス事業者や介護施設などの指定更新についても、一定の権利の有効期限を2027年1月27日まで延長する特例を設けた。介護サービス利用料については、住宅の全半壊や床上浸水、主たる生計維持者の死亡・失職など一定の被害を受けた場合、市町村判断で自己負担1~3割を猶予・免除できる。すでに支払った利用料についても申請により還付が可能で、11月までの利用分などが対象となる。被保険者証を紛失した場合も氏名や生年月日などの確認でサービス利用を認める。さらに、公費負担医療の新規申請では、災害で申請が遅れた被災者について、医師の診断書に記載された日を受給開始日として取り扱える特例を設けた。厚労省は、被災者が医療・介護サービスや行政上の権利を失わないよう、柔軟な運用を自治体や関係機関に求めている。 参考 1) 熊本地震から3週間、18医療機関で断水(MEDIFAX) 2) 公費負担医療の新規申請、被災者は「診断日」を適用熊本地震で厚労省(同) 3) 令和8年熊本地震で被災した介護保険サービス利用者の利用料(1-3割負担)の猶予・免除、詳細な考え方提示-厚労省(Gem Med) 4) 令和8年熊本地震、要介護認定等の有効期間延長、介護サービス事業者等の指定更新の特例を認める-厚労省(同) 4.自治体病院の赤字2,180億円 物価・人件費高騰で「経営努力に限界」/全自病全国自治体病院協議会(全自病)がまとめた2025年度病院事業決算状況調査で、有効回答494病院の84%に当たる413病院が経常赤字となり、赤字額は計2,180億円に上った。前年度から赤字病院の割合は5ポイント改善したものの、依然として8割超が赤字で、自治体病院の厳しい経営環境が続いている。医業収益は前年度比3.3%増えた一方で、医業費用も3.0%増加。職員給与費は3.6%、材料費は5.3%増え、物価高と賃上げが収支を圧迫した。病床規模別では200床以上300床未満の病院がすべて経常赤字となった。大規模病院では改善がみられたが、500床以上でも8割超が赤字だった。経常収支の改善には、2025年度補正予算による1床当たり19万5,000円の賃上げ・物価高支援や救急受け入れ実績に応じた加算、国・都道府県の補助金、自治体からの繰入金増加が寄与した。その一方で、医業収支はなお大幅な赤字で、補助金がなければ経営はさらに厳しかったと全自病は推測している。全自病と全国自治体病院開設者協議会は8月19日、厚生労働省と総務省に緊急要望書を提出した。自治体病院は救急や不採算医療など地域医療の「最後の砦」を担う一方で、中東情勢悪化や円安を背景に医療用手袋、カテーテル、燃料などの価格上昇が続くとして、医療物資の安定確保や物価高対策、診療報酬の中間年改定を含む財政措置を要請。2026年度人事院勧告の月給3.51%引き上げが、ベースアップ評価料で想定した賃上げ水準を上回ることも経営悪化要因になると訴えた。地方交付税や特別交付税の拡充、公立病院の再編・統合、建て替え支援の強化も求めた。病院事業債の交付税措置対象となる建築単価上限は1平方メートル85万円に引き上げられたが、資材高騰でなお不足しているという。一方、四病院団体協議会は21日、2027年度税制改正に向け、社会保険診療報酬の消費税非課税制度を見直し、軽減税率やゼロ税率を含む課税取引へ転換するよう厚労省に要望した。仕入れや設備投資時に生じる控除対象外消費税が、病院建て替えや医療DX投資を妨げているとして、還付制度の創設を含む抜本的な制度見直しを要求。高額医療機器の特別償却制度の延長・対象拡大も求めており、病院団体は診療報酬、財政支援、税制の三面から経営基盤の立て直しを政府に迫っている。 参考 1) 自治体病院の8割が経常赤字 25年度、計2,000億円のマイナス続く(日経新聞) 2) 地域医療の砦となる自治体病院を守るため、物価高騰対応、期中の診療報酬改定含めた財政措置等の拡充等を要望-全自病(Gem Med) 3) 診療報酬の中間年改定含む対応を要望、2団体 物価高騰踏まえ 全自病など(CB news) 4) 控除対象外消費税の問題、抜本解決に向け重点要望病院を課税取引に 四病協(同) 5.イヌ飼育で要介護認知症リスク48%減 公的支出5,920億円削減試算/国環研ほかイヌを飼っている高齢者は、イヌを飼った経験がない高齢者に比べ、要介護認知症を発症するリスクが48%低い可能性があることが、国立環境研究所、東京都健康長寿医療センター、東京大学などの研究チームによる大規模疫学研究でわかった。研究成果は国際学術誌“International Journal of Environmental Research and Public Health”に掲載された。研究では、自宅で暮らす高齢者1万1,224人を「現在イヌを飼育」「過去に飼育」「飼育経験なし」の3群に分け、7.5年間追跡。要介護認知症の発症や死亡との関連を調べた。逆因果や把握できない交絡因子の影響を抑えるため操作変数解析を用いた結果、現在イヌを飼育している人の要介護認知症発症リスクは、飼育経験がない人と比べて48%低く、オッズ比は0.52だった。イヌとの暮らしには、散歩による身体活動の増加や外出機会の確保、地域住民との交流、精神的健康の維持などが伴うことから、研究チームはこうした健康行動が認知症発症の抑制に寄与している可能性があるとみている。さらに、高齢者のイヌ飼育率が13.4%まで増加すると仮定して予算への影響を試算したところ、イヌの飼育に伴う家計支出を含む社会全体の追加費用は4年間で約4兆6,300億円となる一方で、公的な医療・介護費は約5,920億円削減される可能性が示された。研究チームは今後、イヌそのものの効果に加え、散歩や地域交流などイヌとの生活を通じて生まれる行動に着目し、認知症予防や健康寿命延伸策への活用を検討する。ただし今回の結果は疫学研究に基づくもので、イヌを飼えば認知症を防げると直接証明したものではない。 参考 1) 「イヌを飼育している高齢者」は「飼育したことがない高齢者」に比べ認知症発症リスクが48%低い-長寿医療研究センター(Gem Med) 2) イヌと暮らす高齢者が増えると4年間で約5,920億円の公的支出削減-約1万1,200名の地域在住高齢者を対象とした7.5年間の大規模疫学研究-(東京都健康長寿医療センター) 6.豪雨で医療・介護施設91ヵ所被災 透析転院や手術制限続く/千葉県8月13日夜から14日にかけての記録的な千葉豪雨で、県内の病院や高齢者施設に浸水被害が相次ぎ、医療・介護提供体制への影響が長期化している。厚生労働省によると、25の医療施設と66の高齢者施設が被災し、発生から1週間以上経っても全面再開できない施設が残っている。八千代市のセントマーガレット病院では、地下機械室が浸水し、揚水ポンプやボイラーが故障。断水のため46人の透析患者が転院した。給水車を活用して18日から新規の長期入院患者の受け入れを再開したものの、透析センターの復旧は途上にあり、医療機器の滅菌にも通常より手間のかかる対応を強いられている。四街道市の介護老人保健施設でも給水ポンプや送迎車両が被災し、通所リハビリや入浴サービスを休止している。千葉大学医学部附属病院では地下の排水設備が冠水し、医療器具の洗浄装置が使用不能となった。19日には全手術を中止し、その後も手術件数を通常の半分程度に制限している。これを受け、東京科学大学病院は21日から院内の器材洗浄設備を提供。夜間の空き時間を利用してロボット支援手術器具などを洗浄し、1日約40件分の手術器材を処理できる体制を整えた。この支援は千葉大病院の設備復旧まで数週間続く見通し。今回の豪雨では、ハザードマップの浸水想定区域外にある医療機関でも被害が発生した。厚労省は「かつてなかった災害」とし、止水板の設置や地下設備の防水対策など、医療機関の水害対策強化が必要としている。 参考 1) 病院・高齢者施設 再開遠く 千葉豪雨 ボイラー故障透析患者転院(読売新聞) 2) 豪雨被災で手術制限中の千葉大病院へ、東京科学大病院が器材洗浄施設を提供…異例の国立大病院間支援(同) 3) 被害の千葉大病院支援 医療器具の洗浄設備貸し出し東京科学大(NHK)

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心房細動の新規発症、日本人の腎機能低下はどれくらい?

 新規発症の心房細動(AF)は、腎機能低下を加速させる可能性があるという研究結果が、「JAMA Network Open」に5月14日掲載された。 京都大学の森雄一郎氏らは、就労年齢の成人において、新規発症のAFとその後の腎機能低下との関連を検討するため、後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、AFの既往歴、心血管系疾患、末期腎疾患のない、洞調律の35~59歳の健診受診者とした。年次健診の間にAFの新規発症を認めた2万3,510人(AF発症群)を、AFを認めなかった11万7,550人(対照群)と1対5でマッチングした。 解析の結果、推算糸球体濾過量(eGFR)の年間低下率は、AF発症群の方が対照群より大きかった(−1.23mL/分/1.73m2対−0.94mL/分/1.73m2)。また、eGFRが30%以上低下した人の割合も、AF発症群で高かった(ハザード比2.91)。 著者らは、「今回の知見は、AF管理における心血管・腎・代謝の観点の重要性を示唆するものである。AFが慢性腎臓病進行に及ぼす累積的影響、およびAF治療による腎アウトカム改善効果については、さらなる検討が必要である」と述べている。 なお、2人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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既治療の進行腎細胞がん、ベルズチファン+レンバチニブがPFS改善(LITESPARK-011)/Lancet

 抗PD-1/PD-L1療法後に増悪した進行淡明細胞型腎細胞がん患者において、ベルズチファン+レンバチニブはカボザンチニブと比較し、全生存期間(OS)に有意差はなかったものの無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、安全性プロファイルは単剤投与の場合と同程度であったことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのRobert J. Motzer氏らLITESPARK-011 Investigatorsが実施した「LITESPARK-011試験」で示された。著者は、「ベルズチファン+レンバチニブは、抗PD-1/PD-L1療法後の進行淡明細胞型腎細胞がん患者に対する新たな標準治療となりうるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年8月12日号掲載の報告。カボザンチニブと比較、主要評価項目はPFSとOS LITESPARK-011試験は、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米および南米の25ヵ国、計184施設で実施した第III相無作為化非盲検実薬対照試験である。 対象は、18歳以上の切除不能な局所進行または転移のある淡明細胞型腎細胞がん患者で、1次または2次治療としての抗PD-1/PD-L1療法(VEGFRチロシンキナーゼ阻害薬併用の有無を問わない)後、または術前・術後補助療法としての抗PD-1/PD-L1療法の最終投与後6ヵ月以内に、病勢進行が認められた患者であった。 研究グループは、適格患者をベルズチファン(120mg)+レンバチニブ(20mg)併用群またはカボザンチニブ(60mg)群に、Web応答システム(ブロックサイズ4)を用いて1対1の割合で無作為に割り付け、病勢進行または許容できない有害事象が発現するまで1日1回経口投与した。 割り付けの層別因子は、国際転移腎細胞がんデータベースコンソーシアム(IMDC)の予後スコア(0、1~2、3~6)、抗PD-1/PD-L1療法の治療ライン(術後補助療法/術前術後補助療法/1次治療、2次治療)、および地域(北米、西ヨーロッパ、その他の地域)であった。 主要評価項目は、盲検下独立中央評価委員会判定によるPFSならびにOSの2つで、無作為化された全例を解析対象集団とし、PFSまたはOSのいずれかで有意差が認められた場合は主要評価項目達成と定義した。 安全性は、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された患者を対象に評価した。PFS中央値は14.8ヵ月vs.10.7ヵ月、ベルズチファン+レンバチニブ群で有意に延長 2021年3月5日~2023年9月1日に955例がスクリーニングされ、このうち747例が無作為化された(ベルズチファン+レンバチニブ群371例、カボザンチニブ群376例)。 患者背景は、565例(76%)が男性、182例(24%)が女性、651例(87%)が白人であった。 第2回中間解析(2025年4月9日データカットオフ、追跡期間中央値:29.0ヵ月、四分位範囲:23.7~34.9)において、PFS中央値はベルズチファン+レンバチニブ群14.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.2~16.6)、カボザンチニブ群10.7ヵ月(95%CI:9.2~11.1)であり、ベルズチファン+レンバチニブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.59~0.84、片側p<0.0001、有意水準片側p=0.0047)。 OS中央値は、ベルズチファン+レンバチニブ群34.9ヵ月(95%CI:27.5~未到達)、カボザンチニブ群27.6ヵ月(95%CI:24.0~31.4)で、両群間に有意差は認められなかった(HR:0.85、95%CI:0.68~1.05、片側p=0.061、有意水準片側p=0.0115)。 Grade3以上の有害事象は、ベルズチファン+レンバチニブ群で84%(311/370例)、カボザンチニブ群で83%(307/371例)に発現した。両群で最も発現割合が高かったGrade3以上の有害事象は、高血圧であった(ベルズチファン+レンバチニブ群31%、カボザンチニブ群29%)。副作用による死亡は、ベルズチファン+レンバチニブ群で2例(血栓性微小血管症、肺炎)、カボザンチニブ群で1例(喀血)報告された。

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CKM症候群の突然死リスク、フィネレノンで19%低下(FINE-HEART)

 非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンの有効性と安全性を検証した3件の大規模第III相試験の統合解析「FINE-HEART」の事前規定解析の結果、フィネレノンは心血管・腎・代謝(CKM)症候群における突然死リスクの低下と関連していたことが、イタリア・IRCCS Azienda Ospedaliero-Universitaria di BolognaのAlberto Foa氏らによって示された。これまでの研究で、フィネレノンはCKM症候群の心血管系および腎転帰を改善することが報告されているが、突然死に対する影響は明らかではなかった。Journal of the American College of Cardiology誌2026年8月4日号掲載の報告。 FINE-HEART試験に含まれる3件の試験は、FIDELIO-DKD試験(対象:2型糖尿病を伴う慢性腎臓病[CKD]患者)、FIGARO-DKD試験(対象:2型糖尿病を伴うCKD患者)、FINEARTS-HF試験(対象:左室駆出率が軽度低下した心不全[HFmrEF]/左室駆出率が保持された心不全[HFpEF]患者)であり、いずれもフィネレノンまたはプラセボの投与を受ける群に1:1に無作為に割り付けられた。本解析では、多変量Cox回帰モデルを用いて突然死の臨床的予測因子を特定し、フィネレノンの突然死に対する治療効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・中央値2.9年の追跡期間中に、1万8,991例の参加者のうち2,178例が死亡した。心血管死が41%を占め、その中で最も多かったのが突然死(47%)であった。・死亡者に占める突然死の割合は、CKMステージ2/3の患者では13.9%、ステージ4の患者では20.5%であった。ステージ4ではステージ2/3と比較して突然死リスクが約2.7倍高かった(ハザード比[HR]:2.7、95%信頼区間[CI]:1.99~3.67、p<0.001)。・突然死リスクの上昇と独立して関連した因子として、高齢、心不全・心房細動・心筋梗塞の既往、尿アルブミン-クレアチニン比高値、低収縮期血圧、eGFR低下およびHbA1c高値が挙げられた。・突然死はフィネレノン群188例(2.0%)とプラセボ群230例(2.5%)に発生し、フィネレノン群でリスクが19%有意に低下した(HR:0.81、95%CI:0.67~0.98、p=0.034)。 -フィネレノン群:100患者年当たり0.69件 -プラセボ群:100患者年当たり0.85件 -絶対発生率減少:100患者年当たり0.16件 -治療必要数:216・このリスク低減効果は、突然死以外の死亡を競合リスクとして考慮した解析でも一貫して認められた。また、各サブグループ間でも効果は一貫していた。 研究グループは、「これらの知見はCKM症候群患者に対する非ステロイド型MRAの使用を支持するものであり、心血管系および腎臓の保護にとどまらず不整脈による死亡リスクの軽減をもたらす可能性を示している」とまとめた。

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待機的心臓手術後のAKI発生、周術期ダパグリフロジン投与で抑制/JAMA

 待機的心臓手術を受ける患者において、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(10mg)の周術期における4回投与(手術日前日~術後2日目まで1日1回経口投与)はプラセボと比較して、術後7日間の急性腎障害(AKI)の発生を減少させたことが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのMaartina J. P. Oosterom-Eijmael氏らMERCURI-2 Study Groupが、同国で行った多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。待機的心臓手術を受ける患者の2~50%でAKI発生が認められるが、これを予防する薬物療法は確立されていない。SGLT2阻害薬は先行研究において、腎保護効果がある可能性やAKI発生の減少が示されていた。JAMA誌オンライン2026年7月30日号掲載の報告。オランダの7施設で無作為化試験、ダパグリフロジン群vs.プラセボ群 研究グループは、待機的心臓手術を受ける患者において、手術前日から開始するダパグリフロジンの投与が、プラセボとの比較において術後7日間のAKI発生を減少させるとの仮説について検証した。 試験はオランダの7施設(大学医療センター2施設、非大学病院5施設)で実施され、対象は待機的心臓手術を受ける18歳以上の成人患者とした。除外基準は1型糖尿病、2型糖尿病でBMI値25未満かつ1日複数回のインスリン注射を施行、ベースラインeGFRが20mL/分/1.73m2未満、糖尿病性ケトアシドーシスの既往、登録時評価の収縮期血圧100mmHg未満、SGLT2阻害薬服用中、SGLT2阻害薬に対する既知/疑いのアレルギーであった。また、妊娠(可能性を含む)・授乳中、妊娠を希望する女性なども除外された。 被験者を、1日1回経口投与のダパグリフロジン(10mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、手術前日(院内で午後3時~午後8時)に投与を開始し、術後2日目まで合計4回投与した(2回目は手術当日の朝、3回目は術後1日目、4回目は術後2日目)。 主要評価項目は、術後7日間におけるAKI発生の群間差とした。AKIは、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO診断基準)に基づき、術後48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL(26.5μmol/L)以上上昇、術後7日以内に血清クレアチニン値が基礎値より1.5倍以上増加、または術後6~12時間の尿量が0.5mL/kg/時未満と定義した。術後7日間のAKI発生率、28%vs.52%で有意差 被験者登録は2023年6月8日~2025年1月27日に行われ、最終追跡調査日は2025年5月16日であった。 784例が登録・無作為化され(各群392例)、778例(99%)が追跡評価を完了した(6例は手術を受けなかった)。ベースラインの両群の患者特性は類似しており、年齢中央値68歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、76%が男性、97%が白人であり、BMI中央値27(IQR:25~30)、eGFR中央値80mL/分/1.73m2(IQR:67~89)であった。 7日間のAKI発生は、ダパグリフロジン群111/392例(28%)、プラセボ群205/392例(52%)であった(相対リスク:0.54、95%信頼区間:0.45~0.65、p<0.001)。 最も多くみられた術後の有害事象は、心房細動および再手術であった。心房細動の発現率はダパグリフロジン群45%(176/392例)、プラセボ群45%(176/392例)であり、再手術率はそれぞれ11%(43/392例)、10%(39/392例)であった。

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5人に1人はLp(a)高値、CVD死を見落とさないために~Lp(a)の今をインタビュー(前編)

『2022 EAS Lp(a) Consensus Statement』を皮切りに、2025年3月にはLp(a) Global Summitにて『Lp(a)検査と管理に関するブリュッセル国際宣言』が採択された。さらに同年8月の『2025 ESC/EAS Focused Update』、翌2026年3月の『ACC/AHA脂質異常症ガイドライン』改訂へと続き、国際的にLp(a)測定の推奨強化へ向けた大きな潮流が生まれている。では、日本における現在のLp(a)測定のあり方は、諸外国と比較してどのような状況にあるのだろうか。日本版コンセンサスステートメントの発出を目前に控え、国内でLp(a)測定を普及・啓発していくうえで留意すべきポイントとは――。今回、Lp(a)研究の第一人者であるFlorian Kronenberg氏(オーストリア・インスブルック医科大学 遺伝疫学研究所 教授/所長)が来日。ケアネットの単独インタビューに応じ、Lp(a)測定の臨床的意義や最新の知見について語った。※本編は2回にわたってお届けします。後編「Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス」は8月27日公開予定です。INDEXLp(a)がこれほどまで注目される理由Lp(a)が心血管リスクを高めるメカニズムLp(a)高値の驚くべき頻度、Lp(a)の特性と啓発すべき対象者とはCVD死の多くは“予防可能”、Lp(a)測定を促す取り組み―Lp(a)がこれほどまで注目される理由欧州全体において、心血管疾患(CVD)が死因第1位であるという深刻な問題は広く認識されています。同時に、これらの死亡の多くは予防可能であることが分かっています。ところがCVD有病率の3分の1はコレステロールが原因である一方で、Lp(a)測定の理解、家族性高コレステロール血症(FH)への治療介入不足が原因で十分にコントロールできていないこと、一般市民における認知不足などが課題となっています。われわれは2025年3月24~25日にベルギー・ブリュッセルで開催された「Lp(a) Global Summit」において『Lp(a)検査と管理に関するブリュッセル国際宣言』を行いました1)。その宣言および複数のガイドライン推奨も踏まえて、欧州委員会(EU)は「EU Safe Hearts Plan(欧州心血管疾患対策計画)」において、加盟国に対してスクリーニング項目に何を含めるべきかなど、非常に明確な指針を打ち出し、そこにはLp(a)高値やFHのスクリーニングが盛り込まれました。それと同時に、上述の課題解決のためにもEUは国民自身が「リスクを知る」ことを非常に重要視しています。リスクを認識すれば、健康へのモチベーションやヘルスリテラシーが向上し、最終的には治療アドヒアランスの向上につながると捉えています。上記計画の中では何度もLp(a)やFHについて言及されており、加盟国がプログラムを実装できるよう委員会がサポートしています。具体的な認知向上への取り組みについては後述します(CVD死の多くは“予防可能”、Lp(a)測定を促す取り組み)。―Lp(a)が危険な理由、そのメカニズムと心血管リスクの過小評価Lp(a)濃度と心血管リスクには明確な相関関係があることが知られており、Lp(a)濃度が高くなればなるほど、心筋梗塞や脳卒中リスクが比例して高くなります。とくに125nmol/L(50mg/dL)を超えると、リスクが格段に跳ね上がります。その理由は、Lp(a)粒子1個あたりの動脈硬化惹起性が、通常のLDL粒子と比較して格段に高いためです。構造を見るとLDL粒子に似ていますが、Lp(a)には「アポリポ蛋白(a)」という特別なタンパク質が結びついており、さらに、多くの「酸化リン脂質(OxPL)」を搬送しているため、非常に動脈硬化を起こしやすい性質を持っているのです2,3)。(図1)注意すべきLDL様粒子の構造4)画像を拡大するただし、これまでの研究結果5)から、Lp(a)が高値であっても従来の一般的なリスク因子(高血圧、糖尿病、過体重、不健康な生活習慣など)に早期介入することで、CVDの絶対的生涯リスクが大きく低減することが示されています。たとえば、従来のリスク因子を多く持っている人でも、Lp(a)が低ければ、生涯の心血管イベントの絶対リスクは25%程度に留まります。一方で、同じように従来の一般的なリスク因子を多く持ち、Lp(a)が150mg/dLの高値である場合、生涯の絶対リスクは68%にまで跳ね上がってしまいます。もし、医師がその患者のLp(a)の数値を知らなければ、心血管リスクを劇的に「過小評価」してしまうことになります。しかし、従来の危険因子を持たずLp(a)濃度のみが高い人の場合、心血管イベントの生涯リスクは、欧州一般人口における心血管疾患死亡の平均リスクよりも低いんです。人々が過度に不安になるのを避けるためにも、また健康的なライフスタイルを継続し、可能な限り危険因子を増やさないよう心掛けてもらうためにも、この点は伝えるべきです。これに対し、従来の危険因子を有し、かつLp(a)が高い人に対しては、危険因子プロファイルの改善に徹底的に取り組むよう助言すべきです。(図2)Lp(a)濃度が高くても、心血管疾患リスク増加と必ずしも関連しない画像を拡大する(表1)UK Biobankデータ[図2参照]に基づく、Lp(a)と従来リスク因子の有無による介入方法画像を拡大する―Lp(a)高値の驚くべき頻度、特性や啓発すべき対象者とはLp(a)を啓発するにあたり、医療者(医師)側にも認識不足というギャップがあるため、医師と一般公衆の双方への啓発が必要です。現在、Lp(a)はさまざまなコンセンサスステートメントやガイドラインに織り込まれるようになり、「成人は生涯に少なくとも一度は必ずLp(a)を測定すべきだ」という方針が示されています。というのは、Lp(a)高値の頻度は“5人に1人”と言われており、決して“珍しい状態”ではないからです。たとえば、FHの発症頻度は地域によって異なりますが250~350人に1人と言われています。それに比べ、Lp(a)高値の人は周りを見渡せば必ず身近に該当者がいるレベルです。つまり、患者自身がLp(a)高値だと知ることは、適切な対処ができるという意味で「特権」とも言えるのです。次に、『生涯に1度の測定』が推奨される理由は、遺伝的にほぼ90%決定付けられ、生活習慣(食事や運動)によって数値を下げることはできないからであり、一般的には、信頼性が高く十分に標準化された測定法が用いられていることを前提とすれば、多くの場合、生涯に一度の測定で十分です。Lp(a)値には±20%程度の変動がみられますが、これは測定技術上の変動、検体採取方法(前分析条件)、および一部の生理学的変化に関連するものであるため、この変動を過大評価すべきではありません。ただし、以下の患者では、Lp(a)の再測定が推奨されます。◯腎機能障害の患者Lp(a)値が上昇。とくにネフローゼ症候群では、Lp(a)値が3~4倍に上昇することがある◯肝機能障害のある患者Lp(a)は肝臓で産生されるため、肝機能障害の場合にはLp(a)値が低下するこのほかにも、再測定の意義が問われることが多い対象者について、私見を交えながらお伝えしますと、以下のようになります。(表2)現時点での患者背景ごとの再測定の是非画像を拡大する―CVD死の多くは“予防可能”、Lp(a)測定を促す取り組みこれまでに説明してきたとおり、CVDとの戦いにおいて最も重要な柱となるのは、Lp(a)などのリスク因子のスクリーニングです。Lp(a)やコレステロール、血圧などの値は、心筋梗塞や脳卒中を発症するよりもかなり前の段階から、高値を示しているため、これらのリスク因子を早期に検出し、対処することがきわめて重要なのです。そのLp(a)測定に関する認知向上には多くの方法があります。Lp(a)に関する国内のコンセンサスステートメントを作成すること(日本でも数週間以内に利用可能になる予定)Lp(a)を、より幅広い医師を対象とした脂質異常症あるいは心血管疾患診療に関するガイドラインに組み込むこと(これは、脂質代謝および脂質管理・治療というより広い文脈の中にLp(a)を位置付けることを含む)さまざまな診療科・専門領域の学会・学術集会でLp(a)に関する講演の実施、また、Lp(a)測定を提供することLp(a)を説明するための、医師向けおよび患者向けの優れた情報資材を作成することLp(a)およびASCVDリスクに関する典型的な症例[Lp(a)の重要性を強く印象付けるもの]を紹介しながら、メディアでの注目を集めること患者団体と連携し、Lp(a)の重要性が伝わるような症例を紹介・発信することLp(a)アンバサダーグループを構築すること繰り返し、繰り返し、繰り返し…あらゆる機会を捉えて発信し続けることアンバサダーグループは、Lp(a)とともに生きる経験を持ち、Lp(a)について十分な教育を受けた人々です。私たちはFH EuropeおよびLp(a) International Task Forceにおいて、この取り組みを行っています。そして、世界中の人々に啓発を促すため、私自身は年間70回ほど、Lp(a)について講演を行っています。後編に続く―――。 参考 Kronenberg F, et al. Eur Heart J. 2022;43:3925-3946. Kronenberg F,et al. Atherosclerosis. 2023;374:107-120. 1) FH Europe Foundation:Say YES to better cardiovascular health across the world 2) Kronenberg F, et al. J Int Med. 2013;273:6-30. 3) Koschinsky ML, et al. Atherosclerosis. 2022;349:92-100. 4) Koschinsky ML, et al. Pharmacol Res. 2023;194:106843. 5) Kronenberg F, et al. Curr Atheroscler Rep. 2024;26:75-82.

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