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発症時間不明の脳梗塞、rt-PAで転帰改善か/NEJM

 発症時間不明の急性脳卒中患者において、脳虚血領域のMRI拡散強調画像とFLAIR画像のミスマッチを根拠に行ったアルテプラーゼ静脈内投与は、プラセボ投与と比べて、90日時点の機能的アウトカムは有意に良好であることが示された。ただし、頭蓋内出血は数的には多く認められている。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのGotz Thomalla氏らによる多施設共同無作為化二重盲険プラセボ対照試験「WAKE-UP試験」の結果で、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号で発表された。現行ガイドラインの下では、静脈内血栓溶解療法は、発症から4.5時間未満であることが確認された急性脳卒中だけに施行されている。研究グループは、発症時間が不明だが、MRI画像の特色として発症が直近の脳梗塞と示唆された患者について、静脈血栓溶解療法はベネフィットがあるかを検討した。MRI画像を基に介入、90日時点の対プラセボの機能的アウトカムを評価 研究グループは、ヨーロッパの8ヵ国で発症時間が不明の脳卒中患者を集め、アルテプラーゼ静脈内投与群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。すべての患者について、MRI拡散強調画像で虚血病変が認められるが、FLAIR像では明らかな高信号域(hyperintensity)が認められず、脳卒中発症がおそらく4.5時間未満と示唆された。なお、被験者のうち、血栓除去術が予定されていた患者は除外した。 主要評価項目は、修正Rankinスケールによる90日時点の神経学的障害スコア(スコア範囲:0[障害なし]~6[死亡])が良好なアウトカム(同スコアが0または1で定義)とした。副次アウトカムは、シフト解析による、アルテプラーゼ静脈内投与がプラセボよりも、修正Rankinスケールのスコアを低下する尤度とした。アウトカムは有意に改善、一方で死亡・頭蓋内出血例が有意ではないが上昇 試験は、2012年9月24日~2017年6月30日に、61施設で1,362例がスクリーニングを受けた時点で、試験継続の資金調達が困難と予想され早期に中止となった。当初計画では800例を見込んでいたが、無作為化を受けたのは503例であった(アルテプラーゼ群254例、プラセボ群249例)。 90日時点でアウトカム良好であった患者は、アルテプラーゼ群131/246例(53.3%)、プラセボ群102/244例(41.8%)であった(補正後オッズ比:1.61、95%信頼区[CI]:1.09~2.36、p=0.02)。90日時点の修正Rankinスケールスコアの中央値は、アルテプラーゼ群1、プラセボ群2であった(補正後共通オッズ比:1.62、95%CI:1.17~2.23、p=0.003)。 一方で死亡は、アルテプラーゼ群10例(4.1%)、プラセボ群3例(1.2%)が報告された(オッズ比:3.38、95%CI:0.92~12.52、p=0.07)。また症候性頭蓋内出血は、アルテプラーゼ群2.0%、プラセボ群0.4%で認められた(オッズ比:4.95、95%CI:0.57~42.87、p=0.15)。

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TIA/脳梗塞患者、長期の心血管リスクは?/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)および軽度虚血性脳卒中を発症後の心血管イベントの長期的なリスクは知られていない。フランス・パリ第7大学のPierre Amarenco氏らは、21ヵ国のレジストリデータを解析し、TIA/軽度虚血性脳卒中の発症から1年後の心血管イベントのリスクが、5年後も持続していることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号に掲載された。脳卒中後の新たなイベントのリスクは、発症後10日間は増大し、その後は発症後1年まで比較的安定するとされるが、1年以降の脳卒中のリスクを評価した研究は少なく、再発リスクを検討した試験の多くは単施設で行われたものだという。5年フォローアップした3,847例のデータを解析 本研究(TIAregistry.orgプロジェクト)では、2009~11年にTIAおよび軽度虚血性脳卒中患者4,789例を登録した21ヵ国のレジストリデータを解析し、2016年に1年時のアウトカムの結果を報告しており、今回は5年時の長期的なアウトカムの報告が行われた(AstraZeneca社など3社の助成による)。 レジストリへの登録前7日以内にTIA/軽度虚血性脳卒中を発症した患者を対象とした。1年時のアウトカム研究に参加した61施設のうち、5年時に登録患者の50%以上のフォローアップデータを有していた42施設を選出した。 主要アウトカムは、非致死的脳卒中、非致死的急性冠症候群、心血管死のうち最初に発生したイベントの複合であった。 5年フォローアップには3,847例(80.3%)が含まれた。各施設の5年フォローアップ患者の割合の中央値は92.3%(IQR:83.4~97.8)だった。心血管イベント発生率、1年時が6.4%、2〜5年時も6.4% 対象の平均年齢は66.4±13.2歳で、59.8%が男性であった。1年コホートのうち5年解析に含まれなかった患者は、5年解析に含まれた患者に比べ、高血圧、脂質異常症、喫煙者が少なく、修正Rankinスケール、NIH脳卒中スケール、ABCD2のスコアが低かった。 5年時の主要アウトカムのイベント発生は469例(心血管死:96例、非致死的脳卒中:297例、非致死的急性冠症候群:76例)に認められ、推定累積イベント発生率は12.9%(95%信頼区間[CI]:11.8~14.1)であった。このうち、235例(50.1%)は2~5年の期間に発症した。絶対イベント発生率は、1年時が6.4%であり、2~5年の期間でも6.4%だった。 5年時までに、脳卒中は345例が発症し、推定累積イベント発生率は9.5%(95%CI:8.5~10.5)であった。このうち、149例(43.2%)が2~5年の期間に発症した。心筋梗塞は、5年時までに39例が発症した。 全死因死亡は373例(推定5年累積イベント発生率:10.6%)、心血管死は96例(2.7%)、脳卒中またはTIAの再発は621例(16.8%)、急性冠症候群は84例(2.4%)に認められ、大出血は53例(1.5%)、頭蓋内出血は39例(1.1%)にみられた。 多変量解析では、同側大動脈のアテローム性動脈硬化(p=0.001)、心原性脳塞栓症(p=0.007)、ベースラインのABCD2スコア(0~7点、点数が高いほど脳卒中のリスクが高い)≧4点(4〜5点:p=0.01、6〜7点:p=0.04)が、2~5年の期間の脳卒中再発リスクの独立した予測因子であったが、神経画像上の脳病変はリスクの上昇とは関連しなかった。 著者は、「TIAおよび軽度虚血性脳卒中の患者では、心血管イベントのリスクが5年にわたり持続しており、イベントの半数は2〜5年の期間に発生していた」とまとめ、「継続的な2次予防策が、脳卒中の再発を抑制する可能性がある」と指摘している。

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脳梗塞/TIA患者へのクロピドグレル+アスピリンは?/NEJM

 軽度虚血性脳卒中またはハイリスク一過性脳虚血発作(TIA)患者に対し、クロピドグレル+アスピリン投与はアスピリン単独投与に比べ、90日主要虚血イベントリスクを低下するが、一方で重大出血リスクを増大することが示された。米国・テキサス大学のS. Claiborne Johnston氏らが、10ヵ国、約5,000例の患者を対象に行った無作為化比較試験で明らかにした。クロピドグレル+アスピリンの抗血小板薬2剤併用療法は、軽度虚血性脳卒中またはTIA発症後3ヵ月間の脳卒中再発を抑制する可能性が示唆されていた。実際に、中国人を対象とした試験では再発リスクの低下が示されたが、研究グループは、国際的な検討で同療法の有効性を調べた。NEJM誌オンライン版2018年5月16日号掲載の報告。10ヵ国、269の医療機関で試験 研究グループは2010年5月28日~2017年12月19日に、10ヵ国、269ヵ所の医療機関を通じて、軽度虚血性脳卒中またはハイリスクTIA患者4,881例を対象に、無作為化比較試験を実施した。 被検者を無作為に2群に分け、クロピドグレル(初日投与量600mg、その後75mg/日)+アスピリン(50~325mg/日)、またはアスピリン(同用量)のみを、それぞれ投与した。 有効性に関する主要評価項目は、90日後の、虚血性脳卒中・心筋梗塞・虚血性血管イベントで定義した主要虚血イベントの複合だった。予定被験者数84%時点で、重大出血リスク増大により試験中止 試験は予定した被験者数が84%に達した時点で、安全性モニタリング委員会が、クロピドグレル+アスピリン群がアスピリン単独群に比べ、90日時点での主要虚血イベントリスクを低下するものの、重大出血リスクは増大すると判断し、早期に中止・終了となった。 主要虚血イベントの発生は、アスピリン単独群で2,449例中160例(6.5%)だったのに対し、クロピドグレル+アスピリン群では2,432例中121例(5.0%)と有意に低下した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.59~0.95、p=0.02)。また、大半のイベントが、初回イベントから1週間以内の発生だった。 一方、重大出血の発生は、アスピリン単独群10例(0.4%)に対し、クロピドグレル+アスピリン群は23例(0.9%)で認められた(HR:2.32、95%CI:1.10~4.87、p=0.02)。

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第2回 意識障害 その2 意識障害の具体的なアプローチ 10’s rule【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+意識障害のアプローチ意識障害は非常にコモンな症候であり、救急外来ではもちろんのこと、その他一般の外来であってもしばしば遭遇します。発熱や腹痛など他の症候で来院した患者であっても、意識障害を認める場合には必ずプロブレムリストに挙げて鑑別をする癖をもちましょう。意識はバイタルサインの中でも呼吸数と並んで非常に重要なバイタルサインであるばかりでなく、軽視されがちなバイタルサインの1つです。何となくおかしいというのも立派な意識障害でしたね。救急の現場では、人材や検査などの資源が限られるだけでなく、早期に判断することが必要です。じっくり考えている時間がないのです。そのため、意識障害、意識消失、ショックなどの頻度や緊急性が高い症候に関しては、症候ごとの軸となるアプローチ法を身に付けておく必要があります。もちろん、経験を重ね、最短距離でベストなアプローチをとることができれば良いですが、さまざまな制約がある場面では難しいものです。みなさんも意識障害患者を診る際に手順はあると思うのですが、まだアプローチ方法が確立していない、もしくは自身のアプローチ方法に自信がない方は参考にしてみてください。アプローチ方法の確立:10’s Rule1)私は表1の様な手順で意識障害患者に対応しています。坂本originalなものではありません。ごく当たり前のアプローチです。ですが、この当たり前のアプローチが意外と確立されておらず、しばしば診断が遅れてしまっている事例が少なくありません。「低血糖を否定する前に頭部CTを撮影」「髄膜炎を見逃してしまった」「飲酒患者の原因をアルコール中毒以外に考えなかった」などなど、みなさんも経験があるのではないでしょうか。画像を拡大する●Rule1 ABCの安定が最優先!意識障害であろうとなかろうと、バイタルサインの異常は早期に察知し、介入する必要があります。原因がわかっても救命できなければ意味がありません。バイタルサインでは、血圧や脈拍も重要ですが、呼吸数を意識する癖を持つと重症患者のトリアージに有効です。頻呼吸や徐呼吸、死戦期呼吸は要注意です。心停止患者に対するアプローチにおいても、反応を確認した後にさらに確認するバイタルサインは呼吸です。反応がなく、呼吸が正常でなければ胸骨圧迫開始でしたね。今後取り上げる予定の敗血症の診断基準に用いる「quick SOFA(qSOFA)」にも、意識、呼吸が含まれています。「意識障害患者ではまず『呼吸』に着目」、これを意識しておきましょう。気管挿管の適応血圧が低ければ輸液、場合によっては輸血、昇圧剤や止血処置が必要です。C(Circulation)の異常は、血圧や脈拍など、モニターに表示される数値で把握できるため、誰もが異変に気付き、対応することは難しくありません。それに対して、A(Airway)、B(Breathing)に対しては、SpO2のみで判断しがちですが、そうではありません。SpO2が95%と保たれていても、前述のとおり、呼吸回数が多い場合、換気が不十分な場合(CO2の貯留が認められる場合)、重度の意識障害を認める場合、ショックの場合には、確実な気道確保のために気管挿管が必要です。消化管出血に伴う出血性ショックでは、緊急上部内視鏡を行うこともありますが、その際にはCの改善に従事できるように、気管挿管を行い、AとBは安定させて内視鏡処置に専念する必要性を考える癖を持つようにしましょう。緊急内視鏡症例全例に気管挿管を行うわけではありませんが、SpO2が保たれているからといって内視鏡を行い、再吐血や不穏による誤嚥などによってAとBの異常が起こりうることは知っておきましょう。●Rule2 Vital signs、病歴、身体所見が超重要! 外傷検索、AMPLE聴取も忘れずに!症例の患者は、突然発症の右上下肢麻痺であり、誰もが脳卒中を考えるでしょう。それではvital signsは脳卒中に矛盾ないでしょうか。脳卒中に代表される頭蓋内疾患による意識障害では、通常血圧は高くなります(表2)2)。これは、脳卒中に伴う脳圧の亢進に対して、体血圧を上昇させ脳血流を維持しようとする生体の反応によるものです。つまり、脳卒中様症状を認めた場合に、血圧が高ければ「脳卒中らしい」ということです。さらに瞳孔の左右差や共同偏視を認めれば、より疑いは強くなります。画像を拡大する頸部の診察を忘れずに!意識障害患者は、「路上で倒れていた」「卒倒した」などの病歴から外傷を伴うことが少なくありません。その際、頭部外傷は気にすることはできても、頸部の病変を見逃してしまうことがあります。頸椎損傷など、頸の外傷は不用意な頸部の観察で症状を悪化させてしまうこともあるため、後頸部の圧痛は必ず確認すること、また意識障害のために評価が困難な場合には否定されるまで頸を保護するようにしましょう。画像を拡大する意識障害の鑑別では、既往歴や内服薬は大きく影響します。糖尿病治療中であれば低血糖や高血糖、心房細動の既往があれば心原性脳塞栓症、肝硬変を認めれば肝性脳症などなど。また、内服薬の影響は常に考え、お薬手帳を確認するだけでなく、漢方やサプリメント、家族や友人の薬を内服していないかまで確認しましょう3)。●Rule3 鑑別疾患の基本をmasterせよ!救急外来など初診時には、(1)緊急性、(2)簡便性、(3)検査前確率の3点に意識して鑑別を進めていきましょう。意識障害の原因はAIUEOTIPS(表4)です。表4はCarpenterの分類に大動脈解離(Aortic Dissection)、ビタミン欠乏(Supplement)を追加しています。頭に入れておきましょう。画像を拡大する●Rule4 意識障害と意識消失を明確に区別せよ!意識障害ではなく意識消失(失神や痙攣)の場合には、鑑別診断が異なるためアプローチが異なります。これは、今後のシリーズで詳細を述べる予定です。ここでは1つだけおさえておきましょう。それは、意識状態は「普段と比較する」ということです。高齢者が多いわが国では、認知症や脳卒中後の影響で普段から意思疎通が困難な場合も少なくありません。必ず普段の意識状態を知る人からの情報を確認し、意識障害の有無を把握しましょう。前述の「Rule4つ」は順番というよりも同時に確認していきます。かかりつけの患者さんであれば、来院前に内服薬や既往を確認しつつ、病歴から◯◯らしいかを意識しておきましょう。ここで、実際に前掲の症例を考えてみましょう。突然発症の右上下肢麻痺であり、3/JCSと明らかな意識障害を認めます(普段は見当識障害など特記異常はないことを確認)。血圧が普段と比較し高く、脈拍も心房細動を示唆する不整を認めます。ここまでの情報がそろえば、この患者さんの診断は脳卒中、とくに左大脳半球領域の脳梗塞で間違いなしですね?!実際にこの症例では、頭部CT、MRIとMRAを撮影したところ左中大脳動脈領域の急性期心原性脳塞栓症でした。診断は容易に思えるかもしれませんが、迅速かつ正確な診断を限られた時間の中で行うことは決して簡単ではありません。次回は、10’s Ruleの後半を、陥りやすいpitfallsを交えながら解説します。お楽しみに!1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中. 中外医学社;2015.2)Ikeda M, et al. BMJ. 2002;325:800.3)坂本壮ほか. 月刊薬事. 2017;59:148-156.コラム(2) 相談できるか否か、それが問題だ!「報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)」が大事! この単語はみなさん聞いたことがあると思います。何か困ったことやトラブルに巻き込まれそうになったときは、自身で抱え込まずに、上司や同僚などに声をかけ、対応するのが良いことは誰もが納得するところです。それでは、この3つのうち最も大切なのはどれでしょうか。すべて大事なのですが、とくに「相談」は大事です。報告や連絡は事後であることが多いのに対して、相談はまさに困っているときにできるからです。言われてみると当たり前ですが、学年が上がるにつれて、また忙しくなるにつれて相談せずに自己解決し、後で後悔してしまうことが多いのではないでしょうか。「こんなことで相談したら情けないか…」「まぁ大丈夫だろう」「あの先生に前に相談したときに怒られたし…」など理由は多々あるかもしれませんが、医師の役目は患者さんの症状の改善であって、自分の評価を上げることではありません。原因検索や対応に悩んだら相談すること、指導医など相談される立場の医師は、相談されやすい環境作り、振る舞いを意識しましょう(私もこの部分は実践できているとは言えず、書きながら反省しています)。(次回は6月27日の予定)

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心房細動、サイナスになっても 脳梗塞リスク 高いまま/BMJ

 正常洞調律を取り戻し回復した状態(resolved)であると診断された心房細動(AF)患者について、非AF患者と比べると、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)のリスクは有意に高いままであることが、英国・バーミンガム大学のNicola J. Adderley氏らによる、同国の一般診療所(GP)で集められたデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。リスクの増大は、再発の記録がなかった患者でも認められたという。AFは明らかな回復後も再発の可能性があるが、そのような患者で脳卒中/TIAリスクの増大が認められるのかは明らかになっておらず、ガイドラインでも、同患者に関する治療は明示されていない。BMJ誌2018年5月9日号掲載の報告。英国GPデータベースを用いて分析 研究グループは、resolved AF患者の脳卒中/TIAの発生率、および全死因死亡率を調べるとともに、非resolved AFおよび非AF患者のアウトカムと比較した。 GPが関与したデータベース「The Health Improvement Network」の2000年1月1日~2016年5月15日のデータから、脳卒中/TIA既往のない18歳以上の成人患者で、resolved AF患者1万1,159例と、対照群としてAF患者1万5,059例、非AF患者2万2,266例を特定し分析した。 主要アウトカムは、脳卒中/TIAの発生で、副次アウトカムは、全死因死亡とした。抗凝固薬使用の継続を提言するようガイドラインを見直すべき resolved AF患者の補正後脳卒中/TIAの発生率比は、対AF患者が0.76(95%信頼区間[CI]:0.67~0.85、p<0.001)、対非AF患者は1.63(同:1.46~1.83、p<0.001)であった。 また、resolved AF患者の補正後死亡の発生率比は、対AF患者が0.60(同:0.56~0.65、p<0.001)、対非AF患者は1.13(同:1.06~1.21、p<0.001)であった。 さらに、再発のなかったresolved AF患者について、補正後の脳卒中/TIA発生率比は、対非AF患者で1.45(同:1.26~1.67、p<0.001)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「resolved AF患者について、抗凝固薬の使用継続を提言するよう、ガイドラインを改訂すべきである」とまとめている。

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原因不明の脳梗塞へのPFO閉鎖術、有効な患者の特徴は: The DEFENSE-PFO Trial【Dr.河田pick up】

 原因が特定されない脳梗塞、いわゆるCryptogenic strokeに対する卵円孔開存(PFO)閉鎖術が有効であることが、いくつかの無作為化試験、メタアナリシスの結果示されている1)。 今回韓国のグループから報告された論文では、よりハイリスクなPFOを有するCryptogenic stroke患者に対するカテーテルを用いた経皮的閉鎖術の有効性を、無作為化試験で検討している。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2018年2月28日号に掲載。経食道エコーで形態からハイリスクなPFOを同定 Cryptogenic stroke患者に対するPFO閉鎖術が脳梗塞の再発を防ぐという最近の報告は、どのような患者がPFO閉鎖術を受けるべきかという疑問を残している。本研究では、経食道エコーを用いてPFOの形態学的特徴を元にPFOを閉鎖することで、患者が恩恵を受けられるかどうかが評価された。薬物療法群と経皮的PFO閉鎖術群を比較 Cryptogenic strokeとハイリスクなPFOを有する患者が、カテーテルを使用した経皮的PFO閉鎖術群と薬物療法単独群に振り分けられた。ハイリスクなPFOには心房中隔瘤、中隔の可動性(いずれかの心房への一過的な中隔の移動が10㎜以上)もしくはPFOの大きさ(一次中隔から二次中隔への最大距離が2㎜以上)が含まれた。主要評価項目は2年のフォローアップ期間中の脳梗塞、心血管死もしくはThrombolysis in Myocardial Infarction (TIMI)で定義された大出血の複合エンドポイントとした。脳梗塞などのイベントは薬物療法群のみで発生 2011年9月~2017年10月までの期間、120例の患者(平均年齢、51.8歳)がPFO閉鎖術群と薬物療法群に無作為に割りつけられた。PFOの大きさ、中隔瘤の頻度(13.3% vs. 8.3%, p=0.56)、そして中隔の可動性(45.0% vs. 46.7%, p>0.99)は両群間で同等であった。すべてのPFO閉鎖手技は成功した。主要評価項目のイベントは薬物療法群でのみ発生した(60例中6例、2年間でのイベント発生率:12.9% [log-rank p=0.013]、2年間での脳梗塞発生率:10.5% [p=0.023])。薬物療法群で発生したイベントは、脳梗塞5件、脳出血1件、TIMI基準大出血2件とTIA1件であった。非致死的な手技に関連した合併症は心房細動2件、心嚢液の貯留1件と仮性動脈瘤1件であった。著者らは「ハイリスクな特徴を有したPFOの閉鎖は、脳梗塞の再発と主要評価項目のイベント発生を減少させた」と結論している。ただ、本研究は2施設のみで行われ、早期終了しており症例数も少ないため、大規模な前向き研究による検討が必要と考えられる。■参考1)Mojadidi MK, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71; 1035-1043. (カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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線溶薬の種類と役割:脳と心臓は違うのかな?(解説:後藤信哉氏)-853

 脳梗塞、心筋梗塞とも臓器灌流血管の血栓性閉塞による。閉塞血栓を溶解し、臓器血流を再開させれば虚血障害は改善されると予想される。心臓ではフィブリン特異性のないストレプトキナーゼによる心筋梗塞急性期死亡率の減少が大規模ランダム化比較試験にて示され、線溶薬は1970~80年代にブームとなった。損傷、修復を繰り返す血管壁に、線溶を過剰作用させると出血する。心筋梗塞急性期の線溶療法では、頭蓋内出血が問題となった。この問題はフィブリン選択性の高いt-PA、さらに理論上フィブリン選択性をもっと向上させて薬剤を使っても解決できなかった。救急車での搬送中に線溶療法をして再開通が起こると、心室細動などの不整脈も起こることがわかって、心臓領域における線溶療法は廃れた。日本のように医療アクセスのよい国では、圧倒的多数の急性心筋梗塞は急性期にカテーテル治療により再灌流を受ける時代となった。 脳領域の再灌流療法の普及は心臓に遅れた。日本ではCTなどが普及していたが、症状では脳梗塞と脳出血の弁別ができないことも理由であった。太い血管に原因があれば、脳梗塞でも急性期カテーテル治療は可能となった。それでも脳領域では、カテーテル治療前に線溶療法をして早期再灌流を重視している現状にある。 今回の論文ではフィブリン選択性が高く、血中半減期の長いtenecteplase使用後の方が初期に開発されたt-PA使用時よりも、カテーテル治療開始時の血行再開通率、神経学的予後ともによいことが示された。心臓では、カテーテル治療前に線溶療法を施行すると予後は悪化する。再灌流までの時間は短縮するが、心筋内出血、線溶亢進に伴う反跳性の血栓性亢進などが原因と想定された。脳と心臓は違うのであろうか? 微小血管障害による心筋梗塞はあるかも知れないが、臨床的に注目されていない。本研究では、カテーテルによる血栓除去術の対象となった大血管の病変は、全体の10%に過ぎなかった。脳梗塞の急性期治療は心筋梗塞急性期治療を後追いしているように見えるが、カテーテル治療の適応範囲がまだ狭い。線溶療法と同時に普及したカテーテル治療により、線溶療法の質の評価が不十分となった心臓と異なり、脳では線溶療法の質の評価が詳細になされるかも知れない。凝固系、血小板とともに血栓性疾患の発症において重要な役割を演じる線溶系の役割が、脳領域の治療の進歩とともに詳細に解明されることを期待したい。

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治療前のLDL-コレステロール値でLDL-コレステロール低下治療の効果が変わる?(解説:平山篤志氏)-852

 2010年のCTTによるメタ解析(26試験、17万人)でMore intensiveな治療がLess intensiveな治療よりMACE(全死亡、心血管死、脳梗塞、心筋梗塞、不安定狭心症、および血行再建施行)を減少させたことが報告された。ただ、これらはすべてスタチンを用いた治療でLDL-コレステロール値をターゲットとしたものではないこと、MACEの減少も治療前のLDL-コレステロール値に依存しなかったことから、2013年のACC/AHAのガイドラインに“Fire and Forget”として動脈硬化性血管疾患(ASCVD)にはLDL-コレステロールの値にかかわらず、ストロングスタチン使用が勧められる結果になった。 しかし、CTT解析後にスタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを用いたIMPROVE-IT、さらにはPCSK9阻害薬を用いたFOURIER試験など、非スタチンによるLDL-コレステロール低下の結果が報告されるようになり、今回新たな34試験27万人の対象でメタ解析の結果が報告された(CTTの解析に用いられた試験がすべて採用されているわけではない)。 その結果、More intensiveな治療がLess intensiveな治療よりアウトカムを改善したことはこれまでの解析と同じであったが、全死亡、心血管死亡において治療前のLDL-コレステロール値が高いほど有意に死亡率低下効果が認められた。心筋梗塞の発症も同様の結果であったが、脳梗塞については治療前の値の差は認められなかった。治療前のLDL-コレステロール値について、CTTによれば値にかかわらず有効であるとされていたが、本メタ解析の結果はLDL-コレステロール値が100mg/dL以上であれば死亡率も低下するということを示している。 近年、IMPROVE-ITもFOURIER試験も心筋梗塞や脳梗塞の発症は有意に低下させるが、死亡率低下効果がないのは、治療前のLDL-コレステロール値が100mg/dLであることが要因であると推論している。 このメタ解析は、LDL-コレステロール値の心血管イベントへ関与を示唆するとともに、“Lower the Better”を示したものである点で納得のいくものである。しかし、4Sが発表された1994年とFOURIERが発表された2017年の20年以上の間に、急性心筋梗塞の死亡率が再灌流療法により減少したこと、心筋梗塞の定義がBiomarkerの導入で死亡には至らない小梗塞まで含まれるようになったことも、LDL-コレステロール減少効果で死亡率に差が出なくなった原因かもしれない。 今後のメタ解析は、アウトカムが同一であるというだけなく、時代による治療の変遷も考慮した解析が必要である。

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思い込みを正すことは難しい:MRIとペースメーカーの場合(解説:香坂俊氏)-849

 あるとき誰かが思った。 「MRIは強力な磁場を発生させるから、電子機器であるペースメーカーやICDには当然よくないだろう」 MRIでは磁場を発生させてプロトンの「回転」を計測する。しかし、体内に金属性のペースメーカーがあると、強力な磁場を周囲で発生させて先端のリード部分が熱を持ってしまう。すると「心筋への電気伝導に問題がおきるのではないか?」という危惧は当然出ることになる。また、ペースメーカーやICDのジェネレーターは、実は磁石を上に置くとスイッチオフ(※)できるようになっているので、「ジェネレーター部分のプログラムに異常が発生するのではないか?」という心配もある。※機種によって微妙に仕様が異なり、VVIという心室のみのペーシングに切り替わる設定の製品もある。 こういった経緯から、永らくペースメーカーやICDが植え込まれた患者に対するMRIは禁忌とされてきた(一部の最新の機種を除く)。しかし、かねてよりやってみればそれほど危険なものでもないのではないかということも言われており、その実証に挑んだのが、Johns Hopkins大学のNazarian医師らで、このグループはまず50例程度のペースメーカー・ICD患者を安全に行いえたということを2006年Circulation誌(循環器領域で最もインパクトのある雑誌)に報告した。その後、さらに症例データの蓄積を進め、数百という単位の報告を2011年Annals of Internal Medicine誌(一般内科領域で最もインパクトのある雑誌)に報告した。そして今回、1,509例での報告をNEJM誌(医学全領域で最もインパクトのある雑誌)に行ったという運びである。 1,509例(MRIの実施は2,103件)で安全性を担保したプロトコール下でMRIを行った結果として、最新型でないペースメーカーやICDであったとしてもMRIを行ってトラブルを起こしたのは0.4%(2,103件中9件)にとどまり、その内容はその設定がリセットされたというものであった。この9件のうち1件を除きすべてのケースで再設定可能であり、大きなトラブルとはならなかった(再設定できなかった1例はバッテリーが切れる直前のデバイス)。さらに1%でP波の減高がみられたが、長期的にはまったく影響がなかったという。 「誰か」がMRIとペースメーカーやICDの危険性について想像し、そのことをひっくり返すのに2006年の最初のNazarian医師らによる報告から10年以上を要したことになる。脳梗塞などさまざまな病態でMRIは命を救いうる検査であり、このことは多くの循環器患者にとっては朗報となる。 なお、注意事項として、すべてのMRIはすぐにペースメーカーやICDのプログラム変更を行うことができる技師か不整脈専門医の監督下で行われた。MRIの撮影を行う際のモードは、ペーシング依存の患者では非同期モード、それ以外の患者はVVI[レート40]と設定され、ICDの頻脈性不整脈の治療機能も撮影時は無効と設定された。

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血栓回収ハンズオン【Dr. 中島の 新・徒然草】(218)

二百十八の段 血栓回収ハンズオン「血栓回収のハンズオンをやるから興味ある方は参加してください」と大学の脳外科医局から関連病院に呼びかけがあったので、ある土曜日に出かけてきました。血栓回収というのは、脳梗塞の急性期に血管内治療により主幹動脈から血栓を機械的に除去して脳血流の再灌流を図る治療法です。これまでは t-PA を静脈注射して血栓溶解を図っていたのですが、次第に血栓回収療法がメインになりつつあるように思います。脳外科医を名乗るからにはこの治療ができなくてはならない、ということで昨年から大学の医局主催で練習会が始まりました。昨年は70人の参加、今年はそれ以上の参加者数だということで、その人気ぶりというか皆の感じている必要性がよく分かります。昨年は70代の先生も参加して周囲を驚かせていましたが、今年の最年長は60代、某病院の副院長先生でした。また医学生や初期研修医向けのブースもあり、シミュレーターやゲームを使って血管内治療の面白さを体感してもらい、できればリクルートにつなげようという試みがなされていました。会場は、とあるビルの1フロアです。現役の脳外科医用には、ガイディングカテーテルのシステム組立て用のテーブルと模型から血栓回収を行うテーブルの2種類があり、順に練習するようになっていました。私なんかは血管内治療どころか血管造影すら何年もやっていないので、三方活栓やらインサーターやらトルクデバイスやら、わけのわからないモノに囲まれて戸惑ってしまいました。それでも若いインストラクターに教えてもらいながら練習しているうちに、徐々にサマになってきたような気がします。昭和とか平成初期卒業の先生の中には遠巻きにして眺めているだけの人も大勢居たので、「取り残されているのは自分だけじゃないんだ」と、何となく安心しました。練習会の後半はガイディングカテーテルのシステム組み立てのタイムトライアルです。完全にバラバラにした部品を使ってシステムを組み立てるというものです。単に時間を測るのも面白くないので、2人で向かいあっての対決方式でした。当院のレジデント達が対決しましたが、雑談しながら2人とも手慣れた感じで組み立てていきます。感心して見ていたところに現れた某先生。ミもフタもない一言を放ちました。某先生「タイム・イズ・マネーとか言われているのに、1から組み立てるのって無駄やんか。最初から組み立ててあるパッケージとか無いわけ?」この先生は日頃パーキンソン病やてんかんなどを専門にしているだけあって、血管内治療医の汗と涙にはあまり理解がありません。でも正論といえば正論です。つい私も言ってしまいました。中島「いくらゴルゴ13だって、相手に攻撃されてからM16を組み立てているようではアカンやろ」インストラクター「確かに最初から組み立ててあるシステムがあったら便利ですよね。どうしてそういうものがないのかな?」レジデント「こうやって組み立てるのも無駄といえば無駄な気がしてきました」中島「まあまあ、若者は要らんこと考えずに頑張っといたらエエんや」そんなこんなで晴れた休日の午後、血栓回収の練習でいい汗をかくことができました。ハンズオンの後は最年長先生の挨拶です。最年長「われわれが若い時にこんな練習会があったら良かったのに、と思います。心から今の若い人が羨ましい!」まったくその通りだわい、と私も思います。ところで、ちょっと気になって調べてみたところ、急性期脳梗塞治療の場合は「タイム・イズ・マネー」じゃなくて、「タイム・イズ・ブレイン」が正しいようです。まあ、マネーでもブレインでも大事なものには違いありませんが。というわけで最後に1句血栓を 老いも若きも 回収す

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第1回 意識障害 その1 客観的な意識の評価方法【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+意識障害の認識意識障害のアプローチにおいて、重要なことは何でしょうか。原因検索、バイタルサインの改善、安定化はもちろんですが意外と忘れがちなことがあります。それは、「目の前の患者は意識障害」だと認識することです。当たり前のようですが、この当たり前のことができておらず、対応が遅れる、または重症度を見誤ってしまうことが少なくありません。とくに初診患者や高齢者の患者ではありがちです。発熱のせい、認知症のせい、難聴のせいなど、「普段からこんなものだろう」と軽度の意識障害は軽視されがちです。必ず、普段の意識状態と比較して判断するようにしましょう。また、主治医や家族への確認、以前のカルテ記載の検索も怠らずに行いましょう。そして、患者の以前の状態をよく知る家族や施設職員からの、「普段とは違います」というコメントを軽視してはいけません。逆に、見当識障害や失語が認められても、普段と同様であれば焦る必要はないでしょう。認知症や脳卒中後が代表的です。救急の現場において、緊急性が高い病態、重篤な病態を見逃さないようにするためには、症状や検査異常が急性のものか、慢性のものかを判断することが大切です(コラム(1)参照:急性か慢性か、それが問題だ!)。軽度であっても突然、もしくは急性発症の意識障害は早期に対応する必要があるのに対して、慢性経過の意識障害であれば原因検索は必要ですが、1分1秒を争う病態ではありません。意識障害の評価意識障害患者を診たら、まずは客観的な指標で程度を評価しましょう。意識障害の評価では、Glasgow Coma Scale(GCS)(表1)、Japan Coma Scale(JCS)(表2)が有名です。画像を拡大する画像を拡大する救急外来では他科の先生方へコンサルトすることも多く、「様子がおかしい」という表現では相手に患者さんの状況をうまく伝えられません。また、意識障害の経時的な変化は鑑別に大きく影響するため、その時々の意識障害の程度を把握し、記載しておくことも重要です。たとえば初診時にはE3V4M5/GCSであった意識状態が、薬剤などの介入がなく自然にE4V5M6/GCSへ改善したのであれば、低血糖や脳卒中は否定的です。この場合には、痙攣などが鑑別の上位に挙がるでしょう。そして、GCS、JCSはそれぞれの長所、短所を理解したうえで使用する必要があります(表3)。画像を拡大するここでは、GCS、JCSを評価する際の注意点を理解しておきましょう。どちらも開閉眼の有無が点数に大きく反映されますが、診察時に閉眼していたからといってGCSはE3以下、JCSは2桁以上というわけではありません。呼び掛けたその後が問題です。閉眼していたとしても、呼び掛け問診にきちんと応じることができる場合にはGCSではE4、JCSでは1桁ということになります。それに対して、開眼するものの、問診中に(話し掛けているにもかかわらず)閉眼してしまう場合には意識障害と捉える必要があります。私は、15秒程度開眼を維持することができなければ、意識障害ありと判断し対応しています。そのほかにもGCS、JCSの短所を解消すべく開発されたECS(Emergency Coma Scale)(表4)というものがあります。画像を拡大する救急外来で使用するために作成されたものであり、まばたきや睫毛反射の有無(まばたきが可能であれば、脳幹網様体の機能は正常)や、脇を閉じているか否かで除脳硬直、除皮質硬直を区別して分類している点が特徴です。現在、国内の救急隊はJCSを使用し、海外の論文などではGCSを採用しているのが現状であるため、ECSはわが国の救急外来では普及していないのが現状ですが、評価項目や作成に至った経緯は参考になるため、興味がある方は調べてみてください。さて、前置きが長くなりましたが、実際の症例をみてみましょう。72歳男性の意識障害の原因は何でしょうか? 多くの方が急性期脳梗塞、その中でも心原性脳塞栓症を考えるでしょう。それでは、その可能性はどの程度でしょうか? 100%ですか? それとも70%、50%…また、鑑別すべき疾患は何でしょうか? 迷わず血栓溶解療法を行ってよいのでしょうか?意識障害にかかわらず、患者さんが訴える症状や症候に対してアプローチする際には、患者さんごとにアプローチを変えていては、時間が限られている救急外来では見落としの原因となってしまいます。そこで次回は、「意識障害の具体的なアプローチ」を学んでいきましょう!コラム(1) 急性か慢性か、それが問題だ!バイタルサインや検査値の異常を拾いあげることは重要ですが、緊急性を判断するためには、その異常がいつからかを把握することが大切です。Na 126mEq/Lという結果をみて、低ナトリウム血症と判断することは簡単ですが、治療の緊急度は数値の絶対値以上に変化のスピードが重要です。1ヵ月前の検査結果で125mEq/Lであれば、著明な症状が出る可能性は低く、緊急性は高くありません。それに対して、数日前のNa値が135mEq/Lであれば、急性の変化であり、緊急性が高くなります。胸部の異常陰影や心電図変化、Hb値なども同様です。急性か慢性かを判断し、緊急性の適切な判断を行いましょう。(次回は5月23日の予定)

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スマートウオッチによる自動心房細動検知の精度は?【Dr.河田pick up】

 心房細動の早期検知は、血栓塞栓症を未然に防ぐという観点からも非常に重要である。残念ながら、脳梗塞を契機に心房細動が発見されるということが多い。HolterやZio patchなどのモニターよりも低コストで簡易な携帯心臓モニターは、患者にとっては便利なものである。今回はApple Watchを用いた心臓モニターに関する論文を紹介したい。 KardiaBandは、アップルのスマートウオッチ(Apple Watch)を用いて心臓リズムを記録することができる新しい技術である。専用バンドとアプリを組み合わせることで、自動で心房細動(AF)を検知することが可能である。米国クリーブランド・クリニックのJoseph M.Bumgarner氏ら研究グループは、医師による12誘導心電図とKardiaBandの記録の解釈と比較し、KardiaBandが洞調律とAFとを正確に判別できるかを検討した。Journal of American College of Cardiology誌2018年3月号に掲載。除細動で受診したAF患者100例で比較 本研究では、AFに対する除細動のために受診した、連続した患者100例が研究に組み込まれた(68歳±11歳)。患者は除細動前に心電図とKardiaBandの記録を受けた。除細動が行われた場合、除細動後の心電図とKardiaBandの記録が取得された。KardiaBandの解釈は、医師の診断による心電図と比較された。KardiaBandの記録は、患者情報を知らない不整脈専門医によって再度診断を受け、心電図の解釈と比較された。感度、特異度とK係数が求められた。169例のKardiaBandの記録のうち57例は解釈不能 100例中8例は除細動を受けなかった。169例について、心電図とKardiaBandの同時記録が得られた。KardiaBandの記録のうち、57例については解釈不能であった。心電図と比較して、KardiaBandが解釈した記録は、感度が93%、特異度が84%、K係数は0.77であった。一方、医師が解釈したKardiaBandの記録は感度99%、特異度は83%、K係数は0.83であった。解釈不能だった57例のKardiaBandの記録について不整脈専門医が診断したところ、感度100%、特異度80%、K係数は0.74であった。KardiaBandと医師ともに診断可能であった113例においては、双方の診断はかなり一致しており、K係数は0.88であった。医師のサポートによりKardiaBandによるAF検知アルゴリズムは有用 医師によって確認されたKardiaBandのAF検知アルゴリズムは、AFと洞調律の正確な区別が可能であった。この技術は、選択的除細動に先立って患者をスクリーニングする際に役立ち、不必要な手技を回避する一助となりうる。

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急性脳梗塞の血管内治療は日常診療でも有効か/BMJ

 急性虚血性脳卒中の血管内治療は、無作為化対照比較試験の結果と同様に、ルーチンの臨床診療でも有効かつ安全であることが、オランダ・アムステルダム大学学術医療センターのIvo G. H. Jansen氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年3月9日号に掲載された。前方循環系の頭蓋内血管近位部閉塞による急性虚血性脳卒中では、症状発現後6時間以内の血管内治療の有効性と安全性が無作為化試験やメタ解析で示されているが、ルーチンの臨床診療でも既報の無作為化臨床試験と同等の有用性が得られるかは不明であった。MR CLEANレジストリをMR CLEAN試験の結果と比較 研究グループは、オランダの16施設が参加・進行中の前向きコホート研究「MR CLEANレジストリ」の患者データを解析し、無作為化対照比較試験「MR CLEAN試験」の既報の結果と比較した(エラスムス大学医療センターなどの助成による)。 2014年3月~2016年6月の期間にMR CLEANレジストリに登録された急性虚血性脳卒中で、症状発現後6.5時間以内に血管内治療(ステント型血栓回収デバイス、血栓吸引デバイスなど)を受けた患者1,488例を解析の対象とした。 主要アウトカムは、症状発現後90日時の修正Rankin Scale(mRS、0[無症状]~6[死亡]点)のスコアによる機能障害とした。副次アウトカムには、90日時の機能アウトカムがexcellent(mRSスコア:0~1)、同good(0~2)、同favourable(0~3)の患者などが含まれた。臨床試験の介入群よりも機能アウトカムが良好 ベースラインの年齢中央値は、MR CLEANレジストリが71歳(IQR:60~80)、MR CLEAN試験の介入群(233例)が66歳(55~76)、同対照群(267例)は66歳(56~76)であり、男性はそれぞれ53.3%、57.9%、58.8%であった。NIHSSスコア中央値はそれぞれ16点、17点、18点であり、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法は78.0%、87.1%、90.6%に行われていた。 90日時のmRSスコア中央値は、MR CLEANレジストリが3点(IQR:2~6)、CLEAN試験の介入群が3点(2~5)、同対照群が4点(3~5)であり、MR CLEANレジストリの機能アウトカムは、MR CLEAN試験の介入群(補正共通オッズ比:1.30、95%信頼区間[CI]:1.02~1.67、p=0.03)および同対照群(1.85、1.64~2.34、p<0.01)と比較して、いずれも有意に改善した。 90日時の機能アウトカムがexcellentの患者の割合は、MR CLEANレジストリが18.9%、MR CLEAN試験の介入群が11.6%、同対照群は6.0%であった。また、goodの患者はそれぞれ37.9%、32.6%、19.1%であり、favourableは52.1%、51.1%、35.6%だった。 再灌流の達成率(extended TICI gradeで2B-3の場合に再灌流成功と定義)は、MR CLEANレジストリとMR CLEAN試験の介入群がいずれも58.7%で、同対照群は該当なしであった。 また、脳卒中発症から、血管内治療開始までの期間中央値(MR CLEANレジストリ:208分[IQR:160~265]、MR CLEAN試験の介入群:260分[210~313])と、再灌流成功または最後の造影剤ボーラス注入までの期間中央値(267分[217~331]、339分[274~395])は、いずれもMR CLEANレジストリが約1時間短かった。 一方、症候性頭蓋内出血の発症率は、MR CLEANレジストリが5.8%と、MR CLEAN試験の介入群の7.7%、同対照群の6.4%に比べて低かった。 著者は、「この知見は、血管内治療が前方循環系の頭蓋内血管近位部閉塞による急性虚血性脳卒中の標準治療であることを裏付ける」としている。

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きわめて高いHDL-Cは心血管死リスク? EPOCH-JAPAN

 心血管疾患(CVD)に対するvery highやextremely highレベルの HDLコレステロール(HDL-C)の影響は十分にわかっていない。最近のいくつかの研究では、extremely highレベルのHDL-CのCVDイベントへの悪影響が報告されているが、原因別CVD死亡率との間に有意な関連はみられておらず、またアジア人集団では研究されていない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の統合データベース共同研究であるEPOCH-JAPANにおける大規模なプール解析により、extremely highレベルの HDL-Cがアテローム性CVDによる死亡率に悪影響を及ぼすことを示した。Journal of clinical lipidology誌オンライン版2018年2月8日号に掲載。 本研究では、9つの日本人コホート(40~89歳、4万3,407人)において大規模なプール解析を行った。参加者をHDL-C値により5群に分け、2.33mmol/L以上(90mg/dL以上)をextremely highとした。コホート層別Cox比例ハザードモデルを用いて、全死因死亡および原因別死亡について、1.04~1.55mmol/L(40~59mg/dL)の群と比較した各群の調整ハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・12.1年の追跡期間中に、全死因死亡が4,995人、CVDによる死亡が1,280人確認された。・extremely highレベルのHDL-Cは、アテローム性CVDによる死亡リスクの増加(ハザード比:2.37、95%信頼区間:1.37~4.09)、冠動脈疾患および脳梗塞リスクの増加と有意に関連していた。・extremely highレベルのHDL-Cのリスクは、現飲酒者でより顕著であった。

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脳灌流画像による選択により、発症後6~16時間の脳梗塞にも血栓除去術が有用(中川原譲二氏)-818

血栓除去術群 vs.薬物療法群で、90日後の主要アウトカムを比較 血栓除去術は、現在、発症から6時間以内に治療される適格な脳梗塞患者に推奨されている。米国・スタンフォード大学脳卒中センターのGregory W. Albers氏らが行った「DEFUSE3試験」は、発症までは元気で、梗塞に陥っていない虚血脳組織が残存する患者を対象として、発症後6~16時間の血栓除去術の有効性について検討した多施設共同無作為化非盲検試験(アウトカムは盲検評価)である。対象患者は、中大脳動脈近位部または内頸動脈の閉塞を有し、CTやMRI灌流画像で、初期の梗塞容積70mL未満、虚血/梗塞容積比1.8以上を適格とし、血管内治療(血栓除去術)+標準的薬物療法併用(血管内治療群)、または標準的薬物療法単独(薬物療法群)に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、90日後の修正Rankinスケール(mRS)の通常スコア(範囲:0~6、高スコアほど障害の程度が大きい)とされた。血栓除去術群で主要アウトカムの改善が有意に良好 この試験は、2016年5月~2017年5月に米国内38施設で行われた。182例が血管内治療群:92例、薬物療法群:90例に無作為に割り付けられ、中間解析で有効性が確認され早期終了となった。血管内治療群では、薬物療法群と比べて、90日後のmRSでみた機能的アウトカムの分布の良好なシフトがみられた(オッズ比[OR]:2.77、p<0.001)。また、mRSスコアで0~2と定義した「機能的に自立」の患者の割合も高かった(45% vs.17%、リスク比:2.67、p<0.001)。90日死亡率は、血管内治療群14%に対し、薬物療法群26%であった(p=0.05)。症候性頭蓋内出血(7% vs.4%、p=0.75)や、重篤な有害事象(43% vs.53%、p=0.18)については、両群間で有意差はみられなかった。 本研究では、中大脳動脈近位部または内頸動脈の閉塞、および虚血は認めるが梗塞に至っていない組織領域を有する患者では、発症後6~16時間でも、標準的薬物療法単独よりも血管内治療(血栓除去術)を併用したほうが、良好な機能的アウトカムに結びつくことが示された。一方、昨年報告されたDAWN試験では、症状出現から6~24時間が経過した急性脳梗塞で、臨床的障害と梗塞体積の重症度が一致しない患者では、標準的治療+血栓除去術の90日後のアウトカムが良好であることが示された。これら2試験は、血栓除去術のtime windowが6時間から16時間、24時間へと拡大する余地のあることを示すもので、血栓除去術の適格基準がtime-baseから脳灌流画像を用いたtissue-baseに変更する必要性についての議論が今後高まると思われる。しかし、脳梗塞の成立は、発症からの時間と残存脳血流に依存していることは自明であり、血栓除去術については、6時間以内はtime-baseの治療戦略、6時間以降はtissue-baseの治療戦略が奏功すると考えるのが妥当と思われる。

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チカグレロル、心筋梗塞発症から1年以上の多枝病変のイベントを減少

 アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ)は2018年2月7日、第III相PEGASUS-TIMI54試験の新たなサブ解析結果を発表した。心筋梗塞の既往があり、さらに2本以上の多枝病変(以下、MVD)を有する患者において、チカグレロル(商品名:ブリリンタ)60mgと低用量アスピリンの併用療法により、MACE(心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞からなる複合リスク)リスクが19%(HR:0.81、95%CI:0.7~0.95)、冠動脈疾患死のリスクが36%(HR:0.64、95%CI:0.45~0.89)低減した。 この既定のサブ解析はJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。MVDは、初回の心筋梗塞発症時に2本以上の冠動脈に50%を超える異常狭窄が存在する病態と定義された。本試験に参加した患者2万1,162例の59.4%(1万2,558例)がMVDを呈していたことから、本結果は、イベント発症から12ヵ月後以降も、抗血小板治療を続けることで、心筋梗塞の既往歴がある高リスク患者集団にベネフィットをもたらす可能性が示すものとしている。 重大な出血事象については、アスピリン単剤治療と比較して、チカグレロル・アスピリン併用療法で多かったが、これはPEGASUS-TIMI 54試験で確認された結果全体と一貫していた。また、頭蓋内出血あるいは致死的出血リスクの増大はなかった。

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卵円孔開存の存在で周術期の脳梗塞リスク上昇/JAMA

 非心臓手術を受ける成人患者において、術前に卵円孔開存(PFO)の診断を受けた患者は受けなかった患者と比べて、術後30日間の周術期虚血性脳卒中リスクが有意に高いことが示された。米国・マサチューセッツ総合病院(MGH)のPauline Y.Ng氏らが、18万例超を対象に行った後ろ向きコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2018年2月6日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「今回の所見について、さらなる確証試験を行うとともに、PFOへの介入によって術後脳卒中のリスクが低減するのかどうかを確認する必要がある」とまとめている。全身麻酔で非心臓手術を受けた18万人超を対象に検討 研究グループは、2007年1月1日~2015年12月31日に、MGHと関連のコミュニティ病院2ヵ所で、全身麻酔下で非心臓手術を受けた成人18万2,393例について、後ろ向きコホート試験を行った。 術前のPFO診断と、術後30日間に発生した周術期虚血性脳卒中との関連を調べた。脳卒中のサブタイプはOxfordshire Community Stroke Project(OCSP)分類に基づき定義し、重症度はNIH脳卒中重症度スケール(National Institute of Health Stroke Scale:NIHSS)で定義した。周術期脳梗塞推定リスク、PFO群5.9例/1,000人、対照群2.2例/1,000人 解析の対象としたのは15万198例(年齢中央値55歳[SD 16])で、そのうち術前PFO診断例は1,540例(1.0%)だった。 術後30日間に虚血性脳卒中を発症したのは全体で850例(0.6%)だった。内訳は、PFO群が49例(3.2%)、非PFO(対照)群が801例(0.5%)だった。 補正後解析の結果、PFO群は対照群に比べ、周術期虚血性脳卒中リスクが有意に高かった(オッズ比:2.66、95%信頼区間[CI]:1.96~3.63、p<0.001)。1,000人当たりの虚血性脳卒中の推定リスクは、PFO群5.9例、対照群2.2例で、補正後絶対リスク差は0.4%(95%CI:0.2~0.6)だった。 また、PFO群は大血管領域脳卒中のリスク上昇も認められた(相対リスク比:3.14、95%CI:2.21~4.48、p<0.001)。さらに、脳卒中を呈した患者においてPFO群のほうが、NIHSSで定義した脳卒中関連の神経学的障害がより重度であることも認められた(PFO群のNIHSSスコア中央値:4[IQR:2~10] vs.対照群の同値:3[1~6]、p=0.02)。

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脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

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急性脳梗塞の血栓除去術、発症後6~16時間でも有用/NEJM

 近位中大脳動脈または内頸動脈の閉塞を呈し、虚血は認めるが梗塞に至っていない組織領域を認める患者では、発症後6~16時間でも、標準的薬物療法単独よりも血管内治療(血栓除去術)を併施したほうが、良好な機能的アウトカムに結びつくことが示された。米国・スタンフォード大学脳卒中センターのGregory W. Albers氏らが「DEFUSE3試験」の結果を報告した。現行、血栓除去術は画像診断での適格性に基づき、発症後6時間以内の脳卒中患者への施術が推奨されている。NEJM誌オンライン版2018年1月24日号掲載の報告。血栓除去術併用 vs.薬物療法単独、90日時点の機能的アウトカムを比較 DEFUSE3試験は、梗塞のない虚血脳組織が残存する患者への、発症後6~16時間の血栓除去術について検討した、多施設共同無作為化非盲検試験(アウトカムは盲検評価)で、2016年5月~2017年5月に米国内38施設で行われた。 対象患者は、近位中大脳動脈または内頸動脈の閉塞を呈し、CTやMRIの灌流画像診断で、初期梗塞容積70mL未満、虚血/梗塞容積比1.8以上を適格とし、血管内治療(血栓除去術)+標準的薬物療法(血管内治療群)、または標準的薬物療法のみ(薬物療法群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、90日時点での修正Rankinスケールスコア(範囲:0~6、高スコアほど障害の程度が大きいことを示す)であった。血栓除去術併用群でアウトカム改善が有意に良好 試験は、182例が血管内治療群92例、薬物療法群90例に無作為化を受けた後、中間解析で有効性が確認され早期終了となった。 血管内治療群は薬物療法群と比べて、90日時点での修正Rankinスケールでみた機能的アウトカムの改善が良好であった(オッズ比[OR]:2.77、p<0.001)。また、修正Rankinスケールスコアで0~2と定義した「機能的に自立」の患者の割合も高かった(45% vs.17%、リスク比:2.67、p<0.001)。 90日死亡率は、血管内治療群14%に対し、薬物療法群26%であった(p=0.05)。症候性頭蓋内出血(7% vs.4%、p=0.75)や、重篤な有害事象(43% vs.53%、p=0.18)については、両群間で有意差はみられなかった。

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プライマリPCI実施後のプラスグレル対チカグレロル、1年後の比較

 プライマリPCIが適応の急性心筋梗塞患者において、P2Y12阻害剤であるプラスグレルとチカグレロルの有効性および安全性を比較したPRAGUE-18 trialの早期の結果では、2剤に有意差は認められなかった。チェコ共和国のZuzana Motovska氏ら研究グループによる1年フォローアップでは、さらに2剤の有効性と安全性を比較し、退院後により安価なクロピドグレルに変更することが虚血イベントの発生に影響を与えるかどうか検証した。Journal of American College of Cardiology誌11月9日号に掲載。PCI施行した1,230例をプラスグレルとチカグレロルに割り付け 本研究は、多施設共同の前向きランダム化比較試験。急性心筋梗塞でPCIを施行した1,230例をプラスグレル群もしくはチカグレロル群に割り付け、12ヵ月にわたって治療効果を評価した。複合エンドポイントは1年後における心血管に関連した死亡、心筋梗塞、脳梗塞。患者が退院後に内服薬の費用を負担しなければいけないため、患者の一部は安価なクロピドグレルに変更した。複合エンドポイントで有意差は認められず 複合エンドポイント(心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中)はプラスグレル群で6.6%、チカグレロル群で5.7%認められた(ハザード比[HR]:1.167、95%信頼区間[CI]:0.742~1.835、p=0.503)。心血管死亡(3.3% vs. 3.0%、p=0.76)、心筋梗塞(3.0% vs. 2.5%、p=0.611)、脳卒中(1.1% vs. 0.7%、p=0.423)、全死亡(4.7% vs. 4.2%、p=0.654)、確定診断されたステント血栓症(1.1% vs. 1.5%、p=0.535)、全出血(10.9% vs. 11.1%、p=0.999)、そしてTIMI出血基準による大出血(0.9% vs. 0.7%、p=0.754)において、いずれも有意差は認められなかった。 薬の費用を理由としてクロピドグレルに変更した患者はプラスグレル群で34.1%(n=216)、チカグレロル群で44.4%(n=265)であった(p=0.003)。クロピドグレルへの変更は虚血イベント増加と関連せず 本研究では、プラスグレルとチカグレロルは、心筋梗塞後1年において同等に有効であった。 また、クロピドグレルへの変更することは虚血イベントの増加と関連していなかった。ただし、薬の費用を理由としてクロピドグレルに変更した患者は、割り当てられた薬剤を継続した患者に比べて主要血管イベントのリスクは低かったが、虚血のリスクも低かった。この結果は、虚血と出血のリスクを患者ごとに評価し、治療を個別化することを支持しているとも考えられる。

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