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骨髄増殖性腫瘍の治療戦略に新展開【Oncologyインタビュー】第31回

ドライバー遺伝子の解明などと共に、長年停滞していた骨髄増殖性腫瘍の治療が変わりつつある。当該領域の第一人者である順天堂大学医学部 血液学講座の小松 則夫氏に、最新情報を解説していただいた。予後が長い故にQOLの低下が問題―骨髄増殖性腫瘍とは、どのような疾患なのでしょうか?骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、造血幹細胞の異常で、白血球や赤血球、血小板など、1系統以上の骨髄系成熟細胞の過剰生産を来す疾患群です。代表的なものとして、慢性骨髄性白血病(CML)、真性赤血球増加症(真性多血症)(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)があります。BCR-ABL遺伝子の解明からチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が登場し、CMLの予後は劇的に改善しました。ここでは、CMLを除いたフィラデルフィア染色体陰性MPNの3疾患についてお話ししたいと思います。―MPNの予後について教えていただけますか。MPNの予後ですが、生存期間の中央値はETが約20年、PVが約14年と比較的予後良好ですが、PMFは4年と予後不良です。PV、ETでは長期の経過の中で、一部は急性白血病や骨髄線維症に移行することで予後が悪化しますが、これらの疾患の予後を規定する主な因子は、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞といった血栓症で、時に致命的となります。一方、血小板が一定数(150万/μL)を超えると逆に出血しやすい状態となります。予後が長い反面、一旦血栓症や出血が起こると、患者さんは長期間その症状に向き合っていくことになり、QOLは著しく低下します。MPN特異的ドライバー遺伝子の発見が治療に結び付く―MPNに共通の遺伝子変異が発見されたとのことですが。画像を拡大するMPNに共通のJAK2 V617Fの他に、CALRやMPLの遺伝子変異が発見されています。JAK2 V617Fは、2005年にET、PV、PMFに共通の遺伝子変異として報告されました。PVの97%、ETおよびPMFの5~6割に発現しています。JAK2はサイトカインシグナル伝達の中心的役割を担うチロシンキナーゼです。JAK2 V617F変異によりJAK2は活性化され、恒常的にシグナルが伝達され腫瘍化が促されます。MPLは、造血因子サイトカインで、トロンボポエチンの受容体です。MPL変異によりMPLは常に活性化し、トロンボポエチンとの結合なしにJAK2シグナルが細胞内へと伝達され、血液細胞の腫瘍化が促進されます。画像を拡大するCALR遺伝子変異はETおよびPMFの2~3割に発現します。CALR(calreticulin)は、タンパク質を折りたたむ分子シャペロンの一種です。われわれの研究で、変異CALR遺伝子により作られる変異型CALRタンパク質はホモ多量体を形成し、あたかもトロンボポエチンのようにMPL(トロンボポエチン受容体)と強く結合し、JAK2シグナルを介して血液細胞の腫瘍化を促進することが明らかになりました。1)2)これら3つの変異は相互排他的に発現しますが、いずれもJAK2シグナルの活性化につながっています。―遺伝子変異の解明と共に治療も変化しているのでしょうか。ごく最近、インターフェロン(以下、IFN)についての研究結果が発表されました。IFNαは1970年代からMPNの治療に用いられていましたが、副作用が強く頻回投与が必要であること、大規模試験でのMPNへの有効性が証明されていないことから使用は限定されていました。しかし、改良したロペグIFNα2bが開発されたことでIFNは大きく見直され始めました。画像を拡大するロペグIFNα2bは単一異性体の長時間作用型ペグ化インターフェロンで、安全性が高い設計となっています。昨年(2020年)、ロペグIFNα2bを標準療法であるヒドロキシカルバミド(以下、HU)と直接比較した、第III相のPROUD-PV試験とその延長試験であるCONTINUATION-PV試験が発表されました3)。この試験は36ヵ月(PROUD-PV:12ヵ月まで、CONTINUATION-PV:36ヵ月まで)追跡されています。主要評価項目の血液学的完全奏効は治療経過と共にIFNα2bがHUを上回り、18ヵ月以降優越性を保っていました。安全性もHUに対して優れていました。さらに重要なことは、JAK2変異量も有意に減少させたことです(36ヵ月JAK2 V617F変異量:ロペグIFNα2b -22.9対HU -3.5、p<0.0001)。従来の薬剤ではここまでJAK2変異量を減らすというデータはありません。ロペグIFNα2bの大きな特徴と言えます。―JAK2変異量が減少するメカニズムは? また、それがどういうことにつながるのでしょうか。理由は明らかになっていませんが、ロペグIFNα2bは、正常細胞はそのままで、JAK2変異細胞を選択的に攻撃している可能性があります。つまり、疾患そのものを治す、治癒まで持っていくことができるかもしれないということです。したがって、これまでの治療は血栓症や出血の予防に主眼を置いてきましたが、今後は治癒を目指すことになると思います。すなわち治療アルゴリズムが大きく変わる可能性があり、将来的にはIFNが治療の中心となることを期待させます。―CALRを標的とした治療法も開発されているとお聞きしますが。CALR遺伝子変異により作られた変異型CALRタンパク質は、細胞内で未熟なMPLと結合した後、細胞表面に移行し活性化することが、われわれの研究で示されました4)。そこで、未成熟なMPLとの結合の阻害、細胞表面におけるMPLの活性化の阻害、あるいは細胞表面の変異型CALRタンパク質を標的として攻撃することで、MPNは治療可能だと考えられます。変異型CALRが細胞外に移行する際、ある酵素で切られますが、われわれは切断部位を特異的に認識して結合する抗体作成に成功しました。この抗体は非常に特異性が高くCALR変異陽性の細胞だけを標的にするため、今後抗体薬として開発されることが期待されます。正確かつ容易なバイオマーカーの開発―診断についても新たな進化がみられているそうですね。われわれの研究で、CREB3L1という遺伝子がMPNのバイオマーカーの役割を果たすことが示されました。CREB3L1は転写因子として機能し、タイプIコラーゲンを標的とするため、骨形成に関与しますが、乳がんの浸潤にも関係していると報告されています。ところで、血小板増加症として受診する患者の9割は反応性、つまり他の原因による血小板増加症です。しかし、この反応性とETなどの腫瘍性の血小板増加症を臨床的に鑑別することは難しいことが多く、治療法が全く異なるため、正確かつ容易な鑑別方法の確立が求められます。われわれはそこで、採取が簡単な血小板に着目し、血小板が腫瘍性に増加するETでバイオマーカーの検索を行いました。具体的にはETと反応性血小板増加症の患者末梢血から血小板を収集し、RNAの発現パターンを解析しました。その結果、ET症例は反応性血球増加症に比べ、CREB3L1が有意に高く発現することを発見しました(p=0.001770)5)。さらに追加解析で、フィラデルフィア染色体陰性MPN、反応性血球増加症のCREB3L1レベルを調査しました。その結果、CREB3L1はETだけでなく、PVやPMFを含めたMPN全般に高レベルに発現していました(p<0.0001)。興味深いことに、CMLでは反応性や健常人と同く陰性でした。このバイオマーカーは感度、特異度ともに100%です。フィラデルフィア染色体陰性MPN全般の画期的な診断バイオマーカーとして、きわめて優れていることがわかりました。―MPN特異的な遺伝子変異のないケースでは本当に腫瘍性なのか鑑別することが難しいと思いますが、このバイオマーカーの効果は?MPN特異的な遺伝子発現がないトリプルネガティブ症例(JAK2 V617F、CALR、MPL変異すべて陰性)においては、腫瘍性か反応性かの鑑別は悩ましいものです。前述の研究では、病理学的に確認されたトリプルネガティブET(20例)においてもCREB3L1を測定しました。その結果、この集団にもCREB3L1陽性例(12例)と陰性例(8例)が存在すること、そして血小板数と白血球数は陽性例で有意に多いことが判明しました。また、大変興味深いことに、陰性例8例のうち2例は、経過と共に血小板数が減少し、骨髄検査で最終的に正常化が確認されました。ここから言えることは、トリプルネガティブETと診断されても、CREB3L1陰性の場合は自然治癒する可能性があるということ、そして、その場合は不用意に抗がん剤を投与せず、経過観察という選択肢もありえるということです。診断と治療の進化で治療アルゴリズムが大きく変わる!?―こういった新たな診断や治療薬の開発で、MPNの治療はどう変わっていくでしょうか。現在のMPNの治療では、高リスク(60歳以上、または血栓症/出血の既往)になり、初めて抗がん剤が開始されます。患者さんからは「せっかく診断がついたのに60歳まで治療を待つのか、血栓症が起きるまでどうして治療できないのか」といった声を聞きます。IFNは、根本的な治療の実現が期待できますが、長期経過と共に他の遺伝子変異が加わって疾患が修飾されると、効果が低下するとの報告もあります。IFNを有効に使用するためにも、診断後すぐにIFN治療を開始することで、かなりの効果が期待できると、個人的には考えています。CREB3L1という新規バイオマーカーによる正確な診断とINFα2bのような新規薬剤の登場で、MPNの治療が大きく変化する可能性がある。ロペグINFα2bの国内臨床試験も行われているという。近い将来、長期間疾患と付き合わなければならないMPNの患者に朗報が届くことを期待したい。1)Araki M, et al. Activation of the thrombopoietin receptor by mutant calreticulin in CALR-mutant myeloproliferative neoplasms. Blood.2016;127:1307-1316.2)Araki M, et al. Homomultimerization of mutant calreticulin is a prerequisite for MPL binding and activation. Leukemia.2019;33:122-131.3)Gisslinger H, et al. Ropeginterferon alfa-2b versus standard therapy for polycythaemia vera (PROUD-PV and CONTINUATION-PV): a randomised, non-inferiority, phase 3 trial and its extension study. Lancet Haematol.2020;7:e196-e208. 4)Masubuchi N, et al. Mutant calreticulin interacts with MPL in the secretion pathway for activation on the cell surface. Leukemia.2020;34:499-509.5)Morishita S, et al.CREB3L1 overexpression as a potential diagnostic marker of Philadelphia chromosome-negative myeloproliferative neoplasms. Cancer Sci.2021;112:884-892

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COVID-19に脳髄膜炎はあるのか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第183回

COVID-19に脳髄膜炎はあるのか?pixabayより使用日本でも髄膜炎合併COVID-19が第1波の頃にニュースになり、当該症例が論文化されています1)。この24歳男性では、頭部MRIで脳室炎・脳炎がみられ、髄液のSARS-CoV-2 PCRも陽性になりました。その後、海外でもいくつか中枢神経の炎症を合併した症例が報告されているのですが、脳脊髄液(CSF)PCRは陰性になることが多いようです。さて、2021年に入ってまとまった報告がありました。Pilotto A, et al.Clinical Presentation and Outcomes of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2-Related Encephalitis: The ENCOVID Multicenter Study.J Infect Dis . 2021 Jan 4;223(1):28-37.イタリア13施設における多施設共同観察研究であり、CSF、脳波検査(EEG)、MRIデータが得られた脳炎合併SARS-CoV-2陽性患者が登録されました。現在、私はコロナ病棟でも勤務しておりますが、脳のMRIを撮影しに行くのは、なかなか大変だと思います。SARS-CoV-2陽性の脳炎25例が含まれました。CSFは68%の症例でタンパク高値、細胞上昇が見られましたが、CSF PCRは全例陰性だったそうです。MRI所見によると、25人のうち5人が急性散在性脳脊髄炎(ADEM)あるいは辺縁系脳炎で、これらの症例はほかの脳炎症例と比較して、発症が遅く(p=0.001)、重症COVID-19と関連していました。CSFのPCRが陰性というのはどういうことかというと、ウイルスが直接血液脳関門を突破して髄膜脳炎になったというよりも、炎症性サイトカインに関連した免疫介在性脳炎が主病態であることを意味します。――とはいえ、CSF PCRが陽性のCOVID-19もしばしば報告されており、8人のCSF PCR陽性例の報告を見ると2)、そのうち4人が血清に匹敵するほどの高力価を示しています。ちなみに、頭部MRIで異常が見られる頻度としては、これら髄膜脳炎よりも脳梗塞のほうが多いのが現状です3)。また、頭痛・倦怠感・息切れなどがあり、SARS-CoV-2が陽性となった患者に対して、入院後腰椎穿刺を行い、HIV合併クリプトコッカス脳髄膜炎と診断された症例も報告されています4)。ここぞというときにCSF検査を行うことが重要ですね。また、SARS-CoV-2 PCRが陽性でも、他疾患が隠れている可能性をいつも考える必要があることを思い知らされます。コロナ禍の上に、われわれはあぐらをかいてはいけないのです。1)Moriguchi T, et al. Int J Infect Dis . 2020 May;94:55-58.2)Alexopoulos H, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm . 2020 Sep 25;7(6):e893.3)Kremer S, et al. Neurology . 2020 Sep 29;95(13):e1868-e1882.4)Cabot RC, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 24; 383(26): 2572–2580.

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脳卒中データバンク2021

「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立、ますます活用が期待されるデータブック1999年に始まった日本脳卒中データバンクの登録患者数は、2019年ついに20万例を突破!大規模データからしか得られない興味深い解析結果を満載した、大好評のデータブックの最新版。『脳卒中データバンク2015』では2012年までの登録データ約10万例を集計したが、今回は、急性期脳卒中17万例(脳梗塞12.6万例・脳出血3.3万例・くも膜下出血1.1万例)、一過性脳虚血発作1.2万例など、2018年末までに登録された19万9,599例の情報を基に執筆された。脳卒中・循環器病対策基本法が成立し、今後ますます活用が期待される。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    脳卒中データバンク2021定価5,000円 + 税判型AB判頁数200頁 2色刷発行2021年3月編集国循脳卒中データバンク2021編集委員会

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第45回 接種後アナフィラキシー例はすべて女性、欧米の先行報告と合致

<先週の動き>1.接種後アナフィラキシーはすべて女性、欧米の先行報告と合致2.ワクチン供給不足で4月の高齢者優先接種は計画見直しか?3.救急車の出動件数が各地で減少、受診控えに注意4.旭川医大・学長への解任請求、第三者調査委員会設置へ5.糖尿病患者が減少、健康日本21の効果?NDB分析で明らかに/日医総研1.接種後アナフィラキシー例はすべて女性、欧米の先行報告と合致厚生労働省は、新型コロナワクチン接種の開始後に発生した副反応疑い報告について、情報公開を行っている。事例一覧によると、3月5日から8日にかけて、20~50代の女性8例でアナフィラキシーと疑われる症状が発生し、いずれも処置によって改善したことが明らかになっている。これに対し、森尾 友宏氏(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会長)は、「すべての症例が女性であることは、欧米での先行報告と合致している。4万6,000人接種の時点では、欧米の報告に比して頻度が高い印象であるが、事例の蓄積で日本におけるアナフィラキシーの頻度を明らかにし、発症者の背景などについて解析することが重要になる」などとコメントしている。これらの事例と、先月26日に接種を受けた3日後にくも膜下出血による死亡が報告された60代女性について、今後さらに情報を収集した上で、次回の審議会にて、ワクチンとの因果関係や接種後の対応方法などが検討・評価される見込み。画像を拡大する(参考)資料 新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーとして報告された事例の一覧(令和3年2月17日から令和3年3月8日までの報告分)(厚労省)新型コロナワクチンの接種後のアナフィラキシーとして報告された事例について(1例目)(同)国内2例目、ワクチン接種の20代女性にアナフィラキシー(読売新聞)ワクチン接種で3例目のアナフィラキシー…30代女性に息苦しさ・のど違和感(同)2.ワクチン供給不十分で4月の高齢者優先接種は計画見直しか?高齢者向けの新型コロナワクチン優先接種は4月以降に開始されることになっていたが、供給量が不十分となる見通しで、実施計画見直しの報道が相次いでいる。厚労省によると、高齢者向けのワクチン供給は4月1週目に100箱(各都道府県2箱、東京・神奈川・大阪は4箱)、2週目と3週目は500箱(各都道府県10箱、東京・神奈川・大阪は20箱)、4週目には1,741箱(すべての市区町村に1箱)と徐々に拡大され、6月末までに高齢者約3,600万人分(2回接種)を配布できる見込みで、接種体制の拡充が急がれる。現在行われている医療従事者の接種分については、5月前半までに約480万人に2回分の配布を完了する予定。なお、現時点で国内承認されているのは、米・ファイザーと独・ビオンテックのワクチンのみだが、すでに米・モデルナと英・アストラゼネカの2製品も厚労省に承認申請しており、早ければ5月に承認される見込み。(参考)ファイザー社の新型コロナワクチンの供給の見通し(厚労省)資料 新型コロナワクチン配送スケジュール(令和3年3月5日時点)(同)今知りたい新型コロナワクチン接種 さまざまな疑問にできる限り答えます(東京新聞)3.救急車の出動件数が各地で減少、受診控えに注意2020年の救急車の出動件数は、各地で前年に比べ減少の報告がされている。新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言による外出自粛による交通事故の減少などが要因とみられるが、「受診控え」による影響の可能性もあり、専門家は注意喚起している。また、神奈川循環器救急研究会によれば、昨年1~3月と4~12月までの期間で、患者が病院に到着してから手術までにかかった時間を調べた結果、3月までは中央値64分だったのに対し、4月以降は中央値72分と延長傾向だったという。同研究会は、現場は感染対策と緊急対応のせめぎ合いであることから、「(救急車の)受け入れ準備などには一定の時間がかかるので、心筋梗塞などが疑われるときはなるべく早く受診してほしい」と呼び掛けている。(参考)救急車の出動、一転減少 昨年、コロナ下で受診控えか「体の異変迷わず通報を」(日本経済新聞)宮崎県内救急出動9年ぶり減 20年、コロナ外出自粛影響か(Yahoo!ニュース)心筋梗塞 病院到着から手術までの時間延びる傾向に コロナ影響(NHK)4.旭川医大・学長への解任請求、第三者調査委員会設置へ大学病院でのコロナ患者受け入れを進言した病院長を解任した国立旭川医科大学において、同大の教授らが設立した「旭川医科大学の正常化を求める会」による学長の解任請求が、2月24日、同大学の学長選考会議に提出された。これを受け、同大学の学長先行会議が3月5日に開催され、審議を開始することが明らかになった。また、審議を公平なものとするため、3月末までに第三者による調査委員会も設置することが決定された。同大学の学長を巡っては、昨年11月に学内の会議において、新型コロナウイルス感染のクラスターが発生した病院について不適切な発言を行い、さらに感染患者の受け入れを進言した当時の病院長を解任したことにより、学長の職務停止の要請を全教職員の過半数が署名し、同大学の学長選考会議に要請されるなどが繰り返し報道されていた。同大学の元病院長については、復帰を求める1万5,000人の署名が3月3日に大学側に提出されており、地域医療の最後の砦となる大学病院をめぐって、住民も強い関心を持っているのがうかがえる。(参考)学長の辞職・解任を求める署名活動にご協力下さい(旭川医科大学の正常化を求める会)旭川医大 学長解任、適否審査 選考会議、教授ら署名受け/北海道(毎日新聞)5.糖尿病患者が減少、健康日本21の効果?NDB分析で明らかに/日医総研日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が、糖尿病や脳梗塞の治療状況などについて、NDBデータを用いた解析結果をワーキングペーパーにまとめた。これによると、糖尿病の治療を受けている患者数は2010年に比べて、2016年は減少傾向であることが明らかとなった。また、人工透析に至った症例の割合もいずれの年齢階級においても減少しており、厚労省の健康日本21による糖尿病重症化予防への取り組みが、効果を上げていることがうかがえる。40〜64歳の糖尿病患者の場合、脳梗塞のリスク比は11倍以上、急性心筋梗塞のリスク比は13倍以上であり、働く世代における糖尿病コントロールの重要性を示している。また、脳梗塞の治療状況における2010年と2016年の比較では、経皮的選択的脳血栓・塞栓溶解術や経皮的脳血栓回収術といった急性期脳梗塞治療の割合が増加しており、都道府県間の均てん化が進んでいる。(参考)日医総研ワーキングペーパー No.451(日医総研)糖尿病治療患者の人工透析割合が大幅減少、0.88% 日医総研がNDBデータ解析、脳梗塞・認知症リスクは高い(CBnewsマネジメント)

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第25回 その吐血、緊急内視鏡は必要ですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)上部消化管出血を疑うサインを知ろう!2)緊急内視鏡の判断を適切に行えるようになろう!【症例】45歳男性。自宅で洗面器1杯分の吐血を認めたため、両親の運転する車で救急外来を受診した。独歩可能な状態で、その後吐血は認めていない。どのようなマネジメントが適切だろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明/JCS血圧128/51mmHg脈拍95回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温36.0℃瞳孔3/3 +/+既往歴高血圧内服薬定期内服薬なしはじめに吐血を主訴に救急外来を受診する患者さんは多く、救急外来が血の海になることも珍しくありません。バイタルサインの管理、内視鏡のタイミング、輸血のタイミングなど悩んだ経験があるのではないでしょうか?今回はまず押さえておくべき上部消化管出血の管理についてまとめておきます。上部消化管出血を疑うサインとは新鮮血の吐血やコーヒー残渣様の嘔吐を認める場合には、誰もが上部消化管出血を疑うと思いますが、それ以外にはどのような場合に疑うべきでしょうか。黒色便、鉄欠乏性貧血などは有名ですね。救急外来などの外来で見逃しがちなのが、訴えがはっきりしない場合です。脱力など自宅で動けない、元気がない、倦怠感などの主訴で来院した場合には、消化管出血に代表される出血性病変を考えるようにしましょう。その他、急性冠症候群、カリウムやカルシウムなどの電解質異常、そして敗血症や菌血症を考えるとよいでしょう。[失神・前失神を見逃すな]失神は以前に「第13回 頭部外傷その原因は?」でも取り上げましたが、診察時には状態は安定しており重症度を見誤りがちです。しかし、心血管性失神を見逃してしまうと致死的となり得ます。また、出血に伴う起立性低血圧も対応が遅れれば、予後はぐっと悪くなってしまうため必ず出血源を意識した対応が必要になります。ちなみに、前失神は失神と同様に危険なサインであり、完全に意識を失っていなくても体内で起こっていることは同様であり軽視してはいけません。意識を失ったか、失いそうになったかは必ず確認しましょう。緊急内視鏡の適応は?目の前の上部消化管出血疑い患者さんの内視鏡はいつ行うべきでしょうか?ショックバイタルでマズい場合には誰もが緊急内視鏡が必要と判断できると思いますが、本症例のように、一見するとバイタルサインが安定している場合には意外と判断は難しいものです。いくつかの指標が存在しますが、今回は“Glasgow Blatchford score(GBS)”(表1)を覚えておきましょう。GBS≦1の場合には入院の必要性はなく、緊急での対応は一般的には不要です1,2)。前述した通り、失神は重要なサインであり、点数も2点と黒色便よりも高く設定されています。失神を認める上部消化管出血は早期の内視鏡治療が必要と覚えておきましょう。1分1秒を争うわけではありませんが、血圧が普段よりも低めであるが故に止まっているだけですので、処置を行うことなく帰宅の判断はお勧めできません。表1  Glasgow Blatchford score(GBS)画像を拡大するちなみに、Hb値は濃度であり、また早期に変化は認められないため、Hb値が問題ないからと出血はたいしたことないと判断してはいけません。黒色便を認める場合には、数日の経過が経っていることが多く、Hb値も普段よりも低下しています。GBSも2点以上となりますが、即刻内視鏡なのか、24時間以内に内視鏡なのか、より具体的な緊急度は、その他バイタルサインやNSAIDs、抗血栓薬などのリスク因子も考慮し判断します。[抗血栓薬内服中の患者ではどうする?]絶対的な指標はありませんが、頭部外傷患者の対応と同様に、内服しているから緊急かというとそうではありません。しかし、リスクの1つではあるため、具体的な処方薬と用量、内服している理由、効果の評価(PT-INRなど)などと共に慎重な経過観察が必要となります。抗血栓薬を止めるのは簡単ですが、そのおかげで脳梗塞などを引き起こしてしまっては困りますよね。明らかな出血を認めている場合に内服を中止することはもちろんですが、その後の具体的な対応をきちんと決めておく必要があります。GBS以外の有名なリスクスコアに“AIMS65”(表2)がありますが、それにはPT-INRの項目が含まれており、緊急度に関わるとされます3)。また、PT-INRが1.5未満であってもDOAC(Direct oral anticoagulants)内服中の患者では、早期の内視鏡が推奨されています。そのような理由から、抗血栓薬を内服している患者さんでは、早期の内視鏡(24時間以内)を行うのが理想的でしょう。※GBSもAIMS65も覚えるのは大変ですよね。私は“MDCalc”というアプリをスマホに入れて計算しています。表2 AIMS65画像を拡大する現実問題として、夜間や時間外などに来院した患者の内視鏡をすぐに行うのか、一晩様子をみてOKなのかどうかを判断する必要があります。上記の内容を頭に入れつつ、施設毎の対応を構築しておきましょう。消化器内科医師などがいつでもすぐに対応可能な施設であれば、GBS≧2でも輸液や輸血でバイタルサインが安定している場合には一晩待てるかもしれませんが、そうではない場合には、「GBSで◯点以上の場合」、「肝硬変患者の吐血の場合」、「抗血栓薬を内服している場合」には緊急で行うなど、具体的なプランを立てておくとよいでしょう。スコアは絶対的なものではありませんが、GBSやAIMS65などを意識しておくと、確認すべき項目を見落とさなくなるでしょう。失神の有無は前述の通り重要ですし、抗血栓薬などの影響から凝固線溶機能に異常を来している場合には拮抗薬など追加の対応が必要なこともありますからね。最後に、上部消化管出血に伴い緊急内視鏡の判断をした場合には、気管挿管など気道の管理が必要ないかは必ず意識してください。ショックや重度の意識障害は気管挿管の適応であり、バイタルサインが不安定な場合には確実な気道確保目的の気管挿管が必須となります。慌てて内視鏡室へ移動し、不穏になり急変、誤嚥して酸素化低下などは避けなければなりません。救急外来で人数をかけ対応することができればベストですが、どうしても少ない人数で対応しなければならない場合には、確実な気道確保を行い万全の状態で内視鏡を行うようにしましょう。まとめ失神・前失神を伴う上部消化管出血は緊急性が高い!GBSやAIMS65を参考に、患者背景・薬の内服理由も考慮し対応を!緊急内視鏡を行う場合には、気管挿管など気道管理の徹底を!1)Blatchford O, et al. Lancet. 2000;356:1318-1321.2)Stanley AJ, et al. BMJ. 2017;356:i6432.3)Saltzman JR, et al. Gastrointest Endosc. 2011;74:1215-1224.

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一般住民におけるTIA患者の脳卒中長期リスクは依然として非常に高い(解説:内山真一郎氏)-1351

 本研究は、フラミンガム研究のコホートを用いて1万4,000例以上を1948年から2017年にわたって追跡したデータを解析した研究である。2000年から2017年におけるTIA患者における発症後90日以内の脳卒中リスクは、1948年から1985年と比べて有意に低下していたが、10年間の脳卒中リスクはTIAを起こしたことのない住民と比べて4倍以上高かった。本研究におけるTIA経験者の脳卒中発症率は高く、平均8.9年間の追跡期間中に30%のTIA患者が脳卒中を発症していた。 この発症率は、われわれが行った国際前向きコホート研究(TIAregistry.org)における5年間の脳卒中発症率9%よりはるかに高い(Amarenco P, et al. N Engl J Med. 2018;378:2182-2190.)。われわれの研究は脳卒中専門施設においてTIA発症直後から専門医がガイドラインを遵守して行った研究であったのに対し、本研究は一般住民のコホート研究なので、多くのTIA患者は専門施設にアクセスすることができず、専門医による2次予防管理を受けることができなかったことが、この差をもたらしたと考えられる。TIAはともすれば無視または軽視されたり、後回しにされたりしやすいが、本研究結果はTIAを正しく認識し、発症後早期から専門医の診療を受け、厳格な2次予防対策を講じることができるような啓発活動と医療体制の構築が必要なことを示している。

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TIA発症後90日脳卒中リスク、時代とともに低下傾向/JAMA

 米国における1948~2017年の一過性脳虚血発作(TIA)の推定罹患率は1.19/1,000人年であり、脳卒中リスクは、TIA罹患者がTIA非発症者との比較において有意に高かった。一方でTIA後90日の脳卒中リスクは時代とともに低下しており、2000~17年では1948~85年に比べ有意に低下していた。TIAとその後の脳卒中リスクとの関連を正確に推定することは予防への取り組みを改善し、脳卒中の負荷を限定的なものとすることに役立つとして、米国・ハーバード大学医学大学院のVasileios-Arsenios Lioutas氏らが、フラミンガム心臓研究の参加者約1万4,000例のデータを解析し明らかにした。JAMA誌2021年1月26日号掲載の報告。TIA初発群と非発生対照群の脳卒中リスクを検証 研究グループは、住民ベースのTIA罹患率とTIA後の長期にわたる脳卒中リスクの傾向を明らかにするため、フラミンガム心臓研究の参加者データを解析評価した。 参加者のうち、ベースラインでTIAや脳卒中の既往がない1万4,059例のデータを、1948年~2017年12月31日まで前向きに追跡。TIA初発群と、年齢・性別で1対5の割合で適合したTIA非発生群を比較検証した。 主なアウトカムは、TIA罹患率、TIA後の短期(7日、30日、90日)・長期(1~10年超)の脳卒中発生割合、TIA後の脳卒中発生vs.適合対照群の脳卒中発生、3期間(1948~85年、1986~99年、2000~17年)を比べたTIA後90日時点の脳卒中リスクの時間的傾向だった。TIA後の脳卒中発生までの期間中央値は1.64年 1万4,059例を対象とした66年(36万6,209人年)の追跡において、TIAを呈したのは435例だった。うち女性は229例(平均年齢73.47[SD 11.48]歳)、男性は206例(70.10[10.64]歳)。TIA非発生の適合対照群として2,175例を特定し比較検証した。 TIAの推定罹患率は1.19/1,000人年だった。TIA後の中央値8.86年の追跡期間中、130例(29.5%)の脳卒中が報告された。そのうちTIA後7日以内の発生は28件(21.5%)、30日以内は40件(30.8%)、90日以内は51件(39.2%)、1年以上は63件(48.5%)で、TIA後の脳卒中発生までの期間中央値は1.64年(四分位範囲:0.07~6.6)だった。 年齢・性別で補正後の脳卒中10年累積発生率は、TIA初発群は0.46(95%信頼区間[CI]:0.39~0.55、130件/435例)、適合対照群は0.09(0.08~0.11、165件/2,175例)で、完全補正後ハザード比(HR)は4.37(95%CI:3.30~5.71、p<0.001)だった。 1948~85年のTIA後90日脳卒中発生率は16.7%(26件/155例)、1986~99年の同発生率は11.1%(18件/162例)、2000~17年の同発生率は5.9%(7件/118例)だった。第1期(1948~85年)と比較した脳卒中発生の90日リスクに関するHRは、第2期(1986~99年)は0.60(95%CI:0.33~1.12)、第3期(2000~17年)は0.32(95%CI:0.14~0.75)で、時代とともに低下している傾向が認められた(傾向に関するp=0.005)。

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超急性期脳梗塞の血管内治療、rt-PA併用に対して非劣性を認めず/JAMA

 急性脳主幹動脈閉塞に対する機械的血栓回収単独療法は、機械的血栓回収+静脈内血栓溶解併用療法と比較し、良好な機能的アウトカムに関して非劣性は示されなかった。日本医科大学の鈴木 健太郎氏らが、医師主導型多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「Randomized study of endovascular therapy with versus without intravenous tissue plasminogen activator in acute stroke with ICA and M1 occlusion(SKIP study)」の結果を報告した。急性脳主幹動脈閉塞患者において、機械的血栓回収療法に静脈内血栓溶解の併用が必要かどうかは不明であった。JAMA誌2021年1月19日号掲載の報告。超急性期脳梗塞患者約200例で有効性を比較 研究グループは2017年1月1日~2019年7月31日に、全国23施設で脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞患者204例を登録し、機械的血栓回収療法単独群(101例)(MT単独群)と機械的血栓回収+静脈内血栓溶解併用療法(アルテプラーゼ0.6mg/kg)併用群(103例)(MT+rt-PA併用群)に無作為に割り付け、2019年10月31日まで追跡調査した。 有効性の主要評価項目は、発症90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア0~2で定義した良好な機能的アウトカムとした。非劣性マージンはオッズ比(OR)0.74、有意性水準は片側0.025(97.5%信頼区間[CI])とした。 事前に設定した副次評価項目は、発症90日までの死亡などを含む7項目、安全性評価項目は発症36時間以内の頭蓋内出血など4項目であった。90日時点の良好な機能的アウトカムに両群で有意差なし 204例(年齢中央値74歳、男性62.7%、米国国立衛生研究所脳卒中スケール[NIHSS]中央値18)が登録され、全患者が試験を完遂した。 主要評価項目を達成した患者の割合はMT単独群59.4%(60例)、MT+rt-PA併用群57.3%(59例)であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:2.1%[片側97.5%CI:-11.4~∞]、OR:1.09[片側97.5%CI:0.63~∞]、非劣性のp=0.18)。 有効性の副次評価項目7項目および安全性評価項目4項目のうち、90日死亡(7.9% vs.8.7%、群間差:-0.8%[片側95%CI:-9.5~7.8]、OR:0.90[95%CI:0.33~2.43]、p>0.99)を含む10項目で、有意差は確認されなかった。 なお、全頭蓋内出血の発生についてのみ、MT単独群がMT+rt-PA併用群と比較して有意に少ないことが確認された(33.7% vs.50.5%、群間差:-16.8%[95%CI:-32.1~-1.6]、OR:0.50[95%CI:0.28~0.88]、p=0.02)。症候性頭蓋内出血は、両群で差はなかった(5.9% vs.7.7%、群間差:-1.8%[95%CI:-9.7~6.1]、OR:0.75[95%CI:0.25~2.24]、p=0.78)。

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急性脳梗塞、血管内治療単独vs.静脈内血栓溶解療法併用/JAMA

 発症から4.5時間以内の前方近位・頭蓋内循環閉塞性脳卒中患者において、血管内血栓除去術のみの単独療法は、静脈内血栓溶解療法+血管内血栓除去術の併用療法と比べて90日時点の機能的自立アウトカムについて、事前規定の統計学的閾値を満たし非劣性であることが、中国・人民解放軍第三軍大学のWenjie Zi氏らが行った多施設共同無作為化非劣性試験「DEVT試験」の結果、示された。ただし著者は、「今回示された所見は、選択的な非劣性閾値の臨床的受容性を鑑みて解釈する必要がある」としている。JAMA誌2021年1月19日号掲載の報告。機能的自立はmRSスコア0~2で定義 研究グループは2018年5月20日~2020年5月2日にかけて、中国33ヵ所の脳卒中センターで、18歳以上の発症後4.5時間以内の前方近位・頭蓋内循環閉塞性脳卒中で、静脈内血栓溶解療法が適応だった234例を対象に試験を開始した。追跡は90日間行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には血管内血栓除去療法を(単独群、116例)、もう一方には静脈内血栓溶解療法と血管内血栓除去療法を行った(併用群、118例)。 主要エンドポイントは、90日時点における機能的自立(修正Rankinスケール[mRS]スコア0[症状なし]~6[死亡]のうち0~2と定義)を達成した患者の割合とした。非劣性マージンは-10%だった。 安全性に関するアウトカムは、48時間以内の症候性脳内出血と90日死亡率とした。90日機能的自立達成率、単独群54%、併用群47% 計画では被験者数970例を予定していたが、中間解析で単独群の有効性が確認されたため、234例が参加した時点で早期に終了した。被験者234例の平均年齢は68歳、女性は102例(43.6%)だった。 90日時点で、単独群54.3%(63例)、併用群46.6%(55例)が機能的自立を達成した(群間差:7.7%、片側97.5%信頼区間[CI]:-5.1%~∞、非劣性のp=0.003)。 48時間以内の症候性脳内出血の発生率は単独群6.1%と併用群6.8%(群間差:-0.8%、95%CI:-7.1~5.6)、90日死亡率はそれぞれ17.2%と17.8%(-0.5%、-10.3~9.2)で、いずれも有意差はみられなかった。

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超高齢者でもLDLコレステロール上昇は心筋梗塞、動脈硬化性疾患のリスクである(解説:平山篤志氏)-1347

 LDLコレステロール(LDL-C)と動脈硬化性疾患の関連は、多くの疫学研究や大規模臨床試験で明らかにされてきた。しかし、75歳までのデータが多く、75歳以上さらに80歳以上の高齢者のデータはほぼなかった。本論文のCopenhagen General Population Study(CGPS)では動脈硬化性疾患の既往のない健康人を追跡した結果、高齢になればなるほど、心筋梗塞および動脈硬化性疾患(心筋梗塞、致死的冠動脈疾患、非致死的、致死的脳梗塞)の発生頻度が増加しかつ、LDL-C値が高くなればなるほど増加している。LDL-C 1mmol/L(ほぼ38.5mg/dL)の上昇の心血管イベント発生率に及ぼす影響は高齢になるほど大きかった。これまでは、疫学調査でも高齢者のfollow-upが十分でない、期間が短いなどの限界があったが、この研究ではほぼ100%の追跡ができている点、80~100歳が3,188人(全体の3%)、70~79歳が1万591人(全体の12%)と多数例が追跡されている点で実態を正確に反映していると考えられる。この対象にmoderate-intensity statinを使用することで、LDL-C 1mmol/Lを低下することで、5年間の心筋梗塞予防のNNTが80歳以上では80、70~79歳では145と他の年齢に比較して効果があると結論付けている。これはあくまで、これまでの介入試験でのLDL-C低下効果の結果からの類推であり、1次予防効果のエビデンスではないことに留意が必要である。ただ、わが国のエゼチミブを用いた75歳以上の高齢者を対象にしたEWTOPIA75試験でもLDL-C低下によるイベント抑制効果が示されている。超高齢化社会に突入したわが国で、高齢者、とくに超高齢者はポリファーマシー、フレイルなど多くの問題を抱えている。脂質低下療法は2次予防では、論をまたないであろうが、1次予防において積極的介入をすべきかどうかは今後明らかにする必要がある。

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第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?Q1 COVID-19流行による受診機会減少、運動不足解消への具体的な対応策は?COVID-19流行に不安を感じ、受診を控える患者さんは少なくありません。適切な通院間隔は個々の症例によって異なるため、一概には言えませんが、通院間隔が短いほうが血糖コントロールが良好となる傾向があります。糖尿病診療において血糖測定(およびHbA1c測定)は重要な要素であるため、自己血糖測定を行っていない場合にオンラインや電話診療のみで加療をするのは困難です。したがって、血糖コントロールが良好な状態が維持できていれば通院間隔を延長する(最大3ヵ月)、もともと不良であったり、悪化傾向がみられる場合には通院間隔を短縮するといった柔軟な対応が必要です。患者さんの背景にもよりますが、HbA1c 6%台であれば3ヵ月ごと(インスリン使用者は除く)、7%台であれば2ヵ月ごと、8%台であれば1ヵ月ごとなどの目安を患者さんに提示し、受診の必要性を理解していただくことも効果的です。COVID-19流行に伴い外出機会や活動量が低下した高齢糖尿病患者さんも多く経験します。高齢者は活動量が低下すると容易に筋力が低下しますので、活動量の維持は重要です。1人あるいは同居者とのウォーキングで感染リスクが高まることはまずないと考えますので、可能な方には、人込みを避けたウォーキングを推奨しています。また、室内でできる運動としてラジオ体操や当センター研究所 社会参加と地域保健チームで開発された「本日の8ミッション」などを提示しています。「本日の8ミッション」は、つま先あげや、ももあげ、スクワットなどからなり、チェックシートがホームページよりダウンロードできます。また、座位行動時間に注目した指導も有効です。ADA(米国糖尿病学会)によるStandards of medical care in diabetes 2020では座位行動時間の短縮が推奨されています。30分以上座り続けないことで血糖値が改善するといわれており1)、自宅にいても30分に1回は立ち上がるよう患者さんに指導しています。Q2 誤嚥性肺炎の効果的な予防法について教えてください高齢者肺炎の多くを占めると考えられているのが誤嚥性肺炎です。糖尿病患者は脳梗塞による嚥下障害や高血糖による免疫能低下を介し、誤嚥性肺炎のリスクが高いと考えられます。誤嚥性肺炎は、睡眠中などに口腔内の細菌が唾液とともに下気道に流入する不顕性誤嚥により生じると考えられており、口腔内を清潔に保つことが重要です。コロナ禍の現在でも歯磨き習慣の確認や口腔内のセルフチェックを促すことは重要です。嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能の回復を目指したリハビリ(通院が困難な場合は在宅でも可能)や嚥下状態に合わせた適切な食形態への変更が必要です。鎮静薬や睡眠薬、抗コリン薬などの口腔内乾燥をきたす薬剤は嚥下障害をきたしやすいため、適切な使用がなされているか評価する必要があります。また、肺炎一般の予防として肺炎球菌やインフルエンザワクチンの接種も有効です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも肺炎による入院減少が示されており、両者の併用により、さらに入院頻度が減少することが示されています2)。なお、経鼻胃管や胃瘻造設による誤嚥性肺炎の予防効果は示されていません。Q3 尿路感染症の効果的な予防法・無症候性細菌尿への対応は?糖尿病は尿路感染症のリスクであることが知られており、そのリスクは血糖コントロール不良(HbA1c 8.5%以上)により高くなります3)。また、糖尿病患者では男女とも無症候性細菌尿の頻度が高いことも知られていますが4)、一部の例外(妊婦、好中球減少、泌尿器処置前)を除き、無症候性細菌尿に対するスクリーニングや治療は推奨されません5)。ただし、SGLT-2阻害薬の使用は尿路感染症のリスクとなる可能性があるため、現時点で明確なエビデンスがあるわけではありませんが、使用開始前に評価し、無症候性細菌尿が認められれば、使用を慎重に検討する必要があると考えます。閉経後女性140名を対象とした無作為比較試験では、1.5L以上の飲水により単純性膀胱炎の発症を50%低下することが示されています6)。膀胱炎を繰り返す場合には神経因性膀胱を念頭とした残尿測定やエコーによる尿路閉塞の有無を確認する必要があります。再発性尿路感染症予防におけるクランベリージュースの有効性を検討した研究では、50歳以上の女性においてその有効性が示されていますが7)、否定的な意見もあり8)注意を要します。Q4 歯周病に対する評価や歯科との連携について高齢糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、血糖コントロールが不良であると歯周病が悪化しやすいことが知られています。歯周病が重症化すると血糖コントロールが悪化します。逆に治療により歯周病による炎症が改善すると血糖コントロールも改善することが報告されています9)。歯周病による歯牙の喪失は嚥下障害のリスクとなるほか、オーラルフレイルを介し、身体的フレイルおよびサルコペニアのリスクとなる可能性があるため、歯周病の評価・治療は重要です。高齢糖尿病患者で歯牙の喪失または歯周病があると健康関連のQOL低下は1.25倍おこりやすく、過去12ヵ月間歯科治療を受けていないと1.34倍QOL低下をきたしやすいという米国の70,363人の調査結果も出ています10)。歯科との連携に際し、日本糖尿病協会が発行している「糖尿病連携手帳」を利用することが多いです。「糖尿病連携手帳」にはHbA1cなどの検査結果を記載するページとともに眼科・歯科の検査結果を記載するページもあり、受診時に患者さんに持参していただくことで情報の共有が可能です。もともとの状態や血糖コントロール状況にもよりますが、一般に3~6ヵ月間隔での評価が推奨されています。1)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020 Jan;43:S48-S65.2)Kuo CS, et al.Medicine (Baltimore). 2016 Jun;95:e4064.3)McGovern AP, et al.Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Apr;4:303-4.4)Renko M, et al.Diabetes Care. 2011 Jan;34:230-55)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-,日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, p1-3,2016年1月.6)Hooton TM, et al.JAMA Intern Med. 2018 Nov 1;178:1509-1515.7)Takahashi S, et al.J Infect Chemother 2013 Feb;19:112-7.8)Nicolle LE. JAMA. 2016 Nov 8;316:1873-1874.9)Munenaga Y, et al.Diabetes Res Clin Pract. 2013 Apr;100:53-60.10)Huang DL, et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Oct;61:1782-8.

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SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendationを改訂/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2014年に策定された「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」を改訂し、2020年12月25日に第6版を公表した。 2017年9月以降より発売されているSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の配合薬の留意点、成人1型糖尿病患者におけるインスリン製剤との併用療法でのケトアシドーシスのリスクや注意点についてなどについて記載されている。学会では、これらの情報がさらに広く共有されることで、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるように注意を促している。SGLT2阻害薬の適正使用に関する8つの Recommendation1)1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。2)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。3)75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。4)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。5)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。6)全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis:正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。7)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。8)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。そのほかの記載事項・副作用の事例と対策・重症低血糖・ケトアシドーシス・脱水・脳梗塞等・皮膚症状・尿路・性器感染症

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機械学習による疾病予測モデルはあまり当たらない(解説:折笠秀樹氏)-1333

 フラミンガムスタディデータを使って、心臓病の10年予測モデルが出たのが1998年のことです。私も脳梗塞の再発予測モデルの開発に携わったことがありますが、2012年のことでした。今や予測モデルの研究は枚挙にいとまがないほどです。TRIPOD声明というガイドラインまで出ています。モデル開発にはCoxモデルを用いるのが一般的でしたが、最近では機械学習モデルを使うことも多くなりました。ニューラルネットワークやランダムフォレストなどという手法です。 Cox回帰による心臓病の予測(QRISK3)を正解として、19種類の予測モデルの結果と比較しました。それらには統計モデルと機械学習モデルを含みます。集団の性能を示す判別能(C統計量など)や較正能については、どの予測モデルも良い成績でした。しかし、個人の予測能は違いました。機械学習による予測モデルは、個人の心臓病リスクを低く見積もっていたのです。原因は打ち切りデータの扱いにあると思われます。打ち切りデータとは、脱落などで途中から行方不明になったデータのことです。生存時間解析では、「打ち切りとイベント発現は独立」という仮定を置いています。打ち切り例も追跡例も、その後のイベント発現パターンは同じという仮定です。機械学習ではどうでしょうか。打ち切りデータは結果不明のため削除したか、心臓病は起こらなかったとしたはずです。後者だと仮定すれば、当然リスクを低く見積もります。ロジスティック回帰も結果は二値ですから、同じことが問題になります。 QRISK3予測モデルでは22変数を用いていましたが、機械学習モデルはもっと多くの変数を用いていたようです。最大473変数を用いるモデルもあったようです。これなら集団の性能を高くすることはできるでしょうが、個々の事例では合わないケースが出てくることは目に見えています。今や機械学習が流行ですが、古典的な統計専門家の私としては、やはり従来の統計モデルのほうに軍配を上げたい気がします。

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体験ルポ・新型コロナワクチン接種―米国の日本人医師が緊急寄稿

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種がついに始まった。世界に先駆け、英国で12月8日から、14日からは感染者数世界最多の米国でも医療・介護従事者に対し、優先的に接種が行われている。今回、米国・ワシントンDCの病院に勤務する日本人医師の安川 康介氏が、ワクチン接種の体験についてケアネットに緊急寄稿。日本においても来年には一般接種が開始されるとみられる中、同氏の体験をぜひ参考にしていただきたい。3月から感染者数急増、全員体制でもひっ迫する診療現場 米国FDAが12月11日、Pfizer社とBioNTech社が開発したmRNAワクチン(BNT162b2)の緊急使用を認めた。これを受けて、わたしが勤務するワシントンDCのMedStar Washington Hospital Centerにおいても、12月16日から医療従事者を対象にワクチン接種が始まった。本稿では、COVID-19に関するわたしの経験を振り返ると共に、ワクチン接種に対する個人的な所感について述べたい。 米国では3月以降に新型コロナウイルスの感染が急速に広がり、すでに29万人以上がCOVID-19で亡くなり、1日の死亡者が3,000人を超える日もある(12月13日現在)。わたしの病院でも、3月後半からCOVID-19による入院患者が増え始め、最初の約2週間で100人近い患者が入院し、一時期は常時200人近い患者が入院している状況が続いた。当初は、COVID-19専用病棟として1棟準備していたが、感染者数の増加に伴って専用病棟が次々と増え、ピーク時は約5病棟が感染者専用病棟となり、ICUの大部分も感染患者によって占められる状況であった。人員の再配置(redeployment)も必要になり、集中治療医や内科医の負担を減らすために他科の専門医やナース・プラクティショナーが「助っ人」として駆り出された。ピーク時よりも感染者が減少したものの、今ではCOVID-19診療がすっかり日常となっている。 COVID-19のさまざまな合併症については世界規模の研究で明らかになりつつあるが、3月以降、この感染症がいかに多種多様な症状・合併症を引き起こすかということを、研究論文のみならず実臨床からも多く学んだ。時に、急速に進む呼吸不全はもちろんのこと、消化器症状、肺塞栓症や脳梗塞、肝障害、腎不全など、COVID-19の恐ろしさを、同僚と共に目の当たりにしてきた。病院のスタッフでも、亡くなったり重症化したりする方もいた。深刻な症状を引き起こす一方で、軽症もしくは無症状で済むケースもまた少なくないことは確かであり、ウェブ上のCOVID-19関連の情報や意見はまさに玉石混交。医療のコミュニケーションの難しさについてもずいぶん考えさせられた。ワクチン接種はコロナと格闘してきた9ヵ月越しの「特別な日」 Pfizer/BioNTech社のmRNAワクチンを巡っては、その効果と安全性を検証した論文が12月10日付のNEJM誌に掲載され、その数日前から、FDAによる53ページに及ぶ詳細な報告書が閲覧可能となっていた。それによると、当該ワクチンの2回投与後の感染予防効果は約95%と高く、短期的な局所反応・全身反応を除いて重篤な副反応はまれであるとのことである。とはいえ、mRNAワクチンは今回初めて承認となるため、長期的およびまれな副反応については、注意深くモニタリングしていく必要がある。 さまざまな不確定要素があるが、それでも私が接種を決めた理由はいくつかあり、先述したワクチンの効果・安全性についての臨床試験の情報、自身の置かれている状況(コミュニティーにおける高い感染者数、勤務先でのCOVID-19診療)、自分が感染した場合、家族や患者、同僚への感染拡大を避けるため―などである。 12月16日(現地時間)、私の働く病院にてワクチン接種が開始された。病院は接種を推奨しているが、もちろん強制ではない。ワクチンの数量が現在のところ限られているため、院内職員でも優先順位が設けられ、COVID-19患者がとくに多い、救急科、集中治療、そして内科の医療従事者が先んじて受けることになった。事前に予約していた時間に病院内のワクチン接種会場に行くと、すでに数人の同僚が並んでいた。CDCからワクチン接種のカードが配られ、ワクチンに関する簡単な資料が渡された後、ワクチンの筋肉内注射を受けた。アレルギー反応が出ないか接種者全員が15分会場で観察され(ちなみにわたしにはアレルギー歴はない)、その後通常の仕事に戻った。その時点では、痛みはほとんどなかったが、数時間経つとインフルエンザワクチンを受けた時のような注射部位の痛みが生じた。夜になると、その痛みはやや増加し、翌日(現地時間で12月17日)もその痛みは持続しているものの、倦怠感・発熱・頭痛・悪寒などの全身症状はない。同僚の中には、受けた夜に発熱・発汗が生じた人もいたが、周りで受けた人のほとんどが主に注射部位の痛みがあった程度である。次の数ヵ月で米国では数百万人単位で今回のワクチンを受ける可能性があるので、日本で接種が開始される頃には、安全性についてより知見が蓄積していることだろう。今年3月以降、新型コロナウイルス感染者の方を日常に診療してきた。この9ヵ月を乗り越えてきた自分や同僚にとって、12月16日は特別な日となった。 2回目の接種は、2021年1月4日に予定している。次回、1回目の接種後から2回目の接種についてお伝えする。【安川 康介氏プロフィール】2007年慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターにて初期研修を修了後渡米。ミネソタ州ミネソタ大学医学部内科レジデンシー、テキサス州ベイラー医科大学感染症フェローシップ修了。米国内科専門医・感染症専門医。現在は、ワシントンDCのMedStar Washington Hospital Centerにて、ホスピタリストとして勤務。

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日本人のCOVID-19による血栓症発症率は?

 合同COVID-19関連血栓症アンケート調査チームによる『COVID-19関連血栓症に関するアンケート調査』の結果が12月9日に発表された。それによると、日本人での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連血栓症の発症率は、全体では1.85%であることが明らかになった。 この調査は、COVID-19の病態の重症化に血栓症が深く関わっていることが欧米の研究で指摘されていることを受け、日本人COVID-19関連血栓症の病態及び診療実態を明らかにすることを目的として行われたもの。2020年8月31日までに入院したCOVID-19症例を対象とし、全国の病院399施設のうち109施設からCOVID-19患者6,082例に関する回答が寄せられた。なお、合同調査チームは厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班、日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会の3組織合同によるもの。 主な調査結果は以下のとおり。・Dダイマーは症例全体の72%で測定され、入院中に基準値の3~8倍の上昇を認めたのはそのうちの9.5%、8倍以上の上昇を認めたのは7.7%と、多くの症例で血栓傾向がみられた。・血栓症は1.85%(血栓症に関する回答のあった5,687例のうち105例)に発症し、発症部位は(重複回答を可として)、症候性脳梗塞22例(血栓症症例の21.0%)、心筋梗塞7例(同6.7%)、深部静脈血栓症41例(同39.0%)、肺血栓塞栓症29例(同27.6%)、その他の血栓症21例(同20.0%)であった。・血栓症は、軽/中等症の症例での発症が31例(軽/中等症症例の0.59%)、人工呼吸器/ECMO使用中の発症が50例(人工呼吸/ECMO症例まで要した重症例の13.2%)であった。・症状悪化時に血栓症を発症したのは64例だったが、回復期にも26例が血栓症を発症していた。・抗凝固療法は、76病院で6,082例のうち880例(14.5%)に実施された。治療法の主な内訳は、未分画ヘパリン591例(880例中の67.2%)、低分子量ヘパリン111例(同13.0%)、ナファモスタット234例(同26.6%)、トロンボモジュリンアルファ42例(同4.8%)、前述の薬剤併用138例(同15.7%)、直接経口抗凝固薬[DOAC]91例(同10.3%)、その他42例(同4.8%)だった。・予防的抗凝固療法の実施について回答した49施設によると、予防的投与を行った患者背景として、Dダイマー高値、NPPV(非侵襲的陽圧換気)/人工呼吸患者、酸素投与患者などが挙げられた。

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脳血管内治療STANDARD

第1回 病気と治療法について第2回 脳血管内治療のセットアップ第3回 治療に必要な血管解剖第4回 穿刺とガイディングカテーテル第5回 急性期脳梗塞第6回 脳動脈瘤(コイル塞栓術)第7回 脳動脈瘤(フローダイバーター)第8回 頚動脈狭窄症第9回 頭蓋内動脈狭窄症第10回 周術期管理 脳血管内治療は、昨今の需要の高まりで脳神経外科医が身につけるべき必須のスキルになりつつあります。本番組では、この分野の第一人者である吉村紳一先生、兵庫医科大学の講師陣が、器材のセットアップから術式ごとの手技のポイント、周術期管理までをレクチャー。現在の脳血管内治療の標準となる知識と技術を網羅しています。脳血管内治療が適応となる代表的な4つの疾患、脳動脈瘤・頸動脈狭窄症・頭蓋内動脈狭窄症・急性期脳梗塞で、吉村先生が手術室から実際に手術を行いながら解説しているのも特徴です。この番組は、メジカルビュー社から刊行されている『脳血管内治療 スタート&スタンダード』と連動しています。実際の手術映像で同書の内容をよりリアルに学ぶことができます。書籍はこちら ↓【脳血管内治療 スタート&スタンダード】第1回 病気と治療法について第1回は、病気と治療法についてです。脳血管内治療の適応となる代表的な4つの疾患、脳動脈瘤・頸動脈狭窄症・頭蓋内動脈狭窄症・急性期脳梗塞から、それぞれに適応する治療法とその術式について詳しく解説していきます。第2回 脳血管内治療のセットアップ脳血管内治療においては、機器のセットアップが非常に重要です。とくに緊急治療においては必要な物品がすぐに取り出せるよう、セットを作っておくことが大切です。第2回では、脳血管内治療で用いる機器の基本的なセットアップについて紹介します。第3回 治療に必要な血管解剖脳血管内治療を行う上で、血管解剖を理解することは極めて重要です。鼠径部の穿刺から始まり、大動脈、頚部血管、頭蓋内動脈の構造を正確に理解すること、また、そのバリエーションを知っておくことは、治療を成功させるために不可欠です。脳動脈の詳細な解剖について紹介します。第4回 穿刺とガイディングカテーテル脳血管内治療を開始する最初のステップが、動脈の穿刺とシースの留置、そしてガイディングカテーテルの誘導です。治療方法、また治療対象によって穿刺の部位やシースの太さ、ガイディングカテーテルの種類などが異なりますが、この回では代表的な治療における機器と操作法について紹介します。第5回 急性期脳梗塞急性期脳梗塞に対する治療についてクリニカルエビデンスの解説、そして実際の手術の様子まで詳しく紹介します。兵庫医科大学脳神経外科で行われている、患者搬入から穿刺までの様子と、動脈硬化性脳梗塞、末梢血管閉塞の治療について、実際の動画を用いながら解説します。第6回 脳動脈瘤(コイル塞栓術)脳動脈瘤に対するコイル塞栓術は、破裂・未破裂どちらの動脈瘤に対しても行われ、近年ではステントを併用して行う機会も増えています。脳動脈瘤コイル塞栓術のエビデンスの解説と、兵庫医科大学で実際に行われた手術の様子をご覧ください。第7回 脳動脈瘤(フローダイバーター)大型・巨大脳動脈瘤においては、従来の開頭手術やコイル塞栓術では、良好な治療結果が得られにくいことが知られています。近年このような動脈瘤に対し、新たな治療機器であるフローダイバーターを用いた治療が可能となりました。この回では、フローダイバーターの留置法について、実際の手術映像を用いて詳しく解説します。第8回 頚動脈狭窄症頚動脈ステント留置術は、頚動脈の高度狭窄症に対する主流の治療となっています。他部位と異なり、治療中に血栓や血管の成分が脳に流れないよう、脳を保護しながら行う必要があります。この回では、対側内頚動脈閉塞を伴う、比較的リスクの高い症例における、治療の工夫について紹介します。第9回 頭蓋内動脈狭窄症頭蓋内動脈高度狭窄症によって脳虚血発作を来した場合に、ステントを用いた血管拡張術が行われることがありますが、本治療は血圧低下や脂質低下などの積極的内科治療に対する優位性が証明されていません。このため、内科治療抵抗例などの限定的な状況で行われていることに注意してください。この回では、その治療の実際と注意点について解説します。第10回 周術期管理脳血管内治療においては、周術期の抗血栓療法が極めて重要になります。また、腎機能低下例や造影剤アレルギーを有する症例においては、とくに注意が必要です。この回では、脳血管内治療の周術管理について詳しく解説します。

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メタ解析の論文(解説:後藤信哉氏)-1325

 臨床の科学ではPredefinedがキーワードである。Predefined Endpointの発現率を実薬とプラセボにて比較するランダム化比較試験は、EBMの主軸として重要な役割を演じている。ランダム化比較試験のメタ解析のエビデンスレベルは、ランダム化比較試験よりも高いとpredefineされている。Oxford大学が主導しているAntithrombotic Trialists’ Collaboration, Cholesterol Treatment Trialists’ Collaborationなどの主導したアスピリン、スタチンに関する大規模ランダム化比較試験のメタ解析は、アスピリン、スタチンの有効性、安全性の重要なエビデンスを提供した。有効性、安全性の方向が同一となる大規模ランダム化比較試験のメタ解析には大きな価値があると感じる。 メタ解析に科学的価値があるとpredefineされた結果、治療法・薬剤の有効性、安全性が単一のランダム化比較試験にて十分に確立されていない領域にもメタ解析が及んでいる。探索的なメタ解析に抵抗を感じるのは筆者だけであろうか? 大規模な仮説検証ランダム化比較試験の施行には膨大な努力とコストがかかる。Pubmed searchなどシステム的文献解析にも努力が必要かもしれないが、ランダム化比較試験の計画、実行よりも楽に見える。探索的なメタ解析は「楽をしてhigh impact journalに採択される」邪道に思えてしまう。 本研究にて探索された仮説は重要である。後遺症の残る可能性の高い脳梗塞では、発症時刻が明確でなくてもMRIのDWI-FLAIRがあれば、血栓溶解療法を安全に施行できるように筆者も思う。本研究では、単独では有効性を証明できていない4つのランダム化比較試験をメタ解析して、発症時刻が明確でなくてもMRIのDWI-FLAIRがあればt-PA投与による予後を改善できるとしている。頭蓋内出血は増えるがNet Benefitも良好としている。しかも論文はLancet誌に掲載されている。この論文のメタ解析の科学的価値は、Antithrombotic Trialists’ Collaboration, Cholesterol Treatment Trialists’ Collaborationのメタ解析とは質的に異なる。メタ解析のエビデンスレベルは高いとするよりも、「個別のランダム化比較試験にて有効性、安全性が検証された臨床試験」のメタ解析のエビデンスレベルが高いとpredefineしたほうがよいと筆者は考える。

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がん治療の進歩で注意すべき心血管リスクとその対策/日本医療薬学会

 近年、腫瘍循環器学という新しい概念が提唱されている。10月24日~11月1日にWeb開催された第30回日本医療薬学会総会のシンポジウム「腫瘍循環器(Onco-Cardiology)学を学ぼう~タスクシェア・シフト時代にマネジメントする薬剤師力の発揮~」において、腫瘍循環器領域の第一人者である向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科主任部長)が「腫瘍循環器学とは?臨床現場で薬剤師に求めること」と題し、腫瘍循環器学における新たな視点について語った。がん治療の進歩で注意すべき心血管リスクも変化 がん患者の心血管リスクは、がん治療時の急性期/慢性期心毒性をピークに回復・寛解期には一度低下傾向を示す。しかし、転移・再発に対するがん治療の開始やがんサバイバーとして生き長らえる中で、潜在的心血管リスクの増悪による晩期心毒性によりリスクは再び上向きに転じることが報告1)されている。向井氏はその1つとして、28種がんのがんサバイバーの治療経過と心臓病による死亡リスクの検討2)から、がん診断後から5~10年の時点で全領域のがんサバイバー、なかでも乳がん、皮膚がん(メラノーマ)、前立腺がん患者などの死亡リスクが上昇する報告を示した。同氏は「新規薬剤によるがん治療の進歩とそれに伴う生存率上昇の反面、心毒性が増加していることが影響している」と述べ、最新のがん治療にも心血管リスクが潜んでいる点を指摘した。投与終了後の経過観察は生涯必要 がん治療による心毒性・心血管リスクの歴史は1970年代に遡る。殺細胞系抗がん剤アントラサイクリンによる心筋症が明らかになって以降、2000年代には分子標的薬のトラスツズマブにより生じる心筋症が、近年では免疫チェックポイント阻害薬による劇症心筋炎と心血管合併症が問題になっている。さらに、血管新生阻害薬(抗VEGF薬)は心毒性リスクが投与用量に比して増加し、かつ経時的に変化する特徴があり、投与初期には毛細血管攣縮による血圧上昇、数ヵ月後に毛細血管循環障害(密度希薄化)による高血圧症や尿蛋白が出現する。その後、年単位の治療が継続されることでプラーク形成による血栓症・出血が発生し、3~5年の長期治療によって心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な心血管疾患発症に至る。このような症例を実際に目の当たりにした同氏は「がん治療が進歩する一方でこれまでにない晩期合併症が増加している」と危惧した。 心毒性発症の原因は多様性を示し、がん自体の作用、心血管疾患の既往、ゲノムの関与、そしてがん治療が影響していることから、「心毒性に対し循環器医の介入はもちろんのこと実際に薬剤を扱う薬剤師も、近年頻度が増加しているがん関連血栓症や動脈硬化血管障害(虚血性心疾患)、不整脈などを幅広く理解しておく必要がある」とも述べた。がんと循環器疾患の共通点、危険因子と発症機序 がんの危険因子を列挙すると循環器疾患の危険因子との共通項目が非常に多く、たとえば、喫煙、飲酒、食塩摂取、運動不足などが挙げられる。また、がんと動脈硬化発症の機序において、腫瘍が増殖する際の血管新生に影響を及ぼすVEGFは、循環器領域ではプラーク形成にかかわる血管新生や血管内皮障害を起こす。そのほかにもがんの進展と動脈硬化の発症メカニズムには多くの共通点が指摘されており3)、同氏は「遠い存在であったがんと循環器は共通の性格を持つ疾患である」とし、「いずれも生活習慣病として、遺伝子的因子、エピジェネティク因子、環境因子、生活習慣などが原因で酸化ストレス、炎症、増殖、アポトーシス、血管新生などを生じ動脈硬化やがんに発展する。心不全や血栓症などの晩期心毒性はこれらの危険因子を抑えることで発症予防につながることが期待されている」と話した。薬剤師によるがんサバイバーへの貢献に期待 このようにがんと循環器のリスクの共通性が解明される一方、増加するがんサバイバーへの対応は現在模索中である。しかし、がん診療をがん発症予防、診断と治療計画、がん治療、がんサバイバーの4つのステージに分けて考えた時、どのステージにおいてもこれから薬剤師が活躍すると同氏は期待を寄せる。とくにがん治療が終わった後のがんサバイバーは、自分を知っていてくれるかかりつけ薬剤師に調剤薬局やドラッグストアで接することになる。そこでは、がんサバイバーが直面する晩期合併症、なかでも晩期心毒性に対応するためにがん診療における薬薬連携による情報交換と幅広い理解が求められている。 最後に同氏は「腫瘍循環器学を学び、がんと循環器の共通点を知りタスクシフト・シェア時代に対応することで、がんサバイバーの不安を軽減し支援することができるよう薬剤師の皆さまに“薬剤師力”を発揮していただきたい」と締めくくった。

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発症時間不明かつDWI-FLAIRミスマッチ脳梗塞、アルテプラーゼ投与は有益/Lancet

 発症時間不明で、灌流/拡散ミスマッチやMRI拡散強調画像-フレアー画像(DWI-FLAIR)ミスマッチが認められる脳卒中患者において、アルテプラーゼの静脈内投与はプラセボ投与または標準治療と比較して、90日後の機能的アウトカムは良好であることが示された。ドイツ・ハンブルク大学エッペンドルフ医療センターのGotz Thomalla氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果で、症候性頭蓋内出血リスクが高くてもすべての機能的アウトカムで、ネットベネフィットが観察されたという。アルテプラーゼによる死亡例はプラセボよりも多かったが、重度の障害または死亡の発生ケースは少なかった。発症時間不明の脳卒中患者は、以前は血栓溶解療法の除外対象とされていた。研究グループは、イメージバイオマーカーで救済可能な脳細胞範囲が特定された患者については、アルテプラーゼ静脈内投与が安全で有効であるかを確認するため本検討を行った。Lancet誌2020年11月8日号掲載の報告。90日後mRS 0~1の発生率を比較 研究グループは、2020年9月21日以前に発表された試験の個々の患者データを用いたシステマチックレビューとメタ解析を行った。発症時間不明の脳卒中で、MRI灌流-拡散画像、CT灌流画像、MRIでDWI-FLAIRミスマッチが認められた患者を対象に、アルテプラーゼ静脈内投与と標準治療またはプラセボ投与を比較した無作為化試験を適格とした。 主要アウトカムは、90日後の修正Rankinスケール(mRS)で0~1と定義した良好な機能的アウトカム(治療効果を推定するのに適した無条件混合効果モデルを用いて障害がないことを示す)だった。副次的アウトカムは、90日後のmRSの改善と、自立アウトカム(mRS 0~2)だった。安全性に関するアウトカムは、死亡、重度の障害または死亡(mRS 4~6)、症候性頭蓋内出血などだった。mRSスコア改善、自立アウトカムにも効果 適格基準を満たした4試験(WAKE-UP、EXTEND、THAWS、ECASS-4)、被験者総数843例について解析を行った。アルテプラーゼ投与群は429例(51%)、プラセボ投与または標準治療(対照)群は414例(49%)だった。 良好なアウトカムが認められたのは、対照群160例(39%)に対し、アルテプラーゼ群は199例(47%)だった(補正後オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.10~2.03、p=0.011)。試験の異質性は低かった(I2=27%)。 アルテプラーゼ投与は、mRSスコア改善との有意な関連も認められた(補正後共通OR:1.38、95%CI:1.05~1.80、p=0.019)。自立アウトカムについても、アルテプラーゼ群が有意に高率だった(1.50、1.06~2.12、p=0.022)。 重度の障害または死亡は、対照群102例(25%)に対し、アルテプラーゼ群は90例(21%)と低率だったが有意差はなかった(補正後OR:0.76、95%CI:0.52~1.11、p=0.15)。死亡については、対照群14例(3%)に対しアルテプラーゼ群は27例(6%)だった(2.06、1.03~4.09、p=0.040)。また、症候性頭蓋内出血の発生は、対照群よりもアルテプラーゼ群で高率だった(11例[3%]vs.2例[<1%]、補正後OR:5.58[95%CI:1.22~25.50]、p=0.024)。

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がん患者、抗凝固薬の中止時期を見極めるには/日本癌治療学会

 がん患者は合併症とどのように付き合い、そして医師はどこまで治療を行うべきか。治療上で起こりうる合併症治療とその中止タイミングは非常に難しく、とりわけ、がん関連血栓症の治療には多くの腫瘍専門医らは苦慮しているのではないだろうかー。 10月23日(金)~25日(日)にWeb開催された第58回日本癌治療学会学術集会において、会長企画シンポジウム「緩和医療のdecision making」が企画された。これには会長の弦間 昭彦氏の“decision makingは患者の治療選択時に使用される言葉であるが、医療者にとって治療などで困惑した際に立ち止まって考える機会”という思いが込められている。今回、医師のdecision makingに向けて発信した赤司 雅子氏(武蔵野赤十字病院緩和ケア内科)が「合併症治療『生きる』選択肢のdecision making-抗凝固薬と抗菌薬-」と題し、困惑しやすい治療の切り口について講演した。本稿では抗凝固療法との向き合い方にフォーカスを当てて紹介する。医師のバイアスがかからない意思決定を患者に与える がん治療を行いながら並行して緩和医療を考える昨今、その場に応じた1つ1つの細やかな意思決定の需要性が増している。臨床上のdecision makingは患者のリスクとベネフィットを考慮して合理的に形成されているものと考えられがちであるが、実際は「多数のバイアスが関係している」と赤司氏は指摘。たとえば、医師側の合理的バイアス1)として1)わかりやすい情報、2)経験上の利益より損失、3)ラストケース(最近経験した事柄)、4)インパクトの大きい事象、などに左右される傾向ある。これだけ多数のバイアスのかかった情報を患者に提供し、それを基にそれぞれが判断合意する意思決定は“果たして合理的なのかどうか”と疑問が残る。赤司氏は「患者にはがん治療に対する意思決定はもちろんのこと、合併症治療においても意思決定を重ねていく必要がある」と述べ、「とくに終末期医療において抗凝固薬や抗菌薬の選択は『生きる』という意味を含んだ選択肢である」と話した。意思決定が重要な治療―がん関連血栓症(CAT) 患者の生死に関わる血栓症治療だが、がん患者の血栓症リスクは非がん患者の5倍も高い。通常の血栓症の治療期間は血栓症の原因が可逆的であれば3ヵ月間と治療目安が明確である。一方、がん患者の場合は原因が解決するまでできるだけ長期に薬物治療するよう現時点では求められているが、血栓リスク・出血リスクの両方が高まるため薬剤コントロールに難渋する症例も多い。それでも近年ではワーファリンに代わり直接経口抗凝固薬(DOAC)が汎用されるようになったことで、相互作用を気にせずに食事を取ることができ、PT-INR確認のための来院が不要になるなど、患者側に良い影響を与えているように見える。 しかし、DOACのなかにはP糖タンパクやCYP3A4に影響する薬物もあることから、同氏は「終末期に服用機会が増える鎮痛剤や症状緩和の薬剤とDOACは薬物相互作用を起こす。たとえば、アビキサバンとデキサメタゾンの併用によるデキサメタゾンの血中濃度低下、フェンタニルやオキシコドン、メサペインとの相互作用が問題視されている。このほか、DOACの血中濃度が2~3倍上昇することによる腎機能障害や肝機能障害にも注意が必要」と実状を危惧した。DOACの調節・中止時の体重換算は今後の課題 また、検査値指標のないDOACは体重で用量を決定するわけだが、悪液質が見られる場合には筋肉量が低下しているにも関わらず、浮腫や胸水、腹水などの体液の貯留により体重が維持されているかのように見えるため、薬物投与に適した体重を見極めるのが難しい。これに対し、同氏は「自施設では終末期がん患者の抗凝固療法のデータをまとめているが、輸血を必要としない小出血については、悪液質を有する患者で頻度が高かった。投与開始時と同量の抗凝固薬を継続するのかどうか、検証するのが今後の課題」と話した。また、エドキサバンのある報告2)によると、エドキサバンの血中濃度が上昇しても大出血リスクが上昇するも脳梗塞/塞栓症のリスクは上昇しなかったことから、「DOACの少量投与で出血も塞栓症も回避することができるのでは」とコメント。「ただし、この報告は非がん患者のものなので、がん患者への落とし込みには今後の研究が待たれる」とも話した。 さらに、抗凝固薬の中止タイミングについて、緩和ケア医とその他の医師ではそのタイミングが異なる点3)、抗凝固薬を開始する医師と中止する医師が異なる点4)などを紹介した。 このような臨床上での問題を考慮し「半減期の短さ、体内での代謝などを加味すると、余命が短め週の単位の段階では、抗凝固療法をやめてもそれほど影響はなさそうだが、薬剤選択には個々の状況を反映する必要がある」と私見をまとめ、治療の目標は「『いつもの普段の自分でいられること』で、“decision making”は合理的な根拠を知りながら、その上で個別に考えていくことが必要」と締めくくった。

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