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AF治療中に脳梗塞を招く潜在的要因とは

心房細動(AF)患者における経口抗凝固薬(OAC)投与は、脳梗塞予防の中心であるが、適切に治療されていても脳梗塞を発症する事例が存在する。こうしたブレークスルー脳梗塞(breakthrough ischemic stroke)の潜在的原因や、その後の予後への影響は十分に明らかになっていない。そこで、イタリア・University of L'AquilaのFederico De Santis氏らは、AFでOAC継続中に発症した脳梗塞患者を対象に、潜在的な原因と90日転帰との関連を検討した。その結果、潜在的な原因は約半数で認められ、90日以内の脳梗塞再発リスク上昇と関連していた。本研究結果は、Journal of Neurology誌オンライン版2026年8月17日号に掲載された。本研究は、欧州、北アフリカ、中東9ヵ国の脳卒中センター35施設のデータを用いた多施設共同後ろ向き観察研究で、2020年2月~2025年2月に、AFでOAC服用中に脳梗塞を発症した成人患者を対象に解析を行った。また、対象患者は、指標となる脳梗塞発症時にOACを継続的に服用している必要があり、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用中の場合は「指標となる脳卒中発症前の7日間、服用を中断することなく、最後の服用が脳卒中症状発症の48時間前以内であること」、ビタミンK拮抗薬(VKA)服用中の場合は「最後の服用から脳卒中症状発症までの経過時間にかかわらず、国際標準化比(INR)が1.5以上であること」と定義された。ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因は、OACと相互作用しうる併用薬、活動性がん、心原性塞栓以外の競合する脳梗塞病因とした。主要評価項目は90日以内の新規脳梗塞で、副次評価項目は90日時点のmodified Rankin Scale(mRS)スコア分布、心筋梗塞、全死亡、血管死(致死的な虚血性または出血性脳卒中、突然心臓死、心筋梗塞、またはそのほかの血管イベントによる死亡)、安全性評価項目は中等度~重度出血および頭蓋内出血とした。主な結果は以下のとおり。・解析対象1,649例の年齢中央値は80.4歳(四分位範囲[IQR]:73.2~85.6、女性860例[52.2%])であった。発症時の服用薬剤はDOAC1,275例(77.3%)、VKA374例(22.7%)であった。・ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因が1つ以上認められた患者は724例(43.9%)で、潜在的原因が1つのみの患者は544例(33.0%)、複数の患者は180例(10.9%)であった。・潜在的原因の内訳は、OACと相互作用しうる併用薬が469例(28.4%)、心原性塞栓以外の競合する病因が401例(24.3%)、活動性がんが72例(4.4%)であった。併用薬ではプロトンポンプ阻害薬が450例(27.3%)と大半を占め、抗てんかん薬が31例(1.9%)、H2受容体拮抗薬が3例(0.2%)、デキサメタゾンが3例(0.2%)、ケトコナゾールが1例(0.1%)と続いた。・競合する病因では、頭蓋内/頭蓋外大血管アテローム性動脈硬化が240例(14.6%)で最も多かった。・潜在的原因の有無における結果は以下のとおり(その原因を有する患者vs.原因なしの患者)。・高血圧(87.3%vs.76.3%、p<0.001)・脂質異常症(58.1%vs.45.8%、p<0.001)・糖尿病(30.1%vs.24.3%、p=0.009)・心筋梗塞既往(29.3%vs.16.6%、p<0.001)・脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往(28.7%vs.21.8%、p=0.001)・慢性心不全(21.1%vs.13.4%、p<0.001)・慢性腎不全(20.4%vs.13.0%、p<0.001)・末梢動脈疾患(7.3%vs.2.9%、p<0.001)・90日追跡時点で、新規脳梗塞は57例(3.5%)、心筋梗塞は21例(1.3%)、全死亡は334例(20.3%、うち血管死は215例[13.0%])、中等度~重度出血は55例(3.3%)、頭蓋内出血は28例(1.7%)に認められた。・OAC再開までの期間中央値は7日(IQR:3~12)であった。・主要評価項目である90日以内の新規脳梗塞は、潜在的原因を1つ以上有する患者で4.8%、潜在的原因なしの患者で2.4%であり、潜在的原因を有する患者でリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.04、95%信頼区間[CI]:1.18~3.53、p=0.011)。・一方、90日時点のmRSスコア分布のオッズ比は1.15(95%CI:0.97~1.37、p=0.106)で、90日以内の心筋梗塞(1.5%vs.1.1%、HR:1.70、95%CI:0.69~4.14、p=0.246)、90日以内の全死亡(22.7%vs.18.4%、HR:1.24、95%CI:0.99~1.55、p=0.057)、90日以内の血管死(13.7%vs.12.5%、HR:1.06、95%CI:0.80~1.40、p=0.697)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・安全性評価項目についても、中等度~重度出血(4.0%vs.2.8%、HR:1.38、95%CI:0.80~2.38、p=0.245)および頭蓋内出血(2.1%vs.1.4%、HR:1.48、95%CI:0.69~3.18、p=0.310)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・逆確率重み付け解析では、相互作用しうる併用薬あり818例となし831例が比較され、90日以内の新規脳梗塞は併用薬あり群4.3%、なし群4.0%で差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.67~1.73、p=0.761)。一方、90日以内の心筋梗塞は併用薬あり群で2.3%、なし群で0.7%であり、併用薬あり群で有意に高かった(HR:3.26、95%CI:1.30~8.17、p=0.012)。本研究結果について著者らは、AFに対するOAC継続中に発症するブレークスルー脳梗塞では、薬物相互作用、心原性塞栓以外の脳梗塞病因、活動性がんといった同定可能で一部修正可能な潜在的原因が相当数で認められ、これらを体系的に同定し、積極的に管理することがブレークスルー脳梗塞の予防や2次予防の最適化につながる可能性があるとまとめている。

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急性期脳梗塞、血栓回収術後の頭位挙上は有効か/BMJ

 血栓回収術で再灌流に成功した急性期虚血性脳卒中患者において、頭位挙上は頭位を水平位置に保つ場合と比較して、機能的アウトカムを改善せず、全死因死亡率にも差は示されなかった。中国・西南医科大学のZhengzhou Yuan氏らが「HeadSOAR試験」の結果で報告した。血栓回収術後の最適な頭位は不明とされ、血行動態の安定と脳浮腫の予防のどちらを優先すべきかについては相反するエビデンスが存在するという。研究の成果は、BMJ誌2026年8月20日号に掲載された。中国の研究者主導型無作為化試験 HeadSOAR試験は、中国の67の脳卒中専門施設で実施した研究者主導型の非盲検エンドポイント盲検無作為化試験であり、2023年11月~2025年1月に参加者を登録した(本研究は中国・国家自然科学基金委員会などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、前方循環系の脳主幹動脈(内頸動脈、中大脳動脈[M1、M2])閉塞に起因する急性期虚血性脳卒中で、血管内血栓回収術により再灌流に成功(expanded thrombolysis in cerebral infarctionスコア≧2b)した患者であった。 被験者1,368例(年齢中央値68歳、女性565例[41.3%])を、血栓回収術後に72時間、頭位を挙上(30~40度)する群(685例)、または頭位を水平(0~10度)に維持する群(683例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、90日時における機能的状態とし、修正Rankin尺度(mRS、0[症状なし]~6[死亡]点)で評価した。機能的自立、機能障害なしの達成も同程度 1,358例(99.3%)が90日間の追跡調査を完了した。ベースラインのNIHSSスコア中央値は頭位挙上群が15点(四分位範囲[IQR]:11~19)、頭位水平群は15点(IQR:11~18)、ASPECTS中央値は両群とも6点(IQR:4~7)であり、最終健常確認から無作為化までの時間中央値はそれぞれ588分(IQR:422~868)および603分(IQR:427~860)であった。 90日時でのmRSスコア中央値は、頭位挙上群が3点(IQR:1~5)、頭位水平群も3点(IQR:1~5)であり、両群間に有意な差を認めなかった(低い機能障害の調整済み一般化オッズ比:1.12、95%信頼区間[CI]:0.97~1.29、p=0.14)。 90日時の機能的自立(mRS:0~2点)は、頭位挙上群で304例(44.6%)、頭位水平群で294例(43.5%)が達成し、両群間に有意差はみられなかった(補正後リスク比[RR]:1.06[95%CI:0.94~1.19]、p=0.35、補正後リスク群間差:2.52%[95%CI:-1.22~6.25]、p=0.19)。 また、機能障害なし(mRS:0~1点)の達成は、頭位挙上群217例(31.8%)、頭位水平群199例(29.4%)と、有意差はなかった(補正後RR:1.13[95%CI:0.96~1.33]、p=0.13、補正後リスク群間差:3.76%[95%CI:0.30~7.23]、p=0.03)。症候性頭蓋内出血、悪性脳浮腫にも差はない 90日時の全死因死亡(頭位挙上群125例[18.3%]vs.頭位水平群137例[20.3%]、補正後RR:0.86[95%CI:0.69~1.07]、p=0.18)、72時間以内の症候性頭蓋内出血(56例[8.2%]vs.56例[8.2%]、補正後RR:0.98[95%CI:0.69~1.40]、p=0.92)、72時間以内の悪性脳浮腫(56例[8.2%]vs.64例[9.4%]、補正後RR:0.87[95%CI:0.61~1.22]、p=0.42)の発生についても、両群間に有意差は認めなかった。 著者は、「両群間のmRSスコアの差が予想よりも小さかったことから、これらの患者において、頭位挙上がわずかではあるが臨床的に意義のある有益性をもたらす可能性は残されている」としている。 また、「有意差がなかったからといって、2つの頭位管理戦略は同等とのエビデンスと解釈すべきではなく、また治療効果の欠如を示すとも解釈すべきではない」「完全な再灌流が達成された患者は、頭位水平の姿勢に伴う側副血行路の増加による恩恵を受ける可能性は低い一方で、早期または無症候性の脳浮腫を呈する患者では、頭位挙上により静脈還流量が増加し、脳灌流圧の最適化に寄与する可能性がある」「これらの知見は、血栓回収術後の頭位について、より個別化したアプローチの検討を支持する」と指摘している。

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アルツハイマー病と強く関連したのは、高血圧より低血圧?

 アルツハイマー病(AD)と関連する心血管疾患(CVD)のサブタイプが特定され、最も強く一貫した関連が見られたのは低血圧であったという研究結果が、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」6月16日号に掲載された。 米ミシガン工科大学のAili Toyli氏らは、UKバイオバンク(対象者50万2,133人)とAll of Us研究プログラム(対象者28万7,011人)という2つの大規模なバイオバンクにおいて、ADと11種類のCVDサブタイプとの関連を検討した。 解析の結果、両コホートにおいて、ほとんどのCVDサブタイプがADと有意に関連していた。最も強く一貫した関連が見られたのは低血圧であったが、低血圧はAD研究において比較的検討が進んでいないCVDサブタイプである。ADと高血圧、ADと脳梗塞との強い関連も一貫して認められた。一方、急性心筋梗塞とADとの間には有意な関連は見られなかった。遺伝学的解析では、特にAPOE、MAPT、心筋構造および血管機能に影響を及ぼす遺伝子の近傍領域において、AD関連形質とCVD関連形質との間に共通の遺伝子座が見られた。 Toyli氏は、「高血圧と比べ、低血圧は全体的に注目されておらず、そのためデータや研究上の関心も少ないと考えられる。ADとCVDとの関連の背後にある可能性のある生物学的機序を理解するためには、詳細な研究が必要である。両者を結びつける特定の経路が明らかになれば、ADが発症する前に介入し、そのつながりを断つことができる可能性がある」と述べている。

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Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス~Lp(a)の今をインタビュー(後編)

前編では、Lp(a)の第一人者であるDr. Florian Kronenberg氏(オーストリア・インスブルック医科大学遺伝疫学研究所 教授/所長)が治療薬のない状況であっても「Lp(a)測定が重視される」のか、Lp(a)が心血管疾患(CVD)イベントの生涯リスクに及ぼす影響を中心に解説した。後編では、Lp(a)測定が失速した30年前の出来事の振り返り、1次予防への測定意義や日本の医療への期待などについて語った。※前編はこちら(8月18日公開:5人に1人はLp(a)高値、CVD死を見落とさないために)INDEX30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用専門家が伝えたい4つの重要プロセス測らない理由なんてあるのか?スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること―30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史なぜ、Lp(a)測定が失速してしまったのか。それは1990年代にアメリカで行われた大規模な研究において、「Lp(a)と心血管アウトカムには関連性がない」という結果が報告されたことが要因でした。しかし後になって、当時の測定法には技術的な問題があり、それがこのような否定的な結果につながったのではないかと考えられるようになりました。この研究結果により、Lp(a)研究は一度完全に死にかけました。私がこの分野に関わり始めた頃も、周囲から「その分野はやめなさい、もう死んだ分野だから」と言われたものです。しかし、私は遺伝子データから「Lp(a)高値の人は遺伝的に心血管リスクが高いはずだ」という確信を持っていたため、研究を続けました。その後、大きな転機が訪れました。デンマークの研究グループが10万人規模の膨大なビッグデータを持って(われわれの研究に)参入してきたのです。彼らのデータを解析した結果、Lp(a)が高い人は将来明らかに心血管イベントを起こしていることが判明しました1)。さらに、彼らが私たちの遺伝子解析手法をその10万人に適用したところ、遺伝子変異とLp(a)高値、そして心血管疾患の間に強固な因果関係があることが完全に証明されたのです。その後、『2022年EAS Lp(a)コンセンサスステートメント』の作成にあたって、イギリスの「UKバイオバンク」が持つ50万人規模のデータを解析したところ、その結果も同様の方向性を示していました。現在では欧米だけではなく、日本を含めた世界中の研究グループが同様の関連性を確認しており、世界基準の事実となっています。―CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用2025年にブリュッセルで開催され、『Brussels International Declaration on Lp(a) Testing and Management』2)の策定につながった「Lp(a) Global Summit」において、Lp(a)測定を心血管疾患(CVD)の1次予防として行う費用対効果に関する世界初の解析結果が発表され3)、Lp(a)を広くスクリーニングすることで、多くの心筋梗塞や虚血性脳梗塞を回避し、結果として医療費の大幅な削減につながることが証明されたのです。たとえば、20~30代の若者が自身のLp(a)が高値だと知ったとしたら、「血圧をしっかり下げよう」「禁煙しよう」「糖尿病を予防しよう」という強力なモチベーションにもなります。当然ながら、心筋梗塞や脳梗塞を経験した2次予防の患者さんがLp(a)を知ることもきわめて重要です。現実として、心筋梗塞後の患者の一部で、1年後にコレステロール低下薬の服用を止めてしまっているというデータがあります。しかし、自分が「Lp(a)高値という高リスクを抱えている」と知っていれば、将来の再発を防ぐために“従来のリスク因子に対する治療を継続する”強い動機となり、結果としてアドヒアランスの向上にもつながります。つまり、Lp(a)測定はCVDリスクの1次予防と2次予防の双方に重要と言えるのです。Lp(a) Global Summitでの一枚後方左から2番目がKronenberg氏、前方左から3番目には斯波 真理子氏が写る画像を拡大する繰り返しになりますが(前編参照)、心血管イベントの絶対的な生涯リスクは、Lp(a)が高かったとしてもほかの従来の一般的なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、過体重、不健康な生活習慣など)を減らすことで低減させることができるため、Lp(a)自体は生活習慣で下げることができなくても、「ほかの従来の一般的なリスク因子を徹底的に管理しようという意識を高める」というアプローチを取ることができます。「Lp(a)は現在の薬で下げられないのに、なぜ測るのか?」という疑問を持つ人が医療者の中にも存在しますが、「Lp(a)が高くて下げられないからこそ、ほかの従来の危険因子を徹底的に管理しようという意識を高めるために、今すぐ測定すべきだ」というのが私の答えです。Lp(a)値を把握せず、従来のリスク因子に対する治療も十分に行わないというのは、まったく意味がありません。―専門家が伝えたい4つの重要プロセスそこで、多くの国際的なガイドラインとも一致する、私が皆さんにお伝えしたい重要なアドバイス4点を紹介しましょう。1.全員、人生で少なくとも一度はLp(a)を測定すべきである2.リスク評価の際は、Lp(a)の値だけでなく、全体のバランス、患者の全体像、そのほかのリスク因子も含めて総合的に判断する3.Lp(a)が高値である場合は、ほかのコントロール可能なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、喫煙など)を徹底的に治療・管理する4.Lp(a)高値がみつかった場合は、その「家族(親、子、兄弟姉妹)」も機会があれば早めに検査を行う測定タイミングは、初めて脂質プロファイル(健康診断などの血液検査)を取るときが理想的で、早ければ早いほどいいでしょう。Lp(a)は遺伝的要因が非常に強いため、家族歴こそが最大のヒントになります。もしご家族や親戚に若くして心筋梗塞や脳卒中を起こされた方がいる場合は、Lp(a)高値が関連している可能性が疑われます。ぜひ、そのような患者さんにLp(a)測定を強くお勧めします。次にLp(a)の基準値(カットオフ値)の考え方について解説しましょう。Lp(a)のリスクは、ある数値を境に白黒はっきり分かれるようなカットオフ値(閾値)ではなく、数値が高くなるにつれてリスクが上昇していく“連続的なもの”として捉える必要があります4)。たとえば、122nmol/Lだから安全で、127nmol/Lだから危険、という単純な生物学的区切りはありません。測定法や標準化の違いによって105や125という数字のブレは生じますが、本質的なリスクに大差はありません。絶対的な一律の区切りが必要なのではなく、患者個人の全体的なリスク(糖尿病などの有無や既往歴)に応じて、個別に数値を評価し対応する必要があるものです。LDL-Cの基準値も、まったくリスクのない人であれば欧州では「116mg/dL未満」が目安ですが、心筋梗塞の既往があれば「55mg/dL未満」、さらに、同時に末梢動脈疾患(PAD)などを合併していれば「40mg/dL未満」と患者背景やリスク因子の重なりによって目標値が変わるように、Lp(a)も同様に、ほかのリスク因子と合わせて総合的に判断すべきです。―測らない理由なんてあるのか?実際に心イベントを繰り返した患者さんが、「ガイドラインで推奨されていたのに、なぜ何年も前にLp(a)を検査してくれなかったのか」と医師に不満を訴えるような事例は世界で起きています。同様のことを繰り返さないためにも医師への啓発を進め、Lp(a)測定を通常の診療プロセスに組み込む必要があります。さらにポジティブなニュースとして、現在、Lp(a)自体を劇的(80~90%)に低下させる新薬の臨床試験が進んでいます。最終的な試験結果を待つ必要がありますが、これが承認されれば、2次予防の患者さんに対してさらなるイベント再発を防ぐ強力な選択肢を提供できるようになります。―スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること日本のスクリーニングは間違いなく他国の一歩先を行っています。日本には成人健康診査のみならず、小児期という非常に早い時期から検診が行われているケースもあると聞きました。これは国として大変重要な取り組みであり、今後Lp(a)のスクリーニングを導入していく上でも、素晴らしい土台です。これは私にとっても大きな学びとなり、欧州に戻ったらぜひ共有したいと思っています。しかし、「スクリーニングが行われていること」は一側面に過ぎず、「スクリーニング結果を踏まえ、どのように対応(治療・管理)するか」という点においては、まだギャップ(課題)があると感じています。これは日本に限った問題ではなく、世界中で直面している課題でもあります。政策立案者にとっては、常に自国のデータが重要となるため、一般住民を対象とした大規模コホートを構築し、「Lp(a)高値の有病率」「 Lp(a)が日本でもリスク因子である」ことを示す予後データを構築することが望まれます。後者についてはLEAP研究5)をはじめ、質の高い研究によるデータが多ければ多いほど、医療コミュニティでLp(a)が受け入れられる可能性は高くなります。日本には企業健診など、素晴らしいスクリーニングシステムがありますよね。肉体労働者から事務職まで(幅広い職域を)含む代表的な集団を雇用している大企業に研究協力してもらえれば、多数の対象者を迅速かつ低コストで集めることができます。このときに必要なのはLp(a)測定にかかる追加費用のみです。もちろん将来的には、医師がLp(a)測定を行うようになることが重要です。現在、日本動脈硬化学会が主導するLp(a)に関するコンセンサスステートメントが間もなく発刊される予定だと聞いています。これは欧米のガイドラインの「成人は生涯に少なくとも一度は必ずLp(a)を測定すべき」と完全に整合性の取れた内容になるでしょう。また、順天堂大学の三井田 孝氏らが日本国内での測定法の標準化を先導されていますが、国際的にもIFCC(国際臨床化学臨床検査医学連合)が中心となって、Lp(a)測定の標準化を進める取り組みが動いています。これらが整えば、次は実装段階に入っていきます。今後、日本からLEAP研究5)やLp(a)JAPAN study6)のサブ解析結果や心血管リスクに関する大規模な試験などが発信されれば、政策提言や医療者を説得する上でも非常に強力な材料になるでしょう。スクリーニングのさらなる普及を含め、日本における今後の発展に大いに期待しています。 参考 1) Kamstrup PR, et al. Circulation. 2008;117:176-184. 2) Kronenberg F, et al. Atherosclerosis. 2025;406:119218. 3) Morton JI, et al. Atherosclerosis. 2025:409:120447. 4) Kronenberg F, et al. Eur Heart J. 2022;43:3925-3946. 5) Yamada T, et al. J Atheroscler Thromb. 2026;33:1049-1059. 6) Kataoka Y, et al. Eur Heart J. 2026 May 24. [Epub ahead of print]

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外の海へ漕ぎ出せ!~血栓と出血の狭間で揺れる循環器内科医に届いた「1ヵ月」の福音~【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第99回

はじめに:血栓と出血、あちらを立てればこちらが立たず循環器内科の外来診察室では、日々このような静かな葛藤が繰り広げられています。患者「先生、歯茎から血が出るし、腕に大きな青あざができるんですけど……」医師「そうですよね……でも、お薬をやめると血管が詰まってしまう危険もあるんです。脳梗塞の心配もありますからね……」心房細動(AF)を合併し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)によってステントを留置した患者の治療は、まさに綱渡りです。心房細動による脳梗塞を防ぐには抗凝固薬(DOAC)が必要です。一方で、留置したステントの血栓性閉塞を防ぐためには抗血小板薬(P2Y12阻害薬)が必要になります。その結果、「DOAC+抗血小板薬」という強力な2剤併用抗血栓療法を続けざるを得ません。ところが、血栓予防を強化すればするほど、必然的に出血リスクは高まります。血栓を防いで命を救っているのか。あるいは出血という新たな危険を招いているのか。医師の心は常にその狭間で揺れ続けます。「この2剤併用療法を、いったいいつまで続ければよいのか?」長年にわたり、「十分な期間しっかり続けるべきだ」という考え方と、「できるだけ早く減らして出血を防ぐべきだ」という考え方がせめぎ合ってきました。世界中の循環器医が明確な答えを求め続けてきたこの命題に、日本から極めて重要なエビデンスが投じられたのです。金字塔:『Lancet』誌への掲載という快挙2026年7月15日、医学界の最高峰の一つである国際総合医学雑誌『Lancet』に、日本発の臨床研究が掲載されました1)。「OPTIMA-AF試験」です。『Lancet』は『New England Journal of Medicine』『JAMA』『BMJ』と並び、世界中の臨床医と研究者が注目する総合医学雑誌です。そこに日本主導の無作為化比較試験が掲載されることは、日本の循環器領域にとって歴史的快挙と言ってよいでしょう。この研究は、大阪大学の外海 洋平(そとみ・ようへい)氏らを中心とする「OPTIMA-AF Investigators」によって施行されました。本試験は、非弁膜症性心房細動を合併した冠動脈疾患患者を対象に、PCI後のDOACとP2Y12阻害薬の併用期間を1ヵ月に短縮し、その後DOAC単剤へ移行する戦略の有効性と安全性を検証した多施設共同無作為化比較試験です。全国75施設から1,079例が解析対象として登録されました。オールジャパンの結集と「外の海」への船出臨床研究に携わった経験がある者なら、この数字の重みがわかるはずです。全国75施設にわたり1,000例を超える患者を登録し、長期間にわたって追跡を完遂することは容易ではありません。日常診療に追われながら厳格なプロトコールを守り、質の高いデータを収集し続けるためには、研究事務局だけでなく各施設の医師、CRC、看護師、薬剤師など、多くの人々の献身が必要です。特筆すべきは、本研究が従来の大学医局や系列病院の枠を超えた、まさに「オールジャパン」の体制によって成し遂げられたことでしょう。日本の医療界には、ともすれば組織の垣根や地域の壁が存在します。しかし「OPTIMA-AF」は、それらを超えて国内の力を結集し、世界へ向けて発信された成果でした。そして実務的に研究を牽引した外海 洋平氏の名前を見るたび、私はある光景を思い浮かべます。日本の臨床研究という「内海」から船出し、世界標準という「外の海」へと漕ぎ出していく研究者たちの姿です。その航海は決して平穏ではありません。資金、人材、英語、査読、国際競争。その幾重もの荒波を乗り越えた末に、ついに世界最高峰の舞台へ到達したのです。OPTIMA-AF試験の概要と解釈非弁膜症性心房細動CHADS2スコア1点以上PCI施行患者解析対象1,079例無作為に以下の2群へ割り付けられました。1ヵ月併用群(542例)DOAC+P2Y12阻害薬を1ヵ月投与その後DOAC単剤へ移行12ヵ月併用群(537例)同治療を12ヵ月継続その後DOAC単剤へ移行有効性(全死亡または血栓塞栓イベント)1ヵ月群:5.4%、12ヵ月群:4.3%、HR:1.25(95%信頼区間[CI]:0.73~2.17)事前に設定された基準を満たし、1ヵ月群の非劣性が示されました。安全性(ISTH大出血または臨床的に重要な非大出血)1ヵ月群:4.5%、12ヵ月群:8.8%、HR:0.50(95%CI:0.30~0.81)1ヵ月群では出血イベントが有意に減少し、出血リスクはほぼ半減しました。これらの結果は、「1ヵ月で抗血小板薬を中止しDOAC単剤へ移行する戦略は、主要有効性評価項目について12ヵ月併用療法に対する非劣性を示し、さらに出血を大幅に減らした」ことを意味します。もちろん、著者ら自身も慎重な解釈を促しています。実際の血栓イベント発生率は想定より低く、主要有効性評価項目については十分な注意をもって評価すべきであることが論文のDiscussion中で繰り返し述べられています。それでもなお、少なくとも本試験の条件下においては、抗血小板薬の早期中止によって出血を減らしながら、有効性を維持し得る可能性が示された意義は極めて大きいと言えるでしょう。おわりに:世界へ投じられた大きな一石OPTIMA-AF試験が示したのは、単に「薬を1剤減らせる」という話ではありません。血栓症を防ぐために出血リスクを受け入れるのか。出血を避けるために血栓リスクを甘受するのか。その長年のジレンマに対して、「よりよい均衡点が存在するかもしれない」という希望を、無作為化比較試験という最も信頼性の高い方法論によって示したのです。もちろん、この1本の研究だけですべての議論が終わるわけではありません。対象患者の大部分は慢性冠症候群であり、急性冠症候群や欧米集団への一般化には慎重さが求められます。また著者らも、主要有効性評価項目については今後さらなる検証が必要であると述べています。しかし、それでもなお、この成果は今後の国内外の診療ガイドラインや臨床実践に大きな影響を与える可能性を秘めています。明日からの循環器外来で、「ステントを入れて1ヵ月たちましたね。そろそろ薬を減らせるかもしれません」と語ることができる患者さんが増えるかもしれないのです。それは出血合併症を減らし、患者の負担を軽くし、より合理的な抗血栓療法への道を開くことにつながります。緻密な研究デザインのもと、全国の施設を束ね、多くの困難を乗り越え、世界最高峰の舞台へ到達したOPTIMA-AF研究グループに、心からの敬意と祝意を表したいと思います。Congratulations!血栓と出血の狭間で悩み続けてきた循環器医たちにとって、この研究は確かに一筋の光として届いたはずです。そして、外海 洋平氏らが切り開いた「外の海」への航路は、これから先も日本発の臨床研究を乗せた多くの船を世界へ導いていくに違いありません。 1) Sotomi Y, et al. Lancet. 2026 Jul 15. [Epub ahead of print]

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血栓除去術は中位~遠位の脳動脈閉塞に有効性と安全性は証明できなかった(解説:内山真一郎氏)

 中位または遠位の脳動脈閉塞による急性期脳梗塞に対する血栓除去術の有効性と安全性は確立されていない。DISCOUNT試験は、発症後8時間以内の中位または遠位の脳動脈閉塞患者において血栓除去術施行群と内科治療のみの対照群を比較したフランスの多施設共同無作為化試験であった。3ヵ月後の転帰良好例は血栓除去群と対照群の間に有意差がなく、症候性頭蓋内出血は血栓除去群で有意に多かった。遠位部の動脈は狭くて屈曲が多いため、カテーテルやガイドワイヤーによる損傷や穿孔が起こりやすく、血栓溶解療法だけでも転帰良好例が多いため、血栓除去術の有効性と安全性のバランスが期待しにくいことが結果に反映されてしまったと考えられる。 遠位部の動脈にも安全で柔軟なデバイスの開発とともに、最近発表された試験の詳細や現在進行中の試験において、どのような条件を有する患者ならば有効で安全か、どのような併用療法により有効性と安全性のバランスが高まるか、などの課題が解決することを期待したい。

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心・脳血管疾患の既往やNSAIDs使用はパーキンソン病リスクを高めるか?

 心・脳血管疾患の既往はパーキンソン病(PD)のリスク増加と関連することが示されているが、逆の因果関係による可能性が疑われていた。一方、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はPDリスクを低減させると考えられてきたが、過去のエビデンスは一貫しておらず、背景にある血管疾患による交絡の可能性も懸念されていた。 英国・University of OxfordのClare Wotton氏らは、女性約82万例を対象とした大規模前向きコホート研究「Million Women Study」のデータを用いて解析を行った。その結果、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往はPD発症リスクの有意な上昇と関連しており、逆の因果関係だけでは説明できないことが示された。一方、NSAIDsの使用とPD発症リスクとの関連はみられなかった。本結果はAnnals of Clinical and Translational Neurology誌オンライン版2026年7月24日号に掲載された。 本研究では、1996~2001年に募集された英国の「Million Women Study」のデータが用いられた。ベースライン時(中央値2001年)の質問票でNSAIDs(アスピリン、イブプロフェン)の過去4週間の大半における使用(定期的な使用)の有無に回答し、かつPDの既往がない女性81万9,575例を対象とした。ベースライン時の自己申告および入院記録から、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往を特定した。主要評価項目は、PDの診断を伴う初回入院またはPDを原死因とする死亡とし、Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。なお、本研究における「逆の因果関係」とは、運動症状が顕在化する前のPD前駆期において、病態の初期発現として血管疾患が生じた可能性や、初期症状に反応してNSAIDsの使用状況が変化した可能性を指す。この逆の因果関係の影響を評価するため、ベースラインから10年未満と10年以上の追跡期間別にも解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者81万9,575例において、平均18.2年(SD 4.3)の追跡期間中に、1万364例(1.3%)のPD発症が確認された。・虚血性心疾患の既往がある人は、既往がない人と比較してPD発症リスクの有意な増加を示した(HR:1.45、95%CI:1.35~1.54)。・脳血管疾患の既往がある人も同様に、PD発症リスクの有意な増加を示した(HR:1.51、95%CI:1.32~1.73)。・これらの血管疾患とPD発症リスクの関連は、ベースラインから10年以上経過した期間においても依然として顕著であった(10年以上のHRは虚血性心疾患で1.39、脳血管疾患で1.35)。・アスピリンの定期的な使用は、未調整モデルではPDリスク上昇と関連していたが(HR:1.20、95%CI:1.14~1.27)、血管疾患の既往で調整するとその関連はほぼ消失した(aHR:1.06、95%CI:1.00~1.13)。・イブプロフェンの定期的な使用は、調整の前後にかかわらず、PD発症リスクとの関連を示さなかった(調整前HR:1.03、95%CI:0.96~1.10、aHR:1.04、95%CI:0.97~1.11)。 著者らは、10年以上の追跡調査でも血管疾患がPD発症リスクの大幅な増加と関連していたことから、これらは単なる逆の因果関係だけでは説明できないと指摘している。背景として、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、炎症の関与が示唆された。これらは血管疾患のリスクを高めるアテローム性動脈硬化症の発症・進行に寄与する一方で、PDの特徴であるレビー小体を形成するα-シヌクレインの凝集にも関与している可能性がある。また、アスピリンやイブプロフェンの使用はPD発症リスクと直接的な関連がないことも示された。

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医師の4割が抱える歯の悩みとは/医師1,000人アンケート

 近年、口腔疾患は糖尿病、脳梗塞、動脈硬化に伴う心筋梗塞など、全身疾患リスクとの関連性が見いだされたり、高齢者の健康寿命を縮める10大原因の1つとしても問題視されたりしている。このような状況を踏まえ、日本でも2026年度より『歯周病検診マニュアル2023』1)や歯科健康診査票を用いた歯周病検診がスタートし、国を挙げて国民の歯周病の早期発見・重症化予防に乗り出している。そこで今回、日々患者の健康を守る医師自身の定期検診や歯周病検診の受診率、口腔ケアの実態についてアンケート調査を行い、医師自身の歯科領域に対する意識を可視化した。歯周病や歯間への挟まりに悩む まず、自身の歯の健康やオーラルケアに対する意識(Q1)について、「意識している」と回答した医師は約90%に上り、年齢による差はみられなかった。診療科別では、血液内科(100%)、脳神経外科(97%)、呼吸器科(95%)の順で意識が高いものの、眼科医は76%と意識が低かった。 口腔内の健康で気になっていること・悩み(Q2)については、歯周病(38%)が最も多く、歯と歯の間にものが挟まりやすい(29%)、歯の着色・黄ばみ(26%)と続いた。しかし、これらは加齢による影響も大きいことから、歯周病に対する意識は年齢とともに上昇する傾向がみられた。一方で、20代医師の悩みの多くは、歯の着色・黄ばみ、口臭、歯並びなど審美的要素が中心であった。 日常のオーラルケア・審美目的で行っていること(Q3)は、デンタルフロス・歯間ブラシの使用(59%)、電動歯ブラシ・特殊な歯ブラシの使用(32%)、マウスウォッシュ・洗口液の使用(26%)と続いた。デンタルフロス・歯間ブラシの使用はいずれの年代でも最も多く、上述の悩みの解消のために実践されていた。歯周病検診や定期検診の受診率は約60% 歯周病検診を含め、定期検診やメンテナンスで歯科受診している医師の割合は60%に上り、20代を除く30代以降の半数以上が、なんらかの目的で1年に1回以上は歯科受診していた。その年間費用は、80%以上の医師で「5万円未満」であったが、50万円以上という回答も30代以上では1%ほどみられた。意識と行動のギャップ、「頭で理解していても通えていない」 全体を通して、日常のオーラルケアへの意識がある医師は約90%と非常に高い水準であるが、不定期を含め受診経験のある医師は約60%(定期的に通う医師は54%)にとどまり、約40%は受診していなかった。歯のケアなどに関する自由記入では、以下のような声が寄せられた。―――・定期検診の必要性はわかるが、予約が取りづらく、なかなか歯科に行けない(60代、形成外科)・セカンドオピニオンが医科よりも難しい(60代、耳鼻咽喉科)・どれくらいの間隔で歯科受診したらいいのか?(50代、小児科)・顎関節症、口臭、舌痛など、どの医療機関に相談したらよいかわからないことが多い(50代、耳鼻咽喉科)・歯石除去予防が困難(60代、内科)・若いうちにケアしておくべきだったと後悔しています(50代、麻酔科)――― このように、口腔の悩みやセルフケアの必要性を認識しているものの、通院時間や業務の忙しさなどのアクセス面が障壁となり、適切な治療に到達できていない可能性が浮き彫りになった。また、医師であっても自身の受診のみならず、医科歯科連携先の歯科医院選択などの悩みを抱えており、その詳細は以下のページに掲載している。医師自身の口腔ケア問題、その対策は?/医師1,000人アンケート

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中・遠位血管閉塞による脳梗塞、血栓回収療法は有効か/JAMA

 機械的血栓回収療法は、急性期虚血性脳卒中(AIS)の治療法を一変させ、大血管閉塞(LVO)に伴うAISの標準治療となったが、主要な無作為化臨床試験の対象の多くは近位部閉塞の患者で、より遠位部の閉塞はごく一部(M2セグメントに及ぶものは0.5~14.3%)だという。フランス・Hopital Pitie-SalpetriereのFrederic Clarencon氏らDISCOUNT Investigatorsは、非盲検(評価者盲検)無作為化臨床試験「DISCOUNT試験」において、中・遠位血管閉塞(MDVO)に関連する急性期AIS患者では、薬物療法単独と比較して血栓回収療法+薬物療法は、3ヵ月の時点での良好な臨床アウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア:0~2点)の達成割合を上昇させず、血栓回収療法に伴う出血性合併症の発生頻度が高いことを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年7月22日号で報告された。フランスの無効中止の無作為化臨床試験 DISCOUNT試験は、フランスの22の脳卒中センターで実施され、2021年11月~2025年4月に参加者を登録した(フランス保健省などの助成を受けた)。 本研究は、データ・安全性監視委員会の勧告に基づき、無効性および血栓回収療法に伴う症候性頭蓋内出血の発生率の増加を理由に、予定されていた中間解析後に中止された。 対象は、年齢18歳以上、米国国立衛生研究所脳卒中尺度(NIHSS)スコア5点以上または重度失語症を伴う症候性血管閉塞を有し、症状発現から8時間以内、またはFLAIR画像で高信号を認めない場合は最終健常確認から24時間以内に入院し、CTまたはMR血管造影でMDVOを確認した患者であった。 被験者244例(年齢中央値75歳[四分位範囲[IQR]:67~81]、男性56%)を、血栓回収療法+薬物療法(123例)または薬物療法単独(121例)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、3ヵ月の時点における、盲検下独立認定評価者による判定に基づく良好な臨床アウトカム(mRSスコア:0~2点)の達成とした。再疎通率は10%以上改善 血栓回収療法群の123例中100例(81%)が実際に血栓回収療法を受けた。閉塞部位は、遠位中大脳動脈(遠位M2、M3)が75%と最も多く、次いで後大脳動脈(P1、P2、P3)が19%、前大脳動脈(A1、A2、A3)が7%であった。全体で217例(89%)が追跡調査を完了した。 ベースラインのNIHSSスコア中央値は8点(IQR:6~12)、入院時NIHSSスコア≧10点の患者の割合は39%だった。 3ヵ月の時点で、良好な臨床アウトカムを達成した参加者は、血栓回収療法群が116例中72例(62%)、薬物療法単独群は119例中81例(68%)であり、両群間に有意な差を認めなかった(オッズ比:0.73、95%信頼区間[CI]:0.40~1.31、p=0.29、補正後絶対群間差:-6.8%、95%CI:-19.4~5.7)。 閉塞血管の再疎通(48時間後の画像上の動脈閉塞病変[AOL]スコアが2点以上)を達成した参加者は、血栓回収療法群が98例中83例(85%)、薬物療法単独群は97例中71例(73%)であった(群間差:11.5%、95%CI:0.10~23.1、p=0.049)。 また、3ヵ月時に優れた臨床アウトカム(mRSスコア:0~1点)を達成した参加者は、血栓回収療法群が116例中48例(41%)、薬物療法単独群は119例中43例(36%)であった(群間差:5.2%、95%CI:-7.0~17.3、p=0.41)。くも膜下出血、塞栓の移動が高頻度 有害事象(95%vs.85%)および重篤な有害事象(36%vs.26%)は、血栓回収療法群で頻度が高かった。また、7日以内の症候性頭蓋内出血(11%vs.3%、群間差:8.2%、95%CI:4.3~17.9、p=0.008)、症候性または無症候性くも膜下出血(13%vs.2%、群間差:10.9%、95%CI:4.3~17.9、p<0.001)、塞栓の新たな血管領域への移動(5%vs.1%、群間差:4.3%、95%CI:0.30~9.3、p=0.04)は、いずれも血栓回収療法群で有意に高頻度にみられた。 3ヵ月時の死亡率(6%vs.8%、群間差:-2.3%、95%CI:-8.6~4.1、p=0.49)は両群で同程度だった。デバイスの最適化が必要な可能性も 著者は、「機械的血栓回収療法には、機能的有益性がなく、出血リスクが高いことから、この病態下における実臨床での使用は支持されない」としている。 また、MDVOにおいて血栓回収療法の有益性を認めなかったことの説明の1つとして、「これらの結果は、静脈血栓溶解療法を含む最善の薬物療法だけでも、すでに高度な有効性に到達していることを示唆する。再疎通率が有意に高かったものの、3ヵ月後の臨床アウトカムの改善にはつながらなかったのは、症候性出血の発生率が高かったことが原因の可能性が高く、これはMDVOでは手技上のリスクが高いことを反映している。現在のデバイスは、LVO用の単なる小型版であるため、MDVO用に最適化する必要があるかもしれない」と指摘している。

10.

GPIIb/IIIa阻害薬は、脳出血は心配ない?(解説:後藤信哉氏)

 血小板の凝集はGPIIb/IIIaとフィブリノーゲン、VWFの結合による。心筋梗塞、脳梗塞の発症における血小板の役割は完全に理解されているわけではないが、血小板凝集が一定の役割を演じていると考えられた。循環器内科の領域では血小板凝集を完全に阻害するGPIIb/IIIa阻害薬が3種臨床開発され、国によってはabciximab、tirofiban、eptifibatideの3種、あるいは3種のうちの1種が認可されている。循環器内科の再灌流療法の大半はカテーテルを用いた局所的なPCIであるため、静脈投与可能かつ強力な抗血小板薬であるGPIIb/IIIa阻害薬は、再灌流療法後の急性期再閉塞などの症例に限局して使用されている。血小板凝集を完全に阻害するため、重篤な出血イベントリスクも不可避である。日本では、重篤な出血イベントのためGPIIb/IIIa阻害薬は認可されていない状態にある。 本試験では、比較的太い動脈の血栓性閉塞による脳梗塞に対して血栓回収療法を使用し、併用薬としてのtirofibanの有効性、安全性をランダム化比較試験にて検証した。tirofibanには強力な血小板凝集阻害効果があるため、頭蓋内出血の増加が懸念された。しかし、本試験ではtirofibanの併用により90日の時点における脳機能回復効果は認められた。頭蓋内出血は、数は増えたが統計学的差ではないとされた。 心筋梗塞、脳梗塞は、ともに血管を閉塞する数ミリメートルの血栓により惹起される。全身の線溶亢進による血栓溶解療法は非効率である。循環器ではカテーテル治療が一般化した。本研究では、長期予後が改善する症例の存在が示唆された。再灌流成功後に再閉塞する少数例のみを対象とすれば、さらに効率的に予後を改善できる。ランダム化比較試験による標準治療によるシステム的な予後の改善よりも、新薬によりメリットを得る少数例に限局した介入方法の開発が今後の課題だと思う。

11.

血栓回収療法成功後のtirofiban、機能的自立を改善/Lancet

 前方循環系の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を発症し血栓除去術(EVT)による再灌流が成功した患者において、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬であるtirofibanの投与は、プラセボと比較し機能的自立を改善し、症候性頭蓋内出血の発生割合に有意差はなかったことが示された。中国・Tongji Medical CollegeのHao Huang氏らATTRACTION Investigatorsが、同国82施設で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATTRACTION試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中でEVTにより再灌流に成功しても、必ずしも機能的自立が得られるわけではない。tirofibanは、静脈内血栓溶解療法後の急性虚血性脳卒中における補助的な抗血小板療法として検討されているが、EVT後の投与を支持する研究結果が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年6月24日号掲載の報告。EVTで再灌流に成功した虚血性脳卒中患者を対象、tirofiban群vs.プラセボ群 研究グループは、18歳以上、最終健常確認時から24時間以内で、前方循環系の大血管閉塞に起因する急性虚血性脳卒中を発症しEVTにより再灌流が成功した患者を、施設で層別化した固定ブロック法を用い、tirofiban群(5μg/kgを動脈内ボーラス投与後0.1μg/kg/分で持続静脈内投与を最長24時間継続)、またはプラセボ群(同様の用量および投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験薬投与終了後の抗血栓療法およびその他の脳卒中治療は、最新のガイドラインに従って行われた。 有効性の主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア:0~2点)の患者割合で、無作為化されたすべての患者(ITT集団)を解析対象集団とした。 安全性のアウトカムは、無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血および画像診断による頭蓋内出血所見、ならびに90日全死亡率などで、試験治療を受け少なくとも1回の安全性評価が行われた患者を解析対象集団とした。90日時の機能的自立、tirofiban群49%vs.プラセボ群43% 2024年4月9日~2025年9月29日に、1,686例がスクリーニングを受け、このうち1,380例がtirofiban群(689例)またはプラセボ群(691例)に無作為に割り付けられた。 患者背景は、年齢中央値71歳(四分位範囲:62~77)、女性が591例(43%)、男性が789例(57%)、漢民族が1,367例(99%)であり、90日時の追跡不能例は認められなかった。 90日時の機能的自立は、tirofiban群で340/689例(49%)、プラセボ群で299/691例(43%)に認められた(絶対リスク群間差:6.1%ポイント[95%信頼区間[CI]:0.8~11.3、p=0.023]、補正後リスク比:1.15[95%CI:1.03~1.27、p=0.0092])。 48時間以内の症候性頭蓋内出血は、tirofiban群で12%(82/687例)、プラセボ群で9%(65/691例)、48時間以内のあらゆる頭蓋内出血はそれぞれ34%(235例)、32%(219例)に認められ、90日死亡率はそれぞれ18%(126例)、19%(131例)であり、いずれも両群間に差はなかった。

12.

prasinezumabはパーキンソン病の運動症状悪化の抑制に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 prasinezumabはPASADENA試験により、未治療やMAO-B阻害薬の治療を受けている初期のパーキンソン病患者において運動症状の進行を遅くする効果を有する可能性が示されている。PADOVA試験は、安定的な維持療法を受けている、より幅広いパーキンソン病患者においてprasinezumabの有効性と安全性を検討した第II相試験であった。 1次評価項目は運動症状がMDS-UPDRS Part III off-medication scoreで5点以上増加するまでの時間であったが、1次エンドポイントはprasinezumab群とプラセボ群で有意差はなかったものの、運動症状の進行はprasinezumab群で遅くなる傾向が認められた(ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.69~1.01、p=0.066)。サブグループ解析では、L-ドーパ投与例では両群の差は有意であり、MAO-B阻害薬投与例では有意ではなかった。また、付随研究として行われたMRIの解析により、prasinezumab群ではプラセボ群と比べて黒質の変性と基底核の鉄沈着が少なかったことが示された。これらの結果を併せて考えると、凝集したαシヌクレインのC末端を標的とした治療は期待できそうであり、第III相試験(PARAISO)の結果が注目される。

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第324回 薬での体冷却で脳卒中後の脳損傷を減らせるかもしれない

神経遮断作用を担う2つの薬の組み合わせがサルの体温を下げて脳卒中後の脳損傷を減らし、ヒトに投与する試験段階に進んでいます1,2)。その2つは1950年代から体温を下げることが知られる3)抗精神病薬のクロルプロマジンと抗ヒスタミン薬のプロメタジンです。英語表記での頭文字をとってC+Pと呼ばれるその組み合わせが脳の活動と糖代謝を抑制して、いわば冬眠のような状態を作り出すことで脳卒中から神経を守る働きを担いうることが、2019年のラットでの検討で示されています4)。また、2022年に報告された研究では、C+Pがラットの体温を36℃未満に下げて脳梗塞病変を減らしました5)。動物での検討が進む一方で、ヒトにC+Pを経口投与した臨床試験結果が早くも2019年に報告されています。試験には急性虚血性脳卒中患者64例が参加し、およそ半数の34例にはプラセボ、30例には低用量のC+Pが投与されました。治療期間は2週間で、クロルプロマジンとプロメタジンの1日量はどちらも多くて50mgでした(25mgを1日2回)。残念ながら機能的アウトカムの改善はみられませんでしたが、幸いにも深刻な有害事象はありませんでした6)。同試験の著者に名を連ねる米国・ウェイン州立大学(Wayne State University)のYuchuan Ding氏を含むチームは、先立つ研究をなぞって小型動物のマウスでC+Pの効果を改めて検証し、続いて新たな試みとしてより大型の動物のサルでC+Pの効果を検討しました。C+Pはサルの深部体温をマウスでの検討と同様に下げ、グルコース代謝を抑え、脳卒中での脳の損傷を減らしました。脳損傷が減ったおかげかサルは腕を使って食べ物を引き寄せる動作がより素早く、C+Pは運動機能も改善したようです。サルの体温を安全に引き下げた無毒性量(no observed adverse event level:NOAEL)からヒトでも安全に効果を発揮しうるクロルプロマジンとプロメタジンの最大用量が100mgと推定され、その用量を含む4つの用量が2024年11月に始まった第I相試験7)で検討されました。試験には急性虚血性脳卒中患者32例が参加し、標準治療に加えて最高用量(100mg)のC+Pが静注された患者に限って体温がつかの間下がりました。脳損傷を減らす効果や神経/身体機能を改善する効果は認められませんでしたが、被験者数32例ばかりの本試験では効果の確証は叶わなかったと著者は言っています1)。試験でC+Pは12時間かけて点滴されました。深部体温を十分下げるには投与速度がゆっくり過ぎたのかもしれません2)。よって新たな試験ではより短時間かより高用量の投与で有意な体温低下を達成できるかどうかを調べる必要があります。1時間での急速点滴がより体を冷やして確かな効果を発揮するかどうかを調べる試験に研究者らは早速取り掛かっています2)。参考1)Xu S, et al. Sci Transl Med. 2026;18:eady7847.2)Chilling the body with drugs could limit brain damage from stroke / NewScientist3)BURN JH. Proc R Soc Med. 1954;47:617-621.4)Guan L, et al. Curr Neurovasc Res. 2019;16:232-240.5)Guan L, et al. Biomolecules. 2022;12:851.6)Zhu H, et al. J Neurosurg Sci. 2019;63:265-269.7)Study on Hibernation-like Therapy Based on Mechanical Thrombectomy(CHILL-1) / ClinicalTrials.gov

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慢性期外傷性脳損傷に初の再生医療 バンデフィテムセル発売/サンバイオ

 サンバイオが開発した細胞治療薬バンデフィテムセル(商品名:アクーゴ)が慢性期外傷性脳損傷(TBI)の治療に承認・発売された。2026年6月に行われた「アクーゴ脳内移植用注発売メディアセミナー」で紹介された基礎と臨床の専門家の知見を詳報する。不可能だと考えられていた脳神経細胞の再活性化を実現 再生医療においては幹細胞が非常に大きな役割を果たす。幹細胞には体を構成するほぼすべての組織に分化可能な多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)と一定の限られた細胞種に分化する体性幹細胞(間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞など)がある。体性幹細胞は生体組織に存在するため、選択的に増やすあるいは分離することで再生医療に活用できる。 サンバイオ創業科学者で慶応義塾大学再生医療リサーチセンターの岡野 栄之氏による、神経幹細胞マーカーであるRNA結合蛋白質Musashi-1の同定からバンデフィテムセル開発の歴史は始まる。岡野氏らはMusashi-1を活用し、ヒト成人脳に幹細胞があること、脳細胞が新たにニューロンを作っていることを見いだし、サンバイオと製品化に向けた共同研究をスタートした。 バンデフィテムセルはNotch-1細胞内ドメイン遺伝子をヒト骨髄由来の間葉系幹細胞に導入したヒト体性幹細胞加工製品。同細胞は脳内に元々存在するFGF-2などの増殖因子を分泌させることで、神経細胞が本来持つ再生能力を活性化して神経細胞の増殖・分化を促進する。STEMTRA試験が証明したバンデフィテムセルによる慢性期TBIの機能改善1) 川堀 真人氏が所属する北海道大学大学院医学研究科 脳神経外科はバンデフィテムセルの臨床試験であるSTEMTRA試験で最も多くの症例を登録した。川堀氏はTBI診療の最前線で、治らないと宣告される患者の絶望を目の当たりにしてきた。TBIは転落などの日常的な原因で発生し、多様な神経・認知機能障害を伴う疾患である。日本国内では年間約6万人発症、入院患者は1万2,000人とされる。急性期から回復期においては高次脳機能障害や運動機能障害が残る。 バンデフィテムセルを用いた国際共同治験STEMTRA試験は、日・米・ウクライナの多施設で実施された。プラセボ群に偽手術を採用した厳格な二重盲検試験である。頭部外傷後12ヵ月以上経過した患者を対象に、バンデフィテムセルを0個(プラセボ)、250万個、500万個、1,000万個投与の群に無作為に割り付けた。結果として、バンデフィテムセル(500万個)投与群ではFugl-Meyer運動機能スコア(FMMスコア)がプラセボ群に比べ6点(8.3点vs.2.3点)、有意に改善した(p=0.04)。川堀氏は「改善が目で見てわかるのはFMMスコア10点程度」だと言う。FMMスコア10点改善が見られた患者はバンデフィテムセル群で40%、プラセボ群では6%であった。 TBI後の機能改善が確認されたものの、バンデフィテムセルの効果には未解明な点も多々ある。川堀氏は「どの部位に、どの程度の細胞量を投与するのが最適か、そして高次脳機能障害への具体的な効果はどの程度か。これらは今後、実際の臨床現場で医師たちがデータを蓄積し、解明していくべき課題」と述べ、今後のエビデンス構築の重要性を訴えた。再生医療とリハビリテーションの新たな融合 慶應義塾大学リハビリテーション医学教室の川上 途行氏は、再生医療とリハビリテーションの融合が今後重要になると説く。 脳損傷において、急性期と回復期の間はリハビリテーション効果が発揮されるが、この期間を過ぎて慢性期になると治療選択肢は非常に少なくなる。多くのTBI患者は、この後どうやっていけばいいのかと不安を抱えることになる。 STEMTRA試験の成績について川上氏は「通常みられるFMMスコアの改善は2~3点程度。この数値であれば、患者さんも体が動くようになっていることを実感できるのではないか。最適なリハビリテーションを上乗せしたら、スコアはさらに上がる可能性がある」と言う。未来へのビジョン―適応疾患の拡大とグローバル展開 サンバイオ代表取締役社長である森 敬太氏は、25年にわたる開発の道のりを回顧しつつ、未来を見越す。TBIからはじまり、今後は脳梗塞、認知症、アルツハイマーなど、多くのアンメット・メディカル・ニーズに応えるべくバンデフィテムセルの疾患領域を拡大していくと表明した。また、日本だけでなく米国そして世界へと展開させる意向も示した。

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不眠症と心房細動の関連、全国178万人データで検証

 不眠症は多くの人が経験する身近な症状であり、生活の質の低下に加え、さまざまな健康リスクとの関連も指摘されている。今回、日本の全国規模データを用いた解析から、不眠症は心房細動の発症リスク上昇と有意に関連することが示され、特に若年層や女性でその傾向が強いことが明らかになった。睡眠の状態が心臓のリズム異常と関連する可能性を示した研究として注目される。研究は、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学分野の増田拓郎氏、江尻健太郎氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は4月20日付の「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。 不眠症は臨床現場で頻繁にみられる疾患の一つで、死亡リスクの増加や幅広い慢性疾患との関連が指摘されている。一方、心房細動は高齢者に多くみられる代表的な不整脈で、脳梗塞や心不全などのリスクにもつながる重要な疾患だ。不眠症と心血管疾患との関連を検討した研究は多いものの、心房細動との関連を検討した研究は比較的少なく、一般集団における影響は十分に明らかになっていない。そこで著者らは、日本の全国規模のリアルワールドデータを用いて、不眠症とその後の心房細動発症との関連を検証した。 解析対象は、2014年4月~2023年8月にDeSCデータベースへ登録された、心房細動を含む心血管疾患の既往がない約178万人で、不眠症と診断されていた人とそうでない人に分けて、その後の新規心房細動の発症リスクを比較した。DeSCデータベースには、診療報酬請求情報に加え、健診データや処方情報などが含まれる。主要評価項目は心房細動の新規発症とし、不眠症の有無による発症リスクをCox比例ハザードモデルで比較した。解析では、年齢や性別に加え、高血圧や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、飲酒、身体活動などの影響も調整した。 対象者178万764人のうち、21万6,919人(12.2%)に不眠症が認められた。追跡期間中央値3.7年の間に、2万5,779人(1.4%)が新たに心房細動を発症した。不眠症のある人では、ない人に比べて心房細動発症率が高く(10,000人年当たり57.8 vs 35.4)、各種因子を調整した解析でも、心房細動の発症リスクは有意に高かった。調整後ハザード比は1.14(95%信頼区間1.10~1.18)で、リスクは14%上昇していた。サブグループ解析でも全体と同様の傾向がみられたが、65歳未満および女性では、不眠症と心房細動発症との関連がより強い傾向が示された(P for interaction=0.01、0.03)。 著者らは、本研究により、不眠症を単なる睡眠の悩みにとどまらず、心房細動のリスク因子として捉える重要性が示されたと述べている。その上で、心房細動予防の観点から睡眠管理にも目を向ける必要があり、さらなる研究が求められるとしている。また、不眠症に伴う自律神経の乱れや炎症、ホルモンバランスの変化が、心房細動発症に関与する可能性も指摘している。 本研究の限界点として、日本人中心の保険・健診データを用いた観察研究であり、診断がICD-10コードに依存している点や残余交絡の可能性などが挙げられる。

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中高年の前兆を伴う片頭痛、脳梗塞リスクの上昇と関連

 前兆を伴う片頭痛を有する中高年では、片頭痛のない中高年と比べて虚血性脳卒中(脳梗塞)リスクが高い可能性があるとする研究結果が報告された。前兆を伴う片頭痛を有する人では、片頭痛のない人に比べて脳梗塞リスクが73%高かった一方、前兆を伴わない片頭痛を有する人では有意なリスク上昇は認められなかったという。米バーモント大学神経学分野のAdam Sprouse-Blum氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に5月20日掲載された。 研究グループによれば、片頭痛の前兆とは、片頭痛発作に先立って現れる視覚的または感覚的な異常を指す。具体的には、光の点滅、視野欠損、ジグザグ模様、きらめく点などが現れるという。Sprouse-Blum氏は、「これまでの研究で、前兆を伴う片頭痛は、若年層における脳梗塞リスクの増加と関連することが示されていたが、45歳以上における脳梗塞リスクとの関連については十分に分かっていなかった」と説明している。 今回の研究では、米国の大規模コホート研究参加者のうち、45歳以上の1万1,381人(平均年齢72.1歳、女性55.2%)を対象に、片頭痛と脳梗塞リスクとの関連が前兆の有無によって異なるかを検討した。参加者のうち1,130人(9.9%)が片頭痛を有しており、その内訳は、前兆を伴う片頭痛491人、前兆を伴わない片頭痛639人だった。 平均6.4年間の追跡期間中に、片頭痛群では44人(3.9%;前兆を伴う片頭痛群23人、前兆を伴わない片頭痛群21人)、片頭痛のない群(1万251人)では351人(3.4%)が脳梗塞を発症した。解析の結果、片頭痛群では片頭痛のない群に比べて脳梗塞リスクが35%高かったものの、統計学的有意差は認められなかった(ハザード比1.35、95%信頼区間0.98~1.87)。さらに、片頭痛群を前兆の有無で分けて解析すると、前兆を伴う群では片頭痛のない群と比べて脳梗塞リスクが73%有意に高かった(同1.73、1.12~2.65)。一方、前兆を伴わない群では、脳梗塞リスクに有意な増加は認められなかった(同1.10、0.70~1.72)。サブグループ解析からは、72歳未満の男性では、前兆の有無を問わず片頭痛を有する人で脳梗塞リスクが最も高く、片頭痛のない人に比べて約3.7倍だったことも示された(同3.67、1.96~6.88)。 Sprouse-Blum氏は、「72歳未満の中高年男性で脳梗塞リスクが著しく高かったという結果は予想外だった。若年層を対象としたこれまでの研究では、片頭痛に関連する脳梗塞リスクは女性で高いことが示されていたからだ」と述べている。その上で同氏は、「今回の結果をより深く理解するためには、今後さらなる研究が必要である。もし結果が確認されれば、この年齢層に対して脳梗塞予防に関する重点的な指導が必要になる可能性がある」と語っている。

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脳梗塞治療と心筋梗塞治療の類似性と相違(解説:後藤信哉氏)

 今の若い世代の循環器内科医にとって、心筋梗塞に対する再灌流療法は冠動脈インターベンションであろう。1986年から循環器内科医をしている筆者は、心筋梗塞治療に血栓溶解療法が主流になりそうな時代があったことを知っている。血栓溶解療法には内因系のプラスミノーゲンをプラスミンに転換することにより、線溶効果を狙う。ヒトの身体はバランスが取れているので、線溶を亢進させれば、体内の血栓性も亢進する。血栓溶解療法には血小板、凝固系を阻害する抗血栓療法の併用が必須である。われわれは1980~90年代に多数の抗凝固薬、抗血小板薬の併用を試してきた。 脳梗塞治療では血管インターベンションが血栓溶解療法を完全に置換してはいない。本研究でも血栓溶解療法施行時の併用療法が比較された。心筋梗塞後も、当初は抗血小板併用療法が試された。本研究でもチカグレロルを早期から開始する抗血小板併用療法にて予後が改善されたと報告されている。 チカグレロルの用量として循環器と同様90mg bidが選択されている。急性冠症候群では国際共同試験では90mg bidがクロピドグレルよりも有効とされた。しかし、日本などの東アジアではglobal試験の優越性を確認できなかった(Goto S, et al. Circulation Journal. 2015;79:2452-2460.)。本試験は中国にて施行されたがglobal doseが選択されたのは興味深い。 出血合併症から考えれば線溶療法より冠動脈インターベンションが優れていることが心筋梗塞では示されている。抗血小板薬併用療法も、出血合併症リスクが循環器では強調されている。現在、脳領域は1980~90年代の循環器内科を追いかけているようだが、脳梗塞治療も心筋梗塞治療同様カテーテルインターベンションの時代になるのか? いつまでも線溶療法の時代が持続するのか? 興味深く見守りたい。

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血栓回収療法前のtenecteplase、機能的自立を改善せず/JAMA

 脳梗塞発症後4.5時間を超えても、血管内治療(EVT)を迅速に受けられる環境にある患者において、EVT前のtenecteplase静注による血栓溶解療法の役割は不明とされる。中国・首都医科大学のYunyun Xiong氏らTNK-PLUS Investigatorsは、「TNK-PLUS試験」において、発症後4.5~24時間以内にEVTを実施可能な施設に直接搬送された近位中大脳動脈(MCA)閉塞による急性期脳梗塞患者では、EVT単独と比較して、EVT前にtenecteplase静注を行っても、機能的自立の達成率は改善しないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月8日号に掲載された。中国の第III相無作為化優越性試験 TNK-PLUS試験は、中国の40施設で実施した第III相非盲検(エンドポイント盲検)無作為化優越性試験であり、2024年1月~2025年7月に参加者を募集した(北京市自然科学基金などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、MCA-M1または近位M2の閉塞による急性期脳梗塞で、救済可能な脳組織(虚血コア体積<70mL、ミスマッチ比≧1.8、ミスマッチ体積≧15mL)を有し、最終健常確認時から4.5~24時間以内の患者であった。起床時および目撃者不在の脳梗塞も対象に含めた。 適格基準には、脳梗塞発症前の修正Rankinスケール(mRS)スコア(0[症状なし]~6[死亡]点)が0~2点、NIHSSスコア(0~42点、高点数ほど神経学的障害が重度)が6~25点を満たすことが含まれた。 被験者を、EVT前にtenecteplase(0.25mg/kg、最大用量25mg)の静脈内投与を受ける群またはEVT単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点)の達成割合とした。90日時の機能的自立、tenecteplase群44.2%vs.EVT単独群43.2%で有意差なし 391例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:59~75]、女性155例[39.6%])を登録し、tenecteplase群に199例、EVT単独群に192例を割り付けた。入院時のNIHSS中央値は13点(IQR:10~17)、発症から無作為化までの時間中央値は10.0時間(IQR:6.5~14.3)、入院からtenecteplase静注までの時間中央値は90分(IQR:69~130)であった。 90日時の機能的自立は、tenecteplase群の88例(44.2%)、EVT単独群の83例(43.2%)で達成され、両群間に有意な差を認めなかった(補正後相対的比率:1.01[95%信頼区間[CI]:0.83~1.24]、p=0.89、リスク群間差:0.99[95%CI:-8.84~10.83])。 また、副次アウトカムである90日時の障害なし、mRSスコア0、1点(tenecteplase群30.2%vs.EVT単独群28.6%)、mRSスコア0~3点(62.8%vs.62.0%)、重度障害または死亡、mRSスコア5、6点(20.1%vs.22.4%)は、いずれも両群間に有意差はみられなかった。症候性頭蓋内出血が数値上は増加 90日以内の死亡の割合は、tenecteplase群で12.7%(25/197例)、EVT単独群で14.2%(27/190例)に、36時間以内の症候性頭蓋内出血は、それぞれ5.1%(10/197例)および2.6%(5/190例)に発生した。また、重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めなかった。 著者は、「本試験の知見は、EVT前のブリッジング血栓溶解療法の分野に重要なデータを追加するものである」としている。 また、「重要な点として、本試験を含め、血栓溶解薬の投与から動脈穿刺までの時間が短かったいくつかの研究の結果は、病院間を転送された場合など、EVTへのアクセスの遅延が予測される患者には適用されない」と指摘している。

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心血管死は暑さより寒さと関連

 高齢者や心臓に病気を抱えている人は、暑さよりも寒さに注意すべきかもしれない。心血管死(心筋梗塞や脳卒中などによる死亡)のリスクは、暑さよりも寒さとの関連が強いとする研究結果が報告された。リスクが最低となるのは約23℃で、心血管死のおよそ8割は、それ以下の気温の時に発生しているという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のPedro Rafael Vieira de Oliveira Salerno氏らが米国心臓病学会年次学術集会(ACC.26、3月28~30日、ニューオーリンズ)で発表し、また、研究内容が3月24日に「American Journal of Preventive Cardiology」に短報として掲載された。 発表によると、心血管死の16件に1件は寒さと関連付けられたのに対して、暑さと関連付けられた心血管死は300件に1件にすぎなかった。Salerno氏は、「熱波が健康問題の焦点となっている現在、多くの人にとって意外かもしれないが、長期的に見ると気温の低さの方が、はるかに多くの心血管死を引き起こしている」と話している。 Salerno氏らは、米国の25歳超の人口の81.9%が含まれる819郡で2000~2020年の20年間で発生した、25歳以上の心血管死1418万68件を、各郡の月平均気温と関連付けた解析を行った。心血管死は、国際疾病分類(ICD-10)のコードI00~I99に該当する疾患(心筋梗塞、心不全、不整脈、心筋症、弁膜症、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、大動脈解離、肺塞栓症、心膜炎など)による死亡と定義した。 解析の結果、心血管死のリスクが最低となる気温は23.2℃であった。暑さに関連した死亡は1年間で2,242件(10万人年当たり1.3)と推定されるのに対して、寒さに関連した死亡は同4万2,735件(25.6)と推定された。これらのデータを基にした検討の結果、心血管死全体の6.3%は寒さに伴い発生し、0.33%は暑さに伴い発生したものと推定された。 この結果について研究者らは、寒さは血圧を高め、心臓の酸素需要を上昇させる傾向があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性があると述べている。またSalerno氏は、「臨床医は心血管疾患の発症には季節的なパターンがあるものだと片付けてしまいがちだが、われわれの研究結果は、寒さへの曝露が人口レベルでどの程度の影響を及ぼすのか、定量的に把握することを可能にしている」と本研究の意義を述べている。さらに同氏は、「異常気象による極端な寒さだけが問題なのではなく、日常的な寒さへの曝露でさえ、脆弱な患者にとっては心血管死のリスクを高める可能性がある」と強調している。

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頻回増悪を示すCOPD、astegolimabの有効性・安全性(ALIENTO・ARNASAより)/Lancet

 インターロイキン-33(IL-33)とその受容体ST2は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪時に生じる好中球性および好酸球性の炎症に関与するとされる。イタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らALIENTO and ARNASA investigatorsは、2つの臨床試験「ALIENTO試験」「ARNASA試験」において、頻回の増悪歴を有するCOPD患者を対象に、2週ごとのastegolimab(ST2を介するIL-33の活性を阻害するヒト抗ST2 IgG2モノクローナル抗体)投与の有用性を評価し、ALIENTO試験ではプラセボと比較して年間増悪発生率が有意に低下し、ARNASA試験でも効果の大きさは同等であったが統計学的有意性は示されなかったことを報告した。Lancet誌2026年5月23日号掲載の報告。第IIb相と第III相の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COPD治療におけるastegolimabの有効性と安全性の評価を目的に、2つの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相ALIENTO試験[24ヵ国191施設]、第III相ARNASA試験[35ヵ国319施設])を行った(GenentechとF. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、ALIENTO試験が年齢40~90歳、ARNASA試験は40~80歳で、COPDと診断され、頻回の増悪歴(中等度または重度の増悪が年2回以上)を有し、試験開始時の診療ガイドラインに基づき最適化された2剤または3剤による吸入維持療法(ICS+LABA、LAMA+LABA、ICS+LAMA+LABA)を受けている患者とした。ベースラインの血中好酸球数は問わなかった。 被験者を、最適化された吸入維持療法に加えて、astegolimab 476mgを2週または4週ごとに皮下投与する群、またはプラセボ群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週間であった。 主要エンドポイントは、52週時点の、1回以上の試験薬の投与を受けた患者における中等度または重度の増悪の年換算発生率とした。重度増悪が減少する可能性も ALIENTO試験では、2021年10月~2024年2月に1,301例(年齢中央値67.0歳[四分位範囲[IQR]:41.0~90.0]、女性44.1%、astegolimabの2週ごと投与群433例、4週ごと投与群437例、プラセボ群431例)を、ARNASA試験では、2023年1月~2024年6月に1,375例(67.0歳[IQR:40.0~81.0]、35.6%、459例、459例、457例)を登録した。 プラセボ群との比較における年間増悪発生率の補正後率比(RR)は、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.85(95%信頼区間[CI]:0.72~1.00、p=0.049)と有意に優れたが、4週ごと投与群では0.93(95%CI:0.79~1.10、p=0.38)であり有意ではなかった。 一方、ARNASA試験では、astegolimab 2週ごと投与群のRRは0.85(95%CI:0.72~1.01、p=0.068)とALIENTO試験と同じ値を示したものの統計学的有意差はなく、同4週ごと投与群では0.82(95%CI:0.70~0.98、p=0.024)と有意差を認めた。 また、重度増悪(24時間以上の入院、死亡)の年間発生率の、プラセボ群と比較した補正後RRは、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.71(95%CI:0.49~1.05、p=0.088)、4週ごと投与群で0.78(95%CI:0.53~1.14、p=0.20)であり、ARNASA試験では、それぞれ0.67(95%CI:0.47~0.95、p=0.024)および0.83(95%CI:0.59~1.16、p=0.27)であった。上咽頭炎、上気道感染症が約10%で発現、選択肢が限られた患者で有用か 有害事象の発生率は治療群間で均衡しており、多くの参加者が1つ以上の有害事象を経験した(ALIENTO試験:1,301例中1,093例[84.0%]、ARNASA試験:1,375例中1,176例[85.5%])。試験からの脱落に至った有害事象は、ALIENTO試験で78例(6.0%)、ARNASA試験で59例(4.3%)に発生した。 ALIENTO試験で最も頻度の高かったCOPD以外の有害事象は上咽頭炎(134例[10.3%])であり、ARNASA試験では上気道感染症(146例[10.6%])であった。 死亡は、ALIENTO試験で40例(3.1%)、ARNASA試験で44例(3.2%)に認めた。両試験を通じて、合計3例(0.1%)の死亡が担当医により治療関連と判定された(ALIENTO試験の2週ごと投与群の1例[脳梗塞]、ARNASA試験の2週ごと投与群の2例[COVID-19、COPD])。 著者は、「これら2つの試験の知見を総合すると、症状が重度で臨床的負担が大きく、治療選択肢が限られているCOPD患者では、ST2/IL-33経路を標的とすることが、COPDの増悪の頻度を低減するうえで有用となる可能性が示唆される」としている。 また、「両試験の参加者は合わせて39ヵ国(日本を含む)の2,676例(21%が白人以外の人種)に上り、対象集団が広範にわたることから、さまざまな臨床的、生物学的な特性について検討することで、治療反応を示すサブグループの特定が可能と考えられる」と考察している。

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