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1.

血栓回収療法前のtenecteplase、機能的自立を改善せず/JAMA

 脳梗塞発症後4.5時間を超えても、血管内治療(EVT)を迅速に受けられる環境にある患者において、EVT前のtenecteplase静注による血栓溶解療法の役割は不明とされる。中国・首都医科大学のYunyun Xiong氏らTNK-PLUS Investigatorsは、「TNK-PLUS試験」において、発症後4.5~24時間以内にEVTを実施可能な施設に直接搬送された近位中大脳動脈(MCA)閉塞による急性期脳梗塞患者では、EVT単独と比較して、EVT前にtenecteplase静注を行っても、機能的自立の達成率は改善しないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月8日号に掲載された。中国の第III相無作為化優越性試験 TNK-PLUS試験は、中国の40施設で実施した第III相非盲検(エンドポイント盲検)無作為化優越性試験であり、2024年1月~2025年7月に参加者を募集した(北京市自然科学基金などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、MCA-M1または近位M2の閉塞による急性期脳梗塞で、救済可能な脳組織(虚血コア体積<70mL、ミスマッチ比≧1.8、ミスマッチ体積≧15mL)を有し、最終健常確認時から4.5~24時間以内の患者であった。起床時および目撃者不在の脳梗塞も対象に含めた。 適格基準には、脳梗塞発症前の修正Rankinスケール(mRS)スコア(0[症状なし]~6[死亡]点)が0~2点、NIHSSスコア(0~42点、高点数ほど神経学的障害が重度)が6~25点を満たすことが含まれた。 被験者を、EVT前にtenecteplase(0.25mg/kg、最大用量25mg)の静脈内投与を受ける群またはEVT単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点)の達成割合とした。90日時の機能的自立、tenecteplase群44.2%vs.EVT単独群43.2%で有意差なし 391例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:59~75]、女性155例[39.6%])を登録し、tenecteplase群に199例、EVT単独群に192例を割り付けた。入院時のNIHSS中央値は13点(IQR:10~17)、発症から無作為化までの時間中央値は10.0時間(IQR:6.5~14.3)、入院からtenecteplase静注までの時間中央値は90分(IQR:69~130)であった。 90日時の機能的自立は、tenecteplase群の88例(44.2%)、EVT単独群の83例(43.2%)で達成され、両群間に有意な差を認めなかった(補正後相対的比率:1.01[95%信頼区間[CI]:0.83~1.24]、p=0.89、リスク群間差:0.99[95%CI:-8.84~10.83])。 また、副次アウトカムである90日時の障害なし、mRSスコア0、1点(tenecteplase群30.2%vs.EVT単独群28.6%)、mRSスコア0~3点(62.8%vs.62.0%)、重度障害または死亡、mRSスコア5、6点(20.1%vs.22.4%)は、いずれも両群間に有意差はみられなかった。症候性頭蓋内出血が数値上は増加 90日以内の死亡の割合は、tenecteplase群で12.7%(25/197例)、EVT単独群で14.2%(27/190例)に、36時間以内の症候性頭蓋内出血は、それぞれ5.1%(10/197例)および2.6%(5/190例)に発生した。また、重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めなかった。 著者は、「本試験の知見は、EVT前のブリッジング血栓溶解療法の分野に重要なデータを追加するものである」としている。 また、「重要な点として、本試験を含め、血栓溶解薬の投与から動脈穿刺までの時間が短かったいくつかの研究の結果は、病院間を転送された場合など、EVTへのアクセスの遅延が予測される患者には適用されない」と指摘している。

2.

心血管死は暑さより寒さと関連

 高齢者や心臓に病気を抱えている人は、暑さよりも寒さに注意すべきかもしれない。心血管死(心筋梗塞や脳卒中などによる死亡)のリスクは、暑さよりも寒さとの関連が強いとする研究結果が報告された。リスクが最低となるのは約23℃で、心血管死のおよそ8割は、それ以下の気温の時に発生しているという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のPedro Rafael Vieira de Oliveira Salerno氏らが米国心臓病学会年次学術集会(ACC.26、3月28~30日、ニューオーリンズ)で発表し、また、研究内容が3月24日に「American Journal of Preventive Cardiology」に短報として掲載された。 発表によると、心血管死の16件に1件は寒さと関連付けられたのに対して、暑さと関連付けられた心血管死は300件に1件にすぎなかった。Salerno氏は、「熱波が健康問題の焦点となっている現在、多くの人にとって意外かもしれないが、長期的に見ると気温の低さの方が、はるかに多くの心血管死を引き起こしている」と話している。 Salerno氏らは、米国の25歳超の人口の81.9%が含まれる819郡で2000~2020年の20年間で発生した、25歳以上の心血管死1418万68件を、各郡の月平均気温と関連付けた解析を行った。心血管死は、国際疾病分類(ICD-10)のコードI00~I99に該当する疾患(心筋梗塞、心不全、不整脈、心筋症、弁膜症、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、大動脈解離、肺塞栓症、心膜炎など)による死亡と定義した。 解析の結果、心血管死のリスクが最低となる気温は23.2℃であった。暑さに関連した死亡は1年間で2,242件(10万人年当たり1.3)と推定されるのに対して、寒さに関連した死亡は同4万2,735件(25.6)と推定された。これらのデータを基にした検討の結果、心血管死全体の6.3%は寒さに伴い発生し、0.33%は暑さに伴い発生したものと推定された。 この結果について研究者らは、寒さは血圧を高め、心臓の酸素需要を上昇させる傾向があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性があると述べている。またSalerno氏は、「臨床医は心血管疾患の発症には季節的なパターンがあるものだと片付けてしまいがちだが、われわれの研究結果は、寒さへの曝露が人口レベルでどの程度の影響を及ぼすのか、定量的に把握することを可能にしている」と本研究の意義を述べている。さらに同氏は、「異常気象による極端な寒さだけが問題なのではなく、日常的な寒さへの曝露でさえ、脆弱な患者にとっては心血管死のリスクを高める可能性がある」と強調している。

3.

頻回増悪を示すCOPD、astegolimabの有効性・安全性(ALIENTO・ARNASAより)/Lancet

 インターロイキン-33(IL-33)とその受容体ST2は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪時に生じる好中球性および好酸球性の炎症に関与するとされる。イタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らALIENTO and ARNASA investigatorsは、2つの臨床試験「ALIENTO試験」「ARNASA試験」において、頻回の増悪歴を有するCOPD患者を対象に、2週ごとのastegolimab(ST2を介するIL-33の活性を阻害するヒト抗ST2 IgG2モノクローナル抗体)投与の有用性を評価し、ALIENTO試験ではプラセボと比較して年間増悪発生率が有意に低下し、ARNASA試験でも効果の大きさは同等であったが統計学的有意性は示されなかったことを報告した。Lancet誌2026年5月23日号掲載の報告。第IIb相と第III相の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COPD治療におけるastegolimabの有効性と安全性の評価を目的に、2つの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相ALIENTO試験[24ヵ国191施設]、第III相ARNASA試験[35ヵ国319施設])を行った(GenentechとF. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、ALIENTO試験が年齢40~90歳、ARNASA試験は40~80歳で、COPDと診断され、頻回の増悪歴(中等度または重度の増悪が年2回以上)を有し、試験開始時の診療ガイドラインに基づき最適化された2剤または3剤による吸入維持療法(ICS+LABA、LAMA+LABA、ICS+LAMA+LABA)を受けている患者とした。ベースラインの血中好酸球数は問わなかった。 被験者を、最適化された吸入維持療法に加えて、astegolimab 476mgを2週または4週ごとに皮下投与する群、またはプラセボ群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週間であった。 主要エンドポイントは、52週時点の、1回以上の試験薬の投与を受けた患者における中等度または重度の増悪の年換算発生率とした。重度増悪が減少する可能性も ALIENTO試験では、2021年10月~2024年2月に1,301例(年齢中央値67.0歳[四分位範囲[IQR]:41.0~90.0]、女性44.1%、astegolimabの2週ごと投与群433例、4週ごと投与群437例、プラセボ群431例)を、ARNASA試験では、2023年1月~2024年6月に1,375例(67.0歳[IQR:40.0~81.0]、35.6%、459例、459例、457例)を登録した。 プラセボ群との比較における年間増悪発生率の補正後率比(RR)は、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.85(95%信頼区間[CI]:0.72~1.00、p=0.049)と有意に優れたが、4週ごと投与群では0.93(95%CI:0.79~1.10、p=0.38)であり有意ではなかった。 一方、ARNASA試験では、astegolimab 2週ごと投与群のRRは0.85(95%CI:0.72~1.01、p=0.068)とALIENTO試験と同じ値を示したものの統計学的有意差はなく、同4週ごと投与群では0.82(95%CI:0.70~0.98、p=0.024)と有意差を認めた。 また、重度増悪(24時間以上の入院、死亡)の年間発生率の、プラセボ群と比較した補正後RRは、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.71(95%CI:0.49~1.05、p=0.088)、4週ごと投与群で0.78(95%CI:0.53~1.14、p=0.20)であり、ARNASA試験では、それぞれ0.67(95%CI:0.47~0.95、p=0.024)および0.83(95%CI:0.59~1.16、p=0.27)であった。上咽頭炎、上気道感染症が約10%で発現、選択肢が限られた患者で有用か 有害事象の発生率は治療群間で均衡しており、多くの参加者が1つ以上の有害事象を経験した(ALIENTO試験:1,301例中1,093例[84.0%]、ARNASA試験:1,375例中1,176例[85.5%])。試験からの脱落に至った有害事象は、ALIENTO試験で78例(6.0%)、ARNASA試験で59例(4.3%)に発生した。 ALIENTO試験で最も頻度の高かったCOPD以外の有害事象は上咽頭炎(134例[10.3%])であり、ARNASA試験では上気道感染症(146例[10.6%])であった。 死亡は、ALIENTO試験で40例(3.1%)、ARNASA試験で44例(3.2%)に認めた。両試験を通じて、合計3例(0.1%)の死亡が担当医により治療関連と判定された(ALIENTO試験の2週ごと投与群の1例[脳梗塞]、ARNASA試験の2週ごと投与群の2例[COVID-19、COPD])。 著者は、「これら2つの試験の知見を総合すると、症状が重度で臨床的負担が大きく、治療選択肢が限られているCOPD患者では、ST2/IL-33経路を標的とすることが、COPDの増悪の頻度を低減するうえで有用となる可能性が示唆される」としている。 また、「両試験の参加者は合わせて39ヵ国(日本を含む)の2,676例(21%が白人以外の人種)に上り、対象集団が広範にわたることから、さまざまな臨床的、生物学的な特性について検討することで、治療反応を示すサブグループの特定が可能と考えられる」と考察している。

4.

広範囲脳梗塞でも血栓回収療法は有効か?~6試験メタ解析/Lancet

 広範囲の虚血性変化を呈する脳卒中患者は、従来、血管内血栓回収療法の対象から除外されることが多い。米国・University Hospitals Cleveland Medical CenterのAmrou Sarraj氏らATLAS Investigatorsは系統的レビューとメタ解析による「ATLAS研究」において、発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者では、薬物療法と比較して血管内血栓回収療法は機能的アウトカムを有意に改善し、死亡率の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年5月23日号に掲載された。90日時のmRSスコア分布を2段階メタ解析で評価 ATLAS研究は、医学関連データベースを用いて2018年3月1日~2025年3月1日に発表された文献を検索し行われた。 発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者(Alberta Stroke Program Early CT Score[ASPECTS]5点以下、または推定虚血コア体積50mL以上)を対象に、薬物療法との比較で血管内血栓回収療法の有効性と安全性を評価した試験を選出し、すべての試験から患者レベルの個別データを取得した。 主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankinスケール(mRS)スコアの分布とした。変量効果モデルを用いた2段階メタ解析を行い、調整済み統合一般化オッズ比(aGenORs)を算出した。機能的自立、自立歩行も良好 日本の「RESCUE Japan-LIMIT試験」(202例)を含む6つの試験に参加した1,886例(血管内血栓回収療法群944例、薬物療法群942例)を解析の対象とした。ベースラインの全体の年齢中央値は70歳で、女性は43.8%であった。閉塞部位は中大脳動脈が63.0%、内頸動脈が36.9%で、NIHSSスコア中央値は19点、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は360分、ASPECTS中央値は4点、虚血コア体積中央値は82.1mLだった。 90日時のmRSスコア中央値は、血管内血栓回収療法群4点(四分位範囲[IQR]:3~6)、薬物療法群5点(IQR:4~6)であった(aGenOR:1.63、95%信頼区間[CI]:1.42~1.88、p<0.0001)。 また、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点:19.5%vs.7.5%、補正後統合相対リスク[aRR]:2.57[95%CI:1.99~3.31]、p<0.0001)および自立歩行(mRSスコア0~3点:36.5%vs.19.9%、aRR:1.96[95%CI:1.58~2.43]、p<0.0001)、90日以内の全死因死亡(31.1%vs.37.3%、aRR:0.82[95%CI:0.70~0.97]、p=0.022)も、血管内血栓回収療法群で有意に優れた。 36時間以内の症候性頭蓋内出血(1.1%vs.1.0%、補正前統合リスク群間差:-0.17%ポイント[95%CI:-1.01~0.67]、p=0.69)、および24~48時間以内の神経学的悪化(22.0%vs.17.9%、aRR:1.19[95%CI:0.87~1.62]、p=0.27)には、両群間に有意な差を認めなかった。サブグループで一貫した改善効果 血管内血栓回収療法群における機能的アウトカムの改善は、臨床および画像所見上のサブグループ全体で一貫していた。ただし、推定虚血コア体積が150mL以上の患者では、とくに発症後早期(0~6時間)において、点推定値は血管内血栓回収療法を支持していたものの、95%CIが広かったため解釈には限界があると考えられた。 発症後6時間を超えて受診した超広範な虚血性変化(虚血コア体積150mL以上)を有する症例(エビデンスが限定的)を除き、発症後24時間以内に受診した患者では、ASPECTSスコアおよび虚血コア体積にかかわらず、その有益性は持続していた。 著者は、「これらの結果は、従来から血栓回収療法の適応外とされていた広範囲の虚血性病変を有するかなりの数の患者における、血管内血栓回収療法の有効性と安全性を裏付けるものである」としている。 また、「本研究の知見は、ASPECTSスコアや灌流画像上のミスマッチにかかわらず、高齢、脳卒中の重症度が高い、優位半球・劣位半球の脳卒中患者において、血管内血栓回収療法の適用を検討すべきであることを示唆する」と指摘している。

5.

中等度~重度機能障害の中血管閉塞脳卒中、血管内治療は有効か/NEJM

 中血管閉塞に起因する急性虚血性脳卒中で中等度~重度の機能障害を有する患者では、血管内血栓除去術は薬物療法単独と比較し機能的アウトカムを改善することが示された。一方で、症候性頭蓋内出血リスクを高めることも明らかになった。中国科学技術大学のWei Hu氏らが同国48施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検比較試験「ORIENTAL-MeVO試験」の結果を報告した。中血管閉塞による急性虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去術は、試験によって結果にばらつきがみられ、中等度~重度の機能障害を有する患者において血管内血栓除去術が機能的アウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌2026年5月14・21日合併号掲載の報告。最終健常確認後24時間以内の中血管閉塞を伴う脳梗塞患者を対象 ORIENTAL-MeVO試験の対象は、脳卒中発症前に修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])が0~2で、最終健常確認時から24時間以内のNIHSSスコア(範囲:0~42、高スコアほど神経学的機能障害が重度)が6以上を呈し、中大脳動脈M2、M3部、前大脳動脈A1、A2、A3部、後大脳動脈P1、P2、P3部の閉塞を有する18歳以上の中等度~重度脳卒中患者であった。 研究グループは、適格患者を血栓除去術+薬物療法(血栓除去群)または薬物療法単独(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時点のmRSスコアで評価した機能障害であった。当初計画された主要アウトカムはmRSスコアの分布の変化であったが、比例オッズの仮定が満たされない場合、mRSスコア(0、1または2)を主要アウトカムとすることが事前に規定されていた。また、安全性アウトカムは症候性頭蓋内出血および90日死亡とした。90日時点のmRSスコア0~2達成患者割合、血栓除去群58.6%vs.対照群46.6% 2023年12月~2025年4月に564例が無作為化され、同意撤回を除く563例(血栓除去群280例、対照群283例)が主要解析の対象集団となった。患者背景は、年齢中央値71歳、NIHSSスコア中央値は10(範囲:3~36)、女性が42.8%、静脈内血栓溶解療法が36.6%に施行された。 90日時点の良好な機能アウトカム(mRSスコア0~2)は、血栓除去群で58.6%、対照群で46.6%に認められた(補正後率比:1.24、95%信頼区間:1.07~1.44、p=0.004)。 24~72時間における症候性頭蓋内出血は、血栓除去群で4.7%、対照群で2.2%に発生し、90日死亡率はそれぞれ11.1%および10.2%であった。

6.

中等症脳梗塞、血栓溶解療法への早期DAPT追加は有効か/Lancet

 発症後4.5時間以内に静注血栓溶解療法を受けた中等症の虚血性脳卒中患者において、発症後6時間以内の経口抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の開始により、90日時点の機能的アウトカムの改善が得られる可能性が示された。中国・首都医科大学のAnxin Wang氏らTAPIS Investigatorsが、同国で実施した二重盲検プラセボ対照試験「TAPIS試験」の結果を報告した。急性期虚血性脳卒中の患者に対して、静注血栓溶解療法に抗血小板療法を早期に追加することを支持するエビデンスは得られていなかった。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。中国の60病院で試験、90日時点の優れた機能的アウトカムを評価 TAPIS試験は、中国の60病院で、発症後4.5時間以内に静注血栓溶解療法を受けた、National Institutes of Health Stroke Scaleスコア4~10の虚血性脳卒中患者を登録して行われた。 研究グループは被験者を発症後6時間以内(血栓溶解療法の前・中・後のいずれか)に、経口投与のアスピリン100mg錠1錠+チカグレロル90mg錠2錠(早期DAPT)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。早期DAPT群は1日目および2~7日目にチカグレロルを投与され、2~90日目は両群に非盲検下でアスピリン100mg錠1錠が投与された。患者、診療担当医、治験責任医師は割り付けを盲検化された。 有効性の主要アウトカムは、90日時点の優れた機能的アウトカム(修正Rankinスケールスコア0~1)。安全性の主要アウトカムは、36時間以内の症候性頭蓋内出血であった。有効性の評価に有意差、ただし症候性頭蓋内出血のリスク増大は排除できない 2024年4月3日~2025年9月30日に、1,382例が早期DAPT群(690例[49.9%])、プラセボ群(692例[50.1%])に無作為化された。年齢中央値は65.6歳(四分位範囲:58.3~72.0)、男性991例(71.7%)、女性391例(28.3%)であった。 90日時点で、早期DAPT群474例(68.7%)、プラセボ群429例(62.0%)で優れた機能的アウトカムを達成した(リスク比[RR]:1.11、95%信頼区間[CI]:1.03~1.20、p=0.0089)。 36時間以内の症候性頭蓋内出血の発現は、早期DAPT群6例(0.9%)、プラセボ群5例(0.7%)で報告された(RR:1.20、95%CI:0.37~3.93、p=0.76)。 結果を踏まえて著者は、「症候性頭蓋内出血に関しては対照群との有意差は認められなかったが、CI値の範囲が大きく、リスク増大への懸念を排除することはできない」と述べている。

7.

未治療の梅毒は心血管イベントリスクを高める

 梅毒は、長期間治療されないまま放置すると、心血管系の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるとする研究結果が報告された。梅毒は大動脈瘤または大動脈解離などの血管イベントのリスクを約2倍に高め、さらに脳卒中や心筋梗塞の発症リスクも大幅に上昇させることが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に4月13日掲載された。 論文の筆頭著者である米テュレーン大学医学部のEli Tsakiris氏は、「心血管疾患は米国における主要な死因である。最近の梅毒罹患者の増加傾向を考えると、この関連性は梅毒リスクの高い患者を診療する全ての医療従事者が認識すべき重要な問題だ」とニュースリリースで述べている。 梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の感染により、主に性的接触を介して伝播する性感染症(STD)である。初期症状としては、感染部位(通常は陰茎、外陰部、膣など)に潰瘍が現れることが多く、進行すると、皮膚の発疹、湿潤部位の灰白色または白色の隆起、インフルエンザ様症状、脱毛、体重減少、頭痛、リンパ節の腫れなどが見られる。 研究グループによると、米国では梅毒患者が急増しており、2018年から2023年の間に80%以上増加したと報告されている。梅毒は多くの場合、既存の抗菌薬で治療可能であり、ペニシリンの単回投与で治癒が見込める。一方で、未治療で放置すると、神経系、眼、耳、脳、肝臓などに深刻な障害を引き起こす可能性がある。梅毒が心血管系の合併症と関連することは以前より知られていたが、心血管イベントリスクに与える影響を独立して評価した大規模研究はほとんどなかった。 今回の研究では、ニューオーリンズの3つの三次医療システムのデータを用い、8,814人の患者(平均年齢50.0歳、女性53.9%、梅毒患者1,469人、非梅毒患者〔対照群〕7,345人)を対象に、2011年から15年間にわたり、健康状態を追跡し、梅毒と心血管イベントとの関連を検討した。心血管イベントには、心筋梗塞、心不全、大動脈弁逆流症(大動脈弁閉鎖不全症)、心房細動、大動脈瘤または大動脈解離、脳梗塞、出血性脳卒中、末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症、および死亡を含めた。 解析の結果、梅毒群は対照群と比較して、大動脈瘤または大動脈解離(ハザード比2.08、P=0.001)、脳梗塞(同1.53、P<0.001)、出血性脳卒中(同1.92、P=0.004)、末梢動脈疾患(同1.28、P=0.04)、心筋梗塞(同1.33、P=0.01)、および死亡(同5.80、P<0.001)のリスクが有意に高いことが示された。一方、心不全、心房細動、大動脈弁逆流症、静脈血栓塞栓症については有意な関連は認められなかった。 ただし、この研究は観察研究であり、梅毒と心血管疾患の間の因果関係が証明されたわけではない。このことを踏まえたうえで、研究グループは、「それでも本結果は、長期的な梅毒感染に伴う心血管の問題が、これまで考えられていた以上に多い可能性を示している」と述べている。 論文の上席著者であるテュレーン大学心血管トランスレーショナルリサーチ部門ディレクターのAmitabh C. Pandey氏は、「梅毒は全身の炎症を引き起こすことが知られており、この炎症が心血管疾患の進行を加速させる可能性がある。今回の研究で示されたのは、梅毒の場合、こうした心血管疾患の兆候は見過ごされがちだが、決して無視すべきではないということだ。特に、梅毒の治療後でもこれらの影響が残ることは、心血管疾患の一因となり得る」と指摘している。

8.

心血管疾患の再発予防には、LDLコレステロール値もthe lower, the better(解説:桑島巖氏)

 LDLコレステロールが心筋梗塞や脳梗塞などの重大なリスク因子であることは議論の余地はないが、その治療目標値においては、各国のガイドラインに差異がみられる。1次予防に関しては、リスクの有無により<120~140mg/dLとされ、各国ガイドラインに差がみられるが、2次予防に関しては、より厳格な管理が有効であるとするエビデンスが相次いで発表されている。日本では標準的2次予防目標値として100mg/dL未満、急性冠症候群、糖尿病、非心原性脳梗塞合併例などの非常に高リスクな場合には、70mg/dL未満が目標値として掲げられている。 今回、韓国から発表されたEz-PAVE研究は、LDLコレステロール値が70mg/dL以上の冠動脈疾患既往歴、脳血管疾患、末梢動脈硬化性疾患の既往歴を有する3,048例を、LDLコレステロール値低下目標値を55mg/dL未満に下げる強化群と70mg/dL未満とする従来群に1:1にランダム化して3年間追跡したランダム化比較研究である。その結果、主要エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術または不安定狭心症による入院)は、強化群での6.6%が、従来群の9.7%に比べて有意(p=0.002)に抑制率が高かったという結果であった。治療薬としては、スタチンの増量と、エゼチミブの併用、PCSK9併用などが推奨されているが、懸念される筋肉症状などの有害事象の発現率には差がなかったという。 2次予防におけるLDL-C目標値に関して、わが国の動脈硬化学会のガイドライン2022年版では70mg/dL未満としているが、欧州ガイドラインでは超ハイリスク例では55mg/dL未満としている。高カロリー食を好む欧米人では、脳卒中よりも心筋梗塞発症率が高く、米飯食を主食とするアジア人は脳卒中のほうが多いとされてきたが、わが国の食事内容も欧米化している現状を考慮すると、この韓国での本試験の結果は日本人にも適用できる結果であろう。 高血圧と同じく、心血管疾患の再発予防におけるコレステロール管理においては、The lower, the betterを証明したという点で意義のある臨床試験であろう。

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脳ドックのガイドライン2026

日本脳ドック学会がまとめる最新ガイドライン脳ドックの水準と有効性の向上を目指し、日本脳ドック学会がまとめるガイドラインの最新版。各項目の内容を刷新し、最新の知見をもとにまとめました。脳卒中や認知症の予防など、日常診療にも大いに役立ちます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳ドックのガイドライン2026定価5,720円(税込)判型A4判頁数150頁発行2026年2月編集脳ドックのガイドライン2026 改訂委員会/一般社団法人 日本脳ドック学会-脳卒中・認知症予防のための医学会-ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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進行期パーキンソン病で昇圧薬を中止したら意識消失を繰り返す事態に…【うまくいく!処方提案プラクティス】第72回

 今回は、進行期パーキンソン病(以下「PD」)における起立性低血圧の管理に介入した症例を紹介します。血圧が安定しているから昇圧薬を中止しようという判断が、結果として患者さんに意識消失を繰り返させてしまうことになり、私自身の反省を踏まえた事例です。進行期PDにおける自律神経障害の理解と、降圧薬・昇圧薬の適切な管理について、一緒に整理していただければ幸いです。患者情報79歳、男性(施設在宅)介護度要介護2基礎疾患パーキンソン病(発症70歳)、レビー小体型認知症、前立腺がん(既往)、陳旧性脳梗塞(既往)ADL歩行・食事は一部介助、排泄はオムツ使用(一部介助)、両下肢の筋力低下あり服薬管理施設スタッフが管理薬学的管理開始時の処方内容1.レボドパ・ベンセラジド配合錠 4錠 分3 毎食後(朝2・昼1・夕1)2.ドロキシドパOD錠100mg 3錠 分3 毎食後3.ミドドリン錠2mg 3錠 分2 朝夕食後(朝2・夕1)4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後5.ソリフェナシンOD錠5mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイント介入当初、レボドパ・ベンセラジド配合錠とドロキシドパ、ならびに昇圧薬のミドドリンが処方されていました。起立性低血圧の既往があるとの情報は得ていたものの、血圧は安定(110~140/60~80台で推移)していると施設職員から報告を受けていました。血圧が落ち着いているなら、ミドドリンは継続する必要がないのではないかと考え、担当医師にミドドリンの中止を提案しました。医師も同意して中止となりましたが、これが誤りの始まりでした。見落とした進行期PDと起立性低血圧の関係パーキンソン病は運動症状だけでなく、さまざまな非運動症状も呈します。進行期には自律神経障害が高頻度に出現し、とくに起立性低血圧は約3分の1の患者に認められるとされています1)。起立性低血圧の背景には、パーキンソン病の神経変性がノルアドレナリン系にも及び、心臓交感神経の脱落が関与していることが知られています。ドロキシドパは生体内でノルアドレナリンに変換されることで、進行期PDにおけるすくみ足・無動・姿勢反射障害だけでなく、起立性低血圧の改善にも有効とされています2)。本症例では、「現在の血圧が安定している=昇圧薬は不要」と表面的に判断してしまい、昇圧薬がその安定を支えていた可能性を考慮できていませんでした。連鎖した処方変更ミドドリン中止から2週間後、血圧の乱高下が出現しました。朝の収縮期血圧が170mmHg台まで上昇することもあると施設の看護師から相談があったので、今度は降圧薬のオルメサルタン10mgを提案・追加しました。しかし、その約1週間後から食後を中心に起立性低血圧が頻発するようになりました。施設の看護師から「血圧がずっと低くなっている」「何度も意識消失を繰り返している」と緊急の相談が入り、事態の深刻さを初めて認識しました。問題の整理ミドドリン中止により昇圧作用が喪失し、血圧が不安定化(とくに食後の低下)。朝の高血圧を起立性低血圧の代償反応として読めず、降圧薬を追加。進行期PDでは臥位高血圧と起立性低血圧が共存しやすい病態であるにもかかわらず、その特性を理解していなかった。医師への提案と経過施設看護師から相談を受けたのち、速やかに医師に状況を報告し、以下を報告しました。(1)ミドドリン中止後から血圧が不安定となり、食後の低血圧が顕著(2)オルメサルタン追加後から起立性低血圧が頻発、意識消失が複数回発生(3)進行期PDにおける自律神経障害(食後低血圧・起立性低血圧)が主因と考えられるそのうえで、オルメサルタンの中止&フルドロコルチゾン0.5錠(0.05mg)の追加を提案しました。パーキンソン病診療ガイドライン2018によれば、起立性低血圧の非薬物療法として塩分摂取の増加や急激な体位変換の回避などが挙げられており、薬物療法としてはミドドリンやフルドロコルチゾンが用いられます1)。とくに臥位高血圧を認める患者では、半減期の短いミドドリンを日中に使用することが推奨されています。しかし、本患者は薬を増やしたくないという希望があり、施設職員の服薬管理の負担軽減の観点からも1日1回朝食後の投与で済むフルドロコルチゾンを提案しました。医師への提案はすぐに採用され、フルドロコルチゾン0.5錠(0.05mg)を朝食後に追加することになりました。その後、施設の看護師から血圧が安定し、意識消失がなくなったとの報告があり、患者さんは落ち着いた経過をたどっています。考察:この事例から学んだこと1.進行期PDにおける起立性低血圧は「管理すべき症状である」起立性低血圧は進行期PDの非運動症状の代表です。進行期にはほぼ必発ともいえる重要な症状であり、転倒・失神・QOL低下の大きな要因となります。「今は血圧が安定している」という状況だけで薬剤を中止するのではなく、なぜ安定しているのか(=薬が効いているから安定している)という視点を持つことが欠かせません。2.臥位高血圧と起立性低血圧の共存進行期PDでは、自律神経障害により臥位では血圧が高く、立位では低くなるという、相反する病態が共存することがあります。朝の高収縮期血圧をみて安易に降圧薬を追加すると、日中の体動時や食後に重篤な低血圧を招くリスクがあります。3.処方変更は1つずつ丁寧に本症例では、ミドドリン中止→血圧乱高下→降圧薬追加→低血圧悪化という連続した処方変更が事態を複雑にしました。変更の際は1つずつ、十分なモニタリング期間を設けることが原則です。4.施設職員・看護師との連携の重要性施設看護師からの速やかな報告がなければ、意識消失の連発に気付くのが遅れていました。日常的に施設スタッフとの情報共有の関係を築いておくことが、重大な有害事象の早期発見につながります。1)日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」作成委員会. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院;2018.2)大村友博ほか. パーキンソン病薬. In:薬局:南山堂;2021.p.138-165.

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虚血性脳卒中の2次予防、asundexian追加が有効性示す/NEJM

 非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)発症後72時間以内の患者において、血液凝固第XI因子(FXI)阻害薬asundexianの1日1回50mg経口投与は、抗血小板療法との併用下でプラセボと比較し大出血のリスクを増加させることなく、虚血性脳卒中および主要心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、カナダ・McMaster UniversityのMukul Sharma氏らOCEANIC-STROKE Investigatorsが実施した「OCEANIC-STROKE試験」で示された。NEJM誌2026年4月16日号掲載の報告。37ヵ国702施設で第III相試験を実施 OCEANIC-STROKE試験は、日本を含む37ヵ国702施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベント主導型第III相試験で、対象は非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスクTIA発症後72時間以内の2剤併用または単剤による抗血小板療法が予定されている18歳以上の患者であった。 虚血性脳卒中はNIHSSスコア(範囲0~42:高スコアほど重症)が15以下、高リスクTIAはABCD2スコア(範囲0~7:高スコアほど高リスク)が6または7と定義された。また、すべての患者は、急性非ラクナ梗塞の画像所見、冠動脈疾患・末梢血管疾患または50%以上の頸動脈狭窄の既往歴、脳血管アテローム性動脈硬化の画像所見のいずれか1つ以上を満たしていることとし、心房細動の既往歴または抗凝固療法の適応となる病態を有する患者などは除外した。 研究グループは、適格患者をasundexian(1日1回50mg経口投与、経管投与も可)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、予定されていた抗血小板療法に加えて投与した。 有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中発症、副次アウトカムはすべての脳卒中(虚血性または出血性)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合、全死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合など、安全性の主要アウトカムは国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血であった。虚血性脳卒中およびすべての脳卒中が26%有意に減少、大出血は増加せず 2023年1月~2025年2月に1万2,578例がスクリーニングを受け、1万2,327例が無作為化された(asundexian群6,162例、プラセボ群6,165例)。 無作為化後の追跡期間中央値567日(四分位範囲:377~729)において、虚血性脳卒中はasundexian群で384例(6.2%)、プラセボ群で518例(8.4%)に発生した(原因別ハザード比[csHR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)。 asundexian群およびプラセボ群で、すべての脳卒中はそれぞれ404例(6.6%)、545例(8.8%)(csHR:0.74、95%CI:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは568例(9.2%)、685例(11.1%)(0.83、0.74~0.92、p<0.001)、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは649例(10.5%)、757例(12.3%)(0.85、0.77~0.95、p=0.003)に発生した。 大出血は、asundexian群で1.9%(117/6,124例)、プラセボ群で1.7%(107/6,130例)に認められた(csHR:1.10、95%CI:0.85~1.44、層別log-rank検定のp=0.46)。有害事象の発現割合はasundexian群69.3%、プラセボ群70.1%であり、重篤な有害事象の発現割合はそれぞれ19.2%および19.5%であった。

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FXI阻害薬は有効かつ安全か?(解説:後藤信哉氏)

オリジナルニュースAsundexian for Secondary Stroke Prevention/NEJM 血液凝固第X因子の阻害薬FXa阻害薬はNOACs、DOACsなどと総称され、心房細動の脳卒中予防などに広く使用された。長らく続いた特許による独占も一部の薬剤については終了し、安価なジェネリック薬も使用可能となった。FXa阻害薬が十分に有効かつ安全であれば、特許切れにより安価となるところであった。しかし、実際はFXa阻害薬開発試験などを見直せば重篤な出血イベントリスクは年率2~3%あり、十分に安全とは言い難い。より出血イベントリスクの低い薬剤としてFXの、内因系の上流であるFXI阻害薬が開発された。各種疾病を対象としたランダム化比較試験が施行されている。本研究にて使用された経口FXI阻害薬であるasundexianは、心房細動の脳卒中予防ではFXa阻害薬アピキサバンに脳卒中予防効果が劣るとのことで開発中止されている。 本研究では脳卒中再発予防効果をプラセボと比較した。脳梗塞再発を中心とする有効性のエンドポイント発現リスクは、プラセボの8.4%に比較してasundexian群では6.2%と低かった(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.65~0.84、p<0.001)。重篤な出血イベントリスクには差がなかった。FXI阻害薬はプラセボとの比較において、脳梗塞再発予防の観点では重篤な出血イベントリスクを増加させない抗凝固薬であった。安価なジェネリック品が中心となるFXa阻害薬との総合的な比較において、FXI阻害薬が有効性、安全性、経済性の観点から広く使用される薬剤になるか否かを見守りたい。

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脳卒中データバンク2026

ビッグデータからしか得られない興味深い解析結果を満載日本脳卒中データバンク(JSDB)は、コロナ禍の間も順調に登録数を延ばし、2019年以降の5年間に10万例近くが登録され、2024年にはついに30万例を突破した。本書は2023年末までの29.4万例をもとに、計58編の脳卒中に関する話題を、非専門家、非医療者の方にもわかりやすく説明。今後は、急速に発展するAIを利用したビックデータの活用が益々期待される。脳卒中診療の実態とエビデンスを満載した類のないデータブック!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳卒中データバンク2026定価8,250円(税込)判型AB判(並製)頁数304頁発行2026年3月編集一般社団法人日本脳卒中データバンクご購入はこちらご購入はこちら

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『大型血管炎診療ガイドライン』改訂、治療のCQ推奨が新設/日本循環器学会

 大血管炎の高安動脈炎(TAK)や巨細胞性動脈炎(GCA)、そしてバージャー病に関する治療エビデンスや診断基準などをまとめた『2026年改訂版 大型血管炎診療ガイドライン』1,2)が8年ぶりに改訂された。第90回日本循環器学会学術集会(3月20~23日)会期中の3月20日に発刊され、本ガイドラインの研究班長を務めた中岡 良和氏(国立循環器病研究センター研究所副所長/血管生理学部長)が本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において、改訂点などを解説した。CHCC 2012における疾患分類と本ガイドラインで扱う疾患 血管炎は血管壁に炎症を認める疾患の総称で、多臓器を障害するため診療科横断的に多くの専門医の関与が必要とされる領域である。疾患分類は「CHCC 2012 血管炎の分類基準」に基づき、大型血管炎(TAKとGCA)、中型血管炎(結節性多発動脈炎[PAN]、川崎病)、小型血管炎(免疫複合体型小型血管炎、IGA血管炎ほか)3)とされる。一方で、バージャー病はこの分類には記載されていないが、「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究」4)の大型血管炎臨床分科会の調査対象であること、循環器医が関与する疾患であること、そして前版(2017年版)でも対象範囲としていたことから、本書でも大型血管炎の2疾患とともにバージャー病を対象疾患とした。ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨を設定 今回、本書で取り扱う大血管炎(TAK、GCA)の2疾患は、希少疾患であるもののエビデンス収集という難しい局面を乗り越え、治療レジメンに対する全9項目のクリニカルクエスチョン(CQ)とそれに対する推奨がPart1(診療ガイドライン)の項で取り扱われている。TAKとGCAはいずれもステロイド(グルココルチコイド:GC)により一時的な寛解に至るものの、減量過程で半数以上に再燃がみられるため、GC治療抵抗性症例の治療選択肢を明らかにするため、ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨が設定された。中岡氏は、「システマティック・レビュー(SR)チームがTAKとGCAのRCT論文をMindsのGRADEシステムに準拠した最新研究などのSR結果をガイドライン発刊に先駆けて論文報告した5)。そして、近年ではステロイド治療に加えて、IL-6阻害薬トシリズマブなどが汎用されるようになったため、エビデンスの確実性や益と害について各CQと推奨で言及している」と説明した。 なお、中型血管炎であるPANも循環器医が臨床現場で遭遇する可能性があること、『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』での記載がないことを踏まえ、本書第6章で取り上げている。また、バージャー病はPart2(各疾患の基礎と臨床)でのみの取り扱いであることには注意したい。 次に、本書を手に取るうえで理解しておきたい各疾患の特徴を以下のように示す。―――――――――――――――――――【高安動脈炎(TAK)】・病名:高安動脈炎に統一(大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などと呼ばれているため)・患者数:4,642例(2022年度難病受給者証所持者数)・男女比:1対8~9と女性が圧倒的に多い・発症年齢:女性は20歳前後にピーク、男性ははっきりしたピークがない・年齢分布:50代が多い・患者背景:HLA-B52陽性患者が多く、陽性者はグルココルチコイド治療抵抗性症例が多い・合併症:潰瘍性大腸炎罹患者が8%前後存在・地域差:アジアに多く、欧米に少ない【巨細胞性動脈炎(GCA)】・病名:以前は側頭動脈炎、Horton病などが使用されていた・患者数:2,850例(2023年度医療費受給者証所持者数)・男女比:1対2~3で女性がやや多い・年齢分布:50歳以上にみられ、70~80代でピーク・合併症:リウマチ性多発筋痛症が約30~40%にみられる・地域差:欧米に多く、アジアに少ない【バージャー病】・病名:閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる・患者数:2,259例(2019年度特定医療費[難病]受給者証所持者数)で、近年減少傾向・男女比:若年発症でヘビースモーカーの男性に好発する・原因:作用機序などは不明だが、喫煙との関連が推察される―――――――――――――――――――TAKでのトシリズマブ併用、GCAの大動脈瘤リスク 上記を踏まえ、TAKの治療について、「治療アルゴリズムでは、まず疾患活動性を評価したうえでステロイド治療を開始する。欧米のガイドラインでは初期から免疫抑制薬を併用することが推奨されているが、本書CQ1(TAKの治療ではどのようなレジメンが有用か?)では、GCの早期減量が必要な症例に対し、トシリズマブ併用を選択肢とする推奨を示した」と強調した。 続いてGCAについて、「全身症状に加え、血管分布に応じて症状が出現する。外頸動脈の領域では血管狭窄に伴い、側頭部の痛み(顎跛行、舌跛行など)がみられる。内頚動脈の領域では失明や脳梗塞の原因になるほか、近年では大動脈瘤などを来すため、循環器領域でも注目されている」と指摘。診断基準は、現状、国内では1990年ACR分類基準が利用されているが、2022年ACR/EULARベースに日本語版の策定を進めているため、従来の1990年ACR分類基準と欧米で用いられている2022年ACR/EULAR分類基準が併記されている。さらに、トシリズマブの適応について「(確定診断ならびに疾患活動性の評価後に)トシリズマブを併用することでステロイドが減量できる点は50歳以上の患者でステロイドによる副作用を回避できるメリットがあるため、治療アルゴリズムにおいて、矢印を太字で示した。なお、昨年のNEJM誌において有用性が示されたJAK阻害薬ウパダシチニブは今回のアルゴリズムには反映されておらず、改めて検討される予定となっている」と説明した。 バージャー病については、「早期診断のため、診断基準の改訂を望む意見が多くあったため、2024年に一度改訂を行っている。本疾患として相違ない症状を呈し、血管画像検査所見が本疾患の特徴と合致し、ほかの疾患と鑑別できれば、診断可能」と解説した。「妊娠・出産」に関するコラムを新設 本書はわが国の大型血管炎の診療レベルを標準化し、日本全国どこにおいても患者が同じような治療を受けられるようにすること、患者の生活の質(QOL)と予後を改善させることを目的とし、大型血管炎の診療に関わる医師、医療専門職および大型血管炎の患者を利用者と想定して作成された。 最後に、今回新たに盛り込まれたコラムのうちTAK患者の妊娠・出産の項目を例に挙げ、「TAKの発症は10~20代の若年女性に多く見られるため、患者に妊娠をすること自体がリスクを伴う現実を伝えることも必要と判断されたため、コラムで妊娠・出産にも触れている。TAKを有する患者では妊娠が禁忌とされていたが、妊娠前に炎症をコントロールすることで妊娠・出産が可能であることや管理の軸について記した」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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AFアブレーション後のDOAC、Apple Watchで服用日数を95%削減/日本循環器学会

 心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション術後において、ガイドラインでは脳梗塞・全身塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア)に基づいて長期的な抗凝固療法の継続が推奨されている1)。しかし、術後にAFが抑制されている患者においても一律に直接経口抗凝固薬(DOAC)を継続することは、出血リスクの増加や医療コストの増大を招く懸念がある。そこで、アブレーション術後の患者において、Apple Watchを用いてAFをリアルタイムで検出することで、必要な時だけDOACを服用する「イベント駆動型」戦略について、安全性と有効性を検証する多施設共同研究「Up to AF Trial」が実施された。その結果、DOACの服用日数を約95%削減しつつ、追跡期間中に脳梗塞や重大な出血イベントは発生しなかったことが示された。3月20〜22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 1にて、大阪大学の須永 晃弘氏が発表した。なお、本結果はCirculation Journal誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された2)。 本研究は、2023年8月~2024年4月の期間に、関西9施設における前向き単群介入試験として実施された。アブレーション術後3ヵ月以上経過し、洞調律を維持しているCHA2DS2-VAScスコア3以下の患者50例(平均年齢63歳、女性10%)を対象とした。Apple Watchによる30日間の先行モニタリングでAFがないことを確認してDOACを休薬、その後はApple Watchの通知(高心拍または不規則な心拍)や患者自身による心電図(ECG)記録でAFが疑われた場合のみ服用を再開し、7日以内に医師を受診するという「イベント駆動型」プロトコルを採用した。受診の結果、AFが否定されれば再び休薬し、確認されれば試験終了まで服用を継続した。主要評価項目は、追跡期間31~360日目における、従来の継続服用と比較した「DOAC服用日数の削減率」とした。副次評価項目は、全死亡、脳梗塞、全身塞栓症、重大な出血イベント、およびデバイスの不具合とした。 主な結果は以下のとおり。・Apple Watchを用いた心調律モニタリングにより、合計1万5,865人日の観察において、DOAC服用日数は856人日分にとどまり、従来の継続服用群と比較して94.6%(95%信頼区間[CI]:89.8~98.4)削減された。・Apple Watch装着(wear-days)の順守率の中央値は100%(95%CI:99.7~100)に達した。・追跡期間中、死亡、脳梗塞、全身塞栓症、重大な出血イベントは、いずれも発生しなかった。デバイスの不具合によるECG記録不可が1件認められた。・医師の診断を基準としたApple Watch ECGの性能は、感度100%、特異度93.3%、正確度95.8%ときわめて高い値を示した。 本研究の結果、アブレーション術後の低〜中等度リスク患者において、Apple Watchを活用した個別化戦略は、DOACを安全に大幅に削減できる可能性が示された。須永氏は、今回の知見がリスクスコアに基づく静的な管理から、心調律に基づいた「動的な管理」へのパラダイムシフトを促進するものであると指摘した。本研究の限界として、サンプルサイズの少なさや、塞栓症リスクの比較的低い集団を対象としている点に触れ、今後より大規模な無作為化比較試験による検証が必要であると結論付けた。 日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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脳卒中後の転倒予防、在宅個別化介入で転倒率低下/BMJ

 脳卒中生存者の転倒率は、一般高齢者の転倒率と比べて2倍以上(73%vs.30%)と報告されており、多くの場合、転倒に伴う外傷や入院に至る。また、脳卒中経験者は転倒を繰り返す反復転倒者となるリスクが高く、転倒の影響は長期的な健康や幸福な生活を深刻に脅かす要因となるが、脳卒中後の転倒を予防する有効な介入法は確立されていない。オーストラリア・シドニー大学のLindy Clemson氏らは「FAST試験」において、在宅での個別化介入が、地域在住の脳卒中経験者の転倒を大幅に予防することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年3月24日号で報告された。理学療法士と作業療法士が連携して介入 FAST試験は、オーストラリアの3つの州で実施した無作為化第III相試験(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。2019年8月~2023年12月に参加者を登録した。 対象は、年齢50歳超、脳卒中発症から5年以内で、正規のリハビリテーションを終えて退院し、地域社会に復帰しており、補助具の有無を問わず平坦な地面を10m歩行できる患者とした。一方、中等度~重度の受容性失語症の患者、または過去1年間に転倒することなく1.4m/秒以上の歩行速度を示した患者は除外した。 被験者を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。介入群は、6ヵ月間にわたり、(1)習慣形成を目指した機能訓練(運動)、(2)自宅内での転倒の危険低減、(3)目標指向型の地域社会での移動能力の指導を受けた。対照群には通常ケアが提供された。介入は、理学療法士と作業療法士による2人1組のチームが、互いに連携して実施した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での年間平均転倒率であった。転倒による骨折、入院も少ない 370例を登録し、介入群に186例(平均年齢75[SD 10]歳、女性87例[47%]、脳卒中発症後の平均経過期間27[SD 17]ヵ月)、対照群に184例(76[SD 9]歳、82例[45%]、29[SD 17]ヵ月)を割り付けた。 12ヵ月の時点での年間平均転倒率は、対照群が2.7(SD 5.5)回/年であったのに対し、介入群は1.8(SD 3.0)回/年と有意に低かった(発生率比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.94、p=0.02)。これらの転倒の82%について、参加者は立ち上がりへの介助や医学的配慮は必要なかったと報告し、転倒による骨折(2%)および入院(4%)は少なかった。 一方、この間に転倒した参加者の割合(介入群56%[104例]vs.対照群59%[109例]、絶対リスク減少率:0.03[95%CI:-0.07~0.13]、p=0.52)は、両群間に有意な差を認めなかった。地域社会への参加、自己効力感なども改善 12ヵ月の時点における地域社会への参加(Late Life Function and Disability Instrument disability limitation[0~100点]の平均群間差:3%、95%CI:1~6、p=0.02)、自己効力感(Likert尺度[0~6点]の平均群間差:0.6、95%CI:0.2~1.0、p=0.004)、移動能力(fast walking speedの平均群間差:0.13m/秒、95%CI:0.06~0.19、p<0.001、preferred walking speedの平均群間差:0.06m/秒、95%CI:0.02~0.10、p=0.02)、バランス(Step Testの平均群間差:0.06ステップ/秒、95%CI:0.01~0.12、p=0.03)は、いずれも対照群に比べ介入群で有意に良好だった。 著者は、「自己効力感が対照群に比べ介入群で向上したことは、介入の実施における個別対応型のアプローチが、運動への継続的な参加を後押しした可能性を示唆する」「地域在住の脳卒中経験者を対象とし、自宅および地域社会で実施される介入について検証したことで、この介入法が容易に実践可能であることが示された」としている。

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急性期脳梗塞、AI活用臨床意思決定支援で新規血管イベント減少/BMJ

 急性期虚血性脳卒中患者において、脳卒中臨床意思決定支援システム(CDSS)の使用により、通常ケアと比較し3ヵ月後の新規血管イベントの発生が有意に減少したことが示され、脳卒中CDSSによる介入は脳卒中ケアの質の向上と長期的な血管イベントの減少に有効であることが、中国・首都医科大学のXinmiao Zhang氏らが実施した「GOLDEN BRIDGE II試験」で示された。人工知能(AI)を用いた脳卒中CDSSは、脳卒中のアウトカムと医療サービスを改善するための革新的で有望なアプローチであるが、脳卒中医療におけるAIの応用は無作為化比較試験による厳密な評価を受けておらず、脳血管疾患の治療におけるCDSSの使用は現状では限定的であった。BMJ誌2026年3月21日号掲載の報告。中国の77施設でクラスター無作為化試験を実施 GOLDEN BRIDGE II試験は、中国の23省の77施設で実施されたクラスター無作為化臨床試験で、2021年1月~2023年6月に患者を登録した。 対象は、症状発現後7日以内に脳画像検査(MRI)により急性期虚血性脳卒中と確認された18歳以上の患者であった。一過性脳虚血発作、出血性脳卒中などは除外された。 研究グループは、77施設を所在地域(東部、中部、西部)、病院の機能(2次、3次)で層別化し、介入群または通常ケア(対照)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群の施設では、AIを用いた画像解析、脳卒中の原因分類、エビデンスに基づいた治療推奨を含む脳卒中CDSSのサポートが提供され、対照群の施設では通常ケアが提供された。 主要アウトカムは、発症後3ヵ月以内の新規血管複合イベント(虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、および血管死)。副次アウトカムは、急性期虚血性脳卒中ケアの質に関するエビデンスに基づくパフォーマンス指標の複合指標順守率(実際に実施されたパフォーマンス指標の総数を、実施可能なパフォーマンス指標の総数で割った値と定義)、発症後6ヵ月・12ヵ月時点の新規血管イベント、発症後3ヵ月・6ヵ月・12ヵ月時点での障害(修正Rankin Scaleスコア3~6)および全死因死亡。安全性アウトカムは、中等度または重度の出血イベントおよびすべての出血イベントとした。脳卒中CDSSによる介入、新規血管イベントの発生率が低く脳卒中ケアの質も向上 2万1,689例が登録され、登録後1日以内に同意撤回した86例を除く2万1,603例(介入群1万1,054例、対照群1万549例)が解析対象となった。 発症後3ヵ月以内の新規血管イベントは、介入群で2.9%(320/1万1,054例)、対照群で3.9%(416/1万549例)に発生し、補正後ハザード比(HR)は0.74(95%信頼区間[CI]:0.58~0.93、p=0.01)であり、CDSS介入効果はクラスターレベルの回帰分析においても有意であった(効果量:-0.01、95%CI:-0.02~-0.004、p=0.003)。 副次アウトカムについては、介入群で複合指標の順守率が高く(91.4%[7万7,049/8万4,276]vs.89.8%[7万794/7万8,834]、調整オッズ比1.21[95%CI:1.17~1.26]、p<0.001)、12ヵ月時点の新規血管イベント発生率は介入群で有意に低かった(4.0%[440/1万1,054例]vs.5.5%[576/1万549例]、補正後HR:0.73[95%CI:0.56~0.95]、p=0.02)。 障害および全死因死亡率は、両群で有意差は認められなかった。中等度または重度の出血、ならびにすべての出血は、両群間で有意差はなかった。

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脳卒中・出血リスクの高い心房細動患者、LAAC vs.最善薬物療法/NEJM

 脳卒中および出血リスクの高い心房細動患者において、左心耳閉鎖術(LAAC)は医師主導の最善薬物療法(physician-directed best medical care)に対して、複合エンドポイント(脳卒中、全身性塞栓症、大出血、心血管死または原因不明の死亡)に関して非劣性は示されなかった。ドイツ・Charite University Medicine BerlinのUlf Landmesser氏らCLOSURE-AF Trial Investigatorsが、同国で行ったプラグマティックな多施設共同前向き非盲検無作為化試験の結果で報告した。LAACは、心房細動患者の脳卒中予防において経口抗凝固薬に代わる選択肢であるが、脳卒中および出血リスクの高い患者において、医師主導の最善薬物療法と比較した有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2026年3月18日号掲載の報告。ドイツの42施設で患者を登録して試験 試験は、ドイツの42施設で患者を登録して行われた。研究グループは、脳卒中および出血リスクの高い心房細動患者を、LAACを受ける群または医師主導の最善薬物療法(適格の場合経口抗凝固薬を含む)を受ける群に無作為に割り付け、追跡評価した。 主要エンドポイントは、脳卒中(虚血性または出血性)、全身性塞栓症、大出血または心血管死もしくは原因不明の死亡の複合でtime-to-event解析で評価し、非劣性を検証した。非劣性マージンはハザード比1.3であった。主要エンドポイントの発生、LAAC群155例vs.薬物療法群127例 計912例の成人患者が無作為化された。主要エンドポイントの解析は、LAAC群446例、医師主導の最善薬物療法群(薬物療法群)442例を対象に行われた。これら被験者の平均年齢は77.9±7.1歳、女性が38.6%、平均CHA2DS2-VAScスコア(範囲:0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高いことを示す)は5.2±1.5であり、平均HAS-BLEDスコア(範囲:0~9、高スコアほど出血リスクが高いことを示す)は3.0±0.9であった。 追跡期間の中央値3年(四分位範囲:1.7~4.7)後、主要エンドポイントの初発が報告されたのは、LAAC群155例(100人年当たり16.8)、薬物療法群127例(100人年当たり13.3)であった(RMST[restricted mean survival time]群間差:-0.36年、95%信頼区間:-0.70~-0.01、非劣性のp=0.44)。 重篤な有害事象の発現は、LAAC群368例(82.5%)、薬物療法群342例(77.4%)で報告された。

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末梢動脈疾患(PAD)の症状改善にメトホルミンは無効(解説:小川大輔氏)

 末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease;PAD)は、動脈に脂肪やコレステロールが蓄積する動脈硬化によって、腹部大動脈から下肢の動脈が狭くなり血流が制限される疾患である。これにより、歩行時の足の痛み(間欠性跛行)などの症状が生じる。症状はゆっくりと現れることが多いが、急激に悪化する場合もある。主な原因は動脈壁への脂肪、コレステロールなどの蓄積、いわゆるアテローム性動脈硬化と考えられている。PADの患者は動脈硬化を原因とする狭心症や脳梗塞を合併することが多いため、下肢だけでなく全身の動脈硬化症の評価も必要となる。 PADの治療としては、禁煙、生活習慣病の管理、運動療法、薬物療法、血行再建術などがある。PADの最大の原因は喫煙であり、禁煙は必須の治療である。糖尿病、高血圧症、脂質異常症があればそれらの治療も行う。運動療法は血流改善や新しい血管(側副血行路)の発達を促すため、痛みが生じない範囲でのウォーキングなどの運動は有効である。血行再建術は、運動療法やシロスタゾールなどの薬物療法で症状の改善が見られない場合や重症の場合に検討される。カテーテル治療(血管内治療)やバイパス手術はPADの部位や患者の状態を考慮して実施される。 PADは歩行障害を引き起こす重篤な循環器疾患であり、効果的な治療法が限られている。そこで今回非糖尿病のPAD患者に対し、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンを6ヵ月間投与し、歩行能力に与える効果を検証したランダム化二重盲検試験が実施された1)。その結果、メトホルミンはPAD患者の歩行能力改善には効果がないと結論付けられた。 メトホルミンは主に肝臓での糖新生を抑制したり、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進したりすることによって血糖値を下げる効果がある。その他、血管内皮細胞におけるAMP活性化プロテインキナーゼの活性化、酸化ストレスの抑制、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化などの作用も報告されている2)。メトホルミンのこれらの“pleiotropic effects”による血管内皮機能の改善により、PAD患者の血流改善や歩行時間延長を期待され、この試験が実施された。 メトホルミンがPAD患者の歩行能力改善に効果がなかった理由として、喫煙率が約30%と高かったことや、インスリン抵抗性の強くない症例が多かったこと、また観察期間が6ヵ月と短かったことなどが考えられる。その他の可能性として、著者らはPAD患者の骨格筋や血管内皮でAMP活性化プロテインキナーゼがすでに最大活性化されているため、メトホルミンの追加効果が得られなかった可能性を考察している。 いずれにしても今回の研究でPADの歩行障害に対するメトホルミンの効果はないことが示された。今後は異なる作用機序を持つ治療薬の開発や、PADの複雑な病態に対処する新たなアプローチの研究が求められる。またそれ以前に、完全禁煙や肥満の是正、厳格な血圧管理など、現状できることをまずはきちんと行うことが重要である。

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CKDの早期診断・早期介入の重要性と「協力医」への期待/ベーリンガーインゲルハイム

 腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発することを目的として、毎年3月の第2木曜日は「世界腎臓デー(World Kidney Day)」に制定されている。3月12日の本年の世界腎臓デーに先立ち、日本ベーリンガーインゲルハイムは3月5日に慢性腎臓病(CKD)の啓発を目的としたプレスセミナーを開催した。柏原 直樹氏(川崎医科大学 高齢者医療センター/日本腎臓病協会 理事長)が登壇し、CKDの早期診断・早期介入の意義について解説した。血清クレアチニン検査が健康診断の必須項目に わが国には約2,000万例のCKD患者がいると推定されており、新たな国民病ともいわれている。腎機能が低下しても自覚症状が乏しいため、多くの患者は気付かないまま生活している。しかし、病状が進行すると透析などの腎代替療法が必要となる。さらに、心不全・心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクも高く、寝たきりの原因にもなることから、早期診断・早期介入が非常に重要である。 CKDは、(1)蛋白尿やアルブミン尿などの尿異常、画像診断や病理所見などで腎障害が認められる状態、(2)血清クレアチニン値から算出した推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満の状態のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続することで診断される。柏原氏は、「企業などの健康診断で尿検査は実施されているものの、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の必須項目に血清クレアチニン検査は含まれていない。クレアチニンを測定するか尿検査を行わなければCKDは発見できないため、これは大きな問題であった」と、これまでの早期診断の障壁を指摘した。そのうえで、「厚生労働省へ腎臓病のスクリーニングには尿検査と血清クレアチニン検査の両方が必要であることを説明・協議した結果、血清クレアチニン検査を来年度から必須項目にする方向で検討が進められている」と述べ、今後は早期診断の機会がより増えることに期待を寄せた。慢性透析患者数は減少傾向 CKDを早期に発見して適切に介入することで、透析導入を遅らせたり回避したりできる可能性があり、国の経済負担の軽減にもつながる。こうした背景のもと、2018年に厚生労働省に腎疾患対策検討会が設置され、日本の保険医療体制を維持するため、2018年以降の新規透析患者数を10%減らすという目標が掲げられた。目標達成のための活動が功を奏し、これまで増加を続けてきた慢性透析患者数は近年では減少傾向に転じている。 これは腎臓病の重症化が抑制でき、透析患者が減り始めているという世界でも珍しい例であり、柏原氏は「普及啓発や医療提供体制の整備などを草の根的に全国で続けてきたことに加え、腎臓病の進行を抑制する薬剤が登場してきたことなど多くの要因が相まって、当初は不可能だと思った新規透析患者の10%減という目標が2028年までに達成可能になってきた。これが日本の医療の力だと思っている」と早期診断・早期介入の成果と重要性を強調した。今後のCKD診療はかかりつけ医と協力医が中心 柏原氏は最後に、現在の腎臓病診療に関する課題について言及した。とくに問題となっているのが腎臓専門医の地域偏在で、腎臓専門医は6,578人(2025年6月30日時点)いるものの、CKD患者1万例当たりの腎臓専門医数は最も多い東京都と最も少ない県で4倍以上の差があるという。 こうした状況を踏まえ、日本腎臓病協会ではCKDの普及啓発や医療提供体制の整備を進めるとともに、専門医とかかりつけ医をつなぐ「協力医」を新たに設ける方針であり、すでに先行して始まっている地域もある。協力医はセミナーなどを受講することで、かかりつけ医以上の知識を習得することが求められる。現在では腎臓の難病の治療薬が増え、一部の腎疾患では治療薬の進歩により寛解が期待できるようになってきたことから、柏原氏は「CKD患者の多くをかかりつけ医と協力医が診ることにより、腎臓専門医は腎臓難病の診療に集中することができる」と今後の腎臓病診療の発展に期待を寄せ、講演を終えた。患者の立場からの早期介入の重要性 本プレスセミナーでは、CKD患者であり全国腎臓病協議会専務理事も務める宮本 陽子氏が登壇し、自身の経験やCKD患者の抱える困難について紹介した。透析導入に当たり、患者は違う世界に放り出されたような孤独感に陥ることに加え、仕事や生活への不安から現実から逃避してしまうことがあるという。宮本氏は、正しい知識を得ることの重要性とともに、早い段階で合併症の話をするなど専門医・かかりつけ医との連携の重要性を強調した。

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