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洗脳事件の謎解き【Dr. 中島の 新・徒然草】(527)

五百二十七の段 洗脳事件の謎解き今年はいつもより暑いですね。そろそろ熱中症の患者さんが運ばれてくる時期になりました。何と言っても、自分自身が熱中症にならないよう気を付けなくてはなりません。さて、先日は私が卒業した兵庫県立神戸高等学校の同窓会がありました。われわれの学年は29回生なので、大抵が4月29日の昭和の日にあります。6年前の前回が「まさかの還暦同窓会」というタイトルでしたが、今回は「前期高齢者突入記念同窓会」と名付けられていました。久しぶりに集まった200人だか300人だか。高校時代と変わらぬ顔の人もいれば、言われてもわからないほど変化している人もいます。前期高齢者が揃ったら盛り上がるのは病気談義。心筋梗塞、脳梗塞、労作性狭心症、直腸がん、転移性脳腫瘍と病気のオンパレードです。もはや高血圧や糖尿病などはデフォ扱い。皆にコメントを求められる立場なので、適当に答えておきました。逆に私に対して医学的アドバイスをしてくる人もいましたが、上手に相槌を打つことができたのは日頃の外来修業のおかげかもしれません。さて、面白かったのは小学校、中学校、高等学校と12年間同じ学校に通いながら、初対面としか思えない人がいたことです。普通はどこかに接点がありそうなのですが。本当に知らない顔だったので、仮に彼女の名前を白内 佳織(しらない・かおり)さんとでもしておきましょう。果たして1回もクラスが一緒にならなかったのでしょうか?中島「じゃあちょっと確認してみよう。小学校1年生の時の担任は春山先生」白内「私は夏川先生だから別のクラスね」中島「2年生の時は秋原先生という女の先生だったけど、途中から産休になってピンチヒッターで来たのが誰だったかな」白内「冬谷先生よ。だったら一緒の担任じゃない!」なんと彼女とは私と同じクラスだったことがあるみたいです。それでも思い出せません。中島「3年生は東山先生だけど」白内「私も東山先生よ!」中島「あれえ、同じクラスだったかな?」この調子で12年間を振り返ると、なんと小学校で3回、中学校で1回、同じクラスになっていたことがわかりました。それでも何も思い出さないのです。で、ここからが本番!中島「じゃあ、小学校3年生の時のあの洗脳事件を覚えているか?」白内「もちろんよ、放課後にクラス全員が学級委員長に言われて、教室に残されたやつでしょ!」中島「あれは衝撃やったなあ」白内「人にしゃべってはいけないと思ったから、今まで黙っていたけど……」中島「僕もや。人に言っても信じてもらえなさそうやし」事件といっても、誰かが死んだとか誘拐されたとかいうようなシリアスな話ではありません。席に立たされて学級委員長に言われるがままクラスメートを罵倒したり、それができなくて泣き出したり……今になってみれば「あれは何だったんだ?」としか思えないのですが、当時の小学校3年生にとっては十分に大事件でした。ようやくあの事件を語り合うことのできる相手に出会うことができたわけです。実際に事件の内容を話してみると、彼女と私の記憶はピタリと一致しました。中島「やっぱり同じ時に同じ教室にいたのか。ようやく確信できたぞ!」白内「私は習い事があったから、委員長を突き飛ばして先に帰ったのよ。あの後、どうなったの?」中島「僕はなかなか洗脳が解けなくて、ずっといたけどな」ここに至ってようやく親しみを感じた次第です。もちろん同窓会のことなので、他にも大勢の人と世間話をしました。でも、高校時代の記憶がいろいろとよみがえってきたのは翌日になってから。「あの時あんなことがあったけど覚えているか?」みたいな話をもっとできたら良かったのですが。次の同窓会は、おそらく古希になってから。できれば元気に出席したいものです。ということで最後に1句昭和の日 答え合わせの 同窓会

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コロナ禍以降、自宅での脳卒中・心血管死が急増/日本内科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、自宅や介護施設での脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が増加し、2023年末時点でも循環器疾患による死亡のトレンドが減少していないことが、白十字会白十字病院 脳血管内科の入江 克実氏らの研究グループによる解析で明らかになった。本研究は、4月12~14日に開催された第121回日本内科学会総会・講演会の一般演題プレナリーセッションにて、入江氏が発表した。 入江氏によると、国内での総死亡数の推移データにおいて、2023年末時点でもCOVID-19流行前と比べて超過死亡は増加しているという。COVID-19の5類移行後はピークアウトしつつあるが、2023年では12万人ほどの超過死亡が見込まれ、その主な死因としてCOVID-19や循環器疾患の増加が認められる。しかし、2017~22年度のDPC対象病院における循環器疾患死亡数の推移データによると、死亡数が大きく増加している傾向は認められない。そのため本研究では、同時期の病院外での循環器疾患による死亡の推移を検討した。 本研究では、政府統計e-Stat人口動態統計を用い、死亡場所別に2013~22年の総死亡数と循環器疾患死亡数を抽出した。死亡場所は、病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅に分類した。主な疾患ごとにCOVID-19拡大前(2013~19年)の死亡数から回帰直線を求め、2020年以降の推計値を算出し、実測値との差分を超過死亡とした。都道府県別にも同様の抽出を行い、COVID-19前後で自宅死亡数とその増減率を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・総死亡の死亡場所について、2013~19年までは病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅のいずれも±3%内で、死亡数の推移に大きな変化はみられない。しかし、コロナ拡大後、病院外では死亡数が増加し続け、2022年の超過死亡率は、自宅では35%、介護施設/老人ホームでは23%に増加していた。一方、病院/診療所では、2020~21年に-5%まで一過性の減少を示したが、2022年には元のトレンドに戻った。・脳梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±6%内だが、COVID-19拡大後の2022年の超過死亡率は、自宅ではとくに顕著に48%に増加し、介護施設では13%、病院では7%に増加していた。・脳出血による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±5%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では13%、介護施設では17%に増加していた。一方、病院では2020~21年では-5%まで減少し、2022年では-2%であった。・心筋梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±3%内だが、2022年の超過死亡率は、病院で16%まで増加し、他の疾患とは異なる傾向が認められた。介護施設では23%、自宅では12%と病院外の死亡も増加している。・心不全による死亡では、2013~19年ではいずれの場所でも±7%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では33%、介護施設では12%に増加していた。病院では2020~21年に一過性の減少を示し、2022年には元のトレンドに戻った。・都道府県別にみた脳卒中による自宅死亡数では、COVID-19前後の変化に地域差が見られ、とくに大阪府(30%増)と群馬県(30%増)での自宅死亡率が増加していた。・都道府県別にみた心疾患による自宅死亡数では、とくに福岡県(61%増)と神奈川県(38%増)での自宅死亡率が増加していた。 入江氏は本結果について、「コロナ流行期における循環器疾患による病院外死亡数の増加は、サージキャパシティの不足によるものなのか、病院との連携による在宅看取りが進んでいるためなのか、地域ごとに医療逼迫の振り返りをする必要がある。なお、本研究は2022年までのデータを示しているが、2023年11月までのデータから推計しても、死亡率はいまだに高いと予想されている。コロナに関連するフレイルへの対応に加えて、脳梗塞に対しては頭打ちとなっているDOAC処方への対策、心筋梗塞に対してはPCI介入の遅れについての検証など、コロナ禍での診療抑制の影響が残っていないか再検討が望ましい」と述べた。

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夜間の屋外照明は脳卒中リスクを高める?

 大都市の明るい光は人々の心をワクワクさせるかもしれないが、脳卒中リスクを高める可能性もあることが、浙江大学(中国)医学部のJian-Bing Wang氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Stroke」3月25日号に掲載された。Wang氏らは、夜を明るく照らす屋外の人工光(以下、夜間の人工光)が脳の血流に影響を与えて脳卒中が起こりやすくなるようだとの見方を示している。研究の背景情報によると、人工光の過剰な使用によって、世界人口の5分の4が光害環境で暮らさざるを得ない状況に置かれているという。 Wang氏らは、中国の東海岸の主要な港湾都市で工業都市でもある寧波(人口約820万人)に住む2万8,302人の成人(平均年齢61.51±11.02歳)のデータを分析し、夜間の人工光への曝露と脳血管疾患との関連を検討した。脳血管疾患には、動脈に血栓が詰まって脳への血流が阻害されることで生じる脳卒中〔虚血性脳卒中(脳梗塞)〕や脳の動脈の出血による脳卒中(出血性脳卒中)がある。夜間の人工光への曝露量と大気汚染を、光害をマッピングした衛星画像を用いて評価し、それぞれ4群に分類した。 2015年から2021年までの6年間の追跡期間中に1,278件の脳血管疾患(虚血性脳卒中777件、出血性脳卒中133件)が発生していた。解析の結果、夜間の人工光の曝露量が最も多い群では最も少ない群に比べて、脳血管疾患のリスクが43%高いことが示された。また、大気中の粒子状物質(燃料の燃焼、粉塵、煙など)であるPM2.5やPM10、自動車や発電所などから排出される窒素酸化物の曝露量が最も多い群では最も低い群に比べて脳血管疾患のリスクがそれぞれ41%、50%、31%高いことも判明した。 これらの研究結果に基づきWang氏は、「潜在的に有害な影響から身を守るため、特に都市部に住んでいる人に、夜間の人工光への曝露量を減らすことを考慮するよう助言したい」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースの中で述べている。 Wang氏らの説明によれば、夜間に持続的に明るい光にさらされると睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制される。また、夜間の人工光によって質の高い睡眠が妨げられることで、脳卒中リスクが高まる可能性が考えられるという。同氏は、「大気汚染だけでなく、光害などの環境要因による疾病負担を軽減するため、より効果的な政策と予防戦略を立てる必要がある。このことは特に、人口密度が高く大気汚染レベルの高い地域に住む人にとって重要だ」と指摘している。

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甘い飲み物の飲み過ぎで心房細動?

 加糖飲料や人工甘味料入りの飲料を飲み過ぎると、心房細動になりやすくなる可能性を示唆するデータが報告された。上海交通大学医学院附属第九人民医院(中国)のNingjian Wang氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」に3月5日掲載された。 甘味飲料の摂取量が一部の心血管代謝疾患のリスクと関連のあることは知られているが、心房細動との関連はこれまで明らかにされていない。心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なことは、心房細動では心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなって、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。 Wang氏らは、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて、加糖飲料(SSB)、人工甘味料入り飲料(ASB)、および果汁100%フルーツジュース(PJ)の摂取量と心房細動のリスクを、遺伝的素因を考慮に入れて検討した。解析対象は、ベースライン時に心房細動がなく、遺伝子関連データがあり、かつ24時間思い出し法による食事摂取アンケートに回答していた20万1,856人。中央値9.9年の追跡期間中に、9,362人が心房細動の診断を受けていた。 交絡因子を調整後、SSBを摂取しない人に比べて週に2リットル超摂取している人は、心房細動のリスクが10%高いことが示された〔ハザード比(HR)1.10(95%信頼区間1.01~1.20)〕。同様に、ASBを摂取しない人に比べて週に2リットル超摂取している人は、心房細動のリスクが20%高かった〔HR1.20(同1.10~1.31)〕。一方、PJを摂取しない人に比べて週に1リットルを超えない範囲で摂取している人は、心房細動のリスクが8%低いことが分かった〔HR0.92(同0.87~0.97)〕。心房細動の遺伝的素因の有無で層別化した解析の結果、有意な交互作用は観察されなかった。 この結果について論文の筆頭著者であるWang氏は、「さまざまな種類の飲料を摂取している人がいて、飲料以外の食事の影響も否定できないことから、ある飲料が別の飲料よりも心房細動のリスクが高いと明確に結論付けることはできない」としている。とは言え、「これらの結果に基づけば、可能な限りSSBやASBの摂取を避けることが推奨される。また、『低糖』や『低カロリー』とうたったASBには、潜在的な健康リスクを引き起こす可能性があり、それらを健康的な飲み物だとは考えないでほしい」と付け加えている。 SSBが心房細動のリスクを高めるメカニズムとしてWang氏は、糖負荷によるインスリン抵抗性の亢進が2型糖尿病発症リスクを高め、その2型糖尿病は心房細動のリスク因子であることを考察として述べている。またASBについては、サッカリンなどの人工甘味料に対して体が特異的に反応する可能性があるという。

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血管内血栓除去療法は大梗塞の長期予後も改善するか?(解説:内山真一郎氏)

 前回は、不可逆的な虚血コアおよび救命しうる虚血部位(ペナンブラ)と、臨床転帰および血管内血栓除去療法(EVT)の治療効果との関係を検討したPROBEデザインによる国際多施設共同介入試験SELECT2の事後解析の成績を紹介したが、今回はSELECT2試験の長期転帰を解析した結果である。これまでは、どの試験も発症後24時間までの大血管閉塞による大梗塞例にEVTが短期(多くは3ヵ月まで)の転帰改善効果があるというエビデンスであったが、長期にわたる転帰改善効果は検討されていなかった。 今回のSELECT2試験の解析により、EVTは大血管閉塞による大梗塞症例の1年後の転帰を改善する効果のあることが証明されたことになる。大梗塞による重症例は脳損傷が重いので回復にはより長期の時間を要するので、真の効果を検討するにはより長期の転帰まで追跡調査する必要があると考えられるが、EVTは短期のみならず長期の転帰も改善する効果が証明されたといえる。とはいえ、1年後の死亡率は対照群の52%より低いものの、EVT群でも45%であり、重症の大梗塞例の予後は全体として不良であることは否定できない。

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脳卒中患者の手術前の頭位が手術成績に影響

 手術を待つ脳卒中患者の病床での頭位が、脳内の血栓を除去する手術の成績に影響する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。脳主幹動脈閉塞(large vessel occlusion;LVO)による急性期脳梗塞を発症して手術を待つ患者では、病床で頭位を30度挙上させるよりも0度(水平仰臥位)にする方が、術前の安定性が増し、神経学的機能も改善し、術後の転帰も良好になる可能性が示されたのだ。米テネシー大学健康科学センター看護学および神経科学分野教授のAnne Alexandrov氏らによるこの研究結果は、国際脳卒中会議(ISC 2024、2月7〜9日、米フェニックス)で発表された。 LVOでは、閉塞の原因となっている血栓を取り除いて脳内の血流を改善する血栓回収療法が、死亡リスクや脳に恒久的なダメージが及ぶリスクを低下させることが知られている。しかし、LVO患者に対する血栓回収療法は、さまざまな理由で遅れがちである。そのため、手術を待っている間の患者の脳への血流を最適化することは、神経学的な障害や身体的な障害を最小限に抑えるために不可欠である。 血栓回収療法を待つ患者に対しては、病床で頭位を30度以下の角度で挙上させておくことが推奨されている。しかし、Alexandrov氏らによるパイロット研究では、水平仰臥位を保つことで狭窄/閉塞した動脈の血流が20%増加することが示されていた。 今回のランダム化比較試験では、LVO患者を対象に、血栓回収療法を受ける前の患者の頭位を水平仰臥位にした場合と30度に挙上させた場合との間で臨床的安定性と転帰を比較した。患者は水平仰臥位で神経画像検査を受けた直後に、NIHSS(国立衛生研究所脳卒中尺度、0〜42点で評価し、スコアが高いほど重症)での評価を受けた。その後は、ランダム化された頭位(0度または30度)を維持したまま、手術を受けるまで10分ごとにNIHSSの再測定を受けた。 米国の12カ所の包括的脳卒中センターから92人の患者が登録され、中間解析が行われた。その結果、水平仰臥位を保つことで手術前の安定性が増し、および/または臨床的改善が得られることが明らかになった。このような有効性は、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が患者の新規登録を早々に打ち切る決定を下したほど高いものであった。研究グループは、水平仰臥位を保つことが手術後の患者に何らかの利益をもたらすかどうかについても調べた。研究グループは、手術そのものに大きな予後改善効果があるため、水平仰臥位と30度挙上の頭位との間で予後に差が出ることを予想していなかったという。しかし、手術から24時間後と7日後の両時点で、水平仰臥位を保っていた患者は30度挙上の頭位を保っていた患者に比べて、神経学的障害が少ないことが明らかになった。 Alexandrov氏は、「手術から3カ月後までには、両群の間で転帰に差は認められなくなったが、退院時にリハビリテーションを必要とする神経学的障害が生じた患者の数を減らせたのは喜ばしい結果だ」と話している。その上で同氏は、「頭位保持は、脳卒中の治療法ではなく、手術前に脳機能を維持するための方法と考えるべきだ」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。 本研究は、国内3自治体の国民健康保険および後期高齢者医療制度の2015年4月~2021年3月のレセプトデータを用いて調査を行った。2016年4月~2017年3月の期間にPCSK9阻害薬が未処方で、2017年4月~2020年3月に初めてPCSK9阻害薬が処方された患者群を「PCSK9群」、同様の手法で抽出したエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された患者を「エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群」とした。PCSK9阻害薬もしくはエゼチミブと最大耐用量スタチンが初めて処方された日を起算日とし、起算日より前12ヵ月間(pre-index期間)、起算日より後ろ12ヵ月間(post-index期間)に観察された生活習慣病(脂質異常症、糖尿病、高血圧症)治療薬の処方、心血管イベント(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)などの実施状況について調査し、両群で比較した。また、post-index期間における3ヵ月以上の処方中断についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者はPCSK9群184例(平均年齢:74.0歳、男性:57.1%)、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群1,307例(平均年齢:71.0歳、男性:60.5%)だった。・起算日前後(pre-/post-index期間)の虚血性心疾患の診療・治療状況の変化を両群で比較すると、pre-index期間では有意な差はなかったが、post-index期間では、PCSK9群のほうが割合が高かった(85.3% vs.76.1%、p=0.005)。・PCIの実施割合は、起算日前後の両期間においてPCSK9群のほうがエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群より有意に高かった(pre-index期間:40.8% vs.24.0%、p<0.001、post-index期間:13.6% vs.8.1%、p=0.014)。・処方中断率はPCSK9群では44.6%であったが、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群ではみられなかった。 研究者らは「因果関係までは言及できないものの、PCSK9阻害薬による治療が患者側の経済的負担になっていること、医療者側が高価な薬剤を予防目的に使用することを躊躇した可能性が示唆された」としている。

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脳梗塞発症後4.5~24時間のtenecteplase、転帰改善せず/NEJM

 多くの患者が血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けていた脳梗塞の集団において、発症から4.5~24時間後のtenecteplaseによる血栓溶解療法はプラセボと比較して、良好な臨床転帰は得られず、症候性頭蓋内出血の発生率は両群で同程度であることが、米国・スタンフォード大学のGregory W. Albers氏が実施した「TIMELESS試験」で示された。tenecteplaseを含む血栓溶解薬は、通常、脳梗塞発症後4.5時間以内に使用される。4.5時間以降のtenecteplaseの投与が有益であるかどうかについての情報は限られていた。研究の詳細は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。北米112施設の無作為化プラセボ対照比較試験 TIMELESS試験は、米国の108施設とカナダの4施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年3月~2022年12月の期間に患者の無作為割り付けを行った(Genentechの助成を受けた)。 年齢18歳以上、最終健常確認から4.5~24時間が経過した脳梗塞で、発症前に機能的自立(修正Rankin尺度[mRS、スコア範囲:0~6点、点数が高いほど機能障害が重度で6点は死亡を示す]のスコア0~2点)を保持していた患者を、tenecteplase(0.25mg/kg、最大25mg)を投与する群、またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。脳梗塞は、NIHSSスコアが5点以上で、中大脳動脈M1/M2部または内頸動脈の閉塞を有し、灌流画像で救済可能組織を確認した患者であった。 主要アウトカムは、90日後のmRSの順序スコアとした。副次アウトカムの正式な仮説検証は行わず 458例を登録し、tenecteplase群に228例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:62~79]、女性53.5%)、プラセボ群に230例(73例[63~82]、53.5%)を割り付けた。354例(77.3%)が、血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けた。最終健常確認から無作為化までの時間中央値は、tenecteplase群が12.3時間(IQR:9.2~15.6)、プラセボ群は12.7時間(8.7~16.5)であった。 90日後の時点でのmRSスコア中央値は、tenecteplase群が3点(IQR:1~5)、プラセボ群も3点(1~4)だった。90日時のプラセボ群に対するtenecteplase群のmRSスコア分布の補正共通オッズ比は1.13(95%信頼区間[CI]:0.82~1.57)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.45)。 有効性の主要アウトカムに有意差がなかったことから、副次アウトカムの正式な仮説検証は行わなかったが、90日時の機能的自立(mRSスコア≦2点)の割合は、tenecteplase群が46.0%、プラセボ群は42.4%であり(補正オッズ比:1.18、95%CI:0.80~1.74)、24時間後の再疎通の割合はそれぞれ76.7%および63.9%(1.89、1.21~2.95)、血栓回収療法後の再灌流の割合は89.1%および85.4%(1.42、0.75~2.67)であった。死亡:19.7% vs.18.2%、症候性頭蓋内出血:3.2% vs.2.3% 安全性のアウトカムの解析では、90日時の死亡がtenecteplase群19.7%(43例)、プラセボ群18.2%(39例)、36時間以内の症候性頭蓋内出血はそれぞれ3.2%(7例)および2.3%(5例)で発生した。また、有害事象、重篤な有害事象、有害事象による試験からの脱落の発生にも両群間に差を認めなかった。 著者は、「発症から4.5時間以内のアルテプラーゼ投与について検討したさまざまな試験における静脈内投与から動脈穿刺までの時間中央値は25分であり、本試験では15分と短かったが、血栓回収療法前の再疎通の割合は同程度であった」としている。

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大血管閉塞による急性脳梗塞、血栓除去術へのメチルプレドニゾロン併用は?/JAMA

 大血管閉塞による急性脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術に低用量メチルプレドニゾロン静注を追加しても、90日後の機能的アウトカムに差はなかったが、死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率は低かった。中国・人民解放軍第三軍医大学のQingwu Yang氏らが、中国の82施設で実施した医師主導無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Methylprednisolone as Adjunctive to Endovascular Treatment for Acute Large Vessel Occlusion trial:MARVEL試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年2月8日号掲載の報告。メチルプレドニゾロン群とプラセボ群に無作為化、90日後のmRSスコア分布を比較 研究グループは、大血管(内頸動脈、中大脳動脈M1またはM2セグメント)閉塞による急性脳梗塞を発症し、発症前は介助なしで日常生活が可能(修正Rankin尺度[mRS]スコア<2、mRSスコア範囲:0[症状なし]~6[死亡])で、無作為化時にNIHSSスコア≧6(範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的重症度が高い)の18歳以上の成人患者を、健康状態に問題がなかったことが明らかな直近の時刻から24時間以内に登録し、メチルプレドニゾロン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、2mg/kg/日(最大160mgまで)を3日間静脈内投与した。全例、血管内血栓除去術を行い、静脈内血栓溶解療法の前処置も可とされた。 試験薬は、無作為化後できるだけ速やかに、血管内治療のための動脈アクセスを閉鎖する前に投与したが、閉鎖後2時間以内は可とした。 有効性の主要アウトカムは、無作為化90日後のmRSスコア分布(シフト解析)、安全性の主要アウトカムは、90日全死因死亡率および血管内血栓除去術後48時間以内の症候性頭蓋内出血であった。機能的アウトカムに差はないが、メチルプレドニゾロン群で死亡率と頭蓋内出血発生率が低下 2022年2月9日~2023年6月30日の間に1,687例が無作為化され、同意撤回を除く1,680例(年齢中央値69歳、女性727例[43.3%])が解析対象集団に含まれた。このうち、1,673例(99.6%)が試験を完遂した。最終追跡調査日は2023年9月30日であった。 無作為化90日後のmRSスコア中央値は、メチルプレドニゾロン群3点(四分位範囲[IQR]:1~5)、プラセボ群3点(1~6)であった。mRSスコアの分布がメチルプレドニゾロン群で、より良好な方向へ変化する補正後一般化オッズ比は1.10(95%信頼区間[CI]:0.96~1.25)で、両群に有意差はなかった(p=0.17)。 90日全死因死亡率は、メチルプレドニゾロン群23.2%、プラセボ群28.5%であり、メチルプレドニゾロン群で有意に低かった(補正後リスク比:0.84、95%CI:0.71~0.98、p=0.03)。同様に症候性頭蓋内出血の発生率もメチルプレドニゾロン群で有意に低かった(8.6% vs.11.7%、0.74、0.55~0.99、p=0.04)。

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2型糖尿病のNAFLD、CVDや全死因死亡リスク増/BMJ

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を併発した2型糖尿病(T2DM)患者では、NAFLDが軽症であっても、心血管疾患および全死因死亡のリスクが上昇する可能性があり、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDの間の心血管疾患および全死因死亡のリスク差は、非T2DMよりもT2DMで大きいことが、韓国・CHA Bundang Medical CenterのKyung-Soo Kim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年2月13日号に掲載された。韓国の縦断的コホート研究 研究グループは、韓国のT2DM患者において、NAFLDが心血管疾患および全死因死亡のリスクに及ぼす影響を評価する目的で、全国規模の人口ベースの縦断的コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2009年のNational Health Screening Programmeの参加者779万6,763例を、NAFLDの状態に基づき、次の3つの群に分けた。(1)非NAFLD(脂肪肝指数[fatty liver index]<30)、(2)グレード1 NAFLD(30≦脂肪肝指数<60)、(3)グレード2 NAFLD(脂肪肝指数≧60)。 主要アウトカムは、心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞)または全死因死亡の発生とした。グレード1でも5年絶対リスクが上昇 779万6,763例の参加者のうち、6.49%(50万5,763例)がT2DMであった。非T2DM群のうちグレード1 NAFLDは21.20%、グレード2 NAFLDは10.02%であったのに対し、T2DM群ではそれぞれ34.06%および26.73%といずれも高率であった。また、1,000人年当たりの心血管疾患および全死因死亡の発生率は、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加し、非T2DM群よりT2DM群で高かった。 心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクは、非T2DM群、T2DM群とも、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加した。すなわち、非T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは1.03(95%信頼区間[CI]:1.02~1.04)、全死因死亡の5年絶対リスクは1.25(1.24~1.26)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ1.23(1.22~1.25)および1.50(1.48~1.51)、グレード2 NAFLD患者は1.42(1.40~1.45)および2.09(2.06~2.12)であった。 同様に、T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは3.34(3.27~3.41)、全死因死亡の5年絶対リスクは3.68(3.61~3.74)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ3.94(3.87~4.02)および4.25(4.18~4.33)、グレード2 NAFLD患者は4.66(4.54~4.78)および5.91(5.78~6.05)だった。T2DMでのNAFLDのスクリーニングと予防により、リスク低減の可能性 このように、非T2DM群のグレード2 NAFLDと比較して、T2DM群の非NAFLDは、心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクが高かった。また、非T2DM群に比べT2DM群では、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDで、心血管疾患および全死因死亡のリスク差が大きかった。 著者は、「非アルコール性脂肪性肝疾患のスクリーニングと予防により、2型糖尿病患者における心血管疾患および全死因死亡のリスクが低減する可能性がある」としている。

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広範囲脳梗塞への血栓除去術併用、1年後も有効/Lancet

 広範囲脳梗塞患者において、内科的治療のみと比較し血管内血栓除去術の併用は90日時の身体機能を有意に改善することが示されていたが、その有効性は1年後の追跡調査においても維持されていた。米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが、「SELECT2試験」の1年アウトカムを報告した。広範囲脳梗塞患者に対する血管内血栓除去術の有効性と安全性は複数の無作為化試験で報告されているが、長期の有効性については不明であった。Lancet誌オンライン版2024年2月9日号掲載の報告。SELECT2試験のITT集団における1年時の機能的アウトカムを評価 SELECT2試験は、米国、カナダ、スペイン、スイス、オーストラリア、ニュージーランドの計31施設で実施された第III相の国際共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験である。 研究グループは、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞による急性脳梗塞を呈し、非造影CTでASPECTSスコア3~5、またはCT灌流画像あるいはMRI拡散強調画像で虚血コア50mL以上の成人(18~85歳)患者を対象とし、血管内血栓除去術+内科的治療併用群または内科的治療単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 本解析の主要アウトカムは、ITT集団における追跡調査1年時の機能的アウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア:0[無症状]~6[死亡])であった。3ヵ月時の有効性を1年時も維持 本試験は2019年10月11日~2022年9月9日に、計352例が無作為化された後(血管内血栓除去術併用群178例、内科的治療単独群174例)、中間解析(追跡調査90日時のアウトカム)において有効性が認められたため、早期に有効中止となった(ジャーナル四天王(2023/03/01)「広範囲脳梗塞、血栓回収療法の併用で身体機能が改善/NEJM」)。 1年時のmRSスコア中央値は、血管内血栓除去術併用群が5点(四分位範囲[IQR]:3~6)、内科的治療単独群は6点(4~6)で、血管内血栓除去術併用は内科的治療単独と比較してmRSスコア分布を有意に改善した(Wilcoxon-Mann-Whitney検定における優越確率:0.59[95%信頼区間[CI]:0.53~0.64]、p=0.0019、一般化オッズ比:1.43[95%CI:1.14~1.78])。 1年時の全死因死亡率は、血管内血栓除去術併用群45%(77/170例)、内科的治療単独群52%(83/159例)であった(1年死亡相対リスク:0.89、95%CI:0.71~1.11)。

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第183回 新型コロナ公費支援は3月末で終了、通常の医療体制へ/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ公費支援は3月末で終了、通常の医療体制へ/厚労省2.アルコールは少量でも要注意、飲酒ガイドラインを公表/厚労省3.SNSが暴いた入試ミス、PC操作ミスによる不合格判定が発覚/愛知医大4.専攻医の過労自死問題を受け、甲南医療センターを現地調査へ/専門医機構5.医師らの未払い時間外手当、小牧市が8億円支給へ/愛知県6.診療報酬改定で人気往診アプリ『みてねコールドクター』が終了へ/コールドクター1.新型コロナ公費支援は3月末で終了、通常の医療体制へ/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する医療費の公費支援を2024年3月末で終了し、4月から通常の医療体制に完全移行する方針を発表した。これまで、COVID-19の治療薬や入院医療費に関しては、患者や医療機関への一部公費支援が継続されていたが、4月からは他の病気と同様に保険診療の負担割合に応じた自己負担が求められるようになる。COVID-19への公費支援は、治療薬の全額公費負担が2021年10月より始まり、昨年10月には縮小された。また、患者は年齢や収入に応じ、3,000~9,000円の自己負担をしていた。4月からは、たとえば重症化予防薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)を使用する場合、1日2回5日分の処方で約9万円のうち、3割負担であれば約28,000円を自己負担することになる。また、月最大1万円の入院医療費の公費支援や、コロナ患者用病床を確保した医療機関への病床確保料の支払いも終了する。COVID-19の感染状況は改善傾向にあり、定点医療機関当たりの感染者数が12週ぶりに減少している。これらの背景から、政府は公費支援の全面撤廃と通常の診療体制への移行が可能と判断した。さらに、次の感染症危機に備え、公的医療機関などに入院受け入れなどを義務付ける改正感染症法が4月から施行される。参考1)新型コロナの公費負担、4月から全面撤廃へ…治療薬に自己負担・入院支援も打ち切り(読売新聞)2)新型コロナ公費支援 3月末で終了 4月からは通常の医療体制へ(NHK)3)新型コロナ公費支援、3月末で完全廃止 厚生労働省(日経新聞)2.アルコールは少量でも要注意、飲酒ガイドラインを公表/厚労省厚生労働省は、飲酒による健康リスクを明らかにするため、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表した。初めて作成されたこの指針では、純アルコール量に着目し、疾患別に発症リスクを例示している。大腸がんのリスクは1日20g以上の純アルコール摂取で高まり、高血圧に関しては少量の飲酒でもリスクが上昇すると指摘されている。純アルコール量20gは、ビール中瓶1本、日本酒1合、またはウイスキーのダブル1杯に相当。ガイドラインによると、脳梗塞の発症リスクは、男性で1日40g、女性で11gの純アルコール摂取量で高まる。女性は14gで乳がん、男性は20gで前立腺がんのリスクが増加する。さらに、男性は少量の飲酒でも胃がんや食道がんを発症しやすいと報告されている。とくに女性や高齢者は、体内の水分量が少なくアルコールの影響を受けやすいため、注意が必要。また、女性は少量や短期間の飲酒でもアルコール性肝硬変になるリスクがあり、高齢者では認知症や転倒のリスクが一定量を超えると高まる。ガイドラインでは、不安や不眠を解消するための飲酒を避け、他人への飲酒を強要しないこと、飲酒前や飲酒中の食事の摂取、水分補給、週に数日の断酒日の設定など、健康への配慮としての留意点も挙げている。厚労省の担当者は、「体への影響は個人差があり、ガイドラインを参考に、自分に合った飲酒量を決めることが重要だ」と強調している。参考1)健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚労省)2)ビールロング缶1日1本で大腸がんの危険、女性は男性より少量・短期間でアルコール性肝硬変も(読売新聞)3)飲酒少量でも高血圧リスク 健康に配慮、留意点も 厚労省が初の指針(東京新聞)3.SNSが暴いた入試ミス、PC操作ミスによる不合格判定が発覚/愛知医大愛知医科大学(愛知県長久手市)は、大学入学共通テストを使用した医学部入学試験の過程で、PC操作ミスにより本来2次試験の受験資格を有していた80人の受験生を誤って不合格としていたことを発表した。この問題は、SNS上で受験生間の投稿を通じて疑問が提起され、その後の大学による確認作業で明らかになった。受験生は、自己採点結果から「自分より点数が低い友人が合格している」といった内容をSNSに投稿していた。操作ミスは、大学入試センターから提供された成績データを学内システムに転記する際に発生したもので、一部受験生の点数が実際よりも低く記録されてしまったことが原因。発覚後、同大学は該当する80人の受験生に対し、予定されていた2次試験への参加資格があることを通知し、さらに受験できない者のために別の日程も設定した。この事態を重くみた大学は、「受験生に混乱を招いたことを深くお詫びする」との声明を発表し、今後のチェック体制の見直しを約束し、2度と同様のミスが発生しないようにするとしている。参考1)令和6年度医学部大学入学共通テスト利用選抜(前期)における 第2次試験受験資格者の判定ミスについて(愛知医大)2)愛知医科大学 医学部入試で80人を誤って不合格に PC操作ミスで(NHK)3)愛知医科大、PC操作ミスで80人誤って不合格…SNSで結果疑う投稿相次ぎ大学が確認し判明(読売新聞)4)「自己採点で自分より低い友人が合格」愛知医科大、判定ミスで80人不合格に(中日新聞)4.専攻医の過労自死問題を受け、甲南医療センターを現地調査へ/専門医機構日本専門医機構は、2024年2月19日の定例記者会見で、2024年度に研修を開始する専攻医の採用予定数が9,496人と発表し、過去最多であることを明らかにした。2023年度の9,325人から増加し、とくに整形外科で93人、救急科で66人の増加がみられる一方、皮膚科では51人、外科では25人の減少が確認された。同機構理事長の渡辺 毅氏は、外科専攻医の減少は問題であると指摘している。専攻医数の増加は、東北医科薬科大学や国際医療福祉大学の医学部新設とその卒業生の専攻医登録が影響しているとされ、とくに医師不足が指摘されている外科は微減傾向にあるものの、救急科では増加が予想されている。また、専攻医の過労自死問題を受け、甲南医療センター(神戸市)でのサイトビジット(現地調査)を実施する予定であり、専攻医の心身の健康維持や時間外勤務の上限明示などの環境整備が適切に行われているかを目的に調査が行われる。渡辺氏は、「得られた知見を将来の専攻医研修プログラムや専門医制度の整備指針の改善に生かしたい」と述べている。専攻医遺族が甲南医療センター側を提訴しているため、訴訟に影響が出ないような日程での実施を目指している。参考1)2024年度専攻医、整形外科や救急科で増加(日経メディカル)2)来年度の専攻医、昨年度比150人増の9,500人(Medical Tribune)5.医師らの未払い時間外手当、小牧市が8億円支給へ/愛知県小牧市民病院(愛知県)が、医師や薬剤師を含む約277人の職員に対して、夜勤や土日祝日の当直業務で適切に支払われていなかった時間外勤務手当の差額約8億円を支給することを発表した。これは、病院の医師の働き方改革を機に勤務や手当の見直しが行われた際に、複数の医師からの指摘を受けて発覚、本来、労働実態に応じて支給されるべき時間外手当が、一律の定額で支給されていたことが問題となったもの。病院側は、2023年4月からこの問題を調査し、約4年分の差額を医師、薬剤師、放射線技師などの職員に支払うことを決定した。また、3月以降は時間外勤務手当を適切に支給する制度に改めることも発表した。これまでの誤った運用は「慣例に従っていた」との理由から起こったとしている。さらに、病院は夜間や休日の手当の見直しも発表し、2020年4月~2024年2月までの間に当直業務に従事した職員に対して、法律で定められた賃金よりも過小だった手当の差額を支給する。病院側はこれまで、労働基準法に基づいた時間外勤務手当の支給が必要な場合、特例措置として「宿日直許可」を労働基準監督署に申請する必要があることを知らなかったと述べている。この措置により、病院は正規の時間外勤務手当とこれまで支給してきた手当との差額を職員に支給し、法律に準拠した形での勤務条件の改善を目指す。差額の支払いについては、市議会定例会に補正予算案を提出し、支払いは5月下旬に行われる予定。参考1)時間外手当、差額8億円支払いへ 医師ら277人に 愛知の市民病院(朝日新聞)2)小牧市民病院、夜間・休日手当見直しへ 20年以降の差額も支給(中日新聞)6.診療報酬改定で人気往診アプリ『みてねコールドクター』が終了へ/コールドクター夜間や休日に医師の往診をWebやアプリから依頼できるサービス「みてねコールドクター」が、診療報酬の改定により条件が厳格化されるため、3月31日をもって終了することが発表された。このサービスは、子供の医療助成制度適用で都内では自己負担0円(交通費別)で利用が可能で、約400人の医師が登録・在籍し、夜間・休日の急病時に最短30分で自宅に医師を派遣し、その場で薬を渡すことができた。2022年にはミクシィとの資本業務提携を経て、サービス名に「みてね」のブランドを冠し、とくに子育て世代から高い評価を得ていた。今回の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げなどに充てるための基本報酬の引き上げが注目されていたが、往診サービスについては「普段から訪問診療を受けていない患者」への緊急往診や夜間往診の診療報酬が低下し、この変化に伴い「みてねコールドクター」はサービスの終了を決定した。同社は、今後の市場の変化を見据えての決定であると説明しており、オンライン診療や医療相談サービスは継続する。診療報酬の改定では、救急搬送の不必要な減少や医療現場の負担軽減を期待していたが、実際には小児科領域の往診が主であり、コロナ禍での特殊な状況下では多くの人にとって救いとなった。しかし、保険診療の方向性としては、緊急時のみに駆けつける医師ではなく、日常を支えるかかりつけ医の強化が求められている。参考1)往診のサービス提供終了のお知らせ(コールドクター)2)往診アプリ「みてねコールドクター」往診終了 診療報酬改定で(ITmedia NEWS)3)「みてねコールドクター」の往診サービスが終了に(Impress)4)人気の“往診サービス”が突然の終了、理由は「診療報酬改定」なぜ?(Withnews)

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やはりワルファリンとの比較でないとDOACは対抗できない?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳卒中予防には、アピキサバンなどのDOACが多く使用されている。根拠となったランダム化比較試験では、PT-INR 2~3のワルファリンが対照薬であった。ワルファリン治療は心房細動の脳卒中予防の実態的な過去の標準治療ではなかった。さらに、PT-INR 2~3を標的とするのは実態医療とも乖離していた。今回は、心房の筋肉にcardiomyopathyを認めるが、心房細動ではない症例を対象として、奇異性塞栓によるアピキサバンの脳梗塞再発予防効果をアスピリンと比較した。心房筋に障害があるので、病態は心房細動に近い。心房細動例の脳卒中再発予防であれば、過去の標準治療(PT-INR 2~3を標的としたワルファリン)にDOACは有効性で劣らず安全性に勝った。しかし、本研究対象のように心房細動ではないとアピキサバンはアスピリンと有効性・安全性に差がなかった。心房細動の有無というリズムが結果に与えた影響が大きかったのだろうか? 筆者は見かけの差異は対象の差異によると考える。 試験中に心房細動に移行した症例もあった。しかし、アピキサバンは有効性においてアスピリンに勝らなかった。アピキサバン開発の早期には、心房細動の脳卒中予防におけるアピキサバンとアスピリンの有効性・安全性を比較したAVERROSE試験が施行された(Connolly SJ, et al. N Engl J Med. 2011;364:806-817.)。アスピリンに対するアピキサバンの優越性が確認されたとして、AVERROSE試験は早期に中止された。心房筋に異常がある塞栓性の奇異性脳卒中であっても、抗凝固薬アピキサバンの効果が抗血小板薬アスピリンに勝らなかった結果の解釈は難しい。 科学の基本は再現性である。ランダム化比較試験における臨床的仮説検証の結果は客観的であるが、コストの面から第三者による検証は困難である。本研究も多施設共同の二重盲検の第III相試験である。本研究であっても第三者による検証は難しい。ランダム化比較試験は、これまで臨床医学の科学の王道であったが、他の方法論を考える必要があるかもしれない。

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健診後の早期受療、死亡リスクを減少させるか/阪大、NCGMほか

 血圧や脂質、血糖などに問題のあるハイリスク者について、健康診断後の受療行動は、その後の生命予後に影響するのだろうか。大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座の董 加毅氏らの研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険請求データベースを使用し、国立国際医療研究センター(NCGM)と共同で高リスク集団における健診後の受診時期と心血管イベントによる入院と全死亡リスクとの関連を検討した。その結果、健康診断後の早期受診が、高リスク者における主要心血管系イベントの入院および全死亡のリスク低下と関連していた。Atherosclerosis誌2024年1月号に掲載。健診後の早い受療行動が主要心血管系イベントを低下させる 本研究では、協会けんぽの健康保険請求データベースに登録された男女35~74歳の高リスク者41万2,059人を、健診後12ヵ月間の受診時期によって4群に分類(早期:3ヵ月未満、中間:4~6ヵ月、後期:7~12ヵ月、なし)。Cox比例ハザード回帰モデルを用い、健診後の受診時期と脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全による入院または全死亡リスクとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値4.3年の間に、脳卒中、冠動脈性心疾患、心不全による初回入院、または全死因死亡の複合アウトカムを有する症例が合計1万5,860例同定された。・健診後に受診しなかった高リスクの成人と比較し、複合アウトカムの完全調整ハザード比(95%信頼区間)は、早期受診で0.78(0.74~0.81)、中間受診で0.84(0.78~0.89)、後期受診で0.94(0.89~1.00)だった。・受診しなかった場合との比較では、早期受診はすべてのエンドポイントのリスク低下と関連し、脳卒中と心不全による入院ではリスク低下はより大きかった。 これらの結果から研究グループは、「健康診断後の早期受診が、高リスク者における主要心血管系イベントの入院および全死亡のリスク低下と関連するというエビデンスを示唆できた」と結論付けている。

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急性期脳梗塞のIVT+血栓回収療法、140分以内のIVTで有効/JAMA

 急性期脳梗塞に対する静注血栓溶解療法(IVT)の有用性は、症状発現からIVT施行までの時間が長いほど低下するが、IVT後に血栓回収療法を行った場合に、同様の時間依存性が存在するかは知られていない。スイス・ベルン大学のJohannes Kaesmacher氏らIRIS共同研究グループは、IVT+血栓回収療法は血栓回収療法単独と比較して、症状発現からIVT施行までの時間が2時間20分以内と考えられる場合には、90日後の機能的アウトカムが有意に良好だが、この時間以降は統計学的に有意な関連はないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年2月7日号に掲載された。6件の無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、急性期脳梗塞に対するIVT+血栓回収療法は症状発現からIVTまでの時間が短ければ有益との仮説を検証する目的で、IVT+血栓回収療法と血栓回収療法単独を比較した6件の無作為化臨床試験(日本のSKIP試験を含む。2017年1月~2021年7月に15ヵ国190施設で患者を登録)のメタ解析を行った(Strykerなどの助成を受けた)。 対象は、前方循環系脳主幹動脈閉塞の患者2,313例(年齢中央値71歳[四分位範囲[IQR]:62~78]、女性44.3%)であった。1,160例がIVT+血栓回収療法、1,153例が血栓回収療法単独を受けた。 主要アウトカムは90日後の機能的自立とし、修正Rankin尺度(mRS、スコア範囲:0[症状なし]~6[死亡])のスコア0~2と定義。臨床的に意義のある最小差は1.3%とした。 機能的自立を達成した患者の割合を、症状発現からIVT施行までの時間別に比較した。IVTまでの時間が長くなるに従って有益性が減少 IVT+血栓回収療法群における症状発現からIVT施行までの時間中央値は2時間28分(IQR:1時間46分~3時間17分)であった。 主要アウトカムの解析では、症状発現からIVT施行までの時間と、割り付けられた治療と90日後の機能アウトカムの関連には、統計学的に有意な交互作用を認めた(IVTの1時間遅延当たりの補正後共通オッズ比[OR]の比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.72~0.97、交互作用のp=0.02)。 IVT+血栓回収療法の有益性は、症状発現からIVT施行までの時間が長くなるに従って減少した。mRSスコアの1段階改善の補正後共通ORは、1時間の時点で1.49(95%CI:1.13~1.96)、2時間の時点で1.25(1.04~1.49)、3時間の時点で1.04(0.88~1.23)であった。早期IVTの有益性は臨床的に意義のあるもの 機能的自立を示すmRSスコア0、1、2点の達成に関して、両群間の予測絶対リスク差はIVT施行までの時間が1時間の時点で9%(95%CI:3~16)、2時間の時点で5%(1~9)、3時間の時点では1%(-3~5)であった。 IVT施行までの時間が2時間20分以降では、IVT+血栓回収療法の有益性は統計学的に有意ではなくなり、3時間14分の時点で点推定値がnull(補正後共通OR=1)と交差した。 著者は、「IVT+血栓回収療法の有益性は時間依存性であり、症状発現からIVT施行までの時間が短い場合にのみ統計学的に有意であった。本研究で示された早期IVTの有益性は臨床的に意義のあるものだった」とまとめ、「これらの知見の妥当性の検証が進めば、IVT+血栓回収療法におけるIVTの有益性が高い患者、不確実な患者、低い患者コホートの層別化に資すると考えられる」としている。

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広範囲脳梗塞の血栓除去術、虚血コアの大きさ等で有効性は異なるか?/JAMA

 広範囲脳梗塞患者の治療において、内科的治療のみと比較して血管内血栓除去術の併用は、幅広い虚血コア体積およびペナンブラプロファイルにわたって機能的アウトカムを改善することが示された。米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが、非盲検無作為化第III相試験「SELECT2試験」の探索的解析の結果を報告した。急性脳梗塞で大きな虚血コアを有する患者に対する血管内血栓除去術の有効性が、虚血傷害の程度によって異なるかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年2月7日号掲載の報告。血管内血栓除去術+内科的治療併用群、内科的治療単独群に無作為化 研究グループは、2019年10月~2022年9月に、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ニュージーランドの31施設で、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞による急性脳梗塞を呈し、非造影CTでASPECTSスコア3~5、またはCT灌流画像あるいはMRI拡散強調画像で虚血コア50mL以上の成人(18~85歳)患者352例を、血管内血栓除去術+内科的治療併用群または内科的治療単独群に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時点の機能的アウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア:0[無症状]~6[死亡])で、補正後一般化オッズ比(aGenOR、>1でより良好なアウトカムを表す)で評価した。 探索的解析では、血管内血栓除去術と内科的治療の有用性の比較を、異なる画像モダリティを用いて推定された虚血範囲との関連で検討した。機能的アウトカム、虚血コア体積増に伴い悪化するも併用群のほうが良好 無作為化された患者352例のうち探索的解析対象集団は336例(年齢中央値:67歳、女性:139例[41.4%])で、このうち168例(50%)が血管内血栓除去術併用群に割り付けられ、さらに内科的治療群の2例がクロスオーバーにより血管内血栓除去術を受けた。 ASPECTSスコア3~5と判定された277例において、90日時点の機能的アウトカムは、血管内血栓除去術併用群が内科的治療群より有意に良好であった。内科的治療に対する血栓除去術併用のaGenORは、ASPECTSスコア3の患者で1.71(95%信頼区間[CI]:1.04~2.81)、4の患者で2.01(1.19~3.40)、5の患者で1.85(1.22~2.79)であり、ASPECTSスコアで有意な不均一性はなかった(交互作用のp=0.80)。 CT灌流/MRIによる虚血コア体積別では、aGenORは70mL以上で1.63(95%CI:1.23~2.16)、100mL以上で1.41(0.99~2.02)、150mL以上で1.47(0.84~2.56)であった。 ミスマッチのない患者はほとんど登録されていなかったが、ミスマッチの有無による血管内血栓除去術の治療効果の不均一性は確認されなかった。

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GLP-1受容体作動薬の投与には適切な患者をSELECTするのが肝要だろう(解説:住谷哲氏)

 注射薬であるGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:オゼンピック)が心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者の心血管イベント発症を26%減少させることが、SUSTAIN-6試験で報告されている1)。一方で、経口セマグルチド(同:リベルサス)はPIONEER 6試験において心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者の心血管イベント発症を増加させないこと、つまり既存の治療に対する非劣性は示されたが優越性は証明されなかった2)。したがって、同じセマグルチドではあるが、心血管イベント抑制を目標とするのであれば経口薬ではなく注射薬を選択するのが妥当だろう。 肥満症は心血管イベント発症のリスク因子であるが、生活習慣改善のみでは目標とする体重減少を達成することは困難であった。しかし、GLP-1受容体作動薬の登場により状況は一変した。GLP-1受容体作動薬には体重減少作用があり、とくにセマグルチド2.4mg(同:ウゴービ)は肥満症治療薬として欧米およびわが国で承認されている。本試験はセマグルチド2.4mgの心血管イベント既往を有する、糖尿病を合併していない肥満症患者の心血管イベント再発抑制に対する有効性を検討したものである。結果は平均観察期間40ヵ月で、3-point MACEの発症を20%抑制することが示された。 RCTの結果を目の前の患者に適用する際には、結果の外的妥当性(generalizability or external validity)の評価が重要となる(EBMのstep 4)。本試験の対象患者は、全例が心血管イベントの既往があり(心筋梗塞が70%)、平均BMI 33kg/m2、糖尿病ではないが70%以上の患者はprediabetes(HbA1c≧5.7%)を合併していた。本文には記載がないが、表3から主要評価項目のNNTを計算すると67/40ヵ月になる。肥満症の有病率を考慮すると、このNNTはこの薬剤の有用性を示唆すると思われるが、やはりリスクとベネフィットとを考慮して適切な患者をSELECTすることが肝要だろう。

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脳梗塞再発予防薬のアンダーユースに介入【うまくいく!処方提案プラクティス】第57回

 脳梗塞後の再発予防薬として、その塞栓機序に基づいて抗血小板薬やDOACなどが用いられますが、出血などの問題から導入が見送りになっているケースもあります。脳梗塞が再発した場合の患者さんやその介護者への負担は大きなものとなるため、適応とならなかった原因やリスクの評価が必要です。今回は、再発予防薬のアンダーユース(本来使うべき薬が処方されていない)にどのように介入したかを紹介します。患者情報80歳 女性(個人在宅)基礎疾患アテローム性脳梗塞、高血圧症、認知症既往歴2ヵ月前に虚血性腸炎で入院、血便もあったため抗血小板薬を中止介護度要介護2訪問診療の間隔2週間に1回介護サービスの利用週2回、通所介護主な介護者同居の長女、胃瘻からの経管投与処方内容1.カンデサルタンOD錠4mg 1錠 分1 朝食後2.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後3.ランソプラゾールOD錠15mg 1錠 分1 朝食後4.ピタバスタチンOD錠1mg 1錠 分1 朝食後5.ピコスルファート内用液 便秘時 適宜調節(未排便3日で10滴)本症例のポイントこの患者さんの通院には元々長女が同行していましたが、2ヵ月前の虚血性腸炎の入院を契機に訪問診療を利用することとなりました。当薬局もそのタイミングで介入となり、服薬管理や血圧の状況、排便状況のモニタリングを開始しました。気になるポイントとしては、血便をきっかけにアテローム性脳梗塞の再発予防薬が中止になっていたことです。薬局スタッフがOP(観察計画)として、抗血小板薬の再開について確認と計画を立てていました。しかし、この計画を立てた後のアクションがなく、そのままになっていたので、訪問時に血便や排便の状況を改めて確認することにしました。訪問時に長女に話を聞いたところ、退院後は血便は1回も出ておらず、排便コントロールもブリストル便形状スケール3〜4の正常便が連日出ていたことが確認できました。出血していた頃はスケール1〜2の硬便が出ていたことから、肛門口を傷つけていたのではないかと医師から話があったことも聴取できました。いずれにしても、すでに血便は解消しています。このまま抗血小板薬が再開されないことで脳梗塞の再発を招いた場合、高次機能障害から患者本人と介護者への負担が増大するというリスクを抱えていたため、医師への確認が必要だと判断しました。ブリストル便形状スケールによる便の性状分類画像を拡大する処方提案と経過医師にトレーシングレポートで、現状は排便に問題がなく、血便もないことを伝え、抗血小板薬の再開を検討してみてはどうか提案しました。医師より返事があり、出血や貧血もなく、再開をどうするか検討していたので次回の訪問診療で再開について家族に話をします、と返答がありました。また、薬剤師にこのようにリマインドしてもらえるのは、処方漏れを回避できるのでとても助かるとコメントをいただきました。その後、この患者さんはクロピドグレル錠を再開する予定でしたが、肝機能や血球系の副作用を懸念して、低用量アスピリンが開始となりました。今後は脂質の評価を行い、必要に応じてスタチンの導入を提案したいと考えています。

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脂の多い魚の摂取はCVDリスクを低下させる

 心血管疾患(CVD)の家族歴のある人は、サケ、サバ、ニシン、イワシなどの脂肪の多い魚の摂取を増やすと良いようだ。CVDの家族歴がありオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の血中濃度が低い人では、CVDの家族歴がなくEPA/DHAの血中濃度も低くない人に比べて、CVDのリスクが40%以上高いことが新たな研究で明らかになった。一方、EPA/DHAの血中濃度が十分であれば、CVDの家族歴があってもリスクは25%の増加にとどまることも示されたという。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のKarin Leander氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation」に12月4日掲載された。 この研究では、4万885人の成人を対象に、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の低血中濃度と、CVDの家族歴を有する人におけるCVDリスク(致死的または非致死的な冠動脈疾患と脳梗塞)との関連が検討された。対象者の血液および組織を用いて、n-6系PUFAであるリノール酸(LA)と、n-3(オメガ3)系PUFAであるα-リノレン酸(ALA)およびEPA/DHAのレベルを測定し、そのレベルが下位25%以下の場合を「低濃度」と定義した。これらのPUFAはいずれも体内では合成できないため、食事から摂取する必要がある。Leander氏は、「PUFA量は、自己申告による食事データよりも血液や組織中の脂肪酸レベルに基づいて推定する方が、より客観的で正確だ」と説明している。 関連因子を調整して解析した結果、EPA/DHAは、CVD家族歴との間に有意な交互作用のあることが示された。EPA/DHAが低濃度ではなくCVDの家族歴もない人に比べて、EPA/DHAが低濃度でCVDの家族歴がある人でのCVD発症の相対リスクは1.41(95%信頼区間1.30〜1.54)であった。同リスクは、EPA/DHAが低濃度またはCVDの家族歴のどちらかのみを有する場合には低下し、CVDの家族歴のみの場合で1.25(同1.16〜1.33)、EPA/DHA低濃度のみの場合で1.06(同0.98〜1.14)であった。 研究グループは、「これらの結果は、健康的な生活習慣により遺伝的リスクを克服できる可能性があることを示すものだ」と述べる。Leander氏も、「この研究は、CVDの家族歴がある人は、脂肪の多い魚の摂取を増やすことで得られるものが多いことを示唆している」と語る。 Leander氏は、「CVDは、双生児研究で示されているように、ある程度は遺伝性のものであり、その制御遺伝子を特定することは困難であった。現時点で考えられる有力な仮説は、CVDは遺伝と環境の組み合わせにより生じるというものだ」と話している。

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非典型症例と類似疾患を知ってCommon Diseaseを極める

Common Diseaseの画像所見を整理し深く理解「臨床放射線」68巻12号(2023年12月臨時増刊号)日々の診療でよく目にする疾患、Common Diseaseであっても、非典型的な所見を知らないと正しい診断にたどり着けないことがあります。また、典型的所見であっても、画像診断を行ううえで類似の所見を示す他の疾患との鑑別は欠かせません。そこで本年の臨時増刊号は「非典型症例と類似疾患を知ってCommon Diseaseを極める」と題し、放射線科の関係者が日々取り組むCommon Diseaseの画像診断に役立つ特集を企画しました。日常診療のレベルアップにご用立てください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    非典型症例と類似疾患を知ってCommon Diseaseを極める定価9,350円(税込)判型B5判頁数270頁発行2023年12月編集「臨床放射線」編集委員会電子版でご購入の場合はこちら

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