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PCV13はPCV7よりも広範な防御を提供する可能性

 韓国・延世大学校医療院セブランス病院のKim DS氏らは、同国の小児ワクチン定期接種における小児肺炎球菌ワクチンについて、7価(PCV7)と13価(PCV13)の免疫原性と安全性に関して比較した。その結果、「PCV13の免疫原性と安全性が認められた。PCV13はPCV7よりも広範な防御を提供するだろう」と結論している。Pediatr Infect Dis J誌オンライン版2012年9月24日号の掲載報告。 健常な乳児180例を、無作為に1対1の割合でPCV13またはPCV7の接種群に割り付けた。接種は、生後2、4、6ヵ月+12ヵ月齢で行われた(3回接種+追加接種1回)。 3回接種後および追加接種後に、ELISA、オプソニン作用活性(OPA)アッセイを用いて免疫応答を測定し、IgG抗体価幾何平均濃度(GMCs)とOPA機能的抗体価幾何平均力価(GMTs)を算出し検討した。また、安全性について評価した。 主な内容は以下のとおり。・3回接種後、両ワクチンに共通する7つの血清型に関しては、IgG濃度≧0.35μg/mLレスポンダーの割合は、両群間で匹敵した値が示された(≧97.6%)。・IgG GMCsとOPA GMTsは、おおよそ同程度であったが、一部の血清型についてはPCV13群で、より低い傾向がみられた。・PCV13群に特有の6つの血清型については、IgG GMCsとOPA GMTsは、PCV13群で顕著に高かった。・PCV7はPCV13血清型の5および19AのIgG抗体価を上昇させたが、OPA反応はごくわずかだった。血清型の6Aは、IgGとOPA反応がともに上昇した。・これらの所見は、PCV7による防御が最少で一部であったこと、すなわち血清型6Aによる侵襲性肺炎球菌感染症の防御は認められたが、血清型5と19Aについては交差防御が認められなかったことと、整合性がとれていた。・4回目の接種後は、ほとんどの血清型が、3回接種後よりも高いIgG、OPA反応を示した。ただし血清型3と14のOPA反応のみ、4回目の接種後に上昇した。・ワクチンの安全性プロファイルは、同程度であった。

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「小児の肺炎球菌」PCV7ワクチン導入で大きく減少

 欧州における7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)導入後の状況について、フランス・Denis Diderot大学のWeil-Olivier C氏らが、レビュー報告を行った。欧州では2006~2008年の間に16ヵ国が順次、PCV7の定期接種(2~3回+ブースター1回)を導入し、現在は、PCV10、PCV 13の定期接種導入も進んでいる。BMC Infect Dis誌オンライン版9月7日号の掲載報告。 レビューは、2011年6月に欧州小児感染症学会(ESPID)が発表したサーベイランスデータに基づいた。PCV7導入後の欧州における肺炎球菌感染症の動向、PCV10および13の導入とその影響、小児市中肺炎(CAP)へのインパクト、蓄膿症や急性中耳炎(AOM)との関連、そしてPCV接種の役割とベネフィットなどについて考察した。 主な内容は以下のとおり。・PCV7定期接種導入により、小児の肺炎球菌感染症の疾患負荷は大きく減少した。(たとえば、英国<5歳IPD報告: 400件(2006年) →25件(2010年)、CAP入院19%減少など、ドイツ<2歳IPD報告: 20例/10万人・年(1997-2003年) →10例/10万人・年(2007-2008年)。・PCV7に含まれる血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)の分離株がみられることが大きく減った。(たとえば、2009年のドイツ<2歳全IPD例のうちPCV7血清型は12%)・一方で、非PCV7の血清型(例:1、7F、19A)の有病率が増加した。(たとえば、英国<5歳 非PCV7血清型例報告: 150例(2006年) →375例(2010年) など)・非PCV7血清型例の増加を受けて、PCV10、PCV13によって残る疾患負荷を減らす可能性を強調した。PCV7そしてPCV10、PCV13導入(2009年ドイツを皮切りに各国順次導入)は、侵襲性の疾患負荷および市中肺炎負荷を引き続き減少させる傾向がみられた。・肺炎球菌保菌のさらなる減少と、早期AOM感染予防の取り組み増大により、重症または難治性のAOMを予防できる可能性がみられた。・直近のサーベイランスは、より高価のワクチン(PCV10、PCV13)によって、非PCV血清型をカバーし肺炎およびAOMを予防することが、より有意に公衆衛生上の間接的ベネフィットをもたらすことを強調した。

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君も医師として「国際協力師」にならないか?

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」主催(代表:秋葉春菜氏〔東京女子医科大学医学部4年〕)の第17回勉強会が、2012年8月19日(日)、東京医科歯科大学・湯島キャンパスにおいて開催された。当日は夏休みの期間中にも関わらず医学生、社会人を中心に約40名超が参加した。今回は医師でNPO法人宇宙船地球号代表の山本敏晴氏を講師に迎え、「海外で、国境を越えて活躍している医療関係者達~宇宙船地球号にご搭乗中の皆様へ~」と題し、講演を行った。国際協力を俯瞰するはじめに山本氏の自己紹介のあと、「国際協力とは何か」と題して、現在の国際協力の種類や体制、これからの展開についてレクチャーが行われた。最も強調されていた内容は、『国際協力』は、無給のボランティアとして行うだけではなく、有給の仕事として行う方法もある、ということだった。その就職場所となる組織は、大きく分けて4つある。〔1〕国際機関(国連(WHO、ユニセフ等)など)、〔2〕政府機関(外務省の国際協力機構(JICA)など)、〔3〕民間のNGO(非政府組織)、〔4〕民間の企業(開発コンサルタント会社など)。以上の、いずれの組織でも、医師などが雇用され、有給の仕事として国際協力を行っている人が多数いるという。〔1〕の国連職員等の場合、アメリカの国家公務員に準じた給与が支払われ、勤務年数と昇進に伴い増額されていく。〔2〕の日本のJICA専門家などの場合、日本の一般的な勤務医と同等か、それ以上の給与が支払われる。〔3〕のNGOの場合、薄給または無給である。例えば、山本氏がかつて所属した「国境なき医師団」の場合は、2012年現在、毎月約13万円程度が支払われる。〔4〕は日本政府の外務省から国際協力事業を受注する「会社」で、医療・公衆衛生分野の事業を実施する場合もある。その場合、医師なども雇用される。〔1〕国連職員等と〔2〕JICA専門家等の場合、国家公務員と同等以上の待遇で途上国等へ派遣されるので、待遇(給与、年金、保険など)は国内並みに安定する。また、国際協力と聞くと、途上国の田舎で、電気も水道もない生活を送ると思っている人が多いが、そのようなことはなく、(〔1〕と〔2〕の場合は)派遣国の首都にいくことが多く、そこにある高級ホテル等に泊まることが多い。業務は派遣先の国の(医療・公衆衛生に関わる)政策立案(及びその政策の実施補助)などが主体であるなどと述べた。一方で、〔3〕のNGOでのボランティアの場合、収入は低いため、仮にそれに参加したとしても、自分や家族の生活費を捻出できないため、持続的な活動を行うことはできず、半年から2年程度で止めてしまう人が多い。このため、継続的に国際協力を行っている人の8割以上は、〔1〕、〔2〕、〔4〕のいずれかの方法で、有給のプロとして国際協力を行っているという。ただし、〔1〕、〔2〕、〔4〕では途上国の保健省(日本の厚生労働省に相当)への政策提言・アドバイスが、主な仕事となるため、医師が自分で患者の診察や治療をすることは、ほぼない。このため、「自分で直接、患者さんを診療するタイプの国際協力」を行いたい場合、お金にはならないが、〔3〕のNGOのボランティアとして行うしかない。中庸案としては、日本赤十字社が日本各地で運営する病院で、普段は勤務をしておき、自然災害が途上国で起きた際に、それに対する(日赤からの)緊急援助として(短期間の間だけ)出動する、という方法もある。いずれにしても、「『なんらかの形で持続的に国際協力に従事している人々』のことを、山本氏は『国際協力師』と呼び、数年前から、その概念を普及しているのだ」と語った。シエラレオネの現実次に「世界で一番いのちが短い国 シエラレオネ」の説明が行われた。銀座・新宿等で多数の写真展を開催している山本氏が、自ら撮影した写真を示しつつ、現地の内戦の様子や「なぜ平均寿命が短いのか?」が語られた。だがまず、山本氏は、同国の「素晴らしさ」について、触れだした。意外なことに、「持続可能な社会」という意味では、日本の方が「途上国」で、シエラレオネの方が「先進国」だと言う。同国の田舎では、日本の江戸時代のような生活をしており、電気などはない。このため、高度な医療はできない。よって、悪く言えば、近代文明から遅れていると言えるが、よく言えば、「(将来枯渇してしまう石油などのエネルギーに依存しないため)持続可能な生活を、ずっと営んでいるのだ」と言う。このためむしろ、「同国に国際協力をしてあげる」というよりも、「日本人が(江戸時代までは行っていたのに)忘れてしまった「持続可能な社会」(未来まで、ずっと続けていける(医療も含めた)生活のスタイル)を思い出させてくれる国であった」と山本氏は言う。次に、山本氏は、シエラレオネが、ボロボロになっていった経緯を説明した。シエラレオネでは、ダイヤモンドが採れる。これを狙って、欧米の営利企業が、その採掘を巡り同国で紛争を起こした。内戦だけでなく、隣国リベリアからの軍事侵攻も発生し、人々の生活は崩壊していった。多くの医療施設が破壊され、多くの医師や看護師が、国外に逃亡してしまった。その結果、乳児死亡率も、5歳までに子どもが死んでしまう割合(5歳未満子ども死亡率)も、ともに「世界最悪」という国になってしまった(2000年頃)。また、5歳まで生き残った子どもたちも、争う軍事組織らのいずれかに「子ども兵」として雇われ、麻薬漬けにされたまま、「戦争の道具」(生きた兵器)として戦場に連れていかれる。こうして、平均寿命34歳(2002年ユニセフの統計で世界最低)という国ができあがってしまった。こうした現状に対し、山本氏は、自らが現地で医療活動を行うだけでなく、自分が日本に帰ってしまった後も、未来永劫、シエラレオネで続けていけるような「医療システム」の構築を目指した。現地で医療機関(病院と診療所、さらにその連携制度など)を創設し、そこで働く医療従事者の人材育成を行った。そして、これからこうした国々へ支援にいこうという聴講者へ「現地の言葉を覚えること」、「現地の文化と伝統医療を尊重すること」、「西洋医学や日本の医療の手法を、一方的に押し付けないこと」など、体験者ならではのアドバイスを送った。アフガニスタンの現実続いてアフガニスタンに赴任した時の話題となり、同地では、(患者を診る医師としてではなく)プロジェクト・リーダー(コーディネーター)として、同国北部領域における母子保健のシステム構築に従事していたことを語った。同国では現在も(政府とタリバーン等の軍閥間での)紛争が続いており、「世界で一番、妊産婦死亡率が高い」ことと、その理由などが述べられた。国際協力師として世界に関わらないか最後に再び、国際協力を行っていく形として、民間NGOの無給のボランティアとして途上国に派遣されるだけでなく、有給のプロとして、例えば、JICAなどの専門家として赴任する選択肢もあることを強調した。また、今後国際協力を行っていこうという聴講生に向けて、(最も医療が遅れているとされる)アフリカ諸国で国際協力をやりたいのであれば、フランス語を習得した方がいいという助言をした。アフリカ諸国は、昔、フランスの植民地だった国が多いためである。さらに、(途上国の病院等の見学ツアーである)「スタディーツアー」や「ワークキャンプ」を一度は体験してみるのもよいと勧めた。その他、公衆衛生分野(予防、水と衛生など)であれば、医師でなくとも参加できるので医師以外の方でも大学院で「公衆衛生学修士」をとって、参加して欲しいと述べた。それに関連して、「世界を見て思ったことは、予防医学こそが究極の医療ではないかと思う」と述べ講演を終えた。質疑応答次のような質問が、山本氏に寄せられ、一つ一つに丁寧に回答されていた。――援助や支援の在り方について国際協力には、(1)地震などの自然災害の直後や、紛争地帯の中に入っていく「緊急援助」と、(2)それらが落ち着き、途上国の政府や地方自治体が、ある程度、正常に機能している時に行う、「開発援助」がある。(1)と(2)では、まったく違うことをする。(1)は、直接的な(狭義の)医療を行うことが多いが、(2)では、途上国政府への政策提言など、医療システムや公衆衛生の構築(広義の医療)をすることが多い。貧しい途上国への開発援助は、昔は、(マラリアや肺炎などに対する)感染症対策と母子保健(乳児死亡率の改善、妊産婦死亡率の改善など)の改善を目的としていた。ところが、(国連が定めたミレニアム開発目標の終わる)2015年以降、WHOは、大きく方針を変える予定だ。今後は、途上国でも、糖尿病、高血圧などの生活習慣病(いわゆる成人病)が増える傾向にあるため、それらに対する対策(治療と予防)が、主流になる可能性が高い。ちなみに、国際協力の世界では、そうした疾患のことを、「非感染性疾患(NCD)」と言う。――現在の山本氏の活動について現在は、直接的な国際協力(狭い意味での国際協力)からは離れ、『国際協力師』を増やすことを主な活動としている。運営しているNPOの活動は3つある。(1)『国際協力師』を直接的に増やすために、本を執筆したり、啓発するためのさまざまなサイト(ホームページ、ブログ、ツイッター等)を制作している。(2)『お絵描きイベント』という、ちょっと変わった活動もしている。世界中の人々に「あなたの大切なものは何ですか?」と質問をし、その絵を描いてもらい、そこから導き出される、その国の『社会背景に眠っている問題点』を洗い出し、各国の問題をわかりやすく説明し、さらにそれに対し各組織が行っている国際協力活動を紹介する事業を行っている。世界の約70ヵ国・地域で実施した。書籍版が4冊(小学館等から)出版されており、またウェブサイトとしても公開している。(3)一般の企業に対して、「企業の社会的責任(CSR)」のランキングを付けている。利益を追求するだけでなく、環境への配慮を行い、社会貢献も実施するような企業を増やしていくためだ。2年に一度、ウェブサイト上で公開している。同様に、「病院の社会的責任(HSR)」に関するランキングも、現在、検討中である。要するに、すべての組織に、「持続可能性」への配慮を行うように啓発をしている。――国連のミレニアム開発目標(MDGs)2015の評価と意義についてMDGsは大体達成できていると思うが、数字的には、妊産婦死亡率の低下と乳児死亡率の低下が達成できていない。これはこれからの課題だと思う。ただ、この目標を定めたことで先進国が巨額のお金を出資し、資金ができ、一定の効果はあったので評価できると思う。――海外の地域医療で役立ったこと、また逆に日本に持ち込んで役立ったことは?アフリカの田舎では、医師がいないか、足りない。このため、看護師(または、普通の村人で、ある程度の研修を受けた人)が、病気を診断したり治療したりしている。看護師や村人では判断できない、難しい症例の場合は、携帯電話のSMS(ショート・メッセージ・サービス)を使って、首都などにいる医師に連絡をする。こうしたことは、途上国で当たり前のように行われている。日本では、医師法があるため、「医師でなければ診断や治療をしてはいけない」ことになっているが、日本の無医村や離島も、アフリカの田舎に近い場合がある。よって、アフリカの真似をして、日本でも、IT機器(携帯電話やパソコン等)を使って、遠隔地医療を「医師でない人が行って、どうしても医師が必要な場合は、医師がIT技術でアドバイスを送る」ということも考えられる。日本では、毎年、医療費が増加しており、国の借金も膨らんでいる。今後、さらに高齢化社会になるため、毎年1兆円ずつ、国の社会保障費(医療・公衆衛生・年金など)が増えていくことがわかっている。その理由の一つが、医者の人件費が高いことである。一般の日本人の平均年収は430万円だが、医師のそれは1,500万円をはるかに超える。このような「高い」人件費を使わずに、今後の日本の医療を実施していく必要がある。「お金をかけないで行う」、あるいは「費用対効果」を考えるということも、これからの医師には必要だ。2000年から導入された介護保険制度は、まさにこれである。高齢化社会を迎え、また国の財政が破綻しかかっている中、医療従事者であっても、「患者さんにその時点で最高の医療を(予算などまったく気にせず)提供する」ことだけを考えるのではなく、なるべく、お金をかけず、環境にも優しく(電気をあまり消費せず、ゴミをあまり出さないように配慮して)医療システムが未来まで続けていけるように配慮することが必要である。最後にスタッフの伊藤大樹氏(東京医科歯科大学医学部4年)が「国際協力の貴重なお話を有難うございました。これからも充実した勉強会を開催していきますのでよろしくお願いします。また、会では協力いただけるスタッフを募集しています。気軽に参加ください」と閉会挨拶をのべ、3時間にわたる勉強会を終了した。■講演者略歴■関連リンクNPO法人「宇宙船地球号」山本敏晴ブログ* * * * * *医師のキャリアパスを考える医学生の会

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バンデタニブが局所進行性/転移性分化型甲状腺がんのPFSを延長:無作為化二重盲検第2相試験

 放射性ヨード耐性の進行性分化型甲状腺がんに対する有効な標準的治療はまだない。Sophie Leboulleux氏らは、RET、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、上皮成長因子受容体(EGFR)のシグナル伝達のチロシンキナーゼ阻害薬であるバンデタニブが、無作為化二重盲検第2相試験によって、局所進行性または転移性分化型甲状腺がんに対する有効性を示したことを報告した。著者らは、この疾患に対するチロシンキナーゼ阻害薬のさらなる研究が必要であるとしている。The Lancet Oncology誌オンライン版2012年8月13日号に掲載。 本試験は、ヨーロッパの16施設において、18歳以上の局所進行性または転移性分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、または低分化がん)の患者が登録され、バンデタニブ群(バンデタニブ300mg/日)またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における無増悪生存期間(PFS)である(治験責任医師の評価に基づく)。 主な結果は以下のとおり。・2007年9月28日~2008年10月16日に、バンデタニブ群72例、プラセボ群73例が割り付けられた。・データカットオフ(2009年12月2日)までに、113例(78%)の患者が進行(バンデタニブ群52例[72%]、プラセボ群61例[84%])、40例(28%)が死亡した(バンデタニブ群19例[26%]、プラセボ群21例[29%])。・PFS中央値は、バンテタニブ群11.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.7~14.0)、プラセボ群5.9ヵ月(4.0~8.9)であり、バンデタニブ投与によりPFSが延長した(ハザード比[HR]:0.63、60%CI:0.54~0.74;片側p=0.008)。・Grade3以上の主な有害事象は、QTc延長(バンデタニブ群10例[14%]対プラセボ群0例)、下痢(7例[10%]対0例)、無力症(5例[7%]対3例[4%])、疲労(4例[5%]対0例)であった。・治療関連の重篤な有害事象により、バンデタニブ群では2例(皮膚転移による出血および肺炎)、プラセボ群では1例(肺炎)が死亡した。

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震災後の心血管系イベント発症、疾患によりタイムコースが異なる:東日本大震災

2011年3月11日、未曾有の大地震と津波がわが国を襲った。東日本大震災の被災地では、医療従事者、消防など関係者は激務の中であっても、詳細な記録を残すことを厭わなかった。その結果、震災・津波という大きなストレス後の、各種疾患の発症パターンは必ずしも一様ではないことが明らかになった。28日の「ホットライン III」セッションにて、東北大学循環器内科教授の下川宏明氏が報告した。これまでも、大地震後の突然死,心筋梗塞や肺炎の発症増加を観察した報告は存在する。しかし、今回下川氏らが企図したのは、「より大規模」、「より長期の経過観察」、「より幅広い心血管系疾患を対象」とする調査である。同氏らは、宮城県医師会とともに、2008年~2011年の2月11日~6月30日(15週間)における疾患発症情報を集めるため、県下12の広域消防本部から救急搬送に関するデータの提供を受けた。調査対象とした疾患は「心血管系全般」とし、「心不全」、「急性冠症候群(ACS)」、「脳卒中」、「心肺停止」が挙げられた。加えて、「肺炎」についても調査した。まず、上記疾患はいずれも、大震災後,著明な発症増加が認められた。下川氏は、今後同様の大ストレス下では、上記疾患全てに、医療従事者は備える必要があると述べた。また肺炎を除き、発症リスクに対し、年齢(75歳以上、75歳未満)、性別(男、女)、居住地(内陸部、海岸部)で有意な差は認められなかった。肺炎発症リスクは、海岸部で有意に増加していた。津波の影響が原因と、下川氏は考察している。興味深いのは、震災後急増したこれら疾患発症率が、正常に戻るパターンである。3つの類型が観察された。すなわち、1)速やかに発症数が低下する(ACS)、2)速やかに発症数が減少するも,余震に反応して再び増加する(脳卒中、心肺停止)、3)発症数増加が遷延し、長期にわたり発症が減少しない(心不全、肺炎)──の3つである。特にACSは震災発生3ヶ月後、震災前3年間の同時期に比べても発症率は著明に低くなっていた。震災によりACS発症が前倒しになった可能性があると、下川氏は指摘している。記者会見において、脳卒中とACSのパターンが異なる理由について質問が出た。同じくアテローム血栓症を基礎にするのであれば、同様の正常化パターンが予測されるためである。これに対し下川氏は、機序については今後の課題であると述べている。当初同氏らは、震災後に脳卒中が増加したのは、ストレスによる昇圧が脳出血を増やしたためだろうと考えていた。しかしデータを解析すると、地震に反応して増加していたのはもっぱら脳梗塞であり、脳出血の増加は認められなかった。ストレスによる凝固能亢進が示唆される。最後に下川氏は、宮城県の医師会、消防本部,そして日本循環器学会に謝意を示し発表を終えた。指定討論者であるルードイッヒ・マキシミリアン・ミュンヘン大学(ドイツ)のGerhard Steinbeck氏は、東日本大震災のようなストレスが心血管系疾患に及ぼす影響が、発生直後の数日間のみならず、数週間、数ヵ月持続する点に大いに注目していた。関連リンク

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(5)〕 脳卒中後に肺炎を繰り返す高血圧症例では、まずACE阻害薬を!

ACE阻害薬は、すでにわが国の『高血圧治療ガイドライン2009』でも、不顕性を含め誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者高血圧患者に対して推奨薬となっているが、その科学的根拠は必ずしも信頼性の高いものではなかった。 しかし、本メタ解析では18のランダム化試験を含む37の臨床研究でのデータを集めており、ACE阻害薬の肺炎予防効果についての根拠としては現段階では最も信頼性の高いデータといえる。ACE阻害薬が肺炎予防効果に対する治療必要数(NNT)は65、つまり2年間で65人がACE阻害薬を飲み続けることで1人の肺炎発症を予防できることを意味しており、その有効性は非常に高い。とくに肺炎予防効果が脳卒中既往例とアジア人で高いことから日本人での脳卒中患者での予防効果は非常に大きいといえる。 理論的にはブラジキニンを介したサブスタンスPが咳反射を亢進させ、それが痰の喀出を促すことで肺炎を予防するとされ、アジア人の方が予防効果は大きいことも知られている。 肺炎予防効果はARBではみられないことも本メタ解析で示したが、実臨床では、脳卒中後に肺炎を繰り返す高血圧症例では、まずARBではなくACE阻害薬を選択し、咳も苦痛にならない程度に我慢できるのであればそれを継続することが望ましい。もちろん高血圧があり、それがACE阻害薬でコントロールできるということが最低条件である。

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ACE阻害薬は肺炎リスクを減少、特に脳卒中、アジア人で大きい可能性

 ACE阻害薬とARBの肺炎リスクについて、ポルトガル・リスボン大学のDaniel Caldeira氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、これまで考えられていたようにACE阻害薬には肺炎に対する保護作用があることがエビデンスとして示された。また、「脳卒中既往」「アジア人」が最も大きな恩恵を享受できる可能性があることも示唆された。強力な支持データは不足していたが、肺炎関連死を抑制することも認められたという。BMJ誌2012年8月4日号(オンライン版2012年7月11日号)掲載報告より。システマティックレビューとメタ解析、適格試験は37件 Caldeira氏らによる検討は、PubMedを介したMedline、Web of Science、米国FDAのウェブサイトを2011年6月時点で検索して行われ、システマティックレビューと引用参考文献についても評価をした。解析対象試験は、2人の独立レビュワーにより、ACE阻害薬とARBの肺炎リスクとの関連を検討した無作為化対照試験、コホート試験、ケースコントロール試験を選出し、試験特性、推定データを取り出し分析した。適格試験は37件だった。 主要アウトカムは、肺炎罹患率とし、副次アウトカムは肺炎関連死とした。また、ベースラインで有していた疾患(脳卒中、心不全、慢性腎臓病)、患者特性(アジア人、非アジアン人)によるサブグループ解析も行われた。 主要アウトカムに関するデータが得られたのは、ACE阻害薬と対照治療とを比較検討した19試験、ARBと対照治療とを比較検討した11試験、ACE阻害薬とARBを直接比較検討した2試験だった。ACE阻害薬群は、対照治療群、ARB治療群よりも肺炎リスクが有意に減少 結果、ACE阻害薬群は対照治療群よりも[オッズ比:0.66、95%信頼区間:0.55~0.80、i2=79%]、またARB群よりも(直接的・間接的比較を合わせた推定オッズ比:0.69、0.56~0.85)、肺炎リスクの有意な減少が認められた。 サブグループ解析では、脳卒中患者において、ACE阻害薬群が対照治療群よりも(オッズ比:0.46、95%信頼区間:0.34~0.62)、またARBs群よりも(同:0.42、0.22~0.80)、肺炎リスクが低かった。 ACE阻害薬による肺炎リスクの低下は、非アジア人患者よりも(オッズ比:0.43、95%信頼区間:0.34~0.54)アジア人患者で有意に減少した(同0.82:0.67~1.00、サブグループ間p

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年齢・体温別の呼吸数の新基準で、発熱小児の下気道感染症を検出

新たに開発された年齢と体温別の呼吸数パーセンタイル図に基づく呼吸数の新基準を用いれば、既存の呼吸数閾値よりも高い検出能で発熱小児における下気道感染症(LRTI)の診断が可能なことが、オランダErasmus MC-Sophia小児病院のR G Nijman氏らの検討で示された。呼吸数は、LRTIの重要な予測因子であり、呼吸器系の基礎疾患や発熱の影響を受ける。既存の頻呼吸の閾値は発熱との関連はほとんど考慮されていないという。BMJ誌2012年7月28日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。パーセンタイル図を開発し、診断能を前向きに検証研究グループは、発熱のみられる小児におけるLRTIの予測法として、年齢と体温別の呼吸数の基準値とパーセンタイル図を開発し、その検出能を評価するプロスペクティブな観察試験を実施した。2006~2008年に、Erasmus MC-Sophia小児病院(ロッテルダム)小児救急診療部を受診した生後1ヵ月から16歳未満の発熱のみられる小児1,555例を導出集団(derivation population)とした。第1検証集団(validation population)は、2005~2006年にコベントリー大学病院(英国、コベントリー)を受診した発熱小児360例、第2検証集団は2003~2005年にErasmus MC-Sophia小児病院を受診した発熱小児311例であった。導出集団で呼吸数のパーセンタイル図を作成し、体温ごとの呼吸数の50、75、90、97パーセンタイル値を算出した。多変量回帰分析を行って呼吸数、年齢、体温の関連を調べた。得られた結果の妥当性を確認するために、検証集団で呼吸数パーセンタイル図の診断能の評価を行った。肺炎性LRTI(胸部X線検査で確定)、非肺炎性LRTI、非LRTIと診断された小児の呼吸数パーセンタイルを算出した。年齢、呼吸数(回/分)、体温とLRTIの関連を解析した。肺炎性と非肺炎性LRTIの鑑別はできない全体として、年齢と体温で補正すると、体温が1℃上昇するごとに呼吸数が2.2回/分増加した。年齢、体温、呼吸数の間に交互作用は認めなかった。呼吸数の97パーセンタイルをカットオフ値とした場合の年齢と体温に基づくLRTIの診断能(特異度:0.94、95%信頼区間[CI]:0.92~0.96、陽性尤度比:3.66、95%CI:2.34~5.73)は、既存のAPLS(Advanced Pediatrics Life Support)ガイドラインの呼吸数閾値の診断能(特異度:0.53、95%CI:0.48~0.57、陽性尤度比:1.59、95%CI:1.41~1.80)よりも優れていた。一方、呼吸数パーセンタイルのカットオフ値では、肺炎性LRTIと非肺炎性LRTIの鑑別はできなかった。著者は、「年齢と体温別の呼吸数パーセンタイル図により、発熱小児における呼吸数の新たな基準値が示された。97パーセンタイルをカットオフ値とすると、LRTIの検出能が既存の呼吸数閾値よりも良好だった」と結論している。

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シチコリン、急性虚血性脳卒中に対する有効性示せず:ICTUS試験

中等度~重度の急性虚血性脳卒中の治療において、シチコリン(商品名:シチコリン、シスコリンほか)、はプラセボを上回る効果はないことが、スペインGermans Trias i Pujol大学病院(バダロナ)のAntoni Davalos氏らが行ったICTUS試験で確認された。現在、欧米の急性虚血性脳卒中の治療では、発症後4.5時間以内の遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)の投与が唯一、推奨されている。シチコリンは神経血管の保護と修復作用を併せ持つ新規薬剤で、動物モデルでは虚血発作から数時間後でも急性の脳損傷の抑制や機能の回復効果を示すことが報告され、統合解析で有効性のエビデンスが示されている。Lancet誌2012年7月28日号(オンライン版2012年6月11日号)掲載の報告。シチコリンの有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価ICTUS(international citicoline trial on acute stroke)試験は、急性虚血性脳卒中に対するシチコリンの有効性を検証する国際的な多施設共同プラセボ対照無作為化試験。対象は、中等度~重度の急性虚血性脳卒中による入院患者とした。これらの患者が、発症後24時間以内にシチコリンあるいはプラセボを投与する群[1~3日は12時間ごとに1,000mgを静注投与し、その後6週間は12時間ごとに錠剤(500mg)×2錠を経口投与]に無作為に割り付けられた。患者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、90日後の3つの指標に基づく総合評価による回復の達成とした[NIH脳卒中スケール(NIHSS)≦1、修正Rankinスケール(mRS)≦1、Barthelインデックス≧95]。安全性は、rt-PA治療後の症候性脳出血、神経学的増悪、死亡について評価した。中間解析で早期中止に2006年11月26日~2011年10月27日までに、スペインの37施設、ポルトガルの11施設、ドイツの11施設から合計2,298例が登録された。シチコリン群に1,148例(平均年齢72.9歳、70歳以上67.4%)が、プラセボ群には1,150例(同:72.8歳、67.6%)が割り付けられた。3回目の中間解析で、2,078例のデータに基づき両群間に有効性および安全性の差は認めないと判定され、試験は中止された。最終的に2,298例全例のデータの解析が行われた。総合的回復率は両群で同等で(オッズ比:1.03、95%信頼区間[CI]:0.86~1.25、p=0.364)、3つの指標のいずれにおいても有意な差はなかった(NIHSS≦1、OR:1.09、95%CI:0.87~1.36、mRS≦1、OR:1.07、95%CI:0.85~1.36、Barthelインデックス、OR:0.95、95%CI:0.77~1.17)。重篤な有害事象は、出血性/虚血性脳卒中がシチコリン群の5.2%、プラセボ群の4.5%に、心疾患がそれぞれ3.9%、3.4%に、肺炎が2.7%、2.7%にみられ、安全性にも差は認めなかった。著者は、「シチコリンは、中等度~重度の急性虚血性脳卒中の治療においてプラセボを上回る効果は認めなかった」と結論している。

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世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。5歳未満児死亡の約4割が新生児、死因別では64%が感染症で死亡 Liu氏らは、2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向を調査するため、生後0~27週間の新生児、1~59ヵ月の5歳未満児の死亡総数のアップデートデータを集めて解析した。データは各国固有の死因区分が適用されているため、各国間のデータ適合を図ったり、死亡率が高い国に対して同様の多変量ロジスティック回帰モデルなどを作成適用するなどして調整を図り、インドと中国に関しては、国別モデルを作成し検討した。 集計結果から地域と世界の推定値を導き出した。 結果、2010年の5歳未満児死亡760万人のうち、64.0%(487万9,000人)は感染症が原因であった。また死亡の40.3%(307万2,000人)は新生児だった。医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7% 新生児死亡の主な原因は、早産の合併症[14.1%、107万8,000人、誤差範囲(UR):0.916~1.325]、分娩関連合併症(9.4%、71万7,000人、UR:0.610~0.876)、敗血症または髄膜炎(5.2%、39万3,000人、UR:0.252~0.552)だった。 幼児では、肺炎(14.1%、107万1,000人、UR:0.977~1.176)、下痢(9.9%、75万1,000人、UR:0.538~1.031)、マラリア(7.4%、56万4,000人、UR:0.432~0.709)が最も多かった。 一方で、関連データ同定の努力にもかかわらず、2010年に医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7%(20万5,000人)にとどまった。 2000~2010年の間の世界の5歳未満児死亡の減少は200万人で、肺炎(45万1,000人減)、はしか(36万3,000人減)、下痢(35万9,000人減)が全体的な減少に寄与していた。 国連のミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満乳幼児死亡率を1990年の3分の1に低減)達成に十分な年率で減少していたのは、破傷風、はしか、AIDS、マラリア(アフリカ)のみであった。

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高齢者の非小細胞肺がんに化学放射線療法は有益 日本臨床腫瘍研究グループ無作為化第III相試験の結果(JCOG0301)

化学放射線療法が、高齢者の局所進行非小細胞肺がんの全生存期間を改善するかは知られていない。Atagi氏らは、胸部放射線照射+低用量連日カルボプラチン併用療法が、放射線単独療法に比べ、高齢者の非小細胞肺がん患者の生存期間を延長するか評価している。結果の概要は昨年11月開催の第52回日本肺癌学会総会で発表されたが、その詳細がThe Lancet Oncology 2012年5月21日オンライン版に掲載された。試験は、日本臨床腫瘍研究グループ(以下JCOG)が無作為化比較第III相試験として実施したもの(JCOG0301)。対象は2003年9月1日から2010年5月27日に登録された70歳以上の切除不能StageIII非小細胞肺がん患者200例で、化学放射線療法群(60Gy照射+低用量カルボプラチン30mg/m2/日x週5日)と放射線療法単独群(60Gy照射x週5日)に、無作為に100例ずつ割り付けられた。主要エンドポイントは全生存期間。試験の結果、全生存期間の中央値は、化学放射線療法群で22.4ヵ月(95%CI:16.5~33.6)、放射線療法単独群で16.9ヵ月(95%CI:13.4~20.3)であった(HR:0.68、95.4%CI:0.47~0.98、p=0.0179)。有害事象については、Grade3/4の白血球減少・好中球減少・血小板減少を含む血液毒性、Grade3の感染が化学放射線療法群に多くみられた。Grade3/4の肺炎および晩期肺障害の発生は両群とも同等であった。化学放射線療法群の全生存期間が良好であったことから、JCOG効果・安全性評価委員会は、この試験の早期発表を推奨している。切除不能局所進行非小細胞肺がんの高齢患者にとって、化学放射線療法は放射線単独療法より臨床上有意な治療ベネフィットがあり、標準治療として考えられるべきであると述べている。(ケアネット 細田 雅之)

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貧困化と医療・介護

亀田総合病院小松 秀樹 2012年6月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 ●自己負担分が払えないので入院できない  2010年4月、私は、千葉県の房総半島南端の亀田総合病院に赴任した。以後、鴨川市の亀田総合病院と館山市の安房地域医療センターで診療を行っている。当地に来て、それまで勤務していた虎の門病院との違いに驚いたことがある。自己負担分のお金が用意できないので、入院できないという患者が珍しくないのである。亀田総合病院では、医療費の自己負担分の未収金が年間6千万円生じている。未収金は累積で3億3千万円になる。本人がお金を持っていないので、多くは回収できない。他にも、貧困化を感じさせる事件があった。無保険状態の患者が、他人の保険証で入院していたのが本人からの申し出で発覚した。同じことが他にもあるかもしれない。●国民健康保険被保険者の所得国民健康保険(国保)実態調査を見ると、貧困化が進行していることが分かる。2010年度被保険者3920万人の前年(2009年)の平均世帯所得、一人当たり平均所得はそれぞれ145万円、83万7千円だった。被保険者の平均世帯所得は2008年、2009年、それぞれ、前年より6%、8.2%減少した。2008年9月のリーマン・ショックが弱者を直撃したのである。1994年度の被保険者の前年の平均世帯所得、一人当たり平均所得はそれぞれ240万円、109万円だった。以後減少傾向が続いた。1993年の値を100とすると、2009年の人口、名目GDP がそれぞれ102、97とほとんど変化していないにもかかわらず、世帯平均所得、一人当たり平均所得はそれぞれ60、77だった。国保被保険者の所得は、名目GDPに比べて減少幅が大きい。自営業者の所得の実態がつかみにくいとはいえ、同じ方法で調査されているので、変化は捉えられているはずである。また、高齢者には、貯蓄はあったとしても、捕捉されない裏収入が多額あるとは思えない。補足説明を加える。2008年4月1日、後期高齢者医療制度の施行に伴い、75歳以上の高齢者が国保から外れ、被保険者数が5110万人から3966万人に減少し、一人当たりの平均所得は91万5千円から95万6千円に増加した#。75歳以上の高齢者を除けば、最近16年間の所得の減少幅はさらに大きいかもしれない。#最初に配信した記事の数字が間違えていたので修正いたしました。お詫び申し上げます(著者)。●生活保護の支給水準国保被保険者の中には、生活保護受給者より所得の少ない人たちが相当数存在する。68歳と65歳の夫婦が生活保護になった場合、1級地1の東京都江戸川区だと、第1類費2人分、第2類費、住宅扶助で月額190,070円、年額2,280,840円、2級地1の千葉県柏市だと月額168,440円、年額2,021,280円、3級地1の千葉県鴨川市だと月額147,020円、年額1,764,240が支給される。医療については、国保と同等の医療が保険料、自己負担なしに現物支給される。介護も、原則として介護保険と同等のサービスが自己負担なしに現物支給される。他に教育扶助、障害者・母子・児童加算などがある。一方で、国保被保険者は平均世帯所得145万円の中から、平均保険料14万3千円を支払っている。しかも、医療機関の窓口で3割を負担しなければならない。国保被保険者の所得は、地域によって全国平均よりはるかに低い。一人当たりの平均所得は東京の119万6千円に対し、沖縄は48万4千円と半額以下だった。鹿児島、徳島、青森、高知も東京の半額以下だった。●館山市の高齢患者再度、医療現場での実感に戻る。亀田総合病院は安房医療圏最大の基幹病院である。館山市にある安房地域医療センターは、2008年、破綻した安房医師会病院を社会福祉法人太陽会が負債込で引き受けたものである。安房地域医療センターは、館山市の二次救急の大半を引き受けている。亀田総合病院の救命救急センターは、安房医療圏のみならず、君津医療圏、山武・長生・夷隅医療圏の南半分、東京都の島嶼を守備範囲にしている。安房地域医療センターに、脱水や肺炎で救急入院する高齢者は、23キロメートル離れた亀田総合病院まで到達する気力と資力がない。しばしば複数の疾患を抱えており、普段から健康だとは思えない。それでも、救急入院患者は初診患者が多い。安房地域医療センターに普段受診しているわけではない。交通費と医療費の自己負担分が重いのかもしれない。●高齢化と孤独化国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口は2010年から、2030年までの20年間で1195万人減少すると推計されている。 一方で、全国で65歳以上の高齢者人口が726万人増加する。その内の267万人(37%)が首都圏の増加である。国民生活基礎調査によると、2000年には、65歳以上の高齢者のいる世帯の中で、単独世帯が307万9千世帯、夫婦のみの世帯が423万4千世帯だった。2010年には、単独世帯が501万8千世帯、夫婦のみの世帯が619万世帯に増加した。10年間で独居高齢者は63%増加した。国立社会保障・人口問題研究所によると、高齢者の単独世帯数は増加し続け、2030年には、65歳以上の人口の19.5%、717万人が独居になると推計されている。小松らの「医療計画における基準病床の計算式と都道府県別将来推計人口を用いた入院需要の推移予測」(文献1)によれば、療養病床・入所介護需要の増加は著しい。2010年と比較して2030年には847,822床増加する。このうち288,059床、率にして34%が、埼玉、千葉、東京、神奈川における増加分である。首都圏は、現状でも、療養病床・入所介護の需給が日本で最も逼迫している地域である。今後20年間で、現在の3倍の施設が必要になる。孤独化を考慮すると、実際の療養病床・入所介護需要の増加幅はさらに大きくなる。●相対的貧困率相対的貧困率とは、貧困線以下の世帯員数の全人口に占める比率である。貧困線とは、等価可処分所得(世帯の手取り収入を世帯員数の平方根で除した値)の全国民の中央値の半分の金額である。国民生活基礎調査によると、2009年の貧困線は、名目値で114万円である。単独世帯では手取り所得114万円、2人世帯では手取り所得161万円、3人世帯では手取り所得197万円に相当する。2000年台半ばの日本の相対貧困率は、OECDの中でメキシコ、トルコ、アメリカについで4位だった。1985年以来、上昇傾向が続いている。2009年の相対貧困率は、データのある1985年以後最高の16%に達した。国民生活基礎調査では、2009年の全世帯の平均所得金額は549万6千円、中央値は438万円だった。所得金額150万円未満は、全世帯12.2%、高齢者世帯(#)25.2%、児童のいる世帯3.3%、母子世帯19.9%だった。高齢者世帯、母子世帯に低所得者層が多い。しかし、生活意識調査では、生活が大変苦しいとした世帯は、全世帯27.1%、高齢者世帯21.3%、児童のいる世帯31.0%、母子世帯50.5%であり、子供を持つ家庭、特に母子世帯で生活が大変苦しいと実感されていた。#65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯●特別養護老人ホームの個室化(ユニット型)2001年厚労省は、特別養護老人ホーム(特養)を、「終のすみか」と位置付けて、完全個室化する方針を決めた。10名程度の入居者を一つのグループにして、グループごとに食堂、談話スペースなどの設備を設け、自宅に近い環境の中で介護サービスを提供する。居住費については自己負担として徴収することにした。当初より懸念があった。玖珂中央病院吉岡春紀院長の意見(2001年4月11日)を紹介する。意識状態に問題のある場合には個室にする意味はありませんし、むしろ意識障害のある重介護者が一人一人別の部屋になると、今のシステムでは介護スタッフの人数が圧倒的に足りません。全て個室にすることで建設費用は当然アップします。大半が補助金で建設されますが基は税金です。「要介護4」以上の重介護者は介護できないのではないかと思います。個人負担が払えず行き場を失う要介護者を誰が自宅で介護するのでしょうか。質素でよいから使いやすい施設をつくるべきだと思います。吉岡春紀院長の懸念は的中した。2008年7月22日の読売新聞は、新型特養の経営悪化を伝えた。開設2ヶ月前の05年10月、政府の社会保障費抑制策を受け、介護報酬が大幅に削減された。入居者から1人月額8万円の居住費を徴収できれば赤字にならず、借入金も返済できる計画だった。ところが、同時に導入された低所得者対策で、計算が狂った。施設が受け取る低所得者分の居住費に、月6万円(本人負担と公費補てん)という上限額が設けられたためだ。この結果、「居住費は、建設費用をもとに、入居者との契約で自由に設定できる」という当初の国の方針に沿って月6万円以上の料金を設定した施設では、軒並み経営が苦しくなった。「これからは特養も、質の高いハード、ソフトを目指せという国の方針に沿って整備したのに、はしごを外された気分。」2010年4月、利用者の負担軽減と供給を増やすために、厚労省は特養の個室の面積基準を8畳から6畳に狭める方針を打ち出したが、個室推進の方針を堅持している。この現状に対し、群馬県の大澤正明知事は以下のように語って厚労省の現状認識を批判した。「今入居されている方の中には、国民年金をフルに受給できない方もたくさんいらっしゃいます。理想論で『ユニット型』を進めるというのは、私は、現状認識が少し違うのではないかなという思いがあります。そのため、群馬県としては『多床室』も併設して進めたいと思っています。やはり、『多床室』と『ユニット型』では、一か月の入居費用も6万円前後の差があります。」長野県の社会福祉法人敬老園の理事長である斎藤俊明氏も、ブログで個室化に異議を唱えている。5ヶ所の特養。現入所者340人のうち、本日現在、平均年齢85歳(男性81歳、女性87歳)、男性27%、女性73%。平均介護度は4.3と重度です。女性が多いことは、介護サービス全体にいえますが、男性に比べて年金の額が低額の方が多いことも費用負担の少ない多床室のニーズが高い要因の一つでもあります。この春(2012年)開設した特養。個室の希望者が2%、50の個室を埋める苦労に比べ、多床室は、満床でスタートし、3月31日現在では、多床室希望の待機者が815人を超えています。就業構造基本調査によると、看護・介護するために離職した人数は、年間10万人前後を推移してきたが、最新のデータ(2006年10月から2007年9月)では、年間14万4800人に達した。長年在宅医療に携わっている小野沢滋医師によると、入所介護の費用を負担できない貧困家庭で、息子や娘が仕事を辞めて介護に専念せざるをえなくなっている事例が目立つという。彼の経験では、退職する息子、あるいは、娘の平均年齢は、52歳だとのこと。52歳で仕事を辞めると、彼らの生活資金が枯渇する。貧困が再生産される。無理な在宅介護は、虐待、自殺、殺人の原因となる。厚労省は、特養に対し、要介護度4、5の重度者を70%以上にすることを義務付けている。入所者の多くは認知症が進んでいる。厚労省の個室化方針には矛盾がある。重度の要介護者は個室だと目が届きにくく、介護もしにくい。個室化によるプライバシーの尊重より、介護しやすい多床室での手厚い介護が優先されるべきである。特養は、入所介護施設としては、利用者の負担が最も低い。現在、特養の入所待ちが、数十万人になり、「終のすみか」が圧倒的に不足している。「背景にあるのは、危機に立つ国家財政と、厚労省のかたくなとも思える在宅介護への誘導である」(河内孝『自衛する老後』新潮新書)。厚労省の方針は、高齢の要介護者を健康にして自宅に戻すことが可能であり、それを目指すことが正しいという無理な理念に基づいている。人生は、生老病死の順に進んでいく。老、病の後には死が来る。まれに、要介護者が、元気になって自宅に帰れたとしても、次はそうはいかない。独居を含めて、高齢者のみの世帯が増加し続けている。人生の終末期を個人に押し付けるのは不可能になった。超高齢化社会では、老病死を前提にして、社会全体で死を上手にこなしていかないと、不幸の総量を増やす。●厚労省のかたくなな態度はなぜ生じるのか歴史を俯瞰すると、家族と部族がいてそこで生産がほとんど成り立つような分節分化の時代、封建社会や資本家と被搾取階級という分類が可能な初期資本主義社会など階層分化の時代を経て、現代社会は、社会システムの機能分化の時代になった。現代社会では、医療を含めて、経済、学術、テクノロジーなどの専門分野は、社会システムとして、それぞれ世界的に発展して部分社会を形成し、その内部で独自の正しさを体系として提示し、それを日々更新している。例えば、医療の共通言語は統計学と英語である。頻繁に国際会議が開かれているが、これらは、医療における正しさや合理性を形成するためのものである。今日の世界社会は、このようなさまざまな部分社会の集合として成り立っている。それぞれの部分社会はコミュニケーションで作動する。ニクラス・ルーマンはコミュニケーションを支える予期に注目し、社会システムを、規範的予期類型(法、政治、行政、メディアなど)と認知的予期類型(経済、学術、テクノロジー、医療など)に大別した(文献2)。規範的予期類型は、「道徳を掲げて徳目を定め、内的確信・制裁手段・合意によって支えられる」。違背に対し、あらかじめ持っている規範にあわせて相手を変えようとする。違背にあって自ら学習しない。これに対し、認知的予期類型では知識・技術が増大し続ける。ものごとがうまく運ばないときに、知識を増やし、自らを変えようとする。「学習するかしないか―これが違いなのだ」。ルーマンは「規範的なことを普遍的に要求する可能性が大きく、その可能性が徹底的に利用されるときは、現実と乖離した社会構造がもたらされる」と警告する。例えば、耐震偽装問題に対する過熱報道をうけて、建築基準法が改正された。07年6月20日に施行されたが、あまりに厳格すぎたため、建築確認申請が滞ったままの異常な状態が続き、建築着工が激減した。多くの会社が倒産に追い込まれた。日本のGDPが1%近く押し下げられたとする推定もある。耐震偽装そのものによる実被害は知られていないが、過熱報道は日本経済と建築業界、そして日本国民に大被害をもたらした。東日本大震災で行政が迅速に対応できなかったのも、行政が実情ではなく、法律に基づく統治システムだったからである(文献3)。行政は,法,すなわち過去に作成された規範と前例に縛られている。しかも、法は、適切に運用されていなくても、国家の権威と暴力を背景にした強制力を有する。したがって,行政は、過去になかった事態に対し、未来に向かって、臨機応変に試行錯誤しつつ、最適な行動を選択することが原理的にできない。 肥満を目の敵にした特定検診でも感じたことだが、厚労官僚は、特定の個人や団体から聞いた規範色の濃い仮説に、安易に乗る傾向があるのではないか。仮説が法的に規範化されると後戻りが難しい。それにしても、特養個室化へのこだわりは強すぎる。現在(2012年6月)の社会・援護局長の山崎史郎氏が、課長時代に、特養の個室化を強力に推進したと聞く。行政は、科学と異なり、正しさより、法に基づく地位で発言権が決まる。厚労省のかたくなな態度には、人的要因があるかもしれない。●結論日本の国家財政が危機的状況にある中で、国民が高齢化し、孤独化している。格差が広がり、貧困層が増え続けている。生活保護を受給していない貧困層の中に、医療を受けにくくなっている人たちが相当数存在するのは間違いない。加えて、今後、首都圏では要介護者が爆発的に増加する。一方で、母子家庭問題に象徴されるように、若年者への社会保障があまりに軽視されすぎてきた。高齢者だけを優遇しすぎると、少子高齢化がさらに進み、高齢化対策が難しくなる。貧困化、孤独化が進む中で、厚労省がこだわる特養の個室化は、実情に合わない。需要の多い多床室の供給を大幅に増やすべきである。厚労省による在宅介護へのかたくなな誘導は悲劇を生む。現状の制度では、首都圏の爆発的な高齢化に対応できない。日本の財政状況で、万全を求める余裕はない。家族に頼らない質素な介護の方法を考え出す必要がある。医療・介護で雇用を増やすべきではあるものの、無駄遣いが許されるわけではない。医療・介護全体として費用を指標化し、全体として質素にしていく必要がある。必要な介護を提供するためには、高額な割に成果の少ない医療を保険診療から外すことも検討しなければならない。モラルハザードを防ぐためには、利用者による費用負担の大きさとサービス水準の逆転は可能な限り避けなければならない。「等しきは等しく、不等なるものは不等に扱わるべし」(アリストテレス)。 <文献>1 小松俊平, 渡邉政則, 亀田信介: 医療計画における基準病床数の算定式と都道府県別将来推計人口を用いた入院需要の推移予測. 厚生の指標, 59, 7-13, 2012.2 ニクラス・ルーマン:「世界社会」 Soziologische Aufkl?rung 2, Opladen, 1975. 村上淳一訳・桐蔭横浜大学法科大学院平成16年度教材)3 小松秀樹:大規模災害時の医療・介護. 『緊急提言集 東日本大震災 今後の日本社会の向かうべき道』pp64-73, 全労済協会. 2011年6月.

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ニューモシスチス肺炎治療薬「サムチレール内用懸濁液」発売

 グラクソ・スミスクラインは17日、同社のニューモシスチス肺炎治療薬「サムチレール内用懸濁液15%」(一般名:アトバコン、以下サムチレール)が薬価収載されたことを受け、同日より発売したことを発表した。サムチレールは世界20ヵ国以上でニューモシスチス肺炎治療・発症抑制薬として承認 サムチレールは、酵母様真菌であるニューモシスチス・イロベチーのミトコンドリア電子伝達系を選択的に阻害することにより抗ニューモシスチス活性を示すアトバコンを有効成分とするニューモシスチス肺炎治療・発症抑制薬。サムチレールはニューモシスチス肺炎治療の第一選択薬であるスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(ST合剤)の使用が副作用により困難な患者の治療の選択肢となるという。しかし、HIV感染患者におけるニューモシスチス肺炎の治療および発症抑制のために投薬される場合に限り、特例的に発売時より14日間の投薬期間制限が対象外となる。 サムチレールは英GlaxoSmithKline社により開発され、2011年12月現在、世界20ヵ国以上でニューモシスチス肺炎に対する標準的な治療および発症抑制薬として承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2012_01/P1000730.html

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小児重症肺炎、地域の女性医療ワーカーによる診断と抗菌薬投与が有効

パキスタン農村部地域の女性医療ワーカー(LHW)は、小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、十分な役割を果たし得ることが、パキスタン・Aga Khan大学のSajid Soofi氏らの調査で示された。肺炎は世界的に5歳未満の小児の主要な罹病および死亡の原因である。パキスタンでは、肺炎による死亡率は都市部に比べ医療施設が少ない農村部で高く、自宅で死亡する患児が多いという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。女性医療ワーカーによる重症肺炎管理の有用性を評価研究グループは、重症肺炎の管理において、地域の医療従事者による経口抗菌薬投与が小児の自宅での死亡率の抑制に有効か否かを検証するために、パキスタン・シンド州の農村地域であるMatiari地区でクラスター無作為化試験を実施した。地域の女性医療ワーカー(LHW)が、肺炎(WHO定義)が疑われる介入群の小児のスクリーニングを行い、重症肺炎と診断した小児には自宅でアモキシシリンシロップ(90mg/kg、1日2回;商品名:クラバモックス)を5日間経口投与した。対照群の小児には、コトリモキサゾール(ST合剤)を1回経口投与したうえで、近隣の医療施設に入院させて抗菌薬を静注投与した。両群ともに、第2、3、6、14日目にLHWが小児の自宅を訪問してフォローアップを行った。主要評価項目は、登録後6日目までに発生した治療不成功とした。18の地区(クラスター)を介入群あるいは対照群に無作為に割り付けた。治療不成功率:介入群8%、対照群13%2008年2月13日~2010年3月15日までに、生後2~59ヵ月の小児が登録された。介入群は2,341例(年齢中央値13ヵ月、男児56%)が、対照群は2,069例(同:10ヵ月、55%)が解析の対象となった。治療不成功率は、介入群が8%(187/2,341例)、対照群は13%(273/2,069例)だった。調整済みリスク差は-5.2%(95%信頼区間:-13.7~3.3%)であった。第6日目までに2例が死亡し、第7~14日の間に1例が死亡した。重篤な有害事象は確認されなかった。著者は、「パキスタン農村部の小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、地域のLHWは十分な役割を果たすことができた」と結論づけ、「この戦略は、医療施設への紹介が困難な環境にある重症肺炎患児に対し有用であり、小児肺炎の発見や管理の鍵となると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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成人への肺炎球菌ワクチン接種、23価よりも13価のほうが費用対効果が大きい

 成人への肺炎球菌ワクチン接種に関して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)との費用対効果について比較した結果、PCV13接種に高い費用対効果があることが報告された。ただし報告では、前提条件次第で逆転もあり得ることも示されている。米国・ピッツバーグ医科大学のKenneth J. Smith氏らが、50歳成人の仮定コホート群を対象として行った解析の結果で、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。同種の検討はこれまで行われていなかった。65歳でPCV13接種、2万8,900ドル/QALYとPPSV23接種より費用対効果が大きい 研究グループは、米国人50歳の仮定コホートを用いて、PCV13接種とPPSV23接種についての費用対効果についてシミュレーションを行った。 ワクチン戦略と推定される有効性については、デルフォイ専門家委員会によって呈された。乳幼児へのPCV13ワクチン接種による間接的な(集団免疫)効果は、PCV7で観察された効果に基づいて推定された。 モデル・パラメータのためのデータ・ソースには、疾病管理予防センター(CDC)Active Bacterial Coreサーベイランス、国立病院Discharge Survey、全国入院患者標本データと国民健康保険Interview Surveyが含まれていた。 主要アウトカムは、予防できた肺炎件数と、質で調整した生存年数(QALY)増加にかかる費用だった。 結果、現行推奨基準(例えば65歳時のワクチン接種、共存症がある場合はそれより低年齢でのワクチン接種)のPPSV23接種に代わってPCV13を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は、全く接種しない場合との比較で、2万8,900ドルで、PPSV23接種戦略(同3万4,600ドル)よりも費用対効果に優れていた。PCV13の非菌血性肺炎球菌肺炎への有効性など、前提を変えることで結果は逆転も また、50歳と65歳でPCV13を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は、PPSV23接種に代わってPCV13を接種した場合との比較で、4万5,100ドルだった。さらに、50歳と65歳でPCV13を接種した上で、75歳でPPSV23を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は49万6,000ドルだった。 Smith氏は、「費用対効果の絶対基準はないが、一般的にQALY獲得の介入コストが2万ドル未満なら採用エビデンスは強いとみなされ、2万~10万ドルなら中等度、10万ドル以上なら弱いとみなされている」と述べている。 一方こうした結果は、感受性解析でも強固であったが、前提となる、PCV13の非菌血性肺炎球菌性肺炎に対する有効性を下げたり、乳幼児へのワクチン接種による集団免疫効果を上げれば逆転した。その場合は、現行推奨されるPPSV23接種のほうが、費用対効果が高かった。

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死後画像検査による死因判定、CTがMRIよりも良好

従来の剖検との比較では、死後画像検査としてのCTはMRIよりも死因の同定の正確度(accuracy)が優れることが、英国・オックスフォード大学付属John Radcliffe病院のIan S D Roberts氏らの検討で示された。剖検に反対する世論の高まりにより、侵襲性が最小限の死因判定法の確立を目指し検討が進められている。画像検査による判定法が有望視されているが、その正確度は明らかでないという。Lancet誌2012年1月14日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載の報告。CT、MRIによる死後画像検査と完全剖検所見を比較研究グループは、成人死亡例を対象に、死後画像検査としてのCTおよびMRIの正確度を、完全剖検所見との比較において評価する検証試験を行った。試験は、2006年4月~2008年11月に、マンチェスターとオックスフォードの2施設が参加して行われた。成人の死亡例に対し全身CTおよびMRIを行った後、完全剖検を実施した。CTとMRIの結果は、剖検所見をマスクされた2名の放射線科医が別個に報告した。その後、4名の放射線科医が協議を行って死因の信頼性を検討し、剖検の必要性を評価した。剖検との死因不一致率はCTがMRIよりも10%低い任意に抽出された182人の成人死亡例が対象となった。剖検の判定との死因の不一致率は、CTが32%、MRIは43%で、CTが10%低かった。182人中、CTでは62人(34%)が、MRIでは76人(42%)が、両画像検査の合意報告では88人(48%)が剖検不要と判定された。剖検不要と判定された死亡例のうち、剖検との死因不一致率はCTが16%、MRIが21%、合意報告は16%であり、死因不明例に比べ有意に低かった(p<0.0001)。画像検査による死因の誤判定で最も頻度が高かったのは、虚血性心疾患が27人、肺塞栓症が11人、肺炎が13人、腹腔内病変が16人であった。著者は、「従来の剖検との比較では、CTはMRIよりも死因の同定の正確度が優れていた。誤判定率は臨床的な死亡証明書と同等であり、法医学的な目的では許容範囲内であった」と結論し、「CTとMRIはいずれも突然死の原因を誤判定する頻度が高く、これらの弱点に取り組まないうちは、従来の剖検に代えて死後画像検査を導入しても、死亡統計に系統的誤差が生じると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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認知症高齢者、入院率は1.4倍に増大

高齢者において、認知症は入院を有意に増大するリスク因子であることが米国・ワシントン大学のElizabeth A. Phelan氏らによる調査の結果、報告された。認知症高齢者の入院率はそうでない高齢者の約1.4倍に上り、なかでも細菌性肺炎や尿路感染症のような外来治療可能な疾患での入院率が、約1.8倍多かったという。同氏らが3,000人超の高齢者について調べた結果で、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。補正前入院率、非認知症は200件/1,000人・年、認知症は419件/1,000人・年研究グループは、65歳以上の3,019人の1994~2007年のデータについて、後ろ向き縦断コホート調査を行った。 主要評価項目は、認知症の有無による、全原因入院率や外来治療可能疾患(ambulatory care–sensitive conditions:ACSC)による入院率とした。結果、追跡期間中に認知症を発症したのは494人で、うち427人(86%)が1回以上入院した。認知症を発症しなかった2525人では、うち1478人(59%)が入院した。補正前入院率は、非認知症群が200件/1,000人・年だったのに対し、認知症群は419件/1,000人・年に上った。認知症群の全入院率比は1.41倍、ACSCによる入院率比は1.78倍年齢、性別やその他交絡因子を補正後、認知症群の非認知症群に対する入院率比は、1.41(95%信頼区間:1.23~1.61、p<0.001)だった。ACSCによる入院に関する同入院率比は、1.78(同:1.38~2.31、p<0.001)とさらに高かった。入院の原因器官系別に入院率をみたところ、大半で認知症群が非認知症群より有意に高率だった。また細菌性肺炎やうっ血性心不全、尿路感染症による入院は、ACSCでの入院の3分の2を占め、いずれの補正後入院率も、認知症群が非認知症群より有意に高率だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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インフルエンザウイルスによる小児の急性下気道感染が世界的な疾病負担に

インフルエンザウイルスは、急性下気道感染(ALRI)罹患小児で同定される最も一般的な病原体であり、世界的な医療サービスの実質的な負担となっていることが、英国・エジンバラ大学のHarish Nair氏らの調査で明らかとなった。肺炎や気管支炎などのALRIは小児の罹病や死亡の主な原因であり、ALRIの新規罹患者は毎年、世界で約1億5,600万人に上り、2008年には約156万人の小児が感染の結果として死亡している。一方、小児における季節性インフルエンザウイルスに起因する世界疾病負担は明らかでなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月11日号)掲載の報告。インフルエンザウイルスによるALRIの世界的な発生率、死亡率を評価研究グループは、5歳未満の小児におけるインフルエンザウイルスによる下気道感染症の世界的な発生率および死亡率を評価するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。1995年1月1日~2010年10月31日に報告された試験および未報告の16件の地域住民ベースの調査を系統的にレビューしたデータを用いて、5歳未満の小児におけるインフルエンザのエピソード、インフルエンザウイルス関連ALRIおよびインフルエンザウイルス関連の重篤なALRIの発生率を年齢別に推算した。得られた発生率を2008年の推定世界人口に適用してこの年の推定値を算出した。また、インフルエンザウイルス関連ALRIによる死亡率を算定した。インフルエンザウイルス関連ALRIによる小児の死亡は2万8,000~11万1,500例43件の試験が同定され、約800万人の小児のデータが得られた。2008年に、世界の5歳未満の小児のうち9,000万人(95%信頼区間[CI]:4,900万~1億6,200万)が新たにインフルエンザに罹患し(9試験のデータ)、2,000万人(同:1,300万~3,200万)にインフルエンザウイルス関連ALRIが発生し(6試験のデータ、全小児ALRIの13%に相当)、100万人(100万~200万)がインフルエンザウイルス関連の重篤なALRIを発症した(39試験のデータ、すべての重篤な小児ALRIの7%に相当)。2008年における5歳未満の小児のインフルエンザウイルス関連ALRIに起因する死亡は2万8,000~11万1,500例と推算されたが、その99%は開発途上国で発生していた。発生率および死亡率は年ごとに実質的に変動していた。著者は、「インフルエンザウイルスはALRI罹患小児で同定される最も一般的な病原体であり、世界的な医療サービスの実質的な負担となっている」と結論し、「小児のALRIによる死亡において、インフルエンザウイルスがどのような役割を果たしているかを正確に推定するにはデータが不十分である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症肺炎児への母親による抗菌薬投与、医療施設紹介よりも有効

パキスタンの重症肺炎の小児に対し、地域の女性医療従事者(LHW)が母親に経口抗菌薬を提供する方法は、LHWが経口抗菌薬を投与後に医療施設を紹介する標準治療よりも有用なことが、Save the Children USパキスタン支局のAbdul Bari氏らによる検討で示された。WHOの定義による重症肺炎児に対しては、経口コトリモキサゾール(ST合剤、商品名:バクタほか)を投与後に専門医療施設へ紹介することが推奨されている。しかし、医療資源が乏しい環境では患児が実際に専門施設を受診することは困難で、適切な治療へのアクセス率は低いという。Lancet誌2011年11月19日号(オンライン版2011年11月11日号)掲載の報告。母親による経口アモキシシリン投与の有用性をクラスター無作為化試験で評価研究グループは、重症肺炎の患児に対しLHWが経口アモキシシリン(商品名:アモリン、サワシリンほか)を用いて行う地域住民ベースの疾患管理の有用性を評価するクラスター無作為化試験を実施した。パキスタン・Haripur地区の28の医療施設を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。対象は、試験対象地域に居住するWHOの定義による重症肺炎の生後2~59週の患児とした。介入群には、LHWから母親に使用の手引きとともに経口アモキシシリン(生後2~11ヵ月児:80~90mg/日あるいは375mg×2回/日、生後12~59ヵ月児:625mg×2回/日)が提供された。対照群では、LHWが初回分の経口コトリモキサゾール(生後2~11ヵ月児:スルファメトキサゾール200mg+トリメトプリム40mg、生後12~5年児:スルファメトキサゾール300mg+トリメトプリム60mg)を投与し、患児を標準的治療を行う医療施設に紹介した。参加者、医療提供者、効果判定者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、6日目までの治療不成功とし、クラスターで調整したper protcol解析を行った。治療不成功率が半減介入群に14施設(1,995例)、対照群にも14施設(1,477例)が割り付けられ、それぞれ1,857例、1,354例の患児が解析の対象となった。クラスター調整後の6日目まで治療不成功率は、介入群が9%(165/1,857例)と、対照群の18%(241/1,354例)に比べ有意に低かった(リスク差:-8.9%、95%信頼区間:-12.4~-5.4)。さらにベースラインの共変量で調整したところ、このリスク差は小さくなったが有意差は維持された(同:-7.3、-10.1~-4.5)。介入群で1例、対照群では2例が死亡した。有害事象としては、介入群で下痢が4例、皮疹が1例に、対照群では下痢が3例に認められた。著者は、「この地域住民ベースの疾患管理は、治療導入の遅れや、家計、医療費の負担を抑制し、重症肺炎児の標準治療となる可能性がある」と結論し、「本試験は同等性の検証を目的にデザインされたが、得られた知見は介入群の優位性を示すものであった」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬 カナキヌマブ

2011年9月、カナキヌマブ(商品名:イラリス)がクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の適応を国内で初めて取得した。この承認にあたり2011年11月8日(火)に「ノバルティスファーマ・メディアフォーラム」が開催された。演者の横田俊平氏(横浜市立大学大学院 医学研究科 発生成育小児医療学 教授)、および「CAPS患者・家族の会」代表を務める利根川聡氏の講演内容をレポートする。待望の新薬の承認本講演の冒頭において、横田氏は、「これまで、国内でCAPSに適応のある薬剤がなかった。そのため、患者さんは日々進行する辛い症状に耐え、そのご家族もまた、その姿を目の当たりにし、苦しみ続けてきた。そのような方々にとって、カナキヌマブは、まさに長い間待ち望まれてきた新薬である」と述べ、カナキヌマブが画期的な新薬であることを強調した。CAPSとは炎症性サイトカインのひとつであるヒトインターロイキン(IL)-1βが過剰に産生することで、炎症反応が起こる慢性自己炎症疾患群である。生後すぐあるいは幼児期より発症し、生涯を通じて発疹、発熱、関節痛などが繰り返され、重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性がある。国内では標準的治療ガイドラインがなく、また極めて稀な疾患であることから確定診断に至らない患者さんも多い1)~3)。現在、国内の患者数は30名程度とされるが、未診断の患者を含めると全国に100名くらいの患者がいると見込まれている。投与間隔8週間で効果を発揮カナキヌマブはヒトインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体で8週毎に皮下投与する。国内における臨床試験では、投与24週以内に完全寛解した患者さんの割合は94.7%で、投与48週以内に完全寛解した割合は100%であった。横田氏によれば、CAPS治療はこれまで、対症療法しかなかったが、カナキヌマブの登場により、CAPSの炎症症状を速やかに寛解させることができるようになったという。それは患者のQOLや予後の改善だけでなく、家族にとっても大変喜ばしいことであるとも述べた。治療上の注意点国内臨床試験における主な副作用は19例中12例(63.2%)に認められた。主な副作用は鼻咽頭炎3例(15.8%)、口内炎2例(10.5%)であった。横田氏はCAPS治療を行う上で感染症には注意が必要であると述べている。カナキヌマブの特性上、投与により発熱や炎症が治まるため、たとえば肺炎であるにも関わらず、肺炎と診断されないケースがあるという。また、世界的にみても、発売して間もない薬剤であるため、長期的な評価に乏しく、今後も慎重な経過観察が必要とも述べた。CAPS患者・家族の会の存在カナキヌマブは申請から8ヵ月間という短期間での承認に至ったが、その背景にはCAPS患者・家族の会の存在も大きい。CAPS患者・家族の会の代表を務める利根川聡氏のご息女は、1歳になる前にCAPSを発症し、全身の発疹、発熱、関節痛などにより、車いす生活を余儀なくされた。当時、CAPS治療は対症療法しかなかったため、ただひたすら苦しみに耐えるわが子の姿を見守る日々が続いた。しかし、カナキヌマブでの治療を受け、それらの症状は次第に寛解し、今では外で運動することができるまでになったという。利根川氏にとって何より嬉しかったことは毎日、苦しい表情をしていた我が子に笑顔が戻り、周囲の子供達と同じような生活が送れるようになったことだという。しかし、高額な薬剤費が家族の経済的な負担になっているという課題も残されている。現在、CAPS患者・家族の会では、国による患者支援を受けるため、難病指定・特定疾患の認定を要望する活動を続けている。まとめカナキヌマブは世界的にみても、発売されて間もない薬剤であるため、今後も慎重な経過観察が必要であるといえる。しかしながら、カナキヌマブの登場により、今後CAPS治療は大きく変わっていくであろう。これまでCAPS患者はCAPSと診断されず、施設を転々とするケースも多かったという。この薬剤の登場を契機に、より多くの医療関係者がCAPSという希少疾患に対する見識を深め、早期診断、早期治療を行っていくことも次の課題といえよう。

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