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新型コロナ陽性率とBCG接種歴の関係は?/JAMA

 一時期、BCGワクチン接種(以下、BCG接種)をしている人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりにくい、というニュースが世界中を賑わした。ドイツやアメリカではBCG接種によるCOVID-19予防の有用性を検証するために臨床試験も始まっており、動向が気になるところである。このような状況に先駆け、今回、イスラエル・テルアビブ大学のUri Hamiel氏らは「小児期のBCG接種が成人期のCOVID-19に対して保護効果があるという考えを支持しない」という研究結果を発表。本研究で小児期のBCG接種群と非接種群での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の結果割合が類似していたことを明らかにした。ただし、重症者の症例数が少ないため、BCG接種状況と疾患重症度との関連については結論付けられないとしている。JAMA誌オンライン版5月13日号のリサーチレターに報告した。 イスラエルでは1955~1982年の間、国家政策として新生児に対する BCG接種を行い、接種率は90%以上だった。しかし、1982年以降のBCG接種対象者は結核流行地からの移住者に限定されていた。 本研究は2020年3月1日~4月5日の期間、COVID-19症状(咳嗽、呼吸苦、発熱)を有する全症例を対象にRT-PCR法を実施、検査陽性率を1979〜1981年生まれ(39〜41歳)と1983~1985年生まれ(35〜37歳)で比較検討した大規模な人口ベースコホート。本研究の限界はイスラエルで出生しておらずワクチン接種状況が不明な人口が含まれたことだった。 主な結果は以下のとおり。・検査結果7万2,060件のうち、1979~1981年に生まれの結果は3,064件(出生コホート:1.02%、男性:49.2%、平均年齢40歳)、BCG非接種である1983~1985年生まれの結果は2,869件であった(同:0.96%、男性:50.8%、平均年齢35歳)。・SARS-CoV-2陽性となった割合について、BCG接種群とBCG非接種群で統計的有意差はなかった(361例[11.7%] vs. 299例[10.4%]、接種群との差1.3%、95%信頼区間[CI]:-0.3~2.9%、p=0.09)。・また、10万人あたりの検査陽性の割合にも統計的有意差はなかった(BCG接種群121 vs.BCG非接種群100、各群差:21、95%CI:-10〜50、p=0.15) 。・各群において重症疾患(機械的換気またはICU入室)は1例いたものの、死亡は報告されなかった。

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看護施設のCOVID-19の感染拡大を阻止するポイント/NEJM

 高度看護施設内では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症が急速に拡大する可能性があるという。米国・疾病管理予防センター(CDC)COVID-19緊急対策部のMelissa M. Arons氏らは、2020年2月下旬にCOVID-19の集団発生を認めた同国ワシントン州キング郡の高度看護施設でSARS-CoV-2の伝播状況を調査し、入所者の感染の同定における、症状に基づくスクリーニングの妥当性を評価した。その結果、施設内でのSARS-CoV-2の迅速かつ広範囲の伝播が実証されるとともに、検査結果が陽性であった入所者の半数以上が検査時に無症状であり、感染を広める原因となった可能性が示唆された。また、症状にのみ重点を置いた感染制御戦略は、感染の防止には十分でなく、検査に基づく戦略の導入を考慮する必要があることがわかった。NEJM誌オンライン版2020年4月24日号掲載の報告。2回の点有病率調査、症状で4群に分類 研究グループは、キング郡の116床の高度看護施設(4つのユニットで構成)において、1週間間隔で点有病率調査を2回連続で行った。 施設入所者の同意を得て、鼻咽頭および口咽頭の拭い液を用いたSARS-CoV-2検査(リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法[rRT-PCR]、ウイルス培養、配列決定[sequencing])を実施した。また、直近の14日間に入所者が発症した症状を記録した。検査陽性で無症状の入所者は、7日後に再評価した。 SARS-CoV-2に感染した入所者は、典型的症状(発熱[>37.8℃]、咳、息切れ)、非典型的症状(悪寒、倦怠感、錯乱、鼻漏、鼻閉、咽頭痛、筋肉痛、めまい、頭痛、吐き気、下痢)、症状発現前、無症状の4つに分けられた。56%が無症状、無症状者の半数以上に認知機能障害 2020年3月5日、最初のSARS-CoV-2陽性の入所者1人が特定された(3月2日に症状が出て3日に検査)。この最初の検査が行われた3月3日の時点で、施設には89人が入所していたが、23日後の3月26日現在、点有病率調査や臨床評価、死後の検査で57人(64%)がSARS-CoV-2陽性となった。 1回目の点有病率調査(3月13日)には76人が参加した。このうち、1回目または2回目(3月19~20日)の調査で48人(63%)がSARS-CoV-2陽性と判定され、28人は陰性だった。陽性者(平均年齢78.6±9.5歳、併存疾患罹患率98%、有症状率44%)と陰性者(73.8±11.5歳、100%、39%)で、人口統計学的背景因子や併存疾患、症状は類似していた。 陽性者48人のうち、検査時に17人(35%)が「典型的症状」、4人(8%)が「非典型的症状」を呈し、27人(56%)は「無症状(安定した慢性症状の12人を含む)」だった。無症状の27人のうち15人(56%)には認知障害が認められ、有症状者でもほぼ同様の割合であった。 検査陽性から7日後には、「無症状」の27人のうち24人(89%)で症状が発現し、「症状発現前」に再分類された。症状発現までの期間中央値は4日(IQR:3~5)。無症状者で最も多かった新規症状は、発熱(71%)、咳(54%)、倦怠感(42%)だった。症状発現前や無症状でもウイルス増殖、症状発現の-6~9日で分離 rRT-PCR陽性の46検体のうち31検体でSARS-CoV-2の増殖が確認された。ウイルス増殖は、典型的症状の16人中10人、非典型的症状の4人中3人でみられたが、症状発現前の24人中17人と、無症状群の3人中1人でも認められた。 生存ウイルスは、典型的症状の最初のエビデンスが得られた日の6日前から9日後までに採取した検体から分離された。倍加時間3.4日、死亡率26% 入所者の感染倍加時間は3.4日(95%信頼区間[CI]:2.5~5.3)で、施設周辺のキング郡の倍加時間5.5日(4.8~6.7)に比べ急速だった。また、4月3日現在、3月26日までに確認されたSARS-CoV-2感染者57人のうち11人が入院し(3人は集中治療を要した)、15人が死亡した(死亡率26%)。 施設の4つのユニットのうち、最初の感染が起こったと推定され、最初のSARS-CoV-2感染者が居住していた第1ユニットは、1回目の点有病率調査終了時に施設内で最も高い有病率を示した。その後、第2~4ユニットでもSARS-CoV-2感染が確認され、その有病率は持続的に増加した。常勤職員の19%が陽性、検査に基づく戦略が必要 1回目の点有病率調査(3月13日)までに、施設の常勤職員138人中11人(8%)がSARS-CoV-2陽性となった。 3月26日までに、138人中55人(40%)が症状を訴え、51人(37%)が検査を受け、26人(19%)が陽性であった。この検査陽性26人のうち17人が看護職員で、9人は勤務時間中に複数のユニットを通じてサービスを提供する職種(セラピスト、環境サービス、食事サービス)であった。COVID-19罹患職員に入院した者はいなかった。 34人の入所者の39の検体で塩基配列の解析が行われた。すべての配列は、ワシントン州におけるCOVID-19患者の過去の解析で報告された配列と同一または著しく類似していた。34人の入所者のうち、27人(79%)が1ヌクレオチド差の2つの遺伝子クラスターに適合する配列を持っていた。 著者は、「これらの知見は、ほぼ同時期に同じ郡の別の看護施設で起きたCOVID-19集団感染ときわめて類似している」とし、「看護施設の職員は、施設内でSARS-CoV-2感染が確認された場合、症状の有無にかかわらず、個人用保護具(PPE)を使用するなど、さらなる伝播を防御するための追加戦略を実施すべきであり、感染した入所者と職員を同定して隔離するために、検査に基づく戦略を考慮する必要がある」と指摘している。

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第7回 緊急事態宣言解除、補正予算案で医療機関は救われるか?

<先週の動き>1.緊急事態宣言解除、補正予算案で医療機関は救われるか?2.感染予防と経済活性化の両立を目指し、提言が取りまとめられた3.新型コロナ感染の第二波に備え、大都市で病床整備の動き4.マスクに続き、消毒液なども転売禁止に5.国内の新型コロナウイルスによる超過死亡とは1.緊急事態宣言解除、補正予算案で医療機関は救われるか?政府は、大都市などを除く39県において緊急事態宣言の解除を行った一方で、解除されなかった地域における、宣言解除の基準を検討している。感染状況や医療提供体制などから総合的な判断を行うとされ、「直近1週間で人口10万人当たりの新規感染者が0.5人以下」が目安となる見込み。今回の新型コロナ感染拡大は、国民の生活基盤にも大きな影響が出ており、医療機関の定期受診や検診などが延期され、遠隔診療などが普及するきっかけとなった。今後の影響についは、定期的な検査を含め、受診が必須となる患者のアクセス向上が予想される一方、病状が安定している患者については、診療間隔が開いたことで、疾病管理やアドヒアランスの低下など、患者が不利益を被ることがないようにサポートする必要があると考えられる。また、経営悪化による閉院・廃業に追い込まれる医療機関や介護施設が増えることで、地域医療体制の悪化が懸念されており、政府は今後、第二次補正予算案の取りまとめに動く。日本医師会は医療機関の窮状を訴え、財政的な支援を求めている。(参考)39県で“宣言解除” 「解除基準」提言へ(日テレNEWS24)首相、第2次補正予算案は経済対策と医療体制の充実を柱に 参院本会議(毎日新聞)第2次補正予算に向けた医療機関等への支援に関する要望について(日本医師会)2.感染予防と経済活性化の両立を目指し、提言が取りまとめられた緊急事態宣言が解除された翌日に開催された内閣府の経済財政諮問会議では、「攻めの政策運営で感染予防と経済活性化の両立を図る~経済活動の再起動と将来見通し明確化への提言~」が取りまとめられた。経済活動の再起動に向けて、感染拡大防止のための医療体制のボトルネック解消に全力を挙げつつ、より経済活動を拡大させる必要があるとし、国民や企業が安心できる将来見通しを示すことを目指し、骨太の方針に盛り込まれる見込み。「新型コロナウイルス感染症を踏まえた科学技術・イノベーション政策」における具体的な施策として、新型コロナ追跡アプリなどによる感染拡大防止に資するIT活用や、研究のデジタル化・リモート化、AIなどへの研究開発投資が盛り込まれている。これらが実現されれば、今後の日本社会には大きな変革がもたらされるだろう。(参考)令和2年 第7回経済財政諮問会議 資料(内閣府)資料3-1 攻めの政策運営で感染予防と経済活性化の両立を図る資料7 新型コロナウイルス感染症を踏まえた科学技術・イノベーション政策3.新型コロナ感染の第二波に備え、大都市で病床整備の動き4月の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大ピーク時、大都市圏の自治体において、患者の受け入れに際して病床不足があったため、第二波の襲来に備え、大阪や神奈川県、千葉県などで独自の動きが見られる。大阪府では、他疾患で入院していた患者を他院に転院させた上で、大阪市立十三市民病院をCOVID-19専門病院として稼働させ、22日より本格的に始動させる方針である。神奈川県では、COVID-19重点医療機関を受託した湘南鎌倉総合病院が、県の指示下、敷地に隣接する湘南ヘルスイノベーションパークに180床の仮設専用病床を新たに建設し、千葉県においても、千葉西総合病院が、新型コロナ患者を受け入れるための独立した伝染性感染症病棟を3週間で建設するなど、受け入れ態勢を整えている。(参考)「新型コロナウイルス感染症」中等症患者を専門的に受入れることに伴う影響について(大阪市立十三市民病院)COVID-19重点医療機関受託に関して(湘南鎌倉総合病院)伝染性感染症病棟について(千葉西総合病院)4.マスクに続き、消毒液なども転売禁止に民間における高額取引が問題となり、3月15日にマスクの転売禁止が行われているが、医療・介護現場において不足が続く消毒液についても、転売規制がかかることになった。消毒液やアルコール含有ジェルのほか、除菌シート、消毒用に代用できるアルコール濃度の高い酒などが対象となる見通しで、この法律に違反すると、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる。政令は22日に閣議決定する見通し。(参考)消毒液の転売禁止へ、経済活動再開で品薄拍車を懸念(福井新聞)5.国内の新型コロナウイルスによる超過死亡とは世界では、新型コロナウイルスによる死亡者数がすでに31万人を超えるとされているが、検査体制の不備などがあり、実態を反映していないという指摘もある。このため、各国の死亡統計を元に全死亡数を前年などと比較して「超過死亡」を調べ、新型コロナウイルスの影響を評価する動きがある。超過死亡には、新型コロナとは直接関連のない死亡(医療崩壊などによってほかの疾患の治療を受けられなかった患者などの死亡)を含む。わが国においては、最も感染者数の多い東京都の4月1日時点の推計人口データが公表され、それを元に横浜市立大学の五十嵐 中准教授らが考察している。国内の状況を例年と比較すると、インフルエンザの収束が早かったことも影響するかもしれないが、現在のデータからは、海外のような急速な死亡者数の増加は認められていない。今後、4月以降の死亡数などを含めた検討が必要だろう。(参考)東京都の人口(推計)トップページ(東京都の統計)東京都内の死亡者数、新型コロナ感染症拡大局面でも急増見られず(ブルームバーグ)東京都の死亡率、3月も超過はみられず(横浜市立大学 五十嵐 中准教授)Global coronavirus death toll could be 60% higher than reported

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COVID-19重症化予測、血小板数とFARが有用か

 COVID-19の重症化予測マーカーを調べるため、中国・Wenzhou Medical UniversityのXiaojie Bi氏らがCOVID-19患者の血液検査データを検討した結果、フィブリノーゲン/アルブミン比(FAR)と血小板数が重症化の独立したリスク因子であることがわかった。また、FAR 0.0883未満かつ血小板数13.5万/μL以上の場合、重症化の可能性を除外しうることが示された。Platelets誌オンライン版2020年5月5日号に掲載。 本研究では、Taizhou Public Health CenterにおけるCOVID-19患者113例について臨床的特徴と血液検査データを解析した。COVID-19の重症化を予測するためのバイオマーカーを特定するために多変量Cox分析を行った。その結果に基づいてノモグラムを作成し、予測精度を検量線、決定曲線、臨床影響曲線、Kaplan-Meier分析により評価した。さらに感度、特異度、的中率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・重症患者では、フィブリノーゲン、FAR、Dダイマーが高く、血小板数、アルブミンは低かった。・多変量Cox分析の結果、FARと血小板数が重症化の独立したリスク因子であることが示され、最適カットオフ値は、FARが0.0883、血小板数が13.5万/μLであった。・C-index(0.712、95%CI:0.610~0.814)、決定曲線、臨床影響曲線により、ノモグラムで重症化が予測可能であることが示された。・さらに、Kaplan-Meier分析の結果、FARが0.0883未満かつ血小板数が13.5万/μL以上の患者において潜在的リスクが減少することが示された。・このモデルの陰性的中率は0.9474(95%CI:0.845~0.986)であった。

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心血管疾患を持つCOVID-19患者、院内死亡リスク高い/NEJM

※本論文は6月4日に撤回されました。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心血管疾患を有する集団で過度に大きな影響を及ぼす可能性が示唆され、この臨床状況におけるACE阻害薬やARBによる潜在的な有害作用の懸念が高まっている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らは、国際的なレジストリに登録された入院患者8,910例(日本の1施設24例を含む)のデータを解析し、基礎疾患として心血管疾患を有するCOVID-19患者は院内死亡のリスクが高いことを示した。また、院内死亡へのACE阻害薬およびARBの有害な影響は確認できなかったとしている。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。11ヵ国169病院のデータを用いた観察研究 研究グループは、Surgical Outcomes Collaborative(Surgisphere)に登録されたアジア、欧州、北米の11ヵ国169病院のデータを用いた観察研究を行った(ブリガム&ウィメンズ病院の助成による)。 対象は、2019年12月20日~2020年3月15日の期間に、COVID-19で入院し、2020年3月28日の時点で院内で死亡または生存退院した患者であった。 解析時に退院状況が確認できたCOVID-19患者8,910例(北米1,536例、欧州5,755例、アジア1,619例)のうち、515例(5.8%)が院内で死亡し、8,395例は生存退院した。ベースライン時に有意差がみられた背景因子 院内死亡例は生存例に比べ、高齢(平均年齢55.8±15.1歳vs.48.7±16.6歳、群間差:-7.1、95%信頼区間[CI]:-8.4~-5.7)で、白人(68.2% vs.63.2%、-5.0、-9.1~-0.8)および男性(女性34.8% vs.40.4%、5.6、1.3~10.0)が多く、糖尿病(18.8% vs.14.0%、-4.8、-8.3~-1.3)、脂質異常症(35.0% vs.30.2%、-4.8、-9.0~-0.5)、冠動脈疾患(20.0% vs.10.8%、-9.2、-12.8~-5.7)、心不全(5.6% vs.1.9%、-3.7、-5.8~-1.8)、心臓不整脈(6.8% vs.3.2%、-3.6、-5.8~-1.4)の有病率が高く、COPD(6.2% vs.2.3%、-3.9、-6.1~-1.8)や現喫煙者(8.9% vs.5.3%、-3.6、-6.2~-1.1)の割合が高かった。 入院時の薬物療法は、院内死亡例に比べ生存例でACE阻害薬(3.1% vs.9.0%、5.9、4.3~7.5)とスタチン(7.0% vs.9.8%、2.8、0.5~5.1)の使用が多かった。独立のリスク因子は高齢、冠動脈疾患、心不全、喫煙など 院内死亡リスクの増加と独立の関連が認められた因子は以下のとおり。 年齢65歳超(院内死亡率:65歳超10.0% vs.65歳以下4.9%、オッズ比[OR]:1.93、95%CI:1.60~2.41)、冠動脈疾患(10.2% vs.冠動脈疾患のない患者5.2%、2.70、2.08~3.51)、心不全(15.3% vs.心不全のない患者5.6%、2.48、1.62~3.79)、心臓不整脈(11.5% vs.心臓不整脈のない患者5.6%、1.95、1.33~2.86)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(14.2% vs.COPDのない患者5.6%、2.96、2.00~4.40)、現喫煙者(9.4% vs.元喫煙/非喫煙者5.6%、1.79、1.29~2.47)。 院内死亡の増加には、ACE阻害薬(院内死亡率:2.1% vs.ACE阻害薬非投与例6.1%、OR:0.33、95%CI:0.20~0.54)およびARB(6.8% vs.ARB非投与例5.7%、1.23、0.87~1.74)の使用との関連はみられなかった。スタチンの使用(4.2% vs.スタチン非投与例6.0%、0.35、0.24~0.52)は、ACE阻害薬と同様に、院内死亡のリスクが低かった。 また、女性は男性に比べ、院内死亡リスクが低かった(5.0% vs.6.3%、OR:0.79、95%CI:0.65~0.95)。 著者は、「これらの知見は、COVID-19で入院した患者では、基礎疾患としての心血管疾患は院内死亡リスクの増加と独立の関連を示したとする既報の観察研究の結果を裏付けるものである」としている。

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COVID-19、主要5種の降圧薬との関連認められず/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化するリスク、あるいはCOVID-19陽性となるリスクの増加と、降圧薬の一般的な5クラスの薬剤との関連は確認されなかった。米国・ニューヨーク大学のHarmony R. Reynolds氏らが、ニューヨーク市の大規模コホートにおいて、降圧薬の使用とCOVID-19陽性の可能性ならびにCOVID-19重症化の可能性との関連性を評価した観察研究の結果を報告した。COVID-19患者では、このウイルス受容体がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)であることから、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)に作用する薬剤の使用に関連するリスク増加の可能性が懸念されていた。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。患者1万2,594例について、降圧薬とCOVID-19陽性および重症化との関連を解析 研究グループは、ニューヨーク大学の電子カルテを用い、2020年3月1日~4月15日にCOVID-19の検査結果が記録された全患者1万2,594例を特定し検討を行った。 ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬およびサイアザイド系利尿薬の治療歴と、COVID-19検査の陽性/陰性の可能性、ならびに陽性と判定された患者における重症化(集中治療室への入室、非侵襲的/侵襲的人工呼吸器の使用または死亡と定義)の可能性との関連を評価した。 解析はベイズ法を用い、上記降圧薬による治療歴がある患者と未治療患者のアウトカムを、投与された薬剤クラスについて傾向スコアマッチング後に、全体および高血圧症患者とで比較した。事前に、10ポイント以上の差を重要な差と定義した。陽性率は全体46.8%/高血圧患者34.6%、重症化率17.0%/24.6% COVID-19の検査を受けた1万2,594例中5,894例(46.8%)が陽性で、このうち重症化したのは1,002例(17.0%)であった。高血圧症の既往歴を有する患者は4,357例(34.6%)で、うち2,573例(59.1%)が陽性、さらにこのうち634例(24.6%)が重症化した。 薬剤のクラスとCOVID-19陽性率増加との間に、関連性は確認されなかった。また、検討した薬剤のいずれも、陽性患者における重症化リスクの重要な増加と関連がなかった。 なお著者は、COVID-19検査の診断特性の多様性、検査の真の感度が不明なままであること、COVID-19の重症例の割合が過大評価されている可能性などを挙げ、本研究の結果は限定的であるとしている。

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新型コロナ、抗原検出用キットの活用に関するガイドライン発表/厚労省

 5月13日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」(富士レビオ)が製造販売承認を取得した。これを受け、厚生労働省では同日開催された第40回厚生科学審議会感染症部会において、「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」について審議、了承した。ガイドラインでは、これまでに得られている科学的知見に基づき、同キットの最適な使用を推進する観点から、考え方や留意事項が示されている。陽性の場合は確定診断に使用可、無症状者や陰性確認には適さない 同キットは、酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法による、鼻咽頭ぬぐい液中に含まれるSARS-CoV-2の抗原を、迅速かつ簡便に検出するもの。特別な検査機器を要さず、簡便かつ短時間(約30分間)で検査結果を得ることができる。使用対象となる患者については、「医師が、新型コロナウイルス感染症を疑う症状があると判断した者に対して、必要性を認めた時に使用する」と明記。同キットで陽性となった場合は、確定診断とすることができる。 一方で、核酸増幅法(PCR)と比較して検出に一定以上のウイルス量が必要であることから、「現時点では、無症状者に対する使用、無症状者に対するスクリーニング検査目的の使用、陰性確認等目的の使用は、適切な検出性能を発揮できず、適さない」とされている。ただし、緊急入院を要する患者で症状の有無の判断が困難な場合については、症状があるものと判断される。また、陰性の場合には、確定診断のため、医師の判断においてPCR検査を行う必要があるとされ、当面は、PCR検査と抗原検査を併用して使用することを求めている。 退院判定の際の活用については、検出にPCR検査と比較して一定以上のウイルス量が必要なこと、PCR検査との一致性に関するエビデンスが十分ではないことから、適さないとされている。クラスターが発生している医療機関、施設等の濃厚接触者等に対する検査については、感染の疑いが高い者はPCR検査との併用、それ以外の者は抗原検査を実施することも検討されるとしている。臨床試験でのPCR検査との陽性一致率は? RT-PCR法と性能を比較した2つの試験結果が示されており、国内臨床検体(72例)を用いた試験では、陽性一致率37%(10/27例)、陰性一致率98%(44/45例)、であった。陽性検体についての陽性一致率を、RT-PCR法テスト試料中の換算RNAコピー数(推定値)に応じて比較すると、100コピー/テスト以上の検体に対して一致率83%(5/6例)、30コピー/テスト以上の検体に対しては一致率50%(6/12例)であった。  行政検査検体(124例)を用いた試験では、陽性一致率66.7%(16/24例)、陰性一致率 100%(100例/100例)、全体一致率94%(116例/12例)であった。1,600コピー/テスト以上の検体に対して一致率100%(12/1例)、400コピー/テスト以上の検体に対しては一致率93%(14/15例)、100コピー/テスト以上の検体に対しては 一致率83%(15/18例)であった。 本キットでは承認条件として、・承認時のデータが極めて限られていることから、製造販売後に臨床性能を評価可能な適切な試験を実施すること。・製造販売後に実保存条件での安定性試験を実施すること。 の2点が求められており1)、ガイドラインでも、今後、臨床研究によりさらなる評価を実施することとしており、評価結果が得られた場合には、速やかに反映させると明記されている。まずは発生数の多い地域の帰国者・接触者外来、特定機能病院から供給開始 本キットの供給が十分になるまでは、検査の需給がひっ迫することを想定し、また、陰性時はPCR検査での確認が必要になるケースも想定されることから、患者発生数の多い都道府県における帰国者・接触者外来(地域・外来検査センターを含む)および全国の特定機能病院から供給を開始し、生産量の拡大状況を確認しつつ、対象地域およびPCR検査を実施できる医療機関を中心に供給対象を拡大していく。富士レビオのプレスリリースによると、週20万テストの生産体制を国内に構築しているという2)。 ガイドラインでは上記のほか、検体採取方法なども図示されている、また、今回示された運用は、当面の間のものであり、本キットに係る知見等は、引き続き研究により、知見を収集すると明記され、最新の知見をもとにガイドラインの見直しが適宜行われるとされている。

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COVID-19、医師のツイートから行政手続きが効率化

 医療現場は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応と感染対策に追われているが、そこに拍車を掛けているのが非効率な行政手続きだ。新型コロナウイルス感染症は指定感染症となっており、患者が出た場合には感染症法に基づき保健所への届け出が必要となる。このやり取りに使われる「新型コロナウイルス感染症発生届」は医師が所定の用紙を埋めてFAXで送付し、電話で確認するという形式。PCR検査実施を依頼する際にも同様の電話連絡と紙伝票のやり取りが必要となる。 4月23日、川崎市立川崎病院で呼吸器内科医として診療の最前線に立つ田中 希宇人氏は「手書き・FAX」という届け出の非効率性について、自身のTwitterに嘆く投稿をした。「もう止めようよ‥。手書きの発生届‥。こんなん昭和ですよ‥。もう止めようよ‥(一部抜粋)」。 この投稿が反響を呼び、リツイートが繰り返されるうちに河野太郎防衛大臣の目に留まり、大臣が自身のアカウントで反応。Twitter上で担当する副大臣につながり、投稿の翌日には田中氏が改善点についてメールで意見を伝えることとなった。以降、関連閣僚・官僚がデジタル化による医療現場と保健所の負担軽減を言及するようになり、4月30日には「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)」が導入されることが正式に発表された。田中氏の投稿からわずか1週間、システム稼働も5月17日の週を目処に開始されるというスピード感ある展開に、現場の医療者からは一様に歓迎の声が上がった。一連の経緯は海外メディアの注目も集め、5月1日付けのニューヨーク・タイムズはロイター発として「FAXを愛する日本がコロナウイルス報告のオンラインシステムを導入」と紹介した。 田中氏は、今回の経緯について自身のnoteに詳しくまとめている。 https://note.com/cutetanaka/n/nbac8c07a1455 大きく行政を動かすことになった田中氏は、「今回はたまたま河野大臣にツイートを拾われる形となった。本当に偶然だが、医療現場での非効率な古い慣習は『発生届』以外にも数多く存在しており、改善を諦めず、声を上げ続けることが大事だと感じた」と語る。田中氏は以前からTwitterをはじめ、肺がんに関するブログでも医療情報を積極的に発信してきた。そうした発信力と影響力の積み重ねが今回の成果につながった面も大きい。田中氏は「今回、SNSはただの発信/連絡のツールではなく、使い方次第で大きな可能性と将来性があるとわかった」とし、今後も積極的な発信を続けていくという。

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COVID-19患者の自宅などでの健康観察/厚生労働省

 4月27日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養・自宅療養における健康観察における留意点について」の事務連絡を全国の関係機関に発出した。 この連絡では、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」と略す)の無症状原体保有者と軽症患者(以下「軽症者など」と略す)の宿泊療養および自宅療養で、軽症者などの状態が急変する可能性があることから、軽症者などの本人が自ら経過観察(セルフチェック)を行う際に留意すべき「緊急性の高い症状」と下記の項目に該当したときの対応を整理し、宿泊療養・自宅療養での健康観察の際に活用できるようにしたものである。表情、呼吸状態、意識状態でチェック 具体的な手順として、経過観察(セルフチェック)を行う軽症者などの本人に対し、「緊急性の高い症状」の項目を伝え、併せて注意事項を伝えることが重要となる。【緊急性の高い症状】 *は家族などが以下の項目を確認した場合〔表情・外見〕・顔色が明らかに悪い*・唇が紫色になっている・いつもと違う、様子がおかしい*〔息苦しさなど〕・息が荒くなった(呼吸数が多くなった)・急に息苦しくなった・生活をしていて少し動くと息苦しい・胸の痛みがある・横になれない。座らないと息ができない・肩で息をしている・突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた〔意識障害など〕・ぼんやりしている(反応が弱い)*・もうろうとしている(返事がない)*・脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする セルフチェックの回数は原則1日2回だが、軽症者などの症状や状態に応じ、1日3回(朝・昼・夜)または4回(朝・昼・夕・寝る前など)を目安として設定するほか、健康状態の聴取のために連絡する回数を1日2回に増やすなど、より症状の変化に留意して健康観察し、必要に応じてすみやかに医師に相談する。 上記の症状に該当したときには、看護師などからの定期的な連絡を待たず、次の窓口にただちに連絡する。 ・宿泊療養の場合:宿泊施設に配置された看護師などへ ・自宅療養の場合:各都道府県などの連絡・相談窓口へ また、セルフチェックのタイミング以外においても、上記の症状を認識したときは同様に窓口にただちに連絡するよう指示をしている。

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ARBとACE阻害薬、COVID-19への影響みられず/NEJM

 ARBおよびACE阻害薬が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクに影響を及ぼすとのエビデンスは示されなかったことが、イタリア・University of Milano-BicoccaのGiuseppe Mancia氏らが同国ロンバルディア地方で行った、住民ベースの症例対照試験で示された。症例群の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染確認群は対照群と比べて、心血管疾患の有病率が30.1%と高く、ARB(22.2% vs.19.2%)やACE阻害薬(23.9% vs.21.4%)の使用率も高かったが、両薬とCOVID-19にいかなる関連性も認められず、重症化や死亡との関連性もみられなかった。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。イタリア・ロンバルディア地方で住民ベースの症例対照試験 イタリア・ロンバルディア地方で行われた住民ベースの症例対照試験は、2020年2月21日~3月11日の間に、SARS-CoV-2感染患者6,272例と、性別・年齢・居住市町村でマッチングしたRegional Health Service加入者3万759例を対象に行われた。 被験者の選択的薬物の使用情報と臨床プロファイルを、地域の医療サービス利用データベースから入手し、薬物と感染症の関連についてオッズ比(OR)とその95%信頼区間(CI)を、交絡因子を補正し、ロジスティック回帰分析により求めて評価した。性差による違いもなし 被験者の平均年齢は68±13歳、女性は約37%であった。心血管疾患の有病率は、症例群30.1%、対照群21.7%(相対差:28.0%)で症例群が高く、ARB(22.2% vs.19.2%、相対差:13.3%)およびACE阻害薬(23.9% vs.21.4%、10.5%)の使用率も症例群が高かった。 症例群全体において、ARBおよびACE阻害薬の使用とCOVID-19にいかなる関連性も認められなかった(ARBの補正後OR:0.95[95%CI:0.86~1.05]、ACE阻害薬の補正後OR:0.96[0.87~1.07])。重症患者や致死的経過をたどった患者においても同様であった(ARBの補正後OR:0.83[95%CI:0.63~1.10]、ACE阻害薬の補正後OR:0.91[0.69~1.21])。また、これらの変数の関連性について、性差はみられなかった。

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COVID-19、抗HIV薬と脱毛症薬併用に可能性/東京理科大など

 抗HIV治療薬ネルフィナビルと白血球減少症や脱毛症、まむし咬傷などの治療薬セファランチンという2つの既存薬の併用が、新型コロナウイルス増殖を効果的に排除する可能性が示唆された。東京理科大学/国立感染症研究所の渡士 幸一氏らの研究グループによるもので、4月22日に発表された。 研究者らは、国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスと、これを実験室で感染増殖できる培養系技術を利用し、すでに何らかの疾患に対して臨床で使用認可されている約300のFDA/EMA/PMDA承認薬のウイルス増殖への効果を検証。調べた承認薬の中で5剤がウイルス増殖による細胞傷害を抑えることを見出し、この中からとくにネルフィナビル、セファランチンに着目した。 両剤はそれぞれ感染細胞から放出されるウイルスRNAを1日で最大0.01%以下にまで強く減少させ、現在治療薬候補となっているロピナビルやクロロキン、ファビピラビルよりも強い活性を持っていた。またネルフィナビルとセファランチンの併用により、1日で感染細胞からのウイルスを検出限界以下に排除することができた。作用機序としては、薬剤ドッキングシミュレーションによって、ネルフィナビルは新型コロナウイルス複製に必須のメインプロテアーゼ、セファランチンはウイルスと細胞の吸着に必要なウイルススパイクタンパク質にそれぞれ結合する可能性が示されている。 併用によって強い抗ウイルス活性が示されたことを受け、実際に臨床で使用される投与量でどの程度ウイルス排除に有効かを数理解析で予測。その結果、ネルフィナビル(経口投与)単独治療で累積ウイルス量が約9%に減少し、ウイルス排除までの期間が約4日短縮された。またネルフィナビル(経口投与)とセファランチン(点滴投与)の併用治療ではさらに効果が増強し、累積ウイルス量が約7%に、ウイルス排除までの短縮期間が約5.5日となった。 本研究結果をまとめた論文は、現在preprintとしてBioRxivサーバへ登録、公開されている。

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COVID-19、ICU入室患者の臨床的特徴/JAMA

 集中治療を要する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染患者の臨床的特徴の情報は限られている。イタリア・Fondazione IRCCS Ca' Granda Ospedale Maggiore PoliclinicoのGiacomo Grasselli氏らCOVID-19 Lombardy ICU Networkの研究グループは、同国ロンバルディア州の集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の調査を行った。その結果、ICU入室患者の多くは高齢男性で、機械的換気を要する患者が9割近くに及び、呼気終末陽圧(PEEP)値が高く、ICU内死亡率は26%に達したことがわかった。研究の詳細は、JAMA誌2020年4月28日号で報告された。ICUベッドの利用や集中治療の提供の状況は国によって異なるが、ICU治療を要する重篤なCOVID-19患者のベースラインの特徴やアウトカムに関する情報は、地域の集団発生に対処するための取り組みの計画に従事する保健当局や政府関係者にとってきわめて重要である。確定例の9%が入室、年齢中央値63歳、82%が男性 本研究は、2020年2月20日~3月18日の期間に、ロンバルディア州の72のICUに入室したCOVID-19確定例を後ろ向きに評価した症例集積研究である(イタリアFondazione IRCCS Ca’ Granda Ospedale Maggiore Policlinicoの助成による)。最終フォローアップ日は2020年3月25日であった。 この期間に、鼻咽頭拭い液を検体とし、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)で確定されたSARS-CoV-2感染患者は1万7,713例で、1,593例(9%)がICUに入室した。データが得られなかった2例を除く1,591例が解析に含まれ、人口統計学データと臨床データが収集された。 1,591例の年齢中央値は63歳(四分位範囲[IQR]:56~70、範囲:14~91)で、1,304例(82%)が男性であった。また、363例(23%)が71歳以上、203例(13%)は51歳未満だった。高血圧が多くCOPDは少ない、88%で機械的換気 データが得られた1,043例中、709例(68%)で1つ以上の併存疾患が認められた。最も多かったのは高血圧で、509例(49%)にみられ、次いで心血管疾患が223例(21%)、脂質異常症が188例(18%)、2型糖尿病が180例(17%)の順であり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は42例(4%)と少なかった。80歳以上は全例が、60歳以上は76%が、何らかの併存疾患を有していた。 呼吸補助のデータが得られた1,300例中、1,287例(99%)がICUで呼吸補助を必要とし、このうち1,150例(88%)は気管内挿管と機械的換気を、137例(11%)は非侵襲的換気を要した。また、データが得られた1,017例のPEEP中央値は14cmH2O(IQR:12~16)で、999例中887例(89%)で吸入気酸素濃度(FIO2)が50%以上であった。781例の動脈血酸素分圧(PaO2)/FIO2比中央値は160(IQR:114~220)だった。 年齢中央値(63歳)で2群に分けると、PEEP中央値は63歳以下(503例)が14cmH2O(IQR:12~15)、64歳以上(514例)も14cmH2O(12~16)であり、両群間に差は認められなかった(群間差:0、95%信頼区間[CI]:0~0)。また、FIO2中央値は63歳以下が60%(IQR:50~80)、64歳以上は70%(50~80)(群間差:-10%、95%CI:-14~-6)で、PaO2/FIO2比中央値は63歳以下が163.5(IQR:120~230)、64歳以上は156(110~205)であった(7、-8~22)。入室時27%で腹臥位換気、1%でECMO、高血圧患者は高齢 入室時に、875例中240例(27%)が腹臥位換気による治療を受け、498例中5例(1%、51~60歳が2例、61~70歳が3例)が体外式膜型人工肺(ECMO)による治療を要した。 高血圧患者(509例)は、非高血圧患者(526例)に比べ高齢であった(年齢中央値[IQR]:66歳[60~72]vs.62歳[54~68]、群間差:4、95%CI:2~6、p<0.001)。また、高血圧患者は、PaO2/FIO2比が低かった(中央値[IQR]:146[105~214]vs.173[120~222]、中央値の群間差:-27、95%CI:-42~-12、p=0.005)。64歳以上のICU内死亡率は36%、全体の入室期間中央値は9日 2020年3月25日の時点で、データが得られた1,581例のうち920例(58%)がICU入室中で、256例(16%)がICUから退室しており、405例(26%)はICU内で死亡した。また、ICU内死亡率は高齢患者で高かった(21~40歳:4/56例[7%]、41~50歳:16/142例[11%]、51~60歳:63/423例[15%]、61~70歳:174/596例[29%]、71~80歳:136/340例[40%]、81~90歳:11/21例[52%]、91~100歳:1/1例[100%])。高齢患者(64歳以上、786例)は、若年患者(63歳以下、795例)に比べICU内死亡率が高かった(36% vs.15%、群間差:21%、95%CI:17~26、p<0.001)。ICU退室患者の割合は、若年患者のほうが高かった(11% vs.21%、-9%、-13~-6、p<0.001)。 2020年3月25日の時点で、ICU入室期間中央値は9日(IQR:6~13)であった(1,591例)。内訳は、ICU入室中の患者(920例)が10日(8~14)、退室患者(256例)が8日(5~12)、ICU内死亡例(405例)は7日(5~11)だった。また、高血圧の有病率は、ICU内死亡患者が退室患者よりも高かった(63% vs.40%、群間差:23%、95%CI:15~32、p<0.001)。 著者は、「患者の多くは、呼吸補助を要する急性低酸素性呼吸不全のためICUへ入室となった。機械的換気の割合(88%)は、最近の中国や米国からの報告(30~71%)よりも高かった」としている。

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第7回 COVID-19に立ち向かう医療従事者をBCGワクチンで守れるか? 国際試験が進行中

新生児の結核予防にほぼ100年も前から使われてきたワクチンがほかの感染症も防ぐという裏付けに触発され、フランスの微生物学者の名にちなんで名付けられたそのワクチン・カルメットゲラン桿菌(BCG)で、目下の新型コロナウイルス感染(COVID-19)流行を防ぐことができるのか、研究者が調べ始めています。BCGワクチンの成分は結核を引き起こす細菌の類縁菌・Mycobacterium bovisを弱毒化したものです。これまでに40億人以上に接種されており、世界で最も広く投与されているワクチンの一つとなっています1)。BCGは結核に対する特異的な効果のみならず、幅広く、多くの感染症に対し非特異的に防御する効果を免疫系に備わせる働きがあります2)。たとえば、新生児の死亡率が高いギニアビサウでの3試験のメタ解析の結果、低体重出生児へのBCG-Denmark(BCGワクチンの1つ)接種は生後28日間の死亡率の38%低下と関連し、その効果は主に肺炎や敗血症による死亡の減少によってもたらされました3)。12~17歳の若者が参加した南アフリカでの無作為化試験ではBCG-Denmark接種で上気道感染症発現率がプラセボ群に比べて73%(2.1% vs 7.9%)低下しました2,4)。オランダのMihai Netea氏等による試験では、ウイルスへの効果も示唆されています。健康な成人にBCG-Denmarkを接種してしばらくしてからあえて弱毒化黄熱病ウイルスを投与したところ、血中ウイルス量がプラセボ投与に比べて有意に減少しました5)。そのような試験や研究成果を背景にして、COVID-19への効果の緒を掴むべく、BCG接種義務国とそうでない国を比較した結果が報告されるようになっています。たとえば査読前報告掲載サイトmedRxivに今月初めに掲載された報告によると、BCG接種が義務であることは流行最初の30日間のCOVID-19症例数や死亡数の増加がより緩やかであることと関連しました6)。3月末にmedRxivに掲載された別の報告ではイタリア、米国、オランダ等のBCGワクチンが広まっていない国はワクチンが広く接種されている国に比べて流行の被害がより大きいことが示されています7)。ただしそれらの報告は因果関係を示すものではありません。また、個々のヒト単位の比較ではなく国と国の比較には結果を偏らせる多くの要因が存在し、それらをすべて差し引いて解析することは不可能です。BCGワクチンをかれこれ20年調べているデンマークの疫学者Christine Stabell Benn氏は、COVID-19に関するそれらの最近のBCGワクチンの検討データは裏付けの重みとしては最底辺の類のものだが、長年に渡って蓄積された裏付けによると、BCGワクチンのCOVID-19予防効果にかけてみるのは悪くないと科学ニュースThe Scientistに話しています。Benn氏はすでに動きだしており、COVID-19のリスクが最も高い人々、すなわちその対処にあたる医療従事者1,500人を募る試験を始めています。BCGで欠勤が減るかどうかやCOVID-19発現が減るかどうか等が調べられます。デンマークでは1980年代までBCGワクチンが使われており、学校でかつてBCGワクチン接種経験がある医療従事者も試験には混じるでしょう。Benn氏は過去にBCG接種経験がある人への更なる接種は接種経験がない人より有効だろうと想定しています。Benn氏と協力関係にある上述のNetea氏はオランダで同様の試験を開始しています。また、オーストラリア出身のメディア王マードック氏の母親Dame Elisabeth Murdoch(エリザベス マードック)氏の支援を受けて30年前の1986年に設立された同国の小児健康研究所Murdock Children’s Research Institute(MCRI)は、Netea氏も協力する国際試験BRACEを3月27日に始めています。医療従事者を対象としたそれらの試験結果は待ち遠しいですが、無作為化試験以外で先走ってCOVID-19予防にBCGを接種してはいけないと世界保健機関(WHO)は釘を刺しています。あまり当てにならない最近の査読前報告を高品質な裏付けと勘違いしてBCGに群がると、すでに不足気味となっているBCGワクチンがそれを必要としている乳幼児に行き渡らなくなる恐れがあります。実際、アフリカの一部では小児向けのワクチンが医療従事者に横流しされていると上述のBRACE試験を率いるNigel Curtis氏は聞いており、「軽はずみにワクチンを使い始めると幼い子にツケが回る。いまあるワクチンは赤ちゃんの結核を予防するものだ」とThe Scientistに話しています。試験外での不適切な使用を注意しつつCurtis氏が進めているBRACE試験を支援する動きは広がっており、最近になってその被験者数はゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)からの1,000万ドル支援を受けて4,000人から1万人へと大幅に増えています。5月5日の発表によると、試験にはすでに医療従事者2,500人が組み入れられています8)。感染症に広く効きうるBCGワクチン等が病因狙い撃ちワクチン完成までの橋渡しの役割を担うことは、目下のCOVID-19流行や将来の感染流行への対処に大いに貢献するだろうとCurtis氏等はLancet誌に記しています2)。参考1)An Old TB Vaccine Finds New Life in Coronavirus Trials / TheScientist2)Curtis N,et al. Lancet. 2020 Apr 30.3)Biering-Sørensen S,et al. Clin Infect Dis. 2017 Oct 1;65:1183-1190. 4)Nemes E,et al. N Engl J Med. 2018 Jul 12;379:138-149.5)Arts RJW,et al. Cell Host Microbe. 2018 Jan 10;23:89-100.6)Mandated Bacillus Calmette-Guerin (BCG) vaccination predicts flattened curves for the spread of COVID-19. medRxiv. May 04, 20207)Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study. medRxiv. March 28, 20208)10M grant enables MCRI’s BCG vaccine trial to expand internationally, enrol 10,000 healthcare workers / Murdoch Children’s Research Institute’s (MCRI)

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特例承認された新型コロナ治療薬「ベクルリー点滴静注用100mg」【下平博士のDIノート】第49回

特例承認された新型コロナ治療薬「ベクルリー点滴静注用100mg」今回は、抗ウイルス薬「レムデシビル注射用凍結乾燥製剤(商品名:ベクルリー点滴静注用100mg、製造販売元:ギリアド・サイエンシズ)」を紹介します。本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、時限的かつ特例的に承認されました。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2020年5月7日に特例承認されました。なお、臨床試験などにおける主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者を対象に投与を行うこと。<用法・用量>本剤は、生理食塩液に添加し、30~120分かけて点滴静注します。通常、レムデシビルとして、成人および体重40kg以上の小児には投与初日に200mg、2日目以降は100mgを、体重3.5kg以上40kg未満の小児には投与初日に5mg/kg、投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注します。なお、総投与期間の目安は5日までとし、症状の改善が認められない場合は10日目まで投与します。<安全性>SARS-CoV-2による感染症患者1,313例を対象とした国際共同第III相試験において、因果関係ありと判断された有害事象は175例(13.3%)報告されました。主な副作用としては、悪心34例(26%)、ALT増加33例(2.5%)、AST増加32例(2.4%)、トランスアミナーゼ上昇15例(1.1%)など。重大な副作用として、肝機能障害、過敏症(Infusion Reaction、アナフィラキシーを含む)が現れることがあります。<重要な基本的注意>1.肝機能障害が現れることがあるので、投与前および投与中は定期的に腎機能検査、肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察する必要があります。2.低血圧や嘔吐、発汗、振戦などのインフュージョン・リアクション(急性輸注反応)が現れることがあるので、異常が認められた場合はただちに投与を中止し、適切な処置が必要です。これらの発現を回避できる可能性があるため、本剤の緩徐な投与を考慮してください。3.添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムにより腎機能障害が現れる恐れがあるので、投与前および投与中は定期的に腎機能検査を行い、患者の状態を十分に観察する必要があります。<Shimo's eyes>今回、COVID-19に対する初めての治療薬が承認されました。SARS-CoV-2は「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、同類としてはエンテロウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルスなどが知られています。本剤は、RNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を抑制する作用を持ち、新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(商品名:アビガン)と同じ機序となります。本剤は、もともとエボラ出血熱などの新興感染症の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬で、米国では5月1日から緊急的に重症患者への使用が認められました。これを受け、わが国でも特例承認制度が適用され、申請からわずか3日という異例の速さで承認されました。なお、承認薬となったのはわが国が世界初です。本剤は、重症患者の症状改善や回復までの期間短縮が期待されています。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導するプラセボ対照第III相試験(ACTT試験:COVID-19による中等度から重度の症状を呈する患者[きわめて重症の患者を含む]を対象としたレムデシビルのランダム化比較試験)において、レムデシビル群の回復までの日数中央値は11日で、プラセボ群の15日より4日短いことが示されました。一方で、死亡率については、統計学的に有意な差は得られませんでした(8.0% vs.11.6%、p=0.059)。重大な副作用として、肝機能障害、インフュージョン・リアクションなどが報告されています。なお、SARS-CoV-2による感染症患者を対象とした臨床試験(NIAID ACTT-1)では、プロトロンビン時間延長または国際標準化比(INR)増加の発現割合はプラセボ群と比較して本剤投与群で高かったことが報告されています。両投与群間で出血イベントの発現に差は認められていません。なお、本剤は2021年8月から保険適用となりました。※2021年8月、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ベクルリー点滴静注用100mg

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ワクチンと新型コロナウイルスと検疫【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第5回

筆者は家庭医として長年予防接種および渡航医学に従事してきたが、2017年からは検疫官に転じて空港検疫所で勤務している。本稿は本来、2020年夏に開催予定であった東京オリンピック・パラリンピックに向けて、輸入感染症対策と検疫について執筆する予定であった。しかしご承知のとおり、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」)の拡大に伴って同競技会は延期が決定し、本稿執筆時点の5月上旬には新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言が5月31日まで延長されることとなった。市中医療機関と同じく、空港検疫所もCOVID-19対応に忙殺されている。筆者は現在成田空港検疫所に派遣され、大量の鼻咽頭検体採取を行っている。本稿は業務の合間を縫って書いている。COVID-19と検疫検疫業務の目的は「日本に常在しない病原体が国内に侵入することを防ぐこと」である(検疫法第1条)。わが国に常在しない病原体は世界中に無数にあるが、現地での発生頻度、重症度、船舶・航空機を介した侵入リスクなどを勘案して、15種の感染症(病原体でカウントすればさらに増える)が「検疫感染症」として検疫法第2条に指定されている。2019年12月31日に初めて世界に報告されたCOVID-19は、2020年2月1日には感染症法における指定感染症と同時に「検疫感染症」として定められた。さらに2月14日には「検疫法第34条の感染症」へと再指定され、陽性患者の隔離(強制入院)などの強い措置の権限が付与された。しかし、COVID-19は後者の再指定に遡ること1ヵ月前の1月16日には、国内で最初の患者が発見されていた。その後も輸入例や国内感染例が続発し、再指定直前の2月13日には東京での屋形船や和歌山での院内感染などのクラスター発生がすでに報告されていた。わが国に常在しない病原体の国内侵入の防止が検疫の目的であるにもかかわらず、検疫所に措置の権限が付与された時点では新型コロナウイルスはすでに「日本に常在する病原体」と化していたのである。厚生労働省発表によると、5月6日時点で国内のCOVID-19患者は累計15,192人が報告されているが(ダイヤモンドプリンセス号および武漢からのチャーター便での報告を除く)、空港検疫での発見数は147人と国内報告の100分の1に満たない。新型コロナウイルスが完全に日本に定着した状況でCOVID-19に対する検疫にどの程度人的・物的リソースを投じるかは、国内の発生状況や自治体、市中医療機関、検査機関への負荷などとのバランスを考慮しつつ、政府が臨機応変に見直していく必要がある。Withコロナの予防接種COVID-19の特異な臨床経過や感染様式、緊急事態宣言などに伴う外出自粛要請の影響により、市中医療機関のリアル外来受診数は大幅に減少している。それに伴い予防接種実施数も大きく減少する傾向にある。院内感染や来院前後の往来での感染を避けたいという心理は当然了解できる。しかし、COVID-19蔓延期、すなわち“withコロナ”で“stay home”が強く推奨される状況においても、予防接種のための受診は決して不要不急の外出には当たらず、むしろ必要火急とすら言える。[Withコロナで予防接種が必要火急であるのはなぜか?]1)ワクチン予防可能疾患(VPD:vaccine-preventable disease)は、必ずしも「家の外」だけで感染する疾患ばかりではない。肺炎球菌やヒブはヒトの気道常在菌であり、年長小児や成人の気道から免疫不十分な乳幼児へと感染し、致命的な侵襲性感染症を引き起こす。Stay homeにより家族間接触がより濃厚になる今だからこそ、それら感染症のリスクはむしろ高いと言える。あるいはstay homeで庭いじりや日曜大工に精を出す人も増えていよう。そうした作業で汚染外傷を生じれば破傷風リスクがある。Stay homeだからこそ、それらVPDに対する予防接種は必要火急なのだ。2)医療従事者をはじめ、通勤・出勤せねば業務が成り立たない職種も少なくない。通勤や勤務においてVPDに感染するリスクは常にあり、また、家で待つ家族にVPDを持ち帰るリスクも続いている。特に重大な麻疹1)と風疹2)は、4月7日の緊急事態宣言による全国的な外出自粛要請にもかかわらず発生の連鎖は止まっていない。それらVPDに対する予防接種も必要火急である。3)5月上旬時点で国内のCOVID-19発生は減少傾向にある。いずれ外出自粛が緩和され、各地の学校も再開される日が来る。そのとき、stay homeで勢いをひそめていたVPDが再び火を吹き始める。VPDの多くは発熱を伴うため、COVID-19との鑑別が困難であることから受診に至るまでに種々の手間とタイムラグが発生し得る。そうした近い将来のリスクを避けるためにも、今こそ予防接種は必要火急なのである。上記理由により、withコロナの現在だからこそ積極的に予防接種を進めていただきたい。それでも現実には予防接種実績は低迷する恐れが強い。ならば、リアル受診が回復し始めると同時に、接種遅れに対するキャッチアップ接種を積極的に行っていただきたいと強く切望する。さらに、一時的にCOVID-19発生が抑制できても、今冬には再び増加することが懸念されている3)。前記3)以上に、季節性インフルエンザとCOVID-19の初期の鑑別は困難である。インフルエンザの発生数自体を少なくすることが医療機関の負担軽減に直結する。インフルエンザワクチンは例年10月はじめには供給開始される。供給開始と同時に1人でも多くインフルエンザ予防接種を行っていただきたい。インフルエンザ患者が1人減れば医療機関の負担も1人分減るのだ。COVID-19のワクチンの可能性COVID-19のワクチンは武漢での発生当初から世界各国で盛んに研究開発が進んでいる。4月28日現在で90以上のワクチン候補が誕生し、うちすでに6ワクチンはヒトに対する第I相試験に進んでいる4)。古典的な弱毒化または不活化の手法は当然試されている。しかし、一般論として、安全かつ免疫原性の強い弱毒株は、ウイルス培養を繰り返す過程で生ずる変異株が偶然の産物として登場するのを待つしかなく、いつ実現するかは予測困難である。また、不活化ワクチンは少なくとも既知のコロナウイルスでは充分な効果のあるものが登場していない。新興病原体に対するワクチン開発で近年主流になっているのが、ヒトへの病原性がない他のウイルスに目的ウイルスの遺伝子を組み込むことで特異抗原を産生させ、そのまま“生”として、または不活化してワクチンとする遺伝子組み換え手法である。2018年から続いているコンゴ民主共和国でのエボラ出血熱アウトブレイクで濃厚接触者へのring vaccinationとして行われているワクチンも遺伝子組み換え“生”ワクチン(rVSV-ΔZEBOVワクチン)である。2012年に登場したMERSコロナウイルスにはこの手法でワクチン開発が進められ、動物実験までは行われている。COVID-19ワクチンの開発手法もこれを採用しているチームが多い。そのほか、核酸ワクチンという手法もある。ウイルス粒子ではなく、ヒトの免疫系が反応しうるウイルス抗原部分をコードしたウイルスゲノム(RNAのまま、またはDNAに変換)をワクチンとして接種し、ヒト細胞に取り込ませることで抗原を産生させ、それに対する免疫応答を惹起するのが目的である。コロナウイルスの持つタンパクのうち特にヒト免疫が反応しやすいもの(サブユニットと呼ぶ)だけを抽出してワクチン成分とするサブユニットワクチンもある。2003年に登場したSARSコロナウイルスに対してはすでにサブユニットワクチンが開発済みであるが、SARSが完全に封じ込められた影響もあり、サルでの動物実験に留まりヒトでの治験実績はない。これら以外にもワクチン開発技術には大小の異同があり、それぞれのチームが研究開発のしのぎを削っている。わずか4ヵ月あまり前に世界に登場した病原体に対して、すでに90以上のチームがワクチン開発に着手していることには希望が持てるが、しかし安全かつ効果のあるワクチンの開発は決して容易なことではない。COVID-19ワクチンへ希望は持ちつつも過剰な期待はせず、感染拡大防止の努力を徹底した上で、既存ワクチンの接種を遅れることなく推し進めることこそが医療職の使命と言える。読者諸氏には、必要なワクチンを1人でも多く接種いただきたく、深くお願い申し上げる。※上記はすべて筆者個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。1)国立感染症研究所.麻疹.Accessed May 6,2020.2)国立感染症研究所.風疹.Accessed May 6,2020.3)Sun Lena H. The Washington Post, April 22, 2020.4)Callaway E. Nature. 2020;580:576-577.講師紹介

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日本のCOVID-19症例を症状で検索可、新サイトオープン/日医有識者会議

 5月7日、日本医師会は緊急記者会見を開き、「COVID-19有識者会議」のホームページ開設を発表した。4月30日に日本医師会が発行した「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」のほか、約70症例について所見から検索できる症例データベース、WHO発の情報を日本語で提供するWHOアップデート、治療薬開発の現状などが掲載されている。 COVID-19有識者会議は、COVID-19に関するできるだけ良質な情報を収集し、現場に提供することを目的として、日本医師会内に設置される形で4月18日に発足。座長を永井 良三氏(自治医科大学学長)、副座長を笠貫 宏氏(早稲田大学特命教授)が務める。発足時開催された記者会見で横倉 義武会長は政府の専門家会議との関係について、「本有識者会議は主に、臨床の観点からエビデンスのある提言を行い、現場の支援を行うものであり、専門家会議とは“車の両輪"と言うべきものである」とし、連携を図りながらCOVID-19対策を推進していく考えを示した。 今回開設されたホームページは、下記11項目からなる:1.ご挨拶2.外来診療ガイド3.COVID-19症例データベース4.COVID-19の概要5.医療現場における現状認識6.WHOアップデート7.検査の俯瞰(PCR検査の現状と課題)8.抗体検査の現状と課題9.治療薬開発の現状10.頂いた意見 医療提供体制に関する提案 在宅・介護から提案 大学病院から問題提起11.有用なサイト紹介 「2.外来診療ガイド」では、日本医師会による4月30日発行の「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」の内容を掲載。症状のある患者を診察する際の留意点や、COVID-19の患者が直接来院したときのトリアージ、無症候感染者を視野に入れた外来や医療従事者の感染対策についてまとめられている。 「3.COVID-19症例データベース」では、日本感染症学会ホームページに掲載されている症例報告の中から約70症例がTree状に整理されている。発熱、咳嗽、リンパ球低値、すりガラス影など所見を示す用語で検索すると(AND検索も可能)、該当の症例が提示され、患者背景や臨床経過をみることができる。また、約70症例について症状・身体所見、検査・画像所見、合併症の傾向などについても整理されている。たとえば検査所見では、CRP高値、リンパ球低値、白血球低値、LDH高値の頻度が高い、といった傾向がみられている。 同データベースについて、笠貫氏は、今後症例数を増やしていく見通しであることを明らかにした。「学会の垣根を越えて、全国の先生方から症例報告をいただき、このデータベースに登録していきたい」と話し、「先生方から症例報告をあげていただくための方法について検討中で、近々にその方法をホームページ上で掲載する予定」とした。 そのほか、「6.WHOアップデート」では、WHO本部科学ブリーフィングの内容(例:COVID-19患者への非ステロイド系抗炎症薬使用)が簡潔に日本語でまとめられているほか、7~9.では、各種検査や治療薬開発の現状がまとめられている。

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COVID-19にレムデシビルが有意な効果示せず、早期なら有効か/Lancet

 中国で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者へのレムデシビル投与は、臨床的改善までの期間を統計学的に有意に短縮しなかったことが報告された。しかし、発症後10日以内の患者に限定した解析で、有意差は示されなかったものの、臨床的改善までの期間はレムデシビル群で短縮する傾向が認められた。中国・中日友好医院のYeming Wang氏らによる試験の結果で、著者は「早期投与については大規模な研究で確認する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年4月29日号掲載の報告。症状発症12日以内の肺炎確認例にレムデシビルを10日間静脈投与 研究グループは、中国・湖北省の10病院を通じて、検査でSARS-CoV-2ウイルスへの感染が確認された入院患者を対象に試験を行った。被験者は18歳以上で、症状発症から試験登録までの経過日数が12日以内であり、室内空気中の酸素飽和度(SpO2)が94%以下または動脈血酸素分圧(PaO2)が300mmHg以下で、放射線学的画像診断により肺炎が確認された患者だった。 被験者は無作為に2対1の割合で2群に分けられ、一方の群にはレムデシビル(1日目200mg、2~10日目は100mgを1日1回静脈投与)を、もう一方の群にはプラセボを10日間投与した。試験期間中も、ロピナビル・リトナビル配合剤、インターフェロン、副腎皮質ステロイドの併用は可能とした。 主要エンドポイントは、無作為化後28日目までの、臨床的改善までの時間とした。臨床的改善の定義は、生存退院を1、死亡を6とした6段階スケールで評価し、2段階以上の改善か生存退院の、いずれか早期に達成した場合とした。 主要解析(有効性)についてはITT解析で、また安全性解析は割り付け治療を開始した全患者を対象とした。発症10日以内の患者、症状改善までレムデシビル群は18日、プラセボ群は23日 2020年2月6日~3月12日に237例が登録され、レムデシビル群に158例、プラセボ群に79例が無作為に割り付けられた。無作為化後に試験参加を取り下げたプラセボ群の患者1例は、ITT集団に含まれなかった。 臨床的改善までの期間中央値は、プラセボ群23.0日に対しレムデシビル群は21.0日で、レムデシビルと臨床的改善までの期間に関連性は認められなかった(ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:0.87~1.75)。 一方で統計学的に有意ではなかったが、レムデシビル投与患者は、症状の持続期間が10日以下の患者に限定すると、プラセボ投与患者と比べて臨床的改善までの期間中央値が短く、プラセボ群23.0日に対し、レムデシビル群は18.0日だった(HR:1.52、95%CI:0.95~2.43)。 有害事象の報告は、レムデシビル群155例中102例(66%)、プラセボ群78例中50例(64%)だった。 研究グループは今回の試験について、「中国ではCOVID-19の流行が収束したため、当初目標としていた被験者数を達成できず、統計的検出力が不十分だった」としている。また、「今後、レムデシビルの有効性を検証するための試験としては、COVID-19重症患者への早期投与やより高用量の投与、また他の抗ウイルス薬やSARS-CoV-2中和抗体との併用投与なども必要だ」と述べている。

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第6回 新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム

<先週の動き>1.新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム2.COVID-19治療薬「レムデシビル」が7日に特例承認3.新型コロナ相談・受診の目安改訂 「37.5度」が削除4.「アビガン」に注がれる期待と安全性 民間機関が意見書を提出5.やまない医療従事者への誹謗中傷・風評被害に苦悩6.医療従事者の新型コロナ感染、世界で9万人超も1.新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム先月、厚生労働省より「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」についての事務連絡が出されており、今週にも一部保健所などで先行利用開始、5月中旬以降には全国で利用されるようになる見通し。新型コロナ感染者の情報を全国で一元管理し、国・都道府県だけでなく、医療機関や医師会なども即時に情報共有できる仕組み。新型コロナの動向を迅速に把握・対応できる体制を築く。稼働後は、感染症法に基づく保健所への発生届などが、本システムに入力する形式に変更される見込み(具体的な運用方法に関しては、別途通知が発出される予定)。また、各医療機関からの報告に基づいて、行政が医療物資の優先配布や重症患者の受け入れ先の調整などに活用する。(参考)新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)の導入について(厚労省 事務連絡 令和2年4月30日)厚労省が新型コロナ感染者情報を一元管理する新システム、開発費用は10億円(日経クロステック)2.COVID-19治療薬「レムデシビル」が7日に特例承認ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液・同点滴静注用)」が、申請からわずか3日後の7日に特例承認された。翌8日には中央社会保険医療協議会が開催され、レムデシビルの医療保険上の取り扱いについて議論が行われた。現時点では供給量がきわめて限定的であるため、公的な管理の下で無償提供され、時限的・特例的な対応として、公的医療保険との併用が可能とされる。この間、薬価収載はされない予定。レムデシビルは、エボラ出血熱などの治療薬として開発されていた薬剤であり、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する作用を有する。適応患者の選定においては、7日に発出された留意事項に、適格基準と除外基準が示されている。(参考)COVID-19に特例承認のレムデシビル、添付文書と留意事項が公開レムデシビル製剤の使用に当たっての留意事項について(厚労省)新型コロナウイルス感染症に係る医薬品(レムデシビル)の医療保険上の取扱いについて(同)3.新型コロナ相談・受診の目安改訂 「37.5度」が削除以前から、相談・受診の目安を参考にPCR検査を希望しても、帰国者・接触者相談センターには受け入れてもらえないなどの意見が聞かれたが、8日、専門家会議の議論を踏まえ、相談・受診の目安についての改訂が行われた。従来との違いは、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」としていた記載が、個人差があるなどの理由で削除された。改訂版では、「息苦しさ(呼吸困難)・強いだるさ(倦怠感)・高熱などの強い症状のいずれかがある」、「重症化しやすい方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪症状がある」、「これら以外で、発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が4日以上続く」場合には、すぐに相談するよう促している。各自治体は、地域の医師会と連携するなどしてPCR検査の実施施設を増やしており、今後の検査件数は増えていくと考えられる。(参考)【改訂版】新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(厚労省)新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について(事務連絡 令和2年5月8日)4.「アビガン」に注がれる期待と安全性 民間機関が意見書を提出中国でいち早く臨床試験が行われた新型インフルエンザ治療薬「ファビピラビル(商品名:アビガン)」は、新型コロナ患者への有効性について大きく期待されている。本剤は富山化学工業が開発したRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬であり、厚労省は、治療薬候補として5月中の承認を目指している。その一方で、動物実験で観察された催奇形性などの副作用が懸念されている。民間の医薬品監視機関である「薬害オンブズパースン会議」が、厚労省に「アビガンに関する意見書(新型コロナウイルス感染症に関して)」を5月1日付けで提出している。COVID-19治療薬として、科学的根拠の乏しい過剰な期待に対する厳しい警告を含んでおり、メディアの過熱報道とは裏腹に十分なエビデンスと安全性の確立が求められる。(参考)「アビガンに関する意見書(新型コロナウイルス感染症に関して)」を提出(薬害オンブズパースン会議)5.やまない医療従事者への誹謗中傷・風評被害に苦悩現場で奮闘する多くの医療従事者に感謝の気持ちを示すため、ライトアップや拍手などの報道がされる一方で、近隣の住民などから医療従事者やその家族に対して嫌がらせや誹謗中傷を受けたという話が報道されている。感染者の受け入れによって、医療機関が院内外の感染対策に追われ、一般人に十分に説明する機会がないまま、メディアを通して恐怖心が増幅された結果かもしれない。医療従事者は患者さんの治療と安全を最優先に働いているが、最前線で尽力している医療機関や医療者に対してそのような事例があるのは残念でならない。メディアには医療・介護従事者を支援する輪を積極的に広げていただきたい。(参考)医療従事者への風評被害に対する国民へのメッセージ動画を制作(日本医師会)「会社辞めるか、奥さんが辞めるか」看護師と家族に誹謗中傷(神戸新聞)6.医療従事者の新型コロナ感染、世界で9万人超も世界的に広がる新型コロナウイルスにより、医療従事者の感染が問題となっている。先日、国際看護師協会(International Council of Nurses)が30ヵ国の看護協会のデータを元に推計した結果によると、世界全体で新型コロナウイルスに感染した医療従事者は9万人以上、その内死亡した看護師は260人を超えると推測されている。全感染者のうちの平均6%が医療従事者であるとされる。同協会は、医療従事者の感染について正確なデータがないため、「より大きなリスクにさらされている」と指摘している。各国の政府が医療従事者の感染と死亡に関するデータを体系的に収集し、それを世界保健機関(WHO)が保管することを求めている。(参考)ICN calls for data on healthcare worker infection rates and deaths(ICN)

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COVID-19に特例承認のレムデシビル、添付文書と留意事項が公開

 2020年5月8日、ギリアド・サイエンシズ社(以下、ギリアド社、本社:米カリフォルニア州)は、特例承認制度の下、レムデシビル(商品名:ベクルリー)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として承認されたことを発表した。現時点では供給量が限られているため、ギリアド社より無償提供され、公的医療保険との併用が可能である。 本治療薬は5月1日に米国食品医薬品局(FDA)よりCOVID-19治療薬としての緊急時使用許可を受け、日本では5月4日にギリアド社の日本法人から厚生労働省へ承認申請が出されていた。レムデシビル投与、対象者の選定に注意 レムデシビルはエボラウイルス、マールブルグウイルス、MERSウイルス、SARSウイルスなど、複数種類の新興感染症病原体に対し、in vitroと動物モデルを用いた試験の両方で広範な抗ウイルス活性が認められている核酸アナログである。 添付文書に記載されている主なポイントは以下のとおり。・投与対象者は、酸素飽和度(SpO2)が94%(室内気)以下、酸素吸入を要する、体外式膜型人工肺(ECMO)導入または侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者。・警告には急性腎障害、肝機能障害の出現について記載されており、投与前及び投与中は毎日腎機能・肝機能検査を行い、患者状態を十分に観察する。・臨床検査値(白血球数、白血球分画、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、クレアチニン、グルコース、総ビリルビン、AST、ALT、ALP、プロトロンビン時間など)について、適切なモニタリングを行う。・Infusion Reaction(低血圧、嘔気、嘔吐、発汗、振戦など)が現れることがある。・用法・用量は、通常、成人及び体重40kg以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に200mgを、投与2日目以降は100mgを1日1回点滴静注する。通常、体重3.5kg以上40kg未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に5mg/kgを、投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注する。なお、総投与期間は10日までとする。ただし、これに関連する注意として、「本剤の最適な投与期間は確立していないが、目安としてECMO又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されている患者では総投与期間は10日間までとし、ECMO又は侵襲的人工呼吸器管理が導入されていない患者では5日目まで、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する」「体重3.5kg以上40kg未満の小児には、点滴静注液は推奨されない」との記載があり、投与期間や体重制限などに注意が必要である。・小児や妊婦への投与は治療上の有益性などを考慮する。・主な有害事象は、呼吸不全(10例、6%)、急性呼吸窮迫症候群(3例、1.8%)、呼吸窮迫(2例、1.2%)、敗血症性ショック(3例、1.8%)、肺炎(2例、1.2%)、敗血症(2例、1.2%)、急性腎障害(6例、3.7%)、腎不全(4例、2.5%)、低血圧(6例、3.7%)など。 このほか、厚生労働省が発出した留意事項には、適応患者の選定について、以下を参考にするよう記載されている。■■■<適格基準> ・PCR検査においてSARS-CoV-2が陽性 ・酸素飽和度が94%以下、酸素吸入又はNEWS2スコア4以上・入院中 <除外基準>・多臓器不全の症状を呈する患者 ・継続的に昇圧剤が必要な患者 ・ALTが基準値上限の5倍超 ・クレアチニンクリアランス30mL/min未満又は透析患者 ・妊婦■■■ また、本剤を投与する医療機関において迅速なデータ提供を求めており、「本剤には承認条件として可能な限り全症例を対象とした調査が課せられているが、本剤については安全性及び有効性に関するデータをとくに速やかに収集する必要がある」としている。2つの臨床試験と人道的見地に基づき承認へ 今回の承認は、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導するプラセボ対象第III相臨床試験(ACTT:Adaptive COVID-19 Treatment Trial、COVID-19による中等度から重度の症状を呈する患者[極めて重症の患者を含む]を対象)、ならびにギリアド社が実施中のCOVID-19重症患者を対象とするグローバル第III相試験(SIMPLE Study:重症例を対象にレムデシビルの5日間投与と10日間投与を評価)の臨床データ、そして、日本で治療された患者を含むギリアド社の人道的見地から行われた投与経験データに基づくもの。 ギリアド社によると、2020年10月までに50万人分、12月までに100万人分、必要であれば2021年には数百万人分の生産量を目標としている(各患者が10日間投与を受けると想定して計算)。

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Dr.皿谷の肺音聴取道場

第1回 胸部の解剖第2回 呼吸音伝達の仕組み第3回 正常呼吸音を聴く第4回 肺炎と胸膜炎を理解する第5回 頸部で聴こえる音第6回 中葉・舌区で聴こえる音第7回 肺底部で聴こえる音第8回 肺炎へのアプローチ第9回 気管支喘息、肺がんへのアプローチ第10回 多彩な疾患へのアプローチ 肺音に苦手意識がある先生、ぜひこの番組を見てください!Dr.皿谷が、胸部の解剖から肺音が聞こえる原理、雑音が生じる理由まで、肺音聴取に必要な知識を丁寧に解説します。胸部だけでなく頸部や口腔での聴診のコツも伝授。さまざまな部位での聴診スキルと異常音を知ることで、肺音から疾患を特定できるようになります。実症例で録音した肺音を数多く聞いて、コモンな疾患を聴き分けられる耳を養いましょう。※学習効果を高める1冊 皿谷氏の最新著作 「まるわかり!肺音聴診」は、聴診のポイントから診断アプローチまで丁寧に解説。DVDで学んだスキルを深く理解できるおすすめの1冊です。Amazon購入リンクはこちら↓「まるわかり!肺音聴診」(南江堂)第1回 胸部の解剖効果的に肺音を聞くには、解剖の理解が不可欠。なぜなら、体表から肺の位置を把握できることが適切な音を聞くための土台だからです。第1回では、モデルの体表に骨や肺の位置をマーキングし、体表から肺の位置がわかるように解説します。第2回 呼吸音伝達の仕組み肺音は、正常呼吸音と副雑音に分かれます。それぞれの異常に気付くために押えておきたい基本は呼吸音がどこで発生しているのか、そしてその音がどうやって体の中で伝達されているか。これを理解するために最も重要なポイント「肺はlow pass filterである」をわかりやすく解説します。第3回 正常呼吸音を聴く呼吸音は、気管呼吸音、気管支呼吸音、肺胞呼吸音の3つに分類されます。これらの正常音の聴取部位や音の性質をしっかりと把握していれば、異常を見つけるのも簡単。それぞれの呼吸音の正常な状態と、異常が生じる場合を実際に録音した症例音源で解説します。第4回 肺炎と胸膜炎を理解する臨床で頻繁に遭遇する肺炎と胸膜炎。これらの疾患で肺音はどう変化するのか?病変の種類と聴取部位による音の違いを、実際の症例で見ていきます。患者に発語してもらい音の変化から病変を捉える「声音聴診」や打診を組み合わせたテクニックも実技で解説します。第5回 頸部で聴こえる音患部を聴いても見つけられない状態変化を見つける方法を知りたくないですか?それは頸部聴診。頸部で聴こえる異常音がどんな音かを知ってさえいれば、気管狭窄や喘息発作、COPDの急性増悪などをすぐに見つけられます。症例写真と聴診音で勉強していきましょう!第6回 中葉・舌区で聴こえる音中葉・舌区は、鼻症状を呈する患者では必ず聴診を行うべき部位。なぜなら鼻に症状が出る場合、気管支にも何らかの異常があることが多いから。今回は副鼻腔気管支症候群や気管支炎などの疾患で聴こえる音の性質を見ていきます。さらにこれを理解するとより一層、聴診から疾患を予測できるようになる「呼吸相」を解説します。第7回 肺底部で聴こえる音間質性肺炎を疑うとき、最も注意して聴診すべき箇所が肺底部。ここで音をキャッチできるとより早期に間質性肺炎を発見し、治療に結び付けられます。肺底部での聴診のコツ、そして実際の症例で録音した肺音から、音の性質、聴こえるフェーズなどを理解しておきましょう。第8回 肺炎へのアプローチ肺音は、さまざまな肺炎を発見し病期を見分けるのに有用なツールです。今回はインフルエンザ感染後の肺炎、マイコプラズマ肺炎、そしてレジオネラそれぞれの肺音を症例写真とともに聴いていきます。呼気、吸気どちらでよく聴こえるか?高音か低音か?さまざまな角度から音を聴き分ける練習をしていきましょう。第9回 気管支喘息、肺がんへのアプローチ高音と低音と入り混じった喘鳴を聴いたとき、どんな疾患を想像しますか?答えを出すポイントは、気道の構造を考慮すること。気道の太さと細さで音の性質が変わることを念頭に置いて画像や診察情報と照らし合わせることで答えにたどり着くことができます。肺音と解剖、そして画像や診察情報などを総合して、疾患を見つける訓練をしていきましょう。第10回 多彩な疾患へのアプローチ最終回は肺音で聴き取れる特殊な症例をみていきます。画像診断やその他の検査で診断がついてから肺音を聴取してみると、その異常が肺音でも聴き取れることがわかります。こうした症例を知っておくと、侵襲的な検査をする前に異常を発見することにもつながります。これはまさに上級者のテクニック。基本的な肺音を聴けるだけでなく、高度なテクニックも身に付けて診断の精度を上げていきましょう!

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