サイト内検索|page:56

検索結果 合計:1891件 表示位置:1101 - 1120

1101.

認知症患者におけるCOVID-19の影響

 認知症患者において、COVID-19による死亡リスクへの影響は不明である。イタリア・Istituto Clinico S.Anna HospitalのAngelo Bianchetti氏らは、COVID-19で入院した患者における認知症の有病率、臨床症状、その後のアウトカムについて評価を行った。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌オンライン版2020年5月15日号の報告。 北イタリア・ブレシア県にある急性期病院のCOVID-19病棟にCOVID-19肺炎で入院した627例を対象に、認知症の診断、COVID-19の発症様式、病院での症状やアウトカムなどの診療記録をレトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。・認知症患者は、82例(13.1%)であった。・認知症の有無別の死亡率は、非認知症患者で26.2%(545例中143例)、認知症患者で62.2%(82例中51例)であった(カイ二乗検定:p<0.001)。・ロジスティック回帰年齢モデルでは、認知症の診断は死亡率の高さと独立した関連が認められ、認知症患者のORは1.84(95%CI:1.09~3.13、p<0.05)であった。・認知症患者の中で最も頻繁に認められた症状は、せん妄(とくに活動性の低下タイプ)、機能状態の悪化であった。 著者らは「認知症は、COVID-19による死亡率上昇の重要なリスク因子であり、とくに認知症が進行した患者では注意が必要である。認知症患者のCOVID-19による臨床症状は非定型的であり、早期の症状把握や入院を困難にさせるため、せん妄や機能状態の悪化などの徴候に注意する必要がある」としている。

1102.

周術期のCOVID-19、術後肺合併症や死亡への影響は/Lancet

 手術を受けた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染患者では、2割以上が30日以内に死亡し、約半数が術後肺合併症を発症しており、全死亡例の約8割に肺合併症が認められたとの調査結果が、英国・バーミンガム大学のDmitri Nepogodiev氏らCOVIDSurg Collaborativeによって報告された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月29日号に掲載された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行以前には、質の高い国際的な観察研究により、術後の肺合併症(最大10%)および死亡(最大3%)の割合は確立されていた。研究グループは、COVID-19が世界的に流行している現在および収束後に、外科医と患者がエビデンスに基づく意思決定を行えるようにするには、術後の肺合併症と死亡に及ぼすSARS-CoV-2の影響を明らかにする必要があるとして本研究を行った。235施設が参加した国際的なコホート研究 本研究は、24ヵ国235施設が参加した国際的なコホート研究であり、2020年1月1日~3月31日の期間に実施された(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 対象は、手術の7日前~30日後の期間にSARS-CoV-2感染と診断された患者であった。良性疾患、がん、外傷、産科などを含むあらゆる適応症で手術を受けた患者が対象となった。年齢制限は各参加施設の規定に基づき、小児も含まれた。 主要アウトカムは、術後30日以内の死亡とした。主な副次アウトカムは、肺合併症(肺炎、急性呼吸急迫症候群[ARDS]、術後の予期せぬ換気[術後抜管後の侵襲的・非侵襲的換気、体外式膜型人工肺のエピソード、または患者が術後に計画どおりに抜管できなかった場合])であった。流行期はとくに70歳以上の男性で手術の閾値を高くすべき 2020年5月2日の解析の時点で、30日間のフォローアップが完了した1,128例が解析に含まれた。605例(53.6%)が男性で、214例(19.0%)が50歳未満、353例(31.3%)が50~69歳、558例(49.5%)が70歳以上であった。 術前にSARS-CoV-2感染が確定していたのは294例(26.1%)で、術後の確定例は806例(71.5%)だった。835例(74.0%)が緊急手術、280例(24.8%)は待機的手術を受けた。手術の内訳は、良性疾患が54.5%、がんが24.6%、外傷が20.1%であり、小手術が22.3%、大手術は74.6%であった。 30日死亡率は23.8%(268/1,128例)だった。補正後解析では、以下の6つが30日死亡の有意な予測因子であった。 男性(女性と比較したオッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.28~2.40、p<0.0001)、年齢70歳以上(70歳未満と比較したOR:2.30、1.65~3.22、p<0.0001)、米国麻酔学会(ASA)の術前状態分類のGrade3~5(Grade1/2と比較したOR:2.35、1.57~3.53、p<0.0001)、がんの診断(良性疾患/産科の診断と比較したOR:1.55、1.01~2.39、p=0.046)、緊急手術(待機的手術と比較したOR:1.67、1.06~2.63、p=0.026)、大手術(小手術と比較したOR:1.52、1.01~2.31、p=0.047)。 肺合併症は577例(51.2%)で発生した。このうち、456例(40.4%)が肺炎、240例(21.3%)が予期せぬ換気、162例(14.4%)はARDSであった。肺合併症例の30日死亡率は38.0%(219/577例)であり、非肺合併症例の8.7%(46/526例)に比べて高かった(p<0.0001)。また、肺合併症は、全死亡例の81.7%(219/268例)に認められた。補正後解析では、男性(OR:1.45、95%CI:1.07~1.96、p=0.016)およびASA Grade3~5(2.74、1.89~3.99、p<0.0001)は、肺合併症の独立の予測因子であった。 著者は、「COVID-19の世界的流行の期間中は、とくに70歳以上の男性において、通常の診療時よりも手術の閾値を高くすべきである。また、緊急性のない手術の延期を検討し、手術の遅延や必要性の回避を目的とする非手術的治療の積極的導入を考慮する必要がある」と指摘している。

1103.

acalabrutinib、新型コロナ重症例のサイトカインストーム改善/アストラゼネカ

 多施設無作為化非盲検国際共同試験のCALAVI試験において、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤acalabrutinib(国内未承認)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の炎症マーカーを低下させ、臨床転帰を改善したと示された。これを受け、アストラゼネカは2020年6月5日に本試験結果を発表。Science Immunology誌2020年6月5日号にも同時掲載された。 現在、ウイルス誘発性の過剰免疫反応(高サイトカイン血症、サイトカインストーム)がCOVID-19患者の呼吸器疾患の主な発症機序であると仮説が立てられている。そこで、本試験ではCOVID-19入院患者を対象とし、既存のベストサポーティブケアにacalabrutinibを追加した併用療法による効果について検証された。主要評価項目は治療後の生存患者数および呼吸不全を回避できた患者数。本試験は世界中で実施されており、米国、欧州、そして日本も参加している。 本試験結果によると、acalabrutinibをCOVID-19重症患者19例(酸素補充:11例、人工呼吸器管理:8例)に投与。10〜14日間の治療コースにおいて、acalabrutinib投与により大部分の患者の酸素化を改善した。また、CRPとIL-6、リンパ球の減少と相関して酸素化が改善した。acalabrutinib投与終了後、酸素補充を要した11例中8例(72.7%)と人工呼吸器管理を要した8例中2例(25%)は室内気で退院。人工呼吸器管理を要した8例中4例(50%)は抜管に成功した。 次世代の選択的BTK阻害薬のacalabrutinibは、B細胞の増殖・輸送・遊走化、および接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こすBTKに結合し、阻害作用を発揮する。現在、日本国内では未承認であるが、成人の慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ性リンパ腫(SLL)、成人マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬として米国、オーストラリア、アラブ首長国連邦、インドなどで承認されている。ただし、現時点でSARS-CoV-2関連疾患の治療薬としては承認されていない。

1104.

ニンテダニブ、進行性線維化を伴う間質性肺疾患の国内適応を追加/ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは、ニンテダニブ(商品名:オフェブ)について、2020年5月29日付で、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(進行性線維化を伴うILD)の効能・効果で国内における製造販売承認を取得した。 今回の承認は、国際共同第III相臨床試験(INBUILD試験)に基づくもので、ニンテダニブは日本で初めて進行性線維化を伴うILDを適応として承認された治療薬となる。海外においては、2020年3月に進行性線維化を伴うILDの唯一の治療薬として、世界で初めて米国で承認された。 進行性線維化を伴うILDには、関節リウマチ関連ILD、全身性強皮症に伴うILD 、混合性結合組織病に伴うILD、特発性非特異性間質性肺炎、分類不能型特発性間質性肺炎、過敏性肺炎、じん肺など職業環境性ILD、サルコイドーシスなど幅広い疾患が含まれる。しかしながら、これら疾患の一つひとつは、患者数が少なく、頑健なエビデンスを基に承認された薬剤がなかった。

1105.

COVID-19、抗がん剤治療は死亡率に影響せず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者の死亡率は、主に年齢、性別、基礎疾患により上昇することが示された。また、細胞障害性抗がん剤または他の抗がん剤治療中のがん患者が、こうした積極的治療を受けていない患者と比べて、COVID-19による死亡リスクが高いというエビデンスを確認できなかったという。英国・Institute of Cancer and Genomic SciencesのLennard Y. W. Lee氏らが、UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCCMP)による前向きコホート研究の結果を報告した。がん患者、とくに全身薬物療法を受けている患者は、COVID-19による死亡リスクが高いと考えられていたが、この推測を支持する大規模な多施設共同研究のデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年5月28日号掲載の報告。UKCCMPに登録された最初の新型コロナ感染症のがん患者800例を解析 UKCCMPは、COVID-19のがん患者における臨床的および人口統計学的特徴とCOVID-19の転帰を検討し、がんの存在およびがん治療がCOVID-19に及ぼす影響を評価する目的で、2020年3月18日に発足した、最初のCOVID-19臨床レジストリである。ほぼリアルタイムでデータの収集、分析およびレポートを可能にし、迅速な臨床的意思決定をサポートしている。 研究グループは、英国がんネットワークのがんセンターを受診しているすべてのがん患者のうち、鼻咽頭拭い液のRT-PCR検査でSARS-CoV-2陽性と判定された患者を登録した(画像診断または臨床的にCOVID-19と診断されてもRT-PCR検査が陰性の患者は除外)。 今回は、2020年3月18日~4月26日の期間に、英国内のがんセンター55施設で登録された症候性COVID-19を有するがん患者800例について解析した。主要評価項目は、患者が入院中にその施設で評価された全死亡または退院である。抗がん剤はがん患者の新型コロナ感染症による死亡に有意な影響を及ぼさない 解析対象800例のうち、412例(52%)は軽症COVID-19で、226例(28%)が死亡した。死亡リスクは、年齢の上昇(オッズ比[OR]:9.42、95%信頼区間[CI]:6.56~10.02、p<0.0001)、男性(OR:1.67、95%CI:1.19~2.34、p=0.003)、高血圧(OR:1.95、95%CI:1.36~2.80、p<0.001)および心血管疾患(OR:2.32、95%CI:1.47~3.64、p=0.0003)などの基礎疾患の存在と有意な関連が認められた。 281例(35%)が、RT-PCR検査で陽性と判定される前4週以内に細胞障害性抗がん剤による治療を受けていた。年齢、性別、基礎疾患で補正すると、新型コロナウイルス感染症による死亡率は、過去4週間に抗がん剤治療を受けた患者と受けていない患者とで有意差はなかった(OR:1.18、95%CI:0.81~1.72、p=0.380)。また、過去4週以内に免疫療法、ホルモン療法、分子標的療法、放射線療法を受けた患者においても、死亡率に有意な影響は認められなかった。

1106.

Withコロナの夏に5つの提言/日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会

 本格的な夏の到来を控え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防でのマスク着用により、例年以上の熱中症被害が危惧されている。 そこで、日本救急医学会の呼びかけにより、日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会の4学会で構成するワーキンググループが組織され、「『新型コロナウイルス 感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言』について」が発表された。 同提言では、感染対策としての換気やマスク着用の重要性、熱中症対策としてのエアコン使用やマスクを外す必要性との両立など、夏季を迎えて注意するポイントをまとめている。「適宜マスクを外して休憩も大切」と5つの提言 提言では、大きく5項目を示し、細かい解説を加えている。提言の内容は次の通り。(1)屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。(2)マスク着用により、身体に負担がかかりますので、適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので、はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境等に十分に注意を払って下さい 。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。(3)体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。(4)熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。(5)日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。 同提言では、最後に「COVID-19と気温・湿度についての関連性についても 十分なエビデンスに基づくデータはなく、コロナ禍における熱中症の予防や治療に関しても、依然、学術的にも情報が限られている。ゆえに、今回の提言はアップデートされる可能性がある」と今後の修正なども示唆している。

1107.

距離1m以上で感染リスク8割以上減少、マスクでも/Lancet

 ウイルス伝播の予防に、人との物理的距離(physical distance、フィジカルディスタンス)1m以上の確保、フェイスマスクおよび保護眼鏡の着用が有効であることが、カナダ・マックマスター大学のDerek K. Chu氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。解析は、6大陸・16ヵ国で行われた172件の観察研究など患者総数2万5,697例を含むデータを包含して行われ、フィジカルディスタンスが1m以上の場合、感染リスクは約82%減少、フェイスマスクの着用は約85%減少することが示されたという。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、人から人への感染が濃厚接触により拡大している。研究グループは医療機関および非医療機関(コミュニティなど)におけるウイルス伝播について、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2020年6月1日号掲載の報告。フィジカルディスタンスなどの影響をシステマティック・レビューとメタ解析で検証 システマティック・レビューとメタ解析は、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするために、PubMedやEmbaseなど世界保健機関(WHO)が特定する21の標準的データベースと、COVID-19の特異的データベースを基に、重症急性呼吸器症候群を引き起こすSARS-CoV-2とβコロナウイルス、および中東呼吸器症候群(MERS)に関するデータを集めて行われた。 2020年5月3日時点でシステマティック・レビューを実施。言語は問わなかったが、比較試験であることを適格条件とし、また、試験の容認度や柔軟性、資源活用性、公平性の文脈的要因を確認した。そのうえで試験結果をスクリーニングしデータを抽出、バイアス・リスクについては2度評価した。 頻度論的統計、ベイズ・メタ解析、ランダム効果メタ回帰解析を行った。エビデンスの確実性については、Cochrane法とGRADEアプローチで評価した。フィジカルディスタンス1m以上で0.18倍、マスクで0.15倍、保護眼鏡で0.22倍に 検索により、6大陸にわたる16ヵ国からの観察研究172件を特定した。無作為化試験はなかった。 医療現場・非医療現場で行われた比較試験であるとの適格条件を満たした44件(患者総数2万5,697例)を対象にメタ解析を行った。 感染リスクは、フィジカルディスタンスが1m未満の場合に比べ1m以上の場合は、大幅に低下した(被験者総数1万736例、統合補正後オッズ比[OR]:0.18[95%信頼区間[CI]:0.09~0.38]、群間リスク差[RD]:-10.2%[95%CI:-11.5~-7.5]、中等度の確実性)。物理的間隔が広がるほど、ウイルスの感染防御は増大した(1m増の相対リスク[RR]変化:2.02、交互作用のp=0.041、中等度の確実性)。 フェイスマスクの着用も、感染リスクの大幅な減少につながった(被験者総数2,647例、統合補正後OR:0.15[95%CI:0.07~0.34]、RD:-14.3%[95%CI:-15.9~-10.7]、低度の確実性)。とくに、N95マスクや類似の防毒マスクは、使い捨てサージカルマスクや類似のマスク(再利用できる12~16層の綿マスクなど)と比べ、感染予防効果との関連性が強かった(交互作用p=0.090、事後確率95%超、低度の確実性)。 保護眼鏡の使用も感染リスクの低減につながった(被験者総数3,713例、統合補正後OR:0.22[95%CI:0.12~0.39]、RD:-10.6%[95%CI:-12.5~-7.7]、低度の確実性)。 未補正試験やサブグループ解析、感度解析でも、同様の結果が得られた。 著者は、「システマティック・レビューとメタ解析の結果は、1m以上のフィジカルディスタンスを支持するもので、政府が取り組むべきモデルおよび接触者追跡の定量的推定値が明らかになった。解析結果に基づき、公共の場および医療機関でのフェイスマスク、防毒マスク、保護眼鏡の適切な使用を広報しなければならない」と述べるとともに、「今回の介入のエビデンスをより明らかにするために、頑健な無作為化試験を行う必要があるが、解析結果は現時点で得られる最善のエビデンスであり、中間的なガイダンスとして利用可能と思われる」とまとめている。

1108.

COVID-19による静脈血栓症、入院前に発症か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者では、Dダイマーと凝固系での凝固促進変化、この感染症に関連する静脈および動脈血栓症の上昇率が報告されている。現時点でのさまざまな論文報告によると、ICUに入室したCOVID-19患者の死亡率は50%と高い。とくに動脈・静脈での血栓イベント発症の報告は多く、末梢静脈血栓塞栓症は27~69%、肺塞栓症は最大23%も発生している。 フランス・CCN(centre cardiologique du nord saint denis)のJulien Nahum氏らが観察研究を行った結果、深部静脈血栓症の発症割合は79%と高く、早期発見と抗凝固療法を迅速に開始することで予後を改善する可能性が示唆された。また、抗凝固薬を予防投与したにもかかわらず、ICU入室後わずか2日で患者の15%が深部静脈血栓症を発症したことから、COVID-19のICU患者すべてにおいて系統的に抗凝固療法を評価する必要があるとしている。JAMA Network Open 2020年5月29日号のリサーチレターに報告した。 研究者らは、2020年3月中旬~4月初旬、フランス・パリ郊外にある病院の集中治療室(ICU)に入室したCOVID-19重症患者(急性呼吸窮迫症候群を起こし、人工呼吸を要した)を対象に深部静脈血栓症の系統的な評価を行う目的で観察研究を実施した。 研究者らは、ICU入室時、過去に炎症マーカー値の上昇を示したデータや入院時の静脈血栓症の発症率が高いことを考慮し、COVID-19患者全症例に対して下肢静脈エコーを実施。入院時の検査値が正常でも48時間後に下肢静脈エコーを行い、COVID-19の全入院患者に抗凝固療薬の予防投与を推奨した。統計分析はグラフパッドプリズム(ver.5.0)とExcel 365(Microsoft Corp)を用い、両側検定を有意水準5%として行った。 主な結果は以下のとおり。・計34例が組み込まれ、平均年齢±SDは62.2±8.6歳で、25例(78%)が男性だった。・COVID-19患者のうち26例(76%)がPCR法で診断された。 ・8例(24%)はPCR法で陰性だったが、CT画像でCOVID-19肺炎の典型的なパターンを示した。・主な併存疾患は、糖尿病(15例[44%])、高血圧症(13例[38%])、肥満(平均BMI±SD:31.4±9.0)で、深部静脈血栓症を最も発症していたのは、糖尿病(12例/15例)、次いで高血圧(9例/13例)だった。・ 26例(76%)は入院時にノルアドレナリンを、16例(47%)は腹臥位管理を、4例(12%)は体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とした。・入院前に抗凝固療法を受けていた患者はわずか1例(3%)だった。・深部静脈血栓症は、入院時に22例(65%)、ICU入室48時間後に下肢静脈エコーを行った際5例(15%)で見られ、入院から48時間経過時点で計27例(79%)に認められた。 ・血栓症の発症部位は、両側性が18例(53%)、遠位が23例(68%)で、近位が9例(26%)だった。 ・過去に報告されたデータと比較して、今回の集団ではDダイマー(平均±SD:5.1±5.4μg/mL)、フィブリノーゲン(同:760±170mg/dL)およびCRP(同:22.8±12.9mg/dL)の値が高かった。一方、プロトロンビン活性(同:85±11.4%)と血小板数(同:256×103±107×103/μL)は正常だった。

1109.

新型コロナで8割の診療所が患者&収入減!診療科別の違いも浮き彫りに-会員医師アンケート

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大は、診療所・病院の経営に大きな影響を与えている。今回、ケアネットでは診療所で働く会員医師に対し、2020年4月の外来患者数・経営状態についてアンケート調査を行った。アンケートは2020年5月21(木)~25日(月)に実施し、1,000名から回答を得た。 調査は、全国のケアネット会員のうち診療所(病床数0床)で勤務する30代以上の医師を対象にインターネット上で実施。回答者の年代は50代が36.7%と最も多く、60代が32.2%、40代が17.0%、70代以上が8.1%、30代が6%だった。診療科は内科が47.5%と半数近くを占め、続いて小児科が6.9%。整形外科・皮膚科が各4.7%、循環器内科・精神科が各4.6%、などとなっている。新型コロナの影響による患者減は内科と比べて小児科が大きく皮膚科が小さい 「4月平日の外来患者数」を前年同月比で尋ねた設問では、「5~25%減った」という回答が41.2%と最多となり、「25~50%減った」が28.4%、「50%以上減った」が9.7%だった。「減った」という回答を合計すると8割に達し、新型コロナウイルス感染流行が診療所に与えた影響の大きさを確認できる。一方、新型コロナの影響による患者の減少幅には診療科ごとの違いもあり、内科と比較した場合、小児科・耳鼻咽喉科では減少幅が大きい一方で、整形外科・皮膚科・精神科は減少幅が小さい傾向が見られた。 「現時点での経営上の一番の問題」について自由回答で尋ねた設問では、「フェイスシールドなど注文していますが、1ヵ月以上たっても届かない(東京都・内科)」といった依然として続く新型コロナの影響による資材不足や「患者の受診控えによる症状の悪化が心配(京都府・消化器内科)」「隔離場所が確保できない(東京都・糖尿病・代謝・内分泌内科)」といった診療面の不安を訴える声が上がった。自由回答でも最多だったのは「外来患者数が元に戻らない(神奈川県・整形外科)」「外来患者数減少、処方日数の長期化を戻せない(広島県・内科)」といった新型コロナの影響による患者減に関する回答だ。中には「資金ショートの恐れあり、閉院検討(東京都・内科)」という深刻な内容もあった。 アンケートでは、保険診療収入の増減状況や給付金・助成金制度の利用状況についても聞いている。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナ影響で8割の診療所が患者&収入減!対策どうする?-会員医師アンケート

1110.

COVID-19治療薬、ヒドロキシクロロキンに乾癬発症のリスク?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として期待された抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(HCQ)について、乾癬の発症・増悪・再発を誘発する可能性があることを、カナダ・トロント大学のMuskaan Sachdeva氏らが示した。乾癬に関連したHCQ治療の重大な影響を調べた試験報告を統合したシステマティックレビューの結果に基づくもので、著者は、「COVID-19患者へのHCQ治療においては、その重大な影響をモニタリングする必要がある。また、安全性プロファイルを明らかにする臨床試験の実施が不可欠だ」と述べている。HCQはCOVID-19患者のウイルス量を低減する可能性が示された一方で、治療の影響と思われる重大な皮膚有害事象の症例報告が複数寄せられていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。 研究グループは、HCQ治療後の乾癬発症、増悪もしくは再発の症例報告をシステマティックレビューした。乾癬へのHCQ治療の重大な影響を検討していたオリジナル研究をEMBASE、MEDLINEで統合的に検索し、被験者の人口統計学的特性、HCQ治療の詳細、乾癬の診断について抽出した。 主な結果は以下のとおり。・15論文から該当する乾癬発症患者18例のデータを抽出した。・乾癬発症例を性別で分析すると、女性が有意に多かった(女性14例[77.8%]vs.男性2例[11.1%]vs.性別不明2例[11.1%])。・発症例の50%(9例)は、HCQ服用前に乾癬の既往はなかった。・18例のうち、50%(9例)がde novo乾癬で、27.8%(5例)は乾癬性症状の増悪例で、22.2%(4例)はHCQ治療後の乾癬再発例であった。

1111.

Dr.林の笑劇的救急問答15

第5回 腹痛の原因は!病態生理で考える第6回 その腹痛!筋骨格・皮膚・神経も考えよう第7回 腹痛なのに!全身性疾患・慢性疾患って反則?第8回 腹痛は遠方より来る? Season15のテーマは腹痛。腹部救急は難しく、診断に時間がかかります。救急を受診した腹痛患者のうちおよそ1~2割が診断不能で、さらに、そのうち2割が悪化すると言われています。重大な腹痛を見逃さないために、いろいろな原因を想起できるようになりましょう。下巻では内臓痛と体性痛、皮膚・筋骨格由来、全身性や慢性の疾患、腹部以外の疾患などを取り上げ、解説します。そう、痛みがあるところに原因があるとは限らないのが腹痛診断の難しいところです。ピットフォール満載の爆笑症例ドラマと、Dr.林のわかりやすい講義で、これまで「胃腸炎」や「便秘」とゴミ箱診断してきた腹痛に、複数の鑑別疾患を挙げることができるようになるでしょう。第5回 腹痛の原因は!病態生理で考える急性の腹痛は解剖学的に、そして病態生理から考えることが大切です。体性痛の場合は、“膜”が関連しているため、持続痛ですが、内臓痛の場合は、間欠痛や持続痛もあり、局在がはっきりしないことも多く、注意が必要です。痛みはどこを通っているのか、なぜ、その部位が痛むのか、また、その理由は何かをわかりやすく解説します。Dr.林の患者のウソを見抜く診察テクニックもご紹介します。第6回 その腹痛!筋骨格・皮膚・神経も考えよう今回のテーマは神経・筋・皮膚由来の腹痛についてです。腹痛とはいってもすべてが腹部臓器からの痛みばかりではありません。筋骨格由来や神経由来、皮膚由来の痛みもあります。その際は、適切な病歴聴取と身体診察で診断できます。そのノウハウをDr.林が詳しく解説します。第7回 腹痛なのに!全身性疾患・慢性疾患って反則?腹痛は必ずしも、解剖学的なアプローチだけで診断できるわけではありません。全身性疾患の1症状として腹痛が出る場合があります。たとえば、DKAやIgA血管炎、高Ca血症、電解質異常などなど。原因のわからない腹痛を診たら、そのような疾患を鑑別にあげられるようになりましょう。また、慢性の腹痛には、解剖学的なアプローチはもちろんのこと、機能的なアプローチも必要です。いずれの場合も、病歴と身体所見をしっかりと行うことが重要です。第8回 腹痛は遠方より来る?腹痛編の最終回です。腹痛は、必ずしも痛みがあるところに原因があるとは限らないのが非常に難しいところです。たとえば、心筋梗塞や虫垂炎で胃痛を訴えるように、肺炎や膿胸、精巣捻転などでも腹痛を訴えることがあります。なぜそうなるのかわかっていれば、それらの疾患を鑑別に挙げることができるようになります。さあ、これで腹痛の患者が来ても、胃腸炎や便秘というゴミ箱診断をせず、腹痛のさまざまな原因を想起し、診療につなげていきましょう!

1112.

COVID-19診療に医学書出版社が支援/日本医書出版協会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により学術集会で新刊書の購入もままならない昨今、わが国の医学書出版社で構成される「日本医書出版協会」は、同協会の会員各社がサイトで無償公開しているCOVID-19関連の書籍、雑誌の論文や記事、Web情報などを一元的に閲覧できるページ「新型コロナウイルス関連無償コンテンツ 」を開設した。 具体的に公開されているコンテンツは、書籍、論文など約60コンテンツにのぼり、初出年月の新しい順に掲載されている(一部、会員登録が必要なコンテンツもある)。 ホームページでは、COVID-19の診療に携わる医療者に感謝を述べるとともに、診療への支援に役立てほしいと述べている。掲載コンテンツ・書籍「『今日の治療指針2020年版』収載「オンライン診療の手引き」無料公開について」福井次矢(医学書院)・雑誌「おさえておきたい 新型コロナウイルスの情報と感染対策基本テクニック」清水潤三(医歯薬出版)「COVID-19は研究にどう影響しているかー小誌アンケートに寄せられた声を紹介」実験医学編集部 早河輝幸(羊土社)「PCR検査をめぐる再混乱─集団的同調圧力で決めてはいけない」岩田健太郎(日本医事新報社)・その他(Web情報など)「COVID-19緊急企画「プライマリ・ケアにおける漢方薬の新たなニーズ」」長瀬眞彦(羊土社)「「新型コロナウイルス」関連コメント特設ページ」菅谷憲夫(日本医事新報社)「NEJM日本国内版オンラインにコロナウイルス関連情報ページを公開」NEJM日本国内版(南江堂)

1113.

COVID-19感染のがん患者、重症化しやすく複数のリスク因子/Lancet Oncol

 がん患者がCOVID-19に感染した場合に非がん患者よりも重症化する可能性が高く、複数のリスク因子があることが、中国・華中科技大学(武漢)のJianbo Tian氏らによる多施設共同の後ろ向きコホート研究で示された。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月29日号掲載の報告。 2020年1月13日~3月18日に武漢の9病院に入院した、がん患者232例と非がん患者519例を比較した。いずれも18歳以上、PCR検査でCOVID-19陽性と判定されていた。がん患者のがん種は固形がんおよび血液がんだった。年齢、性別、併存症、がん種、病歴、がん治療期間を調整した単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行い、COVID-19重症度に関連するリスク因子を調査した。COVID-19の重症度はWHOガイドラインに基づいて入院時に定義された。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は、がん患者で29日(IQR:22~38)、非がん患者で27日(20~35)だった。・重症の症例は、がん患者では232例中148例(64%)、非がん患者では519例中166例 (32%)、オッズ比[OR]3.61 (95%信頼区間[CI]:2.59~5.04、p

1114.

中国発・COVID-19ワクチン、接種28日後に免疫原性を確認/Lancet

 遺伝子組み換えアデノウイルス5型(Ad5)をベクターとして用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは、健康成人に接種後28日の時点で免疫原性を示し、忍容性も良好であることが、中国・江蘇省疾病管理予防センターのFeng-Cai Zhu氏らがヒトで初めて行った臨床試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月22日号に掲載された。2020年5月20日現在、215の国と地域で470万人以上が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、31万6,000人以上が死亡したとされる。有効な予防策がない中で、現在、集団発生を抑制する方法として、検疫、隔離、身体的距離の保持(physical distancing)などが行われているが、SARS-CoV-2感染に伴う死亡や合併症の膨大な負担を軽減するには、有効なワクチンの開発が急務とされる。単施設の用量漸増第I相試験 研究グループは、中国CanSino Biologicsが開発中の、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を発現する非複製型Ad5ベクターCOVID-19ワクチンの用量漸増第I相試験(単施設、非盲検、非無作為化)を行った(中国国家重点研究開発計画などの助成による)。 年齢18~60歳の健康成人を連続的に登録し、3つのワクチン用量(ウイルス粒子が低用量:5×1010、中用量:1×1011、高用量:1.5×1011)に割り付け、筋肉内に注射した。 主要アウトカムは、ワクチン接種から7日以内の有害事象とした。安全性評価は、ワクチン接種から28日の時点で行った。 特異的抗体は酵素結合免疫吸着法(ELISA)で測定し、ワクチン接種によって誘発された中和抗体反応はSARS-CoV-2ウイルス中和試験と疑似ウイルス中和試験で検出した。T細胞応答は、酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイとフローサイトメトリーアッセイで評価した。約半数に注射部位の痛みおよび発熱、中和抗体は28日にピークに 2020年3月16日~27日の期間に、108例(平均年齢36.3歳、女性49%)が登録された。各用量群に36例ずつが割り付けられ、全者が解析に含まれた。 ワクチン接種から7日以内に有害事象が報告されたのは、低用量群が30例(83%)、中用量群が30例(83%)、高用量群は27例(75%)であり、各群間に差は認められなかった。 最も多い注射部位の有害反応は痛み(58例[54%])で、低用量群は17例(47%)、中用量群は20例(56%)、高用量群は21例(58%)にみられた。 最も多い全身性の有害反応は発熱(50例[46%])で、次いで疲労感(47例[44%])、頭痛(42例[39%])、筋肉痛(18例[17%])であった。重度(Grade3)の発熱(腋窩温>38.5℃)が9例(低用量群2例[6%]、中用量群2例[6%]、高用量群5例[14%])で発現したが、全群で報告されたほとんどの有害反応は軽度~中等度だった。28日以内に重篤な有害事象の報告はなかった。 ワクチン接種から14日には、3つの用量群で受容体結合ドメイン(RBD)への迅速な結合抗体応答が認められ、28日には高用量群で結合抗体の幾何平均抗体価(GMT)が最も高くなった(低用量群615.8、中用量群806.0、高用量群1,445.8、p=0.016)。 SARS-CoV-2に対する中和抗体は、0日には3つの用量群とも認められなかったが、14日には中等度の増加がみられ、3群とも28日にピークに達した。28日の中和抗体のGMTは高用量群が最も高かった(低用量群14.5、中用量群16.2、高用量群34.0、p=0.0082)。 ELISpotによるT細胞応答は、ベースライン時には3つの用量群とも検出されず、ワクチン接種から14日後にピークに達した。14日時のspot形成細胞数の平均値は、100,000個あたり低用量群が20.8、中用量群が40.8、高用量群は58.0であり、高用量群は低用量群に比べ有意に高かった(p<0.0010)が、中用量群との間には差はなかった。 14日および28日に、すべての用量群でCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞からのインターフェロンγ(IFNγ)の分泌が検出された。14日時のCD4陽性T細胞での腫瘍壊死因子α(TNFα)の発現は、低用量群が高用量群(p<0.0001)および中用量群(p=0.0032)よりも低かった。また、CD4陽性T細胞から検出されたインターロイキン2(IL-2)の量は、CD8陽性T細胞に比べて多かった。 著者は、「現在、開発が進められているさまざまなワクチンは、いずれも利点と弱点があり、優劣の予測は時期尚早である。今回の研究で得られた知見は、このAd5ベクターCOVID-19ワクチンのさらなる検討を正当化するものである」としている。

1115.

第10回 病院の経営状況悪化に危機感、日病協から要望書提出

<先週の動き>1.病院の経営状況悪化に危機感、日病協から要望書提出2.全国知事会議で病院再編の検討先送りが歓迎される3.予防医療推進についての報告書、自民党有志から政府へ提出4.合計特殊出生率1.36と4年連続で低下、自然減も50万人超1.病院の経営状況悪化に危機感、日病協から要望書提出コロナの影響による受診・入院患者の急減に多くの医療機関が直面するなか、医師会や病院団体からは入院基本料・初再診料の増額などの緊急措置を求める声が出されている。全国の国立大学附属病院、国立病院、自治体病院、医療法人協会など計15団体により構成される日本病院団体協議会(以下、日病協)は、6月3日に厚生労働省の演谷 浩樹保険局長に対して、「新型コロナウイルス感染症への対応に係る診療報酬に関する要望書」を提出した。この中には「入院基本料、初再診料及び外来診療料の大幅な増額」や「新型コロナウイルス感染症患者の入院、院内感染発生や院内感染防止策として行った休床・休棟の措置等で大幅に収入が減少した病院において、前年度の医療収入を基準とした診療報酬の概算請求」など予算措置を求めるほか、「医療法・診療報酬上の医療従事者等の配置基準の緩和措置の継続」などが盛り込まれている。一方、社会保険診療報酬支払基金が6月1日に発表した2020年3月診療分の統計月報によると、確定件数は前年同月に比べると12%減、確定金額は総計で2.0%減、医療保険分で2.6%減となっている。多くの医療機関が、今年の診療報酬改定の前である3月から、すでに新型コロナ感染症のダメージを受けていることが明らかになり、予算措置などが急がれる。(参考)新型コロナウイルス感染症への対応に係る診療報酬に関する要望書(日病協)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(追加報告)(同)支払基金・3月診療分 確定件数は前年同月比12%減 花粉症で26%減(ミクスオンライン)社会保険診療報酬支払基金 統計月報(令和元年度)2.全国知事会で病院再編の検討先送りが歓迎される6月5日、医療機関に求められていた、公立・公的病院の再編など「具体的対応方針の見直し」議論について、期限を延長する方針が示された。同日オンライン開催された全国知事会において、「公立・公的病院等が新型コロナウイルス対策で中核的役割を果たしていることが正当に評価された」とし、「今後、地域の実情に即し、地域医療の最後の砦としての役割を十分踏まえた検討を望みたい」とするコメントを発表した。昨年の閣議決定で発表された「骨太方針2019」では、公立・公的病院の再編統合を伴わない場合は2019年度中、再編統合を伴う場合は遅くとも20年秋ごろまでに具体的対応方針の見直しを求めるとの期限を設けていた。(参考)公立・公的病院再編検討の先送りについて(全国知事会社会保障常任委員会)経済財政運営と改革の基本方針 2019~「令和」新時代:「Society 5.0」への挑戦~3.予防医療推進についての報告書、自民党有志から政府へ提出人生100年時代にすべての国民が長く健康に活躍できる「百年健幸」の国づくりを目指して、予防・健康づくりを推進するため、昨年11月に自由民主党の有志議員によって立ち上げられた「明るい社会保障改革推進議員連盟(会長:上野 賢一郎氏)」が、6月1日に報告書を公表した。この報告書では、すべての国民が自然に健康になることができる環境を整え、健康格差の解消を図るために、病気予防や健康づくりを社会全体で促進できるように求めている。科学的な効果検証と、データに基づく政策の継続的な改善を行うために、保健医療科学院の機能強化や保険者の予防・健康インセンティブの強化、遠隔健康医療相談やオンライン診療・服薬指導の推進などが含まれている。議連はこの報告書を菅官房長官、加藤厚労大臣、西村社会保障改革担当大臣に提出し、今年7月に閣議決定予定の「骨太の方針2020」に、予防医療の推進が盛り込まれるよう働きかけを行っていく方針。(参考)「予防」を社会保障の柱に 自民議連が報告書(産経新聞)報告書(明るい社会保障改革推進議員連盟)4.合計特殊出生率1.36と4年連続で低下、自然減も50万人超先週、「『希望出生率1.8』の明記、子育て支援が一段と打ち出される」との報道を紹介した直後となるが、6月5日に厚労省は2019年の人口動態統計の概数を発表した。出生数は86万5,234人と前年から5万人以上減少し、統計のある1899年以降で最少となった。また1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率については、4年連続して低下していることが明らかとなった。さらに、死亡数から出生数を差し引いた人口の自然減も51万5,864人と初めて50万人を超えた。団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降は人口の自然減がさらに増加することもあり、政府の対策が急がれる。(参考)昨年の出生率1.36、4年連続で低下…自然減は初の50万人超え(読売新聞)令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚労省)

1116.

新型コロナ抗体検査が日本でも始動、米国での調査結果は?/JAMA

 第2波が懸念される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。日本では厚生労働省主導のもと、6月より3都府県(人口10万人あたりのCOVID-19累積感染者数の多い東京都・大阪府、少ない宮城県)において、性別、年齢を母集団分布と等しくなるよう層別化し、無作為抽出により選ばれた一般住民約3,000人(全体で約1万人)を対象とした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体検査が開始した。 抗体保有者の割合を調べ、今後の感染拡大に役立てる予定だ。海外の検査結果状況 海外では、米国などで既に抗体検査が実施されている。米国・南カルフォルニア大学のNeeraj Sood氏らは2020年4月10~11日、カリフォルニア州ロサンゼルスの成人を対象にSARS-CoV-2の特異的抗体を測定し保有率を調査、SARS-CoV-2感染の累積発生率を推定した。その結果、この地域のSARS-CoV-2に対する抗体保有率は4.65%であることが明らかになった。 また、この結果により、約36万7,000人の成人がSARS-CoV-2抗体を保有していたと示唆されることから、累積感染者数は4月10日にロサンゼルスで確認されていた8,430人を大幅に上回っていたとも推定された。研究者らは本研究において、キットの精度や調査地域に限界があったものの、他地域で同様の調査を行うことは流行追跡に必要である、とJAMA誌オンライン版5月18日号リサーチレターへ報告した。 この研究ではSARS-CoV-2抗体検出にラテラルフローイムノアッセイ(IgG/IgMを検出)を使用。 対象者はカリフォルニア州ロサンゼルスの住民で、2020年4月10~14日に検査会場への来場もしくは自宅にて検査が行われた。検査キットの感度は82.7%(95%信頼区間[95%CI]:76.0~88.4%)、特異度は99.5%(95%CI:99.2~99.7%)。分析には二項分布、ブートストラップ法が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・検査対象者1,952人中1,702人(87.2%)が同意、うち865人(50.9%)が検査を受けた。また、このうち2例の結果はキットの欠陥により分析から除外された。・863人のうち60%が女性、55%が35〜54歳、58%が白人、43%が年間世帯収入10万ドル超だった。・症状は、咳を伴う発熱(13%)、息切れを伴う発熱(9%)、においや味の喪失(6%)が挙げられた。・検査実施者のうち、35人(4.06%)が抗体陽性を示した(二項比率の信頼区間:0.84~5.60)。・陽性者(保有者)の割合は、人種/民族、性別、収入で異なっており、加重調整すると4.31%だった(ブートストラップ信頼区間:2.59〜6.24)。 ・感度と特異度を調整後、SARS-CoV-2抗体の非加重および加重した際の抗体保有率は、それぞれ4.34%(ブートストラップ信頼区間:2.76~6.07)および4.65%(同:2.52~7.07)だった。日本で使用される抗体検査キットや今後の状況 日本では、アボット社をはじめロシュ社やモコバイオ社の検査試薬・測定機器を使用して調査が行われる。たとえば、アボット社のSARS-CoV-2抗体検査は、ウイルスの感染後期に体内で産生される血液中のIgG抗体を特異的に検出する。現在、この抗体検査試薬は研究用試薬として提供されており、日本全国の病院や検査室で導入されている全自動分析装置で使用できる。上述の研究で使用されていたラテラルフローイムノアッセイなどは、日本国内において性能への指摘があっため、これを踏まえ、今回導入する抗体検査試薬の採用にあたっては、米国食品医薬品局(FDA)での緊急使用許可取得などが考慮された。 なお、抗体保有調査概要の結果は、まとまり次第、厚生労働省のホームページに公表される予定である。

1117.

13価肺炎球菌ワクチン、接種対象者を拡大/ファイザー

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は2020年5月29日、プレベナー13(R)水性懸濁注(一般名:沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)の新たな適応として、肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者に対する「肺炎球菌(血清型:1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F および23F)による感染症の予防」の製造販売承認事項一部変更承認を取得した。今回の適応追加により、小児並びに高齢者に限らず、肺炎球菌(血清型:同)による疾患に罹患するリスクが高い方にも接種が可能となる。 肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者は、以下のような状態の者を指す。●慢性的な心疾患、肺疾患、肝疾患又は腎疾患●糖尿病●基礎疾患若しくは治療により免疫不全状態である又はその状態が疑われる者●先天的又は後天的無脾症(無脾症候群、脾臓摘出術を受けた者)●鎌状赤血球症又はその他の異常ヘモグロビン症●人工内耳の装用、慢性髄液漏等の解剖学的要因により生体防御機能が低下した者●上記以外で医師が本剤の接種を必要と認めた者 本剤は、生後2ヵ月齢から6歳未満の小児、65歳以上の高齢者に対する肺炎球菌(血清型:同上)による侵襲性感染症を予防するワクチンとして、定期接種の対象である。なお、2019年1月現在、本剤は米国や欧州をはじめとする80ヵ国以上で生後6週から18歳未満の青年並びに全年齢の成人に対する接種が既に承認されているが、日本では6~65歳未満に対する接種への適応がなかった。2017年5月に厚生労働省へ要望書「沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンの接種対象者拡大に関する要望」が提出され、2018年に国内第III相試験の実施を経て、今回の承認に至った。

1118.

COVID-19へのヒドロキシクロロキン、死亡・心室性不整脈が増加か/Lancet

※本論文は6月4日に撤回されました。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのヒドロキシクロロキンまたはクロロキン±第2世代マクロライド系抗菌薬による治療は、院内アウトカムに関して有益性をもたらさず、むしろ院内死亡や心室性不整脈のリスクを高める可能性があることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らの調査で示された。研究の成果は2020年5月22日、Lancet誌オンライン版に掲載された。抗マラリア薬クロロキンと、そのアナログで主に自己免疫疾患の治療薬として使用されるヒドロキシクロロキンは、多くの場合、第2世代マクロライド系抗菌薬との併用でCOVID-19治療に広く用いられているが、その有益性を示す確固たるエビデンスはない。また、これまでの研究で、このレジメンは心血管有害作用としてQT間隔延長をもたらし、QT間隔延長は心室性不整脈のリスクを高める可能性が指摘されている。6大陸671病院の入院患者の多国間レジストリ解析 研究グループは、COVID-19治療におけるヒドロキシクロロキンまたはクロロキン±第2世代マクロライド系抗菌薬の有益性を評価する目的で多国間レジストリ解析を行った(ブリガム&ウィメンズ病院の助成による)。 レジストリ(Surgical Outcomes Collaborative)には6大陸671ヵ所の病院のデータが含まれた。対象は、2019年12月20日~2020年4月14日の期間に入院し、検査で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が陽性のCOVID-19患者であった。 診断から48時間以内に次の4つの治療のうち1つを受けた患者と、これらの治療を受けていない対照群を解析に含めた。(1)ヒドロキシクロロキン、(2)ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬、(3)クロロキン、(4)クロロキン+マクロライド系抗菌薬。マクロライド系抗菌薬はクラリスロマイシンとアジスロマイシンに限定された。 診断後48時間を超えてから治療が開始された患者や、機械的換気およびレムデシビルの投与を受けた患者は除外された。 主要アウトカムは、院内死亡と新規心室性不整脈(非持続性・持続性の心室頻拍および心室細動)とした。4レジメンすべてで、死亡と心室性不整脈が増加 試験期間中にCOVID-19患者96,032例(平均年齢53.8歳、女性46.3%)が入院し、適格基準を満たした。このうち、1万4,888例が治療群(ヒドロキシクロロキン群3,016例、ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬群6,221例、クロロキン群1,868例、クロロキン+マクロライド系抗菌薬群3,783例)で、8万1,144例は対照群であった。1万698例(11.1%)が院内で死亡した。 交絡因子(年齢、性別、人種または民族、BMI、心血管系の基礎疾患とそのリスク因子、糖尿病、肺の基礎疾患、喫煙、免疫不全疾患、ベースラインの疾患重症度)を調整し、対照群の院内死亡率(9.3%)と比較したところ、4つの治療群のいずれにおいても院内死亡リスクが増加していた。各群の院内死亡率およびハザード比(HR)は、ヒドロキシクロロキン群18.0%(HR:1.335、95%信頼区間[CI]:1.223~1.457)、ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬群23.8%(1.447、1.368~1.531)、クロロキン群16.4%(1.365、1.218~1.531)、クロロキン+マクロライド系抗菌薬群22.2%(1.368、1.273~1.469)であった。 また、入院中の新規心室性不整脈のリスクは、対照群(発生率0.3%)と比較して、4つの治療群のすべてで増加していた。各群の発生率とHRは、ヒドロキシクロロキン群6.1%(HR:2.369、95%CI:1.935~2.900)、ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬群8.1%(5.106、4.106~5.983)、クロロキン群4.3%(3.561、2.760~4.596)、クロロキン+マクロライド系抗菌薬群6.5%(4.011、3.344~4.812)。 著者は、「これらの薬剤の有用性を示唆するエビデンスは、少数の事例研究や小規模の非盲検無作為化試験に基づいているが、今回の研究は複数の地域の多数の患者を対象としており、現時点で最も頑健な実臨床(real-world)のエビデンスをもたらすものである」とし、「これらの知見は、4つの治療レジメンは臨床試験以外では使用すべきでないことを示唆しており、無作為化臨床試験により早急に確認する必要がある」と指摘している。 なお、本論文のオンライン版は、掲載後に、使用したデータベースに問題があることが判明し、修正のうえ2020年5月29日付で再掲されている。修正の前後で結論は変わらないとされるが(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31249-6/fulltext)、同じデータベースを用いた他の論文を含め調査が進められており、今後、さらに修正が加えられる可能性もある。

1119.

唾液によるPCR検査開始、対応可能な医療機関の要件は?/日本医師会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査検体として、6月2日、新たに唾液が保険適用された。これを受け、6月3日の日本医師会定例記者会見において、釜萢 敏常任理事が同時に発出・改訂された通知や検体採取マニュアルなどについて紹介し、今後幅広い医療機関で活用されるようになることに期待感を示した。「症状発症から9日以内」であれば、唾液を用いたPCR検査が可能 COVID-19と診断され自衛隊中央病院に入院した患者の凍結唾液検体(発症後14日以内に採取された88症例)の分析を行い、鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査結果との一致率を検証した厚生労働科学研究(研究代表:国際医療福祉大学成田病院・加藤 康幸氏)において、発症から9日以内の症例では、鼻咽頭ぬぐい液と唾液との結果に高い一致率が認められた1)。この結果を受け、厚生労働省では6月2日に、「症状発症から9日以内の者について、唾液を用いたPCR検査を可能とする」として、検査実施にかかるマニュアルの改定やPCR検査キットの一部変更承認・保険適用を実施した2)。 検査キットについては、鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査キットとして薬事承認されているものに加え、国立感染症研究所により同等の精度があると予備的に確認され現在使われている商品も対象(島津製作所やタカラバイオなど)。「これまで認められているすべてのキットについて、唾液検体を用いたPCR検査が可能になるという整理」と釜萢氏は説明した。唾液検体の採取のみを行う医療機関も? 要件を整理 同氏は、唾液検体のメリットとして、これまでの咽頭ぬぐい液を採取することに比べて感染リスクが少ないことを挙げた。また、PCR検査がこれまで広がらなかった原因として、感染防護具が不足していたことに加えて、検査をするに当たって、都道府県と医療機関が契約を締結しなければならなかったことがあるとし、「今回、その解決策として、都道府県医師会が間に入って、集合契約を結ぶことも可能となっているので、契約もしやすくなり、検査の実施数も増やすことができるのではないか」と述べた。また、すべての医療機関で一様に実施できるというものではないが、感染リスクを抑えられることから、より多くの医療機関で、唾液検体採取のみを担うといった役割も果たすことができるようになるのではないかと期待感を示した。 厚生労働省が2日に発出した通知では、感染症指定医療機関や感染症法に基づき患者が入院している医療機関以外の医療機関で、唾液検体採取を行う場合の要件を以下のようにまとめている3): 次のア~ウのすべてを満たすこと。ア 疑い例が新型コロナウイルス感染症以外の疾患の患者と接触しないよう、可能な限り動線を分けられている(少なくとも診察室は分けることが望ましい)こと。イ 必要な検査体制が確保されていること。ウ 医療従事者の十分な感染対策を行うなどの適切な感染対策が講じられていること。具体的には、以下のような要件を満たすことであり、詳細は、「新型コロナウイルス感染症が疑われる者等の診療に関する留意点について(その2)」(令和2年6月2日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部事務連絡)4)を参照すること。・標準予防策に加えて、飛沫予防策及び接触予防策を実施すること。 ・採取された唾液検体を回収する際には、サージカルマスク及び手袋を着用すること。検体採取・輸送マニュアルも更新 国立感染症研究所ホームページ上で公開されている「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」も6月2日に更新版を公開5)。唾液検体の取り扱いについて追記されている。唾液検体採取時の留意点としては、下記のようにまとめられている: 唾液…滅菌容器(50mL遠沈管等)に1~2mL程度の唾液を患者に自己採取してもらう(5~10分間かけると1~2mL採取できる)。唾液は粘性が高いため検体取扱時のピペット操作が困難なことがある。その際、検査にあたっては、唾液に対して容量で1~3倍量(唾液により粘性が異なるので、適宜、容量を変更)のPBSを加えボルテックスミキサーおよび激しい転倒混和により懸濁し、遠心後、上清を用いて核酸抽出を行う。  釜萢氏は検体をすみやかに、安全に検査実施機関に搬送するためのシステム作りが急務とし、この問題についても早急に解決していきたいと話した。

1120.

COVID-19に対するレムデシビルによる治療速報―米中のCOVID-19に対する治療薬・ワクチンの開発競争(解説:浦島充佳氏)-1238

 COVID-19に対して各国で治療薬・ワクチンの開発が進められている1)。エイズの治療薬であるカレトラは期待が持たれたが、ランダム化臨床試験でその効果を否定された2)。4月29日、レムデシビルは武漢のランダム化臨床試験で、明らかに治療薬群で有害事象による薬剤中止例が多く、途中で中止された。したがって十分な症例数ではないが、レムデシビル群の死亡率は14%、プラセボ群のそれは13%であり治療効果を確認することはできなかった3)。ところが同日、米国国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ博士は同じくランダム化臨床試験[NCT04280705]の結果、レムデシビルを投与された患者の回復期間の中央値は11日で、プラセボを投与された患者(15日)よりも31%短かったことにより、「レムデシビルには、回復までの期間を短縮させる効果がある」と発表した。通常、記者会見は論文が誌上で公表された直後に行われる。トップジャーナルでは、たとえば「○月○日の東部時間○時に誌上発表になる。それ以前よりメディアと打ち合わせして、ニュースをどのように構成するかを相談してもよいが、記者会見はそれ以降とすること」などと厳しく規定される。記者会見の場にはトランプ大統領も同席し、腕を組んでファウチ博士のことをにらみつけていたのが印象的であった。これを受けて米国はレムデシビルをCOVID-19の治療薬として認可し、日本政府も続いて承認手続きに入った。 しかしながら、この米国の臨床試験では、途中で研究計画上の変更が行われている。患者受け入れ期間を20日間延長し、研究対象の範囲も中~重症を酸素投与が不必要な軽症入院事例まで拡大し、対象人数も394人から1,063人に増やし、プラセボを途中から生理食塩水に変更し、効果判定項目も重症度の改善から酸素不要あるいは退院(在宅酸素を含む)に変更している。これは通常の治験あるいは臨床試験ではあり得ない変更だ。たとえば、プラセボが生理食塩水に切り替わったことにより、主治医は目の前の患者がレムデシビル群かプラセボ群かどちらに振り分けられたのかを知りえるかもしれない。主治医がレムデシビルに強い期待を持つことにより、意図的にレムデシビル群で早く酸素を中止したり、早めに退院を誘導し在宅酸素療法に切り替えたりする、逆に生理食塩水の群に含まれた患者で主治医がこの逆をすれば、本当はレムデシビルにCOVID-19患者の症状を改善する効果がないのに、「効果がある」という誤った結論を導く可能性がある。 この治験の詳細な結果は5月22日のNEJM誌に速報として掲載された。内容を精査すると、中等症から軽症の患者には有効であるが、人工呼吸器やECMO を使用するような重症例では効果を認めていない。今後のエビデンスに期待したいが、少なくとも現時点でレムデシビルは致死的COVID-19 に対して有効であるとはいえない。 これは私の考え過ぎかもしれないが、レムデシビルは米国の製薬会社、ギリアド社の開発した薬剤であり、中国はこれを否定し、米国がこれを是が非でも肯定したいという政府の思惑に見えてしまう。1)Borba MGS, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e208857.2)Cao B, et al. N Engl J Med. 2020;382:1787-1799.3)Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.

検索結果 合計:1891件 表示位置:1101 - 1120