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新型コロナ、トイレでの感染リスクは?

 中国・江蘇省疾病予防管理センターの研究者らが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者専用病院内のトイレとトイレ以外での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出状況を調査するため、環境サンプリングを収集し、環境要因を分析した。その結果、SARS-CoV-2陽性を示した4点のサンプルはすべて患者トイレに関連するもので、病棟のドアハンドル、便座カバー、バスルームのドアハンドルから検出された。Science of The Total Environment誌2021年1月20日号掲載の報告。 研究者らはCOVID-19データとして気流及びCO2濃度の測定を実施。表面サンプルを107点(隔離室のトイレ:37点、隔離室のトイレ以外:34点、院内隔離室外のトイレ以外の表面:36点)、空気サンプルを46点、隔離室(1部屋3ベッド)内外の呼気凝縮液サンプルと呼気サンプルを2点ずつ収集し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・陽性を示したサンプル4点のうち、3点は弱い陽性で、便座、洗面台のタップレバー、バスルームの天井排気ルーバーから収集したものだった。・空気サンプル46点のうち、廊下から収集された1点は弱い陽性だった。・呼気凝縮液サンプル2点と呼気サンプル2点はすべて陰性だった。・患者が使用したトイレのエアロゾル(糞便由来)には、院内で検出されたSARS-CoV-2のほとんどが含まれていた。 研究者らは、「今回の結果より、建物の環境設計と清掃習慣が見直されることとなった。また、患者介入する際には手指衛生とともにトイレ表面の定期消毒がCOVID-19対策として重要」としている。

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COVID-19の回復期血漿療法、高力価vs.低力価/NEJM

 人工呼吸器未装着の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、抗SARS-CoV-2 IgG抗体価が高い血漿の投与は低力価の血漿の投与と比較して、死亡リスクが低下することが明らかとなった。米国・メイヨー・クリニックのMichael J. Joyner氏らが、全米レジストリのCOVID-19回復期血漿拡大アクセスプログラムに参加した患者データを後ろ向きに解析し報告した。回復期血漿療法は、COVID-19から回復した患者の血漿に、SARS-CoV-2への治療用抗体が存在し、その血漿をレシピエントに投与可能であるという推定の下で、COVID-19の治療法として広く利用されている。しかし、高力価血漿が低力価血漿よりも死亡リスク低下と関連するかについては不明であった。NEJM誌オンライン版2021年1月13日号掲載の報告。全米レジストリ登録患者約3,000例を後ろ向きに解析 研究グループは、全米レジストリベースの後ろ向き研究で、回復期血漿の投与を受けたCOVID-19入院患者の抗SARS-CoV-2 IgG抗体価を測定し、抗体価と血漿投与後30日以内の死亡との関連を解析した。 解析には、2020年7月4日まで、またはプログラムの当初3ヵ月間に登録され、投与された血漿の抗SARS-CoV-2抗体価のデータと30日死亡に関するデータが利用可能であった3,082例(全米680の急性期施設から登録)が組み込まれた。 抗SARS-CoV-2 IgG抗体価は、シグナル/カットオフ値(S/CO)が<4.62を低力価、4.62~18.45を中力価、>18.45を高力価とした。高力価血漿群が低力価血漿群より30日死亡リスク34%低下 解析対象3,082例は、男性61%、黒人23%、ヒスパニック系37%、70歳未満が69%であり、3分の2が侵襲的人工呼吸器装着前に血漿投与を受けていた。登録施設当たりの患者数中央値は2例(IQR:1~6)。低力価群(561例)、中力価群(2,006例)、高力価群(515例)の3群間の、人口統計学的特性、COVID-19との関連リスク因子、COVID-19の治療薬の併用使用は概して似通っていた。 血漿投与後30日以内の死亡は、高力価群で515例中115例(22.3%)、中力価群で2,006例中549例(27.4%)、低力価群で561例中166例(29.6%)に発生した。 抗SARS-CoV-2抗体価とCOVID-19による死亡リスクとの関連は、人工呼吸器の装着の有無で異なっていた。低力価群に対する高力価群の30日死亡リスク低下は、血漿投与前に人工呼吸器を装着していなかった患者で確認され(相対リスク[RR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.48~0.91)、人工呼吸器を装着していた患者では死亡リスクへの影響は認められなかった(RR:1.02、95%CI:0.78~1.32)。

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COVID-19、半年後も6割強に倦怠感・筋力低下/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で急性症状を呈した入院患者は、退院後6ヵ月時点で、主に倦怠感・筋力低下、睡眠困難、不安・うつに悩まされていることが明らかにされた。中国・Jin Yin-tan病院(武漢市)のChaolin Huang氏らが、1,733例の入院患者についてフォローアップ試験を行い明らかにした。COVID-19の長期的な健康への影響はほとんど明らかになっていないが、今回の検討では、入院中の症状が重症だった患者について、肺の拡散障害および画像所見の異常がより深刻であることも示され、著者は「これらの集団が、長期的な回復介入を必要とする主なターゲット集団である」と述べている。Lancet誌2021年1月8日号掲載の報告。退院後の症状の聞き取り、6分間歩行テスト、血液検査などを実施 研究グループは、COVID-19退院患者の長期的な健康への影響を明らかにし、関連するリスク因子、とくに疾患重症度を調べるため、2020年1月7日~5月29日に武漢市のJin Yin-tan病院から退院したCOVID-19患者を対象に、前後両方向コホート試験を行った。調査から除外されたのは、フォローアップ前に死亡、精神病性障害、認知症、または再入院のためフォローアップが困難、骨関節症で移動が困難、退院前後に脳卒中や肺塞栓症などの疾患により寝たきりの状態、試験参加を拒否、連絡が不可能、武漢市外に居住または介護・福祉施設に入居の患者すべてであった。 全対象患者に対し、退院後の症状、健康関連の生活の質(QOL)などに関する質問と、身体検査、6分間歩行テスト、血液検査を実施。層別任意不均等抽出法を用いて、被験者を入院中の重症度スケール(7段階評価)に応じて規定した3群(スケール3[酸素補給不要]、4[酸素補給を要する]、5~6[5:高流量鼻カニューレ、非侵襲的人工換気を要する、6:体外式膜型人工肺、侵襲的人工換気を要する])に分類し、肺機能検査、胸部高分解能CT、超音波検査を行った。Lopinavir Trial for Suppression of SARS-CoV-2 in China(LOTUS)試験に登録していた患者は、試験期間中にSARS-CoV-2抗体検査を受けていた。 多変量補整線形またはロジスティック回帰モデルを用いて、重症度と長期健康アウトカムの関連を検証した。入院中に重症だと、倦怠感/筋力低下リスクは約2.7倍に 試験期間中に退院した2,469例のうち、1,733例が同試験に参加した。被験者の年齢中央値は57.0歳(IQR:47.0~65.0)、男性は897例(52%)だった。フォローアップ検査は2020年6月16日~9月3日に行われ、症状発症後の追跡期間中央値は186.0日(IQR:175.0~199.0)だった。 最も多くの患者に認められた症状は、倦怠感または筋力低下(63%、1,038/1,655例)、睡眠困難(26%、437/1,655例)だった。不安やうつ症状も23%(367/1,617例)報告された。 6分間歩行テストの結果が正常値の下限を下回った割合は、入院中の症状重症度スケール3群で24%、同4群で22%、5~6群で29%だった。拡散障害はそれぞれ22%、29%、56%で、CTスコア中央値はそれぞれ3.0(IQR:2.0~5.0)、4.0(3.0~5.0)、5.0(4.0~6.0)だった。 多変量補整後、拡散障害発症に関するオッズ比(OR)は、重症度スケール3群に比べて、4群1.61(95%信頼区間[CI]:0.80~3.25)、5~6群4.60(1.85~11.48)だった。不安またはうつ症状のORは、それぞれ0.88(0.66~1.17)、1.77(1.05~2.97)であり、倦怠感または筋力低下のORはそれぞれ0.74(0.58~0.96)、2.69(1.46~4.96)だった。 フォローアップ時に抗体検査を受けていた94例において、血清陽性率(96.2% vs.58.5%)、中和抗体力価の中央値(19.0 vs.10.0)はいずれも急性期と比較して有意に低かった。 また、急性期に腎障害はなかったがeGFR値が90mL/分/1.73m2以上だった患者822例のうち、フォローアップ時のeGFR値が90mL/分/1.73m2以下だった患者は107例だった。

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COVID-19、重症患者で皮膚粘膜疾患が顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の皮膚症状に関する報告が寄せられた。これまで皮膚粘膜疾患とCOVID-19の臨床経過との関連についての情報は限定的であったが、米国・Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのSergey Rekhtman氏らが、COVID-19入院成人患者296例における発疹症状と関連する臨床経過との関連を調べた結果、同患者で明らかな皮膚粘膜疾患のパターンが認められ、皮膚粘膜疾患があるとより重症の臨床経過をたどる可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月24日号掲載の報告。COVID-19入院成人患者296例のうち35例が少なくとも1つの疾患関連の発疹 研究グループは2020年5月11日~6月15日に、HMO組織Northwell Health傘下の2つの3次医療機能病院で前向きコホート研究を行い、COVID-19入院成人患者における、皮膚粘膜疾患の有病率を推算し、形態学的パターンを特徴付け、臨床経過との関連を描出した。ただし本検討では、皮膚生検は行われていない。 COVID-19入院成人患者の発疹症状と臨床経過との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・COVID-19入院成人患者296例のうち、35例(11.8%)が少なくとも1つの疾患関連の発疹を呈した。・形態学的パターンとして、潰瘍(13/35例、37.1%)、紫斑(9/35例、25.7%)、壊死(5/35例、14.3%)、非特異的紅斑(4/35例、11.4%)、麻疹様発疹(4/35例、11.4%)、紫斑様病変(4/35例、11.4%)、小水疱(1/35例、2.9%)などが認められた。・解剖学的部位特異性も認められ、潰瘍(13例)は顔・口唇または舌に、紫斑病変(9例)は四肢に、壊死(5例)は爪先に認められた。・皮膚粘膜症状を有する患者は有さない患者と比較して、人工呼吸器使用(61% vs.30%)、昇圧薬使用(77% vs.33%)、透析導入(31% vs.9%)、血栓症あり(17% vs.11%)、院内死亡(34% vs.12%)において、より割合が高かった。・皮膚粘膜疾患を有する患者は、人工呼吸器使用率が有意に高率であった(補正後有病率比[PR]:1.98、95%信頼区間[CI]:1.37~2.86、p<0.001)。・その他のアウトカムに関する差異は、共変量補正後は減弱し、統計的有意性は認められなかった。

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コロナ病床は簡単には増やせない、医療壊滅を防ぐために/日医

 感染者数の増加が続き、各地で医療体制のひっ迫が叫ばれる中、日本の医療体制の在り方についても様々な意見が報道・発信されている。1月13日の日本医師会定例記者会見において、中川 俊男会長は改めて国民に対し協力を要請するとともに、日本の医療提供体制の現状を説明し、日医として引き続き行っていく働きかけ、施策について説明した。民間病院の新型コロナ患者受け入れが約20%である背景 公立・公的等病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)受け入れ割合が約70~80%である一方、民間病院が約20%というデータに対し、より多くの民間病院が新型コロナ患者を受け入れるべきという意見がある。中川氏は、「医療を必要とするのは新型コロナ患者だけではない。民間病院の多くは、新型コロナ以外の救急・入院が必要な患者への医療を、それぞれの地域で担っている」と民間病院が新型コロナ診療を含む地域医療を面で支えていることを強調した。 加えて、新型コロナ患者向けの病床を大幅に増やせない要因として、民間病院は、三次救急を担う公立・公的等に比べてICU等の設置数が少なく、専門の医療従事者がおらず、病床数が数床規模の場合がほとんどで動線の分離が難しいことなどを挙げた。 このまま感染者数の増加が続けば、必要な時に適切な医療を提供できない「医療崩壊」から必要な時に医療自体を提供できない「医療壊滅」に至るとし、「地域の医療提供体制は、新型コロナウイルス感染症の医療とそれ以外の通常の医療が両立してこそ機能していると言える」と強調。首都圏などにおいて、心筋梗塞や脳卒中患者の受け入れ先が見つからず、がんの手術が延期されるなどが現実化しており、一部ではすでに医療崩壊の状態であるとした。宿泊療養・自宅療養者のフォローアップに注力が必要 日本医師会としては、「必要な地域で1床でも多くの新型コロナ病床の確保が可能となるよう努力していくことには変わりない」と話し、加えて、宿泊療養・自宅療養者の健康フォローアップがより重要となってきているとした。 昨年4月以降、日本医師会では各地の医師会が組織する新型コロナウイルス感染症版の災害医療チーム「COVID19-JMAT」(1月12日現在、医師10,191名をはじめ延べ27,291名)を、宿泊療養施設や地域外来・検査センター等へ派遣しているほか、行政などからの求めに応じ電話やオンラインを利用した、宿泊療養・自宅療養者の健康フォローアップへの協力を行っている。中川氏はこれを改めて働きかけていくと話した。医師がコーディネーターとして機能、保健所の負担軽減が実現した好事例も 続いて登壇した釜萢 敏常任理事は、「年末年始の医療提供体制等に関する調査」の結果について報告。同調査は、年末年始における各地の医療提供体制の構築状況や問題点を把握するために都道府県/群市区医師会に対し昨年末時点で実施したもの。年末年始の医療提供体制の構築状況について聞いたところ、都道府県医師会では約80%、郡市区医師会では約60%、構築されているとの回答であった。 具体的な対応としては、各医療機関が「診療・検査医療機関」として機能するよう準備・調整、休日診療所や急患センターの人員増強や発熱外来の設置、休日当番医の拡充、PCR検査センターの設置、年末年始に従事する人員の増強、初期救急の実施、検査機器の導入、公立病院への応援医師の派遣などが挙げられた。 年末年始に限らない今後の課題として、釜萢氏は人材不足が主要因となり、「医療機関および保健所において、相談・受診をした患者への適切なトリアージが滞っている」「保健所・行政と医師会との連携がうまくいっていない」ケースがあることを挙げた。また、患者の宿泊療養施設が確保されていない地域が少なくないことに触れ、「厚生労働省と課題を共有し、きめ細かい対応に努めていく」と話した。 一方で同調査には、呼吸器感染症の専門医(民間大学教授)にコーディネーター(キーマン)役を依頼し、全患者の各医療機関と宿泊療養施設間の振り分けを依頼することで患者の状態に応じた転院がスムーズに行われているといった好事例の報告もあった。

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第38回 新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール2.医師免許のマイナンバーカード搭載、2024年度から運用開始3.処方箋も紙から電子へ、2022年夏までにシステムを構築4.特別措置法と感染症法改正、通常国会に向けた尾身分科会長の基本方針5.今季のインフルエンザ141例、過去5年で最小/JMIRI6.コロナウイルスの猛威、老人福祉・介護事業者を直撃1.新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール厚生労働省は、各都道府県に対し、通知「医療従事者等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について」を発出した。医療従事者へのワクチンは、一般の接種と同様に市町村が主体となり、契約を締結した医療機関などにおいて実施されることとなった。対象となる「医療従事者等」には、以下が含まれる見込みである。1)病院、診療所において、新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者を含む、以下同様)に頻繁に接する機会のある医師、その他の職員。2)薬局において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する機会のある薬剤師その他の職員(登録販売者を含む)。3)新型コロナウイルス感染症患者を搬送する救急隊員など、海上保安庁職員、自衛隊職員。4)自治体などの新型コロナウイルス感染症対策業務において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する業務を行う者。なお、(1)(2)は医療関係団体が、(3)(4)は都道府県が取りまとめを行う。接種場所については、全国で1,500施設に2月末までにディープフリーザーを配置するとされ、その配置先を「基本型接種施設」として接種を実施するほか、近隣に所在し、当該施設から冷蔵でワクチンの移送を受ける「連携型接種施設」において接種を実施することとなる。在庫管理などには、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)が用いられる。接種開始に向けた具体的な作業期限も1月末~2月上旬に定められ、各自治体や医師会、歯科医師会、薬剤師会、病院団体など地域の医療関係団体は体制整備を急ぐ必要がある。(参考)医療従事者等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について(健健発0108第1号 令和3年1月8日)(厚労省)「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に係る手引き(初版)」(同)ワクチン接種、全国1万か所拠点に…氷点下75度の超低温冷凍庫を配備(読売新聞)2.医師免許のマイナンバーカード搭載、2024年度から運用開始厚労省は「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」の報告書を公表した。社会保障に係る31資格におけるマイナンバー制度の利活用に関して、届出の簡素化およびオンライン化、マイナポータルを活用した資格保有の証明、提示、人材活用などについてこれまでの議論をまとめている。今後、新規資格取得者については、各資格団体や事業者団体の協力を得て、免許証など申請書の提出時にマイナンバーの提供を求める呼び掛けが行われることになる。なお、実際の運用はデジタル・ガバメント実行計画に基づいて、2024年度に開始される見込み。(参考)「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会 報告書」を公表します(厚労省)医師免許もマイナンバーカードに デジタル改革関連6法案の全容判明(産経新聞)3.処方箋も紙から電子へ、2022年夏までにシステム構築1月13日に開催された、第139回社会保障審議会医療保険部会において、電子処方箋の仕組みの構築について討論された。電子処方箋については、現在、導入を進めているオンライン資格確認の基盤を活用して2022年夏頃を目処に構築する。これにより、待ち時間の短縮や直近の処方・調剤情報の参照、重複投薬防止などメリットが期待される。運営主体は社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険中央会があたり、すべての機能が稼働する2023年度でおよそ9.8億円の運用費用が見込まれている。一方、医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の普及状況は、顔認証付きカードリーダー申し込み数が22万8,321施設中4万8,866施設(21.4%)であり、病院が29.4%に対して、医科診療所は14.5%と、クリニックなどで申請が遅れていることが明らかとなった。なお、公的医療機関などにおける申込率は、国立病院機構97.1%、労働者健康安全機構100%、JCHO98.2%と対照的であった。これに対して、周知が不十分であることや、マイナンバーカードの普及率が伸び悩んでいる現状での様子見、新型コロナウイルス感染症の影響もあるとし、追加的な財政支援策を周知するために、全医療機関などに対してリーフレットを再送付するなど働きかけを実施する予定。(参考)電子処方箋の仕組みの構築について(厚労省)オンライン資格確認導入に向けた準備作業の手引き(医療機関・薬局の方々へ)(同)4.特別措置法と感染症法改正、通常国会に向けた尾身分科会長の基本方針18日に召集される通常国会で、政府は、新型コロナウイルス対策の実効性を高めるための特別措置法や感染症法の改正案を提出する見通しとなっている。これに先立ち、15日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で、尾身分科会長から提言について基本方針が示された。コロナウイルス患者の急増に対して、直ちに取り組むべき課題として、基本原則の維持を大前提としつつ、特別措置法は、都道府県知事からの要請にも十分な協力を得られるように早期に結論を出すことなどを求めた。感染症法でも、医療提供体制に関して、病床確保や入院調整については都道府県が総合調整の役割を果たすべきであり、入院の総合調整は都道府県の役割であることを法律上明確にするほか、クラスター発生時の人材派遣のあり方についてもより効率的・効果的な仕組みを検討する必要があるとした。(参考)新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症法の改正に関しての基本的な考え(案)(尾身分科会長 提出資料)政府 通常国会にコロナ特別措置法改正案など63法案提出へ(NHK)5.今季のインフルエンザ141例、過去5年で最小/JMIRI今シーズンのインフルエンザの患者数は202年12月時点で2019年12月と比較して338分の1の141例と、過去5年で最小であることが明らかとなった。調剤薬局の処方データを元に処方箋データベースを運用、解析している医療情報総合研究所(通称JMIRI)が14日に発表した調査結果によると、とくに10歳未満のインフルエンザ患者数が激減していることからも、手洗いうがいなどの推奨により、保育園や幼稚園などで感染拡大が抑えられていることがわかる。例年インフルエンザは1~2月にかけて感染のピークを迎えるため、引き続き注意が必要であるが、コロナウイルス感染対策によって、この傾向が続くと見られる。(参考)インフルエンザ患者数は前年同月比 338 分の1 未成年、特に10歳未満のインフルエンザ患者数が大幅に減少~JMIRI 処方情報データベースにおける調査より~(医療情報総合研究所)20年12月 インフルエンザの流行みられず 患者数、直近5年間平均の169分の1 JMIRI調べ(ミクスオンライン)6.老人福祉・介護事業者の倒産件数、2000年以降最多2020年の老人福祉・介護事業の倒産件数が118件と、2000年の介護保険法施行以降で過去最多であることが明らかとなった。新型コロナウイルス感染拡大で、サービス利用者が減少し、さらに人手不足などによる経営状況の悪化が引き金となったとみられる。業種別では、「訪問介護事業」が56件と半数近く、負債総額はほとんどが1億円未満であり、経営基盤が脆弱なところが多かった。厚労省は2021年度の介護報酬を0.7%引き上げ、介護サービス事業者の経営を支援する方針だが、今年に入ってもコロナウイルス感染拡大が続き、経営の見通しは決して明るくない。今後、介護サービス提供の現場では、さらなる支援を求める声が上がると思われる。(参考)2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況(東京商工リサーチ)東京商工リサーチ、2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況調査結果を発表(日経新聞)

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インフルエンザ【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第6回

今回は、ワクチンで予防できる疾患、VPD(vaccine preventable disease)として、「インフルエンザ」を取り上げる。ワクチンで予防できる疾患インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる急性呼吸器感染症であり、わが国では毎年12月〜3月頃に流行する。感染経路は飛沫感染や接触感染であり、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛や関節痛が出現し、鼻汁や咳などの呼吸器症状が続くが、いわゆるかぜ症候群と比較して、全身状態が強いことが特徴である。多くは自然回復するが、肺炎、気管支炎、中耳炎、急性脳症などを合併し重症化することもある。免疫が不十分な乳幼児や高齢者、基礎疾患のある場合は、特に重症化しやすいため注意が必要である。手洗いや咳エチケットによる感染対策に加え、ワクチンによる予防が重要な疾患である。ワクチンの概要インフルエンザワクチンの概要を表1に示す。インフルエンザは毎年流行する株が異なることから、WHO(世界保健機関)が推奨する株の中から、期待される有効性や供給可能量などを踏まえた上で、A型2亜型とB型2系統による4価ワクチンが製造されている。表1 インフルエンザワクチン画像を拡大する1)ワクチンの効果インフルエンザウイルスが体内に侵入し(感染)、体内でウイルスが増殖することによって一定の潜伏期間を経た後に症状が出現(発病)する。多くは自然回復するが一部は重い合併症を起こし死亡する場合もある(重症化)。インフルエンザワクチンは、ウイルスの“感染”を完全に抑えることは難しく、“発病”については一定の効果が認められているが麻疹風疹ワクチンのような高い効果はない。最も大きな効果は“重症化”を予防することである。国内の研究では、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者において34〜55%の発病を予防し、82%の死亡を阻止する効果があるとされており、6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効性は約60%と報告されている1)。2)集団免疫による効果図1はある集団における感染症の広がりを示している2)。青は免疫を持っていなくて健康な人、黄は免疫を持っていて健康な人、赤は免疫を持っていなくて感染してしまい感染力のある人である。すべての人が免疫を持っていない集団では、感染力のある人が加わるとあっという間に感染は拡大してしまう(上段)。数名しか免疫を持っていない集団では、感染症は免疫を持っていない人を介して拡大する(中央)。しかし、免疫を持っている人が大多数を占める集団では、感染は広がりにくく、免疫を持っていない少数の人にも感染しにくくなる(下段)。この効果を“集団免疫”という。インフルエンザワクチンには個々の感染、発病予防に対する効果は限定的であるが、多くの人がワクチン接種を行うことにより、集団における感染拡大、重症化予防につながるのである。図1 集団免疫による効果画像を拡大する3)接種対象者生後6ヵ月以上のすべての人が接種対象となるが、乳幼児、高齢者、基礎疾患のある人は重症化リスクが高いため特に推奨される。また、これらの人にうつす可能性がある人(家族、医療従事者、介護者、保育士など)に対しても接種が推奨される。わが国においては、65歳以上の高齢者、もしくは60〜64歳未満で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能障害があって身の回りの生活が極度に制限される人、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に障害があって日常生活がほとんど不可能な人は、予防接種法に基づく定期接種の対象となっている。4)接種禁忌と卵アレルギーへの対応インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの既往がある場合を除いて、ほとんどの人が問題なく接種可能である。ワクチンの製造過程で卵白成分が使用されていたため、以前は卵アレルギーがある場合には要注意とされていたが、卵アレルギーのある人に重度のアレルギー反応が起こる可能性が低いことがわかっており、現在では軽度の卵アレルギーでは通常通り接種でき、重症卵アレルギーのある場合でもアレルギー対応可能な医療機関であれば接種可能とされている3)。接種スケジュール(接種時期・接種回数)インフルエンザワクチンの効果持続期間は2週間〜5ヵ月程度である。毎年流行するピークの時期は異なるが、おおよそ12月〜3月に流行するため、10月〜11月頃に接種することが望ましい。わが国におけるインフルエンザワクチン接種量と接種回数については表2の通りである。6ヵ月〜13歳未満は2回接種、13歳以上は1回接種が基本とされているが、諸外国における接種方法とは異なっている。世界保健機関(WHO)においては9歳以上の小児および健康成人では1回接種が適切である旨の見解が示されており、米国予防接種諮問委員会(ACIP)も、9歳以上は1回接種とし、生後6ヵ月〜8歳未満の乳幼児についても前年度2回接種していれば、次年度は1回のみの接種で良いとされている4)。なお、接種回数と効果に関しては、日本のインフルエンザワクチン添付文書において、6ヵ月〜3歳未満では2回接種による抗体価の上昇が認められたものの、3〜13歳未満では1回接種と2回接種とで免疫にほぼ差がなかったというデータが示されている(図2)。表2 わが国におけるインフルエンザワクチン接種量と接種回数画像を拡大する図2 年齢別中和抗体陽転率画像を拡大する日常診療で役立つポイント「ワクチン接種してもインフルエンザにかかったため、効果がないのではないか?」「一度もインフルエンザにかかったことがないから自分は大丈夫」などという理由で、ワクチン接種を希望しないケースも少なくない。前述のように個人免疫としての効果は限定的であるが、重症化しやすい集団を守るためにも、集団免疫の効果について丁寧に説明してワクチン接種につなげていきたい。接種回数については意見が分かれるところであるが、9歳以上は1回接種でも問題がなく、9歳未満の小児においても、3歳以上の場合には前年2回接種していれば1回接種でも良いかもしれない。このあたりについては、本人および家族の希望に加えて、ワクチンの需要と供給のバランスをふまえて、できるだけ多くの人がワクチン接種を受けられるように個々での判断が求められる。今後の課題・展望2020/21シーズンにおいては、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症との同時流行が危惧されており、発熱患者の判断について困難が生じてくるものと予想される。現時点において新型コロナウイルス感染症はワクチンでの予防が難しいため、ワクチンのあるインフルエンザの流行をできる限り抑えることが重要である。インフルエンザの感染拡大、重症化予防のためにも、できるだけ多くの人に対して積極的にワクチン接種を行い、地域における集団免疫を獲得できるようにして頂きたい。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト予防接種に関するQ&A集.日本ワクチン産業協会1)インフルエンザQ&A.厚生労働省2)Building Trust in Vaccines.NIH(アメリカ国立衛生研究所).3)Flu Vaccine and People with egg allergies.CDC(米国疾病管理予防センター).4)Grohskopf LA,et al. MMWR Recomm Rep.2020;69:1-24.5)インフルエンザHAワクチン(商品名:ビケンHA)添付文書講師紹介

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COVID-19の家庭内感染のリスク因子~54研究のメタ解析

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の家庭(同居世帯)内の感染リスクは、他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV)より2~4倍高く、「初発患者が症状あり」「接触者が18歳以上」「初発患者の配偶者」「家庭内の接触人数が1人」がリスク因子であることが、米国・フロリダ大学のZachary J. Madewell氏らのメタ解析で示された。JAMA Network Open誌2020年12月14日号に掲載。 著者らは、PubMedにおいて2020年10月19日までの論文を検索し、系統的レビューおよびメタ解析を行った。主要評価項目は、SARS-CoV-2および他のコロナウイルスにおける、共変量(接触者が家庭もしくは別居家族を含めた家族、初発患者の症状の有無、初発患者が18歳以上もしくは18歳未満、接触者の性別、初発患者との関係、初発患者が成人もしくは子供、初発患者の性別、家庭内の接触人数)で分類し推定した2次発症率。 主な結果は以下のとおり。・家庭内2次発症者7万7,758例を報告した54研究を特定した。・SARS-CoV-2の推定家庭内2次発症率(95%信頼区間)は16.6%(14.0~19.3)で、SARS-CoVの7.5%(4.8~10.7)およびMERS-CoVの4.7%(0.9~10.7)より高かった。・家庭内2次発症率(95%信頼区間)に差がみられた共変量は以下のとおり。 - 初発患者の症状:あり 18.0%(14.2~22.1)、なし 0.7%(0~4.9) - 接触者の年齢:18歳以上 28.3%(20.2~37.1)、18歳未満 16.8%(12.3~21.7) - 初発患者との関係:配偶者 37.8%(25.8~50.5)、他の家族 17.8%(11.7~24.8) - 家庭内の接触人数:1人 41.5%(31.7~51.7)、3人以上 22.8%(13.6〜33.5) 著者らは「感染が疑われる、または確認された人が自宅隔離されていることを考えると、家庭がSARS-CoV-2感染の重要な場となり続けることが示唆される」としている。

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新型コロナ、再入院しやすい患者の特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初発感染で入退院した患者のうち、9%が退院後2ヵ月以内に同じ病院に再入院していたことが明らかになった。また、複数の病院で患者の1.6%が再入院していた。再入院の危険因子には、65歳以上、特定の慢性疾患の既往、COVID-19による初回入院以前の3ヵ月以内の入院、高度看護施設(SNF:skilled nursing facility)への退院または在宅医療への切り替えが含まれていた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)11月13日号での報告。 CDC研究班は、Premier Healthcare Database の電子健康記録と管理データを使用し、退院、再入院のパターン、およびCOVID-19による初回入退院後の再入院に関連する人口統計学的および臨床的特徴を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2020年3~7月の期間にCOVID-19で初回入院した12万6,137例のうち、15%が初回入院中に死亡した。・生存患者10万6,543例(85%)のうち、9,504例(9%)は、2020年8月までの退院から2ヵ月以内に同じ病院に再入院していた。・初回入院後に退院した患者の1.6%で、複数回の再入院が発生した。・再入院は、自宅退院した患者(7%)よりも、SNFへ退院した患者(15%)、または在宅医療を要する患者(12%)でより頻繁に発生した。・65歳以上、特定の慢性疾患の既往、初回入院以前の3ヵ月以内の入院、および初回入院からの退院がSNFまたは在宅診療を要する退院であった場合、再入院の確率は年齢とともに増加した。 研究者らは、再入院の頻度とその危険因子を理解することで、臨床診療、退院の決定、およびCOVID-19患者の急性およびフォローアップケアに必要なリソースを確保するためのヘルスケア計画など、公衆衛生における優先順位を知ることができるとしている。

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高齢COVID-19患者、72時間以内の回復期血漿投与で重症化半減/NEJM

 重症化リスクの高い65歳以上の軽症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、発症後早期の高力価回復期血漿療法により、COVID-19の重症化が抑制されることが明らかとなった。アルゼンチン・Fundacion INFANTのRomina Libster氏らが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)特異的IgG抗体価の高い回復期血漿の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。COVID-19の進行を抑える治療はまだ見つかっておらず、これまで入院患者への回復期血漿の投与は成功していない。研究グループは、抗体は疾患の経過の早期に投与される必要があるのではと考え、軽度の症状発症後72時間以内に回復期血漿療法を開始する検討を行った。NEJM誌オンライン版2021年1月6日号掲載の報告。発症後72時間以内に回復期血漿またはプラセボを投与し、重症化を比較 研究グループは、軽度のCOVID-19症状を発症してから72時間以内の高齢患者(75歳以上、または1つ以上の合併症を有する65~74歳)を、回復期血漿(SARS-CoV-2スパイク蛋白に対するIgG力価が1:1,000以上の高IgG抗体価250mL)投与群とプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、重症呼吸器症状(呼吸数30回/分以上、または室内気酸素飽和度93%未満、あるいはその両方)の発症とした。 本試験は、試験地域のCOVID-19患者が減少して安定した被験者登録が事実上不可能となったため、計画症例数の76%の時点で早期中止となった(試験期間:2020年6月4日~10月25日)。重症化率は、回復期血漿療法16%、プラセボ31% 合計160例が回復期血漿群(80例)とプラセボ群(80例)に割り付けられた。 intention-to-treat集団において、重症呼吸器症状を発症した患者の割合は、回復期血漿群が16%(13/80例)、プラセボ群が31%(25/80例)であり、回復期血漿群ではプラセボ群に比べて重症呼吸器症状の発症リスクが48%減少した(相対リスク:0.52、95%信頼区間[CI]:0.29~0.94、p=0.03)。 回復期血漿またはプラセボを投与する前に主要評価項目のイベントが確認された6例を除いた修正intention-to-treat集団では、回復期血漿群でより大きな効果が示唆された(相対リスク:0.40、95%CI:0.20~0.81)。 安全性については、非自発的な有害事象は観察されなかった。

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Moderna社mRNAワクチン、3万例超で94.1%の有効性/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する、Modernaのワクチン「mRNA-1273」の有効性(重症化を含む発症の予防効果)は94.1%に上ることが、3万例超を対象にした第III相無作為化プラセボ対照試験で明らかになった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLindsey R. Baden氏らが報告した。安全性に対する懸念は、一過性の局所および全身性の反応以外に認められなかったという。mRNA-1273ワクチンは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の膜融合前安定化スパイクタンパク質をコードする脂質ナノ粒子カプセル化mRNAベースのワクチンで、2020年12月に米国では緊急使用の承認が発表されている。NEJM誌オンライン版2020年12月30日号掲載の報告。投与2回目から2週間以降の感染予防効果を検証 試験は全米99ヵ所の医療機関を通じて、18歳以上でSARS-CoV-2感染や同感染による合併症の高リスク者を対象に、観察者ブラインド化にて行われた。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはmRNA-1273(100μg)を、もう一方にはプラセボを、28日間隔で2回筋肉注射した。初回接種は2020年7月27日~10月23日に行われた。 主要エンドポイントは、2回目投与から14日以降のCOVID-19発症の予防で、SARS-CoV-2感染歴のない被験者を対象に評価した。mRNA-1273群の症候性COVID-19発生率、3.3件/1,000人年 ボランティア被験者数は3万420例で、mRNA-1273群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた(各群1万5,210例)。ベースラインでSARS-CoV-2感染のエビデンスが認められたのは2.2%。被験者の96%超が2回接種を受けた。 2回目投与から14日以降に症候性COVID-19が認められたのは、プラセボ群185例(56.5件/1,000人年、95%信頼区間[CI]:48.7~65.3)に対し、mRNA-1273群では11例(3.3件/1,000人年、1.7~6.0)で、ワクチン有効率は94.1%(95%CI:89.3~96.8、p<0.001)だった。 1回目投与から14日以降の症候性COVID-19など主な副次解析や、ベースラインでSARS-CoV-2感染のエビデンスが認められた者を含めた評価、65歳以上に限定した評価でも、有効性は同等であることが認められた。 重症COVID-19の発生は30例(うち1例が死亡)で、全例がプラセボ群だった。接種後の中等度で一過性の反応原性が発現する頻度は、mRNA-1273群で高率だった。重篤な有害イベントはまれで、発現頻度は両群で同程度だった。

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COVID-19外来患者、中和抗体カクテルでウイルス量低減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中和抗体カクテル「REGN-COV2」は、ウイルス量を低減する効果があることが示された。免疫反応が起きる前の患者、あるいはベースラインのウイルス量が高い患者でより大きな効果が認められ、安全性アウトカムは、REGN-COV2投与群とプラセボ投与群で類似していたという。米国・Regeneron PharmaceuticalsのDavid M. Weinreich氏らが、COVID-19外来患者を対象とした進行中の第I~III相臨床試験の中間解析の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照で、ウイルス量の変化を評価 COVID-19の合併症や死亡は、高ウイルス量に関連している可能性が示唆されている。REGN-COV2はウイルス負荷を減らす治療アプローチとして開発が進められている抗体カクテルで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質の受容体結合ドメインをターゲットとする2つの非競合の中和ヒトIgG1抗体から成り、ウイルスがACE2受容体を介してヒトの細胞へ侵入するのを阻止する。“カクテル”のアプローチは、呼吸器合胞体ウイルスへの単一抗体投与で治療抵抗性変異ウイルスの出現を経験したことによるもので、REGN-COV2の前臨床試験では、変異ウイルスの急速出現は回避されたことが確認されている。 第I~III相試験は多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照にて、COVID-19外来患者を対象にREGN-COV2の有効性と安全性の評価などを目的として現在も進行中である。 被験者は、無作為に1対1対1の割合で3群に割り付けられ、それぞれプラセボ、REGN-COV2 2.4g、同8.0gの投与を受けた。また、SARS-CoV-2に対する内因性免疫反応(血清抗体陽性または同陰性)について、ベースラインで前向きに特徴付けがされた。 キーエンドポイントは、ベースラインから1~7日目までのウイルス量の時間加重平均変化、29日目までに1回以上COVID-19関連で受診した患者の割合などであった。安全性は、全被験者を対象に評価した。ベースライン血清抗体陰性群で-0.56 log10/mL、全試験集団で-0.41 log10/mL 今回の中間解析は、第I~II相試験中に登録された275例(REGN-COV2 2.4g群92例、同8.0g群90例、プラセボ群93例)について、2020年9月4日時点で評価したものである。 ベースラインから1~7日目までのウイルス量の時間加重平均変化の最小二乗平均差は、ベースライン血清抗体陰性群で-0.56 log10/mL(95%信頼区間[CI]:-1.02~-0.11)、全試験集団で-0.41 log10/mL(95%CI:-0.71~-0.10)であった。 全試験集団で、1回以上COVID-19関連で受診した患者の割合は、プラセボ群6%、REGN-COV2投与統合群3%であった。ベースライン血清抗体陰性群では、プラセボ群15%、REGN-COV2投与統合群6%であった(群間差:-9ポイント、95%CI:-29~11)。 過敏反応、輸液関連反応、その他有害事象の発現頻度は、REGN-COV2投与統合群とプラセボ群で同程度であった。

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人工呼吸器未装着COVID-19入院患者、トシリズマブで重症化を抑制/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎入院患者(人工呼吸器は未装着)において、トシリズマブは人工呼吸器装着または死亡の複合アウトカムへの進行を減らす可能性が示されたが、生存率は改善しなかった。また、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のCarlos Salama氏らが389例を対象に行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2021年1月7日号で発表された。COVID-19肺炎ではしばしば強い炎症状態が認められる。COVID-19の発生率には、十分な医療サービスが受けられない人種および民族のマイノリティ集団における不均衡がみられるが、これらの集団のCOVID-19肺炎入院患者について、IL-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブの安全性と有効性は確認されていなかった。高リスク・マイノリティ対象に、安全性と有効性をプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、COVID-19肺炎で入院する人工呼吸器未装着の患者を対象に、トシリズマブの安全性と有効性を評価する無作為化試験を行った。 患者を2対1の割合で、標準治療に加えてトシリズマブ(8mg/kg体重を静脈内投与)またはプラセボのいずれかを1回または2回投与する群に、無作為に割り付け追跡評価した。主要アウトカムは、28日目までの人工呼吸器装着または死亡であった。 試験地の選択では、高リスクおよびマイノリティ集団が登録されるように注意が払われた。28日目までの人工呼吸器装着または死亡、トシリズマブ群12.0%、プラセボ群19.3% 389例が無作為化を受け、修正intention-to-treat集団にはトシリズマブ群249例、プラセボ群128例が含まれた。56.0%がヒスパニックまたはラテン系で、14.9%が黒人、12.7%がネイティブ・アメリカンまたはアラスカ・ネイティブ、12.7%が非ヒスパニック系白人、3.7%がその他または人種/民族不明であった。 28日目までの人工呼吸器装着または死亡患者の累積割合は、トシリズマブ群12.0%(95%信頼区間[CI]:8.5~16.9)、プラセボ群19.3%(13.3~27.4)であった(人工呼吸器装着または死亡のハザード比[HR]:0.56、95%CI:0.33~0.97、log-rank検定のp=0.04)。 time-to-event解析で評価した臨床的失敗は、プラセボ群よりもトシリズマブ群で良好であった(HR:0.55、95%CI:0.33~0.93)。 一方で28日目までの全死因死亡の発生は、トシリズマブ群10.4%、プラセボ群8.6%であった(加重群間差:2.0ポイント、95%CI:-5.2~7.8)。 安全性評価集団における重篤な有害事象の発生率は、トシリズマブ群15.2%(38/250例)、プラセボ群19.7%(25/127例)であった。

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COVID-19入院患者への中和抗体、レムデシビルへの上乗せ効果示せず/NEJM

 レムデシビルの投与を受けている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、中和モノクローナル抗体LY-CoV555(bamlanivimab)の単回投与はプラセボと比較して、5日目までの有効性に差はないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJens D. Lundgren氏らが実施した「ACTIV-3/TICO LY-CoV555試験」で明らかとなった。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年12月22日号に掲載された。抗ウイルス薬レムデシビルは、COVID-19入院患者の回復までの期間を短縮することが示されているが、有効な追加治療が早急に求められている。また、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する受動免疫を活用して、感染に対する液性免疫応答を増強することは、COVID-19患者の臨床評価における優先事項とされる。LY-CoV555は、COVID-19外来患者においてウイルス負荷および入院・救急診療部受診の頻度を低減することが知られている。3ヵ国31施設が参加したプラセボ対照無作為化試験 本研究は、COVID-19入院患者の治療における中和モノクローナル抗体と抗ウイルス薬の役割を解明する目的で、米国国立衛生研究所(NIH)によって設立されたACTIV-3/TICO(Therapeutics for Inpatients with COVID-19)プラットフォームに基づく最初の臨床試験であり、31施設(米国23施設、デンマーク7施設、シンガポール1施設)が参加し、2020年8月5日~10月13日の期間に患者登録が行われた(米国Operation Warp Speedなどの助成による)。 対象は、SARS-CoV-2に感染した成人入院患者で、COVID-19による症状発現から12日以内であり、末梢臓器不全(昇圧療法、新規腎代替療法、侵襲的機械換気、体外式膜型人工肺、機械的循環補助)がないこととされた。 被験者は、LY-CoV555(7,000mg)またはプラセボを1時間で静脈内注入する群(単回投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。加えて、全例が基礎治療として、レムデシビルと、適応がある場合は酸素補給やグルココルチコイドを含む質の高い支持療法を受けた。 主要アウトカムは90日の期間中における持続的回復(自宅退院し、少なくとも14日間自宅にいることと定義)とし、time-to-event解析で評価された。また、5日目の肺機能に関する7段階の順序尺度(カテゴリー1「症状が最小限またはまったくない状態で、通常の活動を自立的に行うことができる」~カテゴリー7「死亡」)に基づき、無益性(futility)の中間解析が実施された。5日目のカテゴリー1+2達成率:50% vs.54% 2020年10月26日、データ・安全性監視委員会は、314例(LY-CoV555群163例[年齢中央値63歳、女性40%]、プラセボ群151例[59歳、47%])が無作為化され投与を受けた時点で、無益性のため患者登録を中止するよう推奨した。 無作為化前または無作為化の日に、298例(95%)がレムデシビルの投与を開始しており、49%がグルココルチコイドの投与を受けていた。症状発現からの期間中央値は7日(IQR:5~9)だった。 5日目の時点で、肺アウトカムの上位2カテゴリー(カテゴリー1と2)を達成したのは、LY-CoV555群が161例中81例(50%)、プラセボ群は150例中81例(54%)であった。また、5日目までに退院した患者は、それぞれ90例(55%)および85例(56%)であった。7段階のカテゴリーに関して、LY-CoV555群がプラセボ群よりも良好なカテゴリーに属するオッズ比(OR)は0.85(95%信頼区間[CI]:0.56~1.29)であり、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.45)。 10月26日の時点における持続的回復(少なくとも28日間追跡されるか、この間に死亡した患者が対象)は、LY-CoV555群が87例中71例(82%)、プラセボ群は81例中64例(79%)で達成された(率比[RR]:1.06、95%CI:0.77~1.47)。また、全患者における退院は、LY-CoV555群が163例中143例(88%)、プラセボ群は151例中136例(90%)で達成された(RR:0.97、95%CI:0.78~1.20)。 安全性の主要アウトカム(死亡、重篤な有害事象、Grade3/4の有害事象の複合)は、5日目の時点でLY-CoV555群が163例中31例(19%)、プラセボ群は151例中21例(14%)で発生した(OR:1.56、95%CI:0.78~3.10、p=0.20)。また、28日目の時点で、安全性主要アウトカムまたは臓器不全、重篤な重複感染症を発症した患者は、それぞれ163例中49例(30%)および151例中37例(25%)(HR:1.25、95%CI:0.81~1.93)であり、10月26日の時点における死亡は9例(6%)および5例(3%)であった(HR:2.00、95%CI:0.67~5.99)。死亡例14例のうち12例はCOVID-19の悪化、2例は心肺停止によるものだった。 著者は、「TICOプラットフォームは、今後も、新規モノクローナル抗体製剤を含め、COVID-19の追加治療の評価を進める予定である」としている。

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COVID-19の院内死亡率、10代はインフルの10倍にも

 インフルエンザとCOVID-19は、類似した感染様式を伴う呼吸器疾患である。そのため、インフルエンザの流行モデルは、COVID-19の流行モデルの検証にもなり得ると考えられる。ただし、両者を直接比較するデータはほとんどない。フランス・ディジョンのUniversity of Bourgogne-Franche-Comté(UBFC)のLionel Piroth氏ら研究グループが、国の行政データベース(PMSI)を用いて後ろ向きコホート研究を実施したところ、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザの患者の症状にはかなりの差異があり、11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザの10倍にも上ることが明らかになった。The Lancet Respiratory Medicine誌2020年12月17日付のオンライン版に掲載。 本研究には、2020年3月1日~4月30日にCOVID-19で入院した全患者、および2018年12月1日~2019年2月28日にインフルエンザで入院した全患者が含まれ、年齢層ごとに層別化されたデータを基に、患者間の危険因子、臨床的特徴、および転帰の比較が行われた。 主な調査結果は以下のとおり。・8万9,530例のCOVID-19患者および4万5,819例のインフルエンザ患者が、それぞれの研究期間中にフランス国内で入院した。患者の年齢中央値は、COVID-19で68歳(四分位範囲[IQR]:52~82)、インフルエンザでは71歳(IQR:34~84)だった。 ・COVID-19患者は、インフルエンザ患者よりも肥満または太り過ぎの傾向があり、糖尿病、高血圧および脂質異常症が多く見られたのに対し、インフルエンザ患者は、心不全、慢性呼吸器疾患、肝硬変、および欠乏性貧血が多かった。 ・COVID-19の入院患者では、インフルエンザと比べ急性呼吸不全、肺塞栓症、敗血症性ショック、または出血性脳卒中の発症頻度が高かったが、心筋梗塞や心房細動の発症頻度は低かった。・院内死亡率は、COVID-19患者のほうがインフルエンザ患者よりも高く(1万5,104例[16.9%]/8万9,530例 vs.2,640例[5.8%]/4万5,819例)、相対死亡リスクは2.9(95%信頼区間[CI]:2.8~3.0)、年齢標準化死亡比は2.82であった。・入院患者のうち、18歳未満の小児の割合はインフルエンザよりもCOVID-19のほうが少なかった(1,227例[1.4%] vs.8,942例[19.5%])。・5歳未満では、インフルエンザよりもCOVID-19のほうが集中治療を要する頻度が高かった(14/613例[2.3%] vs.65/6973例[0.9%])。・11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザよりも10倍高かった(5/458例[1.1%] vs.1/804例[0.1%])。 本結果について著者らは、対象患者数が少ないため、限定的な知見ではあるものの、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザ患者の症状にはかなりの差異があること、小児においてはCOVID-19の入院率はインフルエンザよりも低いが、院内死亡率が高いことを指摘。本結果により、COVID-19の適切な感染予防策の重要性およびワクチンや治療の必要性が浮き彫りになったと述べている。

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Pfizerの新型コロナワクチン、190万人でのアレルギー反応は/CDC

 米国で2020年12月14〜23日に初回投与されたPfizer-BioNTechのCOVID-19ワクチン接種189万3,360回で、21例(11.1例/100万回)にアナフィラキシーが発現し、そのうち71%は15分以内に発症したことを、米国疾病予防管理センター(CDC)が2021年1月6日に発表した。 米国では2020年12月23日の時点で、Pfizer-BioNTechのCOVID-19ワクチンの1回目の投与が189万3,360人(女性117万7,527人、男性64万8,327人、性別不明6万7,506人)に実施され、4,393例(0.2%)に有害事象が報告された。そのうち、アナフィラキシーを含む重度のアレルギー反応の可能性がある175例を調査した。これらのうち21例(11.1例/100万回)がアナフィラキシーと判断され、うち17例はアレルギーまたはアレルギー反応の既往があり、そのうち7例はアナフィラキシーの既往があった。 投与から症状発現までの中央値は13分(範囲:2〜150分)で、15分以内が21例中15例(71%)、15〜30分が3例(14%)、30分を過ぎて発現したのは3例(14%)であった。治療については、21例中19例(90%)がアドレナリン(エピネフリン)で治療され、1例は皮下、18例は筋肉内に投与された。21例中4例(19%)が入院し、17例(81%)が救急科で治療を受けた。その後の情報が入手可能な20例全員が回復もしくは退院した。 アナフィラキシーではないと判断された154例のうち、86例は非アナフィラキシー性のアレルギー反応、61例は非アレルギー性の有害事象と判断され、7例は調査中という。

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Dr.林の笑劇的救急問答16 肺炎

第1回 肺炎球菌はチンピラ?第2回 マイコプラズマはかわいい?第3回 レジオネラは麻薬の運び屋?第4回 ごえんしたら誤嚥性肺炎? Dr.林の笑劇的救急問答も16年目に突入!今シーズンは、「肺炎」、「壊死性筋膜炎」、「ダニ」のバラエティに富んだ3テーマでお届けします。上巻では「肺炎」を取り上げ、肺炎球菌、マイコプラズマ、レジオネラ、誤嚥性肺炎について詳しく見ていきます。COVID-19との鑑別のためにも、重要な肺炎を診断、除外できるよう、救急での診療のポイントを確認しておきましょう。思わず笑ってしまう症例ドラマと楽しくわかりやすいDr.林の講義でしっかりと学んでください。(2020年2月収録)第1回 肺炎球菌はチンピラ?今回から4回にわたって肺炎を取り上げます。まずは、肺炎球菌から。肺炎球菌による肺炎をいかに鑑別するか、また、その治療と治療経過についてしっかりと確認していきましょう。Dr.林曰く『肺炎球菌は“チンピラ”』...。これは一体どういうことなのか!詳しくは番組で!第2回 マイコプラズマはかわいい?今回は“マイコプラズマ”がテーマ。マイクプラズマ肺炎は若年者に多く、通常は「元気な肺炎」です。しかしまれに重症化することがあります。悪さをしているのは、かわいいマイコではなく、取り巻きのT細胞。マイコプラズマ肺炎の重症化のメカニズムと治療戦略について、Dr.林が解説します。第3回 レジオネラは麻薬の運び屋?今回のテーマは「レジオネラ」。レジオネラ症は重症化すると、劇症型の肺炎(レジオネラ肺炎:在郷軍人肺炎)を引き起こし、肺外(中枢神経・消化器など)症状が強く出てくることがあります。レジオネラとの闘い方をしっかりと学んでおきましょう。そして...、Dr.林曰く、「レジオネラは水面下で暗躍する麻薬の運び屋」のよう。その意味と意図についても一緒にご確認ください。第4回 ごえんしたら誤嚥性肺炎?今回のテーマは誤嚥性肺炎。誤嚥性肺炎と誤嚥性肺臓炎。まずはこの2つをきちんと分類してから始めましょう。誤嚥性肺炎は、高齢者の肺炎のおよそ80%を占める肺炎です。しかしながら、診断基準がなく、臨床診断となります。それではどうやって診断していくのか、そして、その後の対応は?Dr.林のわかりやすい講義でしっかりと確認してください。

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第39回 人間の弱みを熟知した新型コロナウイルス、これを抑制させるには?

2020年はまさに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に明けて暮れた1年だったと言える。私個人は2019年12月末に中国の武漢で謎の肺炎が流行しているという一報を耳にした時は、「フェイクもどきのオカルト的なニュース?」「中国ローカルな感染症でも出たのか?」くらいにしか考えていなかった。1月16日に日本で初の感染者が報告された時点でも「急性重症呼吸器症候群(SARS)のようなものかな?」ぐらいの認識だった。その後、2月下旬くらいまでは国内でポツリポツリと感染者が報告されると、1例1例の分かる範囲の情報をポチポチとExcelファイルに打ち込んでいた。今振り返ると、とてつもなく呑気なことをしていたと思う。その後、この作業は中止した。とてもそんなことはやっていられないほどに感染者が増えていったからだ。そして今や東京都で1日に確認される感染者は1,000人超どころか、2,000人超にまで達し、ついに政府が首都圏の一都三県に対して新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく2度目の緊急事態宣言を発出するまで追い込まれている。ちょうど昨年末の大晦日の午前11時前に私はTwitter上でこんなツイートをしていた。「大晦日にあんまり不吉なこと言わないほうがいいんだが、今日と明日の元日に発表される感染者数が気になる。新型コロナの平均潜伏期間は5日強なので、これに検査による結果判明までの1~2日を加えると、ちょうどクリスマスの時にどんちゃん騒ぎした中で起きた感染が報告される時期になるから」とはいえ、この時は東京都でPCR検査陽性者数が900人台後半になるか、最悪でも1,000人をやや超える程度だろうと予測していた。しかし、大晦日の午後2時過ぎ、東京都での陽性者が1,300人超の見込みというYahoo!ニュース速報ポップアップがスマホに表示された際は、紋切り型の表現だが「凍り付いた」。その時はたまたま路上にいたのだが、なぜかポップアップからニュース本文に飛ばず、ディスプレイを凝視したまま立ち尽くしてしまっていた。もっとも前述のツイートで、クリスマスのどんちゃん騒ぎで感染したであろう人を非難したつもりは毛頭ない。従来ならばそうした行為は騒音や泥酔など他人への明らかな迷惑行為がなければ、非難されるものではなかったからだ。むしろそうできる仲間と環境を持つ人はうらやましがられたはずである。新型コロナウイルスはそうした状況を一変させてしまった。そして恨んでもしようがないが、新型コロナウイルスの特徴を改めて考えれば考えるほど、なんと嫌なウイルスだろうと思う。感染経路は接触感染と飛沫感染で、そのうちの前者が主。発症前から感染力を有し、一定割合の無症候感染者がいる。発症後は風邪やインフルエンザに比べ、だらだらと症状が続く期間が長く、そこでも他人に感染させる。とにかく音も気配もなく感染を広げていくのである。ワクチンがなく、治療薬も決定打と言えるほど奏効するものはなく、現在打てる対策は予防。3密回避、マスク着用、手洗い励行の3つである。この予防策の中で最も重要度が高いものは3密回避だろう。極端な話、屋内に1人で完全に引きこもって一切外出しないのならば、理論的にはマスク、手洗いという予防策の必要度はかなり低下するからである。そこで改めて3密の定義を確認すると、換気の悪い「密閉」空間、多数が集まる「密集」場所、間近で会話や発声をする「密接」場面の3つの「密」のことである。密閉ぐらいなら若干の注意で避けられるだろうが、日常生活のさまざまなシーンを考えれば密集はやや避けがたく、密接に至っては家族という存在も含めれば完全回避は不可能である。実際、現在報告されている感染者の中で、経路が判明しているケースの最多が家庭内感染というのも頷ける。ちなみに家庭内感染そのものは家族の誰かが他人との会食や接触で感染して家庭内に持ち込むことから始まる。それゆえ多くの専門家が「他人との会食はなるべく控えて」と訴えるのはこの上なく理にかなっている。しかし、食事の時間という日常生活での大きな楽しみを、可能ならば他人と共有したいと思うのもまた人の性である。よく「人は一人では生きられない」という使い古された言葉があるが、結局のところ「3密回避」とは、極端な言い方をすれば「人として当たり前に生きるな」と言われるに等しい。一時期、これまた耳にタコができるほど聞かされたキーワードに「不要不急」があるが、今回のことを通じて「不要不急」と呼ばれたものの多くが私たちの生活の潤滑油だったことに気づいた人も少なくないはずだ。今回2度目となる緊急事態宣言そのものは、かなりの「劇薬」でもあるため、発出中の期間は限定される。ところが今や日常生活でベースの予防対策である「3密回避」は、今のところ期間限定ではなく、終わりはまったく見えていない。結局、新型コロナウイルスはすべての人に「エンドレスな孤独との戦い」を強いている。そしてこれだけパンデミックが長期間に及ぶと、その過程でほぼすべての人がリスクを過小評価しようとする正常性バイアスに襲われたと思われる。時にはその結果として、ウイルスに対するガードを下げてしまう場合もあっただろう。ところがそうした隙を新型コロナウイルスは巧みに突いてくる。まるで、騙されたことに気付いた人が取る回避策すべてにわなを仕掛けてあざ笑う詐欺師のような陰湿さだ。その結果が現在の感染者増につながっていることは明らかだろう。そして医療従事者の中にはテレビで流れている情景とは異なり、思ったほど往来が減っていない年末年始の光景に、「自分たちが発するメッセージが伝わらない」といら立ちを覚える人たちも多いに違いない。だが、繰り返しになるがこのウイルスに対する重要な予防策である「3密回避」は人が人らしく生きようとすることを阻む行動様式である。単純に「伝わらない」のではなく、一旦は伝わっても意識的にも無意識的にも可能ならば無視したいメッセージなのであり、それが自然なのである。現在逼迫している医療現場で奮闘する皆さんからはお叱りを受けるかもしれないが、だからこそ私は「3密回避」を怠ったがゆえに感染したかもしれない感染者は「明日の自分」かもしれないと思ってしまうのだ。同時にこのウイルスは医学的作用と同時に負の社会的作用も生む。典型は少なからぬ医療従事者も経験したであろう差別・偏見である。これは不十分な知識のまま過剰な感染防御に走った人たちがもたらしたものである。また、感染者に占める若年者比率の高さから、無症候・軽症が多い若年感染者が流行を加速させている可能性があるという医学的には比較的妥当な分析が一部の若年者と高齢者との間に亀裂を招いたとの指摘もある。このような現象は挙げればきりがなく、しかも生み出された社会的分断が社会的後遺症にまでつながってしまう可能性もある。このような経緯を踏まえたうえでCOVID-19の報道にかかわる私たちや同じように社会や患者に向かって注意喚起する医療従事者がやるべきこと、やれることは何なのか? 実はこれまた極めて平凡な答えにならざるを得ない。それは3密回避、マスク着用、手洗いの意義をことあるごとに発信し続けることに尽きるのである。発信量が増えてもにわかに効果が出るものではないのは多くの人が認識しているだろうが、逆に発信量が減れば個々人の感染対策のガードを下げる正常性バイアスがいとも簡単に拡散しやすくなる懸念は十分にあるからだ。同時にもう一つ発信する側に必要なのはアンガーマネージメント的な感情コントロールだろう。さもなくば、地味な発信を地味に継続するという意欲を維持することは困難であり、なおかつ感情的な発信が時に前述した社会分断の原因にもなりかねないからである。2度目の緊急事態宣言を前に個人的雑感に寄り過ぎているかもしれないが、この1年を振り返って思いを強くしているのは、強大な敵に対して「竹槍戦法」で挑むしか方法がないならば、根気よく竹を削って竹槍を作り、何度も挑むしつこさが必要だということ。諦めたら負けなのである。

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COVID-19の対応には学会の叡智を結集/日本医学会連合

 日本の医学界を代表する学術的な全国組織の連合体である日本医学会連合(会長:門田 守人)は、1月4日に「日本医学会連合 COVID-19 expert opinion 第2版(2021年1月4日版)」を公開した。“expert opinion” は、COVID-19にevidence based medicineのガイドラインを作成できるような確固としたclinical evidenceが不足していることから「expert opinionとして取り纏め、今後新しいevidenceが蓄積するとともにreal timeに改訂していく」「読みやすい簡潔なものとし、詳細は各学会のhomepageの該当箇所などのリンクを案内する」とし、関連学会との協力の下、迅速な作成を目指し作られた。 このexpert opinionの活用に際しては、「各学会が対象とする患者層は同じCOVID-19患者でもそれぞれ異なるので、同じ治療法でも異なる推奨や考え方が提示されていることがある」と前置きした上で、「推奨のばらつきは、COVID-19患者群の中に存在する多様性を反映したもので、expert opinionの使用では、他のガイドラインと同様に各々の推奨を診療にあたる患者さんの状況に応じて柔軟に使用する必要がある」と注意を促している。 具体的に、たとえば一般外来では、「感染防御」、「診断・検査の進め方」、「服用中の薬剤」にわけて記述され、最新の知見が説明されているほか、必要に応じて各所属学会や海外学会へのリンクなども充実している。主な内容・一般外来・救急外来・入院(内科系)・入院(外科系)・入院患者の見舞いの対応・集中治療と呼吸管理・合併症・特殊な状況の対応:移植医療における対応・特殊な状況の対応:小児・特殊な状況の対応:産婦人科・内視鏡対応:・こころのケア(患者および医療従事者)・口腔科(歯科・口腔外科)診療と医科歯科連携・復職・復学(通常の職種、医療従事者)

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新型コロナ抗体陽性者、6ヵ月は再感染リスクが低下/NEJM

 抗スパイク抗体または抗ヌクレオカプシドIgG抗体の存在は、以後6ヵ月間の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)再感染のリスクを大幅に低下することが示された。英国・オックスフォード大学病院のSheila F. Lumley氏らが、英国の医療従事者を対象にSARS-CoV-2抗体の有無と感染発生率を調査した前向き縦断コホート研究の結果を報告した。これまで小規模な研究では、中和抗体が感染予防と関連する可能性が示唆されていたが、SARS-CoV-2抗体とその後の再感染リスクとの関連については不明であった。NEJM誌オンライン版2020年12月23日号掲載の報告。英国の医療従事者約1万2,500例対象に、抗体の有無とその後の感染率を調査 研究グループは、英国のオックスフォード大学病院における無症候性/症候性スタッフ検査に参加し血清反応が陽性/陰性の医療従事者を対象に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により確定されたSARS-CoV-2感染の発生率を調査した。 被験者のベースラインでの抗体有無を、抗スパイク抗体(スパイク蛋白に対する抗体)(主要解析)および抗ヌクレオカプシドIgG抗体(ヌクレオカプシド蛋白に対する抗体)解析により確定し、最長31週間追跡した。また、PCR検査陽性と新規症候性感染の相対発生率を、年齢・性別・発生率の経時変化で補正を行い、抗体の有無別に推定した。 合計1万2,541例の医療従事者が抗スパイクIgG抗体の測定を受けた。抗体陰性者は1万1,364例、抗体陽性者は1,265例(追跡調査中に抗体陽転が生じた88例を含む)であった。抗体陽性者の抗体陰性者に対する補正後発生率比0.11 血清抗スパイク抗体陰性でPCR検査陽性となったのは223例(リスク期間1万日当たり1.09)で、スクリーニング中に無症状が100例、有症状が123例であった。一方、血清抗スパイク抗体陽性でPCR検査陽性となったのは2例(リスク期間1万日当たり0.13)で、2例とも検査時は無症状であった(補正後発生率比:0.11、95%信頼区間[CI]:0.03~0.44、p=0.002)。 抗スパイク抗体陽性者において、症候性の感染は確認されなかった。 発生率比は、ベースラインの抗体有無を、抗ヌクレオカプシドIgG抗体検査単独で判定した場合、または抗スパイクIgG抗体検査を併用した場合で変わらなかった。 なお、著者は、「主に65歳以下の健康な医療従事者が対象であり、調査期間が短期で、一部の医療従事者は退職により追跡できなかった」ことなどを研究の限界として挙げたうえで、「小児、高齢者、免疫低下を含む併存疾患を有する患者など他の集団における感染後の免疫を評価するには、さらに研究が必要である」とまとめている。

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