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COVID-19治療でシクレソニドの推奨見直し/厚生労働省

 2020年12月25日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.1版」を公開した。 同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に、第4版は12月4日に公表され、今回重要事項について大きく3点で加筆が行われた(なお、この手引きは2020年12月23日現在の情報を基に作成。今後の知見に応じ、内容に修正が必要となる場合がある)。■主な改訂点【病原体・疫学】・国内発生状況の内容を追記(12月23日までの情報に更新)【臨床像】・「重症化のリスク因子」の中で、重症化のリスク因子に「悪性腫瘍」「2型糖尿病」「脂質異常症」「喫煙」「固形臓器移植後の免疫不全」を追記【薬物療法】・「薬物療法」中の「その他の薬剤例」でシクレソニドにつき、「無症状・軽症の患者には推奨されない」を追記

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新型コロナの医療従事者への感染:院内感染と非院内感染が混在(解説:山口佳寿博氏)-1336

 新型コロナが中国・武漢で発生してから約1年が経過し、手探りで始まった本感染症における臨床所見の把握、診断法、治療法(抗ウイルス薬剤、抗炎症薬/サイトカイン・ストーム抑制薬、ECMOなどの呼吸管理法)、予防法(有効ワクチン)の確立に関し多くの知見が集積されつつある。感染症発生初期には、感染症の本体(感染性、播種性、重症化因子)が十分に把握できず、医療従事者の防御法(PPE:Personal Protective Equipment)も不完全で医療施設内での医療従事者を巻き込んだ感染クラスターの発生など、種々の社会的問題が発生した。これらの諸問題は時間経過と共に沈静化しつつあるが、現在施行されている医療従事者の一般的PPEが本当に正しいかどうかに関する検証はなされていない。もし、医療従事者のPPEが正しいならば、医療従事者の新型コロナ感染率は一般住民のそれと同等であるはずである。この問題に対する確実な答えを見つけておくことは、今後のコロナ感染症の診断/治療に当たるわれわれ医療従事者にとって重要な問題である。医療従事者はコロナ感染症患者に的確に対処すると同時に、1人の一般人として自らを取り巻く家族にも責任を持たなくてはならない。本論評では医療従事者における新型コロナ感染症の感染率、入院率について、現在までに報告された知見を基に考察する。 医療従事者における新型コロナ感染率は、中国・武漢における感染初期(2020年1月1日~2月3日)の院内感染データを基に初めて報告された(Wang D, et al. JAMA. 2020;323:1061-1069. )。感染症発症後間もない時期の疫学データで、PCR確定入院肺炎患者138例のうち57例(41%)が院内感染による肺炎であった。他疾患で入院中の患者における院内感染関連の肺炎発症は17例(12%)、医療従事者のそれは40例(29%)であった。これらの値は非常に高く、感染発症初期段階における院内感染予防策の稚拙さを物語っている。 感染が世界に広がり、PPEの重要性が医療現場に浸透しだした2020年2月12日から4月9日までのデータを基に、米国CDCは、39万5,030例のPCR確定患者のうち医療従事者の感染者数は9,286例(感染率:2.35%)であると報告した(Washington Post, USA Today, 2020年4月9日)。この医療従事者の感染率は新型コロナ発生の最も初期に中国・武漢の医療施設から報告された値の約10分の1であり、医療従事者におけるPPEの厳密度が時間経過に伴い上昇していることを示している。米国CDCの報告で重要な点は、医療従事者の感染者のうち45%は感染経路が不明で、院内感染など感染患者との接触歴を認めなかったことである。すなわち、医療従事者の多くは、医療現場で感染したわけではなく、通勤、買い物、あるいは、家族内など一般人と同じ経路で感染したことを物語っている。 同年4月22日から4月30日に集積されたデータを基に、ベルギーの単一施設におけるIgG抗体に基づく医療従事者の感染率が報告された(Steensels D, et al. JAMA. 2020;324:195-197.)。この報告によると、3,056例の医療従事者のうち197例(6.4%)でN蛋白に対するIgG抗体が陽性であった。ベルギーにおける一般人口のN蛋白IgG抗体陽性率は報告されていないが、欧州各国の一般人口におけるIgG抗体陽性率が人口の5~10%であることを考慮すると、ベルギーにおける医療従事者のIgG抗体陽性率は一般人口のそれとほぼ同等と考えてよい。この解析から得られた興味深い知見は、医療従事者のIgG抗体陽性がコロナ患者との院内接触歴ではなく、感染した家族との接触歴が関連した事実である。この結果も、医療従事者への感染は、一般人と同様に医療現場ではなく家族内感染が重要な役割を果たしていること示している。 同年3月1日から6月6日までに集積されたデータを基に、英国・スコットランド全域における医療従事者(15万8,445人)とその家族(22万9,905人)のコロナ感染による入院率が検討された(Shah ASV, et al. BMJ. 2020;371:m3582.)。医療現場を含めた何らかの仕事に従事する“Working age(18~65歳)”の入院総数は2,097例、そのうち医療従事者は243例(11.6%)、医療従事者の家族は117例(5.6%)であった。以上を医療従事者の仕事内容(患者対面職[patient facing]、患者非対面職[non-patient facing])で層別化すると、患者非対面職の医療従事者とその家族の入院リスクは非医療従事者(一般人)のそれと同等であった。一方、患者対面職医療従事者の入院リスクは患者非対面職医療従事者の3.3倍、患者対面職医療従事者の家族における入院リスクは患者非対面職医療従事者家族の1.8倍であった。救急隊員、集中治療室勤務、呼吸器内科医師/看護師など患者対面職の中で“最前線医療従事者(front door staffs)”と位置付けられる人たちの入院リスクは非最前線医療従事者の2.1倍であった。 以上の報告をまとめると、(1)医療従事者におけるコロナ感染は、医療施設内におけるコロナ患者との接触(院内感染)に起因するもの(~55%)と医療施設内患者接触とは無関係なもの(~45%)が混在する。(2)患者非対面職医療従事者(その家族を含む)のコロナ感染症による入院リスクは非医療従事者(一般人)のそれと同等である。(3)医療施設内での患者接触は、患者対面職医療従事者の入院リスクを有意に上昇させる。(4)同時に、感染した医療従事者からの感染を介してその家族の入院リスクを上昇させる。(5)患者対面職にあって最前線医療従事者の入院リスクは、一般的な患者対面職医療従事者に比べ有意に高い。以上より、一般的PPEは医療施設内での感染予防に貢献しているが、患者対面職の医療従事者、とくに、最前線医療従事者にあっては一般的PPEでは不十分で、さらに厳密なPPEが必要であることが示唆される。

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COVID-19入院時、ビタミンD欠乏で死亡オッズ比3.9

 ビタミンD欠乏症と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連は、これまでもさまざまな報告があるが、依然として情報は不足している。今回、ベルギー・AZ Delta Medical LaboratoriesのDieter De Smet氏らが、入院時の血清ビタミンDレベルとCOVID-19の病期および肺炎の転帰との関連を調査した。その結果、COVID-19で入院した患者の59%がビタミンD欠乏症であり、COVID-19による死亡オッズ比は3.9であることが示された。American Journal of Clinical Pathology誌2020年11月25日号での報告。入院時のビタミンD欠乏症とCOVID-19起因肺炎による死亡率との関連 研究者らは、2020年3月1日~4月7日にAZ Delta General Hospitalに入院したSARS-CoV-2感染(PCR陽性)者186例を対象に、入院時の胸部コンピューター断層撮影(CT)と25(OH)D測定を組み合わせた後ろ向き観察試験を実施した。また、ビタミンD欠乏症(25(OH)D<20ng/mL)が交絡する併存疾患に関係なく生存率と相関するかどうかを調べるために、多変量回帰分析が実施された。 なお、CT結果による病期は、すりガラス状陰影(初期、病期1)、すりガラス状陰影内部に網状影を伴うcrazy-paving pattern(進行期、病期2)、浸潤影を呈するconsolidation(ピーク期、病期3)とした。COVID-19による肺炎の影響を受けた肺組織の割合は、CT重症度スコア(0~25)として表された。 入院時の血清ビタミンDレベルとCOVID-19の病期および肺炎の転帰との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・PCRで確認されたSARS-CoV-2感染者186例が入院し、そのうち男性が109例(58.6%)、女性が77例(41.4%)、年齢中央値はそれぞれ68歳(四分位範囲[IQR]:53~79歳)および71歳(IQR:65〜74歳)だった。・入院時に測定された結果によると、186例中85例(46%)は病期3(ピーク期)、病期2(進行期)は30%、病期1(初期)は25%で、男女比に差は見られなかった。・186例中109例(59%)は、入院時にビタミンD欠乏症(25(OH)D<20ng/mL)であり、男性では67%、女性では47%だった。・男性患者では、CTによる病期が進むにつれて徐々に25(OH)Dの中央値が低くなり、ビタミンD欠乏率は、病期1の55%から病期2では67%、病期3では74%に増加した(p=0.0010)。一方、女性患者ではそのような病期依存の25(OH)D値変動は見られなかった。・入院時の25(OH)D値と死亡率の関連を調べた結果、COVID-19患者186例のうち、27例(15%)が死亡し、そのうち67%が男性だった。・死亡した患者は生存者と比べて、年齢(中央値:81歳vs.67歳、p<0.0001)、慢性肺疾患有病率(33% vs.12%、p=0.01)、冠動脈疾患有病率(82% vs.55%、p=0.02)、CT重症度スコア(15 vs.11、p=0.046)が高く、25(OH)D値(中央値:15.2 vs.18.9ng/mL、p=0.02)は低かった。・二変量ロジスティック回帰分析によると、死亡率は年齢の上昇(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.03~1.14)、CT重症度スコアの上昇(OR:1.12、95%CI:1.01~1.25)、慢性肺疾患の存在(OR:3.61、95%CI:1.18~11.09)、およびビタミンD欠乏症の存在(OR:3.87、95%CI:1.30~11.55)とは独立して関連しており、性別、糖尿病および冠動脈疾患の有病率、CTによる病期とは関連していなかった。 著者らは、「本研究は、慢性肺疾患、冠動脈疾患、糖尿病など、ビタミンDの影響を受ける併存疾患とは無関係に、入院時のビタミンD欠乏症とCOVID-19起因肺炎による死亡率との関連を示した。これは、とくにビタミンD欠乏症の患者を対象とする無作為化比較試験の必要性を強調し、SARS-CoV-2パンデミックの安全かつ安価で実施可能な軽減策として、世間一般にビタミンD欠乏の回避を呼びかけるものだ」と結論している。※本文中に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2021年1月18日10時)。

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循環器科医のためのCOVID-19解説サイト/ライフサイエンス出版

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界の日常を一変させ、12月現在、わが国でも感染者数・重症者数ともに増加し、深刻な状況となっている。 そのような状況のなか、ライフサイエンス出版は、特設サイト「循環器科医のためのCOVID-19超解説」を開設した。 COVID-19と循環器疾患との関連は非常に注目されるトピックである。本サイトでは、わが国を代表する循環器領域の専門家が、「川崎病」「血栓症」「心不全」「高血圧」をテーマに解説している。また、COVID-19は、ウイルス感染に起因する炎症反応が重要なキーワードとなっているため、免疫領域の専門家による解説も予定している。 今後の順次公開されるコンテンツに期待をいただきたい。公開されている解説記事第1回「COVID-19における小児の川崎病類似症例」深澤 隆治氏(日本医科大学)第2回「COVID-19の病態としての免疫異常と血栓症」西垣 和彦氏(岐阜市民病院)第3回「コロナ禍における心不全患者の予防と治療・管理、終末期の緩和ケア」安斉 俊久氏(北海道大学)公開予定の解説記事第4回「自然免疫応答とサイトカインストーム」米山 光俊氏(千葉大学)第5回「高血圧」松澤 泰志氏(横浜市立大学)第6回「交差免疫」吉村 昭彦氏(慶應義塾大学)

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免疫も老化、その予防が新型コロナ対策に重要

 国内初の新型コロナウイルスのワクチン開発に期待が寄せられるアンジェス社。その創業者でありメディカルアドバイザーを務める森下 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学 寄附講座教授)が、12月15日に開催された第3回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナー「感染症と免疫」において、『免疫老化とミトコンドリア』について講演した。風邪と混同してはいけない理由 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策やワクチン開発を進めていく上で世界中が難局に直面している。その最大の問題点について森下氏は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のモデルが作れないこと」だという。その理由として、「マウスはSARS-CoV-2に感染しない。ハムスターやネコは感染するものの肺炎症状が出ないため、治療薬に最適なモデルを作り出すことが難しい。つまり、従来の開発方法に当てはめられず、未知な領域が多い」と同氏は言及した。 そんな中、同氏率いるアンジェス社は同社が培ってきたプラスミドDNA製法の技術を活かし、新型コロナのDNAワクチンを開発中である。これは、ウイルスのスパイク部分(感染の足掛かりとなるタンパク質)の遺伝子情報を取り込んだプラスミドDNAをワクチンとして接種することで、スパイク部分のみを体内で発現させて抗体を産生させる仕組みである。12月23日現在、国内で500例を対象としたワクチンの用法・用量に関する安全性や免疫原性評価のための第2/3相臨床試験が行われている。ワクチン完成までは一人ひとりが自然免疫の強化を 国内でのワクチン(海外製含む)接種の開始時期は、2021年2月とも言われているが、実際のところ未だ見通しが立っていない。その間、個人でできる感染対策(手洗い・消毒、マスク着用、うがいなど)だけで感染を凌ぐにはもはや限界にきている。そこで同氏は人間のもともとの免疫力に着目し、「人間の体内で最初に働く自然免疫の強化」を強調した。しかし、自然免疫の機能は18~20歳でピークを迎え低下の一途をたどる。また、免疫機能の中で最も重要なT細胞の分化場所である胸腺は体内で一番老化が早いため、「加齢は自然免疫の低下だけではなく、胸腺の退縮がT細胞の老化につながり、獲得免疫の衰えの原因にもなる」と指摘した。加えて、「睡眠不足、ストレス、肥満、そして腸内細菌叢の構成異常なども免疫力の低下として問題だが、とくに“免疫の老化”が問題」とし、高齢者の重症化の要因の1つに免疫力の老化を挙げた。免疫老化を防ぐにはミトコンドリアをCoQ10で助けよ この免疫老化を食い止めるための方法として、同氏はミトコンドリアの老化を助けることが鍵だと話した。ミトコンドリアは細胞の中のエネルギー生産工場で、中和抗体を作るB細胞などあらゆる細胞の活性化に影響する、いわば“免疫を正常に働かせる司令塔”の役割を司る。そのため主要な自然免疫経路はすべてミトコンドリアに依存している。しかし、ミトコンドリアも加齢とともに減少傾向を示すことから、この働きを助けるコエンザイムQ10(CoQ10)の補充が重要1)だという。また、自然免疫のなかでも口腔内に多く存在し、口腔内に侵入したSARS-CoV-2を速やかに攻撃、粘膜への付着や体内への侵入阻止するIgAもこのCoQ10の摂取により増加傾向が示唆された2)ことを踏まえ、医療用医薬品のユビデカレノン製剤(商品名:ノイキノンほか)をはじめ、サプリメントや機能性食品として販売されているCoQ10(とくに還元型)の摂取が有効であることを説明した。 最後に同氏は「ワクチン導入には時間を要するので、現時点ではまず基本的な感染対策、生活習慣の改善から免疫力UPに注力してほしい。そのなかで免疫を上げる工夫として還元型CoQ10の多い食品(イワシ:約6.4mg、豚肉:約3.3mg[各100g中の含有量])を食べたり、プラスαとしてサプリメントなどを活用したりして、体内のCoQ10量を増やすことを心がけてほしい」とし、医療者に対しては「CoQ10量や唾液内のIgAは検査で測定可能であるため、患者の体質確認には有用」と締めくくった。

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COVID-19ワクチン、2021年に世界人口の何割に接種可能か/BMJ

 主要メーカーの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの世界的な需給について、メーカーが最大生産量を可能としても、世界の人口のほぼ4分の1は少なくとも2022年までワクチン接種を受けることはできないとの研究結果を、米国・ジョンズ・ホプキンズ公衆衛生大学院のAnthony D. So氏らが報告した。COVID-19ワクチンについては、高所得国が市販前に購入契約を結んでいる一方、そのほかの国・地域については入手が不確実であるといわれ、世界保健機関(WHO)が主導するCOVAXファシリティを介して、グローバルアクセスを調整する取り組みが進められている。しかし、高所得国の購入契約に遅れをとっているうえ、資金は不十分で、米国やロシアの協力は得られていない。今回の検討では、高所得国がどのようにCOVID-19ワクチンの将来の供給を確保したかについて概要を示すとともに、残されたそのほかの国・地域は不確実であること、2021年末までに低中所得国が調達できるワクチンはメーカー生産量の40%であり、仮に高所得国が購入予定量を増やした場合、その割合はさらに少なくなるが、高所得国が調達したワクチンが供出されれば増える可能性があることなどが明らかにされた。研究グループは、「政府およびメーカーは、購入契約に関する透明性と説明責任を高めることで、COVID-19ワクチンの公平な配分への確約も果たすことができるだろう」と提言している。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。主要メーカーから各国へのCOVID-19ワクチンの市販前購入契約を分析 研究グループは、主要メーカーから各国へのCOVID-19ワクチンの市販前購入契約を分析するため、WHOのCOVID-19ワクチン候補のレポート(draft landscape of covid-19 candidate vaccines)、米国証券取引委員会へ提出された企業情報開示、企業および財団のプレスリリース、政府のプレスリリース、メディア報告を調べ、2020年11月15日までに公表されていたCOVID-19ワクチンの市販前購入契約(コース当たりの価格、ワクチンプラットフォーム、研究開発のステージ、調達代理店および購入先の国)を分析した。当面の供給量の半分強は高所得国(世界の人口の14%) 2020年11月15日時点で、13のワクチンメーカーから合計74.8億回(37.6億コース)分を購入する市販前契約が結ばれていた。これらの半分強(51%)は、高所得国(世界の人口の14%)に送達されるものであった。 米国は、世界のCOVID-19の症例数の約5分の1(1,102万例)を占めるが、予約量は8億回分であった。一方で、日本、オーストラリア、カナダは、合計10億回分以上を予約していたが、その症例数は世界の症例数の1%に満たない(45万例)。 もし、これらのワクチン候補が最大生産量を達成できた場合、2021年末までに59.6億コース分のワクチン製造が予測された。これらのワクチンコースの最大40%(あるいは23.4億コース)が低中所得国に供給される可能性があるが、もし高所得国が購入拡大オプションを行使すると、低中所得国の供給量は少なくなることが示唆された。また、高所得国が調達したワクチンを供出する場合は、低中所得国の供給量は増すことが示唆された。 ワクチン価格は、コース当たり6ドル(4.50ポンド、4.90ユーロ)から74ドルまでと10倍以上の幅があった。 米国とロシアを除く多彩な国が参加するCOVAXファシリティは、5億回(2.5億コース)分を少なくとも確保しているが、世界的なCOVID-19ワクチンへのアクセスをサポートする取り組みにおいて、2021年末に目標としている20億回分の投与に必要な資金の確保は半分にとどまっているのが現状であった。

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事例017 廃用症候群リハビリテーション料の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説乳がん術後に伴う安静等によって身体能力低下を認めたため廃用症候群と診断してH001-2 廃用症候群リハビリテーション料(以下、「同項目」)を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)で査定となりました。同項目の適用となるのは、同項目の通則1にある「急性疾患等に伴う安静等による廃用症候群の患者であって、一定程度以上の能力低下をきたしているもの」です。具体的には、同項目の算定留意事項(2)に、「急性疾患等(がんの手術を含む外科的手術又は肺炎等)に伴う安静(治療の有無を問わない)による廃用症候群であって、(中略)治療開始時においてFIM(Functional Independence Measure)115 点以下、またはBI(Barthel Index)85 点以下の状態のものをいう」と定義があります。( )内筆者注。レセプトを確認すると、添付もしくは摘要欄に記載しなければならない「廃用症候群に係る評価票(別紙様式22)」の項目のうち、治療開始時のBIが100点と表示されていました。「85点以下でないために適用がない」として査定となったことがわかります。レセプトチェックシステムでは、コメントの数値までチェックされていません。査定対策として、算定担当にはコメント入力時に基準値の確認を行うことを伝え、リハビリテーション部には同項目を実施するときには、FIMとBIの数値が規定以下であることを確認していただくようにお願いしました。

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COVID-19の症状悪化をフルボキサミンが抑制する可能性/JAMA

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルボキサミンが、サイトカイン産生を調節するσ-1受容体を刺激することにより、軽度のCOVID-19患者の臨床的悪化を抑制する可能性が示唆された。米国セントルイス・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らは、症状を有するCOVID-19の成人外来患者を対象とした無作為化二重盲検比較試験において、フルボキサミンで治療された患者がプラセボより臨床的悪化が少なかったことを報告した。ただし、本研究はサンプルサイズが小さく観察期間が短いため、臨床効果を判断するために大規模無作為化試験が必要としている。JAMA誌2020年12月8日号に掲載。 本試験の対象は、セントルイス大都市圏(ミズーリ州とイリノイ州)に在住で、SARS-CoV-2感染が確認され7日以内にCOVID-19症状が発現し、酸素飽和度が92%以上の外来成人患者。2020年4月10日~8月5日に152例が登録され、9月19日まで追跡された。参加者は無作為にフルボキサミン100 mg(80例)またはプラセボ(72例)1日3回15日間投与に割り付けられた。主要評価項目は、無作為化後15日以内に「呼吸困難(すなわち息切れ)または息切れ/肺炎による入院」および「室内気で酸素飽和度92%未満または酸素飽和度92%以上に達するために酸素投与が必要」の両方を満たす臨床的悪化であった。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された152例(平均年齢46歳[SD:13歳]、女性109例[72%])のうち、115例(76%)が試験を完了した。・臨床的悪化は、フルボキサミン群の80例中0例、プラセボ群72例中6例でみられた(絶対差:生存解析により8.7%、95%CI:1.8~16.4%、log-rank p=0.009)。・フルボキサミン群で重篤な有害事象1例、他の有害事象11例、プラセボ群では重篤な有害事象6例、他の有害事象12例が報告された。

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すでに一度補助を受けた医療機関も対象、国による追加支援策/日医

 第3次補正予算案が12月15日に閣議決定され、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、医療機関に対する更なる支援策が講じられている。この中には、第2次補正予算による補助を受けた医療機関が、改めて対象となる支援策も含まれる。12月23日の日本医師会定例記者会見において、松本 吉郎常任理事が支援策の全体像を整理し、有効活用を呼び掛けた。診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援に100万円 都道府県の指定に基づき発熱患者等を対象とした外来体制をとる医療機関(診療・検査医療機関[仮称])については、100万円を上限とした追加支援が決定した:[診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援]対象医療機関:院内等で感染拡大を防ぐための取組を行う、都道府県の指定を受けた診療・検査医療機関(仮称)※ 「診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援」または「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」のどちらかの補助を受けることができる(両方の補助を重複して受けることはできない)。※ 二次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」の補助を受けた医療機関も補助対象。※ 令和2年9月15日の予備費による「インフルエンザ流行期における新型コロナウイルス感染症疑い患者を受け入れる救急・周産期・小児医療機関体制確保事業」の感染拡大防止等の補助を受けた医療機関は対象外。補助基準額:100万円を上限として実費を補助対象経費:令和2年12月15日から令和3年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用(従前から勤務している者および通常の医療の提供を行う者に係る人件費は除く)※ 感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となる。例:消毒・清掃・リネン交換等の委託、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入、寝具リース、CTリース等医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援に25万円 診療・検査医療機関(仮称)以外の医療機関に対しては、病床数等に応じて以下の追加支援が行われる:[医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援]対象医療機関:院内等での感染拡大を防ぐための取組を行う、保険医療機関、保険薬局、指定訪問看護事業者、助産所※ 「診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援」または「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」のどちらかの補助を受けることができる(両方の補助を重複して受けることはできない)。※ 二次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」の補助を受けた医療機関も補助対象となる。※ 令和2年9月15日の予備費による「インフルエンザ流行期における新型コロナウイルス感染症疑い患者を受け入れる救急・周産期・小児医療機関体制確保事業」の感染拡大防止等の補助を受けた医療機関については、三次補正予算の「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」の方が補助上限額が高い場合は、差額分を補助。補助基準額:以下の額を上限として実費を補助・ 病院・有床診療所(医科・歯科) 25万円+5万円×許可病床数・ 無床診療所(医科・歯科) 25万円・ 薬局、訪問看護事業者、助産所 20万円対象経費:令和2年12月15日から令和3年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用(従前から勤務している者および通常の医療の提供を行う者に係る人件費は除く)※ 感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となる。例:消毒・清掃・リネン交換等の委託、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入、寝具リース、CTリース等※ 看護師等が消毒・清掃・リネン交換等を行っている場合は、看護師等の負担軽減の観点から、本補助金を活用して、民間事業者に消毒・清掃・リネン交換等を委託することが可能。 小児診療や回復患者受け入れ医療機関への支援策を含め、補助内容の全体がまとめられた資料はこちら。申請に当たっての質問・相談等に対応するコールセンターについても案内されている。これまで金額の過少申請があった場合も、都道府県に相談を 12月22日には、厚生労働省から事務連絡が発出され、支援事業の対象となる費用や申請方法等についてQ&Aがまとめられた。医療機関が対象となる経費を誤認して金額を過少に申告した場合の再申請についても、「事業実施主体である都道府県に相談して、都道府県が認める場合、再申請することは差し支えない」と記載されている。

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COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を公開/日本感染症学会

 欧米では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種が2020年12月初旬に開始され、わが国でも接種開始が期待されている。日本感染症学会では、学会会員および国民に対し、現在海外で接種が開始されているCOVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を提供し、それぞれが接種の必要性を判断する際の参考にしてもらうべく、COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を作成し、12月28日、学会サイトに公開した。今後、COVID-19ワクチンの国内外における状況の変化に伴い、内容を随時更新する予定という。 日本感染症学会によるCOVID-19ワクチンに関する提言には、世界におけるワクチン開発状況、各ワクチンの特徴、mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンの作用機序、ワクチンの有効性の評価方法、3つのワクチン(ファイザー社のBNT162b2、モデルナ社のmRNA-1273、アストラゼネカ社のChAdOx1)の臨床試験における有効率、1回目および2回目接種後の有害事象、日本での優先接種対象者、接種時における注意や求められる準備などが記載されている。

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新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【臨床編】(解説:山口佳寿博氏)-1335

 本論評(臨床編)では3種類の遺伝子ワクチン(RNA、DNA)の特徴について考察する。(1) RNAワクチンにあってPfizer/BioNTech社のBNT162b2に関しては初期試験が終了し(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450.)、第III相試験の中間解析の結果が正式論文として発表された(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print])。それを受け、12月2日に英国、12月11日に米国においてBNT162b2の緊急使用が承認され、医療従事者、高齢者、施設入居者などを対象としてワクチン接種が開始されている。カナダ、バーレーン、サウジアラビアでは完全使用が認可された。12月18日、Pfizer社は本邦へのワクチン導入を目指し厚労省に製造承認を申請した。 BNT162b2は、S蛋白全長の遺伝子情報(塩基配列)を自己増殖性のAlphavirus遺伝子(1本鎖RNA)に組み込み、脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)に封入し生体細胞に導入するもので、RNAワクチンの中で最も抗体産生効率が良いと考えられている(必要な1回ワクチン量は30μgと最も少ない)。本ワクチンの問題点の1つは、-70℃±10℃という非常な低温で保存しないとワクチンの安定性を維持できないことである。BNT162b2の第III相試験は16歳以上の若年者から高齢者までを対象として、米国、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ共和国、ドイツ、トルコの6ヵ国で施行され(4万3,548例、対照群:2万1,728例、ワクチン群:2万1,720例)、中間報告では、2回目のワクチン接種(1回目接種後21日目)後7日目以降の中間値で3.5ヵ月間におけるコロナ感染予防有効性を報告している。ワクチンの有効性は95%であり、人種/民族、性、年齢、併存症による影響を認めなかった(高齢者でも若年者と同等の有効性)。重症化した症例が10例存在したが、対照群で9例、ワクチン接種群で1例であり、ワクチンは重症化阻止効果を有することが示唆された。副作用/有害事象の内容・頻度は他のワクチン接種時にも認められる一般的なものであり、とくに問題となるものは存在しなかった。1回目のワクチン接種から2回目のワクチン接種までの間の感染予防有効性は52%であり、1回のワクチン接種のみでも有意な感染予防効果が得られることが判明した。本第III相試験では15歳以下の若年者/小児、妊婦、免疫不全を有する患者は治験から除外されており、これらの対象におけるワクチンの効果、あるいは、有害事象については今後の検討課題である。 ワクチンの有効性が最長でも2回目のワクチン接種後3.5ヵ月で判定されており、ワクチンを年間何回接種する必要があるかを決定するためには、もっと長期間にわたる液性/細胞性免疫の持続性に規定される有効性の観察が必要である。ワクチン接種後時間が経過すれば、ワクチン接種によって惹起された液性/細胞性免疫の賦活化は減弱し、それに伴い感染予防効果も低下するはずである。それ故、現時点で報告された感染予防有効性は、あくまでもBNT162b2ワクチンの最大効果を示す値と考えなければならない。 もう一点注意すべき事項は、ワクチン有効性の判定基準である。新規感染はコロナを疑わせる臨床症状の発現(有症状)に加え、呼吸器検体におけるPCR陽性をもって定義された。すなわち、無症候性症例は有効性の判定から除外されている。PCR陽性者のうち無症候性感染者(不顕性感染者)は約30%と報告されており(Lee S, et al. JAMA Intern Med. 2020 Aug 6. [Epub ahead of print])、社会におけるウイルス播種を考えるとき、無症候性感染に対するワクチンの予防効果に関する検討が必要である。 Pfizer/BioNTech社は、S1-RBDに関する遺伝子情報を組み込んだRNAワクチン(BNT162b1)も同時に開発していた。しかしながら、S蛋白全長の遺伝子情報を組み込んだBNT162b2のほうがウイルスの自然構造により近いこと、今後S蛋白領域で間断なく発生する自然遺伝子変異(2.5塩基/1ヵ月、Meredith LW, et al. Lancet Infect Dis. 2020;20:1263-1272.)によるワクチン能力の低下を考慮すると、BNT162b2のほうがより優れていると結論された(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450.)。(2) Moderna社のmRNA-1273は自己非増殖性のLNP封入RNAワクチンであり、S蛋白全長に対する遺伝子情報が導入されている(1回のワクチン量は100μgでBNT162b2投与量の3.3倍、2回目のワクチンは29日目に接種)。本ワクチンは-4℃(通常の冷凍庫)保存で1ヵ月間は安定だと報告されている。本ワクチンに対する高齢者を含む初期試験が終了し(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931. , Anderson EJ, et al. N Engl J Med. 2020;383:2427-2438.)、第III相試験(COVE試験)の中間解析の結果が、12月17日、米国FDAの審査書類の一環として発表された(FDA Briefing Document)。これらの書類を審査した結果、12月18日、米国FDAはmRNA-1273の緊急使用を承認した。本論評では米国FDAが発表したデータを基に考えていく。 治験対象者は18歳以上の3万418例で、25.3%は65歳以上の高齢者であった。妊婦は対象から除外された。感染予防有効性は、2回目ワクチン接種後14日目以降中間値で9週(2.3ヵ月)までの間で判定された。非高齢者(18歳以上~65歳未満)の感染予防有効性は95.6%、高齢者(65歳以上)のそれは86.4%であった(全年齢の平均:94.1%)。これらの値はPfizer/BioNTech社のBNT162b2と同等であり、性差、年齢、人種、併存症の有無に関係なく、ほぼ一定であった。また、重症化した症例は30例存在したが、すべてが対照群で発生し、ワクチン接種群では重症化症例を認めなかった。1回目のワクチン接種から14日以内(2回目のワクチン接種前)の感染予防有効性(ワクチン1回接種の効果)は50.8%であり、やはりBNT162b2と同等であった。副作用/有害事象に関しても、ワクチン接種時に認められる一般的なものが中心で特異的なものは認められなかった。ただ、ワクチン接種群にベル麻痺が1例発生し、米国FDAはワクチン接種と無関係だとは結論できないとしている。mRNA-1273の問題点は、BNT162b2で指摘した内容がそのまま当てはまる(治験対象から外れた17歳以下の症例、妊婦に対する有効性、ワクチン接種による液性/細胞性免疫の賦活化の持続時間とそれに規定される感染予防効果の持続時間、無症候性感染に対する予防効果など)。(3) AstraZeneca社のChAdOx1は、S蛋白の全長に対する遺伝子情報を、チンパンジーアデノウイルス(Ad)をベクターとして宿主に導入した自己非増殖性DNAワクチンである。本ワクチンに関する初期試験は高齢者を対象としたものを含め終了し(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478. , Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)、第III相試験の中間解析結果も正式の論文として発表された(Voysey M, et al. Lancet. 2020 Dec 8. [Epub ahead of print])。本ワクチンに関する第III相試験は英国、ブラジル、南アフリカ共和国において施行されたものを総合的に評価したもので、対象は18歳以上の1万1,636例(対照群:ワクチン群=1:1)であった。 本第III相試験はStudy designに種々の問題点が存在し、その結果の解釈には注意を要する。問題点として、(1)試験施行国での2回目のワクチン接種時期が、決められた1回目ワクチン接種後4週ではなく、それからかけ離れている症例が多数存在する。(2)1回目のワクチン量が国によって異なり、標準量(SD、5×1010 viral particles)の半量(LD、2.2×1010 viral particles)を接種した対象とSD量を接種した対象が混在している。(3)対照群に投与された偽ワクチンが、生食の場合とMeningococcal group A, C, W, Y conjugate vaccine(MenACWY)の場合が混在しており、偽ワクチンの差が感染予防有効性の最終結果をどのように修飾しているのかが判断できない。以上のような問題点を有する第III相試験ではあるが、ワクチンによる感染予防有効性を見てみると(2回目ワクチン接種後14日以上経過した時点での判断)、1回目LD量のワクチン接種、2回目SD量のワクチンを接種した群(LD/SD群)での感染予防有効性は最も高く90%であった。一方、SD/SD群の有効性は62%で、LD/SD群に比べ明らかに低い値を示した。 以上の結果は、ChAdOx1の場合、SD量を2回接種したとき(SD/SD群)には、“基礎編”で考察したように、1回目のSD量ワクチン接種後ベクターとして用いたチンパンジーAdに対する抗体が高度に形成され、その結果として2回目のSD量ワクチン接種時にAdの一部が破壊され遺伝子情報の宿主への導入量が減少、S蛋白関連の液性/細胞性免疫の賦活化が低めに維持された可能性を示唆する。一方、LD/SD群では、初回ワクチン量が低いためAdに対する抗体産生量も低く、2回目のSD量ワクチンに対する負の効果が弱められたのではないかと推察される。しかしながら、LD/SD群には65歳以上の高齢者が1例も含まれておらず、LD/SD投与の優越性が高齢者においても維持されているかどうかは不明である。 副作用/有害事象に関しては、ChAdOx1の治験中に横断性脊髄炎の発症が第I~III相試験を通して3例報告されている。うち1例は偽ワクチン接種後に発生していたことなどから、ChAdOx1接種とは無関係だと結論された。しかしながら、RNAワクチンでは横断性脊髄炎は報告されておらず、ChAdOx1接種後のみに2例の横断性脊髄炎が発生した事実は看過できない問題だと考えられる。ChAdOx1に限らず、RNAワクチンの報告も数ヵ月以内の短い経過観察におけるものであること、さらには、第III相試験でも数万人程度の接種人数であり、ワクチン接種が世界的規模で始まり億単位の人に接種された場合に、頻度の低い有害事象が出現する可能性があることを踏まえ、今後の確実な経過観察の継続が必要である。 AstraZeneca社のChAdOx1に関しては、以下の諸点について再考が必要と思われる。“基礎編”で考察したように、Adをベクターとするワクチンでは2回目のワクチン接種によって誘導されるブースター効果が弱く、単回ワクチン接種で2回接種の場合と遜色ない臨床的効果が得られる可能性がある。ワクチン接種に起因する副作用/有害事象の発現を考慮すると、単回接種の可能性を追求すべきかもしれない。第III相試験の結果からは、ChAdOx1に関する至適用量(LD量かSD量か)が決定されたとは言い難い。対照群に用いる偽ワクチンの固定化、2回目のワクチン接種時期を1回目ワクチン接種4週後に確実に固定したうえで、十分な人数の高齢者を治験対象に含め、LD/LD群(ワクチン半量2回接種)、LD/SD群、SD/SD群に関する新たな第III相試験を計画してもらいたい。これらの治験データが提出されない限り、ChAdOx1を臨床的に有効なワクチンとして受け入れることは難しい。ただ、本ワクチンは2~8℃(家庭用の冷蔵庫)の保存で少なくとも6ヵ月間は安定しており、利便性の面でBNT162b2、mRNA-1273より優れている。さらに、ChAdOx1のコストはBNT162b2、mRNA-1273に比べ安価だと報告されており(コーヒー1杯分の値段とのこと)、その意味でもChAdOx1の開発を成功させてもらいたいと念願するものである。 12月11日、AstraZeneca社は、ChAdOx1(チンパンジーAd)とロシア製Sputnik V(ヒトAd26でpriming、Ad5でboost)を組み合わせた臨床治験をロシアにおいて開始すると発表した。2種類のDNAワクチンを組み合わせることによって、新型コロナに対する感染予防効果を高めることができるかどうかの検証を目的とした治験である。

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新型コロナワクチン、国産希望が約7割/アイスタット

 世界的に収まる気配のない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、英国、米国、ロシア、中国などではCOVID-19ワクチンの投与が開始された。わが国でも国産ワクチンの開発・研究が進んでいるが、その道のりは険しい。 こうした社会の動きを踏まえ、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、12月20日に「新型コロナウイルス感染症のワクチンに関するアンケート調査」を行った。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール “Freeasy”に登録している会員で20歳~79歳の全員に調査を実施したもの。同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2020年12月20日対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20~79歳)アンケート結果の概要・ワクチンの接種が日本でも開始された場合、受ける時期は「現時点では判断できない」(41.3%)が最多、次に「1ヵ月過ぎてから~3ヵ月以内」(14.7%)と続く・6ヵ月以内にワクチンを受ける理由の第1位は、「個人の感染症予防対策だけでは限界があるから」が65.0%・6ヵ月以内にワクチンを受けない理由の第1位は、「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」が57.2%・どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを接種したいかは、第1位「日本」(67.7%)、第2位「アメリカ」(27.3%)、第3位「ヨーロッパ」(22.0%)と国産のワクチン希望者が多い・ワクチンの接種を開始した国について、「早急すぎると思う」が54%で過半数を超えているアンケート結果の詳細 「COVID-19のワクチンが日本でも接種できるようになった場合、ワクチンを『受ける』『受けても良い』と思う時期はいつか」という質問では、「現時点では判断できない」の41.3%が最も多く、次に「1ヵ月過ぎてから~3ヵ月以内」が14.7%、「3ヵ月過ぎてから~6ヵ月以内」が14.0%だった。また、年代別にみると年代が高いほど接種を希望する傾向がみられた。 「ワクチンを受ける時期で、『すぐに受ける』から『6ヵ月以内』を回答した人『その理由』」(複数回答)について質問したところ、「個人の感染症予防対策だけでは限界があるから」が65.0%と最多で、次に「新型コロナウィルスの感染状況が深刻だから」(51.7%)、次に「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」(45.0%)との回答が続いた。社会全体を意識した動機が上位を占めた。 「ワクチンを受ける時期で、『6ヵ月以内に受けない』『期間に関わらず絶対に受けない』『現時点では判断できない』と回答した人に『その理由』」(複数回答)について質問したところ、「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」が57.2%と最多で、次に「副作用が怖いから」が50.0%、次に「ワクチンの有効性がまだ十分に検証されていないから」が36.1%、次に「臨床試験の進行が早すぎるから」が26.1%となっており、効果よりも安全性への懸念が強いことがわかった。 「COVID-19のワクチン接種に関わらず、どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを日本で接種できるのが良いと思うか」(複数回答)という質問では、「日本」が67.7%と最も多い結果だった。次に「アメリカ」(27.3%)、「ヨーロッパ」(22.0%)と続き、「わからない・決められない」も20.7%存在した。回答の結果は、日本製という安心感や日本人の体質にあったワクチンといったイメージがあると予想される。 「ワクチンの接種が開始された国について、この動きをどう思うか」という質問では、「やや早急すぎると思う」が37.7%で最も多く、「非常に」「やや」を足し合わせた「早急すぎると思う」の割合で54.0%を示した。 「政府は、現在、COVID-19ワクチンの準備を進めていますが、あなたが気になること」(複数回答)について質問したところ「安全性」が79.0%で最多であり、次に「副作用」が71.7%、つぎに「有効性」が51.7%と続いた。通常より早いペースで開発が進められているためか、多くの回答者が「安全性」を気にかけている実態が浮き彫りになった。 「(COVID-19ワクチンの接種希望の有無にかかわらず)ワクチン接種が開始されたとき、そのワクチンに不安はありますか」という質問では、「やや不安である」が51.7%で最も多く、「非常に」「やや」を足し合わせた「不安である」の割合でみると72.3%を示し、12月20日時点で、約7割の人が不安を伴うという結果だった。 「現時点で、日々増加しているCOVID-19の患者数を抑えるには、どうすればよいか」(複数回答)という質問では、「個人の予防対策の強化」「集団での予防対策の強化」が共に61.7%で最も多く、「全国的なGO TOキャンペーンの延期・中止」(43.3%)、「政府などからの不要不急の外出自粛要請・特別警報」(39.3%)と続き、「早急なワクチン接種の開始」は22.0%で、第7位だった。

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新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【基礎編】(解説:山口佳寿博氏)-1334

 2020年12月18日現在、新型コロナPCR確定感染者は世界全体で7,285万人、死者数は164万人(粗死亡率:2.3%)に達する。不顕性感染者を含む総感染者数はPCR陽性者数の約10倍と考えられるので(Bajema KL, et al. JAMA Intern Med. 2020 Nov 24. [Epub ahead of print])、現時点での世界総感染者数は約7.3憶人(世界総人口の約10%)と推察される。このままでは新型コロナによって人類は危機的状況に陥る可能性があり、それを阻止するためにはワクチンによる感染予防/制御が絶対的に必要である。現在、18種類のワクチンに関し第III相試験が進行中、あるいは終了している。しかしながら、12月10日、オーストラリアのQueensland大学で開発中の遺伝子ワクチンの臨床治験が中止されたことが報道された。以上の18種類のワクチンのうち、3種類の遺伝子ワクチンに関する第III相試験の中間結果が報告された(米国/ドイツ・Pfizer/BioNTech社のBNT162b2、米国・Moderna社のmRNA-1273、英国・AstraZeneca社のChAdOx1)。これらの3種類の遺伝子ワクチンは来年度上半期には本邦にも導入される予定であり、それらの基礎的/臨床的特徴を把握しておくことは、2021年の新型コロナ感染症に対する本邦での抜本的対策を構築するうえで最重要課題である。本論評(基礎編)では、遺伝子ワクチンを含めたワクチン全体の本質を理解するうえで必要な基礎的事項を整理する。次の論評(臨床編)では、来年度、本邦に導入されるであろう3種類の遺伝子ワクチンに関する臨床的意義について考察する。 新型コロナウイルスに対するワクチンは、主として下記の3種類に分類される(Abbasi J. JAMA 2020;324:1125-1127.)。1)蛋白ワクチン 全ウイルスを不活化したワクチン(Whole inactivated vaccine)、感染と関連する領域のみを精製したワクチン(Subunit or split vaccine)、遺伝子組み換え技術を駆使してウイルス侵入規定領域であるS蛋白を人工的に作成しワクチンとして用いるものが含まれる。新型コロナに対する不活化ワクチンは、中国を中心に開発が進められている(Sinovac社のCoronaVac、Sinopharm社のBBIBP-CorV)。遺伝子組み換え人工蛋白ワクチンとしては、米国・Novavax社のNVX-CoV2373に関する第I/II相試験が終了し(Keech C, et al. N Engl J Med. 2020;383:2320-2332.)、第III相試験が開始されつつある。NVX-CoV2373も本邦への導入が検討されている。NVX-CoV2373はS蛋白全長に対する遺伝子情報をナノ粒子に封入してBaculovirusに導入、そのBaculovirusを昆虫内で増殖、遺伝子組み換えS蛋白を作成し、免疫原性を増加(ブースター効果)させるアジュバント(Matrix M1)と共に接種するものである。NVX-CoV2373と同様の方法で、インフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)を遺伝子組み換え技術を用いて作成した蛋白ワクチン(フランス・Sanofi社のFluBlok)は、米国などで接種され臨床的評価が高い。蛋白ワクチンの主たる作用は液性免疫の賦活であり、下記に述べる遺伝子ワクチンに比べ細胞性免疫の賦活は弱いと考えられている(Keech C, et al. N Engl J Med. 2020;383:2320-2332.)。 Sanofi社とGSK社は共同でS蛋白を標的とした遺伝子組み換え人工蛋白ワクチンの開発を行ってきたが、開発中の蛋白ワクチンのS蛋白に対する特異的IgG抗体産生が高齢者では有効域に達しなかったことにより、本ワクチンの開発を中止することを12月11日に発表した。今後は、新たなワクチンの開発を進めるとしている。2)DNA遺伝子ワクチン ウイルス侵入規定領域であるS蛋白に関する遺伝子情報をDNAに組み込み宿主に導入、S蛋白を作り出したうえで、それに対する液性免疫(抗体産生)、T細胞由来の細胞性免疫を誘導するものである。このために使用されるのがアデノウイルス(Ad)をベクター(輸送媒体)とする方法である。Adは2本鎖DNAによって形成されるウイルスであり、このDNAにS蛋白を規定する遺伝子情報(塩基配列)を組み込み宿主細胞に導入する。Adとして用いられるのは、ヒトに感染病変を起こさないヒトAd5型、ヒトAd26型、チンパンジー型Adである。ヒトAdをベクターとするワクチンは、米国・Johnson & Johnson社のAd26.COV2.S、中国・CanSino社のAd5-nCoV、ロシア・Gamaleya研究所のSputnik Vなどである。チンパンジー型Adをベクターとするワクチンが、英国・AstraZeneca社のChAdOx1(Voysey M, et al. Lancet. 2020 Dec 8. [Epub ahead of print])である。 Adをベクターとして用いるときの重要な問題点は、生体はAdを異物として認識し、それに対する特異抗体を産生することである。この抗体産生はAdの種類によらず発現する。その結果、ブースター効果を意図して投与される2回目のワクチン接種時には、遺伝子情報を封入したAdが1回目のワクチン投与時に形成された特異抗体の攻撃を受け、その一部は破壊される。その結果、Adをベクターとするワクチンでは、2回目のワクチン接種時、遺伝子情報封入Adの一部しか宿主に導入されず、ブースター効果が不十分で液性/細胞性免疫賦活化が阻害される(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)。その意味で、Adをベクターとする遺伝子ワクチンは、2回目のワクチン接種の意義が薄く、単回接種を基本とするワクチンと考えるべきである。この原則にのっとって第II相試験が施行されたのが、CanSino社のヒトAd5型をベクターとしたAd5-nCoVワクチンである。Ad5-nCoVの単回接種1ヵ月後には有意な液性/細胞性免疫が惹起されることが示された(Zhu FC, et al. Lancet. 2020;396:479-488.)。一方、ヒトAd5型とAd26型をベクターとしたSputnik V(Logunov DY, et al. Lancet. 2020;396:887-897.)ならびにチンパンジーAdをベクターとしたChAdOx1(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478.)においては、1回目ワクチン接種後21日目あるいは28日目に、2回目のワクチンが接種される。両ワクチンとも2回目接種後にブースター効果を認め、S蛋白に対する特異的IgG抗体はさらに上昇するが、回復期血漿中のIgG抗体価を凌駕するものではなかった。この結果は、Adをベクターとするワクチンでは2回目の接種でブースター効果は発現するものの、その程度は弱いことを意味する。RamasamyらはS蛋白に対するIgG抗体産生は、Adに対するIgG抗体価に逆比例することを証明した(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)。 DNAワクチンのもう1つの欠点は、DNAに組み込まれた遺伝子情報は、まず細胞核内に取り込まれ、その情報がmRNAに転写される必要があることである。その後、細胞質に移行したmRNAを介する翻訳過程を経てS蛋白が産生される。すなわち、DNAワクチンでは転写と翻訳という2段階の過程を経る必要があるため、標的蛋白(S蛋白)の産生効率が悪い。3)RNA遺伝子ワクチン S蛋白の遺伝子情報(塩基配列)をmRNAとして生体に導入し、宿主細胞内でS蛋白の合成とそれに対する液性/細胞性免疫の発現を促す。この方法だとDNAワクチンと異なり、複雑な蛋白合成経路を経ずにS蛋白が宿主細胞質で産生されるので、DNAワクチンに比べ液性/細胞性免疫発現効率が良い(外から導入したmRNAの95%が宿主細胞に取り込まれる)。しかしながら、mRNAは陰性荷電を有する大きな分子であるため、裸のままでは宿主細胞に導入することができない。この問題を解決するため、mRNAをオイル様の性状を有する脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)に封入して宿主細胞に導入する方法が提唱された。Pfizer/BioNTech社のBNT162b2(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)がこれに該当する。LNPは抗原性を有さず、生体に導入した場合、不要な免疫反応を惹起しない。さらに、LNPは免疫形成に関してアジュバント効果を発揮し、液性/細胞性免疫を上昇させると考えらえている。すなわち、LNP封入RNAワクチンでは、2回目のワクチン接種は確実なブースター効果を発揮するので、BNT162b2、mRNA-1273は2回接種を原則とするワクチンと考えてよい。これら2つのLNP封入mRNAワクチンを用いた場合には、Adをベクターとして用いるChAdOx1ワクチンなどとは異なり、2回目のワクチン接種後のS蛋白特異的IgG抗体価は回復期血漿中のそれを明確に凌駕していた(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450. , Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)。 遺伝子ワクチンの臨床的効果を考えるうえで重要な事項は、(1)ワクチン由来の液性/細胞性免疫が自然感染の場合に比べ質的/量的に同等のものであるか否か、(2)ワクチン接種による液性/細胞性免疫の持続時間がどの程度であるか、これらを把握することである。1)自然感染とワクチンによる模擬感染における液性/細胞性免疫の差異 自然感染初期にウイルスが宿主内に存在するBリンパ球細胞から分化した形質細胞を刺激し、IgGを中心とするウイルス特異的抗体を産生する(液性免疫)。この機序を担当する形質細胞の寿命は短く、感染発症後2~3週で死滅する(短命形質細胞)。しかしながら、ウイルスはCD4+-helper T細胞の一種であるTh2細胞を刺激し、Th2細胞はB細胞から形質細胞への分化を持続的に誘導する。このようにして形成されたB細胞は抗原情報を細胞内に保持し骨髄で長期に生存する(記憶B細胞)。また、このB細胞から誘導された形質細胞も生存期間が長く、IgG抗体の持続的産生を維持する(長寿形質細胞)。さらに、ウイルスはCD4+-T細胞の一種であるTh1細胞を賦活、IL-2存在下で胸腺のナイーブT細胞をCD8+-T細胞(細胞傷害性T細胞)に分化させる。CD8+-T細胞はウイルスに感染した細胞を殺傷/処理する(細胞性免疫)。新型コロナ感染症ではすべてのTh系細胞が幅広く賦活化されるが、Th1細胞の賦活が優位であると報告されている(Dan JM, et al. bioRxiv. 2020 Dec 18.)。感染初期に賦活化されたT細胞は1~2週間でその90%が死滅する。しかしながら、残り10%のT細胞は抗原情報を保持したまま記憶T細胞としてリンパ組織内で長期に生存する。記憶B細胞、記憶T細胞はウイルスの二次感染時に効率よく液性免疫、細胞性免疫を発現する(二次感染の予防)。 RNAワクチンによるウイルス模擬感染における液性免疫(特異的IgG抗体産生)の発現は、自然感染の場合に較べ有意に高いことが確認されている。しかしながら、T細胞系反応の全貌については、現時点で確実な報告はない。暫定的解析では、RNAワクチン接種によってTh1細胞反応は賦活されるが、Th2細胞反応はむしろ抑制されると報告された(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)。RNAワクチン接種によってTh2細胞反応が低く維持されたことは、Th2経路の活性化と関連する抗体依存性感染増強(ADE:Antibody-dependent enhancement of infection)が発生し難いことを意味し、RNAワクチンの安全性を担保する重要な知見である。長期にわたる感染予防のためには、液性免疫に加えTh1系を中心とした細胞性免疫の持続的賦活化も重要な因子であり、今後、ワクチン接種後の細胞性免疫の動態・推移について詳細な検討が望まれる。2)自然感染とワクチンによる模擬感染における液性/細胞性免疫の持続時間 新型コロナの初回感染後に液性/細胞性免疫がどの程度の期間持続するかについての確実な報告はない。新型コロナパンデミック発生初期に出版された論文では、不顕性感染者の40%、有症状感染者の13%で、感染より2ヵ月後(回復期)にはIgG抗体価が無効域まで低下すると報告された(Long QX, et al. Nat Med. 2020;26:1200-1204.)。しかしながら、最近の論文では、S蛋白特異的IgG抗体産生、記憶B細胞、記憶T細胞(CD4+-T細胞、CD8+-T細胞)の賦活化は、感染後少なくとも8ヵ月は維持されることが報告された(Dan JM, et al. bioRxiv. 2020 Dec 18.)。Danらの結果を外挿すると、自然感染によって誘導された種々の免疫機序は、最低でも1年間は持続すると考えてよさそうである。 RNAワクチン接種後(ブースター効果を得るための2回目のワクチン接種後)における液性/細胞性免疫の持続時間に関しては、ワクチン接種後の観察期間が短く確実な結論を導き出せない。しかしながら、S蛋白の受容体結合領域(RBD)に対する特異的IgG抗体産生は、2回目のワクチン接種後少なくとも3ヵ月は持続することが確認された(Widge AT, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 3. [Epub ahead of print])。一方、ワクチン接種後の記憶B細胞、T細胞に由来する細胞性免疫の持続期間についての報告はない。ワクチン接種による模擬感染の液性/細胞性免疫持続時間が自然感染のそれと同等あるいはそれ以上であるならば、ワクチンによる二次感染予防効果は、ほぼ1年は持続することになり(すなわち、ワクチン接種は年1回で十分)、人類にとって大きな福音である。

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新型コロナとインフル、死亡率・症状の違いは?/BMJ

 季節性インフルエンザ入院患者と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者は肺外臓器障害・死亡リスクの上昇(死亡リスクは約5倍)、および医療資源使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間など)の増加と関連していることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。研究グループは、先行研究での季節性インフルエンザとCOVID-19の臨床症状や死亡率の比較は、それぞれ異なるデータおよび統計的手法を用いて行われ、「リンゴとリンゴ」での比較ではなかったとして、米国退役軍人省の入院データを用いて評価を行ったという。結果を踏まえて著者は、「本調査結果は、COVID-19と季節性インフルエンザの比較リスクに関する世界的な議論への情報提供になるとともに、COVID-19パンデミックへの継続的な対策に役立つ可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。米国退役軍人の医療データを用いて違いを検証 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療データベース(1,255のヘルスケア組織[170の医療センター、1,074の外来クリニックなど]を含む)を用いて、コホート研究を行った。 2020年2月1日~6月17日にCOVID-19で入院した患者(3,641例)と、2017~19年に季節性インフルエンザで入院した患者(1万2,676例)に関するデータを用いて、両者の臨床症状と死亡のリスクの違いを比較した。 主要評価項目は、臨床症状、医療資源の使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間)、死亡のリスクで、doubly robust法を用いて傾向スコアを構築し、また、共変量を用いてアウトカムモデルを補正して評価を行った。死亡率の違いは、CKDまたは認知症の75歳以上、黒人の肥満、糖尿病、CKDで顕著 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、急性腎障害(オッズ比[OR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.37~1.69)、腎代替療法(4.11、3.13~5.40)、インスリン使用(1.86、1.62~2.14)、重度の敗血症性ショック(4.04、3.38~4.83)、昇圧薬使用(3.95、3.46~4.51)、肺塞栓症(1.50、1.18~1.90)、深部静脈血栓症(1.50、1.20~1.88)、脳卒中(1.62、1.17~2.24)、急性心筋炎(7.82、3.53~17.36)、不整脈および心突然死(1.76、1.40~2.20)、トロポニン値上昇(1.75、1.50~2.05)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値上昇(3.16、2.91~3.43)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値上昇(2.65、2.43~2.88)、横紋筋融解症(1.84、1.54~2.18)のリスクが高かった。 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、死亡(ハザード比[HR]:4.97、95%CI:4.42~5.58)、人工呼吸器の使用(4.01、3.53~4.54)、ICU入室(2.41、2.25~2.59)および入院日数の増加(3.00、2.20~3.80)のリスクも高かった。 COVID-19入院患者と季節性インフルエンザ入院患者100人当たりの死亡率の違いは、慢性腎臓病または認知症の75歳以上の高齢者と、黒人種の肥満、糖尿病または慢性腎臓病で最も顕著だった。

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COVID-19へのシクレソニド、肺炎増悪抑制せず/国立国際医療研究センター

 COVID-19の治療薬候補として期待されているシクレソニドについて、肺炎のない軽症COVID-19患者90例を対象に肺炎の増悪抑制効果および安全性を検討した、全国21施設における多施設共同非盲検ランダム化第II相試験の結果、有効性が示されなかった。2020年12月23日、国立国際医療研究センターが発表した。米国含む海外にて実施されている検証的な臨床試験の結果も踏まえて判断する必要があるが、今回の研究結果からは無症状・軽症のCOVID-19患者に対するシクレソニド吸入剤の投与は推奨できないとしている。 気管支喘息の治療薬である吸入ステロイド薬シクレソニド(商品名:オルベスコ)は、SARS-CoV-2に対する「抗ウイルス活性」が非臨床試験で報告されており、また国内においてCOVID-19患者3例で症状改善を認めたとの報告があることから、国立国際医療研究センターが中心となって有効性および安全性を検討するための臨床試験を厚生労働科学研究として実施した。 肺炎のない軽症COVID-19患者90例をシクレソニド吸入剤投与群と対症療法群にランダム化。主要評価項目は、胸部CT画像による入院8日目以内の肺炎増悪割合、主な副次評価項目は鼻咽頭ぬぐい液のウイルス量の変化量であった。 その結果、肺炎増悪率は、シクレソニド吸入剤投与群41例中16例(39%)、対症療法群48例中9例(19%)であり、リスク差0.20(90%信頼区間:0.05~0.36)、リスク比2.08(同:1.15~3.75)、p=0.057であった。p値は両側有意水準10%を下回り、対症療法群と比べてシクレソニド吸入剤投与群で有意に肺炎増悪が多かった。 本剤は、厚生労働省が公開している「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」の第4版では「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」のその他の薬剤例として記載されており、「現在国内において特別臨床研究が実施されているほか、観察研究に関しても実施中」と紹介されている。

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COVID-19ワクチンの対象集団、国や地域による違いは?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種の対象集団の規模は、国や地域によって著しく異なっていることを、中国・復旦大学のWei Wang氏らが記述的研究で明らかにした。著者は、「国や地域レベルでの対象集団の分布は、ワクチンの優先順位や配分を公平かつ効率的に計画することの重要性を強調している」と述べたうえで、「各国は、地域の疫学、基礎となる公衆衛生、利用可能なワクチン量の予測、直接的または間接的な有益性をもたらすワクチン接種戦略の選択などに基づいて、さまざまな戦略と配分計画を評価すべきである」とまとめている。先行研究において、COVID-19ワクチンの公正な配分を保証する倫理的な枠組みについては説明がされている。そのうちの1つは、最適化アルゴリズムを用いて異なる目的に対する最適なワクチン配分戦略をモデル化しており、人口統計、職業または高リスク集団(エッセンシャルワーカーや既往歴のある人など)を対象としたワクチン接種プログラムに関する集団規模が必要と示されていた。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。WHO加盟国194ヵ国についてワクチンの対象集団の規模を調査 研究グループは、世界保健機関(WHO)の加盟国194ヵ国について、各国の特性やワクチン接種の目的(必要不可欠な社会サービスの維持、COVID-19重症化の抑制、症候性感染症の減少、ウイルス感染の抑止)に基づいたCOVID-19ワクチン接種の対象集団の規模を評価した。 規模の推定には、職業、年齢、COVID-19重症化リスク因子、ワクチンの受け入れ、世界的なワクチン生産量で層別化された人口規模に関する国別データを使用し、これらのデータは公式ウェブサイト、メディア、学術論文などの多面的な検索より入手した。ワクチン接種の対象集団規模、目的や地域で大きく異なる COVID-19ワクチン接種対象集団の規模は、ワクチン接種の目的や地域ごとに著しく異なった。人口構造、基礎疾患の存在、エッセンシャルワーカーの人数が、地域や国レベルでの対象集団推定の大きな変動に関与した。 とくに欧州は、エッセンシャルワーカー(6,300万人、8.9%)および基礎疾患を有する人(2万6,590万人、37.4%)の割合が最も高かった。これら2つのカテゴリーは、それぞれ社会機能の維持およびCOVID-19の重症化抑制に不可欠である。 一方、東南アジアでは、健康成人(7万7,750万人、58.9%)の割合が最も高く、市中感染の抑制が重要な目的となることが示された。 ワクチン忌避は、将来的なCOVID-19ワクチン接種プログラムに影響する可能性があるが、文献レビューに基づくと、世界の人口の68.4%(95%信頼区間[CI]:64.2~72.6%)がCOVID-19ワクチン接種を受ける意思があり、ワクチン接種を希望する成人集団は37億人(95%CI:32億~41億)と推定された。

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COVID-19入院患者へのバリシチニブ+レムデシビル併用は有益/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、とくに高流量酸素療法または非侵襲的換気療法を受けている入院患者において、バリシチニブ+レムデシビル併用はレムデシビル単独よりも回復までの時間を短縮し、臨床状態の改善を早めることが明らかになった。米国・ネブラスカ大学のAndre C. Kalil氏らが1,033例を対象に行った第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ACTT-2試験」の結果で、著者らは、「この組み合わせ療法は重篤な有害事象の減少と関連していた」と報告している。COVID-19は調節異常の炎症との関連が示唆されている。ヤヌスキナーゼ阻害薬であるバリシチニブとレムデシビル併用の効果については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2020年12月11日号掲載の報告。 レムデシビルにバリシチニブを14日以内追加投与 研究グループは2020年5月~7月にかけて、8ヵ国、67ヵ所の医療機関を通じて、COVID-19で入院中の成人患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはレムデシビル(10日以内)+バリシチニブ(14日以内)を(併用群)、もう一方にはレムデシビル(10日以内)+プラセボを投与した(対照群)。 主要アウトカムは、回復までの期間だった。主な副次アウトカムは、15日時点の臨床状態だった。回復までの日数中央値、併用群は7日で1日短縮 無作為化を受けた患者は計1,033例だった(併用群515例、対照群518例)。 回復までの期間中央値は、併用群7日(95%信頼区間[CI]:6~8)、対照群8日(7~9)だった(回復に関する率比:1.16、95%CI:1.01~1.32、p=0.03)。15日時点の臨床状態の改善に関するオッズ比(OR)は、併用群が30%高かった(OR:1.3、95%CI:1.0~1.6)。 試験開始時に高流量酸素療法または非侵襲的換気療法を受けていた患者の回復までの期間中央値は、併用群10日、対照群18日だった(回復に関する率比:1.51、95%CI:1.10~2.08)。 28日死亡率は、併用群5.1%、対照群7.8%だった(ハザード比:0.65、95%CI:0.39~1.09)。重篤な有害事象の発現頻度は、併用群が対照群に比べて有意に低率だった(16.0% vs.21.0%、群間差:-5.0ポイント、95%CI:-9.8~-0.3、p=0.03)。また、新たな感染症の発生率も併用群が有意に低率だった(5.9% vs.11.2%、群間差:-5.3ポイント、95%CI:-8.7~-1.9、p=0.003)。

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COVID-19パンデミック中の霜焼け症状、病態生理が明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で報告が相次いだ「凍瘡様病変」の病態生理が明らかにされた。フランス・コートダジュール大学のThomas Hubiche氏らによる連続患者40例の前向きケースシリーズ研究の結果、ウイルス誘発型のtype I interferonopathyの症状を呈していることが示唆されたという。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年11月25日号掲載の報告。 COVID-19パンデミック下で凍瘡様病変を呈した患者コホートに関する、体系的、臨床的、組織学的および生物学的評価は、フランスのニース大学病院COVID-19学際的診療グループによって行われた。 対象患者は、皮膚生検、血管評価、生物学的解析、インターフェロンアルファ(IFN-α)の刺激と検出、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と血清学的解析などの一般および皮膚科学的検査を受け評価された。 主な結果は以下のとおり。・全体で、凍瘡様病変を呈した連続患者40例が評価に含まれた。・患者の大半は若者で、年齢中央値は22歳(範囲:12~67歳)、男性19例、女性21例であった。臨床所見は、主に爪先での凍瘡様病変で、再現性が高かった。・水疱性および壊死性への病変進行が11例で観察され、肢端紫藍症または足趾の冷えは19例(47.5%)報告された。・COVID-19症例に適合する基準が、発症前6週間以内に11例(27.5%)で認められた。・リアルタイムPCR(rt-PCR)検査の結果は、全症例で陰性であった。・全体では12例(30%)で、SARS-CoV-2の血清学的評価が陽性であった。また、24例(60.0%)でDダイマー値の上昇が認められた。・クリオグロブリン血症およびパルボウイルスB19の血清学的評価は、検査をしたすべての患者で陰性だった。・特徴的だった主な組織学的所見は、細静脈壁の肥厚と周皮細胞過形成を伴うリンパ球性炎症および血管損傷であった。・凍瘡様病変を呈する患者集団は、軽度~重度の急性COVID-19患者と比較して、in vitroでの刺激後にIFN-α産生の有意な増加が観察された。

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AZ社の新型コロナワクチン4試験統合中間解析で安全性・有効性確認/Lancet

 ChAdOx1 nCoV-19ワクチン(AZD1222)は、英国・オックスフォード大学で開発された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン。同大学のMerryn Voysey氏らは、このワクチンに関する進行中の4つの臨床試験の第1回目の統合中間解析を行い、安全性プロファイルは容認可能なものであり、COVID-19に対し有効であることを確認した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年12月8日号に掲載された。AZD1222は、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の細胞表面の構造蛋白である糖蛋白抗原(スパイク蛋白:nCoV-19)遺伝子を含む、チンパンジー由来の増殖能を欠失させたアデノウイルスベクター(ChAdOx1)から成る。2020年4月23日、英国で第I/II相試験(COV001)が開始され、その後、英国(COV002、第II/III相)、ブラジル(COV003、第III相)、南アフリカ共和国(COV005、第I/II相)で無作為化対照比較試験が進められている。2回接種の安全性・有効性を評価 今回の中間解析には、進行中の4つの盲検化無作為化対照比較試験のデータが含まれ、AZD1222の安全性と有効性の評価が行われた(英国研究技術革新機構[UKRI]、AstraZenecaなどの助成による)。 COV001試験の対象は年齢18~55歳の健康ボランティアであり、COV002試験ではSARS-CoV-2への曝露の可能性が高い職種も含まれた。COV003試験は、医療従事者などのウイルス曝露リスクの高い職種の登録に重点を置き、18歳以上の安定期の併存疾患を有する集団も含まれた。COV005試験にはHIV感染者も登録されたが、今回の解析には含まれず、年齢18~65歳の健康成人が対象とされた。 被験者は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンを接種する群または対照群(髄膜炎菌A、C、W、Y結合型ワクチン[MenACWY]または生理食塩水)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。ChAdOx1 nCoV-19群は、5×1010(標準用量)のウイルス粒子を含むワクチンを2回接種され(SD/SDコホート)、英国の試験(COV001、COV002)の一部では、1回目に低用量、2回目には標準用量のワクチンが接種された(LD/SDコホート)。 主要アウトカムは、ウイルス学的に確定された症候性COVID-19とし、2回目の接種から14日以降にスワブが核酸増幅検査(NAAT)で陽性であることと、1つ以上の特定の症状(37.8℃以上の発熱、咳、息切れ、臭覚障害/味覚障害)がみられることと定義された。ワクチンの有効性は、年齢で補正した頑健ポアソン回帰モデルによる相対リスクの値を1から引いた値として算出した。データカットオフ日は2020年11月4日。ワクチン有効性:全体70.4%、SD/SD群62.1%、LD/SD群90.0% 2020年4月23日~11月4日までの期間に2万3,848例が登録され、有効性の主要中間解析には1万1,636例(英国のCOV002試験:7,548例[SD/SDコホート4,807例、LD/SDコホート2,741例]、ブラジルのCOV003試験:4,088例[すべてSD/SDコホート])が含まれた。 全体(SD/SD+LD/SDコホート)では、主要アウトカムの発生はChAdOx1 nCoV-19群0.5%(30/5,807例)、対照群1.7%(101/5,829例)であり、ワクチンの有効性は70.4%(95.8%信頼区間[CI]:54.8~80.6)であった。 2回とも標準用量を接種したSD/SDコホートでは、主要アウトカムの発生はChAdOx1 nCoV-19群0.6%(27/4,440例)、対照群1.6%(71/4,455例)であり、ワクチンの有効性は62.1%(95%CI:41.0~75.7)であった。また、初回は低用量で2回目は標準用量のLD/SDコホートでは、主要アウトカムの発生はそれぞれ0.2%(3/1,367例)および2.2%(30/1,374例)であり、ワクチンの有効性は90.0%(67.4~97.0)であった(p interaction=0.010)。 初回接種後21日目以降に、COVID-19による入院が10例認められ、いずれも対照群であった。このうち2例は重症COVID-19に分類され、死亡が1例含まれた。安全性の追跡調査は7万4,341例月(中央値3.4ヵ月、IQR:1.3~4.8)で行われ、重症有害事象は168例で175件発現し、ChAdOx1 nCoV-19群が84件、対照群は91件であった。ワクチン関連の可能性もあると判定された重症有害事象は3件で、ChAdOx1 nCoV-19群、対照群、割り付けがマスクされた群それぞれ1件ずつだった。 著者は、「免疫が広く行き渡るまでは、COVID-19の管理には身体的距離(physical distancing)を取ることと新たな治療法が必要である。この間に、有効なワクチンが重症化のリスクがある集団に使用されれば、世界的流行に大きな影響を及ぼす可能性がある。ウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19は有効であり、現在の世界的流行において疾患管理に寄与する可能性があることが、初めて示された」としている。

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