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肺がん左上葉切除術は脳梗塞の危険因子か

 脳梗塞は肺切除術後のまれな合併症であるが、重度の後遺症をもたらしうる。千葉大学の山本 高義氏らが、肺がん術後に脳梗塞を発症した患者の特徴を検討したところ、脳梗塞が左上葉切除を受ける肺がん患者で高頻度に発症しており、左上肺静脈断端における血栓症がその原因となっている可能性が示唆された。Surgery Today誌オンライン版2015年8月14日号に掲載。 著者らは、自施設で2008年1月~2013年10月に葉切除以上を受けたすべての肺がん患者562例を後方視的に検討し、術後30日以内に脳梗塞を発症した患者としなかった患者を比較した。 主な結果は以下のとおり。・全562例のうち、男性5例と女性1例が脳梗塞を発症していた[平均66歳(55~72歳)、術後平均3.3日(1~9日)に発症]。・5例は左上葉切除が、1例は左下葉切除が施行された。・術後脳梗塞発症例6例と非発症例556例の間で、年齢、性別、BMI、喫煙指数、手術時間に有意差は認めなかったが、術式のみ左上葉切除術の割合が発症例で有意に高かった(p<0.001)。・術後脳梗塞例において、左上肺静脈断端に造影CTにて血栓が認められた。

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ピオグリタゾンとがん(解説:吉岡 成人 氏)-397

日本人における糖尿病とがん 日本における糖尿病患者の死因の第1位は「がん」であり、糖尿病患者の高齢化と相まって、糖尿病患者の2人に1人はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代となっている。日本人の2型糖尿病患者におけるがん罹患のハザード比は1.20前後であり、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが増加することが、疫学調査によって確認されている。糖尿病によってがんの罹患リスクが上昇するメカニズムとしては、インスリン抵抗性、高インスリン血症の影響が大きいと考えられている。インスリンはインスリン受容体のみならず、インスリン様成長因子(IGF-1)の受容体とも結合することで細胞増殖を促し、がんの発生、増殖にも関連する。チアゾリジン薬であるピオグリタゾンとがん ピオグリタゾン(商品名:アクトス)は承認前の動物実験において、雄ラットにおける膀胱腫瘍の増加が確認されていた。そのため、欧米の規制当局により米国の医療保険組織であるKPNC(Kaiser Permanente North California)の医療保険加入者データベースを用いた前向きの観察研究が2004年から行われ、2011年に公表された5年時の中間報告で、ピオグリタゾンを2年間以上使用した患者において、膀胱がんのリスクが1.40倍(95%信頼区間:1.03~2.00)と、有意に上昇することが確認された。さらに、フランスでの保険データベースによる、糖尿病患者約150万例を対象とした後ろ向きコホート研究でも、膀胱がんのリスクが1.22倍(95%信頼区間:1.05~1.43)であることが報告され、フランスとドイツではピオグリタゾンが販売停止となった。また、日本においても、アクトスの添付文書における「重要な基本的注意」に、(1)膀胱がん治療中の患者には投与しないこと、(2)膀胱がんの既往がある患者には薬剤の有効性および危険性を十分に勘案したうえで、投与の可否を慎重に判断すること、(3)患者またはその家族に膀胱がん発症のリスクを十分に説明してから投与すること、(4)投与中は定期的な尿検査等を実施することなどが記載されるようになった。多国間における国際データでの評価 その後、欧州と北米の6つのコホート研究を対象に、100万例以上の糖尿病患者を対象として、割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いた検討が2015年3月に報告された。その論文では、年齢、糖尿病の罹患期間、喫煙、ピオグリタゾンの使用歴で調整した後の100日間の累積使用当たりの発症率比は、男性で1.01(95%信頼区間:0.97~1.06)、女性で1.04(95%信頼区間:0.97~1.11)であり、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連が認められないと報告された1)。KPNCの最終報告 今回、JAMA誌に報告されたのが、5年時の中間報告で物議を醸しだしたKPNCの10年時における最終解析である。ピオグリタゾンの使用と膀胱がんのみならず前立腺がん、乳がん、肺がん、子宮内膜がん、大腸がん、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、腎がん、直腸がん、悪性黒色腫の罹患リスクとの関連を、40歳以上の糖尿病患者約20万例のコホート分析およびコホート内症例対照分析で検証したものである。 その結果、ピオグリタゾン使用は、膀胱がんリスクの増加とは関連しなかった(調整後ハザード比1.06:95%信頼区間:0.89~1.26)と結論付けられた。 しかし、解析対象とした10種の悪性疾患中8種の悪性疾患とピオグリタゾンの関連は認められなかったものの、前立腺がんのハザード比は1.13(95%信頼区間:1.02~1.26)、膵がんのハザード比は1.41(95%信頼区間:1.16~1.71、10万例/年当たりの膵臓がんの粗発生率は、使用者で81.8例、非使用者で48.4例)であったことが報告されている。 チアゾリジンの膀胱がんを発症するリスクに対する懸念は払拭されたのか、前立腺がんと膵がんのリスクに関するデータは、偶然なのか、交絡因子の影響なのか、事実なのか……、また1つの問題が提示されたのかもしれない。

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アストラゼネカ、肺がん免疫併用療法で提携を発表

 アストラゼネカは、8月5日、自社のグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンと、ドライバー遺伝子およびエピジェネティックに特化するオンコロジー専門企業Mirati Therapeutics, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、以下、Mirati社)が臨床試験に関する独占的提携を締結したことを発表した。当該第I/II相試験では、メディミューンの治験薬である抗PD-L1免疫チェックポイント阻害剤durvalumab(MEDI4736)とMirati社の治験薬であるスペクトラム選択性ヒストンデアセチラーゼ(ヒストン脱アセチル化酵素)(HDAC)阻害剤mocetinostatとの併用療法について、安全性および有効性を評価する。 Durvalumab (MEDI4736)はプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とするヒトモノクローナル抗体。一方、Mocetinostatはクラス1HDAC酵素を選択的に阻害することで、durvalumabのようなチェックポイント阻害剤の免疫系に対する効果を向上させる可能性を持つ。アストラゼネカのプレスリリースはこちら(PDFがダウンロードされます)

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新しいがん免疫療法、これまでと何が違う?~肺がん医療向上委員会

 7月27日(月)、都内で第8回肺がん医療向上委員会※が開催された。その中で、委員長である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門内科学講座呼吸器内科学 教授)が、注目を集める新しいがん免疫療法について、これまでの免疫療法との違い、抗PD-1抗体薬の試験成績と今後の課題について講演した。これまでの免疫療法との違い 免疫療法は、患者の免疫応答と関係なく、一定期間経過すると消失する「受動免疫療法」と、患者の免疫応答を誘導する「能動免疫療法」に分けられる。また、この分類とは別に、特定のがん抗原に対する免疫を強化する「特異的免疫療法」と、免疫機能全般を強化する「非特異的免疫療法」に分けられる。 中西氏によると、非特異的免疫療法の中には、免疫力全般を高め、ある程度の有効性が示されている免疫グロブリンやピシバニールのほか、プロポリスやアガリクス、丸山ワクチンなど有効性に関しては“怪しい”と言わざるを得ないものが含まれる。これらはまったく効果がないわけではなく、免疫力を若干高めるというもので、そのもの自体が怪しいわけではない。しかしながら、それらを「免疫を高めるから、がんに効く」と紹介したり、宣伝したりすることで“怪しい”ものになってしまっているという。 がんの免疫療法としては、受動免疫療法においては、がんを標的とした抗体や細胞療法、また、能動免疫療法には、がんワクチン、サイトカイン(IL、TNFα、GM-CSF)、T細胞活性化メディエーターがある。現在注目されている新たな免疫療法は、このT細胞活性化メディエーターである。これまで開発されてきた免疫療法の多くは特異的免疫療法であるが、T細胞活性化メディエーターは非特異的免疫療法である、と中西氏は強調した。また、T細胞活性化メディエーターには、アクセルである共刺激経路と、大きな注目を集めている、免疫のブレーキである免疫チェックポイント(免疫抑制経路)がある。 現在、肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬として期待されているものとして、抗PD-1抗体(ニボルマブやペムブロリズマブなど)と抗CTLA-4抗体(イピリムマブなど)がある(肺がんに対しては現在、国内未承認)。その違いについて中西氏は次のように説明した。CTLA-4はリンパ組織における抗原提示を制御し免疫系全体を抑制するのに対し、PD-1は不特定多数のがん特異的免疫を抑制する。よって、抗CTLA-4抗体のほうが、抗PD-1抗体より効果が強いが副作用も多い可能性がある。ニボルマブの肺がんにおける試験成績と今後の課題 ニボルマブの扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するCheckMate017試験、非扁平上皮NSCLCに対するCheckMate057試験は、どちらも進行期肺がんのセカンドラインにおけるドセタキセルとの比較で、全生存期間(OS)を主要評価項目として実施された第III相試験である。これらの試験のOSのハザード比は、扁平上皮がんで0.59、非扁平上皮がんで0.73と、どちらも驚くべき結果が認められ、肺がんに対する免疫療法で初めて科学的に有効性を証明した。さらに、安全性にも期待が持てる結果であった。 一方、これらの試験では、ニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線の交差と、PD-L1発現とニボルマブの効果の相関という2つの点において、検討すべき結果が示されている。非扁平上皮がんではニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線が交差しており、ニボルマブにまったく効果のない例が存在する可能性があるという。また、非扁平上皮がんではPD-L1の発現割合の多い症例でニボルマブ群が優れており、PD-L1発現とニボルマブの効果に相関がみられたが、扁平上皮がんにおいてはPD-L1の発現の有無にかかわらず、ニボルマブ群が優れていた。 中西氏はこれらの結果をまとめ、抗PD-1抗体ニボルマブは既治療のNSCLC(扁平上皮がん、非扁平上皮がん)に対して、従来の抗がん剤に比べ、明らかに優れた結果が示されたと述べた。しかしながら、ニボルマブの効果を予測するバイオマーカーについて、PD-L1は関連がある場合とない場合があるため不十分であるとし、また、治療開始の早い段階で効果のない症例を見極めて次の治療を考えることが必要であると強調した。 最後に、中西氏は、肺がんに対する薬物療法において、これまでの化学療法と分子標的療法に加え、免疫療法というもう1つの武器が手に入ったが、今後、どのように使い分けていくか、どのように併用するかを、安全性の点を含めてしっかりと検討する必要がある、と結んだ。※肺がん医療向上委員会特定非営利活動法人日本肺癌学会が、肺がん患者とその家族に正しい情報を提供するとともに、正しい診断と治療がなされる環境を目指し、学術団体、がん領域に関わる患者支援団体、臨床試験グループ、製薬・臨床検査関連企業など、肺がん医療に関わるすべての関係者との連携の下、2013年11月に設置。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第22回

第22回:成人の頸部リンパ節腫脹について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場で、頸部リンパ節腫脹はそれ自体を主訴に受診する場合のほか、急性疾患に罹患して受診した際に気付かれる、時に見られる症候の一つです。 生理的な範疇なのか、反応性なのか、それとも悪性なのかの区別をつけることが、臨床的には重要になります。 以下、American Family Physician 2015年5月15日号1)より原則として、経過が急性・亜急性・慢性かで鑑別を考える。急性【外傷性】外傷性の場合、組織や血管系の損傷による。少量であれば自然軽快するが、大きく、急性に増大する場合はすぐに処置や外科的精査を要する。剪断力が追加されると偽性動脈瘤の形成・動静脈瘻の形成につながる。その場合はスリルや雑音を伴った柔らかい、拍動性腫瘤として触れる。【感染・炎症性】最も多い原因である。歯や唾液腺のウイルス・細菌によるものが代表的である。性状は腫脹、圧痛、発赤や熱感を伴う。可動性がある。ウイルス性の上気道症状は1~2週続くことが一般的だが、リンパ節腫脹は上気道症状改善後3~6週以内に治まってくることが多い。そのため、上気道症状改善後にも頸部腫脹が続くことで心配して受診する患者さんもいる。病原ウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザが多い。生検が適応になるのは、4~6週経っても改善しなかったり、夜間の寝汗・発熱・体重減少・急速な腫瘤増大といった悪性を示唆する所見があったりする場合である。よって、この点について病状説明を行うべきと考える。細菌性感染では、頭部・頸部がフォーカスの場合に主に頸部リンパ節腫脹を来す。肺外結核も頸部リンパ節腫脹を起こす。びまん性、かつ両側性にリンパ節腫脹があり、多発し、可動性もなく、硬く圧痛もなく、胸鎖乳突筋より後ろの後頸三角地帯に存在していることが特徴である。疑えば、ツベルクリン反応を行うべきだが、結果が陰性だからといって否定はできない。亜急性週~月単位の経過で気付かれる。ある程度は急速に増大しうるが、無症候性に増大するため発症スタートの段階では気付かれない。成人で持続する無症候性の頸部腫瘤は、他の疾患が否定されるまでは悪性を考えるべきである。喉頭がんなどでは診断が遅れる事で生存率が下がるため、家庭医にとって頭頸部がんの一般的な症状については認識しておくことが最重要である。【悪性腫瘍】頭頸部の原発性悪性腫瘍で最も多いのは上気道消化管の扁平上皮がんである。よくある症状としては、改善しない潰瘍・構音障害・嚥下障害・嚥下時痛・緩いもしくは並びの悪い歯・咽頭喉頭違和感・嗄声・血痰・口腔咽頭の感覚異常がある。悪性疾患を示唆するリンパ節の性状は、硬い・可動性がない・表面不整であることが多い。上気道消化管がんのリスクファクターとしては、男性・アルコール・タバコ・ビンロウの実(betel nut:東南アジアではガムを噛むようによく使用されている)である。口腔咽頭がんのリスクファクターは頭頸部扁平上皮がんの家族歴・口腔衛生不良である。扁平上皮がんの一部はヒトパピローマウイルス感染との関連も指摘されている(とくにHPV-16がハイリスク)。病変は急速に腫大し、嚢胞性リンパ節(持続性頸部リンパ節過形成)、口蓋・舌扁桃の非対称性、嚥下障害、声の変化、咽頭からの出血といった症状を来す。集団としてリスクが高いのは、35歳~55歳の白人男性で喫煙歴・重度のアルコール常用者・多数の性交渉相手(とくにオーラルセックスを行っている場合)の存在である。唾液腺腫瘍の80%近くが良性であり、耳下腺由来である。これらの腫瘍は一側性で無症候性、緩徐に増大し可動性のある腫瘤である。一方、悪性腫瘍では、急速増大、可動性がなく、痛みを伴い、脳神経(とくにVII)も巻き込むという違いがある。黒色腫のような皮膚がんもまた局所のリンパ節に転移する。局所のリンパ節腫脹を説明しうる原発の頭頸部がんが存在しない場合、臨床医は粘膜に関わる部位(鼻・副鼻腔・口腔・鼻咽頭)の黒色腫を検索するべきである。まれに基底細胞がんや扁平上皮がんからの転移でリンパ節腫脹を来すこともある。発熱、悪寒、夜間寝汗、体重減少といった全身症状は遠隔転移を示唆しうる。頸部リンパ節腫脹を来す悪性腫瘍の原発部位は肺がん、乳がん、リンパ腫、子宮頸がん、胃食道がん、卵巣がん、膵がんが含まれる。頸部はリンパ腫の好発部位であり、無痛性のリンパ節腫脹で出現して急速に進行し、その後有痛性へと変わる。びまん性のリンパ節腫脹や脾腫よりも先に全身症状が出現することが多い。転移によるリンパ節腫脹と比べ、リンパ腫の性状は弾性軟で可動性がある。Hodgkinリンパ腫では二峰性の年齢分布(15~34歳、55歳以上)があり、節外に症状が出る事はまれである。Non-Hodgkinリンパ腫では高齢者で多く、咽頭部の扁桃輪のようにリンパ節外にも症状が出る。リウマチ性疾患では唾液腺腫大を来すのは3%、頸部リンパ節腫脹を来すのは4%存在する。唾液腺腫大や頸部リンパ節腫大を来すリウマチ性疾患にはシェーグレン症候群やサルコイドーシスがある。慢性小児期から存在する先天性腫瘤がほとんどで、緩徐に進行し成人になっても持続している。慢性の前頸部腫瘤の原因として最も多いのは甲状腺疾患であるが、進行が緩徐であることがほとんどである。びまん性に甲状腺腫大がみられた場合、バセドウ病・橋本病・ヨード欠乏による可能性があるが、甲状腺腫を誘発するリチウムのような物質曝露によるものも考える。傍神経節腫は神経内分泌腫瘍で、側頸部の頸動脈小体の化学受容体・頸静脈・迷走神経を巻き込む。通常無症候性だが、機能性になる時はカテコラミン放出の結果として顔面紅潮・動悸・高血圧を起こす。診断的検査は血漿もしくは24時間蓄尿でカテコラミン・メタネフリンを測定する事である。診断手段成人の持続する頸部腫瘤に対しては、まず造影CTを選択する。大きさ・広がり・位置・内容などに関して評価しうる初期情報が得られるためである。加えて、造影剤は腫大していない悪性リンパ節を同定する助けにもなり、血管とリンパ節の区別の一助になりうる。造影CTでの精査は頸部腫瘤の評価に対しては第1選択として推奨される。しかし、ヨードを用いた造影剤検査は甲状腺疾患の病歴のある、もしくは転移性甲状腺がんの心配のある患者へは避けるべきである。PET-CTは予備的診断として使用するには効果的でなく、悪性腫瘍の最終的な評価目的で使用すべきである。超音波検査はCTの代わり、もしくは追加で行われるとき、嚢胞性疾患と充実性疾患との区別に有用であり、結節の大きさや血流の評価にも有用である。CTと超音波の使い分けとして、より若年で放射線被曝を減らしたい場合に超音波を選択する。また、造影剤腎症を避けるために腎疾患が基礎疾患にある方へは造影剤使用を控える。FNAB(fine needle aspiration biopsy:穿刺吸引生検)については、施行に当たり重要な構造物を含んでいないことが確認できていれば進めていく。FNABでは、細胞診、グラム染色、細菌培養、抗酸菌培養を通じて得られる情報が多い。FNABでの悪性腫瘍診断については、感度77~97%、特異度93~100%である。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) James Haynes, et al. Am Fam Physician. 2015; 91: 698-706.

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非小細胞肺がんの早期診断には無細胞DNA解析が有用

 非小細胞肺がん患者の血漿における無細胞DNA値の上昇は、炎症反応が原因ではなく、腫瘍の発生が主な原因であることをポーランド・結核・肺疾患研究所のAdam Szpechcinski氏らが報告した。British Journal of Cancer誌オンライン版2015年6月30日号の掲載報告。 血漿中の無細胞DNA値の解析は、非小細胞肺がんの早期診断に役立つバイオマーカーと期待されている。しかしながら、非小細胞肺がん患者の血流に多くの無細胞DNAが放出される理由が悪性腫瘍によるものなのか、慢性炎症反応によるものなのかはいまだ明らかになっていない。 このため、慢性の呼吸器炎症を有する患者において血漿の無細胞DNAの定量化が診断を付けるうえで有用かは、明確になっていないのが現状である。そこで、慢性の呼吸器炎症を有する患者における血漿の無細胞DNA値の解析が有効なのかを検討し、早期の肺がんの診断ツールとしての潜在的な臨床的意義を評価した。 対象は切除可能な非小細胞肺がん患者50人と慢性の呼吸器炎症(COPD、サルコイドーシス、喘息)を有する患者101人、リアルタイムPCRを利用している健常人40人で、それぞれの血漿の無細胞DNA値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・非小細胞肺がんの患者では、慢性の呼吸器炎症を有する患者と健常人に比べて、有意に血漿の無細胞DNA値が高いことがわかった(p<0.0001)・慢性の呼吸器炎症を有する患者と健常人との間で血漿の無細胞DNA値に有意な差は認められなかった。・2.8 ng ml-1以上をカットオフとしたとき、非小細胞肺がん患者と健常人とを鑑別する感度は90%、特異度は80.5%であった(Area Under the Curve[AUC]0.90)。・ROC曲線による非小細胞肺がん患者と慢性の呼吸器炎症を有する患者を鑑別するカットオフは5.25 ng ml-1以上で感度は56%、特異度は91%であった(AUC=0.76)。 本研究は、肺がんの早期スクリーニングや早期診断において、血漿無細胞DNA値の潜在的な臨床的意義を向上させたといえる。非小細胞肺がん患者で血漿の無細胞DNA値が上昇する要因や過程の特徴付けや同定をするためには、今後さらなる研究が必要である。

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【JSMO2015見どころ】肺がん

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 肺がんについては、大泉 聡史氏(北海道大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野)より、トピックスや注目演題などが紹介された。 大泉氏は、肺がん領域で取り上げられるトピックスとして4つを挙げ、それぞれの主な注目演題を紹介した。1)免疫チェックポイント阻害薬の非小細胞肺がんへの応用肺扁平上皮がんの2次治療におけるニボルマブ対ドセタキセルの第III相試験(Checkmate-017試験)で、ニボルマブの有用性が確認された。わが国でも早く承認されることが期待されている。・プレナリーセッションPS-2 A Phase III Study (CheckMate 017) of Nivolumab (NIVO; anti-programmed death-1) vs Docetaxel (DOC) in Previously Treated Advanced or Metastatic Squamous (SQ) cell Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・オーラルセッション呼吸器7 免疫チェックポイント阻害薬による肺がん治療日時:2015年7月18日(土)8:00~9:30会場:Room2(ロイトン札幌3FロイトンホールA)2)EGFR遺伝子変異陽性肺がんのEGFR-TKI耐性時の治療戦略EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に抵抗性となる患者の5~6割がT790Mという遺伝子変異である。これを標的とする新規EGFR-TKIのAZD9291の臨床研究結果が報告されているが、JSMOでは日本人集団のみのデータが報告される予定である。・オーラルセッション呼吸器1 EGFR-TKI 耐性日時:2015年7月16日(木)12:30~13:40会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)3)わが国で開発された進行期肺扁平上皮がんの新規治療法進行再発肺扁平上皮がんの初回治療では、今までシスプラチン+ドセタキセルが標準治療であった。今回、標準治療と新たな治療法であるネダプラチン+ドセタキセルについて、西日本がん研究機構(WJOG)による第III相試験で比較したところ、ネダプラチン+ドセタキセルの有用性が認められた。・オーラルセッション呼吸器5 肺がんの新たなる治療戦略日時:2015年7月17日(金)9:30~10:30会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)4)肺がんの遺伝子学的解析の最前線・インターナショナルセッション2-2肺がん(2)肺がんの遺伝子学的解析の最前線日時:2015年7月17日(金)8:30~9:30会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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【JSMO2015見どころ】最新のがん免疫療法

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 いま最も注目されているがん免疫療法については、北野 滋久氏(国立がん研究センター中央病院 先端医療科)より、免疫チェックポイント阻害薬の開発状況や注目演題などが紹介された。 がん医療の進歩に貢献してきた「手術療法」「放射線療法」「化学(薬物)療法」の3大治療に続き、第4の治療として「がん免疫療法」への期待がますます高まっている。わが国でも昨年、「免疫チェックポイント阻害薬」の1つである抗PD-1抗体療法が進行悪性黒色腫に対して承認された。現在、非小細胞がんに対しても国内承認の期待が高まり、さらに他の多くのがん種においても後期臨床試験が実施されている。  「がん免疫療法」の中でも臨床開発が最も成功し、世界的な注目を集めている「免疫チェックポイント阻害薬」の開発状況は、以下のようである。●メラノーマ・進行メラノーマに対して、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)が2011年3月に米国FDA承認済みで、国内でも承認(2015年7月3日)。・進行メラノーマに対して、抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2014年7月国内承認、次いで米国FDAがペムブロリズマブ、ニボルマブの順で承認。・B-raf変異陰性進行メラノーマに対して、1次治療として抗PD-1抗体がダカルバジンを上回る臨床効果を認められた。●肺がん・進行扁平上皮肺がんに対して抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2015年3月にFDA承認。国内申請中。・進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対して抗PD-1抗体がFDA承認申請。・既治療進行非小細胞肺がんに対して、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第III相試験が施行されている。・進行非小細胞肺がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第II相試験が実施または計画中。●その他・既治療の腎細胞がん、頭頸部がん、胃がん、膀胱がんなどにおいて、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第III相試験が施行または準備されている。 また、JSMOでのがん免疫療法に関する注目演題は以下の通り。・Special LectureImmune checkpoint inhibitors日時:2015年7月17日(金)8:45~9:30会場:Room1(ニトリ文化ホール)・ESMO/JSMO合同シンポジウムImmune checkpoint blockade in cancer therapy: new insights, opportunities, and prospects for a cure日時:2015年7月17日(金)9:30~11:30会場:Room1(ニトリ文化ホール)・プレナリーセッションPS-2 A Phase III Study (CheckMate 017) of Nivolumab (NIVO; anti-programmed death-1) vs Docetaxel (DOC) in Previously Treated Advanced or Metastatic Squamous (SQ) cell Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)PS-3 Phase III study of pembrolizumab (MK-3475) versus ipilimumab in patients with ipilimumab-naïve advanced melanoma日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・教育講演EL-23 免疫チェックポイントの基礎日時:2015年7月18日(土)10:30~11:00会場:Room11(札幌市教育文化会館1F大ホール)EL-24 使って分かる免疫チェックポイント阻害薬日時:2015年7月18日(土)11:00~11:30会場:Room11(札幌市教育文化会館1F大ホール)・シンポジウムSY-5 がん免疫制御の現況と次なるホープ日時:2015年7月16日(木)9:00~11:00会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)SY-6 がん幹細胞の分子標的・免疫制御の新展開日時:2015年7月16日(木)12:30~14:30会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)・セミナーCAR-T細胞療法セミナー 基礎と臨床日時:2015年7月17日(金)16:00~17:30会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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タバコには放射性物質が?!

タバコには放射性物質が?!タバコから取り込まれる放射性物質 タバコには、肥料由来とされる放射性物質(ポロニウム210など)が含まれていることが知られています。タバコ煙の粒子BベンツピレンPo ポロニウムPb 鉛210…気管分岐部にポロニウムなどの煙の粒子が付着し、放射線(α線)を出し続ける。(10シーベルト/20年※) タバコを吸うと、ポロニウムが肺内に入り、気管分岐部に付着して、放射線(α線)を出し続けます。肺がんを発症??※一生の内部被ばくは0.1シーベルト以下に抑える(厚生労働省)社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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肺がん患者が禁煙したときの延命効果は?

 米国・ロズウェルパークがん研究所のKatharine A Dobson Amato氏らは、同研究所の肺がん患者における禁煙パターンの特徴、および禁煙と生存率との関連を調査した。その結果、肺がんと診断された患者において、禁煙によって全生存期間が延長する可能性を報告した。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2015年6月20日号に掲載。 この研究所を受診した肺がん患者について、標準化された喫煙評価でスクリーニングし、過去30日以内に喫煙した患者には、自動的に禁煙電話サービスが紹介された。2010年10月~2012年10月にこのサービスを紹介されたすべての肺がん患者について、電子カルテとロズウェルパークがん研究所の腫瘍登録を介して、人口統計的情報や臨床情報、および最終コンタクト時の自己申告による喫煙状況を取得した。禁煙およびその他の要因が2014年5月までの生存と関連するかを評価するために、記述統計とCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・禁煙サービスを紹介された388例の肺がん患者のうち313例に、禁煙コールが試行された。・そのうち80%の患者(313例中250例)にコンタクトでき、これらの患者は少なくとも1回の電話による禁煙指導を受けた。・コンタクトできた患者のうち40.8%(250例中102例)は、最終コンタクトで禁煙したことを報告した。・年齢、喫煙歴(pack-year)、性別、ECOG performance status、診断から最終コンタクトまでの期間、腫瘍の組織、臨床ステージによる調整後、禁煙は、最終コンタクトで継続的に喫煙していた場合と比べ、統計的に有意な生存期間の延長と関連した(HR 1.79、95%信頼区間:1.14~2.82)。また、全生存期間中央値は9ヵ月改善した。

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進行扁平上皮NSCLC、ニボルマブで生存期間延長/NEJM

 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)で化学療法中または療法後に疾患進行が認められた患者に対し、ニボルマブ(本邦ではメラノーマを対象に商品名オプジーボとして承認)投与はドセタキセル投与に比べ、生存を有意に改善したことが示された。米国ジョンズ・ホプキンス病院シドニー・キメル総合がんセンターのJulie Brahmer氏らが行った無作為化非盲検国際共同第III相試験の結果、報告された。ニボルマブは、完全ヒト型抗PD-1免疫チェックポイント阻害薬IgG4抗体の新しい分子標的薬である。一方、既治療で疾患進行が認められた進行扁平上皮NSCLC患者への治療オプションは限定的で、研究グループは、NSCLCでは腫瘍細胞においてPD-L1発現が一般的であることから本検討を行った。NEJM誌オンライン版2015年5月31日号掲載の報告より。ニボルマブを2週間ごと vs.ドセタキセルを3週間ごと投与 試験は2012年10月~2013年12月にかけて、272例を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはニボルマブ(3mg/kg)を2週間ごと、もう一方の群にはドセタキセル(75mg/体表面積m2)を3週間ごと投与した。 被験者の年齢中央値は63歳、男性の割合は76%だった。 主要評価項目は、全生存期間だった。全生存期間中央値はドセタキセル群6.0ヵ月、ニボルマブ群9.2ヵ月 結果、全生存期間中央値は、ドセタキセル群が6.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.1~7.3ヵ月)だったのに対し、ニボルマブ群は9.2ヵ月(同:7.3~13.3)だった。 ニボルマブ群のドセタキセル群に対する死亡に関するハザード比は、0.59(同:0.44~0.79、p<0.001)で、ニボルマブ群の死亡リスクが41ポイント有意に低かった。 1年時点の全生存率は、ドセタキセル群24%(同:17~31)に対し、ニボルマブ群は42%(同:34~50)で、奏効率はそれぞれ9%、20%だった(p=0.008)。 無増悪生存期間の中央値も、ドセタキセル群2.8ヵ月に対し、ニボルマブ群は3.5ヵ月だった(死亡または疾患進行についてのハザード比:0.62、同:0.47~0.81、p<0.001)。 なお、検討では、PD-1のリガンドであるPD-L1発現レベル別(事前規定1、5、10%)で評価したが、有効性エンドポイントとの関連は示されなかった。 治療に関連したグレード3、4の有害事象の発生は、ドセタキセル群55%に対し、ニボルマブ群は7%だった。 上記を踏まえて著者は、「既治療の進行扁平上皮NSCLC患者に対し、全生存期間、奏効率、無増悪生存期間はいずれも、PD-L1発現レベルに関係なく、ドセタキセル投与群よりもニボルマブ群で有意に良好だった」とまとめている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)関連記事 ASCO : nivolumab、肺がんに“前例なき”効果

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問診のみで5年以内の死亡を予測可能?50万人の前向き研究/Lancet

 身体的な検査を行わなくても、通常の問診のみで得た情報が、中高年者の全死因死亡を最も強力に予測する可能性があることが、英国のバイオバンク(UK Biobank)の約50万人のデータを用いた検討で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAndrea Ganna氏とウプサラ大学のErik Ingelsson氏がLancet誌オンライン版2015年6月2日号で報告した。とくに中高年者の余命を正確に把握し、リスクを層別化することは、公衆衛生学上の重要な優先事項であり、臨床的な意思決定の中心的課題とされる。短期的な死亡に関する予後指標はすでに存在するが、これらは主に高齢者や高リスク集団を対象としており、サンプルサイズが小さい、リスク因子数が少ないなどの限界があるという。地域住民ベースの前向き研究で問診の予測スコアを開発 2人の研究者は、UK Biobankのデータを用いて全死因および死因別の5年死亡の評価を行い、個別の死亡リスクを推定するために、患者の自己申告による情報のみを用いて5年死亡の予後指標に基づく予測スコアを開発し、その妥当性の検証を行った。 UK Biobankへの参加者の登録は、2007年4月~2010年7月の間に、イングランド、ウェールズ、スコットランドの21施設で、標準化された方法を用いて行われた。約50万人から、採血、質問票、身体検査、生体試料に基づくデータが収集された。 血液検査、人口統計学、健康状態、生活様式などに関する10群、655項目のデータと、全死因死亡および6つの死因別の死亡カテゴリー(新生物、循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、意図的自傷行為や転倒などの外因によるもの、その他)の関連を、Cox比例ハザードモデルを用いて男女別に評価した。参加者の80%以上で欠損した測定値や、サマリデータが得られなかったすべての心肺健康検査の測定値は除外した。 予測スコアの妥当性の検証は、スコットランドの施設で登録された参加者で実施した。英国の生命表と国勢調査の情報を用いて、スコアを英国の全人口に換算した。重篤な疾患がない場合の最大の死亡リスク因子は喫煙 37~73歳の49万8,103例が解析の対象となった。女性27万1,029例(平均年齢56.36歳)、男性22万7,074例(56.75歳)であった。 追跡期間中央値4.9年の間に8,532例(39%[3,308例]が女性)が死亡した。最も多い死因は、男性が肺がん(546例)、女性は乳がん(489例)だった。 男性では、自己申告による健康状態が最も強力な全死因死亡の予測因子であった(C-index:0.74、95%信頼区間[CI]:0.73~0.75)。女性では、がんの診断歴が全死因死亡を最も強力に予測した(0.73、0.72~0.74)。 重篤な疾患を有する者(Charlson comorbidity index:>0)を除外した35万5,043例(55%が女性)のうち、4.9年間に3,678例が死亡し、この集団における最も強力な全死因死亡の予測因子は男女とも喫煙習慣であった。 予測スコアは、男性が13項目、女性は11項目の自己申告による予測因子から成り、男女とも良好な識別能が達成された(男性のC-index:0.80、95%CI:0.77~0.83、女性は同:0.79、0.76~0.83)。死亡率は英国の一般人口より低かったため、生命表と国勢調査の情報に基づいて予測スコアを調整した。 専用のウェブサイト(http://ubble.co.uk/)では、対話形式のグラフ(Association Explorer)で655項目の変数と個々の死因の関連性を閲覧できると共に、オンライン問診票により5年死亡の個別のリスク計算(Risk Calculator)が可能である(正確な予測は40~70歳の英国居住者のみ)。 著者は、「この研究からはさまざま重要なメッセージが読み取れるが、最も重要な知見は、身体的な検査なしに通常の口頭での問診で得られる情報(たとえば、患者の自己申告による健康状態や日常的な歩調など)が、中高年者の全死因死亡の最も強力な予測因子であることが示唆される点である」と結論している。 また、「この予測スコアを用いれば、看護師などの医療者は、患者の自分の健康状態への認識を高め、医師は、死亡リスクの高い患者を同定して特定の介入の対象を絞り込み、政府や保健機関は、特定のリスク因子の負担を軽減することが可能と考えられる」と指摘している。

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気管支鏡の肺がん診断、遺伝子スコアで精度改善/NEJM

 気管支鏡検査による肺がん診断の精度改善に、気管支上皮細胞の遺伝子発現分類を加味することが有用であることが、米国・南カリフォルニア大学のGerard A. Silvestri氏らが行った2つの多施設共同前向き試験(AEGIS-1、AEGIS-2)の結果、示された。米国では年間約50万例の気管支鏡検査が行われているが、そのうち約半数例は肺がんの診断が不能で、それらの多くで追加の侵襲的検査が行われ、結果として良性病変であることが多いという。研究グループは、気管支の遺伝子発現分類を用いることで気管支鏡検査の診断が改善することを確認するため本検討を行った。NEJM誌オンライン版2015年5月17日号掲載の報告より。2つの前向き試験でスコアを作成、検証 2つの試験は、米国、カナダ、アイルランドの28施設で、肺がん疑いで気管支鏡検査を受けた現在または元喫煙者を登録して行われた。 被験者の正常とみられた主気管支から採取した上皮細胞を用いて遺伝子発現分類を作成し、肺がんの可能性について評価した。 遺伝子発現分類は、AEGIS-1に登録された患者を、試験セット群と確認セット群に無作為に割り付け、試験セット群から遺伝子発現分類アルゴリズム(23遺伝子と年齢から成る)を抽出。これを用いて、AEGIS-1の確認セット群とAEGIS-2の全被験者のスコア分類を行い、事前規定の閾値を用いて、陽性スコアと陰性スコアに分類したものであった。 各試験の被験者は、気管支鏡検査後、肺がんと診断されるまで、もしくは12ヵ月間フォローアップを受けた。中リスク患者、遺伝子発現分類スコアで多くが侵襲的検査を回避可能 検討には、包含基準を満たした639例(AEGIS-1試験298例、AEGIS-2試験341例)が組み込まれた。そのうち43%(272例)は、肺がんの診断が不能であった。このうち侵襲的検査を受けたことが確認された患者は170/267例(64%)だった。最終的に良性病変であった患者で侵襲的検査を受けていたのは、35%(52/147例)であった。 AEGIS-1試験における遺伝子発現分類のROC曲線下分類(AUC)は0.78(95%信頼区間[CI]:0.73~0.83)、感度は88%(同:83~92%)、特異度は47%(同:37~58%)であった。AEGIS-2試験についてはそれぞれ、0.74(95%CI:0.68~0.80)、89%(同:84~92%)、47%(同:36~59%)であった。 遺伝子発現分類と気管支鏡検査結果を合わせた場合、病変サイズや部位にかかわらず、感度はAEGIS-1試験で96%(95%CI:93~98%)、AEGIS-2試験は98%(同:96~99%)で、各試験の気管支鏡検査単独による感度(それぞれ74%、76%)と比べて有意な改善が認められた(両比較のp<0.001)。 また、医師の評価に基づくがん見込み分類(低:10%未満、中:10~60%、高:60%超)で中リスク群とされた患者101例についても検討した。そのうち83%が気管支鏡検査で診断不能で、肺がんの診断感度は41%(95%CI:26~58%)であったが、同患者の遺伝子発現分類による陰性適中率は91%(同:75~98%)、陽性適中率は40%(同:27~55%)であり、遺伝子発現分類と気管支鏡検査の結果を組み合わせた診断感度は93%(同:80~98%)であった。 これらを踏まえて著者は、「気管支鏡検査で診断不能であった中リスク群の患者には、陰性の遺伝子発現分類スコアを加味することで、より多くの侵襲的検査アプローチの回避につながる」とまとめている。

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