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ラムシルマブは肺がん治療に新たな可能性をもたらすか?

 2016年8月4日、イーライリリー主催のプレスセミナー「肺がんに新たな治療選択肢『サイラムザ』登場」が開催された。そのなかで、神奈川県立がんセンター 呼吸器内科医長の加藤 晃史氏は「進行・再発非小細胞肺がん治療におけるサイラムザの位置づけ」と題し、ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)の肺がんに対する新たな知見を紹介した。 ラムシルマブは、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR-2)に作用する血管新生阻害薬で、胃がん、結腸・直腸がんに続いて2016年6月に非小細胞肺がんに対する適応を取得した。海外第III相試験であるREVEL試験では、肺がん2次治療におけるラムシルマブとドセタキセルの併用療法とドセタキセル単独(プラセボ+ドセタキセル)療法を比較した。結果、全生存期間(OS)は併用群10.5ヵ月、タキセル単独群9.1ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.75~0.99、p=0.024)、無増悪生存期間(PFS)はそれぞれ4.5ヵ月、3.0ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86、p<0.0001)と、共に併用群で有意に延長した。また、本邦で行われたJVCG試験においてもREVEL試験と同様の結果が認められ、OS中央値はラムシルマブ・ドセタキセル併用群で15.15ヵ月、ドセタキセル単独群で14.65ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.56~1.32)、PFS中央値はそれぞれ5.22ヵ月、4.21ヵ月(HR:0.83、95%CI:0.59~1.16)といずれも併用群で優れていた。有害事象については、両試験とも併用群で血液毒性が多く認められたが、それらは管理可能であった。 加藤氏はまた、既存の治療薬を踏まえたラムシルマブの可能性について述べた。扁平上皮がんは非扁平上皮がんに比べて治療選択肢が少ない。そこに扁平上皮がんにも有効性を示す免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ」が加わった。しかしながら、ニボルマブで有効性が確認できるのは投与患者のうち20~30%である。ラムシルマブの有効性は扁平上皮がんも含めた成績であることから、治療選択肢が少ないこの領域にも新たな可能性をもたらすことになる。 選択肢の広がる非小細胞肺がんの薬物療法において、ラムシルマブはどのような可能性をもたらすのだろうか。今後の動向に注目したい。

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未分化大細胞型リンパ腫〔ALCL : anaplastic large cell lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義未分化大細胞型リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma:ALCL)は、1985年Steinらによって初めて特徴づけられたaggressive lymphomaである。キール大学で開発されたCD30に対するKi-1抗体によって認識される活性化T細胞由来のリンパ腫で、Ki-1リンパ腫との異名ももっていた。以前「悪性組織球症」といわれていた症例の多くがこのリンパ腫であることが判明し、リンパ球の活性化マーカーであるCD30、CD25のほか、上皮性細胞マーカーであるEMAが陽性となる特徴を有する。腫瘍細胞は胞体が豊かなホジキン細胞様で馬蹄様核をもつhallmark cellが特徴的である(図)。画像を拡大するこの多形芽球様細胞の形態を示すリンパ腫には、全身性ALCLのほか、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のanaplastic variantや病変が皮膚に限局する皮膚ALCLがある。また、豊胸手術後に乳房に発症するALCLも、最近注目されるようになった。ALCLは、あくまで末梢性T細胞リンパ腫の一病型であり、B細胞由来のものは含まれない。ALCLは、インスリン受容体スーパーファミリーの受容体型チロシンキナーゼであるanaplastic lymphoma kinase(ALK)をコードするALK1遺伝子の発現増強を認めるALK陽性ALCLと、発現増強を認めないALK陰性ALCLに分類される。皮膚ALCLや豊胸術後のALCLは共にALK陰性である。■ 疫学ALCLは、わが国で発症する非ホジキンリンパ腫の中で、3%程度を占めるまれな疾患である。ALK陽性ALCLは、ほとんどが50歳以下で発症し、発症のピークは10代の若年者である。一方、ALK陰性ALCLは、加齢とともに発症頻度が増し、50代に多い。両者ともやや男性に多く発症する。皮膚ALCLと豊胸術後のALCLについては、わが国での頻度は不明である。■ 病因ALK陽性ALCLは、t(2;5)(p23;q35)の染色体異常を80%程度に認める。2番染色体2p23に位置するALK1遺伝子が5q35のNPM遺伝子と結合して融合遺伝子を形成し、その発現増強が腫瘍の発症・維持に重要と考えられている。この転座によって生じるNPM-ALKはホモダイマーを形成し、midkineなどのリガンドの結合なしにキナーゼ活性を亢進させ、PI3KからAkt、STAT3やSTAT5などの細胞内シグナル伝達を活性化させる。ALK1遺伝子はNPM遺伝子以外にも1q21/TPM3などの遺伝子と融合するが、このような場合でもALKのホモダイマー形成が生じ、ALKの構造的活性亢進が起きるとされている。NPMは核移行シグナルをもち、NPM-ALKとNPMのヘテロダイマーは核まで移行するため、t(2;5)異常をもつALCLでは、ALKが細胞質のみならず、核も染色される。一方、ALK陰性ALCLの病因はすべて明らかにされているわけではない。アレイCGHやgene expression profilingによる解析では、ALK陰性ALCLは、ゲノム異常や遺伝子発現パターンがALK陽性ALCLとはまったく異なることがわかっている。ALK陰性ALCLの中には、t(6;7)(p25.3;q32.3)の染色体転座をもち、6p25.3に位置するDUSP22遺伝子の切断による脱リン酸化酵素機能異常が確認されている群がある。6p25には転写因子をコードするIRF4遺伝子も存在するが、末梢性T細胞性リンパ腫・非特定型や皮膚ALCLにおいても6p25転座が認められることがあり、それらとの異同も含めてまだ不確定な部分がある。皮膚ALCLはリンパ腫様丘疹症(lymphomatoid papulosis)との異同が問題となる症例があり、これらは皮膚CD30陽性リンパ増殖性疾患という範疇であって、連続性の疾患と捉える向きもある。豊胸術後のALCLについてはまだ不明な点が多い。■ 症状全身性ALCLは、診断時すでに進行期(Ann ArborシステムでIII期以上)のことが多く、B症状(発熱・体重減少・盗汗)を認めることが多い。リンパ節病変は約半数に認められ、節外病変も同時に伴うことが多い。ALK陽性ALCLでは、筋肉などの軟部組織や骨が多く、ALK陰性ALCLでは皮膚・肝臓・肺などが侵されやすい。皮膚ALCLは孤立性または近い部位に複数の皮膚腫瘤を作ることが多いが、所属リンパ節部位以外の深部リンパ節には病変をもたず、その点が全身性ALCLとは異なる。また、豊胸術後のALCLも80%以上の症例が乳房に限局しており、その中で腫瘤を作らずeffusion lymphomaの病態をとるものもある。両者とも発熱などの全身症状は認められないことが多い(表)。画像を拡大する■ 予後ALK陽性ALCLは、末梢性T細胞リンパ腫の中でも予後のよい病型である。5年の全生存割合は80%程度で、ALK陰性ALCLの40%程度と比べて、CHOP療法などのアントラサイクリン系抗生剤を含む初回化学療法によって、効果が期待できる疾患である。ヨーロッパの小児領域における3つの大規模臨床研究の結果から、(1)縦隔リンパ節病変(2)体腔内臓器浸潤(肺、脾、肝)(3)皮膚浸潤が予後不良因子として重要で、これら1項目でも満たすものを高リスク群とみなす。高リスク群は5年の全生存割合が73%と、標準リスク群の94%に比べて有意に下回る結果を示している。小児領域のALCLは、90%がALK陽性例で占められるが、成人領域と比べるとリスクに応じてかなり強度を上げた治療が施行され、高リスク群の治療成績は比較的良好な結果を示していると思われる。一方、成人例に多いALK陰性ALCLは、aggressive lymphomaで共通する国際予後指標(international prognostic index〔IPI〕: 年齢、performance status、LDH値、節外病変数、臨床病期からスコア化する)が参考となるが、(1)骨髄浸潤(2)β2ミクログロブリン高値(3)CD56陽性なども予後不良因子として認識されている。International T-cell lymphoma projectによる検討では、ALK陰性ALCLの60%程度を占めるIPI 3項目以上の患者群における5年の全生存割合は、CHOP療法主体の治療を受けても30%を下回る結果となっている。ただし、ALK陰性であっても皮膚ALCLや豊胸術後のALCLは限局例が多く、生命予後はそれほど悪くない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ほかの悪性リンパ腫と同様、ALCLの診断には、(1)組織診断による病型の確定(2)PET-CTなどの画像検査と骨髄検査による正確な臨床病期診断が必須である。また、皮膚に病変がある場合には、全身症状と病変の分布について、しっかりと把握しなければならない。■ 組織診断HE染色による腫瘍の形態観察とhallmark cellの有無を確認する。hallmark cellがあればALK染色によってALK陽性かALK陰性かを明らかにする。まれにsmall-cell variantや反応性の組織球増生が特徴的なlymphohistiocytic variantがあるので注意を要する。これらはALK陽性ALCLのうち、治療反応の乏しい形態学的亜型として注目されている。さらに腫瘍細胞の特定には、CD30、EMA、lineage marker、TIA-1、granzyme Bなどの細胞傷害性分子の発現を免疫染色で評価する。ALK陽性例についてはFISH検査で2p23の転座があるか確認する。■ 臨床病期診断ALCLはFDG-avidな腫瘍であり、FDG-PETを組み込んだPET-CT検査によって臨床病期診断のみならず治療効果の判定が可能である。皮膚に限局しているようにみえても、PETで深部リンパ節病変が指摘された場合には、全身性ALCLとして対応しなければならない。骨髄検査は、リンパ腫細胞の浸潤の有無と造血能の評価を行うことを目的とする。単なる形態診断だけでなく、免疫染色や染色体・FISH検査によって腫瘍の浸潤評価を行う必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)前述した通り、全身性ALCLは進行期例が多いことから、アントラサイクリン系抗生剤を含む多剤併用化学療法が施行される。ALK陽性ALCLでは、CHOP様レジメンで90%近くに奏効が得られ、再発・再燃の割合もALK陰性ALCLよりも低く、5年の生存割合は70%以上を維持できる。つまり、低リスク群の初回治療はCHOP様レジメンで十分といえる。高リスク群に対し、小児領域では髄腔内抗がん剤投与を含む強度を上げた治療が行われている。成人領域ではなかなか治療強度を上げることが難しいため、自己造血幹細胞移植(autologous hematopoietic stem cell transplantation: ASCT)が考慮される。また、小児領域の治療研究では、ビンブラスチン(商品名:エクザール)が単剤で再燃を延長させる効果をもつことが示されている。高リスク群では、この薬剤をいかに利用して再燃を防ぐことができるのか、今後のレジメン内容を考えるうえでも、さらなる検討が必要である。一方、成人に多いALK陰性ALCLに対しては、現時点で標準化学療法が確立した状況とはいえない。CHOP療法による奏効割合は80%程度期待できるものの、再発・再燃の割合も高く、無増悪生存割合は最終的に20%台まで落ち込んでしまう。成人領域のALCLに対する治療研究は、ほかの末梢性T細胞リンパ腫の病型と同時に含まれて対象とされるため、ALCLに限った治療法が開発されているわけではない。そのため今後も残念ながら、個々の病型に対する標準治療が確立しにくい状況なのである。ALCL患者を対象として多く含む、ドイツの複数の前向き治療研究の解析結果をまとめると、CHOP療法にエトポシド(同:ラステットほか)を加えたほうが完全奏効割合や無イベント生存割合が改善することがわかっている。また、末梢性T細胞リンパ腫全体では、治療強度を上げることが必ずしも全生存割合の向上に寄与しているとは証明されていないが、それは十分な治療効果を生む標準化学療法が確立していないことが背景にあるためと考えられる。全身放射線を前処置として用いないASCTを初回奏効例に施行する、ノルウェーから報告されたNLG-T01試験では、ALK陰性ALCLに対する5年の全生存割合は60%以上を示し、他の病型よりも期待のもてる結果を示している。小児領域のリスクに応じて強度を調節する治療研究の結果も踏まえて考えると、ALK陰性ALCLに対し、治療強度を上げることで生存に有利となる患者群がいることがわかる。こういった問題は、今後も前向き治療研究の場で確定していかなければならない。実地診療において現時点では、CHOPあるいはCHOEP、EPOCHなどのエトポシドを含むCHOP様レジメンが初回治療として選択されることになる。非常にまれな皮膚ALCLや豊胸術後のALCLについての標準治療法は確立されていない。皮膚ALCLは限局性であれば、外科的切除、電子線照射が試みられる。多発性腫瘤の場合には化学療法が行われるが、どのような治療が適切か確固たるエビデンスはない。経験的に少量メトトレキサート、少量エトポシドなどの内服治療が行われている。豊胸術後のALCLも外科的切除で、対応可能な限局期症例の予後は比較的良好であるが、両者とも進行期例に対する治療は全身性ALCLに準ずることになる。4 今後の展望小児領域のヨーロッパ・日本の共同研究で検討された中枢神経浸潤についてみると、全体の2.6%に中枢神経系のイベントが認められ、その半数に脳実質内腫瘤を認めている。ヨーロッパのintergroup(EICNHL)のBFM90試験において、メトトレキサートの投与法が24時間から大量の3時間投与として髄腔内投与を施行しなくとも、中枢神経系のイベントは変わらずに同等の治療効果を生むことが確認されている。Lymphohistiocytic variantでは、比較的中枢神経系イベントが多いとされているが、生命予後の悪い高リスク群患者に対して、いかに毒性を下げて治療効果を生むかという点について、今後も治療法の進歩が期待される。小児領域と成人領域では、治療強度とそれに対する忍容性が異なる。成人領域では治療強度を上げるためには、ASCTを考慮しなければならず、とくに10代後半~20代の患者群に対する治療をどうしていくか、まだまだ解決しなければならない課題は多い。ALK陽性ALCLはALKが分子標的となるため、ALK陽性非小細胞肺がんで効果を示しているALK阻害薬が、今後の治療薬として注目される。クリゾチニブ(同: ザーコリ)は第I相試験が海外で終了しており、今後ALCLに対する有効性の評価がなされていくことになる。わが国ではそれに先立ち、再発・難治性のALK陽性ALCLに対してアレクチニブ (同: アレセンサ) の第II相試験が現在進行中である。また、CD30を標的したマウス・ヒトキメラ抗体のSGN-30は、皮膚ALCLに対する一定の効果は認められたものの、全身性ALCLに対する効果は不十分であったため、SGN-30に微小管阻害薬であるmonomethylauristatin Eを結合させたSGN-35(ブレンツキシマブ ベドチン、同: アドセトリス)が開発された。ブレンツキシマブ ベドチンは再発・難治性のALCL58例に対し、50例(86%)に単剤で奏効を認めており(33例に完全奏効)、再発・難治例に期待できる薬剤である。有害事象として血球減少以外に、ビンカアルカロイドと同様の神経障害が問題となるが、ホジキンリンパ腫でABVD療法と併用した際に肺毒性が問題となっていて、ブレオマイシン(同:ブレオ)との併用は難しいものの、アントラサイクリン系抗生剤やビンブラスチンとの併用が可能であることを考えると、ALCLに対して化学療法との併用の可能性も広がると考えられる。5 主たる診療科血液内科、小児科、皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報European Intergroup for Childhood NHL(欧州で開催された医療従事者向けのフォーラムの内容)患者会情報グループ・ネクサス・ジャパン(悪性リンパ腫患者とその家族の会)1)Savage KJ, et al. Blood.2008;111:5496-5504.2)Kempf W, et al. Blood.2011;118:4024-4035.3)Ferreri AJ, et al. Crit Rev Oncol Hematol.2012;83:293-302.4)Ferreri AJ, et al. Crit Rev Oncol Hematol.2013;85:206-215.5)Miranda RN, et al. J Clin Oncol.2014;32:114-120.公開履歴初回2014年03月13日更新2016年08月02日

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がん脊椎転移、手術が不適な患者とは

 治療の進歩により転移性がん患者の生存期間が延長したことから、症候性脊椎転移が増加している。脊椎の病的骨折や脊髄圧迫を有する患者には、手術で痛みを軽減しQOLを改善することができるが、通常、生存期間が3ヵ月未満と推測される場合には手術は不適と考えられている。今回、手術が不適な患者への手術回避を目的として、日本を含む国際多施設共同研究により、術後3ヵ月または2年以内に死亡した患者のデータを分析し、生存期間に関連する術前因子を検討した。その結果、生存期間は全身の術前状態に依存し、とくに術前に「Karnofsky performance score(KPS)が低い」ことが3ヵ月未満の死亡に有意に関連し、「転移脊椎数が少ない」「原発腫瘍が予後良好な組織型」ことが長期生存に有意に関連していたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJorrit-Jan Verlaan氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2016年7月11日号に掲載。 著者らは、切迫病的骨折と神経障害の両方もしくはどちらかに対する手術を受けた1,266例をプロスペクティブに観察し、腫瘍の特徴、術前状態(米国麻酔学会[ASA])、神経学的状態(フランケル分類)、performance score(KPS)、QOL(EuroQol five-dimensions questionnaire [EQ-5D])などを調査した。アウトカムは、術後3ヵ月および2年における生存とし、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を用いて、短期および長期生存に関連する術前因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・単変量解析において、年齢、緊急手術、KPS、EQ-5D、ASA、フランケル分類、徳橋スコア、富田スコアが、短期(3ヵ月未満)の死亡と有意に関連していた。・多変量解析において、KPS(オッズ比[OR]:1.36、95%CI:1.15~1.62)と年齢(OR:1.14、95%CI:1.02~1.27)が短期(3ヵ月未満)の死亡と有意に関連していた。・単変量解析において、年齢、手術に含まれる脊椎レベルの数、KPS、EQ-5D、フランケル分類、徳橋スコア、富田スコアが、長期(2年超)の生存に関連していた。・多変量解析において、手術に含まれる脊椎レベルの数(OR:1.21、95%CI:1.06~1.38)と原発巣が、長期(2年超)の生存と有意に関連していた。

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高齢者肺がんの長期生存、放射線治療 vs.低侵襲手術/BMJ

 高齢者肺がんに対する、体幹部定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy:SABR)後および胸腔鏡下肺葉切除後のがん特異的生存率でみた長期生存を比較した結果、とくに腫瘍径が大きい症例では胸腔鏡下肺葉切除のほうが、有意に改善する可能性が示唆された。米国・RWJ Barnabas Health SystemのSubroto Paul氏らによる、全米集団ベース傾向適合比較解析を行った結果で、著者は、「交絡因子が排除しきれず結果は限定的だが、手術可能な早期肺がんでSABRの治療選択が浸透する前に、さらなる詳細な評価を行う必要があるだろう」とまとめている。SABRは手術可否を問わず、早期非小細胞肺がんに有用とされている。SABR後の生存率について、低侵襲手術による切除後に疾患リスクが改善した場合と比べた場合に、同等であるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。腫瘍径2cm以下と5cm以下、それぞれの場合についてがん特異的生存率を比較検討 研究グループは、腫瘍径が2cm以下の場合の胸腔鏡下亜肺葉切除(sublobar lung resection:SLR)後 vs.SABR後の、および腫瘍径が5cm以下の場合の胸腔鏡下肺葉切除[肺葉切除(lobectomy)または亜肺葉切除]後 vs.SABR後のがん特異的生存率を比較した。検討は全米集団ベースの後ろ向きコホート研究および傾向適合比較解析にて行った。対象は、全米メディケアデータベースとリンクしたSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)レジストリから、2007年10月1日~2012年6月31日の間に、SABRまたは胸腔鏡下切除を受けた66歳以上の肺がん患者とした。 被験者を2013年12月31日まで追跡し、SABR後と胸腔鏡下切除後のがん特異的生存率を、腫瘍径2cm以下の場合(主要解析)と5cm以下の場合(副次解析)について評価した。手術群が高率、2cm以下では有意差ないが、5cm以下では有意な差 主要解析に組み込まれた被験者は計690例で、SABR群275例(39.9%)、胸腔鏡下SLR群415例(60.1%)であった。また副次解析には計2,967例、SABR群714例(24.1%)、胸腔鏡下切除群2,253例(75.9%)が組み込まれた。全コホートの平均年齢は76歳、フォローアップ期間の範囲は0~6.25年で、平均3年であった。 主要解析(2cm以下対象)における肺がん死亡例は、SABR群37例(13.5%)、胸腔鏡下SLR群は44例(10.6%)であった。1年時点のがん特異的生存率は、適合分析(各群適合患者201例)の結果、SABR vs.胸腔鏡下SLRの死亡に関するハザード比は1.32(95%信頼区間[CI]:0.77~2.26)であり、有意な差はみられなかった(p=0.32)。3年時推定がん特異的生存率は、SABR群82.6%、胸腔鏡下SLR群86.4%であった。 一方、副次解析(5cm以下対象、各群適合患者643例)では、胸腔鏡下切除群のがん特異的生存率の有意な改善が示された。SABR vs.胸腔鏡下切除の死亡に関するハザード比は2.10(95%CI:1.52~2.89、p<0.001)であり、3年時推定がん特異的生存率は、SABR群80.0%、胸腔鏡下切除群90.3%であった。【訂正のお知らせ】本文内の表記に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年7月27日)。

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高度催吐性化療の制吐薬としてオランザピンが有効/NEJM

 高度催吐性化学療法(highly emetogenic chemotherapy:HEC)を受けるがん患者において、オランザピンは悪心・嘔吐の予防に有効であることが、米国・インディアナ大学のRudolph M Navari氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌2016年7月14日号にて発表された。オランザピンは非定型抗精神病薬であり、中枢神経系のドパミン受容体(D1、D2、D3、D4)、セロトニン受容体(5-HT2a、5-HT2c、5-HT3、5-HT6)、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体など多くの神経伝達物質を遮断する。体重増加や糖尿病リスクの増加などの副作用がみられるが、とくにD2、5-HT2c、5-HT3受容体は悪心・嘔吐に関与している可能性があり、制吐薬としての効果が示唆されている。悪心・嘔吐の予防効果を無作為化試験で検証 研究グループは、HECによる悪心・嘔吐に対するオランザピンの予防効果を検証する二重盲検無作為化第III相試験を行った(米国国立がん研究所[NCI]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)0~2で、前化学療法歴がなく、シスプラチンを含むレジメンまたはシクロホスファミド+ドキソルビシンによる治療が予定されているがん患者であった。 これらの患者が、化学療法の第1~4日にオランザピン(10mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられた。全例に、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン、NK1受容体拮抗薬が投与された。 主要評価項目は悪心の予防とし、副次評価項目は嘔吐完全制御(CR)率などであった。「悪心なし」は、視覚アナログスケール(VAS、0~10点、点数が高いほど重度)が0点の場合とし、全期間(0~120時間)、急性期(0~24時間)、遅発期(25~120時間)に分けて評価を行った。CRは、嘔吐のエピソードがなく、かつレスキュー治療が行われなかった場合とした。 2014年8月~2015年3月までに、米国の46施設に380例が登録され、オランザピン群に192例、プラセボ群には188例が割り付けられた。第2日の鎮静が増加、食欲増進に差はない 全体の年齢中央値は57.0歳(範囲:28.0~89.0歳)、女性が72.4%を占めた。原発巣は乳がんが63.7%、肺がんが12.9%、その他が23.4%であった。化学療法は、シスプラチンを含むレジメンが35.8%、シクロホスファミド+ドキソルビシン療法は64.2%だった。 悪心なしの割合は、急性期ではオランザピン群が73.8%、プラセボ群は45.3%(p=0.002)、遅発期ではそれぞれ42.4%、25.4%(p=0.002)、全期間は37.3%、21.9%(p=0.002)であり、いずれもオランザピン群で有意に良好であった。 臨床的に問題となる悪心がない患者(VAS:0~2点)の割合も、急性期(87 vs.70%、p=0.001)、遅発期(72 vs.55%、p=0.001)、全期間(67 vs.49%、p=0.001)のすべてでオランザピン群が有意に優れた。 また、CRの割合も、急性期(86 vs.65%、p<0.001)、遅発期(67 vs.52%、p=0.007)、全期間(64 vs.41%、p<0.001)のすべてでオランザピン群が有意に良好だった。 Grade3の有害事象はオランザピン群で2件(疲労、高血糖)、プラセボ群でも2件(腹痛、下痢)にみられ、Grade4の有害事象はそれぞれ3件(そのうち2件が血液毒性)、0件だった。Grade5は認めなかった。 オランザピン群は、ベースラインと比較した第2日の鎮静の発現(5%が重度)が、プラセボ群に比べ有意に多かったが、第3、4日に継続投与しても第3~5日の鎮静の発現に有意な差はなく、鎮静による治療中止もなかった。また、第2~5日の望ましくない食欲増進の発現にも差は認めなかった。 著者は、「今後の試験では、より高用量および低用量での効果や毒性の評価、多サイクルの化学療法での効果の検討を考慮すべきである」としている。

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医師も医療費のことを考えるべきか?―第12回 肺がん医療向上委員会

 7月4日(月)、都内で「医療者(医師)は医療費のことを考えるべきか?」をテーマに第12回 肺がん医療向上委員会が開催され、後藤 悌氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)が講演を行った。今後のがん治療を変えると言われる免疫チェックポイント阻害薬、ニボルマブが昨年末に肺がんの適応を取得したことで、高額な医療費をめぐる問題に対する関心がますます高まっており、こうした問題は米国では“financial toxicity(経済的毒性)”とも表現される。今回、同氏は医療者の立場からこの問題を論じた。薬価を下げると新薬が開発されなくなる? 日本では、新医薬品の薬価は薬価算定方式により定められ、市場拡大再算定制度によって販売額のきわめて大きい医薬品の薬価を引き下げるなど、国が薬価の伸びを制御している。しかし、医薬品を開発するには膨大なコストがかかる。1つの化合物が新薬として承認される確率は2万5,482分の1であり、その開発費は1,000億円に上るという。医薬品開発費は年々上昇し続けており、上市されない限りコストが回収できない医薬品開発はどの業種よりも効率が悪い。 開発しても、規制当局による製造販売の承認が必要である。それによって安全性や効果を担保している反面、医薬品の価格上昇の一因にもなっている。また、開発費だけでなく、市販後の安全性調査の費用も製造元が負担するなど、医療の発展は製薬会社などの私企業に負うところが大きい。したがって、医薬品の価格を下げると、日本に新規薬剤が導入されなくなるリスクが生じるという矛盾がある、と後藤氏は説明する。日本で医療技術評価が根付かない理由は? 一方で、治療にかかるコストを考えなければならない差し迫った現実があることも事実である。医薬品の価値を考える際、生存期間とQOLを考慮した質調整生存年(Quality Adjusted Life Year:QALY)が効果指標として用いられるが、これに基づき従来の治療薬の1QALY獲得当たりのコストを評価すると、肺がん治療薬のクリゾチニブが2,306万円/QALY、乳がん治療薬のペルツズマブが8,738万円/QALYなど、高額な治療薬が数多くあることがわかる。後藤氏は、ニボルマブの薬価が問題になる以前から、コストの問題を考えずに医療を行ってきた現実を指摘する。しかし、国民皆保険制度と高額療養費制度によって、実際に患者が負担するのはごく一部であり、残りの費用は健康保険料や税金で賄われている。現状のままでは、この“financial toxicity”は将来世代へ重くのしかかることになる。 わが国では、患者が世界でも最低の自己負担額で最善の治療を受けることができ、医師も患者にとって最善の治療をコストに関係なく選択することができる。後藤氏によると、このように現在の医療システムの中で誰も損をしない構造が、日本で医療技術評価が根付かない根底にあるという。そのうえで、この経済的負担を次世代に先送りしないためには、エビデンス、コスト、社会を意識した医療を考えていかなければならず、医療者として今後、類似医薬品を比べるだけの研究ではなく、完治を目指した研究や医療費削減を目的とした研究を進めていく必要がある、と結論を示した。

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【JSMO2016見どころ】肺がん

 2016年7月28日(木)から3日間にわたって、第14回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立って、先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、がん治療の最新動向と、今回のJSMOで注目すべき各領域のトピックが紹介された。 このうち、肺がんについては里内 美弥子氏(兵庫県立がんセンター 呼吸器内科部長)が登壇した。以下、里内氏のコメントを紹介する。【里内 美弥子氏コメント】 肺がんは、がんの個別化治療や分子標的薬の開発が最も進んだ領域であり、昨年末には免疫チェックポイント阻害剤も実地医療に導入され、治療効果を上げてきている。今年はさらに分子標的治療薬の耐性に効果を示す薬剤などが臨床導入されており、今後も新薬導入が続く見通しとなっており、大きな治療の変遷の只中にある。 これらの進展を背景に本学会では、免疫療法の臨床成績、EGFR変異・ALK融合遺伝子陽性肺がんの最新治療、抗がん剤耐性の克服、これら薬剤のバイオマーカー診断に関するトピックス、本邦で行われている全国規模の肺がん遺伝子解析(LC-SCRUM)の現状と、この解析で判明したドライバー変異を持った肺がんの新薬での治療成績など最新の話題が数多く発表される。海外の第一線で活躍する多くの研究者を招聘しており、これらのホットな話題に世界レベルの活発かつ意義深い討論が期待される。【注目演題】 本学会で、里内氏が肺がん関連の注目演題として挙げたのは、以下のとおり。一般口演「EGFR遺伝子変異陽性肺がん」日時:7月29日(金)16:00~17:00場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「肺がん EGFR・VEGFR」日時:7月29日(金)8:30~9:30場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「肺がん バイオマーカー」日時:7月29日(金)9:30~10:30場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「肺がん ALK、ROS、RET」日時:7月29日(金)10:30~11:30場所:Room3(神戸国際展示場2号館2F 2A会議室)「分子・遺伝子診断」日時:7月28日(木)14:30~15:30場所:Room10(神戸国際会議場4F401・402会議室)International Symposium「ALK inhibitors and other targeted therapies」日時:7月28日(木)9:00~11:00場所:Room5(神戸国際展示場1号館2F展示室A)「Resistance of cancer molecular targeted drug and new insights of overcoming therapy」日時:7月28日(木)12:30~14:30場所:Room6(神戸国際展示場1号館2F展示室B)「Immune Check Point Inhibitor;Paradigm Shift of Cancer Treatment」日時:7月28日(木)13:15~14:45場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)「Resistance of cancer molecular targeted drug and new insights of overcoming therapy」日時:7月28日(木)12:30~14:30場所:Room6(神戸国際展示場1号館2F展示室B)Panel Discussion「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」日時:7月30日(土)13:30~15:30場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)ESMO/JSMO Joint Symposium「Evolving molecular targeting treatment for lung cancer」日時:7月28日(木)12:50~14:50場所:Room5(神戸国際展示場1号館2F展示室A)ASCO/JSMO Joint Symposium「Cancer Immunotherapy」日時:7月30日(土)8:50~11:50場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)Encore Session日時:7月29日(金)15:40~17:00場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)【第14回日本臨床腫瘍学会学術集会】会期:2016年7月28日(木)~30日(土)会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場会長:南 博信(神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科 教授)テーマ:Breaking through the Barriers:Optimizing Outcomes by Integration and Interaction第14回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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【JSMO2016見どころ】免疫療法

 2016年7月28日(木)から3日間にわたって、第14回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立って、先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、がん治療の最新動向と、今回のJSMOで注目すべき各領域のトピックが紹介された。 このうち、がん免疫療法については西川 博嘉氏(国立がん研究センター研究所/先端医療開発センター 腫瘍免疫学担当/免疫TR分野)が登壇した。以下、西川氏のコメントを紹介する。【西川 博嘉氏コメント】 免疫チェックポイント阻害剤(とくに抗PD-1抗体)が悪性黒色腫、非小細胞肺がんに臨床導入され、がんに対する免疫応答を人為的に操作することで、がん治療が可能であることが示された。これに続いて腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、一部の大腸がんで従来の治療に対する優位性が示され、臨床応用が期待されている。また膀胱がんに対しては、抗PD-L1抗体がFDAに承認され、さまざまな免疫チェックポイント阻害剤の臨床導入が加速している。加えて、これらのがん免疫療法では、臨床効果が20~30%程度の患者でしかみられないことから、レスポンダーの層別化、ノンレスポンダーへの新規がん免疫療法開発の検討も急速に進んでいる。一方、レスポンダーでの投与継続の必要性、従来の抗がん剤ではみられない副作用など、解決すべき課題も多い。本学会では、世界初の免疫チェックポイント阻害剤、抗CTLA-4抗体の開発者であるJames Allison博士をはじめとする国内外の研究者を集め、現在のがん免疫療法が抱える課題について討論し、今後の展開を考える。【注目演題】 本学会では、免疫チェックポイント阻害薬企画特集として、以下7つの演題が用意されている。特別講演「がん免疫療法の進歩」日時:7月29日(金)11:00~12:00場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南) 教育講演「免疫チェックポイント阻害剤~過去、現在、今後の展望~」日時:7月28日(木)9:00~9:30場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)International Symposium「免疫チェックポイント阻害薬の新展開」日時:7月28日(木)13:15~14:45場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)「免疫チェックポイント阻害薬の期待」日時:7月28日(木)14:55~16:55場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)「免疫チェックポイント阻害薬に対するバイオマーカー研究の最前線」日時:7月29日(金)8:30~10:10場所:Room5(神戸国際展示場1号館2F展示室A) Panel Discussion「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」日時:7月30日(土)13:30~15:30場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)JSMO/ASCO Joint Symposium「Cancer Immunotherapy」日時:7月30日(土)8:50~11:50場所:Room1(神戸国際展示場2号館1Fコンベンションホール南)【第14回日本臨床腫瘍学会学術集会】会期:2016年7月28日(木)~30日(土)会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場会長:南 博信(神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科 教授)テーマ:Breaking through the Barriers:Optimizing Outcomes by Integration and Interaction第14回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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失業とがん死亡の関連:世界銀行とWHOのデータから/Lancet

 失業率上昇はがん死亡率上昇と関連する。しかし、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC;http://uhcday.jp)はこの影響を阻止することが可能である。また、公的保健医療支出の増加はがん死亡率の低下と関連していることを、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのMahiben Maruthappu氏らが、がん死亡率と失業率、公的保健医療支出との関連、ならびにUHCの影響を調査する縦断的研究の結果、報告した。世界経済危機は、失業率の増加、および公的保健医療支出の減少と関連することが知られる。これまでそれに関して、がん転帰との関連を分析した研究はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2016年5月25日号掲載の報告。世界各国のがん死亡と経済指標の関連を分析 研究グループは、世界銀行の2013年版データセットから経済データを得るとともに、WHO死亡データベースから1990~2010年のがん死亡に関するデータを入手した。調査したがん種は、治療可能ながんとして生存率50%超の乳がん(女性)、前立腺がん(男性)、大腸がん(男性・女性)とし、5年生存率が10%に満たない肺がんおよび膵臓がんは治療不能がんにまとめた。なお、中国、インドおよびサハラ以南のアフリカについては完全ながん死亡データを得られなかった。 多変量回帰分析を用い、がん死亡と失業、公的保健医療支出との関連をUHCの有無別に検討した。また、2008年から2010年に多くの国で急激な失業率上昇が発生したことから、それ以前の傾向に基づいた推定死亡率と観察データを比較した。失業率上昇でがん死亡率が上昇、ただし国民皆保険制度がある国を除く 失業率については75ヵ国21億600万人、公的保健医療支出については79ヵ国21億5,600万人のデータを入手。2000~10年のがん死亡データが完全であったのは61ヵ国であり、最終解析には35ヵ国のデータが包含された。 解析の結果、失業率上昇は、すべてのがん死亡率、および女性の肺がんを除く各がん種の死亡率上昇と有意に関連していた。一方で、治療不能がんの死亡率は失業率の変化との有意な関連は認められなかった。 治療可能がんの場合、有意な関連は失業率上昇後5年間持続していた。しかし、UHCがある国(日本を含む26ヵ国)では、失業率とがん死亡率との有意な関連は認められなかった。また、公的保健医療支出が増加すると、すべてのがん、治療可能がん、およびがん種別の死亡率は有意に減少する関連も認められた。 2000~07年の傾向に基づく解析の結果、2008~10年において一部の治療可能がんの過剰死亡は4万人以上と算出され、そのほとんどがUHCのない国での死亡であった。 これらの結果を踏まえて著者は、保健医療アクセスの重要性を指摘。また、「2008~10年の世界経済危機は、経済協力開発機構(OECD)加盟国だけでも推定26万人以上のがん関連死増加と関連していたと推定される」と報告をまとめている。

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非小細胞肺がんに新たなALK阻害剤 セリチニブ発売

 ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:ダーク・コッシャ)は、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(以下、ALK+ NSCLC)の治療薬として、本年(2016年)3月28日に製造販売承認を取得したセリチニブ(商品名:ジカディア カプセル150mg)の販売を本日開始した。 セリチニブは、受容体チロシンキナーゼであるALKの自己リン酸化を阻害し、がん細胞の増殖を抑制する、強力かつ選択的な経口ALK阻害剤。現在、ALK+ NSCLCの治療には、複数のALK阻害剤が用いられているが、既存のALK阻害剤に不耐容であったり、効果が十分ではない、耐性により増悪するケースが報告されている。またALK+ NSCLCでは脳転移のリスクが増加することが示唆されており、脳転移が治療上の大きな課題となっている。 セリチニブは、化学療法及び既存のALK阻害剤(クリゾチニブ)治療歴があるALK+ NSCLC患者を対象とした国際共同第II相臨床試験(日本人を含む)において、奏効率37.1%(95%CI:29.1-45.7%)で主要目的を達成し、高い抗腫瘍効果を示した。同様に、ALK+ NSCLC患者においても、脳転移病変に対するセリチニブの抗腫瘍効果が示唆された。なお、 セリチニブの主な副作用は、悪心(77.9%)、下痢(77.1%)、嘔吐(58.6%)、ALT(GPT)増加(37.9%)、食欲減退(35.7%)、AST(GOT)増加(28.6%)であった。ノバルティス ファーマ株式会社のプレスリリースはこちら

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呼吸器の薬の考え方、使い方 ver.2

呼吸器科専門医の処方センスを学ぶ吸入薬、禁煙補助薬、抗結核薬、対症療法に用いる去痰薬や鎮咳薬、肺高血圧症の治療に用いる循環器系の薬剤、肺がん治療の分子標的薬、意外に深い含嗽薬やトローチまで、呼吸器科で用いるさまざまな薬の薬剤情報、薬理と臨床試験、処方に際しての注意点など医療従事者が知っておきたい薬の必要知識+αをまとめた好評書の改訂第2版。新規薬剤の追加や吸入方法の図解描きおろしなど、ページ数大幅増加でさらに内容が充実しています。専門医はもちろんのこと、すべての呼吸器疾患を診療する医師、医療関係者必読の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   呼吸器の薬の考え方,使い方 ver.2定価 5,200円 + 税判型 A5判頁数 454頁発行 2016年4月著者 倉原 優(近畿中央胸部疾患センター)Amazonでご購入の場合はこちら

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1万人の薬剤耐性例にベネフィットを

 2016年5月16日都内にて、「肺がん個別化医療を新たなステージに導く薬剤耐性獲得後の治療選択肢」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。 EGFR変異陽性の非小細胞肺がんの治療においてEGFR-TKI(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)は有効だが、1年ほどで生じる薬剤耐性が問題となっていた。この問題を解決するために開発されたのが、第3世代EGFR-TKI「タグリッソ錠」(一般名:オシメルチニブメシル酸塩)である。 演者である大江 裕一郎氏 (国立がん研究センター中央病院 副院長 呼吸器内科 呼吸器内科部長)は本セミナーにて「肺がん診療におけるタグリッソの役割」について講演した。 以下、セミナーの内容を記載する。わずか7ヵ月で承認された、第3世代EGFR-TKI 既存のEGFR-TKIは治療開始1~1年半ほどで薬剤耐性が生じることが多く、機序として「T790M遺伝子変異」が最も多く報告されている。このT790M変異に特化して開発された薬が「タグリッソ」である。 これまでの第1、第2世代のEGFR-TKIは、腫瘍細胞のEGFR変異を阻害する力は強いものの、T790M耐性変異への阻害作用は弱かった。また、正常上皮細胞に多く存在する、野生型EGFRも阻害していた。 第3世代EGFR-TKIのタグリッソは、既存薬とは異なるユニークな構造を持ち、EGFR変異に加え、耐性要因となるEGFR T790Mに阻害活性を持つ。また、野生型EGFRへの阻害活性は従来薬よりも比較的弱いことが特徴だ。 日本でも優先審査品目に指定され、申請から7ヵ月という短い期間で製造販売承認を取得した。すでに、米国のNCCNガイドラインでは非小細胞肺がんの2次治療として推奨されており、日本でも次回のガイドライン改訂でこれに近い形になると予想される。2次治療での奏効率は66.1%、PFSは9.7ヵ月 タグリッソの有効性を検討した試験に、AURA試験およびAURA2試験の統合解析がある。T790M変異陽性の非小細胞肺がん患者411例を対象に、タグリッソ80mgを1日1回経口投与した結果、奏効率は66.1%(95%CI:61.2~70.7%)、PFS中央値は9.7ヵ月であった。 本試験には日本人患者が約20%(81例/411例)含まれており、日本人患者のPFSは9.7ヵ月と有効性に差は認められていない。継続した情報の集積が求められる 一方、同試験でグレード3以上の副作用発現率は日本人患者で多かった(日本人:24例/80例、全症例:48例/411例)。これが人種差によるものなのか、抗がん剤による前治療の影響なのか、についてはまだわかっていない。また、EGFR-TKIに限らず日本人は間質性肺炎を起こしやすく、この点には注意が必要である。また、タグリッソにおいてもすでに耐性の報告(C797S変異)があり、今後も全例調査による継続した情報の集積が求められる。1万人のEGFR T790M陽性例にベネフィットを 日本における肺がん患者数は約7万5,000人。そのうちEGFR変異陽性は2万人で、さらに1万人がEGFR T790M陽性と想定される。タグリッソは、この1万人の患者にベネフィットをもたらす新薬と考えてよいだろう。 セミナーの後半、アストラゼネカ 代表取締役社長のガブリエル・ベルチ氏も登壇し、「ベネフィットを享受できる患者さんを増やすために、製薬企業として適切な情報提供を行っていきたい」とコメントした。 現在も1次治療を検討する「FLAURA試験」、術後補助療法を検討する「ADAURA試験」が進行中で、今後、タグリッソの活用の幅は広がっていくと予想される。

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過去の大気汚染、死亡率に長期影響か

 過去の大気汚染への曝露経験は、数十年経ってからの死亡率とも関連していることが、英国・Small Area Health Statistics Unit(SAHSU)のAnna Hansell氏らにより報告された。Thorax誌2016年4月号の掲載報告。 大気汚染の短期的・中期的な死亡率に対する影響は知られているものの、10年以上の長期的な影響を検討した研究は少なく、さらに曝露状況を複数の時点で測定したものはごく限られている。1952年のロンドンスモッグ事件に象徴される重度の大気汚染を経験した英国では、1950年代から1990年代まで大気質モニタリングを実施している。著者らは、そのデータを用いて大気汚染がもたらす長期の死亡リスクを評価するため、38年にわたる前向きコホート研究を行った。 対象者はOffice for National Statistics(ONS)に登録された英国出身・在住の36万7,658人で、居住地域とその地域で測定された黒煙(BS)、SO2(1971、1981、1991年)、PM10(2001年)の大気中濃度とのマッチングを行った。アウトカムは事故死を除く全死因死亡率、心血管系および呼吸器系疾患による死亡率のオッズ比(OR)が用いられた。年齢、性別、個人と居住地域の社会経済レベル、地理的要因、喫煙によるリスクを調整したうえで、区分線形モデルによる濃度反応曲線を用いて大気汚染が死亡率へ与える影響を評価した。喫煙によるリスクは、地域レベルでの肺がん死亡の相対リスクが用いられた。 主な結果は以下のとおり。・曝露から数十年経過後も、BSおよびSO2への曝露と死亡率との間には関連がみられた。・1971年時点でのBSへの曝露が、2002~09年における全死因死亡率(OR:1.02、95%信頼区間[CI]:1.01~1.04)、ならびに呼吸器系疾患による死亡率(OR:1.05、95%CI:1.01~1.09)と有意に関連していた。・2001年時点でのPM10への曝露は、2002~09年における全アウトカムと関連しており、とくに呼吸器系疾患による死亡率との強い関連がみられた(OR:1.22、95%CI:1.04~1.44)。

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認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.1

第1回 呼吸器 第2回 感染症 第3回 アレルギー(※正誤表) 日本内科学会の認定内科医試験を受験する先生方、必見です。出題基準ランクAの疾患を中心に各領域の予想問題を作成、出題意図と関連知識を解説していく“完全対策”DVDができました(全4巻)。講師は、若手育成に定評があり数々の資格試験を突破してきた、聖マリア病院の長門直先生。総合内科専門医試験を受ける先生方にとっては、基礎固め、総復習に最適。これを見れば、勉強するポイント、頻出のトピックがわかります!第1回 呼吸器 出題される疾患が多い呼吸器の中でも、とくに結核は疫学・検査・診断・治療・感染予防と、押さえるところが多い重要疾患です。その他、喘息の重症度分類・治療ステップ、肺がんの病期決定と治療など、必ず出題されるポイントを押さえ、しっかりと整理しておきましょう。第2回 感染症 染色の種類や菌種など、細かいところまで出題が予想される感染症。尿路感染症で膿尿と判定する数値や、菌血症とみなす場合の細菌の名前など、細部までしっかり覚えることが重要です。また、感染症法1~5類指定の疾患はきちんと確認しておきましょう。5類のうち例外としてただちに届出が必要な疾患は?過去に出題されています!第3回 アレルギー 出題数の少ないアレルギーですが、病型や好発期など、疾患ごとにきちんと暗記する必要があります。鼻アレルギーの病型によって異なる投与薬剤の違いや、各食物アレルギー患者への禁忌医薬品など、よく出題されるポイントが明確なので、これを見ればどこを押さえればよいかがすぐにわかります。

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肺がん医療は「協働」の時代

 2016年4月15日、都内で日本肺癌学会主催の第11回肺がん医療向上委員会が開催され、特別講演「医療者・社会と共に、患者が変える肺がん医療」が行われた。 本委員会は、岐阜市民病院がんセンターの診療局長で、肺がん医療向上委員会副委員長の澤 祥幸氏による、「肺がん領域においては、患者自身の努力だけでなく周囲の支援が必要」との言葉により開始された。今回の講演者は2人で、両人ともステージ4の肺がんを患っている。日本の患者にも「患者力」を 初めに、山岡 鉄也氏による講演が行われた。山岡氏は肺がんの罹患経験を生かしたペイシャント・アドボカシー(患者支援)活動を行っている。国際肺癌学会(IASLC)日本初の患者委員として選ばれた山岡氏は、昨年、世界肺癌学会議(WCLC)に参加した際に感じた海外の「患者力」の高さに驚いたという。同会議は肺がん患者ならばすべてのプログラムに参加可能となっており、まさに患者中心の考え方が実践されていたのだ。その経験を踏まえて山岡氏は、「日本国内においてもまずは患者自身が病気を理解し、主体的に治療計画に参加することが重要」と、患者力を高める必要性を強調した。肺がん医療における「協働」の可能性 続いて、長谷川 一男氏による講演が行われた。長谷川氏は、テレビディレクターという職業を生かして自身の闘病生活を描いたドキュメンタリー番組を作成するなど、メディアを通して肺がん患者の現実を伝えている。罹患発覚7年目となる現在も精力的に活動を行っており、昨年には肺がん患者の会「ワンステップ!」を立ち上げた。講演の中で長谷川氏は、「患者自身が、支えてくれようとしているものの存在に気付くこと」が重要と述べ、これからの肺がん医療が目指すべき、医療関係者・製薬業界・マスメディア・企業・行政の「協働」の可能性について言及した。 肺がん領域の患者団体が直面する困難としてはその維持の難しさがあり、いかにしてアドボカシーを持続可能なものにしていくかが今後の課題だという。その解決の糸口となるのは、長谷川氏の言葉のとおり、患者だけでなく医療者・社会全体が「協働」して行う患者支援にあるのではないだろうか。

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