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レポーター紹介ESMO(European Society for Medical Oncology)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月27日~10月1日の期間に行われた。今年は9月初めに世界肺がん学会がESMOとまったく同じ会場であるスペインのバルセロナで行われていたが、昨年のESMOと比べると、肺がんの分野においても注目演題が複数個存在した。とくに、Presidential Symposiumにおいて、肺がんからFLAURAとCheckMate-227の2演題が報告されており、各試験への関心の高さがうかがわれた。また、約30,000人が参加し、多くの演題が報告された。肺がん領域ではこの2つの演題を中心に、いくつか紹介する。分子標的治療のトピックFLAURA試験学会開催前から、全生存期間(OS)において統計学的有意差が出ていることが報告されており、どのような生存曲線が描かれ、その差がどれくらいなのか、全生存中央期間がどれくらいなのかと、注目されていたFLAURA試験のOSが報告された。FLAURA試験は、30ヵ国556例を対象に行われた。EGFRのcommon変異(Del19/L858R)を有する進行NSCLCを、オシメルチニブ群(279例)と標準療法群:ゲフィチニブもしくはエルロチニブ(277例)に1対1の割合で割り付けて行われた。脳転移がある患者も神経学的に安定している患者は参加可能とされ、標準療法群で増悪となり中央判定でT790Mが同定された場合にはオシメルチニブへのクロスオーバーが可能であった。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、有意差をもって、オシメルチニブ群が標準治療群より延長することが示されていた。今回のOSの結果は、OS中央値はオシメルチニブ群が38.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:34.5~41.8)、標準療法群が31.8ヵ月(95%CI:26.6~36.0)で、ハザード比(HR)は0.799(95%CI:0.641~0.997)、p=0.0462であり、有意にオシメルチニブ群でOSが延長していた。また、OSのサブグループ解析では、アジア人のHRと遺伝子変異がL858RのグループのHRがそれぞれ0.995および0.996と、ほぼ1に近い数字であった。とくに、アジア人におけるOSのカプランマイヤー曲線は38ヵ月頃で交差しており議論の余地を残す結果になっている。一方、非アジア人は9ヵ月頃から曲線の差が開き始め、その後、差は広くなっており、アジアと非アジアではやや異なる結果となった。PD後の後治療をみると、各群ともに約30%が次治療を受けておらず、日本の実臨床に合わない印象があった。さらに、標準療法群の85例(次治療に移行した群の47%)がオシメルチニブにクロスオーバーされていた。今後は、日本人のOSサブグループ解析がどのような結果になっているのかが注目されるところである。S.S. Ramalingam, et al. LBA5免疫療法のトピックCheckMate-227試験CheckMate-227 Part 1試験は、非扁平上皮がん、扁平上皮がんの組織型を含む未治療の進行NSCLC患者を対象にした非盲検フェーズ3試験。Part 1a、Part 1bから構成されている。Part 1aは、PD-L1陽性患者(1%以上)1,189例を、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群、ニボルマブ単剤療法群、化学療法群に1対1対1の割合で割り付け、Part 1bは、PD-L1陰性患者550例を、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群、ニボルマブと化学療法併用群、化学療法群に1対1対1の割合で割り付けて評価した。この試験も、学会前より、OSにおいてPart 1aで有意差を認め、Part 1bでは有意差を認めないことが報告されており、その詳細な結果が注目されていた。Part 1には2つの主要評価項目が設定されていた。1つはPart 1aに組み入れられた患者で評価するPD-L1発現陽性患者におけるOSの評価。もう1つは、Part 1aと1bに組み入れられた患者で評価した腫瘍遺伝子変異量(TMB)10mut/Mb以上の患者における盲検下独立中央判定によるPFSの評価。TMB10mut/Mb以上の患者において、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群が化学療法群よりも有意にPFSを延長することはすでに報告されている。今回のOSの評価では、PD-L1陽性患者(Part 1a)におけるニボルマブとイピリムマブ併用療法群(396例)のOS中央値は17.1ヵ月、化学療法群(397例)は14.9ヵ月、HR:0.79(97.72%CI:0.65~0.96)、p=0.007で有意にニボルマブとイピリムマブ併用療法群で延長していた。なお、ニボルマブ単剤療法群(396例)のOS中央値は15.7ヵ月であった。1年OS率はニボルマブとイピリムマブ併用療法群が63%、化学療法群が56%、ニボルマブ単剤療法群が57%、2年OS率はニボルマブとイピリムマブ併用療法群が40%、化学療法群が33%、ニボルマブ単剤療法群が36%となっており、併用群は化学療法やニボルマブ単剤療法群よりtail効果が高い所に出ている可能性があり、今後の長期予後調査が楽しみな結果であった。また、PD-L1発現が50%以上の患者に限定すると、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群(205例)のOS中央値は21.2ヵ月、化学療法群(192例)は14.0ヵ月で、HRは0.70(95%CI:0.55~0.90)となった。ニボルマブ単剤療法群(214例)のOS中央値は18.1ヵ月、化学療法群に対するHRは0.79(95%CI:0.63~1.01)で、免疫チェックポイント阻害薬が含まれる群の効果が高まった。奏効率、PFS、DORも同様だった。一方、PD-L1陰性患者(Part 1b)におけるニボルマブとイピリムマブ併用療法群(187例)のOS中央値は17.2ヵ月、化学療法群(186例)は12.2ヵ月で、HRは0.62(95%CI:0.48~0.78)と探索的研究ではあるが、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群で有意に延長していた。PD-L1の発現にかかわらず、全患者におけるOS中央値は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群(583例)は17.1ヵ月、化学療法群(583例)は13.9ヵ月、HRは0.73(95%CI:0.64~0.84)であり、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群で有意にOSが延長していた。また、OSのサブグループ解析において、TMBの高低にかかわらず、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群は化学療法群と比べOSの延長が示唆されており、以前に発表されたPFSとは異なる結果となり、今後の展開が期待される。S. Peters, eta la. LBA4IMpower110試験IMpower110試験は、PD-L1発現がTCまたはICで1%以上の未治療非小細胞肺がん(NSCLC)患者で、アテゾリズマブ単剤療法とプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法を比較する、フェーズ3、非盲検ランダム化比較試験である。主要評価項目は、EGFRおよび/またはALKの遺伝子変異陽性を有する患者を除外した患者群におけるOSである。OSの検証は、PD-L1のサブグループにより、TC3またはIC3、TC2/3またはIC2/3、TC1/2/3またはIC1/2/3の順に段階的に行われ、これら3つの患者群すべてでOSがポジティブな結果となった場合、PFSの正式な検証を行うこととされた。本研究では、TC3またはIC3群では、アテゾリズマブ群20.2ヵ月(95%CI:16.5~NE)、化学療法群13.1ヵ月(95%CI:7.4~16.5)、HR:0.59(95%CI:0.40~0.89、p=0.0106)となり、PD-L1高発現(TC3またはIC3-野生型)の患者に対する1次治療として、アテゾリズマブ単剤療法は、プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法と比べてOSを有意に延長することが示された。TC2/3またはIC2/3の患者では、アテゾリズマブ群18.2ヵ月(95%CI:13.3~NE)、化学療法群14.9ヵ月(95%CI:10.8~16.6)、HR:0.72(95%CI:0.52~0.99、p=0.0416)となった。ただし、この解析では事前に定めた境界を超えなかったため、TC1/2/3またはIC1/2/3-野生型の患者におけるOSの解析は正式な検証とならなかった。結果的には、まだ検証は続くものの、ペムブロリズマブのPD-L1高発現(50%以上)に追随するような結果であった。D.Spigel, et al. LBA78その他のトピック個人的には、宮本先生がLC-SCRUMの変遷を発表され、その発表の中でラグビー日本代表がアイルランド代表に勝ったことを話されたときに聴衆から大きな拍手が起こったことが一番印象に残っている。REMORA試験REMORA試験は、プラチナ製剤を含む化学療法を受けている既治療胸腺がんに対して、マルチチロシンキナーゼ阻害薬であるレンバチニブの有効性をみる単群フェーズ2試験である。胸腺がんは、化学療法のレジメンが限られており、治療法の開発が切望される分野である。今回、レンバチニブは胸腺がんに対して、PFS中央値9.3ヵ月、OS中央値未到達、奏効率38.1%、病勢制御率95.2%と単群試験ではあるが非常に有用な試験結果が報告された。今後の開発が楽しみである。S. Itoh, et al. 1844O