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<今回のPoint>GAは、入退院支援加算+総合機能評価加算の枠組みで診療報酬に組み込める多職種連携を広げることでほかの加算と組み合わせが可能診療報酬は、GAを評価・活用し“行動につなげる”ことではじめて得られる―診療報酬という視点から考えるGAの価値―高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)に関する講演をすると、毎回のように次の質問をいただきます。「どれくらい時間がかかるのか?」「誰が、いつ行うべきか?」「評価結果をどう活かすのか?」そして―「診療報酬になるのか?」GAを実施していない施設では、「たとえ評価表への記載だけなら数分で終了します」と言われても、結果の評価・記録・共有・多職種連携のすべてが現場にとって“負担増”に見えるのが現実です。そのため、「もし診療報酬で評価されるなら…」と考えるのは自然なことかもしれません。今回は、GAがどのように診療報酬上の加算として位置付けられるか、実例を交えて私見をご紹介します。GA評価の基本は「入退院支援加算+総合機能評価加算」令和6年度診療報酬改定1)では、GAとの親和性が高い以下の加算が整理されています。●入退院支援加算・入院時支援加算・入退院支援加算1(700点)「退院困難な要因(悪性腫瘍含む)を有する入院中の患者であって、在宅での療養を希望するもの」に対して入退院支援を行った場合。・入院時支援加算1(240点)/ 入院時支援加算2(200点)入院前に患者の栄養状態・併用薬などを確認し、療養支援計画書を作成した場合。これらは、すでに多くの急性期病院で標準的に運用されている加算です。さらにこれらの加算に追加してGAを行うことで、以下の算定が可能です。・総合機能評価加算(50点)65歳以上、もしくは40~64歳の悪性腫瘍の患者に対し「身体機能や退院後に必要となりうる介護サービス等について総合的に評価を行った上で、当該評価の結果を入院中の診療や適切な退院支援に活用する」場合この加算の要件としては、GAで得られた情報を患者および家族に説明し、診療録に記載する必要がありますが、日常的にGAを導入している施設では、すでにこれらを満たす体制が整っていることが多いはずです。「たった50点」で終わらせない多職種連携ここで、「50点だけ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際にはGAを起点に多職種の支援に展開することで、ほかの加算の可能性も大きく広がります。たとえば、日本老年医学会のCGA72)では、評価で「否」と答えた項目に対して、次のアクションが提示されており、評価から介入への流れが可視化されています(表1)。GAという“点”を多職種につなげて“線”にすることで、より価値が出る、ということですね。(表1)画像を拡大する症例で考える:実際にどこまで加算できるか?第1、2回提示の症例をもとに、加算の可能性を検討してみます。<症例>(第1回、第2回と同じ患者)88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望。既往に高血圧、糖尿病、軽度の認知機能低下があり、PSは1〜2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。告知後、看護師が待合でG8(Geriatric8)を実施したところ、スコアは10.5点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限など)。改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)は20点で認知症の可能性あり。多職種カンファレンスでは、免疫チェックポイント阻害薬の単剤投与を提案。薬剤師には併用薬の整理を、MSWには家庭環境の支援を依頼し、チームで治療準備を整えることとした。(表2)画像を拡大する表2を踏まえ、本症例で実際に見込める加算「入退院支援加算」+「入院時支援加算」+「総合機能評価加算」GAの結果をもとに入院診療計画書・療養計画書を作成する→計950~990点 上記を基本とし、GAM(GA guided management)として多職種連携することで、本症例は下記について追加で算定できる可能性があります。 多職種カンファレンスを実施し意思決定支援等を行う→「がん患者指導管理料 (イ) 500点」 薬剤師に併用薬の整理を依頼→「薬剤総合評価調整加算 100点」(退院時1回)および「薬剤調整加算 150点」 外出の制限がありリハビリテーション依頼→「がん患者リハビリテーション料(1単位)205点」 G8の点数が低く、栄養状態に脆弱性あり→「栄養食事指導料1 260点」合計:2,165~2,205点いかがでしょうか。単体の50点加算にとどまらず、GA結果を起点にGAMを展開すれば、複数の加算を組み合わせることが可能です。総合機能評価加算は入退院支援加算への追加であり、その内容が入院もしくは退院支援に使用されることが必要です。よって、少なくとも関係学会でのガイドラインに則して評価ツールが利用され、その結果に応じた対応をすることで入院中もしくは退院後の生活支援につながることが期待されています。重要なのは、「GAを実施して記録した」だけでは加算にはならないということです。なお、診療報酬の算定については施設によって要件が異なることをご理解いただくとともに、各評価の算定要件は必ずご確認のうえ運用ください 。1)厚生労働省:令和6年度診療報酬改定について 2)日本老年医学会:高齢者診療におけるお役立ちツール 講師紹介