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抗菌薬・PPI、NSCLCの術前ICI+化学療法への影響は?(CReGYT-04 Neo-Venus副次解析)

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性の低下と関連する可能性が指摘されている。しかし、術前ICI+化学療法などの周術期治療に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、切除可能NSCLCに対する術前ICI+化学療法について、抗菌薬やPPIが及ぼす影響を多施設共同後ろ向き観察研究「CReGYT-04 Neo-Venus」の副次解析で評価した。その結果、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の奏効と有意な関連がみられなかった。本研究結果は、戸田 道仁氏(関西労災病院 呼吸器外科)らによって、Lung Cancer誌2026年4月号で報告された。 本研究は日本の29施設で実施された。対象は、2023年3月~2024年7月の期間に、ニボルマブ+化学療法による術前治療を開始した切除可能StageIIA~IIIBのNSCLC患者131例とした。根治的手術を受け、外科的転帰の解析対象となった113例について、治療開始前30日以内の抗菌薬やPPIの使用と奏効割合(ORR)、病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)などとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬の使用は4.4%(5例)、PPIの使用は20.4%(23例)にみられた。・抗菌薬の有無別にORR、pCR、MPRを評価した結果、抗菌薬の有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(抗菌薬ありvs.なしの値を示す)。 ORR:80.0%vs.70.4%(p=1.000) pCR:40.0%vs.35.8%(p=1.000) MPR:60.0%vs.59.6%(p=1.000)・PPIの有無別にORR、pCR、MPRを評価しても、PPIの有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(PPIありvs.なしの値を示す)。 ORR:78.3%vs.68.9%(p=0.532) pCR:43.5%vs.33.3%(p=0.507) MPR:60.9%vs.58.9%(p=1.000)・感度解析として、逆確率重み付け解析を実施しても抗菌薬やPPIの使用は、ORR、pCR、MPRに有意な影響を示さなかった。・多変量解析の結果、PD-L1 TPS 50%以上(オッズ比[OR]:9.660、95%信頼区間[CI]:3.493~30.405、p<0.05)およびStageII(OR:5.208、95%CI:1.895~16.075、p<0.05)がpCRの独立した予測因子であった 。・PD-L1 TPS 50%以上(OR:7.259、95%CI:2.650~23.628、p<0.05)は、MPRについても独立した予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「切除可能NSCLC患者において、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の効果との有意な関連はみられなかった」とまとめた。また「より大規模なサンプルサイズで、長期フォローアップを伴う研究が必要である」と指摘している。

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苦痛の評価が難しい患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第119回

苦痛の評価が難しい患者さん症状緩和の講演をすると必ずと言っていいほど「苦痛の評価が難しい患者さんへの対応」を聞かれます。皆さん、悩まされることは一緒ですよね。この機会に私なりの工夫を整理してみます。今日の質問高齢者をケアすることが多いのですが、患者の苦痛を評価する難しさを感じます。苦痛の症状は和らげたいのですが、苦痛を評価するって実はかなり難しいのではと思います。皆さんはどのように対応されているのでしょうか?最初にお伝えしたいのが、今回の質問者は「しっかりと緩和ケアを実践されている」ということです。苦痛緩和を大切に考え、苦痛の評価を丁寧にしようとしているからこその質問ですよね。難しい状況に対し、丁寧なケアを提供しようとしていること自体が本当に大切な態度であり、自信を持ってほしいと思います。私が「苦痛の評価は難しい」と感じる患者の特性や状況があります。最初に思い浮かぶのは、患者に意識障害があり、言葉でのコミュニケーションが難しいケースです。お看取りが近くなると、大半の患者がこうした状況になるので、多くの医療者が経験しているでしょう。せん妄も意識障害ですので、この範疇に入るでしょう。こうした場合、もともと関わってきた患者であれば、表情などの非言語的なサインに注目して、家族や介護・医療関係者で「以前の様子と比べると苦しそうに見える」といった印象を擦り合わせるのが良いと思います。別の状況として、患者が苦痛を言いたがらないといったケースもあります。これはさまざまな要因で生じますが、私の経験からは、「介護者や医療者に遠慮している」「医療用オピオイドなど、薬剤への抵抗感がある」という理由が多かったです。前者の場合、苦痛を訴えることで周囲が対応することを気にされているのでしょう。苦痛を非常に強く訴える患者さんもいれば、医療者を気遣って夜通し苦痛に耐える患者さんもいて、苦痛に対する態度は本当に人それぞれだと感じます。遠慮しがちな方に対しては、「痛みや苦痛は訴えていただいたほうが助かります」「我慢されているのかと心配しています」と伝えることが多いです。ただ、前述のように苦痛との向き合い方は人それぞれの面もあり、「見守る姿勢」も大切だと思っています。薬剤への抵抗感が理由の場合、正確な情報提供をしたうえで、「どのような点が心配なのか」を聞くようにしています。「以前、鎮痛薬を飲んだ際に気分が悪くなったんです」といった過去の経験や、「モルヒネのせいで亡くなってしまった人がいると聞いた」という誤った知識に基づく場合も多いので、再度説明を試みます。ただし、考えを無理に修正しようとすると対立関係になることもあるので、注意が必要です。苦痛の評価が難しい患者の対応について考えてみました。さまざまな工夫ができる分野かと思いますので、皆さんの実践もぜひ聞かせてください。今日のTips今日のTips苦痛の評価が難しくなっている要因に合わせ、対応を考えよう。

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若年成人のがん、唯一死亡率が増えているのは?

 若年成人におけるがん罹患率の増加を報告する研究は多数存在するが、検出バイアスの影響を受けにくい死亡率ではどうか。50歳未満の人々における主要5大がんの死亡率の変化を検証した研究結果が、JAMA誌2026年2月17日号「Research Letter」に掲載された。 米国がん協会(アトランタ)のRebecca L. Siegel氏らは、米国健康統計センター(NCHS)の死亡証明データから、1990〜2023年に50歳未満でがん死に至った約約127万例を解析した。主要5大がん(大腸がん、肺がん、乳がん、白血病、脳腫瘍)を中心に、年間死亡数および10万人当たりの年齢調整死亡率の推移を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1990~2023年に、米国における50歳未満のがん死亡数は計126万7,520例(女性53%)で、年齢調整死亡率は10万人当たり25.5から14.2へと、44%減少した。・2014~23年の年間平均死亡率増減の平均は、脳腫瘍-0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.6%~0.0%)、乳がん-1.4%(-1.7%~-1.1%)、白血病-2.3%(-2.3%~-2.2%)、肺がん-5.7%(-7.2%~-4.2%)であった。・大腸がん死亡率のみが2005年以降、年率1.1%(95%CI:0.9%~1.3%)増加しており、1990~94年のがん死因の5位から、2023年には1位となった。・一方、肺がんは1位から4位、白血病は3位から5位に順位を下げた。乳がんは全体では2位、女性では1位のままであった。子宮頸がんは研究期間を通じて減少を続けたものの、1990年と2023年ともに女性のがん死因の3位であった。・男性の順位は全体の傾向を反映していたが、乳がんに代わって1990年には非ホジキンリンパ腫(4位)、2023年には膵臓がん(5位)が入った。 研究者らは、「米国における50歳未満の人々のがん関連死因の上位では、大腸がんを除くすべてのがんで死亡率が低下した。乳がんと白血病は罹患率が増加しているにもかかわらず、死亡率は減少した。大腸がんのみ死亡率が増加している原因はさらなる研究が必要だが、過去の大腸がん検診の推奨開始年齢が50歳だったため、若年者の受診率が低いことは問題だ。若年発症大腸がんは約4分の3が進行期で診断されており、早期発見の重要性が一段と高まっている。現在、検診の推奨開始年齢は45歳に引き下げられたが、遺伝などのリスク要因がある場合や、血便や腹痛などの自覚症状がある場合は、さらに若い年齢からの受診を考慮すべきだ」としている。

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第23回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2026

 日本臨床腫瘍学会は、2026年2月28日にプレスセミナーを開催し、3月26~28日に横浜で開催される第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)の注目演題などを紹介した。 今回のテーマは「Medical Oncologists for Cancer Patients」。これは、2025年9月19日に「がん薬物療法」領域が日本専門医機構によりサブスペシャルティ領域として正式に承認されたことを受けて、もう一度学会としてどのようにメディカルオンコロジスト(腫瘍内科医)を育成すべきかを考えるという意図が込められている。なお、がん薬物療法専門医は2025年4月1日時点で1,825人が認定されている。 今年の演題数は計1,482題で過去最多となる。本学会はアジアにおける国際学会に近づけることを目指しており、約半数の738題は海外からで、インドネシア、インド、中国、フィリピン、台湾、ベトナムなど多くの国から寄せられている。プレジデンシャルセッション・全19演題Presidential Session 1「血液」3月26日(木)08:30~10:301)MOSUNETUZUMAB PLUS POLATUZUMAB VEDOTIN IS SUPERIOR TO R-GEMOX IN PATIENTS WITH R/R LBCL: THE PHASE III SUNMO TRIAL2)EFFICACY OF RITUXIMAB-BENDAMUSTINE +/- ACALABRUTINIB IN PATIENTS WITH MANTLE CELL LYMPHOMA: THE PHASE 3 ECHO TRIAL3)EPCORE FL-1:再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブ+リツキシマブ・レナリドミド(R2)併用療法の第III相非盲検試験4)Improved long-term tolerability with asciminib (ASC) vs IS-TKIs in newly diagnosed CML-CP: ASC4FIRST week 96 analysisPresidential Session 2「消化器/肝」3月26日(木)14:00~16:001)胃癌/食道胃接合部癌に対するデュルバルマブとFLOT化学療法の術前術後補助療法(MATTERHORN)2)SKYSCRAPER-07:根治的化学放射線療法後の切除不能食道扁平上皮癌におけるアテゾリズマブ±チラゴルマブの第III相試験の日本部分集団解析結果3)Precemtabart tocentecan (Precem-TcT, M9140): Results from PROCEADE-CRC-01 and post-hoc analysis in Japanese patients4)TALENTACE:肝細胞癌患者を対象としたTACE及びアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用による第III相試験Presidential Session 3「呼吸器」3月27日(金)9:50~11:501)EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌における一次治療オシメルチニブ ± プラチナ製剤-ペメトレキセド併用療法の全生存期間:FLAURA2日本コホート2)MARIPOSA試験(未治療EGFR変異陽性非小細胞肺がんアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法vsオシメルチニブ)全生存期間アジア人解析3)EGFR変異陽性進行非小細胞肺癌に対するラゼルチニブ併用療法におけるアミバンタマブの皮下投与と静脈注射の比較:PALOMA-3日本人サブセット解析4)進展型小細胞肺がんを対象としたイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd)の第II相試験(IDeate-Lung01試験):日本人サブグループ解析結果の報告Presidential Session 4「乳癌」3月28日(土)8:20~10:201)ESR1遺伝子変異が出現した進行乳癌におけるカミゼストラントによる一次治療:SERENA-6試験の日本人サブグループ解析2)Pooled safety analysis of sacituzumab govitecan in metastatic breast cancer (mBC), including patients in NA/EU and Asia3)Sacituzumab govitecan + pembrolizumab vs chemo + pembrolizumab in untreated PD-L1+ advanced TNBC: ASCENT-04/KEYNOTE-D194)術前療法後に浸潤性残存病変を有する再発高リスクHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXdとT-DM1を比較したDESTINY-Breast05の中間解析Presidential Session 5「TR/第I相試験」3月28日(土)10:30~12:001)WGSに基づく個別化ctDNAパネルによるMRDの検出: MONSTAR-SCREEN-3プロジェクトにおける乳癌コホート2)固形がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬の有効性と標的遺伝子mRNA発現の関連:SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-23)DAREON-7: phase I study of obrixtamig plus chemotherapy in patients with DLL3-positive neuroendocrine carcinomas注目の演題会長企画シンポジウム9 がん患者が求める専門医とは3月28日(土)10:30~12:00 腫瘍内科医にはエビデンスを重視した医療だけでなく、対話を重視した医療も求められている。本シンポジウムでは、「がん患者が求める専門医とは」をテーマに、現在のがん治療が抱える問題について、3つのテーマで患者会側および専門医側が講演する。総合討論では、「がん患者が求める専門医」と「専門医の認識」についてすり合わせ、ディスカッションを深める。会長企画シンポジウム4 希少がんや希少フラクションの医薬品開発~戦略・デザイン・金・ゴール~3月26日(木)16:05~17:35 希少がん・希少フラクションなどを含む患者数の少ない集団では、開発や戦略の困難さ・事業計画の予見可能性・市場性の観点などさまざまなハードルがある。今後の運用や方向性を策定することで、バランスのとれた希少疾病指定医薬品の開発を促進し、医薬品開発力・科学性・先進性においてどのように世界をリードしていけるのかを議論する。委員会企画5 希少がんに対するエビデンスのある抗悪性腫瘍薬の供給問題3月27日(金)10:20~11:50 希少がんであっても、エビデンスの高い標準治療を滞りなくがん患者に届けるにはどうしたらよいのかを、アカデミア、製薬メーカー、がん患者、厚生労働省の立場より議論し、今後に必要なアクションについて考える。

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複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。 本研究では、6つの大規模前向きコホート※の統合データを用いた。対象は上記7がん種の患者で、ベースラインデータは1976~97年に収集した。1週間当たりの余暇時間の中高強度身体活動量をMET・時/週で評価し、診断後少なくとも1年を経過した時点(平均2.8年後)の中高強度身体活動量とがん死亡との関連を解析した。主要アウトカムはがん死亡で、平均追跡期間は10.9年であった。※Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort、Health Professionals Follow-Up Study、NIH-AARP Diet and Health Study、Nurses' Health Study、Nurses' Health Study II、Women's Health Study 主な結果は以下のとおり。・統合解析には、1万7,141例のがん患者が含まれた(平均年齢67歳、女性60%)。多いがん種は膀胱がん(24%)、子宮体がん(22%)、肺がん(18%)であった。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん、卵巣がん患者において、診断後の身体活動レベルが高い群では、身体活動を行っていない群と比較してがん死亡リスクの低下が認められた。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん患者では、推奨量(7.5MET・時/週以上)を下回る身体活動レベルであっても、身体活動を行っていない群と比較して死亡リスクの低下が認められた。・口腔がんおよび直腸がんでは、一部の高い身体活動レベルにおいてがん死亡リスクの低下が示唆された。・腎がんでは、推奨量を満たす群でリスク低下の傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。・診断前後の身体活動の変化を検討した解析では、肺がんおよび直腸がん患者において、診断前後ともに推奨量を満たさなかった群と比較して、診断前は推奨量を満たさなくても診断後に満たした群ではがん死亡リスクが低かった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -肺がん HR:0.58(95%CI:0.47~0.71) -直腸がん HR:0.51(95%CI:0.32~0.83) 研究グループは「本研究は、身体活動量の低下が全身状態の悪化や死期が近いことを反映している逆因果の可能性、アンケートに回答できる健康な患者が対象となっている選択バイアス、喫煙による残余交絡の影響を完全には排除できない」と指摘したうえで、「これらの結果は、がんとともに生きる人々とがんを乗り越えた人々の寿命と全体的な健康のために身体活動を促進することが重要であることを示唆している」とまとめた。

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PPIやNSAIDsの併用、ICIの有効性に影響せず

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療中、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの一般的な併用薬が治療効果に影響するとの報告があるが、その因果関係には議論がある。米国・ミシガン大学のDaria Brinzevich氏らは、米国退役軍人保健局(VHA)の全国データベースを用い、非小細胞肺がん(NSCLC)患者における一般的併用薬とICI治療成績の関連を検証した。Cancer誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。 2005~23年に治療を受けたStageIVのNSCLC患者のうち、1次または2次治療でICI(n=3,739)または化学療法(n=6,585)を受けた患者を対象とした。20種類の薬剤クラス(PPI、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗菌薬、スタチン、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、NSAIDs、オピオイド、ステロイド、抗凝固薬など)について「治療開始前3ヵ月内の処方」を併用と定義した。主要評価項目は全生存期間(OS)とTTNT(次治療開始までの期間)と併用薬の関連で、傾向スコアに基づく重み付けを用いたCox比例ハザードモデルで解析した。ICI群で名目上有意(p<0.05)な関連が認められた薬剤については、化学療法群でも同様の解析を行い、非特異的な影響を検証した。 主な結果は以下のとおり。・ICI群は男性が97%、60~79歳が81%、ICI+化学療法併用が45%、1次治療が71%だった。対照群(化学療法群)は多くの背景因子でICI群と類似していたが、59歳以下が24%(ICI群9.4%)と若年者が多く、併存疾患もやや少なかった。・ICI群において、20の薬剤クラスの中で15はOSと、14はTTNTと有意な関連を示さなかった。一方で、ループ利尿薬、抗凝固薬、オピオイド、ペニシリン系およびフルオロキノロン系抗菌薬はOS不良と関連した。しかし、これらの関連は化学療法群でも同様に認められ、ICIの特異的な影響ではないことが示唆された。これらの薬剤はICI群においてTTNTの悪化とも関連したが、化学療法群でも同様の関連性が観察された。・抗菌薬(1点)、PPI(1点)、ステロイド(2点)から構成される「immunomodulatory drug score」もICI群でOSおよびTTNT不良と関連したが、化学療法群でも同様の関連が認められた。すなわち、同スコアはICI効果修飾因子ではなく、一般的な予後指標である可能性が高いと考えられた。 著者らは、「本研究では、一般的に処方される併用薬がStageIV NSCLCにおけるICIの有効性を変化させることは認められなかった。従来報告されてきた併用薬とICI効果の関連の多くは、疾患重症度や基礎疾患など、未測定の交絡因子による可能性が高い。ICI治療中であっても、併存疾患の治療を過度に制限する必要はない可能性が示唆される」としている。

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飲酒と大腸がん、リスクの高い頻度と量は?

 飲酒は大腸がんリスクの上昇と関連していることが示されているが、生涯飲酒に関する研究は限られている。米国国立がん研究所のCaitlin P. O'Connell氏らは、生涯飲酒と大腸腺腫および大腸がんの発症との関連性を推定することを目的とした研究を行った。Cancer誌2026年2月1日号掲載の報告。 前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がん検診の効果を評価するPLCO試験に参加した米国成人を対象とした。参加者はビール、ワイン、蒸留酒の摂取頻度について、4つの事前定義された年齢層(18~24歳、25~39歳、40~54歳、55歳以上)ごとに、10段階の頻度カテゴリー(飲酒経験なし~1日6杯以上)を用いて回答した。また、過去1年間のビール・ワイン・蒸留酒摂取量も報告した。参加者を「非飲酒者」「元飲酒者」「現飲酒者」に分類し、生涯平均飲酒量(週1杯未満、1~7杯未満、7~14杯未満、14杯以上)でも分類した。 ベースライン時の検診で陰性であった1万2,327例のうち、812例が2回目の検診で腺腫と診断された。腺腫発症のオッズ比(OR)を推定するためにロジスティック回帰分析を用いた。20年間の追跡調査期間中、8万8,092例の参加者において1,679件の大腸がん発症が確認された。Cox比例ハザード回帰を用いて、大腸がんのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の大半が現飲酒者であった(73.4%)。ベースライン年齢は、非飲酒者群が飲酒者群よりわずかに高かった。飲酒頻度が最も低い群(週1杯未満)と比較し、生涯飲酒量が最も多い群(週14杯以上)では、男性(89.8%vs.24.2%)、非ヒスパニック系白人(90.7%vs.90.2%)、現喫煙者(18.3%vs.6.4%)、過体重(48.1%vs.38.2%)である傾向が強く、大学卒業者の割合は低かった(34.7%vs.37.6%)。・一貫して大量飲酒している現飲酒者は、少量飲酒者と比較して、大腸がんリスクが91%高かった(HR:1.91、95%信頼区間[CI]:1.17~3.12)。・現飲酒者において、生涯平均飲酒量が最多の群と最少の群を比較すると、大腸がんリスクとの間に正の関連が認められた(週14杯以上vs.週1杯未満、HR:1.25、95%CI:1.01~1.53)。とくに直腸がんリスク(HR:1.95、95%CI:1.17~3.28)が顕著に上昇した。・少量飲酒者と比較して、元飲酒者は非進行性腺腫のオッズが低かった(OR:0.58、95%CI:0.39~0.84)。・一方、週7~14杯未満の中程度の飲酒者は、週1杯未満の飲酒者と比較して、大腸がんリスクが低下し(HR:0.79、95%CI:0.64~0.97)、とくに遠位結腸がん(HR:0.64、95%CI:0.42~1.00)リスクが低下傾向を示した。 研究者らは「本前向き研究において、継続的な多量のアルコール摂取と生涯平均飲酒量の増加は、とくに直腸がんのリスクを高めることが観察された。また、元飲酒者では非進行性腺腫リスクが低いことも確認され、禁酒が大腸がんリスクを低下させることを示唆している」とした。

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認知症の周辺症状に対する薬物療法【非専門医のための緩和ケアTips】第118回

認知症の周辺症状に対する薬物療法今回は認知症の周辺症状に対する薬物療法に関する質問をいただきました。緩和ケアの実践に限らず、多くの方が経験する状況だと思いますので、私なりに感じる点を述べてみます。今日の質問病棟にいると認知症の方が非常に多く、家族も対応に困りながらギリギリのところで生活しているのでは、と感じます。医療関係者の中には、認知症の周辺症状に対してすぐに抑肝散やクエチアピンを使うべき、とする方もいますが、やや疑問に感じます。質問ありがとうございます。ご家族の大変さにも目を向けているのは非常に重要な点ですね。私自身、認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対して抑肝散やクエチアピンといった薬物療法を行う場合、少し後ろめたさを感じることがあります。この思いの理由は何なのか、振り返って考えてみました。いくつかの論点があると思いますが、まずは「薬物療法の副作用が気になる」という点です。急性期病院に勤務していると、医原性の状態悪化で入院する方をよく見ます。良かれと思って処方された薬剤が理由で状態が悪化している方を見ると、「薬以外に取り組むべきことはないのか」「できるだけ非薬物療法で対応したい」と考えるのは普通かと思います。一方、薬物療法を求める医療者や家族の気持ちを考えてみましょう。これは2つの要素が大きいのではと思います。1つは、認知症に対する看護や介護の大変さが切実だからでしょう。とくに夜間対応の大変さは、ここで語るまでもありません。もう1つの要素としては、以前の回で紹介した「ユマニチュード」に代表される、認知症の非薬物療法に対する知識不足や不慣れさがあるのではないでしょうか。いずれにせよ、誰しも認知症の高齢者に薬を飲ませたくて仕方ないわけではなく、さまざまな要因で対応に困っているために薬物療法が求められているのだと思います。さて、では結局のところ認知症のBPSDへの薬物療法について、どのように対処すると良いのでしょうか? ここでのキーワードは「個別性」と「フォローアップ」です。認知症のBPSD=即薬物が必須、ではありません。一方で、抗精神病薬などを必要とする患者や状況もあるでしょう。関わる多職種で薬物療法の注意点を共有し、患者ごとに必要性を判断することが大切です。もう1つ、適切な薬物療法が提供されているか、非薬物療法にも取り組んでいるかといった、継続的なフォローアップも重要です。こうした取り組みを行う前提があれば、薬物療法も有効な選択肢になりうる、というのが私の見解です。今日のTips今日のTips周辺症状を伴う認知症患者へのケアは、薬物療法と非薬物療法のどちらも大切。

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全身治療後のサルベージ手術で示された、進行肺がんの新たな長期生存の可能性

 進行した非小細胞肺がん(NSCLC)では、初診時に切除不能と判断される症例が多く、治療の主軸は全身治療に置かれてきた。しかし、治療反応が良好な一部の患者に対して、全身治療後に外科切除を行うサルベージ手術の意義は十分に検討されていない。今回、全身治療後にサルベージ手術を行った高度に選択された症例を解析した結果、進行肺がんでも長期生存が現実的となる可能性が示された。研究は愛知県がんセンター呼吸器外科部の瀬戸克年氏、坂倉範昭氏らによるもので、詳細は12月17日付で「Thoracic Cancer」に掲載された。 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、進行NSCLCに対する全身治療成績は大きく向上している。これに伴い、初診時には切除不能と判断された症例でも、全身治療後に病変が局在化・縮小し、根治を目的としたサルベージ手術が行われるケースが増えている。一方、薬物療法後の手術は治療関連線維化など特有の課題を伴い、長期予後への真の影響については十分なエビデンスがない。こうした背景から本研究は、全身治療後にサルベージ手術を行ったNSCLC症例を後ろ向きに解析し、その安全性と腫瘍学的成績、臨床的意義を検討した。 本研究では、2014年1月1日から2024年12月31日にかけて愛知県がんセンターで治療を受けた、初診時に切除不能と診断されたNSCLC患者を対象とした。このうち、化学療法、分子標的治療、免疫療法のいずれか、またはそれらの併用後に、根治目的のサルベージ手術を受けた32例を後ろ向きに解析した。主要評価項目は全生存期間(OS)とし、副次評価項目として無再発生存期間(RFS)、重篤な合併症(ClavienーDindo分類IIIa以上)、およびR0切除(完全切除)率を設定した。生存解析にはKaplanーMeier法およびlog-rank検定を用いた。 年齢中央値は61.0歳で、男性が約3分の2を占めた。ECOG Performance Status(PS)は30例が0、残る2例も1で、PS 2以上の症例は認めなかった。初診時に切除不能と判断された理由は遠隔転移が最多で、次いでN3リンパ節転移や高度N2病変などであった。手術前に行われた全身治療の治療ライン数中央値は1で、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬が症例に応じて使用されていた。 追跡期間中央値40.1か月時点で、OSの中央値には到達せず、RFSの中央値は49.9か月であった。5年OS率は75.0%(95%信頼区間〔CI〕 51.6~88.3)、5年RFS率は46.3%(95%CI 26.3~64.2)であった。 サルベージ手術の内訳は、肺葉切除術21例(65.6%)、区域切除術6例(18.8%)、楔状切除術5例(15.6%)であり、R0切除は26例(81.3%)で達成された。 合併症は全体で4例(12.5%)に発生した。重篤な合併症は1例で、胸膜癒着術を要する遷延性気漏であった。術後90日以内の死亡は認められなかった。 さらに、術後24か月以内に再発または死亡を認めなかった症例を予後良好群(18例)、認めた症例を予後不良群(14例)とし、探索的に各因子について単変量解析を行った。その結果、腺がんのみが有意に良好な予後と関連していた(88.9% vs. 35.7%、P=0.003)。 著者らは、「初診時に切除不能と判断されたNSCLC患者において、全身治療後に行われたサルベージ手術が、安全性および有効性の両面で良好な成績を示した。追跡期間中央値40.1か月における5年OS率は75%、5年RFS率は46%であり、厳密に選択された症例では、サルベージ手術が生存期間延長を目指す治療選択肢となり得る可能性が示唆された」と述べている。 その一方で、単施設・後ろ向き研究である点に加え、全身治療のみで管理された症例や、全身治療後に外科へ紹介されたものの手術に至らなかった症例が含まれていないことから、選択バイアスの影響は否定できないとしている。このため、今後は多施設前向き研究による検証が必要であると述べている。

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ブータンでの経験【非専門医のための緩和ケアTips】第117回

ブータンでの経験緩和ケアは、さまざまな環境で取り組むことが求められます。今回は医療資源の限られた環境での緩和ケアについてのご質問です。緩和ケアに限らず、「資源の限られた中での医療」という話題について、私の経験と学びをお話しします。今日の質問離島で診療をしているのですが、島の限られた医療体制の中で緩和ケアを実践する大変さを感じます。私よりもさらに少ない医療資源の中で取り組まれている方もいることでしょう。先生はこのような環境で診療経験はありますか。あればぜひ教えてほしいです。私は普段、急性期病院に勤務しており、比較的医療資源の潤沢な環境にいます。ただ、年に数回、離島での緩和ケアアウトリーチ(医療者が地域に出向く支援)の手伝いに参加しています。また、2024年からは年に1度、ブータンでの医療支援活動に参加しています。2025年は私にとって2回目のブータン訪問でした。アジア各国から指導医チームが結成され、ブータンの現地で1週間のレクチャーやベッドサイドティーチングを行います。今回は、ブータンの在宅緩和ケアを通じて貴重な経験をしました。ブータンは国土の大半が山岳地帯です。今回、私が往診に同行したお宅は、病院から車で1時間以上かかる場所にありました。市街地を出発し、その後ずっと山道を走り、さらに未舗装路に入っていきます。途中に牛を何頭も見かけ、標高はどんどん高くなっていきます。「どこまで行くのだろう」「夜間や天気が悪いときに往診が必要になっても、この立地では行けないな…」などと考えていると、やっと到着しました。訪問先のお宅が、山の頂上のようなところに、ポツンと立っていました。患者さんは末期の大腸がん、すでに会話が難しい状況で発語がやっとの状態でした。現地の訪問看護師から、「嘔気があるが、もともと内服していたモルヒネをどのように調整すべきか?」と質問されました。皆さんだったらどう答えるでしょうか? もちろん、PCA(自己調節鎮痛)ポンプなんてありません。このような環境で診療をした経験はありませんでしたが、この環境でのベストを考える必要があります。数日内に内服が難しくなりそうだったので、モルヒネの投与経路を皮下注射に切り替えるように提案しました。内服が困難になり、症状が強くなっても、医療者がすぐに駆けつけることができないことが理由です。その後も、日本の診療環境と大きく異なる光景を目の当たりにしました。モルヒネの投与量を計算して訪問看護師に伝えると、持参したモルヒネ注射薬をシリンジに引き、家族に皮下注射の指導を始めたのです。日本で医療用麻薬を家族が注射することはまずありません。再度現地の訪問看護師から、「こうした場合、日本ではどのように対応するのか?」と質問がありました。私は「日本では、在宅用の持続投与が可能なデバイスがあり、それを使っているケースが多い。家族が注射をすることはほぼなく、本人や家族が自分たちで注射するのは、在宅医療ではインスリンの自己注射製剤くらいです。でも、ブータンの環境を考えると、今皆さんがやっていることがベストプラクティスだと思いますし、緩和ケアを届けていることを尊敬しています」と英語でお伝えしました。ブータンでの国際支援活動を通じて、世界中で緩和ケアを必要としている患者さんがいること、そして緩和ケアを届けようと頑張っているスタッフがいることを実感しました。日本でもさまざまな地域で、それぞれの地域にあった形で緩和ケアを実践している仲間がいます。世界中で同じ思いの仲間が頑張っていることを忘れず、われわれもできることを少しずつ頑張っていきたいですね。今日のTips今日のTips今、この瞬間も世界のどこかで緩和ケアを届けている仲間がいることを忘れないようにしよう。

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第281回 インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省 5.医療保険改革で高額療養費を見直し加速、負担上限を「2年ごと検証」へ/政府 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター 1.インフルエンザB型増加で再び警報水準に、対策徹底を呼びかけ/厚労省2月6日に厚生労働省は、1月26日~2月1日の第5週に全国約3,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり30.03人となり、警報基準(30人)を超えたと発表した。前週比の約1.8倍で4週連続の増加となり、患者総数は11万4,291人に達した。今シーズンは1度警報水準を下回った後に再び増加しており、1季で2度警報レベルに達するのは少なくとも過去10シーズンで初めてとされる。都道府県別では大分県52.48人、鹿児島県49.60人、宮城県49.02人、山梨県46.97人、千葉県46.08人など22県で警報基準を上回った。その一方で、香川県8.61人、鳥取県9.45人、北海道10.33人は比較的低水準だった。ウイルス型はA型56%、B型44%で、年明け以降はB型の検出割合が増加し、流行再拡大の一因とみられている。B型は学校など集団生活で小児を中心に広がりやすく、嘔吐や下痢など消化器症状を伴う例も報告される。重症例として脳症や筋炎後の腎機能障害がまれに生じうるため注意が必要となる。休校・学級閉鎖は約6,200校に増加した。なお、新型コロナウイルス感染症の定点報告も前週比25%増の2.49人と上昇している。厚労省はマスク着用、手指衛生、換気など基本的対策の徹底を呼びかけ、今後1~2週間は患者増加が続く可能性があるとして警戒を促している。 参考 1)インフルエンザ患者数 前週の倍近くに増加 B型 半数近く占める(NHK) 2)全国インフル定点報告 前週の1.8倍に 1月26日-2月1日(CB news) 3)コロナ新規感染者 前週比25%増 1月26日-2月1日(同) 4)インフルエンザ、再び警報水準に 2度の警報は過去10シーズンで初(日経新聞) 2.在宅医療「頻回・囲い込み」に診療報酬改定で歯止め、訪問看護は1日包括も/厚労省厚生労働省は2026年度の診療報酬改定で、在宅医療を「量の拡大」から「必要性に見合う質と適正化」へ転換する方針を示した。1月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で提示された個別改定項目では、通院可能にもかかわらず頻回の訪問診療を受けるケースや、高齢者住宅に併設・隣接する訪問看護ステーションが同一建物内で短時間に多数利用者を回ることで報酬が膨らむような過度な同一建物対応に歯止めをかける。訪問診療では、在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の高い評価を、末期がんや要介護度の高い患者を一定割合以上診療する医療機関に限定し、医療・介護ニーズの低い患者への頻回訪問を抑制する。24時間往診体制の評価も、自院での実働体制や連携・委託の関与度に応じてメリハリを付ける。看取り実績の高い在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の評価は「在宅医療充実体制加算」へ再編し、地域の24時間体制を面的に支える往診時医療情報連携加算の対象も拡大する。また、訪問看護では、同一建物居住者への評価を細分化し、人数が多い区分は月内訪問日数で段階化、20分未満は算定不可とする。さらに併設・隣接ステーションが高齢者住まいに頻回提供する場合、利用者数と1日当たり提供時間に応じた「包括型訪問看護療養費(1日定額)」を新設し、同日の回数増で報酬が伸びにくい仕組みとする。その一方で、情報通信技術(ICT)による情報共有を評価する訪問看護医療情報連携加算など質向上策も導入する。背景には同一建物での訪問看護急増や高収益事例への問題意識がある。運営基準では値引き誘引や紹介対価、特定施設への誘導を禁止し、安全管理と記録の正確性を求める。事業継続計画(BCP)策定や残薬管理、電子処方せん活用も要件化される。詳細は告示・通知待ちだが、契約・記録・連携体制の再点検が急務となる。 参考 1)個別改定項目について(厚労省) 2)在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3)2026年度診療報酬改定でも、「適切な形の在宅医療」が量・質の双方で拡大することを目指した対応図る(Gem Med) 4)訪問看護ステーションが隣接等の高齢者住まい居住者に行う訪問看護を「1日当たり包括」療養費で評価(同) 5)在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 6)高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 3.診療報酬改定で看護配置基準を柔軟化、ICT活用を厳格要件化/厚労省2026年度診療報酬改定で、厚生労働省は病院の看護配置基準を「人手不足への救済」と「医療DXによる業務量削減」を前提に柔軟的な設定とする。突発的な欠員で夜勤時間などが一時的に基準から外れても、超過が1割以内で3ヵ月を超えない場合は、入院基本料などの施設基準の変更届を不要とする方向で、感染症対応の特例を人材不足にも広げ、恒久化も視野に入れる。対象は平時からハローワークや都道府県ナースセンターなどの公的紹介を活用し、求人票の提示など採用努力を行う医療機関とし、民間紹介会社の高額手数料による経営圧迫も抑えたい考え。加えて、見守り、記録作成、職員間情報共有などでICT機器を病棟で広く活用し、超過勤務が平均10時間以下で増加傾向がないこと、導入前後の業務量評価・安全配慮、調査への協力など複数の要件を満たす場合、看護要員数や看護師比率等を「基準の9割以上(最大1割減)」でも基準充足と扱い、急性期一般入院料や7対1・10対1、地域包括医療病棟、緩和ケア病棟などに適用する方針。さらに医師事務作業補助者も、生成AIによる退院サマリー・診断書・紹介状などの原案作成、音声入力、RPA、説明動画活用などを条件に、配置要件の見直し(緩和)も検討する。急性期医療機関では救急搬送・全麻手術件数を要件とする新たな入院基本料(A・B)も構想され、看護必要度は項目追加や救急応需状況の反映で基準見直しが議論されている。看護職は全体では増加傾向でも、病院就業者は減少し、求人倍率も高い。算定要件を満たせず収入が落ちる事態を避け、夜勤負担の軽減と地域医療の持続を図る狙い。看護職就業者は2023年時点で約174.6万人、需要推計は2025年約180.1万人とされ、病院就業者は約98.7万人まで減少。日本病院団体協議会は、ICT前提の緩和と一時救済を歓迎している。その一方で、患者安全と効果検証のデータ提出が求められており、今後、医療現場での投資と運用体制が鍵となる。 参考 1)病院の看護職員、必要数を緩和 人手不足の施設の経営安定後押し(日経新聞) 2)ICT利活用・適切な業務遂行等の厳格な要件を前提として「看護職員や医師事務作業補助者の柔軟配置」を認める(Gem Med) 3)ICT利活用により看護師業務負担が減少、この分の看護配置基準柔軟化は病院団体として歓迎-日病協・望月議長・神野副議長(同) 4)救急・手術件数を評価する急性期病院一般入院基本料を新設(日経メディカル) 4.わいせつや盗撮で医師・歯科医師28人を行政処分、医師3人が免許取消/厚労省厚生労働省は2月4日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師16人、歯科医師12人の計28人に対する行政処分を決定した。内訳は免許取消5人、業務停止22人(3ヵ月~2年6ヵ月)、戒告1人で、2月18日に発効する。別途10人には行政指導(厳重注意)が行われた。このうち免許取消は、児童へのわいせつ行為や健診時の盗撮、診療報酬詐欺や脱税などの事案で有罪が確定した医師3人と歯科医師2人。業務停止は収賄、詐欺、薬物関連、暴行・傷害、迷惑行為防止条例違反、道路交通法違反など理由は多岐に及ぶ。2025年12月3日の医道審議会の議事要旨では、医師16件中、免許取消1件、停止3年~3ヵ月の各処分、戒告3件とされたほか、歯科医師7件で免許取消3件、停止7~3ヵ月が答申された。また、元医師1人の再免許付与については適当とする答申は出されなかった。処分は医療への信頼確保を目的とし、医療機関には不祥事の予防とガバナンス、コンプライアンス教育の徹底が改めて求められる。さらに、健診や学校現場での診療行為における倫理遵守、金銭・契約関係の透明化、薬物・交通事案を含む私生活上の法令順守も含め、組織的な再発防止策の整備が重要となる。今回の一連の処分では、刑事有罪事案が中心であり、医師個人の資質管理に加え、採用時のバックグラウンド確認や通報体制の整備など、医療機関側のリスク管理体制の実効性が問われている。 参考 1)医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2)医師、歯科医師28人処分 免許取り消しや業務停止(共同通信) 3)厚労省、医師・歯科医師28人の処分決定 免許取り消しや業務停止(毎日新聞) 5.医療保険改革、高額療養費を「2年ごと検証」へ 患者自己負担増の時代に/政府政府が検討する医療保険改革法案で、高額療養費制度の患者負担上限を「少なくとも2年ごとに検証」する規定が新設される見通しとなった。医療費総額の抑制を目的に、上限額が定期的に引き上げられる可能性がある一方で、決定に当たっては「長期治療患者の家計影響を考慮する」と明記する。昨年末には上限を来年8月までに最大38%引き上げる方針が示され、給付抑制で保険料負担を軽くする狙いだ。併せて、出産費用の無償化(分娩費の全国一律化と保険適用)や、OTC類似薬に薬剤費25%を上乗せする新制度、75歳以上の金融所得の保険料・窓口負担への反映徹底も盛り込む。こうした「負担と給付」の再設計が進む中、がん医療では費用の見える化が始まった。日本肺癌学会は『肺がん診療ガイドライン(Web版)』の付録に薬物療法別の薬剤費一覧(保険適用前)を掲載した。術後補助療法では、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が月56万円×3年で約2,030万円、アレクチニブ(同:アレセンサ)は月168万円×2年で約4,032万円、アテゾリズマブ(同:テセントリク)は総額902万円、再発小細胞肺がんの二重特異性抗体タルラタマブ(同:イムデトラ)は1年で約3,184万円と示している。推奨度の根拠には用いないが、患者から費用を問われた際の説明材料とし、今後の制度変更で自己負担が増え得る現実を共有する狙いがある。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、臨床研究の医療経済評価を基本方針化するなど、効果・安全性に加え「費用と持続可能性」を臨床判断に組み込む動きが広がっている。高額療養費は、重い疾患ほど利用頻度が高く、上限の見直しは治療継続や就労、家族介護に直結する。こうした高額な医薬品を用いた医療を提供する医師は、治療選択肢の効果・副作用に加え、想定される自己負担の幅(多数回該当、年間上限など)について患者への説明責任が一段と増す。同時に、薬価・給付の議論は選挙の争点化も進むため、現場から実データを発信しつつ、費用対効果と公平性の両立を問う姿勢が求められる。治療内容のみならず、診療費用の自己負担についての情報提供が、今後いっそう重要になる。 参考 1)高額療養自己負担、2年ごと検証(共同通信) 2)医療保険制度を維持するには 医療費削減で患者が負担? 高額療養費制度の見直しで治療を受けられない恐れも(中日新聞) 3)年収700万円の人なら約3万円の負担増!「高額療養費の見直し」再燃で、8月からどう変わる?(ダイヤモンドオンライン) 4)肺がん診療指針に薬剤費の一覧、数千万円の治療も 見える化の狙いは(朝日新聞) 6.電子カルテで患者取り違え、経過観察患者に前立腺全摘出手術/千葉県がんセンター千葉県がんセンターは2026年2月6日、60代男性患者に対し、検査結果の取り違えにより不要な前立腺全摘出手術を行った、医療事故を公表し、患者に謝罪した。事故は2025年に発生。男性は前立腺生検の結果、経過観察が妥当とされていたが、検査を担当した医師が、同日に別患者から得られた悪性度の高い前立腺がんの病理結果を、誤って当該患者の電子カルテに貼り付けた。主治医は、この誤った情報を基に高リスク前立腺がんと診断し、約3ヵ月後に前立腺全摘出および骨盤内リンパ節切除を実施した。手術後、摘出組織の病理所見がカルテ記載と大きく異なることに主治医が気付き、調査の結果、検査結果の取り違えが判明した。患者の身体には手術に起因するとみられる影響が出ているが、詳細は公表されていない。病院は賠償について協議中としている。その一方で、検査結果を誤って外された別患者には、主治医が原本確認を行っており、治療への影響はなかった。同センターでは、11年前にも乳がん検査結果の取り違えによる誤切除事故が発生しており、再発防止が課題となっていた。病院は外部委員を含む医療安全調査委員会を設置し、電子カルテへの検査結果貼付時の患者確認、主治医による原本確認の徹底など、原因究明と再発防止策を検討するとしている。 参考 1)千葉県がんセンターにおけるアクシデントの発生について(千葉県) 2)検査結果取り違え前立腺摘出 電子カルテ誤追記、千葉県がんセンター(朝日新聞) 3)千葉県がんセンター 検査結果取り違え不必要手術 患者に謝罪(NHK) 4)千葉県がんセンター、誤って前立腺摘出 60代男性を別患者と取り違え(日経新聞)

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検査における腫瘍の見落とし【医療訴訟の争点】第18回

症例検査を行った際、“精査を目的としていた部位以外の部位に腫瘍が映り込んでいる”ということもありうるところ、本稿では、胸部陰影の精査目的で撮影された画像に写っていた胃の病変が指摘されなかったことが「見落とし」として責任原因となるかが争われた東京地裁令和6年9月26日判決を紹介する。<登場人物>患者女性(当時80歳)原告患者の相続人(子)被告1放射線科クリニック被告2PET-CT検査を実施した医療法人被告3大学附属病院被告医師ら上記各医療機関に所属する医師事案の概要は以下の通りである。平成25年10月患者は健康診断で左上肺野に異常陰影を指摘された。10月28日精査目的で、被告放射線科クリニックにおいて胸部CT検査(本件CT検査1)が実施された。担当医師(被告医師1)は肺病変の有無を中心に読影を行い、両肺上葉に腫瘤などを認めたのでこれを指摘して被告大学病院を紹介したが、胃の病変について特段の指摘を行わなかった。なお、当該検査画像には、後方視的にみれば胃壁に径約2.5cm程度の腫瘍性病変(後に消化管間質腫瘍[Gastrointestinal Stromal Tumor:GIST]と診断される本件腫瘍)が描出されていたとされるものであった。10月30日本件患者は被告大学病院を受診し、被告大学病院の医師は、肺がんの病期診断を目的として、頭頸部から大腿基部までを対象としたPET-CT検査を行うため、被告医療法人を紹介した。11月18日被告医療法人が開設する診療所において、PET-CT検査が実施された。同診療所の医師(被告医師2)は、同検査結果を踏まえた診断を行い、左肺がん(疑い)について転移を疑う明らかな異常所見は認められないと診断した。なお、同診療所の医師(被告医師2)は、胃に存在する本件腫瘍について診断を行うことも、放射線読影医に相談することもなかった。12月4日被告大学病院の担当医(被告医師3)は、同日までに実施した頭部MRI検査、気管支鏡検査(経気管支的腫瘍生検)、本件PET-CT検査などの各検査結果を踏まえて、本件患者につき、肺がんの遠隔転移はみられないとして、左上葉肺腺がん(cT1bN0M0、Stage1B)と診断。肺がんについて、本件患者は外科手術を希望しなかったため、放射線治療が行われることとなった。12月18日放射線治療における照射範囲の特定のため、被告大学病院において胸部CT検査(本件CT検査2)が実施。平成26年1月本件患者に対し、放射線治療が行われた。平成29年11月16日吐血12月2日吐血平成30年1月4日被告病院の消化器内科において、上部消化管内視鏡検査を実施し、胃に粘膜下腫瘍(本件腫瘍)を指摘される。1月25日本件患者は、被告病院消化器内科にて、上記、胃粘膜下腫瘍の精査目的で、腹部CT検査を受けたところ、胃の小弯側に径約5.6cmの腫瘤性病変(本件腫瘍)が認められた。2月他院にて、胃のGISTと診断された。その後、治療が開始された。令和5年12月29日本件腫瘍により死亡。実際の裁判結果患者側は、これら一連の画像検査において本件腫瘍が見落とされたことが、診断および治療開始の遅れにつながったとして、各医療機関および医師に対し損害賠償を求めて本件訴訟を提起した。裁判所は、各検査が実施された目的や経緯、当時の医療水準、画像所見の性質などを踏まえ、医師に課される注意義務につき、以下のとおり判断した。1)被告1(被告放射線科クリニック)の医師(被告医師1)の注意義務違反について原告は、被告医師1が、平成25年10月28日当時、本件CT検査1の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、追加の造影CT検査などを実施する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、本件患者が本件CT検査1を受けるに至った経緯および目的が、健康診断のレントゲン検査によりその左上肺野に陰影が認められたことからその精査目的であったことを指摘し、「被告医師1が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師1においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師1の注意義務違反を否定した。本件患者が、本件CT検査1の実施に先立って、被告医師1に対し、消化管出血、腹痛などのGISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する異常や違和感を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと本件CT検査1の対象であった胸部(肺・呼吸器)と本件腫瘍の存在した腹部(胃・消化器)についてはその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること2)被告2(PET-CT検査を実施した医療機関)の医師(被告医師2)の注意義務違反について原告は、被告医師2が、平成25年11月18日当時、本件CT検査1および本件PET-CT検査の各結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1の場合と同様、本件患者が本件PET-CT検査を受けるに至った経緯および目的が、肺がんの病期診断(肺がんの進行度及び遠隔転移の有無の診断)であったことを指摘し、「本件PET-CT検査の結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「本件PET-CT検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師2においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師2の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師2に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと肺がんについて胃に遠隔転移する蓋然性があることを示す医学的知見は示されていないことGISTが発症頻度の低い疾患であること3)被告3(大学病院)の医師(被告医師3)の注意義務違反について原告は、被告医師3が、平成25年12月18日当時、本件CT検査2の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1、2の場合と同様、本件患者が本件CT検査2を受けるに至った経緯および目的が、本件患者の希望も踏まえて本件放射線治療を実施することとして、その放射線照射部位を特定することを目的としていたことを指摘し、「かかる検査の経緯、目的などに照らせば、被告医師3が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍と推測される腫瘤像が描出されていたとしても、被告医師3においてこれを読影により捕捉する注意義務があったと認めることはできない」として被告医師3の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師3に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴等を申告したという事情もないこと本件CT検査2の対象である胸部と本件腫瘍のあった胃とではその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること注意ポイント解説本件は、画像検査における「腫瘍の見落とし」が問題となった事案である。ほかの診療科領域の疾患が画像に写っていたにもかかわらず、それを正しく指摘できなかったことが注意義務違反とされるかが問題となった点で、第14回(「症例報告の類似事例の誤診・見落とし?」)で取り上げた東京高裁令和2年1月30日判決と共通する部分がある。本件において裁判所は、単に画像上に腫瘍が写っていたか否かではなく、当該検査を行うに至った経緯、当該検査の目的を踏まえ、「注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」と判断している点が特徴的である。また、本件において原告は「放射線読影専門医は、画像診断を専門とする以上、その画像検査の目的の範囲外の部位であっても、患者の生存ないし健康に大きな影響を及ぼす病変を示す異常所見が偶発的に撮像された場合には、読影の際にその偶発所見を発見し、指摘するのが当時の臨床医学の実践としての医療水準であった」と主張した。これに対し裁判所は、以下のとおり判示し、不可能を課すものではない旨を明示し原告の主張を排斥している。「画像技術の進歩により、高解像度、大容量の画像が取得されるようになったことにより、偶発所見が発見されることも増えてはいるものの、画像の処理、識別、判断を医師において行う以上、その処理には当然限界があり、検査の目的とは直接関係のない偶発所見を発見すべき注意義務を医師に課すことは不可能を強いることに他ならない」上記の判示のとおり、裁判所は医師に不可能な義務を課すものではないものの、他方で、本件では、GISTが比較的稀な疾患であり、原告が見落としを指摘する画像上も、腫瘍が小さく、コントラストも薄く、胃壁の蠕動との識別が困難であったことに留意する必要がある。すなわち「そもそも全身を精査する目的での画像検査が行われた場合」や「特定の部位の検査を目的としていても、画像上、その部位以外の箇所に著明な疾患を示唆する所見がはっきりと写っている場合」などには、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性があることに留意する必要がある。また、「読影レポートを作成する放射線科専門医が、検査対象部位以外の部位の病変をレポートしている場合」には、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性がある。そして、近時はAIを用いた画像読影補助システムも導入されているところ、そのようなシステムが検査対象部位以外の部位の病変をレポートした場合などにも同様の問題が生じうる。この意味で、本裁判所の判断は当然に一般化できるとは限らないことに留意して診療にあたる必要がある。医療者の視点本判決は、画像検査における「目的外の偶発的所見」の見落としについて、医師の法的責任を限定する判断を示しました。裁判所は、高解像度の画像から得られる膨大な情報すべてを精査することは不可能であり、特段の事情(関連症状の訴えなど)がない限り、注意義務の範囲は「検査目的に関連のある範囲」に限られるとしました。これは、多忙を極める臨床現場の実情や、人間の認知能力の限界を考慮した現実的な判断であると評価できます。実臨床では、たとえ肺がん疑いの胸部CTであっても、撮像範囲に含まれる胃や肝臓などに明らかな異常がないか、可能な限り確認しようとする医師が多いでしょう。しかし、これを法的な「義務」として課されてしまえば、現場は萎縮し、過度な防衛医療を招きかねません。法的に義務が限定されたからといって、臨床的に「目的外は見なくてよい」と割り切ることはできませんが、本判決は、結果責任を問われる際の「合理的な境界線」を引いたという点で、実臨床を行う医師にとって非常に意義深いものと考えます。Take home message後方視的に異常と評価できる所見が存在していても、それだけで直ちに過失が認定されるわけではない特定箇所の精査目的の画像検査において偶発的に写り込んだ所見について、患者からその所見と結びつく症状がなく、その申告がなされていない場合には、医師に課される注意義務の範囲は、検査目的や臨床状況により限定される検査目的や患者の症状次第では、偶発所見への対応が問題となりうるため、判断の根拠や検討過程を記録しておくことが重要キーワード肺がん、GIST(消化管間質腫瘍)、精密検査、画像所見、他科領域の知見、見落とし、医療水準

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高齢者だから一律に減量・ICI単剤ではない!【高齢者がん治療 虎の巻】第6回

<今回のPoint>高齢者にも適応可能な標準治療が増えており、「高齢だから治療しない」という考えはもはや通用しない。免疫チェックポイント阻害薬は、高齢者でも適切に使えば有効性があり、副作用リスクとのバランスを見ながら“使いどころ”を見極めることが重要。ベストサポーティブケアは多職種と共有しながら日常診療に組み込むことで実践的な価値が生まれる。<症例>81歳、男性。嗄声のため耳鼻科を受診したところ胸部CTで左肺に腫瘤を指摘された。精査の結果、肺腺がんStageIVB(骨転移、副腎転移あり)と診断され、本人は積極的な治療を希望している。既往に高血圧、脂質異常症、脊柱管狭窄症があり、Performance Status(PS)は1。82歳の妻と同居しているが、妻は脳梗塞後遺症のため介護が必要である。息子夫婦は車で40分程度の地域で生活している。娘は他県に嫁いでおり、治療のサポートは困難である。遺伝子変異検査ではドライバー変異なしPD-L1 TPS 5%G8:11点(失点項目:年齢、併用薬数、BMI、食事量の減少など)CARGスコア:platinum-doubletを想定 11点[高リスク(陽性項目:年齢、転倒歴、歩行)]多職種カンファレンスで治療方針を決定することになった。「高齢だから治療しない」はもう古い―肺がん治療にエビデンスあり75歳の日本人の平均余命は、男性で12.13年、女性で15.74年とされています1)。一方、切除不能・進行非小細胞肺がんでベストサポーティブケア(BSC)のみが行われた場合、予後は一般に1年未満です。そのため、明らかな命に関わる併存疾患がない場合には、遺伝子変異が陰性であっても、暦年齢のみで治療を見送るのではなく、何らかの積極的治療を検討する必要があります。以下は70歳以上を対象とした主な非小細胞肺がんの臨床試験の要約です。(表1)画像を拡大する免疫チェックポイント阻害薬の有効性と“使いどころ”現在、ドライバー遺伝子変異が陰性の非小細胞肺がんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とした治療が1次治療の主軸となっています。しかしながら、高齢者に対してICIをどのように使用するのかの指針はなく、irAE管理の問題から高齢者には使用しにくいという声もあると聞きます。以下に、ICI関連の高齢者を対象とした臨床試験をまとめます。(表2)画像を拡大するNEJ057試験の結果からは、一部の高齢者ではICI単剤が適切と考えられることが示唆されており、どのような患者がその適応となるかを見極めることが重要です。また、免疫老化の影響から高齢者ではICIの効果が劣る可能性が指摘される一方で、臨床試験の結果からは、高齢者こそICIの恩恵を受ける可能性があるとも考えられます。治療選択にあたっては、PD-L1発現、腫瘍サイズや転移部位といった腫瘍側の因子に加えて、個々の免疫状態を考慮することが重要です。暦年齢にとらわれず、適切な症例選択を行うことで、ICI治療の真の価値を引き出すことが可能になります。高齢者機能評価(GA)の日常診療での有用性筆者らは、根治的治療が困難な75歳以上の非小細胞肺がん患者1,020例を対象に、患者満足度を主要評価項目としたクラスターランダム化第III相比較試験「ENSURE-GA study」を実施しました。本試験は全国78施設に協力いただき、治療開始前にGAを実施し、その結果を患者・家族と共有するとともに多職種チームにより脆弱性を認めた項目に関してできる限り介入をする群(GAM群)と、GAの結果は提供せず通常通りに診療を実施する非介入群(SC群)に施設をランダム化しました。その結果、GAM群では患者満足度が有意に上昇することが明らかとなりました2)。また、本試験では開始前と終了後に参加施設へアンケート調査を実施したところ、試験開始時にGAを日常診療で実施している施設の割合は25%にとどまっていました。ところが、2022年の試験終了時には、GA導入率は56%と大幅に上昇していました。さらに、「GAの実施は日常診療に役立ったか?」という問いに対しては、すべての施設から「役立った」との肯定的な回答が得られています。これらの結果は、GAの実施が患者満足度を向上させるのみならず、医療現場への定着・活用を促す実践的な意義を示しています。今後は、治療適応の見極めにとどまらず、患者の価値観や希望に基づいた支援を継続的に提供するための枠組みとして、GAのさらなる普及が期待されます。冒頭の症例の治療選択肢に正解はないと思います。GA結果を患者と家族に提示しつつ、患者の希望や環境に合わせた治療を、医療者とともに納得して選択した治療内容が正解だと思います。どの治療を選ぶとしても食事量の低下や転倒歴への対応、有害事象を早めに覚知できる体制を構築してから治療を開始することが重要です。日本人肺がん患者におけるG8とCARGスコア:ENSURE-GA試験より第2回ではG8(Geriatric 8)、第5回ではCARGスコア(Cancer and Aging Research Groupスコア)を紹介しましたが、いずれも「日本では妥当性が検証されていない点に注意」と述べました。ENSURE-GA試験では、これらのスクリーニングツールについて日本人肺がん患者における実際の妥当性を検討しています。G8については、国際的なカットオフ値である14点を用いた場合、91.4%(908例中834例)が陽性と判定され、ほとんどの症例が「脆弱性あり」とされました3)。この結果は、「日本人高齢者においては従来の基準は過度に感度が高過ぎる可能性」を示唆しており、日本人に適したカットオフ値の再検討や、肺がん患者に特化した新たなスクリーニングツールの開発の必要性を浮き彫りにしています。現時点では、75歳以上の非小細胞肺がん患者でG8が15点以上の症例は、上位10%の“お元気な”高齢者とみなすことができるため、ほぼperfect healthとして標準的治療を選択するといった活用法が有効です。一方、CARGスコアについては、治療レジメンごとに有害事象との関連を解析しましたが、Grade3以上の有害事象を予測するには十分な鑑別能は確認されませんでした(表3)4)。今後はがん種別・治療内容別に有害事象をより精緻に予測できる新たなスコアリングツールの開発が求められます。(表3)画像を拡大する1)厚生労働省:令和5年簡易生命表の概況2)Soda S, et al. J Clin Oncol. 2023;41:12041.3)中島和寿. 第64回日本肺癌学会学術集会(2023年). 「高齢肺癌患者における機能評価の有用性を検討するクラスターランダム化第III相試験 (ENSURE-GA study)」4)ASCO2024:Geriatric assessment in older patients with non-small cell lung cancer: Insights from a cluster-randomized, phase III trial-ENSURE-GA study (NEJ041/CS-Lung001).講師紹介

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EGFR陽性MET増幅進行NSCLC、savolitinib+オシメルチニブがPFS改善/Lancet

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)治療後に進行したEGFR変異陽性かつMET増幅を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、savolitinib+オシメルチニブ併用療法はプラチナ製剤ベースの標準併用化学療法と比較して、良好な忍容性プロファイルを維持しながら無増悪生存期間(PFS)を延長したことが示された。中国・上海交通大学のShun Lu氏らSACHI Study Groupが、第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「SACHI試験」の中間解析の結果を報告した。著者は「本レジメンは、バイオマーカーで選択された本集団における経口治療の選択肢となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。階層的方法を用い最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団でPFSを評価 SACHI試験は中国国内の68病院で実施された。適格対象は、局所進行または転移のあるEGFR変異陽性非扁平上皮NSCLCで、EGFR-TKI無効後にMET増幅が認められた成人患者。研究グループは対象者を、1日1回経口投与のsavolitinib+オシメルチニブ群または静脈投与による化学療法(ペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチン)群に1対1の割合で無作為に割り付けた(両群とも21日サイクル)。双方向ウェブ応答システムを用いて混合ブロックサイズ法を使用した中央無作為化法により割り付け、脳転移の有無、第3世代EGFR-TKIによる治療歴の有無、およびEGFR変異サブタイプに基づく層別化も行った。 主要評価項目は、治験担当医師の評価によるPFS(RECIST v1.1に基づく)。階層的方法を用い、最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団で評価し、有効性が認められた場合にITT集団で評価した。 安全性解析は、試験薬を少なくとも1回投与された全患者を対象に行った。 中間解析のデータカットオフ日は、2024年8月30日であった。savolitinib+オシメルチニブ群のPFSが有意に延長、ITT集団でも 2021年10月15日~2024年8月30日に211例が登録され、savolitinib+オシメルチニブ群(106例)または化学療法群(105例)に無作為化された。137/211例(65%)が第3世代EGFR-TKI未治療(savolitinib+オシメルチニブ群69例、化学療法群68例)であった。savolitinib+オシメルチニブ群の年齢中央値は59.4歳(四分位範囲:54.3~65.8)、女性62例(58%)、男性44例(42%)であり、化学療法群はそれぞれ61.9歳(56.3~69.1)、55例(52%)、50例(48%)であった。全被験者がアジア人。 第3世代EGFR-TKI未治療集団における評価で、PFS中央値は、savolitinib+オシメルチニブ群が化学療法群に対して有意に延長した(9.8ヵ月[95%信頼区間[CI]:6.9~12.5]vs.5.4ヵ月[4.2~6.0]、ハザード比[HR]:0.34[95%CI:0.21~0.56]、p<0.0001)。 ITT集団においてもPFSが有意に延長した(8.2ヵ月[95%CI:6.9~11.2]vs.4.5ヵ月[3.0~5.4]、HR:0.34[95%CI:0.23~0.49]、p<0.0001)。 Grade3以上の治療中に発現した有害事象は両群で同程度であり、savolitinib+オシメルチニブ群60/106例(57%)、化学療法群55/96例(57%)であった。

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お看取りが近い患者のお風呂はどうしていますか?【非専門医のための緩和ケアTips】第116回

お看取りが近い患者のお風呂はどうしていますか?皆さんはお風呂、好きですか? 私は元々そんなに好きではなかったのですが、この年齢になってくると温泉と聞くとテンションが上がります。とくに運動の後に温泉に入ると最高ですよね。緩和ケアでもお風呂はしばしば話題になるのですが、今日はそんなお話です。今日の質問お看取りに対応している施設の方からの問い合わせ。「予後1週間以内が予想される状況の方をお風呂に入れたいが、ダメですよね?」というものでした。元々風呂がすごく好きな方で、「亡くなる前に一度でいいから入浴させたい」と家族から要望があったようです。介護スタッフは不安が強いようですが、こうした場合の対応はどう考えていますか?海外の緩和ケア医や、私の施設に見学に来た海外の医療者と話していると、病院に入浴用のバスタブがあることに驚かれます。海外の医療機関にもシャワーはあるのですが、日本の病院にはバスタブがあり、さらには日常生活動作(ADL)が低下した状態でも入浴できる機械浴の設備まであるのを見ると、非常に驚かれます。在宅医療でも訪問入浴サービスがありますが、よく考えてみたら専用の簡易バスタブを組み立て、専用スタッフが入浴させてくれるってすごいことですよね。ケアの観点から入浴を考えると、やはり入浴できるとできないとでは雲泥の差があります。病状が進行すると入浴できなくなり、清拭中心となることが一般的ですが、一度入浴すれば整容面は格段に改善します。身体症状の強さや患者負担とのバランスですが、やはり可能であれば入浴するというのは、ケアの面からも合理的だと感じます。さて、ここまで話してきて、お看取りが近い病状での入浴について考えてみましょう。私も慢性期病棟や施設スタッフから同様の相談を受けることがあります。スタッフのよくある懸念は、「入浴が負担となって、残された時間が短くなってしまうのではないか?」「入浴中に急変したら、ご家族から責められないか」といったことです。私のスタンスとしては、「『入浴しなかったら病状が変化しない』という保証はないので、入浴がご本人や家族にとって大切ならば、入浴させましょう」とお話しします。そして、「やめておけばよかった」「入浴させたから悪くなった」といった後悔につながらないよう、ご家族を中心に事前の話し合いを行います。実際、終末期の入浴に関する興味深い研究があります1)。私の知り合いの医師が取り組んだものですが、「終末期に入浴しても生存とは関係がなかった」という結果でした。観察研究ですのでこれを根拠に必ず大丈夫とは言えませんが、少なくとも「『終末期の患者に入浴は絶対ダメ』と言わなくてもよいだろう」と背中を押してくれる、臨床的な研究結果です。「入浴させたいけれど、大丈夫?」という質問の背景には、さまざまな不安が存在します。そうした不安の背景を探り、一緒に答えを考えることが良いケアを提供するために重要な姿勢です。今回のTips今回のTips終末期の入浴、周囲との話し合いのうえでチャレンジすることも検討しましょう。1)Oya K, et al. Palliat Med Rep. 2021;2:59-64.

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「全国がん登録」での初の5年生存率発表、小児/成人・性別・進展度・都道府県ごとに集計/厚労省

 厚生労働省は、2026年1月14日に「2016年全国がん登録生存率報告」の結果を公開した。この「全国がん登録」は、すべての病院と都道府県が指定する診療所に対し、がん患者の情報の登録を義務付けた制度であり、2016年から登録が開始され、今回、初めて5年生存率が公表された。【調査概要】目的:全国がん登録によりがん医療の質向上、がんの予防推進、情報提供の充実およびそのほかのがん対策を科学的知見に基づき実施するため、がんの罹患、治療、転帰などの状況を把握し、分析する。調査期間:2016年1月1日~2021年12月31日対象:わが国で診断された日本人および外国人方法:病院などの管理者は、届出対象となっているがんの診断または治療をした場合に届出票を作成し、都道府県知事を介して厚生労働大臣に提出。集計は国立がん研究センターが実施。男性と女性で生存率の部位に差【5年純生存率】 思春期・若年成人(AYA)・成人(15歳以上)の2016年診断の5年純生存率は、胃がんで64.0%、大腸がん(直腸・結腸がん)で67.8%、肝および肝内胆管がんで33.4%、肺がんで37.7%、女性乳房のがんで88.0%、子宮がんで75.5%、前立腺がんで92.1%だった。 国際比較用の年齢調整5年純生存率では、胃がんで67.3%、大腸がん(直腸・結腸がん)で70.2%、肝および肝内胆管がんで37.5%、肺がんで43.3%、女性乳房のがんで86.8%、子宮がんで69.8%、前立腺がんで93.2%だった。 小児では、全分類で82.4%であり、網膜芽腫が97.6%、リンパ腫・リンパ網内系腫瘍が95.7%と高い純生存率を示している一方で、中枢神経系、そのほか頭蓋内、脊髄腫瘍は60.8%と低く、分類によって大きな差が見られた。 2016年の部位別5年純生存率では、男性で5年純生存率が比較的高い(70~100%)部位は、前立腺、甲状腺、皮膚、乳房、喉頭だった。その一方で、生存率が比較的低い(0~29%)部位は、胆のう・胆管、膵臓だった。女性で5年純生存率が比較的高い部位(70~100%)は、甲状腺、皮膚、乳房、子宮体部、喉頭、子宮頸部だった。生存率が比較的低い(0~29%)部位は、男性同様、胆のう・胆管、膵臓だった。【進展度別年齢調整5年純生存率】 進展度別の5年純生存率では、限局と診断されたがんでは、胃がんで90.8%、大腸がん(直腸・結腸がん)で91.6%、肝および肝内胆管がんで51.1%、肺がんで77.4%、女性乳房のがんで98.4%、子宮がんで93.9%、前立腺がんで105.3%となっていた。その一方で、遠隔転移まで進行すると、胃がんで6.0%、大腸がん(直腸・結腸がん)で17.0%、肝および肝内胆管がんで2.5%、肺がんで9.4%、女性乳房のがんで40.1%、子宮がんで21.0%、前立腺がんで53.0%だった。【年齢階級別5年純生存率】 AYA・成人(15歳以上)について、性別・年齢階級別5年純生存率の最大値と最小値の差で見ると、多くの部位で年齢階級を追うごとに生存率は低くなっていたが、前立腺がんでは若年の生存率のほうが低く、皮膚がんでは全年齢階級でほとんど生存率が変わらなかった。 男性では結腸がん、乳房のがん、食道がんおよび前立腺がん、女性では乳房のがん、結腸がんでも年齢階級による生存率の差は小さかった。その一方で、男性では白血病、脳・中枢神経系、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫、女性では卵巣、白血病、脳・中枢神経系で差が大きかった。年齢階級による生存率の差は、多くの部位で、男性に比べて女性のほうが大きかった。【罹患数、登録精度、生存率集計対象数】 罹患数、登録精度、生存率集計対象者数について、罹患数の総計は115万3,828例だった。そのうち、死亡情報のみの登録(DCO)が3万1,897例で全体の2.8%、悪性腫瘍以外13万2,492例(11.5%)、診断時年齢不詳および100歳以上1,512例(0.1%)、性別不詳9例(0.0%)を除外して集計対象とした。これらの除外基準は、症例によっては重複して当てはまるものがある。 この結果、生存率集計対象は98万8,985例(本集計時点での上皮内がんなどを含む2016年の罹患数の85.7%)だった。このうち小児の対象者は2,148例だった。【診断から5年後の予後状況】 診断から5年の予後について、全国では52.8%の患者が5年後に生存しており、最も高い55.2%から最も低い49.2%まで、ばらつきの範囲は6ポイントだった。

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間質性肺炎合併NSCLC、遺伝子検査の実施状況と治療成績は?

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)では、治療標的となるドライバー遺伝子異常の有無を遺伝子検査で確認することが一般的である。しかし、間質性肺炎(IP)を合併するNSCLC患者は、薬剤性肺障害のリスクが懸念され、一般的なドライバー変異(EGFR、ALKなど)の頻度が低いことが報告されていることから、遺伝子検査が控えられる場合がある。そこで、池田 慧氏(関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座)らは、びまん性肺疾患に関する調査研究班の分担・協力施設による多施設共同後ろ向き研究を実施し、IP合併NSCLC患者における遺伝子検査の実態、ドライバー遺伝子異常の頻度、分子標的治療の安全性・有効性を調査した。その結果、マルチ遺伝子検査の実施率は依然として低い一方で、特定の遺伝子変異(KRAS、BRAF、METなど)は一定頻度で検出された。また、ドライバー遺伝子異常を同定して適切に治療を行うことで、生存期間の改善につながる可能性も示唆された。本研究結果は、European Journal of Cancer誌で2026年1月12日にオンライン先行公開された。 研究グループは、本邦の37施設において2019年6月~2024年6月に診断した進行・再発の慢性線維化性IP合併NSCLC患者1,256例を対象として、後ろ向きに解析を行った。遺伝子検査の実施状況、ドライバー遺伝子異常の検出頻度、分子標的治療の安全性・有効性、全生存期間(OS)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者の年齢中央値は74.0歳、喫煙歴ありが95.5%であった。IPの臨床診断は、特発性間質性肺炎(IIPs)が88.1%(1,106/1,256例)を占め、特発性肺線維症が48.7%(612/1,256例)となり、IIPsのなかで最多であった。・遺伝子検査の実施割合は59.2%(95%信頼区間[CI]:56.5~62.0)、治療開始前のマルチ遺伝子検査は41.0%(95%CI:38.3~43.8)にとどまった。・治療開始前にマルチ遺伝子検査を実施した患者(515例)において、13.2%にドライバー遺伝子異常が検出された。最も頻度が高かったのはKRAS遺伝子変異(4.7%、G12C変異が1.9%)であった。EGFR遺伝子変異(2.9%)、BRAF V600E遺伝子変異(1.6%)、MET遺伝子exon14スキッピング変異(1.6%)が続いた。・非扁平上皮NSCLC(320例)に限ると、KRAS遺伝子変異が6.9%(G12Cは3.1%)、EGFR遺伝子変異は3.8%であった。・ドライバー遺伝子異常が検出された患者(84例)のうち、33.3%が分子標的治療を受けた。分子標的治療を受けた患者(28例)における薬剤性肺臓炎の発現割合は、全体で25.0%であり、オシメルチニブ以外の薬剤性肺臓炎はGrade1であった。薬剤別の発現割合は以下のとおり。 ソトラシブ0%(0/6例) オシメルチニブ50.0%(4/8例:Grade2が3例、Grade5が1例) アレクチニブ33.3%(1/3例) ダブラフェニブ+トラメチニブ25.0%(1/4例) テポチニブ25.0%(1/4例)・ドライバー遺伝子異常の状況別にみたOS中央値は、陽性の集団が22.1ヵ月、陰性/不明の患者が13.8ヵ月であり、陽性の集団が良好であった(ハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.33~0.64)。・ドライバー遺伝子異常陽性患者のうち、分子標的治療の有無別にみたOS中央値は、分子標的治療ありの集団が39.2ヵ月、なしの集団が24.0ヵ月であった(HR:0.67、95%CI:0.33~1.36)。・多変量解析において、ドライバー遺伝子異常陽性はOS改善と有意な関連がみられた(全体集団のHR:0.57、95%CI:0.38~0.86、p=0.007、何らかの遺伝子検査実施集団のHR:0.42、95%CI:0.23~0.77、p=0.005)。 本研究結果について、本論文の筆頭著者の池田氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【池田氏のコメント】 これまで実臨床の現場では、「IP合併例ではEGFR変異などの頻度が低い」「分子標的薬は薬剤性肺障害のリスクが高い」という懸念から、遺伝子検査、とくにマルチ遺伝子検査の実施自体が手控えられてきた側面が少なからずあったと思います。しかし本研究により、マルチ遺伝子検査を行うことで、KRAS G12C、BRAF V600E、MET exon14スキッピング変異といった、近年治療薬が登場した希少フラクションが一定の割合で確実に存在することが明らかになりました。また、リスク管理を行いつつ適切な分子標的治療へつなげることで、生存期間の延長が得られる可能性も示されました。治療の選択肢が少ないこの患者層において、治療標的を見いだすことは、患者さんにとって大きな希望となります。本研究結果が、IP合併例に対しても「まずはマルチ遺伝子検査を行う」という診療行動への動機付けとなり、1人でも多くの患者さんの治療機会の拡大と予後改善につながることを強く期待しています。

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外科医のための肺がん周術期療法講座【肺がんインタビュー】第118回

第118回 外科医のための肺がん周術期療法講座著しく進歩する非小細胞肺がんの周術期治療。術後に加え、術前および術前+術後レジメンが加わり外科医の役割はますます重要になりつつある。国立がん研究センター東病院の青景圭樹氏に外科医の視点で周術期治療を解説いただいた。

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望ましい死亡診断とは【非専門医のための緩和ケアTips】第115回

望ましい死亡診断とは死亡診断、医師にとって、とくに終末期医療に関わる医師にとって避けて通れない仕事ですが、皆さんは死亡診断時に気を付けていることはありますか? 今回は緩和ケア医として定期的に考えたくなる、死亡診断に関する話題です。今日の質問死亡診断の際、病室に時計がなかったので、自分のスマホの時刻で死亡時刻を確認しました。ご家族からとくに何かを言われたわけではないのですが、自分でも少し違和感を抱いてしまいました。死亡診断の際の行動について、何らかの指針はあるのでしょうか?緩和ケアにおける死亡診断は、それまで積み重ねてきたケアの集大成のような瞬間ですので、大切にしている方も多いと思います。一方、研修医や若手医師であればまだしも、ある程度経験を積んでくるとほかの医師の診療を見ることもなくなるため、私自身、「皆はどうしているのだろう?」と思うときがあります。若手の医師を指導しているときに受けた死亡診断に関連した質問を思い起こしてみました。死亡診断の際、モニターの電源は切るのか診察はどの程度行うのか。服の上から聴診をしてもよいかご家族にどのような声掛けをするとよいか自分が主治医でない患者を看取る際には、どのような点に注意すればいいのかこうしてみると、一つひとつは小さなことですが、患者さんとご家族にとって大切な瞬間における適切な立ち居振る舞いとは、こうした小さなことの積み重ねです。医学部における卒前教育でも、初期研修でも、こうしたことを細かく教えてもらう機会も多くないでしょう。結果として、それぞれの医師の工夫やスタイルが出やすい分野です。今回のご質問にある「死亡診断の指針」ですが、専門家の意見に基づいて作成された死亡診断のガイドブックが存在します1)。とくに在宅におけるお看取りの際の注意点がわかりやすくコンパクトにまとまっています。死亡診断時に「本人と家族へ会釈をし、生きている人と同じように接する」「事務的に見えないように配慮する」といった態度面にも言及されています。私自身としては、死亡診断はそれまでの患者・家族と医療者の関係性や文脈の中で行われるものであり、多くの人が抵抗感を抱くような立ち居振る舞いでなければ、それぞれの医師のスタイルで行えばよいと思っています。「必ずこうしなければならない」ことはそうないですし、質問にあるように「スマホで時刻を確認するのは非常識」とも言い切れないと思います。ただ、後から自身の態度を振り返ることは大切ですし、違和感があったのであれば、「次は腕時計をしていこう」と改善していくことが大切です。忘れてほしくないのは、看取りの瞬間の中心にあるのは患者自身とその家族なので、医師が変に目立ったり、印象付けようと頑張ったりする必要はない、ということです。まあ、これも私の死亡診断の考え方なので、皆さんもそれぞれ考えていただけたらと思います。今回のTips今回のTips日々振り返りをしながら、より良い死亡診断を模索しましょう。1)えんじぇる班. 地域の多職種でつくった『死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについてのガイドブック』;2014.

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