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がん薬物療法における皮下注射剤の可能性/日本臨床腫瘍学会

 近年、がん薬物療法領域での皮下注射剤の活用が広がっている。2026年度診療報酬改定では外来腫瘍化学療法診療料への皮下注製剤の算定も認められる見通しとなった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)では、腫瘍内科医、薬剤師、緩和ケア医、看護師、制度申請者の立場から、皮下注射の現状と課題が多角的に論じられた。がん治療の時間毒性を改善できる皮下注射 大阪大学の吉波 哲大氏は、腫瘍内科医の立場からがん薬物療法における「時間毒性」の概念を提示した。がん薬物療法においては、骨髄抑制や悪心などの薬剤毒性に加え、近年は経済毒性が注目されている。もう1つの側面として、吉波氏は時間毒性の重要性を訴える。 時間毒性は経済毒性とも無関係ではない。たとえば、通院により仕事を休むことで、給与に影響が出る。このように、時間毒性は深刻化すると経済毒性につながる。「医療者は時間毒性に対する取り組みを強く認識しなければならない」と吉波氏は説明した。 吉波氏が専門とする乳がん領域でも皮下注射は活用されている。HER2陽性乳がんでは、トラスツズマブとペルツズマブの併用療法が用いられるが、近年トラスツズマブとペルツズマブの配合皮下注製剤(商品名:フェスゴ)が登場した。フェスゴは2剤併用と同等の血中濃度と有効性を示す。投与時間に関しては、従来の2剤投与の90分超に対し、フェスゴでは最短5分と、1時間以上短縮ができる。患者に2剤投与とフェスゴ投与のどちらを選ぶかを聞いたところ、85%がフェスゴと回答している。その理由の多くは「診療における所要時間の短さ」であった。 皮下注製剤について吉波氏は「がん治療の時間毒性を軽減する可能性を十分に秘めている」と結論付ける。製剤技術の進化が皮下注射の可能性を広げる 小牧市民病院の山本 泰大氏は、薬剤師の観点から皮下注製剤の特性と今後の展開を論じた。従来、皮下投与可能な薬液量は2mLが目安とされてきたが、ヒアルロン酸を配合することで皮下組織にスペースが確保される。そのため、薬液量が増えても投与が可能になった。同院では現時点で外来化学療法患者の約20%が皮下注射を受けている。「今後もさらに増えていくであろう」と山本氏は述べた。 国内で承認されている皮下注射抗がん剤として、前述のフェスゴに加えてダラツズマブ、アミバンタマブ、モスネツズマブなどがある。海外でもいくつかの薬剤で臨床試験が進んでいるという。 「皮下注射抗がん剤は、今後もさらに広がっていくことが予想され、医療コストや患者負担軽減につながることは間違いない。これからは臨床現場での運用や副作用のエビデンスを蓄積していくべき」と山本氏は述べる。緩和ケア領域における皮下注射のメリット 広島市立広島市民病院の余宮 きのみ氏は、緩和ケアにおける皮下注射の臨床的意義を紹介した。緩和ケア領域において持続皮下注はその簡便性と安全性から世界的に普及している。日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」でも、経口困難な患者に対するオピオイドの持続皮下注が推奨される。 緩和ケアにおける皮下注射の利点として余宮氏は、ルート確保の容易さ、シリンジポンプを小さくできる可能性、経口剤に比べた鎮痛達成の早さといった点などを挙げた。 「皮下注射は緩和領域においても重要な選択肢になるであろう」と余宮氏は述べる。安全な皮下注射投与のために 国立がん研究センター東病院の市川 智里氏は、看護師の立場から発言。皮下注射は簡便ではあるものの必ずしも安全というわけではないと指摘した。抗体薬、G-CSF製剤、ホルモン薬と多岐にわたる薬剤が皮下注射として使用されており、薬剤ごとの特性と注意事項を把握しておくことの重要性を強調する。 具体的には、6R(Right Patients・Right Drug・Right Dose・Right Time・Right Route・Right Purpose)と全身状態評価の徹底を挙げた。投与部位、硬結・疼痛予防、放射線照射部位・瘢痕部位の回避といった基本を押さえるとともに、皮下脂肪層が薄い高齢者や低栄養患者に対する工夫も重要だという。 同院では薬剤別の早見表(投与間隔、使用針ゲージ、投与部位、投与前チェック項目など)を化学療法室に掲示し、スタッフが入れ替わっても一定の質を保てるよう工夫している。市川氏はまた、「投与観察時間を患者とのコミュニケーション機会として活用し、副作用や生活上の意見を聞き取ることで治療継続を支援していきたい」と話す。外来腫瘍化学療法診療料への皮下注射の算定 国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏は、2026年度診療報酬改定における「外来腫瘍化学療法診療料」への皮下注射剤算定について解説した。従来、点滴・静注は外来腫瘍化学療法診療料として算定されるが、皮下注製剤は算定対象外とされていた。 算定対象外であるため、医療機関は皮下注射を積極的に選択しにくいのが現状だ。フェスゴを例にとると、外来腫瘍化学療法診療料が算定できないという理由で、4割以上の患者で使用されていないという。 こうした状況を受け、日本臨床腫瘍学会をはじめとする団体が合同で医療技術評価分科会に要望を提出した。要望で示したのは、皮下注も点滴と同様に専門的なケアと安全管理を伴う医療行為であること、算定されない現状が患者の時間毒性軽減という利益を阻害していること、財政影響が限定的であるといった点である。 中医協での審議の結果、点数は点滴・静注よりも少ないが、2026年6月から皮下注製剤に対しても算定が認められる見通しだ。「次回診療報酬改定までの2年間で、算定の活用状況、点数設計などが検討されていくと予想される」と下井氏は述べる。

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親ががんのとき、子供のケアはどうする?【非専門医のための緩和ケアTips】第122回

親ががんのとき、子供のケアはどうする?今回はがんになった親を持つお子さんのケアについてです。悩むことも多いこの話題について考えてみたいと思います。今日の質問大学病院から、若年のがん患者を紹介されました。お子さんがいて、まだ親の病状について、きちんと理解できていない様子です。患者の予後は3〜6ヵ月程度と予想され、治療効果は乏しくなっているものの、しばらくは大学病院に通院するようです。ただ、近い将来、私たちの訪問診療で看取る可能性が高いと予想しています。子供のケアはどのように取り組むとよいでしょうか?地域で緩和ケアに取り組んでいると、時々遭遇する難しい状況かと思います。幸い大学病院からの紹介が比較的早いタイミングだったため、これから関係構築に取り組みながら、お子さんのケアも考えることができそうです。まず、われわれが理解する必要があるのは、子供の発達段階を理解して適切な対応を考える必要があるという点です。ご質問の情報だけではお子さんの具体的な状況がわからないのですが、仮に10歳程度としましょう。10歳程度の子供の発達段階は、徐々に抽象的な概念の理解や先々の予測などについても考えが及ぶようになります。つまり、10歳児は多くの場合、死の概念や不可逆性を理解できるのです。また、事実を隠すような対応は、短期的には平穏でも長期的には家族に対する不信感や「知っていたら、こうしたかった」といった不全感につながるといわれています。一方、緩和ケアの実践では難しいときがあるのも事実です。患者である親やほかの親族が子供への説明を望まないというケースがしばしばあります。多くの場合、子供への影響を心配する気持ちや、どのように話せばよいかわからない、といった苦しさに基づいたものです。また、このような状況にある患者は、若い就労世代であることが多く、がん治療で収入が絶たれているにもかかわらず、介護保険の対象年齢(原則40歳以上)に該当しない場合があります。そういった意味からも、さまざまな支援が必要になる状況です。こうした状況での子供のケアは、一般知識を身に付けたうえで、社会福祉士や公認心理師・臨床心理士といった各職種にも力を借りることが必要です。私のように地域の基幹病院に勤務していれば院内で他職種と連携できますが、在宅医療や診療所の医師はどのように対応すればよいのでしょうか?おそらく地域ごとにできることは異なると思います。もし皆さんがこういった難しいケアを提供する必要性に直面した際は、地域の基幹病院の緩和ケア部門に相談してみてはいかがでしょう? さまざまな事情で入院が必要になる可能性の高い患者でもあり、情報共有の意味合いもあります。基幹病院の専門職に相談できるだけでも対応の幅が広がるでしょう。誰が対応しても難しい状況ですので、地域の緩和ケアリソースをフル活用して、ケアに取り組んでいただけたらと思います。今日のTips今日のTips子供の発達段階に合わせ、ほかの専門職も交え、地域のリソースを使って対応することが大切。

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タルラタマブのCRS関連発熱を解析、発熱が奏効と関連か/日本臨床腫瘍学会

 小細胞肺がん(SCLC)治療薬タルラタマブは、2026年3月27日に添付文書が改訂され、2次治療から使用可能となった。本剤は高い効果が期待されているが、免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群(CRS)による発熱の頻度が高く、適切な管理方法と予測マーカーの確立が急務となっている。そこで、山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)らの研究グループは、タルラタマブによる治療を受けたSCLC患者を対象とした後ろ向き研究を実施し、発熱のタイミングや持続時間などと奏効との関連を解析した。その結果、投与1回目と2回目の両方で発熱がみられた患者は、奏効割合(ORR)が高かった。また、発熱の早期からステロイドを用いることで安全に投与を継続できることも示された。本結果は、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表された。 研究グループは、埼玉医科大学国際医療センターにおいてタルラタマブ治療を受けた、再発または進行SCLC患者25例を対象として後ろ向き研究を実施した。本研究では、37.5℃以上を発熱と評価し、発熱患者にはヒドロコルチゾン100mgを投与した。また、発熱が6時間以上持続または再度発熱した場合はデキサメタゾン9.9mgを投与した。データカットオフ日は2026年2月28日であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は72歳(範囲:50~82歳)、男性の割合は84.0%であった。・タルラタマブ治療開始時に何らかのグルココルチコイドが処方されていた患者は36.0%であった。・37.5℃以上の発熱を認めた割合は、投与1回目(サイクル1の1日目[C1D1])は64.0%、投与2回目(C1D8)は87.0%であった。・発熱のタイミングについて、投与から発熱までの時間の中央値は、C1D1では13.7時間であったのに対し、C1D8は25.2時間であり発熱までの時間が有意に長かった(p=0.005)。・発熱の持続時間(37.5℃以上になってから37.0℃未満に低下するまでの期間)中央値は、C1D1では40.5時間であったのに対し、C1D8は27.3時間であり発熱の持続時間が有意に短かった(p=0.019)。・発熱に対する治療の内訳は、ヒドロコルチゾンのみがC1D1 37.5%、C1D8 35.0%であり、ヒドロコルチゾンのみでは解熱に至らずデキサメタゾンの追加投与が必要となった患者がそれぞれ62.5%、55.0%であった。C1D1、C1D8ともにトシリズマブを用いた患者はいなかった。ステロイド投与量の中央値(プレドニゾロン換算)は、C1D1、C1D8共に91mgであった。・C1D1とC1D8の両方で発熱を認めたdouble-fever群は、認めなかった群と比較して、ORRが有意に高かった(p=0.011)。 本結果について、山口氏は「少数例の検討ではあるが、double-feverパターンを示した患者では、ORRが高くなる傾向があることがわかった。また、発熱の早期からステロイド介入を行う統一されたプロトコールを用いることで、安全に治療を行うことができた」とまとめた。また、本発表の後に実施されたプレスリリースセッションにおいて「タルラタマブ投与後の慎重な観察期間を投与後72時間とすることを提言する。安全な入院管理を行うとともに外来治療への円滑な移行体制が確立されることで、多くのSCLC患者にこの有望な治療を届けることができると期待している」と述べた。

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ皮下注+ラゼルチニブの日本人解析結果(PALOMA-3)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)において、アミバンタマブ皮下注製剤(商品名:リブロファズ)+ラゼルチニブ(同:ラズクルーズ)の併用療法は、アミバンタマブ静脈内投与製剤(同:ライブリバント)+ラゼルチニブと一貫した有効性を示し、Infusion-Related Reaction(IRR)の発現率を低減させることが、国際共同第III相試験「PALOMA-3試験」で示されている1)。本試験の日本人集団の解析結果について、田宮 基裕氏(大阪国際がんセンター)が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で報告した。本解析において、アミバンタマブ皮下注製剤は日本人集団でも全体集団と一貫した臨床的有益性を示すことが示唆された。なお、アミバンタマブ皮下注製剤は2026年3月18日に薬価収載され、同日に発売されている。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:EGFR変異陽性(exon19欠失またはL858R)で、オシメルチニブ+プラチナ製剤を含む化学療法後に進行したNSCLC患者・試験群(SC群、206例):アミバンタマブ皮下投与(体重に応じ1,600mgまたは2,240mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+ラゼルチニブ経口投与(240mg、1日1回)・対照群(IV群、212例):アミバンタマブ静脈内投与(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+ラゼルチニブ経口投与(240mg、1日1回)・評価項目:[主要評価項目]2サイクル目1日目もしくは4サイクル目1日目のトラフ濃度、1~15日目の血中濃度曲線下面積[副次評価項目]奏効割合(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、患者満足度、安全性など[探索的評価項目]全生存期間(OS)など 今回は、日本人集団56例(SC群26例、IV群30例)の解析結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・年齢中央値はSC群70歳、IV群63歳であった。ECOG PS0の割合はそれぞれ62%、27%であり、SC群が高かった。脳転移歴を有する割合はそれぞれ46%、23%であり、こちらもSC群が高かった。・日本人集団の薬物動態パラメータは、全体集団と同様であった。・ORRはSC群39%、IV群30%であった。なお、データカットオフ時点において、奏効例では死亡および病勢進行イベントは認められていなかった。・PFS中央値はSC群未到達、IV群4.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.18~1.10)。・OS中央値はSC群未到達、IV群8.8ヵ月であった(HR:0.14、95%CI:0.02~1.17)。1年OS率はそれぞれ96%、48%であった。・Grade3以上の有害事象の発現割合はSC群42%、IV群70%であった。投与中止に至った有害事象の発現割合はそれぞれ15%、20%であった。・SC群におけるIRRの発現率は15%であり、IV群の60%と比較して低減した。・静脈血栓塞栓症(VTE)の発現割合はSC群12%、IV群17%であった。なお、SC群のVTEは、予防的抗凝固薬の投与を受けていない患者のみに発現した。 本結果について、田宮氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLC日本人患者において、アミバンタマブ皮下注製剤+ラゼルチニブが、より有望な治療選択肢となることを支持するものである」とまとめた。 また、SC群ではIRRの発現が低減した一方で、皮膚障害は低減しなかったことについて問われ、これに対して同氏は「皮下投与では薬剤の吸収が緩やかであり、ピーク濃度は低くなる。このことにより、SC群でIRRの発現が低減した可能性がある。一方で、皮膚障害には、組織における薬剤濃度が関係していると考えられる。体内の薬剤濃度はSC群のほうが安定して高い濃度を維持している可能性があり、このことから皮膚毒性や低アルブミン血症はSC群で多い傾向にあったのではないか」と見解を述べた。

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既治療EGFR変異NSCLCにおけるsacituzumab tirumotecanのOS最終結果(OptiTROP-Lung03)/ELCC2026

 既治療のEGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)においてsacituzumab tirumotecan(sac-TMT)が持続した全生存期間(OS)の改善を示した。sac-TMTはTROP2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)である。独自のリンカーでトポイソメラーゼI阻害薬belotecanの腫瘍細胞への送達を最大化する。すでに第II相OptiTROP-Lung03試験で、既治療のEGFR陽性NSCLCに対する有意な無増悪生存期間(PFS)およびOSの改善が報告されている1)。欧州肺がん学会(ELCC2026)では、中国・中山大学がんセンターのYunpeng Yang氏がOptiTROP-Lung03試験の最終OS解析を紹介した。・対象:EGFR-TKIとプラチナベース化学療法の併用または逐次療法で進行した非扁平上皮EGFR陽性(19-DelまたはL858R)NSCLC・試験群:sac-TMT 5mg/kg 2週ごと(sac-TMT群)・対照群:ドセタキセル75mg/m2 3週ごと(ドセタキセル群)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、OS、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡23.8ヵ月のPFS中央値は、sac-TMT群7.9ヵ月、ドセタキセル群2.8ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.15~0.35)。・OS中央値はsac-TMT群20.0ヵ月、ドセタキセル群13.5ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.40~0.98)。・ドセタキセル群の患者の41%がsac-TMTにクロスオーバーした。・クロスオーバー調整後のOS中央値はsac-TMT群20.0ヵ月に対し、ドセタキセル群は11.2ヵ月で、sac-TMT群の優越性はより強く表れた(HR:0.45、95%CI:0.28~0.73)。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現割合は両群とも97.8%であった。Grade3以上のTRAEはsac-TMT群60.4%、ドセタキセル群73.9%で発現した。・主たるTRAEは両群とも血液毒性であった。・間質性肺疾患の発現は両群とも2.2%の発現であった。・sac-TMT群では治療中止または死亡に至ったTRAEは認められなかった。 本試験の結果は、「既治療のEGFR変異NSCLCに対する有望かつ新たな治療選択肢として、sac-TMTの重要性を強調するものである」と Yang氏は結んだ。 sac-TMTはOptiTROP-Lung04試験の結果2)に基づき、EGFR-TKI不応後のEGFR変異NSCLCに対して中国で承認された。

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肺がんのICIの投与のベストタイミングは午前か午後か(i-TIMES)/ELCC2026

 非小細胞肺がん(NSCLC)および小細胞肺がん(SCLC)における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与タイミングについてスイス・ローザンヌ大学のSolange Peters氏が欧州肺がん学会(ELCC2026)で発表。午後投与は午前投与に対する非劣性を示した。 ICIの治療効果に、概日リズム(サーカディアンリズム)が与える影響については、長年議論されてきた。近年、ICIの抗腫瘍効果について、遅時間帯投与に比べ早時間帯投与で 臨床結果 が改善するという研究が、後ろ向き研究やメタアナリシスで示されている1-3)。しかし、現時点では、ほとんどのエビデンスは後方視的研究である。肺がんにおいては、第III相無作為化試験で早時間帯投与による生存改善が示された4)。しかし、同研究はプロトコールの不一致が指摘されるなど、さらなる検証が必要とされているという。 そのような背景から、ETOP(欧州胸部腫瘍プラットフォーム)とロシュによる共同研究であるi-TIMES試験が行われた。 同研究は、個々の患者データ(IPD)を用いた後方視的なマッチド・コホート患者レベル・メタ解析で、目的は午前投与に対する午後投与の非劣性評価である。解析対象となった試験は、ICI(アテゾリズマブ)対化学療法を無作為で比較したロシュ提供の第II/III相無作為化臨床試験(計8試験)である。マッチングされた患者は、ICIの投与タイミングによって、午前投与群と午後投与群に分類された。主要評価項目は全生存期間である。午前投与に対する午後投与の非劣性の限界値として、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限を1.18に設定した。 主な結果は以下のとおり。・ 8つの試験から3,060例を分析、最終的なマッチング解析コホートは1,550例となった。・全体の32%が午後投与、41%が午前投与、28%は午前と午後が混在していた。解析には午前投与と午後投与だけが用いられている。・主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、午前投与群で17.3ヵ月、午後投与群では16.0ヵ月あった。午前投与に対する午後投与のOSのHRは1.039、95%CIは0.925~1.168であった。95%CIの上限は、事前に設定された非劣性限界1.18を下回り、午後投与の非劣性が示されている。・非マッチングの解析によるOS中央値では、午前投与18.5ヵ月、午後投与15.7ヵ月。HRは1.088で95%CIは0.982~1.207と、午後投与の非劣性は示されなかった。 Peters氏は「i-TIMES試験では、ICIの投与タイミングが治療効果の重要な決定要因となる可能性は低いという結果を示した。これにより、各施設の状況に応じた柔軟で実用的な治療スケジュールの設定によって、臨床アウトカムを損なうことなく治療が可能であることを示唆している」と結んだ。

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KRAS p.G12D変異あり既治療進行固形がん、setidegrasibの安全性確認/NEJM

 KRAS p.G12D変異を有する既治療進行非小細胞肺がん(NSCLC)および膵管腺がん(PDAC)の患者において、開発中のsetidegrasib(KRAS G12D変異体を標的とするファーストインクラスの標的タンパク質分解誘導薬)は抗腫瘍活性を示し、治療中止に至った有害事象の発現は低頻度であったことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのWungki Park氏らによる、第I相試験の結果で報告された。KRAS p.G12D変異は、NSCLC患者の5%にみられる。PDAC患者では40%にみられ、最も頻度の高い変異型であるが、KRAS p.G12D変異を標的とする承認薬は現状では存在していない。NEJM誌オンライン版2026年3月25日号掲載の報告。5ヵ国28施設で、NSCLCおよびPDAC患者を対象に実施 研究グループは、KRAS p.G12D変異を有する既治療の進行固形がん患者において、setidegrasibの安全性、薬物動態、薬力学、および抗腫瘍活性を評価する国際共同非盲検多施設共同第I相試験(用量漸増コホートおよび用量拡大コホートを含む)を実施した。setidegrasibは、10~800mgの用量で週1回静脈内投与された。 本試験の主要目的は、安全性プロファイル(主要評価項目とした用量制限毒性および有害事象)の評価、および第II相の試験用量を確定することであった。 2022年6月21日~2025年4月24日に、日本を含む5ヵ国28施設で203例(NSCLC 59例、PDAC 124例、その他固形がん20例)が登録された。2025年10月9日(安全性評価のデータのカットオフ日)時点で、計24例(NSCLC 20例、PDAC 4例)が治療を継続していた。治療中止の理由としては病勢進行が最も多かった(152/179例[85%])。第II相の推奨試験用量は600mg、Grade3以上の有害事象の発現は42% 安全性、薬物動態、薬力学および有効性の解析に基づき、第II相の推奨試験用量として選択されたのは、76例(NSCLC 45例、PDAC 31例)が受けていた週1回600mg静脈内投与であった。76例の年齢中央値は、NSCLC群68歳(範囲:36~81)、PDAC群65歳(36~79)であり、NSCLC群の30%、PDAC群の57%がアジア人であった。前治療ライン数中央値は、両群とも2(範囲:1~5)であった。前治療として、NSCLC群の93%がプラチナベース化学療法+免疫チェックポイント阻害薬を、PDAC群では84%がゲムシタビン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルを、52%がmFOLFIRINOXを受けていた。 週1回600mg静脈内投与された76例の安全性解析の結果、Grade3以上の有害事象は32例(42%)に発現した。治療関連有害事象は71例(93%)で報告され、最も多くみられたのは注入に伴う反応(80%)および悪心(30%)であった。治療中止に至った有害事象は2例であった。 600mgの投与を受けたNSCLC患者45例において、36%(95%信頼区間[CI]:22~51)が部分奏効を示し、無増悪生存期間(PFS)中央値は8.3ヵ月(95%CI:4.1~推定不能)、推定12ヵ月全生存率は59%(95%CI:40~74)であった。 2次治療または3次治療として600mgの投与を受けた転移のあるPDAC患者21例(うち67%が3次治療)において、24%(95%CI:8~47)で部分奏効が認められ、PFS中央値は3.0ヵ月(95%CI:1.4~6.9)、全生存期間中央値は10.3ヵ月(95%CI:4.2~13.0)であった。

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EGFR変異陽性NSCLC、オシメルチニブに局所療法を追加すべき患者は?(NorthStar)/ELCC2026

 EGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)において、局所地固め療法(LCT)の有効性や、LCTのベネフィットを受ける集団は、十分に検討されていない。そこで、未治療のEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象に、導入療法後のオシメルチニブ+LCTの有用性を検討する海外第II相無作為化比較試験「NorthStar試験」が実施されている。本試験の1次解析では、LCTの追加により主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)が改善したことが示された。また2次解析の結果、導入療法後のリンパ節転移の消失や胸水の消失が、LCTの有効性の予測因子となる可能性が示された。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、Saumil N. Gandhi氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が本試験の2次解析の結果を報告した。・試験デザイン:海外第II相無作為化比較試験・対象:未治療の局所進行または転移を有するEGFR遺伝子変異(exon19欠失またはL858R)陽性のNSCLC患者のうち、導入療法としてオシメルチニブ(6~12週間)が投与され、病勢進行が認められなかった患者・試験群(LCT群):LCT(放射線療法または手術)+オシメルチニブ継続(56例)・対照群:オシメルチニブ継続(63例)・評価項目:[主要評価項目]PFS[2次解析の評価項目]安全で効果的な放射線療法の実施方法、LCTによるベネフィットが得られる患者の予測因子、LCT後の再発パターン など 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、ベースライン時(導入療法開始前)に転移数が3以下であった割合は29%、3超であった割合は71%であった。LCT群に割り付けられた患者のうち、ベースライン時の転移数が3超であった患者の59%がLCTを完遂した。・1次解析においてPFS中央値はLCT群25.3ヵ月、対照群17.5ヵ月であり、LCT群でPFSが改善した(ハザード比[HR]:0.66、片側90%信頼区間[CI]:0.50~0.87)。・LCT群のうち、放射線療法を受けた患者の約80%が放射線療法の期間もオシメルチニブを継続していたが、Grade1~3の肺臓炎の発現割合は約17%と許容可能であった。肺V20Gy(20Gy以上の線量が照射される肺の体積割合)が25%以上の患者では肺臓炎が44%(4/9例)に発現したのに対し、25%未満の患者では7%(2/29例)であり、肺V20Gy 25%以上で肺臓炎リスクが高かった(p<0.007)。・原発巣に対する放射線の生物学的実効線量(BED)が高い場合、PFSが良好であった。PFS中央値はBED 75Gy以上の集団49.1ヵ月、BED 75Gy未満の集団22.3ヵ月であった(HR:0.31、90%CI:0.14~0.70、p=0.006)。・導入療法後のPET/CTまたはCTに基づくリンパ節転移の消失は、LCT群の良好なPFSと関連していた。PFS中央値はリンパ節転移消失の集団49.1ヵ月、リンパ節転移残存の集団22.3ヵ月であった(HR:0.34、90%CI:0.15~0.76、p=0.011)。・導入療法後にリンパ節転移が残存していた集団では、LCTの追加によるPFSの延長は認められなかった。この集団のPFS中央値はLCT群19.0ヵ月、対照群15.9ヵ月であった(HR:0.93、90%CI:0.60〜1.43)。一方、リンパ節転移が消失した患者では、LCT群でPFSの改善がみられた(41.5ヵ月vs.19.6ヵ月、HR:0.43、90%CI:0.23~0.78、p=0.008)。・導入療法後に胸水が残存していた集団では、LCTの追加によるPFSの延長は認められなかった。この集団のPFS中央値はLCT群15.3ヵ月、対照群12.9ヵ月(HR:0.90、90%CI:0.52〜1.55)であった。無作為化時点で胸水がない集団では、LCT群でPFSが良好な傾向がみられた(32.7ヵ月vs.22.3ヵ月、HR:0.63、90%CI:0.39~1.02)。・LCT群における再発は、局所領域のみの再発は約20%であり、大部分が遠隔転移であった。

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薬局と連携しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第121回

薬局と連携しよう在宅緩和ケアではさまざまな専門職が患者の療養を支えています。薬剤師も重要な役割を担っていますが、医師が薬剤師との連携の仕方を学ぶ機会は多くはありません。今日の質問先日、調剤薬局の薬剤師から、訪問薬剤指導について案内がありました。重要な取り組みだと思うのですが、実際にどのように連携すればよいのかイメージが湧きません……。緩和ケアにおける薬剤師の役割は非常に大きく、日本緩和医療薬学会という専門学会があり、緩和薬物療法認定薬剤師という認定資格も設けられています。薬剤師と医師が上手に連携するために、私が感じていること、意識していることをお話しします。薬剤師が関わることで、緩和ケアにおける薬物療法の安全性と質が向上します。安全性では、緩和ケアの患者は腎・肝機能が低下していたり、高齢者だったりと用量調整が必要なことが多くあります。また、多剤併用で薬物相互作用に気を付ける必要があるケースも多くあります。薬剤師は、医師が処方した薬剤について、患者に期待される効果が安全に得られるよう確認してくれます。質の向上では、患者が内服しやすい剤形を提案したり、飲み忘れを防ぐ服薬カレンダーを工夫したりといったことがあります。こうしたことを医師1人で行うのは難しく、実務経験を通じて培った、きめ細かさが求められる分野です。医師はあまり意識しませんが、薬剤師の重要な役割として、薬剤の流通管理があります。医師が処方しても、実際の薬剤が地域の薬局になければ患者には届きません。できるだけ早く薬がほしい状況にもかかわらず、医薬品卸業者に発注してから、となると時間を要します。このような状況では、在宅療養を希望する患者でも「薬剤が提供できない」という理由で入院が必要になります。今回の質問のように地域の在宅緩和ケアを支える薬局は、こうしたことがないよう、在宅医療で使用する薬剤が適切に患者に届くよう、薬剤の在庫管理を行っています。今後さらに薬剤師に期待される役割は、ケアのコミュニケーションに参加してもらうことです。患者の価値観や希望に沿った医療とケアを提供するうえで、各職種が支援者として関わり、患者にとっての最善を共に考えることが求められています。私が研修医だったころは、薬剤師がベッドサイドに行く光景は見たことがありませんでした。しかし、今は薬剤師がどんどん患者と接点を持つようになっています。緩和ケアで重要な役割を持つ薬剤師と相互理解を図り、良い関係を築ける医師が必要ですし、私もそうした医師を育成できるよう取り組んでいます。ぜひ、良い連携を築きながら、質の高い緩和ケアを提供できるよう、取り組んでいきましょう。今日のTips今日のTips診療している地域の薬剤師とネットワークを構築すると、在宅緩和ケアの質も向上します。

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乳がんオリゴ転移、今わかっていること・いないこと/日本臨床腫瘍学会

 乳がんオリゴ転移については、手術や放射線療法などの局所療法が検討されるが、その有効性についての報告は多くが後方視的検討であり、どのような患者にどの治療を選択すべきかについて明確なコンセンサスは得られていない。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、東京科学大学病院の石場 俊之氏が「乳癌オリゴ転移の今とJCOG2110(OLIGAMI試験)の可能性」と題した講演を行い、近年の研究結果と現在患者登録中のOLIGAMI試験の概要について解説した。オリゴ転移に局所療法を行うべきか? オリゴ転移とは、「転移巣の数が少なく腫瘍径が小さく(5個以下で同一臓器に必ずしも限定しない)、局所療法により完全奏効(CR:Complete Response)となる可能性がある状態」と定義され1)、新規に診断される転移乳がんの1~10%程度と考えられている2)。 オリゴ転移に対する局所療法としては、手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、放射線療法(寡分割照射、体幹部定位放射線治療[SBRT])などが考えられるが、「乳癌診療ガイドライン2022年版」3)では外科的切除は推奨されておらず、SBRTについては「症例を選択したうえで考慮してもよい」という記述となっている。 一方で、2025年のSt. Gallen国際乳がんコンセンサス会議では乳がんオリゴ転移への局所療法介入に対して87.1%の専門家が「同意する」と回答し、日本のJCOG乳がんグループへのアンケートでも81%が「転移が限局していて初期薬物療法に感受性が高い場合に検討する」と答えるなど、実地臨床では局所療法の併用が広く模索されている。 2つの臨床試験結果からみえてきたこと 近年、乳がんオリゴ転移を対象とした前向き無作為化試験が世界中で実施されている。石場氏は2つの試験に着目し、その結果について解説した。4個以下の乳がんオリゴ転移を対象としたNRG-BR002試験では、標準的な全身薬物療法に局所療法(定位照射または手術)を追加しても、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められなかった。この理由として、同氏は、無作為化前の薬剤の規定がなく全身薬物療法の強度に群間差があった可能性、患者選定について「登録時の60日以内のオリゴ転移」との規定のみでPETが必須でなく、もともと多発転移であったinducedオリゴ転移や全身療法中に一部の病変のみが増悪したoligoprogressionの症例が含まれていた可能性を指摘した。 乳がんおよび肺がんのoligoprogressionを対象としたCURB試験では、肺がん患者においてはSBRTによりPFS改善が認められたが、乳がん患者では差がみられなかった。石場氏は、PDとなった症例の約6割で新規の病変が出現している点が、乳がん患者でベネフィットが得られない要因ではないかと述べた。OLIGAMI試験のデザインとその意義 上記のような乳がんオリゴ転移の特徴を踏まえ、現在進行中のJCOG2110(OLIGAMI試験)では、以下の基準が設けられている4)。・対象:3個以下のオリゴ転移、各オリゴ転移の大きさ≦5cm(脳転移≦2cm)※de novoオリゴ転移に限定し、PETを必須とする・12週間の全身薬物療法で、薬物への反応性のある症例のみを無作為化・割付調整因子:施設、オリゴ転移個数、サブタイプ分類、転移時期・試験群:全身薬物療法継続群、根治的局所療法(放射線療法または手術後に全身薬物療法を再開)群・主要評価項目:全生存期間 石場氏は、同試験を実施する意義として、ポジティブな結果が出た場合は、乳がんオリゴ転移に対する局所療法を積極的に推奨することができ、現在統一されていない患者選択基準、局所療法の選択に関するコンセンサスが得られることを挙げた。また、もしネガティブな結果となったとしても、無用な局所療法を避けることができ、特定の集団でのみ有効性が認められた場合はさらなる研究につなげることができるとした。 さらに本試験の大きな特徴として、ctDNA(血中循環腫瘍DNA)を用いた微小残存病変(MRD)解析の附随研究が組み込まれている。局所療法介入前後のctDNA動態をモニタリングすることで、分子レベルでの微小転移の有無と局所療法の効果判定、さらには再発の早期検知に関する有用性が明らかになることが期待される。 同試験は現在も患者登録中で、最後に石場氏は「対象の患者さんがいらっしゃれば、ぜひJCOG参加施設にご連絡いただきたい」として、講演を締めくくった。

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早期肺がん肺葉切除、VATS vs.開胸/Lancet

 英国・ブリストル大学のRosie A. Harris氏らは、早期非小細胞がん(NSCLC)患者の治療において、ビデオ補助胸腔鏡手術(VATS)による肺葉切除術は開胸手術と比較して、無病生存(DFS)を損なわずに全生存(OS)を改善するとのエビデンスをメタ解析の結果で示した。VATSは、現在、早期肺がんにおける肺葉切除術の最も一般的な術式であるが、生存率の検証において十分な検出力を持つ単一の試験が存在せず、開胸手術との腫瘍学的同等性は依然として仮説の域を出ないとされている。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。2000年以降の無作為化試験のメタ解析 研究グループは、早期肺がんの肺葉切除術におけるVATSと開胸手術の有用性を比較する目的で、無作為化試験の個別患者データを用いたメタ解析を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。 医学関連データベースで、2000年1月1日~2025年6月13日に発表された論文を検索した。年齢18歳以上の早期NSCLC患者においてVATSと開胸手術を比較し、死亡および再発のデータを収集した無作為化対照比較試験を解析の対象とした。 主要評価項目はOS率、副次アウトカムはDFS率とした。3件の試験の1,185例の個別患者データを解析 3件の論文(Bendixenらによるデンマークの研究[PLEACE試験]、Longらによる中国の研究、Limらによる英国の研究[VIOLET試験])を解析に含めた。参加者は合計1,185例で、VATS群が586例(年齢中央値64.0歳、女性50%)、開胸手術群が599例(64.8歳、49%)だった。 各研究の追跡期間中央値は、Bendixenらの試験が9.5年、Longらの試験が5.2年、Limらの試験が3.8年であった。対象とした肺の原発巣の臨床病期は、Bendixenらの試験がStage1であったのに対し、Longらの試験とLimらの試験はStage1および2だった。 治療群別の完全切除(R0)の達成率は、VATS群が98%、開胸手術群も98%であった。術後補助療法の施行率はそれぞれ30%および29%だった。VATS優先の重要性を示す知見 OS率の統合ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.65~0.96)であり、開胸手術群に比べVATS群で有意に良好であった。一方、DFS率の統合HRは0.91(95%CI:0.75~1.12)と、両群間に有意な差はみられなかった。OS率、DFS率とも、統計学的な異質性は認めなかった。 著者は、「VATSによる肺葉切除術が広く普及している背景には、術後の疼痛軽減、合併症の減少、入院期間の短縮、より迅速な身体機能の回復、術後の生活の質の向上などの既知の非腫瘍学的利点があるが、本研究の結果は、これに長期的な全生存率の優位性を加えた」「これらの知見は、早期NSCLCの外科的切除術の術式の選択では、技術的に実行可能であれば、VATSを優先することの重要性を強く主張するものである」としている。

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第289回 在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省

<先週の動き> 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省厚生労働省は3月31日に、先日公表した2026年度の診療報酬改定について、疑義解釈(その2)で在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の往診体制に関する施設基準を大幅に明確化し、とくに往診代行サービスの利用に厳しい要件を課すことを明らかにした。厚労省は、24時間往診体制を第三者サービスに依存する場合でも、患者への説明責任と医療の継続性確保を重視し、「体制内医師」であることを厳格に求める姿勢を示した。具体的には、往診担当医の氏名および担当日を患者・家族に文書で事前提示することが必須とされ、氏名の非開示は認められない。また、当該医療機関と雇用契約のない医師を往診担当医として記載することも不可とされた。さらに、やむを得ず事前に氏名を提示していない医師が往診を行う場合であっても、往診前日までに当該医療機関を訪問し、常勤医と対面で面談を行い、診療方針や患者情報を共有していることが条件となる。オンラインでの情報共有のみでは要件を満たさない点も重要である。共有すべき内容としては「患者の最新の病状や急変リスク」「今後の診療方針、緊急時の入院先や地域医療体制」「医療機関内の電子カルテや医療資材の運用方法」など、実務レベルまで具体的に示された。これにより、形式的な雇用契約のみでは要件を満たさず、対面での面談や診療方針の共有も必要となっている。従来の往診代行サービスは、外部医師のスポット対応や業務委託契約を前提とするモデルが多く、「誰が来るかわからない」体制でも運用されてきた。しかし、今回の解釈では、こうした外部プール型の仕組みは原則として施設基準を満たさない可能性が高く、実質的に継続困難とみられる。対応策としては、非常勤を含めた雇用契約の締結、連携医療機関としての正式な組み込み、自院内での当直体制強化などが挙げられるが、いずれも人的コストの増加は避けられない。今回の見直しは、責任の所在の明確化や医療の質担保という点では合理性を持つ一方で、小規模な在宅療養支援診療所にとっては24時間体制維持のハードルが一段と高まり、在宅医療提供体制の再編を促す可能性がある。制度上は在宅医療の推進が掲げられてきた中で、実運用面では「外注依存から体制内完結へ」の転換が強く求められる局面に入ったといえる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その2)(厚労省) 2) 在支診・在支病の施設基準、往診代行を使う場合は常勤医との対面での面談が必須に(日経メディカル) 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構日本医療安全調査機構が公表した2025年年報によると、医療事故調査制度が始まった2015年10月~2025年末までの累計報告件数は3,633件に達し、このうち88.9%で院内調査が完了した。2025年単年では375件、月平均31件超で、前年よりやや増加した。都道府県別の人口100万人当たり報告件数は全国平均2.9件で、大分県と京都府がともに4.9件で最多、続いて三重県4.6件、宮崎県4.5件だった。その一方で、福井県1.1件、埼玉県1.6件、和歌山県1.7件など低い地域もあり、地域差が続いている。ただし、報告件数の多寡は直ちに医療安全水準を示すものではなく、報告文化や制度理解の差を反映している可能性がある。事故の起因となった医療内容では、分娩を含む手術が158件で全体の43.9%を占め、依然として最大の割合を占めた。処置は39件、10.8%だった。有床診療所では事故の起因となった医療内容の75.7%が手術関連で、帝王切開を含む分娩が多い点が目立った。手術の内訳では、経皮的血管内手術、内視鏡下手術、開腹手術が上位を占めた。事故発生から院内調査結果報告までの平均期間は494.4日で、前年より延びた。発生から報告まで100.1日、報告から院内調査結果報告まで394.3日で、迅速化にはなお課題が残る。2025年に完了した院内調査は360件で、累計3,230件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある。外部委員の参加は81.4%、解剖・死亡時画像診断(Ai)実施は49.4%だったが、いずれも前年より低下した。2026年4月からは制度見直しにより、医療事故判断プロセスの記録保存、管理者らの研修受講、遺族申し出への組織的対応などが求められる。報告の質と調査の透明性を高め、再発防止に結びつける運用強化が、今後の医療安全の焦点となる。 参考 1) 医療事故調査・支援センター 2025年 年報(日本医療安全調査機構) 2) 2025年の「人口100万人あたり医療事故報告件数」最多は大分と京都、手術・分娩関連の死亡事故が依然多い-日本医療安全調査機構(Gem Med) 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省自由診療で行われる再生医療を巡り、死亡事例や法令違反が相次いでいる。厚生労働省の資料では、2025年8月に都内クリニックで自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し死亡した事案を受け、提供の一時停止命令や立入検査を実施し、製造施設には改善命令を出した。提供医療機関側でも、救急体制の不備、適切な救急措置の未実施、原因究明に必要な投与残余物の廃棄などが課題として示された。別の都内のクリニックでも、計画に記載のない医師や医薬品・試薬による実施、未届出疾患への提供、疾病など報告の未実施などが確認され、改善命令が出されている。問題の背景には、自由診療の再生医療が「認定再生医療等委員会の審査・届出を経ている」ことで、患者側に国が有効性や安全性を評価したかのような誤認が生じやすい構造がある。厚労省の見直し資料も、美容やがん治療などで妥当性が明確でない再生医療が増え、健康被害や信頼性低下のリスクが顕在化していると整理している。日本再生医療学会も2026年3月に「科学的根拠が不十分な自由診療の拡大は深刻な課題だ」と表明している。厚労省は今後、再生医療等安全性確保法の見直しに向け、リスク分類の再検討、自由診療の妥当性評価、提供医師・医療機関の適格性確保、認定委員会の審査の質向上、患者フォローアップや監査体制の強化、国民へのわかりやすい情報提供などを検討する。医師にとっては、自由診療であっても「届出済み」では十分ではなく、科学的妥当性、救急対応、合併症発生時の検体保全、説明責任まで含めた実施体制が厳しく問われる局面に入った。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく行政処分等について(厚労省) 2) 再生医療等安全性確保法の見直しに関する今後の検討方法について(同) 3) 「再生医療」事故や違反相次ぐ 自由診療、安全性に課題 厚労省、制度見直しへ(時事通信) 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大東京大学医学部・附属病院を巡る一連の汚職事件について、第三者のプロセス検証委員会は4月3日、大学側の対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と厳しく批判する報告書を公表した。問題の中心となったのは、内部通報があったにもかかわらず、警察の捜査を理由に学内調査を約7ヵ月間事実上停止した対応で、委員会は「真相究明を警察に委ねる姿勢は、『大学の自治』を自ら毀損する危うさをはらむ」と指摘した。報告書は、東大本部の初動の遅れに加え、総長を含む執行部の危機意識の不足、部局や研究室が互いに干渉しない組織風土、重要会議で議事録を残さないなど運営プロセスの軽視を根本要因に挙げた。また、「東大は悪いことをしない」という無謬性への思い込みと、不祥事が大学全体に及ぼす影響を十分に想像できない体質が、対応の後手を招いたと分析している。そのうえで委員会は、外部第三者による継続的なモニタリング、内部監査・監事監査・会計監査の連携強化、最高リスク責任者(CRO)の配置、対内外コミュニケーションの活性化、教員懲戒制度の迅速化と抜本的見直しの5点を提言した。東大では報告書を受け、近日中に改革策を示すとしている。今回の報告は、医学部に限らず大学全体のガバナンス不全を問う内容であり、東大の信頼回復には、再発防止策だけでなく、自浄能力を備えた組織文化への転換が不可欠だといえる。 参考 1) プロセス検証委員会報告書について(東大) 2) 東大汚職事件めぐり第三者委員会が調査結果を公表(NHK) 3) 東大収賄事件「総長の危機意識不足」、第三者委が報告 初動も問題視(朝日新聞) 4) 東京大院汚職「組織の自浄作用発揮できず」 検証委が報告書(日経新聞) 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター神戸市立医療センター西市民病院で、CT画像に写っていた肺がんを見落とした医療事故が発生し、70代女性患者が死亡した。同院によると、女性は2024年5月、階段からの転落による外傷評価のため整形外科を受診し、CT検査を実施。画像には右肺に最大約37mmの腫瘤影が認められていたが、放射線科医がこれを指摘せず、整形外科医側でも十分な確認が行われなかった。その後、女性は2025年10月に呼吸困難と大量胸水で再受診し、精査の結果、同部位に肺がんが判明。すでにステージIVまで進行しており、手術による根治は困難な状態だった。化学療法が行われたものの全身状態が悪化し、同年12月に死亡した。初回CT画像の再検証により見落としが明らかとなった。病院は今回の事案について過失を認め、遺族に謝罪。補償については現在検討中としている。見落としの背景として、外傷評価が主目的であったため肺野の読影が不十分であったこと、ならびに読影結果の共有・確認体制の不備があったと説明している。再発防止策として、放射線科医と各診療科医師によるダブルチェックの徹底、ならびにAI読影支援ソフトの活用強化を掲げた。今回の事例は、偶発的に撮影された画像所見であっても全身的な異常の見落としを防ぐ体制の重要性を示すものであり、読影責任の所在や多職種間の情報共有の在り方が改めて問われる結果となった。 参考 1) CT画像で肺がん見落とし70代の女性患者死亡 神戸市立・西市民病院、遺族に謝罪(産経新聞) 2) CT検査で肺がん見落とし70代女性死亡 神戸市立病院で医療事故(朝日新聞) 3) 神戸市立医療センター西市民病院で医療事故 外傷診断目的で受診・70代女性患者のCT撮影した際に放射線科医が『がん』見落とす 女性患者はがんが進行して死亡(FNNプライムオンライン) 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線美容外科医が麻酔や睡眠薬を悪用し、無抵抗状態にした女性患者や職員らに対して長期間にわたり性的暴行を繰り返していた事件で、東京地裁は被告人の男性医師に懲役25年の実刑判決を言い渡した。犯行は約9年間に及び、被害者は21人、うち未成年が4人、最年少は9歳と極めて重大である。患者の多くは手術中や処置後の麻酔下にあり、医療行為そのものが加害の機会として利用されていた点が特徴。また、同一被害者に対する複数回の加害行為や、犯行の様子を撮影するなど、計画性と執拗性も認定された。判決は、医師という立場を利用した「悪質で卑劣な犯行」と断じ、常習性と規範意識の著しい欠如を強く非難している。求刑27年に対し25年の量刑となったが、被害の規模と内容から極めて重い判断といえる。被告は起訴事実を認めつつも量刑不当として控訴している。本件は、医療機関という本来安全であるべき場において、患者の身体的・心理的脆弱性が悪用された点で社会的衝撃が大きい。加えて、捜査段階から余罪の可能性も指摘されており、押収された記録媒体には他の被害をうかがわせる映像が含まれていたとされる。事件の実態は、判決で認定された範囲をなお上回る可能性がある。さらに、別の精神科医による患者への不同意性交事件も発覚しており、診察後に施錠された空間で逃げ場を奪われた状況での犯行が疑われている。この医師は過去の逮捕・有罪事案を経ても、診療を継続していたことが明らかとなり、行政処分の遅れに対する制度的問題も浮上している。一連の事件を受け、世論は極めて厳しく、「医師免許制度は機能しているのか」「なぜ再犯を防げなかったのか」といった批判が噴出している。とくに、刑事罰や行政処分が抑止力として十分に機能していない実態に対し、制度の見直しを求める声が強まっている。医療は患者の信頼の上に成り立つが、その信頼を根底から覆す行為が繰り返されたことは、医療界全体の倫理と統治の在り方を問い直す事案となっている。 参考 1) 美容外科医が麻酔で無抵抗の女性患者らに性犯罪、9歳児含む21人が被害…「悪質で卑劣な犯行」懲役25年判決(読売新聞) 2) 女性にわいせつ行為容疑、医師を逮捕 10人以上の被害状況を撮影か(朝日新聞) 3) 「まだ診察ある」経営する心療内科で20代女性患者に不同意性交 容疑で医師の男を逮捕(産経新聞) 4) 患者の女性を閉じ込め不同意性交か 歌舞伎町の精神科医を逮捕(毎日新聞) 5) 新宿・歌舞伎町“有名精神科医”が不同意性交の疑いで7回目の逮捕…20年にわたり犯罪を繰り返してきた激ヤバ医師の「数々の悪行」(現代ビジネス) 6) なぜ6回逮捕でも医師免許は剥奪されないのか…女性患者を襲い続けた歌舞伎町の精神科医を守る「歪んだ制度」の正体(同)

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがアジア人でもOS良好(MARIPOSA)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善することが示されている1)。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、本試験のアジア人集団におけるOSなどのアップデート解析結果が、林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、アジア人集団においてもオシメルチニブ単剤と比較してOSが良好であることが示された。なお本演題は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2025)のアンコール演題であったが、日本人集団のpost-hoc解析結果が追加された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失またはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):アミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群):ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS[主要な副次評価項目]OS[その他の評価項目]PFS2(2次治療開始後のPFS)、治療中止までの期間、頭蓋内PFS(icPFS)、頭蓋内奏効率(icORR)、頭蓋内奏効期間(icDOR)、症状進行までの期間(TTSP)、安全性など 今回は、アジア人集団(ami+laz群250例、osi群251例)の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値は63歳であった。EGFR遺伝子変異の内訳はexon19欠失が55%、L858Rが45%であり、脳転移を有する割合は44%であった。・追跡期間中央値38.7ヵ月時点におけるOS中央値は、ami+laz群が未到達、osi群38.4ヵ月であり、ami+laz群で延長がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.97、名目上のp=0.026)。3年OS率はami+laz群61%、osi群53%で、42ヵ月OS率はそれぞれ59%、46%であった。・OSのサブグループ解析において、一貫したOSのベネフィットが示された。日本人を対象としたpost-hoc解析においても一貫した傾向がみられた(HR:0.77、95%CI:0.34~1.77)。・病勢進行後に後治療を受けた患者の割合はami+laz群71%、osi群75%であり、いずれも多くが化学療法またはチロシンキナーゼ阻害薬を含む治療を受けていた。・PFS2中央値はami+laz群が未到達、osi群34.2ヵ月であり、ami+laz群が良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、名目上のp=0.007)。・治療中止までの期間中央値はami+laz群27.9ヵ月、osi群23.2ヵ月であり、ami+laz群が長かった(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、名目上のp=0.008)。・icPFS中央値はami+laz群が23.5ヵ月、osi群が23.9ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.57~1.09)。3年icPFS率はami+laz群が36%、osi群が18%であった。・icORRはami+laz群が78%、osi群が79%であった。icDOR中央値はそれぞれ未到達、27.4ヵ月であった。・TTSP中央値はami+laz群が未到達、osi群が30.8ヵ月であった(HR:0.65、95%CI:0.51~0.84、名目上のp<0.001)。・安全性プロファイルは既報および全体集団と一貫していた。静脈血栓塞栓症(VTE)はami+laz群の34%、osi群の7%で発現したが、追跡期間の延長による意義のある増加はみられなかった。なお、ベースライン時に抗凝固薬を使用していたのは3%であった。肺臓炎の発現割合はいずれの群も2%と低かった。・ami+laz群における注目すべき有害事象の多くは投与初期(0~4ヵ月)に発現しており、長期の観察において安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。このことから、長期的な治療継続が実現可能であることが示唆された。 本結果について、林氏は「アミバンタマブ+ラゼルチニブはオシメルチニブ単剤と比較して、全体集団と同様にアジア人集団でも死亡リスクを有意に低下させ、アジア人集団における新たな標準治療としての位置付けがさらに強固なものとなった」とまとめた。なお、日本人集団のOS解析結果について、同氏は「日本人集団のOS解析結果はpost-hoc解析であり、サンプルサイズやイベント数が少なかった。アジア人は層別化因子であったことを考慮すると、アジア人集団の解析結果のほうがより重要なデータである」と述べた。

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EGFR変異NSCLC、オシメルチニブ+化学療法の日本人解析結果(FLAURA2)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して、日本人集団においても無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が良好であった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」の日本人集団の結果を栁谷 典子氏(がん研究会有明病院)が報告した。日本人集団のOSの解析結果は、2025年11月に開催された第66回日本肺癌学会学術集会でも報告されていたが、今回はさらに詳細な結果が報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療の局所進行/転移EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失またはL858R)の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 日本人集団の解析結果は以下のとおり。なお、PFSのデータカットオフは2023年4月、OS・安全性・曝露期間・次治療のデータカットオフは2025年6月であった。・解析対象は併用群47例、単独群47例であった。男性の割合はそれぞれ34%、51%であり、年齢中央値はそれぞれ68歳(範囲:39~83)、65歳(同:33~79)であった。中枢神経系転移を有する割合はそれぞれ38%、40%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群49%/51%、単独群66%/34%であった。日本人集団はグローバル集団と比較して、年齢が高く、前喫煙者が多いという特徴があった。・PFS中央値は併用群24.8ヵ月、単独群16.4ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.28~0.86)。・1年、2年時のPFS率は、併用群がそれぞれ83%、64%であり、単独群がそれぞれ63%、30%であった。・OS中央値は併用群48.3ヵ月、単独群34.3ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(HR:0.60、95%CI:0.36~1.03)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ85%、65%、52%であり、単独群がそれぞれ65%、41%、33%であった。・データカットオフ時点(2025年6月)において、試験治療を継続していた患者の割合は併用群28%(オシメルチニブ28%、ペメトレキセド6%)、単独群15%であった。・併用群は化学療法フリー期間が長かった。各薬剤の曝露期間中央値は、併用群はオシメルチニブ28.5ヵ月、ペメトレキセド5.5ヵ月、プラチナ製剤2.8ヵ月であった。単独群のオシメルチニブは16.0ヵ月であった。・次治療を受けた患者の割合は併用群75%、単独群86%であった。最初の次治療の内訳は、併用群では化学療法が多く(プラチナ製剤を含む化学療法40%、プラチナ製剤を含まない化学療法33%)、単独群ではプラチナ製剤を含む化学療法が多かった(71%)。・安全性について、主解析後の2年間の観察期間において、新たな間質性肺疾患の発現はなく、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。 なお、グローバル集団における既報の主要結果1)は以下のとおり。・PFS中央値(併用群vs.単独群)25.5ヵ月vs.16.7ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.49〜0.79、p<0.001)・1/2年PFS率(同上)80%/57%vs.66%/41%・OS中央値(同上)47.5ヵ月vs.37.6ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)・2/3/4年OS率(同上)80%/63%/49%vs.72%/51%/41% 本結果について、栁谷氏は「オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCの1次治療として確立した推奨治療である。FLAURA2試験では、オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法がオシメルチニブ単剤と比較してOSを有意に延長し、日本人集団でもOSの改善傾向が示された。これらの結果は、併用療法が1次治療として強く推奨される選択肢であることを支持する」と述べている。

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HER2変異陽性NSCLCへのゾンゲルチニブ、脳転移例にも奏効(Beamion LUNG-1)/ELCC2026

 ゾンゲルチニブは、未治療のHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、管理可能な安全性プロファイルとともに高い抗腫瘍活性を示し、活動性脳転移を有する患者においても良好な頭蓋内活性を示した。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、John V. Heymach氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」のコホート2(未治療のチロシンキナーゼドメイン[TKD]の変異陽性患者)、およびコホート4(ベースライン時に活動性脳転移を有するTKDの変異陽性患者)の結果を報告した。なお、本試験の結果を基に、米国食品医薬品局(FDA)はHER2遺伝子変異陽性進行NSCLCに対する1次治療として、ゾンゲルチニブを2026年2月に迅速承認した。また、本邦でも同適応に関する適応追加申請が行われたことが、2026年3月に発表されている。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ib相の中間解析の結果から1日1回120mgの用量が選択された。今回は、未治療のHER2遺伝子変異(TKDの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート2)、ベースライン時に活動性脳転移を有するHER2遺伝子変異(TKDの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート4)のうち、1日1回120mgの用量で投与された患者の結果が報告された。有効性の主要評価項目は、コホート2がRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)、コホート4はRANO-BM基準に基づくBICRによる頭蓋内奏効率(icORR)であった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景について、コホート2(74例)の年齢中央値は67歳で、ベースライン時に脳転移を有していた割合は30%であった。コホート4(30例)の年齢中央値は59歳であり、未治療の割合は27%であった。・コホート2において、BICRによる確定ORRは76%(CR:11%、PR:65%)で、確定病勢コントロール率は96%であった。・コホート2における奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月であった。・コホート2における無増悪生存期間(PFS)中央値は14.4ヵ月、奏効期間(DOR)中央値は15.2ヵ月であった。・コホート4において、BICRによる確定icORRは47%、確定頭蓋内DCR(icDCR)は87%であった。脳への放射線治療歴がない患者(17例)における確定icORRは59%、確定icDCRは94%であった。・コホート4における頭蓋内PFS中央値は8.2ヵ月、頭蓋内DOR中央値は6.9ヵ月であった。・コホート2において、治療関連有害事象(TRAE)は91%(67例)に認められ、Grade3以上のTRAEは19%(14例)であった。・コホート2で頻度の高かったTRAEは下痢(55%、Grade3:3%)、皮疹(24%、Grade3以上はなし)、ALT増加(18%、Grade3:4%)であった。・コホート2において、有害事象による減量は16%(12例)、投与中止は9%(7例)に認められた。 本結果について、Heymach氏は「ゾンゲルチニブは、活動性脳転移を有する患者を含めて、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者において臨床的に意義のあるベネフィットを示し、Grade3以上のTRAEが非常に少なく管理可能な安全性プロファイルを示した」と結論付けた。なお、未治療のHER2遺伝子変異陽性進行NSCLC患者を対象として、標準治療との比較によりゾンゲルチニブの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が進行中である。また、切除可能なHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象として、術後補助療法におけるゾンゲルチニブの有用性を評価する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-3試験」も進行中である。

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EGFR・TP53変異NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法がPFS改善(TOP)/ELCC2026

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)において、TP53遺伝子変異は高頻度にみられ、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬単剤療法の効果不良と関連することが知られている。そこで、TP53遺伝子変異を併存するEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象として、オシメルチニブ+化学療法(FLAURA2レジメン)とオシメルチニブ単剤を比較する第III相試験「TOP試験」が中国で実施されている。本試験において、TP53遺伝子変異が併存する集団でも、FLAURA2レジメンが無増悪生存期間(PFS)を改善し、全生存期間(OS)も良好な傾向がみられた。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、Yunpeng Yang氏(中国・中山大学がんセンター)が本試験のPFSの主解析およびOSの中間解析の結果を報告した。試験デザイン:海外第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失/L858R)およびTP53遺伝子変異陽性の非扁平上皮NSCLC成人患者294例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+カルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、146例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、148例)評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・本試験の対象患者は、ベースライン時に約5割が中枢神経系転移を有していた(併用群49.3%、単独群48.0%)。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群54.8%/45.2%、単独群56.1%/43.9%であった。・データカットオフ時点(2025年11月12日)におけるPFS中央値は併用群34.0ヵ月、単独群15.6ヵ月であり、併用群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.32〜0.60、p<0.001)。・PFSに関するサブグループ解析では、中枢神経系転移の有無やEGFR遺伝子変異の種類などを含むすべてのサブグループで併用群が良好な傾向にあった。・OSは未成熟(成熟度30.6%)であったが、OS中央値は併用群48.4ヵ月、単独群36.5ヵ月であり、併用群で改善の傾向がみられた(HR:0.57、95%CI:0.38~0.88)。・ORRは併用群82.9%、単独群71.6%であった。DOR中央値はそれぞれ32.7ヵ月、15.3ヵ月であった。・オシメルチニブによる治療継続期間中央値は併用群20.3ヵ月、単独群15.4ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群62.4%、単独群14.9%に発現したが、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。 本試験結果について、Yang氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCにおいて、遺伝子変異などの特徴に応じて治療を選択する個別化治療戦略を支持する重要な根拠となる」とまとめた。

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アミバンタマブ治療肺がん患者向けサポート・プログラムを提供開始/J&J

 Johnson & Johnsonは2026年3月18日、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)もしくはEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLCで、アミバンタマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ皮下注射(リブロファズ)もしくはアミバンタマブ点滴静注(ライブリバント)で治療を始める患者・家族などを対象としたペイシェント・サポート・プログラム「リブロファズ/ライブリバントwithMe(ウイズミー)」の提供を開始する。定期的な連絡および肺がんや上記治療薬に関する情報提供によって、同剤の適正使用を支援することを主な目的としている。 同プログラムでは、登録された患者に対し、専任看護師が6ヵ月間定期的に電話することで、治療に関連する疑問の解消、セルフケアの習慣化、身体変化への気づき、医療従事者に伝えるべきことの整理などのサポートを無償で行う。また患者からの問い合わせや相談にも電話やメールで随時対応する。 同プログラムは、医療従事者が、リブロファズもしくはライブリバントで治療を始める患者に本プログラムを紹介し、患者がプログラムの内容に納得し、参加登録をすることでサポートを受けられるようになる。 一方で、同プログラムでは医学的判断を伴う情報提供は行わない。医師による診察・治療を代替するものではない、としている。

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がん関連VTE発症予測に包括的ゲノムプロファイリングは有用か/日本循環器学会

 がん患者における重要な心血管合併症の1つに静脈血栓塞栓症(VTE)があり、2023年に公開されたASCO Guidelineにおいても、このようなVTEの高リスク患者への1次予防が推奨されている。しかし、がん関連VTEの発症を正確に予測できるモデルは現段階では確立されていない。そこで今回、中村 栞奈氏(京都大学医学部附属病院 循環器内科)がVTE発症の予測として包括的ゲノムプロファイリングを用いた最新知見について、3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1において報告した。なお、本結果はJournal of thrombosis and haemostasis誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された1)。 本研究は、VTEの発症とがん関連遺伝子変異との潜在的な関連性を調査することを目的として、FoundationOne CDxによる包括的ながんゲノムプロファイリング(CGP)を受けたVTE既往歴のない成人がん患者を対象に、324個のがん関連遺伝子の中からVTEに関連する遺伝子変異を探索した。主要評価項目はVTEの発症。 主な結果は以下のとおり。・京都大学医学部附属病院において、2015年3月~2024年6月の期間にCGPが行われた1,079例のうち、適格基準を満たした412例について検討した。・対象者の平均年齢は59歳、199例(48%)が女性であった。・がんの遠隔転移は319例(77%)、372例(90%)が化学療法を行っていた。・観察期間の中央値は693日で、検体採取後に59例(14%)にVTEを認めた。また、累積イベント発症率は1年で8.3%、3年で16.6%、5年で26.0%であった。 ・VTEを発症した患者の原発がんの部位は、膵臓14例(24%)、胆道7例(12%)、子宮7例(12%)、肺6例(10%)であった。・年齢と性別を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いたがん遺伝子変異の調整ハザード比(HR)を算出したところ、KRAS(HR:2.35、95%信頼区間[CI]:1.38~4.01)、CDKN2A(HR:2.06、95%CI:1.21~3.52)、TP53(HR:1.71、95%CI:0.99~2.93)など、VTEリスクの高さと関連する可能性のあるゲノム変異を特定した。  中村氏は「包括的なゲノムプロファイリングに基づくこの新しい研究は、VTEの発症に関連するいくつかのゲノム変異を明らかにし、従来の臨床指標にがん関連遺伝子変異情報を統合することで、より精緻なリスク層別化が可能となることが期待される」とコメント。ただし、本研究の制限について「対象者が少なく、がんの病期や治療内容による調整ができていないため、潜在的バイアスが存在した可能性がある」と述べた。 最後に同氏は「本研究を踏まえより大規模な研究を行っていくために、新たなコホートで検証するためにONCO CARDIO Registryを始めた。この研究では、日本全国の約40施設の大学病院・がんセンター・大規模基幹病院が集結し、約2万例(最大総数)のがん患者の登録を目指しており、世界的にも最大規模のがん関連遺伝子情報を含めた腫瘍循環器領域の疫学研究となる見込みである」と今後の展望を語った。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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バーンアウトについて学んでみる【非専門医のための緩和ケアTips】第120回

バーンアウトについて学んでみる緩和ケアに限らず、医療者として働き続けるうえで非常に重要な「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に関する質問をいただきました。今回はバーンアウト全般について考えてみます。今日の質問緩和ケアやお看取りのケアはやりがいを感じる反面、精神的負担を感じるときがあります。知り合いの緩和ケア認定看護師が、うつ病で休職したという経験もあります。緩和ケアはバーンアウトしやすいのでしょうか?私も緩和ケアの仕事を始めた頃に、家族や知人に「亡くなる人ばかりを診ていると、うつ病になるのではないか」と心配されたことがありました。私自身は緩和ケアにやりがいを感じ、キャリアの中で関わることができたことは本当に良かったと思います。ただ確かに、周囲にはうつ病と診断されるかどうかはともかく、メンタル不調で休職が必要になったり、緩和ケアの仕事を続けられなくなったりする方もいました。私は精神科医ではなく、バーンアウトについて専門的に学んだ経験もありませんが、部門の管理者としてスタッフの健康管理をするうえでバーンアウトについて知っておくことは重要だと考えています。では、具体的にバーンアウトのどんな点を知っておく必要があるのでしょうか? 緩和ケア領域は、共感性の高いスタッフが集まりやすい分野だと感じます。緩和ケアを実践するスタッフは、患者はもちろん、家族や介護スタッフ、同僚に対しても思いやりをもつ方が多いと感じます。一方、懸命に取り組むスタッフであればあるほど、仕事において感情的な負担や葛藤を抱えることは多いとも感じます。懸命に取り組むだけに、患者さんの苦痛を緩和できなかったり、家族とのやり取りで負担を感じたりといった場面が続くと、より負担を感じやすくなります。そんな状況で、私たちにとって大切なことは、自分自身の状況に敏感であることです。バーンアウトの分野には「情緒的消耗感」や「脱人格化」という用語があります。「情緒的消耗感」は単なる疲弊だけでなく、情緒的な資源の枯渇を伴う状態です。そして「脱人格化」は他者への対応が思いやりのないものになったり、個別のケアに配慮できなかったりする状態を意味します。まずは自分自身のコンディションに意識を向け、こうした状態の兆候がないか、気を払うことが大切です。管理者目線では、スタッフがこうした状態に陥っていないかを注意する必要があります。また、自分自身に注意を払えるよう、バーンアウトをテーマとした研修を行うことも一手でしょう。いかがでしょうか? バーンアウトについて、皆さんの職場で、それぞれの立場で、考えるきっかけになれば幸いです。今日のTips今日のTipsバーンアウトについて理解すること、自身のコンディションに敏感になることが大切。

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