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関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座【大学医局紹介~がん診療編】

倉田 宝保 氏(主任教授)池田 慧 氏(准教授)吉田 清里 氏(病院助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座は、肺がんを中心とする胸部腫瘍に対する診療・研究を行う、呼吸器腫瘍内科学を冠した大学講座として全国で初めて設立された講座です。私たちは「優れた呼吸器内科医であり、かつ優れた腫瘍内科医であること」を人材育成の基本理念とし、肺がん薬物療法のみならず、呼吸器感染症や間質性肺疾患など呼吸器内科全般、内科学全般の診療能力を兼ね備えた医師の育成を目指しています。当講座の特徴は、日常診療から生まれた課題を研究へ発展させ、その成果を患者さんへ還元する「臨床重視」の姿勢にあります。若手医師も早期から診療・研究に主体的に参加し、多施設共同臨床研究や治験などに携わる機会が豊富にあります。また、関連病院への出向においては、1人ひとりのキャリアプランを尊重し、できる限り本人の希望に沿った施設で経験を積めるよう配慮しています。大学病院での高度ながん診療から地域医療まで幅広く経験できる環境も当講座の強みです。今後は、地域のがん診療を支える中核講座として、診療・研究・教育をさらに発展させるとともに、患者さんに寄り添いながら新しい医療を創造できる人材を育成していきます。呼吸器内科医として、そして腫瘍内科医として成長したい若手医師の皆さんを心より歓迎します。力を入れている治療/研究テーマ当科は西日本随一の症例数を誇り、日々の診療から多様な経験を積むことが可能です。各種ガイドラインや臨床研究グループへ委員を多数輩出しており、豊富な企業治験から当科主導の医師主導臨床研究まで、日本の最先端の肺がん診療をじかに体感できる刺激的な環境が整っています。また、指導医層の充実も大きな魅力です。日本の肺がん領域における若手リーダーの1人である山中 雄太講師、国立がん研究センターから帰任し臨床とアカデミックな研究を牽引する竹安 優貴助教、がんリハビリの第一人者としてフレイル外来を立ち上げた勝島 詩恵診療講師など、それぞれ独自の特色や得意分野を持つエキスパートが揃っています。医局の雰囲気、魅力私自身、1年前に赴任してまいりましたが、手前味噌ながら医局員は皆人柄がよく、非常によい雰囲気だと実感しています。学ぶ意欲を持つ若い先生を大切にし、時に優しく、時に厳しく育むための最高の土壌がここにはあります。最先端の環境と温かい仲間に囲まれ、共に高め合える方をお待ちしています。同医局を選んだ理由私が当医局を選んだ理由は、医局全体の雰囲気がよく相談しやすい環境が整っていると感じたからです。上級医の先生方も気軽に相談に乗ってくださり、日々安心して診療に取り組むことができています。また、女性医師も多く活躍しており、子育てをしながら働く先生もいらっしゃるため、私自身も育児と仕事を両立しながら安心してキャリアを続けられる環境であることも大きな魅力です。現在学んでいること現在は肺がん診療を中心に研修を行っており、診断から薬物療法、治療効果や有害事象の評価まで専門的な知識と経験を積んでいます。一方で、呼吸器疾患に限らず、併存疾患を含めた内科的な全身管理についても幅広く学ぶことができる点が大きな特徴だと感じています。また、積極的な治療だけでなく、患者さん1人ひとりの価値観や生活背景に寄り添った緩和医療についても学ぶ機会が多く、日々多くのことを吸収しています。専門性と総合的な診療能力の両方を高められる環境で、充実した研修を送っています。関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座住所〒573-1010 大阪府枚方市新町2丁目5番1号問い合わせ先koshunai@kmu.ac.jp医局ホームページ関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座専門医取得実績のある学会日本内科学会日本呼吸器学会日本臨床腫瘍学会日本呼吸器内視鏡学会研修プログラムの特徴(1)個々人のキャリアプランに合わせた柔軟なプログラム画一的な研修ではなく、1人ひとりの目標や希望を尊重し、個別のキャリアプランに合わせた柔軟な研修プランを提供して個人の成長をサポートします。(2)経験豊富なスタッフによる手厚い指導体制それぞれの得意分野を持つエキスパートが揃っており、複雑な症例や研究に関しても、先輩医師からじかに丁寧なアドバイスを受けられる体制が整っています。(3)互いに助け合い、高め合える良好な医局環境医局員同士の仲がよく、風通しのよい雰囲気が特徴です。気軽に相談し互いにサポートし合う環境が、日々の質の高い診療や優れた研究成果に直結しています。詳細はこちら

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緩和ケアでパニック症状を見逃さない【非専門医のための緩和ケアTips】第128回

緩和ケアでパニック症状を見逃さない進行がん患者が突然の不安と息苦しさを訴え、「このまま死ぬのではないか」と取り乱す……、緩和ケアの現場では時々経験することです。医療者としては難しい対応を迫られ、緊急性も高いので、私の経験を共有したいと思います。今日の質問先日、訪問診療をしていた肺がん患者さんなのですが、呼吸困難が強くなり、パニック発作のような様子になってしまいました。在宅での対応が困難と判断し、もともと通院していた基幹病院に救急搬送としました。緩和ケアでもパニック発作の対応はあるのでしょうか?前提として、私自身は精神科的なパニック発作の診断には習熟していません。精神科的な診断および治療としての厳密さを欠いた部分もあるかと思いますが、その点をご了承ください。今回は緩和ケアの現場で遭遇する、患者がパニック発作様の苦痛を訴える状況を、便宜的に「パニック発作」として扱います。救急診療でしばしば遭遇するパニック発作では、身体的に重篤な疾患はない患者が多いでしょう。そのため、患者が「このまま死ぬのでは」と取り乱していても、「命に関わる状況ではないので、安心してください。呼吸を整えることで苦しさも和らぎますよ」といった声掛けをして対応すると思います。ただし、緩和ケアの臨床で遭遇するパニック発作は救急搬送におけるパニック発作とは明確に異なります。なぜなら、緩和ケアを提供している時点で身体症状の原因となる身体疾患があるからです。そう考えると、救急で遭遇する典型的なパニック発作と同じ対応のみで済ませるのは危険です。実際に病状が悪化したり、新たな病態が生じたり、症状が悪化したりすることが契機となって起こったパニック発作の可能性が高いためです。緩和ケアにおいてパニック発作を来しやすい状況としては、気道閉塞やがん性リンパ管症など、急に悪化する呼吸困難が生じるものが挙げられます。こうした病態は致命的となることがあり、症状の程度によっては緩和的鎮静を検討することもあります。声掛けやオピオイドの調整だけでは症状が和らがない可能性があることを理解しておきましょう。急激な病状悪化や、時間単位で死亡が予測されるような状況であれば緩和的鎮静の対応になることが多いでしょうが、もう少し軽い症状でもパニック発作を経験する場合があります。たとえば、慢性的な呼吸困難がある中で、体動時の呼吸困難が強いときにはパニック発作のように恐怖感が強くなってしまう、といったイメージです。そうした場合は、予防と発作時の対応法の準備が有効です。予防に関しては、患者と家族に対して「呼吸困難は恐怖感も強くなるので、パニックのようになりやすい症状である」と疾病理解を促し、具体的に対応法を打ち合わせます。たとえば、「呼吸困難が強くなりにくい立ち上がり動作」など、日常生活の中での工夫を指導します。状況に応じて、抗不安作用を有するベンゾジアゼピン系薬を頓用または定期投与で使用することもあります。SSRIなどの抗うつ薬の適応については、必要に応じて精神科専門医への相談を検討します。対応策を多く準備しておくこと自体が患者の安心感につながるため、薬剤とそれ以外の非薬物的なアプローチを関係者と一緒に検討します。今日のTips今日のTips緩和ケアにおけるパニック様症状では、精神症状への対応だけでなく、身体症状の悪化や新たな病態も評価することが大切です。

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StageIV肺限局型NSCLCへの肺移植、1年OS率100%/JAMA

 内科的治療に抵抗性の病変が肺に限局したStageIVの非小細胞肺がん(NSCLC)で、呼吸不全を呈する患者において、内科的治療単独と比較して肺移植を受けた患者の早期生存成績は良好であることが、米国・ノースウェスタン大学のAnkit Bharat氏らによる前向き単施設レジストリ研究の結果で示された。移植群の推定1年全生存(OS)率は100%であったのに対し、内科的治療単独群は40.8%であった。著者は、「長期の追跡評価および生活の質(QOL)の評価が求められる」とまとめている。両肺移植は、肉眼的に確認できる病変をすべて切除可能であるが、肺がんについては過去の肺移植成績が不良であったことから適応にならないとされている。JAMA誌オンライン版2026年7月8日号掲載の報告。肺移植vs.内科的治療単独、NSCLC肺移植vs.非がん肺移植患者を評価 研究グループは本検討で、肺移植を受けた患者の転帰を詳述するとともに、肺移植群と内科的治療単独群の生存率を比較した。 レジストリには、2021年9月1日~2025年6月30日に肺移植適応評価が行われた成人404例(3コホート)が含まれていた。そのうち98例が、内科的治療(推奨される全身性の標準療法)に抵抗性で病変進行が認められ、病変が肺に限局したStageIVのNSCLCであった。17例が肺移植を受け(コホート1)、81例は移植適応基準を満たしたが非生物学的障壁により内科的治療のみが行われた(コホート2)。コホート3は、末期肺疾患で肺移植を受けた患者306例で、これらの患者も評価の対象とした。コホート1、3の全例が呼吸不全を呈していた。 肺移植は、最新の病期分類で病期を評価したうえで、腫瘍播種を最小化する手技を用いて行われた。 主要評価項目は、肺移植を受けたNSCLC患者(コホート1)と内科的治療のみを受けたNSCLC患者(コホート2)における、適格評価完了時点からのOSであった。副次評価項目は、肺移植を受けたNSCLC患者(コホート1)と肺移植を受けた非がん患者(コホート3)を比較した移植後1年生存率とした。肺移植を受けたNSCLC患者の早期生存成績は良好 追跡期間(適格評価完了時点から2025年6月30日まで)の中央値は、肺移植を受けたNSCLC患者(年齢中央値61.0歳[四分位範囲[IQR]:48.0~64.0]、女性10例[59%])が343日(IQR:191~768)、内科的治療のみを受けたNSCLC患者(年齢中央値63.4歳[IQR:56.7~68.1]、女性42例[52%])は221日(IQR:68~386)であった。肺移植を受けた非がん患者(年齢中央値63.0歳[IQR:55.0~68.8]、女性112例[37%])の移植日からの追跡期間中央値は200日(IQR:126~496)であった。 Kaplan-Meier法で推定した1年OS率は、肺移植を受けたNSCLC患者が100.0%(95%信頼区間[CI]:63.1~100.0)(死亡0例)であったのに対し、内科的治療のみを受けたNSCLC患者は40.8%(95%CI:29.6~53.1)(死亡52例)であった(絶対群間差:59.2%ポイント、95%CI:46.2~71.7)。 移植後1年生存率は、肺移植を受けたNSCLC患者が100%(95%CI:63.1~100)であったのに対し、肺移植を受けた非がん患者は88.1%(95%CI:83.7~91.4)であった(絶対群間差:11.9%ポイント、90%CI:9.1~15.5)。 延長追跡評価時点(2026年1月31日)で報告された、肺移植を受けたNSCLC患者の死亡は2例であった。

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若年発症がんの増加、背景に生物学的老化の加速?

 近年、若い世代でのがん発症リスクが増加していることが示されているが、それを説明し得る要因が新たな研究によって浮かび上がった。この研究を実施した米セントルイス・ワシントン大学医学部准教授のYin Cao氏らによると、若い世代に見られる生物学的老化の加速が、がんに対処する体の仕組みに影響を及ぼしている可能性があるという。詳細は、「Nature Medicine」に6月22日掲載された。 研究グループの説明によると、50歳未満または55歳未満で診断される若年発症がんは、1990年から2019年にかけて世界全体で24%増加し、現在も増加し続けている。また、米国、英国、カナダ、オーストラリアでは、1990年代生まれの人は1960年代生まれの人と比べて若年発症大腸がんリスクが少なくとも4倍高いという。 研究グループによると、なぜ若い世代でがんリスクが高まっているのかについては明らかになっていない。一般的に、がんは加齢に伴う疾患と見なされている。高齢者でがんリスクが高いのは、がんの発生につながる細胞損傷が長年にわたって蓄積しているためと考えられている。このことから研究グループは、生物学的老化の加速が若い世代のがんリスクの上昇に関与しているのではないかと考えた。生物学的老化とは、出生からの経過年数を表す暦年齢とは異なり、日々の生活の中で生じる身体の摩耗や損傷の蓄積を反映した生物学的年齢に基づく老化を指す。 今回の研究では、英国の大規模なヘルスリサーチ・プロジェクトであるUKバイオバンクの参加者である15万4,169人(女性55%、白人92%)の若年成人と、米国の同様の研究プロジェクト(All of Us Research Program)参加者1万262人(女性69%、非ヒスパニック系白人54%)のデータを解析した。参加者ごとに、血液検査の測定値に基づく全身の生物学的年齢(PhenoAge、Klemera−Doubal Method〔KDM〕年齢)と、メタボロミクス解析に基づく生物学的年齢を推定し、出生コホート(世代)による違いと若年発症がんとの関連を検討した。さらに、生体内に存在する全てのタンパク質(プロテオーム)を解析するプロテオミクス解析により臓器ごとの生物学的年齢を推定し、臓器別老化と若年発症がんリスクとの関連を検討した。 その結果、若い世代ほど生物学的老化が加速している可能性が示され、生物学的年齢が暦年齢より高いほど、がんリスクも高まることが示された。例えば英国では、暦年齢で調整後の解析でも、1950~1954年生まれの人と比べて1965~1975年生まれの人では、標準化したPhenoAgeに基づく年齢差(生物学的年齢−暦年齢)が23%大きかった。この生物学的老化の加速は、若年発症固形がんリスクの8%の上昇と関連していた。さらに、参加者を生物学的老化の加速の程度に基づき分類すると、生物学的老化が最も加速していた群では、加速の程度が最も低かった群と比較して、若年発症固形がんリスクが15%高かった。米国でも同様に、1965~1969年生まれの人と比べて1990~1999年生まれの人では標準化したPhenoAgeに基づく年齢差が平均で92%大きかった。 さらに、生物学的老化の加速は、若年者における特定の臓器のがんのリスク上昇にも関連していた。例えば、免疫系の老化が進んでいることは若年発症肺がんのリスク上昇に関連していた一方、脂肪組織の老化が進んでいることは若年発症大腸がんのリスク上昇に関連していた。 研究グループによると、生物学的老化が加速する原因はまだ明らかになっていないが、環境要因、生活習慣、社会的要因などが若い世代の体に長期的な影響を及ぼし、老化を加速させている可能性は考えられるという。Cao氏は、「われわれの最終的な目標は、現代の環境がどのように生物学的な変化として体内に組み込まれ、がんリスクを高めるのかを解明し、がん予防を幅広い対象者への推奨から個別化された介入へと転換させることだ。これによって、より早期段階でリスクを特定し、個々人の生物学的特性に合わせた予防戦略を開発することに一歩近付くことができる」と話している。

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IB~IIIB期ALK陽性NSCLC、完全切除後ensartinibが有効/NEJM

 完全切除されたIB~IIIB期のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法において、経口投与が可能で強力なALK阻害薬であるensartinibはプラセボと比較して、24ヵ月の時点で生存かつ無病状態(非再発)を維持していた患者の割合が有意に高く、新たな安全性シグナルを認めないことが、中国・Tianjin Medical University Institute and HospitalのDongsheng Yue氏らELEVATE Study Groupが実施した「ELEVATE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年7月9日号に掲載された。無病生存を無作為化第III相試験で評価 ELEVATE試験は、IB~IIIB期ALK陽性NSCLC患者における完全切除術後のensartinib補助療法の安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Betta Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 2022年7月~2024年7月に、年齢18歳以上、全身状態の指標であるECOG PSが0または1で、完全切除されたIB、II、IIIA、IIIB期のNSCLCであり、ALK陽性の患者を登録した。IIB~IIIB期の患者は術後補助化学療法を受けることが求められた。 被験者274例を、完全切除および予定された術後化学療法の終了後に、ensartinib(225mg、1日1回)の経口投与を受ける群(137例、年齢中央値55歳、女性91例[66.4%])、またはプラセボ群(137例、年齢中央値54歳、女性84例[61.3%])に無作為に割り付けた。投与期間は最長24ヵ月であった。 主要評価項目は、II~IIIB期のNSCLC患者における無病生存(無作為化から再発または全死因死亡までの期間)とした。全患者でもII~IIIB期と同等に、無病生存率が改善 IIB~IIIB期の患者の89.1%(172/193例)と、IBまたはIIA期の患者の23.5%(19/81例)が、白金製剤ベースの術後補助化学療法を受けた。ensartinib群では94例(68.6%)、プラセボ群では97例(70.8%)が受けていた。 24ヵ月時点で、II~IIIB期の患者における生存かつ無病状態の患者の割合は、プラセボ群が53.5%であったのに対し、ensartinib群は86.4%と有意に優れた(再発または死亡のハザード比[HR]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.11~0.38、p<0.001)。 また、24ヵ月時の全患者(IB~IIIB期)における生存かつ無病状態の患者の割合は、プラセボ群の57.2%に対しensartinib群は87.3%であり、有意に高かった(HR:0.20、95%CI:0.10~0.37、p<0.001)。 ほぼすべてのサブグループにおいて、ensartinib群で一貫して良好な無病生存の有益性を認めた。 最も多い再発部位は脳であった(ensartinib群5/137例[3.6%]、プラセボ群17/137例[12.4%])。中枢神経系(CNS)の再発または死亡のリスクはensartinib群で低かった(HR:0.22、95%CI:0.08~0.60)。全生存のデータは未確定であった。Grade3以上・重篤な有害事象が多い ensartinib群の安全性プロファイルは、以前の進行病変に関する報告と一致しており、新たな安全性シグナルは認めなかった。 Grade3以上の有害事象は、ensartinib群の49例(35.8%)およびプラセボ群の25例(18.2%)で発現した。Grade3以上の治療関連有害事象は、それぞれ27.0%および6.6%に認められた。重篤な有害事象は、それぞれ25例(18.2%)および14例(10.2%)で報告された。ensartinibに関連すると判定された重篤な有害事象はすべて解消した。 有害事象による投与中断、減量、治療中止は、ensartinib群でそれぞれ48例(35.0%)、41例(29.9%)、3例(2.2%)、プラセボ群ではそれぞれ20例(14.6%)、2例(1.5%)、2例(1.5%)で発生した。 著者は、「ensartinibによる補助療法は、ALK陽性NSCLCで完全切除を受けた患者にとって、有効な新たな治療戦略となる」としている。 また、「補助療法としてのALK阻害が、治癒した患者の割合を増加させるのか、それとも主に疾患の再発を遅らせるのかについては、現時点では決定的な判断を下せない」「最新の知見によると、ALK変異は早期NSCLC患者において、脳再発の素因となる可能性が示唆され、CNS限局病変は積極的な局所療法で治療可能であることから、無症状のCNS再発を早期に検出することが重要である」「ALK阻害薬の今後の検討事項として、術前補助療法が挙げられる」と指摘している。

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患者説明に使う資料や情報源は?~がん専門医500人に聞く

 情報過多の現代、医療情報も多種多様なレベルのものが世の中にあふれている。数十年前と比べ医師と患者の立場がフラットになりつつある昨今、患者自身の学習意欲もあいまって、診療時間中のコミュニケーションに費やす時間は増加傾向にある。診療の効率化が求められる中でも、医師にとっては患者に対し、患者自身の疾患に関する正しい知識を端的に提供したいというニーズは根強いのではないだろうか。 患者の視点に立った情報発信については、若尾 文彦氏(国立がん研究センターがん対策情報センター本部)率いる研究班*や「がん情報の均てん化を目指す会」**をはじめとする多くの団体が検証を重ねている。後者の団体が2024年11月5日に公表したディスカッション・ペーパー『がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~』では、がん患者がオンライン上で情報を入手・活用する際の課題が示された。とくに注目すべきは、患者が情報を入手・精査する際の相談先として、8割が「主治医」を挙げていた点である。*「厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業 _科学的根拠に基づくがん情報の提供及び均てん化に向けた 体制整備に資する研究」**がん患者が適切なタイミングで適切な情報にアクセスすることで、治療や周辺情報に関する知識を高め、適切に治療を受け、がんと共生できる環境を目指すことを目的に2024年4月に発足 そこでCareNet.comでは、患者から相談を受ける医師側が、日常診療でどのような情報源を案内しているかを明らかにするため、日常診療でがん患者の診察を行っている200床以上の施設に勤務する会員医師501人(呼吸器科、消化器科、外科、乳腺外科、血液内科、泌尿器科、腫瘍科)に対し、「医師のがん患者への情報提供方法」に関するアンケートを実施。患者への情報提供資料やその情報源、および活用理由について調査した。告知時の相談内容と使用媒体 まず、回答者の「勤務先施設の区分」(Q1)について、「地域がん診療連携拠点病院」所属の医師が最も多く、「都道府県がん診療連携拠点病院」「いずれも該当しない」と続いた。また、年代別では30~50代が多く、30~40代では「都道府県がん診療連携拠点病院」、その他の年代では「地域がん診療連携拠点病院」に所属する医師の割合が高かった。 「患者や家族への告知時、またはその後の診察で受けることが多い質問・相談」(Q2)については、「病気に関する情報」「病期と治療の選択肢」「予後・余命」が上位を占め、次いで「副作用や対処法」「検査・診断方法」となった。これらは施設区分による大きな差異はみられなかった。なお、前述のディスカッション・ペーパーにおいても、患者側が「十分な情報があった」と回答した項目とほぼ一致しており、患者自身の検索行動だけでなく、医師からの情報提供が一定の影響を与えている可能性が示唆される。 これらの相談に対し「利用する媒体やツール」(Q3)を尋ねたところ、「製薬企業が作成している患者向け資料説明」「自施設で作成している患者向け説明資料」「各学会発行のガイドライン(患者向け含む)」の利用率が高かった。一方で、回答者の約1/3が「手書きの図やメモ」を用いた説明を行っていると回答し、Web媒体系資料の活用頻度は総じて低い傾向にあった。診療科別では、血液内科において製薬企業作成資料の利用が突出しているほか、外科ではガイドラインの利用率が高いという特徴がみられた。 なお、Q3で「患者向けWeb媒体の資料」と回答した医師が利用するサイト(Q4)については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が最多であり、厚生労働省のホームページ、がん関連学会のサイトがそれに続いた。患者の情報収集への意識、医師による「相談支援センター」の活用実態 「病態や治療内容を調べる方法について患者から尋ねられた経験」(Q5)については、全体の60%が「ある」と回答しており、患者側から能動的に調べ方を問うケースは、やはり一定数存在することが伺える。 一方、無料・匿名で利用できる「がん相談支援センターの認知と活用」(Q6)については、ギャップが生じる結果となった。半数以上の医師が存在を認知しているものの、実際に自ら活用を促したことがある医師は2割弱にとどまった。この傾向は診療科や年代によってばらつきがみられ、とくに若年発症が多くサバイバー層も厚い血液内科において、医師からの利用勧奨が少ない結果となっている。これについては、医師による直接の勧奨ではなく、院内の医療連携を通じて看護師やメディカルソーシャルワーカーらが役割を担っている背景も推測される。また年代別では、20〜30代の若手医師の間で認知が浸透している一方、40代以降ではやや認知度が下がる傾向が確認された。 今回の調査では、このほかに自由記入として「患者への説明時に不安を感じること」「説明時に困っていること」「説明時に意識していること」についても回答を得ている。臨床現場におけるコミュニケーションの標準化やリソースの最適化に向け、示唆に富む具体的な声が集まったため、詳細はぜひアンケート結果のデータを参照されたい。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。がん患者への情報提供方法

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ASCO2026 レポート 肺がん

レポーター紹介ASCO2026は、プレナリーセッションに肺がんの演題が2演題選ばれるなど、肺がん領域におけるインパクトが大きい大会となった。とくに、ivonescimabとチスレリズマブを比較したHARMONi-6試験の全生存期間(OS)解析がプレナリーセッションに選出され、これは中国発の治験薬がASCOの60年以上の歴史でプレナリーセッションに選ばれた初めての事例だと思われる。同じくプレナリーセッションでは、RET融合陽性早期非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後補助療法としてのセルペルカチニブの有効性を示したLIBRETTO-432試験の結果も発表され、EGFR、ALKに続きRETでも術後補助療法における分子標的治療のエビデンスが確立した。周術期領域では、ALK融合陽性のStageIII NSCLCに対する周術期ロルラチニブの試験であるLORIN試験が、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に匹敵する、あるいはそれを上回る高い病理学的奏効を報告し話題となった。転移・進行期領域では、EGFR exon20挿入変異陽性NSCLCの1次治療におけるsunvozertinib単剤の優越性を示したWU-KONG28試験、PD-L1陽性NSCLCの1次治療としてTROP2標的抗体薬物複合体(ADC)とペムブロリズマブの併用療法の有効性を示したOptiTROP-Lung05試験など、新規の分子標的薬と抗体医薬品を軸とした新たな治療選択肢の広がりが続いた。ALK陽性NSCLCでは、CROWN試験の7年フォローアップにより、ロルラチニブの長期的ベネフィットが改めて示された。さらに、オシメルチニブなど第3世代EGFR-TKI耐性後の中心的な耐性機序であるC797X変異を克服しうる第4世代EGFR-TKIの開発が世界各地で進み、DZD6008、BH-30643、BDTX-1535 (silevertinib)、VRN110755など複数の候補薬の初期臨床データが報告された年でもあった。[目次]WU-KONG28試験OptiTROP-Lung05試験LORIN試験LIBRETTO-432試験HARMONi-6試験CROWN試験第4世代EGFR-TKI(DZD6008、BH-30643、BDTX-1535、VRN110755)さいごにWU-KONG28試験EGFR exon20挿入変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療として、次世代EGFR-TKIであるsunvozertinib単剤とプラチナ併用化学療法を比較する国際多施設共同ランダム化第III相試験がWU-KONG28試験である。本試験は、未治療の進行NSCLC患者324例を、sunvozertinib単剤の1日1回投与群、またはカルボプラチン+ペメトレキセド併用後にペメトレキセド維持療法を行う化学療法群に無作為に割り付けた国際共同試験であり、化学療法群では病勢進行後にsunvozertinibへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目は独立中央画像判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)であった。PFS中央値はsunvozertinib群で10.3ヵ月、化学療法群で7.5ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.65(95%CI:0.50~0.85、p<0.001)と統計学的に有意な結果であった。奏効割合(ORR)はsunvozertinib群で58.9%、化学療法群で31.1%、奏効期間(DoR)の中央値はそれぞれ11.2ヵ月、7.1ヵ月であった。安全性プロファイルは既報と一致し、新規の安全性シグナルは認められなかった。本試験の結果はNew England Journal of Medicine誌に同時掲載された。EGFR exon20挿入変異陽性NSCLCの1次治療は、既に抗体医薬品であるアミバンタマブと化学療法の併用療法(PAPILLON試験)が導入されつつある領域であり、sunvozertinibは経口薬としての利便性を武器に一定の地位を確立する可能性がある。さらに、中枢神経系(CNS)における効果、至適用量、非アジア人集団における有効性、near-loop型とfar-loop型の挿入変異による効果の違い、そしてアミバンタマブを中心とした治療戦略との最適なシークエンスなど、今後検討すべき課題も多く残されている。目次に戻るOptiTROP-Lung05試験PD-L1陽性進行NSCLCの1次治療として、TROP2を標的とした抗体薬物複合体であるsacituzumab tirumotecan(sac-TMT)とペムブロリズマブの併用療法の意義を検証した国際多施設共同非盲検ランダム化第III相試験がOptiTROP-Lung05試験である。本試験は、EGFR・ALK遺伝子異常を有さず、PD-L1 TPS 1%以上の未治療の局所進行・転移性NSCLC患者413例を対象とし、sac-TMT(4mg/kgを2週ごと)とペムブロリズマブ(400mgを6週ごと)の併用群、またはペムブロリズマブ単独群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであった。PFS中央値は併用群で未到達、ペムブロリズマブ単独群で5.7ヵ月であり、HRは0.35(95%CI:0.26~0.47、p<0.0001)と大きな差が認められた。12ヵ月時点のPFS率は62.4%と29.0%であった。ORRは併用群70.2%、単独群42.0%であり、50%以上の深い奏効を示した割合も49.0%と25.9%であった。OSは未成熟であったが、12ヵ月OS率は併用群80.4%、単独群68.9%と良好な傾向を示した。Grade3以上の治療関連有害事象は併用群55.3%、単独群31.4%であり、好中球減少、貧血、口内炎などが主な事象であった。本試験は、ADCとICIの併用療法がPD-L1陽性進行NSCLCの1次治療においてPFSの統計学的に有意な改善を示した初めての第III相試験であり、結果はLancet誌に同時掲載された。一方で、対照群がペムブロリズマブ単独である点は解釈上の限界であり、とくにPD-L1 TPS 1~49%の集団では化学療法併用が国際的な標準治療とされているため、単独群との比較で得られた効果の大きさをそのまま評価してよいかは慎重な検討を要する。CNSにおける効果や成熟したOSデータ、グローバルでの検証が今後の焦点となる。目次に戻るLORIN試験ALK融合遺伝子陽性のStageIII NSCLCに対する周術期治療として、ロルラチニブの術前投与とその後の手術、術後継続投与の有効性・安全性を検討した中国発の多施設共同単群第II相試験がLORIN試験である。本試験では、切除可能または境界切除可能なStageIIIのALK融合陽性NSCLC患者を対象に、術前ロルラチニブ投与後に手術を行い、可能な症例では術後もロルラチニブを継続する治療戦略が検討された。主要評価項目である病理学的完全奏効割合(pCR)は46.9%、副次評価項目のMajor Pathologic Response(MPR)は81.3%であり、神経療法やICIを含む従来の周術期治療と比較しても高い病理学的奏効が報告された。当初手術不能と判断されていた24例のうち18例(75.0%)は集学的な再評価を経てconversion surgeryに至り、残る症例もTKIの継続投与や放射線治療などが選択された。追跡期間中央値13ヵ月の時点で、1年無イベント生存(EFS)率は97.1%(95%CI:91.5~100)であり、OSイベントは認められなかった。局所再発は3例のみで、いずれも初診時N3の症例であり、術後補助療法としてのロルラチニブは投与されていなかった。EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するNeoADAURA試験やこれまでのオシメルチニブによる術前治療の病理学的完全奏効割合がおおむね10%未満にとどまっていたことと比較すると、ロルラチニブによる病理学的奏効の高さは際立っている。ただし本試験は単群かつ中国単独の小規模な検討であり、EFS・OSのデータも未成熟である。目次に戻るLIBRETTO-432試験RET融合遺伝子陽性の早期NSCLCに対する術後補助療法として、選択的RET阻害薬であるセルペルカチニブの有効性・安全性を検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化第III相試験がLIBRETTO-432試験であり、本年のプレナリーセッションで発表された。本試験は、根治的な手術または放射線治療を受けたStageIB~IIIAのRET融合陽性NSCLC患者を対象に、22か国から151例を登録し、セルペルカチニブ群(75例)またはプラセボ群(76例)に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要な解析対象集団であるStageII~IIIAの患者において、EFSのHRは0.172(95%CI:0.058~0.509、p=0.0003)であり、2年EFS率はセルペルカチニブ群91.5%、プラセボ群61.1%であった。全体集団(151例)においても、EFSのHRは0.165(95%CI:0.056~0.485、p=0.0002)、2年EFS率は92%と61%であり、両群ともEFS中央値は未到達であった。死亡は3例のみで、いずれもプラセボ群における原疾患による死亡であり、割り付けられた治療期間中の死亡はなかった。有害事象はALT・AST上昇を中心に、進行期での既報プロファイルと一致していた。本試験は、早期RET融合陽性NSCLCに対するRET阻害薬の術後補助療法としての有効性を検証した初めての第III相試験であり、結果はNew England Journal of Medicine誌に同時掲載された。EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおけるオシメルチニブ、ALK融合遺伝子陽性肺がんにおけるアレクチニブに続き、RET融合陽性肺がんにおいても術後補助療法としての分子標的治療のエビデンスが確立したことになる。RET融合陽性NSCLCは全体の1~2%程度とまれな分子サブグループであるが、3,446例をスクリーニングして151例を組み入れたという実施体制は、稀少なバイオマーカーに基づく術後補助療法試験の実施可能性を示した点でも意義深い。また、EGFR、ALKに続いて、シングルプレックスの遺伝子検査が存在しないRET融合遺伝子についても術後療法のエビデンスが創出されたことにより、周術期のバイオマーカー検査へのアクセスのさらなる拡大が期待される。目次に戻るHARMONi-6試験未治療進行扁平上皮NSCLCの一次治療として、PD-1/VEGF二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用療法と、抗PD-1抗体であるチスレリズマブと化学療法の併用療法を比較した中国発の国際共同ランダム化第III相試験がHARMONi-6試験であり、本年のプレナリーセッションで発表された。本試験は、未治療のStageIII~IVの扁平上皮NSCLC患者532例を、ivonescimab+化学療法群、またはチスレリズマブ+化学療法群に1:1(各266例)の割合で無作為に割り付けた。既報のPFS解析では、PFS中央値は11.1ヵ月と6.9ヵ月、ハザード比0.60(p<0.0001)と統計学的に有意な結果が示されていたが、本年は副次評価項目であるOSの事前規定の中間解析結果が報告された。データカットオフ日(2026年2月27日)時点で、追跡期間中央値21.36ヵ月において、OS中央値はivonescimab群27.89ヵ月、チスレリズマブ群23.69ヵ月であり、HRは0.66(95%CI:0.50~0.87、片側p=0.0017)と、事前に規定された有意性の境界(片側p<0.0049)を上回る統計学的に有意な結果であった。24ヵ月OS率は64.7%と48.6%であった。PD-L1 TPS1%未満の集団においてもOS中央値は未到達と18.6ヵ月であり、ハザード比0.64と一貫したベネフィットが認められた。本試験は、中国発の治験薬としてASCOの61年の歴史で初めてプレナリーセッションに選出された演題であり、結果はLancet誌に同時掲載された。一方で、対照群であるチスレリズマブ+化学療法群のOSが、既存の欧米標準治療であるペムブロリズマブ+化学療法(KEYNOTE-407試験)の成績を上回っている点は、対照群自体の成績が良好であるがゆえに、相対的な効果が過大評価されている可能性を示唆するとの指摘もあり、今後グローバルな集団における検証(HARMONi-3試験等)が焦点となる。目次に戻るCROWN試験未治療進行ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する1次治療として、ロルラチニブとクリゾチニブを比較した国際共同ランダム化第III相試験であるCROWN試験は、すでに実臨床に導入された標準治療の1つであるが、本年のASCOでは登録された296例(ロルラチニブ群149例、クリゾチニブ群147例)を対象とした7年フォローアップの結果が報告された。追跡期間中央値はロルラチニブ群83.0ヵ月、クリゾチニブ群77.2ヵ月であり、投与者評価によるPFS中央値はロルラチニブ群で未到達、クリゾチニブ群で9.1ヵ月、HRは0.19(95%CI:0.13~0.26)であった。7年時点でのPFS率はロルラチニブ群55%(95%CI:46~63)、クリゾチニブ群3%(95%CI:1~8)であり、24ヵ月の時点でPFSイベントを認めなかった患者が7年時点まで無増悪でいられる確率は79%であった。頭蓋内病勢進行までの期間中央値はロルラチニブ群で未到達、クリゾチニブ群で16.4ヵ月であり、HRは0.06(95%CI:0.03~0.12)、ロルラチニブ群では投与開始後30ヵ月以降に新規の頭蓋内進行イベントは認められなかった。安全性プロファイルは5年時点の解析から大きな変化はなく、データカットオフ時点でロルラチニブ群の44%が投与を継続していた(クリゾチニブ群は3%)。CROWN試験は、固形がん全体を通じても単剤の分子標的治療としては過去最長級のPFSを更新し続けており、ALK融合遺伝子陽性肺がんの1次治療におけるロルラチニブの位置付けを改めて強固なものとした。一方で、高脂血症、体重増加、浮腫、末梢神経障害、認知機能への影響など、長期間にわたる投与に伴う有害事象については、早期からの積極的なマネジメントと必要に応じた減量が実臨床上の重要な課題であり続けている。目次に戻る第4世代EGFR-TKI(DZD6008、BH-30643、BDTX-1535、VRN110755)オシメルチニブに代表される第3世代EGFR-TKI耐性後の中心的な耐性機序の1つであるEGFR C797X変異は、既存の薬剤では標的化することができず、これを克服しうる第4世代EGFR-TKIの開発が世界各地で進められている。本年のASCOでは、中国・米国・韓国発の複数の候補薬について初期臨床データが報告された。DZD6008は、EGFR exon19del/L858Rに加え、T790MやC797Xを含む二重・三重変異にも活性を有し、血液脳関門透過性に優れた第4世代EGFR-TKIである。第3世代EGFR-TKI後に増悪したEGFR C797X陽性NSCLC患者24例(評価可能例)を対象とした、TIAN-SHAN1・TIAN-SHAN2試験(第I/II相)では、20/40/60mgの用量でDZD6008が1日1回投与され、全体でのORRは41.7%、腫瘍縮小を認めた割合は75%であった。推奨第II相用量における解析では、40mg群(13例)でORR 23.1%、60mg群(10例)でORR 60.0%であった。DoR・PFSはいずれも未到達で、9ヵ月PFS率はそれぞれ54.5%、64.8%であった。頭蓋内活性も確認され、Grade3以上の治療関連有害事象はリンパ球数減少(8.3%)などにとどまり、用量制限毒性は認めなかった。BH-30643は、Macrocyclic構造を持つ非共有結合型・変異選択的な「OMNI-EGFR」阻害剤であり、T790MやC797Sの有無にかかわらず活性を維持することが前臨床で示されている。この薬剤を創薬したのは、ロルラチニブやレポトレクチニブなどのMacrocyclic阻害薬の創薬でも有名なJean Cui博士である。第I相のSOLARA試験では、EGFR・HER2変異陽性NSCLC患者72例(前治療ライン数中央値3、脳転移65%)が登録され、画像評価可能な17例中10例(59%)に部分奏効を認め、奏効割合はT790M陽性例(50%)と陰性例(66%)で同程度であった。とくにC797S陽性28例のうち画像評価可能な17例中10例(59%)が奏効し、ctDNA上でもC797S陽性例9例中7例でvariant allele frequencyの99%を超える減少が確認された。安全性についてはビリルビン上昇(36%)がGrade3の治療関連有害事象の主体であるが臨床的にはマネジメント可能で、間質性肺疾患は認められなかった。BDTX-1535(silevertinib)は、古典的変異に加え非典型的(non-classical/PACC)変異やC797S変異を標的とする、脳移行性の高い第4世代の共有結合型EGFR-TKIである。今回ポスターで発表されたのは、第3世代EGFR-TKI(主にオシメルチニブ)による治療歴を有し、非典型的変異またはC797S変異を有するNSCLC患者を対象とした第II相試験であり、前治療は2ライン以内、EGFR-TKIの投与歴は1剤に限定された集団が組み入れられた。200mg1日1回投与において、非典型的変異コホート(30例)のORRは16.7%(PACC変異に限定した解析[23例]ではORR 21.7%)、C797S変異コホート(33例)のORRは36.4%であり、治療期間中央値は4.8~5.0ヵ月であった。脳転移合併率はそれぞれ49%、31%であった。安全性はEGFR-TKI様のプロファイルであり、重篤な治療関連有害事象は11%、治療関連有害事象による投与中止は8%、Grade3の主な事象は発疹(13%)、下痢(8%)であった。同時期に別セッションで発表された未治療例におけるORR 60%というデータと比較すると、既治療・耐性獲得後の集団におけるベネフィットはより限定的であることが示唆される。VRN110755は、韓国のバイオベンチャーであるVoronoi社が開発する変異選択的かつ脳移行性の高い第4世代EGFR-TKIである。既治療のEGFR変異陽性NSCLC患者を対象とした第I/II相試験(REACH-EGFR)において、160mg以上の用量群で画像評価可能な21例中4例に部分奏効、16例に病勢安定が認められ、病勢コントロール率は95.2%であった。忍容性は良好であり、Grade3以上の治療関連有害事象や用量制限毒性は認められず、既存のEGFR-TKIと比較して下痢の頻度が低く、間質性肺疾患やQTc延長も認めなかった点が特徴として報告されている。C797S変異陽性例を含む前治療の進んだ集団においても一定の抗腫瘍活性が確認されており、今後の用量最適化および拡大コホートでの検証が注目される。以上のように、各薬剤ともまだ単群・少数例による初期段階のデータではあるが、C797X耐性を克服しうる経口の第4世代EGFR-TKIとして、抗体医薬品を中心としたアプローチ(アミバンタマブなど)とは異なる選択肢としての開発が進んでいる。今後は奏効の持続性(DoR・PFS)、頭蓋内活性、そして肝機能検査値異常や皮膚障害を中心とした忍容性の観点から、各剤の位置付けと差別化が焦点となっていくものと考えられる。目次に戻るさいごに2026年のASCOはHARMONi-6、LIBRETTO-432に代表される大型の第III相試験の結果に加え、周術期領域でのLORIN試験、進行期1次治療でのWU-KONG28試験・OptiTROP-Lung05試験、そして長期フォローアップデータとしてのCROWN試験7年成績など、肺がん治療のあらゆる場面において着実な進展がみられた。さらに、第4世代EGFR-TKIをめぐる複数の候補薬の初期データが報告されたことは、オシメルチニブ耐性後という長らく有効な標的治療の乏しかった領域に、新たな選択肢が生まれつつあることを示している。周術期ICIや抗体薬物複合体の開発とあわせ、肺がんの治療開発が実に幅広い領域で同時並行的に展開している状況は今後も続くと考えられる。目次に戻る

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「がんサバイバーの心臓をまもる」市民公開講座を開催/日本腫瘍循環器学会【ご案内】

 日本腫瘍循環器学会は、同学術集会(JOCS2026)開催期間中の2026年9月6日(日)、市民公開講座「がんサバイバーの心臓をまもる―がん罹患後の循環器疾患に対応するプライマリケア医を探せ―」を開催する。  近年、がん治療の進歩により多くのがんサバイバーの長期生存が可能になった一方で、治療後には心不全、不整脈、高血圧、血栓症といった循環器疾患に直面するケースも少なくない。本講座では、乳がんや血液がんなどの小児・AYA世代のがん経験者やその家族にとって関心の高いテーマである、「がん治療後に起こりうる心臓・血管の問題」「体調変化を感じたときの相談先」「かかりつけ医や地域医療との連携」などについて、医師、薬剤師、患者アドボケイトが共に考える内容となっている。  開催概要は以下のとおり。【日時】 2026年9月6日(日)10:00~12:00(開場9:30) 【会場】 順天堂大学 本郷・御茶ノ水キャンパス 国際教養学部 第3教育棟(〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1) 【対象】 患者、家族、友人、医療従事者など、どなたでも参加可能 【参加費】 無料(事前申込制・定員200名) 【申込締切】 2026年8月28日(金) 【プログラム】 【申込方法】WEB:https://jocs2026.umin.jp/FAX:03-5275-1192 【演者・パネリスト】座長:下村 昭彦氏(国立国際医療センター がん総合内科/乳腺・腫瘍内科) 向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター) ■10:00~10:10 座長スライド「最新のがん治療と合併症」 ■10:10~10:25 「がん罹患後に出現するがん治療関連心血管毒性~腫瘍循環器医の立場から~」向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター) ■10:25~10:40 「プライマリケア医ってどんな医師?~がん治療後の健康を支える身近なパートナー~」西 明博氏(水海道さくら病院 総合診療科) ■10:40~10:55 「がんとともに生きる時代の健康管理~かかりつけ医との連携が支える安心な暮らし~」桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト) ■10:55~11:55 パネルディスカッション <パネリスト> 西 明博氏(水海道さくら病院 総合診療科) 渡邉 雅貴氏(医療法人社団みやび 理事長) 平出 誠氏(東京薬科大学 臨床評価学教室) 桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト) 山崎 多賀子氏(NPO法人キャンサーリボンズ 美容ジャーナリスト) 岸田 徹氏(NPO法人がんノート) 河田 純一氏(CML患者・家族の会 いずみの会/東京大学医科学研究所)■12:00 閉会挨拶 佐瀬 一洋氏(JOCS2026大会長/順天堂大学 臨床薬理学) 【主催・後援】 主催:第9回日本腫瘍循環器学会学術集会 後援:一般社団法人 日本腫瘍循環器学会 詳細はこちら

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診療科別2026年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Nerandomilast in progressive pulmonary fibrosis: data from the whole follow-up period of the FIBRONEER-ILD trialWijsenbeek MS, et al. Eur Respir J. 2026 Mar 26. [Epub ahead of print].<FIBRONEER-ILD試験>:ネランドミラストはPPFの臨床的イベントと死亡リスクを低減進行性肺線維症(PPF)を対象としたFIBRONEER-ILD試験の全追跡期間データです。ネランドミラストは、52週時のFVC低下抑制に加え、ILD急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡を含む臨床的に重要なイベントのリスクを低減しました。とくに死亡リスクは両用量でプラセボより低く(ハザード比[HR]:0.51)、有害事象による中止もプラセボと同程度でした。PPFに対する新たな抗線維化治療として、今後の実臨床での位置付けが注目されます。Survival with Osimertinib plus Chemotherapy in EGFR-Mutated Advanced NSCLCJanne PA, et al. N Engl J Med. 2026;394:27-38.<FLAURA2試験>:オシメルチニブと化学療法併用はEGFR変異陽性進行NSCLCのOSを延長EGFR exon 19 deletionまたはL858R変異陽性の未治療進行非扁平上皮NSCLCを対象とした、FLAURA2試験の全生存期間最終解析です。オシメルチニブにプラチナ製剤+ペメトレキセドを併用すると、オシメルチニブ単剤に比べてOS中央値は47.5ヵ月vs.37.6ヵ月に延長しました(HR:0.77)。一方、Grade3以上の有害事象は70%vs.34%と多く、初回治療から併用する患者を慎重に選ぶ必要があります。Amikacin liposome inhalation suspension in newly diagnosed Mycobacterium avium complex lung disease (ARISE): a 6-month double-blind, active comparator trialDaley CL, et al. Ann Am Thorac Soc. 2026;23:536-547. <ARISE試験>:新規診断MAC症へのALIS追加で培養陰性化率が改善新規または再発の非空洞型MAC肺疾患患者を対象に、リポソーム化アミカシン吸入懸濁液(ALIS)の初期治療での有効性を評価した二重盲検実薬対照試験です。アジスロマイシン、エタンブトールにALISを追加した群では、6ヵ月目までの培養陰性化率が80.6%(対照群63.9%)、7ヵ月目までが78.8%(47.1%)と良好でした。QOL-B respiratory domainの改善も示されており、難治例だけでなく初期治療からALISを導入する意義を考えるうえで注目されます。Associations between antibiotic use and outcomes in patients hospitalized with community-acquired pneumonia and positive respiratory viral assaysBiebelberg B, et al. Clin Infect Dis. 2026;82:630-638.<ウイルス陽性市中肺炎>:短期抗菌薬と標準期間で臨床転帰は同等呼吸器ウイルス検査陽性の市中肺炎入院患者を対象に、抗菌薬0~2日と5~7日投与を傾向スコア重み付けで比較した後ろ向き研究です。調整後、入院期間、48時間後のICU入室、院内死亡率、30日間の非入院日はいずれも同等でした。細菌性肺炎が明らかでないウイルス陽性市中肺炎では、抗菌薬を漫然と継続しない判断を後押しするデータです。Oral corticosteroid reduction and discontinuation in adults with corticosteroid-dependent, severe, uncontrolled asthma treated with tezepelumab (WAYFINDER): a multicentre, single-arm, phase 3b trialJackson DJ, et al. Lancet Respir Med. 2026;14:129-140.<WAYFINDER試験>:テゼペルマブは重症喘息の維持OCS減量を後押しOCS依存性の重症非コントロール喘息成人を対象に、テゼペルマブ210mgを4週ごとに投与した第IIIb相単群試験です。52週時点で約90%が喘息コントロールを保ったまま維持OCSを5mg/日以下に減量し、50.3%が完全中止に到達しました。表現型にかかわらずOCS負担を減らせる可能性を示し、実臨床でのステロイド離脱戦略に重要な示唆を与えます。

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第68回 ゴールを守るか、頭を守るか。W杯でも活躍するサッカー選手の「その後」が教えてくれること

サッカーワールドカップがアメリカで開幕し、こちらニューヨークでも街のあちこちで歓声が上がっています。選手たちの華麗なプレーに見とれながら、医師という立場からはこんなことにも気が向いてしまいます。ピッチの上で輝いた選手たちは、その後の人生を健康に過ごせているのだろうか。実は近年、この問いに真正面から答えようとした大規模な研究が複数発表され、少し意外な、そして考えさせられる結果が明らかになっています。まず朗報から。選手はむしろ「長生き」だったまず、最初にお伝えしたいのは、明るいニュースです。英国スコットランドの元プロサッカー選手7,676人を、年齢や社会的背景をそろえた一般の人2万3,028人と比べた研究では、選手たちは70歳になるまでの死亡率がむしろ低い、という結果が出ています1)。とくに「虚血性心疾患」で亡くなるリスクは2割ほど低く、肺がんによる死亡に至っては約半分でした。若い頃から体を鍛え、走り続けてきた人生が、心臓や血管を守ってくれたのでしょう。運動が健康に良いという、私たちがよく知る事実はここでも裏付けられたわけです。ところが、認知症などの脳の病気に目を向けると、風向きが変わります。同じ研究で、神経変性疾患が主な死因となった人の割合は、一般の人が0.5%だったのに対し、元選手では1.7%。統計的に調整すると、そのリスクはおよそ3.5倍に上りました。病気の種類ごとに見ると差はさらにはっきりし、アルツハイマー病では約5倍、パーキンソン病でも約2倍でした。認知症の治療薬が処方される頻度も、元選手では約5倍多かったのです。長生きした先で、脳という別の臓器が思わぬ代償を払っていた。そう読み取れる結果でした。興味深いのは「守備位置による差」ではなぜ、脳にだけこうした影響が出るのでしょうか。ここで多くの方が「なるほど」と膝を打つのが、続いて発表された研究です。同じ選手たちをポジションごとに分けて調べたところ、神経変性疾患のリスクはポジションによってはっきり異なっていました2)。最もリスクが高かったのはディフェンダーで一般の人の約5倍、ミッドフィルダーが約4.6倍と続き、フォワードは約2.8倍でした。一方で、ゴールキーパーはわずか約1.8倍にとどまり、統計的には一般の人と差があるとは言い切れないレベルだったのです。この違いを説明する最有力の候補が「ヘディング」です。ボールを頭で受ける回数は、フィールドを走り回る選手ほど多く、ゴールキーパーではごくまれです。実際、プロとしての現役期間が15年を超える選手では、リスクが約5倍まで高まっていました。つまり、頭部への衝撃を繰り返し受けた「量」がカギを握っている可能性があるのです。ボールを頭で受けるか、それとも手でキャッチするか。その差が、何十年も先の脳の健康につながっているのかもしれません。私たちがここから学べること誤解しないでいただきたいのは、これは「サッカーは危険だからやめましょう」という話では決してない、ということです。運動がもたらす心臓や血管への恩恵は本物ですし、これらはあくまでトップレベルで長年プレーした選手を対象にした観察研究で、原因を確定できたわけでもありません。それでも、こうしたエビデンスを考えると、選手たちの繰り返す頭部への衝撃を減らす工夫(たとえば育成年代でのヘディング制限など)には、十分な意味がありそうです。1)Mackay DF, et al. Neurodegenerative disease mortality among former professional soccer players. N Engl J Med. 2019;381:1801-1808.2)Russell ER, et al. Association of field position and career length with risk of neurodegenerative disease in male former professional soccer players. JAMA Neurol. 2021;78:1057-1063.

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消化管閉塞への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第127回

消化管閉塞への対応進行がん患者の緩和ケアで悩まされる病態の1つに「消化管閉塞」があります。症状緩和が難しく、食という楽しみを奪うという意味でも生活の質(QOL)への影響が大きいですよね。今回は消化管閉塞に対する対応を考えてみます。今日の質問在宅で大腸がん患者を担当しているのですが、消化管閉塞症状が強くなってきました。もともと食べることが好きな方なので、食べると吐いてしまうといった様子に、こちらもつらくなります。何かできる工夫はありますか?悪性疾患の消化管閉塞は、診ているこちらもつらいですね。私も質問者の方と同じような経験をしてきました。器質的な閉塞の場合は手術ができない時点で、なかなか根本的な介入が難しいのが現実です。その中でもQOLを低下させないために、私が取り組んでいる工夫を紹介します。最初に、大腸がんなど消化管閉塞を生じやすいがん種の場合、患者・家族と治療方針を話し合っておくことが重要です。将来的に消化管閉塞を来すと食事の経口摂取が難しくなる可能性が高いことなどを共有し、「経皮的減圧胃瘻を選択肢として検討するか」といった話し合いをしましょう。将来生じうることに対する心構えができている場合とそうでない場合では、感じるつらさも違ってくる印象があります。実際に消化管閉塞症状が生じ始めたタイミングでは、閉塞の程度を評価するのが大切です。完全に閉塞しているのか、不完全な閉塞で内容物の状態次第で通過が可能なのかで大きく対応は異なります。閉塞部位では腸管内圧が上昇するため、減圧が重要な治療となります。不完全閉塞であれば、症状の具合に合わせて食事量の調整や薬物療法、減圧などを組み合わせることが重要なアプローチとなります。完全閉塞の場合、経鼻胃管がなければ、経口摂取をするたびに腹痛や嘔吐をすることになります。経鼻胃管の留置を提案しますが、留置自体も苦痛にはなるので、そこも患者との話し合いが必要です。私の経験上も、「どうしても経鼻胃管は嫌だ」と拒否した方もいました。こうした苦痛をゼロにすることは難しいので、患者ごとのベストを実現できるように一緒に取り組んでいくことが重要です。症状緩和だけでなく、ケア提供者と患者・家族が一緒に取り組む中で関係を構築していくことも、重要なケアの一部なのです。今日のTips今日のTips悪性疾患による消化管閉塞は、目標の設定と点滴・胃管・薬物療法の組み合わせが大切です。

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EGFR-TKI後のNSCLC、ivonescimabがOSを改善/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、現在、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が標準治療であるが、獲得耐性は避けられず、EGFR-TKIの投与中に病勢が進行した患者は、耐性のメカニズムが不均一か不明であるため治療選択肢が限られている。中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らHARMONi-A Study Investigatorsは「HARMONi-A試験」において、EGFR-TKI療法後のEGFR変異陽性NSCLC患者では、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)と血管内皮増殖因子(VEGF)の二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、許容範囲内の安全性プロファイルを保持しつつ、全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを示した。本研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月17日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験 HARMONi-A試験は、中国の55施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 2022年1月25日~11月2日に、局所進行または転移のある非扁平上皮NSCLCでEGFR変異陽性と確認され、(1)第1または第2世代EGFR-TKI治療後にEGFR T790M変異陰性が確認された患者、または(2)第3世代EGFR-TKIを1次または2次治療として受けた患者を登録した。 被験者322例(年齢中央値59.4歳、女性51.6%)を、3週を1サイクルとし、1日目にivonescimab 20mg/kgを静脈内投与する群(161例)またはプラセボ群(161例)に無作為に割り付けた。全例に、ペメトレキセド+カルボプラチンによる化学療法を行った。これを4サイクル施行後、それぞれivonescimab+ペメトレキセドまたはプラセボ+ペメトレキセドによる維持療法を行った。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、すでに中間解析の結果(ハザード比[HR]:0.46、p<0.001、中央値の群間差:2.3ヵ月)が報告されている。今回は、中間解析時から25ヵ月の追跡期間を経た時点での主な副次評価項目であるOSのデータが公表された。OS中央値はivonescimab群16.8ヵ月、プラセボ群14.1ヵ月 ベースラインにおいて、ivonescimab群の35例(21.7%)とプラセボ群の37例(23.0%)が脳転移を有していた。それぞれ139例(86.3%)と137例(85.1%)に、第3世代EGFR-TKIによる治療歴があった。追跡期間中央値は32.5ヵ月だった。 OS中央値は、プラセボ群14.1ヵ月に対し、ivonescimab群は16.8ヵ月と2.7ヵ月有意に長かった(層別HR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.95、p=0.02)。 24ヵ月時のOS率は、ivonescimab群35.3%、プラセボ群28.8%であり、30ヵ月OS率は、それぞれ29.1%および18.4%であった。 また、ベースラインの脳転移の有無を問わず、ivonescimab群で生存に関する明確な有益性を認めた(脳転移ありHR:0.61[95%CI:0.37~1.03]、脳転移なしHR:0.77[95%CI:0.58~1.03])。安全性プロファイルは中間解析とほぼ一致 ivonescimab+化学療法の安全性プロファイルは、中間解析の結果や、化学療法、PD-1阻害薬、VEGF阻害薬の既知の毒性作用とほぼ一致していた。治療期間中に発生したGrade3以上の有害事象(67.1%vs.54.7%)およびGrade3以上の治療関連有害事象(59.6%vs.44.7%)は、プラセボ群よりivonescimab群で頻度が高かった。 治療期間中に発生した有害事象による治療中止は、ivonescimab群で11.8%、プラセボ群で8.1%に認められた。また、免疫関連有害事象はivonescimab群で多かった(29.2%vs.8.1%)が、免疫関連有害事象による治療中止はまれであり、両群間で同率だった(各1.2%)。 著者は、「ivonescimabによるOS中央値の改善は2.7ヵ月とわずかではあるが、2つの群の生存曲線はとくに後期の時点で大きく乖離し、30ヵ月時のOS率には10.7%ポイントの差を認めた」「これらの所見は、PD-1とVEGFの二重阻害と化学療法の併用が有効な治療戦略であることを立証するとともに、本研究の対象となった患者群において、ivonescimabと化学療法の併用が新たな治療選択肢となりうることを示すものである」としている。

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GLP-1受容体作動薬、肥満関連がんの進行を抑制か

 新たな研究により、GLP-1受容体作動薬が一部の肥満関連がんの転移進行リスクを抑制する可能性が示された。GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病治療薬として開発されたが、現在は肥満症や心血管疾患の治療にも広く用いられている。米Taussig Cancer InstituteのMark David Orland氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026、5月29~6月2日、米シカゴ)で発表された。 米フォックス・チェイスがんセンターで支持療法腫瘍学・緩和ケアプログラム責任者を務めるMarcin Chwistek氏は、「GLP-1受容体作動薬は、これまでも単なる血糖降下薬ではなかった。その抗炎症作用および免疫調節作用から、以前より幅広い作用を持つことが示唆されている」と述べている。 今回の研究でOrland氏らは、TriNetXの国際的なリアルワールドデータネットワークを用いて、ステージ1~3のがんの診断を受け、診断後にGLP-1受容体作動薬による治療を開始した1万225人の健康データを解析した。対象としたがんは、乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、大腸がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膵臓がんの7種類とした。これらの患者と社会人口統計学的特徴やBMI、血糖関連因子などを一致させた、診断後にDPP-4阻害薬による治療を開始した患者を対照とし、ステージ4(転移がん)への進行リスクを比較した。 その結果、GLP-1受容体作動薬群では7種類中6種類のがんで転移がんへの進行リスクの低下が認められ、うち4種類(NSCLC、乳がん、大腸がん、肝細胞がん)での低下は統計学的に有意であった。進行リスクは、NSCLCで50%、乳がんで43%、大腸がんで31%、肝細胞がんで38%の低下であった。GLP-1受容体作動薬群において、新たな安全性シグナルや有害事象の増加は認められなかった。さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の遺伝子データを解析して、GLP-1受容体の発現と全生存期間との関連を検討した。その結果、腫瘍でのGLP-1受容体の発現が高い患者では、死亡リスクが33%低いことが示された。がん種ごとに検討すると、特に乳がんでのリスク低下は45%と顕著であった。 Orland氏らは、これらの結果は、GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用および免疫調節作用により説明される可能性があるとしている。また、本研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではないとして慎重な解釈を求める一方で、「将来、臨床試験を実施する上で十分な根拠となる有望な結果だ」との見方も示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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“患者・市民の医療情報アクセス向上”のためのコンソーシアム発足

 患者・市民が治療選択や医療用医薬品の適正使用に必要な情報へ適切にアクセスできる環境整備を目指すため、「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」(代表世話人:奥瀬 正紀氏、垣添 忠生氏、片木 美穂氏、武川 篤之氏)が2026年7月1日に正式に発足した。 本コンソーシアムは、患者・市民が必要な医療情報へ適切にアクセスできる社会の実現を目的として設立されたマルチステークホルダーによる連携組織として、がんに限らずさまざまな疾患にわたって、患者団体を中心に、医療関係者、有識者、関係団体などが連携し、疾患啓発、治療選択、適正使用などに関する情報提供の在り方について議論・提言を行っていく。また、広告該当性への懸念から情報提供が過度に萎縮している現状を改善するため、疾患啓発、治療選択肢、適正使用、治験を含む臨床試験などに関する情報は、患者が自らの疾患を理解し、納得して治療を選択するための「教育・学習目的の情報」として位置付けるべきだという考え方に立つ。正確性、中立性、透明性に配慮した情報提供について、「直ちに広告に該当するものではない」という認識を社会全体で整理していくことを目指している。 代表世話人の奥瀬 正紀氏(日本乾癬性疾患協会/YORIAILab)は、「患者・市民が医療情報に適切にアクセスできることは、納得して治療を選択するために不可欠である。本コンソーシアムでの活動を通して必要な人が必要なときに科学的に信頼できる医療情報へアクセスできる社会の実現に貢献したい」とコメント。今後はステークホルダーの声を集め、具体的な提言活動を進める方針である。 コンソーシアムの主な活動内容は以下のとおり。 ・患者・市民の医療情報アクセスに関する課題の整理 ・教育・学習目的の医療情報提供の在り方に関する検討 ・患者団体をはじめとする関係者間の対話と連携の促進 ・社会への情報発信および提言の取りまとめ医療用医薬品の広告規制を巡る構造的課題 本コンソーシアム設立の契機となったのは、がん対策総合機構が2026年2月13日に公表した報告書『患者の知る権利の観点から見た医療用医薬品の情報提供と広告規制の制度・運用』である。同報告書では、日米欧の制度比較を通じて、日本の医療用医薬品情報提供における実態と構造的課題が検証された。報告書や関連する調査では、以下の実態が浮き彫りとなった。・日本では、薬機法に基づく広告規制などの厳格な運用により、患者向け医薬品情報の提供が事実上強く制限され、教育・学習目的の情報提供であっても過度な萎縮が生じている。・商品名を用いた情報提供が難しく、原則として一般名(成分名)での説明が求められるため、患者や家族の理解を妨げ、情報のわかりにくさや混乱につながっている。・患者が必要とする疾患啓発や治療選択肢、治験などの情報に十分にアクセスしにくい状況が、がんや希少疾患をはじめとする多くの疾患領域に共通する社会課題となっている。患者教育・学習目的の適切な医学情報の普及を目指して 2026年3月13日、同報告書の報告会がオンラインで開催され、患者団体や企業など多様な立場から約60名が参加した。報告会では、処方薬において知りたい情報や伝えたい情報が十分に発信されない構造的状況、患者が理解できる仕組みの必要性について活発な意見交換が行われた。 こうした課題認識が広がる中、2026年3月30日に厚生労働省医薬局から通知「治験等に係る情報提供の取扱いについて」が発出された。この通知では、治験などに係る情報提供について、目的や内容、導線設計などの条件を満たせば広告に該当しないことが明確化され、「情報提供=すべて広告ではない」という考え方が具体的に示された。がん対策総合機構などは、この通知を重要な前進と受け止める一方、この考え方は治験情報のみならず、教育・学習目的の一般的な医療情報提供にも適用されるべきであると判断。特定の疾患領域に限らず、患者団体、学会、医療従事者、研究者、企業、行政などが立場を超えて連携し、社会全体で取り組むためのプラットフォームが必要であるとして、コンソーシアムの設立に向けた検討が本格化した。 その後、2026年6月16日には「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」の立ち上げ構想と発足時の体制が公表され、さらなる議論と調整を経て、7月1日の正式発足へと至った。今後は、がんに限らずさまざまな疾患領域にわたって、患者目線に立った環境整備に向けた具体的なアクションを展開していく予定である。<コンソーシアム発起人団体>・有國 美恵子氏(ユーイング肉腫家族の会)・岩瀬 哲氏(NPO法人JORTC)・大井 賢一氏(認定NPO法人がんサポートコミュニティー)・大沢 かおり氏(NPO法人Hope Tree)・奥瀬 正紀氏(一般社団法人日本乾癬性疾患協会、一般社団法人YORIAILab)・垣添 忠生氏(公益財団法人日本対がん協会)・片木 美穂氏(卵巣がん体験者の会スマイリー)・岸田 徹氏(NPO法人がんノート)・後藤 悌氏(認定NPO法人キャンサーネットジャパン)・武川 篤之氏(認定NPO法人日本アレルギー友の会)・中島 弥生氏(認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ)・西舘 澄人氏(NPO法人GISTERS)・橋本 明子氏(NPO法人血液情報広場・つばさ)(五十音順)

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喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第309回

喀血の原因は、喉に住んでいたアイツ喀血の原因といえば、結核、肺アスペルギルス症、肺がん、気管支拡張症あたりが定番です。呼吸器内科医なら、喀血と聞いた瞬間に頭の中で鑑別がズラッと並びます。ところが今回の異物論文は、その鑑別リストに絶対載っていない犯人を連れてきました。Abd Alkareem AA, et al. Nasopharyngeal hirudiniasis, a rare cause of masked hemoptysis in an older patient: A case report. J Int Med Res. 2026 Jun;54(6):3000605261453283.患者は、高血圧以外は元気な62歳の男性。タバコは吸いません。2週間前から血を吐くようになり、喉の違和感も続いていました。発熱も、嗄声も、息切れもなし。地元の病院では原因がわからず、専門医に紹介されてきました。高齢男性で2週間も喀血が続けば、たとえ非喫煙者でも、普通は肺がんや結核、心血管系の病気を疑って精査に入ります。実際この論文でも、最初はそうした方向で考えられていました。ところが、診察医が喉を覗いた瞬間、事態は一変します。え? 喉の奥で、何かが動いている。しかも、見えたと思ったらスッと引っ込む。落ち着け…、落ち着けオレ…! そう思ったに違いありません。鼻咽腔内視鏡を入れてみると、上咽頭の壁に、何かがくっついて、もぞもぞ動いていました。もう、嫌な予感しかしません。口蓋垂を持ち上げて視野を確保し、鉗子でそいつをつかんで引っ張り出す。エエイッ!なんと、出てきたのは、体長およそ3cmの、 生きたヒルでした。いやああああ!!! またこのタイプの論文かよおおお!!!!なぜ、ヒルで喀血したのでしょうか。実はヒルの唾液には、ヒルジンという強力な抗凝固物質と、局所麻酔成分が含まれています。だから噛みついても痛くないし、いったん吸血を始めると血が止まりにくくなります。つまり出血の正体はヒルがせっせと分泌していた天然の抗凝固薬だったわけです。実際、ヒルを取り除いた瞬間、出血はピタッと止まりました。患者さんにあらためて話を聞くと、3週間ほど前に、処理していない池の水を飲んでいたとのこと。水と一緒に幼いヒルを飲み込み、上咽頭に定着してしまったようです。2次感染予防に抗菌薬を1週間処方し、2週間後の再診でも再発はありませんでした。よかったよかった。

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日本におけるがん薬剤費は10年で3倍に、総医療費最大は肺がん

 日本の全国レセプトデータベース(NDB)を用いて、2011~22年にがん診療を受けた約2,320万人を対象とした大規模解析が実施された。その結果、がん診療に伴う医療費は日本の経済成長率を大きく上回るペースで増加しており、とくに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とする新規抗がん薬が医療費増加の主要因であることが明らかになった。京都大学の福山 啓太氏らによる研究はScientific Reports誌オンライン版2026年6月15日号に掲載された。 本後ろ向きコホート研究では、2011年4月~2022年3月に悪性腫瘍と診断された患者をがん種別に分類し、月ごとの保険請求額と適用薬剤を分析した。対象は悪性腫瘍患者約2,320万人(男性:約1,203万人、女性:約1,118万人)で、95%以上の電子レセプトを網羅する全国データを利用し、がん種別、年齢別、薬剤別に医療費を評価した。また、薬価改定を反映した独自のマスターデータを構築し、薬剤価格の経年変化も考慮した。 主な結果は以下のとおり。・患者数では乳がんが最多で、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんが続いた。・総医療費が最も高額だったのは肺がんだった。肺がんの患者数は減少傾向にあるにもかかわらず、診療費は解析期間を通じて増加を続け、2022年には全がん種で最大となった。一方、患者1人当たりの月額医療費では多発性骨髄腫が最も高く、2022年3月時点で約40万9,000円に達した。・研究期間中、がん患者の月当たり人数は612万人から544万人へ約68万人減少したにもかかわらず月額総請求額は5,590億円から7,100億円へ約1,510億円増加しており、1人当たり医療費の増加が認められた。・薬剤費の解析では、ICIの増加が際立った。肺がんではPD-1/PD-L1阻害薬が急速に普及し、分子標的薬やVEGF阻害薬とともに薬剤費増加の主因となっていた。乳がんではHER2標的薬やCDK4/6阻害薬、胃がんではPD-1/PD-L1阻害薬およびVEGF阻害薬、前立腺がんでは新規ホルモン療法薬の使用増加が確認された。・抗がん薬全体の薬剤費は、2011年の月347億円から2022年には1,090億円へと約3.1倍に増加した。なかでもICI関連薬剤は薬価改定により一部価格が引き下げられたものの、新規適応拡大や使用患者数の増加により、総薬剤費は増加を続けた。 同期間における日本の実質GDPは約8.5%の増加にとどまった。これに対し、がん診療費は約1.27倍、抗がん薬剤費は約3.1倍に増加しており、研究者らは「がん診療費の伸びは経済成長を大きく上回っている」と指摘する。一方で研究者らは、「本研究は高額薬剤の使用抑制を提案するものではない。ICIや分子標的薬は臨床試験で有効性が示され、患者予後の改善に大きく寄与している。しかし、公的保険制度の持続可能性を考えると、個々の薬剤の増分費用効果比(ICER)のみでは十分とは言えず、国家経済や医療財政全体を踏まえた新たな評価指標の構築が必要だ」としている。さらに、がん検診による早期発見やワクチンによる予防は、高額な薬物療法を回避できる可能性があり、医療経済の観点からも重要な介入となる可能性が示唆された。

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HER2陽性胃がんに対する二重特異性抗体薬zanidatamabの有用性―トラスツズマブとの比較試験(解説:上村直実氏)

 最近、分子標的薬を含む生物学的製剤の開発が進み、がん診療において効率の良い治療レジメンを選択するためにバイオマーカー検査が必須となっているが、胃がん治療でも「HER2」「PD-L1」「MSI」「Claudin18.2」の4つのバイオマーカー検査の確立に伴って切除不能胃がんに対する薬物療法が急激な変化を遂げている。HER2陽性胃がんに対する標準治療は、従来の化学療法に抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブを追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されているが、今回、日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験の結果、2つの抗原を同時に標的とする二重HER2標的抗体薬であるzanidatamab+抗PD-1抗体チスレリズマブと化学療法の併用もしくはzanidatamab+化学療法の併用治療が、従来の標準治療であるトラスツズマブ+化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが2026年5月のNEJM誌に報告された。 日本では、HER2陽性・PD-L1陽性の切除不能進行胃がん患者を対象にトラスツズマブ+抗PD-1抗体ペムブロリズマブ+化学療法の併用療法が昨年5月に承認されており、本研究は免疫療法の併用に加えてHER2標的治療そのものの質を高めるアプローチが企図された臨床試験といえる。この分野で先行している血液がんに対する抗体医薬は、すでにモノクローナル抗体から二重特異性抗体薬へと置き換わりつつある。二重特異性抗体薬はT細胞などの免疫細胞と腫瘍細胞とを近接化させて免疫攻撃を促進する機能や複数のシグナル経路を同時に制御して薬効が増強されることを期待する薬剤であり、最近では肺がんをはじめとする固形がんに対する二重特異性抗体薬の開発が進んでいる。 今回の研究結果から、固形がんに対する薬物療法においても二重特異性抗体薬の有用性が高くなることが期待されるが、二重特異性抗体薬の利点のみでなく課題も知っておく必要がある。すなわち、血液がんと違って固形がんの腫瘍不均一性による効果のばらつきに伴う混合反応性や過度の免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、標的分子が発現している正常細胞を攻撃する可能性などが報告されており、今後、このような課題を解決しつつ、本研究のように二重特異性抗体と免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物治療がさらに改善することが期待される。

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ASCO2026 レポート 先端研究・希少がん

レポーター紹介[目次]SARC041試験(第III相試験)PEAK試験(第III相試験)StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験)RINGSIDE試験(第III相試験)EMITT-1試験【Abstract LBA2】SARC041試験(第III相試験):脱分化型脂肪肉腫に対するCDK4/6阻害薬アベマシクリブの有効性を検証進行・再発脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma:DDLPS)に対し、CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブがプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが報告された。DDLPSでは12番染色体長腕(12q13-15)の増幅が高頻度に認められる。その部位にはCDK4やMDM2遺伝子増幅が認められる。そのため、CDK4阻害が治療として期待され、過去、単群の第II相試験が実施され、有効性が示唆されていた。本試験は、DDLPSにおいて第III相比較試験でCDK4阻害薬がpositiveな結果を示した点で重要である。本試験は、進行・再発または転移のあるDDLPS患者を対象とした第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、患者をアベマシクリブ200mg 1日2回内服群またはプラセボ群に1:1で割り付けた。適格基準として前化学療法歴の有無は問わなかった。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後にはプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目であるPFS中央値は、アベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、アベマシクリブ群で統計学的に有意な延長を認めた(ハザード比[HR]:0.38、p<0.001)。6ヵ月PFS率は60%vs.22%、12ヵ月PFS率は39%vs.13%であった。奏効率はアベマシクリブ群9%、プラセボ群0%であった。全生存期間(OS)については、中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月であり、統計学的有意差には至らなかったものの、アベマシクリブ群で良好な傾向を認めた(HR:0.55、p=0.07)。プラセボ群の85%が病勢進行後にアベマシクリブへクロスオーバーしていた。探索的な解析であるが、前化学療法歴なしの患者のPFS中央値は16.4ヵ月、ありの患者では5.3ヵ月であった。安全性については、アベマシクリブで既知の有害事象プロファイルとおおむね一致していた。主な有害事象は、下痢、血球減少、貧血、白血球減少、クレアチニン上昇などであり、用量減量を要した症例はアベマシクリブ群で39%であった。本試験の結果から、アベマシクリブは進行・再発DDLPSにおける新たな治療選択肢となると考える。一方、本試験は海外の臨床試験グループにより実施されたものであり、日本ですぐに使用可能な状況とはならない。今後、日本での治療開発も期待される。目次に戻る【Abstract 11500】PEAK試験(第III相試験):イマチニブ治療後GISTに対するbezuclastinib+スニチニブ併用療法の有効性イマチニブ治療後の進行消化管間質腫瘍(GIST)に対し、KIT阻害薬であるbezuclastinibとスニチニブの併用療法が、現在の標準的2次治療であるスニチニブ単剤と比較してPFSを有意に延長することが、PEAK試験の結果として報告された。GISTでは、1次治療のイマチニブ後に耐性機構としてKITの2次変異が出現することが知られており、exon13/14やexon17/18変異がその代表である。現在の標準的な2次治療はスニチニブであるが、スニチニブはexon13/14への阻害活性が高い一方、exon17/18への阻害活性が乏しい。bezuclastinibは次世代のKIT阻害薬であり、exon17/18への阻害活性を有している。両者を併用することで広範にKIT変異をカバーする意義を検討したのが本試験である。本試験は、イマチニブ抵抗性または不耐の進行GIST患者を対象とした国際共同第III相ランダム化試験である。主要評価項目であるPFS中央値は、bezuclastinib+スニチニブ群16.5ヵ月、スニチニブ単剤群9.2ヵ月であり、併用群で統計学的に有意な延長を認めた(HR:0.50、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、exon17/18変異、exon13/14変異、またKITの1次変異であるexon9、exon11変異の状況にかかわらず、全体的に併用群で良好であった。奏効率も併用群46%、スニチニブ単剤群26%と、併用群で高い腫瘍縮小効果が示された。OSは、データカットオフの時点でイベント数が20%未満であり、現時点でimmatureであった。PFS2においても併用群に良好な傾向が示された。安全性については、bezuclastinib+スニチニブ併用による新たな安全性シグナルは認められず、全体としてスニチニブの既知の安全性プロファイルとおおむね一致していた。Grade3以上の主な有害事象としては、高血圧、好中球減少、肝機能上昇、貧血、下痢などが報告された。ALT/AST上昇は併用群で多い傾向があるものの、多くは可逆的で管理可能とされた。本試験では、イマチニブ治療後GISTにおいて、スニチニブ単剤に対してbezuclastinib+スニチニブ併用療法が明確な優越性を示した。新たな標準治療候補となる可能性が高い。現在、FDAではpriority review(優先審査)となっている。本試験に日本は参加しておらず、今後日本での本治療開発が期待される。目次に戻る【Abstract 11501】StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験):進行GISTに対する新規KIT阻害薬velzatinibの1次・2次治療における有効性の示唆先に記載したPEAK試験に続き、同セッションで本StrateGIST 1試験が発表された。進行・再発または切除不能のGISTに対し、新規KIT阻害薬であるvelzatinib(IDRX-42)が、1次治療および2次治療のいずれにおいても有望な抗腫瘍活性と忍容性を示すことが報告された。velzatinibは、新規KIT阻害薬を創出する目的でexon13変異を対象としたハイスループットスクリーニングとその後の最適化のステップを経て開発された経緯がある(Blum A, et al. J Med Chem. 2023;66:2386-2395.)。velzatinibはexon14変異以外の1次、2次KIT変異に対して高い阻害活性を有する。StrateGIST 1試験は、進行GIST患者を対象としたfirst-in-humanの第I/Ib相試験であり、今回の解析では推奨第Ib相用量であるvelzatinib 300mg錠または曝露量が同等となる400mgカプセルを投与された1次治療例および2次治療例が評価された。対象は、KITまたはPDGFRAに変異を有する進行・再発または切除不能GIST患者であり、1次治療コホートでは未治療例、2次治療コホートでは主にイマチニブ治療後の患者が含まれた。有効性評価可能例は、1次治療コホート23例、2次治療コホート46例であった。1次治療コホートでは、未確定奏効率は65%、確定奏効率は56%であり、多くの症例で腫瘍縮小が認められた。最大腫瘍縮小までの期間は中央値8.1ヵ月であり、データカットオフ時点で83%の患者が治療継続中であった。観察期間中央値は7.4ヵ月であり、PFSはimmatureであった。観察期間はまだ限られるものの、初回治療として高い腫瘍縮小効果と持続的な病勢制御が期待される結果である。2次治療コホートでは、未確定奏効率は40%、確定奏効率は33%であり、PFS中央値は13.7ヵ月であった。安全性については、1次・2次治療例73例の解析において、治療関連有害事象(TRAE)は95%に認められ、Grade3以上のTRAEは33%であった。有害事象による治療中止は5%、用量減量は21%であり、全体として管理可能な安全性プロファイルであった。主な有害事象は、下痢、悪心、味覚異常、好中球減少、倦怠感、胃食道逆流症、貧血、食欲低下、腹痛、嘔吐などであった。Grade3以上では好中球減少や貧血が比較的多く認められており、血液毒性のモニタリングは重要と考えられる。本試験は単群の第I/Ib相試験であり、現時点で標準治療に影響があるものではない。しかし、velzatinibは1次治療では高い奏効率、2次治療ではPFS中央値13.7ヵ月という有望な成績を示しており、次世代KIT阻害薬として期待される。イマチニブ後の2次治療においては、スニチニブとの比較第III相試験であるStrateGIST 3試験が進行中である。一方で、1次治療としての位置付けについては、イマチニブとの比較試験や長期安全性、耐性変異出現パターンの検討が今後の課題である。目次に戻る【Abstract 11506】RINGSIDE試験(第III相試験):進行性デスモイド腫瘍に対するγセクレターゼ阻害薬varegacestatの有効性進行性デスモイド腫瘍に対し、経口γセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatがプラセボと比較して主要評価項目であるPFSを有意に改善することが、RINGSIDE試験の結果として報告された。デスモイド腫瘍は遠隔転移を来さないものの、局所浸潤性が強く、疼痛、機能障害、臓器障害を引き起こす中間悪性度の肉腫である。デスモイド腫瘍では、APCやβカテニンの変異によるWntシグナルの活性化が生じている。一方、Notchシグナルも腫瘍の病態に寄与している可能性が報告されている。DeFi試験では別のγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの有効性が示され、FDAで承認されている。本試験は、新規のγセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatについて検証したものである。RINGSIDE試験は、進行性デスモイド腫瘍患者156例を対象とした国際共同第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、varegacestat 1.2mg 1日1回投与とプラセボが比較された。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであり、主な副次評価項目としてRECIST v1.1に基づく奏効率、腫瘍体積変化、患者報告アウトカムによる疼痛評価などが設定された。主要評価項目であるPFSについて、varegacestatはプラセボと比較して病勢進行または死亡リスクを84%低下させた(HR:0.16、p<0.0001)。このPFS改善効果は、腫瘍部位、ベースライン腫瘍サイズ、年齢、前治療歴などのサブグループにおいても一貫していた。奏効率はvaregacestat群56%、プラセボ群9%であり、腫瘍縮小効果も明確に示された。さらに、疼痛スコアは投与開始後早期から改善し、12週時点で臨床的にも意味のある疼痛軽減が認められた。安全性については、全体としてγセクレターゼ阻害薬で予想される有害事象プロファイルと一致していた。主な有害事象は、下痢、倦怠感、皮疹、悪心、咳嗽などであり、多くはGrade1または2であった。一方、閉経前女性では卵巣機能に関連する有害事象が一定割合で認められており、若年女性に投与する際には妊孕性や月経異常に関する説明とモニタリングが重要である。また、有害事象による用量減量や中止も一定数みられており、長期投与を前提とした副作用管理が必要となる。本試験の結果から、varegacestatは進行性デスモイド腫瘍に対する有力な新規治療選択肢となる可能性がある。とくに、PFSのみならず、奏効率、腫瘍体積、疼痛という患者にとって臨床的意義の高い評価項目を同時に改善した点は重要である。一方で、すでに同じγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの臨床的位置付けが確立しつつあるため、今後は、有効性、安全性、卵巣機能への影響、投与スケジュール、患者背景ごとの使い分けが課題となる。現在、日本ではnirogacestatの単群の第II相試験が実施され、募集終了となっている(jRCT2031250269)。目次に戻る【Abstract 2500】EMITT-1試験:ERAP1阻害薬GRWD5769とセミプリマブ併用による抗腫瘍免疫再活性化の可能性免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示した複数の固形がんに対し、経口ERAP1阻害薬GRWD5769と抗PD-1抗体セミプリマブの併用療法が、早期臨床試験ながら複数のがん種で抗腫瘍活性を示したことが、EMITT-1試験の第Ib相拡大コホートの結果として報告された。免疫チェックポイント阻害薬抵抗性の克服は重要課題である。ERAP1はMHC class Iに提示されるペプチドレパートリーの形成に関与する酵素である。ERAP1阻害により腫瘍細胞表面に提示される抗原ペプチドが変化し、T細胞による腫瘍認識を再誘導することが期待される。GRWD5769はfirst-in-classの経口ERAP1阻害薬であり、腫瘍の抗原提示を変化させることで、免疫チェックポイント阻害薬抵抗性を克服するという新しい免疫治療アプローチである。EMITT-1試験は、GRWD5769とセミプリマブ併用療法を評価する第I/II相試験であり、第Ib相拡大コホートでは、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、MSS大腸がん、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮がんの6コホートが検討された。多くの症例は既治療歴を有し、MSS大腸がんを除き、抗PD-1療法に対する2次抵抗性を示した患者が対象とされた。有効性については、各コホートで奏効率13~36%が報告された。尿路上皮がんでは奏効率36%、非小細胞肺がんでは21%、肝細胞がんでは14%、MSS大腸がんでは17%、子宮頸がんでは14%、頭頸部扁平上皮がんでは13%であった。また、6ヵ月以上の奏効または安定を含むdurable clinical benefitも複数のコホートで認められ、非小細胞肺がんおよびMSS大腸がんではPFS中央値が33週と報告された。とくに、MSS大腸がんは一般に免疫チェックポイント阻害薬単独では有効性が乏しい集団であり、本併用療法のシグナルは注目される。安全性については、全体として忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。多くの有害事象はGrade1であり、免疫関連有害事象も限定的であった。本試験は早期相試験であり、対象患者数も限られているため、現時点で標準治療を変える結果ではない。しかし、ERAP1阻害による抗原提示改変という新しい治療戦略が、臨床的にも抗腫瘍活性を示しうることを示した点で意義が大きい。今後は、ランダム化第II相試験での検証、奏効予測バイオマーカーの同定、がん種別の最適な対象集団の絞り込みが重要となる。目次に戻る

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認知症やせん妄、痛みの評価が難しい場合は?【非専門医のための緩和ケアTips】第126回

認知症やせん妄、痛みの評価が難しい場合は?痛みとの付き合い方は人それぞれではありますが、緩和ケアを提供している立場としては、できるだけ苦痛を和らげてあげたいと思いますよね。そうした医療者にとって難しさを感じるのが「痛みを訴えない患者さん」です。今日の質問私が担当している患者さんですが、症状緩和を丁寧にしようと思っても、いつも「大丈夫です」って反応で困っています。画像所見などからは痛みがあると思うので心配しています。ご家族に尋ねても、「我慢強いので、あまりつらいとは言わないだろう」ということでした。こうした場合にできる工夫はありますか?「痛くないです」と言うのに、表情が硬い、動かない、呼吸が浅い……、そんな「言葉と態度がかみ合わない」患者に出会うことがあります。痛みは主観的症状であり、患者の訴えから考えることが基本ですが、さまざまな理由から痛みを言葉で伝えられない患者がいるのも事実です。今回は「痛みを訴えない患者」を診る際に、私がルーチンで検討していることを紹介します。まず、こうしたケースで一番多い要因は「認知症」でしょう。私も担当する患者の大半が高齢者なので、真っ先に可能性を考えるのが認知症です。認知症といっても中核症状である物忘れよりも、軽度の認知機能低下を起こしているケースが多くあります。医療者が「痛みはどうですか?」といった言葉を掛けても痛みの概念化が難しかったり、表現する語彙が少なくなって言葉に詰まり、それを取り繕っていたりするのです。こうした場合は、本人の言葉だけではなく、動作時の様子などから痛みを判断し、「もう少し痛み止めを増やしたほうがよさそうだと思いますが、調整してよいですか?」といったようにアプローチします。せん妄もよく経験する原因です。注意障害で医療者側の質問を理解できていなかったり、睡眠覚醒のリズムがずれて日中にいつも眠っていたりする状況です。さらに、夜間に混乱が見られ、夜勤の看護師に痛みを訴えることもあります。この場合、まずはせん妄の原因が可逆的なものか、不可逆的なものかを判断することが最初のアプローチです。看護師と連携を取り、「せん妄を見逃さない」ように気を付けます。せん妄が見逃されている状況は、意外と多いものです。とくに興奮などを伴わない低活動性せん妄の場合、「ぼーっとしているだけ」「活気がないだけ」という印象にとどまりがちです。痛みだけに目を奪われず、せん妄による意識状態の変化が生じていないかに注意を払いましょう。以上、私が取り組んでいる工夫についてお話ししました。皆さまの工夫もぜひ聞かせてください。今日のTips今日のTips認知症とせん妄、「痛みを訴えない」患者の原因にアプローチすることが大切。

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複合がん免疫療法の近未来/日本臨床腫瘍学会

 がん免疫療法は、複数の免疫療法を組み合わせることで治療効果を最大化する新たなフェーズへと進展しつつある。2026年3月26~28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「複合がん免疫療法の近未来」をテーマとしたシンポジウムが企画され、次世代の治療戦略が議論された。腫瘍免疫の理解が深化する中で、がん免疫応答の多面的なメカニズムを考慮した新たな複合がん免疫療法の確立が期待される。持続型T細胞免疫システムとCD4陽性T細胞療法 冒頭、各務 博氏(埼玉医科大学国際医療センター)は、近年のがん免疫療法の進歩を背景に、免疫応答をいかに持続させるかが重要な課題となっていることを指摘した。そのうえで、腫瘍微小環境内に形成される三次リンパ様構造(TLS)を基盤とした持続型T細胞免疫システムと、CD4陽性T細胞を活用した新たな治療戦略について講演した。 TLSは腫瘍局所に形成されるリンパ組織様構造で、抗原特異的T細胞の増殖や機能維持を担う場として機能する。ここでは、前駆疲弊CD8陽性T細胞(Tpex)が中心的役割を果たしている。TpexはPD-1を発現しつつも自己複製能を保持し、抗原特異的T細胞を継続的に供給する貯蔵プールとして働く。PD-1阻害薬の投与によりTpexが増殖し、抗腫瘍効果を引き起こすことが知られている。 さらに、Tpexの維持には特定のCD4陽性T細胞群が関与することが明らかとなっている。Tpexと連動して長期的な免疫応答を維持する重要な細胞集団であるTh7Rは、Tpexと類似した遺伝子発現を示し、腫瘍内で近接して分布する。解析の結果、Th7RとTpexの細胞数は相関しており、CD4陽性T細胞がTpexの形成および維持に寄与する可能性が示唆されている。 モデルマウスを使用した研究では、Th7Rを投与することで腫瘍内のTpexが増加し、抗腫瘍効果の増強が確認された。また、PD-1やCTLA-4阻害薬との併用により、その効果が持続することも示された。これは、Tpex/Th7R相互作用の維持を目的とした細胞療法として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の有望な戦略となる可能性を示唆している。 臨床的にもCD4陽性T細胞の存在は予後と関連し、PD-1阻害薬による治療前後で血中のTh7Rが減少していない患者さんで5年生存例が多いことが報告されている。一方で、これらの細胞が減少すると再発や死亡につながる可能性がある。このため、CD4陽性T細胞を継続的に補充する細胞療法により、腫瘍微小循環を維持し、免疫応答を長期にわたって持続させる治療戦略が重要であると各務氏は指摘する。 総じて、腫瘍微小循環にはTLS・Tpex/Th7R相互作用に代表される持続型抗腫瘍細胞メカニズムが存在し、持続的ながん免疫の基盤となっている。腫瘍微小循環を維持する細胞療法の併用は、今後のICI治療の発展において重要な方向性になることが期待されている。ICIとADC併用療法の現状と展望 続いて、清水 俊雄氏(関西医科大学附属病院 新薬開発科)はICIと抗体薬物複合体(ADC)の併用療法について、その作用機序、臨床的課題、今後の展望などについて概説した。 ADCは、標的に特異的に結合する抗体、細胞障害作用を担うペイロード、そして両者を連結するリンカーの3要素から構成される。これら各要素の設計は、有効性と安全性を大きく左右する。とくにリンカーの安定性や薬物抗体比(DAR)は体内動態(PK/PD)や毒性に強く影響する。また、ペイロードの疎水性や膜透過性は、腫瘍細胞内での作用に加え、周囲細胞へも影響する重要な因子である。 臨床的課題としては、標的抗原を発現する正常組織にも作用するオンターゲット毒性と、非特異的にほかの組織へ影響を及ぼすオフターゲット毒性が挙げられる。さらに、ADCは体内で単一の形態として存在するわけではなく、完全体、ペイロードが解離した抗体、遊離ペイロードなど複数の分子種が時間とともに変動する。このような動的な分布が薬効と毒性のバランスを規定するため、PK/PDの理解と最適化が重要となる。 免疫学的観点では、ADCによる腫瘍細胞障害は腫瘍抗原の放出を促し、免疫応答を活性化する。これにより樹状細胞およびT細胞が活性化され、腫瘍細胞では主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子やPD-L1の発現が増加する。その結果、CD8陽性T細胞の腫瘍への浸潤が促進される。このような背景から、ICIとの併用による相乗的な抗腫瘍効果が期待されており、ADCとPD-1阻害薬の併用による有望な臨床試験の成績が報告されている。 一方で、併用療法の最適化にはいくつかの重要な課題がある。具体的には、標的抗原発現の維持、毒性の重複回避、ならびにADCの非特異的取り込みの抑制が挙げられる。さらに近年では、二重特異性抗体や二重ペイロードの導入、腫瘍特異的に活性化される設計、免疫刺激型ペイロードの活用など、機能を拡張した次世代ADCの開発が進んでいる。これらの新規ADCはまだ早期開発段階にあるものの、バイオマーカーの確立と臨床的有用性の検証が進めば、より精緻な個別化治療の実現が期待される。 最後に清水氏は、ADCとICIの併用療法は大きな可能性を有する一方で、その成功には分子設計、薬物動態、免疫学的作用、臨床戦略を統合的に理解することが不可欠となることを強調した。加えて、適切な薬剤選択や投与タイミングの最適化、さらには構造の改良による安全性と有効性の向上が、今後の治療成績を左右すると締めくくった。肺がん領域における二重特異性抗体の最前線 ICIの登場により、肺がん、とくに非小細胞肺がんの治療成績は大きく向上した。しかし、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではなく、新たな治療戦略の開発が求められている。こうした中で、最近は二重特異性抗体が注目されている。吉田 達哉氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/先端医療科)は、肺がん領域における二重特異性抗体の臨床的展開について、最近の動向を報告した。 二重特異性抗体は、異なる2つの分子を同時に標的とすることを特徴とし、デュアルチェックポイント阻害型とT細胞誘導型(T細胞エンゲージャー)とに大きく分類される。前者は複数の免疫抑制シグナルを同時に阻害することで免疫応答を増強し、後者は腫瘍抗原とT細胞上の分子を橋渡ししてT細胞を直接腫瘍へ誘導・活性化する。造血器腫瘍ではT細胞エンゲージャーの成功例が多く報告されている一方、固形腫瘍である肺がんでは、これらを単独あるいはICIと組み合わせて用いる戦略が活発に検討されている。 肺がん領域では、特定のドライバー変異に関連する受容体を同時に標的とするアプローチや、腫瘍特異的抗原とT細胞を結び付けるT細胞エンゲージャーが臨床開発の段階から実臨床へと移行しつつある。前者は分子標的薬との併用により生存期間の延長が示唆され、後者は小細胞肺がんにおいて化学療法との併用で良好な治療成績が報告されており、新たな標準治療となる可能性がある。 一方で、患者選択の指標として用いられてきたPD-L1発現のみでは、ICIによる治療効果を十分に予測することが難しく、腫瘍変異量、抗原提示細胞や制御性T細胞の分布など、免疫微小環境をより詳細に解析する必要がある。こうした多面的なバイオマーカーの開発が、今後の個別化医療の鍵を握ると吉田氏は指摘する。 また、二重特異性T細胞エンゲージャーは腫瘍内の局所的なT細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、ICI併用の有効性を示唆する一方で、抗原喪失などの免疫逃避が課題となる。 現在、T細胞エンゲージャーとICIの併用を検証する後期臨床試験が進行中であり、最適な併用方法や投与タイミングの確立が期待されているという。肺がん治療は、免疫療法のさらなる進展により新たな段階へと移行しつつあると、吉田氏は講演をまとめた。ICIとネオ抗原ワクチンの併用療法 近年、感染症領域におけるmRNAワクチンの成功を契機として、個別化がんワクチンの開発が大きく加速している。北野 滋久氏(がん研究会有明病院 先端医療開発科/がん免疫治療開発部)は、免疫学の観点からICIとネオ抗原ワクチンとの併用療法について概説した。 従来のがん抗原は自己由来成分に近く、十分な免疫応答を誘導できないことが多く、ワクチン療法としての成功例は限られてきた。これに対し、ネオ抗原は腫瘍細胞に特異的に生じた遺伝子変異に由来する新規タンパク質断片であり、後天的に獲得されるため免疫寛容の影響を受けにくく、高い免疫原性を持つ可能性がある。 ネオ抗原は、がん細胞内で産生された変異タンパク質が分解され、ヒト白血球抗原(HLA)に提示されることでT細胞に認識される。主にクラスIではCD8陽性T細胞、クラスIIではCD4陽性T細胞を活性化する。この過程には個人ごとのHLA型や遺伝子変異の違いが大きく影響するため、治療には患者さんごとの個別化が不可欠となる。近年では、DNAおよびRNAのシーケンシングと計算アルゴリズムを組み合わせることで、有望なネオ抗原候補を予測する技術が進歩し、個別化ワクチン開発が現実味を帯びてきた。 ワクチンにはペプチド、mRNA、DNA、ウイルスベクターなど多様な種類があり、とくにmRNAワクチンは柔軟性と開発の速さから注目されている。早期臨床試験ではネオ抗原特異的な免疫応答が確認され、ICIとの併用により抗腫瘍効果の向上が期待される。免疫応答は主にCD8陽性T細胞が担い、CD4陽性T細胞も補助的に関与する。安全性については、腫瘍特異的標的であるため理論上重篤な副作用はほとんどないと考えられる。 さらに、従来は注目されていなかったイントロンを含む非コード領域(いわゆるダークゲノム)や、スプライシング異常に由来するネオ抗原の存在も明らかになりつつあり、抗原候補の幅が大きく広がっている。全ゲノム解析を活用することで、これまで見逃されていた免疫標的の同定が進み、新たな治療戦略につながる可能性がある。 北野氏は、こうした科学的進展に加え、産学連携や国家レベルの研究基盤整備も進展しており、個別化ネオ抗原ワクチンと免疫療法の統合的アプローチは、がん治療の新たな柱として実用化に向けた期待が高まっていることを強調した。

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