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嚢胞性線維症〔CF : cystic fibrosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は、欧米白人の出生2,000~3,000人に1人と、比較的高い頻度で認められる常染色体劣性遺伝性疾患であるが、日本人にはきわめてまれとされている。1938年にAndersonにより、膵外分泌腺機能異常を伴う疾患として初めて報告されて以来、現在では全身の外分泌腺上皮のCl-移送機能障害による多臓器疾患として理解されている。近年のCFに関する遺伝子研究の進歩により、第7染色体長腕にあるDNAフラグメントの異常(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR遺伝子変異)がCFの病因であることがわかってきた。このCFTR遺伝子変異は、世界中で400種類以上報告されており、△F508変異(エクソン10上の3塩基欠失によるCFTR第508番アミノ酸であるフェニルアラニンの欠失)が、欧米白人におけるCF症例の約70%に認められている。■ 疫学かつては東洋人と黒人にはCFはみられないと考えられていたが、現在では約10万人に1人と推測されている。わが国では厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班によってCFの実態調査が行われ、1952年にわが国での第1例の報告以来、1980年の集計で46例が報告された。その後、当教室における1993年までの集計によって、104例(男57例、女47例)のCF患者の報告を認めている。単純に計算すると、わが国におけるCF患者の頻度は出生68万人に1人の割合となるが、CFに対する関心が高まったことなどから、1980年以降の頻度は出生35万人に1人の割合となり、確定診断に至らなかった例や未報告例などを考慮すると、真の頻度はさらに高いものと思われる。また、2009年の全国調査では、過去10年間の患者数は44例程度と報告されている。日本人CF症例の遺伝子解析の検討は少なく、王らは3例のCF患児に、花城らはCF患児1例にそれぞれ△F508変異の有無を検索したが、この変異は認められなかった。また、古味らは、△F508変異に加えてCFTR遺伝子のエクソン11に存在するG542X、G551D、およびR553X変異の有無も検索したが、いずれの変異も認められなかった。筆者らは、NIH(米国国立衛生研究所)のgenctic research groupとの共同研究により5例のCF患者およびその家族の遺伝子解析を行い、興味ある知見を得ている。すなわち全例において、△F508変異をはじめとする16種類の既知のCFTR遺伝子変異は認められなかったが、single stand conformational polymorphism analysisにより4例においてDNAシークエンスの変異を認めた(表1)。この変異が未知のCFTR遺伝子変異であるのか、あるいはCFTR遺伝子とは関係しないpolymorphismであるのかの検討が必要である。画像を拡大する■ 病因1985年にWainwrightらによって、第7染色体上に存在することが確認されたCF遺伝子が、1989年にMichigan-Toronto groupの共同研究により初めて単離され、CFTRと命名された。RiordanらによりクローニングされたCFTR遺伝子は、長さ250kbの巨大な遺伝子で、1,480個のアミノ酸からなる膜貫通蛋白をコードしている(図1)。翻訳されたCFTR蛋白の構造は、2つの膜貫通部(membrane spanning domain)、2つのATP結合構造(nucleotide binding fold:NBF 1、NBF 2)、および調節ドメイン(regulatory domain)の5つの機能ドメインからなっている。1991年にはRichらの研究により、CFTR蛋白自身がCl-チャンネルであることが証明され、最近では、NBF1とNBF2がCl-チャンネルの活性化制御に異なる機能を持つことが報告されている。このCFTR遺伝子の変異がイオンチャンネルの機能異常を生じ、細胞における水・電解質輸送異常という基本病態を形成していると考えられている。CFTR遺伝子のmRNA転写は、肝臓、汗腺、肺、消化器などの分泌および非分泌上皮から検出されている。CFTR遺伝子変異のなかで過半数を占める主要な変異が、CF患者汗腺のCFTR遺伝子のクローニングにより同定された△F508変異である。この△F508変異は欧米白人におけるCF症例の約80%に認められているが、そのほかにも、400種類以上の変異が報告されており、これらの変異の発生頻度および分布は人種や地域によって異なっている(表2)。△F508変異の頻度は、北欧米諸国では70~80%と高く、南欧諸国では30~50%と低いが、東洋人ではまだ報告されていない。画像を拡大する画像を拡大する■ 症状最も早期に認められ、かつ非常に重要な症状として、胎便性イレウスによる腸閉塞症状が挙げられる。粘稠度の高い胎便が小腸を閉塞してイレウスを惹起する。生後48時間以内に腹部膨満、胆汁性嘔吐を呈し、下腹部に胎便による腫瘤を触れることがある。腸管の狭窄や閉塞がみられることもある。わが国におけるCF症例の集計では、27.9%が胎便性イレウスで発症している(表3)。膵外分泌不全症状は約80%の症例で認められ、年齢とともに症状の変化をみることもある。食欲は旺盛であるが、膵リパーゼの分泌不全による脂肪吸収不全のため多量の腐敗臭を有する脂肪便を排泄し、栄養不良による発育障害を来してくる。低蛋白血症による浮腫、ビタミンK欠乏による出血傾向、低カルシウム血症によるテタニーなどの合併症を認める場合もある。粘稠な分泌物の気管および気管支内貯留と、それに伴うブドウ球菌や緑膿菌などの感染により、多くは乳児期から気管支炎、肺炎症状を反復して認めるようになる。咳嗽、喘鳴、発熱、呼吸困難などの症状が進行性にみられ、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの閉塞機転に伴う病変が進展し慢性呼吸不全に陥り、これが主な死亡原因となる。胸郭の変形、バチ状指、チアノーゼなども認められる。CF患者では汗の電解質、とくにCl濃度が異常に高く、多量の発汗によって電解質の喪失を来し、発熱や虚脱などの“heat prostration”と呼ばれる症状を呈することが知られている。その他の症状として、閉塞性黄疸、胆汁性肝硬変、耐糖能異常、副鼻腔炎症状などをはじめとする種々の合併症状が報告されている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ CFの一般的な診断法表4にわが国のCF患者104例における確定診断時の年齢分布を示した。全症例の半数以上である64例(61.5%)が1歳までにCFと診断されており、新生児期にCFと診断された30例(28.8%)のうち29例が胎便性イレウスにて発症した症例であった。したがって、胎便性イレウス症候群では、常にCFの存在を念頭におき、メコニウム病(meconium ileus without CF)との鑑別を行っていく必要がある。CFの診断には、汗の電解質濃度の測定が必須であり、Cl濃度が60mEq/L以上であればCFが疑われる。Pilocarpine iontophoresis刺激による汗の採取法が推奨されているが、測定誤差が生じやすく、複数回測定する必要がある。当教室では米国Wescor社製の発汗刺激装置および汗採取コイルを使用し、ほとんど誤差なく簡便に汗の電解質濃度を測定している。CFを診断するうえで、膵外分泌機能不全の存在も重要であり、その診断は、脂肪便の有無、便中キモトリプシン活性の測定、PFD試験やセクレチン試験などによって行っていく。X線検査により、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの肺病変の診断を行う。画像を拡大する■ CFのマス・スクリーニング欧米において、1973年ごろよりCFの新生児マス・スクリーニングが試みられるようになり、1981年にCrossleyらが乾燥濾紙血のトリプシン濃度をradioimmunoassayにて測定して以来、CFの新生児マス・スクリーニング法として、乾燥濾紙血のトリプシン濃度を測定する方法が広く用いられるようになった。さらに1987年にはBowlingらが、より簡便で安価なトリプシノーゲン濃度を測定し、感度および特異性の点からもCFの新生児マス・スクリーニング法として非常に有用であると報告している。筆者らも、わが国におけるCFの発生率を調査する目的で東京都予防医学協会の協力を得て、CFの新生児マス・スクリーニングを行った。方法は、先天性代謝異常症の新生児マス・スクリーニング用の血液乾燥濾紙を使用し、Trypsinogen Neoscreen Enzyme Immunoassay Kitにて血中トリプシノーゲン値を測定した。結果は、3万2,000例のトリプシノーゲン値は、31.8±8.9ng/mLであり、Bowlingらが示した本測定法におけるカットオフポイントである140ng/mLを超えた症例はなかった(図2)。画像を拡大する■ CFの遺伝子診断CFの原因遺伝子が特定されたことにより、遺伝子診断への期待が高まったが、CF遺伝子の変異は人種や地域によってまちまちであり、本症の遺伝子診断は足踏み状態であると言わざるを得ない。欧米白人では、△F508変異をはじめとするいくつかの頻度の高い変異が知られており、これらの検索はCFの診断に大いに役立っている。しかしながら、わが国のCF症例における共通のCF遺伝子の変異は、まだ特定されておらず、PCR-SSCP解析と直接塩基配列解析を用いて遺伝子変異を明らかにすることが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法新生児期にみられる胎便性イレウスに対しては、ガストログラフィンによる浣腸療法などが試みられるが、多くは外科手術が必要となる。膵外分泌不全による消化吸収障害に対しては、膵酵素剤の大量投与を行う。しかし近年、膵酵素剤の大量投与による結腸の炎症性狭窄の報告も散見され、注意が必要である。胃酸により失活しない腸溶剤がより効果的である。栄養障害に対しては高蛋白、高カロリー食を与え、症例の脂肪に対する耐性に応じた脂肪摂取量を決めていく。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、膵酵素を必要とせずに吸収されるため、カロリー補給には有用である。必須脂肪酸欠乏症に対しては、定期的な脂肪乳剤の経静脈投与が必要である。脂溶性ビタミン類の吸収障害もみられるため、十分量のビタミンを投与する。呼吸器感染に対しては、気道内分泌物の排除を目的としてpostural drainageと理学訓練(physiotherapy)を行い、吸入療法および粘液溶解薬や気管支拡張薬などの投与も併せて行っていく。感染の原因菌としてはブドウ球菌と緑膿菌が一般的であるが、検出菌の感受性テストの結果に基づいて投与する抗菌薬の種類を決定していく。1~2ヵ月ごとに定期的に入院させ、2~3剤の抗菌薬の積極的な予防投与も行われている。抗菌作用、抗炎症作用、線毛運動改善作用などを期待してマクロライド系抗菌薬の長期投与も行われている。肺機能を改善する組み換えヒトDNaseの吸入療法や気道上皮細胞のNa+の再吸収を抑制するためのアミロイド、さらに気道上皮細胞からのCl-分泌促進のためのヌクレオチド吸入療法などが、近年試みられている。4 今後の展望まずは早期に診断して、適切な治療や管理を行うことが大切であり、その意味から早期診断のための汗のCl-濃度を測定する方法の普及が望まれる。さらに遺伝子検索を行うにあたっての労力と費用の負担が軽減されることが必要と思われる。適切な治療を行うためには、今後も肺や膵臓および肝臓の機能を改善させたり、呼吸器感染症を予防する新薬の開発が望まれる。さらに遺伝子治療や肺・肝臓移植が可能となり、生存年数が欧米並みに30歳を超えるようになることを期待したい。5 主たる診療科小児科、小児外科、呼吸器内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査 一次調査の集計(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業)難病情報センター:膵嚢胞線維症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病患者支援の会(内閣府認定NPO法人、腎移植や肝移植などの情報提供)Japan Cystic Fibrosis Network:JCFN(嚢胞性線維症患者と家族の会)1)成瀬達ほか.第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査.厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性膵疾患に関する調査研究」平成21年度 総括・分担研究報告書. 2010; 297-304.2)Flume PA, et al. Am J Respir Care Med. 2007; 176: 957-969.3)清水俊明ほか.小児科診療.1997; 60: 1176-1182.4)清水俊明ほか.小児科. 1987; 28: 1625-1626.5)Wainwright BJ, et al. Nature. 1985; 318: 384-385.公開履歴初回2013年08月15日更新2015年12月15日

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遺伝子型2/3型HCV、ソホスブビル+velpatasvirが有効/NEJM

 遺伝子型2および3型のC型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療において、ソホスブビル(SOF)とvelpatasvir(VEL)の併用療法は、従来の標準治療に比べ持続性ウイルス学的著効(SVR)の達成率が優れることが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のGraham R Foster氏らが実施した2つの臨床試験(ASTRAL-2、-3試験)で示された。ヌクレオチドアナログNS5Bポリメラーゼ阻害薬であるSOFは、リバビリン(RIB)との併用で2/3型HCVの治療薬として使用されている。VELは、すべての遺伝子型のHCVに抗ウイルス活性を有する新規NS5A阻害薬であり、SOFとの併用の第II相試験で慢性2/3型HCV感染患者において良好なSVR率が報告されている。NEJM誌オンライン版2015年11月17日号掲載の報告。遺伝子型別の2つの試験に800例以上を登録 ASTRAL-2試験は遺伝子型2型HCVを、ASTRAL-3試験は3型HCVを対象とする多施設共同非盲検無作為化第III相試験(Gilead Sciences社の助成による)。 対象は、両試験とも年齢18歳以上で、6ヵ月以上のHCV感染歴がある患者とし、インターフェロンを含むレジメンでSVRが達成されなかった患者を約20%、代償性肝硬変を有する患者を約20%登録することとした。 ASTRAL-2試験では、SOF(400mg)とVEL(100mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+VEL群)またはSOF(400mg)とRIB(体重<75kg:1,000mg、≧75mg:1,200mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+RIB群)に無作為に割り付けられた。ASTRAL-3試験では、SOF+VEL群はASTRAL-2試験と同じく12週、SOF+RIB群は24週の投与を行った。 主要評価項目は、治療終了から12週時のSVRとし、SVRはHCV RNA<15IU/mLと定義した。 ASTRAL-2試験では、2014年10月15日~12月18日に米国の51施設に266例が登録され、SOF+VEL群に134例、SOF+RIB群に132例が割り付けられた。ASTRAL-3試験では、2014年7月30日~12月17日に北米、欧州、オセアニアの8ヵ国の76施設に552例が登録され、SOF+VEL群に277例、SOF+RIB群には275例が割り付けられた。12週時SVR達成率:2型 99 vs.94%、3型 95 vs.80% 平均年齢は、ASTRAL-2試験が両群とも57歳、ASTRAL-3試験はSOF+VEL群が49歳、SOF+RIB群が50歳で、男性がそれぞれ64%、55%、61%、63%であった。ASTRAL-2試験は肝硬変患者が両群とも14%、既治療例がそれぞれ14%、15%含まれ、ASTRAL-3試験は肝硬変患者が29%、30%、既治療例は両群とも26%だった。 治療終了から12週時のSVR達成率は、遺伝子型2型HCVではSOF+VEL群が99%(95%信頼区間[CI]:96~100)と、SOF+RIB群の94%(95%CI:88~97)に比べ有意に良好であった(p=0.02)。3型HCVでは、それぞれ95%(95%CI:92~98)、80%(95%CI:75~85)であり、SOF+VEL群で有意に優れた(p<0.001)。 治療終了後の再燃が、2型HCVではSOF+VEL群には認めなかったが、SOF+RIB群で6例(5%)にみられ、3型HCVではそれぞれ11例(4%)、38例(14%)に認められた。治療中のウイルス学的治療不成功が、3型HCVのSOF+RIB群で1例に認められた。 3型HCVでは、未治療の非肝硬変例の12週時SVR達成率はSOF+VEL群が98%、SOF+RIB群は90%、肝硬変例はそれぞれ93%、73%であり、既治療の非肝硬変例は91%、71%、肝硬変例は89%、58%と、いずれもSOF+VEL群で良好な傾向がみられた。 最も頻度の高い有害事象は、疲労(2型:SOF+VEL群15%、SOF+RIB群36%、3型:SOF+VEL群26%、SOF+RIB群38%)、頭痛(18、22、32、32%)、悪心(10、14、17、21%)、不眠(4、14、11、27%)であった。有害事象による治療中止は、2型HCVのSOF+VEL群で1例(不安、頭痛、集中力低下で第1日に中止)、3型HCVのSOF+RIB群で9例に認められた。 重篤な有害事象は、2型HCVのSOF+VEL群で2例(1%、肺炎が1例、腸炎と腹痛が1例)、SOF+RIB群で2例(2%、関節炎が1例、うつ状態が1例)、3型HCVではSOF+VEL群が6例(2%)、SOF+RIB群が15例(5%)に発現した。 著者は、「代償性肝硬変例を含む遺伝子型2および3型HCVに対し、ソホスブビル+velpatasvir併用療法は、前治療の有無にかかわらずソホスブビル+リバビリンによる標準治療よりも高いSVR率を達成し、有害事象や検査値異常の頻度が低かった」とまとめ、「遺伝子型1、2、4、5、6型HCVを対象としたASTRAL-1試験の結果と統合すると、SOF+VEL併用の12週投与は遺伝子型にかかわらず高い有効性を発揮すると考えられる」と指摘している。

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C型慢性肝炎ジェノタイプ1型治療薬「ヴィキラックス配合錠」発売

 アッヴィ合同会社(本社:東京都港区、社長 : ジェームス・フェリシアーノ)は、ジェノタイプ1型C型慢性肝炎ウイルス(HCV)に感染した成人患者(代償性肝硬変を含む)の治療薬として「ヴィキラックス配合錠」(オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビル配合錠)を11月26日に発売した。ヴィキラックスの薬価は1錠26,801.20円。 ヴィキラックスは、2種の直接作用型抗ウイルス剤であるオムビタスビルとパリタプレビルにリトナビルを加えた配合剤で、12週間にわたって固定用量を1日1回服用する。厚生労働省より2015年4月に優先審査対象に指定され、2015年2月の製造販売承認申請後、7ヵ月後の2015年9月承認された。 本承認は第III相臨床試験のGIFT-I試験を根拠とし、主要評価項目であるIFN治療の対象で肝硬変を発症していない高ウイルス量(≥100,000 IU/mL)の未治療患者においては、ウイルス学的著効率(SVR12)95%(n=106/112)であった。また、GT1b型C型代償性肝硬変患者を対象とした副次的評価項目では、SVR12が91%(n=38/42)であった。NS5A領域のY93変異(耐性変異)による影響では、変異なし症例でSVR12が99%(301/304)と非常に高い効果を示し、GT1b型感染患者の13%に見られた変異症例では83%(39/47)となった。 全治療群のうち、3例(n=3/363)が治療期間中にウイルス学的無効となり、8例(N=8/354)が治療後の再燃を示し、有害事象により治療を中止したのは3例であった。また、多く認められた有害事象(5%超)は、鼻咽頭炎、頭痛、末梢性浮腫、悪心、発熱、および血小板数減少であった。アッヴィ合同会社からのお知らせはこちら。

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肝炎は全例が“治る”時代、では今後の対策は?

 ギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)の主催により、“新薬「ソバルディ」「ハーボニー」登場で変わる肝炎治療 臨床現場のいま”をテーマに、C型慢性肝炎プレスセミナーが2015年10月27日、東京都中央区で開催された。肝炎ウイルス感染対策、これまでと今後 始めに、田中 純子氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 疫学・疾病制御学 医学部 衛生学講座 教授)より「疫学的視点からみたウイルス性肝疾患患者数の経年推移」と題した講演が行われた。 わが国における肝がんの死亡者数は、2000年頃から緩やかに減少しつつあるが、いまだに年間死亡者数は3万人を超えており、対策が望まれる疾患の1つである。 これまで、住民健診における肝炎ウイルス検査の追加(2002年)や、肝炎無料検査の実施(2007年)、肝炎対策基本法の施行(2010年)などにより、世界の中でも早期に肝炎ウイルス対策に取り組んできた。田中氏は、「検査強化を施策として行ってきた結果、肝炎ウイルスの潜在キャリア数は、推定240~305万人(2000年)から、推定77.7万人(2011年)に減少することができた」と述べた。しかし、感染を知ったものの、(継続的な)受診をしないキャリアが、いまだに推定53~118万人存在するため、受診勧奨や受療継続といった課題が残されているという1)。田中氏は、今後の肝炎・肝がん対策について、「すでに通院中の人には、適切な治療を受けられるようにすること、肝がんの自覚症状がなく、病院受診に至っていない人には、治療に結び付くよう工夫することが、肝炎・肝がん死亡減少のため重要となる」と指摘した。肝炎治療、油断は禁物 次に、榎本 信幸氏(山梨大学 医学部内科学講座第一教室 教授)より「C型慢性肝炎の最新治療」と題した講演が行われた。 これまでC型肝炎治療は、ペグインターフェロン・リバビリン療法が一般的であったが、副作用の問題や、患者の高齢化(すでに治療経験があり、インターフェロンが使えないケースや、効かないケースが増加)といった問題から、投与方法や副作用管理が簡便な治療が望まれていた。こうした背景の下、インターフェロンフリーの治療薬発売が続いているなかで、今年9月、新たに1日1回1錠、12週間の経口投与で治療を完了するジェノタイプ1型 C型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合錠、以下ハーボニー)が発売された。ハーボニーは、治療歴、代償性肝硬変の有無、年齢および投与前のNS5A耐性変異の有無にかかわらず、SVR12率は100%を達成している。 このように一見、C型肝炎は解決したように思えるが、榎本氏は、「C型肝炎ウイルスが消えても肝がんができることがあるため油断はできない」と警鐘を鳴らす。とくに「高齢」、「男性」、「γGTP上昇」、「AFP上昇」では肝がんリスクが高くなるため、ウイルス排除後のフォローが重要だという。榎本氏は、「“肝がん予防のABC”という考え方、すなわち、A:Age(65歳以上)、B:B型肝炎、C:C型肝炎、D:DM(糖尿病、血糖値が高い)、E:Ethanol(アルコールを毎日飲む)、F:Fibrosis(線維)、Fat(脂肪)、Fe(鉄)、G:Gender(男性)のすべてに注意を払うことが大切、BやCだけを治すようでは手遅れとなることもある」と注意を促した。費用対効果の判断は冷静に 最後に、五十嵐 中氏(東京大学大学院 薬学系研究科 特任准教授)より「ソバルディ・ハーボニーの医療経済的な価値」と題した講演が行われた。 新薬の医療経済評価を行うには、原則として「増分費用効果比(コスト増加分の質調整生存率に対する割合)」を考慮し、増大した分のコストが、健康で過ごせる期間に見合っているかを判断する。五十嵐氏は、「“ソバルディ”、“ハーボニー”は、価格だけみれば確かに高価だが、コスト増大分に見合った効果の改善があれば良いのではないか」と述べた。 肝炎から肝硬変、肝がんに進行してしまった場合、難しい治療や多額の治療費用が必要になることも珍しくはない。五十嵐氏は、「高額な薬代であっても、健康に過ごせる期間の延長や、将来的な治療費削減効果を考えれば、妥当ではないか」と説明し、講演を締めくくった。 ソバルディ、ハーボニーの登場により、肝炎治療の未来は明るくなった。だからこそ、今後、ウイルス排除後のフォローなど、肝炎・肝がん死亡減少のための対策が重要となってくるのではないか。(ケアネット 佐藤 駿介)参考1)田中純子ほか. a肝炎ウイルス感染状況に関する疫学基盤研究. In:急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究. 肝炎等克服政策研究事業.

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常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

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世界の疾病負担は改善しているか:GBD 2013の最新知見/Lancet

 2012年、「世界の疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)」の最初の調査(1993年)以降、初めての全面改訂の結果が公表された。この取り組みはGBD 2010研究と呼ばれ、世界187ヵ国の死亡および疾病の原因の情報に基づき、1990年と2010年の国別の障害調整生命年(disability-adjusted life-years:DALY)および健康調整平均余命(health-adjusted life expectancy:HALE)を報告している。その後、GBDは必要に応じて毎年更新することとなり、GBD 2013研究については、すでに国別の損失生存年数(years of life lost; YLL)や障害生存年数(years lived with disability; YLD)などのデータが公表されており、今回は最新の解析結果が報告された。Lancet誌オンライン版2015年8月27日号掲載の報告。1990~2013年の188ヵ国、306の疾病原因のDALY、HALEを評価 研究グループは、世界188ヵ国における1990~2013年の306種の傷病に関するDALYおよびHALEの評価を行った(Bill & Melinda Gates Foundationの助成による)。 既報のGBD 2013研究の年齢特異的死亡率、YLL、YLDのデータを用いて、1990、1995、2000、2005、2013年のDALYおよびHALEを算出した。 HALEの計算にはSullivan法を用い、国別、年齢別、性別、年度別の年齢特異的死亡率および1人当たりのYLDの不確定性を示す95%不確定性区間(uncertainty interval:UI)を算出した。 306の疾病原因に関する国別のDALYは、YLLとYLDの総和として推算し、YLL率とYLD率の不確定性を表す95%IUを算出した。 「疫学転換(epidemiological transition)」のパターンは、個人収入、15歳以降の学校教育の平均年数、総出生率、平均人口年齢から成る「社会的人口統計状況(sociodemographic status)」の複合指標で定量化した。 すべての国で疾病原因別のDALY率の階層的回帰分析を行い、社会的人口統計状況因子、国、年度に関する分散分析を行った。健康が増進しても保健システムへの需要は低下しない 世界的な出生時平均余命は、1990年の65.3年(95%UI:65.0~65.6)から2013年には71.5年(71.0~71.9)へと6.2年(5.6~6.6)延長した。 この間に、出生時HALEは56.9年(54.5~59.1)から62.3年(59.7~64.8)へと5.4年(4.9~5.8)上昇しており、総DALYは3.6%(0.3~7.4)減少し、10万人当たりの年齢標準化DALY率は26.7%(24.6~29.1)低下した。 1990年から2013年までに、感染性疾患、母体疾患、新生児疾患、栄養疾患の世界的なDALY、粗DALY率、年齢標準化DALY率はいずれも低下したのに対し、非感染性疾患の世界的なDALYは上昇しており、粗DALY率はほぼ一定で、年齢標準化DALY率は減少していた。 2005年から2013年の間に、心血管疾患や新生物などの特定の非感染性疾患のほか、デング熱、食物媒介吸虫類、リーシュマニア症のDALYが上昇したが、他のほぼすべての疾病原因のDALYは低下していた。2013年までのDALY上昇の5大原因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳血管疾患、腰頸部痛、道路交通傷害であった。 下痢/下気道感染症/他の一般的な感染性疾患、母体疾患、新生児疾患、栄養疾患、その他の感染性疾患/母体疾患/新生児疾患/栄養疾患、筋骨格系障害、その他の非感染性疾患の各国間の差や経時的な変動の50%以上は、社会的人口統計状況によって説明が可能であった。 一方、社会的人口統計状況は、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、肝硬変、糖尿病/泌尿生殖器疾患/血液疾患/内分泌疾患、不慮の外傷のDALY率の変動については10%も説明できなかった。 また、予測されたとおり、社会的人口統計状況の上昇により、負担がYLLからYLDへと転換しており、筋骨格系障害、神経障害、精神/物質使用障害によるYLLの減少およびYLDの上昇が、これを促進したと考えられる。 平均余命の上昇はHALEの上昇よりも大きく、DALYの主原因には各国間に大きなばらつきが認められた。 著者は、「世界の疾病負担は改善している」と結論し、「人口増加と高齢化がDALYを押し上げているが、粗DALY率には相対的に変化はなく、これは健康の増進は保健システムへの需要の低下を意味しないことを示している。社会的人口統計状況が疾病負担の変動をもたらすとする疫学転換の概念は有用だが、疾病負担には、社会的人口統計状況とは関係のない大きな変動が存在する」とまとめている。 また、「これは、保健政策の立案や関係者の行動に向けて適切な情報を提供するには、国別のDALYおよびHALEの詳細な評価が必要であることをいっそう強調するもの」と指摘している。

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1日1回1錠のジェノタイプ1型C型慢性肝炎治療薬 ハーボニー配合錠発売

 ギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)は9月1日、ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症改善を適応とするNS5A阻害薬と核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬の配合剤である「ハーボニー配合錠」(以下、ハーボニー)(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合剤)を発売した。 ハーボニーは、1日1回1錠の経口投与による治療薬で、投与期間も12週間に短縮される。C型慢性肝炎患者を対象とした国内第III相臨床試験では、治療歴、代償性肝硬変の有無、年齢およびNS5Aの耐性変異の有無にかかわらず、100%の著効率(SVR12)を達成している。詳細はギリアド・サイエンシズ株式会社のプレスリリースへ

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C型肝炎治療が一変、時代は内服療法へ

 2015年7月14日、東京都中央区でギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)の主催により、「国内のC型肝炎の70~80%を占める“ジェノタイプ1型”治療のこれから」をテーマに、C型慢性肝炎プレスセミナーが開催された。冒頭では、代表取締役社長 折原 祐治氏により同社の会社紹介が行われた。ギリアドについて ギリアドは、開発当初から患者さんの服薬アドヒアランスを考え、STR(single tablet resume)により、可能な限り1日1回1錠の薬剤を開発している。この特徴に加えて、アクセス・プログラム(薬剤の特許期間中、低所得国の患者さんであっても1日でも早く治療を開始してもらうためのギリアド・サイエンシズ独特のプログラム)を実施し、世界中の「治したい」に応えている点も特徴的である。 折原氏は、「C型肝炎だけではなく、今後はB型肝炎にも注力し、さらに並行してオンコロジー領域の新薬開発に取り組む」と今後の展望を述べた。インターフェロンフリー時代の展望 次に、溝上 雅史氏(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 内科系統括部長、肝炎・免疫研究センター長)より「ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎における最新治療~インターフェロンフリー時代の展望~」と題した講演が行われた。 わが国において肝がんは、男性、女性ともに部位別がん死亡数の上位を占め1)、予後不良な疾患といわれている。肝がんの発症原因は、約7割がC型肝炎ウイルス(HCV)の感染といわれており2)、わが国のHCV感染者は、150~200万人に上ると推測されている。 これまで、C型肝炎治療は、インターフェロンによる治療が一般的だったが、患者の多くが高齢(65~76%が60歳超)で合併症を有していることや、すでに治療経験があることなどから、インターフェロンが使えないケースや効かないケースが増加している。 こうした背景の下、インターフェロンフリーの治療薬発売が続いているが、今月3日、新たにジェノタイプ 1 型 C型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(以下、ハーボニー、一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合錠)が、製造販売承認を取得した。ハーボニーは、1)1日1回1錠、12週間の経口投与で治療を完了する抗ウイルス剤、2)SVR12率は100%を達成、3)治療歴、代償性肝硬変の有無、年齢および投与前のNS5A耐性変異の有無にかかわらず、SVR12率は100%、4)HCV RNA合成を直接阻害する世界初の核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソホスブビルとNS5A阻害剤レジパスビルの配合剤、5)良好な安全性と忍容性、などの特性がある。溝上氏は、「これまでHCV治療薬の課題とされている点をクリアする驚くべき薬剤」と驚嘆する。一方、「しっかり服用すれば効果が期待できる薬剤だが、中途半端な服用では、十分な効果が得られない。薬局などの力も借りて、患者さんにしっかりと服用してもらう工夫が必要だ」と指摘した。新薬を待つ患者の声 最後に、米澤 敦子氏(特定非営利活動法人 東京肝臓友の会 事務局長)より「患者視点からのC型慢性肝炎におけるアンメットニーズ~東京肝臓友の会の活動について~」と題した講演が行われた。 東京肝臓友の会は、肝臓病の相談や情報提供を行うほか、講演・交流・相談会を通じて肝炎対策の推進などを行う患者の会である。特徴は、相談を受ける東京肝臓友の会の方自身が、B・C型肝炎患者や自己免疫肝疾患などの治療経験者という点である。ここ最近、同社より発売されたソバルディや、ハーボニーの製造販売承認の取得に伴い、相談件数が増えているという。 米澤氏によると、実際の患者さんからの声として、「うつのため、インターフェロン治療が受けられなかったが、私でも新しい治療は受けられるか」などの相談や、「インターフェロン治療は、仕事との両立が難しく、仕事を辞めざるを得ないケースもあったが、今度の新薬はどうか」といった質問が増えてきているという。 米澤氏は、「薬価が高いため、服用できる患者さんが限られてしまったり、治療開始が遅れる、服用が続けられなくなるといった事態が問題だ」と述べた。 ハーボニーの登場により、今までのインターフェロン療法(注射剤、治療期間24週)から、治療期間12週(1日1回)の内服療法が可能になる。これにより患者さんの治療負担が軽減され、またSVR 100%と効果が優れていることから、実際に治療を受ける患者さんおよび医師からも大きな期待が寄せられている。本剤が1日でも早く患者さんの元へ届くことを願ってやまない。参考文献1)国立がん研究センターがん情報サービス2)工藤正俊 ほか. 肝臓. 2010; 51: 460-484.(PDF)

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C型慢性肝炎に対する経口薬併用療法の時代到来!(解説:中村 郁夫 氏)-367

 本論文は、アメリカ・カナダ・フランス・オーストラリアにおいて行われた第III相試験(UNITY-2 study)に関する報告である。対象は、1型(1a/1b)HCVによる代償性C型肝硬変202例(初回治療例 112例、既治療例 90例)である。治療法は、ダクラタスビル(30mg)、アスナプレビル(200mg)、ベクラブビル(75mg)を1日2回の内服とし、半数にリバビリン(1,000~1,200mg/日)を加えた。治療期間は12週間とし、治療終了後24週間の経過観察を行った。SVR12(治療終了後12週におけるHCV陰性化)は、初回治療例で98%、既治療例で93%と高い効果を示した。 わが国におけるC型慢性肝炎の患者数は約200万人と推定されている。従来のC型慢性肝炎に対する治療法の主体は、インターフェロンを含むものであった。しかし、昨年の9月に保険収載されたダクラタスビル・アスナプレビル併用療法(1型HCV:24週)を皮切りに、今年の5月にはソホスブビル・リバビリン併用療法(2型HCV:12週)が保険収載され、順次、ソホスブビル・レディパスビル併用療法(1型HCV:12週)、オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル併用療法(1型HCV:12週)、グラゾプレビル・エルバスビル併用療法(1型HCV:12週)が承認されることが予想され、さらに選択肢が広がることとなった。 本論文のように、欧米では3剤の併用療法が主体であるのに対し、日本では1型HCVの大多数は1b型で、1a型はまれであるため、2剤の併用療法が主体である。いよいよ、わが国においても、C型慢性肝炎に対する経口薬併用療法の時代が到来した。C型慢性肝炎の患者さんにとって大きな福音がもたらされたと考える。

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HCV1型感染に経口3剤配合剤が高い効果/JAMA

 代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染者に対し、経口薬のみの3剤配合錠ダクラタスビル(商品名:ダクルインザ)+アスナプレビル(商品名:スンベプラ)+ベクラブビル(beclabuvir、国内未承認)の12週間治療は、87~98%と高い割合で持続的ウイルス学的著効率(SVR)を達成可能であることが示された。これまでにインターフェロンや直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療を受けた人についても、同達成率は高かったという。米国・デューク大学のAndrew J. Muir氏らが、約200例の患者を対象に行った試験UNITY-2の結果、報告した。ダクラタスビルとアスナプレビルは日本で先行発売されている。ベクラブビルは非ヌクレオシド系NS5B阻害薬である。JAMA誌2015年5月5日号掲載の報告より。4ヵ国、49施設で試験を実施 UNITY-2試験は非盲検非対照無作為化試験で、2013年12月~2014年10月にかけて、米国、カナダ、フランス、オーストラリアにある49施設で、代償性肝硬変を伴うHCV遺伝子型1型感染者を対象に行われた。被験者のうち、インターフェロンやDAAで未治療の人は112例、すでに治療を受けたことのある人は90例だった。 同グループは全被験者に対し、ダクラタスビル(30mg)+アスナプレビル(200mg)+ベクラブビル(75mg)を1日2回、12週間投与した。 被験者を遺伝子型1aまたは1bで層別化し、無作為にリバビリン(1,000~1,200mg/日)またはプラセボを併用する群に割り付けて評価を行った。 主要評価項目は、治療12週後のSVR(SVR12)だった。リバビリン投与群でSVR12は未治療群98%、既治療群93% 被験者の年齢中央値は、未治療群が58歳、既治療群が60歳で、74%が遺伝子型1a感染者だった。 SVR12は、リバビリン投与群で未治療群が98%(97.5%信頼区間[CI]:88.9~100.0)、既治療群が93%(同:85.0~100.0)だった。プラセボ群では、それぞれ93%(同:85.4~100.0)と87%(同:75.3~98.0)だった。 なお、治療に関連する重度有害事象の発生は3例、有害事象による治療中止は4例だった。 治療により現出したグレード3または4のALT上昇は4例でみられ、総ビリルビン値の上昇がみられたのはそのうち1例だった。

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ジェノタイプ2型C型慢性肝炎治療薬 ソバルディ錠が5月25日発売

 ギリアド・サイエンシズ株式会社は5月20日、ジェノタイプ2型C型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善の効果・効能で、核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬「ソバルディ錠400mg」を5月25日に発売することを発表した。同社にとっては日本国内で初めての製品販売となる。 ソバルディは、ジェノタイプ2型C型慢性肝炎の治療において、インターフェロンを必要とせず、リバビリンとの併用において、1日1回の12週間投与を可能とする初めての経口薬のみの治療法となる。 日本国内には、C型肝炎ウイルスに感染している患者が150~200万人いると考えられており、20~30%がジェノタイプ2型に罹患している※といわれている。これまでのジェノタイプ2型のC型慢性肝炎に対する治療は、24~48週間に及ぶペグインターフェロンの注射とリバビリンなどによる治療法が主だったが、ソバルディでは経口薬のみ12週間の治療となり、患者の服薬負担が軽減される。※出典:国立国際医療研究センター 肝炎情報センター. C型肝炎. 詳細はギリアド・サイエンシズ株式会社のプレスリリースへ

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Dr.小川のアグレッシブ腹部エコー 肝臓編

第1回 基本を押さえて異常を知る!超音波解剖と走査のポイント第2回 びまん性肝疾患1 -脂肪肝を中心に-第3回 びまん性肝疾患2 -エコーパターンと肝内脈管評価を中心に-第4回 肝腫瘤性病変と肝細胞がん1 -基本を押さえる- 第5回 肝腫瘤性病変と肝細胞がん2 -バリエーションを学ぶ-第6回 肝腫瘤性病変3 -症例から学ぶ- 超音波検査は非侵襲的で触診感覚で行えることから、患者にとっても、医師にとっても非常に有用な検査です。その超音波を使いこなすにはどうすればよいのでしょうか。その答えは、この番組の中にあります。肝臓の疾患にフォーカスし、さまざまな症例の超音波画像から、何をどう見ていくのかを徹底的に解説します。これを見ると超音波画像がみるみる見えるようになるでしょう。第1回 基本を押さえて異常を知る!超音波解剖と走査のポイント超音画像を見てすぐに所見を述べられますか?なぜ答えることができないのでしょうか。それは超音波検査の「客観性の低さ」が問題なのです。その問題を解決するためには、撮影方法と肝臓の解剖理解して、標的臓器がわかるようになりそして、評価方法がわかるようになることです。そのためにも正常超音波画像を頭にたたき込みましょう。肝臓の超音波画像描出のコツは、メルクマールとなる門脈の描出、区域を意識する、呼吸の利用などなど、コツをしっかりと伝授します。まずは「基本を押さえて異常を知る」ことです。第2回 びまん性肝疾患1 -脂肪肝を中心に- びまん性肝疾患の評価方法、脂肪肝のエコー画像の特徴について解説します。肝臓を観察する上でのチェックポイントは大きく6つあります。1.肝臓の大きさ、2.肝臓の輪郭の評価(形態的な変化)、3.内部エコーの評価、4.肝内脈管・胆管の変化、5.肝外の随伴所見の有無、6.肝腫瘤性病変の有無です。今回は、前半の3つについて実際の症例画像を挙げながら詳しく説明していきます。CT画像や組織所見などとの比較も行います。これを見ればみるみる見えるようになるでしょう!第3回 びまん性肝疾患2 -エコーパターンと肝内脈管評価を中心に-内部エコーのエコーパターンは肝実質の線維化、壊死、胆汁うっ滞、血流障害などのさまざまな要因によって超音波の伝搬が不均一になるために現れる変化です。健常者では均一な像を呈していますが、肝硬変化、重症化するに伴い不均一化は進み、また、原因疾患によってそのパターンは異なります。また、肝内脈管の評価の際にも同様の変化を見ることができます。第3回では、第2回に続き、肝臓を観察する上での6つチェックポイント、1.肝臓の大きさ、2.肝臓の輪郭の評価(形態的な変化)、3.内部エコーの評価、4.肝内脈管・胆管の変化、5.肝外の随伴所見の有無、6.肝腫瘤性病変の有無 の3(エコーパターン)、4、5について解説していきます。第4回 肝腫瘤性病変と肝細胞がん1 -基本を押さえる- 肝腫瘤性病変の評価方法と肝細胞がんの典型的な超音波画像について解説します。超音波装置の発展により、5mm大の結節性病変が散見されるようになったが、この結節をどう評価するか、CTやMRIで描出されない結節をどう扱うかなど悩んだことはありませんか?超音波は所見を撮りに行く検査です!なぜその所見が得られるか、何が臨床の場で重要なのかなど腫瘤性病変に関する考え方を学んでください。そうすれば撮り方も変わっていくでしょう。第5回 肝腫瘤性病変と肝細胞がん2 -バリエーションを学ぶ-肝腫瘤性病変の評価方法と肝細胞がんの典型的な超音波画像についての解説Part2です。腫瘤性病自体の画像の評価からはもちろんのこと、その周辺に起こる画像の変化から読み取ることもダジです。Halo(ハロー:腫瘤の辺縁環状低エコー帯)、側方エコー(Lateral Shadow:外側陰影)、後方エコーなど、なぜそのような画像の変化が起こるのか、突き詰めていきましょう。そして、その意味がわかれば、より適切に病態を把握できるようになります。第6回 肝腫瘤性病変3 -症例から学ぶ- 今回は、総まとめとして患者情報、検査結果、そしてエコー画像が提示される症例を診断していきます。これまでに学んだ肝臓観察時のチェックポイント-1.肝臓の大きさ、2、肝臓の輪郭、3.内部エコー、4.肝内脈管・胆管の変化、5.肝外随伴所見、6.肝内腫瘤性病変 を一つひとつ見ていきましょう。

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C型肝炎治療最前線 経口薬への期待

 C型肝炎の治療に新たな変化が起きている。ダクルインザ・スンベプラ併用療法のインターフェロン未治療・再燃患者への適応拡大に伴い、2015年4月8日、都内にてプレスセミナー(主催:ブリストル・マイヤーズ株式会社)が開催された。今回は、茶山 一彰氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 消化器・代謝内科学 教授)の講演内容を中心にセミナーの内容を紹介する。インターフェロンの副作用が大きな負担 従来、本邦におけるC型肝炎根治療法の主体はインターフェロン(IFN)であった。1992年にIFN単独療法が、2004年にペグIFN・リバビリン併用療法が承認された。さらに、2013年には経口プロテアーゼ阻害薬が承認され、3剤併用療法が開始された。しかし、依然として治療の主体はIFNであり、うつ・全身倦怠感をはじめとする重い副作用が患者にとって大きな負担となってきた。ダクルインザ・スンベプラ療法 昨年9月に発売されたダクルインザ(一般名:ダクラタスビル)とスンベプラ(同:アスナプレビル)は日本初のIFNフリーで治療可能な経口C型肝炎治療薬である。ダクルインザ・スンベプラ療法は、日本におけるC型肝炎の約70%を占めるセログループ1(ジェノタイプ1)型またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症を改善する効果がある。本剤の登場により、これまで高齢や合併症リスク、副作用などでIFNを含む既存の治療を受けられない患者、あるいは十分な効果が得られなかった患者さんに、新たな治療選択肢が加わった。経口2剤併用療法が適応拡大 また、これまでダクルインザ・スンベプラ療法の適応は、「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変で、(1)IFNを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容の患者、(2)IFNを含む治療法で無効となった患者」であった。 しかし、今回(2015年3月)の適応拡大に伴い、IFNの治療歴にかかわらず、日本人で最も多いジェノタイプ1型C型肝炎のすべての患者がこの治療法を選択できるようになった。さらに、第III相試験において、本療法の貧血・皮疹などの副作用は、3剤併用療法例よりも有意に低発現であり、安全性の面でも期待されている。IFNフリー療法への期待 ダクルインザ・スンベプラ療法はその安全性と有効性の観点から、現在約2万6,000例に投与されているという。第III相試験では、ウイルスの遺伝子変異がなければ本療法は98%と高い著効率を示している。茶山氏は「投与前のウイルス遺伝子検査を徹底し適切に使用すれば、患者に優れた有効性と安全性をもたらすことができる」と強調し、講演を結んだ。

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事例46 ウルソデオキシコール酸(商品名: ウルソ)錠 100mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)錠100mg 6錠をアルコール性肝硬変であって、慢性肝不全の患者に投与したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)として100mg 3錠に査定となった。査定事由の検討のために同剤の添付文書を確認してみた。1日量600mgの摘要は、「原発性胆汁性肝硬変(PBC)又はC型慢性肝疾患における肝機能の改善」と記載されている。他には慢性肝疾患における肝機能の改善などが認められており、1日量150mgを標準に年齢、症状により増減すると設定されている。したがって、傷病名欄にPBCとC型慢性肝炎の記載がないことを理由に査定となったと考えられる。また、事例のアルコール性肝硬変は、PBCまたはC型慢性肝疾患に相当せずに添付文書上の慢性肝疾患の区分に分類される。必要とした場合に適宜の増減が定められているものの、1日量600mgの投与は通常量の4倍であり、PBCまたはC型慢性肝疾患に対する投与量と同じ量となるため過剰であると判断されたものであろう。通常量の倍量投与が認められたのは、肝不全があるためと考えられる。投与量によって適用傷病名が異なる場合は、傷病名との整合性をご確認いただきたい。

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HCVとHIV重複感染に3D+リバビリンレジメン有効/JAMA

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の重複感染患者の治療において、インターフェロン(IFN)フリーの全経口3剤組み合わせ直接作用型抗ウイルス薬(3D)+リバビリン併用レジメンは、治療期間12週または24週についていずれも高い持続性ウイルス学的著効(SVR)率に結び付いたことが示された。米国ジョンズ・ホプキンス大学のMark S. Sulkowski氏らによる非盲検無作為化非対照試験TURQUOISE-Iのパイロット試験パート1aの結果、報告された。3Dレジメンは、オムビタスビル、パリタプレビル(またはリトナビル併用[パリタプレビル/r])、ダサブビルから成る。本検討の結果を受けて著者は、「重複感染患者について本療法の第III相試験を行うべき根拠が示された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2015年2月23日号掲載の報告より。63例を対象に非無作為化非対照試験で12週、24週投与について評価 TURQUOISE-Iパート1a試験は、米国およびプエルトリコの17ヵ所で2013年9月~2014年8月に行われた。被験者は、HCV遺伝子型1型とHIV遺伝子型1型に重複感染しており、HCV未治療またはペグIFN+リバビリン治療が無効であった63例であった。被験者には肝硬変を有するものも含まれ、CD4+T細胞数は200/mm3超もしくはT細胞割合が14%超、血清HIV-1RNAはアタザナビルまたはラルテグラビルを含む抗レトロウイルス(ART)レジメンにより安定していた。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方は3D+リバビリンレジメンを12週(31例)、もう一方は同24週(32例)の治療を受けた。 主要評価は、治療後12週時点のHCV RNA<25 IU/mLで規定したSVR12達成患者の割合で検討した。SVR12達成患者、12週治療群94%、24週治療群91% 結果、SVR12達成患者は、3D+リバビリンレジメン12週治療群は29/31例で94%(95%信頼区間:79~98%)、同24週治療群は29/32例で91%(同:76~97%)であった。 SVR未達成だった5例の患者のうち、1例は同意の段階での中断例であり、2例はウイルス学的再発または再燃が確認され、2例はHCVの再感染が臨床歴および系統的エビデンスとして認められた患者であった。 最も頻度が高かった治療に関連した有害事象は、疲労感(48%)、不眠(19%)、悪心(18%)、頭痛(16%)であった。有害事象は概して軽度であり、重篤あるいは治療中断に至った報告例はなかった。 なお治療中にHIV-1再燃(200コピー/mL超)となった患者はいなかった。

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事例41 ヒアルロン酸の査定【斬らレセプト】

解説事例では、高血圧症と肝機能障害で通院中の患者に肝硬変を疑いD007 「42」ヒアルロン酸を実施したところ、C事由(医学的理由による不適当と判断されるもの)にて査定となった。同検査は、算定留意事項に「(前略)慢性肝炎の患者に対して、慢性肝炎の経過観察及び肝生検の適応の確認を行う場合に算定できる」とある。さらに、支払基金の審査情報提供では「『慢性肝炎』の病名の無い『肝機能障害』又は『肝細胞がん疑い』及び『肝硬変』が確定している場合は、同検査は診断の参考とならない」と示されている。認める場合は、「原発性胆汁性肝硬変」の診断時に参考とする場合と示されている。事例に記載されている「肝機能障害」からは「慢性肝炎」であることが読み取れない。また、「慢性肝炎」の判断ができない中での「肝硬変の疑い」では、肝生検の必要性が読み取れないとして、医学的に不適当と判断されたことが考えられる。保険請求では、その行為が必要であったことが、第三者に読み取れるよう診断傷病を記載することが肝要なのである。

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IFNフリーレジメン、4つの遺伝子型のHCVとHIV重複感染に有効/Lancet

 C型肝炎ウイルス(HCV)とヒト免疫不全ウイルス(HIV)の重複感染患者の治療において、インターフェロン(IFN)フリーレジメンであるソホスブビル+リバビリン併用療法は、HCVの4つの遺伝子型のいずれに対しても高い有効性を発揮することが、フランス・パリ第7大学(ディドロ)のJean-Michel Molina氏らが行ったPHOTON-2試験で示された。欧州ではHIV感染例の25%にHCVの重複感染が認められ、遺伝子型2および3型HCVとHIVの重複感染例にはIFNフリーレジメンが承認されているが、1および4型HCV重複感染例の治療選択肢はIFNベースレジメンに限られる。PHOTON-1試験では、未治療の1~3型および既治療の2および3型HCVの重複感染例に対する本レジメンの有効性が確認されている。Lancet誌オンライン版2015年2月3日号掲載の報告。遺伝子型別に非無作為化非対照試験で評価 PHOTON-2試験は、PHOTON-1試験で除外された遺伝子型4型を含むHCVとHIVの重複感染例に対するIFNフリーの経口レジメンとしてのソホスブビル+リバビリン併用療法の安全性および有効性を評価する非盲検非無作為化非対照第III相試験(Gilead Sciences社の助成による)。対象は、年齢18歳以上、遺伝子型1~4型(既治療例は2および3型のみ)のHCVとHIV-1に重複感染し、病態の安定した症例であり、代償性肝硬変を有する患者も含めた。 全例にソホスブビル(400mg、1日1回)+リバビリン(体重<75kg:1,000mg、≧75kg:1,200mg、1日2回)併用療法が行われた。未治療の遺伝子型2型HCV感染例には12週投与が行われ、それ以外の患者には24週投与が施行された。主要評価項目は、治療終了後12週時の持続性ウイルス学的著効(SVR、HCV RNA濃度<定量下限値[LLOQ]と定義)とした。 2013年2月7日~2013年7月29日までに、7ヵ国(オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペイン、イギリス)の45施設から275例が登録され、262例(95%)が治療を完遂し、274例が解析の対象となった。4型への高い有効性を示した初のIFNフリーレジメン HCVの遺伝子型および前治療の有無別の内訳は、未治療の1型が112例、未治療の2型が19例(治療期間12週)、既治療の2型が6例、未治療の3型が57例、既治療の3型が49例、未治療の4型が31例であった。 各群の年齢中央値は45~55歳、男性が67~100%で、89~100%が抗レトロウイルス薬の投与を受けていた。全体の20%(54例)に肝硬変がみられ、既治療例(33~47%)のほうが併発率が高かった。 治療終了後12週時のSVR率は、遺伝子型1型感染群が85%、2型が88%、3型が89%、4型が84%であった。また、2型の未治療例は89%、3型の未治療例は91%であり、SVR率は両群で類似していた。治療終了後4週時のSVR率は83~91%だった。 各群の治療期間中のSVR達成率は、4週時が96~100%、12週時が95~100%、24週時は100%(未治療の2型群以外の全群)であった。治療期間中のウイルス学的再燃が、既治療の3型群の1例(2%)に認められた。SVR達成例における治療終了後のウイルス学的再発率は4~20%であり、再発例にソホスブビル抵抗性の遺伝子変異は認めなかった。 全体で、6例(2%)が有害事象により治療中止となった。最も頻度の高い有害事象は、疲労感(20%)、不眠(16%)、脱力感(16%)、頭痛(16%)であった。また、重篤な有害事象は15例(5%)に認められ、4例(1%)が治療関連(貧血が2例、血小板減少と点状出血が1例、躁病が1例)であったが、フォローアップ終了までに全例が回復した。試験期間中の死亡例はなかった。 抗レトロウイルス薬投与中の患者のうち4例(1%)にHIVの一過性のウイルス学的再燃がみられたが、抗レトロウイルス薬のレジメンの変更を要する患者はいなかった。 著者は、「本併用療法は、4つの遺伝子型のHCVとHIVに重複感染した未治療および既治療の患者に有効であった」とまとめ、「本試験は、遺伝子型4型HCVとHIVの重複感染例にIFNフリーレジメンが高い有効性を発揮するとのエビデンスを示した初めての臨床研究である。本併用療法は、HIV治療に使用される抗レトロウイルス薬と臨床的に問題となる相互作用を示さないため、HCVとHIVの重複感染者の有用な治療選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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