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世界中で起きている障害を有する人の高齢化/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の障害生存年(years lived with disability:YLD)について、オーストラリア・School of Population HealthのTheo Vos氏らがGlobal Burden of Diseases Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。その結果、10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であったが、年齢に伴う着実な上昇が認められたという。背景には人口増加と平均年齢の上昇があった。またYLDの最も頻度の高い原因(メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害など)の有病率は減少しておらず、著者は「各国のヘルスシステムは死亡率ではなく障害を有する人の増加について対処する必要があり、その上昇する負荷に対する効果的かつ可能な戦略が、世界中のヘルスシステムにとって優先すべきことだ」と提言した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の289の疾患・外傷の1,160の後遺症について系統的な解析を実施 研究グループは、GBD2010のデータを基に、その291の疾患・外傷リストのうち、障害をもたらす289の疾患・外傷の1,160の後遺症について、有病率、発生率、軽快した割合、障害持続期間、超過死亡率について系統的解析を行った。データは、公表されている研究、報告症例、住民ベースがんレジストリ、その他疾患レジストリ、マタニティクリニック血清サーベイランス、退院データ、外来ケアデータ、世帯調査、その他サーベイおよびコホート研究から構成された。 YLDを、シミュレーション手法により共存症について補正し、年齢、性、国、年度レベルで算出した。主因は、メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害、糖尿病や内分泌系疾患 解析の結果、2010年の全年齢統合の1,160の後遺症の世界的な有病率は、100万人当たり1例未満から35万例まで広範囲にわたった。有病率と健康損失をもたらす重症度との関連はわずかであった(相関係数:-0.37)。 2010年のあらゆるYLDの有病者は7億7,700万人で、1990年の5億8,300万人から増加していた。 YLDをもたらした主要な要因は、メンタル問題と行動障害、筋骨格系障害と糖尿病や内分泌系疾患であった。 YLDの主要な特異的要因は、1990年と2010年でほぼ同様であり、腰痛、大うつ病、鉄欠乏性貧血、頸痛、COPD、不安障害、偏頭痛、糖尿病、転倒であった。 年齢別YLD有病率は、全地域で年齢に伴う上昇がみられたが、1990年から2010年にかけてわずかだが減少していた。 10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であった。 YLDの主要な要因の地域別パターンは、早期死亡による生命損失年(YLL)とよく似ていた。サハラ以南のアフリカでは、熱帯病、HIV/AIDS、結核、マラリア、貧血がYLDの重大な要因であった。

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世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の死因で感染症などは大幅に減少 GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。 その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。 HIV/AIDSによる死亡は、1990年の30万人から2010年は150万人に増加していた。ピークは2006年の170万人であった。 マラリアの死亡率も1990年から推定19.9%上昇し、2010年は117万人であった。 結核による2010年の死亡は120万人であった。2010年の世界の主要死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDS 非感染症による死亡は、1990年と比べて2010年は800万人弱増加した。2010年の非感染症死者は3,450万人で、死亡3例のうち2例を占めるまでになっていた。 また2010年のがん死亡者は、20年前と比べて38%増加し、800万人であった。このうち150万人(19%)は気管、気管支および肺のがんであった。 虚血性心疾患と脳卒中の2010年の死亡は1,290万人で、1990年は世界の死亡5例に1例の割合であったが、4例に1例を占めるようになっていた。なお、糖尿病による死亡は130万人で、1990年のほぼ2倍になっていた。 外傷による世界の死亡率は、2010年は9.6%(510万人)で、20年前の8.8%と比べてわずかだが増加していた。その要因は、交通事故による死亡(2010年世界で130万人)が46%増加したことと、転倒からの死亡が増加したことが大きかった。 2010年の世界の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。そして2010年の世界の早期死亡による生命損失年(years of life lost:YLL)に影響した主要な死因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、下痢性疾患、マラリア、HIV/AIDSであった。これは、HIV/AIDSと早期分娩合併症を除き1990年とほぼ同様であった。下気道感染症と下痢性疾患のYLLは1990年から45~54%減少していた一方で、虚血性心疾患、脳卒中は17~28%増加していた。 また、主要な死因の地域における格差がかなり大きかった。サハラ以南のアフリカでは2010年においても統合死因別死亡(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が早期死亡要因の76%を占めていた。 標準年齢の死亡率は一部の鍵となる疾患(とくにHIV/AIDS、アルツハイマー病、糖尿病、CKD)で上昇したが、大半の疾患(重大血管系疾患、COPD、大半のがん、肝硬変、母体の障害など)は20年前より減少していた。その他の疾患、とくにマラリア、前立腺がん、外傷はほとんど変化がなかった。 著者は、「世界人口の増加、世界的な平均年齢の上昇、そして年齢特異的・性特異的・死因特異的死亡率の減少が組み合わさって、世界の死因が非感染症のものへとシフトしたことが認められた。一方で、サハラ以南のアフリカでは依然として従来死亡主因(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が優位を占めている。このような疫学的な変化の陰で、多くの局地的な変化(たとえば、個人間の暴力事件、自殺、肝がん、糖尿病、肝硬変、シャーガス病、アフリカトリパノソーマ、メラノーマなど)が起きており、定期的な世界の疫学的な死因調査の重要性が強調される」とまとめている。

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聖路加GENERAL 【Dr.仁多の呼吸器内科】

第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」第3回「慢性の咳にはまずCXRから」第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」 第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」鑑別の難しい呼吸器疾患へのアプローチのポイントについて、役立つ情報が満載です。【CASE1:軽い咳と白色痰が続くために来院した65歳の男性】身体所見は特に問題ありません。しかし、よくよく聞いてみると、数年前から駅の階段を昇る時に息苦しさがあり、最近強くなってきたことがわかりました。また、この患者は40本/日の喫煙を45年間続けていました。労作時呼吸困難は、医師から尋ねないとわからないことが多いため、詳細な問診が重要なポイントになります。検査の結果、労作時呼吸困難の原因は重度のCOPDでした。他に考えられる労作時呼吸困難を引き起こす症例としては間質性肺炎があります。その診断方法、病期分類、治療について詳しく解説します。【CASE2:3ヶ月前から駅の階段を昇るときに息苦しさを感じ始め、増悪傾向の60歳女性】この方は、ペットとしてチンチラを飼っています。肺疾患の場合、ペット飼育歴や住環境を必ず確認します。診察の結果、聴診で両下肺野でfine cracklesを聴取しました。呼吸副雑音を聴取したときは、その音の性質とフェーズを確認することで、その原因をある程度絞り込むことができます。その方法について、詳しく解説します。そして、びまん性肺疾患の場合、症状がない場合でも専門医に送ることが勧められています。必要な検査を実施し、治療方針を立てて、協力しながら治療を進めることが重要です。この患者の場合も、検査の結果、意外なところに原因がありました !第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」気胸の鑑別、画像による診断、治療などについて詳しく解説します。【CASE1:突然刺されるような胸痛を訴えた42歳の男性】胸痛といえば、循環器疾患を思い浮かべますが、今回は呼吸器による胸痛の症例です。労作時に呼吸困難があったことから、胸部X線写真を撮った結果、気胸であることがわかりました。気胸は、つい見逃しがちな疾患といえますが、まずは、「胸痛の鑑別診断に必ず含める」ということを気を付けたいところです。若年に多いとされる自然気胸ですが、40代でも発症する例はあります。気胸には緊急性を要するものがあるため、この患者のように突然発症した場合は、まず救急車で搬送するのが原則です。【CASE2:3ヵ月前から慢性的に右胸痛を訴える58歳の女性】労作時呼吸困難を伴うため、胸膜炎などによる胸水が疑われます。単純エックス線写真を撮影したところ、右肺にかなりの胸水が貯留していることが確認されました。CTも撮影してよく確認してみると、胸水の貯留している右肺ではなく、比較的健康に見えた左肺にその原因につながる影が確認されました。胸痛の診断のポイントは、ずばり問診です。痛みの性状にくわえて、突然発症したか、持続するか断続的かなどの時相的な要素も重要なポイントになります。胸痛には、解離性大動脈瘤など、緊急性の高い疾患も含まれますので、しっかり問診をして鑑別することが重要です。これらのポイントについて、具体的にわかりやすく解説します。第3回「慢性の咳にはまずCXRから」慢性咳嗽についてポイントを詳しく解説します。【CASE1:15本/日の喫煙を40年間続けてきた62歳男性】咳嗽の出現をきっかけに救急室を受診し、気管支炎の疑いで抗菌薬を処方されましたが、改善しませんでした。その後、抗菌薬を変えたところ効果があったかにみえましたが、またすぐに咳嗽が再燃してしまいました。このように、長引く咳をみたときには、まず胸部単純写真(CXR)を撮ることが、診断のポイントになります。本症例では、CXRから結核を疑い、検査の結果結核と診断されました。初動が遅れることで結果的に治療が遅れ、感染の可能性が高まってしまいました。このような事例を防ぐためには、常に疑いをもち、問診の時点から結核を発症しやすい患者を見ぬくことがコツです。また、多剤併用が原則の治療についても、詳しく解説します。【CASE2:乳がん術後、化学療法中の65歳女性】数カ月前から乾性の咳が続くため、咳喘息の疑いで吸入ステロイド治療を開始しましたが、改善はあるものの軽快しません。胸部単純写真を撮影したところ、正面では問題がないように見えましたが、側面では、ちょうど心臓の裏側に隠れるように浸潤影が確認されました。咳の鑑別において重要なことは、まず腫瘍、結核などの器質的疾患を除外することです。そのためには、胸部単純写真は正面だけでなく、側面も撮ること、必要があればCTを撮って確認することが重要です。どのような場合にCTを撮ればよいのか、ポイントをお伝えします。また、遷延する咳の鑑別について詳しく解説します。第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」血痰の鑑別について、詳しく解説します。【CASE1:半年ほど前から、週に2〜3回、断続的に痰に血が混じるようになった77歳の女性】60歳ごろから検診などで胸部異常陰影を指摘されていましたが、経過観察となっていました。血痰をみると、まず結核、肺がん、気管支拡張症などを疑いますが、最初に考えなくてはいけないことは、「本当に血痰なのかどうか」です。もしかすると、口腔内の出血や、吐血の可能性もあります。この患者の場合は、以前より胸部異常陰影があることと、喫煙歴などから肺病変の疑いが強いと考え、検査をしたところ、非結核性抗酸菌症であることがわかりました。非結核性抗酸菌症においては、最終的な診断が出るまで、必ず結核の疑いを持つことが重要です。【CASE2:若い頃から気管支拡張症を指摘されていた66歳の女性】3日前から発熱、喀痰が増加し、近医で肺炎と診断されて、抗菌薬治療を開始していました。ところが、入院当日に持続する喀血があり、救急車で搬送。画像検査では、気管支拡張症と肺の病変が認められました。喀血において、最も重要なことは、その量です。出血の原因より、喀血による窒息のほうが重要な問題を引き起こすためです。本症例においても、大量の喀血とされる600ml/24hrを超えると思われる出血がありました。このような場合、まず気道確保が重要です。気管支鏡検査をしたところ、出血部位を下方にしても両側に血液が流れこむほどの出血があったため、気管支ブロッカーを使用して気道を確保しました。その後、原因とみられる気管支動脈をBAEによって塞栓しました。このように、大量喀血は緊急性の高い場合が多く、その検査の流れなどを詳しく解説します。

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医療施設におけるインフルエンザの予防と治療

1 流行に備えた感染対策インフルエンザ対策は、本格的な流行が始まる前に開始する。平素の感染対策活動に加え、流行前に職員に対するインフルエンザ感染対策に関する啓発活動を強化する。また、施設内で患者発生を早期に探知できる体制を構築しておく。職員もインフルエンザ様症状を認めた場合はただちに当該部署に届けて欠勤するなどのルールを作っておく。その他重要な点を以下に示す。(1)ワクチン接種ワクチン接種はインフルエンザ感染対策の基本である。患者に対し、予防接種の意義、有効性、副反応の可能性を十分に説明して同意を得たうえで、禁忌者を除き積極的にワクチンを接種する。とくに65歳以上の者、および60歳以上65歳未満の者であって心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV感染による免疫機能障害を有する者に対するワクチン接種は、予防接種法上定期接種と位置付けられている。医療施設の職員にも、禁忌者を除き積極的にワクチン接種を勧める。(2)ウイルスの持ち込みリスクの低減流行期間中、ウイルスは医療施設外からもたらされるため、ウイルス持ち込みのリスクを低減する工夫が必要となる。インフルエンザ様症状を呈する者が面会などの目的で施設内に入ることは、必要に応じて制限する。そのため施設の入口にポスターを掲示したり、家族等にはあらかじめ説明しておくなどして、事前に理解を得ておく。施設に入る前に擦り込み式アルコール消毒薬の使用を求めることも必要である。2 流行開始後の感染対策インフルエンザ患者に対しては、まず良質かつ適切な医療の提供が基本となる。治療については後述するので、ここでは医療施設内でインフルエンザが発生した後の対応について述べる。(1)速やかな患者の隔離施設内でインフルエンザ様患者が発生した場合は、迅速診断キットを活用して診断を行う。発症早期には偽陰性となる場合があるので、キットの結果が陰性であっても、臨床的に疑われる場合はインフルエンザとして扱う。患者はただちに個室に隔離し、できるだけ個室内で過ごすように指示する。個室が確保できない場合は、患者とその他の患者をカーテン等で遮蔽する、ベッド等の間隔を2メートル程度空ける、患者との同室者について、入居者の全身状態を考慮しつつサージカルマスクの着用を勧める、といった次善の策も提案されている。患者が複数いる場合は、同型のインフルエンザ患者を同室に集めることも検討する。(2)飛沫感染予防策とその他の予防策職員が患者の部屋に入る場合はサージカルマスクを着用する。インフルエンザ患者がやむを得ず部屋を出る場合は、サージカルマスクを着用させる。インフルエンザの感染対策では通常、空気予防対策は不要であるが、サクションチューブで喀痰を吸引する時や、緊急で心肺蘇生を行う場合などは、N95マスクなどの高性能マスクの着用も勧められる。飛沫予防策として、インフルエンザを発症してから7日間もしくは発熱や呼吸器症状が消散してから24時間のどちらか長い方が経過するまで継続することが推奨されている。(3)患者への抗ウイルス薬の予防投与CDCは、施設内で72時間以内に2名以上のインフルエンザ様患者が発生した場合や、1名のインフルエンザ確定患者が発生した場合は、入所者への抗ウイルス薬の予防投与を勧めている。日本感染症学会は、インフルエンザ患者に接触した患者には、承諾を得たうえで、ワクチン接種歴にかかわらずオセルタミビルかザナミビルによる予防投与を開始すべきであるとしている。予防投与の範囲は、原則的にはインフルエンザ発症者の同室者とする。なお、現時点でペラミビルとラニナミビルには予防投与の適応は無い。(4)職員への予防投与CDCは、医療施設の職員についても、ワクチン未接種者については抗ウイルス薬の予防投与を検討すべきであるとしている。日本感染症学会は、職員は本来健康なので抗ウイルス薬の予防投与は原則として必要ではなく、発症した場合の早期治療開始でよいとしている。しかし、施設内での流行伝搬に職員が関与していると考えられる場合、とくに職員の間でインフルエンザ発症が続く場合は、職員にも予防投与が必要であるとしている。3 インフルエンザの治療-抗インフルエンザウイルス薬-ここでは主に抗ウイルス薬について述べる。現在わが国で使用可能な抗インフルエンザウイルス薬は、アマンタジン、ザナミビル水和物、オセルタミビルリン酸塩、ペラミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の5種類である。そのうちアマンタジンはA型ウイルスにのみ有効であることと、ほとんどの流行株が耐性化していること、ならびに副作用の問題などから使用機会は少なく、現在は主としてノイラミニダーゼ阻害薬が使用される。以下に各薬の特徴をまとめた。ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)は、吸入で用いるノイラミニダーゼ阻害薬である。通常インフルエンザウイルスは主に上気道~気管で増殖するため、非常に高濃度のザナミビルが感染局所に到達する。副作用として、まれではあるが吸入に伴い気道攣縮を誘発する可能性がある。これまでにザナミビルでは耐性ウイルスの出現はほとんど報告されていない。オセルタミビルリン酸塩(同:タミフル)は、内服のノイラミニダーゼ阻害薬である。消化管から吸収され、肝でエステラーゼにより加水分解され活性体に変換される。ペラミビル水和物(同:ラピアクタ点滴用)は、1回の点滴静注でA型およびB型インフルエンザウイルス感染症に対して有効性を示す。点滴静注であるため確実に血中に移行し長時間効果を表す。ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(同:イナビル吸入粉末剤)の特徴は、初回の吸入のみで完結する点で、服薬中断や服薬忘れの懸念が無い。以上の薬剤をどのように使い分けるかは、臨床的に大きな課題である。社団法人日本感染症学会の提言などが参考になる。文献(1)CDC. Prevention strategies for seasonal influenza in healthcare settings. http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/healthcaresettings.htm(2)CDC. Interim guidance for influenza outbreak management in long-term care facilities. http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/ltc-facility-guidance.htm(3)厚生労働省健康局結核感染症課、日本医師会感染症危機管理対策室.インフルエンザ施設内感染予防の手引き 平成23年11月改訂.http://dl.med.or.jp/dl-med/influenza/infl_tebiki23.pdf(4)社団法人日本感染症学会.社団法人日本感染症学会提言2012~インフルエンザ病院内感染対策の考え方について~(高齢者施設を含めて).http://www.kansensho.or.jp/influenza/pdf/1208_teigen.pdf(5)Fiore AE, et al. MMWR.Recomm Rep.2011;60 : 1-24.

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少量、安全接種が可能な貼付パッチ式のロタウイルスワクチンの可能性

 米国疾病予防管理センター(CDC)のSungsil Moon氏らは、極微針パッチ(microneedle patch)を用いた皮下注射による、ロタウイルスワクチン予防接種の可能性についてマウスを用いた試験で検討を行った。皮下注予防接種(skin immunization)は天然痘や結核など多数の感染症で効果が認められているが、接種が難しい。一方、極微針パッチは、貼付式で接種が容易であり、その点で有望視されている。Vaccine誌オンライン版2012年11月19日号の掲載報告。 研究グループは、不活化ロタウイルス・ワクチン(IRV)の皮下ワクチン接種において、接種容易な極微針(MN)パッチの活用についてマウス試験で評価(接種効果と投与量)を行った。 6グループのメスの純系BALB/cマウスを対象に、5μgまたは0.5μgのIRVをコーティングしたMNパッチ、または各量IRVを筋肉内注射によりそれぞれ1回接種を行った。その後、0日、10日、28日時点で採血を行った。 主な結果は以下のとおり。・ロタウイルス特異的IgGは、MNパッチ群、筋肉内注射群いずれも、時間の経過とともに血清内レベルが上昇した。・IgG値と中和活性は、筋肉内注射群よりもMNパッチ群で概してより高かった。0.5μg MNパッチ群は、5μg筋肉内注射群とIgG上昇についてはほぼ匹敵、またはより高く、投与量が節約できることを示した。・陰性対照である無抗原のMNパッチを貼り付けたマウスでは、いかなるIgGをも有していなかった。・MNパッチによる予防接種は、筋肉内注射によるものと同程度以上の効果があり、脾臓由来樹状細胞の免疫誘導が示された。・試験によって、MNパッチでは筋肉内注射よりも少ない量のIRVで免疫を得られる可能性が示された。MNパッチは、世界中の子どもが、より安全で効果的なロタウイルスワクチンを受けるための開発戦略として有望視される。

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Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線  -外来シリーズ-

「外来 case1」―18歳女性・・発熱・リンパ節腫脹―「外来 case2」―72歳男性・・CRPが下がらない―「外来 case3」―90歳女性・・8年間繰り返す発熱― 「外来 case1」―18歳女性・・発熱・リンパ節腫脹―「不明熱」とは読んで字のごとく原因が特定できない原因不明の熱のことで、実は臨床の現場では非常に多く見られる現象です。ところが、例えばハリソンのような名著ですら、膨大な鑑別疾患の他には、「感染症、膠原病、悪性疾患が多い」、「丁寧な病歴と診察が大事」という一般論を記すにとどまっています。コモンな現象にもかかわらず原因が多岐に渡るため、不明熱に「これだ!」という診断方法は未だ存在しないのが現状なのです。本シリーズでは「熱」のプロ、岩田先生が臨床の現場で活躍中の先生との対談の中で不明熱にスポットをあてていきます。外来シリーズでは、ベテランジェネラリストの西垂水和隆先生が数多く経験した不明熱の症例を検討しながら、診断への手がかりを探ります。失敗して教訓になったケースなど不明熱談義が盛り上がります。「不明熱」は医師の技量次第で「不明熱」ではなくなるのです。「外来 case2」―72歳男性・・CRPが下がらない―「不明熱の診断は難しい!」… 確かにそれは事実なのですが、実は診断の手がかりが目の前にあるのに、それに気がついていないことがあります。一つの鑑別診断に目を奪われ正しい鑑別に結びつく大きな手がかりを見逃してしまったり、検査の結果ばかり気を取られ患者さんが訴える症状を軽視してしまったりするかもしれません。病歴を注意深くさかのぼってみると、既に診断の手がかりが示されていることもあるのです。「まれ」な疾患が多い不明熱ですが、外来では「コモン」な疾患の非典型なプレゼンテーションである場合も多いことから、まずは丁寧な病歴徴収、診察、そしてコモンディジーズへの十分な理解が必要となります。今回も岩田先生と西垂水先生から、明解な「外来での不明熱の考え方」について学んでいただきます。「外来 case3」―90歳女性・・8年間繰り返す発熱―外来での不明熱、今回の症例は「8年間繰り返す発熱」です。不明熱を得意とする西垂水先生にとっても記憶に残る症例です。外来で見る不明熱の多くは、医師のちょっとした思い込み、あるいは病歴や身体診察の軽視により、単純な疾患が見逃されることで起こります。それは医師の技量や熱意にかかわらず、どんな医師にでも起こりうることなのです。このような不明熱を診断するためにはどうしたらいいのでしょう。今回は西垂水先生や岩田先生の失敗談を検討することで、そのヒントを解き明かしていきます。是非その感覚を学び取ってください。8年間繰り返す発熱…さあ、この患者さんにいったい何が起こったのでしょうか?!

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整形外科領域にみる慢性疼痛

整形外科疼痛の特徴腰痛・関節痛といった整形外科領域の疼痛は慢性疼痛の3割以上を占め最も多い1)。なかでも腰痛が多く、肩および手足の関節痛がこれに続く2)。整形外科での痛みの発生頻度は年齢および性別により偏りがあるが、多くは変性疾患が原因となっていることから、50歳代頃から増加し60歳代、70歳代ではおよそ3割近くが痛みを訴える。高齢者においては、もはやコモンディジーズといっても過言ではないであろう。整形外科領域の痛みは慢性の経過をたどるものが多い。患者さんの訴えは「突然痛みが起こりました」と急性を疑わせるものが多いが、単純X線所見ではかなり時間経過した骨の変形が確認されることもしばしばであり、長期間にわたって徐々に進行し最終的に痛みが発症するケースが多いと考えられる。変性疾患の多くは荷重関節に生じ、加齢に伴い関節に痛みが起こる。日本人はO脚が多いため痛みは負荷がかかる膝関節に多くみられるのが特徴である。近年、食生活や生活習慣の変化に伴って肥満が多くなり、その傾向に拍車がかかっていることから、膝人工関節手術は年約10%の割合で増加している。また、肥満や運動不足との関係もあり、生活習慣病などの内科疾患との関連も深くなっている。一方、股関節の痛みは減少傾向である。出生時から足を真っすぐにしてオムツをしていた時代、日本人には臼蓋形成不全が多かったが、現在は紙おむつで足を開いている。その結果、臼蓋形成不全も先天性股関節脱臼も減少している。国民性の変化は整形外科治療に大きな影響をもたらしているといえるだろう。一昔前であれば、膝が曲がっていてもあきらめて治療を受けなかったが、今では膝が曲がっていると見た目も悪いし、痛いから手術したいという人が多くなっている。また、痛みがあれば家で寝ている人が多かったが、痛みを改善して運動や旅行をしたいなど積極的に治療を受ける患者さんが、多くなっている。慢性疼痛の病態慢性疼痛には、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、非器質性疼痛の三つの病態があるが、整形外科の患者さんでは約8割に侵害受容性疼痛の要素がみられる。疼痛の原因として多い変性疾患は軟骨の摩耗が原因であり、滑膜の炎症が併発して痛みを引き起こす。神経障害性疼痛も侵害受容性疼痛ほどではないが、整形外科領域でみられる痛みである。これは神経の損傷により起こる痛みであるが、以前はその詳細について十分に解明されておらず、また有効な治療薬がなかったため疼痛非専門医には治療が困難であった。しかし現在ではMRIなどの検査で診断可能であり、プレガバリンが末梢性神経障害性疼痛に効能・効果を取得したことにより、広く認知されてきた。侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛といった器質的疼痛のほかに機能性疼痛症候群がある。機能性疼痛症候群は諸検査で器質的所見や病理所見が明らかにできず、持続的な身体愁訴を特徴とする症候群である。その中には中枢機能障害性疼痛があり、線維筋痛症はその代表と考えられる。全身の筋肉、関節周囲などにわたる多様な痛みを主訴とし、種々の随伴症状を伴うが、その病態は明らかになっていない。治療アプローチ痛みの治療にあたっては、症状だけをみてに安易にNSAIDsで治療するのではなく、痛みの原因を明らかにすることが重要である。痛みの原因となるものには前述の変性疾患以外にも炎症性疾患や感染性疾患があるが、いずれによるものかを明らかにして、適切な評価と適切な原疾患の治療を行う。変性疾患の進行は緩徐であるため、極端にいえば治療を急がなくてもとくに大きな問題はない。炎症性疾患では、痛風やリウマチなど内科疾患の診断を行い、それぞれの適切な治療を速やかに行うことになる。感染性疾患は治療に緊急性を要し、中には緊急手術が必要となる場合もある。痛みの原因を調べる際には、危険信号を見逃さないようにする。関節疾患の多くは、触診、採血、単純X線検査などで診断がつき、内臓疾患との関連は少ないが、脊椎疾患では重大な疾患が潜在するケースがある。とくに、がんの脊椎転移は頻度が高く注意を要する。よって、高齢者で背中が痛いという訴えに遭遇した場合は、結核性脊椎炎などに加え、がんも念頭にておく必要がある。さらに、高齢者で特定の場所に痛みがあり、なおかつ継続している場合もがんである事が少なくない。また、感染性脊髄炎では、早期に診断し適切な治療を行わないと敗血症により死にいたることもある。このような背景から、1994年英国のガイドラインでred flags signというリスク因子の概念が提唱された。腰痛の場合、この危険信号をチェックしながら診療にあたることが肝要である3)。red flags sign発症年齢<20歳または>55歳時間や活動性に関係のない腰痛胸部痛癌、ステロイド治療、HIV感染の既往栄養不良体重減少広範囲に及ぶ神経症状構築性脊柱変形発熱腰痛診療ガイドライン2012より治療期間、治療目標、治療効果を意識すべし疼痛の治療期間は痛みの原因となる疾患によって異なる。たとえば変形性腰椎症など不可逆的な疾患では治療期間は一生といってもよく、急性の疾患であれば治療期間も週単位と短くなる。初診時にどのような治療がどれくらいの期間必要で、薬はどのくらい続けるかなどについて患者さんに説明し同意を得ておく必要がある。疼痛の診療にあたり、治療目標を設定することは非常に重要である。急性の場合は痛みゼロが治療目標だが、慢性の場合は痛みをゼロにするのは困難である。そのため、痛みの軽減、関節機能の維持、ADLの改善が治療目標となる。具体的には、自力で歩行できる、以前楽しんでいた趣味などが再開できる、買い物などの外出ができる、睡眠がよくとれる、仕事に復帰できる、などのようなものである。痛みは主観的なものであり、本人の感覚で弱く評価したり、疼痛(顕示)行動で強く訴えたりする。そのため、効果判定はADLの改善を指標として行う。患者さんへの聞き方として、少し歩けるようになったか、家事ができるようになったか、以前よりもどういう不自由さがなくなったかなどが具体的である。患者さんの痛みの訴えだけを聞いて治療しているとオーバードーズになりがちであるが、ADLの改善をチェックしていると薬剤用量と効果、副作用などのかね合いが判定できる。たとえば、痛みが少し残っていてもADLの改善が目標に達していれば、オーバートリートメントによる薬剤の副作用を防止できるわけである。痛みと寝たきりの関係寝たきり高齢者の医療費や介護費は一人年間300~400万といわれる。日本では寝たきりの高齢者が非常に多い。この高齢者の寝たきりの原因の第2位は痛みであることをご存じだろうか。痛みによりADLが落ち、寝たきり傾向になる。すると筋肉や関節機能が低下して痛みがより悪化し、重度の寝たきりになっていくという悪循環に陥る。寝たきりから自立するためには、痛みを減らして動いてもらうことが重要なのである。動くことで筋力がつき姿勢が矯正され痛みが改善する。バランスも良くなるので寝たきりの原因となる転倒も減るという好循環を生み出す。痛みの診療における運動の重要性は近年非常に注目されている。参考文献1)平成19年度国内基盤技術調査報告書2007;1-222)平成22年9月 厚生労働省「慢性の痛みに関する検討会」今後の慢性の痛み対策について(提言)3)矢吹省司:ガイドライン外来診療2012:P.243

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HIV 感染症を難病指定に

神戸大学感染症内科岩田 健太郎2012年11月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。厚生労働省によると、これまで56しかなかった難病指定疾患を300以上に増やす予定だという。この難病にHIV感染症および後天性免疫不全症候群(エイズ)(以下、HIV感染症とまとめる)を含めるべきだ、というのが本論の主旨である。以下にその理由を示す。難病対策委員会によると、難病の選定基準は1. 患者数が人口の0.1%程度以下2. 病気が未解明3. 治療法がないか、治療法があっても症状が良くなったり悪くなったりする4. 生活への支障が生涯にわたる5. 診断基準か客観的な指標があるの全てを満たす場合に対象となるという(朝日新聞2012年10月31日朝刊より)。HIV感染症は現在482あるという難病研究事業の対象にはなっていないが、患者は現在分かっているだけで数万人規模であり(1)、条件1は満たす。条件2と3についてはどうだろうか。エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)が原因の細胞性免疫不全である。病気のメカニズムはある程度分かっており、抗ウイルス療法も存在する。しかし、この疾患はいまだ治癒に至る方法は解明されていない。「解明」がどの程度を意味するものなのかは分からないが、難病指定されている筋萎縮性側索硬化症(ALS)などもスーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)の遺伝子異常など、病態生理はある程度「解明」されているので、HIV感染症を除外する根拠には乏しいと考える(2)。抗ウイルス療法を用いて患者の予後は劇的に改善したが、症状が悪くなる場合も少なくない。治療は生涯にわたり、生活への支障は続く(条件4)。診断基準は明確だ(HIVの各種検査を行う、条件5)。難病指定してはいけない、という根拠は乏しい。現在、HIV感染患者には診療費の公費助成がある。その主たるものは免疫不全の程度に応じて得られる身体障害者認定と自立支援医療である(3、4)。もともと、薬害エイズ事件など「薬害」の要素が大きかったこの感染症患者の救済の手段として身体障害者制度は活用された(5)。しかし、現実には多くの患者には「身体障害」は存在せず、そういう患者では日常生活を送ったり仕事をすることも可能であるから、この制度をアプライするには若干の無理がある。また、「症状の固定」まで4週間の経過を見なければ障害者認定は受けられないため、その分、治療が遅れたり余分な(そして高額な)治療費がかかる。近年のHIV感染治療は激変している。以前は免疫抑制がかなり進んでから抗ウイルス療法を開始していたが、治療薬の進歩と臨床試験データの蓄積から、治療はどんどん前倒しするようになった。日和見感染症があっても早期(2週間以内。ただし結核などを除く)に治療を始めたほうが予後が良いケースも多いことが分かっている。障害者認定にかかる「4週間の遅れ」は無視できない遅れなのである。今年発表された診療ガイドライン(International Antiviral Society-USA, IAS-USA)では、すべてのHIV感染者に抗ウイルス療法を提供するよう推奨されている(6)。しかし、免疫不全が進んでいない患者では低い等級の身体障害者認定しか得られないため、十分な診療支援はかなわない。感染早期に治療を始めれば、体内にあるウイルスの量を減らし、さらなる感染者発生防止にも役に立つ。日本は先進国でも新規発生患者が増加している稀有な国の一つである。HIV感染の診療費は生涯1億円程度かかると言われる(7)。患者の早期発見、早期治療、そして予防は医療費の有効活用という観点からも重要である。(免疫不全の程度にかかわらず)すべてのHIV感染者を速やかに難病指定し、適切な治療を提供できるようにする必要がある。患者救済という目的のもと、HIV患者の身体障害者認定は一定の成果を上げてきた。しかし、その成果は「歴史的成果」と称すべきで、現状維持を正当化する根拠にしてはならない。厚生労働省は現状を鑑み、HIV感染者を難病指定に切り替えるべきである。1. 日本のHIV感染者・AIDS患者の状況(平成23年12月26日~平成24年3月25日) IASR Vol. 33 P. 171-173 http://www.nih.go.jp/niid/ja/aids-m/aids-iasrd/2274-kj3888.html2. 筋萎縮性側索硬化症(公費対象) 難病情報センター http://www.nih.go.jp/niid/ja/aids-m/aids-iasrd/2274-kj3888.html3. HIV感染者の身体障害者認定について 厚生労働省 http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0912/h1216-1.html4. 自立支援医療(更生医療)の概要 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/kousei.html5. HIV感染者が免疫機能障害として、身体障害者認定を受けるまでの経緯をご存知ですか? はばたき福祉事業団 http://old.habatakifukushi.jp/hiv_medical_welfare/medical_treatment_welfare_system/hiv_55.html6. Lawn SD,Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection. IAS-USA. https://www.iasusa.org/content/antiretroviral-treatment-adult-hiv-infection-07. 世界は減少、日本は増加…1人に約1億円医療費必要なHIV感染症を知る 日経トレンディネット 2011年2月28日 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20110224/1034622/

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結核薬耐性の最大リスク因子は「2次抗結核薬の投与歴」

 超多剤耐性結核(XDR-TB)を含む抗結核薬耐性の最大のリスク因子は、「2次抗結核薬の投与歴」であることが、米国疾病対策予防センター(CDC)のTracy Dalton氏らの調査(Global PETTS)で示された。多剤耐性結核(MDR-TB)は、Mycobacterium tuberculosisを原因菌とし、少なくともイソニアジドとリファンピシンに対する耐性を獲得した結核で、XDR-TBはこれら2つの1次抗結核薬に加え、2次抗結核薬であるフルオロキノロン系抗菌薬および注射薬の各1剤以上に耐性となった結核と定義される。XDR-TBの世界的発生は実質的に治療不能な結核の到来を告げるものとされ、MDR-TBに対する2次抗結核薬の使用拡大によりXDR-TBの有病率が増大しつつあるという。Lancet誌2012年10月20日号(オンライン版2012年8月30日号)掲載の報告。2次抗結核薬の耐性を前向きコホート試験で評価Global PETTS(Preserving Effective TB Treatment Study)の研究グループは、8ヵ国における2次抗結核薬に対する耐性の発現状況を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。2005年1月1日~2008年12月31日までに、エストニア、ラトビア、ペルー、フィリピン、ロシア、南アフリカ、韓国、タイにおいて、MDR-TBが確認され、2次抗結核薬治療を開始した成人患者を登録した。CDCの中央検査室で、以下の11種の抗結核薬の薬剤感受性試験を行った。1次抗結核薬であるエタンブトール、ストレプトマイシン、イソニアジド、リファンピシン、2次抗結核薬としてのフルオロキノロン系経口薬(オフロキサシン、シプロフロキサシン)、注射薬(カナマイシン、カプレオマイシン、アミカシン)、その他の経口薬(アミノサリチル酸、エチオナミド)。2次抗結核薬に対する耐性のリスク因子およびXDR-TBを同定するために、得られた結果を臨床データや疫学データと比較した。2次抗結核薬耐性率43.7%、XDR-TB感染率6.7%解析の対象となった1,278例のうち、1つ以上の2次抗結核薬に耐性を示したのは43.7%(559例)であった。20.0%(255例)が1つ以上の注射薬に、12.9%(165例)は1つ以上のフルオロキノロン系経口抗結核薬に耐性を示した。XDR-TBの感染率は6.7%(86例)だった。これらの薬剤に対する耐性発現の最大のリスク因子は「2次抗結核薬の投与歴」で、XDR-TB感染のリスクが4倍以上に増大した(フルオロキノロン系経口薬:リスク比4.21、p<0.0001、注射薬:4.75、p<0.0001、その他の経口薬:4.05、p<0.0001)。フルオロキノロン系抗菌薬耐性(p<0.0072)およびXDR-TB感染(p<0.0002)は男性よりも女性で高頻度であった。2次抗結核注射薬に対する耐性は、失業、アルコール依存、喫煙との間に関連を認めた。その他のリスク因子については、各薬剤間、各国間でばらつきがみられた。著者は、「XDR-TBを含む抗結核薬耐性の一貫性のある最大のリスク因子は、2次抗結核薬の投与歴であった」と結論し、「今回の特定の国における調査結果は、検査体制に関する国内的な施策や、MDR-TBの効果的な治療に関する勧告の策定の参考として他国にも外挿が可能と考えられる」と考察している。

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XDR結核患者へのリネゾリド追加投与、約9割が半年以内に喀痰培養陰性化

 超多剤耐性(XDR)の結核患者に対してリネゾリド(商品名:ザイボックス)を追加投与することで、6ヵ月時点までに87%で喀痰培養陰性化が認められたことが報告された。一方で、リネゾリドを投与した人の8割で、臨床的に明らかな有害事象が認められた。韓国・International Tuberculosis Research CenterのMyungsun Lee氏らが、40人弱について行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年10月18日号で発表した。リネゾリド600mg/日を投与、4ヵ月以降は半数に300mg/日を投与研究グループは2008~2011年にかけて、喀痰培養陽性の広範囲薬剤耐性の結核患者で、過去6ヵ月間にいずれの化学療法にも反応しなかった41例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはリネゾリド600mg/日の投与を即時開始し、もう一方の群には、2ヵ月後から追加投与を開始した。いずれも、それまでの服用レジメンは変更しなかった。主要エンドポイントは、試験登録後4ヵ月間の、喀痰培養の固体培地上での陰性化までの期間だった。陰性化または4ヵ月後のいずれか早い時点で、被験者を再び無作為に2群に分け、一方にはリネゾリド600mg/日を、もう一方の群には300mg/日を、18ヵ月以上投与した。なお、その間毒性に関する検査も行った。リネゾリド投与後6ヵ月以内の陰性化は87%、一方で有害事象82%その結果、投与開始4ヵ月までに喀痰培養が陰性化したのは、リネゾリド即時開始群の19例中15例(79%)に対し、リネゾリド待機開始群は20例中7例(35%)と、即時開始群が有意に高率だった(p=0.001)。38例中34例(87%)がリネゾリド投与後6ヵ月以内に喀痰培養が陰性化した。一方で、リネゾリドを投与した38例中31例(82%)で、リネゾリドに関連する可能性がある、臨床的に明らかな有害事象が認められ、うち3例は投与を中止した。2度目の無作為化でリネゾリド300mg/日を投与した群では、600mg/日投与群に比べ、有害作用発生率は少なかった。また、治療を完了したのは13例で、そのうち治療期間中に再発がみられなかったのは6例、追跡期間6ヵ月以内では4例、同12ヵ月以内では3例だった。リネゾリドへの耐性獲得が認められたのは4例だった。著者は、「リネゾリドは治療抵抗性XDR結核患者の培養陰性化達成に有効である。しかし一方で、有害事象について注意深くモニタリングしなければならない」と結論している。

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100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺、とくに若者で

 英国・Hergest UnitのHealy D氏らは、統合失調症および関連する精神病の死亡動向について、20世紀初頭と直近とを比較するコホート研究(1875~1924年コホートvs.1994~2010年コホート)を行った。その結果、死亡率は4倍に増大しており、最大の死因は自殺であることなどが明らかとなった。筆者は、「死亡率は大幅に増大した。しかしながら特定領域については介入が可能であり、解析データは、早期介入が、統合失調症患者に標準的な寿命を与える可能性があることを示している」とまとめた。BMJ誌オンライン版2012年10月8日号の掲載報告。 2つの疫学的な完全データが入手できる患者コホートを対象とした。コホートの患者は、北ウェールズのメンタルヘルスサービスに関するフォローアップデータが、1年以上、最長10年間存在した。これらのデータを用いて、統合失調症および関連精神病患者の生存率と標準化した死亡率を算出した。 第1コホートは、北ウェールズのデンビー精神病院に、1875~1924年に入院した統合失調症および関連精神病患者3,168例(患者症例ノートの記録からデータを収集)であった。第2コホートは、北西ウェールズ地区総合病院精神科に、1994~2010年に入院(統合失調症および関連精神病による初回入院)した患者355例であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症および関連する精神病による標準化された死亡率は、第1コホートと比べて第2コホートは4倍であった。・第1コホートでは75%、第2コホートでは90%の10年生存の可能性を認めた。・自殺は第2コホートの最も頻度の高い死因であった(SMR 35)。一方で、第1コホートでは、最も頻度の高い死因は結核であった(SMR 9)。・第2コホートのデータでは、高齢者の死亡は心血管系の原因により、若者の死亡は自殺が原因であった。関連医療ニュース ・自殺リスクの危険因子の検証、年齢別のうつ症状との関係は? ・自殺予防に期待!知っておきたいメンタルヘルスプログラム ・検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

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多剤耐性結核、PA-824を含む3剤併用レジメンが有望

 薬剤感受性の多剤耐性結核の新規治療法として、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド併用療法は適切なレジメンであり、今後、開発を進める価値があることが、南アフリカ共和国Stellenbosch大学のAndreas H Diacon氏らの検討で示された。薬剤抵抗性の結核による世界的な疾病負担を軽減するには、投与期間が短く耐性になりにくい新規薬剤の開発が求められる。近年、種々の新規抗結核薬の臨床評価が進められ、なかでもbedaquiline(ジアリルキノリン、TMC207)とPA-824(nitroimidazo-oxazine)は用量依存性の早期殺菌活性(early bactericidal activity; EBA)が確認され有望視されている。Lancet誌2012年9月15日号(オンライン版2012年7月23日号)掲載の報告。6つのレジメンのEBAを無作為化試験で評価研究グループは、肺結核に対する新規多剤併用レジメン14日間投与法の将来的な開発の適合性を評価するために、EBAに関するプロスペクティブな無作為化試験を行った。2010年10月7日~2011年8月19日までに、南アフリカ・ケープタウン市の病院に入院した薬剤感受性の単純性肺結核患者(18~65歳)を対象とした。これらの患者が、bedaquiline単独、bedaquiline+ピラジナミド、PA-824+ピラジナミド、bedaquiline+PA-824、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミドあるいは陽性対照としての標準的抗結核治療(イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミド+エタンブトール)を施行する群に無作為に割り付けられた。治療開始前の2日間、夜間の喀痰を採取し、開始後は毎日、薬剤投与までに喀痰を採取した。喀痰の液体培養中のM tuberculosisのコロニー形成単位(CFU)および陽性化までの時間(TTP)を測定した。主要評価項目は14日EBAとし、喀痰1mL中のlog10CFUの毎日の変化率を評価した。3剤併用レジメンのEBAが最良、標準治療に匹敵85例が登録され、標準治療群に10例、各治療レジメン群には15例ずつが割り付けられた。平均14日EBAは、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド群(13例、0.233[SD 0.128])が最も優れ、bedaquiline単独群(14例、0.061[SD 0.068])やbedaquiline+ピラジナミド群(15例、0.131[0.102])、bedaquiline+PA-824群(14例、0.114[0.050])との間に有意差を認めたが、PA-824+ピラジナミド群(14例、0.154[0.040])とは有意な差はなく、標準治療(10例、0.140[SD 0.094])との同等性が確認された。いずれのレジメンも忍容性は良好で、安全性が確かめられた。PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド群の1例が、プロトコールで事前に規定された判定基準に基づき、補正QT間隔の過度の延長で治療中止となった。著者は、「PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド併用療法は少なくとも標準治療と同等の有効性を示し、薬剤感受性の多剤耐性結核菌の治療として適切なレジメンである可能性が示唆される」と結論し、「多剤併用療法のEBA試験は、新たな抗結核治療レジメンの開発に要する時間の短縮化に寄与する可能性がある」と指摘している。

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トファシチニブの第III相試験の中間解析結果(ORAL Start試験)

米国ファイザー社は7月31日、関節リウマチ(RA)治療薬として開発中の経口JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤、トファシチニブの第III相ORAL Start試験の中間解析結果を発表した。また、米国食品医薬品局(FDA)からトファシチニブの新薬承認申請(NDA)に含まれる既存データについて追加解析を求められたことから、追加データを提出すると発表した。よって、FDAの審査には処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)の期限日である8月21日以降、さらに時間を要する可能性があるとしている。ORAL Start試験は現在進行中の2年間にわたる試験で、今回の報告は1年目の中間解析から得られたものである。対象はメトトレキサート(MTX)未治療の中等度から重症の活動性RA患者958例で、1日2回、トファシチニブ5mgまたは10mgの単剤療法群と、MTX投与群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は関節構造の維持、徴候および症状の軽減、MTX投与群と比較した安全性および忍容性であった。6ヵ月時点でMTX投与群と比較して評価された結果、トファシチニブ投与群はmodified Total Sharp Score(mTSS)1)で評価した構造的破壊の進展の防止、ACR70反応率2)による徴候および症状の軽減において統計学的有意差が認められ、主要評価項目を達成した。また、トファシチニブ投与群の安全性プロファイルは、過去に実施された臨床開発プログラムで確認されたプロファイルと一致した。なお、このプログラムで観察された結果には、結核、帯状疱疹などの重篤または重大な感染症、リンパ腫を含む悪性腫瘍、好中球数の減少、好中球減少症および脂質上昇が含まれていた。現在、トファシチニブは米国、ヨーロッパ、日本などで承認申請中であり、承認されれば炎症性サイトカインネットワークで重要な役割を果たす細胞内伝達経路に作用するという、新しい作用機序をもったRA治療薬となる。1)modified Total Sharp Score(mTSS)手足のX線写真を用いてRA患者の関節破壊を評価する指標2) ACR70反応率RAの臨床的改善を評価する指標で、治療前に比べて主要項目が70%以上改善した割合ファイザー社プレスリリース(2012年8月6日)http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_08_06.html

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HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。母親あるいは乳児に対する予防治療の有効性を無作為化試験で評価BAN(Breastfeeding、 Antiretrovirals、 and Nutrition)試験は、HIV感染母親から子どもへの感染予防における母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週投与の有効性を検討する無作為化対照比較試験。2004年4月21日~2010年6月28日まで、アフリカ南東部の国マラウイの首都リロングウェ市で実施された。HIVに感染し、CD4陽性リンパ球細胞数≧250個/1μLの授乳期の母親2,369人とその乳児を対象とし、3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けた。すべての母親と乳児に、ネビラピン(商品名:ビラミューン)(母親:200mg/kg、乳児:2mg/kg)を1回経口投与し、ジドブジン(商品名:レトロビル)(母親:300mg/kg、乳児:2mg/kg)+ラミブジン(商品名:エピビル)(母親:150mg/kg、乳児:4mg/kg)の合剤(母親は錠剤、乳児はシロップ)を1日2回、7日間投与した。対照群(668人)にはこれ以上の治療は行わなかった。母親に対する抗レトロウイルス薬3剤併用療法群(849人)には、ジドブジン+ラミブジン合剤(商品名:コンビビル)を28週投与し、ネビラピンは出産後最初の2週は1日1回、15日~28週は1日2回投与した。乳児に対するネビラピン療法群(852人)は、出生後最初の2週は10mg/kgを、3~18週は20mg/kgを、19~28週は30mg/kgをそれぞれ1日1回投与した。なお、ネビラピンは、その肝毒性に関するFDA勧告に基づき、2005年2月以降はネルフィナビル(商品名:ビラセプト)に、2006年2月以降はロピナビル+リトナビル合剤(商品名:カレトラ)に変更した。母親には産後24~28週の離乳が推奨された。治療割り付け情報は、現地の医療従事者と患者には知らされたが、それ以外の研究者にはマスクされた。主要評価項目は48週時の乳児のHIV感染とした。48週乳児HIV感染率:対照群7%、母親3剤併用群4%、乳児ネビラピン群4%母親3剤併用群の676組、乳児ネビラピン群の680組、対照群の542組が、48週のフォローアップを完遂した。産後28週以降は授乳を中止した母親は2つの介入群を合わせ96%、対照群は88%だった。生後2~48週の間にHIVに感染した乳児は、母親3剤併用群が30人、乳児ネビラピン群が25人、対照群は38人で、そのうち28人(30%)は28週の治療終了以降に感染していた(それぞれ9人、13人、6人)。48週までの乳児HIV感染リスクは、対照群の7%に比し、母親3剤併用群が4%(p=0.0273)、乳児ネビラピン群も4%(p=0.0027)と、いずれも有意に良好だった。乳児における重篤な有害事象の頻度は、治療期間中よりも治療終了後(29~48週)のほうが有意に高く(1.1件/100人・週 vs 0.7件/100人・週、p<0.0001)、下痢、マラリア、発育不良、結核、死亡のリスクが高かった。産後2~48週の間に9人の母親が死亡した(母親3剤併用群:1人、乳児ネビラピン群:2人、対照群:6人)。著者は、「医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週予防投与により乳児のHIV感染が減少するが、6ヵ月での離乳は乳児の罹病率を増加させる可能性がある」と結論している。なお、WHOは現在、本試験を含む知見に基づき、授乳期12ヵ月間の抗レトロウイルス薬予防治療を推奨しているという。(菅野守:医学ライター)

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中国全土に深刻な薬剤耐性結核が蔓延

深刻な薬剤耐性結核が中国に蔓延していることが、中国・疾病管理予防センター(CDC)のYanlin Zhao氏らが2007年に行った中国全国サーベイの結果、報告された。公衆衛生および病院医療(特に結核病院)での不適切治療が、多剤耐性(MDR)結核を招いており、大半の症例は一次感染であったという。中国全国にわたる薬剤耐性結核の蔓延状況についての調査はこれが初めて。NEJM誌2012年6月7日号掲載報告より。全結核患者の4分の1が薬剤耐性、10分の1がMDR調査は、公衆衛生システム下の結核症例について集団無作為抽出法で同定し、第1選択の抗結核薬であるイソニアジド(商品名:イスコチンほか)、リファンピシン(同:リファジンほか)、エタンブトール(同:エブトール、エサンブトール)、ストレプトマイシン、および第2選択薬のオフロキサシン(同:タリビットほか)、カナマイシンについて耐性検査を行い、中国における薬剤耐性発生率を推定した。この結果と公表されている推定結核発生率から、薬剤耐性結核発生率を算出した。また、患者インタビューによる情報を用いて、薬剤耐性につながる因子を同定した。2007年4月1日~12月31日の間に、新規発症患者は3,037例、治療歴あり患者は892例が登録され、そのうち多剤耐性(MDR)結核(少なくともイソニアジドとリファンピシンに耐性を示すと定義)だったのは、新規発症患者の5.7%(95%信頼区間:4.5~7.0)、治療歴あり患者の25.6%(同:21.5~29.8)だった。全結核患者の約4分の1がイソニアジドとリファンピシン、または両方に耐性を示し、10分の1はMDR結核だった。MDR結核患者の約8%は、広範囲薬剤耐性(XDR)結核(少なくともイソニアジド、リファンピシン、オフロキサシン、カナマイシンに耐性を示すと定義)だった。最後に結核病院で治療を受けた患者におけるMDR結核が最も高リスクで13.3倍2007年のMDR結核の症例数は11万例(95%信頼区間:9万7,000~13万)、XDR結核の症例数は8,200例(同:7,200~9,700)だった。MDR結核およびXDR結核の症例の大半は一次感染によるものだった。MDR結核のリスクが最も高かったのは、過去に複数回治療を受けており、最後に結核病院で治療を受けた患者だった(補正オッズ比:13.3、95%信頼区間:3.9~46.0)。治療歴のあるMDR結核患者226例のうち43.8%は最後まで治療を完了しておらず、その多くは病院で治療を受けた患者だった。治療を完了していた患者では、公衆衛生システム下で治療を受けた後で結核を再発していた人が大半だった。(朝田哲明:医療ライター)

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関節リウマチ治療薬への新たな期待 【アバタセプト全例調査 中間解析結果】

2012年4月に開催された第56回日本リウマチ学会総会・学術集会(JCR2012)において、アバタセプト(商品名:オレンシア)の使用成績調査(全例調査)の中間解析結果が報告された。これを受けて2012年5月25日、ブリストル・マイヤーズ株式会社による記者発表会が開催され、産業医科大学第1内科学講座の田中良哉氏によって講演が行われた。関節リウマチとは?関節リウマチは手指や膝など全身の関節に腫れや痛みが生じ、症状が進行すると関節破壊・変形が起こるため、生活や仕事に影響を及ぼす自己免疫疾患である。また、関節破壊は発症後、約2年間で急激に進むため、早期からの適切な治療が求められる。日本の患者数は70万人とも100万人ともといわれ、30~40歳代の女性に好発する。関節リウマチの診断基準関節リウマチは関節破壊が起こる前に治療を開始することが求められるため、早期診断・早期治療を推奨することを目的に米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)により、関節リウマチ分類基準(ACR/EULAR2010)が発表されている。この基準によると、1ヵ所以上の関節腫脹を認め、他の疾患と鑑別された場合に、下記スコアリングによる分類基準において10点中6点以上であれば関節リウマチと診断される。 腫脹または圧痛関節数1個の中~大関節   0点2~10個の中~大関節   1点1~3個の小関節   2点4~10個の小関節   3点11個以上の関節(1つの小関節を含む)   5点血清学的検査RFも抗CCP抗体も陰性   0点RFか抗CCP抗体のいずれかが低値の陽性   2点RFか抗CCP抗体のいずれかが高値の陽性   3点滑膜炎の期間6週未満   0点6週以上   1点急性期反応CRPもESRも正常値   0点CRPかESRのいずれかが異常値   1点標的部位の異なる生物学的製剤現在、関節リウマチ(RA)治療に用いられる生物学的製剤はTNF阻害剤が4製品、IL-6阻害剤とT細胞阻害剤がそれぞれ1製品発売されている。T細胞阻害剤であるアバタセプトは抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを遮断し、T細胞の活性化とサイトカイン産生を阻害する薬剤である。これまでのTNFαやIL-6をターゲットとした生物学的製剤とはコンセプトの異なる薬剤として注目されている。3,000例を目標とする全例調査アバタセプトは使用実態下における臨床経過や有効性、安全性に関する情報を収集することを目的に全例調査の実施が承認条件となっている。2010年9月から症例登録が開始され、目標症例数は3,000例(24週の観察期間を終了する症例数)である。本中間解析では登録開始後の初期1,000例を対象として解析された。 <患者背景>性別 男性18.1%、女性81.9%平均年齢 61.4歳生物学的製剤の使用歴 未使用27.2% 既使用72.8%メトトレキサートの併用状況 非併用35.7% 併用64.3%安全性について有害事象は236例(23.6%)、うち重篤な有害事象は33例(3.3%)にみられ、副作用は160例(16.0%)、うち重篤な副作用は24例(2.4%)であった。有害事象のうち、重点調査項目であった重篤な感染症は8例、重篤な過敏症は1例、悪性腫瘍は3例であった。また、生物学的製剤を投与する際には結核等の再燃が危惧されるが、本中間解析において結核の報告はなかった。なお、重篤な副作用発現に対するリスク因子として、リンパ球数1000mm3未満と体重40kg未満が示唆された。バイオナイーブ群ではより高い改善効果DAS28(CRP)*1平均値は投与前は4.34であったが、24週時点で3.32まで低下した。 SDAI*2、CDAI*3はそれぞれ投与前が23.9、22.1であったのに対し、投与後は14.6、13.5まで改善した。また、生物学的製剤による前治療の有無別にみると、既投与例ではDAS28(CRP)は4,36(投与前)から3.48(24週時点)へ低下したのに対し、未投与(バイオナイーブ)群では4.26(投与前)から2.84(24週時点)まで低下していたことから、バイオナイーブの患者でより大きな改善がみられた。より高い治療効果への期待全例調査の中間解析により、アバタセプトは比較的副作用の発現頻度が低く、安全性の高さが示唆された。また、田中氏は、「アバタセプトはバイオナイーブ症例で有効性が高く、他の生物学的製剤と遜色がなかったことから、生物学的製剤の第一選択となり得る」と考察を述べた。アバタセプトの全例調査は承認条件が解除されるまで継続され、現在、長期使用における安全性や有効性に関する調査も実施されており、今後さらなるデータの蓄積が期待される。 *1 DAS28(CRP)28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による健康状態の評価、CRP(C反応性蛋白)による評価*2 SDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による全般評価、医師による全般評価、CRPによる評価*3 CDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、医師による全般評価(ケアネット 森 幸子)

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【第56回日本リウマチ学会】アバタセプト全例調査 中間解析結果

第56回日本リウマチ学会総会・学術集会(JCR2012 )が2012年4月26日から28日にかけて品川で開催された。その中で産業医科大学第1内科学講座の田中良哉氏によって、生物学的製剤のアバタセプト(商品名:オレンシア)の使用成績調査(全例調査)の中間解析結果が報告された。標的部位の異なる生物学的製剤現在、関節リウマチ(RA)治療に用いられる生物学的製剤はTNF阻害剤が4製品、IL-6阻害剤とT細胞阻害剤がそれぞれ1製品発売されている。T細胞阻害剤であるアバタセプトは抗原提示細胞とT細胞間の共刺激シグナルを遮断し、T細胞の活性化とサイトカイン産生を阻害する薬剤である。これまでのTNFαやIL-6をターゲットとした生物学的製剤とはコンセプトの異なる薬剤として注目されている。3000例を目標とする全例調査2010年9月から症例登録が開始され、目標症例数は3000例(24週の観察期間を終了する症例数)である。本中間解析では登録開始後の初期1000例を対象として解析された。 性別 男性18.1%、女性81.9%平均年齢 61.4歳生物学的製剤の使用歴 未使用27.2% 既使用72.8%メトトレキサートの併用状況 非併用35.7% 併用64.3%安全性について有害事象は236例(23.6%)、うち重篤な有害事象は33例(3.3%)にみられ、副作用は160例(16.0%)、うち重篤な副作用は24例(2.4%)であった。重篤な副作用のうち感染症は8例(0.3%)で、そのうち呼吸器は6例、皮膚は1例、消化器は1例であった。また、生物学的製剤を投与する際には結核等の再燃が危惧されるが、本中間解析において結核の報告はなかった。なお、重篤な副作用発現に対するリスク因子として、リンパ球数1000mm3未満と体重40kg未満が示唆された。バイオナイーブ群ではより高い改善効果DAS28(CRP)*1平均値は投与前は4.3であったが、24週時点で3.3まで低下した。SDAI*2、CDAI*3はそれぞれ投与前が23.9、22.1あったのに対し、投与後は14.6、13.5にまで改善した。また、生物学的製剤による前治療の有無別でDAS28(CRP)の経時的推移をみたところ、既投与例は24週時点で2.3未満の寛解状態に達している患者は18.3%であったのに対し、未投与(バイオナイーブ)群では35.3%となり、バイオナイーブの患者でより大きな改善がみられた。より高い治療効果への期待全例調査の中間解析により、アバタセプトは比較的副作用の頻度が少なく、安全性の高さが示唆された。また、田中氏は、「アバタセプトは生物学的製剤未投与の患者で有効性が高かったため、より高い治療効果を得るには、バイオナイーブ症例への導入が鍵となる」と述べた。また、アバタセプトは効果発現の時期に関して、使用状況の異なる臨床でのイメージのみで議論されることがあるが、バイオナイーブ症例では、効果発現や有効性がTNF阻害剤と同等であるという報告もあり、今後さらなるデータの蓄積が期待される。 *1 DAS28(CRP)28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による健康状態の評価、CRP(C反応性蛋白)による評価*2 SDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、患者による全般評価、医師による全般評価、CRPによる評価*3 CDAI28の関節のうちの圧痛・腫脹関節数、医師による全般評価(ケアネット 森 幸子)

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結核に対するrifapentine+イソニアジド、イソニアジド単独と予防効果同等

潜在性結核感染症に対するrifapentine+イソニアジド(商品名:イスコチンほか)の3ヵ月投与は、イソニアジド単独の9ヵ月投与と予防効果は同程度で、治療完遂率はより高いことが、オープンラベル無作為化非劣性試験の結果、報告された。現在有効とされる標準療法はイソニアジド単独9ヵ月投与だが、毒性作用(特に肝臓における)や、治癒完遂率が低い(30~64%)ことが懸念されていた。試験は米国CDCが資金提供し、米国・ヴァンダービルト医科大学のTimothy R. Sterling氏らPREVENT TB試験チームにより行われた。NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)掲載報告より。4ヵ国で結核リスクの高い7,731例を登録し、オープンラベル無作為化非劣性試験試験は、米国、カナダ、ブラジル、スペインから登録され適格となった結核リスクの高い7,731例を、直接監視下にてrifapentine 900mg+イソニアジド900mgを週1回、3ヵ月間服用する、併用投与群(3,986例)と、自己管理でイソニアジド300mgを9ヵ月間服用する単独投与群(3,745例)に割り付け行われた。主要エンドポイントは、結核の確定診断とされた。非劣性マージンは0.75%。追跡期間は33ヵ月間だった。併用群の非劣性証明、治療完遂率はより高い修正intention-to-treat解析の結果、結核発症は、併用群7例(累積発症率0.19%)、単独群は15例(同0.43%)で、両群差は0.24ポイント(95%信頼区間上限値差0.01%)と、併用群は単独群に対し非劣性であることが認められた。治療完遂率は、併用群82.1%、単独群69.0%で、併用群のほうが高かった(P<0.001)。一方で、有害事象発生による投与中断の割合は、併用群4.9%、単独群3.7%で、併用群のほうが多かった(P=0.009)。試験担当医が認めた薬剤関連の肝毒性作用の発生率は、併用群0.4%、単独群2.7%だった(P<0.001)。Sterling氏は、「併用群は単独群と予防効果は同程度であり、治療完遂率はより高かった」とまとめたうえで「長期安全性のモニタリングが重要となるだろう」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その1

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。フランス・ビセートル病院(パリ)のFrancois-Xavier Blanc氏らCAMELIA試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週後と8週後を比較したもので、2週後のほうが生存が有意に改善されたという。本報告の被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)だった。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。カンボジアの5病院から被験者を募り、2週後開始vs. 8週後開始を検討CAMELIA(Cambodian Early versus Late Introduction of Antiretrovirals)試験グループは、カンボジアの5つの病院から被験者を募り、ART開始について抗結核療法開始2週後と8週後とを比較する多施設共同前向き無作為化非盲検優越性試験を行った。具体的には、2006年1月31日~2009年5月27日に被験者を募り、「新たに結核と診断されたCD4+T細胞数200個/mm(3)以下のARTを受けていないHIV患者では、ARTの開始時期が死亡率に有意な影響をもたらす」との仮説検証を目的とした。ART療法は、スタブジン+ラミブジン+エファビレンツの3剤併用療法だった。被験者は、結核の標準治療(6ヵ月間の抗結核療法)開始後、無作為に早期ART開始群(抗結核療法開始2週±4日後に開始)か待機的ART開始群(同8週±4日後に開始)に割り付けられ、生存を主要エンドポイントに追跡された。待機的ART群と比べた早期ART群の死亡リスクは0.62倍と有意に低下試験には661例(早期ART群332例、待機的ART群329例)が登録され、中央値25ヵ月間追跡された。被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)、ウイルス量中央値は5.64 log(10)コピー/mLだった。結果、各群の死亡は、早期ART群は59/332例(18%)だったのに対し、待機的ART群は90/329例(27%)で、早期ART群のハザード比0.62(95%信頼区間:0.44~0.86、P=0.006)と同群死亡リスクが有意に低かった。一方で、結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)リスクは、早期ART群の有意な上昇が認められた(ハザード比:2.51、95%信頼区間:1.78~3.59、P<0.001)。また両群とも、CD4+T細胞数増大の中央値は114個/mm(3)であり、50週時点でウイルス量は患者の96.5%で検出されなくなっていた。(武藤まき:医療ライター)

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その2

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDiane V. Havlir氏らAIDS Clinical Trials Group Study A5221試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週以内の早期開始群と同8~12週以内の待機的開始群とを比較したもので、AIDS疾患の新規発症率および死亡率に両群間で有意差は認められなかったという。被験者のCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)だった。なお試験では無作為化の際、CD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化しての検討も行っており、その結果50個/mm(3)未満群においては早期開始群でのAIDS疾患の新規発症率および死亡率は有意な低下が認められたという。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。ART開始について抗結核療法開始後2週以内開始vs. 8~12週開始を比較本試験は、2006年9月~2009年8月に4ヵ国26施設から被験者809例が登録されて行われた非盲検無作為化試験だった。被験者は、CD4+T細胞数250個/mm(3)以下の、ARTを受けていない、結核感染が確認または疑われる患者だった。被験者は、抗結核療法開始後、2週間以内にARTを開始する早期ART群と、同8~12週以内開始の待機的ART群に無作為化され追跡された。また無作為化に際し、被験者をCD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化した。なおART療法は、エファビレンツ+エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル フマル酸の併用療法だった。主要エンドポイントは、48週時点で生存および新規AIDS疾患の発症が認められなかった患者の割合とした。CD4+T細胞数50個/mm(3)未満群では早期ART群の生存が有意被験者809例の基線でのCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)、HIV-1 RNAウイルス量中央値は5.43 log(10)コピー/mLだった。48週時点までのAIDS疾患新規発症および死亡の発生率は、早期ART群12.9%、待機的ART群16.1%で、早期ART群の有意な低下は認められなかった(発生率差の95%信頼区間:-1.8~8.1、P=0.45)。しかしCD4+T細胞数50個/mm(3)未満の患者における同値は、早期ART群15.5%、待機的ART群26.6%で、早期ART群での有意な低下が認められた(同:1.5~20.5、P=0.02)。結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)は、早期ART群のほうが待機的ART群より頻度が高かった(11%対5%、P=0.002)。ウイルス抑制率は48週時点で74%で、両群間の差はなかった(P=0.38)。(武藤まき:医療ライター)

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