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経口コロナ治療薬の国内製造販売承認を申請/ファイザー

 ファイザーは1月14日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) に対する経口抗ウイルス薬候補「PF-07321332/リトナビル錠」(米国での商品名:Paxlovid)の製造販売承認を厚生労働省に申請したことを発表した。日本も参加した国際共同第II/III相試験(EPIC-HR)の結果に基づくもので、特例承認による迅速な使用開始を目指す。 EPIC-HR試験は、重症化リスクが高く、入院していないCOVID-19成人患者を対象としたランダム化二重盲検試験。EPIC-HR試験の最終データでは、外来治療の対象となる重症化リスクの高い COVID-19患者において、本剤がプラセボと比較して入院または死亡のリスクを89%(症状発現から3日以内)および88%(症状発現から5日以内)減少させることが示された。有害事象の発現割合は、本剤(23%)とプラセボ(24%)では同程度であり、おおむね軽度だったという。 ファイザーでは、本剤の承認が得られた場合、200万人分を供給することを日本政府と合意している。本剤を巡っては、米国や韓国、イスラエルなどで昨年12月、相次いで緊急使用が認められ、EUにおいても加盟国の使用を容認する見解が発表されており、各国で薬剤確保の動きが進んでいる。

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第91回 モルヌピラビル承認報道、新聞各紙が伝え損ねた重要ポイント

年末からここ最近にかけてどうにも報道での扱いが気になって仕方がないものがある。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の軽症患者でも使える世界初の経口薬・モルヌピラビル(商品名・ラゲブリオ)のことである。これまで軽症者で使える経口薬がなかったせいもあり、メディアではまさにフィーバー状態だ。一方、SNS上では虚実入り混じった情報が飛び交う。正直溜息が出て仕方がない。まず、各社の第一報を見てみよう。「『モルヌピラビル』新型コロナの飲み薬として正式に承認」(NHK)「メルク製のコロナ飲み薬を厚労省が特例承認 軽症者向け、国内初」(朝日新聞)「国内初、コロナ飲み薬を承認 米メルク製」(産経新聞)「厚労省、コロナ飲み薬初承認 軽症、中等症向けモルヌピラビル」(毎日新聞)「コロナ軽症飲み薬、国内初承認 週明けにも使用開始」(日本経済新聞)「国内初のコロナ飲み薬『モルヌピラビル』を特例承認…厚労省、年内分として20万回分配送へ」(読売新聞)ご存じのようにモルヌピラビルは(1)軽症・中等症I、(2)重症化リスク因子が1つでもある、(3)発症から5日以内の投与に限定、(4)催奇形性があるため妊婦には使えない、という縛りがある。私個人がもし第一報を書くとしても、この4点は最低限であり、かつ読者に具体的にイメージを沸かせるためには、重症化リスクは最低でも1つは例示し、催奇形性についても噛み砕いて触れることをポイントに挙げる。これらを踏まえたうえで、4項目に各1点、合計4点満点で各社の第一報を採点すると、満点はなく3点がNHK、2点が朝日新聞、読売新聞、1点が産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞。NHKは重症化の具体例にまったく言及がなく、朝日新聞は発症から5日以内の点と催奇形性の表現への甘さ、読売新聞は重症化リスクの具体例の言及がなく、催奇形性に具体的には言及していないところが減点。残りの3社には言及するのも疲れる。多くの人が知っているように、読者は記事を読み流すので一度に全部書いたとて覚えてはくれない。たとえば、繰り返し“重症化リスクがある人のみ”と書いても、重症化リスクがない新型コロナの軽症感染者が「先生、あの新聞に書いてあった飲み薬出してください」というのは目に見えている。それだからこそ重要な点については繰り返し触れる必要があり、第一報はそれなりに情報を盛り込んでおかねばならないはずだ。また、読者に与える印象からも表現は問われる。たとえば、発症から5日以内の部分も読売新聞の「発症5日目までに飲み始める必要がある」と、朝日新聞の「発症から5日以内で効果が期待できる」では読者の受ける印象は相当違う。ちなみに私は今回の件で『重症化リスクの具体例提示』と『発症5日以内の服用開始必須』を一般読者に伝えることはかなり重要だと思っている。というのも重症化リスクのある人が、新型コロナを疑われる症状を自覚しながら放置や我慢で受診を先延ばしすると、せっかくの服用機会を逃し、ワクチン未接種者では致命的になる恐れさえもあるからだ。だからこそ報道は読者自身が「重症化リスクのある人間に該当するかどうか」をイメージできる具体例が必要であり、5日以内という切迫感も伝えねばならない。また、流通が律速段階になることも忘れてはならない。新型コロナ患者が発生する可能性がある医療機関や薬局は国から供給委託を受けたMSD社が開設した「ラゲブリオ登録センター」に事前登録し、必要になったらセンターに供給を依頼して、1~2日で医薬品卸を通じて薬が届けられるという「タイムラグ」がある。これを考慮すると余計のこと、発症から5日目までの服用という情報は大きな意味を持つ。さて、一方SNS上では、「まあよくもそんなモノを…」と思いたくなる重箱の隅突きのような情報も飛び交っている。こうした情報は「アンチ・モルヌピラビル派=ファビピラビル・イベルメクチン礼賛派」による「外資系薬叩き」が主なものだ。その第一の槍玉にあげられているのが「催奇形性」である。実際、モルヌピラビルの添付文書では、妊娠したラットでの実験から、器官形成期のラットで、ヒトでのモルヌピラビル代謝成分(NHC:N-ヒドロキシシチジン)の臨床曝露量の8倍で催奇形性や胚・胎児の死、3倍以上で胎児の発育の遅れ、器官形成期の妊娠ウサギでは18倍以上で胎児体重が低値になることがわかっている。一般的に催奇形性実験では、ヒトで臨床曝露量の10倍以内で催奇形性が示される場合は要注意であることは確かだ。その意味ではモルヌピラビルでは注意が必要で、実際妊婦や妊娠している可能性がある女性での投与は禁止されている。また、同じ理由で妊娠可能な女性が服用する際は投与中と投与終了後一定期間(臨床試験段階では最低4日間)の避妊が求められている。もっともこうしたモルヌピラビルを批判する人たちの一部が擁護するファビピラビルでも催奇形性が指摘されているのは周知のことで、しかもこちらの場合はヒトの臨床曝露量以下でマウス、ラット、ウサギに加え、ヒトに近い霊長類のサルでも催奇形性が認められているのだからはるかに危険である。また、やはりSNS上で騒がれているのが、モルヌピラビルの変異原性試験の結果である。ご存じのように遺伝子に突然変異を起こす可能性、いわば発がん性を評価する試験だが、添付文書では細菌を使って行うと陽性反応が認められ、げっ歯類を用いた2種の変異原性試験で変異原性は認められず、in vitroとラットで染色体異常を起こすかどうか調べた小核試験は陰性だったことが記載されている。もともと細胞の世代交代の早い細菌ではごくごく小さな突然変異は起こりやすい。しかし、細胞の世代交代が遅い齧歯類で実験した結果では異常は認められないため、この試験結果があってもヒトではとくに問題がないと考えるのが妥当な解釈である。さらに言えば、モルヌピラビルの服用期間が最大5日間ということを考えても、突然変異が継続して発がんに至る可能性は極めて低いということになる。いやはや皆さん、こんな揚げ足取りをするのだと感心してしまったが、逆に言えば報道がより正確な情報を伝えるためには、場合によってこうした非臨床試験の結果にも目を配り、その解釈も伝える必要があるという点では冷ややかに横目で眺めているわけにもいかないと、気を引き締め始めている。

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コロナワクチンの感染抑制効果、デルタ株では低下/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのワクチン接種について、アルファ変異株と比較してデルタ変異株のほうが感染減少が少なく、ワクチンの有効性は経時的に低下したことが示された。また、感染発端患者の診断時PCRサイクル閾値(Ct)値は、感染減少を部分的に説明するのみであることも明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現以前は、ワクチン接種によりウイルス量が減少し、感染したワクチン接種者からのSARS-CoV-2の伝播が抑制したとみなされていた。ワクチン接種により感染リスクはさらに低下しているが、デルタ変異株に感染したワクチン接種者と未接種者のウイルス量は同程度であることが判明し、ワクチン接種が感染をどの程度予防するのか疑問視されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月5日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染患者約11万人とその接触者約15万人について解析 研究グループは、英国の接触者検査データを用い、SARS-CoV-2に感染した成人患者(発端患者)と、その接触者を対象に後ろ向き観察コホート研究を実施した。 多変量ポアソン回帰法により、ウイルス感染とワクチン接種状況(発端患者および接触者について)の関連を調べるとともに、この関連性がアルファ(B.1.1.7)変異株およびデルタ変異株で、また2回目のワクチン接種からの経過期間によってどう変化するのかを検討した。 発端患者10万8,498例と、その接触者で検査を受けた14万6,243例のうち、5万4,667例(37%)がPCR検査でSARS-CoV-2陽性であった。ワクチン接種後の感染患者からの感染減少は、アルファ変異株と比べデルタ株で低下 ワクチン接種済みでアルファ変異株に感染した発端患者では、BNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech製)またはChAdxOx1 nCoV-19(AZD1222)(AstraZeneca製)の2回接種は、いずれのワクチンでもワクチン未接種者と比較し、接触者のPCR陽性率の低下と関連していることが認められた(BNT162b2の補正後率比:0.32[95%信頼区間[CI]:0.21~0.48]、ChAdxOx1 nCoV-19の同0.48[0.30~0.78])。 ワクチン接種によるデルタ変異株の感染減少は、アルファ変異株と比較して小幅であった。その感染減少幅は、BNT162b2ワクチン2回接種後(未接種者と比較した補正後率比:0.50、95%CI:0.39~0.65)のほうが、ChAdxOx1ワクチン2回接種後(0.76、0.70~0.82)より大きかった。 ワクチンに関連した2つの変異株の感染率低下について、発端患者のCt値(ウイルス量の指標)の変化が占める割合は7~23%であった。デルタ変異株の感染減少は、ワクチン2回接種後に経時的に低下し、ChAdxOx1 nCoV-19ワクチン接種を受けた発端患者では12週までにワクチン未接種者と同等レベルとなり、BNT162b2ワクチン接種を受けた発端患者では大幅な減弱が認められた。接触者におけるワクチン予防効果は、ワクチン2回接種後3ヵ月間で同様に低下した。

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3回目接種でオミクロン株への中和抗体が大きく増加/NEJM

 新型コロナウイルスのmRNAワクチン2回接種から6ヵ月以降に3回目の接種を受けると、オミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇することが、米国・ロックフェラー大学のFabian Schmidt氏らの研究で示された。また、ワクチン未接種の既感染者においても、mRNAワクチンの接種によりオミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇した。NEJM誌オンライン版2021年12月30日号のCORRESPONDENCEに掲載。 著者らは、新型コロナウイルスのワクチン接種または感染、もしくはその両方で曝露された47人における169の血漿検体において、武漢株とオミクロン株に対する中和抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・mRNAワクチンのBNT162b2(ファイザー製)もしくはmRNA-1273(モデルナ製)を2回接種後1.3ヵ月における血漿検体では、オミクロン株に対する50%中和抗体価(NT50)は武漢株に対するNT50に比べ127±66(平均±SD)倍低く、接種後5ヵ月では27±17倍低かった。しかしながら、2回目接種から約6ヵ月後に3回目接種を受けた約1ヵ月後には、武漢株に対するNT50が26倍、オミクロン株に対するNT50は38倍と大きく増加した。・ワクチン未接種の既感染者の血漿検体では、オミクロン株に対するNT50は武漢株に対するNT50に比べ、感染後1ヵ月で58±51倍低く、感染後6ヵ月で32±23倍低かった。しかしながら、既感染者にmRNAワクチンを接種すると接種前に比べ、武漢株に対するNT50が238倍、オミクロン株に対するNT50が154倍と大きく増加した。・既感染者でワクチンを接種していない人の多くと、mRNAワクチン2回接種のみの人は、オミクロン株に対するNT50は低いもしくは検出不能であった。

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第91回 米軍基地のコロナ感染拡大で露呈した水際対策の“合法的抜け道”

米軍基地内のクラスターとオミクロン株の感染急拡大により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は第6波の様相を呈してきた。沖縄、山口、広島の3県には、1月9日から「まん延防止等重点措置」が適用された。とくに沖縄県は、2020年7月にも米軍基地のクラスターと軌を一にする感染拡大が起きており、当時も米軍基地が感染源として疑われていた。2020年の感染拡大では感染研は米軍基地感染源説を否定しかし、政府の新型コロナ感染症対策分科会会長代理の脇田 隆字氏(国立感染症研究所所長)は2020年8月、分科会後の記者会見で、沖縄県の感染状況を分析したところ東京由来のものだったと説明し、米軍基地の感染源説を否定した。発言の根拠となったエビデンスは不明だが、感染源説が否定されたことで米軍基地はノーマークとなってしまった。沖縄県では新規感染者が急増する中、1月11日現在、医師や看護師ら500人超も感染や濃厚接触者の認定を受け欠勤、15医療機関で救急患者の受け入れを制限するなど、医療体制が崩壊し始めている。2020年の感染拡大時、すべての感染経路不明者に対しゲノム検査などを実施し、米軍基地由来の感染者の洗い出しをきちんとしていたら、その後の感染対策に何らかの手立てがあったのではないかと考えずにいられない。検査・隔離なしの米軍基地から感染者が続々昨年末に発生したキャンプ・ハンセン(沖縄県)でのクラスターでは、米軍兵士が検査・隔離なしで自由に出入国していたことが発覚。沖縄県以外でも、佐世保基地(長崎県)、岩国基地(山口県)、キャンプ富士(静岡県)、横須賀基地(神奈川県)などで感染が拡大したことで、米軍基地由来の新型コロナの存在がようやく明るみに出た。在日米軍の発表(1月7日時点)によれば、7都県の11基地で計約2,100人の感染者が確認されているという。日本政府がいくら水際対策の厳格化に胸を張っても、世界で報告される1日の新規感染者の約3人に1人の割合を占める米国から、基地が抜け道となって国内に新型コロナウイルスが運ばれていたわけだ。実際、キャンプ・ハンセンで感染が広がってから沖縄県内で感染が急拡大するまで、米軍は感染状況を積極的に発信せず、対策も怠った。日本政府もすぐには外出規制や情報提供を求めなかった。そこに科学的合理的な感染対策はない。同じく米軍基地のある韓国やオーストラリアでは、米軍兵士に対する検査や隔離は徹底されている一方で、日本政府の甘い対応が米国や米軍の日本軽視に繋がっているように思える。日米の合意で1月10日から24日まで、すべての米軍基地を対象にした外出制限が発令されたが、「必要不可欠な活動」は認められた。「必要不可欠な活動」とは、米軍側がいかようにも言い訳できるような表現だ。「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革」の真意昨年11月下旬、東京で開かれた第16回「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」に出席した元厚生労働大臣の塩崎 恭久氏は「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革だ」と述べた。塩崎氏が問題視したのは、日本のコロナ対策の非科学性だった。「官僚組織で最優先されるのはムラ社会の理屈で、科学的合理性は二の次。非科学的でも、ムラ社会の対面を保った官僚が出世する」と批判した。年明け早々に起きた米軍基地由来の感染拡大。世界がコロナとの共存に本腰を入れて取り組むフェーズにある中、日本の科学的かつ合理的な感染対策の不在は、もっと問題視されるべきだと思うのだが―。

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単回投与の中国製コロナワクチン、予防効果は57.5%~第III相試験/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルス5型ベクターワクチン「Ad5-nCoV」(中国・カンシノ・バイオロジクス[康希諾生物]製)の単回投与について、健康な18歳以上成人における有効性および安全性が示された。接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19の予防効果は57.5%であり、また、重篤有害事象の発生率は0.1%でプラセボと同等であったという。カナダ・ダルハウジー大学のScott A. Halperin氏らが、第III相の国際二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年12月23日号掲載の報告。ワクチン接種後28日以降の症候性COVID-19予防効果を検証 試験は、アルゼンチン、チリ、メキシコ、パキスタン、ロシアの試験センターで18歳以上を登録して行われた。被験者は、不安定または重度の内科的・精神的基礎疾患がなく、検査確定の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴が認められず、妊娠または授乳中でない、アデノウイルス・ベクター、コロナウイルス、またはSARS-CoV-2ワクチンの未接種者だった。 研究グループは、インフォームドコンセントによる了承を得たのち、全参加者から全血を採取(25mL)、参加者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはAd5-nCoVワクチンを(5×1010vp/mLを0.5mL)、もう一方にはプラセボを、それぞれ投与した。試験担当者および参加者は割り付けを知らされなかった。 被験者とは毎週連絡を取り(eメール、電話またはテキストメッセージ)、あらゆるCOVID-19の症状を申告してもらい、申告があった場合は症状の種類を問わず、SARS-CoV-2検査を行った。 主要な有効性評価目的は、2021年1月15日時点でワクチン接種後28日以上であった全参加者について、ワクチン接種後28日以降の、PCR検査で確定された症候性COVID-19に対する予防効果。主要な安全性評価目的は、試験ワクチンを接種された全参加者における、ワクチン接種後の重篤有害事象または診療を要した非特定有害事象(MAAE)の発生とした。症候性COVID-19予防のワクチン有効性は57.5% 試験登録は、パキスタンで2020年9月22日に、メキシコは11月6日、ロシアとチリは12月2日、アルゼンチンは12月17日に、それぞれ開始された。2021年1月15日にエンドポイント例が150例に達した時点で、最終的な主要有効性解析が行われた。 Ad5-nCoVワクチンの1回投与の、接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19に対する有効性は57.5%(95%信頼区間[CI]:39.7~70.0、p=0.0026)だった(参加者2万1,250例、追跡期間中央値45日[IQR:36~58])。 有効性解析時点で行われた安全性の主要解析(参加者3万6,717例)では、重篤有害事象の発生率は、プラセボ群0.1%(1万8,354例中10例)、Ad5-nCoV群0.1%(1万8 ,363例中14例)で有意差はなく、MAAEの発生率もそれぞれ2.2%(同411例)、2.4%(同442例)で有意差は認められなかった。なお、重篤有害事象で試験ワクチンに関連すると考えられるものは両群ともに報告されなかった。 安全性に関し、より詳しく追跡した拡張コホートでは、非自発的な全身性有害事象の報告について有意差が認められた(Ad5-nCoV群1,004/1,582例[63.5%]、プラセボ群729/1,572例[46.4%]、p<0.0001)。うち頭痛の頻度が最も高かった(Ad5-nCoV群699例[44%]、プラセボ群481例[30.6%]、p<0.0001)。 また、注射部位の有害事象に有意差がみられ(Ad5-nCoV群971/1,584例[61.3%]、プラセボ群314/1,573例[20.0%]、p<0.0001)、そのうち頻度が最も高かったのは注射部位疼痛だった(Ad5-nCoV群939例[59%]、プラセボ群303例[19%])。

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第91回 年末年始急展開の3事件、「アデュカヌマブ」「三重大汚職」「町立半田病院サイバー攻撃」のその後を読み解く

第6波到来、デルタ株とは異なる対策必要にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。国内の新型コロナウイルスの新規感染者は1月8日、9日と連続で8,000人を超え、感染第6波が本格的に到来しました。9日からは沖縄県、山口県、広島県で「まん延防止等重点措置」が適用されています。これまでに、オミクロン株はデルタ型より感染力が強い一方で、肺まで達して重症化するリスクは低いことなどがわかってきました。しかし、感染力が格段に強いため、感染拡大のスピードも早く、国内外で医療機関のみならずさまざまな社会インフラへの影響が出始めています。本連載でも繰り返し書いてきたように、「空気感染」をしているとしか考えられない事例も増えているようです。感染拡大が先行して進んだ沖縄の状況について、1月7日付の朝日新聞は「デルタ株とは別の病気」というタイトルで沖縄県の専門家会議の議論を紹介、座長である藤田 次郎・琉球大学教授が以下のコメントをしています。「国の基準はデルタ株を前提として作られているが、臨床医の感覚では別の病気。インフルエンザなら薬を飲めば熱が下がって数日で職場復帰できるが、コロナは休む期間が長い。このため、社会インフラに与える影響が大きい」。日本では、第5波を教訓に、病床確保など第6波に備えた対策を取ってきたはずですが、それはあくまでもデルタ株の感染を踏まえての対策だったと言えます。その病態を大きく変化させたオミクロン株には、さまざまな対策や規制の抜本的な見直しが必要だと言えそうです。岸田 文雄首相は1月11日、水際対策の2月末までの現状骨格維持や、ワクチンの大規模接種会場の再開設などを表明しましたが、いずれも従来の路線の延長であり、新機軸はありません。第5波の時のように、対策が後手後手にならなければいいのですが……。アデュカヌマブ承認、日本では結論持ち越しさて今回は、このコラムで昨年取り上げたいくつかの話題が、年末年始で急展開を迎えていましたので、まとめておさらいしておきたいと思います。まずはアルツハイマー型認知症の治療薬「アデュカヌマブ」です。2021年12月22日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会には、アデュカヌマブ(商品名:アデュヘルム、バイオジェン ・ジャパン)の承認について、「現時点で得られたデータから、本剤の有効性を明確に判断することは困難であり、今後実施される適切なデザインの臨床試験の成績等に基づき有効性及び安全性について再検討し、その結果に応じて再度審議する必要がある」と、結論を持ち越しました。主な議論の内容として、「申請の根拠とされた2つの 国際共同第III相試験の結果に一貫性がない」「脳内アミロイドβプラーク低下の臨床的意義が確立していない」「本剤の投与によって、脳の浮腫や出血などがみられる」などが挙げられています。アデュカヌマブについては、米国のFDA(食品医薬品局)が承認した2021年6月、本連載の「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」「第63回 後編」でも詳しく書きました。日本の結論持ち越し決定が出る直前の12月17日、欧州のEMA(欧州医薬品庁)は承認しないよう勧告を行っており、厚労省の判断が注目されていました。結局日本は米国と欧州の中間的な結論を選択、米国で行われている第IV相試験の結果や今後実施予定とされる新たな臨床試験の結果次第、ということになったわけです。ちなみに、「臨床的意義が確立していない」と言われた脳内アミロイドβプラークを低下させる薬剤としては、同じくバイオジェン社がlecanemab、イーライリリー社がdonanemabの開発を進めており、いずれも2022 年にFDA から迅速承認を得られる可能性がある、とされています。今年も認知症薬の承認を巡って、医療界だけでなく、世間や株価が大騒ぎしそうです。三重大病院汚職事件、残るは元教授の公判のみ次は、三重大付属病院の臨床麻酔部の医師らが、小野薬品工業、日本光電工業の社員と起こした汚職事件です。津地裁は12月28日、医療機器の納入で業者に便宜を図った見返りに、上司の元教授が代表を務める団体に200万円の賄賂を提供させたとして、第三者供賄罪に問われた三重大病院元講師(47)に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年2月)の判決を言い渡しました。この事件については、2020年9月に「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」で取り上げて以降、幾度も書いてきました。この事件で逮捕・起訴された三重大病院臨床麻酔部の元医師3人、小野薬品工業の社員2人、日本光電工業の社員3人の計8人のうち、これまでに7人の公判が津地裁で開かれ、いずれも執行猶予付の有罪判決が出ています。残るは一連の事件の首謀者とされる元教授の公判ですが、年明けにも開かれる予定です。なお、元教授は保釈を請求し、昨年11月に保釈を認める決定が出ています。この事件については、小野薬品工業が昨年8月に外部調査委員会の報告書を公開、事件について「MRにとってグレーゾーンの中で起きた事件であると言っても過言ではない」と指摘、奨学寄付金と取引誘引との関係については業界全体で検討すべき課題だ、と提言しています。一体何が問題だったのか、元教授の判決を待って本連載でも改めて考えてみたいと思います。町立半田病院、電子カルテのサーバーが復旧最後は徳島県つるぎ町の町立半田病院で2021年10月末に起こったランサムウエアによる病院システムへのサイバー攻撃の事件です。同病院ではこの攻撃で患者約8万5,000人分の電子カルテが閲覧できなくなっていましたが、年末にサーバーが全面復旧、2022年1月4日から約2ヵ月ぶりに全13診療科で通常診療が再開しました。この連載では、「第86回 世界で猛威を振るうランサムウエア、徳島の町立病院を襲う」で同事件を取り上げ、「同病院は11月26日に会見を開き、身代金は支払わず電子カルテのシステムを一からつくり直す、と表明しました」と書きました。結局、復旧を依頼した外部のセキュリティー会社から戻ってきたサーバーでカルテを閲覧できることが確認できたため、システムを一から再構築する必要はなくなった、とのことです。徳島新聞などの報道では、病院は復旧の具体的な方法などについては、「今後のセキュリティー対策に関わるので公表しない」とのことです。また、当面は安全対策として、メンテナンスなどに必要な外部との接続は行わず、専門家らでつくる有識者会議に諮った上で接続を試みるとしています。さらに、バックアップの方法やVPN(仮想プラベートネットワーク)の構築方法なども有識者会議に検討してもらうそうです。12月29日付の読売新聞は、この事件に関連し「『身代金』ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も」と題する記事を掲載しています。それによれば、同紙の取材によって2016年以降、国内の少なくとも11病院がランサムウエアによる被害を受けていたことがわかったそうです。救急搬送の受け入れや手術の停止、外来診療の制限などの被害が出ており、医療機関が攻撃対象になるケースは増加傾向にある、とのことです。なお、同じく読売新聞の報道によれば、厚労省は2021年度中にも医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針を策定する予定で、電子カルテなどのバックアップデータについては病院のネットワークから切り離して保管することなどを盛り込む方針とのことです。今年は診療所・病院の区別なく、あらゆる医療機関がサイバー攻撃の対策に本腰を入れる必要がありそうです。

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オミクロン株での重症度や死亡率、他の変異株と比較/JAMA

 南アフリカ共和国におけるCOVID-19第4波はオミクロン株が原因とされている。同国・Netcare Ltd South AfricaのCaroline Maslo氏らは、第4波初期におけるCOVID-19の入院患者の特徴や転帰について第1~3波それぞれの初期の入院患者と比較し、JAMA誌オンライン版2021年12月30日号のリサーチレターで報告した。第4波では年齢が若く、併存疾患のある患者が少ないこと、入院や急性呼吸器疾患を発症する患者が少なく、重症度と死亡率も低いことが示された。 本研究は、南アフリカ共和国全土に、1万床超の急性期病院49施設を有するNetcare Ltd South Africaで実施された。南アフリカ共和国では、2020年6~8月(従来株)、2020年11月~2021年1月(ベータ株)、2021年5月~9月(デルタ株)の3つの波が発生し、その後2021年11月15日から再び増加し始め、12月7日にコミュニティ陽性率が26%に達した。そこで、各波で陽性率が26%に達するまでの期間(第1波:2020年6月14日~7月6日、第2波:2020年12月1日~23日、第3波:2021年6月1日~23日、第4波:2021年11月15日~12月7日)におけるCOVID-19の入院患者について、患者の特徴、酸素供給・人工呼吸の必要性、ICU入院、入院期間、死亡率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・各波の初期に病院で治療された患者数は、最も多かった第3波で6,342例に対し、第4波では2,351例と差がみられた。一方、第1~3波では新型コロナウイルス陽性で救急に来院した患者における入院患者の割合は68~69%だったのに対し、第4波では41.3%だった。・入院患者の年齢中央値は第4波のほうが若く(第4波:36歳、最も高かった第3波:59歳、p<0.001)、女性の割合が高かった。・併存疾患のある患者は第4波で有意に少なく、急性呼吸器疾患を呈する割合は低かった(第4波:31.6%、最も高かった第3波:91.2%、p<0.001)。・第4波に入院した971例のうち、ワクチン接種者は24.2%、非接種者は66.4%、接種不明が9.4%だった。・酸素供給を必要とした患者は第4波で有意に低く(第4波:17.6%、第3波:74%、p<0.001)、人工呼吸を受けた患者も同様に低かった。・ICU入院患者は、第4波で18.5%に対し、第3波では29.9%だった(p<0.001)。・入院期間中央値は、第1~3波の7〜8日から第4波では3日に減少した。・死亡率は、第1波19.7%、第3波29.1%に対し、第4波では2.7%と低かった。 著者らは本研究の限界として、遺伝子型判定ができなかったこと、追跡最終日(12月20日)の時点で患者の7%がまだ入院していること、患者の行動や入院プロファイルが各波で異なることなどを挙げている。各波の違いが獲得免疫や自然免疫に影響されるかどうか(2021年12月時点で、同国の成人人口の44.3%がワクチン接種済みで、人口の半分以上が新型コロナウイルスへの曝露経験がある)、またオミクロン株が他の変異株よりも病原性が低いかどうかの判断にはさらなる研究が必要としている。

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新型コロナの後遺症、入院患者と自宅療養者で違い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症での一般診療医(GP)受診率について、COVID-19で入院を要した患者(入院患者)と入院を必要とせずコミュニティで療養した患者(コミュニティ療養者)で差があることを、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのHannah R. Whittaker氏らがイングランド住民を対象としたコホート研究で明らかにした。コミュニティ療養者では、時間の経過とともに受診率が低下する後遺症もあったが、不安や抑うつなど受診が継続している後遺症があり、ワクチン接種後に受診率の低下が認められる後遺症があることも明らかにされた。これまでいくつかの観察研究で、COVID-19回復後の持続的な症状および新たな臓器機能障害は報告されているが、それらは主に重篤症状の入院患者でみられたもので、コミュニティ療養者の長期アウトカムを比較した研究はごくわずかで、いずれも小規模で選択バイアスの掛かったものであった。また、大規模な住民ベースのコホート研究での経時的評価やCOVID-19ワクチン接種後のアウトカムの評価も行われていなかった。BMJ誌2021年12月29日号掲載の報告。イングランドのCOVID-19後遺症によるGP受診率を調査 研究グループは、COVID-19入院患者とコミュニティ療養者の急性期症状回復後の後遺症でのGP受診率を調べるとともに、コミュニティ療養者の受診率の経時的変化およびワクチン接種後の受診率の変化を調べた。データソースとして、イングランドのGP 1,392人が寄与する臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink Aurum[CPRD Aurum])を用いた。 対象者は、2020年8月1日~2021年2月14日にCOVID-19と診断された45万6,002例(男性44.7%、年齢中央値61歳)。診断後、2週間以内に入院した患者(1万8,059例)もしくはコミュニティ療養を受けた患者(43万7,943例)で、フォローアップ期間は最長9.2ヵ月であった。解析では、非COVID-19患者からなるネガティブ対照群(3万8,511例)と、パンデミック前のインフルエンザ患者のコホート群(2万1,803例)も設定し評価が行われた。 主要アウトカムは、新規の症状、疾患、処方および医療サービス利用を目的としたGP受診率で、入院患者vs.コミュニティ療養者、感染前vs.感染後とそれぞれ比較した。医療サービス利用についてはCox回帰法および負の二項回帰法を用いた。 解析は、ネガティブ対照群とインフルエンザ患者群と順次実施。コミュニティ療養者については、COVD-19診断後のアウトカムを経時的に記録し、さらに、負の二項回帰法を用いて、COVID-19後の症状を有した療養者についてワクチン接種前後の比較も行った。コミュニティ療養者は嗅覚・味覚障害が、入院患者は静脈血栓塞栓症が最も高頻度 ネガティブ対照群およびインフルエンザ患者群と比較して、コミュニティ療養者群、入院患者群ともに、複数の後遺症でのGP受診率が有意に高率であった。 コミュニティ療養者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、嗅覚または味覚もしくは両方の障害(補正後ハザード比[HR]:5.28、95%信頼区間[CI]:3.89~7.17、p<0.001)、静脈血栓塞栓症(3.35、2.87~3.91、p<0.001)、肺線維症(2.41、1.37~4.25、p=0.002)、筋肉痛(1.89、1.63~2.20、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(1.15、1.14~1.15、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、関節痛(2.5%)、不安症(1.2%)、そしてNSAIDの処方(1.2%)であった。 入院患者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、静脈血栓塞栓症(補正後HR:16.21、95%CI:11.28~23.31、p<0.001)、悪心(4.64、2.24~9.21、p<0.001)、パラセタモールの処方(3.68、2.86~4.74、p<0.001)、腎不全(3.42、2.67~4.38、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(発生率比:1.68、95%CI:1.64~1.73、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、静脈血栓塞栓症(3.5%)、関節痛(2.7%)、および息切れ(2.8%)であった。 コミュニティ療養者群では、不安や抑うつ、腹痛、下痢、全身疼痛、悪心、胸部圧迫感、耳鳴での受診が、フォローアップ期間中継続して認められた。また、コミュニティ療養者群ではワクチン接種前と比べて1回目のワクチン接種後に、神経障害性疼痛、認知障害、強オピオイドおよびパラセタモール使用を除き、すべての症状、処方、医療サービス利用についてGP受診率の低下が認められた。虚血性心疾患、喘息、胃・食道疾患についてもGP受診率の低下がみられた。

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新型コロナ、異種ワクチン接種の有益性を確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの異種接種について、1回目接種がアデノウイルスベクターワクチンのChAdOx1 nCoV-19(ChAd、AstraZeneca製)またはmRNAワクチンのBNT162b2(BNT、Pfizer-BioNTech製)いずれの場合も、2回目接種がmRNAワクチンのmRNA-1273(m1273、Moderna製)の場合は、一過性の反応原性を増大することが示された。遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンのNVX-CoV2373(NVX、Novavax製)は、BNTのプライム接種群で非劣性が示されなかった。英国・オックスフォード大学のArabella S. V. Stuart氏らによる無作為化試験の結果で、「複数のワクチンが、BNTまたはChAdでプライミング後の免疫完了に適していた。今回の結果は、異種ワクチンによる接種スケジュールを支持するもので、ワクチン接種の迅速なグローバル展開を促進することになるだろう」と述べている。Lancet誌2022年1月1日号掲載の報告。ChAd、BNT、m1273、NVXによる混合プライミングスケジュールを検討 研究グループは、同一スケジュールで異なるCOVID-19ワクチンを柔軟に用いることが、迅速な展開を促進するために重要であるとの認識から、ChAd、BNT、m1273、NVXを組み込んだ混合プライミングスケジュールについて検討した単盲検無作為化非劣性試験「Com-COV2試験」を実施した。 試験は、ChAdまたはBNTの単回接種を地域で受けた50歳以上を対象とし、各接種群内で3群(試験全体では計6群)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、同一ワクチン、m1273またはNVXの2回目接種(初回接種後8~12週に)を行った。 主要エンドポイントは、異種vs.同種スケジュールのELISA法で測定した血清SARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度の幾何平均比(GMR)で、2回目接種後28日時点で評価。GMRの片側98.75%信頼区間[CI]値が0.63超を非劣性と定義した。 主要解析は、ベースラインで血清陰性であったper-protocol集団で実施。安全性解析は、試験ワクチンの接種を受けた全被験者を対象に行われた。GMRは、ChAd/m1273群10.2、BNT/m1273群1.3 2021年4月19日~5月14日に、イングランドの9地点で、ChAd(540例、女性47%)またはBNT(532例、女性40%)の単回接種を受けた計1,072例が無作為化を受けた。ChAd群の異種ワクチンによる2回目接種までの期間中央値は9.4週間(範囲:4.7~12.0)、BNT群は同9.6週間(8.0~12.0)であった。 ChAd群では、2回目接種から28日後の幾何平均抗体濃度(GMC)は、ChAd/m1273群2万114 ELISA laboratory units[ELU]/ mL(95%CI:1万8,160~2万2,279)、ChAd/NVX群は5,597 ELU/mL(4,756~6,586)で、いずれもChAd/ChAd群(1,971 ELU/mL[1,718~2,262]に対して非劣性が認められた。ChAd/ChAd群と比較したGMRは、ChAd/m1273群10.2(片側98.75%CI:8.4~∞)、ChAd/NVX群2.8(2.2~∞)であった。 BNT群では、BNT/BNT群(GMC:1万6,929 ELU/mL[95%CI:1万5,025~1万9,075])に対する非劣性は、BNT/m1273群(2万2,978 ELU/mL[2万597~2万5,636])では示されたが、BNT/NVX群(8,874 ELU/mL[7,391~1万654])では示されなかった。BNT/BNT群と比較したGMRは、BNT/m1273群は1.3(片側98.75%CI:1.1~∞)、BNT/NVX群は0.5(0.4~∞)であった。ただし、NVX群もワクチン接種後28日のGMCは18倍の上昇が認められた。 重篤な有害事象は15件報告されたが、いずれも免疫獲得とは関連していないとみなされた。

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2022年度改定でリフィル処方箋がいよいよ本格導入か【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第81回

明けましておめでとうございます。昨年は、最初から最後まで新型コロナに翻弄され続け、さらに医薬品の流通問題も勃発するなど、忙しい1年だったのではないでしょうか。残念ながら半分以上は解決していないという気もしますが、本年は薬剤師が腰を据えて前向きに業務に取り組める1年になればいいなと思います。さて、2022年は診療報酬の改定があるため、年末から議論が本格化しています。まずは、診療報酬全体および医科・歯科・調剤の改定率が決定しました。鈴木俊一財務相と後藤茂之厚生労働相は12月22日、予算をめぐる大臣折衝で22年度の診療報酬改定率を正式に決定した。診療報酬本体は0.43%増(国費300億円程度)。看護の処遇改善に0.20%増、不妊治療の保険適用に0.20%増を確保しつつ、リフィル処方箋の導入・活用促進による再診の効率化で▲0.10%、小児の新型コロナウイルス感染防止対策にかかる加算措置(医科分)の期限到来で▲0.10%を計上したため、実質的な改定率は0.23%増となる。(中略)本体の0.23%分をパイとした各科ごとの改定率は医科0.26%増、歯科0.29%増、調剤0.08%増。医科を1とした場合の配分比率「1:1.1:0.3」は名目上、維持した。(2021年12月23日付 RISFAX)調剤はわずか0.08%増ですが、財源が乏しいなかで減らなくてよかったなという印象です。注目すべきは、リフィル処方箋の導入・活用促進が再診の効率化という目的で突如盛り込まれたことでしょう。これに関しては、この翌日に日本医師会から「議論が必要」という実質的に異議を申し立てるような意見が出ているため、まだ予断を許さない状況ですが、おそらく部分的にであっても導入されるのではないかと思います。その他、薬価の引き下げ、OTC類似品や湿布薬の保険給付の見直し、後発医薬品関連の加算、薬剤師によるフォローアップへの評価などが今回の論点になりそうです。毎回のことですが、薬局に影響があり、かつ始まってからでは遅いのが薬価の引き下げへの対応です。4月1日になった瞬間に薬価が下がってしまうので、早めに薬局の在庫が適正かどうかを確認し、もし過剰であれば他店への譲渡や返品などをおすすめします。薬剤師のフォローアップを患者・医師ともに評価この報酬改定の議論の中で、薬剤師の業務に対する喜ばしい評価がありましたので紹介します。2021年12月1日の中央社会保険医療協議会(中医協)の議論において、2020年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の結果が報告されました。本調査の目的は、2020年度の調剤報酬改定の影響やかかりつけ薬剤師・薬局の取り組み状況などを検証することです。ちなみに、2020年度改定のトピックスとしては、重複投薬解消の取り組みの評価や地域体制加算の要件の見直し、同一薬局利用促進などの評価の見直し、薬剤師による調剤後のフォローアップの評価、調剤基本料の適正化などがありました。その報告の中で、以下のような結果が示されています(一部抜粋)。服薬期間中のフォローアップを受けた患者は、かかりつけ薬剤師指導料などの同意状況にかかわらず、「よかった」という回答が100%であった(患者への調査結果より)糖尿病患者のフォローアップを薬局に指示した場合、保険医療機関が感じるメリットとして、「患者が正しく服用できるようになった」が82.5%、「アドヒアランスが向上した」が67.5%であった(診療所への調査結果より)吸入薬指導を薬局に指示した場合、保険医療機関が感じるメリットとして、「患者が正しく吸入できるようになった」が94.0%、「アドヒアランスが向上した」が69.3%であった(病院への調査結果より)これは、何ともうれしい結果ですね。これらは報酬改定の議論で正式に提出されている資料ですので、報酬への好影響を期待せずにはいられません。もし今回の報酬に反映されなかったとしても、目の前の患者さんや医師が認めてくれているというやりがいを噛みしめつつ、さらにメリットを感じていただけるように服薬指導やフォローアップの質を高めていってもらえればいいなと思います。本コラムでは、患者さんのため、地域のために薬剤師が活躍することを願って、本年も話題のニュースをピックアップしてお届けしていきます。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。参考1)「令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)の報告案について」(中医協 検-5-23.12.1)2)「かかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査報告書(案)<概要>(中医協 検-6-13.12.1)

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コロナワクチン副反応、もっとも影響する因子は?

 カルフォルニア大学のAlexis L Beatty氏らは新型コロナワクチン接種後に参加者が報告した副反応に関連する可能性のある因子を評価した。ワクチンを商品ごとで比較することで、その要因が、フルドーズのワクチン接種、ワクチン商品名、年齢の若さ、女性、新型コロナウイルス既感染であることが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号で掲載の報告。 研究者らは、本研究をオンライン上で実施。対象者は2020年3月26日~2021年5月19日に新型コロナワクチンを1回以上接種し、スマートフォンまたはインターネットにアクセスできる18歳以上で、参加者は健康状態(新型コロナ関連のイベント含む)に対する毎日、毎週、毎月の調査を完了した。 参加者から報告された副反応とその重症度を多変量ロジスティック回帰モデルで解析し、候補因子には、年齢、性別、人種、民族性、主観的な社会的地位、新型コロナ感染歴、持病の有無、薬物の使用、ワクチン接種量、およびワクチン商品名が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万9,586例の年齢中央値(IQR)は54歳(38~66歳)で、そのうち1万3,420例(68.8%)は女性だった。・アレルギー反応またはアナフィラキシーは、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)を1回接種した8,680例のうち26例(0.3%)で、ファイザー製またはモデルナ製を2回接種またはJ&J製(JNJ-78436735)を1回接種した1万1,141例のうち27例(0.2%)で報告された。・副反応に関連する最も強い因子はワクチンの投与量(ファイザー製かモデルナ製2回接種、またはJ&J製1回接種vs.ファイザー製かモデルナ製1回接種)で、オッズ比[OR]は3.10(95%信頼区間[CI]:2.89~3.34、p

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第84回 相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?

2022年となりました、本年もよろしくお願いします。<先週の動き>1.相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?2.オミクロン株も診療の手引きに追記、原則入院見直しへ3.融資未返済で倒産の医療法人、コロナ協力金で回収/大阪市4.サイバー攻撃から電子カルテ復旧、通常の外来診療再開へ/半田病院5.医療機器メーカー納入汚職で講師にも有罪判決/三重大1.相次ぐオミクロン市中感染、3回目接種は間に合うのか?政府は、正月明けのコロナ感染者数の急激な増加、相次ぐオミクロン株の感染例に対して、都府県での無料検査や濃厚接触者に対する宿泊施設への待機要請などを実施し、対応を進めている。東京都は、4日までにオミクロン株感染が確認された55例のうち、およそ7割はワクチンを2回以上接種していたと公表した。岸田総理大臣は、3日に関係閣僚会合を開催し、翌日の年頭記者会見において、医療提供体制のフル稼働や、医療従事者・高齢者を対象とした3回目接種の前倒し、治療薬の普及などの措置を機動的に講じると語った。SNSでは、3回目ワクチンの進捗状況に医師からの不安の声も見られる。広がるオミクロン株の市中感染に危機感を持ち、対応していかなければならない。(参考)コロナワクチンの3回目接種、政府が高齢者に前倒し実施へ 気になる副反応は?オミクロン株への効果は?(東京新聞)東京都 オミクロン株感染者 約7割はワクチン2回接種済み(NHK)岸田首相、コロナ対策「臨機応変に」指示 関係閣僚会合(毎日新聞)2.オミクロン株も診療の手引きに追記、原則入院見直しへ厚労大臣は5日の記者会見で、コロナ感染者急増のため、病床の逼迫が予想される地域では原則全員入院の対応を自宅療養などに切り替えることを認めると発表した。年始に沖縄県、山口県の米軍キャンプなどをきっかけに急増した感染者に対して、まん延防止等重点措置が申請され、政府はこれを認める方針だ。最新の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.1版」では、オミクロン株や経口治療薬モルヌプラビルについて追記されている。(参考)宿泊・自宅療養可能に、厚労省 オミクロン株の拡大地域で(中日新聞)オミクロン株 感染急拡大の地域で自宅療養認める通知 厚労相(NHK)B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて(厚労省)3.融資未返済で倒産の医療法人、コロナ協力金で回収/大阪市医療法人 友愛会が大阪市から無担保で融資を受け、約2億円を返済しないまま昨夏に経営破綻したため、市は交付予定だったコロナ受け入れ協力金を未返済分の回収目的にて相殺していたことを明らかにした。法人は相殺は不当だとして、市に1億8,000万円の支払いを求めている。融資は、友愛会の元理事長が運営していた社会福祉法人が特別養護老人ホームを建設するために5億1,000万円、さらに病院との複合施設であったため、整備費用として4億9,000万円を貸し付けており、昨年10月時点で、利息を含めて約2億円が未返済となっていた。(参考)大阪市、コロナ協力金で融資回収 医療法人「不当」と1.8億円求め提訴(産経新聞)大阪市の融資未返済で倒産 医療法人にコロナ協力金「支給せず」(毎日新聞)4.サイバー攻撃から電子カルテ復旧、通常の外来診療再開へ/半田病院昨年電子カルテにサイバー攻撃を受けた徳島県つるぎ町の半田病院は、システムの復旧を終え、4日からすべての診療を再開したことを発表した。同院は昨年10月末、データ暗号化によるランサムウェア(身代金ウイルス)によって、電子カルテ約8万5,000人のデータが使用不能となったため、新規患者の外来診療を停止していた。報道によれば、国内の電子カルテシステムを標的としたランサムウェア被害は、2016年以降少なくとも11病院で発生しており、厚労省は安全管理に関するガイドラインを今年度中に改定する見込み。医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針では、電子カルテのバックアップデータを病院のネットワークから切り離して保管することを明記し、各医療機関に対策を求める。(参考)サイバー攻撃受けた町立病院 すべての診療再開 徳島 つるぎ町(NHK)「身代金」ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も(読売新聞)病院サイバー対策、カルテデータ「独立保管」…厚労省が新たな指針策定へ(同)5.医療機器メーカー納入汚職で講師にも有罪判決/三重大津地方裁判所は、三重大学への医療機器納入をめぐる贈収賄事件で、12月28日の公判にて、元講師に対して懲役1年、執行猶予3年(求刑:懲役1年2ヵ月)を言い渡した。すでに汚職やカルテ改ざん事件で起訴されている元上司・臨床麻酔部の元教授の指示の下、医療機器メーカーの担当者に対して寄付金を要求し、機器選定に大きな影響を与えるようなメールを送るなどとして、共謀共同正犯が成立するとされた。(参考)三重大病院元講師に有罪 医療機器納入汚職―津地裁(時事通信)三重大元講師に有罪判決 医療機器納入めぐる汚職事件で津地裁(ミクスオンライン)

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第90回 第6波のまん防・緊急事態宣言を否定する人に、聞いてみたいよ、その根拠

もはや第6波到来なのか。1月5日、全国では2,638人もの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)検査陽性者が報告された。2021年の年末最終週あたりから徐々に増え始めていた陽性者はわずか1週間で6倍以上に膨れ上がった。この増加は正月休み明けの検査件数の急増などによる形式的増加も影響していると思われる。しかし、昨年12月中はPCR検査数に大きな変動があるわけではないのに下旬以降徐々に陽性者が増加していることを考えると、デルタ株より感染力が3~4倍といわれるオミクロン株の登場で局面は変わりつつあることがうかがえる。しかし、テレビやネットを見ていると、オミクロン株での重症化率が低いことをフックとした、とんちんかんな解説や意見があまりにも多いことに呆れてしまう。あるテレビ番組では厚生労働省の元医系技官が「増えたから感染を抑えるなんて2年前と同じ馬鹿げた事は、絶対にやってはいけない」と声高に言っていた姿にはもはや失笑を禁じ得なかった。確かに南アフリカ国立感染症研究所からの査読前論文を見ると、対デルタ株比でのオミクロン株の重症化リスクは0.3倍。同様の報告はほかにもある。だが、単純な算数の問題として、感染者がデルタ株による第5波の3倍に増えてしまったならば、この医療側にとって好都合なオミクロン株の特性はチャラになってしまう。また、裾野として広がった軽症、無症状感染者をほぼ全員自宅療養とするにしても社会全体が抱える負荷は莫大なものだ。一部には、ならば新型コロナの感染症法上の取り扱いを指定感染症としての2類相当を5類にすれば良いではないかという意見もあるが、そもそも致死率がいまだインフルエンザなどと比べれば高く、対抗手段も揃いつつあるとはいえまだまだ「帯に短し襷に長し」という現状を考えれば、こうした意見の具体化はまだ時期早尚だろう。ワクチンは有力な手段ではあるものの、それのみで感染・発症を完全には防げず、かつ現時点で国内のワクチン接種率が約8割に達しようとする中、結局、感染者増加という蛇口の元栓を締めるには個人レベルでは手洗い、マスク、三密回避という基本的感染対策の徹底化、公的施策としてはブースター接種の迅速化と感染拡大阻止に向けた行動抑制対策という限られた選択肢しかない。その意味で沖縄県、広島県、山口県の3県で新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」の適用がほぼ確実になったことはやむを得ない措置と言えるだろう。しかし、ネット上では首都・東京都などで同様の対策、あるいは一歩進んで緊急事態宣言まで進むことへの警戒感や倦えん感からなのか、先ほどの厚労省の元医系技官以外でも、いわゆる識者と呼ばれる人から「オミクロン株は重症化率が低いのだから」とか「今現在の重症者は少ないのだから」などの論理で強い措置をすべきではないという意見が散見される。重症者数は感染者発生から1週間後に見えてくる後発指標。少なくともオミクロン株での重症化率の低さや国内のワクチン接種率の高さゆえに理論上はかなり低値に抑えられるのではと思われるものの、あと1週間後の「答え合わせ」で万が一予想を超えてしまった場合は取り返しのつかないことになるのは、医療従事者の中では百も承知のことだろう。また、重症者数が後発指標であることは報道でも繰り返し伝えられてきた。こうした現実を目の当たりにすると、パンデミックから丸2年が経過した今、改めて当たり前になっていると思い込んでいた情報を再整理して繰り返し伝える必要性を認識している。とはいえ正直個人的にもそうした作業に倦えん感がないとは言えない。何とも気が重い年明けになってしまったようだ。

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モルヌピラビル使用の注意点は?コロナ薬物治療の考え方第11版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第11版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、先般特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に関する記載が追加された。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。【4. 抗ウイルス薬等の選択】(1)抗ウイルス薬としてレムデシビル、モルヌピラビルなど、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブなど、(2)免疫調整薬・免疫抑制薬としてデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブについて記載を追加。【モルヌピラビル】の項目を追加・機序 モルヌピラビルは、リボヌクレオシドアナログ。SARS-CoV-2におけるRNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、ウイルスRNAの配列に変異を導入、ウイルスの増殖を阻害する。・海外での臨床報告 日本国内の3施設を含む20ヵ国、107施設で実施した多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験。重症化リスクのある非重症COVID-19患者(目標症例数1,550例)の外来治療を対象。発症5日以内の治療開始で偽薬群(699名)の重症化が68名(9.7%)に対し、治療群(709名)では48名(6.8%)と、相対的リスクが30%減少。また、死亡例は治療群で1名(0.1%)に対して、プラセボ群では9名(1.3%)と治療群で少なかった。・投与方法(用法・用量) 通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。[投与時の注意点]1)臨床試験における主な投与知見を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。2)本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていることなどを踏まえ、重症化リスク因子を有する者(例:61歳以上、活動性のがん、慢性腎臓病、糖尿病など)が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。3)重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者(中等症II以上)に対する有効性は確立していない。4)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は臨床試験で除外されているため、ブレイクスルー感染での重症化予防等の有効性を裏付けるデータは得られていない。6)妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、授乳婦については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。・入手方法 本剤は、現状、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼により、無償譲渡。 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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高リスク外来コロナ患者、レムデシビル早期3日間投与で入院リスク低減/NEJM

 疾患進行リスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の非入院患者において、レムデシビルによる3日間の外来治療は、安全性プロファイルは許容可能であり、プラセボに比べ入院/死亡リスクは87%低かった。米国・ベイラー大学メディカルセンターのRobert L. Gottlieb氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GS-US-540-9012(PINETREE)試験」の結果を報告した。レムデシビルは、中等症~重症のCOVID-19入院患者の臨床転帰を改善することが示唆されていたが、疾患進行リスクが高い症候性COVID-19の非入院患者における入院予防効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年12月22日号掲載の報告。発症7日以内、疾患進行リスクを有する外来患者を対象にプラセボ対照試験 研究グループは、COVID-19発症後7日以内で、疾患進行リスク因子(60歳以上、肥満、併存症がある)を1つ以上有する非入院患者を、レムデシビル群(1日目200mg、2日目および3日目100mg、静脈内投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、28日目までのCOVID-19に起因する入院または全死因死亡の複合、副次評価項目は28日目までのCOVID-19に関連した医療機関の受診または全死因死亡の複合、安全性の主要評価項目はあらゆる有害事象とした。レムデシビル早期導入により入院/死亡のリスクが87%低下 2020年9月18日~2021年4月8日に、米国、スペイン、デンマーク、英国の64地点で患者の登録が行われた。解析対象は、無作為化され少なくとも1回のレムデシビルまたはプラセボの投与を受けた562例(レムデシビル群279例、プラセボ群283例)。平均年齢は50歳、女性47.9%、ヒスパニック系またはラテン系41.8%であった。高頻度にみられた併存疾患は糖尿病(61.6%)、肥満(55.2%)、高血圧(47.7%)であった。 主要評価項目のイベントは、レムデシビル群で2例(0.7%)、プラセボ群で15例(5.3%)確認された(ハザード比[HR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.03~0.59、p=0.008)。副次評価項目である28日目までのCOVID-19に関連した医療機関の受診は、レムデシビル群で1.6%(4/246例)、プラセボ群で8.3%(21/252例)発生した(HR:0.19、95%CI:0.07~0.56)。28日目までに死亡した患者はいなかった。 有害事象は、レムデシビル群で42.3%、プラセボ群で46.3%に認められた。

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新型コロナ感染リスク、ワクチン未接種者は接種者の4倍!?

 米国の大手ドラッグストアであるCVSヘルスに所属するYing Tabak氏らは、新型コロナ感染に対するワクチン有効性を推定するにあたり、時間経過による変化がみられるのかなどを評価するため、診断陰性例コントロール試験を実施。その結果、ワクチン未接種者はワクチン接種者よりも感染リスクが最大で4倍も高いことが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号のリサーチレターに掲載された。 本研究は全米の新型コロナ検査のデータベースを使用し、2021年5月1日~8月7日の期間にドラッグストアのPCR検査で症候性の新型コロナ感染症が確認されたの特有の患者発生率を評価した。新型コロナ関連の症状(CDCの定義に準拠)、ワクチン接種状況、時期、投与回数について、鼻咽頭スワブを収集する前にスクリーニング質問票に自己報告してもらった。分析には、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、およびJNJ-78436735(J&J製)のワクチンを使用した。また、米国での昨年7~8月のデルタ変異株の流行を考慮して、最後のワクチン接種からの経時的な症候性新型コロナ感染に対し、ワクチン接種の有効性を検査実施者の年齢、地域、暦月で調整して推定した。 主な結果は以下のとおり。・全米4,094ヵ所で検査を受けた18歳以上の症候性患者は123万7,097例だった。そのうち女性は73万2,850例(59.2%)、男性は50万3,303例(40.7%)、性別不明は944例(0.1%)だった。・年齢中央値(IQR)は37歳(28~51)だった。・民族の割合はアジア人が8万8,178例(7.1%)、黒人/アフリカ系アメリカ人が16万8,639(13.6%)、ヒスパニック系が22万1,521例(17.9%)、白人が 66万1,459例(53.5%)だった。また、アラスカ先住民、アメリカインディアン、太平洋諸島民、詳細不明として識別された人は9万7,300例(7.9%)だった。・計64万5,604例(52.2%)はワクチン未接種たった。・ワクチン接種者59万1,493例(47.8%)のうち、33万5,341例(27.1%)がファイザー製を、20万7,250例(16.8%)がモデルナ製を、4万8,902例(4.0%)がJ&J製を接種していた。・ワクチンの接種状況は、新型コロナの感染低下と関連していた。・mRNAワクチン(ファイザー製/モデルナ製)を接種した人は、観察時間のすべての時点で発生率が最も低く、ワクチン未接種者で最も高かった。・ワクチン未接種者の感染リスクについて、各ワクチンを接種した人と比較したところ、モデルナ製よりも412%、ファイザー製よりも287%、J&J製よりも159%も高かった。・研究期間中に観察された発生率は、ワクチン未接種者では24.8%だった。各接種者での割合はJ&J製が15.6%、ファイザー製が8.6%、モデルナ製が6.0%だった。・ワクチン未接種者の新型コロナ感染リスクの大きさは、米国でのデルタ変異の有病率の増加と並行して7月と8月にさらに増加したが、ワクチン接種完了者に限定した場合の傾向は、ほぼ横ばいだった。・多変量解析の結果、mRNAワクチンを2回完了した人の調整済みの推定されるワクチン有効性は、2週間後にピークに達し、モデルナ製では96.3%(95%信頼区間[CI]:95.6~96.9)、ファイザー製は92.4%(同:91.7~93.1)だった。・また、有効性は徐々に低下し、接種2~3ヵ月時点において、モデルナ製は86.8%(同:86.2~87.4)、ファイザー製は78.6%(同:78.0~79.2)であり、6ヵ月時点では、モデルナ製が74.2%(同:71.6~76.6)、ファイザー製が66%(同:64.2~68.0)と低下した。・一方、J&J製は接種2週間時点でも有効性は50%超だった。 研究者らは、「本結果は全米における最大の新型コロナ検査のデータセットであり、また、ほかの研究結果1)などと一致している」としている。

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モルヌピラビル、新型コロナの入院・死亡リスクを低減/NEJM

 重症化リスクがあるワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者について、モルヌピラビルによる早期治療(発症後5日以内に開始)は、入院または死亡リスクを低減することが、コロンビア・IMAT OncomedicaのAngelica Jayk Bernal氏らによる第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で示された。試験は約1,400例を対象に行われ、29日間の入院または死亡の発生リスクは中間解析で-6.8ポイント差、全解析で-3.0ポイント差であったという。モルヌピラビルはSARS-CoV-2に対し活性を示す、経口小分子抗ウイルスプロドラッグである。NEJM誌オンライン版2021年12月16日号掲載の報告。発症後5日以内に治療開始、800mgを1日2回、5日間投与 研究グループは、検査によりCOVID-19が確認され、重症化リスクが少なくとも1つあるワクチン未接種の軽症~中等症の成人患者を対象に、症状発症後5日以内に開始したモルヌピラビルによる治療の有効性と完全性を検証した。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはモルヌピラビル800mgを1日2回5日間投与し、もう一方にはプラセボを投与した。 主要有効性エンドポイントは、29日時点での入院または死亡の発生。主要安全性エンドポイントは、有害事象の発現頻度とした。 目標登録患者数1,550例の50%が29日間の追跡を受けた時点で、事前に規定した中間解析を行った。対プラセボの入院/死亡リスク、中間解析で-6.8ポイント差 被験者1,433例が無作為化を受け、716例がモルヌピラビル群に、717例がプラセボ群に割り付けられた。両群のベースライン特性は、性別の偏り(女性がモルヌピラビル群のほうが多く、中間解析では7.6ポイント差、全解析では4.7ポイント差)を除けば類似していた。 中間解析(15ヵ国78地点で775例が登録)では、モルヌピラビル群の優越性が示された。29日間のあらゆる入院または死亡のリスクは、モルヌピラビル群(385例中28例、7.3%)がプラセボ群(377例中53例、14.1%)よりも有意に低下した(群間差:-6.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-11.3~-2.4、p=0.001)。 無作為化を受けた全被験者を対象とした解析でも、29日間の入院または死亡の発生率は、プラセボ群(699例中68例、9.7%)よりも、モルヌピラビル群(709例中48例、6.8%)が低率だった(群間差:-3.0ポイント、95%CI:-5.9~-0.1)。 サブグループ解析は全体解析とほぼ一貫した結果だったが、SARS-CoV-2感染既往者や、ベースラインウイルス量が低値の感染者、糖尿病患者などでは、推定群間差がプラセボ群で良好だった。 29日間の死亡は、プラセボ群9例、モルヌピラビル群1例だった。有害事象の発生率は、それぞれ33.0%(701例中231例)、30.4%(710例中216例)だった。

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第90回 新型コロナウイルスはヒトに感染することで弱体化する?国立遺伝研の研究で考えた「ヒト-ウイルス」生態系

デルタ株はワクチン接種によってではなく、ヒトに感染したことで収束かこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年始年末は大学の先輩の住む長野県原村の別荘を訪ねた後、中央線で実家のある愛知に帰り、正月明け、大学時代の友人が住む浜松で新幹線を途中下車、一杯飲んで帰って来ました。原村と実家は例年以上に厳寒で、寒さが苦手な私にはとても堪えました。さて、浜松の友人は、同じ大学の理学部で生物学を学んだ生物学者(専門は発生学)です。卒業後米国に留学し、長年ニワトリの足の発生を研究、15年ほど前に日本に帰ってきました。浜松駅前の焼鳥屋で雑談する中、昨年夏のコロナのデルタ株による感染拡大が突然収束した理由について興味深い話をしてくれました。曰く、「変異株が次々現れても、流行は必ずピークを迎え、収束していくのが不思議だと思っていたが、秋頃、国立遺伝研究所の発表で『デルタ株はゲノムの変異を修復する酵素の変化が起こり、修復能力が低下して死滅し、収束したのでは』という説が報道されていた。マスクなどの感染予防やワクチン接種ではなく、むしろヒトに感染することで弱体化した、という説だが、説得力もあってなるほどと思ったよ」。というわけで、今回は、誰もデルタ株収束の理由を明快に説明してくれませんので、この説について少し考えてみたいと思います(年末にあった、アデュカヌマブ未承認や診療報酬改定率のニュースはまた別の機会に)。ゲノムのエラーを修復する「nsp14」に関わる遺伝子が変化、修復不全に帰京してからニュースを調べてみると、この研究に関する報道を見つけました。それは、国立遺伝学研究所と新潟大のチームが2021年10月に開かれた日本人類遺伝学会で発表した研究成果です。ウイルスは増殖する際にゲノムを複製しますが、時々ミスが起きてエラーが生じます。このエラーが積み重なると、やがて増殖できなくなります。このエラーを修復するのが「nsp14」と呼ばれる酵素で、これが正常に働けばエラーは修復されて増殖は続き、感染の流行も続く、というわけです。10月31日付の中日新聞等の報道によれば、国立遺伝学研究所と新潟大の研究チームは国内で検出した新型コロナのゲノムデータを分析しました。その結果、第5波では、nsp14の酵素活性に関わる遺伝子が変化したウイルスの割合が感染拡大とともに増え、ピークの前から収束までの間は、感染者のほぼすべてを占めていた、とのことです。2020年秋から21年3月頃まで続いた第3波でも、同様の傾向が確認できたそうです。さらに、nsp14の遺伝子が変化したウイルスではエラーの修復が不十分となるため、新型コロナウイルスのゲノムの変異が通常の10〜20倍あったそうです。研究チームは、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC:apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like」という酵素がnsp14の遺伝子を変化させた、と推測しています。ヒトの身体の中にウイルスが侵入すると、危険信号ともいえるサイトカインというタンパク質が放出されます。このサイトカインによって誘導される酵素の一つがAPOBECです。APOBECが侵入してきたウイルスのnsp14の遺伝子に変化をもたらし、ゲノム複製時のエラーの修復が不十分となってウイルス増殖を阻害したのではないか、というのが研究チームの仮説です。なお、日本人をはじめとしたアジア・オセアニアにAPOBECの活性が強い人が多いそうです。友人は最後に、「RNAウイルスであるコロナウイルスは大型のウイルスで、そのRNAポリメラーゼは“高性能”なポリメラーゼ。“高性能”とは、複製のミスがあればそれを修復する酵素活性を含んでいる、ということ。だから、あまり突然変異は起こらない。この仮説のように、修復の酵素活性に関係するnsp14の変化で修復ができなくなれば、ウイルスのゲノム情報は複製の度にボロボロに壊れていき、最後には増殖できなくなる。感染が拡大しても3〜4ヵ月で収束するのはそのせいかもね。ただ、現場の医師があまりこの仮説に食いついていないのが気になる。ひょっとしたら内容をきちんと理解できていない可能性もある」と話していました。カンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動この仮説は、動物生態学(アニマル・エコロジー)の立場からも、とても理解しやすいと思います。すべての生物は適当な環境下にあれば絶えず数を増やす方向に働きます。しかし、繁殖能力をフルに発揮すれば、たちまち数が増え過ぎて“人口爆発”を起こします。そんな時、生き残った個体を殺すような「外力」が働き、今度は数が減少に転じます。ここで言う「外力」とは、食糧不足であったり、外敵の登場であったり、個体同士の争いであったりとさまざまで、各要素の消長によって個体の数のバランスが保たれていく、というのが生態学の一つのセオリーです。ちなみに、昔の生態学の教科書には、カナダの森林に住むカンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動のグラフが必ず載っています。カンジキウサギが増えると、それを食べるオオヤマネコが増え、それに伴いカンジキウサギが減る。カンジキウサギが減れば、エサが減るのでオオヤマネコが減る……、というグラフで、その変動は約10年周期で繰り返されるそうです。今改めて見てみると、そのグラフの振幅の波は、さながらコロナの患者数の波のようでもあります。「ヒト-ウイルス」生態系がうまく働けば……ウイルスは厳密には生物とは言えず、動物生態学のセオリーが当てはまるかどうかはわかりませんが、仮にヒトもウイルスもそうした生態系の中に組み込まれた要素である、と考えれば、コロナの感染爆発の突然の収束にも納得がいきます。コロナウイルスはヒトに感染し健康上の害を及ぼしますが、逆にヒトは感染することによってコロナウイルスに対して増殖を抑制するような遺伝子的な「外力」を与えているわけです。人類全体としては、感染を避けるのではなく、むしろどんどん感染することでウイルスを弱らせることができるのだとしたら、それこそ“エコ”なことではないでしょうか。なにしろ、無用なモノや技術を使わないで済むのですから。マスクや手洗いといった目先の物理的な感染防御策や、ワクチンといった薬物(科学技術)による防御策ではなく、「ヒト-ウイルス」という何億年もかけて築き上げられてきた生態系のシステムによって、新型コロナウイルスは自然と弱毒化や増殖不能に向かうかもしれない……。久しぶりに旧友と会ったおかげで、そんな楽観論が頭の中をぐるぐる廻り、昨年よりもお酒が美味しく飲めた年始でした。

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モデルナ製とファイザー製、それぞれの心筋炎・心膜炎リスク因子/BMJ

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnders Husby氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種と心筋炎/心膜炎との関連を調査する目的で、デンマーク住民を対象にコホート研究を行った。その結果、ワクチン未接種者と比較して、mRNA-1273(Moderna製)ワクチンは心筋炎/心膜炎の有意なリスク増加と関連しており、とくに12~39歳でリスクが高いこと、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)ワクチンは女性においてのみ有意なリスク増加が認められたことが示された。ただし、絶対発症率は若年層でも低いことから、著者は「今回の知見の解釈には、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の利点を考慮すべきであり、少数のサブグループ内でのワクチン接種後の心筋炎/心膜炎のリスクを評価するには、より大規模な国際的研究が必要である」と述べている。BMJ誌2021年12月16日号掲載の報告。デンマークの12歳以上の住民約493万人について解析 研究グループは、デンマークの予防接種登録(Danish Vaccination Register)、患者登録(Danish National Patient Register)、および市民登録システム(Danish Civil Registration System)を用い、2017年1月1日~2020年10月1日のデンマーク居住者で12歳以上の493万1,775人の全個人について、2020年10月1日または12歳の誕生日(いずれか遅いほう)から、移住、死亡、イベントまたは2021年10月5日まで追跡調査した。血液検査値はRegister of Laboratory Results for Research、PCR検査結果はDanish Microbiology Databaseから情報を得た。 主要評価項目のイベントは、24時間以上の入院を要するトロポニン値上昇が認められた心筋炎/心膜炎の診断とした。ワクチン接種前の追跡期間と、1回目および2回目のワクチン接種後28日間の追跡期間を比較し、年齢を基礎タイムスケールとしたCox比例ハザードを用い、性別、併存疾患、その他の交絡因子で補正したハザード比(HR)を推定した。 なお、研究対象のワクチンは、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)およびmRNA-1273(Moderna製)とした。絶対発症率は低い 追跡調査期間中に269例が心筋炎/心膜炎を発症した。108例(40%)が12~39歳、196例(73%)が男性であった。 BNT162b2ワクチンを接種した348万2,295例においては、接種日から28日以内に48例が心筋炎/心膜炎を発症し、未接種者と比較した補正後HRは1.34(95%信頼区間[CI]:0.90~2.00)、接種後28日以内の絶対発症率(10万人当たり)は1.4(95%CI:1.0~1.8)であった。女性および男性別の補正後HRはそれぞれ3.73(95%CI:1.82~7.65)、0.82(0.50~1.34)、絶対発症率はそれぞれ1.3(95%CI:0.8~1.9)、1.5(1.0~2.2)であった。12~39歳の補正後HRは1.48(95%CI:0.74~2.98)、絶対発症率は1.6(95%CI:1.0~2.6)であった。 mRNA-1273ワクチンを接種した49万8,814例においては、接種日から28日以内に21例が心筋炎/心膜炎を発症し、補正後HRは3.92(95%CI:2.30~6.68)、絶対発症率は4.2(2.6~6.4)であった。女性および男性別の補正後HRは、それぞれ6.33(95%CI:2.11~18.96)、3.22(1.75~5.93)、絶対発症率はそれぞれ2.0(95%CI:0.7~4.8)、6.3(3.6~10.2)であった。12~39歳の補正後HRは5.24(95%CI:2.47~11.12)、絶対発症率は5.7(95%CI:3.3~9.3)であった。

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