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国内オミクロン株感染者139例の臨床的特徴/感染研

 国立感染症研究所は、国内におけるオミクロン株の疫学的・臨床的特徴を迅速に把握することを目的として、検疫および国内にて初期に探知されたオミクロン株症例について、積極的疫学調査を行った。18日、第5報として収集されたすべての結果が報告された。【対象症例】 2021年11月29日~2022年1月12日までに本調査の協力医療機関に入院し診療を行った新型コロナウイルス感染者の中から、ゲノム解析によりオミクロン株感染が確定した139例。【調査方法】 退院後に調査票を用いて、基本情報、渡航情報、ワクチン接種歴、基礎疾患、入院時のバイタルサイン・臨床症状、入院期間中に観察された臨床症状、合併症、入院中の治療、入院経過・退院時転帰などの情報を収集し、疫学的記述を行った。【主な結果】・調査対象139例の内訳は、男性91例(65.5%)、女性48例(34.5%)であり、年齢の中央値は33歳(0-81)。20~50代が7割を占め、10代以下が2割、60代以上は1割だった。・BMIの中央値(四分位範囲)は22.3kg/m2(19.1-25.3)で、33例(23.7%)に喫煙歴、73例(52.5%)に飲酒歴を認めた。・5例(3.6%)に過去のSARS-CoV-2感染歴が認められた。発症から入院までの期間の中央値(四分位範囲)は3日(2-4)であった。・ワクチン接種歴は3回が3例(2.2%)、2回が86例(61.9%)、1回が4例(2.9%)、接種なしが46例(33.1%)。未接種者(1回接種・接種なし)50例は10歳未満が32%と多くを占めた。・何らかの基礎疾患を有した症例は30例(21.6%)であり、高血圧(12.2%)、脂質異常症(7.9%)、肥満(4.3%)の頻度が高かった。・入院時の体温、脈拍数、呼吸数の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8℃(36.5-37.2)、86回/分(77-98)、18回/分(16-20)だった。酸素飽和度の中央値(範囲)は98%(95-100)で、1例が酸素2L/分の投与を必要とした(基礎疾患を有する80代のワクチン未接種者)。・入院時、106例(76.3%)が何らかの症状を認めていた一方、無症状者は33例(23.7%)で、うち5例が入院後に何らかの症状を認めた。・COVID-19診断による入院時の主な症状は、咳嗽(46.0%)、咽頭痛(33.8%)、37.5℃以上の発熱(30.9%)、鼻汁(18.0%)で、味覚障害・嗅覚障害はそれぞれ1例(0.7%)に認められた。・入院時、139例中124例が胸部X線検査もしくはCT検査を受け、7例(5.6%)に肺炎像を認めた(X線:3/108例、CT:5/45例)。血液検査所見は概ね正常範囲内だった。・139例中26例(18.7%)にCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われ、113例(81.3%)が対症療法のみであった。ICUでの加療や、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)の使用といった重症治療を受けた者は認めなかった。・全入院期間の中央値(四分位範囲)は11日(9-14)で、細菌性肺炎や急性呼吸切迫症候群(ARDS)の合併例は認めなかった。・発症から退院までの期間に観察された主な症状は、咳嗽(56.8%)、37.5℃以上の発熱(56.1%)、咽頭痛(41.7%)、鼻汁(32.4%)、味覚障害(7.2%)、嗅覚障害(5.8%)だった。・28例(20.1%)が退院まで無症状で経過し、133例(95.7%)が自宅退院した。残りのうち4例(2.9%)は医療機関へ転院し、2例(1.4%)が医療機関以外の施設へ入所した。・ワクチン接種者、未接種者ともに死亡例は認めなかった。 なお、本調査結果はワクチン接種者と未接種者の比較を目的としたものではない。

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第97回 「ブースター効果は5ヵ月」報道前に、メーカー幹部らが保有株を大量売却

新型コロナワクチンのブースター接種による重症化予防効果は、5ヵ月後に約30%に低下するという米疾病予防管理センター(CDC)の研究結果が報じられる間近に、米モデルナの経営陣が保有株を売却していたことがわかった。各国でブースター接種が進められる中、5ヵ月後に実質的な効果が失われるという研究結果もさることながら、公表される直前での保有株売却は、経営陣への不信感を招きかねない。米『ニューヨーク・タイムズ』の2月11日の報道によると、CDCが公表した研究結果は「新型コロナウイルス感染症ワクチンは、ブースター接種によって重症化を予防する効果は87%に達するが、5ヵ月後には31%に低下する」というものだった。ワクチン関連株価の下落にCDC研究結果が拍車をかける米メルクの新型コロナ経口治療薬モルヌピラビルが各国で承認されたり、世界で感染のピークアウトが指摘されたりした影響で、新型コロナワクチン需要を巡る減速観測が強まり、ワクチン関連株価は下落傾向にある。そのような状況下、CDCの研究結果がさらに株価下落に追い打ちをかけた。モデルナの株価は、2月14日だけで13%下落し、過去10ヵ月間の最安値(140ドル)を割り込んだ。デルタ株流行の最中にあった昨年8月の最高値から70%以上も株価を下げることになった。また、米ファイザーも同日、日本も特例承認した経口治療薬パクスロビド(パキロビッドパック)が期待されているにもかかわらず、株価が2%下落した。モデルナCEOら経営幹部が報道前に保有株を売り抜ける株価下落の原因は、ほかにもある。2月11日に開示された報告書で、モデルナの最高経営責任者(CEO)のステファン・バンセル氏(49歳)を含む4人の幹部が、前週に自社株を売却していたことが発覚したのだ。米国のCEOの報酬は超高額で有名だ。報酬として自社株やストック・オプション(自社株購入権)が提供され、固定報酬よりも短期~長期インセンティブの割合が圧倒的に大きい。とはいえ、CDCの研究結果公表の間近に保有株を売却したタイミングは、株式市場に不信感をもたらした。売却額が最も多いバンセル氏は、1株当たり約155ドルで約1万9,000株を売却し、税引き前で約300万ドル(3億4,500万円)を得たほか、これまでのコロナ・パンデミック期間に計200万株近くを売却したという。バンセル氏はフランス出身で、米イーライリリー・アンド・カンパニーのベルギー責任者や、フランスの体外診断薬メーカー・ビオメリューCEOを経て、2011年にモデルナCEOに就任、同社株式の9%を保有した。ちなみに、ファイザーCEOのアルバート・ブーラ氏(60歳)も2020年11月、コロナワクチンへの期待から株価が上昇する中、保有株13万株を売却して560万ドル(約5億9,000万円)を手にした。米国の経営者はビジネスライクだとはいえ、世界では累積感染者数が4億人を超え、累積死亡者数が600万人に上る状況下、自社製品のマイナス評価を前提に、保有株を売り抜けて巨額の私的利益を確保する経営陣の姿勢は、到底納得できるものではない。4次接種を見通したワクチン接種政策が必要ところで、コロナワクチン開発企業の株価が下がる傾向は、コロナ禍の終息を示唆しているのかもしれない。また、日本政府の専門家からは「感染拡大は2月上旬にピークアウトした」という指摘もある。しかし油断は禁物だ。感染後の後遺症や、基礎疾患を持つ人や高齢者の重症化・死亡リスクを考えると、やはりワクチン接種による感染予防の重要さに変わりはない。ワクチン開発企業トップのマネーゲームの動向にかかわらず、ブースター接種が遅れている日本では、その推進が急務だ。ワクチンの有効期間や新たな変異株の発生可能性などを踏まえれば、4回目接種を見通したワクチン施策をも考えなくてはいけないかもしれない。日本の政治家には、どうか目先のことに追われず、大局的な視点で政策を考えてほしい。国や国民の危機管理を担うことは、ビジネスとは違うのだ。

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コロナ感染での獲得免疫、ワクチン接種で1年以上持続/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのSARS-CoV-2感染予防効果について、英国・Health Security AgencyのVictoria Hall氏らが、医療従事者約3万6,000例を対象に行った前向きコホート試験の結果、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の2回接種の有効率はChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)と比べて高率だが短期間であり、6ヵ月を過ぎると大きく低下することが示された。また、感染者の獲得免疫は、感染後1年で減衰するものの、ワクチン接種によって1年以上高率のままであることも示された。NEJM誌オンライン版2022年2月16日号掲載の報告。ワクチンと既感染による感染予防効果を検証 SARS-CoV-2への感染とワクチン接種による免疫獲得と感染予防の期間と有効性を明らかにするため、研究グループは、英国内でルーチンのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を受けていた医療従事者3万5,768例を対象に前向きコホート試験を行った。 ワクチン初回接種から10ヵ月以内のワクチン有効性と、既感染による獲得免疫について、感染確定者のワクチン接種の有無別、また既感染で階層化することで評価した。 既感染の有無、ワクチンの種類と接種間隔、人口統計学的特性、および職場におけるSARS-CoV-2曝露で補正を行ったCox回帰モデルを用いて評価した。BNT162b2ワクチン、接種後約中央値201日後の有効性は51% 被験者3万5,768例のうち、SARS-CoV-2既感染者は27%(9,488例)だった。被験者のワクチン2回接種率は97%と高く、うちBNT162b2ワクチン2回接種を6週間以上の長期間隔で接種した人は78%、同6週間未満の短い間隔で接種した人は9%、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンを接種した人は8%だった。 2020年12月~2021年9月に、SARS-CoV-2初回感染は2,747件、SARS-CoV-2再感染210件が報告された。 非感染・BNT162b2ワクチンの長期間隔接種者の補正後ワクチン有効率は、2回目接種後14~73日は85%(95%信頼区間[CI]:72~92)であったが、2回目接種から中央値201日後(四分位範囲:197~205)は51%(95%CI:22~69)だった。同有効性は、接種間隔が長期の場合と短期の場合では有意な差はなかった。 ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種者では、2回接種後14~73日の補正後ワクチン有効率は58%(95%CI:23~77)と、BNT162b2ワクチン接種群に比べかなり低率だった。 既感染による獲得免疫は、ワクチン未接種者では1年後に低下したが、18ヵ月以上前の感染者でもワクチン接種を行うことで、有効性は90%以上を維持し続けていた。

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オンライン?現地?学会参加状況と今年の開催希望/会員医師アンケート

 新型コロナウイルス感染流行の影響で、この2年あまり、学術集会はオンライン・ハイブリッド形式での開催が主流になっている。オンライン化によって医師の学術集会への参加状況は変わったのか。2020年の調査(急増するオンライン学会、参加経験と満足度は?/医師1,000人に聞きました)に引き続き、会員医師1,000人に昨年の参加状況や今年以降に希望する開催形態を聞いた。 「2021年に参加した学術集会の総数」を聞いた質問では、「2」との回答者が最多(22%)だったが、「0」との回答者が13%いる一方で「10以上」との回答者4%いるなどバラツキが見られた。 年代別に見ると、30代は平均2.8回(うちオンライン参加2.4回)、40代は3.3回(同2.7回)、50代は2.8回(同2.6回)と大きな差はなく、かつオンラインで参加した割合が高かったが、60代以上は4.1回(3.0回)と参加数が多く、ほかの世代に比べて現地参加した人の割合が高かった。 「オンライン開催になったことで初参加した学術集会はありますか?」(カッコ内は回答者の標榜科)との質問では、「日本内科学会」(循環器内科、腎臓内科等)、「日本内科学会地方会」(内科)、日本感染症学会(内科、産婦人科等)、「日本禁煙学会」(外科)等の多様な回答が集まった。専門領域の中心となる学会ではないが、サブ領域や従来から関心のあった分野の学会がオンライン化で参加しやすくなったので参加してみた、という流れのようだ。 「現地/オンライン/ハイブリッドのうち、今後数年間における学術集会の開催形式として、希望する形式はどれですか?」という質問には、「ハイブリッド」が60%で圧倒的な支持を集め、「オンライン」は27%、「現地」は13%だった。 各開催形態のメリット・デメリットを聞いた質問においても、ハイブリッド形式は「時間効率がよく、ギリギリまで仕事ができる」「コロナの流行状況によって判断できる」とメリットを挙げる声が多数だった。ハイブリッド形式のデメリットとしては「特にない」という声のほか、「開催費用がかさんで参加料が高くなりそう」「開催者の手間が多くなる」といった、参加者よりも開催者側からの問題点を挙げる声が目立った。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中『オンライン?現地?学会参加状況と今年の開催希望/会員医師アンケート』<アンケート概要>・タイトル:オンライン学会の参加状況について・内容:2021年の学会参加状況と、2022年に向けて希望する開催形式について。・対象:ケアネット会員医師1,000人(勤務先の病床数20床以上)・実施期間:2021年12月20日(月)・調査方法:インターネット

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症例報告は自分のキャリア形成である【ちょっくら症例報告を書いてみよう】第2話

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、臨床医が症例報告を書くことについて考えてみたいと思います。連載を読んでちょっとでも皆さまが症例報告を書くお役に立てましたら幸いです。前回は「自分が得た知識・経験を共有することの意義」について述べました。今回は症例報告をすることによる自身のキャリアにとってのメリットについて述べたいと思います。症例報告を積み重ねると「専門家」になる「症例報告なんて大した実績にならないし、自分のキャリアにとって無駄なんで…」なんて思っていませんか。症例報告が実績にならないというのは大きな誤解です。もちろん症例報告だけでアカデミックな地位が得られるわけではありませんが、自分の専門性を高めるためには大いに役に立ちます。私の人生最初の症例報告は、「回帰熱」という珍しい輸入感染症の症例でした。Kutsuna S, et al. The first case of imported relapsing fever in Japan. Am J Trop Med Hyg. 2013;89:460-461.〔被引用数:17〕「回帰熱ってなんやねん」と思われたかと思いますが、数日間熱が続いた後、1週間くらいの無熱期があり、また数日間発熱し…という発熱を繰り返す珍しい感染症です。記録が残っている範囲では、この報告が最初の日本での回帰熱の報告になります(ちなみに日本ではこれまでに2例の回帰熱が報告されており、どちらも私が診断しています)。このような珍しい症例報告をすると、何が起こるかというと、ときどき症例相談が舞い込んでくることになります。「この周期性発熱の患者さん、回帰熱の可能性ないですか?」「回帰熱の検査ってどこでできるんですか?」とかそういう相談です。こうした相談を受けていると、そのうち「回帰熱のことは忽那に相談すればいい」という流れになります。回帰熱なんて激レアな感染症なので、そんなに活躍の場はありませんが、とりあえず「誰も診たことがない疾患を診たことがある」というのは大きなアドバンテージです。症例報告は連鎖するさて、回帰熱の症例報告の影響は回帰熱だけに留まりません。たとえば私が書いた症例報告をインターネットでみつけた患者さん自身が「私も熱を周期的に繰り返してるんですが、回帰熱じゃないですか?」と受診されたことがありました。この方は回帰熱ではなく最終的に「成人発症PFAPA症候群」というこれまた日本初の症例ということがわかりました。Kutsuna S, et al. The first case of adult-onset PFAPA syndrome in Japan. Mod Rheumatol. 2016;26:286-287.〔引用数:19〕ここから私の興味は周期性発熱にも波及することになります。また、輸入感染症の世界にも足を踏み入れることになった私は、とりあえず自分の経験した珍しい輸入感染症の症例をひたすら報告していきました。当時はこれが自分の将来にどういう影響を与えるかなんてことはもちろん考えずに書いていました。その中に、「ジカウイルス感染症」の報告があります。Kutsuna S, et al. Two cases of Zika fever imported from French Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014. Euro Surveill. 2014;19:20683.〔被引用数:212〕ジカウイルス感染症という、当時まったく不明であった蚊媒介感染症による輸入例を“Eurosurveillance”というヨーロッパCDCの学術誌に報告したものです。これも当時は日本第1例目と2例目だったわけですが、報告した当初は「また忽那がマニアックな症例報告を書いとるわ…ホンマしょーもない…」くらいに思われていたわけです。しかし、この後ブラジルでジカウイルス感染症がアウトブレイクし、「妊婦さんが感染すると児が小頭症になることがある」ということがわかりジカウイルス感染症は世界な注目を集めます。私の“Eurosurveillance”の報告は、日本最初の報告であったというだけでなく、尿からジカウイルスを検出したのが世界で初めてということもあって、尿検体を使った診断という点でも評価されました。症例報告で被引用数が200超えというのはなかなかではないでしょうか。こうした症例報告を経て、私は蚊媒介感染症の専門家としての確固たる地位を固めていったわけです(自分で言う)!症例報告は連鎖して、それがいつしか大きな円となり専門性へと繋がることがあるということですね。症例報告は医師の職務経歴書ということで、たかが症例報告、されど症例報告です。症例報告とは、自分はこういう症例を経験してきました、という言わば自己紹介のようなものであり、症例報告が自分自身のキャリアを形成していくことがあります。そして、その症例報告から派生して、別の症例報告に繋がることもあるし、それらの症例報告が繋がることでより広いカテゴリーでの専門性を身に付けることも可能になります。自分が経験した症例を報告することで発生するポジティブ・フィードバックを期待して、ガンガン症例報告していきましょう!!

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第100回 COVID-19ワクチン接種後の90分間の運動で抗体反応が増す

アイオワ州立大学の研究チームが実施した無作為化試験の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)ワクチンやインフルエンザワクチン接種後すぐから心拍数およそ120~140/分の運動を1時間半(90分間)したところその後数週間の検査でのそれらワクチンへの抗体反応が一貫して非運動群を上回りました1,2)。ワクチン接種前の運動が抗体反応を改善することは先立つ研究ですでに知られており、去年スペインの研究者Pedro Valenzuela氏等は運動がCOVID-19ワクチンのアジュバント(増強役)を担いうる可能性を示唆し、接種前の運動習慣や接種直前の単発の運動のCOVID-19ワクチン免疫反応への効果を調べることを提案しました3)。アイオワ州立大学のJustus Hallam氏等はその提案を受けて上述の試験を実施したわけですが、一捻り加えています。ワクチンの接種後に身体に負荷をかけると抗体反応が増すことが示されていることを頼りに、接種前の運動の効果ではなく接種後の有酸素運動が抗体反応にどう影響するかを検討しました。試験は週に2回以上の程々にきついかきつめ(moderate or vigorous)の運動習慣がある人を募って実施され、Pfizer/BioNTechのSARS-CoV-2ワクチン接種後に90分間の軽め~程々にきつめ(light- to moderate-intensity)の運動をした群のその後の検査での抗体反応は接種後に運動しなかった群を上述の通り上回りました。重要なことにCOVID-19ワクチン接種後に運動しても副反応は増えませんでした。ワクチン接種後の運動が抗体反応を上向かせる効果はどうやらCOVID-19ワクチンに限ったことではないらしく、インフルエンザワクチン2種類を接種した42人の検討でも同様の抗体反応増強効果が認められています。抗体生成を増やす役割を担う1型インターフェロン(1型IFN)を誘発するアジュバントはワクチンへの抗体反応を促すことが知られており、試験の運動時間を90分としたことはその長さの運動が1型IFNの一種・インターフェロンα(IFNα)を有意に増やすことが未発表ながら確認されていることを根拠の一つとしています。Hallam氏等はマウスの実験でその根拠がどうやら正しいことを確認しています。運動がワクチン接種の抗体反応を高める効果がIFNα阻害抗体をワクチン接種時に投与したマウスでは弱く、運動のワクチン抗体反応増強にはIFNαがどうやら貢献しているようです。インフルエンザワクチンの試験では接種後90分間の運動に加えてその半分の45分間の運動の効果も検討されました。というのも齢を重ねた成人には90分間の運動より45分間の運動のほうがより容易いであろうからです。結果はというと残念ながら45分間の運動のワクチン効果増強は認められず、運動しなかった群の抗体反応を上回りませんでした。研究者は1時間の運動ならどうかを調べるつもりです2)。試験では運動習慣がある人を募ったように、日頃運動していない人がCOVID-19ワクチン接種後に運動するという選択肢を選ぶことはおそらく土台無理な話で、その選択肢を選べるようにするにはまずは日頃の運動習慣を身に付けてもらう必要がありそうです。COVID-19患者およそ5万人を調べた試験4)では運動習慣がCOVID-19重症化を防ぐ効果があることが示されています。常に運動不足な人は必要とされる運動を日頃こなしている人に比べてCOVID-19入院、集中治療、死亡をより多く被っており、運動を促す保健の取り組みを優先し、いつもの診療で運動を後押しすることが必要と著者は結論しています。体力をつけることは若いころから始めるに越したことはありません。スウェーデンでの試験の結果、若かりし18歳ごろの心肺機能が高かった男性は低かった男性に比べてSARS-CoV-2感染しても大事に至ることは少なく、入院、集中治療、死亡をより免れていました5,6)。心肺機能が良好だった男性のCOVID-19死亡率は最も悪かった男性のおよそ半分であり、若いころの筋力が高いこともCOVID-19重症化し難いことと関連しました。COVID-19重症化を防ぎ、ワクチンの効果も高めうる運動で世間みんなの体力を底上げすることは感染流行の阻止に大いに貢献するでしょう5)。参考1)Exercise post-vaccine bumps up antibodies, new study finds / Iowa State University2)Hallam J,et al. Brain Behav Immun. 2022 Feb 5;102:1-10. [Epub ahead of print]3)Valenzuela PL, et al. Brain Behav Immun. 2021 May;94:1-3. 4)Sallis R, et al.Br J Sports Med. 2021 Oct;55:1099-1105. 5)Af Geijerstam A, et al. BMJ Open. 2021 Jul 5;11:e051316. 6)Highly fit teenagers coped better with COVID-19 later in life / Eurekalert

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オミクロン株に対するコロナ治療薬の効果を比較検証/NEJM

 オミクロン株が世界中で猛威を振るう中、新型コロナウイルスの新たな治療薬の開発が進んでいる。国立感染症研究所の高下 恵美氏ら研究グループが、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでのオミクロン株に対する効果について検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年1月26日号のCORRESPONDENCEに掲載。ソトロビマブ、tixagevimab・cilgavimab併用はオミクロン株に対して中和活性を維持 今回、研究対象となった薬剤は、臨床試験中、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。検証の結果、抗体薬のetesevimab・bamlanivimab併用とカシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ)のオミクロン株に対する中和活性は、著しく低いことがわかった。それに対し、tixagevimab・cilgavimab併用とソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)は、オミクロン株に対して中和活性を維持していることが判明したという。抗ウイルス薬のレムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)は、オミクロン株の増殖を抑制することが示された。 オミクロン株は、初期のSARS-CoV-2と比較して、スパイク蛋白に少なくとも33の変異を有していることが判明しているため、FDAで承認されているモノクローナル抗体は、オミクロン株に対して効果が低い可能性があることが示唆されていた。 今回の検証では、7種類の抗体薬(etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブ)の単剤および併用について、オミクロン株の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するかどうかを、ライブウイルス焦点減少中和アッセイ(FRNT)を用いて、モノクローナル抗体の中和活性を評価した。 etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤および併用について、オミクロン株に対する効果を検証した主な結果は以下のとおり。・etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブの単剤使用では、最も高いFRNT50値(>5万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・カシリビマブは、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して高いFRNT50値(187.69~1万4,110.70ng/mL)で中和活性を示したが、オミクロン株に対するFRNT50値はベータ株に対して18.6倍、ガンマ株に対して75.2倍高かった。・tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤使用は、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して中和活性を保持していたが、これらのFRNT50値は、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株は3.7〜198.2倍高かった。・etesevimab・bamlanivimab併用では、ガンマ株に対する中和活性が著しく低下し、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、ベータ株とオミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に対する中和活性は維持されたが、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・tixagevimab・cilgavimab併用では、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対する中和活性は維持されたが、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株のFRNT50値は24.8倍~142.9倍高くなった。 また、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、PF-07304814)について、50%阻害濃度(IC50)を測定したところ、レムデシビルとモルヌピラビルは、オミクロン株に対する有効性が高く、PF-07304814は、オミクロン株に対する有効性が低いことが判明した。 本研究グループは、COVID-19治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するのかどうかを動物モデルで引き続き検証する予定だ。

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第90回 外科医9人脳神経外科医5人退職に揺れ動く大津市民病院の今後は?

<先週の動き>1.外科医9人脳神経外科医5人退職に揺れ動く大津市民病院の今後は?2.乳腺外科医裁判の最高裁、有罪判決を破棄し高裁に差し戻し3.まん防適用地域で発熱外来のオンライン診療料が2倍に4.医師の働き方改革に向けて、スライド集やeラーニングを提供/厚労省5.労働時間調査から地方の周産期医療体制の崩壊を危惧/日本医師会6.国内医薬品ランキングトップは中外製薬、2位武田薬品/IQVIA調べ1.外科医9人脳神経外科医5人退職に揺れ動く大津市民病院の今後は?滋賀・大津市立大津市民病院は、京都大学から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科の医師9人が、今年3月末~6月末にかけて順次退職する意向を示している問題で、今後京大からの医師派遣が見込めず、同診療科では軽症患者の手術しか実施できなくなる恐れがあることを明らかにした。救急受け入れや新型コロナウイルスの診療体制にも影響する可能性がある。報道によれば、経営状況をめぐって理事長ら経営陣と外科医とで意見が対立し、理事長による「自身が名誉教授を務める京都府立医大から代わりの医師を派遣してもらう」という趣旨の発言に対し、外科医側は退職を強要するパワーハラスメントだと主張している。慰留は難しく、同病院へ多数の医師を派遣する府立医大からも同診療科への医師派遣は見込めないという。また、脳神経外科でも理事長が京都府立大学の医師3人を招き脳卒中科を新設するとして、「(京大の派遣)医師2人を減らすよう」求めたことから、京大側は「信頼をもとに人事関係を構築していくことが困難」と判断。今年度中に脳神経外科医5人の退職も想定されており、今後の行方が懸念される。(参考)大津市民病院、手術は軽症のみの恐れ 医師9人退職意向、京大から派遣見込めず(京都新聞)「9医師が退職意向」と医師側文書 大津市民病院が弁明(産経新聞)脳神経外科5人も退職の可能性 医師一斉退職意向の大津市民病院(毎日新聞)2.乳腺外科医裁判の最高裁、有罪判決を破棄し高裁に差し戻し手術直後の女性患者にわいせつ行為をしたとして準強制わいせつ罪に問われていた乳腺外科医に対し、最高裁判所第2小法廷は18日、上告審判決で二審・東京高裁による懲役2年の判決を破棄し、高裁に差し戻した。本事件をめぐっては、原告の訴えを元に幻覚やせん妄の可能性を否定した高裁判決や、患者胸部から採取された被告の唾液のDNAデータを捜査当局が処分していることなど、問題があるとされてきた。最高裁はこれらの問題について、科学的検討が不十分で審理不尽の違法があるとして、審理を差し戻すこととした。被告の弁護団は、最高裁が無罪を確定せず審理を差し戻したことについて、「さらに被告人に過酷な試練を与え、非人道的な判断」と批判した。(参考)逆転有罪の医師、審理差し戻し DNA「信頼性解明を」―術後患者わいせつ・最高裁(時事通信)「審理尽くされていない」 手術後わいせつ事件で有罪破棄、最高裁(朝日新聞)術後の準強制わいせつ事件 最高裁が男性医師の有罪破棄、審理差し戻し「鑑定結果の信頼性は不明確」(東京新聞)3.まん防適用地域で発熱外来のオンライン診療料が2倍に政府は、まん延防止等重点措置が適用されている地域で、自宅療養中の患者に対するオンライン診療報酬の上乗せを、従来の2倍となる5,000円に引き上げた。これにより、すべての自宅・宿泊療養者について、陽性判明翌日までに健康観察や診療を実施できる体制を確保する。ただし、医療機関が発熱外来を行っていること公表する、あるいは保健所から健康観察の委託を受けていることが条件となっている。(参考)オンライン診療の報酬、発熱外来公表で2倍に(日経新聞)自宅等療養するコロナ患者へのオンライン診療等、一定要件下で二類感染症診療加算×2(500点)を算定可―厚労省(Gem Med)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その66)(事務連絡 令和4年2月17日)新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和4年2月18日変更)4.医師の働き方改革に向けて、スライド集やeラーニングを提供/厚労省厚生労働省は16日、「第4回 勤務医に対する情報発信に関する作業部会」で、2024年4月に始まる時間外労働規制の強化を前に、長時間労働が多い勤務医に対して情報発信する内容の検討や医療現場において行動変容を促す取り組みについて議論した。勤務医に向けて情報の周知を行うためにスライド集やeラーニング教材などのコンテンツを作成し、公式サイト「いきいき働く医療機関サポートWeb」から発信を行っていく。また、実際にモデル病院で、若手医師からベテラン医師、メディカルスタッフ、事務職も交えて意見交換を行う場を設け、「働き方改革に向けた課題抽出」を行った事例について共有し、このような場が「極めて有意義であった」とした。今後、働き方改革のためには「時間外労働を少なくする」だけでなく、業務の見直し、病院集約化が必要であり、今後現場に情報発信を行うために、25日に開催される第5回の作業部会で提言をまとめていく。(参考)医師の働き方改革、院内周知用eラーニング教材を作成「いきサポ」でコンテンツを公開、厚労省(CB newsマネジメント)多くの病院で「働き方改革意見交換会」実施を、働き方改革では病院集約化が必要―医師働き方改革・情報発信作業部会(Gem Med)5.労働時間調査から地方の周産期医療体制の崩壊を危惧/日本医師会日本医師会は16日の記者会見で、大学病院の産婦人科および周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院産婦人科医師の時間外・休日労働時間に対する調査結果を公表した。その結果、約4割(39.4%)の医師がA水準の上限時間(年960時間)を越え、10%の医師が年1,860時間を超えている状態であり、2024年4月に続勤務時間制限や勤務間インターバル規制が行われた場合、連続勤務せざるを得ない地域では周産期医療体制の崩壊につながると指摘した。医師の派遣について、大学病院側で「今後も派遣を制限する可能性はない」と答えたのは約1割、「制限する可能性がある」と回答したところは約半数、判断がつかないとの回答も約4割あり、産科医の派遣を制限する病院が増加する可能性がある。周産期医療の維持と医師の健康確保の両立のためには、医師独自の宿日直基準を設ける必要性がある。(参考)産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果(大学病院・周産期母子医療センター)について(日本医師会)資料 産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果について(同)6.国内医薬品ランキングトップは中外製薬、2位武田薬品/IQVIA調べ医薬品開発や医薬品情報サービスを提供するIQVIAジャパンは、2021年の薬価ベースの国内医療用医薬品市場データを17日に公表し、総売上高が2年ぶりに前年を上回ったと発表した。薬価ベースで前年比2.2%増、金額では2,270億円増となる10兆5,990億3,100万円。市場別にみると病院、薬局が2年ぶりのプラス成長に戻ったものの、開業医は2年連続でマイナスに沈んだ。売上ランキングでは5期連続で過去最高益を確保した中外製薬がトップ、前年首位だった武田薬品は2位となった。中外製薬は主力品のアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)やエミシズマブ(同:ヘムライブラ)が伸びたほか、新型コロナ関連で軽症~中等症IのCOVID-19に対して使われる中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)や、中等症IIからの重症患者に適応がある抗体医薬のトシリズマブ(同:アクテムラ)の売り上げ増加によると考えられる。国内市場は薬価改定や後発品推奨を受けて伸び悩んでおり、成長分野であるバイオ医薬品に力を入れてきた中外製薬の戦略が、今回、国内首位に押し上げる形となった。(参考)IQVIA・21年国内医療薬市場 中外製薬が首位奪取 製品トップはキイトルーダ 売上1000億円超に6製品(ミクスオンライン)国内医薬品市場 2年ぶりプラス…2021年、中外製薬が初の売り上げトップに(Answers News)IQVIA医薬品市場統計ー売り上げデータ(2021年1-12月)

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「災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー」ホームページで公開中/日本静脈学会

 新型コロナウイルス感染症はほかの感染症と比較して血栓リスクが高いことは知られている。今回、日本静脈学会はこのコロナ第6波を受け、コロナ×血栓症に関する内容を多くの医療者に発信したいと、昨年11月10日(水)と12月7日(火)にクローズド開催した『災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー』の編集動画を本ホームページへ公開した。 本学会は「日頃COVID-19治療に従事している医療従事者の皆さんのVTE対応への指標の一つとなるよう」思いを込めてセミナーを企画しており、本講演会については医師のみならず誰でも視聴可能だ。災害としてのCOVID-19と血栓症(前編)1『COVID-19患者で注意すべき血栓症・静脈血栓塞栓症とは?』 山下 侑吾氏(京都大学医学部附属病院 循環器内科)2『日本でもCOVID-19患者のVTE発症は多いのか?』 西本 裕二氏(兵庫県立尼崎総合医療センター 循環器内科)3『COVID-19:血栓症の診療指針と抗凝固療法の実際』 谷地 繊氏(JCHO東京新宿メディカルセンター 循環器内科)災害としてのCOVID-19と血栓症(後編)4『災害時VTEから考える自宅・宿泊療養患者さんのVTEの危険性』 岩田 英理子氏(JCHO南海医療センター心臓血管外科)5『静脈血栓症予防の理学療法 下肢運動と予防用弾性ストッキングの着用法』 杉山 悟氏(広島逓信病院)コメンテーター: 山本 尚人氏(浜松医療センター 血管外科) 佐戸川 弘之氏(福島県立医科大学附属病院 心臓血管外科) 福田 幾夫氏(吹田徳洲会病院 心臓血管センター長) 相川 志都氏(筑波メディカルセンター病院 心臓血管外科)

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妊産婦の新型コロナ感染、産科合併症と関連/JAMA

 妊娠中および出産後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、妊産婦死亡または重篤な産科合併症の複合アウトカムのリスク増加と関連していることが、米国・ユタ大学のTorri D. Metz氏ら国立小児保健・人間発達研究所(Eunice Kennedy Shriver NICHD)のMFMU(Maternal-Fetal Medicine Units)ネットワークによる「GRAVID(Gestational Research Assessments of COVID-19)研究」で明らかとなった。これまで、妊娠中または出産後のSARS-CoV-2感染が重篤な産科合併症のリスクを特異的に増加させるかどうかはわかっていなかった。JAMA誌オンライン版2022年2月7日号掲載の報告。2020年3月~12月に出産した妊産婦、SARS-CoV-2感染者vs.非感染者 研究グループは、GRAVID研究に参加している米国の17施設において、2020年3月1日~12月31日の期間に出産した妊産婦1万4,104例について後ろ向きに解析した(最終追跡調査2021年2月11日)。 妊娠中または産後6週間以内にPCR検査または抗原検査が陽性であった患者をSARS-CoV-2感染者とし、同期間の無作為に選んだ日に出産しSARS-CoV-2検査が陽性でない非感染者と比較した。SARS-CoV-2感染者は、COVID-19の重症度でさらに層別化した。 主要評価項目は、妊産婦死亡、または妊娠高血圧症候群、産褥出血、SARS-CoV-2以外の感染症に関連する重篤な疾患の複合、主要な副次評価項目は帝王切開による出産であった。中等度以上感染者で、妊産婦死亡/産科合併症、帝王切開の発生率が有意に高い 解析対象1万4,104例(平均年齢29.7歳)のうち、SARS-CoV-2感染者は2,352例、非感染者は1万1,752例であった。 SARS-CoV-2感染者は非感染者と比較し、主要評価項目のイベントと有意に関連していた(13.4% vs.9.2%、群間差:4.2%[95%信頼区間[CI]:2.8~5.6]、補正後相対リスク[aRR]:1.41[95%CI:1.23~1.61])。 妊産婦死亡の5例はすべてSARS-CoV-2感染者であった。SARS-CoV-2感染と帝王切開との間に有意な関連はなかった(34.7% vs.32.4%、aRR:1.05[95%CI:0.99~1.11])。 COVID-19の重症度が中等度以上のSARS-CoV-2感染者(586例)は、非感染者と比較して主要評価項目のイベント(26.1% vs.9.2%、群間差:16.9%[95%CI:13.3~20.4]、aRR:2.06[95%CI:1.73~2.46])、ならびに帝王切開による出産(45.4% vs.32.4%、12.8%[8.7~16.8]、1.17[1.07~1.28])と有意に関連していた。 一方、軽度または無症状のSARS-CoV-2感染者(1,766例)は非感染者と比較して、主要評価項目(9.2% vs.9.2%、群間差:0%[95%CI:-1.4~1.4]、aRR:1.11[95%CI:0.94~1.32])、ならびに帝王切開(31.2% vs.32.4%、-1.4%[-3.6~0.8]、1.00[0.93~1.07])のいずれも有意な関連はみられなかった。

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第96回 行政や官公庁はなぜ気づかない!?国民がワクチン3回目接種したくなるひと手間

オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大は新規感染者報告数だけを見ればややピークを過ぎつつあるようだ。もっともまだ気を緩められる状況ではないだろう。たとえば、東京都は過去1週間の各曜日の新規感染者報告数が前週同一曜日と比べて減少しているものの、後続指標である重症者数は一貫して増加している。国基準での重症病床使用率は2月16日現在、46.5%である。その中で数少ない切り札になりそうなのがワクチンの3回目接種だが、国内の3回目接種率は2月16日現在11.1%に止まり、先進国の中ではほぼ最低クラスと言ってよい。そんな最中、これを執筆中の私自身も3回目接種を終え丸1日が経過した。私の場合は過去2回の接種はファイザー製を選択したが、今回は交互接種でモデルナ製を選択した。私の住む自治体の場合、区の集団接種会場はモデルナ、個別接種医療機関はおおむねファイザーという住み分けがされており、接種券が届いた際はどちらも相当の余裕があった。たぶん、細かいことにこだわらなければ2週間前には接種は完了していただろう。しかし、自称『ワクチンマニア』のこだわりのため遅れてしまった。そのこだわりとは、ワクチンの種類としては「交互接種になるようモデルナを選択したい」というのが第一。次いで私自身は接種歴が記録されたイエローカードを2種類(米・CDC版とWHO版)保有しており、「接種後にカードへの英語記入をお願いしたい」。さらに欲を言えば「自分の接種風景を写真に収めておきたい」、この3つだ。イエローカードの記入を考えると、区の集団接種会場でお願いされても、接種実施者の項目に「○○区」と記入するのかどうかという問題もあるし、それ以上に集団接種会場のオペレーションは個別医療機関と違って現場に裁量がないはずなのでカード記入や写真撮影をお願いされても困るだろう。予約システムを見ると、区内のあるクリニックならばモデルナ製の接種が可能だったが、最寄り駅が7つも離れていることと、一見さんが写真撮影をお願いしてOKしてもらえるかどうかわからないので予約を躊躇してしまった。どうしようかと思いながら、1、2回目を接種したクリニックのホームページを念のため覗いてみたところ、ワクチン在庫の関係で特定週だけモデルナ製を接種すると記述がある。ここでは前回、イエローカード記入も写真撮影も了承してもらえたので、早速予約を入れた。接種当日、クリニックに到着すると、前回の接種時の補助をしていた看護師さんと目が合い「ああ、村上さん。今回もイエローカードと写真?」と先回りで言われてしまう始末。接種担当医師も前回と同じで「前回は副反応どうでした?」と聞かれたので、「まったくと言っていいくらい何もなく、仕込んだネタを外して笑ってもらえない芸人の気分でした」と答えると大笑いされた。ちなみに丸1日経っているが、今のところ注射部位を指で押せば軽い痛みがある程度で発熱もない。今回も「ネタを外した」ようだ。さて前置きが長くなってしまったが、3回目接種が進展していないことへの批判を受けて岸田 文雄首相は、菅 義偉前首相時代と同じく「1日100万回接種」の目標を掲げた。しかし、この実現に当たって目下障害になるものがある。それは当初定めた3回目接種の目標時期である「2回目接種から8ヵ月以上経過」という条件である。この件は本連載の第84回でも触れたが、あくまで行政的な判断である。医学的には各ワクチンで承認された追加接種適応にあるように「6ヵ月以上」である。第84回の執筆時に私は行政的判断としては妥当ではないかとの見解だったが、それはあくまで執筆時点での推定在庫を念頭に置いたもので、すでに状況は変わっている。地域差はあるものの当時と比べれば在庫はある。その意味ではもはや8ヵ月以上の条件はほぼ不要と言っていい。厚生労働省もホームページでも「追加接種の予約枠に空きがあれば、一般の方も順次前倒しで3回目のワクチン接種を受けられるようになりました」と但し書きをしているが、その下にまるで残骸のように過去の接種基準を付記したままである以上混乱を招きやすい。もちろん最近の目まぐるしい情勢変化があるため、ある種の「アリバイ」表記は必要だろうが、こうした表記は紛らわしく、誤解を生むことが多いもの。ならば、国から今まで以上に積極的に“予約枠次第で前倒しは可能”と情報発信すべきだ。結局、今はヒトも予算も国よりも限られる自治体がその負荷を追う形となり、あちこちの自治体で接種券に表記された接種可能時期と国の方針変更に応じた最新の接種時期を反映した各自治体ホームページでの情報の不一致が散見される。接種券を印刷し直している余裕がないため致し方ない措置だが、これではインターネット弱者は置き去りにされてしまう。一方で自治体も改善可能な点はある。一部では2回目接種から6ヵ月以上が経過したことで接種券が送付されているが、目下の予約状況に空きがあるにもかかわらず、予約開始日がかなり先の日時に固定されているという自治体もあるのだ。こうした自治体に居住している人によると、この件を区に問いただしても「あくまで区の方針なので」で押し切られ、予約開始日前の空き枠を指を咥えて見ているしかないそうだ。自治体も柔軟な対応が必要だろう。3回目接種になってから今回私が選択したモデルナ製は不人気で、そのことが3回目接種推進のハードルになっているかのようなことが書かれた記事がやけに目立つ。確かにファイザー製と比べ、心筋炎なども含めやや副反応の頻度が高いという報告もあり、避けられている側面はあるだろう。その意味では確かに足かせの一つかもしれないが、ここに挙げたもの以外にも、あちこちに目詰まりの要素は散見されるはずだ。その一つ一つを丁寧に解きほぐしていかない限り、3回目の接種率は思ったように上昇しないのではないかと内心危惧している。

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標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性【令和時代の糖尿病診療】第5回

第5回 標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性今回のテーマであるビグアナイド(BG)薬は、「ウィキペディア(Wikipedia)」に民間薬から糖尿病治療薬となるまでの歴史が記されているように、なんと60年以上も前から使われている薬剤である。一時、乳酸アシドーシスへの懸念から使用量が減ったものの、今や2型糖尿病治療において全世界が認めるスタンダード薬であることは周知の事実である。そこで、メトホルミンの治療における重要性と作用のポイント、その多面性から血糖降下薬を超える“Beyond Glucose”の可能性もご紹介しようかと思う。なお、ビグアナイドにはフェンフォルミン、メトホルミン、ブホルミンとあるが、ここから先は主に使用されているメトホルミンについて述べる。作用機序から考えるその多面性まず、メトホルミンについて端的にまとめると、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中ではインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用は肝臓での糖新生抑制である。低血糖のリスクは低く、体重への影響はなしと記載されている。そして主要なエビデンスとしては、肥満の2型糖尿病患者に対する大血管症抑制効果が示されている。主な副作用は胃腸障害、乳酸アシドーシス、ビタミンB12低下などが知られる。作用機序は、肝臓の糖新生抑制だけを見ても、古典的な糖新生遺伝子抑制に加え、アデニル酸シクラーゼ抑制、グリセロリン酸シャトル抑制、中枢神経性肝糖産生制御、腸内細菌叢の変化、アミノ酸異化遺伝子抑制などの多面的な血糖降下機序がわかっている2)。ほかにも、メトホルミンはAMPキナーゼの活性化を介した多面的作用を併せ持ち、用量依存的な効果が期待される(下図)。図1:用量を増やすとAMPキナーゼの活性化が促進され、作用が増強する1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンの大規模臨床試験が欧米で実施された。その結果、これまで汎用されてきたSU薬と比較しても体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善するなどのメリットが明らかになった。これにより、わが国においても(遅ればせながら)2010年にメトホルミンの最高用量が750mgから2,250mgまで拡大されたという経緯がある。メトホルミンの作用ポイントと今後の可能性それでは、メトホルミンにおける(1)多面的な血糖降下作用(2)脂質代謝への影響(3)心血管イベントの抑制作用の3点について、用量依存的効果も踏まえてみてみよう。(1)多面的な血糖降下作用メトホルミンもほかの血糖降下薬と同様に、投与開始時のHbA1cが高いほど大きい改善効果が期待でき、肥満・非肥満によって血糖降下作用に違いはみられない。用量による作用としては、750mg/日で効果不十分な場合、1,500mg/日に増量することでHbA1cと空腹時血糖値の有意な低下が認められ、それでも不十分な場合に2,250mg/日まで増量することでHbA1cのさらなる低下が認められている(下図)。また、体重への影響はなしと先述したが、1,500mg/日以上使用することにより、約0.9kgの減量効果があるとされている。図2:1,500mg/日での効果不十分例の2,250mg/日への増量効果画像を拡大するさらには高用量(1,500mg以上)の場合、小腸上部で吸収しきれなかったメトホルミンが回腸下部へ移行・停滞し、便への糖排泄量が増加するといわれており、小腸下部での作用も注目されている。これは、メトホルミンの胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害作用により再吸収されなかった胆汁酸が、下部消化管のL細胞の受容体に結合し、GLP-1分泌を促進させるというものである(下図)3)。図3:メトホルミンによるGLP-1分泌促進機構(仮説)画像を拡大するまた、in vitroではあるが、膵β細胞に作用することでGLP-1・GIP受容体の遺伝子発現亢進をもたらす可能性が示唆されている4)。よって、体重増加を来しにくく、インクレチン作用への相加効果が期待できるメトホルミンとインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の併用は相性が良いといわれている。(2)脂質代謝への影響あまり知られていない(気に留められていない?)脂質代謝への影響だが、メトホルミンは肝臓、骨格筋、脂肪組織においてインスリン抵抗性を改善し、遊離脂肪酸を低下させる。また、肝臓においてAMPキナーゼの活性化を介して脂肪酸酸化を亢進し、脂肪酸合成を低下させることによりVLDLを低下させるという報告がある5)。下に示すとおり、国内の臨床試験でSU薬にメトホルミンを追加投与した結果、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)が低下したが、有意差は1,500mg/日投与群のみで750mg/日ではみられない。糖尿病専門医以外の多くの先生方は500~1,000mg/日までの使用が多いであろうことから、この恩恵を受けられていない可能性も考えられる。図4:TC、LDL-C、TGは、1,500mg/日投与群で有意な低下がみられる画像を拡大する(3)心血管イベントの抑制作用メトホルミンの心血管イベントを減らすエビデンスは、肥満2型糖尿病患者に対する一次予防を検討した大規模臨床試験UKPDS 346)と、動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者に対する二次予防を検討したREARCHレジストリー研究7)で示されている。これは、体重増加を来さずにインスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して、糖尿病起因の催血栓作用を抑制するためと考えられている8)。ここまで主たる3点について述べたが、ほかにもAMPKの活性化によるがんリスク低減や、がん細胞を除去するT細胞の活性化、そして糖尿病予備軍から糖尿病への移行を減らしたり、サルコペニアに対して保護的に働く可能性などを示す報告もある。さらに、最近ではメトホルミンが「便の中にブドウ糖を排泄させる」作用を持つことも報告9)されており、腸がメトホルミンの血糖降下作用の多くを担っている可能性も出てきている。しかし、どんな薬物治療にも限界がある。使用に当たっては、日本糖尿病学会からの「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」に従った処方をお願いしたい。今や医学生でも知っている乳酸アシドーシスのリスクだが、過去の事例を見ると、禁忌や慎重投与が守られなかった例がほとんどだ。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や投与開始直後、あるいは数年後に発現した症例も報告されている。乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴としては、1.腎機能障害患者(透析患者を含む)、2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態、3.心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、4.高齢者とあるが、まずは経口摂取が困難で脱水が懸念される場合や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以上1~4の事項に留意する。とくに腎機能障害患者については、2019年6月の添付文書改訂でeGFRごとの最高用量の目安が示され、禁忌はeGFRが30未満の場合となっているため注意していただきたい。図5:腎機能(eGFR)によるメトホルミン最高投与量の目安画像を拡大するBasal drug of Glucose control&Beyond Glucose、それがBG薬まとめとして、最近の世界動向をみてみよう。米国糖尿病学会(ADA)は昨年12月、「糖尿病の標準治療2022(Standards of Medical Care in Diabetes-2022)」を発表した。同文書は米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、新しいエビデンスを踏まえて毎年改訂されている。この2022年版では、ついにメトホルミンが2型糖尿病に対する(唯一の)第一選択薬の座から降り、アテローム動脈硬化性疾患(ASCVD)の合併といった患者要因に応じて第一選択薬を判断することになった。これまでは2型糖尿病治療薬の中で、禁忌でなく忍容性がある限りメトホルミンが第一選択薬として強く推奨されてきたが、今回の改訂で「第一選択となる治療は、基本的にはメトホルミンと包括的な生活習慣改善が含まれるが、患者の合併症や患者中心の医療に関わる要因、治療上の必要性によって判断する」という推奨に変更された。メトホルミンが第一選択薬にならないのは、ASCVDの既往または高リスク状態、心不全、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合だ。具体的な薬物選択のアルゴリズムは、「HbA1cの現在値や目標値、メトホルミン投与の有無にかかわらず、ASCVDに対する有効性が確認されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を選択する」とされ、考え方の骨子は2021年版から変わっていない。もちろん、日本糖尿病学会の推奨は現時点で以前と変わらないことも付け加えておく。メトホルミンが、これからもまだまだ使用され続ける息の長い良薬であろうことは間違いない。ぜひ、Recommendationに忠実に従った上で、用量依存性のメリットも感じていただきたい。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)松岡 敦子,廣田 勇士,小川 渉. PHARMA MEDICA. 2017;35:Page:37-41.3)草鹿 育代,長坂 昌一郎. Diabetes Frontier. 2012;23:47-52.4)Cho YM, et al. Diabetologia. 2011;54:219-222.5)河盛隆造編. 見直されたビグアナイド〈メトホルミン〉改訂版. フジメディカル出版;2009.6)UKPDS Group. Lancet. 1998;352:854-865.7)Roussel R, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1892-1899.8)Kipichnikov D, et al. Ann Intern Med. 2002;137:25-33.9)Yasuko Morita, et.al. Diabetes Care. 2020;43:1796-1802.

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新型コロナ感染の高齢者、32%が後遺症を発症/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した65歳以上の高齢者は、急性期後に診療を要する持続的または新規の後遺症のリスクが高いことが、米国・Optum LabsのKen Cohen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示された。後遺症は、呼吸不全、認知症、ウイルス感染後疲労を除くと、高齢者のウイルス性下気道疾患の後遺症と類似していたが、SARS-CoV-2感染後は、重要な後遺症が多岐にわたって発生することが明らかになったという。著者は、「後遺症のリスクは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した人で高いことが明らかで、いくつかの後遺症のリスクは男性、黒人、75歳以上で高かった。今回のデータは、高齢者におけるSARS-CoV-2感染急性期後の後遺症を定義し、これらの患者の適切な評価と管理に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年2月9日号掲載の報告。65歳以上のSARS-CoV-2感染者と非COVID-19患者を比較 研究グループは、UnitedHealth Group Clinical Research Database(匿名化された診療報酬請求と外来患者の臨床検査結果が含まれる)を用い、COVID-19を発症した65歳以上の高齢者(2019年1月からSARS-CoV-2感染の診断日まで継続してメディケア・アドバンテージプランに加入していた人)について、傾向スコアマッチングにより特定したCOVID-19を発症していない3つの比較群(2020年群8万7,337例、2019年群8万8,070例、ウイルス性下気道疾患群7万3,490例)と比較した。2020年群は2020年において65歳以上で、COVID-19の診断を受けていない、またはPCR検査が陽性ではない集団、2019年群はCOVID-19流行前の2019年における65歳以上の集団、ウイルス性下気道疾患群は2017~19年にインフルエンザ・非細菌性肺炎・急性気管支炎・急性下気道感染症・急性下気道感染を伴う慢性閉塞性肺疾患と診断された65歳以上の集団であった。 主要評価項目は、COVID-19診断後21日以降における持続的/新規後遺症の有無(ICD-10コードで同定)とし、急性期後120日間の後遺症の過剰リスクについてリスク差およびハザード比を算出した。また、後遺症の発症率を、年齢、人種、性別およびCOVID-19による入院の有無別に解析した。非COVID-19患者と比べて後遺症の発症は11%高い SARS-CoV-2感染が診断された65歳以上の高齢者のうち、32%(87,337例中27,698例)が急性期後に持続的/新規後遺症のために医療機関を受診し、これは2020年群と比較して11%高かった。 呼吸不全(リスク差:7.55、95%信頼区間[CI]:7.18~8.01)、疲労(5.66、5.03~6.27)、高血圧(4.43、2.27~6.37)、記憶障害(2.63、2.23~3.13)、腎障害(2.59、2.03~3.12)、精神的診断(2.50、2.04~3.04)、凝固能亢進(1.47、1.2~1.73)、心調律異常(2.19、1.76~2.57)は、2020年群と比較してリスク差が大きく、2019年群との比較でも同様の結果が得られた。 一方、ウイルス性下気道感染症群と比較した場合、呼吸不全(リスク差[100人当たり]:2.39、95%CI:1.79~2.94)、認知症(0.71、0.3~1.08)、ウイルス感染後疲労(0.18、0.11~0.26)のみ増加が認められた。 入院を必要とした重症COVID-19患者は、ほとんどのリスクが顕著に増加したが、すべてが後遺症というわけではなかった。

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スタッフの本音を引き出すコツ【今日から始める「医師の働き方改革」】第8回

第8回 スタッフの本音を引き出すコツ医師の働き方改革を進めるうえでは、スタッフ同士の信頼感の醸成が重要です。とくに役職者は部下の本音を聞き出すことが求められます。長崎大学病院・高度救命救急センターで働き方改革に取り組んで成果を上げつつある田崎 修氏に、部下との円滑なコミュニケーションのコツを聞きました。―働き方改革のための意見集約はどのように行ったのでしょうか?年次や役職にかかわらず、広く意見を聞きました。年長者が必ずしも「正解」を知っているだけではないので若い先生からも積極的に意見を聞いています。年長者として、若い先生に何ができるのかを常に考えています。具体的には、全員と1対1で話す時間をつくり、聞ける範囲でプライベートなことも聞いています。子供が受験で塾の送り迎えが必要、といった事情を知っていれば、カンファレンスを欠席した場合などもフォローがしやすくなります。新型コロナウイルス感染症の影響で、学会や会議がほとんどオンラインになり、浮いた移動時間を若手医師や学生への教育に充てられるのはありがたいですね。 ◆本音を引き出すためには働き方改革という正解のない取り組みの中では、スタッフからさまざまな意見を集め、その中で最適に近いものを探していく、というプロセスが必要です。長崎大学病院・高度救命救急センターでは以下のようなツールでスタッフの意見を集めました。【会議時に付箋を使う】テーマごとに意見を付箋に書いて貼り出します。話したことと違って書いたものは残るため忖度によって意見が消えることがなく、若手の方や新人が意見を出しやすいのです。また、付箋に書き出すことで、「書かれた意見」と「書いた人」を分離し、意見のみについて議論できる効果もあります。【聞く態度】1対1で話を聞く際には、聞く態度が重要になります。面談で話すときはもちろん、日常業務で話し掛けられたときも、一度手を止めて、相手の目を見て話し、メモを取るなど相手の話に集中します。腕組み、足組み、背もたれに寄り掛かった姿勢は相手に威圧感を与えるため、避けます。ワーク・ライフバランス社資料よりオンラインの場合、とくに表情が伝わりにくいので、上記に加えて大きめにうなずくなどのオーバーリアクションを心掛けましょう。オンライン会議が増える中では、ぜひこうしたコツも意識してみてください。

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コロナワクチン有効性、4ヵ月超で明らかに低下/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを2回接種後、日数経過によりワクチン有効性は低下し、その低下速度はワクチンの種類によって異なることが示された。スウェーデン・Umea大学のPeter Nordstrom氏らが、84万人超のワクチン接種者と、同数のマッチングコントロールについて後ろ向き全住民コホート試験を行い明らかにした。ChAdOx1 nCoV-19(Oxford-AstraZeneca製)、mRNA-1273(Moderna製)、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の2回接種後、症状の程度を問わない新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に対するワクチン有効性は、BNT162b2は4~6ヵ月で47%に減少、7ヵ月後には有意な有効性が認められなかったが、mRNA-1273では6ヵ月以降も59%を維持していた。入院や死亡などを伴う重症COVID-19に対する予防効果は、いずれかのワクチンとも2回接種後、比較的長期にわたり維持されてはいたが、4ヵ月以降は64%と明らかな低下が認められ、著者は「今回の結果は、エビデンスに基づく3回目のブースター接種に関する根拠を強化するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年2月4日号掲載の報告。感染予防と重症化予防効果の減少について検証 研究グループは、スウェーデンの全国登録名簿を基に、COVID-19ワクチン、ChAdOx1 nCoV-19、mRNA-1273、BNT162b2のいずれかの2回接種者と、ワクチン未接種者のマッチングコントロール試験を行い、2021年10月4日まで追跡した。 評価アウトカムは2つで、(1)2021年1月12日~10月4日の重症度を問わないあらゆるSARS-CoV-2感染、(2)2021年3月15日~9月28日の重症COVID-19(COVID-19による入院またはSARS-CoV-2感染確定後の30日全死因死亡で定義)とした。ChAdOx1 nCoV-19ワクチン、接種後4ヵ月超の予防効果認められず 2020年12月28日~2021年10月4日に、COVID-19ワクチン2回接種者84万2,974例と、同数のマッチングコントロールについて分析を行った。 あらゆる重症度のSARS-CoV-2感染に対するワクチン有効性は、BNT162b2では接種から日数の経過に従い低下し、接種後15~30日で92%(95%信頼区間[CI]:92~93、p<0.001)、121~180日で47%(39~55、p<0.001)、211日以降で23%(同:-2~41、p=0.07)だった。 mRNA-1273の同有効性の低下はやや緩やかで、接種後15~30日で96%(95%CI:94~97、p<0.001)、181日以降で59%(18~79、p=0.012)だった。ChAdOx1 nCoV-19とmRNA-1273のそれぞれ1回接種群でも同有効性の低下はやや緩やかで、接種後15~30日で89%(79~94、p<0.001)、121日以降で66%(41~80、p<0.001)だった。 対照的にChAdOx1 nCoV-19については、接種後15~30日のワクチン有効性は68%(95%CI:52~79、p<0.001)で、121日以降は有効性を検出できなかった(有効性:-19%、95%CI:-98~28、p=0.49)。 重症COVID-19に対する全種ワクチンの有効性は、接種後15~30日は89%(95%CI:82~93、p<0.001)であったものから、121日以降は64%(同:44~77、p<0.001)に低下していた。 また、全体として女性よりも男性のほうがワクチンの有効性は低く、若年者よりも高齢者のほうがワクチン有効性が低いとのエビデンスも認められた。

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第96回 2022年診療報酬改定の内容決まる(前編)オンライン診療初診から恒久化、リフィル処方導入に日医が苦々しいコメント

中医協総会で診療報酬改定の答申行われるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連休は気心が知れた山仲間数人で、八ヶ岳の東天狗岳に渋の湯、黒百合ヒュッテ経由で登ってきました。前日までの降雪でいい具合の積雪となった八ヶ岳は、待ってました!とばかりに登山者も多く、頂上直下は行列もできるほどでした。とはいえ厳冬期の八ヶ岳、1月には遭難も起こったルートです。極寒の中、程よいスリルと緊張感を味わって無事下山しました。さて、2月9日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2022年度診療報酬改定の答申1)が行われ、項目の詳細と点数が明らかになりました。今回の診療報酬改定、ニュースなどでは不妊治療(体外受精、顕微授精など)の保険適応が着目されていますが、ここではこのコラムでも触れてきた政策的な意味合いが大きいいくつかの項目について、その内容を見てみたいと思います。看護職員の処遇改善でプラス0.2%、不妊治療の保険適用でプラス0.2%今回の診療報酬改定率は、「第92回 改定率で面目保つも「リフィル処方」導入で財務省に“負け”た日医・中川会長」でも書いたように、医師らの人件費などにあたる「本体」部分を0.43%(国費で3,000億円相当)引き上げる内容となりました。このうち、看護職員の処遇改善でプラス0.2%、不妊治療の保険適用でプラス0.2%相当分の財源を使うことになります。一方で、リフィル処方箋の導入・活用促進でマイナス0.1%、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来でマイナス0.1%の医療費低減を見込みます。結果、実質的な本体の増分はプラス0.23%とされています。なお看護職員の処遇改善は、2022年2~9月までは2021年12月20日に成立した2021年度補正予算で賄い、2022年10月以降に診療報酬で対応することになっています。財源的には0.2%分が不妊治療の適用に充てられ、今改定の岸田政権の目玉的存在として報道されています。現在は一部を除き公的保険外の不妊治療について、「人工授精」「体外受精」「顕微授精」などが新たに保険適用となりました。一般マスコミではこのほか、オンライン診療の見直しやリフィル処方箋の導入などを取り上げるところが目立ちました。時限的・特例的措置終了でオンライン診療初診から恒久化へコロナ禍となって普及・定着が求められてきたオンライン診療。本コラムでは、「第24回 オンライン診療めぐり日医と全面対決か?菅総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと」や「第29回 オンライン診療恒久化の流れに「かかりつけ医」しか打ち出せない日医の限界」などで取り上げて来ました。オンライン診療の初診は、コロナ流行期の時限的・特例的措置として2020年4月から認められています。菅政権では「オンライン診療の恒久化」が掲げられ、岸田政権でもそれを受け継ぐ形で議論が進められて来ました。2021年11月29日、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が、「かかりつけ医による診察を原則として、コロナの流行期に限らず初診からオンライン診療が行える」新指針案を了承、今年1月28日に、その新指針2)を公表しました。新指針は時限的・特例的措置が終了(新しい診療報酬が適用される4月1日)次第、適用される予定です。推進派と慎重派が対立、公益裁定で決定今改定に向けての中医協の議論でも、オンライン診療と推進派(経済界、保険者、オンライン診療システム事業者など)と、慎重派(日本医師会など)の間では激しい対立がありました。推進派は「規制は可能な限り緩めるべき」「点数は対面診療と同一にすることも含め、大幅引き上げを行うべき」などと主張、一方、慎重派は「安全性・有効性を確認しながら徐々に規制を緩めていくべき」「サービスの質が劣るため、対面診療よりも低い点数を維持すべき」などと反論してきました。対立は中医協論議の最終局面になっても収まらず、最終的に公益裁定(中医協委員の支払側と診療側で議論がまとまらないときに、公益側委員が中立・公正な立場で裁定すること)で点数等が決定しました。初診は251点で対面の初診料の約87%具体的な改定内容は、現行のオンライン診療料(71点)を廃止した上で、初診料、再診料(外来診療料)の中で「情報通信機器を用いた場合」として新たに点数を設定するというものです。オンライン診療による初診は251点で対面の初診料(288点)の約87%となり、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下で時限的・特例的に認められている電話・オンライン診療による初診料(214点)から大幅に引き上げられます。オンライン診療を行った場合に評価する14種類の医学管理料についても対面での評価の約87%に設定されます。再診料は73点で、対面診療と同じ点数になります。さらに、現行のオンライン診療料では、「日常的に通院または訪問による対面診療が可能な患者を対象」という距離要件、「オンライン診療の実施割合が1割以下」という実施割合要件が設けられていますが、今改定でこれらが撤廃されます。対面診療を提供できる体制を有することは求めた上で、オンライン診療で対応できない場合に、他の医療機関と連携して対応できる体制を有することなどが算定要件となります。「患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じたりした場合には見直しを要請」と日医・中川会長日本医師会の中川俊男会長は2月9日、診療報酬改定の答申を受けた会見で、「公益委員の裁定による決着となったが、オンライン診療では対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないことが明示されたことを受けて、対面診療とオンライン診療とでは診療の対価に差を設けることは適当であるとされた」と総括、その上で、「患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じたりした場合には、期中であっても速やかに診療報酬要件の見直しを要請する」と述べたとのことです。オンライン診療は、コロナ禍でそのニーズが高まっているにも関わらず、点数設定や各種規制などによって普及が今ひとつであるのが問題視されています。対応できるのは2021年6月時点で全医療機関の約6%でした。大幅な点数増もあり、今回改定でオンライン診療はこれまで以上に普及しそうですが、推進派の掲げた要望はその一部が実現したに過ぎません。次期改定に向けて規制緩和の議論がまだ続きそうです。リフィル処方は1回29日以内で処方箋料の減算なしこのコラムの第92回で書いたリフィル処方ですが、4月から処方箋様式が下図のように変更され、「リフィル可」「調剤実施回数」の項目が追加、一定期間内、処方箋を反復利用できるようになります。新たな処方箋様式画像を拡大するリフィル処方の対象となるのは、「医師の処方により、薬剤師による服薬管理の下、一定期間内に処方箋の反復利用が可能である患者」で、留意事項として「総使用回数の上限は3回まで」、「1回当たり投薬期間及び総投薬期間については、医師が、患者の病状等を踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間」、「投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない」などの要件が定められています。リフィル処方箋導入に合わせ、その普及を後押しするため処方箋料も見直されます。現在の処方箋料は、「1処方につき投与期間が30日以上の投薬を行った場合は、所定点数の100分の40の点数」になりますが、この一部が対象外になります。具体的には、「処方箋の複数回(3回までに限る)の使用を可能とする場合で、処方箋の1回の使用による投与期間が29 日以内」の投薬が対象から外れます。日本医師会を刺激しないよう大人しめのコメントの日薬・山本信夫会長日本薬剤師会にとって“悲願”とも言われたリフィル処方の導入。1月18日の都道府県会長協議会で日本薬剤師会の山本 信夫会長は、「薬剤師が担う役割は大きいものがあり、その判断や決断は重たくなる。覚悟を持って取り組まなければならない一大事業になる」と熱く語っていました。ただ、2月10日に開かれた三師会の会見では山本会長は、「どんな形の処方箋かによって職能が変わることはない。これまで同様に、きちんとした対応していくことに変わらない。これまでも薬剤師の職能が発揮されてきたからこそ、医師にも信頼され、地域の方々からの信頼を受けいまの状態がある。これをさらに進めていく」と、薬剤師と医師の関係の重要性を改めて強調するに留めました。リフィル処方導入に一貫して反対してきた日本医師会を刺激しないよう、大人しめのコメントにしたようです。日医・中川会長「リフィル処方箋を出すかどうかは医師が決める」と強調一方、日本医師会の中川 俊男会長は2月9日の答申を受けた会見で、過去10年近くにわたって「骨太の方針」等でその導入を求められてきたことや、今回の診療報酬改定の議論に先立って、2021年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2021」でも、改めてリフィル処方の導入が明記されたことに触れた上で、「日本医師会は症状が安定している慢性疾患の患者さんであっても、定期的に診察を行い疾病管理の質を保つことが重要であると主張してきた。日本では医師法により医師に処方権がある。今回の診療報酬改定では、厚生労働大臣・財務大臣両大臣合意でリフィル処方箋の導入が決まったが、両大臣合意でも『医師の処方により』行うものであることが明示されている」と語り、「リフィル処方箋を出すかどうかは医師が決める」と強調しました。そして、「今回、両大臣合意を踏まえたリフィル処方箋の導入ということになったが、患者さんにとって、適切な治療が行われることについて、十分配慮した運用が現場でなされることを期待している。現行制度において、投薬日数は医師の裁量とされている。ただ、これまでも繰り返し主張しているとおり、長期処方にはリスクがあり、不適切な長期処方には是正が必要と考えている」と長期処方のリスクに言及。「新しい仕組みを導入する際には、患者さんの健康に大いに関わるため、慎重の上にも慎重に、そして丁寧に始めることが望ましい」と語ったとのことです。「先生、私もリフィルで」と言い始めたら医師は抵抗できるか?中川会長のコメントからは、改定率と引き換えに受け入れてしまったリフィル処方に対する苦々しさが伝わって来ます。「処方するのは医師だ」という当たり前のことをあえて強調しなければならないほど、リフィル処方の導入を恐れているのでしょう。今回の診療報酬改定でのリフィル処方の影響は、再診料、処方箋料の減少などで改定率にしてマイナス0.1%と言われています。しかし、以前のコラムでも書いたように、もし国民がその割安感と利便性に気づいたら、それ以上の影響が出てくるかもしれません。日医が今恐れるのは、リフィル処方の仕組みや利用の仕方をテレビや一般マスコミが大々的に取り上げることではないでしょうか。患者がその割安感や利便性に気づき、「先生、私もリフィルで」と言い始めたら、医師は果たして立派な根拠を持って抵抗できるでしょうか。リフィル処方の今後の広がりが気になります。次回は、「かかりつけ医機能」について考えてみたいと思います。(この項続く)参考1)中央社会保険医療協議会 総会/厚生労働省2)オンライン診療の適切な実施に関する指針

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パキロビッドパック投与時の注意点、薬物治療の考え方13版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、2月10日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第13版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、2月10日に製造販売に関し特例承認を取得した経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル錠/リトナビル錠(商品名:パキロビッドパック)などの追加記載が行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。【3. 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」を変更【4. 抗ウイルス薬等の選択】・総論にニルマトレルビル/リトナビルを追加・各薬剤につき、わが国で適用承認されている薬剤は商品名を追加(抗ウイルス薬)ニルマトレルビル/リトナビルの追加・機序ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼに作用し、その働きを阻害することによりウイルスの増殖を阻害する。リトナビルは、ニルマトレルビルの代謝を遅らせ、体内濃度をウイルスに作用する濃度に維持する目的で併用。・国内外での臨床報告国内外で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験において、重症化リスクのある非入院COVID-19患者の外来治療を対象にニルマトレルビル300mg/リトナビル100mgまたはプラセボを1日2回、5日間経口投与する群に1対1で無作為割付。主要有効性解析集団とされたmITT集団のうちプラセボ群(385名)の28日目までの入院または死亡が27名(7.0%)に対し、治療群(389名)では3名(0.8%)と相対的リスクが89%減少した(p

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第99回 オミクロン株亜種BA.2を相手しうる治療抗体はたった1つ?

世界に広まった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株の発見国である南アフリカではその亜種BA.2(B.1.1.529.2)が先立つBA.1型に取って代わって優勢となっています1)。同国政府の顧問を務める生物統計研究者Tulio de Oliveira氏によると不気味なことにいまや同国でのSARS-CoV-2感染(COVID-19)の実にほぼすべてがBA.2によるものとなりました2)。オミクロン株の発見の報告者としても知られるDe Oliveira氏はオミクロン株が後ろ盾の感染流行の第二波をBA.2がもたらしうるとかつて述べており、同国のCOVID-19のほぼ100%がBA.2になったことはその予想通りです。BA.2への既存の抗体薬の効果の検討が早速始まっています。感染症治療薬を開発する米国のバイオテクノロジー企業Vir Biotechnology社の先週9日の発表3)によるとBA.2を阻止する中和活性を同社がGlaxoSmithKline(GSK)と協力して取り組んでいる抗体sotrovimab(ソトロビマブ、S309)が幸いにも備えていました。ただし中和活性がどれほどのものかの具体的な説明はなく、代理ウイルスを使ったその実験結果の詳細は近々bioRxivに掲載されるとVir社はその発表に記しています。時を同じくして先週9日にbioRxivにすでに掲載済みのコロンビア大学の別の研究でもソトロビマブがBA.2中和活性を有することが確認されています。しかし残念なことにその活性はかつて流行した野生型D614G代理ウイルス(wild-type D614G pseudovirus)に対するのと比べて27分の1ほどでしかありませんでした4)。bioRxivへの提出後の追試でのソトロビマブのBA.2中和活性はさらに低かったと研究リーダーDavid Ho氏は言っています5)。一方、ソトロビマブとは対照的にEli Lilly社の抗体bebtelovimab(ベブテロビマブ、LY-CoV1404)はBA.2にも歯が立ち、野生型D614G代理ウイルスに対するのとほぼ同等にBA.2を中和しました。また、AstraZenecaの抗体一対cilgavimab(COV2-2130)/tixagevimab(COV2-2196)の片方cilgavimabもbebtelovimabには劣るもののBA.2とどうやら張り合うことができるようです。bebtelovimabのBA.2中和活性は野生型D614G代理ウイルス中和活性の1.1倍でほぼ同じだったのに対してcilgavimabのそれは2分の1ほどでした。コロンビア大学の研究ではそれら3抗体を含むあわせて19の抗体が検討され、結論としてそれらのうちBA.2に対抗しうるのはLillyのbebtelovimabとAstraZenecaのcilgavimabのみであり、GSK/Vir社のソトロビマブを含む他の17の抗体はBA.2阻止活性を全く持ち合わせていないか酷く損なっていました。折しも先週末11日に米国FDAはBA.2に勝ち目があるLillyのbebtelovimabを取り急ぎ認可しています6)。重症化する恐れがある外来の軽~中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者への使用が許可され、米国政府は少なくとも7億2000万ドルを払って同剤最大60万回投与分を購入します7)。同剤の投与は1回8)なので最大60万人分に相当します。BA.2を相手しうるもう1つの抗体cilgavimabを成分とするAstraZenecaの抗体薬も米国FDAに取り急ぎ認可されていますが、認可されたのはCOVID-19予防用途です9)。治療に使うことは認められていません。よってFDAがCOVID-19治療に使うことを認可した抗体のほぼすべてがBA.2におよそ歯が立たず、勝負できそうなのは今のところLillyのbebtelovimabのみであり、果てなく進化し続ける脅威・SARS-CoV-2を抑える新たな手段をわれわれも絶えずひねり出していく必要があるようです4)。参考1)Omicron BA.2 sub-variant dominant in S.Africa, says CDC / Reuters2)Omicron BA.2 Sub-Variant Close to 100% Dominant in South Africa / Bloomberg3)Data Suggest Sotrovimab Retains Neutralizing Activity Against Omicron Subvariant BA.2 / GlobeNewswire4)Antibody Evasion Properties of SARS-CoV-2 Omicron Sublineages. bioRxiv. February 09, 20225)Spreading version of Omicron resists all but one new drug / Reuters6)Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Authorizes New Monoclonal Antibody for Treatment of COVID-19 that Retains Activity Against Omicron Variant / PR Newswire7)Lilly's bebtelovimab receives Emergency Use Authorization for the treatment of mild-to-moderate COVID-19 / PR Newswire8)FACT SHEET FOR HEALTHCARE PROVIDERS: EMERGENCY USE AUTHORIZATION FOR BEBTELOVIMAB9)AZD7442 request for Emergency Use Authorization for COVID-19 prophylaxis filed in US / AstraZeneca

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追加接種でオミクロン株での入院が未接種の23分の1/CDC

 米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡での調査によると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株優勢期におけるCOVID-19による入院率は、ワクチン未接種者では2回接種+追加接種者の23.0倍、2回接種者の5.3倍だった。ロサンゼルス郡公衆衛生局のPhoebe Danza氏らが、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年2月4日号に報告。 ロサンゼルス郡公衆衛生局は、COVID-19サーベイランスおよびCalifornia Immunization Registry 2のデータを用いて、2021年11月7日~2022年1月8日の年齢調整14日間累積感染率と入院率について、新型コロナワクチン接種状況および各変異株の優勢期ごとに調査した。SARS-CoV-2感染は、核酸増幅検査もしくは抗原検査で確認した。対象は18歳以上の成人で、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、Ad.26.COV2.S(Johnson & Johnson製)の最初の連続接種が終了した日から14日後に2回接種完了とみなした。また、2回接種完了者が追加接種を受けた日から14日後に追加接種完了とみなした。 主な結果は以下のとおり。・2021年11月7日~2022年1月8日に報告されたSARS-CoV-2感染者42万2,966人のうち、ワクチン未接種者は14万1,928人(33.6%)、2回接種+追加接種者は5万6,185人(13.3%)、2回接種者の22万4,853件(53.2%)だった。・デルタ株優勢期の最終期である2021年12月11日までの14日間で、ワクチン未接種者の感染率は、2回接種+追加接種者の12.3倍、2回接種者の3.8倍で、入院率は、2回接種+追加接種者の83.0倍、2回接種者の12.9倍であった。・オミクロン優勢期(2022年1月8日で終わる週)では、ワクチン未接種者の感染率は、3回接種者の3.6倍、2回接種者の2.0倍で、入院率は、2回接種+追加接種者の23.0倍、2回接種者の5.3倍であった。・全解析期間において、ICU入院、人工呼吸器装着、死亡は、ワクチン未接種者が2回接種+追加接種者、2回接種者より多かった(p<0.001)。・感染率、入院率とも、いずれの時期においても未接種者が最も高く、2回接種+追加接種者が最も低かった。

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ファイザーの経口コロナ治療薬「パキロビッドパック」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は2月10日、ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス剤「ニルマトレルビル錠/リトナビル錠」(商品名:パキロビッドパック、以下パキロビッド)について、国内における製造販売を特例承認した。2021年12月24日に承認されたモルヌピラビル(ラゲブリオ)に続き、本剤は国内における2剤目の経口コロナ治療薬となる。2月27日までは、全国約2,000の医療機関における院内処方およびこれらの医療機関と連携可能な地域の薬局でパイロット的な取り組みを実施し、それ以降は全国の医療機関の入院・外来でも処方可能となる。 パキロビッドは、重症化リスク因子を有する軽症~中等症患者が投与対象。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、ニルマトレルビル1回300mgおよびリトナビル1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。 本剤を巡っては、高血圧や高脂血症、不眠症などの治療薬において併用禁忌薬が多数あることから、審議会でも専門家から慎重な投与が必要との意見が出たという。本剤の添付文書には、下記39種の薬剤および含有食品について併用禁忌が明示されている。【併用禁忌】▼アンピロキシカム▼ピロキシカム▼エレトリプタン臭化水素酸塩▼アゼルニジピン▼オルメサルタン、メドキソミル・アゼルニジピン▼アミオダロン塩酸塩▼ベプリジル塩酸塩水和物▼フレカイニド酢酸塩▼プロパフェノン塩酸塩▼キニジン硫酸塩水和物▼リバーロキサバン▼リファブチン▼ブロナンセリン▼ルラシドン塩酸塩▼ピモジド▼エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン▼エルゴメトリンマレイン酸塩▼ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩▼メチルエルゴメトリンマレイン酸塩▼シルデナフィルクエン酸塩▼タダラフィル▼バルデナフィル塩酸塩水和物▼ロミタピドメシル酸塩▼ベネトクラクス▼ジアゼパム▼クロラゼプ酸二カリウム▼エスタゾラム▼フルラゼパム塩酸塩▼トリアゾラム▼ミダゾラム▼リオシグアト▼ボリコナゾール▼アパルタミド▼カルバマゼピン▼フェノバルビタール▼フェニトイン▼ホスフェニトインナトリウム水和物▼リファンピシン▼セイヨウオトギリソウ含有食品 また、併用に注意すべき薬剤なども多数記載されているので、処方の際には配慮が必要だ。詳細については、添付文書を参照されたい。

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