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モデルナ追加接種用2価ワクチン候補、2倍以上の中和抗体価を確認

 米国・モデルナ社は4月19日付のプレスリリースで、同社初の追加接種用2価ワクチン候補(mRNA-1273.211)が、オミクロン株を含むすべての変異株に対し、同社の承認済みのワクチン(mRNA-1273、商品名:スパイクバックス筋注)と比較して優れた中和抗体価を示したことを発表した。ワクチン効果の優越性は、追加接種の6ヵ月後も維持されたという。なお、mRNA-1273.211の忍容性および安全性は、承認済みのmRNA-1273追加接種(50μg)とほぼ同様であった。本研究は、査読前論文のオンライン・アーカイブである「Research Square」※2022年4月15日号1)にも掲載された。※今後、審査によっては論文内容が修正される場合あり 本試験は、mRNA-1273.211の単回ブースター投与による反応原性および免疫原性を評価する非盲検第II/III相臨床試験で、少なくとも6ヵ月前にmRNA-1273の2回投与によるプライマリーシリーズを完了した米国の18歳以上の被験者896例を対象に、ワクチン候補mRNA-1273.211を50μg追加接種した群(300例、平均年齢50.7歳)と、100μg追加接種した群(596例、平均年齢53.0歳)を検証した。 主な結果は以下のとおり。・承認済みのmRNA-1273を50μg追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後で幾何平均抗体価(GMT):630.5(95%CI:520.0~764.9)、接種181日後でGMT:145.6(95%CI:118.1~179.5)となり、オミクロン株への強力な中和抗体反応が得られたものの、接種後6ヵ月で効果が減少した。・新たな2価ワクチン候補のmRNA-1273.211を追加接種した後のオミクロン株に対する中和抗体価は、接種29日後でGMT:1389.8(95%CI:1212.1~1593.4)、接種181日後でGMT:312.9(95%CI:269.5~363.4)となった。・mRNA-1273.211は、既存のmRNA-1273に比べ、中和抗体価が1ヵ月時点での幾何平均比(GMR):2.20(95%CI:1.74~2.79)、および6ヵ月時点でGMR:2.15(95%CI:1.66~2.78)となり、2倍以上増加したことが確認された。・mRNA-1273.211の50μg投与後の副作用の発現率と比較して、100μg投与後の副作用の発現率が高いことが確認されたが、忍容性はおおむね良好で、50μg投与後に非自発的に報告された副反応および自発的に報告された有害事象の発現率は、mRNA-1273の50μg接種と同程度だった。 同社は現在、オミクロン株の特異的な変異に対応した最新の追加接種用2価ワクチン(mRNA-1273.214)も第II/III相臨床試験で評価中。2022年秋の北半球用追加接種ワクチンの選定に向けて、試験の初期データが第2四半期中に得られる予定としている。 追加接種用2価ワクチン候補のmRNA-1273.211は、ベータ株に基づく、9個のスパイク蛋白の変異(うち4つはオミクロン株に存在する変異)に、mRNA-1273.214は、オミクロン株に基づく、32個のスパイク蛋白の変異に、それぞれ対応しているという。(ケアネット 古賀 公子)1)Safety, Immunogenicity and Antibody Persistence of a Bivalent Beta-Containing Booster Vaccine. Research Square. 15 Apr, 2022.

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第106回 新しい公立病院の経営ガイドライン、「リストラ色」薄まるも総務省の本音は再編・統合推進か

市立大津市民病院、京大医局派遣の医師27人全員が年度内に退職へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、「第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚」「第103回 大津市民病院の医師大量退職事件、「パワハラなし」、理事長引責辞任でひとまず幕引き」「第104回 パワハラ事件に大甘の医療界、旭川医大、大津市民の幕引きの背後に感じた“バーター”の存在」で伝えてきた市立大津市民病院(30診療科、401床)の大量退職事件に再び動きがありました。4月18日、済生会滋賀県病院(栗東市)の院長補佐だった日野 明彦氏(京都府立医大 脳神経外科学教室出身)が新院長に就任したのですが、その翌日、新たに脳神経内科4人、麻酔科2人、放射線科の非常勤医師1人の計7人が年度内に退職する意向を持っていることが明らかになったのです。これで同病院在籍の京大医局派遣の医師27人全員が年度内に退職見込みとなりました(6人はすでに退職)。病院の診療体制としてはボロボロと言えます。4月25日のびわこ放送等の報道によれば、同日、大津市の佐藤 健司市長は定例会見で病院の設置者として改めて謝罪し、「今後も医師確保を含めた法人運営の後押しを全力で進めていく」と説明したとのことです。また、佐藤市長は、4月15日に滋賀医科大学を訪れて市立大津市民病院の運営立て直しへの協力を求めたことも明らかにしています。大津市には市立大津市民病院のほかに、日本赤十字社・大津赤十字病院(37診療科、684床)という京都大学系の巨大公的病院があり、患者獲得競争を繰り広げてきました。仮に今回の事件をきっかけに、市立大津市民病院の人気が落ち、ジリ貧になっていくとしたら、2病院の再編・統合話が出てくる可能性もゼロではないと思います。総務省が「公立病院経営強化ガイドライン」公表ということで、今回は総務省が3月29日に公表した「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(令和4年3月29日 総財準第72号 総務省自治財政局長通知)について書いてみたいと思います。公立病院、公的病院を巡っては、新型コロナ感染症流行拡大前に、厚生労働省から436病院の“リストラ”リストが公表され、全国の公立・公的病院関係者を青ざめさせました(「第23回 実は病院経営に詳しい菅氏。総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと(前編)」参照)。コロナの感染拡大もあって、このリストラ計画は中断したままでした。しかし、今回の新ガイドライン公表と合わせる形で、厚労省も第8次医療計画(2024年度から実施)の策定作業と並行して、公立・公的病院だけでなく民間病院も含めた機能の再検証を行うことを都道府県に求めています。再び各地で再編・統合の議論が活発化するのは必至でしょう。3回目のガイドライン、「改革」の文言がなくなり「経営強化」に公立病院を管轄する総務省が、その経営改革に関するガイドラインを公表するのは2007年12月、2015年3月に続いて3回目です。ガイドライン作成の背景には、全国の公立病院の多くは経営状況が非常に悪く、医療提供体制の維持が極めて厳しい状況にあったことがありました。これまでの2回は「公立病院改革ガイドライン」でしたが、今回は「改革」の文言がなくなり、「公立病院経営強化」とタイトルが微妙に変わっています。新型コロナ感染症対応で、地域の公立病院の必要性が再認識されたことも影響したと考えられます。旧ガイドラインで強調されていた「再編(リストラ)」色は薄まる旧ガイドライン(2015年版)は「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」と「再編・ネットワーク化」に力点が置かれていました。それに対し、新ガイドラインは個々の病院の「経営力強化」「機能強化」に力点が置かれています。新ガイドラインは「公立病院経営強化の基本的な考え方」として、「公立病院が直面する様々な課題のほとんどは、医師・看護師等の不足・偏在や人口減少・少子高齢化に伴う医療需要の変化に起因するものである。これらの課題に対応し、持続可能な地域医療提供体制を確保するためには、医師確保等を進めつつ、限られた医師・看護師等の医療資源を地域全体で最大限効率的に活用するという視点を最も重視し、新興感染症の感染拡大時等の対応という視点も持って、公立病院の経営を強化していくことが重要」と述べています。そして、その経営強化のためには、「地域の中で各公立病院が担うべき役割・機能を改めて見直し、明確化・最適化した上で、病院間の連携を強化する『機能分化・連携強化』を進めていくことが必要である。特に、機能分化・連携強化を通じて、中核的医療を行う基幹病院に急性期機能を集約し医師・看護師等を確保するとともに、基幹病院から不採算地区病院をはじめとする基幹病院以外の病院への医師・看護師等の派遣等の連携を強化していくことが重要である。その際、公立病院間の連携のみならず、公的病院、民間病院との連携のほか、かかりつけ医機能を担っている診療所等との連携強化も重要である」と、公民の区別なく地域において「機能分化・連携強化」を進める必要性を説いています。内容的にも新型コロナウイルス感染症対策において地域の公立病院が果たした役割などを勘案し、旧ガイドラインで強調されていた「再編(リストラ)」色が薄まった印象です。「都道府県の役割・責任強化」もより強調こうした前提のもと、新ガイドラインは2022~23年度中に「経営強化プラン」を策定することを求めています。すでに「自主的に改革プランを策定している病院」などでも、新ガイドラインで要請されている部分と比べて「不足」があれば、その分を追加策定する必要があるとし、また、すでに「従前の改革プランに基づいて再編やネットワーク化、経営形態見直しに取り組んでいる病院」でも、現在の取り組み状況や成果を検証し、さらなる経営力強化のために新ガイドラインに沿った経営強化プランを策定するよう求めています。旧ガイドラインで初めて盛り込まれた、病院の再編・統合に当たっての「都道府県の役割・責任強化」についても、より強調される内容となりました。「都道府県が、市町村のプラン策定や公立病院の施設の新設・建替等にあたり、地域医療構想との整合性等について積極的に助言すること」や「医療資源が比較的充実した都道府県立病院等が、中小規模の公立病院等との連携・支援を強化していくことが重要」としています。ドラスティックな再編・ネットワーク化の事例も紹介総務省は4月20日、この新ガイドラインの説明会をオンラインで開催、その中で最新の「公立病院の経営状況」を明らかにしています。それによると、853病院全体での2020年度の経常収支は1,251億円の黒字でした。コロナ関連補助金により980億円の赤字だった前年度(857病院)から大きく改善したものの、本業に当たる医業収支ベースでは6,010億円と大幅な赤字でした。また、病床規模別の経常収支は「500床以上」(95病院)が584億円の黒字だったのに対し、「100床未満」(255病院)では1億円の黒字に留まったそうです。コロナ対応をしていた病院でも1億円程度の黒字でしかないということは、コロナ後は再び大きな赤字転落になることを意味します。新ガイドラインの最後には、資料として「平成27年度から令和2年度までの間に実施済み又は実施中の再編・ネットワーク化の事例」が多数掲載されています。公立、公的、民間併せたさまざまな再編(統合、病床削減、病院の診療所化等)のケースは、どれもドラスティックです。地方の病院で働く方は、この資料だけも目を通しておくといいと思います。こうした事例を最後に掲載していることからも、「再編(リストラ)」色が薄まった新ガイドラインですが、「地域の病院の再編・統合に向けて、都道府県は今まで以上に積極介入をして欲しい」というのが総務省の本音と言えるでしょう。参考1)公立病院経営強化ガイドライン/総務省

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日本からもこういう情報が欲しい!(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染禍は2年以上持続している。テレビのニュースでは各県の新規感染者数が発表される。日本のような小さな国で、各県、揺らぎの大きい毎日の感染報告者数を発表されても正直何もわからない。科学の世界では数値情報が必須である。世界の誰とも共有できるように、科学的方法に基づいて数値をまとめてほしい。 北欧諸国は日本と同様に比較的サイズの小さい国である。社会主義的傾向があるのでNational Databaseが充実している。本研究は新型コロナウイルス発症日を起点として、発症前の時期と静脈血栓症、肺塞栓症、重篤出血イベントの発症リスクを示している。ウイルス感染であるため、感染後ウイルスは増殖するが、免疫により駆逐される。新型コロナウイルスは血管内皮にも感染して血栓リスクを増加させるとされているが、リスクの増加はいつまでも持続するわけではない。血栓イベント予防を目指してヘパリンなどの抗血栓薬を使用するのが一般的なので重篤な出血合併症も増えると想定される。 新型コロナウイルスに感染すると静脈血栓リスクは速やかに上昇し、1週間から1ヵ月でリスクは5倍以上と最大になる。3ヵ月後には激減し、6ヵ月でコントロールに戻る。肺塞栓症のリスクは発症直後から激増し、2週間で46倍ともなる。その後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月とリスクは激減する。重篤な出血イベントリスクは発症直後が5倍と最大で、その後は、急速にリスクは低下する。 日本のニュースで発表される情報が臨床的見地から役に立たないのに対して、スウェーデンでは新型コロナウイルスの血栓症、その重篤なイベントである肺血栓塞栓症、抗血栓薬の合併症の好発時期に対して臨床に役立つ情報を提供している。 継続的に集積されているイベントデータなので、ワクチン接種の有無による変化、ウイルス株による血栓性の変化も定量情報として取得できる。 厚生労働省内部に「論文出版課」を作れば、日本でも役所が仕事として科学論文をシステムに出版するようになるかもしれない。科学論文を作ろうとすれば、データを科学的にまとめるだろう。厚労省から科学的数値データが出れば、数値データに基づいた政策ができるだろう。読者がいたらまじめに考えてほしい。

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第109回 12ヵ国が小児の原因不明の急な肝炎を報告

英国や北アイルランドで発端不明の急な肝炎が幼い小児に多発していることを世界保健機関(WHO)が今月15日に発表して以降その数は増えており、21日までに12ヵ国で少なくとも169人に認められています1,2)。注意の高まりでいつもなら未発見のままの発生例がより検出されているだけで発生率は上昇していないかもしれず、肝炎が実際に増えているのかどうかは定かではありません。原因の調査は進行中ですが、今のところアデノウイルスの関与が示唆されています。肝炎小児の年齢層は生後1ヵ月から16歳で、169人のうち17人(約10%)は肝臓移植を受けました。少なくとも1人は死亡しています。小児の多くは腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸症状を急な重症肝炎に先立って被っており、肝酵素・ASTやALTの500 IU/L超への上昇や黄疸を生じています。一方、ほとんどは発熱していません。急な肝炎の原因として知られるA~E型肝炎ウイルスはどの小児からも検出されていません。把握済みの情報によると外国への旅行や国外要因の寄与は認められていません。アデノウイルスは少なくとも74人から検出されており、分子レベルの検査記録がある小児のうち18人からはアデノウイルスF亜群41型(F type 41)が検出されています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は20人に認められ、19人からはSARS-CoV-2とアデノウイルスの両方が検出されています。報告数のほとんどを占める英国では新型コロナウイルス感染(COVID-19)流行の初期には少なかったアデノウイルス市中感染が最近になって有意に増加しています。また、オランダも同様の傾向を報告しています。アデノウイルスは免疫学的に50を超える種類があり、少なくとも18人から見つかっている41型の主な症状として知られているのは下痢、嘔吐、発熱であり、しばしば呼吸器症状を伴います。免疫不全小児のアデノウイルス感染肝炎の報告はありますが、アデノウイルス41型が健康な小児の思いもよらない肝炎の原因と見られたことはありません。COVID-19流行中にアデノウイルスと疎遠だった幼い小児のその後の易感染性、新たなアデノウイルスが発生していないかどうか、アデノウイルスとSARS-CoV-2の同時感染などの要因調査が必要とWHOは述べています。英国はアデノウイルスのゲノムに変化が生じているかどうかの調査を始めています3)。WHOに報告されている小児のほとんどはCOVID-19ワクチン非接種です。報告数が最も多い英国の12日までの医療機関受診例に認められた原因不明肝炎の小児108人にCOVID-19ワクチン接種者は1人もおらず、COVID-19ワクチンとは無関係と判断されています3)。参考1)Multi-Country - Acute, severe hepatitis of unknown origin in children / WHO2)WHO says at least one child has died after increase of acute hepatitis cases in children / Reuters3)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation /UK Health Security Agency

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第98回 診断遅滞で研修医寝たきり、鹿児島大などに約3億円の賠償命令

<先週の動き>1.診断遅滞で研修医寝たきり、鹿児島大などに約3億円の賠償命令2.新型コロナワクチン接種、4回目は対象者を絞って実施へ/厚労省3.新型コロナ治療薬としてパキロビッドパックを推奨/WHO4.第6波のコロナ受け入れ体制、国の要請に応じる余力なしと判明/医労連5.膨らみ続けるコロナ対策、予備費の用途に透明性を求める声1.診断遅滞で研修医寝たきり、鹿児島大などに約3億円の賠償命令研修医の男性が、鹿児島大学病院と鹿児島生協病院の医師らが適切な診断と治療をしなかったため、寝たきりになる後遺障害を負ったとして、同病院に対して慰謝料など約4億1,200万円を求めた訴訟の判決が20日、鹿児島地裁で下された。裁判長は医師らの過失を認め、病院を運営する鹿児島大と鹿児島医療生協に対して約3億2,700万円の支払いを命じた。判決によれば、鹿児島生協病院の研修中だった男性が、2007年12月、診療中に頭痛を訴え、同病院の内科を受診。頭部CT検査などから異常を認め、鹿児島大学病院の脳外科に精査を求めたところ、「膠芽腫」の可能性があると診断されたが、すぐに手術が必要とは判断されず生協病院で入院継続となった。男性は嘔吐を繰り返し、4日後に意識消失のため鹿児島大学病院に緊急搬送され、別の医師の診察で「脳膿瘍」による脳ヘルニアと判明した。治療開始が遅れたため、開頭手術をしたが意識障害や運動障害が残り、現在は要介護状態である。裁判長は、ただちに治療していれば後遺症の発生を避けられた可能性を指摘した。(参考)診断ミスで寝たきり 鹿児島大などに3.2億円の賠償命令 地裁(毎日新聞)誤診で後遺症、3億2700万円賠償命令 鹿児島大学病院と生協病院に 地裁判決(南日本新聞)2.新型コロナワクチン接種、4回目は対象者を絞って実施へ/厚労省政府は、新型コロナウイルスワクチンの4回目接種について、60歳以上と基礎疾患のある者を対象として検討している。これまでは子供から高齢者まで積極的なワクチン接種の推奨を行ってきたが、3回目の接種率が伸び悩んでいることや死亡率の低下、治療薬の普及を踏まえ、接種対象をハイリスク患者に絞る方針。先に4回目接種が承認された米国でも対象者は50歳以上とされるなど、海外の影響もあると考えられる。今月27日の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会で議論予定。(参考)ワクチン4回目接種、60歳以上と基礎疾患者を軸に検討 政府(毎日新聞)ワクチン4回目接種 3回目から5か月間隔での実施を検討 厚労省(NHK)4回目接種、全員に必要?「高齢者の重症予防に」―専門家指摘・コロナワクチン(時事通信)3.新型コロナ治療薬としてパキロビッドパックを推奨/WHO世界保健機関(WHO)は22日、新型コロナウイルス感染症について、ワクチン未接種や高齢者などの軽症患者の治療薬としてファイザー製の内服治療薬「パキロビッドパック」を強く推奨するとした。わが国では2月に重症化リスクが高い軽症~中等症の患者を対象として特例承認されたものの、報道によれば、累計投与数は約4,000人(4月12日時点)にとどまる。これは同剤に含まれるリトナビルがCYP3Aの強い阻害作用を有するため、投与前に他剤との相互作用について確認する時間が必要であり、処方が進まない1つの原因と考えられる。安全性について慎重なのは大事だが、再び感染拡大となった場合は、本剤が必要とされる人への投与がもっと検討されるべきだろう。(参考)ファイザーコロナ薬、投与は感染者の0.12% 奪い合いから一転(朝日新聞)WHO recommends highly successful COVID-19 therapy and calls for widegeographical distribution and transparency from originator(WHO)4.第6波のコロナ受け入れ体制、国の要請に応じる余力なしと判明/医労連日本医労連は、新型コロナウイルス感染症の第6波(2022年1月以降)における医療現場の実態調査を公表した。調査は3~4月、医労連に加盟する全国の国立病院や赤十字病院、民間病院などを対象に行い、176病院から回答を得た。2021年中に政府から「ウイルスの感染力が第5波より2倍になっても対処できる医療提供体制の整備」が要請された後、重症病床を増やしたかどうかに対し、実際に「増やした」と回答したのは176施設中14施設だった。また、今年1月以降に救急搬送(コロナ以外も含む)の受け入れを断ったことがあるのは61病院(35%)で、最大で1日16件を断った病院もあった。医労連は、回答した医療機関は国公立病院が中心であり、そのほとんどが第5波までにコロナ患者をすでに最大限受け入れていたため、第6波に備えてさらなる受け入れ態勢拡大を要請されても応じられなかった状況があるのではないかと推測した。さらに離職者について、2021年度は2020年度と比較して50施設(28.4%)が増えたと回答しており、とくに多かったのは圧倒的に看護師だった。(参考)重症病床増の病院1割のみ コロナ5波後、医労連調査(東京新聞)コロナ救急搬送受け入れ、公的病院の3割超が断る…最大で1日16件のケースも(読売新聞)第6次「新型コロナ感染症」に関する実態調査(医療)結果(医労連)5.膨らみ続けるコロナ対策、予備費の用途に透明性を求める声政府が新型コロナウイルス感染症への対応で用意している2022年度補正予算について、国会審議を経ずに閣議決定のみで予算執行されることを問題視する報道が相次いでいる。日本経済新聞によれば、12兆円余りの用途について、医療・検疫体制向けの4兆円のほか、地方自治体に支出した地方創生臨時交付金は3.8兆円だが、最終的な用途を特定できたのはわずか8,000億円余り(約6.5%)と不透明であり、今後の補正予算のあり方について国会のチェック機能も含めた改善が求められる。(参考)予備費乱用の恐れも 異例の補正予算編成―緊急経済対策(時事通信)社説:予備費の乱用 立法府の自己否定だ(朝日新聞)コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題(日経新聞)

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小児期および青年期におけるオミクロン株に対するファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)の予防効果(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、小児におけるファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)のオミクロン株に対する有効性を評価した論文である。 まず、本邦と海外での現況を確認する。本邦における5~11歳の新型コロナウイルスワクチン接種は、2022年(令和4年)1月21日より薬事承認されている。これは、オミクロン株が流行する前のデルタ株でのデータで、5~11歳でも、16~25歳と同程度に抗体価が上昇し、有効性が評価できたことを根拠としている。ただし、小児におけるオミクロン株の感染状況が確定的ではなかったことと、オミクロン株の小児における発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスも十分ではなかったため、小児については努力義務の規定は適用せず、今後の最新の科学的知見を踏まえて引き続き議論することが適当とされていた。また、本コメント執筆時点での海外情勢としては米国やカナダ、フランスでは小児に対して接種を推奨、英国やドイツは重症化リスクが高い小児や重症化リスクのある者と同居や接触がある場合などで接種を推奨している。 今回の研究結果では、5~11歳に対するワクチン接種で、オミクロン株関連入院のリスクを68%低下させることが証明された。これは、過去に報告されたデルタ株関連の入院リスクを低減させる効果よりは低いが、引き続き重症化リスクのある小児へのワクチン接種を推奨する根拠になると考えられる。 また、新型コロナワクチンは時間経過に伴う予防効果の軽減が懸念されている。本研究では、12~18歳の青年期について、デルタ期とオミクロン期でワクチン接種からの時間経過に伴う有効性の違いも分析されている。12~18歳の青年に対するデルタ株流行期間中のCovid-19関連入院に対するワクチンの効果は、ワクチン2回接種完了後2~22週で93%(95%CI:89~95)、23~44週で92%(95%CI:80~97)だった。オミクロン株流行期間中は、ワクチン2回接種完了後2~22週で43%(95%CI:-1~68)、23~44週で38%(95%CI:-3~62)だった。このデータから、本論文ではオミクロン株流行期におけるワクチン接種による予防効果の低下は、ワクチン接種後の時間経過による効果軽減よりも、流行株の変化に伴うワクチン効果の軽減が大きいと考えられると指摘している。 前述のデータを参考にすると、12~18歳のオミクロン株に対する効果が落ちていることが懸念されたが、それでも重篤なCovid-19関連の入院を防ぐことは本論文からも読み取られた。サブグループ解析で、オミクロン期間中の入院に対する予防効果が、非重篤なCovid-19に対しては20%(95%CI:-25~49)であったが、重篤なCovid-19に対しては79%(95%CI:51~91)であり、オミクロン株流行時期の青年期であっても重篤な入院を予防するためには適切なワクチン接種が望ましいと考えられる。 また、本論文のlimitationsにも記載があるが、5~11歳についてはワクチン接種後の追跡期間が限られており、時間経過による予防効果の変化はデータが収集できていない。本コメント執筆時点では、小児におけるファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)の5~11歳に対する接種量は成人よりも少ないため、時間経過に伴う感染予防効果軽減が起こることが懸念されている。小児についてはブースター接種時期のみならず、適切な1回当たりのワクチン接種量を勘案するためにもこれらのデータは今後確認する必要があるだろう。 さて、ワクチン接種の推奨については、ワクチンによる予防効果のみではなく、副反応やCovid-19流行に伴う小児に与える行動制限の影響についても考える必要がある。副反応は、本論文に記載はないが、CDCの報告やNEJM誌に掲載されたデータを参考にすることができ、現時点での厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の資料では許容できないリスクを示唆する情報はないとしている。また、本邦の報告でも、厚生労働省によるワクチン接種後の副反応疑い報告で、3月20日までに推定で21万5,000回余りの接種で16件。症状が重いと判断されたのは心筋炎・心膜炎などが疑われた2例とのことだった。この2例も、その後軽快しており、厚生労働省は副反応の頻度について、「12歳以上と比較して低い傾向にある」としたうえで、「重大な懸念は認められない」としている。 小児のワクチン接種が成人ほど急がれなかった理由の1つに、Covid-19流行当初は小児におけるCovid-19罹患率や、重症化リスクが低いことがあった。しかし、今後の流行株によっては小児の重症化リスク増大や、小児多系統炎症性症候群(MIS-C:multisystem inflammatory syndrome in children)症例の増加、安全な集団生活の確保困難等が起こり、さらにワクチン接種の推奨度が増すことも考えられる。

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60歳以上の4回目ファイザー製ワクチン、感染・発症予防効果は/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の4回目接種は、4ヵ月以上前に受けた3回目接種と比較して、接種後30日までのCOVID-19関連アウトカムの改善に有効であることが示された。イスラエル・Clalit Research InstituteのOri Magen氏らが、同国の半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析して報告した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン株)による感染が拡大するとともに、COVID-19ワクチンのブースター接種(3回目接種)後の免疫減弱が示されており、いくつかの国では高リスク者への4回目接種が開始されている。NEJM誌オンライン版2022年4月13日号掲載の報告。4回目接種者vs.マッチング3回接種者、それぞれ約18万2千人について解析 研究グループは、イスラエル最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータベースを用い、同国でオミクロン株が優勢であった2022年1月3日~2月18日のデータを解析した。対象は、60歳以上で研究期間中に4回目接種を受ける資格があり(すなわち、少なくとも4ヵ月前に3回目接種済み)、SARS-CoV-2感染歴がない人である。 研究期間の各日に4回目接種を受けた人(4回目接種群)、ならびに4回目接種者と交絡因子(年齢、性別、居住区等)がマッチした同日時点でまだ4回目接種を受けていない人(対照群)について、マッチングした日からSARS-CoV-2感染、死亡、30日間、2022年2月18日、または対照者が4回目接種を受ける日のいずれか早い日まで追跡した。 主要評価項目は、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、症候性COVID-19、COVID-19関連入院、重症COVID-19およびCOVID-19関連死である。4回目接種後7~30日目および14~30日目の2期間について、4回目接種の相対的有効性を解析した。解析対象は、適格基準を満たした4回目接種群18万2,122例、対照群18万2,122例であった。4回目接種、入院・重症化・死亡に高い効果、感染・発症予防効果は45~55% 4回目接種後7~30日目の相対的有効率は、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染に関して45%(95%信頼区間[CI]:44~47)、症候性COVID-19が55%(53~58)、COVID-19関連入院が68%(59~74)、重症COVID-19が62%(50~74)、COVID-19関連死が74%(50~90)であった。 4回目接種後14~30日目における相対的有効率は、SARS-CoV-2感染52%(95%CI:49~54)、症候性COVID-19が61%(58~64)、COVID-19関連入院72%(63~79)、重症COVID-19が64%(48~77)およびCOVID-19関連死76%(48~91)であった。 4回目接種後7~30日目における絶対リスク差(3回接種vs.4回接種)は、COVID-19関連入院が180.1例/10万人(95%CI:142.8~211.9)、重症COVID-19が68.8例/10万人(48.5~91.9)であった。 パラメトリック・ポアソン回帰を用いた感度分析の結果、SARS-CoV-2感染に対する相対的有効率推定値は主要解析と類似していた。

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2ヵ月1回の注射が女性をHIV感染から守る(解説:岡慎一氏)

 性交渉によるHIV感染に対するリスクグループは、不特定多数を相手にする男性同性愛者(men who have sex with men:MSM)およびcommercial sex worker(CSW)を中心とした女性である。性交渉によるHIV感染予防には、コンドームの使用などsafer sexの実施が推奨されてきたが、それだけでは不十分であることが、多くの疫学データから示されていた。 一方、MSMにおいては、10年以上前よりHIVウイルスに曝露する前に予防的にTDF-FTC(今回のコントロール薬)を服用する曝露前予防(Pre-Exposure Prophylaxis:PrEP)の有効性が証明されており、すでに90ヵ国以上の国でPrEPが実施されている。WHOも2015年にPrEPを強く推奨するガイドラインを出しているが、残念ながら日本では2022年5月現在まだ承認されていない。 ところが、女性の場合、PrEPの有効性はあまり芳しくなかった。これは、女性がPrEP薬を服用することにより、CSWではないかという差別・偏見を受けたり、コンドームを使用してもらえなくなるなどのマイナス面があり、服薬の遵守(Adherence)が低くなりがちであることが影響していた。 治療においても一番重要な点はAdherenceである。現在、HIV感染症に対する治療法は進歩し、1日1回1錠で治療できるようになっているが、実臨床の場ではそれでも飲み忘れは起こり、治療の失敗が起こる。このAdherenceの問題を解決してくれたのが、半減期延長型の注射剤である。治療においては、今回のcabotegravirとリルピビリンの2剤を4週もしくは8週に1回注射することにより、治療の成功率が飛躍的に改善した。 今回は、その注射剤であるcabotegravirを8週間おきに注射し、PrEPの効果を検討したものである。今まで予防効果が安定していなかった女性においても、現在認可されている経口のTDF-FTCと比較し、注射剤での予防効果が有意に勝っていた。MSMにおいても同様の結果は示されており、薬価の問題が克服されれば、今後のPrEPは、長期作用型の注射剤が主流になってくるであろう。

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第105回 アビガン承認見送り、医療関係者が今明らかにした催奇形性以外の問題点

約2週間前、ある医療関係者とお会いして「懐かしい」薬の名前を耳にした。それは抗インフルエンザ薬のファビピラビル(商品名:アビガン)のことである。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の特効薬になるかもと一時大騒ぎになったこの薬については、本連載の第7回と第44回で触れている。しかし、複数の治療薬が登場した今となっては非常に影が薄くなっていて、正直、私個人もほぼ忘れかけていた存在だ。簡単にこれまでの経緯をまとめるとRNAポリメラーゼ阻害薬の作用機序をもつ同薬は、新型コロナウイルスが同じRNAウイルスであったため、新型コロナのパンデミック初期にドラッグ・リポジショニングとして注目を浴びた。この時期に藤田医科大学による特定臨床研究(観察研究)もスタートしており、2020年5月4日、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言延長時の記者会見で、安倍 晋三首相(当時)は「すでに3,000例近い投与が行われ、臨床試験が着実に進んでいます。こうしたデータも踏まえながら、有効性が確認されれば、医師の処方の下、使えるよう薬事承認をしていきたい。今月(5月)中の承認を目指したいと考えています」と発言したほどだった。その後、特定臨床研究では有効性が示せず、製造販売元の富士フイルム冨山化学が単盲検試験による企業治験を実施。結果は主要評価項目の「症状(体温、酸素飽和度、胸部画像所見)の軽快かつPCR検査で陰性化するまでの期間」で、アビガン群で11.9日、プラセボ群で14.7日となり、調整後ハザード比(HR)は1.593(95%信頼区間[CI]:1.024~2.479、p=0.0136) 。アビガン群で有意に症状を改善することが示された。ところが厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(薬食審)医薬品第二部会は2020年12月21日の審議で「単盲検試験という設定が結果に与えた影響について議論され、現時点で得られたデータから有効性を明確に判断することは困難」と結論付け、承認は見送られた。当時はクウェートとカナダでプラセボ対照の二重盲検試験が進行中だったことから、これらなど追加の結果次第で再度審議が行われることとなった。そして、クウェートで中等症~重症で入院中の新型コロナ患者を対象に症状回復までの期間を主要評価項目にした治験の結果は翌2021年1月に速報で公表され、プラセボ群との間で統計学的有意差が認められず、さらにカナダで軽症~中等症の新型コロナ患者を対象にクウェートの治験同様、症状回復するまで期間を主要評価項目にしていた治験も昨年11月に統計的有意差は認められなかったと発表された。一方、富士フイルム側も承認見送り確定後、新たな試験デザインで日本国内での治験を再度実施していた。この試験では重症化リスク因子がある発症早期の新型コロナ患者を対象に主要評価項目を重症化率に設定して昨年4月にスタート。そして先月11日、試験へのエントリーを3月末で終了することをひっそりと発表していた。その理由をプレスリリースでは以下のように説明している。「今般、従来株と比べて重症化率が低いオミクロン株が流行し、最近本治験に組み入れられた患者のほとんどがオミクロン株感染者であると推定される中、現在の治験プロトコルで試験を継続しても、『アビガン』の重症化抑制効果の検証が困難になることや、プラセボを用いた試験継続は被験者の利益に繋がらないことから、当社は、本試験への新たな被験者の組み入れを終了することを決めました」この文章を素直に読めば、試験の進行が思わしくないだろうことは容易に想像がつく。ちなみに治験が開始された昨年4月以降、何度も感染拡大の波がありながら、いまだに続いていることを不思議に思う向きもあるかもしれない。しかし、この試験の対象はワクチン非接種者。しかも、その後、重症化予防を意図した治療薬も複数承認されていることを考えれば、被験者集めが相当難航した結果だろうと考えられる。さて冒頭の医療関係者は私に「あの時」の内情を話してくれた。それは承認見送りになった時のこと、つまりその理由である。ちなみにこの2週間、私はほかの関係者にもこの件をぶつけてみて、冒頭の関係者のいう話はおおむね正しいのだろうと判断した。この関係者が挙げた承認見送りの理由は大きくわけて2つあった。まず、試験が前述のように単盲検であり、プラセボ群では症状悪化の際の救済措置としてのファビピラビル投与が認められていたため、実薬群と比べてプラセボ群からの脱落があまりにも多かった点が問題となったとのこと。この点に関しては単盲検試験という設定が適切ではなかったとの意見は当時からあったが、第77回でも触れた通り、当時の新型コロナの致死率や対抗手段の乏しさから考えればやむを得なかっただろうと私個人は考えている。そしてこの試験デザインは想像以上に試験結果に影響を与えていたことになる。もう1点の理由は主要評価項目の評価の在り方についてだ。主要評価項目では、「体温の改善(37.4℃以下)」「酸素飽和度の改善(96%以上)」「胸部画像所見が最悪の状態から改善」の3条件が満した症例で、PCR検査を48時間間隔で2回行い、ともに陰性だった患者において投与開始から1回目のPCR検査陰性までの期間を比較していた。しかし、このうちの「胸部画像所見」という、ある種の主治医バイアスが入り込む余地がなくもない項目について、撮影時期の設定がなく、その結果、撮影枚数なども症例や施設によってまちまち過ぎたというのだ。この関係者によると、「撮影枚数が多い症例によっては極端に良いとこ取り、悪いところ取りができてしまうので、撮影枚数が少ない症例と比較して信頼性、妥当性を担保できると判断するのは困難だった」というのだ。これならば単盲検という試験デザインを抜きにしても科学的な評価は難しいだろう。私も「あの時」の承認見送りにかなり納得がいったポイントだ。同時にこのことを知ると部会での審議は科学的には相当厳格に対応していたこともわかるし、その時点で承認をしていなくて良かったと胸を撫でおろしてしまう。ご存じのようにファビピラビルはかなり高い催奇形性を有することが動物実験から分かっている。このために抗インフルエンザ薬の承認の時ですら、当初目指していた季節性インフルエンザの適応症ではなく、「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、ほかの抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分なものに限る)」とされ、パンデミック発生時に国が出荷の可否を決めるという「あるのにない薬」状態だった。この当時、私は厚労省の関係者に「なにもそこまで厳格にせずに問診の際に医師に妊娠の有無やその可能性を確認したうえで投与する形を徹底すれば良いのではないか?」と尋ねたが、「広範に使われるインフルエンザ治療薬では『蟻の一穴』は十分に起こりえます。そうではないと断言できますか?」とやや色をなして反論された記憶がある。残念ながらこの懸念はこのコロナ禍で現実のものとなっている。千葉県のいすみ医療センターで昨年8~9月の第5波の最中、前述の観察研究で配布されていたファビピラビルを妊孕性がある患者も含めた男女98人の自宅療養者に処方していた件である。この件について、センター側は「緊急避難的でやむを得なかった」と説明しており、あの当時では未曽有の事態だったことを考えれば、私自身も過度に批判するつもりもなく同様にやむを得なかっただろうと思う。とはいえ、催奇形性による被害が起きれば、それは不可逆のものだ。今回冒頭の関係者の話を聞いて、非常時の新薬承認の難しさと恐ろしさを改めて思い知らされた次第だ。

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新型コロナによる血栓・出血リスク、いつまで高い?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は深部静脈血栓症、肺塞栓症および出血のリスク因子であることが、スウェーデンにおけるCOVID-19の全症例を分析した自己対照ケースシリーズ(SCCS)研究およびマッチドコホート研究で示された。スウェーデン・ウメオ大学のIoannis Katsoularis氏らが報告した。COVID-19により静脈血栓塞栓症のリスクが高まることは知られているが、リスクが高い期間やパンデミック中にリスクが変化するか、また、COVID-19は出血リスクも高めるかどうかについては、ほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、COVID-19後の静脈血栓塞栓症の診断と予防戦略に関する推奨に影響を与えるだろう」とまとめている。BMJ誌2022年4月6日号掲載の報告。スウェーデンのCOVID-19全患者約105万7千例を解析 研究グループは、スウェーデン公衆衛生庁の感染症サーベイランスシステム「SmiNet」を用い、2020年2月1日~2021年5月25日の期間における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査陽性例(初感染者のみ)の個人識別番号を特定するとともに、陽性者1例につき年齢、性別、居住地域をマッチさせた陰性者4例を特定し、入院、外来、死因、集中治療、処方薬等に関する各登録とクロスリンクした。 SCCS研究では、リスク期間(COVID-19発症後1~7日目、8~14日目、15~30日目、31~60日目、61~90日目、91~180日目)における初回深部静脈血栓症、肺塞栓症または出血イベントの発生率比(IRR)を算出し、対照期間(2020年2月1日~2021年5月25日の期間のうち、COVID-19発症の-30~0日とリスク期間を除いた期間)と比較。マッチドコホート研究では、COVID-19発症後30日以内における初回および全イベントのリスク(交絡因子[併存疾患、がん、手術、長期抗凝固療法、静脈血栓塞栓症の既往、出血イベント歴]で補正)を対照群と比較した。 解析対象は、SCCS研究ではCOVID-19患者105万7,174例、マッチドコホート研究では対照407万6,342例であった。COVID-19発症後数ヵ月間は有意に高い 対照期間と比較し、深部静脈血栓症はCOVID-19発症後70日目まで、肺塞栓症は110日目まで、出血は60日日目までIRRが有意に増加した。とくに、初回肺塞栓症のIRRは、COVID-19発症後1週間以内(1~7日)で36.17(95%信頼区間[CI]:31.55~41.47)、2週目(8~14日)で46.40(40.61~53.02)であった。また、COVID-19発症後1~30日目のIRRは、深部静脈血栓症5.90(5.12~6.80)、肺塞栓症31.59(27.99~35.63)、出血2.48(2.30~2.68)であった。 交絡因子補正後のCOVID-19発症後1~30日目のリスク比は、深部静脈血栓症4.98(95%CI:4.96~5.01)、肺塞栓症33.05(32.8~33.3)、出血1.88(1.71~2.07)であった。率比は、重症COVID-19患者で最も高く、スウェーデンでの流行の第2波および第3波と比較し第1波で高かった。同期間におけるCOVID-19患者の絶対リスクは、深部静脈血栓症0.039%(401例)、肺塞栓症0.17%(1,761例)、出血0.101%(1,002例)であった。

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COVID-19に対する中和抗体薬「ソトロビマブ」の有効性(解説:小金丸博氏)

 ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ点滴静注液)はSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を発揮することが期待されている中和抗体薬である。Fc領域にLS改変と呼ばれる修飾が入ることで長い半減期を達成する。今回、重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症のCOVID-19患者に対するソトロビマブの有効性と安全性を検討した第III相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験の最終結果がJAMA誌オンライン版に報告された。被験者1,057例を対象とした解析では、無作為化後29日目までに入院または死亡した患者の割合は、プラセボ投与群(529例)が6%(30例)だったのに対し、ソトロビマブ投与群(528例)では1%(6例)であった(相対リスク減少率:79%)。副次評価項目である救急外来受診の割合や致死的な呼吸状態悪化の割合などでもソトロビマブ投与群で有意に減少しており、軽症~中等症のCOVID-19に対して重症化予防効果を示した。 本試験の重要なLimitationとして、変異株に対する有効性が検討されていないことが挙げられる。2020年8月~2021年3月に割り付けが行われた試験であり、その後世界的に流行したオミクロン変異株は含まれていない可能性が高い。オミクロン変異株に対するソトロビマブの中和活性は若干の減弱にとどまり、有効性が期待できると考えられているが、BA.2系統に対してはBA.1系統に対してよりも中和活性が低下する可能性が指摘されている。今後、ソトロビマブの中和活性が低い変異株が出現する可能性は考えられるため、SARS-CoV-2の最新の流行株の情報に注視し、適応を検討する必要がある。 主な有害事象としてソトロビマブ投与群では下痢を2%に認めたものの、ソトロビマブに関連した重篤な有害事象は認めなかった。ただし、まれな有害事象を検出するには症例数が不十分であり、さらなる知見の集積が必要である。 本試験の中間解析の結果を参考に、本邦においても2021年9月27日に特例承認された。COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行う。本臨床試験の組み入れ基準等を参考に、重症化リスク因子としては、薬物治療を要する糖尿病、肥満(BMI 30kg/m2以上)、慢性腎障害(eGFR 60mL/分/1.73m2未満)、うっ血性心不全(NYHA心機能分類クラスII以上)、慢性閉塞性肺疾患などが想定される。発症早期に投与することが望ましく、症状出現から7日以内が投与の目安となる。

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オミクロン株患者の症状報告、喉の痛みや嗅覚障害の割合は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状研究のアプリとして知られる「ZOE COVID」の登録者について調べたところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン変異株を特徴付ける症状の有病率と、デルタ変異株の同有病率は異なることが示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCristina Menni氏らが、ZOE COVIDに登録した6万例超を対象に行った解析結果を報告した。オミクロン変異株の症状は、明らかに下気道に関与したものが少なく、入院となる可能性も低かった。オミクロン変異株はデルタ変異株よりも重症化リスクは低いことが明らかになっている。結果を踏まえて著者は、「オミクロン変異株は、発症の期間は短いが感染性の可能性はあることを示している。今回得られたデータは、労働衛生政策および公衆衛生アドバイスに影響を与えると思われる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年4月7日号掲載の報告。COVID-19症状研究アプリの登録者データを解析 研究グループは、ワクチン接種を受けた集団における、発症率、入院リスクおよび症状の持続期間の違いを定量化する前向き縦断観察研究を行った。「ZOE COVID」に登録し、検査結果と症状を自己報告した参加者のデータを収集して解析。英国在住の16~99歳、BMI値15~55で、いずれかのCOVID-19ワクチンを2回以上接種しており、症候性PCR検査陽性またはSARS-CoV-2イムノクロマトグラフィの結果を、試験期間中ログに記録していた参加者を適格とした。 主要アウトカムは、発症(アプリでモニタリングした32症状)または入院で、陽性検査結果の判定前後7日以内の発生率について、オミクロン変異株流行中とデルタ変異株流行中を比較した。喉の痛みはオミクロン株のほうが有意に多い 2021年6月1日~2022年1月17日に、ZOEアプリでSARS-CoV-2陽性の検査結果と症状を報告した6万3,002例を特定し解析した。被験者を、年齢、性別、ワクチン接種回数でマッチングし、1対1の割合でデルタ変異株流行期間(2021年6月1日~11月27日、デルタ変異株罹患率70%超、4,990例)とオミクロン変異株流行期間(2021年12月20日~2022年1月17日、オミクロン変異株罹患率70%超、4,990例)の群に割り付けた。 嗅覚障害は、オミクロン変異株流行期間中のほうがデルタ変異株流行期間よりも有意に少なかった(16.7% vs.52.7%、オッズ比[OR]:0.17、95%信頼区間[CI]:0.16~0.19、p<0.001)。 喉の痛みは、オミクロン変異株流行期間中のほうがデルタ変異株流行期間よりも有意に多かった(70.5% vs.60.8%、OR:1.55、95%CI:1.43~1.69、p<0.001)。 入院率は、オミクロン変異株流行期間中のほうがデルタ変異株流行期間よりも有意に低率だった(1.9% vs.2.6%、OR:0.75、95%CI:0.57~0.98、p=0.03)。

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デルタ株、オミクロン株感染に対するBNT162b2の3回目接種の感染/発症、入院予防効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 今回取り上げたMoreiraらの論文(Moreira ED Jr, et al. N Engl J Med. 2022 Mar 23. [Epub ahead of print])はBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)の3回目接種の効果を検証した第III相試験の結果を提示したものである。この論文の解釈において注意しなければならない点は、試験が施行された時期の背景ウイルスが現在の問題ウイルスであるオミクロン株ではなく、それ以前のVOC(Variants of concern)であるという事実である。すなわち、Moreiraらの論文に示された内容は、現在、あるいは近未来において、“Real-world”で深刻な問題を提起するであろうオミクロン株に対する抑制効果を示すものではない。それ故、本論評ではMoreiraの論文に基づき一世代前の変異株であるデルタ株に対するBNT162b2の3回目接種による予防効果とAndrewsら(Andrews NA, et al. N Engl J Med. 2022 Mar 2.)が発表したオミクロン株に対する3回目接種の予防効果を比較し、両者の差を説明する液性免疫、細胞性免疫の動態について考察する。デルタ株に対するBNT162b2の3回目接種による感染、入院予防効果 Moreiraらは2回目ワクチン接種より中央値で約11ヵ月後に3回目接種を施行した18歳以上の症例を対象として3回目接種より中央値で2.5ヵ月の経過を観察した。治験開始は2021年7月1日、デ-タ集積締め切りは2021年10月5日であった。この時期の主たる背景ウイルスはデルタ株であり、治験の結果はデルタ株に対する予防効果を示すものである。3回目接種後のデルタ株感染予防効果は2ヵ月未満で94.8%、2~4ヵ月で93.3%であった。ワクチン2回接種後の感染予防効果は3%/月の割合で低下するので(Thomas SJ, et al. N Engl J Med. 2021;385:1761-1773.)、2回接種11ヵ月後には60%前後まで低下していたはずである。すなわち、2回接種後の時間経過に伴い低下したデルタ株に対する感染予防効果は、3回目接種により2回目接種後の最大値付近(90~95%)まで回復した。しかしながら、一度回復したデルタ株感染予防効果はその後の時間経過に伴い再度低下した。 重症化予防の1つである入院予防効果は2回目接種5ヵ月後にも90%台の高い値を維持し(Tartof SY, et al. Lancet. 2021;398:1407-1416.)、3回目ワクチン接種による入院予防効果の底上げは著明なものではない(Thompson MG, et al. Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71:139-145.)。オミクロン株に対するBNT162b2の3回目接種による感染、入院予防効果 Andrewsらはオミクロン株に対するBNT162b2の2回接種、3回接種の効果を報告した。オミクロン株に対する発症予防効果(感染予防効果とほぼ同等)はワクチン2回接種2~4週後に65.5%であったものが接種後25週以上経過すると8.8%まで低下した。定性的に同様の結果は英国健康安全保障庁(UKHSA)からも報告されている(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。ワクチン2回接種後25週以降に8.8%まで低下したワクチンの発症予防効果は3回目ワクチン接種2~4週後には67.2%まで回復した。しかしながら、3回目接種から10週以上経過するとワクチンの発症予防効果は45.7%まで再度低下した。 オミクロン株に対する入院予防効果は2回目接種2~24週後には72%であったものが25週以上で52%まで低下するが、3回目接種2週以降には88%まで回復する(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。しかしながら、それ以降は再度低下する(UKHSA. Technical Briefing. 2022 Jan 14.)。以上のようにオミクロン株に対するワクチンの感染/発症、入院予防効果はデルタ株に対する予防効果に比べ、いかなる時間帯でも低値を維持する。デルタ株、オミクロン株に対するワクチン接種後の液性免疫、細胞性免疫の動態 まず初めにBooster(免疫増強)という言葉について考えたい。従来、ワクチン接種による生体の免疫反応において1回目接種による免疫記憶細胞(B細胞、T細胞)の誘導をPriming、2回目接種による免疫記憶細胞の賦活化をBoostingと表記されてきた。コロナRNAワクチンに関する論文では3回目接種をBoosterと呼称されることが多いが、厳密には、2回目ワクチンを1回目のBooster、3回目ワクチンを2回目のBoosterと定義すべきである。また、液性免疫(B細胞)と細胞性免疫(T細胞)に対するPrimingとBoostingは必ずしも並行しないことにも注意する必要がある。 1回目ワクチン接種(Priming)から2~4週以降に液性免疫を形成するのは記憶B細胞の賦活化である。2回目ワクチン接種(1回目Booster)より3.5ヵ月後における賦活化された記憶B細胞の変異株S蛋白RBD(Receptor binding domain)に対する認識は、デルタ株で85%であるがオミクロン株では42%と低い(Tarke A, et al. Cell. 2022;185:847-859.)。その結果、オミクロン株に対する中和抗体価は2回目接種後でも検出限界近傍の低値を呈する(山口. 日本医事新報. 2022;5111:28.)。これはオミクロン株S蛋白に存在する数多くの遺伝子変異による強力な液性免疫回避に起因する。すなわち、オミクロン株に対する液性免疫においては2回目までのワクチン接種はPriming効果しかなく、3回目接種以降に初めてBooster効果を発現する。一方、デルタ株に対する液性免疫においては2回目接種以降にBooster効果が発現する。 オミクロン株に対するワクチン2回接種後の感染/発症予防効果は6ヵ月以内には低いながらも有効域に存在し、感染/発症予防効果の動態をほぼ無効の液性免疫からは説明できず、細胞性免疫(記憶CD4+-T、記憶CD8+-T細胞)の関与を考慮する必要がある。S蛋白にはCD4+-T細胞によって認識される抗原決定基(Epitope)が167個、CD8+-T細胞によって認識されるEpitopeが224個存在する(Ahmed SF, et al. Viruses. 2022;14:79.)。デルタ株ではCD4+-T細胞に対するEpitopeの91%、CD8+-T細胞に対するEpitopeの94%が保持されるため、デルタ株に対する細胞性免疫は野生株に対する細胞性免疫とほぼ同じレベルに維持される。一方、オミクロン株ではCD4+-T細胞に対するEpitopeの72%、CD8+-T細胞に対するEpitopeの86%が保持されるので、オミクロン株に対する細胞性免疫は有効ではあるがデルタ株に比べ少し低い(Tarke A, et al. Cell. 2022;185:847-859.)。2回目のワクチン接種により賦活化されたCD4+-T細胞は液性免疫と共同してデルタ株感染を抑制する。一方、2回目ワクチンのオミクロン株感染抑制には液性免疫の寄与はほぼゼロで、主としてCD4+-T細胞がその役割を担う。CD8+-T細胞の賦活化はデルタ株、オミクロン株に感染した生体細胞を殺傷/処理し重症化を阻止する。 3回目ワクチン接種後にはオミクロン株に対する記憶B細胞の賦活化が初めて有効化し、オミクロン株に対する感染予防はデルタ株の場合と同様に液性免疫とCD4+-T細胞賦活の共同作業として発現する。ワクチン接種後のCD4+-T細胞、CD8+-T細胞性免疫は時間経過と共に緩徐ではあるが低下することが報告されており(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)、オミクロン株における2回目ならびに3回目ワクチン接種後の感染/発症予防効果、入院予防効果の時間的低下を招来する。 現状のRNAワクチンは武漢原株のS蛋白をPlatformとして作成されたものである。それ故、オミクロン株が有する多数の変異がワクチン接種後の記憶B細胞(液性免疫)、記憶T細胞(細胞性免疫)の働きを抑制/修飾する。その結果、現状ワクチンのオミクロン株制御効果は不十分で、2022年1月3日にイスラエルで、3月29日に米国で、高齢者に対する4回目のワクチン接種(3回目Booster)が開始された(Magen O, et al. N Engl J Med. 2022 Apr 13. [Epub ahead of print]; The Washington Post. updated. 2022 Mar 29.)。このように、現状ワクチンを用いたオミクロン株制御は複雑な様相を呈し、今後、何回のワクチン接種が必要であるかを結論できない混沌とした時代に突入している。この問題を解決するためにはオミクロン株特異的ワクチンの開発が必要である。2022年1月下旬、Pfizer社とModerna社はオミクロン株のS蛋白をPlatformにしたオミクロン株特異的ワクチンの臨床治験を開始したと発表した。これらの新ワクチンの開発が成功すれば、現在混沌としているオミクロン株に対するワクチン脆弱性に関する多くの問題が解決する可能性があり、両製薬会社の努力に期待したい。

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5~11歳への新型コロナワクチンの副反応の頻度は?/厚生労働省

 厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は、4月13日に合同会議を開催し、最新のワクチン(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]を含む)の動向の報告が行われ、その内容が公表された。 とくにCOVID-19ワクチンの5~11歳への接種では、接種による副反応報告は医療機関からの報告が6件(0.0028%)、製造販売業者からの報告数が2件(0.0009%)だった(推定接種回数:21万5,368接種)。なお、重篤な副反応や死亡の報告はなかった。■副反応疑い報告の状況について・集計期間:2022年2月21日~3月20日・推定接種回数:1回目 21万5,368接種・副反応疑い報告:医療機関報告数 6(0.0028%)製造販売業者報告数 2(0.0009%)・副反応報告について医療機関、製造販売業者合わせて21件あり(4月1日現在)、いずれも軽快、回復している。(重篤度が重い2例)組織球性壊死性リンパ節炎(10歳・女)心筋炎、心膜炎、ウイルス性咽頭炎の所見(7歳・男)(重篤度が重くない症状など)血管迷走神経反射、異常感、嘔吐、苦悶感など 審議会では、上記の報告から小児ワクチン接種に関する論点として次の2点を提起し、今後も検討を行っていく。・小児(5~11歳用)ワクチン接種後の事例についても、国内外における報告状況を注視していくとともに、引き続き評価・分析を行っていく。また、最新の報告状況などを踏まえ、必要に応じ、周知・注意喚起を行っていく。・小児(5~11歳用)ワクチン接種後の報告状況についても、現時点においては、引き続き、ワクチンの接種体制に影響を与える程の重大な懸念は認められないと考えてよいか。※4月13日現在、5~11歳に適応承認がされているCOVID-19ワクチンはBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)のみである。

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ノババックス製ワクチン承認、添付文書を公開/厚生労働省

 厚生労働省は4月19日、ノババックス製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて製造販売を承認(国内の申請者は武田薬品工業)。併せて、ノババックス製ワクチンの添付文書を公開した。一般名は組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン、販売名はヌバキソビッド筋注。国内で承認を得た4種類目のワクチンとなる。ノババックス製は添付文書によると2~8℃の冷蔵保管が可能ノババックス製は、ファイザー製とモデルナ製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンとは異なる、遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンで、添付文書によると冷蔵保管(2~8℃)が可能。これまでのワクチン接種でアレルギー反応が出た人への使用を想定している。<ノババックス製COVID-19ワクチンの添付文書情報>6. 用法及び用量初回免疫:1回0.5mLを2回、通常、3週間の間隔をおいて、筋肉内に接種する。追加免疫:1回0.5mLを筋肉内に接種する。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 接種対象者本剤の接種は18歳以上の者に行う。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.2 接種回数初回免疫:本剤は2回接種により効果が確認されていることから、原則として、他のSARS-CoV-2に対するワクチンと混同することなく2回接種するよう注意すること。7.3 接種間隔初回免疫:1回目の接種から3週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目の接種を実施すること。追加免疫:通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができる。 本ワクチンについて、米国およびメキシコで行われた第III相無作為化プラセボ対照試験では、ワクチンの有効性は90.4%(95%CI:82.88~94.62)。英国で行われた第III相無作為化プラセボ対照試験では、ワクチンの有効性は89.7%(95%CI:80.2~94.6)であった。 厚労省は1億5,000万回分の供給を受ける契約を結んでおり、来月下旬から約10万回分を自治体に配送する予定。

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第108回 小児の原因不明の重症肝炎が欧州や米国で増えている

肝炎の主な原因ウイルスが見当たらない原因不明の重症肝炎が欧州や米国の10歳頃までの幼い小児に増えています1)。英国で主に10歳までの74例(49例がイングランド、13例がスコットランド、残りはウェールズと北アイルランド)、スペインで13歳までの3例が4月8日までに見つかっています2,3)。また、米国のアラバマ州で1~6歳の9例が見つかっており1,4)、デンマークとオランダでも似た病状が報告されています。英国とスペインのそれら小児に4月12日時点で死亡例はありませんが全員が入院を要し、何人かは非常に重篤であり、7例は肝臓移植を受けています。米国アラバマ州でも9例中2例が肝臓移植を必要としました4)。風邪を引き起こすウイルスの一員として知られるアデノウイルスがそれら重症肝炎の原因かもしれません。Scienceのニュースによると英国ではアデノウイルスが多ければ半数から検出されています1)。また、アラバマ州の9例では全員からアデノウイルスが検出されました。英国でのそれら急な重症肝炎の最初の10件は健康な小児に発生したものでした3)。ほんの一週間前まではいたって健康だった小児に発生しうる重症肝炎は深刻な事態だと英国イングランドのBirmingham Children’s Hospitalの小児肝臓研究医師Deirdre Kelly氏は言っています1)。ただし同氏によると幸いほとんどは自ずと回復しています。先週14日には英国スコットランドでの原因不明の小児重症肝炎流行の詳細がEurosurveillance誌に掲載されました5)。同地でのその流行は3~5歳の原因不明重症肝炎小児5人がわずか3週間にグラスゴーの小児病院で認められたことを受けて先月末3月31日に察知されました。スコットランドでのそのような肝炎の通常の発生数は年間4例未満ですが、流行察知後の調査の結果、今年に入ってから4月12日までに10歳以下の小児13人が原因不明の急な肝炎で入院していました。それら13例のうち1例以外は今年3~4月に生じています。飲食物の毒あたりやおもちゃなどの有害物質が原因かと当初は考えられましたが、今ではウイルスに目が向けられています。肝炎の主な原因であるA、B、C、E型肝炎ウイルスは英国やスペインの小児から見つかっていません。一方、ワクチン非接種の何人かからは入院の少し前か入院時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が検出されました。また、多ければ半数からは肝炎の原因となることは通常稀なはずのアデノウイルスが検出されました。アデノウイルスは呼気中の液滴に含まれるかそれらが付着した表面や感染者に触れることで伝染し、嘔吐・下痢・結膜炎・風邪症状を引き起こすことが知られます。現時点ではそういうアデノウイルス絡みの原因が有力視されています。肝炎の原因となることがおよそ稀なアデノウイルスの仕業であるならそうさせる何らかの事態を背景にしているのでしょう。これまでとは一線を画す症候群と紐づく新たな変異株が発生しているかもしれないし、免疫が未熟な幼い小児をすでにありふれた変異株が酷く害しているのかもしれないとスコットランドの研究者はEurosurveillance誌で述べています5)。SARS-CoV-2感染(COVID-19)流行で足止めを食らった幼い小児はいつもなら接しているはずのアデノウイルスなどのウイルスの面々といまだ馴染めず免疫が頼りないままで未熟である恐れがあります。ノッティンガム大学のウイルス学者Will Irving氏によるとロックダウン明けの小児にいつものウイルス感染が増えており、アデノウイルス感染もその一つに含まれます1)。全員からアデノウイルスが検出された米国アラバマ州の9例のうち5例にはもっぱら胃腸炎の原因として知られる41型アデノウイルスが認められ、どうやら関連があるらしいとアラバマ州保健部門は言っています4)。アデノウイルス原因説が有力とはいえそれ以外の要因の検討もなされています1)。たとえば先立つCOVID-19の免疫への影響が他の感染を生じやすくしているのかもしれません。あるいはCOVID-19の長期の後遺症の一つと考えられなくもありません。それに未知の毒物に端を発している可能性もあります。参考1)Mysterious hepatitis outbreak sickens young children in Europe as CDC probes cases in Alabama / Science2)Increase in hepatitis (liver inflammation) cases in children under investigation / UK Health Security Agency3)Acute hepatitis of unknown aetiology - the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland / WHO4)Investigations of nine young children with adenovirus are underway / Alabama Department of Public Health (ADPH)5)Investigation into cases of hepatitis of unknown aetiology among young children, Scotland, 1 January 2022 to 12 April 2022 / Eurosurveillance

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新型コロナ第6波の重症化率と致死率/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波のピークアウトがあいまいな中で、すでに第7波の気配もみられている。陽性者数が一番多かった新型コロナ第6波では、どれくらいの重症化率、致死率だったのだろう。 4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」が資料として発表された。新型コロナ第6波の重症化率と致死率、11万9,109例を対象に算出 解析は石川県、茨城県、広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日の期間における新型コロナ感染者11万9,109人を対象とした。年齢階級別、ワクチン接種歴別に重症化率および致死率を暫定版として算出した。 新型コロナの重症者は、人工呼吸器使用、ECMO使用、ICUなどで治療のいずれかの条件に当てはまる患者と定義し、重症化率は、経過中重症に至ったが死亡とならなかった患者、重症化して死亡した患者、重症化せず死亡した患者の合計を感染者数で割ったもの、死亡者は、新型コロナの陽性者であって、死因を問わず亡くなった者とした。 解析の結果、60代から新型コロナの重症化率と致死率が上昇し、とくにワクチン接種がない場合は、40代からも上昇していた。【全体】(単位は%)10代未満:重症化率0.02 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.02 致死率0.0030代:重症化率0.01 致死率0.0040代:重症化率0.05 致死率0.0250代:重症化率0.12 致死率0.0360代:重症化率0.58 致死率0.2970代:重症化率2.03 致死率1.2380代:重症化率4.25 致死率3.6790代以上:重症化率6.48 致死率6.21【3回ワクチン接種歴あり】10代未満:重症化率0.00 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.00 致死率0.0030代:重症化率0.00 致死率0.0040代:重症化率0.00 致死率0.0050代:重症化率0.00 致死率0.0060代:重症化率0.31 致死率0.3170代:重症化率0.95 致死率0.6380代:重症化率2.15 致死率1.7990代以上:重症化率0.97 致死率0.97【ワクチン接種歴なし】10代未満:重症化率0.02 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.00 致死率0.0030代:重症化率0.03 致死率0.0040代:重症化率0.09 致死率0.0950代:重症化率0.50 致死率0.1760代:重症化率1.72 致死率0.6370代:重症化率3.83 致死率2.0080代:重症化率7.62 致死率6.6390代以上:重症化率9.76 致死率9.33※なお、これらの数字は2022年3月31日時点のステータスに基づき算出されており、今後重症者数や死亡者数は増加する可能性がある点に留意してほしいと注意を促している。

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テビペネム ピボキシル、複雑性尿路感染症に有望/NEJM

 複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の入院患者の治療において、テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩の経口投与はertapenemの静脈内投与に対し有効性に関して非劣性で、安全性プロファイルはほぼ同等であることが、英国・Spero TherapeuticsのPaul B. Eckburg氏らが実施した「ADAPT-PO試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年4月7日号に掲載された。テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩はカルバペネム系のプロドラッグであり、経口投与されると腸管細胞によって速やかに活性本体であるテビペネムに変換される。テビペネムは、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科やフルオロキノロン耐性菌などの多剤耐性グラム陰性病原菌に対し広域抗菌スペクトル活性を有するという。95施設の国際的な第III相非劣性試験 本研究は、複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の入院患者の治療におけるテビペネム ピボキシル臭化水素酸塩とertapenemの有効性と安全性の比較を目的とする第III相二重盲検ダブルダミー無作為化非劣性試験であり、2019年6月~2020年5月の期間に中東欧、南アフリカ、米国の95施設で参加者の登録が行われた(米国Spero Therapeuticsと米国保健福祉省[HHS]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、規制当局による現行のガイダンスに沿ったプロトコルで規定された疾患の定義の基準を満たす複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の診断を受けた患者であった。 被験者は、テビペネム ピボキシル(600mg、8時間ごと)を経口投与する群またはertapenem(1g、24時間ごと)を静脈内投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、7~10日間(菌血症の患者は最長で14日間)の投与が行われた。 有効性の主要エンドポイントは、微生物学的intention-to-treat集団(複雑性尿路感染症または急性腎盂腎炎の診断が確定し、ベースライン時に尿培養が陽性のすべての患者)における治癒判定の受診時(19日目、±2日以内)の全奏効(臨床的治癒と良好な微生物学的反応の複合)とされた。非劣性マージンは12.5%。菌血症では治療終了時に90%を超える全奏効割合 1,372例の入院患者が登録された。このうち868例(63.3%)が微生物学的intention-to-treat集団(複雑性尿路感染症50.8%、腎盂腎炎49.2%)で、平均年齢(±SD)は58.1±18.3歳、女性が505例(58.2%)、中東欧の患者が856例(98.6%)を占めた。 治癒判定時の全奏効の割合は、テビペネム ピボキシル群が58.8%(264/449例)、ertapenem群は61.6%(258/419例)であり、加重群間差は-3.3ポイント(95%信頼区間[CI]:-9.7~3.2)と、テビペネム ピボキシル群のertapenem群に対する非劣性が確認された。 また、ベースライン時に菌血症が認められた患者の全奏効割合は、治療終了時がテビペネム ピボキシル群93.6%、ertapenem群96.2%で、治癒判定時はそれぞれ72.3%および66.0%(加重群間差:6.3ポイント、95%CI:-11.8~24.4)だった。 副次エンドポイントやサブグループ解析では、主解析の結果を支持するデータが得られた。たとえば、微生物学的intention-to-treat集団における治療終了時の全奏効割合は、テビペネム ピボキシル群が97.3%、ertapenem群は94.5%であった(加重群間差:2.8ポイント、95%CI:0.1~5.7)。 また、治癒判定時の臨床的治癒の割合は、テビペネム ピボキシル群が93.1%、ertapenem群は93.6%だった(加重群間差:-0.6ポイント、95%CI:-4.0~2.8)。治癒判定時の微生物学的反応は、それぞれ59.5%および63.5%で得られ(-4.5ポイント、-10.8~1.9)、治癒判定時に微生物学的反応が認められなかった患者の多くでは、無症候性の細菌尿の再発がみられた。 有害事象は、テビペネム ピボキシル群の25.7%、ertapenem群の25.6%で発現し、最も頻度の高い有害事象は軽度の下痢(テビペネム ピボキシル群5.7%、ertapenem群4.4%)と頭痛(3.8%、3.8%)だった。重篤な有害事象はそれぞれ1.3%および1.7%、投与中止の原因となった有害事象は0.1%および1.2%で認められた。 著者は、「ほかに有効な経口薬がない場合に、テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩は、抗菌薬耐性の尿路病原体による複雑性尿路感染症および急性腎盂腎炎の治療選択肢となる可能性がある」としている。

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第97回 巨額のコロナ補助金による公立病院の収益改善を問題視/財務省

<先週の動き>1.巨額のコロナ補助金による公立病院の収益改善を問題視/財務省2.GW中も新型コロナ患者に対応できる体制確保を求める通知/厚労省3.コロナ禍で自殺者数が増加、自殺総合対策大綱の見直しへ/政府4.「かかりつけ医」以外の受診に定額負担、フリーアクセス抑制5.精神科の医療保護入院、「廃止」の文言を撤回/厚労省6.岸田首相、リフィル処方箋の推進を/経済財政諮問会議1.巨額のコロナ補助金による公立病院の収益改善を問題視/財務省13日に開催された財政制度等審議会の分科会において、財務省が新型コロナウイルス対策に投じられた巨額の補助金をめぐって医療機関経営実態の「見える化」を提言した。感染拡大中の病床確保支援、医療従事者への慰労金、院内感染対策、ワクチン接種体制確保などのために、緊急包括支援交付金として6兆円、病床確保のための緊急支援金0.3兆円などと、低く見積もっても約8兆円が使われた。病床確保料を受け取りながらも新型コロナ患者の受入れをしなかった病院が問題視されたこともあり、医療機関などへの財政支援の効果の検証が求められる。2020年度決算では、新型コロナ関連の補助金に支えられた形で、国公立病院の収益が急改善している。853病院ともっとも数が多い公立病院の合計収益は、2019年度における980億円の赤字から2020年度には1,251億円の黒字になるなど、国立病院機構傘下の140病院、地域医療機能推進機構の57病院を含む国公立病院の決算の分析結果を示した。費用対効果の面で補助金額が適切だったかどうか、問題提起する狙いがある。(参考)国公立病院の収益が急改善 20年度、コロナ巨額補助金で(東京新聞)コロナ対応に国費16兆円、4割が医療体制強化に…財務省幹部「検証が必要」財務省(読売新聞)コロナ対策、病院に8兆円 無駄排除へ実態検証欠かせず(日経新聞)2.GW中も新型コロナ患者に対応できる体制確保を求める通知/厚労省厚生労働省は、今年のゴールデンウィークを前に、各医療機関や自治体に対して、連休中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者や疑い患者の増加が想定されるとして、引き続き診療・検査体制や入院体制を維持・確保することが重要とする通知を13日に発出した。とくに高齢者施設等における医療支援の更なる強化を始めとした流行再拡大への対応が求められる。連休時における発熱患者等の診療・検査医療機関やコロナ患者の受入れ医療機関など、十分な医療提供体制の事前調整や、COVID-19疑い例の相談窓口など、連休時においてもその体制を引き続き確保することなどが全9項目にまとめられている。(参考)ゴールデンウィーク等の連休時の保健・医療提供体制の確保について(厚労省)連休時も確保病床など即座に稼働できる準備を 厚労省、診療・検査・入院体制確保を要請(CBnews)ゴールデンウィーク中も十分な医療提供が行える体制を地域関係者で協議し、準備・周知を―厚労省(Gem Med)3.コロナ禍で自殺者数が増加、自殺総合対策大綱の見直しへ/政府厚労省「自殺総合対策の推進に関する有識者会議」は15日に報告書をとりまとめ、公表した。わが国では1998年以降、14年連続して年間自殺者数が3万人を超えていたものの、2006年に制定された自殺対策基本法や政府の自殺総合対策大綱に基づく取り組みの結果、2万人台に減少するなど、成果を挙げていた。しかし、2021年は女性や小中高生の自殺者が増え、総数は11年ぶりに前年を上回った。このため、女性や子供への支援強化として相談窓口の拡充や、若者の自殺対策のさらなる推進、報道等への対応を含め、今年の夏に政府は、現在の自殺総合対策大綱を見直す方針。(参考)女性、子ども「深刻な状況」 自殺対策の指針、見直しに向け報告書(朝日新聞)自殺対策、精神科医療につなぐ連携体制強化を 厚労省が有識者会議の報告書を公表自殺総合対策の推進に関する有識者会議報告書(厚労省)4.「かかりつけ医」以外の受診に定額負担、フリーアクセス抑制13日に開催された財務省財政制度等審議会の分科会において、「かかりつけ医」以外を受診した場合に、患者に対して新たな定額負担を求める意見が出された。これは2015年にも政府内で検討されていたが、「かかりつけ医」の定義が曖昧なため見送られた経緯がある。2025年には団塊世代が75歳以上となるため医療費の抑制が課題となっており、これに対して「量重視」のフリーアクセスを、必要な時に必要な医療にアクセスできる「質重視」に切り替えていく必要があるとし、財務省はこれを今年の夏の「骨太方針2022」に盛り込みたいとしている。なお、今年の夏には参議院選挙もあり、どこまで具体化するか注目したい。(参考)外来受診時の定額負担、再び俎上に「かかりつけ医」制度とセットで財務省提案(CBnews)「かかりつけ医」と医療の今後(読売新聞)5.精神科の医療保護入院、「廃止」の文言を撤回/厚労省厚労省は、14日に開催された「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」において、精神科病院に強制的に入院させる「医療保護入院」について、将来的な「廃止」という文言を削除した。民間団体「精神医療人権センター」によると、日本の精神科の強制入院率は欧州の3~4倍、人口100万人当たりで比較すると約15倍と世界的に見ても大きい。前回の検討会では、将来的な廃止も視野に入れ縮小する考えを示していたが、日本精神科病院協会(日精協)の委員が反発したため、表現を後退させた形。今後も、医療保護入院の見直しについては、できる限り入院治療に頼らない治療を行うことを原則として、それでも入院治療が必要な場合、できる限り本人の意思を尊重する形で任意入院を行うことが重要であるとした。入院医療を必要最小限にするための予防的取り組みの充実や、医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援など、より一層の権利擁護策の充実を求めている。(参考)医療保護入院、廃止も視野に縮小へ 「任意」や退院促す(福祉新聞)医療保護入院、「廃止」を削除 精神科、厚労省が表現後退(東京新聞)第9回「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」6.岸田首相、リフィル処方箋の推進を/経済財政諮問会議今年の診療報酬改定で導入されたリフィル処方だが、現場では再診料が減ることを懸念した医療機関などによりあまり活用されていない。この現状に対して、岸田総理は13日に開催された経済財政諮問会議で、リフィル処方の使用促進を含む医療・介護サービス改革の継続・強化に取り組むことを明らかにした。民間議員からは、コロナの感染拡大を機に外来の受診回数が減少したデータを提示し、薬のみの診療は患者にとって過度な通院負担であった可能性があると指摘。患者の希望を確認、尊重する必要性があると求めた。(参考)岸田首相 諮問会議でリフィル処方の使用促進求める コロナ禍の経験踏まえた医療改革の継続・強化を(ミクスオンライン)「リフィル処方箋」医師及び腰「薬剤師が管理」抵抗 患者ニーズ置き去り(日経新聞)

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国内コロナ患者の血栓症合併、実際の抗凝固療法とは/CLOT-COVID Study

 国内において、変異株により感染者数の著しい増加を認めた第4波以降に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した際の血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態に関するデータが不足している。そこで尼崎総合医療センターの西本 裕二氏らは国内16施設共同で後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、とくに重症COVID-19患者で予防的抗凝固療法が高頻度に行われていた。また、血栓症の全体的な発生率は実質的に低いものの、COVID-19が重症化するほどその発生率は増加したことが明らかになった。ただし、画像検査を受けた患者数が少ないため実質的な発生率が低く見積もられた可能性もあるとしている。Journal of Cardiology誌オンライン版2022年4月5日号掲載の報告。 研究者らが実施したCLOT-COVID Study(日本におけるCOVID-19患者での血栓症・抗凝固療法の診療実態を明らかにする研究)は、2021年4~9月に国内16施設でPCR検査によりCOVID-19と診断された入院患者を登録した後ろ向き多施設共同研究で、第4波と第5波でのCOVID-19患者の血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態を把握することなどを目的に実施された。対象者は予防的抗凝固療法の種類と用量に応じて7グループ(予防用量の未分画ヘパリン[UFH]、治療用量のUFH、予防用量の低分子ヘパリン[LMWH]、治療用量のLMWH、直接経口抗凝固薬[DOAC]、ワルファリン、その他)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19と診断されて入院したのは2,894例で、平均年齢(±SD)は53±18歳、男性は1,885例(65%)であった。また、平均体重(±SD)は68.9±18.5kg、平均BMI(±SD)は25.3±5.4kg/m2であった。・D-ダイマーが測定された患者(2,771例)の中央値は0.8μg/mL(四分位範囲:0.5~1.3)であった。・1,245例(43%)が予防的抗凝固療法を受け、その頻度は軽症9.8%、中等症61%、重症97%とCOVID-19の重症度が高くなるほど増えた。・抗凝固療法に使用された薬剤の種類や投与量は、参加施設間で大きく異なったが、予防用量UFHは55%(685例)、治療用量UFHは13%(161例)、予防用量LMWHは16%(204例)、治療用量LMWHは0%、DOACは13%(164例)、ワルファリンは1.5%(19例)、その他は1.0%(12例)で使用された。・入院中、下肢の超音波検査は38例(1.3%)、下肢の造影CTは126例(4.4%)が受け、55例(1.9%)で血栓症を発症した。そのうち39例(71%)は静脈血栓塞栓症(VTE)で、VTE診断時のD-ダイマーは18.1μg/mL(四分位範囲:6.6~36.5)、入院から発症までの日数の中央値は11日(四分位範囲:4〜19)であった。・血栓症の発生率は、軽症0.2%、中等症1.4%、重症9.5%とCOVID-19が重症化するにつれて増加した。・57例(2.0%)で大出血が発生した。・158例(5.5%)が死亡し、その死因の81%はCOVID-19肺炎による呼吸不全であった。 研究者らは、COVID-19入院患者への予防的抗凝固療法は重症例になるほど高頻度に行われていたが、治療方針が参加施設間で大きく異なっており、各施設の判断や使用可能な薬剤が異なっていた可能性を示唆した。また今後、国内のCOVID-19患者に対する至適な予防的抗凝固療法についてその適応や抗凝固薬の種類、用量を明らかにすべく、さらなる研究が望まれると結んだ。

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