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葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏でコロナ増悪抑制の可能性/東北大学ほか

 軽症および中等症Iの新型コロナウイルス感染症患者に対し、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を追加投与することで、発熱症状が早期に緩和し、呼吸不全への増悪リスクが低かったことが、東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座の高山 真氏らの研究グループによる多施設共同ランダム化比較試験で明らかになった。Frontiers in pharmacology誌2022年11月9日掲載の報告。葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用したコロナ患者は増悪リスクが低かった 調査は、2021年2月22日~2022年2月16日にかけて国内7施設で行われた。20歳以上の軽症および中等症Iの新型コロナウイルス感染症患者161例を、解熱薬や鎮咳薬による通常治療を行うグループ(対照群、80例)と、通常治療に加えて葛根湯エキス顆粒2.5gと小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒2.5gを1日3回14日間併用するグループ(漢方薬群、81例)にランダムに割り付け、その効果を比較検討した。主要評価項目は1つ以上の風邪様症状の緩和までの日数で、副次的評価項目は各症状が緩和するまでの日数および呼吸不全への増悪であった。 コロナ治療に葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用する効果を比較検討した主な結果は以下のとおり。・解析対象となったコロナ患者は、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用する漢方薬群70例(男性45例[64.3%]、年齢中央値35歳)、対照群73例(男性47例[64.4%]、年齢中央値37歳)であった。・1つ以上の風邪様症状緩和までの日数は、漢方薬群と対照群で有意差はみられなかった(p=0.43)。・共変量調整後の累積発熱率では、漢方薬群のほうが対照群より有意に回復が早かった(ハザード比[HR]:1.76、95%信頼区間[CI]:1.03~3.01、p=0.0385)。・中等症Iのコロナ患者における呼吸不全への増悪リスクは、漢方薬群のほうが対照群よりも低かった(リスク差:−0.13、95%CI:−0.27~0.01、p=0.0752)。・両群で薬物投与に関連する有害事象に有意な差はみられなかった。

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女性のサル痘感染、性自認や性行為で臨床症状が異なる/Lancet

 2022年5月~11月に、世界で7万8,000人以上のヒトサル痘ウイルス感染が報告されたが、主に男性と性行為を持つ男性で発生している。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJohn P. Thornhill氏らは、今回、15ヵ国のシスジェンダーおよびトランスジェンダー女性と、出生時に女性性を割り当てられたノンバイナリーにおけるサル痘感染の疫学的および臨床的な特性を記述し、リスク因子の特定と理解の向上を目的とする症例集積研究を行った。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月17日号に掲載された。136人のデータを解析、性行為による感染が多い 本研究では、サル痘ウイルス感染の診断件数が多い地域の研究者と連絡を取り、サル痘ウイルス感染が確定された女性およびノンバイナリーのデータを提供するよう依頼した。 参加施設は、匿名化された構造的症例報告スプレッドシートに感染した女性およびノンバイナリーの関心変数のデータを記述したほか、可能性のある曝露、人口統計学的因子、職業、早期の症状、HIVの感染状況、併存する性感染症などを中心に、疑われる感染経路についても尋ねられた。 2022年5月11日~10月4日までに15ヵ国(欧州、北米・南米、アフリカ、イスラエル)でサル痘ウイルスに感染した136人のデータが寄せられた。トランス女性が62人(46%)、シス女性が69人(51%)、ノンバイナリーが5人(4%)であった。ノンバイナリーは数が少ないため、シス女性と合わせて解析が行われた(シス女性/ノンバイナリー74人)。全体の年齢中央値は34歳(四分位範囲[IQR]:28~40、範囲:19~84)だった。 136人中121人(89%)が、男性との性行為を報告した。37人(27%)はHIV感染者で、トランス女性(62人中31人[50%])がシス女性/ノンバイナリー(74人中6人[8%])よりも高率であった。 性行為による感染が疑われたのは、トランス女性が55人(89%、残りは感染経路不明)、シス女性/ノンバイナリーは45人(61%)であった。性行為以外の感染経路は、シス女性/ノンバイナリーでのみ報告され、性行為以外の密接な接触が7人(9%)、家庭が7人(9%)、職場(医療従事者)が4人(5%)だった。診断前誤診が23%、肛門性器の小水疱膿疱性発疹が多い サル痘ウイルス感染の診断の前の誤診が136例中31人(23%)で認められ、トランス女性(62人中6人[10%])よりも、シス女性/ノンバイナリー(74人中25人[34%])で高率であった。 データが得られた集団における症状は、発疹が134人中124人(93%)に認められ、121人中105人(87%)は小水疱膿疱性と記述されていた。また、少なくとも1つの肛門性器病変が129人中95人(74%)にみられた。 病変数中央値は10個(IQR:5~24、範囲:1~200)であった。粘膜病変(膣、肛門、中咽頭、眼球)は119人中65人(55%)で発現した。膣および肛門の性行為は、これらの部位での病変の発生と関連していた。 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で検査した14の膣スワブ検体のすべてで、サル痘ウイルスDNAが検出された。 17人(13%)が入院した。入院理由は、病変部の細菌性重複感染が2人、肛門直腸の重度疼痛の管理が3人、嚥下痛が3人などであった。33人(24%)がテコビリマット(tecovirimat)による治療を受け、6人(4%)は曝露後にワクチン接種を受けた。死亡の報告はなかった。 著者は、「女性における診断の遅れや誤診を避けるために、特別な注意を払う必要がある」と指摘し、「トランス女性およびシス女性/ノンバイナリーでは、病変部位は性行為の種類とほぼ一致していた。臨床医は、性自認や性行為によって臨床症状が異なることに留意する必要がある」としている。

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第141回 退院COVID-19患者に抗凝固薬アピキサバン無効

抗凝固薬は重度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の回復を助けると広く考えられてきましたが、英国での無作為化試験結果によるとどうやらそうとはいえず、むしろ有害かもしれません。英国全域で実施されている無作為化試験HEAL-COVIDの結果、退院COVID-19患者に経口の抗凝固薬・アピキサバン(apixaban)を投与しても死亡や再入院のリスクは残念ながら低下しませんでした1)。COVID-19患者のその病気との戦いは退院して一件落着というわけにはいかず、心臓、肺、循環器がしばしば絡む症状の新たな発生や悪化、俗に言うlong COVIDをおよそ5人に1人が退院後に被ります。命を落とす人も少なくなく、退院したCOVID-19患者の10人に1人を超える12%は半年以内に死亡しています2)。HEAL-COVID試験はCOVID-19患者のそういった長引く症状や死亡を予防するか減らしうる治療に目星をつけ、それらの治療がCOVID-19患者の長期の経過を改善しうるかどうかを調べることを目当てに実施されています。被験者はCOVID-19で入院した患者から募り、自宅へと退院する少し前にアピキサバン投与群か病院それぞれのいつもの退院後治療群(標準治療群)にそれら患者を割り振りました。アピキサバン投与群の患者は同剤を1日2回2週間経口服用しました3)。1年間の追跡の結果、アピキサバン投与群と標準治療群の死亡か再入院の発生率はほとんど同じでそれぞれ29.1%と30.8%であり、アピキサバンの死亡や再入院の予防効果は残念ながら認められませんでした。アピキサバンは抗凝固薬なだけにHEAL-COVID試験でも出血と無縁ではなく、同剤投与群402人のうち数名は大出血により同剤服用を中止しています。COVID-19患者の退院後の手当として有用と広くみなされていた抗凝固薬は実際のところ死亡や再入院を減らす効果はなく、むしろ危険らしいことを示した今回の試験結果をうけてCOVID-19患者への本来不要な同剤投与がなくなることを望むと試験主導医師Mark Toshner氏は言っています。今回の結果は無益な治療で患者に害が及ぶのを断ち切る重要な役割を担うことに加え、COVID-19患者の長い目でみた回復、すなわちlong COVIDの解消を助ける治療を引き続き探していかねばならないことも意味します1)。HEAL-COVID試験でもその取り組みは続いており、コレステロール低下薬アトルバスタチン(atorvastatin)1年間投与の検討が進行中です。同剤は抗炎症作用があり、COVID-19患者にみられる炎症反応を緩和しうると目されています4)。long COVIDは本連載第140回で紹介したとおり英国では230万人、米国ではその10倍の2,300万人に達すると推定されており、その影響は医療に限らず雇用、障害年金、生命保険、家のローン、老後の備え、家計に波及します5)。それらをひっくるめてlong COVID が米国に強いる負担は4兆ドル近い(3.7兆ドル)とハーバード大学の経済学者David Cutler氏は予想しており6)、その額は実にサブプライムローン絡みの2000年代後半の大不況(Great Recession)の負担に匹敵します。目下のところCOVID-19といえば感染してすぐの時期に目が行きがちですが、感染がひとまずおさまった後の長患いの最適な治療をいまや急いで確立する必要があります1)。参考1)Blood thinning drug does not help patients recover from Covid / Cambridge University Hospitals NHS Foundation Trust2)About HEAL-COVID3)HEAL-COVID試験(Clinical Trials.gov)4)Blood Thinner Ineffective for COVID-19 Patients: Study / TheScientist5)Long Covid may be ‘the next public health disaster’ - with a $3.7 trillion economic impact rivaling the Great Recession / CNBC6)Cutler DM.The Economic Cost of Long COVID: An Update

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新型コロナ抗体保有率が高い/低い都道府県は?/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で鈴木 基氏(国立感染症研究所感染症疫学センター長)らのチームが、「献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査」について結果を報告した。 本調査は、わが国における今夏の感染拡大を踏まえた市中での感染状況の把握を目的に、2022年11月6日~13日にかけて行われた。対象は、全国の日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた献血者8,260人で、献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体の有無が調べられた。日本全体および都道府県・男女・年齢群別の抗体保有率が解析されている。 なお、本調査の対象は全血献血または成分献血の基準を満たし、以下のいずれにも該当しない者とされた。・新型コロナウイルス感染症と診断または新型コロナウイルス検査で陽性になったことがあり、症状消失後(無症状の場合は陽性となった検査の検体採取日から)4週間以内・発熱および咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含む新型コロナウイルス感染症が疑われる症状や、味覚・嗅覚の違和感を自覚し、症状出現日から2週間以内および症状消失から3日以内・新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者に該当し、最終接触日から2週間以内全国で26.5%が新型コロナ抗体保有、沖縄県が最高、長野県が最低 過去の新型コロナウイルス感染で獲得したとみられる抗N抗体を保有する人の割合は、全国平均で26.5%(95%信頼区間[CI]:25.6~27.5)であった。都道府県別にみると、最高は沖縄県の46.6%(95%CI:41.2~52.1)、最低は長野県の9.0%(95%CI:4.6~15.6)であった。<抗体保有率(95%CI)の高かった都道府県(上位10都道府県)>沖縄県:46.6%(41.2~52.1)大阪府:40.7%(34.7~46.9)鹿児島県:35.2%(28.8~42.0)京都府:34.9%(28.5~41.7)熊本県:32.9%(26.7~39.5)長崎県:31.9%(25.4~39.1)東京都:31.8%(26.1~37.9)神奈川県:31.6%(25.1~38.7)宮崎県:31.3%(25.0~38.0)香川県:30.9%(24.1~38.3)<抗体保有率(95%CI)の低かった都道府県(下位10都道府県)>長野県:9.0%(4.6~15.6)徳島県:13.1%(8.2~19.5%)愛媛県:14.4%(9.1~21.1%)新潟県:15.0%(9.3~22.4)岐阜県:15.5%(10.5~21.8)岩手県:16.5%(10.1~24.8)広島県:17.1%(11.9~23.6)島根県:18.5%(12.6~25.8)秋田県:18.7%(12.2~26.7)山形県:19.5%(12.6~28.0)男女による差はなく、年齢が高いほど抗体保有率が低い傾向 男女別の抗体保有率は、女性26.5%(95%CI:24.7~28.4)、男性26.5%(95%CI:25.4~27.7)で、年齢群別の抗体保有率は以下のとおりであった。<年齢群別の抗体保有率(95%CI)>16~19歳:38.0%(33.5~42.7)20~29歳:35.7%(23.8~38.8)30~39歳:33.6%(31.0~36.3)40~49歳:26.8%(24.9~28.8)50~59歳:21.3%(19.6~23.0)60~69歳:16.5%(14.4~18.8) なお、今回の測定結果には献血ができない15歳以下や70歳以上の高齢者は含まれず、単純集計に基づく速報値であることなどから、結果の解釈には留意が必要としている。

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ソトロビマブ、高リスクCOVID-19で優れた重症化予防効果/BMJ

 オミクロンBA.1およびBA.2変異株が優勢な時期のイングランドでは、重症化のリスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の日常診療において、中和モノクローナル抗体ソトロビマブは抗ウイルス薬モルヌピラビルと比較して、28日以内の重症化の予防効果が優れ、60日の時点でも結果はほぼ同様であったことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBang Zheng氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月16日号で報告された。イングランドのEHRデータを用いたコホート研究 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19による重症転帰のリスクが高い患者において、重症化の予防効果をソトロビマブとモルヌピラビルで比較する目的でコホート研究を行った(UK Research and Innovation[UKRI]などの助成を受けた)。 本研究は、OpenSAFELY-TPPプラットフォーム(国民保健サービス[NHS]の電子健康記録[EHR]の解析のための、安全で透明性の高いオープンソースのソフトウエアプラットフォーム)を用いた実臨床コホート研究であり、イングランドの総合診療(GP)施設に登録している2,400万人から、患者レベルのEHRデータが取得された。 2021年12月16日以降に、ソトロビマブまたはモルヌピラビルによる治療を受けた、COVID-19による重症化リスクが高い成人COVID-19患者が対象となった。主要アウトカムは、治療開始から28日以内のCOVID-19による入院およびCOVID-19による死亡であった。さまざまな解析法で、矛盾のないほぼ同様の結果 2021年12月16日~2022年2月10日の期間に、3,331例がソトロビマブ、2,689例がモルヌピラビルによる治療を受けた。全体(6,020例)の平均年齢は52.3(SD 16.0)歳、58.8%が女性、88.7%が白人で、87.6%はCOVID-19ワクチンを3回以上接種していた。 治療開始から28日以内に、87例(1.4%)がSARS-CoV-2感染により入院または死亡した(ソトロビマブ群32例、モルヌピラビル群55例)。 居住地域で層別化したCox比例ハザードモデルでは、人口統計学的因子、高リスクコホート分類、ワクチン接種状況、暦年、BMI、その他の併存疾患で補正すると、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群に比べ、COVID-19による入院または死亡のリスクが大幅に低かった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.33~0.88、p=0.01)。 傾向スコアで重み付けしたCoxモデル(HR:0.50、95%CI:0.31~0.81、p=0.005)および完全ワクチン接種者に限定した解析(HR:0.53、95%CI:0.31~0.90、p=0.02)でも、これと矛盾のない結果が得られた。また、他の因子の有無による層別解析でも、実質的な効果の修正は検出されなかった(交互作用検定のp値はすべて>0.10)。さらに、この結果は、イングランドでオミクロンBA.2が優勢だった2022年2月16日~5月1日の期間に治療を受けた患者の探索的解析でもほぼ同様であった。 治療開始から60日以内(95例[1.58%]がCOVID-19で入院または死亡、ソトロビマブ群34例、モルヌピラビル群61例)の層別Cox回帰分析でも、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群よりもCOVID-19による入院・死亡の予防効果が優れた(4つのモデルのHRの範囲は0.46~0.51、すべてp<0.05)。 著者は、「これらの結果は、入院を要さないCOVID-19患者の治療において、モルヌピラビルよりもソトロビマブを優先する現行ガイドラインを支持するものである」としている。

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第137回 新型コロナ「5類」引き下げ、今やる3つのデメリット

「またこの議論が出てきたか」と感じている。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の『感染症法上の5類扱い問題』である。加藤 勝信厚生労働大臣は11月30日、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに対して、感染症法上の分類の見直し検討を念頭に現在のウイルスの病原性・感染性などに関するリスク評価を示すよう求めたという。釈迦に説法になってしまうが、改めて新型コロナの感染症法上の分類について触れておくと、現在は「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、外出自粛要請や入院勧告が可能で、医療費が全額公費負担なため、法的には感染症法上の2類とほぼ同等となっている。また、これとは別に新型コロナワクチンに関しては予防接種法の臨時接種扱いで、現時点でのワクチン接種は全額公費負担だ。もっとも陽性者報告などは簡略化されたことや、軽症の陽性者が大半を占めるようになり、自主的な自宅隔離や増加した発熱外来での対応止まりも増えたことなども相まって、現状は限りなく5類に近い扱いとも言える。さて個人的にはこの件についてどんな見解かと言うと、「見直し議論は大いにやって良いと思うが、実際の分類変更は多角的かつ慎重に検討すべき」という立場だ。なぜこのように敢えて言及するかと言えば、最近の新型コロナ5類化議論は世論や一部の政治家の主張に押され気味なことに加え、現在の岸田 文雄政権の支持率がかなり低くなっているため、ポピュリズムとも言える安易な判断をしかねない懸念があるからだ。この議論で最も慎重に検討すべきなのは今後の変異株登場の恐れと現在の重症化率についてである。2020年初以来、丸3年のコロナ禍の中で新型コロナでは武漢株→アルファ株→デルタ株→オミクロン株と流行株が入れ替わった。現在のオミクロン株の流行はほぼ丸1年が経過し、国内では最長流行期間を維持している変異株であるのは確かだ。もっともこの間もオミクロン株内の亜系統で流行株が入れ替わっている。これほど流行株が不安定な中で、単純にオミクロン株の特性を基準に法的位置づけを考えるべきかは検討の余地がある。そもそも今回の新型コロナでは、ウイルスの生存原理としての「感染力が強くなれば、重症化率は低下するだろう」というロジックが、武漢株からデルタ株変遷時には“幻想”にすぎなかったことが明らかになった。今の時点でオミクロン株感染者の重症化率が低下しているからと言って、今後もこの状況が続くと考えるのはやや拙速の感がある。感染力の強さゆえに新規感染者が増加し、その過程で強毒の変異株が出現する可能性も十分に考慮に入れなければならない。また、そもそもこの議論では、5類化を支持する一般人を中心に「感染者の数で考えるべきではなく、重症化率で考えるべき」との主張が多い。この手の主張をする人たちの中での最近の流行りは、財務省が各種データからまとめた各感染拡大期の重症化率データの引用である。確かにこのデータを見れば、第6波以降の重症化率や致死率は大幅に低下し、第7波では季節性インフルエンザと同等以下になっているように見える。しかし、この数字は極めて数多くの交絡因子を含んでいる。そもそも第5波と第6波以降での最大の違いはワクチン接種の有無である。第5波時もすでにワクチン接種は進行していたが、重症化率が最も深刻だったと言われる2021年8月は月末時点で全国民の1回目接種率がようやく50%超という状況に留まっていた。現在のオミクロン株の重症化率は2回目までが80%超、3回目までが70%弱の接種率を達成している中でのもの。真の重症化率はワクチン効果でマスクされている可能性がある。5類化議論、もっと言えば季節性インフルエンザとの比較をするならば、ワクチン接種回数や最終接種完了からの経過時間などの層別解析でワクチン接種状況に応じたデータを基に検討しなければ判断を誤る可能性もある。同時に財務省とりまとめの重症化率を基に5類化議論をするならば、それより一足先に始まった新型コロナワクチン接種の無償化終了の是非議論との兼ね合いをどうするかも欠かせない。少なくとも高齢者や基礎疾患保有者では、いまだ油断のならない感染症であることは明白である。5類化するならば、こうした人に対して季節性インフルエンザワクチンのような公費接種(費用の一部に公費負担がある場合)を提供するか否かは明確にしなければならない。というか、それなくして5類化はあまりにも暴論と言える。また一方で、5類化を主張する一般人の多くは、判で押したように「5類にすればどこの医療機関でも診てもらえるようになり、医療逼迫は防げる」というフレーズを口にする。しかし、これは“幻想”に過ぎない。すでに全国で新型コロナ対応を行う発熱外来を有する医療機関は4万軒超に達しているが、これだけ感染力の強い新型コロナでは、院内の導線確保がままならないなどの理由でどうあがいても対応できない医療機関はある。結局、5類化したところで今より発熱外来の対応施設が激増するとはとても考えにくい。そんな中、全国でどのような診療体制を構築するかという議論を棚上げにはできない。同時に整備しなければならないのが、この感染症の特徴ともいえる後遺症対応である。現在はごく一部の後遺症外来対応の医療機関を崖っぷちに立たせたかのような診療体制が続いている。地域ごとの後遺症診療体制の確立は急務だ。さらに検討しなければならないのが治療費の公費負担の在り方である。現在の新型コロナ治療薬は新規の抗体医薬や抗ウイルス薬など製薬企業にとって高額な開発費を要するものばかりで、すべての治療薬が5類という“ありふれた”感染症にしては高薬価である。そのアンバランスさはまるで田んぼのあぜ道をポルシェが疾走するかのごとき状況である。すでに薬価収載されたものでも、自己負担となれば患者は万単位の支払いを迫られることになり、「だったら要らない」という患者も出現するだろう。これら多くの変数を考慮した議論が必要で、およそ1~2ヵ月で結論を出せるものだとは思えない。というか、そもそも感染症法上の1~5類という硬直化した分類の枠内で考えるのもなかなか困難と言ってもいいかもしれない。にもかかわらず、政治の側から5類化議論が比較的安易に飛び出しているように私の目には映る。しかも、日本版CDC創設を根回しなしに突然進めた岸田政権である。正直、この先の行方は気が抜けないと個人的には思っている。

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AIファースト・ヘルスケア―医療現場におけるAIアプリケーションの利用

AIがもたらす医療現場の改善の可能性を知るために新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、医療システムの課題を浮き彫りにしました。本書は医療におけるAIの活用について「AIが現状できることとできないこと、今後の課題」「現状の医療が抱えている問題をAIが解決することができるのか」「医療のデジタルトランスフォーメーション(ヘルスケアDX)をどう実現させるか」「AIを中心とした医療の実現は、患者や医師、経営、テクノロジー企業など多角的な視点から見てどうあるべきか」などをテーマに、AIがもたらす医療現場の将来について論じています。 医師と技術者がともに歩み、AIの可能性を議論しながら医師、IT技術者、利用者、経営者、ビジネスのステークホルダーのためにAIを解説した1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    AIファースト・ヘルスケア ―医療現場におけるAIアプリケーションの利用定価2,640円(税込)判型A5判頁数268頁発行2022年9月著者Kerrie L. Holley、Siupo Becker,M.D.監訳者木村 映善訳者岡 響

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母子手帳アプリ『母子モ』で疾患啓発/AZ

 アストラゼネカは、11月28日付のプレスリリースで、母子手帳アプリ『母子モ』を通じた早産児やRSウイルス感染症に関する情報提供を11月11日より開始したことを発表した。 RSウイルスは、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳児では感染すると重症化しやすいとされている。また、正期産であっても生後6ヵ月未満は感染後重症化するリスクが高いため、該当する年齢の乳幼児を持つすべての保護者に疾患情報や感染対策について知ってもらうことが重要である。 今回の取り組みでは、母子手帳アプリ『母子モ』を通じて、妊娠中もしくは該当する年齢の乳幼児を持つ保護者を対象に、アストラゼネカが作成した早産児やRSウイルス感染症に関する情報を提供する。同アプリは、母子健康手帳との併用により、妊娠から子育てまで切れ目ない子育て支援サービスを受けられることが特徴で、全国47都道府県510の自治体で採用されている(2022年11月時点)。 『母子モ』は、妊婦健診など「妊娠中」メニュー、予防接種管理や乳幼児健診の記録、身体発育曲線などの「子育て」メニューを網羅した母子健康手帳機能のほか、子育てイベントやニュースなど地域の子育て情報機能を利用できる。また、本アプリの開発と運営は、生理日予測をはじめとした女性の健康情報サービス『ルナルナ』(2022年2月時点のアプリ累計ダウンロード数1,800万以上)など、モバイルサイトでヘルスケアサービスを提供するエムティーアイの子会社、母子モ株式会社が行っている。なお、今回の取り組みは、i2.JP(アイツードットジェイピー:Innovation Infusion Japan)―「患者中心」の実現に向けて、医療・ヘルスケア業界はどうあるべきか、といった難題の解決策を探るべく発足―というオープンなコミュニティで検討するなかで、『母子モ』を通じた情報提供が可能となった。 アストラゼネカは、「患者中心」の実現を目指すなか、この活動を通じてRSウイルス感染症の効果的な疾患啓発について検討するとともに、母子手帳アプリ『母子モ』で対象となる保護者へのタイムリーかつ適切な情報提供により、早産児やRSウイルス感染症に関する啓発の輪を一層広げていく、としている。

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12月1日 世界エイズ・デー【今日は何の日?】

【12月1日 世界エイズ・デー】〔由来〕世界レベルのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定。毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動を実施。関連コンテンツHIV感染症患者は新型コロナウイルスに罹りにくいのか?【新興再興感染症に気を付けろッ!】HIV感染と心血管疾患に関連はあるか/JAMA診療に役立つLGBTQsの基礎知識サル痘+コロナ+HIVのトリプル感染が初報告、臨床経過は?早く治療すれば怖くないHIV感染症

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第22回 電話・FAX・郵送が必要なコロナ治療薬「アナログ処方」の不可解

エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)を使うタイミングは?世間では「ゾコーバすげぇぜ!」みたいな報道が多いですが、有効性については少し落ち着いてみてほしいと思います。新型コロナの診断がついた途端「よっしゃ、ゾコーバや!」というのは適切とは言えません。「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」(2022年11月22日)では、以下のように記載されています1)。一般に、重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきである。また、重症化リスク因子のある軽症~中等症の患者に投与する抗ウイルス薬は、重症化予防に効果が確認されているレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルによる治療を検討すべきである。重症化リスクがある軽症者には、その他の抗ウイルス薬がよいとされており、重症化リスクがない軽症者にはそもそも治療が必要なのかどうかという議論になります。とはいえ、いろいろなエビデンスが今後出てくるかもしれませんので、全然ダメじゃんとバッサリ切ってしまうのではなく、もう少し長い目線で見ていくほうがよさそうに思います。抗ウイルス薬処方の手間が多すぎるそれにしても、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を使い始めた頃から、新型コロナの抗ウイルス薬の処方手続きが煩雑過ぎる問題が解決していません。本当に煩雑で、「処方させたくないのかな」と思うくらいです。ゾコーバも、これまでと同じように登録センターに医療機関と調剤薬局が登録する必要があります。また、処方に際して同意書を書いてもらって、調剤薬局に電話で一報を入れて、その後適格性情報チェックリストと処方箋をFAXして、原本を郵送するという「例の手順」になっています(図1)。画像を拡大する図1. ゾコーバの処方手順(参考資料2より筆者作成)変異ウイルス東京都の変異ウイルスモニタリングを見ていると、BA.5がまだ主流ではあるものの、BQ.1.1、BN.1、BF.7などの変異ウイルスが増えています(図2)。チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)はまだ効果を残していますが、変異ウイルスが出回るとこれも推奨されなくなるかもしれません。図2. 東京都の変異ウイルス(参考資料3より引用)抗体薬の位置付けが下がって、抗ウイルス薬への期待が相対的に高まっているからこそ、エビデンスに基づいてベストな選択肢を選ぶようにしたいものです。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会 COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版2)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(ゾコーバ錠125mg)の医療機関及び薬局への配分について3)東京都 モニタリング項目の分析(令和4年11月24日公表)

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軽症のコロナ入院患者、ARB上乗せは無益/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)(主にテルミサルタン40mg/日)による治療は疾患重症度に対する有益性がないことが、オーストラリア・シドニー大学のMeg J. Jardine氏らがインドとオーストラリアの17施設で実施したプラグマティックなアダプティブデザインの無作為化比較試験「CLARITY試験(Controlled evaLuation of Angiotensin Receptor blockers for covid-19 respIraTorY disease)」の結果、示された。これまで、ARB未治療の患者を対象とした5件の無作為化臨床試験において、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の主要評価項目に対する中立的効果が報告され、1件では副次評価項目である死亡に対し高用量テルミサルタン(80mgを1日2回14日間投与)の有益性が報告されていた。著者は本試験の結果について、「対象のほとんどがベースラインで酸素吸入を必要としない患者であったため」と述べたうえで、「現在進行中の試験では、より重症患者におけるARBの効果を評価できる可能性があり、ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いることで、臨床診療に役立つ確定的かつ効率的な回答が得られる」と述べている。BMJ誌2022年11月16日号掲載の報告。標準治療+ARB(主にテルミサルタン)vs.標準治療のみ(±プラセボ) 研究グループは、ARBによる治療歴がなく、検査による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の確定診断を受け、COVID-19の管理のために入院した18歳以上の患者を、標準治療に加えてARBまたは対照薬を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回28日間経口投与した。なお、ARBは、インドではテルミサルタン(開始用量40mg/日)、オーストラリアでは担当医の選択とし、対照薬はインドではプラセボ(二重盲検試験)、オーストラリアでは標準治療のみ(非盲検試験)であった。 主要評価項目は、14日目における修正WHO臨床進行スケール(WHO-CPS)(1:退院・活動制限なし~7:死亡)によるCOVID-19の疾患重症度、副次評価項目は28日目のWHO-CPS、死亡率、集中治療室入室、呼吸不全であった。14日目の疾患重症度は両群で同じ 2020年5月3日~2021年11月13日の期間に、2,930例がスクリーニングを受け、787例がARB群(393例、うち388例[98.7%]はテルミサルタン40mg/日)または対照群(394例)に無作為に割り付けられた。787例中、778例(98.9%)がインドから、9例(1.1%)がオーストラリアからの参加であった。 主要評価項目である14日目のWHO-CPS中央値は、ARB群(384例)で1(四分位範囲[IQR]:1~1)、プラセボ群(382例)で1(1~1)であった(補正後オッズ比[OR]:1.51、95%信用区間[CrI]:1.02~2.23、オッズ比>1の確率〔Pr[OR>1]〕:0.98)。 28日目のWHO-CPSは、両群間でほとんど差は認められなかった(補正後OR:1.02、95%CrI:0.55~1.87、Pr[OR>1]:0.53)。 本試験は、事前に設定された無益性の基準を満たし中止となった。

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コロナワクチン追加接種後も重篤なCOVID-19となる患者の特徴(解説:寺田教彦氏)

 2022年11月末、新型コロナウイルス患者は増加傾向となり、「第8波」への対応が問題となっている。「第1波や第2波」の頃と比較すると、新型コロナワクチンの普及や、重症化リスクの高いCOVID-19患者への抗ウイルス薬処方が可能になるなど治療の選択肢が増えており、これらの適切な活用が求められている。 本論文の執筆者であるUtkarsh Agrawal氏は、過去に新型コロナワクチン初回接種完了後も重症化する患者(COVID-19関連入院またはCOVID-19関連死)についてスコットランドで検討しており、高齢(80歳以上)、5つ以上の併存疾患、過去4週間以内の入院歴、新型コロナウイルスに接触するリスクの高い職業、行動(10回以上の検査歴)、介護施設入居者、社会的弱者、男性、前喫煙者でリスクが高いことを報告していた(Agrawal U, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:1439-1449.)。 当時と今回の論文で異なる点は、流行株がアルファ株からオミクロン株に変化した点と、新型コロナワクチンの接種回数が以前の研究では2回接種者を対象としていたが、本研究ではワクチン2回接種後に追加接種をした患者を対象としている点である。 「第8波」を迎える本邦の環境としても、流行株はオミクロン株と考えられ、ワクチンの接種も3回目以降の追加接種済みの患者が増えていることから、この論文を参考にしやすい状況と考えられる。 本論文の概要は「ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は?/Lancet」にまとめられており、ブースター接種後も高リスク患者の特徴は、高齢者(aRR:3.60[95%信頼区間[CI]:3.45~3.75])、5つ以上の併存疾患(aRR:9.51[95%CI:9.07~9.97])、免疫抑制状態(aRR:5.80[95%CI:5.53~6.09])、慢性腎臓病(aRR:3.71[95%CI:2.90~4.74])等である。※aRR:人口統計学的、臨床的因子と重症COVID-19との関連についてワクチン接種後の時間で調整した率比 本研究の結果を参考にできる臨床場面の1つは、執筆者の指摘どおり、抗コロナ薬の処方の判断がある。以前オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化予防に関する報告がされていた(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田 教彦 氏)-1570)。本研究で特定された、ブースター接種後もCOVID-19重症化リスクの高い患者層に対して、ニルマトレルビル等の抗ウイルス薬の処方をすることでCOVID-19重症化リスクが低下するか否かのエビデンスは今後の報告を待つ必要はあるが、現時点でのエビデンスとしては、これらの患者に対して抗ウイルス薬の処方を検討することは妥当だろう。 また、筆者は、重症化リスクの高い人々には、2回目接種以降のブースター接種を優先的に行うことも提案している。新型コロナウイルスワクチンのブースター接種により重症化率等の低下は認められており、本邦においてもブースター接種が未実施の場合は適切なタイミングでの接種が望ましいだろう。 ただし、ワクチンのブースター接種の実施に関しては、メリット(感染予防効果、重症化予防効果、集団免疫効果など)とデメリット(費用、副反応など)は継続して考えていく必要がある。本論文のように、新型コロナウイルスワクチン接種後もCOVID-19が重症化するリスクの高い患者層を特定するとともに、健康成人や重症化リスクの高い患者層それぞれに対して、ワクチンを追加接種する適切なタイミングを考察するための研究も望まれる。

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難治性心室細動、新たな除細動法が生存退院率を改善/NEJM

 院外心停止で難治性心室細動が認められる患者において、二重連続体外式除細動(DSED)およびベクトル変化(VC)除細動は標準的な除細動と比較して、いずれも生存退院率が高く、修正Rankin尺度スコアで評価した良好な神経学的転帰の達成はDSEDで優れたものの、VC除細動には差がなかったことが、カナダ・トロント大学のSheldon Cheskes氏らが実施した「DOSE VF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年11月24日号で報告された。カナダのクラスター無作為化クロスオーバー試験 DOSE VF試験は、カナダの6つの救急医療サービス(合計約4,000人の救急隊員)が参加した3群クラスター無作為化対照比較クロスオーバー試験であり、2018年3月~2022年5月の期間に行われた(カナダ心臓・脳卒中財団の助成を受けた)。 6施設は、救急隊員がDSED(2つの除細動器により、急速に連続してショックを与える)、VC除細動(1つの除細動器で、身体前面と背面に装着した電極パッドを切り換えてショックを与える)、標準的除細動のいずれかを行う群(クラスター)に無作為に割り付けられ、6ヵ月ごとにクラスターのクロスオーバーが行われた。 対象は、年齢18歳以上、院外心停止中に心因性と推定される難治性心室細動を呈した患者であった。 主要アウトカムは、生存退院とされた。副次アウトカムは、心室細動の停止、心拍再開、退院時の良好な神経学的転帰(修正Rankin尺度スコア2以下)であった。 本試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行による救急隊員の不足に関連して、救命処置に要する時間が延長する可能性への懸念から、データ安全性監視委員会により早期中止が勧告された。DSEDは心室細動停止率、心拍再開率も良好 早期中止の前に登録された405例(平均年齢63.6歳、男性84.4%)が解析に含まれた。355例(87.7%)が割り付けられた除細動を受けた。DSED群に125例(30.9%)、VC除細動群に144例(35.6%)、標準的除細動群に136例(33.6%)が割り付けられた。 生存退院率は、標準的除細動群の13.3%に比べ、DSED群が30.4%(補正後相対リスク[aRR]:2.21、95%信頼区間[CI]:1.33~3.67)、VC除細動群は21.7%(1.71、1.01~2.88)であり、いずれも高率であった(3群の比較でp=0.009)。 心室細動停止率は、標準的除細動群の67.6%に対し、DSED群は84.0%(aRR:1.25、95%CI:1.09~1.44)、VC除細動群は79.9%(1.18、1.03~1.36)であり、心拍再開率は、標準的除細動群が26.5%に対し、DSED群は46.4%(1.72、1.22~2.42)、VC除細動群は35.4%(1.39、0.97~1.99)であった。 また、良好な神経学的転帰の達成率は、標準的除細動群の11.2%に比べ、DSED群が27.4%(aRR:2.21、95%CI:1.26~3.88)と優れたのに対し、VC除細動群は16.2%(1.48、0.81~2.71)であり、差はみられなかった。 著者は、「薬剤投与のタイミングや、エピネフリンおよび抗不整脈薬の平均投与量は、3群ともほぼ同様であり、これらの薬物療法による試験結果への治療上の影響に差があったとは考えにくい」と指摘し、「結果はDSEDが良好であったが、救急医療サービスのなかには2台目の除細動器の補給が困難な施設もある可能性がある。標準的除細動よりもVC除細動のほうが生存率が高いことから、院外心停止時に2台目の除細動器が用意できない場合に、1台の除細動器でVC除細動を行うことは、難治性心室細動の代替治療の方法として有効と考えられる」としている。

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4回目接種後、医療者での抗体価推移と有効性の持続期間/NEJM

 4回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価は2・3回目接種後と比較して違いはあるのか。そしてコロナワクチンによって上がった抗体価はどのくらいの期間、持続するのか。イスラエル・Sheba Medical CenterのMichal Canetti氏らは、同国の医療従事者における4回目接種後6ヵ月間の液性免疫応答とワクチン有効性を評価。2回目および3回目接種後と比較した。NEJM誌オンライン版2022年11月9日号のCORRESPONDENCEに掲載の報告より。コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を2回目および3回目と比較 SARS-CoV-2検査および血清学的フォローアップ検査によって感染歴がないことが確認され、4ヵ月以上前に3回目接種を受けていたコロナワクチン4回目接種者が対象。4回目接種後の液性免疫応答(IgGおよび中和抗体の測定によって評価)を、2回目および3回目の投与後と比較した。 コロナワクチンの有効性は、以下の期間(4回目の接種後7~35日、36~102日、または103~181日)ごとに4回目接種を受けた参加者の感染率を、3回接種者の感染率と比較することによって評価された。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、年齢、性別、および職業により調整し、経時的な感染率の違いを説明するための時間スケールとして暦時間が使用された。死亡や追跡不可となった参加者はいなかった。 コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を調べた主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2感染歴のない参加者のうち、6,113人(年齢中央値48[37~59]歳)が液性免疫応答の分析に含まれ、1万1,176人(年齢中央値49[36~65]歳)がコロナワクチン有効性の分析に含まれた。・抗体反応はコロナワクチン接種後約4週間でピークに達し、13週間までに4回目接種前に見られたレベルまで低下し、その後安定していた。・コロナワクチン4回目接種後6ヵ月の追跡期間を通じて、週ごとに調整されたIgGおよび中和抗体レベルは、3回目接種後と同等であり、2回目接種後に観察されたレベルと比較すると著しく高かった。・コロナワクチン3回接種者と比較して、4回接種者ではSARS-CoV-2感染に対する保護効果が強化された。全体のワクチン有効性は41%(95%信頼区間[CI]:35~47)だった。・ワクチンの有効性は接種後の時間とともに低下し、接種後最初の5週間では52%(95%CI:45~58)だったのに対し、15~26週間では-2%(95%CI:-27~17)に低下した。 著者らは今回の結果について、「コロナワクチン3回目接種が2回目接種と比較して、免疫応答の改善と持続をもたらしたのに比較すると4回目接種の追加の免疫学的利点ははるかに小さく、ワクチン接種後13週までに完全に弱まった。この結果は、4回目接種を受けた患者のコロナワクチン有効性の低下と相関しており、接種後15~26週においては3回目接種後と比較した実質的な追加効果は見られなかった」とした。そのうえで、「これらの結果は、インフルエンザワクチンと同様に、4回目の接種および将来の追加接種を、流行の波に合わせて、または季節的に利用できるように賢明なタイミングで行う必要があることを示唆している」とまとめている。

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COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーの臨床的特徴-ワクチン接種の有無で比較-(解説:小金丸博氏)

 COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーやフロントラインワーカーの臨床的・ウイルス学的特徴をワクチン接種の有無で比較した前向きコホート研究の結果がJAMA誌2022年10月18日号に報告された。エッセンシャルワーカーとフロントラインワーカーは、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で接触する仕事を週に20時間以上行うものと定義され、具体的には医療従事者のほか、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、行政サービス、保育などの分野が含まれた。この研究は、米国において、症状の有無に関係なく毎週行うサーベイランス検査でSARS-CoV-2感染症と特定された労働者を対象とし、変異株の種類やワクチン接種状況別に臨床症状やウイルスRNA量の評価を行った。 本試験ではCOVID-19感染者1,199例が解析に組み込まれた。デルタ変異株に感染した288例の解析によると、感染前に2回または3回のmRNAワクチンを接種したことが、症状の軽減や有症状期間の短縮と関連していた。オミクロン変異株に感染した743例の解析でも、感染前に3回のmRNAワクチンを接種したことが、同様の関連性を示した。また、どちらの変異株に感染した患者でも、感染前に2回のmRNAワクチンを接種したことが平均ウイルスRNA 量の減少と有意に関連していた。 本試験で評価された被験者の年齢中央値は41歳と若く、1つ以上の慢性疾患を有する割合は27.4%であった。肥満の割合などはわからないものの、被験者の多くは重症化リスク因子を有しておらず、本試験のみでは重症化リスク因子を有する集団でのワクチン効果を評価することは難しい。 COVID-19患者に濃厚に接触する可能性の高い職種であっても、ワクチンを接種することによって症状の緩和や有症状期間の短縮を期待できることが示された。本研究では感染予防効果は検証されていないものの、エッセンシャルワーカーの休職期間の短縮は社会的なメリットが大きいと考えられるため、引き続きワクチン接種の対象とするのが望ましいと考える。 無症候者の割合はデルタ変異株で3.9%だったの対し、オミクロン変異株では20.2%と高率だった。症状の程度、罹病期間、潜伏期間、感染性、治療薬やワクチンの有効性などが変異株によって変化することがCOVID-19の特徴のひとつであり、今後も変異株の動向を注視する必要がある。

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B型肝炎(HB)ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第15回

今回は、ワクチンで予防できる疾患(VPD:vaccine preventable disease)の1つであるB型肝炎を取り上げる。B型肝炎はがんの原因となりうるウイルス性疾患の1つで、わが国では2006年に定期接種に導入された。ワクチンで予防できる疾患B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に感染し、一過性の感染もしくは持続性の感染を起こす。B型肝炎に感染すると20~30%が急性肝炎を発症し、そのうち1%前後が劇症化して昏睡・死亡に至ることがある。ウイルスを排除できず持続感染に至ると、慢性肝炎を発症し、さらに肝硬変、肝細胞がんを生じることがある。この持続感染の多くは出産時や乳幼児期に成立するため、ワクチンによる出生早期からの予防が望まれる1)。感染は血液や体液を介して成立する。母親がHBV保有者である場合、妊娠中あるいは出産中に、胎児もしくは新生児が母親の血液を介して感染することがある(垂直感染)。また、近年では性感染の割合も増加しており、2006~2015年に報告された急性B型肝炎のうち70%は性的接触による感染であった2)。さらに父子感染、保育園での集団感染といった汗、涙などによる感染が疑われる例も報告されている。そのほか医療従事者や清掃業者などが針刺し事故などの血液曝露で感染することがある1)(水平感染)。急性B型肝炎は感染症法において5類感染症に位置付けられており、診断から7日以内の届け出が義務付けられている1,3)。WHO(世界保健機関)による2019年の報告によると全世界の2億9,600万人がHBV持続感染者(キャリア)で、肝硬変や肝細胞がんにより年間82万人が亡くなっている4)。ワクチンの概要と接種スケジュール(表)表 B型肝炎ワクチンの概要画像を拡大する(おとなとこどものワクチンサイトより引用)開発、普及の歴史B型肝炎ワクチンは、1985年に母子感染予防事業として導入された。この事業では全妊婦で感染を確認し、HBs抗原陽性妊婦から出生した乳児に公費でワクチンおよび免疫グロブリン投与を行った。これにより94~97%と高率に母子感染が予防できるようになった5)。さらにWHOおよびUNICEF(国際連合児童基金)は、1992年にB型肝炎制圧のため、全世界の全新生児を対象にB型肝炎ワクチンの接種を行うように推奨した。これを受けて2016年10月には定期接種(A類疾病)となり、わが国においてもB型肝炎ワクチンはユニバーサルワクチンとなった1,3)。1)効果B型肝炎ウイルスの感染を予防する。2)対象定期接種(1)1歳に至るまでの年齢にある者(2)長期療養などで定期接種期間中に受けることができなかった者(治療後2年間)3)保険適応(1)HBs抗原陽性(B型肝炎ウイルスキャリア)の母親から出生した児(2)血液曝露後:事故発生からなるべく早く経静脈的免疫グロブリン療法(IVIG)と共に1回目を接種する(保険適応は7日以内)。業務上の曝露でHBs抗原が陽性なら労災保険が適応される。4)任意接種上記以外のすべての場合5)副反応ワクチン接種による一般的な副反応のみで、特異的な副反応は報告されていない。複数回の接種により、副反応の発現率が上昇することはない。6)注意点B型肝炎ワクチンによりアナフィラキシーを起こしたことがある場合は禁忌である。日常診療で役立つ接種ポイント1)どのような人に勧めるか?血液・体液に曝露する可能性のあるすべての人、つまり基本的にはすべての人に推奨される。特に医療・介護従事者、清掃業者、血液透析患者、コンタクトスポーツ(ラグビー、レスリングなど)をする人には必須である。そのほかHIV陽性者などの免疫不全者、HBs抗原陽性者のパートナーにも強く推奨される。また、海外留学の要件になることも多く、留学を考える人にとっても必須ワクチンの1つである。2)3回接種の途中で、異なる種類のワクチンを使っても良いか?問題はない。現在国内には、遺伝子型A由来のワクチン(商品名:ヘプタバックス-II[MSD社])と遺伝子型C由来のワクチン(同:ビームゲン[KMバイオロジクス社])の2種類が流通している。いずれも異なる遺伝子型に対しても有効であり、互換性がある。3)3回目接種が遅れた場合はどうすればよいか?気付いた時点で速やかに3回目を接種する。4)3回接種後の抗体確認は必要か?定期接種では不要である。ただし母子感染予防対象者、医療従事者などのハイリスク者では、3回目接種から1~2ヵ月後の抗体検査が推奨される。HBs抗体値が10mIU/mL未満の場合は1回の追加接種を行い、環境感染学会が推奨する図のアルゴリズムで対応する。被接種者の約10%が、1シリーズ(3回)接種後も抗体反応ができない(non responder)もしくは悪い(low responder)とされている。なお、若いほど抗体獲得率が高い7)ため、なるべく早期の接種が推奨される。図 ワクチン接種歴はあるが抗体の上昇が不明の場合の評価画像を拡大する(環境感染学会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020.より転載)今度の課題、展望従来のワクチンで十分な感染予防効果が期待できないワクチンエスケープ株が報告されており、新しいワクチンの開発が進んでいる。HBVは3種類のエンベロープ蛋白(small-S、middle-S、large-S蛋白)を持つ。従来のワクチンはsmall-S蛋白を抗原としているが、現在開発されているのはmiddle-S蛋白からなる“Pre-S2含有”ワクチンと、large-Sとsmall-S蛋白を併用するワクチンで、より多くのHBV株に対する効果が期待される1,8)。B型肝炎ワクチンはユニバーサルワクチンである。職種を問わず全世代で推奨されるワクチンの1つであり、2016年4月以前に生まれた人の多くはワクチン接種歴がなく免疫を持たないため、1度は接種を検討すると良いだろう。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト1)B型肝炎、海外渡航者のためのワクチンガイドライン/ガイダンス2019. 日本渡航医学会; 2019.p.85-86.2)国立感染症研究所. IASR.2016;37:438.3)日本ワクチン産業協会. 予防接種に関するQ&A集. 2021.(2022年9月アクセス)4)Hepatitis B. WHO.5)白木和夫. IASR. 2000;21:74-75.6)環境感染学会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020.(2022年11月アクセス)7)厚生労働省. B型肝炎ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版).(2022年9月アクセス)8)Washizaki A, et al. Nature Communications. 2022;13:5207.講師紹介

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第140回 long COVIDの偏見がまん延

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後に数週間や数ヵ月も続く不調・COVID-19罹患後症状(俗称:long COVID)の人のほとんどが社会からの偏見にも苛まれていることが英国での調査で浮き彫りになりました1,2)。英国の実に230万人がlong Covidを患っています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率は依然として高いことからその数は減っていません。long COVIDは治療がままならないこともその数の高止まりに加担しています。long COVID治療探しは一筋縄ではいかないようで、たとえば最近発表された試験結果ではプレドニゾロンのCOVID-19後嗅覚障害の改善効果は残念ながら認められませんでした3,4)。long COVIDの人はかなりの偏見に苛まれていると言われていますが、それがどれほどの負担になっているかはこれまで定かではありませんでした。そこで英国サウサンプトン大学等の研究者等は長引く不調でただでさえ生きづらくなっているlong COVIDの人がいわば泣きっ面に蜂の偏見でどれだけ難儀しているかを新たに開発された評価尺度を使って調べました。その試験はlong COVID患者団体(Long Covid Support)のからの意見も取り入れて設計されました。2年前の2020年のオンライン調査に参加した人にその1年後の2021年11月に案内を出し、以下の3種類の偏見に関する13の問いへの5択の回答をお願いしました。実際の偏見(enacted stigma):体調不良のせいで不当に扱われること内なる偏見(internalised stigma):自身の体調不良を恥じたり気にすること偏見の予感(anticipated stigma):体調不良で不利になると予想すること最終的に千人を超える1,166人から回答があり、そのほとんどを占める英国からの966人の情報が解析されました。解析の結果、ほぼ全員の95%が3種類の偏見のいずれか1つかそれ以上を少なくとも時々被っていました。また、8割近い76%の状況は深刻で、しばしばまたは常に偏見に直面していました。5人に3人(63%)は蔑ろにされたり付き合いを絶たれるなどの実際の偏見が少なくとも時々あり、91%はそういう実際の偏見の予感が少なくとも時々ありました。また、9割近い86%は体調不良を恥じたり、役立たずと感じたり、変わり者だと思い込むなどのlong COVID絡みの内なる偏見に少なくとも時々苛まれていました。そのような驚くばかりの偏見まん延2)はlong COVIDの人に肩身の狭い思いを強いているらしく、5人に3人(61%)はlong COVIDを打ち明けることに少なくとも時々は細心の注意を払っていました。また、3人に1人(34%)はlong COVIDを打ち明けたことを後悔したことが少なくとも時々ありました。今回の研究で使われた13の問い(“自身のlong COVIDのせいで相手が気まずそうだったことがある”等)への5択(ない、稀にある、時々ある、しばしばある、いつもそう)の回答結果に基づいてlong COVID患者が被る偏見のほどを表す検査が開発されています。long COVIDの人が被る偏見のほどの推移や、偏見を減らす取り組みの効果のほどを10分とかからず完了するその検査Long Covid Stigma Scale(LCSS)を使ってこれからは把握することができます。LCSSの開発を指揮した今回の試験の著者の1人Marija Pantelic 氏によると、long COVIDにつきまとう偏見はそれらの患者を害するのみならず社会や医療も損なわせもするようです。先立つ研究で喘息、うつ、HIVなどの他の長患いの偏見が社会をひどく不健全にすることがすでに示されています。偏見の恐れは人々を医療やその他の支援からおそらくより遠のかせ、その積み重ねが心身を蝕んでいきます。今回の試験では意外にもlong COVIDの診断を受けている人の方がそうではないlong COVIDの人に比べて偏見をより被っていました。その理由はわかりませんが、診断を受けた人ほど自身の体調を他の人により知らせているからなのかもしれません。その理由も含め、偏見がどこでどうやって発生するのか、どういう人が偏見を持ちやすいのか、どういうlong COVID患者が偏見を被りやすいのかを今後の試験で調べる必要があります2)。参考1)Pantelic M, et al. PLoS ONE . 2022;17:e0277317.2)Most people with long Covid face stigma and discrimination / Eurekalert3)Schepens EJA, et al.BMC Med. 2022;20:445.4)Prednisolone does not improve sense of smell after COVID-19 / Eurekalert

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コロナ感染、繰り返すほど重症化・後遺症リスク増

 新型コロナウイルスへの複数回の感染により、死亡と後遺症リスクは2倍超、入院リスクは3倍超になることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによるコホート研究で明らかになった。新型コロナウイルスの感染による死亡や後遺症のリスクは知られているが、1回感染後の再感染によってそれらのリスクが高くなるかどうかは不明であった。Nature Medicine誌2022年11月10日掲載の報告。コロナ2回目以上の複数回感染群では後遺症発現のHRが2.10 調査は、2020年3月1日~2022年4月6日の米国退役軍人省の医療データベースを利用し、コロナ1回目感染者44万3,588例、コロナ2回目以上の複数回感染者4万947例(コロナ2回目感染者3万7,997例[92.8%]、コロナ3回目感染者2,572例[6.3%]、コロナ4回以上感染者378例[0.9%])、対照群として1回も感染していない未感染者533万4,729例を抽出し、死亡率、入院率、後遺症発現率を解析した。 コロナ複数回感染による死亡や後遺症のリスクを解析した主な結果は以下のとおり。・コロナ1回目感染群と比較して、コロナ2回目以上の複数回感染群では、全死因死亡のハザード比(HR)は2.17(95%信頼区間[CI]:1.93~2.45)、入院のHRは3.32(95%CI:3.13~3.51)であった。・同じく1つ以上の後遺症発現のHRは2.10(95%CI:2.04~2.16)で、腎障害(HR:3.55、95%CI:3.18~3.97)、肺障害(3.54、3.29~3.82)、血液凝固異常(3.10、2.77~3.47)、心血管障害(3.02、2.80~3.26)、消化器障害(2.48、2.35~2.62)、倦怠感(2.33、2.14~2.53)、精神的な不調(2.14、2.04~2.24)糖尿病(1.70、1.41~2.05)、筋骨格系障害(1.64、1.49~1.80)、神経学的障害(1.60、1.51~1.69)であった。これらは主に急性期に認められたが、コロナ再感染から6ヵ月後でも認められた。・これらのリスクは、新型コロナウイルスワクチンの接種状況に関係なく認められた。・コロナ感染回数が増えるほど後遺症リスクは上昇した。未感染群と比較して、コロナ1回目感染群のHRは1.37(95%CI:1.36~1.38)、コロナ2回目感染群のHRは2.07(95%CI:2.03~2.11)、コロナ3回目以上感染群のHRは2.35(95%CI:2.12~2.62)であった。 これらの結果より、同氏らは「新型コロナウイルスへの複数回感染は、初回の感染よりも死亡、入院、後遺症リスクが高まることが明らかになった。すでに1回感染した人は、コロナ2回目の感染を予防することでさらなる健康問題を防ぐことができる」とまとめた。

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第125回 新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省2.子育て支援充実に、時短勤務者へ新たな給付制度を検討へ/内閣府3.コロナ感染拡大で少子化さらに進行、出生数80万人以下に/厚労省4.かかりつけ医機能について医療機関が情報開示へ/全世代型社会保障構築会議5.初の国産、新型コロナワクチンの承認申請へ/塩野義6.認知症の新薬普及に向けた体制整備を関連6学会が提言1.新型コロナ「5類」への引き下げを検討へ/厚労省11月27日に民放番組に出演した加藤勝信厚労大臣は、厚生労働省において、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけの見直しに向け、本格的な検討に入っていることを認めた。現在、臨時国会で審議されている感染症法改正案には、新型コロナウイルス感染症の類型の見直しを「速やかに検討する」と附則が加えられており、来月上旬の成立を待って、厚生労働省は成立後の速やかな検討を開始するとしている。(参考)新型コロナ「5類」引き下げ、本格検討へ 特例措置見直しも 厚労省(毎日新聞)新型コロナ「5類」への引き下げ 加藤厚労相「規定に則って早期に検討(FNN)2.子育て支援充実に、時短勤務者へ新たな給付制度を検討へ/内閣府すべての世代で支え合う社会保障の制度の実現を目指すため、内閣府は第9回全世代型社会保障構築会議を11月24日に開催した。子育て支援のために、育児中に時短勤務を選んだときに新たな給付を行う仕組みや、育児休業を取った後の職場復帰を容易にするため、休業期間中でも保育所の枠を確保できるシステムを構築する方向性をまとめるように求めた。今後は、論点の整理として年内に報告書を取りまとめ、来年度の「骨太の方針」などに盛り込む方針となっている。一方、具体的な財源についてはこれからの検討となる見込み。(参考)第9回全世代型社会保障構築会議(内閣府)全世代型社会保障実現へ 育児で時短勤務に給付の仕組み創設へ(NHK)少子化は急ピッチで進むのに…停滞する子ども関連予算の財源議論(毎日新聞)3.コロナ感染拡大で少子化さらに進行、出生数80万人以下に/厚労省厚生労働省は、令和4年9月までの人口動態統計の速報値を発表した。これによると、今年9月までに国内で新たに生まれた子供の数は外国人も含めて速報値で59万9,636人と、前年度の同期間の63万569人と比較して3万933人少なかった。このペースのままであれば、わが国の出生数は80万人を切ることになる。その一方、死亡者数は今年9月までに12万7,040人と去年の9月までの11万5,706人より1.1万人多く、人口減少も加速していることが明らかとなっている。出産する可能性の高い15~49歳の女性は1990年より減少しており、晩婚化に加え、新型コロナウイルス感染症により、婚姻数の減少などが背景にあるとみられる。(参考)9月までの出生数59万9千人余 年間80万人下回る過去最少ペース(NHK)出生数、コロナで悲観シナリオに迫る(日経ビジネス)人口動態統計速報(令和4年9月分)4.かかりつけ医機能について医療機関が情報開示へ/全世代型社会保障構築会議11月24日に開催された全世代型社会保障構築会議で、「かかりつけ医機能」の制度について、年末までにまとめる報告書に盛り込む論点整理が行われた。今後、この報告書の内容を盛り込んだ関連する法律の改正案を来年の通常国会に提出する見込み。かかりつけ医機能が発揮される制度整備のため、早急な実現に向けて、以下の項目の整理を求めた。かかりつけ医機能の定義は、現行の「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースに検討。日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うこと。休日・夜間の対応、他の医療機関への紹介・逆紹介、在宅医療、介護施設との連携や複数の医療機関が緊密に連携して実施することを求める。かかりつけ医機能の活用は、医療機関、患者それぞれの手上げ方式とし、医療機関は自らが有するかかりつけ医機能について、住民に情報提供を行うとともに、自治体がその機能を把握できるようにする仕組み。高齢者については幅広い診療・相談に加え、在宅医療、介護との連携に対するニーズが高いことを踏まえ、これらの機能をあわせもつ医療機関を自治体が把握できるようにする。地域全体で必要な医療が提供できる体制が構築できるよう、地域の関係者が、その地域のかかりつけ医機能に対する改善点を協議する仕組みの導入。(参考)全世代型社会保障構築会議の論点整理(全世代型社会保障構築会議)かかりつけ医の役割を法律明記へ 厚労省 コロナで「曖昧」指摘(毎日新聞)「かかりつけ医」を法律で定義、医療機関が満たす項目を情報公開へ…厚労省が方針(読売新聞)「かかりつけ医機能」地域ごとに改善点協議 全世代型構築会議が論点整理(CB news)5.初の国産、新型コロナワクチンの承認申請へ/塩野義塩野義製薬株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチンを11月24日に「成人における初回免疫(1回目、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)によるCOVID-19の予防」を適応として、日本国内における製造販売承認申請を行った。今回のワクチンは、現在、使われているmRNAワクチンとは異なり、遺伝子組換えタンパクワクチンであり、国内の製薬企業による初の国産ワクチンの開発であり、早期の承認を目指す。政府はこれまで、国内のワクチン開発の支援を行うため、ワクチン生産体制等緊急整備事業を通して早期供給を促す支援をしてきており、同社にも476億円を交付しており、その成果が実った。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の国内における製造販売承認申請について(塩野義)開発状況について(厚労省)塩野義製薬 新型コロナワクチンの国内製造販売承認申請 国産で初(ミクスオンライン)塩野義製薬 新型コロナワクチンの承認申請 国内開発で初(NHK)6.認知症の新薬普及に向けた体制整備を、関連6学会が提言日本老年精神医学会、日本認知症学会など認知症に関連する6学会は、エーザイ社の新薬「レカネマブ」などの認知症の新薬開発が進む中、こうした新薬が実用化された場合に、患者の早期診断の手段が限られることや治療費が高額になるため、普及に向けて医療整備体制が必要とする提言を共同で発表した。現時点では、早期診断に用いられるPET(陽電子放射断層撮影)検査は保険適用外であり、今後、新薬の承認とともに早期の診断体制の確立と、費用対策効果について検討を求めている。(参考)アルツハイマー新薬、実用化へ「高額医療費巡る議論を」…認知症関連6学会が提言(読売新聞)認知症新薬の実用化に備え、医療体制整備を 関連6学会が提言(毎日新聞)

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COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、ファイザー)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランス・Assistance Publique-Hopitaux de ParisのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。本結果は、JAMA Network Open誌2022年11月15日号のリサーチレターに掲載された。 本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。 本研究では、2020年1月24日~2021年11月30日の期間で、パリ大学の36の大規模病院におけるCOVID-19入院患者6万2,525例において、米国食品医薬品局(FDA)がニルマトレルビル/リトナビルを禁忌とした条件に当てはまる患者の割合が調査された。被験者は、性別、年齢(65歳以下vs.66歳以上)、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の主章に基づく併存疾患ごとに層別化された。本研究は、STROBEレポートガイドラインに準拠して実施された。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値52.8歳(四分位範囲[IQR]:33.8~70.5)、女性3万1,561例(50.5%)、男性3万964例(49.5%)、入院後28日以内に死亡した患者4,861例。・COVID-19入院患者6万2,525例のうち、9,136例(14.6%)がニルマトレルビル/リトナビルの医学的禁忌を有していた。・禁忌を有していた患者の割合は、男性18.0%(5,568例/3万964例)、女性11.3%(3,577例/3万1,561例)で、男性のほうが女性よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、66歳以上26.9%(5,398例/2万64例)、65歳以下8.8%(3,738例/4万2,461例)で、高齢者のほうが若年者よりも高かった。・禁忌を有していた患者の割合は、併存疾患のある患者のほとんどの疾患で37.0%以上、併存疾患のない患者で3.9%(1,475/3万7,748例)となり、併存疾患のある患者のほうが、ない患者よりも高かった。・死亡した4,861例のうち、2,463例(50.7%)が禁忌を有していた。・死亡した患者で禁忌を有していた者の割合は、男性、女性、高齢者、若年者ではそれぞれ50%前後であったが、併存疾患のある者ではほとんどの疾患で60~70%台で、腎尿路生殖器系の疾患では91.5%であった。・禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(3,958例、6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(3,233例、5.15%)であった。 本研究の限界として、本剤が禁忌でない患者でも、症状発現から5日以上経過した場合や、供給量が限られる場合があるため、一部の患者に使用できない可能性があることや、ワクチン接種、人種・民族、体重に関する情報は得られていないことなどが挙げられている。著者は「本結果は、ニルマトレルビル/リトナビル以外の新型コロナ治療薬の供給を予測することや、治療の選択肢の研究を継続することの必要性を裏付けている」としている。

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