サイト内検索|page:40

検索結果 合計:4332件 表示位置:781 - 800

781.

初めての喘鳴症状で受診、行うべき治療は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第11回

初めての喘鳴症状で受診、行うべき治療は?講師国立病院機構三重病院 アレルギーセンター 山田 慎吾 氏【今回の症例】2歳の生来健康な男児。これまでに感冒時にも喘鳴の経験はない。受診前日の夜間から38.2度の発熱を認め、咳嗽が増加し、ゼーゼーと呼吸をしたため、翌朝に受診した。兄弟が通う幼稚園ではRSウイルス感染症が流行している。受診時に鼻汁が多く、断続する咳嗽、呼気性喘鳴を認めるが、活気はあり、陥没呼吸はなく、SpO2は98%であった。

782.

第181回 「3た論法」と思しきエンシトレルビルの最新データ

ちょうど約1ヵ月前、薬剤師の祭典とでも言うべき日本薬剤師会学術大会が和歌山市で開催された。私は毎年、同大会に参加しており、顔見知りの薬剤師も多い。今回、そうした薬剤師に会うたびに、私は半ばあいさつ代わりにあることを尋ねていた。「〇〇って処方出てる?」その質問をすると、クールな表情のまま「ああ、そこそこに出てますよ」と言う人もいれば、ある人はニヤリとしながら「まあ出ていることは出ていますね」と答えてくれた。〇〇とは何か? ずばり国産の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬であるエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)のことである。新型コロナのパンデミックで登場した治療薬は、ほとんどが外資系製薬企業からの導入品だが、これだけは薬機法改正で創設された緊急承認制度の第1号の国産治療薬として2022年11月に承認された。あれから間もなく1年が経つので、現場の実感を聞きたいというのが、このことを片っ端から尋ねた意図だった。「それならば医師に聞けばいいだろう」という声も聞こえてきそうだが、私の周囲の医師では、感染症の非専門医を含め、まったくと言って良いほど処方事例を聞かない。ご存じのように緊急承認時のデータは有効性がクリアに証明されたとは言えず、医師の間で評価が二分し、私の周りにはたまたま懐疑的な医師が多い。しかし、一説ではエンシトレルビルは新型コロナ経口薬の市場シェアで過半数を超えるとも伝わる。だからこそ、このギャップが何なのかを知りたかった。エンシトレルビルも含め、新型コロナの経口薬は外来処方が中心となるので、この辺の事情を薬局薬剤師に聞くのはあながち間違いではないだろうと考えたのだ結局、尋ねた薬剤師の答えを総合すると、そこそこ以上に処方はされていることはわかった。そしてこの質問を一番目に尋ねた薬剤師が重要な“ヒント”をくれた。「出ていることは出ているんですが、だいたい特定の医師の処方箋に集中してますね。ああ、もちろん感染症の専門医とかではなく、いわゆる一般内科医ですよ」彼にこの話を聞いてからは、「出てますよ」と答えた薬剤師には「処方元はどんな医師?」と尋ねるようにしたところ、ほぼ全員が処方元は特定の医師に集中しがちと答えてくれた。良いか悪いかは別にして、どうやら私はある種“偏った”環境にいるようだ(「それはあなたが偏っているから」との声も聞こえてきそうだが…)。そして私は無理を承知で、薬剤師の目から見た「処方感」、要は効果のほども尋ねてみた。この質問には「うーん、効いてるんですかね?」「よくわからないです」「目先の評価として3た論法(使った、治った、効いた)で言えば効いたことになるでしょうかね」と、何ともはっきりしない。関西地方のある薬剤師は、「そもそもこの薬を処方された患者さんは若い人が中心で、中には初めてお薬手帳を作ったという人もいるくらい。しかも、5日分の飲み切り終了ですから、処方された患者さんが再来することはないので、効いているかどうか確認のしようがないですよ」と話してくれた。まあ、ごもっとも。これは薬剤師だけでなく処方した医師も同じではないだろうか?そうした中で臨床実感ではないが、関東圏のある薬剤師が話してくれた事例は興味深かった。彼が話してくれたのは、在宅の認知症高齢者へのエンシトレルビルの処方事例。最初に聞いたときは「え?」となった。新型コロナは「高齢」が重症化の最大のリスクファクター。このため経口薬では、重症化予防効果のエビデンスがあり、適応上も重症化リスクがある人向けのモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)のいずれかが優先されるはずだ。このうちエビデンス上、重症化予防効果の数字上が高いのはニルマトレルビル/リトナビルのほうだが、併用禁忌薬が多いため使えないケースが少なくないことは良く知られている。しかし、この併用禁忌薬の多さは同じ作用機序であるエンシトレルビルも同じこと。ということは、この薬剤師が話してくれたケースは、ニルマトレルビル/リトナビルも処方できるはずで、医学的にもそのほうが妥当だと思われる。そう問うと、彼は「単純ですよ。分1(1日1回)なので、高齢者ではそのほうがアドヒアランスを確保しやすいですから。とくにこのケースは認知症ですからね」との答え。エビデンスを単純に当てはめられないという意味で、これは妙に納得がいった。もっとも、結果として知りたかった臨床実感は何ともぼんやりしたものしかないまま終わってしまった。そして後日、実際の専門医にも話を聞く機会があったが、そこでも実際の処方は数例で効果を判断できるレベルではないと告げられ、今も「詰んだ」状態である。ちょうど同じころ、塩野義製薬が重症化リスク因子のある患者での治療選択肢になりうる可能性があるとのデータをプレスリリースした。これは重症化リスク因子がある軽~中等症の新型コロナ入院患者で3日間以上レムデシビルを投与し、十分な抗ウイルス効果が確認されなかった21人(平均年齢78.0歳、ワクチン接種率76.2%)に対し、エンシトレビルの5 日間投与を行ったというもの。この結果、エンシトレルビル投与終了翌日までに66.7%の患者でウイルスクリアランス(鼻腔内抗原量

783.

有病率の高い欧州で小児1型糖尿病発症とコロナ感染の関連を調査(解説:栗原宏氏)

特徴・新規に出現したウイルスと自己抗体の関連を示した・追跡期間が長く、感染と自己抗体の発現の前後関係を区分できている・SARS-CoV-2抗体以外に、その他の呼吸器感染代表としてインフルエンザ抗体も調査・インフルエンザは著減しており、SARS-CoV-2の影響がメインと考えられる限界・対象は遺伝的ハイリスク群。かなり特殊で結果が一般化しづらい・日本国内での発症率は調査地域である欧州よりも格段に低い・因果関係が逆である可能性:自己抗体が発現する子供がコロナに感染しやすい? 本研究で対象となっている小児1型糖尿病は、発症率に人種差があり白人に非常に多い。欧州全般に発症者は多く、とくに多い北欧諸国、カナダ、イタリアのサルディニアでは年間約30/10万人と日本(1.4~2.2/10万人)に比して10倍以上の違いがある。1歳ごろに膵島細胞への自己抗体が発生するピークがあり、10年以内に臨床的な糖尿病を発症する。自己抗体の発生原因は不明ながら、呼吸器系ウイルス感染が関与している可能性があるとされている。 本研究はPrimary Oral Insulin Trial(POINT)のデータが使用されている。2018年2月~2021年3月のCOVID-19拡大前からパンデミック期にかけて、欧州5ヵ国の複数施設で、遺伝的に1型糖尿病リスクが高い乳児(4~7ヵ月)1,050人を対象として、SARS-CoV-2感染と膵島自己抗体の発現の時間的関係を明らかにするために実施されたコホート研究である。このうち、実際に対象となったのは885人である。 本研究は、SARS-CoV-2という新規に出現した疾患と自己抗体の出現との関連を自己抗体発現の可能性が高い乳児を対象として調査した点が特徴である。性別、年齢、国に調整後のSARS-CoV-2抗体陽性例における膵島自己抗体陽性のハザード比は3.5(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7、P=0.002)となっており、遺伝子的ハイリスク群ではSARS-CoV-2感染はリスク因子であることが示されたことは意義が大きいと思われる。 SARS-CoV-2抗体出現後に自己抗体が発現する割合が有意に高いことが示された。一方、他のウイルス感染評価目的に実施されたインフルエンザA(H1N1)抗体では自己抗体発現はなかった。少なくともこの対象群においては、呼吸器系ウイルス全般で自己抗体が出現するわけではないことが示唆された。 自己抗体の出現がすぐさま臨床的1型糖尿病発症を意味するわけではない点には留意が必要である。SARS-CoV-2感染と膵島自己抗体出現には関連があるが、感染後の短期間での急激な糖尿病発症率の増加には影響しない可能性が高い。将来的な1型糖尿病発症率については当該地域でフォローが必要である。 前述のとおり、小児1型糖尿病は遺伝子的な問題で人種差が大きい。本研究はその中でもさらに遺伝子的なハイリスク群を対象としており、その結果は広く一般化できるものではない。日本国内では比較的まれな疾患であり、SARS-CoV-2感染の影響は非常に小さいと推測されるが、否定しうるものでもない。今後の本邦での小児1型糖尿病の発症率の推移をみていく必要がある。

784.

第66回 10ヵ月流行し続けるインフルエンザ

新型コロナは収まりつつあるが…Unsplashより使用インフルエンザの陽性が増えてきましたよね。「新型コロナかなと思って測定したらインフル陽性」というパターンがまたまたやってきました。新型コロナの定点医療機関当たりの感染者数は全国平均で8人台になっていますので、ひとまず足元の波は越えたかなと思われます1)。さて、現在、昨シーズンから一度も途切れることなくインフルエンザの流行期が続いています(図)2)。「10ヵ月連続流行期」というのは、1999年以降、初めてのことなので、現場としてはもう戸惑うしかありません。一体何が起こっているのか。図. インフルエンザの定点医療機関当たりの報告数(全国)推移(参考2を基に筆者作成)インフルエンザが流行する理由昨シーズンのインフルエンザが春まで継続して流行していたことから、現在発熱者に対しては両方の検査を行っている医療機関が多いかと思います。当院は、同じ検体を使って新型コロナは抗原定量検査、インフルエンザは抗原定性で検査していますが、病院によってはマルチプレックスPCR検査や、同時抗原検査キットなどを適用しているところもあるかもしれません。そのため、検査自体が行われやすいため、見かけの陽性者数が多い可能性があります。とはいえ、例年と比べると流行曲線の立ち上がりが早く、間違いなくインフルエンザの陽性者が増えてきているのは現場でも実感されるところです。多い年では、定点医療機関当たり50~60人というのがインフルエンザの恒例でしたから、定点医療機関当たり10人台だった昨シーズンの波は、ウイルス側としては不完全燃焼だったでしょう。ずっと私たちは感染対策を続けてきたため、「5類感染症」に移行してから、どのウイルス感染症もこれまでの常識が歪められつつあります。いつか落ち着くでしょうが、しばらく流行曲線が乱高下する時代と向き合うのかもしれません。参考文献・参考サイト1)内閣官房:新型コロナウイルス感染症 感染動向などについて2)厚生労働省:インフルエンザの発生状況

785.

鎮咳薬や去痰薬がひっ迫、国が節度ある処方・在庫確保を求める【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第119回

医薬品の流通不安や在庫不足がこんなに長く大変なものになるとは思ってもみませんでした。とくに鎮咳薬や去痰薬の品薄状態は顕著で、もう薬局の努力だけではどうにもならない状態まできています。その流通問題に関して、厚生労働省が9月29日に通知を発出しました。内容としては、鎮咳薬や去痰薬が安定的に供給されるまでの間、以下3点を各所にお願いする内容になっています。1.鎮咳薬(咳止め)・去痰薬については、初期からの長期での処方を控えていただき、医師が必要と判断した患者へ最小日数での処方に努めていただきたいこと。また、その際に残薬の有効活用についても併せて御検討いただきたいこと。2.薬局におかれては、処方された鎮咳薬(咳止め)・去痰薬について、自らの店舗だけでは供給が困難な場合であっても、系列店舗や地域における連携により可能な限り調整をしていただきたいこと。3.鎮咳薬(咳止め)・去痰薬について、必要な患者に広く行き渡るよう、過剰な発注は控えていただき、当面の必要量に見合う量のみの購入をお願いしたいこと。医師や薬剤師などに対して、過剰な処方や在庫確保、発注は控えるようにという通知です。この通知で節度ある処方や在庫確保となり、この混乱が少しでも落ち着けばよいのですが、そんなに甘くもないだろうなとも思います。今回の通知の前提として、「新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症の拡大に伴い鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の需要が増加しており、製造販売業者からの限定出荷が生じている」と記されています。また、その具体的な数字も出されていて、「主要な鎮咳薬(咳止め)の供給量については、新型コロナウイルス感染症の流行以前の約85%まで生産量が低下しており、また主要な去痰薬の供給量については、新型コロナウイルス感染症の流行以前と同程度ではあるものの、メーカー在庫が減少している状況」とあります。え? ちょっと待って、と思いませんか? 今回のお願いの前提となっている「生産量がコロナ禍の前より減少している」という点に少し驚きました。需要が増えているから不足しているとばかり思っていましたが、生産量自体が減っているというのはちょっと意外です。今回の医薬品の流通問題は、先発医薬品も後発医薬品も含む薬価制度などの医薬産業の構造の問題である可能性もあります。その場合、今回の通知で節度ある行動がとられたとしてもその生産量は増えないと思われ、薬価の変更や薬価制度の見直しなどの抜本的な対応がとられない限り、残念ながらこの供給不足は解決しないだろうと想像します。また一方で、後発医薬品については、後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いを延長するという通知「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」が発出されました。実績要件である後発医薬品の使用(調剤)割合を算出する際に算出対象から除外しても差し支えない、とするものです。今回の延長は前回と同様ですが、後発医薬品の供給停止や出荷調整が続いており、代替の後発品の入手が困難な状況となっていることを踏まえたものであるとされています。この後発医薬品の供給停止や出荷調整が始まって2年以上が経過し、この通知の延長は今回で3回目です。10月1日以降に除外対象となる医薬品は、2023年6月1日時点で医政局医薬産業振興・医療情報企画課に供給停止に関する報告があった85成分980品目で、今回示した供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品を除外しても差し支えないとしています。また、これまでと同様に、一部の成分の品目のみの除外は認められないこと、1ヵ月ごとに適用できること、加算などの施設基準を直近3ヵ月の新指標の割合の平均を用いる場合は当該3ヵ月にこの取り扱いを行う月と行わない月が混在しても差し支えない、などの注意点がありますので注意が必要です。加算算出方法の臨時的な取り扱いの延長などは助かりますが、やはり一番に望むことは適切な量の医薬品が安定的に流通することです。医薬品の流通問題については各所で議論されていますが、抜本的かつ効果的な対策が早急にとられることを切に願います。

786.

コロナ罹患後症状の患者、ワクチン接種で症状軽減か?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種は、COVID-19の重篤化を予防する。しかし、コロナ罹患後症状を有する患者に対するコロナワクチン接種が罹患後症状や免疫応答、ウイルスの残存に及ぼす影響は不明である。そこで、カナダ・Montreal Clinical Research InstituteのMaryam Nayyerabadi氏らの研究グループは、コロナ罹患後症状を有する患者を対象にコロナワクチンの効果を検討し、コロナワクチンは炎症性サイトカイン/ケモカインを減少させ、コロナ罹患後症状を軽減したことを明らかにした。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月15日号に掲載された。ワクチン接種はコロナ後遺症を軽減させる可能性 研究グループは、コロナ罹患後症状(世界保健機関[WHO]の定義※に基づく)を有する患者83例を対象とした前向きコホート研究を実施した。対象患者のコロナワクチン接種前後の罹患後症状数、罹患後症状を有する臓器数、心理的幸福度(WHO-5精神健康状態表[WHO-5]に基づく)を評価した。また、全身性炎症のバイオマーカーや血漿中のサイトカイン/ケモカイン量、血漿中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原量、SARS-CoV-2由来のタンパク質に対する抗体量なども評価した。本記事では、組み入れ時にコロナワクチン未接種であった39例を対象に、ワクチン接種前後に評価した縦断的解析の結果を示す。※新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもの。 コロナ罹患後症状を有する患者を対象にワクチンの効果を検討した主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種前後のコロナ罹患後症状数(平均値±標準偏差[SD])は、ワクチン接種前が6.56±3.1であったのに対し、ワクチン接種後は3.92±4.02であり、有意に減少した(p<0.001)。また、罹患後症状を有する臓器数(平均値±SD)はワクチン接種前が3.19±1.04であったのに対し、ワクチン接種後は1.89±1.12であり、こちらも有意に減少した(p<0.001)。・WHO-5スコア(平均値±SD)は、ワクチン接種前が42.67±22.76であったのに対し、ワクチン接種後は56.15±22.83であり、心理的幸福度が有意に改善した(p<0.001)。・コロナワクチン接種後において、16種類のサイトカイン/ケモカイン量がワクチン接種前と比較して有意に減少した。・ワクチン接種前において、血漿中からSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質とヌクレオカプシド(N)タンパク質がそれぞれ17.9%(7/39例)、38.5%(15/39例)に検出されたが、ワクチン接種前後において、血漿中濃度に有意な変化はみられなかった。・ワクチン接種前において、Sタンパク質、Nタンパク質、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体およびIgM抗体が検出された。ワクチン接種後において、Nタンパク質に対する血中のIgG抗体、IgM抗体の濃度が有意に減少したが、Sタンパク質、RBDに対する血中のIgG抗体の濃度は有意に増加した。 本研究結果について、著者らは「コロナ罹患後症状を有する患者は、コロナ罹患後症状に関連する炎症反応が亢進していることが示され、コロナワクチン接種は炎症反応を低下させることによってコロナ罹患後症状を軽減させる可能性が示された。また、コロナ罹患後症状を有する患者には、ワクチン接種とは関係なくウイルス産物が検出される患者が存在し、炎症の持続に関与している可能性がある」とまとめた。

787.

デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高用量rAAV9遺伝子療法後の死亡/NEJM

 米国・イェール大学のAngela Lek氏らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の27歳の男性患者において、dSaCas9(Cas9ヌクレアーゼ活性を不活化した“死んだ[dead]”黄色ブドウ球菌Cas9)-VP64融合を含有する組み換えアデノ随伴ウイルス血清型9(rAAV9)による治療を行った。投与後、患者は軽度の心機能障害と心嚢液貯留を発症し、遺伝子導入治療後6日目に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と心停止を来し、その2日後に死亡した。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号で「短報」として報告された。5歳時に診断、18歳で自立歩行能力を失う 患者は5歳時にDMDと診断され、21年間にわたりdeflazacort 1.1mg/kg/日の投与を受けてきた。18歳時に自立歩行能力を失った。腕の機能が進行性に低下し、心肺機能障害が徐々に増強した。 2022年10月4日、患者はCRISPR-transactivator治療薬(CK8e.dSaCas9.VP64.U6.sgRNA)を含有するrAAV9ベクターの投与を受けた。その時点で、除脂肪筋肉量の割合が45%と低く、拘束性換気障害および軽度の左室収縮機能障害を伴う重度の全身性筋力低下を呈していた。その後、左室駆出率(LVEF)は維持されていたが、肺機能は経時的に低下した。治療を行わなければDMDの筋症状の悪化が予測され、代替療法がないことから、遺伝子治療の候補と判断した。自然免疫反応がARDSを引き起こした 導入遺伝子は、custom CRISPR-transactivator療法として皮質型ジストロフィンをアップレギュレートするように設計された。使用したrAAV9の用量は、体重1kg当たり1×1014ベクターゲノムと、高用量であった。予防的免疫療法として、リツキシマブ、グルココルチコイド、シロリムスの投与を行った。 ベクター投与後1日目に、患者は心室性期外収縮を発症し、引き続き血小板数が減少傾向を示し、BNPとN末端proBNPの値が上昇した。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の上昇は、DMD患者に見られるように、クレアチンキナーゼ値の増加と比例した。γ-グルタミルトランスフェラーゼ値は正常だった。 3~4日目には、呼吸性アシドーシスを伴う無症候性高炭酸ガス血症が発現した。5日目には、心機能が悪化し、LVEFは45~50%に低下した。トロポニンI値が上昇し、心エコー図検査でタンポナーデの生理的特徴を示す心嚢液貯留が認められたため、患者は心筋心膜炎と推定された。6日目には、急性呼吸困難を呈し、胸部X線所見でARDSと左室収縮機能不全(LVEF:45~50%)を認めた。 この間、緩和的な治療として、グルココルチコイドの増量、エクリズマブ(抗C5モノクローナル抗体)、トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)、anakinra(IL-1受容体拮抗薬)の投与を行った。 患者は6日目に心肺停止となり、体外式膜型人工肺による治療を受けたが、2日後の遺伝子治療から8日目に、多臓器不全と重篤な低酸素性虚血性神経障害により死亡した。死後の検査では、重度のびまん性肺胞障害が認められた。肝臓における導入遺伝子の発現はわずかであり、臓器におけるAAV9抗体やエフェクターT細胞反応性は認めなかった。 著者は、「これらの所見は、高用量のrAAV9遺伝子治療を受けた進行性DMD患者において、自然免疫反応がARDSを引き起こしたことを示している」としている。この研究は、米国・Cure Rare Diseaseの助成を受けて行われた。

788.

モデルナのインフル・コロナ混合ワクチン、第I/II相で良好な結果

 米国・Moderna社は10月4日付のプレスリリースにて、同社で開発中のインフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する混合ワクチン「mRNA-1083」が、第I/II相臨床試験において良好な中間結果が得られたことを発表した。同ワクチンは、インフルエンザおよびCOVID-19に対して強い免疫原性を示し、反応原性および安全性プロファイルは、すでに認可されている単独ワクチンと比較して許容範囲内であった。本結果を受けて、mRNA-1083は第III相試験に進むことを決定した。 第I/II相臨床試験「NCT05827926試験」は観察者盲検無作為化試験で、混合ワクチンmRNA-1083と、50~64歳への標準用量のインフルエンザワクチン(Fluarix)、および65~79歳への強化インフルエンザワクチン(Fluzone HD)とを比較し、安全性と免疫原性を評価した。また両年齢層において、mRNA-1083と、2価の追加接種用COVID-19ワクチン(Spikevax)とも比較して評価した。 主な結果は以下のとおり。・mRNA-1083は、4価インフルエンザワクチンと同等以上の赤血球凝集抑制抗体価が認められた。50~64歳へのmRNA-1083はFluarixと比較して、インフルエンザウイルスA型およびB型の全4株について、幾何平均力価(GMT)比が1.0以上だった。65~79歳へのmRNA-1083もFluzone HDと比較して、GMT比が1.0以上だった。・mRNA-1083は、Spikevax 2価ワクチンと同等のSARS-CoV-2中和抗体価が認められた。Spikevaxに対するmRNA-1083のGMT比は、50~64歳で0.9以上、65~79歳で1.0以上だった。・mRNA-1083投与後に報告された局所および全身性の副反応は、COVID-19単独ワクチン投与群と同程度だった。副反応の大部分は重症度がGrade1/2であった。・Grade3の局所/全身反応は、50歳以上の参加者の4%未満で報告された。・mRNA-1083については、単独ワクチンと比較して安全性に関する新たな懸念は確認されなかった。 同社は、2023年にmRNA-1083の第III相試験を開始する予定であり、2025年に本混合ワクチンの承認を目標としている。

789.

医療従事者、職種ごとの自殺リスク/JAMA

 米国の非医療従事者と比較した医療従事者の自殺のリスクについて、正看護師、医療技術者、ヘルスケア支援従事者の同リスクが高いことを、米国・コロンビア大学のMark Olfson氏らがコホート研究の結果で報告した。歴史的に医師の自殺リスクは高かったが、この数十年で減少した可能性が指摘されていた。一方で、他の医療従事者の自殺リスクに関する情報は、依然として不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「米国の医療従事者のメンタルヘルスを守るため、新たな計画への取り組みが必要である」とまとめている。JAMA誌2023年9月26日号掲載の報告。26歳以上の184万2,000人について解析 研究グループは、2008年の米国コミュニティ調査(American Community Survey:ACS)を国民死亡記録(National Death Index:NDI)に連携させた米国コミュニティ間の死亡率格差(Mortality Disparities in American Communities:MDAC)データを用い、26歳以上の雇用されているACS参加者184万2,000人を同定し解析した。調査期間は、2019年12月31日まで。 主要アウトカムは、年齢および性別で標準化した自殺率で、6つの医療従事者グループ(医師、正看護師、その他の医療診断または治療従事者、医療技術者、ヘルスケア支援従事者、社会/行動ヘルスワーカー)および非医療従事者について推定した。Cox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、人種/民族、配偶者の有無、教育、居住地(都市部または地方)で調整後、非医療従事者に対する医療従事者の自殺に関するハザード比(HR)を算出した。ヘルスケア支援従事者、正看護師、医療技術者で自殺のリスクが上昇 10万人(年齢中央値44歳[四分位範囲[IQR]:35~53]、女性32.4%[医師]~91.1%[正看護師])当たりの年間標準化自殺率は、ヘルスケア支援従事者21.4(95%信頼区間[CI]:15.4~27.4)、正看護師16.0(9.4~22.6)、医療技術者15.6(10.9~20.4)、医師13.1(7.9~18.2)、社会/行動ヘルスワーカー10.1(6.0~14.3)、その他の医療診断または治療従事者7.6(3.7~11.5)、非医療従事者12.6(12.1~13.1)であった。 非医療従事者に対する自殺の調整後HR(aHR)は、医療従事者全体が1.32(95%CI:1.13~1.54)、ヘルスケア支援従事者が1.81(1.35~2.42)、正看護師が1.64(1.21~2.23)、および医療技術者が1.39(1.02~1.89)で増加したが、医師は1.11(0.71~1.72)、社会/行動ヘルスワーカーは1.14(0.75~1.72)、その他の医療診断または治療従事者は0.61(0.36~1.03)で増加しなかった。 なお、著者は研究の限界として、死亡率のデータは2019年に終了しており新型コロナウイルス感染症時代の自殺リスクを反映していないこと、ICD-10の臨床修正コードに基づく死亡データは自殺死を正確に分類していない可能性があること、個々の調査の回答の正確性を検証する手段がないこと、ACSは雇用前の自殺未遂や精神障害など重要な自殺のリスク因子を調べていないこと、などを挙げている。

790.

イラン産の新型コロナワクチン、有用性は?/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する不活化全ウイルス粒子ワクチンBIV1-CovIran(イラン・Shifa-Pharmed Industrial Group製)の2回接種は、有効率が症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して50.2%、重症化に対して70.5%、重篤化に対して83.1%であり、忍容性も良好で安全性への懸念はないことを、イラン・テヘラン医科大学のMinoo Mohraz氏らが多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果で報告した。BIV1-CovIranは、第I相および第II相試験において、安全で免疫原性のあるワクチン候補であることが示されていたが、症候性感染や重症化/重篤化あるいはCOVID-19による死亡に対する有効性は、これまで評価されていなかった。BMJ誌2023年9月21日号掲載の報告。2万例を対象に、有効性、安全性、免疫原性をプラセボと比較 研究グループは、イランの6都市(ブーシェフル、イスファハン、カラジ、マシュハド、シラーズおよびテヘラン)のワクチン接種センターにおいて、18~75歳の2万例をワクチン接種群とプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、5μg(0.5mL)を28日間隔で2回接種した。最初の接種は2021年5月16日(テヘラン)、最後の接種は2021年7月15日(イスファハン)であった。 主要アウトカムは、90日間の追跡調査期間におけるワクチンの有効性、安全性、探索的な免疫原性および試験期間中の変異株検出とした。有効率は症候性感染予防50.2%、重症化予防70.5%、重篤化予防83.1% 対象2万例のうち、ワクチン接種群は1万3,335例(66.7%)、プラセボ群は6,665例(33.3%)であり、平均年齢は38.3(標準偏差11.2)歳、女性が6,913例(34.6%)であった。 追跡調査期間(中央値83日)において、ワクチン接種群では症候性COVID-19が758例(5.9%)に認められ、144例(1.1%)が重症、7例(0.1%)が重篤であった。プラセボ群ではそれぞれ688例(10.7%)、221例(3.4%)、19例(0.3%)であった。 全体としてワクチンの有効率は、症候性COVID-19に対して50.2%(95%信頼区間[CI]:44.7~55.0)、重症COVID-19に対して70.5%(63.7~76.1)、重篤化に対して83.1%(61.2~93.5)であった。有効性解析対象集団において、プラセボ群で2例の死亡が報告されたが、ワクチン接種群で死亡の報告はなかった。 追跡調査中に有害事象が4万1,922件報告され、そのうち2万8,782件(68.7%)が副反応であった。副反応のうち1万9,363件(67.3%)がワクチン接種群でみられた。ほとんどの副反応は、軽度または中等度(Grade1または2)で自然軽快した。注射に関連した重篤な有害事象は確認されなかった。 SARS-CoV-2変異株陽性者は119例で、このうち106例(89.1%)がデルタ株陽性であった。

791.

第65回 男性へのHPVワクチンについに助成か

東京都がついに!Unsplashより使用ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて懐疑的な見解をいまだにSNSなどで耳にしますが、接種によって子宮頸がんの低減に効果的であることが徐々に認識されてきました。しかし、男性に対するHPVワクチン接種については「さすがにそれはいらんやろ」と思っている方が医療従事者でも数多く見受けられます。海外では男性のHPVワクチン接種率は高く、アメリカでは半数以上の男性が接種しています。HPVワクチンは、日本では9歳以上の女性のみが長らくその対象でしたが、2020年12月に4価HPVワクチンが9歳以上の男性へ適応となり、国内でも男性に対してHPVワクチンが接種できるようになっています。それでもまだまだ接種が少ない状況です。その足かせの1つに、全3回で5~6万円かかる費用的な問題もありました。東京都議会において、小池 百合子知事が「子宮頸がんの主たる原因となるHPVワクチンについて、女性だけでなく男性への接種が進むよう、行政への支援を検討する」という方針を示しました1)。いやー、これは歴史的な一歩です。男性に対するHPVワクチンのメリット男性へHPVワクチンを接種するメリットは、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんといったHPVが関連する悪性腫瘍のリスク低減につながること、尖圭コンジローマなどの性感染症の予防につながること、そして何より将来のパートナーの子宮頸がんのリスクを減らすことができることにあります。この中でも、中咽頭がんは軽視されがちな疾患で、HPV関連悪性腫瘍だけで見ると、子宮頸がんに匹敵する患者数となっています。失われる健康よりも、接種するメリットのほうが大きい疾患であることから、この流れがほかの自治体でも踏襲され、男性のHPVワクチンの助成が進めばよいなあと思っています。そのためには「子宮頸がんワクチン」という呼び方ではなく、「HPVワクチン」という形で啓発していく必要があるのですが、そのあたりの舵取りをうまくやらないと、なかなか接種率は上がらないかもしれません。参考文献・参考サイト1)小池知事 男性の「HPVワクチン」接種 費用補助も含め検討(NHK)

792.

動物咬傷(犬、猫)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第7回

今回は動物咬傷の処置を紹介します。一概に動物といっても種類は無数にあり、Review報告の頻度が高いのは想像どおり犬や猫ですが、それ以外にも蛇やげっ歯類、馬、クモ、サメ、アリゲーター/クロコダイルなどが報告に挙がっています1)。私は医師3年目のときに、アメリカの救急医向けの著書「Tintinalli's Emergency Medicine」でアナコンダにかまれたときの対処法を学びましたが、「人生で遭遇する機会はないだろうなぁ」と思いながら読んでいました2)。実際に私が経験する機会の多い咬傷の第1位は犬で、次いで猫、そして人です。蛇咬傷については第5回をご参照ください。今回は犬咬傷で、創が比較的小さく(3cm未満)、四肢をかまれた場合の処置に限定します。犬と猫は基本的には治療は変わりませんが、しいて言えば猫のほうが歯が細くて鋭く、創が小さく深い傾向にあります。創が大きい、もしくは美容的に縫合が必要な場合(顔面など)はアプローチが別になります。<症例>72歳男性主訴飼い犬にかまれた高血圧、糖尿病で定期通院中。受診2時間前に飼い犬のマルチーズに手をかまれた。自宅にあった消毒液で消毒し、包帯を巻いた状態で定期受診。診察が終わったときに自分から「今日手をかまれて血が出て大変だったんだよ」と言い、犬咬傷が判明。既往歴糖尿病、高血圧アレルギー歴なしバイタル特記事項なし右前腕2ヵ所に1cm程度の創あり。発赤なし。内科外来をしていると上記のようなことを偶然聴取することがあります。さて、これは「そうなんだ。大変だったね~」とこのまま帰してよいのでしょうか?報告によると、犬咬傷は咬傷全体の80%を占め、若い男性に多く、餌を取り上げるなど犬に不快感を与えたときにかまれることが多いそうです3)。私が小さいころ、田舎の犬が食事をしていたときに、いつもは喜ぶ頭なでなでをしたら吠えられて驚いた記憶があります。この患者さんはとくに理由もなくほぼ毎日かまれているそうですが、ここまで深くかまれたのは初めてだったとのことです。ちなみに、犬咬傷の次に多いのが猫咬傷で全体の10%程度、若い女性に多いようです1)。咬傷で危険なのは、かみ傷が神経や血管を損傷することですが、感染も同等に危険です。口腔内には多種多様な菌がいて、感染のリスクが高いです。動物にかまれた後1~2日してから病院を受診した患者では、入院や外科的処置が必要になるリスクが3.5~7倍高くなるという報告があります4)。早期に適切な処置をして感染を防ぐことが重要ですので、治療をステップに分けて説明します。(1)鎮痛、創の深さ・異物の有無の確認創に対して処置を行うのでしっかりと鎮痛しましょう。動物咬傷は感染リスクが高いため可能な限り縫合は避けます。縫合しない場合は、私は鎮痛薬としてキシロカインの注射剤ではなく、ゼリー剤を用います。塗布してガーゼで覆い、5分ほど待ってから創の深さと異物の有無を確認しましょう。私はこういった小さな創に対しては眼科用ピンセットを用いて深さや異物の有無を確認しています。創部内の観察が困難な場合もありますが、動物咬傷で異物となるのは歯ですので、疑わしい場合はレントゲンを撮影しましょう。本症例は眼科攝子を入れたところ創は浅く、可視範囲に異物はないと判断しました。(2)洗浄、消毒この患者が自宅で行った処置は創に消毒液を塗ったことだけでした。非医療者はこういった処置で終わることが非常に多い印象があります。しかし、咬傷は創の入口が狭くて深いことが多く、唾液などの汚染物質が創部内に残ります。ですので、表面だけを洗ったり消毒したりするだけでは十分な処置とはいえません。汚染された創を洗浄するためには、8psi(Pound per Square Inch)の圧が理想とされていて、図1のように20mLのシリンジの先に20ゲージの静脈留置針の外套を付けるとちょうどよい値になります5)。図1 20mLのシリンジに20G静脈留置針を装着画像を拡大する私は創が小さい場合、眼科用ピンセットがあればピンセットで入り口を広げ、シリンジを用いて圧をかけながら外から洗浄します。創の入り口を広げるのが難しい場合は、そのまま外から圧をかけて洗浄します。この際に「針を創に入れて洗浄すればよいのでは?」と思われるかもしれませんが、かけた圧力の逃げ場がないため、皮下に大きな死腔を作ってしまうことがありますので控えてください(図2)。洗浄の量は傷1cm当たり100~200mLが推奨されています6)。図2 入り口が狭い創に圧をかけると皮下に死腔ができる画像を拡大する創の消毒に関して有効性が示唆された報告はなく、ポピドンヨードや次亜塩素酸ナトリウムは組織障害性が強いこともあり、すべて症例に積極的な推奨はされていません7)。しかし、創の汚染が強いときに消毒することを否定する根拠もありませんので、状況に合わせて消毒を行うことをお勧めします。私は、「創の汚染が強いとき」「初回のみ」消毒しています。水道水や生理食塩水の代わりに、消毒液を用いて洗浄することは効果的ではないので控えましょう。次に必要になるのは創の処置です。口腔内には嫌気性菌を含めた細菌が多数いるため、動物咬傷では口腔内の汚染物質が創に入り込みます。入り口を塞ぐと、(1)空気に触れない、(2)創内のドレナージができない、という事態が生じて感染リスクが上がるとされているので、可能であれば縫合しません。もし美容的に問題がある場合はリスク・ベネフィットを説明して縫合します。今回のような小さく深い創の場合は、ナイロン糸を用いたドレナージが有効です。私は1-0から3-0の太さのナイロン糸1本を図3のように先端が輪っかになるように結び、輪っか側の先端を創に挿入してテープで固定します。図3 ドレナージ用のナイロンの作り方とドレナージの方法画像を拡大する創には抗菌薬入りの軟膏を塗ったガーゼを被せ、1日1回水道水で洗浄してから軟膏ガーゼを交換するように指導しています。若手医師からドレナージ抜去のタイミングに関して聞かれることがありますが、私は受傷2~3日して感染兆候がなければ除去しています。ガーゼを頻回(1日2回以上)交換しなければならないほど浸出液が多い場合は留置を継続しますが、長くても1週間としています。本症例は、嫌気性菌のカバーを目的に、アモキシシリン・クラブラン酸配合剤250mg+アモキシシリン単剤250mgを3錠ずつ5日分処方して帰宅としました。また、破傷風の予防接種を受けたことがなかったため、破傷風トキソイドも投与しました。患者には3日後に来院してもらい創を観察したところ、ナイロン糸は残っており、浸出液は少量で感染兆候がなかったため、糸ドレナージを除去しました。抗菌薬は飲み切り終了し、毎日のガーゼ交換は継続してもらったところ、1週間後の診察で創はきれいになっていたため、咬傷に対する通院は終了としました。軟膏ガーゼは浸出液が付かなくなるまで継続してもらい、何かあれば再診を指示しましたが、次の定期受診までとくに問題はありませんでした。患者さんは相変わらず毎日犬にかまれているものの、「犬と接する際はなるべく手袋、長袖を着るようにした」と工夫していました。そもそも犬にかまれないようにする何かよい方法はないのかなと思いましたが、私は犬を飼ったことがないため何もアドバイスできませんでした…。軽症の動物咬傷は患者自身が処置して感染症を引き起こすことがあり、より大きな処置が必要になることがあります。適切な診断・加療が必要ですので参考にしてください。動物咬傷の豆知識感染してしまったとき今回の症例で、もし残念ながら感染してしまった場合はどうしましょうか? この場合、ドレナージが十分にできていない可能性があります。そのため、糸ドレナージは抜去して、創内を十分にドレナージできる程度に切開する必要があります。自信がなければ専門科に相談しましょう。十分なドレナージと抗菌薬でほとんどの動物咬傷の感染は改善します。感染が関節にかかっている場合感染が関節にかかっている場合は、化膿性関節炎の可能性や手の咬傷でカナベルの4徴(屈筋腱に沿った圧痛、患指の腫脹、患指の軽度屈曲位、受動的に患指を伸展すると激痛を訴える)を認める場合は化膿性屈筋腱炎の可能性があり、専門的な処置が必要なためコンサルトしましょう8)。1)Savu AN, et al. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2021;9:e3778.2)Tintinalli JE, et al. Tintinalli’s Emergency Medicine: A Comprehensive Study Guide 8th edition. McGraw-Hill Education;2016.3)Basco AN, et al. Public Health Rep. 2020;135:238-244.4)Speirs J, et al. J Paediatr Child Health. 2015;51:1172-1174.5)Shetty R, et al. Indian J Plast Surg. 2012;45:590-591.6)Moscati RM, et al. Acad Emerg Med. 2007;14:404-409.7)Chisholm CD, et al. Ann Emerg Med. 1992;21:1364-1367.8)Kennedy CD, et al. Clin Orthop Relat Res. 2016;474:280-284.

793.

ノーベル生理学・医学賞、mRNAワクチン開発のカリコ氏とワイスマン氏が受賞

 2023年のノーベル生理学・医学賞は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの開発を可能にしたヌクレオシド塩基修飾の発見に対して、カタリン・カリコ(Katalin Kariko)氏とドリュー・ワイスマン(Drew Weissman)氏に授与することを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のノーベル委員会が10月2日に発表した。カリコ氏とワイスマン氏の画期的な発見は、mRNAがヒトの免疫系にどのように相互作用するかという理解を根本的に変え、人類に対して最大の脅威の1つとなったCOVID-19パンデミックにおいて、前例のないワクチン開発に貢献した。授賞式は12月10日にストックホルム市庁舎にて開催される。 ノーベル委員会はプレスリリースにて、カリコ氏とワイスマン氏の業績を紹介している1)。以下に抜粋して紹介する。「mRNAワクチン」という有望なアイデア ヒトの細胞では、DNAにコードされた遺伝情報がmRNAに伝達され、これがタンパク質生産の鋳型として使われる。1980年代、細胞培養なしにmRNAを生産する効率的な方法が導入された。この決定的な一歩は、いくつかの分野における分子生物学的応用の発展を加速させた。mRNA技術をワクチンや治療に利用するアイデアも浮上したが、その前に障害が待ち構えていた。in vitroで転写されたmRNAは不安定で、送達が困難であると考えられていたため、mRNAを脂質ナノ粒子によってカプセル化する必要があった。さらに、in vitroで産生されたmRNAは炎症反応を引き起こした。そのため、臨床目的のmRNA技術開発に対する熱意は、当初は限られたものであった。 ハンガリー出身の生化学者であるカリコ氏は、このような障害にも挫けずに、mRNAを治療に利用する方法の開発に力を注いだ。同氏が米国・ペンシルベニア大学の助教授だった1990年代初頭、自身のプロジェクトの意義について研究資金提供者を説得するのが困難であったにもかかわらず、mRNAを治療薬として実用化するというビジョンに忠実であり続けた。ペンシルベニア大学の同僚であった免疫学者のワイスマン氏は、免疫監視とワクチン誘発免疫応答の活性化において重要な機能を持つ樹状細胞に興味を持っていた。新しいアイデアに刺激され共同研究が始まり、異なるタイプのRNAが免疫系とどのように相互作用するかに焦点を当てた。ブレークスルー カリコ氏とワイスマン氏は、樹状細胞がin vitroで転写されたmRNAを異物として認識し、活性化と炎症シグナル分子の放出につながることに気付いた。哺乳類細胞からのmRNAは同じ反応を起こさないため、in vitroで転写されたmRNAはなぜ異物として認識されるのか疑問に感じ、何らかの重要な特性が、異なるタイプのmRNAを区別しているに違いないと考えた。 RNAにはA、U、G、Cの4つの塩基があり、DNAのA、T、G、Cに対応している。カリコ氏とワイスマン氏は、哺乳類細胞のmRNAの塩基は頻繁に化学修飾されるが、in vitroで転写されたmRNAの塩基は化学修飾されないことを認めており、in vitroで転写されたRNAの塩基が変化していないことが、好ましくない炎症反応の説明になるのではないかと考えた。これを調べるため、研究チームは塩基に独自の化学修飾を施したさまざまな変異型mRNAを作製し、樹状細胞に投与した。結果は驚くべきもので、mRNAに塩基修飾を加えると、炎症反応はほとんど消失した。これは、細胞がどのようにしてさまざまな形のmRNAを認識し、それに反応するかという理解にパラダイム変化をもたらすものであった。カリコ氏とワイスマン氏は自らの発見がmRNAを治療に利用するうえで重大な意味を持つことを理解し、この画期的な結果は2005年に発表された2)。これはCOVID-19が流行する15年前であった。 カリコ氏とワイスマン氏が2008年3)と2010年4)に発表したさらなる研究で、塩基を修飾して作成したmRNAを送達すると、修飾していないmRNAに比べてタンパク質産生が著しく増加することを示した。この効果は、タンパク質産生を制御する酵素の活性化が抑制されたことによるものであった。カリコ氏とワイスマン氏は、塩基修飾が炎症反応を抑制し、タンパク質産生を増加させるという発見を通して、mRNAの臨床応用に至る重要な障害を取り除いた。mRNAワクチンの可能性 mRNA技術への関心が高まり始め、2010年にはいくつかの企業が開発に取り組んでいた。ジカウイルスや、SARS-CoV-2と関連が深いMERS-CoVに対するワクチンの開発が進められていた。COVID-19パンデミック発生後、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質をコードする2つの塩基修飾mRNAワクチンが記録的なスピードで開発された。約95%の予防効果が報告され、両ワクチンとも2020年12月に承認された。 mRNAワクチンの驚くべき柔軟性と開発スピードは、この新たなプラットフォームをほかの感染症に対するワクチンにも利用する道をひらくものだ。将来的には、この技術は治療用タンパク質の送達や、ある種のがんの治療にも使用されるかもしれない。 SARS-CoV-2に対して、mRNAワクチンとは異なる方法論に基づくワクチンも急速に導入され、合わせて130億回以上のCOVID-19ワクチンが世界中で接種された。このワクチンによって何百万人もの命が救われ、さらに多くの人々の重症化を防ぐことができた。今年のノーベル賞受賞者たちは、mRNAにおける塩基修飾の重要性という根本的な発見を通じて、現代の最大の健康危機における変革的発展に大きく貢献した。 カタリン・カリコ氏は、1955年ハンガリーのソルノク生まれ。1982年にセゲド大学で博士号を取得後、1985年までセゲドにあるハンガリー科学アカデミーで博士研究員として勤務。その後渡米し、テンプル大学(フィラデルフィア)とUniformed Services University of the Health Sciences(USUHS)(ベセスダ)で博士研究員として勤務。1989年にペンシルベニア大学の助教授に任命され、2013年まで在籍。その後、BioNTech社副社長、後に上級副社長に就任。2021年よりセゲド大学教授、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部非常勤教授。 ドリュー・ワイスマン氏は1959年米国マサチューセッツ州レキシントン生まれ。1987年にボストン大学で医学博士号を取得。ハーバード大学医学部のベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで臨床研修を受け、米国国立衛生研究所(NIH)で博士研究員として研究。1997年、ペンシルベニア大学ペレルマン医学部に研究グループを設立。The Roberts Family Professor(ワクチン研究)、ペンシルベニア大学RNAイノベーション研究所所長。

794.

XBB.1.5対応コロナワクチン、新規剤形を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは9月29日付のプレスリリースにて、オミクロン株XBB.1.5系統対応新型コロナウイルス感染症(COVID-19)1価ワクチンの新規の剤形について、厚生労働省に承認申請したことを発表した。 今回申請した新規の剤形は以下のとおり。・12歳以上用:プレフィルドシリンジ製剤(希釈不要)・5~11歳用:1人用のバイアル製剤(希釈不要)・6ヵ月~4歳用:3人用のバイアル製剤(要希釈) また、12歳以上用の1人用バイアル製剤(希釈不要)については2023年9月1日に承認を取得している。 これらの製剤は2024年以降の接種に向けたものであり、2023年9月開始の予防接種法上の特例臨時接種において使用されることはない。

795.

第165回 新型コロナ後遺症、2ヵ月以上の後遺症に悩む成人の割合は1~2割/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ後遺症、2ヵ月以上の後遺症に悩む成人の割合は1~2割/厚労省2.コロナ禍でも診療所は増加の一方、産婦人科・小児科の標榜病院は減少/厚労省3.「幸齢社会実現会議」がスタート、認知症対策の強化を目指す/内閣府4.「マイナ保険証」利用率4ヵ月連続減少、窓口負担誤表示問題も浮上/厚労省5.せき止め・去痰薬の供給逼迫、医療機関に最小限の処方を求める/厚労省6.県立5病院で医師の違法残業続出、県が働き方改革のプロジェクトチームを設置/兵庫県1.新型コロナ後遺症、2ヵ月以上の後遺症に悩む成人の割合は1~2割/厚労省厚生労働省の研究班は新型コロナウイルスの後遺症に関する最新の調査結果を公表した。「COVID-19感染者の健康と回復に関するコホート研究」は東京都品川区、大阪府八尾市、北海道札幌市の住民を対象として実施されたもの。その結果、「何らかの罹患後症状を有した」と回答した割合は成人の方が小児より2~4倍高く、成人の約1~2割が2ヵ月以上の後遺症を経験していることが明らかとなった。とくに札幌市での後遺症経験率が最も高く23.4%となった。また、ワクチン接種者は非接種者に比べて、後遺症の発症率が約25~55%低いこともわかった。今後、研究班では、これらの結果について厚労省のウェブサイトに掲載し、診療の手引きに、今回の研究の知見、就業/就学との両立の観点を踏まえた診断書の見本などを盛り込む予定。また、米国の国立保健統計センターの調査によれば、新型コロナの後遺症を経験した米国成人は6.9%、子供は1.3%で、この数字は前回の調査と比較して低下している。その一方で、後遺症に悩む患者の数は依然として多く、米国では後遺症対策に約67億円の助成金を提供すると発表している。参考1)令和4年度 COVID-19感染者の健康と回復に関するコホートの主な結果(厚労省)2)新型コロナ19万人余調査 成人1~2割「後遺症」か 厚労省研究班(NHK)3)コロナ後遺症、目を向けて 5類移行、実態把握しづらく 世界で200超の症状(毎日新聞)4)コロナ後遺症、「成人の約7%が経験」 米推計(CNN)2.コロナ禍でも診療所は増加の一方、産婦人科・小児科の標榜病院は減少/厚労省厚生労働省は、令和4年医療施設(動態)調査・病院報告を発表し、2022年10月時点で、産婦人科や産科を標榜する全国の病院の数は1,271施設と32年連続で減少していることを明らかにした。このほか、小児科を標榜する一般病院も29年連続で減少し、2,485施設であった。全国の医療施設は前年比で697施設増の18万1,093施設となっており、一般病院の数は減少している一方で、診療所の増加が目立ち、この「乱立」の問題が改善されていないことが指摘されている。コロナの影響で医療提供体制の課題が浮き彫りになった中、施設やマンパワーの集約化が重要とされているが、診療所の増加は集約化の方針に反する動きとされている。有床診療所も減少が続き、2023年6月末には施設数が5,751施設にまで減少していることがわかっている。今後、人口減少と高齢者の増加とともに、産婦人科医や小児科医の確保や医療機関の再編など、地域にとって大きな課題となるとみられる。参考1)令和4年医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚労省)2)産婦人科・産科が最少更新 32年連続減、厚労省調査(東京新聞)3)病床数の多い高知県等では「多すぎる病床を埋めるために、在院日数を延伸」させていないか、検証が必要-厚労省(Gem Med)3.「幸齢社会実現会議」がスタート、認知症対策の強化を目指す/内閣府政府は9月27日、認知症対策の強化のための「認知症と向き合う『幸齢(こうれい)社会』実現会議」を首相官邸で開催した。会議には、認知症の当事者、家族、有識者が参加。政府はこの会議を通して「共生社会」の実現、治療薬の開発、社会環境の整備などの方針を議論し、年内に意見をまとめる方針。岸田文雄首相は、新たに承認されたアルツハイマー病の治療薬レカネマブ(商品名:レケンビ)を踏まえ、早期発見や治療のための医療体制構築を急ぐよう関係閣僚に指示。また、岸田首相は「安心して年を重ねることができる高齢社会作りを進める」との意向を強調した。厚生労働省のデータによれば、2025年には認知症患者は約700万人に達するとの予測があり、早急な対策が求められている。さらに、認知症の人やその家族の会の代表は、認知症を「自分事」として考える社会を求め、当事者や家族の実感を政策に反映させることの重要性を訴えた。同様に、日本認知症本人ワーキンググループの代表は、認知症の人たちが社会活動を続けられる環境を作ることの必要性を強調した。今後の認知症施策には、症状の進行を遅くする治療薬の開発、身寄りのない人のための環境整備、悩みや困りごとを共有する場の提供などが期待されている。参考1)認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議(首相官邸)2)岸田首相 アルツハイマー新薬承認を踏まえ 医療体制構築を指示(NHK)3)認知症対策で政府が「幸齢社会実現会議」 年内に意見とりまとめへ(朝日新聞)4.「マイナ保険証」利用率4ヵ月連続減少、窓口負担誤表示問題も浮上/厚労省厚生労働省は、9月29日に開催した社会保障審議会医療保険部会で、「マイナ保険証」の利用率が4ヵ月連続で減少し、8月時点で4.7%にとどまったことを明らかにした。健康保険証の廃止が2024年秋に迫る中、トラブルが続出しており、同省は危機感を募らせている。とくに、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に伴い、医療機関での窓口での医療費自己負担割合が誤表示される事例が全国で5,695件確認された。これらは、データ入力のミスやシステム上の問題が原因とされている。厚労省は、誤表示の再発防止のため、事務処理のマニュアルの見直しやシステムの改修を進めている。また、マイナ保険証の利用が進まない理由として、情報の紐付けの誤りやトラブル、利用メリットの認知不足などが関係しているとの認識が示された。参考1)オンライン資格確認等について(厚労省)2)「マイナ保険証」の利用率は5%弱 4カ月連続減少 厚労省は危機感(朝日新聞)3)マイナ保険証、利用率が下がり続けて5%割れ…「不安が払拭されていない証左」(東京新聞)4)“医療費負担割合の誤表示 全国で5700件近く確認” 厚生労働省(NHK)5.せき止め・去痰薬の供給逼迫、医療機関に最小限の処方を求める/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスならびにインフルエンザの感染拡大を受け、せき止め薬や痰を取り除く薬の供給が不足しているため、医療機関や薬局に対して、処方を最小限に抑え、鎮咳薬や去痰薬について過剰な発注を避けるよう9月29日に全国の自治体や医師会を通して通知を発出した。具体的には、患者への薬の処方日数を最も短くとどめること、そして、薬の入手が難しい場合には、系列店や地域間で連携し、過剰な発注を控えるよう指示されている。背景には、2020年末に始まった後発薬メーカーの不祥事や業務停止命令などが影響し、一部の薬の生産量が低下していることが挙げられる。現在、主なせき止め薬の生産量は、新型コロナ流行前と比較して約85%まで減少しており、去痰薬の供給も不安定な状態が続いている。厚労省は、状況の早急な改善は難しいとして、薬の供給不足に関する相談窓口を設けるとともに、引き続き適切な対応を求めることを強調している。参考1)鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の在庫逼迫に伴う協力依頼(厚労省)2)せき止め薬足りない 処方「最小限に」 コロナで減産 厚労省が通知(朝日新聞)3)せき止めなど一部の薬 入手難しく“有効活用を” 厚労省が通知(NHK)4)せき止め薬・痰切り薬「必要最小限の処方を」…コロナやインフル感染拡大のたびに供給不足(読売新聞)6.県立5病院で医師の違法残業続出、県が働き方改革のプロジェクトチームを設置/兵庫県兵庫県立の5つの病院が医師に対して労使協定の上限を超える時間外労働をさせていた問題で、労働基準監督署から是正勧告を受けていることが明らかとなった。とくに、兵庫県災害医療センター(神戸市)では、2017年11月に勤務していた外科医師の残業時間が労使協定で定める月150時間を超える152時間だったことが確認された。さらに、神戸新聞社の情報公開請求により、西宮病院や尼崎総合医療センター、加古川医療センター、淡路医療センターなどの医師も労使協定を大幅に超える残業をしていたことが判明している。兵庫県では、甲南医療センターで26歳の専攻医が過労自殺した事件もあり、この問題を受け、斎藤元彦知事は医師の働き方改革に向けたプロジェクトチームを設置するよう指示。プロジェクトチームは時間外労働の要因を分析し、来年4月までに結果を取りまとめる予定である。参考1)県災害医療センター医師も違法残業 労基署の是正勧告は兵庫県立5病院に(神戸新聞)2)医師の働き方改革へ、兵庫県がプロジェクトチーム設置 県立5病院の違法残業、要因分析(同)3)県立病院医師の長時間労働 プロジェクトチームで改善策協議へ(NHK)

796.

新型コロナBA.2.86「ピロラ」、きわめて高い免疫回避能/東大医科研

 2023年9月時点、新型コロナウイルスの変異株は、オミクロン株XBB系統のEG.5.1が世界的に優勢となっている。それと並行して、XBB系統とは異なり、BA.2の子孫株のBA.2.86(通称:ピロラ)が8月中旬に世界の複数の地域で検出され、9月下旬時点で、主に南アフリカにおいて拡大し、英国やヨーロッパでも広がりつつある。ピロラは、BA.2と比較して、スパイクタンパク質に30ヵ所以上の変異が認められる。世界保健機構(WHO)は、ピロラを「監視下の変異株(VUM)」に指定した。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、ピロラの流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証し、その結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。ピロラは最も中和抗体に対する抵抗性を高めた変異株の1つ 本研究では、デンマークにおける2023年9月4日までのウイルスゲノム疫学調査情報が用いられた。同国ではEG.5.1を含む複数のXBB亜型が共存し、ピロラも複数検出されている。本疫学データを基に、ヒト集団内におけるピロラの実効再生産数を推定した。実効再生産数は、特定の状況下において、1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均で、本研究では変異株間の流行拡大能力の比較の指標として用いた。 未感染のワクチン接種者におけるウイルスの中和抗体回避能を評価するために、新型コロナワクチンを接種した人の血清(起源株対応1価ワクチン×3回/起源株対応1価ワクチン×4回/BA.1対応2価ワクチン追加接種/BA.4-5対応2価ワクチン追加接種)を用いて中和アッセイを行った。同じく、ブレークスルー感染者におけるウイルスの中和抗体回避能を評価するために、ワクチンを2回接種し2週間以上経過してXBBに感染した人の血清(XBBブレークスルー感染血清)を用いた。また、4種のモノクローナル抗体薬(ベブテロビマブ、ソトロビマブ、シルガビマブ、チキサゲビマブ)の効果を検証した。 ピロラの流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証した主な結果は以下のとおり。・ピロラの有効再生産数は、XBB.1.5よりも1.29倍高かった(95%ベイズ信頼区間[BCI]:1.17~1.47)。なお、利用可能なBA.2.86配列の数が少ないため、この推定にはかなりの不確実性があった。・ピロラの有効再生産数がEG.5.1の有効再生産数を上回る推定事後確率は0.901であり、今後ピロラが流行株の1つになる可能性が示された。・ピロラは、起源株、BA.1対応2価、BA.4-5対応2価のいずれのワクチン接種によって誘導される中和抗体に対してもきわめて強い抵抗性を示し、ワクチンの効果はほとんど認められなかった。抵抗性の強さはEG.5.1と同程度だった。・XBBブレークスルー感染血清を用いた中和アッセイでは、ピロラに対する50%中和力価は、EG.5.1に対するものよりも有意に(1.6倍)低かった。・ピロラの祖先株であるBA.2に対して中和活性が認められる4種類の抗体薬(ベブテロビマブ、ソトロビマブ、シルガビマブ、チキサゲビマブ)は、ピロラに対していずれも中和活性が認められなかった。 ピロラはこれまでの変異株の中で最も中和抗体に対する抵抗性を高めた変異株の1つであることが明らかになった。研究グループは本結果について、今後全世界に拡大していくことが懸念されており、さらに現状の抗体薬による感染防御の有効性も低いことが予想されるため、有効な感染対策を講じることが肝要だと述べている。

797.

フルチカゾン、コロナ軽~中等度の症状回復に効果なし/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者をフルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入薬で14日間治療しても、プラセボと比較して回復までの期間は短縮しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果で示された。米国・ミネソタ大学のDavid R. Boulware氏らが報告した。軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、症状消失までの期間短縮あるいは入院または死亡回避への吸入グルココルチコイドの有効性は不明であった。NEJM誌2023年9月21日号掲載の報告。持続的回復までの期間をフルチカゾンフランカルボン酸エステルvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた分散型臨床試験で、2021年6月11日に参加者の募集を開始し現在も継続中である。 研究グループは、2021年8月6日~2022年2月9日に米国の91施設において、登録前10日以内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認され、7日以内にCOVID-19の症状を2つ以上認めた30歳以上の外来患者を登録し、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群(1日1回200μg 14日間吸入)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、持続的回復までの期間とし、3日連続で症状がない場合の3日目と定義された。副次アウトカムは、28日目までの入院または死亡、28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合などであった。持続的回復までの期間に有意差なし 登録患者1,407例がフルチカゾンフランカルボン酸エステル群(715例)とプラセボ群(692例)に無作為化され、それぞれ656例および621例が解析対象集団となった。平均(±SD)年齢は47±12歳、39%が50歳以上で、女性63%、ワクチン2回以上接種65%、症状発現から試験薬投与までの期間の中央値は5日(四分位範囲[IQR]:4~7)であった。 持続的回復までの期間に、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群とプラセボ群の有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信用区間[CrI]:0.91~1.12、有効性[HRが>1と定義]の事後確率0.56)。 入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群で24例(3.7%)、プラセボ群で13例(2.1%)に認められた(HR:1.9、95%CrI:0.8~3.5)。各群で3例入院したが、死亡例はなかった。 有害事象の発現率は、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群2.0%(13/640例)、プラセボ群2.5%(16/605例)であり、両群とも低率であった。

798.

第180回 宮城の病院でレジオネラ症集団感染、病院利用がない地域住民への感染はなぜ起こった?

入院患者、外来患者だけでなく病院利用が全くなかった地域住民にも感染広がるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球は、オリックス・バファローズがパ・リーグ三連覇を決めました。阪神、オリックスがこのままの勢いで行けば、今年の日本シリーズは大阪と兵庫の球場だけで行われる関西シリーズになります。関東在住者としては少々寂しいです。一方、米国のMLBでは、藤浪 晋太郎投手が所属するボルチモア・オリオールズと、前田 健太投手が所属するミネソタ・ツインズが、それぞれアメリカン・リーグの東地区、中地区の優勝を決めました。シーズン後半になって持ち直してきた両投手のポストシーズンでの活躍に期待したいと思います。さて、今回は東北の地方都市にある民間病院で起こった、レジオネラ症の集団感染について書きます。7月に発覚したこの事件、その後の調査で、入院や外来など病院を利用した人の感染だけではなく、病院利用がまったくなかった地域住民にも感染が広がっていました。温泉入浴施設での集団感染事例が多いレジオネラ症ですが、どうして病院で起こったのでしょうか。また、どうして病院利用者以外にも広がってしまったのでしょうか…。一般病床80床、透析病床60床を有する地域の急性期病院宮城県は9月11日、県内の病院で、今年6~7月にかけて病院の利用者6人がレジオネラ症に感染し、80代と40代の男女2人が死亡した問題で、病院の利用歴のない近隣住民ら11人も感染していた、と発表しました。県は「病院の集団感染と関連があるとみられる」として、詳しい因果関係を調べているとのことです。宮城県の発表によると、ことの経緯は以下のようなものでした。6月下旬~7 月中旬、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づくレジオネラ症患者の届け出があった6人について、届け出を受理した大崎保健所が調査を行いました。その結果、同一医療機関を利用していたことが判明、健康被害拡大防止と重症化防止のため、7月19日に施設名の公表を行いました。集団感染を起こしたのは、宮城県大崎市の医療法人永仁会・永仁会病院です。一般病床80床、透析病床60床を有する地域の急性期病院で、Webサイトによれば、消化器、腎臓、糖尿病、乳腺疾患などを専門としています。その後、同病院の施設調査が行われ、空調設備(空調冷却塔2基の拭取検体)からレジオネラ属菌が検出。1基は安全とされる目安の97万倍、もう1基は68万倍の菌が検出されたとのことです。菌を含んだ水がエアロゾル状となり冷却塔外に舞い散る空調の冷却は冷却塔内のファンを回して行うため、菌を含んだ水がエアロゾル状となって冷却塔外に舞い散り、新型コロナ対策の換気で開放されていた病室の窓などから入り感染につながったとみられています。コロナ予防のための換気対策が逆にレジオネラ症の感染拡大につながったわけです。皮肉なものです。また、遺伝子検査により、6人の患者のうち4人の患者由来菌株と病院の空調冷却塔由来菌株との遺伝子パターンが一致したため、8月4日にはその事実も公表されました。県はこの事実に基づいて、近隣医療機関に対する注意喚起を行い、併せて同病院に対して、厚労省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」1)に基づき指導を行いました。半径3km以内に住む住民も感染3回目となる9月11日の宮城県の発表では、さらなる感染拡大が明らかになりました。7月に公表された患者6人に加え、7月下旬にレジオネラ症患者の届け出があった1人についても同病院を利用していたことが判明、遺伝子検査でこの患者由来菌株と病院の空調冷却塔由来菌株の遺伝子パターンの一致が確認されました。ちなみに、計8人の患者の年齢は40〜90代、入院5人、通院3人でした。死亡したのは40代と80代の2人で、残り6人は入院加療により軽快したとのことです。この時の発表では意外な事実も明らかにされました。病院の利用歴がない近隣住民らの感染です。大崎保健所の管内では、同病院を利用していた患者8人とは別に、利用歴がない13人のレジオネラ症患者の届け出が出ていました。これは、大崎管内の例年のレジオネラ症発生状況と比較しても多い数字であったことに加え、13人のうち11人については、自宅や勤務先が同病院に近接(半径3km以内)している事実が判明、うち4人については患者由来菌株と同病院の空調冷却塔由来菌株の遺伝子パターンが一致していました。宮城県は、「当該医療機関の冷却塔が感染源であることは科学的に完全には証明できておりませんが、同種事案の再発防止や県民の健康を守る観点から、県内において冷却塔を有する施設管理者に対し注意喚起を行う」と発表しました。なお、永仁会病院は県の指導の下、7月23日に清掃業者が空調冷却塔2基の清掃と薬品による化学的洗浄を実施、8月以降はこの冷却塔との関連性が疑われるレジオネラ症患者の発生はないとのことです。温泉入浴施設での集団感染が多いレジオネラ症レジオネラ症は感染症法上の4類感染症に分類されており、全数報告対象です。よくニュースになるのは、温泉入浴施設などでの感染です。最近の大きな集団感染事例は、2017年3月に発生した広島県内の温泉入浴施設で起きたもので、入浴客の中から58人の患者が発生し、1人が死亡しています。なお、2002年7月に宮崎県内の温泉入浴施設で起きた集団感染では295人が感染し、7人が死亡しています。厚生労働省のWebサイトによれば、レジオネラ症は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症で、その病型は劇症型の肺炎と、肺炎は起こさない一過性のポンティアック熱があるとのことです。もともと土壌や水環境に普通に存在する菌ですが、エアロゾルを発生させる人工環境(ビル屋上に立つ空調冷却塔、ジャグジー、加湿器等)や循環水を利用した風呂などが菌の増殖を促し、感染機会を増やしているとされています。レジオネラ属菌で汚染されたエアロゾルを吸入すること等で感染し、潜伏期間は2~10日間、ヒトからヒトへ感染することはない、とされています。もっとも、菌に曝露しても誰もが発症するわけではなく、細胞性免疫能の低下した高齢者やがん患者、透析患者などで肺炎を発症しやすいとされています。今回の永仁会病院のケースも、病院屋上の空調冷却塔でレジオネラ属菌が増殖し、それを含んだエアロゾルが拡散、免疫の落ちた患者らが吸引し、感染したと考えられます。同病院は透析病床も多く抱えているので、そのあたりも感染拡大の一因かもしれません。病院の空調設備だけでなく給水設備も汚染源に調べてみると、院内感染によるレジオネラ症は決して珍しいことではなく、世界的にも問題になっているようです。原因は今回問題となった病院の空調設備だけでなく、給水設備も汚染源になり得るようです。たとえば、神奈川県衛生研究所の研究者らが、2015年に神奈川県内の3病院(200床以上)を対象に給水設備(病衣内の蛇口水及びシャワー水と、蛇口及びシャワーヘッドのスワブ)のレジオネラ属菌による汚染を遺伝子の検出と培養により調査した文献によれば、3病院でのレジオネラDNAの検出は水試料では6.7~93.8%、スワブ試料では0~7.1%、培養によるレジオネラ属菌の検出は水試料では26.7〜66.7%、スワブ試料では0~14.3%だったそうです。著者らはこの結果を踏まえ、「医療機関においては高リスクグループに配慮し、感染防止対策と給水設備の管理の徹底が必要である」と結んでいます2)。「藻が生えているのが目視で分かっても放置することがあった」と病院それにしても、病院利用者以外への感染はどう考えたらいいのでしょうか。宮城県はその後、調査結果を公表しておらず想像するしかありませんが、空調冷却塔からレジオネラ属菌で汚染されたエアロゾルが風などに乗って相当広範囲に飛んだのが原因だと考えられます。空調冷却塔は通常、気温が上がり始めた5~9月頃まで使用されます。同病院の場合、冷却塔の洗浄を十分にしないで今シーズンを迎えたのかもしれません。7月20日付の朝日新聞の報道等によれば、病院は「これまで、毎年1回換水し、冷房を使い終わる10月と、使い始める5月ごろに病院職員がデッキブラシなどで清掃していた」と説明し、「今年も5月に清掃した」とのことです。しかし、「冷却塔の動作確認を毎月する際、塔内に藻が生えているのが目視で分かっても放置することがあった」そうです。安全とされる目安の100万倍近い菌が棲み着いたエアロゾルが、風に乗って病院から半径3キロ内に飛び散っていたわけです。まさにモダンホラーです。これでは病院の近くにはおちおち住めませんね。駅弁で大騒動のセレウス菌も過去には医療機関で集団感染先週、青森県の駅弁メーカーの弁当で起きたセレウス菌による食中毒もそうですが、集団感染や院内感染は忘れた頃に突然起きます。医療機関以外での集団感染が一般的な感染症も、時として病院などで起こるので注意が必要です。ちなみに、セレウス菌については、病院のリネン類(外部に洗濯を依頼していた清拭タオルなど)を介した集団感染が時折起きています。大きく報道されたところでは、2006年の自治医科大学附属病院、2013年の国立がん研究センター中央病院の事例が有名です。いずれも死亡例が出ています。病院管理者の皆さん、病院が思わぬ菌の感染源とならないためにも、MRSA対策だけでなく、レジオネラ属菌やセレウス菌にも気を付けて下さい。参考1)レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針/厚労省2)大屋日登美ほか.医療機関の給水設備におけるレジオネラ属菌の汚染実態.感染症誌.2018;92:678~685.

799.

9月26日 大腸を考える日【今日は何の日?】

【9月26日 大腸を考える日】〔由来〕9の数字が大腸の形と似ていることと、「腸内フロ(26)ーラ」と読む語呂合わせから、健康の鍵である大腸の役割や生息する腸内細菌叢のバランスを健全に保つための方法を広く知ってもらうことを目的に森永乳業株式会社が制定。関連コンテンツ潰瘍性大腸炎【希少疾病ライブラリ】腸内細菌の医療への応用【慢性便秘症特集】潰瘍性大腸炎へのミリキズマブ、導入・維持療法で有効性示す/NEJMアルコール摂取、大腸がんリスクが上がる量・頻度は?加齢や疲労による臭い、短鎖脂肪酸が有効

800.

第182回 コロナ入院患者の6割が数ヵ月後のMRI検査で複数臓器に異常あり

コロナ入院患者の6割が数ヵ月後のMRI検査で複数臓器に異常あり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者の3例に2例近い61%が退院から約半年ほど(中央値5ヵ月)の時点で複数臓器の異常を呈していました1,2)。英国のCOVID-19入院患者259例が参加したこれまでで最も詳しく調べたCOVID-19罹患後症状(long COVID)MRI画像診断試験の結果です。一般から募った感染していない対照群52例で複数臓器のMRI異常所見を呈していたのは3例に1例ほど(27%)のみでした。COVID-19入院患者の肺のMRI所見異常の割合は飛び抜けて高く、対照群に比べて約14倍も多く認められました。また、脳や腎臓の異常もCOVID-19入院患者により認められ、対照群に比べてそれぞれ約3倍と2倍多く生じていました。先立つ試験で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は心臓を損傷すると示唆されていますが、今回の試験で心臓異常が認められたCOVID-19入院患者と対照群の割合はどちらも5例に1例ほど(それぞれ21%と24%)で似たりよったりでした。肝臓の異常の割合も心臓と同様に大差ありませんでした。COVID-19後の心臓の炎症やそのほかの不調で病院に来る患者は確かにいます。心臓はCOVID-19で損傷こそすれ比較的早く回復するので今回の試験では心臓のMRI異常所見の検出が対照群とほぼ同じだったのかもしれません。あるいは、COVID-19と心臓の不調の関連はそもそもそれほど密接ではないのかもしれません。または、長引く心臓の不調を訴えるCOVID-19患者はMRIでは把握できないこともある不整脈などの病気やほかの臓器の不調を患っている可能性もあります。MRI所見は臓器の調子の目安になるとはいえ感染後の患者の症状をすっかり把握できるわけではありません。今回の試験で肝臓のMRI異常所見と胃腸や腹部の症状の関連は認められませんでした。腎臓や脳のMRI所見も同様で、患者の訴える症状と関連しませんでした。一方、肺のMRI異常所見は別で、咳や胸の苦しさと関連しました。また、心身がすこぶるすぐれない患者には複数臓器のMRI異常所見がより多く認められました。今回の試験のMRI検査で認められた臓器異常がCOVID-19に確かに起因していると判断することはできません。というのもCOVID-19前と後のMRI所見の比較なしでは感染前からすでに存在していた異常を識別することは不可能だからです。そのような結果解釈の注意点はさておき、COVID-19感染後の不調には専門分野の垣根を超えた包括的な手当てが必要なことを今回の結果は示しています。COVID-19で複数の臓器が支障を来す恐れがあるとの注意を持って治療に臨む必要があると米国・スタンフォード大学医学所属の著者Linda Geng氏は言っています3)。Geng氏らは試験のデータ集めを続けており、さらに240ほどのMRIスキャン結果が追加される予定です。COVID-19またはほかの病気のせいでさらなる入院治療が必要になる患者をMRI所見から予想できるかどうかも今後調べられます。もし予想できるなら、COVID-19が重症だった患者をMRI画像診断することで治療が改善し、さらには回復を早めることすら可能になるかもしれません。参考1)The C-MORE/PHOSP-COVID Collaborative Group. Lancet Respir Med. 2023 Sep 22. [Epub ahead of print]2)Longer-term organ abnormalities confirmed in some post-hospitalised COVID patients / University of Oxford3)Months after hospitalization for COVID-19, MRIs reveal multiorgan damage / Science

検索結果 合計:4332件 表示位置:781 - 800