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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】クレナフィン爪外用液10% 7.12gの査定【斬らレセプト シーズン3】不眠症の爪白癬患者 薬剤師は何を見逃したか?【スーパー服薬指導(1)】「デルマクイック爪白癬」は技術や検査時間も不問で誤診も防ぐ

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第64回 気候変動と感染症 ― 私たちが備えるべき新しいリアル

気候変動が地球規模で進むなか、感染症の流行パターンが確実に変わりつつあります。今回ご紹介するNature Medicine誌の論文は、気候変動が感染症に与える影響を、蚊やダニが媒介する「ベクター媒介性」、インフルエンザやRSウイルスなどの「直接伝播性(呼吸器感染症)」、コレラのような「環境媒介性」という3つの病原体グループを軸に整理した最新の総説です1)。本稿では、論文の要点をご紹介したうえで、私たち日本の医療者にとって何を意味するのかを一緒に考えてみたいと思います。なぜ気候は感染症を動かすのか気候変動が感染症に影響を与える経路は、病原体ごとに少しずつ異なります。蚊やダニといったベクターを介する病気では、気温や湿度がベクターの寿命、繁殖、媒介効率を直接左右します。たとえばデングを媒介するネッタイシマカは、気温の上昇に伴い発育速度や吸血頻度が高まります。過去の研究では、温暖化がすでに南北アメリカ・アジアのデング流行を拡大させており、2050年までにデング発生がさらに49~76%増加する可能性が示されています。一方、インフルエンザやRSウイルスのような呼吸器感染症では、湿度と温度がウイルスの生存性、気道粘膜のバリア機能、さらには宿主の免疫応答までを変化させると考えられています。また、コレラなど水系の感染症では、豪雨や洪水が井戸を汚染し、逆に干ばつ時には限られた水源に病原体が濃縮されることで、いずれの極端な気象でも流行リスクを高めうると考えられています。さらに重要なのは、これらの関係が直線的ではなく、ある閾値を超えると急に変化する「非線形」なものであるという点です。「異常気象」がトリガーになる時代近年とくに注目されているのが、気候の平均値の変化だけでなく、極端な気象による急性の影響です。論文では、2022年のパキスタン大洪水後にマラリア症例が前年比4倍に急増したこと、2024年には全世界のデング報告例がエルニーニョと温暖化の相乗効果により1,400万例を超えた(前年は700万例)ことなどが具体例として示されています。気候変動は、長期的な気温上昇だけでなく、突発的なショックを通じて感染症の地図を書き換えているのです。もう一つ見落とせない論点が、人口動態との相関です。世界的に進む高齢化により、コロナウイルスなど高齢者で重症化しやすい感染症の負担は今後さらに大きくなる可能性がある一方、小児が罹る感染症の社会的負担は相対的に縮小する地域もあります。気候変動の影響は決して一律ではなく、地域・病原体・人口構成によって増えたり減ったりする、不均一な現象だ、という著者らの指摘は、政策設計のうえで非常に重要だと感じます。日本にとっての示唆それでは、日本にとってこの研究は何を意味するのでしょうか。日本ではすでにヒトスジシマカが広く生息し、2014年には代々木公園を起点とする国内デング流行を経験しています。記録的猛暑、線状降水帯、巨大台風が常態化するなか、海外からウイルスが持ち込まれれば、これまでとは異なる規模や時期の流行が起こりうるシナリオは、決して絵空事ではありません。世界に先んじて進む高齢化は、呼吸器感染症の重症化負担をさらに重くする可能性もあります。著者らは、廃水サーベイランス、機械学習を用いた早期警戒システム、気候情報を組み込んだ予防的介入(ワクチン展開など)の重要性を訴えています。日本でも、気象データを公衆衛生対策と接続する仕組みづくり、そして急変する状況に対応できる柔軟な医療体制の確保が、これからの大切な課題と言えそうです。「予想外を予想せよ(expect the unexpected)」という著者らの言葉は、私たち日本の医療者にこそ深く響くメッセージではないでしょうか。 1) Baker RE, et al. Climate change and infectious diseases. Nature Medicine. 2026;32:1634-1645.

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六病位~乾姜と附子~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第7回

六病位~乾姜と附子~これまで、感冒初期に使う葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)、少し時間が経ってから使う小柴胡湯(しょうさいことう)を解説してきました。そろそろ感冒初期、少し時間が経った状態に相当する用語を勉強する頃合いかと思います。漢方の世界では、急性熱性疾患のステージング、進行度を六病位といって、6つに分類します。六病位の順番は漢方の流派によっても若干異なるのですが、大塚流の場合は、太陽病(たいようびょう)、少陽病(しょうようびょう)、陽明病(ようめいびょう)、太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の順番で病気が進んでいきます(図1)。どれくらい体の抵抗力があるかによっても、この進み具合は変わります。虚証が強く出ている方、たとえば高齢で痩せた患者は、太陽病、少陽病、陽明病をすっ飛ばして、いきなり太陰病や少陰病から始まることもあります。今回は、この六病位を絵的なイメージに落とし込んで、漢方の世界観を皆さんと共有することを目標にします。図1 六病位画像を拡大する太陽病まず、感冒初期に相当する太陽病です。便宜上、ここではウイルス感染症ということにしておきますが、最初にウイルスが外から体表へと侵入しようとしてきます。それによって、空気に触れているところから症状が起こっているというイメージで捉えてください。具体的には、悪寒とか頭痛、もう少し体の奥だと咽頭痛ですね。こういった体表部、空気に触れやすいところに症状が出てくるわけです。それに対して、漢方医学では発汗とともにウイルスを追い出すイメージで治療します。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯などは、そういったコンセプトで用いられます(図2)。図2 太陽病画像を拡大する少陽病次に、感冒の5~6日目以降に相当する少陽病です。ウイルスが体表から体のもう少し奥へと侵入して、横隔膜のあたりまで到達するイメージを思い描いてください。胃とか肺のあたりです。そうすると、吐き気が出たり、食欲がなくなったり、咳が出たりしますよね。時間経過で体が消耗してもいるので、倦怠感もあります。この深さまでウイルスが侵入してくると、汗とともにウイルスを追い出す治療が効かなくなってくるため、今度は横隔膜周囲に生じている炎症を緩和するイメージで治療します。東洋のステロイドこと柴胡剤がここで活躍してくるわけです。胸脇苦満(きょうきょうくまん)というキーワードを思い出していただければと思います(図3)。図3 少陽病画像を拡大する陽明病さらに病気が長引いてしまうと、体のさらに深部に熱がたまってきて、たとえば、大腸のあたりも調子を崩してきて、便秘になる方がいます。この状態を陽明病といいます。少しイメージが難しいのですが、急性期病院で肺炎などの急性期疾患がうまく治った患者さんが、転院調整中にやたら便秘を起こしたり、せん妄を起こしたりしている「あの状態」をイメージしていただけるとしっくり来るかもしれません。このような状態を治すには、西洋医学だとセンノシドや酸化マグネシウムを使うことが多いと思うのですが、漢方の場合もかなり似ていて、承気湯(じょうきとう)というグループの漢方薬を使うことがあります。たとえば、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)は、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)、芒硝(ぼうしょう)からなる漢方薬です。大黄がセンノシドを含んでいて、芒硝が硫酸ナトリウムを含みます。要は浸透圧性下剤ですね。そのため、誤解を恐れずに言えば、センノシドと酸化マグネシウムを同時に使用しているようなイメージの漢方薬ということになります(図4)。あとは、葛根湯を説明した時の条文クイズで簡単に触れた白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)も用いられます。喉が渇いてしょうがない時に使う薬ですね。これも、体の深部を冷やす漢方薬なので、陽明病の薬に分類できます。図4 陽明病画像を拡大する太陰病太陽病、少陽病、陽明病をまとめて陽証と呼びますが、これらは体の抵抗力が病気の勢いを上回っている状態です。要は炎症という防御反応がちゃんと機能している状態です。逆に、もともと抵抗力が少ない方、抵抗力があったけれど長い闘病生活でだんだんと病気に負けていった方などの場合は、いわゆる陰証という状態に入っていきます(図5)。図5 陽証と陰証画像を拡大するたとえば、感染症診療に精通されている先生方は、敗血症では高熱の時よりも低体温になっている時の方が危ないということを経験的にご存じかと思うのですが、まさしくその低体温に相当する状況になっていくわけです。その陰証の最初のフェーズが太陰病です。病気に屈すると、まずは腸が冷えてきて下痢をします。この場合の治療では、単純に腸を温めれば良いのです。これまで、お腹に優しい漢方薬をいくつか紹介してきました。桂枝湯の延長線上にある桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や小建中湯(しょうけんちゅうとう)などは、太陰病の治療にうってつけです(図6)。図6 太陰病画像を拡大する少陰病・厥陰病問題はそこから先で、さらに病状が進むと腸だけでなく全身が冷えてきます。体がとにかく冷たくて、脈をとっても弱々しい。この状態を少陰病と呼んでいて、さらに進んで危篤状態になると厥陰病といいます。とにかく体全体を温めないとまずいということで、こういう状況下では乾姜(かんきょう)や附子(ぶし)を含む漢方薬を使うことが多いです。乾姜というのは、ショウガを加熱したもので、成分も加熱によってギンゲロールからショウガオールに変わっています。あと、附子はトリカブトの根っこの部分です。この2種類の生薬はとにかく体を温める力が強いのです(図7)。たとえば、人参湯や大建中湯(だいけんちゅうとう)には乾姜が入っていますし、真武湯(しんぶとう)には附子が入っています。いろいろと漢方薬の名前を出してしまいましたが、ここでは乾姜と附子は体を温める力が強いことだけ覚えていただければ十分です。少陰病の治療薬は、乾姜や附子に、人参(にんじん)のような胃腸に優しい生薬が加わってできているものが多いという話でした。図7 少陰病・厥陰病画像を拡大するまとめ最後に少しだけ補足します。実証・虚証の話と、陽証・陰証の話がごちゃまぜになって混乱する方もいるかと思うので、念を押しておきます。実証・虚証は、患者さんの病気に対する抵抗力です。陽証・陰証は、その結果、病気が今どこのstageにあるかということです。たとえば、ご高齢で痩せている方は虚証ですが、その方が軽いかぜをひいて頭痛や微熱が出ていれば太陽病で陽証ですよね。逆に、その方が敗血症性ショックになっていたら厥陰病で陰証です(図8)。もちろん、実証の患者は陽証に留まりやすく、虚証の患者は陰証に進みやすいため、両軸にはちゃんと結びつきがあるのですが、虚実と陰陽は別々に考えてほしいと思います。図8 虚実と陰陽画像を拡大するとりあえず、今回は皆さんに太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病という六病位を覚えてもらえると嬉しいです。このシリーズは、ここまでで一区切りのため、このタイミングで復習することをお勧めします。

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日本のがん死亡率低下も、大腸がん・膵がん・子宮頸がんは依然高水準

 日本では全がんの年齢調整死亡率(ASR)が着実に低下している一方で、大腸がん、膵がん、子宮頸がんなど一部のがん種では依然として国際的に高い死亡率が続いていることが明らかになった。胃がんと肝がんでは大幅な改善が認められたものの、予防や検診による死亡率低下が期待されるがん種において十分な成果が得られていない実態が浮き彫りとなった。国立がん研究センターの片野田 耕太氏らによる本研究の結果はJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年3月5日号に掲載された。 研究では、国際がん研究機関(IARC)のGlobal Cancer Observatoryデータベースおよび各国の人口動態統計を用い、日本、韓国、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの高所得国における1980~2024年のがん死亡率の推移を比較した。解析対象は全がんに加え、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がんだった。肝がん・胃がんは日本の成功事例 歴史的に日本で死亡率が高かった胃がんと肝がんについては、長期的に大幅な減少がみられ、欧米諸国との国際格差は大幅に縮小した。とくに女性の肝がん死亡率については、日本が欧米諸国を下回る水準にまで低下した。著者らはこの背景として、B型・C型肝炎ウイルス検査の全国的な実施、妊婦へのHBs抗原検査、さらには直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及といった一連の肝炎対策が有効に機能したと考えられ、WHOが掲げる2030年までのC型肝炎排除目標に向け、国際的なモデルケースになり得る、としている。 一方、胃がんも日本における死亡率は低下し続けているものの、韓国の減少速度には及ばなかった。日本ではヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用拡大など1次予防が進む一方、韓国では内視鏡検診を中心とした2次予防が強力に推進されている。また、韓国では国家健康保険制度により検診データが一元管理されているのに対し、日本では職域検診の精度管理やデータ統合に課題が残ることが示唆された。大腸がん・膵がん・子宮頸がんは深刻な高水準 大腸がん死亡率は1980年代には欧米のほうが高かったが、その後減少が進んだ。これに対し日本では明確な低下傾向がみられず、近年では比較対象国の中でも高い水準となっている。韓国も近年減少傾向に転じており、日本との差が広がっている。 膵がんは、日本において男女とも死亡率の上昇が続いており、国際的にみても高い水準が際立っている。早期発見が困難で予後不良な疾患であるが、喫煙や2型糖尿病が重要なリスク因子であり、禁煙や糖尿病管理といった1次予防の重要性が改めて示された。 子宮頸がんにおいても、日本の相対的な立ち位置は悪化した。欧米諸国や韓国では死亡率が大幅に減少した一方、日本では高止まりが続いている。HPVワクチンの積極的勧奨の中止と再開の経緯もあって接種率はいまだ不十分であり、ワクチン接種と検診の双方を速やかに強化する必要性が示された。乳がん・肺がんでも改善が緩やか 女性の乳がん死亡率は欧米では着実に低下している一方、日本では増加傾向が続き、差は縮小している。男性の肺がんでも欧米に比べて死亡率低下が緩やかであり、近年では日本の死亡率が欧米を上回る状況となっている。一部のがんでは予防を強化する必要性 本研究により、日本の全がんのASRは他国と同様に引き続き低下していることが示された。とくに、かつて日本の死亡率の高さの要因となっていた胃がん、肝がんで持続的な低下がみられ、欧米諸国との差は縮小し、女性の肝がんでみられるように一部では逆転している。一方で、日本は大腸がん、膵がん、および子宮頸がんにおいて依然として最も高い死亡率を示している。女性の乳がんおよび男性の肺がんでは、日本における低下の遅れ、あるいは継続的な増加により、死亡率が欧米諸国の水準に近づいている。これらのがんの多くでは、1次予防および2次予防の方法が確立されており、胃がん、肝がんで達成された死亡率低下を再現するために、予防対策を強化する必要性が示唆される。

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第315回 国内の麻疹流行、2025年と今年で決定的に違うこと

INDEX止まらない麻疹感染、流行地点はどこか推定感染地域に変化ワクチン接種を粘り強く唱えるのみ止まらない麻疹感染、流行地点はどこか麻疹の猛威が止まらない。2026年20週(5月11~17日)までの国内の麻疹患者報告累計(速報値)1)は498例。2025年52週(12月22~28日)までが265例だったので、あまり口にはしたくないが、今年は昨年の2倍以上の患者報告数になることは確実な情勢だ。現時点までの感染報告を見ていると、昨年と比べて特徴的なことがある。昨年の患者報告の地域分布を見ると、首都圏の1都3県からの報告割合は42%だったが、今年は途中経過とはいえ、その割合は72%。ちなみに首都圏外で現時点までの患者報告が最多は鹿児島県の34例となっている。愛知県の26例や大阪府の15例を超える数字にやや驚くが、これは3月に鹿児島市内の高校の卒業式で13例もの集団感染が発生したためである。そして、現在までに最も患者報告が多いのは、やはり東京都の244例で20週までの患者の過半数を占める。その意味で東京都の感染動向は、現在の日本の麻疹流行の縮図であるとも言えることから、これより東京都の詳細な感染動向を見ていきたい。推定感染地域に変化まず今までのところ、最も患者報告が多かったのは17週(4月20~26日)の53例で、同週を境にピークアウトしているようにも見える。ただし、麻疹は基本再生産数が高いため、収束しつつあるとはとても言えないのが実際である。10歳区切りの患者報告では20~29歳の89例がボリュームゾーン。これに次ぐのが30~39歳の54例、10~19歳の51例。これ以外に40代、50代でそれぞれ10例以上の患者報告があり、かつてのような「麻疹は子どもの病気」のイメージは、もはや過去のものとなっている。憂慮すべきは推定感染地域のデータである。2026年20週までの推定感染地域は国内が77.0%と圧倒的多数を占める。不明が17.2%あるものの、国外はわずか3.7%に過ぎない。2025年は国内が64.7%、国外が32.4%であり、仮に2026年の不明をすべて国外に分類したとしても、現在は国内感染の割合が高くなっていることになる。ちなみに、一部の症例の検査により判明している流行ウイルスの遺伝子型は、世界の流行主流となっているアフリカや中東が起源のB3型と南アジアや東南アジアに広く定着しているD8型である。昨年来から続いている麻疹流行のきっかけは、おそらく輸入例だと考えられるが、推定国内感染率が上昇傾向を示している今の状態は極めて不気味だ。ご存じのように、日本は世界保健機関(WHO)が定義する「適切なサーベイランス制度の下、土着性の感染伝播が36ヵ月以上継続して確認されないこと」を満たし、2015年に麻疹排除国の認定を受けて10年以上この状態を維持しつづけてきた。現時点で土着性の判断は極めて難しいと考えられるが、麻疹流行が2年目に入った現在は外形上、土着性が疑われる段階に差し掛かっているとの見方もできなくはない。ちなみに2026年1月にイギリス、スペイン、オーストリアなどが麻疹の排除国認定を喪失したことは記憶に新しい。この排除認定喪失には実際には前段階があり、12ヵ月以上の持続伝播状態を「地域流行の再成立」と位置付ける。今の日本はこの段階か否かという非常に微妙な地点にいる。ワクチン接種を粘り強く唱えるのみさて、前述の東京都の麻疹流行だが、20代、30代患者のワクチン接種歴は過半数が「なし」あるいは「不明」で占められる。もはや麻疹対策とは2回のワクチン接種の一択と言ってもいいことは医療者の中では共通認識だろうが、このことはこの東京都のデータからも明らかである。この件に関連してSNS上では、以前本連載(第310回)で取り上げた新宿区内の小学校での集団感染事例において、2回接種済み者でのブレークスルー感染が多かったことを挙げて、「ワクチンは無効」であるかのような言説も目に付く。しかし、クイーンズランド大学のグループがワクチン2回接種後の免疫獲得失敗症例からの2次感染に関する14研究を使ったシステマティックレビュー2)によると、ワクチン2回接種完了者の実行再生産数は0.063。麻疹の基本再生産数の12~18に比べると無視できると言ってよいほどの低値である。この点からもワクチンは有効と言える。もっとも、われわれ報道関係者も医療者も今は言葉でワクチン接種を粘り強く呼び掛けるしかないという点では、やや手詰まり感はある。少なくともいわゆる反ワクチンと言われる人ではなくとも、ワクチン接種は煩わしいものであり、身近で危険を感じるか、手軽に接種できる機会と経済的なインセンティブ(いわゆる無料接種)でもなければ、ワクチン接種に行こうとはならないのが現実だ。その意味では、東京都が5月18日からスタートさせた「麻疹ワクチンの緊急接種事業」は目を引く。これは72時間以内の麻疹患者と接触し、麻疹罹患歴がなく、さらに麻疹ワクチンの接種歴なし/不明、あるいは1回のみの都民に対し、都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料のワクチン接種を行うものだ。私個人の本音を言えば、何らかの形でもう少し対象を広げてほしいが、予算措置が必要な以上やむを得ない。一方で、東京都のみにとどめてしまうのは効果が限定的である。前述のように現時点の麻疹流行が1都3県に集中している現実を考えれば、埼玉、神奈川、千葉の3県でも必要なことだろう。とくに東京都の場合、昼間の人口が336万人も増加し、その9割以上がこの3県からの流入であることを考えれば、なおのことである。もちろん予算のことはあるが、この3県のトップには英断を期待したい。参考1)国立健康危機管理研究機構:感染症発生動向調査週報(IDWR)2)Tranter I, et al. Emerg Infect Dis. 2024;30:1747-1754.

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爪白癬への外用抗真菌薬、反応不良と関連する因子は/岩手医科大ほか

 外用抗真菌薬は爪白癬に対して広く用いられているが、患者内相関を考慮し、治療反応に関する病変レベルの予測因子が定量化されたデータはほとんどない。岩手医科大学の井上 剛氏らは、爪白癬患者の治療反応とその予測因子について、一般化推定方程式(GEE)を用いた解析を実施した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2026年5月17日号への報告より。 本研究では、2017~21年にルリコナゾール爪外用液5%またはエフィナコナゾール爪外用液10%で治療された爪白癬患者を後ろ向きに検討し、66例について計80病変を特定した。治療効果は、患者IDによりクラスター化し、交換可能な作業相関構造とロバスト(サンドイッチ)標準誤差を適用した病変レベルのGEEを用いて評価した。改善率(連続変数)は線形GEE、完全治癒(あり/なし)はロジスティックGEEを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・母趾の爪の病変は、一貫して治療反応不良と関連しており、低い改善率(β=-0.461、標準誤差[SE]=0.145、p=0.0015)、低い完全治癒のオッズ(オッズ比[OR]:0.07、95%信頼区間[CI]:0.01~0.37、p=0.002)を示した。・ベースラインの爪に厚みがあるほど、完全治癒のオッズが低かったが(OR:0.17、95%CI:0.07~0.42、p<0.001)、改善率と有意な関連はみられなかった(β=-0.089、SE=0.058、p=0.125)。・ルリコナゾール爪外用液5%の使用は、エフィナコナゾール爪外用液10%と比較して、低い改善率(β=-0.310、SE=0.154、p=0.044)および低い完全治癒のオッズ(OR:0.07、95%CI:0.01~0.60、p=0.015)と関連していた。 著者らは、後ろ向きの非無作為化研究であるという本研究の限界について挙げたうえで、「母趾の爪の病変は、局所療法への反応不良の予測因子であることが示され、爪の厚みが増すととくに完全治癒が妨げられる可能性が示唆された」とまとめている。

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難治性肺MAC症へのベダキリン、培養陰性化を改善(TMC207NTM3002)/ATS2026

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とする肺MAC症では、多剤併用療法を6ヵ月以上実施しても細菌学的効果が不十分な患者を難治例としている。難治性肺MAC症の治療選択肢は限られている。ジアリルキノリン系抗菌薬であるベダキリンは、多剤耐性結核に対する併用療法の一部として用いられており、MACに対してin vivoでの活性も報告されている。そこで、難治性肺MAC症に対するベダキリンの有効性および安全性を検討することを目的として、国際共同第II/III相無作為化比較試験「TMC207NTM3002試験」が実施された。その結果、24週時点の喀痰培養陰性化率は、対照群と比較してベダキリン群で有意に高かった。米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、森本 耕三氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器センター)が本結果を発表した。試験デザイン:国際共同無作為化非盲検第II/III相試験(日本、韓国、台湾で実施)対象:肺MAC症に対する標準治療を6ヵ月以上実施しても培養陽性が持続する成人肺MAC症患者129例試験群(ベダキリン群):ベダキリン+クラリスロマイシン+エタンブトールを48週間 65例対照群:リファンピシンまたはリファブチン+クラリスロマイシン+エタンブトールを60週間(24週時で培養陰性化未達成の患者はベダキリンにクロスオーバー可) 64例評価項目:[主要評価項目]24週時点の喀痰培養陰性化率(25日以上間隔をあけた喀痰培養で3回連続して陰性)[副次評価項目]喀痰培養陰性化までの期間(陰性化[3回連続の陰性]の時点は1回目の陰性が認められた時点と定義)、薬物動態、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でおおむね均衡がとれていた。年齢中央値はベダキリン群67歳(範囲:44~79)、対照群62歳(同:32~79)、女性の割合はそれぞれ80.0%、84.4%であった。日本からの登録はそれぞれ90.8%、92.2%であった。・ベースラインの原因菌種は、ベダキリン群ではM. avium 83.1%、M. intracellulare 15.4%、M. aviumおよびM. intracellulare 1.5%で、対照群ではそれぞれ70.3%、28.1%、1.6%であった。・24週時点の喀痰培養陰性化率は、ベダキリン群24.6%、対照群4.7%であった。群間差は19.7%ポイントであり、ベダキリン群が有意に高かった(95%信頼区間[CI]:8.3~31.2、p=0.002)。・24週までの喀痰培養陰性化までの期間についても、ベダキリン群は対照群より短かった(p<0.001、層別log-rank検定)。喀痰培養陰性化例における陰性化までの期間中央値は、ベダキリン群43日、対照群66.5日であった。・薬物動態解析において、ベダキリン群は対照群と比較してクラリスロマイシン濃度が高かった。・24週までの試験治療下における有害事象(TEAE)は、ベダキリン群93.8%、対照群76.6%に発現した。治療関連有害事象はそれぞれ32.3%、18.8%に発現した。・ベダキリン、リファンピシンまたはリファブチンの中止に至ったTEAEは、ベダキリン群3.1%、対照群7.8%にみられた。 なお、本結果は24週時点の主要な解析結果であり、24週以降の解析は現在進行中である。

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複雑性尿路感染症と腎盂腎炎、nacubactam併用で有効かつ安全な治療法は/Lancet

 グラム陰性菌による複雑性尿路感染症(cUTI)または急性単純性腎盂腎炎(AP)患者において、イミペネム/シラスタチンとの比較により、セフェピム/nacubactamおよびアズトレオナム/nacubactam併用投与の有効性および安全性が確認された。札幌医科大学の高橋 聡氏らが、「Integral-1試験」の結果を報告した。nacubactam(OP0595)は、新たに開発されたジアザビシクロオクタン系β-ラクタマーゼ阻害薬で、セフェピムまたはアズトレオナムとの併用投与により、カルバペネム耐性腸内細菌細菌および第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌細菌(ESBL産生菌を含む)に対する強力な活性を示すことが確認されていた。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。nacubactamとセフェピムまたはアズトレオナム併用投与の有効性と安全性をイミペネム/シラスタチンと比較 Integral-1試験は、ブルガリア、中国、チェコ共和国、エストニア、ジョージア、日本、ラトビア、リトアニア、スロバキアの79施設において実施された国際共同第III相無作為化二重盲検実薬対照試験。18歳以上、体重が140kg以下で、少なくとも5日間の注射用抗菌薬による治療が必要とされているcUTIまたはAP患者を対象とした。 研究グループは、対象患者をセフェピム(2g)/nacubactam(1g)群、アズトレオナム(2g)/nacubactam(1g)群、またはイミペネム(1g)/シラスタチン(1g)群に、診断(cUTI、AP)および地理的地域(日本、中国、その他)を層別因子として2対1対1の割合で無作為に割り付け、8時間(±1時間)ごとに60分間(±15分間)かけて、5~10日間、必要に応じて最長14日間、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、微生物学的修正intention-to-treat(mITT)集団(無作為化され試験薬の投与を受け、かつベースラインで適格病原体がイミペネムおよびメロペネムに感受性のあるすべての患者)における、投与終了7日後の治癒判定時点での総合臨床効果とした。総合臨床効果は、臨床的成功(治験責任医師評価による臨床効果が治癒と判定)、および微生物学的成功(試験実施施設と中央検査室での検査結果に基づく細菌学的効果が消失と判定)の達成とした。また、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者において安全性を評価した。 主要エンドポイントの非劣性マージンは、群間差の95%信頼区間(CI)の下限が-15%ポイント、優越性マージンは0%ポイントと事前に規定された。イミペネム/シラスタチンに対するセフェピム/nacubactam併用群の優越性を確認 2023年5月22日~2024年11月26日に、614例が無作為化され、うち微生物学的mITT集団は431例(セフェピム/nacubactam群214例、アズトレオナム/nacubactam群112例、イミペネム/シラスタチン群105例)であった(男性228例[53%]、女性203例[47%])。 主要エンドポイントを達成した患者の割合は、セフェピム/nacubactam群で82%(176/214例)、アズトレオナム/nacubactam群で72%(81/112例)、イミペネム/シラスタチン群で61%(64/105例)であった。イミペネム/シラスタチン群との差は、セフェピム/nacubactam群で21.3%ポイント(95%CI:10.9~32.0)(非劣性かつ優越性)、アズトレオナム/nacubactam群で11.4%ポイント(95%CI:-1.2~23.7)(非劣性)であった。 試験治療下で発現した有害事象は、セフェピム/nacubactam群で306例中100例(33%)、アズトレオナム/nacubactam群で152例中45例(30%)、イミペネム/シラスタチン群で150例中65例(43%)に報告された。治療に関連する死亡は認められなかった。

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夜間の食事でストレスによる腸の不調が悪化

 夜遅い時間帯の食事は、ストレスによる腸の不調を悪化させる可能性があるようだ。午後9時以降の食事量が多い人は、便秘や下痢のリスクが高くなる可能性が、新たな研究で示された。米セントメアリーズ・アンド・セントクレアズ病院のHarika Dadigiri氏らによるこの研究結果は、消化器疾患週間会議(DDW 2026、5月2〜5日、シカゴ)で発表された。 Dadigiri氏は、「何を食べるかだけでなく、いつ食べるかも重要だ。また、すでにストレスを抱えているときには、食べるタイミングが腸内環境にとって『二重の負担』となる可能性がある」とニュースリリースで述べている。 この研究では、米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者1万1,000人以上のデータを分析して、慢性ストレス、夜間の食事摂取、および腸の機能の関連を検討した。その結果、コレステロール値、血圧、BMIなどに基づく慢性的な生理学的ストレスが高い人が、1日の摂取カロリーの25%以上を午後9時以降に摂取した場合、ストレスレベルが低く夜遅くに食事をしない人に比べて、便秘や下痢になる可能性が1.7倍高いことが示された。 さらに、研究グループは、腸内環境に関する研究(American Gut Project)に参加した4,000人以上のデータも分析した。その結果、ストレスレベルが高く、夜遅くに食事する習慣がある人は、腸の不調を訴える可能性が2.5倍高いことが明らかになった。また、腸に問題を抱えている人は、腸内細菌の多様性が著しく低かった。これらの結果は、食事のタイミングがストレスによる消化器系の健康への影響を増幅させる可能性があることを示唆していると研究グループは述べている。 研究グループは、本研究結果は、間食を完全にやめるべきだということではなく、自分へのご褒美として何か食べるなら、夕方の早い時間帯にすることを勧めるものだとの見方を示している。Dadigiri氏は、「私はアイスクリーム警察ではない。誰でもアイスクリームを食べてもよいが、食べるなら日中の早い時間帯にするべきだろう。規則正しい食事を維持するなど、小さな習慣を継続することで、食生活の規則性が高まり、長期的には消化機能をサポートするのに役立つかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第317回 夏到来!今年もクマ被害とダニが媒介するSFTS増加の予感

東京都の奥多摩でツキノワグマに襲われる事件頻発こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。本連載で、ゴールデンウィークの福島・西大巓(にしだいてん)登山で左膝の靭帯を損傷したことを書いたところ、知人から「そもそもクマは大丈夫だったの?」と聞かれました。福島、山形の県境の山にはツキノワグマも多く生息しているので、そうした心配をしてくれたのでしょう。幸いクマの足跡はいくつか見ましたが、遭遇することはありませんでした。とは言え、この日は、白布峠からの登山者は我々のパーティーだけだったこともあり、クマ鈴を付け、クマ笛を頻繁に鳴らすとともに、「ホー、ホー」と時折大声を上げながらの登山になりました。そうしたクマ対策に神経を使った結果、雪渓の安全性に対する注意力が鈍り、踏み抜いてしまったのかもしれません。クマ恐るべしです。そんな反省をしていたところ、先週、東京都の奥多摩で相次いでツキノワグマに襲われる事件が起こりました。5月17日、奥多摩駅から雲取山に連なる人気縦走路・石尾根の途中、三ノ木戸山付近でロシア国籍の男性登山者がクマに襲われました(命に別状なし)。さらに2日後の19日には、東京都と埼玉県の県境、蕎麦粒山近くの仙元峠付近で、クマに襲われたとみられる上半身がない遺体が見つかりました。身元はまだ不明とのことです。私自身、三ノ木戸山も蕎麦粒山も何度も行ったことのある山だけに、さすがに恐ろしくなりました(15年ほど前、三ノ木戸山近辺では木に登っている子グマを見たことがあります)。クマ外傷患者の受傷部位で一番多かったのは顔面で90%、次いで頭部60%クマによる人身被害については、昨年の本連載「第279回 『クマ外傷』の医学書が教えてくれるクマ被害の実態、『顔面、上肢の損傷が多く、挿管と出血性ショックに対する輸血が必要なケースも。全例で予防的抗菌薬を使用するも21.1%で創部感染症が発生』」で詳しく書きました。書籍『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(編著・中永 士師明、新興医学出版社)によれば、クマ外傷患者20人の受傷部位で多かったのは、顔面90%(顔面骨折45%、眼球破裂15%)、次いで頭部60%(頭蓋骨骨折5%、硬膜下血腫5%)だったそうです。こうした知見が集積され、報道もされた結果でしょう、万が一襲われそうになった時の防御姿勢についてマスコミの多くはおおむね次のように報じています。「フードや帽子等で頭部を保護しつつ、うつ伏せになって顔や胸、腹部を守るとともに、手指を組み合わせて後頭部と首の後ろをガードする」。とにかく、「襲われたら頭と顔を守る」のが鉄則というわけです。今年は春から夏への移行が早く、クマの出没も過去最悪のペースで増えているようです。政府も「今年はヤバい」と考えたのか、5月23日付の新聞各紙に注意喚起のための全面広告を掲載、「山菜採りに行くみなさん。クマにご注意ください」というキャッチコピーとともに、「クマに出会わないための6ヶ条」の周知に務めています1)。同日に放送されたNHKの「サタデーウオッチ9」では、この政府の注意喚起にあわせて「緊急報告『クマ出没列島』」と題する特集レポートを放送、都市部での出没が相次ぐ中、東京都についても多摩川沿いにクマの生息範囲が広がる可能性があると報じていました。クマが生息する地域や、出没する可能性のある地域にある医療機関は、クマ外傷の患者が運ばれてきた時の対応(創処置、骨折対応、感染対策等)や必要な医薬品(抗菌薬等)について、改めて確認しておくべきだと思われます。今年もすでに死亡例が出ている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ということで、クマ出没やクマ被害も増えていますが、今年はマダニが媒介するあの感染症も立ち上がりが早く、昨年並みの増加を予感させます。感染症と言えば、ハンタウイルスやエボラ出血熱、そしてはしかが話題となっていますが、ごく身近で発生し、今年もすでに死亡例が出ているダニ媒介感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」も頭に入れておきたいところです。以下、最近の報道からいくつかピックアップしてみます。5月12日付/神奈川新聞「相模原市は11日、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』に同市緑区在住の80代女性が感染したと発表した。神奈川県内では昨年7月に松田町在住の女性の感染が確認されており、今年に入ってからは初めて。市保健所によると、女性は4月29日に発熱や関節痛などの症状があり、30日に市内の医療機関を受診。5月9日にSFTSの陽性が確定した。女性は現在も入院中だが、軽快傾向にあるという。女性の行動歴を調べた結果、自宅周辺で畑仕事などをした際にマダニに刺されて感染したとみられ、市保健所は市内を感染地域と推定」。5月12日付/NHKニュース「熊本県内では先月、主にマダニが媒介する感染症に感染した患者が死亡しました。患者の治療にあたる医師は畑や草むらに入る場合などはマダニに刺されないよう対策を徹底するよう呼びかけています。先月、県内ではことし初めて、天草市の90代の女性が、主にマダニが媒介する感染症、SFTS=『重症熱性血小板減少症候群』で亡くなりました。これまでにも県内ではSFTSの感染が相次いで確認されていて、去年は11件、ことしに入ってからも今月10日までに2件確認されています」。5月13日付/産経新聞「奈良県は13日、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群』(SFTS)に中和保健所管内の60代の男性が感染したと発表した。男性は意識障害を起こして入院中という。感染症法上では4類に位置付けられ、有効な治療法がないため、県はマダニにかまれた際は医療機関での受診を勧めている」。5月14日付/NHKニュース「高松市保健所は、市内の80代の男性が主にマダニが媒介する感染症、SFTS=重症熱性血小板減少症候群に感染し、14日死亡したと発表しました。保健所は、山や草むらで活動する場合は、肌の露出を控え、マダニに刺されないよう注意を呼びかけています。高松市保健所によりますと、今月1日、市内の80代の男性が発熱や全身のけん怠感などの症状を訴えて市内の病院に入院し、治療を受けていましたが、14日死亡しました」。5月19日付/NHKニュース「マダニが媒介する感染症、SFTS=『重症熱性血小板減少症候群』の患者が県内でことし初めて確認され、(福岡)県が注意を呼びかけています。SFTSへの感染が確認されたのは、宗像市の70代の男性で、県によりますと、今月14日に発熱や関節痛を訴えて医療機関を受診し、18日、食欲低下や意識がはっきりしないなどの症状で入院しました。粕屋保健福祉事務所から連絡を受けた県が検査したところ、19日、感染が確認されたということです。県内でSFTSへの感染が確認されたのは、ことし初めてです。男性は現在も意識がはっきりしない状態が続いていて、治療を受けているということです」。5月20日付/NHKニュース「京都府内に住む70代の男性が、先月(4月)、重症の場合、死亡することもある感染症のSFTS=『重症熱性血小板減少症候群』に感染したことが分かりました。媒介するマダニに京都市内で刺されたことが原因とみられ、府は草むらに入る際は肌の隠れる衣服を着用するなど、注意を呼びかけています。(中略)京都府によりますと、先月(4月)上旬、府の南部に住む70代の男性が京都市伏見区の竹やぶで作業をしたあと、発熱などの症状を訴え医療機関を受診したところ、SFTSに感染していることが確認されたということです。府によりますと、SFTSの感染場所が京都市内と推定されたのは、今回がはじめてだということです」。農作業などを行う人が発熱や嘔吐、下痢などで運ばれてきたらSFTSを疑う日本で確認されているマダニによる感染症は非常に多くあります。代表的なものが重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介脳炎(北海道中心)などです。これらの中でとくに注意が必要なのが、死亡例が多いSFTSです。夏の到来が遅い東北地方では患者の確認はまだのようですが、九州、四国、本州の西日本~関東ではすでに患者が発生しています。ちなみに2025年の報告数は191例で過去最高を記録、2014年の61例と比較すると約3倍だったそうです。本連載でも昨年7月掲載の「第272回 致死率30%!猛威を振るうマダニ感染症SFTS、患者発生は西日本から甲信越へと北上傾向」で詳しく書いたように、温暖化などの影響でSFTSウイルスを持ったマダニの生息域が日本で徐々に北上、シカなどの野生動物からネコ、イヌへの感染も手伝って、ヒトへの感染も増えているというわけです。そう言えば、昨年はSFTSのネコを治療した三重県内の獣医師がその後SFTSで死亡する、ということもありました。国立健康危機管理研究機構は「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版」2)や「Q&A」3)を作成し公開していますので、これからの季節、農作業などを行う人が発熱・嘔吐・下痢や、意識障害や失語などの神経症状、下血などの出血症状で運ばれてきたら、SFTSも疑うようにしたいものです。 参考 1) 山菜採りに行くみなさん、クマにご注意ください/政府広報オンライン 2) 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2024年版」/国立健康危機管理研究機構 3) 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」/厚生労働省

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全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」【最新!DI情報】第63回

全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」今回は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体「アニフロルマブ(遺伝子組換え)(商品名:サフネロー皮下注120mgオートインジェクター、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。これまでの点滴静注製剤に加えて皮下注製剤が登場したことで、全身性エリテマトーデス患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療が可能になると期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスの適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、1回120mgを1週間ごとに皮下注射します。なお、アニフロルマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤から本剤に切り替える場合、点滴静注の最終投与から約2週間後に本剤の投与を開始します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)、重篤な感染症(2.3%)があります。その他の副作用として、注射部位反応(10%以上)、気管支炎(気管支炎、ウイルス性気管支炎、気管気管支炎)、上気道感染(上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎)、帯状疱疹、過敏症(いずれも1~10%未満)、気道感染(気道感染、ウイルス性気道感染、細菌性気道感染)(いずれも1%未満)、関節痛(頻度不明)があります。なお、症状を悪化させる恐れがあるため、重篤な感染症の患者および活動性結核の患者には投与できません。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体製剤であり、既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスに用いられる皮下注射薬です。 2.今までに、ステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬などによる全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても効果不十分な場合に上乗せして使用されます。 3.医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんや家族が自己注射できます。自己判断で中止や減量をしないでください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、使用する前に医師または薬剤師に告げてください。 <ここがポイント!>全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、免疫系の異常により全身の多臓器に炎症を引き起こす慢性の自己免疫疾患で、厚生労働省の指定難病49に該当します。初期症状として全身倦怠感や発熱が多くみられ、その後、皮膚・粘膜症状、関節症状、腎病変、中枢神経症状などさまざまな症状が現れるため、患者ごとに症状の組み合わせや重症度が大きく異なります。治療の主軸は副腎皮質ステロイドによる免疫抑制および抗炎症であり、重症例ではステロイドパルス療法が選択されます。しかし、ステロイドは長期使用に伴う多くの副作用があり、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、生物学的製剤などを併用し、ステロイドの減量を目指す治療が行われます。SLE患者の多くは、I型インターフェロン(IFN)シグナル伝達が持続的に亢進し、IFN誘導性遺伝子の過剰発現が認められます。アニフロルマブは、I型IFNα受容体サブユニット1に結合するヒト免疫グロブリンG1κ(IgG1κ)モノクローナル抗体であり、I型IFN受容体を介したシグナル伝達を遮断することで自己抗体産生を抑制し、SLEの症状緩和および進行抑制に寄与すると考えられています。同成分は2021年11月に点滴静注製剤が発売されていますが、4週間ごとに通院し、30分以上かけて点滴投与を行う必要があります。今回承認された皮下注製剤は、週1回の自己注射薬であり、従来の点滴静注製剤に加わる新たな選択肢として、患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療を可能にします。また、通院負担の軽減や治療継続率の向上も期待されます。なお、アニフロルマブ点滴静注製剤から皮下注製剤に切り替える場合、点滴静注製剤の最終投与から約2週間後に皮下注製剤の投与を開始する必要があります。標準治療を実施中の中等症~重症の疾患活動性を有する自己抗体陽性のSLE患者を対象とした第III相国際共同試験(TULIP SC試験)において、主要評価項目である投与52週時のBICLA達成例(複合的な疾患活動性低下指標)の割合は、本剤120mg皮下投与群で59.4%、プラセボ皮下投与群で43.9%、割合の群間差は15.5%(96.46%信頼区間:1.4~29.6%)であり、プラセボ投与群に対する本剤投与群の優越性が検証されました(p=0.0211、層別Cochran Mantel Haenszel法)。

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経鼻インフルエンザワクチン、鼻腔内に免疫反応を形成

 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンのフルミスト(FluMist)は、従来の注射型ワクチンとは異なる仕組みで作用することが、新たな研究で示された。フルミストは、ウイルスが侵入してくる鼻腔内で直接的に免疫反応を引き起こし、ウイルスと闘うための「戦場」を形成することが明らかになったという。米ラホヤ免疫研究所のチーフサイエンティフィックオフィサーであるShane Crotty氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に4月29日掲載された。 研究グループは、こうした免疫反応は上気道にとどまり、血液検査では検出できないため、これまで成人に対する経鼻ワクチンの潜在的な有益性が見過ごされてきたと指摘する。「これまで、フルミストは大多数の成人にはほとんど効果がないと考えられていた。しかし、意外なことに、実際には大多数の人々が鼻腔組織内でワクチンに反応を示すことが明らかになった」とCrotty氏はニュースリリースで説明している。 フルミストは小児で有効性が示され、成人に対する使用も承認されている。しかし、この経鼻ワクチンを接種した成人の血液を調べたところ、インフルエンザと闘う免疫細胞の存在が確認できなかったという。このことから、専門家の間で、インフルエンザに対するこのワクチンの予防効果を疑問視する声が上がっていた。 研究グループは今回の研究で、成人25人の鼻腔からフルミストの接種前後で検体を採取し、鼻腔内の免疫細胞を詳しく調べた。人間の体はさまざまな免疫細胞を有しているが、本研究では、鼻や気道の組織に定着し、ウイルスに対する抗体を産生するB細胞に焦点を当てた。 その結果、フルミストを接種した人では、接種後に上気道にインフルエンザウイルスに対抗するメモリーB細胞の大幅な増加が認められ、この増加は6カ月後も維持されていた。ただし、これらの細胞が確認されたのは鼻腔内のみであり、血液中には循環していなかった。 論文の筆頭著者でラホヤ免疫研究所の博士研究員であるHannah Stacey氏は、「この結果は、経鼻ワクチンあるいは粘膜ワクチンの接種後に血液のみを調べると、極めて興味深い免疫学的現象を見逃してしまう可能性があるということだ」とニュースリリースで述べている。 研究グループが、この結果を通常の注射型インフルエンザワクチンを接種した成人25人の結果と比較したところ、その免疫反応は完全に異なることが判明した。注射型ワクチン接種者では、血流中のインフルエンザ抗体は増加していたが、上気道では防御に関わる免疫細胞は誘導されていないことが示された。 研究グループは今回の結果について、フルミストの有効性が通常の注射型ワクチンと同等であることを意味するものではないと強調している。なお、研究グループは現在、鼻腔内の免疫細胞の反応が、インフルエンザに対して持続的な防御作用をもたらすのに十分な強さであるかどうかを検証中であるという。

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40歳以上の一般住民における未診断の肝線維症発症頻度は推定1.6%;ヨーロッパ9ヵ国の国際前向きコホート研究(解説:相澤良夫氏)

 この大規模な前向きコホート研究では、40歳以上の一般住民を対象に未診断の肝線維症の頻度および肝線維症と代謝因子(肥満、2型糖尿病、脂質異常、高血圧)やアルコール摂取との関連性について検討した。肝線維症は主にフィブロスキャン(VCTE)での肝硬度(LSM)上昇(8kPa以上)によりスクリーニングされ、肝臓専門医によって確定診断がなされた。その結果、肝線維症の推定有病率は1.6%(3万199人中477人)で、肝硬度の上昇は肥満、2型糖尿病、過度の飲酒と強く関連し、その93%は脂肪性肝疾患であった。 この結果からヨーロッパ各地では未診断の肝線維症が一般的に認められることが判明した。このような未診断の肝線維症を早期に発見しその要因を解析することにより、それぞれの症例に即した個別化治療介入が可能となるため、このような取り組みは、無症状の慢性肝疾患の肝硬変への進展を防止し、肝硬変に伴う重篤な合併症の発生を阻止するうえできわめて重要と考えられる。 わが国では代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)など、慢性肝疾患の病因別患者数は推計されているが、実際に一般住民を対象としたこのような大規模前向き研究により未診断の肝線維症の頻度やその要因を明らかにした報告は知られていない。 従来、わが国ではHBVやHCVによる慢性ウイルス肝炎が慢性肝疾患の大多数を占めていたが、近年の抗ウイルス療法の急速な進歩により激減し、とくにHCVはわが国から撲滅される日が近いと思われている。代わりに、わが国でもこの論文に示された代謝因子やアルコール過剰摂取に関連した慢性肝疾患の重要性が強調されているが、いまだに無症状のまま経過し肝硬変や肝がんで発見される症例も少なくない。 したがって、わが国においても未診断の肝線維症を早期に診断し、その病因に即した治療を行うことは、肝疾患による重篤な合併症を未然に防止するうえで公衆衛生上の観点からもきわめて重要な課題と考えられる。未診断の肝線維症をいかに効率的に拾い上げ早期に治療できるか、その標準的スクリーニング法についてわが国の実情に即した方策を真剣に検討する必要がある。

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小柴胡湯~胸脇苦満と往来寒熱~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第6回

小柴胡湯~胸脇苦満と往来寒熱~これまで解説してきた葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)は、いずれも感冒の初期に使うものでした。言い換えると、これらの薬は感冒を患ってから5~6日経った時に使うものではないということです。では、時間が少し経った感冒には何を使えばいいかというのが、今回のお話です。導入として、西洋医学の話をさせてください。感冒に対して西洋医学では、どんな時でも症状に合わせてアセトアミノフェンやデキストロメトルファンなどを使うと思います。つまり、西洋医学では一見すると感冒初期とそれ以降とをそんなに区別していないわけです。しかし、COVID-19の場合はちょっと違いますね。罹患初期には抗ウイルス薬、たとえばレムデシビルなどを使って、ウイルス量を減らしにいきます。少し時間が経ってからは、ウイルスそのものよりも炎症反応によって肺炎が悪化していくため、それを抑えるためにステロイドが重要になってきます。このような感じで、COVID-19では感冒初期とそれ以降を区別します。じつは、漢方薬の考え方もこれにちょっと似ています。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯の解説をしている時に、やたら汗の話が出てきたのを覚えているでしょうか(図1)。じつは、感冒初期ではこれらの漢方薬を使うことで発汗を調整して、汗とともに悪いものを体表から体外へと追い出すイメージを昔の人は考えていたんです。図1 感冒初期に対する漢方薬の選び方画像を拡大する一方で、発症してから時間が経ってくると「悪いもの」、要はウイルスのことですね。それが体表や喉のあたりから肺、胃といった横隔膜レベルの臓器まで侵入してしまい、そこでも炎症を起こしてくるわけです。そこまで侵入されると、汗とともに追い出すことができなくなります。そこで、肺や胃のあたりの炎症を鎮静化するために、漢方では柴胡(さいこ)を含む漢方薬を使うことになるわけです。いわゆる柴胡剤。「東洋のステロイド」のイメージです(図2)。図2 COVID-19治療イメージ:西洋医学と漢方医学の比較画像を拡大する柴胡剤柴胡を含む漢方薬を柴胡剤と呼んでいて、その代表格が小柴胡湯(しょうさいことう)です。これを「こしば」なんとかと読まなくなったら、漢方の初心者卒業かなと勝手に思っています。冗談はさておき、小柴胡湯は、柴胡、半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)の7種類の生薬で構成されます。大棗と生姜は以前紹介したように、胃腸に優しい生薬ですが、半夏と黄芩は胃のむくみや熱を除いてくれて、人参も胃を温めて支える生薬のため、構成生薬の作用点が胃に集中しているのが特徴的です。また、感冒初期の漢方薬には桂皮(けいひ)が必ずといっていいほど入っていましたが、小柴胡湯ではなくなりました(図3)。桂皮は気逆といって頭のほうに向かう症状を抑えてくれる生薬です。要は頭痛です。感冒初期では頭痛が症状として出やすいですが、少し時間が経つと頭痛はあまり目立たなくなってきますよね。そのため桂皮は要らなくなるのです。図3 小柴胡湯の構成生薬画像を拡大する小柴胡湯は虚実中間の患者に使う漢方薬です。結構幅広い体力の患者さんに使うことができます。一方で、世の中には実証の患者も虚証の患者もいて、その両極に対応する形で柴胡剤の派生処方が存在します。たとえば、実証であれば、便秘を目安に使う大柴胡湯(だいさいことう)、イライラを目安に使う柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)があります。虚証であれば、寒がっているのを目安に使う柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が該当します。また、症状から桂枝湯と小柴胡湯の中間、つまり過渡期に位置する患者には、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)という漢方薬もあります(図4)。たくさん薬が出てきましたが、ここは無理に覚えず、軽く流しておきましょう。図4 柴胡剤の派生処方画像を拡大する胸脇苦満と往来寒熱ここまで柴胡剤というもの紹介しましたが、これらの共通点として「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」というお腹の所見を覚えてください。これは、肋骨弓の下に手を差し入れようとすると強い抵抗がある状態で、柴胡剤を使う目安として重要です(図5)。現代人はストレスを抱えて胃に負担をかけているので、この胸脇苦満が出ている人が結構多いです。ご自身の体に手を入れて確認してみてください。図5 胸脇苦満画像を拡大する日本漢方ではお腹の所見が大事で、個人的には再現性もあるため、学び始めの段階から勉強する価値があると思っています。たとえば、前回まで桂枝湯、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、建中湯(けんちゅうとう)の話をしましたが、こういった「芍薬が要になる漢方薬」が効く人のお腹は腹直筋が張っています。これを「腹直筋攣急(ふくちょくきんれんきゅう)」と呼ぶのですが、昔の人は「お腹に2本の棒を触れる」と表現しています(図6)。図6 腹直筋攣急画像を拡大する最後に、古典で小柴胡湯の話を締めておきましょう。こちらの条文は、長いですね(図7)。図7 小柴胡湯の古典条文画像を拡大する胸脇苦満はさっき出てきましたね。ここで注目してほしいのが「往来寒熱(おうらいかんねつ)」という言葉で、これは潮の満ち引きのように、熱が1日のなかで出たり引いたりすることを指しています。ときどきいませんか? かぜをひいてしばらくたった後に「夜だけ熱が出る」といって受診する方。医者目線だと少し説明に困るものです。これこそが往来寒熱ですね。そういう方は、倦怠感や食欲不振も訴えてくることが多いため、この条文通りの症状になってくるんです。また、この条文にはないですが「口の中が苦い」というのも柴胡剤を使うヒントになります。胃が悪いと舌苔が分厚くなってきて、舌の見た目もちょっと変わってきます。まとめ漢方の世界では感冒初期とそれ以降を区別します。治療のコンセプトも薬の選択肢も異なります。感冒初期が終わってからは、東洋のステロイドこと柴胡剤の出番です。ここでは、小柴胡湯を覚えておきましょう。使用にあたっては、胸脇苦満の存在を確認しておくと、勝率が上がってくると思います。胸脇苦満以外にも往来寒熱という言葉を覚えました。こういう独特の用語を知っていると、漢方の上達が早くなるため、もし余裕があれば、こちらも覚えていってください。次回は、これまでの内容をもう少し俯瞰的におさらいして、漢方の世界ならではの病気の捉え方を一緒にみていきましょう。それでは、お楽しみに!

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第314回 17回目のエボラ流行、ワクチンが使えない明確な理由

INDEX今回の発生経緯“世界で最も過酷な国の1つ”と言われる由縁どうやって開発しろと?今回の発生経緯世界は一難去って、また一難ということか? ハンタウイルス騒動が鳴りを潜めた(正確には下船した乗員・乗客は経過観察期間中)と思ったら、今度はアフリカのコンゴ民主共和国(DRC、以下コンゴ)でエボラウイルスのアウトブレイクである。世界保健機関(WHO)の5月16日付発表によると、5月5日付でコンゴ東部のイツリ州で、医療従事者の死者を含む原因不明の致死率の高い疾病のアウトブレイク発生の第1報が入ったとのこと。5月15日までに同州から採取された13血液検体のうち8検体からエボラウイルスの一種であるブンディブギョ株が確認された。これを受けてコンゴ保健省は同日に同国で17回目となるエボラ出血熱のアウトブレイクを正式に宣言した。また、同日に隣国ウガンダの保健省は、コンゴから入国し、5月14日に死亡したコンゴ人からブンディブギョ株が分離されたと発表し、翌5月16日には首都カンパラでコンゴから帰国したウガンダ人からもブンディブギョ株が検出された。その結果、5月16日、WHO事務局長のテドロス・アダノム氏は、今回のアウトブレイクが国際保健規則(IHR)の規定で定義されている「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当するとの判断を公表した。PHEICは国境を超えた感染拡大が懸念される時に発令されるが、テドロス氏は20日の記者会見で、国内および地域レベルでの感染リスクは高く、世界レベルでは低いとの評価を示している。これはアウトブレイクが確認されたコンゴのイツリ州と北キブ州がウガンダ、南スーダン、ルワンダと国境を接していることから、この範囲内で国境をまたいだ感染拡大が起こる可能性を念頭に置いていると考えられる。WHOの20日の記者会見で明らかにされた実態は、感染の疑いによる死亡139例、感染疑い症例600例であり、5日前の発表からはともに約2倍に拡大している。5月15日時点のWHO発表によると、今回のアウトブレイクで現在までに確認されている最初の疑い例は、4月24日に発熱、出血、嘔吐、激しい倦怠感などの症状が現れた医療者(後に死亡)だという。WHOがコンゴ当局から通報を受けたのは前出のように5月5日、ブンディブギョ株の検出が確認されたのは5月15日で翌日には公式発表があったわけだが、これについて「対応が遅い」との批判が噴出している。この代表格は、すでに報じられている米国のマルコ・ルビオ国務長官による批判だ。“世界で最も過酷な国の1つ”と言われる由縁しかし、私見ではあるが、これはトランプ政権特有の歴史や地域事情を考慮しない的外れな指摘だと考えている。その最大の理由はコンゴという国家の特徴に起因する。同国はもともとアフリカ大陸唯一のベルギー植民地で、1960年に独立して60年以上が経過しているが、この間の国家元首はわずか5人しかいない。独立直後は大統領と首相が対立し、これに乗じて大統領側に立った軍事クーデターが勃発、首相は公衆の面前で処刑されるという憂き目にあった。この時、軍事クーデターを起こした軍参謀総長のモブツ・セセ・セコは後に初代大統領を自宅軟禁下に置いて自ら大統領に就任し、1965~97年まで実に30年以上も独裁体制を敷いた。ところが1997年、同国東部を拠点に隣国のブルンジ、ウガンダ、ルワンダの支援を受けた反政府勢力のコンゴ・ザイール解放民主勢力連合(AFDL)を率いるローラン・カビラ氏が反乱を主導し、モブツ政権は崩壊。カビラ氏が第3代大統領に就任したが、4年後の2001年には護衛によって暗殺され、その息子であるジョセフ・カビラ氏が第4代大統領に世襲で就任した。ジョセフ氏は後に民主化を行い、同国初の民選大統領として再選もされるものの、2016年の任期切れ時に一方的に大統領選を延期し、これにより国内では暴動が多発。2018年の大統領選挙で野党のフェリックス・チセケディ氏が当選し、現在に至っている。ちなみにチセケディ大統領就任後にジョセフ氏は戦争犯罪で起訴され、欠席裁判で死刑判決が言い渡されているが、本人はいまだ行方不明である。しかも、この間、同国内では東部を中心に武装勢力が乱立し、常に内戦状態である。この背景には国内では数えられるだけで250以上もの民族集団が存在すること、またアフリカ大陸内でも有数の天然資源に恵まれた国であるため、こうした利権を巡った争いが絶えないのだ。2022年に国連人道問題調整事務所は、今回のアウトブレイクが発生しているイツリ州、北キブ州に加え、南キブ州も含めたコンゴ東部で活動する反政府組織は約120組織と報告している。失礼ながら、こうした組織の大半は政治思想で固まっているわけではなく、半ば武装強盗のような組織である。この結果、現地では地域住民の虐殺や女性に対する性暴力が横行している。はっきり言ってしまえば、コンゴは日本人が考えるような国家の体をおよそ成していないのである。そこでWHOの対応の遅れを指摘してもまったく意味がない。むしろ責められるべきはコンゴ保健省だが、とにもかくにも中央政府は全土を掌握しきれていないのである。どうやって開発しろと?さて、的外れと言えば、こうした時によく出てくるのがワクチン問題である。エボラウイルスに関しては、米国・メルク社がザイール株に対するワクチン「rVSV-ZEBOV(商品名:Ervebo)」を開発済みだ。しかし、ザイール株とブンディブギョ株は全ゲノム解析によると、塩基配列が30%前後も異なり、結果として細胞侵入の足がかりになるウイルス表面の糖タンパクもかなり異なることが知られている。これではErveboはほぼ効かないか、よくて弱い重症化予防効果があるか、ぐらいだろう。ブンディブギョ株に対するワクチンは現時点では存在しないわけだが、こうした時に日本のワイドショー的な報道では「製薬企業は儲けがないからワクチンを開発しようとしない」という言説が登場しがちだ。これは完全に間違いではないが、「当たらずとも遠からず」である。そもそも、これまでに公式に確認されているブンディブギョ株のアウトブレイクは、ウガンダ西部のブンディブギョ州(これがウイルス株の命名起源)で2007年11月に初めて確認された131例(同年2月に終息宣言)と、2012年8月にコンゴ北東部のオリエンタル州(現・高ウエレ州)で発生した59例(同年11月に終息宣言)しかない。このたかだか3ヵ月で終息してしまう少数例のアウトブレイクのウイルス株に対して、どのようにワクチン開発しろというのだろうか? 試験デザインすら困難だろう。こんなこともあり、「なぜ対応が遅れた?」「なぜワクチンがない?」という言説には、個人的にはかなりイラっとしてしまうのである。

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糖尿病患者の下痢・便秘に有効なビフィズス菌の種類は?

 2型糖尿病患者の下痢・便秘といった消化器症状にプロバイオティクスであるビフィドバクテリウム・ビフィダムG9-1(BBG9-1)が有効であることをマキノ病院の小林 玄樹氏らが明らかにした。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2026年4月22日号掲載の報告。 研究者らは、下痢または便秘を伴う2型糖尿病患者100例を対象に12週間の非盲検ランダム化比較試験を実施。対照群またはBBG9-1群に1対1に無作為に割り付け、BBG9-1群にはビフィズス菌を1日12mg投与した。主要評価項目は全解析対象者(BBG9-1群43例、対照群51例)の消化器症状評価尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale:GSRS)の変化。 主な結果は以下のとおり。・BBG9-1摂取群のGSRS全体スコアは、対照群(2.08±0.67~2.06±0.63)と比較して有意に改善した(2.22±0.67~1.83±0.62、群間差-0.34[95%信頼区間:-0.55~-0.14、p=0.001])。・サブグループ解析では、女性、便秘を有する、65歳以上、BMI25kg/m2未満の患者において、GSRS全体スコアの改善がより大きいことが示された。・GSRSサブスケールの中で、BBG9-1は対照群と比較して便秘スコアの平均減少が有意に高かった(-0.79±1.38 vs.-0.13±1.04、p=0.013)。・下痢スコアの平均変化には有意差がなかったものの(-0.42±1.14 vs.-0.06±1.08、p=0.14)、追跡調査による下痢スコアはBBG9-1群で有意に低かった(2.04±1.00 vs.2.58±1.44、p=0.049)。・腸内細菌叢を解析した結果、BBG9-1群でPhocaeicola属の相対存在量が有意に増加した(BBG9-1群:15.98±13.75%から19.56±14.79%、対照群:18.14±14.17%から18.21±13.58%)。・糞便中の短鎖脂肪酸(SCFA)の評価では、BBG9-1投与に関連した有意な変化は認められなかった。・両群間で有害事象の発生率は同程度であった。

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COVID-19患者の同居家族、エンシトレルビルで発症予防/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状発現後72時間以内に、患者の同居家族に対してエンシトレルビルを投与することにより、接触者のCOVID-19発症を抑制できることが示された。米国・バージニア大学のFrederick G. Hayden氏らSCORPIO-PEP(Stopping Covid-19 Progression with Early Protease Inhibitor Treatment for Post-Exposure Prophylaxis) Study Teamが、日本を含む5ヵ国共同で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照試験「第III相SCORPIO-PEP試験」の結果を報告した。エンシトレルビルは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)3CLプロテアーゼの経口阻害薬であり、本邦においては軽症~中等症COVID-19の治療薬として承認されている。これまで、COVID-19患者の同居家族に対する曝露後予防薬として承認された抗ウイルス薬はなかった。NEJM誌2026年5月14・21日合併号掲載の報告。COVID-19発症後72時間以内に、家庭内接触者を無作為化 研究グループは、COVID-19患者(指標患者)の同居家族で試験実施機関においてSARS-CoV-2陰性が確認された12歳以上の家庭内接触者を、指標患者の症状発現後72時間以内にエンシトレルビル(1日目に375mg、2~5日目に125mgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、修正ITT集団(mITT集団:無作為化され、中央検査機関においてベースラインでSARS-CoV-2のRT-PCR検査が陰性、かつ試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者)における、試験薬投与後10日以内のCOVID-19発症(中央検査機関でRT-PCR検査が陽性、かつ事前に規定された14のCOVID-19の症状のうち少なくとも1つが48時間以上持続と定義)とした。エンシトレルビル群はプラセボ群と比較しCOVID-19発症リスク67%減 試験は、2023年6月~2024年9月中旬に、米国、アルゼンチン、日本、南アフリカ共和国、ベトナムで行われた。 計2,387例の家庭内接触者が無作為化され(エンシトレルビル群1,194例、プラセボ群1,193例)、このうち中央検査機関においてベースラインでSARS-CoV-2陰性が確認されたエンシトレルビル群1,030例、プラセボ群1,011例が有効性解析対象集団(mITT集団)となった。 試験参加者の平均年齢は42.4歳で、71.1%は指標患者の症状発現後48時間以内に無作為化され、37.0%は重症COVID-19の危険因子(肥満、喫煙、65歳以上など)を少なくとも1つ有していた。 mITT集団における10日目までのCOVID-19発症率は、エンシトレルビル群2.9%、プラセボ群9.0%であり、エンシトレルビル群で有意に低かった(リスク比:0.33、95%信頼区間:0.22~0.49、p<0.001)。 試験中の有害事象の発現割合は両群で類似しており(エンシトレルビル群15.1%、プラセボ群15.5%)、主な有害事象は頭痛、下痢、鼻咽頭炎、咳、疲労、およびインフルエンザであった。重篤な有害事象の発現割合も同じで(各群0.2%)、COVID-19に関連する入院や死亡は報告されなかった。 なお、著者らは、家庭内感染の可能性には世帯の規模、マスク着用習慣、社会的距離の確保など複数の要因が影響する可能性があるが、これらのデータを収集できなかった点で結果は限定的だとしている。

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第62回 コンゴでエボラ流行、87人死亡。私たちが知らない落とし穴

2026年5月17日、世界保健機関(WHO)は、アフリカ・コンゴ民主共和国の東部イトゥリ州で発生しているエボラ出血熱の流行を、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言しました1)。アフリカ連合によれば、すでに87例が亡くなり、疑い例を含めると336例の感染が判明しているとされています。隣国ウガンダではコンゴ人男性の死亡例もすでに報告されており、周辺国への波及が強く警戒される事態となっています2)。「またエボラ?」と思った方も多いかもしれません。「エボラのワクチンはあるって聞いたけど、どうして今も流行を抑えられないんだろう?」そんな素朴な疑問を抱いた方もいるかもしれません。実は、今回のニュースを少し立ち止まって整理してみると、その「あるはずのワクチン」の話に、知っておきたい大切な落とし穴が隠れています。そもそもエボラとは、どんな病気?エボラウイルス病は、フィロウイルス科に属するエボラウイルスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間はおよそ6〜12日(最短2日、最長21日)で、発症後は突然の発熱、激しい頭痛、筋肉痛、倦怠感など、決して特徴的とはいえない症状から始まります3)。数日のうちに嘔吐や下痢が加わり、大量の体液の喪失をきたすことが、その病態の中心になります。「出血熱」という名前が独り歩きしている感がありますが、実際には出血が目立つ患者さんは少数派で、多くは脱水と臓器の障害、ショックで命を落とします3)。致死率は流行ごとに大きく異なります。1976~2022年までの集計によれば、ザイールウイルスで約66.6%、スーダンウイルスで約48.5%、そして今回コンゴで検出されたブンディブギョウイルスでは約32.8%とされています4)。「3割」と聞くと低く感じるかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症の致死率が1%前後であったことを思えば、いかに恐ろしい数字かが分かるかと思います。感染は、症状のある患者さんや亡くなった方の血液・体液との直接接触によって起こります。空気感染はしません。つまり、感染拡大の主役となるのは、家族の看病、葬儀での遺体への接触、そして十分な防護具なしで治療にあたる医療者です3)。逆にいえば、「症状のない人」からはうつらない。これも知っておきたい大切なポイントです。なぜ「緊急事態宣言」がそんなに重い意味を持つのかWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言するのは、その感染症が「国境を越える拡大リスクがあり、国際協調的な対応が必要」と判断されたときに限られます。これまでに発令されたのは、新型インフルエンザ(H1N1)、ポリオ、エボラ(西アフリカ流行、東部コンゴ流行)、ジカウイルス、新型コロナウイルス、エムポックスなど、ごく限られた事例です。つまりPHEICは、「世界中で警報を共有しましょう」「物資、人材、検査体制を国際的に動かしましょう」という、最上位レベルの号令です。今回もWHOは、コンゴと国境を接するウガンダや南スーダンへの飛び火を念頭に、検査強化や接触者追跡の必要性を強く訴えています2)。日本に直接的な影響が及ぶ可能性は現時点では高くはないものの、グローバル化した現代において、こうした宣言を「対岸の火事」と片付けるのは適切ではないと、私は考えています。エボラに対する承認済みのワクチンは?実は、エボラに対しては承認済みのワクチンがあります。「rVSV-ZEBOV(商品名:Ervebo)」と呼ばれるもので、2019年に欧米で承認され、その後アフリカ複数カ国でも使用が認められました。すでに30万人を超える人に接種されています5)。流行が発生すると、患者の接触者と、そのまた接触者にワクチンを打つ「リング・ワクチネーション」という戦略が用いられ、実際の流行抑制に効果を上げてきました6)。では、なぜ今回はそれができないのでしょうか。実は、承認されているErveboは、エボラウイルスの中の「ザイールウイルス」専用のワクチンであり、今回検出された「ブンディブギョ株」に対する有効性は確立されていないのです5)。エボラウイルス属にはザイール、スーダン、ブンディブギョ、タイフォレストなど複数の種が含まれ、それぞれ抗原性(ウイルスの顔立ち)が異なります。実験動物のデータでも、ザイールウイルス向けワクチンはスーダンウイルスにはうまく反応しないことが示されており、ウイルスが違えば効果はなくなる、というのが現実です5)。承認されている治療薬(atoltivimab/maftivimab/odesivimab[商品名:Inmazeb]やansuvimab[商品名:Ebanga]など)も同様に、ザイールウイルスにのみ有効性が確認されている薬剤です5)。ではなぜ、ブンディブギョ向けのワクチンが整備されてこなかったのか。理由は単純で、これまでブンディブギョの流行が散発的かつ小規模で、製薬開発の優先順位がどうしても下がってきたからです。2014年の西アフリカ大流行(約2万9,000例感染)が世界を震撼させ、Erveboの開発が一気に進んだことを思えば、対照的な状況といえます5)。これは「市場原理だけにワクチン開発を委ねるとどうなるか」という、グローバルヘルスにおける古くて新しい問題でもあります。流行が起きるまで開発の動機が生まれず、いざ流行すれば「ワクチンがない」と慌てる。この繰り返しを断ち切るために、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)など国際的な枠組みが動いてはいますが、まだ十分とは言いがたいのが実情です。日本に住む私たちが今すぐエボラそのものを過剰に恐れる必要はないでしょう。感染経路は限定的で、症状のない人からは感染しないからです。ただ、海外渡航前後の発熱を安易に放置しないこと、そして「アフリカで起きていることは、いずれ自分たちの問題にもなり得る」という視点を持つことは、パンデミックの時代に大切な姿勢かもしれません。今回のニュースは、感染症が今なお人類にとって克服しきれない相手であること、そして国家間で協力してワクチン開発を進める難しさを、改めて教えてくれているように思います。 1) WHO. Epidemic of Ebola Disease caused by Bundibugyo virus in the Democratic Republic of the Congo and Uganda determined a public health emergency of international concern. 2026 17 May. 2) 共同通信. コンゴのエボラ熱、緊急事態宣言 WHO、東部の州で死者87人. 2026年5月17日. 3) Bray M, et al. Clinical manifestations and diagnosis of Ebola disease. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. Accessed May 17, 2026. 4) Izudi J, et al. Case fatality rate for Ebola disease, 1976-2022: A meta-analysis of global data. J Infect Public Health. 2024;17:25. 5) Chertow DS, et al. Treatment and prevention of Ebola and Sudan virus disease. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. Accessed May 17, 2026. 6) Muyembe JJ, et al. Ebola Outbreak Response in the DRC with rVSV-ZEBOV-GP Ring Vaccination. N Engl J Med. 2024;391:2327.

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GSKの組換えRSVワクチン、重症化リスクの高い18歳以上に対象拡大

 グラクソ・スミスクラインは2026年5月18日、組換えRSウイルスワクチン(商品名:アレックスビー)について、RSウイルス(RSV)による感染症が重症化するリスクの高い18~49歳の成人を対象として、用法・用量追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 すでに、重症化リスクの高い50~59歳を対象として2024年11月に承認を取得しており、今回の承認により、本邦では重症化リスクの高い18~59歳の成人に使用可能な唯一のRSVワクチンとなる。なお、本剤は母子免疫による新生児・乳児におけるRSV感染症の予防に対する適応はない。 RSVは、とくに基礎疾患のある成人で重症化リスクが高いことが知られている。添付文書上、18歳以上のRSVによる感染症が重症化するリスクが高いと考えられる者とは、以下のような状態の者を指す。・慢性肺疾患、慢性心血管疾患、慢性腎臓病または慢性肝疾患、糖尿病、神経疾患または神経筋疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上を目安とする)、基礎疾患もしくは治療により免疫不全状態であるまたはその状態が疑われる者・上記以外で、医師が本剤の接種を必要と認めた者

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子宮頸がん排除は可能か:予防戦略の世界的強化が必要/Lancet

 子宮頸がんは最も予防の可能性が高いがんの1つだが、世界中で毎年60万例以上の女性が子宮頸がんがんと診断される。また、低・低中所得国(LMIC)における子宮頸がんの年齢調整罹患率は高所得国(HIC)の3倍、同死亡率は6倍に達し、大きな不均衡が存在する。2020年11月、世界保健機関(WHO)は、この不均衡を是正し、最終的に子宮頸がんの排除を目指す世界的な戦略を立ち上げた。カナダ・Universite LavalのMarc Brisson氏らは、排除戦略立ち上げから5年が経過した時点での世界的な現況を、数理モデルを用いて分析した。研究の成果がLancet誌2026年5月2日号に掲載された。WHOの戦略目標:罹患率<4例/10万人年 LMICとHICにおける子宮頸がんリスクの不均衡の主な要因は、子宮頸がん検診へのアクセスの大きな差(検診を受けたことがある女性の割合:10%vs.84%)とされる。さらに、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの配分の世界的な不平等がこの不均衡を助長していると考えられ、2023年の主要な対象年齢層の女子への接種率はHICの57%に対しLMICは23%であり、2022年にはHICの大部分で男子への接種が行われたのに対しLMICでは1%だった。 WHOの排除戦略は、女子の90%へのHPVワクチン接種、女性の70%への子宮頸がん検診、前がん病変およびがんを有する患者の90%に治療を行うことを目標とし、すべての国で年齢調整子宮頸がん罹患率を女性10万人年当たり4例未満に低減することを目指すとしている。67のLMICと42のHICで、シナリオに基づく罹患率を比較 研究グループは、HPV-ADVISEモデルを用い、67のLMICと42のHICにおいて、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診に関する種々のシナリオに基づき、年齢調整子宮頸がん罹患率を推計した(Canada Research Chairs Programなどの助成を受けた)。 LMICとHICの格差は、年齢調整子宮頸がん罹患率(ASR)の比率(RRLMIC/HIC=ASRLMIC/ASRHIC)として評価した。現状維持で、HICでは2048年に排除 ワクチン接種と検診が現状維持の場合、LMICの子宮頸がん罹患率は2105年までに23%しか減少しない一方で、HICでは2048年までに排除(年齢調整子宮頸がん罹患率<4例/10万人年)を達成すると予測された。その結果として、2105年までに格差が4倍に拡大すると考えられた(2022年のRRLMIC/HIC=3、2105年のRRLMIC/HIC=12)。 また、すべてのLMICが9価ワクチンに切り替えると、対象集団やワクチン接種・検診に関して現状を維持した場合でも、罹患率およびLMICとHICの格差への影響は最小限にとどまると予測された。WHO排除目標に加え、男子・MAC接種導入が重要 LMICの女子で接種率90%を達成した場合、今世紀末までに罹患率が大幅に低減し(87%の減少)、2094年に排除を達成(HICに遅れること約45年)、格差はわずかに縮小する(2105年のRRLMIC/HIC=2)と考えられた。 また、男子も加えた全国民的な定期接種および多年齢層コホート(MAC)への接種を追加すると、LMICにおける長期的な年齢調整罹患率がさらに低下する(93%の減少、2105年に2例/10万人年)。この戦略は、子宮頸がんの排除を加速し(2080年に達成[HICより約30年遅れ])、今世紀末までにLMICとHICの格差をほぼ解消することになる(RRLMIC/HIC≒1)。 さらに、今世紀末までにLMICとHICの格差解消を達成し、今後数十年間における格差の拡大を抑制するには、LMICがWHOの排除目標を達成し、全国民的な定期接種およびMACワクチン接種を導入する必要がある。この複合戦略により、HICから約20年遅れの2070年には子宮頸がんの排除を達成すると予測された。接種拡大に向けた状況が大きく変化 著者は、「WHOの世界戦略の開始から5年が経過したが、多くのLMICは排除目標の達成にはほど遠い状況にある」「LMICとHICの格差を解消し、すべてのLMICで子宮頸がんを排除するには、LMICがWHOの排除目標を達成し、全国民的なHPVワクチン接種およびMAC接種を導入する必要があるだろう」としている。 また、「(1)WHOの事前認証を受けたワクチンが低価格で入手可能になった、(2)ワクチンの供給制約が解消された、(3)1回接種の選択肢が加わったことにより、HPVワクチン接種の拡大に向けた状況が大きく変化している」「本研究の結果を各国の具体的な状況に適応させるための実装研究とともに、WHO戦略を含む施策を進めるための政治的意志が緊急に必要とされている」と指摘している。

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