サイト内検索|page:203

検索結果 合計:4273件 表示位置:4041 - 4060

4041.

細菌性髄膜炎、ワクチン導入で乳幼児リスクは減少、疾病負荷は高齢者に:米国CDC

1998~2007年の細菌性髄膜炎に関する疫学調査を行った米国疾病管理予防センター(CDC)は、発生率は減少しているが、同疾病による死亡率はなお高いこと、また1990年代初期以降の各対策導入によって乳幼児のリスクの減少には成功したが、相対的に現在、高齢者が疾病負荷を負うようになっているとの報告を発表した。米国では1990年代初期に乳幼児へのインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを導入した結果、細菌性髄膜炎の発生率が55%減少。2000年に導入した肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)では、侵襲性肺炎球菌感染症が5歳未満児75%減少、65歳以上31%減少したと報告されている。このほかにも全妊婦を対象にB群レンサ球菌(GBS)スクリーニングなど予防策が講じられるようになっており、今回の調査は、今後の予防戦略の基礎資料とするため1998~2007年の細菌性髄膜炎の発生率の動向、2003~2007年の髄膜炎の疫学を評価することを目的に行われた。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。1998年から2007年の間に発生率31%減少調査は、Emerging Infections Programs Network(新興感染症プログラムネットワーク:EIPネットワーク)の8つのサーベイラインス地域(1,740万人居住)から報告された細菌性髄膜炎の症例を分析して行われた。細菌性髄膜炎については、髄膜炎の臨床診断と合わせて、脳脊髄液その他通常無菌部位に、インフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌、GBS、リステリア菌、髄膜炎菌のいずれかが確認された場合と定義した。対象地域・期間中、細菌性髄膜炎と特定された患者は3,188人だった。転帰データが入手できたのは3,155人、うち死亡は466人(14.8%)だった。髄膜炎の発生率は、31%減少(95%信頼区間:-33~-29)していた。1998~1999年には人口10万当たり2.00例(同:1.85~2.15)だったが、2006~2007年には同1.38(同:1.27~1.50)となっていた。患者年齢30.3歳から41.9歳に上昇患者の年齢中央値は、30.3歳(1998~1999年)から41.9歳(2006~2007年)へと上昇していた(Wilcoxon順位和検定によるP<0.001)。致命率は、1998~1999年15.7%、2006~2007年14.3%で、有意な変化がみられなかった(P=0.50)。2003~2007年報告症例(1,670例)では、最も優勢を占めたのは肺炎レンサ球菌で58.0%に上っていた。次いでGBS(18.1%)、髄膜炎菌(13.9%)、インフルエンザ菌(6.7%)、リステリア菌(3.4%)だった。2003~2007年の米国における細菌性髄膜炎の年間症例数は約4,100例、死亡500例と推定された。(武藤まき:医療ライター)

4042.

中国で報告された原因不明のSFTSは新種ウイルスによるものと発表

2009年3月後半から7月中旬にかけて中国中部の湖北省や河南省の農村地帯からの報告に端を発した新興感染症の原因を調査していたXue-Jie Yu氏ら中国疾患管理予防センター(CDC)の調査グループは、「SFTSブニヤウイルス」と命名した新種のフレボウイルスが同定されたことを報告した。同報告患者には、原因不明の血小板減少を伴う重度の発熱症候群(SFTS)がみられ、発生初期の致死率が30%と非常に高いことが特徴だった。同年6月に、その臨床症状からAnaplasma phagocytophilum感染が原因ではないかとして血液サンプル調査が行われたが、病原体は検出されず、代わりに未知なるウイルスがみつかっていた。2010年3月以降になると、同様の病状を呈する報告例が中国中部から北東部の入院患者からも報告され、サーベイランスを強化し、6省で原因の特定と疫学的特性の調査を行った結果、今回の報告に至っている。NEJM誌2011年4月21日号(オンライン版2011年3月16日号)掲載より。6省でSFTS様患者の血液サンプルを調査6省での調査は、SFTSの症例定義に当てはまった患者から血液サンプルを入手し、細胞培養による原因病原体の分離と、PCR法によるウイルスRNAの検出を行った。病原体の特性は、電子顕微鏡法と核酸塩基配列決定法を用いて調べ、患者の血清サンプルのウイルス特異的抗体の濃度を、ELISA法、間接免疫蛍光法、中和検査を用いて分析した。新種のウイルスを分離、「SFTSブニヤウイルス」と命名結果、発熱、血小板減少、白血球減少、多臓器不全を呈した患者から新種のウイルスを分離。調査グループは「SFTSブニヤウイルス」と命名した。このウイルスは、RNA配列解析から、新しいブニヤウイルス科フレボウイルス属のウイルスであることが確認され、電子顕微鏡検査から、ビリオン(ウイルス粒子)はブニヤウイルスの形態的特徴を有することが認められた。6省のSFTSを有した患者において、ウイルスRNAの検出および/またはウイルス特異的抗体の検出によりウイルスの存在が認められたのは171例だった。また血清学的検査の結果、急性期および回復期の患者から得た血清サンプル35組すべてで、ウイルス特異的免疫応答が示された。(武藤まき:医療ライター)

4043.

ICUにおける耐性菌伝播を減らすには?

 MRSAとバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、医療施設における感染症の主要な要因であり、これら細菌に起因する感染症は通常、患者の粘膜や皮膚などへの保菌(colonization)後に発症がみられ、保菌は医療従事者の手指や汚染媒介物などを介した患者から患者への間接的な伝播や、保菌医療従事者からのダイレクトな伝播によって発生することが知られる。米国・メイヨークリニックのW. Charles Huskins氏らICUにおける耐性菌伝播を減らす戦略研究グループは、MRSA、VREの伝播リスクが最も大きいICUにおいては、積極的監視培養やバリア・プリコーション(ガウン、手袋着用による)の徹底により、ICUにおけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を低下すると仮定し、それら介入効果を検討する無作為化試験を実施した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。MRSA、VREの保菌および感染発生率を介入群と対照群で比較 研究グループは、MRSAやVREの保菌に対する監視培養とバリア・プリコーション徹底(介入)の効果について、ICU成人患者におけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を通常実践(対照)との比較で検討することで評価するクラスター無作為化試験を行った。 介入群に割り付けられたのは10ヵ所のICUで、対照群には8ヵ所のICUが割り付けられた。 監視培養(MRSAは鼻腔内検査、VREは便・肛囲スワブ)は、被験者全員に行った。ただしその結果報告は、介入ICU群にのみ行われた。 また介入ICU群で、MRSAやVREの保菌または感染が認められた患者は、コンタクト・プリコーション(接触感染に注意する)・ケア群に割り付け、その他すべての患者は、退院もしくは入院時に獲得した監視培養の結果が陰性と報告されるまで、ユニバーサル・グロービング(手袋着用の徹底)群に割り付けた。 介入による伝播減少の効果は認められず、医療従事者のプリコーション実行が低い 介入は6ヵ月間行われた。その間に、介入ICU群には5,434例が、対照ICU群には3,705例が入院した。 ICU入室患者にMRSA、VREの保菌または感染を認めバリア・プリコーションに割り付けた頻度は、対照ICU群(中央値38%)よりも介入ICU群(中央値92%)のほうが高かった(P<0.001)。しかし、介入ICU群の保菌または感染患者が、コンタクト・プリコーションに割り付けられた頻度は51%、ユニバーサル・グロービングに割り付けられた頻度は43%だった。 また介入ICU群における医療従事者の、滅菌手袋・ガウンテクニック・手指衛生の実行頻度は、要求レベルよりも低いものだった。コンタクト・プリコーション群に割り付けられた患者への滅菌手袋の実行頻度は中央値82%、ガウンテクニックは同77%、手指衛生は同69%で、またユニバーサル・グロービング群患者への滅菌手袋実行は同72%、手指衛生は同62%だった。 介入ICU群と対照ICU群で、MRSAまたはVREの保菌または感染イベント発生リスクに有意差は認められなかった。基線補正後の、MRSAまたはVREの保菌・感染イベントの平均(±SE)発生率は、1,000患者・日当たり、介入ICU群40.4±3.3、対照ICU群35.6±3.7だった(P=0.35)。 Huskins氏は、「介入による伝播減少の効果は認められなかった。そもそも医療従事者によるバリア・プリコーションの実行が要求されたものよりも低かった」と結論。医療施設における伝播減少を確実のものとするには、隔離プリコーションの徹底が重要であり、身体部位の保菌密度を減らしたり環境汚染を減らす追加介入が必要かもしれないとまとめている。

4044.

肺結核患者へは、4種固定用量合剤が個別投与よりも好ましい

新たに肺結核の診断を受けた患者に対する、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトールを含む固定用量合剤(FDC)の投与と、各薬剤の個別投与とを比較するオープンラベル非劣性無作為化試験「Study C」が、WHOのChristian Lienhardt氏ら研究グループにより、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの9ヵ国11ヵ所で行われた。FDCは薬剤耐性の出現を防ぐ方法として提唱されたものだが、これまで有効性や安全性の評価に関する無作為化試験はほとんど行われていなかった。JAMA誌2011年4月13日号掲載より。4種FDC投与か個別薬剤投与を8週間毎日投与、18ヵ月後の細菌培養陰性率を比較研究グループは、2003~2008年にかけて、新たに診断を受けた塗抹陽性肺結核の成人1,585人について試験を行った。研究グループは被験者を無作為に二群に分け、一方の群(798人)には4種FDCを、もう一方の群(787人)には4種の薬剤を個別に、それぞれ8週間毎日投与した。両群ともに、投与量はWHOの勧告に従って、被験者の体重により調整した。その後18ヵ月は、両群ともに、2種(リファンピシン、イソニアジド)FDCを週3回投与した。主要アウトカムは、治療開始18ヵ月後の細菌培養陰性の割合だった。プロトコルに沿った被験者のみを分析したPPB分析と、治療を試みた全員を分析したITT分析2種の合わせて3種の分析を行い、非劣性マージンは4%と定義した。3分析中2分析で、FDCの非劣性を示す結果、PPB分析において18ヵ月後に細菌培養が陰性であったのは、FDC群は591人中555人(93.9%)に対し、個別投与群は579人中548人(94.6%)だった(リスク差:-0.7%、90%信頼区間:-3.0~1.5)。ITT分析の一つ目の分析方法では、細菌培養が陰性だったのは、FDC群684人中570人(83.3%)、個別投与群664人中563人(84.8%)だった(リスク格差:-1.5%、90%信頼区間:-4.7~1.8)。二つ目のITT分析では、同陰性は、FDC群658人中591人(89.8%)に対し個別投与群647人中589人(91.0%)だった(同:-1.2%、-3.9~1.5)。研究グループは、「3つの分析結果のうち2つで、FDCの個別投与に対する非劣性が示された。非劣性の証明は完全ではなかったが、FDC投与のほうが優位である可能性が示されたことにより、FDC投与のほうが好ましく優先される」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4045.

HPVワクチン接種スケジュール、0・3・9ヵ月または0・6・12ヵ月でも

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種について、3回の接種を標準スケジュールの初回接種0・2・6ヵ月ばかりでなく、0・3・9ヵ月や0・6・12ヵ月で行っても、効果は非劣性であることが確認された。米国・ワシントン州シアトルのPATHに所属するKathleen M. Neuzil氏らが行った無作為化非劣性試験によるもので、JAMA誌2011年4月13日号で発表した。ベトナム21ヵ所の学校に通う11~13歳903人を対象に試験研究グループは、2007年10月~2010年1月にかけて、ベトナム21ヵ所の学校に通う11~13歳の女生徒903人について、オープンラベルクラスター無作為化試験を行った。研究グループは被験者を無作為に、HPVワクチンを「標準接種(0・2・6ヵ月)」「0・3・9ヵ月」「0・6・12ヵ月」「0・12・24ヵ月」のスケジュールで接種する4群に割り付けた。3回目接種後1ヵ月に血清抗HPVの幾何平均抗体価(GMT)を調べ、標準接種に対する非劣性試験を行った。各接種群GMT値の標準接種群GMT値に対する割合を調べ、95%信頼区間の下限値が0.5以上であれば非劣性が認められると定義した。被験者のうち、HPVワクチン接種を1回以上受け、3回接種後1ヵ月の時点で血清検査を行ったのは809人だった。0・12・24ヵ月の接種スケジュールでは非劣性は認められず結果、標準接種群の3回接種後のGMT値は、HPV-16が5808.0(95%信頼区間:4961.4~6799.0)、HPV-18が1729.9(同:1504.0~1989.7)だった。それに対し、9ヵ月スケジュール群のGMT値はそれぞれ5368.5(同:4632.4~6221.5)と1502.3(同:1302.1~1733.2)、12ヵ月スケジュール群はそれぞれ5716.4(同:4876.7~6700.6)と1581.5(同:1363.4~1834.6)と、いずれも標準スケジュール群に対する非劣性が認められた。一方で、24ヵ月スケジュール群については、3692.5(同:3145.3~4334.9)と1335.7(同:1191.6~1497.3)で、標準スケジュール群に対する非劣性は認められなかった。Neuzil氏は「このベトナムの青年期女児において、HPVワクチン投与は標準または選択スケジュールにおいても、免疫原性、忍容性ともに良好であった。標準接種法(0・2・6ヵ月)と比較して、2つのスケジュール法(0・3・9ヵ月、0・6・12ヵ月)は、抗体濃度について非劣性であった」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4046.

移植患者へのサイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチン接種でウイルス血症が減少

腎/肝移植患者では、サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンの接種で誘導された液性免疫によってウイルス血症が減少することが、イギリス・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPaul D Griffiths氏らの検討で示された。サイトメガロウイルスによるウイルス血症がみられる同種移植患者では、ガンシクロビル(商品名:デノシン)あるいはそのプロドラッグであるバルガンシクロビル(同:バリキサ)の投与によりウイルスに起因する肝炎、肺炎、胃腸炎、網膜炎などの末梢臓器障害の予防が可能である。末梢臓器障害の発現はウイルス量と関連し、ウイルス量は既存の自然免疫の影響を受けるが、ワクチンで誘導された免疫にも同様の作用を認めるかは不明だという。Lancet誌2011年4月9日号掲載の報告。糖蛋白Bワクチンの免疫原性を評価する無作為化第II相試験研究グループは、イギリス・ロンドンのRoyal Free Hospitalの腎臓あるいは肝臓の移植術待機患者を対象に、MF59アジュバント添加サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンの、安全性と免疫原性を評価する無作為化プラセボ対照第II相試験を実施した。妊婦、直近3ヵ月以内に血液製剤(アルブミンを除く)の投与を受けた患者、多臓器の同時移植患者は除外した。サイトメガロウイルス血清反応陰性の70例と陽性の70例が、MF59アジュバント添加サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンあるいはプラセボを接種する群に無作為に割り付けられた。接種はベースライン、1ヵ月後、6ヵ月後に行い、移植が実施された場合はそれ以上の接種は行わないこととし、定量的real-time PCR法で血液サンプル中のウイルスDNAを解析した。サイトメガロウイルスのゲノムが200/mL以上(全血)の場合にウイルス血症と定義し、3,000/mL以上に達した患者にガンシクロビル5mg/kgの1日2回静注投与(あるいはバルガンシクロビル900mg 1日2回経口投与)を行い、2回の血液サンプルの検査でウイルスDNAが測定限界以下になるまで継続することとした。安全性と免疫原性の2つを主要エンドポイント(coprimary endpoints)とし、両群とも1回以上の接種を受けた患者についてintention-to-treat解析を行った。ワクチン群で、糖蛋白B抗体価が有意に上昇ワクチン群に67例(血清反応陽性例32例、陰性例35例)が、プラセボ群には73例(38例、35例)が割り付けられ、全例が評価可能であった。実際に移植を受けたのはワクチン群が41例(18例、23例)、プラセボ群は37例(22例、15例)であった。ワクチン群では、血清反応陰性例、陽性例ともに糖蛋白B抗体価がプラセボ群に比べ有意に上昇した。すなわち、血清反応陰性例の幾何平均抗体価(GMT)は、ワクチン群12,537(95%信頼区間:6,593~23,840)、プラセボ群86(同:63~118)、陽性例のGMTはそれぞれ118,395(同:64,503~217,272)、24,682(同:17,909~34,017)であり、いずれも有意差を認めた(いずれもp<0.0001)。移植後にウイルス血症を発症した患者では、糖蛋白B抗体価がウイルス血症の期間と逆相関を示した(p=0.0022)。血清反応陽性ドナーから移植を受けた血清反応陰性の移植患者では、ワクチン群がプラセボ群よりも、ウイルス血症の期間(p=0.0480)、ガンシクロビル治療日数(p=0.0287)が有意に短かった。著者は、「移植後の細胞性免疫の抑制を背景にサイトメガロウイルス症が起きるが、サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンで誘導された液性免疫によってウイルス血症が減少することが示された」と結論し、「ワクチン群で有意に増加した有害事象は、事前に健常ボランティアで確認したとおり、注射部位の疼痛のみであった。それゆえ、本ワクチンは移植患者においてさらなる検討を進める価値がある」としている。(菅野守:医学ライター)

4047.

男性の発がん性HPV感染率は30%、パートナー数と密接に関連

 男性の発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)感染率は30%に及び、性交パートナー数が多いほど感染率が高く、かつウイルス消失率が低いことが、アメリカ・H Lee MoffittがんセンターのAnna R Giuliano氏らの検討で示された。HPVは男性の陰部疣贅やがんの原因となるが、男性におけるHPVの自然経過はほとんど知られていないという。HPVは男性から女性に感染することで女性の疾患リスクに大きな影響を及ぼし、男性の性行動は女性パートナーのHPV感染率や関連疾患にも影響することから、男性におけるHPV感染状況の解明が急がれている。Lancet誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月1日号)掲載の報告。3ヵ国の男性のHPV感染状況を検討する前向きコホート試験 研究グループは、男性性器のHPV感染の発生状況を検討し、関連因子を評価する前向きコホート試験を実施した。 ブラジル、メキシコ、アメリカに居住するHIV陰性で、がんの既往歴がない18~70歳の男性を対象とし、フォローアップ期間中に6ヵ月ごとの検査が行われた。亀頭冠状溝、亀頭、陰茎、陰嚢から試料を採取し、HPV遺伝子型の評価を行った。男性のHPVワクチン接種の費用効果モデル開発に有用な可能性 2005年7月~2009年9月までに4,299人(ブラジル:1,443人、メキシコ:1,429人、アメリカ:1,427人)が登録された。そのうち、2006年12月までに登録され少なくとも2週間以上のフォローアップを完遂した1,159人の男性(平均年齢32.1歳、フォローアップ期間中央値27.5ヵ月)について解析を行った。 発がん性および非発がん性を含むHPV感染率は50%(584/1,159人)であり、13種の発がん性HPVへの感染は30%(345/1,159人)に認められた。新規のHPV感染率は、1,000人・月当たり38.4(95%信頼区間:34.3~43.0)であった。 多変量解析を行ったところ、発がん性HPV感染率は、女性の性交パートナー数が0~1人の男性に比べ、10~49人の男性(ハザード比:2.18、95%信頼区間:1.53~3.12)および50人以上の男性(同:2.40、1.38~4.18)では2倍以上に達しており、有意な差が認められた。また、直近の3ヵ月間に男性の肛門性交パートナーがいなかった男性に比べ、3人以上のパートナーがいた男性では発がん性HPV感染率が有意に高かった(同:2.57、1.46~4.49)。 発がん性/非発がん性HPV感染者の感染期間中央値は7.52(同:6.80~8.61)ヵ月であり、HPV-16感染者では12.19(同:7.16~18.17)ヵ月であった。 発がん性HPVの消失率は、女性の性交パートナー数が0~1人の男性に比し50人以上の男性で有意に低く(ハザード比:0.49、95%信頼区間:0.31~0.76)、アメリカ在住の男性よりもブラジル在住男性(同:0.71、0.56~0.91)、メキシコ在住男性(同:0.73、0.57~0.94)は有意に低値を示した。また、発がん性HPVの消失速度は加齢に伴って迅速化した(同:1.02、1.01~1.03)。 著者は、「男性の性器HPV感染は3ヵ国のどの年齢層においても同様に高率であり、新規感染やウイルス消失はパートナーの性別にかかわらずその数と密接な関連を示した」とし、「これらのデータは、男性のHPVワクチン接種に関する現実的な費用効果モデルの開発に有用と考えられる」と指摘している。

4048.

HIV感染の母親から生まれた非感染乳児、Hibなど抗体低値だがワクチン投与反応は良好

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染する母親から生まれたHIV非感染の乳児は、出生時のインフルエンザ菌b型ワクチン(Hib)や百日咳、肺炎球菌などの抗体値が、HIV非感染の母親から生まれた乳児に比べ、低いことが明らかになった。同時に、そうした乳児の、ルーチンのワクチン投与に対する反応は良好だったことも示されたという。英国Imperial College LondonのChristine E. Jones氏らが、南アフリカで100人超の妊婦とその乳児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。母親がHIV感染の乳児、Hib、百日咳、肺炎球菌、破傷風の抗体値がいずれも低値Jones氏らは、2009年3月3日~2010年4月28日にかけて、南アフリカの首都ケープタウン近郊の旧黒人居住区であるカエリチャで、HIV感染・非感染の妊婦109人とその乳児について、地域ベースのコホート試験を行った。対象者のうち、HIVに感染する母親は47人(43%)だった。出生後に検査を行った幼児でHIV非感染だった100児について、出生時と出生後16週間の時点で抗体値を調べ比較した。これら被験者100児のうち、HIV感染の母親から生まれた乳児は46児だった。出生時の検査では、母親HIV感染群は非感染群に比べ、Hib(母親HIV感染群:0.37mg/L、 vs. 非感染群:1.02 mg/L、p<0.001)、百日咳(同16.07 FDA U/mL vs. 36.11 FDA U/mL、p<0.001)、肺炎球菌(同17.24mg/L vs. 31.97 mg/L、p=0.02)、破傷風(同0.08 IU/mL vs. 0.24 IU/mL、p=0.006)の抗体値が、いずれも低かった。ルーチン予防接種後の百日咳と肺炎球菌の抗体値は、母親HIV感染群の方が高値母親についても比較したところ、HIV感染群(46人)は非感染群(58人)に比べ、Hib(HIV感染群:0.67mg/L vs. 非感染群1.34mg/L、p=0.009)と、肺炎球菌(同33.47mg/L vs. 50.84mg/L、p=0.03)の抗体値は低かった。百日咳や破傷風の抗体値については、両群で同等だった。一方で、母親がHIV感染者の乳児はルーチンの予防接種に対する反応は良好だった。百日咳(母親HIV感染群:270.1 FDA U/mL vs. 非感染群:91.7 FDA U/mL、p=0.006)と肺炎球菌(同47.32mg/L vs. 14.77mg/L、p=0.001)については、母親HIV感染群の幼児の方が、接種後の抗体値が高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4049.

教授 富田剛司 先生の答え

緑内障手術を受けた患者さんの細菌感染について日本緑内障学会からの災害時の注意を読みました。緑内障手術を受けた患者様では、衛生環境の悪化や抵抗力の低下によって細菌感染(濾過胞炎・眼内炎)を生じる危険があります。とありますが、術後どのくらいの期間までを指すのでしょうか?術後1年以上であれば危険がないのか、そもそも緑内障手術を受けた患者さんは常に細菌感染のリスクがあるのか?教えていただけると助かります。私の地域でも被災地からの避難者(疎開?)が増えてきました。整形外科(クリニック)をやっていますが、できることは全てやって差し上げようと他の領域についても勉強を始めた次第です。初歩的なことかとは思いますが宜しくお願いします。緑内障手術の中でも術部位に濾過胞が形成される線維柱帯切除手術後の、濾過胞関連感染症の発症頻度は、報告にもよりますが、1から3%とされており、感染のリスクは濾過胞が形成されている限り(これがあるために眼圧が下がるのですが)続きます。濾過胞の壁(結膜)が非常に薄くそこから房水が漏出しているような状況の場合、濾過胞が眼球下方に形成されている場合は、特に感染のリスクは高くなります。逆に、十分に壁の厚い(厚い結膜で覆われている)濾過胞の場合はリスクはほとんど無くなります。眼科医にすぐ診察を受けられないような状況下で緑内障術後の患者さんがいらした場合は、点眼中止が可能かどうかの判断は難しいと思いますので、念のため抗生物質の点眼薬を継続して使用していただく方がよいと思います。 眼底三次元画像解析装置について眼底三次元画像解析装置については3,4年前に記事を読んだ記憶があります。(確か富田先生の記事でした。)まだ完成に至ってないとのことですが、完成度としてはどの程度まできているのか教えてください。眼底三次元画像解析装置は、すでに検査技術料が保険収載されており、そういう意味では眼科診療に一般的に受け入れられています。完成に至っていないとの記事内容ですが、画像解析装置のみを用いて緑内障を100%自動診断するには至っていない、という意味で書きました。画像解析装置の使用目的として、健康診断などで眼科医がいないような状況下においても緑内障を早期に自動診断することが究極的な目標の一つに挙げられています。しかし、今のところ装置のみによる診断精度は80%から90%くらいであり、現時点では画像解析結果の最終判断は眼科専門医に委ねられるべきであると考えています。心身不安からくる疾患(眼科領域)について災害時などでは心身不安から急性緑内障発作をおこす方がいるとのことですが、他にも気をつけるべき疾患はありますでしょうか?眼科分野において、緑内障の急性発作以外に急激に発症し早急な治療を要する疾患としては、網膜剥離、網膜中心動脈あるいは静脈閉塞症、視神経炎(眼を動かすと眼の奥が痛いなどの症状を伴って、強い視力低下を自覚する)、ぶどう膜炎の発作(ベーチェット病など)等々がありますが、自覚症状としては通常、眼の症状に限定されるので、少なくとも眼疾患であることは比較的分かりやすいと思います。災害時の心身不安ということを考えた場合、逆に目に関する不定愁訴のようなものが増える可能性もあると思います。緊急性を見分ける検査としては、やはり視力検査が重要と思いますので、どこかに視力表があるとよいと思います。この場合、メガネを掛けた状態で矯正視力を評価するのが重要な点です。急性緑内障先生の記事大変勉強になりました。大橋病院さんで、救急に運ばれてきて、結果、急性緑内障だったケースは年間何例くらいあるのでしょうか?私は、強い頭痛、吐き気を訴えてきた患者さんは、まず近くの脳神経外科に直ぐ行かせていました。今のところ、結果急性緑内障と診断されたことはないのですが、先生の記事を拝見する限りでは、眼科もある病院を紹介した方がよいのでは?と考え直しているところです。緑内障の発作であると最初はわからなくて体調不良として救急を受診される方はさすがに少なくて、ほとんどがすでに眼科医を受診された上で緊急紹介されるか、救急で受診されても眼の症状ということで最初から眼科に廻されてくることが多いです。大橋病院で救急に運ばれてきて、最初はわからなくて脳外科的検査も受けた後、結果、急性緑内障だったケースは私の記憶では、この5年間でお一人くらいだったと思います。なので、ほとんどの場合は問題とはならないと思いますが、眼科医が眼をみて初めて、「あ、緑内障の発作だ」という事例はありますので、やはり、可能であれば眼科もある施設にご紹介されるのがベストと考えます。40歳からの眼科健診先生が推奨されている「40歳からの眼科健診」は私も賛成です。先生も他でご指摘されているように、生活習慣病に焦点があてられている住民健診では眼科健診を取り入れることは難しい、と考えますが…。しかし一方で、全ての自治体が動き、住民健診の中に眼科健診が取り入れられた場合、現状の眼科医でさばけるのでしょうか?緑内障の診断は難しいと聞きます。健診を標準化できるように眼底三次元画像解析装置など開発されているかと思いますが、住民健診の場全てにその装置を配備することは難しいのでは?と思います。この点について先生の見解をお聞かせいただければと思います。先生のご指摘はまったくその通りだと思います。先の眼底画像解析装置のご質問にもお答えしましたが、画像解析装置での眼底スクリーニングには限界がありますので、住民健診の場で使用できる現状にはまだ至っていません。現時点で私が考える最も効率的な緑内障を含めての眼底疾患スクリーニング法は、無散瞳眼底写真撮影です。考え方としては、胸部レ線による疾患のスクリーニングに近いと思います。眼底カメラの価格は300から500万円くらい。熟練した技師であれば眼底写真撮影は数分ですみますので、畳一畳分くらいの暗室があればOKです。写真はカラープリント(あるはスライド)にして眼底読影医(眼科専門医が望ましい)が判定することになります。したがって、健診の場に眼科医がかならずしも常駐する必要はありません。問題は、先生もご指摘のように、眼科医が対応できるのか、ということです。眼底読影という点については、各健診地区で読影の拠点施設(眼科医会の協力が必要か)を確立できれば良いように思いますが、スクリーニングで精密検査が必要となった場合が問題となります。緑内障で言うと有病率は5%であり、おそらく日本人全体で350万人くらいの緑内障が患者いると想定されます。日本眼科学会に登録している眼科医は現在1万5千名くらいですので、単純計算で眼科医すべて(後期研修医も含め)が200人強の緑内障患者を受け持つことになります。残念ながらこれは眼科医からみれば無理な数字です。誰が緑内障を診るのか、ということについては今後の議論を待たねばなりませんが、"40歳以降の目の健診"については、現在は会社の健康診断や各病院の人間ドックメニューに眼底写真撮影を取り入れてもらうようにすることから健診者を増やしていければと思っています。手術時の患者さん対応について目の手術となると患者さんの不安は大きく(当然ながらメスが近づいてくるのが見えるんですよね?)、しかも局所麻酔なので、周囲の音も聞こえ、ますます不安が大きくなるのかと想像します。手術の時に患者さんをリラックスさせるために行っていることや、気をつけていることがあればご教示ください。大変重要なご質問です。手術前の患者さんをリラックスさせるための手段として、多くの眼科施設でBGMを流しています。私の施設でもクラッシックやヒーリング系の音楽を流すようにしています。子供や若い患者さんには、あらかじめ自分の好きなCDなどを持ってきてもらって、それを流しています。また、洗眼などの手術準備中はできるだけ声を掛けながら、場合によっては世間話をしながら、患者さんの緊張をほぐすようにしています。富田先生は最初から眼科医を目指していたのでしょうか?富田先生は最初から眼科医を目指していたのでしょうか?また眼科医を目指そうと思ったきっかけなどあれば教えていただければと思います。私は学生の頃は、循環器内科に興味を持っていました。心電図を読むのが好きで、先生に褒められたのも一因です。ただ、眼科のポリクリの時に、アメリカのNIHでの留学から帰ってきたばかりの講師の先生が、眼科の疾患の説明はそっちのけで、人間の眼と、魚やカタツムリの眼の構造上の違いや類似点を楽しそうに話してくれたのが強い印象となって、父が眼科医であることもありましたが、眼科医の道を選びました。日本人と欧米人の眼の違い外科系の先生からは日本人と欧米人では体質が違う(肉食系の欧米人は血がドロドロ、でも止まりやすい、日本人は臓器が小ぶりなので欧米人よりも手術に気を遣う)ので、注意するようにと教わりました。眼もそのような質の違いがあるのでしょうか?(医学生)確かに日本人の眼と欧米人の眼で違いがあるように感じます。眼球は、眼窩という頭蓋骨のくぼみの中に収まっていますが、欧米人の眼窩は広くゆったりしており、日本人の眼窩はそれよりは狭い感じがあります。眼球の大きさはさほど違わないので、日本人の眼は眼窩周囲の組織に圧迫されているような感じがあります。したがって、硝子体圧が高めです。これは、白内障手術などをする場合、水晶体がせりあがってくる感覚があり、やや、手術がやりにくいと感じる場合があります。ただ、日本人の眼で慣れてしまうと、逆に白人の手術をする場合、眼球内がふにゃふにゃしている感じがあります。したがって、白人の眼はそっと丁寧に扱う必要性があるように思います。ただ、これは微妙な違いなので、ものすごく問題になることはありません。眼科医以外が眼科のことを学べる取り組み「どの科の専門であっても医師ならば必ず眼科の講義は受けているはずですが、眼の疾患がおざなりになっている現状を危惧せずにはいられません。」全くその通りです。私も講義を受けた記憶はありますが…。数年前から大学を離れ、診療所で患者を診るようになり、今更ながら後悔しています。プライマリー・ケア医に役立つ眼科セミナーや、勉強会など、眼科医以外が眼科のことを学べる取り組みがあれば参加したいと思います。もしご存知でしたらご教示お願いします。真摯なご姿勢に敬意を表します。大変重要なポイントをご指摘いただいたと思います。残念ながら、日本眼科学会や眼科医会には、他科の医師を対象とした眼科プライマリー・ケアに関する講習プログラムはこれまで存在しておりません。今回のような大震災を経験しますと、専門科を超えて医師が最低限知っておくべきプライマリー・ケアの知識と技量の生涯教育の必要性を痛感します。他科医師を対象とした眼科のプライマリー・ケア―のセミナーに関して、一度、学会に提言してみたいと思います。海外と日本の違い富田先生は海外留学のご経験も豊富とのこと。富田先生が思う、世界で一番眼科医療が進んでいる国はどこでしょうか?またその理由もご教示ください。失明率(一定人口中の失明者の数)や人口あたりの眼科医の数、眼科診療器械の普及度、眼科手術の件数、等々でその国の眼科医療を評価した場合、日本の眼科医療が実は世界一という結果が出ています。これは、日本の保険医療制度が大きく貢献しているとも言われていますが、日本の眼科医の質の高さを示す、誇るべきことであると思っています。近年、岐阜県の多治見市と沖縄の久米島で緑内障に関する疫学調査が行われましたが、それに付随するデーターとして、両地域間の失明率に違いはないことが明らかになりました。このことは、すくなくとも眼科医療に関しては、日本のどの地域であっても遜色なく普遍的に行われていることが示されており、日本の眼科医療が世界一であることを裏付けるものであると思います。総括大変多くの方からご質問をいただき感激しました。今回の質問にもありましたが、何と言っても、東日本大震災に関することで、眼科医療の重要性が再認識されていることをお伝えしたいと思います。今回、被災地から点眼薬やコンタクトレンズ用品、眼科医の不足を訴える声が大きいと聞きます。災害地が広範囲にわたるため、とりあえず近隣の眼科医を受診するということが出来なくなっているのです。災害では救急救命が重要なことは言うまでもありませんが、避難生活が長期化しだすと、やはり慢性疾患や、視覚などの生活の質を左右する要素に関するする対応も重要であることが痛切に感じられました。現在、産科医や小児科医の不足が問題になっていますが、実は、眼科医の数も年々減っています。今後日本が超高齢化社会を迎えるにあたり、物がみえているという最低限の生活のクオリティーを守るべき人がもっと増えてもいいのではないかと思っています。教授 富田剛司 先生「全身の疾患が眼に現れることは明確 眼を診るのは診断の第一歩である」

4050.

農家で育つ子どもは喘息、アトピーの有病率が低い:ドイツ

微生物に曝される環境下であることと、喘息や花粉症のようなアレルギー性疾患の発症が少ないこととの関連が繰り返し報告されているが、それらはロシアとフィンランドというように近接する生活環境が異なる集団からの知見であった。そこでドイツ・ミュンヘン大学小児病院のMarkus J. Ege氏ら「GABRIELA Transregio 22」研究グループは、同一地域に住んでいる子どもで、農家の子どもとそれ以外の子どもとの喘息・アトピー有病率を比較し、微生物に曝されることとの関連を調べた。NEJM誌2011年2月24日号掲載より。農家とそれ以外の子どもの喘息・アトピー有病率と微生物曝露のデータを解析研究グループは、二つのスタディデータを用いて、農家とそれ以外の子どもの喘息・アトピー有病率と微生物曝露について検討した。一つは「PARSIFAL」(アレルギー予防―農業とアントロポゾフィー〈人智学〉を基盤とした生活環境下にいる子どもの感作の危険因子)のデータ。PARSIFALでは、マットレスダストをサンプルに、細菌DNAのスクリーニングがSSCP法(培養法では測定できない環境細菌を検出するための解析法:一本鎖高次構造多型解析)にて行われた。もう一つは「GABRIELA」(欧州共同体における喘息の遺伝的・環境要因特定のための集学的研究「GABRIEL」の先端研究)のデータで、GABRIELAでは、子ども部屋の降下ダストをサンプルに、培養法にて細菌真菌の分類評価が行われた。スタディ母集団は、PARSIFALはドイツ南部のバイエルン地方の6~13歳の児童6,843人、GABRIELAはオーストリア・ドイツ南部・スイスの6~12歳の児童9,668人だった。そのうち、両スタディのバイエルン地方に住む子どものデータ(PARSIFAL:489例、GABRIELA:444例)を解析した。曝される環境微生物が多様なほど、喘息リスクが低い結果、両スタディとも、喘息およびアトピーの有病率が、バイエルン地方の農家で暮らす子ども(PARSIFAL:52%、GABRIELA:16%)の方が、対照(農家以外の子ども)群と比べて低かった。喘息に関する補正後オッズ比は、PARSIFALでは0.49、GABRIELAでは0.76、アトピーに関する補正後オッズ比は両スタディ間でより開きが大きく、それぞれ0.24、0.51だった。また、農家の子どもの方が多様な環境微生物に曝露されていた。そして曝露される微生物が多様であるほど、喘息リスクが低くなるという逆相関の関連が認められた(PARSIFALでのオッズ比:0.62、GABRIELAのオッズ比:0.86)。さらに、特定の微生物への曝露について、喘息リスクとの逆相関が認められた。その微生物は、真菌分類群ユーロチウム属の種(補正後オッズ比:0.37)や、リステリア菌、桿菌、コリネバクテリウム属その他の細菌種(補正オッズ比:0.57)などだった。Ege氏は、「農家で暮らす子どもは、それ以外で暮らす子どもより広範な微生物に曝露されていた。そしてこの曝露が、喘息と農家で育つ子どもとの逆相関の関連について大部分の理由づけとなっている」と結論、また今後は、どのような種の微生物曝露が喘息予防に結びつくのかを特定するための試験に挑んでいくつもりだとまとめている。(武藤まき:医療ライター)

4051.

吸入コルチコステロイド連日投与、小児の軽症持続型喘息に有効:TREXA試験

小児の軽症持続型喘息の治療では、増悪の抑制効果は吸入コルチコステロイド(ICS)の連日投与が優れることが、米国・アリゾナ大学のFernando D Martinez氏らが実施したTREXA試験で示された。軽症持続型喘息の小児における症状のコントロールや増悪の抑制に望ましい治療法として、低用量ICS連用が推奨されているが、コントロール良好でも増悪する例が存在し、無症状の期間が長期に持続すれば服薬の遵守が極めて困難となる。1)コントロール良好例におけるICS連用の中止は増悪のリスクを増大させるか、2)レスキュー治療としてのICS/アルブテロール(別名サルブタモール:β2アドレナリン受容体刺激薬)併用とアルブテロール単独の増悪抑制効果が、ICS連用の有無で異なるかという課題は未解決だという。Lancet誌2011年2月19日号(オンライン版2011年2月15日号)掲載の報告。4つの治療群を比較する2×2ファクトリアル・デザインのプラセボ対照無作為化試験TREXA試験の研究グループは、小児の軽症持続型喘息に対するレスキュー治療としてのICS(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)の有用性を評価する2×2ファクトリアル・デザインの二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。2007年1月~2009年5月までにアメリカの5施設から5~18歳の軽症持続型喘息の症例が登録され、4週間の導入期間の後、以下の4つの治療群に無作為に割り付けられ、44週間の治療が行われた。1)併用群:ベクロメタゾン1日2回+ベクロメタゾン/アルブテロールによるレスキュー治療、2)ベクロメタゾン連用群:ベクロメタゾン1日2回+プラセボ/アルブテロールによるレスキュー治療、3)レスキューベクロメタゾン群:プラセボ1日2回+ベクロメタゾン/アルブテロールによるレスキュー治療、4)プラセボ群:プラセボ1日2回+プラセボ/アルブテロールによるレスキュー治療。ベクロメタゾン治療は1パフ(40μg)を朝夕2回吸入し、レスキュー治療は症状が軽減するまでアルブテロール(180μg)2パフ当たりベクロメタゾン2パフとした。主要評価項目は経口ステロイド薬を要する初回増悪までの期間、副次的評価項目はICSの副作用である成長障害の指標としての線形成長とし、intention-to-treat解析を行った。増悪率、治療失敗率は連用群が最も低い843例が登録され、事前に規定された判定基準に従って導入期間中に555例が除外された。残りの288例のうち、71例が併用群に、72例がベクロメタゾン連用群に、71例がレスキューベクロメタゾン群に、74例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。増悪率は、プラセボ群の49%(95%信頼区間:37~61)に比し、ベクロメタゾン連用群が28%(同:18~40、p=0.03)、併用群が31%(同:21~43、p=0.07)、レスキュー群は35%(同:24~47、p=0.07)といずれも低下しており、連用群では有意差を認めた。治療失敗率は、プラセボ群の23%(95%信頼区間:14~43)に比べ、併用群は5.6%(同:1.6~14、p=0.012)、連用群は2.8%(同:0~10、p=0.009)、レスキュー群が8.5%(同:2~15、p=0.024)であり、いずれも有意に良好であった。線形成長の平均値は、ベクロメタゾンを連用した併用群と連用群はプラセボ群に比べて1.1cm(SD 0.3)有意に低下した(p<0.0001)が、連用していないレスキュー群は0.3cm(SD 0.2)の低下でありプラセボ群と同等であった(p=0.26)。重篤な有害事象は2例(連用群の1例でウイルス性髄膜炎、併用群の1例で気管支炎)にのみ認められた。著者は、「軽症持続型喘息の小児にはアルブテロール単独によるレスキュー治療は行うべきではなく、増悪の予防に最も効果的な治療はICS連日投与である」と結論し、「レスキューとしてのICSをアルブテロールと併用する治療は、アルブテロール単独によるレスキュー治療に比べ増悪率が低い点で有効性が高く、コントロール良好な患児に対するステップダウン治療として有効な可能性がある。それゆえ、ICS連用は回避可能であり、それによる成長障害などの副作用も避けられると考えられる」と考察している。(菅野守:医学ライター)

4052.

新型インフルエンザワクチンの安全性、市販後調査で確認:中国

中国・疾病管理予防センターのXiao-Feng Liang氏らは、2009年9月21日に優先すべき集団を対象に、新型インフルエンザ[インフルエンザA(H1N1)ウイルス]感染に対するワクチン(異なるメーカー10社から入手)接種が開始された予防接種プログラムの、安全性に関する評価を行った。結果、同プログラムにおいて有害事象例は観察されず、ギランバレー症候群のリスク増加のエビデンスも認められなかったと報告した。NEJM誌2011年2月17日号掲載より。接種後の有害事象発生率は90件/100万回研究グループは、インフルエンザA(H1N1)ワクチン接種後の有害事象を調査するため、受動的サーベイランス計画を作成し、医師または予防接種提供者に対し、ワクチン接種者数とすべての有害事象数を、地元の疾病管理予防センター(CDC)に報告するよう求めた。報告データは、オンラインで全国予防接種情報システム(National Immunization Information System)内の全国予防接種後有害事象追跡評価システム(National Adverse Event Following Immunization Surveillance System)に集められ、中国CDCにより検証・分析された。検証・分析されたデータは、2010年3月21日までに集まったものであった。結果、ワクチン接種は、2009年9月21日から2010年3月21日まで合計8,960万回行われ、ワクチン接種後の有害事象の発生は8,067例で、接種100万回当たり90.0件の発生率だった。年齢別有害事象発生率は、60歳以上の100万回当たり31.4件から、9歳以下の100万回当たり130.6件まで幅があった。ワクチンのメーカー別の発生率は、100万回当たり4.6~185.4回まで幅があった。懸念される重篤な有害事象は低率報告された8,067件の有害事象のうち、6,552件(81.2%、発生率は100万回接種当たり73.1件)はワクチン反応であることが確認された。また8,067件のうちの1,083件(13.4%、同100万回当たり12.1件)は、発生が稀で、より重篤なものであった。その大半(1,050件)は、アレルギー性反応だった。ギランバレー症候群は11例報告されたが、発生率は接種100万回当たり0.1件と低率で、中国における背景発生率より低かった。(朝田哲明:医療ライター)

4053.

4価HPVワクチンは男性にも有効

 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に対するHPVワクチン接種は、男性に対しても有効で、外性器病変の予防に有効であることが示された。米国H. Lee Moffittがんセンター研究所のAnna R. Giuliano氏らが16~26歳の男性を対象に、女性において持続感染や生殖器疾患に有効な4価ワクチンの有効性を検討した試験の結果による。少年および男性の生殖器HPV感染の割合は女性と同等だが、免疫応答に性差があり、自然感染では男性の方が抗体の力価は低い(HPV血清陽性:女性17.9%、男性7.9%)という。NEJM誌2011年2月3日号掲載より。18ヵ国・16~26歳男性4,065例を対象に無作為プラセボ対照二重盲検試験 Giuliano氏らは、少年および男性における、4価ワクチン(HPV 6型、11型、16型、18型に対して活性)の安全性と、外性器病変と肛門性器HPV感染の予防における有効性について、無作為プラセボ対照二重盲検試験を行った。試験には18ヵ国から、16~26歳の健康な4,065例が登録された。 主要有効性評価項目は、4価HPVワクチンが、HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変の発生率低下を示すこととされた。有効性解析は、per-protocol集団(ワクチン接種を3回受けており登録時に関連HPVに非感染)と、intention-to-treat集団(ワクチンもしくはプラセボ接種を受けており、登録時のHPV感染状態は不問)を対象に行われた。intention-to-treat解析における外性器病変への有効率は60.2% intention-to-treat集団における外性器病変の発生率は、ワクチン群36例に対し、プラセボ群は89例で、ワクチン有効率は60.2%(95%信頼区間:40.8~73.8)だった。HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変に対する有効率は65.5%(同:45.8~78.6)だった。 per-protocol集団においては、HPV 6、11、16、18に関連する外性器病変に対する有効率は90.4%(同:69.2~98.1)だった。 安全性に関しては、注射部位疼痛が、ワクチン接種群の方がプラセボ群に比べて有意に高頻度に認められた(57%対51%、P<0.001)。

4054.

2009年新型インフルエンザワクチンの安全性と有効性:中国・北京

中国・北京における、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)ワクチン接種の安全性と有効性について、安全性プロファイルは季節性インフルエンザワクチンと同等であり、また新型インフルエンザウイルス感染が確定した学童期の子どもで有効だったとの報告が、北京疾病管理予防センターのJiang Wu氏により発表された。中国では、2009年9月以降に単価ワクチンが利用可能となり、ただちに当局による北京での集団ワクチン接種のプログラム実行が指示されたという。Wu氏らは、同ワクチンの安全性と有効性について評価を行った。NEJM誌2010年12月16日号掲載より。北京のワクチン接種者、小児・成人9万5,244例を評価Wu氏らは、2009年9月21~25日の5日間で、PANFLU.1ワクチン(Sinovac Biotech社製)の接種を受けた、北京の小児および成人合計9万5,244例を対象に評価を行った。ワクチンは非アジュバンドの赤血球凝集素抗原15μg含有単価スプリットビリオンワクチンであった。評価は、強化受動サーベイランスシステム(日記)とアクティブサーベイ(電話インタビュー)を用いて、接種後の有害事象について行われた。また神経疾患のアクティブサーベイを、市内全病院で行った。ワクチン有効性の評価は、学生を対象に行われ、集団予防接種の2週間後から報告された、2009年新型インフルエンザウイルス感染の検査確定例の発生率を、ワクチン接種群と非接種群とで比較した。推定ワクチン有効率は87.3%結果、2009年12月31日時点で、接種者の有害事象の報告例は193例あった。病院ベースのアクティブサーベイの結果では、集団予防接種後10週間以内で、362例の新規神経疾患が発生していたことが明らかになった。そのうち27例がギラン・バレー症候群であった。神経疾患の発症例にワクチン接種者はいなかった。学生の評価は、245校を対象に行われた。集団接種を受けた学生は2万5,037例、非接種の学生は24万4,091例であった。そのうち2009年10月9日~11月15日の間に、2009年新型インフルエンザ感染確定症例の発生率は、接種学生群では10万人あたり35.9例(9/25,037例)、非接種学生群は同281.4例(687/244,091例)であり、推定ワクチン有効率は87.3%(95%信頼区間:75.4~93.4)であった。(武藤まき:医療ライター)

4055.

抗菌性創傷被覆・保護材「アルジサイト銀」新発売

 スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社は、本邦初のアルギン酸カルシウム繊維に銀イオン効果をプラスさせた抗菌性創傷被覆・保護材『アルジサイト銀』を2011年1月1日に発売した。アルジサイト銀は滲出液と細菌の両方をコントロール アルジサイト銀は、創傷の治癒を遅らせる過剰な滲出液と細菌の両方をコントロールできる製品。天然素材由来のアルギン酸繊維が創傷の滲出液を吸収し、ゲル化することにより創傷に適切な湿潤環境を提供し、治癒を促進するという。また、滲出液の吸収と同時に放出された銀イオンには、滲出液と共に被覆材内に流入した細菌や創傷接触面の細菌に対し抗菌効果を発揮することにより、創傷を清浄化し、治癒を促進する効果があるという。また、血液凝固第IV因子であるカルシウムイオンの効果も期待できるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://wound.smith-nephew.com/jp/node.asp?NodeId=4117

4056.

教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

1981年滋賀医科大学卒業後、千葉大学医学部第二内科入局。アイルランド・トリニティ大学留学。2003年東邦大学医学部付属佐倉病院内科助教授、2004年同院消化器センター長、2006年より現職。日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会認定専門医。難病「潰瘍性大腸炎」「クローン病」が日本で急増中「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、日本ではまだ歴史が浅い病気で、元々は欧米諸国の白色人種に多いことで知られています。特に北欧・西欧・北米地域で広がりをみせており、クローン病は近代化された地域の人たちに多く発症している病気であると認知されています。しかし、今、日本でこれら両疾患が急増しています。当院の診療科では約800人以上の患者さんを診療しており、外来には多い時で1日約100人位の患者さんが来院します。患者さんの絶対数は欧米諸国に比べまだまだ少ないのですが、増加率が他の国に比べ高いのが特徴です。私は日本人を取り巻く食生活、ライフスタイル、衛生環境などの変化が影響していると考えています。我々が最近注目している発症要因の一つに、腸内細菌のバランスがあります。まだ研究している段階ですが、腸というのは実は複雑な臓器で腸内の各種要因、特に細菌叢のバランスが重要で、それらは大脳へも強く影響している可能性もあることがわかってきました。最近話題にされるメタボリックシンドロームですが、その病因にも腸が関係している可能性があり、腸の働きがクローズアップされています。私たち人間の体は腸の働きによって健康を保っているとも考えられているのです。よって、我々は「潰瘍性大腸炎」「クローン病」と、腸内細菌叢のバランスとの因果関係に注目しているのです。難病相談、講演活動の日々が臨床開発のヒントに十数年前まで、千葉県には「潰瘍性大腸炎」「クローン病」を専門に診察する医師がいなかったこともあり、現在では急増する患者さんに対応が追いつかない医療機関が多くあります。また、最近では治療方法の選択肢が多くなったため、治療の質を上げてもらうために、それぞれの治療成績、治療戦略、対処方法などについて講演して回っている状況です。また、講演活動とともに地域での難病相談にも20年近く携わっています。県内全域を一人で回っていたこともありました。講演・難病相談とともに年々回数が増加していますが、今では後輩の専門医が参加してくれるようになり、手分けして対応できるようになりました。悩み相談に応じることにより、多くのことを学ぶことができました。病院の外来では、多い時で1日100人の患者さんを診察しなければならないため、残念ながら一人の患者さんに多くの時間を割くことができません。一方、難病相談では一人ひとりに時間を割けるため、様々なことを知ることができます。その中から研究開発のヒントを得たことは数多く、まさに臨床は研究の基礎でもありますね。患者さんには情報を開示して治療の道を迷わせない「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」はとても手ごわく、またきめ細かい診断が必要です。そのため私は内視鏡を用いた検査から診断まで、一貫して自分で行うようにしています。その他はチームで治療にあたることになりますが、良質のチーム医療を行うためにはスタッフ同士の意思統一が必要不可欠です。また、最近ではインターネット上に疾患の情報が氾濫しているため、疾患や治療方法に対する誤った認識をもたらしているようです。そのため、私は医師をはじめ、看護師、薬剤師、栄養士と患者さんたちが一堂に会する会合をもち、栄養・薬剤・治療などに関する正確な情報開示を行い、当院での治療方針を説明し共有してもらうようにしています。スタッフの意思を統一し、また患者さんの気持ちをきちんと落ち着かせるためにも、このような会合を大切にしています。海外研究留学でクローン病患者と再度出会ったことで私が入局した頃は、海外留学をして欧米から学ぶというスタイルがほとんどでした。私はEPAの抗炎症効果に関する共同研究をすることになり、アイルランドに研究留学しました。研修医として初めての受け持ち患者さんがクローン病だったのですが、不思議な御縁で、留学でクローン病とまた出会うことになりました。留学するまで、クローン病はまだまだ日本では珍しい病気でしたのであまり意識したことはありませんでした。また、それまでの私は、当時の先端医療をリードしていた内視鏡が好きで、特にがん領域での内視鏡治療に携わっていきたいとの強い思いがありました。しかし、この留学で2年間内視鏡から離れたこと、多くのクローン病の患者さんたちに出会い、おそらくこれから日本でも増加する病気の一つになるだろうと思うようになったことから、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」の臨床研究をしていきたいと考えるようになりました。そして帰国後は、困っている難病患者さんを前にして留学での経験を生かして貢献したいという気持ちが日に日に大きくなり、今に至っています。今の若い人たちは海外留学を希望する人が少ないと聞いていますが、自分の専門分野がどこで一番臨床研究されているかと考えると、やはり留学は重要な位置を占めるのではないでしょうか。そういった意味でも後輩たちに留学を勧めています。海外の生活は苦労が多いのですが、その苦労が人生のプラスにもなりその後の医師としてのキャリアに大いに役立つと思います。若い人にはもっと外へ出かけ、知識や技術を磨くきっかけにして欲しいと考えています。グローバルに活躍できる医療現場がここにはある今現在、当院では世界同時進行で、新薬の臨床製薬治験を行っています。病院のある佐倉市は都市部からは離れていますが、この地で欧米諸国と肩を並べられる、最先端の診療体制を構築することができたと自負しております。私の場合、身近にこの分野の先輩・指導者はいませんでした。そのため積極的に外へ出かけていき専門医の先生たちとコミュニケーションを取る、海外に出向き最新治療の情報を入手するなどして勉強することが多かったです。特に難病の専門分野を極めるにはこれが一番大事だと私は思います。医師としてこの分野で頑張るという強い思い、志は高く持ち、視線は患者さんと同じでいるというのが私のいつも信条としていることです。患者さんと同じ目線で病気を診ていると、わからなかったこともみえてくるものです。医師は自分の思い込みだけで診療をしていては駄目ですね。困っている患者さんは大勢います。私が若い時は欧米からただ学ぶだけでしたが、今の日本は他国をリードすることができると思います。目の前で困っている患者さんのためにも、今まで以上に世界に先駆けた臨床研究を行って欲しいと思うのです。最近、診療など上手くこなせる若い医師は多いのですが、一歩踏み出していける人が少ないと感じています。難病は先がみえず、特にこの病気は再発を繰り返す特徴があり、患者さんにとっては一生を通じて苦痛が伴いますから、患者さんの情報をしっかり把握できることが望ましいでしょうね。私はチームスタッフや若い医師に、「私たちの治療は世界で肩を並べられるものである。自信を持つよう」と常々言い聞かせています。佐倉から世界へ最新治療・治験の発信を行っており、これからもここ佐倉から発信していくつもりです。これからの医療を創っていく若い医師たちには、どんな場所でも、どんな環境でも、自信を持って世界に通じる医療創りに挑戦していただきたいと思います。質問と回答を公開中!

4057.

教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

4058.

携帯電話のショートメールサービスのサポートで患者のアウトカムが改善

ケニアのHIV感染患者を対象とした無作為化試験で、患者に携帯電話のショートメールサービス(SMS)を使ったサポート介入を行ったところ、非介入群と比べ抗レトロウイルス治療(ART)のアドヒアランスおよびウイルス抑制の割合が改善されたことが報告された。ケニア・ナイロビ大学医療微生物学部門のRichard T Lester氏らが実施報告したもので、「医療資源が不十分な環境で、携帯電話は患者のアウトカムを改善する効果的なツールとなる可能性がある」と結論している。Lancet誌2010年11月27日(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。週1回メッセージを送信、12ヵ月間の介入効果を検証医療サービス提供を改善する手段として携帯電話が提案されているが、医療資源が不十分な環境で、携帯電話が患者のアウトカムにもたらす効果に関するデータは限られているという。そこでLester氏らはケニアで、医療従事者とARTを開始する患者との携帯電話を介したコミュニケーションが、服薬アドヒアランスおよび血漿HIV-1 RNA量を改善するかを目的とする、多施設共同無作為化試験「WelTel Kenya1」を行った。試験は2007年5月~2008年10月の間に、ケニアの3つのクリニックで行われ、538例の患者が、SMS介入群(273例)か通常ケア群(265例)に無作為化された。SMS介入群の患者には、週1回、クリニックのナースからメッセージが送信され、患者は48時間以内に返信をすることになっていた。主要評価項目は、追跡12ヵ月時点での、自己申告によるARTアドヒアランス(追跡6ヵ月と12ヵ月時点で尋ねた過去30日間の処方薬の服薬割合が95%超)、血漿HIV-1 RNA量の抑制(<400コピー/mL)とした。アドヒアランス、ウイルス抑制ともに改善ARTアドヒアランスは、SMS介入群では168/273例、通常ケア群では132/265例が報告され、非アドヒアランスの相対リスクは0.81(95%信頼区間:0.69~0.94、p=0.006)だった。ウイルス抑制は、SMS介入群では156/273例、通常ケア群では128/265例が報告され、ウイルス学的な治療失敗の相対リスクは0.84(同:0.71~0.99、p=0.04)だった。95%超のアドヒアランス達成に要する治療数(NNT)は9例(95%信頼区間:5.0~29.5)であり、ウイルス抑制についての同NNTは11例(同:5.8~227.3)だった。

4059.

今後の対策のため2009新型インフルの小児死亡例を解析:英国保健省

英国保健省のNabihah Sachedina氏らは、今後の新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)対策のため、昨シーズンの小児死亡例についての解析を行った。背景には、0~18歳の新型インフルの罹患に関してバラつきがみられたことがある。Lancet誌2010年11月27日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。小児(0~17歳)の全死亡70例を解析解析は、2009年6月26日~2010年3月22日に英国で報告された新型インフルに関する小児(0~17歳)の全死亡70例(平均年齢7歳)について行われた。いずれもデイリーレポートシステムによって報告され、カルテとの照合が行われた症例であり、新型インフル感染のラボ報告もしくは死亡診断書がある症例だった。症例個々の病歴、症状、急性疾患の臨床経過はそれぞれの担当医から提供されており、新型インフルと推定された症例のデータは英国健康保護局(Health Protection Agency:HPA)から入手された。主要評価項目は、集団死亡率と致死率だった。死亡率は1歳未満児で最も高い結果、昨シーズンの小児死亡率は、100万あたり6例だった。死亡率は、1歳未満児で最も高く、100万あたり14例だった。死亡率は人種間で異なる傾向がみられ、英国白人小児の100万あたり4例(95%信頼区間:3~6)に比べ、バングラデシュ系小児(同47例、17~103)とパキスタン系小児(同36例、18~64)で高かった。死亡した小児のうち15例(21%)は、新型インフルに感染する前は健康児だった。一方で、45例(64%)は、慢性神経学的、胃腸系、呼吸器系など重度な疾患を有していた。なかでも、慢性神経学的疾患を有する子どもの年齢標準化死亡率が最も高く、100万あたり1,536例だった。また、入院中の死亡例は19例(27%)だった。これらは、退院後に死亡した例よりも、健康的で既存疾患もごく軽症であることが有意に認められた(p=0.0109)。なお、オセルタミビル(商品名:タミフル)を投与されていたのは全体で45例(64%)で、症状発症から48時間以内に投与を受けていたのは7例だった。これら解析結果を受け、Sachedina氏は、「ワクチン接種は、重症疾患および死亡リスクの高い小児に優先して行わなくてはならない。これら小児には、特定の既存疾患を有する子どもやいくつかの少数民族の子どもも対象に含まれる。また、入院前早期からのサポート的また治療的ケアも重要である」と報告をまとめている。

4060.

HIV感染者への腎移植、課題は優れた免疫抑制薬の開発

欧米の末期腎不全(ESRD)患者の約1%はHIV感染者であるなど、HIV感染者にESRDが増加しており、そうした患者にも腎移植が期待されるようになっている。しかし、HIV感染者への腎移植や免疫抑制のアウトカムについては十分には明らかになっていない。そこで米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPeter G. Stock氏らの研究グループが、腎移植を希望するHIV感染者を対象に、安全性と有効性について多施設共同の前向き非無作為化試験を行った。NEJM誌2010年11月18日号掲載より。HIV感染レシピエント150例を中央値1.7年追跡試験は、抗レトロウイルス療法が安定しており、CD4+T細胞数が≧200個/mm3、血漿HIV1型(HIV-1)RNAが検出されないHIV感染者の腎移植希望者を対象とした。被験者は移植後、あらかじめ決められた試験プロトコルに従い、日和見感染に対する予防処置、生検処置、許容可能な範囲での免疫抑制療法、拒絶反応に対する管理、抗レトロウイルス療法などの移植後管理が行われ追跡された。被験者は2003年11月~2009年6月の間に、米国19施設で腎移植を受け生存した150例で、期間中央値1.7年間追跡された。生存率・生着率は高い移植後1年、3年時点の患者生存率(±SD)は、それぞれ94.6±2.0%、88.2±3.8%であり、平均生着率はそれぞれ90.4%、73.7%であった。これらの割合は、65歳以上の高齢腎移植レシピエントまたは全腎移植レシピエントに関する結果が集約されている全米データベース(SRTR)に報告されている結果の範囲内のものだった。多変量比例ハザード解析の結果、graft lossのリスク増加は、拒絶反応が起きて治療を受けた患者(ハザード比:2.8、95%信頼区間:1.2~6.6、P=0.02)、抗胸腺細胞グロブリン導入療法を受けた患者(同:2.5、1.1~5.6、P=0.03)で認められ、生体腎移植の場合は、保護効果が認められた(同:0.2、0.04~0.8、P=0.02)。拒絶反応は、予想以上に高率で観察された。推定値で1年時点31%(95%信頼区間:24~40)、3年時点41%(同:32~52)であった。HIV感染状態についてはコントロールが良好で、CD4+T細胞数は安定しており、HIV関連の合併症もほとんど認められなかった。Stock氏は、「慎重に選別したHIV感染集団における腎移植は、術後1年、3年時点の生存率および生着率ともに高く、HIV感染に関連する合併症の増加もみられなかった。しかし、拒絶反応が予想以上に高く重大な懸念事項であり、より優れた免疫抑制薬の開発が必要であることが示された」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

検索結果 合計:4273件 表示位置:4041 - 4060