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重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(108)より-

インフルエンザは急性熱性ウイルス性疾患であり、自然に軽快することが多いが、一部の患者では肺炎などを合併し、重症化することが知られている。重症インフルエンザ患者に対してエビデンスの存在する治療方法はないが、WHOのガイドラインでは、パンデミック2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症の重症例や鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症に対して、オセルタミビル(商品名:タミフル)の高用量投与や治療期間の延長を考慮すべきと述べられている。 本研究は、重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性を評価するために行った、二重盲検ランダム化比較試験である。迅速検査あるいはRT-PCR検査でインフルエンザと診断された1歳以上の重症入院患者326例を対象とし、オセルタミビルの通常量投与群と2倍量投与群の2群に分けて、治療5日目のRT-PCR陰性率や、死亡率などを比較検討した。重症の定義は、インフルエンザで入院した患者の中で、新たな肺浸潤影、頻呼吸、呼吸困難、低酸素血症のうち1つ以上を有する者とした。また鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症例は、全例本研究に含めた。 エントリー時のインフルエンザウイルスの内訳は、A型が260例(79.8%)、B型が53例(16.2%)、迅速検査の偽陽性が13例(3.9%)だった。A型のうち、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスは17例だった。なお、今回の研究には、2013年に中国で人ヘの感染例が確認された鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは含まれていない。 治療5日目のRT-PCR陰性率は、2倍量投与群で72.3%(95%信頼区間:64.9~78.7%)、通常量投与群で68.2%(同:60.5~75.0%)であり、有意差を認めなかった(P=0.42)。死亡率は、2倍量投与群で7.3%(同:4.2~12.3%)、通常量投与群で5.6%(同:3.0~10.3%)であり、有意差を認めなかった(P=0.54)。死亡例の71%は、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症例であった。 本研究では、重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビルの2倍量投与は通常量投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも有効性に差を認めなった。インフルエンザを治療するうえで大切なのは「症状発現からいかに早く治療を開始できるか」であることがほかの研究で示唆されている。本研究では、症状発現から治療開始まで中央値で5日(鳥インフルエンザA(H5N1)感染症では7日)経過しており、両治療群ともに治療効果が乏しかった可能性がある。 一般的にインフルエンザの重症化因子として、高齢者、慢性肺疾患や心疾患などの基礎疾患を有する者、免疫抑制患者、妊婦などがあげられるが、本研究の対象にはこれらの患者があまり含まれていない。今回の研究対象の75.5%が小児例であることからも、本研究の結果を重症化因子を有する成人にそのまま当てはめることはできないと考える。

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予防的なマクロライド系抗菌薬の投与はCOPD増悪を抑制するのか?

 マクロライド系抗菌薬の予防的投与はCOPD増悪を抑制する有効なアプローチであることがマイアミ大学のElie Donath氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年6月11日号の掲載報告。 マクロライド系抗菌薬は抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用など、さまざまな特性を有しており、COPDの増悪抑制に対して独特な利点を有している。近年、マクロライド系抗菌薬の予防的投与がCOPD増悪のリスクを低減させるかに関する研究が注目を集めているが、これら最近の知見が先行研究の知見にどの程度当てはまるかについてはほとんどわかっていない。 本研究の目的は、呼吸器関連のメタアナリシスから、COPD増悪の抑制に対するマクロライド系抗菌薬の予防的投与がコンセンサスのとれるものかを評価することである。 EMBASE、コクラン、Medlineのデータベースから関連のあるランダム化比較試験を検索し、6件のランダム化試験を同定した。プライマリエンドポイントはCOPDの増悪発生率であり、セカンダリーエンドポイントは全死亡、入院率、有害事象、少なくとも1回以上のCOPD増悪を経験する可能性であった。 主な結果は以下のとおり。・プラセボと比較してマクロライド系抗生物質を投与した群では、COPD増悪の相対リスクが37%減少していた(RR:0.63、95%信頼区間[CI]: 0.45~0.87、p=0.005)。・入院の相対リスクは21%減少していた(RR: 0.79、95%信頼区間[CI]: 0.69~0.90、p=0.01)。・少なくとも1回以上の増悪を起こす相対リスクは68%減少していた(RR :0.34、95%信頼区間[CI]: 0.21~0.54、p=0.001)。・マクロライド系抗生物質を投与した群では、全死亡の減少傾向や有害事象の増加傾向が認められたが、統計学的な有意差はみられなかった。 なお、今回の研究において、有害事象報告に一貫性が欠けていた点やメタアナリシス間で臨床的、統計学的に不均一性があった点についても著者は言及している。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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陽性検出率は69%、爪真菌症のための迅速・正確な診断法MS-ELISAを開発

 ドイツ・シャリテ・ベルリン医科大学のF. Pankewitz氏らは、目標遺伝子とDNA抽出法を至適化し、迅速にT.rubrum(紅色白癬菌)爪真菌症を特定できる新たな診断法を開発した。爪真菌症の有病率は過去10年間で、着実に増加したという。爪真菌症では最初の正確な診断が治療の成功および費用対効果に重要だが、現状の診断法は、迅速なものではなく、感度、特異度も低いとして、著者らは新たなPCR酵素結合免疫吸着検査法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)を開発した。The British Journal of Dermatology誌2013年6月号の掲載報告。 Pankewitz氏らが開発したのは、マイクロサテライトベースのPCR-ELISA(MS-ELISA)で、爪真菌症で最も多いT.rubrumを検出するためのものであった。 本研究では検出について、MS-ELISAと顕微鏡、先行発表されているトポイソメラーゼPCR-ELISA(TI-ELISA)法(MS-ELISAとは異なる方法で抽出した鋳型DNAが用いられている)、および培養法と比較した。 主な結果は以下のとおり。・本試験で用いられたサンプルは、患者217人から集められた爪および皮膚標本434件であった。・陽性サンプルの検出件数はMS-ELISAが最も高く69%であった。次いで直接顕微鏡56%、TI-ELISA法は44%であり、培養法は30%であった。・同一のDNA抽出法を120件の標本に適用した場合、MS-ELISAの感度はTI-ELISAと比べて2倍高いことが証明された。

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抗菌薬適正使用推進プログラム、広域抗菌薬の適応外使用を改善/JAMA

 小児プライマリ・ケア外来への抗菌薬適正使用推進プログラム(antimicrobial stewardship program)の導入により、細菌性急性気道感染症(ARTI)の診療ガイドライン遵守状況が改善されることが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らの検討で示された。米国では小児に処方される薬剤の多くが抗菌薬で、そのほとんどが外来患者であり、約75%がARTIに対するものだという。ウイルス性ARTIへの抗菌薬の不必要な処方は減少しつつあるが、細菌性ARTIでは、とくに狭域抗菌薬が適応の感染症に対する広域抗菌薬の不適切な使用が多いとされる。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。プライマリ・ケアでのプログラムによる介入の効果を評価 研究グループは、小児プライマリ・ケア医による外来患者への抗菌薬処方における、抗菌薬適正使用推進プログラムに基づく介入の効果を評価するクラスター無作為化試験を行った。 ペンシルベニア州とニュージャージー州の25の小児プライマリ・ケア施設のネットワークから18施設(医師162人)が参加し、介入群に9施設(医師81人)、対照群に9施設(医師81人)が割り付けられた。 介入群の医師は、プログラムに基づき2010年6月に1時間の研修を1回受講し、その後1年間にわたり3ヵ月に1回、細菌性およびウイルス性ARTIに対する処方への監査とフィードバックが行われた。対照群の医師は通常診療を実施した。 主要評価項目は、介入の20ヵ月前から介入後12ヵ月(2008年10月~2011年6月)までの、細菌性ARTIに対する広域抗菌薬の処方(ガイドライン規定外)およびウイルス性ARTIに対する抗菌薬の処方の変化とした。広域抗菌薬処方率が6.7%低下 広域抗菌薬の処方率は、介入群では介入前の26.8%から介入後に14.3%まで低下し(絶対差:12.5%)、対照群は28.4%から22.6%へ低下した(同:5.8%)。両群の絶対差の差(difference of differences:DOD)は6.7%で、介入による処方率の有意な抑制効果が認められた(p=0.01)。 肺炎の小児への広域抗菌薬処方率は、介入群が15.7%から4.2%へ、対照群は17.1%から16.3%へ低下し、介入による有意な抑制効果がみられた(DOD:10.7%、p<0.001)。一方、急性副鼻腔炎への処方率はそれぞれ38.9%から18.8%へ、40.0%から33.9%へと低下した(DOD:14.0%、p=0.12)。 A群レンサ球菌咽頭炎では、ベースラインの広域抗菌薬処方率が低く、介入による変化はほとんどみられなかった(介入群:4.4%から3.4%へ低下、対照群:5.6%から3.5%へ低下、DOD:−1.1%、p=0.82)。ウイルス感染症への抗菌薬処方にも同様の傾向が認められた(介入群:7.9%から7.7%へ低下、対照群:6.4%から4.5%へ低下、DOD:-1.7%、p=0.93)。 著者は、「プライマリ・ケア医の研修と、処方の監査、フィードバックを組み合わせた抗菌薬適正使用推進プログラムにより、小児に一般的な細菌性ARTIの診療ガイドラインの遵守状況が、通常診療に比べて改善された。一方、ウイルス感染症への抗菌薬処方については、介入の影響は認めなかった」とまとめ、「今後、外来における抗菌薬適正使用推進プログラムの有効性の促進要因や、一般化可能性、持続可能性、臨床アウトカムの検証を行う必要がある」と指摘している。

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「内科で遭遇する皮膚疾患」に関するアンケート結果 part 2

Q1皮膚疾患を診療する上で困っていることがありましたら教えてください<診断・治療について>「このほくろは大丈夫ですか」と聞かれることが多いが、皮膚科医へわざわざ紹介すべきか、経過観察でよいかの判断がつかない。 患者さんとしては、受診したついでに質問されていることなので、それを全例「皮膚科へ行ってください」では患者さんのニーズにこたえていないと思う。しかし実際のところ判断がつかないので「大丈夫です」とも言えない。(勤務医・内科)ステロイドを使用するかどうか迷う時がある。(勤務医・内科)どういう湿疹や病状なら皮膚科に紹介すべきか悩む。(開業医・内科)患者さんから皮膚科医の処方の継続を依頼されるが、薬剤の中止や変更の判断が困る。(開業医・内科)感染性の皮膚疾患が診断できなくて、困っている。(勤務医・内科)緊急性の有無がよく分からない。(開業医・内科)黒色の色素斑が、悪性なのかどうか聞かれることがあるが、難しい。かといって、すべてを紹介するわけにもいかず、悩むことが多い。(開業医・内科)初期の病状は何とかなるが、しばらくたってからの皮膚病変をどのようしたらよいかわからない。(開業医・内科)他の医師で比較的安易にステロイド含有剤を内服処方しているので、離脱が大変である。(開業医・内科)皮膚科と違い、内科では、外来でKOHなど迅速に検査することができず、白癬として抗真菌薬を処方すべきか、ステロイド外用薬を処方すべきなのか、悩むことがある。(勤務医・内科)風疹などの感染症との鑑別。とくにウィルス性のカゼや溶連菌などで出てくる皮疹との鑑別。また、薬疹が疑われる場合の原因物質の究明。(開業医・内科)薬疹の原因薬剤が最終的に絞りきれない症例がある。(勤務医・内科)蕁麻疹と思われるが長期化している症例や受診時には皮疹が消失している症例がある。(勤務医・内科)<患者さんについて>あきらかに皮膚科的専門性のある疾患で、皮膚科受診を勧めるも、行きたがらないこと。(開業医・内科)皮膚に関して相談されたときは基本的に皮膚科に紹介している。ところがなぜか患者は”皮膚が悪いのは内臓から来ているのではないか”と内科を先に受診されることがままあり、困っている。(勤務医・内科)皮膚科受診を勧めても、当方での治療を希望される方が少なからずいる。今のところ大きなミスはないが、やはり専門医に行ってほしい。(開業医・内科)<その他>気軽に相談できる皮膚科医がそばにいない。(開業医・内科)当院は、総合病院でないため皮膚科医が在籍しない。外来患者で診断に困る場合や難治性の場合には他院の皮膚科専門医に紹介できるが、入院の場合には紹介しにくい。出来るだけ自分自身の診断能力の向上に努めているが限界がある。(勤務医・内科)疥癬など、急いで診断治療しないといけない疾患や薬疹を疑った時など、皮膚科にすぐコンサルトできる時は良いが、できないときに困る。(勤務医・内科)

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重症インフルエンザへのオセルタミビル2倍量投与の効果を検討/BMJ

 重症インフルエンザに対し、オセルタミビルを通常の2倍量投与しても、治療効果は通常量投与の場合と同等であったことが示された。東南アジア感染症臨床研究ネットワーク(South East Asia Infectious Disease Clinical Research Network)が、インドネシアなど東南アジア4ヵ国13病院で重症インフルエンザ患者について行った、無作為化二重盲検試験の結果、報告した。BMJ誌5月30日号で発表した。4ヵ国13ヵ所の病院で326人の患者を無作為化 ガイドラインでは、重症インフルエンザに対し通常量よりも高用量を用いることが推奨されている。同ネットワークはその推奨の妥当性を調べることを目的に、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの13ヵ所の医療機関で無作為化二重盲検試験を行った。 重症インフルエンザの確定診断を受けた1歳以上の入院患者326例を無作為に2群に分け、一方にはオセルタミビルを通常の2倍量(165例)、もう一方には通常量(161例)を投与した。被験者のうち、15歳未満は246例(75.5%)だった。 主要アウトカムは、投与5日目の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法によるウイルスの有無とした。投与5日目のインフルエンザ陰性率は両群とも約7割 被験者のうち、インフルエンザA型ウイルス感染者は260例(79.8%)、インフルエンザB型ウイルス感染者は53例(16.2%)だった。 5日目にRT-PCR陰性だった割合は、2倍量群が159例中115例(72.3%、95%信頼区間:64.9~78.7)、通常量群が154例中105例(68.2%、同:60.5~75.0)と、両群に有意差はなかった(群間格差:4.2%、同:-5.9~14.2、p=0.42)。 死亡率についても、2倍量群が165例中12例(7.3%)、通常量群が161例中9例(5.6%)と、有意差はなかった(p=0.54)。 酸素補充療法や集中治療室(ICU)での治療、人工呼吸器を利用した日数の中央値も、いずれも両群で有意差はなかった。 著者は「重症インフルエンザで入院した患者において、オセルタミビルの2倍量投与は通常投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも利点は認められなかった」と結論している。

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エキスパートに聞く!「内科医がおさえるべき皮膚診療ポイント」Q&A part1

CareNet.comでは『内科で診る皮膚疾患特集』を配信するにあたり、事前に会員の先生より質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、三橋善比古先生にご回答いただきましたので、全2回でお届けします。皮膚科専門医に紹介すべき疾患の見分け方、緊急性のある皮膚疾患の見分け方のポイントがあれば教えてください。発熱がある場合は緊急性があることが多いと思います。皮膚所見では、全身が赤い紅皮症状態、水疱形成や粘膜症状がある例が重症疾患のことが多いと思います。数日間観察して悪化傾向があれば、その後も悪化することが考えられるので紹介すべきです。この悪化傾向は必ずしも面積の拡大を意味しません。中毒疹は体幹に始まり、軽快するときに四肢に拡大していくことが多いのです。面積が拡大しているので悪化していると解釈されることが多いですが、実際は軽快していることもあります。この場合、色調や浸潤に注意すると、面積は拡大しても赤みが薄くなって浸潤が改善していることがあります。これは軽快の徴候です。プライマリ・ケアで注意すべき皮膚疾患はどのようなものがあるでしょうか?湿疹・皮膚炎群、蕁麻疹、表在性白癬で、全皮膚疾患患者の半分程度を占めるとされています。これらの疾患に対応できればかなりの部分をカバーできると思われます。白癬を疑うケース:内科外来では顕微鏡やKOH検査ができません。そのような場合、どのように対処すべきでしょうか? まず抗真菌薬を処方すべきか、ステロイド外用薬を処方すべきかなど悩みます。皮膚科でKOH検査を行っても湿疹か白癬か判別できないことがあります。このような場合は、必ず後日再来する約束をしてステロイド薬の外用を行い、再度、真菌鏡検を行って診断を確定することがあります。この場合、ステロイド薬外用は、湿疹性病変を治療することで白癬病変を明瞭化すること、かゆみを取り除くという意味があります。真菌鏡検ができないときはこの手は使えませんので、まず抗真菌薬を外用する方がよいと思います。ステロイド外用で真菌病変が悪化してしまうことを避けるためです。蕁麻疹について:受診時には皮疹が消失している症例にはどのように対処したらよいでしょうか?蕁麻疹は膨疹を特徴とする疾患です。膨疹は短時間で出没することが特徴です。出たり消えたりしているわけです。全体としては続いていることもあるし、全体が消えてしまうこともあります。従って、診察の時に発疹がまったくないことは珍しくありません。むしろこれが、他の疾患ではみられない蕁麻疹の特徴です。蕁麻疹はアレルギー性のほか、運動誘発性、寒冷、温熱、コリン性など原因は多彩です。蕁麻疹の治療は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服が第一選択です。ステロイド外用はあまり意味がありません。もし外用薬を処方する場合は、ジフェンヒドラミン(商品名:レスタミンコーワクリーム)などのステロイドを含まないものがよいでしょう。複数の皮膚病変が合併している場合の対処法について教えてください。複数の皮膚病変の合併と聞いて、真っ先に、水虫(足白癬)に細菌の二次感染が合併している状態を思い出しました。このような患者は、これから暑くなってくると毎日のように来院されます。また、足白癬の治療のための外用薬による接触皮膚炎を合併している患者もおられます。これら3疾患を併発していることもあります。このようなときの治療は、後で生じたものから治療するという原則があります。白癬に細菌感染では、細菌感染から治療します。接触皮膚炎を合併していたら、まず接触皮膚炎を治療します。原則にこだわるよりも、急を要するものから治療すると考えるのがいいかも知れません。いずれにしても、白癬の治療は最後でよいのです。

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第15回 診療ガイドライン その1:ガイドラインから外れた医療行為は違法か!?

■今回のテーマのポイント1.ガイドラインに反する診療は、紛争化のリスクを上げることから注意する必要がある2.裁判所はおおむねガイドラインに沿った判断をする3.ガイドラインに反する診療であっても、直ちに違法とはならないが、少なくとも「相応の医学的根拠」は必要である事件の概要患者X(死亡時79歳)は、昭和43年より糖尿病にてY病院糖尿病代謝科(主治医A医師)に外来通院していました。平成12年に上部内視鏡検査を行ったところ、食道静脈瘤が認められたことから精査した結果、HBV、HCV感染は認められないものの、初期の肝硬変と診断されました。その後、A医師は、外来で定期的に採血にて肝機能及び血小板数を測定していましたが、いずれも正常範囲内で推移しており、上部内視鏡検査上も食道静脈瘤に著変なく、経過観察をしていました。しかし、A医師は、その間、腫瘍マーカーの測定及び腹部超音波検査、CTなどの画像検査は行っていませんでした。Xは、平成18年8月7日21時頃、自宅トイレで倒れ、意識レベルが低下していたことからY病院に入院しました。その際、撮影した胸部CTにて肝臓に腫瘍性病変が認められたことから精査したところ、多発性肝細胞がんと診断され、同年10月23日に死亡しました。これに対し、Xの遺族は、肝硬変があったXに対し、肝細胞がん発見を目的とした検査を長期にわたり行わなかったとして、Y病院に対し、2,350万円の損害賠償を請求しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者X(死亡時79歳)は、糖尿病にてY病院糖尿病代謝科(主治医A医師)に外来通院していました。昭和61年12月に採血検査にて肝機能障害が認められたことから腹部超音波検査を行ったところ、慢性肝疾患及び脂肪肝の疑いと診断されました。平成12年7月に、糖尿病代謝科入院中に上部内視鏡検査を行ったところ、食道静脈瘤が認められたことから精査した結果、HBV、HCV感染は認められないものの、初期の肝硬変と診断されました。その後、A医師は、外来で定期的に採血にて肝機能及び血小板数を測定していましたが、いずれも正常範囲内で推移しており、上部内視鏡検査上も食道静脈瘤に著変なく経過観察をしていました。しかし、A医師は、その間、腫瘍マーカーの測定及び腹部超音波検査、CTなどの画像検査は行っていませんでした。Xは、平成18年8月7日21時頃、心不全のため自宅トイレで倒れ、意識レベルが低下していたことからY病院に入院しました。その際、撮影した胸部CTにて肝臓に腫瘍性病変が認められたことから精査したところ、AFP 30ng/mL、PIVKA-Ⅱ 7,000mAU/mL以上であり、多発性肝細胞がんと診断されました。Xは高齢であり、全身状態も悪かったため、積極的な治療は行われず、同年10月23日に死亡しました。事件の判決診療ガイドラインは、その時点における標準的な知見を集約したものであるから、それに沿うことによって当該治療方法が合理的であると評価される場合が多くなるのはもとより当然である。もっとも、診療ガイドラインはあらゆる症例に適応する絶対的なものとまではいえないから、個々の患者の具体的症状が診療ガイドラインにおいて前提とされる症状と必ずしも一致しないような場合や、患者固有の特殊事情がある場合において、相応の医学的根拠に基づいて個々の患者の状態に応じた治療方法を選択した場合には、それが診療ガイドラインと異なる治療方法であったとしても、直ちに医療機関に期待される合理的行動を逸脱したとは評価できない。そして、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいてサーベイランス(*肝細胞癌早期発見のための定期的な検査(筆者注))の至適間隔に関する明確なエビデンスはないとされており、推奨の強さはグレードC1(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)と位置づけられていることからすれば、サーベイランスの間隔については一義的に標準化されているとまでは認めがたいのであるから、上記間隔については医師の裁量が認められる余地は相対的に大きくなるものと解される。・・・・・・・(中略)・・・・・・・そこで、被告医師がどの程度の間隔でサーベイランスを行うべきであったかを検討するに、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいて非ウイルス性の肝硬変は肝細胞癌の高危険群とされ、6か月に一回の超音波検査及び腫瘍マーカーの測定が推奨されている。そして、上記認定説示したとおりXの肝硬変は発癌リスクが否定されるものではなかったことに加え、上記で認定のとおり肝硬変の前段階とされる慢性肝炎であっても発癌リスクが相当程度認められることからすれば、Xの肝硬変が初期のものであったとしても、被告A医師がXに対して肝硬変と診断してから一度も超音波検査等を実施しなかったことが相応の医学的根拠に基づくものとは評価しがたい。なお、後記で認定説示した本件での検査結果から、被告A医師においてXの肝硬変がさほど進行していなかったと判断すること自体は不合理であるとはいえない。したがって、これらの検査結果を根拠として、肝癌診療ガイドラインとは異なるサーベイランスを実施していたとしても、上記で説示したとおりサーベイランスの間隔について医師の裁量を認める余地があることを併せ考慮すれば、直ちに不合理であると断定することができないとの見方もあり得ないではない。しかしながら、本件においては、そもそもサーベイランスそれ自体が全く実施されていないことに加え、被告医師において肝癌診療ガイドラインとは異なるサーベイランスを実施することが相当であるとした場合には具体的なサーベイランスの間隔及び方法をどのようなものにするのが妥当であったかという点や、それを裏付ける医学的根拠はどのようなものかという点について何ら被告における主張立証がない。以上の検討によれば、上記で説示したように医療行為において医師の裁量を尊重する必要があること及び肝癌診療ガイドラインが絶対的な基準ではないことを考慮してもなお、被告は、Xに対し、肝癌発見を目的として6か月間隔で腫瘍マーカー及び超音波検査を実施し、腫瘍マーカーの上昇や結節性病変が疑われた場合には造影CT検査等を実施すべきであったというべきである。(* 判決文中、下線は筆者による加筆)(仙台地判平成22年6月30日)ポイント解説今回は、ガイドラインについて解説いたします。ガイドラインは、添付文書同様、裁判所が個別具体的な事例における「医療水準」を判断するにあたり用いられる文書であり、特に、作成当時の多数の専門家間における合意事項が文書化されていることから、訴訟においては重視される傾向があり、民事医療訴訟において重要な文書であるといえます。ただ、ガイドラインは法的に作成が義務付けられた文書ではないこともあり、第12回で紹介した添付文書のように、「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」(最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁)といった過失の推定効は認められていません。しかし、患者・家族が弁護士に相談した際に、弁護士が当該診療が適切か否か、すなわち事件を受任して裁判をするか否かを判断するにあたり、必ず参照する文書でもあることから、ガイドラインは紛争化するか否かを決定する上でも非常に重要な文書であるといえます。■ガイドラインに対する裁判所の傾向それでは、裁判所のガイドラインに対する姿勢はどのようなものかみてみましょう。本事例のような肝硬変の患者に対しては、肝細胞がんの早期発見のため定期的に腫瘍マーカーや腹部超音波検査等によるサーベイランスを行う必要があると考えられています。したがって、肝硬変の患者に対して、適切な検査を行わなかった結果、肝細胞がんの発見が遅れ、死亡してしまった場合には、医療過誤として訴えられることとなります。そして、このサーベイランスの方法や間隔については、平成11年に作成された「日本医師会生涯教育シリーズ 肝疾患診療マニュアル」と平成17年に第1版が作成された「肝癌診療ガイドライン」(平成21年改訂)の2つのガイドラインがあります。これらのガイドライン作成後に患者が死亡し、肝細胞がんに対するサーベイランスを争点として争われた判決は、民間判例データベースから検索すると6つあります(表1)。画像を拡大する表1をご覧いただけれるとわかるように、サーベイランスに関する判決では、ほとんどが原告勝訴となっています。一般に民事医療訴訟の原告勝訴率が20~40%であることを考えると、その差は明らかといえます。なお、唯一、原告が敗訴している(4)の事例は、患者の受診コンプライアンスが悪く、適切なフォローが困難であった事例であり、それでも、おおむね年2回程度は検査が行われていたことから、このような判断となっています。それではこれらの訴訟において、ガイドラインはどのように使われていたのでしょうか。表2にそれぞれの判決において、裁判所が示した適切なサーベイランス頻度を示します。画像を拡大するそして、平成11年に作成された「日本医師会生涯教育シリーズ 肝疾患診療マニュアル」においては、「肝硬変を超高危険群、ウイルス性の慢性肝炎及び非肝硬変のアルコール性肝障害を高危険群、その他の肝障害を危険群と設定し、これらの患者に対して、それぞれ定期的に諸検査を行うよう指針を定めています。同指針は、超高危険群患者に対しては、AFP検査を月に1回、腹部超音波検査を2、3か月に1回、腹部CT検査を6か月に1回、高危険群患者に対しては、AFP検査を2、3か月に1回、腹部超音波検査を4ないし6か月に1回、腹部CT検査を6か月ないし1年に1回並びに危険群に対しては、AFP検査を6か月に1回、腹部超音波検査及び腹部CT検査を1年に1回行う」と記載されています。また、平成17年に作成された「肝癌診療ガイドライン」においては、「一つの案として、超高危険群に対しては、3~4カ月に 1 回の超音波検査、高危険群に対しては、6カ月に 1回の超音波検査を行うことを提案する。腫瘍マーカー検査については、AFP およびPIVKA-Ⅱを超高危険群では 3~4カ月に 1回、高危険群では 6カ月に 1回の測定を推奨する」と記載されています。表2と比較していただければわかるように、(2)と原告敗訴となった(4)を除いた判決においては、裁判所は、判決文中にガイドラインを引用した上で、ガイドラインに沿った判断をしています。このようにしてみると、ガイドラインに違反した結果、患者に損害が生じた場合には、紛争化しやすいと同時に、裁判においても、ガイドラインに沿った判断がなされやすいということがいえます。■ガイドラインは「不磨の大典」ではないこのようなガイドラインに対する裁判所の傾向をみると、皆さんは違和感を覚えるでしょうし、批判もあるかと思います。ただ、添付文書の時にも説明しましたが、現在の裁判所は、添付文書やガイドラインを不磨の大典としてとらえているわけではありません。本判決においても、「もっとも、診療ガイドラインはあらゆる症例に適応する絶対的なものとまではいえないから、個々の患者の具体的症状が診療ガイドラインにおいて前提とされる症状と必ずしも一致しないような場合や、患者固有の特殊事情がある場合において、相応の医学的根拠に基づいて個々の患者の状態に応じた治療方法を選択した場合には、それが診療ガイドラインと異なる治療方法であったとしても、直ちに医療機関に期待される合理的行動を逸脱したとは評価できない。そして、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいてサーベイランスの至適間隔に関する明確なエビデンスはないとされており、推奨の強さはグレードC1(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)と位置づけられていることからすれば、サーベイランスの間隔については一義的に標準化されているとまでは認めがたいのであるから、上記間隔については医師の裁量が認められる余地は相対的に大きくなるものと解される」と判示されているように、杓子定規に判断するのではなく一定程度の裁量の幅(グレーゾーン)が認められていると考えられます。ただ、その場合においても、「相応の医学的根拠」は必要であり、肝細胞がんのサーベイランスにおいては、単に「気が付いたらずいぶん期間が開いてしまった」ということでは許されませんので、注意する必要があります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)仙台地判平成22年6月30日最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁

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EV71ワクチン、乳幼児対象の第3相試験で高い有効性と良好な安全性を報告/Lancet

 エンテロウイルス71(EV71)ワクチンの有効性と安全性、免疫原性について検討した第3相無作為化試験の結果、有効性は高く、安全性は良好で、免疫原性の維持が確認されたことを、中国・江蘇省疾病管理予防センター(CDC)のFeng-Cai Zhu氏らが報告した。EV71感染症は1974年に疾患報告されて以降、世界的に手足口病(HFMD)と関連した発生が、とくに乳幼児で多く報告され、過去10年では600万例以上の感染、2,000例以上の死亡が報告されているという。不活化アラムアジュバントEV71ワクチンは中国で開発され、成人および小児を対象とした第1相、第2相試験で安全性と免疫原性が確認されていた。今回の第3相試験は乳幼児を対象に、EV71と関連した疾患予防を目的とした評価が行われた。Lancet誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。6~35月齢児1万245例をワクチン接種群とプラセボ群に無作為化 第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験は、中国国内4施設において健常6~35月齢児を対象とし、無作為に1対1の割合で、ワクチン接種群とプラセボ(ミョウバンアジュバント)群に割り付け行われた。ワクチンは、0、28日に接種され、試験担当者および被験児と保護者には、割り付け情報は知らされなかった。 主要エンドポイントは、サーベイランス期間中(56日~14ヵ月)のEV71関連のHFMD発生およびEV71関連の疾患とした。解析は事前に規定した集団について行われた。 1万245例が登録され、5,120例がワクチン接種群に、5,125例がプラセボ群に割り付けられた。ワクチン有効性、EV71関連手足口病には90.0%、EV71関連疾患には80.4% 主要有効性解析の結果、ワクチン接種群(4,907例)のEV71関連HFMD発生は3例、EV71関連疾患の発生は8例であった。プラセボ群(4,939例)の発生はそれぞれ30例、41例であった。 ワクチンの有効性は、EV71関連HFMDに対しては90.0%(95%信頼区間[CI]:67.1~96.9、p=0.0001)、EV71関連疾患に対しては80.4%(同:58.2~90.8、p<0.0001)であった。 重大有害事象の報告は、ワクチン接種群1.2%(62/5,117例)、プラセボ群1.5%(75/5,123例)で有意差はみられなかった(p=0.27)。有害事象の発生も両群で有意差はなかった(71.2%vs. 70.3%、p=0.33)。

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鳥インフルエンザA(H7N9)患者の約8割がICU、死亡は約3割/NEJM

 中国で2013年春に流行した鳥インフルエンザA(H7N9)の感染者111例について、診療記録を基に行った調査の結果、ICUで治療を受けたのは約77%、死亡は27%であったことを、北京大学のHai-Nv Gao氏らが報告した。また、患者の大半は入院時に肺炎と同様な症状を呈し、患者の年齢中央値は61歳であったという。NEJM誌オンライン版2013年5月22日号掲載の報告より。最も多い症状は発熱と咳、典型的X線所見はGGOと浸潤影 研究グループは、2013年5月10日までにH7N9ウイルス感染が確認された111例について、その臨床的な特徴を調べた。 その結果、111例のうちICUで治療を受けていたのは76.6%で、死亡したのは27.0%だった。 111例の年齢中央値は61歳で、65歳以上は42.3%、女性は31.5%であり、61.3%の患者が1つ以上の基礎疾患があった。 最も多く認められた症状は、発熱と咳だった。入院時に108例(97.3%)が、肺炎と一致する症状が認められた。典型的なX線所見は、両側性スリガラス状陰影(GGO)と浸潤影だった。 リンパ球減少症が認められたのは88.3%、血小板減少症は73.0%だった。共存症があるとARDSリスクが3.4倍に 患者のうち108例(97.3%)に抗ウイルス薬による治療が行われ、治療開始の中央値は発症後7日目だった。 RT-PCR法によって、ウイルス試験の結果が陰性であることが明らかになるまでの日数の中央値は、発症から11日(四分位範囲:9~16)、抗ウイルス薬投与開始から6日(同:4~7)だった。 多変量解析の結果、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスク因子は、共存症のみであったことも明らかになった(オッズ比:3.42、95%信頼区間:1.21~9.70、p=0.02)。

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RSV流行期に健常早産児へのパリビズマブ月1回投与、喘鳴エピソードを有意に抑制/NEJM

 RSウイルス(RSV)の流行期に、健常早産児にモノクローナル抗体パリビズマブ(商品名:シナジス)を月1回投与することで、生後1年間の喘鳴が認められた日数が有意に減少し、また投与終了後も効果の持続が認められたことが、オランダ・ユトレヒト大学病院のMaarten O. Blanken氏らによる多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験MAKIの結果、報告された。RSVは、1歳未満児の冬季入院の最も多い原因である。また、重症RSV感染症は、高齢になってからの喘息等の発生率と関連していること、さらにRSVは幼児期の喘鳴症状との関連やQOL、医療コストに与える影響が大きいことが知られている。しかし観察研究では、RSV感染が反復性喘鳴の原因であるのか、早産児においてはもともと存在する肺の脆弱性の最初の徴候であるのかが明らかではなかった。一方でパリビズマブは、ハイリスクの乳児の重症RSV感染症の予防に有効であることが先行研究で示されていた。NEJM誌2013年5月9日号掲載の報告より。生後1年間における喘鳴の総日数についてプラセボと比較 本研究において研究グループは、パリビズマブを用いて、生後1年間における喘鳴の病因においてRSV感染症が潜在的な原因となっている可能性を調べることを目的とした。 2008年4月~2010年12月の間に、オランダ国内の15地点から、在胎33~35週で出生した429例を登録し、RSV流行期に、パリビズマブを月1回接種する群(214例)とプラセボを接種する群(215例)に無作為に割り付けられた。被験児は、早産であること以外は健常で、RSV流行期が始まる時点で6ヵ月未満児であった。 事前に規定した主要アウトカムは、生後1年間における喘鳴が認められた総日数(両親による報告)とした。ウイルス解析は、呼吸器エピソード発生の間に鼻咽頭スワブにて行われた。生後1年間の喘鳴総日数はプラセボ群と比べて相対的に61%低下 パリビズマブ接種群の生後1年間の喘鳴総日数は、プラセボ群と比べて相対的に61%(95%信頼区間[CI]:56~65)減少した。パリビズマブ予防群が930/5万3,075日(1.8%)、プラセボ群2,309/5万1,726日(4.5%)であった。 また、同期間中に反復性喘鳴を来した乳児の割合は、パリビズマブ群が10%低かった(11%対21%、p=0.01)。 著者は、健常早産児へのパリビズマブ接種は、生後1年間の喘鳴が認められた日数を有意に減少し、その効果は投与終了後も持続したと結論したうえで、「本研究で示されたパリビズマブ投与終了後も効果が持続したという所見は、RSV感染症が早産児の生後1年間における喘鳴の重大な機序であることを示すエビデンスである」とまとめている。

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ソホスブビル、既治療の遺伝子型2、3型HCV感染患者に有効/NEJM

 ペグインターフェロン(PEG)+リバビリン(RBV)療法が適応外または無効な、遺伝子型2、3型C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対し、ソホスブビル(SOF)+RBV療法は高い有効性と安全性を示すことが、米国ワイルコーネル大学(ニューヨーク市)のIra M. Jacobson氏らの検討で明らかとなった。欧米では現在、これらの患者の治療選択肢として承認されたレジメンはない。ソホスブビルはHCV特異的NS5Bポリメラーゼのヌクレオチド誘導体阻害薬で、in vitroではすべての遺伝子型のHCVを抑制し、第II相試験で2、3型HCV感染患者に対する有効性が確認されている。NEJM誌オンライン版2013年4月23日号掲載の報告。2つの第III相試験で、12週投与とプラセボまたは16週投与を比較 研究グループは、遺伝子型2、3型の慢性HCV感染患者に対するソホスブビル(SOF)+リバビリン(RBV)療法の有用性を評価する2つの無作為化第III相試験(POSITRON試験、FUSION試験)を行った。 POSITRON試験では、インターフェロンを含むレジメンが適応外の患者(有害事象で治療を中止した患者や禁忌例など)を対象に、12週のSOF+RBV療法とプラセボの比較が行われた。 2012年3月~5月の間に4ヵ国(米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)63施設から278例が登録され、SOF+RBV群に207例(平均年齢52歳、男性57%、肝硬変15%)、プラセボ群には71例(52歳、48%、18%)が割り付けられた。 FUSION試験は、インターフェロンを含むレジメンによる前治療が無効であった患者を対象とし、16週と12週のSOF+RBV療法の比較を行った。 2012年5月~7月までに3ヵ国(米国、カナダ、ニュージーランド)67施設から201例が登録され、16週投与群に98例(平均年齢54歳、男性68%、肝硬変33%)、12週投与群(54歳、71%、35%)には103例が割り付けられた。 主要評価項目は、いずれの試験も治療終了後12週の持続的なウイルス学的著効(SVR)とした。3型の肝硬変例、前治療無効例では長期投与が有効な可能性も POSITRON試験のSVR率は、SOF+RBV群が78%と、プラセボ群の0%に比べ有意に良好であった(p<0.001)。FUSION試験のSVR率は、16週投与群が73%、12週投与群は50%であり、有意な差が認められた(p<0.001)。 両試験ともに、2型よりも3型HCV感染患者でSVR率が低かった(POSITRON試験のSOF+RBV群:93 vs 61%、FUSION試験の16週投与群:94 vs 62%、12週投与群:86 vs 30%)。3型では、肝硬変なしよりも肝硬変ありの患者でSVRが低かった(68 vs 21%、63 vs 61%、37 vs 19%)。 全体として、最も頻度の高い有害事象は頭痛、疲労感、悪心、不眠であった。治療中止率はPOSITRON試験のSOF+RBV群が2%、FUSION試験の16週投与群が0%、12週投与群は1%だった。安全性プロフィールは肝硬変ありとなしの患者で類似しており、16週投与群と12週投与群の間にも差はなかった。 著者は、「PEG+RBV療法が適応外または無効の2、3型HCV感染患者の治療において、SOF+RBV療法は12週投与、16週投与ともに有効であった。とくに2型および非肝硬変患者に対する効果が高く、3型では16週投与が12週投与よりも優れていた(SVR:62 vs 30%)」とまとめている。

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中国で見つかった鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の疫学調査(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(97)より-

2013年3月に中国で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人への感染例が初めて報告されて以降、中国から継続して感染者が発生している。4月には中国帰りの男性が台湾で発症し、中国以外から初めて報告された。本稿執筆時点では日本国内での感染例は報告されていないが、国内発生時に冷静に対応できるよう準備しておく必要がある。  本論文は、4月17日までに確定した鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症82例の臨床情報と、濃厚接触者の追跡調査をまとめた報告である。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染は、リアルタイムRT-PCR法、ウイルス分離、血清学的検査のいずれかで確認した。確定診断された患者の平均年齢は63歳(範囲:2~89歳)で、46%が65歳以上であった。5歳未満は2例のみで、どちらも軽い上気道症状を呈するのみだった。性別は男性が73%と多かった。  情報が得られた77例のうち、4例が家禽を扱う労働者であった。59例で動物との接触歴があり、そのうち45例に鳥との接触歴を認めた。 確定診断された82例のうち、81例は入院加療され、17例がARDSや多臓器不全で死亡した。発症から死亡までの期間の中央値は11日だった。軽症だった4例はすでに退院した。情報が得られた64例のうち、41例でオセルタミビルが投与された。発症から投与開始までの期間の中央値は6日だった。  感染患者との濃厚接触者1,251名を7日間追跡調査した。呼吸器症状を呈した19名(研修医1名を含む)で咽頭スワブ検体を用いてリアルタイムRT-PCR法が行われたが、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは1例も検出されなかった。  同一家族内で複数の患者が発生した3事例のうち、調査中の1事例を除く2事例の調査の結果では、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト-ヒト感染は否定できなかった。 本論文のポイントの1つは、確定患者に重症例が多いことである。通常の季節性インフルエンザと比較すれば死亡率は高そうである。ただし、もともと原因微生物不明の肺炎患者を対象とした調査であり、重症例が選択的に拾い上げられていた可能性が高い。調査範囲が拡大され、症状の軽い患者も報告されるようになってきており、本当の重症度は今後判明していくだろう。 もう1つのポイントは、濃厚接触者にヒト-ヒト感染が起きていることが確認されなかったことである。現時点では、鳥インフルエンザA(H7N9)はあくまで鳥に感染するインフルエンザである。同一家族内での感染事例が存在し、限定的なヒト-ヒト感染が起こっている可能性は否定できないが、パンデミックを起こす可能性は低いと推測する。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症は、人にとって未知の感染症であり、感染源、感染経路、検査診断、治療法、重症度などは依然として明らかとなっていないため、今後も個々の症例を集積していく必要がある。

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鳥インフルエンザは怖くない!でも備えは万全に!!

連日報道される中国で発生した鳥インフルエンザA(H7N9)(以下、鳥インフル(H7N9)記す)。WHO(世界保健機構)の発表によれば、131人の確定患者、32名の死亡と報告されている(5月9日現在)。折しもゴールデンウイークでの海外への大量渡航や行楽地への人口の集中があったことから、わが国での感染流行が危惧されていた。今回、医師、医療従事者がこの鳥インフル(H7N9)に、どのように対応したらよいか大曲貴夫氏に話を聞いた。今回の鳥インフル(H7N9)の特徴や感染経路について教えてください今回の鳥インフル(H7N9)は、鳥では重症化しないのに(高病原性ではない)ヒトで重症化していることが言えます。死亡率は現時点での報告によると約20%です。一見死亡率が高いようにみえますが、これについては今後精査が必要だと考えています。また、感染経路については、トリからの感染がほぼ確定しており、現在ヒトからヒトの感染は確認されていません。中国でも生鳥を扱う市場を閉鎖する対策をとったことで、感染者が格段に減少したとの見方もあるため、感染ルートがトリ-ヒトだけなのであれば、このまま終息に向かう可能性も高いと思われます。今回の鳥インフル(H7N9)は、市販の迅速キットで検出できるものでしょうか市販の迅速キットの性能は不明です。ただし通常の鼻腔内や上気道の検体採取では、PCR法を用いても陰性反応が出るレポートもあります。確定には、下気道・肺からの検体採取が必要だと考えています。よって、迅速キットで上咽頭から検体をとって検査しても、陰性になる可能性が高いと推測します。現在、症状から疑って、気道分泌物を用いてPCR法で診断する方法しかないように思われます。診療時のポイントについて教えてくださいこれは今回の鳥インフル(H7N9)だけではないのですが、「最も大切なことは、疾病を思いつくこと!」です。患者さんが、急な発熱、倦怠感で来院した場合、病歴聴取の時に渡航歴がないかどうか聞くことが重要です。問診で「渡航歴を聞く」ことは、実際の医療現場では意外と軽んじられています。そこで中国渡航歴があれば、鳥インフル(H7N9)の可能性も考え、診療をすすめていきます。このように適切な問診をすることで、可能性のある疾患を思いつくことが出来るかどうか、ここが早期発見のポイントとなります。診断で確定患者がいた場合の治療やその後の措置について教えてください実際には、鳥インフル(H7N9)ウイルスによる感染と確定診断がつくまでには、少し時間がかかります。よって現実には、まだ確定診断がついていない状況で、患者さんの症状を診て、治療をどうするかを決めることになります。お年寄りや基礎疾患のある重症化が懸念される患者さんには、WHOが推奨しているように早期に抗インフルエンザ薬の処方をした方がよいかもしれません。ただし抗インフルエンザ薬の効果は、まだ十分検討されていませんので、その点は念頭に置くべきですね。診療時に医療従事者が気をつける点について教えてください鳥インフル(H7N9)に限らず、呼吸器症状を訴える患者さんを診療するときに大事なことは、患者からウイルスをもらわないことです。そのため、呼吸器症状のある患者を診療する場合には、サージカルマスクを着用し、手指衛生に気を配ること。これらを、今だけ実施するのではなく、常日頃から実践し、診療スタッフ全員で習慣化しておくことが大事だと考えます。実際に鳥インフル(H7N9)の疑い例を診療する場合、感染対策をどうするかについては、実はさまざまな意見があります。ただ、実際の診療では、患者さんの中国渡航歴がわかるまで、時間がかかることもあります。それがわかるまで、医療者は何も対策をしていなかった・・・では意味がありません。鳥インフル(H7N9)の疑い例を診療する場合には、状況がはっきりするまではN95マスクを着用すべきと言う意見もあります。しかし、症状のない患者に対応する場合に、濃厚接触の無い時点で長時間の着用勤務が難しいN95マスクの着用を標準にする根拠は乏しいです。仮にN95マスクをつけていなかったとしても、サージカルマスクをつけて接していれば、かなり感染を防御できるはずです。呼吸器症状・発熱のある方の診療では、サージカルマスクを着用し、手指衛生に気を配ること。これらを、今だけ実施するのではなく、常日頃から実践しておくことが、まずは重要でしょう。それと鳥インフル(H7N9)疑いの患者さんがいる場合は、待合室を分けたり、別室で待っていただくなどの配慮も必要になります。実際に、鳥インフル(H7N9)を強く疑う場合に医療者が取るべき感染対策は、それぞれの現場の特性に合わせて考える必要があります。事前に感染対策の専門家に相談して、対応を決め、スタッフで共有しておくことが大切でしょう。不安を訴える方への健康相談について、教えてください医療者がきちんと鑑別、対応し、安心させることが重要です。医療者が舞い上がると、患者さんにも伝わり、周囲や社会にも誤解を与えますので気をつけたいところですね。今回の鳥インフル(H7N9)が行政より検疫感染症に指定されました(5/6より施行)。これに伴い今後、医療従事者が行わなければいけない事項などについて教えてください鳥インフル(H7N9)だと確定した患者さんがいる場合、担当した医師は直ちに保健所に届出を行う必要があります。また、状況によっては患者さんの転院や入院を行う必要がでてきます。今回の指定は、入院勧告や就業制限が罰則つきでできる、強制力のあるものです。患者さんに対してもその点を十分説明しないと、納得頂けないでしょう。「今回の鳥インフル(H7N9)流行について」最後に一言お願いします重症例が多いと報道されています。しかし、冷静に構えてもらいたいと思います。繰り返しになりますが、診療にあたる医療者は、普段から感染防止対策の習慣化を心がけておくことが大切です。例えばN95マスクを装着する場合もありますが、このマスクの着用には少しテクニックが必要ですから、普段からその練習をしておく、あるいは連携する医療機関や保健所などの行政機関との連絡体制の確認など、今回のような事態にきちんと対応できるように備えておくことが大切です。「特別な状況だから、特別な対策をする」と言うことは簡単ですが、実はこれは極めて非現実的です。日頃から対策を適切に行えるよう、準備しておくことが必要と思います。国立感染症研究所 鳥インフルエンザ特集ページ 

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鳥インフルH7N9型ウイルスの感染源を同定、症状はH5N1型に類似/Lancet

 2013年2月、中国東部地域で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染が発生し、感染者と家禽との接触が確認された。浙江大学医学部(杭州市)のYu Chen氏らは、同定した感染患者4例の感染源が同省の市場の家禽である可能性が高く、臨床症状は高い致死性を示すH5N1型ウイルス感染と類似するとの調査結果を、Lancet誌オンライン版2013年4月25日号で報告した。臨床像の評価とウイルスのゲノム解析 研究グループは、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染患者の臨床像およびウイルス学的な特徴を検討し、ヒト由来のウイルスと浙江省の市場の家禽由来のウイルスを比較するゲノム解析を行った。 2013年3月7日~4月8日の間に、初発の呼吸器症状を呈し、胸部X線検査で原因不明の肺浸潤影を認め、検査でH7N9型ウイルス感染が確認された入院患者を対象とした。 これらの患者の病歴および種々の検査結果を収集した。咽喉および喀痰のサンプルを採取し、RT-PCR法でM、H7、N9遺伝子の検索を行うとともに、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞で培養した。重複感染の評価を行い、6つのサイトカインとケモカインの血清濃度をモニタリングした。 疫学的に関連のある市場(6ヵ所)から86羽の鳥(ニワトリ20羽、ウズラ4羽、ハト5羽、アヒル57羽)の排泄腔スワブを採取して、RT-PCR法で分離株の同定と分類を行った。さらに、患者とニワトリのウイルス分離株の8つの遺伝子セグメントを系統発生的に解析した。4例中2例が死亡、ハトとニワトリから近縁ウイルスを検出 4例のH7N9型ウイルス感染患者(39歳、68歳、64歳の男性、51歳の女性)を同定した。4例とも発症前の3~8日に家禽と接触していた。 全例に発熱および抗菌薬が無効で急速に進行する肺炎を認めた。白血球数およびリンパ球数の減少や、肝・腎機能の低下がみられ、血清サイトカインやケモカイン濃度が高度に上昇し、病態の進行に伴って播種性血管内凝固(DIC)をきたした。2例(39歳と64歳の男性)が死亡し、残りの2例は回復した。喀痰サンプルは、咽喉スワブよりもH7N9型ウイルス陽性率が高かった。 2羽(40%)のハトおよび4羽(20%)のニワトリからH7N9型ウイルスが検出された。患者(死亡した64歳の男性)由来のウイルスと、疫学的に関連のある市場のニワトリ由来のウイルスはきわめてよく類似していた。すべてのウイルス遺伝子セグメントが鳥由来であった。 分離されたH7N9型ウイルスのH7は浙江省のアヒル由来のH7N3型ウイルスのH7と最も近縁であり、N9は韓国の野鳥由来のH7N9型ウイルスのN9と近縁だった。 H7の受容体結合部位の解析では、ヒトウイルスのGln226Leuの置換およびヒトとニワトリのウイルスのGly186Valの置換(α-2,6結合シアル酸受容体への親和性の増大に関連)が認められ、ヒトウイルスのPB2のAsp701Asn突然変異(ほ乳類への適応に関連)も確認された。また、M2遺伝子ではアダマンタン(アマンタジンはその誘導体)抵抗性に関連するSer31Asnの突然変異もみつかった。 著者は、「同定された鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染患者の感染源は浙江省の市場の家禽である可能性が示唆された。この新たな再集合体H7N9型ウイルスの種を超えた家禽-ヒト間の伝播は、ヒトに致死的な重度の肺炎および多臓器不全をもたらす。症状はH5N1型ウイルス感染と類似していた」とまとめている。

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腸内細菌叢代謝産物TMAO、心血管リスクの新たな予測因子に?/NEJM

 トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)は、食事中のホスファチジルコリンが腸内細菌叢により代謝されて生成し、血中や尿中のTMAO値の上昇は主要な有害心血管イベントの予測因子となる可能性があることが、米国・クリーブランドクリニックのW.H. Wilson Tang氏らの検討で示唆された。リン脂質であるホスファチジルコリン(レシチン)は食事由来の主要なコリン供給源で、コリンは脂質代謝や細胞膜形成のほか、神経伝達物質アセチルコリン合成の前駆体など、代謝に関わるさまざまな役割を担う。同氏らは最近、動物実験で、食事由来ホスファチジルコリンのコリン部分の腸内細菌代謝と冠動脈疾患の間には、アテローム性動脈硬化を促進する代謝産物であるTMAOの産生を介する機構的な関連があることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2013年4月25日号掲載の報告。2つの前向き臨床試験で評価 研究グループは、ヒトにおける食事由来ホスファチジルコリンの腸内細菌依存性の代謝や、TMAO値と有害な心血管イベントの関連を2つのプロスペクティブな臨床試験で評価した。 第1の試験(ホスファチジルコリン負荷試験)は健常被験者40人を対象とした。ホスファチジルコリン負荷(固ゆで卵2個および重水素(d9)標識ホスファチジルコリンの摂取)を行ったのち、6人に対し広域スペクトルの経口抗菌薬(メトロニダゾール、シプロフロキサシン)で腸内細菌叢を抑制する前後に、高速液体クロマトグラフィとオンラインエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析法にて血漿中および尿中のTMAO値、血漿中のコリン値とベタイン値を測定した。 第2の試験(臨床転帰試験)では、待期的診断的心臓カテーテル検査を受けた患者4,007人[無イベント群:3,494人(平均年齢62歳、男性65%)、イベント発生群:513人(68歳、62%)]が対象となった。 心臓カテーテル検査時に採取した空腹時の血液サンプルを用いて血漿中TMAO値を測定し、3年のフォローアップ期間における主要な有害心血管イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)の発生との関連について検討した。高TMAO値群は心血管リスクが2倍以上に ホスファチジルコリン負荷試験では、負荷後のTMAOおよびそのd9同位体置換体の濃度が、他のコリン代謝産物と同様、時間依存性に上昇した。血漿TMAO値は抗菌薬投与後、著明に抑制され、投与を中止すると再び検出された。 臨床転帰試験では、血漿TMAO値の上昇により主要な有害心血管イベントが増加した(TMAO値の最低四分位群に対する最高四分位群のハザード比:2.54、95%信頼区間:1.96~3.28、p<0.001)。 高TMAO値は、従来のリスク因子(年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧など)で調整済みの主要有害心血管イベントのリスク上昇に関する有意な予測因子であった(p<0.001)。また、65歳未満、女性、冠動脈心疾患の既往なし、脂質異常なし、正常血圧、非喫煙などの低リスクのサブグループにおいても、高TMAO値は心血管リスクの有意な予後予測因子であった。 著者は、「TMAOは、食事中のホスファチジルコリンが腸内細菌叢により代謝されて生成することが示された。TMAO値の上昇は主要な有害心血管イベントの発生リスクの増大と関連する」と結論している。

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新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染、82例の疫学的特性/NEJM

 中国疾病予防管理センター(CDC)・公衆衛生緊急センターのQun Li氏らは、2013年4月17日時点で入手できた新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染に関する情報を基に解析した疫学的特性についてまとめ、NEJM誌オンライン版2013年4月24日号に予備報告として発表した。その中で著者らは「H7N9ウイルス感染は中国内6地点で確認され、感染確認患者の多くが非常に重篤であった。疫学的な関連性はなかった」と述べたうえで、「ヒト-ヒト感染について2家族集団でルールアウトはできなかったが、7日間の疾患モニタリングで呼吸器症状を呈した患者の濃厚接触者(1.5%)からウイルスは検出されなかった」と報告している。H7N9感染者の疫学情報を分析、患者の濃厚接触者についても7日間モニタリング 新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染事例の疫学的特徴をまとめるためのフィールド調査は、H7N9感染が確認された症例(リアルタイムRT-PCR法、ウイルス分離、血清学的検査による)を対象とした。特定された患者の人口統計学的特性、曝露歴、病状変化の情報を入手した。 また、患者の濃厚接触者について7日間にわたり疾患症状についてモニタリングした。症状を発現した人には咽頭スワブを行い、H7N9ウイルスの有無をリアルタイムRT-PCR法にて調べた。入院81例の死亡率は21%、発症から死亡までの中央値は11日 3月25日以降4月17日現在までにH7N9ウイルス感染が確認されたのは82例であった(原因不明の肺炎による入院患者664例のうち)。症例患者は、平均年齢63歳(範囲:2~89)、男性が73%、84%が中心都市の住民だった。 症例が確認されたのは6地点で、上海市(確定31例、疑い1例)、浙江省(確定25)、江蘇省(確定20、疑い1)、安徽省(確定3)、河南省(確定2)、北京市(確定1)であった。 解析データを入手できた77例のうち、4例が鶏肉を扱う労働者であった。また77%(59例)が生きた動物との接触歴があり、そのうち鳥との接触歴があったのは76%(45例)だった。次いでイヌが20%(12例)、ブタは7%(4例)だった。 症例患者の発症から初診までの期間中央値は1日で、入院までは同4.5日だった。 入院例は、小児1例を除く81例で、そのうち4月17日現在、17例(21%)が死亡、発症から死亡までの期間中央値は11日であった。また、60例は予断の許さない状況が続いている。退院例は4例でいずれも症状が軽度であった。2家族集団のヒト-ヒト感染はルールアウトできず 家族集団の検討は4月17日現在、2行政区3家族で行われ、そのうち2家族のデータが解析可能であった。この2家族について、H7N9ウイルスのヒト-ヒト感染はルールアウトできなかった。 一方で、7日間の疾患モニタリングが完了したのは、患者の濃厚接触者1,689例のうち1,251例で、そのうち呼吸器症状の発症がみられたのは19例(1.5%)であったが、H7N9ウイルスは検出されなかった。

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慢性HCV感染患者、新規ヌクレオチドポリメラーゼ阻害薬の上乗せ効果を確認/NEJM

 未治療の慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療において、新規ヌクレオチドポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルを標準治療であるペグインターフェロンアルファ2a+リバビリン療法に追加すると有効性が改善され、ソホスブビル+リバビリン療法の効果は標準治療に対し非劣性であることが、米国テキサス大学健康科学センターのEric Lawitz氏らの検討で示された。慢性HCV感染患者は世界で約1億7,000万人に及び、年間35万人以上がHCVに起因する肝疾患で死亡しているという。ソホスブビルは、第II相試験で未治療の遺伝子型1、2、3型の慢性HCV感染患者に対する有効性が確認されている。NEJM誌オンライン版2013年4月23日号掲載の報告。遺伝子型別の2つの第3相試験で評価 研究グループは、未治療の慢性C型肝炎患者に対するソホスブビル(SOF)の有用性を評価する2つの第3相試験(FISSION試験、NEUTRINO試験)を実施した。 NEUTRINO試験は、遺伝子型1、4、5、6型のHCV感染患者(98%が1と4型)を対象にSOFとペグインターフェロンアルファ2a(PEG)+リバビリン(RBV)の併用療法(治療期間12週)の評価を行う非盲検単群試験。2012年6月~8月までに米国の56施設から327例(平均年齢52歳、男性64%)が登録された。 FISSION試験は、遺伝子型2、3型のHCV感染患者を対象にSOF+RBV療法(治療期間12週)とPEG+RBV療法(治療期間24週)を比較する非盲検無作為化非劣性試験。2011年12月~2012年5月までに6ヵ国(米国、オーストラリア、ニュージーランド、イタリア、スウェーデン、オランダ)97施設から499例[SOF+RBV群:256例(平均年齢48歳、男性67%)、PEG+RBV群243例(48歳、64%)]が登録された。 両試験とも、主要評価項目は治療終了12週後の持続的なウイルス学的著効(SVR)とした。3剤併用でSVRが90%に、3型には3剤併用が有用な可能性も NEUTRINO試験におけるSOF+PEG+RBV療法の治療終了後12週のSVRは90%(95%信頼区間[CI]:87~93)であった。以前の試験で得られた調整済みSVRは60%であり、今回のほうが有効性が有意に優れた(p<0.001)。 FISSION試験では、SVRは両群ともに67%であった。層別因子で調整後の両群のSVRの絶対差は0.3ポイント(95%CI:-7.5~8.0)で、SOF+RBV群で良好な傾向を認めた。 補足的な解析でSOF+RBV群のPEG+RBV群に対する非劣性が確認された(p<0.001)。SOF+RBV群では、3型のSVRが56%と、2型の97%に比べ不良であった。 治療期間中の重篤な有害事象は、SOF+PEG+RBV群が1%(4例)、SOF+RBV群が3%(7例)、PEG+RBV群は1%(3例)に認められた。有害事象による治療中止率はそれぞれ2%(5例)、1%(3例)、11%(26例)だった。 SOF+RBV群は、PEGを含む群に比べ全般的に有害事象の頻度が低く、とくに疲労感、頭痛、悪心、不眠、貧血が少なく、好中球減少は1例もみられなかった。 著者は、「SOF+PEG+RBV療法による12週の治療は、主に1型と4型から成るHCV感染患者群で90%という高いSVRを示し、2型と3型のHCV感染患者群ではSOF+RBV療法とPEG+RBV療法の非劣性が確認された」とまとめ、「SOF+RBV療法では3型HCV感染患者のSVRが低かったが、これらの患者は治療期間を延長するか、SOF+PEG+RBV療法を行うことでSVRが改善する可能性がある」と指摘している。

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乳児期の重度のアトピーや食物アレルギー、小児期のマラセチア感作リスクと関連

 1歳未満の乳児期に重度のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを有すると、小児期にマラセチアに対する感作を有するリスクが高くなっていたことを、フィンランド・タンペレ大学病院のO-M. Kekki氏らが10年間のフォローアップの結果、報告した。マラセチアは、ヒトの皮膚に常在する酵母様真菌だが、アトピー性皮膚炎では疾患の増悪に関与することが知られる。Pediatric Allergy and Immunology誌2013年5月号(オンライン版2013年4月3日号)の掲載報告。 研究グループは、乳児期から食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を有している小児について、10年フォローアップ時でのマラセチアに対する感作の有病率を調べた。 対象は、1歳未満でアトピー性皮膚炎かつ牛乳/小麦アレルギーと診断された乳児187例であった。アトピー性皮膚炎の部位は、初診時の診療記録で評価し、10年フォローアップ時はSCORADで評価した。また、11歳時にImmunoCAPにて、マラセチアに対する特異的IgEを評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験児187例は、24例(13%)が牛乳アレルギーを、71例(38%)が小麦アレルギーを、92例(49%)が牛乳と小麦アレルギーの両方を有していた。アトピー性皮膚炎の重症度の内訳は、軽度が94例(50%)、中等度が57例(30%)、重度が36例(19%)であった。・10年フォローアップ時点で、19例(10%)が継続して牛乳または小麦アレルギー(もしくはその両方)を有していた。アトピー性皮膚炎は147例(79%)が軽度であり、30例(16%)がSCORADスコア0であった。・被験児187例のうち、マラセチア属特異的IgE陽性(≧0.35kU/L)者は27%であった。M. sympodialis特異的IgE陽性者は20%であった。・乳児期のアトピー性皮膚炎の範囲は、10年フォローアップ時にマラセチア特異的IgEを有するより高いリスクと関連していた。・食物アレルギーのリスク比は、マラセチア特異的IgE陽性の場合、3.11(95%CI:2.05~4.72、p<0.001)であった。

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ショーシャンクの空に【心の抵抗力(レジリエンス)】[改訂版]

「あ~もう嫌になる!」みなさんは、仕事や人間関係でうまくいかなかったり、移った職場で慣れなくて居心地が悪かったりして、「あ~もう嫌になる!」と絶望的になったことはありませんか?そんな時、みなさんの心に何が起きているのでしょうか?そして、どうしたらこの気持ちから救われるのでしょうか?これらの疑問を踏まえて、今回は、映画「ショーシャンクの空に」を取り上げてみました。舞台は、1940年代後半から1960年代頃までの、とあるアメリカの刑務所。主人公の20年の歳月をかけた刑務所での生活が描かれています。このストーリーを追いながら、メンタルヘルスの視点で、心の抵抗力(レジリエンス)について、いっしょに考えていきましょう。ストレス因子―心の風邪ウイルス主人公のアンディは、もともと若くして有能な銀行員で、妻といっしょに裕福な暮らしをしていました。しかし、彼の妻は不倫をしており、しかも彼女の愛人とともに何者かに銃殺されてしまったのです。そして、彼は、身に覚えのないまま、状況証拠から、妻とその愛人を殺害した罪で終身刑を言い渡され、ショーシャンク刑務所に収容されてしまいます。刑務所では、所長に「命を私に預けろ」と宣告され、全裸にされ乱暴に消毒薬の粉をかけられ、そのまま独房が並ぶ廊下を歩かされます。囚人虐待を予感させます。その後、アンディは男色の囚人たちに目を付けられ、集団で暴行されレイプされます。看守たちは見て見ぬふりの無法状態です。そして、それが刑務所の日常業務の1つのようにして繰り返されるのでした。時には反撃しますが、暴行はとどまるところがなく、まさに絶望的なのでした。アンディのストレスとなる原因(ストレス因子)として、妻の裏切りと喪失、濡れ衣、終身刑、囚人虐待、集団レイプがあげられます。彼はくじけそうになり、精神的に限界に達しようとしていました。私たちも、彼ほどではないにしても、日々の生活の中で、このストレス因子という心の風邪ウイルスにより、心の風邪(うつ)をひいて、ふさぎ込むことはあります。このストレス因子を整理して見ると、対人関係、環境変化、燃え尽き(過剰適応)の3つに大きく分けられます(表1)。表1 ストレス因子の例対人関係環境変化燃え尽き(過剰適応)例職場・学校・地域・家庭でのトラブル離婚、結婚(「マリッジブルー」)喪失、死別(「ペットロス」なども含む)就職(5月病)、退職、解雇、昇進転居、転勤、転職、転校カルチャーショック施設症身体疾患(疼痛、不自由など)育児ノイローゼ介護疲れ(介護ノイローゼ)新人(新入生や新入社員)の張り切り過ぎ(4月病)レジリエンス―心の抵抗力アンディが受けた囚人たちからのレイプの関係とは対照的に、調達屋で友人のレッドとの友情が引き立ちます。この映画の醍醐味の1つとも言えます。アンディはレッドに趣味の鉱物集めのためにとロックハンマーを調達してもらいます。刑務所の中の時間はゆっくりと流れていきます。2年後のある時に、屋根掃除のボランティアが募られました。この時、レッドは「このままだと彼は廃人同然になる」と思い、彼の計らいで、メンバーにアンディが引き抜かれます。レッドはアンディを何とか救いたいと思ったのでした(ソーシャルサポート)。屋根掃除をしているさなか、たまたま看守が遺産相続で愚痴をこぼしているのを小耳にはさんだアンディは、もともと銀行員であった知識を生かし資産運用をアドバイスします。その見返りとして、なんと意を決して、掃除メンバーにビールを振る舞うように申し出るのです(積極性)。まさに、アンディ自身が囚人たちにとっての「救世主」となるのです。アンディの狂気に陥りそうになる中での人間らしさを求める気持ちが伝わってきます。それは、彼を思いやるレッドの存在と同時に、彼がレッドを含め多くの仲間たちへの思いやりです(愛他主義)。ビールを片手に、メンバーたちは、アンディに感謝すると同時に一目置くようになります。その後、その能力を買われたアンディは刑務所職員たちの税理士となり、所長にも大目に見られるようになります。刑務所職員からも一目置かれる存在になり、強姦魔たちは排除されます。アンディは生き生きとし自尊心を取り戻し、図書室の改造や刑務所全体にオペラを流すなど、様々なことに精力的に力を注いでいきます。オペラの歌声が響き渡り、荒みきった囚人たちの心がひと時、潤されるシーンは感動的です。アンディが様々な苦難にくじけずに乗り越えてきた理由が、ストーリーを追っていくうちに見えてきます。それは、彼には、苦難という心の風邪ウイルス(ストレス因子)を撥ね返す心の抵抗力(レジリエンス)が強かったからでした。これから、このレジリエンスという心の抵抗力の要素を、他の登場人物と比べながら、もっと掘り下げていきましょう。スキーマ―生き様という心の習慣図書室の係員であるブルックスは50年という歳月を刑務所で過ごしてきました。一番の古株です。その彼に仮釈放処分が許可されたところから事態が急展開します。彼は出所を拒む気持ちから、仮釈放取り消しを望んで、気が動転して、なんと仲間にナイフを振り回してしまいました(衝動性)。あまりにも長い年月、塀の中にいると逆にその居心地が良くなってしまうのです。もはや塀の外でやっていくだけの自信がないのでした。レッドも気付きます。「ブルックスはここでは教養があり大事にされているが、外ではただの老いた元服役因だ」「あの塀は、最初に憎み、やがて慣れ、最後に頼るようになる」「これは施設慣れ(施設症)だ」(表1)と。ブルックスが刑務所での役割を見出し、そこが自分の居場所であると確信していました。ちょうど風邪ウイルスから体を守るために、マスク、手洗い、うがいをする習慣のように、心の風邪ウイルス(ストレス因子)から心を守るために、私たちはそれぞれが良しとしている心の習慣を持っています(スキーマ)。それは、考え方の癖、生き方、生き様、人生観があります。そして、この心の習慣(スキーマ)が周りから見てあまりにも偏っている場合は、問題が起きてしまいます(認知の歪み)。それはちょうど、風邪を予防しなければならない時に、あえてマスクを付けなかったり、手洗いやうがいをいい加減にしてしまうようなものです。適応障害―心の風邪(うつ)結局ブルックスは出所します。半世紀を経て外の世界が大きく変わったことに驚きます。与えられた仕事であるスーパーマーケットのレジ係に慣れず、上司からは嫌われ、気遣ってくれる仲間もいなくて、新しい生活を送ることがつらくなっていきます。また、「悪夢で眠れない」「不安から解放されたい」と思い詰めていきます。出所後の慣れない生活環境 (ストレス因子)が心の習慣(スキーマ)に合わず、心の風邪をひいています(適応障害)。そして最後は、「おさらばすることにしました」とあっけなく(衝動性)、自宅アパートで首を吊ってしまいます。レッドが後に「ここ(刑務所)で死なせてやりたかった」と言ったように、ブルックスほどにもなると、もはや居場所は刑務所しかなかったのかもしれません。ブルックスは、もともとの衝動性や「刑務所が自分の本当の居場所」という凝り固まり偏った考え(認知の歪み)に、出所後の孤独が重なり、心の抵抗力はとても弱くなっていた(脆弱性)と考えられます(表2)。実際に最近の日本でも、出所しても社会での居場所がないため軽犯罪を繰り返し、再び入所するケースが問題視されています。出所後、彼らにどういう適応環境が提供されるか(ソーシャルサポート)、また彼らがどういう適応環境を見出すことができるか(認知再構築)が大きな課題です。実は、この問題は、精神科病院に長期入院をしている患者にも通じることです。入院期間が年単位の患者ともなると、病院生活がいかに楽かうすうす気付いてしまい、むしろ安住し、居付いてしまうのです。そして、地域や病院の手助けがあるのに、自分で生きていくことを拒むようになります。また、家族も本人が家庭にいないことが当たり前になってしまい、今の生活を続けたいと思い、家族も受け入れに対して強い抵抗を示すようになります。仮に退院しても、本人が新しい生活に慣れず、すぐ再入院してしまうケースも多く、医療関係者の頭を悩ませる1つになっています。表2 脆弱性とレジリエンスの比較脆弱性レジリエンス意味ストレスへの心の脆さ、弱さストレスを撥ね返す心の抵抗力(立ち直る力、打たれ強さ)要素本人(個人)衝動性偏った考え方(認知の歪み)マイナス思考消極性無力感、受身自己本位客観視ユーモア希望を持つプラス思考積極性他者への思いやり(愛他主義)助けを求める能力(社交性)周り(社会)つながりなし(孤独)家族、仲間、地域、職場とのつながりアスピレーション―心のワクチン20年の月日が流れ、新入りトミーが入所します。憎めないトミーにアンディは父親のように接し、勉強を教え、高校卒業資格を取らせます。その後、奇遇にも、トミーはたまたまアンディの妻とその愛人を殺害した真犯人の話を知っていました。ついに、アンディの無実が明るみになります。アンディは、所長に掛け合いますが、所長は全く取り合ってくれません。所長に金銭面での違法な便宜を図り悪事を支えているアンディは、所長にとって、なくてはならない存在にまでなっていたからです。その直後、トミーは密かに射殺されます。そして、アンディは監禁房に入れられてしまいます。アンディが2ヵ月間も監禁房にいて正気が保てたのは、ひとえに彼を希望が支えていたからでした。彼の希望とは、脱獄し、ジワタネホという楽園に行くことでした。このように、「自分の人生をどうしたいのか」というはっきりとした希望、目標、生きがいがあること(アスピレーション)は、苦難を生き抜くための大きな原動力になります。このアスピレーションは、ちょうど、風邪をひかないために、ある一定期間に免疫力を高めるワクチン予防接種のように、心の抵抗力を高める心のワクチンと言えます。レッドが昔、アンディに「希望は危険だ」「塀の中では禁物だ」「正気を失わせる」と言い諭したことがありましたが、非常に対照的です。セルフモニタリング―心を鍛えるようやく監禁房から出た後、アンディは、レッドに漏らします。「自分が妻を死に追いやったも同然だと思う」「こんな私が彼女を死なせた」「そして、もう十分すぎるほどの償いをした」と。自分の運命を受け入れているという前向きな発言です(プラス思考)。「私は運が悪いな」「不運は誰かの頭上に舞い降りるけど、今回は私だった」「それだけのことだけど、油断しちゃったな」とユーモアも交えています。これらの考え方の基になるのは、彼が自分自身を冷静に見つめ直し、客観視していることです(セルフモニタリング)。このセルフモニタリングの能力は、ちょうど、風邪をひかないように体を鍛えて血の巡りをよくするのと同じく、心の風邪をひかないよう心を鍛えて心の血の巡りをよくしていくことであると言えそうです。ただ、この心の鍛えることは、「スポ根(スポーツ根性)」のような単に無理に我慢すること(忍耐力)とは違います。その理由は、単なる我慢強さは、燃え尽き(過剰適応)に陥るリスクを高めてしまうからです(表1)。自分の独房に戻った時、アンディは思い立ちます。脱獄する時が来たと。かつてレッドに調達してもらった大きなポスターが貼られてある独房の壁の向こうには、彼が小さなロックハンマーで密かに20年の歳月をかけて地道に掘った穴が続いていたのです。彼は、自分の運命を受け入れ、さらに時間をかけて打開しようとしていたのでした(積極性)。その穴の向こうには確実に希望がありました。小さな穴道を必死に這いつくばり、最後は塀の外の下水管から這い出ていきます。そして、汚物まみれのアンディは恍惚とします。祝福の雷雨に、汚物と過去に背負ってきた全てのものを洗い流されながら。この映画のクライマックスと言えるシーンです。その後すぐに、アンディの告発によって、所長の悪事が明るみになります。所長は、様々な聖書の一節を引用する偽善者でしたが、駆けつけてくる警察車両を彼は窓から見つつ、壁に刺繍で書かれた聖書の一節が眼に飛び込んできます。「主の裁きは下る。いずれ間もなく」と。見ている私たちには、してやったりの瞬間です。追い詰められた所長は咄嗟にピストル自殺します。ソーシャルサポート―人薬という心のビタミン剤アンディが去った刑務所で喪失感を感じるレッドにも、やがて仮釈放処分が下ります。そして、かつて自殺したブルックスと同じ道を辿っていきます。ブルックスが住んだアパートに住み、ブルックスと同じスーパーマーケットのレジ係の仕事に就きます。長年、刑務所で調達屋としての地位を築いていた彼は、塀の一歩外に出てしまうとただのスーパーのレジ係に過ぎず、自分を必要としてくれる仲間はそこにはいません。レッドは塀の外に出て初めて、ブルックスと同じように正気を失いかけていました。彼は、ブルックスと自分を重ね合わせて思います。「毎日が恐ろしい」「おびえなくて済む安心できる場所へ行きたい」と。その時、かつてアンディが脱獄前に言った言葉を思い出しました。ある場所に行けと。そこは二人が出会う約束の場所でした。それは、まさにレッドにとっての一筋の希望(アスピレーション)でした。希望は、正気を失いかけていたレッドも救ったのでした。希望とは、ポジティブな見通しであり、心の抵抗力(レジリエンス)としてとても重要であることが分かります。また、自分とつながっている人がいること (ソーシャルサポート)も大切であることが分かります。これは、風邪をひかないためのビタミン剤のように、心の風邪をひかないための「人薬(ひとぐすり)」という心のビタミン剤と言えます。ブルックスと比べて、レッドの状況は大きく違っています。アンディが待っていると気付いたことで、レッドは初めて本当の自由を実感したのでした。そして、「希望には永遠の命がある」と思うまでになりました。ブルックスにも、地域で行きつけのお店ができて、顔馴染みの知り合いでもできれば、また状況は変わったかもしれません。表3 心の抵抗力(レジリエンス)の違いブルックスレッドアンディレジリエンス×衝動的×認知の歪み×出所後に孤独△出所後に一時孤独◎アンディとの約束○冷静○仲間思い◎希望を持つ心の抵抗力を高める具体的なコツ私たちは、アンディから心の抵抗力(レジリエンス)を高める様々なコツを学ぶことができました。これらは、それぞれ連動し合い、強め合っています。これから、それらを大きく3つに分けて整理し、具体的に私たちにもできることを考えていきましょう。(1)心を鍛える(セルフモニタリング)1つ目は、心を鍛える、つまりは、自分を冷静に見つめ直す癖を付けること、つまり自己客観視です(セルフモニタリング)。具体的には、自分自身の行動や気持ちを記録したり日記をつけて、心の風邪ウイルス(ストレス因子)を書き出して、言葉にすることです(外在化)。これは、例えば、「神様にいつも見守られている(=いつも見られている)」という信者が神様の視点で自分自身を見る心理でもあります。また、カリスマ歌手である矢沢永吉の熱烈なファンが、「自分は困った時、『永ちゃんだったらどうするんだろう』っていつも考えるんだよ」と語る発想にも似ています。尊敬する人の視点で自分自身を見ることにより、自分自身への気付きを高めていると言えます。また、気持ちが揺らいできたら、そこでわざと自分を実況生中継して、自分自身への気付きを高めるのも手です(マインドフルネス)。例えば、あなたは今お腹が空いてイライラしてレストランで注文した食事を待っているという状況。「『お腹が空いた』と○○(自分の名前)はいら立っている」「なぜかと言うと・・・」と実況中継します。すると、どうでしょう?自分じゃない誰かの視点に立つことで、自分自身の心から距離が取れた感覚(メタ認知)になりませんか?このように、もやもやとした感情を理性的な言葉にすること(外在化)で、理性が、感情の手綱を握ることができるようになります。さらには、お笑いネタのように自分自身に突っ込みを入れること(ユーモア)も良いです。これらは、車の運転や楽器の習い事のように、理屈を頭で理解すると同時に、別の視点や様々な発想(認知パターン)を感覚的に刷り込むトレーニングです。こうして、心を鍛えることで、やがていら立ちも意識しにくくなっていきます。(2)アスピレーション2つ目は、はっきりとした希望、目標、生きがいを持つことです(アスピレーション)。自分は「こうしたい」や「こうなりたい」(ロールモデル)という強い気持ちがあることで、人生をより前向きに(プラス思考)、より積極的に生きて行こうという発想になります。これは、1つ目のコツの自己客観視(セルフモニタリング)が基になっています。例えば、誰かのために何かをした時、「いいように使われた」と損得勘定だけでマイナスに思ってしまったら(外発的動機付け)、同時に「自分を役立てることができた喜びと楽しさがあった」「お仕えすることができて幸せだ」との前向きで積極的な発想も持ち、そして強めていくことです(内発的動機付け)。また、苦しい状況の中に意味を見出すのもコツです。例えば、「あっ、今、自分は試されている」「これは自分の目標に達するための試練だ」と発想を切り替えることです。これらの発想は、全てアスピレーションという希望や目標があることで支えられていると言えます。(3)ソーシャルサポートそして、3つ目は、家族や仲間とのつながりを保つこと、つまりは人薬です(ソーシャルサポート)。そのためには、まず家族や仲間への思いやりが大切であることが分かります。独りぼっちには思いの外、危うさがあります。そして、つながっていることで、自分の役割を見つけ、居場所を見いだすことができます。これらは、アスピレーションである希望や目標をより硬く力強いものにしてくれます。表4 心の抵抗力(レジリエンス)を高めるコツ例心を鍛える(セルフモニタリング)自己客観視言葉にする(外在化)自分への気付きを高める(マインドフルネス)心のワクチン(アスピレーション)希望、目標、生きがい、ロールモデルを持つプラス思考積極性人薬(ソーシャルサポート)家族や仲間とのつながり家族思い、仲間思い自分の役割と居場所の確保自分らしく生き生きと生きる二人が再会するラストシーンは、かつて共に過ごしていた高い塀に囲まれた暗く行き場のない刑務所から一転して、視界が限りなく広がった真っ青な海のビーチです。このシーンは強烈なインパクトで、最高のコントラストでした。もはや見ている私たちにも深い感動と、そして癒しを与えてくれます。私たちの生活に置き換えてみると、私たちも「日常生活」という塀の中にいるのかもしれません。そして、何かに立ち向かっている時や苦しんでいる時に、この映画は心地よく励みになります。「必死に生きるか、必死に死ぬか」とのアンディのセリフがありますが、それは塀の中でも外でも同じことで、いかに自分らしく生き生きと生きるかが大事だというメッセージです。私たち自身も、心の抵抗力(レジリエンス)を高めることで、より生き生きと生きていけるのではないでしょうか?1)「臨床精神医学、レジリエンスと心の科学」(アークメディア)2012年2月号2)「マインドフルネスそしてACTへ」(星和書店) 熊野宏昭

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