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腸管出血性大腸菌O104: H4感染による重度神経症状に免疫吸着療法が有効

腸管出血性大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群(HUS)患者にみられる重篤な神経症状のレスキュー治療として免疫吸着療法が有効なことが、ドイツ、エルンスト・モーリッツ・アルント大学のAndreas Greinacher氏らの検討で明らかとなった。2011年5月の北ドイツ地方におけるShiga毒素産生性腸管出血性大腸菌O104: H4の感染拡大により、血漿交換療法や抗補体抗体(eculizumab)に反応しない腸炎後の溶血性尿毒症症候群や血栓性微小血管症が多発した。患者の中には、腸炎発症の1週間後に発現した重篤な神経学的合併症のために人工呼吸を要する者がおり、これは症状の発現機序に抗体が介在することを示唆するという。Lancet誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月5日号)掲載の報告。免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験研究グループは、大腸菌O104: H4感染に関連して重度神経症状がみられる患者に対する、レスキュー治療としての免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験を実施した。重篤な神経学的症状を呈し、大腸菌O104: H4感染が確認され、他の急性の細菌性感染症やプロカルシトニン値の上昇がみられない患者を対象とした。12Lの血漿量のIgG免疫吸着処置を2日間行った後、IgG補充(0.5g/kgの静脈内IgG投与)を実施した。連日、複合的神経症状スコア(低いほど良好)を算出し、免疫吸着療法前後の変化を評価した。12例中10例で神経症状、腎機能が完全回復初期症状として腸炎を発症したのち腎不全を来した12例が登録された。そのうち10例(83%)は、中央値8.0日(5~12日)までに腎代替療法を要した。神経学的合併症(患者の50%にせん妄、刺激感受性ミオクローヌス、失語、てんかん発作がみられた)の発症までの期間は中央値で8.0日(5~15日)であり、9例で人工呼吸を要した。免疫吸着療法開始の3日前の時点で3.0(SD 1.1、p=0.038)まで上昇した複合的神経症状スコアは、免疫吸着療法施行後3日目には1.0(SD 1.2、p=0.0006)まで改善した。人工呼吸を必要としなかった患者では、免疫吸着療法中に失語の消失など明らかな改善がみられた。人工呼吸を要した9例のうち5例は48時間以内に、2例は4日までに機器が外されたが、残る2例は呼吸障害のために人工呼吸が継続された。12例全例が生存し、10例は神経症状および腎機能が完全に回復した。著者は、「大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群患者の重篤な神経症状の病因として抗体の関与が示唆される。免疫吸着療法は、これらの重篤な合併症を迅速に改善するレスキュー治療として安全に施行可能である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減

米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。導入2年で、1歳未満児の接種率は73%調査は、MarketScanデータベースを使って、5歳未満児のRV5接種率および下痢関連の医療利用について、2007年7月~2009年6月と2001年7月~2006年6月とを比較して行われた。また、未接種児の下痢関連の医療利用の割合について、2008年と2009年それぞれの1~6月期とワクチン導入前とを比較し、間接的なベネフィットについて推定評価した。そして下痢関連の入院の全米的な減少数、およびコストについて外挿法で推定した。2008年12月31日時点で、少なくとも1回接種済みの1歳未満児は73%、1歳児は64%、2~4歳児は8%であった。ロタウイルス感染症入院、導入前と比べて導入2年目75%減、3年目60%減各年の5歳未満児の1万人・年当たりの下痢関連入院は、2001~2006年(導入前)52件、2007~2008年35件、2008~2009年39例となっており、2001~2006年と比べて相対的に、2007~2008は33%減少(95%信頼区間:31~35)、2008~2009年は25%減少(同:23~27)していた。同じく、ロタウイルス感染症と特定された入院は各年、14例、4例、6例で、75%減少(同:72~77)、60%減少(同:58~63)となっていた。2007~2009年で、入院6万4,855件減、医療費2億7,800万ドル減2008年と2009年それぞれ1~6月期の、相対的減少の接種児vs.未接種児の比較は、以下のとおりだった。下痢入院:44%(同:33~53)vs. 58%(同:52~64)、ロタウイルス感染症と診断入院:89%(同:79~94)vs. 89%(同:84~93)、下痢で救急外来受診:37%(同:31~43)vs. 48%(同:44~51)、下痢で外来受診:9%(同:6~11)vs. 12%(同:10~15)。未接種児の間接的なベネフィットは、2007~2008年は認められたが2008~2009年には認められなかった。一方で、2007~2009年の間に米国全体で、入院が推定6万4,855件減少、医療費は2億7,800万ドル削減したと推定された。(武藤まき:医療ライター)

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戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

1985年新潟大学医学部卒業。現在、廿日市記念病院リハビリテーション科勤務。2001年1月~2004年2月までアメリカ国立衛生研究所に勤務した際、線維筋痛症に出会い、日本の現状を知る。帰国後、線維筋痛症を中心とした中枢性過敏症候群などの治療にあたっている。日本線維筋痛症学会評議員。著書に『線維筋痛症がわかる本』(主婦の友社)。線維筋痛症の現状先進国の線維筋痛症(fibromyalgia : FM)の有病率はわずか2%だが、グレーゾーンを含めると約20%になる。そのため、患者数が多いと予想される。また、先進国や少なくない非先進国ではFMは常識だが、日本ではまだよく知られていない。この疾患特有の愁訴を訴える患者さんを、プライマリ・ケア医や勤務医が診察する機会が多いと予測される。今回、FMの標準的な診療について、正しく理解していただくために診療のサマリーと診療スライドを公開させていただく。よりよい治療成績を求めることが臨床医の努めと考えているので、是非実践していただきたい。線維筋痛症の疫学・病態画像を拡大する腰痛症や肩こりから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)を経由してFMは発症するが、それまで通常10~20年かかる(図1)。FMの有病率は先進国では約2%、FMを含むCWPの有病率は約10%、CRPの有病率はCWPのそれの1-2倍である*1。FMの原因は不明だが、中枢神経の過敏状態(中枢性過敏)が原因であるという説が定説である*1。中枢性過敏によって起こった中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome)にはうつ病、不安障害、慢性疲労症候群、むずむず脚症候群などが含まれるが、FMはその代表的疾患である(図2)。画像を拡大する女性がFM患者の約8割を占める。未就学児にも発生するが、絶対数としては30歳代~60歳代が多数を占める。線維筋痛症の症状全身痛、しびれ、疲労感、感覚異常(過敏や鈍麻)、睡眠障害、記憶力や認知機能の障害などいわゆる不定愁訴を呈する。中枢性過敏症候群に含まれる疾患の合併が多い。痛みや感覚異常の分布は神経分布とは一致せず、痛みやしびれの範囲は移動する。天候が悪化する前や月経前後に症状がしばしば悪化する。症状の程度はCRP<CWP<FMとなる(図1)。線維筋痛症の検査・診断(2012年1月30日に内容を更新)画像を拡大する圧痛以外の他覚所見は通常存在せず、理学検査、血液検査、画像検査も通常正常である。従来はアメリカリウマチ学会(ACR)による1990年の分類基準(図3)が実質的に唯一の診断基準となっていたが、2010年(図4)*2と2011年*3に予備的診断基準が報告された。ACRが認めた2010年の基準は臨床基準であり、医師が問診する必要がある。ACRが現時点では認めていない2011年の基準は研究基準であり、医師の問診なしで患者の回答のみでも許容されるが、患者の自己診断に用いてはならない。2011年の基準は2010年の基準とほぼ同じであるが、「身体症状」が過去6カ月の頭痛、下腹部の痛みや痙攣、抑うつの3つになった。共に「痛みを説明できる他の疾患が存在しない」という条件がある*2、*3。1990年の分類基準は廃止ではなく、使用可能である*2、*3。CRPやCWPにFMと同じ治療を行う限り、FMの臨床基準には存在意義がほとんどない。どの診断基準がどのくらいの頻度で、どのように使用されるのかは現時点では不明である。画像を拡大する1990年の分類基準によると、身体5カ所、つまり、左半身、右半身、腰を含まない上半身、腰を含む下半身、体幹部(頚椎、前胸部、胸椎、腰部)に3カ月以上痛みがあり、18カ所の圧痛点を約4kgで圧迫して11カ所以上で患者が「痛い」といえば他にいかなる疾患が存在しても自動的にFMと診断される*1(図3)。つまり、圧痛以外の理学検査、血液検査、画像検査の結果は、診断基準にも除外基準にもならない。通常、身体5カ所に3カ月以上痛みがあれば広義のCWPと、CWPの基準を満たさないが腰痛症のみや肩こりのみより痛みの範囲が広い場合にはCRPと診断される。FMとは異なり他の疾患で症状が説明できる場合には、通常CRPやCWPとは診断されない。~~ ここまで2012年1月30日に内容を更新~~従来の基準を使う限り、FMには鑑別疾患は存在しないが、合併する疾患を見つけることは重要である。従来、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)、心因性疼痛、仮面うつ病と診断されたかなりの患者はCRP、CWP、FMに該当する。線維筋痛症の治療(2012年7月24日に内容を更新)画像を拡大する世界ではCWPに対して通常FMと同じ治療が行われており、CRPやCWPにFMと同じ治療を行うとFM以上の治療成績を得ることができる*1。FMの治療は肩こり、慢性腰痛症、慢性掻痒症、FM以外の慢性痛にもしばしば有効である。他の疾患を合併している場合、一方のみの治療をまず行うのか、両方の治療を同時に行うのかの判断は重要である。FMの治療の基本は薬物治療と非薬物治療の組み合わせである。非薬物治療には認知行動療法、有酸素運動、減量、禁煙(受動喫煙の回避を含む)、人工甘味料アスパルテームの摂取中止*4が含まれる(図5)。鍼の有効性の根拠は弱く高額であるため、週1回合計5回行っても一時的な効果のみであれば、中止するか一時的な効果しかないことを了解して継続すべきである。薬物治療の基本は一つずつ薬の効果を確認することである。一つの薬を少量から上限量まで漸増する必要がある。効果と副作用の両面から最適量を決定し、それでも不十分な鎮痛効果しか得られなければ次の薬を追加する。上限量を1-2週間投与しても無効であれば漸減中止すべきで、上限量を使用せず無効と判断してはならない。メタ解析や系統的総説により有効性が示された薬はアミトリプチリン〔トリプタノール〕、ミルナシプラン〔トレドミン〕、プレガバリン〔リリカ〕、デュロキセチン〔サインバルタ〕である*1、4。二重盲検法により有効性が示された薬はガバペンチン〔ガバペン〕、デキストロメトルファン〔メジコン〕、トラマドールとアセトアミノフェンの合剤〔トラムセット配合錠〕などである*1、4。ノルトリプチリン〔ノリトレン〕は体内で多くがアミトリプチリンに代謝され、有効性のエビデンスは低いが実際に使用すると有効例が多い。ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕、ラフチジン〔プロテカジン〕は対照群のない研究での有効性しか示されていないが、有効例が多く副作用が少ない。抗不安薬はFMに有効という証拠がないばかりか常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的で使用すべきではない*1、4。また、ステロイドが有効な疾患を合併しない限りステロイドはFMには有害無益である*1。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は通常無効であるが、個々の患者では有効なことがある。個々の薬物の有効性のレベルは文献*1、4を参照していただきたい。論文上の効果や副作用、私自身が経験した効果や副作用、費用の点を総合的に考慮した私の個人的な優先順位は〔ノイロトロピン〕、アミトリプチリン、デキストロメトルファン、ノリトレン、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、ミルナシプラン、ガバペンチン、デュロキセチン、プレガバリンである。これには科学的根拠はないが、薬物治療が単純になる。不都合があれば各医師が優先順位を変更すればよい。日本のガイドラインにも科学的根拠がないことはガイドラインに記載されている*5。筋付着部炎型にステロイドやサラゾスフファピリジン〔アザルフィジン〕が推奨されているが、それらはFMに有効なのではなくFMとは別の疾患に有効なのである。肺炎型FMに抗生物質を推奨することと同じである。線維筋痛症の治療成績画像を拡大する2007年4月の時点で3カ月以上私が治療を行った34人のFM患者のうち薬物を中止できた人は5人(15%)、痛みが7割以上改善した人が4人(12%)、痛みが1割以上7割未満改善した人が17人(50%)、不変・悪化の人が8人(24%)であった*1。CRPやCWPにFMとまったく同じ治療を行えば、有意差はないがFMよりはよい治療成績であった*1(図6)。※〔 〕内の名称は商品名です文献*1 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.*2 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: The American College of Rheumatology preliminary diagnostic criteria for fibromyalgia and measurement of symptom severity. Arthritis Care Res (Hoboken) 62: 600-610, 2010. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20461783*3 Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA et al: Fibromyalgia Criteria and Severity Scales for Clinical and Epidemiological Studies: A Modification of the ACR Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia. J Rheumatol 38: 1113-1122, 2011. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21285161*4 戸田克広: エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.*5 西岡久寿樹: 治療総論. 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 82-92.質問と回答を公開中!

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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ビフィズス菌「LKM512」摂取による寿命伸長効果を発見

協同乳業株式会社は17日、同社の松本光晴主任研究員らが、(独)農業・食品産業技術総合研究機構・生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出基礎的研究推進事業」の平成21年度課題「健康寿命伸長のための腸内ポリアミン濃度コントロール食品の開発」(研究代表者:同氏)の研究において、プロバイオティクス ビフィズス菌「LKM512」の摂取により、マウスの寿命伸長効果が得られることを発見したと発表した。今回の研究は、プロバイオティクスビフィズス菌「LKM512」を摂取し、腸内細菌にポリアミンを生成させることで、老年病の原因である慢性炎症を抑えることが可能になるという仮説を検証するために実施した。実験は、10ヶ月齢のマウス(ヒト換算:30-35歳)を用い、LKM512投与、ポリアミンの経口投与、生理食塩水との比較試験の形式で行った。その結果、LKM512は、大腸内のポリアミン濃度を上昇させることで、大腸バリア機能が維持され、抗炎症効果が得られ、寿命を伸長させることが明らかになった。一方、ポリアミンの経口投与でも一定の寿命伸長効果はあったものの、LKM512と比較すると弱いものだった。今回の研究成果は、カロリー制限以外の方法で、マウスの寿命伸長効果が得られることを証明した数少ない成果となっている。なお、同研究結果は、米国オンライン科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」で8月17日に公開された。詳細はプレスリリースへhttp://www.meito.co.jp/press_144.htm

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インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。インドの都市部スラム街の小児373例を3年間追跡研究グループが対象としたのは、インド・Velloreの都市部のスラム街で生まれた小児で、出生後3年間、週2回往診して追跡した。追跡調査期間は2002年3月~2003年8月で、当初452例が登録され、追跡が完了したのは373例だった。調査は、便検体を2週間ごとに集め、酵素免疫測定(ELISA)法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でロタウイルス抗原を同定する検査が行われた。なお、下痢症状が認められる期間は2日ごとに便検体を集め検査が行われた。また、血清検体を6ヵ月ごとに採取し、セロコンバージョンの評価(IgG抗体価4倍上昇またはIgA抗体価3倍上昇と定義)が行われた。全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%結果、インドの都市部スラム街では、概して生まれて間もなくロタウイルスに感染している実態が明らかになった。生後6ヵ月までの感染率は56%だった。再感染率は高く、調査期間中の全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%だった。中等度~重度疾患に対する防御効果は、感染回数が増すごとに高まってはいたが、感染3回後も防御率は79%にとどまっていた。最もよくみられたウイルス株の遺伝子型はG1P[8](15.9%)で、G2P[4](13.6%)、G10P[11](8.7%)、G9P[8](7.2%)、G1P[4](4.4%)、G10P[4](1.7%)、G9P[4](1.5%)、G12P[6](1.1%)、G1P[6](0.6%)と続いた。同一タイプのウイルス株への初回、再感染リスクについて評価した結果、遺伝子型に基づく明らかな防御効果は認められなかった。これら結果を踏まえGladstone氏は最後に、「インドや同等の地域では、ロタウイルスワクチン戦略を見直すべきことを示す結果であった。投与量や回数を増加したり、ワクチン接種を早期に行う(たとえば新生児のうちの接種、あるいは母親への接種など)ことも考慮していく必要があるだろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(1):THRIVE試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、米国・Community Research Initiative of New England(ボストン)のCalvin J Cohen氏らによる、全被験者がヌクレオシド系またはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンも同時に受けていることを前提に行われた「THRIVE」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。NRTIレジメンを受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化THRIVE試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー非劣性試験で、21ヵ国98医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、NRTIに対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者が、治験参加医師の選択により、いずれかのNRTIレジメン[テノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)、ジドブジン(同:レトロビル)+ラミブジン(同:エピビル)、アバカビル(同:ザイアジェン)+ラミブジン]を受けた。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性、rilpivirine群86%、エファビレンツ群82%2008年5月から947例がスクリーニングを受け、主要アウトカム検証のためにデータを打ち切った2010年1月までに340例が登録された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群86%(291/340例)、エファビレンツ群82%(276/338例)であり、両群差3.5%(95%信頼区間:1.7~8.8)でrilpivirine群の非劣性(p<0.0001)が認められた。基線から48週までのCD4細胞数増大は、両群でほぼ同等であった(rilpivirine群:189個/μL、エファビレンツ群:171個/μL、p=0.09)。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群7%、エファビレンツ群5%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群4%、エファビレンツ群7%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。特に、発疹とめまいが少なかった(いずれもp<0.0001)。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった(p<0.0001)。Cohen氏は、「ウイルス学的失敗はわずかに多かったが、rilpivirineはエファビレンツに比し、良好な安全性、有効性については非劣性であることが示され、未治療のHIV-1感染患者に対する新たな治療の選択肢と成り得るであろう」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(2):ECHO試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、フランス・Paris Diderot大学Saint-Louis病院感染症部門のJean-Michel Molina氏らによる、全被験者がヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンのテノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)も同時に受けていることを前提に行われた「ECHO」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。テノホビル +エムトリシタビン投与を受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化ECHO試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー実薬対照試験で、21ヵ国112医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、全治験薬に対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者に、テノホビル ジソプロキシルフマル酸+エムトリシタビンが投与された。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性の非劣性確認2008年4月から2011年1月までに948例がスクリーニングを受け、690例が登録、intention-to-treat解析された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群83%(287/346例)、エファビレンツ群83%(285/344例)であり、ロジスティック回帰分析モデルでの推定両群差は、rilpivirine群が-0.4%(95%信頼区間:-5.9~5.2)で非劣性(マージン:12%)が確認された。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群13%、エファビレンツ群6%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群2%、エファビレンツ群8%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。エファビレンツ群では、発疹、めまい、異常な夢やナイトメアの頻度が高かった。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった。Molina氏は、「rilpivirineはエファビレンツに比し、有効性について非劣性であることが示された。ウイルス学的失敗は高かったが、安全性と忍容性プロフィールはより良好であることが示された」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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イソニアジドの結核一次予防的投与、未発症、未感染を改善せず:南アフリカHIV曝露児対象試験

結核治療薬イソニアジド(商品名:イスコチンなど)の乳児への一次予防的投与について、南アフリカで行われた試験の結果、結核の未発症や未感染を改善しなかったことが報告された。試験対象児は、結核感染リスクの高いHIV感染児あるいは周産期にHIVに曝露された乳児で、いずれも生後30日までにBCGワクチンは摂取されていた。サハラ以南では結核が蔓延しており、特にHIV感染成人が多い地域での感染率の高さが問題となっており、イソニアジドによる結核予防戦略が提唱されているという。南アフリカ共和国・ヴィトヴァーテルスラント大学のShabir A. Madhi氏らは、イソニアジドは感染者からの感染が明らかな患児での治療効果は示されているが、サハラ以南のような結核感染リスクが高い環境下にいる乳児を対象とした試験は行われていないとして、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年7月7日号掲載報告より。イソニアジド群、プラセボ群に無作為化し96週投与、その後108週までの転帰を比較試験は、南アフリカ共和国3施設とボツワナ共和国1施設から、生後91~120日で、30日までにBCGワクチン接種を受けていた、HIV感染児548例とHIV非感染児804例を登録して行われた。被験児は無作為に、イソニアジド群(10~20mg/kg体重/日)か同用量のプラセボ群に割り付けられ、96週間投与を受けた。その後108週までの間の、HIV感染児については結核発症と死亡について、HIV非感染児については潜在性結核感染症、結核発症、死亡を主要転帰として検討された。なお、HIV感染児には試験中、抗レトロウイルス治療が行われた(98.9%に実行)。HIV感染児にとって結核は、抗レトロウイルス治療環境が整っても負荷が大きい疾病結果、HIV感染児群、HIV非感染児群ともに主要転帰についてイソニアジド群とプラセボ群とで有意差は認められず、HIV感染児群での結核発症と死亡の発生は、イソニアジド群52例(19.0%)、プラセボ群53例(19.3%)だった(P=0.93)。この結果は、抗レトロウイルス治療開始時期、結核の母子感染歴で補正後も同様であった(P=0.85)。HIV非感染児群では、潜在性結核感染症・結核発症・死亡の複合発生率が、イソニアジド群(39例、10%)と、プラセボ群(45例、11%)で有意差がなかった(P=0.44)。結核罹患率は、HIV感染児群は121例/1,000児・年(95%信頼区間:95~153)、一方HIV非感染児群では41例/1,000児・年(95%信頼区間:31~52)であった。安全性に関して、グレード3以上の臨床毒性あるいはラボ毒性は、イソニアジド群とプラセボ群とで有意差は認められなかった。Madhi氏は、「イソニアジドの一次予防としての投与が、BCGワクチンを受けたHIV感染児の結核未発病生存を、また同HIV非感染児の結核非感染生存を改善しなかった。HIV感染児にとって結核の疾病負荷は、抗レトロウイルス治療を受けられる環境が整っても高いままだった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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C型慢性肝炎治療剤 テラプレビル

新規C型慢性肝炎治療剤であるテラプレビルが、2011年1月、承認申請された。優先審査品目に指定されたことから、早期の承認が見込まれる。社会的に大きな関心を集めるC型慢性肝炎治療肝臓がんは、がんの中でも予防可能ながんとして注目されている。わが国の肝臓がんは、72%がC型肝炎由来、17%がB型肝炎由来であることが報告されており、肝臓がん発症の高リスク例は、C型およびB型肝炎ウイルスの検査で事前に予測することができる。そのため、国としても対策に注力しており、肝炎ウイルス検診の実施、肝炎研究7ヵ年戦略、肝炎治療における助成金の交付など数多くの取り組みがなされている。また、報道機関などで取り上げられることも多く、国民の関心が高い疾患といえる。Genotype1・高ウイルス量におけるSVR率の向上が課題現在のC型慢性肝炎治療では、C型肝炎ウイルスのGenotypeとウイルス量をもとにした4つのカテゴリーに分け、それぞれで異なる治療戦略がとられている。近年の医療の発展により、多くの患者カテゴリーで治療成績が向上したが、Genotype1・高ウイルス量のカテゴリーに属する患者の治療成績は現在も良好とはいえず、大きな問題となっている。このカテゴリーに属する患者は、現在の治療の中心であるペグインターフェロン、リバビリンの併用療法(48週)であっても、SVR (Sustained Viral Response:ウイルス学的著効)率が約50%に留まり、約半分の患者でウイルス消失が達成できていない。さらに、多くの患者がこのカテゴリーに属しているため、Genotype1・高ウイルス量へのSVR率向上は大きな医療ニーズとなっている。テラプレビルの追加でSVR率の大幅な上昇が可能にC型慢性肝炎ウイルスの増殖抑制作用を有するNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビルは、こうした医療ニーズを満たす薬剤として、すでに医師ばかりでなく患者からも大きな期待を集めている。国内でもGenotype1・高ウイルス量患者を対象に第Ⅲ相試験が行われている。ペグインターフェロンα-2b、リバビリンの2剤併用療法48週(PR48)群と、最初の12週をテラプレビル、ペグインターフェロンα-2b、リバビリンの3剤併用療法を行い、その後12週をペグインターフェロンα-2b、リバビリンの2剤で後観察したテラプレビル追加群(TVR12/PR24)の2群に割り付け、SVR、HCV RNA陰性化率、および安全性を検討した。この試験におけるPR48群のSVRは初回治療例で49.2%であった。TVR12/PR24群においては、初回治療例73.0%、前治療再燃例88.1%、前治療無効例が34.4%であった。、初回治療無効例でのSVR率の差はもちろんだが、現在有効な治療手段を持たない前治療無効例の3分の1でSVRを獲得し、新たな治療手段を示した点も興味深い。HCV RNAの累積陰性化率をみると、PR48群が6週で15.9%、48週で79.4%と比較的緩やかに上昇しているのに対し、TVR12/PR24群は6週時点ですでに97.6%、24週では98.4%と、早期かつ高い陰性化を示している。一方、有害事象の発現率では、PR48群においてもすでにヘモグロビン量減少や皮膚症状の発現例がみられ、テラプレビルの併用により発現率が強まる可能性が示唆された。今後は、皮膚症状への適切な対応については皮膚科との連携がより重要視されよう。テラプレビルの併用は、副作用上昇の可能性があるため注意が必要であるが、治療期間の短縮化、SVR率の向上性などを鑑みても有用な治療法だといえよう。承認前から治療ガイドラインで推奨これらの試験結果を受け、厚生労働省研究班は、すでにテラプレビル承認後の治療ガイドライン(初回投与)を策定・発表している。テラプレビル承認後のガイドラインでは、Genotype1・高ウイルス量の患者さんに対しては、ペグイントロン、レベトール、テラプレビルの3剤併用24週投与が推奨される。肝炎の治療薬が、承認前からガイドラインで推奨されるのは、今やB型肝炎治療のスタンダードなったバラクルードと同じで、その期待の高さがうかがえる。実際、テラプレビルは、わが国で優先審査品目に指定され、通常の新薬よりも早い承認が予想される。すでにFDAでは、今年4月に諮問委員会が満場一致で承認を支持、5月には正式に承認された。このような背景がわが国でも追い風になる可能性は高い。

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HPV 4価ワクチン導入で18歳未満女児の高度子宮頸部異形成が減少傾向に:オーストラリア

オーストラリア・ビクトリア州では、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する4価ワクチン(商品名:ガーダシル)導入後の18歳未満女児における高度子宮頸部異形成の発生率が、導入前に比べて減少する傾向にあることが、ビクトリア州細胞診サービス部のJulia M L Brotherton氏らの調査で示された。HPVに対する最初の予防的ワクチンが承認された2006年以降、4価ワクチンあるいは2価ワクチン(同:サーバリックス)の接種が、国の予防接種プログラムとして(28ヵ国以上)、または開発途上国でも地方レベルの寄付金(17ヵ国以上)によって実施されているという。オーストラリアでは、2007~2009年に12~26歳の全女性に対し4価ワクチンを用いたHPVワクチン接種プログラムが導入されている。Lancet誌2011年6月18日号掲載の報告。プログラム導入の前後で、頸部異常の傾向を比較研究グループは、オーストラリア・ビクトリア州居住の女性を対象に、ワクチン接種プログラム導入の前後における子宮頸部異常の傾向の変化について解析した。ビクトリア州子宮頸部細胞診レジストリー(VCCR)のデータを用いて、プログラム開始前(2003年1月1日~2007年3月31日)と開始後(2007年4月1日~2009年12月31日)の高度子宮頸部異形成(HGA、グレード2以上の子宮頸部上皮内新生物あるいは上皮内腺がん)と軽度子宮頸部異形成(LGA)について、5つの年齢層(<18歳、18~20歳、21~25歳、26~30歳、≧31歳)に分けて評価した。主要評価項目はHGAの発生率とし、フィッシャー正確確率検定を用いて2つの時期の比較を行い、ポアソン区分的回帰分析にて発生率の傾向を評価した。導入後3年以内のHGA発生率低下に関する最初の報告ワクチン接種プログラム導入後は、18歳未満の女児においてHGAの発生率が0.38%低下した。この低下の傾向性は徐々に増強し、ワクチン接種導入前の発生率と比べ傾向性に有意な差が認められた(発生率比:1.14、95%信頼区間:1.00~1.30、p=0.05)。LGAや18歳以上の女性ではこのような傾向はみられなかった。著者は、「これは、地域住民を対象としたHPVワクチン接種プログラム実施後3年以内のHGA発生率の減少に関する最初の報告である」とし、「この地域相関的観察研究がワクチン接種の普及に寄与することを確証し、ワクチン接種女性の検診への参加状況をモニターするには、ワクチン接種と検診の連携が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ロタウイルス単価ワクチン「RV1」のリスク・ベネフィット

現在、WHOにより世界的に推奨使用されているロタウイルス単価ワクチン「RV1」について、米国疾病予防管理センター(CDC)のManish M. Patel氏らが、ブラジル、メキシコ両国での乳児への接種後の腸重積発症について評価した結果、短期リスクは約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められたものの、ワクチン接種によるリスクよりもベネフィットがはるかに上回ると結論する報告をNEJM誌2011年6月16日号で発表した。ロタウイルスワクチンは、初期の「Rotashield」では初回接種後3~7日でリスクが最大に達し(約37倍)、約1万人に1人の割合で腸重積が認められたため1999年に市場から回収された。その後開発されたのが次世代ワクチン「RV1」や「RV5」(5価ウシ-ヒト組み替えワクチン)で、いずれも6万児以上を対象とした臨床試験を経て、「RV1」は接種後30日間、「RV5」は同42日間の腸重積リスクの上昇がみられなかったことから、世界的に推奨ワクチンとして使用されている。「RV1」接種は、ブラジルでは2006年3月に、メキシコでは2007年5月に、全国的な小児期予防接種プログラムに導入され、両国で600万例以上の乳児に接種されている。全国接種が導入されているメキシコとブラジルで症例集積および症例対照研究Patel氏らは、症例集積(case-series)および症例対照(case-control)の手法にて、RV1と腸重積との関連を評価した。2008年8月~2010年8月にかけて両国合わせて69の評価対象施設(メキシコ:10地域から16施設、ブラジル:7地域から53施設)で腸重積を有した乳児を特定し、対照群は年齢をマッチさせた乳児を近隣施設から登録した。ワクチン接種日は、接種カードまたはクリニックの記録を再調査し確認された。主要リスク観察期間は、接種後1~7日とされたが、8~14日(2週目)、15~21日(3週目)の期間もリスク評価がされた。結果、症例群に登録された腸重積を有した乳児は615例(メキシコ285例、ブラジル330例)だった。対照群には2,050例が登録された。年間超過入院96例、死亡5例に対し、年間入院8万例、死亡1,300例回避分析の結果、メキシコの乳児において、RV1の初回接種後1~7日に有意な腸重積リスクの増大が認められた。症例集積法における発生率比は5.3(95%信頼区間:3.0~9.3)、症例対照法におけるオッズ比は5.8(同:2.6~13.0)だった。なお、2回目接種後1~7日のリスク上昇はみられなかったが(症例集積法と症例対照法の各比1.8と1.1)、2週目(同:2.2と2.3)、3週目(同:2.2と2.0)に約2倍の増大が認められたブラジルの乳児においては初回接種後1~7日に有意なリスク増大は認められなかったが(同:1.1と1.4)、2回目接種後1~7日に、メキシコでの初回接種後ほどではなかったが、リスクの増大が認められた(同:2.6と1.9)。RV1接種に起因する両国合わせた腸重積の超過入院症例は年間96例(メキシコは約5.1万人に1人、ブラジルは約6.8万人に1人)、腸重積による超過死亡は年間5例だった。一方でRV1接種により、両国で入院は年間約8万例、下痢症状からの死亡は年間約1,300例が回避された。Patel氏は、「RV1と腸重積の短期リスクとの関連は、接種を受けた乳児の約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められた。しかし、ワクチン接種により回避された死亡および入院の絶対数が、ワクチン接種と関連している可能性があった腸重積症例の数をはるかに上回った」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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わが子が受けたポリオ生ワクチンから感染

入院中の便検査でエンテロウイルスが陽性だった弛緩性麻痺例の調査結果について、米国ミネソタ州保健局Aaron S. DeVries氏らによるレポートが、NEJM誌2011年6月16日号で発表された。患者は、長期にわたり後天性免疫グロブリン血症で免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性で、突然、四肢および呼吸麻痺を来し入院、その後死亡に至ったというもので、症例経過、ウイルス検査結果、家族を含めた周辺調査および二次感染の結果などから、推定感染時期が、女性の2人の子どものうちの1人がポリオ生ワクチンの接種を受けた時期と一致したという。免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性に突然の麻痺女性に症状が現れたのは2008年12月で、咳、化膿性鼻汁、軽度の呼吸困難、倦怠感、微熱が認められたが、患者自身、慢性副鼻腔炎の増悪ではないかと考え、事実4日後にその症状は消失した。しかし2日後に、左ふくらはぎに締め付けられるような感覚を覚え、その後5日間で下肢虚弱、入院となった。入院2日後に症状は上肢にも進行、さらに8~38日にかけて自発呼吸が困難となり気管挿管、61~73日には肝機能障害悪化、肺炎、呼吸不全を来し、その後も問題改善が認められず、92日目に家族がサポート中止を選択、その後死亡に至った。患者は、1991年に後天性免疫グロブリン血症と診断され、その後、慢性リンパ様間質性肺炎、食道静脈瘤を伴う肝硬変、一連の入院前2ヵ月の間に悪化した慢性下痢症を伴う腸疾患を患っており、2006年には脾摘を受けていた。B細胞欠損、Bruton型チロシンキナーゼの発現は正常なども報告されている。当局が調査に乗り出すことになったのは、初期には陰性だったが、入院74日目の便検査でエンテロウイルスが検出され報告されたことがきっかけだった。ポリオウイルス同定、感染は11.9年より以前であると推定ゲノム塩基配列決定法の結果、ポリオウイルスtype 2が同定されたが、以前に発表されていた経口ポリオウイルスワクチンのヌクレオチド配列とは12.3%の相違が認められ、2つの弱毒化した野生型ウイルスが認められた。患者はおそらく11.9年(95%信頼区間:10.9~13.2)より以前に感染したと推定された。家族への聞き取り調査から、2人の子ども(13歳と6歳)のうちの1人がその当時、3回接種のポリオ生ワクチンを受けていることが明らかになった。一方で、同室患者3人や2,038人に上る医療従事者へのスクリーニングが行われたが、二次感染は確認されなかった。DeVries氏は、「後天性免疫グロブリン血症患者は、ポリオウイルスに慢性感染している可能性がある。そして、ポリオは免疫グロブリン静注療法を受けているにもかかわらず発症する可能性がある」と報告。米国では2000年にポリオ生ワクチンから不活化ワクチンに切り換えられた。本症例は、それ以後初の麻痺性ポリオの症例だったという。最後に、不活化ワクチン切り替え後も、ポリオ根絶のための監視と、特に慢性感染の可能性がある患者へのメンテナンスが必要だとまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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C型肝炎治療法をテレビ会議システムでプライマリ・ケア従事者に訓練:ECHOモデル

米国・ニューメキシコ大学で開発されたECHOモデル(Extension for Community Healthcare Outcomes model)は、必要な医療サービスを十分に受けられず、C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者のような複合的な健康問題を抱える集団へのケア提供改善を目的として開発されたもので、テレビ会議システムを用いて、現地のプライマリ・ケア従事者に複合疾患の治療技術訓練プログラムを提供する。その効果について、これまでプライマリ・ケア従事者への訓練不足のため治療が行われてこなかったという農村地帯と刑務所をプログラム対象として検討した、同大内科部門のSanjeev Arora氏らによる前向きコホート研究の結果、ECHOモデルはHCV感染治療を効果的に行ううえで有効であることが示されたという。NEJM誌2011年6月9日号(オンライン版2011年6月1日号)で掲載された。大学HCVクリニックでの治療とECHOプログラム実施施設での治療の成果を比較C型肝炎感染については治療の進展、治癒率の改善が著しいが(HCV遺伝子型1感染患者45%、2および3は75%)、米国では治療を受けている慢性C型肝炎感染患者は少なく、処方数は2002年から2007年に34%減少したという。抗ウイルス薬の投与は重大な副作用と関連しており、多くの専門家による積極的な管理が必要だが、訓練不足のためプライマリ・ケア従事者による治療は行われていなかったことが背景にあり、ECHOモデルが開発された。Arora氏らによる試験は、ニューメキシコ大学HCVクリニックでの治療と、ECHOプログラムによる訓練を受けたプライマリ・ケア従事者がいる21ヵ所の農村地帯および刑務所での治療を比較し行われた。被験者は、これまで治療を受けたことがない慢性HCV感染患者合計407例で、ウイルスが持続的陰性であることを示すSVRを主要エンドポイントとした。SVR率、大学治療群57.5%、ECHO施設治療群が58.2%結果、SVR率は、大学治療群が57.5%(84/146例)、ECHO施設治療群が58.2%(152/261例)だった(群間差:0.7ポイント、95%信頼区間:-9.2~10.7、P=0.89)。またHCV遺伝子型1感染患者におけるSVR率は、大学治療群が45.8%(38/83例)、ECHO施設治療群が49.7%(73/147例)だった(P=0.57)。重大な有害事象の発生率は、大学治療群で13.7%、ECHO施設治療群では6.9%だった。Arora氏は「サービスが不十分な地域におけるHCV感染治療に、ECHOモデルは効果的な方法であることが示された。このモデルを実施することで、他の州や米国以外でも、現在可能な患者数よりも多くのHCV感染患者を治療することが可能となるであろう」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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NV1FGFによる血管新生療法、重症下肢虚血患者の大切断術、死亡を低減せず

重症下肢虚血患者に対する非ウイルス性ヒト線維芽細胞増殖因子1発現プラスミド(NV1FGF)による血管新生療法は、下肢切断術施行および死亡を低減しないことが、英国Ninewells病院のJill Belch氏らが実施したTAMARIS試験で示され、Lancet誌2011年6月4日号(オンライン版2011年5月31日号)で報告された。欧米では最大で約2,000万人が末梢動脈疾患に罹患し、そのうち2~5%が最も重篤な病態である重症下肢虚血に至るという。線維芽細胞増殖因子1(FGF1)は血管の新生を調節、促進し、血管内皮細胞の遊走、増殖、分化を活性化することで既存の血管からの毛細血管の発生を促すことが知られている。下肢虚血患者に対するNV1FGFのプラセボ対照無作為化第III相試験TAMARIS試験は、血行再建術が非適応の重篤な下肢虚血患者に対する血管新生療法としてのNV1FGFの有用性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験である。2007年12月1日~2009年7月31日までに、30ヵ国171施設から、下肢の虚血性潰瘍あるいは軽度の皮膚壊疽がみられ、血行動態に基づく選択基準(足首血圧<70mmHg、爪先血圧<50mmHgあるいはその両方、治療足の経皮的酸素分圧<30mmHg)を満たした患者525例が登録され、NV1FGF(0.2mg/mL、筋注)を投与する群あるいはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は2週ごとに4回(第1、15、29、43日)実施され、1回につき治療足に対し8回の注射が行われた。主治医、患者、研究チームには治療割り付け情報は知らされなかった。評価項目は大切断術(足首より上部での切断)の施行あるいは全死因死亡までの期間および発生率とし、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を用いたintention-to-treat解析を行った。有効な治療法開発が課題として残るV1FGF群に259例が、プラセボ群には266例が割り付けられ、全例が解析の対象となった。全体の平均年齢70歳(50~92歳)、男性が365例(70%)、糖尿病患者は280例(53%)、冠動脈疾患既往歴のある患者は248例(47%)であった。大切断術施行あるいは死亡の割合は、NV1FGF群が33%(86/259例)、プラセボ群は36%(96/266例)であり、有意な差は認めなかった(ハザード比:1.11、95%信頼区間:0.83~1.49、p=0.48)。大切断術の施行や死亡までの期間にも差はみられなかった。虚血性心疾患(NV1FGF群10% vs. プラセボ群10%、p=1.00)、悪性新生物(3% vs. 2%、p=0.55)、網膜疾患(4% vs. 6%、p=0.42)、腎機能障害(7% vs. 6%、p=0.49)の発現率も、両群で同等であった。著者は、「重症下肢虚血患者に対するNV1FGFによる血管新生療法は切断術施行および死亡の低減に有効とのエビデンスは得られなかった」と結論し、「これらの患者に対する有効な治療法の開発は大きな課題として残されている」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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新生児CMVスクリーニングに唾液検体リアルタイムPCR法が有用

難聴の重大原因である先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症の新生児スクリーニングについて、リアルタイムPCR法が有用であることが示された。米国・アラバマ大学バーミングハム校小児科部門のSuresh B. Boppana氏ら研究グループが行った前向き多施設共同スクリーニング研究による。新生児CMV感染症スクリーニングの標準アッセイは出生時に採取した唾液検体による迅速培養法とされているが、自動化ができず大規模スクリーニングに不向きであった。そこでリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をベースとし、出生時に採取した液体の唾液検体もしくは乾燥させた唾液検体を用いる2種のリアルタイムPCR法が開発された。研究グループはその有用性について検討した。NEJM誌2011年6月2日号掲載報告より。新生児3万4,989例を対象に前向きスクリーニング研究2008年6月~2009年11月の間に、米国内7施設で生まれた新生児3万4,989例が、出生時に採取した唾液検体を用いて迅速培養法と2種のリアルタイムPCR法のうち1種以上の検査を受けた。リアルタイムPCR法の有用性の検証は、第1相群(液体唾液PCR群)と第2相群(乾燥唾液PCR群)の前向き研究にて行われた。第1相群は迅速培養と液体唾液PCRを受けた1万7,662例で、第2相群は迅速培養と乾燥唾液PCRを受けた1万7,327例だった。感度および特異度、液体唾液PCRは100%・99.9%、乾燥唾液PCRは97.4%・99.9%結果、全被験児のうち177例(0.5%、95%信頼区間:0.4~0.6)が、3種の検査法のうち1種以上でCMV陽性だった。第1相群で陽性だったのは93例。そのうち85例(第1相群の0.5%、95%信頼区間:0.4~0.6)は、液体唾液PCR、迅速培養ともに陽性だった。残る8例は、液体唾液PCRは陽性だったが迅速培養は陰性だった。迅速培養との比較による液体唾液PCRの感度は100%、特異度は99.9%であり、陽性適中率は91.4%、陰性適中率は100%だった。第2相群で陽性だったのは84例だった。そのうち迅速培養陽性は76例(第2相群の0.4%、95%信頼区間:0.3~0.5)だった。うち乾燥唾液PCRも陽性だったのは74例で、2例は乾燥唾液PCR陰性だった。また乾燥唾液PCR陽性だが迅速培養陰性は8例あった。迅速培養との比較による乾燥唾液PCRの感度は97.4%、特異度は99.9%であり、陽性適中率は90.2%、陰性適中率は99.9%だった。Boppana氏は「液体唾液検体でも乾燥唾液検体でもリアルタイムPCR法は、CMV感染症検出に高い感度と特異度を示した。したがって新生児CMV感染症スクリーニングの強力なツールとなりうるとみなすべきである」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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小児の特発性膜性腎症にウシ血清アルブミン関与の可能性示唆

ネフローゼ症候群の原因疾患として最も多い膜性腎症のうち、自己免疫疾患が原因と考えられている特発性膜性腎症について、フランス・パリ公立Tennon病院のHanna Debiec氏らにより新たな知見が報告された。膜性腎症は、免疫複合体が糸球体基底膜の上皮下に沈着することにより腎臓の濾過機能が障害されると考えられている。ウイルス細菌、腫瘍など外因性抗原が特定される症例は二次性膜性腎症と分類されるが、いずれも抗原の特定や性質、病院や発症機序など不明な部分が多い。特発性膜性腎症についても最近、2つの抗原候補が同定され、そのうちのM型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)は同症例の70%に認められたが、その他の抗原については明らかではない。その抗原候補として、Debiec氏らは、疫学調査で示された自己免疫疾患発現リスク因子としての栄養学的要因に着目、牛乳や牛肉蛋白質の一種で腸管吸収され抗体誘導の可能性があり得るウシ血清アルブミンの関与を探った。結果、小児例の一部でその病態への関与が示唆される知見が得られたという。NEJM誌2011年6月2日号掲載より。小児9例、成人41例についてウシ血清アルブミンの関与を探る研究グループは、2004~2009年に生検を受け二次性膜性腎症を否定された特発性膜性腎症の50例(小児9例、成人41例)と、対照群172例について調査した。血清検体を採取し、ELISA法とウエスタンブロット法で抗ウシ血清アルブミン抗体と血中アルブミン血清について調べた。また、二次元ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、血清検体から免疫精製したウシ血清アルブミンの性質を解析した。さらに糸球体沈着物中のウシ血清アルブミンを検出し、IgGを抽出し反応性を解析した。小児例でのみ上皮下の免疫沈着物中にウシ血清アルブミンが検出結果、小児4例、成人7例の計11例に、高濃度な血中抗ウシ血清アルブミン抗体が認められた。いずれもIgG1とIgG4のサブクラスだった。またこれら患者は、血中ウシ血清アルブミン値の上昇も認められた。しかし、血中免疫複合体の濃度は上昇が認められなかった。ウシ血清アルブミンの性質についての解析では、小児4例ではpHの基本域に属することを示したが、成人例は天然のウシ血清アルブミンと同様に中性域に属することを示した。また小児例でのみ、上皮下の免疫沈着物中にウシ血清アルブミン(陽イオン性血中ウシ血清アルブミンとウシ血清アルブミン特異抗体の両方)が検出された。それはPLA2R非存在下でIgGと共存しており、IgGはウシ血清アルブミンに特異的だった。Debiec氏は、このように小児膜性腎症患者の一部で、血中陽イオン性ウシ血清アルブミンと抗ウシ血清アルブミン抗体の両方が認められたこと、また上皮下の免疫沈着物中にそれらが存在することを踏まえ、「実験モデルで示されているように、陽イオン性ウシ血清アルブミンが陰イオン性の糸球体係蹄壁に結合し、免疫複合物のin situ形成をすることが病原となっていることが示唆される」と結論。最後に「さらなる疫学調査は必要だが、小児例の可能性として食事由来のウシ血清アルブミンやウシ血清アルブミンの免疫処置が考えられ調査を促す必要がある。もしウシ血清アルブミンが検出されたら、食生活からそれを除去することは有益であろう。我々の研究は、ほかにも食物抗原が膜性腎症の発現に関係している可能性を高めるものとなった」と報告をまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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子宮頸がん集団検診でのDNA法、カットオフ値の増加は安全に女性の負担を有意に減らす

子宮頸がん集団検診でhybrid capture-2法を用いる場合、カットオフ値は≧1 rlu/co(relative light units/cut-off level)とされているが、それ以上の値(≧10 rlu/coまで)を用いた場合も感度は良好で、特異度に関しては高度子宮頸部上皮内腫瘍とは無関係の陽性を半減できることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学公衆衛生部門のMatejka Rebolj氏らが、システマティックレビューを行い報告したもので、「集団検診でのカットオフ値を上げてよいことが示された。検診を受ける女性にとっては安全で負担が有意に減る」とまとめている。hybrid capture-2法は、ヒトパピローマウイルス(HPV)-DNA法の一つ。細胞診では感度が低いとして英国など数ヵ国でDNA法の導入が検討されているという。BMJ誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月23日号)掲載より。hybrid capture-2法を検証した無作為化試験をシステマティックレビューRebolj氏らは、PubMedをデータソースとしてシステマティックレビューを行った。hybrid capture-2法を用いた子宮頸がん集団検診の無作為化試験論文を検索し、陽性者数やカットオフ値により子宮頸部上皮内腫瘍を有した人を階層化していた、2010年8月までに発行された論文を選んだ。本研究では、各試験の不均一性のためにメタ解析はできなかった。解析対象となったのは6試験、25のカットオフ値のデータで、解析されたカットオフ値は≧1 rlu/co、≧2 rlu/co、≧3 rlu/co、≧4 rlu/co、≧5 rlu/co、≧10 rlu/coについてだった。感度、最低でも≧2 rlu/coで0.97、≧10 rlu/coで0.91グレードIII以上の子宮頸部上皮内腫瘍に関する相対的感度は試験により異なったが、最低でもカットオフ値≧1 rlu/coとの比較で、≧2 rlu/coは0.97、≧4 rlu/co(または≧5 rlu/co)は0.92、≧10 rlu/coは0.91を示した。同様の傾向が、グレードII以上の感度についてもみられた。特異度は、最低でも≧2 rlu/coで1%、≧4 rlu/co(または≧5 rlu/co)で2%、≧10 rlu/coで3%の上昇を示し、最大ではそれぞれ24%、39%、53%まで上昇した。その結果、高度子宮頸部上皮内腫瘍とは無関係の陽性者の検出を回避することができた。この総体的パターンにおいてアウトライアーは2例だけだった。Rebolj氏は「≧2 rlu/co~≧10 rlu/coのカットオフ値を用いることで感度は低下するが、国際的に推奨されているグレードII以上の検出感度として90%以上が必要という基準を満たしており、特異度については≧1 rlu/coは高かった。このことはhybrid capture-2法のカットオフ値を集団検診において増やしてよいということを示すものであり、女性にとってはかなり安全で、有意に負担が減ることになる」と結論している。

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小児の細菌性髄膜炎に対するCTRX、5日間投与vs. 10日間投与/Lancet

発展途上国の小児において重大な疾病であり死亡の原因となっている細菌性髄膜炎に対して、静注の抗菌薬セフトリアキソン(CTRX、商品名:ロセフィンなど)が多くの国で推奨されているが、その至適な投与期間について確立されていない。アフリカ南東部のマラウイ共和国・マラウイ大学医学校小児科のElizabeth Molyneux氏らは、CTRXの投与期間について、5日間投与と10日間投与との同等性を検証する国際共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を、2ヵ月~12歳児を対象に行った。Lancet誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。細菌学的治療失敗、再発を主要アウトカムに無作為化試験試験は2001年9月~2006年12月にかけて、バングラデシュ、エジプト、マラウィ、パキスタン、ベトナムの5ヵ国10小児科病院の協力を得て行われた。いずれの病院も年間150例以上の細菌性髄膜炎患児を受け入れていた。対象は、細菌性髄膜炎の原因菌として肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌b型、髄膜炎菌を有した2ヵ月~12歳児。無作為化は、5日間のCTRX治療で臨床的に安定したと診断された1,027例を、均等にコンピュータ配分で、さらに5日間治療を行う群とプラセボ群とに割り付ける方法で行われた。割り付け情報は患児、保護者、また医療スタッフにも知らされなかった。主要アウトカムは、細菌学的治療失敗(脳脊髄液または血液培養検査で陽性)および再発。分析は、パー・プロトコール解析にて行われた。5日間で症状が安定したら投与を打ち切って問題ない解析に含まれたのは、1,004例(5日間治療群:496例、10日間治療群:508例)だった。治療失敗例は、5日間治療群、10日間治療群ともに0例だった。再発は、5日間治療群で2例が報告、うち1例はHIVを有する患児だった。10日間治療群では再発はみられなかった。抗菌薬投与の副作用は、両群とも軽度で同等に認められた。Molyneux氏は、「肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌b型または髄膜炎菌による細菌性髄膜炎を発症した2ヵ月~12歳児で、CTRXの5日間投与で症状が安定した患児は、問題なく投与を打ち切ってよい」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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